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部室に一人、俺は居る。 卓と牌を綺麗にしながら、物思いに耽る。 京太郎「咲たちは今頃合同合宿か……」 京太郎「思えば色々あったな、麻雀部に咲が入って、合宿行ったり、県大会優勝して、全国出場が決まって……」 京太郎「咲にも気の置けない仲間も出来た。」 京太郎「もう俺の手も必要ないくらいに……」 今の咲には和や優希、それに染谷先輩に部長が付いている。 もう俺の後ろを付いて来る咲はいない…… 京太郎「っとそういえばハギヨシさんにタコスの作り方と麻雀を教えてもらうんだった。」 ―龍門渕家屋敷― ハギヨシ「ようこそ龍門渕家へいらっしゃいました。」 京太郎「やめてください、仰々しいですよ、客でもないんですから、というかむしろこっちが教わる側なのに……」 ハギヨシ「いえいえ、須賀様はお客様です、お客様に粗相などあったら龍門渕家の執事として面目が立ちません。」 ハギヨシ「ただ、お嬢様達は生憎、合同合宿で不在で大したおもてなしや挨拶など出来ませんが……」 京太郎「こちらこそすみません、急に料理を教えて欲しいなんて無理言って。」 ハギヨシ「では不肖、この萩原、精一杯須賀様の指南役を受けさせていただきます。」 京太郎「よろしくお願いします。」 ハギヨシさんからおいしいタコスの作り方と麻雀を教わる。 厨房でタコスを作る傍ら、ハギヨシさんは何かを煮込んでいた。 京太郎「ハギヨシさん、それは?」 ハギヨシ「ああ、これはシチューを煮込んでいるんです。」 京太郎「シチュー?夕飯のしこみですか?」 ハギヨシ「いえ、料理の練習です。」 京太郎「ハギヨシさんほどの腕前なら練習なんてしなくてもいいんじゃ……?」 ハギヨシ「ふふ、練習はし続けることに意味がある……と言いたい所ですが……」 ハギヨシ「目指す味には到底近づけられないのです……」 京太郎「目指す味、ですか。」 ハギヨシ「ええ、衣様がシチューを召し上がった際、こんな事を仰いまして……」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「「「「いただきます」」」」 衣「今宵の夕餉は……シチューか……」 透華「そうですわね……」 純「しかし今日のはまた一段とうまいな!」ガツガツ 智紀「萩原さんの作る料理はいつもおいしい。」 一「おいしいね、透華。」 透華「え、ええ……」 「違う」 智紀「?」 純「何が違うんだ?衣?こんなに旨いのに。」 衣「いや、あの、ハギヨシの作ったシチューは大変美味だぞ。」 衣「ただ、その……」 ハギヨシ「龍門渕家のシチューとは味が違う……ですか。」 衣「う、うむ。」 衣「昔、母君が作ってくれたシチューを思い出して……」 透華「でも仕方ないことですわ……何せもう作れる者がおりませんもの。」 衣「ああ、そうであったな……」 衣「すまないハギヨシ……忘れてくれ……」 ハギヨシ「いえ、こちらこそ配慮が足らず申し訳ありません。」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 京太郎「そんなことがあったんですか……」 ハギヨシ「はい、それからは今は亡き奥様のが作っていたシチューを思い出しながら試行錯誤していましたが中々上手く行かず……」 ハギヨシ「おっと、少々湿っぽくなりましたね。」 ハギヨシ「そうだ、今夜はお泊りになってはいかがでしょうか?」 京太郎「流石にそこまでして頂く訳には……」 ハギヨシ「いえいえ、麻雀のこともありますし、何より夕食も召上って貰わずにお客様を帰したとなると透華お嬢様に叱られてしまいます。」 京太郎「そこまで言うなら泊まって行こうかな?」 ハギヨシ「ではお部屋にご案内させていただきます。」 夜になってハギヨシさんに案内された部屋で床に就こうと思ったが…… 慣れない枕が原因か、はたまた慣れない部屋が原因なのかはわからないが中々寝付けなかった。 余りに寝付けないので、ふと窓に目をやると龍門渕家の庭が見えた。 「どうせ寝付けないのだから」と、少し外の空気を吸うためにも庭を散歩しようと部屋から出る。 庭に出て、少し歩いてみる。 辺りは静まり返っていて風の音すら聞こえない。 月夜に照らされた綺麗な庭で空を眺めると雲が一つも無く満天の星空に満月が浮かんでいた。 綺麗な月だ。 月を見ながらそんな事を思っていると何所からか風が吹いた。 それと同時に人も…… 「あら、どちらさまかしら?」 「ええと龍門渕の知り合いに泊めさせて頂いてる須賀京太郎です。」 「そう、ならお客様ですわね。」 その人は長い金髪の女性で、気品と優しさを体現しているような美しい人だった。 「私、今、"寝付けなくて"庭で休んでいましたの。」 「よかったら京太郎君も月夜のティータイムはいかがかしら?」 「いいんですか?見ず知らず俺なんかが……」 「ええ、家で泊まっているという事は誰かに誘われたという事でしょう?」 「ええ、ハギヨシさんに……」 「なら、問題ありませんわ。」 「では、失礼して……」 「さあ、一緒に月夜のお茶会を楽しみましょう。」 それから暫く話しをしながらお茶を飲んでいく。 不思議な人だった。 優しい雰囲気と柔らかな笑みで俺の話を聞いてくれていた。 「――で、そいつは麻雀やる時はすごいのに、いつもはどん臭くいやつなんですよ。」 「うふふ、京太郎君はその子の事とても気に掛けてらっしゃるのですわね。」 「なんか、妹みたいで放って置けないんです。」 「妹、ですか……」 「あの、俺なにか気に障ることいいましたか?」 「いえ、少し昔の事を思い出しただけですわ……」 「そうですわ、私にも妹がおりましてね。」 「それを少し、思い出しまして。」 「ただそれだけですわ。」 「そうなんですか……」 そう言って、その人は少し悲しそうな顔をしながら虚空を仰ぎ見ていた。 先ほどまで見せていた柔和な笑顔が曇ったのが少し辛かった。 それから少しだけその人は自分の話をしてくれた。 体が弱く、肺の病を患っていたこと。 そして今はもう大丈夫になって、夜の間なら歩き回れるようになったこと。 「ごめんなさいね、私のつまらない話なんて聞かせてしまいまして。」 「いえ、むしろ俺のことばかり話してしまい、すみません。」 「貴方の話はとても面白かったですわ。」 「こんな話でいいならいくらでもしますよ。」 「うふふ、あら、お茶が切れてしまいましたわ。」 「時間が経つのが早いですね。」 「……それにもうこんな時間ですわ、よい子はもうとっくに眠っている時間ですわよ?」 「うわ、本当だ、そろそろ寝ないと。」 「ちょっとよろしいでしょうか?」 「はい、なんでしょう?」 「京太郎君に"ついていって"いいかしら?」 「え?」 「"ここは迷いやすい所"ですわ。」 「なのでお部屋まで案内いたしますわ。」 「ありがとうございます。」 その人はそう言って、俺を部屋まで案内してくれた。 彼女は部屋の前に飾られている花をみて、呟いていた。 「あら、この花は……」 「どうしたんですか?」 「私の好きな花でして。」 「ええっとエゾムラサキでしたっけ?」 「いいえ、似ていますが違いますわ。」 薄青色の花を慈しむように見た後、俺に向き直り、挨拶をする。 「それではお休みなさい、京太郎君。」 「おやすみなさい、あ、そうだ貴女のお名前を聞き忘れていました。」 「私の名前は、龍門渕……――華ですわ。」 最後の方は閉まる扉の音で聞き取れなかった。 ただ明日にでもなればハギヨシさんに聞けばわかるだろう。 そう思い、用意されていたベッドで目蓋を閉じる。 ここは厨房か……そう思い辺りを見回す。 その内に厨房に仲が睦まじい姉妹らしき二人がやってくる。 鍋を掴み何かしている。 妹らしき方が何かを言っている。 「お姉さま、お母様に教えられた作り方ってこれで合ってましたか?」 「確かこんな感じだったはずですわ。」 「デミグラスはこんな味でしたでしょうか?」 「もうちょっと甘めだったはずですわ……」 「ここからは隠し味ですわね。」 「お母様も祖母様から教わった時に隠し味を入れたって言ってましたわね。」 「そうして少しずつ隠し味が増えていくんですわね……」 「お姉さま、私たちも娘か息子のお嫁さんが出来たら新しい隠し味を増やすのですね。」 「そうですわね、でもその前に私たちのお婿さんを探さないといけませんわね。」 「うふふ、そうですわね、子供なんてまだまだ先ですわね。」 姉の方はある程度煮込んだ後、味見している。 「うん、良い出来栄えですわね。」 「それでは私、みんなにシチューが出来た事を教えてきますわ。」 そう言った妹はどこかに行ってしまった。 姉は何故かこちらを向いた。 俺が見えているのだろうか…… 夢の中なので何があっても不思議ではないが…… 俺を見据えて姉は呟いていた。 Forget-me-not 「私を忘れないで」 朝日が昇り鳥の囀りで目を覚ます。 不思議な夢を見たものだ。 ハギヨシさんにシチューの話を聞いていたからか、はたまた龍門渕さんと話していたせいかはわからない。 たかが夢の事で一々考えてても仕方ないので、とりあえず顔を洗って身支度をする。 ハギヨシ「須賀様、おはようございます、昨晩はよく眠れましたか?」 京太郎「あ、おはようございますハギヨシさん、おかげでちゃんと眠れましたよ。」 ハギヨシ「朝食の用意が出来ております。」 京太郎「ありがとうございます。」 ハギヨシさんに通され、軽めの朝食を取らせてもらった。 その後は流石に家に帰らないと拙いのでハギヨシさんに挨拶をして別れることにした。 京太郎「麻雀とタコスを教えてもらっただけでなく泊めさせてもらいまして、本当にありがとうございました。」 ハギヨシ「いえ、お気になさらないで下さい。」 京太郎「あ、そうだ、ハギヨシさん、名前をちゃんと聞き取れなかったんですが『龍門渕なんとか華』さんていますよね?」 ハギヨシ「透華お嬢様のことですね。」 京太郎「その人にもお礼を言っておいて下さい、『昨日の貴女との夜中のお茶会は楽しかったです』って。」 ハギヨシ「?わかりました、伝えておきます。」 京太郎「それでは。」 ――ハギヨシ視点―― 確かに言伝を受け、須賀様を見送りさせていただきました。 ただ、須賀様のお言葉に少し引っかかりがあったのです。 何故なら透華お嬢様は合同合宿で皆様と一緒に出ていますので、 昨日の夜に透華お嬢様と須賀様が会われるということはないのです。 一介の使用人風情が詮索することではありませんので透華お嬢様が戻られた時に伝えれば良いこと…… 私は厨房に向かい朝食の片付けと昼食の下拵えをすることにしました。 その時気付いたのですが、昨日作ったシチューとは別に新たな鍋が置いておりました。 私はその鍋から一掬い取り、味見をし、そして驚愕致しました。 驚愕した理由は今は亡き奥様の作ったシチューと同じ味だったからです。 勿論私が作った覚えがありませんので周りの人物が作った考えるのが妥当です。 そこで私は、近くに居た杉乃さんに聞いてみましたが、残念ながら彼女ではないようです。 となると益々謎が深まりました。 今龍門渕家にいるのは私と杉乃さん。 そして昨晩からお泊りになられた須賀様だけなのです。 当然、須賀様は元の味や作り方を知る由はありませんですし、何より彼の性格からして厨房を勝手に使うという事はないはず…… 一体誰がこのシチューを作ったのでしょう…… 京太郎「ただいま~」 京太郎母「あんた何所に行ってたのよ?」 京太郎「執事のハギヨシさんにタコスと麻雀を教えてもらってた。」 京太郎母「執事?今時そんなのいるんだ。」 京太郎「居るとこにはいるんだな。」 京太郎母「私ちょっと出かけてくるからお昼はテキトーに食べておいて。」 京太郎「あいよー。」 簡単な昼食をとってベッドの上で昨晩の事を思い出す。 月夜に照らされた彼女は美しく、そして儚かった。 「優しそうな人だったな……」 その内に段々と目蓋が重くなり、夢の世界の扉を叩いてしまう事になる。 ここは何所だ…… 今は誰も住んでいない洋館に執事服を着た男が暗い顔をしていた。 そこへ声を掛ける女の人が一人。 「あの、どうしました?」 「……私はここの執事でございます。」 「と言いましても、『元』ですが。」 「そう、ですか。」 「はい、ここは直に人の手に渡るのですが行く宛もありませんので。」 「ここで果てるのも一興かと思いまして……」 男は悲しそうな顔をしながら洋館を見回し、そう言ってのけた。 「……どうして命を捨てようとなさるのか聞いてもよろしいかしら?」 「……ここには私の主が住まわれていたのですが、ある日、主は恨みを買った賊に襲われ、息を引き取りました。」 「私は守れなかったのです、守るべき主人を……」 「主はご両親と死別なされてから、一人この家を守り続けていました。」 「死後は天涯孤独の身であったため、家を受継ぐ者もおらず、こうして人手に渡ることに……」 「…………」 「……私は仕えるべき主を失い、守るべき家も失いました。」 「私は自分の存在価値を見出せないまま、途方に暮れていました……」 「ですから、せめて主のお傍にと……」 「……それなら貴方、私の執事になりませんこと?」 「は?」 出された提案に男は驚いた顔をしていた。 多分これから先は見ることはないくらいこの男にとって珍しい顔だ。 「ですから、今は何所の執事でもないのでしょう?」 「だったら、我が龍門渕家の執事になりなさい。」 「しかし、こんな私でよろしいのでしょうか……」 「主人一人守れなかった私が、また執事をするなんて……」 「私が許可します、貴方は私に仕えなさい。」 「文句を言う者が居るのなら私が蹴散らして差し上げますわ。」 「……左様でございますか。」 「ええ、私に通せぬ物はありませんわ。」 「ところで貴方の名前は?」 「私に名前などありません。」 「名前を与えてくれた主が亡くなった時、名前に意味など無くなってしまいましたから……」 「……では私が付けて差し上げましょう。」 「……萩原、そう萩原がいいですわね。」 「萩原、でございますか。」 「そう、それで愛称は……ハギヨシがいいですわね。」 「わかりました、ではこのハギヨシ、精一杯貴女様に仕えさせていただきます。」 京太郎「う、う~ん……」 そこで目が覚めた。 俺は軽く体を伸ばし、変な夢を見たと思いながら、喉の渇きを潤す為に台所へと向かう。 そこで帰ってきた母親と出くわした。 京太郎「お帰り、結構遅かったな。」 京太郎「そういえば母さんは何所行ってたんだ?」 京太郎母「ただいま、ちょっと人と会っててね。」 京太郎「へぇー。」 京太郎母「そういえば、京太郎、あんた昨日は執事に会いに行ったって言ってたわよね?」 京太郎「ああ、それがどうしたの?」 京太郎母「どこの執事?」 京太郎「龍門渕家の執事さんだけど。」 京太郎母「そう……」 京太郎「どうしたんだよ、いきなり?」 京太郎母「……京太郎、あんた……父親に会ってみたくはない?」 京太郎「はぁ?」 京太郎「俺の父さんって俺が生まれる前に死んだんじゃないのかよ?」 京太郎母「ちゃんと生きてるわよ、ただ、余り表沙汰に出来る人じゃなかったから死んだ事にしてただけ。」 京太郎母「あんたが会った事あるかはわからないけど、行った事はある所よ。」 京太郎母「で、会ってみたくない?」 京太郎「いきなりそんな事を言われてもな……」 京太郎「そもそも何で今更になって……」 京太郎母「あんたも高校生になったんだから父親の事を知っておいてもいいかなって。」 京太郎「もしかして母さんが今日あってた人って……」 京太郎母「そう、あんたの父親。」 京太郎母「あんた返事次第で養子にしてもいいとも言われてるのよ。」 京太郎「養子?」 京太郎母「あっちにも家庭があったからよ。」 京太郎母「元々あんたが生まれていたことも知らなかったのよ。」 京太郎「ようは母さんは不倫してたのか?」 京太郎母「結果的に言えばね。」 京太郎母「まぁ養子の件は直ぐに答えを出せとも言われてないし、とりあえず一緒に住まないか?って聞かれたのよ。」 京太郎「母さんはどうなんだよ?」 京太郎母「あたしはどっちでもいいけどあんたとは一緒には住まないわよ。」 京太郎「はぁ!?」 京太郎母「あたし暫く海外に転勤するから。」 京太郎「そんな話聞いてねぇよ!?」 京太郎母「そりゃ言ってないもの。」 京太郎母「だからあんたの父親に話を付けに言った訳。」 京太郎母「この家は一応残してあげるけど出来れば京太郎には父親の所に行って欲しいかな?」 京太郎「なんでだよ?」 京太郎母「流石に息子一人にするのは忍びないし、結構長く居る予定だから海外に連れて行くわけにはいかないし。」 京太郎「……わかったよ、とりあえず会うだけ会うよ。」 京太郎「一緒に住むかどうかはそれから考える。」 京太郎母「よーし、それでこそ我が息子だ。」 明日父親と会うことになった。 この母親いつもこんな感じだ。 いきなり重要な事を言い出してはケロッとしてやがる。 それはともかく一体父親どんな人物なのだろうか…… 朝になり父親が住んでいる家とやらに向かう。 なんじゃこりゃ。 誰かがドッキリの看板もって何所かに潜んでいるんじゃないかと思った。 何せここへ来たのは昨日ぶりなのだから…… ハギヨシ「ようこそいらっしゃいました『京太郎様』。」 京太郎「ハギヨシさん、昨日ぶりですね。」 やはりと言うかなんと言うか、お出迎えこの人だった。 てっきりハギヨシさんといっしょにドッキリの看板が出てくるのかとも思ったが、 ハギヨシさんはそんな事をするような人ではない。 そして出迎えにはもう一人居た。 「よく来たね、京太郎君。」 そこにはどこか頼りなさげな中年の男が立っていた。 「ええと貴方が俺の……?」 「詳しい事は中で話そうか。」 そう言われて通された部屋には白髪交じりの男が待っていた。 「ハギヨシ、もう下がっていい。」 「はい、それでは私はここで失礼させていただきます。」 ハギヨシさんはそう言って音も無く去っていった。 これから重要な事を話すのだろう。 そのための人払い。 先ほどから一緒に来た中年の男性が切り出す。 「お義父さん、彼が京太郎君です。」 「初めまして、須賀京太郎です。」 「……君がそうか、急な事で済まないな。」 「君の母親から京太郎君を預かって欲しいと言われてな。」 「それに私も是非、君を養子にと思っている。」 「いきなりすぎて直ぐには答えられません。」 「そうだな……虫のいい話をいきなり出されても困惑するだろう……」 どうやら話を聞くと中年の男の方が龍門渕家の現当主で透華さんの父親。 老人の方が前当主で透華さんの祖父、龍門渕高校の理事長でもあるらしい。 それから俺の人生を変える様な話が続いた。 ―――――― ―――― ―― 結局の所、龍門渕家のお世話になることにした。 後で龍門渕高校の面々に挨拶をしないといけないな。 あと、清澄高校の面々にも事情を話さないと…… 透華父「そろそろ透華達が帰ってくる頃だ、挨拶は私も一緒に立ち会おう。」 京太郎「わかりました、えっと、"お義兄さん"?」 透華父「出来ればお父さんと呼んでほしいのだがね……」 京太郎「"お義兄さん"の養子になる話は"まだ正式に決まった"わけではないんですよね?」 透華父「まぁそうではあるが一日でも早く家族として馴染む為にもそっちの方がいいのではないのかな?」 京太郎「それよりも何故お義兄さんが俺の親になるのかが……」 透華父「……すまないね、大人の事情半分、私のエゴ半分という奴だよ。」 京太郎「……大人って大変ですね。」 透華さんのお父さんと話していたら女性の大きな声が響き渡った。 「ただいまもどりましたわ!」 「おかえりなさいませ、皆様。」 どうやら龍門渕のメンバーが帰ってきたみたいでハギヨシさんが出迎えたようだ。 透華父「透華達が戻ってきたようだな。」 透華父「さぁ、君の事を紹介しようか。」 京太郎「ええ、お願いしますよ、"お義父さん"?」 透華父「……婿養子ではないからね?」 京太郎「わかってますよ……」 俺達は今居る部屋を出て、今から家族になる人たちの所へ向かう。 部屋の前ではハギヨシさんが待っており、俺達に向かって御辞儀をする。 そしてゆっくりと部屋の扉を開けてくれた。 部屋の中に居た一人がこちらに気付く。 「あら、お父様、ただいま戻りましたわ。」 「ああ、お帰り、透華。」 この人が透華?確かに似ているがあの人とは違う…… あの人はもっとこう……落ち着いていて、柔和な笑みの持ち主だったはずだ。 そんな疑問を考えていたが透華さんが父親に尋ねる。 「ところでお父様、そちらの方は?」 「彼は京太郎君、我が龍門渕家の家族になる子だ。」 「清澄高校麻雀部の1年、須賀京太郎です、よろしくお願いします、お義姉さん。」 「はい!?」 驚きの表情と共に素っ頓狂な声が部屋に響く。 養父が苦い顔をしていたが、それは娘に対してではなかった。 先ほどから養父の顔を睨んでいる金髪の一際背の低い少女が気になるのか、とも思ったがそれだけではなかったようだ。 透華父「京太郎君。」 養父は咎めるような声で俺を呼んだ。 そして意味がわかった。 京太郎「あ、須賀というのは不味いですかね……」 透華父「出来ればね、それに高校も直に変わる。」 京太郎「そうでしたね。」 透華「では改めて自己紹介を、龍門渕透華ですわ。」 衣「衣は天江衣だトーカとは従姉妹にあたる。」 一「ボクは国広一、透華専属のメイドでもあるんだ、よろしくね。」 純「おれ、じゃなくて私の名前は井上純です、メイドでもあります。」 智紀「メイド、沢村智紀、です。」 歩「りゅ、龍門渕家のメイドで一年の杉乃歩です!」 ハギヨシ「執事の萩原でございます、皆様からはハギヨシと呼ばれております。」 透華父「挨拶は終わったようだね、では私はこれで戻るよ。」 そう言って養父は部屋から出て行った。 部屋の扉が閉まった瞬間、息を吐く音が聞こえる。 純「あ~なんか苦手なんだよな、透華の親父さん。」 智紀「なんとなくわかる。」 一「一応龍門渕家の当主だからね~。」 衣「衣もあの男は好かないな。」 透華「あの、あれでも私のお父様なのですわよ……」 「あれでも」ってなんだ、「あれでも」って…… 俺は会って一日も経ってないから何とも言えないが男には男の苦労があるんだよ……多分。 74 名前: ◆/cZ9NqabwE[saga] 投稿日:2012/10/23(火) 19 26 21.21 ID 9mpxyvgoo んじゃ本編すこし投下 75 名前: ◆/cZ9NqabwE[saga] 投稿日:2012/10/23(火) 19 26 49.84 ID 9mpxyvgoo 夕食の時間になり、皆が一堂に会する。 透華さんの祖父さんと親父さんは居なかったが、家族はなるべく一緒に食事を取るのが決まりらしい。 その家族の中に、執事やメイドさんも含まれているらしい。 皆が席に着くとハギヨシさんが料理を運んでくる。 次々と色取り取りの料理が並べられるが、一品だけ異彩を放った料理がある。 それを見た天江さんがぽつりと呟く。 「シチューか……」 この前作っていたシチューだろうか。 完璧なハギヨシさんのことだ、未完成品を出すわけがない。 つまり龍門渕家のシチューを完成させたということだろう。 明らかに戸惑っている透華さんと天江さんを見て、他の人たちが躊躇っていた。 折角ハギヨシさんが苦労して作ってくれたんだ、食べないのは勿体ないと思う。 俺は手を合わせて声を張って「頂きます」と言い、スプーンで一掬いするとシチューを口に運ぶ。 京太郎「うん、美味しいですよ、ハギヨシさん。」 ハギヨシ「ありがとうございます。」 その言動の意味に気付いたのか、透華さんがシチューに手をつける。 一口味わったかと思ったら、顔を綻ばせた。 「美味しい……そして懐かしい味ですわ。」 その言葉を聞いた天江さんがスプーンを手に取り、恐る恐るシチューを口に運ぶ。 「ああ、確かに、母君が作ってくれた味だ……」 天江さんが感慨深そうに言うと、周りから安堵の息が漏れ出る。 走った緊張の糸が切れたからか、井上さんが大声で頂きますと言った後、がっつき始める。 他の人もそれに倣ってか、食事を始めた。 「では、ごゆっくりどうぞ。」 ただ一人、ハギヨシさんはそれだけ言って食堂から出て行った。 食後、とぼとぼと家の中を歩き回る。 思い出すのは透華さんの笑った顔。 あの人に似たあの笑顔だった。 結局あの人は透華さんではなかった。 なら一体誰なのか…… 考えても出ない答えを考え、 思考はぐるぐると迷う。 真夜中になって俺に与えられた部屋で窓から外を見る。 月明かりに照らされた庭が見える。 今夜もあの人はいるのだろうか…… 俺の疑問は解けるのだろうか…… 気付いたら庭に足が向かっていた。 庭に敷き詰められた綺麗な花絨毯を横目に、小さな屋根が付いたお茶会の場所へ向かう。 そこに白い椅子に座った綺麗な金髪が風にたなびいていた。 「こんばんは。」 「ん?きょうたろーか。」 目的の人に思わず声を掛けて、そして人違いだと気付く。 「どうしたきょうたろー?」 「いえ、天江さんがいるとは思わなかったので。」 「ここからの望む景色は風情があるからな、時折ここで寛ぐ。」 「そうですか。」 「ところで天江さん――「衣だ」」 「衣を呼ぶときは衣と呼んでくれ、衣もきょうたろーのことをきょうたろーと呼ぶ。」 「衣たちは家族になるのだ、名前で呼ぶのが道理であろう?」 「わかりました。」 「では衣さん、こちらに座ってもいいですか?」 「そのくらいの瑣末なことは一々許可を取らなくてもいいぞ。」 「んじゃ失礼します。」 俺は空いている向かい側の椅子に腰を下ろし、暫くの間、衣さんと話していた。 話している内に衣さんは眠くなってきたのだろう、ゆっくりと舟をこぎ始めた。 「衣さん、もう寝ましょうか。」 「衣はまだきょうたろーと話をしてても大丈夫だぞ……」 「俺もそろそろ寝ないといけないんですよ。」 「なんだきょうたろーも寝るのか、それなら仕方ないな、衣は部屋に戻るぞ。」 「お休みなさい、衣さん。」 「お休み、きょうたろー。」 そう言って衣さんは眠そうな目をこすりながら別邸に戻っていった。 衣さんに寝るとは言ったものの、直ぐに部屋へと戻る気はなかった。 ただ、俺が寝ると言わないと衣さんは素直に戻らない気がしたのでそう言っただけだ。 花と月を見ながら少し目を瞑る。 風の音と花の香りが心地良い。 色んなことが俺の身に起き、住んでいた家から離れ、今はここにいる。 起こった出来事とこれからの事を頭の中で整理していたら何時の間にか眠っていたようだ。 大した時間ではないが、その間に人が来て俺に声をかけてきた。 「こんなところで寝ると風邪をひきますわよ。」 「え?あ、こんばんは。」 「ふふ、またお会いしましたわね、京太郎君。」 そこには真夜中のお茶会を開いた人がいた。 「京太郎君、お茶はいかがかしら?」 「頂きます、『龍門渕さん』。」 「はい、どうぞ。」 コポコポとティーカップに注がれたお茶を飲みながら、 下の名前を聞きそびれた女性と会った。 「そういえば、おれ、ここの養子になることになったんです。」 「そう、なら私とも家族になりますのね。」 「私の事は母親だと思ってかまいませんわ。」 「なんなら私の事を『お母様』と呼んで頂いても構いませんのよ?」 「流石にそれはちょっと……」 「そうですか、残念ですわね……まぁ無理にとは言いませんわよ。」 それから俺が高校に転校する事、明日清澄に行って挨拶する事や不安な事、 身の回りの急激な変化を話した。 話が進むに連れ、お茶が切れて御開きの時間になった。 「龍門渕さんと話していて大分気が紛れました。」 「私で良ければ幾らでも相談に乗りますわ。」 「ありがとうございます……そういえば貴女は普段、何所にいるんですか?」 「夜はいつもここにいますわ。」 「私に会いたくなったらここにいらっしゃい。」 「出来れば私をお母様と呼ぶ練習もして欲しいですけど。」 冗談めかしてくすくすとお上品に笑いながら言っていた。 「出来るだけ努力します、それではお休みなさい。」 「おやすみなさい、京太郎君。」 挨拶を済ませて部屋に戻ると、暗がりの中で目立っている物が在った。 枕元に置いてある、チカチカと光る携帯電話を開く。 「ん、母さんからのメールか……」 『ハロー京太郎、元気にやってる? 今母さん海外に居るせいか電波が届かない事もあるの、 だからメールとか電話出来ないことも多いけど寂しくなるなよ? あたしも寂しいけど京太郎との思い出を元に仕事頑張るわ。』 「適当なメール寄越しやがって、まぁ母さんらしいと言えば母さんらしいか。」 それにしても母親、か。 俺には既に母親がいるので暫くはあの人を母と呼べないだろう。 でもあの人を母親と呼べるようになった頃には、ここの一員になれたってことだろうな…… やがて朝になり、清澄との別れの日がやってきた。 朝一に担任に事情を伝え、教室で別れの挨拶をする。 そこには咲も含まれていて、その顔は驚愕の色しか見せていなかった。 咲「京ちゃん、嘘……だよね?」 京太郎「咲、別に今生の別れって訳じゃないんだ、同じ長野に居るから何時でも会える。」 咲「……でも清澄から出てくって事でしょ……?」 京太郎「確かにそうだけど、咲はもう大丈夫だろ?」 咲「私の何が……大丈夫なの……?」 今にも泣きそうな咲を宥めつつ、落ち着いた声色で諭す。 京太郎「咲には和も優希も染谷先輩も部長も居るだろう?」 京太郎「困った時は頼れる仲間や友達がいる……」 京太郎「だからもう俺が居なくても大丈夫だろ?」 咲「何も……何もわかってないよ……京ちゃんは……」 咲「全然大丈夫じゃないよ……」 咲「京ちゃんのバカ……」 それだけ言って咲は足早に去っていった。 「これでいい、これでいいんだ。」 自分にそう言い聞かせて、咲の背中を目で追いかけていた。 やがて放課後になり、一人部室の掃除をする。 「もう今日で最後か」と思うと、どこか物寂しく感じる。 懐に忍ばせた退部届けが重い…… ただの紙切れ一枚なのに、こんなにも重いものなのか…… そして一番最初にやってきた部長に事情を話し、退部届けを渡す。 それを受け取った部長はただ、目を細めてぼそりと呟いた。 「そう、家の事情なら仕方ないものね……。」 「うちも少し寂しくなるわ。」 「直ぐに気にならなくなりますよ。」 「そうかしら?送別会もせずに送り出すのは心苦しいわね。」 「出て行く奴のことより、今居る部員のために時間を割いてください。」 「そっちの方が建設的です。」 「案外須賀君ってドライなのね。」 「別れは惜しいですが決まった事をうだうだ考えても仕方ないです。」 「咲には言ったの?」 「納得はしてないようでしたが、大丈夫でしょう。」 「そう……」 部長は短く言うと椅子に座って部員全員を待っていた。 その内に部員が一人、また一人と入ってくる。 やがて集まった部員に別れの挨拶を告げる。 まこ「しかし急な話じゃな。」 京太郎「急すぎて俺もびっくりしましたよ。」 和「これでお別れなんですね。」 京太郎「同じ長野だから会おうと思えば会えるんだけど……」 優希「まったく、犬が勝手に飼い主放ってどっかに行くんじゃないじぇ!」 京太郎「タコスの食いすぎんなよ?」 久「とうとう咲は来なかったわね……」 和「……そうですね。」 京太郎「直ぐに元に戻りますよ、今のあいつには目標がありますから。」 まこ「だといいんじゃがのう……」 京太郎「最後に一つだけ……」 優希「なんだじぇ?」 京太郎「あいつを……咲を頼みます……」 和「言われなくても大丈夫です。」 京太郎「それじゃあ、さようなら、皆元気でやってください、俺、全国応援してますんで。」 そう言って部室から出る。 咲は今何所に居るのだろうか。 あいつの事だ、きっと一人でめそめそと泣いているのだろう。 公園近くの河川敷で彼女を見つけた。 須賀君の言った通りの場所でした。 「咲さん。」 「あ、和ちゃん……」 「部活終わっちゃいましたよ。」 「うん、ごめんね。」 彼女は赤い目を擦りながら申し訳なさそうに謝ります。 やはり彼のことで泣いていたのでしょうか…… ふざけた男ですね、須賀君は…… 彼女にこれだけ想われていて、 彼女の場所が解るくらい想っていて、 何故自分で彼女を慰めないのでしょう…… 私は正直彼に嫉妬しています。 大切な友人をここまで泣かせた彼に。 大切な友人をここまで理解している彼に。 家の事情で仕方ないのは分かっています、私も人の事を言える様な環境ではありませんから。 それでも私は嫉妬してしまう。 私以上に彼女を理解している彼を…… 校門を出るとハギヨシさんが車で迎えに来てくれていた。 ハギヨシ「京太郎様、御向かいに上がりました。」 京太郎「様付けは勘弁してください。」 ハギヨシ「では、京太郎お坊ちゃまとお呼びします。」 京太郎「もっと嫌です。」 ハギヨシ「そうですか、それと私の事は呼び捨てで構いません。」 京太郎「年上の人を呼び捨てにするのは……」 ハギヨシ「透華お嬢様たちも私の事は呼び捨てでございます。」 京太郎「じゃあ呼び方は個人の気持ちの問題ということで。」 ハギヨシ「畏まりました、京太郎様。」 京太郎「結局様付けのままですか。」 ハギヨシ「やはり坊ちゃまの方がよろしかったでしょうか?」 京太郎「いえ、呼び捨てにするという選択肢をですね……」 ハギヨシ「仕える方に対してそんな失礼なことはできません。」 京太郎「俺はそっちの方が楽なんですけど……」 ハギヨシ「それに、京太郎様は先程――」 ハギヨシ「呼び方は個人の気持ちの問題と仰いましたので。」 京太郎「うっ……わかりました。」 大人ってずりーのな。 龍門渕家に戻った後、皆で食事をしている時、衣さんがこんな事を言い始めた。 衣「確かきょうたろーは明日から龍門渕に転校するのだったな?」 京太郎「ええ、そうですけど。」 衣「部活はどうするのだ?」 京太郎「特には決めてないです。」 透華「あら?麻雀部に入るのではありませんの?」 透華「京太郎も元は麻雀部なのでしょう?」 京太郎「俺は高校に入ってから麻雀始めたんで凄く弱いんですよ。」 京太郎「麻雀部に入ってからはずっと雑用ばかりしてましたし。」 純「個人戦は出なかったのかよ?」 京太郎「個人戦では午前で敗退しました。」 透華「……そうですか」 智紀「…………?」 衣「つまりきょうたろーは初心者なのだな。」 京太郎「ええ、そうですよ、役を覚えた程度です。」 透華「私、良い事を思いつきましたわ!」 京太郎「すっごい嫌な予感がする……」 透華「この後、京太郎の歓迎会を始めますわよ。」 衣「おー!とーか!衣もその意見には賛成だ!」 純「歓迎会って言ってもどんな事をやるんだよ?」 透華「もちろん!麻雀ですわ!」 京太郎「それって歓迎会と言う名のカワイガリじゃないですか!?やだー!?」 純「まぁ諦めな、野良犬に噛まれたと思ってさ。」 純「いざとなったらオレが助け舟だしてやっから。」 京太郎「うう、井上さん、イケメンだ……」 純「……言っとくけどオレは女だぞ。」 京太郎「知ってますよ。」 純「へぇ、オレを男扱いしない奴なんて初めてだ。」 京太郎「県予選の時に井上さんにタコスを食われたせいで、俺買いに行きましたから。」 純「……すまねぇ。」 京太郎「気にしてませんよ。」 純「あと、オレの事は純でいいぜ。」 京太郎「はい、分かりました、純さん。」 衣「純!きょうたろー!早く衣の部屋で打つぞー!」 純「はいはい……」 京太郎「俺の力を見せてやるぜ。」 京太郎「主に弱さ的な意味で……」 純「情けねぇ男だな……」 そんなこんなで衣さんが住んでる別邸に向かい、卓を囲む。 最初のメンバーは俺、国広さん、沢村さん、透華さんだ。 結果は俺の箱割れで終わった。 一「よっわ!?」 智紀「弱い……」 透華「弱いですわね。」 京太郎「だから言ったじゃないですかー……」チーン 純「見事な振込みマシンだったな。」 衣「きょうたろーは銀行みたいだな。」 京太郎「せめて少しは慰めてくださいよ……」 透華「慰められるレベルですらありませんもの。」 衣「よし今度は衣も打つぞ!」 純「今度はトバないようにしろよ?」 京太郎「善処します……」 またもや俺がラス引いたわけだけど、この人たち相手なら仕方ないよね? 俺そこそこ健闘したと思うよ? 箱は割れたけど。 京太郎「」チーン 純「まぁある意味予想していた。」 衣「寧ろ先程よりかはましだろう。」 一「それでも弱いね。」 衣「よし、では次だ!」 京太郎「マジですか……」 純「やばくなったらストップかけてやるから安心しろ。」 京太郎「出来れば早めにお願いします……」 透華「私が京太郎をみっちり鍛え上げてみせますわ!」 京太郎「もう既に歓迎会じゃないな。」 その後10時を過ぎまでやっていてそのあとお開きになった。 お開きの理由は衣さんがお眠の時間になったからだ。 どんだけ見た目通りなんだ衣さんは…… 衣さんを寝かしつけて戻ってきた透華さんに呼び止められた。 透華「京太郎、ちょっとお話をしてもよろしいかしら。」 京太郎「ええ、大丈夫ですよ。」 透華さんは対面の椅子に腰掛け俺と話し始める。 透華「龍門渕家には慣れまして?」 京太郎「慣れたかどうかはまだ何ともいえませんが、良くはしてもらってますよ。」 透華「そうですの。」 透華「家には早く慣れて欲しいですわ。」 透華「京太郎は既に家族の一人なんですから。」 京太郎「家族、ですか。」 透華「ええ、そうですわ。」 透華「貴方と私がどんな関係でも、我が龍門渕家に来た時から、京太郎、貴方は家族ですわ。」 京太郎「なんかむず痒いですね。」 透華「直ぐに慣れますわよ。」 透華「だからこそ、家族だからこそ聞いておきたいのですの。」 京太郎「なんですか?」 透華「一つは個人戦のこと。」 透華「もう一つは貴方が夜に会った方の事。」 京太郎「個人戦は午前で予選敗退しただけですよ?」 透華「……個人戦は得点制ですわよね?女子も男子も変わりませんわ。」 透華「なのに、何故、得点制の個人戦出場者が午前で終わる事が出来ますの?」 京太郎「……あまりに点数が酷かったもので。」 透華「しかし、それだと公平性が失われてしまいますわ。」 透華「凄く弱い方と打てたから一人二人だけ良い点が取れたなんてことになったら、それこそ不公平。」 透華「本当は棄権か出場拒否をしたのでしょう?」 京太郎「凄いですね、エスパーかなんかですか?」 透華「ただの推理ですわ。」 京太郎「俺はただ身の丈に合った事をしてただけです。」 京太郎「俺は麻雀初心者ですから、大会に出られるレベルじゃありませんし。」 京太郎「それに皆の役に立ちたかったので、大会に出なかったんです。」 透華「……そう、ですの。」 京太郎「もう一つの方は夜のお茶会のことですよね?」 透華「ええ、その通りですわ。」 京太郎「実は、俺、透華さんに会うまでその人の事を透華さんだと思っていたんです。」 京太郎「特徴を聞いてみたら透華さんの様でしたし。」 京太郎「でも実際に透華さんに会って見て違うと分かっただけで、その人の事は特に分かってないんですよ。」 京太郎「分かっているのはその人が「龍門渕」と名乗っている事、よく夜の庭に居る事ぐらいですかね。」 透華「わかりましたわ、京太郎、お話に付き合って頂いてありがとうございます。」 京太郎「いえ、こちらこそ話して少し楽になりましたから。」 透華「ではお休みなさい。」 京太郎「おやすみなさい。」 俺は透華さんと別れた後、夜の庭へと出向く。 勿論あの人に会うために。 いつもの場所に行くとお茶を用意して待っていてくれた。 「こんばんは、龍門渕さん。」 「あらこんばんは、流石に一朝一夕で「お母様」とは呼んで頂けませんわね。」 「そんなに簡単なことじゃないんですよ。」 「気長に待ちますわ。」 「それで今日はどんな悩み事かしら?」 「麻雀をやっているんですがさっきコテンパンにされちゃって。」 「ふふふ、大丈夫ですわ、京太郎君は強くなりますもの。」 「そんなことがわかるんですか?」 「ええ、コツは大きく三回深呼吸して頭を氷のように冷ますことですわ。」 「そんなんで出来ますかね……」 「とにかくやってみればわかりますわ。」 「わかりました、それでは今度やってみます。」 「そういえば龍門渕さんって御幾つなんですか?」 「女の人に年齢と体重を聞くのはタブーですわよ。」 「あ、すみません。」 「ふふ、ただ一つヒントを言うなら……私には子供がいます。」 「お子さんが居るんですか。」 「ええ、近くにいるのですがその事に気付いていないようですわ。」 「そんなに会いたいなら会えばいいんじゃ……」 「中々難しいものなのですわ。」 「そうなんですか……すいません、無神経な事を言って……」 「お気になさらないで。」 それだけ言ってその人はお茶を一啜りしていた。 「すいません、本当はもうちょっと居たいんですけどそろそろ部屋に戻ります。」 「そうですか。」 「もう部屋に戻らないと明日が辛いですから。」 「転校初日お寝坊は恥ずかしいですものね。」 「それではお休みなさい。」 「お休みなさい。」 俺は部屋に戻り、明日のために早めにベッドの中に入った。 今夜はどんな夢を見るのだろうか…… 俺は部屋に戻り、明日のために早めにベッドの中に入った。 今夜はどんな夢を見るのだろうか…… ここは……龍門渕家か? 今からしたら大分若く見える透華さんのお祖父さんがいる。 台紙入りの写真を渡される。 所謂お見合い写真というものだ。 お父様からの話によると、とある企業の御曹司らしい。 人柄は中々の好青年で、経営者としては辣腕らしく、 龍門渕の婿養子候補としてお父様の御眼鏡に適ったとのこと。 龍門渕家の長女として、一応、会って話を聞くことにしました。 私の旦那様になるかどうかは別として。 また変な夢をみたな、と思いつつ体を起こした後、身支度をする。 今日は転校初日だ、何かあったら困るので念入りに身嗜みを整える。 朝食を軽めに取った後、ハギヨシさんが用意してくれた制服に袖を通し、鏡の前で不備が無いか確かめる。 龍門渕高校は服装自由なのだが、初日は印象も大切なので一応制服で登校しようと思う。 それからなんだかんだあったが無事放課後になった。 なんだかんだと言うのは透華さん達と登校する際、入部届けに既に麻雀部と書かれていて、 それを見せながら爛々とした目で俺を見てくる金髪二人。 女の子ってずるいな、俺、断れないじゃん。 高校に着いたあとは職員室に行って担任と校長、教頭にやたら丁寧に挨拶されたりした。 放課後に入った直後、純さんがやってきて道案内と言う名の麻雀部に連行された。 恐らく待っていたずっと待っていたであろう透華さんが、仁王立ちしていた。 透華「龍門渕高校麻雀部へ、ようこそいらっしゃいましたわ!」 衣「よく来たな、きょうたろー!とーかはずっと立ったまま待っていたぞ!」 透華「衣!余計な事は言わなくてよろしいですわ!」 京太郎「あ、そうなんですか。」 透華「ムキー!?なんですの、その反応!?」 純「透華、京太郎はあっけに取られてるだけだ。」 京太郎「なんというか、ビックリしましたよ。」 透華「ふふ、私、目立っておりますわ!」 どっちかって言うと悪目立ちの部類だと思うけど、伏せておこう。 辺りを見回して疑問が浮かぶ。 今ここに居るのはレギュラーメンバーに補欠の杉乃さん、家で見た面子ばかりだ。 京太郎「あの透華さん、麻雀部に男子って居ないんですか?」 透華「おりませんわ!」 京太郎「あれ?って事はもしかして男子って……」 一「純くんと京太郎君だけだね。」 純「オレは女だ!」 京太郎「それって一種のテンプレ芸ですか?」 純「定着させたかねぇのにな……」 京太郎「龍門渕って強豪校なのに人数少ないですね。」 透華「ええ、あまりに軟弱でしたので、私達が1年生の時に追い出しましたわ。」 京太郎「すっごく不安になってきたんですけど。」 純「ここで打っていたら軟弱になろうと思ってもなれないから安心しろ。」 京太郎「無事生きて卒業できるかな……」 京太郎「あ、そうだ、皆さんお茶飲みますか?」 透華「ええ、お願いしますわ。」 衣「衣も飲むぞ。」 一「それじゃボクも頼もうかな。」 智紀「頂きます……」 純「オレもオレも。」 歩「私もお言葉に甘えていいですか?」 京太郎「分かりました。」 純「ってちょっと待て、なにナチュラルにお茶淹れようとしてんだよ。」 純「てかお前らも何自然にパシってるんだよ……」 一「違和感が無かった……」 歩「当然のように受け入れていました……」 京太郎「普段の習慣で体が動いてました……」 ハギヨシ「お茶でしたら私が淹れますので、どうぞ京太郎様は席でお掛けになってください。」 京太郎「あ、すみません。」 あれ、ハギヨシさんってこの部屋にいたか? 気にしてはいけないんだろうな、執事だもの。 声が掛かる、透華さんからだ。 透華「さぁ今から新入部員の歓迎会ですわ!」 あれ、昨日と似たような事言い始めたぞ? 俺に拒否権なんざあるわけないけど。 最初に卓に着いたのは俺、一さん、純さん、沢村さん。 京太郎「お手柔らかに……」 智紀「頑張って……」 一「今度はトバ無いようにね。」 純「練習だからそんなに気負わなくていいんだよ。」 みんなの心遣いが沁みるぜ…… ラスだけどトンでない、奇跡的にトンでない。 純「おー、今日はトバなかったな。」 智紀「意外……」 一「少しは進歩したのかな?」 京太郎「すみません、ベタおりしまくっただけです……」 純「あー、なんだ、上がらなきゃ勝てねぇけど点棒キープするのも重要だもんな……」 透華「点を取れなければ意味がありませんわ!」 透華「もっと攻めるべきですわ!」 透華「これは教育ですわね。」 衣「それでは次は衣達だな!」 透華「次は誰が入りますの?」 純「オレ今卓に入りたくないんだが……」 一「ボクも……」 智紀「私は後ろで見てる。」 歩「私は無理ですよ!?」 京太郎「ハ、ハギヨシさん!助けて!」 ハギヨシ「私ですか?ご要望とあれば……」 透華「ハギヨシと打つのは久しぶりですわね。」 衣「よし!それでは皆の者!打つぞ!」 そんなわけで今度は俺、透華さん、衣さん、ハギヨシさんで卓を囲んだ。 透華「ロン、5200ですわ。」 衣「ロン、8000。」 ハギヨシ「ロン、3900です。」 京太郎「はい……」 純「おい、京太郎が涙目だぞ……」 一「あの卓に入ったらそうなるよ……」 衣「きょうたろー、流石に振り込みすぎだぞ。」 透華「負けが込んでいても自棄になってはいけませんわ。」 京太郎「そんな事言われても……」 ハギヨシ「京太郎様、落ち着いて、今までやってきた事を思い出してください。」 京太郎「今までのこと……」 清澄のメンバーで打った時、ハギヨシさんに教わった事、昨日皆と打って感じた事。 色々思い出してみる。 少し頭を冷やした方がいいかもな…… ……そういえば龍門渕さんにコツを教えてもらったっけ。 『頭を氷のように冷やせ』って。 やってみよう、まずは三回深呼吸だ。 スー、ハー、スー、ハー、スー、ハー…… よし、次だ。 一・純・智紀「?」 頭を冷やし、冷静になろう。 冷たく。 冷たく。 氷のように。 衣「……!」 透華「…………?」 ハギヨシ「…………」 京太郎「お待たせしました、再開しましょう。」 ハギヨシ「ええ、準備は宜しいようですね。」 衣「どうやら暗がりに鬼を繋いでいたようだな。」 透華「どういうことですの?」 衣「打ってみるまで判らぬ、だがきょうたろーには言い知れぬ天資がある。」 京太郎「冷静に……冷たく……」 賽が回る。 投げられた賽は澱みなく滑っていく。 山が切り分けられ、それぞれに手牌が配られた。 衣(この手に伝わる感触は……) 透華(京太郎の雰囲気が少しずつ変わっていきますわね……) ハギヨシ(まさか……) ハギヨシ「もしかしたら暖房を入れる準備をした方がいいかも知れませんね……」 一・智紀「?」 純「おいおいヨッシー、冷房の間違いじゃないのか?」 ハギヨシ「備えあれば、というやつですよ。」 京太郎「…………」 13順目 透華(妙ですわね、先程に比べて衣の鳴きが少ないですわ。) 透華(衣が麻雀で手心を加えるとは思えませんが……) ハギヨシ(やはり京太郎様は『何か』を待っていますね。) ハギヨシ(この前麻雀の指導をさせて頂いた時に奇妙な感じがしたのはこれでしたか。) 衣(山からツモる度、手に牌の冷たさが伝わる……) 衣(きょうたろー、これが貴様の力なのか……?) 京太郎「リーチ……」 一「あ、京太郎君が初めてリーチしたよ。」 純「「やっと」って感じだな。」 智紀「上がったら今日の初和了。」 京太郎「……ツモ。」パタタタ 純「お、今日の記念すべき初和了。」 京太郎「えっと……」 透華「1000・2000ですわ。」 京太郎「すみません、まだ点数計算出来なくて。」 透華「覚えることがまだ沢山ありそうですわね。」 一「点数言えないせいか、いまいち締まらないね。」 衣(今は元に戻っているが、きょうたろーの力の発露は確かに在った。) 衣(まだまだ未熟な力であるし、麻雀に関しても伊呂波を知らぬ初心者。) 衣(だからこそきょうたろーの今後の成長が楽しみだな。) 衣「さぁ、次局に移るぞ!」 京太郎「うわー、もう疲れたー……」 衣「だらしがないな、きょうたろー。」 透華「家に帰りましたら特別メニューを用意して差し上げますわ。」 京太郎「夕飯の話ですか?」 智紀「多分、麻雀の話。」 京太郎「ということは……」 衣「うむ、特訓だな。」 純「特訓だろうな。」 一「特訓だね。」 京太郎「マジですか……」 純「夕飯食う時間くらいは確保してくれると思うぜ。」 純「ロン、3900だ。」 一「ツモ、1000・2000だよ。」 智紀「ロン、5200。」 京太郎「焼き鳥……」 透華「京太郎、牌効率を考えるのですわ。」 京太郎「牌効率、ですか。」 透華「ええ、待ちに関してですが、場に一枚も出てないと仮定して、 嵌張・辺張・単騎待ちなど一種四枚の牌待ちなどより、 両面待ち、二種八枚の方が単純に考えて二倍の確率で引けますわ。」 透華「多面張であればあるほど単純に和了する確率は上がりますの。」 京太郎「ああ、なるほど。」 透華「いっそのこと字牌は全部切るつもりで行ってみてはいかがかしら?」 透華「順番としては手配に一枚しか無い客風を最初に切り、それから場に出ている字牌を切ってみましょう。」 透華「三元牌や連風牌が二枚手牌にあるならキープしてもよろしいですが今は忘れるのですわ。」 京太郎「えーとつまり……?」 透華「……最初は字牌全部切って面前でタンヤオか平和を目指しましょう。」 京太郎「おお、そういうことですか。」 純「いいのかそれで……」 透華「最初はこれでいいんですわ、ではやってみましょう。」 京太郎「ツモ、ええっと1300・2600?」 透華「メンタンピン・ツモで裏も一枚ありますから五飜で満貫ですわね。」 京太郎「おお、満貫なんて滅多に和了出来なかったのに!」 透華「ふふ、京太郎ったら和了っただけでそんなに喜んで。」 京太郎「嬉しかったものでつい。」 ハギヨシ「皆様、デザートをお持ちしました。」 純「お、良いタイミングで持ってきてくれたぜ!」 一「ちょうど甘いものが食べたかったんだ。」 衣「ハギヨシ、今日の甘味はなんだ!」 ハギヨシ「ゆずとみかんのジェラートでございます。」 衣「氷菓か!衣は幾らでも食べられるくらい好きだぞ!」 純「食いすぎて腹壊すなよー?」 衣「衣だって節度は守るぞ、子供じゃないからな!」 京太郎「衣さん、すっごい目を輝かせている……」 京太郎「あれで俺より年上だってんだから驚きだ……」 純「あんまり本人の前では言うなよ?」 京太郎「あはは……」 そのあと透華さんの座学が始まった。 スジ、壁、捨て牌読み、降り方。 簡単なところで言えばまずはこれを覚えろと言われた。 スジにも色々あるらしいが多すぎて俺は覚えきれていない。 透華「それでは実践ですわ、京太郎は全体を見きれていない節がありますので注意してくださいまし。」 京太郎「まだ全部覚え切れていないですよ!?」 透華「やりながら覚えていけばいいですわ。」 透華「純、入りなさい。」 純「あいよ。」 衣「衣も入るぞ。」 透華「あとは……ハギヨシ、入れますかしら?」 ハギヨシ「わかりました。」 京太郎「あれ、透華さんは入らないんですか?」 透華「私は京太郎の後ろでちゃんと出来ているか見ていますわ。」 先生に後から見られているとか緊張するんだが…… とにかくさっき教わった事を思い出しながら打ってみよう。 相手は遥か格上なのだから胸を借りるつもりで行こう。 純「ロン、2600だ。」 ハギヨシ「ツモ、1000・2000です。」 衣「ツモ、4000オールだ。」 京太郎「……はい。」 透華「このくらいで暗い顔をしてはいけませんわ。」 京太郎「焼き鳥はきついです……」 純「おいおい、さっきに比べて振り込みが少なくなってるだろ。」 ハギヨシ「危険牌を切る頻度が明らかに減っておりますね。」 衣「トーカのおかげだな。」 透華「進歩はしておりますけど、京太郎は少し焦りすぎなのですわ。」 透華「節目節目に一度落ち着いてください、常に冷静でいれば全体を見ることができますわ。」 京太郎「わかりました。」 京太郎「よし、COOLだ、COOLになるんだ。」 純「落ち着くのはいいがCOOLとか京太郎に似合わねー。」 京太郎「あ、ひどい。」 衣「出来れば、きょうたろーのもう一つの方も鍛えなければな。」 京太郎「"もう一つの方"ってなんですか?」 ハギヨシ「恐らくですが、オカルトと呼ばれる分類のものでしょう。」 京太郎「自覚ないんですが、俺にそんなのあるんですか?」 衣「衣の印象だとトーカに似た感じがしたな。」 透華「え?そうですの?」 純「そういえば京太郎のオカルトってどんなのなんだ?」 衣「衣も確たる物を得た訳ではいないが、多分温度に関わるものだろう。」 純「温度ねー、だからハギヨシが暖房がどうのって言ってたのか。」 衣「それでは始めるとするか。」 あれから3半荘ほどやってみたがギリギリラスだった。 揮わぬ成績を見てか衣さんが唸る。 衣「う~む、きょうたろーが力を発露する条件がいまいち掴めん……」 純「普通にさっきより点数よかったけど違ったのか?」 衣「きょうたろーのはもっと冷える感じなのだ。」 一「透華と似た感じっていうのはそういうこと?」 透華「私って冷えてますの?」 衣「咲やノノカと打ってたとき事を覚えてないのか?」 透華「覚えていますけど、あんなの私じゃありませんわ、第一地味ですし。」 京太郎「地味って……」 透華「龍門渕透華は目立ってなんぼですもの!」 衣「話は逸れたがそんな感じだ。」 結局、俺のオカルトの発動条件が判らないままその日はお開きになった。 わからないことをわからないままにするのはなんとも気持ち悪いものだ。 せめて糸口でも見つけられれば思いながら自然と庭へ向かう。 そして今夜もあの人と会う。 「こんばんは。」 「こんばんは、今日はなんのお話をしましょうか。」 「いつも話を聞いて貰ってばかりですね。」 「京太郎君のお話を聞けるのなら構いませんわ。」 「今日、衣さんにオカルト打ちに関して話したんですが。」 「衣と、ですか。」 「ええ、龍門渕さんは衣さんの事をご存知で?」 「知っていますわ、衣のご両親のことも含めて。」 「へー、親しい間柄なんですね。」 「ええ、そうですわ。」 「それでオカルトがどうしたのかしら?」 「部活で打ってるときにオカルトの力が出たらしいんですが、いまいち出る条件がわからなくて。」 「そうですわね……」 「前に私の言った事を覚えていらっしゃるかしら?」 「えーと『頭を氷のように冷やす』でしたっけ?」 「そうですわ。」 「氷のように冷えた頭ならオカルトに関して何かわかりますわ。」 「ただし、これだけは守って欲しいですわ……」 「なんでしょう?」 「心だけは氷のように冷やさないで。」 「自分もそして周りも辛いことになりますわ……」 「何かよく分からないけど、分かりました。」 「うふふ、変なお返事ですこと。」 ふと昨日、話したことが気になった。 この事を聞くのは無神経な事だということは自分でも分かっている。 「ところで龍門渕さん、子供が居るって言ってましたけど……」 「今でも昨日の事の様に思い出せますわ。」 「その子が生まれた日の事を……」 「何で会わないんですか……」 「正直、会わせる顔なんてありませんの、我が子を残して去った母親なんて……」 「……その子ももう、私の顔など覚えてないと思いますわ。」 「…………」 憂いを帯びたその顔を見て俺は…… 何も言えなかった。 この人がどんな気持ちで過ごしてきたのか想像も付かなかった。 ただ、月明かりのように冷たい悲しみの感触だけが伝わってきた…… 「さぁ、京太郎君、良い子はもう寝る時間ですわよ。」 「あの!」 「あの……上手く言えないけど、きっとそのお子さんも貴女に会いたいと思っていますよ。」 「……ありがとう、京太郎君。」 「それではお休みなさい。」 「お休みなさい。」 自室に戻った俺はベッドの横たわる。 今日起きた出来事を整理する。 転校初日のこと。 部活のこと。 麻雀のこと。 オカルトのこと。 そして龍門渕さんのこと。 今日は色々有って疲れた、早く寝よう。 そう思ってたが、何か体の調子が優れなかった。 そのまま一人、部屋で休んでいたが眩暈がする。 それに続き、突如腹部からの激痛に襲われ、その場で蹲ってしまった。 下腹部が熱い。 脚を伝う液体の感触。 一体何が流れているんだ…… 体に力が入らない。 誰か助けを呼ぼうにも、痛みの余り声も出ない。 そして俺は痛みに耐えかねて意識を手放した。 さっきの部屋だ…… ただ自分の体に違和感がある。 異様にお腹が出っ張っている。 自分の足元すら見えないくらいに。 そういえば妹はつい先日無事赤ちゃんを出産しました。 生まれた子供の名前は確か『衣』という名前になりましたわ。 妊娠が発覚した時期が一緒なので二人して大喜びしていましたわね。 ということはそろそろ私も陣痛が来てもおかしくありませんわね…… そんな事をハギヨシと夫に話しながら笑っていたら。 突如腹痛に見舞われる。 とても痛く、額に脂汗をかくのがわかる。 そんな様子をみてハギヨシが車の手配をして。 夫は私の身を案じる。 その内に産婦人科に着き、分娩室に入った。 「龍門渕さん!吸って吸って吐いてー!」 「ひっひっふー!」 「吸ってー!はい息んで!」 「うううぅぅんんんあああぁぁあ!!」 「もう少しですよ龍門渕さん!赤ちゃんの頭が見えましたよ!」 「龍門渕さんもう一度!吸って吸って吐いてー!」 「ひっひっふー!」 「ひっひっふー!」 「はい息んで!」 「あああぁぁぁあぁぁあぁ!!」 ……ギャーオギャーオギャー 「無事生まれましたよ!龍門渕さん!」 「可愛い女の子です!」 「ああ、ああ、私の赤ちゃん……」 助産婦さんに我が子を渡してもらった時。 産む時の痛みなど気にならないほどの幸福感があった。 愛しい我が子を抱きながら、『こんにちは』と言う。 産まれて来てくれて、ありがとう。 可愛い可愛い、私の赤ちゃん。 京太郎「うわ!?」 全身にかいた寝汗が気持ち悪い。 最近変な夢ばかり見るな…… ここへ来たのが何か関係しているのだろうか? それからそれなりに時間が経った日。 京太郎「…………」タンッ パキパキ 純「京太郎から鳴けねー……」 衣「衣の特訓のおかげだな。」フフン 一「打牌が凍りついて卓から離れないん感じだよね。」 衣「まさにすが(河に張った氷)だな。」 京太郎「一応ですが今はもう須賀じゃないですけどね。」 智紀「長野なのに東北弁……」 扉が開き、出てきた透華さんが声を張る。 透華「みんな!明日清澄の応援に行きますわよ!」 一「また急だね。」 純「おいおい、学校はいいのかよ?」 透華「問題ありませんわ、部活動の一環として行きますもの。」 一「いいのかなー?」 透華「いいんですわ。」 京太郎「応援ですか。」 透華「京太郎も原村和や宮永咲のことが気になるんじゃなくて?」 京太郎「そうですね、俺もあいつらのこと応援したいです。」 咲は元気にやってるだろうか。 危なっかしいあいつが少し気になる。 いつものような夜に、 いつものような庭で、 いつもの人が待っている。 「こんばんは。」 「こんばんは。」 「俺たち明日から東京に行く事になりました。」 「そうですか、もうそんな時期なんですのね、少し寂しくなりますわ。」 「インターハイが終わったら直ぐに帰ってきます。」 「そしたらまたこうして話せますよ。」 「そうですわね……」 龍門渕さんは少し寂しそうな顔をしたあと、真剣な眼差しを俺に向けた。 「京太郎君、私が前に言いました「心だけは冷やさない」という言葉覚えていますか?」 「ええ、冷やすのは頭だけですよね。」 「この先、何が起こっても心だけは氷のように冷やさないで、そして心を氷で閉ざさないで。」 「辛い時は家族に頼ると良いですわ。」 「わ、わかりました。」 龍門渕さんの真剣な表情に気圧され、意味も分からず返事をした。 龍門渕さんが再び穏やかな表情に戻った後、いつもの優しい声で話す。 「明日は東京なのでしょう、でしたら早目に寝ませんとね。」 「あ、はい、おやすみなさい。」 「おやすみなさい、良い夜を。」 挨拶をして別れたあと、自室に戻ってベッドに寝転がる。 京太郎「辛い時は家族に頼れ、か……」 京太郎「そういえば母さん今何やってるんだろう?」 携帯電話を開き、母親にメールを打つ。 《明日から友達の応援の為、東京に行って来る。母さんの方は仕事とかどんな感じ?》 京太郎「簡単だけどこんな感じで良いか。」 明日から東京に行くのか、咲は頑張れるだろうか。 東京のお姉さんと無事仲直り出来ればいいのだが…… 明日は早目に起きよう。 続き
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前話 次話 恒子「お前ら待ってたかー!大将戦の実況の福与恒子とご存じアラフォーが来たぞー!!」 健夜「アラサーだよ!というかいきなり何言ってるの!?」 恒子「なんか言うべきかなーって」 健夜「もう……ええと、解説の小鍛冶健夜です」 恒子「元世界第2位のアラフォー」 健夜「アラサーだって!」 恒子「はい、えー、大将戦を前にしてこうなってます」 1位白糸台2264 2位清澄1892 3位臨海1305 4位阿知賀900 健夜「白糸台はさすがですね。準決勝では弱点を突かれたのか油断したのか2位でしたけど、決勝では圧倒的な実力で1位をキープ」 健夜「それを追う各校。特に清澄が迫っていますね」 恒子「臨海と阿知賀も頑張っているよね?」 健夜「うん。でもどうしても白糸台との差が縮まらない。それがここまで」 恒子「てことは?」 健夜「大将戦でここまで変わらなかった順位が変化するかもしれません」 恒子「ほほう……女の勘、もといアラフォーの勘だね」 健夜「アラサー!今回いつもより多くない!?」 誠子「ただいま戻りました」 淡「お疲れさまでーす。今回はハンデ無しかー」 誠子「お前はまた……とりあえず汚名返上ってことで」 尭深「お疲れ様」 菫「ああ、よくやってくれた。で、淡」 淡「はーい」 菫「お前阿知賀ばかり意識するなよ?」 淡「……そんなことないですよ?」 菫「こっち見て言え」 照「……大将戦」 淡「テルー?」 照「ん……淡ファイト」 淡「うんっ!」 照「そして……気を付けてね」 淡「もっちろん!高鴨穏乃、今度こそ100回倒す!!」 菫「阿知賀はいいから他にも気を付けろよ……」 照(咲……京ちゃん……) 灼「ごめん……あんまり差縮められなかった……」 晴絵「灼……」 灼「私……」 穏乃「灼さんお疲れ様です!!」 灼「し、穏乃?」 穏乃「後は私がなんとかしてきます!」 灼「いや、なんとかって…」 穏乃「うおおおお!!燃えてきたあああ!!」 憧「少しは静かにしろ!」ベシッ 穏乃「あたっ!もーいいじゃん、逆境って燃えるし」 玄「穏乃ちゃんはいつも燃えてるよね」 宥「あったかい?」 穏乃「まだ負けた訳じゃないですし!行ってきます!!」 憧「ジャージで行くなっつったでしょ!!ほら、着替えた着替えた!」 穏乃「えー……ジャージの方がいいのに」 憧「ジャージで全国決勝大将戦なんて聞いたことないわ!」 灼「っぷ、あはははは!」 玄「灼ちゃん?」 灼「……悩んでるのが馬鹿らしくなってきた」 晴絵「……そうだな」 灼「……穏乃」 穏乃「はい!」 灼「まかせたよ」 穏乃「はい!!よーし!行くぞー!!」 憧「ちゃんと制服着ていきなさいって!!」 宥「ふふっ。あったか~い」 ダヴァン「……日本は強かったデス」 智葉「おい、こいつのラーメン持ってけ」 明華「はーい」 ハオ「何日分かなー」 ダヴァン「酷い!私に死ねト!?」 智葉「なんで麻雀よりも必死なんだお前……冗談だからな」 ダヴァン「サトハの冗談は笑えまセン……」 ネリー「じゃーネリーがばばーんと逆転してくるねー」 智葉「おう……しかし、全国大会の決勝、それも大将戦が全員1年生とはね」 明華「何か問題でも?」 智葉「いや……何が起こってもおかしくないよな」 ハオ「?」 ネリー「よく分かんないけど、行ってくるねー」 久「お疲れ様、よくやってくれたわ」 和「もう少し頑張れればよかったんですが……」 まこ「あんまり言うなって。1年生がよーやったわ」 優希「そうだじぇ!それに、おっぱいならのどちゃんが圧勝だったじぇ!」 久「そりゃー永水でも呼ばなきゃ勝てないわー」 和「もう優希!部長まで!」 まこ「うーん、わしら全員分でも足りなんか」 和「染谷先輩まで……あれ?咲さんと、こんな時真っ先に反応する須賀くんは?」 久「ああ、須賀くんは咲を対局室まで送らせたわ」 まこ「今までの会場でも迷っとったんじゃ。まず今回も迷うじゃろ」 優希「京太郎なら大丈夫だからな!」 咲「……ねぇ京ちゃん」 京太郎「うん?」 咲「えっと……私が方向音痴だってのはもう認めるからさ……」 京太郎「……まだ認めてなかったのか」 咲「それはいいよ!……手、繋いだまま対局室まで行くの?」手繋ぎ 京太郎「……咲だしなぁ」手繋ぎ 咲「私、そこまでじゃ…」 京太郎「中学の修学旅行で隣にいた咲が消えたのはさすがに驚いたなぁ……」 咲「あ、アレはお店からいい匂いがしたから……」 京太郎「このまま行くぞ」 咲「……はい」 咲(やっとお姉ちゃんのとことだけどお姉ちゃんじゃない……) 咲(でも、部長に和ちゃん、それにみんなが勝ちたいって言ってた) 咲(私は……どうしたいんだろ) 咲「……ねぇ京ちゃん」 京太郎「うん?」 咲「京ちゃんは……清澄が優勝したら嬉しい?」 京太郎「はぁ?当然だろ?」 咲「そうだよね……」 京太郎「それに、咲が勝つってのが嬉しいな」 咲「え?」 京太郎「まさかちんちくりんの幼馴染が全国決勝で大将をまかせられるなんて……感慨深いなぁ」 咲「……ちんちくりんじゃないもん」 京太郎「……それに、よくは分からないけど照さんと本気でやるって言ってたろ?」 京太郎「そりゃ照さんと直接対決って訳じゃないし……なんか上手く言えねーけど、お前が勝つ方が俺は嬉しい」 京太郎「ああもうなんだろ……とにかく俺はお前を応援するし、お前の味方だ!どうだ!?」 咲「……ぷっ、どうだって……あはははは!京ちゃん何言ってるか分かんないよ」 京太郎「う、うるせー!とにかく、お前は全力でやって、楽しめばいいんだよ!」 京太郎「県大会の決勝でも言ってたろ?楽しいって。もうそれでいいよ。ごちゃごちゃ言うのは性に合わない」 咲(なんかいろいろぐるぐる考えて、悩んでたのがどうでもいいやってなったな……) 咲「ふふふ。そうだね……全力で楽しんでくるよ!」 咲が+-0を止めました 恒子『さあ、選手が全員揃ったー!』 健夜『アレ?今宮永選手、男子に手を引かれて対局室まで来てなかった?』 恒子『アラフォーの嫉妬?』 健夜『アラサー!!』 恒子『あ、試合開始』 健夜『軽いよ!?』 淡(今回は最初っから全力!) 咲(これって……) ネリー(話は聞いてたけど面倒だよー) 穏乃(うーん……配牌をどうこうするとかできないし……) 淡「カン!」 穏乃(え!?最初から!?) 淡「ロン!」 淡(100回……100回分倒す!!) 咲(う……なんか衣ちゃんとやってた時みたい……) ネリー(金髪が強いよ……) 穏乃(うおおおお……なんかやばい!) 淡「ツモ!」 淡(あはっ!なんか絶好調じゃん!!) 恒子『前半戦終了!王者白糸台の1年生、大星淡選手が大活躍!!』 健夜『すごいですね……準決勝ではなんと言うか、油断していたように見えましたけど、今回はそれが無い』 健夜『去年の天江選手や、宮永照選手ほどじゃないですが、彼女もかなり点を稼ぎますね』 恒子『うん……さすがアラサー』 健夜『アラサー…合ってるよ!今なんで脈絡無く言ったの!?』 淡「たっだいまー!!どう!?」 誠子「あ、あぁ……お前、すごいな……」 淡「でしょー!?」 菫「ああ。今回は油断していないみたいだな」 淡「決勝だし、出し惜しみ無しです!」 尭深「でも……準決勝では後半戦から……」 淡「大丈夫」 照「……淡?」 淡「後半戦だろうとなんだろうと……負けないから」ゴッ 照(淡がここまで本気になるなんて……) 菫「普段からここまでやる気ならいいんだがな……頼むぞ」 淡「はーい」 穏乃「うわーやばいやばい!大星さん最初から全開だよ!」 宥「お、落ち着いて……」 穏乃「というか何気に宮永さんもすごいね!あとあの……名前長い子も!」 灼「……大丈夫?」 穏乃「うおおおおおお!!また燃えてきたあああああ!!」 玄「し、穏乃ちゃん?」 穏乃「いやーもうなんかすごい!!」 憧「おいおい……うち圧倒的に負けてるのよ?」 晴絵「……シズ?」 穏乃「はい?」 晴絵「楽しい?」 穏乃「すっごい楽しいです!ああもう後半楽しみすぎる!」 憧「あたしの制服で暴れるなっ!」 晴絵「そっか……最後まで楽しんできな!」 穏乃「はいっ!!」 ネリー「サトハー、アレ貸して」 智葉「いきなりなんだ」 ハオ「……眼鏡?」 ネリー「違う」 明華「サラシ?」 ネリー「……巻くほど無いよ」 ダヴァン「ドス?」 智葉「メグ、ちょっと来い」 ダヴァン「冗談ですカラ!!」 ネリー「それそれ」 ハオ「それなの!?」 智葉「そもそも持ってねーよ」 ネリー「うーん……金髪とか短髪が強いからサトハの力を借りたかったのに……」 智葉「貸し出せるものじゃないだろ……後半、いけるか?」 ネリー「最後までやってみるよー」 ネリー「……負ける気はないしね」 和「……オカルト合戦ですか」 優希「じぇー……私の時並みにやばくね?」 まこ「どうするんじゃ久?」 久「大丈夫よ」 まこ「あん?」 久「ちょっとした秘策を送ったから」 咲(お姉ちゃんとこの大将さん、思ってた以上だったな……) 咲(ちょっと差広がっちゃったし……どうしよ) 咲(そういえば……部長が休憩の時に秘策を送るから対局室から出るなって言ってたけど……なんだろ?) 京太郎「おーい、咲ー」 咲「京ちゃん?」 京太郎「えっと……」 京太郎(確か部長がこう言えばいいって言ってたな……) 京太郎「どんな事になっても、最後まで見てるから」 咲「……うん」 京太郎「全力で楽しんで来いよ」 咲「……勝てないかもしれないよ?」 京太郎「どんな事になってもって言ったろ?いいんだよ。お前の味方だって言ったし」 咲「京ちゃん……」 咲(本当に……来て欲しい時に、来てくれるんだなぁ……) 京太郎「ああ、じゃあ優勝したくなることも言ってやるよ」 咲「へ?」 京太郎「優勝したら、お前の言うこと何でも聞いてやるよ」 咲「…………え?」 京太郎「あ、こっちだけだったかな……まぁいいや。どうだ?」 咲「……約束だからね?」 京太郎「?お、おう!」 咲「破ったら……ええと、泣くよ?」 京太郎「泣くよって……あはは!それはないだろ?」 咲「い、いいの!とにかく約束だから!」 京太郎「はいはい。了解しましたよお姫様」 咲(なんでも……なんでもかぁ。何しよっかな) 咲(手を繋いでデート?あ、恋人繋ぎとかいいかな!それから膝枕とかも……よし!とにかく頑張ろう!!) 咲(これ……カンできない……) ネリー(むむむ……やっぱり借りた方がよかったかな) 穏乃(よし、配牌はまともだ!) 淡(……準決勝みたいにいくと思ってんの?) 淡「ロン!」 穏乃「……え?」 淡(100回、倒す!!) 穏乃(最後だけど、まだ諦めない!限りなく0に近い可能性だけど、それを目指すのが楽しい!!) ネリー(素直に負ける気は無いし……全力だよ!) 淡(うっわ凄い!こんなに差があるのに諦めてないとか!本当に冗談みたいな勝ち方しかないのに全員諦めないとか…) 淡(みんな、この3人みんなイケてんじゃん!!) 咲「……カン!」 淡・穏乃・ネリー「!」 淡(テルーの妹……アンタが一番イケてるよ!) 淡(でも、最後まで私が和了る!) 咲(……楽しいよ、京ちゃん) 咲(そういえば……県大会の決勝もこんなだったね) 咲(うん……最後まで、楽しむよ!) 咲「もいっこカン!」 咲(嶺上……) 咲(……ならず……か) 淡「ツモ!」 大将戦結果 1位白糸台2264+713=2977 2位清澄1892+648=2540 3位臨海1305+55=1360 4位阿知賀900+35=935 恒子『し、試合終了ー!!優勝は、白糸台高校ー!!!』 前話 次話 名前 コメント
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特別編 side阿知賀 ※日記発見から中身拝見までの流れは省略します 現在の阿知賀編とはまた別の世界とかそういうのです 時期は秋頃のイメージ ■月▽日 今日は穏乃に誘われて山に出掛けた この時期は綺麗なんだと楽しそうに案内する穏乃といるのは、実際楽しかった しかし、山の天気は変わりやすいからか、急に強めの雨が降り出した 穏乃の案内で慌てて雨宿りができそうな山小屋へと駆け込んだ そこは雨こそ凌げるが、やや古い作りだった 俺達はとりあえず濡れた服を脱いで少しでも乾くように室内に干した 着替えも無いが、濡れた服をそのまま着ているよりは、ということでお互いにかろうじて濡れていなかった下着姿だった とりあえず雨さえ止めば、と思っていたが穏乃が結構寒そうにしていた 小柄で身体の肉も薄い穏乃をそのままにしておくのはと思い、一応断ってから穏乃を抱き締めて暖めた 俺より薄着だった分、穏乃の体は冷たかった が、俺の体温で暖まったのか、気付くと穏乃は眠っていた 雪山でもないし、そのまま雨がやむまでしばらく寝かせてやった その後、雨が止み、日も差していたので穏乃を起こし、多少湿ったままの服を着て山を下りた 下りた後、穏乃から「今日はごめん、それとありがと……あったかかった」そう言われ、穏乃は走り去って行った 風邪引かなきゃいいんだがなー 俺も今日はあったかくして早く寝よう 玄「わー、下着姿で抱き締めてもらうなんて、穏乃ちゃん大胆だね!」 穏乃「ち、ちがっ……別に変なことはやってませんよ!」 晴絵「ほーう……まぁ深くは追及しないでおくけど、よく抱き締めてもらうこと許したわね」 穏乃「あー……それはそのー……」 宥「どうしたの?」 穏乃「許したっていうか……寒いかって聞かれて、寒いって返したら……いきなり抱き締められまして……」 憧「い、いきなり!?」 灼「京太郎……」 穏乃「あ!そんな無理矢理とかじゃないですよ!私も嫌じゃなかったし……あっためようって、必死だったとかで……」 晴絵「おー、あの穏乃が完っ全に乙女の顔だわー」 憧「くっ……やっぱり穏乃だからって言っても油断できないか」 灼「強敵ばっかり……」 玄「おもちあるからって油断できないな……」 宥「私も頑張ろう」
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番外編 京太郎と淡 京太郎「ふぅ…流石に一月の夜は冷えるな」 淡「そうだね…ねえ京太郎、もうちょっとだけそっちに寄っていい?」 京太郎「今回だけだぞ」 ダキ… 淡「やった!京太郎は温かい…」 京太郎「淡は相変わらず冷たいな」 淡「私は冷たくてもいいの。京太郎が温めてくれるでしょ?」 京太郎「そうだな…でも俺が暖かく成りたかったらどうすればいいんだ?」 淡「その時はまたこうやって抱き合って、毛布でまるまれば完璧だよ!」ドヤぁ 京太郎「…それも悪くないな。あっ、流れ星!」 淡「えっ、嘘どこ!?」 京太郎「ああ…消えて行った」 淡「うぅ…京太郎は何かお願いしたの?」 京太郎「したぞ」 淡「なんてお願いしたの?」 京太郎「…秘密だ」 淡「えー、ずるいよ京太郎!」 京太郎「聞いたら笑うから絶対に言わない」 淡「笑わない、絶対に笑わないから!」 京太郎「…また淡と星見にこれますようにって願ったんだ」 淡「えっ?」 京太郎「だからまた淡と星見ができるようにって願ったんだよ」 淡「ふふ…あははは!」 京太郎「だから言いたくなかったんだよ!」 淡「ご、ごめん、ごめん。だってそんな当たり前のこと…」 京太郎「……」プクぅ 淡「京太郎、こっち向いて」 京太郎「……」振り向く チュ… 淡「また二人だけで来ようね、星見に」 カン!
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京太郎「せっかく早めに帰ろうと思ったんだけどなぁ」 京太郎「ま、学校出る前に気づいて良かったって思えばいいか」 京太郎「まぁ咲に届けてもらうってのも……ん?なんか部室が騒がしいな」 ???「だから!これは私が届けるからみんなは引き下がってよ!」 ???「いけません!どうせもってかえって今夜のオカズにするんでしょう!?」 ???「そうよ、きっとそうするわ、というわけで部長権限よ、渡しなさい……じゅる」 ???「よだれを垂らしながらいうても誰も従わんと思うぞ?」 ???「やっぱりここは正々堂々と麻雀で決めるべきだじぇ!」 ???「そうだね!じゃあ私がやっちゃうとすぐ勝っちゃうから先に他4人でやって上位3人出してね!」 ???「どうせそう言っておきながら家に帰るんでしょう?お見通しですよ」 ???「困ったものねぇ……」 ???「まったく、その前に、おぬしらはオカズ以外に何に使うんじゃ?」 ???「え、えー……そんなの企業秘密に決まってるじぇ」 京太郎「な、なんだか、変な話になってるような……とりあえずこっそり覗いてみよう、そうしよう」 咲「何に使うって、そりゃあ鑑賞だってするし、ちょこっと布もらったりとか」 和「単純にクンカクンカモフモフとかないんですか?」 久「絶対それ単純じゃないわよね、いったい何よクンカクンカモフモフって」 優希「というか、そんなこと聞いてくるワカメ先輩はオカズ以外何に使うんだじぇ!」 まこ「そんなもの和の言ったことじゃ、京太郎のにおいはな、色々と良いアイディアが沸くんじゃ」 咲「あーわかる、京ちゃんのにおい嗅いだら絶対勝てるんだよねー」 優希「確かに、前のテストのときにバカ犬のにおいを嗅いだらやけに点数が良かったじぇ」 久「一体須賀君のにおいってどうなってるのよ……」 まこ「じゃろう?だから、わしはそれを持って帰ってにおいを嗅いでインスピレーションをじゃな」 咲「だめですよ、この中学校のときの京ちゃんの体操服から作った予備ハンカチあげるんで今回は引き下がってください」 まこ「キャッホォォォォォウ!」 和「咲さん、それ、あと何枚あります?」 優希「あ、それ私も欲しいんだじぇ!この間バカ犬の汗を拭いてやったハンカチとトレードだじぇ!」 咲「優希ちゃんはいいよ、等価交換だね……けど、和ちゃんはなぁ?今回、引き下がってくれる?」 和「ぐ、ぐぬぬ……」 久「というより、まこが抜けて4人になったことだし、麻雀で決着でもつけましょ?」 咲「うーん、まぁいいでしょう……本気、出しますけど」ゴッタオ 和「いくら本気の咲さんが相手でも、今回ばかりは引けませんからね」 優希「ふっふっふ、実は私はな……タコスより京太郎のにおいのほうが強くなれるんだじぇ、たとえ南家になろうと勝てる!」 京太郎「な、なんでこんな意味のない争いが始まってるんだ」 京太郎「なんだろう、かわいい女の子が俺の体操服を取り合ってるのに全然うれしくないや」 京太郎「……いつ、部室に入ったらいいんだ?もう今入ってしまうか?」 京太郎「よし……そうだな、いくか」ガチャ 咲「京ちゃんの体操服は私の物!カン!カン!さらにカン!もいっちょカン!」 和「い、いきなりそれは勝てませんよ……」 久「あ、あきらめたらおしまいよ……」 優希「う、うぅ……バカ犬~」 京太郎「」 咲「無駄だよ!そうやって京ちゃんに助けを求めてもここにはこ……な、い」 久「どうしたの咲……ってあは、あはははは」 京太郎「えーっと、その……体操服、もって帰りますね」 和「! ま、待ってください須賀君!それはいけません!」 優希「そうだじぇバカ犬!お前は早くここから出るんだじぇ!」 咲「そうだよ京ちゃん!さっきのはただのNGだから!テイクツー入るよ!」 京太郎「わ、ちょ、押すなって、うわっ!?」バタン 京太郎「し、閉め出されてしまった」 京太郎「テイクツーとか言われても、いつからなんだよ、くそっ」 京太郎「……しかたない、ここは……ハギヨシさーん!」 ハギヨシ「お呼びですか?」 京太郎「すいませんハギヨシさん、実はかくかくじかじかで……」 ハギヨシ「そのぐらいお安い御用です、では行ってまいります」 京太郎「お願いします……ハギヨシさんと知り合いでよかった」 京太郎「何かあったときは呼んでくれれば飛んでいきます、とは言ってたけどここまで早いだなんて」 京太郎「頼みますよ……」 ハギヨシ(むふふ、京太郎君の体操服だなんて、妄想と股間が膨らみますね……むふふ) ハギヨシ(さて、目標は……ありましたね) 咲「カン!カン!さらにカン!」 優希「まった!それロンだじぇ!」 和「なるほど、国士無双なら暗カンでもいけますね!」 久(成り行きで参加しちゃってるけど、私部長権限でよく須賀君のにおい嗅いでるのよねー) 咲(次にそれやったらどうなるかわかりますよね?部長) 久(こいつ直接脳内に……!) ハギヨシ「むふふふふ、色々と盛ってる執事に不可能はありませんからね」 ハギヨシ「皆さんが麻雀に集中してて良かったです、あとはトイレにいって……ん?」ピリリリリ ハギヨシ「はい、こちらハギヨシです……どうしましたか?透華お嬢様」 透華『どうしましたか、ではありませんわ!ハギヨシ、今すぐ帰ってきなさい!』 透華『それと……ちゃんと手に持ってるものももって帰ってくること、いいですね?』 ハギヨシ「な、なんですか?私は今手に携帯しかもっておりませんが」 透華『須賀君の体操服がそこにあるんでしょう?今すぐ持って帰ってきなさい!早く!』 ハギヨシ「わ、わかりました……しかたありませんね、ぱぱっと京太郎君の家にいってパンツの1枚でも盗って帰りましょう」 京太郎「お、俺の体操服入れが消えてる……ってことは、ハギヨシさんがやってくれたか」 京太郎「あとは帰ってくるのを待つだけだな……」 ~~~~~~~~30分経過~~~~~~~~~~ 京太郎「お、遅いな……咲たちはさっきからずっと麻雀打ってるし」 京太郎「ちょっとメールでもしてみるか……」 京太郎「今どこですか……っと、送信」 ~~~~~~~~龍門渕~~~~~~~~ 透華「でかしましたわ!ハギヨシ!」 衣「おー、ちゃんと京太郎のにおいがするぞー!やたー!」 一「これぐらいあるなら布もらって僕の服に縫っても大丈夫だね」 純「まさかお前が面積少ない服着てる理由って……まさか」 一「そう、このためと、京太郎君を誘惑するためだよ」 ハギヨシ「では、私はこれにて……」 智紀「ポケットの中、京太郎のパンツが……3つ、ある」 透華「!? ハギヨシ、それを今すぐ出しなさい!」 ハギヨシ「ぐぬ、ぐぬぬ……わかりました」 衣「おー、これは……」 純「オレは体操服はいいや、こっちもらうぜ」ヒョイッ 一「うわぁ……穿く用?」 純「? 当たり前だろ?」 透華「さて、ハギヨシ……よくやってくれましたわ!」 智紀「私もこっちをもらう……」ヒョイッ ハギヨシ(や、やばい……あと1着しかない……これをどう死守しよ……ん?)ピリリリリ ハギヨシ「メール……京太郎君から……!」 ハギヨシ(今どこですか……そういえばあれから30分以上たちますね) 透華「ハギヨシ……このメールはどういうことですか?」 ハギヨシ「じ、実はかくかくじかじかで」 衣「なんだ……衣は京太郎の体操服を着れないのか」 透華「このまま黙っておきたいですが、それはさすがにいけませんわ……返してきなさい!」 ハギヨシ「ハッ!」シュバッ ハギヨシ(仕方がありませんね、10分ほど公園のトイレで時間をつぶしましょう) 京太郎「結局メールかえってきてないな……」 京太郎「仕方がない、部室に戻るか……ん?」 モモ「おぉーっと足が滑ったっスー!」 京太郎「」 モモ「いやー目の前に人がいるとは思ってもいなかったっス!」 京太郎「……こんなとこで何やってですか、東横さん」 モモ「別にステルスして視察とかじゃないっスよ!」 京太郎「は、はぁ……とりあえず、スパイってことですか?」 モモ「一応そうなるっス……でも、なんか今日のリンシャンさん……怖いっス」 京太郎「咲が……怖い?ちょっと見てきますね」 咲「キエテル、キョウチャンノタイソウフク……」 和「コノナカノダレカデショウネ……ホカノダレカガトッテイクナンテオカルト、アリエマセン」 優希「ふ、二人ともー?目が死んでるじぇー?」 久「でも、なんでなくなってるの?京太郎君の気配ならまだ学校内にあるし」 まこ「わしにまかせろい……クンクン、これは龍門渕の執事のにおい!……うっぷ」オロロロロ 京太郎「……ハギヨシさん何やってるんですか」 咲「フーン……そういえば京ちゃんと結構仲良かったよね」 和「そうですねぇ……代わりに取ってもらったと考えるのが妥当でしょうけど」 優希「バカ犬の気配はこの部室の前」 久「絶対持ち逃げしてるわ……」 京太郎(バレてる!?それにハギヨシさん何でもち逃げしてるんですか!?) モモ「ど、どうっすか?怖いっスよね……?」 京太郎「……ちょっとまってくれ、電話かける」 モモ「?……別にいいっスけど」 ピリリリリリリリ ハギヨシ「ハァ、ハァ、京太郎君……うっ!」ピリリリリリ ハギヨシ「これで7発目……そろそろ行かないといけませ……ん?」ピリリリリリ ハギヨシ「はいどうも、こちらハギヨシです」 京太郎『あなたは今、どこにいますか?』 ハギヨシ「……龍門渕ですね、透華お嬢様に絞られていたもので」 京太郎『すぐにこっちにこれます?いやきてください来い』 ハギヨシ「わ、わかりました」 京太郎『ちゃんと体操服も持ってきてくださいね?では』ピッ 京太郎「ふぅ、これですぐきてくれるだろ」 モモ「なんか、今日はいろんな人が怖くなる日っスね……」 京太郎「さっきの俺、変でした?」 モモ「人でもやっちゃいそうな目だったっス」 京太郎「ゔっ……そんな目してたかなぁ?」 モモ「してたっスよ……まぁ、深くは追求しないっす」 京太郎「そうしてもらえるとありがたいです……と、あれはハギヨシさんか」 モモ「? 一体何が見えて……うわっ!?」 ハギヨシ「すいません、遅れました」 京太郎「遅れすぎです、そのせいで……ほら」 咲「どうやってあの執事に地獄を見せてあげようか……ふふふ」 和「そうですね、この紙を亀頭に挟んでシュパッとしちゃいましょう」 ハギヨシ「え、えげつない……」 京太郎「はぁ、自業自得ですね、体操服返してくださいよ」 ハギヨシ「ど、どうぞ……では私はこれで!」 モモ「な、なんだかすごい人っすね」 京太郎「一応執事ですし、あれぐらいできないとだめなんじゃないですかね?」 モモ「お、恐ろしい……それじゃあ私はここら辺で帰らせてもらうっす、というか帰らせて欲しいっす」 京太郎「まぁ、部室から禍々しいオーラでてるしなぁ……途中まで送りますよ?」 モモ「いや、いいっす、私は被害者になりたくないっす!それじゃ!」ドヒューン 京太郎「あ、いっちゃった……まぁあの人ステルス?だし、大丈夫か」 京太郎「でもあそこまで拒否されると悲しいな……」 京太郎「……俺も、帰ろう」 ~~~~~~~~~~~~~~次の日の放課後~~~~~~~~~~~~~~ 京太郎「やばっ、部室で勉強してたから筆箱忘れてきちまった」 京太郎「明日の朝でもいいけど、早いにこしたことはないし、取りに行くか……」 京太郎(あれ?……なんだか部室が騒がしいぞ?) カン!
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. 京太郎「やっぱり初詣って混むんでしょうかね?」 郁乃「ん~着かへんことにはわからんわ~」 京太郎「ですよねー」 郁乃「それで、この振袖どや~?」 京太郎「似合ってると思いますよ、可愛いです」 郁乃「それじゃあいつも可愛くないみたいやん」プクーッ 京太郎「可愛いですよ、いつもの可愛さが100だとしたら今の郁乃さんの可愛さは150です」 京太郎「あとその膨らませたほっぺも可愛いので200ですね」 郁乃「そ、そんなに褒めても何も出ないで~」 京太郎「郁乃さんと初詣デートができるだけで十分ですよ」 郁乃「うぅ~……」ドン 郁乃「え?」 男「おいこらそこの嬢ちゃん、なにぶつかっとんねん」 男「嬢ちゃんがぶつかったおかげで右肩の骨外れてもうたわ」 男2「あ~こりゃ金払ってもらわんとな~」 男「せやな、とりあえず頭金として10万くらい貰おか」 郁乃「そ、そないに持っとらん……」 男「現ナマで払えない言うんやったら、体で払ってもらおか?」 郁乃「い、いやや」カタカタ 京太郎(この場面……見覚えが……) 男「ほな早くいこか」ガシッ 郁乃「嫌!嫌や!放して!」 京太郎「そこのおじさん、ちょっと待てよ」 男「あん?なんやこのガキ?」 男2「ひょっとしてこの嬢ちゃんの彼氏とちゃいます?」 京太郎「ああ、その通りだよ」 京太郎「ところでさ、おじさん、どうしてアンタ、郁乃さんを掴めるんだ?」 男「腕はものを掴むためにあるんやで?そないなこともわからんのか?」 京太郎「分かんねえな、だっておじさんさっき右肩の骨外れたって言ってたじゃん」 京太郎「どうしてその右腕で郁乃さんを掴めるんだ?」 男「なっ!」 京太郎「これで郁乃さんを掴む必要はないな、とっとと放してくれないか?」 男2「このガキ、さっきから何を!」 京太郎「俺にちょっかいは出せねえよ」 男「はっ、何を言うて」 ウーウーウー 男「る…ん……や?」 京太郎「薬物取引もしてるヤクザの幹部が、2人で何をしているんだ?」 男2「に、逃げましょう!」 男「憶えとれよ、このガキが!」 京太郎「行った……みたいっすね」 郁乃「こ、恐かった~」ヘナヘナ 京太郎「あのときと同じでしたからね」 郁乃「京太郎くんと初めて逢ったときのこと~?」 京太郎「また郁乃さんを助けられてよかったです」 郁乃「疲れたわ~もう帰らへん?」ブチッ 郁乃「あ、鼻緒が切れてもうた~」 京太郎「帰りましょうか、はい」シャガミ 郁乃「何してるん?」 京太郎「歩きづらいでしょうからおぶろうかと」 郁乃「そういうこと~ほな、お言葉に甘えて~」 京太郎「よ……っと、じゃあ帰りましょうか」 郁乃「ご~!」
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憩「京太郎くーん!朝やでー!」 京太郎「うん……あと五分……」 憩「もう!はよ起きへんと大変なことになるで!」ドシッ 京太郎「う、うぅ…………」 憩「起きた?」 京太郎「お、重い……」 憩「」ピキッ パシーン! 京太郎「痛いよ憩姉ちゃ~ん」ヒリヒリ 憩「京太郎くんがあんなこと言うから悪いんやで」プイッ 京太郎「そんな風に不機嫌にしてても何だかんだで朝ごはん作ってくれるんだから憩姉ちゃんは優しいよなー!」 憩「そ、そんなことないで!ウチやって……」 京太郎「ウチやって?」 憩「え……ほな今日のお弁当のタコさんウインナーイカさんにしたろっかなー」 京太郎「はいはいご苦労さん」 憩「どやーぁ?意地悪やろ?」 京太郎「むしろ憩姉ちゃんの方がマイナスな気がするんだけどな」 京太郎「そろそろ行こっか」 憩「イカさん作るん時間かかってもうた……」 京太郎「一々タコさんの足切ってるからだろ」 憩「これで京太郎くんも懲りるやろ?」 京太郎「そっちがな」 京太郎「そうだ、今日も乗ってく?」 憩「そう毎日毎日京太郎くんのお世話になると思うとったら大間違いやで」プイッ 京太郎「歩きだと遅刻しそうだけど」 憩「あ……う……」 憩「……よろしくお願いします」 チャリンチャリ-ン 京太郎「咏ーおっ先ー!」 咏「あっ、お前らズルいぞ!」 京太郎「俺と憩姉ちゃん専用だかんなー!あーはっはっはー!」 ザワザワ 憩「きょ、京太郎くん、みんなに見られとるから……」 京太郎「よし!もっと速く漕ぐな!」グングン 憩「えっ、いや、そういうことや――!」 チュドーン! 咏「どんだけスピード出すんだよあいつ……」 モブ二年「なーなー、荒川さんって須賀くんと付きあっとるん?」 憩「ひぇっ?な何を言うちょるんや?」 モブ二年生「呂律回っとらんで、でそこんとこどうなん?」 憩「ウチが京太郎くんとなんてあり得へんから!」 モブ二年生「せやかて、毎朝仲良く登校、時々自転車で二人乗りやし、それに昼休みは一緒に荒川さんのお弁当食べとるやんか」 モブ二年生「これで付き合っとらんとか、そっちの方があり得へんわ」 憩「……ウチやって、そっちの方がええけど……」 京太郎「憩姉ちゃーん、帰ろうぜー!」 憩「あ、ちょっと待ってー」 タッタッ ガチャ バタム 霞「いつも仲良しね、あの二人は」 咏「毎日毎日惚気聞かされてると腹立ってくんだよねぃ、知らんけど」 照「私だって幼馴染なのに……」 郁乃「ほんまもんのカップルさんみたいやな~」 エイスリン「リアジュウバクハツシロ!」 霞「エイスリンちゃんにこんな言葉教えたの誰かしらー?」 コキコキ 京太郎「あー!風気持ちいー!」 憩「もうちょっとゆっくりにしてー!」ギュッ 京太郎「嫌だねー!」ギュンギュン 憩「きゃあああああああ!」 京太郎「えっと……ごめん」 憩「もう……怖かったんやから……」 京太郎「坂道だし、気持ちいいかなって思ったんだけど……ほんとごめん」 憩「別に……許したるけど……一つ、言うこと聞いてもらってもええ?」 京太郎「おう、俺にできることなら何でも!」 憩「え、えっと、それで……」 憩(ど、どうしよ!勢いで言ったのはええけどどうすればええんや!) 憩『キス……して?』 憩『ウチと……付き合ってください!』 憩(ちゃう、こんなんちゃう……けど……) 京太郎「憩姉ちゃん?」 憩「そう、やな……」 憩「…………」 憩「…………よし」ボソッ 憩「これから、きょーちゃん……って呼んでもええ?」 京太郎「なんだそんだけか、って命令でもなんでもねえじゃねえか」 京太郎「一休みも済んだし、行こうか」 憩「……うん」 キコキコ 憩(なんで、こないなことしかできひんのやろな……) 憩(……けど、今はこんなんでええのかも) 憩「きょーちゃん?」 京太郎「どうしたー?」 憩「ウチ、これからも毎朝きょーちゃんのお味噌汁作りたい」 京太郎「……?それがどうしたんだ?」 憩「なんでもないですーぅ!」 京太郎「何なんだよもー」 キコキコ 憩「なーなーきょーちゃん」 京太郎「何だよー」 憩「えへへー、呼んだだけー!」 憩(……まだ、今はこれだけで) 憩(これから、ゆっくり) ギュッ 憩(……きょーちゃんの胸、ええ音する)
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京太郎「あ゛ー……」 京太郎「(…昨日の俺は間違いなく頑張った)」 京太郎「(あの誘惑を良く断ち切れたもんだと褒めてやりたいところだ)」 京太郎「(…でも、一晩立っていくらか冷静になるとさ)」 京太郎「(やっぱり惜しかったってそう思うんだよなー…)」 京太郎「(あそこで流れに身を任せておけば、脱童貞出来てもおかしくなかったのに!のに!!)」 京太郎「(しかも、相手はあの和…!!)」 京太郎「(何度も脱童貞した相手とのセックスを逃したかもしれないとなれば…!!)」 京太郎「(正直…失敗したかもしれないってそんな言葉が浮かんできたりもする)」 京太郎「(あー…今からでもあの時に時間戻ったりしないかなー…)」 京太郎「(するはずないよなー…)」 京太郎「(…つーか、戻っても多分、俺は同じ選択肢を取りそうだし…)」スタスタ フニョン 京太郎「わぷっ」 「きゃんっ!?」 京太郎「(…あれ?なんだこの柔らかさは)」 京太郎「(顔全体に広がるこの甘い感触は…)」 京太郎「(ま、まさか…!!)」 京太郎「(O PPA I !!!!)」 はやり「あ、あの…」 京太郎「(うぉお!!おっぱいだ!!)」 京太郎「(しかも、この柔らかさ…そして質量…!!)」 京太郎「(これは和クラス…いや、下手をすればそれ以上かもしれない…!)」 京太郎「(まさか階段を登っているだけでこれほどのおっぱいに遭遇出来るとは…!)」 京太郎「(…やはり昨日、頑張った俺の事を神様は見ててくれたんだな)」 京太郎「(ありがとう、おっぱいの神様…)」 京太郎「(俺は今、最高に幸せです…)」ウットリ はやり「…あのー…大丈夫?」 京太郎「…ハッ!」 京太郎「(し、しまった、あまりの心地良さにトリップしてしまったぜ…)」 京太郎「(この俺とした事が…これほどのおっぱいさんに気遣われてしまうとは…)」 京太郎「(一人のおっぱい紳士としてはあまりにも失格…!)」 京太郎「(だから、ここは…早くこのおっぱいから離れて…離れて…)」 京太郎「…らいじょうぶです」モニュモニュ はやり「…そ、そう?」 はやり「それなら良いんだけど…」 はやり「(…なんでこの子私から離れようとしないんだろう?)」 はやり「(いや…まぁ、別に嫌って訳じゃないけれどね)」 はやり「(アイドルになってファンも増えたけど…この胸の所為か、全然、モテないままだったし…)」 はやり「(男の人とこんなに触れ合った機会なんてもう一年…いや、下手をすれば数年単位でないし…)」 京太郎「(ってちげええええええ!!)」 京太郎「(何をやってるんだ、俺は!!)」 京太郎「(幾らこのおっぱいさんがおっぱいに負けない心の広さだと言っても!!)」 京太郎「(貧乳には絶対に真似出来ない淑女っぷりだったとしても!!!)」 京太郎「(それに甘えておっぱいに溺れるなど言語道断!)」 京太郎「(ここはこれ以上、迷惑を掛けない為に離れなければ…!)」スッ はやり「(…あ、離れちゃうんだ…)」 はやり「(ちょっと勿体無かったかな……って言うのは、あんまりにもがっつき過ぎかなぁ…)」 はやり「(でも、この子、結構、身体大きいし…いい匂いもしてるんだよね)」 はやり「(何処かの香水って感じじゃないし…多分、体臭だと思うんだけど…)」 はやり「(正直、香水だって思えるレベルでいい匂いがする子に抱きつかれて悪い気はしないよね)」 はやり「(うん、別にこの年になっても結婚相手どころか恋人がいなくて焦ってる訳じゃないから)」 はやり「(これくらい女の子としては普通だし)」 京太郎「って…は、はやりん!?」 はやり「あ、私の事、知ってるんだ」 京太郎「俺らくらいの雀士で、はやりんの事知らない奴なんてモグリですよ!!」 京太郎「つーか、俺が麻雀を始めたキッカケははやりんですし!!」 はやり「そうなの?」 京太郎「はい!俺が何か新しい事始めようと思ってた時に、牌のお姉さんの麻雀教室を見て!」 京太郎「(そのおっぱいに惹かれて)麻雀をやり始めようと思ったんです!!」 はやり「そ、そうなんだ…なんだかちょっと恥ずかしいな」テレテレ はやり「でも、嬉しい、ありがとね」ニコ 京太郎「いえいえ、こっちの方こそありがとうございます」 京太郎「はやりんのお陰で、俺は沢山、素敵な事に出会えました!」 京太郎「友達も沢山出来て…麻雀も楽しくて…」 京太郎「本当にはやりんには感謝しています!!」グッ 京太郎「(…って待てよ?)」 京太郎「(と言う事は俺がさっき包まれてたのははやりんのおっぱい…!?)」 京太郎「(あのあこがれのはやりんの胸の中でハスハスしてたって事なのか…!?)」タラァ はやり「…え?」 京太郎「あ、す、すみません…鼻血が…」 はやり「だ、大丈夫?」 京太郎「大丈夫っす。こ、これくらいすぐに治ります」ハナツマミ はやり「ダメだよ、鼻血って甘く見ると大変な事になるから」 はやり「えーっと…そうだ。こっちに来て」ギュッ 京太郎「ふぁ、ふぁ…っ」 京太郎「(は、はやりんの手が!手が!!)」 京太郎「(俺の事を掴んで、先に進んで…!!)」 京太郎「(憧れのはやりんのおっぱいにダイブしただけじゃなくてこんな役得があるなんて…)」 京太郎「(お、俺は今日、死んでしまうかもしれない…)」 はやり「(あ…この子の手、おっきくて硬い…)」 はやり「(ってそりゃそうだよね)」 はやり「(この会場にいるって事は、この子も高校生って事なんだし)」 はやり「(私から見たら一回り近く下だけど…でも、もう立派な男なんだ)」 はやり「(…ってそんな子の手を繋いじゃうとか…よくよく考えてみると危ない?)」 はやり「(もしかしなくても…即座に通報案件かも…?)」 はやり「(で、でも…鼻血流してる子の事を放っておく訳にはいかないし…)」 はやり「(仕方ない…うん、これは仕方ない事だよね)」 はやり「(…でも、スキャンダルになったりしない事を一応、祈っておこう)」 はやり「よし。到着」 京太郎「あ、あの…」 はやり「はい。君はそこに座って」 はやり「後、ティッシュここにあるから鼻に詰めておいてね」 はやり「顔を上に向けるのは血が逆流して大変な事になるからダメだよ」 はやり「少しうつむき加減になって待っておいてね」 京太郎「ふぁ、ふぁい…」 はやり「うんうん。良い子」 はやり「じゃあ、そのまま待機しててね」 はやり「私、そこの自販機で冷たいものを買ってくるから」 京太郎「(…なんつーか、すげぇよな)」 京太郎「(勿論、俺もはやりんがずっとテレビの中のキャラだって思ってた訳じゃないけどさ)」 京太郎「(でも、こんな風にキビキビ鼻血の処置をする姿と…)」 京太郎「(テレビの中のキャピキャピしたはやりんの姿は重ならない)」 京太郎「(もう十年近く牌のお姉さんやってるって話だけど…)」 京太郎「(それでもやっぱりはやりんも大人なんだなぁ)」 京太郎「(ただ、それで幻滅したりはしない)」 京太郎「(そもそもアレがテレビ向けのキャラだって言うのは最初からわかってるし)」 京太郎「(寧ろ、こうやってしっかりしてるはやりんも魅力的で良いって言うか)」 京太郎「(大人のお姉さんって感じで結構、ドキドキする)」 ガチャガチャゴトン はやり「おまたせ」 はやり「で、このお茶をちょっと鼻のところに当てておいてくれる?」 はやり「冷やすと血管が収縮して早めに血が止まりやすくなるから」 京太郎「ふぁい」ソッ はやり「後は多分、数分もすれば血が止まるはずだけど…」 はやり「あんまり長い間、止まらなかったら病院行く事も考えた方が良いかも」 はやり「鼻血だけならばまだしも何かの初期症状である可能性も考えられるし」 京太郎「ふぁりがとうごじゃいます」 はやり「ううん。気にしないで」 はやり「って言うか、多分、私の所為だと思うから」 はやり「その…不注意でぶつかっちゃってごめんね」 京太郎「ひあ、アレは踊り場れの事故みたいにゃもんれすし」 京太郎「しょの上、考え事してらんれ俺が悪いっしゅ」 はやり「考え事?」 京太郎「あ、いや…しょの…」 京太郎「(…流石に据え膳食い損ねて後悔してたなんて言えないよな)」 京太郎「(普通の女の子ならまだしも、相手は憧れのはやりんなんだし)」 京太郎「(こうやって知り合いになれたのに幻滅されたくはない)」 京太郎「しょ、しょれよりあの…」 はやり「ん?」 京太郎「牌のお姉しゃん辞めりゅってほんろなんでしゅか?」 はやり「…………それ何処で聞いたの?」 京太郎「ネットでうわしゃになってまひた」 京太郎「でも…俺は信じてないっしゅ」 京太郎「辞めるなんて…勿論、うしょれすよね?」 はやり「………ごめんね、本当なの」 京太郎「しょんな…」 はやり「ほら、私…胸、大きいじゃない?」 はやり「やっぱり『お姉さん』は、あんまりおっぱい大きくない方が良いらしくて」 はやり「それでも、牌のお姉さんでいれるように色々と頑張ってきたけれど…」 はやり「やっぱり年齢的にもそろそろ厳しいから降板してくれないかって言われちゃってる…」 京太郎「れ、でも…!」 京太郎「はやりんはじゅっと立派に牌のお姉しゃんやってきたじゃないれすか」 京太郎「人気らってあるのに、それを降ろすにゃんて…」 はやり「…芸能界ってそういう世界なんだよ」 はやり「ずっと同じところにいられるのは本当に大御所さんだけ」 はやり「私みたいななんちゃってアイドルが、ここまで牌のお姉さんでいられ続けた事の方が奇跡なんだよ」 はやり「寧ろ、私をここまで起用し続けてくれた番組プロデューサーさんには感謝してる」 はやり「だから、最後の日まで牌のお姉さんである私を応援…」 京太郎「嫌れす」 はやり「え?」 京太郎「俺ふぁ…あぁ、くそ!」ズボッ はやり「あ、て、ティッシュ抜いちゃダメだよ!」 京太郎「大丈夫です。もう血も止まりました!」 京太郎「それに真面目な話するのにティッシュ詰めてられないっすよ!」 はやり「ま、真面目な話って…」 京太郎「だって、そうじゃないっすか!」 京太郎「俺は牌のお姉さんが、はやりんだったからこそ麻雀を始めたんです!」 京太郎「はやりんみたいがおっぱいが大きいからこそ!」 京太郎「そんな人達と仲良くなれるかもって麻雀を始めたんですよ!!」 はやり「え、えぇぇぇぇ!?」マッカ 京太郎「えぇ。勿論、不純です!最低だって分かってます!」 京太郎「でも、俺は今、すっげー麻雀が好きで…楽しめていて…!」 京太郎「牌のお姉さんであったはやりんに本当に感謝しているんですよ」 京太郎「それが辞めさせられるって言うのに…黙って見てられません」 京太郎「それに…何より」グッ 京太郎「はやりんだって…本当は辞めるの嫌なんじゃないですか?」 はやり「…え?」 京太郎「俺、雑誌で読みましたけど…はやりんは牌のお姉さんになりたくて芸能界に入ったんですよね?」 京太郎「勿論、麻雀プロとの二足草鞋も大変だろうに、それらを立派にこなしていて…」 京太郎「それなのに降ろされるなんて納得出来るはずと思います」 京太郎「だからこそ、さっきも…一瞬、寂しそうな顔をしたんじゃないですか?」 京太郎「本当は辞めたくないのを堪えて…ファンの前で空元気見せてただけじゃないんですか?」 はやり「…それは…」 京太郎「…だから、俺は嫌です」 京太郎「俺の為だけじゃなくって…はやりんの為にも…」 京太郎「最後の日まで応援なんて…出来ません」 京太郎「何とか…はやりんが牌のお姉さんでい続けられるよう…何かしたいです」 京太郎「だから…何かありませんか?」 京太郎「はやりんが牌のお姉さんでい続けられる方法」 京太郎「俺…何でもします」 京太郎「はやりんの為ならなんだって出来ます!」 はやり「な、何でも…!?」 はやり「(な、何でも…なんて…そんな事…い、いきなりいわれても…)」 はやり「(も、勿論、嫌じゃないどころか…とっても、嬉しいよ)」 はやり「(…勢い任せだとしても…普通はそんな事言わないだろうし)」 はやり「(…この子がどれだけ本気なのかが伝わってきてる)」 はやり「(おっぱい大きいのに…アイドルなんか似合わないって)」 はやり「(プロもアイドルもどっちも中途半端で終わるだけだって)」 はやり「(そんなふうに陰口叩かれて…それを否定出来なかった私なのに…)」 はやり「(こんなにも…本気に…真剣になってくれてる…)」 はやり「(…ど、どうして…)」ドキドキ はやり「(今までファンの人達ともお話した事なんていくらでもあったのに…)」 はやり「(でも…私、今、すごく…ドキドキしちゃってる)」 はやり「(もしかしたら…私の一回りは下かもしれない男の子に…)」 はやり「(フライデーされたら…即座に手が後ろに回っちゃいそうな相手なのに…)」 はやり「(…そんなの関係ないって言うみたいに…身体が、心が…変わっていって…)」 はやり「(私…アイドルじゃ…なくなっちゃう)」 はやり「(この子が求めてくれているのは…アイドルの『はやりん』なのに…)」 はやり「(こんなに真剣に気持ちぶつけられたら私…)」 はやり「(一人の女に…『瑞原はやり』になっちゃうよ…)」キュゥン 京太郎「だから…!」タラァ はやり「え?」 京太郎「…あ」 京太郎「(うあああああ、い、今、シリアスだったのに!)」 京太郎「(メッチャクチャ真剣だったのにいいい!!)」 京太郎「(なのに、俺、ここで力みすぎて鼻血出してしまうなんて…お、俺って奴は…!)」 京太郎「(俺って奴はあああああああああ!!!)」 はやり「…くす」 京太郎「え?」 はやり「…ほら、こっち向いて」 はやり「もっかい、ハンカチ詰め直さないとね」キュッキュ 京太郎「…ごめんなしゃい」 はやり「ううん。謝る事じゃないよ」 はやり「寧ろ、それだけ私の為に必死になってくれてるんだって分かって嬉しかったし」 はやり「アイドルとして…牌のお姉さんとして…」 はやり「こんなに嬉しい事なんてきっと今までになかったと思う」 京太郎「はやりん…」 はやり「…だから、私、もうちょっとだけ頑張ってみるね」 京太郎「え?」 はやり「考えても見れば…私はこれまでおっぱい大きいお姉さんは不適切って道理を蹴っ飛ばして来たんだし」 はやり「辞めさせますって言われて、はいそうですかなんて私らしくなかったよ」 はやり「…だから、最後までプロデューサーさんの迷惑にならない程度に足掻いてみる」 はやり「それでダメなら…今度は私、主役の麻雀番組でも作らせるよ」 京太郎「はは。それも良いれすね」 京太郎「牌のお姉さんにょ麻雀教室以上に視聴率取っちゃへば、戻ってきへくれって言われりゅかもしへましぇん」 はやり「うん。それくらいのつもりで…私、頑張ってみるから」 京太郎「じゃあ…俺に出来りゅ事ありましゅか?」 はやり「ううん。君はもう十分過ぎるほどやってくれてるよ」 はやり「…正直ね、私もちょっと行き詰まりを感じてたところだからさ」 はやり「牌のお姉さんの降板を勧められて、思い悩んでて…」 はやり「アイドルを辞めて麻雀一本に絞るか…」 はやり「それとも全てすっぱり止めて…実家の手伝いをするか…」 はやり「そう思ってた私に…第三の選択肢をくれたんだから」 はやり「…まぁ、それでも、何かしたいってそう言ってくれるのなら…」 はやり「えっとね…その…無理に…とは言わないけど…」 はやり「……れ、連絡先、教えてくれない…?」 京太郎「ふぇ?」 はやり「あ、あの…わ、私、これからすっごく大変だと思うの」 はやり「番組の決定を覆す事もそうだし…新しい番組を立てる事もそう」 はやり「でも……き、君がいてくれたら…」 はやり「こんなに熱心なファンの子が何時も背中を押してくれたら…きっと頑張れると思うから…」 はやり「だから…あの…これからもファンとして…あ、或いはその…こ、個人として…ね」 はやり「私の事を応援してくれたら嬉しいなって…」 京太郎「もちろんれす!!」 京太郎「はやりんの為にゃら俺はいちゅだって応援しましゅし!」 京太郎「夜中らってLINE返しましゅよ!!」 はやり「も、もう…そんなふうに力んだらまた鼻血でちゃうよ?」 はやり「…でも、ありがとうね」クス 京太郎「(……)」ポチポチ 京太郎「(……ある)」 京太郎「(何度確認しても…ある)」 京太郎「(はやりんの連絡先が俺の携帯の中にある!!!)」 京太郎「(うぉおお!夢じゃない…!)」 京太郎「(さっきの出会いは…決して夢じゃなかったんだ!!)」 京太郎「(正直、あんまりにも都合良すぎて夢じゃないかと思うんだけどさ!!)」 京太郎「(はやりんが仕事があるからっていなくなってから何度も確認したけど…)」 京太郎「(…でも、その度に分かるのはさっきのが現実だったって事)」 京太郎「(憧れのはやりんとお知り合いになれただけじゃなく…)」 京太郎「(そのおっぱいにもダイブしちゃった事が現実だったって事で…)」グヘヘヘヘ ネリー「…キョータロー」ツンツン 京太郎「うぉ…ってなんだ、ネリーか」 ネリー「なんだとは失礼だよね」 ネリー「こっちは男がしちゃいけない顔してるキョータローを見つけて注意してあげようと思ったのに」 京太郎「…そんなにやばかったのか?」 ネリー「んー…私は正直、男に興味ないけどさ」 ネリー「でも、幾らキョータローの事が好きな人でも一発で恋から覚めちゃいそうなレベルでやばかったよ」 京太郎「マジかー…」 ネリー「まぁ、私も自分の預金口座見てる時に似たような顔をしてるから分かるけどさ」 ネリー「あんまり人前でそういう顔してると引かれちゃうよ?」 京太郎「おう。ありがとう」 京太郎「(…預金口座云々に関しては突っ込まないでおこう)」 ネリー「お礼の言葉だけー?」 京太郎「…なんだよ、何か欲しいものでもあるのか?」 ネリー「私、喉が乾いちゃったなー?」チラッ 京太郎「…ったく。仕方ないな」 ネリー「わーい」 京太郎「…ホント、こういう時だけ素直な顔するんだから」 ネリー「折角、ちんまい身体に生まれたんだから、その長所は活かさないとダメでしょ」 京太郎「全部、計算の内かよ」 ネリー「とーぜん」 ネリー「こっちはもうティーンズも折り返しに来てるんだよ」 ネリー「そんな子どもっぽく喜怒哀楽表現するはずないじゃん」 京太郎「(…いや、ネリーよりも年上で子どもっぽい人はいるけどな)」 京太郎「(照さんとか照さんとか照さんとか)」 京太郎「で、それはともかく…何が良いんだ?」 ネリー「一番、高い奴!」 京太郎「ほんっと遠慮しねぇよな、お前」 ネリー「しってる? キョータロー」 ネリー「遠慮ってし過ぎると相手に失礼になるんだってさ」 京太郎「お前は遠慮しなさすぎだって」 京太郎「…つか、一番、高いって言っても複数種類あるぞ」 京太郎「どれが良いんだ?」 ネリー「んー…それじゃあ、あの炭酸の奴」 京太郎「オッケ」ポチ ガチャガチャゴトン ネリー「よいしょっと」ゴソゴソ カチッ プシュ ネリー「ごく…ごく…」 ネリー「んー…♪人のおごりで飲むジュースって最高だよね!」ニッコリ 京太郎「いや、んな輝かんばかりの笑みで最低な事言われても」 ネリー「そんな事言うけどさ、キョータローだって良く奢られてるでしょ?」 京太郎「いや、まったく」 ネリー「…はい?」 京太郎「だから、まったく奢られた記憶なんかないぞ」 京太郎「つーか、寧ろ基本的にこっちの方が奢る側だわ」 ネリー「…あれー?」 ネリー「(…キョータローって所謂、イケメンって奴だよね?)」 ネリー「(私はまったく興味ないけど…並のアイドルとか凌駕してるし)」 ネリー「(それなのに奢られてないなんて…彼の周りにいる女が美的感覚狂ってるか…)」 ネリー「(或いは人気がありすぎて周りが牽制しあってるかのどっちかしかないと思うんだけど…)」 京太郎「…どうした?」 ネリー「んーん。何でもない」 ネリー「(…ま、あんまりその辺深く突っ込むとやけどしちゃいそうだしやめとこう)」 ネリー「(どっちであっても大変なのはキョータローだしね)」 ネリー「それよりさ、キョータローって今日も偵察?」 京太郎「あぁ、その予定だけど」 ネリー「じゃあ、今日も私と一緒に回らない?」 ネリー「ジュース一本分くらいは働いてあげるよ」 京太郎「俺としては有り難いけど…良いのか?」 ネリー「うん。一人で麻雀見てても退屈なだけだしね」 ネリー「興味引かれるような打ち手なんて100人に一人いるかいないかくらいだし」 ネリー「偵察なんてしなくても臨海の優勝は決まってるけど…」 ネリー「監督や周りがうるさいから仕方なくやってるだけだしさ」 京太郎「…大した自信じゃないか」 ネリー「当然でしょ」 ネリー「こっちはその為に海超えてわざわざこんな島国にまでやってきてるんだから」 ネリー「生ぬるい環境で適当にやってるような連中に負ける気はしないよ」 京太郎「(…すげぇよな)」 京太郎「(コレつよがりとかじゃなくて完全に本気で言ってるんだから)」 京太郎「(しかも、そう言っても馬鹿にされないだけの実力をネリーは持ってる)」 京太郎「(この先、世界で戦っていくだけの覚悟と実力を俺と同い年で備えてるんだ)」 京太郎「(ハンドボールでも、そんな覚悟なんて芽生えなかった俺にとってはちょっとうらやましくもある)」 京太郎「(でも…)」 京太郎「…言っとくけど、ウチは強いぜ」 ネリー「あー…清澄…だったっけ?」 ネリー「確かに悪くはないと思うけど…臨海に勝つのは無理だよ」 ネリー「私ほどじゃなくても、他の皆も世界で戦っていける実力者だから」 ネリー「世界を知らないただのダークホース程度に負けたりしないよ」 京太郎「…じゃあ、賭けるか?」 ネリー「いーよ。とりあえず100万で良い?」 京太郎「いや、100万はでかすぎるだろ…」 京太郎「外食一回くらいで勘弁してくれ」 ネリー「えー…中金持ちの癖にケチなんだから」 京太郎「ジュース奢られた奴が言うセリフじゃねぇよ、それ」 京太郎「つーか、中金持ち呼ばわりするけどさ」 京太郎「俺はそんな小遣い貰ってねぇから」 ネリー「えー…嘘でしょ?」 ネリー「キョータローレベルなら次に百万単位で貰えるものじゃないの?」 京太郎「そんなに貰ったら性格歪むわ」 京太郎「諭吉さん一人前も貰ってねぇっての」 ネリー「えー…じゃあ、ファミレスくらいしかいけないじゃん」 京太郎「あ、一応、その辺は考慮してくれるんだな」 ネリー「そりゃね。それで借金とかされても後味悪いし」 ネリー「お金は好きだけど、別にそれだけで生きていけるってほど達観してる訳じゃないから」 ネリー「人間関係の大事さっていうのは分かってるつもりだよ」 ネリー「まぁ、それ以上にお金が大事だけれど」 京太郎「へー…」 ネリー「…何?」 京太郎「いや、ちょっと意外だった」 京太郎「ぶっちゃけ、ネリーってお金以外には興味ないのかと」 ネリー「流石にそれは失礼だと思うなー」 ネリー「一応、これでも麻雀とかは好きでやってるし」 ネリー「それに私にだって家族や友人くらいいるんだからね」 京太郎「流石に金から生まれたとは言わないかー」 ネリー「……」 京太郎「…いや、冗談だからな?」 京太郎「それはそれで惹かれるとか言わないでくれよ」 ネリー「…うん。大丈夫分かってる分かってる」カクカク 京太郎「(…本当に分かってるんだろうか)」 京太郎「…まぁ、何はともあれ、誤解してすまなかった」 ネリー「良いよ。そう思われるのも仕方ないって思うし」 ネリー「それに例えそうでもキョータローは私の事嫌ってないでしょ?」 京太郎「…まぁ、な」 ネリー「だったら良いよ。許してあげる」ニコ 京太郎「…ネリーってさ」 ネリー「ん?」 京太郎「結構、寂しがり屋なのか?」 ネリー「……は?」 京太郎「いや、だって、今の流れで許すとかないだろ」 京太郎「何時もだったら…って言うほど俺はネリーの事知らないけど…」 京太郎「でも、賠償の一つでも要求してもおかしくはない話の流れなのに…」 ネリー「……つまりキョータローは私に償いをしたいって事?」 京太郎「い、いや、そういう意味じゃなくてさ」 京太郎「ただ、ここであっさり許すって事は…」 京太郎「案外、ネリーって友達とかそういうのに飢えてるのかなって思ったんだよ」 ネリー「……飢えてる…かぁ」 ネリー「(…まぁ、友達って呼べる相手が少ないのは事実だよね)」 ネリー「(故郷ならともかく、日本に来てからはほとんどそんな相手出来なかったし)」 ネリー「(臨海のメンバーは仲間や友人って言うよりも…ライバルって感じが強いもん)」 ネリー「(決して険悪な訳じゃないけど、最後の一線でどうしても心を許せない自分っていうのはいる)」 ネリー「(そういう意味では飢えてるとか…寂しいって言うのは否定しきれないけど…)」 ネリー「…………んー」 京太郎「あー…ごめん。変な事言ったか」 ネリー「うん。本当にね」 京太郎「それは『ううん、大丈夫』とか言うところじゃねぇのかよ」 ネリー「そんな気遣いして一銭の得にもならない相手だしね」 ネリー「それに…キョータローもそういうのを望んでるんでしょ?」 京太郎「あー……そうかもな」 ネリー「じゃあさ、それで良いじゃん」 ネリー「こういって憎まれ口叩く系の…そういうのでさ」 京太郎「…そういうのって?」 ネリー「…馬鹿、分かってるでしょ?」 京太郎「分かってるけど、ネリーの口から聞きたいんだよ」 ネリー「…だ、だから…その…と、友達…とか」ポソ 京太郎「そっかー。ネリーは俺の友達になりたいのかー!」 ネリー「あーもう…!そんなに大声で言わないでよぉっ!!」 ネリー「まったく…恥掻いちゃったじゃん」 ネリー「これは賠償が必要だよね」 京太郎「はいはい。んじゃ、会場まで背負えば良いか?」 ネリー「…幾ら私がちっちゃいって言っても男に背負われるとか恥ずかしいから却下」 ネリー「だから、さっきの分と合わせてお昼ごはん奢って」 京太郎「マ○ドで良いか?」 ネリー「そこはせめてモ○って言って欲しかったなー…」 京太郎「学生にゃ○スは辛ぇよ」 ネリー「ま、その辺は後で協議を重ねるとして」チラッ 京太郎「…ん?」 ネリー「キョータローの方は…どうなの?」 京太郎「あー…そうだなー」ンー ネリー「…ちなみにここでダメとか言ったら、お昼ごはんが高級レストランになるから」 京太郎「はい!喜んでネリーさんのお友達になりたいと思います!」 ネリー「宜しい」クス 京太郎「ま、アレだ」 京太郎「なんかちょっと情けない流れになっちゃったけどさ」 京太郎「今後共宜しくって事で」 ネリー「ん。これからも私に奢る為にお金を集めてきてね」 京太郎「お前ってホントブレないなぁ…」 ネリー「キョータローがそういう私が好きだって言ってくれたからね」 京太郎「好きだとは言ってねぇよ」 京太郎「まぁ…そういうほうがネリーらしいと思うけどさ」 ネリー「ふふ。まぁ…そういう意味じゃキョータローは私と相性が良いのかもね」 京太郎「相性?」 ネリー「奢りたいキョータローと奢られたい私で受容と供給がぴったり一致してるじゃん」 京太郎「俺は別に奢りたい訳じゃないんだけどなぁ…」 ネリー「でも、結構、簡単に奢ってくれるし、嫌じゃないんでしょ?」 京太郎「まぁ…そりゃ女の子相手に奢るのは悪い気分じゃねぇよ」 京太郎「ましてや、ネリーも可愛いからさ」 ネリー「…可愛い?」 京太郎「おう。まぁ、俺は貧乳には興味ないけどさ」 京太郎「客観的に見れば十分、可愛いだろ」 ネリー「…うーん…」 京太郎「なんだ、その微妙そうな反応」 ネリー「…いや、可愛いとか言われた事ないし」 京太郎「冗談だろ?」 ネリー「いや、ホントホント」 ネリー「小憎たらしいとか悪魔とか鬼とかは言われた事あるけれど…」 ネリー「可愛いなんてほとんど言われた記憶ないなぁ…」 京太郎「…普段、どういう事をしてるのか若干、気になるけど…」 京太郎「でも、女の子なら親に言われた事くらいあるだろ」 ネリー「あ、私、親いないし」 京太郎「え?」 ネリー「私、孤児院で生まれ育ったから」 ネリー「親の顔も知らないし、そもそも生きているのかさえ分かんない」 ネリー「ある日、孤児院の前に捨てられてたんだって」 京太郎「…いや、お前、あっけらかんと…」 ネリー「だって、別に何とも思ってないもん」 ネリー「親の顔なんて知らなくても生きていけるっていうのは私自身が証明してるし」 ネリー「寧ろ、こんなにお金を稼げる私を捨てた親が哀れで仕方がないくらいだよ」 ネリー「ちゃんと手元で育てれば、掛かった元手以上にかえしてあげられたのにね」 京太郎「……ネリー」 ネリー「まぁ、その分、私は孤児院に返してるんだけどね」 ネリー「今時、孤児院の経営なんて何処も一杯一杯だし」 ネリー「私が仕送りしないとチビどもにちゃんとした服も着せてやれないくらいだから」 ネリー「こっちでもバリバリ活躍して世界戦でも優勝しまくって」 ネリー「お金稼いで仕送りしてやらなきゃいけないんだ」 京太郎「…………そっか」 京太郎「お前って良い奴なんだな」 ネリー「そうだよ」 ネリー「あ、でも、やめてよね、同情とかそういうの」 ネリー「これでも私、それなりに幸せに生きてきたと想ってるし」 ネリー「同情とか腹が立つだけだから」 京太郎「…おう。分かってる」 京太郎「ただ…まぁ、アレだ」 ネリー「ん?」 京太郎「同情はしてないし、お前の今までの人生を否定するつもりはないけれど」 京太郎「…ただ、お前はすっげぇ頑張ってるんだなってそう思うから」 京太郎「だから、俺にはちょっとくらい甘えてくれても良いんだぞ」ナデナデ ネリー「…………ぁ」 ネリー「(……何、それ)」 ネリー「(甘えてくれても良いとか…そんな事言って…)」 ネリー「(人の頭撫でるとか…ちょっと間違ってない…?)」 ネリー「(…………でも)」 ネリー「(どうして…かな)」 ネリー「(……明らかに間違っていると思うのに…嫌じゃない)」 ネリー「(キョータローの手…大きくて優しいから…)」 ネリー「(私の頭を覆い尽くす…まるでお父さんみたいな手だから…)」 ネリー「(…おかしいはずなのに、私、安心しちゃう…)」 ネリー「(優しくて暖かい手に…顔が勝手に緩んで…)」 ネリー「(悔しいのに…こんなの…負けたくないのに…)」 ネリー「(でも…私、嬉しいって…そう思っちゃう…)」 ネリー「(キョータローに撫でられるのが…幸せなんだって…)」 ネリー「(この人は私の事捨てないんだって…そう…思っちゃう…………)」 京太郎「確かネリーの誕生日って俺の後だよな」 京太郎「だから、俺の事をお兄ちゃんってそう呼んでくれも良いんだぞ」 ネリー「……お兄…ちゃん?」 京太郎「おう。お兄ちゃんだ」 京太郎「多分、ネリーよりお金持ってないけど、それでも俺はお兄ちゃんだからな」 京太郎「存分に甘えて良いんだぞ」 ネリー「…何、それ」 ネリー「いきなりお兄ちゃんって呼べとか…変なの」 ネリー「幾らキョータローが男でも…私みたいな見た目の女の子にそんな事言ったら通報されちゃうよ」 京太郎「ですよねー」 ネリー「…………でも」ダキ 京太郎「うぉ…」 ネリー「…………割りとその響きは嫌いじゃないかも」ギュゥ 京太郎「ね、ネリー?」 ネリー「…………お兄ちゃん、もっと撫でて」 京太郎「お、おう。分かった」 京太郎「(…おかしい)」 京太郎「(どうして俺は同い年の女の子にお兄ちゃんと呼ばれているんだろうか)」 京太郎「(いや、まぁ…俺がそう呼んでくれと言った事ではあるんだけどさ)」 京太郎「(でも、それは冗談のつもりって言うか、ツッコミ待ちだったんだけど…)」 京太郎「(なのに、ネリーは完全に本気にして…俺の事を完全にお兄ちゃんと呼ぶようになった)」 京太郎「(…正直、戸惑いはあるけれど…でも、それはネリーが今まで中々、人に甘えられてこなかった証なんだ)」 京太郎「(原因となったのは俺な訳だし…ちゃんと受け止めてあげないと)」 京太郎「(それに…まぁ、俺自身、あんまり嫌じゃないからな)」 京太郎「(何だかんだ言って、俺は人に甘えられるのとか結構、好きなタイプだし)」 京太郎「(しっかりし過ぎてるほどしっかりしてるネリーが俺にあぁも甘えてくれているんだから…)」 京太郎「(嫌がるどころか光栄だって言っても良いくらいだよな)」 京太郎「(…ただ、まぁ、そうこうしている間に試合が終わって)」 京太郎「(またネリーとも別れる事になったんだけど…)」 淡「…」ジィィィィィ 京太郎「(…日頃からモモにストーカーされてる俺には分かる)」 京太郎「(さっきから女の子に監視されているんだって事が)」 京太郎「(…でも、一体、どうしてなのかが全然、分からん)」 京太郎「(正直、俺はストーキングされるほど器量良しじゃないし…)」 京太郎「(何より、俺の後をついてきているのは…)」クルッ 淡「あわわっ」カクレ 京太郎「(…どう見てもアレ、白糸台の大星さんだよなぁ)」 京太郎「(確か照さんの後継者とか言われてる…)」 京太郎「(…あ、やべ。なんかそう言うとすっげぇ嫌な予感がしてきた…)」 京太郎「(勿論、あの二人が別人なんだとは分かってるんだけど…)」 京太郎「(…それだけ俺の中での照さんショックはでかかったって事なんだろうな)」トオイメ 淡「…」チラッ 京太郎「(…しかし、これは一体、どうすりゃ良いんだろうな)」 京太郎「(正直、モモとはストーキングに対する技術から情熱までかけ離れ過ぎてて…)」 京太郎「(監視してるのが丸わかりと言うか…俺の後をついてまわる姿を周りの人に見られまくってるし)」 京太郎「(これが普通の世界ならともかく…今のこの世界はほぼ男女が逆転してるようなものなわけで)」 京太郎「(俺の常識で考えれば…男子の有名人が女の子を隠れながら追い回してるって事だよな)」 京太郎「(…………うん、完全に犯罪だな)」 京太郎「(正直、俺が通行人だったらすぐさま警備員のところに行くレベルだわ)」 京太郎「(…まぁ、そんな不審な行動をいつまでも取らせる訳にはいかないし…)」 京太郎「(そろそろ、こっちから話しかけるかな)」スタスタ 淡「っ!?」ビクッ カクレ 京太郎「いや、今更、隠れても遅いですから」 淡「…遅くないもん」 京太郎「いや、返事してる時点でもう言い訳しようもないだろ」 淡「あわ…っ」ビックリ 淡「ひ、ひきょーだよ!」 淡「これってゆーどーじんもん?って奴でしょ!」 京太郎「誘導する暇すらないレベルで尻尾出しただろ」 淡「尻尾…?私、猫じゃないよ?」 京太郎「…あぁ、うん。大体、分かった」 京太郎「(…この子、アホの子だ)」 京太郎「(思わず敬語ぶっ飛んじゃうくらいにアホい子だ…)」 京太郎「(…正直、なんでこんな子が頭使う麻雀なんて競技で活躍出来ているのか分からないくらいアホの子だ…!!)」 淡「な、何がわかったって?」 京太郎「君の名前と生年月日と住所と電話番号」 淡「う、嘘だ」 淡「そんなのそう簡単に分かるはずないもん」 京太郎「じゃあ、まず名前から当てていこうか?」 京太郎「君、白糸台の大星淡だろ」 淡「っ!?」ビックゥ 京太郎「誕生日は12/15」 京太郎「後は…もう言う必要ないよな?」 淡「うぐ…」 京太郎「(…まぁ、ぶっちゃけこれくらいは麻雀ウィークリー読んでたら分かるんだけどさ)」 京太郎「(白糸台のレギュラー…しかも、大将ともなれば、何処も注目してる訳だし)」 京太郎「(住所や電話番号はともかく、誕生日くらいの個人情報は載ってる)」 淡「そ、それで…一体、何のつもり?」 淡「名前とかがバレちゃったからって勝った気にならないでよね!」 淡「私はそれよりもずっとずっと凄い事知ってるんだから!!」 京太郎「凄い事って?」 淡「…えっと、実は小学校三年生までお父さんと一緒にお風呂入ってたとか…」 淡「ってだ、だからゆーどーじんもんはダメだって言ってるじゃん!!」マッカ 京太郎「いや、だから、誘導尋問も何も、そっちが自爆してるだけだろ」 淡「うー…うー…」スネー 京太郎「(あー…この子、可愛いな)」 京太郎「(顔立ちもそうだけど…良い感じにアホくて凄いいじりがいがある)」 京太郎「(正直、このままずっといじり続けてやりたいけど…それじゃ間違いなく話が進まないからな)」 京太郎「(とりあえず話を本題に戻そう)」 京太郎「…まぁ、小学校三年までお父さんと一緒にお風呂入ってた大星さんの事はさておいてな」 淡「い、いちいち、口に出さなくて良いってば!」 淡「と言うか、忘れてよ!!」マッカ 京太郎「忘れるのは良いけど、条件がある」 淡「じ、条件って…」 京太郎「なんで俺の事さっきからつけ回してたんだ?」 淡「そ、そんな事してないもん」 淡「そっちがじいしきかじょーなだけなんじゃない?」 京太郎「…まぁ、しらばっくれるのも別に構わないけどさ」 京太郎「でも…良いのかな?」 淡「え…?」 京太郎「さっき大星さんから聞いたあの恥ずかしい秘密…」 京太郎「もしかしたらそれを俺が誰かに漏らしちゃうかもしれないぞ」 淡「な…っ!?」 京太郎「…それが嫌なら誠意を見せて欲しいもんだなぁ」ゲスカオ 淡「く…ぅ…!」 淡「こ、この…卑怯者!鬼!悪魔っ!金髪!!」 京太郎「金髪はそっちもだろ」 淡「わ、私のは良い金髪だから良いの!」 淡「そっちは悪い金髪だからダメ!!」 京太郎「はいはい。…で、返答は?」 淡「ぬぐぐぐぐ…」 京太郎「…おぉっと、何故か無性にLINEで誰かの秘密を流したくなったぞー」 淡「わーわーわっ!」 淡「分かった!いうから!いうからそれは秘密にしておいてえええ!!!」 京太郎「…で、どうしてなんだ?」 淡「…私、悪くないもん」ムスー 淡「ただ…テルーが昨日、金髪に会ったって言ってて…」 淡「凄い嬉しそうだったから…どんな奴なのかなって思っただけで…」ポツ 京太郎「だからって人のことを付け回さなくても良いだろ」 淡「だ、だって…」 淡「い、いきなり知らない男の人に話しかけるとか恥ずかしいし…」 京太郎「いや、人のことを付け回す方がよっぽど恥ずかしいだろ」 淡「うー…!良いでしょ!」 淡「女の子には色々あるの!!」 京太郎「はいはい。それで?」 淡「それでって?」 京太郎「これまで俺の事見てきた感想は?」 淡「…すっごい嫌な奴」 淡「テルーが褒めてるのが嘘なくらいにひきょーで酷い奴だったよ」ツーン 京太郎「ストーカーに嫌なやつ呼ばわりされるとはなぁ…」 淡「それだけ酷い事やったじゃん」 京太郎「正直、自業自得だと思うぞ」 京太郎「…ま、何はともあれだ」 京太郎「これに懲りたら、もう人の事を付け回したりしない事だな」 淡「ふーんだ」ツーン 京太郎「(…反省してるのかなー)」 京太郎「(って、ヤバイ。そろそろ次の会場に向かわないと)」 京太郎「(折角の偵察だっていうのに対局見逃した…とかなると笑えないからな」 京太郎「じゃあ、俺はそろそろ行くけど…」 京太郎「大星さんもそろそろ帰った方が良いぞ」 淡「つーん」ツーン 京太郎「(自分で言うのか…)」 京太郎「(…ま、忠告はしたんだ)」 京太郎「(後はもう知らぬ存ぜぬで構わないだろう)」 京太郎「…」スタスタスタ 淡「…」スタスタスタ 京太郎「…」スタスタスタ 淡「…」スタスタスタ 京太郎「…あのさぁ」クル 淡「あわっ!?」スタ ビックゥ 京太郎「…俺、もう帰れって言ったよな?」 淡「わ、私もこっちに用があるだけだもん」 淡「べ、別にこのまま追い回して金髪の弱みを握ってやろうとか考えてないから!!」 京太郎「…なるほどな」 淡「あわわわっ」 淡「い、いまのなし!なし!!」 京太郎「いやぁ…なしには出来そうにないかなぁ」ニッコリ 淡「あうぅぅ…」フルフル 京太郎「…まぁ、アレだ」 京太郎「ぶっちゃけさ、俺の事、付け回すのは構わないんだよ」 淡「じゃ、じゃあ、別に私の事放っておいてよ」 淡「金髪の弱みを握ったら私も満足して帰るから!」 京太郎「…いや、それはそれで困るんだけどさ」 京太郎「ただ、その前に冷静になって欲しいんだけど」 淡「私は冷静だもんっ」スネ 京太郎「じゃあ、今の自分がどう見られるか説明出来るか?」 淡「え?超すっごい白糸台の大将でしょ?」 京太郎「あー…うん。それもあるけど」 京太郎「それ以上にさ、今の大星さん、俺の事を追い回してる訳じゃん」 淡「うん」 京太郎「…女がな、男を影からストーカーしてる訳だよ」 淡「それがどうし…あっ」 京太郎「…まぁ、これがほかの人ならば良いんだけどさ」 京太郎「さっき大星さんが言った通り、君はすっごく目立ってる訳で」 京太郎「そんな君が、ストーキングしてたらどうなる?」 淡「…警察に捕まっちゃう」 京太郎「そうだな。で、そうなったら白糸台はどうなるんだ?」 淡「…………すっごく困る」 京太郎「困るどころか、下手すりゃ数年公式戦出場停止食らうぞ」 淡「…そ、そんな…っ」 京太郎「…まぁ、幸いさ、今のところ騒ぎになってない訳だけど…」 京太郎「でも、今のままずっとそうだとは限らないだろ?」 京太郎「だから、俺の事追い回すのなんてやめた方が良いって」 京太郎「…一応、これ大星さんの為に言ってるんだからな」 淡「…………うん」 京太郎「まぁ…その、なんだ」 京太郎「俺も調子に乗って色々とやりすぎたよ、ごめんな」ペコリ 淡「う、ううん。私の方こそ…ごめん」 淡「周りの事、ちゃんと見えてなくて…金髪に教えて貰うまで事態の深刻さを分かってなかった…」シュン 京太郎「(…なんだ。この子)」 京太郎「(ただ、面白いアホの子ってだけじゃなくて…ちゃんと謝れるし反省も出来るんじゃないか)」 京太郎「(ちょっと跳ねっ返り気質なだけで根が素直なんだろうな)」 京太郎「いや、こうしてちゃんと向き合って話せば分かってくれた訳だしさ」 京太郎「大星さんは十分、偉いと思うよ」 淡「そ、そう…?」エヘヘ 京太郎「(やだ、この子、アホいだけじゃなくてチョロい…)」 京太郎「…まぁ、さっきの秘密は誰にも話さないからさ」 京太郎「信じられないなら、俺の恥ずかしいネタを教えてあげても良いし」 淡「…んーん。いいや」 淡「今ので金髪が嫌な奴じゃないって言うのは分かったし」 淡「ちゃんと秘密は護ってくれると思うから」 淡「それに…」 京太郎「それに?」 淡「テルーは言ってたよ」 淡「京ちゃんはたまに意地悪で、ツンデレ?とか言う性格だけど…」 淡「でも、人の約束は絶対に護る一本芯が通った男だって」 京太郎「そ、そうか…」テレ 京太郎「(…照さん俺の知らないところでそんな事言ってたのか)」 京太郎「(正直、恥ずかしいけど…でも、そんなふうに評価してもらえると嬉しいな)」 淡「だから、私は金髪の事を…ううん」 淡「キョータローの事を信じる」 京太郎「…ってキョータロー?」 淡「……あ、図々しかった?」 京太郎「いや、俺は構わないよ」 京太郎「(…ちょっと話の展開が早すぎて驚いたけど…)」 京太郎「(まぁ、多分、そうやって信じて貰えるだけ色々な事を照さんから聞いてたんだろうし)」 京太郎「(ちょっとどころじゃなくアホいけど可愛くておっぱい大きい美少女とお近づきになれたのを喜んでおこう)」 淡「良かった」ニコ 京太郎「…じゃあ、俺もそっちの事を淡って呼んで良いか?」 淡「えー…どうしよっかなー?」 京太郎「…いや、お前、そこでそれはないだろ」 淡「だって、キョータローってば一杯意地悪してたし?」 淡「私だってキョータローに意地悪しないとふこーへーじゃん?」ニッコリ 京太郎「へー?」 淡「…………何?」 京太郎「いや、別に何でもないんだけどさ」 京太郎「ただ…随分と生意気な態度をとるんだなーと思っただけで」ニッコリ 淡「う……」 京太郎「…じゃあ、仕方ないよな」 京太郎「うん。大星さんが下の名前で呼ぶのを許してくれないんだったら仕方ない」 淡「な、何をするつもり…?」 京太郎「いや、大した事じゃないよ」 京太郎「ただ、小学3年生までお父さんと」 淡「わーわーわーわーっ!!!」 淡「秘密って言ったじゃん!!!言わないって言ったじゃん!!」 京太郎「言ってないだろ、最後までは」 淡「屁理屈っ!!」 京太郎「先に弱み握られたそっちが悪い」キッパリ 京太郎「…で、俺はどう呼べば良いんだ?」 淡「…淡って呼んでも良いよ」 京太郎「呼んでも良い?」 淡「うーっ!」 淡「淡って呼んでくださいっ!」 京太郎「よし、これでお揃いだな、淡」 淡「何時か絶対ふくしゅーしてやる…」 京太郎「別に構わないけど、もうストーカーは辞めろよ」 淡「流石にそれはしないよ」 淡「でも…」スタスタ 京太郎「ん?」 淡「…こうして隣にいるのはストーカーじゃないし良いよね」 京太郎「あー…そう来たか」 淡「ふふーん。そう来ました」ニコ 京太郎「…つってもさ、俺、今から偵察だぞ」 淡「じゃあ、私はキョータローの事、偵察してるね」 淡「それで弱み見つけたら、今までの分、全部ふくしゅーしてやるんだから」 京太郎「…ま、淡がそれで良いなら俺は何も言わないけどさ」 京太郎「ただ、横にいてもあんまりおもしろくはないと思うぞ」 淡「大丈夫だよ」 京太郎「…なんか不安だなぁ」 淡「大丈夫だって言ってるでしょ」 淡「それより…ほら、早く行かないと試合始まっちゃうよ」 淡「偵察するんでしょ?」グイグイ 京太郎「わ、ちょ…いきなり引っ張るなって!」 淡「えへへ、さっきの仕返しだよーっ」 京太郎「(それから淡は俺の事を見てたんだが…)」 京太郎「(すぐさま飽きて麻雀の方を見始めてた)」 京太郎「(まぁ…分かってたと言うか、約束された勝利と言うか)」 京太郎「(俺はまだ淡の事良く知らないけど、あいつが落ち着くあるタイプとは思えないからなぁ)」 京太郎「(ただ、麻雀の方見ながら色々解説してくれるのは正直、有り難かった)」 京太郎「(淡にとっては暇つぶしだったんだろうけれど、初心者の俺にも分かりやすかったし)」 京太郎「(…ただ、途中で淡の方のスマホが鳴ってからはそうもいかなかった)」 京太郎「(どうやら淡は大事なミーティングの事を完全に忘れてたらしく、迎えに来た白糸台の部員に連行されていって)」 京太郎「(俺の周りには再び平穏が戻ってきた訳だけれど…)」 京太郎「んー……」 京太郎「(…流石に朝から偵察しっぱなしの牌譜作りっぱなしは辛いなぁ)」 京太郎「(丁度、休憩時間になったし…一回、一息入れるとするか)」ヨイショ 京太郎「(…って身体も結構、バキバキになってるわ)」 京太郎「(これはちょっと動いて身体からこわばりを抜いた方が良いかなぁ…)」 京太郎「(…ま、どうせだし、ちょっと階段あがって飲み物でも買って来るかな)」 京太郎「(丁度、飲み物も切れたところだし)」 京太郎「(もうちょっとで今日の試合も終わるけど、残りは帰り道にでも飲めば良いもんな)」 京太郎「(じゃあ、そうと決まれば即刻っと)」スタスタ 玄「…」スタスタ 京太郎「(ってアレは…確か阿知賀の松実玄さんか)」 京太郎「(姉妹共にとっても素晴らしいおっぱいをおもちなので良く覚えてたんだが…)」 京太郎「(それ以上に彼女には凄いシンパシーを感じるんだよなぁ)」 京太郎「(…こう同志と言うか仲間と言うか…)」 京太郎「(いっそ電波にも思えるような言葉が彼女に対しては浮かんでくる)」 京太郎「(…まぁ、一応、前世の仲間とかそういうんじゃない分、マシだと思おう)」 玄「……」クラッ 京太郎「って…!?」 玄「(ううぅ…なんだか体調が悪い…のかなぁ)」 玄「(普段ならおもちを見てるだけでも元気になれるのに…)」 玄「(今日はお姉ちゃんのおっぱいを見ても、朝からダルイままで…)」 玄「(どうしよう…こんな大事な時期に風邪なんてひいたりしたら…)」 玄「(皆にとんでもなく迷惑をかけちゃうよ…)」 玄「(……まだ見るべき試合は残ってるけど、風邪薬でも飲んで早めに休もう)」 玄「(それで次の試合前に何とか体調を元に戻して…)」クラァ 玄「(って…ここで立ちくらみ…!?)」 玄「(ダメ…足滑らせて…!)」 玄「(堕ち……っ!?」 京太郎「よいしょぉ!」ダキッ 玄「ふぇええxt!?」ビックリ 京太郎「(…ふぅ。何とか間に合ったか)」 京太郎「(何とか間一髪階段を降りてくる松実さんを抱きとめる事に成功した)」 京太郎「(…まぁ、勢いはどうしても殺しきれず、俺の胸に松実さんがダイブしてる形になるけれど)」 京太郎「(それでも階段から堕ちるよりはずっとマシだろうし)」 玄「(はわ…はわわわわっ!?)」 玄「(こ、この硬いの…も、ももももももしかしなくても男の人の胸…!?)」 玄「(か、階段から落ちそうになったら、よもや男の人に抱きしめられるなんて…!!)」 玄「(って…そ、そうじゃない…!)」 玄「(は、早く離れなきゃ…)」 玄「(このままずっと抱きついてたら…それこそ痴漢か何かだって思われちゃう…!)」ワタワタ 玄「あ、あああああああのあのっ」ジタバタ 京太郎「いや、ちょ…!?」 京太郎「(待って!だ、抱きとめられたって言っても…バランス不安定だから!)」 京太郎「(階段っていう狭いところで踏ん張ってるだけだから!)」 京太郎「(それなのにそんなふうに暴れたら、俺まで堕ち……っ)」グラ 玄「きゃああっ」 京太郎「ぬああっ!!」 京太郎「い…てて…」 京太郎「(…やっぱ身体なまってるなぁ…)」 京太郎「(まさかちょっと暴れられただけでバランス崩して階段から堕ちるなんて)」 京太郎「(まぁ、幸い、俺が堕ちたのは数段だったから怪我がある訳じゃなかったけど…)」 京太郎「(って松実さんの方は…)」チラッ 京太郎「…ってえ?」 玄「(…な、何…コレ)」 玄「(…なんで階段から堕ちちゃった私の前にズボンがあるの?)」 玄「(これ…もしかして…)」 玄「(ううん…もしかしなくても…)」 玄「(私、さっきの人の股間に顔を埋めてる!?)」 玄「(胸だけじゃなくて…オチンチンのところまで触っちゃってるの!!?)」 玄「(す…凄い…)」 玄「(も、もう…何から言えば良いのかわからないくらい凄いよ…)」 玄「(だって…まるでフェロモンみたいなオスの匂いがたまってて…)」 玄「(嗅いでいるだけで…頭の奥から…ジィンってしびれちゃいそうになっちゃう…)」 玄「(その上…私に触れてるコレ…)」 玄「(夏服だからか…とっても布地が薄くて…)」 玄「(私…わか…分かっちゃう…)」 玄「(この奥にあるもの…)」 玄「(エッチで…とっても気持ち良いもの…)」 玄「(オチンチンがある事が…肌で感じ取っちゃう…)」 玄「(こ、こんなの…無理だよ)」 玄「(処女の私には…刺激が強すぎる…)」 玄「(まるでエッチな漫画みたいに都合の良い展開に…私の頭、クラクラして…)」 玄「(もう…目の前にあるモノしか…考えられなく…なっちゃう…)」ゴクッ 玄「(…コレ反則…反則だよ)」 玄「(私…これまで男の人にあまり興味なかったのに…)」 玄「(おもちさえあれば…それで良いって思ってたのに…)」 玄「(でも…これは…これは無理…ぃ)」ゾク 玄「(この匂いと感触には…絶対に勝てない…)」 玄「(興味ないとかそんなの…関係なしに…)」 玄「(女の子の…ううん、メスの本能に訴えてくるんだから…)」 玄「(どれだけ…男の人に興味が無い子でも…目覚めちゃう…)」 玄「(この匂いの源が欲しいって…)」 玄「(この感触を生で感じたいって…そう思わされちゃう…)」 玄「(魔性の…魔性のオチンチン…だよぉ…♪)」ハァ 玄「(おしゃぶり…したい…♪)」 玄「(それがダメなら…直接頬ずりさせて…欲しい…っ♪)」 玄「(そんな気持ちを…私もう抑えられなくて…ぇ♪)」 玄「(だから…ぁ♪)」スッ 京太郎「あ、あの…大丈夫ですか?」 玄「ひゃうっ」ビクッ 京太郎「さっきから動かないけど…もしかして怪我したんですか?」 京太郎「もしそうなら俺、ここから救護室に…」 玄「(…この人、私の事を心配してくれてる)」 玄「(もうオチンチンの事しか考えられなくて…今にも無理やり襲いそうだった私の事を…)」 玄「ご、ごごごごごごごごごごごめんなさい」パッ 玄「(は…恥ずかしい…っ)」 玄「(私、最初から最後まで自分の事ばっかりで…)」 玄「(申し訳なさすぎて…顔も見れないよぉっ)」マッカ 玄「わ、わわわわわ私は大丈夫ですから!」 玄「ほ、本当にありがとうございました!」 玄「では!!」ダッ 京太郎「あ…」 京太郎「(…逃げられてしまった)」 京太郎「(まぁ、事故とは言え、男の股間に顔を突っ込んだんだから当然だよな)」 京太郎「(しかし…惜しいなぁ)」 京太郎「(松実さんはおっぱい大きい美少女だっていうのもあるけれど…)」 京太郎「(なんとなくシンパシーを感じて仲良くなれそうな相手に避けられるとは…)」 京太郎「(…最初にはやりんのおっぱいに顔を突っ込んだり)」 京太郎「(連絡先聞けた反動が今に来てるのかなぁ…)」フゥ はやり「ふー…」 はやり「(インハイの解説も楽じゃないよね)」 はやり「(勿論、普段からお仕事でテレビの前で喋ってるし…)」 はやり「(ほかの人より慣れてると言えば慣れてるんだけれど)」 はやり「(でも、私の解説一つ一つで選手に対する印象ががらりと変わっちゃう訳で…)」 はやり「(ある程度、台本があるテレビよりもよっぽど緊張する)」 はやり「(まぁ…それでもお仕事と大会に挟まれるよりはマシだけどね)」 はやり「(台本覚えながら、相手のデータも読み込まなきゃいけないってホント辛いし)」 はやり「(学生時代にちゃんと勉強して暗記方法も覚えてなかったら今の仕事なんて絶対無理だったと思う…)」 はやり「(まぁ…それだけやり応えのある仕事ではあるし)」 はやり「(『彼』のお陰でまだまだ辞めるつもりはないけどね)」 はやり「……えへへ」 はやり「(今、すんなり『彼』とか言っちゃった…)」 はやり「(まだ知り合ったばかりなのに、ちょっと大胆かな?)」 はやり「(で、でも、心の中でくらいは良いよね)」 はやり「(『彼』…京太郎君は私のファンだって言ってくれてる訳だし…)」 はやり「(心の中でくらい『彼』呼びしても許してくれるはず)」 はやり「(まぁ、私はまだ知り合って少ししか経ってないけれど…)」 はやり「(でも、あの子がとても優しい子って言うのはわかってるし)」 はやり「(その上…ちょっぴりエッチ…だよね)」カァ はやり「(あんなに露出の激しい格好してるのもそうだけど…)」 はやり「(私の胸もチラチラ見てるし…好きだって言ってくれてたし…)」テレ はやり「(実際、私が横に立っても嫌な顔ひとつしないどころかデレデレしちゃって…)」 はやり「(ちょっと触っても、嫌な顔せずに受け入れてくれる)」 はやり「(だからってビッチって感じじゃなくって…おっぱいに挟まれて鼻血出しちゃうくらい純情で)」 はやり「(真っ直ぐに私に気持ちぶつけてくれるくらい熱くて…真面目な子)」 はやり「(正直、狙いすぎてるんじゃないかなって思ったりもするけれど…)」 はやり「(でも、アレきっと演技じゃないんだよね)」 はやり「(私もそれなりに芸能界長いから分かるけど…)」 はやり「(そういうのを演じてる時の雰囲気を感じない)」 はやり「(きっと彼は本気であぁいう性格をしてるんだと思う)」 はやり「(…でも、ちょっとエッチでビッチっぽいのに純情とかさ)」 はやり「(どう考えても…危険だよね)」 はやり「(そんなの女の子が大好きなエッチな本にしか生息しない生き物だって)」 はやり「(女の子の妄想の中にしかいない都合の良い『男』なんだって)」 はやり「(そう思うような子が…現実に存在してたんだから)」 はやり「(…正直、私もちょっとヤバイ)」 はやり「(話してた時はまだしも…今は色々と落ち着いてきてるし)」 はやり「(何より疲れも溜まって…ちょっぴりムラムラしてるから…)」 はやり「(…彼でオナニーしたくなってる)」 はやり「(彼の手で、おっぱいで挟んだ時の感触で…)」 はやり「(思いっきりあそこをクチュクチュしたくて…堪らない…)」モジ はやり「(…ま、その為にも早く帰ろっと)」 はやり「(牌のお姉さんを降ろされた後の為に企画書も作らないとダメだしね)」 はやり「(牌のお姉さんをやってて感じた事をぶつけた番組に出来るよう頑張らないと)」グッ 京太郎「…」スタスタ はやり「(…ってあれは…)」 はやり「(もしかしなくても…京太郎君?)」 はやり「(…やった、すっごくラッキーっ)」ニコ はやり「(インハイ会場の中とは言え、偶然会えるなんて思ってなかった)」 はやり「(これはもう…運命だよね)」 はやり「(話しかけないと…)」 はやり「京…」 咏「おーっす。そこいく男の子ー」 京太郎「ん?」 はやり「え…?」 咏「どうしたんだぃ、なんだか浮かない顔をして」 京太郎「あ、三尋木プロ…お疲れ様です」 京太郎「今日はもうあがりですか?」 咏「うん。バッチリ解説してやったぜぃ」 はやり「(…あれは、咏ちゃん?)」カクレ はやり「(どうして京太郎君とあんなに仲良く話してるの?)」 はやり「(…もしかして咏ちゃんも知り合い?)」 はやり「(私みたいに…京太郎君にファンだって言われて仲良くなった…とかなの?)」ズキ 咏「そっちはどう?」 京太郎「俺も今日は合宿場に戻るだけです」 咏「へぇ…そうなんだ」ニヤリ はやり「っ」ゾクッ はやり「(…あ、これ違う)」 はやり「(咏ちゃん…京太郎君と仲が良いんじゃないんだ)」 はやり「(完全にこれ食べ物としか見ていない)」 はやり「(京太郎君の心とか人権とか…そんなの無視して…)」 はやり「(ただ、自分の性欲を発散する相手としか思ってないんだ…)」 咏「…じゃあ、一緒に晩飯でもどうだい?」 京太郎「え、良いんっすか?」 咏「勿論。学生に奢ってやれる程度には貰ってるしねぃ」 咏「で、それが終わったら、私の部屋でマンツーマンレッスン…なんてどうだ?」 京太郎「ま、マジっすか」 京太郎「三尋木プロとマンツーマンレッスンなんて光栄です!」キラキラ はやり「(って…京太郎君、気づいてない?)」 はやり「(咏ちゃんの目がもう欲情でギラギラしてるのに…)」 はやり「(部屋に連れ帰ってレイプする事しか考えてない目なのに…)」 はやり「(一緒になんていったら…穢されちゃうよ…っ)」 はやり「ま、待って!」 咏「…ん?」 京太郎「え?」 はやり「(って飛び出したけど、ど、どどどどどどどうしよう…!?)」 はやり「(ここから先の事なんてまったく考えてないよ…!)」 はやり「(でも…それでも…)」 はやり「(京太郎君をレイプするなんて…そんなの絶対に許せるはずない)」 はやり「(京太郎君は…私の大事なファンで…)」 はやり「(ちょっとだけ…他よりも特別な人なんだから)」 はやり「(幾ら咏ちゃんでも…穢させない)」 はやり「(京太郎君の事を食べ物としか見てない咏ちゃんになんか…)」 はやり「(絶対に…絶対に渡さないんだから…っ)」グッ はやり「き、今日は私が先約だから…」 咏「…先約」 はやり「そ、そう。先にご飯食べにいったり麻雀を教える約束してたんだよ」 咏「…………そうなのかぃ?」 京太郎「え、えっと…」 はやり「(…お願い、気づいて、京太郎君)」 はやり「(咏ちゃんの意図に気づかなくても…)」 はやり「(私の意図にだけは…気づいて欲しい…)」ジィィ 京太郎「…………すみません」 はやり「っ」ビク 京太郎「はい。確かにそうでしたね」 京太郎「今日ははやりんと先に約束してたのすっかり忘れてました」 はやり「き、京太郎君…」パァァ 咏「…そっか」 咏「それならしょうがないねぃ」 京太郎「折角、誘ってもらったのにすみません」ペコ 咏「んーん。私は気にしてないから大丈夫」 咏「ま、この埋め合わせは何時かしてもらうけどねぃ」チラッ はやり「……っ」グッ 京太郎「勿論ですよ」 京太郎「今度は俺の方が晩飯おごります」 咏「はは。学生にたかるほど耄碌してないって」 咏「そういうのは私以上に稼いでから言うんだねぃ」 咏「ま、それじゃ、今日のところは退散するけど…」スタスタ 咏「……どういうつもりかわっかんねーけど、次は容赦しないよ」ポソ はやり「…それはこっちのセリフだよ」ポソ はやり「…ふぅ」 はやり「(…あー、怖かったぁ)」 はやり「(まさか咏ちゃんからあんな声が出てくるなんて…)」 はやり「(よっぽど咏ちゃんは京太郎くんに御執心なんだ…)」 はやり「(まぁ…正直、分かるけどね)」 はやり「(麻雀プロなんてやってて、こんなに格好良い男の子と知り合える機会なんてないし)」 はやり「(でも…」 京太郎「…大丈夫ですか?」 はやり「…ん。大丈夫」 はやり「これでもはやりんは芸能界の荒波に揉まれて生きてきてるからね☆」 はやり「アレくらい慣れっこだから心配しないで」ニコ 京太郎「それなら良いんですけれど…」 京太郎「でも、どうしていきなりあんな事を…?」 京太郎「わざわざ間に入り込んでくるなんてよっぽどだと思って話にノリましたけど…」 はやり「あー…」 はやり「(…やっぱり分かってないんだ、京太郎君)」 はやり「(あれ完全にお持ち帰りの手口だって言うのに…)」 はやり「(芸能界だけじゃなく高校とかでもあんなのザラにあると思うんだけどなぁ…)」 はやり「(やっぱりただ純真なだけじゃなくて警戒心たりなさすぎるよね)」 はやり「(そこのところは大人としてしっかり言っておかないと)」 はやり「…京太郎君はもうちょっと女の子の事警戒した方が良いと思うな」 京太郎「え?勿論、警戒してますよ」 京太郎「美人局とか怖いですもんね」 はやり「…え?美人局って男の人がやるもんじゃないの?」 京太郎「あー…うん。ごめんなさい」 京太郎「そうでしたね、いやぁ…うっかりうっかり」 はやり「???」 はやり「…まぁ、何はともあれだよ」 はやり「咏ちゃんにはもうちょっと警戒した方が良いと思うな」 京太郎「そんなに評判悪いんですか?」 はやり「ううん。そんな事ないよ」 はやり「寧ろ、とっても良い子…だったはずなんだけど…」 はやり「(…そう考えるとさっきの様子、変だよね)」 はやり「(私の知ってる咏ちゃんはもっと飄々として何かに執着する事なんて滅多になかったのに)」 はやり「(でも…そんな咏ちゃんが京太郎君にだけはあんなにも関心を持っていた)」 はやり「(勿論、京太郎君はそれだけ魅力的な子ではあるけれど…)」 はやり「(でも、それだけで説明をつけるには…ちょっと尋常じゃない様子だった気がするし…)」 京太郎「…はやりん?」 はやり「う、ううん。何でもない」 はやり「それより…えっと…さ」 はやり「…良ければ今から…家来る?」 京太郎「え?」 はやり「い、いや、変な意味はないんだよ!?」 はやり「で、でも…ほら、さっき咏ちゃんの誘いを断らせちゃったからさ」 はやり「だから、その分の埋め直しを私がしなきゃダメだと思って…」 はやり「そ、それに…えっと、私、それなりに御飯作るのも得意だから…あの…っ」 はやり「(…って、私、何を言ってるんだろ)」 はやり「(これじゃさっきの咏ちゃんと同じじゃない…)」 はやり「(京太郎君を部屋に連れ込んで…エッチな事するつもりなんだって…)」 はやり「(そう言われてもまったく反論出来ない事を…)」 はやり「(あぁぁ!もう!私の馬鹿ぁあっ!)」 はやり「(もうちょっと考えてから発言すれば…)」 京太郎「え、良いんですか?」 はやり「(……あれ?)」 はやり「…………良いの?」 京太郎「いや、それは俺のセリフなんですけど」 京太郎「はやりんのお部屋にお邪魔出来るだけじゃなくて」 京太郎「手料理まで作ってもらえるなんて…幸せ過ぎてどうにかなっちゃいそうですよ」 京太郎「しかも、麻雀の練習まで付き合ってもらえるとかお金払らわなきゃダメなレベルじゃないですかね」 はやり「お、お金なんて受け取れないよ」 はやり「(と言うか…高校生の男の子を部屋に呼ぶって私の方がお金出さなきゃいけないし)」 はやり「(いや、援交じゃないけど…援交じゃないけれどね!)」 京太郎「いや、でも、晩飯代くらいは…」 はやり「ダメです」 はやり「京太郎君は学生なんだから、素直にお姉さんに甘えなさい」 はやり「アイドルとしての命令です」 京太郎「…はーい」 はやり「~っ」キュン はやり「(あぁ…もう…可愛いなぁ)」 はやり「(本当に…可愛すぎるよ…)」 はやり「(…さっきは咄嗟にお姉さんぶったけれど…)」 はやり「(こんな子とずっと一緒にいたら…絶対に血迷っちゃう)」 はやり「(……でも、絶対に我慢しなきゃ)」 はやり「(京太郎君だって…私の事好きって言ってくれてるけど…)」 はやり「(でも、一回り以上離れてる相手を好きになってくれるはずないし)」 はやり「(あくまでも淑女的…)」 はやり「(そう。まるで中世の淑女のようにしっかりと彼の事をもてなさなきゃ…!)」 ~はやりんハウス~ 京太郎「…」スヤァ はやり「(うわあああ!もう!もぉおおお!!)」 はやり「(なんで寝ちゃうの!?)」 はやり「(いや…それだけ色々と疲れてたって事だってわかってるよ!?)」 はやり「(今日の彼が作った牌譜とか…とっても書き込まれてて…)」 はやり「(どの試合も真剣に見てたんだって事が伝わってきたんだから)」 はやり「(でも、女の部屋にあがって寝ちゃうのはダメだよ…)」 はやり「(そんなの…レイプしてくださいって言ってるようなものなんだから)」 はやり「(…そんな気がなくても…その気にさせられちゃう…)」 はやり「(こんなに無防備な寝顔を見せられたら…)」 はやり「(ちょっとくらい…悪戯しても良いんだって…)」 はやり「(それを…君も望んでいるんだって…)」 はやり「(そんな…都合の良い事…考えちゃうんだから…ね)」スッ はやり「(………だけど、本当に綺麗な寝顔…)」 はやり「(まるで…漫画やアニメに出てくる王子様みたい)」 はやり「(…正直…宝物にして一生、手元においておきたいくらいだよ)」 はやり「(でも…そんな事しちゃダメだよね)」 はやり「(京太郎君はモノじゃなくて一人の人間なんだから)」 はやり「(…………だから、とりあえず写真を取って)」パシャ はやり「(…うん。それでちゃんとロックかけて…バックアップもとって…)」 はやり「(それで…その…えっと…)」 はやり「(…こういう時はね、やっぱり…お姫様のキスが一番だと思うし…)」 はやり「(ソファで寝てる京太郎君に悪戯…うん)」 はやり「(あくまでもただの悪戯をする為に…)」 はやり「(ちょっとだけ…ちょっとだけ…キス……して…)」スッ 京太郎「…………さ、き」 はやり「っ!?」ビクッ はやり「(…咲って…)」 はやり「(確か…清澄の大将で京太郎君の幼馴染…だったよね)」 はやり「(…確かに、結構、仲よさそうに話していたし…)」 はやり「(寝言で名前が出てくるのは普通かもしれないけど…)」 京太郎「…和…も…もう勘弁…してやってくれよ…」 京太郎「タコスにだって悪気があった訳…じゃ…」 京太郎「…あ、部長、それ俺やります…から…」 京太郎「染谷先輩も…置いといてくださ……」 はやり「…………」ズキ はやり「(…………京太郎君は)」 はやり「(京太郎君は、きっと皆に愛されてるんだね)」 はやり「(こんなにも寝言で…仲間の事が出てくるくらいに…)」 はやり「(皆の事を思って…思われてる)」 はやり「(…でもね、わかってる?)」 はやり「(さっき、君が見せてくれた写メ…)」 はやり「(咲ちゃんって言う君の幼馴染は…完全に咏ちゃんと同じだったんだよ)」 はやり「(君の事をオナペットとしか思ってない…発情したメスの目)」 はやり「(きっと毎日、京太郎君の事を頭の中で犯して…滅茶苦茶にしてる)」 はやり「(…ううん。きっと咲って子だけじゃない)」 はやり「(そんな咲って子を仲間に思うって事は…他の子も全部、同じ)」 はやり「(京太郎君の事を…レイプする事しか考えてない連中に決まってるよ)」 はやり「(そんな子達の事をそこまで思う必要なんてない)」 はやり「(…ううん。そんな風に思っちゃダメ)」 はやり「(相手は…ケダモノなんだから)」 はやり「(心を許したら…食い物にされるだけだよ)」 はやり「(こんなに…こんなに可愛い寝顔とか…)」 はやり「(絶対に…私以外に…見せちゃいけないんだからね)」グッ はやり「(…わかってる)」 はやり「(私、今、すっごい最低な事を考えてる)」 はやり「(京太郎君は私の事をこんなに信頼してくれてるのに)」 はやり「(私の前で寝顔を晒すくらい信じてくれているのに)」 はやり「(私は…それを裏切ろうとしているんだから)」 はやり「(…でもね。でも…)」 はやり「(…………それが京太郎君にとっての一番なんだよ)」 はやり「(京太郎君は優しくて純真で暖かくて…)」 はやり「(そんな君の周りには穢そうとするメスしかいないんだから)」 はやり「(…京太郎君が京太郎君のままでいる為には…)」 はやり「(例え、君の心を裏切っても…私が護ってあげなきゃいけない)」 はやり「(君の尊さを知って…それを尊重してあげられる私しか…)」 はやり「(京太郎君は…守れない)」 はやり「(咲って子にも…清澄にも…)」 はやり「(それは…絶対に出来ない事だから)」 はやり「(……だからね)」 はやり「(だから、ごめんなさい)」 はやり「(私は京太郎君の為におかしくなります)」 はやり「(京太郎君の事を思って…君の事を踏みにじります)」 はやり「(でも……でも、私の気持ちは変わらないから)」 はやり「(他の何を犠牲にしても守りたいって思うくらいに…)」 はやり「(私は君の事を…大事に思ってるから)」 はやり「(だから…お願いです)」 はやり「(私の事を…許してくれなんて言いません)」 はやり「(でも、せめて…嫌わないでください)」 はやり「(…君の為におかしくなってしまった私の事を)」 はやり「(君の為に犯罪に手を染めてしまう私の事を)」 はやり「(受け入れて…側においてください…)」スッ 京太郎「ん…」カチャン 京太郎「ん……んぅ…」 京太郎「(…あれ、俺、眠っちゃったのか)」パチ 京太郎「(ってあれ、ここ…何処だ…って)」ギシ 京太郎「(な、なんだこれ!?)」 京太郎「(両手が縛られて動けないんだけど…)」 京太郎「(こ、これってもしかして誘拐とかそういうの!?)」 京太郎「(だったら一緒にいたはやりんも危ないんじゃ…!)」 はやり「…あ、京太郎君、起きたんだ」ニコ 京太郎「……あれ?」 はやり「もう。君って思った以上に寝坊助さんなんだね」 はやり「思ったよりもぐっすりだったからちょっと心配になっちゃった」クス 京太郎「あ、あの…はやりん?」 はやり「ん?どうかした?」 京太郎「あの…どうして俺の横に寝て…」 はやり「だって、ここ私のベッドだもん」 京太郎「あ、そうだったんですか」 京太郎「って俺なんかをベッドに運んでよかったんですか?」 京太郎「そのままソファで放っておいて貰っても良かったんですけど…」 はやり「折角のお客様なのにソファでずっと寝かせておく事なんて出来ないよ」 はやり「それに…ソファの周りでずっと暮らすのは京太郎君も辛いでしょ?」 京太郎「…え?ずっと暮らすって…」 はやり「そのままの通りだよ」 はやり「…京太郎君はね、今日からここでずぅぅぅぅっと過ごすの」 はやり「君の周りに…君を穢そうとするメスがいなくなるまで…」 はやり「ずっと私が…護ってあげるんだよ」ニコ 京太郎「っ」ゾクッ 京太郎「(…なんだ、この濁った目)」 京太郎「(いや…濁ってるけど、一部分だけはとても綺麗で…)」 京太郎「(そこが…俺の事しか映してない)」 京太郎「(まるで俺以外の全てがどうでも良くなってしまったかのように…)」 京太郎「(その綺麗で恐ろしい目は…じっと俺だけを見つめていて…)」 京太郎「い、いや、あの…冗談ですよね?」 はやり「…冗談でこんな事するほど子どもじゃないよ」 はやり「私はコレでもアイドルで麻雀プロでもあるんだから」 はやり「こんな事やっちゃったら即座にスキャンダルになって…何処にも居場所がなくなっちゃう」 京太郎「だ、だったら…」 はやり「…でも、仕方ないじゃない」 京太郎「え…?」 はやり「…アイドルである事よりも、麻雀プロである事よりも…」 はやり「私はね、君の事の方がずっとずっと大事なの」 京太郎「そ、そんなの…」 はやり「…おかしいと思う?」 はやり「うん。私も自覚してる」 はやり「でもね。どうしても止まらないの」スッ 京太郎「…っ」ゾクッ はやり「…君を穢されたくない」 はやり「私の事を立ち直らせてくれた君の事を…」 はやり「私を好きだって言ってくれた京太郎君を…清澄になんて返したくない」ナデナデ 京太郎「で、でも、俺が帰らなかったら…」 はやり「…大丈夫だよ。その辺りは私が何とかするから」 はやり「京太郎君はそんな事きにせず…くつろいでいてくれればそれで良いの」 はやり「君が皆に忘れさられるまで…君のお世話は私が誠心誠意…してあげるからね」ニッコリ 京太郎「(…正直、それからはかなり辛かった)」 京太郎「(なにせ、あのはやりんが本当に俺の事を誠心誠意尽くしてくれたんだから)」 京太郎「(食事と良い下の世話と言い、縛った俺の為に色々としてくれて)」 京太郎「(しかも、それら全部が嫌そうなどころか嬉しそうなんだから)」 京太郎「(おかしくなったとは言え…心から充実しているようなはやりんは魅力的だったし…)」 京太郎「(何より、俺にそっと寄りかかって眠るはやりんの身体が色んな意味でやばかった)」 京太郎「(正直、合宿場に来てから自家発電もしてなかったから結構、たまってたし…)」 京太郎「(安らかに眠ってるはやりんとは裏腹に、一睡も出来なかった…)」 京太郎「(…まぁ…そのお陰で…)」ブラン 京太郎「(……手錠壊して脱出出来たんだけどな)」 京太郎「(最初はこれガチな奴かと思ったらドン○とかで売ってるプラスチックの安物だったし)」 京太郎「(思いっきり力を入れたらベッドの支柱につながってる方が壊れて脱出出来た)」 京太郎「(…ホント、ギリギリって感じだったけどな)」 京太郎「(これがもし本物の手錠だったら…なんて想像もしたくない…)」 京太郎「(…しかし…まさかはやりんが俺の事を監禁するなんて…)」 京太郎「(いや…まぁ、正直、嬉しくない訳じゃないんだ)」 京太郎「(ハッキリ言われた訳じゃないけれど…でも、それはきっとはやりんなりの愛なんだろうし)」 京太郎「(俺に向ける言葉の一つ一つにも嫉妬や独占欲が滲み出ていた)」 京太郎「(男としてそんなに誰かに…)」 京太郎「(しかも、はやりんほどの美少女……うん、美少女に想われるのは光栄だ)」 京太郎「(…でもさ、それは決して彼女の望んでいた事じゃないんだ)」 京太郎「(俺が石版にあんな事を書いてしまったから…)」 京太郎「(だから…はやりんもおかしくなってしまった)」 京太郎「(……今はまだ無理だけど、また何時か…)」 京太郎「(何時か全てを元に戻す方法が見つかったら…またちゃんとはやりんと向き直ろう)」 京太郎「(このまま逃げ出して終わりじゃ…幾らなんでも不誠実過ぎる)」 京太郎「(俺が全部悪いんだから…責任を撮らないと…な)」 京太郎「(…しっかし…これどうしようかなぁ…)」 京太郎「(…今の時刻はもう深夜)」 京太郎「(店なんて何処も開いてないし…勿論、列車もない)」 京太郎「(はやりんのマンションから合宿場までは遠いし…歩いて帰るのは厳しいな)」 京太郎「(だから、一番はこの辺のネットカフェで一晩明かす事なんだけれど…)」 京太郎「(…………スマホの電源が切れた)」 京太郎「(もおお!こんな時に!こんな時にいいいいいいい!!)」 京太郎「(ちゃんと昨日の夜充電してたのに、なんで一日で切れるんだよおおおお!)」 京太郎「(まぁ、確かに合間に色々LINEやったりしてたけどさああ!!)」 京太郎「(でも、ここまであっさりきれる事ないじゃん!!)」 京太郎「(ないじゃん!!!!!)」 京太郎「(はぁぁ…マジどうしよう)」 京太郎「(流石に地図もないのにネカフェ探すのは至難の業だぞ)」 京太郎「(つーか、コンビニさえどっちに行けばいいのか分かんないレベルだし)」 京太郎「(東京って都会じゃねぇのかよ…)」 京太郎「(なんでこんなに住宅地が密集してるんだよ…)」 京太郎「(……まぁ、何はともあれ、動かないとな)」 京太郎「(幸いにして、ここは東京なんだし)」 京太郎「(適当に動いていれば、コンビニかなんかが見えるだろ)」 京太郎「(で、コンビニでネカフェの場所を聞けば、とりあえず一晩はしのげるはず)」 京太郎「(だから、ネカフェにさえ行けば…)」 「申し訳ありませんが深夜の18歳未満のご利用はお断りしております」 京太郎「…マジですか」 「申し訳ありません…」 京太郎「(あばばばばばばばばば)」 京太郎「(ま、まさか頼みの綱のネカフェにまで断れるなんて…!?)」 京太郎「(これ、もうどうすりゃ良いんだよ…)」 京太郎「(まだ始発まで数時間あるぞ…)」 京太郎「(コンビニで充電器買ったからスマホも復活したけど…)」 京太郎「(でも、流石にこの時期に外で時間潰すのは結構きつい)」 京太郎「(でも、コンビニで数時間居座るのも申し訳ない話だし…)」 京太郎「(本気で打開策が思いつかなくなってきたぞ…)」 京太郎「うーん…」スタスタ 「お、そこのかれー」 京太郎「え?」 「この時間に制服で出歩いてるとか超悪い子じゃん」 「もしかしてウリとかやってんの?」 京太郎「え?う、ウリ…?」 「なーに、もうしらばくれちゃって」 「ウリって言ったら援交でしょ、えんこー」 京太郎「え、援交!?」カァァ 「やっだ。これくらいで顔を赤くするとかマジかわいー」 「ねーねー。お姉さん達とちょっと遊ばない?」 「私達、最近、彼氏に振られて欲求不満でさ」 「一時間に一万…ううん。君が相手なら一万五千は出すよ」 「どう。悪い話じゃないでしょ?」 京太郎「い、いいいいいや、俺、童貞なので!」 「え?」 京太郎「し、ししししし失礼しまーす!」ダッ 京太郎「(…東京怖い)」 京太郎「(まさか外歩いてるだけでも、女の人に声掛けられるなんて)」 京太郎「(しかも、全部、援交目当てのものばっかりだし…)」 京太郎「(…まぁ、性別逆にして考えれば当然なのかもしれないけど…)」 京太郎「(でも、怖かった…本気で怖かった…!)」 京太郎「(夜道を一人で歩く女性の怖さを思い知ったわ…!)」 京太郎「(でも…そうやって怖い思いをしたお陰で何とか始発の時間になったし…)」 京太郎「(……とりあえず電車乗って…)」フゥ 京太郎「(……あぁ、ヤバイ)」 京太郎「(安心したら一気に眠気が…)」 京太郎「(ここで寝たら大変な事になるかもしれない…のに…)」 京太郎「(堪えられな……)」グゥ 「…おきゃくさーん、終点ですよー」 京太郎「…ハッ」 京太郎「(やべ、今の時間…)」 京太郎「(つーか、携帯とか財布は!?)」ババ 京太郎「(…良かった、ちゃんとあった)」フゥ 京太郎「あ、すみません。今、降りま…」 ネリー「ん?」 京太郎「…………何やってんだ、ネリー」 ネリー「いや、ちょっとインハイ会場に行こうかと思ったら見慣れた顔が座席でぐうぐう眠ってるし」 ネリー「ちょっと膝枕でもしてあげようと思って」ニコ 京太郎「……」 ネリー「…ってお兄ちゃん?」キョトン 京太郎「ネリー!!」ダキッ ネリー「うひゃあ!?」ビックリ ネリー「な、ななななな何々、何なの!?」 ネリー「そんないきなり抱きつかれたら、私、ドキドキしちゃうでしょ!!」 ネリー「っていうか、人前!他に人いるからっ!!」 京太郎「ネリー…ネリー…っ」ギュゥゥ ネリー「……あー…」 ネリー「…分かった。分かったから」 ネリー「何か怖い事あったんでしょ?」 ネリー「私は別に逃げないし…とりあえず落ち着いて」 ネリー「ちゃんと後で話も聞いてあげるし…」 ネリー「落ち着けるようコーヒーでも奢ってあげるから」ナデナデ 京太郎「…………お前、本物のネリーか?」 ネリー「……やっぱお兄ちゃんは奢ってあげるのやーめた」ムスー 京太郎「わ、悪い」 ネリー「はぁ…」 ネリー「まったく、自分でお兄ちゃんって言ってくれても良いんだぞ、とか言ってた癖にさ」 ネリー「ちょっと優しくしようと思ったら、これだもん」 ネリー「私が優しくしようと思ったら悪いって言うの?」 京太郎「いや、本気で悪かったよ…」 京太郎「まさかネリーがそんな事言ってくれるとは思わなかったし…」 京太郎「それに昨日から色々あって…頭働いてなくてさ」 ネリー「…まぁ、こんなに朝早い電車で爆睡してたら何かあったのはなんとなく予想つくけど」 京太郎「あ、いや…その…」 ネリー「…私にも言えない?」 京太郎「……ごめん」 ネリー「…まったく、お兄ちゃんって言っておいて」 ネリー「情けないだけじゃなくて、私に秘密をつくるとか酷いと思わないの?」ツーン 京太郎「…返す言葉もないです…」シュン ネリー「…だから、せめてちゃんと甘えてよね」 京太郎「……え?」 ネリー「だ、だから…言わないなら言わないで良いけど…甘えて欲しいって言ってるの」 ネリー「私に言えないけど…でも、怖い事あったんでしょ?」 ネリー「私は…その、大丈夫だから」 ネリー「お兄ちゃんの事絶対に傷つけたりしないし…」 ネリー「本気で嫌な事だってしないから」 京太郎「…ネリー」 ネリー「…だから、一杯、甘えて…元通りになってよね」 ネリー「そうじゃないと…私が甘えられないでしょ」 京太郎「…あぁ、ありがとうな、ネリー」ナデナデ ネリー「も、もぉ…またそうやって気易く頭を撫でる…」 ネリー「……別に良いけどね、こっちも撫で返すし」ナデナデ 京太郎「はは。なんかくすぐったいな」 ネリー「ふーんだ。なんて言っても止めてなんてやらないんだから」ナデナデナデナデ ネリー「(…本当はもっと突っ込んだ事言ってあげたいけれど)」 ネリー「(でも…それはきっとお兄ちゃんの事傷つけるだけにしかならないよね)」 ネリー「(だって、さっきの反応を見るに…お兄ちゃんは高確率でレイプされちゃったんだから)」 ネリー「(ここでしつこく聞こうとしたら…それこそセカンドレイプになっちゃう)」 ネリー「(だから、ここは何も気にしないで…お兄ちゃんの事を癒やしてあげる事を優先しないと)」 ネリー「(レイプされるっていうのはそれだけ辛くて苦しい事なんだから)」 ネリー「(…………でも)」 ネリー「(きっと夜通し…このエッチな身体を知らない女に好き放題にされちゃったんだ…)」 ネリー「(私の事、今も抱きしめてくれてる…この大きくて暖かい身体を穢されて…)」 ネリー「(……………そんなの許せるはずない) ネリー「(キョータローは…私のお兄ちゃんなのに…)」 ネリー「(私だけの…お兄ちゃんなのに…)」 ネリー「(…勝手に手を出した奴には…必ず報いをくれてやる)」 ネリー「(……お兄ちゃんを傷つけた以上に…ボロボロにしてやるんだから…)」ゴッ
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1364646357/ 和「お疲れ様です。あ、まだ須賀君と咲さんだけですか?」 咲「ほら、和ちゃん来たよ」 和「はい?」 京太郎「あ……でも」 咲「今更何言ってるの」 和「あの、どうかしましたか?」 咲「あー、えっとね……どうする、京ちゃん? 私が言おうか?」 京太郎「……いや、ここはやっぱり俺が自分で言うべきだろう」 咲「うん、そうだね」 京太郎「あ、でもやっぱりもしもの時は頼む」 咲「はーい」 和「一体なんですか」 京太郎「あー、和、さん」 和「え? なんですか急にさん付けとか」 京太郎「実は……ですね。ちょっとお願いがありまして」 和「はあ」 京太郎「ぅぁ……あ……ええい!」 和「な、いきなり土下座とかどうしたんですか!」 京太郎「お願いします! おっぱいを見せてください!」 和「………………はい?」 京太郎「いきなりで本当に申し訳ないのですが、僕に! 僕におっぱいを! 見せてください!」 和「嫌ですよ! 嫌に決まってるじゃないですか! なんで私が須賀君に、 そ、その、おっぱ……お……胸を見せなければいけないんですか!」 咲「和ちゃん……混乱するのもしかたないけど、ここはどうか一つ」 和「ちょっと、なんで咲さんまで土下座なんて!」 咲「お願いします、京ちゃんにおっぱいを見せてあげてください」 咲「私が頭なんて下げても意味が無いのは分かってる……でも」 咲「京ちゃんが。どうしてもおっぱいが見たいって言ってるの」 咲「だから……ね? ほんの少しの時間でもいいから、和ちゃんのその大きなおっぱいを見せてあげてくれないかな」 京太郎「お願いします! お願いします!」 和「ちょ、何言ってるんですか咲さん」 京太郎「お願いします! お願いします!」 和「須賀君は少し黙っててください!」 和「あの……一体どうして須賀君は急にこんな事を」 咲「………………急じゃあ、ないよ」 和「はい?」 咲「和ちゃんだって気付いてたでしょ? 京ちゃんがいつも和ちゃんのおっぱいを見つめていたこと」 和「それは……まああれだけ見られていれば嫌でも気付きますけど」 咲「京ちゃんは……もう、制服の上からだけじゃ我慢できなくなっちゃったんだって」 和「だからって嫌ですよ、私。須賀君にむ、胸を見せるだなんて」 咲「……そう。うん。そうだよね」 和「分かっていただけましたか」 和「ま、まあ須賀君は、その、なかなか気配りも出来ますし料理も上手ですし、顔も整っていますので」 和「む、胸は彼女が出来てからいくらでも見せてもらえばいいじゃないですか」 和「って、一体なんで制服を脱ごうとしているんですか咲さぁぁぁぁぁん!」 咲「え? だって和ちゃんがおっぱい見せたくないって言うから……仕方ないから私が代わりに見せるしか」 和「どんな理論の飛躍ですか! 大体須賀君はそれでもいいんですか!」 京太郎「おっぱいが……見たいんです……!」 京太郎「どうしても……! どうしても見たいんです……!」 咲「ほら、血の涙まで流してる」 和「」 咲「ほら京ちゃん、和ちゃんは嫌がってるから……あっちで私のおっぱい見て我慢してね?」 京太郎「うう……はい……」 和「ちょっ! ちょっと待ってください!」 咲「ん? どうしたの?」 和「……せます」 咲「何?」 和「む、胸を……須賀君に見せます……ですから、咲さんが犠牲になることはありません!」 咲「聞いた、京ちゃん!? よかったね!」 京太郎「いよっしゃああああああああ!!」 和「あ、あの、それでですね」 咲「うん! 何かな!」 和「さ、流石に須賀君と二人きりでその……む、胸を見せることには抵抗がありますので」 咲「大丈夫! 分かってるよ和ちゃん! 私も一緒に居るから安心してね!」 和「あ、ありがとうございます」 京太郎「やった……! やった……!」 和「え、っと……」 咲「大丈夫だよ和ちゃん! ドアに鍵かけたから! さ、どうぞ!」 京太郎「やったぞ……俺はついに……」 和「は、はい。それでは……」 和は顔を赤らめながら背中に手をまわす。 いくら覚悟したとはいえ、いきなり男子生徒である京太郎の前で制服を脱ぐことに抵抗があるのだろう。 ぷちり、とした音をたてブラジャーのホックが外されると、和のその大きな胸がたぷんと揺れる。 京太郎がおお……と小さく歓声をあげるのも無理はない。 和がするすると制服の裾からブラジャーを引き出すと、いつの間にかそばに来ていた咲がそれを受け取る。 咲はそのブラジャーを見て一体何を思うのだろうか。 可愛い? 自分の付けているものと形が違う? それとも単に重量の違いに愕然とする? 否。 断じて否。 咲はその時、ブラジャーなど見ていなかった。 そう。制服越しにはっきりと見えるのどかの胸の先端を凝視していたのだ。 それは勿論京太郎もである。 和「あ、あの……やっぱり制服も脱がないと……だめ、ですよね?」 咲「勿論だよ! そうだよね、京ちゃん!」 京太郎「はい!」 和「う……うう」 咲「上手くいってよかったね、京ちゃん」 京太郎「ああ、咲のおかげだ」 咲「それにしてもすごかったね、和ちゃんのおっぱい」 京太郎「ああ……やはり多少重力に負けて垂れぎみではあったものの、素晴らしいものをおもちであったな」 咲「で、次はどこにしようか」 京太郎「そうだな……ううむ」 京太郎「鶴賀でどうだろうか」 咲「鶴賀? ああ、妹尾さん? 確かにあの人なら土下座したら見せてくれそうだね」 京太郎「だろ? 確か清澄の応援に東京まで来てくれてたはずだよな」 咲「うん」 咲「こんにちはー」 加治木「おや、宮永じゃないか。どうしたんだ、こんな所まで」 咲「今日はちょっとお願いがありまして」 加治木「お願い? まあいい。こんなところで立ち話もなんだから入るといい」 咲「おじゃまします」 加治木「それで、一体どんな頼みごとだ? 麻雀の練習なら別に来て貰わなくとも連絡をもらえればこちらから」 咲「あ、今日は麻雀関係ではないので」 加治木「?」 京太郎「あ、それよりこれ、お土産です」 加治木「ありがとう。……あー、たしか須賀君、だったな」 京太郎「名前を覚えていてもらえたとは恐縮です」 咲「それで、あの」 加治木「ああ」 咲「妹尾さん、いらっしゃいますか?」 加治木「妹尾? 妹尾に何か用事だったのか……しかし参ったな」 京太郎「どうしたんです?」 加治木「妹尾は今、津山と一緒に蒲原に付き合ってドライブの最中だ」 咲(ど、どうしよう京ちゃん!) 京太郎(待て、まだ慌てる時間じゃ無い) 京太郎(確か、まだ鶴賀にはすばらしいものをお持ちな方がいらっしゃるはずだ) 京太郎「そうだったんですか……まあこちらもアポなしでしたのでしかたありませんよね」 京太郎「あ、お土産ケーキなんで、是非早いうちに」 加治木「すまない、なら早めに頂くとしよう。モモ、お前も」 モモ「はいっす」 加治木「ふむ……これはなかなか」 モモ「美味しいっすね、先輩!」 咲(なるほど! 確かに東横さんもなかなかのものを!) 京太郎(だろう!? そして頼み込むなら今がチャンスだ) 咲「あの、妹尾さんがいらっしゃらなくて残念ですが、妹尾さんの代わりに東横さんにお願いしてもよろしいでしょうか」 モモ「はい? 何っすか?」 京太郎「お願いします!」 加治木「な、何故いきなり土下座を!」 京太郎「東横さん! おっぱいを! おっぱいを見せてください!」 加治木「な、ななな」 モモ「いきなり何を言ってるっすかあああああ!」 モモ「嫌っす! 私の胸は、ていうか私の全部は先輩のものっす!」 モモ「いくら土下座されようと見せないっすよ!」 京太郎「そこをなんとか……!」 モモ「だ、大体清澄にはおっぱいさんがいるじゃないっすか! そっちに見せてもらえばいいっす!」 京太郎「お願いします、お願いします!」 加治木「み、宮永! 須賀君はいきなり何を言っているんだ!」 加治木「なんでモモのお、おっぱいを見たいだなどと」 加治木「そ、それにモモも言っているが清澄には原村がいるじゃないか! 原村でいいだろう!?」 咲「……同じ部活でそんなこと……できるわけないじゃないですか」 加治木「何!?」 咲「いきなり京ちゃんが土下座しておっぱいを見せてくれるよう頼んだとして、それ以降部活の雰囲気は……」 加治木「だからと言って他校のだな、私達にそれを頼むのもお門違いと言うか」 咲「加治木さん達も言っていますけど、うちには和ちゃんがいます」 咲「それはそれは大きなおっぱいです」 咲「ですが」 咲「そんなものを毎日見て、京ちゃんはもう、我慢できなくなってしまったんです」 咲「お願いします……京ちゃんに東横さんのおっぱいを見せてあげてくださいませんか」 加治木「だがしかし……」 京太郎「お願いします! お願いします!」 モモ「ええいしつこいっす! 先輩、もうこいつら追い出すっすよ!」 加治木「う、うむ」 咲「ケーキ」 加治木「!?」 咲「おいしかった、ですか? おいしかったですよね? それはもうお高いケーキでしたもの」 加治木「宮永……?」 咲「いえ、いいんです。私達はただ遊びに来て、そしてお土産のケーキを置いて行った。そういうことですから」 咲「京ちゃん、ほら立って」 京太郎「お願いしま……咲?」 咲「やっぱりこんなお願い無茶だったんだよ……ね?」 モモ「やっとわかったっすか!」 咲「あ、さっき買ったケーキのレシートが」 モモ「!?」 加治木(な……なんて値段だ) 加治木「み、宮永……もうすこしゆっくりして行っても」 咲「え? ですがご迷惑じゃ」 加治木「いや、いいんだ……それに須賀君」 京太郎「はい?」 加治木「その、だな……モモの物とは流石にサイズが違うが、わ、私の胸で我慢してもらえないだろうか」 モモ「先輩!?」 加治木(仕方ないだろう、モモも見ただろうあの値段!) モモ(でも……!) 加治木(私が須賀君に胸を見せることでいいなら、それで) 咲「どうする? 京ちゃん、加治木さんのおっぱいでいい?」 京太郎「……………………」 加治木「…………」 モモ「…………」 京太郎「お願いします!」 加治木「な、なら今から脱」 京太郎「おっぱいを見せてください、東横さん!」 加治木「」 加治木「な、なあ須賀君、私じゃやはり駄目か……?」 京太郎「お願いします、お願いします!」 モモ「こいつ……っ! 先輩の好意を……!」 咲「まあまあ加治木さん。ちょっといいですか?」 加治木「あ、ああ」 咲(東横さんが顔を真っ赤にしておっぱい出してる所、見たくないですか?) 加治木(!?) 咲(以前合宿で一緒にお風呂に入った時思いましたが、東横さんいつも加治木さんにべったりですよね) 加治木(あ、ああ) 咲(東横さん……加治木さんの前であまり恥じらったりしないんじゃないですか?) 加治木(そんなことは) 咲(ない、かもしれませんね。ですが、今回はまた別ですよ) 咲(加治木さんの眼の前で、他校の男子生徒におっぱいを見せる……その屈辱と恥ずかしさの入り混じった東横さんの顔) 咲(見たいと思いませんか) 加治木「!!!!」 京太郎「お願いします! お願いします!」 モモ「ええい! このこのっ!」 加治木「なあ、モモ」 モモ「先輩こいつを追い出すの手伝っ」 加治木「そこまでお願いされてるんだ……少しおっぱいを見せるくらいいいんじゃないかな」 モモ「」 京太郎「東横さんのおっぱいもなかなか良かったな」 咲「そうだね。まさか」 京太郎「乳首までもステルスだとはな」 咲「巨乳の人には多いって聞くけど、ねえ」 咲「そう言えば京ちゃんは陥没乳首でもよかったの?」 京太郎「ああ……確かに陥没乳首の魅力は乳首をたたせてこそだが……」 咲「今回は見るだけだしね。どうしても刺激できないと難しいよね」 京太郎「だが、あの東横さんの真っ赤な恥じらい顔を見たらそんなことは小さなことだと思えたからな」 咲「だよねー。すっごく可愛かったよね」 京太郎「うむ」 咲「それじゃあ次はどうする? 龍門淵の沢村さんもなかなかだったと思うけど」 京太郎「あそこはアカン」 咲「え?」 京太郎「アカン」 京太郎「ハギヨシさんに素敵滅法されたくなければ近づかない方がいい」 咲「あ……うん」 京太郎「それよりあそこはどうだ?」 咲「! なるほど! なら今回は前もって連絡しておいた方がいいよね!」 京太郎「頼むぞー咲」 咲「と言う事でこんにちは姫松高校のみなさん」 京太郎「どうもー」 漫「あ、あの、これは一体」 絹恵「どういうことですか?」 恭子「ごめん……ごめんなあ……」 漫「ちょ、なんで手錠なんかするんですか!」 絹恵「お姉ちゃん!? 悪ふざけは」 洋榎「せ、せやかて……なあ」 京太郎「はいはーい、さっさと準備していただけますかー」 漫「末原先輩!?」 恭子「アカン……宮永に逆らったらあかんのや……堪忍やで漫ちゃん」 絹恵「お姉ちゃん何してんの?」 洋榎「絹……インハイで原村のペンギン蹴っっぽったやん?」 絹恵「ああ……うん」 洋榎「あれなあ、ごっつ高いぬいぐるみだったらしいんや……」 絹恵「え……?」 洋榎「これが許してもらう条件やって言われて……」 咲「あ、写真など撮影はしませんから安心してくださいね」 咲「じゃあ京ちゃん」 京太郎「あ、ちょっと待て。一応形だけでも頭下げとかないと」 京太郎「てなわけで今からお二方のおっぱい、見せて頂きますね」 ぺっこりん 漫「何がそういうわけやあああ!! 嫌や嫌や嫌やああああああ! 末原先輩放してくださいいいいいいい!!!」 恭子「ごめんなあ漫ちゃんごめんなあ……」 絹恵「…………」 洋榎「絹……お姉ちゃんがついとるから……」 絹恵「…………うん」 京太郎「ありがとうな、咲。咲が居てくれなかったらこんなにスムーズにおっぱい見せてもらえなかったぜ」 咲「えへへ……しかしすごかったね、上重さんのロケット」 京太郎「だな。重力にあそこまで逆らっていながらおっぱいとしての柔らかさを兼ね備えているとは」 咲「触ってないのになに言ってるの、もう」 京太郎「見た感じだって。あのおっぱい揉める人が羨ましいぜまったく」 京太郎「愛宕の妹さんの方はあれだな、あの大きさに対して少し乳輪が小さめな気がしたな」 咲「でも乳首自体は普通だったね」 京太郎「うむ。あれもいいものであった」 咲「それで、次はどうする? 宮守でも行く?」 京太郎「ああ……いや、あそこは臼沢さんの腰のラインはすばらしいが、おっぱいとなるとなあ」 京太郎「それよりやっぱりあそこ行こうぜ」 咲「永水、だね!」 京太郎「お願いします、おっぱいを! おっぱいを見せてください!」 霞「どうぞ」 初美「いやーん、ですよー」 京太郎「」 初美「あれ? どうしましたー? もしかして見とれちゃってますー?」 京太郎「」 春「黒糖、食べる?」 咲「あ、ありがとうございます」 京太郎「……う」 初美「はい?」 京太郎「……がう」 咲「あ、美味しい」 春「竹井さんにもお土産持って行って」 咲「あ、はい」 京太郎「違う! 俺が求めているのは! 薄墨さんの胸じゃない!」 京太郎「神代さんの圧倒的存在感を持つ! 石戸さんの他者を寄せ付けないほどの重量感を持つ!」 京太郎「おっぱいなんだああああああああ!!!!!」 初美「失礼な子ですねー」 霞「あらあら」 京太郎「それに薄墨さんの乳首チラは県予選の映像から大量にキャプってありますので」 初美「あうう……流石に照れますねー」 京太郎「お願いします! 神代さんと石戸さんのおっぱいを見せてください!」 霞「ええと……それだけ額に小石が食いこむほどお願いされてるのになんなんだけど」 巴「何してるんですかー、もう時間ですよー」 小蒔「宮守のみなさんが待ってますよー」 初美「これから宮守の人達と海水浴なのでー」 春「それじゃあ」 京太郎「ちくしょおおおおおおおおお!!!」 咲「何してるの京ちゃん……ついて行って宮守の人達のおっぱいも見せてもらえばよかったのに」 京太郎「あのなあ、咲」 咲「何?」 京太郎「しつこい男は嫌われるだろう?」 咲「何をいまさら」 京太郎「さーて次は阿知g」 咲「ああ、阿知賀は駄目だよ? 和ちゃんの幼馴染がいるらしいし」 京太郎「マジか……なら白糸台だな」 咲「新道寺は?」 京太郎「お前分かってて聞いてるだろ……あそこはおっぱい担当いないだろうが」 咲「うん……でも白糸台はちょっと……」 京太郎「ん? どうして……ってそうか」 京太郎「白糸台にお前のお姉さんいるんだったな……」 咲「うん」 京太郎「さすがにそれは気まずいな。せめて咲とお姉さんが仲直りした後なら行きやすかったかもしれないけど」 咲「ごめんね京ちゃん」 京太郎「まあいいさ。今日はありがとうな、咲。こんな俺の我儘を手伝ってもらっちゃって」 咲「ううん、別にいいよ」 京太郎「何かお礼しないとなあ」 咲「それなら今日鶴賀の人達に持って行ったケーキ奢ってもらおうかな」 京太郎「了解です、姫」 咲「あはは、なんか懐かしいね、それ」 京太郎「だな。ははは」 京太郎「それでだな……咲」 咲「何、京ちゃん?」 京太郎「咲のおっぱいを! 俺に! 見せてください!」 咲「嫌」 おわり
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前話 まとめ それからの話を、俺、須賀京太郎がしようと思う 試合が終わったその時のことはあまりよく覚えていない 笑いながら泣いていたる部長、声をあげて泣いている優希と和、二人をなだめている染谷先輩 そして、画面の向こうで目を閉じて少しだけ微笑んでいる咲、みんなの顔だけは、よく覚えている 俺は咲を迎えに行った 対局室前で、 淡「テルーやったよ!!これでKちゃんゲット…え!?無い!?なんでー!?」 何か淡が白糸台の人達相手に騒いでいた アイツ、優勝して何が不満なんだ? 穏乃や臨海の大将も、え?みたいな顔をしていた気がするが……気のせいだろう とりあえず咲の手を引き、控え室に戻った 咲は堪えていたようだが、控え室に戻った途端、優希や和と泣いていた そして、清澄高校の団体戦は終わった インタビューやらなにやらあったが、適当に流して俺たちはホテルに帰った 久「優勝できなくてすっごく悔しいけど……すっごく楽しかったわ。まこ、それにみんな。後をお願いね」 そう言って部長、竹井先輩は染谷先輩を次の部長に任命し、個人戦の準備をすると言った お疲れ様です あなたがいたから、ここまで来ることができました ありがとうございます その数日後、個人戦は始まった 咲も和も気持ちを切り替えて個人戦に臨んでいるようで安心した しかし、とんでもないことが起きた 個人戦2日目の午後 チラホラ去年活躍した実力者なども出始めるこの日に 咲「えっと……よろしくお願いします」 照「……よろしくお願いします」 姉妹対決が実現してしまった なんでだよ! そう思ったのは確実に俺以外にいるだろう 最後の最後、全国1位を決める試合! そういうところで当たるべき二人だ 神様、いたらとんでもねーわ この二人をこんなところで当てるし 照「なんて言うか……こんなとこで当たると思わなかった」 咲「うん……私も」 照「でも……全力でいくからね?」 咲「私だって……負けないよ、お姉ちゃん!」 その日のどの試合よりも注目された試合になった 試合内容は……二人の選手が可哀想とも思える内容だった 最後に選手が一人飛んで僅差で照さんの勝ち、という結果で試合は終わった 飛んだ選手は全国的に見ても無名だったらしく、実力差は歴然だった 試合終了後、それ以降の試合は棄権したとか ただ、その卓にいたもう一人の選手は、直接の振込みそのものは無かったがツモで削られて3位という結果だった しかし、全国1位の宮永照 その妹で、自身より明らかに実力が上の宮永咲 その二人を相手に、最後まで諦めず、むしろ勝ってやろうという姿勢で打った彼女は、各所で活躍した選手達とまた違う意味で有名な選手となった 彼女はその後の試合も最後まで出場し、相手がどんな有名で、どんな強敵でも最後まで諦めずに打った 後に彼女はこう言っている やえ「諦める?最後まで勝ちにいかないニワカのような真似を私がやるわけないだろう!」 彼女のその姿勢は、王者のようだった その後の咲は、燃え尽きたのか照さんとの直接対決に満足したのか、それまでほど圧倒的な勝ち方じゃなかった それでも、相手が勝手に怯えたり、カタカタしたり、恭子の仇やーと燃えたりで、最終的な順位は21位だった 和は、相変わらずのデジタル打ちだった 団体戦の悔しさからか、今まで以上に早く『のどっち』になっていた しかしそれでも、全国の壁は高かった 個人戦最終日、和の相手は荒川憩さんに、辻垣内智葉さん、神代小蒔さんだった さすがの『のどっち』も、この実力者ととんでもないオカルトには敵わず、8位という結果に終わった 和「……そんなオカルトありえません」 戻ってきた第一声がそうだった 和はどこまで行っても変わらないな…… 個人戦の優勝はやっぱりというか、当然の如く照さんだった 優希「いや……アレ無理だって」 珍しく真面目な顔の優希がそう言う 優希「ドラ無しで私フルボッコだじぇ?ドラ縛りなけりゃーこうなるって。あんなんと渡り合った咲ちゃんが凄すぎるじょ」 うん、気持ちは分かるが照さんをアレとかあんなんとか言うのはやめろ? 麻雀以外なら無害かドジなお菓子好きの人だから あ、咲も似たようなもんだったな 優希「……なんで咲ちゃん21位なんだろ?」 本人のやる気の問題だな こうして個人戦も終わり、インターハイは幕を閉じた 閉会式で開会式の時のような視線を感じたが……どうでもいいか みんな知り合った何人かの人に挨拶をして回った 竹井先輩や和はマスコミのインタビューもあったようで忙しそうだった でも竹井先輩……挨拶の相手なんか多くないですか? 俺も一応知り合った人には挨拶をした やけに惜しまれたりまた連絡してと言ってくる人が多かった 煌「あなただけでなく、和や優希も、また会いましょうね」 姫子「れ、連絡待っとるけんね!」 哩「その……タコス、美味しかったよ。また、会ってくれる?」 桃子「帰りは別っすからねー。今度また合宿とかやるっすよ!」 ゆみ「全くモモは……ああ、私もその時はまた参加したいな」 穏乃「今度遊びに行くからね!」 憧「その……メール、するからね?」 玄「ぜひ!ぜひ長野のおもちを教えてね!!」 宥「あったかいあなたに会えてよかったよ」 灼「……こ、今度ボーリングでも」 エイスリン「……ハイ!」(海外の住所と連絡先とハートのイラスト) 塞「あはは……忙しくなるけど、連絡するね」 泉「えっと……今度ネト麻とか……」 セーラ「またな!あ、今度は打とうなー!」 怜「……ウチ病弱やから、こまめに連絡してな?病弱アピール?……連絡してほしいんはホンマやで?」 竜華「あんま話す機会も無かったけど……大阪に来た時は連絡してな?」 洋榎「大阪来たら連絡やで!え?これ言われたん2度目?……ウチを先にな!」 絹恵「お姉ちゃん、そこはうちだけって言えばええんちゃう?……あ、サッカーとか興味ある?近いうちに試合あるんがやけど…」 洋榎「絹!?絹が……絹が逆ナンしよるなんて……おかんと浩子に言ったるー!!」 絹恵「お姉ちゃん!?知ってる人相手でも逆ナンて言うん!?」 ダヴァン「東京とアメリカに来た時はぜひ連絡を!おいしいラーメンをご馳走シマス!」 明華「アメリカでラーメンはないと思いますよ。またお会いしましょうね」 ネリー「監督に頼むからさー、うちに来ない?」 智葉「引き抜くなっつったろ!!……ああ、前に言ってた件だが……大丈夫だ、そちらの部長とも連絡先は交換した近いうちにまた会おう」 ハオ「楽しみですね。また会えるのが」 憩「体は気ぃ付けてなーぁ」 やえ「うむ、体調管理は基本だからな!それを怠るようなニワカな真似はするなよ!……あ、Kちゃんってどうやったら買える?」 春「はい黒糖……また送る……」ニコッ 初美「はるるー?なんでそんな笑顔ですかー?あ、このお面どうぞー!……冗談ですよー?」 誠子「今度、長野に釣りに行くから、その時連絡するよ」 尭深「私も行くから……美味しいお茶、持っていくね?」 菫「その……約束、覚えているよな?ああ、必ず君に麻雀を教えるよ。うん、また」 淡「絶対絶対連絡してね!絶対の絶対だよ!!……私からも、絶対連絡するからね?」 照「夏休みの内に、一度長野に帰るから。うん……いろいろ難しいかもしれないけど、私と咲は大丈夫だから……また3人でね?」 みんないい人だ そこからはあっという間だった ホテルで荷物をまとめ、俺たちは長野に、清澄高校に帰った 清澄高校に帰った俺達を待っていたのは……多くの人達だった 久「え?……これ……」 副会長「お疲れ様です……えーっと……会長達が今日帰ってくるって聞いて……」 「会長!お疲れ様です!」 「準優勝とか……すごいです!」 「準優勝記念だ!学食のタコス割引だよ!!」 「おう!またラーメン食っていきな!金はいらねぇよ!腹一杯食ってけ!!」 マホ「先輩方お疲れ様です!全国大会、すごかったです!!もうすごくてすごくて!!それで……えと……」 裕子「落ち着けって……先輩方お疲れ様です。なんていうか……感動しました」 久「……もう……いらないって……言ったのに……」 竹井先輩の目が潤んでいたのは、見間違いじゃないと思う 後ろには、見覚えのある同級生から知らない上級生までいた おそらく先輩たちのクラスメイトや友人だろう 「お疲れ様!」 「会長すごいぜ!」 「まこー!今度お店行くねー!!」 「優希やるじゃん!」 「原村さんもすごかったよー!」 「宮永さん最後かっこよかったー!!」 「須賀帰れー!」 最後誰だコラ 久「もう……騒がないの!ああもう……お土産もっと買っとけばよかった……」 まこ「そうじゃな……おいおい、ウチの店の常連まで……どさくさまぎれてチラシ配りよる……」 しばらく騒がしそうですね 久「もう……やっと解放されたわ」 今は部室にいる あれからしばし揉みくちゃにされた 俺はどちらかと言うと叩かれまくったが 副会長とか全力だったな…… 久「さてと……賞状やらなんやらは部室でいいわね?」 まこ「ああ。また夏休み明けにいろいろあるじゃろうが……とりあえずは置いといていいじゃろ」 優希「それじゃあラーメン食べにいくじぇ!」 咲「うん。何人かは待ってるって言ってたよね?」 和「はい。あのお店に入る人数でしょうか……」 そう言いながら外に出て、ラーメン屋に向かう その途中、1台の車が俺達の近くに停まった 京太郎「ん?まだ待ってる人がいたのか?」 和「この車は……」 優希「……のどちゃん?」 車から、一人の男が降りてくる 咲「和ちゃん、知り合い?」 和「……父、です」 和は、震えていた 和父「……帰ってきたと聞いて、来てみたが」 和「その……今からみんなで夕飯を……」 和父「そうか……以前言ったことは覚えているな?」 和「……はい」 一体、なんなんだ? 親子というのに、和は今にも泣きだしそうな顔だった 和父「試合自体はテレビで見ていた……団体戦は準優勝で、個人戦で8位だそうだな」 和「……はい」 和父「……和」 和の肩がビクッっとなる 和父「……来年は頑張れよ」 和「……え?」 和父「荷物があるなら持っていこう。後で迎えに行くから連絡するようにな」 和「えっと……荷物は……ありますけど……え?」 和父「うむ……成績だけは落とさないように」 和「あ……はい!!」 和父「ではな。高校生だから、あまり遅くならないように」 和「あの……どうしてですか?」 和父「……何、頑張る娘を邪魔することを、やめようと思っただけだ」 そう言って和の父親は行ってしまった 久「邪魔って一体……和!?」 和は、泣いていた 優希「ど、どどうした!?何があったんだじぇ!?」 まこ「お前さんの親父のせいか!?成績とか、いったいなんなんじゃ!?」 咲「その……お父さんと、喧嘩?」 和「いえ……違います」 和は、泣きながら、嬉しそうに言った 和「……麻雀を続けていいということが……嬉しくて……」 後で、和と父親がしていた約束を聞いた 色々と思うことはあるが……良かったな、和 そして、数日が過ぎた 京太郎「咲……」 咲「……何?」 京太郎「頼む……お前にしか頼めないんだ」 咲「京ちゃん……でも……」 京太郎「俺にはお前しかいないんだ!!」 咲「……京ちゃん」 咲「……さすがに夏休みの宿題を丸写しはできないよ」 京太郎「頼むよー!!お前にしか頼めないことなんだよー!!」 俺は咲の家に居た 理由はにっくき夏休みの宿題だ 東京やらなんやら行ってる間、まっさらなままだったブツである これを残り数日で仕上げるなど、不可能だった 咲「なんで私なの?」 京太郎「先輩たちは忙しそうだし、和はこういうこと許さないだろ。優希は論外」 咲「京ちゃん、友達結構多い方だよね?」 京太郎「野郎共は全員爆ぜろだのもげろだのお前ばっかりだの言って無理だった」 俺が何をしたというんだ! そんな爆ぜたりもげたりするようなことやってないっての!! この夏は知り合いこそ増えたが東京でやったのは雑用ばっかりだ あいつらが羨ましがるようなことは一切やってない!! 咲「……なんとなくその男の子たちが言いたいこと分かる気がするなー」 お前までそう言うなよ! 京太郎「頼む!お前の言うことを何でも聞いてやるから!!」 咲「…………」 アレ?失敗した? そういえば決勝の時も言ってたけど、あの時は結局無しになった訳だし 京太郎「あの……咲?」 咲「しょうがないな、京ちゃんは」 咲はやれやれといった感じだった なんか、口元が緩みそうになってるぞ? おい、俺に何させる気が 今月のこずかいそんなに残ってねーぞ 咲「でも教えるだけ。いいよね?」 京太郎「ああ。それでも十分助かるけど、今日だけじゃ終わらねーぞ?」 咲「終わるまで付き合ってあげるからね」 持つべきものは優しい幼馴染だ…… 京太郎「それはそうと、俺に何させる気だ?」 咲「……あ、今日はあんまりできないよ?」 無視かよ 咲「お姉ちゃんが帰ってくるって言ってたし」 京太郎「照さんが?」 咲「ちょうどいいからこのまま会って…」 その時に咲の携帯電話が鳴った 咲「わっ!え、えっと……お姉ちゃんからだ」 照『もしもし咲?』 咲「お姉ちゃん?」 照『今駅に着いたけど……この辺り少し変わった?』 咲「あんまり変わってないけど……」 照『……見覚えが無い景色だけど』 咲「……駅まで行こうか?」 照『……うん』 電話が終わる おそらく相手は照さんで、駅まで行くという内容か 京太郎「俺も行こうか?照さんの荷物持ちくらいはできるぜ?」 後、迷子二人の保護者とか 咲「うん、それじゃ宿題は私の部屋に置いておく?京ちゃんもお姉ちゃんに会っていけばいいし」 京太郎「ああ、そうさせてもらうよ」 そのまま咲の部屋に行く 高校入ってからは初めてだがあんまり変わってねーな 咲「じゃ、その辺りに置いて」 京太郎「おう」 その時、咲の机の上にあるものに気付いた 京太郎「Kちゃんぬいぐるみ?」 それは俺が咲にあげた、正真正銘、最初に作られたKちゃんぬいぐるみだった 思えば、こいつがあったから全国でもいろいろな人と知り合えたんだよな 咲「あ……それ……」 京太郎「なんか懐かしいな」 咲「うん……大事にしてる」 京太郎「こいつができたのもちょっとしたきっかけだったのにな」 正直ただの思いつきで言ったらできて、何故か売れた『Kちゃんぬいぐるみ』 そういえば今度『ハギヨシぬいぐるみ』も発売するとか言ってたっけ 京太郎「……こいつのおかげとも言えるな」 全国で、いろいろな人と知り合えたのは 咲「京ちゃん?」 京太郎「ああ悪い。今行く」 咲の部屋を出る間際、振り返り、もう一度Kちゃんぬいぐるみを見る 気のせいかもしれないが、Kちゃんぬいぐるみが笑っていた気がした カンッ!! 前話 まとめ 名前 コメント