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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1359734281/ 外では氷雨のように冷たい雨が降っている。 雨に濡れて弱った子猫の声が聞こえる。 ミーミーと、か細く弱い声で鳴いている。 その鳴く子猫を抱いた子供が父親に必死に頼み込んでいる。 厳格な父親に対して泣きそうな顔をしながら頼み込んでいる。 『あ、あのこの子を飼っちゃダメですか……』 『……家は飼えない事をわかっているだろう、元居た場所に返してきなさい……』 『で、でも、この子弱っていて放っておいたら死んじゃうかも……』 『…………元気になるまでの間だけだ、そのあとは飼ってくれる人を探そう。』 『はい! ありがとうございますお父さん!』 懐かしい夢だ、今は離れ離れになってしまったがあの子は元気だろうか。 顔を洗い、着替えて、財布と携帯とイニシャルが入ったハンカチを持って部屋をでる。 ホテルの食堂に着くとみんなが待っていた。 優希「犬ー!おそいじぇ!」プンスコ 京太郎「だー! 抱きつくな! あと犬じゃねぇっての!」アタフタ 和「そうですよゆーき、人を犬扱いしては失礼です。」 みんな各々食べたいものを注文をして持ってくる。 席に着いた面々が手を合わせてから食べていた。 優希「やっぱりタコスは出来たてが美味いじぇ~。」 京太郎「ああもう、口の周りに食べかす付いてんぞ。」 京太郎「待ってろ、今ハンカチで……あれ、どこにしまったかな……」 優希「ハンカチなら犬のポケットから出てあるじょ。」ヒョイ 「触んな!!」 優希「ヒッ!?」ビクッ 京太郎「あ……悪ぃ、それすごい大切な物なんだ。」 優希「まったくびっくりしたじぇ……そんなに大切なものってことは誰かに貰ったものなのか?」 京太郎「……ああ、すごく大切な人から貰ったんだ。」 彼は少し安堵したような顔をした後ハンカチをポケットにしまいました。 それを横目に見ながら食事をしていると私に声が掛けられます。 「和ー!」 京太郎「あ……」 和「あれ、穏乃……どうしたんですか?」 穏乃「和をさっき見掛けたから多分ここにいるだろうと思って。」 和「そうだったんですか。」 京太郎「…………」ジー 穏乃「ん? 君、どこかで会いましたっけ?」 京太郎「いえ……」 穏乃「んー? どっかで会ってる気がするんだけどなー……」 憧「ちょっと! シズ!」 京太郎「!?!?」ガタタン 優希「どうしたんだじょ? まるで突然天敵にあった小動物のような反応だじぇ。」 京太郎「い、いや、なんでもないよ?」 優希「声が上擦ってるじょ……」 京太郎「そうか?」オドオド 憧「えっと、どうかしたの?」 京太郎「ななんでもないです!」ジリジリ 憧「なんでもないって感じじゃないわよ……しかもあんたさっきから少しずつあたしから距離取ろうとしてるわよね?」 穏乃「……私の友達がなんかしたの?」 京太郎「アコは関係ないよ!?」 憧「あれ、あたし名乗ったっけ?」 京太郎「え、えっとインターハイの出場選手だから知っててもおかしくないでしょう?」 和「まぁ、確かにそうですが……それにしてもさっきから挙動がおかしいです。」 京太郎「そ、そうかな?」オドオド 和「……今の須賀君、初めて優希と会った時みたいな態度ですよ?」 優希「ああ、そういえばそうだじぇ。」 優希「犬と初めて会った時、鳩が豆鉄砲食らったような顔したあとやたらキョドってたじょ。」 京太郎「あ、いやだって、それは……」 憧「……ま、いいや。」 京太郎「あぶねぇ……」 それからしばらく穏乃や憧と食事をしながら会話をしていました。 須賀君がやたら憧にビクビクしていたように思います。 憧「そろそろあたしたちは行くわね。」 穏乃「じゃあね、和。」 和「ではまた。」 優希「あれ? 咲ちゃんがいないじょ……」 和「確か先ほどお手洗いに立って……」 京太郎「……まさか。」 優希「多分そのまさかだと思うじぇ……」 京太郎「……探しに行って来ます。」 和「私も行きます……」 溜め息混じりに席を立った須賀君に続き、私も咲さん捜索の為に付いていく。 お手洗いに続く道を歩く途中なにやら須賀君が行動を起こしていました。 須賀君は少ししゃがんで頻りに辺りを見回しています。 和「何をしているんですか?」 京太郎「ん? ちょっと咲の痕跡を探しているんだ。」 和「痕跡? そんなものがどこにあるんですか……」 和「それにしても咲さんは一体どこへ……」 京太郎「……こっちだ。」 和「わかるんですか?」 京太郎「ああ、咲はこっちを歩いていった。」 和「一体どうやって……」 京太郎「付き合い長いからな。」 須賀君が辺り見回しながら咲さん歩いた道を辿るように右へ、左へとうねうね曲がりながら進んでいく。 一体こんな事で咲さんが見つかるのでしょうか。 暫く歩くと見覚えのあるシルエットが見えました。 それはこちらに気付くと今にも泣きそうだった顔を明るくさせてこちらに駆け寄ってきました。 咲「京ちゃん! 和ちゃん!」 京太郎「また迷いやがって……世話掛けさせんなよ……」 咲「ごめんね……」 咲さんに悪態を吐きながら頭をぽんぽんと触る須賀君。 そんな素振り見せないですが、心配していたのを隠すようでした。 傍から見れば結構過保護な気がします。 そんな事に気付いたら不思議と口角があがっていました。 和「うふふ、でも見つかってよかったですね。」 咲「うんうん、ちょっと迷った程度で大騒ぎしすぎなんだよ京ちゃんは。」 京太郎「おう、言うねーさっきまで泣きそうな顔をしてたやつが。」 咲「さ、戻ろうか。」 京太郎「迷った奴が仕切るな。」ポンッ 咲「あいた。」 戻る途中、近道に公園を通ると先ほどまで一緒に居た憧が木の前で右往左往していました。 一体憧は何を…… 和「あれは……」 京太郎「げっ!?アコ!……」 憧「ん? 和たちか……『げっ』て、なによ失礼ね……」 咲「どうかしたんですか?」 憧「うん、ちょっと木の上に猫ちゃんがね……」 見上げると確かに木の上に子猫が居ました。 どうやら登ったいいけど降りられなくなったようです。 京太郎「……ん、ちょっと待ってろ。」 京太郎「よっと。」 彼はそういうと木の下に行き、屈んだと思ったら身体を伸ばし、ピョンと跳ねました。 跳躍したと思ったら彼は木に掴まりスイスイと登っていく。 子猫が居る枝まであっさり辿り着き、そして手を差し伸べ子猫に声を掛ける。 京太郎「おいで、怖くないよ。」 子猫「ニャン。」ピョン 憧「猫が素直ね……」 咲「京ちゃんは動物の気持ちがわかるんですよ、カピバラとかも飼ってるからかな?」 憧「へぇ~人は見かけによらないもんね。」 京太郎「よし、降りるぞ。」 枝に手を掛け、そこから着地して子猫を放してあげる。 彼の身軽さを見た憧が感心するように言葉を漏らしていました。 憧「あんたまるで忍者みたいね、木登りも上手いし。」 京太郎「山生まれの山育ちだからな。」 咲「お猿さんみたいだよね。」 京太郎「咲はいつも一言余計だ。」 子猫「にゃん♪」スリスリ 憧「あんたに感謝してるみたいね。」 咲「京ちゃん猫には好かれるよね、猫には。」 京太郎「『には』は余計だ。」 憧「いいな~あたしも動物に好かれたいわよ……」 京太郎「無理に近づかなきゃいいんじゃないですかね。」 憧「……あんた適当に言ってるでしょ?」 京太郎「いーえ、別に。」 憧「まぁいいわ、猫に好かれる秘訣は今度聞くもの。」 憧「それじゃあね、和。」 和「それでは。」 憧と別れたあと、咲さんを無事送り届けました。 そのあと須賀君に今までの不可解な行動について聞こうとしました、買出しがあると言われて上手く逃げられてしまいましたが。 私は子猫で思い出し、エトペンの身体の脇を見る、そこには動物の爪痕を縫ったあとがありました。 外に出て歩く少し気分を変えたくて。 エトペンを抱えたまま昔の事を思い出す。 奈良に居た時の事。 別れ際にとあるものを渡した事。 そんな事を考えていたら人とぶつかってしまいました。 ドンッ 「きゃ!? すみません……」 人とぶつかりふらついてしまう。 その際大事なエトペンを落としてしまった。 「あ、エトペンが……」 転がっていくエトペンを追いかけて拾いに行く。 転がるエトペンを漸く拾えました。 ですがそこは車道、ここで私は周りに碌な注意を払わず飛び出していたことに気付く。 車道に飛び出した私に向かってくる車。 注意を払わなかった代償は身を危険にすることで払ってしまうことになる。 『注意一秒、怪我一生』とはよく言ったものです。 徐々に迫る車に意識を向けた私の視点が傾く。 そしてその少し前には声と衝撃が…… 「のどか! 危ない!」 聞き覚えのある男の人の声が聞こえた瞬間、私の身体は突き飛ばされる。 振り返った時に見たその金色の頭髪が、私が先ほどまで居たところに立っていました。 勿論、その位置に向かって来る車も彼を狙うかのように…… 彼は車に視線を向けた瞬間硬直して動けていなかった。 車は無慈悲にも彼に食らい着こうとしている。 私はその刹那、恐怖で目を瞑ってしまった。 甲高いブレーキの音。 人のざわめき。 車のドアが開く音。 運転手のうろたえる声。 が、いつまで待っても、どこにも人を撥ねた音はしなかった。 「さっき男の子轢いてしまったと思ったのに……!」 「いないんだ、居ないんだよ! さっきの男の子が!」 私は恐る恐る目を開き確かめてみる。 確かに彼は居ませんでした。 ただ、およそ彼がそこに居たであろう場所には制服が落ちていました。 私は、その制服を手に取り、周りを探しました。 明らかに異様な状況にも関わらず、辺りに彼が居るのではないかと思って…… ですが、結論から言うと見つかりませんでした。 私は手に持った制服を見ながら考える。 ポケットには携帯と、財布と、彼の宝物のハンカチが入っていました。 彼の宝物という事が気になってハンカチを調べてみる。 そしてとあることに気付く。 和「これ、は……」 ハンカチにはN.Hと刺繍が入っていました。 これは昔、私があの子に渡したもの…… あの子とはもう数年会っていない。 彼はあの子となにか関わりがあったのでしょうか…… それに関して知っていそうな友人に聞いてみることにしてみました。 それは前に預かっていてくれた友人。 憧「あれ? 和、どうしたの?」 和「すいません、穏乃にどうしても聞きたいことが。」 穏乃「何でも聞いていいよ。」 和「……あの子……穏乃に預かってもらったひょうちゃんに関してです。」 憧「ひょうちゃん? 確か穏乃が預かっていたあのこだよね?」 憧「しかも穏乃が名付け親だったから結構懐いてた。」 和「そうです、そのひょうちゃんです。」 穏乃「……うん、わかった。」 穏乃「あの子を和から預かった日からひょうちゃんはずっと大人しかったんだ。」 穏乃「まさに借りてきた猫状態だったよ……」 穏乃「家のお店においても大人しいし、みんなから愛されてたんだ、みんなに撫でられて、お店の看板招き猫だって。」 穏乃「和から貰ったハンカチ、首に着けて凄く大事そうにしてた。」 穏乃「ひょうちゃんはよく店の窓から外を見てたよ、誰かが道を通るたびに視線をずらしてた。」 穏乃「今思えば和が来るのをずっと待ってたんだね……」 穏乃「気分転換に散歩とか連れて行ったけどよく辺りを気にしていた、というより匂いを嗅いでいたんだ。」 穏乃「それからひょうちゃんはさ、和が引っ越したあともちょくちょく和が居た家に行ってた。」 穏乃「なんどもなんども行くから、その度にかわいそう思えてさ……私、思わず言っちゃったんだ……」 穏乃「『そこにはもう、和はいないんだよ。』って……」 穏乃「それから少ししてひょうちゃんはいなくなった……」 穏乃「最初は散歩にでも行ったのかなって……お腹空いたら戻ってくるかなって……」 穏乃「でも……ひょうちゃんは帰ってこなかった……」 穏乃「私が……和はもういないって言ったから……探しに行っちゃったんだって思って。」 穏乃「きっと、私のせいだって……」 穏乃の声が震えていた、目尻には薄っすらと涙も…… 穏乃はあの子がいなくなったことが気懸かりだったんですね…… 穏乃「もしかしたら無事、和のところに行ったのかもって思ったけど……和の連絡先も知らなかったし……」 和「穏乃、ありがとう、話してくれて……」 穏乃「うん、今までちょっと言いづらくてさ……」 和「そう、ですか。」 穏乃「何でまた今になって?」 和「もしかしたらですが、ひょうちゃんと会えるかもしれないんです。」 憧「嘘!?」 穏乃「ホント!?」 和「もしかしたらですが……」 憧「あ~! あの子もっかいモフモフしたい~!」ワキワキ 穏乃「憧は動物好きだもんね。」 憧「部屋にはぬいぐるみや飼育本があるくらい好きよ。」 和「もし会えたなら憧も触れるかも知れませんね。」 憧「そのときはよろしくね。」 穏乃達と別れてホテルに戻りました。 そして、彼の部屋へと向かい、ドアをノックします。 中から返事を待つとドアが開きました。 彼は私を見ると少しほっとしたような顔をしていました。 京太郎「和……」 和「先ほどは助けていただいてありがとうございました。」 京太郎「いや……それは……」 和「聞きたい事があるので、中に入ってもいいですか?」 京太郎「……ああ。」 中に入ると荷物を整理している様子でした。 多分、服を漁っていたのでしょう。 彼は着ていた物を置いて事故現場から消えたのですから。 和「これをお返しします。」 京太郎「……こりゃ、どうも。」 和「ところでこのハンカチについてお聞きしたいのですが……」 京太郎「ああ、それがどうしたんだ?」 和「優希がこれに触った時、須賀君は大事な宝物だと言いましたよね?」 京太郎「ああ、そうだよ。」 和「実はこれ、私が奈良から引越しする際にある子に渡したものなんです。」 和「貴方が持っていたということは、貴方はひょうちゃんについて知ってますよね?」 京太郎「……もっと直接言ったらどうだ?」 和「……では単刀直入に言います。」 和「須賀君は、ひょうちゃんなんですよね?」 京太郎「……なんでそう思うんだ?」 京太郎「いつもの和なら『そんなオカルトありえません』って否定するだろ?」 和「……そうですね、でも貴方は嘘は吐かないと思います。」 京太郎「人は猫には化けないだろ。」 和「語るに落ちていますよ、『ひょうちゃんが猫』だなんて私は一言も言っていません。」 京太郎「……はぁ。」 京太郎「俺はもう和が知ってる『ひょうちゃん』じゃないぜ?」 京太郎「元の姿が可愛くなくても文句言うなよ。」 和「構いませんよ。」 私がそう言うと須賀君……いえ、"ひょうちゃん"はみるみるサイズを変えて猫に変わっていきました。 体長約90センチの身体に40~50センチはある長い尻尾。 まるでジャガーや豹のような短い毛の文様。 小さい頃の記憶とは違いますが間違いなく"ひょうちゃん"でした。 「びっくりした?」 和「驚いてはいますがそれよりも嬉しいです。」 和「昔はあれだけ小さくて弱々しかったのに……」 「そうか、やっぱり昔からのどかなんだな。」 和「? どういう意味ですか?」 「そのままの意味だよ、昔からその優しさは変わっていない。」 「昔から人間っていうのは匂いが変わらないな。」 和「もしかして憧のことですか?」 「ああ……うん、あいつは無茶苦茶にしてくるから苦手だ。」 和「うふふ、憧は動物が好きですからね。」 「それはわかってはいるんだけどな。」 「一体幾つの仲間が魔王アコの犠牲になったのやら……」 「まぁアコも成長して少しは大人しくなったのかな?」 和「……聞いても良いですか?」 「なんだ?」 和「その……ひょうちゃんが須賀君になった理由とか。」 「……俺さ、のどかが居なくなった日から探していたんだ。」 「家まで匂いを辿って。」 「その時はシズノも一緒にいたけどさ。」 「何度も行くとシズノが寂しそうに教えてくれたよ。」 「『のどかはもういない』って。」 和「ええ、知っています、聞きましたから。」 「でさ、俺さ、思っちまったんだ。」 「捨てられたんじゃないかって。」 和「!……」 「もしかしたら何かの間違いじゃないかとも思ったけど、仲間の猫も捨てられた奴がいたんだ。」 「家猫だったけど、もう飼えなくなったから捨てられたんだって……そいつは言ってた。」 「でも、俺は諦め切れなかった、認めたくなかった。」 「のどかに捨てられた事に、どうしても思い出を忘れられなかった。」 「のどかの匂いも、初めて抱いてもらった時の温かさも、忘れられなかった……」 「だから俺はのどかを追いかけたんだ、シズノや可愛がってもらった周りには申し訳なかったけど。」 「長かったよ、のどかを捜す旅路は……」 「烏や野生動物に襲われたりもした。」 「悪ガキにも追いかけられたこともあった。」 「宛てがわからない旅に疲れて、疲れきって、倒れて、 もう死ぬんだろうなって思ったときさ……俺を助けてくれた老夫婦がいたんだ。」 「倒れてから何時の間にか俺は人っぽいの身体になっていた、 そんな事どうでもよかったけど……須賀さん……俺を拾ってくれた人だが。」 「爺ちゃん婆ちゃんは必死に介抱してくれたんだ、どこの生き物かわからないような俺を。」 「優しい人たちで今でも感謝してるんだ。」 「介抱してもらったときに名乗ったんだけどさ、俺餓死寸前だったし、 なにより人の言葉を喋ったの初めてだったから上手く言えなかったんだ。」 「ちゃんとシズノが付けてくれた『豹太郎』って言う強そうな名前を貰ったのにな……」 「それから京太郎って名前になっちまったよ。」 「そのあと学校にも通わせてもらってさ。」 「咲にあったのもそこらからかな。」 「これが俺が人間っぽくなるまでのそして須賀を名乗る話だ。」 和「そうだったんですか……」 「助けてもらった爺ちゃんや婆ちゃんに恩返ししたかったから、のどかを捜すのを辞めて一緒に住んでたんだ。」 「でも、高校に入ってから懐かしい匂いがしてその匂いを辿っていくと麻雀部に行き着いたんだ。」 「ドアを開けると……のどかがいた。」 「嬉しかったよ、でも俺は名乗れなかった、昔とは違う姿だったから。」 「ついでに小さい頃のアコに似た女が居てびびったぜ?」 和「優希は確かに小さい頃の憧に似ていますからね。」 「まぁ匂いで違う人間だってわかったけど中々なぁ……」 和「そんなに憧が苦手だったんですか?」 「俺を捕まえて無茶苦茶撫でてくるじゃん……」 「禿げるかと思ったよ。」 「あいつは動物好きにも程があるよ。」 和「うふふ、そうですか、憧の猫可愛がり困ったものですね、憧にはちゃんと言っておきますよ。」 「なぁ、のどか。」 和「はい?」 「ちょっとだけ甘えて良いか?」 和「ええ。」 私はベッドに腰掛、ひょうちゃんは私の膝の上に乗ってくる。 撫でて上げるとゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らしています。 スリスリと頭を擦り付ける動作。 まるで昔に戻ったようでした。 「ありがとう、元気が出たよ。」 和「いえお安い御用ですよ。」 「あとさ……のどか、一応言っておきたかったんだけど……」 和「はい?」 「実はさ、前々からこの姿を見せたら俺、姿を消そうと思っていたんだ。」 和「そんな……」 「わかるだろ……俺はのどか達とは違う、人じゃない……かといってただの猫でもないんだ。」 「文字通り住む世界が違う。」 「……それじゃあな。」 和「ひょうちゃん!」 追えば彼は逃げるでしょう。 本気で逃げたら人の足では追いつけない。 それほどに私たちには隔たりがあり、埋められない溝がある。 それでも私は…… 追わなくては……今追わないと一生後悔すると思い、私は部屋を飛び出していた。 公園近くを猫が一匹、色々と思い悩みながらトボトボと歩いている。 (どうすっかな……爺ちゃん婆ちゃんにも会わないといけないし……) 「あ、猫ちゃん!」 (あ!? この声にこの匂いは!?) 憧「あんたあの子に似て可愛いわね~」ワキワキ 憧「ほれほれおいで~」 (猫じゃらしだと? へ、甘く見られたもんだぜ。) 憧「ほらほら~」 (散っていった多くの仲間の為にもこんな奴に屈してたまるか!) (絶対猫じゃらしなんかに負けたりしない!!)キッ 「にゃ~ん♪」 憧「やっぱりこれを使うとイチコロね~。」 (本能には勝てなかったよ……) (てかマタタビは反則だろ!) 憧「もしかして和が言ってたアレってこの子のことかしら?」 (!? まずい!) 憧「ちょっと和に連絡取るから大人しくしててね、猫ちゃん。」 (和に居場所バレるのはまずいって!) (何とか逃げないと……) 憧「うりうり~猫ちゃんは大人しくマタタビを嗅いでなさ~い。」 (くやしい…!でも…嗅いじゃう!)ビクンビクン 和「ありがとうございます。」 憧「いいのいいの、すっかりこっちも楽しませてもらっちゃったし。」ツヤツヤ (お婿にいけない身体にされてしまった……)シクシク 憧「で、やっぱりこの子ってひょうちゃんなの?」 和「ええ、ですから再び会えたのが嬉しいんです。」 和「それなのに逃げ出してしまって……」 和「でも、もう逃がしません。」 和「首に縄を付けてでも一緒に帰ります。」 憧「そう、ならまたあたしにも触らしてよね。」 和「うふふ、ええ構いません、ひょうちゃんが嫌がらない程度でしたら。」 憧「うん、和なら言ってくれると思った……あ、シズにも伝えなきゃ。」 和「きっと喜びます、穏乃もこの子も。」 憧「じゃあ、あたしシズに伝えてくるわね~。」タタタタッ 和「……もう、逃げないでくださいね?」 「でもさ、俺は人間でも猫でもないんだぜ?」 和「そんなのどうでもいいです。」 「……俺の意思は?」 和「そんなの知りません。」 「結構、のどかって頑固だよな……」 和「頑固で結構です。」 「ま、そのおかげで俺は生きてるんだけどさ……」 和「さぁ、帰りましょう、みんなが待ってます。」 和「あと人の姿格好で匂いを嗅がないでくださいよ? 怪しまれますから。」 「え、バレてた? さりげなくやってたつもりなんだけどな……」 和「気付く人は気付きますよ、猫だってバレないのが不思議です。」 「いやいや、目の前で変わらないかぎり大丈夫だろ。」 和「色々猫とバレ無いように特訓しないとですね。」 「麻雀の特訓の方が有意義だと思うんだけどなー……」 和「ほらほら~」 京太郎「…………」 優希「咲ちゃん、犬の奴、のどちゃんと何してるんだじぇ?」 咲「さぁ……猫じゃらしを目の前で揺らして何やってるんだろうね……」 京太郎「……んにゃー。」 優希・咲「え?」 和「ちょっ!?」 京太郎「す、すまん……何とか誤魔化してくれ……」ボソボソ 和「お、お前ネコかよー!?」 京太郎「ん、ンアーッ!」 和「無理矢理すぎませんか……」 京太郎「大丈夫、あの二人ならこれで誤魔化せると思う……そんな気がする……」 咲「京ちゃんがおかしい……」 優希「のどちゃんもおかしいじぇ……」 和「…………」 京太郎「……すまん。」 和「これからも頑張りましょう……」 京太郎「ああ、そうする……」 カンッ!
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しゃべるKちゃんぬいぐるみ新道寺編の続きです 哩「明日は試合も無かし、次まで日もあるけん、1日自由行動ね」 姫子「はい」 姫子(そう、明日。やっと、やっとこん時になった!) 姫子「♪」 哩「……?」 姫子(前の喋るKちゃんの時に聞いた番号。完全には聞きとれんかったけど、なんとなくで番号入れたら) 京太郎「もしもし?どちら様ですか?」 姫子「あ。え、えっと……Kちゃんですか!?」 京太郎「?まあ、ある意味そうですけど」 姫子(偶然かもしれんけど、繋がった) 姫子(そんで、なんだかんだで仲良ぉなって、明日会うことになっとる) 姫子「……楽しみ♪」 姫子(どこ行こっかな……年上やけん、リードとかせやんかな……ああ、楽しみすぎるね) 姫子「……早すぎたかな」30分前 姫子「いや、待ってる内もデートっちゅうし……デート」 姫子「うわ、今さら恥ずかしくなってきたぁ……」 京太郎「あ、すいません。待たせました?」 姫子「ひゃいっ!」 京太郎「おわっ!」 姫子「あ……京太郎くん」 京太郎「やっぱり待たせましたか?姫子さん」 姫子「や、大丈夫大丈夫……でも、30分前よ?」 京太郎「姫子さんもいるじゃないですか」 姫子「……そうやったね」 京太郎「じゃ、行きましょうか」 姫子「うん」 哩「姫子……まさかデートやったとか……」 煌「……部長、頼まれたんで来ましたけど、これ以上はやめません?すばらくないですよ」 哩「花田……姫子のデートの相手、Kちゃんやけど」 煌「……いや、でも2人の邪魔をするなんて……いやでも…」 哩「お、移動しよったぞ。はよ行かんと」 煌「あ、待って下さい」 姫子「で、ここがパフェがおいしかとよ」 京太郎「へえ、いいお店ですね」 姫子「やろ?じゃ、入ろか」 ガチャ 店員「おめでとうございます!」 姫子「へ?」 京太郎「え?」 店員「お客様でちょうど当店に来店した1000組目のカップルです!なので、カップルメニューを無料で提供させていただきます!」 京太郎「いや、別にカップルって訳じゃ…」 恒子「はい!記念すべきカップルにインタビューでーす!え?お前何やってる?固いこと言うなってー」 姫子「これは、行くしかなかよ」 京太郎「は、はぁ」 姫子(少し驚いたけど、概ね問題無し!むしろありがとう!) 店員「では、お席はこちらになります」 恒子「あ、私もちょっとだけ同席するねー?インタビュー終わったらイチャついていいから」 姫子「い、イチャつくって……」顔真っ赤 恒子「ほほう、良い反応を。これはインタビューも期待できそうだね!」 店員「こちら、カップル用パフェです。ごゆっくりどうぞ」 京太郎「アレ?スプーンがひとつしかないですよ?」 姫子「忘れたんですか?」 恒子「そりゃーカップルだし?ひとつのスプーンで食べさせあおうか!」 京太郎「え!?そ、それはちょっと……」 姫子「……はい、あーん」 京太郎「姫子さん!?」 姫子「ひょっとして、私からとかいややった?」 京太郎「……あーん」 姫子「!……はい」 京太郎「……甘いです」 姫子「じゃ、じゃあ次は……」 恒子「はいはい、イチャつくのは構わないけど、インタビューに答えてね?」 京太郎「あ、はい」 姫子「……後でお願いね?」 恒子「ではまず…」 哩「あーんって……あーんって……」 煌「部長、落ち着いて下さい。カップ持ってる手震えすぎです」 哩「……羨ましか」 煌「……何が目的で尾行してるか分からなくなってきましたよ」 恒子「なるほどねー。ありがとう!じゃ、ゆっくりイチャついてねー!」 姫子「い、イチャつくって……もう!」 京太郎「遠距離で付き合って1年目、とかよく思い付きましたね」 姫子「ん?電話でやけど、出会ってそのくらいやし?嘘っちゅう訳じゃなかよ」 京太郎「なるほど。はい、あーん」 姫子「あ、あーん……ん、おいしか」 京太郎「東京は露天みたいなのが多いですねー」 姫子「賑やかやしね。あ、このネックレスかわいかー」 男「おや、可愛い嬢ちゃん、彼氏とデートかい?」 姫子「そ、そがんこつ……えへへ」 男「羨ましいねー。これ負けとくよ?」 姫子「うーん。でも少し高か……」 京太郎「じゃ、俺が払うんでそれ下さい」 姫子「え!?」 男「お、にいちゃんかっこいいねー」 姫子「そ、そんな悪かよ!それに、私のが年上やし!」 京太郎「年は関係ないですよ。それに、俺が姫子さんにプレゼントしたいから買ったんです。受け取ってもらえませんか?」 姫子「うー……そん言い方はずるかよ……」 京太郎「まぁ、今日の記念ですよ」 哩「なんよあのイケメン……」 煌「そんな記念の日にこんなことしてるなんて……すばらくないですよ」 哩「言うな……」 京太郎「で、その時ですね…」 姫子「本当に?そんなん…」 ポツッ 姫子「うん?」 ポツッポツッ 京太郎「雨ですかね」 姫子「そういやにわか雨があるかもって天気予報で…」 ザーッ 京太郎「にわか雨にしちゃ降りすぎですよ!」 姫子「あそこ!あそこの屋根あっとこまで!」 京太郎「はい!」ギュッ 姫子「へ?ちょ、なんで手を…」 京太郎「走りますよ!」 哩「や、やばっ!見失う!」 煌「こ、これはもう尾行どころじゃないですよ!」 哩「くっ……花田!退くばい!」 煌「了解です!」 京太郎「ふー。ここなら大丈夫ですね」 姫子「……手、握られて……もう」 京太郎「大丈夫で……!」目逸らし 姫子「どしたと?」 京太郎「その……透けてます」 姫子「!!」 姫子(こ、こんな時に限って黒い下着とか!え、えっちに見えんかったよね?) 京太郎(く、黒だった……ばっちり見てしまった……) 姫子(ど、どうしよ……顔見れん……) 京太郎「……あ。晴れて、虹が……」 姫子「あ……きれー」 京太郎「……今日、来てよかったですね」 姫子「……うん、良かったよ」 姫子(結局あのまま解散になった……京太郎くんの上着借りたけん、他の人には見えんかったと思うけど) 姫子(京太郎くんやったら、別に……) 姫子(!!何考えよっと!?別に付き合っとる訳でもなかし……) 美子「あ、おかえり」 姫子「ただいま帰りました」 仁美「うわ、濡れとるね。部長と花田も濡れた帰ってきたけん、風呂行ったよ」 美子「うん。姫子ちゃんもはよ行った方がよかよ」 姫子「そうします」 テレビ『それでは今日のインタビューは、新道寺のダブルエースの1人!鶴田姫子さんです!!』 3人「!?」 恒子『彼氏とデート?いやー羨ましいねー付き合ってどれくらい?』 姫子『えっと……まだ1年目です。私達、遠距離で…』 美子「そういえば、今日出かけたとって……」 仁美「今見てみれば、男物の上着……」 姫子「えーっと……風呂行ってきます!」 美子・仁美「逃げた」 哩「残念ながら」 煌「逃がしません」 姫子「あ……いや、アレは、その……違うんですー!!」 その年の大会では、姫子は彼氏のいない女子高生雀士と打つ時、非常によく狙われたらしい
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(準決勝・実況席) 恒子「さぁ、準決勝先鋒戦前半戦もいよいよ大詰め、オーラスを迎えました! ここまで下馬評通り宮永選手の圧倒的リードで進んでおります」 恒子「対して新道寺、かなり大きなマイナスを背負っています。これは苦しいか!」 健夜「さすが宮永選手、だね。おととしよりも去年、去年よりも今年、着実に進化してる」 照『リーチ』 123s4567778p發發發 恒子「おぉっと! オーラスで駄目押しのダブリーが入った!」 健夜「しかも4面張。豪快なフィニッシュになりそうだね」 煌『……』 『煌手牌』 125m289s23369p東南 ツモ南 ドラ4s 健夜「うーん、これはもしかしたら新道寺の子から出ちゃうかもね。手なりで打つなら9筒が不要牌だし」 恒子「なるほどー。さすがプロ生活20年ともなればそれぐらいの予想はお手の物だね」 健夜「だからアラフォーじゃ……って、ずいぶん長考だね」 恒子「まぁねー。これだけ点数取られた状況でダブリーかかっちゃ無理もないか」 健夜「俯いて……ちょっと震えてる。大丈夫かな?」 煌『……』 煌『……』 煌『……』スゥ 健夜「ん? 深呼吸してる?」 恒子「出しちゃうのかな?」 煌『……』ギリッ 煌『ッ!』打5萬 恒子「ブッ!」 健夜「こ、これはずいぶんと思い切ったね」 恒子「す、すこやん。これはどういう打牌なのかな?」 健夜「うーん、おそらく123の三色とチャンタ、ピンズ一通とピンズの混一色を見た一打……かな?」 健夜「この格好から5萬周りを引いても高い手にはならないからね。 赤頼みも阿知賀の彼女がいる状況じゃ望み薄だし。だったら手役を作らなくちゃいけないとなると」 恒子「5萬切りってことかー。でも、この手牌から? まぁ、点数取り戻すために高い手狙うのはわかるけど、うーん」 健夜「そうだね。ダブリー入っている状況でやるにはなかなか勇気があるというか無謀だけど……成就、するかなぁ」 (新道寺控室) 姫子「は、花田ってあんな豪快な一手が打てる奴だっけ?」 美子「」ブンブン 仁美「驚いたわ」ポカーン 哩「(……そか。そうだな)」 哩「(花田、頑張れ。お前の意地、見しぇてやれ)」 (会場) 照「(随分脂っこいところを通してきた……。でも、この待ちだったらいずれ)」カチャッ 煌「……れ……ない」打8索 照「?(何か言ってる)」 煌「ま……ら……」打9索 煌「………れない」打2索 煌「……け………」打1萬 煌「………れ……」打2萬 照「(この子……危険牌を6枚も……!)」 煌「……」打5索 煌「……」打6萬 煌「……」打東 煌「……」打發 玄「(新道寺の人が突っ張ってくれてるから安牌には困らないけど……)」パシッ 怜「(あの宮永照のダブリーの前にここまで……)」パシッ 照「(引けない……嫌な、感じがする)」パシッ 煌「っ!」チャッ 煌「……9筒。暗カン」 照「(私の待ちの一つを……!)」 煌「……けられない」打中 照「えっ?」 煌「決勝に行って、会いたい子がいるんです。同じ舞台に立って、伝えたいことがあるんです」 煌「今更出て行って、私の言葉は届かないかもしれないけど。強くもない先輩ですけど。それでも、それでも」 煌「先輩として……かわいいかわいい後輩と」 煌「どうしても、話がしたいんです。そのために同じ所に立たなくちゃいけないんです」 煌「だから」 煌「だからっ!」 煌「だから、ここで、負けられないんです!」ギッ 煌「リーチっ!」打2筒 照「(追いつかれた!?)」 玄「(嘘……ダブリーを掻い潜った)」 怜「(ありえへん……)」 照「くっ……」ツモ5筒 照「(アガれない……! しかもこれはっ!)」パシッ 煌「ロンッ!」 『煌手牌』 3335567p南南南 カン9999 ドラ4s、中 煌「リーチ、一発、南、混一色、三暗刻……こんな場でも、乗るものですね。裏3で24,000」 (白糸台控室) 尭深「嘘……」カシャン 誠子「わっ、尭深! 湯呑湯呑!」 菫「……初めてだ」 淡「えっ?」 菫「あいつが、照が三倍満に打ち込んだのを初めて見た。そもそも跳萬以上に振り込むこと自体、いつ振りか」 淡「……新道寺の先鋒は実績もなくて、捨て駒だって話じゃなかった?」 菫「あぁ、そのはずだった。そのはずだったんだが……」 誠子「途中までの打牌も平々凡々だったのに」 菫「なんだ。いったい、あの選手に何があったんだ?」 (実況席) 恒子「」 健夜「こーこちゃん、しっかり」 恒子「はっ。あまりのことに思わず言葉を……」 健夜「危険牌12枚切って三倍満打ち取りだからね。しょうがないよ」 恒子「いや、出来過ぎでしょ」 健夜「うん、私だって普通に宮永選手がアガって終了だって思ってたもん」 恒子「でも結果として、あのチャンプが三倍満放銃とは……」 健夜「あの子の打牌にすごく強い意志を感じたよ。想いや意志で麻雀が勝てるなら苦労はしないけど、それでも」 健夜「それがなくちゃ、勝てないときもあるんだよね。本当にすごかったよ」 (会場) 煌「はぁ、はぁ、はぁ」 怜「(えらい消耗しとるな。あんな真似すりゃ無理もないか)」 玄「(負けられない……か)」 ――――決勝に行って、会いたい子がいるんです。同じ舞台に立って、伝えたいことがあるんです ――――どうしても、話がしたいんです。そのために同じ所に立たなくちゃいけないんです 玄「……私だってっ!」 照「?」 玄「私だって、負けられないのです。決勝に行って、会わなくちゃいけない人がいるんです」 玄「大切な、大切な友達で」 玄「そこまで長い付き合いじゃなかったかもしれないけど、それでも大切な友達で」 玄「だからっ、私だって!」 玄「絶対に、負けれないんです」ゴッ 煌「……」コクリ 怜「なんや、二人して熱くなって……」 怜「……ふふ」 怜「でもこういうの、嫌いやないで。こっちも……負けてられんなぁ」ゴッ 照「(この子たち……!)」 (観客席) 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 京太郎「……優希」 優希「……なんだじぇ?」 京太郎「あの、新道寺の人って中学の時の先輩なんだって?」 優希「そうだじぇ」 京太郎「……いい先輩だな」 優希「うん……後輩思いで面倒見がよくて、世話になったものだじぇ」 京太郎「そうか……和」 和「……なんですか」 京太郎「あの阿知賀の人が……」 和「はい、昔の友人です」 京太郎「いい人だな」 和「はい、あんなに私のことを想ってくれてるなんて正直思ってもみなかったです」 京太郎「そうか、よかったな?」 和「……はい」 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 京太郎「……決勝、何が何でも行かなくちゃな」 和「……ええ」 優希「……そうだな」 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 3人「(どうしよう……)」 (会場某所) 照「……」 菫「お疲れ、照」 照「うん」 菫「何とか2着通過だったな。危なかった」 照「……ごめん」 菫「な、なぜ謝る?」 照「本当は私がもっと点数を叩きたかったけど……7,000点しか稼げなかった。前半戦のリードを大分食いつぶされたから」 菫「謝ることではないだろう、プラスはプラスだ。だけど、正直驚いた。照が準決勝でここまで手こずるとは」 照「その……」 菫「いや、別に攻めているわけじゃない。本当に驚いただけ」 照「……」 菫「……私は」 照「菫?」 菫「私は照とあの清澄の大将の関係はよく知らない」 照「っ」 菫「デリケートな話なんだろ? だから無理に聞き出そうとはしない。だけど……聞いてるんだろ? あの話」 照「……」コクリ 菫「で、これはさっき試合後に聞いたんだが、新道寺と阿知賀の2人はどうやら 清澄のメンバーと知り合いらしいな。……だから、会って話がしたいと」 照「……」 菫「本当になのか。本当だとしたら、どうしてそんなことになってしまったのか。 大切な友人だから、かわいい後輩だから、できるなら止めない。泣かせる話だな」 照「……何が言いたいの?」 菫「阿知賀は勝ったが新道寺は落ちた。私たちはあの子の願いを踏みつけて行くわけだ」 照「……菫」 菫「わかってる。別に後悔をしているわけではない。……だけど、踏みつけるのではなく、それを背負っていくことはできるはずだ」 照「せお、う?」 菫「きっと、話をして、できるなら止めたいんだかったんだろうな、あの子は」 照「多分」 菫「で、だ。……お前だって、話したい子がいるんじゃないか。あの話を聞いていたってことは何も感じなかったことはないと思うが」 照「……」 菫「……さっきの発言を撤回する。ちょっと踏み込んだことを言うぞ?」 照「えっ?」 菫「『妹』なんだろう?」 照「っ」 菫「『姉』として、『家族』として、できることができるんじゃないか? 止めてやることも、できるんじゃないか」 照「……」ウツムキ 菫「悪かった。ズケズケとプライベートなことに踏み込んだことは謝る。だけど、考えてみてほしいんだ。頼む」 照「……うん、わかった」 菫「そうか、よかった。……さっ、何か食べて帰るか?」 照「うん」コクリ 京太郎「今日こそは……」 我等が清澄高校の準決勝を翌日に控えた夕暮れ時、本日は部員一同ゆっくりと過ごすこととなった。 こんな状況なので人目を気にしているというのもあるが、最近はいろいろありすぎてみんな疲れ気味だ。 和などは最近は掲示板の内容に目を通しつつ怒ると言う大変不毛な行為を繰り返している。 見るのをやめればいいもののどうしても気になるそうな。 俺もホテルでゆっくりしていようと思ったが、どうしても行きたいところがあったのでこうして東京の街を歩いている。 京太郎「さて、今日は居るかな?」 財布の中の小銭を確かめながら、俺は目的地であるゲームセンターに足を踏み入れた。 入り口に設置されているクレーンゲームや大型筐体には目もくれず、 比較的奥に設置されている格闘ゲームのコーナーに足を向けた。 休み中なので俺と同じような高校生と思われる人間も多い。 その人ごみをかき分けながら、筐体の一つ一つに目を向ける。 京太郎「居たっ」 思わず口に出てしまう。 プレイヤーネームに『AwaAwa100』という表示。 筐体の向こう側でプレイしているため顔は見えないが、間違いなく彼女だ。 相変わらずのえげつない腕で、俺の目の前で対戦している少年が操作しているキャラクターを固め殺している。 京太郎「あの6Cを1発目から小パンで……」 考えてきた対策を軽く口に出して復習する。 まぁ、この状況で分かったと思うが俺はリベンジにやってきたわけである。 大会始まる前の期間にぶらりと寄ったゲーセン。 せっかく東京に来たんだからと軽い気持ちでよくやっている格ゲーをプレイしてきたときに乱入してきたのがこいつだ。 正直自分の腕はそこそこあると思っていたが、そんなプライドをメタメタのギッタギタにしてくれたのがこいつだ。 負けも負けたり20連敗。しかも対戦していたのが自分と同じぐらいの女の子とあっては凹みに凹んだ。 あれから何度か対戦を挑んでいるが今のところ全敗である。 しかし、この前対戦した時は惜しいところまで行ったのだ。 最終セットまでもつれこみ、大技が入ってコンボを完走すれば勝ちというところだった。 京太郎「まさか、残影牙拾いに失敗するとは……牙昇脚にしておけばよかったなぁ……」 あとちょっとで勝ちというところで痛恨のコンボミス。 そしてグチャグチャっとなったところであえなく敗北した。 思わずうがーっと叫んだところで、お互い顔ぐらいは知っている程度に対戦していたが 会話はしたことがないはずのあいつにこう言われたのだ。 ?『コンボミスをすることで勝ち確を逃すことができるwwwwwねーねーアレ落とすってどうなのwwwwww今どんな気持ちwwwww』 人は言った。格闘ゲームは人の性格を悪くする、と。 若干記憶が脚色されている気もするが、ファーストコンタクトがこれだからかわいい女の子といえども印象最悪である。 で、そう言われて顔真っ赤になった俺は懲りずにこうやってリベンジにやってたのだ。 ちょうど目の前の少年がパーフェクト勝ちをされ、肩を落として席を立った。 俺は入れ替わるように席に座ろうとして、気になっていたことを思い出し、筐体の向こう側を覗いてみた。 ?「~♪」 そこにはCPUを相手に楽しそうにコンボ練習をする姿。癪な話だがかなりの美少女、というやつだろう。 そうやって、改めて顔を見直して俺は確信した。 京太郎「(……やっぱり)」 3人で観戦したAブロックの準決勝。 観客席から見つめる画面の向こうに、俺をぼっこぼこにした奴が白糸台の大将として恐るべき実力を発揮する姿があった。 その立ち振る舞いは負けた俺を煽る姿とは一致せず、思わず呆気にとられたものだ。 京太郎「(白糸台の大将……大星淡、だったか。麻雀も強くて格ゲーも強いとかなんだよそれ)」 この世の不公平さを嘆きつつ、俺は100円を入れてカードを筐体に読み取らせた。 今日こそは勝ってやる。 こうやって負け続けるのは精神衛生的にも財布の中身的にも大変よろしくないからだ。 (対戦中) 京太郎「っつつつ」ガチャガチャ 淡「画面端ごあんなーい。固めるよー」ガチャガチャ 京太郎「あぶねっガードできた……」ガチャガチャ 淡「ふーん、大分頑張ってきたみたいだねー」ガチャガチャ 京太郎「ここで暴れてッ」ベシベシ 淡「あっ、やばっ」イタイニャス 京太郎「中段通った!」イキマスヨ、ジャヨクホウテンジン! 淡「立った! 立ったって!」ガチャガチャ 京太郎「よっしゃ! ここで蛇翼からODでっ!」コレカラガホンバンデスヨ! 淡「あーあ、さすがにこのセットは取られたかな」ガチャガチャ 京太郎「よし、これで蛟竜で締めれば……あっ」ガチャガチャ 淡「あ、繋がってない。んじゃ、美味しくいただきますっと」ニャスニャス 京太郎「あああああああああああああああああ! 保障高過ぎだろぉぉぉぉぉ!」ディストーションフィニッシュ! 京太郎「」 結論から言おう。 負けた。負けました。10連敗しました。 しかも何戦かは勝ちが見えてたのにお手手プルプルしてコマンド入力をミスるとかいうあまりにもアレな負け方。 ベッコベコに凹まされて現在は自販機コーナーのベンチで自棄コーヒー中である。 京太郎「ふぅ」 いつもよりコーヒーが苦く感じる。これが敗北の味というやつか。 完全に負け癖がついてしまった。家庭用が出たら練習しよう。 長野に帰る前に1度ぐらいは勝ちたいなぁ。 湯だった頭でそんな風に取り留めのないことを考えているときだった。 淡「ねーねー」 京太郎「俺?」 淡「そうに決まってるじゃん」 話しかけてきたのはあいつだった。 というかまともに話しかけられたのはこれが初めてだったからちょっと戸惑ってしまう。 そいつは探るような視線を俺に遠慮なく向けながら口を開いた。 淡「ねぇ、ちょっと聞きたいことあるんだけど、いい?」 京太郎「別に、いいけど」 淡「清澄の須賀京太郎って、あんた?」 考えてみれば当たり前の話だ。 相手も麻雀部員だ、例の噂を聞きつけていて居るのは当然だろう。 だが、あの噂が流れていることを知ってから他校の人間とこうやってまともに話すのは初めてなので、 内心めんどくさいことになったな、とちょっと焦る。 京太郎「……そうだけど」 淡「やっぱり? ネットの画像の通りだ。へー、ふーん」 そう言いながらジロジロと上から下まで品定めするように見てくる。 こいつ(いいよね、こいつならこいつ呼ばわりで)は礼儀というものを知らんのか。 このゆとりめ。いや、俺もゆとりだけど。 一方的に聞かれるのもしゃくなので、ちょっと反撃してやる。 京太郎「そういうそっちは、白糸台の大星淡さんだよな?」 淡「へぇ、私のこと知ってるんだ」 京太郎「準決勝、見てたしな。うちが決勝に行けば、当たる相手だし」 淡「なるほどねー。いやー、有名になるのも大変だー」 ケラケラと笑うこいつを見て驚きの表情一つも見せないことにげんなりする。 こいつ大物だわ。 それともただのバカなのか。 個人的な所感では間違いなく後者。 うん、確信。 京太郎「で、何の用だ?」 淡「あ、もしもしテルー? うん、そう、いまね……」 京太郎「聞けよ」 俺の問いには答えず目の前の珍種は気づけば俺を無視して電話を始めていた。 思わず乱暴な突込みが入ったけど、いいよね。同い年だし。 黙って帰ってもいい気がしたけど、それはそれでめんどくさいことになりそうだし、仕方なく電話が終わるのを待った。 淡「うん、それでね、大会が終わったらね……」 淡「それでね、たかみーが抹茶ケーキを……」 淡「ケーキといえば駅前のモールに……」 淡「そうそう、Aちゃんに彼氏が……」 淡「この前会ったんだけど、なんかすごい電波で……」 淡「哲っちゃん達者で打ってるかいってブツブツ言いながら体がプルプル震えてて……」 京太郎「お前何の話してるんだよ」 5分間我慢したんだけどもういいよね。 横で聞いてる限りどう考えても俺と関係する話をしているとは思えない。 付き合ってられんとばかりに踵を返そうとしたとき、そいつは俺の顔を見て『あっ、やっば忘れてた』って顔をした。 淡「あっ、やっば忘れてた」 京太郎「おい」 一点読みが通ったのにまったく気持ちよくない。 というか俺はこんなツッコミキャラだっただろうか。 部の皆といるときは結構ボケるほうだと思っていたのだが。 淡「うん、そう。噂の清澄の、うん、会いたいって言ってた」 淡「そうそう、そいつ。今ゲーセンに居るよ」 淡「あっ、ゲーセンに行ったことはスミレには黙っておいてね? また怒られるから」 淡「うん、それで、どうする……うん、うん」 淡「わかった、あそこだね。りょーかい」 俺を置き去りにすることたっぷり10分。 俺は途中で痺れを切らしクレーンゲームでぬいぐるみを3つ取ってで 『妹の彼氏を姉が寝取り泥沼になった姉妹に挟まれ精神崩壊する彼氏ごっこ』をして遊んでいた。 彼氏が追い詰められた挙句の自殺後、葬式帰りに二人が刃傷沙汰になるという佳境のシーンでこいつはようやく電話を切った。 即興のシナリオにしてはなかなかいい出来だと思う。 なんかの賞にでも応募してみようか。 淡「明日なんだけど、ちょっと時間ある?」 電話を切って一言目がこれ。 単刀直入である。突然すぎて色気も何もあったもんじゃない。 女の子の誘いだからもっとテンションが上がってもよさそうだが心はコールアングレの音が響く 中央アジアの草原のような穏やかさである。 こいつはあれだ、優希と同じカテゴリだ。 京太郎「うち、明日試合なんだが……?」 淡「自分が出るわけじゃないでしょ。それに開始前に時間は調整したから問題なし!」 京太郎「おい」 返事を聞く意味があったのだろうか。 あと、そろそろ殴っても文句は言われないだろうか。 淡「明日10時に会場最寄駅の横にある喫茶店で人が待ってるから。じゃ、よろしくっ!」 そう言ってそいつは振り返り帰ろうとする。 俺はそれを呆然と見送りかけたが肝心なことを聞いてないことに気づいてあわてて声を掛けた。 京太郎「ちょ、ちょっと待てよ。待ってるって、誰が!? 何で!?」 淡「んー?」 俺の呼び止めの声にそいつはくるりと踊るようにその場で回って、少し考え込むようなそぶりを見せる。 うーん、とちょっと考え込んでいるような声が漏れて聞こえてきた。 淡「何でかは私もよくわかんない。一度話がしたいーって言ってたのを聞いただけだから。あと、誰が、だけど」 そこまで言うと、不意ににやっという音が聞こえそうな感じで笑った。 その笑い方がなかなかにピッタリで、ちょっとというかかなり可愛くて、正直ドキッとした。 した後ですごく悔しくなった。謎の敗北感である。 淡「うちで一番有名な人、っていえばわかるでしょ?」 京太郎「それって……」 淡「じゃあね、絶対行ってよ! それともっと練習してきなよー。コンボミスりすぎっ!」 びしっと指を突き付け、そう言いながらあいつは去って行った。 俺はあまりに突然の事態に呆然とそれを見送るしかなかった。 京太郎「一番有名な、人」 そう言われると心当たりは一人しかいない。 しかし何故、という気持ちが大きい。 麻雀を始める前からおぼろげにその存在は知っていた。 だが、所詮はそのレベルの話であってお互い面識もないのに突然どうしてなのかが全く分からない。 意図が読めない。 行くべきなのだろうか。 部の皆には話すべきなのか。 そんな感じにもやもやしたものを抱えながら俺はホテルへ足を向けた。 淡「あ、そうそう」 京太郎「どわっ! なんだよ、いきなり戻ってくるな!」 淡「そのぬいぐるみ、かわいいね。ちょーだい!」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……ほら」 淡「え、本当にくれるの?」 京太郎「……暇つぶしで取っただけだし」 淡「やった、ありがとう! じゃーねっ!」 うん(困惑) うん(現状認識) うん(把握) なんだあいつは(戦慄) 新種の生命体と対話した次の日、俺は予定時間の15分ほど前に指定の店に着いていた。 部のメンバーはもうそろそろ会場入りしているころだろう。 俺はこのことを報告するか悩んだが、結局黙っていた。 ここに来ることを適当にごまかして、皆とは現地で合流する手はずになっている。 本来であればこんな状況だしちゃんと話すべきだと思ったんだが……。 京太郎「言えないよなぁ、やっぱり」 あの癖っ毛たくましいポンコツ娘の顔を思い浮かべると、どうしてもその気になれなかった。 そんな感じで、心にしこりを抱えながら水をすすっているとドアベルが小さく鳴った。 ちらりと視線を向ける 京太郎「(あぁ、やっぱり)」 まさか、という気持ちはあったが、やはり想像通りの人がそこにいた。 その人は店内をきょろきょろと見回し、俺の姿を見つけるとゆっくりと近づいてくる。 そして、少しの沈黙の後に口を開いた。 ?「須賀、京太郎君?」 京太郎「はい、そうです」 ?「はじめまして、宮永照と言います」 咲、やっぱりお前には言えないよ。 お前のお姉さんと会ってくるなんて。 咲に姉がいるのは知っていた。 それと同時に二人の間に簡単に口に出せないような『何か』があるのも知っていた。 そもそも離れて暮らしているのだ、いろいろあるんだろう。 中学の時、家族の話になったら咲が露骨に辛そうな顔をしていた時以来、咲に家族の話はしないようにしてきた。 友人とは言え、触れてはいけないところ、触れてほしくないところってのは誰にだってあるだろう。 そう、だからここに来ることを言えなかった。 照「来てくれてありがとう」 京太郎「いえ……」 俺の向かいの席に座る……この人を何と呼べばいいのだろう? 宮永さん? 当たり障りないが、咲のことを名前で呼んでるせいでなんとも変な感じだ。 照さんとか? いや、初対面で下の名前は馴れ馴れしすぎだろう。 チャンプ? お互いに恥ずかしすぎだろ。 あいつが言ってたテルー? 命を大切にしない奴はうんにゃらっていうあのセリフを思い出すな。 どう口火を切ればいいのかわからず俺は手元の水に口を付けた。 照「何か飲む?」 京太郎「あ……えと、はい」 照「コーヒーでいい?」 京太郎「大丈夫、です」 どうにも緊張する。 そもそも女の子と二人でお茶をするなんて初めて……いや、咲は例外ね。 いや、女の子っていうのも何か微妙だ。 相手は年上の人だし、見た目からも『女の子』というより『女性』と言ったほうがしっくりする。 水を持ってきた店員さんに対して穏やかに注文する姿はとても大人っぽく感じた。 年齢としては2歳しか違わないのに、不思議だ。 店員さんが去った後は再び気まずい空気が流れる。 斜向かいの席に座っているおばさんたちの楽しげな笑い声が妙に耳に入ってくる。 目の前の人も同じく落ち着かないような感じだったが、一口水を飲んでから口を開いた。 照「突然呼び出してごめんなさい」 京太郎「いえ、別に……」 照「その、私のこと、知ってる?」 唐突な問いだった。 どういう意図なのか、どう答えるべきなのか。 どんな回答を求めているのか、何を聞きたいのか。 いまいちわからなかったが俺は頷いた。 京太郎「あの、俺からもいいですか?」 照「うん」 その一言を口に出すのは結構勇気が必要だったが何とか絞り出す。 京太郎「咲の、お姉さんですよね?」 俺の問いに少しの沈黙ののち、小さく頷いた。 わかりきっていたことだったが、これで確信に変わった。 確かによく見ると顔立ちとか少し咲に似ている。 ただ、纏う雰囲気は大違いなせいかあまりピンとこない。 店員「お待たせしました」 そうこうしているとちょうどコーヒーが運ばれてくる。 コーヒーは嫌いではないが砂糖なしで飲むほど俺の味覚は子供から脱却できていない。 テーブルの上にあったスティックシュガーをひとつ取り、コーヒーに混ぜていく。 向かいではどこか憂いを帯びた感じでコーヒーにミルクを入れる咲のお姉さんがいた。 普段周りにいる女性陣が絶対にしないようなその表情はちょっとドキッとする。 照「」サラサラサラサラサラ 照「」ドバー スティックシュガーを5本、ミルクピッチャーに入っていた2人分のミルク全部をコーヒーに投入しているのはちょっと気になるけど。 別に俺は入れないので俺の分のミルクまで使っているのは構わないのだが、甘すぎないのだろうか。 いや、それ以前にあれをコーヒーと呼んでいいのだろうか。カフェオレ? そういえばカフェオレの定義ってなんだろう? 照「」カチャカチャ コーヒー(?)を混ぜている咲のお姉さんを見ているとふと昔を思い出した。 咲も中学生の時に「京ちゃんが思ってるより私は大人なんだから!」とか強がってブラックコーヒーを勢いよく飲んだ結果、 チョコレートファウンテンの如く口からコーヒーを垂れ流したことがあったな、と。 そんなことを考えていると、俺の視線に気づいたのか、少し顔を伏せたまま口を開いた。 照「今日、来てもらったのは、その……」 そこまで言ってまた口ごもる。 若干の沈黙ののち何か思い悩んだ表情で手元のコーヒーカップに手を伸ばした。 何かを流し込むかのように、咲のお姉さんはコーヒーに口を付けた。 照「熱っ!」 そして、思ったより熱かったのか慌てて口を離し 照「あっ」 勢い余って手まで離し 照「あちちちちちちち!」ガシャーン! そしてコーヒーは見事に咲のお姉さんの胸のあたりにぶちまけられた。 床に落ちてけたたましい音を立てて割れるコーヒーカップ。 散らばる破片 照「あっつ! あっちゅい!」バタバタ 胸元にこぼれたコーヒーが扱ったのか慌てて胸元をつまみ服を肌から離している。 てんやわんやとはまさにこのことか。 俺は一瞬ポカンとするが慌てて手元のおしぼりを差し出した。 お姉さんはそれを受け取り胸元のコーヒーのシミを必死にこすり始める。 こするんじゃなくて叩かないといけないんじゃと思っていると仕事の早い店員さんが颯爽と飛んできた。 店員「お客様、大丈夫ですかっ!」 照「すみません、大丈夫です……」 店員「すぐに掃除いたしますので!」 照「本当にすみません……」 俺は店員さんが持ってきてくれたおしぼりで机の上を拭きながら、しみ込んだコーヒーと格闘している咲のお姉さんを見てふと思った。 ――この人、間違いなく咲のお姉さんだわ。 ――血は争えん。 それと同時にこうも思った。 ――こぼれたのが水だったら着けている下着ぐらいは見えたかな。 ほら、思春期真っ盛りだし、これぐらいの下心は許してもらえるよね? 俺は机をおしぼりで拭きながらそんな自己弁護に走っていた。 15分後、落ち着きを取り戻した俺たちは再び向かい合って座っている。 咲のお姉さんの手元にはサービスで用意してくれた新しいコーヒーがある。 照「それで、来てもらった理由は……」 大変シリアスな面持ちをしているが、胸元に広がる大きなコーヒーのシミがぶち壊しにしている。 白糸台の制服が真っ白ということもあり、大変目立っているのが悲劇以外の何物でもない。 何とも微妙なテンションに陥っていた俺だが、次の一言にはさすがに衝撃を受けた。 照「どうしても、謝りたくて。ごめんなさい」 そう言った後、頭を下げられる。 初対面の女性にこうやって頭を下げられる経験などあるわけがない俺は 京太郎「いや、えっ、ちょっと、へっ?」 当然キョドるわけである。 さっきの騒ぎで微妙に店内の注目を浴びてることもあり焦る。 ほら、さっきはあれだけ騒がしかったおば様方がチラチラとこっちを見ながらヒソヒソ話をしている。 そんな俺の返事を待たず、頭を下げたまま畏まり、重い口調で喋り始めた。 照「須賀君が今どういう状況に置かれているか、っていうのは聞いています」 照「私は妹と長く離れて暮らしているから妹がそんなに荒れてるなんて知らなくて……」 照「昔は気弱だったあの子がどうしてそうなっちゃったかはわからないけど」 照「でも……私が、近くに居たら止められたかもしれない。だけど、それが、出来なくて……」 照「だから、ごめんなさい」 下げた頭をさらに深く下げ、年下の俺に妙に丁寧だが絞り出すような謝罪の声を出すお姉さん。 ここまで言われて俺はようやく理解した。 京太郎「(姉として、妹の行いを謝罪してくれてるってことでいいんだよな)」 京太郎「(……すごく仲が悪いとか、確執があるのかとか勘ぐってたけど、そうでもないのか?)」 そうだとしたらそれはそれで大変喜ばしいことなのだが、そもそも謝る原因が大きな誤解だというのが大問題である。とんだ謝り損だ。 どう訂正したものかと頭を悩ませているとお姉さんはとんでもない右ストレートを繰り出していた。 照「その、私にできることは何でもします。だから……」 ん? 何でもする。 何でもすると言いましたよこのお姉さん。 恐らくはお姉さんとしては、現在の問題を解決するために何でもするっていう意味だろうけど、言っちゃったよ。 性に目覚め、色を知り、一番肉に飢えているこの年代の男の子に何でもすると仰いましたよ。 食事のシーンに定評がある某漫画でも言ってたよね、『強くなりたければ喰らえ』って。 つまり、わかるな? 和が知ったら斬刑に処された後、諏訪大社に必勝祈願の贄として捧げられそうなことを考えること10秒。 俺は脳内に繰り広げられたR-18劇場を若干名残惜しさを残しながら幕を下ろした。 京太郎「頭を上げてください。その、誤解なんですよ!」 照「……えっ?」 頭を下げ続けていたお姉さんはようやく頭を上げてキョトーンとした顔で俺を見てくる。 俺自身、この状況を誰かに面と向かって釈明するのは初めてなので若干混乱していたが、これまでのあらましを話した。 あくまで誤解であり、別に俺自身は虐げられてはいないということ。 せいぜいほかの学校でも下っ端がやるようなことをやっているにすぎないこと。 まぁ、多少からかわれることはあるけど苛められているとか、そういうことはないこと。 ほかのメンバーも別に北○の拳の登場人物やヤクザみたいなそれではなく、いたって普通の女の子であること。 むしろ彼女たちのおかげで俺は楽しく過ごせていること。 たっぷり20分ほどかけて、俺自身なんて説明するべきか若干悩みながらも説いていった。 照「……なるほど、言われてみれば確かにおかしい」 京太郎「よかったです、わかってもらえて」 照「咲が悪魔合体をして人修羅になったとか、冷静に考えればありえない」 京太郎「長野はボルテクス界ではありませんし、アマラ経絡とも繋がっていません」 照「須賀君もオリジナルはもう死んでいて実は3人目だっていう噂もありえない」 京太郎「生憎と人造人間のパイロットでもなければ電光機関の使い手でもないです」 どっかで聞いた設定だが、大方騒ぎに便乗した愉快犯が書き込んだのだろう。 現在流れている噂の9割方がそうだけれども。 と言うより、何故明らかにおかしい噂を信じちゃったのだろうか。 照「でも、よかった」 京太郎「えっ?」 照「さっきの須賀君の話を聞いて思ったけど……咲、みんなで仲良く、楽しくやってるんだ」 京太郎「はい、それは保証します」 中学時代は殻にこもりがちだったアイツが最近は社交的になった。 笑った顔を見る機会だって増えた。 そう考えると麻雀部に誘った俺としても誇らしいものがあり、胸を張ってそう答えられた。 照「須賀君のおかげかな?」 京太郎「俺だけじゃないですよ。ほかのメンバーや、他校のライバルたちのおかげですよ」 照「それでも、ね。ありがとう、須賀君」ニコッ 京太郎「(うぉ……)」 あまり感情の起伏が大きくない人なのか、ほんの口元が笑ったぐらいだったけど、今日初めて見たその笑顔にちょっと落ちかけた。 危なかった、服に広がるコーヒーのシミがなければ即死だった。 照「」モグモグ 京太郎「えーっと、宮永さん?」 照「照でいい」モグモグ 京太郎「じゃあ……照さん」 照「何?」モグモグ 京太郎「ほっぺたにクリームが」 照「」ゴシゴシ 誤解も解け、ひと段落したタイミングで俺たちは現在ホットケーキをつついている。 クリームとブルーベリーソースがかかったそれはなかなかに美味である。 どうやらこの喫茶店の一押しメニューらしく、照さんが奢るから食べたいと訴えたため、相伴にあずかっている。 本当はさっさと会場に向かうべきなのだろうが……。 照「それにしても、そんな噂が広まってるとなると、やりにくくない?」モグモグ 京太郎「はい。遠巻きから見られて白い目で見られるし、対局している人たちは怯えてるし……」 1、2回戦の阿鼻叫喚っぷりを思い出すと思わずため息が出る。 出場メンバーでもない俺ですらこんな始末だから、女性陣の心労はいかほどか。 京太郎「最初は放っておけば沈静化すると思ってたんですけど、なかなか……。少なくともこの大会中は消えそうにないですね」 照「うーん」モグモグ 京太郎「弁解しようにもネットに否定意見書いたところでほかの多数意見に流されて終わりですし、 かと言って参加者全員に一人一人釈明するのは無理ですし」 照「なるほど」モグモグ 京太郎「いろいろ部内でも考えたんですけど正直お手上げ状態で」 照「」モグモグ 京太郎「それで……」 照「」モグモグ 京太郎「……」 照「」モグモグ 京太郎「……美味しいですか?」 照「うん」モグモグ 聞いているのかホットケーキに夢中なのかよくわからない照さんは一応返事を返してくれる。 白糸台のレギュラーというのはマイペースな人間しかなれないという決まりがあるのだろうか。 照「わかった」 俺が雀力と性格の因果関係について考えていると、ホットケーキを食べ終えて表情は変わらないけど 心なしか満足そうな照さんが口を開いた。 照「正直、私もどうすればいいかわからない。だから私も帰って皆に相談してみる」 京太郎「皆って……」 照「うちのメンバー。ちょうどこの後Bブロックの観戦とミーティングだし」 京太郎「おぉ……」 天下の白糸台のメンバーが解決案を考えてくれるというのか。なんと豪華な。 レギュラーの中の約1名は全くアテにならないが気になるけど、まぁ、それはそれだ。 京太郎「でも、いいんですか? こんな面倒なこと」 照「うちは準決勝終わったから少し時間がある。それに……」 京太郎「それに?」 照さんは少し思い悩むような表情を見せる。 俺は残り1切れになった最後のホットケーキを口に含んでコーヒーで流し込みながら、返答を待った。 照「私は、咲のお姉ちゃんだから。それじゃ理由にならない?」 京太郎「……いえ」 その一言が聞けただけで、少し胸のつかえが取れた気がした。 ここ最近微妙な話ばかり聞いていたので余計にうれしく感じる。 照「ただ、このことは咲には黙っておいて」 京太郎「それはいいですけど……。ただ、その、ちょっとお願いが」 照「?」 京太郎「二人の間に何があったかはわからないですけど……よかったら咲が東京にいる間に、会ってやってくれませんか?」 照「……」 京太郎「咲、口には出しませんけど寂しがってます」 照「……うん」 京太郎「大きなお世話ってのはわかってます。何様だっていうのもわかっています。だけど……お願いします」 照「……わかった」 頭を下げた俺に照さんが返事をしてくれるまでに少し間があったが、肯定の返事が聞けたことにほっと胸を撫で下ろした。 大きなお世話だったかもしれないし、これが火種でまた争うことになってしまうかもしれない。 だけど知らんぷりを決め込むよりはずっとずっとマシなはずだ。 渡りに船とばかりに勢いで言ってしまったが、後悔はない。 照「じゃあ、また私から連絡するから、番号だけ」 そう言って照さんは携帯を取り出す。 妹はいまだに持っていない携帯だが、さすがに都会人は格が違った。 それにしもて、全国に行ったら女の子の知り合い増えるかなーと若干妄想じみた期待をしていたが、まさか叶うとは思わなかった。 色っぽい何かではないけれども、まぁ、それはそれだ。 照「じゃあ、行こうか。そろそろ時間でしょ?」 京太郎「あ、そうですね。そろそろいかないと不味いです」 時間を確認すると大会開始までにもうあまり時間がなかった。 さすがにこれ以上遅れると部長に叱られてしまう。 照「ここは私が」 京太郎「悪いですよ、そんなの」 いくら友人のお姉さんとは言え、会ったばかりの人に奢られるのもどうなのだろう。 そう思い、伝票を持って立ち上がった照さんを慌てて追いかける。 すると照さんは振り返って若干ふんぞり返る感じで口を開いた。 照「いいから、先輩に任せて」フンス ちょっとドヤ顔というか偉そうな顔というか、その表情が俺に対して偉ぶるときの咲に本当にそっくりで思わず軽く笑ってしまう。 しかたない、ここはおとなしく奢られておこう。 恐らく妹と一緒で、ここでさらに抵抗するとヘソを曲げてしまうだろう。 そう結論付けて俺は照さんにご馳走様です、とだけ伝えた。 そう言うと照さんは満足そうに伝票をレジのお姉さんに差し出した。 店員「お会計2400円です」 照「」ポケットゴソゴソ 照「」カバンゴソゴソ 照「」ポケットパンパン 照「」カバンバサバサ 照「」 照「財布忘れた」 京太郎「……」 照「……」 京太郎「……払っときます」 照「……ごめんね」 京太郎「いいですよ、(妹さんで)慣れてますし」 あの妹にしてこの姉有。 1時間にも満たない逢瀬だったのに、俺内カテゴリにおける照さんのランクが『年上の綺麗な女性』からグーンと下がり 『ポンコツ』(現在のところ咲のみ該当)に落ちて行ったのが悲しい。 現実の非情さと財布へのダメージに俺は涙を禁じ得なかった。 (白糸台控室) 照「遅れてごめん」ガチャ 菫「遅いぞ、照……ん?」 淡「テルー、なんで冬服着てるの? 暑くない?」 照「暑い。けど、コーヒーこぼして制服の替えがなくなったから……」ダラダラ 菫「……昨日カレーこぼしたばっかりだろ」 尭深「一昨日はチョココロネのチョコレートこぼしてましたね」 誠子「つまり全部クリーニングに出したから着替えがなくなったってわけですか」 照「そういうこと」 尭深「(この人は社会に出てちゃんとやっていけるんでしょうか……)」 淡「そう言えば、清澄の須賀、だっけ? 会ってきたんでしょ? どうだった?」 菫「お、おい。聞いてないぞ。昨日の今日で会ってきたのか!?」 尭深「だ、大丈夫でしたか?」 照「うん、何も問題なかった。と言うか……」 (説明中) 誠子「つまり」 淡「すべて誤解だったってこと?」 照「そう」 誠子「現実的に考えておかしい噂もありましたけど、もろもろひっくるめて全て嘘っぱちだったってことですか」 照「そうらしい。ひどい扱いの目撃証言もあくまで仲間同士でのじゃれあいレベルで 須賀君も別に怒ってるとかそういう認識はなかった」 菫「そうだったのか……」 尭深「まぁ、冷静に考えれば現実的にありえない話が多かったですし……」 菫「(ん、と言うことは……)」 ――前話より―― 菫『わかってる。別に後悔をしているわけではない。……だけど、踏みつけるのではなく、それを背負っていくことはできるはずだ』 菫『……さっきの発言を撤回する。ちょっと踏み込んだことを言うぞ?」 菫『妹なんだろう?』 菫『姉として、家族として、できることがあるんじゃないか? 止めてやることも、できるんじゃないか』 ――回想終わり―― 菫「(あああああああああああああああああ!)」 菫「(は、恥ずかしいいいいいいいいいいいいいいい!)」 菫「(『妹なんだろう(キリッ』だってああああああああああああああああああああああ!)」 菫「(誰か私を殺せえええええええええええええええ!)」 誠子「先輩は何をもがいてるんだ?」 尭深「さぁ……?」 (5分後) 菫「で、だ。私たちに知恵を出してほしいと?」 照「うん」 誠子「でも、解決案って言われても……」 菫「部として付き合いのある、知り合いの記者に取り上げてもらうか? いや、面白おかしく扱われるのがオチか」 尭深「そう言う意味だと、下世話な雑誌とかにこの騒ぎが取り上げられると取り返しがつかないかも……」 菫「決勝で戦うかもしれない相手だ。できればそういうことは避けたいな」 誠子「やっぱり、一度広まった噂を鎮めるっていうのはなかなか……」 一同「うーん」 淡「へー、阿智賀の監督にプロ復帰の噂ねー。というか元プロだったんだ」パソコンカチカチ 誠子「皆で悩んでるってのに何やってんだ。ほれほれ」ムニムニ 淡「へいじぶぁんみるあいふぁにみへはだへだっへばー(掲示板見る合間に見てただけだってばー)」 照「何を見てたの?」 淡「麻雀関連のニュースに特化したサイト。飛ばしも多いけどなかなか面白いよ」 照「どれどれ……『小鍛冶健夜プロ、熱愛発覚』」カチカチ 尭深「ガセネタですね」 菫「即答はやめてさしあげろ」 照「『咲-saki-第12巻、本日2013年12月25日発売』」カチカチ 淡「皆買おうね!」 尭深「安易なメタネタはちょっと……」 照「『牌のお姉さん。WEBにて麻雀教室の生放送配信決定。新衣装お披露目に期待大』」カチカチ 誠子「荒れそうだなぁ……いろんな意味で」 菫「しかし、淡の言うとおり玉石混合だな。流石ネットと言ったところか」 尭深「あっ」ピコーン 淡「どうしたの? どっかのゲームみたいに頭の上にひらめきの電球マーク出してるけど」 誠子「抜刀ツバメ返し、最後までひらめけなかったなぁ……」トオイメ 菫「なんだその例え……。で、どうした?」 尭深「もしかしたら……この方法ならいけるかもしれません」 照「?」 尭深「かくかくしかじか」 (説明中) 菫「……おい、流石に不味いだろ」 淡「えー面白そうじゃん! 本人に断りを入れれば問題ないでしょ。そう、あれ、毒を持って毒を制す的な」 照「確かに、効果はありそうかも。部員全員を当たれば必要なものは揃えられそう」 誠子「元手もかからないし、まぁ、こっちの負担は少ないか」 菫「本当に上手くいくのか? 私は本人に会ったことないから何とも言えないが」 淡「大丈夫、あいつは何度か会ってるけど、性格上絶対うまくいくって! ね、テルー?」 照「……うん。それは、確かに」 淡「ねー、いいでしょ? 目立つところは私とテルーでやるし」 菫「しかし……」 照「菫」 菫「ん?」 照「お願い」ジッ 菫「うっ……」 照「」ジーッ 淡「」ジーッ 尭深「」ジーッ 誠子「」ジーッ 菫「あー……」 菫「まったく」ハァ 菫「わかった。わかったから、そんな目で見るな。私がまるで悪者じゃないか」 照「よかった、ありがとう菫」 淡「よし、決まりだね! じゃあ、さっそく準備準備ー」タタタッ 誠子「(不安があるとすれば淡が遊び半分だってことか)」 尭深「(大丈夫だよ、きっと、多分、おそらく)」 菫「うーん……」
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781 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 00 10 59.23 ID uHK8sWdWo 【龍門渕家・正門前】 。 。 。 ∧人∧ __o __ __ { {{ {0} }} } __. | || | | ゚ )/ ̄ ̄ ̄\( ゚  ̄ ̄|| ∧ ∧lニ0ニ! ((..| | \|/ | |..)) ||.∧ ∧ (* ) | | ))| | /|\ | |(( ||( *) / つ | | ((. \___/ .)) ||と ヽ ~(;;;;;Uノ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ヽU;;;;;)~ |三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三| ┏╋┳┳━┳━┳━┳━┳┳┳━┳━┳━┳━┳┳╋┓ ┣{†}╋╋━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━╋╋{†}┫ ┣┻┫┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┣┻┫ ┣┳┫┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┣┳┫ ┃╋┃┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┃╋┃ ┣┻┫┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┣┻┫ ┣┳┫┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┣┳┫ ◆ ◆ ◆ ┃╋┃┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┃╋┃ ◆ ◆ ◆━╋━╋━╋━╋┻┫┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┣┻╋━╋━╋━╋━ ┃ ┃ ┃ ┣┳┫┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┣┳┫ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┣╋╋╋〓†〓〓†〓〓〓†〓〓†〓〓〓†〓〓†〓╋╋╋┫ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┣┻┫┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┣┻┫ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┣┳┫┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┣┳┫ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃╋┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃╋┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┣┻┫┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┣┻┫ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┣┳┫┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┣┳┫ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃╋┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃╋┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┣┻┫┣━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━┫┣┻┫ ┃ ┃ ┃┳╋┳╋┳╋┳╋┳┫┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┣┳╋┳╋┳╋┳╋┳╋┃╋┃╋┃╋┃╋┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃╋┃╋┃╋┃╋┃╋┻╋┻╋┻╋┻╋┻╋╋━╋━╋━╋━╋╋╋━╋━╋━╋━╋╋┻╋┻╋┻╋┻╋┻━┻━┻━┻━┻━┻┻━┻━┻━┻━┻┻┻━┻━┻━┻━┻┻━┻━┻━┻━┻━ 衣「さぁ着いたぞ!」 京太郎「……予想はしてたけどさぁ」 京太郎「門からして既にとんでもないよね!?」 衣「ふむ。確かにやや重々し過ぎて、なんびとをも拒むような雰囲気は醸し出しているが……」 衣「衣はこれくらいの重厚さも好きだぞ!」 京太郎「テレビとかでしか見たこと無いぞ、こんなの……」 782 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 00 24 15.89 ID uHK8sWdWo 衣「さて、まずは呼び鈴を押して……」 ギギィーッ 京太郎「うおっ!?開いた!」 京太郎「あれ?でもまだ建物が見えないんだが……」 衣「本館はもう少し先なのだが、流石に少し疲れたな」 京太郎「まぁここまで歩きっぱなしだったしな」 ハギヨシ「――そう思いまして、失礼ながらお車をご用意させて頂きました」シュタッ 京太郎「うおっ!?ハギヨシさん、やっぱり神出鬼没だよなこの人……」ドキドキ ハギヨシ「それが執事ですので」ニコッ 衣「ご苦労。だがもう少し早く用意すれば良かったのではないか?」 ハギヨシ「申し訳ありません」 ハギヨシ「衣様が京太郎君と楽しそうに歩いていらしたので、お邪魔しては悪いと思いまして」 衣「ふむ。そう言う事ならば不問に処す」 ハギヨシ「ありがとうございます」 ハギヨシ「それでは本館までお車でお送りいたします」 京太郎「つーかそこまで車使うって、どんだけ広いんだよこの家……」 783 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 00 31 46.31 ID uHK8sWdWo . i .傘 | 傘傘 r^t .傘∩傘 ./. ヘ 傘傘傘傘 .| | . | . [IIIIIIIIIIIIIII]_____________________________________________ .r". `i . r'^ー --------..i.. ;;;;i|;;;; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;ヽ |. _;_;;;_;;|_____________. / ; ; ; ; ; ; ; ; ;;;| .. ; ;;;;;i|;;; ; ; ; ; ; ; ;/|\ ; ; ; ; ; ; ; ;..ヽ.;;;;; ;; ;; ; ; ;; ; ; ;; ;; ;\ . /;;;;_;.;;;_;; ;_;_;;;._;.;;; ;.;;| ∩ ;;;;;/;;_; ;;;_;; ; _; ; ; ;_; /\|/\;;;_; ;;_;_;; ;;_; ;; ;_ ;;_;. ;ゝ. - ; - - - - - -.-ヽ |. ;;| .. ;;;;;i|;; [IIIIIIIIIIIII] |;. ;ヘ.; ;ヘ . ;ヘ . ;ヘ. | | i^i i^i i^i i^i| ∩ . ;;;;;i|;; i^i i^i i^i || i'⌒`i ||.. i^i i^i i^i i^i |;. |_j; .|_j; . |_j |_j; | | Ll . Ll . Ll . L.| . . . ;;;;;;i|;;; Ll; ; Ll;. ..Ll; [IIIIIIIIIIIII] ;Ll;; Ll; Ll;; Ll i;; ; . .; . ;. . ;.. .; ;.i |≡≡≡≡≡≡≡.| ∩... ;;;;;i|!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i|| i'⌒`i...||;i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!i!| ≡≡≡≡≡≡≡| | . .;;| . .. . ;;;;;i|;; [IIIIIIIIIIIII] ... |; ;ヘ;. ;ヘ. . ;ヘ. .;ヘ. .| | i^i i^i i^i ...i^i| ∩.. ;;;;i!|;;. i^i i^i . i^i || r'⌒`.i..||;;;i^i i^i i^i i^i ..i ..LI; . LI ..Li; LI; .| | Ll;; .Ll;; . 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' '"' .. ー. .. .. ... .... ー.. .. .. .. - . .. ... .. ./ ,,,, ,,,, \. .. .. ..ー .. .. . .. ... .. .. .. .. .. . .. .,.,,..、 ... .. .. ..ー .. .,.,,..、 ../ \. ,.,,.、. .. .. .. .ー. .. . .. .. . .. .. .. .. .. ... .. .. .. .. .. |i. |/ ,,, ,,,,,, ,,,,,,, ,,, \|i. | . .-. .. .. .~ .. .. .;;''.;; ; '' .; '' .;;''.;; ; ''/ \ .;;'' ;; ; ''. .. .. .. .. .. . __,,.. .-‐ '''" "~ ~""'' ´~"''~""''' ''"´~"'''"'' (~)~~ ""''´~"''~" "'''' '"´~"''"' ''""~~ ""''´~"''~ ""'''""'''""'' ハギヨシ「お待たせしました。こちらが本館です」 京太郎「あーうん、分かってたよ。とんでもないって事はさ」 京太郎「言葉も出ないってこう言う事だよね」 京太郎「そして――」 メイド「「「お帰りなさいませ。衣お嬢様」」」ズラーッ 衣「うむ。今帰ったぞ」 京太郎「――これだもんな」 784 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 00 47 24.37 ID uHK8sWdWo 透華「オーッホッホ!よくぞ参られましたわ!」 京太郎「あ、どうも。お世話になります」ペコリ 透華「龍門渕家の総力を挙げて京太郎さんを歓待いたしますわよ!」 京太郎「あ、ありがとうございます」タジタジ 衣「ただいまだぞ!とーか!」 透華「お帰りなさい。衣」 透華「あら?その巨大なぬいぐるみは一体……?」 衣「きょーたろーに取ってもらったのだ!」エッヘン 透華「それは良かったですわね。大事になさい」 衣「もちろん!」 透華「申し訳ありません京太郎さん。衣がお世話になったそうで」 京太郎「いや世話って言うか、ただゲーセンでぬいぐるみ取っただけなんですけどね」 透華「ふふふ。衣にとってはそれが何よりの事ですもの」 透華「今日は是非私達のおもてなしを受けていって下さいませ」 京太郎「ありがとうございます」 786 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 01 03 35.81 ID uHK8sWdWo 純「よ!久しぶり。衣をナンパしたんだって?」 純「まさか須賀がロリコンだったとはなぁ……」 京太郎「違いますから!」 純「ははは。冗談冗談」 京太郎「……はぁ」 智紀「……ご主人様」 京太郎「ぶふぉっ!?」 京太郎「い、い、いきなり何ですか!?沢村さん!」 智紀「……男の子はこう呼ばれるのが良いって聞いた」 京太郎「それは人それぞれですから」 智紀「む。残念」 一「じゃあ――旦那様」ボソッ 京太郎「なっ!?」クルッ 一「ふふふ。驚いた?」 京太郎「そりゃいきなり耳元でそんな事言われたら驚きますって!」 一「結構耳とか敏感?」 京太郎「……ちょっとだけ」 一「良い事聞いちゃった♪」 歩「国広さん。少しお戯れが過ぎると思うのですが……」 歩「こんにちは。京太郎くん」 京太郎「ああ、こんにちは。歩」 京太郎「いやぁ歩みたいな普通のメイドが居てくれて本当に良かった!」 京太郎「まさに君は地獄で仏、いや女神だ!」 歩「も、もう!冗談が過ぎます!///」 一「……む」 純「どうした?国広君?」 一「なんでもないよっ!」 790 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 01 27 37.83 ID uHK8sWdWo 透華「それでは中へどうぞお入り下さいませ」 京太郎「お邪魔しまーす」 京太郎「うはっ!やっぱ広いなー」 透華「そうでしょうか?これくらい普通かと」 京太郎「何処が普通やねーん!」 純「まぁまぁ仕方ねーって。透華は生まれてこの方この家に住んでるんだからさ」 智紀「最初に来たときは私も驚いた」 一「無駄に広いんだもん。掃除も大変だよ」 京太郎「でしょうねぇ……」 透華「何を話してますの?ささ、こちらにどうぞ」 京太郎「あ、どうも――ってやっぱりひろーい!」 京太郎「つーか調度品も何だか高そうな……」ソーッ 歩「ああ!ダメです京太郎くん」 京太郎「えっ?」 歩「その花瓶は億は下らないものですから、万が一の事があると……」 京太郎「ひぃっ!?」サーッ 透華「大丈夫ですわ。割ったとしてもそれぐらいのもの、幾らでも用意できますわよ」 京太郎「は、はぁ……」 京太郎(やっぱ金持ちは違ーよ、うん) 791 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 01 39 31.32 ID uHK8sWdWo 透華「さて、改めて京太郎さんようこそお越しくださいましたわ」 京太郎「すみません。こちらこそ急に押しかけて……」 透華「ふふふ。確かに少し驚きはしましたが、何時如何なるときも来客を拒まぬのが龍門渕たる者」 透華「ましてや衣が世話になったとあれば当然ですわ!」 透華「今からお帰りになられるまでは、御自分の家のようにくつろいでくださって結構ですわよ」 京太郎「あ、ありがとうございます」 京太郎(自分の家と違いすぎて全然くつろげない気もするけど……) 透華「あと、そうですね……用事や身の回りの世話をするものが必要ですわね」 京太郎「へ?」 透華「京太郎さんは誰がよろしいでしょうか?誰を選んでも問題ないとは思いますので、お好きなようになさってください」 京太郎「じゃ、じゃあ…… 794で」 1.純 2.智紀 3.一 4.歩 5.透華 6.衣 7.ハギヨシ 8.その他(内容併記) 801 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 01 56 45.49 ID uHK8sWdWo ハギヨシ 京太郎「じゃあハギヨシさんで」 京太郎(男同士の方が何かと気兼ねななさそうだし) ハギヨシ「私ですか?」 透華「確かにハギヨシは一番信頼が置けますけど……」 純「でも俺達以上に屋敷の事色々やらないといけねーし、須賀にかかりっきりにする訳にはいかねーんじゃねーの?」 一「そ、そうだよ!あんまりハギヨシさんに負担をかけちゃ悪いよ!」 智紀「……私はアリだと思う」 透華「どう致します?私は構いませんが、ハギヨシに任せますわ」 ハギヨシ「……では 804」 コンマ判定(コンマ反転) 01~40 申し訳有りませんが、私は執事ですのでお嬢様達から離れる訳には 【信頼度+0.5】 41~98 折角のご使命ですので喜んでお受けいたします 【信頼度+1】 ぞろ目44以外 【信頼度+3】 ぞろ目44 破魔矢発動 810 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 02 05 06.65 ID uHK8sWdWo 申し訳有りませんが、私は執事ですのでお嬢様達から離れる訳には ハギヨシ「申し訳有りませんが、私は執事ですのでお嬢様達から離れる訳には……」 ハギヨシ「指名して頂いたのに申し訳有りません」 京太郎「あ、いや俺の方こそ。ハギヨシさんの事を考えずに申し訳有りません」 純「まぁ仕方ねーよな。男同士の方が気が置けないのは分かるけど」 一「……」ホッ 智紀「……」チッ ハギヨシ「ですが京太郎君が指名してくれた事はとても嬉しかったですよ」ニコッ 京太郎「ハギヨシさん……」 歩「男の人の友情って良いですね!」 透華「そう言う訳で申し訳有りませんが、ハギヨシ以外で選んでくださいませ」 京太郎「分かりました。それじゃ…… 813で」 1.純 2.智紀 3.一 4.歩 5.透華 6.衣 7.その他(内容併記 817 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/28(木) 02 15 27.37 ID uHK8sWdWo 一 京太郎「それじゃあ一さんで」 一「し、仕方ないなぁー。指名されたら断れないもんね!」グッ 純「……すっげー喜んでるように見えるのは俺だけか?」ボソッ 智紀「……私もそう見える」ボソッ 透華「それでは一、京太郎さんがお帰りになられるまで専属メイドとしてお世話をしてくださいませ」 透華「くれぐれも粗相の無い様に」 一「分かってるって」 一「それじゃよろしくね。京太郎くん」 京太郎「こちらこそ、よろしくおねがいします」 829 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/29(金) 00 05 54.52 ID e/9f+nEOo 純「で、決まったは良いけどどうすんだ?」 純「飯まではまだ時間有るぜ?」 透華「そうですわね……」 透華「京太郎さんは何かやりたい事有ります?」 京太郎「お、俺っすか?」 一「もちろん。お客様なんだから」 智紀「……大抵のものなら用意できる」 衣「麻雀でも良いぞ!」 京太郎「え、えーっとそれじゃあ…… 831とか」 ※全員でやれる事 833 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/29(金) 00 18 24.85 ID e/9f+nEOo 王様ゲーム 京太郎「王様ゲームとか?」 純「おいおい!それは……」 透華「なるほど、いつぞやのリベンジですわね!」 衣「今度は衣が王様になるからな!」ワクワク 純「……絶対こうなると思った」 智紀「……でもよく覚えてた」 京太郎「いやぁ、透華さんが確かあの時やる気満々だったなぁと思い出しまして……」 一「無茶な事を言い出さないか、ボクは心配だけどね」 ルール 京太郎は指定コンマ以上もしくは以下で王様 王様指定安価は京太郎以外 番号は適当に割り振るので、命令される人物を書く(王様以外) 被ったら安価下 836 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/29(金) 00 27 43.18 ID e/9f+nEOo 純「ま、こうなったら面白そうな事を命令して楽しむのも有りだな」ニッ 智紀「……そんな事言ってると自分が泣く事になる」 純「お、智紀こそ覚悟しろよ?」 一「もう!二人とも変な事はやめてよね!」 京太郎(何か嫌な予感してきたぞ……」 衣「ハギヨシももちろん参加するのだぞ!」 ハギヨシ「私もですか?」 透華「そうですわ」 ハギヨシ「了解しました」 京太郎(まぁハギヨシさんなら無茶な事は言わないだろうし、いざとなれば操作してもらうことも……) 透華「それでは始めますわよ!」 みんな『王様だ~れだ!?』 838ののコンマが60以上なら京太郎が王様 それ以外は 839で指定された人物が王様 844 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/29(金) 00 33 30.18 ID e/9f+nEOo 京太郎 京太郎「っしゃあ!俺が王様だ!」 衣「む。またなれなかったぞ……」 透華「むきーっ!どうしてなれませんの!」 一「まぁまぁ。まだこれからだしね?」 純「そうそう。さっさと命令して次行こうぜ!」 智紀「……まずは軽めに」 京太郎「そうっすね」 京太郎「じゃあ 846が 848に 853する事とかどうですかね?」 856 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/29(金) 00 53 52.97 ID e/9f+nEOo 純が衣に投げ上げ高い高い5連発 京太郎「2番が5番を高い高いする!」 純「おっ、オレが2番だな」 純「さて誰だ?オレに高い高いされるのは?」 純「……ハギヨシは勘弁して欲しいが」 衣「……6番は衣だ」 純「あり?なんだ衣か」 衣「な、なぁきょーたろー。本当にやらねばならぬのか?」ウルウル 京太郎(うぐっ……) 京太郎「ま、まぁ嫌なら――智紀「王様の命令は絶対」い」 智紀「……でしょ?」 京太郎「は、はい」 京太郎(何故か沢村さんがノリノリだ) 純「つー訳だ。まぁすぐに終わらせてやるから我慢しろって」 衣「……仕方あるまい。なるべく高すぎないように――」 純「――なーんてな。いつも通りじゃ面白くないだろ?」ニィッ 衣「えっ?」ガシッ 純「ほーら!高い高い!」ポイ 衣「!!」 純「まだまだだぞー!」ポイッ 衣「た、高すぎ――」 純「もうちょい高目が良いか?」ポイッ 衣「や、やめ――」 純「まだまだいけそうだな!」ポイッ 衣「む、無理――」 純「よし!じゃあこれが最後だ!」ポイッ 衣「――――ッ!!」 858 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/29(金) 01 02 06.68 ID e/9f+nEOo 衣「……うっ」 透華「だ、大丈夫ですの!?」ナデナデ 衣「だ、大丈夫だ。息災無い……」フラフラ 一「もう!ちょっとやり過ぎだよ!」 純「すまんすまん。ちょっと力入れすぎたな」 京太郎「なぁ、気分が悪いなら止めようか?」 衣「いや、それには及ばぬぞ」 衣「絶対衣が王様になって純に命令するまでは諦めぬ!」 衣「さぁ!続けようぞ!」 京太郎「わ、分かったよ」 みんな『王様だ~れだ!?』 860ののコンマが30以下なら京太郎が王様 それ以外は 861で指定された人物が王様 863 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/29(金) 01 06 51.60 ID e/9f+nEOo 智紀 智紀「……王様は私」 衣「むぅ」 透華「また逃しましたわ!」 一「ともきーお願いだから空気読んでよ?」 智紀「善処する」 智紀「……では 865が 867に 870する」 871 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/29(金) 01 17 22.57 ID e/9f+nEOo 京太郎がとーかにプロポーズする 智紀「7番が1番にプロポーズする」 純「プロポーズって……女同士だったらどうするんだ?」 智紀「別に男同士でも構わない」 純「そう言う事じゃなくてだな」 京太郎「あ、7番俺っす」 ハギヨシ「残念ながら私は1番で有りませんね」 京太郎「……」ホッ 智紀「……チッ」 歩「私も1番じゃないですね」 衣「衣もだぞー」 純「オレも違う……って事は?」 一「ボクじゃないよ……残念だけど」 純「と言う事は――」 透華「……わ、私ですわ///」 875 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/29(金) 01 30 13.87 ID e/9f+nEOo 智紀「じゃあさっさとやって」 純「なんかえらく雑だな、おい」 透華「ちょ、ちょっとお待ち下さいまし!」アセアセ 透華「ほ、本当にやりますの?///」オソルオソル 智紀「王様の命令は絶対」 透華「で、ですが京太郎さんだってこういうのは……」 京太郎「あ、透華さん準備は良いですか?」 純「こっちは既に準備万端だぞ」 透華「あうっ……///」 一「まぁまぁ透華。これはあくまでお遊びなんだから、ね?」 歩「そうですお嬢様!道端の石ころか何かに言われたと思って」 京太郎「俺は石ころっすか……」 透華「わ、分かりましたわ!」 透華「この龍門渕透華。どんな命令であろうと逃げませんわよ!」 透華「さぁ!京太郎さん、さっさと済ませてくださいまし!!」 京太郎「分かりました」 京太郎「では、透華さん――いや、透華」 透華「は、はい!///」ドキッ 京太郎「お前とは色々違いすぎて頼りない俺だけど、きっとお前を幸せにしてみせる」 京太郎「だから――」 京太郎「――結婚してください」 \ヽ. _, -‐_'二>iー-、.,-、 ヽ V'´, -‐ ´ ∧ /| \ 〉 i ト、ヽ.//| \ / / ト、ヽY//! i i . / !|`゛゛ヽ"´!i | |. / ,イ|__, ゙、 |.!__ | // ´ ̄/. リ )|ハ ` | / 、_ヶ=/=ミ、 //;=i、_ | ,. '´//. / ヽiィ ノ`./.. iィ ; ィ´ ゙、 i // / ( ; ! ゙、 レiハ ,.ヘ __ /i i.ヽ / \ レ'|丶 ´ .,.イ / ハ i ヽ、_,ノ/ / \ N /\ ` ー-r< ! / /|/ リ `二ニ´ /__,∠) ノ ` vr'´ ∀ /_ノ_\_,ノ / /i i´  ̄ / / ケk゙、 ∧ .i ` 、 丶. | !/ .| Y / \ // ハ i ヽ / ゙、 ゙、 / i ) 透華「……はい///」 カン! 880 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/29(金) 01 38 43.93 ID e/9f+nEOo 純「いやーなかなか演技とは思えないほど、良い感じだったぜ二人とも」 歩「はい!まるで本物のプロポーズみたいでした!」 智紀「ばっちり」 京太郎「……///」 透華「……///」 衣「……辛いが、きょーたろーにならとーかを任せられるぞ」グスン 一「いやいや!衣、これは冗談だからね!?」 ハギヨシ「ふふふ。しかし近いうちにもう一度同じ事が起きたりするかもしれませんね」 一「もう!ハギヨシさんまで!」 透華「つ、次やりますよわよ!///」 { ` /,ヽヽ \ _, -‐ ´ ∟_ \ ヽ / \ /λ ヾ 、 \ へ / |iミ V.彡} l } ヽ 、 ー 、 j |l ノ j| | ゝ 〉 >、 ` ヽィュ_ |i ハ ゝ, {| ヘ \i / \ \``ゝ, }. / ヾ、ヽ ヽゝ `, ヽ / | , -‐ ` ヽ \ ノ. ∠`へ, ' ノ x弋 ヾミ 、 \ 〈 ',. | } } \ }´`ゝ~ ュ _ . 〃 i'〈弋 リ` ´{テ } 〉ヽハ , ヽ }. | ´ / ,,_ ゝ,,._ \ゝ 从 ,, , ` ,,, / 从 / ′. ヽ ヘ.__, -‐ ト _ >、  ̄ ` ヽ .\ ', ヘ ャー― , . /ヘ ゙,ソ /j ゝ ゝ ー,,ュ, -‐ ´ ー´,, ` ー- , } ヘ ` ヾ , ヽ ノ , ´{| ゝ /ノ\ `ゝ、  ̄ ゝー‐< ,, _`` ‐- ´ } ヽ ー < | f メ ⅳ \ \ `\ , -‐ `>ー- ェ 〉 \ /V ,ヘー- ュ ゝ ゝ、 ` ,, / /´´ \ \ .` ひ二つ ∧ `ヽ } ー 、 \ , -‐ ´ / ' / ヘ 〉 \ | 、 ノ ヘ ヽ } / ノ ノ 〉、 / i \ ', { 〉 \ \ 透華「今度こそ私が王様ですわ!!」 898 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/30(土) 00 37 46.72 ID tCWdRj5zo みんな『王様だ~れだ!?』 900のコンマが60以上なら京太郎が王様 それ以外は 901で指定された人物が王様 905 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/30(土) 00 45 12.88 ID tCWdRj5zo 衣 衣「わーい!衣が王様だー!」 透華「む。衣ならば仕方ないですわね」 純「ま、衣なら無茶な事はしねーだろ」 一「それなら良いんだけどね」 衣「そうだな……」 衣「 907が 908に 911すると言うのはどうだ?」 917 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/30(土) 01 11 04.89 ID tCWdRj5zo 純が京太郎にあすなろ抱き 衣「4番が5番を抱き締めると言うのはどうだ?」 純「随分無難だな。ま、衣だし仕方ねー……って、4番オレだわ」 一「純君が抱き締めるって似合いすぎでしょ。あ、ボクじゃないよ」 ハギヨシ「私ではありませんね」 智紀「……私も違う」 歩「私も違いますね」 透華「私も違いますわ。と言う事は……」 京太郎「……はい。俺です」 純「あはははは。お前かよ!」 智紀「これはアリ」 衣「おー!純ときょーたろーか。存分に抱き合うがいいぞ!」 京太郎「マジッすか……」 純「まぁまぁウチのお姫様じゃなかった王様もこう言ってるんだ。観念しな」 京太郎「……優しくしてくださいね」 純「ふっ。任せな」 一「……何これ」 918 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/30(土) 01 33 28.13 ID tCWdRj5zo 純「それじゃ準備は良いか?」 京太郎「は、はい」 純「んじゃ行くぞ」ギュッ 京太郎「!」 智紀「……」ドキドキ 一「むぅ……」 透華「……なんだか心がポカポカしますわ」 衣「素晴らしきかな。親愛の情を表すのにこれほどの物はあるまい」 京太郎(うわー何か女性に後ろから抱き締められるのって新鮮っつーか……) 京太郎(井上さんって結構良い匂いがするし、背中に確かな感触が///) 純「……須賀」 京太郎「は、はい!」ドキドキ 純「お前男なのに結構良い匂いするよな」 京太郎「うえっ!?」 純「でもやっぱ男らしくがっしりしてると言うか、オレとはやっぱ違うっつーか」 純「――好きだぜ。そういうの」 京太郎「!」ドッキーン 智紀「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」ブーッ 一「うわっ!?ともきーが鼻血を!?」 透華「あぁ何故かとても素晴らしいと感じてしまいますわ……」ウットリ 衣「と、とーか?」 歩「お嬢様!しっかりして下さい!」 ハギヨシ「……まさか衣様の命令が惨状を招いてしまうとは」 919 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/30(土) 01 40 34.56 ID tCWdRj5zo 智紀「……最高だった」ポタポタ 一「まだ出てるよ、ともきー」 純「いやぁ面白かったなー」 京太郎「お、俺は別に……」 純「でも今度は抱き締めてほしいかなー、なんちゃって」 透華「京太郎さん×純……アリですわね」 歩「お嬢様!?」 ハギヨシ「……皆様、そろそろお時間ですのでこれで最後に致しましょう」 京太郎「あ、もうそんな時間っすか」 透華「ぜぇ~ったいに王様になってみせますわよ!」 みんな『王様だ~れだ!?』 921のコンマが50以下なら京太郎が王様 それ以外は 922で指定された人物が王様 923 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/30(土) 01 44 50.85 ID tCWdRj5zo 京太郎 京太郎「あ、すみません。俺みたいです」 透華「どうしてなれませんのー!」 一「まぁまぁボクや歩、ハギヨシさんもなってないしさ」 純「こうなりゃさっさと命令して終わらせようぜ」 京太郎「分かりました。じゃあ 925が 926を 928して終わりです!」 930 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/30(土) 02 07 14.04 ID tCWdRj5zo 透華がハギヨシを膝枕 京太郎「6番が2番を膝枕して終わりです!」 純「あー俺はどっちも違うな」 智紀「……私も違う」 透華「6番は私ですわ!」 一「あ、透華が膝枕するのか良いなー。でもボクじゃないや」 歩「お嬢様の膝枕、是非堪能してみたかったのですが……」 衣「む。衣も違うぞー」 純「……と言う事は?」 ハギヨシ「…………私です」 透華「ハギヨシでしたか。では早く」ポンポン ハギヨシ「ちょ、ちょっとお待ち下さいお嬢様。流石にそれは……」 京太郎「あ、珍しくハギヨシさんが困ってる」 智紀「……レア」パシャパシャ 一「ハギヨシさん真面目だからなぁ」 透華「何を迷ってますの。早くなさい」 ハギヨシ「ですがゲームとは言え、お嬢様の膝を使う訳には……」 衣「ハギヨシ!」 ハギヨシ「は、はい」 衣「王様ゲームにおいて、王様の命令は絶対。その中において主従関係なぞあって無きようなもの」 衣「速やかに実行する事こそが真の執事たるものと心得よ!」 931 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/30(土) 02 17 46.22 ID tCWdRj5zo ハギヨシ「……了解しました」 ハギヨシ「それではお嬢様。失礼させて頂きます」 透華「どうぞ」ポフッ ハギヨシ「……重くありませんでしょうか?」 透華「大丈夫ですわよ」 透華「……ですが懐かしいですわ」 透華「昔はよく私がこうして膝枕して貰ってましたわね」 ハギヨシ「……そう言う事も有りましたか」 ハギヨシ「お嬢様は大変大きく、そしてお美しくなられました」 透華「ふふふ。ハギヨシはあの頃から変わりませんわ」 透華「そしていつも私達を見守って下さってますし」 ハギヨシ「……それが私のお役目ですから」 透華「だとしても大変感謝しておりますのよ?貴方が居たおかげで私達は本当にたくさんの事を成し遂げることが出来ました」 ハギヨシ「それは違いますお嬢様。全てはお嬢様達が勝ち取ったものです」 ハギヨシ「私は多少のお力添えをさせて頂いただけですので」 透華「……相変わらず貴方は謙虚ですわね。まぁそれが貴方の良い所ですが」 透華「ですが、だからこそ言わせてくださいまし」 透華「――ありがとう。ハギヨシ」 ハギヨシ「……勿体無いお言葉です」 934 名前: ◆UNNCnfZIx6[saga] 投稿日:2014/08/30(土) 02 24 06.62 ID tCWdRj5zo 純「……ちくしょう。泣かせるじゃねーか」グスン 智紀「……自分が恥ずかしい。死のう」ズーン 一「グスッ……透華」グスグス 歩「うわぁぁぁぁぁん。やっぱりお嬢様は最高ですぅぅぅぅぅ!」エグエグ 衣「うむ。これぞ真の主従愛である」グスッ 京太郎「俺、蚊帳の外の感ハンパないけど、でも感動しました!!」ボロボロ 透華「ちょ、ちょっとそんな泣かないで下さいまし!恥ずかしいですわ///」 ハギヨシ「……ふふふ。お嬢様は本当に良いご友人と家族を持たれましたね」ニコッ <<前に戻る|7月へ|次に進む>>
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http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1343224835/ ─清澄高校麻雀部 京太郎「おっしゃ、リーチだ!」タンッ 優希「通らないじぇ!ローン!12000!」パタッ 京太郎「いいいいいい!?」 まこ「京太郎は相変わらず弱いのう」 京太郎「うう…そういやお前点数計算できたのか」 優希「当たり前だ!わたしをあまり舐めないでほしいじょ!」 咲「京ちゃんはできないんだっけ?」 京太郎「おう、まだやっと役を覚えたばかりだからなぁ」 和「この際ですし私たちが教えてあげたらどうでしょうか?」 京太郎「の、和がそういうなら…教えてもらおうかな///」デレデレ 咲「…」ムスッ 久「そうねぇ。県予選に向けての特訓もしたいけど須賀君も一応部員だしね」 京太郎「い、一応すか…」ションボリ まこ「個人戦で点数申告できず恥かくのもかわいそうじゃな」 優希「どうせ焼き鳥だから問題ないじぇ!」 京太郎「なんだとー!」 久「はいはいストップ。須賀君、早速だけど教えていくわ。ノートか何か用意してね」 京太郎「あ、はい!」 久「まずは基本からね。麻雀の点数の単位には"符(ふ)"と"翻(ハン)"があるの」 久「翻も符も、大きければ大きいほど点数も大きくなる訳。一般的に○符△翻、と表記されるわ」 久「翻は役の数や難易度によって上下し、符は最終的な待ちの形や構成面子によって上下するわ」 和「点数は、(1の位を切り上げた符の合計)*16*2^(翻数) を計算し、10の位を切り上げんですよ」 京太郎「お、俺そんな計算瞬時に暗算なんてできない…!終わった…」 まこ「まぁこんな計算はする必要ないんじゃけどな」 京太郎「へ?」 優希「実際は 符の合計を出し、符と翻数に応じ暗記しておいた点数表から点数を思い出す のが普通だじぇ!」 ■基本 麻雀の点数には"符(ふ)"と"翻(ハン)"がある 翻は役によって上下し、符は最終的な待ちの形や構成面子によって上下する 点数計算は、符の合計を出し符と翻数に応じて暗記した点数表から思い出すのが普通 優希「では符がどんな時に付くのかを教えてやる!」 優希「まず、"副底(ふうてい)"という20符が必ず付くじぇ!」 優希「これはどんな手にも絶対に付く基本点のようなものだじょ」 優希「副底は基本的には20符だけど"門前でロンあがりした場合に限り"、30符付くじぇ!」 咲「いくつか例外もあるけどね。基本20符、門前ロンで30符だよ。これに他の符を足していくの」 京太郎「つまりどんな手でも20符以下になることは無いのか?」 まこ「そうなるな」 ■副底(ふうてい) 基本符としてどんな手でも絶対に20符が付く 面前でロン上がりした場合に限り30符となる 久「次に、具体的に手牌のどこに符が付いていくのかを説明するわ」 京太郎「お願いします」 久「ざっくり言うと四面子1雀頭のすべて、待ちの形、上がりの方法に符が付くの」 京太郎「部長…全然分かんないっす」 久「今から細かく説明するわ」 久「まずは雀頭からね。アガった時に雀頭にしている牌の種類によっていくつか符が付くわ」 久「中張牌(2~8牌)、老頭牌(1、9牌)、客風牌(オタカゼ)を雀頭にしている時は符は付かないの」 久「自風牌、場風牌、三元牌を雀頭にすると2符付くわ。連風牌(W東、W南)は4符付くのよ」 京太郎「ふむふむ」カキカキ ■雀頭によって付く符 中張牌 0符 ・老頭牌 0符 ・客風牌 0符 自風牌 2符 ・場風牌 2符 ・三元牌 2符 連風牌 4符(2符の場合もある) 咲「次は私が面子に付く符を説明するね」 咲「まず順子だけど、順子には中張牌、老頭牌関係なく符が一切付かないの…」 咲「一方で刻子は牌によって付く符が変わるよ」 咲「中張牌は暗刻で4符、明刻(ポン)で2符付くの。ヤオ九牌(1,9字牌)は暗刻で8符、明刻で4符つくんだよ」 まこ「これは雀頭とは違って場風とか関係ないから要注意じゃ」 京太郎「つまり対々とかの刻子が多い手のほうが点数が高くなりやすいのか?」 咲「そんな感じ。三暗刻とかは翻数に似合わず高得点になったりするよ」 ■面子によって付く符 その1 ・順子に符は付かない ○刻子の場合 ・中張牌は 暗刻で4符、明刻で2符 ・ヤオ九牌は 暗刻で8符、明刻で4符 咲「次は槓子の説明だね!槓子は他の面子と比べてたくさん符が付くよ!」 咲「槓子も刻子と同じで中張牌、ヤオ九牌で符が違うの」 咲「中張牌の槓子は暗槓で16符、明槓で8符付くよ。ヤオ九牌は暗槓で32符、明槓でも16符もつくの!」 咲「槓ドラも増えるし、嶺上開花も付くし、たくさん符が貰えるから点数が上がりやすいよ!」 京太郎「お、おう」 優希「ちなみに槓したりして符が変わって点数が上がることを"テンパネ"なんて言ったりするじぇ!」 ■面子によって付く符 その2 ○槓子の場合 ・中張牌は 暗槓で16符、明槓で8符 ・ヤオ九牌は 暗槓で32符、明槓で16符 まこ「面子や雀頭以外にも最終的な待ちの形によっていくつか符が付くんじゃ」 まこ「まず両面、シャンポン待ちには残念ながら符が付かん…」 まこ「しかしカンチャン、ペンチャン、単騎待ちで和了ると2符付くんじゃ!」 まこ「これはノベタンのようにアガリ牌が2種類以上あっても変わらんぞ」 まこ「注意が必要なのはシャンポンじゃ!愚形でもシャンポン待ちだけ符が付かんからの」 まこ「けど、シャンポンはツモなら暗刻、ロンなら明刻として扱うから刻子としての符は付くんじゃ」 まこ「これを計算しないで過少に申告してしまう人もいるから気をつけい」 京太郎「ふぅ~むなるほどなるほどーなるほどー」 ■待ちの最終形による符 両面 0符 嵌張 2符 辺張 2符 双ポン0符 ※刻子としての符は付く 単騎 2符 優希「最後にアガリの方法によって付く符について説明するじぇ!」 京太郎「アガリの方法・・・?」 優希「ツモ、ロンのことだ!単刀直入に言うとロンでは符が付かず、ツモなら2符付くじょ!」 優希「ただし例外として平和のツモアガリには2符は付かないじぇ!」 京太郎「え?なんでだよ」 優希「知らないじぇ!」 ■和了方法による符 ロンは付かない ツモは2符付く ★例外その1 平和ツモは2符が付かない 久「例外もあるけど大体こんなところね」 京太郎「まだなんかあるんですか…?」 和「はい、七対子とか…」 京太郎(覚えきれるかなぁ…) 咲「じゃあ早速例題だよ、京ちゃん」カチャカチャ 京太郎「おう」ドキドキ 咲「・・・よしできた、翻数と点数はいいから符の合計だけ言ってみて」 東1局南家 56m567p888s發發發南南 ツモ 4m 京太郎(ええと・・・まずツモアガリだから副底が20符、ツモで2符) 京太郎(雀頭が南で南家だから2符付く) 京太郎(順子の456m、567pは0、中張牌の暗刻だから888sに4符、ヤオ九牌の暗刻だから發發發に8符かなぁ) 京太郎(待ちは両面だから0、つまりええと 20+2+2+4+8=36 か) 京太郎「さ、36符だ!!」ドキドキ 咲「正解!」パチパチ まこ「でも計算するときは40符になるんじゃ」 京太郎「えっ、それってどういう…?」 和「麻雀の符計算は1の位を切り上げるんです。今回のような36符は6を切り上げて40符と扱います」 久「31符でも1を切り上げて40符扱いになるわ。この辺ちょっと不平等よね」 ■符の切り上げ 符は計算するとき、"1の位を切り上げる"ため、31符だろうが39符だろうが40符として扱う 和「ここでちょっと無駄知識です。点数計算が既に分かる方、何故執拗に符の1の位を切り上げるかご存知ですか?」 和「麻雀の点数は場ゾロ等で16倍、1翻縛りで実質2倍、符は10点単位で切り上げているので10倍されてます」 和「つまり320倍という乗算をしています。実はこれ、最初に流行っただけで全く意味は無いんです」 和「計算が複雑化した理由はこの点数の引き伸ばし方法のせいです」 和「"320倍"は100の倍数である事を保障できない為に10の位の切り上げという余計な作業が必要になります」 和「細かく符を与えて10の位に端数が出やすくしておきながら切り上げてしまう・・・」 和「320倍という引き伸ばし方が非常にお粗末だった為に複雑になってしまったんですね」 優希「まったく分かんないじぇ!」 京太郎「同じく!」 久「さて、符が計算できるようになったところでいよいよ点数計算に入るわ」 京太郎「はい!」ドキドキ 久「須賀君、優希が最初に"符の合計と翻数に応じ、暗記した点数表から点数を思い出す"と言ったの覚えてる?」 京太郎「あ、忘れてました…」 優希「酷いじょ…京太郎は私の言葉は聞いてないのか!」 京太郎「すまんすまん」 久「次はその点数表を暗記するの。ここが点数計算の鬼門でもあるから頑張ってね」 咲「これが点数表だよ。親と子の2つあるの」スッ 京太郎「サンキュー。どれどれ・・・」ピラッ 子の場合┏━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┓┃ 子 ┃ 30符 ┃40符 ┃50符 ┃ 60符 ┃ 70符 ┃ 80符 ┃90符 ┃100符 ┃ 110符 ┃┣━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━┫┃1翻. ┃1000 ┃1300 ┃1600 ┃ 2000 ┃2300 ┃ 2600 ┃2900 ┃ 3200 ┃3600 ┃┣━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━┫┃2翻. ┃2000 ┃2600 ┃3200 ┃ 3900 ┃4500 ┃ 5200 ┃5800 ┃ 6400 ┃7100 ┃┣━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━┻━━━┻━━━┻━━━┻━━━┫┃3翻. ┃3900 ┃5200 ┃6400 ┃ 7700 ┃. ┃┣━━━╋━━━╋━━━┻━━━┻━━━┛. ┃┃4翻. ┃7700 ┃ 満貫(8000.) ┃┣━━━╋━━━┛ . ┃┃5翻. ┃ .┃┣━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┃6翻. ┃ ┃┣━━━┫ 跳満(.12000.) ┃┃7翻. ┃ ┃┣━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┃8翻. ┃ ┃┣━━━┫ ┃┃9翻. ┃ 倍満(16000.) ┃┣━━━┫ ┃┃10翻 ┃ ┃┣━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┃11翻 ┃ ┃┣━━━┫ 三倍満(24000) ┃┃12翻 ┃ ┃┣━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┃13翻 ┃ .数え役満(32000.) ┃┗━━━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 親の場合┏━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┳━━━┓┃ 親 ┃ 30符 ┃ 40符 ┃50符 ┃ 60符 ┃ 70符 ┃ 80符 ┃90符 ┃100符 ┃ 110符 ┃┣━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━┫┃1翻. ┃1500 ┃ 2000 ┃2400 ┃ 2900 ┃3400 ┃ 3900 ┃4400 ┃4800 ┃5300 ┃┣━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━┫┃2翻. ┃2900 ┃ 3900 ┃4800 ┃ 5800 ┃6800 ┃ 7700 ┃8700 ┃ 9600 ┃10600 ┃┣━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━┻━━━┻━━━┻━━━┻━━━┫┃3翻. ┃5800 ┃ 7700 ┃9600 ┃ 11600┃. ┃┣━━━╋━━━╋━━━┻━━━┻━━━┛. ┃┃4翻. ┃17700 ┃ 満貫(12000.) ┃┣━━━╋━━━┛ . ┃┃5翻. ┃ .┃┣━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┃6翻. ┃ ┃┣━━━┫ 跳満(.18000.) ┃┃7翻. ┃ ┃┣━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┃8翻. ┃ ┃┣━━━┫ ┃┃9翻. ┃ 倍満(24000.) ┃┣━━━┫ ┃┃10翻 ┃ ┃┣━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┃11翻 ┃ ┃┣━━━┫ 三倍満(36000) ┃┃12翻 ┃ ┃┣━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┃13翻 ┃ .数え役満(48000.) ┃┗━━━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 京太郎「…………」 優希「はっはっは、分かる!よく分かるじぇ京太郎の気持ち!こんなの覚えられないじぇ!」 京太郎「ぐぬぬ…」 和「須賀君、実はこれを全て記憶する必要は無いんですよ」 京太郎「え、そうなの?」 優希「ドーン!そこでこの簡易版の出番だじぇ!私もこれで覚えたぞ!ほれ」スッ 京太郎「簡易版…?」ピラッ 表② ─────────────────────── 子の場合 30符 40符 50符 1翻 1000 1300 1600 2翻 2000 2600 3200 3翻 3900 5200 6400 4翻 7700 8000 8000 親の場合 30符 40符 50符 1翻 1500 2000 2400 2翻 2900 3900 4800 3翻 5800 7700 9600 4翻 11600 12000 12000 ──────────────────────── まこ「これは表①の子の場合、親の場合の一部を抜粋したもんじゃ」 京太郎「こ、これだけ?」 和「満貫以下の和了点の9割近くはこの範囲に収まります」 和「読み方はこんな感じです。何度も口に出すと覚えやすいですよ」 【語呂合わせ暗記表】 ──────────────────────────── 子の場合 30符 40符 50符 1翻 セン センサンビャク センロッピャク 2翻 ニセン ニーロク ザンニ 3翻 ザンク ゴーニー ロクヨン 4翻 チッチー マンガン マンガン 親の場合 30符 40符 50符 1翻 センゴヒャク ニセン ニーヨン 2翻 ニッキュウ ザンク ヨンパー 3翻 ゴッパー チッチー クンロク 4翻 ピンピンロク マンガン マンガン ──────────────────────────── 京太郎「な、何度も口に出す…///」ムラムラ 和「また、この簡易表を覚えるだけで60符から110符までの全ての手を計算できるんですよ」 京太郎「え…?しかしどうやって…」 和「須賀君、表①を良く見て下さい。何か法則性に気が付きませんか?」 京太郎「うーん…特には」 和「では30符と60符、または40符と80符など、倍になっている符の点数に注目して下さい」 京太郎「…? あっ!分かった!」 ■点数表の覚え方 麻雀のアガリのほとんどは30~50符の間に収まる とにかく【語呂合わせ暗記表】を"何度も声に出して"覚えよう 京太郎「30符2翻と60符1翻の点数が同じだ!40符2翻と80符1翻も!」 和「そうです。麻雀の点数は、"1飜上げた点数は符を2倍にした点数と同じ"なんです」 和「この法則で60符、80符、100符の点数を簡易表から導き出せます」 京太郎「なるほど~」 和「そしてもう一つ、50符以降は足し算で計算できるんです」 京太郎「足し算?」 和「はい。例えば90符2翻ならば、50符+40符で90符と考えます」 和「90符2翻の点数は、50符2翻と40符2翻の点数の和と等しいはずです」 京太郎「ええと…あ、なってるなってる!」 和「この2つの法則で110符までの全ての手を簡易表から計算できるんですよ」 ■点数計算の法則 x符y翻 の点数は、2x符y-1翻 あるいは x/2符y+1翻 の点数と等しい 60符以降の a+b符c翻 の点数は、a符c翻 + b符c翻 で求まる 久「どう?覚えられそう?」 京太郎「跳満以降は簡単ですしこれなら覚えられそうです!」 咲「あのね京ちゃん、表②の他にも実はもう1つ表があるの」 京太郎「なん…だと…?」 咲「ツモアガリの時の親、子の支払い表だよ」スッ 表③ ─────────────────────────── 子の場合(子,親) 30符 40符 50符 1翻 300,500 400,700 -- 2翻 -- 700,1300 -- 3翻 1000,2000 -- -- 4翻 2000,3900 -- -- 親の場合 30符 40符 50符 1翻 -- 700 -- 2翻 1000. -- -- 3翻 2000 2600 -- 4翻 3900 -- -- ─────────────────────────── 京太郎「あれ?なんだかスカスカだな…」 久「ツモった場合"親なら点数を子の3人が均等に支払い"、子なら"親が半分、残りを子で折半する"のよ」 久「空欄の部分は表②の簡易表から暗算で出せるわ。これは例外を纏めた物という事ね」 久「余裕があれば空欄を埋めて覚えてもいいのよ?」 ■ツモ和了時の清算方法 親がツモ和了・・・子の3人が均等に支払う 子がツモ和了・・・親が半分を支払い、残りを子で折半する 久「さて、表はおしまいにして例外の解説に入るわ。須賀君、これは何点だと思う?」カチャカチャ 子 55m224466p33449s ロン 9s ドラ 5m 京太郎「ええっと…七対子ドラ2か」 京太郎(副底は門前のロンだから30符だ) 京太郎(雀頭が7個と見るのか?だけど中張牌だから符はつかない) 京太郎(単騎待ちだから2符付いて、合計32符、切り上げて40符かな) 京太郎「40符4翻の8000点ですか?」ドキドキ 優希「ぜーんぜん違うじぇ!」 久「実は"七対子はどんな形でも25符で固定"という決まりがあるのよ」 京太郎「25符…?簡易表に25符って無いですね…表①にも無いです」 久「そこで和の言ってた"1飜上げた点数は符を2倍にした点数と同じ"法則よ」 久「これは七対子の25符にも言えるわ。つまりこの25符4翻は、50符3翻の点数に等しいわけね」 京太郎「ええと50符3翻、つまり…6400ってことですか…?」 久「正解!表②と[■点数計算の法則]を覚えれば七対子も問題なく計算できるのよ」 優希「これが出来るようになるとこういう問題も解けるじぇ!」カチャカチャ 優希「・・・出来たじぇ!犬、これは何点だ!」 子 22334m678p33567s ツモ 4m ★例外その2 七対子は25符で固定である 京太郎「ええっと…」 京太郎(まず翻数がツモ、平和、タンヤオ、イーペーコーで4翻) 京太郎(副底が20符、雀頭は中張牌だから付かない) 京太郎(面子は順子だけだから符は付かない、待ちも両面だから付かないな) 京太郎(最後にツモ符だけどこれも平和ツモだから例外として付かないんだっけ) 京太郎(だからこの手は20符4翻!!つまり40符3翻と同じ点数ってことだな!) 京太郎(つまり5200、ツモだけど例外に無かったから暗算か。親が1/2、子がそのまた1/2だから…) 京太郎「1300,2600だ!」 優希「正解だじぇ!よしよし!」ナデナデ 京太郎「やめい」 久「じゃあ次ね。須賀君、これは何点?」カチャカチャ 子 34m66s チー234p チー567m チー678s ロン 2m ドラ 6s 京太郎(ええと…翻数はタンヤオで1翻、頭がドラ2、678sにドラ1で4翻、鳴きのロン上がりだから副底が20符) 京太郎(雀頭も中張牌、面子も全部順子だから符が付かない。待ちも両面だから付かない) 京太郎(ってことは20符4翻、さっきと同じ40符3翻と同じ。でも今度はロンだから…) 京太郎「5200ですか?」 久「残念。計算自体は合っているんだけど実はこれも例外の一つなの」 京太郎「と、いいますと…?」 久「"鳴いた手の平和の形は30符"として扱われることが多いわ」 京太郎「そうなんですか、なるほど。つまりこれは、ええっと…7700…?」 久「正解。けどこれは地域やゲーム、店によって違ったりするから確認を取ることをオススメするわ」 和「ちなみに天鳳や雀龍門などのメジャーなネット麻雀では30符で統一されてますよ」 ★例外その3 喰い平和形は30符として扱う 久「あとは積み棒ね」 京太郎「積み棒…?」 久「ええ。流局したり親が連荘すると1本場、2本場と増えていくでしょ?あれのことよ」 久「基本的に1本場につき全員の点数が300点アップするわ。ルールによっては1500点だったりもするけど」 優希「1500点のルールは『バセンゴ』とか呼ぶじぇ!」 久「あと点数申告の仕方だけど、例えば1本場で8000点なら『8000は8300』みたいに言えばいいの」 久「別に8300だけでもいいんだけどできるだけ丁寧な方がいいわ」 まこ「じゃがいちいち役まで申告したり、数字を言わずに満貫、跳満とだけ申告するのはマナー違反とする場所も多いから注意せい」 池田「へっくし!」 咲「どう?大体覚えた?」 京太郎「おう。あと1つ聞きたいんだけど…例えばこんな形」カチャカチャ 子 123m123p1235567s ロン 5s 京太郎「これだと平和三色の3900、5s単騎と見ての三色のみ2600の2種類に取れると思うんだが・・・」 京太郎「これってどっちが正しいんだ?」 咲「ええとね、こういう場合、点数の高い方を申告しなきゃいけないの」 咲「これなら3900の方だね。これを高点法っていうんだよ」 和「ネット麻雀などでは自動で一番高い点数を申告してくれますよ」 京太郎「なるほど」 久「さて、大凡覚えたところでおさらいしましょうか」 まとめ1 ■副底 基本20符 面前でロン上がりした場合に限り30符 ■雀頭によって付く符 中張牌、老頭牌、客風牌 0符 自風牌、場風牌、三元牌 2符 連風牌 4符 ■面子によって付く符 順子に符は付かない ○刻子の場合 ・中張牌は 暗刻 4符 明刻 2符 ・ヤオ九牌は 暗刻 8符 明刻 4符 ○槓子の場合 ・中張牌は 暗槓 16符 明槓 8符 ・ヤオ九牌は 暗槓 32符 明槓 16符 まとめ2 ■待ちの最終形による符 両面、双ポン 0符 嵌張、辺張、単騎 2符 ■和了方法による符 ロン 0符 ツモ 2符 これらを足し合わせ、1の位を切り上げた数字をその手牌の符の数とする ●注意すべき例外 ツモ平和には2符が付かない 七対子は25符で固定である 喰い平和形は30符として扱う まとめ3 簡易点数表 ─────────────────────── 子の場合 30符 40符 50符 1翻 1000 1300 1600 2翻 2000 2600 3200 3翻 3900 5200 6400 4翻 7700 8000 8000 親の場合 30符 40符 50符 1翻 1500 2000 2400 2翻 2900 3900 4800 3翻 5800 7700 9600 4翻 11600 12000 12000 ──────────────────────── ■点数計算の法則 x符y翻 の点数は、2x符y-1翻 あるいは x/2符y+1翻 の点数と等しい 50符以降の a+b符c翻 の点数は、a符c翻 + b符c翻 で求まる ■その他留意点 手の解釈で点数が変化する場合、一番高くなる点数を申告する 積み棒は1本場につき300点加算される まとめ4 ■ツモ和了時の清算方法 親のツモ和了・・・子の3人が均等に支払う 子のツモ和了・・・親が半分を支払い、残りを子で折半する ※いくつか例外が存在する。下記の表はそれを纏めた物 ─────────────────────────── 子の場合(子,親) 30符 40符 50符 1翻 300,500 400,700 -- 2翻 -- 700,1300 -- 3翻 1000,2000 -- -- 4翻 2000,3900 -- -- 親の場合 30符 40符 50符 1翻 -- 700 -- 2翻 1000. -- -- 3翻 2000 2600 -- 4翻 3900 -- -- ─────────────────────────── 久「よし、こんなところでしょうね」 咲「京ちゃん頑張ったね!」 和「あとは何度も練習したり実戦の中で覚えていくだけですね」 まこ「とにかく練習するのが1番じゃけんの」 優希「じゃあ早速打つじぇ!」 京太郎「おうよ!」 久「ロン、18000。終了ね」 京太郎「はい………」 . 咲(京ちゃん…2半荘連続焼き鳥…) 久(これは…) 優希(気まずいじぇ…) まこ(やっぱり先に) 和(基本的な技術を教えるべきでしたね…) カン
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京太郎(インハイでうちの麻雀部はかなりの活躍をした) 京太郎(それを見て俺は、今まで以上に麻雀をうまくなりたいと思った) 京太郎(そして色々あって和に教わることになったが) 和「須賀くん、それはこの前教えましたよ。ちゃんと覚えていれば振り込みませんよ」 和「そこはそうじゃなくてこっちです。昨日教えてさっき復習したばかりですよね?」 和「ですからそうじゃないと言っているじゃないですか。ちゃんと計算していれば……」 京太郎(かなりスパルタでした) 久「あーあ。和もそこまで言わなくていいんじゃない?」 和「いえ、厳しくと言ってきたのは須賀くんです。私はちゃんとやってるだけです」 まこ「それはそうじゃが……いきなりお前さんと同じようなやり方は無理じゃぞ?」 優希「うむ。昔のどちゃんに本気で勉強教わった時はしんどかったじぇ……」 咲「京ちゃん大丈夫?なんか、煙が出てるように見えるけど……」 京太郎「だ、大丈夫だ。これくらいでへばってられねーって」 和「そうですよ。ほら、ここはどうします?」 京太郎「えーっと……これ?」 和「…………全然違います」 京太郎「……はい、すいません」 和「それじゃ、私達は残っていきますから」 まこ「おう、戸締り頼んだぞ。後、ほどほどにな」 優希「のどちゃんも京太郎に襲われないうちに……おーい京太郎、大丈夫か?」 咲「じゃあ、お先に。それと、無理は駄目だよ」 久「それじゃーねー」 京太郎「お、お疲れ様です」 バタン 優希「それにしても毎日よくやるじぇー」 まこ「ちぃと厳しすぎる気もするんじゃが……京太郎の実力も前と段違いじゃからのう」 咲「それに和ちゃんも、前より上手くなってますよね」 久「そうねー。毎日残ったり、休日も一緒に練習したり、みっちりよねー」 久「実はあの二人、付き合ってるとか?」 和「……はい、それで正解です」 京太郎「ふー、やーっとか。まだまだだな、俺」 和「そうですね、全然です」 京太郎「うわぁまたドストレートに言うな」 和「まだまだ覚えないといけないことや、気を付けないといけないところがありますからね」 京太郎「はいはい。でもありがとな和」 和「はい……その、"京太郎くん"……」 京太郎「おや。須賀くんじゃなかったのか?」 和「それはみんなの前と、麻雀の練習中だけです!……その」 京太郎「おう。どうしてほしい?」 和「……ギュッって、してほしいです」 京太郎「はいよ」ギュッ 和「ん……あったかくて、安心できます」 京太郎「そりゃ良かった」 和「……やっぱり、少し厳しすぎでしょうか」 京太郎「え?」 和「みんなからも言われますし。その、呼び方まで変えてますし」 和「京太郎くんが告白してくれたのも、麻雀を私に教えて欲しいって言ってくれたのも嬉しいです」 和「だけど……やっぱり私は、、ん!?」 京太郎「……ん、ふぅ」 和「い、いきなりは…」 京太郎「和」 和「は、はい」 京太郎「こうしてくれって言ったのは俺だし、今みたいなやり方で俺もいいって思ってる」 京太郎「それに、少しでも上手くなって、和やみんなに近付きたいんだ」 京太郎「だから、これからもよろしく頼む」 和「……は、はい!!」 京太郎「ところで、わざわざ毎日残ってこうやって抱き合ったりとかするのは…」 和「それがないと私が耐えられないです」 京太郎(和は教える時は厳しい師匠だが、二人っきりだと可愛い自慢の彼女だ) 京太郎(少し厳しすぎることもあるが……それでも俺は幸せ者だよな) カンッ!!
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【告白シリーズ】 咲「好きだよ、京ちゃん」ニコッ 照「これからもずっと――一緒にいてくれる?」キュッ 菫「私は君が好きだ」バンッ 優希「京太郎! 大好きだじぇ!」ダキッ 和「私と……付き合ってもらえますか?」ドキドキ 久「惚れた方の負けって奴かしらね……ふふっ、好きよ須賀君」ウィンク 美穂子「京太郎君……私、貴方が好きなのっ!」ブルブル 透華「京太郎、もう私――この気持ちを、我慢できませんわ」ギュッ 洋榎「あの、その……面と向かって言うんは恥ずかしんやけど……好き、なんや」ポリポリ まこ「わしはお前のことが好きなんじゃ、京太郎」クスッ ゆみ「そろそろ……この関係を次に進めても、いいんじゃないか?」ジィー マホ「えへへっ、須賀先輩っ♪ マホと付き合ってくれますよね?」ニコニコ 豊音「きょ、京太郎君のこと……// ちょー大好きだよー」カァァ 淡「なになにー? この超絶可愛い淡ちゃんと付き合いたいって~? うん、いいよ!」ツンツン 宥「京太郎君と付き合えたら私、もっと……あったかく、なれるかな?」モジモジ 桃子「……見て貰えなくても、感じて貰えなくても。私は――お前の傍にいたいっす」ジワッ エイスリン「ワタシ、スガクンノコト……スキ」ソワソワ 煌「私が隣に立って、貴方が前を見つめている。そんな未来を、夢見てしまうんです」クスクス 小蒔「京太郎さん……あの日からずと、お慕いしています」ペコリ 玄「あのね、京太郎君のことを考えると私――おかしくなっちゃいそうなんだ……//」ボシュゥゥ 怜「うちの残りの人生――ほんの少ししかあらへんけど、京太郎にもらって欲しいんや」ウルウル 咏「余計な言葉なんて必要無いんじゃね? し、しらん……けど……」チラチラッ 京太郎「……」 どうする! どうすんのよ俺!!
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クリスマスネタ 宮守サンタ 京太郎「皆に二階に行けと言われてきたが寒いな」 塞「京太郎ー、もう降りてきていいよ」 京太郎「わかったぞ…やっと炬燵にはいれる」 スタスタ…階段を降りて行き 京太郎「皆、なにをして…サンタだと」 塞「どう似合うかな?」ミニスカサンタ エイスリン【サンタの絵】水着サンタ 胡桃「今日はクリスマスだからね」ミニスカサンタ 豊音「サンタさんになってみたんだよー」通常サンタ 白望「ダルい…」通常サンタ 塞「それで京太郎、感想は?」 京太郎「ぐ、グッジョブ」鼻を抑えながら エイスリン「アリガトウ!」 京太郎「NZはクリスマスは夏だから水着なのか?」 エイスリン「ウン!」 豊音「クリスマスプレゼントもあるんだよ」 ゴソゴソ…持っていた袋を漁り 京太郎「プレゼント?」 豊音「これだよー!」鍋セット 京太郎「…任せろ俺が最高の鍋を作ろう」 豊音「やったー!」 胡桃「私も手伝おうか?」 京太郎「いや、ミニスカ見れた御礼をしないといけないのでいいですよ」 胡桃「ば、馬鹿!」カァァ 白望「ダルい…」炬燵に入っており 京太郎「シロも似合ってるぞ」 白望「ありがとう…」カァァ 京太郎「今日はつくりがいがある鍋だぞ!」
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淡「…」 照「…と、言って別れたものの、その後私が京ちゃんに会う事は何年も無かったんだ」 誠子「どうして?」 照「咲が…妹が私と彼が会うのを良しとしなかったんだ。何度かこっそり病室に行こうとしても 、常にアイツが病室に居たし、彼の退院後は彼にベッタリになった」 照「…私は、アイツに責められるのが怖かった。京ちゃんが怪我したのは、紛れもなく私のせい だったから。だから、文句も言わなかった」 照「…いや。それも実は言い訳で、京ちゃんに会うのが怖かったのかも知れない。その証拠に、 公園に行くのを避けるようになった」 照「ついでに、進学校を白糸台に変えた。…まあ、これは私達姉妹の喧嘩が原因で元から危うか った両親の関係に亀裂が入って、別居が決まったって言うのも大きな原因ではあるんだけど」 照「次第に私もアイツとは険悪な関係になっていってね。妹とは、こっちに来るまでずっと険悪 なままだったよ」 照「…だから、アイツが突然一人で東京に来た時は、驚いた」 照「『今までごめん』って、謝られたんだ」 照「京ちゃんが、妹にもさっきと同じ話をしたらしいんだ。話すのは2人目だったらしい」 照「それがアイツに心境の変化を与えたそうだ」 照「…けど、今度は私の方が苛立ってしまって。京ちゃんが傍に居るからって余裕ぶってるのか この野郎って」 照「まるで、完全に妹に京ちゃんを取られてしまったような気になってしまったんだ」 照「…昔話はこんなとこかな」 淡「そんな話があったんだ…」 菫「なるほどね。そんなこんなで変な性格の歪み方はしたが、なんとかグレずに済んだ、と」 照「…」 菫「…ふう。少し疲れたな。照。それで、それが最近の挙動不審にどう繋がってるかだが」 照「ああ、それは…」 菫「長い話は却下だ。三行で話せ」 淡「エエエエエエエエエエエエ!!?」 菫「うるさいなぁ。何を驚いてるんだ淡は」 淡「いや、だって!さっきまでの話聞いて!ええ!?」 尭深「」カチカチ 淡「何スマフォ弄ってるんですか渋谷せんぱああああああああああああああああああい!!?」 誠子「それでさー。うん。うん。だから頼むよー。そっちだって悪い話じゃ…」 淡「いつの間に電話してるんですか亦野せんぱああああああああああああああああああい!!」 照「…」 淡「ああ!ほら!!宮永先輩黙りこくっちゃって…」 照「京ちゃんに会いに行った」 照「告られた」 照「テンパッて逃げた」 淡「本当に纏めちゃった!!」 菫「馬鹿だろお前」 淡「ひっでええええええええええええええええええええええええええ!!!」 照「…」ショボン 菫「…はぁ」 淡「ちょっと!!この人でなしども!!」 菫「なんださっきから五月蝿い淡。その人でなしてのは私達の事か」 淡「あったりまえです!!」 照「…」 淡「あのですねえ!この鬼畜ども!折角宮永先輩が勇気出してこんなヘヴィなはなししてくれた のに、なんですかこの態度!畜生ですか!」 菫「って言われてもなぁ…いや、馬鹿だろ。なんだこの救いようのない青臭いコミュ障の昔話は 。私なら恥ずかしくて墓の下まで持っていく」 淡「っきいいいいいいいいいいいいい!!」 菫「五月蝿いなぁ…」 淡「あああああああああああ!!」 菫「誠子」 誠子「アイアイサー」キュッ 淡「ゴフッ」 菫「もういいぞ。少しは血の気は収まったか?」 淡「血の気が引きました」 菫「よし。…で、誰に頼んだんだ」 誠子「ああ。最近内に良く取材に来る記者に」 淡「…は?」 誠子「スクープやるからって言ったら、今すぐ車で来ると」 淡「へ?」 菫「よし。尭深。清澄までの地図は」 尭深「バッチ」グー 菫「ん。それじゃあ、車来るまでに各自準備しておくように」 淡「…へ?」 菫「…照」 照「…」 菫「照!!」 照「」ビクッ 菫「お前も準備しろ。急げよ。これから清澄へ行くから」 照「…え」 菫「話は分かった。お前の凹んでる理由も分かった。ついでに解決法も分かった。だから解決に 行く」 照「ちょ…」 菫「拒否権は無いぞ。今までお前には3年間散々振り回されてきたんだ。最後の最後で渾身の力 で振り回してやる」 照「ま…」 菫「要は、お前がその『京ちゃん』に想いを伝え返せば全部解決なんだろう?簡単じゃ無いか」 照「ば、馬鹿言うな!そんな簡単な話しじゃ…」 菫「簡単ですぅー。お前が勝手にややこしくしてるだけじゃないか。テンパッて逃げてなければ 今頃ハッピーエンドだろ?浮かれたお前を私がぶん殴ってそれで終わってたはずだろ?なんでこ んな面倒な事にしてくれてるんだ。ふざけやがって」 照「む、無茶苦茶…」 菫「無茶苦茶なのはお前だ。『京ちゃん』の身になれ馬鹿。想い人に一世一代の懺悔したと思っ たらいつの間にか蒸発されて、数年後に奇跡的に出会って思い切って大告白したら逃げられて… 可哀想過ぎて泣きそうになったわ。アホか」 淡「言われてみれば…」 照「うぐ…」 菫「しかも、お前の話だと妹もその子が好きなんじゃないのか?よく今まで無事だったと思うよ 。運の良さだ・け・は!流石だと言っておいてやる。馬鹿」 淡「確かに奇跡ですよね」 照「おふ…」 誠子「先輩。車が来たみたいです」 菫「よし。それじゃあ行くか」 尭深「これ、カーナビです」スッ 菫「ありがとう。借りておくよ」 照「…」 菫「照」 照「はい」 菫「さっきの反論は」 照「ありません」 菫「ん。じゃあ行くぞ」 照「はい」 泡(あの宮永先輩が子羊のようだ…) 菫「じゃあ、誠子。尭深。明日の部活は任せた。私と照はサボりだ」 誠子「了解」 淡「…」 菫「…淡」 淡「は、はい!!」 菫「……お前も来るか?」 淡「…」 照「あの…菫。一応私がメイン…」 淡「…お願いします。私も連れて行って下さい。弘世先輩」 照「淡まで…」 菫「…ふ。いいだろう」 照「…」 菫「行くぞ。こんなのは、要は行動なんだ。さっさと行ってさっさと済ませるに限る。だろう? 照」 照「はい」 誠子「今から行けば、最短で明日の日の出前くらいまでには長野に到達するでしょう」 菫「よし。わかった。なら、現地に着いたら即効連絡して呼び出せ。連絡先は勿論知ってるんだ よな?」 照「さっき聞いたけど…日の出前に連絡って常識的にどうなの」 菫「お前が言うな」 淡「ばっさりだ…」 菫「さて…それでは諸君。…行くぞ!!」 照「…はい」 淡「…はい」 数時間前 長野→清澄の在来線の中 京太郎「…くー…くー…」 咲「…」 優希「…なあ、咲ちゃん」 咲「…なに?優希ちゃん」 優希「…私は、早く告白しちゃった方がいいと思うじぇ」 咲「え…」 優希「…ん。なんでもない」 咲「それってどういう…」 優希「まだ清澄まで時間あるよな?私は寝るじょ」 咲「あ…」 優希「おやすみ」 咲「…」 優希「…すー…すー…」 咲「…」 咲「…私…」 咲「私は…」 咲「…」 ガタン…ガタン…ガタン… 清澄駅ホーム 優希「さて…それじゃあ、私はさっさと帰るじょ。じゃあな、お前ら」 京太郎「…ん。おう…」 咲「うん…」 優希「…はぁ」 優希「じゃーーーあーーーなーーー!!」 京太郎「うおっ!?」ビクッ 咲「きゃっ!?」ビクッ 優希「ったく…な~に二人してテンション下げてるんだか」 咲「…」 京太郎「わ、悪い悪い…ああ、じゃあな。また明日…」 優希「…京太郎。もしかして」 京太郎「?」 優希「…ん。なんでもないじょ」 京太郎「?」 優希「咲ちゃん」 咲「…うん。また明日。ばいばい」 優希「…ん」 咲「…」 優希「…京太郎」 京太郎「なんだよ」 優希「もう暗いし、咲ちゃん一人で帰らすの、心配だじょ。お前、送ってってやれ」 咲「はっ…!?」 京太郎「…分かった」 優希「うっし!」 京太郎「お前はどうすんだよ」 優希「私のような強者はお前ごときの見送りは不要よ」 京太郎「なんだよそりゃ」 優希「ふっふっふ。…じゃあ、任せたじょ」 京太郎「…」 咲「ゆ、優希ちゃん…」 優希「咲ちゃん」 咲「…なに?」 優希「…」 咲「…」 優希「にひっ」 咲「あ…」 優希「じゃあね~~~~」タッタッタッタッタッ 咲「優希…ちゃん…」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…」 咲「あ、あの…京ちゃ…」 京太郎「行こうぜ。咲」 咲「…うん」 京太郎「…」スタスタ 咲「…」スタスタ 京太郎「…」スタスタ 咲「…」スタスタ 京太郎「…」 咲(…沈黙が、重い。京ちゃんと二人っきりで歩いて、家まで送って貰って…本来は凄く嬉しい はずなのに、居心地が悪いよ) 京太郎「…」 咲(…さっき電車の中で優希ちゃんに言われた言葉が頭に響いてるから?) 咲(…早く告白した方が良いって…そんな、いきなり言われても、私は…どうすれば) 京太郎「…」 咲(それに、京ちゃん、さっきから元気が無い) 咲(ううん。正確には、さっき長野駅のホームでトイレに行ってから。あれから帰ってきた時、 京ちゃん、目に見えて落ち込んでた) 咲「…」 京太郎「…咲」 咲(何かあったの?京ちゃん。電車の発車時間ギリギリに帰ってきて、電車に乗ったと思ったら すぐにふて寝みたいに眠っちゃって…ちょっと怖かったよ) 咲「…」 京太郎「咲?」 咲「あ…う、うん。なに?」 京太郎「お前んち、どっちだったっけって」 咲「え?」 京太郎「いや、お前んち行くの久しぶりだったから。ちょっと記憶曖昧で」 咲「あ、それは…」 咲「…あれ?」 咲「…わかんない」 京太郎「…お前に聞いた俺が馬鹿だった」 咲「むっ…」 京太郎「しっかし参ったなー」 咲「…う」 京太郎「どうすっかね」 咲「えっと…」 京太郎「仕方ねーなー。スマフォで確認すっか。住所は流石に覚えてるよな?」 咲「うん…って、馬鹿にしすぎ!」 京太郎「ははは…で、住所は?」 咲「あ、えっとね…」 咲「ん。この道見覚えあるよ。ここからなら大丈夫」 京太郎「そっか。じゃあもう地図は見なくて大丈夫か」 咲「けど、おかしいなぁ。いつも通ってる道のはずなのに…」 京太郎「それはあれだな。今がもう真っ暗だからだ」 咲「…」 京太郎「夜道は、いつもと違って見えるもんだ」 咲「…」 京太郎「ま、しかたねーよ」 咲「…なんか」 京太郎「ん?」 咲「なんか、優しいね。京ちゃん」 京太郎「…そうか?」 咲「うん。いつもなら絶対私の事からかい倒すのに」 京太郎「…」 咲「…なにかあったの?」 京太郎「…」 咲「その…さっき、の。長野駅で」 京太郎「んー…」 咲「…」 京太郎「まあ、な」 咲「…」 京太郎「…」 咲「…あの」 京太郎「…」 咲「…何があったか…聞いてもいい?」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…どうすっかなー」 咲「…」 京太郎「ん~…」 咲「…」 京太郎「…誰にも言うなよ?」 咲「…」 京太郎「…実は、さっきさ」 咲「…うん」 京太郎「ふられちった」 咲「え…」 京太郎「…さっき、電車の待ち時間に。照ちゃんに、さ。告白しに行ったんだわ」 咲「…」 京太郎「…好きです!っつってさ。そしたら、泣かれちゃった。で、ごめんね!って言われて、 そのまんま新幹線に乗ってっちまった」 咲「…」 京太郎「まさかあんだけ拒否られるとはなー。せめてお友達のままで…くらいだったらまだ良か ったんだけど…いや。これもやっぱヘコむか」 咲「…」 京太郎「以上」 咲「…」 京太郎「…昔から、ずっと好きだったんだ。諦めかけてたんだけど、まさかの偶然の再開で、テ ンション上げすぎちまったんかね」 京太郎「そりゃ冷静に考えて、昔ちょっと一緒に遊んだガキなんかに今更告られてもどーせいっ ちゅーねんって感じだわな」 咲「…なにそれ」 京太郎「…悪い。キモかったか?引いた?」 咲「…」 京太郎「…そりゃそうだよな」 咲「…」 京太郎「…っと。着いたんじゃね?確かここだろ。お前んち」 咲「…」 京太郎「…じゃ、俺は帰るから」 咲「…って」 京太郎「さって…と。それじゃあ、また明日な。咲」 咲「待って…」 京太郎「お、今日はそう言えばまだまだオリンピックやってるよな。よし、ダッサイふられ男は コンビニ寄って菓子でも買って、自棄食いしながら朝まで生観戦…」 咲「待って!!」 京太郎「…どうした?」 咲「…ちょっと、待ってて…!!」 京太郎「…はぁ」 咲「いい!?待っててね!絶対待っててね!!絶対絶対!黙って帰ったら駄目だからね!!」 京太郎「お、おう…」 咲「っ!!」ダッ バタン ダダダダダダ ドタン バタン ドタン バタン ゲシッ ウギャアアアアアアアア!! 京太郎「?」 バタン 咲「おまたせ!!」 京太郎「お、おう…」 咲「あ、あのね!?京ちゃん!」 京太郎「ああ」 咲「…きょ、今日、お父さんお仕事で帰って来れないんだって」 京太郎「え…?けど、お前んち電気点いて…」 咲「…消し忘れて出てっちゃったんだって。置き書きしてあった」 京太郎「いや、それはなんかおかしくな…」 咲「だ、だから!!!」 京太郎「はい」 咲「…せ、折角だから…わ、私。京ちゃんの自棄食いに付き合ってあげるよ」 京太郎「…」 咲「…うちでテレビ、一緒に見てかない?」 京太郎「咲…」 咲「…う、うち、さ。テレビ結構大きいし、お菓子も飲み物もいっぱいあるし、その、私の他に は誰も居ないから大声出しても迷惑にならないし…」 京太郎「…」 咲「え、えっと…あ、そうだ。それに、今から家に帰ってたら見逃しちゃう競技も、今から私の うちで見たらいっぱい見れるし…」 京太郎「…」 咲「…ど、どう…かな?」 京太郎「…」 咲「あ、か、勘違いしないでよ!あくまで京ちゃんの残念会の自棄食いに付き合ってあげるのが メインなんだからね!」 京太郎「…」 咲「…って、わけなんですが」 咲「い、いかがでしょうか…」 京太郎「…はは。ありがとうな。…それじゃあ、お言葉に、甘えちまおう…かな」 咲「…」 京太郎「…なんて」 咲「う、うん!!じゃあ、入って!」グイッ 京太郎「おっとっと…」 長野行きの車の中 淡「」ソワソワ 照「…淡?」 菫「…どうした淡」 淡「えっと…その…ま、まだ長野には着かないんでしょうかね」 照「いや…まだまだだけど」 菫「やっと首都高を出たところだぞ」 淡「うぐぐぐ…」 照「どうしたの?」 淡「えっと…その…お、お小水が…」 照「ああ」 菫「淡。どんまい」 淡「ええええ!?」 菫「我慢しろ。事態は一刻を争うんだ。…最悪、黙っててやるから」 淡「お、鬼!悪魔!人でなし!」 菫「くー…」 淡「うわああああああん!寝たふりしたこの人ーーー!」 照「菫…それは流石に淡が可哀想…」 記者「って言うか、私の車の中でおしっこなんか漏らさないでよ。記事にしちゃうわよ」 淡「そんなんされたら自[ピーーー]るぅううううううう!!」 菫「仕方ないな…記者さん。次のパーキング停まってあげて下さい」 照「お願いします」 記者「もとからそのつもりだわよ…っていうか、もう着くわよ」 淡「ほっ…」 記者「はい、到着。行ってこーい」 淡「ありがとうございますううううう!!」タタタタ 記者「ついでに、悪いけど私もちょっとコンビニ行ってくるわ。眠気覚まし買ってくる」スタスタ 照「…」 菫「お前も行ってこい」 照「えっ…」 菫「気分転換も必要だろ。ついでに適当に菓子でも買ってくればいい」 照「…」 菫「今からソワソワしても、仕方ないだろ?今の内にちょっとリラックスしておきなさい」 照「…うん。じゃあ、ちょっと行ってっくる」 菫「あ、ついでにコーヒー買ってきてくれ。UCCのブラックのな。財布は出すの面倒だからお前 の奢りでいいぞ」 照「…」 菫「なんだその顔。ほら、行け」シッシ 照「…はい」スタスタ コンビニ 照「…菫、最近酷くない?」 照「…えっと。お茶と、お菓子買ってこう。あとは、菫のはなんだっけ。…あれ?ミルク入りの コーヒーだっけ。…あれ」 照「まあいいや。このカフェオレにしよう。ミルクと砂糖たっぷりのほうが美味しいし」 照「淡にもなんか買っていってあげよう。コーラでいいかな」 照「…消臭ガム買ってこう」 照「えっと、あと、あぶらとり紙も」 照「…ん?」 照「…あ。折角長野に行くんだし、時間有ったら久しぶりに実家に寄ってもいいかな。みんなに 昔の話したら、すっきりしちゃった。咲とも仲直りしたい…」 照「…うん。それじゃあ、これを買っていこう」ヒョイヒョイヒョイ 照「あとは…」チラッ 照「…えっ?」 照「そ、そんな…」 照「なんでコレがここに…!!?」 車内 照「ただいま」 菫「おかえり」 照「はい、コーヒー」スッ 菫「サンキュ…って、これ、カフェオレ…はぁ。お前は…」 照「?」 菫「…まあいい。で?随分と大量に荷物を抱えているけど、どうしたんだ?適当に菓子でも…と は言ったが、車内で宴会でも始める気か」 照「ふふ…」 菫「…?久しぶりに笑ったな」 照「見ろ、菫」 菫「んあ」 照「奇跡だ」ガサガサ 菫「なにが…って」 照「じゃーん。東京ばな奈」 菫「…まあ、高速のコンビニって、たまに名物とか置いてるよな」 淡「すいませーん!おまたせしましたー」タッタッタ 記者「おらぁ!!気合入ったぁ!!」タッタッタ 照「2個はお土産。後は私が食べる」モックモック 淡「うわ…また東京ばな奈だ…」 菫「…見てるだけで胸焼けしそうだ。やっぱりブラックが良かったな」 記者「うおおおおおおお!!レッドブル8本効っくぅうううううう!こっから先はぶっとばすぞ おおおおおおお!!」 淡「え…」 記者「振り切るぜ!!!!」 淡「なにを…」 ギュルルルルル ブオオオオオオオオオオオオオオオオン!!! 宮永家 咲「…」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…」 咲「オリンピック、凄いね」 京太郎「ああ…」 咲「…お菓子、食べないの?」 京太郎「ん…まだいいや」 咲「そっか…」 京太郎「うん。もうちょっとテレビ見るのに集中する」 咲「…」 京太郎「…」 咲「……い」 京太郎「…咲?」 咲「…京ちゃんはズルイよ」 京太郎「…あ、ああ、悪い。お邪魔してる立場なのに、1番テレビ見やすい正面のソファに座っ ちまって」 咲「…」 京太郎「…あれ、そうじゃなくて?」 咲「…」 京太郎「咲?おーい」 咲「…ううん。その通り」 京太郎「ごめんごめん。今どけるから…」 咲「いいよ」 京太郎「え?」 咲「そのままでいい」 京太郎「…」 咲「…」スッ 京太郎「ちょ!?」 咲「…私が京ちゃんの隣に座るから」 京太郎「お、お前…!」ドキドキ 咲「」ピトッ 京太郎「あわわわわ」 咲「…ねえ」 京太郎「は、はい!?なんでしょう!!」 咲「…これって、今どっちが勝ってるの?」 京太郎「え?あ、テ、テレビか!?え、えっとな!これは…」 咲「…」 京太郎「それで、これは…こういうルールで…」 咲(…京ちゃん) 京太郎「で、これはこっちが…………で………」 咲(京ちゃん…) 京太郎「この大会のルールだと……で……………の場合は…」 咲(京ちゃん…!!) 咲(好き) 咲(大好き) 咲(大大大大大好きだよ) 京太郎「……だって…………ってルールで…俺の好きな………は……」 咲(愛してる) 咲(…けど、京ちゃん) 咲(私、私、私…!!) 咲「…」 咲(私は……っっっっっ!!) 咲「…ありがとう」ボソッ 京太郎「…へ?」 咲「…」 京太郎「…咲?」 咲「…」 咲(…私は、京ちゃんには告白しないよ) 咲「…」 京太郎「…寝ちまったのか?」 咲(好きだけど。愛してるけど。告白しないよ) 咲「…」 京太郎「…そっか。寝ちまったか…」 咲(うん。私は…眠ってしまったの) 京太郎「…」 咲「…」 咲(…京ちゃんの好きな人が、お姉ちゃんなのなら…) 咲(私は、京ちゃんに告白しないんだ) 咲(絶対に。絶対に告白してあげないんだ…) 咲(してあげないんだから…) 咲(…京ちゃんが、言っちゃったから悪いんだよ?) 咲(私が、それを知ってしまったから…) 咲(だから、告白しないんだよ) 咲(…京ちゃん、今私が身体を寄せた時に、ドキドキしてくれたでしょ?) 咲(…だから、告白してあげないんだよ) 京太郎「…咲」スッ 咲「…」 京太郎(…止めた。寝てる咲に何しようとしてんだ俺は。頭撫でるつもりか。さっきの今で。… 馬鹿野郎。これ以上屑になる気か俺は) 京太郎「…はぁ」 京太郎(…咲がもたれ掛かってるし。動けないな) 京太郎(…俺も、寝よう) 京太郎「…」 咲(…京ちゃんが、お姉ちゃんを好きだから悪いんだよ) 咲(京ちゃんが、お姉ちゃんに告白したから悪いんだよ) 咲(…京ちゃんの中の私が、お姉ちゃんに負けてたって、知ってしまったから) 咲(…だから、私は、告白しないんだ。私は京ちゃんに告白しないよ。京ちゃんが私に告白して くれるなら応えてあげるけど) 咲(…お姉ちゃんに、負けたまんまじゃ、応えてあげないんだから) 咲(京ちゃんは寂しんぼだから、もしかしたら今私が本気で告白したら、応えてくれるかもしれ ないけど) 咲(…けど、それをしたら、お姉ちゃんにも、優希ちゃんにも顔向けが出来ないから) 咲(…だから) 咲(…だから、ねえ京ちゃん) 咲(…私、馬鹿だよね) 咲(…だけど、決めたんだ) 咲(…京ちゃんを、本気で惚れさせてやるって。お姉ちゃんに勝って、京ちゃんの告白に『しょ うがないなー』言って応えてあげるって) 咲(それまで、京ちゃんの1番はお姉ちゃんで良いよ) 咲(けど、絶対に負けないから) 咲(…負け…) 咲(…怖いけど) 咲(不利かもしれないけど) 咲(今のままじゃ、お姉ちゃんがその気になったらあっという間に終わってしまうけど) 咲(…時間もないし、勝ち目も全然見えないないけど) 咲(…それでも、私はこんな不器用な戦い方をする自分を、誇りに思える。肯定できる。だから 、闘う) 咲(…) 咲(…私) 咲(…馬鹿だなぁ) 咲「…」 京太郎「…すう…すう…」 咲「…」パチッ 京太郎「…すう…すう…」 咲「…京ちゃん?」 京太郎「…すう…すう…」 咲「…寝たの?」 京太郎「…すう…すう…」 咲「…寝たんだね」 咲「…」 咲「…京ちゃん」 咲「…待っててね」 咲「それと」 咲「ごめん」 咲「…あとは」 咲「…ばーか」 咲「…」 咲「…」チュッ 咲「…」 咲「…ほっぺただけは、貰っておくよ」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 咲・京太郎「「…すう…すう…」」 未明 清澄 記者「着いたぁああああああああああ!!…すみません。体力の限界ですので休ませて下さい」 菫「…着いた、か。ご苦労さまです。ふう。流石に田舎だけあって清々しい空気だ」ノビー 淡「うぐぅ…」フラフラ 照「ごふぅ…」フラフラ 菫「なんだお前ら。随分とフラフラじゃないか」 淡「だって…あの激しい運転…」ヨロヨロ 照「…」 菫「情けない…これからが本番だというのに…」 淡「化物ですか先輩の体力」 照「えう…」 菫「…照?」 照「うぷ…」 菫「…おい」 照「…ごぷ」 菫「おい!」 淡「ちょ!?まさか…!」 記者「ま、待って宮永さん!せめて車の外に…」 照「えろろろろろ…」ゴッポォォ 記者「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!」 淡「うわぁ…」 菫「やっちまいやがった…」ハァ 照「ギボジワルイ」ウルウル 記者「」 淡「高速の車の中であんなに甘いもの食べるから…」 菫「…おい。大丈夫か?」 照「まずい。死ぬ」 菫「参ったな…流石にこんな状態のコイツにターゲットを会わせるわけにもいかないし…」 淡「どこか、休める場所とかありませんかね」 記者「」 淡「…記者さん、真っ白になってます。…すみません。せめて安らかに…」ナームー 菫「この辺はとんでも無い田舎だしな。休憩出来そうな場所あるか?ホテルとか、カフェとか、 マンガ喫茶とか」 照「…無い。間違いなく」フラフラ 菫「むむむ…」 淡「かと言って、宮永先輩のゲロまみれの車の中は…」 菫「却下だ」 照「その辺の道端でも大丈夫…」 菫「却下。虫が多い」 淡「じゃあ、どうしましょうか」 菫「…照」 照「なに…」 菫「…お前の家はどこだ」 照「…?」ポヘ? 菫「いや。お前の実家だよ。こんな時間に訪ねるのもアレだが、実家なら休憩くらい出来るだろ うが」 淡「あ、ナイスアイディア」 照「えー…」 菫「なんだ。嫌そうな顔だな」 照「なんか咲に顔合わせにくいっていうか…」 菫「お前、今更なぁ…」 照「むぅ…」 菫「兎に角だ。この辺は虫多いし、暑いし、私はいい加減一刻も早くクーラーの効いた室内に行 きたいんだよ」 淡「それが本音ですか」 照「菫、酷い」 菫「五月蝿い。いつまでも駄々捏ねてるとそのトコロテンのような頭をシェイクするぞ」 照「ごめんなさい」 淡(この人にだけは、本当に逆らわないようにしなければ…) 菫「分かったな?それじゃあ早く案内しろ。迷ったらシェイクだ」 照「はい」 淡「あの…」 菫「ん?」 淡「記者さんは…」 記者「」 菫「…記者さん」 記者「あ、は、はい…」 菫「今晩中には東京に戻りたいので、車の中綺麗にしておいて下さい」ニコッ 記者「…」 菫「ありがとうございます。では、よろしく。…さ、行くぞ、照」ズンズン 照「はい…」トボトボ 淡(哀れな…って) 淡「…」チラッ 記者「…」 淡「…えっと」 記者「…?」 淡「…よ、よろしくお願いします!」ペッコリン 記者「…」 淡「弘世先輩ー!宮永先輩ー!待ってくださいよー!」トテテテテ 宮永家 京太郎「…ん」パチッ 咲「あ、起きた?」 京太郎「咲…」 咲「おはよ」 京太郎「…おはよう。今何時?」 咲「まだ5時前だよ」 京太郎「なんだよ。ぜんっぜん寝てねーじゃん…」 咲「ふふ…狭いソファーの上に二人だったからね。無理な体勢でよく寝れなかったのかも」 京太郎「」ドキッ 咲「京ちゃん?」ズイッ 京太郎「あ、ああ…なんでもない」 咲「そっか」 京太郎「お、おう…あ、そういえば今日学校じゃん。授業道具取りに行かなきゃ…」 咲「まだ結構時間はあるよ?」 京太郎「そうだけど、風呂入ってねーしシャワーくらい浴びてきてーし」 咲「…うちの浴びてく?」 京太郎「はぁ!?」 咲「…ふふふ。なんちゃって」 京太郎「お前なぁ…」 咲「あはは!」 京太郎「んじゃ、行くぞ。お邪魔しました…」 咲「ちょっと待って」 京太郎「なんだよ」 咲「私、早起きしたから、朝ごはん作ってたの」 京太郎「…」 咲「ついでだから、食べてかない?」 京太郎「…いいの?」 咲「うん。あと、私はもう食べたし、これからシャワー浴びてくるから」 京太郎「…」 咲「私が上がってきたら、一緒に学校行こ?」 京太郎「…」 咲「京ちゃんが家でシャワー浴びてる時間くらい、外で待ってるから」 京太郎「咲…」 咲「それじゃあ、行ってくるね。あ、ご飯は炊飯器から好きなだけよそって良いよ!おかわりも ご自由に!」タタタタ 京太郎「…行っちまった」 京太郎「もう配膳されてるし」 京太郎「目玉焼きに、味噌汁に、肉じゃが?」 京太郎「…ま、いっか。折角だし、いただきますか」 京太郎「…」ゴソゴソ 京太郎「…」パクッ 京太郎「…ん」 京太郎「んまい」モグモグ 京太郎「…」モグモグ 京太郎「…」モグモグ 京太郎「…」モグモグ 京太郎「…」モグモグ 京太郎「…ごちそうさまでした」ペッコリン 咲「ふう。いいお湯だった」スタスタ 京太郎「ぶふっ!」 咲「あれ、どうしたの?京ちゃん」 京太郎「…いや、なんでもないです」 咲「そう?」 京太郎「…」 京太郎(すでに制服だけど…湯上りだから髪濡れてて艶っぺー!?) 京太郎(くっそ…!なんなんだよ昨日から!このぉ…咲の癖にぃい…!) 咲「…ご飯、どうだった?」 京太郎「ん。美味かったよ。ごちそうさま」 咲「そう。良かった。お粗末さま」ニコッ 京太郎「…」 咲「洗い物は帰ったらするから、じゃあ、もう出ようか」 京太郎「ん?あ、ああ…そうだな」 道端 照「あれ…えっと…」キョロキョロ 菫「…」 淡「…」 照「えーっと…こっちがあれで、あっちがそれで…えっと…」 菫「…おい。ジモティ」 照「あれ…」ウロウロ 淡「宮永先輩って…」 照「あ、こ、この道!この道なんだか見覚えがある!」 菫「当たり前だ」 淡「…さっきもこの道通りましたよ」 照「…困った。道が変わってる」 菫「お前の生まれ故郷は不思議のダンジョンか」 淡「ああ。それなんか納得しました」 照「あれ?なんで?あれ?」 淡「迷ったんですね…」 菫「まさか本気で生まれ育った故郷で道に迷う奴が居るとは…」 照「あううう…あ、こ、こっち…かも…」 菫「おい、淡。コインランドリー探せ。コイツ一回乾燥機で回してやる」 淡「落ち着いて下さい弘世先輩」 照「しまったな…どうやって私はこの町で生きてきたんだろう」 菫「本当にな…」 照「…キボジワルヒ」 淡「またですか!?」 菫「ほら、道端行け。幸いこの辺田んぼばかりだ。お前の酸っぱいゲロも肥料になろう」 照「オボロロロロロロ…」 淡「…私、なんだか泣けてきました」サスサス 菫「それにしても…ふう。どうしたものか。このままじゃ我々はこのド田舎で遭難してしまうか もしれん」 淡「人様の街を…」 照「…はぁ。はぁ」 淡「…あ、もう大丈夫ですか?」 照「ん」 淡「…なんか、この人随分大人しくなりましたね」 菫「そうだな。麻雀部では威張り腐ってる癖にな」 照「…」 淡「…」 菫「ん?何か言いたそうな顔だな」 淡「いえ。何も」 菫「そうか」 淡(逆にこの人は何故こんなに理不尽なのだろうか) 照「…っ」ピクッ 菫「…ん?」 淡「どうしたんですか?宮永先輩」 照「…ねえ、何か聞こえない?人の声…」 淡「え?ん…言われてみれば確かに」 菫「おお、丁度いいじゃないか。道を尋ねられる」 淡「あ、確かに」 照「…」 菫「良かった、これで遭難を免れられるぞ。早く道を押しえて貰って宮永家に行こう。流石に歩 き疲れた」 照「…」 淡「そうですね。私もお腹すいちゃいましたし…シャワー借りられないでしょうか」 照「…」 菫「…照?」 照「…この声」 淡「…宮永先輩?」 照「…聞き覚えがある」 菫「は?何を…」 照「あっちだ…!」タッ 菫「あ。おい、照…!」 淡「えっ!?えっ!?えっ!?」 菫「淡!ぼさっとするな!追うぞ!」ダッ 淡「あ…は、はい!!」ダッ 咲「 」 京太郎「 」 咲「 」 京太郎「 」 淡「…そして、勢い良く走っていった割にコソコソ後ろをつけるんですね」コソコソ 照「…うん。あの子達が、妹の咲と、私の好きな人の須賀京太郎君」コソコソ 淡「良くあの遠距離で確認できましたね。今だって顔を確認出来るような距離じゃないのに」 照「二人は私の大切な人だもん」 淡「…そうですか」 菫「…何を話してるかは聞き取れないが随分親しげじゃないか。それにこんな時間に二人で歩い て…もう付き合ってるんじゃないのか?今は朝帰りに的な」 照「」ガーーーン 淡「弘世先輩!」 菫「いや、でもあれはどう見ても」 照「…」クスン 淡「ほらぁ。また凹んじゃったじゃないですかぁ…」 菫「面倒くさい…わかったわかった。まだ付き合ってない付き合ってない」 淡「…」 照「…そう、かな」 菫「ああ。大丈夫だ」 照「」ホッ 淡「信じた!?」 菫「しかし、それでもあの二人が随分仲良さそうなのは間違いないぞ」 照「あわわわわ」オロオロ 淡「面倒な人だなぁ…」 菫「どうする?照。まさかここで会うとは色々と手間が省けた感じではあるが…」 照「こ、心の準備まだ出来てないよ…」 菫「だよなぁ…」 照「ど、どどどどうしよう、ねえ、菫、淡…私…」 淡「それに、妹さんもいる前じゃ、ちょっと…」 照「そ、そうだよ。今は咲が居るし。駄目だよ。それにもし二人が本当に付き合ってたら私…」 菫「ったく…」ボリボリ 淡「…菫先輩?」 菫「…照。お前、そこでちょっと待ってろ」 照「…へ?」 菫「行くぞ。淡」 淡「へ?」 菫「私に考えがある。上手いことあの妹ちゃんをターゲットから引き離すぞ」 照「え?」 菫「照。私達がここまでするんだ。まさか私達の頑張りを無視してこのままウダウダしてるなん て情けない真似で終わるんじゃないだろうな」 淡「ちょ!?強引過ぎませんそれ!?」 菫「大丈夫、別に危害を加えるわけでは無いさ。ただちょっと照の告白までの時間稼ぎをさせて 貰うだけだ」 淡「なんか怖いですよ。言っておきますけど、私は不良の真似事なんて絶対にしませんからね」 菫「馬鹿言うな、私がそんな真似するわけないだろ。なあ?照。お前ならわかるだろ」 照「い、妹に手を出すなよ…!」 淡「ほら、信用されてない!」 菫「あれ…おかしいな」 照「い、幾ら菫だって、咲に危害を加えるなら私だって…」 淡「信頼ってなんなんでしょうか…」 菫「めんどくせえなぁ…」 淡「そういうのが悪いんですって!」 菫「ったく。兎に角、行くぞ。照。このままそこで縮こまってたらもうどうなっても知らんぞ。 どうしても妹が心配なら、告白の結末だけ着けてから来い」 淡「妹さん人質!?」 菫「今まで色んな事から逃げてばかりで、情けないと思わないのか」 照「…」 菫「いじめから逃げて、妹と向き合うことから逃げて、自分の気持から逃げて、挙句に好きな人 からの告白からすら逃げて。次は何から逃げる気だ?麻雀か?学校か?人生か?」 照「…」 菫「一個でも最後まで立ち向かって見ろよ。お前、確かに麻雀はバケモノだけど、このままじゃ 壁にぶつかったらそこで終わるぞ」 菫「…麻雀だけじゃなくてもさ。他になんにも取り柄の無いお前だけど、それでも逃げずに立ち 向かえばなんとか打ち勝てるものだって今までの人生には幾らでもあったはずなんだよ」 照「…」 菫「立ち向かえ。お前がさっき妹を私から守ろうとしたろ。そんな風に立ち向かえ。一人が怖い なら私達に頼れ。お前が望むなら、私達が幾らでも力になってやるから」 菫「お前、長野は敵ばかりで、友達が居なかったって言ってたよな?じゃあ、今はどうだ?私は ?淡は?誠子は?尭深?他の麻雀部やクラスの連中は?」 照「…」 菫「例えどれだけダメ人間のお前でも、友人の私達の力が有れば、お前、幾らでも強くなれるだ ろう?」 菫「だから、安心してぶつかってこい。戦うべき時に戦ってこい。勇気出してやりたい事、やる べき事やって、結果見届けて、自分の限界知ってこい」 菫「失敗したら笑ってやるから。一緒に泣いてやるから。成功したら一緒に喜んで笑ってやるか ら」 菫「…それで、私が困ってたら、お前が私を助けてくれればそれでいい」 照「…」 菫「逃げるな。たまには逃げてもいいけど、今だけは逃げるな。逃げるべき時は逃げていいから 。今だけは絶対に逃げるな」 照「…」 菫「…行くぞ。淡」スッ 淡「あ…」 照「…」 淡「…宮永先輩」 照「…」 淡「私も、戦ってきます」 照「…」 淡「だから、待ってます」 照「…」 淡「…っ!」タタタタタ 咲「それでね、京ちゃん…」 京太郎「…ん?」 咲「…京ちゃん?」 菫「おはよう、少年少女達」スタスタ 淡「えーっと…お、おはようございます」 咲「…?お、おはようございます…」 京太郎「…誰?」 菫「ああ、失礼。私は東京の白糸台高校というところの人間だよ。3年生にして麻雀部部長の弘 世菫だ」 淡「お、同じく1年の大星淡です」 京太郎「…はぁ」 咲「えっ。白糸台って…お姉ちゃんの…」 京太郎「へ?」 菫「その通り。宮永照はうちのエースだ」 京太郎「えっ」 菫「そう。宮永照。…私達は親しみを込めて『照ちゃん』と呼んでいるがね」ニヤリ 淡(嘘ばっかり…) 京太郎「えっ!?」 咲「…何の用…ですか?」 菫「ん?何。大したことじゃない。これは恥ずかしながら今まで知らなかった事だが、我等が絶 対的なエースに、なんと妹さんが居ると言うじゃないか」 菫「あの子は恥ずかしがり屋でなかなか自分の事を話さないから、まあ無理もないのだけれどね 」 咲「…」 菫「それで、今日は君をスカウトに来た」 咲「は…」 京太郎「はぁあああああああああああああああああ!?」 淡(この人、悪役やったら板につくなぁ…) 菫「おや、何を驚いているんだい?」 京太郎「ふ、ふっざけんじゃねぇよ!!」 菫「至って真剣だが」 京太郎「尚更悪い!!」 菫「クククク。おや、何故だい?」 京太郎「何故って…全国前にしたこの時期に、王者がチャレンジャーの戦力引き抜きに来るって 、どういう了見だってんだよ!」 菫「おや、と言うことは君達も全国に出るのか、初めて知ったよ。なにせ我々は王者なので、下 々の者には興味が無い」 京太郎「この野郎…!!馬鹿にしやがって」 淡(初出場校はダークホースになりやすいって、いっつも入念に調べまくってる癖に) 菫「そう言われてもね。本当にこの子の存在を知ったのは最近なんだ」 京太郎「それは残念だったな!行くぞ咲!」 咲「あ、う、うん…」 菫「いいのかい?」 咲「…え、えっと…ごめんなさい…」 京太郎「だとよ!悪いけどお引き取り願おうか!王者様!!」 菫「本当にいいのかい?」 咲「…?」 京太郎「咲!耳貸すな!早く行くぞ」 咲「う、うん…」 菫「君の姉から、君宛てにと言って預かっている物があるんだが」スッ 咲「えっ…」 淡(あ…宮永先輩がコンビニで買ったっていう、妹さんへのお土産が入った袋。いつの間に) 菫「実は私もまだ中身を検めてはいないんだが…君にどうしても渡して欲しいと言われているん だが」 咲「…」 京太郎「咲!」 菫「…私と、サシで話をしないか。丁度すぐそこに神社がある。そこで二人きり、ゆっくりとな 」 咲「…わかりました」 京太郎「咲!」 咲「大丈夫だよ。京ちゃん。この人、雑誌で見たことある。本当に白糸台の部長さんだ」 京太郎「けどよ…」 咲「…お姉ちゃんの名前を出したって言う事は、きっと本気でしたい話があるんだ。危ないこと されるとも思えない」 菫「懸命な判断だ」 淡「ひ、弘世部長…?」 菫「なんだ?淡」 淡「い、いや…なんですかこの状況。サシで話って…私が一緒に来た意味一瞬で無くなっちゃっ たじゃないですか。私どうすればいいんですか」ヒソヒソ 菫「さあね」 淡「絶句です」 菫「…お前、昨日から言いたい事あったんじゃないのか?コイツに」 淡「…へ?」 菫「お前、東京には小学生の時に転校してきたんだって?」 淡「…」 咲「…あの」 菫「…ああ、すまない。ちょっと打ち合わせをね」 京太郎「…咲」 咲「大丈夫だよ。…待ってて、京ちゃん」 京太郎「…わかったよ」 菫「こいつは人質だ。私がこの子に危害を加えたら、コイツをいじめ殺して良いぞ」 淡「ふえっ!?」 京太郎「誰がんな事するかよ!」 菫「ふふ。そうだったか失礼。それじゃあ行こうか」スッ 咲「はい」スッ 京太郎「…」 淡「…」 京太郎「…」イライラ 淡「…」ダラダラ 京太郎「…」イライラ 淡(ど…) 淡(どどどど…) 京太郎「…」イライライラ 淡(どおおおおおおおおおおおおおおおしよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!) 京太郎「…チッ」 淡「」ビクッ 京太郎「…あ?」 淡(なんか嫌な予感はしてたんです。確かにしてたんです。宮永先輩の話聴いてた時に、ちらっ と確かに思ってたんです!) 淡(ま、まさか…まさか…まさか…!って!うっすらと嫌な予感はしてたけど、だけど、だけど !顔見た後にああ、やっぱりって思ったけど!だけど!) 淡(まさか、宮永先輩が好きになるような人だし、なんだかんだ言って人畜無害そうな感じの人 だって思ったのに!信じたかったのに!) 淡(それでも一応なんか確かめなきゃいけないと変な使命感覚えてノコノコ付いてきたけど!) 淡(もうずっと前だし、名前も覚えてなかったし、顔もうろ覚えだったし!流石にトラウマ克服 したと思ってたのに!!) 淡(思い出してしまったぁあああああああ!!この人だ!!間違いない!!5年2組の須賀京太 郎だあぁあああああああああ!!!) 淡「」ガタガタ 京太郎「…おい」 淡「ひゃぃっ!!?」ビクッ 京太郎「…なんでそんなビビってんだよ」 淡「す、すみ、すみま、すみません…」ガタガタ 京太郎「…ん?」 淡(ひいいいいいい!) 京太郎「…アンタ、どっかで見たことあるような…」ジーッ 淡「そ、そうですか!?私アナタはじめて見ましたけど!お初にお目にかかると思いますけど! !けど!!」 京太郎「そうだっけ…まあ、確かにそうか。俺に東京の知り合いなんか居ないはずだし…」ブツフ ゙ツ 淡(そしてとっさに誤魔化してしまったぁあああああ!ああああ!だから嫌だったんです!弘世 先輩の鬼!悪魔!弘世菫!あの人が傍にいるならって一緒に飛び出したのに!) 淡(なんで私とコイツが二人きりになる状況作り出してくれちゃってるんですかぁああああああ あああああああ!!?しかも敢えて挑発しまくって印象と機嫌悪くした後に!!) 淡「あわわわ…」ボソッ 京太郎「…ん?」 淡「ひゅっ…」 京太郎「…」 淡(し、しまった…この口癖」。『あわわわ』って、昔からの癖なんだった。下手に使ったら思 い出されてしまう…) 京太郎「あわわわ…って…」 淡(手遅れ!?)ビックーーーン 京太郎「なあ、アンタ」 淡「は、はひ!?」 京太郎「悪い。さっき不意だったから、名前良く聞き取れなかったんだ。もう一回教えてくれる か」 淡「あわわわ…」 京太郎「そう、その口癖。なんか引っかかるっつーか…」 淡「…」 淡(うわああああん!どうしましょう宮永せんぱぁあああああい!!) 淡「あのぉ…」 京太郎「ああ」 淡「そのぉ…」 京太郎「…」 淡「あー…」 京太郎「…」 淡「…」 京太郎「…」 淡「…」 京太郎「…」イライラ 淡(イライラしていらっしゃるぅううううううう!!) 淡(どうしようどうしようどうしようどうしよう) 淡(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい) 淡(嫌。コイツからのいじめが耐えがたくて、わざわざ長野から東京まで転校してきたのに。も う二度とコイツに会う事なんて無いと思ったのに) 淡(いじめられるのが嫌で、地味な外見が原因なのかもって悩んだ挙句に怖い外見になろうとア イツの髪の色真似て染髪までしたのに) 淡(それが…それが、なんでこんな状況になってるの!?) 京太郎「なあ。答えろよ。オイ」イライラ 淡(いやああああああああああああああああああ!!何にも変わってないじゃないコイツ!!) 京太郎「なあ…アンタ」 淡(宮永先輩!コイツ、やっぱり駄目ですって!外見は確かにちょっと丸くなった…ってか柔和 そうな顔にもなりましたけど、やっぱりコイツ悪い奴です!) 淡(正解です!告白に応えないで正解でしたよぉおおおお!宮永先輩がコイツ彼氏としてうちの 部室に連れてきたりしたら、私ストレスで死にますから!!) 京太郎「…」 淡(無言で睨むなぁ!!あああああもうっ!逃げたい!逃げたい!逃げたい!逃げたい!逃げた い!逃げたい!逃げたい!逃げ…) 淡「…逃げ?」ピタッ 京太郎「…?」 淡「…」 京太郎「…なぁ「大星淡です」」 京太郎「…へ」 淡「大星淡です。覚えてませんか?この名前」 京太郎「大星…淡…」 淡「はい。まあ、見た目はこの通り大分大人っぽくセクシーになってたので、外見で気付かれな いのは仕方ないかも知れませんが」 淡「…ってか、タメだし敬語使う必要ないよね。須賀京太郎」 京太郎「おお…ぼし…」 淡「思い出せないって言うなら自己申告すれば良いよ。その瞬間ぶん殴ってやる」 京太郎「…お前、まさか…」 淡「思い出した?」 京太郎「…俺が、昔いじめてた」 淡「正解。じゃあ、殴られても仕方ないって、自分でもわかってるよね?」 京太郎「は…」 淡「[ピーーー]!!」バキッ!! 京太郎「いってぇ!?」 淡「ふん。思わず禁止用語を使ってしまいましたが。まあ、これで私の怒りはわかりましたね? この糞野郎」 京太郎「…大星」 淡「ったく…宮永先輩には、今度プリンの王様プリン・ア・ラ・モード奢ってもらわなけりゃ気 が済みませんよ本当に」ブツブツ 京太郎「…あの」 淡「なんですか?この下郎」 京太郎「げろ…い、いや。その、待ってくれよ。お前には色々言いたい事も聞きたい事もあるん だ」 淡「私には聞きたい事も教えたい事もありませんが」 京太郎「…」 淡「…はぁ。なんですか?一個だけ聞いてあげます」 京太郎「…その、昔は、すみませんでした」 淡「はっ。別に今更貴方に謝罪されても私の心には響きません。自分の気を済ませたいなら、穴 掘ってその中でごめんなさいって繰り返してればいいんじゃないですか」 京太郎「それでも、言わせて欲しいんだ。…あの頃は俺が馬鹿だった。大星が嫌がってるのに、 くだらない理由でお前に嫌がらせ繰り返して」 淡「知りませんよ。いじめっ子の心境なんて聞きたくもありません」 京太郎「…」 淡「…けど、まあ、それでも貴方のお陰であるものもありましたし」ボソッ 京太郎「え?」 淡「…いくつか、教えてあげてもいいって思った事がありました。時間が無いので手短に」 京太郎「時間が無い…?」 淡「1つ。私は強くなりましたよ。貴方なんかよりずっと強く。もう負けません。いつだって相 手になってやります」 京太郎「…」 淡「2つ。けど、私が貴方を許す事はありません。少なくとも現時点では、よっぽどの奇跡が起 こらない限りは」 京太郎「…」 淡「3つ。でもまあ、私が自分より弱い奴を恐れる事はもう無いです。覚えておくといいですよ 。私の心は健全です」 淡「そしてもう1つなんですが…」 淡「…照ちゃんは、我々だけでは面倒見切れません。貴方のせいで無駄に元気なので、とっとと 保護義務を果たして下さい」 京太郎「へ?」 ドドドドドド 照「あわあああああああああああああああああ!!」バキイイイイッ 淡「ごふっ」 京太郎「」 淡「」ドサッ 照「京ちゃん!京ちゃん!?いきなり淡に殴られてたけど、大丈夫!?怪我は無い!?ちょっと 淡!何話してた知らないけど、いきなり殴る事ないじゃない!!」ギューッ 京太郎「へ?へ?へ?照ちゃん?へ?」 照「京ちゃん!京ちゃん!京ちゃん!痛くない!?大丈夫!?ねえ!ねえ!ねえ!ええええええ えええん!!」 京太郎「えーっと…」チラッ 淡「…ふん。なんですか、もう話す事はありません」サスサス 京太郎「…まいったな…」 淡「…。あー、そうだ。じゃあ、もう一個だけ教えてあげましょう。これ、実は今までで一番重 要な話かもしれないんですが」 淡「私はプリンが大好きです。以上。じゃあ、言いたい事言ったのでどっか行きます」ムクッ 京太郎「ちょ、待てって、大星!お前さっきから何言って」 淡「嫌です。…宮永先輩。先輩には良く分かんないかも知れませんけど、私は勇気を出しました 。なんか、今なら矢でも鉄砲でも来いって感じです」 照「淡?」 淡「勇気を出してみた先達としてアドバイスを言うとですね。勇気出すと、すっきりしますよ。 気持ちいいです。モヤモヤが晴れます」 淡「あとは、宮永先輩次第だと思いますんで。じゃあ、頑張ってください」 照「…」 淡「では」スタスタスタ 照「…」 京太郎「…」 淡「あ、ところで須賀京太郎。余計な事言ったらぶっ殺しますから。私には完璧超人なりのイメ ージってもんがあるんで」 淡「…ふんっ」スタスタ 京太郎「…なんも言うなってか」 照「京ちゃん?」 京太郎「…照ちゃん。はは。半日ぶり…くらい?」 照「…うん。そうだね」 京太郎「…まさか、こんな早く再会する事になるとはなぁ」 照「…」 京太郎「…何か、用だった?」 照「…うん」 京太郎「落し物したとか」 照「…ちょっと違う」 京太郎「じゃあ、間違えて誰かのもの持ってっちゃったとか」 照「それもハズレ」 京太郎「忘れ物?」 照「それも、あるかな。でもちょっとハズレ」 京太郎「…」 照「…正解は、迷子。道を間違えちゃったんで、正しい道の歩き直し。そのスタート地点まで、 歩いてる最中なの」 京太郎「…」 照「いっぱい、いっぱい、さ。私、迷っちゃったんだ」 京太郎「照ちゃん、方向音痴だしな」 照「本当だよ。だから、何回だって迷って、変な道行っちゃって。気付いたらいっつも暗い道だ ったり、険しい道だったり、寒い道だったり。心細くていっつも泣いていた」 照「…けど、昨日、今まで歩いて来た道をふと振り返って見て気付いたの。その度に誰かが私の 腕を引いてくれたから、今私はここに居る」 照「行き先もわからずに歩いてきたけど、それでもなんとか道を踏み外さずに引っ張ってもらっ て、ここに居る」 照「さっきの偉そうな奴とか、生意気そうな奴とか、他にも東京には殺し屋みたいな奴とか、お 茶ばっか飲んでる奴とか。後は、咲とか。他にもいっぱい。いっぱい手を引いてくれた」 照「…その中でも、京ちゃんは、私が1番怖い道を歩いてる時に、一緒に歩いてくれてたんだ。 矢が降ってきても、爆弾降ってきても、なんでも無い振りして、傷だらけになって」 照「私、お姉さんなのにいっつも子供みたいにベソかいて道を歩いてたんだ。誰かに手を引っ張 ってもらうまで蹲って。本当、頼りない子だったと思う」 照「…でも、それだけじゃ駄目なんだ」 照「私は方向音痴だから。この先もきっと誰かに手を引っ張って貰わなきゃ歩けない」 照「けど、この先はきっと、自分で行くべき場所を決めなきゃいけないんだ。暗い道を照らすの は、私がやらなきゃ駄目なんだ。歩くのは、自分の意志で歩かなきゃ駄目なんだ」 照「一緒に歩いてく人を支えてあげたい。擦れ違う人を励ましてあげたい。迷った人を照らして あげたい」 照「私を今まで支えてくれてきた人たちのように、今度は私が誰かを支えてあげたい。私が今此 処に在れるように、誰かが其処に在れるようにしてあげたい。その為に、迷子から抜け出したい 」 照「だから私は、戻ってきたの。この、君が居る街に」 照「…ねえ、君。名前、教えてくれるかな。私の名前は宮永照。東京の、白糸台高校に通う3年 生。特技は麻雀。宝物は、妹の宮永咲」 照「…君が、いじめっ子から助けてくれた子」 京太郎「…っ!!」 照「…受かった高校。教えたよ」 京太郎「…お、俺っ!!」 京太郎「…俺は…!」 京太郎「…俺は、須賀京太郎!!長野の、清澄高校に通う、1年生!!麻雀部員だけど、麻雀は 素人。ペットはカピバラ。好きな人は…!」 照「…」 京太郎「好きな人は…!!」 照「…うん」 京太郎「照ちゃんだよ!!!」 照「うん…!」 京太郎「…~~~~っ!!」 照「…やっと、迷子から抜け出せた」 照「やっと、追いついた」 照「やっと、捕まえた」 照「やっと、隣を歩ける」 照「やっと、声を届けられる」 照「ねえ、京ちゃん。じゃあ、忘れ物、返すね」 京太郎「…」 照「…これは昨日の忘れ物だけど…」 照「…『私も好きです』って」 照「『私はすぐ迷子になるので、どうか私が迷わないよう、あなたの手を繋いで下さい』って」 照「『その代わり、私はあなたが道を見失いように、照らし続けます』って」 照「『どうか、私と一緒に道を歩いてください』」 照「『あなたの横で歩かせてください』」 照「『大好きです』って、言い忘れた言葉を。初めて会ったその瞬間から暖めていた想いを乗せ て、あなたに渡します」 照「どうか、受け取ってください。京ちゃん、大好きだよ」 照「付き合おう」 照「…」 京太郎「…ありがとう」 京太郎「改めて…よろしくお願いします…!!」 照「…うんっ!!」 神社の階段のてっぺん 淡「…はぁ」スタスタ 菫「ああ、淡。ご苦労」 淡「ご苦労って…なんですかその、計画通り…!!みたいな顔。なんですか。私の事どこまで知 ってるんですか先輩は」 菫「いやあ、お前の親御さんからな?実は、入部に当たって、相談があったんだ。この部に不良 系は入部することは有り得ないんでしょうかって」 淡「は…」 菫「素晴らしい親御さんじゃないか。お前が小学校の頃いじめられて転校してるのを気にして、 色々手を尽くしてくれてたらしいぞ。お前、ちゃんと感謝しておけよ」 淡「」パクパク 菫「まあ、私も顧問の先生から聞いた話だが。そんな話を聞いたら私も少々気になってな。小学 校やらの経歴は全部調べた。いやあ、まさか照と同じ地域出身だとは。魔境かここは」 淡「あわわわ…」 菫「はっはっは」 咲「…はぁ」 淡「…あ、妹さん…良かった。〆られて無かった」 菫「誰がんな事するか。照の買ってきた土産を二人で食ってたんだ。特等席の神社の階段の上か ら観戦しながらな」 淡「何を買って…って、うわ。東京ばな奈」 咲「…うええええ…京ちゃぁん…」モックモック 淡「しかも泣きながらもすっごい食べてるし」 菫「好物らしい」 淡「はぁ…」 咲「うええええええ…」グスグスモグモグ 淡「なんか、悪いことした気になってくるなぁ」 菫「お前が彼を殴った時、この子も飛び出しそうになってたんだぞ」クスクス 淡「それは…うん。ごめんね」 咲「いいの。全部話はきいたから。私が口挟める問題じゃ無いと思うし…」シクシクモグモグ 淡「…良かったら元いじめられっ子同士仲良くしましょうか。私が元いじめられっ子っていうの は、トップシークレットだけど」 咲「うん…うん…」シクシク 菫「お、もう全部食ったのか」 咲「…うええええ…もっとありません?」チラッ 菫「中々したたかな…照よりしっかりものじゃないか?この子。だがすまん。もう無い」 咲「うえええええええええ…!!」 菫「…はぁ」 淡「…今度、長野代表で東京来るんだっけ?日持ちしないけどマジキチレベルの美味しさって噂 の東京ばな奈バウムブリュレ奢ってあげる」 咲「ううううう…ありがとうございますぅ…」シクシク 菫「…やれやれ」ナデナデ 淡「…あ」 菫「…む?」 咲「…ああぁ~!」 照「…ねえ、京ちゃん」 京太郎「…ん?何だ?照ちゃん」 照「…キス…しよ」 京太郎「…え」 照「…いや?」 京太郎「い、いやじゃない…ってか、その…むしろ嬉しいくらいだけど…その…」 照「?」 京太郎「は、恥ずかし…」 照「ふふ…」 京太郎「わ、笑うなよ!」 照「可愛い」 京太郎「うう…なんだこれ。いきなり照ちゃんが大人になったみたいだ」 照「何言ってるんだ。私は京ちゃんより、2つもお姉さんなんだぞ?ちゃん付けじゃなくて、照 さんって呼ぶべきだ」 京太郎「…照」 照「な!?」 照「なわわわわわ!?きょ、京ちゃん!?今、な、なんて…」 京太郎「付き合ってるんだし、呼び捨てでも良くねぇ?」 照「こ、この!馬鹿!」 京太郎「あははは!ごめんごめん。でもこんなんで動揺するようじゃまだまだだーね」 照「もうっ!もうっ!もうっ!」ポカポカ 京太郎「いって!あは!ごめんって!」 照「~~~~~っ!」 京太郎「で、えっと、なんだっけ。えーっと…」 照「…」 照「…キス…だよ」スッ 京太郎「…へ?」 照「キス」 チュッ 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…ぷは」 京太郎「…」カチコチ 照「…ふふふ。びっくりした?」 京太郎「…」 照「あー。これは完全に固まってるな。ふふふふふ」 京太郎「…」 照「どうだ。見たか。これが年上のお姉さんの実力だ。まいったか」 京太郎「…ハッ」 照「…ふふ。気付いた?京ちゃん」 京太郎「あ、あわわわわ」オロオロ 照「ふふふ。可愛いなぁ」 京太郎「て、照ちゃ…照ちゃん!」 京太郎「うわ…うわ…やっべえ…俺、今照ちゃんとキス…うわ…うっわ…やべ…うわ…顔あっつ …」 照「あはは。その反応、初キスだったかな?」 京太郎「な、なんだよ、その余裕っぽい反応!まさか照ちゃんコレが初じゃない!?」 照「いや、コレが初だよ」 京太郎「へ?」 照「…ふふふふ。顔アッツイ…駄目だ。もう立ってられない」チジコマリ 京太郎「…」 照「あうううう…恥ずかしい…」 京太郎「…えっと…」 照「マズイ。死ぬ。恥ずかしくて死ぬ。あう。あうううう…」キュー 京太郎(この生き物かわええ…) 照「と、ところで、京ちゃん?」クルッ 京太郎「あ、は、はい」 照「…は、初キス…どうだった?」 京太郎「どうって…」 照「その…き、気持ち良かったとか。男の子の唇って思ったより弾力有ってびっくりしたとか。 そういうの」 京太郎(そういう感想だったのか照ちゃんは) 京太郎「…あー。そうだなぁ」 照「うん。正直に言って」 京太郎「…まず、照ちゃんが近づいて来る度にどんどんいい匂いがして」 照「うん」 京太郎「すっげー胸がどきどきして」 照「うん」 京太郎「唇が触れた瞬間に、ものすごい柔らかい感触が唇を擽って」 照「うん」 京太郎「照ちゃんの体温を、今まで感じた事が無いくらい身近に感じられて、嬉しくなって」 照「…うんっ!」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…京ちゃん?」 京太郎「…ほんのり、ゲロ臭かった」 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…ごめん」 終わりっ!!
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【プロ勢とのクリスマスパーティーでぼっち気味ののよりんの相手をする京太郎 それを見て、ぐぬぬのプロ勢】 京太郎「……やっぱり場違いだったんじゃなかろうか?」 俺はそう思いながら近くのオードブルに手を付けた 流石麻雀協会主催のクリスマスパーティーである。普通じゃ食べられない豪華なものが並べられているみたいだ ……よくわからないけど そもそも何故ただの学生である俺がこんな場違いのパーティーに居るのかと言うと クリスマスだと言うのに何の予定も無く一人寂しく家に篭もっていた俺に咏さんから突然誘いの電話がやってきたからである なんでも暇なら女子プロのクリスマスパーティーに連れて行ってやるとのことだった 渡りに船と二つ返事で頷いた俺だったが、咏さんは偉い人に挨拶まわりをしなければならないらしく、暫く待ってるように言われ、現在に至る訳である 京太郎(まぁその間に健夜さんや靖子さん、良子さんにはやりさんにも出会ったんだが) 京太郎(……と言うか咏さんってよく俺を誘うけど友人いないんだろうか) などと失礼なことを考えていた俺だったが、会場を見渡しているとある事に気付いた 京太郎「ところで隅の方で一人寂しく食べてるのってもしかしてーー」 京太郎「……理沙さん?」 理沙「京、ぐんっ!?」 京太郎「わ、わ、水です!はいこれ!」 理沙「……」ゴックン 理沙「……感謝!」 京太郎「いえ、俺がいきなり声をかけたのが悪いんですから」 理沙「っ、こんばんは!」 京太郎「こんばんは。理沙さんもいらっしゃってたんですね。って当たり前か」 理沙「一応プロだから!」プンプン 京太郎「ですよねー」 俺の失言に流石の理沙さんも怒っているようだ ……いつも怒ってるように見えるからあまり変わらないのは秘密だが 理沙「なんで此処に?」 京太郎「ああ、実は咏さんに連れてきて貰ったんですよ」 京太郎「最も咏さんはえらい人達に挨拶まわりをしなければならないらしく、ここで待ちぼうけを食らってるんですけどね」 理沙「大変!」 京太郎「ですね。大人になるとこういう事も大切なんでしょうけど」 理沙「仕方ない!」 京太郎「そう言えば理沙さんは終わったんですか?」 理沙「終わった!」 理沙「……私口下手だから」ションボリ 京太郎「そ、そうだ!理沙さんは他に何か食べたい物有ります?俺、取ってきますよ!」 そう言って理沙さんは肩を落とした。……きっとこういう人だし普段から色々苦労してるんだろうな そう思った俺は、せめてこの場は彼女の為に何かしてあげようと思ったのだった 一方その頃他のプロ達は―― 咏「あー毎年の事とはいえ、めんどくさいねぃ。ま、京太郎を誘う口実になったからいいけどねぃ」 咏「適当に切り上げてご飯でも奢ってやって、あとは……」 咏「うん、バッチリ。さぁて京太郎はどこかねぃ」 健夜「うーん。断れないとはいえ年々参加するのキツいな。周りは少しずつ結婚していくし……」 健夜「京太郎君、この後暇かなぁ。暇ならお洒落なレストランに連れて行ってあげようかな」 健夜「そして良いムードになったら……エヘヘ」 靖子「パーティーとか柄じゃないんだが、こればかりは外せないのがプロの面倒なところだね」 靖子「あとやっぱりオードブルぐらいじゃ駄目だな。京太郎でも誘ってカツ丼食べに行くか」 良子「やっと解放されました……」 良子「挨拶回りはベリーハードですね。そうですね……この疲れを癒す為にも、このあと京太郎を誘ってデートしましょうか」 良子「そうと決まれば善はハリーアップです」 はやり「んー疲れました。でもスポンサーの事もありますから無碍には出来ませんし……」 はやり「そう言えば京くんが居ましたね……。抜け出しちゃいましょうか☆」 はやり「京くんはどこかな?」 そして―― 全員『京(くん)太郎君』 全員『え!?』 理沙「あーん」 京太郎「はい。どうぞ」 理沙「……」パクッ 理沙「美味!」 京太郎「それは良かったですね」ニコッ 理沙「京くんもあーん」 京太郎「……」パクッ 京太郎「本当に美味しいですね」 理沙「うん!」 はやり「おかしいですね。はやりには二人がイチャついてるように見えます。やっぱり疲れてるのかな☆」ゴシゴシ 咏「ま、まぁ野依さんなら大丈夫さ」 健夜「そ、そうだよね」 良子「京太郎は面倒見がグッドですから」 靖子「……本当にそうなんだろうかね」 理沙「……」チラッ 理沙「……」ニヤリ 全員『!?』 全員『ぐぬぬ』 ……実はノーマークだった人が一番手ごわかったと言うのはよくある話である そしてこの後、女子プロによる麻雀史に伝説に残る聖夜の争奪戦が有ったとか無かったとか カン