約 7,332 件
https://w.atwiki.jp/jinrowiki/pages/475.html
前ページ次ページ審問同村会 [魔王村] 村のログ [魔王村] [#t7e30baf] 構成および勝敗結果 [#ze8f4e82] あらすじ [#v1368857] 名言集 [#hc417fbc] 悪事全集 [#c97a24df] キャスト [#x0c49959] 主な出来事 [#id563598] MVP [#hfa8f465] コメント [#p571b205] 構成および勝敗結果 村の名前 魔王村 人数構成 勇者(人狼)3人 裏切り者(狂人)1人 黒魔道士(占い師)1人 死霊術士(霊能者)1人 守護隊長(守護者)1人 一般魔族(村人)6人 魔王様(聖痕者)1人 勝敗結果 勇者側勝利 あらすじ 数々の冒険を経てようやく魔王の居城へとたどり着いた勇者たち。 しかし魔王の城には勇者たちを返り討ちにするべく数々の強敵が待ち受けている。 そこで勇者たちは魔王の配下に変装して忍び込む作戦をとることにした。 もちろんそれに気づかない魔王ではない。魔王は配下たちを大広間に呼び寄せるとその中に潜む勇者を探し出し、一人づつ処刑することを宣言した・・・ (なんで身内の顔しらんねんって突っ込み禁止。した人から処刑) 名言集 皆燃えてしまえ。 書生 ハーヴェイ エピローグ とりあえずカップルにむかついたときはこう言って放火するといいよ なんでしんどんねん 魔王 シャーロット 5日目墓ログ はーべいの人が一番はじめに人狼やったときのマンジローの台詞らしぃょ。 灰で食われたときだけでなく、死んだらいつでも言おうぜ! 特に吊られて当たり前の状況で言うと、ふてぶてしくて好感度アップ間違いなし! さあみんなはやらせよう! 悪事全集 シャーロット 私は・・・とりあえず過疎地でトレカの大人買いをしてきましたわ。 これで入荷の遅い過疎地の住人はカードが買えなくて困るはず・・・ ただ、私の財布も困ったことに・・・ [シャーロットは大量の『世界の魔王』トレカを抱えている] しかもこのトレカにうちの魔王様いなかったんですよね・・・ マイナーなのかしら。 さて私は今日も今日とて悪事に勤しんでましたとも。 今日は中学受験に疲れた見知らぬ小学生に戯れでラブレターを渡してみましたわ。 コレできっと小学生は 「見知らぬ美人で聡明で優しいおねえさんにラブレター貰っちゃったよ僕」 と妄想で悶々としてエリートコースを滑り落ちてくれちゃうはずvv ああ、想像するだけでぞくぞくしちゃうw なんて悪事なのかしらvv そういえば今日の悪事を紹介するのを忘れてましたわ。 今日は道行くおじ様のポケットに「キャバクラ魔王」のいかがわしいマッチと 「ろーずまりー☆」と書かれた名刺(キスマークつき) をこっそりと忍び込ませてきましたわ。 これできっと熟年離婚ね。おじ様はひとりっきりで寂しい思いをするに違いないわ。 なんて愉快なのかしら! こんばんわです〜 今日は駄菓子屋ロッテになって子供にわざと多くおつりを渡して混乱を誘ったりしてみましたわ。 正直に言うべきか、言わずにネコババすべきか良心の呵責に悩む子供の姿を眺めるのは楽しかったですw あと1/16ニーナのお友達フィギアも売ってみたらまにあな大人のお兄さんにバカ受けでしたわw ただいま〜です 今日は魔王学校に行ったら下駄箱にラブレターが入れてあったので それを他の男子の下駄箱に入れなおしてみました☆ これで薔薇疑惑が持ち上がっちゃいますわw きゃ、たのしみー [シャーロットは大量のプリンが入った箱を抱えて帰ってきた] ふう。今日は小学校に忍び込んで美少年の確保・・・ ではなくて給食のプリンを盗んできましたーw 小学生の唯一の生きがいであるプリン。 休みの子とかアレルギーの子の分が血で血を洗う争いによって奪われるプリン。 それを奪う私ってなんて罪な女なのかしら。 しかもあえて1個だけ残していくのがまた罪。 あの小学校は今頃バトロワ状態になっていることでしょうよ。 [シャーロットは大量のマンガを抱えている] とりあえず今日はこの付近のすべての本屋からマンガ 「魔王の仮面」の12巻だけを買い占めてきました。 集めてる人は続きが気になって狂ってしまうことうけあい。 そして我慢できずに13巻を買ってしまうと いきなり展開が変わっていて混乱してしまうという寸法ですわ。 今日は学校のチャリ置き場のチャリの大移動を行いました。 めっさ骨の折れる作業でしたわ。 位置を入れ替えることにより生徒たちはもしや盗まれたのでは!?と大混乱。 放課後の学校のカオス具合は見ていて面白かったですわw よいしょよいしょ。 [シャーロットは大量のメイド服を抱えている] 今日は聖地アキバハラとやらに行って来てそこにある限りのメイド服を奪ってきました。 これでメイド喫茶は営業不可能。 そして萌えを奪われた聖地の住人たちは絶望に沈むでしょう。 そこへ私とローズとエッタがメイド服を着て颯爽と現れることによって 魔族の尖兵を簡単に獲得できるのですよ。なんとスマートな作戦っ こんばんわ。 今日はおいしいと評判のレストランをたくさんめぐって 一口だけ食べて残すといった行為を繰り返してきましたわ。 これでシェフは自信喪失して廃業。 そして街からはおいしいレストランはなくなってしまいますわw ナサニエル さて、俺はアイスのアタリ棒の文字を消してしまう新呪文でも考えるとしようかな。 希望に胸をふくらませて駄菓子屋にやってきた子供達の笑顔が、 棒を出した瞬間絶望に凍り付く。 その表情を想像しただけで悪の喜びが心を満たすというものだ。 -ナサニエルはコボルドたちに命じ、次々に穴を掘らせていた。 掘り出された缶や大きなカプセルを改めては満足げに微笑む。- 「失われた記憶が甦る。タイムカプセル暴露大作戦」 は思った以上のペースで着々と進行中だな。 幼い頃の無防備だった自分。 その秘密を握られた相手にはなかなか頭が上がらないもの。 そして、なぜ俺がその秘密を知っているのかと俺の千里眼ぷりに恐れおののくに違いない。 ふふふ……。 だが、資金回収の手段はちゃんと考えてある。 その名も、「肩たたき券増刷大作戦」だ★ 肩たたき券を大量印刷して全国の子供たちにおばあちゃんから小遣いをせしめさせ、 少しずつ上前をはねるという壮大にして華麗な大プロジェクトだ。 肩たたき券などいくらあったところで使うのを忘れて引き出しの中、 というのが相場だからな。 これで、損失補填どころか財務状況は上向くことだろう。 ヘンリエッタ わたくしは、本日、この国のインスタントラーメンと名がつくものを全て買い取りしましたの。 インスタント中毒になっている貧困学生は、 あと二、三日もすれば禁断症状で苦痛にのた打ち回るか、暴れ出すに違いありませんわ。 そこをインスタントラーメンをちらつかせて買収すれば、 また一人哀れなボンビーがわたくしの下僕と化すのですわ。 ほーっほほほほほほほ♪ どうですか、この素晴らしく隙のない作戦は! まあ、財力がない方々では無理かもしれませんが。 わたくしは、今日は電車とバスでご老体に席を譲り、 横断歩道で手を引いて一緒に渡ってあげましたのよ。 おーっほっほっほ♪ 皆さん、こんにちはですの。 ようやく開発していた高機能高電力ハイビジョンテレビを開発することができましたわ。 機能は従来のテレビの約12.5倍、消費電力は約3倍でありながら、 価格は従来のテレビの1.1倍程度に抑えることが出来ましたわ。 これを全国規模で販売し、高視聴番組を放送することができれば、 あとは電力会社を襲撃するだけで都市機能を麻痺させることができますわ。 どこかで見たやり方ですって? 知らないフリをするのもマナーというものですことよ。 先日、人間とバッタの合成人間を造って、街で破壊と略奪をさせようとしたのですが、 脳波回路が狂っていたらしく、こちらの施設を破壊されて潜伏されましたわ。 勇者騒ぎの最中に、面倒を増やしてくれた科学技術庁長官は減俸にしておきましたわ。 わたくし好みの若き傭兵団長がいましたので、誘惑してそそのかしてきましたわ。 これは上手くいって、その団長は、 自分の団を生け贄に捧げてわたくしたちの仲間になったのですが、 生け贄から運良く生き延びた大男が、巨大な剣と漆黒の鎧を纏って襲ってきますの。 人間って、意外としぶとい生き物なのですね。 TVは観てくれてますか? 只今大人気の『姉妹戦隊シャロズニーナ』、大好評ですのよ。 三人の姉妹が、イケメンの敵と戦うというお話ですの。 小さいお子様から、大きなお兄様お姉様方まで幅広く支持を集めていますわ。 実はこっそり番組の最中にサブリミナル効果で我々のことを宣伝しておりますの。 これで、新しい兵隊には事欠きませんわね。 え? 姉妹のモデルは誰かですって? それはもちろん、おーっほほほほほほほほほほ♪ ユージーン そういえば今日の悪事を紹介するのを忘れていたぜ。 今日は道行くナサニエルのポケットに「キャバクラ魔王」のいかがわしいマッチと 「ろーずまりー☆」と書かれた名刺(キスマークつき)をこっそりと忍び込ませてみたぜ。 これできっとシャーロットに見つかって半殺しだぜ。 俺みたいに墓場で骸骨と戯れることになるに違いないぜ。 愉快な仲間を増やして墓場をにぎやかに♪ [ユージーンは大量のマンガを抱えている] とりあえず今日はこの付近のすべての本屋からマンガ 「魔王の仮面」の13巻も買い占めてきたぜ。 集めてる人は続きが気になって狂ってしまうことうけあい。 そして我慢できずに14巻を買ってしまうと いきなりめちゃくちゃ展開が変わっていて混乱してしまうという寸法さ 今日は学校のチャリ置き場のチャリのサドルの大移動を行たぜ。 めっさ骨の折れる作業だったぜ。 サドルを取り替えたことにより生徒たちは騒ぐと思ってたら、 ほとんどのヤツが気づかないでかえっちまったぜ。大失敗だorz キャスト キャラクター 役職 結果 プレイヤー コメント 裏魔王シャーロット 魔族 死亡 sora 魔性を通り越して魔王って何のことかしら? 魔界軍師はーべい 魔族 死亡 shakko 軍師だけあって奇策好きみたいですよ ボッタクル商店会長レベッカ 守護隊長 死亡 eureka ボッタクル商店って結局何売ってるんだろうねw謎だわw 魔界医師ヴィンセント 死霊術師 死亡 tukihana 薔薇先生、素敵な萌えをありがとうw 魔界絵師ニーナ 黒魔道士 生存 Hinata AAの魔術師wはぐれメタルかわぃぃ 麗しの姐さんローズマリー 魔族 生存 babypop 照れ具合が激しくかわいかったですよ姐さん 神リック 勇者 生存 kasi118 君が魔王亡き後の新世界の神です お財布係ヘンリエッタ 魔族 死亡 minekura 実はかなりいい人らしぃよ 迷い者エロバート 勇者 生存 mashiro 実はエロの癖に隠し通そうとしてましたよ 竜騎士エロニエル 魔族 死亡 riz シスコンシスコンシスコン 風のコーネリアス 魔王 死亡 tak そろそろ魔王だってっこと忘れられてるっぽい ビデオ屋ゆーじーん 魔族 死亡 NIZ ビデオは、ビデオだけはやめてぇっ 愛の勇者ケネス 勇者 生存 ayurazi この村の男性で唯一硬派だったんじゃないでしょうか 鉄の胃袋ミッキー 裏切り者 死亡 MASTER 実はアーヴァイン食べたのは彼らしいょ 主な出来事 1日目 ●ローズマリー(魔族) ハーヴェイが軍師らしく奇策提案。ヘンリエッタがそれに乗って守護隊長CO。コーネリアスが風のコーネ発言で場を騒がせる。 2日目 ●コーネリアス(魔王)▼レベッカ(守護隊長)■コーネリアス(魔王) 死霊術士確定させたにもかかわらず、レベッカがナサニエルに殺される。 3日目 ●ユージーン(魔族)▼ナサニエル(魔族)■ユージーン(魔族) ユージーンとナサニエルの大喧嘩。リックの提案により二人仲良くお墓行きになる。 4日目 ●ハーヴェイ(魔族)▼ミッキー(裏切り者)■シャーロット(魔族) うるさい二人がいなくなって城が静かになる。シャーロットが墓下でおもいきし疑われる。 5日目 ●ケネス(勇者)▼ハーヴェイ(魔族)■ヘンリエッタ(魔族) 墓下でナサとロッテが結ばれる。ハーヴェイ、信じていたリックに裏切られショック。そして墓下でも疑われる。 エピローグ ▼ナサニエル(ある意味)■ロッテ(ある意味) ロッテとナサがいちゃつきまくる。ビデオが流出。ケネスとローズもくっついたらしいょ (▼:処刑 ●:占い ■:襲撃 ◆:護衛) MVP MVP リック 勇者 絶対真だと思ってました。ネタ襲撃見事。 敢闘賞 はーべい 魔族 墓場でも疑ってました。ごめん・・・ 殊勲賞 ユージーン 魔族 しゃべりすぎです。考察深すぎです。 技能賞 ヘンリエッタ 魔族 魔族の親衛隊長騙りはいい手ですよw RP賞 ニーナ 黒魔道士 AAかわいすぎますw ベストオブ悪事 シャーロット全般 裏魔王 ごめんほとんど改蔵ネタです シスコン賞 ナサニエル 魔族 妹とは結婚できないんですよ 墓場賞 ナサニエル 魔族 墓場でもしゃべりすぎです 酸欠賞 ナサニエル 魔族 もう何も言うまいよ。 官能賞 ナサニエル 魔族 さすが変態薔薇男爵。 コメント 最終発言もらっちまったー。ナサすまーん! -- ケネス 皆さん、おつかれさまでした。最終発言は勝者側が取るべきですよっw 気にしないで ケネスさんエピの吊りと襲撃の欄が素敵やね(笑) -- riz@ナサ兄 とりあえずMVP編集完了っと。いやあ下のほうが楽しいことになってますねw -- sora@魔王ロッテ やっとこ帰宅してエピ読んだ…しみじみいい村だったなとw soraさん、村立て乙です! -- babypop@ローズ おつかれさまでーす。…ナサニエルはある意味『勝者』だろう。シスコン賞以下総ナメ(笑 -- NIZ@ゆーじーん よし、一通り完成!ニーナのAA劇場作りたかったけどうまく表示されなかったのが残念。 -- sora@魔王ロッテ うは。ロッテ編集おつかれー。ニーナのAAは残念だねー。まぁログ参照ってことで。 -- ayurazi@勇者ケネス ロッテ、編集おつかれ。しかし、臨海の恥ずかしい二つ名をひっぱるのはやめてくださいw 三回連呼するのもやめてくださいw一番楽しんだ、という意味では私がきっと『勝者』です(* - )b ロッテの愛があれば他になにもいりません。変な賞とかいりません♪皆さん、またどこかで〜 -- riz@ナサ兄 ローズ〜、良かったらミクシで声かけて〜。密かに探してるよ〜。(嫌ならいいよ) -- ayurazi@勇者ケネス ミクシーかあ…!!多分解からないと思います(笑)人狼をしてることをステルスしてるんで(笑)名前「マツモト アカネ」ニックネーム「ボス」で検索するといけます(w)是非是非☆>ayuraziさん -- babypop@ローズ 前ページ次ページ審問同村会
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/8408.html
登録日:2011/08/10(水) 21 17 37 更新日:2024/05/11 Sat 09 36 48NEW! 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 けいおん!あずにゃんぺろぺろクンカクンカ その発想はなかった どうあがいても絶望 ゆうパック アルカイダ イスラム国 オウム真理教 オタク オタクバレ キラークイーン テロ テロ行為 ニートの天敵 フルメタ 事件 合法テロ 宅急便 宅配テロ 宅配便 山口組 工藤会 微笑みの爆弾 悪意の塊 日本赤軍 炎上 無差別テロ 爆発 爆発しろ 発送の勝利 隠す気が一切ない 隠れオタク 魔女の宅急便 宅配テロとは宅配便、郵便物などを装ったテロ行為のこと。刑事もののドラマではよくあることかもしれない。 小包などにカモフラージュされた爆弾を何も知らずに受け取り、開けたらドカン!…というわけだ。 (時限爆弾かと思ったらただの目覚まし時計だったという展開もあり。) 恨みを持った個人宅か企業などに直接送られてくる場合が多く、実際に起こった事例ではアメリカの炭疽菌事件が記憶に新しい。 「キラークイーンの特殊能力…それは…触れた物を爆弾に変える能力…たとえ宅配便であろうと…クックッ…なんであろうと」 もしも憶えのない不審物が送られてきたりしたら、無闇に開けたりせずに通報するなりそのまま処分するなりした方がいいだろう。 え? 例えば下駄箱のような動かしようのないものに不審物が仕掛けられた形跡があったとしたら? 下駄箱ごと爆破するのをお勧めする。 追記、修正はテロに注意しながらお願いします。 △メニュー 項目変更 テロじゃなくね? これはあかん -アニヲタWiki- アニヲタ「ただいまー」(先週注文した商品届いてるかなぁ) 母「おかえり…あんたに荷物届いてたよ」 アニヲタ「ああ、ありがとう」(キタ――(゜∀゜)――!!) 母「あんた…」 アニヲタ「ん、なに?」 母「ううん、なんでもない」 アニヲタ「?」 <自室にて> アニヲタ「では早速中身を拝ませてもらいますかwwwん?」 品名:パンツじゃないから恥ずかしくないもん!ストライクウィッチーズ〇〇 品名:パンツじゃないから恥ずかしくないもん!ストライクウィッチーズ〇〇 /‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖\||‖|||⊥⊥⊥⊥、||‖‖||‖|/ ヽ|‖‖||‖/ _ノ八\_ \|‖|| / ((・)) ((・)) ヘ‖||| ⌒(_人_)⌒ |||| |トェェイ| |||| ヘ | | /‖||‖ ヘ ヒェェイ ノ ‖||r' `ー-´ ヽ 転じて、宅配テロとは宅配物の中身の商品名やアニメのイラストなどが箱に印刷・または配達伝票の中身の項目に記載されている事を指す。 これらの情報が箱の外側に記載される事により、運送業者の方々や預かった家族に品名などが知れわたる事、これが宅配テロが宅配テロたるゆえん。 宅配業者ではなく発送側に問題があるため、この名称を用いるべきかという声もあるが、既に浸透しているし別に宅配業者を恨むヒトはいないだろう。 テロだなんて大袈裟な…と思う人もいるだろう。確かに中身が食品や日用品、普通のゲームとかなら問題はないはず。 しかし上のように萌え系アニメグッズやえっちなアイテムだと話は変わってくる……というか場合によっては死活問題だ。後は女装用品とか……。 特に隠れオタクな人にとっては家族などに中身が知られるのは死の宣告を受けるに値する。 宅配のスタッフだって大抵は担当エリアが一定なので、通販を頻繁に使う人は顔馴染みになっている場合もある 。そういうときに宅配テロをされたら、死活問題とは言わないまでも気まずくはなるだろう。 これとかいい例。 大抵の業者は「ゲームソフト」や「CD・DVD」といったジャンルのみを記載して宅配物の内容が洩れないように気をつけている。 特にアニメグッズ・アダルトグッズ・コスプレグッズを扱う通販業者などは何を頼んでも、「電子機器」「精密機械」「模型」「衣類」「箱類」などと記載したり、「中身が分からないように梱包いたします」とはっきり告知していることもある。 逆に言えば、家族宛にこうした商品が届いた場合……。 というか宅配テロ業者とバレたら次から買ってもらえなくなるので当然ではあるが。 また、注意点として発送者の情報は隠しきれない事がある(店名、法人名、発送者名等)。 商品名や梱包材からは中身がわからなくても、発送者の情報をネットで検索されたらバレる可能はある。 わざわざ運送業者が調べたりしないだろうが、家族が疑い深い場合は注意する事。 しかし出版社等の通販が本業でないところやメーカー直販サイトは注意が必要。 特に懸賞とかプレゼント企画の商品は「当選した」という嬉しさを演出するためか外装に企画名や品名を描いたりすることが多いようである。 オークションやフリマアプリでは出品者の手間を減らす為に商品のカテゴリ名がよく使用されるのだが、これもまた曲者。 この手のサイトはカテゴリが細かく分けられており、「コスプレ」「抱き枕」「フィギュア」といったカテゴリの商品を落札すると、そのカテゴリ名のまま送られてくることがある。 また、出品者が軽いイタズラのつもりなのかトンでもない品名や箱で送った例も報告されている。やられる方は溜まったもんじゃねぇ……。 品名に留まらず、外装の段ボールや封筒にキャラクターの絵がでかでかと印刷してあることもあり、こちらは破壊力が倍増。 特にプリキュアシリーズなどの児童向け作品に顕著であるが、これは本来ターゲットとしているお子様に喜んでもらうためのサービスであり、 これをもって宅配テロと呼ぶのは逆ギレに近いものがあるだろう。 荷物を受けとるとき配達人の表情を見てみるといいかもしれない。 防衛策 宅配テロを恐れる諸君のために、主な防衛策をここにいくつか紹介しよう。 日時指定をして自分で受け取る 最もシンプルな方法。日時指定などで配達日時を決めておき、当日は一切の予定を入れず家でじっと待つ。 可能なら、家族が用事で出払っているなど、自分しか家にいない日時を指定しておくとなお良い。 実際の配達が指定した時間帯から前後する事もあるので、トイレ等は早めに済ませておこう。 コンビニ受け取り 提携しているコンビニで荷物を受け取れるサービスを行う業者もある。自分で取りに行く手間はあるが、家族に知れてしまう恐怖と比べれば遥かにマシだろう。 営業所(郵便局)止め ネット通販では自宅以外の住所を届け先に指定できる事もある。プレゼントのために親戚宅や友人宅に送るというのがメジャーな使い方だろう。 このシステムを利用して、希望の営業所名などを手打ち入力し、備考欄に「営業所止め希望。不都合の際は連絡願います」などと書いておけば大体はOKしてもらえる。 コンビニ受け取りが使えない場合に有効な手段だが、この方法を利用する際は担当の配送業者を予め確かめておこう。サイトを隅々まで見れば、利用ガイドやFAQなどどこかに書かれているはずだ。 また、受け取りに身分証が必要になるので忘れないように。 届く前に受け取り場所を変更する 配送業者の所定のサービスに会員登録しておくと、自分宛の荷物が来た際にWeb上から受け取り場所と日時を変更できる。営業所止めがNGされてしまった場合に有効な手段。 業者によっては変更サービスの会員でなくても、サービスセンターに電話で連絡して変更してもらう事も可能。 また日本郵便なら、ゆうパックの初回配達に限り、非会員でも配送番号だけでWeb上から受け取り場所を変更できる。 なお、手続きのタイミングによっては変更が間に合わなくなってしまうので、発送連絡が来たら即座に行おう。 公共宅配ロッカー 上記のサービスに会員登録しておくと、業者の事業所やターミナル駅、商業施設などに設置されたロッカーが利用できるようになる。 相手が機械なのでコンビニ受け取りや営業所止めよりも気楽だろう。主なものはヤマト運輸の「PUDO」や日本郵便の「はこぽす」など。 ただし代金引換の荷物やあまりに大型の荷物では利用できないので注意。 配達日時をわざと遠く・遅くに指定し、配送担当の営業所で保管中の荷物がトラックに乗る前に受け取りに行く 「通販サイトが複数の配送業者で配送し、担当業者がどれなるかは発送連絡が来るまで分からない」といった場合など、ホントにどうしようもない時だけの手段。 営業所の受付の人などにも荷物を探す手間を掛けさせてしまうので、しつこいようだが先述のどの方法も使えないような時だけの最終手段。 商品購入時の備考欄などで伝票の品名を指定する 「もし家族が受け取っても怪しまれなければいい」という別角度からアプローチした対策。 ネットオークションやフリマアプリでは特に有用だが、別の意味で出品者に不審がられる恐れもある(*1)。 通販を使わずに実店舗で買う 当たり前だがこれが最強。 ただし、商品をレジまで持っていき、そして商品を持ち帰る精神力が必要。 もっとも専門店であれば、店員もオタクだったり、(取り扱い商品に)理解がある場合も多く、そもそも多くの人と接客する中でわざわざ一人でだけ覚えているとも限らない。 諦める これらの対策はネット通販やフリマアプリなど「買い物」には通用しても、懸賞やプレゼント企画の「当選の発表は発送をもって代えさせていただきます」の前には無力である。 オタクである事をカミングアウトする。 家族にオタクである事が知られていれば、もはや怖いものは何もない。 ただし、性同一性障害で女装(男装)をしている場合のカミングアウトには十分な注意を要する。(*2) 万が一バレた際の言い訳を考えておく どんなに対策をしてもバレてしまう事もあるだろう。そんな場合を想定して言い訳を考えておく。 友達の誕生日プレゼント、イラスト練習の資料、文化祭で使う等々。 追記、修正は宅配物をオカンから渡された後にお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 怖い。 -- ななし (2013-07-31 23 12 03) まぁあれだ、家族に知られたくない物なら可能な限り自分の手で買えってこったな -- 名無しさん (2013-07-31 23 59 08) 本当にキラークィーンの攻撃だったほうがナンボかマシだよ -- 名無しさん (2013-08-01 00 20 38) また君かこわれるなぁ・・・ -- 名無しさん (2013-09-26 23 52 23) ダメみたいですね(諦観) -- 名無しさん (2014-02-27 01 25 51) 配送センターにいる大量のバイト青年達にも見られてる可能性が微レ存。 -- 名無しさん (2014-02-27 01 51 22) はこの形状からバレる可能性も・・・ -- 名無しさん (2014-02-27 02 00 59) 抽選プレゼントの当選品とかあぶねぇなw一字一句逃さず品名書かれてた日にゃもう -- 名無しさん (2014-02-27 03 14 32) この間某アニメのプレゼント企画で当たったのが届いたけど書いてあったよ、企画名と品名と。幸いうちわとかいう無難なものだったからよかったけど -- 名無しさん (2014-09-12 16 35 36) 割と真剣に身近で破壊力のあるテロだから困る -- 名無しさん (2014-10-13 09 37 19) 一番くじとかセットで買うと商品名でかでかと書いてあるからなぁ -- 名無しさん (2014-10-13 09 47 42) 集英社の得意技 -- 名無しさん (2014-12-05 22 22 46) 家族の絆こわれる -- 名無しさん (2015-03-08 23 35 42) かつてKONAMIから箱にデカデカと「ときめきメモリアル」のタイトルロゴが描かれた箱がユーザーへ届けられた事例があったらしい。箱 -- 名無しさん (2015-04-30 01 28 08) (続き)箱そのものなので宛先がどう書かれてようがアウトという公式テロ -- 名無しさん (2015-04-30 01 29 43) みんなそんなに家族に知られたくないのか? オレはエロ本とか堂々と本棚に挿してるし、机の上に置いているが -- 名無しさん (2015-04-30 01 34 52) プレバンの梱包物はたいてい堂々と商品名が書かれてる状態で届くからなぁ… -- 名無しさん (2015-04-30 09 48 22) 実際、見つかったら後でなんか言われるの? -- 名無しさん (2015-04-30 09 56 58) 宅配業者の方に悪気はないだろう、多分・・・ -- 名無しさん (2016-03-30 10 54 59) 宅配業者(まーたあそこの家変なの買ってるよ…)位は思われてるかも知れないが -- 名無しさん (2017-06-21 21 52 30) クドわふたーのLEDメッセージボードをヤフオクで買ったら、品名「けいおん!あずにゃんぺろぺろクンカクンカ」で送られた人、今頃どうしてるんだろうか… -- 名無しさん (2017-06-21 23 19 21) ↑16配送センターの人は仕分けに必死だから商品名とかぶっちゃけ見てないよ。注視てるのは箱のサイズや重さくらいだ -- 名無しさん (2019-03-16 00 34 33) 炎上して住所が特定されたヤツの家に大量に出前を届けさせるやつとは違うのか -- 名無しさん (2019-12-11 19 40 52) なんだこのタグ群・・・? -- 名無しさん (2021-01-16 16 41 48) ピングーでポップコーンが届いた瞬間爆発するなんてネタはあった -- 名無しさん (2021-01-16 16 52 18) ガチな意味での宅配テロならサラリーマン金太郎でもあったな。金ちゃんがブチ切れて元八州のメンバーを集めてヤクザの事務所にカチコミにいった奴 -- 名無しさん (2021-04-18 00 22 28) 微妙に違うけど、商品名に俺の名前、受け取り人に商品名が書かれてたことがある。配達員さんお疲れさまでした。 -- 名無しさん (2021-05-26 16 41 28) 宅配テロ以前に具体的な商品名が書かれてると盗難の恐れも起こりうるとか想像できないんかな発送する側は・・・ -- 名無しさん (2021-06-23 20 35 02) オタクである事をカミングアウトするが俺的にいい対策だと思うんだがどうおもう? -- 名無しさん (2021-10-31 00 48 35) ↑昔はオタクってだけで犯罪者予備軍扱いだったんだよな。今なら別に問題ないと思う。 -- 名無しさん (2022-07-22 09 30 07) 今でも聞くかな?この手の話題? -- 名無しさん (2024-05-11 09 36 48) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1597.html
「前回までの粗筋。 始めはさながらヒーローの如く現れ、この私を身を呈して守った古泉一樹だが、 物語の進行と共にヘタレ化が進んでいる」 「それでは粗筋にしても粗過ぎます。やり直す必要があるでしょう。 …ヘタレ化は否めませんが……」 「了解した。やり直す。否、物語の進展云々についてはこの際問題にしない」 「もはや粗筋ですらありませんね」 「問題視すべきは…」 「…すべきは?」 「イ・イ・イツキン イツキンキン」 「また!?止め――」 「以上。自転車の上からお送りした」 「え!?マジでずっと乗ってたんですか、自転車に!?ぼくた―― ――えええこれ浮いてる!?凍死とか補導どころじゃねええ!!」 「ペダルを踏み続ける行動が余りに単調だったため、この前に見た映画のワンシーンを再現した。 かごに、あなたのシャミセン二号を乗せれば完璧。 前フリが長い上に粗筋の役割を果していないので、早急に本筋に入ることが望ましい。 続々々・花嫁修行危機一髪、スタート」 「ぞくぞくぞく!?語呂悪っ! ちょ、始まる前に降ろして下さいい!」 「ヘタレ」 「くっ…! ああっ、前向いて下さい、でっででで電柱がっ!」 家に着いて、冷蔵庫に買った物を詰め込んで、ソファに突っ伏す。 今日も疲れた… 長門さんは口をもごもごと動かして、十八番の情報操作だろう、 ぐちゃぐちゃに混ざった黄身と白身に沈む、砕けた殻を取り除いていた。 少しの間休んだおかげで復活した僕も、彼女と並んで台所に立つ。 「何か僕に手伝えることは」 「無い」 にべもなく長門さんはそう言って、フライパンに卵を流す。 卵が焼けるいい匂いが部屋に立ち込めた頃、 彼女のお腹から、くうくうとかわいらしい音がして、思わずへらっと笑うと、 「恥ずかしい」 と菜箸で居間を指した。 何もできないくせにぼさっと突っ立ってないで、 さっさと向こうに行け…と言う訳ではないのだろう。 今は、あの炭水化物ダイエットの時とは違い、はっきりと恥ずかしいと言っている。 ですが、長門さん。 室内に入った今でもニット帽を被っている方が恥ずかしいのでは…? 「気に入った。 次の市内探索はこの服装で臨む」 うーん…それは… 僕が選んだ服を気に入ってくれたのは素直に嬉しい。 嬉しいが、その服を着た長門さんを見て、 それも僕が買った物だとばれたら、涼宮さん達がどう思うか… 「あたしは人の趣味に難癖をつける気は無いわ…… 有希がいいんなら、まあ、別に構わない、わ…よ」 「へ、へええー。 古泉くんって、そういう趣味があったんですか~。 あっ、別に軽蔑なんてしてませんよ! かわいいですね~、長門さん。確かに似合ってます~…」 「お前… いや俺は何も言わん何も聞かんお前の趣味なんて知りたく無い。 長門がいいならそれでいい。 お前が無理矢理着せたっつうんなら話は別だけどな。 とりあえず…俺の妹には手え出すなよ……」 ありありと残りの団員の反応が見えて、僕は乾いた笑い声を漏らした。 どーしよー… 僕が選んだことを、長門さんが黙っていてくれれば問題はそこまで大きく無いのだが… 「できた。オムカレー」 どん、と皿がふたつ机の上に置かれる。 「召し上がれ」 「あ、いただきます」 豊かな匂いと鮮やかな彩色が思考を遮ったのをいいことに、 心配は後回しにして、スプーンを手に取った。 それまでずっと続いていた、スプーンと皿の底がぶつかる軽い音が止まった。 長門さんの分だけ。 しかし、彼女の皿には、まだ黄色と茶色の固まりが半分ほど残っている。 「あなたは」 ぽつり、と彼女は言葉を落とした。 「目の前に危機が迫っている人間がいたら、 利害の有無に関わらず、その人間の安全の為に動く、と。 あなたはそう言った」 一昨日の僕が言ったことを彼女は反復した。 今の状態に発展する羽目になった、今思えば小っ恥ずかしい台詞。 そしてこの騒動が起こる、全て引き金となった台詞。 「危機と呼べるレベルには至らない。 しかしそれはあくまで、私から見た彼女の状況。実際に彼女が感じていた不安は私には計り知れない。 私は母を見失い、泣いていたあの子の為に、行動を取ったつもりだった」 長門さんはここで言葉を切り、僕を見つめた。 僕のスプーンを運ぶ手も、もうとっくの前に止まっていた。 「あなたが私にそうしたように」 沈黙は数秒程だった。 「成長、されましたね…本当に」 まるで、今まで遠目にしか見ていなかった幼い子の格段の成長を目の当たりにしたような気分で、 多分穏やかなものになっているであろう目線を暫く注いでいると。 長門さんはニット帽を更に深く深く被った。 前が見えないんじゃないのか、と思うくらいに。 夕食も、その後片付けも終えて、まあ、また抵抗虚しく脱がされ、 浴槽に突っ込まれたりした。 長門さん、あなたはもう少し恥じらいを持ちましょう… 婿にいけない…え、お前がいくの?来てもらえよ、 と、どうだっていいことを一人で悶々と考えて、続けて入浴している長門さんを待つ。 しばらくして、脱衣所の扉が開いた。 よほど気に入ったのか、僕が貸そうとしたラフな服を彼女は受け取らず、 今日買った服をもう一度着ていた。 帰宅してパジャマなりに着替えると思うので、僕がとやかく言うことではない。 「忘れていた」 開口一番、彼女はそう言って、居間の床に正座した。 「何をですか?」 「耳掻き」 ぽんぽん、と彼女は太股を軽く叩き、こちらを見上げた。 片手には耳掻きが握られている。 ……できればそのまま、ずっと忘れていて欲しかった… ではお言葉に甘えて、と言う訳にもいかないので、 首をひたすら左右に振ることに専念する。 「結構です」 「良くない」 「いりません」 「いる」 素早く伸びた長門さんの手が、ぐっ、と僕の右手の中指を強く握った。 そこに巻かれていた包帯は、入浴前に解かれていて、今はむき出しだ。 そこっ、腫れてるとこだって!ワザとやってるだろ!! 「いた、い、です」 「耳掻き」 「いりません…っ」 ぎゅうううう 「すみません嘘つきましたー! やっぱりお願いします!!」 「そう」 指を握る力が弱くなり、そのまま手を引かれ、彼女の太股に顔の側面を預けることになる。 なんだこれは。 彼女が無頓着でも、こっちはそうにもいかないのだから、 やっていいことと悪いことがあるだろう。 なんでスカート選んだんだよ… と数時間前の自分を呪う。 知らねえよ、こんなことになるなんて普通思わないだろ。 と数時間前の自分は言った。 普通、なんて言葉は三年半程前に見限ったつもりだったのだが、そう言い訳せずにはいられない。 あーあーあー、早く終われー、と呪文のように口の中だけで呟く。 「終わり」 その甲斐あってか、意外と早く耳から棒が抜き出された。 しかし、ほっ、と息を吐いた途端、 「次、反対向いて」 ごもっとも…耳はふたつあるんだよな… 一度起き上がり、反対側の耳が上を向くように動く。 これはどこの少女漫画だ、と眉が寄る。 どこの誰だ、僕の忍耐力やら精神力やら理性やらその他諸々を試しているのは。 受けて立とうじゃないか、とひとりで意気込んでいると、耳から違和感が消えた。 「終わりましたか?」 そう聞いても、長門さんは黙ったままだ。 頭を持ち上げたが、彼女に手の平でこめかみを押さえつけられ、さっきと同じ体勢のままで動けない。 「寂しい」 僕は真上を向いた。 「ひとりは寂しい」 彼女は僕を覗き込んでいる。 今日会ったあの女の子の目は、母とはぐれたと気付いた時、きっとこんな風に揺れていたのではないのか。 もしかしたら、長門さんは、今、彼女自身を迷子の女の子に重ねているのかもしれない。 気のせいかもしれないが、もしそうだったら、いつもの笑顔になればいい。 「寂しい、ですか」 「そう」 「あなたにも、そんな感情があるんですね」 「そう。一人暮らしは寂しい」 「僕も寂しいです」 「泊めて」 またえらい所に話が飛ぶものだ。 「駄目?」 「駄目です」 「私はひとり。あなたもひとり。あわせてふたり」 「それはそうですけれど」 「なら決定」 どうやら僕に拒否権は無いらしい。 この強引さ、涼宮さんの影響だろうか。 「歯磨き」 やっと起き上がることができた僕に、歯ブラシが突き付けられる。 はいはい、ともう抵抗する気力も失せて、僕は口を開いた。 「長門さんはどうぞベッドでお休み下さい」 その格好のままで寝るのは窮屈だろうと、長門さんに簡単な服を手渡すと、 脱衣所に入ってあっさりと着替えてしまった。 耳掻きをする前にそのジャージを履いて欲しかった。 「あなたはどこで寝るの?」 「ソファで寝ます」 「押し入れの方が安眠できると思われる。 私はそこを寝床にしているロボットを知っている」 「いえ…あんな、尚更ネズミが出てきそうな所では落ち着いて眠れません」 「確かに…では何故? 何故彼は、彼の畏怖の対象であるネズミがより出現しやすい押し入れで眠るの?」 「さあ…直接、その猫型ロボットに聞いて下さいとしか」 押し入れから毛布と掛け布団を引っ張り出して、ソファに被せる。 その際、長門さんは押し入れの上の段に登って、二分程そこに寝転がってから、また直ぐに下りた。 「今度、自宅の押し入れで寝てみる」 好奇心旺盛だ。けれど、隠れ家みたいで少し面白そうかもしれない。…やらないよ。 「そこでいいの?」 ベッドに飛び乗った長門さんが聞いた。 「僕のことはお構いなく」 ソファと布団の間に潜る。 「一緒にベッドで寝たとしても、私は構わない」 「僕が構います」 そんなことをして、何かあってからでは遅い。 遅いって何が?いや別に何も。 「そう」 長門さんはこちらを見て、 「おやすみ」 と壁に張り付いた電灯の電源を切った。 「おやすみなさい」 ここで寝返りをうったら転げ落ちるな。 「古泉一樹?もう寝たの?」 「起きてますよ」 「そう」 夏ならともかく、冬だと少し冷えてしまう。 「古泉一樹、寝た?」 「起きてます…」 「そう」 仮眠だとそこまで気にならないが、長い時間寝るとなるとソファは少し固い。 「古泉一樹?眠った?」 「………」 「古泉一樹?」 「起きてますけど…」 「そう」 「あの、あまり声を掛けられると、ちょっと…」 控え目にそう言うと、しばらくの間沈黙が流れた。 「眠れないんですか?」 「違う。 あなたがそこにいるということを、あなたの声がすることで確認したかっただけ」 「そうですか…」 「そう」 閉鎖空間でも発生しない限り、一度床に就いてから家を抜け出すことはなかなか無いのだが。 きっと長門さんに備わっているであろう、サーモグラフィティ等の機能を使用せず、声での存在確認。 …そうだ。 「寝物語りをしましょうか」 「お話?」 「そうです。 おとぎ話とか、童話とか…怪談や、本当は恐ろしいグリム童話等はできませんが。 あなたが寝付くまでお話しでも」 「金太郎がいい」 「日本人の殆どが完璧に説明できないで有名な話できましたね… えーと、昔々ある所に金太郎という名前の男の子が…」 「ある所ではない。物語の序盤の舞台は足柄山の山奥」 「ご存じでしたら僕が話す必要は無いのでは…」 「ある」 どこにその必要があるのやら毛頭見当つかぬまま、そこからは殆ど長門さんが物語の語り手になっていた。 これでは僕の方が先に眠ってしまいそうだ。 「そうして、坂田金時は酒呑童子を無事に退治した。と言い伝えられている」 「それで源頼光に褒美を頂いて、めでたしめでたし、ですか…」 「そう」 「そうですか…金太郎ってそんな話だったんですね… 眠い、です…」 「そう。私も」 「寝てもいいですか」 「いい。私も寝る」 その言葉に僕は目を閉じる。するとそのまま、くたっ、と眠れた。 色々と疲労が溜まっていたからだろう。その疲れが取れる筈の入浴が一番気苦労が絶えなかったから。 朝に強いとも弱いとも言えない僕を起こしたのは、先に目覚まし時計を止めた長門さんだった。 「起きて」 「ん」 「起きて」 「あーい…」 は、の発音ができず、それでもまだ布団の中でまんじりとしていると。 「起き――て!」 そう言いながら、助走をつけて腹に飛び乗られた。 「ぐあ!」 膝立てることねーだろ!! と叫ぶのもままならなず、自由な上半身のみで飛び起きれば、 僕に跨がっている長門さんのドアップで、うわうわ言いながら背中がソファに逆戻り。 コントか、コントがしたいのか一樹。 「起きた?」 「ええもう最高の目覚めです。誰かさんのおかげで」 体の上から退いた長門さんに、いつもの笑顔で痛むお腹を押さえ、ほんの少しの嫌味を垂れる。 「あなたは痛くされるのを好むの?」 嫌味は通じなかった。 「なんでそう話がぶっ飛ぶんですか」 「好き?」 「違います!」 何時何処でどんな状況で誰からそういう知識を得ているんだ。 朝っぱらからなんて会話だ、と洗面所に向かおうとすると、 『ラジオ体操第一!』 全部やってたら確実に遅刻しますよそれ。 結局遅刻は免れた。 体操は昨日のものを全てやったので、 終わった頃には徒歩では到底間に合わないであろう時間だったのだが、 ここでもう一度自転車に出番が与えられた。 「早く乗って」 「ふたり乗りで登校はちょっと…教師の目もありますし」 「遅刻したいの?」 「そういう訳では…」 自転車置場でもたもたする僕を見兼ねてか、 長門さんはさっさとスタンドを撥ね上げてサドルに腰掛け、こちらを振り返って言い放った。 「乗らないと置いて行く」 チリンチリン 「おはよう」 「あら有希、おはよ!…え?古泉くん?」 「お、おはようございます」 チリーン 「おはよう」 「おう、はよっす長門…はあ?古泉?」 「おはようございまーす…」 チリンチリーン 「おはよう」 「あ、おはようございますー長門さ……ふえ?こいず…」 「おはようございま、す…」 恥ずかしい恥ずかしい目茶苦茶恥ずかしい。 こっち見ないで欲しい、っていうか、なんで今日に限って登校中のSOS団全員に会わなきゃならない。 それになんで今日に限って長門さんは全員に挨拶するんだ。 わざわざベルまで鳴らして。 長門さんは三人ともすいすい追い抜かしたが、荷台で僕が縮こまっていた事に関して、 必ず後で涼宮さん達に追及されるんだろうな、今から頭が痛い。 とひとりで思い悩んでいると、坂のふもとの自転車置場に着いた。 「ありがとうございました…」 「いい」 見上げただけでうんざりとする坂を徒歩で登る。 「今日の僕の下駄箱には何が入っているんでしょうね」 昨日の剣山を思い返す。画鋲どころでは無かったな… 「さあ。ちなみに昨日の私の下駄箱には消しゴムのかすが隅に置いてあった。 恐らくは、あなたに好意を寄せている女子生徒の仕業」 うん…なんてコメントしよう……。 長門さんは、怒らせたら恐そうな人学年第一位に輝いてるから…当然と言えば当然か。 「ショボい」 うん…。 その日の僕の下駄箱には、いや、上履きの中には、良く練られた納豆が入っていた。 ちょ、たんま。ほんのちょっとでいいから暴言吐かせて…一言で済むから。 せーの、 「食べ物に罪はないでしょうが!!」 「そっち?」 と、下駄箱から丸められた紙屑を取り出しながら言う長門さんを尻目に、 僕はあらん限りの力で上履きを廊下に叩き付けた。 ああ、むしゃくしゃする。こんな扱いを受けた納豆の気持ちを考えてもみろ。 誰のために美味しく加工されたと思っているんだ。 買ったお前のためだろう!? 「いや、ツッコミ所が違う」 長門さんはそう言い、廊下に転がった上履きを拾い、口をもごもごとさせた。 復活の上履き。 さて、特筆すべきは全ての授業が終わった放課後、文芸部室にての事だ。 今朝の件についての、他の団員からの追及どころでは無かった。 いや、追及はされるにはされた。一時間目が始まる前の休み時間、教室に襲撃しに来た涼宮さんに。 なので、長門さんが昨日に限り僕の家に泊まったことや、 晩ご飯を作りに来てくれていることは勿論伏せて涼宮さんには寝坊して遅刻か、 と慌てて僕がマンションを飛び出した所でたまたま長門さんが通りかかり、 彼女の善意による思い付きで一諸に自転車で登校することになった、と説明した。 今の状況に至った経緯を順に追って説明するのももどかしいので、過程は省かせて頂こう。 僕は両肩に物凄く強い力を加えられ、腰を掛けた姿勢のままパイプ椅子に押さえ付けられていた。 その力は長門さんの両手に込められていて、彼女は僕の目の前で仁王立ちをかましていた。 「えー…と」 「却下」 「まだ何も言っていませんが…」 「あなたが、先程私があなたについて指摘し、 そして今から私が、あなたに実行しようとしている事から逃げようとしているのは明らか」 「いや、そりゃ、逃げもしますって」 「遠慮は無用」 「遠慮だとか言う問題では無くてですね…」 「私は有機生命体で言う所の雌に分類される。あなたは雄。 よって私には、あなたが今置かれている状況を完全に理解する事は不可能」 「はあ、まあ、長門さんには無縁でしょうねえ…」 「しかし、今のあなたは辛そうに見える」 「別に、あなたが思っていらっしゃる程問題は…」 「ある。あなたのそれは痩せ我慢」 「我慢、って…」 「間違ってはいない筈。私は私の発言に責任を持つ。 『あなたの手が完治するまで私があなたの生活をサポートする』」 「はあ、まあ、そんな台詞もありましたね…」 「それはこうとも言える。あなたの手が完治するまで私があなたの右手の役割を担う、と」 「だからって、何もこんなことまで…」 「恐らく、あなたの右手が正常に使えたのであれば、 あなたはこの様に追い込まれるまで放置しなかった筈」 「ええ、まあ、それは確かに」 「しかし、あなたのその不快感も今日で終わり。私がその始末をする」 「いや、マジでいいです、って!僕はそこまで気にしていませんから!」 「あなたが気にせずとも、私が気になる。もう限界」 「どうかお気になさらないでく――なんて物ポケットに入れていらっしゃるんですかあなたは!?」 「これは使用しないの?」 「しませんしません! あなたは、何か大きな勘違いをされているようですね、止めておきましょう!ね!!」 「却下」 「却下って!あなたにこういった経験があるとは思えません!」 「確かに、経験は皆無」 「なら!」 「やる気があれば何でもできる。これは名言。偉大な人の言葉」 「ひっ、人には努力や根性のみで出来ることと出来ないことが… とにかく一旦離して下さい」 「暴れないで」 「お断り、しますっ…手を退けて頂けませんか!」 「却下。これ以上は私が見ていられない」 「たんま!待った!結局それ使うおつもりですか!?」 「そう」 「いや、そんなの使ってやったら死にますよ!殺す気ですか!」 「男が細かい事でごちゃごちゃと…」 「男だからです!」 「わかった、文句は後程受け付ける」 「後では遅――」 「力、抜いて…」 「ちょ、わ、やめ、ぎゃああああ!!」 ひゅっ、と長門さんの右手が振り上がり、僕は彼女の手の中にあるカッターナイフの刃先を避けるべく、 渾身の力で彼女の左手を肩から払い、椅子から転げ落ちた。 しかし、無様に尻餅をついた体勢の僕が立ち上がるよりも先に、彼女のカッターが頬にぴたりと添えられる。 「あなたに無精髭は似合わない」 「ひ……!」 皮膚に、刃の冷たく固い感触を感じ、さーっ、と血の気が引く。 カッターで、髭は、剃れません…!! そう言おうとするが、後ちょっとでも刃が深く入れば、 間違いなく流血沙汰なこの状況に対する恐怖からか、 口がぱくぱくと空気を噛むだけで全く声にならない。 怪しげな機関に所属しているせいで、恐い目や痛い目には割と遭い慣れている筈なのだが、 それらと決定的に違っているのは、今の彼女に悪意は、それはもう全く、全然、これっぽっちも無く、 だからこそ、これ位で許してやらあ、ここまでやったら十分だろ、というラインが彼女には存在せず、 それがより恐怖を倍増させる。 更に、あんなに必死になって身に付けた護身術は、彼女相手には無効と来ている。 カッターとのゼロ距離に鳥肌を立て、僕は首をカッターから逃れる為に横に向けた。 ぎぎぎ、と効果音を付けても良さそうな程ぎこちなく。 今の今まで長門さんの説得に必死(しかもその説得も失敗への道まっしぐらだ)だったせいで全く描写していなかったが、 涼宮さん達も既にこの部室に居て、先程から僕達の会話を目の当たりにしているのだ。 そろそろ危険だ、と助太刀をしてくれても良さそうだと言うのに、しかし一向に誰も動く気配を見せない。 は、薄情者…。 傍観を決め込んでいる三人に、アイコンタクトで助けを求める。 S! 「しっかし、さっきの有希と古泉くん、会話だけ聞いてたらどえらい勘違いしそうだわ。 ね、みくるちゃーん」 O! 「ふえ?勘違いですかあ?別に何も… ああ、長門さん、カッター振り回しちゃ、危ないですよぉ…でもわたしじゃ止められないし… あれ?キョンくん、なんで震えてるんですか?」 S! 「刃物持った女子恐い腹えぐられるえぐられる朝倉止めて助けて嫌だ助けて助けて」 SOS送信ミス ………どっ、どいつもこいつも…!! 僕のSOS信号は誰にも届かなかったようだ。 いや、届くには届いたが、長門さんプラスカッターのコンボに立ち向かう勇気が無いのかもしれない。 僕だってそんな勇気は微塵も無い。 が、このまま大人しくしていると輪をかけてとんでもない事態に陥りそうなので、 ていうか、高々無精髭くらいで一々血の海に沈んでいては、この先命がいくつあっても足りない。 「ああっ、あんな所にキュアブラックがっ!!」 「なぎさ!?」 この部室のある校舎とは反対側に建っている校舎の屋上を指差す。 長門さんがプリキュア好きだというのは初詣の際に知ったことだ。 窓の方へ、足はその場に貼り付けたまま、上半身のみを大きく後ろに捻った長門さんから隙をついて飛び退き、 ドアノブに手を掛ける。この部室から逃げた所で彼女が諦めてくれるとは思わないが、ここはすったもんだをするには狭すぎる。 しかし、こんな見え見えの嘘に上手いこと引っかかってくれたな… 「この様に」 「え?」 「私が騙されるとでも」 長門さんはこちらを振り返ることすら無く、刃物を握った右手を肩越しに覗かせただけだった。 …僕の目には少なくとも、そうとしか映らなかった。 次の瞬間には、すかーん!と音を立て、扉にカッターが突き刺さった。僕のブレザーの裾を巻き込んで。 「な……!」 手裏剣!?あんたは忍者か!とか、ぶっちゃけありえなーい、とか、言いたいことは無限にあったが、 歯の根が噛み合わず、かちかちと音を立てただけだった。 あれ、僕ここまでビビりだったっけ…? あ…ヘタレ化……? でもこれだと、どちらかと言うとヘボ化では…? 頭がぐるぐるになっている僕を当然無視して、長門さんはすたすたと近付き、カッターを扉とブレザーから引き抜いた。 大きく切れ目が入ってしまったブレザーを見て、長門さんは、 「後程修正を施す」 と言い、またも刃物を構えた。 それなら無精髭をきれいさっぱり取り除いて下さい。 長門さんの右腕が、再び大きく振り上がって、風を切り裂きながら僕の顔面目掛けて迫って来た。 もう、それ、殺ろうとしているようにしか見えない。とても髭を剃ろうとする動作ではない。 腰が抜ける要領で、足の力を一気に抜き、扉にもたれ掛かって背中を落とし、危機一髪で逃れる。体育座りの姿勢だ。 が、それも虚しく、すぱっ、ぱさっ、と嫌な音が続いた。 「あ」 カッターを手にした、通り魔予備軍の少女の唇から小さく声が漏れた。 はらはら、と僕の肩に何かが降り懸かる。 なんだこれ…血、ではないな… 「ストップ、ストーップ!有希、やり過ぎやり過ぎ!!」 涼宮さんが、がらくたの山から美術に使う画板を引っ張り出し、盾にするように僕と長門さんの間に差し込んだ。 肩に落ちた、細い糸のような物を摘む。髪の毛だった。 どうやら、体を落としたはいいものの、髪が体について来れず、逃げ遅れてしまったようだ、 と、そこまで考えて、僕は卒倒こそはしなかったが、へなへな、と体育座りから、 内股を床にべったり付ける体勢になり、今度こそ腰が抜けた。 「大丈夫か古泉くたばってないか古泉チビってないか古泉立てるか古泉」 彼が、彼なりに心配してくれている顔で僕の前に立つ。 トラウマのせいか、まだ些か混乱気味のように、僕の名前を連呼している。 てか、チビってはない!!ないったらないからな!そこだけは絶対譲れない!! 「ななな、長門さん…カッター、わたしに預けてもらっても…?」 朝比奈さんまでおどおどしながらも心配してくれている。 ……みんな、ありがたいのだが、できればもう少し早い段階で助けて欲しかった… びくつく朝比奈さんに、刃をしまったカッターを渡した長門さんは、 彼に並んで僕の前に屈んだ。 「済まない」 長門さんは淡々と言葉を紡ぐ。 「あなたがなぎさをだしに、私から逃れようとたのに憤りを感じ、 少しばかりの制裁を与えようとした。が、度を越してしまった」 ほんとにな。 …そこまでなぎさを使われたのが頭に来たのか… ここで、彼女はひょこんと頭を下げた。 「…ごめんなさい」 「そうね、有希も反省していることだし、悪気があった訳じゃないし。 ね、古泉くん、許してあげて!」 全く、この人は寛大と言うべきか、大雑把と言うべきか… 実際、彼女がカッターで髪をちょんぎられたら、多分相手が誰であれ一生涯許さないだろうに。 はあー、と盛大に溜息をついて(それ位は優等生演技中の今でも許されるだろう)僕は力無く笑った。 「帰りに床屋に寄って、髪も髭も見れるようにします… 美容院だと、髭剃りは無理でしょうから」 「そうした方がいいわ。 古泉くんは爽やか美少年ポジションであって、無精髭が似合うワイルドタイプじゃないしね」 そう言って、涼宮さんは彼を暫くじっと見て、あんたも似合わないわね、きっと、と呟いた。 「立てる?」 長門さんが手を差し出す。 あっさりとその手に頼るのも情けないので、ぐっ、と力を入れて立ち上がろうと試みる。 が、腰が全く持ち上がってくれない。 「ちょっとキョン、古泉くんに肩貸しなさい」 「なんで俺が」 「あたしやみくるちゃんや有希じゃ力が足りないでしょ!」 「朝比奈さんはともかく、お前と長門はいけるだろ」 「はあ!?ふざけ――」 「私の責任。手出しは無用」 軽く口喧嘩になりかけていたふたりを長門さんが遮る。 そのまま彼女は強引に僕の膝を立てて体育座りにさせ、手を僕の肩と膝の裏に添える。 おいおいおいおいおいおい、これってまさか… 「世間一般で呼ぶ所の、お姫様抱っこに該当される」 「いやいやいや!何をさらっと!」 彼女の手を引き離し、そのままその手を押さえ付け、 足に力を入れると、火事場の馬鹿力か、ふらつきながらもなんとか立てた。 はー、危機一髪… もう少しで男の面目丸潰れだった… で、 「………」 なんで睨むんですか長門さん。 その日の団活動は、床屋が閉まらない内にと涼宮さんが僕に帰るように言い、 その途端、長門さんが本を閉じたので、じゃあ今日はこれでお開きね!といつもより早い時間で終わった。 「という訳で」 最後尾を、今日だけは長門さんと並んで歩き、僕は前の三人に聞こえないように少し声を落とした。 「帰りに床屋に寄るので、先に帰っていて下さい」 ポケットから部屋の鍵を出し、長門さんに手渡す。 ピッキングの現場を住人に目撃されるのは、なんとしても避けたい。 こく、と彼女は小さく頷いて、ポケットに鍵を滑り込ませた。 そのまま彼女は僕のブレザーの裾に手をかざし、その手が離れると、切り込みは塞がっていた。 「あいよ、坊や。お疲れさん」 そこまで髪が悲惨な目に遭っていた訳でもなく、ほんの少し鋏を入れただけで、元通りとはいかなくとも、 自分から言わなくては、切ったことすら団員以外は誰も気付かないと思われる程変化は見られなかった。 顎を支配していた不快感ともおさらばできて、 安堵と共にそのまま床屋の椅子に深く腰掛けたままでいたかったが、 携帯が着信音1を奏でたので、慌てて会計を済ませた。 Eメール一件受信。 定期報告せよ、とのことだった。 続く 「次回、花嫁修行危機一髪・完、お楽しみに」 「あ?坊や、誰に話し掛けてんだ?」 「…あ、いえ、ひ、独り言です…どうかお気になさらず…」 花嫁修行危機一髪・完へ
https://w.atwiki.jp/virtualrowa/pages/243.html
6◆◆◆◆◆◆ ――――そうして。 レオからの連絡を受けた岸波白野たちは、生徒会室へと戻って来た。 「それでレオ。なんかわかったのか」 「ええ。僕の予想が正しければ、ウイルスに対策することが可能かもしれん」 「ならその予想ってのを早く教えてくれ。このまんまなんもできねぇで時間切れってのはゴメンだぜ」 苛立たしげなレインの言葉に、自分も同意する。 プレイヤーのアバターに仕掛けられているというウイルスの発動まで、すでに残り半日を切っている。 だというのにそのウイルスは結局、アバターデータを解析できるユイにも、そしてレオですら発見もできなかった。 PKを行えば延命は可能だが、PKを行うという事はすなわちデスゲーム――榊の思惑に乗るということを意味する。 そして幸か不幸か、自分たちは戦闘こそ行ったが、PKには至っていない。またレオたちも同様にPKは行っていないという話だ。 合計七人。たとえ都合よくPKが現れたとしても、この人数全員が延命できるとは思えない。 つまりこの場にいる全員が生き残るためには、ウイルス自体をどうにかするしかないのだ。 ………だが、先ほども言ったように、ウイルスに関する手掛かりは何もないままだ。 レオはこの状況から、いったいどうするつもりなのだろうか。 「わかりました。それではモニターの方を見てください。 まず皆さんが一番恐れているであろうウイルスについてですが―――」 レオが頷き、そう告げると同時に、一際大きなモニターが浮かび上がる。 モニターには簡略化されたPCボディの素体のようなものと、何かしらのパラメータが表示されていた。 「ユイさんの協力の下、僕らのアバターを様々な角度から解析した結果……… 僕らのアバターには、ウイルスは仕掛けられていない、と結論するに至りました」 「はあ!? そりゃ一体どういう意味だよ!」 「そうだぞレオ! ウイルスが仕掛けられていないってことは、時間制限の話は嘘だったってことか?」 ウイルスは仕掛けられていないというレオの言葉に、ジローとレインが戸惑ったように言葉を荒げる。 同然だろう。それが事実だとしたら、延命のためにPKを行う必要性がなくなるのだから。 だがレオは、首を振ってそれを否定した。 「いいえ。残念ながら、制限時間の話は本当でしょう。そんな嘘を吐く意味はありませんから」 「じゃ、じゃあどういう意味だよ。ウイルスが仕掛けられていないなら、どうやって時間切れのヤツを殺すんだ?」 「それは簡単ですよ。ジローさん、パソコンにウイルスが感染する時は、どんな時ですか?」 「どんな時って、そりゃあ……他のパソコンからハッキングされたり、インターネットの変なページ開いたり、あとは………」 「メールの添付ファイル、だな。なるほど、そういう事か」 「そういう事です、レインさん。おそらくですが、主催者はメールを使って、時間切れのプレイヤーにウイルスを送り込んでくるのでしょう」 レオのその推測に、なるほど、と納得する。 PKによって延命できる時間は一人につき6時間。そして主催者が送ってくる定期メールも6時間ごとだ。 ならそのメールにウイルスを添付して送信すれば、時間切れのプレイヤーはウイルスに感染しデリートされることになる。 「そしてメールの本文はともかく、着信時にはメニューウィンドウが強制的に展開されます。 つまりメニューを開かないという方法では、ウイルスの感染は防げません。 対策としては、メールそのものを着信拒否するしかないでしょうね」 「着信拒否って、そんなことできんのかよ」 「できなければウイルスに感染して死ぬだけですよ。 幸いにして、ウイルスメールが来るまであと一回は猶予があります。それまでに着信拒否プログラムを組むしかないでしょう」 だがプログラムの構築に失敗すれば、PKによって延命するか、ウイルスによって死ぬだけだ。 あと一回は猶予があるとレオは言ったが、逆に言えば、延命(PK)をしない限り一回しか猶予はないのだ。 果たしてそれまでに、ウイルスメールへの対抗プログラムを組むことができるのだろうか、なんて心配が心を過る。 ……が、しかし、そんな心配をしたところでどうにかなるものでもない。 岸波白野にはその手の魔術師(ウィザード)スキルがなく、ウイルスに関してはレオとユイに頼るしかないのだ。 「ウイルスに関してはこれくらいでしょうか。 ウイルスそのものへの対策は以降も考えますが、現状ではこれ以上手の打ちようがないわけですしね。 では次の議題――バトルロワイアルそのものへの対抗策に移りましょう」 結局ウイルスそのものに対する対策をとることが出来ないまま、話は次の議題へと移ってしまった。 アバター内にウイルスを発見できなかった以上、それも仕方がないだろう。 あとはこちらの予想通り、ウイルスがメールによって送信されてくるものであることを祈るしかない。 それにこちらの議題も重要なものだ。 たとえウイルスをどうにかできたとしても、バトルロワイアルそのものをどうにかできなければ意味がないのだから。 「それはいいけどよ、こっちはこっちで情報不足だろ。」 「いえ、そうでもありません。 ウイルスの件と比べれば、こちらは大きく前進しています」 「そうなのか?」 「ええ。と言っても、こちらもやはり、予測の範疇を超えません。 ちなみに先に言っておきますが、この予測を立てるにあたって、番匠屋淳ファイルを参照しました。 そのためこの予測は、番匠屋淳ファイルの内容がこのデスゲームと関係していることが前提条件となることを覚えておいてください」 そのレオの言葉に頷く。 番匠屋淳ファイルの存在が前提となるということは、逆に言えば、ファイルがデスゲームと何の関係もない場合、レオの予測は的外れなものとなる。 レオが予測の範疇を超えないといったのはそのためだろう。 そんな予測を当てにしなければならないほど、自分たちには情報が不足しているのだ。 「僕はこれまでに集まった情報から、このデスゲームには『The World R 1』で起きたある事件――通称モルガナ事件における何かが関係していると予測しました。 そしてその結果、デスゲームを打破する鍵となるのは、やはりアウラであると結論付けるに至りました。 そもそもアウラは、『The World』の女神となり得る――言い換えれば、一つのネットゲームを支配できる存在です。 そんな存在が介入できるような余地を、榊がわざと残しておくとは思えません。あの手のタイプの人間は、自分が支配者であることに拘りますからね。 そして本当に介入を拒むのであれば、アウラのセグメントを参加者に支給などせず、自分たちで回収・管理しているはずです。 しかしそうはならず、こうしてその一つが支給されている。という事は」 「そうできなかった理由がある、という事か」 「ええ、その通りです。 おそらくですが、このデスゲームのシステムを作成する段階で、何らかの理由によりアウラのセグメントが紛れ込んだのだと思われます。 そして榊たちゲームマスターの用いるシステムプログラムでは、アウラのセグメントに直接的な干渉ができなかった。 その結果、アウラのセグメントはアイテムとしてプレイヤーに支給されてしまったのでしょう。 ―――ここで重要となるのが、“アウラの復活を本当に恐れているはいったい誰か”、です」 「そりゃあ榊のヤロウじゃねぇのか? 仮にも女神様だっつうんなら、復活さえできれば、このデスゲームもどうにかできるだろ」 「ええ確かに。ですがそうではありません。 無論ゲームマスターたちもアウラ復活を恐れてはいるでしょう。 ですがそれ以上に、アウラ復活が致命的となる存在がいるのです。その存在こそが―――」 モルガナ・モード・ゴン。『The World』における最初の女神。 番匠屋淳ファイルに記録されていたモルガナ事件の原因であり、『The World』の管理・運営を行う、『The World』そのものとも言える自律型プログラムだ。 このデスゲームとモルガナ事件を関連付けるのであれば、アウラを最も恐れているのはモルガナだろう。 「正解です。さすが白野さん、情報の組み立てが見事ですね。 このデスゲームにはすでに、アウラの断片であるセグメントと、スケィスの存在が確認されています。 ここに残るモルガナを加えるとすれば、彼女の役割はこのデスゲームを運営するプログラムとなるでしょう。 要するに、このデスゲームのシステムその物が、アウラの復活を恐れているのです」 このデスゲームにはすでに、桜たちのようなAIがNPCとして流用されている。 それと同じように、モルガナも運営システムとして流用された、という事だろうか。 そしてモルガナが運営システムであるのなら、ゲームマスターにとってもアウラの復活は致命的なはずだ。 何しろモルガナ事件は、アウラの復活が終わりへの引き金となったのだから。 システムが同一である以上、このデスゲームでも同様に終わりへの引き金になる可能性はある。 「ってことは、このデスゲームをどうにかするには、やっぱりアウラを復活させればいいのか?」 「いいえ。アウラを復活させるだけで破綻するほど、このデスゲームは甘くないでしょう。 休憩前に軽く話したように、主催者たちもアウラ復活に対する対策をとっていないはずがありませんから。 それをどうにかしない限り、アウラ復活は有効な手とはなりえないでしょう。 そしてその対策の一つが、おそらくはスケィスです。 スケィスはアウラの追跡者。いわばアウラの天敵のようなもの。一度はアウラをセグメントに分割したことからして、彼女に直接干渉することも可能なのでしょう。 ならばゲームマスターは、スケィスがアウラのセグメントを回収または破壊するよう仕向ければいい。 そうすれば自ら手を出すことなく、アウラのセグメントを処分できるのですから」 そしてそれこそが、このデスゲームにおける対主催生徒会の敗北条件だ。 アウラのセグメントが回収されてしまえば、デスゲームは滞りなく運営されてしまう。 そうなってしまえば、残る手がかりはこの月海原学園に隠されていたというダンジョンだけだ。 それもアウラと違い、確実性はほとんどない。 だが逆に言えば、それらの対策を突破し、アウラを無事に復活させることができれば。 「あのクソ榊に一泡吹かせられるってわけか」 「ようするに、決して有利じゃないけど、不利ってワケでもないってことだな」 「そういうことです。 まあもっとも、先ほども言ったように、アウラ復活への対策がスケィスだけのはずがありませんし、これはあくまで予測に過ぎないわけですが」 しかし、何の手立てもなかった先ほどまでと比べれば、ずっと前に進んでいる。 それに幸いというべきか、セグメントの一つは自分たちに支給されているのだ。 これが奪われない限り、敗北条件が満たされることはないはずだ。 「加えて言えば、この番匠屋淳ファイルの存在によって、ある事実が浮かび上がってきます」 「ある事実?」 「このファイルは、聖杯戦争の参加者でなければまず気付けないような、閉鎖されたダンジョンで入手したものです。 そしてこのダンジョンは、本来なら破棄されていたはずのものであり、存在しないはずのもの。 その証拠に、ダンジョンにはエネミーこそ存在しましたが、道中のアイテムフォルダは空っぽでした。 でありながら、デスゲームにおいてはほとんど意味をなさないこのファイルが、ボスエネミーを倒すことによってドロップされました」 ウイルスによって制限時間を設けられたこのデスゲームにおいて、強力なアイテムの手に入らないダンジョンに潜る利益は薄い。 なぜなら、ただポイントを稼ぐのであれば、ダンジョンに潜るよりもアリーナで戦う方が、移動の手間が省ける分効率が良いからだ。 だというのに、わざわざ破棄されたダンジョンの、それもボスエネミーに、戦闘とは関係のないアイテムを持たせておく意味。それは―――― 「それはすなわち、ゲームマスターたちは、決して一枚岩ではない、ということを表しています。 最終的な目的が違うのか、それとも別の理由があるのかはわかりませんけどね」 隠されていたという事は、それが重要であることを示すと同時に、その存在を誰かに知られたくないという事でもある。 そしてわざわざデスゲームのマップに隠したという事は、その知られたくない相手とは通常であればマップに下りてこない存在――つまりゲームマスターとなる。 逆に言えば、プレイヤーに対してであれば、知られたところで大きな問題にはならないと考えている、という事でもある。 いや、道中のアイテムファイルではなく、ボスエネミーのドロップアイテムとして隠されていたという事は、むしろ知ってほしいことなのかもしれない。 「ならばこのファイルを隠した存在と接触できれば、このデスゲームの核心に迫ることができるかもしれません。 そしてその存在は、僕たちがダンジョンを突破した時に現れる可能性が高いでしょう」 ダンジョンの深さは、レオの予想では七から八層。 エネミーも弱体化しているため、魔力の問題さえ解決できれば、そう時間をかけずに踏破出来るだろうとのことだ。 つまり対主催生徒会の今後の方針は、ウイルスへの対策と、ダンジョンの探索。 これに魔力問題の解決と、主催者が仕掛けたアウラへの対策の調査を加えた四つといったところか。 セグメントの探索とプロテクトエリアの調査は、それらの――特にウイルスの問題が解決してからになるだろう。 「そこにハセヲの捜索も加えろ。 あんにゃろう、今度会ったら一発ぶん殴ってやる」 「うわぁ……だいぶ怒ってるな……」 「だしかにハセヲさんの事もどうにかしなければいけませんね」 それにシノンの事も心配だ。 彼女はハセヲを追いかけていたが、無事に追いつけたのだろうか。 「では、ハセヲとシノン、両名の捜索も追加ですね。 ウイルスについての問題も、彼らと話し合わなければいけませんし」 確かにその通りだ。 たとえメールの着信拒否によるウイルス対策が成功したとしても、現在それを知っているのは自分たちだけだ。 シノンたちが今どういう状態なのかはわからないが、もしPKを行っていないのであれば、残り時間は半日を切っていることになる。 ウイルスの発動を阻止するためにも、彼女たちと急いで合流する必要があるだろう。 「シノンといえば、あの娘、なかなかに愛らしい容姿をしておったな。 あの耳といい、あの尻尾といい。何時ぞや出会った麗しのアタランテの系譜かと思ったぞ。 あの娘に火急の用さえなければ、余のハレムに加えて存分に愛でてやりたかったところだ」 「なるほど。シノンさんはそんなおもしろ……いえ、可愛らしい容姿をしているのですか。それはぜひとも見てみたいものです」 シノンの事を思い出したのか、セイバーがそう感想を口にし、それにレオが好奇心を示す。 それを聞いて、この場にシノンがいなかったことに思わず安堵した。 今彼女がここにいれば、今頃セイバーたちにどんな目に合わされていたことか。 「あらあらセイバーさんったら、まさかの浮気発言ですか? そんな事でよくご主人様を自分の物だーなんて言えたものですね。 やはりご主人様に相応しいのはこの私。たとえ何があろうとご主人様一筋な、純情狐のタマモにございましょう」 「浮気とは失敬な! 余は遍く全ての市民を愛する、博愛の皇帝であるぞ。 正妻の座に余がいるのであれば、愛人を一人や二人、余は広い心を以て受け入れる。故に、余も自分のハレムを作ってもよいのだ!」 「うわあ……。なんて王様発言でしょう。さすが皇帝特権:EX(チートスキル)を持つ人は言うことが違いますね」 「うむ! そうであろうそうであろう! もっと褒めるがよい!」 「ですから褒めてませんってば」 そこへキャスターがからかう様な発言をし、またもセイバーとの言い争いが始まる。 その光景に違和感を覚えなくなってきたあたり、自分も慣れてきたなぁ、と何となく思った。 そんな風に今後の方針を纏めていると、ジローが不意に、あ、と声を漏らした。 「……なあレオ。そういえばこの会議って、榊たちに聞かれてないよな。ほら、盗聴とかログとか、そんな感じのでさ。 モルガナの事とかファイルの事とか、あいつらに聞かれたらまずいと思うんだけど。 最悪の場合、榊たちが直接俺たちを消そうとするんじゃないか? いきなりウイルスメールを送ってくるとかさ」 そう言われてみれば、確かにその通りだ。 ここは電子世界。相応の処理能力があるのなら、履歴を辿ることは難しいことではない。 ましてやこのデスゲームの規模を考えれば、その手の監視プログラムはあって然るべきだろう。 だがそれを聞いたレオは、余裕の笑みを崩さない。 「確かにその可能性がないとは言い切れません。 一応監視への対策は講じてありますが、ゲームマスター相手にどこまで有効かもわかりませんしね。 そしてウイルス自体への対策ができていない以上、そうなれば僕たちはお手上げです」 「おい」 「ですが、その可能性は低いと僕は見ています。 なぜならこのデスゲームは、あくまでバトルロワイアルだからです。 ゲームマスターたちの目的は不明ですが、わざわざPvPという形をとった以上、何かプレイヤー同士を殺し合わせる理由があるはずです」 近い例でいえば、岸波白野たちが経験した聖杯戦争だ。 あの戦いも月の聖杯(ムーンセル)を巡って、マスターたちが殺し合う生存競争だった。 もっとも、わざわざモルガナをシステムに使っている以上、このデスゲームはムーンセルによるものではないとは思うが。 「それにゲームマスターが実力行使に出るのであれば、むしろ好都合です」 「好都合って、なんでだよ」 「簡単ですよ。モルガナの事もファイルを隠した存在の事も、あくまで予測に過ぎず、確証などないからです。 だというのにゲームマスターが動いてしまえば、それは僕たちの予測が正解であることの証明になってしまう。 故にゲームマスターは、直接的な対策を講じることができません。 なぜなら最悪の場合、このデスゲームはプレイヤー同士の殺し合いではなく、プレイヤーとゲームマスターの戦いとなってしまうのですから」 ゲームマスターには、プレイヤー同士を殺し合わせる何らかの理由がある。 だというのにPvPがPvGMとなってしまえば、先ほどとは違う意味でこのデスゲームは破綻する。 デスゲームを企画したゲームマスターからすれば、それも避けたい事態の一つのはずだ。 ゆえにゲームマスターは、直接的な手出しは可能な限り避けるだろうとレオは語る。 「それに、危険だからという理由で足を止めては、このデスゲームを打破することは出来ません。 いいですかジローさん。挑むこと自体に価値の有る窮地。それをいわゆる逆境と呼ぶそうですよ。 そして逆境とは超えるために現れるもの。諦めさえしなければ、運命は覆し得るんです。 ―――聖杯戦争の決勝で、白野さんが僕を倒した時のようにね」 いつかどこかで聞いた誰かの言葉。 それをレオは、何かに想い馳せるように口にする。 岸波白野(最弱のマスター)とレオ(最強のマスター)によって行われた、聖杯戦争の決勝戦。 自分にとっては勝てるはずのなかった、レオにとってはは負けるはずのなかった戦い。 その定理が覆り敗北を知った王は、ほんの少しだけ、だが確かに何かが変わったのだろう。 ―――と、そんな風に干渉を懐いていると。 「――――おや?」 不意に生徒会室に、謎の電子音が響き渡った。 これは何の音か、とレオに尋ねる。 「校門に仕掛けておいた警報(アラーム)の音です。 白野さんの出迎え準備ができたのも、これのおかげなんですよ。 ………そしてどうやら、招かれざる客が来てしまったようです」 レオがそう口にすると同時に、モニターに校門の映像が映る。 そこには、黒いスーツを纏いサングラスをかけた男の姿があった。 ――エージェント・スミス。 その男は、シノンから聞いたPKと特徴が一致している。 「うげ、マジかよ……」 「早速ヤベェのが来やがったか……!」 ジローが顔を引き攣らせ、レインが戦慄とともにそう口にする。 シノンから聞いた話では、スミスにはゼロ距離または視覚外から以外の銃撃が通じないという。 射撃攻撃を主体とするらしい彼女からすれば、スミスは天敵もいいところだろう。 「白野さん、カイト、迎撃をお願いします。僕はここでジローさんたちを守ります」 岸波白野へと向き直ったレオが、そう指示を出してくる。 レオが自分とカイトへと声をかけたのは、スミスが同時に複数人存在できるからだろう。 現在モニターに映っている男は一人だけ。 あの男がスミスだと確定したわけではないが、もしそうならば、他のスミスがどこかに隠れているという事になる。 その場合、非戦闘員のジローやユイ、スミスが天敵となるレインを守る人間が必要になる。 そこで単騎での戦闘能力に最も優れているレオたちがユイたちを守り、複数のサーヴァントを従える岸波白野がスミスの相手をするのが適任となるのだ。 問題は――――スミスを撃退するまでに、岸波白野の魔力が持つかどうか、という事なのだが。 「レインさん。白野さんに、あの礼装を渡してください」 「礼装? ああ、あれか。ほらよ」 レオの言葉で、レインからその礼装が手渡される。 受け取った礼装の名は、【赤の紋章】。聖杯戦争中、エネミー300体を撃破した記念にアーチャーがくれた礼装だ。 その効果の〈boost_mp(150); 〉は、装備者のMPを150上昇させるというものだ。岸波白野が装備すれば、最大MPが1.5倍にもなる。 「ほほう。アチャ男さんってば、ご主人様にそんなものをお渡ししていたんですか。 ですが! 礼装の効果は私のプレゼントした【妖狐の尾】の方が上。つまりこの戦い、私の勝利です!」 「なんと! アチャ男だけではなくキャス狐まで奏者に礼装をプレゼントしていたというのか!?」 「ええ。被ダメージ合計30万突破記念に、私の尾っぽの欠けた部分をちょちょっと加工したものを。 そういうセイバーさんは、ご主人様にどんな礼装をプレゼントなさったのですか?」 「ぬ! そ、それはだな………あ、あれだ! 余を誰と心得る! 世界に名立たる第五代ローマ皇帝だぞ!? そこはむしろ、奏者が余にアイテムを贈るべきであろう!」 「黄金率・皇帝特権乙。まあもっとも、セイバーさんじゃ何を作ったところで合体事故を起こすのがオチでしょうけど。 というわけで、ロクな贈り物もできない皇帝様は、購買部で強化体操服でも買っておいてくださーい」 「ぐぬぬぬっ……、む? いやまてキャス狐。貴様今、被ダメージと言わなかったか? ……という事は、まさかとは思うが、奏者がどんな雑魚やサーヴァントであろうと常にピンチだったのは、貴様のように礼装をプレゼントされることを期待してのことだったのか?」 「いやまさか。ご主人様に限ってそんなこと………なくもない、のかな? ご主人様ってば、こう見えて意外とSっ気がありますし。当事者兼被害者的に」 「どうなのだ奏者よ。事と次第によってはただではおかんぞ!」 アーチャーと別れてから、すでに半日近くが経過している。 慎二と行動を共にしている彼が、今どこで何をしているのか。それを知る術は自分にはない。 その事を少し心細く思っていたのだが、この礼装があると、彼が支えてくれているような気がして安心できた。 「こらー! 無視するでなーい!」 「はいはい、敵も迫ってますし、コントはそこまでにしてそろそろ向かってくださいね」 「ぬぅ、致し方あるまい。だが忘れるな。あ奴を追い払った後で、じっくり話を聞かせてもらうからな!」 レオの言葉に頷き、カイトに声をかけて生徒会室の扉に手をかける。 「ハクノさん、あの……」 するとユイが、不安そうな表情で声をかけてきた。 思えば、このデスゲームが始まってから今まで、ユイはずっと岸波白野と行動を共にしてきた。 同じ学園内とはいえ、こうして別行動――それも戦闘を行うのは、彼女にとって大きな不安なのだろう。 そんな彼女に対し、自分は―――― 安心してほしい。 >ヘレンを頼んだ。 現状、ヘレンと意思の疎通ができるのはユイだけだ。 キリトのことで不安はあるが、自分やカイトが離れる以上、サチ/ヘレンを任せられるのはユイしかいない。 それに自分は、岸波白野にできることをするだけだ。だからユイも、自分にできることを頑張ってほしい。 「! はい。ハクノさんも、頑張ってください!」 その言葉に、頑張ってくる、と返し、今度こそ生徒会室を後にした。 7◆◆◆◆◆◆◆ カイトとともに生徒会室を後にし、急ぎ階段を駆け下りる。 しかし一階に到着した時には、男はすでに昇降口へと辿り着いていた。 「ふむ。その様子では、どうやら私を歓迎しているわけではないようだな」 警戒を顕わにする岸波白野の様子を見てか、男はそう口にした。 だがそこには、驚きも困惑も、警戒を解こうとする様子もない。 そんな男へ、ここへ何しに来たのか、と尋ねる。 男は少なくとも、味方ではない。咄嗟の動きに対応できるよう細心の注意を払う。 「そうだな。強いて言えば、“仲間”を増やしに来た」 そう口にする割には、男の表情はひどく冷めていた。 言ってしまえば、岸波白野への関心がまるでない。 むしろサングラスに隠れたその視線は、自分の背後にいるカイトへと向かっているような気がした。 ――――“仲間を増やしに来た”、と男は言った。 ではその仲間とはいったい何なのか。 普通に考えれば、非戦闘区域となっているこの学園で集まるだろう仲間は、榊に反抗する人物のはずだ。 なぜなら学園内にいるプレイヤーは、基本的に戦いを避けようとする人間のはずだからだ。 そして逆に、デスゲームに乗った人物が手を組もうというのであれば、わざわざ学園内に来る必要はない。 なぜならペナルティを厭うPKならば、学園の外から内の様子を探っているはずだからだ。 だがこの男からは、学園内にいながら、戦いを避けようという気配がまるで感じられない。 好戦的、とは少し違う。あえて言えば、やはり無関心。 この男はモラトリアム中の学園内のルールなど、まるで気にも留めていないのだ。 そんな男が捜している仲間とはいったい何なのか。 それを探るために、最後の質問を投げかける。 >1.あなたの名前を……教えてほしい。 「スミス。私の名前は、スミスという」 ッ――――――! 確定した。この男は間違いなく、シノンが警告していたPKだ。 そしてこの男の言う仲間とはすなわち、“この男自身”に他ならない………! 「ふむ。その様子からすると、どうやら君たちは、すでに私のことを知っているようだな。 だが同時に、私の存在を教えた人物はここにはいないらしい。 あのハセヲという少年か、それともシノンか、あるいはアンダーソン君か……。 私のことを教えた人物が誰かは知らないが、まあいい。それは君たち自身に聞くことにしよう。 ――――君たちを、“私”へと上書きしてね」 もはや隠す気もないのか、男――スミスは嗜虐的な笑みを浮かべながらそう口にする。 ――――危険だ。 やはりこの男は、モラトリアムのペナルティなど気にも留めていない。 そう戦慄するとともに、いっそうスミスへの警戒を強める。 だが―――― 「いいのかね? “この私”にばかり意識を向けていて」 スミスがそう口にした瞬間、ドガン、と上階から激しい音と振動が響いてきた。 何事か、と思わずそちらへと意識を向けた。 直後、ガゴン、と激しい金属音が響き渡った。 慌てて振り返れば、保健室へと通じる廊下が“下駄箱によって封鎖されていた”のだ。 そのことに驚愕する間に、金属音はさらに三度連続で響き渡る。 見渡せば、反対側の廊下、外へと通じるガラス戸もまた、下駄箱によって封鎖されていた。 「まあ、こんなものか。これでNPCは、この戦いを見つけることは出来まい」 下駄箱を使い一瞬で昇降口を封鎖した男は、両手をはたきながらそう口にした。 なるほど。確かにこの状態ならば、NPCが昇降口の様子を確認することは出来ないだろう。 驚くべきはその身体能力。 よくよく見れば、下駄箱には殴り飛ばしたような、あるいは握り潰したような跡が見て取れた。 つまり男は、ただその怪力のみで、四つもの下駄箱を瞬時に移動させたのだ。 ……だが、重要なのはそんなことではない。 問題なのは、先ほどから上階で響き続けている戦闘音。 そしてシノンから聞き及んだスミスの能力が真実だとすれば、答えは一つだ。 自分は―――― レオを信じる 生徒会室へと向かう >カイトに頼む カイトへと、ユイたちを助けに向かうよう指示を出す。 「……………………」 その指示にカイトは頷き、封鎖された昇降口の唯一の出入り口。自分たちが下りてきたばかりの階段へと駆け戻る。 生徒会室にはレオとガウェインがいる。 二人の戦闘能力を考えれば、たとえスミスが何人いようと一掃できるだろう。 だがしかし、あそこにはユイやサチ/ヘレン、ジローにレインまでもいる。 戦闘能力のないユイたちを守りながらでは、さすがのレオたちでもカバーしきれない可能性もある。 「ほう。あの少年を向かわせた、という事はつまり、君が私の相手をする、という事だね」 スミスはそう口にすると、ようやく岸波白野へとその関心を向けた。 その視線に、ザワリと背筋が泡立つ。 サングラス越しでありながら、男の視線はあまりにも無機質だった。 あり大抵に言えば、“こちらを人間として見ていない”。そんな感じがする。 ……いや、違う。 シノンの話によれば、スミスはAI。そしてその関心は、未知のプログラムへと向けられているらしい。 つまりスミスは、岸波白野を何の特別性も持たない、“無価値な人間”だと判断しているのだ。 ……スミスの問いに答えるように、一歩強く踏み出す。 確かに岸波白野には、レオのような特別な才能はない。 カイトのように戦うこともできないし、ユイのような解析能力もない。 ……けれど、岸波白野の価値を決めるのはおまえじゃなない。最後に“自分の価値”を決めるのは、自分自身の気持ちのはずだ……! 「そうか。ならば見せてもらおうではないか。君の定めた、“自分の価値”とやらを」 そう宣告すると同時に、スミスが岸波白野へと勢いよく踏み込む。 その一歩だけで、昇降口の床が砕け散る。 対する岸波白野には、当然戦う力などない。 だが――――と、左手に刻まれた令呪(きずな)を強く意識する。 たとえ岸波白野に戦う力がなくとも、自分には誰よりも信頼し、助け合ってきた仲間たちがいる! だから自分は―――― 頼む、セイバー! 頼む、キャスター! ――――いつだってその名前を呼び続ける! § ――――一方、少し時間を遡り。 「頼みましたよ、白野さん」 岸波白野の出て行った扉に視線を向けながら、レオは小さくそう呟いた。 その声が聞こえたのか、レインは怪訝そうな視線をレオへと向ける。 「なあレオ、本当にあの兄ちゃんに任せて大丈夫なのか? 聖杯戦争でレオに勝ったっていうけどよ、とてもそうは見えないぜ?」 「確かに純粋な実力でしたら、白野さんより僕の方が上でしょう。魔術師(ウィザード)としてのスキルはもちろん、サーヴァントの能力もね」 たとえ岸波白野のサーヴァントが三騎揃っていようと、実力で負けることはない、とレオは語る。 それは紛れもない事実だ。それほどの実力差が、両者の間には存在する。 「ですが、白野さんの真価は単純な能力にはありません。 相手の能力・思考を見極め、適切な指示を出す戦術眼。どのような窮地であっても前に進もうとする諦めの悪さ。 逆境での大一番こそが、白野さんの得意分野です。彼が本気を出せば、互いの戦力差なんてお構いなしですよ」 「なるほどね」 そうレオへと返すレインの脳裏には、一人のバーストリンカーが浮かんでいた。 シルバー・クロウ。 彼もまた、ここぞというところで強い爆発力を発揮する人間だった。 岸波白野はそんな彼と同じ、普段は頼りなくとも、一番大事なところで仲間を支えてくれる人間なのだろう。 「それはそうとさ、俺たちも何かした方がいいんじゃないか? キシナミだけにあいつの相手を任せるってのもあれだろ」 「もちろんその辺りのことは考えてあります。エージェント・スミスの能力を考えれば、白野さんだけに任せるのはむしろ悪手でしょう。 僕たちがすべきことは、他のスミスの存在を警戒しつつ、スミスの増殖能力への対抗策を探すことです。 これをどうにかしなければ、たとえ何人スミスを倒そうと無意味ですからね」 たとえその場にいた全てのスミスを倒したとしても、他の場所に一人でも生存していれば、その一人を起点にスミスは無限増殖していく。 加えて全てのスミスを倒し尽すには、その戦闘能力が高すぎる。 そんなスミスを倒すには、増殖能力そのものをどうにかするしかない。 そしてこのデスゲームは仮にも“ゲーム”だ。 無限増殖などというバランスブレイカーを、ゲームマスターがそのままにしておくはずがない。 必ず何か対策が施してあるはずなのだ。 ならば自分たちは、岸波白野が戦っている間にその対策を見つければいい。 そのためには、岸波白野と接触中のスミスのデータを解析する必要がある。 ゆえにレオはそれを行おうとコンソールを開き、 「っ!? エージェント・スミスと同一のプレイヤー反応が急速に接近! 位置は……上からです!」 「伏せてください!」 唐突に放たれたユイの警鐘に、咄嗟にそう指示を下す。 直後。 ドガン、という激しい音とともに、生徒会室の天井が崩落した。 「ガウェイン!」 「ハッ!」 即座に下される迎撃命令。 粉塵が晴れ、天井からの侵入者が姿を現すよりも早く、太陽の聖剣が薙ぎ払われる。 放たれた一撃は激しい剣戟を鳴り響かせ、粉塵諸共に侵入者を弾き飛ばし、勢いよく生徒会室の壁へと激突させる。 その激しい衝撃に壁が崩壊し、瓦礫となって侵入者を埋め潰す。 「やったか!?」 「いえ、防がれました。手応えはありません」 「な、マジかよ!」 「皆さん、今のうちに退避を!」 「行きましょう、ヘレンさん!」 「――――――――」 レオの指示に従い、ジローたちは急ぎ生徒会室から駆け出す。 その背後からは、瓦礫が除けられ、崩れ落ちる音がした。 「ちっ! 一体どうやって入ってきやがった!」 「上ってことは、もしかして屋上からか? 最初からそこに隠れてたのか!?」 「いえ、違います。プレイヤーの反応は、さらにその上から接近してきました。つまり―――」 「空、ですね。単なる跳躍か、それとも飛行能力か……どちらにせよ、敵の能力はこちらの想定を上回っているようです」 こうなった以上、白野さんと合流します。下階へと急いでください」 敵の能力はこちらの地的優位を完全に上回っている上に、ペナルティも気に留めていない。 拠点をいきなり崩された以上、このまま別行動をとっているのは危険だと判断し、レオたちは階段へと急ぐ。 「喝! お前たち、廊下は走るな! それと、今の騒音は―――何事ぉ!?」 そんなレオたちの様子を見咎めた、階段前の廊下に佇んでいた柳洞一成が声を荒げた。 直後、階段前の廊下の天井――すなわちレオたちの直上が、轟音とともに崩落した。 「っ!」 「キャッ!?」 「――――」 レオは咄嗟に飛び退き、ユイとサチ/ヘレンもどうにか瓦礫を回避する。 「うわぁ!?」 「チィッ……!」 だが一般人の範疇を超えない次郎は咄嗟に反応できず、レインが横から突き飛ばすことで瓦礫から逃れる。 「き、貴様! 神聖なる学び舎に何という事を、おおぉお――――!?」 天井を崩落させた存在へと、柳洞一成が声を荒げて詰め寄る。 だがその存在は一成の言葉など意に介さず、その胸倉を掴んで窓から外へと投げ捨てた。 ………即ち、この場でペナルティを与える存在が退場させられた、という事だ。 割れた窓ガラスから風が吹き込み、粉塵が晴れる。 現れたのは、黒いスーツにサングラスをかけた一人の男。先ほど生徒会室のモニターに映し出されていた侵入者、エージェント・スミスだ。 同時に背後の生徒会室から、黒いスーツにサングラスをかけた男、エージェント・スミスがもう一人現れる。 しかも両者とも、その手に緑色の銃剣を構えている。 「まずいですね」 分断された、とレオは呟く。 状況は最悪だ。 先ほどの崩落によって、ジローとレインは屋上へ通じる階段の方へと投げ出された。 そして自分たちとジローたちとの間には、エージェント・スミスが立ち塞がっている。 加えて自身の背後にもエージェント・スミス。迂闊に動けば、背後から攻撃されるだろう。 一方をユイとヘレンに任せるとしても、ジローたちを助け出すには一手足りない。 ならば―――助け出すことができないのであれば、自力でどうにかしてもらうしかない。 「ジローさんとレインさんは屋上へ退避を! ここは僕たちが抑えます!」 「ちっ、仕方ねぇ。おい、行くぞジロー!」 「あ、ああ。レオ、負けんなよ!」 二人はレオの指示に頷き、階段を駆け上る。 それを見届けつつ、レオは更なる指示を下す。 その視線はすでに己が敵へ、彼の騎士はとうに聖剣を構えている。 「ユイとヘレンは生徒会室側を任せます。階段側は、僕とガウェインが」 「はい、任せてください!」 「――――――――」 ユイを背後に、サチ/ヘレンが剣を抜き放つ。 型も何もない、完全な自然体。まともな剣技など、とても期待できない。 されどAIDA-PCたる彼女の反応速度・適応能力は、一般PCをはるかに上回る。 そこにユイの支援が加わるとなれば、まず負けることはないだろう。 ………相手が、並大抵のプレイヤーであるのなら、の話だが――――。 頭上から再び轟音が響く。 今度は天井の崩落はない。だが、微かにだが銃声が聞こえた。 「どうやら、時間をかけている暇はないようですね」 エージェント・スミスがまた一人現れたことは、想像に難くない。 逃げ場のない屋上で、ジローたちが一体どれだけ生き延びられるか。 「……ならば、即急に終わらせましょう。 ―――ガウェイン」 「御意」 己が主の命に、ガウェインが一足でエージェント・スミスへと肉薄し、聖剣を振るい。 同時にもう一方のエージェント・スミスが、サチ/ヘレンへと銃撃を行い、その手の剣によって防がれる。 その攻撃に呼応し、サチ/ヘレンは戦意、あるいは警戒を表すように、その体に黒い泡を纏わせる。 サチに感染しているAIDA Helen は、現在サチが懐いている感情……すなわち、『死にたくない』という恐怖を行動の起点としている。 ゆえに、サチへと攻撃を行った存在――エージェント・スミスは、ヘレンにとって完全な敵性存在となったのだ。 「ク…………」 対するエージェント・スミスに貌には凄惨な笑み。 それはまるで、自分たちなどまるで相手にならないと見做しているかのよう。 「行きますよ、ヘレンさん!」 「――――――――」 ユイの声に従うように、サチ/ヘレンは剣を構え、エージェント・スミスへと接近する。 その様子を見届けながら、ユイはこの場で自分にできることを模索し始めた――――。 § 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ………」 全速力で階段を駆け上がり、屋上へ通じる扉を開け放った。 短距離とはいえ、上りでの全力疾走にジローの息が乱れる。 「は、情けねぇぞおいジロー。この程度で息乱すとか、あんたホントに、野球部か?」 「な、なんだと! そう言うニコだって、息乱してるじゃないか」 同じように息を乱したレインの悪態。 それに言い返しつつ呼吸を整え、なんとなしに視線を空へと向けた。 校舎内の騒動など無関係とばかりに、視界に広がるのは一面の蒼。そこに浮かぶ、一点の黒。 「へ?」 思わず間の抜けた声を上げる。 青空に浮かんだ黒い点は急速にこちらへと接近し、構内へ通じる扉へと轟音とともに着弾した。 「うわぁ!?」 ジローは衝撃に吹き飛ばされるが、即座に起き上がって屋上の出入り口へと視線を向ける。 そこにはやはり、黒いスーツにサングラスの男、エージェント・スミスがいる。 「チィッ!」 その姿を見たレインは舌打ちをし、ストレージから一丁のみのDG-0を取り出し、スミスへと向け引き金を四度引く。 だがしかし、放たれた弾丸はスミスの残像を残すほどに素早い動作によって、その悉くが回避される。 「ちっ、やっぱ無駄か」 聞き及んでいた通りの回避能力。 たとえインビンシブルを使用したとしても、その攻撃のほとんどは回避されるだろうし、そもそもこの距離では貼りつかれて破壊されるのがオチだ。 それにそもそも、この屋上では足場が崩落する危険性だって存在する。 一応知覚外、またはゼロ距離からの射撃なら有効とは聞いているが、それを可能とするだけの運動能力が自分たちにはない。 「さて、どうすっかね」 まさに絶体絶命。 攻撃がまともに効かない敵を相手に、いったいどう戦えばいいというのか。 ―――その答えはいたって単純。 A.戦う >B.逃げる C.諦める 「どうするもなにも、こうするしかないだろ―――! そう声を荒げながら、ジローはレインの腕を掴んで駆け出す。 「じ、ジロー、テメェまさか!?」 戦って勝てないなら、逃げるしかない。 そしてこの屋上にある逃げ場は、一つだけだ。 向かう先は屋上の端。それも、レインの攻撃によって、フェンスの壊れた地点。 躊躇っている暇はない。 二度味わったその恐怖を振り払うように、ジローは勢いよく屋上の縁から飛び出した。 ――――十坂二郎、本日三度目の屋上からのダイブであった。 「っ、てててて。三度も落ちりゃ、さすがに慣れるもんだな」 中庭の木をクッションにして落下の衝撃を和らげ、慣れた要領で素早く地面へと降りる。 「ッ……つぅ。あたしは慣れたくねーぞこんなの!」 続いて降りてきたレインを受け止め、即座にその場から駆け出す。 目指すは昇降口。そこでは今、岸波白野たちがスミスと戦っているはずだ。 もちろん、自分たちが行っても、彼らに余計な負担をかけるだけだと思う。だが自分たちだけで、あのスミスをどうにかできるわけでもない。 屋上を見上げてみれば、そこには自分たちを見下ろすスミスの姿。 あんな突撃ができるのだ。あの男にとってはこの程度の高さ、大したものでもないだろう。 だというのにすぐに追ってこないのは、その余裕の表れか。 ならばその余裕の間に、キシナミたちのところへと辿り着く……! ――――しかし。 「な……うそ、だろ……?」 「おいおい、マジかよ……」 キシナミがいるはずの昇降口は、下駄箱と思われる金属によって完全に塞がれていた。 その事実に思わず呆然とする。これではキシナミと合流することができない……! だが、そう二人が放心している間に、スミスはすでに動き出していた。 「しまっ、ガッ―――!?」 「うわっ、ぐえっ……!?」 背後から響く、ズシンという落下音。 慌てて振り返ったその瞬間、伸ばされた両手に首を掴まれ、引きずられる。 そしてある程度進んだところで、勢いよく投げ捨てられる。 「げほっ、ごほっ……ッ」 咳き込みつつも急いで立ち上がり、周囲を見渡す。 まず、月海原学園の裏門にスミスが立ち塞がっている。 そして自分たちが今いるのは道路上。つまり学園(ペナルティエリア)の外だ。 門をスミスが塞いでいる以上、学園内に戻るには、スミスを倒すしかない……! 「はっ。結局やるしかねぇってわけだ」 「ごめん、ニコ」 あの時、屋上から逃げ出さず戦っていれば、あるいはレオが助けに来てくれたかもしれないのに、とジローは謝る。 「ハッ、んなこと気にしてる場合かっつーの。今はとにかく、生き延びることを考えろ」 だがレインはそんなジローを鼻で笑い、DG-0を投げ渡しながら一歩前へと出る。 覚悟を決めた、という事だろう。 その少女の小さな背中が、ジローには不思議と大きく見えた。 「……ああ、そうだな。二人一緒に、絶対に生き延びてやるぞ!」 受け取ったDG-0を構えながら、ジローもまた、一歩前へと踏み出す。 自分も男だ。たとえレインが自分より強かったとしても、年下の女の子に守られてばかりじゃいられない。 「最後の会話は終わったかね。ならば始めるとしよう」 そう口にして、スミスが自分たちへと歩き出す。 「行くぞ、ニコ!」 それに応戦するように、ジローがDG-0の銃口をスミスへと突きつけ。 「テメェが仕切ってんじゃねえよ――――バースト・リンク!!」 スカーレット・レインが紅い装甲を纏い、スミスへと向けて駆け出した。 こうして今ここに、対主催生徒会の戦いが始まったのだ――――。 やる気が 3上がった 体力が 5下がった こころが 1上がった next Action;交戦
https://w.atwiki.jp/83452/pages/15692.html
187. 1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/08/13(土) 18 15 09.26 ID jjA13T110 →A:「あのね純ちゃん、実は……」 家での憂の様子について伝える。ちょっと気になるし……。 少し強張る唯の声に、純は不思議そうに首をかしげる。 純のポンポンが揺れるのを見ながら、唯は少しずつ話し始めた。 唯「修学旅行から帰ってきたらね、憂、割と普通な感じだったんだ……」 純「あっ、そうですか、なら……」 唯「でもね、時々……ほんのちょっぴり……憂、暗くなることがあって……」 純「えっ……唯先輩がいても、ですか?」 唯「うん……私の気のせいだといいんだけどさ……」 純「……まさか本当に恋愛小説の件を信じているわけじゃ……」 唯「えっ? えっ、な、なに?」 純「あっ! ああっ、いや、別に、何でもないですよ!」 唯「ええ〜っ、気になるよお、教えてよ純ちゃーん!」 純「べ、別に大したことじゃないんで! 本当に!」 唯「えーやだやだ! 気になるよ〜」 純にしがみつき、ぶんぶんと腕を振り回す唯に、純も困惑する。 純は少しの間思案すると、ふと思いついたように口を開いた。 純「じゃ、じゃあ唯先輩! 一個訊きますけど……」 唯「うんうん!」 純「唯先輩って、その……」 唯「うんうん!」 純「そ、そのう……」 唯「なあに!?」 純「……こ、恋人いるんですか?」 唯「ほえ?」 188. 1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/08/13(土) 18 15 56.98 ID jjA13T110 唯が気の抜けた返事を返すと、二人はそのままの体勢で沈黙した。 唯はぽっかりと口を開け、純は冷や汗をたらしながら引きつった笑みを浮かべている。 少しして、痺れを切らしたように唯の表情が動いた。 唯「こ、恋人……って私に?」 純「……あっ、は、はい、そうです……」 唯「なんでそんなこと訊くの?」 純「え、えーっと……(もし、本当にいたら憂……どうなっちゃうんだろう)」 唯「まあ、そんな人、いないけどねっ!」 純「ほっ……あ、そう、ですか……」 純が胸をなでおろして安堵の息をつくと、唯が途端に閃き、何やらにやにやとしだした。 純「ど、どうしたんですか?」 唯「う、ふ、ふ。そっかあ、そういうことだね」 純「えっ、なにがですか?(……まさかあの小説についての話を知っているとは思えないけど……)」 唯「純ちゃん……うふふ、私に惚れると火傷しちゃうぜ!」 純「なああああっ!?」 得意げに歯を見せる唯に、純は驚愕の声を上げた。 何か言葉を継ごうとするが、上手い言い回しが見つからない。 唯「そっかぁ〜そうなんだぁ〜えへへ、私もモテるんだねえ」 純「ち、違いますからっ! 全然違うし勘違いしないで下さいよおお! 第一私の憧れの先輩は澪先輩ですしっ」 唯「恋と憧れは違うよ? うふふ……」 純「な、なななな……っ」 189. 1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/08/13(土) 18 16 30.43 ID jjA13T110 ぽんぽんを手で弄びながら、不敵な笑みを浮かべる唯に、慌てふためく純。 言葉にならない呻きを上げながら口をパクパクとさせる純を一通り観察した後、唯はふとポンポンから手を離した。 純「(……あっ)」 そして唯は、ふふふ、と年上に似つかわしい優しい笑みを浮かべ、純と向かい合う。 純「(……唯先輩、こんな風な笑顔もあるんだ)」 ぼんやりと見つめていると、唯がふと口を開いた。 唯「なんてねー。冗談だよ〜。びっくりした? えへへ、おはようのときの仕返し」 純「…………」 唯「純ちゃん?」 純「……な、なんだぁ〜。い、いや分かってましたよ冗談だって!」 唯「えへへ……だよねえ〜」 純「そ、そうですよ……だ、だから別に仕返しは成立していないですからねー」 唯「むー。純ちゃんは手ごわいなあ……」 純「……あはははっ」 それから二人は元の通りに、肩を並べて歩き始めた。 ゆったりとした足取りで校門をくぐりながら、純は先ほどのことについて悶々と考えを巡らせていた。 純「(な、なんだろう……)」 純「(冗談で言っていた時よりも……その後の唯先輩に、ちょっとどきってしちゃった……)」 純「(……き、気のせいだよ気のせい! でも……)」 純「(恋人がいるかもって不安になる憂の気持ち……なんか、分かる気がする……)」 純の【気になる】ステータスが 2/3 → 3/3 にアップしました! これにより、純の【好き】ステータスが 0/5 → 1/5 にアップしました! 【気になる】ステータスは繰り越され、 0/3 となります。 190. 1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/08/13(土) 18 17 09.88 ID jjA13T110 憂「……純、ちゃんが……そう、だったんだ……」 梓「何だ純か……ってちょっと憂!?」 前を行く二人の30メートルほど後方で、電信柱に二人の乙女が隠れていた。 憂の体がふらりと傾くと、梓は慌てて憂の肩を支えた。 梓「だ、大丈夫? 憂……別に、そんなショッキングな映像でもなかったけど……」 憂「……わ、たしは……少なくとも頭がふらふらする……」 梓「え? ど、どこが?」 憂「お、お姉ちゃんと純ちゃんが……恋人だったなんて……」 梓「えっ……いや、あれは、たまたま会って、一緒に登校しただけの話じゃ……」 憂「……でも、お姉ちゃん、純ちゃんにしがみついていたし……純ちゃんも何か照れていたし……」 梓「そ、そんなことないって……ほら、また明日、突き止めようよ、ね?」 憂「もし、純ちゃんがお姉ちゃんの恋人だったら……恋愛小説の話をしても、まるで動じなかった純ちゃんの様子にも納得がいくし……」 梓「…………」 憂「……そっか、だから純ちゃん……落ち着いていたんだ……」 梓「…………」 憂「どうしよう……全然知らない人よりはいいけど……でも、私と同い年の子と、なんて……」 梓「…………」 憂「わ、わたし、どうすればいいのかな……二人にこれからどう接すればいいんだろう……?」 梓「……憂」 憂「ど、どうしようっ……」 梓「(……妹だけじゃなく、部活の後輩まで放っといて……)」 梓「(……それで、私達と同じ二年生の純にうつつを抜かしてっ……)」 梓「ゆ、」 梓「唯先輩のばかぁーーーっ!!」 梓の【尊敬】ステータスが 2/5 → 1/5 にダウンしてしまいました。 憂の【尊敬】ステータスが 1/5 → 0/5 にダウンしてしまいました。 191. 1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/08/13(土) 18 17 36.41 ID jjA13T110 下駄箱まで来ると、唯と純はいったん別れ、それぞれ上履きをはいた。 校舎に上がり、再び純の姿を認めると、唯はにっこりと手を振った。 唯「じゃあね、純ちゃん。楽しかったよー」 純「あ、あははは……はい」 純の無垢な笑顔を見ながら、唯は歩いて行った。 *選択肢* A:もう少し純ちゃんと話したいな……。 純のところに近づいて行く。 B:まだ時間あるし、ちょっとぶらぶらしようっと。 適当に校舎内を散歩。 C:皆とは修学旅行ぶりだね!! 自分の教室へ向かう。 D:もう少しゆっくりしていてもいいかな? 下駄箱でぼんやりとする。 192. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/08/13(土) 18 19 06.83 ID Szz+JZLSO C 196. 1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/08/13(土) 18 52 36.84 ID jjA13T110 →C:皆とは修学旅行ぶりだね!! 自分の教室へ向かう。 唯は踵を返し、歩を進めて行った。 教室の前まで来ると、いつもよりいっそうにぎやかな声が廊下に響いている。 修学旅行のときのテンションが、今もなお続いているのかもしれない。 唯も皆の声を聞くうちに気分が盛り上がり、力強い足取りでドアを開けた。 「あ、唯だ! おはよう!」 「おはよー、久しぶりー? かなー?」 唯「えへへ〜。おはようっ!」 クラスメイトに元気よく声をかけると、唯は自分の席の椅子を引き、腰を落ち着けた。 ふと、四つの視線が集まったような気がして、不意に顔を上げた。 教室の時計が目に入る。あと十分ほどでさわ子が教室に入ってくることを示していた。 唯は机に頬杖をつき、じっと考えた。 唯「うーん、どうしよっか?」 *選択肢* A:律の席に行く。 B:澪の席に行く。 C:紬の席に行く。 D:和の席に行く。 E:このまま座っている。 202. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/08/13(土) 19 24 15.42 ID hMqJyn7Zo C 246. 1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/08/16(火) 01 06 20.31 ID w6MFD1o20 →C:紬の席に行く。 唯「ムギちゃんとは、あの日の夜にちょっとお話ししたきりだしね!」 唯はそう意気込むと、机に手をついて立ちあがり、勢いよく紬の席へと向かった。 紬はいつも通り、姿勢よく前を向いて座っていた。 お嬢様にふさわしく、教室の中という庶民的なシチュエーションであっても、どこか品が漂っている。 唯は、そうっと近寄り、紬の肩に突然手をおいてみせた。 すると紬は、びくりとなって振り返る。 紬「きゃっ! ……あっ、唯ちゃん」 唯「えへへ。おはよう! 久しぶり」 紬「ふふ、おはよう。久しぶりね」 唯「ほんの少しの間なのに、しばらくムギちゃんの声を聞いてなかった気がするよ〜」 紬「もう……ふふ、唯ちゃんってば大げさよ」 和やかに挨拶を済ませた後、軽く雑談を交わした。 紬がふと教室の時計を一瞥し、唯に向き直る。 紬「唯ちゃん、大丈夫? あと少しで先生が来ちゃうと思うわ」 唯「うーん、あと少しなら大丈夫だよお」 紬「そ、そう……うん、そうね」 唯「あっ、ごめんね……長居しちゃうの嫌だったかな?」 紬「そっ、そそそそんなことあるわけない! 大丈夫よ!」 唯「……えへへ、そっかー。ならよかったよー。一瞬心配になっちゃった」 紬「ごめんね、唯ちゃん。変に気を遣わせて……なんでもないの、ちょっと気になっただけなの」 唯「うん? なあに?」 紬「えっと……その、どうして私のところにお話しに来てくれたのかな、って……」 そこで紬は、少し俯き、指をもじもじとさせた。 唯はその言葉を不思議に思いながら言う。 247. 1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/08/16(火) 01 06 46.83 ID w6MFD1o20 唯「どうしてって……ムギちゃんとお話ししたいからに決まってるよー」 紬「そ、そう……うん、唯ちゃんならそうよね」 唯「? ……ムギちゃん、他に何か気になることでもあるの?」 唯が訊くと、紬は少しの間逡巡していたが、やがて意を決めたように話し出した。 紬「唯ちゃん、その……私だけじゃなくて、他の皆とも会うの久しぶりよね?」 唯「うん、そうだね」 紬「でも、どうしてその……わざわざ私のところに来てくれたのかな、って……」 唯「……ふえっ?」 紬「……あっ、ご、ごめんなさい! な、何か変なこと言っちゃって……えっと……」 少し頬を染めながら顔の前で手を振る紬に、唯は不思議そうな顔をした。 *選択肢* A:「理由なんてないよー。ただムギちゃんとお話ししたいなって思ったから……だけじゃだめ?」 ムギちゃん、なんでそんなこと聞くのかな? うーん、分からないや……。 B:「そうだそうだ、ムギちゃんに渡したいものがあったんだよ!」 もってきといてよかった〜。京都土産を渡す。 C:「実は、お礼言いたくて……色々相談にのってくれて、ありがとう!」 ムギちゃんには本当にお世話になったね……。りっちゃんと仲直りできたし、感謝感謝。 D:「ムギちゃん、修学旅行の夜にお話ししたとき、ちょっと様子が変だったから……気になって」 何もなければいいんだけど……気になるかも。 E:「ムギちゃんがお話ししたそうだったから……なーんてねっ!」 教室に入ったとき、色んな視線を感じたんだよね。ちょっとおどけて訊いてみよう! 248. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/16(火) 01 07 26.58 ID Py7h3hBTo C 5
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1164.html
長門がいなくなって数日経ったが気になることがある。 手紙の最後の言葉・・・。”新しいインターフェースとコンタクトをとって” 結果から言えば呆気なくどういうことなのか判明した。 俺にとっていつも通りではない文芸部室で古泉とオセロでやっていた時。 いつも通りの勢いでドアが開いた。 「みんな~!まった~?」 「今日は紹介したい子がいるのよ~!その名は!」 「長門有希でーす!今日転校してきたばかりだけど面白そうだからこの部に入ろうと思ってまーす。」 「古泉君の次にまたもや謎の転校生よ!」 な、長門!?いや、どう考えても違うだろ。見た目はもしかしたら長門かもしれないが。中身がおかしいって。 「あっ、キョンくーん。会いたかった~!」 こ、こら。抱きつくな! 「キョンその娘と知り合いなの?」 「えっと・・・まぁ遠い親戚みたいなのかな・・・。」 「ふーん。」 どうなってんだながと!?それにそのテンションは・・・。 「細かいことはあとあと!終わってから帰る振りしたらまた文芸部室に戻ってきてね!」 その後の長門はハルヒと部活動終了までずっと話をしていた。 全員部室から出て行ったところを見計らって再度部室に入る。 長門は折畳式テーブルの前に立っている。 「で、お前は本当に長門有希なのか?」 「確かに長門有希だよ!でも正確には新しい長門有希だけどね。」 「それはどういうことなんだ?」 「以前の長門有希と同じところは外見と蓄積されたデータと能力そのたもろもろなんだけどぉ。 精神だけはまるっきり別ていうか、以前の長門有希だとなぜかエラーとかバグがいっぱい発生してたんだよね。 だから以前の長門有希のデータから有機生m・・・人間と一番触れ合いやすいと思われる形で再構築されたのが あたしなの。だから、長門有希であって長門有希ではないの。」 「それなら新しいインターフェースってのはお前で良いのか?」 「まぁそういうとなんだけどね。暗くなってきたからそろそろ帰りましょ!」 そんなこんなで今、長門に腕を抱かれながら帰宅中。 あの~あたってるんですけど~・・・。 「あててんのよ!」 はぁ、そうですか。 「なに~?やっぱりこうされるんならみくるちゃんとか涼宮さんがいいの~?」 いや、そういうわけでは。 「じゃぁ、いいでしょ!」 途中の分かれ道でやっと離れることができた。あぁ・・・でもあの感触も・・・ ってなに考えてんだ俺は!! 先が思いやられるぜ・・・。 学校に来て放課後まで一気に時間がすっ飛んだかと思うほど今日ほど時間の感覚が無い日はないだろう。 下らん授業中の様子がどうだなんてことはだれもが気にすることじゃないと思うが唯一言える事はなぜか いつもより教師どもの下らん世間話が多かったことだろう。 まぁおかげで早々に朝比奈さんのいるであろう文芸部室兼SOS団部室へ向かうことができるがな。 文芸部室前。いつもの朝比奈ボイスを期待にドアをノックする 「は~い、どうz」 「キョーンくん待ってたよぉ!」 ドアを開けようと手をノブに伸ばしたとたんドアが開けられ何かが押し倒して・・・いや、体当たりしてきた。 「おっそいよキョンくん。待ちくたびれたー」 俺じゃなかったらいったいどうするつもりだったのだろうか。 「わざわざノックしてくれるなんてキョンくんだけでしょぉ~」 ああ、そういえば前の長門の記憶は引き継がれるのか・・・。 「あ、あの!キョンくん。何をしておられるんで・・・」 え?朝比奈さん・・・って長門!早くどいてくれ! ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・ ・・ 「キョンくんお茶ですぅ。」 朝比奈さんありがとうございます。 「みくるちゃんあたしのもお願しま~す」 「はいはい」 「また新しく買ってみたお茶なんでけどどうでしょうか・・・?うまく煎れれてればいいんですが・・・。」 「もちろんおいしいですよ。」 「よかったぁ!」 何度か行っている気がするが朝比奈さんが煎れれば下水の水だってアルプスの天然水以上だ! ・・・ 「ねぇ、なんでキョンくんはいつもみくるちゃんとか涼宮さんばっかり見てるの?」 「長門・・・?」 「みくるちゃんはずるいよ。キョンくんと仲良くなんかしちゃいけないのに。」 「長門。」 「なんでみくるちゃんは「長門!!!」 椅子を後ろに蹴り倒して立ち上がっていた。頭に上っていたちが一気に落ちていく。 何で長門がこんなことを言い始めたのだろうか・・・。 「すまん。頭を冷やしてくる。」 そんなことを俺は言っていた。本当はその場からすぐに逃げたいだけだった。 翌日から長門とはほとんど口をきかなかった。 だが、ある日。下駄箱に手紙が入ってた。”放課後、部活が終わったらまた文芸部室に来て。” 長門からだった。これは俺からも誤るチャンスだろうと思った。 微妙に悪い空気の中で部活動終了後。また文芸部室へと戻ってくる。 「長門・・・。」 「あのね・・・もうすぐお別れなの・・・。」 何を唐突に!? 「本当はあたしは人とうまく触れ合えるように作られたテスト用のインターフェースなの。うまくいったら 観測とテストを継続できたんだけど・・・キョンくん怒らせちゃったから・・・。失敗なの。」 「あれは俺がいけなかった。長門が何を考えていたのか分からなかった。つい頭に血が上って・・・」 「だったら・・・なんで?・・・なんであたしをもっと見てくれないの?」 俺の前にいる彼女の目に光る粒が浮かぶ。 長門・・・すまなかった・・・。 そういいながら俺は長門を抱いていた。 「キョンくんの匂い・・・。ありがとう・・・。でも、もう消えちゃうの。」 下を見るともう長門の足が光の粒となって消えかかっていた。あの時のあいつと同じように・・・。 「長門!!!!」 「最後に一つだけお願いしても・・・いい?」 「ああ・・・。」 長門は目を瞑って少し背伸びした。 俺は黙ってその柔らかな口に重ねる・・・ ・・・何かがあたるような感触は無かった・・・ 俺は・・・俺は2回も長門を・・・。 「わたしはここにいる。」 長門!? 俺のorz体制前に長門がいた。昔の・・・長門だ・・・。 「どういうことだ!?」 「テスト用が失敗という結果になった。そのため元のデータにより復元された私がいる。」 そうか・・・長門は無事だったのか・・・。 「貴方のために・・・もう少し笑えるようにする。」 そう言った長門は薄く微笑を浮かべていた・・・。その笑い顔にはハイテンションな長門の名残があった ように思える。 あんなハイテンションな長門もよかったかな・・・。 ---fin---
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4773.html
「物質、エネルギー、そして情報。これが、宇宙を構成する三つの要素」 「情報統合思念体って、どういうものだと思ってる?遠い宇宙の果てのはてにある、銀河みたいな星の固まり?それとも、宇宙に漂う、 何か大きなクラゲみたいなもの?」 「どっちも外れね。情報統合思念体は、この宇宙を構成する情報全て。全宇宙の情報が、時に秩序を形成し、 時に無秩序に増殖する。そして、それらを認識する情報。これが情報統合思念体。率直にいえば、この宇宙全体が統合思念体なのよ。 もちろん、あなたも私も思念体の一部。でも安心して、あなたが自分の体の細胞の1つを認識できないように、 思念体もあなたのことなんか全然気にしていないから。」 俺と朝倉は、今カラオケボックスのベンチシート席に居る。最近のカラオケボックスでは、少人数の客はこうしたベンチシートルーム、 3人掛けくらいのベンチ1台に向かい合うようにマシンが設置された小部屋に案内されるようになっている。今日は団のメンバー抜きでの 朝倉との二人連れであり、世間一般的に見ればまあ非常に羨まれるべきシチュエーションなんであるが、やはり一度なりとも刃物で殺され かかった相手というものはなかなかその恐怖を体が忘れづらい。あと、朝倉、普通に会話するだけなら別にマイク使う必要ないだろ。 事の発端はこうである。 朝倉とSOS団の『懇談会』以来、一段とその頻度、クオリティともに激しさを増した長門のレッスンのせいか、俺は最近思い出し笑い、 思い付き笑いを所わきまえず非常に頻繁に繰り返すような状態になってしまい、だんだんクラスでも浮いた存在になってしまってきている。 最近では谷口も挨拶を一拍置いてから返すようになってきているし、国木田は弁当を別のクラスで喰うようになった。笑いさざめくクラスの ドアを開けて教室に入ると、今まで談笑していた生徒全員が一斉に俺の事を注視する、と言ったことも1度や2度ではない。 ハルヒは一人 「なんか、最近のキョンちょっとオモシロイわ!何ていうかほら、バガボンドの最初の頃に出てきた『不動さま』みたい!」 と盛り上がっているが、うん、まあ、ホントはあんまりおもしろい状態でもないんだろ。俺も自分でわかるからさ… そんな孤独と焦燥のさ中にあって、再びクラスの中心人物に返り咲いた朝倉が 「キョン君、今日放課後空いてる?空いてるなら、ちょっと付き合って欲しいんだけどな♪」 と聞えよがしに話しかけてきてくれた時、俺は1も2もなく飛びついてしまった。誰だってそうだよな? そして、放課後俺は口早にハルヒに団活を休む旨を告げると、下駄箱で待ち合わせした朝倉に手を引かれる様にこのカラオケボックスまで来たという訳だ。 「でもね、涼宮さんは別。あなただって、突然自分の体の一部がチクッと痛んだりしたら、何かな、って思うでしょう? 思念体もそう思ったの。いつもどおりに生活していたら、体の一部が変におかしい。何だろう?と思って立ち止まり、調子がおかしい 箇所をしげしげと見ている。調子がおかしい箇所が涼宮さん。それを見つめている目や、触って調べたりしている指が私たち。」 「そういう訳で派遣されてる私たちなんだけど、まあ、私たちだって完璧ではないわけなのよ。同じ宇宙の構成物なんだしね。 目だって指だって病気になるしケガもする。変なものを見ちゃったり、触っちゃったりしたら。」 そう言って、にじり寄ってくる朝倉。 「涼宮さんみたいな強い存在のそばにいたら、私達端末も影響を受けちゃうのよ。本来の機能からエラーを起こして、 自分で勝手に情報を紡いでいくようになるの…あなた達の体でいったら、ガン細胞ね。心でいったら、何かしら…」 朝倉の顔が近い。つぶらな瞳が、俺を真正面から捕えて離さない。 「いっそ、本人に聞くのが一番早いかも♪」 個室のドアが勢いよく開く。廊下の蛍光灯のまばゆい光を逆光に、小柄なシルエットが目に飛び込む。 『…二人とも、表に出ろ』 長門がいた。いつも通りの、高熱に燃える炎のような青白い表情で。 ------------------------------------------------------------------ 俺達がカラオケボックスにいる間に表は小雨になっており、長門は自分で持ってきたであろうビニール傘を差し、 俺は頑強に拒みはしたものの朝倉の持っていた折り畳み傘に結局引っ張り込まれてしまい、先を行く長門の2メートル ほど後ろを2人でついて行っている。 駅前から離れ、踏切を渡りやや閑静なあたりに差し掛かる。 「この前のカラオケでのキョン君の歌。あれ、歌じゃないわ。心の悲鳴よ。キョン君の。」 朝倉が足を止め、長門に声をかける。 「わかってると思うんだけど、最近のキョン君、ちょっともう限界よ。ここまで彼を追い詰めて、何をしたいの?」 長門も足を止め、傘を片手に雨の中、背中で朝倉の言葉を聞いている。 『…獣は、追い詰められた時に一番良い声で鳴く。赤子の声が一番心を打つのは、その母親を呼んで泣き叫ぶとき。』 『歌は、惚気話でもなければ、自慢話でもない。人間の、泣き声。叶わぬ望みが心に叫ばせるもの』 振り向きもせず答える長門。 『だから、人は歌に心をふるわせる。人が、人の泣き声を聞き過ごせぬよう、人の心は、歌にとらえられる』 「なかなか言うじゃない… …まるで、人間にでもなったみたいに。」 口角を上げて、朝倉が答える。 「でも、長門さん、わかってるかしら?私達、端末よ。そんな感傷、本来の機能にはないの。エラーが溜まりすぎちゃったのね。 システムの処理の、暴走。人によっては、こういう風にも、言うかしら」 「『精神病みたいな、もの』、って」 ビニール傘が転がる。 振り向いた長門の顔。いつも通りの、軽く結んだ唇、澄み切った黒い瞳。その瞳の縁から、小雨に打たれた顔の頬を二筋の流れが伝っている。 「観測用端末の更新が発令されたわ。長門さん、あなたはもうとっくに暴走状態。思念体への報告すら満足に行っていない。 私が来たのは、バックアップのためじゃない。あなたと交代して、私が涼宮ハルヒを観測するの。」 「あなたはもう、観測を行える状態じゃない。復旧すらおぼつかないエラーの蓄積状態で、観測対象の周囲にすら影響を働きかけて きている。これはもう、思念体による観測活動継続の為の、除去の対象。つまり---」 朝倉が傘を手放した。 「パーソナルネーム長門有希を敵性と判定。当該対象の有機情報連結を解除します。」
https://w.atwiki.jp/ryouhouji/pages/2086.html
壱 弐 参 極 名前 化け古下駄 (ばけふるげた) セリフ 壱 「切れそうだなぁー、大事な鼻緒が切れそうだなぁー」 弐 「欠けちゃったー、歩きにくいよ、欠けちゃったぁー」 参 「直せばまだまだいけると思うー、大事にしてね、何時までもぉー」 極 「カランコロン♪軽やかにー♪」 解説 古くなった下駄に魂が宿り、妖怪と化したもの。切れかけた鼻緒や、歯板を憂い、歌い踊ると言われる。 レアリティ 必要法力 攻 防 知 壱 SR 19 2710 2670 2580 弐 2990 2940 2840 参 3290 3240 3130 極 3620 3560 3440 術式名 属性 MAX Lv 効果 専:下駄ップ 雷 7 自分自身の攻防アップ お邪魔戦術式 発動率 攻撃力アップ 低 備考:
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/42602.html
【検索用 けためかね 登録タグ 作け 作けた 作り手 作詞家】 + 目次 目次 特徴 リンク 曲 CD 動画 関連タグ内の更新履歴 コメント 特徴 作り手名:『下駄メガネ』(げためがね) 作詞家。 リンク piapro Twitter 曲 まだ曲が登録されていません。 CD HEART S WAVE 動画 関連タグ内の更新履歴 + 関連タグ内の更新履歴 関連タグ内の更新履歴 ※「下駄メガネ」「下駄メガネCD」タグ内で最近編集やコメントのあった記事を新しい方から10件表示しています。 HEART S WAVE コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/306.html
true tears SS第二十三弾 雪が降らなくなる前に 中編 比呂美と眞一郎は一緒に帰る約束をしている。 あさみがささやかな復讐を果たし、朋与が妖怪と呼ばれた恨みを晴らす。 さらなる奇跡を比呂美は願い、さらにちゃんと眞一郎はしようとする。 前作の続きです。 true tears SS第二十二弾 雪が降らなくなる前に 前編 http //www39.atwiki.jp/true_tears/pages/287.html true tears SS第十一弾 ふたりの竹林の先には http //www39.atwiki.jp/true_tears/pages/96.html true tears SS第二十弾 コーヒーに想いを込めて http //www39.atwiki.jp/true_tears/pages/245.html true tears SS第二十一弾 ブリダ・イコンとシ・チュー http //www39.atwiki.jp/true_tears/pages/275.html 六時間目が終わると誰もが部活や帰宅する準備をし始める。 終わりのホームルームは担任が伝達事項やプリントを配るだけで、あまりすることがない。 誰もが机の上に鞄やコートを乗せている。 ふと比呂美を見ると、同じようにしていて背筋を伸ばしている。 授業中に何度も眺めていたが、あの朝以後にこちらを向かなかった。 全員が起立してから一礼をして放課後になったので、俺はコートを着てから鞄を握る。 「謎は解けたか?」 三代吉が心配そうに囁いた。 「今日も奇跡もわからない」 授業中も考えていたが、これという決定打がなかった。 「優等生と劣等生の俺らとは思考回路が違うんだ。謝るしかないな」 「目的地に着くまでに探ってみるよ。比呂美と叶えたいこともあるし」 俺の願いは下校中には無理だと諦めている。 「まあ、がんばってこいや」 俺が歩き出すと、三代吉に背中を叩かれた。 比呂美は立ちながら自分の席で表情が固いまま待っていて、そばには黒部さんもいる。 「麦端の花形とミス麦端のカップルだね、お似合いだよ」 あさみさんが寄って来て無邪気に祝福してくれた。 「ミス麦端?」 俺は疑問を口にした。 「それはね、比呂美が……」 「あさみ、眞一郎くんに変なことを吹き込まないで!」 比呂美に中断されたあさみさんは慌てて見渡してから、黒部さんの後ろに隠れる。 「怖いよ、褒めているだけなのに、また比呂美に睨まれた。 仲上くんの踊りのときだって、夜はなかなか眠れなかった」 顔だけ出してきっちりと主張だけはしていた。 祭りの翌日に俺の席には男女が十人くらい囲っていた。 そのときに三代吉の弁である思い詰めた顔で比呂美の部屋に誘われたのだ。 「そのとき私は見ていないのよね。あさみから聞かされたけど」 「朋与には報告しておかないと」 舌を出してからにんまりとすると、比呂美は瞳を左右に動かしている。 「さて私は仲上くんに言わせてもらうわ。封印された妖怪って誰のこと?」 比呂美が停学中に黒部さんはノートを取らないで寝ていた。 俺は比呂美にノートを貸してあげたときに喩えたのだ。 「比呂美、あれはまずいだろ。受け取ってくれないから言っただけなのに」 「だっておもしろかったから、言っちゃった……」 我に返ったように笑顔で右に首を傾けた。 「つまり仲上くんは私を出しにしていたのね」 「その前に黒部さんが授業をしっかりと聞いておけば良かったのでは?」 「あさみのを写すからいいの」 「朋与には無条件で貸すよ。情報提供者だからね」 そんな遣り取りを比呂美は無言で眺めている。 「というわけで仲上くんには比呂美にあだ名を付けて。もちろんわかっているよね」 瞼を閉じて微笑むのが感情を読ませてくれない。 親友でありながら比呂美に嘘をつかれたので、俺に仕返しをして欲しいのだろう。 最初に浮かんだのは、誰もが思いそうな花であったが、やめておく。 もう一つは比呂美らしいきれいな花だったが、保留する。 「不発弾。地面に埋まっているから、知らない間に爆発しそうで。 でも発見したら爆発しないように取り除きたいなと」 仲上家に比呂美がいるときに出会えたら歓喜と恐怖がつねにあった。 ただ挨拶するだけでも比呂美を傷つけないように配慮はしていた。 「眞一郎くんはそう思っていたのね」 前髪を垂らして俯いている比呂美の声質は無機的であった。 「私もさっき地雷を踏んじゃったよ」 「あさみのはわざとでしょ。余計なことを言ったくせに」 「だって言いたかったから」 唇を尖らせてまったく反省していない。 「比呂美は浮き沈みが激しいから、冷や冷やさせられて頭を冷やされたわ」 「朋与が冷やすのは肝で、私が冷やすのは頭のようね」 比呂美は即座に述べてから、わざわざ後ろの扉のほうから出て行った。 「甘く囁いて比呂美を照れさせてくれると思っていたのに」 黒部さんは腕を組んで不平を洩らした。 「黒部さんを妖怪と呼んでおきながら、比呂美だけきれいに喩えるのはどうかと思った」 「でも不発弾を放置せずに取り除くというのは、良い心掛けかも。 夜の電話で愚痴をこぼされるだろうな」 黒部さんは比呂美が去った扉を見つめている。開いたままで教室にいる人数も少ない。 「また迷惑を掛けてしまって」 「愚痴られるだけましよ。つらいときには何も言ってもらえないし、訊かなかったし」 比呂美も俺が三代吉に相談できないように耐えていたのだろう。 「最近は明るくなっているわ。今朝だって、自然に仲上くんを誘えたとね」 黒部さんが登校してきたときに微笑を浮かべていたのは、俺のことを話題にしていたようだ。 「やっぱりふたりはお似合いだよ。仲上くんにアタックしようかなと思っていたのに」 あさみさんは後ろ手にしたまま顔を近づけてきた。 「そんなことを言われても……」 慣れない場面で言葉が続けられないが、あさみさんは身体を起こす。 「ほんの少しでも悩んでくれただけでも嬉しい。 仲上くんの人気は上がってきているよ。がんばってね」 「校門を出るとふたりきりの世界だからね」 ふたりに見送られてから俺は後ろの扉をめざす。 あまり交流のないふたりと接していると長話になってしまった。 これから比呂美を探すが、発見できなければ比呂美の部屋の前で何時間でも待とう。 合鍵を渡されているけれど、断りもなく中には入れない。 廊下に出ると扉のすぐそばの壁に寄り掛かっている人がいる。 「ミス麦端を知りませんか?」 平然と訊いてみると、きょとんとしていたのに左の人差し指を向ける。 「階段のほうにいるのかも」 「ありがとう」 俺は頭を下げてから歩き出す。 「置いてかないで」 比呂美は右横に来て頬を膨らませている。 「ミス麦端って何?」 「あさみが勝手に言っていることなの。 たまに私の下駄箱に手紙が入っているのを見つけられたから。 全部、断っているので安心して欲しい」 比呂美は教えるのをためらってから、視線を合わせてきた。 「信じている」 普通に考えれば比呂美はかなりもてるだろう。 もし全校生徒でミス麦端の無記名投票があれば、上位に入選するのは予測できる。 最初に浮かんだ高嶺の花を封印しておいて良かった。 あさみさんは俺が麦端の花形になったためか、比呂美と対等に思ってくれていたからだ。 「眞一郎くんもすごいよ。 私が登校しているときに他校の女の子まで踊りを褒めていた。 だから恋敵が増えて欲しくなくて眞一郎くんを部屋に誘ってしまったの。 また爆発してしまったよね」 落ち込んでしまった比呂美と並んで階段を降りている。 「制服姿だと俺とはわからなかったみたい。あの衣装があるからかもしれない」 「花形衣装のおかげにしないで」 比呂美の眼差しは強くても、口元は緩んでいる。 「本当は水仙だと喩えたかったんだ。 雪が降っていても水辺で凛と白くきれいに咲いているから」 雪が好きになってくれるように願いを込めていた。 比呂美は立ち尽くしたまま呟く。 「ナルキッソス……、自己陶酔……、そして……」 ナルキッソスは他人を愛せなくなり、水辺に映る自分を好きになってしまって死んでしまう。 ここが学校でなければ抱き締めてでも否定していた。 むしろ逃避行や昨晩の竹林のように態度で示すのはありきたりだ。 俺は比呂美のそばに戻って耳元で囁く。 「もう少し慎重に検討して選ぶべきだった」 「眞一郎くんが考えてくれたのに、欠点しか思えなくて」 左右に首を振ってくれていても俯いている。 「俺のことを比呂美が喩えて欲しい」 比呂美は見開いてから俺のほうを向く。 「考えてみる。変なのでも怒らないでね」 「爆発しないから」 「すぐそんなことを言うし」 比呂美が素早く階段を降りて行く。俺も同じようにしつつ、比呂美の下駄箱を窺う。 「今日は入っていないわよ。入れられないようにしてくれないと」 俺の行動を読まれてしまい釘を刺されてしまった。 「俺のところにもない」 「そういうので争いたくない」 俺たちは靴を履き替えて、外に出て並んで歩いている。 校内で比呂美の顔を遠慮なく眺められるのは、白昼夢のようだ。 横目で俺を見てから、比呂美はゆっくりと喩え始める。 「屋根の上の猫。私よりも高いところにいるんだけど、私が困ると降りて来てくれる。 私が高い屋根に上がれると、眞一郎くんはさらに高い屋根にいるの。 でもいつか同じ屋根にいて、穏やかに過ごすの」 幼い頃の祭りでの竹林と似たようなものだろう。 比呂美を驚かせたくて先に行ってしまった。 俺は比呂美を見つけると竹林の傾斜から滑り降りた。 そうでもしないと比呂美の笑顔を取り戻せないと思っていたが、逆に泣かせてしまった。 幼い俺は比呂美を任されても何をすればいいかわからなかったからだ。 「最近は比呂美のほうが猫のように去って行っている。 俺のほうが追い駆けていないか? さっきのはわざわざ後ろの扉から出てから壁に寄り掛かっていた。 まるで猫が振り返るように」 俺の指摘に比呂美はそっぽを向く。 「でもなかなか来てくれないし。何を話していたの?」 「戻ってくれば良かったのに」 「できるはずがないでしょ」 かすかに声を荒げる比呂美は今朝のむくれっ面になっている。 もうすぐ校内ではなくなり、やっと校門を抜けた。 俺は左手で比呂美の右手に触れる。 「ごまかさないでよ……」 覇気がなく地面に視線を落としている。 「黒部さんとあさみさんに比呂美のことを教えてもらっていただけさ。 一度は起きた奇跡を望んでいると言われたけど、よくわからない」 比呂美が軽々しく奇跡を求めるのも不可解だし、奇跡的な出来事に身に覚えがない。 「今日も起きればいいと願っているの。 今日がダメなら、また明日。春になるまでに時間がないけど」 比呂美が空を仰いでいて今朝よりも曇っている。 「また明日も一緒にいよう。比呂美の部活があるなら待っているよ。 絵本の題材を探すためにも図書室で過ごしているから」 今まであまり本を読む機会が少なかったかもしれない。 水仙のときも一瞬でナルキッソスを思い出せなかったのは失態だ。 「でも今日がいいな。先に進みたいから。 私が行きたい場所はわかった?」 暖かな明るさを帯びた比呂美が問うた。 「ごめん、授業中もずっと考えていたけど、一つに絞れなかった。 比呂美と行きたいところは、いっぱいあるから」 「朋与に言われたの。曖昧な単語では伝わりにくいって。 でもわかってもらえたら嬉しいし、わかってくれなくてもいいの。 そのときに眞一郎くんがどう反応してくれるか楽しめれば」 まったく翳りがなく比呂美は俺を責めようとはしないようだ。 今までと違って幅広く受け入れてくれるようだ。 「クイズみたいでおもしろいよ。発想力を鍛えるみたいで。 愛ちゃんと三代吉がいつか店に来て欲しいって。 公民館でのことを愛ちゃんは気にしていないようだ。 あのふたりは祝い酒でも悔やみ酒でもコーラを飲んでいるらしい」 比呂美の手を握るのを強める。 店には一緒に行くのだから少しでも比呂美の励みになるようにだ。 「でもコーラを私は飲めないわ。微炭酸のファンタやキリンレモンぐらいしか。 できればオレンジジュースのほうがいいな」 「健康的だな」 「眞一郎くんもコーラばかり飲まないでね」 「俺もオレンジジュースにするから」 「うん」 比呂美の進む方向に合わせてはいるが、俺の通学路を辿っているだけだ。 いつもの長い坂を下っている。 「坊ちゃん、お熱いですね、手まで握っちゃって」 踊りを教えてもらった中年男の能登さんが、自転車で通り過ぎようとしていた。 「俺たち、付き合っているから」 以前のように何も言えずにいたのと違っているのを示したかった。 能登さんは急ブレーキで自転車を止めてから振り返る。 「そうだったんすか。この前、理恵子さんはかなり驚いていたけど、良かったですね」 一言を残してから、すぐに自転車をこいで去って行く。 「おばさんと何かあったのかな?」 不安げで見つめてくる比呂美は、さっきの宣言ついて感想がない。 「よくわからない。能登さんは人付き合いが広そうだから、お袋と話す機会はあるだろうし」 踊り場にお袋が来ているのを知らないから、判断材料がない。 だが俺に関係することだからこそ能登さんは伝えようとしたのだろう。 あとがき あさみは髪の毛の色を変えられそうな口調で、かわいらしく明るいようにしてみました。 眞一郎母の理恵子は似たような性格だったかもしれません。 比呂美と眞一郎は物や言葉に想いを託していますが、まだうまくできていません。 いつかお互いが納得できるようになればいいのですが。 次回は、『雪が降らなくなる前に 後編』。 比呂美は目的地に到着して、雪が好きだった理由を明かします。 比呂美はさらなるアプローチを仕掛けますが、眞一郎にも計画があります。 眞一郎父は博、眞一郎母は理恵子、比呂美父は貫太郎、比呂美母は千草。