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「「「「「ス・・・スマ高!!!?」」」」」 教室の窓から遥達が目にしたのは信じられない光景だった モー商の校庭・・・周辺校から神聖不可侵といわれたその領域で 見慣れぬ制服を着た一団とモー商の生徒達が小競り合いを演じている その一団の真ん中の生徒が振っている王冠エンブレム入りの大きなピンクの旗 そのエンブレムが近年、周辺区域を席巻した新興勢力・・・ スマイル女子高等学院~通称スマ高のものであることを遥達は一瞬にして認識した 「な、なんでスマ高がここにおると!」 「あんなに堂々と・・・」 流石の九鬼組、聖達も動揺を隠せなかった。遥達天鬼組に至っては言葉すら出ない 「なんでからしらねぇ・・・」 道重さゆみがふ~っと溜息をつき肩を竦めながら言葉を続ける 「ウチらさぁ、ナメられてるんじゃない?」 ・・・そうとしか思えない。 しかしスマ高は所詮数年前に設立された新設校。伝統も頭数も戦力も喧嘩の場数もモー商には大きく及ばないはず 一体どんな勝算があって仕掛けてきたのだろうか? だが唐突な奇襲による動揺が薄れ、冷静に校庭の攻防の様子が見えてきたところで 遥はその認識がいささか甘いものであることを思い知らされる よく見れば地に倒れているのはモー商の生徒ばかり。その数は徐々に・・・いやどんどん増えていっている! 死屍累々、そんな表現がぴったりくる状況だ。 更に状況を良く見るとスマ高の前線に2人、手練れの強者がおりモー商の生徒は殆どその2人に倒されている。 その2人の手練れの内の1人の姿を見て、譜久村聖、そして工藤遥の表情が凍りついた。 「あ、朱莉ちゃん・・・!?」「竹内さん!?」 「和田さぁ~ん、やっぱやめましょうよぉ~。絶対マズいっスよこれ~」 スマ高の手練れの1人、竹内朱莉はこの殴り込みに乗り気ではなかった。 別にモー商にビビっているわけではない。それなりに渡り合う自信はある。 しかし、朱莉にはこの殴り込みに乗り気になれない理由が二つあるのだ。 「うるさいタケ!とっととコイツら倒してはるなんを探して!」 そんな朱莉を後方から腕を組んで叱咤しているのがスマ高の総長・・・和田彩花 今回のモー商への殴り込みの発端となった人物だ。 総長なのに発端?という言い方はおかしいと思うだろう。 普通は総長が召集をかけて他校に殴り込むものである。 だが、飽くまで和田は『私事』でモー商を訪れたに過ぎない。 今回、スマ高の兵隊達の召集を掛けたのは和田の隣でほくそ笑んでいる人物なのだ。 「こういうきっかけ、ずっと待ってたんだよね~。ねっ、かななん」 その人物が旗を振っている生徒に話し掛ける 「さっすが福田さんですわ。こんなに短時間でこんだけ兵隊集めるとか尊敬しますわ。でも福田さん・・・」 「ん?」 「そろそろ疲れましたわ、なんかこの旗振るの意味あるんですか?」 「何言ってるのかななん!せっかく殴り込みに来たんだから大々的にスマ高ここにあり!ってアピールしないと」 「そういうことでっか、なんとなくやる気出てきましたわ~」 「おい福田さん!かななん!まったりしてねぇでちっとは手伝え!」 まったりと後方でだべっているスマ高の副総長、福田と関西弁の旗振りの生徒にツッコミを入れたのは スマ高前線のもう1人の手練れ、前髪リーゼント風で後ろに長髪を流している手足の異様に長い生徒だ 「いや、めいめいが居ればウチらの出る幕なんか無いって。ウチのエースってとこモー商に見せてやんなよ」 確かに『手伝え』と言った割に『めいめい』と呼ばれた生徒は髪を振り乱し、常軌を逸したかのような暴れっぷりで 群がるモー商生達を次々にズタボロにしている。悪鬼羅刹・・・まさにそんな表現がぴったりだ 「オラぁ!そんなもんかモー商!レベル低いじゃねぇか!このタァムラ様とまともにやり合える奴は居ねぇのか!」 まるで水を得た魚のように暴れるめいめい~田村芽実に対して もう1人の手練れ、竹内朱莉は相変わらず愚痴りながら戦いを続けていた 「和田さん、もう無ーーーーーー理ーーーーー、やめときましょう!」 「タケ!弱音を吐かない!1人30殺ぐらいすれば何とかなるから!」 しかし愚痴りつつも朱莉はきっちりと仕事をこなしている 小柄な身体に不釣り合いな恐るべき筋力・・・ キュー学の怪物、矢島舞美と同じ遺伝子を朱莉が宿していることを知らないモー商生徒達は 次々にその重いパンチの餌食となっていた。 「早くしないとはるなんが死んじゃう!」 「死にゃしませんって、いくらモー商でも殺しはしないでしょ殺しは」 「でもメールにはもうお別れかもって・・・はるなん!はるなん!」 激しく取り乱す和田彩花。はるなんはるなん・・・はるなんのことになると人が変わる。 朱莉がイマイチ乗り気になれない理由の一つがこれである。 (いや、お友達もいいっスけどね・・・ちょっとおかしいでしょ。和田さん絶対なんか騙されてるって) それでもまぁ朱莉がこの殴り込みに付き合っているのはそんな真っ直ぐで危うい大将が案外嫌いじゃなくて 放っておけないからなのだが。。。 「なかなか面白いじゃんスマ高・・・つーかアンタ達何ぼーっとしてるわけ!?さっさと行きなさいよ!」 道重の檄で聖とナマタがハッ!と我に返った 「ス、スマ高かなんか知らんけど捻り潰しちゃるけん!」 「・・・行ってきます!」 教室から飛び出していく聖とナマタ (フクちゃん・・・?まっ、いいか) 一瞬、聖の顔に迷いのような表情が浮かんだのを道重は見逃さなかった。 少し気になるが、譜久村は信頼出来る子だ。少なくとも九鬼の中では一番。 何があってもモー商の為に尽くしてくれるだろう。それに・・・ 「1年!アンタ達も早く行きなさいよ!」 「えっ!?」 道重の言葉に、遥達天鬼組は一瞬呆けて固まってしまった 「何?ビビってるわけ?なら行かなくてもいいけど。こういうのは顔売るチャンスだよ?」 チャンス・・・チャンス・・・ 「ディス イズ ア チャ~ンス!(どや!)」 その言葉に真っ先に反応したのはだーいしだった・・・つーかなんだそのどや顔は? お前そんなキャラだったっけ? 「はい!みにしげさん、まーちゃんも行って来ます!」 行くのか優樹・・・つーかコイツを他校と絡ませて大丈夫なのか? しかもみにしげって総長に失礼だろ! 2人は勢い良くダッシュで飛び出して行った ・・・ってか出遅れた!ハルも! 「自分も行って来ます!」 そう宣言したハルの顔を道重総長は無言でまじまじと眺めた じ~っ・・・な、なんスか? 「アンタ、無理しない方がいいよ?」 ど、どういう意味っスか?怪我してるからっスか? またじ~っとハルの顔を見てる うっ・・・この人なんか苦手かも・・・ 「そこに倒れてる子を保健室に運んで。総長命令!」 「えっ!?」 倒れてる子・・・はるなんのことか あぁ、すっかり忘れてたぜ 「で、保健室にあの子寝かせてよくよく考えて覚悟決めてから校庭に行きなさい。 ・・・アンタさ、足震えてたよ。ビビってるでしょ?」 「ビ、ビビってなんか!!!」 ビビってなんかいない!ビビってなんかいませんよ! 「スマ高の小さい赤い奴、アレは知り合いかな?なんかフクちゃんもアイツ見て動揺してたけど」 な、何だ・・・何なんだこの人は? ええ、ビビってましたよ。ハルは竹内さんにビビってました! でもあの一瞬で見抜くかそれ普通?ハルと竹内さんのことだけじゃなく譜久村さんと竹内さんのことまで わ、わかりましたよ!まずはるなんを保健室に運びます!でも必ず校庭には行くんで!意地でも!!! 階段を全力で駆け降り、靴も履き替えずに下駄箱を駆け抜けて校庭へ飛び出した聖とナマタ。 「やばか!」 スマ高を取り囲んでいたモー商生徒の一団は2箇所、田村と竹内の居る前線から完全に包囲を崩され 崩壊寸前の状態である。あろうことか田村と竹内の恐るべき強さに後退りする者達も現れ始めた。 「そろそろ頃合いかな・・・」 冷静に後方から戦局を見ていたスマ高副長、福田花音が号令を掛ける 「特攻部隊前へ!めいめいとタケちゃんの開けた穴から校内に突撃して!飯窪春菜さんを見つけたら保護して!褒美は焼肉おごりーーーーーー!」 福田の号令と共に20名程の『特攻部隊』が校舎を目がけて突撃を開始した。 「ヒャッハァ!!!」「バーベキューっ!!!」「イーヤフォンでっ!!!」 「しゅわしゅわーーーーーーーーーー!!」「ぽんっ!!!」「ギャハハハハハ!!!」 どう見てもチャラく、頭の悪そうな若者達・・・かつてスマ高が周辺区域を席巻した時代に猛威を振るった 『ピンチケ』と呼ばれる兵隊達である。 個々の力はさほど強くないが良心というものがまるで存在せず、集団になったときの無軌道な暴力は 一時期、他校の脅威となっていた。ちなみに『ピンチケ』の語源とは・・・ 「少し遅かったようですわね」 「聖!ウチらで食い止めるしかなかよ!」 「言われるまでもありませんわ!」 聖、ナマタが下駄箱への道を塞ぐようにピンチケ達の前に立ち塞がる 「イヤッハァ!死ねえ!」 ぽーん! ナマタにバットで殴り掛かったピンチケの身体が派手に宙を舞った。 強烈なアッパーカットの一撃 恐るべき筋力の大振りな打撃で敵の身体を吹き飛ばし、宙に舞い上げる・・・ぽんぽんのもう一つの『ぽん』 「どけぇ!」 ぽーん! 聖に襲い掛かったピンチケの身体も宙を舞った。 ロックからの合気道投げ・・・どごっ!高く宙を舞ったピンチケの身体は頭から無残に校庭に叩き付けられた。 ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん! 次々と聖達に襲い掛かるが、まるで紙屑のようにピンチケ達は次々と宙を舞う 「お~、やっと出てきたね~、ぽんぽん」 福田は特に動揺を見せることもなく、ニヤニヤしながら軽く言い放つ 「こ、コイツら・・・強ぇ!」「ヤバいよヤバいよ」 「か、勝てるわけがねぇ!!!」「ヒィ!ふ、福田さぁ~ん!!!」 『ピンチケ』の語源・・・『ピンチ』になると『ケ』ツを捲って逃げ出す。ゆえにピンチケ。 勢いに乗った勝ちいくさでは大きな戦力となるが劣勢になればまるで蜘蛛の子を散らすように逃げ出すのだ。 結局『特攻部隊』の半数、10名程がスマ高本陣に逃げ帰ってくる有様である。 「おめーらなぁ!ちょっとは根性見せろやぁ!!!」 田村の檄が虚しく響く。しかし、相変わらず福田花音の頬はなぜか緩んでいた。 「クソ弱かね、スマ高。相手にならんっちゃ」 「気を付けてえりぽん、弱い奴ばかりじゃないわ」 「先輩!遅れてすみません!うおっ!もうこんなに倒したんですか」 「うひょ~!」 遅れて校庭に飛び出して来た石田と佐藤は一瞬、横たわるピンチケ達に驚いたものの すぐにスマ高本陣の方に目を向けた 「ウチもだいぶ浮足立ってますね」 「ウチらが行けばきっと盛り返せるけん、行くとよ!」 「突撃にょろ~!」 「待って!」 突然、勇んで突撃しようとするナマタ達を聖が制した。 「なんね聖、怖気付いたと?」 「考えなしに突っ込むんじゃなくて分担を決めましょう!」 「分担?譜久村さん、ウチらみんなで一点突破した方が早いんじゃ・・・」 「そうたい、そんなん必要なか!」 「勿論そうだけどスマ高のあの強者2人が易々と通してくれると思う? あの2人と戦う担当と本陣を襲う担当を決めておいた方がいいわ」 なるべくもっともらしいこと言うように聖は腐心していた。 目的は、ただ一つシンプルなことなのだが 「まぁええっちゃよ。じゃああのリーゼントの奴はえりなが殺るけん」 「じゃあ私はもう1人の赤い学ランの・・・」 それはダメ!石田が言い終わらない内に聖は慌てて口を挟んだ 「アイツは私がやるわ!1年の2人は構わず本陣に突撃して!」 「ええっ!?ウチらで敵の大将殺るんですか!」 「あああっ、もうっ!見てらんないっ!あやが行くっ!」 「待ってあやちょ!」 ピンチケ達の不甲斐なさにたまらず自ら前線に出て行こうとする和田を福田が全身で制した。 「こんなんじゃ埒が明かないじゃない!はるなんが死んじゃう!」 「あやちょ、花音を信じて!もう手はちゃんと打ってあるから!」 そう言って福田は和田に何やらごにょごにょと耳打ちをした 「えーっ!そうなの!?じゃあ最初から言ってよー!」 ふぅ・・・やれやれ、なんとか納得してくれたか。 万が一アンタが討たれちゃうといくさにならないんだよね。 だから大人しくしててよ、和田さん。 こっちは引き摺り出す側だからね、アンタが引き摺り出されてどうすんだよってこと。 こっちが最初に強さを見せた後、少し弱さを見せればあっちは好機と見て攻め寄せてくるわけさ。 ピンチケどもに最初から期待なんてしてない。アイツらは単なる餌。 向こうが戦力を前に出してくれば出してくるほどチャンスが生まれる。 正面から勝つだけがいくさじゃない。ってゆうか正面からモー商に勝てるわけない。 兵は詭道なり。 詭道の矢は既に敵に放っている ここまでは計算通り・・・あとは不確定要素次第、かな ったく、手間掛けさせんなよコイツは・・・まぁ軽いからいいけどよ 工藤遥は飯窪春菜を背負い、人気の無い廊下を保健室に向かって歩いていた 校舎内の殆どの生徒はスマ高を迎え撃つかヤジ馬で観戦するか出払っていて校内は静かだ ああっ、ハルも早く行かねぇと・・・ん? 前から生徒が1人歩いてくる。こんなときに中に残ってる奴が居るのか? モー商生は例外なく血の気の多い奴ばっかりのはずだが・・・ 近付いてくる・・・誰だ?長身でかなりスタイルがいいが、顔はよくわからない 特徴のない顔だ。どっかで見たような見ないような???あんな奴ウチに居たっけ? まっ、いっかどぅーでも。まさにどぅーでもいい感じの顔だし・・・ その生徒は特にこちらを見る様子もなくすっ、すっ、すっ、と歩いてくる。 ま、便所かなんかかな? 特に何事もなく擦れ違・・・どごっ! 腹に衝撃・・・え?え? 遥はわけもわからないままうつ伏せに倒れ、春菜の下敷きになった。 えっ!?何だ?何がどうなってんだ? さっきの生徒の足が見える・・・やっと頭が回った ハル・・・コイツにやられたのか? 遥は顔を上げ、生徒の顔を見ようとする・・・視界がぼやける・・・ ぼんやりと見える顔・・・この顔、どっかで・・・ あ!コイツは確か・・・ そこで遥の意識は途切れた。 NEXT>第5話 『なんにも言わずにI Kill You』 BACK>第3話 『Help me!!』
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事情を話してしまおうか。 シンは朝の食卓でぼんやりとそんなことを考える。 今日はもう金曜日、バレンタイン前の最後の週末である。週が明けたら13日。 でも切り出しようがないよなあ。 はあ~。 「シン。銜え箸やめなさい」 行儀悪く朝食を取るのを、母親に見咎められてしまった。 妹のマユが『今日は忘れないでお弁当持って行ってよ?』と念押しする。その甲斐あって、その日はちゃんと忘れずに弁当を鞄に詰め込むことができた。駅でヨウランと一緒になっていつものようにファミザに寄る。 「調子はどうよ?」 「何の?」 「そんなの決まっているじゃないか」 分かっているが、シンはジロリとヨウランを一瞥して店内のドアを開ける。お客に声を掛けるアルバイト店員。 「はいはい」 昨日より空いている店内でシンの声は意外とよく通った。レジの中の金髪のアルバイトがチラリとシンを見る。シンもそれを確認して、平然と正面のおにぎりが並んだ棚へと大股で近づいた。 あのバイトとアスランさんは仲が良さそうだよな。 補充を待つ棚にはいくつもおにぎりはなく、選ぶ必要はないのに、シンは手に取っては置き、手に取っては置きを繰り返していた。おかかと昆布の間を行ったり来たりする。 あの人に頼んでみるとか。 隣の寿司巻きに手が伸びて、急に止まる。 付き合ってるとか言わないよな。 二人が一緒のシフトの時の様子はどうだったかと思い出す。確かに仲が良さそうに見える。唯のバイトであそこまで親密になるだろうか。 しかし、彼は誰にでもあんな感じだ。 物腰柔らかって奴だ。 だから、それはない。多分。 結局シンは、梅おにぎりとペットを掴んでお金を払う。ヴィーノを待ちながら、ファミザの前で早速、封を切る。とても天気はいいのに、雲一つない空のせいでいつもより冷え込んだ朝は、ペットのお茶もすぐに冷たくなってしまっていた。 まあ、でも、貰えなかったからと言って別に何があるわけじゃないし。 こいつらの思う壺だと、シンはやって来るヨウランを見て思った。 シン達の高校では屋上やベランダは立ち入り禁止である。それ故、昼食は各自教室で取ることになっていた。屋上で語らうなどの青春の1ページが見られないと言えども決まりは決まりなので、ほとんどの生徒はそのルールを守っていた。 進学クラスでも上位の成績をキープするシンもその1人で、今は、ヨウランとヴィーノと一緒に机にお弁当を広げている。ヨウランは弁当、ヴィーノはコンビニで買ったパンとおにぎりをパクついている。その隣の島には机を引っ付けて女子共が小さな弁当をつついていた。 あらかた皆が食べ終わろうしている頃、ルナがやって来る。 「アンタ、面白いこと始めたらしいじゃない?」 「は?」 ちょうど机の位置ぎりぎりのところにスカートの裾があるくらい、超ミニを着ている。視界に素足が飛び込んできて、椅子に座ったまま彼女を見上げる。 ルナは女子にしては背が高い方で、理系クラスの数少ない女子である。短く切った臙脂の髪が一房跳ねているのがトレードマークだ。 「×ゲームなんだって?」 「ああ・・・」 その事か。 面白くなさそうに相槌を打つ。反対にヨウランやヴィーノは面白そうだった。 午後の授業は単調で、眠魔との盛大な戦いに勝利した後はただ暇なだけだった。勿論、授業に集中できるならそれがいいのだが、シンは昼休み時間中にルナからもたらされた情報を反芻していた。 どうやら状況は芳しくないようね。 腐れ縁のアンタのために一ついいこと教えてあげましょうか? ルナはこの高校にできたファン倶楽部の一員である。抱きつき事件の後の反応と比較すると反対のような気がしたのだが、彼女はシンのその疑問にあっさりと答える。 首尾良く運んだら、アタシの口にも入るじゃない? だそうだ。 そんな彼女が言うには、彼は今週末にどこかに遊びに行く予定があるらしい。 お近づきになるチャンスだとルナは手をひらひらとさせて、人事のように言った。 ヴィーノの奴がしゃべったんだな? もうクラス中が知ってんだろうな。止めてくれってーの。 このまま知らん振りでも決め込もうと思っていたのに、これでは、当日何を言われるかたまったものではない。自分一人だけ少しも面白くないゲームに、溜息を付いた。 窓からは冬空の下にファミザの看板が見える。 大学生ってどこに遊びに行くんだろうか。 「アスカ。窓の外がそんなに気になるか?」 ハッとした時には、既にクラス中の注目を集めていて、指摘に教科書、ノート、黒板を見るが、返事をすることはできなかった。 「お前、5限の時って・・・もしかしてファミザ見てた?」 「は? ファミザ?」 下駄箱から靴を取り出して地面に投げる。いつもより遠くまで飛んでしまったが、この際気にしない。知らず、シンは口を尖らせて鞄を背負いなおす。 「お前ってさあ・・・純情だよな」 ギギギと音を立ててシンの首が回る。 引きつった口元は笑みを浮かべているが、目は笑っていなかった。しかし、シンの友人達は気にせずに会話を続ける。 「見てると面白いんだよね。朝ファミザ入って行く時とかさ、さりげなーく、中確認しているだろ」 「そうそう、態度が違うもんな」 真冬の時期に比べれば日が落ちるのも少し遅くなって、辺りはまだ明るい。油断しているとすぐに暗くなってしまうけれど。 「あ~あ、後は月曜日と当日だけか」 「ったく、お前ら」 「まっ、シンもあまり思いつめるなよな?」 「別に俺はっ!」 弁当を忘れた事とか、今日、先生に注意されたこととか、関係ないから! 喉まで出掛かって口を噤む。口に出したら最後、意識しまくりだと宣言するようなものだからだ。シンは必死に何でもない風を装ったのだが。 「そうそう、別にお前が本当にチョコ貰えるとは思ってないし」 「なんつーか、シン・アスカ君のいつもと違う貴重な一面って奴?」 シンは足を止めた。 その台詞に安堵すればいいのに、しかめっ面のまま二人に置いていかれる。 それはそれでどうなんだ、と。 こう見えても自分の方が人気がある。と、思う。 マユの友達にも、カッコいいと言われたのだ。 ヨウランもヴィーノも、順位だって自分より下だ。 どうして俺がこんな目にあわなければならないんだ。 純情なのかも知れない。 先生に注意される姿が珍しいのかも知れない。 けれどそれ以上に、シンは負けず嫌いだった。 お前らがそういうつもりなら、マジでチョコを貰ってやる。 ヨウランとヴィーノ、二人の後ろでシンの瞳が光る。 些か、純情と言うよりは直情であった。 戻る 次へ すみません。すみません。カウントダウンって難しいんですね・・・。
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前へ 行ってらっしゃい、と生徒会長さんに見送られながら、私たちは生徒会室を後にする。 「じゃあ、ここからは別行動だね。いろいろとありがとう、遥ちゃん」 「あ・・・うん、別に」 「花音ちゃん」 律儀に私に頭を下げた後、ユウカさんはカノンさんのほうを振り返った。 「花音ちゃん、ありがとうね。これで、またお嬢様とお話するチャンスが出来たかもしれない」 「・・・ね、無理することないんだよ?マロも一緒に」 「ううん、ここからは私が一人で頑張らなきゃ。ふふ、花音ちゃん、生徒会の皆さんのライブが気になってるんでしょう?そっち、行ってきちゃっていいよ。」 なんだかわからんけど、やはり、ユウカさんは相当な理由あり参加者さんのようだ。 ちさとちゃんのことだから、それはすごく気になるんだけれど・・・それは聞いていいことなのか、どうにも判断かできない。 好きならば、何でもしていい。そんな風には私は考えられないし、第一、それは私が一番恐れている事・・・つまり、ちさとちゃんに嫌われてしまうってことに繋がってしまうだろう。 「うおおおおまーちゃんやったるちゃん!さらば愛しき友たちよ!!!」 マサキは威勢よく叫び、またとっととどこかへ去っていってしまった。 「えーと・・・憂佳がそう言ってくれるなら、私、ライブ行ってきていいかな」 「うん、あとで感想教えてね」 「まかせて!一人で行く学園クリスマス会に音源をうんたらかんたら」 そうこうしているうちに花音さんも体育館へ戻っていき、私と憂佳さんは二人きりになってしまった。 「あー・・・当てとか、あるんすか」 「うん?」 「何か、この条件だと、ハルのほうが結構有利になっちゃうと思って、ユウカさん的にはどうかなって」 「あはは、優しいなあ」 目を細める横顔には愁いがあって、視線を外せなくなってしまう。 「じつはね、今日は用事があって来れなかったんだけど、私の学校の友達が、千聖お嬢様と親しいから」 憂佳さんは、その人からの情報を元に、1つ決めた場所があるらしい。 「みんな、私とお嬢様の間に起こったことを、真剣に聞いてくれて、絶対に解決しようって言ってくれたんだ。 嬉しかったなあ」 「あのさ、ユウカさん・・・」 もし、どうしてもっていう事情があるなら、ハル、辞退してもいいよ、と言いかけて、私はハッと口をつぐんだ。 ・・・違う、そうじゃない。ユウカさんが望んでいるのは、そういうんじゃないんだ。 この人は・・・戦っている。それは過去の自分とであり、うちの学校のクリスマス会に参加したことでもあり、ちさとちゃんと向き合おうとしてることでもあり、そして、今、“誰かと競う”ことで、その権利を手にすることでもある。 だから、私がライバルになっているのは、むしろ望ましい状況なんだろう。 「ハル、本気で探すから。恨みっこなしだぜ」 そう宣言すると、ユウカさんはにっこり笑ってうなずいた。 ***** 「しかし・・・探せるのは1回、となるとなぁ」 数分後。 ひとまず高等部の昇降口まで下りてきた私は、ちさとちゃんの下駄箱を見つめながら、ため息をついた。 大好きな人のことだ。心当たりがないわけじゃない。だけど、逆に絞るのが難しい。 大好きなラーメンの出る学食?合唱が楽しかったと言ってたから、音楽室?力いっぱい走れるグラウンド? どれも合ってるようで、正解じゃないような・・・。 「きえええ!すどぅー!」 「うわっ!」 突然、足元から人間の顔がニョキッと出現した。 「マサキ!ま、まさかお前・・・」 「まーちゃん終了のお知らせ!佐藤優樹かわいそすぎワロタ!まさ哀れざまあああ!」 「落ち着け!見つからなかったんだな?カード!」 ほんのちょっとだけ、「よかった」なんて思ってしまったことに自己嫌悪。 案の定マサキはこくこくとうなずいて、またスンスンと鼻をすすりあげた。 「泣くなってば・・・」 「ちさとーなら、あそこだと思ったのに。・・・3階東階段の手前のトイレ、奥から2番目」 「なんでだよ!」 「ちさとーはだいたいそこを使います」 「へ、へー・・・3階東・・・って、なんでそんなこと知ってんだよ!」 「えっへん」 有益な情ほu、じゃなくて、ウソかホントか知らんけどほんと恐ろしいわ、こいつってば。 だけど、玉砕を隠さずにすぐ私を探しに来て報告してくれたってのは嬉しい。素直なとこもあるじゃんか。今度お小遣い入ったら、駄菓子でも奢ってやろうかな。 「すどぅは?」 「まだ探してないよ。迷ってんだ、今」 「ふーん・・・」 マサキは私の視線に合わせるように、しばらく黙って、昇降口の低い天井を見つめていた。 「はー、これでハルもユウカさんも見つけらんなかったらどうすんだろ。やりなおしかー?」 「すどぅ、すどぅ」 私の言葉を遮るように、マサキがスカートのすそを引っ張ってくる。 「どうした?」 「えーっと、まーちゃん、ちさとーのプレゼントを探してる間、ずっと、ママ生徒会長の言葉のことを考えてました」 「言葉?」 「ママ生徒会長は言いました。“ちさとーのことをしっかり考えてくれる人に、プレゼントを渡したい”」 「そうだな」 ふと、マサキが真顔に戻る。散々ふざけた後の、コイツのいつもの癖。何を言い出すのかと、思わず身構える。 「まーちゃんは、ちさとーの眠たそうな顔が好き。ぼーっとしてる顔も好き。ちさとーが落ち着いて安らげていたら嬉しいなって思います。そういう場所を選んで探しました」 「・・・・・それでトイレを選ぶっていうセンスはどうかと思うぞ、マサキ」 だが、場所はともかく、マサキのその考えは、1つのヒントとなって胸にスッと入ってきた。 「安らげる場所、か」 これで、私の探索候補はかなり絞られることになった。 その中でも、選ぶとしたら、・・・そう、多分、あそこだ。だが、出来れば避けたい場所でもある。だってさ、あそこは・・・ 「すどぅ。もう行く」 いきなり、マサキが私の腕を掴んでぐいぐい引っ張ってきた。 「どこに行くんだよ」 「すどぅが今考えてる場所。まーちゃんも一緒にいく」 「ハルが何考えてるか、わかんのかよ」 「わかる!友達!」 ヒートアップしてるのか、マサキの手の力と、声のトーンがどんどん強くなっていく。 相変わらず、宇宙人な奴だけど・・・とりあえず、今この瞬間、コイツが私を鼓舞しようと必死になってるのはわかる。 そして、自分が“友達”として、それに答えるのは当然だってことも。 「そうだよな・・・ここまできて、見つけなけりゃしょーがないしな」 「イエス!誰のためでもない、すどぅのしたいようにいきていくだーけねー!」 無駄に質のいい、マサキの歌声に後押しされるように、私はついに“あの場所”へ足を向けることにしたのだった。 次へ TOP
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投稿日:2010/03/23(火) 17 41 50 夕暮れが影を落とす、校舎裏。風に揺れて木々がざわめく。 下駄箱に入っていた手紙に応えて、わたしはここへ来た。 朝手紙を読んでから、ずっと頭がいっぱいだった。 でも誰にも言えなかった。 だってきっとすごく勇気がいっただろうから。 それがわたしには、とてもよく分かるから。 授業もろくに耳に入ってこなかった。いや、それはいつものことなんだけどさ。 唯やムギの話も上の空だったし。 ここに来る前、部活に少し遅れると澪に告げたとき。 澪の顔、まともに見れなかったな…。 なぜだか後ろめたかった。 色んな気持ちがないまぜになって、どんどんわたしの鼓動を早めていく。 「あの…田井中先輩」 あぁ、くるぞ。 「す、好きですっ!先輩、今付き合ってる人とかいますか…?」 ドキっとして、すぐさま頭の中をよぎる、端整な顔と澄んだ声。 「付き合ってる人は…いない、けど…」 けど、思い浮かぶのは、 「じゃあわたしと付き合ってください…」 いつも、この心を離さないのは、 「いや、でも…」 好きな人がいる、そう言おうとしたとき。 胸に受けた衝撃に、言葉が詰まる。 「好きなんです…ほんとに…っ……」 肩に埋められた顔。くぐもった嗚咽が聞こえてきた。 どうしたらいい。突き放すことも出来ない。 傷つけるのは可哀想だ…でも、気持ちには、応えられない。 だってわたしは、澪のことが、 「律…」 すっと頭に入ってくる声。わたしの大好きな声。 わたしの名前を呼ぶ、澪の声だ。 一瞬、世界が止まったように思えた。 そしてその途端に跳ね上がる心臓。わたしは弾かれるように澪を見る。 「澪…!」 澪は大きな目をさらに見開いて、わたしたちを見つめていた。 「澪っ、これは…!」 言いかけたわたしに背を向け、澪は走り出す。 「待っ…」 追いかけようと動き出したわたしの体を引き止める、か細い腕。 「先輩…」 すがるような目でわたしを見つめてくる。 でもごめん、もう、構っていられない。 零れる涙を拭うこともしない彼女を、ぐっと引き離す。 「わたし、澪が好きなんだ。ごめん」 さっき言えなかった言葉を今度ははっきりと口にする。 自分でも確認するかのように頷いて、わたしは澪の後を追った。 背後から聞こえてくる悲嘆に胸を刺されながらも、足を止めることはできない。 飛び出したときにはもう澪の姿はなかったから、少々手間取るかと思った。 でも澪は案外すぐに見つかった。 さっきとは打って変わってゆっくりとした足取りで、澪は講堂の影に消えていった。 わたしはそのあとを力の限り追いかける。 気持ちを伝えることは出来なくても、澪に誤解されたままでいたくない。 「澪っ…!」 追いついたわたしが見たものは、小さくしゃがみこんでいる澪。 顔を腕に埋め、表情は伺えない。 訳が分からないけど声をかけないと、と思い近づこうとした。 「くるなっ!」 突然の叫びに驚き足が止まる。 「み、お…?」 息切れのせいか、うまく声が出ない。 「なんで来たんだよ…なんで…くっ……」 澪の声に嗚咽が混じることで、どんな顔をしているのか想像がついた。 どうして泣いているんだ? わからない。わからないよ、澪。 「澪、泣いてるのか…?」 じり、と足を動き出させる。 「泣いて、なんか……っ…」 精一杯の強がりさえ、うまく口に出せていない。 「澪…」 わたしは澪との距離を縮め、その横にそっと跪く。 「う…っ…ぐす……」 わたしのことで澪が泣いている。 それが嬉しく思える、澪が愛しくて愛しくてたまらない自分がいた。 「澪、黙っててごめん。あの子は…」 「っ…ほんと、だよ…わたしに黙って恋人なんてっ!」 「なっ…わぁっ!」 澪が急にわたしに掴みかかって、わたしはバランスを崩し、結果地面に押し倒される形になる。 「ってぇ……澪…」 馬乗りになった澪を見上げると、そこには涙をぽろぽろ零しながらまっすぐわたしを見つめる瞳があった。 「わたしは、ずっと律の一番でいれると思ってた!」 澪が涙を流しながら、顔を真っ赤にして叫ぶ。 「ずっとずっと一緒にいるって思ってたのに!それは…そう思ってたのはわたしだけだったのか!?」 「澪、ちが…」 「ばかりつ!ばかりつばかりつ!……ずっと、ずっと好きだったのにっ…うぅ…うわぁあん!」 「ちょ、ちょっと澪っお、落ち着けって!」 衝撃の一言と、大声をあげて泣き出す澪に、慌てるしかなかった。 でもこのまま泣いていては、きっと話も聞いてくれないだろう。 わたしは意を決する。 「ていっ!」 「ぅひゃぁっ」 ばっと起き上がり、形勢逆転、今度は私が澪を押し倒す。 「り、りつ…?」 びっくりして涙が引っ込んだのか、澪は泣き止んでわたしを見上げた。 「あのなぁ、あの子はなんでもないの!」 「へ…?」 「告白はされたけど、断るところだったんだよ。それを澪が勘違いしてだな」 わたしがひとつひとつ説明し始めた途端、澪の顔がさっきよりも赤くなっていく。 「じゃじゃじゃあ、わ、わたしは、さっき、ななななんてことっ」 顔から火が出んばかりに赤面する。 「ぷっ…くくっ…あはははは」 その様子に思わず噴き出してしまった。 「うぅ、り、りつのばかぁ!紛らわしいことしてるからだろ!」 「澪ちゅわんってば早とちり~」 「知らない知らない!」 「えー…さっきの、なかったことにしちゃうのか?」 意地の悪い質問に、澪はまた赤面する。 このくらいにしておいてあげようかな。 恥ずかしがり屋の澪の、一大告白を受けたわたしはとても気分がいいし。 「律は…どうなんだよっ」 さっきまでの恥ずかしさを振り切ったのか、澪が問いを返す。 「んー?そうだなぁ」 今まで焦らしていた分、なんだかすっと言葉に出すのがもったいなく思えた。 「りーつー?」 澪が口を尖らせて急かす。 可愛いやつ。 「だーい好きだよ、みーお」 自分で聞いておきながらまた真っ赤になる澪が愛しくて、わたしはすっと澪に口付けた。 ちゅっと触れるだけの短いキス。 「り、りりりりつ!」 もはや爆発してしまうんじゃないかと言うほど真っ赤になって慌てふためく澪。 キスするたびにこうなるのかなと想像すると笑えてくる。 「澪しゃん真っ赤~うぶですな~」 なんて茶化しているわたしも、実は耳が熱い。 好きな人とキスするってこんなにドキドキするもんなんだと実感する。 「~~~!もぉっ!ばかりつー!!」 「へへっ」 夕焼け空に、わたしの大好きな澪の声が大きく響いた。 いつまでも一緒に…! -- 名無しさん (2014-01-21 07 56 27) 名前 コメント
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「よし! 告白をしよう!」 2月11日。バレンタインデー3日前に、私はそんな決断をした。 きっかけはテレビでやっていたドラマである。人が決断するときのきっかけは、大体がくだ らないことだ。 私もその例に洩れず、ドラマで自分の恋が成就することを夢見て、告白をすることにしたの だ。 バレンタインデーに、チョコレートをあげて告白をする。古典的で、古臭い方法ではある が、私にはそれしか思いつかなかったのだ。なんといっても、私の友達は皆が恋愛事に疎 かったからだ。 「澪とチョコ作ろうっと」 さっそく澪に電話をする。 1のボタンを押せばすぐに澪につながるようになっているため、携帯を開いて5秒後には澪 の声が聞こえた。 ……ほとんど一方的に用件を伝える。 そして、切る。 澪は物事を決めるのが少し遅いため、これぐらい強引で丁度いいのだ。 ベッドに横たわって雑誌を開く。 いつもは読み飛ばしていたバレンタイン特集のページをじっくり読んで、その日は床につい た。 「どうしたんだ? 律がいきなりチョコを作りたいだなんて」 「ま、色々あったのさ。私にも」 材料と道具を取り出しながら話をする。 子供のころから変わらない。 澪が家に来た時、料理をするときは決まってピンクのエプロンだ。もちろん子供のころのエ プロンではないけれど、ピンクのエプロンが澪で、オレンジのエプロンが私だ。 チョコレートの甘い香りが鼻につく。 どんな形にするかは、じっくり考えて決定した。 あまりにも典型的すぎる形であると、私自身も思っているがあの形ほどわかりやすい形もな いだろう。 「聡はどうした?」 「まだ寝てる。たぶん腹空かして降りてくるだろうから、私がチャーハンでも作ってるわ」 「律のチャーハンは美味しいものな」 ……私は料理は苦手だ。 細かい分量だとか、包丁で食べやすいように、だとか。精密な仕事ができないからであ る。ただ、チャーハンは簡単だ。総てが目分量でも美味しく出来るからだ。初めてチャーハ ンを聡と澪に作ったとき、二人は目を丸くした。 それぐらい、私のチャーハンは美味しいらしいのだ。 「じゃあ私はその間にチョコ溶かすためのお湯沸かすよ」 「……チョコ? 澪姉。バレンタインのチョコ作ってるの? それにしても、腹減った」 案の定、聡が腹を空かして降りてきた。 少し待ってろ、と聡を座らせてチャーハンを作り始めた。 ――それから一時間ほどで、チョコの形は完成した。 型に入ったそれは、冷蔵庫の中で固まることを待つだけとなった。 「みおー。ゆっくりだぞー。ゆっくりだからなー」 「わかってるよ。だからそう煽るな」 「私のチョコへ。美味しく固まってください」 「何言ってるんだか……」 かなり本気なのである。 私にとって、あのチョコレートは勝負の道具だ。 剣を研ぐ剣士のように細心でなくてはならない。 恋愛という勝負に勝つために、こういったことに祈りをささげて何が悪い。 ……と。 彼の剣豪宮本武蔵は戦に向かう際、仏に祈ろうとした自らに怒ったらしいが。 「明日になれば固まるよな。 それじゃあ澪ー。二階でスト2やろうぜー」 「サード持って来たけど」 「澪姉! 俺にもやらせてよ!」 バレンタインまで、あと2日だ。 私の恋の決戦まで、あと2日なのだ。 次の日、チョコはしっかり固まっていた。 その後は昨日と同じでサードの時間だ。 楽しい時間がすぎるのは早いもので、日も沈む。 「じゃあな。また明日」 「今度こそ負けないからなー!」 「俺の疾風迅雷が火を噴くぜー!」 靴を履いて、扉を開ける。すると、夕日が開いた扉から差し込んできた。 ……思えば、澪との思い出はいつも夕暮れだった。 泣き虫の澪を家に連れてきて。 恥ずかしがり屋の澪と遊んで。 へとへとになるまで一緒に――。 笑顔が――頬が緩んだ。 口元がだらしなくつりあがる。こんなに楽しい時期が、いつまで続くのかと思うと―― 「は――はは――」 涙が、出てきた。 明日……私は傷つくかもしれない。 だって、初恋だもの。 怖いよ。 フラれるのは――恐い。 「律……。ちょっと来てくれないか?」 「……え?」 澪はそんなことを言ってきた。 まるで、私の不安を知っているかのように。 「懐かしいな。この空地……」 「だな。私が聡を守るために井上をボコボコにしたんだよな」 「そうそう。りっちゃんたら、いきなり私にランドセル渡して走っちゃうんだもん。びっくりした」 「昔から、お前をびっくりさせるのは私だったからな」 「――」 間が置かれる。 澪は、そんな昔話をしにつれ出したわけではない。 なにか話すことがなければ、澪は無駄な行動はとらない。 私も少し、ほんの少しだけ大きく呼吸した。 澪の顔は、夕日に照らされて綺麗に光っている。 白い肌に反射して、幾分か眩しく感じる。 「あのさ――」 「うん?」 「……律は、りっちゃんはバレンタイン、誰にあげるつもり?」 「……だよな。 ――よし。澪ちゃんにだけは言うよ。私、生徒会長の福山にあげるんだ」 「そっか。りっちゃんも男の子のことが好きになったんだね」 「そうだ。自分でもびっくりしてる。この私が、男の子を好きになるなんて、さ」 恥ずかしい。 てれ隠しに笑ってみせる。 親友とはいえ、好きな人を暴露するのは恥ずかしい。 澪は長い髪をかきわけて、私の眼を見た。 「りっちゃん、可愛いから。大丈夫。 ――うん。私のりっちゃんだもん。絶対に大丈夫」 そういって、澪は空地を後にした。 長くのびた影と澪の言葉が、私の不安を少しだけ和らげてくれた。 ――そうして、来てしまった。 2月14日。 バレンタインデーだ。 朝は早く起きる。これは絶対だ。 当日に努力しても無駄かもしれないが、少しでも可愛い自分でいるためにシャワーを浴び て、髪をきちんと乾かして整える。 制服も、埃一つ見逃さない覚悟で綺麗にする。 寝不足にならないために、澪が帰ってからすぐに眠った。 ――鏡を見る。 完璧だ。 完璧な私。今日の私は最高に可愛い。 カチューシャは……。つけていこう。流石に恥ずかしすぎる。 冷蔵庫からチョコレートを忘れずにカバンに入れる。今日は教科書を全て忘れても、これば かりは忘れられない。 さあ、開戦だ。 私の恋が実るか。 それとも儚く散るか。 玄関から出ると―― 「よう、律。チョコは忘れずに持ってきたんだろうな」 親友の姿が、そこにはあった。 ――通学路は、いつもとは違う雰囲気だった。 挙動不審に周りを見渡している者。 友人に話しかけられただけで大げさに反り返る者。 女子生徒のチョコという単語に反応する者。 挙句の果てには、チョコレート・ディスコを口ずさむ者もいる。 ……修羅の国だ。 今まで特別に意識しなかったからだろう。 バレンタインデーという日が、ここまで思春期の男女を惑わすなんて。 この光景をアメリカ人が見たらなんというだろうか。『クレージー』と言われてしまうのだ ろうか。 だって、日本人は未来に生きてるんだもの。ゲームとキスする時が来てもおかしくなんて、 ない。 「す、すごいな」 「学校についたらもっとすごいぞ。よく見てるんだぞ」 「アレ以上に凄いのかよ……」 学校に着くと、もっと凄いものが見られる。 それは――事実だった。 パカパカパカパカパカ。 この音は決して某リズムゲームの音ではない。 下駄箱の開け閉めを繰り返している音だ。 ……ぎろり、とこちらを睨んでくる。 こちらというよりも澪の方を見ている。 ――当然と言えば当然だが、澪は学年でも抜群の美人である。今まで言い寄ってきた男たち を『恐い』の一言で撫で斬りにしてきた彼女は、いわゆる高嶺の花だった。 下駄箱の男子生徒も、澪に憧れを抱いている一人なのだろう。目が血走っている。 「うう……怖いよぉ……」 当人の澪は私の背中で丸くなっている。 こういうところは相変わらずで、澪のベクトルは基本的に怖いものを避けるという方向に向 いている。 つまり、このままだと彼氏なんて夢のまた夢なのである。 「もう、上履きとってやったから教室行くぞー!」 教室も、これまた亜空間だった。 「……チョコの匂いがすごいな」 嗅いでいるだけでお腹がいっぱいになりそうなくらいに、チョコの匂いが充満している。 冬だから、誰も換気のために窓を開けない。どうして冬にバレンタインがあるのかと考えて しまうが、バレンタインは聖人が何やらかした日だそうなので、冬なのは固定だ。オースト ラリアならば夏にバレンタインがやってくる。ただ、夏ではチョコが溶けてしまう。 「ファック!」 机をひっくり返してチェックするのは学級委員の丸山である。 いつもはまじめキャラのくせに、どうしてこんな日にキャラを変えるのだろうか。眼鏡をコ ンタクトに変えて、七三の髪型はワックスで今風の髪型に固めてある。 ……もちろん。これも無意味だ。 女の子はチョコレートをあげる人は数日前には絞ってある。そうでないと、チョコが間に合 わないからだ。故に、当日や前日に頑張ったところで意味はほとんどゼロなのである。 これが男だと、無駄だと言い切れるのだが今日の私はそれも他人ごとではない。 「よお福山! お前はチョコ何個貰った?」 「よ、よせって。何個貰ったとかは関係ないだろ」 彼が、来た。 思わず緊張した。 澪が私を優しい目で見つめる。 ……手を握って、頑張ってと耳元で囁く。 「……ああ」 向かうは福山の席。 右手と右足が同時に出ている。これでは、緊張しているのがバレバレだ。 「福山。放課後、体育館裏に来い!」 ――言えた。 言えたことに興奮してしまっている。 周りは『果たし合いだ!』だとか『血で血を洗うバレンタインだ』とか『競技はバトルドー ムか!?』とまで言われている。 震える足を抑えつけて、自分の席に座った。 「頑張ったな、律。さあ、これからだぞ」 澪は、優しく言ってくれた。 「あ、ああ――!」 がくがくと身体が震える。 誘った側なのだから、先に待ち合わせ場所に来ているのは当然だ。故に私は帰りのHRが 終わったらすぐにここに来た。 澪は、体育館の陰から私も見ていると言ったが断った。 女子生徒が、告白する際に友達を引き連れていくことがある。 あれはだめだ。好きな相手を安心させる対象になりたいのに、どうして集団の圧力をかけ ているのか。私にはまったく理解ができない。断ったら評判ががた落ちだとわかっている告 白は、もはや告白ではない。脅迫だ。 それ故に、私はそんな卑怯なコトはしない。 もとより、澪では頼りにはならない。男を前にすると逃げ出してしまう彼女が、そういった 係りとして機能するはずがないと考えたからだ。 ……歯が震える。 平静を保っているのが不思議なくらいに、心は動揺している。 「田井中。おまたせ」 ――背後から声。 振り向くと、そこには福山直樹(あこがれのひと)がいた。 「よ、よう。ごめんな。こんなところに呼び出して――」 「いいって。部活もまだ始らないしさ。 もしかして、ホントに勝負でもするの?」 首を振って否定する。 のどが震えて、上手く声が出せない。 見据えた先には彼がいるのに、どうしても目線が下に行く。 ……アリがいる。 こういうとき、どうしてどうでもいいところに目が行ってしまうのだろう。 カバンから、生まれて初めて作ったチョコレートを取り出す。割れていないコトを確かめ、 福山に向きなおす。 「こ、ここここここここここ――――これ!!!! やるよ!!!!」 手が震える。 握力が亡くなって、チョコも握れない。 押しつけるように渡すと、言いたい言葉を――しっかりと口にした。 「好きです! 付き合ってください」 ――沈黙。 永遠にも思える、沈黙。 聞こえるのは、部活動に勤しむ生徒たちの喧騒だけ。 それすらも、私にとってはグワングワンという雪崩にしか聞こえない。 顔を上げるのが怖い。 顔をあげて、彼の顔を見るのが厭だ。 私は、どんな顔をしているんだろう。 きっと、不細工なんだろうな。 「あの――さ」 声を聞いて、顔をあげる。 「――――――――――――――――」 なにも、聞こえない。 聞きたくない。 「だから――俺、秋山が好きなんだ。 だから、ごめんな」 そんな声、キキタクナイ―― それからの帰り道は、覚えていない。 泣いていたのか。 笑っていたのか。 否、笑ってはいないだろうな。 悲しいことが、あったんだから。 「律!」 澪が走ってくる。 どうやら、私の家の前で待ってくれていたみたいだ。 ホントに、いい子だ。 心配そうな顔で私を見る。察してくれたのか、澪は私を強く抱きしめた。 澪は、泣いていた。 どうしてだろ。恋敵なのに―― どうして――私は振りほどかなかったのだろう。 澪には話さなかった。 澪も、訊かなかった。 聡は部屋に戻った。 きっと、アイツなりに気を使ったんだろう。 母も心配そうに私たちを見ている。 私たちはソファーに並んでいた。 澪は、私を強く抱いて頭をなでて―― 私は、その行為にただただ甘えていた。 思えば、澪の前で泣いたのはこれが初めてだった。 こんなにもみっともなく。 こんなにも格好悪く。 こんなにも不細工に。 声をあげて泣いたのは、初めてだったのかもしれない。 「よしよし。りっちゃんをフッたなんて、福山君ももったいないことしたよ」 「――う……うう……ああ……」 「大丈夫だよ。私がいる。りっちゃん、りっちゃん」 「澪……み……お」 「よしよし。今日はお母さんと私が美味しいご飯作ってあげるからね」 澪は、ずっと声をかけてくれていた。 私の名前を呼んで、私の頭を撫でて。 私も、離れないようにと抱きしめた。 柔らかい。 お母さんみたいに。 母も、私を抱きしめた。 小さなころと同じように、母のいい匂いがする。 「お母さん……。お母さん……」 「りっちゃんが大好きなキャベツチャーハンとキャベツロール。澪ちゃんと作ってあげるからね」 「うん……。うん……………」 夕日差し込めるリビング。 また、思い出は夕日の中だった。 「出来たわよ。ほら、りっちゃん」 湯気が、温かい。 こんなにも料理が温かいなんて――思わなかった。 澪はいつものピンク色のエプロン。 母も、いつもの笑顔と美味しいごはん。 聡は黙って私にキャベツロールをくれた。 父は、少し乱暴に頭をなでてくれた。 「りっちゃん、今日は私泊まるよ。だって――りっちゃんの傍にいたいもの」 「澪……。ありがと……」 私はもう泣かない。 後悔させてやるんだ。 私をフッたことを――。 澪といる間、私は澪が家から持ってきたDVDを見ていた。 「こういうときは音楽でも聞いて、見て、紛らわそうな」 いつもなら、少し離れて見ていた。 いつもなら、スナック菓子を食べて、コーラを飲んで。話しながらDVDを見ていた。 でも。 今はいつもではない。 澪は私をしっかり抱いて、私の小さな身体を温めてくれていた。 上映しているのは『QUEEN』のエイズ撲滅キャンペーンのライブだ。伝説のライブと呼 ばれていて、音楽に興味のなかった私が、目を奪われるほどだ。 流れるのは『We are the champions』。ラストの曲らしい。 ――僕らがチャンピオンだ。 ――友もチャンピオンだ。 そうだ。 これだ。 「これ――だ」 「え?」 「これだよ! これ! 澪! バンドやろう! バンド!!」 それが、私たち。 言ってしまえば『放課後ティータイム』の先駆けとなる言葉だ。 4
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前へ 「早朝からすいません、ノート警部」 「気にするな、お前らの方がずっと辛いんだ」 出木杉未来が、現場の指揮を取っているノートと会話をしている。 「今、部下達がこの樹海の周辺を調査している。 もしかしたら、殺人犯が潜んでいるかもしれん」 ノートの言葉を聞き、皆、安堵する。 「警部さん、私達のことは疑わないのですか?」 Lがノートに話しかける。 「て、てめ、なんて事を言うんだ!」 ギンガが、Lに突っかかろうとする。 「………実は、お前らも容疑者の中に入っている……」 ノートの言葉で、場は凍りつく。 「嘘だろ……警部さん!?」 「仕方が無いだろ、俺だってできればこんなことはしたくない だがな、考えてみろ…… もしお前らの中に殺人犯が居たとする。 そこで俺らが何もしなかったら、そいつは絶対に改心しない それはお前らにとっても、そして犯人にとってもいいこととは言えないだろ…… ……だから、俺たち警察に強力してほしい」 ノートは、皆に頭を下げている。 年上の人間が年下の人間に頭を下げる。 普通はなかなかできないものを、この警部は平然とやってのけた。 それに対し、皆は心を打たれたのか 全員の答えは、Yesだった。 「その代わり、こちらにも条件があるわ」 「なんだ、言ってみろ」 「私達にも、この事件を調査する権利が欲しい。できるかしら?」 Lの発言に、その場に居た全員が驚いている。 ノートは、少し悩んだ後にこう言った。 「いいだろう。その代わり、現場を下手に荒らすなよ」 Lは、ノートの発言に歓喜した。 「調査の前に、まずは事情聴取だ 聞いたところ、赤髪の死亡推定時刻を出すのは難しいそうだ。 そこでお前らに、赤髪がいつまでは生存していたかを教えて欲しい」 「確か、赤髪は薪拾い競争の時までは生きていた」 挑戦者がノートにそう言う。 「つまり、薪拾い競争以降は、姿が見えないわけだ 薪拾い競争が始まった時間と、終わった時間を教えて欲しい」 「16時20分くらいに始まって、ちょうど30分ぐらいで終わったんだよな、アクアマリン?」 「僕が時間を計っていたから、間違い無いね」 「すると、被害者のおおよその死亡推定時刻は16時20分~17時くらいか」 「薪拾い競争に参加していた奴は誰だ?」 「僕と、ギンガとドラAAモンと赤髪の四人です」 「薪拾い競争をしている間、他の人間は何をしていた?」 「皆、広場に集まって、それぞれ別の仕事をしていました」 アクアマリンの言葉を最後に、ノートはメモ帳を閉じた。 「悪いが、薪拾い競争をしていた3人には、少しは話を聞かせてもらうことになる」 「ちょ、なんでだよ!?」 「お前ら3人は、赤髪の死亡推定時刻時にアリバイが無いからだ」 「……分かったよ」 ギンガは、反論しようとしたが、さっきのノートの言葉を思い出し、静かになった。 「だが最初に言っておく、俺はやってない」 ギンガはそう言い放った。 「俺もだ」「……僕も」 続いて、ドラAAモン、DPその2も同じことを言う。 「信じてるぜ、L……」 3人は、ノートと一緒にどこかへと行ってしまった。 「どうします、Lさん?」 「決まってるでしょ?事件を調べるのよ」 Lと活劇が、廊下を歩きながら、会話をしている。 「とりあえず、ルビーの死体が発見された場所に行きましょう」 ――地獄の炎の部屋 数人の警官が居たが、ノートの言葉が通っていたようで、すんなりと入ることができた。 「あの後あの部屋を調査したけど、扉の鍵も掛かっていたし 窓も閉まっていた、どうやら密室だったみたいね……」」 「密室って……じゃあルビー先輩はどうやって!?」 「さあ……まだ死因すらも分かっていないのよ……」 「原因は不明ですが、窒息死だそうですよ」 近くに居た警官がLにそう告げた。 思わぬ人物からの情報、これにLは感謝した。 Lは警官に礼を言い、再び調査に戻る。 「……何かしらこれは?」 Lが注目したのは、ゴミ箱に捨てられていたガムテープの塊だ。 「ガムテープ……ですかね?」 「そんなこと分かってるわよ、何でこんなものがここにあるかよ」 「さぁ……」 Lと活劇の会話は、それ以降、途絶えてしまった。 Lと活劇は、地獄の炎の部屋を出て、廊下を歩いていた。 「Lさん、ちょっといいですか……?」 「何かしら?」 活劇は、何か後ろめたそうにLに尋ねる。 「赤髪先輩の死体が見つかったときに、ギンガ先輩が この部はどんどんと人が死んでいくと、言いましたよね?」 《何でこの部は、どんどんと人が死んだり居なくなったりするんだよぉ……》 「……えぇ」 「それって、つまりこの部で過去にもう一人 失踪したり、あるいは亡くなったりした人が居るということですか?」 「……随分と勘が鋭いわね……」 「演劇部には1年前に、キョーコという先輩が居たの 彼女は、有名な劇団からオファーが来るほど素晴らしい人だったわ……」 活劇は、神妙な顔をしてLの話を聞いている。 「しかし、ある日突然失踪したのよ……」 Lの顔が暗くなった。 「あの人は、とても明るい人で誰にも言わずに失踪するような人じゃなかった……」 「ここからは"噂"だけどね、キョーコ先輩の失踪の原因がワタリ達にあると言われてるのよ」 ワタリ達……ワタリ、ルビー、赤髪の三人のことだ。 「ワタリ達が、キョーコ先輩の女優として生きる道を なんらかの方法で断ち切った……これが演劇部内で伝わっている噂よ」 「でも、それってただの噂じゃ……」 「皆はワタリ達なら、やりかねないと言っているわ」 ワタリ達三人は、演劇部内に留まらず 学校内でも有名な不良である。 「実際にキョーコ先輩も居なくなっているわけだし、 私はこの噂は真実だと思っているわ……」 「それなら、実際に確かめていてはどうでしょうか?」 「……どういうこと?」 「ワタリ先輩に、聞いてみればいいんですよ 今回の事件で、手下の二人が亡くなっていますし 既に身の危険を感じたりしてるかもしれませんよ」 「……今のワタリなら喋るかもしれないわね、行ってみましょう」 Lと活劇は、ワタリの元へと向かった。 ワタリは、挑戦者と一緒に劇場の舞台に腰を掛けていた。 「なんだよ……何か用か?」 ワタリは、Lと活劇に冷たい視線を送る。 挑戦者は無反応である。 「用があるからあんたに話しかけたのよ そろそろ聞かせてもらうわよ……キョーコ先輩のこと」 "キョーコ"この単語が出てきたときに ワタリの顔は青ざめ、瞳孔が見開いた。 「お、俺は知らねぇ、俺は何もやってないぞ!!」 狂ったようにワタリは、暴れだした。 これに反応して、挑戦者がワタリを取り押さえた。 「何するんだ挑戦者!?離しやがれ!!」 ワタリは必死に抵抗するが、その拘束は解けることはない。 「今、ワタリを刺激しないでくれよ」 挑戦者が、ワタリを押さえつけながら叫ぶ。 「す、すいません!!」 「分かったなら、どこかへ行ってくれ!」 Lと活劇は、劇場から出て行った。 劇場を追い出された二人は、再び廊下を歩いていた。 「結局、キョーコさんの情報は手に入りませんでしたね」 「そうでもないわよ」 「どういうことですか?」 「あそこまでワタリが真っ青になって暴れだす、無関係とは言い難いと思わない?」 Lの眼が鋭く光る。 「そ、そうですね」 「いや、実際そうだよ」 奥のほうから声が聞こえる。 声の主は、出木杉未来。 「部長!」 「事件の調査をしているみたいだね、僕も考えているけどさっぱりなんだ」 「そう、それよりもどういう意味かしら?実際そうだよって…」」 「言葉の通りだよ、キョーコ先輩の失踪にワタリが関わっているんだ」 出木杉未来の言葉で、Lは僅からながら動揺する。 「僕の父が、医者だっていうのは知っているよね?」 「ええ、あなたも少しは医学を勉強しているみたいね?」 「どうしてそんなことが分かるんだい?」 「ルビーの死体が発見された時に、あなたはルビーが死亡したのを確認していた 脈を計る程度は一般人にでもできるけど、死体のを計るのはなかなか勇気がいるわ」 「そんなことで見抜くとは…君は本当に凄いよ…… 誰にも言わないでくれよ、キョーコ先輩の情報を…」 【次回予告】 ―ワタリ達の悪事、それがついに暴かれる。 事件はゆっくりと光へと近づいていく。 ゆっくりと……確実に…… 次回、推理編2に続く キョーコ先輩は、出木杉未来の父親の勤める病院に入院していた。 入院の理由は手足の複雑骨折。 原因は不明――ただ体に打撲の痕があることから おそらくは高いところから落ちた、または落とされたかのどちらかだと思われる。 本人に聞いても、何も喋らない―喋れないのかもしれない。 結局のところ、原因は誰も知らない。本人でさえも…… 「これは病院の関係者しか知らないんだ、本当は君にも喋っちゃいけない しかし、あの噂と今回の事件が関係しているなら 僕は君に教える義務があるのだと思う……」 出木杉未来は、今までに見たことも無いような険しい顔をしている。 「そしてもう一つ、この情報は隠蔽されているんだ… 上からの圧力によって……」 「上からの圧力?」 「おそらくワタリの父親だ……あいつの父親はその筋の人間とそれなりに親しいみたいなんだ 父の病院になんらかの圧力を掛けているんだ」 「それって…つまり……」 「ああ、おそらく間違いないだろうね、あの"噂"は……」 この言葉に活劇は唾を飲み込み、Lは拳を強く握る。 「この情報は君達二人だけの心の中に秘めていて欲しい、じゃあ」 出木杉未来は乾いた足音をたてながら去っていった。 「Lさん……」 「分かってるわ…」 Lは怒りを隠せないようだった。 シュゥゥゥゥゥン 「俺は二番かよ……」 「けっきょくおれがいちばんはやくてすごいんだよね?」 「デボンの御曹司っすかwwwwww」 賑やかな声が聞こえるのは、炭水化物の部屋。 マリカ四天王が宿泊している部屋だ。 「また……マリカやってますね……」 「こんな時に……本当に呆れるわ……」 「昨日の夜はミュウが一番だっただろ……」 「寝る時間削ってまでマリカをやってるとは……」 活劇が間抜けな顔をしながら、Lの顔を見る。 しかし、Lは活劇とは違い厳しい顔をしていた。 「ど、どうしたんですか?」 「分からないの!?昨夜起きていたとしたら ひょっとしたら、事件の音とかを聞いているかもしれないじゃない!」 Lの言葉を聞き、活劇は間抜けな顔から、真剣な顔に戻る。 そのまま二人は、炭水化物の部屋の中に飛び込んだ。 「な、何なんだよお前ら!?」 ミュウが、顔を引きつらせながら二人を見ている。 「昨夜あなたたちはずっと起きてたの!?」 「は?」 「いいから答えなさい!」 「は、はいぃ!ずずっとじゃないけど……そうだ二時ごろまでは起きていたよ」 怯えながらミュウは、Lに話しかける。 「その間に、何か物音とかは無かった?」 「俺たちゲームやってたしなぁ……」 「ゲームやってたりすると、雑音は聞こえなくなるしね」 ミュウと書こうかは、難しい顔をしている。 「あっ!そういえばいつだか忘れたけど、外で1回だけ川に何かが落ちたような音がしたよ」 「本当!?」 「ああ、そういえば大きな音がしたなぁ、いつだったっけミュウ?」 「えぇーと……ちょうど12時前ぐらいだったと思うよ」 「ああ、そうだな……それよかL、いきなり人の部屋に入ってくるな!」 「悪かったわね、それよりも随分眠そうな顔してるわね皆…」 「なんせ12時から2時までゲームやって、その後早く起きてたからね」 「呆れた……ゲームもほどほどにしておきなさいよ」 「はいはい、分かったよ……」 Lと活劇は、炭水化物の部屋を出た。 「12時前の大きな音……怪しいですね。Lさんは正体分かりますか?」 「それをこれから調べに行くのよ」 Lと活劇は、下駄箱に向かって走り出した。 「早くしなさい、活劇!」 「そ、そんなこと言われたってぇ」 Lと活劇は、廊下を走っている。 だが、二人の足の速さの違いで、かなり差が広まっている。 しかし、活劇の足が遅いのではなく、Lが速すぎるのだ。 「ったく……遅いわね……」 Lは、不機嫌そうな顔をしながら、下駄箱にある自分の靴に手をかける。 その時に、ある物に目が行った。 「これは……赤髪の靴……?」 Lが手に取っているのは、真っ赤な色をした靴だ。 「ハァ……ハァ……やっと追いついた……Lさん何をやっているんですか?」 「まさか……でも、これなら何もかも辻褄が合う」 「あ、あの……どうかしたんですか?」 「赤髪殺しのトリックが分かったわ」 「ど、どんなトリックなんですか!?」 「後で説明するわ、それよりも屋上へ行くわよ!」 「ちょ、ま、待って」 活劇が、次の言葉を発しようとしたときは 既にLの姿は見えなかった。 ――屋上 Lは、無言である物を見ている。 「やっぱり、そうだったのね」 「犯人も分かったんですか?」 「ええ、後はルビー殺しのトリックだけよ とりあえず、再び現場に行ってみましょう」 Lと活劇は、また地獄の炎の部屋へと向かった。 ――地獄の炎の部屋 数人居た警官も、今は居ないようだ。 「そういえば、大量のガムテープは何に使われたか分かったんですか?」 「それを調べるために、ここの部屋に来たんでしょう」 Lは、ゴミ箱の中に入っていたガムテープの塊を手に取った。 「……埃……が付着してるわね」 ガムテープには、他にも糸くずなどが付着していた。 「これは……多分、この部屋のどこかについていたものね」 Lの言葉で、活劇は辺りを見回した。 しかし、そのような痕跡のある箇所は見つからなかった。 「分かりませんね……」 「犯人の意図が分かれば、不思議と答えは見えてくるわ」 Lと活劇は、再び調査を開始した。 「ルビーは下のベッドで寝ていたのね……」 下のベッドには、ルビーの所持していたDSが置かれていた。 「Lさん、ちょっとこっちに来てください」 活劇が突然Lを呼ぶ。 「どうしたの?」 「何か、ここが湿っているみたいなんですよ」 活劇が、部屋の中央の床を叩き続けている。 「……分かったわ、ルビー殺しのトリックが」 「ほ、本当ですか!?」 「お手柄ね、活劇。 これから、私はノート警部に自分の考えを話してくるわ あなたは他の皆を集めておいてちょうだい……この部屋にね」 「わ、わかりました!!」 活劇は、心の底から嬉しそうな顔をして部屋を出て行く。 そして、Lもゆっくりと立ち上がった―― その顔は、厳しくもあり、悲しくもあるようだった…… 【次回予告】 「わざとじゃないんだ……わざとじゃないんだ……うわぁあああああああああああああ」 複数の散らばった証拠品―― それが今ここに結集し、一つの道を開く。 そして、次回……ついに殺人者の正体が暴かれる 「……あなたがこの殺人事件の犯人よ…」 次回、解決編1に続く 自分なりに推理して、答えが見つかったら、次に行きましょう
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長門がいなくなって数日経ったが気になることがある。 手紙の最後の言葉・・・。”新しいインターフェースとコンタクトをとって” 結果から言えば呆気なくどういうことなのか判明した。 俺にとっていつも通りではない文芸部室で古泉とオセロでやっていた時。 いつも通りの勢いでドアが開いた。 「みんな~!まった~?」 「今日は紹介したい子がいるのよ~!その名は!」 「長門有希でーす!今日転校してきたばかりだけど面白そうだからこの部に入ろうと思ってまーす。」 「古泉君の次にまたもや謎の転校生よ!」 な、長門!?いや、どう考えても違うだろ。見た目はもしかしたら長門かもしれないが。中身がおかしいって。 「あっ、キョンくーん。会いたかった~!」 こ、こら。抱きつくな! 「キョンその娘と知り合いなの?」 「えっと・・・まぁ遠い親戚みたいなのかな・・・。」 「ふーん。」 どうなってんだながと!?それにそのテンションは・・・。 「細かいことはあとあと!終わってから帰る振りしたらまた文芸部室に戻ってきてね!」 その後の長門はハルヒと部活動終了までずっと話をしていた。 全員部室から出て行ったところを見計らって再度部室に入る。 長門は折畳式テーブルの前に立っている。 「で、お前は本当に長門有希なのか?」 「確かに長門有希だよ!でも正確には新しい長門有希だけどね。」 「それはどういうことなんだ?」 「以前の長門有希と同じところは外見と蓄積されたデータと能力そのたもろもろなんだけどぉ。 精神だけはまるっきり別ていうか、以前の長門有希だとなぜかエラーとかバグがいっぱい発生してたんだよね。 だから以前の長門有希のデータから有機生m・・・人間と一番触れ合いやすいと思われる形で再構築されたのが あたしなの。だから、長門有希であって長門有希ではないの。」 「それなら新しいインターフェースってのはお前で良いのか?」 「まぁそういうとなんだけどね。暗くなってきたからそろそろ帰りましょ!」 そんなこんなで今、長門に腕を抱かれながら帰宅中。 あの~あたってるんですけど~・・・。 「あててんのよ!」 はぁ、そうですか。 「なに~?やっぱりこうされるんならみくるちゃんとか涼宮さんがいいの~?」 いや、そういうわけでは。 「じゃぁ、いいでしょ!」 途中の分かれ道でやっと離れることができた。あぁ・・・でもあの感触も・・・ ってなに考えてんだ俺は!! 先が思いやられるぜ・・・。 学校に来て放課後まで一気に時間がすっ飛んだかと思うほど今日ほど時間の感覚が無い日はないだろう。 下らん授業中の様子がどうだなんてことはだれもが気にすることじゃないと思うが唯一言える事はなぜか いつもより教師どもの下らん世間話が多かったことだろう。 まぁおかげで早々に朝比奈さんのいるであろう文芸部室兼SOS団部室へ向かうことができるがな。 文芸部室前。いつもの朝比奈ボイスを期待にドアをノックする 「は~い、どうz」 「キョーンくん待ってたよぉ!」 ドアを開けようと手をノブに伸ばしたとたんドアが開けられ何かが押し倒して・・・いや、体当たりしてきた。 「おっそいよキョンくん。待ちくたびれたー」 俺じゃなかったらいったいどうするつもりだったのだろうか。 「わざわざノックしてくれるなんてキョンくんだけでしょぉ~」 ああ、そういえば前の長門の記憶は引き継がれるのか・・・。 「あ、あの!キョンくん。何をしておられるんで・・・」 え?朝比奈さん・・・って長門!早くどいてくれ! ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・ ・・ 「キョンくんお茶ですぅ。」 朝比奈さんありがとうございます。 「みくるちゃんあたしのもお願しま~す」 「はいはい」 「また新しく買ってみたお茶なんでけどどうでしょうか・・・?うまく煎れれてればいいんですが・・・。」 「もちろんおいしいですよ。」 「よかったぁ!」 何度か行っている気がするが朝比奈さんが煎れれば下水の水だってアルプスの天然水以上だ! ・・・ 「ねぇ、なんでキョンくんはいつもみくるちゃんとか涼宮さんばっかり見てるの?」 「長門・・・?」 「みくるちゃんはずるいよ。キョンくんと仲良くなんかしちゃいけないのに。」 「長門。」 「なんでみくるちゃんは「長門!!!」 椅子を後ろに蹴り倒して立ち上がっていた。頭に上っていたちが一気に落ちていく。 何で長門がこんなことを言い始めたのだろうか・・・。 「すまん。頭を冷やしてくる。」 そんなことを俺は言っていた。本当はその場からすぐに逃げたいだけだった。 翌日から長門とはほとんど口をきかなかった。 だが、ある日。下駄箱に手紙が入ってた。”放課後、部活が終わったらまた文芸部室に来て。” 長門からだった。これは俺からも誤るチャンスだろうと思った。 微妙に悪い空気の中で部活動終了後。また文芸部室へと戻ってくる。 「長門・・・。」 「あのね・・・もうすぐお別れなの・・・。」 何を唐突に!? 「本当はあたしは人とうまく触れ合えるように作られたテスト用のインターフェースなの。うまくいったら 観測とテストを継続できたんだけど・・・キョンくん怒らせちゃったから・・・。失敗なの。」 「あれは俺がいけなかった。長門が何を考えていたのか分からなかった。つい頭に血が上って・・・」 「だったら・・・なんで?・・・なんであたしをもっと見てくれないの?」 俺の前にいる彼女の目に光る粒が浮かぶ。 長門・・・すまなかった・・・。 そういいながら俺は長門を抱いていた。 「キョンくんの匂い・・・。ありがとう・・・。でも、もう消えちゃうの。」 下を見るともう長門の足が光の粒となって消えかかっていた。あの時のあいつと同じように・・・。 「長門!!!!」 「最後に一つだけお願いしても・・・いい?」 「ああ・・・。」 長門は目を瞑って少し背伸びした。 俺は黙ってその柔らかな口に重ねる・・・ ・・・何かがあたるような感触は無かった・・・ 俺は・・・俺は2回も長門を・・・。 「わたしはここにいる。」 長門!? 俺のorz体制前に長門がいた。昔の・・・長門だ・・・。 「どういうことだ!?」 「テスト用が失敗という結果になった。そのため元のデータにより復元された私がいる。」 そうか・・・長門は無事だったのか・・・。 「貴方のために・・・もう少し笑えるようにする。」 そう言った長門は薄く微笑を浮かべていた・・・。その笑い顔にはハイテンションな長門の名残があった ように思える。 あんなハイテンションな長門もよかったかな・・・。 ---fin---
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<side n> 「ごめんなさい・・あのぉ、、、今は 大切に想ってる人がおるから、、うん・・ ごめんなさい。。。」 「いえ、いいんです。わかってますから」 「…」 「・・・やっぱ、あ〜ちゃん先輩です、、か?」 「えっ?」 「いえっ、すみません。余計な詮索ですよね。 ありがとうございました。ちゃんと答えてくれて。 先輩が卒業するまでに、キモチにけじめつけたかったんです」 そう言って、目の前の女の子は、 目を真っ赤にして、ぺこりと頭を下げ のっちの前から、走り去った。 はぁ・・ 大きなため息が一つ。 真っ白な息とともに消えていく。 最近、こんなのばっかだな・・ いったい、こんなのっちのどこがいいんだか? ほんま、ナゾだわ… −あ〜ちゃん先輩です、か?− さっきのコトバを思い出して、苦笑い。 そんなにわかりやすかったんだな、、、 ま、そっかも、ね。 ヒューっと 冷たい風が、通り抜ける。 思わず、身がすくみ、視線が足元に落ちる。 いかん、いかん。 ぐっと、天を仰ぐ。 夕暮れの空は、セツナイほどきれいだった。 あ。 ふと、教室の人影に視線が移る。 ゆかちゃん、だ。 夕日が反射して、はっきりと表情はよみとれない けど ヒラヒラと手を振っている、その姿は きっと、やわらかな笑顔だね。 −お・つ・か・れ・さ・ま 聞き取れはしなかったけど 唇の動きで、そう言ってるような気がした。 今の、見られてたんだろ、、、な。 ヒラヒラと、手を振り返す。 彼女の、長い指が 下向きに指差す。 下りてくから、待ってて、、、てことだろう。 親指と人差し指をくっつけ、OKサインを送った。 <side k> 別に、覗き見なんて そんな趣味の悪いことするつもりなかったんだけど。 一緒に帰ろうっかなぁ そう思って、のっちを探してただけ。 すると、ふと、窓の下、中庭。 のっちと見たことない女の子の姿。 上からじゃ、表情までは見えんけど ぺこりと頭を下げるのっちの眉が この上もなく、ハの字になってるであろうことは 容易に想像できた。 女の子が立ち去った。 先週は同級生の男の子だったっ、、、け? 卒業間近。 みんな、のっちのあの 大きな瞳にうつろうと必死なんだ。 こんな光景を目にしたのは、 もちろん初めてではない。 きっと、ゆかが知らないとこでも・・・ 初めの頃は、、茶化して笑い飛ばせたのに。 最近は、ただただ苦しくなるだけ、だ。 そう、自分の ホントのキモチに気付いてしまって、からは。 空を仰いだ、のっちと目が合う。 できる限りの笑顔で手を振る。 うまく笑えてるだろう、か? −おつかれさま・・・ そう呟く。。。ゆかが、言うことでもないんだけど・・ いいや、きっと、のっちには聞こえない。 手を振り返してくれた、のっち。 たまらなく愛しくて、すぐにでも抱きしめたい。 なんて 叶いもしない願い、だね。 −下りてくから、待ってて。 そう合図して、すっと 教室をあとにする。 一歩一歩、階段を駆け下りていく。 少しずつ、切り替えていくキモチ。 吐き出す、白い息。 その一つ一つに、決して 届けることのできない想いをのせていく。 自分の中にとどめておくには 苦しすぎるから・・ 白い息と一緒に この空気に溶けて、消えてしまえばいい。 <side n> 下駄箱で、しばらく待ってると ゆかちゃんがやってきた。 「おまたせ」 「うぅん、てか、そんな急がんでもいいのに」 少し息の上がった姿をみて、自然と笑みがこぼれるのがわかった。 落ちていたキモチが、すっと軽くなる。 寒さのせいか、紅くなってる頬。そして、鼻のあたま。 自然とのびる指先。 ぷにっと、その頬に触れる。 「な、なにしよん!?」 「えぇ、ゆかちゃんのほっぺた超やおいw」 「やおいって・・・答えになってないし!」 ずっとずっと昔からあった姿のはずなのに いつからこんなに愛しくなったんだろ? 二人並んで歩く帰り道。 ほんとに、あと少し、あと少しなんだ。 手を伸ばせば、触れられる距離。 今より、ちょっと まだコドモだったころは、 何も考えずに、じゃれあえたのにね。 いつからなんかな。 この微妙な距離にもどかしさを感じ どうしたらいいのか、わからなくなって・・ それでも どうにかして、もっともっと 近づきたいと思うようになったのは・・ 二人の間を吹き抜ける、冷たい風。 この距離を埋められたら、 少しはあったかくなれるのかな? 「相変わらず、もてもてじゃね」 ゆかちゃんのコトバで我に返る。 「もてもて、、、ていうんかね」 「もてもてじゃなかったら、 この告白ダッシュはなんなんですかね?」 相変わらず、意地悪なキミ。 「う〜ん、、、たとえモテてたとしても関係ないよ。 自分が、想ってる人に、想われんと」 そう、ゆかちゃん、、キミに。 「のっちもさ、、、ちゃんとコトバにすればいいんよ。 きっと、伝わるはず、だよ・・・」 吹き荒ぶ、風が 心臓にまで沁みて、ぎゅっと締め付けられる。 イタイ、、、イタイよ・・・ だって、それって のっちは、ゆかちゃんにとって そういう存在でないってことでしょ? 「・・・そっかなぁ… だと、、いいね・・」 そうコトバを紡ぐので精一杯だった。 見上げた夕日は 全てを燃やし尽くしちゃうんじゃないかってくらい 真っ赤だった。 この想い。 全て燃えてなくなっちゃえば 楽になれるのかな? <side k> 外にでると、想像以上に寒かった。 けど さっき、のっちに触れられた頬だけ、、、熱い。 ひっついてるわけでもないのに さっきから、心臓はありえないくらい ドキドキしてる。 すれ違う恋人同士のように 触れ合うことができたら どんなふうになってしまうんだろか? 最近のゆかは、ほんとにおかしい。 今だって、ほら 「相変わらず、もてもてじゃね」 こんな会話したいわけじゃないのに・・ ココロと裏腹なコトバばっか、溢れてくる。 「ちゃんとコトバにすればいいんよ。 きっと、伝わるはず、だよ・・・」 誰に? ほんとは、伝えて欲しくなんかない。 ゆかのものにならなくたっていい。 だから、せめて 誰のものにもならないで。。。 なんて、、ズルイんだろ。 あの子たちのように 想いを伝える勇気すらもってないくせに・・ ちゃんとコトバにできないのは、ゆかだ。 隣を歩くのっちに視線を向ける。 真っ赤な夕日を見上げたのっちの横顔は とてもキレイで・・ でも、すぐにでも消えてなくなってしまいそうな 儚い表情にも見えて・・ 思わず泣きそうになるのを ぐっと堪えた。 いかないで。 どこにもつれていかないで。 ずっと、一緒にいたいの・・ 引き止めるかのように 無意識に手が、のっちの腕に伸びる。 びっくりしたようにのっちが振り向く。 ごめん。 そう言って、手を引っ込めようと思った瞬間。 ぎゅっと、手を握られた。 戸惑うキモチと嬉しさで わけがわかんなくなった。 けど、ぎゅっと握り返した。 二人とも何も言わずに 木枯らしの中、寮までの道を歩いた。 繋がれたこの体温だけが リアルに感じられた。 夢のようにも思われた。 ねぇ、のっち。 ゆかたちは、どこに向かってるんだろね?
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*各自、自分の名前とプロフィールを記入* 例: 名前:ときメ モの助 かに座B型 プロフィール…ガチホモ ※順不同・敬称略 01アクロ トモ 蠍座B型 プロフィール…下駄箱にナマコ、水槽にタニシを 02倉澤 麗也 かに座A型 プロフィール…ネタ師&盛り上げ役で。竿師じゃありません。 03一条 支葵 やぎ座B型 プロフィール…イラスト描きが趣味の万年寝不足男。名前の読みは「シキ」 04霧島 樹 かに座A型 プロフィール…華音さん一筋! 05小麦原 ちとせ かに座A型 プロフィール…寝ちゃうんですぅ 06森 蘭丸 双子座A型 プロフィール…鳴かぬなら殺してし(r 07東原 ののみ おうし座A型 プロフィール…みんな仲良くしよう 08真神 タカヤ みずがめ座B型 プロフィール…OK俺は無実だ。 09清水 ほづき おひつじ座A型 プロフィール…とにかく痛い人 10大盛 ユッケ 蠍座AB型 プロフィール…モーオタではないがG組の学級歌には『Go Girl』を推すね。 11桐沢 静真 蟹座のO型 平凡な人生を切に願う。いじられとツッコミはもう絶えられねぇよ 12ミレイ リリア 乙女座O型 プロフィール…留学生です 13神原 夕里子 牡羊座AB型 プロフィール…食いしん坊じゃありませんですのよ。 14みけ ねこ 水瓶座O型 プロフィール…ポチです!! 15涼月彩夜 乙女座AB型 プロフィール…人見知りですけどよろしく~^^ 16鷺城 絵里子 山羊座B型 プロフィール…いつもはしゃぎ気味です^^ 17小倉 さらさ 牡羊座B型 プロフィール…ときどきメモリアル 18終月 フィン てんびん座O型 プロフィール…Janne Da Arc ファンの、ちょっとイカしたセクシーガイ(違)ふぃそじゃないYOε= \_○ノ 19黒豆 だいず みずがめ座A型 プロフィール…見た目は委員長 でもカンニングすると痛い目にあうぞ☆ 20新宮 千麻紀 さそり座AB型 プロフィール…神社の三女です~ 21小池 たかなを 天秤座A型 プロフィール…オレノーマルなんで! 22山県 凛 天秤座O型 プロフィール…突撃(突っ込み)は得意 23結城 なお おひつじ座O型 プロフィール…ボソッと言います。 24浅葉 早永未 乙女座A型 プロフィール…控えめ発言と遅いタイピング。だョ 25哀川 万里 さそり座B型 プロフィール…元気いっぱいのスポーツ少年です!バスケが大好き、だけど他のスポーツも好きだよ。よろしくね! 26鐘月 華音 さそり座A型 プロフィール・・・(*/∇\*)キャがんばりますっ 27温泉 熊猫 さそり座O型 プロフィール…「おんせん ぱんだ」です。ボーっとしてますが、どうぞよろしく。 28港 カヲル 双子座A型 プロフィール…みなさんよろしく(´∀`)ノ 29橘 弥生 いて座O型 プロフィール…絆創膏とポニーテールがトレードマークです,よろしくー 30今帰仁 嘉穂 蟹座AB型 プロフィール…「なきじん」って読みます。よろしくね~ 31小鳥遊 燕子花 双子座AB型 プロフィール…「たかなし かきつばた」おぼえれっ!んで、仲良くしてください。うはっ! 32ギルガ メッシュ みずがめ座О型 プロフィール…G組の神 33亜取 アキラ 乙女座 A型 プロフィール…「あとり あきら」少年サンデー連載中の「D-LIVE!!」のキャラから取りました。あだなの「ドゥルガ」はインドのシヴァ神の奥さんで手が8本ある怖い神様の名前だそうです。 34神山 高志 乙女座 A型 プロフィール…「かみやま たかし」少年マガジン連載中の「魁!クロマティ高校」のキャラからとりました。 35竜宮 レナ 山羊座 A型 プロフィール… 粒一溺愛の妻 36霜月 戒 天秤座 O型 プロフィール… G組モテナイ男代表_| ̄|○ 37白銀 武 やぎ座 A型 プロフィール…「しろがね たける」です^^G組のみんな!楽しくクラスを盛り上げていこー♪音ゲーが好きで、よくポップンミュージックやってます。 38夜露死苦 哀愁 ?座A型 プロフィール…ヨロシク哀愁! 39白露 秋一 乙女座 AB型 プロフィール…迷走超特急 40天城 士郎 魚座 A型 プロフィール…魔王参謀、頭がいい振りして、じつは悪いかも 41水月 孝一 天秤座 AB型 プロフィール…強制再起動でなかなかログインできません…。原因追求中…。 42宮古 れいら 山羊座 O型 プロフィール…G組出前担当中華娘です(ノ´∀`*) 43小鳥遊 千夏 射手座 B型 プロフィール…小さなシアワセぶち壊し、他人の不幸は蜜の味。カップルブレイカー千夏ここに推参! 44高橋 克実 天秤座 A型 プロフィール…無駄知識とF1,車の知識の探求者、高橋克実です。地味キャラですがよろしくお願いします。 45大森 だす子 かに座 AB型 プロフィール…親切な方ばかりで楽しいクラスです、タイプ遅いけどよろしくお願いいたします。 46相原 夏海 みずがめ座 AB型 プロフィール…常に冷静にみなにやさしさを振りまきたいです 47火原 和樹 いて座 A型 プロフィール…みんな、よろしくね! 48森 沙織 しし座 A型 プロフィール…声かけてやってね☆ 49桜井 津軽 おとめ座 AB型 プロフィール…家庭科以外はわかりません。 50舞鶴 巧 おとめ座 B型 プロフィール…オレのポジションって、何か決まった感じ?wどうも今いち吹っ切れないんだが・・・ 51双月 コウ おとめ座 B型 プロフィール…リアル学校並みに楽しんでます。影は薄いですがよろしく! 52魔王 王子 てんびん座 AB型 プロフィール…魔王です。腰が低いので仲良くして下さい。(※誕生日はフェイクです 53長月 凛 乙女座 B型 プロフィール…G組バカ代表。目指すは姉御 54霞 拳志郎 双子座 O型 プロフィール…北斗神拳第六十二代伝承者(のつもり) あたァ!!よろしく!! 55森崎 莉子 みずがめ座 O型 プロフィール…文系志望。屋上でぼんやり歌っています。 56池丸 大王 おとめ座 B型 プロフィール…フラッといなくなるときは、待ち人を捜しに行ってます♪ もしくは修行ですw 57渚 りお さそり座 A型 プロフィール…自称眼鏡推進委員会、委員長。 58アルザ ロウ しし座 B型 プロフィール…姓がロウで名がアルザですwよろろー 59鳴風 みなも かに座 A型 プロフィール…この想いハーモニカの音色に乗せて届けてせます。みなさん、よろしくお願いしますね 60愛咲 ルイ かに座 A型 プロフィール…アイドルスターです。代表曲は♡$☆!! 61聖皇院 鈴乃 いて座 A型 プロフィール…G組のお嬢『せいおういん すずの』、、真打は最後に登場ですわ・・うふふ みなさん、よろしくですわねw 62渋谷 ゆうひ おとめ座 B型 プロフィール…渋谷から接続「しぶやゆうひ」です!主にお昼から夕方ごろアクセスしてます。よろしく☆ 63綾河 深月 山羊座 AB型 プロフィール…夜出没する黒水晶を味方につける人です。石化にも注意w[[@wikiへ http //kam.jp" META HTTP-EQUIV="Refresh" CONTENT="0; URL=http //esthe.pink.sh/r/]]
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ワードサラダ 詩 コンバイン 噴き上がる程に熱せられた奸物が堰を切ったように 八ッ場ダムを怒涛の羊が赤裸々に放免されかかったようにも 見えなくもなかった潜在写真の暗黒のシャチホコを レバ刺しと織り成した百代のさざ波のブブゼラのグラインダーの右側部分の 戦場のピアニストの蝶番のペテン師の包茎手術の領収書の切れ端の寄せ集めの 肥溜めの盲目の断崖の切り立った絶壁が降り立った風貌は祝福のコンバイン ヤンマーニ そうその時は鄭重に取り除かれた泡沫同士のデートを妨害した美人 過ぎる蟹漁師の融通無碍なる生き様をしらんぷりし兼ねない我々人類の 学習態度におけるのらりくらりとした清廉さのようなものが雪崩を打って たらちねの若旦那衆の餌食となるや否やという時こそすでに拒まれた ヤンマーニがそそくさとした立ち振る舞いに付け込んでもいいか悪いかというと そんなにどうでもいいものでもない様な気がすると述べる弱冠49最の パートタイマーに御礼申し上げると共に手ぐすねを引きながら千載一遇のチャンスを ふいにしようと目論むほくそ笑み太郎のほくろと臍の黒さはももいろクローバー では言い表せないと信じられている一種のコマドリのおしっこの芳香 星屑のロンリネス 悪名高いイワンコフって一体誰なんですかと聞く前にやることが山積している筈の 森口くん家の屑籠に散りばめられた星屑のロンリネスがっちょんがっちょんという ギャグは不発に終わることなく一生一緒にいてくれなどと申した気がするが断った スンスス 寂寞が落とした一つの影が瞬く間に備長炭を揺るがしその結果温室効果ガスの削減に 繋がるみたいなおじさんの妄言をうつらうつらと書き留めたるはシェラハザードじゃなくて フンムッムムムと言ってしまいそうな良く考えたら回ってしまいそうな地球儀を満遍なく こすり付けたのちに訪れる一抹の寂寥とさっき言った寂寞がせめぎ合いながら昇天 しそうになる瞬間のVTRは残念ながらお出し出来ませんとそう言い残してしょっぴかれた しょっぱいしょっつる焼きそばのウヌヌンガのヌラヌラのチンチロのペンパラのでっかい象の 脚の爪の細部の至る所に時折見られる感動的な保安官を警抜なスンススに明文化運動 みずたまりの透明度 繁華街の裏路地にひっそりとしたたたずまいでたたずむこちらの男性に 焼け焦げるような熱い視線を送るあなたの友達の借金の督促を電話越しに 迫るババアの鼻の穴に吸い込まれた大気の100年前の位置の不確定さを 無理やりこじつけるオカルト研究家の眉間に刻まれた深い溝の模倣の卑しさ を糾弾する陣営とその反対側の陣営の間の軋轢の瑣末さに辟易するようにも 見えるクロアリの天敵のシロアリの天敵ではないサザエの名にちなんだキャラクター の上空に見える雲の絵が何枚も立てかけられた竹やぶの向こう側で呻いている 彼女の心の底のわだかまりのふきだまりのみずたまりの透明度 ナナナ 触られたおしりのこれまでにない柔らかさと言えばお分かりになるような 阿吽の呼吸を台無しにした貴様ら五所川原の言い訳を覚えていないなどと 先輩の中枢のグリコーゲンのヒロポンのペトラルカのサピエンスの宮中の どんでん返しの本田さんカッケーのゴールドソーサーのヘテロセクシュアルの エピステーメーのミシェルフーコーの河童の川流れのえさ槍の土留め色の ゲテ物のバケ物のバケーションの廓のテラスの反吐のうるち米の孔雀の 空洞の向こうのフェンスの穴の下の土の硬さの強さのフフュフュフュフの ポポポのデデデの鬼太郎のナナナーーーーナナナーーーーの長久命の養命酒の ペールギュントのサッカレーのサッカーのカレーのサッチャーのピッチャーのあ 否定 お前が殺した軍勢の怨念が一丸となって押し寄せてくるよさあ始めよう夢の中から 内側を破るようにして外に出るフリをしていっぱい気持ちよくなって自制したり挫折したり 永遠に思える時の中をグルグル徘徊するつもりで本気で疲れないように機械の力を借りよう マッサージ機も全自動皿洗い機もみんな手伝ってくれると口約束しかしてくれなくても 疑わずに信じろ先週言われたように何度も何度も同じ過ちを繰り返して列車に乗ってという ことではなくてそうではないということがそもそも違うくて何が違うのか分からないというわけでもなくて とにかく何でもかんでも否定すればいいかというとそういう訳でもないというのが最早何でも 否定してるのと何ら変わりはなくてだから牛頭馬頭とはいえ一念発起して何らかの衣類を イピピライ 飛翔する味噌汁の具財たちをその胸に旅立つ日が永遠の別れとなる契約の不履行の 未来の光の明日の希望の手紙の襖の向こう側のざわめきの高鳴りの聞こえない音楽の 決して見えない光芒の満ちる宇宙の裏側の汚さの反動の空爆の戦車の存続の惑溺の巨人の否の 否の否の否の愚の愚の緞帳の桟敷の片棒の無辜の田楽の寸胴の網膜の限界の否の 否の否の否のふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁののいぴぴpらい 小さな衒学者 舞い降りたアェオロスの挫かれたアキレス腱と輝きを放つエクスカリバーの切っ先を 向けるその先はケンタウルス座より7時の方角を暗示するかのような滅却を厭わない 小さな衒学者の偽らぬ年賀状の行方は滅びの下駄箱ともつかぬオンボロが行き交う その上に再びあふれ出すゲボのせつなくて甘いごとしは本堂の奥深くに封印されし泌尿器 亡霊たちの誕生日 粉々に砕かれた尾てい骨の悲しみを啄ばんだ鳥たちの鳴き声の共鳴が アウアウアーというようにそれはまるで泣き叫ぶ民衆のあらぶりと一体化 しつつケバブを食したらさぞかし美味だろうなんていう甘っちょろい希望的 観測の墓場に掘り込んでみても何も変わらないと嘆く亡霊たちの誕生日を 誰も覚えちゃいないと嘯く彼の右手首には珍しい漬物を創った痕跡がほの見える 托鉢僧の一生 行く先々で神妙なる面持ちのおモチを配り歩く托鉢僧の一生を振り返ると面白いことに 一度も大きな病を申告し忘れないという事実が判明するとともに益々のご健勝をお祈り する神経の太さを鑑みずにじたばたともがいても無駄ですよと言わんばかりのヒゲ面を これでもかと仰りながら迫りくる度量は11年前のパーティーのときに絨毯に落とした豚肉 分娩台 分娩台に因んだ五角形の不思議な蟯虫を手の平に乗せて物思いに耽る君がいつもしている 超光速度の発声練習に聞く耳を持たない奴らの爪の垢の馬の骨の金魚のフンの精神を忘れずに つまりは忘れるということはあれだからそして浸食されたマネマネのHPの寂しさを競って補うように 押し合いへし合いするモンゴロイドのペーターカルソン君は12歳の時に連立方程式をお蔵入りさせた 実績の持ち主を殴った罪で懲役30年の実刑判決をチラつかせられたことで心に深い傷を負いしかも 脳神経の飛び出た形が芸術的だとして万国博覧会の招待状を配る権利のズロースのソテーの マリネッティの何が何だか分からなくなったと言うLのその瞳の黒さを裏付ける研究成果が今にも ネイチャーに載らんとするその時こそ君が50年の眠りから目覚める瞬間 ギャグ漫画日和のエピゴーネン 凍てつく手の凍える肩の凍りつく瞳の輝く世界の惑わす怪物に願う星辰の 焦げ付く肌のいざなう龍の神の掟の裏切る歩哨の哀しきレベルの損なう天球の 軌道の血の絆の表情の美しさの底引き網のギャグ漫画日和のエピゴーネン