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9話:一方通行な想い 廃墟と化したラブホテルを住処にする野良の妖犬。 彼、ドーグラスは自由気ままな野良生活を送っていた。 それがある日、彼の人生に大きな潤いがもたらされる事になる。 「ドーグラスさん、お願いがあります、私を犯して下さい」 「……は?」 それは、廃墟探検が好きだと言う、中学生の少女からの突然の願いだった。 彼女はドーグラスと知り合いたまに食糧を持ってきてくれるなどそれなりに親しい仲になったとは、 ドーグラス自身も思ってはいたがまさかこんな願いをされるとは。 そしてドーグラスは少女の願いに、答えた。 普段滅多に交尾も出来ないのにわざわざ女の方から願われているのだから断る理由など無い。 「ああ! あああ~! 犬のおち***が奥まで来てるよぉ!」 「締まりが最高だぜ! ウウッ、クウウッ気持ち良いぞォ! もっと締めろや!」 「あひぃ! 締めます! 締めますぅ! ああああ!」 ドーグラスは中学生の割に発育の良い身体をした少女を心ゆくまで味わった。 そしてその日からドーグラスと少女はより親密な仲になった。 ◆ 「ふぃー」 廃集落の廃屋の壁に小水を掛けながら白い毛皮の妖犬、ドーグラスは一息つく。 「出た出た……さてと、凛花捜すか……あいつこの殺し合い生き残れないかもしれんけど」 片桐凛花――――廃墟探索を趣味とする中学生の美少女でありドーグラスの性欲処理相手。 彼女がこの殺し合いに呼ばれていると知った時からドーグラスは凛花を捜し出すと決めていた。 彼女の事が大切と言うよりも、折角手に入れた性欲処理要員を失いたく無かったと言うのが大きい。 「あいつは俺の大事な性処理道具だからなー。 食べ物持ってきてくれたりするしおまけに最近知ったがあいつすげぇ金持ちの家の娘らしーじゃねぇか。 お嬢様を性的に独り占めなんて俺はツイてるなぁ。 よーし、さっさとあいつを捜し出して死ぬまで犯してやろう! どうせ生きて帰れる訳ねーしwww」 そしてドーグラスはこの殺し合いからの生還を諦めていた。 首には爆弾付きの首輪がはめられ無理に外そうとしたり逃げようとすれば、 開催式の時に首輪を誤って爆破されて殺された許田拓斗のようになる。 首輪をどうにか出来るような人物が都合良くいるとも思えない。 以上の事から、ドーグラスは片桐凛花を捜し出したら命ある限り凌辱しようと決めていたのだった。 「凛花はどこにいるのかなーっと」 ダダダダダッ!! 「うおお!」 突然、ドーグラスの足元辺りに銃弾が複数撃ち込まれる。 幸いにもドーグラスに当たる事は無かったが。 「何だよ!? ……ああ? あいつ……」 自分を銃撃したと思われる人物を見付け、ドーグラスは驚く。彼はその人物を知っていた。 「見付けたぞ……ドーグラスぅ!」 「お前、凛花のクラスメイトの」 「気安く彼女の名前を呼ぶなぁ!!」 ダダダダダダッ!! 「ぬおお! 危ねぇだろ!」 「畜生、上手く避けやがって……!」 ドーグラスに向けデジニトクマッシSR-2短機関銃を乱射する中学生風の少年。 彼が目の前の妖犬を見るその目には殺意が滲んでいた。 「俺を殺そうってか、んな事したって凛花はおめぇのモンにはならねーよ、平田洋明君よォ!」 「うるさいうるさい! お前のせいで、彼女は変わってしまったんだ!」 少年、平田洋明はドーグラスが弄んでいる片桐凛花のクラスメイトで、 凛花に片想いをしていた。最近では凛花に対しストーカー行為を働き、 そして彼は目撃してしまった、凛花が廃墟で野良犬と性交しているのを。 学校では清楚で可憐な雰囲気を漂わせていた凛花が、 廃墟で野良犬の赤黒いそれを股に咥え込んでよがり狂い、身体中に精液を掛けられ嬉しそうにしている様子など、 洋明には到底受け入れ難いものだった。 だから彼は現実を認めなかった。自分の都合の良いように解釈してしまう。 「お前が片桐さんを無理矢理犯したんだろう……お前が片桐さんを淫らにしたんだろう! そうだ、そうに決まっている、片桐さんが自分から喜んであんな事する訳が無いじゃないか……」 悲しげな声でそう言う洋明を、ドーグラスは憐れむような表情を浮かべながら言った。 「はぁ、お前、凛花の奴を美化し過ぎじゃね? あいつはお前が思ってるような清楚な女じゃ」 「うるさいって言ってるだろぉおお!! 糞犬がぁああ!!」 ダダダダダダダッ!! 洋明が吼え、ドーグラスに向けSR-2を乱射する。 しかし本人が銃に不慣れなせいとしっかり照準を定めていないせいもあって、 銃弾はドーグラスに掠りもしなかった。 「何で当たらないんだ!!」 「ちゃんと狙えやストーカー野郎! じゃあな! いつまでも付き合ってられないんだよ!」 「ま、待てっ……くそっ、弾が切れた!!」 逃げ去るドーグラスに向けて再びSR-2を掃射しようとした洋明だったが、 弾が切れ発砲する事が出来なかった。 予備の弾倉に替えている間にドーグラスを見失ってしまった。 悔しがって、近くに放置されていた廃車のドアに蹴りを入れる洋明。 「あの糞犬め! 馬鹿にしやがって……! はぁ、はぁ……今度会ったら、今度こそ殺して、 あの汚いチ*コを切り取って、燃やしてやる! ……片桐さん、貴方は僕が生き残らせます、 僕が、あの汚い野良犬から解き放ってあげますから」 そう言う洋明の目にはかなりの狂気が宿っていた。 とても想い人のために、と言うような様子には見えない。 彼はもう誰にも止められないであろう、もしかしたら彼が一方的に想っている少女さえも。 ◆ 「チッ、あのストーカー野郎、マジで俺を殺そうとしやがった……」 廃集落は規模が大きく、平田洋明からそれなりに離れたはずだがドーグラスはまだ廃集落内だった。 遺留物もほとんどないがらんどうの廃屋の中で息を潜める。 平田洋明については凛花本人から話を聞かされていた。 「最近ストーキングされている」と。 洋明の想いも虚しく当の凛花からは「ストーカー」としか認識されていない。 その事も知らず――知る由も無い洋明はドーグラスを殺して凛花を救うなどとほざいた。 滑稽過ぎるな、とドーグラスは笑みを浮かべる。 「あそこで殺しときゃよかったかなあいつ、あれだと凛花まで殺しそうだが。 ……まあ良いか、あんな奴勝手に自滅すんだろ……」 出来ればもう平田洋明とは会いたくない、関わりたくないとドーグラスは心から願った。 【早朝/C-2廃集落】 【ドーグラス】 [状態]健康 [装備]??? [持物]基本支給品一式、???(1~2) [思考・行動] 0:片桐凛花を捜し出し死ぬまで弄ぶ。 1:殺し合いに乗る気も抗う気も無いが襲われたらそれなりの対処はする。 2:平田洋明にはもう会いたくない。 [備考] ※平田洋明から離れた場所にいます。 【平田洋明】 [状態]健康 [装備]デジニトクマッシSR-2(20/20) [持物]基本支給品一式、デジニトクマッシSR-2の弾倉(4) [思考・行動] 0:片桐さんを優勝させ、自分は自害する。 1:ドーグラスを殺したい。 [備考] ※特に無し。 ≪キャラ紹介≫ 【ドーグラス】 35歳の妖犬の雄。白い毛皮だがボサボサで汚れ、痩せ気味。 気ままな野良生活を送っており廃墟のラブホテルを住処にしているが、最近、 近所の中学に通う少女と親密になっている。ドーグラス自身は少女を性欲処理相手としか考えていない、 訳ではないかもしれない。過去にオスケモ好きの変態男に捕まり尻穴調教され尻が敏感。 【平田洋明】 ひらた・ひろあき 14歳の中学二年の少年。大人しく特に目立った特徴の無い普通の中学生。 同じクラスの美少女・片桐凛花に想いを寄せストーカー行為を働いてしまっていたが、ある日、 凛花が廃墟で野良犬とまぐわっているのを目撃し思い詰めるようになってしまう。 凛花本人からは単なるストーカーとしか思われていない事に彼はまだ気付いていない。 名前の元ネタは声優の平田広明。取り敢えず本人にごめんなさい。 ≪支給品紹介≫ 【デジニトクマッシSR-2】 平田洋明に支給。予備弾倉5個とセット。 1999年にロシアで開発された小型短機関銃。 ボディアーマーを着用したテロリストなどを相手とすることを想定し高い貫通力を持つ弾薬を使用する。 ロシア国内の法執行機関にて使用されているらしい。 前:エンカウンター 次:アミューズメントパーク動乱 ゲーム開始 ドーグラス 次:You took the best parts of my life ゲーム開始 平田洋明 次:全ては君を”救う”ために
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絶対的一方通行 ~ Unreachable Message 原曲 夜が降りてくる ~ Evening Star/ネクロファンタジア Vocal めらみぽっぷ Lyric RD-sounds 概要 廻の絶対的一方通行を改めた、似て非なる曲。 考察 この曲は、概要で説明した絶対的一方通行をリメイクしたものなのだが、一部歌詞が変わっている所がある (歌詞の変わっている部分のみ記載) 廻版 そうして、大人しく、何も知らずに、ただ夜に怯えていなさい… あまりにも絶対的な"とおりゃんせ"に背を向けよ。 どうか赦して欲しいと 置き去りにした貴女の姿に今乞うけれども 通れば取り返しはつかない …私の様に。 改版 そうして、大人しく、何も知らずに、ただ夜に怯えていれば、よかったのに… あまりにも絶対的な"とおりゃんせ"に背を向けず どうか赦して欲しいと 置き去りにした貴女の姿に乞うこともできずに 通れば取り返しはつかない …『私』も、もはや。 歌詞考察 変わったところはメリーが紫に変わったからか? これによって「メリー=紫」説が濃厚になった? →メリー=紫だとして、絶対的一方通行→rebellion -たいせつなもののために-→この曲、と捉えることもできる。 『絶対的一方通行』での警告もむなしく、メリーを探して自らも幻想郷に足を踏み入れてしまった蓮子のことを、紫となったメリーが嘆いているのかもしれない。 題名の訳は「届けられないメッセージ」 オリジナル版との違いとして、最後の部分にプレイヤーズスコアが流れる。 小ネタ コメント欄 題の訳はたぶん→http //www.rd-sounds.com/C84_a.html のトラックリストのリンクつながってる下線部では? -- 名無し (2017-12-26 17 21 51) このリンク先は知りませんでした。どうもです! -- SIDE (2017-12-26 18 38 59) 廻の「余りにも絶対的な通りゃんせに背を向けよ」が改では「余りにも絶対的な通りゃんせに背を向けず」になってた筈ですよ -- 名無しさん (2018-01-05 08 40 46) プレイヤーズスコア、原曲でいつ流れる曲かと言うとゲームオーバー時なんですよね… -- 名無しさん (2018-07-14 05 38 55) なんとなく廻と聞き分けてみたが結構違っているんだな。どうしようもないほど~幻想に塗れているのだとらへんからめっちゃ変わってた -- 名無しさん (2018-07-19 14 55 07) ↑リズムが -- 名無しさん (2018-07-19 14 55 44) 名前 コメント
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▽タグ一覧 とあるシリーズ セロリ ロリコン 悪役 白髪 音MAD素材 ニコニコで【一方通行(アクセラレータ)】タグを検索する 概要 とあるシリーズの登場人物。 7人のレベル5の第一位に君臨する学園都市最強の能力者。 体表面に触れたあらゆる力の向き(ベクトル)を操る能力を持つ。 顔芸や「ッエーイ☆」などの奇声が多いため音MADが多く「クソヤロイド」タグがつけられることが多い 打ち止め(ラストオーダー)関連でロリコン扱いも多い。一方通報(アクセロリータ) 結標淡希の顔を殴るシーンがドラムに使われることが多い。あわきんドラム
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前ページとある使い魔の一方通行 ―――――虚無の日・夕暮れ 「ねぇ、ダーリン?この剣、素晴らしいと思いませんこと?」 キュルケが一方通行に剣を見せる。 「ゼロのルイズなんかには勿体ないものですけれど。貴方なら、きっとこの素晴らしさがわかると思うの」 ちらり、とルイズを一瞥するのを忘れないキュルケ。 「キュルケ!人の使い魔に勝手に物を与えないで!」 目を怒らせ、ルイズがキュルケに詰め寄る。 (うるせぇなァ…しかもまた物扱いかよ) 「あらルイズ。女の嫉妬は見苦しいわよ」 「だ、誰が嫉妬なんかするのよ!」 「違うの?貴方がとても買えないような品を私がプレゼントするものだから、嫉妬しているんじゃなくて?」 「アクセラレータ!」 ルイズが一方通行に怒鳴る。 なまじ、剣の価値がわかってしまっただけに、ルイズはキュルケに強く言えないようだ。 「だからうるせぇってンだろ?俺ァ武器なンざ無ェ方が強いンだよ。このナイフがあれば十分だっての」 パァッとルイズの顔が輝いた。 「ふ、ふんっ。わかってるじゃない」 それとは対照的に、キュルケの顔が曇る。 「ダーリン…」 キュルケの顔を見ると心が少し痛んだ。 あの剣がいくらしたかは聞いているので、それが無駄になったとなればさすがにきついだろう (…ったく、俺ァボケたか?ってか、良心なンて物があること自体、らしくねェ) 「誰もいらない何て言ってねェだろ」 「「えっ?」」 ルイズとキュルケの声が重なった。 今度はみるみるキュルケの顔が輝き、ルイズの顔が赤くなっていく。 「ンな高い物買わせて、いらねェなんて言わねェよ。ありがたく貰っとく。」 「ダーリン…やっぱり、本当は優しいのね…」 「言っとくが、何も返せねェからな」 一方通行の腕に腕を絡ませ(さすがに反射は切る)喜ぶキュルケ。 「な、な、な…何してんのよキュルケ!」 「あらぁ、誰かと思ったらルイズ。まだいたの?」 プルプル体が震えだしたルイズ。 「あ、アクセラレータ。あんた、私の使い魔よね。何勝手にしてんの」 面倒くせぇ、と思いながらもちゃんと反応をする一方通行。 (らしくねぇよなぁ) さっきからずっとそんなことばかり考えている。 これが平和ボケというやつだろうか。 だが、元に戻ろうとは思わなかった。 この、生ぬるい温度が気持ち良かった。 そんな事を考えている間に 「「決闘よ!!!」」 そんな声が聞こえてきた。 「あァ?何やってンだお前ェら」 「良いの、ルイズ?お互いに使っていいのは魔法だけ。貴方、絶対に、確実に、100%勝てないわよ?」 「う、うるさいうるさい!そんなことやってみなくちゃ分からないでしょ!」 「はぁ…ま、良いわ。適当な所でやめてあげるから」 「私を侮辱する気!?」 (決闘っても、ただの痴話喧嘩か) 見ると、タバサは何も起きていないように本を読んでいる。 適当に、放っておくことにする。 ―――――ルイズが呪文を唱えた。 対して、キュルケは杖を下におろしたまま動かそうとしない。 ルイズの呪文が完成。杖を振り下ろす。 ―――ズドンッ 大きな爆発、大きな音。 明らかにドットクラスの魔法すら使えないルイズが使えるものでは無い。 トライアングルクラスの自分ですら、あのクラスの爆発を起こすには相当の力を必要とするだろう。 それを、2秒とかからず起こせるのだ。あれは一種の才能だと思う。 当たれば、自分だって一溜まりもないかもしれない。 …が。 爆発は、キュルケの大きく背後。 学院の壁を直撃し、破壊していた。 ―――――遡ること数分。 巷を騒がしている盗賊、「土くれのフーケ」。 貴族や金持ちの家のみに忍び込み、厳重な警備を嘲笑うかのような手口で、秘宝を盗み出す盗賊。 それにかけられた懸賞金はウナギ登りに上がっている。 しかし、未だつかまらないどころか、年齢・性別すら分かっていない。 その、「土くれのフーケ」が今。 学園の宝物庫。その外の壁の前に立っていた。 「ったく、どうしたもんかね」 愚痴を吐いては、いくつかの呪文を唱え、失敗する。 おそらくスクウェアクラスの固定化が掛けられているのだろう。 トライアングルクラスの自分の力では、これは錬金出来そうにない。 「いっそのこと、ゴーレムで力任せに…」 考えた瞬間にすでに口から呪文が流れていた。 数瞬の間に呪文は完成し、地面から巨大なゴーレムが現れた。 「さぁて、いっちょぶちかますわよ!」 ―――ズドンッ! 「なッ!?」 轟音。 今のは何の音だ?ゴーレムが殴ったのか。違う。 もしかして、学園の誰かに見つかって攻撃を受けたのだろうか。 にしては、ゴーレムに損傷は全くない。あわてて周囲を見回す。 そこには、 淡いピンク色の髪をした少女と、燃えるような赤い髪の少女が、杖を握って対峙していた。 (どうやら、あの二人の仕業らしいね…) だが、自分にまだ気づいた様子は無いようだ。 そして何より。 爆発によって、宝物庫の壁に穴があいていた。 「ふふ、ラッキー♪」 このままいけば、見つからずに目的のものを運べそうだ。 ―――5分後。 宝物庫の中では、ひとつの秘宝と一枚の紙が入れ替わるように置きかえられていた。 紙には、ただ一言こう書かれていた。 [破壊の杖、確かに領収しました 土くれのフーケ] ―――――翌朝、学院長室にルイズ・一方通行・キュルケ・タバサの4人が呼ばれていた。 あの後、巨大な地響きのような音に気づいた4人。 あわててそこへ向かうと、巨大なゴーレムと、その方に乗っている高笑いをする人間のようなシルエットを発見した。 その事件の目撃者として、4人は呼び出されたのだ。 「ほむ…なるほど、つまり…」 「フーケを追う手がかりは無し、といことですかな」 オールド・オスマンの言葉に、教師の一人・コルベールが続けて言った。 鬚をなでながら、オールド・オスマンは気づいたように言う。 「そういえば、ミス・ロングビルが見当たらんのう」 「それが、その…今朝から姿が見当たらないのです」 困惑したように、そして心配したようにコルベールが答える。 「何じゃと?あの真面目なミス・ロングビルが、今朝からいないとなると…」 「はい。もしかしたら、巻き込まれた可能性も…」 他の教師と4人を放って、真剣に話をしている2人。 そこへ、ミス・ロングビルが現れた。 「ミス・ロングビル!無事でしたか!?いや、今までどこに…」 血相を変えてコルベールが詰め寄るが、彼女はそれをかわして、落ち付いた様子で報告を開始した。 「なるほど…その小屋にフーケは隠れている可能性があるのじゃな?」 「はい。ですが、逃走中の盗賊がそんな場所に入るというのも奇妙な話です。罠である可能性も…」 「その農民が、ウソをついている可能性は?」 「完全に否定はできませんが…その可能性は低いと思われます」 「ミス・ロングビルが言うのなら、確かじゃろうて」 言うや否や、オスマンは立ち上がり 「ミス・ロングビルは非力ながらも、フーケの居場所へとつながる可能性を探し出してくれた!そちらはトライアングルクラス。名をあげるチャンスじゃ!捜索隊に志願する者はおらんか?」 力強く教師たちに聞かせた。 だが… その中の、誰ひとりとして手をあげる者はいなかった。 「おらんのか?おや、どうした!フーケを捕まえて名を上げようとするものはおらんのか!」 依然として、誰ひとりとして反応する者はいない。 その中で…顔を俯かせたまま、ルイズが杖を上げた。 ――――ざわっ ルイズの行動をみた教師が、突然ざわめき始めた。 教師の誰かが声を上げた 「ミス・ヴァリエール!あなたは生徒じゃありませんか。ここは教師に任せて…」 他の教師も頷く。 (腰抜け共が。自分達は何もしないくせに、教師としての対面だけは守ろうとするンだな) 冷めた目で見渡す一方通行。 だが。 「誰も杖を上げないじゃないですか」 ルイズは、きっと唇を強く結んで言った。唇をへの字に曲げ、真剣な顔をしたルイズが、何故だがひどく眩しく見える。 そして、その様子を見てやがてキュルケも杖を上げた。 「ふん。ヴァリエールに負けてられませんわ」 キュルケが杖を上げるのを見て、タバサも杖を上げた。 「心配」 ただ一言だけを発して。 (ハッ、自分の身も守れねェようなアマチャンが良くやンぜ) そう思いながらも、一方通行は止めようとはしなかった。 「よし、3人に任せるとしよう」 オールド・オスマン!何を… 彼女らは生徒です!行かせるべきでは… 反対の声が上がったが、 「では、諸君らが彼女らの代わりに行くかね?」 その一言で、すべてが黙った。 結局、場所を知っているミス・ロングビルと4人で捜索隊が結成された。 ―――――馬車にゆられて何時間か。 「皆さん、申し訳ありません」 突然、ミス・ロングビルが声を発した。 「どうしたんですか?」 ルイズが質問を返す。 「実は…少々迷ってしまいまして…現地の農民の方に案内してもらおうと思うのですが」 「そうですか。もとより、私たちは場所を知りません…すべてお任せしますわ。ミス・ロングビル」 キュルケも言葉を返す。 「わかりました。申し訳ありません」 そして、現地の農民であるという一人のまだ幼い少年が、その小屋の場所まで案内することになった。 ―――12くらいだろうか。 幼いその少年は、貴族の3人よりも一方通行に興味を示した。 「アクセラレータ、さん、っていうんですか?変わったお名前ですね」 「あァ」 「貴族様の使い魔をなされているんですよね?すると、僕と同じ平民ですか?」 「ンなようなモンだ」 だが、正直一方通行にとっては鬱陶しい。 純粋な子供というのは、どう扱えばいいのか分からない。 そして、その眼で自分を見られるのが嫌だった。 「俺の事ァどうでもいいだろ。ちゃんと場所まで案内してくれ。あそこのお姉さんのところへでも行ってな」 「は、はい」 そういうと、目をつぶって拒絶の意思を表す。 それから間もなく、その小屋へと到着した。 「たぶん、ここが貴方達の言っていた小屋だと思います。このあたりは人が滅多に入らないので、ここにある小屋はここだけですから」 少年が説明する。 「どうやら、ここで間違いないようですね…」 「そう、じゃ、この子はさっさと返しましょうね。このまま一緒じゃ危ないもの」 キュルケが提案する。 「まァ、それに反対するつもりは無ェが…このまま、歩いて帰らせンのか?結構な距離だと思うけどな」 一方通行の指摘に、少年が焦る。 「い、いえ、このくらいの距離歩くのは慣れてますから。貴族様のご迷惑になるようなことはいたしません!」 「いいえ、私たちの都合で無理やり来てもらったんだもの。帰りくらいはちゃんと送るわ」 ルイズ言い、結局馬車で待機、ということになった。 「さて、ンじゃ俺ァあの小屋を調べてくる」 「え!?」 言うや否や、一方通行はすたすたと小屋へ歩いて行った。 (実際、こいつらと一緒にいるよりも一人のが安全だからなァ) 全く警戒せずドアを開くと、一通り罠がないか調べて… 「罠とかは特に無いみたいだな」 と、みんなに知らせた。 全員が小屋に入り、何か手掛かりがないかと調べていると… 「みなさん!これは…」 ミス・ロングビルが声を上げた。 そこには。 「これは…破壊の杖!」 フーケに盗まれた、破壊の杖がしまわれていた。 「なんか、あっけなかったわね~」 キュルケが叫んだ。 「…何も無い方が良い」 「それもそうね」 タバサが応え、それにキュルケが応えた。 ミス・ロングビルがそれを持って小屋の外へ出た。 他に手がかりになるものが無いか、軽く調べなおす。 その時、小屋の外で見張りをしていたルイズから悲鳴が上がった。 「キャアアアア」 「ルイズ!」 勢いよく一方通行が飛び出した。 その先にはミス・ロングビルから破壊の杖を奪い取ろうとしている巨大なゴーレムと、その肩に乗っているフーケが居た。 「―――ッのやろォッ!」 暴風を操作し、ミス・ロングビルとルイズ、そして少年と破壊の杖を数m離れたところへ吹き飛ばす。 同時に周囲の砂を巻き上げ、肩に乗っているフーケらしき影へと飛す。 「逃げろ!ルイズ!」 視界を遮られたフーケ。 すぐにキュルケとタバサがやってきて、呪文を唱え始める。 だが、同時にゴーレムを反転させ、逃走した。 (逃がすかよォ!) 「お前ェらはそこで破壊の杖を守ってろ!動くンじゃねェぞ!」 返事を聞かずに飛び出し、普通の人間にはとても出せないような速度でゴーレムの追跡を開始する。 いくら歩幅が大きくとも、ゴーレムは大した速度は出せない。 時間にして5分程度。一方通行はフーケに追いついた。 「手間ァとらせやがって。とっとと終わらせて戻らせて貰うぜ」 あくまで余裕の態度を崩さない一方通行。 (っても、あの質量じゃ風で吹き飛ばせねェしなァ) どうしたものか、と考える。 ふと、脳裏にあのクローンのオリジナルの姿が思い浮かんだ。 (まァ、試してみるのも悪くは無ェか) 思い、その辺に落ちている石ころに手を伸ばす。 「なァ。今、ここにどれだけの速度があるか。知ってるか?」 ――――フーケは何も答えない。 「一重に速度といっても、それには自転・公転・遠心力・重力など様々な力がかかっています。さて、問題です」 10cm程度の石ころを持ち上げる。 「これらのすべてのベクトルが、一点に集中したら。どうなるでしょうか」 ベクトル変換。 それは、彼の肌に触れている全てのベクトルを自由に変えることができる力。 その力により、慣性のベクトルを180度変更さてた石ころ。 ―――――轟ッッ!!! 重さ100g程度の小石が、音速をはるかに超える速度を生み出し。 そのエネルギーは、土くれのゴーレムをた易く射抜き。 その風は、周囲の森の木々をなぎ倒した。 嵐が過ぎ去った跡地には、見るも無残な森だったものが残されていた。 そこには、フーケの姿などもちろん存在しない。 「あァ…ちっとばかし、やりすぎたかな?」 どうでもいいように軽口を叩いて、元来た道を歩き始めた。 ―――瞬間 「グァッ!?」 全身に、激しい痛みが走った。 (なっ…一体!?) 痛みの正体を探るため、思いを巡らせ 「く…ルイズかっ!」 元の道を凄まじい速度で走りだした。 ―――追跡を開始した直後 「み、みなさん!彼を追わなくてもいいのですか!相手はあのフーケなんですよ!」 ミス・ロングビルが慌てて言う。 「大丈夫じゃない?ダーリンは強いし、やられるようなヘマしないわ」 「安心」 2人は事も無げに言う。 「いくら強いと言っても、彼は平民ですよ!貴族を手玉に取るような相手に…」 ―――瞬間、音が消えた。 数瞬遅れて、轟ッっと凄まじい音があふれる。 鳥が一斉に羽ばたき、風の塊が頬を撫でた。 「ひゃっ」 少年がおびえたように体を竦ませる。 「終わったみたいね。いつも思うんだけど、一体どんな力を持っているのかしら」 「先住?」 「ルイズ、あんた本当に何も知らないの?」 ふ、とキュルケがルイズを見やる。 「し、知らないものは知らないわよ…自分の事何も話さないし…あいつ…ブツブツ」 呆気にとられているロングビル。 (魔力が…まさか…ゴーレムがやられた!?) あのゴーレムは、足止めだけでなく破壊の杖を使わせる為のものだ。 当然、トライアングルクラスの攻撃でも壊せないように表面は錬金した鉄で覆っている。 それを、一瞬で屠ったというのだろうか。それも、使い魔の平民が。 (あ、ありえないわ…) 愕然とするロングビル。 だが、いつまでもボーっとしていたらすぐに彼が戻ってくるだろう。 あんなことをやってのける化け物相手に戦うのは完全に自殺行為。 それならば、戻ってくる前にせめて破壊の杖だけでも奪い返さなければ。 「ええい…まったくもう!」 悪態をつきながら、杖を振り上げ呪文を唱える。 一瞬の間に、巨大なゴーレムが現れた。 「「!!?」」 不意を突かれた2人の反応が遅れた。 (確か、あの2人はある程度の力は持っていたはずだね) ゴーレムを操る。 (下手に戦ったら足止めされる可能性がある。安全に、雑魚を人質にとって逃げるべきだろうさ!) その手でルイズと少年をその掌の中に納めた。 「そこの2人!この2人を潰されたくなかったら、おとなしく破壊の杖を返しな!」 グゥッ!っと掴まれた2人の間から苦悶の声が漏れた。 「ミス・ロングビル…まさか」 「土くれのフーケ…」 唇を噛み、己の不覚を悔いるキュルケのタバサ。 おそらく、あの肩の人影もゴーレムだったのだろう。 巨大なゴーレムを作れるのだから、そんなことは出来て当たり前だということを失念していた。 だが、二人はすぐに気持ちを切り替え策を練り始める。 (策を考えさせる暇なんかないんだよ!) 「早く渡しな!じゃないとこの2人がどうなるかわからないよ!」 「く…」 唇を噛むキュルケ。 しぶしぶと、そばに落ちている破壊の杖を手に取り… 瞬間、ひらめいた。 「破壊の杖」 タバサも同じ事を考えたのだろうか。 キュルケの頬が歪む。 「わかりましたわ。この破壊の杖…お返ししますっ!」 破壊の杖えを手に取り、魔力をこめゴーレムへ振る。 ――――― 何も、変化がなかった。 (っち。結局無駄足だったね…) 「な、何!?これ破壊の杖なんじゃないの!?」 あわてるキュルケだが… 「ふん。本当に無駄足だったね…早く破壊の杖をよこしなっ!」 握る手を強める。 ギリッ。 悲鳴が途切れた。 意識を失ったのかもしれない。 「危険」 タバサがキュルケに目配せする。 「…わかったわ」 それに、深く頷くキュルケ。 そして、キュルケが破壊の杖を放り投げた。 ――――勝負は、一瞬。 (絶対に失敗するわけには…いかない!) タバサの口から、呪文が漏れる。 その小さな声は、破壊の杖を見つめているフーケには届かない。 そして、キュルケが破壊の杖を投げた。 すでに詠唱は終わっている。 身の丈もある、巨大な杖。 それを振りかざし、現れた巨大な氷の矢はゴーレムの手を正確に射抜いた。 ―――ズンッ! ゴーレムの腕が千切れ飛んだ。 (何!?) そして、キュルケが唱えたレビテーションにより2人を救出。 「チッ…やってくれるねぇ!」 小さく呪文を唱える。 対して、タバサはすでに詠唱を完了していた。 先ほどの大きさは無いが、巨大であることには変わりない氷の矢が飛んできた。 が。 その矢は、巨大な腕に阻まれ、消滅した。 「なっ…」 驚いて声を上げた、キュルケ。 そして、目をむくタバサ。 「ふふっ…教えてあげるわ。私の二つ名は土くれのフーケ。土さえあれば、このゴーレムは何度でもよみがえるのさ!」 そして、ゴーレムが再び少年をつかむ。 「言ったはずよ…抵抗したら、こいつらの命はないと!」 二人の表情が絶望に染まった。 ミチリッ 意識を失った哀れな少年は、その体を潰され。 ボトリッ と頭だけが地面へと落下した。 残る二人をまとめて腕で弾き飛ばし、破壊の杖を拾い上げた。 「手間とらせやがって…」 一瞬、全員を踏みつぶそうかとも考えた。 (そんなことしたら、あの化け物が追いつくわね…逃げるか) 止めを刺すことなく、フーケはゴーレムを反転させし、 「待てよ」 「なっ…!」 そして、化け物が現れた。 いくらなんでも早すぎる。 ゴーレムが消滅した場所とここまでの距離は、少なくとも馬で2~3分はかかる。 それだけの距離を置いて、ゴーレムに追いつかせたのだ。 なのに… (まだ2分もたってないよ!) 一体何だこれは! 叫びたかったが、動けない。 顔をゆがめた、14,5歳程度にしか見えない少年が。 自分の命を刈る、死神に見えたのだ。 ―――重力すら速度に変え、木々をなぎ倒し一方通行は奔る。 痛みが、全身を襲う。 (そンなもン、構ってられッかよ!) 時間にして、1分か2分か。 来たときの倍以上の速度で、一方通行はルイズの元へと舞い戻る。 「待てよ」 身を反転ようとしたロングビル、いやフーケへと言葉を叩きつける。 その表情は、ルイズが受けた痛みを受けて苦痛にゆがんでいる。 正直、立っているだけでもやっとだ。 (だが…あの程度を消滅させる程度なら全く問題は無ェな) 自転操作でもしようかと、適当な物を探す。 と 地べたに寝転んでいる、おそらくは気絶しているであろうルイズ・キュルケ・タバサの姿を確認した。 そして――― おそらくは、あの少年のものであろう。 血液の水たまりと、頭部を発見した。 (何…だと…?) 一体これはどういうことか。 死んだ? 何故? 彼はごく普通に生活をしていた、一般人だ。 この場所へ案内するために連れてこられ、偶々ここにいたにすぎない。 偶然なのか。 たまたま、運が悪かったから死んだというのか。 いや――― 守れたはずだった。 考える。 ここと学院は、馬車で数時間の距離がある。 ミス・ロングビルは、朝の1-2時間でその距離を往復したというのか。 今まで、誰にも姿を見られずに盗みを行った大盗賊相手に、人が滅多に入らないような場所に、ただの農民が偶然行き、そのアジトを発見でき、偶然ロングビルがその農民に話を聞くことができたというのだろか。 これらすべて、普通に考えればありえないことだ。 だが、自分の力を過信しすぎた。 自分なら、どんなことが起きても守りきれると。 そう、思ってしまった。 全ては、自分の油断が招いたことなのだ。 (俺の力は、自分だけは守れても他人は守れないってのによォ) 本当に馬鹿だ。 自分の力を過信しなければ。 この、学園都市最高の。 能力開発された230万人の中で最大の頭脳を持ちながら、小学生でも気づくような矛盾を見過ごしたのだ。 「ぐ…く…くは…」 おかしい。 可笑しすぎる。 結局、自分は壊すしか脳が無いのだ。 誰かを守ろうなんて、おこがましい。 1万人の罪の償い? ―――そんなこと、できるはずがない 「くははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」 笑いが止まらない。 もう、能力を押えようとは思わない。 とりあえず、あの三下を消滅させよう。 無造作に手をかき回し。 暴風を操作し。 風を一点に集中させる。 頭上、100メートルの位置。 暴風が集められた瞬間まばゆい光が周囲を照らす。 摂氏一〇〇〇〇度を超えるプラズマが発生した。 プラズマは、周囲の空気を飲み込み瞬く間に巨大になっていく。 そして、フーケが何事かを呟き。 光の玉に飲み込まれ、完全にフーケは消滅した。 フーケは殺した。 だからなんだというのだろう。 学園都市最高の頭脳が、生きていればいるほど自分の罪を増やしていくと告げている。 もう、何をどうすればいいのかも分からない。 最強の存在は、自分の過去にすら勝てないのだ。 「アク、セラ…レータ?」 「…」 意識を取り戻したばかりのルイズが、一方通行に呼びかける。 「だい、じょうぶ?」 「―――ッ!」 (何で人の心配してやがんだ…!自分の方が大変じゃねェか…) そんな状態で、しかし自分のことより一方通行の心配をする。 「あんたが…守ってくれたのね。ありがとう…」 自分はこんなにボロボロなのに。 「守ってなンか…いない!」 叫ぶ。 「俺は!守ってなンかいねェ!あのガキを助けられなかった!殺した!助けられたはずなのに!」 叫ばずにはいられなかった。 「そう…彼、死んでしまったのね…」 「違う!俺が殺した!」 「いいえ…違うわ。アクセラレータ。貴方は殺してなんかいない」 「ッ!?」 しかし、ルイズは冷静に、静かに、言い聞かせるように一方通行へと話しかける。 「あなたがいなければ…ここにいる、みんなが殺されていた。殺したのはフーケ。そして、ミス・ロングビルがフーケだということに気付かなかったのは、先生も含める全員」 そして 「もし、貴方が彼を殺したというのなら、それは私たち全員の罪。誰かがあなたを人殺しと糾弾するのなら、私が全力で貴方を守るわ」 そう、宣言した。 (また…だなァ) また、救われた。 自分よりも圧倒的に弱い、貧弱な人間に。 最強である筈の自分が、二度も守られ、救われた。 それだけでなく、これからも自分を守るとまで言った。 そう、そうなのだ。 何かを守るのに、最強である必要など無い。 あの、最弱の少年のように。 この、貧弱な少女のように。 無敵にならなくても、最強ですらなくても。 きっと、人を守ることはできるのだ。 ならば、最強である自分は。 守れないはずがない。 守らなければならない。 今度こそ。 光の道を歩む、この少年のような人間を、今度こそ守る。 たとえ、フーケのように消滅しようとも、闇の奥底へもぐろうとも、出来得る限りのすべての手段を行使して。 一方通行は、その覚悟を決めた。 前ページとある使い魔の一方通行
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131 奈落の一方通行 ◆BEQBTq4Ltk 骸が黙って風を受ける。 彼女らの視線の先には民宿があり、現在探索を行っている主人を待つ。 一人と一匹は声を発することもなく、微動だにしない。 天輝く太陽の日差しを浴びながらも、生命の息吹を何一つ感じさせない。 八房に生涯を絶たれた敗者に明日を夢見る資格など無い。 生前にどんな活躍をしようが、どんな未来を描こうが、死んでしまえば過去の存在となる。 「本当に気色悪い人形達だね、これ」 民宿から出て来たエンヴィーが言葉を飾らないで骸に吐き捨てる。 人造人間に不快を与えるほどに、生を彷徨う敗者は何も、しない、出来ない。 「それでも侵入者の監視は出来る……と言っても進展は何一つありませんでしたがね」 ホムンクルスの後に登場したキンブリーの口ぶりから民宿には何も無かったようだ。 帽子をかぶり直すと、骸の横を通る。 主が移動したことを確認すると、死体達はまた黙ってその後を追う。 「感情も持ち合わせない指示待ちじゃ人間なんて呼べないねぇ……生き恥を晒しているだけじゃん」 電車に乗り込んだ生者二人と敗者達。 広川の放送に耳を傾けるため、適当に座席へ腰掛ける。 流れる放送で特筆すべき点は首輪交換制度になる。 停車中の電車内で耳を傾けていたキンブリーとエンヴィーの表情は固くも緩くもない。 彼らにとっての大切な存在が会場に招かれている訳でもなく、誰が死のうが感情が揺らぐことなどない。 「鋼のオチビさんは呼ばれてないのか」 気になる点と云えばアメストリスで散々交戦を重ねてきた錬金術師ぐらいだろう。 知り合いの名前も半数がホムンクルス側の人間であり、例え彼らが死んでもどうでもいい。 「きっと彼の信念を守り抜いて行動していることでしょう。 常識も倫理も価値観も通じないバトル・ロワイアルでどこまで貫けるか見ものですね」 エンヴィーの声に対しキンブリーは微かに嗤いを含んだ声を飛ばす。 敵であれどエドワード・エルリックの持つ信念と貫き通す意思は美しい。 人間の枠に収まる彼が殺し合いを打破するべく、通常に機能しているならさぞ潰しがいがあるだろう。 電車の中には彼らの声が響く。少女と犬の骸は何も話さない故に。 「それにマスタング大佐とウェイブも……高坂穂乃果に花陽って呼ばれてた女と………………」 「瞬間移動を操る少女……黒子と呼ばれていたことから白井黒子。 まさか誰も死んでないとは……運が良いのやら悪いのやら解りませんね」 「せっかくマスタングの奴に罪を擦り付ける形で一人殺したのにつまらないなぁ」 「今更たった一人の人間を殺したぐらいで揺らぐ存在でも無い話ですね。 イシュヴァールを生き抜いた彼なら尚更だ。一緒に居たウェイブも白井黒子も本質は知りませんが状況をちゃんと理解していた」 鋼の錬金術師ともう一人招かれている敵が焔の錬金術師――ロイ・マスタングである。 一度、エンヴィーは二度であるが交戦を重ねており、その一団は誰一人として死んでいないようである。 あの場では氷を操る鳥と奇妙な触手を操る男も襲来していたが、随分と運の良いことだ。 「つまらないなぁ……人間ならそのうざったい感情に駆られて憎しみで殺せばいいのに」 「生と死に隣り合わせで立っていない高坂穂乃果と小泉花陽の二人しか取り乱すことは無いでしょう。 一緒に行動しなくても彼女達をフォローするか、マスタング大佐と引き離せば表面上は回復の兆しを見せますからね」 参加者も絞りを掛けられてくる半日が経過している中、交戦した集団から死者が出ていないのは少々驚きとエンヴィー。 しかしキンブリーは想定通り……かどうかは不明だが、何も感情を示さない。 (このまま生きていくのもまた彼らの人生……散るまで精々足掻いてもらいましょうか) 「さて、このまま電車に乗れば首輪交換制度の場所である闘技場まで行けますね」 話題を変え主催から提案された首輪交換制度。 「首輪を持っているのはお前だろキンブリー、試すのかい?」 「それなんですが……エンヴィー、貴方は一人で闘技場に向かってもらいたい」 予期せぬ提案に固まるエンヴィーは黙って話の終わりを待つ。 「このまま二人仲良く電車に乗っていても面白みも何も無い。 手を組んでいるならば別れて行動するのも悪く無い……天城雪子の首輪は貴方に渡します。 少々惜しいですが私には八房で得た二体の骸がある……つまり首輪を二つ所有していることと同義」 「別に構わないけどお前はこれから何処に行くんだよ」 「民宿で若干時間を潰した後、北上しようかと」 キンブリーの提案に特段反対する意見は無い。 どう行動しようが勝手であり、共に動いていたのも同胞の好に近い。 興味も何も無く、どうでもいいと云った表情を浮べながらエンヴィーはキンブリーから天城雪子の首輪を受け取る。 「大佐に焼き殺された次は武器と交換か……全く同情するよお前には」 皮肉の一つを零しつつ天に居るであろう彼女に嗤う。 「首輪交換制度ですが主催と接触出来るなら情報を聞き出して置いてください」 「それぐらい解ってるさ。それで、次の合流はどうする」 「私も北上のついでに武器庫に趣き首輪交換制度を試すつもりでいます。 両者の中間地点から考えるに……次の放送を終えた四回目の放送時に図書館で待ち合わせといきましょう」 決まりだね、言葉を返したエンヴィーは座席に座り込み足を組む。 外を見つめると北から煙が上がっており、何処も争い事に欠けないようだ。 扉に手を翳し外へ出ようとするキンブリーは一瞬止まると、 「私の錬成で直ぐにこの電車を動かしましょう。 それでは――何に祈るかは解りませんがまた会う日まで」 それだけ言い残し、彼を追うように骸が付いて行く。 「これで電車は動き出す」 錬成エネルギーを流し込まれた電車は間を置かずに東へ走り出した。 見送るキンブリーが目指す場所は近場にある民宿。主に散策をメインとする短い滞在になりそうだ。 北から上がっている煙を見れば流石はバトル・ロワイアルと言うべきか、どこもかしこも騒乱に満ちている。 電車に乗っているだけでは興が削がれてしまう……と、此処で一つ想定外の出来事が発生する。 「おやおや別の車両に誰か乗っていましたか……これは彼に悪いことをしてしまった」 走り去る窓に一人の男性が映る。 今となってはどうでもいいことだが、悪いことをしてしまったと感情の篭ってない謝罪が風に消える。 ホムンクルスと同じ電車に乗っている……一般人ならば考えるだけでも恐ろしい。 「人が簡単に消えて行く会場で貴方達はどうしますかね」 お父様の元に強力するホムンクルスを相手に戦ってきた二人の国家錬金術師。 色や性質は違えど両者共に、芯を持っている強い人間だ。 「私達も知り得ない規格外の人外が蔓延る中で何処まで人間は抗えるのか」 前を歩くキンブリーの背後には二体の骸が黙って付き添う。 言葉も感情も持たないが、強さは一級であり、死体の面から見ても最悪の兵器と云えよう。 「その信念を何処まで貫けるか……樂しみにさせてもらいます」 民宿の扉を開けても、数分前と同じように人の気配は感じない。 潜んでいる可能性もあるが、危険が無い場所などあり得ない。 「それはそうと……貴方も私達と同じ立場の参加者ですからね。 自分だけ賢者の石で回復――とは卑怯だと思いませんかね、ホムンクルス」 キンブリーの声が風と共に東へ流れる。 その先は電車、彼が錬成エネルギーを流し込んだ電車。 総ては平等に――少しの遊び心で時限爆弾に錬成し直した電車。 「別に此処まで来て貴方達と協力する義もありません」 言葉を聞くは脱落した敗者達のみ。 【東に向かう電車内/1日目/日中】 ※キンブリーによって電車が爆弾と化しました。 ※爆発時間はおよそ二時間後。 ※但し、衝撃等外部からの干渉で爆発する可能性あり。 ※もしかしたら速度が速くなったり遅くなったりしているかもしれません。後の書き手さんにお任せします。 【エンヴィー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:疲労(小) [装備]:ニューナンブ@PERSONA4 the Animation、ダークリパルサー@ソードアート・オンライン [道具]:ディパック、基本支給品×2、詳細名簿、天城雪子の首輪 [思考] 基本:好き勝手に楽しむ。 0:闘技場で首輪交換制度を試す。 1:色々な参加者の姿になって攪乱する、さしあたってはウェイブ。 2:エドワードには……? 3:ラース、プライドと戦うつもりはない、ラースに会ったらダークリパルサーを渡してやってもいい。 4:強い参加者はキンブリーに大佐たちの悪評を流させて潰しあわせる。 5:キンブリーとは四回放送時に図書館で合流。 [備考] ※参戦時期は死亡後。 ※電車の爆弾化には気付いていません。 【D-7・民宿入り口/1日目/日中】 【ゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:疲労(小)、高揚感 [装備]:承太郎が旅の道中に捨てたシケモク@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ [道具]:ディパック×2 基本支給品×2 躯爆弾・クロメ@アカメが斬る! 帝具・死者行軍八房@アカメが斬る!、躯人形・イギー@現地調達 流星の欠片@DARKER THAN BLACK 黒の契約者 [思考] 基本:美学に従い皆殺し。 1:民宿で休憩後、北上する。 2:ウェイブと大佐と黒子は次に出会ったら殺す。 3:少女(婚合光子)を探し出し殺す 4:首輪の解析も進めておきたい。 5:首輪の予備サンプルも探す。 6:余裕があれば研究所と地獄門を目指す。 7:武器庫で首輪交換制度を試す。 [備考] ※参戦時期は死後。 ※死者行軍八房の使い手になりました。 ※躯人形・クロメが八房を装備しています。彼女が斬り殺した存在は、躯人形にはできません。 ※躯人形・クロメの損壊程度は弱。セーラー服はボロボロで、キンブリーのコートを羽織っています。 ※躯人形・クロメの死の直前に残った強い念は「姉(アカメ)と一緒にいたい」です。 ※死者行軍八房の制限は以下。 『操れる死者は2人まで』 『呪いを解いて地下に戻し、損壊を全修復させることができない』 『死者は帝具の主から200m離れると一時活動不能になる』 『即席の躯人形が生み出せない』 ※躯人形・イギーは自由にスタンドを使えます。 ※千枝、ヒルダと情報交換しました。 時系列順で読む Back 新たな力を求めて Next 翔べない天使 投下順で読む Back 新たな力を求めて Next 翔べない天使 103 災厄の紅蓮は東方に消え… エンヴィー 144 見えない悪意 ゾルフ・J・キンブリー 136 正義の味方
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3ページ目 触れれば即殺。それだけだ。だが実際は一方通行の思い通りにはならない。 「あァ?」 こちらへと突進してきていたはずの男の姿が、突然消え去ってしまったのだ。 普通なら理解することも出来ないな現象だが学園都市内に限っていえばおかしいことでもない。 あの男が能力者だとすれば姿を消すのも簡単なことだ。 反射によって幻覚などは通用しないことから考えると、どうやら男の能力は『辺りの風景と一体化する』ものだろう、と一方通行は考える。 しかし数秒後、彼は自分の推測が間違っていたことに気付く。男は消えていなかった。 男は頭上――一方通行の真上を飛んでいた。 「ヒィィィィィィヤッフゥゥゥゥゥゥゥ!!」 背後からの奇声に思わず振り返る。 そこには10032号を抱えた男の姿があった。 だが一方通行は焦るような素振りを見せない。実際焦ってなどはいなかった。 目にも止まらぬ速さ――男の能力が身体強化系だとすれば尚更一方通行には敵わない。 いくら拳が硬かろうと、いくら突きが速かろうと、反射されれば自分へと返るのだ。 しかも自ら触れてくれるのならその瞬間血流逆転で勝負は決する。 だが超スピードで逃げられてしまうのだけは厄介だ。 目で追えなかった以上、見失えば殺すことが難しくなる。 ならばこちらから仕掛ければいい。足付近のベクトルを変換し、それこそまさに超スピードで男へ向かう。 触れれば即殺。 「ヤッハー!」 一方通行の手が触れるか触れないかで男の姿はまた消えた。 今度は一方通行でも彼がどこへ行ったのかが分かった。 飛んで――いや、跳んでいたのだ。 男はジャンプをして一方通行をかわしていた。 だとすればなんという常人離れした跳躍力だろうか。 男の能力が身体強化系であることが一方通行の中で確信へと変わる。 しかし、その確信は一瞬で消し飛ぶ。 「ハッ!」 男は掌から炎の玉を発射し始めたのだ。 次へ トップへ
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第三回雪降る箱庭、インスタントタッグ戦「泥塗れのバニラアイス」の 一方通行&くうねるのタッグチーム アーカナイトマジシャンとシーラカンスのデッキ。両者デッキのエースがはっきりしている分、それに特化させてありかなり強力なデッキであった。アーカナイトマジシャンは進化しました。シーラカンスは相変わらずの破壊(壊れ)を見せました。補足であるが一方通行はタッグ初参加。
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L:ゴミ収集車={ t:名称=ゴミ収集車 t:要点:積載量1t、ツーマンセルで運用、消化器付き t:周辺環境=きれいな町並み t:評価値=なし t:特殊={ *ゴミ収集車のカテゴリ=個人所有アイテム *ゴミ収集車の効果=設定国民しか使用出来ない } t:→次のアイドレス:火力発電所での代価燃料化(技術) } 30マイル このアイテムで収集しつつ、次のアイドレス開示でのコンボを行うと、ゴミの量を減らし、さらにエネルギーへ転換可能です。 次のアイドレスをゴミの燃料化(技術)とした場合、120マイルとなりますが、燃料消費が多く、資源に乏しい国で効果的な為、現在検討中です。未発売。
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6ページ目 一方通行、と呼ばれる少年の皮膚にはほんの僅か――目視出来ないほど薄い保護膜が張られている。 彼の能力『一方通行』は自分が触れているものにしか影響を与えられない。 では自分とは何か、というと哲学的な問題になってしまうが早い話、彼を覆う保護膜が触れているかいないかを判断し、そして反射が働く。 逆に言えば、保護膜に触れることなく一方通行自身へ触れることさえ出来れば反射されず攻撃を成功させることが出来るのだ。 保護膜は一切の隙なく彼自身を覆っていてそんなことは不可能だが。 しかし、彼は今〝風圧〟を感じている。 マリオの持つスーパーマントは一方通行の能力とよく似た性質を持つ。 そのマントで吹き飛ばされたものはベクトル変換と同じように反射され、逆方向へと向かっていってしまう。風でさえも。 例えば、攻撃が一方通行の保護膜に触れた瞬間に引っ込むとどうなるだろうか。 遠ざかる攻撃が内側に反射され、攻撃が当たるのだろう、ととある科学者は仮説を立てた。 その仮説は今現実となり、スーパーマントによって反射された風は一方通行に不可解な感覚を与える。 その感覚が一方通行に怒りの感情を湧き立たせる。 「ざ…………ッけンじゃねェぞ!」 屈辱だった。 いきなり現れた中年男性に、わけの分からない方法で、ダメージを受けてはいないとはいえベクトル変換による防御を打ち破られたのだ。 だがマリオを殺してしまえば問題は無くなる。明確な殺意が一方通行の中でひしめく。 一撃、たった一撃当てられればそれで一方通行を破れる者はいなくなる。 一方通行が風圧の中、再度攻撃を仕掛けようとするが、 マリオも再度マントをひるがえす。 次へ トップへ
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*** 「お姉様? お姉様、どうしましたの?」 黒子の声で美琴ははっとわれに返る。 「あ、黒子? なんか言った?」 「もう、お姉さまってばりんご剥きすぎですわよ。 二人で食べるには少し多すぎるのではありませんこと?」 「え? ……あ」 美琴の座る椅子の脇に置かれたサイドテーブルを見ると、そこには皮を剥かれたりんごが3つ並んでいた。 食べやすく切られたわけでもなく、皮を剥かれただけで放置されていた。 最初に剥いたであろうりんごはすでに軽く変色していた。 「お見舞いに来てくださるのはうれしいのですけれども、今日のお姉さまは少し変ですの」 黒子がほほを膨らませて言う。 「ごめんごめん、そんなすねないでよ」 美琴は手に持った4つ目のりんごを皿の上に載せて苦笑した。 剥いてしまったからにはこのりんごの大半を食べるのは自分の仕事だろう。 「……やはり、昨日隣の病室で騒いでいたことが原因ですの?」 「え」 黒子がため息をつく。 「やっぱりですの。騒いでいたのはお姉様だってことくらい知ってていましてよ?」 美琴は息を呑んだ。昨日の会話は殺すだの殺しただの、物騒な内容だった。 学園都市の暗い部分を知らない黒子には聞かせたくないことだった。 「き、聞こえてたの!?」 「盗み聞きは趣味じゃありませんから内容までは把握しておりませんが。 そう、黒子は空気の読める女」 なぜかうっとりとしている黒子に冷や汗を悟られないように美琴は極力平静を装った。 「単に知り合いがいてびっくりしただけよ」 なんとかごまかせたのか、黒子はふうんとうなずいただけだった。 隣室との間を隔てる壁をじっと見つめながら黒子は言った。 「お姉さまのお知り合い……。わたくし、ご挨拶に伺ったほうがよろしいかしら」 「ぜっっっったいにダメ!!」 美琴の声に黒子はビクッと体を震わせる。 「お、お姉様、どうしましたの? わ、わたくしはもし隣室の方が殿方でしたらお姉様に不埒な真似をしないよう釘をさしておこうと思っていただけですわ!」 「……そんなこと考えてたのアンタ」 釘をさすどころか下手したら逆に命がない。 まちがっても黒子が隣室に突撃したりしないようにきつく言っておこう、と美琴は心に決めた。 だが美琴が口を開く前に黒子が顔を青くした。 「ま、まさかあの類人猿!? お姉様、あの殿方が隣にいるのではないでしょうね!?」 「あー、ないない、それはないわ」 美琴は冷めた表情で手をパタパタとふった。 「その反応でしたらあの殿方ということはなさそうですわね。安心いたしましたの。 わたくし、お姉様を悩ます人間といったらまず真っ先にあの殿方を思い浮かべてしまいましたわ」 「な、なんで私がアイツのことで悩まないといけないのよっ」 顔を真っ赤にして反論する姿を見れば否定する要素はひとつもないように思える。 しかし本人に自覚がないようなので救いようがない。 黒子は半目でじたばたと挙動不審な美琴を見た。 「な、何よその目は。私は別にアイツのことなんて」 「はあ、よろしんですのよ。今に始まったことではありませんし。 それよりも、わたくしはお姉様の今現在の悩みのほうが心配ですの」 一転してまじめな表情を浮かべた黒子に美琴はたじろいだ。軽くごまかせるような雰囲気ではない。 「また何を一人で考え込んでいるのかはわかりませんが、隣の病室の方に関係することなのでしょう? わたくしのお姉様は常に凛々しく美しくあっていただかないといけませんわ」 「つまり、何が言いたいのよ」 いぶかしがる美琴に、黒子は極上の笑みを浮かべた。 しなやかなその表情は、挑発的で、なおかつ官能的にさえ見える。 「当たって砕けてくればよろしいじゃありませんの。 うじうじ悩むのは私の知っているお姉様らしくありませんことよ? なんならわたくしが隣の方とお話をつけて差し上げますわ」 美琴は黒子の笑みに気おされたように押し黙った。 こういうときの黒子こそ、自分などよりずっと凛として美しいと美琴は思う。 「ご安心くださいな。もし砕け散ってしまわれたのならこの黒子がお姉様を受け止めて差し上げますの」 *** 「入るわよ」 美琴は返事を待たずに一方通行の病室のドアを開けた。 姿を見る前に一方通行の声を聞けば逃げてしまいそうな気がしたからだ。 「一方通行! ……あれ?」 思い切って勢いよく開けたドアの向こうは無音だった。 病室で動いているものは、細く開かれた窓から吹き込む風に揺られるカーテンだけだった。 「いない……? っているじゃない」 ベッドの上に積まれた掛け布団がこんもりと人の形にもりあがっている。 その端からは白い後頭部がちらりとはみ出ていた。 打ち止めはいないようだ。二人きりというのは少し気まずいな、と思いながら美琴は一方通行に近づく。 「話があるんだけど」 一方通行は美琴に背を向けたままの姿勢で答えない。 (返事くらいしなさいよね) 思い切って来てみたはいいもののまったく相手にされていない。 無理もない。自分とこの少年との間には圧倒的な戦力差があるのだ。 (当然よね。……でも!) 「いい加減無視しないで!」 一方通行の頭に顔を寄せるようにして怒鳴る。その声に反応するかのように一方通行が身じろぎした。 そして布団の中で身体をもぞもぞと動かすと、寝返りを打つように美琴のほうを向いた。 「むゥ……ンン」 「へ?」 あと少し近づけば顔と顔が触れ合いそうな距離なのに、美琴は一方通行と視線を合わせることはできなかった。 一方通行の瞳は硬く閉じられていた。美琴の声をうるさがるようにその眉間には深くしわがよっていた。 (寝てる……?) 睡眠という人間的な行為を一方通行がとることに美琴は拍子抜けした。 美琴にとって一方通行とは、悪の化身そのものであり、理解の範疇外にいる存在だ。 そういえばコイツも一応人間なのかもしれないと、当たり前のことを思う。 (というか、あれだけ怒鳴っても起きないとか) 案外この少年は鈍いのだろうか。それとも『脳へのダメージ』とやらが原因で疲れがたまっているのか。 美琴はとりあえず一方通行を観察する。 美琴が静かになったせいか、先ほどまでの険しい表情ではなくなっていた。 穏やかなその表情に実験のときの面影はない。 (うわー睫毛まで白いわコイツ。人が寝てるときの表情って意外に素直そうに見えるわね) その線の細さと病院という環境もあいまって、病弱な少年ですと説明されれば信じてしまいそうだ。 至近距離でじろじろ見られても起きない神経はどうなっているのだろう。 ともすれば吐息がかかりそうな距離である。 (……って近い! 顔近い!) ざっ、と俊敏な動作で美琴はベッドから1メートルほど後ずさる。 その物音で起きたか、とも思ったがそのようなことはないようだ。 一方通行は相変わらず静かな寝息を立てて眠り続けていた。 (なんかここまで起きないとわざとなんじゃないかって思えてくるんだけど、調子狂うなぁ) 美琴は再び一方通行に近寄る。 どこまでやったら起きるんだろうか。 美琴のイタズラ心がむくむくと沸いてきた。 あまりの平和な寝顔に、第一位への怒りと恐怖が一瞬薄れたのかもしれない。 「えい」 人差し指を立て、それをそのまま一方通行の白い頬につきさす。 指先は弾力のある、滑らかな感触を美琴に伝えた。 「うわー、ほんとに反射しな……い?」 目が合った。 半開きになった焦点の合わない赤い瞳が美琴へと向けられていた。 「……」 「……」 「お、おはよ」 沈黙に耐え切れず、美琴は上ずった声を出して笑顔を作る。 もちろん人差し指は一方通行の頬にささったままだ。 一方通行が布団から手を出し、頬に触れる美琴の手を握った。 「!?」 「クソガキィ、人が寝てる間に鬱陶しいことはやめろっていっつも言ってンだろォが……」 眠そうな声でそう言って、一方通行は美琴の手を優しく遠ざける。 その手は美琴に手を握ったままシーツの上に落ちた。 「ちょ、ちょっとはなしなさいよ! っていうか寝ぼけてんの!? ねえ!」 一方通行は閉じた瞳をもう一度重そうに持ち上げた。 「クソガキィ、オマエの声は頭に響くっつってンだろ……ンだァ? なンか背ェ伸びて……」 「……はなしてほしいんだけど」 病室に再び沈黙がおとずれた。 一方通行の目の焦点が徐々に美琴に合う。 一方通行の脳が彼の寝起きにしては珍しく高速で働いて現状を整理する。 なぜか超電磁砲が一方通行の顔を覗き込んでいてなぜか頬をつついていて、なぜかそれを一方通行が打ち止めのイタズラか何かと勘違いし、なぜかその手を握っている。 「……」 美琴は気まずそうに一方通行から視線をそらした。 一方通行も美琴の手をそっとはなす。 「あァ、とりあえず、ここ3分くらいの出来事をなかったことにするか」 「……そうね。異論はないわ」 一方通行は何事もなかったかのようにゆっくりと上体を起こした。 「それで今日はまたなンの用だ。 またバチバチして出入り禁止になるつもりですかァ?」 一方通行がねめつけるような視線で美琴を見上げる。 ニヤニヤとした薄ら笑いは『実験』のときの一方通行を彷彿とさせた。 「ア、アンタに聞きたいことがあってきたのよ」 美琴は精一杯の虚勢を張り、努めて冷静に聞いた。今にも暴発しそうな思いを咽の辺りでぐっとこらえる。 「……妹達を助けたんですってね。そのせいで能力が使えなくなったとか?」 口元に笑みを張り付かせたまま、一方通行の目がすっと細くなる。 冷笑するようなため息が漏れた。 「くだらねェこと知ってンなァ、オマエ」 「なんで?」 そのシンプルな問いに、一方通行は一瞬黙り込む。 そして、ぼんやりとした視線で病室の蛍光灯を眺めながら答えた。 「別に意味なんてねェよ。 気に入らねェ研究者をぶっ殺したらついでにあのガキが勝手に助かってやがっただけだ」 「アンタが打ち止めを……あの子達を助けたっていうのはただの偶然だったっていうの?」 美琴の声が高くなる。 「偶然以上に何があるってンだ?……まァ、能力に制限がかかっちまったっつゥのは想定外だったがな」 鼓動が早くなるのを感じる。それが怒りのためだと気づくのに少し時間がかかった。 一方通行の視線が天井から美琴に移される。 からかうような赤い視線が美琴に絡みついた。 「制限がかかったところで第三位の超電磁砲程度なら軽く瞬殺できるンだぜ? なンなら試してみるかァ?」 目の前の白い人間がいったい何を言ったのか。沸騰寸前の美琴の頭では理解しかねた。 「もっとも、オマエと同じ顔の人間なんざこっちは殺し飽きてンだけどな」 その口元の歪みが笑みを意味していることに気づいたときにやっと美琴 「あ、んたはああぁぁ!!」 美琴の怒声とともにその前髪に火花が散る。 「やっぱり何も変わってないじゃない!」 美琴は握り締めた拳を高く振り上げて―― 一方通行の表情が無くなったのに気づいて、冷静になる。 「アンタをちょっとでも信じそうになった私が馬鹿だったわ」 行き場を失った拳を下ろし静かな声でそう言った。 そしてそのまま美琴は一方通行に背を向けて振り返らずに病室から出て行った。 ドアを閉める寸前に小さく聞こえてきた、 「悪党がそう簡単に善人になってたまるかっつゥンだよ」 という声が少し弱々しく感じたのは気のせいだと思った。 「違ェよなァ、なァンか違うンだよなァ……クソ!」 一方通行一人になった病室に、ベッドを殴る鈍い音が響いた。 *** 美琴は病院の中庭のベンチでぼうっとしていた。 勢いに任せて建物から出たはいいものの、よく考えたら黒子の病室に荷物が置きっぱなしだった。 黒子の病室に行くならまた一方通行の部屋の前を通らなければならない。 なんとなくそれが嫌で立ち上がることができなかった。 「お姉様、表情が冴えませんね、とミサカは手の中の空き缶をじっと見つめるお姉様に声をかけてみます」 顔を上げると、御坂妹が目の前で美琴を見下ろしていた。 「失礼します、とミサカはお姉さまの隣に腰を下ろします」 制服のスカートの折り目を気にするようにしてベンチに座った御坂妹は、無感動な瞳で美琴をじっと見つめる。 「な、なによ」 「ご気分が優れませんか? もしや上位個体や一方通行と何かあったのでは? とミサカはお姉様にお尋ねします」 もやもやの原因そのものズバリをつかれて美琴はたじろいだ。 「う、何よそれ、やっぱりネットワークでそんなこともわかっちゃうわけ?」 「いいえ。昨日も同じような表情をしていましたから、とミサカは推測の根拠を明確にします」 なんとなく、自分のクローンの少女にすべてを見透かされている気がして言葉に詰まる。 そんなはずはないと、咽の奥から声を搾り出す。 「……そうよ。一方通行とちょっと話してきたの。それでわかったのよ」 「なにがですか? とミサカは質問します」 少し首をかしげるような仕草が機械仕掛けの人形のようだ。 無機質な瞳がその印象をより深くしていた。 「あいつが相変わらずただの外道だってことよ。アンタたちを助けたのは偶然だとか、意味はないとか…… 一万人殺したことについてもまったく気に留めてなかったわ。 アンタたち、いいように騙されてるだけなんじゃないの?」 美琴は視線を手元の空き缶に戻し、消え入るような声でつぶやいた。 クローン体の少女はうつむく美琴を覗き込むようにしてゆっくりと口を開いた。 「このミサカも個人的に彼に全面的には好意はもてませんが、とミサカは正直なところを吐露します」 「なら」 御坂妹は美琴の言葉をさえぎり、続ける。 「上位個体を助けた状況はこのミサカもネットワークを通じて知っています、 とミサカはネットワークの便利さにお姉様に似て薄っぺらい胸を張ります」 「ちょっと! アンタ、それは今どうでもいいでしょうが!」 思わず顔を上げると御坂妹はまだまっすぐに美琴を見ていた。その目はふざけているようには見えない。 「ミサカたちを助けたのは偶然でもなんでもなく、彼自身が選択したことだとミサカは断言します」 「え?」 「彼が怪我を負ったとき、打ち止めを見捨てるという選択をしていれば負傷することはなかったのです、 とミサカは事実を述べてみます」 御坂妹が淡々と述べる内容が事実だとしたら、一方通行の態度の理由がわからない。 「だったらなんで……」 美琴は一方通行の歪んだ笑みと、真剣な顔で美琴の前に立ちふさがった打ち止めの姿を思い出す。 一体どちらを信じればいいのか。 「彼はお姉様と同じでツンデレ属性ですから素直になれないのでしょう、とミサカは推測します」 「はあ?」 冗談なのか真剣なのか、御坂妹の無表情からは図りかねる。 「上位個体なら彼のことミサカよりも詳しく知っているはずです、とミサカはアドバイスします」 「……」 ミサカネットワークを司どる上位個体、打ち止めの心情を確かめたい。 しかしもう一度一方通行と顔を合わすのはさすがに気まずい。 逡巡していると御坂妹が不自然に視線をそらして大きな声を出した。 「そういえば上位個体は今の時間入浴中のはずだから風呂場の前で待ち伏せしていたら会えるはずだなあと ミサカは少し大きな独り言をつぶやきます」 美琴は御坂妹の言葉にポカンとする。どうしても美琴を打ち止めに会わせたいらしい。 彼女は彼女なりに美琴を元気付けようとしているのだ。 そのおかげか、少し元気が出てきた気がする。 美琴の表情に久しぶりに笑みが戻る。 「ありがとう」 美琴はそう言って立ち上がった。 黒子や御坂妹に背中を押してもらわなければ満足に動くことができない自分が情けない。 そんな自分を後押ししてくれる人が周りに何人もいる。それはなんて幸せなことなんだろう。 美琴は地面を強く蹴って病院の出入り口に向かって勢いよく走り始めた。 「入院患者用のお風呂場ってどっちですか!?」 廊下を歩く気の弱そうな看護士を捕まえ、かなりの剣幕で風呂場の位置を聞き出す。 そして短く礼を言った後、美琴は軽い足取りで駆け出した。 その勢いに驚いた女性看護士はしばらくポカンとしていたが、美琴の騒がしい足音にはっとしてその後姿に声をかける。 「びょ、病院内は走らないでくださいっ!!」 その声は美琴に届いたのか、全速力が小走り程度に変わる。 それでもはやる気持ちを抑えきれず急ぎ気味に階段を上る。 聞いたとおりの場所に風呂場であることを示すプレートを発見した。 「こ、ここね」 よしっと気合を入れるために自分の両頬をぱちんとはたく。 何を話そう? どうやって話を切り出そう。 そもそも打ち止めは自分たちのオリジナルである自分をどう思っているのだろう。 ドキドキしながら脱衣所のドアノブに手を伸ばすが、そこで気づいた。 入浴中に風呂場に飛び込んでどうする。 (少し、冷静にならないとね……) 興奮を抑えるために眉間を人差し指と親指でつまんでぐりぐりと揉む。 結局打ち止めが出てくるのを待つしかない。 大きく深呼吸してから脱衣所の入り口に対面した壁に背中を預ける。 (とりあえずまずは自分の気持ちを整理……) と思考をめぐらしはじめたところで脱衣所から物音がした。 ガチャリ、と扉の開く音とともに扉越しに少女の声が響く。 「ふいー、すっきりしたーってミサカはミサカは扇風機の前という好位置に陣取ってみる」 聞き取りづらいが確かに打ち止めの声だった。 美琴は簡単に目的の少女を見つけられたことにほっとして声をかけようとした。 「ぶあっ!? 背後から何者かに目潰し攻撃を!? うわわわわわ、わっしゃわしゃするのはやめてー! ってミサカはミサカは誰かに助けを求めてみる!!」 打ち止めの声が悲鳴じみたものに変わった。 (『無防備な入浴中は最も命を狙われやすい』――ってのをこの間少年漫画で読んだ気がする!) 一万人強の『妹達』を統べる上位個体。ともすれば軍事利用も可能である。 彼女が何者かに狙われるのは十分に起こりうることだ。 美琴は迷わず脱衣所のドアを開けた。 「打ち止め!! 大丈夫!?」 「オイクソガキ! 風呂から上がったらまず髪を乾かせっつってンだろ!風邪引くだろォが……あ?」 「んんー!前が見えないよう、ってミサカはミサカは……あれ? その声は?」 脱衣所で美琴が目にしたのは、頭からバスタオルをかぶせられた怪人チビタオルと、 その頭をわしわしと拭いている一方通行(E 腰タオル)だった。 「……」 「……」 「……あれ? やっぱりお姉様。 どうしてこんなところに? ってミサカはミサカは疑問符を浮かべてみる」 押さえつける一方通行の力が緩み、バスタオルの下から打ち止めの顔がひょこっとのぞく。 その胸から下にはきっちりとバスタオルが巻かれている。 「え? ちょっとまって、何で!」 「オマエなァ、こういうイベントは普通男女逆だろォが。なンなンですか痴女ですかァ、まったく」 あきれたような一方通行の声に美琴の思考回路がショートした。 「誰が痴女よおおお!!! ていうか何楽しく幼女とお風呂してんのアンタはあああああああ!!!!」 そのときの美琴の叫びは病棟のフロア隅々まで響き渡っていたそうだ。 「にゃ、にゃあああ、お姉様、ボリューム大きすぎるよってミサカはミサカはガンガンする頭を抱えてみる」 顔を真っ赤にした美琴が一方通行をにらみつけた瞬間、廊下の向こうから疾走するような激しい足音が聞こえてきた。 「おおおおおお姉様ああぁぁぁぁぁ!!!!!!!」 ドップラー効果も真っ青な絶叫を撒き散らしながら脱衣所に飛び込んできたのは、白井黒子その人だった。 「くく、黒子!?」 「お姉様、いったい何がございましたの!? お姉様の悲鳴が聞こえましたので参上しましたの! ま、まさかその白もやしになにか不埒なまねを……!? 初対面で失礼かもしれませんがその際の映像などございましたらぜひ私に譲っていただけませんでしょうか、白もやし様」 「し、白もやしィ?」 「うわー、なんかすっごく的確ってミサカはミサカは感心してみる」 ポツリとつぶやいた打ち止めの声に反応し、黒子がぐるりと蛇のような動作で首をまわす。 「小さいお姉様!? 全裸!? なんだかよくわからないですけれども黒子は黒子は大歓喜!!」 息を荒げる黒子の様子に打ち止めは反射的に一方通行のかげに隠れ、そこからちらりと顔を出しておびえる。 「こ、このお姉さんちょっと怖いかも、ってミサカはミサカは戦慄してみる!」 「あああ、アンタはまたこのややこしい状況を余計にややこしくしてくれちゃって!」 わけのわからないまま美琴はとりあえず黒子の後頭部をはたく。 「とりあえずだなァ」 目をつぶり、考えるように眉間にしわを寄せた一方通行が口を開いた。 「オマエらはこっから出て行け!!」 その声とともに美琴と黒子は無事脱衣所から追い出された。 *** 「訳わかンねェよ……」 一方通行は昨日から妙に絡んでくる超電磁砲に頭を悩ませながら自動販売機コーナーの椅子に腰掛ける。 風呂で温まった身体も先ほどの騒動ですっかり冷えてしまった。 設置されたテーブルに頬杖を着いて浅いため息を吐く。 缶コーヒーでも飲むかとポケットを探るが、そもそも財布など持って来ていないことを思い出した。 なんだか自分自身が馬鹿馬鹿しくなり、小さく舌打ちして席を立とうとした。 「隣、よろしいですの?」 「あン? 超電磁砲……じゃなくてさっきの変態か」 唐突に現れた黒子は返事を待たずに一方通行の向かいに腰を下ろした。 「いかがです?」 黒子は一方通行の目の前にコーヒー牛乳の入ったビンをコトリと置いた。 「こんな甘ったりィもン飲めるかよ」 「あら? お風呂上りに牛乳は必須じゃありませんの? あのおチビさんからあなたがコーヒーがお好きだと聞きましたのでコーヒー牛乳にしてみたのですけれども」 それは科学的に根拠があるのか、などとどうでもいいことが気になったがとりあえずその質問は保留にしておいた。 何でこう自分に絡んでくるの無遠慮な人間ばかりなのだろうか、と一方通行は嘆息する。 「クソガキはどうした変態」 会話するのも億劫だがこう目の前に陣取られては無視するのも気が引ける。 というわけで目下のところの疑問をぶつけてみた。 「お姉様となにやらお話があるそうですわ。……それにしても、なぜ私が変態などと呼ばれなければなりませんの?」 心外だ、という風に黒子が大きな目をさらに見開く。それに対して一方通行は心底呆れた声を出した。 「自覚ねェのかオマエは」 「わたくしのはそんな邪なものではなく純粋な愛ですのよ」 自覚あンじゃねェか、と毒づいて一方通行は結局コーヒー牛乳に口をつけた。 「甘ェ」 ちょっと見ただけではわからない程度に量の減ったコーヒー牛乳を目の前まで持ち上げて軽く振る。 ちゃぷりと水面が揺られるが、白茶色の液体はこぼれそうでこぼれない。 その滑らかなガラスの曲面に映るのは苦々しい表情をした白い少年の顔。 反対側はツインテールの少女の黒い真剣な瞳を映しているのだろう。 「わたくし、お姉様とあなたの関係は存じ上げませんけれども」 牛乳瓶を間にはさんで年齢よりもずっと大人びた声で少女が語りかける。 「お姉様はあなたのことをずいぶんと気にしていらしてよ? 頭より先に体が動くお姉様にしては珍しくうじうじしておりますもの」 黒子に目を向けようとしない一方通行と対照的に、黒子は一方通行から視線を外さない。 「あなたもあなたでお姉様に何か感じるところがあるのでしょうけど」 「……あァン? 俺が? 何言ってんだクソガキ」 少し笑み含んだ声で、黒子は滔々と続けた。 「だってあなた、先ほどお姉様の顔を見ようとしておりませんでしたでしょう。 それに、お姉さまの知り合いであるこのわたくしのことも。 わたくしこう見えて、お姉様ほど鈍くはございませんの」 自動販売機の光が一方通行の頬を照らし、もともと白い顔をよけいに青白く染めている。 眠たそうな瞳からは感情を読み取ることはできない。 「どうか一度お姉様と正面からぶつかっていただけませんかしら。 お姉様は素直で単純ですから、ひねくれ曲がった回答では届きませんの」 「ンだァ? さっきから敬愛するお姉様に対してずいぶンな言い方だな」 黒子は一方通行の軽口を意に介さず続ける。 「これはお願いではありませんわ。お姉様を煩わせたあなたの義務ですの」 一方通行は答えない。 答えをはぐらかすようにコーヒー牛乳を口元に運んだ。 「……やっぱクソ甘ェわ。俺には合わねェ」 白い色の混じった液体は甘味が効きすぎていてつらい。舐めるように一口だけ飲んでビンを机の上に戻した。 「いちいち文句を言うのでしたら飲まなければよろしいですのに」 余裕を感じさせる口調が一方通行の癇に障る。子供相手に大人気ないとわかっているのでできるだけ低い声を出した。 「オマエが持ってきたんだろォが」 「それでもそれを手に取ったのはあなたですの。私に押し付けることもできたでしょう?」 無意識のうちに牛乳瓶を握る手に力がこもった。ビンを握る指先から一方通行の体温が奪われる。 「一度口をつけたものは責任を持って飲み干すべきですわ。違いまして?」 一方通行はそこで初めて黒子の顔をまともに見た。 黒子は安心したようにその赤い瞳を覗き込んで悪戯っぽくこう付け加えた。 「そのうち、その甘さが病み付きになってしまうかもしれませんわよ」 「ンなこたァ……ありえねェよ」 これだからガキは面倒だ、と思いながら手の中の甘ったるいコーヒー牛乳を一気に飲み下した。 *** 「あの人は天邪鬼だから、ってミサカはミサカはフォローしてみる」 主のいない病室で打ち止めと美琴は向かい合っていた。 打ち止めはベッドの端にちょこんと座り、美琴はパイプ椅子に腰を下ろしている。 「天邪鬼、ってそんな可愛いもんだとは思えないんだけど」 美琴は苦々しく言って、一方通行の凄んだ様子を思い出す。 あれが本心でないとしたら、ひねくれ方が尋常ではない。 「んー、確かに可愛いか可愛くないかって言われると悩みどころなんだけど…… で、でも寝顔は素直だったりするんだよってミサカはミサカはあの人の長所を無理やり述べてみる」 「それはそうだけど」 何気なく同意した美琴に打ち止めは驚愕する。 「お、お姉様、あの人の寝顔なんてどこで見たの!? ミサカだけの特権だと思ってたのにって ミサカはミサカは意外すぎる伏兵の登場に危惧してみる」 「あのね、何か勘違いしてるみたいだけど私が今日ここにきたときに勝手に寝てただけなんだからね」 「う、それくらい予測してたのってミサカはミサカは主張してみる……」 美琴は少しむっとしたように黙る打ち止めの頭をぽんぽんと撫でた。 「むうー、子ども扱いはやめてほしいな。ミサカの製造年月日は基本的に『妹達』とあんまり変わんないんだよ ってミサカはミサカはお願いしてみる」 そうは言われても見た目と言動が子供なのでどうしてもそういう扱いになってしまう。 「わかったわよ。気をつけるわ」 美琴は少し困ったように苦笑した。 その様子を見て、それまで頬を膨らませて宙に浮いた足をパタパタさせていた打ち止めの動きが止まる。 「……お姉様はやっぱりあの人のこと許せない?」 子供特有の甲高い声が妙に落ち着いて聞こえた。 「お姉様に言った言葉はあの人の本心じゃないよってミサカはミサカは断言してみる」 「10032号にもそれは言われたけど」 美琴は搾り出すようにゆっくりと自分の思考をまとめる。 「許せるわけないじゃない。一万人を殺しておいて、偶然にしろアイツの意思にしろたった一度の行為で帳消しにしようなんて 理解しかねるわ」 打ち止めは首をかしげてうーんとうなった。小さな腕を組む様は愛嬌たっぷりで可愛らしい。 「それはちょっと違うの。ミサカは死んでいった妹達のためにもあの人を許すことはない。 だからミサカのことは忘れて幸せに暮らしてねなんて絶対に言ってあげないんだからってミサカはミサカは意地悪してみる」 今一緒にいるのは罰の意味もあるんだよと不敵な微笑を浮かべた。 そしてぴっと人差し指を立てて打ち止めなりに権威のありそうなしぐさを演出する。 「でもあの人がミサカを助けてくれたのは事実。 ミサカに対する態度も、不器用だけどあの人なりに歩み寄ろうとしてくれている。 その上でミサカは結論付けた。あの人はミサカたちを二度と傷つけることはない。信じることができる、と」 その、美琴に伝えようと身振り手振りを交えて話す姿から打ち止めが真剣であることが伝わってくる。 美琴はその雰囲気に飲まれて口を挟めないでいた。 「ミサカのために命がけで立ち上がってくれた記憶をミサカはもう二度と手放したりしたくない、 ってミサカはミサカは正直な気持ちを告白してみる」 傾き始めた陽光が打ち止めを照らす。斜めに差し込む光がうつむく打ち止めの睫に影を作った。 「あの人が素直になれないのは、お姉様との距離を測りかねてるからなんじゃないかな お姉様がまっすぐすぎて、見ているのがつらいんだと思う」 それが本当だとしても、『実験』のときの一方通行の高笑いが美琴の頭から消えない。 同時に、脱衣所で打ち止めの面倒を見ていた姿を思い出す。 同一人物とは思えないと首をひねり、気付けば独り言のようにこう漏らしていた。 「そんな短期間で人って変わるものかしら」 「あの人の本質は何も変わってないよってミサカはミサカは 打ち止めは顔を上げて慈しむような表情を浮かべた。穏やかで優しい声が美琴に届く。 「ただ、気づいてしまっただけ。あの人の弱さに。ミサカも、あの人も。 だからミサカはあの人に守られているけどあの人を守ってあげたいってそう思うの」 照れたようにはにかむ打ち止めに美琴はついに降参した。 なんだか少し馬鹿馬鹿しくなってきた。これではただののろけにしか聞こえない。 「アンタ、ほんとーにアイツのこと好きみたいね」 パイプ椅子の背もたれに体重を預けて脱力する。 「好き? うーん、好きとか嫌いじゃないんじゃないかなあって ミサカはミサカはこの気持ちのうまい表現を探してみたり」 打ち止めは足を前後に振りながら悩む。ぶかぶかのスリッパが小さな足からすっぽ抜けた。 「10032号だっけ。あの子はアンタが一方通行のことを信頼しているって話してたけど」 美琴は飛んできたスリッパを拾い、打ち止めの足元にそろえてやった。 「信頼……確かにその言葉は一番近いかもしれない。でも信頼以上の何かをミサカは感じている。 もしかしてこれが好きってやつなのかなあ? ってミサカはミサカは未成熟な個体だからわかりかねるとか言ってみる」 都合のいいときだけ子供ぶる打ち止めのしたたかさを感じながら美琴は立ち上がった。 考え込む打ち止めの頭をまたもやぽんぽんとなでて窓の外を見る。 「ん、お姉様、もう行っちゃうの? ってミサカはミサカは残念がってみる」 空の色はうっすらとオレンジ色に変わってきていた。だが、面会時間の終了までにはまだ時間がある。 「私、今までうじうじしてたけど本当は物事には決着をはっきり着けたい性質なのよ」 美琴の声に力がこもっていることに気づいて、打ち止めはにっこりと微笑んだ。 *** 「こんなところにいたのね」 美琴は病院中を歩き回り、最後にたどり着いた屋上で一方通行を見つけた。 柵にもたれかかるようにして景色を眺めている一方通行の後姿は沈みかけの太陽の色に染まっている。 一方通行は美琴の声にゆっくりと振り返った。 「オマエの連れが鬱陶しくてな。ちったァ外の空気吸わねェとやってらンねェンだよ」 そう答えた一方通行はなぜかばつの悪そうな顔をしていた。 美琴は刺すような夕陽の光に目を細めながら一方通行に近づく。 二人の距離が近くなりすぎないところで美琴は立ち止まった。およそ3メートルといったところか。 「わざわざ俺を探してたのか。ずいぶん暇なんだな、超電磁砲」 柵に背を預け人を小馬鹿にしたように笑う一方通行に、美琴はなぜか怒りを感じなかった。 だから、冗談のつもりでこう言った。 「まったく、殺してやりたいほど憎たらしいわね」 一方通行は夕陽に背を向けているにもかかわらず、まぶしそうに眉を寄せると美琴から視線をそらした。 「別に殺りたきゃ殺りゃあいい。反射をしていない今の俺ならオマエでも簡単に殺せる」 予想外の一方通行の返答に美琴は虚をつかれた。 一方通行から笑みは消え、つまらなそうな淡々とした表情になっていた。 てっきり、『オマエみたいな三下に殺されるわけねェだろ』とでも言われると思っていただけに、美琴は返答に詰まった。 「何驚いてンだ。復讐する理由はオマエにもあるだろォが」 「……冗談に決まってるじゃない。私は無駄に人を殺したりなんてしない。それに」 美琴の視線と一方通行の視線が絡む。こうやってお互いが見つめあったのは、もしかしたら初めてかもしれない。 「あの子と話してきたわ」 「そォか」 興味がなさそうな声で返事を返す。 美琴の位置からは逆光になっているため、細かな表情の変化はわかりづらい。 「復讐なんて考えてないわよ。あの子達は」 相変わらず表情はわからないが、ピクリと一方通行の肩が動く。 だがそれだけだ。 「それどころか、呆れちゃったわ。ずいぶんとアンタのこと信用してるみたいだったから。 私にはちょっと理解できないけどね」 「……なら」 超電磁砲が一方通行を信用できないのなら。今ここで殺されても文句は言えないと一方通行は思う。 美琴はそんな一方通行の内心にかまいもせず一方的に言った。 「私はアンタを信用なんてできないしこれからもそんなことはないと思う。 でも、あんたを信じるっていうあの子のことは信じられるわ」 今度は一方通行が驚く番だった。 「それに、アンタを殺したら一体誰がこれからあの子たちを守るって言うのよ」 感情が未発達である妹達だけでなく、そのオリジナルまでこのように甘いことを言う。 一方通行からチッと舌打ちが漏れた。 「そろいもそろっておめでてェな、オマエの遺伝子ってヤツは」 美琴には打ち止めが一方通行のことを『天邪鬼』と評した理由が少しわかった気がした。 「一万回殺したことにたいしての償いは求めないわ。ただ、一回救った責任はきちんととりなさいよね」 なんだかどこかで聞いたような台詞に一方通行は憮然とする。 年下の少女にこうも諭されるのは気持ちのいいことではない。むずがゆさを感じて首の後ろを掻いた。 「ンなこと言われるまでもねェよ」 美琴に聞こえないように小さく小さく呟いたつもりだったが、ばっちり聞かれてしまっていたらしい。 意地の悪そうなニヤニヤした笑いが美琴の顔に張り付いていた。 こうなったら恥をもう一つや二つ上塗っても同じだ。一方通行はハァ、と大きなため息をついた。 「悪かったな」 ポツリと言った一方通行の声は小さすぎて凪いだ空気に溶け込んでしまいそうだった。 「さっきは無駄に挑発しちまって」 「は?」 なんだろう。これはまさか。 「ガキ相手に大人気なかったっつってンだよ」 だんだんとヤケクソ気味になる一方通行に美琴は呆けたように目を見開く。 一方通行が謝罪している。 その意味に気づいて美琴は思わずふきだした。 「ぷっ、アンタそれ……なに似合わないこと言ってんのよ」 「あァ!?」 「別に今更アンタが私にどんな態度とろうと気にしないわよ。 どんな態度とられたってこれ以上アンタの印象は悪くなりようがなかったもの」 一方通行はやはり言わなければよかったなどと後悔しながら美琴から視線をそらして足元のタイルに入ったひびの数を数える。 「何笑ってンだよ気持ち悪ィ」 一方通行の頬が夕陽の色よりも少し濃い赤色に見えたのは美琴の気のせいではないだろう。 「あー! あなたたちこんなところにいたの? ってミサカはミサカは屋上で向かい合う二人を発見してみる」 屋上への出口から小さな人影が元気よく駆けてくる。 人影、打ち止めは勢い余って美琴の周りをぐるりと一周し、一方通行と美琴と打ち止めで正三角形を作る位置で止まった。 「お話はちゃんと終わったかな?ってミサカはミサカは確認してみる」 絶妙のタイミングで現れた打ち止めに、一方通行は実は全部聞いていたのではないかと疑いのまなざしを向ける。 打ち止めはそんな視線は慣れっこのようでものともしない。 「あれ?なんかもしかして仲良くなった? ってミサカはミサカは二人の間に険悪な雰囲気がないことに気がついてみる」 「それはねェよ」 「それはないわ」 美琴と一方通行は打ち止めの問いに間髪入れずに答えた。 「おおっと、なんとステレオ攻撃ってミサカはミサカはびっくりしてみる」 美琴は打ち止めの頭をぽんぽんと撫でると一方通行に向き直った。 真剣な中にもどこか遊びがある、そんな目だった。 「ちょうどいいわ、この子の前で約束しなさい」 「?」 打ち止めはきょとんとして二人を見比べる。 「一方通行、アンタはこれからどうするの?」 「あァ……面倒くせェなァ」 苦々しい表情をした一方通行とは対照的に、美琴は楽しそうに構えている。 「なになにどうしたの? ってミサカはミサカは疑問符を浮かべてみるっ」 本日何度目かすでにわからないため息をついた一方通行は、疲れているようにも見えたが同時に穏やかさも感じさせていた。 一方通行は打ち止めの頭部に手を置いてわしゃわしゃと髪をかき乱した。 「わわ、いったいなんなのアナタまで!ってミサカは」 一方通行を見上げた打ち止めは、彼の口が信じられないほど優しく動くのを見た。 大きくはないがしっかりと意思のこもった声が打ち止めに届いた。 「え?」 「だからオマエは安心して馬鹿みたいに笑ってろ」 一方通行は早口でまくし立てるとくるりと回れ右をして抱きつくように落下防止の柵にもたれかかった。 しばらくポカンと口を開けていた打ち止めだったが、一方通行の落ち着かない背中を見て満面の笑みを浮かべた。 「――うん、もちろん信じてるよ、ってミサカはミサカはアナタにダイブ!!」 「おお!? クソガキ、ふざけたことしてンじゃねェよ!!」 猫がじゃれ付くように一方通行に飛び掛る打ち止めをみて美琴は細く長く息を吐いた。 まるで恋人同士じゃない、となんだか置いてけぼりを食らっている美琴は心の中で苦笑して空を見上げる。 太陽はすでに沈み、地平線を隠すビルの群れの輪郭をうっすら色づけているだけになっていた。 たそがれた空の天頂近くに、白く輝く一番星と小さく光る二番星が仲よさそうに寄り添っている。 その睦まじい二つの星を見つけて、きっと明日も晴れるだろうなと美琴は根拠もなくそう思った。 (おしまい) あとがき