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キャラクターリスト オリジナル 有栖零児 小牟 鎌鼬・蒼 鎌鼬・紅 鎌鼬・橙 悪天狗 業天狗 毒牛頭 毒馬頭 沙夜 片那 九十九 Xenosaga EPISODE 1 -力への意志- シオン M.O.M.O. KOS-MOS アレン ゴブリン ゴーレム スヴァロギッチ ベルーン ストリボーグ フェアリー グレムリン ソウルキャリバー 2 御剣平四郎 タキ シャレード Tales of Destiny スタン ルーティ ジューダス(Tales of Destiny 2)[=リオン(Tales of Desiny1)と同一人物] イーブルソード バトラー インクイジター ナイチンゲール コープスリバイバー ドルアーガシリーズ ギルガメス カイ イシター アキンドナイト ソウル・オブ・ドルアーガ クォックス ドルアーガ・クォックス シルバードラゴン ブラックドラゴン グリーンスライム ブラックスライム レッドスライム ブルースライム ダークグリーンスライム ダークイエロースライム グリーンローパー レッドローパー ブルーローパー メイジ ソーサラー ドルイド ウィザード ドルアーガ・ウィザード メイジゴースト ドルイドゴースト ウィザードゴースト ブルーナイト ブラックナイト ミラーナイト ハイパーナイト ドルアーガ・ハイパーナイト リザードマン レッドナイト ドルアーガ ディグダグ ホリ・タイゾウ ファイガー ファイガー・ザ・グレート キングファイガー プーカァ メイジプーカァ ダークプーカァ バラデューク トビ・マスヨ ブルー・ウォーム ブルー・スナイパー シェル・オクティ ギリィ・オクティ チューイング・オクティ ドロッピング・オクティ バガン バーニングフォース 天現寺ひろみ 源平討魔伝 平景清 安陀婆 閻魔 琵琶法師 源義経 武蔵坊弁慶 風神 雷神 骸骨 鬼姫 木曽義仲 源頼朝 槍骸骨 妖怪道中記 たろすけ 乙姫 ガマガエル ガマ親分 ワルキューレの伝説/冒険 ワルキューレ クリノ・サンドラ サビーヌ ズール ブラックサンドラ コアクマン(悪) シーザス カオックス ホノーリアン ロボティアン ダダッタ ブラックワルキューレ カムーズ ゾウナ ワンダーモモ ワンダーモモ ジャグロック クラブフェンサー キャノンポッター アマゾーナ 超絶倫人ベラボーマン ベラボーマン 爆田博士 わや姫 ベンジャミン大久保彦左衛門 ピストル大名 ブラックベラボー 鉄拳シリーズ 風間仁 三島平八 キング アーマーキング プロトタイプ・ジャック デビルカズヤ オーガ 木人 クロノアヒーローズ ?伝説のスターメダル? クロノア ガンツ ロロ 大巫女 ムゥ ジャイアントムゥ よろいムゥ・ぎん よろいムゥ・きん たてムゥ ジャイアントたてムゥ グリッヅ グリッヅファランクス ジョーカー ジャンガ VAMPIREシリーズ デミトリ=マキシモフ モリガン=アーンスランド リリス フェリシア レイレイ フォボス ザベル=ザロック キュービー キャプテンコマンドー キャプテンコマンドー フーバー ジェネティー 翔 ウーキー ウーキー・L ウーキー・R キャロル ブレンダ Z(ズィー) ドッペル シュトゥルムJr. シュトゥルム ドラック Final Fight マイク・ハガー 凱 ストライダー飛竜シリーズ 飛竜 東風 南風 ソロ ソロ・量産型 飛燕 グランドマスター STREET FIGHTERシリーズ リュウ ケン 春麗 キャミィ 春日野さくら 神月かりん キャミィ ローズ 豪鬼 殺意の波動に目覚めたリュウ ユーニ ユーリ ベガ 燃えろ!ジャスティス学園 島津英雄 水無月響子 魔界村シリーズ アーサー 死神 レッドアリーマー レッドアリーマーエース レッドアリーマーキング レッドアリーマー・ジョーカー 大魔王アスタロト 超魔王ネビロス ロストワールド 名無しの超戦士1P 名無しの超戦士2P シルフィー ダストドラゴン ロックマンDASHシリーズ ロック ロール トロンにコブン ホロッコ レッドホロッコ アイスホロッコ ゴルベッシュ ファイアゴルベッシュ ロックマン・ジュノ ガイニートーレン GUNSURVIVOR 4 BIOHAZARD -HEROES NEVER DIE- ブルース 鳳鈴 DINO CRISISシリーズ レジーナ ヴェロキラプトル アロサウルス
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限定、イベントを除く No. 氏 名 読み仮名 レア度 タイプ 守備位置 打席 ファン パワー ミート 走 力 守備力 投 球 球 速 球 威 変化球 制 球 成長タイプ 1-36 遠山 みちこ トオヤマ ミチコ ★★★ 制球 投手 右 140 5 5 5 5 右 125 15 16 30 早熟 1-49 小梅 コウメ ★★★★ 制球 投手 90 右 132 10 8 30 早熟 1-55 遠山 みちこ トオヤマ ミチコ ★★★★★ 制球 投手 180 右 125 18 19 33 天才 3-21 桜沢 えり サクラザワ エリ ★★ 守備 捕手 右 80 11 10 11 20 万能 1-50 神崎 かえで カンザキ カエデ ★★★★ 守備 捕手 右 140 11 10 11 21 万能 1-37 安西 レミ アンザイ レミ ★★★ ミート 一塁 右 140 10 21 11 11 早熟 1-51 のぶよ のぶよ ★★★★ パワー 一塁 左 140 30 10 5 5 早熟 2-61 遠山 みはる トオヤマ ミハル ★★★★ 走力 二塁 右 180 12 20 25 13 天才 3-51 藤咲 ほたる フジサキ ホタル ★★★★ 守備 二塁 右 140 11 10 11 20 万能 1-38 クレア クレア ★★★ パワー 三塁 左 110 21 10 11 10 早熟 2-46 クリステル クリステル ★★★ パワー 三塁 右 140 30 16 15 16 早熟 2-44 愛沢 翔子 アイザワ ショウコ ★★★★ 守備 遊撃 右 170 11 10 10 22 万能 2-39 森川 ちひろ モリカワ チヒロ ★★★ 守備 外野 右 110 10 11 10 21 万能 2-40 鳴海 さなえ ナルミ サナエ ★★★ 走力 外野 右 140 11 10 21 10 早熟 N-22 カイ カイ ★★★ 守備 外野 右 150 10 11 10 21 平均 2-60 烏山 ひな カラスヤマ ヒナ ★★★★ パワー 外野 左 180 20 12 11 11 万能改 N-29 ワルキューレ ワルキューレ ★★★★ 守備 外野 左 150 10 11 10 20 平均 2-54 蓮見 マリア ハスミ マリア ★★★★★ 走力 外野 右 200 11 12 25 11 早熟
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なかなか戻ってこない二人に、ルイズ達は焦りを感じていた。 本当にここで待っていていいのか? 彼らの後を追わなくていいのだろうか? 口には出さなくとも、彼女達の表情が如実にその心境を表していた。 シルフィードで上空から様子を見るか? とタバサは考えたが、恐らく木々に阻まれて何も見えないだろうと思い直し、その案を却下した。 そんな風に皆が皆ギアッチョ達の方に気をとられていた為――彼女達の背後で聞こえていた、ズズズと何かを引きずるような集まって行くような音を意識する者はいなかった。 最初に気付いたのはタバサである。経験から来る何かがゾクリと警鐘を鳴らしたのを感じて、彼女は後ろを振り向いた。 そこにあったのは、もはや八割方完成しつつあるあの大ゴーレムであった。 そしてタバサより遅れること数瞬、同じく振り返ったキュルケが驚愕の声を上げ、その声でルイズがようやく後ろを振り向いた時には、ゴーレムの形成部位はもはや一割以下を残すのみだった。 「あっははははははははは!!」 ついに完成したゴーレムの肩で高笑いをあげる女性に、三人の眼は釘付けになる。 ミス・ロングビルと名乗っていたその女性は、今や正体を隠そうともせずに彼女達を見下ろしていた。 「ふふふ・・・いいわねぇその表情 伝来の至宝を盗まれた貴族みたいないい顔してるわよ三人とも!」 心底楽しそうに言って、土くれのフーケはまた高笑いをする。 「騙したのね!!」 ルイズがキッとフーケを睨む。しかしフーケはニヤニヤと笑うのをやめない。 「ええ騙したわ」と愉快そうに返答し、なおも続けて挑発する。 「このままあんた達を潰しちゃっても面白くないわねぇ そうだ、先に一発攻撃させてあげるわ ほら、やってみなさいよ ん?」 完全にこちらを侮って挑発を繰り返すフーケに、ギアッチョではないがルイズはもうブチキレ寸前だった。しかしキュルケはそんなルイズを片手で制して、 「それ、嘘じゃありませんよね?ミス・ロングビル・・・いや、土くれのフーケ」 微笑を浮かべながら問う。 「失礼ね 私が約束を破るように見えるかしら?」 どの口がそれを言うかと思ったルイズだったが、キュルケはそ知らぬ顔で話を続けているので唇を噛んで耐えた。 「それじゃあ、お言葉に甘えさえていただきますわ」 ニッと笑ってそう言うと、キュルケはタバサに何事か声をかける。それを受けてタバサが手早く抱えていた箱を開け、キュルケに破壊の杖を手渡した。 「あっ!」 とルイズが驚くのと、 「な・・・!?」 フーケが驚愕するのは同時だった。キュルケはフーケが約束を反故にしないうちに詠唱を始める。 唱える魔法は炎と炎。炎の二乗で生成する、フレイム・ボールだった。 破壊の杖がどんなものかは知らないが、この魔法に破壊力がプラスされればフーケのゴーレムとてただでは済まないはずッ! 一瞬のうちにそう判断したキュルケは、破壊の杖をゴーレムに向け、魔法を発動させる! 「食らいなさい!フレイム・ボールッ!!」 「・・・・・・」 シン、と場が静まり返る。破壊の杖からは、炎の弾どころか火の粉一つ発生しなかった。 「あ・・・あれ?なんで?どうして?」 キュルケは焦って杖を上にしたり下にしたりしている。両脇の二人も、何故魔法が発動しないのか全く理解出来ないようだ。 フーケは怯えていた・・・ような演技からさっきまでの凶相に戻り、 「期待外れだわクソガキ共」 と吐き捨てた。 「なんですって・・・!?」 キュルケ達がゴーレムを見上げる。 「その杖ね、使い方が分からなかったのよ どうやら普通に杖として使うことが出来ないみたいでね で、メイジを呼び寄せて・・・使い方を盗んで殺すつもりだったんだけど やっぱダメねぇ」 「ガキなんかに期待したわたしがバカだったわ」と言って、フーケは今度こそ慈悲のかけらもない眼で3人を見下ろした。そして。 「じゃ、死になさい」 言うや否やゴーレムの鉄腕を振り下ろす! 「股下!」 タバサがとっさに叫んで駆け出す。キュルケとルイズがそれに続き、石人形の初撃は虚しく宙を打った。 柱のようにそびえる両の足の間をくぐると、後方でシルフィードが待機していた。 タバサはあの状況に流されることなく、使い魔に冷静な指示を送っていたらしい。 ルイズは改めて、このタバサという少女の実力を痛感した。 先頭を走っていたタバサが飛び乗り、それとほぼ同時にキュルケが飛び乗る。 「ルイズ」 タバサが最後尾だったルイズを促した。しかし―― ピタッ、と。ルイズは止まった。キッと後ろを振り向き、杖を握る。 「ちょ、ちょっとルイズ!何してるのよ!!」 キュルケが慌てて声をかけた。しかしルイズは振り返ることなく言う。 「あいつを倒すのよ!ゴーレムには歯が立たなくても フーケに直接魔法を命中させれば倒せるわ!」 キュルケは愕然とした。本気だこのバカは。 「何を言ってるのよルイズッ!!あの巨人の攻撃をかいくぐってフーケ本体に魔法を命中させるだなんて、そんな芸当私だって難しいわよ!! ここで逃げても誰もあなたをバカにしたりはしないわ!意地を張る必要はないのよ!ねえ!!早く乗りなさいルイズ!!頼むから早く乗ってッ!!」 キュルケは必死で訴える。ゴーレムはどんどんこちらに迫って来ている。 ルイズはカタカタと震えているが、それでも振り返らない。 「ルイズ!!」 タバサが珍しく語気を荒げる。ゴーレムはついにルイズを射程距離に捉えた。 「行って!」 ルイズが怒鳴る。キュルケも怒鳴る。タバサまで怒鳴った。そんな彼女らの状況など気にも留めず、ゴーレムが無慈悲に拳を振り下ろす! 「行きなさいよ!!」 と最後に大きく叫んで、ルイズは駆け出した。先ほどのタバサと同じ戦法で股の下をくぐる。タバサは一瞬苦虫を噛み潰したような顔を見せると、 「行って!」 シルフィードに指令を下す。間一髪、風竜はゴーレムの一撃を避けて飛び立った。 ルイズはゴーレムから距離を取って走る。射程範囲の外にいるうちに作戦を練ることにした。 ――プライドを、捨てる ルイズの考えた作戦は、それだけだった。長い詠唱で呪文を発動させても爆発するだけ。 何をやろうが爆発するなら、最短のコモン・マジックで魔法を乱発する! この速度の速さだけが、自分がフーケに勝っているものであるとルイズは理解していた。 今大事なのはプライドじゃない。そんなものを失うより、ギアッチョを失うほうがよっぽど辛い。よっぽど怖い。よっぽど、悲しい。 ルイズはごくりと唾を嚥下して、ふるふると首を振った。そうだ、それに比べればゴーレムなんて全然怖くない。バッと顔を上げると、ルイズは杖を握りしめてゴーレムへと駆け出した! 「一番最初に死にたいのはあんたかい!」 フーケの指示で、ゴーレムは三度腕を振り下ろす。ルイズはまたも足をくぐり抜けてそれを回避し、そして振り向きざま魔法を放った! 「ロック!」 ドウン!とゴーレムの背中で空気が爆ぜる。失敗だ。ルイズはすぐに気持ちを切り替え、振り向きつつあるゴーレムの足を前面からくぐり、ゴーレムの背面向けてもう一度ロックを唱えた。 今度はゴーレムの腰で爆発が起きる。失敗。 ――落ち着け・・・冷静に照準を合わせるのよルイズ・・・! うるさいぐらいに音を響かせる心臓を片手で抑えて、ルイズはまた足をくぐりに走る。くぐる。振り向く。放つ。失敗。くぐる。振り向く。放つ。失敗。くぐる。 振り向く。放つ。失敗―― 「ちょろちょろとしつこい鼠だね!いつまでも同じ手が通用すると思うんじゃあないよ!」 しびれを切らしたフーケが、続けて下をくぐろうとしたルイズにヒザを落とす! 「きゃああっ!!」 直撃コースだった。無駄だと知りつつ、ルイズは頭を庇う。 ドッグォオン!! ・・・足が落ちてこない。何故?ルイズがゴーレムを見上げると、その頭からは白煙が上がっていた。 「フレイム・ボールのお味はいかがかしら!?」 ウインドドラゴンから身を乗り出して、キュルケが杖を構えている。 「もうちょっと濃いほうが好みだわねッ!」 フーケが叫ぶと、全然堪えた様子にないゴーレムがシルフィード目掛けて腕を繰り出す!器用に避け続ける風竜の上で、 「出来る・・・ことを するッ!!」 ギアッチョに言われたことを反芻し、2発、3発と火弾を放つ。その言葉にタバサもコクリと頷き、得意技のウィンディ・アイシクルを撃ち放った。 空から降り注ぐ炎と氷の雨はゴーレムの体にこそ穴を穿たないが、 その肩に立っているフーケは生身なのである。ゴーレムは両腕でフーケを庇い、その場に棒立ちになった! 一番危険なポジションであるゴーレムの真正面にいたルイズだが、 ――チャンスは今しかないわッ!! 素早く深呼吸をして、すっとフーケを見上げる。グッと杖を突き出して、全精神を集中させる。冷静に、照準を合わせる。わずか眼をつむり――開く。 「・・・・・・ロック!!」 ドッガァァアアァッ!!! 「命中した・・・!!」 爆炎は、フーケの立っている位置、そのド真ん中で炸裂した。 「・・・やった・・・!わたしでも勝てた・・・ッ!!」 ルイズは嬉しさで泣き出しそうだった。ゼロのルイズが、土くれのフーケに打ち勝った・・・! しかし――煙が晴れるにつれ、ルイズの感動は徐々に絶望へとその色を変えた。 煙が晴れたそこでは―― 岩で作った盾の影で、フーケが微笑みながらルイズを見下ろしていた。 「・・・そんな・・・」 ルイズが後じさる。 「あんたの速射に対して・・・いつまでも無策でいるわけがないでしょう?」 フーケが汗を垂らしながら笑う。ギアッチョ達に差し向けたゴーレムとこっちのゴーレム、そしてこの岩の盾で、フーケの力はかなり消耗されていた。 「一旦身を潜めるしかないかねぇ・・・顔を見られちまったのは残念だけど」 ふぅ、と溜息を一つついて、 「だが、こいつをあんたに食らわせる余力ぐらいは残ってるよッ!!」 フーケはギン!とルイズを睨んだ。 バゴァッ!! ゴーレムの胸から岩塊が一つ、眼にも留まらぬ速さで飛来し―― ルイズの左足がはじけた。 ギアッチョとギーシュは、木々の隙間にフーケの大ゴーレムの姿を認めた。 「・・・ヤ ヤバいよ、ギアッチョ!!」 フーケの騎士達から逃げ回りながら、ギーシュが叫ぶ。 「・・・くッ、こいつら僕のワルキューレより強い・・・!」 フーケのゴーレムに、ワルキューレは一体また一体と破壊されていた。 「やかましいぜマンモーニ!無駄口叩いても始まらねぇッ!!」 ギアッチョはその逆、一体、次、その次とゴーレムの首を刎ね飛ばしている。 ギーシュのワルキューレは残り五体。それに対して、フーケのゴーレムは同じ五体を数える。 「もう少し逃げ回ってな・・・ とっととカタをつけるッ!!」 袈裟斬りに振り下ろされた剣をかわし、そのままぐるりと回りこむようにしてゴーレムの後ろに回る。 一瞬の動きで腕を引き、ゴーレムの首を斬り飛ばした。 逃げ惑いながらもギアッチョの腕前に感心していたギーシュだったが、 「あ・・・ッ!?」 あることに気付き、心臓が跳ね上がった。 「ギッ・・・、ギアッチョぉおおぉ!!」 「やかましいって言ったろーがマンモーニ!!」 「それどころじゃあないッ!見るんだシルフィードを!!『ルイズがどこにも乗っていない』!!」 「何・・・だとォオォ!?」 ギアッチョはバッと飛び下がると、上空に視線を移した。確かに、ルイズの姿はどこにも見当たらない。 「――あのバカ野郎 まさか地上で・・・」 他の可能性を考える。見えてないだけでは?いや、それはない。 風竜がどんな体勢になってもルイズの姿は見当たらない。一人でこっちに向かっている? これもないだろう。罠が張られているかもしれないところにむざむざルイズを行かせるようなことをする奴らじゃあないはずだ。 妙な意地を張って地上で戦っている?これが一番ありえそうだ。ルイズはプライドが高い。 己の貴族としてのプライドの為なら、命を捨てる覚悟で戦いに挑むこともあるかもしれない。 そして最後の可能性。ルイズは、もう既に―― ギアッチョはギリっと歯を噛んだ。考えている場合ではない。自分がすべき事は一秒でも早くルイズの元へ駆けつけることだ。 ――ホワイト・アルバムを全開にするか? ギアッチョはこの場を一気に打開する方法を考える。 ――いや、それはマズい オレのホワイト・アルバムは刀やスーツを作る精密さはあるが、敵だけを選んで凍らせるといった器用さはない・・・ッ ギアッチョの顔が苦悩に歪む。そんなギアッチョを見て、ギーシュは一瞬・・・ほんの一瞬考え込み、 そして。 「・・・う・・・うぉぉおおおぉッ!!ワルキューレッ!!僕を軸にッ!矢じりのように並べェェェッ!!」 ワルキューレに号令を発した!ギアッチョはイラついた顔でギーシュを見る。 「何やってるんだてめー・・・黙って逃げてろってのがわかんねーのか!!」 しかしギーシュは壮絶な意思を持った瞳でギアッチョを睨み返す! 「行けギアッチョ!!ここは僕が食い止めるッ!!」 「正気で言ってんのかマンモーニッ!!てめーじゃ勝てねえのは分かってるだろうがッ!!」 「いいから行くんだッ!!」 ギーシュは怒鳴る。 「ここだ・・・!ここで、『覚悟』を決めるッ!!僕はここで、『覚悟』を身につけるッ!!」 ギアッチョはギーシュを見た。ギーシュの眼に、迷いや怯えはない。侮りも思い込みも、恐怖も後悔もない。ギーシュは今、ここで覚悟を知ってやると『覚悟』していた。 「・・・『覚悟』とは 犠牲の心じゃあねえッ! それだけは覚えておけッ!!」 自分を殺した男の言った言葉を、ギアッチョは今ギーシュに伝える。 そして言うが早いか、ギアッチョは後ろも見ずに駆け出していった。 ギーシュは彼に満足げに眼を遣ると、すぐにフーケのゴーレムに眼を戻した。 「いくよワルキューレ・・・『覚悟』を決めろッ!!」 ギーシュはそう叫ぶと、心の中でワルキューレに指示を出す。矢じりの隊形のまま、ワルキューレは右端のゴーレムに突っ込んだ! 先頭のワルキューレの斬撃をかわし、ゴーレムがワルキューレを真っ二つに切り裂く。 しかしギーシュはそれを見越していた。先頭のワルキューレがやられる前、既にその右後ろに陣取った二体目が、先頭のワルキューレの首に向かって剣を振るいはじめていた! 唐竹割りにされた自らのワルキューレの首を更に自分のワルキューレで薙ぎ、そのままフーケのゴーレムの首も刎ね飛ばす! 間髪いれず左側から襲ってくる二体目のゴーレムに、ギーシュの左前に構えていたワルキューレが突きを受けて倒れ――その影から、ワルキューレの槍を拾ったギーシュがゴーレムの首を突き飛ばした! 「肉を斬らせて――骨を断つ・・・か」 ギーシュはようやく気付いた。自分が負けていたのは、力の差があったからだけではない。 朝、オスマン達の前で仲間に頼らないと誓ったにも関わらず、ギーシュは知らず知らずのうちにギアッチョにべったり頼っていた。 自分のワルキューレが倒れるところは見たくない。ある程度の安全圏からサポートしていれば、ギアッチョがケリをつけてくれる。 そんな甘っちょろい考えが、ワルキューレの動きを、攻撃を、判断を、ハンパに鈍らせていたからだ。 それが理解出来たならば、例え相手がトライアングルとはいえ、完全遠隔操作のゴーレムなどに負けるわけがないッ! ギーシュは片手に槍を構えて、高らかに宣言する。 「これで僕のワルキューレは三体・・・お前達は二体だッ!! 僕は逃げない・・・お前達を恐れない そして侮りもしない!! 我が名はギーシュ・ド・グラモン!我が友ルイズの為、そして我が道の師、ギアッチョの為ッ!!今この場で、お前達を斬り伏せることを『覚悟』するッ!!」 自分で槍を握ったことなどないにも関わらず――その姿は雄雄しく、そして気高かった。 ギアッチョは走る。走りながら、何故自分はここまで必死になっているのかと考えた。 たった数週間前に知り合ったばかりのガキのために、何故オレは血管がブチ切れそうな勢いで走っているんだろうか。 ギアッチョは考える。オレが生きていた頃なら、こんなことはありえない。 こんなどっちつかずで下手をすれば両方を失ってしまうような判断はしないはずだ。 ――いや。そうじゃない。生きていた時の判断とは、つまり暗殺者としての判断ということだ。 そういうことじゃない。ハルケギニアにいるオレは、トリステインにいるオレは暗殺者じゃあない。使い魔だ。 「使い魔のギアッチョさんよォォ・・・おめーは何故走ってるんだ・・・?」 解らなかった。あらゆる感情の摩滅した世界で生きてきたギアッチョには、自分の心など解るはずもなかった。だが、理由は解らなくても一つだけ 理解していることがある。 あいつを死なせたくない、自分はそう思っている。それだけは解った。だから。それだけをともし火に、ギアッチョは走る。 デルフリンガーもまた焦っていた。こんな嫌な予感は何年ぶりだろう。 守ると誓ったばかりなのに。ルイズを守ると約束したばかりなのに―― 今朝までロクに会話も交わしたことがなかった娘だった。だがそれがどうした?そんなことは関係ないしどうでもいい。 自分はルイズを守りたいと思った。だから誓った。ならば自分はデルフリンガーの名にかけて誓いを果たす。それだけだ。 ・・・なのにどうして自分には足がついていないのか。デルフが今日ほど己を呪った日はなかった。 雑草の生い茂る地面ではホワイト・アルバムでスケートなど出来ない。 鬼のような形相で森を駆け抜け、小屋を中心に広がる空き地が目前に迫ったその時、ギアッチョとデルフリンガーがそこに見たものは、 「――バカな・・・」 左の足首を吹っ飛ばされて地面に倒れるルイズと、それを今まさに踏み潰さんとする巨大な岩の足だった。 何もおかしいことはない。十分予想していた状況だった。しかしギアッチョはそう言わずにはおれなかった。 そしてそれは、デルフリンガーも同じことだった。 「・・・嘘だろ・・・」 ギアッチョは足を止めない。茂みを掻き分け、空地に飛び込み、ルイズに向かって走り続ける。しかしその頭は、悲しいほど冷静に状況を計算をしていた。 ルイズまでの距離、25メートル。到達所要時間、約3.4秒。 ゴーレムの右足がルイズを踏み潰すまでの時間、2秒未満。 絶望だった。 「うおおぉおあああああああああああああ!!!!」 ギアッチョが絶叫する。いくら叫んだところで、いくら怒ったところで、もう辿り着けない。間に合わない。ルイズは――救えない。 何が最強のスタンドだ。絶対零度は全てを止める?じゃあやってみろよッ!!今ここで!!この距離で!!2秒以内にあいつを止めてみろよッ!! 怒りと無力さと絶望に駆られて、ギアッチョはただ叫ぶことしか出来なかった。 ――たとえ天が落ちてこようが・・・ デルフリンガーもまた、絶望していた。今朝誓ったことを、5時間も経たないうちに破ってしまう。 そしてその場を自分はただ眺めているだけ ――これほど滑稽なことがあるだろうか?デルフリンガーはただの剣だ。目の前で何が起ころうと、彼は常にただ見ていることしか、 この身が、砕け散ろうが―― 「――あ、ああ・・・ああぁああぁあああああああ!!!」 稲妻に打たれたように、デルフリンガーは思い出した。こいつは俺の『使い手』だと。そして、それだけで十分だった。 「ダンナッ!!俺を抜けェェェ!!!」 喋る魔剣は絶叫する。 「イカレてんのかてめーは・・・ッ!!少し黙って」 「いいから早く抜けェエェェェーーーーーーーーッ!!!!!」 鬼神の如きデルフリンガーの絶叫にギアッチョは尋常ではない『意思』を見出し――柄に手をかけ、一気に引き抜き。 ドンッ!!! その瞬間、ギアッチョは消えた。いや、正しくは眼にも留まらぬ速さに『加速』した。 ギアッチョを見ていたものがただ出来ることは、一定の間隔で土煙を巻き上げて弾ける地面で彼の向かった方向を把握することだけだった。 ギアッチョとデルフリンガーは一瞬にして距離を詰め、ルイズを突き飛ばし、 ズン!! 彼女の身代わりになった。 今、何が起きた? 誰もが状況を上手く認識出来ず、場は沈黙に包まれた。 ルイズが助かり、ギアッチョが死んだ。最初にそれに気付いたのは、キュルケとタバサだった。 ゴーレムがその手でフーケを庇っている限り、彼女達にゴーレムを止める手段はなく ――ルイズが踏み潰されるその一瞬、キュルケ達に出来たことは彼女の名を叫ぶことだけだった。 しかし巨大な岩塊がルイズに打ち下ろされる寸前、誰かがその下に飛び込みルイズを弾き飛ばした。誰か?誰かって何だ。 ギアッチョ以外に誰がいるんだ。 キュルケは、そしてタバサはまさに茫然自失だった。死んだのはルイズではない。 得体の知れない平民の使い魔だ。ルイズは生きている・・・。喜ぶべきじゃないか。 頭ではそう思っているのに、キュルケは震えが止まらなかった。 隣のタバサはいつもと同じく何も喋りはしないが、その瞳は信じられないものを見たかのように見開かれていた。 次に事態を理解したのは土くれのフーケである。 無詠唱で魔法を使うメイジという一番の危険人物が死んだことに気付き、フーケはヨハネの首を貰い受けたサロメのように笑い狂った。 ちょこまかとうるさい落ちこぼれを殺して逃げるつもりが、死んだのは何をしでかすか解らない異端の平民だったのである。 信じられない幸運にフーケは狂喜した。 何かに突き飛ばされて呆然とへたり込んでいたルイズは、その哄笑で ようやく理解した。自分を突き飛ばしたギアッチョが、身代わりになって死んだ ということを。 「・・・・・・・・・・・・・・・嘘・・・・・・」 ルイズは長い時間をかけて、やっと一言言葉を吐き出した。 「嘘だよね・・・ギアッチョ・・・・・・」 ルイズの声は震えていた。ゴーレムのことなど完全に忘れてギアッチョの 『いた』場所へと歩き出そうとするが、立ち上がろうとした瞬間につんのめり 無様に倒れる。ルイズは自分の左足が吹っ飛ばされたことを思い出し、 だがそれでも一歩ずつ這って行く。ギアッチョがこんなことで死ぬわけない。 きっと生きている。すぐに足を壊して出てくる―― しかし少女の淡い期待は、地面に滲む鮮血によって脆くも打ち砕かれた。 ゴーレムの足に接していた場所から流れているそれは紛れも無く ギアッチョの血液であることを悟り、ルイズはその場に崩れ落ちた。 「返事してよ・・・・・・ねえ」 ルイズは消え入りそうな声で問いかける。 「生きてるんでしょ・・・悪い冗談はやめてよ・・・」 しかしギアッチョのいた場所からは何も返ってはこない。聞こえるのは、 壊れたように鳴り続けるフーケの笑い声だけだった。 「・・・そんな・・・・・・ギアッチョ・・・・・・・・・デルフ・・・」 自分が。自分が殺した。その事実に、ルイズは涙すら出なかった。 そろそろ殺すか、とフーケは思った。 今にも死にそうに打ちのめされているルイズを見て若干の憐憫が沸かないでもなかったが、無理やりバカ笑いをしてそれを打ち消した。 自分の正体を知った者を生かしておくわけにはいかない。 ルイズを殺し、こいつの左足を打ち抜いた岩塊で風竜の翼を貫く。 あとは二人を踏み潰すだけだ。 「悪いわねお嬢ちゃん・・・あの世で仲良くしなさいなッ!!」 グッ!! 「・・・・・・・・・?」 ルイズを蹴り飛ばそうとしたゴーレムの右足が、動かない。 いや、正確には――地面から離れない。 「・・・な・・・によ これ・・・・・・」 おのがゴーレムの足を見下ろして、フーケは戦慄する。ギアッチョを踏み潰した右足が、氷によって完全に地面に固定されていた。 そしてその氷の中から声が響く。彼女にとっては地獄の底から響く声、そして『彼女達』にとっては百年間も待ちわびていたように思える声だった。 「・・・・・・ギリギリだ・・・ ええ・・・?クソ・・・ ギリギリ・・・発動出来たぜ・・・」 その声にフーケの心臓は凍りつく! 「そして・・・発動しちまったからにはよォォォ~~~・・・・・・てめーは絶対に逃がさねェッ!!」 何をする気か知らないが・・・これはマズいッ!!そう思ったフーケだったが、ゴーレムの足は大地と同化しているかのように動かない。 そして―― 「ホワイト・アルバム・・・ジェントリー・ウィープスッ!!!」 ビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキィッ!!! 裏切り者を断罪する、氷結地獄コキュートス。まるでそこから響いてくるような声が、彼の姿無き半身を呼び起こす!岩人形の右足を覆う氷は電光石火の如く脛を、膝を、腰を駆け上り、右足から頭に至るまで、その全てが完全に凍りついた! 「なんなのよ・・・なんなのよこれェェェ!!」 無詠唱、という単語が彼女の脳裏によみがえった。彼女はうわごとのように繰り返す。 「こんなの・・・こんなの私達の魔法じゃない・・・!!」 しかしそんな彼女の怯えなど一顧だにすることなく、ギアッチョは無慈悲に宣言する。 「・・・ブチ・・・・・・割れな・・・・・・!!」 バガシャアアアアアァッ!! 千里に響く轟音と共に、ゴーレムの体が端から崩落を始める! 「ま・・・マズい・・・!!逃げないとッ!!」 フーケは慌ててレビテーションを唱えるが、その体は毫末も上昇することはなかった。 「な・・・なんで・・・・・・ハッ!?」 フーケはようやく気付いた。自分の足が、氷によって完全にゴーレムと固定されていることに。 そして彼女にもはや「火」を使う力は残っておらず―― 彼女は己のゴーレムの破片と共に、惨めに、そして無残に墜落した。 フーケの凍りついた両足は完全に割れて分断されていたが、レビテーションで逃げることも出来ないようにギアッチョはホワイト・アルバムで容赦なく地面と固定させた。もっとも、フーケはその時点で完全に意識を失っていたが。 とにかくそうしておいて、ギアッチョはルイズの元へ駆け寄る。 「ギアッチョ・・・!!」 ルイズはおのが使い魔の姿をはっきりと確認し、そこでようやく――そして どうしようもなく、ぼろぼろと涙をこぼした。ギアッチョはすたすたとルイズに近寄る。 言いたいことは色々あるが、とにかく一発ブン殴ってやるつもりで手を上げた。が。 がばっ!と血まみれの自分に抱きついてただごめんなさいと繰り返す少女をブン殴ることは、流石のギアッチョにも出来なかった。 振り上げた手をゆっくりと下ろすと、彼はとりあえず溜息をついた。
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「オールド・オスマン。食堂で生徒が騒いでいまして、 何事かと思い見てまいりましたら・・・・『彼』が、騒ぎを起こしています。」 「ほう、あのカメレオン君も、やっと人の目に映るようになったんじゃの。」 「真面目に聞いてください!大騒ぎなんですよ!」 コルベールが血相を変えて、一冊の古書を差し出し『ガンダールヴです!』と部屋に飛び込んできたのはつい昨日の事だ。 なんでも、彼(ミス・ヴァリエールが彼を見なかったかと、散々聞いて回っていたので覚えてしまった。イルーゾォという変わった名だ。) の左手に現れたルーンが、始祖ブリミルの伝説の使い魔、『ガンダールヴ』と同じものだというのだ。 「ガンダールヴが透明になれるという記述は何処にもないようじゃの」というと、やはりふざけないで下さいと突っぱねられた。 「ミスタ・コルベールの言うように強力な使い魔なら、ミスタ・グラモンが危険ではないでしょうか? 『眠りの鐘』の使用許可申請も出ていますし・・・・」 「何、彼だってドットといえどメイジなのじゃ。そう一方的に負けはすまい。それに」 「それに?」 鏡は再び、広場に対峙するイルーゾォを映し出していた。 ギーシュと彼の間には、青銅の甲冑兵『ワルキューレ』が立ちふさがっている。 その長い槍と反対に、イルーゾォの手には短いナイフが一本だけ。 「彼にはちと、分の悪い戦いかも知れんの。」 ヴェストリ広場についてみると、その中央に糞ガキが胸を反らせて立っていた。 「逃げずに来た事は褒めてやろう。『平民』に僕らの誇りが理解できるか不安だったんだ。」 いつの間にか食堂から流れていたギャラリーは、遥か遠くでわっと沸いた。 「この『青銅のギーシュ』の『ワルキューレ』が君の相手をしよう。平民には過ぎるぐらいだが、ライオンはウサギを狩るのでも全力を尽くす。」 『青銅のギーシュ』?(『鏡のイルーゾォ』みたいなもんか?)ならばこの銅像が奴の能力。 しっかりと地面を踏みしめこちらに近づいてくる――――実体を持っている?だとしたら願ったりだ。 「勝負はどちらかが音を上げるまで。もっとも上げるとしたら君だけど・・・・立会人はここに居る全員だ、いいね?」 「構わない。」 糞ガキの薔薇の動きを合図に、青銅像が馬鹿正直に殴りかかる―――― 顔面を狙った攻撃を、姿勢を下げて避ける。そのまま後ろに抜ければ女騎士は緩慢に振り返った。 右腕から振り下ろされた槍(こんなもん止まって見えるぐらいだ)の横っ腹をマン・イン・ザ・ミラーが薙ぎ、 体制を崩したそいつの首元をナイフで掻っ切る・・・・! やはり青銅、傷はついたが硬く、刺さったナイフが途中で止まる。(本体にダメージは無い様子) 舌打ち一つして引き抜き、バックステップで距離をとり――――次の瞬間には地面に突っ伏していた。 不意の攻撃だ、背中から!第二撃を警戒して素早く起き上がる。 「ギーシュ!一人相手にワルキューレ二体なんて酷いんじゃないの?!」 昨夜の女の声が聞こえた。二体!そう早くない動きの変わりにコンビネーションか、複数のスタンドだなんてついてない。 二体に背後を見せない位置まで身体をずらし・・・・更に腕をつかまれる。 「言っただろう?全力を出すと・・・・二体で終わると思われちゃあ困るね!」 咄嗟相手の腕にナイフで傷をつけ、そこをマン・イン・ザ・ミラーで強打する。 右腕を失い一瞬動きを止める一体をカヴァーし、もう一体が切りかかる。すんでで避ける。全部で四体、まだいるか? 距離をとるのはナシだ、多いなら同士討ちを狙う。避ける逸らすなら出来るだろうが、これ以上背中から攻撃を貰うのはヤバい。 デカく振りかぶった一撃を避けて先の一体の横を抜け、再度首を狙う。先程のとは違う一体。 これも途中で刃が止まるが、引き抜きざまに肘で強打すると大分傾いだ。 正面、更に二体から攻撃。目の前の銅像で受け(弱った首が見事に吹っ飛んだ。相手は馬鹿か)マン・イン・ザ・ミラーで殴りかかる。 右手から落としたのが一体、首をもいで動きを止めたのが一体、さっき切れ込みを入れた奴もやはり容易に首が落ち、残り一体・・・・ 「い、意外とやるじゃあないかッ!」 違う、増えた。無限増殖か?動かないのを抜かしたら5体だ。 おまけに痛覚なんざ無いようで、千切れた右腕で殴りかかってくる。5体同時は流石に避けきれず、いくらかマトモに食らった。畜生ッ! 「意外とよく動くな・・・・だけど僕のワルキューレは同時に7体、お前を確実に仕留めるぞ!」 内臓にクる一撃を受けて、もんどりうって身体を投げ出す。続く攻撃が右足に降り、重たい金属の感触が脹脛の骨を踏み潰す。 「・・・・ッ、ぐ、ぁ」 絶えろ!まだ左足が動くじゃあないか、立ち上がれ・・・・!次いで右腕をもへし折ろうと迫る一撃を左手で受ける。 ビリビリ痺れ、左手の甲が溶けるように熱く滾る。一瞬視界が白んで頭を振った。 足を引きずり立ち上がる。再び右腕へ攻撃。倒れこむように避け、マン・イン・ザ・ミラーが再び頭を飛ばしにかかる ・・・・が、今度は明らかにパワーが負けた。一瞬怯んだ銅像は、構わず俺の腹を殴る。 痛い、痛い、泣きそうだ。右足は熱暴走したみたいに滅茶苦茶な信号を脳に送り、そのくせちっとも働かない。 無我夢中でナイフを振るい、三体目の首筋を抉る。「どうした『マン・イン・ザ・ミラー』、頭を・・・・ッ」 背中に迫る斬撃をマン・イン・ザ・ミラーが受けていた。 実体からスタンドへの攻撃は無効。それでもパワー不足のマン・イン・ザ・ミラーは重圧に腕を震わせ、その衝撃はオレへと帰ってくる。 右腕から飛び火したみたいに左手まで熱を持つ。焦げ付く痛み同士相殺してやけに意識がハッキリする。 (また助けられた――――『マン・イン・ザ・ミラー』。背中は、お前に預けていいんだな?オレを守ってくれるんだな――――) どっと安心感が押し寄せ、しかし同時にオレの刃は鈍る。『一人で殺る』と決めたって言うのに。 渾身の力で三体目の首を思い切り殴り(拳の裂ける感触がした)それでも繋がった部分はナイフで裂いた。 ぐっと握りこむたびに、力が湧き出るような気がする。別のワルキューレが二体、そのナイフを叩き落とそうと手を伸ばし、 それを掻い潜る様に懐へもぐりこむ。胸を抉ってやったが、意にも解さない。細い部分じゃあないともぎ取る事も出来ないだろう。 背後、マン・イン・ザ・ミラーに逸らされた槍が、右肩を抉る。 大丈夫だ、傷は浅い!右足と違ってまだ動く・・・・! そう。だが、右足は動かない。 フットワークを失ったオレは、マン・イン・ザ・ミラーが止められなかった刃のいくつかを避けられず、 全身に傷を増やしてゆく。 暫く一進一退の攻防が続き、動くワルキューレは残り3体まで減った。だが此処へきて、ついに青銅の重い打撃を右手で受ける羽目になる。 強い痺れに思わずナイフを取り落とす―――― 途端。 今まで気にならなかった、全ての傷の痛みと熱が、倍以上に膨れ上がって襲ってきた。 とっくに全身ボロボロで、右足が無事だって立っていられる状態じゃあなかったのだ。 意思と関係なく身体が弛緩する。何度目か地面に横たわる感触で、戦意が音を立てて崩れていく。 (駄目だ、駄目だ、泣くなよイルーゾォ!ここで負けたらお前は暗殺者じゃない!) 腕を伸ばしてナイフを掴もうとしたところで、ワルキューレが『それ』を踏み砕いた。 「ハハ・・・・そんなにコイツが怖いのか、坊ちゃんよお。ナイフが怖くて仕方ないんだな・・・・」 「負け惜しみを言うなよ、平民。」 オレの右手は歯痒さとともに残骸を掴む。柄も刃も砕けて欠片ばかり、とてもナイフとは言えなかった。 先ほどまで溢れていた力が戻らない。何故だろう?武器を手にすれば戦える。そんな確信があったのに。 考えて、思い至る。 欠片だって急所に突き立てれば命を奪えるだろう だが、そこまで手を伸ばす余力すらなかった。 オレはもう、どうやったって――――コイツを『武器』だと思えないのだ。 ギーシュ、『青銅のギーシュ』と呼ばれる彼は、造花の杖を振りワルキューレを退ける。 悠々とした足取りでイルーゾォに近づき悪戯に、蹲る男を覗き込んだ。 油断と驕りからくるその行動は『暗殺者』を激昂させるに十分だったが、その激情があって尚、イルーゾォの身体は動かなかった。 「謝れば許してやるさ。本当は土下座ぐらいさせてやりたいが、今のお前には無理だろうしね!」 「・・・・・・・誰、が・・・・・・ッ」 頭上から振る嘲笑に打ちのめされる。 欠片を引き寄せ、これで戦うんだと自身に鞭打つのに、歯向かうように動かない全身。 「強情を張るね。そんなもんでどうしようって言うんだよ、そんなのもう――――」 強く握りすぎて血の滲む銀の欠片に映る、自分の情けない泣き顔と、それを笑う『青銅のギーシュ』。 「『鏡』くらいにしか使えないじゃないか。」 少年の嘲笑は刹那、銀の欠片に飲み込まれて消える。 「『マン・イン・ザ・ミラー』・・・・オレも、奴も『鏡』だと思うなら・・・・・『許可』、出来る・・・・・ッ!!」
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ガキンッ 叩きつけられるゴーレムの鋼の拳を、デルフリンガ―で受け流し刀身が鈍い音を立てる。 「一応褒めておいてやるぜ、その頑丈さ」 「俺の偉大さが判ったかアヌ公」 「ケッ、褒めてんのはお前を作った刀鍛治だぜ」 軽口を叩きながらも、くるくると身を翻しその鋼鉄の腕を、アヌビス神で斬りつける。 キンッ しかし高い音がして弾かれる。 「くくっ、鋼鉄のゴーレム……その硬さ憶えたぞッ!」 しかし二度目の斬撃は鋼鉄をバターの様にあっさりと斬り飛ばす。 動きが重たいゴーレムの周りを、女神が舞うかの様に華麗にワルキューレが跳び、そして跳ねる。 「お仲間が使い手だった時はおどれーたがよ。こうしてきちんと剣の癖して剣を操れるってんだから納得だ」 ゴーレムの後ろを取りながら、鋼鉄の部分をアヌビス神、そうで無い部分をデルフリンガーと器用に使い分けながら次々と斬りつけて回る。 身体から引き出せる力を最大限とし、人の目にも止まらぬ速度で、今までのゴーレムの再生速度を越える速さで四方から斬撃を加え続ける。 タバサ操る風竜のシルフィードが一瞬、アヌビス神らの背面を翔け抜ける。その一瞬タバサがこくりと頷くのが見えた。 大きく跳躍し、魔剣、妖刀、二振りを持ってして大上段から一気にゴーレムを上から下へと斬り裂き、其の侭跳ぶ様に後ろへ下がる。ワルキューレの青銅の身体が、その負荷に耐え切れずに罅割れを大きくし、肩が、背が、砕け崩れる。 自らの側を旋廻し飛翔する風竜に向ってアヌビス神が怒鳴るように叫ぶ。 「ギィィーシュ!!」 叫びに応える様に花びらが舞い、ワルキューレの砕けた身体を次々と健常体へと『錬金』していく。 ギーシュのその動きに続けてタバサが杖を大きく振るう。それと共に巨大な竜巻が現れ、ゴーレムを包み込む。 「次は、あ・た・し」 キュルケが杖を振るい巨大な炎を放ち、竜巻を火炎竜巻へと変える。新鮮な酸素を次々と吸い込む竜巻が炎をより高熱とし、渦巻く高熱の風が、全身切裂かれたゴーレムの全身の構成をぼろぼろにしていく。 「次はあなた」 タバサが少し呆然とその様子を伺っていたルイズを振り向く。 「わ、わたし?」 「これ以上は打撃や衝撃を与えないと駄目。風では足りない。氷は炎で弱る」 タバサがこくりと頷く。 「あの火の中ではワルキューレは耐えられない」 つまり失敗魔法の爆発力で攻めよと彼女は言っている。 ぱしんっとキュルケがルイズの背を叩く。 「わ、わわ、判ったわよ!」 息もつかせぬ速度で次々と、もっとも詠唱が短いルーンを唱える。 火炎竜巻に翻弄されるゴーレムの巨体の彼方此方で、ボンッボンッと爆発が起こり。その脆くなった部分を崩していく。 竜巻が収まった後には、身体を白ませボロボロになったゴーレムが佇んでいる。しかしその身体は未だ動きを止めない。 ワルキューレの身体を持ち直したアヌビス神とデルフリンガ―が、大きく吼え、ゴーレムへと飛び掛る。 脆くなった肩を踏みつける。 半壊した片腕を斬り捨てる。 その頭部を叩く様に斬りつけ砕く。 「おれ的にイメージは良くねえけどよォー」 「あ、何だって?」 「気にするな、行くぜェー」 胴を、狂った様に両の手を振るい次々と斬りつけはじめる。 「斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る」 連撃の負荷に耐えかね、ワルキューレの肩が、腕が次々と皹を走らせ、ギシギシと疲労音で泣き声を上げる。 「か、勘弁してくれ……た…まえ…」 ギーシュが顔を真っ青にして、ふらふらしながら、シルフィードの上から薔薇の花びらを撒き散らす。 それはタバサが起こした小さなつむじ風と共に、花吹雪となってワルキューレを美しく彩る。 ゴーレムの上半身が細切れとなり風に散る。 花吹雪と共に力を取戻したワルキューレを酷使し、其の侭ゴーレムの、腹、腰へと斬撃を加える。 「もういっちょ行くぜデルフ!!」 「おうよ、いっちまえ兄弟!!」 「かァァァァァ―――――― 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る 斬る斬るKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLキッルァァァァァァ―――!!!!」 足首を残しゴーレムがサイコロの様に切り刻まれ散る。 それは魂運ぶ戦乙女が齎す死の踊り。 「やっぱおれ、これはイメージ悪いな。オラオラ見てえだ」 「オラオラってなんだ?」 「気にすんな」 そしてワルキューレの身体がついに耐え切れず次々と崩れる。 肩が、腕が、肘が、掌が、首が、胸が罅を走らせ砕ける。 アヌビス神とデルフリンガ―が、崩れる手から取り落とされ、青銅と土の山の上に突き立つ。 「やったの?」 キュルケが下の様子を首を伸ばす様にして覗き込む。 「はは……これで終ってくれていないと僕はもう駄目」 ギーシュはついに力を使い果たし、気を失う一歩手前とばかりにシルフィードの上に突っ伏す。 ルイズは自分の手の平を見て、何かを握る様にぐっと力を入れる。 タバサは気をまだ抜かずにじぃーっと下の様子を伺い続ける。 「駄目……まだ」 残った足首からゴーレムが回りの土を取り込みながら再生を始める。 「うっそォーん」 「だ、だだだ、駄目じゃねえかァッ!」 「脚だ、脚残したからっ」 「ア、アホォッ、何で最後まで斬らなかったんだっ」 「ちょ、ちょっと地面に埋まってたから、てへっ」 「てへっじゃねえ、この若造ッ!」 「と、兎に角やり直しだ。ギィーッシュッ!!」 アヌビスの声に、上空からタバサが腕で×の字を書いて答える。 その僅かなやり取りの間にゴーレムは腰の辺りまで再生している。 「マジかマジかマジか」 「そりゃドットメイジにあそこまでやらせちゃ持たねえだろうよー!」 「嘘だろ嘘。だって修理の分考えてもワルキューレ七体行ってねえよォー」 「馬鹿でっけえ剣作らせてたじゃねえか馬鹿っ!それにあんな空の上から地上への『錬金』 普通にやるよりちょっと負担でかいって。馬鹿馬鹿馬鹿っ!」 「おれ達さっきまで格好良かったよな?」 「ああ、間違いなくぶっちぎりで俺たち伝説だったぜ」 「じゃあ今はどうだ?」 「可愛い鞘付けて武器屋のバーゲンワゴンセール品以下だーな」 上半身まで再生したゴーレムが腕を振り上げる。 「あのゴーレムもワルキューレみたいに操っちまえよ。それでオッケーだ兄弟」 「どうやってェー。最初に触った時にバラバラ粉々だァー」 「使えねえなオメー」 「人の事言えるか!」 「「ははははははは……」」 二振りはお互い言い合うだけ言い合うと、渇いた笑いしか出てこなくなった。 シルフィードの上、ルイズがすくっと立ち上がる。 「タバサ!ゴーレムに『エア・ハンマー』を! キュルケはわたしに『レビテーション』!」 そしてそう言うやいなや飛び出していた。中空に向って。 「あ、あんた何をっ!」 キュルケが慌てて『レビテーション』をルイズにかける。 それによる減速を確認してから、タバサが『エア・ハンマー』を再生したゴーレムに叩き付ける。 先程よりも幾分小さい再生中のゴーレムが、その衝撃で後によろめく。 地に降り立ったルイズが、決して早くない全力ダッシュで、アヌビス神とデルフリンガ―へと駆けより飛びついた。 「脳味噌がマヌケかっ!『危なくなったら躊躇わずに撤収しろ』っつっただろうがっ!」 「使い魔を見捨てるご主人さまはいないの!」 怒鳴りつけてくるアヌビス神にルイズが怒鳴り返す。 「けど、俺等所詮剣だ。お前等の人生の何倍も、もう充分にやってきた剣だ。生き物でもねえ!」 デルフリンガ―が横から怒鳴りつける。 「それでも、あんた達だって、喋って、考えて、喜んで、泣いて、ふざけて、喧嘩して、その他にも色々色々よ。 人と同じだったじゃない!」 ルイズは更に怒鳴って睨みつけて黙らせる。 そして、右の手でアヌビス神を。左の手でデルフリンガ―を精一杯力を振り絞って持ち上げる。 それらは少女の手には、余りにも似つかわしくなく、そして重たい。 「アヌビス!わたしはあんたに『許可』するわ!」 二振りの剣を構え吼える。 「とんだご主人さまだな。え?アヌ公」 「けっ、言っといてやる。こいつは俺だけのご主人さまだ! デル公、貴様のご主人さまはこのおれだ。判ったか糞兄貴!」 「んじゃ行くぜ。おれに全部預けろ」 アヌビス神の柄のルーンが再び輝きを放つ。 「アヌビス神ッ! デルフリンガ―ッ! ルイズ 二 刀 流 !!」 そして『ガンダルーヴ』ルーンの輝きは今までよりも強く!強く!煌く! 振り下ろされたゴーレムの鋼の拳を、両の剣を交差させ受け止め、其の侭身体を浮かせ後ろへ飛ぶ。 「やつの材質はさっきより弱ってるぜ」 「だがよ兄弟、さっきのアレは、無理だろ?」 「ああ、この細腕でやっちゃ腕がぶっ壊れちまうね」 アヌビス神はルイズの身体を、流れる様に操る。先程のワルキューレなどと比べる事もできない軽やかなステップが踏まれ、桃色がかったブロンドの髪が、太陽とルーンの輝きの光にキラキラと煌く。 次々と繰り出される斬撃が右、左、右、左と順に繰り出されゴーレムの身体を少しづつ削ってゆく。 その舞いを捕らえる事が出来ずにゴーレムは無様に腕を振り回す。 ゴーレムの拳が先端から少しづつ少しづつ、斬って捨てられる。 決して負荷が掛らぬ様に、決して速くはなく、しかし鋭く。 これ以上削らせまいと、ゴーレムは左右の腕を同時に、蚊トンボでも叩き潰す様に振る。 しかしその右の腕をデルフリンガ―で受け止め、其の侭の勢いで左の腕をアヌビス神で斬りつけ、そのままその峰を更に勢いで蹴りつけ、その切れ味を持ってして一気に腕を斬り飛ばし切り抜ける。 宙で舞う様にくるくると身を翻し、大地へと降り立ちまたくるっと一回転し全ての力をその舞いの内に逃がす。 「おい、何でも良いから魔法の準備だッ!」 アヌビス神は素早くデルフリンガ―を鞘へと納め、杖を取り出させる。 「詠唱の時の動きは憶えてる、舌噛まない様にルーン唱えろ」 アヌビス神と杖の二刀流へと切り替え、ゴーレムの腕を捌いた後、軽やかにその懐へと入り込む。 そして腰へ一閃。返す刀で更に一閃。脚の付け根近くを斬り飛ばす。 「今だ!」 「う、うん! 『フライ』!」 至近距離で確実に、その斬り口へと、ゼロの『フライ』を撃ち込む。 そして爆風に乗る様にして、其の侭ゴーレムの懐から飛びのく。 片足の付け根だけ突然爆破されたゴーレムは、バランスを失い転倒する。 「押さえ込んでてくれ!」 アヌビス神が上空の仲間達へと向かい叫ぶ。 タバサによって起き上がろうとするゴーレムへ次々と『エア・ハンマー』が叩き込まれ、砕けた脚が直ぐに『練金』されない様にキュルケの『フレイム・ボール』よって脚が周辺の土ごと焼かれる。 しかしそれすらも、何する物ぞとゴーレムは両の腕を持って、走るルイズを追う為に動かんと足掻く。 だが一枚だけ風に乗り舞う薔薇の花びらがゴーレムの眼前へと舞い落ちる。 そして地より現れる『青銅』のゴーレム『ワルキューレ』……いや、その胸より上。それが首へと絡みつき動きを邪魔せんと、必死にぶら下る。 「ははは、なんとか上手くいったよ……」 シルフィードにしがみ付く様にして、下を見ながら杖を振るギーシュがいた。 「で、どうするの?小屋に向って」 頭だけが自由になるルイズが、突然の己の身体の動きが判らずに問う。 「おれとしちゃ、気にいらねえやり方なんだがよ。 さっきあの小屋に有った物の中に、一発逆転の物がな」 半壊した小屋へと走り込み、ゴミの様に積まれた物の山をあさる。 鞘に納められているデルフリンガーが、なんとか身を乗り出して覗き込んでくる。 「判ったぜ。この『鉄球』だな?見た目的に確実に強そうだぜ」 「違う、只のボールだ、そんなもん!」 ぽいっ 「この赤い石か!確かにこいつぁスゴイパワー秘めてそうだぜ。 魔法見てえに光線がでてゴーレムを焼き払えるんだな?」 「6000年生きてボケたかデル公!夢見るな!」 「わ、判ったぜ。この釣竿でゴーレムを操るフーケを釣……」 「あった!」 アヌビス神は先程投げ捨てたロケットランチャーを見つけた。 「何だこの筒は」 「こ、これって『破壊の杖』じゃないの!宝物庫見学した時見た事有るわ!」 「何揃って寝言言ってんだ。こいつは、ロケットランチャーだ。この型はM72Aか。杖なわきゃねえよ」 「なんだそりゃ」 「ありていに言えばな、あの程度のゴーレムは一撃で粉々にしちまう飛び道具だ。 威力はすげえぞ。昔ちょいと兵隊操ってぶっ放した事有るがよ、上手くやりゃ学院の塔も一発だぜ多分。 ま、おれが生まれた世界の兵器だ」 「それどういう事?」 「説明は後だ、両手で扱う物だからな。ちと、おれを咥えててくれ」 ルイズに己を咥えさせ黙らせると、ロケットランチャーを発射体勢にしながら、外に飛び出て押さえ込まれているゴーレムに向き直る。 扱い方は、既に昔『憶え』ている、考えるまでも無い。 「飛び道具ならあの中から撃ってもいいだろーに。急ぎだろ?」 「黙ってろデル公。こいつは屋根も無くて殆ど外な状態でも、屋内はあんまよくない」 ルイズは不思議な思いだった。己の手が知りもしない武器を自由自在に操るその様が。 「しっかり押さえてろよォー……」 言うと、発射トリガーを引く。 ルイズはその目で、筒から、白煙を吐く太く短い矢の様な何かが飛び出したのを見る。 それは吸い込まれる様にゴーレムの胴に減り込む。その数瞬後に大爆音が響き渡る。反射的に自由になる目を閉じる。 ゴーレムは粉々に砕け散り、土の塊が雨の様に辺りに降り注ぐ。 「な、なんだこりゃ。おでれーた」 一部始終を見ていたデルフリンガ―が声を振るわせ驚く。 「つまんねえ兵器って奴だ」 それに対しアヌビス神が心底くだらないと言った風に吐き捨てた。 「ま、その気持ち判らんでもねーな。 あんなのごろごろ有った日にゃ俺たちゃ用済みだ」 「って事だ。 やっぱ斬り合わねえとな!」 言うとアヌビス神はルイズへと、身体の主導権を自ら返した。 ルイズは未だ呆然とし、ゴーレムが吹き飛び消え去った場所を眺めている。 そこにふらふらとシルフィードが降りてきた。どうやら上空で先程の爆風をモロに受けてしまったらしい。 「わ、わりぃ。そっちへの被害の事、おれすっかり忘れてた」 アヌビス神がふらふらしながら降りてきたキュルケとタバサへと一応とばかりに詫びる。 ギーシュはシルフィードの上でぐたぁーと伸びている。シルフィードも地面にべたぁーっと伸びている。 「さ、流石『破壊の杖』凄まじいわね」 けほけほと咳をしながらキュルケが感嘆の声をあげる。 同じくけほけほしながらタバサが回りをきょろきょろして呟いた。 「フーケは?」 言われてみれば、この戦闘中一切フーケの姿を誰も見ていない。 全員一斉にはっとし辺りを見渡す。ギーシュ以外。 辺りを見渡していると、偵察にでていたミス・ロングビルが、茂みの中から現れた。 「ミス・ロングビル!フーケはどこからあのゴーレムを操っていたのかしら」 キュルケがそう尋ねると、判らないという風に首を振った。 そのまま『M72LAW』を抱えて座り込んでいるルイズへ『ご苦労様』と言いつつ歩み寄る。 「ミス・ロングビル!」 キュルケが叫んだ。 なんとミス・ロングビルが後ろからルイズの首筋に杖を突き付けている。 「どういうことですか?」 冷汗を流しながらルイズが、ミス・ロングビルを見ようと首を捻る。 「さっきのゴーレムを操っていたのは、わたし」 彼女はルイズの腕を強引に引いて無理矢理立ち上がらせ、そのまま後ろから押さえ込んだ。 To Be Continued 11< 戻る
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三 世の中というのはかくも不平等に出来ているものか。 衛士は大きな溜息をついた。 我々が夜を徹して警備に勤しむ中、親愛なる旦那様はいい女とお楽しみ中、と。 まぁ、それで給金を貰っている以上、文句を言っても仕方のないことなのだが…… ……しかし夜風が身にしみる。せめて屋内担当だったらまだ暖房が効いているのに。 それでいて外と中で給金が同じというのは、まったくもって納得がいかない。 「なぁ……そう思うだろ、あんたも?」 近くに立つ同僚に声を掛ける。 ……返事がない。 元々愛想の良い奴ではなかったが、声を掛ければ返事くらいは寄越すはずだが……聞こえていないのか? 「おい」 唐突に同僚の身体が揺れ、その場に倒れた。 「! おい、どうした!?」 カタリ。 仲間の元へ駆け寄ろうとしたところで、背後から微かな物音。 咄嗟に振り向くと、目前に覆面を被った人間が立っていた。 「賊――!?」 仮にも戦闘訓練を受けている身。突然現れた敵にも冷静に対処する。 すぐさま槍を構え、目の前の賊に突き付ける。 賊は動じた様子もなく、無言で手に持った小壜から中の液体を振りかけた。 甘い香りが衛士を包む。 咄嗟に鼻と口を押さえるが、時既に遅し。 視界はぼやけ、意識が薄れてゆく。 衛士は力を振り絞り、敵の覆面を剥ぎ――そのまま倒れた。 覆面の下にあったのは、青銅の兜だった。 兜だけではない。鎧、籠手、具足、そしてその中の骨格さえも。 全てが青銅で出来ていた。 青銅のゴーレム。――すなわち、賊の正体は『ワルキューレ』である。 * 「四号及び五号、コンプリート。これで屋外の敵は全て無力化、と」 伯爵家の敷地の隅の藪の陰。丁度警備の死角となる場所。 地面に掘られた穴からひょっこりと顔を出す覆面の男。その右手には造花の薔薇。左手には一振りの刀。 目の前のゴーレムに薔薇を突き付けると、ゴーレムはまた元の姿――花びらへと戻り、薔薇の中に収まった。 『どうだい! これが僕の本気さぁ!』 男――ギーシュが心を通じて刀に呼びかけた。 『……半分以上は俺が発案したんだがな』 刀――殷雷刀が突っ込む。 ギーシュの使い魔が穴を掘り、地中から敷地内に潜入。 『ワルキューレ』を操り、衛士に気配を悟られず接近。 そしてモンモランシー謹製の、催眠成分入りの香水でそれらを無力化。 その間、彼らはこの場を一歩も動いてはいない。 ……ギーシュ自身の手柄はワルキューレの部分だけで、それも別に必ずしも使わなくて良かった、 などと言ってしまうのは少々意地悪がすぎるだろうか。 まぁそれでも、彼の助力無くしてここまで順調に事は進まなかった、と言うのは間違いない。 ギーシュの脇から、巨大なモグラが顔を出した。 功労者の一人――いや一頭。ギーシュの使い魔、ヴェルダンデである。 ヴェルダンデは興奮気味に鼻を鳴らしつつ、周囲を見渡している。 「もしかしたら騒がしくなるかもしれない。ヴェルダンデ、君はここで大人しくしてるんだぞ?」 ギーシュが言うと、巨大モグラは大人しく頭を引っ込めた。 使い魔と主人の正しい姿である。 『……それに引き替え、ウチのご主人様は何やってんだかな』 この位置からでは確認できないが、目の前の屋敷の中にルイズが居るのは間違いない。 『ルイズはあれでも公爵家の娘だ。そう悪いようにはされてない……と思うけどね』 ……相手は稀代の助平人間であるモット伯なので、断言は出来ないが。 女を傷物にせずに手込めにする方法も、彼なら熟知しているだろう。 『いや、さすがに今朝連れてきて今夜いきなりってことはない……んじゃないかな』 『やけに歯切れが悪いな』 『まぁ……なにせ好色一代男だから』 何にしても、ここで考えていても埒があかない。しばらくすれば、縛り上げてある衛士たちが目を覚ましてしまうかもしれない。 『とにかく、行くぞ。冷静に、敏速に、隠密にな』 左右に動く人影がないことを確認し、ギーシュはゆっくりと立ち上がる。 そして、素早く建物の壁に張り付く―― ――キュイィィィィィィ!! 突如、上空から響く甲高い鳴き声。風を切る音。 ――そして、舞い降りる巨体。 凄まじい速度で降下してきた『それ』は、地面スレスレで急停止した。 巨大な翼。瞳。牙。角。爪。尻尾。それはまさしく―― 『……ツバサオオトカゲ?』 『な、何言ってるんだい。竜だよ、竜! ドラゴン!!』 ……やっぱりそうか。 その姿は殷雷の知る龍とは大分異なってはいたが、言われてみれば確かにそうも見える。 竜は甲高い雄叫びを上げると、再び空へと舞い上がっていった。 『……そういえば、使い魔のドラゴンが居なくなったとか何とか誰かが言ってたような気が』 『先に言え! くそっ、どこまでも面倒な!』 おそらく、この竜はメスなのだろう。 蜂引笛で魅了できるのは人間だけではない。 先にも述べたが、その対象は『無差別にして無条件』。 猛獣、幻獣の類すら例外ではないのだ。 翼が突風を巻き起こし、カマイタチが屋敷を削る。 爪が空を切り裂き、吐息が大地をえぐる。 その苛烈にして豪速の連続攻撃を、殷雷は躱すので精一杯だった。 一撃でも受ければ、致命傷は免れない。 それにつけてもこの動きはあまりにも異常だ。 六メイルを超える巨体が自由落下してきたかと思えば、そのまま速度を落とさず水平飛行に移り、 さらにこれまた同じ速度のまま、今度は急上昇。 これらの動作を間断なく行っているのだ。 「お、お、おかしいよ! これは!? 幾らドラゴンだからって無茶苦茶だ!! 学園にこんな使い魔が居たなんて話、聞いてないぞ!?」 ギーシュが悲鳴を上げる。 ……確かに、物理法則も何もあったものではない。 ギーシュが身を捻るたびに、敷地内は破壊されてゆく。 天から見下ろされては、屋敷の陰に隠れることもままならない。 ――ひとつ、殷雷には気になる物があった。 『……あの足環、まさか……』 竜の右後ろ足に着けられた銀色の環。それには見覚えがあった。 大きさは合わないが、形、色は彼の記憶と一致する。 ありえない。ありえないはずだが…… 『まさか、界転翼か……!?』 『か、回転……何?』 界転翼。かつて戦った、猛禽類の能力を強化する足環の宝貝の名。 『猛禽類って……鷹とか鷲のことだろ? 竜じゃないか!?』 そう。強化できるのは猛禽類に限る。それ以外のモノが身に付けても効果はない。 ――その、はずだった。 ありえない。おかしい。矛盾している。いや、界転翼だけではない。 ……実を言うと、蜂引笛についても致命的に引っ掛かる点がある。 が、今は目の前の状況を片付けるのが先だ。 既に庭は荒れ放題で、眠らせた衛士達に死者が出ていないのが不思議なくらいだった。 ……一応、相手もその辺りは気を使っているのかもしれない。 とてもそうは見えないが。 「こんな相手と長々戦っていられるか……少しばかり荒っぽい手で終わらせてもらうぞ!」 殷雷はギーシュの声でそう叫ぶと、懐から小さな白い玉を取り出した。 『そ、そんな飴玉で何が出来るんだ!?』 ただの飴玉である。――少なくとも、外見上は。 『あ、ぶつけて目を潰すとか?』 『……潰せたところで状況が好転するとは思えんな。飴玉の使い道なんぞ、一つしかあるまい』 ギーシュが動きを止めたのを見て、竜はとどめを刺すべく急降下を仕掛けた。 爪か、翼か、それとも吐息で来るか。 ……何でも良い。どうせすることに大した違いはない。 ギーシュの眼前で竜は大きな口を開け、牙を剥いた。 噛み付きか? 吐息か? ――どちらでも構わん! 竜の口の奥に飴玉を放り込む。 ギーシュは横に転がって身を躱し、とどめを刺し損なった竜は再び宙へと舞い上がる。 「……やれやれだ」 殷雷は大きく息を吐いた。 いらぬ所で時間を食ってしまった。この騒ぎは間違いなく屋敷内にも伝わっているだろう。 『え、終わり? ……何で?』 殷雷によって身体を操られた当人であるにも関わらず、ギーシュには状況が理解できなかった。 竜は未だ上空を飛び回っている。まだ何も終わっていないのではないか? 『今、何をしたんだい?』 『見ての通り、いや、やっての通りか。飴玉を飲ませただけだ。 ……九鷲特製の、魂沌酒を練り込んだ奴をな』 キュィアアアアアアア!! 竜の鳴き声が変わった。先ほどまでと比べて、明らかに獣じみている。 「魂沌酒は、飲んだ者に強大な力を与えるとともに、理性を吹き飛ばして野獣へと変える。 そう長い時間じゃない。……まぁ、飴玉に含まれる程度の量なら、せいぜい十秒か二十秒か」 ……確証はないが。 『時間が来れば、ブッ倒れて意識を失う。 それまでひたすら逃げ回れば、ひとまずは勝ちだ』 『……逃げ切れなかったら?』 『死ぬだけだ』 『ちょっ!?』 殷雷は、この飴玉を貰った時の九鷲の言葉を思い出していた。 ――ちょっとした工夫をしてみたわけ。 ちょっとした工夫。何と不吉な言葉であろうか。この言葉にはロクな思い出がない。 そしてこの出来事も、『ロクでもない思い出』として記憶に残ることだろう。 さあ、あと十六秒。 完全に暴走状態の竜が、頭上に迫る。 ――あいつ、少し龍華に似てきたな。 殷雷の頭に浮かぶのは、そんな場違いな考えだった。 * ……さて。 まだ屋敷内にすら侵入できていないにも関わらず、予想外に手間取ってしまった。 モット伯はもう逃げ出してしまっただろうか? ――いや、竜が暴れ回る外よりは、屋敷内の方が安全か。 内部の構造は不明だが、人が住んでいる以上そう非常識な造りにはなっていまい。 『こうまで派手にやっちゃった訳だし、いっそ正面から突入するのも手かなぁ』 すこぶる疲れた様子のギーシュ。 先ほどまで大暴れしていた竜は、庭――と言うかかつて庭であった場所――に陣取って、大きないびきをかいて爆睡中。 出来れば、こいつが再び目覚める前に片を付けたいところだ。 『いや、複数の入口から同時にお前の人形を踏み込ませて、その隙に窓から――』 ガラッ。 「あ」 「あ」 唐突に窓が開き、そこから顔を出した人物と目が合ってしまった。 「へ……変態!」 「せめて泥棒と言え!!」 ……ルイズだった。 「……って、その声、もしかしてギーシュ!?」 二秒でバレた。 「ギーシュあんた、こんな所で何やってんのよ……まさかこの騒ぎ、あんたの仕業?」 「ち、違うぞ。私は、ええと。愛の……いや薔薇の」 しどろもどろのギーシュに代わり、殷雷が代わりに突っ込んだ。 「何やってんのはこっちの台詞だ。お前こそ何故こんな所にいる」 突然変わったギーシュの口調に少々驚いたようだが、すぐに殷雷刀の存在に気づく。 「インライまでいたの……伯爵の屋敷を襲撃するなんて、何考えてんのよあんたら……」 誰のせいだと思っているのだ。 「質問に答えろ。何故、お前が、ここに居るんだ」 聞き慣れぬギーシュの強い語調にルイズはたじろぐ。 「え、ええと……そう! 公爵家の娘として、モット伯から学びたいことがたくさんあったのよ! 別におかしい事じゃないでしょ!?」 「それならそれで、使い魔や級友に対して書き置きなり言伝なり残すのが筋というものだろうが」 「ううう」 ルイズは、一つのものに入れ込むと周りが見えなくなる気質なのだろう。 大きく息を吐き、後を続ける。 「お前が誰に惚れようが勝手だがな。最低限やるべき事はやってもらわないと、迷惑が――」 「な、な、な、何言ってんのよ! 誰が誰に惚れてるって!? 馬鹿言ってんじゃないわよ!!」 全力で否定された。 「だ、誰があんな、スケベで、金持ちなだけの、ヒゲの……その……か、勘違いするんじゃないわよ!!」 口ではそう言っていても、真っ赤な顔で説得力ゼロのルイズ。 『こういう形の愛もあるんだねぇ。いやぁ面白い。参考になる』 『……俺にはよく分からん』 将来こいつの恋人になる男は苦労するだろうな、というのだけは分かった。 「……ま、認めなきゃ認めないでかまわん。上がらせてもらうぞ」 「ちょ、ちょっと!」 と、窓枠に足を掛けたところで。 コンコン。 「ルイズ嬢。お怪我はありませんかな?」 扉を叩く音と、中を伺う声。 その声の主は―― 『――モット伯だ』 と、ギーシュ。 好機到来。相手の方から近づいてきたのなら、さっさと目当ての物を奪ってしまえばいい。 窓から屋敷内に侵入、室内を横切り扉に手を掛けて、 「やらせない!!」 ――突然の爆発に、扉ごと吹っ飛ばされた。 「な、な、何だ!?」 突然扉が吹っ飛んで向かいの廊下に叩きつけられ、しかもそこに謎の覆面男が張り付いていたのだ。 モット伯が驚くのも当然だろう。 ルイズがいきなり実力行使に出るのは予想外だったが、モット伯との距離を縮めるのには成功した。 ――が、爆発の第二波が殷雷の追撃を阻止する。 「逃げて下さい、モット伯! 賊は、私が始末します!!」 部屋の中からルイズの声。モット伯は素直に従った。 「くそ、逃がさ――」 「逃がさない!!」 ――第三波。 それにしてもこの爆発、かなりの威力だ。 皆はこれを『失敗魔法』と呼ぶが、素直に火の玉や突風を起こされるより余程質が悪いのではないか? ルイズの攻撃を躱しつつ、モット伯を追う。 優れたメイジだからかどうかは不明だが、モット伯の逃げ足は意外なほど速かった。 そういえば、屋敷内に入ってから衛士を一人も見かけない。 最初から居ないのか、それとも全員逃げたか。 ――大広間に出て、モット伯は足を止めた。 「観念したか? さっさと宝貝を渡してもらおうか」 しかし伯爵の表情にはまだ余裕がある。 「パオペー? 貴様、パオペーの事を知っているのか。 ……もしや、お前が噂の『土くれのフーケ』か?」 土くれのフーケ。殷雷には聞き覚えのない名前だったが、ギーシュが教えてくれた。 『最近、貴族たちを狙って暴れてる怪盗だよ。僕らをそいつと勘違いしてるみたいだけど……どうする?』 向こうが油断してくれていた方が、こちらとしてはやりやすい。 「いいや。お前のお宝をフーケが狙ってるって噂を聞いたんでね。 お先にいただいてしまおうと思ったのさ」 わざと小物っぽく振る舞うのも一つの策である。 「ほれ、さっさと宝貝をよこせ」 モット伯は余裕の表情だ。 「勘違いするなよ、コソ泥が。 私が此処まで移動したのは、単に廊下では狭すぎたからだ。 この『波濤のモット』の力、存分に目に焼き付けろ」 悠然と杖を構える。 はったりではない。この自信は実力に裏付けられた物だ。 と、緊迫した空気が流れたところで、ルイズが割り込んだ。 「ぜぇ……ま、待って。はぁ、はぁ。こいつは、私が」 ……魔法を連発しながら走っていたため、息も絶え絶えである。 「しかしだな、ルイズ嬢」 「……お願いします」 「……では、無理はせぬように」 そう言って、数歩後ろに下がった。 杖の構えは解かない。やはりそう簡単に隙を見せる相手ではない。 ギーシュとルイズが対峙する。 その構図はいつぞやの『決闘』を思い起こさせた。 ただ一つあの時と違うのは、殷雷刀を握っているのがルイズではなくギーシュであること。 ギーシュは、相手にだけ聞こえる小声で言った。それは殷雷刀の言葉だった。 「……言っても信じないだろうが、お前のその恋心はモット伯が持ってる宝貝によって植え付けられた物だ。 本当の気持ちではない」 「だ、だから恋とかそんなんじゃ……ああもう! ……で、それが本当だとして、あんたらはどうしたいわけ?」 「もちろん奪って、お前を正気に戻す。正確にはお前だけじゃないが」 「……そうなったら、私のこの気持ちも消えちゃうの?」 「当然」 「じゃあ、絶対に渡せない!!」 「……だと思ったよ」 頑固な娘である。 ルイズは杖を構え、ギーシュも空いた方の手で造花の薔薇を取り出す。 今度はルイズが話しかけてきた。 「……さっさと降参すれば、今ならまだ許してあげなくもないわよ。 モット伯にもあんたらの正体は黙っていてあげる」 「冗談」 「……だと思ったわ」 二人の呪文は同時に完成した。 「ファイヤーボール!」 「『ワルキューレ』!」 爆発がギーシュを襲う。 ……爆煙が晴れると、三体のゴーレムがバランスを崩し、倒れるのが見えた。 残り三体と、その向こうのギーシュは平然と立っている。 ルイズは舌打ちする。 ――六体? 破壊されたゴーレムと、立っているゴーレム。計六体。 ギーシュの手の薔薇には、花びらは一枚も残っていない。 確か、ギーシュのゴーレムは全部で七体―― 「はい、ご苦労様」 覆面の向こうでギーシュが笑う。その声は彼自身のものだった。 ――ギーシュの手から、殷雷刀が消えている。 「後ろだ!!」 背後からモット伯の声。だが、振り向く前にルイズは意識を失い、倒れた。 殷雷刀を持った七体目の『ワルキューレ』が、香水を浴びせかけたのだ。 * 『……人間以外の体も操れるもんだな。初めてやったが』 ワルキューレの一体に殷雷刀を握らせ、爆発のどさくさに紛れて回り込む。 遠くから見ればどうということはないが、間近にいたルイズには認識できなかったのだ。 殷雷刀を握る『ワルキューレ』の左手は淡く輝いていた。 モンモランシーからもらった香水は今ので使い切ってしまったが、問題はない。 残るはモット伯ただ一人。 「さて。四対一……いや、五対一かな? 大人しくパオペーを渡してくれれば、危害は加えないよ」 先頭の『ワルキューレ』が、殷雷刀の切っ先をモット伯に向ける。 残る三体も各々の武器を構える。 幾らモット伯が優れたメイジでも、この戦力差は覆せまい。 ――だが、モット伯は余裕の笑みを浮かべるばかり。 そして、その口から紡ぎ出されたのは意外な言葉だった。 「私は、いつも孤独だった」 訝しむギーシュたちに構わず、後を続ける。 「私は金に物を言わせて、多くの女を手に入れてきた。 逆らう者などいようはずもない。 だが、女達はこの私に身体は許しても、決して心までは許そうとしなかった。 地位、名誉、金、力。私は全てを持っている。 にも関わらず、心だけはどうしても手に入れることが出来ない。 私は、孤独だった……」 モット伯の顔が凶悪な笑みに歪む。 「『金で心は買えない』などとはよく言ったものだ。 ――だがな。 パオペーでなら買えるのだ! 世の中というのは上手くできているものだなぁ!!」 伯爵は高らかに笑い、杖を放り捨てた。 そして懐から紅色の笛を取り出す。 「ルイズ嬢はよくやってくれたよ。 お前たちは、彼女が何の役にも立たずに倒れたように見えただろうが、そうではない。 彼女のお陰で、私は良い物を見ることが出来たよ。 ・ ・ ・ ・ お前のその――女性型のゴーレムをな!!」 ――しまった! モット伯は蜂引笛に口を付けようとしている。 殷雷刀のゴーレムは即座に背後を振り向いた。 『ギーシュ! 人形を引っ込めろ!!』 駄目だ。『ワルキューレ』は声を出せるようには出来ていない。 ならば笛の方を―― 『ワルキューレ』はモット伯めがけて駆ける。 ――が、意外な人物にそれを阻まれた。 「ジュール様を、傷つけさせません!」 メイドの少女が両手を広げて立ち塞がる。――シエスタだ。 『くそ、こんなところで!』 ビィビョロビャビラリィ。 そして、虫の羽音のごとき笛の音が広間に響き渡る。 殷雷刀のワルキューレががくりと膝を付いた。 「どうした、ワルキュー……ぐへっ」 ギーシュの目前のワルキューレは、左右から主人の腕を掴み、地面に組み伏せた。 『そんな、馬鹿な……』 ――異性でさえあれば、あとは無差別にして無条件。 ギーシュのゴーレム、『ワルキューレ』は確かに女性型だ。 ただしそれはあくまで表面的な装飾のみであり、中身は一般的なゴーレムと一切変わらない。 だが、蜂引笛は『彼女』たちを魅了した。ただの青銅の塊である『ワルキューレ』たちを。 蜂引笛の効果が無機物にまで及ぶとは、流石の殷雷も予想外だった。 『予想外、予想外……! くそっ、最近こんなのばっかりだ!!』 殷雷は必死で抵抗するが、『ワルキューレ』の手足は全く言うことを聞かない。 モット伯は驚いていた。 これまでの相手は全く抵抗する素振りもなく易々と魅了できていたのに。 目の前の何の変哲もないゴーレムだけが例外だとでも言うのか。 だが、効いていない訳ではない。確かに苦しんでいる。 モット伯は息を強め、駄目押しの曲を奏でる。 仮にも宝貝の笛。使用者が望む限り、幾らでも奏で続けることが出来るのだ。 長期戦では殷雷たちに勝ち目はない。 『くそったれめ……』 ここで屈してしまったら、自分はどうなる? ルイズは? ギーシュは? シエスタは? ……女性陣は無事かも知れない。自分も、『ワルキューレ』から解放さえされれば自由の身に戻れる。 だが、ギーシュはどうなる? 彼がグラモン元帥の息子であることを明かせば……駄目だ。 それを証明できる人間は今、催眠香水で夢の中。 たとえ証明できたところで、己を脅かす敵の存在をモット伯は許さないだろう。 ……秘密裏に始末されるのが関の山か。 元々ギーシュが今回の件に首を突っ込む利点はない。 決闘で恥をかかせないでくれた借りを返すため? ……そんなもの、いつでも返せた。こんな危ない橋を渡る必要は何処にもない。 せめて、ギーシュだけでも助けてやらねば。 屈する訳にはいかない。 ――その時。 笛の音が消えた。 笛だけではない。風の音。虫の声。全ての音が消えた。 モット伯の目が驚愕に見開かれ、思わず口を離してしまう。 再び、世界に音が戻る。 風に乗って、かすかに声が聞こえたような気がした。 ――足環は、後で返す。 それが誰の声かは分からなかったが、考えるのは後回しだ。 モット伯は慌てて笛に口を付けようとするが、遅い。 ワルキューレは雷光の速度で立ち上がる。 シエスタの脇をすり抜け、モット伯の手から蜂引笛を奪い取った。 ついでに回し蹴りも食らわせておく。 ……モット伯は昏倒した。 これでようやく、永い夜が終わる―― * ビャララリビャロルゥビャラ。 相変わらずの怪音。強力なのは認めるが、この音はどうにかならないものだろうか? シエスタは蜂引笛から口を離した。彼女の小脇には殷雷刀が抱えられている。 「――では、モット伯。この宣誓書に署名をお願いします」 テーブルの上に置かれた紙切れには、以下のように書かれていた。 『わたくしは二度と宝貝を悪用致しません。 また、ご迷惑をかけた女性たちに深くお詫びを申し上げます。 女遊びは控えます。 シエスタには手を出しません。 あと、壊れた屋敷の修理代も請求しません』 概ねこのような感じ。 ……後半になるに連れて文章がヤケクソ気味になっているのは気のせいだろうか? モット伯は憔悴しきった表情でうなだれていたが、ゆっくりとペンを取り紙に文字を走らせた。 『ジュール・ド・モッ ――と、ここで止まった。 「……どうしたんですか? あと少しですよ」 モット伯の手が震えている。 彼は声を絞り出した。 「駄目だ……この宣誓書には、サイン出来ない」 殷雷刀が跳ねる。 『馬鹿な! 宝貝の力に逆らったというのか!?』 蜂引笛の威力は殷雷が身をもって知っている。 あの音色を聞いた以上、今のモット伯がシエスタに逆らえるはずがない。 モット伯はおもむろにシエスタの腕を掴み、すがりつく。 その顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。 「行かないでくれシエスタ! 私にはお前が必要なんだ! 愛している! 愛してるんだよシエスタ! 頼む、私の財産の全てをやってもいい!! だから私を捨てないでくれえええぇぇぇぇぇ!!」 ……そうだった。正確には、蜂引笛に『異性を操る力』は無い。 ただ、『絶対的な恋心を植え付ける』こと。それが力の全て。 その対象から引き離そうというのだから、抵抗しない訳がない。 これを説得するのは、並大抵の労力では不可能だろう。 『……どうしましょう?』 『……どうしたもんかなぁ』 永い夜は、まだまだ終わりそうにない――
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登録日:2022/08/18 (木) 15 40 02 更新日:2022/08/20 Sat 10 54 31NEW! 所要時間:約 1 分で読めます ▽タグ一覧 ウマ娘 ウマ娘 プリティーダービー プランカルキュールとは、『ウマ娘 プリティーダービー』を元ネタとするあにまんウマ娘になりたい部の登場キャラクターである。 CV:████ + 目次 ◆プロフィール 概要 ☆3[LIFE.exe]スキル固有スキル:/\cl(L 1_p\/ 1(_ 初期スキル 覚醒レベル ◆プロフィール 生年月日:4月1日 身長:145cm 体重:微増(成長期だと信じたい) スリーサイズ:B66・W47・H72 学年:中等部 キャラクターソング:██████████ + 親愛度ランク1で解放 身長:145cm 体重:微増(成長期だと信じたい) 誕生日:4月1日 + 親愛度ランク2で解放 得意なこと:論理的思考 苦手なこと:即興での行動 + 親愛度ランク3で解放 耳のこと:大きいけど冷えにくい 尻尾のこと:手入れが雑な割には綺麗 + 親愛度ランク4で解放 :両足ともに22cm + 親愛度ランク5で解放 家族のこと:3世代16人の大家族 + プランカルキュールの秘密① レッドコーダー中括弧内には1以上の整数を入力してください。 例 &footnote(){1} + プランカルキュールの秘密② レースは力押しでなんとかする派 「才能」とは「生まれ持った能力」である。 「才能」とは「能力の伸びやすさ」である。 だが、「もっとも重要な才能」は「絶対にあきらめないという意志」である。 彼女は身をもってそれを証明して見せたのだ。 20██年URA「名ウマ娘の肖像」プランカルキュールより 概要 ハッピーミークやリトルココン等と同じ、モチーフとなる競走馬が存在しないウマ娘。 非常に無口であり、イベントで出てきてもたいていの場合黙々と練習している。 レースではバ場・距離・脚質を問わず走れることもあり、実装されている全てのレースで目撃報告がある。 一人称は「私」なのだが、殆ど喋らないせいで育成ウマ娘として実装されるまで一人称が分からなかったという逸話を持つ。 勝負服は黒のフード付きパーカーワンピースだけどいう非常にシンプルなもの。 プレイヤー間では作中と同じように「プル」と呼ばれることが多い。 ☆3[LIFE.exe] 性能 バ場 芝:C ダート:C 距離 短距離:C マイル:C 中距離:C 長距離:C 脚質 逃げ:C 先行:C 差し:C 追込:C 成長補正 スピード スタミナ パワー 根性 賢さ 6% 6% 6% 6% 6% スキル 固有スキル:/\cl(L 1_p\/ 1(_ レースの終盤で呼吸を整えてラストスパートの準備をする。 + 発動条件および効果 レースの終盤に入ると同時に発動。速度と加速力をちょっと上げて持久力をわずかに回復させる 初期スキル 末脚 右回り◎ 左回り◎ 覚醒レベル Lv2:直線巧者 Lv3:曲線のソムリエ Lv4:コーナー回復◯ Lv5:弧線のプロフェッサー 名前 コメント
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『ワルドマンが倒せない』 作詞・歌 平賀才人 (前奏) 気がついたら 同じ展開でプレイ そしていつも同じ場所で負ける 諦めずに アルビオンまでたどり着くけれど すぐにルイズ結婚 ギーシュのモグラがいれば 楽に味方を呼んでくれるけど 何回やっても 何回やっても ワルドマンが倒せないよ あの竜巻 何回やっても避けれない 後ろに回って 斬り続けても いずれは風に飛ばされる ガンダールヴも試してみたけど 遍在相手じゃ意味がない! だから次は絶対勝つために 俺はデル公だけは最後まで持っておくぅ~ (間奏) 気がついたら ルイズもう飛び出してる そしていつもそこで俺が救う 諦めずに 高い大剣振り回すけれど すぐにポキリと折れる クロスの強キャラいれば 楽に敵を攻略できるけど 何回やっても 何回やっても フーケさんが倒せないよ あのゴーレム 何回やっても強すぎる 後ろに回って 魔法撃っても いずれは土に埋められる ガンダールヴも試してみたけど 本体やらなきゃ意味がない! だから次は絶対勝つために 俺は『破壊の杖』は最後まで持っておくぅ~ (間奏) ギーシュのモグラがいれば 楽に味方を呼んでくれるけど 何回やっても 何回やっても ワルキューレが倒せないよ あの青銅 何回やっても避けれない 後ろに回って 距離をとっても いずれは距離を詰められる ガンダールヴも試してみたけど 丸腰パンチじゃ意味がない! だから次は絶対勝つために 俺は長剣だけは最後まで持っておくぅ~…… (倒せないよ……) (終奏) (ティウンティウンティウンティウン) (GAME OVER)
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2003年OVA発売。円盤皇女ワるきゅーレのOVA版。 http //www.tokinoyu.net/ 監督 柳沢テツヤ 原作 介錯 脚本 月村了衛 キャラクターデザイン 藤井まき メカニックデザイン 秋山英一 美術監督 鈴木恵美 色彩設計 植木義則 撮影監督 沖田英一 編集 櫻井崇 音響監督 亀山俊樹 音響効果 庄司雅弘 音響調整 大坪恵美 音楽 川井憲次 アニメーション制作 TNK 制作協力 スタジオタマ 脚本 月村了衛 絵コンテ 柳沢テツヤ 演出 新田義方 作画監督 藤井まき ■関連タイトル DVD 円盤皇女ワるきゅーレ SPECIAL 円盤皇女ワるきゅーレ 主題歌・挿入歌をほぼ完全収録 ドラマCD 円盤皇女ワるきゅーレ ワルキューレ宇宙大歌劇 “たいせつなモノあげちゃいました!?”ソングアルバム 円盤皇女ワるきゅーレ TVアニメ メモリアルファンブック 原作コミック 介錯/円盤皇女ワるきゅーレ 1巻
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ディセプティコン・ゼロ back / next 学院長室に、ミスタ・コルベールの興奮した声が響く。 室外に佇むミス・ロングビルは耳を澄ませてみるものの、内で発せられるその声が洩れ聞こえる事は無かった。 「つまりオールド・オスマン! あれはマジックアイテムなどではなく、紛う事無き『銃』だったのですよ!」 「ふぅむ・・・・・・」 沸き立つ感情もそのままに叫ぶコルベールに、オールド・オスマンは得心がいったという様に頷く。 その様子にコルベールは、訝しげに目の前の老人を見た。 「・・・・・・驚かないのですね?」 「予想はしておったよ。あの引き金を見れば、誰だって銃を思い浮かべるわい・・・・・・尤もすぐに考え直すじゃろうがの」 苦笑しつつ答えるオスマンに、コルベールもまた曖昧な笑みを浮かべる。 このハルケギニアの人間が『あれ』を見たとして、銃だと断言出来る者が果たしてどれだけ居る事だろう。 「とにかく、ミスタ・コルベール。『火竜の息吹』の取り扱い方は極秘という事にしておいてくれ」 「勿論です。分析結果を示した書類は、同じチェストに入れておきます」 「頼むぞ。ところで、『破壊の槍』の方の分析はどうなっとるかの?」 その質問にコルベールは、打って変わって意気消沈した表情を浮かべる。 「殆ど進んでいません・・・・・・引き金を引こうにも、何らかの安全装置が掛かっているらしく・・・・・・」 「そうか」 口惜しげに語るコルベールとは対照的に、オスマンは何処かほっとした様に呟いた。 そしてコルベールを慰める様に、奇妙な言葉を発する。 「だが寧ろ、引き金を引かずに済んだ事は幸運かもしれんぞ、ミスタ・コルベール。もし君の研究室であれが放たれれば、今頃・・・・・・」 「失礼します」 オスマンの言葉を遮って入室してきたのは、室外で待機していたミス・ロングビル、そして汗だくで荒い息を吐くミセス・シュヴルーズだった。 その尋常ならざる様子に、室内の2人も一瞬で表情を引き締める。 「何事かね」 「ヴェストリの広場で・・・・・・生徒が・・・・・・決闘を・・・・・・」 意気も絶え絶えにシュヴルーズが吐き出した言葉に、オスマンは拍子抜けした様な表情を浮かべた。 コルベールも同様で、そんな事かといわんばかりに溜息を吐いている。 「なんじゃ・・・・・・暇人どもの馬鹿騒ぎか。放っておきなさい、その内飽きるじゃろ」 「グラモン・・・・・・ミス・ヴァリエールが・・・・・・」 呆れを隠そうともせずシュヴルーズを宥めようと言葉を発したオスマンだったが、当のシュヴルーズはそれが耳に入らないかの様に何かを呟いている。 それに気付いたロングビルが、もっと良く聴き取ろうと耳を近付けたその時、シュヴルーズが必死の形相で叫んだ。 「殺されます・・・・・・ミスタ・グラモンと、ミス・ヴァリエールが・・・・・・殺されてしまう!」 学院全体を揺らす地響きが轟いたのは、それと同時だった。 時は僅かに遡り、ヴェストリの広場。 キュルケとタバサが其処へと辿り着いた時、既にルイズとギーシュは広場の中央で敵と向かい合っていた。 遅かったか、と歯噛みするキュルケを余所に、2人は杖を構える。 そして敵は余裕を滲ませた笑みを浮かべ、風の系統が誇る悪夢の呪文を唱えた。 『ユビキタス・デル・ウィンデ・・・・・・』 瞬間、2つの人影が7つに分裂する。 一方の遍在は2体、さらに一方は3体。 本体も含め、計7体。 それが2人が相対する敵の数だった。 「あはは・・・・・・声も出ないか? 僕等に歯向かう事がどれだけ愚かな事か、今更解ったってところか」 「風は遍在する・・・・・・風の吹く所、何処と『ワルキューレッ!』なぁッ!?」 見下す様な眼で2人を貶める敵。 しかしその御高説は、広場を覆いつくさんばかりの薔薇の花弁と共に現れた青銅の戦乙女達の突撃によって遮られた。 各々の得物を手に、果敢に敵へと襲い掛かる5体のワルキューレ。 その突進力に面食らった敵は態勢を崩すも、次の瞬間には1体のワルキューレが首を飛ばされる。 『エア・カッター』だ。 「チッ!」 「ファイアーボールッ!」 舌打ちするギーシュの横でルイズが『ファイアーボール』を唱えるも、失敗魔法の爆発は狙いが安定せず、命中したものは1発も無い。 周囲の生徒達から巻き起こる笑い。 しかしそれに狙われた当人は、その威力に内心肝を冷やしていた。 (何だ!? あれが・・・・・・失敗魔法だって? 冗談じゃない! あんなもの喰らったら、火傷どころじゃ・・・・・・!) 背筋を走った冷たい感覚に、彼はぶるりと震えた。 曲りなりにもトライアングルメイジ、瞬時に思考を切り替え、全力で敵を叩き潰すべく次の呪文を唱える。 「エア・ハンマー!」 その声と共に杖から暴力的なまでの突風が放たれ、それは未だに『ファイアーボール』を唱えていたルイズに直撃する。 「きゃっ!」 「ミス・ヴァリエ・・・・・・ぐぅッ!」 「お前もだッ!」 吹き飛ばされるルイズに気を取られたギーシュが、遍在を含めたもう一方の敵3体からの『エア・ハンマー』で壁に叩き付けられる。 地面へとずり落ちたギーシュは何処か内臓を傷めたのか、その口から咳と共に僅かな血を漏らした。 その姿に、ギャラリーの所々から微かな悲鳴が上がる。 「う・・・・・・ぐっ・・・・・・」 「どうした? 大口叩いた割には大した事が無いな。所詮ドットはこの程度か」 「な・・・・・・貴様・・・・・・僕の事を知って・・・・・・」 敵の言葉に含まれた『ドット』という単語に反応したギーシュ。 相手はどちらかといえば端整に見えるその顔に厭らしい笑みを浮かべ、勝ち誇った様に語りだした。 既に5体のワルキューレ全てが撃破されており、ルイズは気絶、ギーシュは負傷によって動けず、大方の勝敗は決した様に見える。 「知っているさ、グラモン家の末息子。兄弟に比べて随分と劣った出来らしいな」 「っ!」 「見栄を張るしかないグラモンの家には、女を誑かすしか能の無い失敗作がお似合いだよ」 その言葉と同時、ギャラリーの一角が俄かに騒がしくなる。 見れば、食堂を出て部屋へと戻った筈のモンモランシーが、級友達に抑えつけられているではないか。 どうやら決闘の話を聞き付けて、居ても立ってもいられずに此処へと駆け付けてきたらしい。 そしてギーシュへの暴言に耐えられずに思わず飛び出そうとした所を、彼女が巻き込まれるのを防ごうとした級友達に抑えられているという訳である。 しかしその彼女の目の前で、ギーシュとルイズへの暴言は更に続く。 「おまけにヴァリエールの出来損ないとデキているとあってはな。まぁ、失敗作と出来損ない、お似合いではあるか」 楽しそうに声を張り上げる2人の脳裏には、ヴァリエール家とグラモン家の力など欠片も浮かんではいなかった。 実際に陰謀渦巻く王宮などに出れば、そんな命知らずな真似は決して出来ないだろう。 しかし彼等は未だ学生の身。 散々に自らの家名を盾にしてきたにも関わらず、魔法の才能で劣ると判断したルイズとギーシュに対し、自らと比べ遥か格下の相手であるかの様に振舞う。 結局のところ、彼等は井の中の蛙だった。 「どうした? 少しは反論したらどうか・・・・・・ねッ!」 「がっ!」 遍在の1体が、ギーシュの腹に蹴りを入れる。 少し離れた所では、相方の遍在がルイズを『レビテーション』で浮かし、壁へと叩き付けていた。 どうやら本気で動けなくなるまで痛め付けるつもりらしい。 「ほらほらほらほらほらほらァ! 何とか言ったらどうだい、えぇ?」 「う、うああっ、ぐ、ぇえッ」 「・・・・・・なんだ、こっちはもう気絶してるぞ」 眼前で繰り広げられる余りの非道に、其処彼処から悲鳴が上がる。 血反吐を吐くギーシュを仰向けにし、その腹を繰り返し踏み付ける3体の遍在。 本体は少し離れた場所から、薄笑いを浮かべながらその様子を見守っている。 一方でその相方は気絶したらしきルイズを広場の中央へと放り出し、呼び出した己の使い魔を差し出した腕にとまらせて下卑た笑みを浮かべた。 「トーレスの仇を討たなければな・・・・・・なぁ、イルミー?」 主の呼びかけに応える様に、その腕にとまったオオワシが羽を広げつつ甲高く鳴き声を上げる。 そして主はその腕を掲げ、隠し切れない愉悦の表情を滲ませた。 「まぁ・・・・・・片目くらい無くても、楽しむ事は出来るだろう」 差し出した腕をルイズへと向け、余りにも非情な命令を使い魔に下す。 「抉り出せ、イルミー!」 その命令にイルミーは、一際高い鳴き声を上げて羽を打ち下ろし、意識の無いルイズへと向かうべく主の腕を離れた。 堪らずキュルケが、それに呼応してタバサが杖を構えた、その瞬間。 青銅の豪腕が、哀れな使い魔の体を握り潰していた。 「・・・・・・イルミー?」 目の前で起きた事を受け入れられず、呆然と呟く主。 そして我に返った瞬間、己の使い魔を握り潰した腕が自分の背後から伸びている事に気付いた。 若干離れた場所で、思わず踏み付ける脚の動きを中断していた3体の遍在の足元から、息も絶え絶えながら可笑しくて仕様が無いといった声が洩れる。 「本当は・・・・・・ヴェルダンデが見分けるのを待って・・・・・・仕掛けるつもりだったんだけど・・・・・・ね・・・・・・」 「な・・・・・・に?」 背後から抱きしめられる様にして押さえ付けられた彼は、ぼろぼろのギーシュから放たれる言葉に凍り付いた。 見れば自分の足元には小さな穴が開き、その中に小さな光る目らしき物が動いているのが見て取れるではないか。 「どれが本物か判らないから・・・・・・1つだけ異なるニオイを・・・・・・探させたんだ」 「お、お前・・・・・・」 「でもまさか・・・・・・『自分から』名乗り出てくれるなんてね」 その言葉に今度こそ遍在も含め、7つの人影が凍り付く。 ギーシュの言う通り、彼等はよりにもよって自らの行動で、どれが本体かを敵に教えてしまったのだ。 片や、1人安全な場所から遍在の行う暴行を眺めていた。 片や、呼び出した使い魔を自身の腕にとめた。 既に勝負は決したとの思い込みから来た、致命的な失策。 ギーシュは激しい暴行を受けながらも、決してそれを見落とさなかった。 最初のワルキューレを錬金した際に、演出を装って広場中にばら撒いた薔薇の花弁。 その中で敵本体に最も近い1枚から、ワルキューレを錬金したのだ。 「そして・・・・・・これが僕等の切り札だ」 「エア・カッター!」 ギーシュの言葉が終わるか否かというところで、ワルキューレの胴体が斜めに切り飛ばされる。 抱え込まれた人間が巻き込まれぬよう、絶妙な角度で射ち込まれた一撃。 それは遍在の1体が放ったものだった。 同時に勝ち誇った様な、嘲りの声が上がる。 「切り札だって? それはこの青銅のゴミ・・・・・・!」 「そう・・・・・・そうすると思ったよ」 『勝利への確信』に満ちた声は、ギーシュの『確実な勝利への確信』に満ちた声によって遮られる。 ワルキューレを切り飛ばした当の本人は、その内部から零れ落ちた無数の『石』を見て呆けた顔を晒していた。 「僕のワルキューレは・・・・・・中が空洞でね・・・・・・」 その無防備な相手に対しギーシュは、一片の慈悲も無く止めの声を発する。 「ヴェルダンデが集めたんだ・・・・・・それだけの石礫の中で・・・・・・『爆発』が起こったら・・・・・・どうなるだろうね・・・・・・!」 「やめっ・・・・・・」 「ミス・ヴァリエールッ!」 その瞬間、気絶したと思われていたルイズが跳ね起き、杖を構えて呪文を唱えた。 「錬金ッ!」 瞬間、石礫の1つが爆発を起こし、その爆風によって飛び散った周囲の石礫が敵本体を激しく打ち据えた。 防御する暇などある筈も無く、無数の破片を受けた彼は数メイルも吹き飛ばされて地面に転がる。 同時に、2体の遍在もその姿を消した。 「なっ!?」 「ヴェルダンデ!」 そして間を置かず、もう一方の本体の足が吸い込まれる様に地に沈む。 ウェルダンデが掘った落とし穴だ。 そしてこちらの背後にも、青銅の死神がその姿を現す。 「あ・・・・・・あ・・・・・・」 「さて、ミス・ヴァリエール・・・・・・さっき彼は、僕等が何だって言ってたかな?」 仰向けに地に転がったまま薔薇の造花を咥えたギーシュが、ワルキューレへと杖を向けるルイズに問い掛けた。 遍在に囲まれ血を吐きつつも、その顔は何時も通りの気障な表情を浮かべている。 そして対するルイズの声もまた、何時も通りの気丈さに満ちたものだった。 「さあ・・・・・・忘れちゃったわ。でも別にいいんじゃない? 何せ・・・・・・」 「ああ、そう言えばそうだね。何せ・・・・・・」 前屈みになったワルキューレの首が落ち、中から無数の石礫が零れ落ちる。 自身の頭に当たるそれらの硬く冷たい感触に、首の無い戦乙女に抱きしめられた彼は絶望の表情を浮かべた。 『まともに喋る事も出来なくなるんだからねッ!』 そして『錬金』の呪文と共に、彼は石礫の暴風に呑み込まれた。 「・・・・・・はぁ」 「ぐっ・・・・・・ふぅ」 呻き声と共に2人が身を起こし、互いの姿を見て笑みを浮かべた、その瞬間。 ヴェストリの広場に、耳を劈く様な歓声が上がった。 「ルイズッ! ルイズ、ルイズ、ルイズルイズルイズッ!」 「なっ、ちょ、キュルケッ・・・・・・ふみゃうっ!」 「嗚呼、ルイズ! やった、勝った、勝ったのよトライアングル2人に! 凄いわ!」 「むーっ、むーっ!」 「・・・・・・お美事」 駆け寄ってきたキュルケに熱烈な抱擁を受け、呼吸困難に陥るルイズ。 キュルケはルイズの額から滲む血が己の服を汚すのにも構わず、彼女を抱きしめたままくるくると回転する。 タバサはそんな2人を何処か羨ましそうに眺めつつ、心からの賛辞をルイズとギーシュに送った。 一方でギーシュは・・・・・・ 「やあ、モンモランシー」 「・・・・・・」 「あ、あはは、見ていてくれたかい、僕の戦いを? いやあ、如何にトライアングルとはいえ、僕のワルキューレの前には・・・・・・」 「ギーシュ」 「はい」 ギーシュ、直立不動。 初めて王の前に立った新米騎士の様に、冷や汗を流しながら俯いたままのモンモランシーの言葉を待つ。 しかし続く言葉は予想していたような怒声ではなく、か細く震える涙声だった。 「こんな・・・・・・こんな無茶して・・・・・・」 「・・・・・・」 「死んじゃうかと・・・・・・思ったじゃないっ・・・・・・」 「モンモランシー・・・・・・」 「もう・・・・・・こんな無茶・・・・・・しないでよっ・・・・・・」 しゃくり上げるモンモランシーの肩に、ギーシュはそっと手を置く。 そして泣き顔を上げたモンモランシーの耳元に口を近づけ、何事かを呟いた。 するとモンモランシーの顔が一瞬にして赤く染まり、次いでギーシュの頭を可愛らしく叩き始める。 ギーシュは笑いながらそれを宥めていたが、それらの声は周囲の止む事の無い歓声に掻き消されて誰の耳に入る事も無かった。 そして数分後、ルイズとギーシュは周囲の友人達に見守られながら、互いの健闘に賞賛の言葉を送り合っていた。 「まさかあそこまで上手くいくとはね・・・・・・アンタのワルキューレ、なかなかのものじゃない」 「ふっ、何を今更。しかしあんな作戦、よく思い付いたものだね」 「アンタがワルキューレの特徴を事細かに教えてくれたからよ・・・・・・その、感謝するわ」 そっぽを向いて言われたその言葉に、ギーシュは苦笑しながら手を差し出す。 それを眼にしたルイズも、一瞬戸惑いを見せたもののすぐに手を差し出し、2人は握手を交わした。 周囲からは再び割れんばかりの歓声が上がり、2人の顔にもまた笑みが浮かぶ。 そしてそんな2人にキュルケ、そしてモンモランシーが駆け寄ろうとして――――― 「エア・カッター!」 無数の風の刃が、2人を襲った。 「えっ!?」 「きゃあっ!」 咄嗟に腕で顔を庇う、キュルケとモンモランシー。 刃の暴風が通り過ぎ、腕を下ろして見た先に、ルイズとギーシュの姿があった。 「ルイズ・・・・・・」 「ギーシュ、良かっ・・・・・・」 無事らしき2人の姿に安心したのも束の間、周囲の生徒達は凍り付いた。 ルイズ、そしてギーシュの全身から、夥しい量の血が噴き出したのだから。 「ルイズ!」 「ギーシュ、ルイズ!」 動きを止めたのは一瞬の事。 すぐさまモンモランシーが駆け寄り、2人に治療を施そうとする。 しかし次の瞬間、その華奢な体が『エア・ハンマー』の暴風に吹き飛ばされ、床へと強かに打ち付けられた。 「モンモランシー!? くっ!」 キュルケ、タバサ。 そして複数の生徒達が杖を構えた先に、その2人は立っていた。 服は至る所が破け、全身から血を流してはいるものの、憎悪と殺意に濁ったその双眸は爛々と輝いている。 「アンタ達・・・・・・」 「出来損ない風情が・・・・・・調子に乗りやがってぇ!」 「殺してやる! 豚の相手など生温い! 切り刻んで鼠の餌にしてやる!」 怨嗟の叫びと共に、再び遍在がその姿を現す。 どうやら既に詠唱は済んでいたらしい。 そして2人のその言葉によって、キュルケの瞳に灼熱の憎悪と憤怒が燃え上がる。 「いいわ・・・・・・アンタ達はこの決闘を汚した・・・・・・此処から五体満足で帰れると思わない事ね・・・・・・!」 その背後ではタバサがその眼に絶対零度の怒りを浮かべ、無言で杖を構える。 意識の無いルイズとギーシュ、モンモランシーの周囲には級友達が集まり、何としても3人を守ろうと同じく杖を構えていた。 そして、ルイズ達を級友諸共切り刻もうと、7体の敵が詠唱に入った、その瞬間。 ヴェストリの広場上空を、轟音と共に巨大な影が飛び去った。 広場に詰めた全員が空を見上げ、絶句する。 其処には金属の巨体から放たれた無数の火球が白い尾を引き、空中を白一色に覆い尽くしていた。 視線の遥か先には濃灰色の鉄塊が移り込み、既に点ほどの大きさになっているというその事実が、鉄塊の誇る異常なまでの速度と上昇力を示している。 しかし、ヴェストリの広場に居る者達が眼を奪われたのは、そんな事ではなく。 鉄塊の尾の下で、ゆっくりと閉じてゆく空洞から飛び出した何かが。 日の光を受けて鈍く輝く何かが。 生物の様で、決してそうではないと解る何かが。 白煙の層を突き破って広場へと落下してきたという事実だった。 そしてトリステイン魔法学院に、異形の咆哮が響き渡る。 これこそが、後に永く語り継がれる事となる『虚無の鋼鉄の使い魔』こと『動く兵器庫』、そしてその僕『鋼鉄の蠍』こと『地中の暗殺者』により引き起こされる数々の惨劇、その第一幕の始まりであった。 back / next