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翌日、キュルケは昼近くに目を覚ました 寝ぼけた頭で先ず今日が虚無の日であることを思い出し、次に今や焼け焦げた風穴と 化した窓を見て昨夜の事を思い出した 「そうだわ、ふぁ・・・・。色んな連中が顔出すからふっ飛ばしたんだっけ」 そして壊れた窓のことなど毛ほども気にかけず、起き上がると先ず化粧を始めた 今日はどうやってヴァニラを口説こうかと考えるとやる気がムンムン湧いてくる キュルケは生まれついてのスタンド使・・・・もとい狩人なのだ 化粧を終え、ルイズの部屋の扉を叩く その後キュルケは顎に手を置いてにっこりと微笑む ヴァニラが出てきたら抱きついてキスをする ルイズが出てきたらどうしようかしら、少しだけ考えるが (そのときは、そうね・・・) 椅子に座っているであろうヴァニラに流し目を送って中庭でもブラブラしていれば向 うからアプローチしてくるだろう キュルケはよもや自分の求愛が拒まれるとは露ほども思っていないのであった(昨夜 のはノーカウントらしい しかしノックの返事は無い 構わず開けようとするが鍵がかかっていた キュルケは禁止されているにも関わらず、『愛の情熱はすべてのルールに優越する』 というツェルプトー家の家訓に従いなんの躊躇いも無くドアに『アンロック』の呪文 をかけた 鍵が開く音がすると勢いよくドアを開けるが 「あら?」 部屋はもぬけの殻だった 「相変わらず色気のない部屋ね・・・・」 キュルケは部屋を見回し、ルイズの鞄が無い事に気づいた 虚無の曜日なのに鞄が無いという事はどかかに出かけたのであろうか、 そう思い今度は窓から外を見回した 門から馬に乗って出て行く二人の人間が見える 目を凝らせば果たして、それはヴァニラとルイズであった 「なによー、出かけるの?」 キュルケはつまらなそうに呟き、それからちょっと考えるとルイズの部屋を飛び出した ヴァニラを伴ったルイズはトリスティンの城下町を歩いていた 学院からここまで乗ってきた馬は町の門のそばにある駅に預けてある 「狭いな」 物珍しそうに辺りを見回したヴァニラが呟いた 白い石造りの街はまるで話に聞くテーマパークのようだ 魔法学院に比べると質素ななりの人間が多い、皆平民なのだろう 道端で大声を張り上げて果物や肉、籠などを売る商人たちの姿が ヴァニラに何処と無くエジプトの情景を思い起こさせた 「狭いってこれでも大通りなんだけど」 「これで?」 道幅は5メイルもない そこを大勢の人が行き来するものだから歩くのも一苦労である 「ブルドンネ街。トリスティンで一番大きな通りよ、この先にトリスティンの宮殿があるわ」 「ああ、有事の時の備えという訳か」 確かに道が広いと街中が戦場になれば守るべき箇所が増え敵の侵攻が容易になる、 もっともこの場合は技術レベルの問題もあるのだろう 「ほら、さっさと行くわよ」 一人納得するヴァニラを引っ張るようにしてルイズは狭い路地裏に入っていく 悪臭が鼻を突き、ごみや汚物が道端に転がっている 「・・・・不潔な」 「だからあまり来たくないのよ」 ルイズは四辻に出ると立ち止まり、辺りをきょろきょろと見回す 「ピエモンの秘薬屋の近くだったからこの辺りなんだけど・・・・」 それから一枚の銅看板を見つけ嬉しそうに呟いた 「あ、あった」 ヴァニラが見上げると剣の形をした看板が下がっていた どうやらそこが武器屋であるらしい 店の中は昼間だというのに薄暗く、ランプの灯りが燈っていた 壁や棚に所狭しと剣や槍が並べられ、立派な甲冑が飾ってある 二人の客に気づいた五十がらみの店主が店の奥から胡散臭そうに見つめ、 ルイズの紐タイ留めに描かれた五芒星に気づくとドスの利いた声をだす 「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさぁ。お上に目をつけられるよう なことなんかこれっぽっちもありませんや」 「客よ」 ルイズは腕を組み、その台詞を一蹴するように言った 「こりゃおったまげた、貴族が剣を!おったまげた!」 「どうして?」 「いえ若奥さま。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、そして陛下 はバルコニーから手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで」 「使うのは私じゃないわ。使い魔よ」 「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も剣をふるようで」 主人は商売っ気たっぷりにお世辞をいい、それからヴァニラを見上げるように眺め、 ごくりと息を飲んだ 「・・・・剣をお使いになるのはこの方で?」 ルイズは頷き肯定する 二人のやりとりを他所に店内へ品定めするように鋭い視線を巡らすヴァニラには 相当な威圧感があった 「私は剣のことなんかわからないから適当に選んでちょうだい」 主人はいそいそと奥の倉庫へ消えるがその背中は心なし煤けていた気がするが、 多分気のせい 「おっかねぇ客だ。適当にふっかけてとっとと帰らせるとしよう。 それに売れりゃ儲けものだ」 僅かに身震いすると出来るだけ見栄えのする剣を選んで店に戻る 「これなんかいかがです?」 見事な剣だった 1,5メイルはあろうかという大剣 柄は両手で扱えるように長く、立派な拵えである 鏡のように諸刃の刀身が光り、見るからに切れそうである 大剣としての本来の目的からは外れているようだが戦争に行く訳ではないのだ、 あまり関係ないだろう 「店一番の業物で、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の傑作で。魔法が かかってるから鉄だって一刀両断でさ。使い魔の旦那なら腰から下げれやしょう」 勿論嘘なのだが店で一番立派という点では偽りは無い 店主はチラチラとヴァニラの顔色を窺うが興味が無さそうに一瞥をくれただけだった しかしルイズ乗り気だった、店一番と店主が太鼓判を押したのが気に入ったらしい 貴族はなんでも一番でないと気がすまないのである 「おいくら?」 「エキュー金貨で二千、新金貨なら三千」 「立派な家と森つきの庭が買えるじゃないの」 ルイズは呆れていった ヴァニラが生徒から巻き上げた金でも足りそうにない ルイズが店主に何か文句を言おうとするがそれは叶わなかった 「帰りな素人さんどもよ!」 突然誰かの声がし、弾かれたようにヴァニラが店内を見回すが店の中には三人しかいない 「誰だ?」 ヴァニラが眉間に皺を寄せ警戒していると店主が怒鳴り声を上げた 「やいデル公!お客様に失礼なことを言うんじゃねぇ!」 「デル公?」 見れば乱雑に積まれた剣の山の一本が、錆の浮いたボロボロの剣が喋っている 「それってインテリジェンスソード?」 ルイズが当惑した声をあげる 「そうでさ若奥さま。意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。 こいつはやたらと口は悪いは客にケンカ売るわで閉口してまして・・・・」 「まるでアヌビスだな・・・・」 ヴァニラは今頃ナイルの川底に沈んでいるだろう、或いは平行世界で虐げられている スタンドの名を呟くとその剣を手に取る 「おでれーた、てめ『使い手』か」 「『使い手』?」 「ふん、自分の実力も知らんのか。まあいい、てめ俺を買え」 偉そうにいう剣にどうしたものかと暫し悩んでいたが 「おい、こいつでいい」 ルイズに向き直り錆だらけの切っ先を向ける 「え~~~~~~~~?もっと綺麗で喋らないのにしなさいよ」 ルイズは心底嫌そうである 「こいつは何か知っているようだ。帰るための方法を探す役に立つかも知れん」 「立たなかったら?」 汚いものでも見るような目で剣を見るとヴァニラの顔を見上げる 「消し飛ばす」 「ならいいわ」 流れるような一連の遣り取りにデル公と呼ばれた剣は凍りついたように黙り込み 「店主、これにするわ」 「ちょ、ちょっと待った!やっぱ無し今の無しぃぃぃぃぃぃッ!」 盛大な悲鳴を上げた 「それなら百で結構でさ」 「安いじゃない」 「こっちにしてみりゃ厄介払いみたいなもんでさ」 店主はひらひらと手を振りながら言った 支払いを済ます間じゅう剣は騒いでいたがヴァニラ、ルイズ、店主の三人は奇妙な連帯感で無視していた 「毎度」 剣を取り、鞘に収めるとヴァニラに手渡した 「こいつの名前はデルフブリンガー、名前だけは一人前でさ。どうしても煩いと思っ たらこうやって鞘に入れれば大人しくなりまさぁ」 ヴァニラは頷いて剣を受け取ると腰から下げる 斯くしてインテリジェンスソード、デルフブリンガーは無事ヴァニラ・アイスのもの となり、デルフブリンガーは騒いでも聞き入れてもらえないので、考えるのを止めた To Be Continued...
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時はギーシュを億泰がフルボッコにする数分前…… 「フン、ご飯抜きは当然の報いよ」 そう言って自分だけお昼に手をつける。 うん、今日も美味しい。 部屋で着替えた後で少~~~し昼寝をしてしまったから、他の皆より遅い昼食だった。 周りは大体デザートに入っているので少し気恥ずかしい。 「掃除はもう終わったの?ルイズ? 少しばかり遅い昼食みたいだけどねー?」 ああ、もうこのキュルケときたらからかう事ばかり。 得意げな顔をして胸を揺らしている。こんなキュルケと家がライバルの自分が憎い。 「あら?そういえば使い魔はどうしたの? まさか一人で掃除させて自分は寝てたとかじゃないわよね?」 正解にすぎる。トリステインはどうなってしまうのか。 「~~~! その通りよ!文句ある!?」 「まあいいけどね。 貴方の使い魔があそこでケーキ配ってても」 「え!?」 キュルケに言われて辺りを見てみると、確かに間抜け面が見つかった。 隣のメイドとそれなりに仲良さそうにケーキを配っている。 (な、ななななによアイツは! なんで勝手にメイドと仲良くしてんのよ! いえ、平常心、平常心よルイズ。 使い魔が言うこと聞かないでメイドに餌付けされた位でなんだっていうの。 後でご飯を抜いて……ってもう一週間抜いたんだったァー!) そんなこんなで悩んでいるルイズをキュルケが可愛い物を見る目でこっそり鑑賞しだした頃、 ふと勘違いのギーシュの辺りでモンモランシーと知らない少女の怒鳴る声、それからガラスの割れる音が聞こえた。 見ると、ツープラトンを食らっているようだ。 「あちゃー、ギーシュってば手酷くやられたわねー」 「……自業自得じゃない」 あれ?いつの間にかアホのオクヤスが厨房に戻って出てきて…… と時がすっ飛んでいることにルイズが気づくのと同時に、メイドが土下座をしていた。 ボーッとそれを見ていると、今度はオクヤスがギーシュとなにやら言い合いを始めて…… 気づいた時にはもう億泰がギーシュをフルボッコにしていた。 白目を剥いて鼻血と舌をダランと垂らしたギーシュの襟首を掴んで殴っている。 暫くすると手を離されてギーシュが床に沈みこむ。 さっき取り巻いてた友人達が引っ張ってく様子を見て、 マリコルヌと一緒におねんねするのね、とルイズは思った。 「って何をやってるのアンタはーーー!?」 メイドに手を差し出して立たせていた億泰へと詰め寄ることにした。 「お、オクヤスさん!? 逃げてください!貴族を殴っちゃうなんて! 殺されちゃいますよ!?」 「そ、そうよ! アンタ何考えてやってんのよ! 今度は魔法使ってくるわよアイツは!」 「いや、別になんも考えてなんてねーけどさ」 それを聞いてルイズとシエスタはサッと顔を青くし、周囲の生徒は皆ずっこけた。 「考えなしでギーシュをボコボコに!?平民が!?」 「いや、別にギーシュはどうでも良かったけどアホかアイツは!」 「へへ、あの平民が何日生き残れるか賭けようぜ! 俺は一日目でだ!毎食のはしばみ草のサラダを賭けるぜ!」 「Bad!もっとまともな物を賭けるんだ! 僕は三日で……この十枚を賭けよう!」 「Good!」 「ああ、どこに行ってたんだアンジェロ岩! 心配したよ急に居なくなってるもんだから!」 アギ…… 「~~~~! 出かけるわよ!用意しなさい! メイド、アンタは馬の支度!」 喧騒をよそにルイズがシエスタと億泰を食堂から引っ張り出して命令する。 「え、あの、ミス・ヴァリエール? 午後の授業は言ったいどうするんですか?」 「サボるわよ…… 町にいくの。少なくともギーシュが起きあがる前までに剣を買うわ。 丸腰よりは幾らかマシだもの」 「剣~~~? オメーが使うってのか~~?」 「アンタのよ!」 そして三時間後 「腰がいてェェ~~!」 「情けないわね、馬にも乗った事ないなんて。 それより気持ち悪いからその歩き方なんとかならないの? 相当人の目を引いてるじゃないの」 トリステインの城下町へと辿り着いた二人の様子は対照的だった。 映画のセットのような街中をひょこひょこと内股で歩く学生服の億泰。 それを気持ち悪い物を見る目で見ているルイズ。 そして億泰の(主にケツを)見ているイイ男数人。 「というか、アンタ感謝の気持ちが足りてないでしょ。 生存確率上げてあげようと思ってわざわざ町まで遠出したのに……」 「だからよォー、いらねーっつったじゃねーか」 「メイジの魔法って物を分かってないわね。 そんなんじゃ本当に死ぬわよ?さっきの逆の構図で」 馬の上でも何度も交わした問答だったが、 改めて言っても無駄だったので億泰は諦める事にした。 「それより、預けた財布は大丈夫? 大通りなんだからスリ多いのよ?」 財布は下僕が持つ物だと言われ馬から降りるなり財布を預けられたのだ。 ずっしりとした感触に顔がどうしても綻ぶ。 「大丈夫だってーの。 こんな小さな通りでよぉ~~スられっかって」 「小さいって……この町一番の大通りよ?ここ」 そう言いながらもルイズは更に狭い路地裏へと入っていく。 汚物やらゴミやらが道端に放置されていて、 入ってきた二人に気づいた猫が子犬を咥えて走り去っていった。 「うわ、見るからにヤバそーですって感じだなァー」 「だからあんま来たくないの。 ほら、さっさと用事を済ませるわよ」 そう言ってルイズは路地裏を進んでいき、やがて一軒の店へと入っていった。 億泰が看板を見ると、剣の形をした銅の看板がかかっている。 どうやら武器の店らしいな、と思いながら億泰はルイズに続いて店内へと入った。 店の中は昼間だというのに薄暗く、所狭しと並べられた武器防具がランプに照らしだされていた。 奥には五十絡みの親父がたるんだ顔してパイプをふかしている。 「レストラン・トラザr じゃねーや、こんな所へ何の用だい?おじょうちゃ……」 くわえたパイプを離し、ドスの利いた声で言いかけた所でルイズの服装に気づいたらしい。 胸元の五芒星に目をやると、途端に態度を変える。 「旦那。貴族の旦那! うちはまっとうな商売をしてまさあ、お上の目にさわるような事はこれっぽっちも! もう『ゼロ』でさあ!」 「客よ」 『ゼロ』に反応してムカつきながらも、ルイズはそう言って物色しだす。 やがて、自分では剣の良し悪しなんて分からない事を理解して億泰に尋ねる。 命が懸かってる分本人に尋ねた方が分がいいだろうと考えたのだ。 「ほら、どんなのが欲しいの?」 「ってもよォ~俺帰宅部だったしそんなん分からねーって」 「アンタ自分の命懸かってるのがわかんないの!?」 そう言い合う二人を見ると、店主はいそいそと奥へ引っ込んでいく。 そして、倉庫に入る前に振り向いてニヤニヤと笑いながら小声で呟いた。 「ド素人どもめ、鴨葱ってやつか。 せいぜい高く売って儲からせてもらおうかね」 やがて店主は奥から1.5メイルはあろうかという立派な剣を油布で拭きながら持ってきた。 両手で扱える程の柄の長さに、ところどころ宝石が散りばめられている。 「なるほど、確かに昨今は貴族の方々の間で下僕に流行ってますからね。 そこの兄ちゃんはガタイもいいし、コイツでもきっと扱いきれますな。 どうです?コイツはこの店一番の業物ですぜ」 その輝きにルイズも億泰も魅入られたのか、覗き込んだ。 やがて、ルイズが聞き出す。 こいつでいいやと思ったのだろう。見栄っ張りのルイズらしい所である。 「おいくら?」 「へい、何せこいつはかの高名な錬金魔術師シュペー卿が鍛えた一品でしてね、 ちょいと値が張りますぜ?」 「私は貴族よ?ほら、もったいぶらないで言いなさい」 「エキュー金貨で二千、新金貨では三千になりますな」 その値段を聞いた途端、ルイズがあんぐりと口を開く。 億泰はサッパリこちらの金銭感覚が分からないのでポケーっとしていた。 「ドンくらいの価値なわけ?これ」 「森つきの庭と立派な邸宅が買えるくらいよ」 「……ハァ?何言ってんだてめー! 俺達からボろうってでも言うのかコラー!」 「お、おい、勘弁してくださいよ兄ちゃん。 うちの品物にケチつけるってのかい? 青銅だって真っ二つだし、青銅や青銅や青銅のゴーレムが殴った程度じゃ折れない代物なんですぜ?」 弁解と追求の争いが始まろうとしたその時、乱雑に積まれた剣の山の中から声がした。 低い男の声だ。 「おいおめえ!ケチつけるんなら証明でもすりゃーいいじゃねえか! 鉄を切るだとか剣がダメになるだとかの前に腕が壊れるだろうがな! むしろ棒っきれでも振ってんのがお似合いだぜ猿野郎が!」 「ん、んだとてめー!」 いきなりの悪口にムカっ腹が立った。 しかもいつもと違うバリエーションだったためにより一層だ。 しかし、声がしても姿が見えない。 「デル公てめえ!商売の邪魔する気か! せっかく良い値でだま……っと、売れそうだってのに!」 「黙ってろいオヤジ! ほらほら、帰んな貴族の娘っ子!」 「失礼ね!」 怒鳴るルイズをよそに、億泰は声の方へと近づいていく。 そして、剣の山の中から一本の剣を引き抜く。 「まさか、おめーがしゃべってんの?」 「そうだぜこのボケナス!」 それは薄手の長剣だった。 しかし、錆がところどころに浮いてとてもじゃないが使えそうとは言えない。 「ほォー!剣がしゃべんのか!おもしれーな」 「それって、インテリジェンスソード?」 ルイズが当惑した声を出してその剣を見た。 「そうでさあ若奥様。意思を持つ魔剣インテリジェンスソードでさ。 どこの物好きが始めたのか、剣をしゃべらせるようにした奴なんですが…… いかんせんこいつは性格は悪い、口は悪い、喧嘩早いととにかく嫌な野郎でして。 おいデル公!失礼はそこまでにしときな!それ以上すると川底に沈めるからな!」 「そん時は魚に話して岸まで運んでもらうから構わねえぜクソオヤジ!」 「なんだとこの野郎!孤独だよ~!って喚いてもゆ、許さないからな!」 歩き出す主人を億泰が手で制す。 その表情は新しいおもちゃを手に入れた子供、 あるいは康一が由花子に初めて呼び出されたシーンを見た億泰のようだ。 「おもしれーじゃねーか。 俺よォ~、このデル公でいーぜ?」 「え?い、嫌よそんなの。 『ぜ~~~~ったいに負けんのだあ!』とか叫びそうじゃないの」 「俺様はデルフリンガー様だ!デル公じゃねえ! さっさと放せ三下!……?」 ルイズと一緒になって抗議しだしたデルフリンガーだったが、ふと押し黙った。 そして、暫くたってから再び話しはじめる。 「おでれーた。てめ『使い手』じゃねえか。 ああ。あんなナマクラよりは損はさせないから俺を買え」 「ん、だから買うっつんじゃねーかよォ」 そう億泰が言うとすぐにまた押し黙る。 「チッ…… まあ、ソイツなら厄介払いで百で結構でさあ。 どうしやすか?相場なら数百は頂きやすし、そいつ鞘に入れとけば黙りやすんで」 ウッとルイズは息がつまる。 財布には数百も無い。せいぜい二百が良い所だったのだ。 だから、それを気取られないように精一杯虚勢を張って言う。 「仕方ないわね……こいつでいいから買ってあげるわ」 「ヘイ、毎度あり!」 そうして、デルフリンガーを抱えて二人は出て行った。 途端に武器屋には静寂が戻ってくる。 「フン、今日はもう店じまいにするかね。 五月蝿いのがいなくなってせいせいしたしなあ」 酒瓶を取り出しながら親父は独り言を漏らす。 「ま、これで儲け話を零さないで済むんならマシってもんよ。 なあ?そう思うだろおめーら。 ……チッ、今日はやけに酒が塩辛いな」 親父の呟きは、ガランとした店の中に消えていった。
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炎の使い魔 Summon 1(炎) / 400f ファミリアーの召喚 Atk=0 HP=1 炎の使い魔が攻撃に参加した際、全てのクリーチャーと全てのプレイヤーに1点のダメージを与える。 -- http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/27456/1135510382/826 カテゴリ:本体火力, クリーチャー除去 参照:水の使い魔, 風の使い魔, 光の使い魔, 闇の使い魔 コメント欄 名前 コメント
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朝もやの中、セッコとルイズとギーシュは馬に鞍をつけていた。 ルイズとギーシュが乗馬用のごつい靴を履いているのが不安で仕方ねえ。 どんだけ遠いんだ。 そういやギーシュって何ができるんだっけ。ええと・・・ 錬金。これは便利だ、うん。青銅と石以外に何を出せるか知らねえけどな。 固定化。脅迫気味にスーツにかけてもらったが、ルイズに話すと「ドットの固定化は気休め」って言われたっけ。微妙だ。 銅像。いっぱい出せるみたいだがあんまり強くないし目立つ。 やっぱし、秘密っぽい作業には向かねえよな。 こいつ自体目立ちたがり屋だし。 こっそり動くのに向かないと言えばルイズもだ。 セッコ的にルイズの爆発は凄い能力なのだが、 ルイズは爆発を「爆破攻撃」として使うことを非常に嫌がるので期待できない。しかも目立つ。 セッコが一人で悩んでいると、ギーシュが突如改まって話し始めた。 「お願いがあるんだが・・・」 「んん?」 「僕の使い魔を連れて行きたいんだ。」 「どこにいるんだあ?」 「ここ」 ギーシュは地面を指差した。 その直後、もこもこと地面が盛り上がり、熊ほどもある茶色の生き物が姿を現した。 ギーシュがそれに抱きつく。 「ヴェルダンデ!ああ!ぼくの可愛いヴェルダンデ!でも、最近ちょっと太り過ぎじゃないかな?」 「そいつヴェルダンデって名前だったのかあ。」 前言撤回、ギーシュ(の使い魔)は物凄く使える。 シルフィードに勝るとも劣らねえだろう。 パワフルだし、高速で地中を進める。 しかもオレと違って穴が残るから人の輸送も可能ときてやがる。 陣の外から穴掘ってウェールズを急襲だ、完璧、よしッ!! 「そうだよ。セッコは僕の可愛いヴェルダンデを知ってたのかい?」 「ああ、いつもそいつとシルフィードとオレで、食堂の力仕事手伝って飯もらってるぜ。」 「ヴェ、ヴェルダンデ・・・変なもの食べちゃダメだよ?」 ヴェルダンデは我関せずといった調子で鼻をならした。 ルイズが横から口を挟む。 「ねえ、ギーシュ。ダメよ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょう?」 「当然。[モグラ]だからな。けど、ヴェルダンデは馬ぐらいなら追いつけるよ。」 「そういう問題じゃないわ。わたしたちが行くのって、アルビオンでしょ」 「あ・・・」 「脳がマヌケね。」 「お別れなんてつらすぎる・・・僕はギリギリまで諦めないぞ!」 「残念ね。」 アルビオンって島なのかよ。結局ヴェルダンデも使えねえのか・・・うう・・・ とりあえずギーシュと一緒になって撫でておく。本当に残念だ。 その時、突然ヴェルダンデが鼻をひくつかせてルイズに飛びついた。 「な、なによこのモグラ」 「なーギーシュ。ヴェルダンデはなにやってんだ?」 ルイズとヴェルダンデが取っ組み合っている。 「この!無礼なモグラね!姫さまに頂いた指輪に触らないで!ああもう!」 「多分その指輪に引き寄せられたんじゃないか? ヴェルダンデは宝石とか希少鉱物が大好きだからね」 「宝石まで探せるのか、すげえなあ。ギーシュオメーにゃもったいねえぜ。」 「いつかはふさわしい主になってみせるさ」 「当分無理じゃねえかあ?」 と、一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつくヴェルダンデを吹き飛ばした。 「誰だッ!!!」 ギーシュが激昂してわめいた。 朝もやの中から、一人の男が現れた。羽帽子を被っている。こいつも貴族かあ? んんー?どっかで見たことあるなあ。 「貴様、僕のヴェルダンデになにをするだぁー!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げる。 が、それよりも早く羽帽子の男が杖?を抜き、ギーシュのそれを吹き飛ばした。 「僕は敵じゃない。姫殿下より、君たちに同行することを命じられてね。君たちだけではやはり心もとないらしい。 しかし、お忍びの任務であるゆえ一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」 その男は帽子を取ると一礼した。 なんだ、でかい帽子を被ってなければかっこいいじゃねえか。 「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」 ワルドはしょぼくれたギーシュを見て、声をかけた。 「すまない。婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬ振りはできなくてね」 婚約者ねえ。貴族って大変だな。 ルイズは目を輝かせてワルドを見ている。 「ワルドさま・・・」 「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!」 ワルドはルイズを抱え上げた。ルイズは頬を染めている。 「お久しぶりでございます」 「相変わらず軽いなきみは、まるで羽のようだね!」 「・・・お恥ずかしいですわ」 「彼らを、紹介してくれたまえ」 言うとワルドはルイズを下ろした。 「あ、あの・・・ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のセッコです」 「きみがルイズの使い魔かい?人・・・だよね?」 ワルドが近寄ってくる。 「僕の婚約者がお世話になっているよ」 「・・・うん。」 セッコはワルドを観察した。さっき風を起こしたということはメイジなんだろう。 だが、いい体してやがるなあ。きっと体術もそこそこいけるに違えねえ。 こんな奴をよこすなら、最初からこいつにやらせりゃいいじゃねえか。 いや、もしかするとむしろこいつの方が微妙に信用されてないのかあ? 今考えることじゃねーな。さっさと馬に乗ろう。 ワルドが口笛を吹くと、昨日見たライオンの胴体に鳥の頭がついた珍獣が現れた。 よく見ると羽が生えている。 グリフォン隊隊長つってたし、きっとこれがグリフォンなんだろ。多分。 ひらりとそれに跨ると、ルイズを手招きした。 「おいで、ルイズ」 ルイズはしばらく躊躇った後、グリフォンに乗った。 うー、くそお、やはりタバサと連絡を取っておくべきだった。 グリフォンの速さはわからねーが、2人が飛んで2人が馬とか冗談きついぜ。 ワルドが杖?を掲げ叫ぶ。 「では諸君!出撃だ!」 グリフォンが駆け出す。セッコとギーシュもそれに続いた。 空を見る。置いていかれると思ったが、意外にも馬と大差ない。 半分は鳥じゃねえから、鳥の半分の速度ってわけかあ。ふうん。 車とかあれば楽なのによお・・・ねえんだろうな、多分。 港町ラ・ロシェールは、トリステインから離れること馬で約2日、アルビオンへの玄関口である。 小さな町で、人口は300ほどでしかないが、アルビオンを行き来する人々で常に十倍以上の人間が町を闊歩している。 狭い山道を挟む崖の一枚岩を、土の魔法で住居に加工しているため、昼でも薄暗い。 更にそこから奥へと入った安居酒屋「金の酒樽亭」で、フーケと白仮面の男が話をしていた。 「連中が出発した」 「あんたに言われたとおり傭兵は雇ったよ。」 「で、こいつらは信用できるのかね?」 居酒屋の中はたった今フーケに雇われた傭兵でごった返していた。 「できるわけないじゃない、今前金を叩きつけたばかりよ。 そもそも人を選ぶ時間もなかったし。」 「まあ、そうだろうな。少し喝を入れてやるか」 「いいんじゃない?」 魔法学院を出発させて以来、ワルドはグリフォンを疾駆させっぱなしである。 セッコとギーシュは既に2匹の馬を交換しているが、グリフォンはそのまま頑張っている。 なるほどな、そう早くなくてもスタミナがあるってわけかあ。 しかし、馬って使えねえなあ、腰痛いし。 「ちょっと、ペースが速くない?」 ルイズの口調は、ワルドと雑談を続ける間に元に戻っていた。 「へばったら、置いていけばいい。見た感じラ・ロシェールまでぐらい持ちそうだがね」 「そういうわけにはいかないわ。」 「どうして?」 「だって、仲間じゃない。それに、ギーシュはともかくセッコは重要な戦力よ。」 「そうは見えないがねえ。もしかしてきみの恋人だったりするのかい?」 ワルドは笑いながら言った。 「こ、恋人なんかじゃないわ」 ルイズは顔を赤らめた。そしてちょっと考える。 セッコの能力を知らせておこうかしら? いや、やめておこう。戦闘になってからでも遅くはないわよね。 「そうか、ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたら、ショックで死んでしまうからね」 「お、親が決めたことじゃない」 「僕のことが嫌いかい?」 「そんなわけないじゃない!」 「はは、それは良かった」 わたしが結婚、ねえ。 まだそれに現実味を感じられないルイズではあった。 「もう半日以上、走りっぱなしだ。魔法衛士隊の連中は化け物か」 ギーシュが馬に体を預けて口を開く。 「バカ、ありゃあの動物がタフなんだ、人は関係ねえ。ルイズを見てみろよお。」 それにしても馬って奴は。 「秘密任務なら、風竜の一匹ぐらい貸してくれてもよかったのに。そう思わないかい?セッコ」 テメーがいなけりゃシルフィードの力を借りる予定だったんだよお。 「来なきゃよかったんじゃねえの?」 「そういうわけにはいかないよ。姫殿下を助けるのは貴族の義務だ」 「そうか。」 馬を乗り潰すこと4匹。何とかセッコたちはその日のうちにラ・ロシェールの入り口に着いた。深夜だが。 あれえ?確かにルイズは港町、つってたよな?何だこりゃ。 街並みは峡谷に挟まれている。 「なあ、ギーシュよお」 「なんだい?」 「ラ・ロシェールって港町だよな?」 「そうだけど、どうかしたのか?」 「うう・・・」 ギーシュの答えは要領を得ない。 その時不意に崖の上から、松明が何本も投げ込まれてきた。 その拍子に馬が驚きセッコとギーシュは振り落とされてしまう。 「な、なんだ!、奇襲か!」 ギーシュが怒鳴った。 そこを狙って何本もの矢が夜風を裂いて飛んでくる。 ああ、畜生。なんかあるとは思ってたがよお。 とりあえずギーシュを馬の影に向かって蹴り飛ばし、鞘に入ったままのデルフリンガーで矢を叩き落とす。 「痛っつ、何するんだ!」 ギーシュがわめいている。 「壁でも作って待ってろお。」 潜るルートを考えつつ、再び飛んでくる矢を適当に捌こうとした所で、目の前に小型の竜巻が現れた。 慌てて後ろに跳び退る。 「大丈夫か!」 ワルドの声が聞こえる。大丈夫かじゃねえよ、邪魔するな。 「その様子だと平気そうだね、すまなかった。・・・夜盗か山賊の類か?」 降りてきたワルドが呟く。 ルイズも呟いた。 「もしかしたら、アルビオン貴族の仕業かも・・・」 「貴族なら、弓は使わんだろう」 いや、その理屈はおかしい。つーかそう言うワルドの杖はどう見ても剣だ。 弓や槍持ったメイジも絶対どっかにいるだろ。賭けてもいいぜ。 そんなことを思っていると、聞きなれた羽音が聞こえてきた。 シルフィードかあ? 同時に、崖の上から男たちの叫び声が聞こえ、そしてばらばらと落下してくる。 「おや、風の呪文じゃないか。」 ワルドが微妙な表情になった。そしてシルフィードが地面に降りてくる。 「うおお、どうしたシルフィード」 「きゅいきゅい!」 そして、その上から何故かキュルケが飛び降りてきて、髪をかきあげた。 「お待たせ、ルイズ」 ルイズがグリフォンから飛び降りて、キュルケに怒鳴った。 「お待たせじゃないわよ!何しにきたのよ!」 「助けにきてあげたんじゃないの。朝方、窓から見てたらあんたたちが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、急いでタバサを叩き起こしてあとをつけたのよ」 キュルケは風竜の上のタバサを指差した。 しかし・・・ タバサはなんとしっかりと服を着込み、荷物まで持っていた。 絶対前もって準備してた雰囲気である。 「ツェルプストー。あのねえ、これはお忍びなのよ?」 「お忍び?だったら、そう言いなさいよ。言ってくれなきゃわからないじゃない。 あなたたちを襲った相手も捕まえたんだし、感謝しなさいよね?」 そう言ってキュルケは誇らしげに笑った。落ちてきた男たちが呻いている。 いや、全部聞いてたから知ってますけどね。 ルイズが心配だから応援に来た、なんて言えないじゃないの。タバサはタバサで何か考えがありそうだし。 「助けは嬉しいが、あまり深入りはしてほしくないな」 ワルドが首をかしげる。 「加減するから、大丈夫よ」 キュルケは笑った。本当は言い寄ってやろうと思ったのだが、先手を打たれてしまった。 そこまで好みじゃないしいいけど。 「あれは、放置?」 タバサが男たちを指差して、シルフィードを撫でていたセッコに言った。 「そんなのもいたな、一応話聞いてやるかあ。」 「情報一番」 敵から話を聞くときはどうするんだったっけな。 確か、えーと、足先から、あー・・・んと・・・ 思い出した、切らなきゃなあ。デルフリンガーを引き抜く。 「よう相棒久しぶり。寂しかったぜ」 「喜べデルフリンガー。」 「どうしたよ」 「ちょっと静かにしててくれよお。」 「ああ、かまわねえぜ」 うー、36等分ってどのぐらいずつ切ればいいんだろ? 適当でいいかあ。どうせ多分死ぬし。 「なー、ちょっと話聞かせてくれるよなあ?」 「おめえらに話すことなんかこれっぽっちもねえよ!」 「そーかあ。それは残念だぜえ。」 「急いでたんだろ?さっさと行ってくれ!」 「まあ、そう言うなよお。な。」 深夜の渓谷に、偶然セッコから一番近い場所に転がっていた不幸な男と、その横にいたもう一人の絶叫と断末魔が響いた。 「あ、相棒ってわりと乱暴だな・・・」 「そうかなあ。」 ちゃんと話聞けたしルイズに報告するかあ。 「仮面の貴族と、貴族じゃない女メイジの2人に雇われた。怪しいけど給金が凄かったから受けた。 つってたぜ。」 「そ、そう。やっぱり貴族派かしら?もう危ないのね・・・」 ルイズの様子がおかしい、震えている。なんでだ? 「ふむ・・・既に情報が漏れているとは予想外だな、なるべく急ごうか。」 ワルドはそんなルイズを抱きかかえて、ひらりとグリフォンに跨った。 「今日はラ・ロシェールに一泊して、朝一番の便でアルビオンに渡ろう」 ワルドは一行にそう告げた。 「それはいいんだけどよお、ギーシュはどこ行ったんだあ?」 皆が首をかしげる。 すると、矢が数本刺さった青銅のドームの影からギーシュが姿を現した。 「あれ、賊はどうなったんだい?」 「「「「「・・・」」」」」 道の向こうに、ラ・ロシェールの町の灯りが怪しく輝いていた。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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トイレから部屋に戻ったルイズは、昨日呼び出した使い魔について考えていた (朝食は抜いた、死体は芯まで凍っていた為、血こそ飛び散らなかったものの食欲が消えるには十分だった 粉々になった死体は部屋に戻ると昨日の様に消えていた、消えて無かったら今頃いい感じでスプラッタだったろう) おかしい、落ち着いて考えてみると確かにおかしい 死体が消えるのもそうだけど、死んだ筈なのに再び召喚されるっていうのは如何考えてもありえない 死んだ、自分の目の前で死んだ、なのに召喚されて動いて喋っていた 屍生人?吸血鬼?アヴドゥル?どれも違うように思える それよりも「死んでも召喚されれば生き返る」のではないか? そう思えた もう一度呼び出してみれば分かるかもしれない 疑問を確かめるべく、三回目の召喚を行う これであの男が出てくれば確定だ、自分が呼び出したのは只の平民などではない 何か力を持った存在なのだ、馬鹿にされる様な使い魔等ではないのだ そう思うと落胆していた気持ちが高揚していくのを感じた 「あらためて、アンタ誰」 「…ディアボロだ」 過去2度の召喚と同様に杖の先に現れた男は落ち着いていた 絶え間無く周囲を見回し警戒していること隠さなかったが、こちらを見て怯えるということは無かった ディアボロの落ち着きを見て取ったルイズは ディアボロを召喚したこと、ディアボロが使い魔であること、使い魔とは何であるかを説明した 「自分の置かれた立場が分かったわね」 「じゃあ私の疑問に答えて貰えるかしら 彼方は何故生き返ったの? 前に呼び出した時は確かに死んでいた筈だわ 甦る力があるの?それとも死んでいなかったの?」 ディアボロは警戒を解かぬまま口を開く 「…私はある戦い以来、何処から来るか何時来るか分からない死に襲われ続けている」 「一度死んでもそれで終わりではない、場所が変わり時が変わりまた死が襲ってくる」 「…まるで死の呪いね」 「ルイズ…だったな」 「お前の話は理解できた、だがそれはお前の都合であり私には関係の無いことだ 使い魔が欲しいのなら別のを探すんだな」 この男の言葉には凄みがある、言葉を裏打ちするだけの力を持っているのだ 逃す訳には行かない ここで逃せば自分は本当に何も無い「ゼロ」になってしまう しかしこのままでは引き止められない ルイズは何かこの男を留めて置けるなにかはないかと必死に頭を働かせた 力?金?カラダ?いや違う 男の喋った言葉の中にあったそれに気付く、思いつくままに口を動かす 「死ぬ度に時間と場所が変わる、そう言ったわね」 「それならばあれほどまでに周りを恐れていたのは分かるわ」 「何も分からぬままいつまでも流され続ける、これほどの恐怖は無いものね」 「でも、今の彼方は落ち着いている、死を恐れているものの落ち着いているわ」 「それは安心したからじゃあないかしら、状況が理解できる範囲にあることに」 「私に呼ばれてから別の場所で死んだことはあった?無いんじゃないの?」 「それは契約を結んだことで呪いに変化があったと考えられるわ」 「だから私の元を離れたり、私を殺したりすればその安心は失われるかもしれないわよ」 「何処とも知れぬ場所で永遠に死に続ける、そんなのに耐えられるかしら」 一気にまくし立てたルイズは息を整え、最後の決め手と言わんばかりに言い放った 「これは機会よ!慈悲深い御主人様が与えた最後の機会! 逃したならもう二度と救われることは無いわね」 ディアボロがルイズを見る 「よく喋る口だ…つまり利害が一致した訳だな、お前は使い魔が欲しい、私は平穏を必要としている いいだろう、使い魔になってやろうじゃあないか」 ルイズは笑みを浮かべた やった、ほとんどでまかせだったがこの男は使い魔になると言った ディアボロの言葉遣いや態度は気に入らないが、とにもかくにも使い魔を得ることが出来たのだ 「じゃあ行くわよ、ついて来なさい」 「何処にだ」 「教室によ、使い魔は主と行動を共にするものよ」 教室は大学の講義室という風だった 何か異なることといえば生徒達が皆何かしら生き物を従えていることだろう 道すがら見かける様なものもいれば、動物園で目にするようなものもいる ディアボロの目を引いたのは中でも物語の中でしか存在し得ない筈の生き物達だ (ここでは幻獣と称するらしい、ルイズの話の中で出ていた) (イタリアではないことだけは確からしいな) この小娘に出会ってから2度死んだ、死んだ次の場面は2度とも小娘の前だった 今までこんなことは無かった、時間も場所繋がり無く変わり訳も分からぬまま死を繰り返した 小娘のでまかせを思い出す 確かに以前の状態に戻らないという保証は無い 認めたくは無いが自分はあの小僧に破れ絶頂から転げ落ちてしまったのだ 今は崖に生えた細い枝に服が引っ掛かった様な極めて不安定な状態だ 少しでも重心を崩せば再び奈落の底へと転落してしまうだろう しっかりと三点確保を維持しながら崖を上らねばならない 迂闊な行動は出来ない 絶頂であり続ける為には… 「コッチヲ見ロォ~~ッ」 「ん………?」 顔を起こしたディアボロに散弾の様な石の破片が突き刺さり、ついで爆風が体を粉々に吹き飛ばした ■今回のボスの死因 ルイズの失敗魔法の巻き添えで爆死
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まあ、なんだ。 結局さっきの一件はおれの『おいた』で済まされた。 おれはコレに納得がいかない。 何故ならその言い方ではおれが悪いことをしたみたいだだからだ。 まあその後ピンクの髪の女に連れられているって訳だ。 本心ではもっと胸のあるヤツがいいんだが、嫌な予感がするのでそれは黙っておく。 そしてどうやらここは異世界で魔法があるらしいところまで理解した。何故かおれの手も直っている。 「さて、とまずはアンタの名前ね」 「イギーだ。それが俺の名前」 「そう、イギー。よろしくね」 そう言われても状況がサッパリなんだが、おれがそう言うと 「状況って、アンタは私の使い魔になったのよ」 なんて返してきやがった。 使い魔ってのは何だ?と聞くと 「使い魔は使い魔よ」 あーあーこれだから人間は、説明になってないじゃねーか。 「使い魔って言うのは主人のメイジ、つまり私ね、が使役する絶対的な主従関係で成り立つ動物や幻獣のことよ」 ウィキペディアで調べた様な答えだな。 「とにかく!アンタは私に絶対服従!いいわね?」 「よくない」 誰がこんな貧乳なんかに服従するか 「………」 あれ、黙っているぞ?そんなにおれが否定したのがショックだったのか? 「だ……うよ」 ん? 「誰が貧乳よ~~~~!」 やべえ、つい言っちまってた! おれは自分の身を守るためベッドの下に飛び込む。魔法を使われたくないのでついでに杖も持っていく。 「あ!出て来なさい!このバカ犬!」 無視する 「杖を返しなさい!」 無視する 「さっさと出て来い!」 アーアー聞こえなーい 「いい加減にしなさい!」 そういってベッドの下に手を突っ込んでくる。今だ! おれはベッドの反対側から出てそのまま部屋を飛び出す。脱出成功! とはいかなかった。 「ドアが開けられねえ……」 クソッ!こんな時はあのブ男が開けてたのに! そしておれは殺気を感じた。後ろに振り向き 「いやあご主人様!今日も綺麗ですね!」 とりあえず褒めてみる。 「ありがと。出会ったのは今日だけどね」 もっともなお言葉で。 そして散々鞭で叩かれる。その最中に気絶しちまった。 「まったく…目覚めたら従順になってればいいけど」 そう言うルイズ。 絶対ならないぞ、おれは。 鞭で叩くようなやつに従うつもりは全くない。 「そろそろ寝ましょ」 そうしろそうしろ 「えーと着替えは…」 ム!覗けるのか、と思ったがあんな貧乳に興味はない。さっさと寝やがれ。 しばらくしてルイズが眠る。 それを確認しておれはベッドの下から出る。 「ザ・フールをおとりに使ってよかったぜ」 何か罰を与えないと気がすまないって感じだったからな。 おれは叩かれたくないのでザ・フールで自分の形を作ったって訳だ。(もちろんベッドから出るとき入れ替わった。) さて、おれも寝るか ベッドからルイズを下ろす。ルイズより早く起きて床にいれば寝相のせいになるだろう。 このベッド結構寝心地いいなぁ。 今日は疲れたので良く寝れそうだ。 To Be Continued…
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『NINKU―忍空―』から、キャラ『風助』を召喚。 原作FIRST STAGE終了後、釈迦の証を所持している状態です。 1章 輝きは君の中に 風の使い魔-01 風の使い魔-02a/b 風の使い魔-03a/b 風の使い魔-04a/b/c/d
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康一達がマリコルヌに地獄を見せていた同時刻、本塔の最上階にある学院長室で、ちょっとした騒ぎが起ころうとしていた。 トリステイン魔法学院の学院長を務めるオスマン氏が、白いひげと髪を揺らして、退屈そうにしていた。 「暇じゃのう……」 オスマンは、机に手をつきながら立ち上がり、理知的な顔立ちが凛々しい、ミス・ロングビルに近づいた。 椅子に座ったロングビルの後ろに立つと、重々しく目をつむった。 「こう平和な日々が続くとな、時間の過ごし方というものが……」 「オールド・オスマン」 オスマンが、年季の入ったしわをよせながら重々しく語ろうとするが、ロングビルによって遮られる。 「なんじゃ?」 「暇だからといって、わたくしのお尻を撫でるのはやめてください」 オスマンは口を半開きにして、耳をロングビルに向けながら聞く。 「え? ポッポ ポッポ ハト ポッポ?」 「都合が悪くなると、ボケた振りをするのもやめてください」 どこまでも冷静な声でロングビルが言った。 オスマンは深くため息をついた。そして真剣な顔をしながら語る。 「そういえば、昨日召喚されたという平民の少年はどうしてるんじゃろうな? 後で様子でも……」 「少なくとも、私のスカートの中にはいませんので、机の下にネズミを忍ばせるのはやめてください」 ロングビルの机の下から、小さなハツカネズミが現れた。 オスマンの足を上り、肩にちょこんと乗っかって、首をかしげる。 「気を許せる友達はお前だけじゃ。モートソグニル」 そう言って、ネズミの前にナッツを振る。 「ほしいか? カリカリの欲しいじゃろう? なら報告をするんじゃ」 ネズミは、ちゅうちゅうと鳴きながら、オスマンに耳打ちした。 「そうかそうか、白か。純白か。よーし、よしよしよしよしよしよしよしよしよしよし! よく観察してきたのう、モートソグニル! 褒美をやろう。いくつ欲しいんじゃ? 二個か?」 ネズミは、顔を横に振って、ちゅーうちゅうちゅうちゅう! と鳴いた。 「三個欲しいのか? カリカリのを三個……。いやしんぼじゃのう! よし、三個くれてやろう!」 ロングビルが眉をぴくぴくとさせながら、その光景を見ていた。 「オールド・オスマン」 オスマンは、ネズミに向かってナッツを放り投げながら聞く。 「なんじゃね?」 「今度やったら、王室に報告します」 その言葉を無視するかのように、オスマンはネズミと戯れていた。 ネズミが手を使わずに、全てのナッツを口でキャッチして、カリコリさせながらナッツを食べている。 「よォ~しよしよしよしよしよしよしよしよしよし! とってもいい子じゃぞ、モートソグニル!」 うれしそうにネズミを撫で回すオスマン。 その光景を見ていたロングビルは、オスマンの背後に無言の圧力をかける。 「下着を覗かれたぐらいでカッカしなさんな! そんな風に怒ると、余計にしわが増えるぞ。 これ以上、婚期は逃したくないじゃろう。 ぁ~~~~、若返るのう~~~、何というスベスベの……」 オスマンが、ロングビルのお尻を堂々と撫で回し始めた。 ロングビルは立ち上がり、無言で上司の顔面を手の甲の部分で引っぱたいた。 バギィッ! 小気味良い音を立て、オスマンは地面に倒れる。 追撃といわんばかりに、ドガドガドガと、オスマンの体中に何度も蹴りを入れ続ける。 「ごめん。やめて。痛い。もうしない。ほんとに。許して!」 「このッ! このッ! このエロじじぃがッ! 思い知れッ!!」 普段の冷静なロングビルとは思えない台詞を言い放ちながら、尚もオスマンに蹴りを入れる。 「あだッ! うげッ! ごげッ! と、年寄りを、きみ。ちょま、まって。折れちゃう! はぐッ!」 「私の清らかな部分を! よくも汚れた指先で! いやらしく撫で回してくれたわねッ!」 ロングビルは完全にプッツンしているようで、目を尋常じゃないほど見開いている。 迂闊なことをしたと後悔しながら、意識が遠くへいきそうになるオスマン。 オスマンが失禁寸前になっていたその時、 ドアがガタン! 勢いよくあけられ、中堅教師のミスタ・コルベールが飛び込んできた。 「オールド・オスマン!!」 「……」 返事がない。 ロングビルは何事も無かったように机に座っているが、オスマンはピクピクと体を痙攣させていた。 いつものことなので、特に気にも留めずにコルベールは話を進める。 「たた、大変です! ここ、これを見てください!」 『炎蛇のコルベール』の二つ名を持つコルベールは、 白目をむいて気絶しているオスマンを燃やして、強制的に意識を覚醒させる。 そして、図書館にあった書物をオスマンに手渡した。 「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか」 オスマンは何事も無かったかのように、書物をマジマジと見つめている。 「これが一体どうしたと言うんじゃ。 こんな古臭い文献など漁ってる暇があったら、貴族から学費を徴収するうまい手を考えるんじゃよ。ミスタ……、なんだっけ?」 オスマンは首を傾げた。 「コルベールです! お忘れですか!」 「そうそう。そんな名前だったな。それで、この書物がどうかしたのかね? コルベット君」 「コル 『ベール』ですッ! わざとらしく間違えないで下さい!!」 だめだコイツ……、と思いながら頭を抱えるコルベール。 「とにかく、これを見て下さい!」 コルベールは、康一の手に現れたルーンのスケッチを手渡した。 それを見た瞬間、オスマンの表情が変わった。目が光って、厳しい色になった。 「ミス・ロングビル。席を外しなさい」 ミス・ロングビルは立ち上がり、部屋を出て行った。 彼女の退室を見届け、オスマンは口を開いた。 「詳しく説明するんじゃ、ミスタ・コルベール」 ルイズがめちゃくちゃにした教室の片付けが終わったは、昼休みの前だった。 罰として、魔法を使って修理することが禁じられたため、時間が掛かったのである。 といっても、片づけをしたのは殆ど康一で、ルイズは面倒くさそうな顔で机の煤を拭いただけだった。 新しい窓ガラスや重い机を運ばされた康一はくたくたになりながら、食堂へ向かうルイズの後ろを歩いてる。 「……」 「……」 二人とも無言であった。 ルイズは不機嫌そうにしており、康一は話す気力もないと言った感じで肩を落としてる。 だらだらと歩く康一に我慢できなくなったルイズが、康一に向かって怒鳴りつける。 「ちょっと! 私の使い魔らしく、もっとシャキっとなさい、シャキっと!」 康一は、何も答えずにノロノロと歩いている。 「人の話を聞いてんの? この犬!」 犬と言われた康一は、ムッとしながらも何とか堪え、ルイズの所までスタスタと歩いた。 ルイズの肩に手をポンと置き、散々コキ使われた恨みを籠めながら笑顔で返事をする。 「僕もシャキっとしたいんだけど、何せもう体力が 『ゼロ』 だからなぁ~」 康一は、『ゼロ』の部分だけ声を張った。 ルイズの眉毛がぴくぴくと動き、歯はギリギリと不協和音を奏でていた。 「いや、本当は僕も急ぎたいけど、体力が『ゼロ』だし、気力も『ゼロ』だからさぁ~!」 「ふーん、へぇ~、そーなの。 体力が無いなら仕方ないわね~」 ルイズは笑顔で、しかし、万力の力を込めるように、拳を握った。 それを見た康一は、ヤバイと思って、後ずさりしながら離れる。 「さ、さあ~てッ! 早いとこ食堂に行こ……」 ルイズの右ストレートが、康一の左頬にクリーンヒットする。 バギィッ! という音が、食堂へと続く廊下に響いた。 康一は、明日の食事も全て抜きとされてしまった。 殴られた左頬を押さえながら、康一はシエスタに案内された厨房へ向かっていた。 口の中は鉄の味で充満しており、虫歯になった時のように、ジンジンと痛みが走っている。 「あら、コーイチさん」 厨房の前に到着すると、シエスタが大きな銀のトレイで、何枚もの皿を運んでいる最中だった。 康一は、シエスタのところまで駆け寄り、一礼をした。 「どうも、シエスタさん。朝はお世話になりました。運ぶの手伝いますよ」 そう言って、シエスタの持っていたトレイを持ち上げる。 しかし、片づけで大幅に体力を失っていたこともあり、持ち上げた体勢のままプルプルと震えて動けなくなる。 「あ、あの……無理はなさらないほうが……」 シエスタが康一を心配そうに見つめる。 「だ、だ、だ、大丈夫……です。あ、いや……。やっぱまずいかも……」 シエスタは、康一の両手に重なるように手を置き、トレイを持ち上げるのを手伝う。 「す、すいません……」 シエスタの手に触れていることも相まって、康一は顔を真っ赤にして俯いた。 「一緒に運びましょう。二人で運べば、お互い楽に運べますから」 そう言って、可愛らしい笑顔でニコリと微笑むシエスタ。 康一は十分の一でもいいから、シエスタの優しさをルイズに分けてほしいと思った。 皿が乗っているトレイを、厨房のテーブルに乗せる。 トレイから皿を下ろしていると、料理を作っていたコックが皿を何枚か要求した。 康一が皿を持っていき、コックが料理を盛って、再び康一に手渡す。 シエスタが康一から料理を受け取り、何枚か大きな銀のトレイに乗せて食堂へと持っていった。 数分後、メイン料理の全てを運び終えたメイドたちは、デザートの時間になるまで昼食を取っていた。 「うーん、やっぱおいしいッ!」 康一も、シエスタを含むメイドたちと賄い料理を食べていた。 今日の賄いはシチューらしく、康一の腹を満たすには充分すぎる程の量が入っている。 シエスタは、その様子をクスクスと笑いながら見ている。 「……? どうしたの?」 「コーイチさんって、本当においしそうに食べてくれますね」 「そりゃあ、本当においしいんですから、自然とそうなりますよぉ~!」 そう言って、満面の笑みでシチューを頬張る康一。 ルイズに殴られた傷なんて、気にならないくらいであった。 「この後、デザートを運ぶんですよね? 僕も手伝いますよ」 「そんな、そこまでしてもらうわけには……」 既に厨房の仕事を手伝って貰っており、これ以上手伝ってもらっては申し訳ない、とシエスタは思った。 「いえ、朝もご馳走になりましたから、是非やらせて下さい!」 「……わかりました。なら、手伝って下さいな」 康一の素直な瞳を見て、断っては逆に失礼だと思ったシエスタは、デザート運びを手伝ってもらうことにした。 大きく頷き、康一は再びシチューを食べ始めた。 大きな銀のトレイに、デザートのケーキが並んでいる。 康一がトレイを持ち、シエスタがはさみでケーキをつまみ、一つずつ貴族たちに配っていく。 「なあ、ギーシュ! お前、今は誰と付き合ってるんだよ!」 声のした方を見ると、金色の巻き髪にフリルのついたシャツを着た、キザなメイジがいた。 薔薇をシャツのポケットに挿している。どうやら友人らしき人物と話をしているようだった。 「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」 「つきあう? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 あの人、自分を薔薇に例えるなんて、よっぽど自分の容姿に自信があるんだなぁ~。 などと思いながら次の席までトレイを運ぶ。 特に興味もなかった康一は、すぐに視線を元に戻した。 次の席にケーキを配ろうと康一が移動した時、シエスタが何かに気づき、はさみをトレイに置いた。 「すみません、ちょっと待ってていただけますか?」 「あ、はい」 そう言って、シエスタはさっきのキザな男の元に駆け寄った。 知り合いかな、と思いながら康一が見ていると、何やら少しモメているようだった。 シエスタは困った顔をして、オロオロとしていた。 何かあったのかと思い、トレイをテーブルに乗せて康一がシエスタに声をかける。 「どうしたんですか?」 「あ、それが……」 その時、一人の女性がキザ男に向かってコツコツと歩いてきた。 「ギーシュさま……。 やはりミス・モンモランシーと……」 「彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは……」 ギーシュと呼ばれた男がそう言いかけた時、パァンッ! という音が、食堂に響いた。 ケティと呼ばれた女性が、ギーシュの頬を思いっきり引っ叩いていた。 「その香水が貴方のポケットから出てきたのが、何よりの証拠ですわ! さようなら!」 ギーシュは頬をさすった。 康一が何事かと思っていると、康一を押しのけて、また一人の女がギーシュの前に現われた。 「モンモランシー。誤解だ。彼女とはただ一緒に、ラ・ロシェールの森へ……」 「やっぱり、あの一年生に、手を出していたのね?」 モンモランシーは、テーブルに置かれたワインのビンを掴むと、中身をどぼどぼとギーシュの頭の上からかけ、 「うそつき!」 と怒鳴って去っていった。 しばし、なんともいえない沈黙が流れた。 ギーシュはハンカチを取り出すと、ゆっくりと顔を拭いた。 そして、首を振りながら芝居がかった仕草で言った。 「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」 康一は、この人二股かけてたのか、まあ自業自得かな。などと思っていた。 あんまり惨めな姿を見ていると可哀想だったので、康一はすぐにその場を去ろうとする。 「……メイド風情がやってくれたね。君が軽率に、香水のビンなんかを拾い上げたおかげで、 二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだい?」 シエスタは、体を震わせながら、半泣きで土下座をする。 その光景を見た康一は、ピタリと足を止め、ギーシュの元へと引き返した。 「も、申し訳ございません!」 「謝って済む問題じゃない。キミには責任を取ってもらうとしよう。 ここのメイドをやめて、今すぐトリステインから出て行ってくれたまえ」 そう言って、ギーシュはシエスタの元から去ろうとする。 それを聞いていた康一が怒りをあらわにしながら言った。 「ちょっと! 何もそこまでする必要はないじゃないですか!」 「ん? 君は確か……ゼロのルイズの使い魔だったか。 使い魔如きが、軽々しく僕に話しかけないでくれたまえ」 使い魔如きと言われカチンとするが、 それよりも頭に来たのは、ギーシュが自分の責任をシエスタに押し付けてることだった。 「話を聞いていると、悪いのは明らかにキミの方だ! 大体、二股をかけてるのが悪いんじゃあないか。自業自得だよ!」 ギーシュの友人たちが、どっと笑った。 「確かにその通りだ! ギーシュ、お前が悪い!」 「そうだ、お前が悪い!」 それを聞いていた、周りのギャラリーたちも、一斉にギーシュを攻め立てた。 「責任転嫁するなんて、かっこ悪いぞ!」 「この極悪人め!」 「キミが真の邪悪だ」 周りから好き放題言われるギーシュ。 プルプルと振るえ、顔を怒りの形相へと変えた。 「よくも……僕にこんな恥をかかせてくれたな……」 歯をギリギリとならし、康一をキッと睨みつけている。 康一も負けじと、ギーシュを真っ直ぐ見る。 「そうやって、なんでもかんでも人のせいにするのは止めた方がいいよ。 全てキミが悪いじゃあないか。周りの皆だって、そう言ってるよ」 うんうん、と頷くギーシュの友人とギャラリー達。 「……どうやらキミは貴族に対する礼を知らないようだな。 よかろう、ヴェストリの広場で待っている。ケーキを配り終えたら来たまえ」 くるりと体を翻し、ギーシュと、その友人たちが去って行った。 「コ、コーイチさん! 逃げて下さい! 殺されちゃいます!」 「シエスタさん」 「悪いのは私なんです! だから、行くのは絶対にやめて下さい!」 「シエスタさん、聞いて下さい」 康一は地面に座り込んでいたシエスタの手を取って、立たせた。 その姿は、体の小さな康一とは思えないほど、凛々しかった。 ドキリと胸をならし、シエスタは思わず視線をそらす。 「僕が逃げるってことはつまり、シエスタさんの名誉を汚すことになります。 シエスタさんは何も悪くないんです。だから、自分が悪いなんて言うのはやめて下さい」 康一は、真っ直ぐにシエスタを見ながら言葉を続ける。 「それに、僕は彼に解らせてあげなければならないんだ。『お前が悪いんだ』ってね。 大丈夫。僕は一度殺されそうになったことがあるからね。あんな奴、ちっとも怖くなんかないよ」 そう言って、康一はテーブルに置いたトレイを持った。 「さ、それより、早くケーキを配りましょう。皆さん、お待たせしてすみません」 康一達は、残りのケーキを貴族達に配っていった。 To Be Continued →
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ポルナレフがルイズを助ける少し前のこと。 「いいか、よく聞け。フーケが出て来たのはチャンスだ。今なら奴を倒せるかもしれん。」 ポルナレフはシルフィードの上で二人に話し出した。「確かに出て来たのはいいけど、あたし達の魔法じゃきっと効かないわよ?」 「お前達の魔法じゃあ無い。あくまで可能性の話だが…」 タバサが持っていた破壊の杖を指差した。 「その破壊の杖ならあのゴーレムを一発で破壊できるかもしれない。そして俺はその使い方を知っている。」 二人は驚いて、顔を見合わせた。破壊の杖を初めて見たばかりのそれもメイジではないはずのポルナレフが「使える」と言い出したのだ。 「だが、使うにはあそこにルイズがいると危険だし、距離と時間が必要だ。」 だからフーケの動きをしばらく止めてくれ、とポルナレフは頼んだ。 「ダーリンの頼みなら断る理由は無くてよ!それにルイズばかりかっこよくさせとくのも釈だし。」 「…(コクリ)」 キュルケとタバサは快く承知した。 ポルナレフはそれじゃあ頼んだ、とだけ言うと亀と破壊の杖を持って飛び降りた。 「はん!何わざわざ『土』は切れないなんて教えてんだい!これであんたの勝ち目は無くなったよ!」 フーケはゴーレムの腕を鉄に変えずにポルナレフに向かって撃った。 ポルナレフはルイズを抱えて急いで避けると、そのまま背中を向けて逃げ出した。 「逃がさないよ!」 フーケはゴーレムで後ろから追おうとしたが、 「ファイア・ボール!」 キュルケ達に邪魔された。「うざったい虫だね!」 空から来る二人の魔法に足止めを喰らうフーケ。ちらりとポルナレフの方を見ると、いつの間にか大分距離が開いていた。 ヤバイと思ったが、はたと気付いた。何故ポルナレフは破壊の杖を持って来たのだ?ルイズを助けるだけならば邪魔以外のなんでも… そしてフーケはニィっと口を歪めた。 (こいつは『当たり』だったようだね…。まあ、ゴーレムは犠牲になるかもしれないけど…) フーケはそう考えると今度は『わざと』じりじり後退していくような振りをした。 ポルナレフはフーケのゴーレムからある程度距離を取るとルイズを亀の中に入れ、破壊の杖を構えた。 「こんなものには頼りたくないんだがな…生憎チャリオッツじゃああいつには分が悪すぎる。」 ポルナレフはそうぶつぶつ言いながら慣れた手つきで破壊の杖の安全ピンを抜きとり(めんどくさいので省略)安全装置を外した。弾数は一発。失敗は許されない。 「タバサ!準備は出来た!すぐにゴーレムから離れろッ!」 ポルナレフがそう叫ぶとタバサは急いでシルフィードを上昇させた。 それを確認すると、ゴーレムに狙いを定めポルナレフはトリガーを引いた。 しゅっぽっと栓抜きのような音がして羽がついた大きな弾が白煙を引きながら飛び出した。 その弾がゴーレムの身体にのめり込んだ瞬間、その衝撃で信管が作動、弾頭は爆発し、ゴーレムを吹っ飛ばした。 だがその爆風の中、三人共気付かなかった。フーケが砕け散っていくゴーレムの残骸と共に落ちていく最中、笑っていたことに。 「後はこの土の中からフーケを探し出したらようやく終わりね。」 「…」 ポルナレフ、キュルケ、タバサの三人はゴーレムの残骸もとい土の山の前で立ちすくんでいた。ちなみに破壊の杖はすぐ近くの地面に置いてある。(ルイズはまだ亀の中で気絶している。) 正直言ってこの中から探し出すなんて面倒である。 「それにしてもダーリン。何で破壊の杖の使い方を知ってたの?」 「ノーコメントだ。」 「…ずるい」 三人がそんなやり取りを交わしている所に 「皆さんすいません。遅くなってしまって…てこの土の山は!?まさかフーケが…」 ロングビルが森の中から現れた。 「ああ、フーケが襲って来た。罠だったみたいだが俺がその破壊の杖で奴を倒し…「そこまでだよ。全員動くな。」!?」 ロングビルがポルナレフの言葉を遮った。その手には破壊の杖。 「ミ、ミス・ロングビル?」 キュルケがまさか、という顔をした。 「その通り。あたしが『土くれ』のフーケさ。 すまなかったねミスタ・ポルナレフ。あんたのお陰で全ては上手くいったよ。本当に感謝しているよ。」 フーケが嫌味ったらしく言った。 「成る程、やはりあれは嘘だったか。しかし、感謝しているならその破壊の杖を下ろしてもらいたいものだな…」 ポルナレフは静かに言った。 「駄目駄目。だってあたしの正体ばれてるのにここで逃がしたらあたしが大変な目に会うからね。 あんた達には残念だけど、これで死んでもらうよ。」 フーケがそう言って、破壊の杖の照準をポルナレフに合わせようとした時、ポルナレフはクククと笑い出した。 「?何笑ってんだい?」 「さっさと魔法で俺達を始末すればいいのに、貴様が無駄口叩いているのが面白くてな…しかもそれはな、」 ドサッ ポルナレフがそこまで言った時、いきなりフーケが倒れた。首の付け根に丸い凹みが出来ている。 「単発式…てもう聞いてないか。」 ポルナレフはロングビルが自分がフーケと明かした時、既にチャリオッツの剣針を飛ばしていた。 直接やらなかったのはフーケの位置までチャリオッツが届かなかったからだ。そして剣針は森の木々に反射し、見事フーケの首に命中したのだ。 「まさかミス・ロングビルがフーケだったとはのう…」 四人の報告を受けたオスマンは多少残念そうに言った。オスマンいわく、酒場で給仕をしていた彼女の尻を故意に触ったのだが怒らなかった、という理由だけでスカウトしたらしい。 その場にいたコルベール含む五人全員「死ねばいいのに」と思ったのは言うまでもないが、コルベールとポルナレフの親父二人はまあ、色々あったので少し同情した。 とりあえず体裁だけ整えてからオスマンはルイズとキュルケにシュヴァリエ、タバサには精霊勲章を申請しておくと言った。 その言葉に三人は誇らしげに礼をしたが、ルイズはあることに気付いた。 「オールド・オスマン。ポルナレフには何も無いのですか?」 「残念じゃが、彼は貴族では無いのでな…」 「そんな…」 1番手柄を立てたと言えるポルナレフには貴族では無いというだけで何も無いのか、ルイズはその理不尽に憤慨したが、ポルナレフはその肩を叩いて、 「俺は別に何もいらない。色々訳ありでな…」 と言った。 その言葉にルイズは渋々頷いた。 「それはそうと今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。この通り『破壊の杖』は戻ってきたし、予定通り執り行う。 今日の舞踏会の主役は君達じゃ。用意してきたまえ。せいぜい着飾ってくるのじゃぞ。」 三人が礼をしドアに向かったがポルナレフは行こうとしなかった。 「ポルナレフ?」 「先に行ってろ。こいつらと話がある。」 ルイズは納得いかなかったが、渋々出て行った。 「何か、私に聞きたいことがお有りの様じゃな…言ってごらんなさい。 出来るだけ力になろう。君に爵位は…ああ、要らないんじゃったな。まあ、せめてもの御礼じゃ。」 「聞きたいことは二つある。一つはこのルーンだ。薄々気付いていたが、このルーンは剣やナイフを持つと何故か反応する…これは何だ?」 「うむ…それは伝説の使い魔の印じゃ。」 「伝説の使い魔?」 「さよう。始祖ブリミルの使い魔でガンダールヴと言う。彼の者はありとあらゆる武器を使いこなした、と言い伝えられておる。 コルベールの仮説じゃったがどうやら本物らしいな。」 「なるほど…だから破壊の杖も扱えたのか。しかし何故あの小娘が俺達をそのような使い魔として召喚したのだ?」 「すまんが、そればかりは分からん。」 「…まあ、いい。それよりだ。あの破壊の杖はどうやって手に入れた?あれは俺がいた世界の武器だ。この世界の技術で作れるはずがない。」 「君がいた世界…ああ、君が言ってた召喚される前の魔法が無い世界か…まあ、話すと長いのじゃが…」 オスマンが言うにはその昔ワイバーンに襲われ危機に陥った所を破壊の杖の持ち主に助けられたらしい。 「その男は?」 「死んだよ。酷い怪我を負っていてな…『元の世界に帰りたい』とベッドで言っていたよ。 彼は破壊の杖を二本持っていてな、それで彼の墓に彼が使った方を埋め、もう一本は宝物庫にしまったのじゃ。」 「そいつが来た方法なんかは聞いてないのか?」 「聞いたのじゃが、本人も分からんと言っておった。すまんな、力になれなくて。」 オスマンがすまなさそうに頭を下げた。 「別に構わない。ただ、俺や亀の様に来た奴がいる…それさえ分かればな…」 ポルナレフは立ち上がると一礼してから退室していった。 To Be Continued...
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「ハッ?!」 目が覚めるとそこは見慣れないところでした 「・・・あれ、なにしてたんだっけ?こんな傷までして・・・」 この青年、ドッピオは腹部に包帯を巻かれてベッドの上で寝ていました 「・・・あ」 そして自分がなぜこんな傷を負ったのか思い出しました 「あ・・・気がつきましたか?」 「シエスタさん・・・そうだ!シエスタさん、僕が決闘しているのを見ていましたよね」 「あ、はい」 ドッピオは決闘のとき湧き上がったドッピオコールの最初、自分の名前を言ってくれたのがシエスタだと覚えていました 「あの後、どうなったんですか?」 「どうってドッピオさんがギーシュさまをやっつけたんですよ?覚えていないんですか」 それもそのはず、倒したのはドッピオではなく主人格であるディアボロなのですから ドッピオは自分のボスが倒したのだと思いひとまず落ち着きました 「目が覚めたようですのでヴァリエール様に報告しますね」 「ヴァリエール?」 「・・ルイズ様のことですよ」 ドッピオは最初に説明されたフルネームを忘れていました 「ドッピオ!!」 「ルイズさん・・・そんなに声を立てなくても」 「このバカ!!なんであんなことをしたの!!」 「いきなり罵倒しますか・・・」 しばらくベッドの上で貴族に決闘をさせるようなことをするなだとか あんなことではちっとも自分のためにならないだとか 傷を負ってるのに無茶をするなだとか ドッピオはいろんな罵倒を半分聞き流しながらルイズにあわせていました しばらくして怒鳴りつかれたのか一呼吸して 「今は傷を治すことだけ考えなさい。無茶したらそれこそ許さないんだから」 といって部屋から出て行こうとします 「ありがとうございます。ルイズさん」 ドッピオが礼を言うと 「か、勘違いしないでよね! 別にアンタのためじゃなくって早く傷を治してもらわないと家事をするのは誰がいるのよ」 照れ隠しだと思いながらドッピオはその言葉を受け取りました 「・・ここだけの話ですけどね」 シエスタが言います 「決闘の後ルイズさんとても心配なされていたのですよ? 傷を治すのにも高級な薬草を取り入れたりしていたそうですし」 「そうですか・・・それだとなおのこと傷を治すことを考えないといけませんね」 そして二日ほどたちました ルイズの取り入れた薬草のおかげか傷のほうも早く完治し、十分に動けるようになりました 決闘のこともあってかドッピオのことを「平民が…」等と言って直接絡んでくる人は特にいなくなりました ですが中途半端に腕に自信がある人たちが絡んできたりします あの後、ドッピオは貴族との戦いを学習し、絡まれたら逃げるといった行動に移るようになりました それでもそういった行動をとると相手は挑発をします。それに耐えられなくなるのはドッピオではなく主人のほうでした 「ちゃちゃっとあいつをやっつけちゃって!」 などの無茶な命令を聞くのも使い魔の仕事です。エピタフの未来予知を駆使し魔法を発動させる前に近づいて杖を折る ギーシュとの戦いで学んだことです。貴族の人たちは例外なく杖を折ると魔法が使えないようです ですがドッピオはこういった人たちよりももっと苦手な部類の人種がいるのです 先程絡んでくる人がいなくなったと言いましたが例外はいるんです 無性に絡んでくるのが1人います 「ドッピオー♪」 「・・・キュルケさん・・・」 キュルケと呼ばれた女生徒はドッピオの腕に胸を押しつけるように抱きついてきます 肩までかかる燃えるような赤い髪を持ちスラッと長身で豊満なバストを見せつけるような格好をしているキュルケ ドッピオに対しここ数日求愛行動を示していました 「ねぇ、今夜私の部屋にこ・な・い?」 「遠慮します・・・」 「あぁ~ん。即答しないでよー」 「じゃあ来年まで考えときます」 「もぉー、つれないわねぇ・・・」 彼女は二つ名が示す「微熱のキュルケ」の通り恋多き女なのです 理由は以下の通り 「数日であの「青銅のギーシュ」を初めとする学院の貴族を50あまり倒した平民・・・燃えるわー」 噂は肥大化するものなんです 「ちょっと・・・使い魔に用があるなら主人を通すのが礼儀じゃなくて?ミス・ツェペェルトー?」 「あーらミス・ヴァリエール。いたの?色々小さくて見えなかったわ」 「な、なんですってぇー!!!」 ちなみにルイズとは家柄的な問題で犬猿の中らしい 「・・・タバサさん。長くなりそうだから先に夕飯食いに行きませんか?」 「・・・・・・(コク」 タバサと呼ばれた少女はチラッとドッピオを見て頷くと視線を読んでいた本に戻しドッピオに続き歩き出しました 眼鏡をかけショートカットで青髪。ルイズよりも一回り小さい少女はいつも本を読んでいます ここの世界の文字が読めないドッピオには何の本だかはわかりませんが・・・ タバサはキュルケの親友でだいたいセットでいます 口数も少なく表情の変化もないので何考えてるがわかりにくい謎多き少女なのですがドッピオからして見ると一番疲れない相手でもあります 何だかんだここ最近4人組でいることが多いんです 「お腹すきましたね」 とお腹を押さえて歩いていると後ろから声が聞こえる 「あぁ~ん、待ってー!!」 「こらぁ!!ご主人様置いてどこ行くの!!」 と言った具合で夕食を取り部屋に戻るのです そしてルイズを寝かしつけると服を丁寧にハンガーにかけ下着姿になり毛布を被り眠ります 住めば都と言うべきなのでしょうか、我が侭なご主人はさて置きドッピオはここの生活に慣れていました ですがそんな休息も長くは続かないのでした 「フフフ、ここね…」 皆が寝静まった深夜のトリステイン魔法学院宝物庫 その扉の前に黒いフードを頭から被り明らかに不審者である人物がブツブツと独り言を言っているのでした 8へ