約 1,950,776 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2592.html
夜、陽気に賑わう酒場に、一人の男が入ってきた。 マントを着けているが、身なりからすると貴族とは思えない。 幅の広い帽子と、担いでいるこざっぱりとした荷物からすると旅人の様だ。 だが、酒場の喧騒の中その男に注目する者は居なかった。 その男は、大声で歌っている男の側を通り抜け、踊っている者たちを押しのけ、喧嘩をしている連中を避けてやっとカウンターにたどり着いた。 「お隣よろしいかな?」 緑色の髪の女に声を掛け男は席に着いた。 声を掛けられた女は気だるそうに顔を上げた。 「はん?…あんた誰よ?……さっきまで居たボーヤは?」 かなり呑んでいるらしい。ワリと整った顔は酒の為に火照っている。 年齢は二十代後半ぐらいだろか。 「坊やって…こいつの事かい?」 足元を指差す男。 見ると16、7の少年が酔いつぶれて寝ている。 「そうよ…いや、違ったかも………もうどうでもいいわ。マスター!もう一杯!」 「それじゃあ」 足元の少年を跨いで席に着く男。 「僕に奢らせてくれないか?」 「あら~いいの?じゃあ一番高い奴」 「おいおい…まあいいか。僕にも同じのを頼むよ。僕はジャック。君の名前は?」 少しの間、酒が注がれているグラスを見つめてから、女は答えた。 「…マチルダよ」 「マチルダか…ステキな名前だ」 「あら、口説いてるの?」 「そう聞こえるかい?」 グラスを受け取ると、ジャックはマチルダに向き直って言った。 「乾杯しないかい?」 「何によ」 「僕らの出会いに」 「プッ。何よそれ」 「では、アルビオン共和国の戦勝一周年を記念して」 「いいわよ」 「乾杯」 「乾ぱ~い」 神聖アルビオン共和国がトリステインに宣戦布告をしてから2年。 戦争はたった1年で終結してしまった。 当初、トリステインとゲルマニアが同盟を組むというと言う噂もあったのだが、開戦とほぼ同時に反故にされてしまった。 さらにトリステインのカリスマであるアンリエッタ王女が、開戦直後のタルブで戦死してしまったのだ。 突然の悲報に兵士達の士気は落ち、王宮勤めの貴族たちはアルビオンの事よりも、王女をタルブへ行かせたのは誰か?と責任を押し付け合った。 その様な状態では『空の怪物』『羽を持つ悪魔』『灰の塔』等とあざなされるレキシントン号率いる空中艦隊と戦えるはずも無く、トリステインはアッサリと降伏したのだった。 その後、ジャックとマチルダは他愛も無い話をしながら酒を楽しんでいた。 深夜に近づいているというのにあたりの騒音はいっそう酷くなってきている。 「所であんた仕事は何?あ!ちょっと待って当てるから……吟遊詩人?」 「ハッハッハ、何でそう思ったんだい?」 「いや、何か帽子がそう見えたからね。で、本当は何さ?」 「こいつだよ」 そういってジャックはマントをめくって見せた。 「杖…あんた貴族かい」 マチルダの顔が少し険しくなった。 「いやいや、傭兵さ。とっくの昔に没落しててね。貴族制が廃止されたんで少しスカッとしてるよ」 「フフ、あたしもだよ」 「君も…するとやっぱり傭兵でもやってたのかい?」 「まあね。この戦争のおかげでちょいと稼がせてもらったよ」 頬杖をつくマチルダ。 そんなマチルダにジャックが質問した。 「戦争の前は何をやっていたんだい?」 「何って…まあ色々さ」 「色々とは?」 「…レストランとか、宿屋で働いてたよ」 「それだけじゃないだろう?」 「…どういうことだい?」 ジャックの顔が険しくなった。 「魔法学院でも、だろ?」 「フン!傭兵にしちゃ礼儀正しいと思ったら…あんた何者だい?」 袖口に隠し持っている杖に手を掛けるマチルダ。 「早まるな」 手で制するジャック。 「ちょっと話を聞きたいだけさ」 「話って?」 杖に手を掛けたまま怪訝そうな顔になるマチルダ。 「あの日の事をだ」 「あの日…」 マチルダの顔に、一瞬怯えが過ぎった。 「そう。あの日だよ」 ジャックはマチルダにグッと顔を寄せた。息が掛かるぐらい近くに。 「…一体何があったんだ?」 「何って…」 喧騒に掻き消されそうな声で呟くマチルダ。 「3年4ヶ月前の春の召喚の儀式の日。トリステイン魔法学院の教師・生徒・使用人全員が死んだ。何故だ?」 「……」 「トリスタニアで検分書を読んだよ。全員即死。殆どの者に外傷は無い。被害者の死んだ場所はわりとバラバラで、厨房で死んでいた者。 洗濯物の山に埋もれていた者。廊下に倒れていた者。木に寄りかかっていた者。生徒全員が居眠りしている様に机に突っ伏して死んでいた教室も在るそうだ。 3人ほど、首の骨が折れていた者があったな。フライ中に落ちた様だが、フライを使ってて落ちるか?普通。落ちたために死んだのではなく、死んだために落ちたんだろうな。 そして二年生だけは全員サモン・サーヴァントを行っていたであろう広場で死亡していた…」 ジャックは溜息を付く様に一旦言葉を切った。 「検分書に因ると、二年生の誰かが悪質な病気を持った生物を呼び出したのだろうとある。確かに病気なら被害者たち殆ど無傷という説明が付くかもしれない。 だが、明らかに何者かから逃げて、狼に怯えた羊のように数人で寄り添って死んでいた者たちも見つかっている。病気の感染者から逃げたのか?違う。感染すると即死するのでこれは違うだろう。 では病気を持った生物から逃げていたのか?それも違う。スクウェアのメイジ達が検査したが生徒と生徒の使い魔以外の痕跡は見られなかった。 …というか、病原体や毒物の痕跡すら全く見られなかったのだよ!そしてそんな大惨事のなか…君だけが生き残った。何故だ!!」 ジャックに両腕をつかまれ、ビクッとするマチルダ。 「あ、あたしは……」 一瞬言葉に詰まる。 「あたしは何にも知らないよ」 ジャックの目が鋭くなった。 「隠してもために成らんぞ…」 「隠してるんじゃあない!本当に何も知らないんだよ!!あの日あたしは…」 マチルダことロングビルは辟易していた。 魔法学院に潜り込んだはいいが、あのスケベじじいが終始セクハラをして来るわ、忌々しい白鼠を使って下着を覗こうとするわ、あまつさえ昨日は着替えを覗かれたのだ。 これも辛抱、宝物庫からお宝を頂くまでの我慢だ!お宝さえ手に入ればこんな所さっさと辞めてやる!!ついでにセクハラの事を上に訴えてやろうか。 そういえば、今日は使い魔召喚の儀式があるんだっけ?使い魔を手に入れてハシャぐあまり、覗きをやろうとする生徒がいるから気を付けろってシュヴルーズが言ってたが、やれやれそんな奴はオールドオスマン一人で十分だよ… 等と考えながら学院長室の前に来たロングビル。 ノックしてから「失礼します」と声を掛ける。 ………………… おかしい。 いつもならスケベじじいが浮かれた声で招き入れるというのに、返事が無い。 「失礼します。入りますよ」 ドアを開けて中に入ると、いつもの席に座っていたオスマンが、ハッとこちらを向いた。 その瞬間、ロングビルは心臓が締め付けられるような嫌な感じを覚えた。 こちらを見たオスマンの顔には、はっきりと恐怖が表れていた。 何?何がどうしたのよ?まさかフーケだとバレた?!いや、そんな筈は無い! もしフーケだとバレたとしても、オスマンが恐怖を抱くだろうか?このあたしに。 ここに勤め始めてから初めて見たオスマンの恐怖。他人の恐怖が、ロングビルに言い知れぬ不安を与えた。 「ど、どうかなさったんですか」 オスマンはロングビルの方と遠見の鏡の方を交互に見た。 「大変な…大変な事が起こったんじゃ!!こ、こんな事が!!」 「オールドオスマン。落ち着いて下さい」 と言ったものの、自分も落ち着けぬロングビル。 「何が起きたのですか?」 「こ、これは!こんな事が!!まさかこんな!これはどういう事なんじゃ!!??」 日ごろからボケた様な事を言うオスマン。 しかし、これは違う。これはボケ老人の戯言ではない! 知能の高い者が理解不能の状況を目の当りにして混乱しているんだッ!!。とロングビルは思った。 オスマンはロングビルと遠見の鏡の方を交互に何度も見ている。 「ああ!何ということじゃ!!これは…そ、そういう事か!何ということじゃぁああ~!!!」 叫ぶと同時にイスから立ち上がり、ロングビルをビシッと指さし指示を出す。 「ミス・ロングビル!!急いでぜんs――」 指示はそこで途切れた。 唐突に。何の前触れも無く。糸が切れた操り人形が倒れるように、オスマンは崩れ落ちた。 「オールドオスマンッ!!」 持っていた書類を投げ出し駆け寄るロングビル。 鼻の前に手をかざすが、呼吸が無い。 首筋に指を当てるが、脈が無い。 死んでいる。 死んでいる、という事には多少慣れていた。 色々危ない橋も渡ってきた。 死を覚悟した事もあった。 目の前で人が死んだことも一度や二度ではない。 もちろん…殺した事もだ。 だが… だが……この『死』は異常過ぎる!! 矢を射られる訳でもなく、氷を射られる訳でもなく、炎に焼かれる訳でもなく、岩に潰される訳でもなく、唐突に『死』が現れた。 どうする?助けを呼ぶか?いや、死んだ原因は何だ?その原因はまだここにあるのか?オールドオスマンをも殺せるような原因が。 このオールドオスマンを殺せる…? 背筋に激しい悪寒が走った。 胃の中から何かがせり上がってくる。 駄目だ、助けを呼んでいる場合ではない!宝物庫なんて知ったこっちゃあない!!逃げるんだ!! 自分の盗賊としての勘がそう叫んでいる。 部屋を駆け出したロングビルは、手近な窓を見つけると、そこから飛んだ。 今まで出したことも無い速度で。 自分の荷物さえも置いて。 三日後。 トリスタニアの宿屋で、学院の人間が全員死んだと聞いたロングビルは、しばらく震えが止まらなかった。 「それだけか?」 ジャックの声は、落胆した声で聞いた。 二人は多少静かな方へ席を移していた。 「そうよ。だから言ったでしょ、何も知らないって…がっかりさせて悪かったね」 「いや」 気を取り直すようにジャックが言った。 「疫病ではないと確信できただけでも進展さ」 「フ。目の前で死なれて、その死体を触ったあたしが死ななかったからね」 と自嘲気味に言ってからグラスを煽るマチルダ。 酔いもスッカリ醒めてしまった。 「では僕はこれで失礼させてもらうよ」 そう言って席を立つジャック。 「協力を感謝する」 歩き出そうとした所をマチルダが引き止めた。 「ねぇ…一つ聞いて言いかい」 「何だね?」 「…あんた何でこの事件を調べてるんだい?」 「何でそんな事を聞く?」 「いや、何か随分がっかりしてたからさ…ちょっとした好奇心だよ」 「………大した事じゃあない。トリステイン魔法学院に許婚が居たんだ。それだけさ」 「そう。悪い事聞いちゃったね」 「いや。では今度こそ失礼する」 そう応えると、ジャックは酒場の喧騒の中へ消えていった。 一人残されたマチルダは、少し悩んでから、次のボトルを開ける事にした。 許婚か……一体どの『教師だったんだろう』…。…シュヴルーズ? 「まさかね」 呟いてから、新しいワインに口を付けた。 魔法学院で一体何が起こったのか?ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは生涯この謎を追い続けた。 家庭を築いて後も、暇を見つけてはトリステイン魔法学院跡地に赴き、時には家族と、時には一人で調査を続けた。 しかし、結局最後まで何も判らぬまま、その生涯を閉じる。 では、何が起きたのか?時は3年4ヶ月前に遡る。 春の召喚の儀式の日。 進級試験に臨んでいたルイズは、同級生が何の問題も無く使い魔を召喚して行った後に、自分が召喚したものが信じられなかった。 「……先生!召喚のやり直しをさせてください!!」 ルイズが叫ぶ。 現れた物は、一人の『おじさん』だった。 何の変哲も無い、普通の、どう見ても平民にしか見えない『おじさん』だった。 青い帽子を被り、パイプを咥え、青緑の上着を着ている、無精ひげを生やした『おじさん』……。 到底、使い魔にしたい相手でもなければ、コントラクトサーヴァントしたい相手でもない! 「残念ながら、ミス・ヴァリエール。儀式のやり直しは許可できません」 監督をしていた教師のコルベールが言う。 ルイズにとっては無情な言葉だが、コルベール本人も前代未聞の出来事にこれ以上の事を言えないのだ。 「そんな!!でも――」 「すみません」 「!!」 いつの間にか、コルベールとルイズのそばに来た『おじさん』。 「ちょっと質問したいのですが」 「な…なんでしょうか?」 コルベールが答える。顔に少し、緊張の色が見える。 「サンレミの病院は、どちらにいけば良いのでしょうか?」 質問しながら、帽子を取る男。 「サン・レミの…病院ですか?」 「何言ってるのよあんた。それより引っ込んでなさい!今は取り込み中よ!しかも!あんたのせいでね!」 「おや?」とルイズの顔を覗き込む男。 「な、何よ!」 「ちょっと待って。この私の事知ってますよね?そうでしょう?私ですよ」 知ってるんですか?という顔のコルベール。 「知らないわよ!こんなおっさん!見たことなんて無いわ!」 「そうですか…でも、今わたしを見て感動したでしょう?皆さんも」 と周りを見渡す男。え?という顔の生徒達。 確かに、この『おじさん』には何か引きつけられる物がある。何かわからないが。 「…あんた何なの?」 ルイズが聞く。 「わたしは…ヴィンセント」 パイプを咥えなおし、帽子を被る男。 「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。『ゴッホの自画像』です。昨日カミソリで耳を切り落としました………所で病院は、どちらでしょう…?」 こうして、同日中にトリステイン魔法学院は全滅した。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/30.html
この俺、ディアボロはGERの能力で永遠に死に続けることとなった 何百、いや何千死んだだろうか しかし、転機を俺は迎えた。 「ハッ?!今度は何だ?」 いつの間にか俺はまた見知らぬ所に飛ばされた 周りには黒いコートを着た集団がいる 「どこから・・・どこから襲ってくるんだ?!」 そうして戸惑っていると一人の桃色の髪をした少女が近づいてくる 「くくく来るな?!俺のそばに近寄るな!!!」 少女は訝(いぶか)しい表情をして俺に聞き取れない言語で怒鳴る 俺の目の前まで来てわけの分からない言語で言葉を発した後 「???!!!!」 俺に口付けをしてきたのだ (何か・・・いつもと違うようだぞ・・・?) 口付けをされながら俺は考えをまとめていた (GERの能力が解けたとは思えない・・・だが) いつもだったら死を迎えるのは二、三分だ だが今回はどうだ。時間は経っているが死を迎えない (まさかジョルノ自身に何かがあってGERの能力が・・・) 考えをまとめた結果は (・・・この世界には俺の救いがあるかもしれん!) 今までの自分とは思えないほどの楽観的な答えだった しばらくの間、周りは静寂としていた だが 「・・・プククッ」 その笑いから 「くくくっ」 「あっはっはっはっはっは」 「ぶーっはっはっはっはァ――――ッ」 「ちょ、ちょっと、ぷはっ、アハハハハハハハハ」 「くわははははは」 「さっすがルイズッ ぐはははは」 「平民を召喚したぞおおおお」 周りの笑いによって静寂は打ち破られた 「・・・くっ」 召喚をした張本人、ルイズは恥ずかしさで顔が真っ赤だった そして無意識にその怒りを使い魔である目の前の男にぶつけようとした 「お前!」 無作法に呼びかける。だが 「ククッハハハハックハハハハハハッ!!!」 目の前の男は突然笑い出した 「・・・ご主人様を侮辱するつもり?」 俺は嬉しさのあまり笑い出してしまった もしかするとこの先すぐに死んでしまうかもしれない だが終わりを終わらせる可能性が少しでも見えたのだ。笑わずにはいられまい 「・・・ご主人様を侮辱するつもり?」 だがその絶頂の心情を無粋にも汚すものがいた 「・・・ご主人様?」 「そうよ。貴方は私に召喚された使い魔、貴方はさっきの契約で私の使い魔になったの」 つまりこの少女によって俺は救われたのだろうか (この世界・・・スタンドとは違う力がある世界のようだな 我が野望の成就にはいつ、またチャンスがあるか分からん ならばここで我が野望を成し遂げる!) 「ちょっと聞いているの!」 主人を名乗る少女からの怒声が聞こえる (・・・今はこの者たちに合わせて世界について調べるべきか 我が野望の成就はまず世界を知らなければ) 「トゥルルルルルルルル!」 「なに?!」 それは俺自身が発した声だった 「・・主人、それを貸してくれないか?」 「え?」 それと言って指差したのはステッキだ 「・・・何に使うって言うのよ」 「なんでもいい。貸してくれないのなら」 キング・クリムゾンを出す・・・これは問題ないようだ キング・クリムゾンを使いステッキを奪う 「あ!ちょっと」 「・・・もしもし」 俺はステッキを耳と口にあててそう言った (ボス!聞こえますか!) 「・・・ドッピオ?まさかドッピオなのか?!」 (はい!・・・よく分かりませんがいつの間にかボスと意識が入れ替わっていたみたいです) ドッピオが生きている・・?あのとき死んでしまったと思ったドッピオが生きている? 「・・・よく生きていてくれたドッピオ。俺自身もこの状況についていけていない この世界について目の前にいる少女について行き、世界について調べてくれ ・・・私の可愛いドッピオ、やってくれるな?」 (はい!もちろんですボス!!) 意識が変わる。その寸前で (・・・前のときと同じくエピタフと腕を渡そう 私の可愛いドッピオ、生きていてくれてよかった) 「・・ボス・・ありがとうございます」 「・・いいかげん返してくれないかしら」 「あ、すいません」 (ドッピオ、この少女が私を・・私たちを救ってくれたようだ 利用以前に大切にしてやりたい。そう思うのだ) (・・・ボス?) (・・・忘れてくれ、ドッピオ。今のはただの戯言だ) ドッピオは少々驚いた あのボスが戯言とは言えどこんなことを言うとは思わなかったからだ (・・・僕たちを救ってくれた少女、ちゃんと礼儀を持たないといけないよな) そう決心したドッピオだった 2へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/33.html
ディアボロがこの世界に来てから二日がたちました ルイズを起こし着替えさせて汲んできた水で顔を洗ってあげます。もちろんドッピオがやっています 「男の前で恥ずかしくないんですか?」 やってはいるが毎朝異性の裸を見るのは大半の男性にとっては余り精神的に優しくないものだ 「はぁ?男?あんた使い魔でしょ?偉そうなこと言ってないで早くしなさいよ!!」 「・・・はい」 タオルで顔を拭いてやると朝食を取りに行く 初め食事にまで制限を付けられそうになったが何とか頼み込んだ。労働の後がパン一個なんてふざけています 朝食の後は午前中の授業です ルイズが授業に出ている間に部屋の掃除をします 箒とちりとりを使いささっと済ませてしまいます。ドッピオは案外家事に適正があるんです やり始めるととまらなくなって隅から隅まで掃除をしてしまうことがあります ドッピオはそこそこのところでやめて洗濯に行きます 洗濯も二日ほどたつと慣れてきます。スキルは5ほどでしょうか 洗濯も終え、洗濯物を干すともうお昼です 「ふー・・・お昼ご飯の時間かな?」 太陽が真上にあがってきています。ドッピオはこのお昼ご飯を楽しみにしているのです 「こんにちは、マルトーさん」 「お、いらっしゃい!」 魔法学院アルヴィーズ食堂、コック長マルトーさん ルイズさんに躾と言われてパン一個しか食べさせてもらえなかったとき、賄い料理を食べさせてくれた優しい人だ 「賄いだったらもう少しで出来るからそれまで待っててくれ」 「それじゃ料理を配るのを手伝いますよ」 食堂でウェイターの真似をするのは昨日からだ 賄い料理を貰いっぱなしなのはいけないと言ってここで働かせてもらっている 「クップププ」 「ククク」 ・・・笑い声があるのは使い魔なのにこんなところで何をやっているんだ。みたいなことだろう 「・・・ドッピオさん」 「いいんですよ。シエスタさん」 笑い声をそこそこ無視して料理を配る 「・・・あの」 「はい?」 僕に話しかけたのは茶色のコートを着た女性。下級生がこういう格好をしているんだっけ 「ギーシュさまがどこにいるか分かりませんか?」 「ギーシュ?」 ・・・ああ、脱走したときにルイズさんと一緒に来た金髪の人か、食堂の中をぐるりと見渡すと・・・ 「あ、います。外のほうですね。案内しましょうか?」 「お願いします」 外に行くとギーシュはこの子以外の女性と話していた まだこの子は気づいていない (・・・二股?よくないな・・改めさせたほうがいいかな) 配るために持っていた物のうちの一つ、チーズケーキを持って話しかける 「チーズケーキをお頼みの方」 「は?チーズケーキなんて頼んでないよ・・て君はミス・フランソワーズの使い魔」 「それではこちらの女性と待ち合わせの方は?」 「?!・・モンモランシー、ちょっと待っててくれるかい?」 そういうとギーシュはつれてきた子の肩をつかんで奥の茂みは行った もれ出る話を聞くとギーシュが二股をかけているのが分かって女性のほうが怒っているようだ あ、女性のほうが帰っていった ギーシュが戻ってくる 「モンモランシー、あの子はただの」 「・・・最低」 「うっ」 「・・・下劣」 「ぐっ」 「・・・絶交よ」 「なっ?!最後まで聞いてくれモンモランシー! ほら君の顔に怒りは似合わない」 二股をかけた人の末路って怖いなー 結局、ギーシュは二股をかけているのがばれて二人からふられてしまったようだ 「・・・くっ」 結構、効いたみたいだけど 「・・・・」 僕に怒りが向けられているのが気のせい・・ではないと思う 突如、ギーシュから何かを投げつけられる。手袋だ 「平民風情がこの僕に恥をかかせるとはね」 「いや、それは自分が悪いんじゃ」 「うるさい!君を叩きのめさないと気がすまない。決闘だ!」 「え?」 外の中庭、周りには大勢のギャラリーがいる どこで聞いたのか決闘と聞いて見に来た人たちだと思う 「勝負方法は単純にどちらかが負けを認めるまで、分かったかな」 「・・・つまり二股をかけた自分が悪かったと認めさせればいいんですか」 周囲から笑いが漏れる 「うるさい!君があの子をあの場に連れてこなければ万事上手くいったって言うのに・・!」 「いや、元々待ち合わせていたって聞いたんですけど」 「・・・そういえば・・ええい、あのとき見えていたはずだろう!気を使うのが常識だろう!」 「どんな常識ですか。二股かけていいなんて」 「うるさい!」 ・・何をするつもりだ 「エピタフ」 エピタフを使い未来を察知する 「なっ!」 一歩後方に下がって攻撃を回避する 「言い忘れていたけど僕は貴族だからね。魔法で戦わせて貰うよ」 目の前にいるのは青銅の鎧人形。形は・・・なんだろう? 「・・・魔法・・次、何が来る・・・」 5へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1803.html
「…で、俺はなにをすればいいんだ?」 あぐらをかく使い魔。 生徒たちが好き勝手な方向にクモの子を散らすように逃げ去っていった中、 歩いて少女の使い魔の部屋に到着したワムウと少女。 ワムウは、部屋に向かうまで真昼間であるはずの今、遮蔽物もなしに歩けることを不思議に思った。 しかし、それ以上に不思議に思ったのはッ! (月がッ!月が2つあるッ!…どういうことだ?太陽の光も少し体の調子を下げる程度で十分に動ける… 長い間直射を浴びていればダメージを受けるだろうが…風のプロテクターを使うよりもスタミナは安上がりだな…… だが、油断はできんな…シーザーのやったように、鏡などで太陽の光を集中させれば、十分致命傷になりうる… 天敵である波紋使いが今のところ見当たらん…そのためにも唯一の『天敵』である太陽光…もっとも違う世界であるようだし 太陽とは呼ばないのかもしれないが…太陽光には十分気をつけなければいけないな…) 「さっきも言ったように…使い魔は主人の目となり耳となる能力を与えられるはずなんだけど…なにも見えないし聞こえないわね…… 次に使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。たとえば秘薬とかね。あんたどこの田舎に居たかしらないけど亜人なんだから そういうの詳しくないの?」 「そもそもここはどこだ?それすらわかっていない…魔法学校などと言っていたな、ここはスイスではないのか?」 「スイス?そんなところ聞いたことないわ。トリステイン魔法学院くらいは知ってるわよね?」 「そもそも魔法自体俺は知らん。俺の知らない土地で人間は二〇〇〇年の間にそこまで成長していたのか? ……ああ、ここは違う世界だったな、まあ似たようなものだろう。」 一呼吸空く。 「あ、あんた?なに言ってるの?違う世界から来て、しかも二〇〇〇年前から生きてるなんて言わないわよね?」 「正確には二〇〇〇年前から眠っていたというところか。念のために聞いておくがここは『地球』という言葉を知らないよな? もしくは『Tellus』『Earth』…それに似たような言葉でも構わん。」 「チキュウ?それがあんたのいた国?聞いたことないわね。大体二〇〇〇年間寝てて、ご飯とかどうしてたのよ?他にもいろいろ 生きてく上で必要あることあるでしょ?さすがに私でもそんな嘘にひっかからないわよ。」 「石と同化して二〇〇〇年間眠っていた。食料も二〇〇〇年程度いらん…が、こちらに来てなにも食べていないな。 お前ををまず食ってみようか?」 しばしの沈黙。 「きゃああああァアアアアアアーーッ!!」 大声で悲鳴をあげる。 窓を思いっきりあけ逃げようとする少女。 「冗談だ、それほど騒ぐな」 「冗談って、あ、あんた二〇〇〇年眠ってたってのも?」 「それは本当だ。人間を食うこともな」 「きゃああああァアアアアアアーーッ!!」 二度目の悲鳴。先ほどの悲鳴より強いようだ。 「ルイズッ!うるさいわよッ!」 悲鳴を聞きつけたのか、赤髪のグラマーな女性が彼女の部屋に怒鳴り込んでくる。 「ひとりで逃げるのよキュルケ。あんたを逃がすのは私であり……そこのサラマンダーであり、あたしの魔法 爆発… 生きのびるのよ あんたは『希望』!来いッ!ワムウ!」 「あ、あんた、何を言ってるのよ…脳みそがクソになったの?」 「……なにを勘違いしているんだ。お前の使い魔になったといっただろう。起きている間でも二〇〇〇年やそこら人間を食わなくても済む。 他の…人間どもの一般的な食事があればな」 「な、なんだ……じゃあやっぱり私の使い魔で私を食べたりはしないのね」 「うむ。少なくともお前はとりあえずしばらくの間は食わないし、食う価値も今のところはなさそうだ」 「やっぱ逃げてええええキュルケェえええええッ!」 もう既に赤髪の女は居なかった。 * * * 「先ほどの女はなんだ?そういえばお前の名前も聞いていなかったが。ルイズというのはわかったがな」 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、由緒正しきヴァリエール家の三女よ」 「さっきの女、キュルケとやらは?」 「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。忌々しきツェルプストー家の尻軽女よ。 ああ、憎たらしい!あんな女逃がそうとなんかしなきゃよかったわ。とっくのとうにいなくなってるしね……」 顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。 「ツェルプストー家になにか因縁でもあるのか?」 「数え切れないほどあるわよ!キュルケのひいひいひいひいおじいさんのツェプルストーはわたしのひいひいひいおじいさんの恋人を 奪ったのよ!今から二百年前に!それから、わたしのひいひいおじいさんは……」 「人間どものつまらん話など聞く必要はない。それより飯だ。まさか使い魔にはないとは言わないよな?」 先ほどの『食料は人間』という話を思い出す。 顔が青ざめていき、高ぶっていた心は一気に冷めていった。 彼女の口の動力機関はぴたっと止まった。 「え、ええ。食堂はこっちよ。」 (数段ランク落ちたものを食べさせて威厳を見せつけようと思っていたのに、こんなんじゃそんなものあげるにあげられないじゃないッ! はあ、私なにを呼び出しちゃったのかしら……い、いえ!ポジティブに考えるのよ!『ゼロ』だってバカにしてた奴らを追い払うくらいの…) 「どうした、行くんじゃないのか?」 ワムウに声をかけられ、思考は中断する。 「ひゃっ、……は、はい。」 寮の出口へ2人は歩き出した。 * * * 「うーむ、なんじゃあの使い魔は。あんなパワーを持った亜人みたことないぞい……多少鈍っているとはいえ、コルベール君、君が 本気を出して放ったファイヤーボールを片手で止めるとは……」 老人がいすの上で唸る。 「しかも、現状を一瞬で理解したことから、私たち以上といっても過言ではない判断力を持っているといっていいでしょう…… 特に……戦闘の際の判断力は、私が見てきた軍人たちの中から探してもあれほどの人間は居ませんでした。」 髪の薄い男性も唸る。 「で、君が調べたあのルーンは間違いないのかね?」 「はい、私も何度も確かめましたが間違いないでしょう。喜ぶべきなのか困るべきなのか……」 「やれやれ、よりにもよって伝説の使い魔ガンダールヴとはな…」 老人はため息をつく。 「やれやれ、ミス・ヴァリエールもやっかいな者を呼び出したようじゃわい…」 外からノック音が聞こえる。 息を切らした様子の緑色の髪の女性が入ってくる。 「ミス・ロングビル、そんなに慌てていてどうしたんじゃ?そんなんだから婚期を逃すんじゃよ」 「婚期は関係ありません!そんなことより、ヴェストリの広場で決闘がおきて大騒ぎになっています! 止めに入った教師たちも、生徒たちに邪魔されて、止めるに止められないようです」 「なんじゃ、そんなことか暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」 「一人はギーシュ・ド・グラモン」 「あのグラモンのところのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。 おおかた女の子のとりあいじゃろう。相手は誰じゃ?」 「そ、それが……ミス・ヴァリエールの使い魔です…」 老人は二回目のため息をついた。 「やれやれ、今日は厄日かのう……」 * * * 数十分前の食堂。 ややにぎわっており、生徒たちであふれている。給仕たちや料理人たちもいそがしそうである。 そこに入っていったルイズとワムウ。 教室での騒ぎを知らない者の一部は好奇の目を向け、知っている者はそそくさと立ち去る、ルイズが座る席から離れる、気づかない振りをするなど 多種多様だが、多くは友人たちとの会話や食事を続けている。 ルイズ達が席について少し経つと料理が二人の前に運ばれてくる。 運んできたメイドは、ワムウの顔に少しおびえたのか、目の前に立った瞬間怯んだものの、何事もなかったかのように仕事を再開した。 「なあ、ギーシュ、お前、今誰とつきあってるんだよ!」 「誰が恋人なんだギーシュ!」 気障な少年が数人の友人に囲まれて話をしていた。 「つきあう?僕にそのような特定の女性は居ないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね。」 今日も絶好調、気障なセリフが全快だッ! 友人の一人がギーシュのポケットの中のふくらみに気が付く。 「なあギーシュ、お前のポケットに入ってるものはなんだ?見せてみろよ」 「や、こ、これはだめだって!」 「いいじゃねえか。見られて困るものじゃないだろ?困るならなにか教えろよ」 「そ、それは……」 友人たちに迫られて後ずさりする。 ギーシュには幸運が二つあった! 友人が迫るスピードが遅かったために彼の影を踏むときにギリギリまで彼から遠くに居たこと! そして! 幸いにも回し蹴りが下半身に行ったこと! そのどちらの幸運がなかったとしても彼の人生は老化して首の骨を折られる以上の悲しい死因だったであろう。しかし彼はその大きな幸運より 目先の不運を恨んだのだった。 「うわらばッ!」 容器が割れる甲高い音と、彼の断末魔に似た声がする。 「な、なにしてるのよワムウ!」 「すまんな、坊主。俺は影に入られるのが嫌いでな。反射的に攻撃してしまった。まあ生きているようだし次からは気をつけるんだな。」 「お、おいギーシュ、大丈夫か?」 「なにか割れた音がしたけど……あれは!」 「モンモンラシーの香水の入った小壜じゃないか!割れてるけど」 「そうか、ギーシュはモンモンラシーとつきあってたんだな!」 「ああああああ!モンモンラシーからのプレゼントがあああッ!」 その嘆きを無視し食堂を出ようとするワムウに少年、ギーシュは叫び声を突きつける。 「お前!貴族になにをしたかわかっているのかッ!そして、お前が割ったのは僕の最愛の人モンモンラシーからのプレゼント! 謝罪ではすまないぞ!」 「ふむ、ではなにをすればいいんだね?」 ワムウが振り向きギーシュを見据える。 「決闘!それがグラモン家の流儀ィイイイイッ!ヴェストリの広場に来やがれッ!」 /|_________ _ / | | ̄| | | \ TO BE CONTINUED .. | |_| |_| \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1260.html
夜。ギアッチョはベランダの手すりに背中を預けて、あおむけに空を見上げていた。 「一つだけの月なんざ、もう長く見てねえ気がするな・・・」 片手に持ったワインを飲み干して、柄にもないことを考える。 グイード・ミスタとジョルノ・ジョバァーナ、あの二人と戦った夜、たった一つの地球の 月は自分を照らしていたのだろうか。ついぞ空など見上げなかったことを思い返して、 ギアッチョは首を振る。 黒い手袋に三角形に覆われた己の右手に、ギアッチョは眼を落とした。この手で 無数の人間を葬って来たことを思い出す。対抗組織の人間を、彼は腐るほど 殺して来た。しかしその一方で、組織の障害となるというだけのやましいところの ない人間をその手にかけたことも一度ならずあった。 罪悪感はない。後悔もない。ギアッチョは、ただ生きたかっただけだ。パッショーネの 庇護なしには生きられない世界に絶望し、殺さなければ生きられない世界に絶望 しても尚、ギアッチョは生きたかった。唯一つの拠り所で、リゾットのチームで、 なんとしても生き抜きたかった。だからギアッチョは、人が牛を、豚を、鶏を 殺すように人を殺した。殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、 殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して――そして最後に殺された。 この世を修羅道と見紛わんばかりの凄絶な人生だった。ギアッチョにとって殺人は、 もはや呼吸と同じほどに当たり前の行為としてその身に染み付いている。まともな 人の心など、とうの昔に消え去ったはずだった。 しかし。 ならばなぜ、自分はルイズに付き従っているのだろう。ルイズを庇い、叱り、助けた のだろう。ギーシュを殺さなかったのは何故だ?キュルケを叱ったのは?タバサを 助けたのは? リゾットチームのほかには、ギアッチョの世界には彼にとってどうでもいい人間か、 そうでなければ殺すべき人間しかいなかった。何故なら彼は暗殺者だったからだ。 イタリアにいてさえ、彼は災禍を振り撒く魔人だった。魔人であらねばならなかった。 別の世界に召喚されようが、使い魔として契約をしようが、彼の思考は、言動は 暗殺者としてのものだった。キュルケが殺されようが、タバサが身代わりに なろうが、ルイズが死んでしまおうがどうでもいいはずだった。なのに、何故自分は 彼女達を助けた? ――・・・贖罪のつもりってわけか? 後悔していないと思っていても、どこか心の奥底でわずかに罪悪感を感じていたの だろうか。彼女達を助け導くことで、無数の犠牲者への罪滅ぼしをしているのだろうか。 しかし、ならば死ねばいいだろう。例え何万人の命を救ったところで、ギアッチョが 殺した人々が蘇るわけではない。彼らが願うものは唯一つ、ギアッチョの死である はずだ。 それもいいかもな、とギアッチョは思う。イタリアに戻ったところで、もうどこにも彼の 居場所はない。そしてイタリアで生きる意味も、もはやありはしない。仇を討つ意味も また、存在しない。彼らはその命と誇りの全てを賭けて戦い、そして負けたのだから。 みっともなく再戦を挑むなどということは、彼らを侮辱する行為でしかないと ギアッチョは思っている。 ブルドンネ街のあの薄汚い裏路地のような場所で、惨めに哀れにのたれ死ぬこと こそが、自分に相応しい末路だ。この手で消した数え切れない命は、もはや ギアッチョが一秒でも早くその命を絶つことを願っているだろう。 ベランダから地面を見下ろして考える。氷の槍を作って飛び降りれば、それだけで 死ぬことが出来るだろう。ギアッチョは虚ろなまなざしで、数秒地面を見つめた。 ゆるゆると、実に緩慢な動作でギアッチョは顔を上げる。引き結ばれていたその 口からは、「・・・クッ」という声が漏れる。 「クックック・・・ どこにでもいるもんだよなァァ 全く度し難い人間ってのはよォォーー」 全然理解が出来ないことだが、自分が死ねばルイズはまた泣くだろう。自分を 友だと言ったギーシュはどうだ?キュルケとタバサは?一体どんな顔をするものか 自分には分からないが、バカみたいに真っ直ぐな奴らだ、また突っ走って危ない目に 遭うだろう。任務の情報が漏れている上に既に刺客が差し向けられていることを 思い出して、ギアッチョはやれやれと呟いた。結局自分は、どこまでも悪人なのだ。 いくら罪悪感を感じようが、いくら良心の呵責に苛まれようが、結局は自分の意思で 己の生死を決定出来る。自分の意思の赴くままに何かをすることに、微塵の躊躇も ありはしない。 ギアッチョは静かに笑いながら、己の左手に眼を向けた。そこに刻まれたルーンは、 使い魔の契約の証だった。 ――オレがこの手で命を救ったんだぜ 笑える冗談じゃあねーか ええ?おめーら・・・ リゾットの奴は責任をまっとうしろと言うだろう。プロシュートの野郎はマンモーニを 鍛え直してやれと言うかもしれない。メローネのバカはオレと代われと言いそうな 気がする。イルーゾォは、ホルマジオは、ペッシは、ソルベは、ジェラートは・・・。 地獄で自分を笑っているであろう仲間達を思い浮かべて、ギアッチョはフンと鼻を 鳴らす。この任務の間だけは、面倒を見てやろう。ギアッチョは今、そう決定した。 コンコンという音に、ギアッチョは部屋の入り口を見る。断続的に続くその音は、 扉から発されていた。 「入りな」 という彼の声で部屋に入ってきたのは、ルイズだった。ギアッチョは彼女を確認すると、 すぐに視線を外してまた手すりにもたれかかった。ルイズはベランダまでやって 来ると、ちょっと心配そうな顔でギアッチョを見る。 「・・・ねぇ どうして負けたの?」 今朝の決闘で、ギアッチョはホワイト・アルバムを使いもせずに敗北した。まさか力が 使えなくなったのだろうか、なんて心配しているルイズである。 「ワルドの野郎を信頼するな」と言いかけて、ギアッチョは口をつぐんだ。ルイズが ワルドに向ける表情は、自分へのそれとどこか似ている。確定もしていないのに 迂闊なことを言うべきではないだろう。 何故そう思ったのか、そこに意識が至らないままギアッチョは言葉を返す。 「剣の練習だ」 「そ、そう・・・」 ルイズは納得したようなしてないような微妙な顔になるが、それ以上は何も 言わなかった。何も言わないまま、ギアッチョの隣で同じように手すりにもたれ かかった。ギアッチョはルイズに、不思議そうに一瞥を向ける。 「・・・何か用でもあんのか」 しかしルイズは答えない。色んな感情の入り混じった、結果としてどこか悲しげに 見える表情で、何も言わずに空を見ている。何か悩んでいるのだということは 容易に察しがついたが、言う気のないことを根掘り葉掘り聞く気はない。そこまで 考えて「根掘り葉掘り」についてブチ切れそうになったが、自制心をフルに活用して 抑え込む。空気を読んだギアッチョにあの世で仲間達は涙を流して喜んでいる かもしれない。 「・・・ギーシュ達は何をやってんだ」 何とはなしにそう尋ねる。ルイズは無理に笑顔を作ってそれに答えた。 「酒盛りしてるわよ 皆アルビオンへ行くのが楽しみみたい」 「遠足気分だな・・・あのガキ共はよォー」 そう言うギアッチョに、ルイズは「全くだわ」と笑う。二人して空を見上げたまま、 また静寂が流れ――、 「・・・・・・・・・私、結婚するの」 やがてぽつりと、ルイズはそう言った。 反応が気になって、ルイズはこっそりギアッチョを見る。いつもの無表情で、 ギアッチョは何も変わらず空を見上げていた。 「よかったじゃあねーか 憧れの子爵様だろうが」 ホントに喜んでいるのならこんな表情はするわけがない。そう分かっては いるが、彼女が一体何に心を囚われているのか全く分からないので彼としても そう言うほかはなかった。しかし何かを期待していたらしいルイズは、更に 悲しげな色を深めた眼を伏せて、一言「そうね」と呟いた。 これだからガキはなどと思いつつも、このままルイズを放置するのは気分が 悪い。仕方なく身体を起こすと、ギアッチョはルイズに向き直った。 「何を迷ってるんだか知らねーがよォォ~~ 言いたいことがあるなら言いな オレじゃあなくていい キュルケでもタバサでもギーシュでも、言いたい奴に ぶちまけろ あいつらなら真摯に聞いてくれるぜ・・・多分な 些細な感情のスレ違いから身を滅ぼしたバカをオレは何人も見てきた おめーがそうなっちまうのは気分のいいことじゃあねーからな」 己の眼を覗き込むようにしてそう言われて、数秒の葛藤の後、 頬を染めながら彼女は恐る恐る口を開いた。 「・・・・・・・・・あの ・・・・・・えっと・・・その ・・・・・・・・・じゃ、じゃあ言うわ・・・」 深夜の静寂に自分の心臓の鼓動が煩いほどに響き、ルイズは大きく 深呼吸をする。そうしてからその真っ赤な顔を怪訝な眼で自分を見ている ギアッチョに向けて、ルイズは怒鳴るような勢いで口を―― ズズンッ!! 開けなかった。素晴らしいタイミングで大地が鳴動し、ベランダの外に 二度と見たくなかった 巨大なシルエットが闇を切り抜いて姿を現した。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/31.html
「あんた名前は?」 「ヴィネガー・ドッピオです」 「それじゃあんたのことはドッピオって呼ぶから…」 魔法学院の一室の椅子に座る青年、もといドッピオは目の前のベッドに座る少女の質問に答えていた 広場でボスと話をしていると突然手を捕まれて城のような建物の中の彼女の自室らしき場所に連れ込まれたのだ そしてドッピオは質問責めにあっていた 話を聞いているうちにわかったことはここはイタリアじゃなく魔法使いがいる国 少女はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 通称ルイズ そしてここ魔法学校 魔法生物の使い魔呼んだんだけどあんた誰? って話らしい しまいには「呼んじゃった以上仕方ないから平民のあんたのご主人様になってあげるから感謝しなさい!!」 ときた。…のだが彼やもう一人の彼的には (言っていることがわからない。イカれてるのか?この状況で?) (ボス・・・僕、ストレスで挫けてしまいそうです ) と当然の反応である(一人は未来に不安しているが) キング・クリムゾンの腕を発現させルイズの反応を見たがどうやら見えていないらしい つまり新手の敵スタンド使いではないらしいのだが魔法使いがいるなんて考えられなかった 常識的に考えて もちろん自分が特殊であることもキスのせいで頭から吹っ飛んでいる されているのはボスだが彼にされたのも事実、彼はとっても純愛系なのだ 「貴女の話はわかりました ここが魔法の国、貴女の魔法で僕が来た、使い魔の儀式ってのでキスした それで帰れたりするんでしょうか?」 もしGERの能力が切れた(ジョルノに何かあった)のなら元の世界に戻ってもう一度再建したほうがいい と考えたドッピオの考えは 「無理よ… サモンサーバントであんたを呼び出したのは私 だけど元の場所に帰す魔法なんて知らないし聞いたこともないわ」 この主人にスパっと切り捨てられたのだ 「そうですか・・・僕はどうなるんでしょう」 「元々人間なんて使い魔になられたって困るのよ とりあえず掃除や洗濯をしてもらうわ」 「・・・分かりました」 ドッピオはこれでも譲ったつもりだった だが次の一言で温厚なドッピオは怒ってしまうのだった 「それにしても最初と今とではまったく別人よ なんだかよくわかんない変な平民かと思えば今は礼儀正しい人になってるし 「どこから襲ってくるんだ」とか「俺のそばに近寄るな」とか、最初は精神障害と思ったけど今はそんなことないし あんた、なんなの?」 「・・・変?」 最初、もちろんそれはディアボロ自身のことだ。ドッピオ自体も分かっている いや、それが悪かった。彼は自分が変な扱いをされるぐらいならまだ怒らない だが、ルイズは罵倒してはいけない人を罵倒した 人にはいくつか言われたり、やられたりすると許せない個人個人の地雷と言うものがある (この人・・・ボスを侮辱した・・・!) ドッピオは怒ってしまったのです 「何でボスを貴女なんかに侮辱されないといけないんですか!! 自分で呼び出しておいて無責任な魔法使い様で… 付き合ってられません。僕は帰ります!!」 そしてそのまま出ていった 罵倒した本人は 「・・・ボス?」 聞きなれない人物の事を半濁していた 建物を出ると見渡す限り地平線 どんな田舎に来てしまったのだろう この怪しい魔法使いどもの敷地をでていこうと正門らしき場所に向かいドッピオは歩を進める 「・・・それにしてもここは地球のどこなんだろう」 周りの景色を見渡しながら首を傾げる 木々や草花を見る限りどうも地元で見たことないものばかりである 「これはまさか異世界…」 頭を回転させるが何者かの言葉によって遮られた 「トゥルルルルルル!」 何者かの言葉はドッピオ自身の言葉だ 「電話だ!・・・えっとどこに・・・」 そこにある木の枝を拾い耳と口にあてる 「もしもし」 (ドッピオ、このまま抜け出すつもりか?) 「あ・・・はい」 (ならばあては?) 「・・・ありません」 (・・・私も侮辱されたのは腹が立つが今はそのようなことで怒るな 我々には今はあの少女しか・・・ルイズしかあてが無いのだから) 「すいません・・・ボス」 (いいのだ、私の可愛いドッピオ。私のために怒ったのだろう?) ドッピオはボスが少し変わったのに気がついていた GERによって地獄を味わい、ディアボロが他人の痛みをわかってあげられるようになったことを 「・・・ボス」 (なんだ?ドッピオ) 「・・いえ、やっぱりなんでもありません」 ドッピオはこう思ってしまった。今のボスなら野望という大きな幸せではなく日々の小さな幸せで生きていけるのではないかと そんな日々をドッピオは欲しいと思ってしまったのだ (このままこの世界でボスと一緒に・・・) そんなことを考えていたドッピオの思考は 「やあ、そんなところで何をしているのかな?」 突如の声で切られてしまったのだ 「・・・あ、ルイズさん・・・」 「ハアハア・・・急に抜け出してどこに行くつもりなのかしら?」 息を切らしながら最初に声をかけた人の後ろからルイズがやってきた 「・・・すいません、ルイズさん。急に怒り出してしまって」 ドッピオはディアボロを侮辱されたのをまだ良く思っていないが急に怒り出したのは悪いと思いまず謝った 「・・・あれから少し考えたんだけど」 ルイズが口を開く。ドッピオはそれが何かと思って顔を上げると 「あんた、やっぱり精神障害でしょ」 そんなことを言われた 「・・・え?」 「そうとしか考えられないのよ。部屋でボスとか言ってたでしょ? 最初と今と違うならあんた二重人格とかそういうのよ」 「えっと・・それは・・その」 ドッピオは少々迷っていた。このまま自分のことを正直に言うべきかそれとも嘘を言うべきか どうするか迷っていたとき 「まあまあ、そこら辺にしておいたほうがいいのではないかな?ミス・フランソワーズ」 一緒に来た金髪の人に遮られたのだ 3へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/591.html
ルイズが他の生徒たちを怒鳴りつけていると、教師らしい中年男性がため息をつきながら近寄ってきた。 「オホンッ!ミス・ヴァリエール・・・速やかに契約を。 時間が・・・あまりないのでね。」 「・・・ハイ、ミスタ・コルベール。そこの餓鬼、後で覚えてなさい。 それにしても貴方、ずいぶんおとなしいわね。声もあげないなんて。ま、いいわ。 ・・・我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え・・・我の使い魔となせっ!!!」 ズキュウウーンンッ!!!! スーパーフライ、アヌビス神、チープトリック・・・いずれも主を必要とし、求めていた! その能力ゆえに主を殺したものもあったが、いずれも主を求めていたのだ! 確かに例外も存在する!主の死を発動の条件とするものも存在する! しかしこのキラークイーン、断じてそのような性質のスタンドではない! ならばっ!主を失ったキラークイーンが、 この少女を新たな主とすることは極々自然なことではないだろうか!? ルイズの口付けがキラークイーンに新たな運命を与えた! 「ッ!!?」悠然と少女を見下ろしていた彼が突然震えた。 彼の左手にルーンが刻み込まれているのだ。 そう、シアーハートアタックと呼ばれていた、追尾戦車の部分に・・・。 「これはッ!?キラー・・・クイーン・・・? こいつの名前が、力が・・・言葉ではなくっ!心で理解できるっ!! そして・・・この能力!魔法ではない力!スゴイッ!スゴイけど・・・微妙にムカつくわ・・・。 これじゃあまるで私が爆破しかできないみたいじゃない・・・。」 強化能力・・・シアーハートアタック 自動追尾型爆弾戦車。基本性能、原作通り。 ルーン発動時、ちょっとガンジョーになる。 しかしもともとガンジョーなため、とくに意味はない。 ルイズ・・・どうして爆破なのよお~!!と心の中で叫んだ。 To Be Continued → 1話< 目次
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/322.html
人は運命に使役される使い魔である。 「・・・・・・あれ?」 その日は年に一度の恒例行事、使い魔召還の儀。 彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエールもまたほかの生徒と同じく使い魔を召喚しようとして、 ”失敗”した? 「あれ? え? え?」 机の影に隠れてた生徒たちが顔を出す。彼らもまた驚いている。 ”ゼロのルイズ”たるルイズの失敗など日常茶飯事だと言うのに。 それもそのはず、”爆発”が起きてないからだ。 数多の平行世界の彼女であってもここで爆発しないということは絶対にありえない。そのはずなのだが。 「おっほん、ミス・ヴァリエール。これは召喚に失敗したと見てよろしいのですかね? 「ま、まって下さいミスタ・コルベール。ま、まだ失敗と決まったわけじゃ」 その時 ヒュ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン ドグシャア!! 「おべがげべはぁ!」 「うわああああああ、いきなり岩が落ちてきたー! しかも運悪くギーシュが下敷き!」 「ああ、でも見てっ! ギーシュの足元にいたカエルはなぜか無傷」 「これが波紋なのか!?」 これが彼女と”運命”との邂逅であった。 「ええっと・・・とりあえずギーシュはすぐに医務室に運びました。気を失ってますが命に別状はないそうです。」 「うーむ、あれだけのダメージを負って気を失う程度なのか彼は・・・」 そりゃ天井からあのサイズの岩石が落ちてくれば普通即死だろう。 とりあえず自分の失敗で死人を出さなかったことに彼女は安堵した。 「ミスタ・コルベール、やはりこれは私の使い魔なのでしょうか?」 「そうですね、ゴーレムが呼び出されること自体はそう珍しくないので十分あり得るでしょう。 ・・・少々珍しいゴーレムのようですがね、彼は」 そう言ってコルベールは岩に目を向ける。 その岩は見れば見ること不思議な岩だった。 まず球体だ。ほぼ完全な。岩を完全な球体にするなど、どこぞの中国四千年くらいしかできるものではない。 そう考えるとやはりゴーレムの線が濃いだろう。 ゴーレムに手や足はなく、ただ一部に変な模様が刻まれていた。 「ミスタなんなんでしょうこの・・・四角の一本線が足りないのに×印がついたマークは」 「ふうむ、私も始めてみる紋章ですね。あるいは何らかの文字でしょうか」 コルベールは知的探究心を刺激されたのか岩のあちこちを触って感触を確かめている。 「ミスタ・コルベール、どうやって契約を行えば・・・」 「おっと、失礼。使い魔の契約は口付けが原則ですが生憎このゴーレムには口らしきものはありませんね。 仕方ありません。とりあえずどこでもいいので口付けをしてみて下さい」 由緒と伝統のある使い魔召還の契約の儀式がどこでもいいでよかろうんだろうか。 ルイズは多少不安になりつつもそっと紋章のちょっと上に口付けた。すると ペキ ペキペキ ペキペキペキ 「やった!」 岩の裏側に使い魔のルーンらしき文字が彫られていく。 つまりこれは正真正銘私が呼び出した、私の使い魔だ。 「よろしい。これで全員が使い魔を召喚できたことになりますな。よかったよかった」 「つまんないの。これでルイズだけ留年したりしたら面白かったのに」 キュルケが野次を飛ばすがルイズは気にしない。 「よろしくね・・・ええっとあなたの名前何にしようか」 「さぁとりあえず学校を案内するわついてきなさい。あなたの名前も考えないといけないし」 しかし岩はピクリとも動かなかった。 「ちょっと、聞いてるの?今更知らんふりしたって無駄よ。あなたが私の使い魔だってことは分かってるんだから」 やっぱり岩は動かない。 「むむむむむむむ・・・もしかして何か動かす方法があるのかしら」 ルイズは手を組んでうんうん考えたが特に何も思い浮かばなかった。 それはそうだ。ゴーレムの知識など彼女は0だからだ。ギーシュじゃあるまいし。 「とりあえずこのままにしてく訳にもいかないし・・・ああもう! 」 ゴーロ ゴーロ ゴーロ クスクス ゴーロ ゴーロ ゴーロ ゴーロ なにあれ? 知らないの? ゴーロゴー 「・・・っぷ、何やってるのあなた?」 「・・・うるさい」 「大変ねえ。レビテーションなんてコモンマジックすら扱えないと。手伝ってあげましょうか?」 「結構。私の使い魔の面倒は私が見るわ」 「あらそう。でも、どうすんのここから」 なんとかルイズは岩を寮まで運んだが、ここからは階段だ。 ルイズの細腕ではとても運べるものじゃない。 「・・・いいのよ!こいつは入り口においてく! どうせまた明日授業に連れて行くんだし」 「・・・あんた毎日それ押して授業受けに行く気?」 「私の勝手よ! いいからあっちに行って!」 キュルケを追い返し彼女も部屋に戻った。 「はぁ・・・なんなのよもう」 正直使い魔の契約が出来たとき彼女は有頂天だった。 爆発も起こさず使い魔を召喚できた。魔法の成功自体彼女の人生の中では快挙だった。奇跡だった。 呼び出せたのは多少変なのだったが、文句を言うレベルではない。 だからこそ他人の嘲笑に耐えてあそこまで岩を運んだんだから。 「ほんとに・・・私の使い魔なのかな」 彼女がもう一度大きなため息をつこうとしたその時 ゴト 「きゃっ!?」 誰かいるの? ルイズが振り向いたそこには 「・・・あんた、もしかして自分で来たの?」 いつの間にか部屋には岩が鎮座していた。 「なによ、動けるんなら最初からいいなさいよ、バカ」 彼女は岩をパシンと叩く。手が痛いだけだった。 「そだ、あんたの名前考えたわ。可憐で高貴で素晴らしい岩と言う意味の・・・『ローリングストーン』よ。かっこいいでしょ?」 「・・・・・・・・・・・」 無論岩がその名前に不平を言うことも不満を言うこともなかった。 むろん違うだろ、と言う突っ込みさえも。 「おはよう、キュルケ。いい朝ね」 次の日の朝、授業が始まる前にルイズはキュルケに挨拶した。 いつもは目すら殆どあわせないのだが。 「あら、おはようルイズ。あなたの大事な使い魔さんは運べたの?」 「ご心配なくこれこの通り」 ぽんぽんと足元をたたくルイズ。そこには岩が昨日と変わらずその身を晒していた。 「・・・使えるようになったの? レビテーション」 「使い魔が主人に付き従うのは当然のことでしょ? わざわざそんな必要はないわ」 といいつつルイズも実はよく分かっていなかった。 岩を動くところも彼女は見たことはないからだ。ただいつの間にか”岩は側に立っている”のだから。 食事のときもいつの間にか足元にいた。パンとスープを与えてみたがやはり食べることはなかったが。 なんと忠義に厚い使い魔だろうか。彼女はその程度にしか考えてなかったが。 「ふーん・・・まあいいや。ところで聞いた? あの話」 「あの話?」 「実はね・・・」 「はい、皆さん席について。授業を始めます」 シュブルーズが教室に入ってきたことにより、その話は中断された。 「皆さん、春の使い魔召喚は、大成功のようですね。おめでとうございます」 授業は滞りなく進んでいく。ルイズが爆発したことも含め。さいわいシュブリーズに怪我はなかったようだが。 おかげで授業は途中で取りやめになった。ルイズは罰として教室の後片付けを命じられた。 当然ローリングストーンは手伝ってくれるわけもないため一人で片付ける。 「はぁ・・・今度はうまくいくと思ったんだけどなあ」 やっぱり召喚の時のあれは偶然だったのだろうか。教室を片付けながらルイズ昨日つけなかった分のため息をついた。 「はぁ~~~やっぱルイズはこうでなくっちゃ。スッキリしないわ」 「あら、そう。じゃあ昨日の分を貸し付けて失敗して差し上げましょうか?」 「うわ、ちょちょちょ、冗談よ冗談。あ、それより聞いた? あの話?」 「あの話?」 そういえば授業の前もいってたな。 「何の話?」 「アルビオンってあるじゃん。あの浮遊大陸の」 そんなの知ってる。少なくともゲルマニアなんかよりもよっぽど親交が深い。 そういえばアルビオンは現在内戦中だったと聞いたがなにかあったのだろうか。 「あそこの王子様さ、死んじゃったらしいわよ」 「死んだ? 王国が滅亡したの?」 「いやそれがね」 ・ ・ ・ 「事故死なんだってさ」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/764.html
(あー、私ったら本当にご主人様失格だわ…) ポルナレフがキュルケの部屋で熱烈なアプローチを受けている時、ルイズは一人部屋で自責の念にかられていた。 あの時、亀とだけ契約したつもりが、何故かポルナレフも一緒に契約されルーンが刻まれてしまった。 とすれば直接契約していないとしてもポルナレフも亀同様に自分の使い魔のはずなのに自分はポルナレフだけを追い出した上にそのポルナレフに、使い魔は亀だけで良い、と言った。 実際本人も嫌々していたようだし、自分も平民付きより亀だけの方がずっと使い魔らしくていいと思う。 しかしポルナレフが言った大切な物が何かは知らないが、亀ごとそれを取り上げ、全く行く宛も無いのに追い出してしまうのは外道以外の何でもない。 それを本当にやってしまうとは自分はなんて最悪な御主人様なんだろうか。彼に謝って、亀を返そう…。 そう決意するとドアを開け、廊下に出た。 暗くなっていたので、とりあえず誰かに探すのを手伝って貰おうと考えたその時、キュルケの部屋のドアをぶち破って男が出て来た。 紫の眼帯、ハートが半分に割れたような金の耳飾り、そして立てた銀髪。 ルイズが探そうとしていたポルナレフ本人だった。 更に部屋の中に下着姿のキュルケが見えた。 そしてポルナレフもキュルケもほぼ同時にルイズに気付いた。 時が止まる。 「あああ、あんた達何やってんの…?」 ポルナレフは激しく後悔した。もっと早く逃げるべき、いや、そもそも入るべきじゃなかったと。 「こ…これはだな、その…俺がそこの小娘の使い魔に連れられてな、中で立ち話していただけだ。何もしていないぞ。な?」 ポルナレフはキュルケの方を向いて、弁護を要請したのだが、 「いやぁ、あんたの使い魔、中々情熱的だったわ。結構ガッシリした体つきしてるし期待してたけど、期待以上だったわ。また貸してね。」 キュルケはそう出鱈目を言うと、部屋に戻り服を着ると呆然としている二人を置いてどこかへ去っていった。おそらくドアの代わりになるものを探しに行ったのだろう。 「まさかとは思うが…あいつの言ったことを信じてないよな?俺はこう見えても30過ぎてて、あんな小娘の色仕掛けになんか…」 ポルナレフは必死になって弁明した。 「…もういいわ、見苦しい。言い訳なら部屋で聞く。」 そう言って踵を返し、部屋に戻って行った。明らかにキレていた。 それから二時間ほどルイズの部屋から、鞭が空気を裂く音、それをナイフで切り裂く音、ルイズの罵声、ポルナレフの悲鳴に似た叫びが響いてきた。 「ハァ……つ、つまりあんたは…ハァ…単に誘惑されてた…ハァ…だけって事?」 ようやくルイズは息を切らせながらも納得したかの様に言った。ちなみにルイズの周りには切られた鞭が散乱している。 「ハァ…ハァ…そういうことだ…。」 ポルナレフは憔悴しきった様子で言った。たとえガンダールヴでも二時間も切り合いしてたら疲れたらしい。(本人は知らないが) 「ハァ…ハァ…!それならいいわ。しかしツェルプストーめ…私の使い魔にまで手を出すつもり!?」 ルイズは苛々した様子で爪を噛んだ。 「やれやれ、なんだ?『まで』って?なんか前にもあったのか?」 ポルナレフはルイズに尋ねた。 ルイズはポルナレフに自分の実家ヴァリエール家とキュルケの実家ツェルプストー家の数世代に及ぶ奇妙な因縁を話した。 「…という訳よ。ただでさえ国境を挟んで隣あってるのに、そのせいでヴァリエール家とツェルプストー家は有り得ないぐらい仲が悪いの。」 「そのせいであんなに怒ったのか。てっきり独占欲かと思ったがな。ほら、飼い犬が他の人になつくとムカつくって奴だ。」 ポルナレフがうんうんと頷く。 「その通りよ。だからあんたも他の女だったらいいけど、ツェルプストーの女だけは駄目よ。あんたは私の使い魔なんだからね!」 ルイズはズビシッとポルナレフを指差した。 「分かった分かった。まあ、女遊びはもうとっくの昔に卒業したんだがな…」 ポルナレフは若い頃は遊びほうけていたが、ディアボロに追い詰められて以来隠者みたいな生活を送っていたため、欲をセーブ出来るようになっていた 「分かればいいのよ。」 ルイズはそう言うと大きな欠伸をし、ネグリジェに着替えだした。もう見慣れた光景なのでポルナレフは無視してとっとと寝ようと藁の方に近寄った。 「あ、そうそう。ポルナレフ、これ。」 ルイズが何かを投げて寄越した。それは亀の鍵だった。 「…どういう風の吹き回しだ?」 「あんたさっきその中に大切な物があるって言ったでしょ?だから返してあげるわ。 それと中で寝ることも許してあげる。そのかわり明日その藁を捨ててきなさい。」 「ああ…そういうことか。すまないな。」 もっとも鍵を取られていた理由がわからんがな、とポルナレフはひそかに思った。 「なんであんたが謝るのよ。むしろ…私こそ亀だけでいいとか言って…部屋から追い出して…その…ごめんなさい…」 ルイズは赤面しながらぼそぼそとだが、ポルナレフに謝った。 ポルナレフはそんなルイズの態度に一瞬ポカンとしたが、すぐに微笑んだ。 ルイズが恥ずかしがりながらも精一杯謝るその姿は、ポルナレフにはまるで妹か娘の様で実にほほえましかった。 そしてその晩、ポルナレフは久しぶりに亀の中のソファで熟睡した。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1715.html
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 享年16歳 嗚呼、美人薄命とはいうけれど恋の一つでもして死にたかった 振り下ろされる巨大な拳を前に、16年間の出来事が走馬灯のように流れていく 恐れ多くも姫殿下の遊び相手として王宮で過ごした日々 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと 小船で泣いている所を婚約者に慰められたこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと ちぃ姉さまの動物に危うくじゃれ殺されそうになったこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと 魔法が使えなくて馬鹿にされたこと ・・・・・。 何だろう、急に悲しくなってきた 私の人生こんなことでいいのだろうか?いいやよくない!! せめて抗ってやる! 屹然と杖を構え、目の前のゴーレムに向けて魔法を放とうとする。しかし 「「きゃっ!?」」 不意に脇腹に衝撃を受け、続いて頬の辺りにボヨヨンと何か暖かく柔らかな感触 「ちょっとヴァリエール、重いから退きなさいよ!」 「う、うるさい!今退くわよっ!!」 どうやらにっくきツェルプトーの胸に溜まった二つの脂肪の塊がクッションになったらしい いっそそのまま潰れてしまえばよかったのに・・・・いや、その前にさっきの衝撃は何だったのだろう? 「ッ、そうだヴァニラ!」 慌てて振り返るが、そこにあったのは今正にドスンという鈍い音共に地面に減り込むゴーレムの拳 「え、嘘!?」 「まさか私たちを庇って・・・・?」 何ということだろう あまりのショックに地面に膝をつき、呆然と拳の着弾地点を見つめる ツェルプトーが横で何か言ってるが分からない 全然いう事を聞かなくても私の使い魔 平民でも、何だか訳のわからない力を持っていた私の使い魔 あの物を削る力でもあの面積は防ぎきれなかっただろう 私があの時直ぐ逃げていればヴァニラは・・・・ 「ヴァリエール! ルイズ!! あれ見てあれッ!!」 うるさいわね、今感傷に浸ってるんだから邪魔しないで・・・・って何? 「ほらあそこ!」 ツェルプトーの示す先を見ればゴーレムの腕を伝い、壁に開いた穴に入っていく人影が一つ 「何あれ・・・・まさか賊!?」 「ていうかあの穴アナタの失敗魔法で出来た皹じゃないの?」 「なッ!?そ、そんなわけないじゃないの!!」 冗談じゃない、でもまさか・・・・・ってそんなことよりヴァニラ! ガオンッ! 突如、独特な音と共にゴーレムの右腕が崩れ落ちる 「え、何事!?」 「ヴァニラ!!」 私とツェルプトーが声を上げるうちにも、次々とゴーレムの体にボコボコと風穴が穿たれていく 「やっちゃいなさいヴァニラ!!」 このままいけばあのゴーレムを倒せる! そう考えついつい逃げるのも忘れて観戦してしまったが、それがいけなかった 「「え?」」 不意にゴーレムがぐらりと傾ぎ、そのまま私たちの上に大量の土砂が覆いかぶさった To Be Continued...