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覚悟は出来てるか? 俺は出来ているッ!! 亜空の使い魔 「キサマなああんぞにィィィィィィーッ……」 満身創痍のヴァニラ・アイスッ 彼方此方から血を流し右腕と右足、それぞれ肘と膝から下が綺麗に消し飛び あまつさえその断面からは煙のようなものが出ていたが 日光の中、同じく満身創痍で膝を付くポルナレフに向かい吠える しかしッ 「地獄でやってろ」 ドンッ ポルナレフのスタンド―シルバーチャリオッツ、甲冑を着た銀色の騎士の肩がヴァニラにぶつかり、DIOの血で吸血鬼となった狂信者は、文字通り塵となった 塵になった者はどうなるのか?それはスタンド、クリームの亜空間に消えた者の行方同様に分からない しかし 「ぐぁああああッ!?」 「きゃっ!」 ヴァニラ・アイスは突然左手を襲った焼け付くような痛みで覚醒する 「な、何だこれはッ!左手に文字が!!」 まるで焼印を押されたようなこの痛みッ! しかしそれ以上の衝撃が彼を襲う 「右手があるだと!?」 紫外線を浴び消し飛んだはずの右腕が、右足がッ しっかりと存在し、それどころかチャリオッツに刺された傷も何処にも見当たらない 「おいおいルイズ!平民どころかそいつ頭がおかしいんじゃないのか?」 「さすが『ゼロ』ッ!俺たちにできないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるぅ!」 ヴァニラを遠巻きに囲むよう不規則に並んだ子供、その中のから野次が飛ぶ それは半分は自分に向けられたものだったがもう半分は誰か別の人物へ向けたもの しかしその疑問を口にする前にその答えは見つかった 「うるさいわね! ちょっと間違っただけよ!」 「間違いって、ルイズはいっつもだろ!」 「『ゼロ』のルイズは失敗が当然なんだからな!」 目の前で尻餅をついたピンク色の髪の少女、どうやらルイズというらしい 「おい女ッ!ここは何処だ?DIO様は何処にいるッ!!」 ヴァニラの迫力に思わず気圧されるが直ぐに 「ご主人様に向かってその口の利き方は何よ!」 「ご主人様?私がお仕えするのはDIO様だけだッ 質問に答えろ!!」 少女を締め上げようと手を伸ばすが、 「ミス・ヴァリエール!そこまでです!みなさん。今日はここでおしまいです。解散!!」 U字禿の男の言葉に遮られタイミングを逃してしまった 野次を飛ばしていた子供たちもぞろぞろと遠くに見える城の様な建物へ向かい歩いて行き、 ゼロのルイズと呼ばれていた少女も溜息をつき立ち上がる 「・・・・アンタ、名前は?」 「名前?ヴァニラ・アイスだ、それより質問に」 「ヴァニラ?変な名前ね・・・まあいいわ、来なさい。色々説明して上げる」 ルイズはそれだけ言うとヴァニラの返事を待たず、さっさと歩き出してしまった 一人取り残されたヴァニラはにわかに翳り出した空と、そこに浮かぶ何故か自分の身体を焼かない太陽を見上げ呟く 「DIO様、私はこれからどうなるのでしょうか・・・?」 己の命さえ投げ出し忠誠を誓った主の顔を思い浮かべ、一先ずあの少女から話を聞こう。そう自分を奮い立たせヴァニラは立ち上がった To Be Continued...
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蟲の使い魔/Minion of Insect 蟲の使い魔 (1)(G) クリーチャー ― 昆虫・式 蟲の使い魔は人間でないクリーチャーによってブロックされず、 人間でないクリーチャーのブロックに参加できない。 あなたが3体以上の昆虫をコントロールしているとき、蟲の使い魔は +1/+1 の修整を受ける。 1/1 コモン 永夜抄の各色に存在する、使い魔サイクルの緑版。 サイクル共通で、人間にしかブロックされず、人間しかブロックできないという特性を持つ。 群れるとサイズアップする。昆虫を統治する者と組み合わせるといろいろ良い。 参考 使い魔サイクル : 人間の使い魔 兎の使い魔 亡霊の使い魔 不死鳥の使い魔 蟲の使い魔 カードセット一覧/東方永夜抄 クリーチャー コモン 式 昆虫 東方永夜抄 緑 部族支援 2マナ
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水の使い魔 Summon 1(水) / 400f ファミリアーの召喚 Atk=0 HP=1 水の使い魔が対戦相手にダメージを与えた際、あなたはドローストック+1を得る。 -- http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/27456/1135510382/826 参照:炎の使い魔, 風の使い魔, 光の使い魔, 闇の使い魔 コメント欄 名前 コメント
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一行はその日の夜中にラ・ロシェールの入口に到着した。 「…彼らは本当に先に行ったのかい?」 ワルドは自慢の使い魔であるグリフォンでも二人に追いつけなかったと思いこみ、ショックを受けて凹んでいた。 「あの…子爵…実は」 それを見たルイズは哀れに思い、ワルドに亀の事を話した。 「…そういう種だったのかい。」 「もしかして怒ってますか…?」 「いや一本取られたな、と思ってね。まさかそんな方法で着いてくるなんて思い付かなかったよ。 とりあえず町で一泊して明日朝一番の舟でアルビオンに向かうことにしよう。」 ワルドは笑いながらそう言い、グリフォンをラ・ロシェールの町に乗り入れた。 「道理で追いつけなかったし、見つかりもしなかったわけだ。なるほど、な」 それと同時刻、ラ・ロシェールの入口の崖の上に多数の傭兵達がいまかいまかと待ち構えていた。 金の酒樽亭で女メイジと仮面を被ったメイジの二人に雇われ、「ラ・ロシェールの入口でグリフォンと馬二頭を襲え」と言われたのだ。 そしてつい先程グリフォンが通過し、何人かが弓を構えた。これに続いて馬二頭が来たら矢を尽きるまで射続けるつもりだった。 と、そこへ仮面メイジが闇の中から音もなく現れた。 「作戦は失敗だ。」 「…はあ?どういう事だ、あんた?まだ馬は来てないぜ。」 「奴らは既に町に入った。次にやるべきことを指示するから全員一旦『金の酒樽』亭に戻れ。異論は許さん。」 そう言うと再び闇の中に姿を消していった。 傭兵達は仮面メイジの言うことが理解出来なかったが、そこは傭兵。ぶつぶつ言いながらも雇い主の彼の言うことに従い、崖を降りて行った。 一行はラ・ロシェールで1番上等な宿、『女神の杵』亭に泊まることにした。 「宿に入る前に二人に着いたことを伝えないと…」 ルイズはそう言うと亀の鍵を外した。 「二人共、宿に着いたわよ。」 亀の中から断りもなくいきなり引きずり出されたギーシュは恨めしそうにルイズを見て文句を言ったが、ワルドとルイズはギーシュの文句を華麗にスルーして宿に入ろうとした。 その時である。四人の前に一頭の龍が舞い降りた。 ワルドは咄嗟に杖を構えたが、ルイズとギーシュはその背中に乗っていた少女達に驚愕した。 「あんなに急いで何処に行くのかと思ったら、ラ・ロシェールって…アルビオンにでも行くつもりなの?」 「キュ、キュルケ!タバサも!なんでここに!?」 「後をつけてきた。」 パジャマ姿のタバサが本を読みながら短く答えた。 キュルケは驚いたままのルイズとギーシュを無視してワルドににじり寄った。 「お髭が素敵よ。あなた、情熱はご存知?」 ワルドはちらっとキュルケを見つめて左手で押しやった。 「あら?」 「好意は有り難いが、これ以上近づかないでくれたまえ。婚約者が誤解するといけないのでね。」 そう言ってルイズを見つめた。ルイズの頬が赤く染まった。 「なあに?あんたの婚約者だったの?」 キュルケがつまらなさそうに言うと、ルイズの後ろで何か考え事をしていたポルナレフに抱き着いた。 「ほんとはね、ダーリンが心配だったからよ!」 が、ポルナレフは無反応だった。キュルケが抱き着いてきた事を無視して何か別の事を考えていた。 「…つまんない」 キュルケは自分のアプローチに反応しない男二人に軽く失望した。 『女神の杵』亭の一階は酒場となっていて、その造りは貴族を相手にするだけあって豪華だった。テーブルは床と同じ一枚岩から削り出しでピカピカに磨き上げられていた。 ルイズとワルドが『桟橋』へ交渉に行っている間、彼ら以外はそこでくつろいでいた。 ギーシュとキュルケは他愛のない事をしゃべり、タバサは普段と同じく本を読んでいたが、ポルナレフだけ三人から離れてカウンターに座っていた。 「…果たして俺はどうしたらいいんだろうな…」 出されたワインに手をつけず、そう呟いた。 「なんだい相棒?なんか元気無いねえ」 鞘から僅かに出ていたデルフがいつもと同じ軽い口調で言った。 「いや、これから…俺はどんな『道』に進むべきなのかが気になってな…」 「『道』?」 「俺はここに来るまでずっと戦っていたんだ…妹の仇や100年の時を越え蘇った吸血鬼、世に蔓延る邪悪とかとな…」 「へえ。そいつあおでれーた。意外とすげえ人生送ってきたんだな。」 「ああ。だが、そのような『因縁』はこの世界にはない…俺は異邦人だからな。そんな俺がだ、この世界で戦いを続ける義務が、権利があるのか?まだ戦う事に意味があるのか?分からないんだ…全く、な。」 「…難しくて俺にはよくわかんねーけど、なんだい、相棒は戦う事に『理由』を求めてるのかい?」 「そうとも言えるし、違うとも言える。」 「?」 「ひょっとしたら『戦い』自体を俺はもう嫌っているのかもしれない…」 「おいおい、変な事言うんじゃないぜ、相棒。」 「いや、これはまじめな話だ。考えてみれば俺は今まで生きてきた内の半分は戦いや修業に費やしてきた…もう休みたいと考えても変じゃあない程な」 「でも相棒は…」 ポルナレフはデルフを鞘に収めた。 これ以上話したくなかった。ポルナレフは学院を発つ前に、この任務を終えたらもう戦いから身を退こうと考えていた。ルイズには少し悪い気もするが亀だけで使い魔は十分だろうから、自分はただの平民として暮らし帰る方法も自分一人で探そうと決めた。 だがデルフと話していて沸々と何かが沸いてきた。何かは分からなかったが、それは確かに今の自分の心に問いかけてきた。 それが嫌だった。これ以上話せば自分の決心が鈍る…そう思った。 ポルナレフはワインを煽った。酔い潰れて今の話を全て忘れるまで飲み続けようと… 「お客様の気持ち…よく分かりますよ」 店主はそれだけ言って空いたグラスにワインをなみなみと注いだ。 やがてルイズとワルドが帰って来た。 ワルドは席につくと、困ったように言った。 「アルビオンに渡る船は明後日にならないと出ないそうだ」 「急ぎの任務なのに…」 ルイズが口を尖らせた。 「あたしはアルビオンに行った事無いから分かんないけど、どうして明日は船が出ないの?」 キュルケの方を向いてワルドが答えた。 「明日の夜は月が重なるだろう?『スヴェル』の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく。」 キュルケはふーんと納得したように頷いた。 「さて、じゃあ今日はもう寝よう。部屋は取った。」 ワルドは鍵束を机の上に置いた。 「キュルケとタバサは相部屋だ。そしてギーシュとポルナレフが相部屋…って彼は何処だい?」 キュルケがカウンターを指差した。そこにはワインを煽り続けるポルナレフの姿があった。近寄りがたい負のオーラが滲み出ている。 「…まあ、酔い潰れたら店主に運んでもらうよう頼んでおこう。 あと、僕とルイズは同室だ。婚約者だからな。当然だろう?」 「そんな、ダメよ!まだ、私たち結婚してるわけじゃないじゃない!」 しかしワルドは首を振ってルイズを見つめた 「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」 貴族相手の宿、『女神の杵』亭で一番上等な部屋だけあって、ワルドとルイズの部屋はかなり立派な造りであった。ベッドを例にとっても、天蓋付きの大きなもので高そうなレースの飾りがついていた テーブルに座るとワルドはワインの栓を抜いて杯に注いだ。それを飲み干す。 「君も腰掛けて一杯やらないか?ルイズ」 ルイズは言われるままにテーブルについた。ワルドがルイズの杯にワインを満たしていく。自分の杯にも注いで、それを掲げた。 「二人に」 ルイズはちょっと俯いて杯をあわせた。かちん、と陶器のグラスが触れ合った。 「姫殿下から預かった手紙はきちんと持っているかい?」 ルイズはポケットの上から預かった封筒を押さえた。一体どんな内容なのか、そしてウェールズから返して欲しいという手紙の内容はなんなのか、ルイズにはなんとなく予想がついていた。 アンエリッタとは幼なじみである。彼女がどういう時にあのような表情をするのか、よく分かっていたからだ。 「…ええ」 「心配なのかい?無事にアルビオンのウェールズ皇太子から姫殿下の手紙を取り返せるのかどうか」 「そうね。心配だわ…」 「大丈夫だよ。きっと上手くいく。なにせ僕がついているんだから」 「そうね、あなたがいればきっと大丈夫よね。あなたは昔からとても頼もしかったもの。で、大事な話って?」 ワルドは遠くを見る目になって言った。 「覚えているかい?あの日の約束…ほら、君のお屋敷の中庭で…」 「あの池に浮かんだ小船?」 ワルドは頷いた。 「君はいつもご両親に怒られた後、あそこでいじけていたな。まるで捨てられた子猫みたいにうずくまって…」 「本当に、もう、ヘンな事ばっかり覚えているのね」 「そりゃ覚えているさ」 ワルドは楽しそうに言った。 「君はいっつもお姉さんと魔法の才能を比べられて、出来が悪いなんて言われてた」 ルイズは恥ずかしそうに俯いた。 「でも僕はそれはずっと間違いだと思ってた。確かに君は不器用で失敗ばかりしていたけれど…」 「意地悪ね」 ルイズは頬を膨らませた。 「違うんだルイズ。君は失敗ばかりしていたけれど、誰にもないオーラ…さっきの使い魔君みたいなんじゃなくて…何て言うかな、魅力、みたいなものを放っていた。 それは君が他人には無い特別な力を持っているからさ。僕だって並のメイジじゃ無い。だからそれが分かる」 「まさか…」 「まさかじゃない。例えば、そう、君の使い魔…人間の方しか見えなかったけど、彼のはただのルーンじゃない。伝説の使い魔の印さ」 「伝説の使い魔の印?」 「そうさ。あれは『ガンダールヴ』の印だ。始祖ブリミルが用いたという、伝説の使い魔さ」 ワルドの目が光った。 「ガンダールヴ?」 「そう。君も知ってるだろう?誰もが持てる使い魔じゃない。しかも亀まで呼び出した…つまり君はそれだけ力を持ったメイジなんだよ」 「信じられないわ」 「君はただ自分の力に気付いていないだけだ。きっと君はいつしか偉大なメイジになるだろう。そう、始祖ブリミルのように歴史に名を残すような素晴らしいメイジにね。僕はそう予感している」 ワルドは熱っぽい口調でそう言うと、改めてルイズを見つめた。 「この任務が終わったら僕と結婚しよう、ルイズ」 「え…」 いきなりのプロポーズにルイズははっとした顔になった。 「僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりは無い。いずれは国を…いや、ハルケギニアを動かすような貴族になりたいと思っている」 「で、でも…」 「でも、なんだい?」 「わ、わたし…まだ…」 「もう子供じゃない。君は十六だ。自分のことは自分で決められる年齢だし、父上だって許して下さってる。確かにずっとほったらかしだった。婚約者だなんて言えた義理じゃない事も重々承知している。でもルイズ、僕には君が必要なんだ」 「でも…まだ私はあなたに釣り合うような立派なメイジじゃないし…もっともっと修行して…」 ルイズは俯いた。 「…君がそう考えているなら仕方が無い。その気持ちはよくわかる。取り消そう。今返事をくれとは言わないよ。君が君の言う『立派なメイジ』になるまで待とうじゃないか。」 ルイズは頷いた。 「それじゃあもう寝ようか。疲れただろう」 それからワルドはルイズに近づき、唇を合わせようとした。 ルイズの体が一瞬強張る。それから、すっとワルドを押し戻した。 「ルイズ?」 「ごめん、でも、なんか、その…」 ルイズはもじもじとしてワルドを見つめた。ワルドは苦笑いを浮かべて首を振った。 「急がないよ。僕は」 ルイズは再び俯いた。 こんなに優しくて、凛々しい、あの憧れだったワルドの気持ちはもの凄く嬉しい。 だけど気にかかるのはポルナレフのことだった。 使い魔とは言え人間、それも男なのだ。ワルドと結婚しても連れていけるのだろうか。それは出来ない気がした。 異世界から来たあいつはほっぽりだされた後、生きていく宛はあるんだろうか あのメイドや学院の使用人達、あるいはキュルケが世話してくれるだろうか?でも、呼び出したからには帰る方法を一緒に探してやる義務があるんじゃないか。それを無視するのは… そのような思いがルイズの心を前に歩かせないのだった。 翌日、ポルナレフは見知らぬ部屋のベッドの上で目覚めた。隣にはギーシュが寝ていた。 ぼやーとした頭で何処だここは?と思っているとドアがノックされた。 ふらふらした足取りでドアに向かい、鍵を外してドアを開けるとワルドが立っていた。 「おはよう。使い魔くん」 「…おはよう。 おお、そうだ。昨日は結局どうなったのか教えてくれないか?酒を飲んでたから全く聞いてなくてな…」 「ああ。まず出発は明日の朝だよ。明日じゃないと船が出ないらしくてね。」 「ほう…じゃあ今日は暇な訳だ」 ワルドが頷いた。 「そういうことだ。ところで君は伝説の使い魔『ガンダールヴ』なんだろう?」 「あ?」 「いや、フーケを尋問した時君の名前が出て来てね…きみに興味を抱き王立図書館で調べたんだよ。その結果『ガンダールヴ』にたどり着いた」 ポルナレフは二日酔いで頭がぼんやりしていてワルドが何を言いたいのか分からなかった。 「あの『土くれ』を捕まえた腕がどのぐらいのものだか、知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」 「手合わせ…」 「分かってるとは思うが、これさ」 ワルドは腰に差した杖を引き抜いた。 「もちろん二日酔いを治す薬は持って来ているよ。ほら。」 ワルドはポルナレフに透明な液体が入っている小瓶を投げて寄越した。 「引き受けてくれるね?」 「断る」「は?」 「手合わせなどやって怪我したりして明日からに響いたらどうするつもりだ」 ポルナレフはそう言うとドアを閉めた。ベッドの方を見るとギーシュがいつの間にか起きていて、こっちをじっと見ていた。 「…なんで断ったんだい?」「任務中だからな。仕方ないだろう」 「そうじゃないだろ?本当の理由は」「…どういう事だ」 「君と一度やりあったからね。何となく分かるんだ。君が今断ったのは心の深いところからやりたくないからじゃないか、てね」 「…気付いていたのか、小僧」 「で、何でなんだい?僕の申し入れは受けたのに」 「それは…もう戦いから身を退くことを決めたからだ。」 「身を退く?」 「ああ…ルイズにはまだ言ってないが、この任務が終わり次第、俺は隠者のような生活をしようと考えている」 ポルナレフは静かに続けた。「戦う理由が…因縁が…俺には無いからな…」 バキィ! ギーシュは魔法を使わず、素手でポルナレフを殴った。「な…!?」 「君は…!君は…!いつの間に誇りも主人も平気で捨ててしまうような屑みたいな人間になったんだ!因縁が無いから使い魔をやめるのかい!?」 怒りで声が震えていた。 「僕は…あの時君から言われた事を覚えている……『誇り高い男に月桂樹の冠を送る』と君は言った! 僕は…君を尊敬した!月桂樹を身につけなかったのは君にまだ劣っていると考えていたからだ!いつか…君に追い付いた時に堂々と身につけようと考えていた!なのに…君は…!」 ギーシュは鞄から月桂樹の花を取り出すとポルナレフに投げ付けた。 「君みたいな男にこんなもの貰うなんてむしろ恥だ!!」 そう言うとギーシュは扉を荒々しく開けて出ていった。部屋には呆然と床に座り込んだポルナレフだけが残されていた。 To Be Continued...
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室内で使い魔と向かい合う少女が一人。 言わずと知れたルイズのお部屋である。所々焦げたり穴があいているのはご愛嬌だ。 彼女は今、使い魔にわりと偏った説明をしていた。 「使い魔の仕事はねえ・・・私の身の回りの世話や、硫黄とか宝石みたいな材料探し、 さらにはあらゆる危険から私を守り抜く、といったようなことまで色々とあるの。 あんたは亜人ぽいし・・・ひょっとして洗濯とかできる?」 無理よねえ、と言外に含ませながら尋ねる。 「・・・?」 案の定、だ。人型なんだからそのくらい出来るでしょう?とか、 装飾品っぽいのつけるくらいの文化持ってるくせに・・・とか言いたいのをぐっと抑える。 「できなさそうね・・・例を挙げると(ヌギヌギ)・・・いい?これは私のパンツ。これを綺麗にするの。」 パサッ 「・・・。」 ボンッ! ・・・消えた。綺麗さっぱり。 「あ・・・あ、あんたねえ!綺麗にしろとは言ったけどッ!綺麗に吹き飛ばしてどーすんノよっ!?」 だめだこいつ・・・私の服が無くなる。着替えも自分でやらなくちゃ。 「・・・?」 教え込める・・・かしら?・・・まあ・・・そのうちメイドの子にでも教育、させようかしら・・・。 「はあ・・・もういいわ。あんた食事はいらないみたいだし、そのへんは楽だから今回は許してあげる。 その代わり、しっかり私の言うこと聞くのよ?・・・もう寝るわ。」 ルイズは服を脱ぎ始めた。上着を脱ぎ、スカートも脱ぎ、次に下着に手をかけようとして・・・ ルイズは穿いていないことを思いだし・・・キラークイーンを蹴った。 「あんたが吹っ飛ばしたパンツ、どーするのよッ!」 ・・・でもまあ強いんだから満足はしているわ♪ 口には出さないルイズであった。 To Be Continued → 戻る< 目次
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サガフロンティアⅡのギュスターヴ13世 本編 第一部『覚醒篇』 鋼の使い魔-01 鋼の使い魔-02 『ギュスターヴと学院』 鋼の使い魔-03 鋼の使い魔-04 『ギュスターヴの決闘』 鋼の使い魔-05 鋼の使い魔-06 鋼の使い魔-07 『剣と盗賊』 鋼の使い魔-08 鋼の使い魔-09 鋼の使い魔-10 『盗賊捕縛、そして』 鋼の使い魔-11 『教える者、教えられる者』 鋼の使い魔-12 『シエスタは何処へ?』 鋼の使い魔-13 『モット邸潜入』 鋼の使い魔-14 『舞台、その裏は…』 鋼の使い魔-15 『アンリエッタ来訪』 鋼の使い魔-16 『ラ・ロシェールへ向けて…』 鋼の使い魔-17 『秘かな疑惑を胸に』 鋼の使い魔-18 『襲来!土くれのフーケ』 鋼の使い魔-19 『ウェールズ邂逅』 鋼の使い魔-20 『前夜祭は静かに流れ』 鋼の使い魔-21 『ギュス対ワルド』 鋼の使い魔-22 『無垢なる過失は罪か、それとも罰か』 鋼の使い魔-23 『百貨店 建設』 鋼の使い魔-24 『挑む若者、伏する男、携える女』 鋼の使い魔-25 『氷河剣と土人形』 鋼の使い魔-26 『歯車は外から回る?』 鋼の使い魔-27 『下準備の日々』 鋼の使い魔-28 『来る僅かな手懸り』 鋼の使い魔-29 『老獪とふたつの遺物』 鋼の使い魔-30 『seventy years ago/fortytwo years ago』 鋼の使い魔-31 『触れ合う歴史の糸二つ』 鋼の使い魔-32 『大きな一歩、躓いて…?』 鋼の使い魔-33 『開幕、長い一日』 鋼の使い魔-34 『タルブ戦役・序―開戦―』 鋼の使い魔-35 『タルブ戦役・二―紛糾―』 鋼の使い魔-36 『タルブ戦役・三―戦端/飛天―』 鋼の使い魔-37 『タルブ戦役・四―誘う魔卵―』 鋼の使い魔-38 『タルブ戦役・五―集結―』 鋼の使い魔-39 『タルブ戦役・六―両軍衝突/降り立つ明暗―』 鋼の使い魔-40 『タルブ戦役・七―再戦、狂気のワルド―』 鋼の使い魔-41 『タルブ戦役・八―始源者の亡霊―』 鋼の使い魔-42 『ルイズの夜』 第二部 『前夜篇』 鋼の使い魔-43 『王命拝命』 鋼の使い魔-44 『ルイズ、術を知る。/ギーシュ、堕ちる。』 鋼の使い魔-45 『ギーシュの秘密』 鋼の使い魔-46 『シエスタ滑落事件』 鋼の使い魔-47 『行き先は、ラグドリアンレイク』 鋼の使い魔-48 『巨湖の主、ここに』 鋼の使い魔-49 『水魔との狂宴』 鋼の使い魔-50 『忍び寄る第二幕』 鋼の使い魔-51a 鋼の使い魔-51b 幕間 鋼の使い魔 幕間-01 『幕間 ギーシュの災難』 鋼の使い魔 幕間-02 『幕間 ヘンリーの日記』 鋼の使い魔 幕間-03 『幕間 ウェールズ最後の戦い』 鋼の使い魔 幕間-04 『続・ギーシュの災難』 鋼の使い魔 幕間-05 『ジェシカの華麗なる一日』 鋼の使い魔 幕間-06 『外伝 魔法戦士タバサ(1)』 鋼の使い魔 幕間-07 『外伝 魔法戦士タバサ(2)』 鋼の使い魔 幕間-08 『外伝 魔法戦士タバサ(3)』 鋼の使い魔 幕間-09 『外伝 魔法戦士タバサ(4)』 ライブラリ 鋼の使い魔 ライブラリ-01 『1.ドラングフォルドの魔法書断片』 鋼の使い魔 ライブラリ-02 『2.石工一家所蔵、怪文書物の一項』
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「遅いから逃げ出したのかと思っていたよミス・ヴァリエール!」 ルイズたちが着くなり、ギーシュは奇抜なポーズをとりながら挑発を始めた。 コォォォォォォという奇妙な呼吸音も聞こえる。一瞬体が光ったような気もするが目の錯覚だろう。 ギーシュがさらに人体の構造を無視したポージングを決めると、観客から歓声があがった。 「ギーシュ!あなたが侮辱した全員に謝りなさい!まず私に!そうしたら許してあげてもいいわ!」 ルイズも負けじとポージングを決めながら強気の姿勢で答える。 以前図書館で見た学術書に乗っていた「究極生物」の登場シーンの挿絵と同じポーズだ。これには観客から失笑があがった。 「許してあげる?それはこっちのセリフさ!君と、その隣の君の使い魔が僕にした侮辱を謝罪するがいい!」 そう言うとギーシュは一本のバラの花をポケットから取り出した。 「ワルキューレ!」 ギーシュが派手な仕草でバラの花を振りかざすと7体のゴーレムがギーシュの前に横一列に現れた。 「本来貴族の決闘は1対1でするものだが、僕は君の使い魔にも用がある。分けるのは面倒だ。いっぺんに来るがいい。ただし! 僕は『青銅』のギーシュ!従って青銅のゴーレム、ワルキューレ7体がお相手する!8対1になるわけだけど、よもや文句はあるまいね?」 それを聞いたルイズは疑問符を上げる。 ギーシュ+ワルキューレ×7=8は分かる。でもルイズ+ブラック・サバス=2ではないか。 足し算もできないのかこのド低脳がァーッ! と、言おうとしたルイズよりも先にギーシュが口を開いた。 「ああすまない。『ゼロ』のルイズをカウントするのを忘れていたよ。8対2。だったね」 ギーシュはバラの花の香りを嗅ぎながら、ルイズにウィンクした。 いつもならこの挑発にのっているところなのだろうが ギーシュのウィンクに寒気を覚えたルイズは幾分冷静さを取り戻すことができた。 「…………さっさと始めましょ。このままだと日が昇ってくるわ」 「フッ。覚悟は決まったようだね。行けワルキューレ!」 ギーシュのその掛け声に、2体のワルキューレが列を崩さぬまま突進してくる。 ルイズはそれを見ると冷静に、ブラック・サバスに命令を下す。 「サバス。ワルキューレを捕らえなさい!」 広場は相変わらず暗い。行こうと思えばきっとブラック・サバスは、ワルキューレを飛び越えてそのままギーシュを拘束できるはずだ。 実際ルイズはもしあの7体のワルキューレが、全部同時に襲ってきたらそうしようと考えていた。 しかし、あのキザ男はルイズたちを舐めているのだろう。今こっちに向かってきているのは2体 ……まずはこの2体を軽く撃退して驚かしてやろうという魂胆だ。 (ギーシュ!あんたが勝ち誇った時、そのときすでに敗北しているのよ!) ルイズが杖をワルキューレに向けると同時に、自分の隣で微動だにしていなかったブラック・サバスが、水中に潜っていくように地面に消えた。 このときルイズはまだ気づいていない。すでに自分が勝ち誇っていたことを。 消えたブラック・サバスは、ギーシュとルイズの立っている場所の、ちょうど中間地点に突如現れた。 予想外の出現に突進してきていたワルキューレの動きが止まり、観客から驚きの声が上がる。 ブラック・サバスが右手を上げ、ワルキューレを指差した。 観客はもちろん、ギーシュも次にブラック・サバスが何をするのか、思わず固唾を呑んで見守ってしまう。 「チャンスをやろう!」 ブラック・サバスは高らかに宣言した。 その言葉にルイズは思わずがっくりと膝をつき、それ以外の者は何がなんだかという顔で見ている。 「お前にh「いいから!かっこつけてないでさっさと行きなさい!」」 ブラック・サバスがルイズの方を向く。ルイズは腰に手をあて、目で「さっさと行きなさい」と意志を送る。 すると予備動作なくブラック・サバスがワルキューレに突撃していく。 それに反応するように、キレイに並んでいた2体のワルキューレのうち、右側のほうが槍を片手に立ち向かってくる。 両者の距離があっという間に縮む。あと数歩と言うところでワルキューレが槍を前方に構えた。 この勢いではブラック・サバスは自らその槍に突っ込んでいってしまう。 しかし、ブラック・サバスは半歩体を横にそらすだけで、槍の直線的な軌道から外れた。 まるで闘牛士のように、ブラック・サバスの黒いマントがはためき、ワルキューレをひらりとかわす。 「なかなかやるね。でも!」 不敵に笑うギーシュ。実際彼の中ではもうルイズの使い魔をチェックメイトしていた。 2体のワルキューレのうち、動いていなかったほうがいつの間にか距離を詰めている。 そして今度は槍を突くのではなく、なぎ払うために構える。 もう横に逃げても意味を成さない。すでに必殺の間合いだ。 (勝った!第三部完!) ワルキューレが槍を横一線に振りぬく! しかし、その軌道上にやはりブラック・サバスはいなかった。 もう横に逃げるには遅すぎるし、突っ込んできている勢いがあるため後ろには飛べない。 だからブラック・サバスは前転するように頭から突っ込んでいったのだ。 回りから見たら単につまづいて、こけた様にしか見えなかっただろう。 (い、今こけてなかったら、首が飛んでたわよ!) ……ルイズもそう思っていた。 ブラック・サバスはワルキューレの足元で両肘、両膝をつき、四つんばいのポーズになっている。 正直、負けました許してくださいと土下座をしているようにも見える。 だが、ワルキューレは今度こそ止めを刺すために、槍を頭上に掲げる。後はコレを振り下ろすだけだ。 しかし先に動いたのはブラック・サバスだった。 ブラック・サバスは片手でワルキューレの腰布をめくり、もう一方の手をワルキューレの股の間に突っ込んだ。 「つかんだ!」 再びブラック・サバスは高らかに宣言した。 (な、な、な、な、何をやってんのよーー!!エロ犬ーー!) 今までで一番の意味不明の行動に、ルイズが声にならない心の叫びをあげる。 「なにをされてるんでしょうか?」 さっきまで戦いを恐々観戦していたシエスタが、少し顔を赤らめてキュルケに尋ねる。 「なにって…………」 「…………」 キュルケは苦笑するしかない。タバサは無言で見つめている。 回りからはブラック・サバスがワルキューレの股に手を突っ込んで、何かをまさぐっている様にしか見えない。 何をつかんだのかは分からないが、いろいろな考えが皆の頭に浮かぶ。なぜかマリコルヌが鼻血を出している。 これはルイズもまだ知らないことだったのだが、ブラック・サバスは影から魂を引き抜き動きを止める。 ルイズも2回それ体験していたのだが、魂を引き抜かれていたことには、気づくに至っていなかったのだ。 ……とにかくブラック・サバス本人はいたって真面目に、ワルキューレの影から魂を引っ張り出そうとしているのだ。 しかし何度やっても上手くいかない。影を触っているはずなのに、地面にガリガリ爪を立てるばかりだ。 ブラック・サバスも気づいていないことがあったのだ。ワルキューレが魂を持たぬ人形だということに。そして。 「僕のワルキューレに、なにハレンチなことをするだァーーーッ!ゆるさん!!」 ギーシュの怒りの叫びに合わせて、ワルキューレの槍がブラック・サバスの後頭部めがけて振り下ろされた。 「サバス!!!」 ルイズの悲鳴にも似た声をかき消す様に、ドゴォという鈍い音がヴェストリの広場に重く響いた。 To Be Continued 。。。。?
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貴族狙い専門の盗賊、「土くれ」フーケはこの学院に潜入してからの日課である宝物庫のほころび探しを今日もやっている。 強力な固定化がかかっているとはいえ、物理的な衝撃への魔法防御はされてないまでは判明したものの、壁の厚さ自体が数メイルもあるせいでなかなか難しい。 破壊するだけなら破城槌を練成して、得意のゴーレムに振り回させればいいのだが、中のお宝が無事ではすまない可能性が高いためなるべくやりたくない。 先週の決闘騒ぎで塔の一部が崩れたときは狂喜乱舞したが、 よく確認すると微妙に宝物庫からずれていて結局涙をのんだ。 いい加減潜伏も疲れてきた、何とかしなければ…… そうだ、力の掛け方を変えればどうだろうか。 「ねえ、セッコ。」 「何だ」 「何で昼あれだけ厳重に縛ったデルフリンガーの鞘が外れてるのよ。」 「うるせー娘っ子、あんな縛られたら苦しくて生きていけねえや。」 ああもうウザい! 「情報が得られねーかな、と思って」 「この様子じゃ全く期待できないんだけど。 だってさっきから何聞いても、わからん・覚えてねえ ばっかりじゃない。 固定化がサビる程の年月経過してるくせに記憶喪失とか、本当に使えないわね。」 「覚えてねーもんは仕方ねえだろが!なあ相棒!」 「それ言われたらオレも記憶喪失なんだけどよおー。」 あ゙―そういえばそうだった…… 「まあ若いんだから気にすることないわ。」 「わかった。」 「少しは気にしろよ相棒!」 「少なくともあなたが言うセリフじゃないわよ!」 とりあえず鞘で思い切りぶん殴る。 「プゲッ」 相変わらず叫び声が汚いわね。超硬いし、殴られ屋でもやらせようかしら? 「ひでー ひでーよ!」 本当に使えないわこいつ。 記憶を取り戻す魔法とかないのかしらね、喋らせる薬や魔法はアホほどあるのに。 とりあえずデルフリンガーを鞘にしまう。 セッコが嫌そうな顔をしたので、縛るのは止めといた。わたし優しいわね。 「ルイズ」 「なによ。」 「変な音がするぜぇ」 「何も聞こえないわよ。」 「オメー耳が悪いな」 「あなたが良すぎるのよ。で、どんな音?」 「ドリルが回ってるみてーな感じ。」 「どりるって何よ。」 「壁とか鉄板とか硬い物に穴あけるもの」 「聞いたことないわね。」 「この辺には無いんじゃねーの?多分」 「なんで無いものの音がするのよ。」 ああ、気になるわ 「見に行かない?案内して。」 「わざわざ行くのかよぉ」 「そもそもあなたが変って言ったんじゃない。行くわよ。」 「……わかった。」 所変わって女子寮5階。 「タバサの方から私を呼ぶなんて珍しいわね。」 本当に珍しい。 「ルイズ・ヴァリエールの使い魔を調べて欲しい」 「は?」 「気になる。部屋、隣。」 タバサってばあんなのがいいのかしら? ま、外見以外はタバサと似てなくもないかもしれないけれど。ご飯優先とか。 「応援するわよ。」 「勘違い。」 「あ、能力ってことね。せっかくタバサにも春が来たと思ったのに、残念。」 相変わらず固い子ねぇ。まあそこがいいって人もいるかもね。 「キュルケ。」 突然タバサが私を引っ張る。 「ちょっと、どうしたのよ?」 さらに引っ張られる。 「な、なによあれ……」 窓から見えたその光景は、いろいろと不自然だ。 まず巨大ゴーレムが学園内に居る時点でおかしい。 宝物庫ってあの辺りだったかしら?泥棒? それはまだいい。 そのゴーレムは遠目では微動だにしてないように見える。 いくら巨大ゴーレムとはいえ、あの宝物庫の壁は簡単には破れないはず。 壁を破るならもっと激しく動いているはずだし、 既に首尾が終わっているならあんな目立つ物を残す理由がない。 「変。」 そうね、どう考えてもおかしいわよね。 「どうする?」 「見に行く。」 そう。 いけるとは思った。我ながら素晴らしい思い付きだったわ。 でも……でもねえ…… 「うふふふふふ」 まさかここまで効果抜群なんてねえ……もしかして私って天才? これ、もしかして歴史に残るんじゃないかしらあ? 回転を、力に!一点集中!!! 着実に宝物庫の壁は削れていく。 もう少しで[破壊の杖]に手が届く! 建物から出てきたルイズたちの見たものは。 「な、なによあの巨大なゴーレム」 「やっぱドリルの音だったじゃねーか」 ゴーレムの影に人がいるみてーだな、女か? ルイズに言ったら追いかけかねないし黙っとくかぁ。 「おでれーた……」 左腕を高速回転させながら宝物庫の壁に突っ込んでいる、 身長30メイルはあろうかというゴーレムだった。 タバサとキュルケはシルフィードに乗り、上空からそのゴーレムを観察していた。 「でかいわね」 「フーケ?」 「タバサもそう思う?」 「かなり」 「ところで、あのゴーレム崩れ始めてない?」 「……」 ヤバい、人の気配がしてきたわ、急がないとねえ。 ん、手ごたえが変わった!貫通したかしら? すばやく宝物庫に滑り込み、犯行声明を刻む。 「破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ。」 次に壁を破るときも、あの技を使うことにしよう。 なんか名前でもつけてやろうかしらね? 自分の発想に乾杯。 そんなことを思いつつ、フーケは闇の中へ消えていった。 「と、止めなきゃ!ファイアボール!」 よし、命中! 失敗の爆発だけど。 「「おい」」 「何よ!ファイアボール!」 ああ、外れたわ。 爆発だけど。 「よく見ろ、何もしねーでも崩れてるぜぇー」 「え?」 「え、え、ええ!」 ゴーレムが こっちに向かってくる。 いや、こっち側に向かって崩れてくる…… 「きゃああああ」 ドビチャャアアアア 「うおおおわあ、っとと」 「危なかったなー相棒。」 「うおう」 「なあ、相棒、相棒の主人はどこ行った?」 「おあ」 「ちょっと……早く助けなさいよ……」 先走って突撃したルイズは、崩れてきたゴーレムの土をもろに被って首まで埋まっていた。 「無様ね、ルイズ。」 「きゅいきゅい!」 「……」 「なんであなた達がここにいるのよ。 私を助けにきたんなら早く掘り出してちょうだい。」 「通りがかっただけよ。」 「誰でもいいから助けなさいよ!セッコもボーっと見てないで!」 「アレ……」 セッコが宝物庫の方を指差している。 人間は首を180度回せないのよ、見えないわ。死ね。 「あの宝物庫の壁があんなになるなんて、何をしたの?」 「最低でもトライアングル。」 「いいから早く助けてよ!」 何とか掘り出してもらって宝物庫を見る。 壁が、円形にくりぬかれていた。 翌朝。 トリステイン魔法学院では、昨夜からの蜂の巣をつついた騒ぎが続いていた。 何せ、秘法の破壊の杖が、ゴーレムで壁をぶち破るなどという無茶な方法で破られたのである。 宝物庫には、学院中の教師が集まって口々に好き勝手なことを言っている。 「土くれのフーケ!貴族の財宝を荒らしまくっているとか! 学院にまで手を出すとは、なんと不遜な!」 「衛兵は一体何をしていたんだね?」 「いや当直は誰だ!」 「寝てたわ!ああ寝てたわよ!でもあんたも一昨日当直サボって 酒かっくらってたじゃない!人の事言えるの!」 「あまりわめき散らすでないぞ。ハッキリ言って油断してた全員が悪いわ。 わしも含めてのう。」 学院長老オスマンの登場により、ようやく静寂が訪れた。 「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」 オスマン氏が尋ねる。 「この3人です」 コルベールがさっと進み出て、自分の後ろに控えていた3人を指差した。 ルイズにキュルケにタバサの3人である。 デルフリンガーとそれを持ったセッコもそばにいたが、 というか最初に異常に気づいたのはセッコなのだが…… やはり「使い魔」は人として数えられないらしい。 「ふむ……君たちか。」 オスマン氏はふと興味深そうにセッコを見つめた。 なんだぁ?このジジイホモの気まであんのか? 口には出さないことにして、少し睨みつけておく。 オスマン氏が視線を外し、再び口を開く。 「詳しく説明したまえ。」 ルイズが進み出て見たままを述べた。 「あの、大きなゴーレムが壁に穴を開けていたんです。 近づいてみたときには既にモノは盗まれた後みたいで、 ゴーレムは崩れ始めていました。」 後ろで2人と1匹?と1本がうなずく。 「黒い服を着た人影をチクリとだけ見たぜ。」 セッコが補足した。 「ふむ……」 オスマン氏がヒゲをねじって遊んでいる。 「後を追おうにも、手がかりナシかのう……」 それからオスマン氏は、気づいたようにコルベールに尋ねた。 「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」 「それがその……朝から姿が見えませんで。」 「この非常時に、どこに行ったのじゃ。」 「どこでしょう?」 そんな風に噂をしていると、ちょうどミス・ロングビルが現れ、後ろから声をかけてきた。 「朝ここに来る前、フーケについて調べろと私に言ったのはオールド・オスマンじゃありませんか。今まで聞き込みしてたんですよ!」 コルベールがかわいそうな目でオスマン氏をチラ見し、そして視線をそらした。 「あ、ああ、そういえばそうじゃったの。それで首尾はどうじゃね?」 「はい、フーケの居所がほぼ分かりました。」 「な、なんですと!」 コルベールが、素っ頓狂な声を上げた。 「誰に聞いたんじゃね?ミス・ロングビル。」 「はい、近在の農民に聞き込んだところ、 近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。 おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと。」 オスマン氏は、目を鋭くして、ミス・ロングビルに尋ねた。 「そこは近いのかね?」 「はい、徒歩で半日、馬で4時間といったところでしょうか。」 「すぐに王室に報告しましょう!山狩りです!」 コルベールが叫んだ。 オスマン氏は首をひねると目をむいて怒鳴った。さっきまでとはえらい違いだ。 「ばかもの!王室なんぞに知らせていたらその間に逃げられるわ! その上……宝物庫が破られたなど、魔法学院の立場が更に悪くなる、 冗談ではない!当然我らで解決する!」 ミス・ロングビルは微笑んだ。まるでこの答えを待っていたかのように。 「では、捜索隊を編成する。我と思う物は、杖を上げよ。」 「なあー、ルイズよお、何でわざわざ志願したんだあ?」 ミス・ロングビルが引く馬車の中で、セッコはルイズに訪ねた。 タバサとキュルケも首を縦に振り、デルフリンガーがカタカタと揺れる。 「だって、誰も挙げなかったじゃない。」 「確かに学校の先生なんて信用できねえけどよおー」 デルフリンガーが横から口を挟んだ。 「とりあえず娘っ子はあの二人に礼を言うべきだと思うぜ。」 「うるさいわね剣の癖に!あとせめて名前で呼びなさいよ! タバサはともかく、ツェルプストーに礼なんて……っ!」 「オレにはスゲー仲よさそうに見えるけどなあ。」 「んだ」 デルフリンガーがセッコに頷く。 (なーデルフリンガー) (何だ相棒。) (あの人影は確かに女だと思ったんだが、[フーケ]って男なのかぁ?) (俺様って目はあまりよくねーんだよ。) (使えねーなあオメー) (おめーこそ剣に視覚を期待すんじゃねーよ馬鹿野郎。) (ねえ、タバサ、あんたもなんで志願したのよ。) (気になる) (ルイズが?そもそもタバサとあいつが知り合いだったことに驚いたけど。) (違う) (ああ、大体分かったわ。あんまり危ないことしちゃダメよ。) タバサとキュルケがこそこそ話している。 なんだかわたしだけ仲間外れみたいじゃない。まったく。 そもそもあの状況で誰も志願しない先生達ってのはどうよ。 ああもう。着くまで寝とこうかしら。 所変わって学院長室。 「オールド・オスマン?」 コルベールが尋ねる。 「彼女達を行かせてよかったのですか?」 「仕方ないじゃろう。他に誰もおらんかったんじゃし。 ま、生徒とはいえミス・タバサとミス・ツェルプストーはトライアングルじゃし、急襲すれば大丈夫じゃろ。 それに、あの使い魔の印が本物かどうかも確かめたいんじゃ。 もし、[ガンダールヴ]そのものなら単体でもフーケごときに遅れを取ることはあるまいよ。」 コルベールの顔は浮かない。 「まあ、そうですが……」 「わしは学院を離れられんし、コルベール君が戦いたくないというのではなあ」 「ううむ……しかし……」 「何か気になることでもあるのかね。」 「あの宝物庫の壁ですよ。フーケはラインかトライアングルという説が一般的ですが……あの穴はどうやってあけたんでしょう?」 宝物庫の壁にはスクウェアの「固定化」が何重にもかかっている。 ゴーレムでぶん殴るにしても、あんな綺麗な穴になるわけがない。 「いくらなんでもスクウェアってことはないと思うんじゃが。」 「いや、それはそうなんですが。」 これ以上オスマン氏に愚痴を言っても始まるまい。 コルベールは学院長室を後にした。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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馬に乗ること3時間、ルイズとギアッチョはトリステインの城下町に到着した。ここ ハルケギニアに召喚されてから初めて見る学院外の景色だったが、ギアッチョは 今それどころではなかった。生まれて初めて乗馬を経験した彼は腰が痛くて仕方が なかったのだ。 「そっちの世界に馬はいないの?」 ルイズが不思議そうに尋ねる。 「いねーこたねーが・・・都市部で馬を乗り物にしてたのは遥か昔の話だ」 ギアッチョが腰を揉みほぐしながら答えるが、ルイズはますます不思議な顔を するだけだった。 「まぁ覚えてりゃあそのうち話してやる それよりよォォ~~ 剣ってなどこに 売ってんだ?」 「ちょっと待って・・・ええと こっちだわ」 ルイズが地図を片手に先導し、ようやく周囲に眼を向ける余裕が出てきたギアッチョは その後ろを観光気分でついて行く。何しろ見れば見るほどメルヘンやファンタジー以外の 何物でもない世界である。幅の狭い石敷きの道や路傍で物を声を張り上げて売る商人達、そして彼らの服装などはまるで中世にワープしたかのようだ。しかし中世欧州と似て 非なるその建築様式が、ここがヨーロッパではないことを物語っていた。 「魔法といい使い魔といい、メローネあたりは大喜びしそうだな」などと考えたところで、 ギアッチョは自分が既にこの世界に馴染んでしまっていることに気付いた。 リゾットはどうしているのだろう。見事ボスを倒し、自分達の仇を取ってくれたのだろうか。 それとも――考えたくないことだが、先に散った仲間達の元へ行ってしまったのだろうか。 このハルケギニアと同じように時間が流れているのならば、きっともうどちらかの結果が 出ているだろう。 ホルマジオからギアッチョに至る犠牲で、彼らが得る事の出来たボスの情報はほぼ 皆無だった。いくらリゾットでも、そんな状態でボスを見つけ出して殺せるものだろうか。 相当分の悪い賭けであることを、ギアッチョは認めざるを得なかった。 ――どの道・・・ ギアッチョは考える。どの道、もう結果は出ているのだ。自分はそれを知らされていない だけ・・・。 「クソッ!!」 眼に映るものを手当たり次第ブチ壊してやりたい気分だった。当面はイタリアに戻る 方法が見つからない以上、こんなことは考えるべきではなかったのだろう。だがもう遅い。 一度考えてしまえば、その思考を抹消することなどなかなか出来はしない。特に―― 激情に火が点いてしまった場合は。 ――結末も知らされないままによォォーーー・・・ どうしてオレだけがこんな異世界で のうのうと生き長らえているってんだッ!ああ!?どうしてだ!!どうしてオレは生きて いる!?手を伸ばすことも叶わねぇ、行く末を見届けることすら出来やしねえッ!! 何故オレがッ!!ええッ!?どうしてオレだけがッ!!何の為に!!何の意味が あってオレは惨めに生きている!?誰か答えろよッ!!ええオイッ!! 一体何に怒りをぶつければいいのか、それすらも解らないまま――、ギアッチョは 溢れ出しそうな怒りを必死に押しとどめていた。 「・・・ギアッチョ ・・・・・・どうしたの?」 その声にハッと我を取り戻したギアッチョが顔を上げると、ルイズが僅かな戸惑いをその 顔に浮かべて自分を見ていた。 「・・・・・・なんでもねぇ」 思わずルイズに当たりそうになったが、彼女とて意図して自分を呼び出したわけでは ない。数秒の沈黙の後――ギアッチョは何とかそれだけ言葉を絞り出した。 いつもと様子が違うギアッチョに、ルイズは当惑していた。ギアッチョを召喚してまだ 数日だが、この男がキレた所はもう嫌というほど眼にしていた。そしてその全く 嬉しくない経験から理解していたことだが、ギアッチョはブチキレる時にTPOを わきまえることはない。食堂だろうが教室だろうが、キレると思ったらその時スデに 行動は終わっているのがギアッチョなのである。シエスタから聞くところによると、 既に厨房でも一度爆発したらしい。傍若無人を地で行く男であった。 そのギアッチョが怒りをこらえている。ルイズでなくても戸惑いは当然だろう。 レンズの奥に隠れてギアッチョの表情は判らなかったが、ルイズには彼が無言の うちに発している悲壮な怒りが痛々しいほどに伝わってきた。 ――・・・ギアッチョ 私のただ一人の使い魔 ただ一人の味方・・・ ルイズはギアッチョの力になってやりたかった。圧勝とは言え体を張って自分を 助けてくれたギアッチョに、せめて心で報いたかった。しかしルイズの心の盾は 堅固不壊を極めている。自分の為に本気で怒ってくれたギアッチョに、ルイズは ただ一言の礼を言うことすら出来なかった。そして今もまた、ルイズの盾は 忠実に職務を果たしている。ギアッチョに報いたいというルイズの思いは、自らの 盾に阻まれて――彼女の心の内に、ただ虚しく跳ね返った。 こうして、怒りを内に溜め込んでいるギアッチョと自己嫌悪に陥っているルイズは 二人して陰鬱な空気を纏ったまま武器屋へと到着した。 貴族が入店したと見るやドスの効いた声で潔白の主張を始める店主に「客よ」と 告げて、ルイズは剣の物色を始める。 「・・・ギアッチョ、あんたはどれがいいの?」 使用者であるギアッチョの意向無しに話は進まないので、ルイズは意を決して 話しかけた。 「・・・剣なんぞに馴染みはねーんだ どれがいいかと聞かれてもよォォ」 同じ事を考えているであろうギアッチョは、そう答えて適当な剣を手に取る。 「――リゾットの野郎がいりゃあ・・・いいアドバイスをくれただろうな」 刀身に視線を落とすと彼はそう呟いた。 リゾット・・・何度かギアッチョが話した彼のリーダー。怒りや悲しみがないまぜに なった声でその名を呟くギアッチョに、ルイズは何かを言ってやりたくて・・・ だけど言葉すらも浮かんではこなかった。 「帰りな素人さんどもよ!」 ルイズの代わりに静寂を破ったのは、人ではなかった。二人が声の主を 探していると、再び聞えたその声はギアッチョの目の前から発されていた。 「剣なんぞに馴染みはねーだァ?そんな野郎が一人前に剣を担ごうなんざ 100年はえェ!とっとと帰って棒っ切れでも振ってな!」 「・・・何? どこにいるのよ」 ルイズがキョロキョロとあたりを見回していると、ギアッチョがグィッ!と一本の 剣を持ち上げた。 「・・・インテリジェンスソード?」 ルイズは珍しそうに持ち上げられた剣を眺めている。 「は、いかにもそいつは意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ こらデル公!お客様に失礼な口叩いてんじゃあねえ!」 店主の怒声をデル公と呼ばれた剣は軽く受け流す。 「おうおう兄ちゃんよ!トーシロが気安く俺に触ってんじゃあねーぜ!放しな!」 なおも続く魔剣の罵声もどこ吹く風で、ギアッチョは感情をなくした眼で「彼」を じっと見つめている。 「聞いてんのか兄ちゃん!放せっつってんだよ!ナマスにされてーかッ!」 なんという口の悪さだろう。ルイズは呆れて剣を見ている。そしてギアッチョも 感情の伺えない眼でデル公を見ている。 「・・・おい、てめー口が利けねーのかぁ!?黙ってねーで何とか言いな!!」 ギアッチョは見ている。死神のような眼で、喋る魔剣を。 「・・・・・・ちょ、ちょっと何で黙ってんだよ・・・喋ってくれよ頼むから ねぇ」 ギアッチョは不気味に見つめている。彼の寡黙さにビビりだした剣を。 「・・・あのー・・・ 丁度いいストレスの発散相手が出来たって眼に見えるんですが ・・・僕の気のせいでしょーかねぇ・・・アハハハハ・・・」 そして完全に萎縮してしまったインテリジェンスソードを見つめる男の唇が、 初めて動きを見せ―― トリステイン城下ブルドンネ街の裏路地に、デル公の悲鳴が響き渡った。
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ヴェストリの広場に向かうルイズとワムウ。 「勝算はあるのか?」 「ないわ」 「作戦はあるのか?」 「ないわ」 「俺に助けろなどというのか?」 「言わないわ……ああ、なんであんなこと言っちゃったのかしら…あんたに似てきたのかも」 口調は嫌がっているようだが後悔の念はなかった。 「ならば、付き添いは必要ないな」 「あら、何様のつもり?主人に付き添いって私子供じゃないのよ」 「俺から見れば人間なんぞ皆子供だ」 ワムウがフッと笑う 「よく言うわ」 「遅れるなよ」 「あいつが笑ってるところなんて……初めて見たわね。雨でも降るのかしら」 * * * 「はあ?ゼロのルイズが決闘?あの恐ろしい使い魔じゃなくて?」 キュルケがタバサから噂を聞き、首を傾げる。 「変ねえ、あいつは後先考えないことがあるとは忍耐だけはあると思ってたのに。 ま、あのヴィリエじゃもし気に入らなくなったらなにするかわかんないけどね、最近は落ち着いてきたと思ってたけど。あいつ何されたのよ」 「メイドが侮辱された」 たまたま食堂にいなかったキュルケの代わりに事態を見ていたタバサは答える。 「あいつも素っ頓狂な理由で決闘なんかするわねー。確か禁則事項だったわよね?校則は守らないと」 「私たちも人のことは言えない」 「未遂でしょ。校則破りなんてバレなきゃいいのよバレなきゃ」 キュルケは立ち上がって歩き出す。 「どこ行くの?」 「あんた程じゃないけどヴィリエは確か風のラインメイジでしょ?点もないのにどれだけやれるかからかいに行くのよ」 * * * 「なに?あのルイズが決闘だって?本当かい、モンモンラシー」 決闘でのケガでまだ医務室暮らしのギーシュ。 「ええ、本当よ」 「やれやれ、あの使い魔に影響されたのかな?それで、原因と相手は?」 「風のラインメイジのヴィリエよ。原因は私は直接見てないけど、シエスタっていうメイドの平民らしいわ」 「ああ、あの脱いだら凄そうな」 「ギーシュ、そうえいばケティの件問いただしてなかったわね?あと見舞いに来た子達のことも」 モンモンラシーに殺気が宿る。 その気配を感じ取って慌てるギーシュ 「ははは、何言ってるんだモンモンラシー、君の愛のこもった看護のおかげで全治数週間のケガだってのにもう歩けるようになったし、僕もヴェストリの広場を見に行こうかな」 言うが早いか、ギーシュは立ち上がって医務室を出ていった。 「まったく、あの浮気癖の治療法はないのかしら…」 モンモンラシーはため息をついて、医務室を出て行った。 もちろん、行き先はヴェストリの広場。 * * * 「おい、また決闘だってよ」 「誰と誰がだい?またゼロの使い魔かい?」 「その主人とヴィリエだってよ」 「チハとシャーマンくらい差があるな」 「いや、クリリンと魔人ブウくらいだろ」 「いやいや、勇次郎とディーノ男爵くらいだって」 「ちょっと待てお前、地獄の魔術師バカにしやがったな?」 「あんな奴ヘタレじゃねーか、所詮鎮守直廊三人衆だろ」 「黙れ、今その思いをはらしてやる!キレまくってはらしてやる!」 「俺が最強だ!はらしてやる!」 「最高にハイ!って奴だーーッ!」 * * * ヴェストリの広場、決闘開始10分前。 「立ち見席でいい、買うぜ!50ドニエまで出す!」 「金さえ出すなら一番前の席だって引っ張ってきてやる」 「特等席だっ!……500ドニエ以上出せる奴っ……!ケチケチしてると買い損なうぞ!」 席の売買まで行われ、非常に活況を呈している。 この前のワムウとギーシュの決闘での結果が尾を引いているのか、それともルイズがどう戦うか見ものなのか。 「ヴィリエに5スウ賭けるぜ!」 「あ、あれは!1ヶ月分の小遣い全部だ!」 賭けも行われ、さながら祭りのような異様な雰囲気だ。 あまりの騒ぎに校長を含め、教師が駆けつけたが、止めるどころか声すら届かない。 「のう、ミス・ロングビル。ワシ、けっこう娯楽だけは用意しているつもりなんじゃが、近頃の子供はそんなに退屈しておるのかのう……今期の学生は色々と不安じゃ……なんとか仲裁できんかの?」 「ミスタ・オスマンがやらないなら無理でしょう」 「スクウェアクラスが5人居ても仲裁なんて無理ですな」 「やれやれ、こういうときはいつも風を自慢しておるミスター・ギトーに押し付け…任せたいんじゃが、あやつはどこにいるんかの?ミスタ・コルベール」 「えーっと、さっきチラっと見たんですが…」 コルベールがあたりを見回す。 そして、ギトーを見つける。 「最前席に座ってますな」 コルベールはため息をつく。 「なあ、ちょっとあやつを殴ってきていいかの?わしゃもう泣きたくなって来たわい…」 「やれやれ、すごい活況だね、モンモンラシー」 立ち見席で遠巻きに広場を眺めるギーシュとモンモンラシー。 そこに席を探しているキュルケとタバサがスペースを目ざとく見つける。 「……ほんと、どこも空いてないわね…あ、ギーシュの隣が空いてるわね。あそこで妥協しましょう、行くわよタバサ」 「妥協ってなんだねキュルケ、そんなに僕の隣がいやなのかい?」 「あんたの隣なんて座ってたらうるさいのが増えるもの、あんたの女だなんて思われると色々と面倒だしね」 「…僕の名誉を貶すのがそんなに好きかい?」 「あんたの名誉なんてこの前の決闘で急落も急落、整理ポスト行き同然じゃない」 「せめて、そういうことはモンモンラシーの前以外で言ってくれよ…」 決闘後の医務室で五股もバレ、使い魔に決闘で敗れて取り巻きも消え、唯一残ったモンモンラシーの中での評価もガタ落ち。 それでも彼女が残ったのは決闘の原因が彼女の香水であったこともちょっとだけ影響している。 「おいお前らも賭けないか?1口10ドニエだ」 小銭の入った箱と賭け金の額を書いている紙を持った同級生が彼らに尋ねる。 「今の倍率どうなってんのよ」 キュルケが興味を示す。タバサはギャンブルは嫌いではないが、野暮だと思って顔を上げない。 「賭けになんねーよ、今ならルイズに賭ければ140倍だ、どうだい賭けないかい」 彼は肩をすくめる。 ギーシュがポケットの財布を出し、 「そうだな、じゃあルイズに5口かけるよ」 「ほう、ギーシュ、なかなかギャンブラーだな」 「彼女が勝ってくれれば彼女の使い魔に負けた僕も少しは汚名返上できるかもしれないからね。まあお祈りみたいなもんさ」 ギーシュは苦笑する。 「そうねえ…」 キュルケが呟く。 「じゃあこれくらいかしら…5スゥだから…50口ね」 「はいはい、ヴィリエに50口ね」 「待って、わたしの『投票先の選択』の発言がまだすんでないわ」 帳簿に書き込もうとした彼の手が止まる。 「ルルルルルルルルルルル、『ルイズ』だとッ!あんたは一番バカにしてるはずじゃ…」 「140倍なら十分儲かる見込みありよ」 「驚いた、こんだけもらえれば黒字だな、サンクスキュルケ!」 彼は去っていった。 「どういう風の吹き回しだい、キュルケ?」 「言ったとおりよ、殺し合いならともかくルールのある決闘なんだから十に一つくらいはルイズでも勝てるでしょ。 1割で勝てるんだから140倍なら限界まで張らないと……それに、なんとなく『なんか』やりそうなのよね、あの子」 ギーシュはニヤっと笑った。 「君はルイズ以上に素直じゃないな」 「どういう意味よ、燃やすわよ」 キュルケはニコリともせずにギーシュを睨んだ。 「ふーっ、もうすぐ決闘開始か、まあこんなもんだろうな」 帳簿を見直し、一息つく。 「おい、そこの男」 「ヒッ!な、なんですか?」 いきなり後ろから巨漢に話し掛けられ、ビクりとする。 どうみてもメイジではないが、平民からの賭けも募っているため、その件かと思う。 「なんでしょうか?賭けならば一口10ドニエですが」 「賭けをやっているらしいな、この宝石を賭けよう、証明書もある」 大男は宝石と証明書を懐から出してくる。素人でもわかるくらい素晴らしい輝きを誇っている。 「そうですね…それはいくら分ですか?」 「100エキューだと書いてあるな」 冷や汗が彼の頬を走る。 (ひゃひゃひゃ100エキューだって!?馬が何頭帰るんだ!?えーと…2頭、3頭、5頭、7頭…) 「どうした?受けないのか」 「そ、そんな、ヴィリエにそんなに賭けられたら赤字ですよ」 「ヴィリエ?誰だそれは、俺はルイズに賭けると言ってるんだ」 彼の汗が引く (やったァーーッメルヘンだ! ファンタジーだッ!こんな体験できるやつは他にいねーッ!) 「わかりました、ルイズに100000口ですね!」 (でも…万が一…当たっちゃったら…俺破産だな!そんなわけないだろうけどね!ハハハ!) 「「ルイズ・フランソワーズの入場だァーーッ!」」 場内から歓声があがった。