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前ページ次ページ真白なる使い魔 青く澄み渡る高空が魂を高揚させる。若者達はこの大空の下、今日この日に巡り会った己の使い魔と友誼を交わし、この先続くであろうお互いの未来を夢描く。それはまるで、頭上に広がる雲一つ無い大空の様に、どこまでも果てなく続いていくかのような、そんな希望に満ちた出発点だった。 そんな中においてルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという少女だけは、ある種の絶望とでも言うべき表情を浮かべていた。彼女は確かに使い魔の召喚だけは何とか成功している。それは望んだとおりの『気高く凛として高貴な神聖さすら感じさせる美しい容姿』の・・・・・・人間の女の子。そう、人間の女の子だ。 良識において、人間の使い魔など許されよう筈も無い。 「ミスタコルベール。召喚のやり直しを求めます。」 「ダメです。」 当然なルイズの求めを、同行の教師たるコルベールは即座に拒絶する。 「ミスヴァリエール。この春の召喚は神聖な物なのです。この儀式において召喚された使い魔は、呼び出したメイジにとって最も相性の良い存在であると言えます。あなた方は、お互いがお互いを補う何かを持っているという事なのですよ。そして何より、この召喚によって現れた『使い魔』によって属性を固定し、専門課程へと進むワケですから、断固として認められません・・・・が、」 と、そこまで言ったところで、コルベールの表情に険しい物が浮かぶ。 「とはいえ、彼女の場合、契約前に幾つか聞き出しておかなければ、色々と面倒がありそうではありますが。」 そう、ルイズの召喚した少女は、見るからに貴族の令嬢としか思えぬ服装だった。これが只の平民だと言うならば、雇用というごくごく一般的な主従関係という形を取ることや、信頼関係を築く事も出来よう。しかし、相手が貴族(メイジ)であった場合、当人同士の意志だけではどうにもならない問題となってくる。場合によってはその事が原因で戦争などという事態とてありうるのだから。 コルベールとしては、出来うる限りルイズを契約までこぎつかせたかった。普段、魔法がうまくいかず、失敗に次ぐ失敗。学科だけであれば学年でもTOPだというのに、実技がそういう状態のせいで、『ゼロ』などと渾名され、当人はそれを挽回すべく努力の限りを尽くしていると言うことを知っていたから。 もし、これで再度召喚ともなれば、神聖な儀式である以上、この場での続行ではなく、留年という形になる。だが、それはあんまりではないか。あれ程に真面目な生徒など、教師生活を始めて以来の記憶を総動員して尚、せいぜい2人か3人といったところだ。そんな生徒にこれ以上絶望など味逢わせたくなどあろうものか。そう考えるとどんな生き物でも良いから、契約を達成させようと思わずに居られなかったのである。 意を決し、コルベールはルイズの召喚した少女に問いかけた。 「お嬢さん。出会い頭で申し訳ありませんが教えて下さい。あなたはメイジ(貴族)ですか?」 問いかけられたマシロの方はと言えば、メイジが貴族を指す事など知りようもないし、相手がそう言った意味合いでの答えを求めている事など知りようもなかった。故に、単に原義である『魔法使い』という意味で問われたと判断し、精々が突如現れた自分のことが、まるで魔法使いにでも見えたといった処なのであろうと考えるに至る。 「いいえ。違いますよ。ボクは只の人間です。」 誤解を解くためと思い、微笑と共にそう答えたマシロ。だが、その質問の意味を誤解し、その誤解に基づいて導き出された回答は、新たな誤解の元にしかならない。実際、その言葉はコルベールに誤解をもたらす。つまりは彼女は貴族では無いと。 この少女の装いや所作から見るに、彼女は平民ではあるものの、それなりに名の通った富豪の令嬢なのでは無かろうかと予想された。それもあの気品を見るに、貴族などに政略結婚で嫁がせ、メイジの血を自家に引き入れる事を目的として育てられた息女。だとしたら、使い魔とはいえ名門の大貴族であるヴァリエール家の息女であるルイズと契約を結ぶ事は、決して彼女の実家にとって不利益ではなく、むしろ祝福されるべき事柄ではなかろうか。コルベールはその結論に至り、決意を固めた。 「では、ミスヴァリエール。彼女と契約の儀式を。」 「はい。解りました。」 ルイズは一瞬恨めしそうな眼差しをコルベールに向けるも、素直にその言葉に従うことにする。いざ、契約を結ぶべく真正面から見たこの少女は、同性である自分の目から見ても美しく清楚で、一瞬目を奪われた。刹那、紅を差した艶やかな花唇がふと開かれる。 「あ、あの一体・・・・。」 「いいから、 我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 朗々とした詠唱と共に言葉を遮り、少女と軽く口吻を交わすルイズ。キスの経験の無い彼女は心から思う。召喚された使い魔が人間とはいえ、その相手がこの少女だったのは不幸中の幸いであったと。一方のマシロの方は、何がなにやら解らぬうちに、ふと気が付けば、目の前の桜色の髪の少女の、その可憐な唇で口を塞がれ、心臓が早鐘の様になり出していた。 『柔らかい。そしてキスがこんなに気持ちいいなんて、初めてだ……。』 マシロのキスの経験はコレが最初という訳ではない。むしろ平均的な男子と比べるまでもなく多い。それというのも、共に暮らす4人の少女達の仕業なのではあるが、そんな彼女達との口付けより気持ちよく感じられたのだ。それはマシロの身に起こった異変が原因だったのであるが、その事には未だ気付いてはいなかった。ただ瞼を閉じ、うっとりと夢寐するかのように、その余韻に浸っていた。その二人の姿を目の当たりにした、ややふっくらとした体格の小柄な青年と、その友人らしき、やたら装飾の多いシャツを着た美しい顔立ちの金髪の青年が、貌を赤らめて股間を押さえうずくまっていたのだが、その事にマシロ達が気付く事も無く、ただ、マシロはその心地よい感覚に身をゆだねる。 が、次の瞬間一変した。左手の甲に焼け火箸を押しつけた様な痛みが走る。あまりに唐突であった事もあり、その瞳には涙が浮かび、思わず右手を抱えてうずくまった。 「安心して。」 目の前の桜の髪の少女ルイズが、マシロの肩に手を掛ける。 「それは、貴女の体に使い魔の印が刻まれているだけだから、すぐにおさまるわ。 そういえば、出てきたときに、ここは何処か尋ねていたわね。ここはトリステイン王国のトリステイン魔法学院よ。」 「魔法学院?」 「ええ、そう。私達貴族の子弟が魔法を学ぶための学校。」 ルイズの言うとおり、2,3言葉を交わしているウチに痛みは治った。恐る恐る右手の甲を見ると、彼女の言う通り、なにやらマシロの知らない文字で短い文の様な物が描かれているのが解る。呆然とその印を見つめるマシロの手を取り引き起こすと、ルイズが語りかけた。 「私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。使い魔である貴女のご主人様よ。これから長い付き合いになるだろうし、仲良くしましょ。貴女の名前は何て言うの?」 「マシロ。マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム。ボクの事はマシロって呼んでくれると嬉しいな。」 握手して微笑み合う二人。そしてマシロは、ルイズにこう尋ねた。そしてここから騒動の日々が始まる。 「で、ルイズちゃん。使い魔ってどういう事?それにトリステインなんて地名、ボクは知らないけど、エアルのどの辺りなの?」 途端にルイズの表情が険しくなる。 「さっき言ったでしょ、私が貴女のご主人様って。つまりはそういう事よ、貴女は私の下僕な訳解った?。そもそもルイズちゃんってのは無いんじゃない?、ご主人様なんだから、そのまま『ご主人様』もしくは『ルイズ様』と呼ぶのが常識でしょうに。 それとエアルって何よ。聞いたこともないわ。」 プリプリと不機嫌さを隠そうともせずに言い放つルイズ。そうした二人の様子を見て、周りの生徒が『ゼロが使い魔を従えられずに揉めてるぜ』と指さして嘲笑し、それを聞きつけた彼女は、キッとにらみ付けて黙らせていた。そんなルイズの言葉にマシロは、困惑と共に答える。 「い、いや、エアルはこの星の名前でしょ?少なくともボクはトリステインなんて聞いた事無いよ。」 「ハア?トリステインを知らない?貴女一体どこの田舎者なのよ?」 あきれ顔で返すルイズ。マシロはその勢いにやや気圧される。自然、その声はやや弱々しい物となっていた。 「いや、あのぉヴィントブルームの王都ヴィント市なんだけど。」 「ヴィントねえ?。それも聞いたこと無いわ。って、そう言えばヴィントブルームって、貴女の姓と同じじゃなかったかしら?」 興味深そうな表情でルイズが言う。 「うん。ボクはコレでも一応はヴィントブルームの王様、というか女王様って言うべきなのかな。だから、国と同じ名前なんだよ。まあ、女王って言っても半年前に即位したばっかりの半人前の女王様なんだけどね。」 屈託のない表情のマシロと対照的に、ルイズの表情はやや不機嫌な物となり、突如としてマシロの頬を摘み、そのままグイグイと捻りあげる。 「ウソおっしゃい。大体この世界にメイジでもない王族が居るわけ無いでしょ?。 いくら貴女がそんな格好をしているといっても、精々が大富豪の令嬢ってとこでしょ。ウソを吐くにも限度ってモンがあるの。ヴィントブルームなんてもっともらしい名前を出しても騙されないわ、いい加減になさい。私も鬼じゃないから素直に答えれば許してあげるわ。さあ、さっさと本当の事をおっしゃい。」 「い、いひゃい。はなひて」 泣いて懇願するマシロの言葉に、ルイズは捻りあげていた彼女の頬を放し、その手を腰に当てて詰め寄った。マシロは頬をさすって痛みが引くと、居住まいを正し答えた。 「じゃあ、答えるよ。さっき言ったのは全部本当のこと。証拠を出せと言われても困るけど、強いて言えばコレかな?」 「?」 マシロが指さしたのは、自分の頭上。其処には、目映く光り輝くティアラが、光をたたえ存在していた。 「いくら富豪の令嬢だとしても、ティアラを身につけるなんて事は無いんじゃないかな?」 正直ルイズは、マシロ自身に言われるまで、マシロの頭上のティアラの存在には気付いていなかった。それは今ならば解る。彼女の王としての気品に、ティアラも彼女の肉体の一部であるかのように、ごく自然な物と感じられたからだと。 そして、全てが納得謂ったとき、ルイズの貌は真っ青となる。そう、自分が今為した事に。自分は一国の王を召喚し、使い魔として契約を行ってしまったのだ。でも、気付けというのも無茶な話だ。いくら何でもメイジでも無い人間が、貴族どころか王族だなどと解る筈もない。とりあえずだ、自分一人では決められないと、ルイズは判断した。 「ミスタ。ミスタコルベール!。」 次の授業の為に、生徒達に学舎への帰還を促していたコルベールは、何か必死めいたルイズの声に、生徒達への指導を中断して彼女の元へ走り寄る。 「どうかしましたか?ミスヴァリエール。」 「ええ、実は・・・・・・。」 ルイズの事情説明に、コルベールの顔もまた蒼白になる。 当然だ。嫌がるルイズに無理に契約を勧めたのは他ならぬ自分なのであるから。彼女が王族であるかどうかの真偽の証拠は、未だに弱い。だが、これ以上の失礼があってはならないというのも確かだ。もはや、一教師の手に負える事態では無いのであるから、ひとまずは、学院長であるオールドオスマンに引き合わせるべきであろう。しかし、今日オールド・オスマンは公務で学園の外に出ている。 「解りました。ミスヴァリエール。貴方は本日この後の授業は欠席して良いですから、こちらのマシロ嬢に学園を夕方まで案内してから、学院長室までマシロ嬢を連れてきてください。そこで今後の事については話し合うことにしましょう。」 ルイズはハイとだけ答え、悲しそうな面持ちで他の生徒達が教室へと戻っていく姿を見つめていた。マシロはといえば、状況こそ今一つ掴めていなかったものの、そんなルイズの悲しみの原因が自分にあると察し、せめて元気づけたいと思うのだった。 前ページ次ページ真白なる使い魔
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アプロディテエンケーポイス(アプロディテ・エン・ケーポイス) アプロディテの別名。 「庭園の中のアプロディテ」の意。
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召喚~コントラクト・サーヴァント (なんでなんでなんで?なんでなのよ、もうッ!) ――ここは始祖ブリミルに愛された地ハルケギニア。歴史を誇るトリステイン王国の、これ また由緒正しき魔法学院。 その敷地の外れの丘で、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは頭を抱 えていた。 「何これ…?」 「亜人?」 「こんなの初めて見るけど」 「ゼロのルイズ涙目wwwww」 『見てなさい、あんたち全員でも及ばないほど神聖で美しくそして強力な使い魔を呼び出 してみせるわ!』 昨日の大見得が頭の中でリフレインする。サモン・サーヴァントだけは得意だなんて、言 うんじゃなかった。 クラスメートのヒンシュクを買った大爆発の挙句、ルイズの目の前に姿を現したのは、地 面に大の字に横たわる黒ずくめの人影だったのだ。 「こここ、こんなのが神聖で美しくそして強力な…?」 「コーホー」 大きい。身の丈2メイルは優に超える。 体躯では他の亜人種には及ばないが、指先までみなぎる迫力は引けを取らない。 驚くほど精巧で光沢を放つ頭部はどこか人間の髑髏を思わせる禍々しさで、全身を覆う 皮膚は多少の熱量なら跳ね返しそうだ。 生意気にもメイジのような黒マントを羽織っている。 胸部に付属する謎の器官が絶えず光を発しているのが、なんとも言えず不気味だった。 そして全く狂うことのない一定のリズムで、くぐもった呼吸音がやけに大きく響き渡るのも 不快さをつのらせた。 「こ、これは…」 博学で鳴らすミスタ・コルベールも首を傾げていた。 当然だ。どんな文献にもこんな生物の記述はない。 人間なのか亜人なのか、それとも全く未知の生物なのか・・・ ベイダー卿ことアナキン・スカイウォーカーが目を覚ますと、かろうじて記憶のある手術 室とは全く違う風景が広がっていた。 生い茂る草の原と、薄い雲の浮かぶ抜けるような青空。 いつか滞在したナブーの景色にも似ている。 しばらく見ていなかった強い日差しが眩しくて、マスクの光学センサーごしに網膜が焼か れる思いがした。 自分がどんな手術を受けたのかは概ね把握していた。 失った両手足の代わりをなす強力なサイバネの義肢。 溶岩に焼かれて呼吸の機能を喪失した皮膚と循環器系をカバーするべく、肺の代わりに ボンベとマスクが取り付けられていた。 さっきから耳障りな「コーホー」という呼吸音が、実は自分のものであることに気づいたとき、 ベイダーもさすがに泣きたくなった。 フォースの使い手としては、何よりも生身の体をほとんど失ってしまったのが痛い。 フォースの意志を伝える媒介となるミディ・クロリアンの絶対数が激減してしまったからだ。 ジェダイを殲滅した後、皇帝をも倒して銀河を手中に収めるという野望が遠のいてしまっ たことを、自信家のベイダーも認めざるをえなかった。 二人で銀河を支配するはずだったのに。 ――ふたり? ――だれと? 不意に、誰かがこちらをのぞきこんでいるのに気づいた。 桃色の髪に黒マント。白いシャツと短いスカートを身に着けた小柄な少女だった。 とりあえず彼の脅威にはならなさそうだ。 脳裡にかかった靄が急速に晴れていくのを感じた。 サイボーグならではの予備動作のない動きで、ベイダーはすばやく身を起こした。 光学センサーの受像範囲一杯に少女の驚いた顔が広がる。 「パドメはどこだ?」 地の底から響き渡る悪夢の如き声だった。 黒い人影が突如身を起こしたことに驚いたのは、一番そばに立っていたルイズだけでは なかった。 その瞬間、興味津々といった風情で二人の周りを円状に囲んでいた魔法学院の生徒達も 一斉に飛びのいた。 メイジの常として、何人かは咄嗟に魔法の杖さえ構えていた。 青い髪と眼鏡が特徴の雪風のタバサもその一人だった。 「珍しいわね、タバサ。いっつもクールなあんたが反射的な行動するなんて」 隣で感心したように言う親友のキュルケに、タバサは視線さえ送らずに一言応じた。 「危険人物」 「あ、あんた、喋れるの?」 半身を起こした黒ずくめの人影と、上体を傾ける格好のルイズの視線はほぼ同じ高さ だった。 その、全く表情の変化しない落ち窪んだ眼窩に見つめられて困惑しながらも、ルイズは 幾分安心していた。 喋れるということはかなりの高度な知性を具えた生命体だ。極めて稀ながら、そういった 幻獣が存在していることは確認されている。 少なくとも、この中の誰が召喚した使い魔にも引けを取らない希少種には違いない。 いつものように「ゼロのルイズ」と馬鹿にされるのは回避できるかもしれない。 この凶悪な姿は置いておいて、だが。 黒い人影はゆらりと立ち上がり、ルイズを見下ろした。 153サントしかないルイズと2メイルを越える彼とでは、大人と子供以上の差がある。 「パドメはどこだ?いや、まずここはどこだ?コルサントではないな?」 黒い巨人が繰り返した。口らしき部位はあるものの、そこを全く動かさずに発声している。 「ぱ、パドメって誰よ?ていうかそもそもあんた何者?」 圧倒的な存在感を示す人影相手にルイズがかろうじて退かずにいられたのは、貴族として の矜持以上に、サモン・サーヴァントのゲートをくぐってやって来た者は使い魔であり、自分 はそのご主人様であるという意識のおかげだった。 だが、そんなルイズの甘い考えもあっさり打ち砕かれることになる。 「僕の質問に答えた方がいい。僕はシスの暗黒卿だ」 「死す?暗黒卿?…もしかしてあんたの二つ名?あんたメイジなの?」 「僕はダース・ベイダー。皇帝の弟子だ」 「ダース・ベイダーって名前なのね。皇帝って、ゲルマニアの?ほんとにメイジってわけ?」 メイジを使い魔にするだなんて、前代未聞すぎる。でもそれはそれで、途方もなく甘美な 響きを持っていた。人間が使い魔になるなんて見たことも聞いたこともないが、メイジを 使役するメイジ……悪くはない。少なくとも平民が使い魔になるよりずっといい。 ルイズの胸中を知ってかベイダー卿は威圧するかのように腕を組んだ。 「いい加減にした方がいいぞ。僕は皇帝ほど寛大ではない」 「あんたこそ、人間ならそのブサイクなマスクを取りなさいよ。ご主人様に失礼でしょ――」 ルイズがそう言い終るのとほぼ同時に、ベイダー卿の右手が真っ直ぐ前に差し出された。 「は、きゅ…」 うめくルイズ。 二人のやり取りに割って入れず、遠巻きに見守っていた生徒達はその光景に驚愕した。 黒い人影――ダース・ベイダーの右手が前に差し出されたかと思うと、触れられてもいない のにルイズが自分の喉元を押さえ、顔を真っ青にして苦しみ始めたのだ。 さらに、レビテーションの魔法でもかけられたかのようにその両足が地面を離れ、バタバタと 無様に空を蹴る。 「先住魔法だ!」 悲鳴にも近い声が上がった。 何しろベイダー卿は杖すら持っていないのに、手振り一つでルイズをくびり殺そうとしてい るのだ。 ルイズを救出しようと我に帰った何人かの生徒が呪文を唱え始めたところで、ベイダー 卿は右手を下ろした。 その途端喉を締め付ける不可視の力から解放され、柔らかい草地が支えを失ったルイ ズの体を受け止めた。 「ゲホッ!ゲホゲホ、ゲホッ…!」 地面に転がり涙目で咳き込むルイズを、黒いマスクの陰に表情を覆い隠したベイダー卿 が冷ややかに見下ろした。 「言ったはずだ。僕を怒らせない方がいいと。あらためて聞くが、ここはどこだ?」 「トリステイン…魔法……学院…よ」 息も絶え絶えといった様子で、ルイズが答えた。 「魔法?迷信の一種か。ずいぶんと未開の部族のようだな。星系と惑星の名は?」 「何…よ、それ…?」 「自分たちが何という名の星に住んでいるかも知らないのか。では、この土地の名は?」 「トリステイン王国…ハルケギニア…」 質問の意図が掴めず、ルイズは怯えながらベイダー卿が満足しそうな答えを挙げるしか なかった。 どうして自分がこんな辺境の惑星にいるのか、機械化手術完了後に光に包まれた時の あのハイパースペース・ドライブに似た感覚はなんだったのか、いくつも疑問は残ったが、 とりあえずは一刻も早くコルサントの皇帝のもとに帰還し、パドメの無事を確認せねば ならない。 ベイダー卿も彼なりに焦っていた。 「最後に尋ねるとしよう。宇宙港はどこに――」 その瞬間、フォースが警告を発するのをダース・ベイダーは確かに感じた。 だが、それが何に対してであったのか理解する間もなく、その巨体は突然襲ってきた衝撃に 宙を舞っていた。 全身を覆う装甲服は彼の肉体を完璧に保護していたものの、マスクの中に収められた 生身の頭脳は振動に揺れに揺れた。 (これが魔法…だというのか……?) 薄れゆく視界の隅に、自分の身長より長大な杖を構えた小柄な少女の姿が映じた。 「エアハンマー」 タバサが放った空気の塊に吹き飛ばされ、ベイダー卿はあっけなく意識を手放していた。 「ミス・ヴァリエール、最後の最後にとんだ大物を持ってきたもんですなぁ」 緊張の糸が切れ地面にへたり込むルイズの脇に立ち、どこか呑気に聞こえる口調で コルベールは額の汗を拭っていた。 「ほんとよ、ルイズ。タバサがなんとかしてくれなかったら、あんたってばどうなってたことか…。 でもタバサ、なんでもっと強力な呪文で止めを刺さなかったの?」 キュルケが大多数の生徒の疑問を代弁した。 それも当然。ベイダーが先住魔法を使った時、彼らは幼い頃から刻み付けられたエルフの 恐怖を思い出し、命の危険を感じていたのだ。 現に今なお、地面に横たわるベイダーに向かって致命傷となる呪文を唱えようとしている 生徒もいる。 だが、そんなどこか非難の混入した生徒達の視線を真っ向から受け止めて、タバサは涼やかな 声でポツリと漏らした。 「メイジにとって使い魔は一生の問題」 そう、メイジにとって使い魔は生涯のパートナーであり、分身とも言える存在である。 コントラクト・サーヴァントの儀式すら終えていない使い魔を抹殺する権利を、同じメイジの 誰が有すると言うのか。 炎蛇のコルベールもそう考えたからこそ、ギリギリの状況になるまでベイダーに対して 攻撃を加えることを控えていたのである。 「それではミス・ヴァリエール、コントラクト・サーヴァントの儀式を」 「ええッ!これと!?」 ようやく動悸の収まったらしいルイズは、早くも新たな危機に直面することになった。 ルイズはベイダーの胸の上に馬乗りになるような姿勢で、彼の頭部を観察していた。 一体この生物、どこが唇だというのか。 気絶していてなお規則正しい呼吸音は、一応普通の人間で言えば口に当たるべき箇所から 聞こえてきている。 だけど先ほどわずかながら言葉を交わしたとき、その部位が全く動いてさえいなかったことは 確認済みだ。 いや、ちょっと待て。 こいつも人間か亜人の類なのだとしたら、この鉄化面も武装した騎士たちと同じような防具なのかもしれない。 これ、どうにかして外せないのだろうか…? 「ねぇ、ギーシュ」 ルイズは土のドットメイジたる男子学生の方に頭をめぐらせた。 「なんだい?僕のモンモランシー」 「錬金で、剣か何か刃物を…」 「ああ、僕の可憐なモンモランシー。そうだね、君の言うとおりだ。君のロビンは僕の ヴェルダンデに劣らず可愛いね」 「…やっぱいいわ」 会話が成立してさえいなかった。ギーシュは最近付き合い始めた「洪水の」モンモランシー とのおしゃべりに夢中なようだ。 (ま、ギーシュの錬金で作った刃物が、何で出来ているのかよくわからないこいつに歯が 立つとも思えないしね) ルイズはだめもとで、このマスク(?)の口吻部で試してみることにした。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 詠唱が終わり、ルイズはコーホー、コーホー騒がしいベイダーのマスクに唇を近づけた。 前のページへ / 次のページへ
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「さぁ、何してるの?ぼんやりして。」 「あの…」 「男と女がベッドルールで二人きりならすることは決まっているでしょ。」 「でも…」 「脱ぎなさい。それとも脱がして欲しいの?」 有無を言わせない口調でルイスの母は言う 「じ、自分で脱げます」 沙慈は状況に流されるまま、ブレザー、スラックス、シャツと脱いでいき、ブリーフだけの姿になった。 ルイスの母もニットの上着、ブラウス、スラックスを脱ぎ下着だけの姿になっていった。 赤色のブラジャー、赤色のショーツ、ガーターベルトで吊った黒のストッキングという姿に沙慈は思わず生唾を飲み込んだ。 年頃になって下着姿の女性を間近で見たのは、着替え中を偶然見てしまった姉だけであった。 「さあ、いらっしゃい」 ベッドに腰掛け手招きする。 ―僕のベッドなんだけど そう思いながらも、招かれるままそばに寄っていき、彼女の前に立つ。 「ブラジャーを外してちょうだい。」 「は、はい」 沙慈はルイスの母の背後手を回し、ブラジャーのホックを外そうとする。 何度か試したが手が震えているせいもあってなかなか外せずいたずらに焦ってしまう。 「ブラジャーの外し方もわからないの? お姉さんがいらっしゃるんだからブラジャーぐらい見たことあるでしょ?」 「そうですけど…それとこれとは…」 沙慈もこの年頃の少年らしく、姉のブラジャーやショーツをクローゼットから出して観察したことがある。 しかし、自分で身につけてて見ることは思いとどまったので、ブラジャーの外し方までは知るらなかった。 「ほら、こうよ」 ルイスの母は自分の背中に手を回し、ブラジャーのホックを外してしまった。 「もう一回、つけて外してみなさい。」 沙慈は言われるままに、見よう見まねでブラジャーのホックを留めて、外した。 「こんなことでまごつくようじゃ、いざというとき大変ね。」 「がんばります」 「ほら、沙慈君」 ブラジャーの肩ひもはほどけ、カップが落ちるのを腕組みをして防いでいた。 腕からはみ出る乳房があまりにも扇情的で、沙慈は思わず我を忘れてしまった。 いきなりルイスの母を押し倒し、二つの乳房にむさぼりついていった。 「お母さん、お母さん!!」 「ダ、ダメよ沙慈君、落ち着きなさい!情熱的なのは結構ですが乱暴なのはいけませんよ。」 そういわれて沙慈は我に返った。 「ご、ごめんなさい…」 「いいのよ、でも焦らないで。ほら、見てみて。」 ルイスの母が手をどけると、二つの乳房があらわになった。 透き通るように白い肌。手に収まりきらない大きさの乳房。ピンとつきだした淡い褐色の乳首。 年頃になってこんな間近に乳房を見るのは初めてだった。 「いいのよ、沙慈君」 ルイスの母は自らの乳房をつかみ、乳首を沙慈の口の方に向ける。 沙慈は何も考えず本能のまま乳首に吸い付いていった。 「もっと強くしてもいいのよ。やさしく噛んでみて。」 沙慈は言われるままに乳首を甘噛みする。 「あっ!」 ひときわなまめかしい声をルイスの母は上げた。 「左手がお留守よ。」 そういわれて沙慈はもう片方の乳房を左手でまさぐり始めた。 乳房は柔らかくそれでいて弾力がありいくらもんでも飽きない感触だった。 ルイスの母の体からは高級そうな香水のにおいの他に、何か懐かしい甘い香りがした。 「左の乳首も舐めてちょうだい」 沙慈は左の乳首に口を移し、右手で右の乳房をもんだ。 「あぁっ、いいわ!いいわよ!上手よ!」 沙慈の背中に回したルイスの母の手に力が入る。 「次のレッスンよ、沙慈君」 ルイスの母は上半身を起こすと、ゆっくりとじらすようにショーツを脱いでいく。 そして、ガーターベルトにストッキングだけの姿になった。 金色の草むらに覆われた秘部に沙慈の目は吸い寄せられていった。 「見てちょうだい。」 草むらはじっとりと湿っていた。 その間に開く淫らな唇もじっとりと湿っていた。 その奥にぬめぬめと光る肉襞が見えた。 沙慈は植物園で見た食虫植物を思い出した。 「さわってちょうだい。」 食虫植物に吸い寄せられる虫のように、沙慈はルイスの母の肉体に吸い寄せられていった。 初めて間近で見る大人の女性の性器は複雑な形をしていた。 沙慈はぬめぬめとした肉の襞を指でなぞった。 「あっ!」 ルイスの母が声を上げる。 「そうよ、ゆっくりね。」 沙慈は指を襞に沿って先ほどよりも大胆に動かしていく。 「あぁっ、いいわよ!いいわよ!」 ルイスの母は沙慈の指の動きに合わせ身をくねらす。 「沙慈君、まんなかの上の方にかたい部分があるのがわかる?」 「ここですか?」 「あぁっ、そうよ、そこよ。そこがクリトリスよ。」 クリトリスを中心に愛撫をすると、さらにルイスの母の声は高くなる。 「そうよ、上手よ。もう我慢できない、沙慈君、いらっしゃい。」 沙慈にもルイスの母が求めていることがすぐにわかった。 男と女として結ばれること、それが二人の一致した望みだった。 ルイスの母は体を少し起こすと、沙慈の肉棒をやさしく握った。 「初めてなんでしょ。ちゃんと入り口まで案内してあげるわ。 両手を私の肩のところにおいて。 そう、その通り。 次はゆっくり腰を下ろしていって。」 沙慈はルイスの母に覆い被さるような体勢になる。 ルイスの母の手にひかれ、沙慈の亀頭が彼女のぬめった部分に触れる。 「ここよ。ここに入れるの。このままゆっくり腰を進めて。」 沙慈はゆっくりとルイスの母の手に導かれて彼女の中に入っていった。 亀頭が入り口で柔らかい抵抗を受けたが、亀頭が潜り込むと、あとはするりと奥まで入って行った。 「ああっ!お母さん!」 熱くぬめったルイスの母の内部はとろけてしまいそうな甘美な快楽をもたらした。 もう、それだけで射精してしまいそうだった。 「焦らないで。焦らないでいいのよ。」 ルイスの母は沙慈の背中をなでて落ち着かせる。 危うくこのまま暴発してしまうところだった。 「ゆっくり腰を動かしてみて」 言われるまま、本能のまま沙慈は腰を動かしていった。 腰を動かすたびに、二人のつながった部分から湿った淫らな音が鳴る。 「いいわよ、その調子。」 沙慈はぎこちないながらもピストン運動を始めていった。 ルイスの母はストッキングに包まれた足を彼の背中にからめ、 沙慈のピストン運動にあわせ自分からも腰を動かし始めた。 「とっても気持ちいいです…」 「そう、うれしいわ。」 沙慈のピストン運動の速度が上がる。ルイスの母も腰を動かす。 「も、もうでちゃいそうです。」 「いいのよ出しで。私の中にたくさんちょうだい!」 「あっ、出るっ、ああっ…!」 沙慈の肉棒は激しく脈動を始め、ガールフレンドの母の子宮めがけ激しい勢いで精子を吐き出していった。 「ああっ、来てる、来てるわ…ああっ…」 ルイスの母は娘のボーイフレンドの吐き出した精子を胎内奥深くで受け止めていた。 何度も何度も脈動するたびに大量の精液を吐き出していった。 すべてを出し切ると、沙慈はルイスの母の体から離れて仰向けに横たわった。 二人とも息を切らし、快感の余韻にひたっていた。 「良かった?」 「とっても良かったです。」 ルイスの母が体を起こし、沙慈の唇に音を立ててキスをする。 そのとき、ドアの方でどさっと、何かが落ちる音がした。 あわてて振り返った沙慈が見たものは、呆然と立ちつくす ガールフレンド、ルイス・ハレヴィの姿だった。 持っていた鞄を落とし、両手を口に当て、目は驚きに見開かれていた。 「ル、ルイス?!ど、どうして!」 沙慈は叫んだ。 ~~~ つづく ~~~
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前ページ次ページ狂蛇の使い魔 第九話 フーケが破滅の箱を盗み去った、その翌日。 学院長室にて、目撃者であるルイズたち三人と教師一同、そして学院長のオスマンらによる臨時会議が行われた。 ルイズたちによる証言の後、フーケの居場所を突き止めたと途中から部屋に入ってきたロングビルの情報を元に、オスマンがフーケ討伐隊の結成を提言。 本来なら、教師たちが率先して名乗りを挙げるべきであった討伐隊。 しかし、相手が強力なメイジであることや事後処理などの責任問題で、誰も杖を上げようとしなかった。 その代わり、今度こそ周りを見返してやろうと燃えるルイズが真っ先に杖を上げた。 ルイズには負けられないとキュルケ、皆が心配とタバサの二人も杖を上げ、結局三人でフーケの討伐に向かうことになったのである。 「あー、ミス・ヴァリエール。君の使い魔を呼んできてはくれんかね。……少々話があるのでな」 会議も終わり、一人また一人と学院長室を出ていく中で、ルイズはオスマンに声をかけられた。 「オールド・オスマン。使い魔をお連れしました」 「……俺に何か用か?」 話がある、と聞かされた浅倉は、ルイズに連れられて学院長室にやってきた。 浅倉の無礼な態度を、ルイズが慌ててたしなめようとする。 「よいのじゃ、ミス・ヴァリエール。……ところで使い魔殿。突然で悪いが、破滅の箱について話があるのじゃ」 オスマンが学院長席で手を組み合わせながら、浅倉に尋ねた。 扉の横の壁に寄りかかり、腕と足を組んだ浅倉がそれに応える。 「破滅の箱……ああ、あのカードデッキのことか。それについては俺も聞きたいことがあったな」 ふむ、とオスマンが考える。 「それなら、わしの質問が終わった後で答えることにしよう。まずはあの箱について知ってることを教えてくれんか?」 「それならこいつに聞け。知ってることは全部こいつに話した」 浅倉がルイズの方を向き、再びオスマンに目線を戻す。 「えっ、私!?」 いきなり話をするようにと言われ反論しようとしたルイズであったが、逆らえそうにもないと分かると渋々と口を開いた。 ルイズが一通り話し終えると、オスマンは椅子にゆっくりともたれ掛かった。 「なるほどのう……。にわかには信じがたいが、信じる他なさそうじゃ」 ギーシュと浅倉の決闘の様子を思い出しながら、オスマンが言った。 「今度はこっちの質問に答えてもらおうか。……お前、どこであれを手に入れた?」 浅倉の質問に、オスマンは白髭を撫でながら答える。 「そうじゃのう。あれは数年前のことじゃ……」 オスマンが言うには、数年前、とある村に見慣れない格好をした男が倒れていたという。 男は既に死亡しており、村人らによって葬られた後、彼の持ち物は村人たちの手に渡ったらしい。 その内の一つが破滅の箱である。 見た目はただの奇妙な箱だが、この箱を手にした者は、どのような呪いなのかはわからないが、幾日かの間に忽然と姿を消してしまうというのである。 当初、男の持ち物を所持していた村人も消えてしまったという。 そのため、気味悪がった村人たちによって売り払われ、破滅の箱という名で取り引きされるようになったのである。 それ以来、秘宝という価値に惹かれた者、呪いの正体を暴こうとする者、興味半分に手を出す者などが後を絶たず、犠牲者は増えるばかりであった。 オスマンもまた、呪いの原因を突き止めようとした者の一人であった。 最近になって闇市場に出回っているのを見つけたオスマンは、ようやくこの呪われた秘宝を手にすることができたというわけである。 「なるほどな。……そうだ、一ついいか?」 浅倉がオスマンに向かって尋ねた。 「なにかの?」 「あのデッキを俺によこせ。呪いでないことがわかったなら、もう必要ないだろう?」 そう言って、浅倉が口元に笑みを浮かべた。 「そうじゃのう……。フーケを捕らえられたなら、箱は好きにするがよかろう。扱いを知っている者なら、これ以上犠牲者を出さずに済むじゃろうて」 オスマンが軽く頷いた。 「話が分かる。で、用事というのはこれだけか?」 言いながら扉に向けて歩き出す浅倉を見て、オスマンが思い出したように言った。 「そうじゃ、もう一つ。君が毎日やっている決闘の相手に、もう少し休みを与えてやってはくれんか。このままだと死んでしまうからのう」 「……気が向いたらな」 オスマンに背中を向けると、浅倉は扉を開けて部屋を出ていった。 ルイズはオスマンに向かって一礼すると、慌ててその後を追うのであった。 会議から一時間ほど後に学院を発った、ルイズたちと浅倉。 彼らはロングビルの案内のもと、フーケが逃げてきたという森へとやってきた。 「情報によると、あの小屋に『土くれ』のフーケが潜伏しているとのことです」 ロングビルが、少し離れたところにある古びた小屋を指さしながら言った。 草木に身を隠しながら、ルイズたちは作戦を練り始める。 「誰かが囮になって中のフーケを誘きだし、出てきたところを皆の魔法で叩く! これでいけるはずよ」 「でも、ルイズ。肝心の囮役はどうするのよ。もちろん言い出しっぺのあんたが……」 「わたしが行く」 挑発しようとするキュルケを遮り、タバサが名乗り出た。 「ケンカはだめ。作戦は調和が大事」 作戦会議が一段落したところで、ロングビルが「辺りの様子を見てきます」と言い残し、森の奥へと消えていった。 ルイズたちは作戦の準備に取りかかる。 「ところで、アサクラを見ないんだけど……どこにいったの?」 キュルケがルイズに尋ねた。 「そういえば姿が見えないわね。どこにいって……あっ! アサクラ!!」 いつの間にか小屋の前に立っている浅倉に向けて、ルイズが叫ぶ。 と同時に、小屋の扉が勢いよく蹴破られた。 「無人か……」 デルフリンガーを背負った浅倉が呟いた。 誰かがいたような後が見られるものの、最近使われていなかったのか、部屋の至るところが埃をかぶっている。 テーブルに目を向けると、盗まれたはずのカードデッキが置いてあった。 浅倉がデッキを手にとると、デルフリンガーがカチャカチャと喋りだした。 「相棒、どうやらこの状況は……」 「そのようだな」 浅倉が小屋を飛び出したのと、小屋の天井が吹き飛んだのはほぼ同時であった。 突如目の前に現れたゴーレムは、フーケがいるはずの小屋を破壊すると、ルイズたちがいる方向に向けて歩き出した。 キュルケとタバサが魔法で応戦するも全く歯がたたず、動きを止めることができないでいた。 浅倉は懐からルイズに借りている手鏡を取り出すと、デルフリンガー、盗まれたデッキとともに地面へ放り投げた。 そして自らの持つ蛇のデッキを鏡に向けると、右手を胸の前で前後させ、叫んだ。 「変身!」 ベルトにデッキを差し込み、ガラスの割れるような音とともに王蛇への変身が完了する。 王蛇はデルフリンガーを拾いあげると、鞘から刀身を抜き、巨大なゴーレムに向かって駆け出した。 「ウオオオオッ!!」 ゴーレムが反応するよりも早くその足元に近づくと、浅倉は土でできた右足をがむしゃらに斬りつけた。 二度、三度と斬りつけるうちに足が切断され、ゴーレムが態勢を崩す。 しかし、すぐにまわりの地面から土を吸収し、元の無傷な状態へと戻ってしまう。 左足や胴体でも結果は同じであった。 ゴーレムの攻撃は単調で避けることは容易いが、これでは一向に勝負がつかない。 「チィッ……イラつかせるっ……!!」 ルイズは焦っていた。 せっかく自分が提案した作戦も決行前にご破算。 魔法は危ないから使うなとキュルケに釘を刺され、現れたゴーレムに逃げ惑うことしかできないでいる。 これでは役立たずのままではないか。 (何か……何かできることはないの!?) そう考えながら、ルイズは辺りを見回す。 ふと、浅倉に貸しっぱなしだった手鏡が目に入った。 そして、その傍らにあるのは…… (破滅の箱……?) フーケに盗まれたはずの秘宝。 手にした者を破滅させるという呪われた品。 しかし、浅倉の言う通りならばこれを使って変身できるはず……。 (これなら私だって……私だって戦える!!) 思い立つやいなや、すぐにデッキを拾い上げると、鏡に向かってその白虎の紋章をかざし、叫んだ。 「変身!!」 「あれは……破滅の箱!?」 タバサが呼び寄せたシルフィードに乗り、上空に避難していたキュルケがルイズの方を見て、叫んだ。 タバサも珍しく驚いた顔つきでルイズの方を見つめている。 ルイズが腰に巻かれたベルトに破滅の箱を差し込むと、ルイズの姿が一瞬にして青と銀の鎧に包まれた。 「近くへ寄って」 タバサはシルフィードに指示を出し、ルイズの元へと急ぐ。 「これが……破滅の箱の力……」 自身の姿が映った手鏡を覗き込むようにして見ながら、ルイズが呟いた。 その姿は、胸に青と銀の、肩に鋭い爪を模した装甲を纏い、顔は虎をイメージさせるような形の面を被っている。 両手を動かすと、チャキチャキと装甲が擦れる音がした。 「ルイズー!」 ルイズが鏡に見入っていると、上からキュルケの声が聞こえてきた。 振り返ると、シルフィードから降りたキュルケとタバサがこちらに向かって走ってきていた。 「ルイズ、この格好は……」 驚きの表情で尋ねるキュルケに、ルイズ―仮面ライダータイガ―は答えた。 「これはアサクラと同じ、『仮面ライダー』よ」 前ページ次ページ狂蛇の使い魔
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リビティーナ リビティナの別名。
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ワルイージ とは、マリオシリーズのキャラクター。 プロフィール 作品別 マリオカートシリーズ マリオパーティシリーズ その他のマリオシリーズ 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ その他の作品 ゲーム以外 元ネタ推測 関連キャラクター 関連商品 余談 コメント プロフィール ワルイージ 他言語 Waluigi (英語) 性別 男 声優 チャールズ・マーティネー デザイン 青木文英 初登場 【マリオテニス64】 紫色の服を着た、やせ細り気味で手足の長い男性。 【ワリオ】とつるんで行動し、【ルイージ】をライバル視している。 一人称は「オレ」。キャラクターはあまり安定していないが薔薇を多用する事がある。 ワリオとの関係は不明。 作品別 マリオカートシリーズ 【マリオカート ダブルダッシュ!!】 『マリオカートシリーズ』初登場。中量級で、スペシャルアイテムは【ボムへい】。モチーフカートとして【ワルイージバギー】が用意されている。 【マリオカートDS】 隠しキャラ。中量級。100ccのレトログランプリ側の全カップを優勝すれば使用できるようになる。 使用カートは【ゴールド・マンティス】【スタンダードWL】【トリッパー】の3台。 【マリオカートWii】 初期ドライバー。重量級になった。細身だが、身長が高いからだろうか。 【マリオカート7】 彼は登場しないが、DS ワルイージピンボールの看板には書かれている。 新キャラクターのために席を外してもらったとのこと。 【マリオカート8】 初期ドライバー。重量級。ステータスは【ドンキーコング】/ロイ/【ロゼッタ】/【リンク】と共有されている。 【マリオカート8 デラックス】 該当する重量の性能の評価が高く、同性能のドンキーコングとロイよりも細身故に視認性が良いため、ネット対戦では圧倒的な使用率を誇っている。【ハナチャンバギー】との組み合わせが鉄板で、ネット上では「ワルハナ」の通称で知られている。 長らく「ワルイージカート」や「ワルハナカート」と皮肉られていたが、Ver.2.3.0でバランス調整が入った事で他のキャラクターとマシンが強化されたため、ロゼッタや【ネコクラシカル】等の他のキャラやマシンもよく見かけるようになり、ワルハナ一強の時代は幕を下ろした。 尚、ステータスは【ハナチャン】とも共有されている。 【マリオカート ツアー】 「ハロウィンツアー(1回目)」から登場。レアリティはレアで、スペシャルスキルは「ダブルボムへい」。 ワルイージ(バスドライバー)「ロンドンツアー」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「トリプルバナナ」。 ワルイージ(ヴァンパイア)「ハロウィンツアー(3回目)」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「ボムへいキャノン」。 【マリオカート アーケードグランプリ2】? 標準性能タイプ。専用アイテムは「ひげミサイル」、「スパナ」、「ウニボー」、「(未確認)」、「(未確認)」。 【マリオカート アーケードグランプリDX】? 隠しドライバー。軽量級で、【ピーチ】や【ヨッシー】と同じく加速寄りの性能になっている。 2023年7月4日のアップデートにて、【クッパJr.】と共に初期ドライバーになった。 マリオパーティシリーズ 【マリオパーティ3】 マリオパーティシリーズ初登場。ストーリーモードでは【クッパ】を蹴りでぶっ飛ばしてしまう。 ストーリーモードでは操作できない。 【マリオパーティ4】 本作からストーリーモードなどでも操作可能になった。ビリキューシールを好む。 【マリオパーティ5】 【マリオパーティ6】 【マリオパーティ7】 【マリオパーティ8】 本作では勝利時にどこからともなく薔薇を差し出す、少しキザな一面が見られる。 【マリオパーティ9】 【マリオパーティ10】? 【スーパーマリオ パーティ】? 【マリオパーティ スーパースターズ】 ホラーランドのとあるイベントで、彼だけノリノリでムーンウォークを披露してくれる。 【マリオパーティDS】 【マリオパーティ アイランドツアー】? 【マリオパーティ スターラッシュ】? 【マリオパーティ100 ミニゲームコレクション】? 【Mario Party-e】? プレイヤーキャラの1人。ミニゲームの「Time Bomb Ticks!」で操作可能。「Waluigi s Reign」にも登場するがそちらでは操作できない。 その他のマリオシリーズ アクション系では2D/3Dを問わず、あまり出番がない。その代わり、スポーツ系にはほぼ出場している。 【スーパーマリオメーカー】? キャラマリオとして登場。横スクロールアクションでは唯一の登場作品。 ラケットを持っている。 【ペーパーマリオRPG】 バッジ「エムブレームL」と「エムブレームW」を両方着ける事でワルイージカラーになれる。 【マリオゴルフ ファミリーツアー】 弾道はふつうの高さのドローで飛距離は209Y(ノーマル)、260Y(スター)。 【マリオゴルフ ワールドツアー】? 飛距離は209Y(ノーマル)、246Y(スター)。 【マリオゴルフ スーパーラッシュ】 オールラウンドタイプ。本作ではスーツを着ている。 【マリオテニス64】 初出。長い手足を活かしたネットプレイが得意。テクニックタイプ。 ダブルスのパートナーは【パタパタ】。 本作の開発時にワリオにはダブルスのパートナーがいなかったので、急遽彼が作られた。 公式HPのワルイージのページによれば、「マリオ・ブラザーズが「スーパー・スター」に上り詰めていく姿(中略)を仰ぎ見て、「今に見ていろ!オレだって!」と、マリオ・ブラザーズに対抗できる力を蓄えるまで、下積みを続けてきたのでした。」との事。 コントローラー未接続で起動した際の警告画面では、64本体を持って横に飛んでいる。どういう状況なんだ…。 【マリオテニスGB】 【マリオテニスGC】 ディフェンスタイプ。スペシャルショットは、攻撃系が「ビールマンショット」、防御系が「スイミングレシーブ」。 防御系スペシャルショットを発動させると、コート内に水が流れ込み、平泳ぎでボールへ向かってから打ち返す。 【マリオテニスアドバンス】 語尾に「ザマス」を付ける謎のキャラクター性を模索していた。 【マリオテニス オープン】 ディフェンスタイプ。 【マリオテニス ウルトラスマッシュ】? 【マリオテニス エース】? 本作では半袖のシャツと短パンを着ている。ディフェンスタイプ。 ストーリーモードでは、ワリオと共にソル王国の遺跡に潜り込んで【エスター】?を盗み出す。 そして案の定操られてしまう。 本作の事件の原因だが特にお咎めなし。 【スーパーマリオスタジアム ミラクルベースボール】 メインキャラクター。テクニックタイプで、だげき4、とうきゅう9、しゅび4、そうるい4。とくいプレイはとうきゅう、とくしゅプレイはレーザービーム、スーパージャンプ。 初期設定がサウスポーの珍しいキャラクター。 【スーパーマリオスタジアム ファミリーベースボール】 メインキャラクター。左投 8、左打 4、守 8、走 5。スペシャル技は「ウソツキボール」と「スネークショット」、特殊アクションは「クイックスロー」。チャージすると何故かパワーが減るが、ミートが上がる。 【スーパーマリオストライカーズ】 【マリオストライカーズ チャージド】 【マリオストライカーズ バトルリーグ】 プレイヤーキャラの1人。ディフェンスタイプで素早く動ける。 【マリオバスケ 3on3】 【MARIO SPORTS MIX】? 【マリオ ソニック AT 北京オリンピック】? テクニックタイプとして登場。対応するライバルはエッグマン。 【マリオ ソニック AT バンクーバーオリンピック】? DS版のアドベンチャーツアーズではワリオと共にボブスレーとスノーボードクロスで勝負してくる。スノーボードクロスでの勝負に勝てば仲間になる。巧みな話術で【ヘイホー】を手玉に取ったりと、今までにない活躍を見せている。 【マリオ ソニック AT リオオリンピック】? 3DS版のエピソードモードでは、ルイージを倒して世界のスーパースターになるために、ルイージを観察するための双眼鏡「ワルイージグラス」を作ったりと、相変わらず努力家な描写が見られる。 なお、ゲームのシステム上、ルイージとワルイージが同じ種目に出場することはない。 【マリオスポーツ スーパースターズ】? テニスはディフェンスタイプ、サッカー・ベースボール・乗馬レースではテクニックタイプである。ちなみにテニスのディフェンスタイプは本作では彼しかいない。 【メイド イン ワリオ ゴージャス】? 「ワリオのamiiboスケッチ」で絵が描かれる対象の一人。今まで一度も出番の欠片すら無かった『ワリオシリーズ』でようやく姿を表した。 【ゲームボーイギャラリー4】? 【ボクシング】?のいまモードで3人目の相手として登場。 ルイージとガチで殴り合いをするかなり珍しい作品。 【Dance Dance Revolution with MARIO】 ストーリーの敵役として登場。こういった扱いは『マリオパーティ3』以来。 優遇されてるかと思いきや、最初のボスとしての登場で、しかも彼との勝負に勝った後は何故か影も形も名前すらも出てこないという。 更にはワリオすら出てくるのにエンディングにも登場しないという訳の分からない不遇っぷりである。 戦闘時に使用される楽曲は、【レッキングクルー】のBGMのアレンジ「月夜にぶちこわせ」。スパイクと似ているイメージがあったのだろうか。 【役満DS】? 【ドクターマリオ ワールド】 ドクターの「ドクターワルイージ」として登場。スカウトで排出される。ワールド6のスペシャルステージではクリア報酬として入手可能。 ステージモード ダストウイルスを10匹消します VSモード レベル スキル効果 1 相手のウイルスを3匹、ダストウイルスに変えます 2 6匹に強化 3 9匹に強化 4 12匹に強化 5 15匹に強化スキルゲージのたまる速度が中アップ! 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ 【大乱闘スマッシュブラザーズDX】 フィギュアとして登場。 【大乱闘スマッシュブラザーズX】 アシストフィギュアとして登場。テニスラケットを片手に足で踏みまくってくる。消える直前には埋まっている相手を蹴り飛ばすか、テニスラケットを素早く振ってふっとばす。 普通のフィギュアやシールもある。シールのアートワークはそれぞれ『スーパーマリオスタジアム ミラクルベースボール』『スーパーマリオストライカーズ』のもの。 【大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U】 アシストフィギュアとして続投。行動パターンは『X』と同じ。倒せるようになった。最大HPは「35」。 両機種にフィギュアもある。 【大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL】 引き続きアシストフィギュアとして続投。最大HPは「30」。 2種類のスピリットもある。アタッカースピリットで、アートワークはそれぞれ『マリオパーティ10』『マリオストライカーズ チャージド』のもの。 その他の作品 いただきストリートDS、いただきストリートWii ランクC。自分の身を省みずに5倍買いを行ってくるので自滅しやすいが、迷惑なキャラ。 ゲーム以外 【スーパーマリオくん】 マリオテニス64編とマリオパーティ3編に登場。マリオテニス64編ではクッパの手下という設定だった。 顎が異常に長く、コマにぶつかっていたりいちいち「長ッ!」とツッコミが書かれている。 【スーパーマリオ(本山版)】 【スーパーマリオランド2 6つの金貨】編で【ワルデイジー】の悪のオーラを浴びたルイージがこの名を名乗っている。 当然ながら当時は今のワルイージは存在していないので偶然の一致である。 【ドクターマリオくん】? 元ネタ推測 悪い+ルイージ ワリオ+ルイージ 『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』の「ボヤッキー」グラフィックリーダーに、ワリオとセットになるようなルイージの悪いヤツっていう指示を出した所、「ヤッターマンのドロンボー一味みたいな感じですか」という返答があり、その凸凹コンビのイメージで制作された。(参照) 関連キャラクター 【ワリオ】 【ルイージ】 関連商品 余談 『マリオテニス64』の開発秘話では、ワルイージの成功を経て次の作品である『マリオテニスGC』にてもう一人の派生キャラクターとして【ワルピーチ】を作ろうと提案した所、宮本茂にどうせドロンジョみたいなんでしょ?と返されて没になったエピソードがある。(参照) コメント 名前 全てのコメントを見る?
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ルイズが変わったのは、春の使い魔召喚の儀式からである。 と言っても、当時のわたしはルイズにさしたる興味を持っていなかったので、これは後になって友人に聞き知ったことだ。 ゼロのルイズが平民の女の子を使い魔にしたという話は、少しの間、話題になった。 リリイという名の、その使い魔は、コウモリのような羽根があったり、犬のような耳を生やしていたりと、どう見ても亜人であったのだが、 その女の子が大した能力がなさそうな人畜無害な見た目をしていたり、羽根があるくせに飛べなかったりということで、ゼロのルイズに亜人が召喚できるはずがないという偏見から、そう噂されたのだ。 魔法の成功率ゼロのルイズが使い魔の召喚に失敗して、その辺りを歩いていた平民の女の子を捕まえてきて仮装させて使い魔扱いしている。 そんな根も葉もない噂を流されて、しかしルイズは何の反応もしなかった。 友人に言わせると、ここからしてありえないということだが、わたしは、それをおかしいと思えるほどルイズの事を知らない。 そして使い魔召喚の儀式の翌日、ルイズの使い魔が決闘をすることになる。 相手は、ドットの土メイジ、青銅のギーシュ。 決闘に至った原因は、リリイのせいでギーシュが二人の女の子と付き合っていたのがバレて、フラれたとのことだが、そこはどうでもいい。 見た目はどうあれ、リリイは亜人である。ならば、その戦い方を見ておいて損はないだろうと、わたしは考えた。 もしも未知の魔法でも使いこなせるようなら、その知識を得ておくことは決して損にはならないのだから。 だけど、期待は裏切られる。 リリイは、普通の平民よりは強かった。 だけど、それだけの話。ギーシュの作り出した一体目の青銅ゴーレムを破壊したまでは良かったが、彼が六体を同時に生み出した後は、数の暴力に負けて敗れさった。 そこで、わたしのルイズとその使い魔に対する興味は消えた。 たから、わたしの使い魔である韻竜のシルフィードに、二人が夜になるとこっそりどこかに出かけていると聞かされても、何も思わなかった。 ルイズも、その使い魔も自分が興味を向けるだけの価値のある存在ではない。 その認識を改めたのは、かなり後になってからなのだけれど、きっかけになったのは、学院に土くれのフーケを名乗る盗賊が現れたときだったのかもしれない。 学院の宝物庫を襲ったフーケの討伐に名乗りを上げた三人の一人がルイズであった。 もっとも、実際に名乗りを上げたのはルイズだけで、残りの二人、キュルケはルイズに対抗してみただけであるし、わたしはそんなキュルケが心配で付き合っただけである。 そして、わたしたち三人とルイズの使い魔のリリイとフーケの情報を持ってきた学院長秘書のミス・ロングビルの五人はフーケのアジトと思われる廃屋に向かい、そこで奪われた宝物を見つけた後、フーケの巨大な土ゴーレムに襲われた。 この時、不可解なことがいくつか起こった。 わたしやキュルケでは、どうにも対抗できなかった土ゴーレムに、自分の身長よりも長大な剣を持ったリリイが立ち向かったのだ。 ギーシュのゴーレムにすら敵わなかったはずのリリイは、フーケの巨大ゴーレムと五分に渡り合っていた。 もちろん、巨体であり、いくらでも再生するゴーレムを剣一本で倒せる道理はない。 だけどゴーレムも、素早く動き剣で容易くゴーレムを切り裂くリリイを倒せず、しばらくの膠着状態の後。土ゴーレムは自然に崩れ落ちた。 その後である。 フーケは逃げ出したらしい、自分とミス・ロングビルは、あと少し辺りを調べてから帰るから、先に宝物を持って帰って欲しい。 そう、ルイズから連絡があったとリリイが言い出したのは。 思い返せば、ルイズとロングビルは、わたしたちが廃屋に入ったときに、周囲を見てくると言って姿をくらませたままである。 その時のわたしは、冷静な判断力を失っていたのだと思う。 メイジとその使い魔は、精神で繋がっている。だから、離れていても連絡をしてくることが出来るのだから、これは不思議なことではない。 その程度にしか思わなかったのだが、思い返してみれば、何故ルイズにフーケが逃げたと判断できたのかを疑問に思うべきだったのだ。 そう、これも後になって分かったのだが、フーケは逃げてなどいなかった。捕まり、拘束されていたのだ。ルイズの手によって。 ルイズの目的が、フーケを捕まえて官憲に引き渡すことではなく、自身の手駒とすることだと知ったのは、ずっと後になってからの話。 わたしたちに遅れて二人が帰ってきたとき、ロングビルは着ていた服が引き裂かれ、肌も露わな姿で憔悴した顔をしていて、その理由が分かったのは、これもかなり後になってからのこと。 ルイズは、フーケに襲われた結果だと言っていたが、それは嘘だろう。ミス・ロングビルの正体がフーケなのだから。 キュルケは何かを察していたが、その時点では教えてくれなかった。 ともあれ、そこでルイズとの縁は切れるのだと思ったのだけれど、そうはならなかった。 それから、何日もの日々が過ぎたある日のことである。 ルイズが、トリステイン魔法衛士隊の隊長と出かけるのを見かけたキュルケが、後を追うと言い出したのだ。 そして、その後わたしたちが魔法学院に帰ることはなくなる。 ルイズたちの目的はアルビオンに向かうことであり、とりあえず港町ラ・ロシェールの前で賊に襲われていた彼女たちに加勢したわたしたちは、不可解なものを見ることになった。 そこにいたのは、ルイズとギーシュと魔法衛視隊隊長でありルイズの婚約者であるワルド子爵。ルイズに個人的に雇われたのだと言って一緒にいた、目が死んでるミス・ロングビル。 そして、わたしたちと同年代の亜人の少女。 ルイズの使い魔と同じ種族に見えるその少女が、リリイ本人であると聞かされたときは、目を疑った。 何をどうすれば、あの小さな女の子が急に成長するというのか。 とはいえ、驚いてばかりもいられない。 夜も遅かったので、ラ・ロシェールに宿泊することにしたわたしたちは、ルイズたちが乗るアルビオン行きの船が出るまでの間、そこに留まることにした。 そして、二つの事件が起こる。 一つは、早朝のリリイとワルドの決闘。 かつてギーシュにすら敗れたリリイは、スクウェアメイジであるワルド子爵とすら互角以上の実力を見せた。 そして、もう一つの事件は夜に起こった。 アルビオンは今、王党派と貴族派に分かれて戦っていると聞く。 その一方。貴族派に雇われた傭兵が宿を襲ったのだ。 その時、ワルド子爵は二手に分かれて、片側が傭兵の足止めを、もう一方はアルビオンに向かう船に乗り込むべきだと主張し、わたしも同意した。 それは正しい判断であったはずである。真相を知っている今では、そうではないとわかるが、あの時点で知りうる情報からでは、それ以上に正しい判断ができるはずがない。 そのはずなのに、ルイズはその主張を退けた。 それが、仲間を置いて自分だけが逃げるのは嫌だなどという感傷であれば、わたしもワルド子爵も黙殺したのだろうが、そうではなかった。 どのみち船が出るのは、翌日である。ならば、それまでに傭兵たちを倒してしまえばいい。 そう言った彼女には、それができる自信があったのだ。 そして、現実に傭兵たちは、わたしたちの前に倒れた。 それは、ほとんどがリリイの仕業であった。 ルイズの防衛をわたしたちに任せて一人で突撃したリリイは、強かった。 それだけではない。いかにスクウェアメイジと五分に戦える実力を持っていても多勢に無勢、無傷で戦えるはずもないのだが、たとえ傷を負っても ルイズの唱える聞いた事もない呪文ですぐに癒されていたのだ。それは、敵対している傭兵たちからすれば不死身の怪物と戦っているような錯覚を覚えさせただろう。 そうして全ての傭兵を打ち倒したわたしたちは、なし崩しに全員でアルビオンに向かうことになった。 何故、わたしとキュルケまで? と気づいたのは、勢いでマリー・ガラント号という船に乗った後。 その後、空賊に扮したアルビオン皇太子の乗った空賊船に襲われたり、それらと戦い皇太子の正体に気づかずに捕らえ拘束してしまったりという珍事はあったが、わたしたちは、無事にアルビオン王城ニューカッスルに到達した。 そこで初めて、わたしとキュルケは、ルイズたちの目的がトリステイン王女がアルビオン皇太子ウェールズに送った手紙の回収なのだと知ったのだが、それもどうでもいいことである。 より重要なのは、実はワルド子爵がアルビオンの貴族派レコン・キスタと通じており、手紙とウェールズの命を奪わんとしていたことであろう。 結論から言ってしまえば、彼は上手くやった。 手紙をルイズから預かり、ルイズと結婚式を挙げたいと訴え、ウェールズを王党派の軍人から引き離し、見事その胸を貫いた。 だが、そこには一つの計算違いがあった。 ワルド子爵は、ルイズには力があると信じていた。そして、その力を自身の欲望のために利用しようと考えていた。 実際、ルイズには力があった。だけど、それはワルド子爵に制御できる程度のものではなかったのだ。 結婚式の時、ルイズは遅れて礼拝堂にやってきた。 リリイとロングビルに持たせた大きな風呂敷包みが、なんだか不安を誘ったが、そこはみんなでスルーした。 そして、いざ始祖ブリミルへの誓いをというときになって、ルイズはワルド子爵に言ったのだ。 「何をそんなに焦っているのだ?」 その言葉で、わたしたちは気づいた。 幼いときからの知り合いで、婚約者であるはずのワルド子爵は、この旅の間、発情期の孔雀のようにルイズに自分をアピールし続けていた。 まるで、この機会を逃せば、もうルイズを手に入れることが出来なくなるのだというように。 ルイズを自身の手駒として手に入れようと考えていたワルド子爵の考えは、当のルイズ本人に看破されており、自身の望みが果たせないことを理解した彼は、正体を明かすと同時にウェールズの命を奪った。 そして、手に入らないのならばとルイズの命を奪わんとしたとき、ルイズが隠していた能力を見せる。 ルイズには、ワルド子爵と互角の戦闘力を持つ使い魔のリリイがいる。普通に考えれば、ワルドに勝ち目はない。 だが、風のスクウェアメイジには、偏在という魔法がある。 それは、自身とまったく同じ能力を持った分身を生み出す魔法。いかにリリイが強くとも本体を含めて五人ものワルド子爵に勝てる道理はない。 そして、リリイ以外の人間。わたし、キュルケ、ギーシュ、ルイズ、ロングビルの五人には、残念ながらワルド子爵に勝てるほどの能力はない。 ゆえに、ルイズの生存は絶望的なはずであった。 この時ルイズが使った魔法は、原理としてはサモンサーヴァントに似たものだったのだと思う。 離れた場所にいる者を召喚する魔法。違うのは、それらは複数であり、すでにルイズと契約を済ませ命令を聞く存在であったこと。 現れたのは、オーク鬼や翼人や吸血鬼といった亜人たち。 毎夜どこかに出かけていたルイズは、それらを倒し配下としていたのだ。ちなみに、前の事件でフーケを捕らえたのも、彼らだったのだという。 平民とは比較にならない強靭な肉体を誇るオーク鬼や、先住の魔法を使う翼人と吸血鬼。 それらは、ただでさえメイジにとってすら脅威となりうる戦闘力を持つのに、ルイズの下で働かされ戦いを繰り返すことで、それぞれがリリイと互角の実力を持っていた。 数で、こちらを蹂躙しようとしたワルド子爵は、より多くの数で敗れ去ったのだ。 だけど、ルイズは裏切り者であるワルド子爵を殺しはしなかった。 それが、婚約者への未練であるのではないかと思ったのは、一瞬のこと。 ルイズは、倒れたワルドの服を剥ぎ、同時にリリイにも脱ぐようにと命じた。 その後、何かを察したキュルケに一時放り出されたわたしは、しばしの時間の後、やけにグッタリした顔の皆と再会する。 全員。ルイズもリリイもキュルケもロングビルもギーシュも、妙に上気した顔をしていて服も乱れていたのだから、さすがにわたしにも何をしていたのか理解できるのだが、なんの目的でそんなことをしていたのかは分からなかった。 キュルケも、ルイズの目的は分かっていなかったはずなのに、躊躇いなく参加するのは如何なものか。 まあ、目的の方も尋ねてみればすぐに答えが返ってきたのだけど。 ルイズには、性魔術という魔法が使えて、それを使うと魔法を使うための精神力を簡単に回復できるのだそうだ。 それで、亜人たちを召喚するのに使った精神力を回復させた理由は、レコン・キスタを倒すことであるとルイズは言った。 無茶だ。と、わたしは思ったが、彼女には勝算があった。 礼拝堂に遅れてやってきたルイズたちが持ってきた荷物。それは、この城中から集めてきた宝物。 呆れたことに、火事場泥棒をしてきたルイズが運んできた物の中に古いオルゴールがあった。 それが、勝利をもたらすのだと言われても、納得できようはずもない。 とはいえ、思ったより早く攻めてきたレコン・キスタを相手に逃げる暇のなかったわたしたちには、ルイズの賭ける以外に他に手立てがなかった。 ルイズがオルゴールから得たものは、虚無の魔法。 その魔法が、どれほどの威力を持つものなのか、わたしたちは知らなかった。多分、ルイズも正確には予想できてなかったに違いない。 だって、一個人の使う魔法が、一撃で万単位の兵士を吹き飛ばすだなんて、誰に予想できるというのだ。 大爆発の魔法の後に敵兵士の襲いかかった亜人の群。それが、レコン・キスタを完膚なきまでに叩きのめし、敵軍の首魁クロムウェルすら虜囚にする。 それで、全てはおしまい。 それが、思い違いであったと、わたしたちはすぐに思い知らされる。 ルイズは、別にアルビオンの王党派を救おうなどとは考えてはいなかった。 ただ単に、自分の集めた戦力とここで手に入れた魔法を試してみたかっただけなのだ。 そして彼女は、もう充分だと判断した。のみならず、クロムウェルから人の心を操るアンドバリの指輪というマジックアイテムすら奪い取った。 その結果、ルイズは彼女が欲するものの足がかりを手に入れたのだ。 この世界全てを蹂躙する力と軍隊を。 そうして初めて、彼女は自身の正体と目的をわたしたちに話す。 ここではない、ある世界での物語。 そこには、魔王と呼ばれる邪悪がいて、そいつは勇者たちによって倒された。 だけど、魔王は自身の魂だけを切り離し、使い魔に持たせ逃れさせた。 それをルイズが召喚してしまった。 魔王の魂を持つ使い魔を。 そして事故が起こる。 使い魔、リリイの持つ魔王の魂がルイズに入り込んでしまったのだ。 これは、お互いにとって不本意な事態であったろう。 ルイズとしては、そんな得体の知れないものに肉体を乗っ取られるなど、望んでいたはずがないし、魔王としても、少女の肉体に憑依するなど納得できようはずがない。 なにしろ、性魔術を使うに当たっては、男性を相手にしなくてはならなくなったのだ。リリイという、代わりを務めてくれるものがいなければ発狂していたかもしれないとは本人の弁である。 なんにしろ、魔王は自身の望みを叶えるために活動を開始する。 リリイを育て、戦力を集め、元の世界に帰る方法を探す。 封印された肉体を取り戻すために。かつて、自身を打ち倒した者たちを責め滅ぼすために。 今、レコン・キスタとアルビオン王党派を、アンドバリの指輪の力で手に入れたルイズは、ハルケギニアの全てを支配するつもりである。 元の世界を攻める戦力を手に入れるという理由ために。 そして、今わたしやキュルケはルイズの下でハルケギニアを征服する軍体の指揮を取っている。 わたしたちとは、わたしとキュルケとギーシュとワルドと、ついでに更に成長したリリイのこと。 ルイズがわたしたちに秘密を話したのは、ようするに仲間になれという宣言であり、それ以外の選択を許さないという通告である。 わたしたちに選択肢は与えられていなかったのだ。 ただし、わたしは条件を出した。 わたしタバサ、いや、シャルロット・エレーヌ・オルレアンの命は、母を守ること。復讐を果たすこと。そのためにある。その二つを叶えてくれるなら、従おうと答えた。 ルイズは、それを了承した。それどころか事情を聞いて、毒を飲まされ正気を手放した母を癒してくれるとまで言った。 その勇気があるならばと、前置きしてだったが。 母は、優しい人だったと記憶している。 その母が、魔王の配下となった自分を見てどう思うのか? そんなことを今の今まで、考えていなかった、むしろ考えないようにしていたわたしは、自分に勇気などないことに気づかされた。 だからといって、ルイズの仲間になるのをやめるという選択肢はない。ルイズはそんなことを許さないし、あのままガリアで働いていても救いなどないと分かりきっていたのだから。 だから、ルイズの力を借りて連れ出した母は、今も気がふれたままであり、執事のペルスランに任せきりになっている。 わたしにとって意外だったのは、キュルケが素直にルイズの仲間になったことである。ギーシュのことはどうでもいい。 元々ルイズと仲がよかったわけでもはなく、ルイズの世界征服にも興味を持たないであろうキュルケが何故と思ったわたしに、彼女は苦笑と共に答えた。 「だってねえ。本当にルイズが魔王に完全に乗っ取られていたら、わたしたちは今生きてないわよ」 キュルケが魔王の過去の話を聞いて最初に感じたのは違和感であったという。 魔王が、自身の話した通りの存在なら、それは人の命を虫ケラの如く扱い、自分たちのことなど、さっさと口封じに始末しているか、どこかで使い捨てにしているだろう。 なのに、それをしなかった理由はどこにあるというのか? それは、魔王に乗っ取られた身の裡に、ルイズ本人の心が残っているからに違いないとキュルケは考えた。 ならば、魔王からルイズに守ってもらっている自分としては、その借りを返さないわけにはいかないではないか。 そんなことを言う親友に、わたしは今更ながらに彼女がルイズを嫌ってなどいなかったのだと、それどころか好きだったのだと気づかされた。 そうでなくて、借りがあるからと、家族のいる祖国にまで戦争を仕掛けようという魔王に手を貸そうなどと誰が考えるものか。 わたしは、わたしと母を取り巻く過酷な運命から救ってくれたルイズに感謝している。 わたしは、キュルケまで、こんな運命に巻き込んだルイズを憎んでいる。 わたしは多分間違っているのだろう。だけど、今更道を違えることは出来ない。 この先、わたしたちにどのような結末が待っているのかは分からない。分からなくても進むしかないのだから。 小ネタで姫狩りダンジョンマイスターからリリイ召喚
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結局、ルイズとその使い魔である双識が、地獄絵図の後始末をさせられることになった。 吹き飛んだゴミを片付け、吹き飛んだ窓を付け、吹き飛んだ机を並べる。 元は椅子だった木屑を片付けている双識の目の前で、ルイズはかろうじて生き残った机を拭いている。 「使い魔なんだから――」という例の言葉が出てくると思っていた双識は面食らっていた。 さしものルイズも自分が引き起こした惨状を双識一人に片付けさせるのは気が引けたのだろうか。 「最悪だわ……」 暗澹たる気分でルイズは呟いた。 使い魔に知られたくなかった事実――魔法が使えないということがばれてしまったのだ。 これで、ルイズの今までの努力は全て水泡に帰したことになる。 ルイズは手際よく掃除をこなしている双識を見る。 まだ正面切って馬鹿にされるなら良い。だが陰で笑われるのは耐えられなかった。 この従順に見える使い魔も、心の中では自分を笑っているのかもしれないと思うと、悔しくなった。 ルイズが俯くと、窓を拭いている双識が唐突に口を開いた。 「――まだ話してなかったかもしれないけれど、私の嫌いな言葉のベスト3は不誠実、無責任、非人情でね」 「……え?」 ルイズの方を向くことはなく、双識は独り言のように続ける。 「初めてこの世界に私が召喚されてきたとき、ルイズちゃんはベスト3を全て満たしていた。 勝手に呼び出して文句を言って、まともな食事もくれず、おまけに人間扱いすらしてくれない。 本来なら『不合格』間違いなしなんだが――私にはどうもきみを『不合格』にする気が起こらなかった。 それが私にはどうにも不思議だったんだが、」 一旦言葉を切って、双識は振り返り、ルイズに真正面から向き合う。 「けど、さっきの爆発を見てわかったよ。ルイズちゃん、きみは――魔法が使えないんだね?」 「……そうよ。もうわかったでしょ、確かに私は『不合格』だわ。魔法が使えないメイジなんて、聞いたことないもの」 痛いところを突かれたルイズは、自嘲ぎみに言う。俯いた顔から諦めと、それ以上の悔しさが伺えた。 「いや、そういうことが言いたいんじゃない。問題は精神だ。魔法が使えるか、使えないか、そんなくだらないこと――」 「くだらないことなんかじゃない!私は貴族なのよ!魔法が使えなくていいなんて、そんな、そんなこと!」 顔を上げて、双識に食って掛かるルイズ。 自分の今までの苦労を、生き様を踏みにじるような双識の発言が、ルイズには許せなかった。 「――きみは魔法を使えるように、貴族として『普通』になれるように、努力を重ねているんだろう?」 憤るルイズに構わず、双識はさっきの混乱で床に落ちたルイズの教科書を拾い、パラパラと捲る。 要所に貼られた付箋、丁寧な字で入れられた注釈、何度も開いたためによれたページ。 それらは紛れも無く、ルイズの努力を表す証拠だった。 「私にとっては『普通』を求めようとするその精神こそ、賞賛に値すべきものなのだよ。 無意識のうちにその精神を感じ取ったから、私はきみを『不合格』にしなかった――今ならそう思える。 それに、今魔法が使えないからってそう悲観することもないさ。 ――きみが前に向かって進む限り、目標は近づきこそすれど、遠ざかることは無いのだからね」 どうやら双識はルイズのことを励ましているらしかった。 双識の柔らかく諭すような口調を聞いていると、不思議とルイズの心は安らいだ。 「……ありがと。あんたに慰められるとは思わなかったわ」 「それじゃ、続きをさっさと終わらせてしまおうか」 元の飄々とした態度に戻った双識と、ルイズは掃除を再開する。 机を拭くルイズの胸中からは、さっきまでの鬱屈とした気分が綺麗に消えていた。 掃除が終わるとルイズと双識は、食堂で遅い昼食を食べた。 教室での出来事のせいか、ルイズの機嫌はそれなりに良かった。 出すぎた説教だったかもしれないと後悔した双識だったが、存外に効果があったようだ。 もっとも、相変わらず机の上での食事は叶わなかったのだが。 ルイズの食事が半分も進まないうちに、双識の食事は終わった。 マナーに従って上品に食べているルイズとは食べる速度も、量も違うので、どうしても時間差が出てきてしまう。 暇になった双識が昨日のように食堂の中をのんびりと眺めていると、食堂の一角で大きな声が上がった。 続いて乾いた高い音が響く。どうやら、何か揉め事が起こっているらしい。 双識は食後の退屈しのぎに覗きに行ってみることにした。 「す、すみません!」 双識の目にまず飛び込んできたのは、メイド服の少女が、同じ年齢ぐらいの少年に平謝りしている光景だった。 謝られている方の少年は薔薇の花をワイングラスでも持つかのように指に挟み、足を組んで悠然と少女を見下ろしている。 本人は格好をつけているつもりなのだろうが、頬に咲いた紅葉のせいで、なんとも間抜けである。 さっきの乾いた音の正体はこれらしい。 いずれにせよ、年若い少女が苛められている光景というものは、双識にとってはあまり気分の良いものではなかった。 「何にせよ、二人の女性の名誉を傷つけたのは事実だ。謝罪したまえ」 「そんな、私は香水を拾っただけなのに……」 「違うね。君の気が利かないから、だ。そもそも平民ごときが――」 「その辺りで勘弁してあげる、というのはどうかね?」 突然会話に割り込んできた部外者に、その金髪の少年は不機嫌そうに少女をなじる口を閉じた。 少女も、意外なところから差し伸べられた救いの手に、驚いたように双識を見ている。 「何だね、君は……ああ、ゼロのルイズが呼び出した平民か。 ふん。礼儀を知らない平民を少々叱っていたところだ。わかったらさっさと行きたまえ」 「ギーシュ!お前が二股かけてたのが悪いんだろ!」と取り巻きから茶々が入る。 どうやらこのギーシュという少年は、二股の責任を少女に転嫁しようとしているらしい。 双識は少女の頭を上げさせると、ギーシュに向き直った。 「大体の事情はわかった。結論から言えば、きみは二股をかけた女性たちに謝ってくるべきだね。 文句を言われ、場合によっては叩かれるかもしれないが――なあに、かえって免疫がつく」 「いきなり出てきて何を言うかと思えば……君は誰に向かって物を言っているのか、わかっているのかね?」 『反論をしたら許さない』と言外に含ませ、ギーシュは双識をねめつける。 ギーシュの見下したような視線を意にも介さず、双識は笑う。笑って、言う。 「勿論だとも。『三人』の女性の名誉を傷つけた少年に対して、私は言っているのだよ」 「ッ!……いいだろう。平民が貴族に逆らうとどうなるか教えてやろう。ヴェストリの広場で待っている」 どうにか感情を表に出すことを抑えたらしいギーシュは、ゆっくりとした足どりで去っていった。 「食事が終わっていなくなったと思えば……あんた、自分が何したかわかってんの!?」 振り向けば、いつの間にか双識の横にルイズが立っていた。顔色が悪い。 そういえばさっきの少女はどこにいったのだろう、と双識が辺りを見るが、既に少女の姿はない。どうやら怯えて逃げてしまったようだ。 「『苛められるメイド少女』は十分に私のストライクゾーンだったんだが――ギーシュくんの不誠実さに我慢ができなくてね」 双識のふざけた動機に、ルイズの顔が更に蒼白になる。 「そんな理由で……?あなた、殺されるわよ!」 「――私を殺せるなら、是非とも殺していただきたいものだね」 ルイズは不思議な気持ちだった。 この使い魔の妙な余裕の裏には、何の根拠もなく、何の打算もないのだろう。 貴族を相手にして勝てる平民なんか、一握りもいないのだ。 ましてや、こんな平民には到底無理な芸当のはず――なのに。 その姿は余りにも悠然としていて―― その姿は余りにも颯爽としていて―― 歩き出した双識の背中に、ルイズは思わず声をかけずにはいられなかった。 「……ヴェストリの広場はそっちじゃないわよ」 (青銅のギーシュ――試験開始) (第五話――了)
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確定設定 オート・コンヴァージョン 毎朝、女性 ルイ になるか男性 レイ になるかランダムで決定される。 ただし、シナリオによっては性別が固定される。 また、再びコンヴァージョンを使うことで任意に変更もできる。 ルイとレイ コンヴァージョンする事で"身体及び性格が"切り替わる。 二重人格的設定で、記憶の共有はしている。 また、お互いに勝手にコンヴァージョンを唱えて中から出てくることも。 戦闘では現レベルでやっとお互いのやりたいことが出来るように。 ルイ→魔法ぶっぱ レイ→デーモンルーラーで投影して魔力撃ぶっぱ ただ、メインでやることであって、お互いに出来ないことはない。 イザベラとのLGBT ルイレイ共々イザベラと愛し合っている(直喩)。 ルイはイザベラに『幸せ』を貰った。 レイは不明。 星の巫女 巫女枠の一人。GMから設定されている。 その設定が投げられる直前の成長でミスティックを取っている() →とりあえず星の巫女の副作用だかなんだかの所為にしておく。 スケッチ ルイの趣味の一つに、人物画・風景画がある。 最初は単に暇つぶしの一環で描いていたのだが、 いつのまにか日常と化してしまった。 ちなみに、レイは描いているのではなく描かされている。 構想設定 ルイとレイ もともと別人同士、という設定。 「サモンナイトエクステーゼ夜明けの翼」の主人公たちの持っていた設定をパロパクったもの。 一つの体に二つの魂が共存し、表に出るほうで身体も変わる。 そのため、ルイの肉体が何処かにあるとかないとか。 が、別にレイは肉体を取り戻したいとも思ってなく、ルイも貸せばいいや程度の認識。 ヴァリアン城にいた理由 最初のきっかけはおそらくイザベラの一言。 ヴァリアンがーヴァリアンがーと五月蝿かったのではなかろうか。 なんやかんやあって単身乗り込んだはいいものの、半幽閉されてしまったオチ。 プレイヤーキャラクター一覧へ Dominateメインメニューへ