約 596,292 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4127.html
前ページ次ページ雇われた使い魔 大きな爆音と共に現れた奇妙な生物。 その生物を召喚したルイズといわれている少女は目をぱちくりさせていた。 後ろでルイズを煽っていたギャラリー達もルイズと同じような反応をしている。 『サモン・サーヴァント』という召喚の儀式でルイズが呼び出した生物は、 狐と人間が合体したような、なんとも奇妙な動物であった。 「……何これ」 ルイズは、自分が召喚した奇妙な動物におそるおそる近寄る。 爆風によって舞い上がった砂埃が晴れ、今はその謎の動物の容姿が手に取るように分かる。 顔は狐。よく見ると尻尾も生えている。しかし体は人間のような骨格をしている。 おまけに服も着ており、彼の顔にはよくわからないアクセサリーのようなものがついていた。 「おいおい、なんだよアレ? 狐じゃあ……ねえよな?」 「ルイズが召喚したから骨格がおかしくなっちまったんじゃねーの?」 「でも服を着ているしな……」 ギャラリーが騒然となる中、ルイズは自分の使い魔となるその動物をじっと見つめていた。 気絶しているのか、はたまた眠っているのか、その動物は目を閉じたまま動かない。 まさか死んでいるのではないだろうかと、ルイズの頭に嫌な予感が過ぎる。 何回、何十回と失敗をし、やっと召喚できた動物なのだ、死んでしまっていたらたまったものではない。 ルイズは生死の確認をするため、恐る恐る手を伸ばし触れてみた。……暖かい。 どうやら死んでいるということはなさそうだった。 ルイズがほっと胸をなでおろし、ため息をついた瞬間、その動物がムクリと起き上がった。 「うう……」 ルイズはビクッと体を反応させ、思わず後ずさりする。 起き上がった動物は、自分の身に何が起こったのか理解出来てない様子で、辺りをキョロキョロと見回している。 「や、やったわ…… 成功よ! ついに成功した! ついにやりました、ミスタ・コルベール!」 ルイズはあまりの嬉しさにカエルのようにピョンピョンと飛び跳ねた。 召喚したのは、人間のような謎の狐だが、自分の使い魔であることには変わりない。 いや、"人間のような謎の狐"なんてそうそう出会えるものではない。 もしかしたら自分は物凄い才能の持ち主なんじゃないかと思えるほどだ。 「なあ……あれって成功なのか?」 「絶対変だよな……あれ」 あれと言われた動物は、辺りをキョロキョロと見回したり、 自分の頬を抓ったり、自分の顔についてる奇妙なアクセサリをいじったりしていた。 そんな奇妙な動物の様子を興味深そうに見ながら、ミスタ・コルベールと呼ばれた男が呟いた。 「ふむ……これは珍しい。人間のような格好をした狐とは実に興味深い……」 「は、はい! きっと凄い使い魔となるに違いありません!」 すっかり興奮しきった様子でルイズが答える。 そんなルイズに、多少気圧されながらも、コルベールは話を続けた。 「ミス・ヴァリエール、興奮するのは後にして、早く契約をしたまえ。次の授業まで時間がないんだ」 「あ……。す、すみません……」 ルイズは狐人間に近づき、スッと顔を近づける。 「悪いけど、ちょっとの間だけじっとしててね」 「……!?」 狐人間はルイズに顔を掴まれ驚いたような表情をしている。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 すっと杖を狐人間の額に置き、そのまま唇を重ねた。 「終わりました」 ルイズにキスをされた狐人間はしばらく放心しているらしく、ピクリとも動かなくなった。 自分の体が妙に熱くなっているのを感じていたが、そんなものが気にならないくらい意識が飛んでいた。 なぜなら、この狐人間は宇宙空間に漂い、強大な敵に向かって戦闘機を走らせているからだ。無論妄想であるが。 「ふむ……珍しいルーンだな」 コルベールは魂が抜けている狐人間の左手の甲を見ながら呟いた。 「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」 コルベールはきびすを返すと、中に浮いた。 他の生徒達も中に浮き、それぞれ教室に向かって飛んでいく。 「ルイズ、お前は歩いて来いよ!」 「『レビテーション』がまともに使えないんだからな!」 「使い魔もまともじゃねえしな!はーっはっは!」 いつもなら罵倒を浴びせてくる生徒達を睨み付けるルイズだが、今回は違った。 なぜなら、自分の目の前に最高の使い魔が現れたからだ。 それに比べたら、幼稚な罵倒や、見る目が無いバカの戯言などまったく気にならなかった。 「ねえ、いつまで硬直してるのよ? あんたは私の使い魔なんだから早く私について来なさい」 そういって狐人間が着ていた服を掴もうとした瞬間だった。 「い、い、い、い、いきなり何をするだあーっ!!」 狐人間が思いっきり叫んだ。 思わず台詞をかんでしまったことを恥じる。 しかし、この狐人間にとってもっと恥じるべきことが先ほど発生した。 台詞をかんだことよりも、そっちの方が遥かに重大であった。 「……へ?」 「"へ?"じゃない! キミには恥じらいというものが無いのか!」 「あんた、喋れるの……?」 「……? 何を言ってるんだ、当たり前じゃないか」 狐人間がしゃべった。いや、狐"人間"なのだからしゃべって当たり前なのかもしれない。 しかし、この狐人間が喋るなんて毛ほども想像していなかったルイズは、驚きと同時に深い喜びを感じた。 「す、すごい! すごいわ! ねぇねぇあんた一体何者なの? 人間じゃないんでしょ? でも、狐でもないんでしょ? 一体何なの? どんな生物なの? 名前は何? どこから来たの? 歳はいくつ? 性別は雄……じゃなくて男……どっちでもいいわ!」 凄い勢いで質問攻めしてくるルイズに、狐人間は後頭部に大きな汗を流す。 そして、とりあえずルイズを落ち着かせることにする。 「ちょ、ちょっと待ってくれ。 オレだって質問したいことは山ほどあるんだ。 とりあえず順番にお互いのことを話していくってことでどうだい?」 狐人間の提案に、ルイズはなるほどといった表情で頷いた。 「そうね、それがいいわ。じゃあまず名前から聞くわ。ていうかあんた名前とかあるの?」 狐人間はむっとした表情で答える。 「あるに決まってるじゃないか、失礼な子だな……。オレの名前はフォックス・マクラウドだ。 雇われ遊撃隊、スターフォックスのリーダーを務めている。よろしくな」 フォックスと名乗った男は握手を求め手を差し出す。 「雇われ遊撃隊……? ナニそれ? ……ま、いいわ。フォックスって呼べばいい?」 「ああ、そう呼んでくれると助かるよ。オレの仲間も皆そう呼んでいるからね」 「そう。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 ルイズが言い終えると、フォックスは頭に?マークを浮かべ、しばし考え込む。 「……それ、キミの名前かい?」 「当たり前でしょ」 「……な、なんだかずいぶんと長い名前だな……えーとルイズ・フランスソース……?」 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!!」 「……? ……そうか、よくわかった! よろしく頼む、ルイズ」 「あんた絶対分かってないでしょ……」 ルイズはあきれ返ったような表情でフォックスを見た。 さっきの最高の使い魔を手に入れたという表情はどこへやら。 ひょっとして自分はとんでもないボンクラを呼び出してしまったのではないかとさえ感じている。 「ところで、先に一つ言っておくことがあるわ」 「……なんだ?」 ルイズはフォックスが差し出している手をはたく。 「な、何をするんだ!」 「あのね、今日から私はあんたのご主人様なの。わかる? 握手するつもりなんだろうけど、ご主人様に軽々しく握手するなんて使い魔としてどうなのって感じでしょ?」 フォックスは自分が何を言われているか理解できてない表情で首を傾げる。 「あー、もう! つまり、あんたは私の部下ってこと! だから私と立場が同じと思っちゃだめなの! わかったら、"ハイッ!"って大きな声で返事をしなさい! これは私の最初の命令よ!」 フォックスは今となっては誰にも通じない通信機に向かって呟いた。 「コイツ何言ってんだ?」 その声はルイズにも聞こえ、ルイズは顔を振るわせながら両手を挙げる。 「あんた私に喧嘩売ってるの!? とにかくあんたは今日から私の使い魔なの! 分かったわね!」 「……言っている意味がさっぱりわからない。スリッピー、この子が言っていることを分析してくれ……」 今やそばにいない仲間に助けを求め、フォックスは頭を抱えた。 しかし、フォックスの苦悩はまだ始まったばかりなのであった。 前ページ次ページ雇われた使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7493.html
前ページルイズと彼女と運命の糸 ※ウルの月 エオローの週 ラーグの曜日 ―― 午前 今日は特別な日だ。 なんと、姫殿下が学院に視察に訪れるというのだ。 気合を入れて盛大にお迎えしなくては。 そうそう、彼女はというと、天の柱を探すため学院の馬を借りて遠出をしている。今夜あたり帰ってくるはずだ。 戻ってこないかもしれないとも思ったが、一度結んだ約束を反故にしたりはしないだろう。 この数週間で大体の人柄は掴んでいる。 どうせ、私の使い魔にするのだから、今の内に自由を満喫しているといいわ。 姫殿下を歓迎しているのに、最初に馬車から降りてきたのは鳥の骨だった。空気を読んでほしい。 ユニコーンに牽かれた純白の馬車から姫殿下が姿を現すと、割れんばかりの歓声が巻き起こった。 勿論、私も声の限り姫殿下を讃え歓迎した。 だが、キュルケとタバサはあまり関心がないようだ。外国からの留学生だから仕方がないか。 キュルケは不遜にも自らの容姿を姫殿下と比べていたので、鼻で笑ってやった。 キュルケと口喧嘩をしていると、視界の端に見覚えのある人物が映った気がした。 ―― 夜 昼間の出来事をボーっと思い出していると、部屋にノックの音が響いた。 聞き覚えのあるノックの音だ。長く間を置いて2回と短く3回、もしかして…… 覗き窓から誰かも確認せずに私は弾かれる様にして扉を開けた。 来訪者は、思った通りの人だった。姫殿下だ。 姫殿下は、昔を懐かしみ私に会いに来たのだという。こんなにも嬉しい事はない。 昔話に花を咲かせていると、不意に姫殿下の顔が陰った。 理由を聞き出してみると、結婚が決まったのだという。相手はゲルマニアの皇帝、アルブレヒト三世だそうだ。 結婚が決まり憂鬱になっているのだと思ったが、そうではないようだ。 詳しくは書けないが、婚姻を妨げるモノがあるらしい。 そして、それを見つけようと血眼になっている奴らがいるそうだ。 名を『レコン・キスタ』、アルビオンの貴族が中心になって出来た組織で、王党派を相手取って主権争いを繰り広げている。 しかも、その婚姻を妨げる物証を持っているのがよりにもよってウェールズ皇太子殿下ときたものだ。 すわ、王家の危機! 今こそ王家への忠義を示す時。 お任せ下さい姫殿下。見事わたくしめが、その生涯を取り払ってみせましょう。 「ただいま、ルイズ。 あれ、お客さん?」 いいタイミングで彼女が帰ってきた。 さあ、使い魔として最初の仕事をしてもらうわよ! ◆ ◇ ◆ ※ウルの月 エオローの週 イングの曜日 ―― 早朝 私たちは学院の裏門にいた。 人目を避けて出発するためだ。 旅の道連れは私と彼女、そしてギーシュだ。 なんでギーシュがいるのかというと、盗み聞きしていたのだコイツは。 それにより、昨晩私の部屋に乱入してきたのである。姫殿下もグラモン元帥の息子だと聞き、同行することを許された。 まあ、盾ぐらいにはなるか。 ギーシュの使い魔はジャイアントモールなのだが、これは最悪だ。 何故最悪かというと、私を押し倒したからだ。 しかも、姫殿下より賜った『水のルビー』にその汚らしい鼻を擦りつけやがった。 本当に最低だ。姫殿下の信頼の証ともいえる『水のルビー』に鼻を擦りつけるなど、許されるはずもない。 なのに、だ。 ギーシュは馬鹿みたいに笑って、一向に止めさせようとはしない。自分の使い魔の躾ぐらいしろ! その不逞モグラに制裁を加えたのは、突如現れたワルドだった。 そして、尻餅をついていた私に、ワルドは優しく手を差し伸べてくれた。凄くドキドキした。 10年近く会っていなかったのに、私の事を未だに婚約者と呼んでくれたのは素直に嬉しかった。 今も昔も、ワルドは私の憧れだったのだから。 ワルドとグリフォンに乗って空を往く。 彼女とギーシュは遥か下だ。栗毛の馬に跨り駆けている。 だが、グリフォンと馬では速度が違いすぎる。グリフォンはまだ余力がありそうだが、彼女たちとは距離が開いてきている。 ワルドは二人を置き去りにしてでも急ぎたいようだったが、ラ・ロシェールまでは馬では二日もかかるのだ。 私の説得で速度を緩めてもらう。 そりゃあ、手紙の回収なんてワルド一人でも余裕だとは思うが、姫殿下から命を受けたのは私たちだ。 出来る限り、置き去りになんてしたくない。 ―― 夕方 街道に沿って半日ほど進むと、渓谷に入った。彼女たちは何度も馬を変え、辛うじてついてきている。 しかし、空を飛ぶグリフォンと山道を進む馬とでは、平坦な街道を進むよりも差が出てしまう。 もうすぐアルビオンとの玄関口である『ラ・ロシェール』だ。 遅れても、上手くすればそこで合流できるかもしれないが、フネが出航するまでに間に合うだろうか? 何か不測の事態が起これば、彼女を置いていってしまう。 そう不安に思った時、事件は起きた。 彼女たち目掛けて崖の上から松明が投げ込まれた。ついで、幾本もの矢が射かけられる。 危ない! と、思った瞬間、矢は小さな竜巻に飲まれて弾かれた。 ワルドだ。ワルドが魔法で助けてくれたのだ。 そして、襲撃者の姿を見ようと崖に視線をやる。 私の目が捉えたのは、赤々と燃え上がる炎と小型の竜巻だった。 ワルドの魔法じゃない。だとすれば誰が……? 襲撃者を蹴散らしたのは、キュルケとタバサだった。 どうやら、出発するところを見られていたらしい。タバサの風竜に乗って追いかけてきたようだ。 お忍びなんだからと告げると、そうならそうと言えと文句を言われた。お忍びなんだから、部外者に言うはずがないでしょ。 あと、タバサはパジャマのまんまだった。きっと、寝ているところを叩き起されたのだろう。 「アンタも大変ね」 「平気。もう慣れた」 どうしてこの二人は友人をやっているのか不思議だ。静と動で正反対なのに。 あと、襲ってきた連中は簀巻きにしておいた。運が良ければ夜を越せる筈だ。 物取りだったらしいが、馬鹿な奴らだ。数を揃えた所で、メイジに敵う筈がないのに。 ―― 夜 「フネは明後日にならないと出航しないらしい」 『女神の杵亭』で寛いでいると、船着き場から戻ってきたワルドにそう告げられた。 何故かと理由を尋ねると、明日の夜は双月が重なる『スヴェルの夜』で、その翌朝にアルビオンが最接近するらしく、船乗りたちは風石の消費を抑えるため、今日明日は絶対に船を出さないのだそうだ。 ワルドはかなり食い下がったようだが、船は出せないと断られたらしい。 その気になれば、魔法衛士隊隊長の権限で無理に出航させることも可能だが、お忍びなので目立つ事は避けたいそうだ。 そういうわけで、予定が狂ってしまった。 本当ならば、明日の朝には出発する筈だったのだが、一日ここで足止めとあいなった。 二人部屋を三つ取り、私と彼女、ワルドとギーシュ、キュルケとタバサという部屋割だ。 ワルドは婚約者だからといって、私と相部屋を望んだが、ギーシュを他の女性陣と一緒にさせるわけにはいかないと言うと 大人しく引き下がってくれた。婚約者とはいえ、まだ学生だしそういう事は早いと思うの。 ◆ ◇ ◆ ※ウルの月 エオローの週 オセルの曜日 ―― 朝 翌朝、何故か彼女とワルドが模擬戦をする事になった。 止めるようワルドに言ったのだけれど、「彼女の実力を知りたい」の一点張りで聞く耳を持ってくれなかった。 婚約者を蒸発させられてはたまらないので、手加減するよう彼女にお願いする。 「分かったわ。能力は使わず剣で勝負するよ」 「よっしゃ! とうとう俺っちの出ば……」 「このレイピアでね」 そういや居たわね、喋るしか能のない駄剣が。 でも、アンタ凄く重いんだから、彼女が振りまわせるわけないでしょ。 結果は、当然ワルドの勝ち。 ウィンドブレイクで吹っ飛ばした彼女に実力不足だとか言っていたが、女の子相手にやり過ぎだと思う。少し幻滅だ。 非難の眼差しを向けると、ワルドはサッと目を逸らす。少し動揺したのか、説教もそこそこに去っていってしまった。 しょうがないので、倒れたままの彼女に手を差し伸ばして立ちあがらせた。 彼女は擦り傷と軽い打撲を負っていたが、やおら淡い光に包まれると、傷一つなくなっていた。 軽い怪我だったとはいえ、あんな一瞬で治るなんて驚きだ。 断然、彼女を使い魔にしたくなった。 ―― 夜 あの後は特に何事もなく、素直に時間は流れ、夜になった。 宿の酒場で夕食を摂りながら歓談に興じる。 そして、彼女がワインを飲んだ事がないという事を知った。 彼女の世界ではどうか知らないが、ワインなんて普通の飲み物だ。 むしろ、綺麗な水の方が下手なワインよりも高級品の場合がある。 試しに一口飲ませてみると、意外といける口だったようで、あっという間にグラスを空けてしまった。 食後も酒場に残って騒いでいる彼女らを残して、私は部屋に戻り夜風に当たっていた。 窓から重なった双月を見上げていると、部屋にワルドが入ってきた。 そして、結婚しようと言われた。 いきなりの言葉に、頭が真っ白になる。他にも色々と言っていたが、憶えていない。 それだけ、その言葉の威力が高かったのだろう。 返事をせずにいると、ワルドは「諦める気はない」と言い残して部屋から出ていった。 婚約者なのだから、いずれはそういう事になるだろうと思っていたが、これは不意打ちだ。 任務の事で精いっぱいだというのに、人生の岐路に立たされてしまった。一体何を考えているのだろう? 熱で上手く働かない頭をフル回転させていると、宿に衝撃が奔った。一体何事!? ● ● ● 一階の酒場に駆け込むと、何故か彼女が仁王立ちをしていた。 酒場を見渡すと、テーブルがひっくり返り酷い有様だ。床には投げ出された料理が散乱している。 入口の扉に至っては、吹き飛ばされて無くなっていた。周囲の壁は黒く焦げている。 そんな惨状なのに、酒場は酷く静まり返っていた。外からは、傭兵みたいなやつらがおっかなびっくり遠巻きにこちらを見ている。 視線を戻すと、彼女の顔は真っ赤だった。目は座っている。 「きしゃまら! いきなりなにをしゅるのよ! このわたしがせいばいしてくれりゅう!」 見事に酔っぱらった声で彼女が叫ぶ。同時に、指からビームを乱射した。 ロクに狙いを定めていないビームだが、それだけで驚異であった。 なにしろ、石壁を簡単に蒸発させるのだから、襲撃者たちは逃げ惑うしかない。 中には果敢に突撃してくるものもあったが、そいつらは炎で焼き払われた。 襲撃者の中にはメイジも混じっていたらしく、三十メイルはあるゴーレムが出現したが、 彼女によってあっという間に穴あきチーズみたいになってしまった。 それにより、襲撃者たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていき、辺りには再び静寂が戻る。 「あはははは! せいぎはかつ!」 彼女は上機嫌に腕を振り上げて勝鬨を上げた。 酔っ払いは勘弁してほしい。今度からは飲みすぎないよう監視していないとね。 それにしても、こんな大掛かりな襲撃があるなんて、私たちを狙う存在がいるという証拠だ。レコン・キスタか? とりあえず一難は払えたが、急いでココから離れないといけない。 私たちはワルドの誘導に従い、船着き場を目指した。 ◆ ◇ ◆ ※ウルの月 エオローの週 ダエグの曜日 ―― 明け方 私たちはフネに乗り込みアルビオンを目指していた。 昨晩の襲撃の後、ワルドの権限を使い商船を徴発しラ・ロシェールを発ったのだった。 船着き場へ向かう途中、仮面を被った白尽くめの男が襲ってきたが、一瞬にして彼女によって蒸発させられた。 アレだけの力を見せられてまだ襲ってくるのは、無謀というかなんというか…… 冥福を祈っておこう。 フネには風石が足りないとのことなので、ワルドがその代わりを務めている。 そして、アルビオンまであと少しというところで空賊船に出くわしてしまった。 アルビオンは今、内乱の所為で治安が乱れに乱れている。なので、こういう無法な連中が野放しになっているのだ。 私は断固抗戦を主張したが、あえなく却下された。 理由としては、こちらの船には武装がなく、非戦闘員を多く抱えているからだそうだ。 それに…… 「う~ん…… 頭がガンガンする……」 彼女は二日酔いだった。万全の状態なら、どんな遠距離からでも蒸発させれたはずなのに。 今は大人しく従う他ないようだ。ワルドはヘロヘロで役に立たないし。 ―― 昼 ありのまま起こったことを話すと、空賊が皇太子殿下で王党派だった。 何を言っているのか分からないと思うけど、私も何が起こったのかすぐには分からなかった。 それこそ、頭がどうにかなりそうだった。 カモフラージュだとかゲリラ戦法だとか、そんなチャチなもんじゃない。もっと恐ろしいご都合主義の展開を味わったわ。 テンパるのはこれくらいにして、状況を整理しようと思う。 私たちは姫殿下の使いで、アルビオンに赴いた。目的はある手紙を回収するため。 道中、襲撃をかわしあと少しでアルビオンというところで空賊船に拿捕された。 私は空賊の頭の前に通され、尋問をされた。あまりにも失礼な輩なので、大いに啖呵を切ると空賊の態度が一変。 空賊の正体は、アルビオンの王党派。まさしく、任務の目標だった。 そして今、秘密の航路を使い王党派の居城『ニューカッスル城』にたどり着き、ウェールズ殿下より手紙を回収したところだ。 手紙の内容は見ていないが、殿下の態度を見てある程度の予想はついた。 /ヽ/W\/Mvヘ/ヽ/ヽ/W\/Mvヘ/ヽ/ヽ/W\/Mvヘ/ヽ/ヽ/W\/Mvヘ/ヽ/ヽ/W\/Mvヘ/ヽ/ヽ/W\/Mvヘ/ヽ/ヽ/ (ここから先のページは破り取られている) ―― 夜 ニューカッスル城のダンスホールにて、最後の晩餐会が行われていた。 既に覚悟が出来ているのか、王党派の人々は底抜けに明るく騒いでいる。 その光景が悲しくて痛々しくて、私は会場から逃げるようにして抜け出した。 暗い廊下の隅でさめざめと泣く。 私には分からない。明日死んでしまうのに、ああやって明るく振舞えるのが。 どうして、自分から死を選ぶのが分からない。逃げれば、愛する人とも一緒にいられるというのに…… そうやって泣いていると、廊下の奥から燭台を持った彼女が現れた。 泣き腫らした目を擦り涙を拭う。どうやら、いなくなった私を心配して探しに来てくれたらしい。 感情を抑えきれずに、彼女に疑問をぶつける。 どうして、あの人たちが死を選ぶのかと。 その質問に彼女は口ごもり、建前通りに誇りとか守るためとかと口にしたが、私が聞きたいのはそんなことじゃない。 でも、誰にも分からないわよね。分かるはずがない。 だけど、残された人は一体どうすればいいの? 早く帰りたい。トリステインに帰りたい。 ● ● ● 彼女が去ると、入れ違いでワルドがやってきた。ワルドなら私の疑問に答えてくれるだろうか? そう期待を込めて見上げる。 「ルイズ、結婚しよう。ウェールズ殿下も祝福してくれている」 どうしてそんな事を言うのだろうか? 私は拒否したが、ワルドは結婚式を挙げると言ってきかない。 いろんな事が起こりすぎてワケが分からない。大声をあげて泣きたい。 バカ。 ◆ ◇ ◆ ※ウルの月 エオローの週 虚無の曜日 ―― 朝 礼拝堂に連れていかれ、半ば強引にウェディングドレスに着替えさせられた。 結局状況に流されてしまった。 どうしてこうなってしまったのだろう? 何度も溜息をつく。 部屋で待機していると、彼女たちがやってきた。 「こんな状況で結婚式なんて、アンタたちは何を考えているのよ?」 「なあルイズ、急すぎやしないかい。いきなり結婚だなんて。 大体まだ学生じゃないか」 「……非常識」 口々にこの結婚式に対して否定的な意見を言う。 だけど、私だってどうしてこうなったのか分からないのだから、答えられるはずもない。 「ねえルイズ、アナタはこれでいいの? この結婚式に納得してるの?」 「それは……」 「だったら言わなきゃ。 じゃないと、どこまでも流されるだけよ。 自分の事なんだから、自分の意見を言ってやらないと」 そうよね。分かったわ、自分の意思をはっきりと伝える。 ワルドには悪いが、結婚なんて私にはまだ考えられない。 そう決心すると同時に、準備が整ったとの連絡が来た。 ● ● ● 一瞬、何が起こったのか分からなかった。 目の前には、胸から大量の血を流して倒れているウェールズ殿下がいる。 ワルドが顔を醜悪に歪めさせて何かを言っている。 情けない話だが、私は腰を抜かしてしまっていた。 誰かが茫然とつぶやいた。 「レコン・キスタ……」 「そうだ、僕はレコン・キスタのスパイだ」 誰かの怒声が聞こえた。 ワルドが立っていた場所に炎と氷刃が奔り、私の周りに七体のブロンズゴーレムが現れる。 キュルケにタバサにギーシュ、そして私の横に立っているのは彼女だ。 「ふん、手紙は貴様らを皆殺しにしてから回収するとしよう」 「スクウェアとはいえ、五対一で勝てるつもり?」 「貴様ら程度を相手取れぬのでは、魔法衛士隊隊長は務まらぬよ。 まあ、その使い魔君の相手は骨が折れそうだが……」 そう言うと、ワルドの姿がぼやけた。虚像が幾重にも重なり、陽炎のように揺れている。 「ユビキタス・デル・ウィンデ。 さあ、これで五対五だ。君らの勝ちはなくなったな」 「風の遍在……」 風の遍在。それは、術者と等しい力を持つ分身を作り出す風のスクウェアスペルだ。 五人のワルドと彼女たちが戦っている。 それなのに、私は見ているだけでいいのか? 泣いているだけでいいのか? いい筈がない。 だから、私は杖を振り上げ呪文を唱える。 成功するなんて思っていない。でも、爆発は起こる。今、私が出来る精一杯だ。 当たるなんて思っていない。でも、意思は示せる。 彼女が言ったのだ。自分の意見を言ってやれと。 だから、私は力の限りぶつけてやる。ワルドに限りない拒絶を。 死んでもお前のモノなんかにはならないのだと。 確かな意思を込めて杖を振る。 「なんだとっ!? ルイズ!」 「え、なに? 当たったの? うそ?」 遍在の一体を一撃で消されワルドは、一瞬動揺する。私だって驚きだ。 その隙を見逃すはずがない。 礼拝堂に氷嵐が吹雪いた。視界を真っ白に埋め尽くす。 しかしそれも一瞬の事、吹雪はすぐにおさまった。だが、その一瞬で十分だった。 動きの止まったワルドに、ギーシュのブロンズゴーレムが肉薄する。 ワルドは巧みな体捌きと杖を剣のように操り、ブロンズゴーレムをいなすが、反撃は小さな火球で邪魔をされた。 打ち合わせたわけでもないのに、澱みなく流れる連携にワルドは思わず飛び退く。 気がつくと、四人のワルドは一ヶ所に集まっていた。 そして、全員の視線が彼女に集中する。ワルドの表情が凍るのが見えた。 散開しようとするが、遅い。 「くっ……」 「スターライトブラスト!」 その瞬間、光が視界を塗りつぶした。 ● ● ● ―― 午後 私たちは学院へと帰ってきていた。 アレからどうなったのかというと、絶体絶命のピンチに陥っていた。 ワルドは塵も残さず消滅したとはいえ、危機が去ったわけではないのだ。 王党派とレコン・キスタの戦闘が始まり、城は砲撃で激しく揺れている。 ここから逃げるのは至難の業だ。 秘密の航路を使おうにも、ワルドによってリークされている可能性が高く危険である。 どうすれば逃げ出せるか算段を立てていると、彼女がこう言ってきた。 「大丈夫私に任せて」 彼女の提案を聞くと、その内容に笑う事しか出来なかった。 ズルイというか、非常識というか、ご都合すぎる。裏技だ。 その方法とは、テレポートという能力を新しく覚えたのでそれで帰ろうというのだ。 テレポートとは、瞬間移動の事らしい。一度行った事のある場所なら、一瞬で移動できるのだそうだ。 そんなわけで、そのテレポートを使い学院に帰ってきたわけだ。 勿論、タバサとギーシュの使い魔も回収して。 これから姫殿下に報告に行かなくてはいけない。 ◆ ◇ ◆ ※ウルの月 エオローの週 ユルの曜日 「ごめんルイズ、話があるんだけどいい?」 彼女がそう切り出してきた。 彼女が言うには、テレポートを覚えたので天の柱を探す必要はなくなったらしい。 やっぱりそうか。 何となく、そうなのではないかと思っていた。 「三ヶ月っていう約束だったけど、出来るなら早く帰りたいの」 「いいわよ」 頭を下げる彼女を制止して、ぶっきらぼうに告げる。 「いいの?」 「いいのよ。 だって、アンタを使い魔にする気なんてもうないもの」 だってそうでしょう? 友達を使い魔なんかに出来る筈がないもの。 「だから、どこにでも行けばいいわよ。さよなら」 「ありがとう、ルイズ。私の旅が終わったら、また会いにくるから」 「……ふん」 そう言って、彼女は私に糸の束を渡してきた。 不思議な糸だった。オレンジ色の、見ているだけで心が温かくなるような糸。 これが、彼女と交わした最後の会話だった。 ◆ ◇ ◆ 「う~ん…… この彼女ってのはどんな奴だったんだろ? これだけじゃ、よくわかんないな。 なあデルフ、お前は知ってんの?」 「なあ相棒、人の日記を勝手に読むのはどうかと思うね」 「そうは言ってもよ、ルイズにきいても教えてくれねぇんだもん。 だったら、自分で調べるしかないだろ?」 「だからって、この行動はないと思うね俺は」 何処に居るのかと探しにきてみれば、何をしているのだコイツは。 よりにもよって、私の日記を読むなんて。 おしおきね。久しぶりの。 「こっの、バカ犬!」 「キャイン!」 手にした馬上鞭で打ちすえると、サイトは叫び声をあげてのた打ち回った。 久しぶりだけど、相変わらずいい声で鳴く。ゾクゾクきちゃうわ。 両手を腰に当て、倒れこんだサイトを上から睨みつける。 「アンタね、人の日記を勝手に読むなんて何考えてるのよ!」 「相棒はね、アイツの事が知りたいんだってよ」 「アイツ? ああ、彼女の事ね」 彼女が去ってから、一年以上が経つ。 アレから色んな事があった。使い魔としてコイツを呼んだ時はガックリときたが、今では大切なパートナーだ。 暫くは日常を過ごしていたが、程なくして戦争が起きた。 レコン・キスタとの戦争、それが終わった後にはガリア。 でも今は、このハルケギニアで戦争をしている国はない。なぜなら、そんな余裕がないからだ。 ハルケギニア全土を揺るがす大地震によって、各国はことごとく力を減退させ、戦争をしている余裕はなくなった。 瓦礫に埋もれる町を復興させなければならず、エルフとの聖戦に息を巻いていたロマリアも休戦する他なかった。 学院もかなりの部分が破損し、まだ完全には復興仕切っていない。 駄犬と駄剣に説教をしていると、私の後ろの扉が開いた。 何の断りもなしにキュルケが入ってくる。 「ちょっとちょっと、こんな日にも喧嘩なわけ? 仲が良いのも分かるけど、少しは落ち着いたらどう?」 「ふん、アンタとも今日でお別れね。清々するわ」 「あら? 実家に帰っても隣同士なんだから、いつでも会えるわよ。 ふふふ、さびしい?」 「誰が」 世界がどうなっても、私たちの関係は変わらない。 多分十年後も同じことを言っている気がする。なんせ、先祖代々の宿敵なのだから。 さて、そろそろ時間だ。 「ほら、行くわよ犬」 「わ、わぅ~ん……」 まだ寝ころんでいるサイトの頭をふみつけると、犬語で返事をしてきた。 鳩尾を思いっきり踏みつけてから、部屋を出る。 今日は卒業式だ。 この間、竣工したばかりの本塔にて行われる。 本塔は宝物庫の床が抜け落ちていたので、再建が大変だったらしい。 廊下を進む。この寮塔も今日でお別れだ。 「う゛っ、ごほっ…… 待ってくれよ、置いてかないでくれ」 後ろからサイトが咳き込みながら追いついてくる。 軟弱な使い魔だ。しょうがないから、落ち着くまで待ってやろう。 そうしていると、不意に後ろから声をかけられた。 「久しぶり、ルイズ。今日卒業式なんだって? 丁度いい日に来たものね」 ああこの声は、忘れる筈がない。私の友達の声だ。 ゆっくりと振り返ると、変わらぬ彼女の姿があった。 「ええ、本当に久しぶり」 今日は良い日になりそうだ。 = ルイズと彼女と運命の糸 ・ 終わり = 前ページルイズと彼女と運命の糸
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2924.html
前ページ / 豆粒ほどの小さな使い魔 / 次ページ 扉の隙間から、細く明かりが漏れている。 夜も遅いのに、耳を澄ませば、かさりと紙を捲る音がする。 覗き込むと、部屋の奥のベッドで、上体を起こしたカトレアさんが、静かに本を読んでいた。 そういえば、笑顔以外を見たのは初めてかもしれない。引き締まった口元は、ルイズと似ていながら少し冷たさを感じる。 もしかしたら、カトレアさんも、自分でそのことを知っているから、いつも微笑んでいるのかもしれない。 くるる、と、奥の薄闇から獣の寝息が聞こえる。 さて、どうやって声を掛けよう。いきなり目の前に飛び出すのは礼儀知らずだし、驚かせたくない。 思い立って、帯から草笛を抜いて、今日演奏した曲の一節を小さく吹いてみた。 聞き取ってくれたカトレアさんが、こちらを向いて、すぐにあの笑顔を浮かべてくれた。 「来てくれたの? ハヤテちゃん」 ひざ掛けの上、栞を挟まれた本の上に飛び乗る。音は立てない。 「コンバンハ、かとれあサン」 「いらっしゃい。こんなに遅くに呼び出して、ごめんなさいね」 ちらと見た本の表紙には、まだあまり文字を覚えていない私には読めない難しい綴り。 そこに、私の腰くらいまである天鵞絨張りの、多分宝石箱が、カトレアさんの手でことりと置かれた。 「お客様を立たせておくなんてできないもの、どうぞお掛けになって」 ますます敵わない気がする。私の方が余裕がない。 「本当はね、貴女に逢えたら、一番最初にありがとうって言おうと思ってたのよ」 「ル……ソンナコト」 「去年の夏辺りから、ルイズからの手紙が少しずつ減ってたの」 少し、遠くを見る目で、 「頑張ってる。元気です……いつも手紙にはそう書いてあって、でも、家族にもそう言い続けるのが辛くなってるんじゃないかって」 カトレアさんの、ルイズには言えないこと。 「私ハ、今ハマダイイ、ダケドイツカハ、国ニ帰リタイ」 そしてこれが、私の、ルイズには言えないでいること。 ルイズは好き。だけど、あの小山も忘れられない。靴に穴が開いちゃったとき、心にも穴が開いた気がした。 ほう、と、カトレアさんが、やさしく吐息をついた。 「それでも、ハヤテちゃんがルイズの使い魔になってくれて、本当によかった。ね? 私は、小さなルイズさえよければそれでいいの」 だから怒るならルイズじゃなくて私にしてね、と、小さな私に向かって本気で頭を下げてくれる人。 ルイズは、きっとカトレアさんへのお手紙に、私のこと色々と書いたんだと思う。 頭のいいカトレアさんだから、気がついたんだろう。 「ずっと昔、子供の頃だから、ルイズは覚えてないと思うけど、私もよく癇癪を起こしてたの。その度に発作を起こして、寝込んでは癇癪を起こして」 くすっ、と 「あの子ったら、私に八つ当たりされるのに、いつも私の側にいてくれた。泣きながら。それで、馬鹿な私が血を吐いて倒れたときに、『わたしがおねえちゃんの代わりに怒るから、だからおねえちゃんは笑ってて』って」 「本当は、ルイズの方が大人しくて優しい子だったの。もう死んでしまったけど、最初に私の部屋に動物を連れてきてくれたのもルイズなのよ。一生懸命『騒がしくして私の邪魔しちゃだめよ』って躾けて、連れてきてくれたの」 両手で、小さな空間を作る。このくらいの、白いネコだったわ、と。 今とは全然違う二人の姿が、カトレアさんの口から語られるのを、私は黙って聞いていた。 「ルイズはもう覚えていないのかもしれない。忘れようとして、本当に忘れちゃったのかも。あの子の中では、私は最初から優しいちい姉さまみたい」 「お母様にも、お父様にもどうしようもなかった私を変えてくれたのは、小さなルイズだった。だから私は、ルイズを、ルイズが魔法を使えるようになることを、世界の誰よりも幸せになってくれることを信じられるの」 ルイズを信じて支え続けてくれてたカトレアさん、その優しい強さは、カトレアさんの心の中にいるルイズ自身だったんだ。 「るいずハ、本当ニ覚エテナイミタイダヨ。イツモ、チイ姉サマハ優シクテ最高ノ私ノ憧レダッテ言ッテル」 「まぁ」 「デモ、ナンデ私ニ話シタノ?」 これは、カトレアさんのナイショの宝物だと思う。きっとご両親にだって話してないはず。 それなのに、逢ったばかりの私に。 「だって、ハヤテちゃん、私のこと警戒してたでしょ?」 あ、あれは、違うの、ルイズがちい姉さまのこと好きだって何度も言うから、ちょっと変な気持ちになってただけ、なのに。 「ううん、それだけじゃなくて、私が笑うのに、不自然さを感じてたみたいだし」 あんまり鋭いから、びっくりしちゃった、って。 この人は、身体が弱い。走ったり馬に乗ったり、魔法を使うのもきっと大変なんだと思う。 だけど、すごく深い人だ。世話役とか、相談役の長老たちと同じ匂いがする。 「今日は私、お昼寝したから、結構元気なの。だからハヤテちゃんとお話できるわ」 なんで、だろう。 そう言われたら、ほろりと、涙が零れた。 全然、哀しくなんてないのに。 カトレアさんがちっとも慌てないから、私も不思議と落ち着いた。 それから、沢山話した。小山のこと。隊長のこと。組んでいるマメイヌのこと、今頃はきっとつがいができてること。大好きな桃のお酒のこと。 ルイズとあれだけお話してたのに、まだ話し足りなかった自分がちょっと恥ずかしい。 空も薄く白み始めて、 「アリガトウ、かとれあサン」 沢山話して、沢山泣いて。頭も身体も、すごく軽くなった気がする。 妹の前では泣けないものね、そうカトレアさんが言ってくれた。 そういうことだったんだろうか? 私みたいな新米お姉ちゃんには、まだまだ覚えないといけないことがありそう。 手を振ってくれるカトレアさんに見送られて、ルイズの部屋に駆け戻る。 よかった、まだぐっすりと寝てた。 畳まれたハンカチの布団に潜り込んで、だけど目は閉じずにルイズの寝顔を眺める。 つい、頬が緩む。 妹の寝顔を眺めるのは、妹に懐かれてる姉の特権なんだからって、本当にカトレアさんの言うとおりだと思った。 * * くぅ、と伸びをして、あれ? と思ったけど、何が変なのか分からなかった。 ぐるりと見回して。ここは学院の寮じゃない、久しぶりのヴァリエール家だけど。 ああ、そうか。 枕元、ハンカチが盛り上がって、ゆっくりと上下してる。 ハヤテが私より遅くまで寝てるって、もの凄く珍しいから。 そうっと、振動を伝えないように、ハンカチの端を指で摘んで、そうしたら、解かれた豊かな黒髪に縁取られた整った寝顔。本当にお人形さんみたい。 起きてるときの凛とした様子からは信じられないくらいあどけない。 (だーれが、お姉ちゃんよ。まるっきり妹じゃない) いつもの立場にはとりあえず目を瞑って、メイドが朝食の支度が整ったことを伝えに来るまで、つかの間のお姉ちゃん気分を味わった。 前ページ / 豆粒ほどの小さな使い魔 / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1164.html
「すまぬが、許可できぬ」 昨晩の雛水の話を聞き、早速長期外出の許可を得るために、朝食も取らずに学院長室を訪問した。 事前にコルベールに聞いたようで、ルイズの使い魔が天使である事はオスマンに知られていた為、ならば話は早いと天使の帰還について説明、アルビオンへの渡航許可を申請したが、返ってきたのは最初の言葉だった。 「神の使いである天使に協力したいのは山々じゃが、時期が悪すぎる。 一応王宮に申請してはみるが、今は諦めた方がよいな」 と、不本意さを表に出してオスマンはやんわりと拒絶した。 更に踏んだり蹴ったりで、朝早く起きたせいで授業中陽気に誘われて眠ってしまったり、レディが鳴らすべきではない空腹の音が響きすぎて笑われたりと、悪い物事が重なった。 致命的ではないものばかりだったのが救いだろうか。 「はぁ……」 「ふぅ……」 「へぇ……」 そしてルイズ達三人は、ため息をつきながら食堂の一角で陰鬱な空気を撒き散らしていた。その様子に、誰も見て見ぬ振りをして近づかない。 いや、二人いた。足音を立てず、近づく大きな影が一つ、小さな影が一つ。 「はぁぁ……」 「ふぅぅ……」 「へぇぇ……、そういえば何でため息ついてるんだっけ?」 ガツン、とルイズと雛水はコントのようにテーブルに頭をぶつける。周りに観客がいたら思わず拍手してしまうぐらい、見事な反射だった。 「遊羽、説明したでしょう。帰る話と、上手くは行きそうにない話を」 黒い羽と命の危険は隠しているが。 「あっ、そうね。あはは……」 「私も付き合いたいけど、今のアルビオンは政情不安定らしくて、おまけに無許可で国外に出たら、後が色々怖いのよね……」 何かトラウマを思い出したのか、ガタガタと震えだすルイズ。気の抜けた声でこわくなーいこわくなーいと頭を撫でる遊羽。 ルイズはともかく、この友人はいつまで経っても脳天気は治らないらしい。そこが遊羽らしいといえばらしいのだが。 「ルイズっちには悪いけど、見送り無しでいいんじゃない?」 「ダメ! 私はあんたの対象者で主なんだから、ちゃんと試験が終わるまで付き合うのが決まりってものなのよ!」 「そんな決まりはありませんが……何でもありません」 雛水はやんわりと否定するが、ルイズの睨みに負けて引き下がった。 「それによく言うでしょ? 家に帰るまでが試験だって」 「それは遠足よ」 「―――げ」 ガチガチガチ、と壊れた歯車のようにルイズが振り向くと、キュルケとタバサがいつの間にか立っていた。話に夢中になりすぎて、もしくは落ち込みすぎて気づかなかった。 「試験って何よ? 最近の授業であったかしら」 「追試」 「違うわよ! 大体私の話じゃないんだから!」 「じゃ、誰のかしら?」 「うっ」 墓穴を掘ったことを感じた。だがあの時点でうまい誤魔化しや切り返しが出来るほど、ルイズはその方面で賢くは無い。 アイコンタクトで雛水や遊羽と言っていいか確認し、出歯亀二人に白状した。 「天使ねえ……はぁ」 「どうせ信じないんでしょ」 「信じるわよ。 あんたはずっとゼロのルイズだったり背も小さかったり胸も無かったりするけど、しょうも無い嘘をつくほどつまらない女じゃないって事は、入学以来ずっとからかい続けてるあたしが一番知ってるから」 「それは、喜んでいいのかしら?」 「勿論」 やれやれ、と怒る気にもなれないルイズは、天使と聞いてもあまり驚きを見せないタバサに視点を変える。 「あんたは、特にどうとか思わないの?」 「シルフィードが見抜いた」 「そ、そう」 確かタバサの使い魔は風竜。簡単に納得してしまった。 実際は、タバサは使い魔が人間では無いとだけしか知らなかったと言う意味で言ったのに対し、ルイズ達は天使である事を見抜かれたと誤解していたのだが、今教えているので結局誤解の問題は無かった。 「明日、一緒にオールド・オスマンのとこ行ってあげるわ。タバサもいいでしょ?」 「興味ある」 あまり付き合いの無いタバサはともかく、いつものキュルケからはかけ離れたその優しさに、ルイズは疑いの表情を隠し切れない。 「……悪いものでも食べた?」 「失礼ね」 「まあ、感謝してあげるわよ」 「初めから素直にそう言っておきなさい」 「ありがとうございます、キュルケ」「ありがとね、キュルキュル」 「ほら、使い魔のほうが素直じゃない」 「私はどうせ、素直じゃないわよ!」 *************** そして次の日。オールド・オスマンは悩んでいた。 ヴァリエールだけならともかく、かのツェルプストーやタバサまでもが三人一緒になって目の前に外出申請に来た。 理由は間違いなく、ヴァリエールの付き合いだろう。これで危険だとか言う言い訳は通じにくくなった―――実力が高すぎる。正直、ただアルビオンに行って帰って来るだけならこのトライアングルメイジ二人も連れて行けばお釣が帰って来る。 だが、まだ公表していないものの、明日は我が国のアンリエッタ姫がゲルマニア訪問からの帰りに、この学院に来られる。訪問理由は婚姻と、アルビオンを睨んだ同盟。 そんな時に、貴族の中でも名が高い家系の三人(タバサは若くしてシュヴァリエの称号持ちとの意味で)を、しかも今のアルビオンに行かせるのは何かと不安がよぎる。下手をすれば痛くもない腹を探られかねない。 それ以前の問題で、王宮に申請をまだしていない。 「ふぅ、仕方あるまい」 若いのは羨ましいと、年老いた髪を撫でつつ、理由を言う事にした。秘密を言う事になるだろうとは思っていたので、全て人払いはしてあり、彼女達とオスマン以外に人はいない。 「実は明日、アンリエッタ姫がこの学院にいらっしゃる」 姫殿下が!? と色めき立つ生徒。ふむ、これは効き目がありそうだ。 「ゲルマニアの帰りに来られる予定じゃ。この国の貴族たるもの、お迎えしない訳にはいくまい?」 全員に対する効果は期待していない。最低、首謀者であるヴァリエールを止められればいいのだ。 「じゃから、姫がお帰りなさるまで、数日待ってはいかがかの?」 そして、嘘も混ぜる。数日とは言ったが、その後に許可を出すとは言っていない。 案の定ツェルプストーとタバサは幾分不満気な顔をしていたものの、ヴァリエールが引き下がった為に一緒におとなしく出て行った。 「やれやれ……」 気持ちは分からんでも無いが、親から生徒を預かる身である学院の立場も考えて欲しいものだ。 危険な場所に飛び込むにも限度がある。 「しかし、ミス・ロングビルはどこへ行ったんじゃ」 最近、美人の秘書が突然失踪したせいで事務仕事が増え、面倒になったわいと思いながら、机の上の山の様な書類に手をつけた。 *************** 勿論それで諦めるルイズではない……が、アイデアが浮かばない。 学院長の手前、姫殿下を優先する発言を取ったが、正直姫殿下はタイミング悪いなとか愚痴みたいなことを思っていた。 確かに姫殿下が来られるのはとても嬉しいのだが、幾ら昔に遊び相手を務めていたとあってもそんな事覚えていないだろうし、何せ今の自分はただの学生の一人で、ゼロのルイズだ。とても姫殿下に気にかけて貰える存在とは思えない。 まあ仕方あるまい。学院長にああ言った手前、いないとまずい。明日だけ姫を見てから明後日こっそり出よう。 「母上が怖いわね……」 規則を守らないとオーガのように怖い存在が頭をよぎる。でも、時間の無さには代えられない。 私は、遊羽を助けたいから。 そんな思いが天に通じたからか、突然の幸運がルイズに舞い降りた。 アンリエッタ姫が学院に来て、歓迎式典が行われた初日の夜。遊羽とともに無断外出の準備―――そればかり気にして肝心の式典はあまり覚えていない―――をしていると、突然一人の少女が部屋に訪れた。 頭巾で顔を見えないようにし、部屋に入ってからもわざわざ探知魔法を使う念の入れように、二人は訝しむ。 「ディテクトマジック?」 「どこに耳が光っているか、分かりませんからね」 そう頷き、更に覗き穴や魔法盗聴が無いか確認してから、頭巾を取った。 出て来たのは、ルイズに勝るとも劣らない美少女で、今日の式典の主役だった。 「姫殿下!」 久々の思わぬ再会を果たし、ルイズとアンリエッタは語り合う。幼き頃の思い出、宮廷の愚痴、結婚話。 一人聴衆となっていた遊羽は、 (何だか、会話がわざとらしくない?) 特にこの姫殿下って呼ばれてる人、とか思いながらも、顔に出さず蚊帳の外にいると、自分の話に変わっていた。 「ところで……そこにいる方は?」 「あ、私の使い魔です」 「……人間、ですが」 胡散臭いとは言わないが、流石に困惑と疑いの目を向けてくる。まさか天使と言っても信じて貰えまい。 (空気読みなさいよ) (オーケイ) 慣れたアイコンタクトを一瞬交わし、 「は、はい。珍しいモノを召喚してしまって」 「私も、人間が使い魔というのは初めて見ました。貴方の名前は?」 「遊羽よ。よろしくね」 相変わらずのしゃべり方に頭を痛くした。そういえば先生達と話す数少ない場合でも、しゃべり方は変わって無かった気がする。 しかし幸いアンリエッタは気を悪くした様子は無く、それに一安心で胸をなで下ろす。 「びっくりしました。まさかルイズが、その、人に言えない愛の趣味を持ったのかと」 「そ、そんな事はありえません!」 「凄い否定ねえ……」 ちなみに後でしゃべり方について聞いてみると、 「あたしだって、敬語は使えるわよ」 「じゃあ何で使わないのよ!」 「うーん……何とかなると思ったのよね」 これも『少しだけ都合がよくなる』力か。まあ、遊羽が敬語を使うのはそれはそれで想像できなかったが。 使い魔話は呆気なく終わり、本題―――アンリエッタの頼み事に移る。 大まかに言えば、アンリエッタはゲルマニアとの同盟の為に結婚する。しかし、以前アルビオンの皇太子に出した手紙の存在がある。 現在、貴族派と王党派で内乱中のアルビオンは皇太子がいる王党派が風前の灯。貴族派は二国の同盟破棄を望んでいて、婚姻妨害の材料としてその手紙が見つけられれば、同盟破棄は確実。 哀れトリスティンは1国で、内乱後も強国であろうアルビオンの侵略に立ち向かわなければならない。 だからアルビオンの皇太子に手紙を渡し、また、危ない手紙を受け取って欲しいと言う。 途中出歯亀のギーシュを加えたものの、ルイズは二つ返事で承諾し、手紙と旅費代わりに水のルビーを受け取った。 アンリエッタが去って再び準備に取り掛かってから、遊羽は思う。 頼み自体は別にいい。だが、何故ルイズなのか? 「正直、あたしとかルイズっちって大した事ないじゃない? ヒナは凄いけど、他人が知ってるはず無いし」 雛水は対外的には、ルイズのちょっと変わった付き人としている。只でさえ使い魔がややこしいのに、それ以上ややこしくしてはかなわない、との判断だ。 幸い今まで知り合いとの訓練以外に戦う姿を見せていないので、そのまま付き人で通っている。隠す場所も無い服でどこから長剣を出すのか、がルイズの疑問だが。 「分かってるわよそんな事。多分、私がアルビオンへの渡航許可を出したのが知れたんでしょ?」 「それでも、よ。大体、さっきの話し方だってやけに大袈裟過ぎたり、わざとらしく溜め息付いて、それで何でもありません、だなんて、聞いてくれって言ってるのと同じじゃない」 「―――ええ、分かってる」 ルイズは忠告を切って捨てる。うっとおしいからではない、気付いていたからだ―――話が終わってからだが。 何の実力も実績も無い自分に、そんな重要任務を任される筈は無い。精々捨て駒で本隊は別にいるか、もしくは姫殿下が信頼する誰かを連れて行くのか。 まさか、本当に私しか頼める相手がいなかったのか―――それは光栄過ぎる話だが。 話の中身も遊羽が挙げた他に、最初にはしゃいで懐かしの思い出を、昔からの友人である事を確認するように次から次に挙げたり、 失敗したら国が滅ぶとか破滅とか言いながらその後で自分は混乱しているとか危険だから行くのは頼めないとか言うのは行ってくれと言うのと同じじゃないのかと思ったり、 友情とかおともだちって言葉に過剰に反応するのは何でだろうとか考えたり。 けど、それでも別に構わなかった。友達であり敬うべき姫殿下の役に立てるのは素晴らしい事だと思うし、そう思える事に間違いは無い筈だ。 「大丈夫、これで私達の目的の1つは達成されるわ。大義名分を持って、私達は外出出来る! 私達に重要なのは『あんた達を天界に帰す事』ッ! トリステインと姫殿下に重要なのは手紙をやり取りする事ッ! 両方の行き先がアルビオンなら、同時に任務を成功させれば、問題は無いわよ」 「ルイズっちって……結構醒めてるのね」 醒めてる? どういう意味だろう? 「ちょっと前のルイズっちだったら、さっきみたいなお姫様? に頼まれたら、他を放り出してお姫様の目的を最優先にしそうだったけど、今は随分欲張りね」 ハッとする。そういえば……そうだ。 あの姫殿下に極秘の頼み事をされたって言うのに、本当なら天秤にかける事すら許されないと思ってただろうに、今の私は何を考えてた? 同じ土台に、置いてしまっていた? 私は、いつの間にか変わってしまったのか……? いや、違う。姫殿下を、国をないがしろにしているのとは、違う。 多分、これは。 「あんた達がいるからよ」 「あたし達が?」 「あんた達を帰す。その重さを背負っているから、問題が同列になっただけ。けどそれが何? どこかの逸話でもあるでしょ?」 それはとある国の軍人の話。部下に願いは何かと聞いたとき、「一国を統一する事」と言った。 その軍人は聞いて怒り、「人間、全国統一と願ってやっと一国を統一できる程度だ。人間、もっと望みは高く持て!」と言ったという。 「だから、望みは高く持った方がいいのよ」 それって別のところの話なんじゃないかなあ、とか無闇やたらな考えは計画倒れにならないかしら、とは思っていても遊羽は口に出さない。 本人が出来ると思ってるなら別に止める理由は無いし、何より嬉しいのだ。何だかんだ言って、こんなに必死になってくれる自分の対象者が。 遊羽でも、それが追い出したいからか別れを惜しんでくれているかぐらいは区別がつく。ルイズは、後者だった。 だから、その想いを一つの言葉に込めて言う。 「ありがとね、ルイズっち」 「あ、うん……ああもう! 明日は早いんだから、さっさと寝なさい!」 「はぁい」 どう見ても照れ隠しです、に真っ赤になったルイズにニヤニヤしながら、一足先に遊羽はベッドに入った。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8919.html
前ページ次ページるろうに使い魔 その日、トリステイン魔法学院は快晴だった。 シエスタは、貴族達の服の洗濯をする傍ら、この晴れやかな日差しを心地よく浴びていた。 「今日もいい天気ねぇ」 そんな事を言いながら、シエスタは小鳥たちと戯れつつ、どこかウキウキした様子で洗濯物を干していた。すると…。 「あれ、ケンシンさん?」 シエスタの遠くで、例の気になる男性、あの緋村剣心が、どこか森の中へと入っていくのをその目で見た。 何だろう? シエスタは持ち前の好奇心で、剣心の後を追った。 しばらくして、剣心はおもむろに草木が生い茂る林の中心に立つと、どこか神妙な顔つきで目を閉じていた。 ひっそりと隠れながらも、シエスタはこの気になる行動に疑問符を浮かべていた。 しばらくして…彼の周りから、ただならぬ雰囲気が立ち込めるのを感じた。 そして次の瞬間――――。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」 剣心は、それを一気に開放するかのように、急に唸り声を上げた。 それに伴い、パン!! パン!! と周囲に舞う木の葉が弾け飛び、木々は悲鳴を上げる。 シエスタは、この出来事に大層驚き、腰を抜かしてしまった。 「きゃああ!!」 シエスタの悲鳴が聞こえると同時に、剣心はハッとしてそちらの方をむいた。 「シエスタ殿?」 「あ、御免なさい…えと、あの」 シエスタは、しどろもどろになりながらも、これまでの経緯を剣心に話した。 「そうか、それは済まない事をしたでござるな」 「あ、別に大丈夫です。でも…」 聞こうか聞くまいか、悩む仕草をしたシエスタだったが、やっぱり知りたい好奇心が勝ったのか、剣心に質問した。 「さっきのは、一体何だったんです?」 「まあ、気を引き締めてただけでござる」 シエスタは、さらに疑問が増えた。気を締めてた? あれはそんなレベルじゃないような気が…。 シエスタは、吐き出すように気迫を飛ばしていた剣心を思い出し、首をかしげた。 「拙者は、ああして時々気を締めないと、心の具合が黒くなる。だからさっきのようにやって、それを発散させているのでござるよ」 思うところがあるのだろうか、時々左手を見つめながら剣心はそう言った。 「へえ、そうなんですか」 正直、言っている意味はさっぱり分からないが、剣心が言うことなら、余程重要なことなのだろう。シエスタはそう思った。 (ってあれ? これって今、ケンシンさんと二人きり…?) そして、丁度二人っきりだということにシエスタは気付き、顔を赤らめた。 対する剣心は、ルイズの事を思っているのか、どこか考え込むような表情をしていた。 今のルイズに必要なのは、リラックス出来る環境だろう。 何かないものか…そんな事を思案しているうちに、シエスタから声が掛かった。 「そ、そう言えば、ミス・ヴァリエール達と、どこかへ行っていたようですが、一体どこへ…」 単なる話題を作るために、シエスタは質問したが、剣心は困ったような表情をした。 「う~ん、まあ、お忍びでござるな」 頬を指でかきながら、剣心はそう返す。 「へぇ~…そうなんですか…」 少し何とも言えなさそうな顔をして、シエスタはそう相槌を打った。 その後、しばらくの間沈黙が流れたが……やがて意を決したのか、勇気を振り絞ってシエスタは顔を上げた。 「あ、あの、実はですね、今度お姫様の結婚式のときに、特別にお休みがいただけたんですけど…それで…ケンシンさんも、私の故郷をどうかなって…。 とっても綺麗な草原もありますし、気も休まると思いますよ」 シエスタはシエスタなりに、彼の顔を見て思うところがあったのだろう。気を遣うような風で聞いてみた。 剣心は、少しポカンとした感じで、それを聞いて、そして叫んだ。 「それだ!!」 「へっ?」 第二十五幕 『宝探しと冒険』 「う~~~~~ん…」 同時刻、ルイズは学院の中庭のベンチに座り、一人考え事をしていた。 膝の上には、ボロボロの本『始祖の祈祷書』が乗っけられている。 あれから、ルイズは悶々として詔を考えていたのだが、いかんせん良い詩が思いつかない。まだ時間はあるとはいえ、そろそろ何か思い浮かんでもいい頃なのであるが…。 「…どうしよう…」 どれだけ声を唸らせて考えてみても、やっぱり何も出てこない。 ちなみにこの事は、剣心には言ってなかった。何というか、これ以上、彼に頼りっぱなしも良くないと思うし、何よりこれは自分自身の問題だ。 剣心も、その空気を察してくれているのか、必要以上には介入してこない。勿論困ったことがあれば、何時でも駆けつけてきてくれるだろうが。 「はーい、ルイズ」 気付けば、いつの間にか隣にはキュルケがいた。 面倒なのに見つかった。そんな雰囲気を隠そうともせずにルイズは目を細めた。 「…何しに来たわけ?」 「やあね、折角面白いものを見つけてきてあげたのに」 剣呑な雰囲気を受け流しながら、キュルケは胸の、その大きい谷間から何やら取り出し始めた。 それは、幾つかに分けられた羊皮紙の束だった。 「…で、これ何?」 「宝の地図よ」 怪訝な顔つきで見るルイズに、キュルケはしれっと答えた。成程確かに、それらしいことがその紙には書かれている。 しかし、ルイズは怪訝な顔つきを崩そうともしなかった。 「それを私に見せてどうする気よ?」 「連れないわねえ、誘ってるんじゃないの。宝探しに行こうって」 キュルケの言葉に、ルイズはハァ? って顔をした。いきなり何を言い出すのだろうかこの変態巨乳は。 しかし、キュルケの表情は、至って真剣そのものだった。 「あんた、この頃張り詰めてるでしょ」 「えっ…?」 「隠したって無駄よ。昨日の事件を見れば、誰だってそう思うわよ」 ルイズは、昨日の出来事を思い出した。 確かに、あの時自分の感情も爆発して、泣いてしまったことは覚えている。でも…。 「分かるわよ、王子様の事よね。普段強がりばっか言ってるあんたが、人目を気にせずに泣くんだもの。相当辛かったんでしょ?」 「そんな…私…」 「こういう時はね、何か気を紛らわすものが、必要なものなのよ」 キュルケの押しに、ルイズはグイグイ押される。こうなると、彼女は本当に強かった。 「でも、今私は…」 「でももさっちもない! 私が行くと決めたんだから、あんたも行くの!!」 ほぼジャイアニズムのような言動だったが、ルイズは妙に心打たれた。そう言えば、ワルドの結婚を吹っ切らせてくれたのも、彼女の言葉のおかげだった。 家系が家系故に、憎らしさが前面に出てるため、表立って言うことはないが…こういうところは素直に感心するなぁ、とルイズは思った。 確かに、環境を変えれば、まだ何か思いつくかもしれないし、それに、行くのを断れば、またキュルケが剣心をたぶらかそうとするかもしれなかった。それはやだ。 という訳で、ルイズは覚悟を決めた。 「……分かった、付き合うわよ。それで、いつ行くの?」 「勿論今からよ。後タバサと、ついでにギーシュの奴も誘ってあるから」 「ちょっと待って、授業中よ!?」 「いいじゃん、サボれば」 そんな風なやり取りをしていたところへ、上手い具合に剣心とシエスタが通り掛かった。 「おお、ルイズ殿。ちょうど良かったでござる」 「あら、ダーリン。いいとこに来たわね」 ナイスタイミング、と言わんばかりに、二人は同時に口を開いた。 「一緒に宝探しに行かない?」 「少し休養をとってはどうでござるか?」 「…え?」 「おろ?」 しばしの間、同時に放られた言葉の意味を、片側が理解するのに数秒かかった。 そして、剣心はキュルケの持っている地図の方を見て聞いた。 「宝探し?」 「そ、たまにはパァーッとさ。いいでしょ?」 「ってか、休養って何よ?」 ルイズは、隣にいるシエスタを怪訝な表情で見つめながら、剣心に聞いた。 そう言えばこのメイド、最近やたら剣心と一緒にいる気がする。 自分のことで精一杯だったから、そこまで回す気は無かったけど……なんだろう。何か嫌な予感がしたのだ。 女の勘で、何となくシエスタの心情を察したルイズは、無意識に彼女を睨んでいた。 ここで普通なら、貴族に睨まれただけで、シエスタは怯えただろう。しかし、表立っては出さないが、そこだけは譲れないという強い意志を宿して、シエスタも睨み返していた。 二人の間にバチバチと花火を散らす中、剣心がおもむろに言った。 「ルイズ殿、最近思い詰めてたでござろう? あんなことがあったんだし、ここは少し休みでもとったほうが良いと思うでござるよ」 この言葉に、ルイズは内心勝った! と叫んでいた。 いいでしょ? 心配されてるのよ、ワタクシ。アンタなんかにワタクシの相手が務まると思って? しかし、シエスタの方も、あくまでも営業スマイルを崩さずに、ルイズに対抗した。 「いいのですか? 行き先は私の村ですよ? 私の村には何にもない、つまらない所ですよ? 貴族の皆様が満足していただけるかは、保証しかねるのですが」 「へえ、いいじゃない。どんなつまらないところなのか、逆に興味が湧いてきたわ」 笑顔で睨み合う二人を見て、ようやくらしくなってきたなあ、と思ったキュルケは、ルイズたちの間に入って折衷案を出した。 「それじゃ、まず最初の何日かは宝探しで、その後にそこのメイドの故郷に行くって事で、いいかしら?」 「ちょっと待ってください。宝探しなら私も行きます!!」 さも当然だと主張するかのように、シエスタは手を挙げてそう言った。 無論ルイズは即座に反対する。 「はぁ? 魔法もないアンタに何ができるっていうのよ?」 「料理ができます!!」 「それが何の役に立つのよ!?」 「美味しい食事を提供できますわ!!」 相手は貴族だというのに、シエスタはルイズに対し、一歩も引かなかった。 それにより、ルイズは何か内側から燃えるようなものを感じていった。 しかし、これには思うこともあったのか、今度はキュルケが口を挟んだ。 「まあでも、そういう意味合いじゃ、確かにうってつけかもね。マズイ料理なんて私やだし、いいじゃないルイズ。連れてってあげましょ」 「あ、あんたは横からしゃしゃり出て来ないでよ!!」 「ねえ、ダーリンはどう思う?」 ここぞとばかりに、キュルケは決定権を剣心に渡した。 ルイズはグッとした目で剣心を見る。シエスタも、ルイズと同じような目で剣心を見つめた。 そんな二人の雰囲気に若干気圧されながらも、剣心は確認するかのようにシエスタに聞いた。 「休暇の方は、大丈夫なのでござるか?」 「はい、早くに取るつもりですから!!」 「危険もあるかも、でござるよ」 「平気です!! だってケンシンさんが守ってくれますから!!」 即答するシエスタを、剣心は改めてまじまじと見た。意地でも従いていく。目がそう語っていた。 まあ、それなら…と、ついに剣心も折れた。 「シエスタ殿が良いなら、拙者は構わないでござるよ」 「やったあああ!! ありがとうございます!!!」 「ちょ…ケンシンまで何言ってんのよ!!」 一人わぁわぁ喚くルイズとは裏腹に、シエスタはここぞとばかりにガッツポーズをした。 「という訳で、宜しくお願いしますね。ミス・ヴァリエール」 深々と頭を下げながらも、若干皮肉がこもった言い分に、ルイズは思いっきり髪をかきむしって、空に向かって叫んだ。 「もう、何なのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 そんなルイズの様子を見て、剣心も、やっと少し調子を取り戻したか。と思った。 あの魔法の失敗以来、どこか俯いた感じで、人を寄せ付けないオーラを放っていたが、今のルイズを見ると大丈夫なようだ。 「そんじゃ、今日はもう遅いし、出発は明日から。皆ちゃんと準備してきなさいよ」 キュルケの言葉を最後に、剣心達は一度解散した。 前ページ次ページるろうに使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5905.html
前ページ次ページゼロの黒魔道士 「はぁ…全く、どうしてくれようかしら、こんな役立たず…」 「あ、う、うん、ゴメンなさい、ルイズおねえちゃん…」 …出会ってから、ちょっと時間が立ったんだ。 …ここは、お城みたいな魔法学院。 …目の前のきれいだけどちょっと怖い女の子はルイズおねえちゃん。 …で、ボクはビビ、死んじゃって、動かなくなったはずが… 「なんっであんたが使い魔なのよぉ~!!!!!」 …使い魔、になっちゃったみたい…ホントに、なんでなのかなぁ…? ―ゼロの黒魔道士― ~第一幕~魔法の学び場 トリステイン魔法学院 …窓の外の空には2つのお月さま、 ここもお月さまは2つなんだなぁと変な感心をしてしまう。 「ちょっと!またあんた、聞いてるのっ!?」 「わぁっ!?ご、ゴゴメン…なさい…ルイズおねえちゃん…」 さっきからずっとこの調子なんだ… …ちょっと、今日までにあったことを思い出してみた… …たしか、黒魔道士の村にいたんだ… もう、だんだん体が動かなくなるのが分かったし、 寿命(リミット)が近いんだなって分かってた… 黒魔村のみんなは優しくしてくれたし、 ジェノムのみんなともなかよくなっていってるみたいだった… …それを見守るのはうれしかったけど…動かなくなってきている体で、見てるだけなのはちょっと悲しかったなぁ… ときどき、みんなお見舞いに来てくれた… …フライヤおねえちゃんやダガーおねえちゃんは国を立て直すのにいそがしいはずなのに… …サラマンダーは黙ったままだったけど…なんか優しくなってたなぁ… …スタイナーおじちゃんはちょっとうるさかった。「手伝うのである!!!」ってジェノムのみんなを手伝ったりしたんだけど… …「ぬぉぉぉ!?」ドンガラガッシャーン… …みんな、得意と不得意があるんだなぁ… …クイナが来たときは、食事が豪華になるんだ。いつもの同じ材料なのに… …「…クェー」「チョコボのコドモ…珍味ネ…」ジュルリ… …い、いつもと、同じ、だよね?… …エーコは、シドおとうさんといっしょに「し、新飛空艇の試験飛行で来ただけよ!あんたが心配じゃないんだから!」って言って来てた… …試験飛行でなんであんなに、お菓子持ってくるのかなぁ?…食べきれないからって言ってボクにおしつけるし… …そして、昨日、最後の日の前の日、いよいよ体が動かしにくくなったとき… 「よっ、意外と元気そうじゃん!」 …ボクに、生きる意味を、ボクに勇気をくれた最大の恩人が、来てくれたんだ… 「いやぁ~、ちょっと危なかったんだけどさ…やっぱヒーローは遅くなるもんだから、なっ!」 …そう言ってウィンクする…ボクは、少し体を起こして、「無事…だったんだ…」って聞いたら… 「ん、まぁ色々あってな…あ、ダガーにはまだ内緒な?ちょっとしたサプライズ用意してるんだ…」 …そういって照れくさそうに笑ってた…きっと、そのまま会いに行くのが、ちょっとはずかしいんだなって思った… 「お、うまそうなリンゴがある…クイナの見舞いかな?1個もらうぜっと…」 …エーコからもらったリンゴの山から、器用に尻尾で1個をお手玉のように抜き出して、ダガーで皮をむいて… 「ほれ、ウサギの完成~!」 …一緒にウサギリンゴを食べて、いっぱい、いっぱい、話したんだ… …しばらくして、「劇の練習の時間だからな…見に来てくれよ?アレクサンドリアで一芝居うつからさ!」って言って出て行った… …ジタンは、やっぱり、優しかった。強かった… …そして、今日… …体がいよいよ動かなくなって… …気づいたら光に包まれて… 「ふぅ~ん、ビビ、ね…で、あんた結局何なのよ?平民にしては…色々変だし…」 …「トリステイン魔法学院」ってところにいたんだ… 「え、へ、変…かなぁ…?」 …たしかに、「人間」では無いから、ちょっと「変」なのかもしれないけれど… 「あんた、顔あるの?頭よりおっきなトンガリ帽子かぶって…まだ寒いとはいえそんな厚着だし…」 …顔かぁ…そういえば考えたことなかった…なんとなく恥ずかしくなって帽子をキュッキュッてかぶりなおした… 「…ミスタ・コルベール!やりなおしさせてください!こんなのが私の使い魔なんて!」 …使い魔?さっきも聞いたなぁ…こんなのって…まさか、ボクのこと…? 「それはできません、ミス・ヴァリエール、春の使い魔召喚は神聖な儀式だ。 そう簡単にやり直しは認められない、いずれにせよ彼を使い魔にするしかない」 …頭のまぶしいおじちゃんがそう言った…カレを使い魔…?この場合、彼って… 「え、あ、あの、す、すいません…使い魔って…」 「あーもう、なんでこんなのが…あんた感謝しなさいよ、普通平民が貴族にこんなことされるなんて一生無いんだからねっ!」 「え、あ、え?え?」 …こっちは慌てるしかなかった。ゆっくりときれいだけどキツそうな顔が目の前に近づいてきて… 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 チュッ …女の子の唇って、やわらかかったんだなぁ… 「ほんとに!!!!もう!!聞いてるのっ!!!!」 「わわわわっ!?ゴ、ゴメンなさい…」 …さっきから、ルイズおねえちゃんの部屋で謝り続けている気がするなぁ… …時間はもう日が暮れて空ではお月さまが2つしっかり出ている… 「まったく、マントは燃やされるし、使い魔はこんなだし…今日は厄日ね、厄日っ!!!」 …ドキッ…ゴメンなさい…ルイズおねえちゃんにはまだ内緒にしていることがあるんだ… 「え、い、今のって、キ、キス…あつつつつつつつつつつ!?!?!?」ボッ 「我慢しなさい、使い魔のルーンが刻まれてるだけよ…ってあつっ!?」 …キスされた後、左手がすっごく熱くなって …「はんしゃてき」ってことなんだと思う …モンスターに襲われたりしたのと勘違いしたのかもしれない …思わず…「ファイア」ってちっちゃく唱えちゃったんだ 「あつつつつつ…うぅぅぅ…?…何、コレ…」 …しばらくして、左手の痛みがおさまって…変な模様が左手(の手袋の上)に描かれているのに気づいたんだ… 「はぁ、はぁ…あぁっ!?私のマントっ!?」 …このときまで、咄嗟に「ファイア」を唱えてたのに気づかなかったんだ。 …そして、このピンクの髪のおねえちゃんのマントをちょっと燃やしちゃったことも… 「…あ、ん、た、がやったのねぇ~!!! ツェルプストーっ!!!!」 「ゴ、ゴゴゴゴゴゴゴごめんなさ~い!!!! え?」 …気づいたら、おっきなトカゲ…かな?尻尾に火がついてるけど…がボクの足元にいたんだ… 「あら、ダメよ、フレイム~!いくらヴァリエールのでもマントを燃やしたりしちゃ…」 …まっ赤な髪の、おっきなおねえちゃんがケラケラと笑ってた …足元のトカゲはボクの左手を心配そうにペロッとなめてくれた …ぶっきらぽうだけど優しそうで…ちょっとサラマンダーを思い出した 「あんた、自分の使い魔の制御もできないの!?人のマント燃やしてくれて!!」 「あら、フレイムはそこのお人形さんが痛そうにしてるから心配になっただけよ?優しいでしょ? でも、尻尾の先にまさかあなたのマントがあるとはねぇ…まぁよかったじゃない、黒こげにならなくて!」 「キィィィィィィィ!」 …あ、マントを燃やしたのはトカゲくん…フレイムって言うのかな?のせいになってる…ゴメンなさい… 「はいっ、そこまでっ!!ミス・ツェルプストー、使い魔同士の友情は結構なことですが、 周囲に被害が及ばぬよう気をつけるように!ミス・ヴァリエールもマントの件はそのぐらいで!」 …頭のまぶしいおじちゃんが近づいてきて、ボクの左手をしげしげと眺めた 「ふむ、コントラクト・サーヴァントは無事成功のようだね。おや、珍しいルーンだな…しかも衣服の上に、か…」 …そう言ってボクの左手のスケッチをする…間近に太陽があるみたいで目がショボショボした… 「さてと、じゃあ皆教室戻るぞ」 「ルイズお前は歩いて来いよ」 「あいつ『フライ』はおろか『レビテーション』もまともにできないんだぜ」 「チビの人形みたいな平民、あんたの使い魔にはお似合いよ」 「あ、でもちょっと可愛くない?」 「そうかぁ?僕には不気味だけどなぁ…」 …みんながふわりと浮きあがる…レビテトでも使ったのかなぁ…? …まっかな髪のおねえちゃんもフレイムといっしょに空に浮かんで行ってしまった …青い髪のメガネの女の子が最後にボクをじっと見てからおっきなドラゴンと一緒に飛び去って …ピンクの髪のプリプリ怒ってる女の子とボクだけが原っぱに取り残された… 「あ、あの…えーと…ヴぁ、ヴァリエールおねえちゃん…?で、いいのかなぁ…?」 …さっき呼ばれていたのがきっと名前だろうと思ってそう声をかけた 「私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!!! 呼ぶんなら『ご主人さま』と呼びなさいっ!!あぁ、もうっ、何なのよっ!!!」 …おねえちゃんはすっごく長い名前だった。ダガーおねえちゃんの本名ぐらい… …『ご主人さま?』 「え、あ、あの、『ご主人さま』って、どういうこと…?ルイズおねえちゃん…?」 …呼びにくかったので、「ルイズおねえちゃん」って呼ばせてもらうことにした 「あんたは私の使い魔!!だから、私はあんたの『ご主人さま』よっ! …ま、まぁ『ルイズおねえちゃん』でもいいけど…」 …あ、良かった。この呼び方で良かったみたいだ…それにしても、使い魔って…?あれ?それよりも… …さっきからなんでボクは動けるようになっているんだろう…? 「もぅっ!!!ボーっとしてばっかりで!!そんなに貴族の部屋が珍しい!?」 「わ、え、あ、ゴメンなさい…広くて豪華だなぁ、って…」 …で、ルイズおねえちゃんの部屋に来てから今まで、ハルケギニアの話、貴族の話、そして使い魔の話を聞いたんだ …もしかして、ここはガイアやテラじゃないかもしれないって気づいたのはこのときなんだ …これだけ大きなお城みたいな学校、飛空挺で世界中まわったけれども見なかったもんね… …ルイズおねえちゃんによると、ここはハルギゲニアのトリステインって国の、トリステイン学院、魔法の学校なんだって …魔法の学校かぁ…ちょっと、ワクワクするなぁ…でも、貴族しか通えないんだって…ちょっと残念だなぁ …で、使い魔って、召喚獣とは違って、メイジ(魔道士に近いのかな?でも貴族らしいから違うかもしれない)とずっと一緒にいるんだって …で、えーと…か、感覚のきょーゆー?とかいうのと、魔法のための素材探し、それから、護衛なんていうのもやるらしい… …ボク、よくわからないけど、使い魔になっちゃったみたいだ…なんか色々大変そうだなぁ… 「はぁ…感覚の共有もできないし、田舎者すぎて薬草の知識も無い、護衛だって…そんなナリじゃね…」 「う…ゴメンなさい…」 …さっきから謝ってばっかりだなぁ… 「まぁ、いいわ、あんたには雑用とか、明日から色々やってもらうから!いいわねっ!!」 「あ、う、うん…」 「もうこんな時間だし、今日はもう寝るわ…あんたは床よ!」 「う、うん…」 …旅の途中で何回か野宿もしたし、床で寝るのは久しぶりだけど全然平気だ… …ともかく、死んじゃったって思ったら、まだボクには色々やれることがあるらしい…雑用だけど… …だれかのために何かできるんだったら、いいことじゃないかなぁと思うんだ…雑用だけど… …そんな色々なことを考えながら、寝ようとしたら、帽子の上に薄い布が飛んできたんだ 「それ、明日洗っときなさいよ!!」 「え?あ、うn」「返事は『はい』!」は、はいっ…」 …それは、下着だった… …ともかく、ルイズおねえちゃんの使い魔になっちゃったみたいだし、色々やってあげよう、と思ったんだ …それに、ルイズおねえちゃん、ちょっと怖いけど…うまく言えないけど…何か、ほっとけない気がするんだ… …だから、ジタン、みんな…ボク…がんばるよ… …おやすみ… ピコン ~おまけ~ ATE ―ルイズの1日― …もう、寝たのかしら? 「グゥ、グゥ」 …わ、わかりやすい寝方ね… ほんっと、今日は散々な1日だったわ… 召喚は何度も何度も失敗するし、 出てきたのはとんがり帽子の人形みたいな平民だし、 お気に入りのマントは燃やされるし…しかもあのツェルプストーの使い魔に! 何よ、サラマンダーが何よっ!た、ただの火を吐くトカゲじゃない! …うー、私ももっとすごい使い魔が欲しかったのに… …とんがり帽子をキュッキュッって直す仕草にちょっと「あ、カワイイ」とかときめいちゃったけど… …「ルイズおねえちゃん」って言われてうれしくなっちゃったりしたけど… いや違う違う違う!!!あれはほら、そう、母性本能!? いやいやいやいや違うわ、貴族!そう貴族として、平民を庇護しなければならないという責任感からくる感情よ、うん、そうなのよ!! …貴族として、よね。サモン・サーヴァントもコントラクト・サーヴァントも成功したんだし、もうゼロじゃないのよね、私… そうとなれば、この平民に貴族として明日から、みっちり良いところをみせなくてはね!! おねえちゃんとsってちっがーーーうっ!!貴族!き・ぞ・くとして!! …弟がいればこんなのだったのかなぁ… ちがうちがうちがうー、弟とかそんなんじゃなくてコイツは平民でーっ!あーもうっ!寝なくちゃ明日から通常授業なのにーっ! 眠れないのもみんなこの使い魔のせいよーっ!もーっ! ピコン ~おまけ2~ ATE ―どっかの作者の失敗― ディシ○ィアが出るうれしさで思わず初SS書いちまったなぁ… まぁ、ジタン召喚するのと迷った挙句(最強のFFは9かT、異論は認める) ビビ選んで良かった…初SSにしてはみんな期待してくれてるみたいだし… でも、だ… 失敗しちまったぁぁぁぁ!! 最初は「ビビ召喚でデルフ持ったらスタイナーなしで一人魔法剣使えるんじゃね?KH2で見せた剣術と組み合わせて…うはwww夢がひろがりんぐww」 って考えてたのにっ!!! デルフ魔法吸収しちゃうじゃんっ!!!魔法剣使えないじゃんっ!! ビビの最強奥儀「リフレク2倍返し」+「いつでもリフレク」しようとしてもデルフ吸収しちゃうじゃんっ!! 俺のばかぁぁぁぁぁぁ 前ページ次ページゼロの黒魔道士
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/7762.html
82 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/12/17(水) 03 19 34.65 ID gVHuJx8s0 セイ「緩くなったポリキャップはこうして瞬間接着剤を流し込んだ後、動かすとまたキツくなるんだよ」 シンタ「わーい!ありがとうセイ兄ちゃん」 セイ「どういたしまして」 騎馬王丸「東方不敗、将棋の決着はガンプラバトルでつけようではないか」 東方不敗「面白い!このマントの表面にヤスリをつけたワシのマスターガンダムに勝てるかな!?」 ザコ「ザコー!大変ザコー!!」 パーラ「おーお帰り。お使い終わったか?釣りは駄賃でいいぞ」 ザコ「それどころじゃないザコ!セイ君はいるザコか!?」 セイ「どうしたの?」 ザコ「ザコは…ザコは見てしまったザコよ!!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ザコ「後はカロッゾベーカリーで食パン買うだけザコね」テクテク シャア「………」 ザコ(あ、シャア社長ザコ。珍しいザコ、こんな商店街にいるなんて。 しかもサングラスでアタッシュケースを持ってるザコ。人目を気にしてるザコか?) カランコロン ザコ(あれは……コウサカさん家のお店に入っていったザコ。でも変ザコね? お店のプレートはclosedになってるザコよ。……こっそり外から店内を伺ってみるザコ) シャア「―――」ミブリテブリ チナパパ「………」ムムム… チナ「――…」オロオロ シャア「――!」ニヤリ ザコ(シャア社長がアタッシュケースを開けたザコ!中は金塊ザコ!!) チナパパ「―――!!」ブンブン シャア「………」スッ… チナ「!?」 ザコ(コウサカさんが眉間に皺を寄せて首を振ったと思ったら、シャア社長がチナちゃんの肩を掴んで自分の方に引き寄せたザコ!?) シャア「―――」ニヤッ チナ「!!」サッ シャア「………」フッ チナパパ「―――!!」 シャア「―――」 チナパパ「……」コクン シャア「―――」ニヤリ ザコ(シャア社長が強引にチナちゃんに視線を合わせると、チナちゃんは慌てて視線を逸らしたザコ! それでもシャア社長の余裕のある表情は崩れないザコ!コウサカさんが社長に対して何かいってるけど シャア社長は言い聞かせるように滔々と喋ると、チナパパも最後は納得したザコ!?! そしてシャア社長は勝ち誇ったようにコウサカさんと握手をしたザコ!!!) シャア「―――」サッ チナパパ「………」 シャア「………」フッ チナ「………」 シャア「―――」ササヤキ チナ「――!!」プルプル ザコ(コウサカさんがアタッシュケースを受け取ったザコ。そしてシャア社長は呆然とするチナちゃんの髪をかき上げると 耳に唇を近づけて何事か囁いたザコ!!するとチナちゃんは震えて泣き出したザコ!) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 83 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/12/17(水) 03 23 48.20 ID gVHuJx8s0 ザコ「その後シャア社長は満足げにチナちゃんをみると、颯爽とお店を出たザコ……」 パーラ「おい、それって……」 東方不敗「シンタ、クム、向こうでワシと一緒に遊んでこようか。風雲再起もおるぞ」 シンタ「風ちゃんもいるの!?」 クム「わーい!!」 パーラ「………」 騎馬王丸「つまりこういうことだな。男が営む店は経営難で金に困っていた。 そして男の娘に目を付けた金持ちの男が現れ、娘を売れと言ってきた。 男は最初は反対したが、金持ちに説き伏せられ娘を売った。哀れな娘は涙を濡らすばかり……」 パーラ「き、騎馬王丸!!」 騎馬王丸「そうとしか考えらえまい。よくある話よ」 ザコ「ザコ!?シャ、シャア社長はロリコンだけどそこまで人として落ちぶれてないザコ!多分!きっと!ザコ!!!」 パーラ「ど、ど、どうすりゃいいんだ……!?と、とりあえず男湯にいってグラハム呼んでくればいいのか!?」 ザコ「コマンダー様ザコ!コマンダー様ならきっと事情を知っている筈ザコ!!」 騎馬王丸「ところでガンプラに長けたぷにぷにがなにやら血相を変えて走っていったが、あやつニッパーを忘れていったぞ?」 ザコ「ああーー!?セイがいないザコ!!」 パーラ「もぉぉ!!こんなときに限ってシンがいないんだから!!!バイト代カットすんぞ!!」 タッタッタ! カランカラン!! セイ「委員長!!」 チナパパ「おや、ガンダムさん家の……」 セイ「委員長のお父さん、委員長は!?」 チナパパ「チナなら家にはいないよ」 セイ「そんな……どうして!!どうして僕に相談してくれなかったんですか!?」 チナパパ「ええ!?いや、そんな……家のことだし、君に相談するようなことじゃ……」 セイ「……これ、使ってください」 チナパパ「え?通帳?」 セイ「900万ギラ入っています」 チナパパ「ぶーーーーーー!?!!?!!?」 セイ「僕がガンプラバトルやビルド教室で稼いだお金です」 チナパパ「す、すごいね……い、いや、でも受け取る理由がないよ」 セイ「シャアさんのお金は受け取ったのに!!」 チナパパ「どこでそれを……」 セイ「今はそんなことどうでもいいじゃないですか!!」 チナパパ「でもね、あれはチナが稼いだお金だよ」 セイ「そんな言い方って……お父さんはそれでいいんですか!!」 チナパパ「……悩んだよ。でもチナのためでもある」 セイ「そんな……そんな大人の言い方……歯食いしばれ!修正してやるーー!!」 チナパパ「な、なにをするんだセイk…あべし!?」 カランカラン チナ「ただいm…イオリ君!?パパ!?」 セイ「委員長!シャアのところになんていっちゃダメだ!!」 チナ「ど、どうしてそれを……。でもイオリ君、私もう社長と約束しちゃったの」 セイ「そんな約束、無理やりじゃないか!!」 チナ「確かに強引だったけど……でも社長はフランスに私を連れて行ってくれるって……」 セイ「そんな……そんなものに惹かれたの!?」 チナ「そんなものって……私にとっては夢なの!」 セイ「フランスぐらい僕が連れて行ってあげたのに……ううぅ……」 チナ「イオリ君にそこまでして貰えないし……」 セイ「シャアならいいって言うの!?委員長のわからずや!!」 ダッ!! チナ「イオリ君?!え、えぇっと……パパ、おつかいの人参ここにおいておくから!」 84 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/12/17(水) 03 26 23.94 ID gVHuJx8s0 カテジナ「遅いぞクロノクル!」 クロノクル「すまない、ザンスカールのタイヤ戦艦の冬タイヤ交換があってな……」 カテジナ「ふん!言い訳をする男は嫌いだ!」 クロノクル「寒い思いをさせたな」 カテジナ「別に…」 クロノクル「その赤い手を見ればわかる。本当に待たせてすまない」 カテジナ「………」 クロノクル「まだ映画には時間がある。そこの喫茶店でカテジナの好きなダージリンで温まろう。もちろんアップルパイもつけてな?」 カテジナ「……ふん」 ダン!ダン!ダンッ!! カテノクル「「!?!」」ビクッ!? ゼハート「シングルベール…シングルベール……」 マオ「商店街のイルミネーションを見ると、無償に壁を殴りたくなりまへん?」 クロノクル「な、なんだお前達は!?」 ゼハート「お前達……私達が見えるのか?」 マオ「あんさんらみたいなリア充にはワイらみたいな地べたを這いずり回る喪男なんて見えへんのかと思いましたわ……」 カテジナ「ク、クロノクル、はやく行こう!コイツら危ないよ!!」 クロノクル(カテジナが危険を感じる連中だと……!?) ゼハート「ははははははは……」 マオ「ひひひひひひひ……」 < 委員長のわからずや!! マオ「あれ?どこかで聞いたような声が……」 ゼハート「私のXラウンダー能力がいまNTRを食らった惨めな男を感知した……追いかけるぞ」 マオ「まさか……聞き間違えや!セイはんに限って……アンタは…アンタはリア充やなかったんか!!」 セイ「………」ブツブツ マオ「ああ、セイはんが公園の隅でガンダム兄弟伝統の体育座りを!?」 ゼハート「握り締めたドムの頭を齧っているのか……一体何が……」 ルナ「辛い……話になるわよ」 マオ「ルナマリアはん!?」 ルナ「私、聞いちゃったのよ」 ゼハート「何をだ?」 ルナ「サテリコンでシンが来るのを張り込んでいたらね、ザコが慌ててお使いから帰ってきて……かくかくしかじか」 ゼハート「なんだと!?」 ルナ「それでアホ毛をセイ君に貼り付けて行く末を盗ちょ…見守っていたんだけど、どうやら……もぐもぐうまうま」 マオ「まさか……あの二人に限って……」 ゼハート「ガンダム兄弟のリア充っぷりは私だって知っている。しかしそういう事情ならばな」 ルナ「ゼハート、どこへいくの?まさかセイ君を慰めるつもり!?」 マオ「ゼハートはん!今のセイはんに半端な慰めは危険なんです!」 ゼハート「………」 テクテク 85 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/12/17(水) 03 28 59.31 ID gVHuJx8s0 ゼハート「この時期に独り身であることの辛さは私だって知っている」 セイ「………」 ゼハート「クリスマスというものが、もはやすでに恋人達がイチャイチャする行事になっていることも…… だがそれを認めてしまったら、今までのクリスマスで死んで逝った者達はどうなる? 彼らが独りですごしたクリスマスはどうなる?それを無為にすることはできない…… 48時間もの間、紡がれ、積み重なっている恋人達への思いを、私は拳に込めなければならない。 ……彼らの歴史の中の、消えていくだけの孤独のベルを、ただ僅かばかりの嫉妬を、私は刻み、叶えたかったのだ」 ルナ「それはっ、人の負いきれる重さじゃないわ!」 ゼハート「それが私の望んだ壁叩き……」 マオ「恋人が作れなかった者たちのためにさらに壁を叩いてっ!それでなんの未来が得られるんやっ!!」 ゼハート「私は……壁を代償にしてでしか、慰めを与えられない……」 セイ「それは違う……」 ゼハート「なに?」 セイ「確かに僕たちは道をたがえたかも知れない……けど僕たちの過ごしてきた時間が色褪せて消え去ったりはしない…… 傷つけあったことも、わかりあえずすれ違ったことも、一緒に泣いて……そして笑いあったことも……」 ゼハート「あぁっ……あぁぁっ……」ガクガク ゼハート(これが、一度でも彼女が居た者と、生まれてからずっと独りの者の違いっ……!!)ガクッ マオ「ゼハァァァトォォォォはぁぁぁぁぁんっ!!」 ルナ「ゼハート……貴方はあの日見た遠い星の光よ……」 ザコ「ああ、いたいたザコ!!」 パーラ「おーい、セイ!」 ザコ「チナちゃんにも連絡するザコ」 パーラ「あのさ、なんか勘違いだったみたいだぜ」 セイ「勘違い?」 パーラ「コマンダーサザビーから聞いたところによると、ネオジオン社がクリスマスに向けて新しいアッガイ出すんだって。トナッガイっていう。 んでチナの作ったベアッガイⅢのことを聞いたシャアのおっさんが、チナをぜひアドバイザーにって商談にきたらしいぜ?」 セイ「商談?」 パーラ「さすがに大金すぎるってチナの親父さんも受け取れないってビビッたんだって。チナもチナで男に免疫ないから頭真っ白になってたってさ。 それでもシャアのおっさんはあれでも敏腕だからな。うまく言いくるめて、話纏めて、お金は保護者である親父さんが預かることにして アドバイザー料ってだけじゃなく、チナの絵の才能に投資するって名目でさ、将来留学先と資金にしてってコトでお金渡したんだってさ」 ザコ「チナちゃん、フランスで絵の勉強するのが夢ザコね。シャア社長はセレブザコから、そっち方面にもコネがあるし 社長本人もいくつものコンクールの審査員やってるぐらいザコ。その社長直々に留学を薦められて……つまり才能が認められて、チナちゃん思わず泣いちゃったザコ」 セイ「そ…そうだったの!?はぁ~……」ヘナヘナ パーラ「まったく、ザコがそそっかしいせいで!」 ザコ「ザコだけのせいにするなんて酷いザコ!」 セイ「はは……いいよ、もう誰かのせいとか。あ!どうしよう……委員長のお父さん殴っちゃった……」 チナ「イオリ君!!」ハァハァ セイ「委員長!!」 チナ「あ、あのね……イオリ君……」 セイ「な、なに?」 チナ「フランスに連れて行ってくれるって……」 セイ「あ、いや、あれは……」 チナ「私の夢のためにイオリ君に負担かけたくないから……イオリ君はイオリ君の夢を頑張ってほしいから!」 セイ「委員長……そうだね。それにフランスでもガンプラは人気だから、きっと僕もいつかフランスに行くときがあると思うんだ」 チナ「そ、そうよね。も、もしそうなったら……私に会いに来てくれる?」 セイ「もちろんだよ!一番最初に会いに行くよ!」 チナ「い、一番……えへへ……」ニヘラ セイ「あ……いや、その……あはは……」ポリポリ ザコ「めでたしめでたしザコ」 パーラ「ったく、ノロケてくれるよな。まだクリスマス前だってのに」 ゼハート「……マオ」 マオ「……はい」 ダン! ダン! ダンッ!!
https://w.atwiki.jp/zairin/pages/550.html
108 :それも名無しだ:2010/10/19(火) 23 05 08 ID +iyFMsMQ イスペイル様は変態だけど、ルイス様は苦労人に入ると思うの。 109 :それも名無しだ:2010/10/19(火) 23 56 48 ID JIijJ6J+ ルイス様「うわぁ~ん!私、変態じゃないよぉ~みんなにドジっ子って、言われるだけだよぉ~!」 110 :それも名無しだ:2010/10/19(火) 23 59 03 ID 3fG2ypIY 苦労人ですら気づけば変態化していく…ザイリン酸の侵食力は異常だなw 115 :それも名無しだ:2010/10/20(水) 19 58 32 ID dboVT0ly ルイス様「私もついに変態さんの仲間入りしちゃったよぅ…orz」 レイ(種)「気にするな。スーツを着ていない状態ならまだ変態ではない。 が、油断していたらスーツ着用時同様変態になる可能性も無きにしも非ずだな」 ルイス様「ふえぇ!?ど、どどどどうしたらいいのかな…」 レイ(種)「率直に言うと、スーツ着用時は変態というのはすでに免れない事実だ。 だが、スーツを脱いでいる状態だけでも変態ではない趣味を見つければ、 少なくともルイスでいるときはマトモな状態でいられるだろう」 ルイス様「あぁ、やっぱりあの姿の私はもう変態なんだね…なんか悲しいなぁ… でも、私研究以外の趣味とか全然知らないよ?」 レイ(種)「まぁ、そこは俺も極力協力してやる。マトモな女性に聞いてみるのもいいかもしれん。 ルナマリア辺りならいい意見が得られるだろう」 ルイス様「う、うん。分かった。 …ありがとうね、何度も面倒見てもらっちゃって。」 レイ(種)「気にするな。俺は気にしない」 116 :それも名無しだ:2010/10/20(水) 20 16 53 ID jjKW80gx ルナマリアの意見を聞いて、ジョシュアを逆レイ〇するルイス様の姿が(ry 117 :それも名無しだ:2010/10/20(水) 22 35 10 ID lIooL/Qa 【ペットショップ・ry】 ルナマリア「趣味ねぇ」 レイ「気にするな、俺は(ry)とも言えんのでな。何かアドバイスを」 ルイス様「お、お願いしますっ!」 クーコ「あのう、ルイスさんてよく今みたいなフリフリの服を着てますよね。服とかのショッピングはどうなんです?」 ルイス様「えっ!?こ、これは…L君とかBちゃんに買ってきてもらったものなんだけど」 ルナマリア「はぁ…自分の服は自分で買わないとダメよ。イスペ兵さんはお父さんの部下なんだから公私混同は(ry)」 ルイス様「す、すみません…(まあ父じゃなくて自分なんだが)」ペコペコ レイ「ふむ。買い物か」 【ギル・バーガー★】 ソル「天体観察なんてどうかな?夜空をじっくり見れば、地球が小さな星だって分かるよ」 ルイス様『…天体ならぬ変態観察なら、毎日嫌という程してるが(汗)』 スウェン「バストアップ体操とかはどうだ」 ヒミカ「幼子に妙な知恵を吹き込むな。やはり銅鐸研究がお勧めじゃ」 セレーネ「趣味なんか昼寝か朝風呂で十分よ」 剣児「間違ってもあんな大人になるなよ」ヒソヒソ ルイス様「は、はぁ」 レイ「まあ、一応メモをとっておくか」 総士『剣児さんがマトモなアドバイスをするなんて…… いやよそう、僕の勝手な思い込みでみんなを混乱させたくない』 乙姫『総士、ミストの真似全然似てないよ』 【いんでぃくす☆】 レイ「どうする?ウチのメイドにも意見を聞いてみるか?」 ルイス様「う、うーん…何となく展開が読めちゃうんだけど…」 118 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 01 44 22 ID xe+5rQW2 ルイス様「その前に、お客さんにも聞いてみようかなぁ」 シンシア「趣味?ゲームっしょ!せっかくのアキバなんだし色々漁ろうよ!」 メイリン「と○のあなに○イト、ゲー○ーズ、そっち方面が好きになれば天国ですよね」 アビー「いんでぃくす☆は男性多いから観察してるだけで美味しいじゃないですか。 剣司君ヘタレ攻めジョシュアさん流され受け、ザイリンさんうっかり攻めに肉○器ノーザさんで」ムフフ ルイス様「…ア、アハハハ…ちょっと理解しがたい世界かな…」 早乙女「うげーっ、オタク女の趣味と来たら軟弱だよな!もっと筋肉使えってンだ!」 パイ「そーさね、少しは身体動かさないと育ちが悪くなるよぉ。おっぱいとかのさ」プルン シンシアメイリンアビー「余計なお世話だよ(です)っ!!!」 レイ「オタ女VS筋肉女の平行線バトルが始まりそうだが、俺は気にしない」 ルイス様「ま、まぁ私もどっちかといえばオタク側なんだけど」 レイ「(どっちかどころかかなりの…)気にするな、俺は気にしない」 ニュッ プロ子「あらあら、ルイスちゃんが新たな趣味をお探しですって!(・∀・)」 ルイス様「(げげぇ!厄介な奴が来おった!)は、はい…そのぉ…」 プロ子「そうですわね、コスプレ少女を目指してはいかが?わたくしが似合うコスを見繕って差し上げますわ(・∀・)」 つスパロボMXア○アコス つエロ水着 つエロランジェリー ルイス様「こ、こんな布の少ない衣装なんて…趣味で着られやしません!」 レイ「コスプレというよりただの板倫への挑戦だな。だが俺は気ry」 ステラ「うぇーい?そのパンツはステラのだよぉ~」 ノザ子「らめぇぇえ!それノザ子のブラだよぅ!(///」 ルイス様「二人ともこんな凄いの着けてたの!?」ガーン プロ子「オホホ、二人ともわたくしの英才教育の賜物ですわよーん(・∀・)」 119 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 03 29 28 ID um4mSoC6 ルイス様「はぁ・・・なんか疲れてきちゃった・・・」 レイ「あと、この店で聞いていない人物となると・・・」 咲良「買い出しから戻りました。」 祐未「あれ、ルイスちゃん。何か用事かしら?」 ルイス様「(ようやくまともな相談が出来そうだな)え、え~と、実は・・・」 咲良「ふ~ん、新たな趣味探しねぇ・・・」チクチク レイ「ああ、それで様々な女性陣に色々聞いているのだが・・・」 祐未「まだ美容体操とかやる様な歳ではないしねぇ・・・」チクチク ルイス様「?祐未さん逹。さっきから何をやっているんですか?」 祐未「冬に向けて新しいセーターを編んでいるんだけど・・・。そうだ!?ルイスちゃん。一緒にやってみない?」 ルイス「えっ!?き、急に言われても・・・」 咲良「大丈夫だって!!私達がちゃんと教えてあげるから」 ルイス様「う~ん・・・」 レイ「この際やってみてはどうだ?見ているだけよりも少し体験した方がいいぞ」 ルイス様「は、はぁ・・・じゃあ少しだけ・・・」 120 :ルイス様にこんな事をさせる俺のネタに価値ry:2010/10/21(木) 07 11 59 ID JO9WsIWN 【イディクスの部屋】 ヴェリニー「で編み物をやっていたらこのザマ。ほんとにドジっ娘だね」 ルイス様(両手がドラ○もん状態)「うー、わたしだって好きでドジっ娘やってるんじゃ…」 ヴェリ兵B『好きでやるものじゃないよね』 ヴェリニー「はいはい、取れたよ。この毛糸は貰ってもいいかい?」 ルイス様「うん、咲良ちゃんからの貰い物で良ければ。ヴェリニーも編み物するの?」 ヴェリニー「違うさね。これはこうやって使うんだよ」ツンツン ルイス様「は?」 ヴェリニー「ああ…毛糸を転がすと癒されるぅ」コロコロ ルイス様「ずいぶん変わった趣味だね……」 ヴェリ兵B「趣味というよりは本能ですね」 ガズム「趣味か?俺も特にない…うっ!また頭痛がぶり返した」イチチ ゼナ(ガズム専用の介護アンドロイド・少女型)「だ、大丈夫ですか、ガズム様?」 ガズム「ま、またいつもの頭痛だ。それよりこの前買った頭痛薬を…」 ゼナ「また新しい頭痛薬ですか。そろそろ新しいのを買うのを止めては」 ガズム「そ、そうは言ってもな…う、痛ぇ」 ルイス様『頭痛薬を買いあさるのも趣味かな?』 ヴェリ兵C「アタシはお菓子の買い食いニャ♪」ペロペロ イスペ兵S「僕はギャルゲにエロゲです!」キリッ ヴェリ兵M「……メカいじり(///」 ルイス様「みんな結構趣味持ってるんだ…」 ル・コボル「プロ子ちゃんに勧められたコスプレはどうするの?」 ルイス様「あ、あんな…えっちなのは着られないよぉ~」 ヴェリ兵A「まあエッチなコスプレが出来るにはあと五年は必要かな」 ヴェリ兵N「ルイス殿にはまだ早いでござる」 ルイス様「………#」カチン←ルイス様の闘志に何かが付いた音 【いんでぃくす☆】 ルイス様「つ、つい……反発して付けたけど……何か恥ずかしいな(///」モジモジ ザイリン「ルイス君がモジモジしてるが…」 翔子「体調でも悪いんですかねぇ」 プロ子「オホ(・∀・)」 121 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 13 27 25 ID oYS7Xt33 ヴィル「母よ、今日はやけにソワソワしてるな」モグモク ルイス様「べ、別に何でもないから!き、気にしないで!」 ヴィル「なら私は何にも気にしないし構わん」ムシャムシャ ルイス様「ヴィルはどうせならカロリー気にした方がいいね…」 ミスト(まだバイト中)「ほらヴィル!ご奉仕おいもプディングお待たせだ!」 ヴィル「ふんっ!」 ベキッ ミスト「へぶぅ!?い、いきなり殴るなよぉ!?」 ヴィル「メイドならばしおらしく『ご主人様、お待たせしましたぁ☆』と言え」 ミスト「些細なことじゃないか…一緒に住んでるのにそんな演技恥ずかしい…」 ヴィル「馬鹿、親しき仲にも礼儀ありだ、メイドの立場をわきまえろ」パクパク ルイス様「(そう言えばコイツ等、同居してるのか…今更だが不安だな…よもや)」 モワモワーン ミスト『アトリームにもデキ婚はありましたよ、地球より迅速なものがね』 ヴィル『腹の子の栄養も取らねばならん、もっとスイーツを寄越せ』ムシャムシャ シェルディア『ずるーい!ボクだって4ヶ月目なんだからね!』モグモク アンジェリカ『うぷ…や、やめて、つわりでお菓子の匂い嗅ぐと…オェーッ』 ミスト『全員まとめて母親にするだなんて、こんな俺に価値はry』 ルイス様「価値はないよぉぉー!!!」ミルナリオンハンマー!! ミスト「クリスタルッ!!」ベタン ヴィル「いいぞ母よ、この無礼なやつに礼儀を叩き込んでやれ」ムシャムシャ 123 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 21 36 18 ID JO9WsIWN 122 ザイリン酸のせいです ええ全てザイリン酸のなせる業です… 【ボロめなアパート】 ロン「ルイスちゃんの趣味って何かなぁ」 ヴァン「最近寝てもさめてもルイスルイスだな」 セイジュウロウ「ロン、悪いことは言わん。そろそろ夢からさめろ」 ロン「失礼だなぁ。これは仕事でルイスちゃんを調べてるんだ、けっして興味本位じゃないよ」 ヴァン「嘘臭え」 セイジュウロウ「…まあそれで稼げるなら問題はない」 ロン「うーん、ルイスちゃんの趣味…女の子らしく刺繍とかお花を育てることかな。 いやいや意外にも下着集めとか…ルイスちゃんのパンツ…きっと清純な白とか可憐なピンクなんだよねぇ」クネクネ ヴァン「馬鹿だな」 セイジュウロウ「…馬鹿に着ける薬はない」 【いんでぃくす☆】 ルゥ「下着占い?」 プロ子「ええ、ネットで見つけましたの。ちなみにこれが今日の運勢ですわよん」つ【リスト】 翔子「フヒヒッwwちょっと試しにww」 白:いつも清楚可憐な貴女にラッキー。片思いの彼が誘いにくるかも? 黒:大人っぽい貴女に刺激的な出会い。血湧き肉踊る出来事が… ピンク:恋に生きる貴女に恋敵の襲来!ラッキーアイテムはハリセン 青系:クールに決めた貴女だけどピンチが!?水回りには気をつけて! 黄色系:ほんわかタイプの貴女は金銭的にちょっとひと息つけそう 縞系:一癖ある貴女にはきつーいお仕置きが。オカンには要注意! アダルト系:背伸びしたい貴女に【板倫】超えの大々ピンチ!?何をやってもダメかも… ルイス様「ええーっ!」ガビーン プロ子「あらあらルイスちゃんたら。占いを信じ過ぎてもいけませんのよ(・∀・)」ニヤニヤ ルイス様『プ、プロイストめぇぇえ!!私で遊ぶ気満々だな!!』 124 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 21 49 02 ID aLbGUmf4 一応ラスボスであるル・コボル様がスレ随一の常識人ってのもすげえ話だな… レイ(種)「手段と目的が入れ替わって余計に変態化が進んだようだが気にするな、俺は気にしn」 ルイス様「気にして!?」 レイ「趣味は見つかったんだろう?ならば大丈夫だ、問題無い」 ルイス様「ある!問題あるよ!あれはつい勢いで…って何言わせるの!///」 レイ「落ち着け、お前は既に相当錯乱している」 ギャーギャー ヴェリニー「漫才見てる気分ね、どっちがボケでツッコミやらわかりゃしない」 ル・コボル「でも素で話せる相手が居るっていうのは良いことだよ?もう色々混ざりすぎて 素のキャラが何なのかわからなくなった私みたいなのはともかく」 ガズム「俺はガズムだがアンジェリカの父親はエルリックでアンジェリカは俺の娘で…ああ頭が」 125 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 23 28 21 ID e4Coa5go ルイス様「と、に、か、く!あれは一時の気の迷いで趣味にするつもりは無いから!」 レイ(種)「そうか。結局振り出しに戻ってしまったが気にするな。俺は(ry まぁ、趣味を見つけるのにそう焦る事は無いだろう。やってみて偶然趣味になる事もあるしな とりあえずルナマリアが言っていたように、今度女性陣と一緒にショッピングに行ってみたらどうだ?」 ルイス様「そうだね…ルナマリアさんだったらまだマトモだしね。 しかし趣味を見つけるのがここまで大変だとは思わなかったよ」 レイ(種)「こんなことで悩むようになったのも、それだけ人間らしくなったからなんだろうな」 ルイス様「…そうかもしれないね。あ、そう言えばレイお腹空いてない?」 レイ(種)「む…もうこんな時間か」 ルイス様「今日は色々付き合ってもらったから、私が何か作ってあげるね。何がいい?」 レイ(種)「ふむ、ではカレーを頼むか…ってルイスは料理は出来るのか?」 ルイス様「あー、バカにしてるな。それくらい出来るよぅ。 まだまだ未熟な腕だけど、実は何度か作ってるし。…じゃ、作ってくるね」タタッ レイ(種)「…料理、か。全く、ちゃんと普通の趣味もあったじゃないか」 ル・コボル「本当にね。まぁ、それに気づくのも当分先になりそうだけどね~。 それより今日はありがとね。また相談される事もあるかもしれないけど、ルイスの事、よろしく頼むね」 レイ(種)「…気にするな、俺は気にしない」 126 :それも名無しだ:2010/10/22(金) 01 30 43 ID hbcvVw9P クルーゼ「レイも悩める女性へ助言できるほど成長したか」 ローザ「良かったですね、弟さんのこと、表に出さずとも心配しておりましたし」 クルーゼ「ああ、一時はデュランダルの阿呆に憧れたりしてどうなることかと」 ローザ「成長出来る、それこそ生きている証です。私たち死人には決して叶わない…」 クルーゼ「我らにも出来ることはあるさ、想いや経験を生きている人間へ伝えることが」 ローザ「ですわね。私、久しぶりに剣にお仕置きしてまいります♪」ススーッ クルーゼ「…レイが立派に育ってくれた今、私のやるべきことは」 ヒガント「プロイスト様ハァハァプロイスト様ハァハァぷろいすとさまハァハァハァハァ」ドクドクドク バルトフェルド「しばらく会わんうちに、ダコスタ君も妙なお友達が出来たんだねぇ」 ダコスタ「まー悪い子じゃないんですけど彼、お母さん見ると変態スイッチ入っちゃって」 プロ子「どうして我が子は変態ばかりですの?みんな私のクローンだというのに!」 剣司「そりゃ、プロイストさん自身ならみんな変態で然りっすよ!」 サスページ「すぐ板倫越えようとさせるプロイスト様こそ立派な変態ですし」 プロ子「んだと!俺の生き様捕まえて変態たぁなんだぁーっ!!」クワッ 剣サス「ヒギャー!!?」 クルーゼ「ウーム、我が子か」 ムゥ「零時過ぎ…エンデュミオンの夜鷹のお目覚めだぜ!」 ゲイン「俺の黒いサザンクロスも光って唸る、ってね!行くかい?」 ムゥ「おうさ、今日もまだ見ぬ女性と異文化交流(ビビッ)…うぐっ!?」 ゲイン「どーしたよ、ムゥ。腹でも痛いのか」 ムゥ「…か、下半身が…石みてぇに固まっちまってよ…」グググ ゲイン「なにぃ!?」 クルーゼ「奴も私にとって子みたいなものだからな、上手く矯正してやらねば」(金縛りビーム発生中) マリュー「はぁ…よく分からないけど頼むわね、クルーゼ」 クルーゼ「お義父様と呼んでくれて構わんよ」キラッ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1105.html
前ページ次ページハルケギニアの騎士テッカマンゼロ 「ホントに良かったの?」 ワルドのグリフォンの騎上で、上目遣いにルイズは尋ねた。グリフォンの手綱を引く、ワルドへ向けてのものだ。 今ルイズはワルドに抱かれるような格好でグリフォンにまたがっている。 目的地は昨日彼が言ったとおり、ヴァリエール公爵領。ときどき休みながらの、ちょっとした旅行のようなものだ。 「何だい? 急に」 「だってワルド、ゼロ機関とかの仕事で忙しいんじゃない?」 「君の警護も立派な仕事だよ。それにミス・ロングビルは優秀だしね」 「そうなの。そういえば、どんな仕事をしてるのか知らないわ」 「ラダムへの対策が主な任務だけど……今は国中から戦力に使えそうなものを探す方が重要かな。 ミス・ロングビルは今日はタルブ村に向かうと言っていたね」 「タルブ村? そんな所に何かあるの?」 「確か……竜の羽衣の伝説がどうとか」 「竜の羽衣?」 「伝説だよ。本当にあるとは思えない」 緊張しているせいか、口数が多くなっている。ワルドもそれは分かっているので、笑いながら話に付き合っていた。 そうこうしているうちに、目的地は確実に近づいていた。 少しずつ、ルイズの顔がこわばっていくのが分かる。 「ほら、見えてきたよ」 地平線の向こうに、やっと領境が見えてきた。 ヴァリエール公爵領は広い。領境から屋敷まで普通の馬車で半日かかる。 ワルドたちはグリフォンをとばして来たが、それでも時間がかかることには違いない。 やっと吊り橋が見えてきた。 吊り橋は上がっていたが、ワルドのグリフォンの前には大した障害ではない。それを飛び越え、さらに走る。 屋敷の目の前まで来た二人はグリフォンを降りる。グリフォンを樹の辺りに待たせ、屋敷に向かう。 歩いている途中で、ルイズはふと顔を上げた。 「そういえば、ワルドは戻らなくていいの? 近くでしょ」 すると、ワルドは顔色を曇らせた。再会して以来、初めて見せる表情だ。 「ワルド?」 「いや、すまない。僕の領地は壊滅したんだ」 「壊滅!?」 意外な返事にルイズは素っ頓狂な声を上げた。それに対してワルドは努めて平静な感じで応える。 「ああ、ラダムの襲撃があってね。今はもうラダムの植物園さ」 「ご……ごめんなさい。わたし、そんなこと知らなくて」 「いいんだ。もう、過ぎたことだからね」 そう言って笑う。とても寂しげな笑いだった。かなり堪えているのは間違いない。 当然だ。貴族として、領地を失うのは身を切られるように辛いはずだ。 ルイズは自分の迂闊さを心の底から悔いた。 屋敷の大きな門をくぐったところでルイズは足を止めた。 緊張しているのは分かるが、ここまで来て……。 そう思ったワルドが彼女の手を引いて促そうとしたところで、ルイズは顔をうつむけ、言いづらそうにしながらも口を開いた。 「……ねえワルド。一つ、頼んでいい?」 「何かな、僕の可愛いルイズ」 少しでも彼女の気を紛らわせようと軽い調子で言うが、彼女は顔を上げなかった。 「テッカマンのこと、父さまたちには言わないで」 家族に心配をかけたくないということだろう。ワルドはおどけた調子で承諾、ひざまずいてルイズの手をとり、その手に接吻をした。 「承知いたしました。我が姫君」 ルイズは照れて顔を真っ赤にし、ワルドに怒鳴りつけた。 ついに屋敷の目の前まで来た。来てしまった。 しかし、なかなか扉を開ける決心がつかない。手をつけただけで、そこから先に押せない。 ワルドはルイズが扉を開けるのをあえて待っているのか、何も手助けをしない。 「あなたたち、何をしてるのかしら」 そこへ後方から鋭い声が投げかけられた。ルイズは慌てて振り向くが、ワルドはそれを予期していたかのごとくゆっくりと後ろを向く。 そこでは、きつい目つきをしたブロンドの女性が杖をルイズたちに向けていた。 女性の姿を見て、いや見るまでもなく声だけでルイズはそれが誰か分かった。 「エ、エレオノール姉さま!」 紛れもなく、その女性はエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール。ルイズの長姉だ。 ルイズの顔と声を聞いたエレオノールは一瞬驚くが、すぐにいつもどおりの表情を取り戻す。 「あら、あなた……ちびルイズ?」 そしてつかつかと歩いてくる。懐かしさに抱きつこうとしたルイズは、いきなり頬を引っ張られた。 「どの面下げて、ここに顔を出しているのかしら~」 「い、いひゃい! なにをひゅるの、ねえひゃま」 その様子を見ていたワルドは、くすくすと笑いを漏らした。その声にエレオノールはルイズから手を離し、ワルドの方に向き直る。 「あなた、ワルド子爵ね。……結婚の報告にでも来たのかしら」 「ち、違うわよ! ワルドはただここまで送ってくれただけで……」 「そう……まあいいわ。入りなさい」 大きな扉を開ける。その先では、ルイズとよく似た桃色の髪をした女性がしっとりと微笑んだ。 「ルイズ……、お帰りなさい、小さなルイズ」 「ちいねえさま!」 ルイズのすぐ上の姉、カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌだ。まるで来るのが分かっていたか のように、ルイズを出迎えた。嬉しさのあまり、ルイズは彼女のすぐ上の姉に抱きついた。今度は頬をつねられるようなこともない。 「お久しぶりですわ、ちいねえさま」 「ルイズ、お顔をよく見せて」 細く白い手をルイズの顔に添えて、顔を近づける。 「まあ、すっかりきれいになって」 「ちいねえさまったら。ね、お体の具合はいかが?」 「ありがとう、相変わらずよ」 ルイズが顔をうつむけたのを見て、カトレアはとりなすように言う。 「大丈夫よ。いつものことだもの」 そこで話題を変えようと、ルイズは別の質問をした。 「そういえば、父さまと母さまは?」 ルイズの質問に、カトレアもエレオノールも顔をそむける。カトレアが口を開こうとしたところで、エレオノールは手で制した。 「父さまは貴族として軍務に復帰して以来、連絡がつかないわ。母さまは……」 「お姉さま、それは……」 カトレアが制止しようとしたが、エレオノールは構わずに続けた。 「……母さまはあんたを探しに行ったきり、帰ってこないわ」 彼女の言葉に、ルイズは大きな衝撃を受ける。自分を探しに行ったということは、トリステイン魔法学院に…… 「あの……姉さま、それってどういう……」 「魔法学院と連絡が取れなくなって、あの化け物が現れたでしょ。それで、あんたを探しに飛び出していったのよ」 「お姉さま!」 カトレアは珍しく声を荒げた。しかしエレオノールはその抗議を受け付けない。 「黙っていてもいずれ分かることよ。ならさっさと教えた方がいいわ」 「それは……ルイズ?」 ルイズは放心したように、両膝を地面に落としている。尋常ではないその様子に、カトレアはしゃがみこんで問いかけた。 「ルイズ、大丈夫?」 「わ、私のせいで……母さまが?」 「そんなことはないわ。あなたのせいではないのよ、ルイズ」 「ルイズ、話があるから後で私の部屋にいらっしゃい」 そんな二人の様子を見下ろしながら、エレオノールはきつい調子で言った。 何とか自分を取り戻したルイズは、カトレアの部屋でドレスを選んでもらい、彼女自らに髪を整えてもらっていた。 心労のせいか、髪の毛はかなり痛んでいた。カトレアは優しく、自分とそっくりな色の髪に櫛を通す。 沈んだままの表情で、ルイズはカトレアに訊いた。 「……ちいねえさま」 「何? ルイズ」 「エレオノール姉さまって、やっぱりわたしのことを嫌ってるのかな?」 「何でそんなことを思うの?」 「だって、エレオノール姉さまったら昔からわたしにいじわるしてばっかで……母さまだってわたしのせいで……」 途中から涙声になっている。カトレアはルイズを後ろから優しく抱きしめ、ささやいた。 「そんなことないわよ。姉さまだってあなたのことが可愛くて仕方ないのよ。心配だから、ついついきつく言っちゃうの。 それに、魔法学院のことを聞いて真っ先に飛び出そうとしたのはねえさまなのよ?」 「え、うそ!」 「本当よ。けど、わたしをほうっておけないからって姉さまは家に残って……母さまが代わりに探しに行ったのよ」 ルイズはカトレアの話に聞き入った。昔から自分にいじわるばかりしていた長姉の意外な一面を初めて知った。 「だから、母さまのことはルイズのせいじゃないわ。むしろ、わたしのせいよ?」 「そ、そんなことない! ちいねえさまのせいなわけないじゃない!」 「ほら、誰のせいでもないでしょ? 母さまは自分で決断して出て行ったの。だから、あなたが気にすることじゃないわ。 分かった?」 「……うん」 長い沈黙の末、ルイズは頷いた。カトレアも満足そうに微笑む。そして再びルイズの髪の毛に櫛を入れた。 カトレアに再び髪を整えられる気持ちよさに身を委ねながらも、ルイズは思った。 誰のせいでもない。ちいねえさまはそう言っていたけど、本当はそうじゃない。 紛れもなく、ラダムのせいだ。そして、それを呼び出したのはわたし……。 カトレアに見えないところで、ルイズは強く拳を握り締めた。 「エレオノール姉さま、入ります」 カトレアと共に、部屋に入る。そこにはエレオノールだけでなく、彼女と対峙するような形でワルドまでがいた。 「あら、来たわね」 ルイズが入ってきたのを見たエレオノールはちょうどいい、とばかりに言った。 ここに何故ワルドがいるのか分からないルイズは、混乱する。 「お姉さま、これはいったい……?」 「ワルド子爵にも聞いてもらうためよ。あなたたち、さっさと結婚なさい」 あまりにも突然のことで、わけが分からない。ルイズは間抜けにも、呆けた表情となってしまった。 「……え? ええぇぇぇぇっ!!?」 やっと理解したルイズは、可愛らしい声を全開にして驚いた。 エレオノールは、ルイズが叫び終わって息を整えているのを見計らってから、発言する。 「もう学院もなくなってしまったことだし、おとなしくうちで花嫁修業でもしていなさい!」 「でも……」 「でも、じゃなくてはいでしょ! あんたたちは婚約者なんだから、別に今から結婚しても問題ないわ!」 しかし、あまりにも突然のことに、気持ちの整理がつかない。 「だって……そうだ! ワルドは、ワルドはなんて言ってるの!?」 突然話を振られたワルドは、ルイズのほうを見、エレオノールのほうへと向き直る。 「そうだね。僕としてはルイズと今すぐ結婚できるのは嬉しいよ」 「……だそうよ。ルイズ、文句はないわね!」 エレオノールは強い調子で断じた。あまりのことに、ルイズは惑うばかりだ。 「そんな……いきなり」 そのとき、ルイズは他のテッカマンの気配を感じた。すぐ近くにいるこれは、間違いなくダガーのものだ。 ルイズはエレオノールとカトレア、ワルドの顔を次々と見比べた。そして、ワルドの方に視線を固定させる。 彼女の視線に気付いたワルドは首をかしげる。 「どうかしたのかい?」 「ワルド、ちょっと来て!」 返事も聞かず、強引に引っ張って部屋を出る。ドアに差しかかった辺りで、カトレアが声をかけた。 「ルイズ、どうかしたの?」 そして、足早について来ようとする。ルイズは心の中で謝りながら、大きな声で言った。 「ごめんなさい、ちいねえさま! ワルドと二人っきりで話があるの!」 廊下に出たルイズは、そのまま足早に外へ向かっていた。彼女の尋常でない様子と表情に、思い当たったことを訊く。 「ラダム、かい?」 こくりと頷く。ワルドは仕方ない、とでも言う風に肩をすくめた。 「お姉さまたちには、うまく言ってくれる?」 「分かったよ。君との結婚は当分先になりそうだね」 「え?」 「こんなんじゃ、結婚なんてとてもできそうにないからね。お姉さまたちにもそう伝えておくよ」 そう言って、ワルドは部屋へと引き返していった。後姿を見送ったルイズは、意を決して外へ向かって駆け出した。 領地内の森の中。そこで一人の少年がバラをくわえながら木にもたれかかっていた。 金色の巻き髪をした、美少年といってもいい顔立ちをしている。彼は何かを隠すかのように、常に顔の右側を右手で覆っていた。 そこに、小さな足音が響いた。木の根に足を取られないように気をつけ、飛び跳ねるようにして、ルイズがやってくる。 彼女の姿を見つけたギーシュは身を起こし、嬉しそうな声を発した。 「よく来てくれたね。嬉しいよ、ルイズ!」 「ギーシュ……!」 状況と台詞だけ取ってみると逢引のようにも見えるが、二人の間に流れる不穏な空気はそれを否定する。 そう。彼らの間にあるのは、殺意だけだった。 一方は裏切り者に対する蔑みと右目の傷に対する恨み。 もう一方は自分の大切な者を奪った存在に対する憎悪。 「この傷の恨み、受けてもらうよ」 ギーシュは右手にクリスタルを持った。それで初めて彼の顔があらわになる。 それを見て、ルイズは息を飲んだ。顔の右側に大きな傷跡が刻まれ、彼の顔を台無しにしていた。 そして、右手のクリスタルを天に掲げて叫んだ。 「テックセッター!」 システムボックスに包まれたギーシュの身体は人ならざるもの、ラダムの姿へと変わっていった。 「テッカマンダガー!」 それに対し、ルイズもクリスタルを掲げて叫んだ。 「テックセッタァーッ!」 ルイズの身体もシステムボックスに包まれ、ギーシュと同じような変化を遂げる。 実際、ギーシュとルイズはほとんど同一の存在だ。どちらも同じ物によって、同じ改造を受け、同じような姿へと変えられた。 唯一つの違いは、人の心が残っているかどうか。ただ、それだけだ。 だからこそルイズは今までギーシュを倒すことができなかった。 しかし、今は違う。母を奪われ、ラダムへの怒りと憎しみに満ち溢れている今なら。 「テッカマンゼロ!」 変身を完了したルイズ、テッカマンゼロはテックランサーを構え、かつての学友に飛び掛っていった。 二人のテッカマンは空中を自在に舞い、接近してはランサーを切り結び、高速で離脱してはまた切り結ぶ。 テッカマンが高速で飛び回るたびに衝撃波が発生し、木々をなぎ倒していく。 ダガーは魔法を使わないまま、テックランサーを駆使している。 彼には勝算があった。先の戦闘の経験から、ゼロがとどめをさせないと踏んでいたのだ。 だが、戦闘が始まってすぐにそれは誤算だと思い知った。ゼロの攻撃はいつになく苛烈で、迷いのないものだったのだ。 しかし、作戦には直接の関係はない。 ただゼロを罠にはめ、あの世に送り込むだけだ。 幾度目かの衝突で、機会が来た。 低空で激突し、間合いが離れた瞬間、ダガーはランサーを変形させ、横に構える。 変形したテックランサーから反物質の矢、コスモボウガンを連続して放たれた。 ゼロはとっさに下に移動し、それをかわす。あまりに急激な回避は勢いを止めきれず、地面に足を着いてしまった。 それを見たダガーは、仮面の下で薄く笑った。罠にかかったのだ。 「いまだ!」 ダガーがバラの花を振る。と同時に地面から複数の手が飛び出し、ゼロの足を掴んだ。 「えっ!?」 その腕は土を吹き飛ばし、全身を現した。ワルキューレだ。 完全に虚を疲れたゼロは、四肢を完全に拘束されてしまう。 「これで終わりだ、ゼロ!」 ダガーはランサーの変形したコスモボウガンを連射した。ボルテッカには到底及ばないが、直撃すればただではすまない。 その寸前、かろうじてゼロは身体を動かした。 二、三発の矢が肩に突き刺さるが、心臓を狙っていた矢はコスモボウガンはゼロに突き刺さる前にワルキューレの背中を貫き、爆発した。 衝撃でワルキューレの拘束する力が緩む。その瞬間、ゼロは懇親の力で両腕の拘束を外し、右腕の自由を奪っていたワルキューレをダガーへと投げつける。 「なにっ!?」 二人の一直線上にワルキューレが割り込んだ。一瞬、互いの視界が遮られる。 ゼロは両肩の装甲を開き、全てのエネルギーを込めた。片側四つ、計八つのレンズ状の物体に光が集まる。 彼女の脳裏に母親のイメージが浮かんだ。そして、叫ぶ。 「ボルテッカァァッ!!」 今度は、迷いはなかった。ボルテッカは狙い違わずダガーに迫っていく。 もはやダガーに避ける術はなかった。 「うあああぁぁぁぁぁっっ!!」 断末魔の叫びを残し、テッカマンダガーはフェルミオンの奔流の中へと消えていった。 ゼロは両肩の装甲を収納する。 身体を拘束していたワルキューレたちは、崩れ落ちるように大地に消えた。 ダガーが滅びた何よりの証拠だ。 わたしは、ギーシュを殺したんだ……。 静かになったところで、ワルドはルイズがいると思われるところへ走った。 先ほど、凄まじいエネルギーの放たれたところだ。 果たしてルイズは、そこにいた。 桃色の髪をした小柄な少女は、手に持った何かを呆けたように見つめている。 「ルイズ、それは?」 彼女の手の中にあったのは、一枚のバラの花だった。それはやがて、溶けるように消滅した。 しばらくの間ルイズはそれを見つめ続けていたが、何かを吹っ切るようにワルドの方を向く。 「……ううん、なんでもない。それより、もう帰らないと」 「いや、それは……」 「ごめんなさい。今は、お姉さまたちと顔をあわせられない」 ルイズは下を向き、思いつめたような顔で言った。 その表情に何かを感じたワルドは何も言わず首を縦に振り、グリフォンのいた場所へと走った。 テッカマンオメガは、ダガーの消滅を知りながらも何ら動揺を見せなかった。 「ダガーが倒されましたか。ならば、次の者を送りこむだけです、ルイズ」 その時、テックシステムから一人の人間が解放され、新たなテッカマンが生み出された。 前ページ次ページハルケギニアの騎士テッカマンゼロ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7860.html
前ページ次ページ確率世界のヴァリエール 「左手は添えるだけ。」 「こ、こう?!」 タバサの声に緊張の面持ちでルイズが応える。 初夏の日差しが照りつけ始めたトリステイン魔法学院の中庭。 シュレディンガー、キュルケ、シエスタ、ギーシュ、 モンモランシー、ケティ、それにマリコルヌ。 いつもの面子が顔を揃え二人を見守っていた。 「そして詠唱。」 「よ、よしっ!」 ルイズがきりりと眉を上げ、杖を振るう。 「イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ!」 ふわり、とルイズの体が宙に浮かぶ。 「や! や? やたっ!」 慣れない浮遊感に思わず内股になりつつも、ルイズは 離れていく地面を見つめ両手をぴんと横に突っ張ったまま快哉を叫ぶ。 「どう? どう?! どうよ! 浮いたわ私! すごいわ私!!」 「わ! わ! 浮いてますわお姉さま!」 「ちょ! 待って、浮いてるってルイズ!」 「きゃあ!? う、浮いちゃってますルイズさん!」 周りから上がる悲鳴とも歓声ともつかぬ声にも目を向ける余裕は無い。 「だから浮いてるって言ってるでしょ! フライ(飛行)の魔法は成功よ!」 「そうじゃなくて、こっち!」 慌てふためくキュルケの声にルイズが顔を上げると、 そこには宙に体を浮かせばたつく皆の姿があった。 「何で私たちまで浮かせてんのよ!!」 「おお」 「おお、じゃないっ!」 。。 ゚○゚ 「次は僕が教師役だね」 丸テーブルの上の小石を前に、ルイズはギーシュへ胸を張る。 「任せて、錬金の魔法は得意よ!」 「ルイズちゃん、教室を等価交換して瓦礫の山に換えるのは 錬金って言わないからね? 念のため」 「判ってるわよ!」 茶々を入れるキュルケを睨み付ける。 「じゃあ、僭越ながらまずはお手本という事で」 ギーシュが詠唱とともに杖を振るうと小石が緑色に輝き出す。 「おお~!」 「お粗末」 一礼するギーシュが錬金で作り出したのは、 多少の曇りはあれど紛れも無いエメラルドだった。 「じゃ、じゃあ次は私ね!」 「何でも良いんだルイズ、このエメラルドを見て 頭の中に浮かんだものを、心に強く思い描いて」 「よ、よーしっ!」 目をつぶり、精神を集中する。 「イル・アース・デルっ!」 げこげこ。 さっきまでエメラルドだったそれが足を生やして跳び跳ねる。 「っきゃあー!」 「せ、生命を練成した?! 等価交換の法則はあ?!」 「だって何だかカエルっぽかったから! カエルっぽかったから!」 ルイズの言い訳も空しく、緑のカエルはテーブルの周りを跳び回る。 「ま、まさに黄金体験ですわお姉さま!」 「マリコルヌ、シャベルよ! シャベルでアタックよ!」 「やだよモンモランシー! それ涙目のルカじゃないか!」 。。 ゚○゚ 「、、今度は真面目にやってよね、ルイズ」 ルイズがモンモランシーに向かって頬を膨らませる。 「失礼ね! 私はいつだって100パー真面目だっつうの!」 「はあ、、、まあいいわ」 モンモランシーはため息を一つつくと、 シエスタから受け取ったグラスをテーブルの上に置いた。 「この魔法は水系統の初歩の初歩。 コンデンセイション(凝縮)よ」 詠唱とともにモンモランシーがグラスに杖をかざす。 グラスの内側に水滴が浮かび、流れ溜まってグラスを満たしていく。 「ま、ざっとこんなものよ」 「うーん、地味ね」 「あ、あんたねえ、、、」 眉をヒクつかせるモンモランシーにルイズが見得を切る。 「こんな地味魔法、楽勝よ!」 「、、、で、まだ?」 「も、もうちょっと待ちなさいよ!」 あきれ声を上げるモンモランシーにルイズは振り向きもしない。 詠唱を終えグラスに向けた杖に力を込めるが、何の変化も現れない。 「ぬ、ぬうう、、」 ごぽり。 グラスに溜まった水の中に気泡が上がる。 「な、何これ? 水の中に何か、、」 「水の中に不純物、ルイズの念は具現化系。」 「水見式か! 、、、ってタバサ、これ?!」 げこげこ。 グラスを挟んでモンモランシーとルイズがにらみ合う。 「何であんたはカエルにこだわる!」 「わ、私だって知らないわよ!」 。。 ゚○゚ 「はーい、みなさん。 このあたりで一休みしましょう」 パラソルの付いたテーブルに退避した皆に シエスタが色とりどりのシャーベットを配る。 氷の魔法で作るのを手伝ったタバサの前には どんぶりサイズの特大シャーベットが置かれた。 その隣にはシルフィード用の飼い葉桶いっぱいのシャーベット。 「んはあ~」 いち早くクックベリーのシャーベットをゲットしたルイズは さっそく一口ほお張ると至福の表情を浮かべる。 「すごいやルイズ、本物の魔法使いみたいだったよ!」 「はっはっは、もっと褒めていいわよシュレディンガー。 あと本物みたい、じゃなくて本物だから。 すでに。 まさに。 ガチに。」 鼻高々に背もたれにふんぞり返る自分の主人を シュレディンガーがニコニコしながらうちわで扇ぐ。 「な~に威張りくさってんのよ。 私の目には失敗のバリエーションが増えただけにしか 写らないんだけど?」 「ふっふっふ、言ってなさい」 隣のテーブルからのキュルケの声も今日は軽く受け流す。 「他の魔法はいいけどさ、私の時はちゃんと成功させてよ? 炎の魔法でさっきみたいな失敗なんて想像したくも無いわ。 地獄絵図よ、ヘルピクチャーよ」 「安心なさいなキュルケ。 どんな事があろうとあんたにだけは魔法習わないから。 今日のあんたは天才の開花を見守る単なるギャラリーよ!」 「な、何よソレ」 休憩を終え、日差しの強くなった中庭で。 ルイズがタバサの指導の下、サイレントの魔法で なぜか巨大竜巻を発生させ学院長の像をなぎ倒しているのを 遠めに見ながら、パラソルの下でキュルケはつぶやく。 「、、、ま。 今までの爆発オチから比べれば、格段の進歩ではあるケドね」 それはキュルケも認めざるを得ないようだ。 「しっかしあの娘が本当に虚無の系統だったとはね~」 日差しにダレるフレイムの口もとへシャーベットを一さじ運ぶ。 仰向けに寝転んだヴェルダンデのお腹を撫でながらギーシュが答える。 「何だい、君は信じていなかったのかい? 『虚無のルイズ』なんて二つ名を名付けたのは君だろうに」 「あれはほんの冗談で、、って、ギーシュ。 あなた最初から虚無だって思ってたの?」 「勿論」 事もなげにギーシュが返事をする。 「ギーシュ! 錬金!錬金! ルイズが学院長の像を錬金で直そうとしてるから! その前に早く!」 「おお、それは大変」 モンモランシーの叫びにギーシュは腰を上げる。 モンモランシーにどういう意味かと詰め寄るルイズを皆がなだめ、 ギーシュが悪趣味にもバラの花束を背後に背負わせた学院長の像を 錬金で作り直すのを眺めながら、キュルケはあくびを一つする。 「ふわ。 、、、平和だわね」 その横でフレイムも貰いあくびを一つした。 。。 ゚○゚ 同日、同時刻。 浮遊大陸アルビオンの東端、ニューカッスル。 戦火の傷を晒したままのその古城の地下、隠された空中港の桟橋で 二人の男たちが今まさに邂逅を果たしていた。 「やっと会えたな、子爵」 アルビオン王国皇太子、『プリンス・オブ・ウェールズ』 ウェールズ・テューダー。 「光栄の至り、殿下」 トリステイン王国グリフォン隊隊長にしてゼロ機関機関長。 ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 居並ぶ歴戦の兵たちが見守る中、 彼らは固い握手を交わした。 「して殿下、状況は?」 石造りの長い階段を上りながら、ワルドが尋ねる。 「明後日には停戦会議を控えているしな、 あちらも下手に動く事はできんのだろう。 しかし子爵、私は今でも悩んでいるのだ。 他に選択肢は無かったのか、とな」 「心中、お察し致します。 しかし殿下とて、奴らが素直に会議の席に着くとは お思いではないのでしょう?」 「確かに、な」 「それに今や我がトリステインはアルビオンと一蓮托生。 アルビオンの危機は即ちトリステインの危機でもあるのです。 殿下がお気に病む事は御座いません」 「そう言ってくれると、幾らか気は休まるがな」 急な階段は螺旋を描き、上へ上へと続いていく。 「明日」 ワルドが声のトーンを落とす。 前後について階段を上る衛兵たちはこの会話が極秘のものである事を 悟り、歩調をずらし距離を取る。 「レコン・キスタの中でもトリステインに私怨を持つ者達が 『今回の停戦合意に反対』し、ロサイスにて軍艦を強奪 トリスタニアを目指しダングルテールへ降下します」 「、、、」 その扇動役を誰が担うのか、聞かずともウェールズは承知している。 「しかし、『偶然』ダングルテール付近で演習中であった トリステイン軍二個師団と遭遇、交戦状態となります。 軍艦と言えど相手は二個師団、判刻と持たずカタは付きましょう」 「トリステインの民に、被害が及ぶ心配は?」 ウェールズが尋ねる。 「その心配は御座いません、殿下。 ダングルテールは20年以上も前に見捨てられた土地です」 ワルドはその経緯について語ろうとはしない。 「国土への侵攻を理由にトリステインは即日レコン・キスタへ 宣戦布告、殿下には停戦会議を破棄して頂きます。 トリステインとアルビオンは連合を組み、既にラ・ロシェールに 停泊させてある艦全てが即時アルビオンへと上陸いたします」 潜められたワルドの声を消すように、足音が螺旋の空間に響く。 「さらにアルビオン南部で活動している『アルビオン解放戦線』と カトリック教徒達には、混乱に乗じてそのまま ロサイスを攻め落としてもらいます」 「そうなれば残るはサウスゴータとロンディニウムのみ、か」 「左様で」 清廉潔白を絵に描いたようなアルビオン皇太子の顔が 何ともいえぬ影を帯びる。 「すまぬな、子爵。 そのような汚れ役を貴殿にばかり押し付ける」 「勿体無いお言葉。 それより殿下、この事は」 先を行くウェールズの背をワルドの視線が射抜く。 「無論だ。 全てはアルビオンの民の為。 今の話は私一人、墓の下まで持っていこう」 ウェールズは自嘲気味に微笑んだ。 階段の先から日の光が差し込んでくる。 階段を上り終えるとウェールズは廊下を外れ、テラスへと出た。 涼やかな風がウェールズの髪をかき上げる。 手すりに手を突き、遠くを見つめたままウェールズが言う。 「子爵。 この戦が終わり、アルビオンに再び平和が戻ったその時には、、、 貴殿と、もう一度会ってみたい。 今度は酒でも飲みながらな。 だから、、、死ぬなよ。 生きて戻ってくれ、ワルド」 ワルドは顔を伏せたまま、かすかに肩を震わせた。 「は、、、 はっ! 必ず」 。。 ゚○゚ 「ルイズー、ぼちぼち時間なんじゃないのー?」 日も傾きかけた魔法学院の中庭で、キュルケがパラソルの下から だれた声をかけて寄こす。 「え、何? ちょっと待ってて!」 ルイズの作り出した青白い雲を吸い込んだシルフィードの目がとろけ、 見上げるルイズの前でこっくりこっくりと船を漕ぎ出す。 「おお、やたっ! スリープ・クラウド成功でぎゃふんっっ!!」 勢いを付けて大きく船を漕いだシルフィードの頭が脳天へ直撃し、 ルイズは頭を押さえしゃがみ込む。 「、、、なにやってんのよあの娘は」 キュルケが頭に手を当て、あきれた声を出す。 「『学院長のお使い』~!! ワルド様と一緒に~、用事あったんでしょ~!!」 「え、うそ?! やだ、もうこんな時間!」 ルイズが頭をさすりながら立ち上がる。 「え、なになに? またワルド様とのデートなの?」 モンモランシーが興味津々に近寄ってくる。 「でもこの前はデート終わってもなんか重ーい雰囲気だったけど、 ケンカでもしたの? それでもう仲直り?」 「だ、駄目だよモンモランシー! そんなにズバズバ聞いちゃ」 あまりにもあけすけな質問にギーシュがうろたえつつ間に入る。 だがルイズはギーシュの心配をよそに平然と答える。 「何よ、私はワルド様とケンカなんてしてないわよ。 でもまあ、仲直りって言えば仲直り、ね」 「? 誰とよ」 ルイズは少し考えてから、はにかむ様に笑った。 「『私の運命』と、よ」 その顔をみてシュレディンガーも満足げに微笑む。 「ふ~ん、、、魔法使をえるようになって、 ちょっとは自信が付いたみたいじゃない。 じゃあさ、、、」 ニヤケ顔でキュルケが近づいてくる。 「ワルド様のプロポーズに返事する決心も、付いた?」 「へ?」「うそ?」「それはそれは」「拍手。」 「わあ! おめでとう御座います、ルイズさん!」 みなの驚きと祝福の声の中、ルイズはキッとキュルケを睨むが キュルケはどこ拭く風とニヤけたままだ。 首を振りシュレディンガーに視線を向ける。 シュレディンガーは目を逸らし、口笛を吹き始めた。 がっき。 ルイズのアイアンクローが猫耳頭の後頭部に食い込む。 「みんなには内緒っつったでしょ! こんの 猫 畜 生 ~!!」 みしみし。 「いだだだだ! ギブ! ギブ!!」 「な~にいってんのよルイズ。 これから婚約しようってのに秘密にしてど~うすんのよ。 それとも、結婚してもずっとみんなに内緒にするつもり?」 「そ、、それは、、、」 「それで、なんてお返事するんですか? ルイズお姉さま」 ケティが目を輝かせて聞いてくる。 「魔法もまだ使いこなせない半人前ですしー、なーんて 言わないでしょうね、これだけ皆に付き合わせておいて」 モンモランシーがにやりと笑う。 「ああもう、いまさら言わないわよそんなこと」 ため息混じりに返す。 ルイズは皆を見回し、改まった顔で口を開く。 「あ、あのね、あのさ、、、モンモランシー。 それに、みんなも。 夏休みなのにわざわざ学院に残ってまで 私の特訓に付き合ってくれて、その、、アリガトね」 ルイズに似つかわしくないその素直な感謝の言葉に 思わずモンモランシーが赤面する。 「あ、あんたの為なんかじゃないんだからね!」 「で、出たあー! 掟破りの逆ツンデレ!」 「さすがですわモンモランシーお姉さま!」 「ま、ルイズの為じゃないってのは本当なんだけどね」 「はあ? それどういう意味よ、キュルケ」 水をさすキュルケにルイズが食って掛かる。 「いやだってホラ、明後日に日食あるじゃない、日食。 で、タルブが一番綺麗に見れるらしいのよ。 それでシエスタの故郷がタルブだって言うからさ、 それじゃ見に行こうって事でみんなで学院に残ってたのよ。 特訓もその暇つぶしだからさ、柄にも無く恩に着ることないわよ」 しれっとした顔でキュルケが説明する。 「っていうかルイズ、あんたも誘おうかとも思ってたけどさ~、 アンタはホラ、どうせワルド様とアルビオンで見るのかなって」 「あー、ヘンに誘って逃げ道作っちゃ悪いわよねえ」 「逃げないわよ!」 ルイズはシュレディンガーの頭を引き寄せると、 笑顔で見送る仲間達に堅い笑顔で答えた。 「じゃ、じゃあね、みんな。 行ってくるから!」 ============================== ぼすんっ。 ルイズが目の前に突然現れた何かにぶつかり、尻餅をつく。 「きゃっ?! ちょっと、気を付けなさいよ!」 眉をしかめ、シュレディンガーに怒りの声を上げた ルイズの目に、つば広の黒い羽帽子が飛び込んでくる。 その下には口髭も凛々しい精悍な、しかし優しい顔があった。 「おや、大丈夫だったかい?」 そう言いながらワルドはルイズに手を差し伸べた。 ワルドの顔を見て、ルイズの頭は真っ白に飛んだ。 そう言えばあんな気まずい別れ方をして、その後会ってもいない。 きちんと覚悟を決めた筈なのに、頭に何も浮かんでこない。 あ! 皆と特訓の後、お風呂にも入っていないじゃない! 大体なにをしにここに来たんだっけ? それと言うのもシュレディンガーがキュルケなんかに話すから! きちんと返事をしてから皆に言うつもりだったのに。 不意にキュルケの言葉が頭の中にリフレインする。 (結婚してもずっとみんなに内緒にするつもり?) 結婚。 「結婚、して下さい、、」 ワルドの手を握り返す。 「ええ、喜んで」 ワルドは優しく手を引き、ルイズを胸に抱きとめた。 ニューカッスルの風吹き抜ける中庭で、 夕日に伸びた二つの影は一つに重なった。 。。 ゚○゚ 「、、、って、違くて!」 「ええ? ち、違うの?!」 急に赤面するルイズに、ワルドが慌てふためく。 「いえ、違うくは無いんですけど、ももも、もっとこう! いろいろ用意してた言葉があったのに!」 「え~? もういーじゃーん」 「だああ! アンタは黙っときなさいよシュレ!」 ワルドの手を離れ、シュレディンガーの頭をはたく。 「それはそうだ。 それに、レディの口から言わせるべき言葉ではないな、子爵」 「わわっ、ででで殿下! いらしたんですか?!」 一部始終を見られた恥かしさから、ルイズの頭に血が上っていく。 そんなルイズにウェールズは優しく笑いかける。 「あいも変わらず元気そうで何より、大使殿」 「いや、まあ、はは、それもそうですね、殿下」 ワルドが襟元を正し、ルイズに向き直る。 「すまない、ルイズ。 僕から言うべきだった」 「で、でもあのワルド様!」 「『様』は、いらないよ、ルイズ」 「でもあのその、わ、ワルド、、私まだ魔法も全然だし」 「それでいいんだ」 「背も、、それに、その、む、胸も、まだこんなだし」 「それがいいんだ」 「? そ、それに、、、!」 「、、、ルイズ。 僕と結婚しよう」 ワルドの目を見つめ、ルイズは涙を浮かべ微笑んだ。 「、、はい、ワルド」 「よかったよかった。 そうと決まれば式の支度に取り掛かるか」 ウェールズの言葉にルイズは小首をかしげる。 「式、ですか?」 「そう、僕ら二人のね」 ワルドの言葉にルイズはようやく事態を理解する。 「式って、けけ、結婚式ですか?! そそ、そんな! まだ早、、!」 言いかけて、ルイズは湖でのワルドの言葉を思い出す。 「も、もしかして、貴族派がトリステインを狙ってるっていう、 あの時ワルドが言ってた事が現実に?!」 ルイズの言葉にワルドは小さく頷く。 「ルイズ、僕は今晩にはロサイスへ立たねばならない。 しかし、僕は必ず君の元へと戻ってくる。 だから、その約束を僕にさせておくれ。 始祖ブリミルの前で、永遠に消えぬ約束を」 「、、、」 真実を知るウェールズは黙して語らない。 「、、、分りました。 ワルド、、、絶対、無事に帰ってきてね」 「君のお望みとあらば」 「よかったな子爵。 では、礼拝堂で待っているよ」 「あ! わ、私もせめておフロに!」 歩み去るウェールズにルイズも付いて駆けてゆく。 ルイズに付いて行こうとするシュレディンガーを ワルドが引き止めた。 「おっとネコ君、式の前に男同士の話があるんだが、、、 付き合ってもらえないかな?」 。。 ゚○゚ 日の暮れたニューカッスルの礼拝堂。 始祖ブリミルの像が見下ろす祭壇の前に、三人の姿があった。 ワルドの任務の機密性をおもんばかり、ウェールズは 他の人間に式の事も知らせてはいない。 ウェールズから借り受けた新婦の証である純白のマントを 身にまとったルイズは、落着かなげに辺りを見回した。 「もう、またどっかで迷ってんのかしら、シュレの奴」 「ネコ君ならここには来ないよ」 心配げなルイズにワルドが優しく語りかける。 「神聖な儀式という事で、どうも遠慮したらしい。 控えの間で式が終わるまで待っているそうだ」 「ええ? あーもうあの猫耳頭! どーうせまた面倒そ~、とか退屈そ~、とか思って逃げたんだわ! ご主人様の一生に一度の晴れ舞台だってのに! 式が終わったらお仕置きだわ!!」 「まあまあルイズ、彼は彼なりに気を利かせてくれているんだよ」 「もう、ワルドったらシュレの性格知らないからそんな事言えるのよ」 「んんっ、そろそろ宜しいかな、ご両人」 婚姻の媒酌を務めるウェールズの声に、慌てて二人が向き直る。 ブリミル像の元、皇太子の礼服である明紫のマントに身を包んだ ウェ-ルズが、祭壇の前で高らかに告げた。 「では、式を始める」 「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、 そして妻とすることを誓いますか」 ワルドは重々しく頷いて、杖を握った左手を胸の前に置いた。 「、、、誓います」 ウェールズは静かに笑って頷いた。 「宜しい」 「では、次に」 ウェールズの視線はルイズへと移る。 「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、、」 朗々と、ウェールズが誓いのための詔を読み上げる。 今が結婚式の最中だというのに、ルイズは思い返していた。 相手は憧れていた頼もしいワルド、二人の父が交わした結婚の約束。 幼い心の中、ぼんやりと想像していた未来。 それが今、現実のものになろうとしている。 級友と自国の姫君が睦み合うとんでもない状況で再会を果たしたあの日。 シュレディンガーと異世界を巡っていても一人待ち続けてくれたあの時。 鼻の下を伸ばした男共をよそに酒場で一人賢者の如く佇んでいたあの顔。 ロクな思い出が無いような気もするが、それもまた良し。 「新婦?」 ウェールズの声に、ルイズは慌てて顔を上げた。 「緊張しているのかね? 仕方が無い。 初めてのときは事が何であれ緊張するものだからね」 にっこりと笑ってウェールズは続けた。 「まあ、これは儀礼に過ぎぬが、儀礼にはそれをするだけの意味がある。 では繰り返そう。 汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、 そして、夫とすることを、、誓いますか」 ルイズは溜まった思いを吐き出し、杖を握った手を胸の前に置いた。 「はい、、、はい、誓います!」 「宜しい。 では誓いの口づけを」 アルビオン皇太子と、始祖ブリミルとが見守る中、 二人の唇は今、静かに重なった。 くたり、とルイズがワルドの腕に倒れこむ。 「新婦? どうしたね? やはり緊張で?」 「いや失礼、ここからは大人の時間なのでね。 彼女には刺激が強すぎると思い、眠ってもらった」 胸の中にルイズを抱いて、ワルドが悠然と言い放つ。 「子爵? いったい何、を、、、?!」 ウェールズが自らの胸に突き立った魔法の光を見つめる。 「あなたが悪いのですよ、殿下」 ワルドはどこまでも優しい笑みを浮かべる。 しかしその笑みは今や、嘘に塗り固められていた。 「貴方があの時死んでさえいれば、 それで戦争は終わっていた」 ウェールズの胸に突き立った杖をこねる。 「お゛、、、ごおっ、、」 「その戦乱の元凶である貴方が言うに事欠いて、 『アルビオンに再び平和が戻ったその時には』などとはね! ははっ、とんだお笑い種だ」 ワルドが杖を引き抜くと、ウェールズの口から鮮血が溢れた。 胸に空いた穴から飛沫が散り、服を真紅に染めていく。 「きさ、、! レコン、キス、、、」 仰向けに倒れたウェールズが悪魔のごとく笑う影を見上げる。 「ああ、あの哀れな貴族派の連中ですか? 私は彼らのような夢想家ではありませんよ」 ワルドはルイズをゆっくりと祭壇の上に寝かせる。 「せっかく終幕も近いのにこのまま何も知らずに 舞台を降りるのも可哀想だ、せめてこの先の筋書きを 教えて差し上げましょう」 ワルドが芝居がかった口調で手をかざす。 「ロサイスの戦艦がダングルテールへ向かうと言ったがありゃ嘘だ。 艦隊は手薄なタルブを突いてラ・ロシェールを急襲。 そのまま演習中の二個師団が不在の王都へ西から攻め上る。 ロサイスを攻めるカトリック教徒達は、まあ返り討ちでしょうな。 そして、王都トリスタニアの東からはガリアが攻め入る手筈です」 「ガ、リア! 、、、だと、、そうか、き、貴様、、!」 「二国からの挟撃を受ければたとえ王都といえど一晩と持ちますまい。 死出の旅路を寂しがる事はございませんよ、殿下。 貴方が慕うあの姫君も、遠からず貴方の後を追いましょう」 「が、、、ま、、、」 「お別れです、殿下。 こう言っちゃなんですが、私は貴方が好きでしたよ」 ワルドは息絶えたウェ-ルズの手を取り、その指にはまった 始祖の秘宝、『風のルビー』を抜き取った。 「へ~、そ~いう事だったんだ~」 「!!」 場違いに陽気なその声にワルドは杖を構え振り向く。 そこには、いるはずも無い者の姿があった。 貫いたはずの胸には一滴の血の跡すら無く、 潰したはずの頭は悪戯っぽく笑みを浮かべる。 「どーして? って顔だね~。 君には言ってなかったっけ? ワルド。 僕はどこにでもいてどこにもいない。 だから、君が僕を殺しても」 猫が牙をむく。 「僕は、ここに、いる」 ゆっくりと、虚無の使い魔がワルドに近づく。 「僕はね~、怒っているんだよ」 眉を上げてうっすらと笑みを浮かべる猫は言う。 「別に君が僕の頭を吹っ飛ばそうが、 そこの可哀想な王子様の心臓を貫こうが、 僕にとってはそんな事はどーだっていーんだ」 シュレディンガーの中に、何かが渦巻き満ちていく。 今までに感じた事もない、名状しがたい感情が。 チリチリとしたものが、その胸の内を焦がしていく。 「だけど君はね」 ぎちり、と猫が牙を鳴らす。 「僕の ご主人様(ルイズ)を 裏切った」 ワルドは窓を開け放ち、二つの指輪を外に放る。 始祖の秘宝、『風のルビー』と『水のルビー』。 それを空中で咥えたグリフォンが空へ舞い上がり、 西のかなたへ飛び去っていく。 「、、、ほう、そうかね」 返事をしつつワルドは頭の中で考える。 まずは指輪さえ届ければ、自分達は後回しでも構うまい。 幸いこの城は浮遊大陸アルビオンの突端、 フライを使い地上へ降りれば後はどうとでもなる。 それよりも。 問題は目の前のこれだ。 幻術? 幻覚? さっき殺ったのはスキルニルか何かか? 超再生? 回復術? それとも、不死? 馬鹿馬鹿しい。 不死身などこの世に存在しない!! 何より確実な事は、やはりこの使い魔は危険だという事だ。 ルイズの心は手に入れた。 しかし、この目の前のこれは、人に懐かぬ『死神』だ。 ここで始末をつけねば禍根を残す。 ワルドは杖を握りなおした。 「では、、、どうするかね?」 祭壇で横たわるルイズからゆっくりと距離を取り、 礼拝堂の中央で二人は対峙する。 「どーするかって?」 シュレディンガーが腰の後ろに手を回す。 「こーする」 ズルリ、と黒い塊が手の中に現れる。 「それは、、、!」 ワルドには禍々しい輝きを放つその鉄塊に見覚えがあった。 スパイとしての信頼を得る為、自分がレコン・キスタから盗み出し トリステインへと持ち運んだものだ。 全長39cm、重量16kg、装弾数6発、専用弾13mm炸裂鉄鋼弾。 対化物戦闘用13mm拳銃『ジャッカル』 それが今、シュレディンガーの手にある。 ワルドは声を殺し低く笑う。 どんな能力を持っているか知らないが、戦闘に関しては ズブの素人であるらしい。 いくら威力があろうと、あんなものが当たるものか。 両手で銃を構えてもその足元はふらつき、 銃口を自分に向けるどころか水平に構えることさえ出来ない。 「はははっ、それでどこを狙うというんだい? そんなにフラフラしていては一生この私には当たらんよ!」 「へーそう?」 シュレディンガーはワルドの足元に銃口を向け、引き金を引いた。 礼拝堂を轟音が揺さぶった。 シュレディンガーは吹き飛び、壁に叩き付けられる。 そしてワルドは、天井に飾られたフレスコ画を眺めていた。 何が起こったのか、理解が追いつかない。 左手をまさぐったが、持っていたはずの杖が無い。 首を起こし目をやると、杖ごと手の平がどこかへ千切れ飛んでいた。 体を起こそうとすると、腹の中でゴリゴリと何かがこすれる音がする。 親指だけが残ったその左手の先には、大きくえぐれた床が見えた。 あの拳銃の放った弾丸は、莫大な運動エネルギーで礼拝堂の床石を 大きく穿ち、その破片をワルドの全身に撒き散らしていた。 ごぽり。 何かを言おうとしたワルドの口から、血の塊がこぼれ出る。 肋骨をぬい、肺の中にも石片が入り込んでいるのが感じ取れた。 もう下半身の感覚は無くなっている。 ゆっくりと意識の途絶えていくその頭を、誰かが持ち上げた。 「ワルド?! ワルド!!」 聞き覚えのあるその可愛らしい声が、悲痛な叫びを上げている。 「はは、ルイ、ズ、か、、」 ワルドは左手の残りでその髪を優しく撫でる。 「何が?! 何で?! しっかりワルド!! い、いま、てあ、手当てを、、!!」 自分の顔に降り注ぐ涙の暖かさだけが、 今のワルドに感じ取れるすべてだった。 「いいんだ、、ルイズ、、、 僕は、、もう、、、」 「駄目! 駄目!! ワルド!!」 「はは、、、そう、さ、、これが、末路だ、、、 裏切り者に、ふさわ、しい、、末路、だ、、」 「裏切り?! 何を言っているの? 喋っちゃ駄目、ワルド!!」 ルイズは自分のマントを剥ぎ取りワルドの腹に押し当てるが、 流れ出る血はその純白のマントをどろどろと赤く染めていく。 「で、も、、信じて、くれ、ルイズ、、、」 最早その目は空ろに開かれ何も映ってはいない。 「嘘だらけ、だった、、、僕の、人生の、中で、、、 君への、、想いだけ、は、、たった一つ、の、、、」 「、、、ワルド?」 それきりその口からは言葉も、呼吸も、こぼれ出ることは無かった。 「ん~、痛てて、、」 後ろから響いた声に、のろのろとルイズは振り返る。 そこには自分の使い魔が居た。 「あ! ルイズ、起きたんだ! 大丈夫?」 肋骨は折れ右手の指の殆どは捻じ曲がっていたが、 いつものように「無かった事」にする気はなぜか起きない。 手に持った巨大な銃の重みが今は誇らしかった。 ルイズの目にその銃が映る。 大きく穿たれた床の石畳と、自分の伴侶に突き立った無数の石片と。 あの日の光景が蘇る。 はじめてその銃を見た日。 トリステイン魔法学院の仲間達と。 そして、大きく穿たれた学院の壁と。 「、、、あなたが、撃ったの?」 まるで感情のこもっていない、低く澄んだ声。 「うん、そう! 僕がワルドをやっつけたんだ!」 胸を張りシュレディンガーが答える。 「シュレディンガー、、」 「どうしたの? ルイズ」 不安げに近づくシュレディンガーの足をルイズの声が止める。 「、、消えて」 その声には、いつもの傲慢さも強さもヒステリックさも無く、 水晶のように純粋な拒絶のみがあった。 「、、、ル、、?」 困惑し立ち尽くすシュレディンガーに、 ルイズは目を伏せたまま、ただ、告げた。 「消えて、シュレディンガー。 私の、目の、前から」 「、、、」 シュレディンガーは何かを言おうとして口を閉ざし、 それきり、ルイズの目の前から消えた。 ============================== 確率世界のヴァリエール - a Cat, in a Box - 第十三話 前ページ次ページ確率世界のヴァリエール