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前ページ次ページネコミミの使い魔 教室はルイズお姉ちゃんの爆発魔法で大変な騒ぎになっていた。 他の生徒さんたちは別の授業に行ってしまい、わたし達は片付けを言い付けられてしまった。 わたしが魔法で先生を直したからか、魔法禁止ということはなかったので、マミお姉ちゃんに習ったリボンと治癒魔法で壊れた窓や瓦礫を集めていく。 ルイズお姉ちゃんは雑巾で治った窓を拭いたり、煤を掃いたり、おしゃべりしながら片付けていくと自然とても早く進んだ。 この左手のルーンっていうんだっけ、それは不思議だ。 魔法を使えばソウルジェムがドンドンと曇っていってバンバン使えないのに、ルーンがあるせいか全く曇らないし疲れもない。 習ったばかりの頃は全然上手に使えなかった、マミお姉ちゃんのリボンや結界も不思議とキョーコやお姉ちゃんのように使えてしまう。 わたしがすごくなったのか、それともこのルーンの影響なのかはわたしにはわからなかったけれど、とりあえずルイズお姉ちゃんが喜んでくれると私も嬉しい。 めちゃくちゃになった教室の片付けが終わったのはちょうど昼食の時間の前あたりだった。前のとおりピカピカというわけには私の力不足で出来なかったけど、ルイズお姉ちゃんは私の頭を撫でながら褒めてくれた。 食堂にたどり着くと、朝と同じように豪華な食事が並んでいた。 わたしはルイズお姉ちゃんと隣同士に座り、食事を始める。やっぱりすごくおいしい、マミお姉ちゃんの料理よりもすごい。 一体どんな人が作っているんだろうな、と思った。 「でも本当、ゆまが働いてくれて助かったわ」 「使い魔だからね」 「いい使い魔を召喚したものだわ」 「あらあら、現金ね罰掃除させられてたのに」 キュルケお姉ちゃんに呆れられてしまっても、二人は笑顔だった。 食事はおいしいし、給仕の人の仕事は手早くて、なくなったお皿に食事が並べられるし、飲み物も用意されていく。 「お姉ちゃん、給仕の人って平民の人なの?」 「そうね」 「わたしは平民だけどそういう事しなくてもいいのかな?」 と聞くと、ルイズお姉ちゃんは考えるような仕草をする。 するとなにか思い当たったのか。 「いけない、次の授業の予習をしなくちゃいけないわ」 「それは大変だ!」 「ええーっと、そこの黒髪の給仕! ちょっとこっちへ」 そう言われて、黒い髪の短髪で鼻のあたりにそばかすがある、ちょっと胸の大きい給仕の人がこちらにやってきた。 「お呼びでしょうか?」 「この子に仕事の手伝いをさせて欲しいの、できるかしら?」 「おまかせください、ミス・ヴァリエール」 「頼んだわね」 そうして私は給仕さんに預けられることになった。 名前はシエスタさんというらしい。 素朴な感じの印象で、カチューシャでまとめた髪が可愛らしい。 「こちらにいらしてください、ゆま様」 「ゆま、でいいよ、シエスタさん」 「そう、ですか? ではゆま、仕事の説明をしますね」 厨房にはたくさんの給仕さんとシェフの人たちが忙しそうに働いていた。 今では食事もほとんど終わりデザートのケーキを配っているみたいだ。 「ゆまは魔法を使えるようですが、メイジなんですか?」 「ううん、シエスタさんと一緒の平民だよ」 「そうなのですか、貴族の方には家柄や決まりごとなどお忙しいですからね、私にはよくわかりませんが、魔法を使えても平民という方がいても不思議でないかもしれませんね」 と、ここで一呼吸をおいて。 「ただ、貴族の方に逆らってはいけません、殺されても文句は言えないのです」 シエスタさんに頼まれた仕事をマミお姉ちゃんのリボンも上手に使いながら、無難にこなしてシエスタさんにほめられる。 そしてこのままメイドになってくれたらいいのにと冗談も言ってくれた。 大きな銀のお皿にデザートのケーキが乗っている、私は両の手をいっぱいに広げて、真ん中辺りにリボンで支えてバランスをとっている。 そしてそのトレイに乗ったケーキをシエスタさんがはさみでケーキを掴み配っていく、確かにお皿とかの回収はリボンでできるけどケーキを配るのは難しい。 と、ここで金髪の貴族の人の下に香水の小瓶が落ちているのが分かった。私はリボンを使ってテーブルに乗せてあげる。 「あれ、それはモンモランシーの香水じゃないのか?」 「そうだ! その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分のためだけに調合をしている香水だぞ!」 「それがギーシュの机の近くにおいてあるってことは、つまりお前は今モンモランシーと付き合っている、そうだな!」 クラスメートの人たちからの追求を受けて、金髪の巻き毛のお兄さんは 「違う。いいかい、彼女の名誉のために言っておくが……」 お兄さんが口を開いた瞬間、後ろの席に座っていた茶色のマントの女の人が立ち上がり、お兄さんの席に向かって歩いてきた。 栗色の髪をした女の人だった、他の人達よりも一回り可愛らしい人だ。 「ギーシュさま……」 そしてポロポロと泣き始めた。 「やはりミス・モンモランシーと……」 「違う。彼らは誤解をしているだけだ、いいかいケティ、僕の心のなかに住んでいるのはキミだけ……」 ケティと呼ばれた女の人は思い切り金髪のお兄さんの頬を叩いた。 「その香水が何よりもの証拠、さようなら!」 と背中を向けて去っていってしまった。 すると他の巻き毛の女の人がやってきて。 「モンモランシー誤解だ、彼女はただ一緒に、ラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで」 「やっぱりあの一年生に手を出していたのね」 「お願いだよ香水のモンモランシー咲き誇るバラのような顔をそのような怒りで歪ませないでくれよ、僕まで悲しくなるじゃないか」 モンモランシーと呼ばれた女の人は、さっきよそいだばかりのワインを金髪の人の髪にドボドボとひっかけて。 「嘘つき!」 と怒鳴って走りっ去っていってしまった。 大変なことになったけど、わたしとしてはケーキを配り終わるほうが先だった。シエスタさんと一緒に仕事に戻ろうとすると。 「まちたまえ、ルイズの使い魔」 と、呼び止められる。 振り返ると、足を組んでポーズを決めながらハンカチで顔を拭いている、金髪のお兄さんと目があった。 「キミが軽率に香水の瓶を拾い上げたおかげで二人のレディの名誉が傷つけられた、どうしてくれるんだね?」 「……? ゆまが悪いの?」 小首を傾げる。 「どう考えても、お兄さんが悪いよ、二人の好きだっていう人にする態度じゃない、悪いのはお兄さん」 「そうだそうだ、ギーシュが悪いぞー!」 どこからか女の人の声が聞こえてきた。 「キミは、この僕に喧嘩を売ろうというのかい?」 「喧嘩? ゆまね、キョーコに習ってるよ」 そういってソウルジェムを掲げてから変身をする。 「売られた喧嘩は買えってね!」 ココで勝利したら、ルイズのお姉ちゃんの評判も上がるだろう、すごい使い魔を召喚したって、貴族って言ったって二股をかけるような人が強いわけないし、普通に女の人に殴られてたし。 「よかろう、キミに礼儀を教えてやろう、ちょうどいい腹ごなしだ」 ヴェストリの広場という場所は、魔法学園の敷地内、風と火の塔の間にある中庭らしい。 西側にある広場なので、そこは日中でもあまり陽は差さないみたいだ、火の塔の近くなのにとわたしは思った。 わたしが逃げ出さないようにするためなのか、噂を聞きつけてきたのか、周りには人であふれていた、魔法を使うときに気を付けないと。 「諸君、決闘だ!」 と、バラの造花を掲げた。 「こんな年端も行かない幼女と決闘なんてギーシュカコワルイ!」 先ほども聞こえた声がまた聞こえてきた。 「ギーシュが決闘するぞ! ……確かに相手はただの小さな子だが」 「……と、とりあえず逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」 「逃げる必要なんて無いもん」 相手は確か魔法を使うって言ってた、シエスタさんも貴族に逆らうと殺されちゃうと言っていたから、殺してしまうような魔法を使うかもしれない。 とりあえず距離を取らないと。 わたしは飛んで、ギーシュさんから距離を取った。 「ふん、メイジとの戦い方はわかっているようじゃないか」 そういってバラの造花を振るう、花が一枚待ったかと思うと、甲冑を着た女の人の格好になった。あれは鉄製なのかな? 「僕はメイジだ、だから魔法で戦う、よもや文句はあるまいね」 「エイム……ファイア!」 とりあえず一本マミお姉ちゃんのマスケット銃を召喚して打ってみた。 腕に当たって貫通したけど、ダメージは少ないみたいだ。 「いい忘れていたな、僕の二つ名は青銅、青銅のギーシュだ。青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 そのワルキューレがこちらに向かって走ってくる。私のハンマーじゃリーチが短すぎて反撃を受けてしまいそうだ。痛いのには慣れているけど、ルイズお姉ちゃんを心配させるような勝利では意味が無い。 「キョーコ、力を貸して!」 キョーコの槍を召喚して武器にする。 するとルーンが光り輝いたような気がして、ソウルジェムの輝きも普段よりも増した。 コレなら行けそうな気がするよ! ワルキューレの攻撃の前に、キョーコの槍を鞭のようにしならせて一刀両断する、半分になったワルキューレはさすがに動かなくなったみたいだった。 ギーシュさんは慌てて花びらを振って、何体ものゴーレムを出現させた。 「ゆま! ちょっとキュルケ、どういうことなのよ!」 「どういうことも何も、ギーシュとゆまが決闘をしてるのよ」 「はあ、何で止めないのよ!」 「止めないも何も、ゆまがやる気なんだから仕方ないじゃない!」 ルイズお姉ちゃんの声が聞こえる。 噂を聞いて駆けつけてきてくれたのかな。 「ルイズお姉ちゃんが来たなら、格好良いところを見せないとね!」 「余裕だな、ルイズの使い魔くん!」 「そうだよ! 余裕なんだよ!」 そういって私は叫んだ。 「みんな離れて! わたしの本気、見せてあげるから」 高く高く跳躍する。 そうしてマミお姉ちゃんみたいに大砲を出して、遥か下にいるワルキューレたちに向ける。 私の武器を見て他の貴族たちやルイズお姉ちゃんたちが蜘蛛の子を散らすように逃げていく、いや、そこまで本気でふっ飛ばすつもりはないんだけど……。 「ティロ・フィナーレ!」 その言葉と同時に巨大な爆弾が発射される。 落下した途端大きな爆発が起きて、バラバラになったワルキューレと一緒にギーシュさんが吹っ飛んでいく。 どうやらそれ以外に被害にあった人はいないみたいだ。 ルイズ、ゆまに抱きついてすごいじゃないと喜ぶ。 地面に着地すると、ルイズお姉ちゃんが近づいてきて抱きしめてきた。 「すごいじゃないのゆま!」 「えへへ、召喚したルイズお姉ちゃんがすごいってことだよ」 「ほんとう……胸をはっていい使い魔を召喚したって言えるわ!」 暖かく抱きしめてくれる、マミお姉ちゃんを思い出す感覚に私は涙が出そうに鳴るのを我慢した。 「でも、あまり危ないことはしないようにね」 「うん!」 「……わかっているのかしら?」 やってきたルイズのお姉ちゃんと午後の授業に向かう。 予習が必要な授業ということで、内容は殆どわからなかった気がするけれど、真剣にペンを握るルイズのお姉ちゃんを眺めて、ルイズのお姉ちゃんが頑張ってるからゆまも頑張れるんだよと心のなかで応援した。 夜になって食事の後で部屋に戻る。 決闘の話のこと、給仕のお手伝いのこと、いろいろな話をする。 「でも、決闘なんて受けてはダメよ?」 「どうして?」 「ギーシュ以上に強いメイジなんていくらでもいるの、そういう人には殺されちゃうかもしれないのよ? だから、危ないことはやめてね?」 ルイズお姉ちゃんの言ってること、キョーコの喧嘩は買え主義。どちらを取るのかは難しいけれど、きっとその時にもよるんだろう。 それにこのルーン、武器を持ったときに今まで感じたことのないような力を感じた不思議なルーン。 これについてはまだわからないことが多すぎるけど、きっといつか分かるようになるだろう、この不思議な世界と一緒に生きてさえいれば。 ルイズお姉ちゃんと一緒のベッドで寝る、今日は寂しくない。 一人ぼっちじゃないような気がしたから。 前ページ次ページネコミミの使い魔
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2000の技を持つ使い魔 EPISODE02 疾走 膝をつきつつ、自分の左手の甲に刻まれたクウガの印をしげしげと見ていた雄介のそばにコルベールと呼ばれた男が近づくと、雄介と一緒になってしげしげとクウガの印を詳しく見始めた。 「ふむ…… これはルーンなのか? 見たこともない」 そう呟くと、今度は帳面を取り出してクウガの印を詳細にスケッチし始めるコルベール。 「……とにかくおめでとう、ミス・ヴァリエール。 コントラクト・サーヴァントはきちんとできたね」 雄介の印をスケッチし終わると、コルベールはルイズに向かってにこやかに言う。 「あ、はい!」 サモン・サーヴァントは何十回となく失敗したが、コントラクト・サーヴァントはなんと一発で成功した。 これが偶然なのか、それとも必然性があったのかはともかく、今のルイズにはコントラクト・サーヴァントが一発で決まったことに満足感を感じていた。 「でもさー、あれ平民だからできたんじゃねーの?」 「あり得るねー、ルイズなら」 「そいつが高位の幻獣とかなら、契約すらできなかっただろーぜ」 そんな小さな満足感をぶちこわすように生徒の内の何人かがはやし立てるのを、ルイズは聞き逃さなかった。 「馬鹿にしないで! 私だってたまには上手くいくわよ!」 ルイズが彼らにかみついたところで、コルベールが待ったを掛けるように割って入ってきた。 「皆そこまで! 兎に角今日はこれにて解散。教室に戻ろう」 コルベールが手をパンパンと叩きながら、生徒たちを教室へと戻るよう促す。 さすがに教師に促されては従わざるを得ないのか、生徒達はそれぞれに呪文を詠唱すると、次々と空へ舞い上がっていく。 中には飛べないルイズに嘲笑と罵声を浴びせる生徒生徒もいたが、ルイズはそれをガン無視。雄介は「人が空を飛ぶ」というあり得ない事を見せつけられて、口をぱくぱくさせながら、あたりをきょろきょろと見渡していた。 もちろん、雄介の視界の中に、トランポリンもワイヤーもクレーン車もない。 「うっそ…… 飛んでっちゃったよ」 コルベールをはじめとした生徒達は、空を浮遊しつつ遠くにある城のような石造りの建物へと飛んでいった。 「……行くわよ、付いて来なさい」 空を飛ぶ生徒たちを見つめ、悔しそうに唇をかみ締めていたルイズが雄介に言うと、一人だけカツカツと道なき草原の中を歩きはじめるの見て、雄介が待ったをかける。 「ちょ、ちょっと、えーと…… ルイズちゃんでいいのかな? 行くってどこに?」 そんな雄介の言葉に、ルイズは心底がっくり来たのか、ジト目で雄介のことを見ながら肩を落としつつ雄介に向かって大声で怒鳴り始めた。 「ご主人様をちゃん付けするなあああああ!! あーもお、何だってっこんなのがあたしの使い魔になるんだろ.もう気分へにゃへにゃよ!」 ルイズにしてみれば、ペガサスだのユニコーンだのワイヴァーンのような美しくて強力な使い魔が召喚されることを望んでいたにもかかわらず、呼び出されて出てきたものといえば、どこか呆けたような感じのする若い平民男子と来た日には、夢も希望も無残に打ち砕かれてへこみたくもなるものだ。 さらに、何でこの目の前の使い魔は、未だにのほほんとご主人様の事を主人とも認識していないのだろうか。 「あー、あのさ。俺、冒険の最中なんだけど…… イヤもうスッゴイ物見せてもらいましたホント。魔法なんてモノがホントにあるなんて知らなかったなもう」 あまつさえ、「冒険の途中にいいもの見せてもらいました」等と抜かしやがりますかこの平民? と今度は怒りがふつふつとルイズの腹の底から湧き起こる。 だが、そんなことを思うご主人様をさておき、使い魔となった雄介は未だに無口なルイズを見やり、致命的な一言を言ってしまった。 「……もう行ってもいいかな?」 ぶちっ、とルイズの頭のどこかで、スイッチがオンになったような、もしくは何かのキレるような音がした。 「だからっ、あんたは、わたしがっ、召喚した使い魔なのっ! あたしの使い魔だから、あたしと一緒に学校に戻るの! 判った!?」 全身でぜいぜいと息を切らして声を張り上げるルイズの言葉が、雄介の脳内に十分浸透して驚愕の声を上げるまでに、たっぷり2呼吸は必要だった。 「……えええええええええ!?」 使い魔になったいきさつを知らない雄介に、ルイズがかいつまんで状況を説明してやると、しばらく困った顔をしていた雄介だったが、すぐ吹っ切れたのか「まいっか」の一言で開き直ってしまった。 その暢気さに呆れたルイズが、踵を返してそのまま徒歩で帰ろうとするのを引き止めたのは雄介だった。 「ちょっとまって。あの城みたいなところに行くって言うなら。歩くよりもこれに乗っていくほうがいい」 「何よ? ホントにそんな物が速いって言うの? その、車輪が二つついた銀色の馬みたいなものが?」 呼び止められたルイズが胡散臭げに雄介のバイク「ビートチェイサー2000」を見ながら言うのを、雄介は気にも止めずにビートチェイサーのハンドルにあるスターターを押して、その心臓である無公害イオンエンジン「プレスト」を始動させる。 すると、パルンッ! と軽く甲高い爆発音と共に、プレストに息吹が吹き返る。 「わあっ!? 何? 何なの今の爆発音?」 雄介にとっては心強く感じるプレストのエンジン音も、バイクを見るのも乗るのもまったく初めてのルイズにとっては、銀色の恐怖の塊でしかない。 そんなルイズを笑顔で手招きする雄介。右手のアクセルを軽く煽って、エンジンを操っているのは雄介である事を証明しながら、ビートチェイサーにくくりつけていたザックの口をあけて、中からもう一つ小ぶりなハーフヘルメットを取り出してルイズに言う。 「大丈夫。噛み付いたりなんかしないから」 雄介に大丈夫と言われて半信半疑だったルイズだったが、雄介がアクセルを煽る事でエンジン音が変わることに気がつくと、雄介が操っているんだという事に気がつく。 バルン、バルルンと雄介がアクセルを吹き鳴らすたびに、初めて聞くエンジンの音と離れていても感じてくる力強さを体で感じ取っていた。 「ホント? これ、何で動いているの? 魔法?」 わずかながらにルイズの中で好奇心が沸き起こる。どう考えても、魔法で動かしてるとしか思えなかったが。 「魔法じゃないよ。ウーン、なんて説明すればいいのかな」 しばらく考えていた雄介が、ぽんと手を打って言う。 「まいっか。それもそのうち、おいおいね。これなら獣よりも速く、空を飛ぶくらいに早く何処にでも行けるよ」 軽く言う雄介の言葉に、ルイズは疑いのまなざしを向けるが、気にせずビートチェイサーに跨った雄介がルイズに言う。 「じゃあ、行こうか。あ、そのヘルメットかぶって、紐は顎の下でしめてね」 言われたルイズがヘルメットをかぶったはいいが、顎紐をしめる事が判らないルイズがおたおたするのを見て、見かねた雄介がビートチェイサーを降りると、自らの手で、ルイズの顎紐をしめてやる。 「こんなもの、かぶった事なんかないからしょうがないか」 顎紐を金具に通して、遊びがないようにしっかりとしめる雄介。紐を締めながら遊びがないかを確認し、ルイズも嫌がったり痛がったりしている様子でもないのを認めると、雄介はサムズアップしながら、またビートチェイサー跨りなおす。 「ん、これでいいの?」 顎紐を締めたルイズが、雄介に訊く。 「うん、それじゃシートの後ろのほうに跨って……… 手をしっかり俺の腰に回して」 ルイズは雄介の言うがままに、ビートチェイサーのシートに横座りして、前に座る雄介の腰のあたりに両手を回す。 「じゃ、いくよ? 手は離さないでね」 雄介はルイズが腰に手を回していることを確認すると、ゆっくりとビートチェイサーを走らせ始めた。 それまで馬しか走った事のない草原を、二つの輪を持った銀色の鉄の馬のような乗り物「ビートチェイサー2000」に跨って、ルイズと雄介は疾走する。 「こ、これ、すごい。馬よりも早い! 何でこんなに速く走れるの!?」 雄介とは違う形の小さな兜を頭にかぶったルイズが、風切り音に負けないように大声出して雄介に聞く。 「うーん、詳しく説明すると長くなるから。それよりまっすぐで良いんだよね?」 雄介はあえてルイズの質問には答えず、ビートチェイサーの行き先が間違えていないか聞き返すと、ルイズはこくこくと頷いた。 雄介にとっては軽く流している程度の速度でも、ルイズにとってはそれまでとはまったく違う視点と感じる風は、驚き以上のものを感じていた。 こんな異形なものが、獣が大地を疾走するよりも速く、空を飛ぶ鳥のように早くこの大地をも疾走できるという雄介の話も、嘘ではなく本当の事なんだと直感的に理解していた。 「すごぉ~い! すごいすごい! フライの呪文よりも速いっ!!」 ルイズの視線の先には、先に飛んでいった生徒達の殿を目で見る事が出来たのだから。 「もっと早く進めないの!?」 ルイズの言葉に、雄介は一瞬躊躇して聞き返す。 「進めるけど、二人乗りじゃそんなに速度は出せないよ!?」 雄介の大声に負けないくらいの勢いで、ルイズは言ってのけた。 「かまわないからぶっ飛ばして!」 そして、この使い魔がすごい事をみんなに見せ付けてやるんだ。ルイズはそう思っていた。 「じゃあ、手をしっかり俺の腰に回して。しがみつくように!」 雄介が叫ぶと、ルイズが雄介の腰に両腕を回してしっかりと掴んだのを確認して、アクセルを吹かしてギアをもう1段上げる。 「うひゃあああああ!??」 たちまちのうちに、スピードを上げて草原の上を疾駆する弾丸と化すビートチェイサー。 ルイズは、しっかりと両腕を掴んでいなければ放されてしまいそうなスピードで、まだゆっくりと空を飛んでいく生徒たちを追い越し、学園へと向かうのであった。
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2020年9月8日 出題者:かちわりの種 タイトル:絆は離れない 【問題】 ケイコとハナコはとっても仲良しだった。 彼女達はいつも一緒で、固い絆で結ばれていた。 しかし、ある日のこと、片方が離れたのがきっかけで、 彼女達の距離はみるみる離れていった。 そしてハナコは死んで、ケイコは大怪我を負ってしまった。 彼女達に何があったのだろうか? 【解説】 + ... ケイコはとあるマンションに住む住人、そしてハナコはケイコが飼っている愛犬だった。 ある日のこと、さんぽから帰る途中のケイコとハナコ、 自室に向かおうとマンションのエレベーターに乗った時、扉が閉まる直前に、 ハナコがエレベーターの外に出ていってしまった。 エレベーターはケイコだけを乗せたまま、どんどん上昇していった。 ケイコとハナコはリードで固く繋がれていた。 ハナコはエレベーターに挟まれたリードに引っ張られ、宙吊りになり、 強く首を閉められた。 そしてハナコは息絶えてしまった。 一方、ケイコは片手の指4本に、リードを固く巻き付けていたので、 指を引きちぎられてしまったのだ。 ペットと一緒にエレベーターに乗る時は、抱きかかえるなどしましょう!! 《死》《ブラック》 配信日に戻る 前の問題 次の問題
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前ページ次ページアノンの法則 一行はラ・ロシェールで一番上等な宿、『女神の杵』亭を今夜の宿と決め、一階の酒場で食事を摂っていた。 キュルケが、隣で鶏肉をほおばっているアノンの腕をつついた。 「ねえ、ダーリン。ギーシュってずいぶん雰囲気変わったと思わない?」 そう言われて向かいの席のギーシュを見ると、ギーシュはワイングラスを手に、なにやら真剣な表情をしている。 「さっき襲撃してきた奴らの尋問のときなんか特に。あんなギーシュ見たこと無いわ」 横で聞いていたタバサも、ハシバミ草のサラダで頬を膨らませたまま、こちらに視線を移した。 「なんでも実家で鍛え直してきたらしいよ。実際、凄く強くなってる」 アノンは嬉しそうに答える。 「多分ギーシュくんは、フーケよりも強くなるんじゃないかなぁ」 「フーケよりぃ?」 キュルケは信じられない、といった風にギーシュを見た。 「ねえ、ギーシュ。さっきから何見てるの?」 「ん? いやね、あそこのご婦人。なかなか美人だと思わないかい?」 キュルケとタバサはアノンを見る。アノンはすっと視線を逸らした。 そこに、『桟橋』へ乗船の交渉に行っていた、ワルドとルイズが帰ってきた。 ワルドは席につくと困ったように、 「アルビオンに渡る船は明後日にならないと、出ないそうだ」 「急ぎの任務なのに……」 仕方が無いこととは言え、ルイズは不満そうだ。 「私はアルビオンに行ったことないからわかんないんだけど、どうして明日は船が出ないの?」 キュルケの問いに、ワルドが答える。 「明日の夜は月が重なるだろう? 『スヴェル』の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最も、ラ・ロシェールに近づく」 近づく、と言うことは、アルビオン大陸は浮島のようなものなのだろうか、とアノンは一人考える。 「さて、じゃあ今日はもう寝よう。部屋を取った」 ワルドは鍵束を机の上に置いた。 「キュルケとタバサは相部屋だ。そして、ギーシュとアノンが相部屋。……ルイズは僕と同室だ」 ルイズがはっとして、ワルドを見た。 「そんな、ダメよ! まだ、私たち結婚してるわけじゃないじゃない! それに…」 ルイズはちらりとアノンを見る。アノンは特に気にした様子も無く、テーブルの料理をパクついている。 何か不愉快なものを感じて、ルイズはぷいっと視線を逸らした。 ワルドは、真剣な眼差しでルイズを見つめた。 「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」 ルイズは黙って頷いた。 「ねえ、本当にやるつもりなの? 今は、そんなことしているときじゃないでしょう?」 ルイズがワルドに言った。 「そうだね。でも、貴族というヤツはやっかいでね。強いか弱いか、それが気になるともう、どうにもならなくなるのさ」 「いいじゃない。ダーリンがスクウェアメイジ相手にどう戦うのか興味あるわ」 「僕も同意見だ」 顔に痣を作っているギーシュが賛同し、タバサもこくこくと頷く。 「あら、ギーシュ。その顔は?」 「今朝方、朝食前に子爵と手合わせした」 「ああ、なるほど」 次の日、ワルドは朝食の席で、アノンに立会いを申し込んだ。 介添え人に指名されたのはルイズ。 手合わせを申し込まれたアノンは喜んでそれを受け、ルイズの制止になど耳を貸さない。 形だけとは言え、介添え人を置くとなれば、決闘だ。 となると、キュルケたちが放って置くはずが無く、結局今は物置と化した練兵場に旅の一行が集まる形となった。 「では、始めようか」 ワルドは腰から、レイピア型の杖剣を引き抜き、フェンシングのように構える。 アノンも背中のデルフリンガーを抜いた。 すでに馴染んだ、ルーンが光り体が軽くなる感覚。 だが、いきなり飛び掛るような真似はせず、形だけの構えでワルドの出方を伺う。 「どうしたね。来ないなら……こちらから行くぞ!」 ワルドが大きく踏み込み、鋭い突きを放った。 (へえ。杖を剣のように使うのか) 杖の切っ先は、真っ直ぐにアノンの眉間に向かう。 (太刀筋も鋭い) アノンは半歩横に移動、 (突きに迷いが無い) 半身になって体を逸らし、 (うん) 突きをかわす。 (見事だ) さっきまでアノンの頭があった空間を、ワルドの杖が貫いた。 一撃目をあっさりと避けられ、ワルドは慌ててバックステップを踏んで距離をとる。 (紙一重でかわしただと?) 「避けた…!」 少しでも技を盗もうと、食い入るように二人を見ていたギーシュが思わず声を出した。 「完全に見切っていた。でなければあれを紙一重でかわすのは不可能」 「ああん、さすがダーリン!」 タバサの呟きに、キュルケが嬌声を上げる。 一方、ルイズは気が気ではなかった。 大事な任務の最中だというのに、怪我でもしたらどうするのか。 「あーもう!」 こんなときに手合わせなど始める二人が分からず、ルイズはじだんだを踏んだ。 今度はアノンが一足飛びで距離を詰め、ワルドに斬りかかった。 「うおっ!?」 ワルドは辛うじて杖で受け止める。 これほどまでに早いとは。『風』でなければ対応は至難だ。 しかも、攻撃が重い。頑丈な鉄ごしらえの杖剣が軋み、手がしびれた。 普通の身体能力ではない。人間離れしている。 だが、突出した身体能力などに遅れをとっては、メイジの名が廃る。 “本物”のメイジは、接近戦もこなせてこそなのだ。 再び後ろに飛びずさったワルドは、ゆっくりと息を吐き出し、油断を捨て去る。 ようやく本気になったか、とアノンは身構えた。 「魔法衛士隊のメイジは、ただ魔法を唱えるだけじゃないんだ」 ワルドは羽帽子に手をかけて言った。 「詠唱さえ、戦いに特化されている。杖を構える仕草、突き出す動作……、杖を剣のように扱いつつ詠唱を完成させる。軍人の基本中の基本さ」 再びアノンが斬りかかる。 ワルドは猛スピードで振るわれた剣を見切り、今度は杖で受け流した。 体勢の崩れたところに、柄じりでの一撃を叩き込むが、アノンは凄まじい身体能力で持って飛び上がり、それをかわしてみせる。 「君は確かに素早い。ただの平民とは…いや、人間とは思えない」 身を捻って着地するアノンを狙い、ワルドは風を裂く音と共に、何発も刺突を繰り出す。 一撃目よりも速く、鋭く、力強い。 「しかし、それだけでは本物のメイジには勝てない」 それでもまだ、アノンの方が速い。だが、的確に避けづらい場所を狙ってくる攻撃が、攻めに転じることを許さない。 ワルドはアノンの“超身体能力”を、卓越した“技”で押さえ込んでいた。 「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」 杖が風を切る音の中に、アノンは何かの呟きを聞いた。 「! コレは…」 「相棒! いけねえ! 魔法がくる!」 デルフリンガーが叫んだと同時に、アノンの目の前の空気が跳ねた。 巨大な空気の塊に殴り飛ばされ、宙を舞ったアノンは、積み上げられた樽に突っ込んだ。 派手な音を立てて、樽の山が崩れ落ちる。 「つまり、君ではルイズを守れない」 崩れた樽に埋まったアノンに、ワルドはそう言い放った。 慌ててキュルケたちが、樽を退けてアノンを掘り出しにかかる。 「アノン!」 「待つんだルイズ」 ルイズも駆け寄ろうとしたが、ワルドに止められた。 「こういうとき、男には声をかけないほうがいい」 「でも…!」 「今君に慰められたりなどしたら、それこそ彼は立ち直れなくなる」 ルイズはぐっと黙り込んでしまう。 「とりあえず、そっとしといてやろう」 ワルドがルイズを諭す。 「ダーリン、大丈夫!?」 「あ、待つんだキュルケ! そこを退けたらまた……」 向こうでは、『レビテーション』で樽を退けようとして、さらに崩れてきた樽にキュルケたちがきゃあきゃあ言っている。 ルイズはしばらく躊躇っていたが、やがてワルドに引かれて去っていった。 「自分で出られるよ」 樽山の中から、アノンの声がした。 ガラガラと山を崩しながら、アノンが自力で這い出してきた。 「よく無事だったな」 「ダーリン、怪我は無い?」 「平気だよ」 服の埃を払いながら、アノンは答える。 「しかし、いくら君でも魔法衛士隊隊長の相手は荷が重かったようだな」 「でも、平民であれだけやれれば十分よ」 「けっ! ガキどもが。どこ見てもの言ってやがる!」 いきなり野太い男の声が聞こえた。声の主は、アノンのインテリジェンスソードだ。 その柄は、アノンの手にしっかりと握られていた。 「見ろ、相棒はまだしっかり俺を握ってる。武器を手放さないうちは負けじゃねえ」 アノンは必死に訴えるデルフリンガーを鞘に戻し、柄をぽんぽんと叩く。 「ただ魔法を唱えるだけじゃない、か……。この世界の『魔法』…まだまだ奥が深そうだ」 決闘の結果など気にもせず、アノンは新しいおもちゃを見つけた子どものように、瞳を輝かせて嬉しそうに笑った。 その夜、アノンは一人部屋のベランダから、重なり一つになった『スヴェル』の月を見上げて、思考に耽っていた。 ワルド子爵。 相当な腕の持ち主だ。速さだけなら、あの李崩以上。 そこに魔法の力と実戦で鍛えられた技術が加わり、まさに『閃光』の二つ名に相応しい実力だ。 それに、今日の戦いが彼の全力ではない。 デルフが言うには、ワルドは最高クラスのスクウェア・メイジ。 もっと強力な魔法が使えるはずだ。 彼が本気になれば、今日とは比べ物にならない戦闘力を発揮するだろう。 だが、アノンが重要に考えていることは他にあった。 本物のメイジと戦ったことで新たに知った、メイジの戦い方。 すなわち、剣と魔法の併用である。 杖を武器とし、杖で攻撃しつつ詠唱を完成させ、魔法を撃ち込む。 魔法を使うための限定条件、“杖を手に持つ”と“ルーンを唱える”の二つをクリアしながら、攻め手を緩めず、魔法攻撃に繋げられる有効な戦術だ。 ワルドは、それを完全に使いこなしていた。 そして、それは『軍人の基本』と言った。 モット伯の魔法に加えて、更なる魔法の力を得ようと考えていたアノンだったが、今はそれ以上に、魔法を使いこなす技術に興味を持っていた。 「何たそがれてんのよ」 後ろからの声に振り向くと、そこにルイズが立っていた。 「ワルドはスクウェア・メイジよ。負けたって恥じゃないわ」 ぶっきらぼうに言うルイズ。 どうやらアノンが、ワルドに負けたことを気にして、落ち込んでいるのではないかと心配してくれたらしい。 「別に落ち込んでるわけじゃないよ」 アノンは答える。 「ただ、ボクもまだまだだなって思ってただけさ」 「べ、別に心配したわけじゃないわ」 ルイズはぷいっとそっぽを向いた。 「子爵様がいれば、この任務も心配ないね」 アノンの何気ないその言葉に、ルイズは急に不機嫌になった。 「なによ。全部ワルドに任せる気? あんたは私の使い魔でしょ。ちゃんと私を守りなさいよ」 「わかってるよ。でも凄い腕だったし。実際、今回の任務くらい一人でこなせちゃいそうだよね」 なぜだか分からないが、ルイズはアノンのその態度に酷く苛立った。 自分の心配が、空振りに終わったからだろうか。 それとも、アノンが決闘に負けた事を、全く気にしていないからだろうか。 とにかく、ルイズは今のアノンが気に喰わなかった。 「わかったわ。いいわよ。私はワルドに守ってもらうわ」 「?」 ルイズの怒った様な言い方に、アノンは不思議そうな顔で、うん、とだけ答えた。 それがさらにルイズを苛立たせる。 「あの人、頼りがいがあるから、きっと安心ね。別に使い魔のあんたに言うことじゃないけど、言うわ。今、決心したわ。私、ワルドと結婚する」 何かの気持ちを込めてルイズは言ったが、アノンは、一体なんだ、とでも言いたそうだ。 「ワルドと結婚するわ」 もう一度、ルイズは繰り返した。 「ああ、キミたちは婚約してるんだっけ? 別にいいんじゃないかな」 「…!」 特に驚いた様子も無いアノンに、ルイズのプライドは傷ついた。 「あんたなんか一生そこで月でも眺めてればいいのよ!」 そう怒鳴って、ルイズはアノンに背を向けた。 その時、巨大な影がベランダを覆った。 見上げると、月光を遮り、影を作っているのは巨大なゴーレム。 「な、なによこれ!」 「このゴーレムって確か…」 「久しぶりね、お二人さん!」 ゴーレムの肩から、長い髪の人物が二人に向かって言った。 「フーケ!」 ルイズが叫ぶ。 「感激だわ。覚えててくれたのね」 「たしか、牢屋に入れられてたんじゃなかったっけ」 言いながらアノンは背中に手をやり、デルフリンガーを背負っていないことに気がついた。 一人で考え事をしたかったので、あのよく喋る剣は、部屋の中に置いて来ていたのだ。 「親切な人がいてね。私みたいな美人はもっと世の中のために役に立たなくてはいけないって、出してくれたのよ」 嘯くフーケ。その隣に、黒マントを着て、顔を仮面で隠した男が立っている。 (アレがフーケを脱獄させた犯人か?) 黙り込んでいるため、どういった人物なのか分からないが、どうにも不気味な感じだ。 「素敵なバカンスのお礼をしてあげるよッ!」 フーケが叫び、ゴーレムが拳を振り上げた。 「ルイズ!」 「きゃあ!」 アノンはルイズを部屋の中へ突き飛ばし、自分も部屋に転がり込む。 ゴーレムの拳が、ベランダを抉った。 「何事だ、相棒!」 アノンは喚くデルフリンガーを引っつかみ、ルイズを引っ張って一階へと駆け下りる。 しかし、そこもすでに修羅場と化していた。 街中の傭兵たちが、宿を襲撃してきたのだ。狙いはもちろん、ワルドたち。 石のテーブルを倒して盾にし、反撃もしているが多勢に無勢といった状況だ。 破られた店の扉から、フーケのゴーレムの足が見える。 どうやらフーケも店ごと潰すつもりは無いらしい。 アノンたちもテーブルの影に滑り込んだ。 「ギーシュくんがいないね。どこ?」 「え、上にいたんじゃないの?」 アノンの問いに、キュルケが驚いたように言った。 首を振るアノン。ギーシュの姿は夕食の後から見ていなかった。 「では外か。参ったな」 「ただでさえ多勢に無勢だっていうのに、分断されるなんて」 キュルケは忌々しげに外に見えるゴーレムの足を睨んだ。 「あのフーケがいるってことは、アルビオン貴族が後ろにいるということだな。ギーシュ君は最悪、見捨てることになるかもしれん」 ワルドのその言葉に、ルイズが声を上げる。 「そんな!」 「この状況じゃ、探しにもいけないよ」 アノンにそう言われても、ルイズは納得していないようだ。 話している間も、矢は飛んでくる。 キュルケはテーブルの盾から身を乗り出し、反撃の火球を放つも、すぐさま討ち返された矢に、慌てて頭を引っ込める。 「それより、このままじゃいずれ精神力が切れるわ! そしたら連中、一斉に突撃してくるわよ。どうすんのよ!」 「こうするのさ!」 突如、勇ましい声が酒場に響いた。 それと同時に、厨房の方から大きな鍋が、突入を図ろうとしていた傭兵達に向かって投げつけられた。 派手な音と共に、鍋の中にたっぷり入っていた油がぶちまけられる。 「ギーシュ!?」 ルイズたちが声の方を見ると、趣味の悪いシャツを血で汚したギーシュと、鍋を投げたワルキューレが立っていた。 「キュルケ! 炎だ!」 「言われなくても!」 傭兵達が怯んだ隙に、キュルケはテーブルから乗り出し、火球を放った。 火球は撒かれた油に引火し、火の海を作り出す。 「ルイズ! ここは任せろ! 君たちは船へ!」 タバサがこんな時まで読んでいた本を閉じ、自分達を指して、 「囮」 と呟く。 「聞いての通りだ。裏口に回るぞ」 「行くよ、ルイズ」 「え? え? ええ!?」 戸惑うルイズを急かし、ワルドとアノンはテーブルの影から飛び出した。 三人めがけて矢が放たれたが、タバサの風が全て防ぐ。 三人は裏口から、桟橋へと急いだ。 キュルケの炎をタバサの風が煽り、陣形の崩れた傭兵達に青銅のゴーレムが突進する。 突然のギーシュの参入で、傭兵達は動揺し、形勢は一気に逆転した。 あれだけいた傭兵達は、すでにほとんどが逃走を初めている。 「あんたどこ行ってたのよ」 逃げ出した傭兵達に一仕切り勝ち誇った後、キュルケはギーシュに尋ねた。 戦闘が一段落し、床に座り込んでいたギーシュは顔を上げて答える。 「ちょっとトレーニングさ。そしたら急に宿の方が騒がしくなったからね。急いで戻って来たってわけだ」 「傭兵の中を突っ切ってきたわけ?」 「連中、後ろはまるで気にしてなかったからな。厨房の窓に飛び込むまで、ほとんど無傷で走り抜けられたよ」 「へえー…」 キュルケは意外そうにギーシュを見た。 あの軟派なドットメイジがえらく変わったものだ。 伊達に武門の出ではないということか。 「しかし…傭兵とはいえ、人を殺すというのはあまり気分の良いものじゃないな」 ギーシュは今回初めて、本格的な命のやり取りを経験したのだ。 戦いの興奮が冷めてそれを実感したのか、青い顔で体を震わせた。 「まだ終わっていない」 タバサが二人に言った。 その直後、轟音と共に宿の入り口がなくなった。 「あちゃあ。忘れてたわ。あの業突く張りのお姉さんがいたんだっけ」 ゴーレムの肩ではフーケが、目をつりあげてこちらを睨んでいる。 「どうする?」 「ルイズたちは行ったし、もう戦う意味が無いような気もするが……」 「調子にのるんじゃないよッ! 小娘どもがッ! まとめてつぶしてやるよッ!」 フーケの怒鳴り声が響く。 「……そう簡単には逃がしてくれなさそうよ?」 タバサが、ギーシュを見て言った。 「さっきと同じ。油と炎」 「あの巨大なゴーレムを焼けるだけの油がどこにあるんだね」 「あなたが作る。まずは花びら、それもたくさん」 それでギーシュは、タバサの意図を察する。 「…ああ、了解。今度は相手がゴーレムなだけ気が楽だ」 よっこらしょ、と腰を挙げ、ギーシュは薔薇の杖を振った。 無数の花びらが生まれ、それをタバサが風に乗せてゴーレムへと飛ばす。 花びらが、ゴーレムにまとわりついた。 「うん。あの無骨なゴーレムも、僕の薔薇でずいぶん見栄え良くなったじゃないか」 勝ちが見えたからか、それとももう恐怖が麻痺したか。 ギーシュはあのフーケを前にしているにもかかわらず、なんだかのん気な気分だった。 「なによ。贈り物? 花びらで着飾らせてくれたって、見逃してなんかやらないよ!」 フーケがせせら笑ったが、ギーシュは冷静に『錬金』を唱えた。 ゴーレムの表面に張り付いた花びらが、ぬらりとした油に変わる。 「これは…」 フーケは、敵たちの能力と照らし合わせて、すぐにその目論見に気づいた。 (やばい!) フーケがゴーレムから飛び降りると同時に、キュルケが『ファイアーボール』を放った。 ゴーレムは一瞬にして炎に包まれる。 燃え盛る炎を振り払おうと、ゴーレムはしばらく暴れていたが、やがて力尽きたように崩れ落ちた。 雇い主の敗北に、わずかに残っていた傭兵達も散り散りになって逃げていく。 「やったわ! 勝ったわ! 私たち!」 ぴょんぴょん跳ねて喜ぶキュルケ。 タバサは座っていつものように、本のページをめくり始める。 逃げ去っていくフーケと傭兵を見送り、ギーシュは大きく息をついて、地面に大の字に寝転んだ。 空には、重なり合った双月が輝いている。 「ルイズたちは無事に船まで行けたのか…?」 今は考えても仕方ない。 ギーシュは襲ってきた疲労に任せて、目を閉じた。 前ページ次ページアノンの法則
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前ページときめき☆ぜろのけ女学園 (タバサに人間だって知られちゃったわ。このままじゃ他の妖怪にもバレて、襲われちゃうかもしれない。食べられちゃうかもしれない) そんな事を考えつつ、ルイズは布団に包まっている猫耳の少女を見据えていた。 (そんなの絶対に嫌!! そんな事になるくらいなら、私は、キリと同じ猫股になるわ!) 決意を込めて布団をめくり上げるルイズ。 そこでは、キリと同じ猫股だが別の少女が静かな寝息を立てていた。 (ま、間違えたああ!) ルイズは頭を抱え心中で絶叫する。 その時、背後で襖が開く音がした。 「ひ……っ(誰か来たっ!!)」 慌ててキリの掛け布団に潜り込む。 「……ル、ルイズ?」 文字通り「頭隠して尻隠さず」という状態になっている何者かの正体を匂いで看(?)破し、キリはそう声をかけた。 「……キリ」 「ルイズ! そんなかっこで何してんの!?」 「これは~、その~」 キリに尋ねられたルイズがしどろもどろになっていると、 「ううん……、うるさいな……」 もう1人の猫股が寝ぼけ眼で体を起こした。 「キリ? どうかした?」 ルイズはそれより一瞬早くキリの布団に潜り込み、キリは何事も無いように装って答える。 「あ……、暑くて水飲んできた。ごめん……、起こしちゃった?」 「あ……、そ」 猫股はそう答えると即座に眠りについた。 安堵の溜め息を吐いたキリは、 「ルイズ、今のうちに部屋戻ろう」 と布団の上から声をかけるもルイズの反応は無い。 代わりに自分の下半身に奇妙な違和感を覚え始めたため、布団をめくる。 「ちょ……、ルイズっ、何してるの!?」 「し……、下のお口っ!」 そこではルイズがキリのスパッツを下着ごと脱がそうと引っ張っていた。 「は!? ええっ!? ええええええ?」 「下のお口……、下のお口ってどれ? どこ? どうしたらいいの!?」 「ルイズっ、どうしちゃったの? 落ち着いて!!」 ルイズの突然の行動に混乱しつつも何とか落ち着かせようとするキリ。 しかしそんな彼女にルイズは、 「私、猫股になるって決めたの……!!」 と自分の決意を告白した。 「え?」 呆気に取られたキリ。そこに、 「むにゃ……、うるさいな……」 先程の猫股が目を擦りつつ再度体を起こした。 2人は即座に布団を頭まで被って狸寝入りを決め込む。 「……あれ?」 周囲を見回した猫股が三度眠りにつくと、 「………」 「………」 しばらく息を潜めてからルイズ・キリは会話を再開した。 「ねえルイズ、自分の言ってる事わかってる?」 キリからの問いかけにルイズは赤面しつつ頷く。 「猫股になったら、もう人間には戻れないんだよ? それでもルイズは本当に猫股になりたいの?」 (他の妖怪に襲われるくらいなら、猫股の方がいいに決まってる) 心中でルイズはそう呟き、キリからの再度の問いかけに再び決意を口にする。 「キリ……、私を猫股にして」 その言葉にキリはルイズをそっと抱きしめる。 「ありがとう、ルイズ。私凄く嬉しいよ」 「キ……、キリ」 そして2人はそっと口づけ合う。 (だから……、だから……、これでいいのよね……) キリが優しく胸を揉む感触に耐えられず、ルイズの口から声が漏れる。 「ふ……っ、うん、キ……、キリ、どうして胸を触るの? 下のお口……でしょ?」 「だって気持ちいいでしょ。ほら……、下のお口も気持ちいいって言ってる」 「やんっ!」 嬌声を上げたルイズの口を自分の口で塞ぐキリ。 「ふっ、んっ、やあ」 「ルイズ、声出したら駄目」 「んん」 キリはそっとルイズの下半身に手を伸ばしていく。 (何これ何これ、こんなの初めてよーっ!! き……、気持ちいいよ~!) さらにキリの口がルイズの胸を攻める。 「はっ、キリ……、駄目、もう駄目。あ、お願い、早く猫股にしてっ!」 「ルイズ、可愛いな。無理なら今日はもうここまでにしよ?」 「だ……、駄目っ。だって……、だって、タバサに人間だって知られちゃったから、私早く猫股にならなきゃ!」 「……タバサに……、だからそれで突然……」 そう呟いたキリはそっとルイズから離れ起き上がる。 「キリ……?」 「ルイズ、駄目だよ。そんなの駄目だよ」 「キリ……、駄目って……、どうして!? だって私猫股にならなきゃ他の妖怪に……っ」 「タバサには私から話をつけてくるから大丈夫」 「でも……」 「だからそんな理由で妖怪になるなんて言わないで!!」 キリが荒げた声にまたも隣で寝ていた猫股が体を動かす。 「キリ……、声大きいよ……。うううん……」 その声に一瞬沈黙した2人だったが、ルイズの方から声をかける。 「……何か怒ってる?」 「………」 しかしキリはそれに答えず布団に潜り込んだ。 「もう寝よう。今日はここに泊まっていっていいから」 「キリ……」 ルイズも仕方なく布団に潜り込む。 (タバサに知られちゃった事も、キリの様子がおかしかった事も心配なのに――) しかしルイズの頭の中は先程のキリとの事でいっぱいになっていた。 (あんなに気持ちいいなんて……。どうしよう、もっとしたい!) その夜、ルイズは一睡もできなかった。 前ページときめき☆ぜろのけ女学園
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平 祥子@リワマヒ国 こんばんは、生活ゲームで声かけさせていただきました。 芝村 記事どうぞ 平 祥子@リワマヒ国 はい ttp //cwtg.jp/ogasawara/wforum.cgi?no=3455 reno=3305 oya=3305 mode=msgview こちらになります 平 祥子@リワマヒ国 前のゲームのときはフィーブル藩国滞在のイイコちゃんを呼んでいたのですが、そのときの記憶や誕生日に手紙を送ったイイコちゃんを指定することはできますか?(どっちも結構前なのでかなり記憶は薄れてそうですが) 芝村 イベントは? 芝村 大丈夫 平 祥子@リワマヒ国 ありがとうございます。藩国のほうで少し気になっていることがあるので少し質疑してから決めさせていただきたいのですがよろしいでしょうか?>イベント 芝村 ええ 平 祥子@リワマヒ国 Q1.以前ISSに国内のクーリンガン高弟の調査をお願いしましたが、何か進展はありましたか? Q2.紅葉国で避難民にまぎれて入り込むというケースがあったようですが、リワマヒでも問題がないか調査したほうがよいでしょうか? Q3.繁茂技術でできた密林は生物兵器対応植物でなくなっているようですが、発生していた遺跡はどうなっていますか? Q4.なりそこないが出ていたようですが今の状況で以前なりそこないになったことがある人がログインしても問題ありませんか? 平 祥子@リワマヒ国 以上の4つになります。>質疑させていただきたいこと 芝村 A1:ええ。 芝村 あやしいのみつけてる 芝村 A2:いえ? 芝村 A3:わからない 芝村 A4:ええ 平 祥子@リワマヒ国 ありがとうございます。 えーと、藩国のほうはそんなに問題なさそうなので普通にあって話でもできたらと>イベント 芝村 リワマヒ? 宰相府? 平 祥子@リワマヒ国 ではリワマヒでお願いします。 芝村 2ふんまってね 平 祥子@リワマヒ国 はいー 芝村 /*/ 芝村 昼のはずなのに太陽が見えない 平 祥子@リワマヒ国 「おお?」 平 祥子@リワマヒ国 #Q.密林でしょうか? 芝村 A:密林なんか影も形もない 芝村 貴方は腐った土を踏んだ。 芝村 嫌な匂いがする 平 祥子@リワマヒ国 周りを見て状況確認しつつ、小村さんを探します。 平 祥子@リワマヒ国 「これは…ひょっとして生物兵器対応植物の効果?」 芝村 イイコみつけた。 芝村 ゆっくり歩いている 平 祥子@リワマヒ国 「小村さん、こんにちは。お久しぶりです」 芝村 イイコ:「はい? あ・・・ああ。南の島で?」 平 祥子@リワマヒ国 「ええ。かなり前のことですけど。覚えていてくれてうれしいです。」 芝村 イイコ:「自由号が、あのころはいたから」 平 祥子@リワマヒ国 「あぁ、なるほど。そうか自由号も一緒に呼べばよかったですね。」 「この前のお礼も言いたかったし」 芝村 イイコ:「世界の終わりみたいな感じですね・・・」 平 祥子@リワマヒ国 「この前まではジャングルみたいなとこだったんですが…。やはり緑オーマに利用されるのを恐れて生物兵器対応植物で密林枯らしたのが原因でしょうか・・・」 芝村 イイコは首をかしげた 芝村 イイコ:「わかりません。調べますか?」 平 祥子@リワマヒ国 「ええ、このままだと国の人たちも困りそうですし。手伝っていただけます?」 芝村 イイコはうなずいて、貴方の手をとった。歩き出した 平 祥子@リワマヒ国 一緒に行きます。 芝村 巨大な樹だ 平 祥子@リワマヒ国 「これは…?」 #Q.国に長いこといますが私が見たことあるようなものでしょうか? 芝村 そこに、たくさんの死体がつり下げられている。 芝村 A:ええ。 芝村 イイコは目を細めている。 平 祥子@リワマヒ国 「どこのどいつがこんなことを…」 芝村 イイコは木の上を見た。 芝村 巨大な化け物が。樹の上にいる。 平 祥子@リワマヒ国 敵の攻撃がないか警戒しておきます。 芝村 イヒヒヒと笑っていた。 芝村 貴方の脚が震えだした。 平 祥子@リワマヒ国 震えをこらえて、深呼吸していったん落ち着きます。 芝村 無理だ。貴方は歯がなっているのを感じた。 芝村 化け物:「メリークリスマス。メリークリスマス!イヒヒヒ」 芝村 イイコ:「なりそこない・・・か」 平 祥子@リワマヒ国 ISSと政庁に連絡を、後可能ならダガーマンコールを 芝村 ISSは連絡に反応しない。政庁は対応で忙殺されている。 芝村 ダガーマンを呼んだ 平 祥子@リワマヒ国 後藩国マイルで自由号を追加で呼べますか? 芝村 呼べる 平 祥子@リワマヒ国 では10マイル支払って自由号呼びます。 芝村 反応はない。声援がたりないようだ・・・・ 平 祥子@リワマヒ国 (しまった、前の生活ゲームで普通に呼べたからいけるのかと… 芝村 イイコは眼鏡をとった。 平 祥子@リワマヒ国 イイコちゃんを見ます。 芝村 イイコは笑っている。 芝村 イイコ:「みつけた」 平 祥子@リワマヒ国 「小村さん?あれを探して?」 芝村 イイコ:「その馬鹿笑い、そこまでだ。暗渠にて笑うあしきものよ。あなたがたの天敵がきたぞ」 芝村 なりそこないは地上におりたった。 芝村 イイコは素手で歩き出した。 芝村 イイコはなりそこないと殴り合い始めた。 平 祥子@リワマヒ国 「手伝います。」 女の子があの啖呵を切って戦っているところを見たい上震えている場合ではないと思うのですが震えるのをやめて援護射撃はできますか? 芝村 無理だ。貴方はイヒヒヒと笑っている。 平 祥子@リワマヒ国 orz 芝村 イイコは正面切って8mの化け物に殴り勝った。貴方は後ろから襲いかかった。 平 祥子@リワマヒ国 イイコちゃんのほうに攻撃しそうならせめて全然関係ないところ攻撃してAR減らします。 芝村 2 芝村 1 芝村 イイコは振り向くと貴方を殴り倒した。 芝村 正気に戻った。 平 祥子@リワマヒ国 (うわーイイコちゃんごめん) 芝村 イイコ:「目、さめましたか?」 平 祥子@リワマヒ国 「ハイ、おかげでどうにか。ありがとうございます。」 芝村 イイコはほほえんだ。 芝村 イイコ:「森が、遺跡を封じてたんですね」 平 祥子@リワマヒ国 「なるほど・・・。それを取り除いてしまったからこの状態になってたんですね。」 #Q.最初木の上にいた敵のほうはどうなっていますか? 芝村 A:すでに倒された。消えてなくなっている 平 祥子@リワマヒ国 #了解です。 平 祥子@リワマヒ国 「ありがとうございました…。おかけでこれ以上の被害はなくなりそうです。 芝村 イイコ:「まだ、そんなに数はでてないようです。すぐに対応します」 平 祥子@リワマヒ国 「ありがとうございます。私も藩王に連絡入れてすぐに非難活動と支援物資を相談します。必要なことがあれば何でもいってください。」 芝村 イイコ:「はい」 芝村 イイコ:「・・・・」 芝村 イイコは頭をかいた 芝村 イイコは眼鏡をみつけた。かけた 平 祥子@リワマヒ国 w 芝村 イイコ:「すみません」 平 祥子@リワマヒ国 「眼鏡かけていないのもなかなか素敵だと思いますよ。(微笑んで)」 芝村 イイコ:「・・・大昔、かのものの遺跡をつぶしたのは密林だと、きいています」 平 祥子@リワマヒ国 「そうだったんですか・・・。繁茂技術はまた使用できるようにしたほうがよさそうですね…。」 平 祥子@リワマヒ国 となると緑オーマ対策と植物をこの時期に増やすことを他国に対して説明もいりますかね。 芝村 イイコ:「はい・・・すみません」 芝村 イイコ:「もっと、助言しておくべきでした」 平 祥子@リワマヒ国 「いえ、私たちのほうこそそこまで考えが回っていませんでした。教えていただいてありがとうございます。」 「・・・国民の皆さんにはできる限りの償いをしようと思います。」 芝村 イイコ:「・・・はい」 芝村 イイコ:「・・・・・・」 平 祥子@リワマヒ国 「ここでこうしていても仕方ないか。救助に行こうと思います。まだ敵がいるなら一人でも犠牲者を減らしたい」 平 祥子@リワマヒ国 救助活動に向かおうと思います。行政士官を着ているので戦闘以外の避難活動でならばそれなりに働けるかと 芝村 イイコはにこっと笑った。 芝村 イイコ:「お手伝いします」 平 祥子@リワマヒ国 「ありがとう」 芝村 /*/ 芝村 はい。お疲れ様でした 平 祥子@リワマヒ国 お疲れ様でしたー 平 祥子@リワマヒ国 最初の質疑で大丈夫なのかと思って油断しました 芝村 遺跡はわからない。で、警戒してもいいかもね 平 祥子@リワマヒ国 なるほど 平 祥子@リワマヒ国 すいません、活動限界までPCで避難や救助活動手伝いたいのですが可能でしょうか? あと、その活動中にまたなりそこない化する可能性はあるでしょうか? 芝村 イイコがいるから大丈夫さ。 芝村 はい。では解散しましょう 芝村 秘宝館には1,1で 芝村 評価は+1+1でした 平 祥子@リワマヒ国 了解です。>大丈夫 ありがとうございましたー 平 祥子@リワマヒ国 ではー 芝村 ではー
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108 :それも名無しだ:2010/10/19(火) 23 05 08 ID +iyFMsMQ イスペイル様は変態だけど、ルイス様は苦労人に入ると思うの。 109 :それも名無しだ:2010/10/19(火) 23 56 48 ID JIijJ6J+ ルイス様「うわぁ~ん!私、変態じゃないよぉ~みんなにドジっ子って、言われるだけだよぉ~!」 110 :それも名無しだ:2010/10/19(火) 23 59 03 ID 3fG2ypIY 苦労人ですら気づけば変態化していく…ザイリン酸の侵食力は異常だなw 115 :それも名無しだ:2010/10/20(水) 19 58 32 ID dboVT0ly ルイス様「私もついに変態さんの仲間入りしちゃったよぅ…orz」 レイ(種)「気にするな。スーツを着ていない状態ならまだ変態ではない。 が、油断していたらスーツ着用時同様変態になる可能性も無きにしも非ずだな」 ルイス様「ふえぇ!?ど、どどどどうしたらいいのかな…」 レイ(種)「率直に言うと、スーツ着用時は変態というのはすでに免れない事実だ。 だが、スーツを脱いでいる状態だけでも変態ではない趣味を見つければ、 少なくともルイスでいるときはマトモな状態でいられるだろう」 ルイス様「あぁ、やっぱりあの姿の私はもう変態なんだね…なんか悲しいなぁ… でも、私研究以外の趣味とか全然知らないよ?」 レイ(種)「まぁ、そこは俺も極力協力してやる。マトモな女性に聞いてみるのもいいかもしれん。 ルナマリア辺りならいい意見が得られるだろう」 ルイス様「う、うん。分かった。 …ありがとうね、何度も面倒見てもらっちゃって。」 レイ(種)「気にするな。俺は気にしない」 116 :それも名無しだ:2010/10/20(水) 20 16 53 ID jjKW80gx ルナマリアの意見を聞いて、ジョシュアを逆レイ〇するルイス様の姿が(ry 117 :それも名無しだ:2010/10/20(水) 22 35 10 ID lIooL/Qa 【ペットショップ・ry】 ルナマリア「趣味ねぇ」 レイ「気にするな、俺は(ry)とも言えんのでな。何かアドバイスを」 ルイス様「お、お願いしますっ!」 クーコ「あのう、ルイスさんてよく今みたいなフリフリの服を着てますよね。服とかのショッピングはどうなんです?」 ルイス様「えっ!?こ、これは…L君とかBちゃんに買ってきてもらったものなんだけど」 ルナマリア「はぁ…自分の服は自分で買わないとダメよ。イスペ兵さんはお父さんの部下なんだから公私混同は(ry)」 ルイス様「す、すみません…(まあ父じゃなくて自分なんだが)」ペコペコ レイ「ふむ。買い物か」 【ギル・バーガー★】 ソル「天体観察なんてどうかな?夜空をじっくり見れば、地球が小さな星だって分かるよ」 ルイス様『…天体ならぬ変態観察なら、毎日嫌という程してるが(汗)』 スウェン「バストアップ体操とかはどうだ」 ヒミカ「幼子に妙な知恵を吹き込むな。やはり銅鐸研究がお勧めじゃ」 セレーネ「趣味なんか昼寝か朝風呂で十分よ」 剣児「間違ってもあんな大人になるなよ」ヒソヒソ ルイス様「は、はぁ」 レイ「まあ、一応メモをとっておくか」 総士『剣児さんがマトモなアドバイスをするなんて…… いやよそう、僕の勝手な思い込みでみんなを混乱させたくない』 乙姫『総士、ミストの真似全然似てないよ』 【いんでぃくす☆】 レイ「どうする?ウチのメイドにも意見を聞いてみるか?」 ルイス様「う、うーん…何となく展開が読めちゃうんだけど…」 118 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 01 44 22 ID xe+5rQW2 ルイス様「その前に、お客さんにも聞いてみようかなぁ」 シンシア「趣味?ゲームっしょ!せっかくのアキバなんだし色々漁ろうよ!」 メイリン「と○のあなに○イト、ゲー○ーズ、そっち方面が好きになれば天国ですよね」 アビー「いんでぃくす☆は男性多いから観察してるだけで美味しいじゃないですか。 剣司君ヘタレ攻めジョシュアさん流され受け、ザイリンさんうっかり攻めに肉○器ノーザさんで」ムフフ ルイス様「…ア、アハハハ…ちょっと理解しがたい世界かな…」 早乙女「うげーっ、オタク女の趣味と来たら軟弱だよな!もっと筋肉使えってンだ!」 パイ「そーさね、少しは身体動かさないと育ちが悪くなるよぉ。おっぱいとかのさ」プルン シンシアメイリンアビー「余計なお世話だよ(です)っ!!!」 レイ「オタ女VS筋肉女の平行線バトルが始まりそうだが、俺は気にしない」 ルイス様「ま、まぁ私もどっちかといえばオタク側なんだけど」 レイ「(どっちかどころかかなりの…)気にするな、俺は気にしない」 ニュッ プロ子「あらあら、ルイスちゃんが新たな趣味をお探しですって!(・∀・)」 ルイス様「(げげぇ!厄介な奴が来おった!)は、はい…そのぉ…」 プロ子「そうですわね、コスプレ少女を目指してはいかが?わたくしが似合うコスを見繕って差し上げますわ(・∀・)」 つスパロボMXア○アコス つエロ水着 つエロランジェリー ルイス様「こ、こんな布の少ない衣装なんて…趣味で着られやしません!」 レイ「コスプレというよりただの板倫への挑戦だな。だが俺は気ry」 ステラ「うぇーい?そのパンツはステラのだよぉ~」 ノザ子「らめぇぇえ!それノザ子のブラだよぅ!(///」 ルイス様「二人ともこんな凄いの着けてたの!?」ガーン プロ子「オホホ、二人ともわたくしの英才教育の賜物ですわよーん(・∀・)」 119 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 03 29 28 ID um4mSoC6 ルイス様「はぁ・・・なんか疲れてきちゃった・・・」 レイ「あと、この店で聞いていない人物となると・・・」 咲良「買い出しから戻りました。」 祐未「あれ、ルイスちゃん。何か用事かしら?」 ルイス様「(ようやくまともな相談が出来そうだな)え、え~と、実は・・・」 咲良「ふ~ん、新たな趣味探しねぇ・・・」チクチク レイ「ああ、それで様々な女性陣に色々聞いているのだが・・・」 祐未「まだ美容体操とかやる様な歳ではないしねぇ・・・」チクチク ルイス様「?祐未さん逹。さっきから何をやっているんですか?」 祐未「冬に向けて新しいセーターを編んでいるんだけど・・・。そうだ!?ルイスちゃん。一緒にやってみない?」 ルイス「えっ!?き、急に言われても・・・」 咲良「大丈夫だって!!私達がちゃんと教えてあげるから」 ルイス様「う~ん・・・」 レイ「この際やってみてはどうだ?見ているだけよりも少し体験した方がいいぞ」 ルイス様「は、はぁ・・・じゃあ少しだけ・・・」 120 :ルイス様にこんな事をさせる俺のネタに価値ry:2010/10/21(木) 07 11 59 ID JO9WsIWN 【イディクスの部屋】 ヴェリニー「で編み物をやっていたらこのザマ。ほんとにドジっ娘だね」 ルイス様(両手がドラ○もん状態)「うー、わたしだって好きでドジっ娘やってるんじゃ…」 ヴェリ兵B『好きでやるものじゃないよね』 ヴェリニー「はいはい、取れたよ。この毛糸は貰ってもいいかい?」 ルイス様「うん、咲良ちゃんからの貰い物で良ければ。ヴェリニーも編み物するの?」 ヴェリニー「違うさね。これはこうやって使うんだよ」ツンツン ルイス様「は?」 ヴェリニー「ああ…毛糸を転がすと癒されるぅ」コロコロ ルイス様「ずいぶん変わった趣味だね……」 ヴェリ兵B「趣味というよりは本能ですね」 ガズム「趣味か?俺も特にない…うっ!また頭痛がぶり返した」イチチ ゼナ(ガズム専用の介護アンドロイド・少女型)「だ、大丈夫ですか、ガズム様?」 ガズム「ま、またいつもの頭痛だ。それよりこの前買った頭痛薬を…」 ゼナ「また新しい頭痛薬ですか。そろそろ新しいのを買うのを止めては」 ガズム「そ、そうは言ってもな…う、痛ぇ」 ルイス様『頭痛薬を買いあさるのも趣味かな?』 ヴェリ兵C「アタシはお菓子の買い食いニャ♪」ペロペロ イスペ兵S「僕はギャルゲにエロゲです!」キリッ ヴェリ兵M「……メカいじり(///」 ルイス様「みんな結構趣味持ってるんだ…」 ル・コボル「プロ子ちゃんに勧められたコスプレはどうするの?」 ルイス様「あ、あんな…えっちなのは着られないよぉ~」 ヴェリ兵A「まあエッチなコスプレが出来るにはあと五年は必要かな」 ヴェリ兵N「ルイス殿にはまだ早いでござる」 ルイス様「………#」カチン←ルイス様の闘志に何かが付いた音 【いんでぃくす☆】 ルイス様「つ、つい……反発して付けたけど……何か恥ずかしいな(///」モジモジ ザイリン「ルイス君がモジモジしてるが…」 翔子「体調でも悪いんですかねぇ」 プロ子「オホ(・∀・)」 121 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 13 27 25 ID oYS7Xt33 ヴィル「母よ、今日はやけにソワソワしてるな」モグモク ルイス様「べ、別に何でもないから!き、気にしないで!」 ヴィル「なら私は何にも気にしないし構わん」ムシャムシャ ルイス様「ヴィルはどうせならカロリー気にした方がいいね…」 ミスト(まだバイト中)「ほらヴィル!ご奉仕おいもプディングお待たせだ!」 ヴィル「ふんっ!」 ベキッ ミスト「へぶぅ!?い、いきなり殴るなよぉ!?」 ヴィル「メイドならばしおらしく『ご主人様、お待たせしましたぁ☆』と言え」 ミスト「些細なことじゃないか…一緒に住んでるのにそんな演技恥ずかしい…」 ヴィル「馬鹿、親しき仲にも礼儀ありだ、メイドの立場をわきまえろ」パクパク ルイス様「(そう言えばコイツ等、同居してるのか…今更だが不安だな…よもや)」 モワモワーン ミスト『アトリームにもデキ婚はありましたよ、地球より迅速なものがね』 ヴィル『腹の子の栄養も取らねばならん、もっとスイーツを寄越せ』ムシャムシャ シェルディア『ずるーい!ボクだって4ヶ月目なんだからね!』モグモク アンジェリカ『うぷ…や、やめて、つわりでお菓子の匂い嗅ぐと…オェーッ』 ミスト『全員まとめて母親にするだなんて、こんな俺に価値はry』 ルイス様「価値はないよぉぉー!!!」ミルナリオンハンマー!! ミスト「クリスタルッ!!」ベタン ヴィル「いいぞ母よ、この無礼なやつに礼儀を叩き込んでやれ」ムシャムシャ 123 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 21 36 18 ID JO9WsIWN 122 ザイリン酸のせいです ええ全てザイリン酸のなせる業です… 【ボロめなアパート】 ロン「ルイスちゃんの趣味って何かなぁ」 ヴァン「最近寝てもさめてもルイスルイスだな」 セイジュウロウ「ロン、悪いことは言わん。そろそろ夢からさめろ」 ロン「失礼だなぁ。これは仕事でルイスちゃんを調べてるんだ、けっして興味本位じゃないよ」 ヴァン「嘘臭え」 セイジュウロウ「…まあそれで稼げるなら問題はない」 ロン「うーん、ルイスちゃんの趣味…女の子らしく刺繍とかお花を育てることかな。 いやいや意外にも下着集めとか…ルイスちゃんのパンツ…きっと清純な白とか可憐なピンクなんだよねぇ」クネクネ ヴァン「馬鹿だな」 セイジュウロウ「…馬鹿に着ける薬はない」 【いんでぃくす☆】 ルゥ「下着占い?」 プロ子「ええ、ネットで見つけましたの。ちなみにこれが今日の運勢ですわよん」つ【リスト】 翔子「フヒヒッwwちょっと試しにww」 白:いつも清楚可憐な貴女にラッキー。片思いの彼が誘いにくるかも? 黒:大人っぽい貴女に刺激的な出会い。血湧き肉踊る出来事が… ピンク:恋に生きる貴女に恋敵の襲来!ラッキーアイテムはハリセン 青系:クールに決めた貴女だけどピンチが!?水回りには気をつけて! 黄色系:ほんわかタイプの貴女は金銭的にちょっとひと息つけそう 縞系:一癖ある貴女にはきつーいお仕置きが。オカンには要注意! アダルト系:背伸びしたい貴女に【板倫】超えの大々ピンチ!?何をやってもダメかも… ルイス様「ええーっ!」ガビーン プロ子「あらあらルイスちゃんたら。占いを信じ過ぎてもいけませんのよ(・∀・)」ニヤニヤ ルイス様『プ、プロイストめぇぇえ!!私で遊ぶ気満々だな!!』 124 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 21 49 02 ID aLbGUmf4 一応ラスボスであるル・コボル様がスレ随一の常識人ってのもすげえ話だな… レイ(種)「手段と目的が入れ替わって余計に変態化が進んだようだが気にするな、俺は気にしn」 ルイス様「気にして!?」 レイ「趣味は見つかったんだろう?ならば大丈夫だ、問題無い」 ルイス様「ある!問題あるよ!あれはつい勢いで…って何言わせるの!///」 レイ「落ち着け、お前は既に相当錯乱している」 ギャーギャー ヴェリニー「漫才見てる気分ね、どっちがボケでツッコミやらわかりゃしない」 ル・コボル「でも素で話せる相手が居るっていうのは良いことだよ?もう色々混ざりすぎて 素のキャラが何なのかわからなくなった私みたいなのはともかく」 ガズム「俺はガズムだがアンジェリカの父親はエルリックでアンジェリカは俺の娘で…ああ頭が」 125 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 23 28 21 ID e4Coa5go ルイス様「と、に、か、く!あれは一時の気の迷いで趣味にするつもりは無いから!」 レイ(種)「そうか。結局振り出しに戻ってしまったが気にするな。俺は(ry まぁ、趣味を見つけるのにそう焦る事は無いだろう。やってみて偶然趣味になる事もあるしな とりあえずルナマリアが言っていたように、今度女性陣と一緒にショッピングに行ってみたらどうだ?」 ルイス様「そうだね…ルナマリアさんだったらまだマトモだしね。 しかし趣味を見つけるのがここまで大変だとは思わなかったよ」 レイ(種)「こんなことで悩むようになったのも、それだけ人間らしくなったからなんだろうな」 ルイス様「…そうかもしれないね。あ、そう言えばレイお腹空いてない?」 レイ(種)「む…もうこんな時間か」 ルイス様「今日は色々付き合ってもらったから、私が何か作ってあげるね。何がいい?」 レイ(種)「ふむ、ではカレーを頼むか…ってルイスは料理は出来るのか?」 ルイス様「あー、バカにしてるな。それくらい出来るよぅ。 まだまだ未熟な腕だけど、実は何度か作ってるし。…じゃ、作ってくるね」タタッ レイ(種)「…料理、か。全く、ちゃんと普通の趣味もあったじゃないか」 ル・コボル「本当にね。まぁ、それに気づくのも当分先になりそうだけどね~。 それより今日はありがとね。また相談される事もあるかもしれないけど、ルイスの事、よろしく頼むね」 レイ(種)「…気にするな、俺は気にしない」 126 :それも名無しだ:2010/10/22(金) 01 30 43 ID hbcvVw9P クルーゼ「レイも悩める女性へ助言できるほど成長したか」 ローザ「良かったですね、弟さんのこと、表に出さずとも心配しておりましたし」 クルーゼ「ああ、一時はデュランダルの阿呆に憧れたりしてどうなることかと」 ローザ「成長出来る、それこそ生きている証です。私たち死人には決して叶わない…」 クルーゼ「我らにも出来ることはあるさ、想いや経験を生きている人間へ伝えることが」 ローザ「ですわね。私、久しぶりに剣にお仕置きしてまいります♪」ススーッ クルーゼ「…レイが立派に育ってくれた今、私のやるべきことは」 ヒガント「プロイスト様ハァハァプロイスト様ハァハァぷろいすとさまハァハァハァハァ」ドクドクドク バルトフェルド「しばらく会わんうちに、ダコスタ君も妙なお友達が出来たんだねぇ」 ダコスタ「まー悪い子じゃないんですけど彼、お母さん見ると変態スイッチ入っちゃって」 プロ子「どうして我が子は変態ばかりですの?みんな私のクローンだというのに!」 剣司「そりゃ、プロイストさん自身ならみんな変態で然りっすよ!」 サスページ「すぐ板倫越えようとさせるプロイスト様こそ立派な変態ですし」 プロ子「んだと!俺の生き様捕まえて変態たぁなんだぁーっ!!」クワッ 剣サス「ヒギャー!!?」 クルーゼ「ウーム、我が子か」 ムゥ「零時過ぎ…エンデュミオンの夜鷹のお目覚めだぜ!」 ゲイン「俺の黒いサザンクロスも光って唸る、ってね!行くかい?」 ムゥ「おうさ、今日もまだ見ぬ女性と異文化交流(ビビッ)…うぐっ!?」 ゲイン「どーしたよ、ムゥ。腹でも痛いのか」 ムゥ「…か、下半身が…石みてぇに固まっちまってよ…」グググ ゲイン「なにぃ!?」 クルーゼ「奴も私にとって子みたいなものだからな、上手く矯正してやらねば」(金縛りビーム発生中) マリュー「はぁ…よく分からないけど頼むわね、クルーゼ」 クルーゼ「お義父様と呼んでくれて構わんよ」キラッ
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前ページ次ページ”舵輪(ヘルム)”の使い魔 早朝、ルイズの部屋にノック音が響く。 早起きの生徒は起き出している時間ではあるが、低血圧で寝坊すけなルイズにとってまだまだ甘美な眠りの時間であった。 先にミュズがそれに気付いて目を醒まし、すうすうと寝息を立てるルイズを揺すって起こそうとする。 「マスター、起きて下さい。シエスタが呼んでいます」 「はえ?そ、そう……。って誰よあんた!」 ルイズは寝ぼけた声で怒鳴った。 ふにゃふにゃとした顔で眠そうにしている。 「ミュズです」 「ああ、使い魔ね。そうね、昨日、召喚したんだっけ」 ルイズは起き上がると、欠伸をした。 そして、ミュズに聞く。 「シエスタ…。ああ、昨日のメイドの事?で、そのメイドがどうしたのよ」 その時、再度、扉の外からノックとルイズを呼ぶシエスタの声が聞こえる。 「すみません、ミス・ヴァリエール。昨日、御依頼された件でご相談が…」 ルイズはシエスタに待つ様に返事をすると、ミュズに命じる。 「服」 ミュズに椅子に掛かった制服を手渡されると、ベッドの隅に置き、ルイズは怠そうにネグリジェを脱いだ。 「下着」 「どこにあるんですか?」 「そこのクローゼットの、一番下の引き出しに入っているわよ」 ミュズはルイズが指したクローゼットの引き出しをあけ、適当に下着を取り出すと、ルイズに渡す。 下着を身につけたルイズが、再び怠そうに呟く。 「服」 「さっき渡しませんでしたか?」 「着せて」 下着姿のルイズがベッドに座って、気だるそうに言う。 「平民のあなたは知らないだろうけど、貴族は下僕がいる時は自分で着ないのよ」 ルイズは唇を尖らせてさらに言った。 「そうなんですか」 理解した様に大きく頷くと、ミュズはベッドの上にある制服のブラウスを手に取り、のたのたとルイズの腕に袖を通す。 初めて人の着替えをする様でたどたどしいが、これから教え込ませれば良いと、ルイズは目を閉じて考えていた。 そうしていると、首筋にがさがさとした違和感を感じる。 目をパチッと見開くと、正面でミュズがブラウスのボタンを、んしょんしょと”内側に”掛けていた。 ボタンを一つ違いに掛け違えしているのはご愛顧としても、更にブラウスが裏表逆なのは、”いつもより早く起こされて”機嫌の良くないルイズの堪忍袋の緒を易々と切ってしまった。 「何やってんのよ!あんたは~!!」 その怒号は扉の向こう側で待っていたシエスタが跳びはね、女子寮全体に響き渡る程に大きな物であった。 「服はこうやって着るのよっ」 ルイズは、裏っ返しのブラウスの中に片手を突っ込んで内側に留まったボタンを外し、ブラウスが表になる様に翻すと、素早くボタンを上から順にピッタリと留めた。 スカートを手に取ると、ズバッズバッと細い脚を入れ、腰の留め金を掛け、ループタイを五芒星の飾りで固定すると、黒いマントを羽織る。 そして、どうよと言わんばかりの顔で、胸を張り腰に手を当てて、ミュズを睨み付ける。 そんなルイズの姿をミュズはまじまじと見つめて、「なるほど」と知らなかった事を知って感服した面持ちだった。 「ミス・ヴァリエール。どうなさいました?」 そこに、ノック音と共に扉の向こうから、中の様子を気にするシエスタの声が聞こえた。 「なっ、なんでもないわよ」 ルイズはちょっと恥ずかしいポーズを決めている事に顔を赤らめ、慌てて返事をする。 「そんな事、気にしないで入りなさい」 扉の鍵をガチャリと開けて、怒鳴り声を上げたのを誤魔化しつつ、ルイズは部屋にシエスタを入れた。 「で、何よ。相談って」 ルイズは椅子に腰掛け腕組みをして、シエスタに尋ねる。 「それがその…、」 シエスタは機嫌の悪そうなルイズの様子を見て、怯えて身体を震わせながら恐る恐る声を絞り出すと、頭を深々と下げる。 「申し訳ございません。お預かりした布に鋏が通らなくて、上手く仕立てられませんでした」 シエスタは面を見せないまま、謝罪の言葉とその訳を告げる。 「えっ、どう言う事?」 ルイズはイマイチ意味が分からない様で、シエスタに疑問を投げ掛ける。 裁縫や服飾に詳しい訳では無いが、公爵の息女であるルイズは平民と比べると触れた布の数や種類では数倍も多い。 あの布を触った感じから、織り目自体は細かいが地は薄くて堅い印象を受けなかった。 学院内のメイドに任せても一晩で服が出来上がる物だと思っていた。 「ご覧になって下さい」 シエスタは持っていた籠の中から、鋏を一丁取り出してルイズに差し出す。 学院からの支給されている鋏には教員の土メイジによって固定化かけられている筈で、その刃が毀れてボロボロになっている。 「これは酷いわね。それで服の方はどうなったの?」 ルイズは鋏をシエスタに返しながら、あの真っ赤な布がどうなったかを訊く。 シエスタは籠からルイズから預かった赤い布を広げ、言った。 「どうにか着れる形にはしたのですが…」 一見するとワンピースのドレスの様だが、肩を掛ける所が片方しかなく、縫われているのはその反対側の腰だけで、そこ以外の体側はバックリと開いていた。 鋏もそうだが、針で縫うのも侭ならない様子であった。 「それ、着られるの?」 シエスタはルイズの許可を貰い、二人のやり取りを聞いていたミュズに着替えさせ始めた。 着ていたワンピースを脱がすと、赤い服をミュズに潜らせる。 二つ付いている胸の留め具を左右の脇から通して背中で固定し、胴のコルセット状のベルトを巻き、縫われていない方の腰に開いている穴に長いベルトを着ける。 着替え終わったミュズが嬉しそうにクルッと回るがはだける事もなく、ワンピースとして様になっていた。 ただ、脚の両側のスリットは深く、ほぼ両肩が出て、胸元が開いている。そんな格好を好んでするのはゲルマニアの女ぐらいだ。 「留め具も元々付いていたものでしか布にくっつけるが出来ませんでした。胴のベルトは手持ちの似たような色合いの布と留め具を無理矢理、縫い付けて使ったのですが、如何でしょうか?」 「まっ、まあ。良いじゃないの」 ミュズが服を着た様子を見て、ルイズはシエスタが『上手く仕立てられませんでした』と言ったものの、それなりに形になっていたので妥協する事にした。 その言葉に表情を曇らせていたシエスタの顔がパアッと晴れる。 「ありがとうございます、ミス・ヴァリエール」 「それで。また、頼みたい事があるんだけど…」 「はい。なんなりと」 「この娘に使用人としての作法や技術を仕込んで欲しいの。どうも、世間知らずと言うか常識が無い所があるから」 「わかりました」 シエスタはにっこりと微笑んで即答する。 「じゃあ、よろしくね」 「それでは失礼いたしました」 シエスタは深々とお辞儀をすると、ルイズの部屋を慌てて出て行った。 シエスタを含むメイド達には、今の時間は朝食の準備があるので、大変なのである。 シエスタが去っていった所で、ルイズは部屋を出る仕度を済ませる。 「それじゃ、私達も行くわよ」 体をねじらせながら嬉しそうに服の様子を見ているミュズに、ルイズは声をかけて、ドアノブを掴んで扉を開けた。 (※注:この話でミュズの足のサンダルも含めて格好が、原作批准になりました) 前ページ次ページ”舵輪(ヘルム)”の使い魔
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前ページドラえもん のび太のパラレル漂流記 学院の廊下を、一匹のどでかいネコとツインテールの少女が走り回っていた。 「こ、ここここのバカネコ! なぁにがいい音楽よ! この『剛田武リサイタルコレクション』ってただの騒音じゃない!」 「なにをいうんだ! ぼくはきみが『刺激的な音楽が聴きたい』っていうから…」 誰あろう、ルイズとドラえもんである。 逃げるドラえもんを遅れて爆発が襲い、さらにその後をルイズが駆けていく。 「刺激的にもほどがあるわよ! 魔法も使ってないのに、『ゼロのルイズがまた魔法を失敗したぁ!』 ってまたバカにされたのよ! 全部あんたのせいだわ!」 「め、めちゃくちゃだ!」 もはやこのところの日課になっているドラえもんとルイズの追いかけっこであった。 ルイズの失敗魔法は校舎を削り、その威力はちょっとシャレにならないものがあるのだが、 止めても聞かない上にどうせ後になってドラえもんが直すので、みな見て見ぬフリをしている。 そして、みなが黙認している理由がもう一つ。実はこの追いかけっこ、大抵すぐに終わるのであった。 「今日という今日は許さないわよ!」 このルイズ。胸も魔法もゼロだが、すばしっこさには定評がある。 人間の男にならともかく、短足ロボットなんぞに負けるはずもない。 「うわあっ!」 あっというまにドラえもんをつかまえると、その上に馬乗りになる。 そしてドラえもんのしっぽに次ぐ急所とも言うべき四次元ポケットに目をつけ、 「なにをする! あっ…」 ベリッ、とお腹から剥がしてしまった。 そのまま、手の中で弄ぶ。 「こ、こここのポケット、破いちゃったらどうなるかしらね!」 「や、やめろ! それがなくなったら…」 ドラえもんがめずらしく切迫した声でルイズを止める。 だがルイズは唇の端を意地悪くにやあー、と歪めると、 「びりびりびり!」 「ぎゃあーーー!!!!」 聞こえてきた破滅的な音に、ドラえもんが思わず叫びをあげるが、 「……なあんてね」 本当にポケットを引き裂いた訳ではない。 ただ、切り裂くような指の動きにあわせて、ルイズが声を出していただけだ。 ……実に古典的なイタズラであった。 「わるふざけはやめてくれ。まったくしんぞうにわるいよ」 ドラえもんの取り乱しように多少溜飲を下げたルイズがドラえもんにポケットを返すと、 ドラえもんはぶつくさと言いながらポケットを付け直した。 「にしても、このポケットがないと何も出来ないなんて、あんたも意外と不便ね」 「そりゃ、ずっとおなかにつけてるからなくしたりしないし、 のび太くんの家にはスペアポケットが……スペアポケット!!!!」 ポケットを破かれそうになった時より大きな声で、ドラえもんが叫んだ。 「スペ……え? なによそれ? 新しい道具?」 きょとんとしているルイズに、ドラえもんが大慌てで説明する。 「スペアポケットだよ! この四次元ポケットとおなじつくりの、よびのポケットなんだ!」 「……へえー」 一応そう言ってみるものの、ルイズには何がそんなに驚くことなのか、よく理解出来ない。 ドラえもんはそんなルイズの様子に焦れたように、 「わからないかなあ。このポケットとスペアポケットは、四次元空間を通じてつながっているんだ」 「つまり?」 「このポケットの中にはいれば、きっとのび太くんの家のスペアポケットに出られるんだ!」 そこに至って、ようやくルイズもドラえもんの興奮の理由がわかった気がした。 「それってまさか、あんたが家に帰れるってこと?」 「そうさ! ……ばんざーい、ばんざーい! スペアポケット、ばんざーい!!」 いつものやさぐれたような口調も忘れ、素直に喜びをあらわにするドラえもんの声を、 なぜだろう、ルイズはどこか寒々しい気持ちで聞いていた。 「のび太くんの家にやってきてからこのかた、こんなに長い時間、のび太くんとはなれたのは はじめてだったかもしれない。でも、それももうおわりだ。 まってろよ、のび太くん。ぼくがいま行くから!!」 興奮冷めやらぬ、といった様子で無邪気に喜ぶドラえもん。 一方で、ルイズは複雑な心境だった。 「そう。よかったじゃない」 祝いの言葉も、ついついかすれてしまう。 ――こんなおかしな使い魔、いなくなればいい、と最初はずっと思っていた。 しばらくして、ほんの少しだけドラえもんと親しくなってからも、もしドラえもんが 元の世界に帰る方法を見つけたら、快く送り出してやろうと考えていた。 しかし、それはもっともっと先のことで、しばらくはこのままの生活がずっと続くと思っていた。 なのにその時がこんなにも早く、こんなにも唐突に訪れるとは、ルイズは全く想像もしていなかったのだ。 (さっきまで、いつも通り、ふつうにバカやってたじゃない。なのに、こんないきなり……) 降って湧いたような事態に、ルイズは混乱していた。 「とにかく、部屋に戻りましょう。こんなこと、廊下でする話じゃないわ」 「ん? ああ、そうだね。帰りじたくもしなくちゃいけないし……」 ドラえもんの弾んだ声に、なぜが胸がずきりと痛む。 だが、ルイズはそれを無視して無言で廊下を歩き、自分の部屋のドアを開ける。 目の前に広がる、無人の部屋を見た時、つい、口から思いが漏れた。 「そっか。あんたが出て行ったらわたしまた、一人でここで暮らすのね……」 そんな弱音を口にしてしまってから、ハッとして後ろを振り返る。 「ルイズ…」 さっきまではしゃいでいたドラえもんが、今は申し訳なさそうな顔でルイズを見ていた。 ――まずい、そんなつもりじゃなかったのに。 ルイズは焦って弁解して、 「ち、違うわよ! さびしいとかそういうんじゃないからね! 勘違いしないでよ、バカネコ! ただ、わたしは…わたし、は……」 しかし、後に言葉が続かない。言うべき言葉は喉に詰まって、何も出てきてはくれなかった。 ルイズは大きく深呼吸して、何とか表面だけでも心を取りつくろうと、 「とにかく、なんでもないわ。いいから、早く帰りなさいよ。 ……あんたには、ちゃんと必要としてくれてる人が、待ってる人がいるんでしょ」 ルイズはそう言って、ドラえもんから視線を外した。 そのままでいると、何だかドラえもんには見られたくない顔や、 聞かせたくない言葉を漏らしてしまう気がしたのだ。 「いや、ぼくは行かない」 「…えっ?」 意外なドラえもんの言葉に、一瞬ルイズの顔がほころびかけ、 「な、なに言ってんのよ! あんたがいないと、のび太ってのが…」 それを必死で押し隠して、怒ったようにドラえもんに食ってかかる。 しかし、ドラえもんは穏やかな顔で首を振った。 「帰るほうほうがわかっただけでいいんだよ。 ぼくにはタイムマシンやタイムベルト、ほかにもべんりな道具がたくさんあるからね。 帰るのがいつになったって、ぼくがいなくなった時間にもどればかんけいないんだ」 ぽん、とルイズの頭にドラえもんの手が乗せられる。 「どうせのりかかったふねだ。ここできみを見守って、きみのことがぜんぶかたづいてから、ぼくはもどるよ」 「ドラえもん…」 その優しい言葉を聞いた途端、ルイズの顔がふにゃっと崩れ、泣き出してしまいそうになる。 しかし、何とかそこで踏み止まり、自分が無防備な顔をさらしていたことに気づいて、ルイズは真っ赤になった。 「お礼なんて、言わないんだからね!」 その顔の火照りをごまかすように、ルイズはそんな捨て台詞を残して部屋の中に駆け込んでいった。 ――その、夜のことだった。 「あれ、ドラえもん…?」 夜中に目が覚めたルイズは、ドラえもんが寝床を抜け出しているのに気づいた。 「もう、あの不良使い魔は…!」 そう毒づいて、もう一度寝てしまおうかと思ったが、どうにも気にかかって眠れない。 「これは別に、あんたのことが心配だからとかじゃないんだからね!」 誰も聞いていないのにそう言い訳して、寝台を降りる。 「ご主人さま置いて勝手に抜け出すなんて、使い魔失格……あれ?」 ぶつくさと言いながら、扉を開いたその先、そこに、ドラえもんはいた。 うっすらとした月明かりの下、一枚の写真を手に、何かを語りかけているのだった。 「やあのび太くん。きみのところにもどるのは、まだだいぶ先になりそうだよ。 でも、きっともどるから。ぜったいにもどるから、まっててくれよ」 ルイズは写真に話しかけるドラえもんを見て、思わず声を出しそうになった。 (あいつ…!) それだけ、写真を眺めるドラえもんの顔は優しくて、それ以上に悲しそうだったからだ。 ルイズの見守る中、そうとは知らぬドラえもんは、空を見上げ、ぼそりとつぶやく。 「ああ、のび太くん。きみはいったい、どうしているかなあ…」 そしてその時、ルイズは見た。 血の通わぬはずの異世界のカラクリ人形の目から、透明な雫がこぼれ落ちていくのを……。 「……あの、バカ」 ぎゅうぅ、と唇を噛み締め、ルイズはうつむいた。 ――どうして気づいてやれなかったのだろう。 ドラえもんはあんなにのび太のことを心配して、そして何より、あんなにのび太に会いたがっていたのに。 なのに自分は勝手な都合でドラえもんを引き止め、ドラえもんの気持ちも考えずに無神経に喜んでいたなんて。 ルイズは顔を伏せたまま、ごしごし、と涙をぬぐう。 「……よし」 そして、ふたたび顔をあげた時のルイズの顔は、さっきまでの甘えん坊な小娘の顔ではなかった。 誇り高い貴族の顔が、そこにあった。 翌朝、めずらしく自分で起きだしたルイズは、何でもないことのようにドラえもんに告げた。 「そうそう。そういえば言い忘れてたけど」 「なんだい? またキュルケにからかわれた? それともじゅぎょうでしっぱいしたのかい?」 失礼極まりない質問だが、ドラえもんがルイズを気遣うような言葉をかけてくるのはめずらしいことだ。 決心が揺らぎそうになるが、それを必死で押さえ、ルイズはこう言い放った。 「そんなんじゃないわよ。そうじゃなくて、あんた、今日で使い魔クビだから。故郷帰りなさい」 出来るだけ冷たく、突き放すように。 ドラえもんはしばらくポカンとしていたが、 「ははあ。ルイズ、さてはきみ、きのうのことをきにしてるんだな」 「そんなんじゃないわ…」 「いいんだ、いいんだ。きみだってなかなかいいところがあるじゃないか。 でもだいじょうぶさ。いつだって帰れるんだ。いまじゃなくてもいい」 「そんなんじゃないって言ってるでしょ!」 あくまで強情なルイズに、ドラえもんはやれやれとばかりに首を振った。 「ねえルイズ。ぼくはもう、帰るほうほうがわかっただけでまんぞくなんだ。 時間なんてどうにでもなるんだから、このままきみのつかいまをつづけて…」 諭すようにドラえもんがそう言ってくれている。……はっきり言えば、嬉しかった。 今まで家族以外にこんな優しい言葉をかけてくれる者がいただろうか。 だが、だからこそルイズにはもう、耐えられなかった。 その言葉をさえぎって叫ぶ。 「でも、あんたは泣いてたじゃない!」 もし、ドラえもんがルイズの所に留まって、使い魔をしてくれたらどんなにかいいだろうと思う。 しかし、それは望んではいけないことなのだ。ドラえもんのことを思うなら、決して。 「たしかに元の世界に戻ってからタイムマシンとやらを使えば、 あんたが消えてた時間はなくなって、元の通りになるかもしれない。 あんたの大好きなのび太だって、悲しい思いをしなくて済むかもしれない。 ――でも、あんたはどうするのよ! これからずっと、そののび太っていうのに会いたいって気持ちを抑えて、 わたしの使い魔をやるって言うの!? そんなの、わたしは認めないわ!」 ドラえもんが驚いた顔をしている。だが、それは図星を突かれた驚きの表情であって、 見当外れのことを言われた驚きではなかった。 そんなドラえもんの顔を直視出来なくて、ルイズは下を向いた。 「やっぱりあんた、ほんとは帰りたいんでしょ。そんなやつを、わたし、使い魔にしていたくない。 していたくないから、だから、帰って。帰ってよ、お願いだから……」 それでもかすれた声で、最後まで言い切った。 「……ルイズ」 かけられた声にルイズが顔をあげると……ドラえもんが複雑な顔をしてルイズを見ていた。 それだけで、それ以上何も言われずともルイズにはわかった。 やはりドラえもんは帰りたいのだ。元の世界に帰って、のび太と会いたくてたまらないのだ。 「ルイズ。その、なんていったらいいか…」 「なんにも言わなくていいわ」 ルイズがそっけなくそう言い放ち、それきり、部屋に沈黙が満ちる。 「……おせわになったひとたちに、あいさつに行ってくるよ」 やがて根負けしたようにドラえもんがそう言って、部屋を出て行った。 ――バタン。 その扉が閉められた途端、ルイズは堪え切れずにベッドに身を投げ出し、泣き出した。 「これで、いいのよね、ちいねえさま。わたし、正しいことをしたんだもの」 つぶやいてみても、心は晴れない。 優しいカトレア姉さまのことを考えて、涙を止めようとしてもダメだった。 (わたし、昔ほどちいねえさまのこと、考えなくなってた。 それってきっと、わたしが一人ぼっちじゃなくなってたから。 いつのまにか、あの使い魔はわたしの心に空いた虚無を埋めていたんだわ) そんなことばかり考えてしまって、よけいに悲しくなる。 ルイズは一人、枕に顔をうずめて泣き続けた。 戻って来たドラえもんに、『使い魔の見送りなんてどうでもいい、わたしは授業に行く』 と意地を張ったため、ドラえもんは授業の終わった夕方に元の世界に戻ることにした。 そのくせ出発が夕方だと決まると、なんのかんのと理由をつけて授業をサボり、 ルイズは最後の何時間かをドラえもんと一緒に過ごした。 だが、それはドラえもんも同じで、もうとっくに帰り支度なんて終わっているはずなのに、 部屋の隅でグズグズと何か作業をしていた。 ――しかし、いつか幕は引かねばならない。 そして、それが長引けば長引くほど、別れのつらさは倍増するのだ。 ルイズは意を決し、往生際悪く作業を続けるドラえもんに呼びかけた。 「そんなとこで何してるのよ、ドラえもん! 元の時代に帰るんでしょ?! だったら早く、しなさいよね…!」 最後の方が鼻声になってしまったが、今のルイズとしては上等だろう。 それでもまだ動こうとしないドラえもんに、出来るだけ苛立ちを込めて、 「ドラえもんー!?」 と呼んだ。 さすがに無視出来ないと感じたのか、ようやくドラえもんが立ち上がる。 そしてそのまま、ルイズの至近距離まで近づいてきた。 「…なによ」 泣きはらした顔を見られたくなくて、ぷい、とルイズはそっぽを向く。 「その、きみにはせわになったなあ、と思って…」 「ほんとよ! すっごく感謝しなさいよね! 貴族のわたしが、あんたみたいなヘンテコを 養ってやったんだから、もっと感謝して、もっと……」 最後までいつも通りにと思うのに、やはりどうしても言葉が出てこない。 代わりに目から水があふれてくる。 ……かっこ悪い。 ルイズはごしごしと目元をこすった。 ドラえもんは、そんなルイズをからかうでもバカにするでもなく、優しく語りかけてくる。 「なあルイズ。そんなになくなよ」 「な、泣いてなんかないわよ! あんたなんかがいなくなったって、 何にも変わらない! だから、悲しくなんかないんだから、 さっさと行けばいいじゃないの!」 最後まで素直になれないルイズの肩に、ぽん、とドラえもん手が置かれた。 「四次元ポケットはここにおいていくよ。 これさえあればいつだってここにもどってこれるし、きみだって道具を使える」 驚いて、ルイズはドラえもんの顔を見る。 その顔は、どこまでも穏やかだった。 「で、でもこれ、あんたの大事なもの…」 「そんなものより友だちのほうがたいせつさ」 「とも…だち……」 その言葉に堪え切れず、ルイズの瞳からぶわっと涙があふれた。 貴族としてのプライドも、ご主人さまとしての体面も忘れ、体ごとぶつかるように、ドラえもんにしがみついた。 「……バカ、バカ! なんで行っちゃうのよ! ポケットなんていらない! 道具なんてどうでもいい! 友達なんだったら、一緒にいてよ!」 「ルイズ…」 いけないと思っても、溢れ出した言葉は止められなかった。 「わたしにもようやく、居場所ができたと思ったのに…! あんたと二人なら、ゼロだってバカにされてもがんばれるって、 そう、思ってたのに…!」 それからはもう言葉にならない。 ルイズは声をあげて泣き、ドラえもんも涙をこぼしながら、ひたすらルイズの頭をなで続けた。 「ルイズ、やっぱりぼくは…」 ドラえもんがとても困ったような顔で、口を開く。 ルイズはドラえもんが何を言おうとしているか悟って、首を振った。 「…やめて。さっきのは気の迷いよ。忘れて」 「でも…」 「ドラえもん。わたしに恥をかかせないで。……だって、わたしは決めたの。 自分の意志で、あんたを元の世界に帰すって。この選択は、誰にもくつがえさせはしない。 たとえあんたにだって、わたしにだって、ね」 「ルイズ…」 ドラえもんは一度口を開いて何かを言いかけ、しかしまた口を閉じると、 今まで見たことがないほど真剣な顔をして、一言一言を惜しむように、ゆっくりと口を開いた。 「ルイズ。きみはゼロなんかじゃない。 きみはぼくがしってる中でいちばんりっぱなきぞくで、ぼくのじまんの……ともだちだよ」 ――そして、とうとう別れの時が訪れる。 「ぼく、行くよ」 ドラえもんが、ポケットを外し、そこに足をかける。 「あっ……」 それを見てルイズは思わずドラえもんに手を伸ばしかけ、しかし何も出来ずに下ろした。 どれだけつらくても止めてはいけないのだ。 それが、自分の決断なのだから。 ……手は出せない。だからせめて、言葉をかける。 「も、もし、うまく帰れなかったら、ちゃんとここに戻ってきなさいよね! その時は……わ、わたしの家で、ちゃんと雇ってあげるから! だから…」 ルイズのその言葉を聞いた時、ドラえもんは微笑んだように見えた。 そうして、 「――さようなら、ルイズ」 その言葉を最後に、ドラえもんの姿はポケットの中に消えた。 「ドラ、えもん? ……いっちゃった、の?」 ルイズの言葉に答える者は、もう誰もいない。 後に残ったのは、小さなポケットだけだった。 ルイズはずっと、一晩中ポケットの前で待ち続けた このままあのヘンテコな使い魔と別れることになるなんて ルイズにはとても信じられなかったのだ 「だってあいつ、間が抜けてるんだもの。きっとすぐに戻ってくるに決まっているわ」 だからルイズは、使い魔からのその小さなプレゼントを胸に抱き 帰ってきたドラえもんにかける言葉を一生懸命に考えながら 「ふふ…」 ときどき、穏やかで優しい妄想にほおをほころばせる かけたい言葉はたくさんある。伝えたい想いも、また だけど、時間はいつだって有限で ルイズはいまだ決定的な言葉を見つけられないまま 時計は淡々とその時を刻む やがて空には曙光がさし、いつのまにか夜は明けて ドラえもんは結局、戻ってこなかった…… 「ん…。あさ…?」 ルイズが目を覚ました時、もう日は空に高く上がっていた。 「ドラえもん! あんたまたわたしを起こすの――!」 忘れたでしょ、と言いかけて、ルイズはようやく思い出す。 「そっか。いなくなったんだった。……あはは。これですっきりしたわ。 あんなナマイキな使い魔。こっちから願い下げだもの」 そんな言葉を口にして、なのになぜだろう。部屋の広さに、視界がにじんだ。 「あはは。わたし、ほんとに一人ぼっちになっちゃった……」 ふらふらとした足取りで、ドラえもんが寝ていた部屋の隅に向かう。 寝床にはあまりこだわりがないのか、そこに敷かれた藁の上で、 ドラえもんはいつも横になっていたのだった。 「こんなことなら、もうちょっとあったかい寝床、用意してやるんだった。……ん?」 そこでルイズは、ドラえもんの寝床に何か落ちているのに気づいた。 「なにかしら…」 ルイズがそれに手を触れると、いきなり空中にドラえもんの姿が浮かび上がった。 驚くルイズに、映像のドラえもんが語りかける。 『ルイズ。面とむかってはなすとてれくさいから、こうして手紙をのこすことにするよ』 その言葉を聞いて、ルイズは悟った。これは、たぶん未来の世界の手紙なのだろう。 帰る直前、ドラえもんはこっそりとルイズにこんな手紙を残していたのだ。 「あいつ、こそこそと何かやってると思ったら、こんなよけいな、こと…」 言っている間に、また涙が出てくる。グジ、とルイズは鼻をすすった。 『なあルイズ。きみはまったくわがままでへんてこなやつだったけど、その…… きみとすごした日々は、とても、たのしかったよ』 空に浮かび上がったドラえもんが、照れくさそうにそう言った。 「わたしも、よ。あんたこそヘンテコで、ご主人さまの言うこと、なんにも聞かなかったけど、 ……でも、わたしだって楽しかった。あんたがいるから、わたしは一人ぼっちじゃなかった」 この先何があっても、たとえもう二度と、ドラえもんと会えなくなったとしても、 自分はドラえもんと過ごした日々を忘れたりはしないと確信出来た。 『ぼくが、もし、もしのび太くんにあうまえにきみとであっていたら……』 そこで映像のドラえもんが鼻をすすりあげる。 「なによ、いまさら。そんなの、ずるいじゃない…」 現実のルイズもつられてグズ、と鼻をすする。 後ろを向いて涙をぬぐったドラえもんが、無理矢理な明るい声で告げる。 『ルイズ。ぼくはきみのためにポケットをのこしていくつもりだけど、 ひとつだけやくそくしてほしい。なれないひとに四次元空間はきけんなんだ。 ぜったいに、ぼくをおってポケットの中に入ったりしないとやくそくしてくれ』 その言葉にルイズはぐっと息を飲む。 いざとなれば、ドラえもんを追ってポケットの中に入ればいい、心のどこかでそう思っていたのだ。 だが、他ならぬドラえもんの言葉なら、守らないわけにはいかない。 「…わか、ったわ。始祖と紋章に誓って、ポケットには入らない」 聞こえていないと知っていながら、律儀に誓いの文句を口にする。 『この世界には戦争や怪物、魔法を使うおそろしいエルフまでがいるらしいじゃないか。 そんな世界で、魔法も使えないのにくそまじめでうそもつけないきみがやっていけるか、 ぼくはしんぱいだ。だからひとつだけ、道具をのこしておくよ。 すごい力をもった道具だから、ぼくが行ったあとで、どうしようもなくなったときにだしてくれ』 そう言って、ドラえもんは藁束の一番奥のふくらみをたたく。 『これはぼくじしん、まだいちども使ったことのないとっておきだけど、使いかたはかんたんで…』 だが、その言葉は他ならぬルイズの声でさえぎられた。 『そんなとこで何してるのよ、ドラえもん! 元の時代に帰るんでしょ?! だったら早く、しなさいよね…!』 その声の主は、今手紙を見ているルイズではない。過去のルイズが、ドラえもんをせかしているのだ。 その言葉に、ルイズは手紙の終わりが近いことを悟った。 なぜならこの後、ドラえもんはすぐに…… 『ゴメン、もう時間がないみたいだ。道具のせつめいは紙に書いてはりつけておいたから…』 せめて一言、とドラえもんは身を乗り出すようにして、最後の伝言を残し、 『ドラえもんー!?』 遠くからまた、ルイズの声が聞こえて、 『…それじゃあね、ルイズ。ぼくはぜったい、もどってくるから――』 ――ぷつん。 そこで、映像は途切れた。 映像が終わり、われに返ったルイズは、ぼんやりとした動きで敷き詰められた藁を見た。 そこには確かに、何かが隠されているようなふくらみがあった。 ――ごそ、ごそ。 見るからに緩慢な動きで、藁の奥に隠された何かを引き出す。 「……なに、これ?」 何かの装置なのだろうか、縦長で、何かのケースのようにも見える奇妙な物体が置いてあった。 そのまんなかの辺りには付箋のような物が貼ってあって、道具の説明らしきものが書かれているが、 「バカね。あんたの世界の言葉、わたしが読めるワケないじゃない…」 翻訳こんにゃくを使えばトリステインの文字だって書けるだろうに、 ドラえもんは焦って日本語で字を書いてしまっていたのだ。 涙に濡れたルイズの顔に、くすりと小さな笑みが戻る。 こんな時でもドジなドラえもんが、あまりにもドラえもんらしくて、笑ってしまう。 「でも、いいわ。あんたの気持ち、受け取ったから……」 これではこの道具の使い方は分からないが、元よりルイズはこの道具を、 いや、ポケットの中に入っている他の道具も含め、ドラえもんの道具を使う気はなかった。 自分の、自分だけの力で、胸を張って生きていく。 いつか、ドラえもんと笑って再会するため、それが必要なことに思えたのだ。 次に会った時、ドラえもんが自分の使い魔であることを誇れるような、そんな人間になりたい。 ――それが、ルイズの新しい目標だった。 「ドラえもん、あんたが帰ったら、部屋ががらんとしちゃったわ。 でも……すぐに慣れると思う。ううん、ぜったいにそうなる。なるように努力する。 だから、だから心配しないで」 ルイズは気丈に胸を張り、涙によごれた顔をあげ、過去のどんな約束よりも重い、誓約の言葉を紡ぐ。 「でも、その代わり、わたしがずっと、がんばれたら。 いつか、胸を張って笑えるようになった、その時には。 また、笑顔で…えがお、で……う、うぅ、ぐ、グス…ドラ、えもん」 しかしついには堪え切れず、誓いの言葉に嗚咽が混じった。 「ドラえもん! ドラえもん、ドラえもん、ドラえ…もん…」 どれだけ強がっても、幼い心に別れの痛手は重く、心の傷はまだジクジクと痛む。 それでも、ルイズはそれに必死で抗った。 耐えがたい胸の痛みがあふれる度、ドラえもんの残した道具を強く、強く抱き寄せる。 よぎる思い出の度にこみあげる涙の衝動に負けぬよう、一層強く、それを抱き締めるのだ。 朝の喧騒はまだ遠く、ルイズの前には密やかでちっぽけな、けれど過酷な戦いが待っている。 しかしそれでも、孤独ではない。 ルイズは別れた友の贈り物を抱え、静かに目を閉じる。 傷だらけの心を休ませて、また立ち上がるために。 ……そして その道具を大切そうに抱えたまま、ルイズが眠りに落ちてしまった後。 ――ひらり。 ルイズの腕の間から、道具に貼られた付箋が落ちる。 その、一行目。 そこにはドラえもんの字で、こう書かれていた。 『地球はかいばくだん』と。 第六話『さようなら、ドラえもん』 おわり 前ページドラえもん のび太のパラレル漂流記
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前ページ次ページ使い魔は妖魔か或いは人間か 舞踏会から数日が経った、ある日。 水の中に浮かんでいるような感覚。 ルイズは過去の風景を見ているのだと気付いた。 母親に叱られ、池のほとりの小船でうずくまっていた幼い頃の夢。 その度に優しい子爵様が手を差し伸べてくれた。 いつものように手を取って、夢から覚める……はずだった。 目を覚ましたルイズが次に見たのは、薄暗い部屋だった。 暗く感じるのは揺らめく灯りの所為で、建物自体は立派な代物に見える。 「……ハア……ハア……夢か……やな夢だったな」 聞こえてきたのは、ルイズにも馴染みのある声。 「アセルス!?」 ルイズが驚いて叫ぶも、アセルスには届いていない。 「ここ、どこ?服が破れて……血の痕? どっか怪我したのかな……じゃあ、ここは病院?」 現状がどうなっているのかまるで分からない有様で、周囲を見渡していた。 ルイズもかつて見た夢を思い出していた。 人ならざる者を乗せた馬車に、アセルスが跳ね飛ばされていたと。 アセルスは尚もうろたえながら、部屋を出て行く。 置いていかれるまいと、ルイズも慌てて後を追いかけた。 城は異様としか表現できない代物だった。 上層には化け物が飛び交い、置かれた棺には人が入ったまま並べられている。 「こんな所にも花がある」 アセルスがたどり着いたのは白い花壇。 優雅に飾られた花も、城に漂う雰囲気の前に不気味でしかない。 「ここの城主も意外といい趣味かな……うっ」 花畑に近づいたアセルスの心臓に、背後から剣が突き刺さる。 「え?」 ただ呆然とするしかないルイズ。 「血は紫か」 後姿だけで顔は見えない。 突然現れた男が一言呟くと、姿を消す。 白い花はアセルスの体から流れた鮮血に染まっていた。 ──鮮やかな紫色に。 「……生きてる……傷が……ない……夢なら覚めて、お願い!!」 心臓を貫かれながらも生きていた事実に混乱する。 血に塗れた姿のまま、アセルスは何かに導かれるように歩く。 しばらく降りた先にたどり着いたのは、壮大な玉座の置かれた広場。 「名は?」 玉座に座る男が尋ねる。 声の主にルイズは聞き覚えがあった。 アセルスから流れた血を確認していた人物だと気付く。 「私はアセルス。 でもね、人に尋ねる前に自分で名乗るのが礼儀だと思うな」 「この無礼者!」 配下の者がアセルスの態度に憤るが、当の本人は気にした様子もない。 「アセルスか、人間にしては気の利いた名だな……気も強い、いい事だ」 「そろそろ名乗ったらどう?」 アセルスの催促に、配下達が次々と口を開く。 「魅惑の君」「無慈悲な王」「薔薇の守護者」「闇の支配者」「美しき方」「裁きの主」 「ファシナトゥールの支配者、この針の城の主」 「妖魔の君、オルロワージュ様」 最後の一人が彼の名と正体を告げる。 「妖魔……妖魔だったのね!私は人間、あなた達には関係無いわ」 家に帰すよう懇願するアセルス。 オルロワージュと名乗る男は、二つ名の通り無慈悲な声で告げた。 「先ほど花壇で見なかったのか? お前の血は紫だった、お前はもう人間ではない」 「嘘……」 アセルスは後ずさりしながら呟く。 「セアトの剣で串刺しにされた、その傷はなぜ無い? そもそも、我が馬車に轢かれてお前は死んでいた」 アセルスは何も言わずにただ青褪めて、震えていた。 「お前が甦ったのは我が青い血の力、妖魔の青と人の赤。 二つの血が混じりあいお前の血になった、紫の血の半妖半人だ。」 「私が……」 人でなくなった現実を受け入れられないアセルス。 「アセルス!」 絶望する彼女に手を差し伸べようとして、ルイズは飛び跳ねるように起きた。 「また……アセルスの過去?」 激しく脈を打つ心臓を抑え、呟く。 気を落ち着かせる為に、窓を開けて換気する。 時刻はまだ夜明け前、ルイズの髪を冷たい風がそよぐ。 アセルスが部屋にいないのは、『食事時』だからだろう。 ルイズも必要だと分かってはいる。 アセルスも気遣って、ルイズが寝静まった頃に向かっていた。 だが目覚めた以上、独占欲から嫉みにも近い感情がルイズに芽生える。 「はぁ……使用人に嫉妬してどうするのよ」 頭を振って反省したのは、ルイズが成長した証。 同時に、アセルスに対する信頼の現われでもあった。 再び夜風にあたり、頭を冷やす。 身を乗り出した際に、下にいるメイドの姿に気付いた。 「あら、シエスタ?」 呼びかけた訳ではなかったのだが、シエスタに声は届いていた。 「ルイズ様?」 見上げた先に、自らの仕える少女の姿。 シエスタの目は、驚いたように見開かれている。 「こんな遅くまで仕事?」 「今日は遅番ですから…… ルイズ様こそ、こんな夜更けに如何なさいましたか?」 至極真っ当なシエスタの返事に、ルイズは硬直する。 アセルスの過去を話すのは躊躇われる。 夢見が悪かったと言うのも、あらぬ勘違いをされそうだ。 「ちょっと寝つきが悪くて」 多少は誤魔化しながらも、正直に告げた。 「でしたら、ホットワインでもお入れ致しましょうか?」 「……そうね、お願いするわ」 仕事の邪魔をするようで悪いが、好意を素直に受け取る。 ──数分後、シエスタがホットワインを届ける。 誰かと話したい気分だった為に、ルイズはシエスタを引き止めた。 「少し聞きたいの」 「はい……なんでしょうか?」 神妙なルイズの面持ちに、シエスタも畏まった様子で伺う。 「ああ、緊張しないで。 他愛もない話だから……シエスタは運命って信じる?」 ルイズはくつろげるよう微笑んでみせる。 「運命ですか……私は信じないですね」 「どうして?」 自分だけが魔法が出来ない、ルイズは魔法が使えない運命を呪い続けてきた。 次に思い出すのは、人間でなくなったアセルスの姿。 何故彼女があんな運命に巻き込まれねば、ならなかったのか。 「気を悪くしないでくださいね、祖父からの受け売りなんですけど……」 どこか答えづらそうに、シエスタは口ごもる。 前置きを確認して、シエスタは続きを口にした。 「祖父曰く、例えどんな人生でも自分で変えるしかないと。 自分で決断して来なかった人間だけが、運命を言い訳のように使うって」 シエスタの言葉に、ルイズは胸を突き刺されるような感覚に陥る。 今までどれだけ決断をしてきただろうか? 魔法が使えるようになる目標、貴族で有り続ける志。 貴族生まれと言う立場や環境に流されただけではないのか? 自分の意思で決断を行ったのは一度だけ。 ゼロと認め、アセルスに恥じない貴族となると宣告した時。 だが、その決意すら彼女の影響に過ぎないのではないかと疑念が生じる。 「だから、私も運命は信じないですね。 まぁ祖父は、ブリミル教すら信用しないって公言するほど偏屈者でしたけど」 苦笑しながらも、懐かしそうに語るシエスタ。 彼女の姿に、ルイズも少しだけ心が軽やかになった。 「偉そうな発言をしてしまい、申し訳ありません」 謝るシエスタに、ルイズは首を振って否定する。 「ううん、素晴らしいお爺様だと思うわ。 ありがとう、シエスタ。引き止めて悪かったわね」 「いえ、お話できて嬉しかったです。 それではごゆっくりお休みなさいませ、ルイズ様」 シエスタが部屋を出る前に、一礼する。 「おやすみ」 挨拶を交わして、再びルイズはベッドに潜る。 発端はアセルスとの出会いだった。 だが、立派な貴族となるのは自分で決めたのだ。 過酷な運命が待ち構えようと後悔するつもりはない。 ルイズは固く誓うと共に眠りについた…… ──王女来訪の当日。 ルイズも久方となる王女の姿を見つめていた。 最も、他の生徒同様に整列して出迎えてはない。 ルイズとアセルスは学院長室から遠見の鏡で見ている。 二人は品評会に参加するつもりはない。 オールド・オスマンとしても、ありがたい申し出。 王宮連中の迂闊な行動で、揉め事が起きる可能性は十分にあった。 王女の姿を見て、共に遊んだ記憶が蘇る。 あの頃に比べ、自分は成長したのかと考える。 魔法を使う努力は続けていたつもりだった。 思い返せば、闇雲に魔法の詠唱を行っただけ。 実際、空回るだけで何一つ実を結んでいないのだから。 現実を受け入れられなかった。 今は魔法を使えなくても、いつか報われると信じていた。 「滑稽だわ……」 努力というのは、正しい方向に向けて意味を成す。 間違った努力を続けても、賞賛も評価もされようはずがない。 「どうしたの?」 ルイズが溜息と共に自嘲する姿に、本から目線を上げる。 王女に興味が無いアセルスは、文字を覚える為の絵本を読んでいた。 タバサからエルザに会わせたお礼として見繕ってもらった本だが、今はどうでもいい。 まだ短い付き合いながら、アセルスはルイズの性格を把握しつつあった。 端的に言えば、自虐的。 ルイズは人生において、自信を得た経験がない。 親譲りの気の強さはあれど、自信がなければ虚勢にしかならない。 それが些細な理由……例えば身体的な成長等に対して、大きな劣等感を抱く原因でもある。 「ううん、今まで無意味な努力を続けていたなと思っただけ」 虐げられてた者が力を持てば、過信しやすい傾向にある。 そうならないのは、アセルスの存在とルイズが抱いた志の高さ。 他者より力を付けても、自分が納得できないなら充実感は得られない。 「これから正せばいいよ」 「うん」 急かすでも、甘やかすでもない。 そんな一言にルイズから肩の荷がおりる。 「あ……」 再び遠見の鏡に目を向けたルイズの動きが止まった。 写っていたのは夢で見た人物──かつての許婚の姿だった。 「オーイ、嬢ちゃん」 アセルスは会話しない為、デルフはルイズと話すのが日課だった。 今日に限っては部屋に帰ってきて以来、呼びかけても上の空で反応がない。 部屋に悠然と時間が流れる。 静寂を破ったのは、扉を叩いた来訪者。 エルザかシエスタかと思ったが、用事を頼んだ覚えはない。 立っていたのは、黒いローブを被った一人の少女。 部屋に入るや否や、呪文を唱えると部屋が淡く光った。 「ディテクト・マジック?」 来訪者にようやくルイズが反応を示す。 「どこに目が光ってるかわからないですから」 そう言いながらフードを取ったのは、ルイズも良く知る姿。 「姫殿下!?」 トリスティンの王女、アンリエッタその人だった。 ルイズは慌ててベッドから降りると、膝を突いた姿勢でひれ伏す。 「品評会を休んだのには驚いたけど、ご無事なようで何よりですわ」 ただ困惑するルイズを後目に、王女は世間話をするかのごとく語りかけた。 「姫殿下の心遣い、身に余る光栄でございます。 何故このような所まで、おいでになったのですか?」 ルイズは面を上げて、当然の疑問を投げかける。 王女は疑問には答えず、ルイズに大仰に詰め寄った。 「他人行儀な挨拶はやめて頂戴! ここには小煩い枢機卿も媚び諂うだけの宮廷貴族もいないの。 貴女にまでそんな態度を取られたら、私に心休まる親友はいないわ!」 王女はルイズを抱きしめると、一気にまくし立てる。 その後、ルイズと王女は思い出話に花咲かせていた。 湖畔のほとりで遊んだ事や、泥だらけになって家臣に叱られた過去。 時にはドレスの奪い合いで取っ組み合いをしていた等、他愛もない内容。 アセルスは二人の旧交を邪魔するつもりはない。 何かと余計な一言の多いデルフを連れて、部屋から姿を消していた。 夜空に浮かぶ二つの月。 特に行く当てがある訳でもないアセルスは、屋根で月を見上げていた。 「なあ相棒、感傷に浸ってるところ悪いんだけど……」 アセルスは無言で呼びかけた剣を見下ろす。 「前にも聞いたけど、お前さんいったい何者なんだ? 人間なのに人間じゃなく、妖魔の血が流れてるのに妖魔でもない」 「誰に聞いたの?」 いつもと変わらないように聞こえるアセルスの口調。 「そんな怒らないでくれ。 何となく使い手の感情とか力とか分かるんだよ」 感情を察したデルフリンガーが正直に答える。 アセルスは機械にエネルギーの異常を判断されたのを思い出していた。 「貴女には関係ないわ」 軽々しく話したい過去ではない。 ルイズに半妖の事実を伝えたのは、似た境遇によるものからだ。 人に存在を知られれば、利用されるか怯えられるかだと経験している。 「相棒の不利になる事は言わねえって」 「うっかりで口を滑らされても困るもの」 アセルスがデルフリンガーを信用しない理由。 かけがえのない存在──白薔薇を失った時、軽口を叩いた魔物を思い起こすからだ。 背後の気配に気付いて、アセルスが振り返る。 振り返った先にいたのは、忠実な僕となったエルザ。 「ご主人様、ルイズ様が御呼びです」 「分かったわ、すぐ行く」 アセルスは空間移動で姿を消す。 デルフはそのまま屋根に置いていかれた。 「相棒が信用するのは嬢ちゃんだけかよ。 使い魔としては正しい姿勢なんだろうけどさ……」 なおもブツブツと不満を零すデルフ。 エルザも愚痴には耳を貸さず、剣を拾うと仕事場へ戻った。 「何か用?」 突然、部屋に現れたアセルスに驚く王女。 慣れた様子のルイズが王女に代わって説明する。 「実は、アン……姫殿下から依頼を頼まれたのよ」 アンリエッタ王女の依頼。 内容を要約すれば、政略婚の障害になる手紙を引き取る事。 問題は手紙を出した相手が、反乱で陥落しかけている王国の皇太子である。 一人で請け負うにはあまりに危険な任務──だが、ルイズは引き受けてしまっていた。 アセルスは頭を悩ませる。 ルイズがアセルスの力に頼っている訳ではない。 どんな使い魔が呼び出されたとしても、引き受けたのは想像できる。 「貴女……自分が何を頼んだかわかっている?」 王女への不信感が生まれる。 親友と言いながら、危険を押しつける王女の姿。 アセルスが最も嫌う人間の悪意。 己が目的の為に、他者を利用するやり方に似ていた。 「危険な任務ですが、ルイズなら大丈夫と信じていますわ」 酷く軽薄な王女の笑み。 憤りを増しただけの弁明に、アセルスは王女の首を抑えて壁に叩きつける。 「アセルス!?」 ルイズが驚愕して叫ぶ。 王女に対する非礼以前に、アセルスが何故怒っているのか理解できない。 「大切な者を失う辛さも知らないで、よくも言えたものね」 王女からはアセルスの表情は逆光になって見えない。 ただ明かりもないはずなのに、妖しく輝く赤い瞳は怒りに満ちあふれていた。 「何を……」 「親友?貴女はルイズが死んだって、ただ嘆いて忘れるだけでしょう」 王女が問うより、アセルスが永久凍土のように冷たい声を放つ。 「姫殿下を放して!私は名誉の為なら死なんて恐れないわ!!」 「だからよ、彼女は君の性格を知っている上で頼んだ」 ルイズの請願に対して、アセルスの返答は拒否だった。 「そんなはず……!」 「いえ……ルイズ、彼女のおっしゃる通りですわ」 なおも反論しようとしたルイズを制止する。 アセルスがようやく首から手放すと、床に崩れ落ちて咳き込んだ。 「私に心休まる相手がいないのは本当ですわ。 だからこそ、誰にもお願いできなかった事も……」 懺悔するように王女は……いや、アンリエッタは本心を語り始めた。 「なら、どうして……」 ルイズは次の句が紡げなかった。 自分を利用したいだけだったのか? 友だと告げてくれたのは偽りだったのか? 本当の理由を聞きたい感情と聞きたくない感情が、ルイズの胸中に渦巻く。 「私はウェールズ皇太子を、今でも愛しております」 「……亡命を進めたいと?」 ルイズにも依頼の真相が見えてきた。 ウェールズ皇太子を助けたいが、家臣が賛同などするはずもない。 亡命を受け入れれば、アルビオン王国の打倒を掲げる貴族派と敵対する事になる。 その程度は政に疎いルイズでさえ予測できた。 アンリエッタとて理屈では分かっているつもりだ。 「私は彼に手紙を届けて欲しかった……」 王女ではなく、恋人として手紙を送りたい。 こんな酔狂な依頼を頼める相手がいるはずもない。 何とかできないかと悩む中、ルイズがフーケを捕らえた一報が伝わる。 かつての親友だったルイズならば、引き受けてくれるかもしれないと考えた。 「私は……ルイズ、貴女を利用しようとしたのですわ」 泣き崩れるアンリエッタはただ悔恨していた。 ルイズの身の危険など考えてもいなかった事実。 いや、本当は気づいていた。 ただ自分の目的の為に利用したのだ。 日頃、忌み嫌っているはずの宮廷貴族達のように。 「今日起きた事は全てお忘れになって。 ここに来たのは王女でも、貴女の友人でもない……ただの愚かな女ですわ」 死者のように虚ろな瞳のまま、アンリエッタは部屋を出て行こうとする。 「アン……いえ、姫殿下」 ルイズの呼び止めに、アンリエッタの足が止まる。 振り返るのが怖かった。 ルイズに合わせる顔がない。 部屋から一刻も早く、逃げ出してしまいたかった。 「逃げるな」 彼女の葛藤を見破るようにアセルスが促す。 心臓を鷲掴みにされた心境のまま振り返った。 ルイズは敬服を示す姿勢で跪いて、顔を伏せている。 「ルイズ……?」 ルイズの真意が把握できない。 「手紙を届けたいと望むのでしたら、一言仰せください。手紙を必ず届けよと」 悲嘆も、失望も感じられない。 彼女の瞳にあるのは強い決意のみ。 「何を言っているの!?私は貴女を……」 「私は由緒ある公爵家の三女で、貴女は王族です。 命じられたなら、如何なる理由とて引き受けてみせます」 ルイズには、昔話していた先ほどまでの穏やかさはない。 「ですから姫殿下もご決断ください。 私に号令を下すのも、このまま去るのも貴女の意思一つです」 アンリエッタは息が止まりそうな程の重圧を受ける。 同時にルイズが何をさせようとしているのか、気付いてしまった。 ウェールズ皇太子を手紙を届けよ。 友人ではなく、王女として命じれば良い。 代償としてルイズの命を、己の一存で天秤に懸ける必要がある。 「わ、私は……」 喪に服すと言い訳ばかりで王位を継がない母親。 権威のみを求めて、責務を果たそうとしない宮廷貴族。 アンリエッタの周りには、王族の手本になるような人物がいなかった。 自然と重責から逃避する回数が増えていく。 先程ルイズに己の醜態を晒した時も、逃げるように部屋から去ろうとした。 王女の権威も心構えもない、ただの傀儡の少女。 いや、一人だけ王族を自覚するよう忠言する者がいた。 アンリエッタの嫌う相手、鳥の骨と揶揄されるマザリーニ枢機卿。 『王族である以上、いつの日か決断をしなかった事を後悔しますぞ』 まさに忠告通りの事態が起きていた。 鼓動だけが早くなり、意識だけが遠のいていきそうになる。 ルイズは顔を伏せ、アセルスも沈黙する。 夜分も更けてきた以上、周囲の喧騒もない。 永遠とも錯覚しそうな静寂のみが、部屋を支配している。 「ルイズ」 王女の声は震えたままだ。 しかし、心は決まっている。 「手紙を……ウェールズ皇太子に……届けるように」 震える手でルイズに封筒を手渡す。 軽いはずの手紙が、鉛より重く感じられる。 重さの正体は、ルイズの命。 初めて自分の意思で下した命令で、人が死ぬかもしれない重圧。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 必ずや姫殿下のご期待に沿え、この困難な任務を成し遂げてみせます」 ルイズは下賜された手紙を両手で受け止め、力強く答える。 「ルイズ……教えて頂戴。何が貴女の心を変えたの?」 ルイズとて、箱入り娘だったはずだ。 王女と遊んでいた頃から、年月を経たが印象は変わらなかった。 「私が変われたのは、一つの決心」 「決心……?」 アンリエッタが身を乗り出して、没頭する。 ルイズの一言一句を聞き逃すまいとするように。 「使い魔の儀式まで私は自分の境遇を嘆くだけでした。 どれだけ努力しても、魔法が使えない『ゼロ』のルイズと馬鹿にされる日々」 彼女の噂は以前、耳にしていた。 簡単なコモン・マジックすら使えない落ちこぼれと評されていたとも。 「あだ名通り、私には何もない。あるのは公爵と言う立場だけで私自身は空っぽの存在」 アンリエッタは胸が締め付けられる思いだった。 ルイズが抱いていた感情は、多かれ少なかれ自身にも存在するものだ。 「でも、貴女は変わった……」 同じ立場だったはずのルイズと自分。 しかし、今では差が大きく離れている。 促され、震えながらようやく命令を下せた小心者の自分。 死すら厭わずに任務を受けたルイズとは、比べ者にならない。 「目標へ向かう為の道に気付いたのです」 「立派な貴族になりたいと語っていた事?」 アンリエッタが思い出したのは、常日頃からルイズが語っていた将来の夢。 「はい、でも何も出来ずにいました。 理想に対して、何一つ届かない自分と言う現実を認めたくなかった」 「自覚できた……その理由は?」 答えを求める王女に、ルイズは一つだけ誓いを求める。 「これから話す事は誰にもおっしゃらないでください」 王女が頷いて同意したのを見て、ルイズの独白が再び紡がれる。 「きっかけは使い魔の召喚儀式でした。 ここにいるアセルスを呼び出したのが始まりですわ」 使い魔召喚儀式からの出来事をかいつまんで話す。 呼び出したアセルスが妖魔の支配者である事。 妖魔でありながら、誰より貴族らしく感じた印象。 ギーシュとの決闘、フーケの討伐。 「妖魔の支配者……」 荒唐無稽にも思える話だったが、ルイズが嘘をつくはずもないと思っている。 「私はいつかアセルスの力に並び立てる貴族になる、これが今の目標ですわ」 ルイズの誇らしげな表情。 彼女がこれほど自信に満ちあふれた姿は、過去に見た記憶がなかった。 「ルイズ、今の貴女がとても……羨ましいですわ」 アンリエッタには人生の目標と呼べるものはない。 愛する者の危機に、ただ小娘のように狼狽するのみ。 口では親友と謳いながら、泣き落とすような真似で危険な任務を請け負わせた。 己の卑小さを嫌という程に思い知らされた。 項垂れていたアンリエッタはアセルスの方を振り向いた。 「アセルス様でしたね?この度の非礼、深くお詫びをいたしますわ」 アンリエッタが深々と謝罪する。 アセルスからすれば不快な相手ではあったが、 ルイズが望んで任務を受けた以上は口を挟むつもりはない。 「身勝手な願いですけど、ルイズをお守りください」 「心配しなくても彼女は必ず守るわ」 アセルスにも絶対の自信がある訳ではない。 自身は永遠の命でも、大切な人を守れなかった経験はある。 危険はあるが、ルイズが望むならアセルスは叶えるつもりだった。 「ルイズ、ごめんなさい。 許してなんて言えない、資格がないのも分かっています。 でもどうか無事で帰って頂戴、私のたった一人の友人なのだから」 芝居がかった出会い頭の時のようではなく、不安からルイズを抱きしめた。 「心配しないでくださいませ、私が姫様のお願いを断った事なんてないでしょう? 夜に城を抜け出してウェールズ皇太子に会う時だって、変わり身を引き受けたじゃないですか」 ルイズが安心させるように軽口を叩く。 思わずアンリエッタの顔が赤く染まった。 「い、いつから気づいていたのルイズ?」 「つい先ほど。 恋文を届けて欲しいと頼まれた時に、私を影武者に逢引していたと思い当たりましたわ」 いたずらっ子のように笑うルイズに釣られて、アンリエッタも笑った。 僅かな時間だが、二人は今度こそ心から話し合った。 二人の様子を見て、微笑ましく思うと共にアセルスの胸に小さな痛みが走る。 王女の依頼、胸の痛みの正体。 この旅でルイズとアセルスの関係は大きく変わる。 二人の少女が行き着く先は天空かそれとも…… 前ページ次ページ使い魔は妖魔か或いは人間か