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「宇宙の果てのどこかにいる 私の下僕よ 神聖で美しく そして強力な使い魔よ 私は心より訴えるわ! 我が導きに応えなさい!」 ルイズの出鱈目な詠唱が響き渡る。 ゼロのルイズがどんな使い魔を召還するのか、居合わせた一同の注目が集まる。 しばしの沈黙。痺れを切らした学友の一人が、罵声を浴びせようとした…… その時! ちゃんか ちゃんか ちゃんか ちゃんか ちゃん ちゃちゃー ちゃちゃちゃん! という、妙にレトロなBGMが、天空より響いてきた。 「なんだ! この郷愁を誘うメロディは?」 「見ろ! ルイズの前に真っ赤なゲートが!」 鳴り止まないポップなメロディ、未だかつて見た事がない深紅のゲート。 ルイズは一体、何を召還しようとしているのか。 固唾を飲んで、一同がゲートを見守る。 「この色は 何の兆候…… ぐはッ!」 引率役のコルベールが不用意に近づいた瞬間、それは起こった。 突如、ゲートの色が赤から青へと変わり、ヘルメットをかぶったツナギ姿のアゴ男が一名、 コルベールの禿頭を足蹴にしながら登場したのだ。 「へ 平民ですって! ……って ちょっと待ちなさいよッ!?」 男はルイズの言葉も聞きもしない。 まるで、何かに取り憑かれたかのように、ギャラリー目掛けて突進する。 「誰かッ 誰かそいつを止めて!」 ルイズの叫びで我に返った生徒が数名、慌てて杖を構える。 未だ修行中の身とは言え、彼等は皆、有望なメイジの卵である。 走る事しか能の無いアゴ男など、簡単に打倒せる筈だった。 だが、キュルケの放った火の玉は、男の流れるような横移動にあっさりとかわされた。 タバサの横薙ぎのエア・ハンマーも、男の見事なジャンプで飛び越えられる。 そしてギーシュ自慢の七体の戦乙女は、男の爆走の前に、空き缶のように弾き跳ばされた。 「くッ……! アンタ 止まりなさいよ!」 ここで使い魔に逃げられてはたまらない。 あいつを捕まえ、無事に契約を結ばなければ、ルイズは留年なのだ。 馬を取りに行く時間はないが、幸い彼女は徒競争には自信があった。 「待ちなさいってばアァァァー!」 呆然とする一同を置き去りにして、二人は校門の外へと飛び出して行った。 二人が走る。 街道を駆け抜け、草原を乗り越え、道なき道を突き進む。 男の尋常ならざるスタミナにルイズが驚愕する。 既に全身は汗だくで、薄桃色の髪は大きく乱れ、 上等なマントもスカートも、泥まみれで大きく破れているが、そんな事を気に留めている余裕は無い。 「くっ…… 何なのよ アイツ……」 やがてルイズは、奇妙な異変に気付いた。 走りにくい湿地帯に入ったと言うのに、男のスピードがぐんぐん加速しているのだ。 と言うか、遠目には足を動かしていないようにすら見える。 「あっ!?」 ルイズが思わず叫ぶ。 男はいつの間にか、偶然落ちていたスケボーに乗って湿原を疾走していた。 「卑怯よッ!」 怒鳴りつつも、ルイズはやはり、たまたま落ちていたスケボーを目ざとく見つけ、颯爽と飛び乗った。 スケボーに乗るなど初めての体験だったが、なにせ、男を捕まえられねば留年である。 おっかなびっくりの及び腰ながら、物凄いスピードを出して追走する。 荒野を爆走し、狭い森林地帯を突き抜け、巨大なゴーレムの股下を間一髪ですり抜けながら、 やがて、二人は港町ラ・ロシェールへと到達した。 町中に入り、流石にスケボーを乗り捨てこそしたものの 男の腱脚は一向に衰える気配を見せない。 酔っ払った傭兵崩れが乱闘騒ぎを起こす中、飛び交う酒瓶をかわし、椅子を飛び越え港へ進む。 ここで国外に逃亡されては、ルイズは一巻の終わりである。 荒くれどもに揉みくちゃにされ、安ワインを頭からひっかぶりながらも、執拗に男を追いかける。 「なっ!」 港内に突入した途端、ルイズは再び驚愕した。 どれだけ鬱憤が溜まっていたのか、階段の最上部から、飲んだくれどもが大量のドラム缶を投げつけてくるのだ。 流石のアゴ男もこればかりはどうしようもなく、派手にズッこけたりペシャンコにされたりしながら、一歩一歩昇り続けていた。 ルイズも思わず躊躇う。 ルイズはあの男のような頑健な体は持ち合わせていない。 ドラム缶が直撃すれば、生身の肉体ではひとたまりもないだろう。 だが、ここは男に追いつく最大のチャンスでもある。 どうせ男を逃せば、ルイズにはロクな未来が無いのだ。 ルイズは覚悟を決めると、転がってくるドラム缶を気合いで見切りながら、階段をかけ始めた。 運命の女神は、ルイズに味方したかに思われた。 港では、船が既に出港した直後だったのだ。 これで男に逃げ場は無い、ルイズは胸を撫で下ろしたが、そこに大きな落とし穴があった。 あろうことか、先の船のクルーが、積み荷であるジャンプ台を置き忘れていたのだ! 男のサングラスがキラリと光る。 迷いの無い動きでジャンプ台を踏みしめると、勢いよく30メイルほど前方に跳びはね、 クルクルと回転した後、見事、甲板の上へと着地した。 「なッ! アイツ…… 人間なの……?」 だが、ルイズも躊躇ってはいられない。 くどいようだが、男を取り逃せばルイズは留年なのだ。 ヴァリエールの家名に泥を塗るくらいなら、この場で墜死した方がマシであった。 「どりゃあああああああああああああああ!!」 凄まじい絶叫を上げながら、ルイズが飛ぶ。 フォームもへったくれもない勢いだけのジャンプであったが、十年に一度の上昇風にも助けられ、 かろうじて、船の欄干へとしがみついた。 「やっ やったわ…… お母様 ちい姉さま……」 喜びの声を洩らしながら船内に転がり込んだルイズに、船員たちの歓声が浴びせられる。 言い知れぬ達成感がルイズの全身を駆け巡る。 気が付いた時、彼女は周りの祝福に、全身を使ったガッツポーズで応えていた。 見れば件のアゴ男も、前宙したりマッスルポーズを披露したりして周囲にアピ-ルしている。 溢れんばかりの感動に、船上に居合わせた人々がひとつになっていた。 「――じゃないわよッ! アンタ 一体何者な……」 ちゃんか ちゃんか ちゃんか ちゃんか ちゃん ちゃちゃー ちゃちゃちゃん! ようやく我に返ったルイズのツッコミを遮り、悪夢のようなメロディが再び響き渡る。 第二ラウンドの始まりだ! 突如現れた空賊の戦艦が、船上に容赦ない砲撃を浴びせてくる。 船内がパニックに陥る中、男が再び甲板を駆ける。 華麗なステップで飛び交う砲弾を交わし、例によってたまたま落ちていたジャンプ台に飛び乗ると その素晴らしい跳躍で、見事、敵船へと乗り移った。 「クソッ やって…… やってやろうじゃないのッ!」 もはやルイズもヤケクソである。 逃げ惑う人々を蹴散らしながら、ジャンプ台を踏みしめ風となる。 たちまち展開される空中での激しいチェイス。 迫りくるレコン・キスタの大艦隊を次から次へと乗り換えながら、 やがて二人は、アルビオンの地へと到達していた。 一体、何が男を駆り立てるのか? 白き国へと到達しても、男の逃走心は一向に冷める気配を見せない。 ニューカッスルで失敬した怪しいドリンクを一息で飲み干すと、 立ち塞がる謎の遍在軍団を蹴散らし、韋駄天の如き速さで荒野へと消えた。 もっとも、ルイズも既に、単なる貴族の令嬢ではない。 男同様、ニューカッスルで拝借した胡散臭いドリンクを一気に呷ると、 ようやく立ち上がろうとしていた遍在軍団を再び踏みつけ、虚無魔法の如き加速で荒野へ消えた。 「誰か…… 誰かッ! そいつを止めてェ!」 ルイズの悲痛な叫びは、遂に天に通じた。 たまたまアルビオンを旅行中だった学院長の使い魔、モートソグニルが、ルイズの声を耳にしたのだ。 主人の教え子を救うため、勇敢な鼠が大地を駆ける。 無人の野を行く男の胸元目掛けて飛び込むと、その全身を、ちゅうちゅうと駆け回り始めたのだ。 さしもの傷だらけのランナーも、鼠だけは苦手だったか、 その動きが、傍目にも分るほど緩慢なものへと変わっていった。 「もらったあアァァァァッ!」 千載一遇の隙を付き、ルイズが裂帛の気合いを込めたタックルを浴びせる。 これには男もひとたまりもない。 二人はもんどりうって倒れこみ、そのままゴロゴロと揉み合いながら、 やがて、たまたまジャイアントモールがねぐらにしていた大穴へと落下した。 「くっ もうこれ以上 足掻くんじゃないわよォ!」 尚も走り出そうと必死で暴れる男の、その特徴ある大顎をがっしりと掴むと ルイズは口早に詠唱を唱え、ズキュウゥゥンとばかりに唇を奪った。 直後、稲妻のようなファースト・キスの衝撃が二人を襲う! これは比喩ではない。 キスと同時に発生した謎エネルギーが、二人の体を貫いたのだ。 たちまち全身黒コゲとなり、黒煙を吐きながら呆然とする二人と一匹。 「…………」 「…………」 ちゃっ ちゃー ちゃー ちゃー 「なんでよ!」 悲しげなメロディが響く中、ルイズのツッコミがアルビオンの空へと消えた。 ちゃんか ちゃんか ちゃんか ちゃんか ちゃん ちゃ ちゃちゃん! ちゃー…… 【 GAME OVER 】
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前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア 54.探求者たるもの アニエスがヴァルハラ、もしくは月影の国へ逝きかけている頃、ルイズはアカデミー近くの草原にて、 呪文を繰り返し唱えていた。爆発が起こったかと思えば辺り一面が白銀に染まり、 それに驚く間もなく、嵐と見まがう大きな竜巻がいくつも発生しだす。 「疲れた?」 「平気!」 物に釣られたルイズの精神力はあり余っている。いつだってそういう状態ではあるが、 やる気になっているからか、更に凄いのだ。 髪をかきながら、その場で錬成したイスに座っているエレオノールは、 同じく錬成した机に置かれてある羊皮紙に、何かを書いている。 伝記や伝説、特に神様がどうの、始祖がどうのといった物語にしか存在しない「虚無」の系統。 ちゃんとしたデータが全く無いので、とりあえず「虚無」の使い手はどのように系統魔法を使えるのか、 エレオノールはそこから調べることにしたのだ。 「……予想以上ね」 力をコントロールしきれていないのか、見慣れた爆発こそ起こすものの、 ひとたび成功すればその力はスクウェアの遙か上を行く。 エレオノールは全く信じていない神に感謝した。 とても面白い研究対象を提供してくれてありがとう、と。 「あとは祈祷書の解析ができれば……」 祈祷書の中身が分かって、ルイズが唱えることができたなら、 「虚無」の系統は再びこの地に蘇る。 失われた系統の復活、なんと素晴らしき響きだろうか! 別に名声を得たいとかそんな理由ではない。 研究者として真理の探究をしたいと思う気持ちがエレオノールを高ぶらせている。 エレオノールは今まで妹たちのために時間を費やしてきたが、 もう自分のために時間を費やしても良いよねと思った。 もちろん、本来の仕事をほっぽり出しているのだが大丈夫。 元々スクウェアクラスは、一つの国に四系統がそれぞれ二人か三人ほどしかいない。 アカデミーとしては彼らに実験の協力を願いたいことも多々あるが、 大抵気むずかしく、断られることが多い。 そんなところに全ての系統がスクウェア以上に扱えて、基本的に断らない、 というより喜んでその身を貸し出す身内の妹が現れたらどうするだろう。 よろこんでその子が使えるかどうか調べといてと言うに違いない。 最後の手段として家名を出すという方法もある。アカデミーの体質が変わってから、 ヴァリエール家がスポンサーの一つになっているのだ。 「ところで、ミス……」 私は何をすればいいのでしょうか?隣の地べたに座るマーティンが小さな声でたずねた。 エレオノールはあ、と気の抜けた声をあげる。すっかり忘れていた。 研究者は、自分のこだわること以外はすぐに忘れてしまうのだ。 「え、ええ。ところで、ずっとルイズを見ていたあなたに聞きたいのだけれど」 「なんなりと」 「いつもあんな感じなのかしら?」 「いわゆるスクウェアクラスの呪文以外は、大抵失敗します。 ですが、「錬金」のようなスクウェアクラスに対応する呪文は、 あのように成功しますね」 黄金の草が辺りを輝かせている。エレオノールは思わず笑った。 「錬金で作られた鉱物とか宝石類の価値が暴落するでしょうね。妹ながら末恐ろしいわ」 「ですが、ルイズはそんなことをするつもりはないでしょう」 率直な感想だった。自分の力を知ってから、ルイズは自信を持てるようになった。 自分の力の凄まじさに振り回されてはいるが、決して人を不幸にするために使う気は無い。 まだ立派な貴族にはほど遠いが、その卵にはなっている。マーティンはそう考えている。 「おだてたら調子に乗る子なのだけれど。あなたのようなしっかりした人がいてくれるなら安心そうね」 自分よりずっと年上の男を見て、エレオノールはそうこぼした。 ルイズからは元々メイジで、色々あって司祭になったと聞かされていた。 なにかもめ事でも起こして俗世から身を退いたのだろう。 そう想像していたが、どうしてなかなか信頼のおけそうな人物だった。 単純にシロディール人特有の才覚がそう見えさせているだけだが、 エレオノールがそれに気付くはずもない。 「まぁとりあえず一通り呪文の効果は書き記したし、日も暮れてきたわね。 とりあえず、今日はここまでにしましょうか」 エレオノールはルイズを呼ぶ。一旦調査を終えてみんなでアカデミーに帰っていった。 「ちょっと驚いたどころの話じゃないわね。まさかあそこまで凄いだなんて」 夕食を取るエレオノールは、ニヤニヤしながら今日のことをカトレアに話している。 食堂のテーブルには姉妹三人が仲良く座っていた。マーティンとシエスタは、 使用人の部屋で夕食を取っている。 「姉さまったら、ずいぶんと嬉しそうね。ルイズが魔法を使えるようになったの、そんなに嬉しいの?」 「違うわよ。ルイズの系統が凄いって言っているの」 「ふうん……ねぇルイズ。あなたが眠っているとき、姉さまに魔法が使えるって言ったら……」 「あ、こら!」 顔を赤くするエレオノールに途中でさえぎられる。カトレアはやはりころころと笑った。 「聞いたとき、姉さまはなんて言ったの?ちいねえさま」 「それはね……」 「いや、やめて!」 カトレアはやはり笑っている。いいおもちゃを見つけたらしかった。 「姉さまがこう言っているから、本人から聞いてね」 「……つねるわよ」 ルイズは恐れおののきながら、ゆっくりと首を縦に振った。 「よろしい。まぁあなたもちゃんと貴族らしくなれてほっとしたわ。まぁ問題もあるのだけれど」 「まだちゃんと使えないけれど、たくさん練習しますわ!今までの分も」 「いや、そこじゃないでしょ……」 「へ?」 エレオノールはルイズの耳元に顔をよせた。アカデミーの使用人たちが周りにいる。 「あなた「虚無」なの。分かる?「虚無」の系統よ」 ルイズはコクリと頷いた。 「一つ聞きたいけど、このことはどれだけの人が知っているの?」 「姉さまたちとマーティンと、タルブの村の人たちのいくらかに、そこに居合わせた友達くらい。 みんな口は堅いから大丈夫よ」 エレオノールは眼鏡をあげてまたたずねる。 「学院の人たちには?」 「何も。だって、それでおべっか使われたりされたら嫌ですもの。私はメイジとして認められたいの」 「あら、まぁ。成長したのね」 マーティンの言っていたことはあながち間違いでもないらしい。 昔の妹だったら間違いなくこれを言いふらしていたに違いないだろう。 それほど、認められることに必死になっていた。 それに比べると、今はとても落ち着いているようにも見える。 妹の成長を嬉しく思いながら、エレオノールは念を押す。 「まぁ、あなたもそれの何たるかは多少なりとも知っているでしょう? ハルケギニアの大抵の国は、始祖が神より授かった奇跡である魔法、それを使える人を貴族としているの。 そんな世界で、伝説の系統が見つかったなんておおやけになってみなさいな。 面倒なことになるわよ。調査なら私が楽しいだけだから良いけれど」 「……」 神より授かった、と言われてルイズは何とも言えない気持ちになった。 祈祷書によるとブリミルは神から力を奪ったらしい。 どうやって奪ったのかは知らないが、今のブリミル教の言葉よりも、 それが真実を語っているような気がしてならない。 いや、むしろそれを隠すために今のブリミル教やそれを信じる国々ができたのではないだろうか? 「ルイズ?どうしたの」 下を向いて深刻な顔で何か考えるルイズを、カトレアが心配そうに見つめている。 「あ……なんでもないのちいねえさま。姉さま、一つ質問していい?」 「なにかしら?」 「平民に杖を持たせたら、魔法、使えるようになるの?」 エレオノールの体は固まった。ルイズを見る視線は何とも言い難そうで複雑なもので、 とりあえず一息ついて、自分を落ち着かせて再びルイズを見る。 「……やぶからぼうにどうしたの?」 「祈祷書に書かれていたことが、今のブリミル教の言っていることと違うの。 魔法の解釈だって、ブリミル教の教えとは違う気がして」 「始祖がこの地にやってきて6000年以上経つのよ。主義主張が変わってもおかしくはないわ」 「でも、聞きたいの」 やけに真剣な眼差しのルイズに、エレオノールは頭をかいて一つため息をついた。 「とりあえず、食事を済ませてから。私の研究室で話してあげる」 これはつねって終わらせてよい話ではない。きちんと話そうとエレオノールは思った。 とりあえず、また和やかな夕食の時間となった。 アルビオンの地下奥深く、白い大理石のような石で造られた遺跡の中に足音が響く。 その足音は二つだけ。アクアマリン色のウェルキンド石に照らされているのは二人。 備え付けの燭台から放つ青白い光に、黒いローブを着たマニマルコと、 それなりに派手な格好のイザベラが照らされている。 「さっきの、すごかったねぇ。いきなりトゲトゲの付いたのがこっちに来るんだもの」 「……そうだな」 マニマルコは不愉快だった。遺跡に罠はつきものだが、 深部にたどり着くまでに、スケルトンを全てダメにされたことが腹立たしかったのだ。 私の作ったスケルトンが、ああも簡単に壊されるとは。 ぶつぶつとマニマルコは歩きながら苛立たしげに呟いていると、 自分のローブの裾をイザベラが引っ張りだした。 その表情から察するに、どうやら何度も声をかけていたらしい。 「あっち」 指をさしている方向には扉が見える。いかにも何かありそうな、他のものとは違う装飾が施されていた。 「……ふむ」 扉に手をかける。鍵はかかっておらず、すんなりと開いた先から白く輝かしい光があふれ出す。 ウェルキンド石よりも希少で、白く、そして通常よりも遙かに大きなヴァーラ石が天井から吊されていた。 ウェルキンド石と共に、古代のシロディールを支配していたエルフが使っていた物が何故ここにあるのか? 考えても仕方ない。マニマルコはとりあえず扉から辺りを見渡す。 部屋の中は密室でそれほど大きくはない。天井は少し高く、中程に立つ四つの柱で仕切られた中央に、 ヴァーラ石が吊されている。白く輝く星の石の真下には銀色の台座が備え付けられていて、 その上を人の頭ほどはある黄金の球体が浮かんでいた。 「なんだ、あれは」 マニマルコが部屋の中に入り台座に近づこうとすると、突然青い閃光がどこからかマニマルコに放たれた。 うかつだった、罠か。そう思う間もなくマニマルコの近くに閃光が突き刺さる。 稲妻は大きな音を立てて霧のように消え去った。 「マニマルコ!」 イザベラがあわててマニマルコに駆け寄った。マニマルコが無事を伝えると、 魔法が放たれた辺りをざっと見回す。何故か、懐かしい腐敗臭がした。 「……その青い髪は人か?だが、何故精霊の力が使える?」 柱の影からしわがれていて、どこか冷たさを感じさせる声が聞こえた。 マニマルコは納得したような、さらに疑問が増えたような声で呟いた。 「こんな所で同輩に会えるとは、やはりこの地はエルノフェイなのか?」 遙か昔、エルフはエルノフェイと呼ばれる大地からタムリエルに移住したと伝えられている。 いくらかのウッドエルフやハイエルフたちによると、それは神の国エセリウスのことで、 故に自分たちはエイドラに近い存在である、と主張している。 そこにはボロボロの赤いローブを纏い、大きな杖を持つミイラが浮かんでいた。 魔法力がその周りに雲散し、緑色のオーラとなって噴出している。 眼球が存在しない顔を向ける様は、大抵の冒険者を震え上がらせるだろう。 その力は強大で、冒険者にしてみれば、できれば会いたくない相手。 正しく最強のアンデッドであるリッチがそこにいた。 「汝ら去ね!例えサーシャとあの男の血を受け継ぐ者であろうとも、この地に入ることは許されぬ。 霊峰の指を無視してなお留まろうとするのであれば容赦はせん!」 激しているリッチは杖を向けてマニマルコたちを威嚇している。 マニマルコは、冷めた目でそれを見ていた。 「死霊術師が墓守か……」 それは奴隷か、愚かな古代の王共がやることだろうが。マニマルコは杖を向けて威嚇するリッチに怒りの目を向ける。 体を変えてもなお生きる彼の目的はただ一つ、真理の探究である。 メイジが善や悪といった「どうでもいいこと」を考慮して研究するかどうかを決めるのが大嫌いな彼にとって、 今目の前にいるリッチは、存在そのものが許せない。 「真理の探究を忘れた愚かな先祖よ!お前の魂は、俺が有効に使ってやる」 長い黒髪が妖艶な、美しい女性の体から魔法力がほとばしる。 それに呼応するように、イザベラが両手から炎を出しながら口をつり上げて笑う。 「最近戦いがなくて暇でさぁ……派手にいくよぉぉぉ!!」 「待て、イザベ――」 爆裂と破砕する音が辺りにこだまする。リッチに確実に当てたはずの炎の塊が、 どういうわけかイザベラに当たったのだ。全身にひどい火傷を負ったイザベラは、 叫びながら辺りを転がり回っている。 リッチとはメイジがその力を持ったままアンデッドと化した存在であり、 そのため魔法に対する耐性が非常に高く、時には魔法そのものを跳ね返してしまうこともある。 マニマルコはとりあえず魔法耐性上昇の呪文を唱えようとしたのだ。 なにせ相手は6000年前のエルフ。自分もリッチとはいえ、古代のエルフの魔法力に敵うはずがない。 強敵との戦いは、まず能力を上げる魔法を唱えることが勝利の秘訣である。 「いたい、いたい、いたい、いたい」 「哀れな」 リッチは全身に火傷を負い、肌を真っ黒に焦がしたイザベラを見て悲しそうに首を横に振った。 どうやら好戦的な性格ではないらしい。 「分かったであろう。人間の皮を被りし者よ、今すぐにその人間を連れて去ね」 「やはり、お前は愚かだ」 マニマルコはせせら笑ってリッチに答える。リッチはマニマルコに杖を向け、 脅すようにうめいた。 「いたいよう、いたいよう……」 泣いているイザベラの体が音を立てて治っていく。回復の魔法ではなく、 死霊術特有の力で自己修復している。焼けただれた皮膚があり得ない早さで元に戻っていく。 「その娘も既に俺と同じだよ」 「なんと……外道が!」 その一言に、マニマルコは怒りを露わにする。 「道を外したのはお前だろう!命題たる真理の探求を忘れ、この地で年月を無駄に過ごしたお前に言わる筋合いはない!」 「そんなものより、守るべきことがあると知った!それは――」 マニマルコが大声で笑い、リッチの言葉を遮る。 「当ててやろうか。愛か友情か、それとも憐憫の情か……くだらん、全て一時の愚かな気の迷いにすぎん!!」 「否!それこそ我が守るべき理由、この「ミョズニトニルン」があの男に従った理由なり!」 リッチの手から炎が現れる。マニマルコに向かって投げつけようとしたその時、 その腕を誰かが掴んだ。 「いたいんだけどさぁ……もの凄く痛いんだけどさぁ……」 額に青筋が浮かぶイザベラが、そのまま勢いで腕をへし折った。 リッチが驚いていると、目を真っ赤にして憤怒の表情のイザベラが叫んだ。 「いたいんだよぉぉぉぉ!」 「ぬぅぅっ!」 リッチへ次の一撃を決めようとイザベラは感情のおもむくがままに腕を動かす。 その一撃はリッチの鳩尾を砕いたが、その程度で活動を止めはしない。 「哀れな娘よ……そうまでして力を求むるか」 「あわれ、だってぇ?」 イザベラがリッチの胸ぐらをつかんだ。怒りが消える気配も無く、 素に戻って思い切り叫んだ。 「わたしはあわれなんかじゃない!!わたしはエレーヌよりも上手に魔法が使えるようになったんだ! もう誰にもわたしを笑わせない誰にもおろかだとおもわせないだれにも……」 イザベラの憔悴しきった表情を見てようやくリッチは気が付いた。この娘は自らではなく、 そこにいる人間の体に入ったエルフによって、人間をやめさせられてしまったことを。 リッチはマニマルコに吐き捨てるように言った。 「このような、このような娘に術を施すなど……」 「質が良くなった。悪くない選択だろう?ミョズニトニルン」 自分の額が見える位置まで、マニマルコは近づいた。リッチに眼球があれば、目を丸くして驚いただろう。 「まさか、まさか!いかん、お前のような輩にこの地を、約束の地を」 リッチは力の限りもがき、魔法を放つがイザベラの力には全く効かない。 マニマルコがとても楽しそうに歌でも歌うようにささやく。 「イザベラ、もう壊してかまわん。それでは後は我々に任せてくれ。愚かしき先任者よ」 リッチの体は破砕され、その魂は天に昇ろうとする。 「ああ、聞きたいことが山ずみだった。しばらく俺の側にいてもらおうか」 だが救済が訪れることは無いだろう。蠱の王は謎の部屋と、その鍵を握る魂を手に入れた。 夕食は終わり、後は寝るだけとなったルイズたち。 エレオノールは、自分の研究室にルイズだけを呼んでさっきの話をすることにした。 「……そうね。大昔から平民への魔法が使えるかの調査は法律で禁止されているわ。 ちなみに、ゲルマニアでは建国した時から元平民が杖を所有することを原則として禁じているわね。 上の位になれたら持ってもいいみたいだけど、不可能でしょうね。 あの国は夢を売り物にしているけど、その中身は結構悲惨みたいよ?」 ゲルマニアでは成り上がって貴族になれる。とても魅力的で甘い話だが、 そんなにうまい話があるはずもない。自由に階級移動ができるということは、 自分の位を上げるよりも、下げる方が簡単だということだ。 「つまり、そういうこと」 「じゃ、じゃあ、平民も……」 「多分使えるんじゃないかしら。試したことはないけれど」 「どうして?」 男の貴族が近所のきれいな平民を囲ったりするのは、ルイズでも聞いたことがある。 そうして生まれた子供やその子供は、やはりメイジとしての能力を持つのだろうか。 「それをおおやけにすると、あなたが「虚無」だっていうこと以上に大変なことになるからよ。 いくら私が研究者だと言っても、ちゃんと分別するだけの脳みそはあるわ。 あなたのことが分かっても、まぁあなたが祭り上げられるだけで済むけど、こっちはそうはいかないの」 ルイズはきょとんとした。 「でも、平民たちが魔法を使えて便利になるだけじゃないの?姉さま」 エレオノールは頭をがくっと下げる。ここか。ここがネックか。エレオノールはルイズのダメな所をまた見つけた。 正論すぎるのだ。確かにどちらかと言えば正しいのだが。 「そりゃ、平民たちは大喜びよ。別に貴族になれなくたって、 魔法が使えるって分かれば色々な仕事が楽になるのだから。 揉めたりはするでしょうけど些細なものよ。 貴族に逆らって良いことがないのは分かっているでしょうし。 問題は地方領主とか僻地に住んでいる貴族たちや、 色々あって貴族をやめさせられたメイジよ」 ルイズはまた首をかたむけた。ああ、とエレオノールは額に手を当てる。 やっぱりこの子は知識に基づいている。現実的な悪いところが見えていない。 「いい、ルイズ。やっかいごとを起こすのは下々の人間じゃなくて、知識階級の人間よ。 みんながみんな、王家に心から忠誠を誓っているわけじゃないの。 魔法が実は誰でも使えるものでした。だなんて分かったらそんな連中が何をしでかすか分かる?」 「……わかりませんわ」 実際、さっぱり分からない。ルイズは今までずっと魔法を使いたいと思って生きてきたこともあって、 魔法の恩恵ということは人一倍理解しているが、それがもたらす影響については、 あまり分からないのだ。 「平民たちを上手く利用するでしょうね。ただの兵士にするよりも、 メイジになる方が簡単で強いし、お金もそこまでかからないわ。 それでそいつらを組織して、王家に取って代わろう、なんて奴がいると思うのは私だけかしら? 少し冷静に考えれば平民だっておかしいと思うのだけれど、甘い話には誰でも引っかかるのよね」 こほんと咳払いして、エレオノールが勇ましく歌うように口ずさむ。 「平民の魔法の使用は王家が法律で禁じていた。悪い王家は君たちを苦しめるだけだ、今こそ変革の時、 共に自由を掴もうではないか。こんな馬鹿げた話でも繰り返し聞いていると、 その内なんの疑いも持たずに信じてしまうのよ」 案外人って単純なのよ。エレオノールは真剣な表情で聞いているルイズにそう言った。 「そうして方々の平民に魔法を教えて、王家やその周りの大貴族を中心に反乱を起こすように仕向けるの。 平民たちは自分たちが世界を変えるとか思っているだろうけど、単に踊らされているだけ。 彼らだけで王軍に勝てるとは思えないし、もし反乱が成功したとしても、 王家の権利を欲した連中が平民に多少なりともそれらを渡すと思う? 最終的にそいつら同士で仲違いを起こして、ハルケギニアはさらに血にまみれるでしょうね」 理想はもろくも崩れ去り、残るは利権を貪る醜い者たちのみ。権力争いなんてそんなものである。 隙あらば牙を向ける輩は、どこにでもいるものだ。 ルイズはそんなことになるだなんて考えもしなかった。 「魔法が平民に伝わることは、 ハルケギニアの各地で争いが起こるきっかけになることは間違いないでしょう。 レコン・キスタとか目じゃない規模のね。一番怖いのはロマリアよ。 魔法は神の奇跡で、選ばれし者のみが扱えるって教えていたのはあの国じゃないの。 実は嘘でしたなんて分かったら、信者が減るどころか平民が怒るわよ。 それでトチ狂って聖戦とか言い出したら、この世界終わるわね」 そこまで言われて、ルイズはようやくはっとした。でも、どうしてだろう。 なぜ本当のことが明らかになっただけで争いが起こるのだろうか。 「なにか言いたそうね」 エレオノールは自分が言いたいことは伝わったらしいと感じた。 ルイズは下を向いてたずねる。 「どうして、みんなが使えるようにしただけでそんなことになるの?便利なのに」 しょんぼりしているルイズの頭をなでて、エレオノールは呟くように答えた。 「便利な力を神様からもらった力だといって崇めさせたからよ。 今の世の中は魔法が使えるかどうかで全てを決めてしまっているの。 だから今更使えるようになりました、とか言ったらてんやわんやの大騒ぎになるの。 平民は平民として生きるのが幸せなんだから、魔法が使えなくたっていいんじゃない? 私は使える側の人間ですから、そう思いますけれどね。あなたは……」 そのままエレオノールは何か言おうとして、口を閉じる。少し間をおいて、 ルイズに優しく語りかけた。 「あなたは自分で考えなさい。 悪いと思ったら、それをどうするか考えて。ただ、魔法が使えると広めるだけなら、 今の方が誰にとってもマシということだけは覚えておくのよ」 ルイズはなんとも言えなさそうに頷いた。 国は人がいなくちゃできん。だが、上に立つ者がいなければ国にはならん。 そこまで考えて、お前は上に立つ者をやっているのかね?あの老人に言われた言葉を思い出す。 きっときれいに考えるだけでは、全然やれない。ということだったのだろう。 全く考えていないんだわ、私ったら。ルイズはとぼとぼとエレオノールの研究室から出て行った。 前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア
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前ページ次ページ鷲と虚無 才人が朝食の残りを口に入れている間に、最初はウォレヌスが、次はプッロがトイレに行った。 昨夜から用を足していないのは彼らも同じだ。その間に才人は朝食を食べ終える。 量こそはそれ程多いわけではなかったが、何はともあれ空腹は十分に満たされた。 そしてプッロが戻ると、ウォレヌスが見計らった様に口を開いた。 「そろそろ教室とやらに行った方がいいと思う。授業が始まった後に行けばあの娘が色々とうるさそうだ」 「ええ、俺もそう思いますね。今はこれ以上ここにいてもする事はないし」 才人も特に反対する理由は無い。どっち道、昼食時にはここには戻ってくる。 そして三人は改めてマルトーに礼を言い、教室への道を聞くと厨房を後にした。 教室は広々とした石造りの部屋で、大学の講義室のように下から上に階段のように席が続いている。 中に入ってまず目に入ったのが生徒達の使い魔だ。 その多くは生徒達と同じ席にたたずんでおり、猫やカラスなどの普通の動物もいたが才人のとってはファンタジーにしか出てこない“架空”の動物――すなわちキュルケも連れていたサラマンダーなど――も数多い。 既にキュルケのフレイムを見て多少の免疫が出来ていたとは言え、才人は驚嘆した。二人もかなり面食らったようだ。 「あの神話に出てきそうなバケモノたちが、使い魔とやらなんですよねえ」 プッロがポツリと呟く。 「だろうな……人間が召還されると言うのは確かに相当珍しいようだ」 その通り、人間どころか人間に近い姿を持つ使い魔さえ、自分達以外には誰もいない。 これはつまり、オスマンの「使い魔に人間はいない」やシエスタらの自分達への反応に嘘は無かったと言う事だ。 人間が召還されると言うだけでも有り得ない上に、それがまったく別の異世界からの召還。なぜこんな事が起こったのだろう? (そもそも一体なんで俺が……世界には他にも60億人もいるってのに。ったく、運が悪いってレベルじゃねえだろこれ) 才人は再び自分の境遇を呪う。だがそうしても自分がこのファンタジー世界に古代人のオッサン二人と一緒に取り残されたと言う事実は何も変わらない。 教室の中には既に数十人の生徒と思われる少年少女が着席していた。あのキュルケの姿も、特徴的な赤髪と褐色の肌のおかげですぐに確認できた。 キュルケは数人の男子生徒に囲まれており、彼女の人気振りがうかがえた。だがあの美貌なら当然だろう。 ルイズの方も、彼女の桃色がかった金髪はひと際目立ったのですぐに見つける事が出来た。 だが何かが変だ。他の生徒達は皆隣同士で座ってるのに、ルイズだけは隣に誰もおわず、一人だけで座っている。 (俺達の分のスペースを取っておいたのかな?) そう思った時、才人は生徒達が自分たちを見てなにやら騒ぎ始めたのに気づいた。 「おい、なんで平民が教室に入ってきてるんだ?」 「誰かあいつらをつまみ出せよ」 どうも自分たちが教室の中に入るというのが問題らしい。何か変な事になる前に早くルイズの所に行った方がいい。 才人はそう思い、ルイズの元へと急いだ。 ルイズは才人達を目に留めると、「来たわね。さ、座りなさい」と言った。 プッロとウォレヌスは何も答えずにそのまま椅子に座った。 才人も同じくそうしようとしたが、ルイズに制止された。 「何やってんのよ、そこはメイジの席……あんたらが座るのは床。プッロ、ウォレヌス。立ちなさい」 ルイズの語調は早朝と比べて、幾分疲れたかの様に聞こえる。勢いが無い。 プッロさんに手玉に取られたのが答えたのかな、と才人は推測した。 そしてプッロもウォレヌスも椅子から立ち上がる気配はない。 「ちょっとあんた達、聞こえなかったの?」 「椅子が空いてるのにわざわざ床に座れるかよ。何回言えば解る?おれはお前の下になったつもりなんてないんだよ」 少しためらったが、結局才人も二人に習い椅子に座った。 ルイズは苦虫を噛み潰したような表情になり、ぐぬぬぬと唸ったが、何も言わなかった。 しかし、自分達の分の席を取っておいた、と言うわけでないのなら何であいつの周りには誰もいないんだろう、と才人は不思議に思った。 そして他の生徒達は何故かは解らないが、自分たちが教室にいるの事を不思議に、そして不快に思ってるようだ。 それがなぜかを知る為、才人は彼らの言葉に聞き耳をたててみた。 「あいつら、ゼロのルイズの隣に座ったぞ」 「一体誰なんだあいつら?ゼロのルイズと何か話してたぞ」 「ただの平民が貴族と同じ席に座るなんて、気でも狂ってるのか?」 どうやら彼らは、平民とやらが自分たちと同じ席に座るのを不快に思っているらしい。 オスマンはここは貴族に魔法を教える学校だと言ってたし、ルイズも、プッロもウォレヌスも殆ど相手にしていないとはいえ自分が貴族である事を盛んに主張していた。 ならば彼らも全員貴族なのだろう。貴族と平民。才人にはフィクション以外では殆ど馴染みの無い言葉だ。 その理解も“貴族は金持ちでなんとなく偉い”と言った程度だ。今までの例に漏れず、学校で習ったフランス革命などについての歴史は綺麗に頭の中から溶けて無くなっていた。 当然、単に平民とやらであるという理由だけで見下されるのはいい気分ではない。 それは他の二人とも同じなのだろうか、才人はウォレヌスが小さく「小うるさい蛮人のガキどもが」と呟くのを耳にした。 バンジン、と言うのはどう言う事なのか才人は不思議に思った。 野蛮人と言う意味だろうか。だがここの人間は才人のイメージするような野蛮人、つまり毛皮を着た原始人という風な連中ではない。 だが今はその事について聞く様な状況ではない。今のところは黙っておこうと才人は判断した。 そして驚く事に、なぜかルイズまでもが歯軋りをしている。 だがどう考えても自分達の事を思ってそうしているわけだとは思えない。 おそらくは他の生徒達が自分までもを馬鹿にしてるのが悔しいのだろう、と才人は見当をつけた。それがなぜかは解らないが。 やがて教室に教師と思われる、小太りの中年女性が入ってきた。 紫色のローブと、三角帽子をつけた優しそうな人だ。 彼女が教室の一番下にある机に座ると同時に、それまでガヤガヤと騒がしかった生徒達は彼女に抗議の声を上げ始めた。 「ミセス・シュブルーズ、なんで平民が教室にいるんですか!どう言う事なのか教えて下さい!」 「すぐにあいつらを追い出して下さい!」 「ゼロのルイズがあの平民達と話をしていました!」 そのシュブルーズと呼ばれた先生は、生徒達の詰問に落ち着いた様子で答えた。 「その事については学院長から説明を受けました。彼らは昨日ミス・ヴァリエールに召還され、使い魔となった平民達です。気にしない様にしなさい」 先ほどまで騒いでいた生徒達は突如シン、と静かになったかと思うと、次はどっと笑い始めた。 忙しい連中だな、と才人は思った。 「おいおい、てっきり失敗したのかと思ったら平民を、しかも三人召還してたのかよ!さすがゼロのルイズだ!」 「成功してもやっぱりはゼロはゼロだな!」 彼らは思い思いにルイズをからかい、笑う。 才人はルイズが顔を赤くし、悔しそうに拳を握り締めたのに気づいた。 これはちょっと酷い。これでは殆どいじめだ。 ルイズの後ろに座っていた、太っちょの男子などはルイズに直接声をかけた。 「ゼロのルイズ、召喚に失敗したからってそこら辺を歩いてた平民を連れてくるんじゃない!見っともないぞ!」 これにはルイズも立ち上がり、声を張り上げて言い返した。 「違うわ!本当に召喚できたのよ!こいつらが勝手にきちゃったのよ!それに私はもうゼロじゃないの!」 だが今度は意外な事にプッロが席から立ち上がり、ルイズに口を出した。 「おい、勝手にきたってのは聞き捨てならねえな!俺がいつこんな場所に来たいって言ったんだ?お前が“勝手に”つれて来たんだろうが!」 「あ~もう!頼むからあんたは黙ってて!」 ウォレヌスの方は手を頭に当ててうなだれた。こんな下らん言い争いはゴメンだと言わんばかりに。 「おいおい、平民を連れてくるにしたってもうちょっと品の良い奴をつれて来いよ。これじゃちょっと程度が低すぎるぜ?」 「だから違うって言ってるでしょ!なんならミスタ・コルベールに聞いて見なさい!」 ここに至って、シュブルーズが懐から小さな杖を取り出し、何かを呟いた。 するとルイズもプッロも太っちょも、見えない手に押さえつけられたかの様にストンと椅子に座り込まされた。 「いい加減にしなさい!教室で下らない口論をする事は許しません!他の皆さんも、お友達の悪口を言うような程度の低い事は止めなさい!さあ、早く授業を始めますよ」 シュルブルーズがそう叱責を飛ばすと、プッロはブツブツと何か呟き、ルイズはしょんぼりとうなだれた。 最初にゴタゴタはあった物の、授業はおおむね滞りなく進んだ。 授業の最初は都合の良い事に、今までの復習のようでシュブルーズは基本から説明してくれ、そのおかげで才人たちにも魔法の仕組みと言う物が良く解った。 例えば、魔法には大昔に失われた虚無の系統を除いて四つの系統、すなわち火、土、水そして風が存在し、魔法使い(メイジと言うらしい)にはそれぞれ得意とする系統が存在する事、そして“足せる”系統の数でメイジのランクが決まる事などだ。 無論、才人にとってもこれは非常に興味深い物だったが、一番関心を奪われたのはウォレヌスとプッロの二人らしく非常に熱心に耳をかたむけている。 だが心なしか、ウォレヌスの表情の方が暗い。その理由は才人にはわからない。 そして彼女は最後にこう付け加えた。 「そしてこれらの魔法の為に、我々は社会を維持する事が出来るのです。例えば、もし魔法が無ければ重要な金属を作る事も出来ませんし、石を切り出す事も出来ません。作物の生産も今よりずっと手間取るでしょう。我々がいなければ平民達はたちどころに生きる術を失うのです」 これを聞いたプッロは不思議そうな顔をし、ルイズに「おい」と声をかけた。 「……なによ」 「平民が生きる術を失う、ってどう言う意味だ?なんでそうなるのか解らねえんだが」 ルイズは棘を含めた言い方で返した。 「……あんたらしい馬鹿な質問ね。魔法が使えない平民が生きられるわけないじゃない」 「馬鹿だとぉ?まあいい、って事はなんだ魔法ってのは貴族しか使えないってのか?」 「当たり前でしょ!魔法が使えるからこそ貴族なのよ!あんた達が来た場所ってのは一体――」 その瞬間、シュブルーズのカミナリが飛んだ。 「ミス・ヴァリエール!授業中に無駄なおしゃべりをするのは許しません!」 「で、でも!こいつが勝手に話しかけただけで……」 「使い魔の不始末は主人の不始末です。それと、あなたも……」 そう言ってシュブルーズはプッロを睨んだ。 「授業中は静かに!」 プッロは「へえへえ、すみませんね」と小さく言い、肩をすくめて見せる。 ルイズは、プッロの方も叱責を受けたせいか素直にすみませんと言った。 これで才人はなんでルイズや他の生徒達があんなに偉そうだったのか少し理解出来た。 貴族しか魔法を使えず、シュブルーズの言うように魔法のおかげで社会が成り立ってるのなら確かにそれはすごい。 少し位威張るのも当然かもしれない。だからと言って良い気分はまったくしないが。 これらの基本をおさらいした後に、シュブルーズは本題に入った。 「では、今日は皆さんに“錬金”の魔法を覚えてもらいます。一年生の時にやり方を覚えた方もいるでしょうが、基本は大事ですから手を抜かずにしっかりとやりなさい。まずは私が手本を見せましょう」 そう言って彼女は懐から小石を取り出すと、それを机に置く。 そして杖を持つと、何かを呟いた。その途端、信じられない事にただの石ころが何かの光り輝く金属に変化した。 「そ、それってもしかして……金ですか?」 キュルケが恐る恐ると言った様子でシュブルーズに聞いた。 「いいえ、残念ながらただの真鍮です。ゴールドはスクエアでないと錬金できません。私はトライアングルなので……」 彼女はもったいぶった様に言ったが、トライアングルと言うだけでも上にはスクエアしかいないのだから中々の実力者なのだろう。 そして彼女は錬金を行う魔法の使い方を教え始めたが、魔法に縁など無い才人には何を話しているのかは全く理解出来ない。 才人もこの錬金と言う物には驚いたがウォレヌスとプッロの反応はまさに驚愕としか形容出来ない物だ。 最初はポカンと口を開けていた二人だったが、やがて二人は小声で話し始めた。 「今……確かにただの石ころが真鍮に変わったんですよね。何かの手品とかじゃなく」 「ああ……間違いない」 そう言ってウォレヌスは首を振った。 「冗談じゃない、あんな事が死すべき定めの人間に出来て良い筈が無い」 その時、ルイズが苛立った様に声を張り上げた。 「あんた達、さっきの先生の言葉を聞いて無かったの?授業中は黙ってなさい!」 だがこれは逆効果だったようだ。シュブルーズは話を中断し、ルイズを睨んだ。 「ミス・ヴァリエール。私の言った事を理解しましたか?私は授業中は静かに、と言ったのです」 「で、ですが私はこいつらが話し始めたので注意を……」 「前にも言いましたが、使い魔の不始末は主人の不始末です。彼らを黙らせないのならあなたの責任です。よろしい、あなたがきちんと授業を聞いていたかどうか試して見ましょう。あなたが錬金の実演をしてみなさい」 突然の指名に、ルイズは思わず聞き返した。 「え?わ、私ですか?」 「そうです。ちゃんと私の話を聞いていたのなら出来るはずです。さあ、やってみなさい」 彼女のその言葉と同時に、生徒達がザワザワと騒ぎ出した。 「あ、あのミセス・シュブルーズ。絶対に止めさせた方がいいと思いますけど……」 キュルケが困ったようなような顔をして言う。 「何故です?」 「危険だからです。凄く」 教室にいた人間の殆どがうなずいた。 「確かにミス・ヴァリエールの実技の成績はあまり良くないのは知っていますが、それ以外の部分では彼女はとても優秀です。彼女なら出来る筈です」 と言った後に、シュブルーズは忘れずに一つ付け加えた。 「もし授業をちゃんと聞いていたのなら、ですが」 才人も他の二人も、なぜ生徒達がこうも騒ぎ始めたのかが理解出来なかった。 一体何が“危険”なのだろう。ルイズ自身までが青ざめた表情になっている。 そして才人はルイズが何かをブツブツと呟くのを耳にした。 「……大丈夫、大丈夫よ。学院長も召喚は成功だって言ってくれた。私はもう魔法が出来るようになったの。私はもうゼロじゃない。これを成功させればあいつらも私を見直す筈……」 そしてルイズは立ち上がり、表情は蒼白ながらキッパリと言った。 「私、やります!」 シュブルーズは満足げにうなずいたが、他の生徒達はますます騒ぎ出し、キュルケに至っては殆ど哀願するようにルイズに言った。 「お願いだからやめて、ルイズ。どうなるかはあなたにも解ってるでしょう!?」 「いいことツェルプストー、私はもうゼロじゃないの!使い魔を召還出来たのがその証拠!そこで見てなさい」 そう高らかに宣言し、ルイズは席を立ちシュブルーズの所に進み出た。 ルイズがシュブルーズの机の前に立つとほぼ同時に、ウォレヌスが口を開いた。 「プッロ、才人君。机の下に隠れた方がいい」 「え?なんでです?」 プッロは意味が解らないと言う様に聞いた。 「この騒ぎ具合は普通じゃないのは解るだろう。何かが危険だ。それに他の生徒の殆どはそうしてる」 才人は周りを見回した。なるほど、確かに生徒達の殆どは既に机の下に隠れている。 別に隠れても失う物は何も無い。三人は机の下にもぐりこんだ。 机の下からは何も見えないが、声を聞く事は出来る。 才人はルイズの隣に立ったシュブルーズが、錬金を始める様に命ずるのを聞いた。 「さあ、始めなさい。やり方は解りますね?」 「はい」 そしてルイズが何かの呪文らしき物を力強く口に出すのを聞くのと同時に、才人の耳にとてつもない轟音が響いた。 爆弾のような(と言っても才人は本物の爆弾を聞いた事があるわけではないが)としか形容がしない音だ。 それがクラス中を揺さぶり、最初に驚いた使い魔達が暴れだす音が聞こえてきた。 その次は生徒達の罵声だ。 「クソッ!誰かさっさとあいつを退学にさせろよ!」 「やっぱりゼロのルイズはゼロのまんまね!冗談じゃないわ!」 「ラッキーが!俺のラッキーがヘビに食われちまった!」 才人は恐る恐る机から身を出し、周りを見渡した。プッロとウォレヌスも続いて起き上がった。 「……雷でも落ちたのか、これは?」 ウォレヌスが唖然とした様子で呟いた。 教室の中央は黒こげになっている。ミセス・シュブルーズは倒れているが、ピクピクと痙攣しているので生きているようだ。 机はめちゃくちゃに壊されており、錬金された筈の石ころは影も形も見えない。当のルイズは服がボロボロになってはいるが、シュブルーズとは違いちゃんと立っている。 彼女はうつむいたまま悔しそうにギリギリと歯を食いしばり、手は血が滲む程強く握り締めていたが、才人達にはそれが見えなかった。 結局、その日の錬金の授業はそのまま中止になった。 ミセス・シュブルーズは命に別状は無かったとはいえ、とても授業に参加出来る状態ではなかったからだ。 彼女は爆音を聞きつけたやってきた他の教師達にそのまま医務室に連れて行かれた。 この惨状を招いたルイズはと言うと、滅茶苦茶になった教室(爆発だけでなく、暴れた使い魔達が壊した備品も含めて)の掃除を命じられた。 そして教室にはルイズと三人だけが残された。だが誰も掃除を始めようとはしない。 ルイズはうつむいたまま動こうとしないし、ウォレヌスは腕を組んだまま壁の背にもたれ、プッロは椅子に座ったまま足を机の上に投げ出していた。 しばらくの間気まずい空気が流れたが、その内プッロが口を開いた。 「おい、さっきのあれ、ありゃなんだったんだ」 「そうだ。あれはどう考えても錬金と言う奴ではないだろう。まるで落雷のようだった。一体何をしたんだ?」 最初、ルイズは黙ったままだったが、ポツリポツリと答え始めた。 「……見て解らない?失敗よ。完全な」 それを聞いて才人はやっとゼロのルイズと言う言葉の意味を理解出来た。 ゼロと言うのは成功率ゼロと言う意味だったのだ。そして同時になぜ彼女がクラスメートから笑われていたのかも解った。 「なあルイズ」 「……なによ」 「お前のあだ名のゼロのルイズって奴。あれってもしかして……魔法を必ず失敗する、って意味か?」 ルイズは答えなかったが、プッロはどうやらそれを肯定と受け取ったらしい。 「おいおいお嬢ちゃん、それ本当か?まさか魔法が使えないのにさっきまで貴族だのなんだのと威張り腐ってたのか?お前、魔法が使えるから貴族だって言ってたよな。じゃあお前はただのガキなのか?今朝杖を突きつけたのもただのコケおどしか?え?」 確かにそれが本当なら噴飯物だ。 ご主人様だの貴族だのと散々威張っていたのに、肝心の本人が魔法を使えないなどと、冗談にすらならない。 単に魔法が使えない鬱憤を自分達にぶつけていた様にしか見えない。才人は憤慨し、ウォレヌスまでもが嘲りの声を出した。 「なるほど、あの爆発は魔法が失敗したのか。確かにどう見ても錬金とやらではなかったからな……まったくお笑いだな、おい」 ルイズは相変わらずうつむいたまま、答える。 「……そうよ。魔法が必ず失敗して爆発を起こすからゼロのルイズ。簡単でしょ?……さあ、掃除を始めましょう。手伝って。ウォレヌス、あんたは机の残骸を片付けて」 だがウォレヌスは鼻で笑った。 「ハッ!なぜそんな事を?これはお前がやらかした事だろう。お前が起こした不始末をなぜ私達が片付ける必要がある」 これには才人も同意した。 「俺も同感だ。自分の不始末は自分で始末しろよ」 なるほど、確かに彼女はどうやら魔法が使えないと言う理由でクラスメートに馬鹿にされているようだ。 だがだからと言って自分が彼女の尻拭いをする必要は無い。 そして最後にプッロが一言付け加えた。 「それが嫌だってんなら、暇な奉公人にでも手伝って貰っとけ。どっちにしろ、俺たちの誰もお前を手伝う気なんて無いってことだ」 ルイズは少しずつ顔をあげる。その顔は悔しさと不甲斐なさに歪んでおり、目には涙すら浮かんでいる。 そして彼女は三人を睨み付けながら、感情を爆発させた。 「……あああ、あんた達はなんでいちいちあーだこーだと口答えするの!?き、昨日もそう、今日もそう!おまけにつ、杖まで奪う!ああ、あんたらは私の使い魔なのよ!しゅ、主人の私には絶対服従の筈なのに一体なんで! な、なんでたかが平民がこんなに私に逆らうの!?いや、そもそもなんで貴族への敬意なんてカカ、カケラも持たない平民三人が私のつ、使い魔になったのよ?しかも三人!あ、悪夢だわ! おまけに魔法がやっとの事でせせ、成功してやっとゼロの名前が無くなるかと思ったらあいも変わらずば、爆発!昨日の召喚の成功はい、一体なんだったのよ!?それともやっぱりし、失敗?失敗だったの? ええ、そうにちち、違いないわ、私は召喚に失敗したからこそあんた達みたいなややや、野蛮人がやってきたのよ!そうに違いないわ!私はゼロのルイズ! これからも一生魔法を使えずに終わるのよ!これでま、満足?笑いなさい、笑いなさいよ!どうせ心の中じゃもうわわわ、私の事を嘲笑ってるんでしょ?さあ、笑いなさい!」 あらん限りの声を喉から絞り出し、殆ど絶叫といって言い様子でどもりながらまくしたてるルイズ。 肩で息をしながら、ルイズは三人をにらんでいたがやがて自分の杖を床に叩きつけると、彼女は涙をこぼしながら教室から駆け出していった。 才人達は彼女の突然の剣幕に圧倒され、何も出来なかった。 前ページ次ページ鷲と虚無
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──教室吹っ飛ばして掃除中 「──だから『ゼロ』のルイズなのか…」 「フンッ! あんたまで『ゼロ』『ゼロ』ってわたしのことバカにするのね」 「聞いてたのか。怒るなよ、ルイズ。 君はオレの命の恩人で、頼りになる主人だと思っている。友人ともな。 それじゃ、いけないか?」 「…生まれてこの方、わたしの人生狂いっぱなしよ。 『フライ』はおろか、『レビテーション』ですら失敗ばかりだし、 それが、『あの』由緒あるヴァリエール公爵家の三女ってことで、他の連中にはバカにされるし…、 べ、べべ別にわたしはやっかみなんて気にしてないわよ!? わたしは、少し他と違うだけで、原因を突き止めたら、 きっと、魔法が使えるようになるんだから! …でも、その足がかりになるはずだった使い魔召喚でも、 あんたみたいな平民が召喚されちゃうし、もう、めちゃくちゃよ」 「焦ってんだ」 「…なんですって?」 「オレと同じさ。 どうしたらいいか、何をしたらいいか、わからなくて、焦ってる。 状況の変化に対応できてない」 「なっ、なによ! わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、 由緒あるヴァリエール公爵家の三女よ!!」 「名門貴族の子も人ってことだろ?」 「……ふ、ふんだ、なによ! わかったような口きいちゃって! …あぁもう! さっさと片付けてご飯食べに行くわよ!! わたしも手伝うから! か、勘違いしないでよね! さっきからお腹ペコペコで、一刻も早く食べに行きたいだけなんだから!!」 「わかったよ。 早く一緒に食べに行こう、ご主人様」 「…フン」 スーパーロボット大戦Dの男主人公 ジョシュア=ラドクリフを召喚
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前ページ次ページゼロの騎士団 ゼロの騎士団 PART2 幻魔皇帝 クロムウェル 7 「旅立ちと焦り」 トリステイン魔法学院 まだ朝日も昇らない時間 世界から音を奪う闇の時間。 本来、人が居ないであろう学院の入り口には、二つの声が聞こえていた。 「……眠い」 ルイズは目をこすりながら、不機嫌な顔で呟く。 朝がそれほど強いと言う訳でも無く、任務の重要性、昨日見た夢などもあり、ルイズは充分な睡眠をとれているとは言えなかった。 だが、不機嫌の理由はそれだけでは無かった。 「しかも、何でこんな恰好なのよ」 彼女の服はいつもの制服では無く、シエスタに頼んで用意してもらった平民の服に、長旅用の使い古されたボロボロのローブであった。 シエスタの服では大きすぎるので彼女の友人のメイドの服を借りたのだが、それでもルイズには胸の部分も含め大きく感じられた。 「当たり前だろう、聞くところによるとアルビオンは数日の長旅になるのだろう。 いつもの制服と言う訳にも行かないし、町の中を貴族の学生が歩いてたら不自然だろう」 ルイズと似たような、ローブを着たニューが答える。 彼らの目的は目立つ事と逆――隠れる事である。ここハルケギニアで、貴族という存在はそれから最も遠い存在であった。 ルイズは貴族としての旅行は経験して居ても、旅人としての旅行など経験はなかった。 昨日の準備ではトランクを二つも持ち出しており、ニューに呆れられていた。 「ルイズ、我々は観光旅行に行くんじゃないんだぞ。しかも、劣勢と言われる方に接触しなくてはならないんだぞ、目立つ訳にはいかないんだ」 (こんな事で大丈夫だろうか?) ルイズの感覚に早くも黄色の信号が灯り始める。 ニューの顔を見て、ルイズが愚痴をこぼす。 「それは解るわよ、けど、さすがに早すぎない?」 目も慣れてきたが、朝と言うよりも夜と言っても過言ではないほど暗く、かろうじて数メイルが見える程度であった。 早く出ると言う事が陽が明け始めるくらいの出発を予想していたので、肌寒さすら感じる空気は自分の感覚に吹き付けるようであった。 「仕方ないだろう、朝食を食べてみんなに見送られるのとは訳が違うんだ。 マルトーさんに頼んどいて、朝食を作ってもらったから、少し走ってから休憩しよう」 そう言って、ニューは厩舎より連れて来た馬に乗る 文句の一つでも言いたかった。しかし、文句が無いくらい手際の良さを咎める事も出来なかった。 「……分かったわよ、じゃぁ行くわよ」 渋々ながらルイズも馬に乗り、二人は馬を走らせ始めた。 「行ったようですね」 学院長室 遠見の鏡から二人のやり取りを見ていたコルベールが呟く。その声には不安の混じった声があった。 「心配無いじゃろう、ニューもいる事なんじゃし。それに、姫様も自身の信頼できる人物を使わすそうじゃ」 それほど心配なさそうな口調で、オスマンは口を開く。 二人は昨夜、王室――アンリエッタより今回の任務を聞かされていたのだ。 「ただ、わしが気になるのはミス・ツェルプストーとダブルゼータがアルビオンに渡り ミス・タバサとゼータもお馴染みの欠席じゃ、偶然であると思いたいのだがのぉ」 脳内でアナウンスされる偶然とは思えないキャスティングが、オスマンの表層に不安の石を投げ込む。 (……無事に帰ってくるのじゃぞ) オスマンは、それぞれ居なくなった生徒と使い魔に、心の中で心配の言葉を投げかけた。 あと1時間もせずに、日は昇ろうとしていた。 二人は乗馬の心得があるので、速さは順調であった。 場所は解らないが、ニューは少なくともそう思っていた。 ルイズの方も意識の覚醒と趣味の乗馬という事も有り、次第に顔から不機嫌が消えて行った。 馬を走らせて数時間、馬と自分達の休憩の為に、ルイズ達は街道の無人の小屋に腰を降ろした。 「アンタって、旅慣れているのね」 意識も完全になったのか、ハムと野菜のサンドをかじりながら、ルイズはニューに話しかける。 「遠征の経験もあるし、険しい山道を越えた事もあるからな」 簡素な水筒から紅茶を出しながら、ニューはそれに応じる。 ラクロアまでの遠征は険しい山脈と凶悪なモンスターを相手にする為、旅人という人種では無謀とも言えるほどであった。 (あの時は大変だったな、私もアムロ殿の様に移動魔法が使えればな) 実際、アムロから聞いていたが予想以上に厳しく、一度遠征した後は魔法で移動する事がほとんどであった。 「私は完全には地理が解らないのだが、ペース的には悪くないだろう。ラ・ロシェールと言う所は約二日だそうだな」 自身の見た地図を頭に描きながら、ニューは確認する。 「そうよ、まぁ早ければ明日の夜には着くかもね」 そう言って、紅茶に手を伸ばそうとした時、二人は上空に強い風の流れを感じた。 上の方には、鳥と言うには大きい影が見えていた。 「何だあれは?」 自身の世界ではあのクラスの物体が空を飛ぶのは動物とは考えにくい。 (早速、敵か?) 警戒しながら、ニューがルイズに聞く。 「違うわ、あれはグリフォンよ……野生と言う訳でもなさそうだし、誰かしら?」 ルイズも不安そうに呟く。 比較的安全な街道で、グリフォンが自分達を狙って襲うとは考えにくかった。 その言葉の数秒後に、グリフォンはルイズ達の目の前に着陸した。 グリフォンに乗っていたのは帽子をかぶった長身の金髪の男であり、二人はその人物を知っていた。 誰よりも先に、ルイズが反応する。 「ワルド様、なんで此処に!?」 ルイズがその人物を見て、驚きの声をあげる。 本来会う事のない人物と思うだけに驚きは強い物があった。 ルイズの驚きに、ワルドは軽く受け流しながら、グリフォンの背中より降りる。 「私はアンリエッタ様より、君達の護衛を頼まれたのだ。ルイズ、久しぶりだね」 ワルドはルイズに近づき、ルイズの肩に手を掛ける。 肩を触れられて、ルイズは動きが硬くなる。 「そ、そうなんですか。ありがとうございます」 それだけを言いながら、ルイズは恥ずかしそうに身を震わせる。 その様子をニューは観察していた。 (姫様の言っていた護衛と言うやつか・・・) ルイズの初々しい反応などではなく、目の前の男に注視する。 アンリエッタが護衛をつけると言っていたので、多分、目の前の男がそうなのだろう。 ルイズが言うには、若くして精鋭部隊の隊長になったとの事なので腕が経つとの事。 少なくとも、あの獰猛なグリフォンを乗りこなしているのを見れば、その実力は朧ながらも分かる物であった。 ワルドはルイズとの再会をそこそこに、今度はニューに向けて視線を送る。 その視線は何処かニューの事を推し量るような物を感じる。 (私の事を知っているのか?) 少なくともこの世界には自分達を知る物はいない。 しかし、目の前の男は対して驚きもしない様子だった。 (私の方が本命か?) その視線に好意だけではない何かが、ニューを探ろうとする。 それに気づいても、ワルドは表に出す様子は無く。 「君がルイズの使い魔だね、今回はよろしく頼む。アンリエッタ王女から聞いたが、魔法が使えるようだね」 爽やかな様子で、ワルドはニューに挨拶をする。 「はい、ニューと申します。ワルド殿、主の護衛を引き受けてくれて、大変ありがたく思います。主のお相手は大変だと思いますが、よろしくお願いします」 丁寧ながらも少し慇懃な態度で応じる。 その様子に、ルイズがニューを睨みつける。 「ちょっと、もっと丁寧な態度を取りなさいよ!」 「ははっ、ルイズいいんだよ」 ワルドは気にしないといった様子で、ルイズの言葉を流した。 (人が出来ているな。ルイズの相手をするには、それぐらいでないといけないと言う事か) 子爵でルイズの相手をすると言う事はおそらく接待の様なものであろう。 ルイズの難しさを知っているだけに、若い頃からルイズの相手をしてきた目の前の男を見てそんな感想を抱いた。 「ルイズ、休憩も済んだしそろそろ出発しよう」 「そうだな、ルイズは僕のグリフォンに乗って貰うつもりだが、良いかね?」 ニューの合図に、ワルドが提案する。 それを聞いて、ルイズは頬を赤らめる。 それはルイズだけにではなく、自分にも聞いてる事がはっきりと分かった。 「分りました、今後の指揮はワルド殿がお願いします。私は外様ですので」 断る理由も無かった。むしろ。 (疲れて文句を言われてはかなわんからな) ニューはそんな事を考えながら、ワルドの案を受け入れる。 しかし、今の会話がルイズの気に障ったのか、顔を恥ずかしいから怒りに切り替える。 「馬鹿ゴーレム! アンタのその態度は何なの、さっきからアンタ失礼よ!」 ルイズが先程からのニューの態度が気に入らないのか喰ってかかる。 しかし、ワルドが居る手前、手までは出さなかった。 「私もこの任務を絶対に成功させないといけないからね、そう言ってもらえると助かる。ではルイズ、行こうか」 ルイズを連れて、自身のグリフォンに乗っける。ニューはその様子をしばし見てから、馬へと向かった。 「まったく、あの馬鹿ゴーレム! なんで、あんな態度取るのかしら」 空から大地を走る馬を睨みつけながら、ルイズが愚痴る。 本来なら、ワルドとの再会の喜びを楽しむ時間の筈であったが、自身の使い魔がその時間を略奪した。 「彼がどうかしたのかい?」 ワルドはそれに起こった様子でも無く。ルイズの顔を嬉しそうに見つめる。 「いえ、何でもないんです」 その顔が自分の今の顔に合わない事に気付いて、ルイズは下を向く。 ニューはいつも皮肉を言うが、さっきの様に毒を撒き散らすような言い方はしない。 (それに、皮肉と言うよりも、何か拗ねている様だったし) 心なしかルイズはそんな事を感じていた。 心当たりと言えば昨日のやり取りだろう。ルイズは思い返す。 (そりゃあ二人より劣るとは思っていないけど、だからって、あんな態度取る必要ないじゃない) 本心で行ったわけでは無い。 ルイズとしてみればニューを動かす為に、言っただけである。 しかし、魔法学院に帰った後も、ニューは心なしか不機嫌な様子だった。 「彼の事を考えているのかい?」 ワルドがルイズの顔を覗き込みながら、聞いてくる。 「べっ、別にそう言う訳では無いんです。ただ、アイツは口が悪いけど、今まであんな態度は取らなかった……」 彼の不機嫌な理由は自分だろう。 (やっぱり、私が悪かったのかな) ルイズには心なしか、ニューが苛立っているその理由が解らなかった。 そして、それがルイズの不機嫌の基でもあった。 「彼だって考える事はあるさ、使い魔だからって何でもわかる訳では無いよ」 「そうですよね……」 (謝らなくちゃ、駄目なのかな……けど、私はアイツの主人なのよ! いくら私が悪いからって簡単に謝ったら鼎が問われるってものよね。もう少し、時間を置きましょう。そして、さりげなく謝るのよ) 自己弁護と解決方法を考えながらルイズは大地を眺め続けていた。 3人の旅は順調であった。妨害を予想していたがこれと言った事がある訳では無く、 次の日の夕方にはラ・ロシェールに到着していた。 岩肌に丘に作られた町 ラ・ロシェール 「女神の杵」――アルビオンに向かう貴族が利用する高級旅館 疲労回復と安全面からルイズ達はそこで宿を取る事にした。 「一番早いのは明日の夕方には船に乗る事が出来るよ、それに乗って明後日にはアルビオンに行く事が出来る。」 船長と乗船の交渉をしたワルドが、二人に出向の時間を告げる。 「そうですか……しかし、船が飛ぶとは驚きです」 出発も明日と言う事もあり、三人は宿の中の食堂で夕食を取っていた。 ニューは先程まで居た桟橋の光景を思い出しながら、驚きを口にする。 船が無い訳ではないが、それでも、巨大な木にクリスマスツリーの飾りの様に停泊する空飛ぶ船は素直に感動する物であった。 「アンタの所には船は無いの?」 ルイズがメインに手をつけながら、ニューに話題を振る。 「私の知る限りでは無いな、それに、大陸が浮くなんて聞いた事がない」 最初、ここに来た時港がなくて、道を間違えたのかと危惧したが、 アルビオンの事を聞き実際に空飛ぶ船を見た後だと、この世界が異世界であると今更ながら思い知るのであった。 「……ところでで、君は異世界からか来たそうだね」 ルイズと会話を楽しんでいたワルドが話題を変えて、ニューの方に声を掛ける。 「そんな事まで知っているんですね……信じるんですか?」 突然、話題を変えて、自分に振って来たワルドに対してある事に気付き考える。 (色々調べているんだな) ワルドが自分達が異世界から来ている事に気付き、ニューも情報能力に感心する。 思えば、思うに目の前の男は、初めて会った時に自分が魔法をつく事を知っていたのだ。 「情報収集も仕事でね、アンリエッタ様から異世界から来たと聞いた時、最初は正直信じられなかったけどね」 ワルドがそう言って、ワインを口にする。 「さて、今夜泊まる部屋の事なんだが、悪いが僕はルイズと大事な話がしたいんだ、僕とルイズが一緒でいいかね?」 ニューの方を見ながら、ワルドが聞いてくる。 それを聞いたルイズは、頬を赤く染めてワルドの方を見やる。 (え! ちょっと待ってよ、いきなりそんな) ニューといつも通り同室で泊まると考えていただけに、ワルドの言葉は意外であった。 「ちょっと、ワルド様、いきなりそんな事言われた」 「いいですよ」 ルイズの言葉を遮り、ニューがあっさり同意する。 音が聞こえるように首を動かし、ニューの方を見る。 「久しぶりに会って積もる話もあるでしょう……それに、ルイズ」 ニューが真剣な目で、ルイズを見つめる。 「な、何よ!」 (私の事、信用してくれるの) その表情に、ルイズも勢いが止まる。 幾らなんでも、年頃の男と一緒の部屋で泊まる等とはルイズとしても抵抗がある。 それに、そう言った状況で流されてしまうのが良くある事はルイズの耳に入っていた。 しかし、ニューはそう言った事をしないとルイズを信用―― 「お前がワルド殿の相手になる訳ないだろう、冗談は胸だけにしろ」 ――する訳でも無かった。 握った拳に銀の感触が強くなる。 「この馬鹿ゴーレム! 絶対コロス!」 意識を失う直前、ニューが最後に見たのは、ルイズの手に持ったフォークとそれを止めるワルドであった。 ニューが次に目覚めたのは、数時間たったベットの上であった。 「ルイズの奴め、本気で刺してくるとは……」 自身の傷を魔法で回復させて、ニューはベットの上で横になっていた。 自身のいつもの環境に比べれば、ホテルのベットは極上と言っても差し支えなかったが、 ルイズに数時間の間、気絶させられた為に寝る事が出来なかった。 ニューは自分の事を考えていた。 「ルイズじゃないけど、確かにそう思うところがあったんだよな……」 (アイツ等の力は知っている。知っているだけにいつしか頼るようになってしまった) ニューはベット上で寝がえりを打ちながら、そんな事を考える。 ニューはルイズに言われて以来、ずっとその事を気にしだしていた。 仲間達は前線で戦う事が多く、そして、優れた使い手が多かった為にニューは直接手を下す必要が多い訳では無い。 自身がその立場上、援護に回る事が多い為にニューは回復などの方が多い事もあった。 いつしかそれが当たり前だと思いはじめ、知らないうちに二人に依存しだしていたのだ。 ハルケギニアに来た時は、口には出さなかったが三人しかいないと言う孤独感もあり、 それは感じなかったがこの世界に馴染むにつれて、徐々にその事を思い出しつつあった。 (いつまでも二人に頼る訳にはいかない。今回の様にいつも三人で行動する訳では無いのだから) これまでは騎士団であったために、ともに行動してきたが今は使い魔でもある為に何時また別行動をするかは解らない。 そこまで考えてから、ニューはルイズとワルドの事を考える。 「そもそも仮にも精鋭部隊の隊長が、公爵家の三女に手を出す訳ないだろう」 若くして魔法衛士隊の隊長であるワルドが、そんな事をすれば今の立場を失いかねない事はニューには解っていた。 (……おそらく、なるとしたら婿であろう) 何となく、ニューはそう考える。 ワルドは子爵の息子だ、ルイズは三女であるからもしかしたらもあるかもしれないが、家柄を考えたら彼の方が下だろう。 (ただ、ワルドからしてみれば、それでも得られる物は大きいだろう。なにより、ルイズは扱いやすいからな) 自身の口でついた傷を棚に上げて、ニューはそんな事を考える。 おそらく、ワルドはルイズとヴァリエール家の後ろ盾を得たいのだろう。 自身も、騎士団長を輩出した名家、等と呼ばれる家柄だけに、ニュー自身もそう言った思惑に晒された事が無い訳ではない。 この世界に長く居るつもりはない。 故にそう言った事には自身はなるべく関わらないようにと考えている。 (この世界で生きてくのはルイズ自身だ、私がとやかく言うべき事ではない。ルイズが自分で選ばなくてはいけないのだ) そう考えてから、夜風に当たりたいと思いニューは部屋を出た。 宿の2階にあるテラスには先客が居た。 それを見て、ニューは声を掛ける 「どうしたルイズ、ワルド殿に結婚してくれとでも言われたのか」 からかい半分に、テラスに居るルイズに近づく。 ニューを見て何か言いたそうであったが、ルイズはニューの言葉を聞いて不機嫌な顔を作る。 「なっ、何を馬鹿な事を言ってるのよ!」 怒鳴りながらも、直にその意気を落とす。 「……ただ、ワルド様が昔約束した婚約の話を覚えていてくれてたの、けど、それは子供のころの約束だったし、なんて答えればいいのか分からなかったの」 (嬉しくないと言えば嘘になる、けど、いきなりそんなこと言われても) 久しぶりに会って自分との思いでを覚えてくれるのは嬉しかったが、それでも、ルイズには簡単に応えられる事では無かった。 (まぁ、普通はそうだよな) 「ルイズ、私はいずれアルガスに帰る身だ、いつまでもこの世界に居る訳では無い。」 ニューがルイズの隣に移動する。 「ニュー……」 「私は妻を持ったわけでもないし、恋愛に聡い訳では無い。私が責任を持って言える事ではないが言わせてもらう事がある」 「……何よ」 ルイズが身構えながら、ニューの話を待つ。 「ワルド殿はお前を愛して居るかも知れない、しかし、それは、ヴァリエール家の三女という事である事も忘れてはならない」 「え!」 「別に彼が酷いのではない。彼の様に若くしてそれ相応の地位に居れば、そう言った物を少なからず求めるだろう」 ニューは少し渋い顔でルイズを見る。その顔を見ながら、ルイズも何か言いたそうな顔をしている。 「ワルド殿が今更ながらそう言った事を述べると言う事は、そう思っているかもしれないと述べたのだ。 お前も十数年、貴族の社会で生きて来たのだ、全く分からなったり信じなかったりするわけではあるまい?」 ニューは以前の教室の様に、やさしい声で語る。 「そんな事言って、どうすればいいのよ」 (じゃぁどうしろって言うの、偉そうなことばかり言って) そう思いながら、ルイズはニューの言葉を待つ。 「ワルド殿は少なくとも立派な人物だと思う。 ただ、あせる必要はない。彼と一緒に居て彼と言う人間を知ってからでも遅くは無い。私はそれくらいの事しか言えん」 風が強くなってきているのを感じて、ニューは戻るように促す。 何となく嬉しかった。 「偉そうなこと言わないでよ、使い魔のくせに」 ルイズは頬をふくらませる。 それを見て、ニューは笑いながら自室に戻ろうとする。 「悪かったな。だが、もう少し成長しなければ相手してもらえないぞ」 (そうだな、未熟者の私が偉そうなことは言えんな) それだけを言って、ルイズの視界から消えた。 「……この馬鹿、一言多いのよ」 (心配するなら、もっと良い事言いなさいよ……けど、ありがとう) ニューの居なくなった後を睨みつけた後、ルイズは戻っていた。 その時の、ルイズの表情を確認する者はいなかった。 翌日、ニューは朝の散歩を兼ねて無人の広場に来ていた。 (闘技場か何かだろうか) 周りに散らばる剣の金属片や杖らしき木片、そして、傷だらけの地面がそれを連想させる。 それらを見渡して、近くの岩に座ろうとした時、自身とは違う足音が聞こえる。 「やぁ、おはよう」 後ろから声をかけられても、その声の主は解っていた。 「おはようございます。ワルド殿」 ニューは振り返り挨拶をする。気のせいか、昨日とは空気が少しだけ違うような気がした。 (釘を刺しに来たのかな) なんとなくそんな事を考える。 昨日ルイズに言った事はワルドにとってはマイナスであり、ワルドの評価を下げるには理由としては充分であった。 「今日の夕方頃までには時間がある。実は、君と手合わせしたいんだ」 (なんだ、釘を刺しに来たんじゃないのか) 自身の考えとは違うが、それでもワルドの言葉はニューにとって意外な物であった。 「どうしてですか?」 理由がないので、ニューはとりあえず聞いてみる。 「大した事じゃないんだよ。ただ、異世界の魔法とやらに興味があるんだ。 君の実力はフーケの件で知っているからね、初めて学院で君を見た時からずっと思っていた事だ」 (……なるほど、そう言う事か) ワルドの理由を聞いて、ニューはこの間、パレードで目が合った時の事を思い出す。 あの時、ワルドは自分達がフーケを取らえた事を知っていたのだ。 だからこそ、目が合った時、驚きもせずに自分の方を観察していたのだろう。 ニューはそこまで考えて、目の前のワルドに目を移す。メイジであると言う事は恐らく、自身と似たようなタイプであろう。 力で魔法を押しつぶすようなタイプでなければ、そう簡単には後れを取らない。 「私が相手では不満かい?」 言葉とは裏腹に、ワルドの言葉には挑発的な意味が含まれている。 (いつまでも、二人に頼る訳にはいかない。今回の様にいつも三人で行動する訳では無いのだから) 心の中で昨日の自分の言葉が反芻する。 「受けさせていただきます。勝敗の方法はどうしますか?」 (これもいい機会だ、それにこの男相手に戦えれば、私もあの二人に頼ると言う考えも少しは薄れるだろう) そう考えて、ニューは受ける事にした。 ワルドは近くにあった木の枝を取り、それをニューに渡す。 「メイジの戦いは杖を落としたら負けとなる、君は杖は要らないだろうがこう言うルールでいいかい?」 「いいですよ」 (それなら穏便に済ませそうだしな) そう考えて、ニューは木の枝を握る。お互いがある程度距離を取った時、人の気配がやってくる。 「ワルド、ニュー!二人とも何やっているの」 起きたばかりのルイズが、慌てて二人の元にやってくる。お互いに杖を持っているので不穏な空気を来たばかりのルイズも感じていた。 「これは簡単な手合わせだよ、ルイズ、君には立会人をやってもらいたいんだ」 ワルドはそう言って、ルイズを下がらせる。 「何馬鹿な事やっているのよ、ニュー、アンタもやめなさいよ」 自身の使い魔に主として命令を出すが、それは聞き入れられなかった。 「ルイズこの機会に自分の使い魔の実力を見ておくんだ、ゼータやダブルゼータが居なくても大丈夫だと言う事を」 (そう、私は大丈夫だ……二人が居なくても問題ない) そう思い聞かせて、ニューは木の棒を構える。 「アンタ、何言ってるのよ!」 (この間の事、まだ気にしてるんじゃない!それに、今のアンタ……) ルイズから見て、今のニューはどこか冷静さを欠いているような印象を受けた。 「35颯爽とグリフォンに乗ったワルドが現れた」 魔法衛士隊隊長 ワルド 風のスクウェア MP 1050 前ページ次ページゼロの騎士団
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前ページ次ページゼロの魔王伝 ゼロの魔王伝――8 夢の世界に沈んだルイズは、これが夢の中だと分かる不思議を感じながら、懐かしくさえ思える夢を見ていた。それは春の使い魔召喚の折の事。唱えても唱えても爆発ばかりが起き、一向に使い魔を召喚できずにいたルイズに周囲の生徒から罵倒が飛ぶ。 “ああ、これは、Dを召喚した日の事ね” この日の事は今も鮮明に思い出せる。その時の情景も、周囲から向けられる感情の種類も、虚しく空を切る杖の感触も、なにも呼ぶ事無く虚ろに響く呪文も……もっとも、Dの美貌ばかりは夢の中でも思い出せないけれど。 魔法学院の外に広がる薄緑が連なる草原の真ん中で、同級生達に軽蔑の視線でもって見守られながら、ルイズは何度も杖を振り、呪文を唱え続ける。だがそれは実を結ぶ事無く草原に土煙を幾筋もたなびかせていた。 引率として同伴していた頭頂の毛が薄い、温和そうな中年男性のミスタ・コルベールが、最後の機会と夢の中のルイズに告げる。ルイズは上空からその様子を俯瞰する高さで見つめていた。これが最後と覚悟を決め、詠唱を始める夢の中のルイズ。 それまでと変わらぬ爆発が起きた時、夢の中のルイズは目の前が真っ暗になったようだった。いや、実際そうだった。必死に歯を食い縛って流すまいと堪えていた涙の粒が眼尻に大きく盛り上がり、ついには理性の堤防を破って滴り落ちそうになる。 その涙を許さない貴族としての矜持、もうどうでもいいと投げやりになる素の感情。せめぎ合うそれらがルイズの心を掻き乱していた。 周囲の生徒達の野次が一層ひどく、そしてコルベールの姿にも傍から見てもあからさまに失望の色が伺えた。無理もない、また自分は落ちこぼれのルイズである事を証明したのだから。 一人進級する事も出来ず、また同じ一年を過ごし、周囲からの嘲りと憐れみとを満身に浴びて、いずれは耐えきれずに屈辱に胸を掻き毟り自ら命を断つか、あるいは心に癒えぬ傷を抱えたままラ・ヴァリエールの領地に戻っていただろう。 “でも、違った” 慈悲深き始祖ブリミルはルイズを見放しはしなかった。やがて土煙に薄く人影が映し出された時、すべての音は絶え、唯一その場に居た人間のみならず使い魔たちの息を呑む音だけが響いた。 そう、風さえも音を絶やしていた。風は怯え、土は慄き、火は熱を失い、水は流れる事を止めた。 ルイズが召んだ者――いやモノとはそれほどまでに美しく、それほどまでに恐ろしいものだと、人間よりも世界が悟ったのだ。 見よ、立ち込める土煙は決して触れてはならぬ者の出現を悟り自ら左右に分かれ、踏みしめられる大地は喜びと共に甘受し、頬に触れた風は恍惚と蕩け、泥の如く蟠って大地に堕ちた。 ルイズの瞳にそれが映し出された。コルベールの脳がそれを認めた。周囲の生徒達が考える事を止めた。使い魔達は来てはならぬ者が来た事を悟った。 かつて、森の彼方の国から、一人の美女を追って全てを白く染めるほどに濃い霧と共に、死者のみを乗せた船の主となって倫敦を訪れたバンパイアの様に、ソレは姿を見せた。 太陽の光がそのまま闇の暗黒に変じてしまうかの如き黒の服装。胸元で時折揺れる深海の青を凝縮したようなペンダント。それらが彩る、広く伸びた鍔の旅人帽の下にある美貌よ。美しさとは、これほどまでに極まるものなのか。 それは、美しいという事さえ認識できぬ美しさであった。目の前のそれを表す言葉を探り、しかし美しいと言う他ないと認め、それよりも相応しい言葉を見つけられないと絶望するのに刹那の時を必要とした。 若い、まだ二十歳になる前の青年であった。銀の滑車がついたブーツは音一つ立てずに歩み、かろうじて息を吹き返した風の妖精たちによって靡く波打った黒髪も、漆黒のコートもその全てに美しいという形容の言葉を幾度も着けねばならぬ。 右肩に柄尻を向けて斜めに背負った一振りの長剣は180サントを悠々と越える青年の身の丈にも届くほどに長く、尋常な腕では満足に鞘から抜き放つ事も出来ないだろう。 一歩、二歩と歩む青年の姿はルイズの魂を根幹から揺さぶるほどに美しく、この瞬間、ルイズはこれまで影のように傍らに在り続けた“ゼロ”というコンプレックスを忘れた。 一人の少女の輝かしい生涯を、その終りまで暗黒に変えるだろう劣等心を忘却させた青年は、しかし、三歩目を刻む事はなかった。土煙とは異なる白煙を全身から立ち上らせた青年は、ゆっくりと、その様さえも美しくうつ伏せに倒れたのだ。 ど、と重い音が響く。ルイズが目の前の光景を理解するのに数秒を要した。 『目の前に倒れているのは、誰? 私が召喚した、使い魔? いや、こんな美しい御方が? いえ、それよりも、倒れている? どうして? 違う、そんな事よりも!!』 意味のある言葉にならぬルイズの思考を突き動かしたのは、自分が呼び出したかもしれない使い魔を保護しようという意識ではなかった。 それは奉仕の心であった。この方の為に何かしなければならない。何か自分に出来る事があるのなら、それに全力を尽くさねばならない。期待の結婚詐欺師にかどわかされ、夫を殺した婦人方の万倍も強く、ルイズは眼前の青年の奉仕者となっていた。 トリステイン王国でも五指に数えられる名家中の名家ラ・ヴァリエール家の令嬢として、多くの召使たちに傅かれ日常の雑事の全てを他者に委ね、頭を下げられる事を当たり前の事として育った少女が、この時世界の誰よりも強い奉仕の心を持っていた。 誰よりも早く倒れ伏した青年――Dに駆け寄り、膝をついて白煙をたなびかせる剣士へと手を伸ばして声をかけた。 「大丈夫ですか、ミスタ! どこかにお怪我でも? 熱っ!?」 その背に恐る恐る伸ばした右手が、途方もない熱を感じ、思わずルイズは手をひっこめた。この場に居る誰もが知り得る筈もないが、Dはほんの数秒前まで燃えたぎるマグマに飲み込まれんとしていたのだ。 その余熱がこの青年の体を焼き、今も体内に残留していたのである。Dの意識が絶えている事を、自分の呼び掛けに無反応である事から確認し、ルイズは大きく声を張り上げた。これほど乱暴に声を荒げたのは初めての事だったろう。 「誰か、水魔法使える子は早く来て! 治癒をかけるのよ、怪我をされているわ! のろくさとしないで、さっさとしなさい!!」 雷に打たれたように、ルイズの怒声を耳にした生徒達の中の、全水系統の者達が全力疾走でDの元へと駆け寄った。彼らもまた美の奉仕者へと変わったのだ。 押しあいへしあい、我先にこの美しい方の傷を癒さんと杖を伸ばす生徒達のど真ん中で、ルイズは憎悪の視線さえ向けられながらぐいぐいと遠慮なく体を押されていたが、それに負ける事無く、ひたむきな視線を倒れ伏したDへと向けていた。 敬虔な信徒、忠義に熱い騎士、一途な恋に身を焦がす少女、その全てに似て非なる視線であった。だが、Dの身を案ずるという一点においてその全てと共通していた。 ルイズにとって二番目の姉の体を案ずるのと同じくらいに、今、Dの怪我の治癒に対して心を砕いていたのだ。 流石に教師としての面目を思い出したのか、コルベールが最も早く正気に戻り、Dの傷が癒えた頃を見計らって、生徒達に戻るよう声をかける。途端にこれまでの人生で浴びせられた事の無い程の、怒涛の殺気がコルベールの全身を呑みこんだ。 途方もなく巨大な蛇に飲み込まれてしまったように、コルベールは恐怖に身を竦ませた。美への奉仕を邪魔する者に制裁を、この一念で水系統の魔法学院生徒達はコルベールを睨みつけたのだ。 とても実戦経験の無い生徒達が放つとは思えぬ殺気を浴びてコルベールの毛根は死んでゆく。はらはらと抜け落ちる自身の毛髪には気付かず、なんとか心胆に力を込めて生徒達に声をかけ直す。 「こ、これで使い魔召喚の儀は終わりですぞ! 急いで学院に戻りなさい!」 ゆらゆらと立ち上がる生徒達は、まるで冥界から生ある者を恨みながら黄泉返った死者の様に恐ろしくコルベールの眼に映る。チビりかけるが、かろうじてこらえる。教師としての威厳や年長者としての自尊心を動員し、なんとか成功した。 傍らを過ぎる度に水系統生徒達に血走った眼を向けられて、コルベールは保健室で胃薬を貰おうと決心した。その他の系統の生徒達も、頬を薔薇色に染めながら、失神したクラスメート達を抱えて、学院へと戻り始めた。 美の衝撃は抜けず、人間に空を飛ぶ事を約束するフライの魔法を唱える事の出来た者は一人もおらず、全員が自分の足で使い魔を連れて戻っていった。他の生徒達がいなくなった草原に、倒れたままのDと共に残っていたルイズに、コルベールが声をかけた。 「さ、ミス・ヴァリエール、保健室にその方を運びますぞ。契約はそちらが目を覚まされてから事情を説明した上で、でよろしいですかな? 古今人間を使い魔にした例はありませんが、神聖な使い魔召喚の儀式においてやり直しは認められませんからな」 「あの、でも、ミスタ・コルベール」 雨に打たれる子犬の様に弱々しく、ルイズはそのまま泣き出しそうな顔で、上目使いにコルベールを見た。赤く染まった頬に潤んだ瞳は、誰もがこの小さな少女を守ってあげなければならないと思わせるほど儚く、可憐だった。 「なんですかな?」 「わたしなんかが、この人を使い魔にするなんて事があって良いのでしょうか?」 「うむ、それは、まあその青年が目を覚まされてからの話と言う事で」 と、コルベールは逃げた。彼自身、このような使い魔が召喚されるなど想像だにしていなかったのだ。メイジに相応しいと思える使い魔が召喚される場面は何度も見てきたが、使い魔に相応しいかどうかと、メイジの方を疑ったのは初めての経験だった。 その後、コルベールが対象物を浮かび上がらせるレビテーションの魔法を掛けてDを保健室まで運んだ。 旅人帽と長剣、ロングコートを脱がし、腰に巻かれた戦闘用ベルトを括りつけられたパウチごと外して清潔なベッドに寝かせたDを、傍らでぽけっとルイズは見つめていた。完全無欠に心ここに在らずである。 気を絶やして眠りの世界に陥った青年の横顔を、宝物を眺めて一日を過ごす子供の様にして見ているのだ。 この時、ルイズは生涯でもっとも幸福であった。この時を一分一秒でも長く過ごす為にか、ルイズの体は身体機能を調節する術を覚え、保健室に運びこんでからの数時間、手洗いに一度とて行く事もなく、また睡魔に襲われる事もなかった。 自分の膝に肘を着けて、細い顎にほっそりとした指を添えて、うっとりと、うっとりと見つめていた。このまま食を断ち、眠りを忘れて命を失い、骸骨に変わろうとも何の後悔もなくルイズは見続けるだろう。 ルイズとD。ただ二人だけの世界は、この上なく美しく輝いていた。ちなみに保険医の水メイジの先生は、Dの美貌を目の当たりにして瞬時に気を失い、Dの隣のベッドで笑みを浮かべながら眠っている。 固く瞼を閉ざし、浅い呼吸は時に目の前の青年が既に息をしていないのではないかとルイズの胸に不安の種を植え付け、それが芽吹くたびにルイズは、震える指を青年の花の前にかざし、本当にかすかな吐息を確認する。 Dの吐息を浴びた指が、そのまま宝石に変わってしまいそうでルイズは頬をだらしなく緩めた。 一見すれば気が触れたとしか思えないうっとり具合であったが、その原因が桁はずれの説得力を有する外見の為、今のルイズをからかう資格のある者はこのトリステイン魔法学院には誰一人としていなかった。 はあ、とルイズは切ない溜息をついた。もう切なすぎてそのまま死んでしまうんじゃないかしら、私? と本人が思うほど切ないのである。憂いも愁い患いもルイズの心の杯をいっぱいに満たし、溢れんとしている。 それは、ルイズがこれから行うかもしれない使い魔との契約の儀が理由だった。召喚した使い魔との契約――それは粘膜の接触、すなわち口と口での接吻であった。 通常動物や幻獣の類が召喚される為、この接吻は誰とてキスの一つには数えぬものだが、ルイズの場合は相手が相手であった。 『ここここここの、くく、唇に、キキキキキィイイイイイッススススススゥをしなけれなならないのかしら? わわわわたしししし!? ふぁ、ファーストキッスにかかか、カウントすべきよね! ね!!』 とまあ、こんな具合に愁いを帯びた深窓の令嬢の雰囲気とは裏腹に、ルイズの内心はいい感じに茹だっていた。タコを放り込めばコンマ一秒で真っ赤っかになるだろう。実にホット。地獄で罪人を煮込む釜並みにぼこぼこと沸騰しているに違いない。 はあ、とそのまま雪の結晶になって落ちて砕けてしまいそうな溜息が、ルイズの唇から零れる。これまでルイズに目向きもしなかった同級生達も、はっと息を飲みそうなほどに麗しい。 可憐、と言う言葉を物質にできたならまさに今のルイズほど似合う少女は居なかったろう。 つい見惚れて、ふらふら~っと誘蛾灯に誘われる蛾よろしく――蛾、というのはいささかルイズに失礼かもしれないが――、ルイズは思わず目を細めて唇を突き出し、Dの唇へと引き寄せられる。 二人の唇の間に引力が存在するかのように、夢見る顔でルイズの頭が眠りの世界の魔王子となっているDの頭に重なる。 『横にズレなし、後は縦に落ちるだけよ、ルイズ!』 さあ、さあ、ぶちゅっと一発! とルイズは平民の様な伝法な声で自分を励ます自分の声を聞いていた。心の中の鼓膜が盛大に揺れる。それを、絞り粕の様に残っていたルイズの理性が留めた。 いくらなんでも眠っている殿方の唇を奪うなど、婦人に夜這いを掛ける殿方よりも、よほど卑しくはしたないではないか、と誇り高いトリステイン貴族でもとりわけ格式も誇りも高いヴァリエール家に生まれたルイズの気高さが、反攻の狼煙を上げたのだ。 『でもこの唇に、キ、キスできるのよ?』 はう、と声を上げてルイズは自分の小ぶりな胸を押さえて背を逸らした。残り数センチで重なった唇は、遠く離れる。反攻の狼煙は一瞬で踏み潰された。 重なる唇。触れ合う唇。融け合う唇。 私と、この青年の、唇が、こう、ちゅう、とくくく、くっつく!? かは、と息を吐いてルイズは自分の体を抱きしめた。やばい、非常にやばい。このまま心臓の鼓動が激しくなりすぎて破裂しそうだ。 ルイズはそのまま燃え上がりそうなほど過熱してゆく体温を感じていた。年相応に豊かなルイズの想像力が、重なり合う二つの唇を思い描いて脳の許容量を突破し、ルイズの理性を粉微塵にした。 『もう、悩んでないでぶちゅっといっちゃえば? べ、別に私だって好きでこんなはしたない真似するんじゃないわ。だ、だって使い魔を呼び出せなきゃ進級できないし、そしたらお父様やお母さまに恥をかかせることにもなるし。 ……ね、だからキスするのは仕方のないことなのよ。し、し、仕方なくああ、貴方とキスするんだから、そこの所を誤解しないでよね! 仕方なくよ、仕方なく何だから!』 と、この上ない至福の笑みを浮かべて契約の呪文を唱える。一秒が数十年にも感じられる中、呪文を唱え終えたルイズはすう、と息を吸った。なだらかな丘のラインを描く胸がかすかに膨らむ。 お父様、お母様、ルイズは女になります―― 「いざあああああああああ!!!!!!」 と、豪胆な戦国武将さながらに反らしていた背を勢いよく振りかぶった。割とアレな子らしい。アレとはなんぞや? と言われた、まあ、頭のネジの締め方が緩いとか、数本外れているとか、そーいう意味でだ。 そんな時、気迫が何らかの獣の形を取って咆哮を挙げている姿を幻視するほどのルイズが、どん、と背中を押された。 へ? とルイズがぽかん、とする間もなかった。コルベールに頼まれてDの世話をしにきたメイドがルイズの背を押した張本人だった。 怪我人でも摂れるようにと軽めの食事を乗せた銀盆を手にやって来たのだが、ベッドの中の眠り姫ならぬ眠り吸血鬼ハンターに心奪われ、夢遊病者の様に歩み、ルイズと激突したらしかった。 そして自分のタイミングを逸したルイズは、え、まだ心の準備が、と今さらな事を呟きながらD目掛けて落下し、やがて ぶちゅうううう という音がした。 Dが目を覚ましたのは、そのぶちゅう、という乙女のロマンもへったくれもないキスをルイズがかました直後である。 左手に刻まれる使い魔のルーンの熱と、痛みが、暗黒の淵に落ちていたDの意識を浮上させたのだ。 とうのルイズはもっと、もっとこうロマンと言うかムードのあるキスがああああああ、となまじキスが成功した所為で、現実のキスとの落差にショックを隠しきれず頭を抱えていた。 一方で、ルイズに望まぬ形でのキスを行わせた張本人たるメイドは、目の前で行われた美青年とルイズのキスの光景に、気を失って保健室の床に伸びていた。 ま、無理もない。この世ならぬ美とこの世の範疇に収まる美の接触を目の当たりにした事は、メイドの少女にとって直視に耐えうるレベルを超えた現象だったのである。 もはや兵器と呼んでも差し支えないのではないかと言う、冗談じみたDの美貌であった。頭を抱えてうんうん唸るルイズは、やがてDの視線に気づきはっと顔をあげ、Dの視線とルイズの瞳が交差した。 ひゃん、とルイズの喉の奥から仔猫の様な泣き声が一つ漏れて、腰砕けになる。かろうじて椅子から落ちなかったのは幸運といえただろう。 開かれたDの瞳に宿る感情を読み取る事は、どれだけ人生経験の豊かなものでも不可能だろう。およそ人間とは様々な意味で縁の遠い青年なのだ。その時の流れを忘れた堅牢な肉体も、その氷と鋼鉄でできた精神も。 Dはルイズの様子に注意を払うでもなく無造作に上半身を起こし、枕元に置かれていた旅人帽とロングコート、長剣を身につける。それから、至福の笑みを浮かべたまま器用に気絶しているルイズを見た。 床で伸びている黒髪のメイドにはそれこそ一瞥をくれる事もなく、ルイズの額へとDは左手を伸ばした。その左掌の表面がもごもごと波打つや、小さな老人の顔が浮かび上がったではないか。 皺と見間違えてしまうような、糸のように細い眼。米粒を植えた様に小さな歯。こんもりと盛り上がった鉤鼻。驚くほど年を取った老人の人面疽であった。この青年は自らの左手に独立した意思を持った老人を宿しているのだ。 表に出た老人の顔が口を開いた。 「やれやれ、九死に一生かと思えばとんでもない所に来てしまったのう。お前も気付いとるだろうが、ここは“辺境”区ではないかもしれんぞ」 答える声はなく、Dの左手はルイズの額に触れて、老人の唇から目に見えぬ何かがルイズの体内へと流れ込んだ。まるで氷水を直接頭蓋骨に流し込まれたような冷たい感触に、ルイズの意識が急速に覚醒した。 はっと眼を開き、自分の額から離れて行くDの左手に、皺の集合体の様な老人の顔が浮かんでいるように見え、驚きに目を見張った。老人の顔は、ひどく意地悪げに笑っていたのだ。 「あ、あの」 「ここはどこだ?」 こちらの問いの答えしか聞かぬと冷たく告げるDの声に、ルイズの蕩けていた心が強張った。目の前の青年が、美しいだけの人間ではないと悟ったからだ。不用意な言葉の一つが、自分の首を刎ねる理由になる。 それほどの、抜き身の刃と例えるも生温い心根の主なのだと悟った。美貌に囚われた心は、今や眼前の青年が死の塊なのだと知り恐怖に怯えた。 「ここは、トリステイン魔法学院よ」 これほど落ち着いた声を出せた事が、ルイズには不思議だった。心当たりがなかったのか、二秒ほど間をおいてDが質問を重ねた。 「ほかの地名は?」 「……ハルケギニア大陸、トリステイン、ゲルマニア、ガリア、アルビオン、ロマリア。主だった国や地方の名前だけど……」 「おれがここにいる理由は?」 来た、とルイズは思った。自分が目の前の青年に殺されるとしたら、コレだろうと覚悟していた。 ルイズは何が嬉しくて使い魔の契約で命の覚悟をしなければならないのかと、自らの不運を呪ったが、うまく行けばこの超絶美青年が使い魔である。 着替えさせて、と命じるルイズ。返事はないがもくもくとルイズの服を脱がして新しい服を身につけさせるD。 食事よ、と食堂に来たルイズの為に椅子を引き、腰かけたルイズにうやうやしく給仕をするD。 寝るわ、とととと、特別に私のベッドで寝てもいいわ。勘違いしないでね、藁を敷いた床で眠らせるのがちょっと可哀想だから、特別なんだからね! 普通の貴族だったら、こ、こんなこと許してくれないのよ。 私の優しさに感謝してよね、だだ、だから、ほら、早く入んなさいってば! いいこと、同じベッドで寝てもいいけど、指一本でも、私に触ったらダメなんだから! そういうのは結婚してから、結婚しても、三ヶ月はダメなんだから! ……で、でもどうしてもって言うんなら、ちょっとだけ許してあげない事もない事もないのよ? ど、どうしてもって言うならよ! ちょ、さ触ったらダメって、始祖ブリミルも、お父様もお母様もお許しに、や、ご、強引なんだから……あ、あぁ…………。 でへへ、とルイズはにやけた唇の端から涎を垂らしていた。何が引き金になって首をはねられるか分からないこの状況で、かような妄想に浸れる辺り、やはりルイズはかなりアレな子であった。可哀想な意味で。 そのルイズの様子を九割呆れ、一割感心した様子で眺めていた左手が感想を零した。 「お前を前にして、なんというか、度胸のあるガキじゃな」 「…………」 ルイズのようなタイプは珍しいのか、Dは沈黙していた。毒気を抜かれたか、肌の内側に滞留していた鬼気を小さなものに変えていた。それでもルイズか周囲に敵意を感じ取れば、レーザーよりも早いと謳われた抜き打ちが放たれるのは間違いない。 二人(?)の痛いモノを見る視線に気づいたのか、ルイズは頬を恥ずかしさで赤く染めて、もじもじと床の一点を見つめた。そうしているだけなら神がかった可愛らしさなのだが、常軌を逸した妄想に浸った直後の姿なので魅力も万分の一であった。 それから、流石に下手をしたら自分が殺されかねない状況を思い出したのか、若干手遅れな気もするシリアスな顔をした。 「少し長い話になるけど、いいかしら?」 Dは黙って頷き、先を促した。意を決したルイズの唇が開く。淡い桜色に染めた珊瑚細工の様な唇は、死を覚悟する事で一層美しさを増していた。 「私、貴方使イ魔呼ンダ。私、貴方ノ主人」 びびって片言だった。しかも省きも省いたりな内容だ。ルイズ、ここ一番で空気の読めない子であった。 だってホントの事言ったらどうなるか分からないんだもん、怖いんだもん、女の子だもん、とルイズは心の中でマジ泣きしていた。 「短いわい」 「なに、その声?」 自分の口調は棚に上げて、ルイズは聞こえてきた老人の声に眉を寄せる。若者の張りの中に鋼の響きと錆を孕んでいたDの声とは、聞き間違えようの無い声である。これは無論Dの左手に宿る老人だ。 ルイズの疑惑に答えはせず、今度は影を帯びた青年の風貌に相応しい声がルイズの心臓を射抜いた。 「きちんと答えろ」 「ひう、は、はい。実は……」 ルイズは一言ごとに自分が死刑台への階段を踏んでいるようで、まるで生きた心地がしなかった。かといって下手に誤魔化しを口にしようものなら、その場で体を真っ二つにされかねないのだから、選択肢など元からない。 ルイズは、はやくもこの使い魔を召喚した事を後悔しつつあった。 ――あ、なんか胃に穴が開きそう。 なんとか、ルイズがDを召喚した事実を伝え終えたとき、 ルイズは自分の髪が全部白髪になっているではないかと疑ったほどだ。 Dは開口一番、 「戻る方法は?」 「わ、わからないわ。普通、人間が呼び出されることなんてないから、そのまま使い魔として扱うし、使い魔の契約は使い魔が死なない限りは解除されないのよ」 「では、契約者が死んだ時は?」 「そ、それは」 見る見るうちにルイズの血色のよい顔から抜けて行く血の気。瞬く間に顔色を死人の色へと変えたルイズは、目の前の青年が必要とあれば殺す事も厭わないのだと、悟った。 ――あ、私死んだ。これは殺されるわ。 死への恐怖に涙をぽろぽろ流し始めてしゃくりあげるルイズを見てから、Dは無言で立ち上がった。びくり、とルイズの小柄な体が跳ねた。えう、と嗚咽を漏らし、せめて痛くないと良いな、優しくしてくれるかしら? と思いながら眼を閉じた。 何にも出来ずに終わる。ずっと馬鹿にされて、ずっと憐れまれて、ずっと悲しませて、ずっと失望させ続けてきた人生が、今、自分が呼び出した使い魔によって幕を引く。それはそれで、ゼロの自分には相応しいと思えた。 ぎゅ~と眉を寄せて瞼を閉じていたルイズに、Dの声が届く。 「この学院の責任者の所へ案内してもらおう」 「……え? あ、あの私を殺……」 「早くしろ」 「はは、はい!」 背に鉄筋でも通したみたいにあわあわと立ち上がり、ルイズはDを魔法学院の最高責任者オールド・オスマンの所へ案内すべく動き始めた。生命が助かった安堵も、新たな緊張に即刻引き締められ、ちっとも気が楽にならない。 ルイズがきびきびとドアを開けて歩きはじめてからその後を追うDに、左手からこんな声が聞こえてきた。 「お前にしてはずいぶん優しい反応じゃな。左手の甲に浮かんでいるルーンから精神干渉がさっきから来とるが、この程度で靡くようなやわな心でもあるまいに」 寝ている間にルイズによって交わされた契約によって刻まれた左手のルーン。一般に人間との意思疎通が難しい幻獣や動物の類を、主人に従順に従う存在に変える為に、使い魔のルーンには使い魔の知能向上のほかに親しみや忠誠心を抱かせる効能もある。 最終的には思考が主人と同一化するという、ある種と残酷極まりない洗脳効果もあるのだが、Dも過去に都市の住人全員を千分の一秒で発狂死させる精神攻撃を破った男、そう簡単に心は操れぬようだ。 「ずいぶん遠くに招かれたようなのでな」 「衣食住と情報源の確保か。しかし、青色と紅色の親子月か。貴族の手が伸びた外宇宙にもこんな衛星の記録はなかったわい。となるとさらに外側の宇宙か、別次元か。やれやれ、厄介なのは毎度の事じゃが、今回はいつにもまして面倒じゃわい」 Dの視線は、廊下の窓から覗く蒼と紅の二つの月を見つめていた。 そして学院長室にルイズとDは到着し、まだ執務中だったオールド・オスマンに会う事が出来た。 オールド・オスマンは齢三百歳を超えるトリステイン最強のメイジ、と謳われる事もある大御所なのだが、入学式の時にフライを唱え損ねて死に掛けたのを目の当たりにした事があるから、ルイズはさほど尊敬できずにいる。 ノックの音から間もなくオスマンから入室の許可がお降りた。夜中にアポイントを取らずの急な訪問であったが、オスマンの返答は穏やかな声だったので、ルイズは少し安堵した。 扉を開いた向こうには、白く変わった髪とひげを長く伸ばし、ゆったりとしたローブに身を包んだオールド・オスマンが椅子に腰かけて待っていた。動かしていた羽根ペンを止めて、入室者を見つめる。 「このような時間になんの様じゃね? ミス・ヴァリエールと…………」 ルイズの傍らに立つDを見て、机の上でクッキーをかじっていたネズミの使い魔ソートモグニル共々ぽかん、と口を開けて固まる。 自分の使い魔に対する反応に、ルイズは奇妙な優越感を感じてかすかに口元を緩めた。自分も同じ目に遭っていたのだが、それが他人も同様と知って嬉しいらしい。 たっぷりと一分かけてオスマンが現実世界に復帰してから、Dが一歩前に出て口を開いた。オスマンも、Dの体からかすかに立ち上る尋常ならざる気配を前に、二度と我を失う様子はなく、生ける伝説に相応しい威厳でDと対峙した。 そうそうに用件を口にし、使い魔の契約の解除とも元いた場所への返還手段を訪ねた。オスマンは長いひげをしごきながら黙ってDの話を聞いていた。使い魔の契約を解除してくれ、などと使い魔の側から言われたのは初めての事だろう。 「おれはある男を捜さねばならん」 「ふう、む。しかし君には悪いが使い魔を帰す魔法はわしの知る限り存在せんのじゃよ。君の事情とやらもなにかただ事ではないと分かるが、帰してやろうにも帰し方が分からぬのじゃ。 どうじゃね? ミス・ヴァリエールの使い魔が不満と言うなら、護衛の傭兵と言う触れ込みでしばらく暮らしてみては? 住めば都と言うてなあ、君ほど美しければ嫁さんもいくらでも……」 と、そこまで諭すように口を開いていたオスマンの口を止めたのは、Dの気配に死神の携える鎌を思わせる冷酷なモノが混じっていたからだ。これまでの人生で多くの大剣をしてきたオスマンからしても、一瞬死を覚悟せざるをえぬ鬼気。 それを止めたのは二人のやり取りを見守っていたルイズだった。 「やめて! 貴方を呼んだのは私よ。私が召喚した所為で貴方に迷惑をかけたというのなら、私が償うわ。ここには大陸中の魔法関係の書物を集めた図書室もあるから、情報もたくさんあるわ。 貴方の食事とかの世話も私の責任で見ます。貴方を元の場所に帰す方法も探します。怒りが収まらないというのなら私を斬っても構わない。だから!」 一人の少女の懇願をどう受け取ったか、Dはしばし自分をまっすぐ見つめるルイズを見返していた。左手のルーンがかすかに輝いていたが、それはDの心に影響を及ぼす事がないのは、すでに明かされている。 「口にしたからには守ってもらうぞ」 「はい。貴族の誇りに掛けて」 ルイズの口にした貴族と言う言葉に、Dはかすかに苦笑めいた影を這わせたが、それをルイズやオスマンに悟らせる間もなく消し去り、踵を返した。 どうやら矛を収めてくれたらしい、とルイズとオスマンが気づいたのは、Dが院長室の扉に手を駆けた時だった。 「ま、待って。ええっと……」 「Dだ」 「あ、ディ、D? Dが貴方の名前なの?」 「そうなるな」 ようやく使い魔都の名前を知る事が出来た事の喜びに弾むルイズの声が、二人の主従共々消えてから、オスマンは深く長い溜息をそろそろと吐き出した。一気に何十歳分も年を取ったような気分であった。 「なんとまあ、ミス・ヴァリエールはとんでもないものを召喚したものじゃ。まだこちらの言い分を聞いてくれるから救いが無いわけではないが。こりゃ『転校生』を呼ぶ事も視野に入れた方がいいかの?」 オールド・オスマンの呟きは知らず、Dとルイズは再びルイズの部屋に戻り、緊張に満たされた世界で対峙していた。 ルイズはベッドの上に、Dは窓際に背を預けて腕を組み、黙って目を閉ざしている。部屋に戻って以来言葉の一つもない。シーツをぎゅっと握り締めてもじもじしていたルイズが、何度目になるか分からない覚悟を決めて口を開いた。 「あ、あの」 「……」 「えっと、D? あのね、一応使い魔の役割を説明しようとおもんだけど」 「……」 「い、いい? まず主人の目となり耳となって、視覚や聴覚を共有するのだけど」 Dの首がほんとうにかすかに横に振られた。まあ、確かに同じものは見えていないので、ルイズも同意する。今の所Dの導火線に着火するような真似はしないで済んでいるようだ。早く終わらせないと私の神経が持たない、と判断したルイズは一気にまくし立てた。 「あとは秘薬なんかを探してきたりするの。ポーションやマジックアイテムの作成の時に必要だから。それと特にこれが重要なんだけど主人の身を守る事、これ、これ大切よ」 「世話になる間は君の身は守ろう」 「ほ、ほんと?」 「嘘を言っても仕方あるまい。だが、おれを帰す魔法の調査は約束通り行ってもらおう」 「は、はい!」 「もう眠れ。明日は授業なのだろう?」 「そう、だけど」 「なんだ?」 そんなまともな事を言われるとは思わなかった、と口にする勇気はルイズにはなかった。ぶんぶんと壊れた人形みたいに何度も首を縦に振る。 雰囲気はやたらと怖いけど、わりとまとも? とルイズは一縷の希望に縋る様な感想を抱いた。そうだったらいいなーというかそうであって欲しいなー、と痛切に願う。 ルイズはもう色々と疲れすぎて着替えるのが面倒になってしまい、そのままベッドに倒れて眠ってしまった。 Dは、その様子を黙って見守っていた。 前ページ次ページゼロの魔王伝
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82 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/12/17(水) 03 19 34.65 ID gVHuJx8s0 セイ「緩くなったポリキャップはこうして瞬間接着剤を流し込んだ後、動かすとまたキツくなるんだよ」 シンタ「わーい!ありがとうセイ兄ちゃん」 セイ「どういたしまして」 騎馬王丸「東方不敗、将棋の決着はガンプラバトルでつけようではないか」 東方不敗「面白い!このマントの表面にヤスリをつけたワシのマスターガンダムに勝てるかな!?」 ザコ「ザコー!大変ザコー!!」 パーラ「おーお帰り。お使い終わったか?釣りは駄賃でいいぞ」 ザコ「それどころじゃないザコ!セイ君はいるザコか!?」 セイ「どうしたの?」 ザコ「ザコは…ザコは見てしまったザコよ!!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ザコ「後はカロッゾベーカリーで食パン買うだけザコね」テクテク シャア「………」 ザコ(あ、シャア社長ザコ。珍しいザコ、こんな商店街にいるなんて。 しかもサングラスでアタッシュケースを持ってるザコ。人目を気にしてるザコか?) カランコロン ザコ(あれは……コウサカさん家のお店に入っていったザコ。でも変ザコね? お店のプレートはclosedになってるザコよ。……こっそり外から店内を伺ってみるザコ) シャア「―――」ミブリテブリ チナパパ「………」ムムム… チナ「――…」オロオロ シャア「――!」ニヤリ ザコ(シャア社長がアタッシュケースを開けたザコ!中は金塊ザコ!!) チナパパ「―――!!」ブンブン シャア「………」スッ… チナ「!?」 ザコ(コウサカさんが眉間に皺を寄せて首を振ったと思ったら、シャア社長がチナちゃんの肩を掴んで自分の方に引き寄せたザコ!?) シャア「―――」ニヤッ チナ「!!」サッ シャア「………」フッ チナパパ「―――!!」 シャア「―――」 チナパパ「……」コクン シャア「―――」ニヤリ ザコ(シャア社長が強引にチナちゃんに視線を合わせると、チナちゃんは慌てて視線を逸らしたザコ! それでもシャア社長の余裕のある表情は崩れないザコ!コウサカさんが社長に対して何かいってるけど シャア社長は言い聞かせるように滔々と喋ると、チナパパも最後は納得したザコ!?! そしてシャア社長は勝ち誇ったようにコウサカさんと握手をしたザコ!!!) シャア「―――」サッ チナパパ「………」 シャア「………」フッ チナ「………」 シャア「―――」ササヤキ チナ「――!!」プルプル ザコ(コウサカさんがアタッシュケースを受け取ったザコ。そしてシャア社長は呆然とするチナちゃんの髪をかき上げると 耳に唇を近づけて何事か囁いたザコ!!するとチナちゃんは震えて泣き出したザコ!) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 83 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/12/17(水) 03 23 48.20 ID gVHuJx8s0 ザコ「その後シャア社長は満足げにチナちゃんをみると、颯爽とお店を出たザコ……」 パーラ「おい、それって……」 東方不敗「シンタ、クム、向こうでワシと一緒に遊んでこようか。風雲再起もおるぞ」 シンタ「風ちゃんもいるの!?」 クム「わーい!!」 パーラ「………」 騎馬王丸「つまりこういうことだな。男が営む店は経営難で金に困っていた。 そして男の娘に目を付けた金持ちの男が現れ、娘を売れと言ってきた。 男は最初は反対したが、金持ちに説き伏せられ娘を売った。哀れな娘は涙を濡らすばかり……」 パーラ「き、騎馬王丸!!」 騎馬王丸「そうとしか考えらえまい。よくある話よ」 ザコ「ザコ!?シャ、シャア社長はロリコンだけどそこまで人として落ちぶれてないザコ!多分!きっと!ザコ!!!」 パーラ「ど、ど、どうすりゃいいんだ……!?と、とりあえず男湯にいってグラハム呼んでくればいいのか!?」 ザコ「コマンダー様ザコ!コマンダー様ならきっと事情を知っている筈ザコ!!」 騎馬王丸「ところでガンプラに長けたぷにぷにがなにやら血相を変えて走っていったが、あやつニッパーを忘れていったぞ?」 ザコ「ああーー!?セイがいないザコ!!」 パーラ「もぉぉ!!こんなときに限ってシンがいないんだから!!!バイト代カットすんぞ!!」 タッタッタ! カランカラン!! セイ「委員長!!」 チナパパ「おや、ガンダムさん家の……」 セイ「委員長のお父さん、委員長は!?」 チナパパ「チナなら家にはいないよ」 セイ「そんな……どうして!!どうして僕に相談してくれなかったんですか!?」 チナパパ「ええ!?いや、そんな……家のことだし、君に相談するようなことじゃ……」 セイ「……これ、使ってください」 チナパパ「え?通帳?」 セイ「900万ギラ入っています」 チナパパ「ぶーーーーーー!?!!?!!?」 セイ「僕がガンプラバトルやビルド教室で稼いだお金です」 チナパパ「す、すごいね……い、いや、でも受け取る理由がないよ」 セイ「シャアさんのお金は受け取ったのに!!」 チナパパ「どこでそれを……」 セイ「今はそんなことどうでもいいじゃないですか!!」 チナパパ「でもね、あれはチナが稼いだお金だよ」 セイ「そんな言い方って……お父さんはそれでいいんですか!!」 チナパパ「……悩んだよ。でもチナのためでもある」 セイ「そんな……そんな大人の言い方……歯食いしばれ!修正してやるーー!!」 チナパパ「な、なにをするんだセイk…あべし!?」 カランカラン チナ「ただいm…イオリ君!?パパ!?」 セイ「委員長!シャアのところになんていっちゃダメだ!!」 チナ「ど、どうしてそれを……。でもイオリ君、私もう社長と約束しちゃったの」 セイ「そんな約束、無理やりじゃないか!!」 チナ「確かに強引だったけど……でも社長はフランスに私を連れて行ってくれるって……」 セイ「そんな……そんなものに惹かれたの!?」 チナ「そんなものって……私にとっては夢なの!」 セイ「フランスぐらい僕が連れて行ってあげたのに……ううぅ……」 チナ「イオリ君にそこまでして貰えないし……」 セイ「シャアならいいって言うの!?委員長のわからずや!!」 ダッ!! チナ「イオリ君?!え、えぇっと……パパ、おつかいの人参ここにおいておくから!」 84 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/12/17(水) 03 26 23.94 ID gVHuJx8s0 カテジナ「遅いぞクロノクル!」 クロノクル「すまない、ザンスカールのタイヤ戦艦の冬タイヤ交換があってな……」 カテジナ「ふん!言い訳をする男は嫌いだ!」 クロノクル「寒い思いをさせたな」 カテジナ「別に…」 クロノクル「その赤い手を見ればわかる。本当に待たせてすまない」 カテジナ「………」 クロノクル「まだ映画には時間がある。そこの喫茶店でカテジナの好きなダージリンで温まろう。もちろんアップルパイもつけてな?」 カテジナ「……ふん」 ダン!ダン!ダンッ!! カテノクル「「!?!」」ビクッ!? ゼハート「シングルベール…シングルベール……」 マオ「商店街のイルミネーションを見ると、無償に壁を殴りたくなりまへん?」 クロノクル「な、なんだお前達は!?」 ゼハート「お前達……私達が見えるのか?」 マオ「あんさんらみたいなリア充にはワイらみたいな地べたを這いずり回る喪男なんて見えへんのかと思いましたわ……」 カテジナ「ク、クロノクル、はやく行こう!コイツら危ないよ!!」 クロノクル(カテジナが危険を感じる連中だと……!?) ゼハート「ははははははは……」 マオ「ひひひひひひひ……」 < 委員長のわからずや!! マオ「あれ?どこかで聞いたような声が……」 ゼハート「私のXラウンダー能力がいまNTRを食らった惨めな男を感知した……追いかけるぞ」 マオ「まさか……聞き間違えや!セイはんに限って……アンタは…アンタはリア充やなかったんか!!」 セイ「………」ブツブツ マオ「ああ、セイはんが公園の隅でガンダム兄弟伝統の体育座りを!?」 ゼハート「握り締めたドムの頭を齧っているのか……一体何が……」 ルナ「辛い……話になるわよ」 マオ「ルナマリアはん!?」 ルナ「私、聞いちゃったのよ」 ゼハート「何をだ?」 ルナ「サテリコンでシンが来るのを張り込んでいたらね、ザコが慌ててお使いから帰ってきて……かくかくしかじか」 ゼハート「なんだと!?」 ルナ「それでアホ毛をセイ君に貼り付けて行く末を盗ちょ…見守っていたんだけど、どうやら……もぐもぐうまうま」 マオ「まさか……あの二人に限って……」 ゼハート「ガンダム兄弟のリア充っぷりは私だって知っている。しかしそういう事情ならばな」 ルナ「ゼハート、どこへいくの?まさかセイ君を慰めるつもり!?」 マオ「ゼハートはん!今のセイはんに半端な慰めは危険なんです!」 ゼハート「………」 テクテク 85 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/12/17(水) 03 28 59.31 ID gVHuJx8s0 ゼハート「この時期に独り身であることの辛さは私だって知っている」 セイ「………」 ゼハート「クリスマスというものが、もはやすでに恋人達がイチャイチャする行事になっていることも…… だがそれを認めてしまったら、今までのクリスマスで死んで逝った者達はどうなる? 彼らが独りですごしたクリスマスはどうなる?それを無為にすることはできない…… 48時間もの間、紡がれ、積み重なっている恋人達への思いを、私は拳に込めなければならない。 ……彼らの歴史の中の、消えていくだけの孤独のベルを、ただ僅かばかりの嫉妬を、私は刻み、叶えたかったのだ」 ルナ「それはっ、人の負いきれる重さじゃないわ!」 ゼハート「それが私の望んだ壁叩き……」 マオ「恋人が作れなかった者たちのためにさらに壁を叩いてっ!それでなんの未来が得られるんやっ!!」 ゼハート「私は……壁を代償にしてでしか、慰めを与えられない……」 セイ「それは違う……」 ゼハート「なに?」 セイ「確かに僕たちは道をたがえたかも知れない……けど僕たちの過ごしてきた時間が色褪せて消え去ったりはしない…… 傷つけあったことも、わかりあえずすれ違ったことも、一緒に泣いて……そして笑いあったことも……」 ゼハート「あぁっ……あぁぁっ……」ガクガク ゼハート(これが、一度でも彼女が居た者と、生まれてからずっと独りの者の違いっ……!!)ガクッ マオ「ゼハァァァトォォォォはぁぁぁぁぁんっ!!」 ルナ「ゼハート……貴方はあの日見た遠い星の光よ……」 ザコ「ああ、いたいたザコ!!」 パーラ「おーい、セイ!」 ザコ「チナちゃんにも連絡するザコ」 パーラ「あのさ、なんか勘違いだったみたいだぜ」 セイ「勘違い?」 パーラ「コマンダーサザビーから聞いたところによると、ネオジオン社がクリスマスに向けて新しいアッガイ出すんだって。トナッガイっていう。 んでチナの作ったベアッガイⅢのことを聞いたシャアのおっさんが、チナをぜひアドバイザーにって商談にきたらしいぜ?」 セイ「商談?」 パーラ「さすがに大金すぎるってチナの親父さんも受け取れないってビビッたんだって。チナもチナで男に免疫ないから頭真っ白になってたってさ。 それでもシャアのおっさんはあれでも敏腕だからな。うまく言いくるめて、話纏めて、お金は保護者である親父さんが預かることにして アドバイザー料ってだけじゃなく、チナの絵の才能に投資するって名目でさ、将来留学先と資金にしてってコトでお金渡したんだってさ」 ザコ「チナちゃん、フランスで絵の勉強するのが夢ザコね。シャア社長はセレブザコから、そっち方面にもコネがあるし 社長本人もいくつものコンクールの審査員やってるぐらいザコ。その社長直々に留学を薦められて……つまり才能が認められて、チナちゃん思わず泣いちゃったザコ」 セイ「そ…そうだったの!?はぁ~……」ヘナヘナ パーラ「まったく、ザコがそそっかしいせいで!」 ザコ「ザコだけのせいにするなんて酷いザコ!」 セイ「はは……いいよ、もう誰かのせいとか。あ!どうしよう……委員長のお父さん殴っちゃった……」 チナ「イオリ君!!」ハァハァ セイ「委員長!!」 チナ「あ、あのね……イオリ君……」 セイ「な、なに?」 チナ「フランスに連れて行ってくれるって……」 セイ「あ、いや、あれは……」 チナ「私の夢のためにイオリ君に負担かけたくないから……イオリ君はイオリ君の夢を頑張ってほしいから!」 セイ「委員長……そうだね。それにフランスでもガンプラは人気だから、きっと僕もいつかフランスに行くときがあると思うんだ」 チナ「そ、そうよね。も、もしそうなったら……私に会いに来てくれる?」 セイ「もちろんだよ!一番最初に会いに行くよ!」 チナ「い、一番……えへへ……」ニヘラ セイ「あ……いや、その……あはは……」ポリポリ ザコ「めでたしめでたしザコ」 パーラ「ったく、ノロケてくれるよな。まだクリスマス前だってのに」 ゼハート「……マオ」 マオ「……はい」 ダン! ダン! ダンッ!!
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登録日:2019/12/11 Wed 21 32 30 更新日:2024/06/28 Fri 15 51 50NEW! 所要時間:約 15 分で読めます ▽タグ一覧 2019年 Next Level Games Nintendo Switch お化け屋敷 オバキューム オバケ キングテレサ ゲーム ハロウィン ホテル ホラー マリオ リゾートホテル ルイージ ルイージマンション ルイージマンション3 三度目の掃除機 任天堂 ルイージ、三度目の掃除機 『ルイージマンション3』(Luigi's Mansion 3)とは、2019年10月31日に発売されたNintendo Switch専用ソフト。 開発は前作と同じNext Level Games。 【概要】 【ストーリー】 【登場人物】 【オヤ・マー博士の発明品】 【アイテム】 【オバケ達】【ザコオバケ】 【ボスオバケ】 【ホテルラストリゾート】 【概要】 「ルイージマンションシリーズ」の第3弾。 プレイヤーはルイージを操作し、ホテル『ラストリゾート』を探索し、オバキュームでオバケを捕獲しながら進んでいくアクションゲーム。 3DS版『ルイージマンション』で先行登場したグーイージを切り替えながら操作していく。おすそわけプレイをすることで2人同時プレイが可能。 ストーリーモードの他、前作の協力マルチプレイモード「テラータワー」が最大8人でプレイ可能となり、ルイージチームとグーイージチームに分かれて対戦する対戦パーティーゲーム「プレイランド」が追加されている。 【ストーリー】 ある日、ルイージのもとにホテルの一通の招待状が届く。 ルイージは、マリオやピーチ姫を誘い、ホテルへと向かう。 ホテルにたどり着き、部屋でうたた寝をしていたルイージだったが、ピーチ姫の悲鳴で目を覚ます。 そこでルイージが見たものは、すっかり雰囲気を変えたホテルと絵に閉じ込められた仲間たちだった。 実はこの招待状はキングテレサの大ファンであるホテルオーナー「パウダネス・コナー」の罠だった。 こうして臆病なルイージは三度、オバキュームを手に一夜の大冒険を繰り広げるのだった。 【登場人物】 ルイージ おなじみ本シリーズの主人公である緑の人気者。 臆病な性格は相変わらずだが、マリオ達を助けるために勇気を奮い立たせる。 ベッドに入った瞬間に即座に眠れる特技は今もなお健在。 オバ犬 前作から登場したオバケの犬。ルイージに懐き、そのままペットとなった。 ルイージ大好きな忠犬だが、基本的に気まぐれな性格で主人の不安をよそにホテル内を自由気ままに歩き回っている。 ルイージに行き先を教えてくれたり、倒れた時に黄金のホネで蘇生してくれたりと頼りになる犬である。 犬種はオヤ・マー曰く「ホーンテン・レポルター」 オヤ・マー博士 シリーズおなじみのオバケ研究家にして自称天才発明家。 パウダネスからホテルへの招待をされて「キングテレサを見せてくれればオバケコレクションを全て譲る」という嘘にだまされ、絵にされていた所をルイージに救出された。 自分本位かつ強引な性格は相変わらずだが、自身の発明品でルイージをサポートする。 グーイージ オヤ・マー博士最新の発明品である、ルイージそっくりのスライム状の生命体。 3DS版の初代ルイージマンションでは動作テストという体で先行登場した。 オバケエネルギーとルノマングリーニーコーヒーを掛け合わせて出来た緑のジェル状の物質『グー』 にルイージの生体エネルギーを電気信号として注入することで誕生した。 公式サイトでは誕生までの経歴を見ることができる。とんでもなく濃い設定は必見。 姿や運動能力はルイージのそれと同程度だが、オリジナルと違いオバケにびびることはない。 マリオ ご存じルイージの双子の兄。 ルイージやピーチ姫と共に高級ホテルへと訪れるが、またしても絵画に閉じ込められる。 終盤、臆病なルイージとは対照的に軽やかにホテル最上階へと上っていく様は正にヒーロー。 また、彼の部屋はピザがバスルームにまであるという意外と食いしん坊な一面を見せた。 ピーチ姫 ご存じキノコ王国のお姫様。当シリーズでは初登場(*1)。 キノピオをお供に高級ホテルへと向かうが、こちらも絵画に閉じ込められる。 キノピオの扱いは荒い。 キノピオ 前回では博士の助手だったが、今回はピーチ姫のお供として3人登場する。 マリオやピーチ同様絵画に閉じ込められているので、見つけ次第救出してあげよう。 【オヤ・マー博士の発明品】 オバキューム ルイージの代名詞ともいえるオバケ退治用の赤い掃除機。 2の後に再び改良されたようで、本作では遂にサイクロン式へと進化した。 ちなみに本作発表前の大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIALからこのデザインで登場していた。 吸い込む オバキュームの基本操作。 オバケどころか家具やお金も吸い込める。 吸引力の変わらないただ一つのオバキューム はき出す 物を押したり吹き飛ばしたりできる。 ノズルに吸い付けた物を発射させる事も可能。 ストロボ ライトから強力な光を発する。オバケを驚かせたり仕掛けを作動させることができる。 チャージすると範囲が広がる。 ダークライト 見えないものを映し出す他、絵になったものを実体化させるすごいライト。 今作ではオーバーヒートがなく、半永久的に照らせるように改良された。 姿を消しているオバケにも有効。 スラム 今作から追加された新アクションその1。 オバケを吸い込みながら床に叩きつけることで大ダメージを与えられる。 オバケに物理攻撃が効くの?とか言ってはいけない。 他のオバケに向けて叩きつければそのオバケにもダメージを与えることができる。 巻き込んだオバケも実体化するため、うまく立ち回れば素早いオバケ退治が可能。 バースト 今作から追加された新アクションその2。 オバキュームから瞬間的に空気を発射し、勢いよくジャンプする。 オバケや家具などを吹き飛ばせる他、敵の衝撃波を回避する、オバケの武装を外すなど汎用性の高いアクション。 キューバンショット 今作から追加された新アクションその3。 オバキュームから吸盤を発射し、吸盤についたヒモを吸い込むことで家具や扉を破壊できる。 スマブラに先行登場していたので見覚えのある人も多いはず。 グーイージ 今作から追加された新アクションその4。 オバキュームから緑の生命体『グーイージ』が飛び出し、操作することができる。 スライム状のため、形を崩すことなく隙間をくぐったり、鋭いトゲ地帯を通り抜けることができる。 火と水が弱点で触れるとすぐに溶けてしまう上、体力もルイージより低い。 しかし何度でも復活するという荒技でその弱点を補っている。 オバキュームを介してグーイージに意識を乗り移らせるという仕様上、操作中はルイージは眠ってしまうが、瞬時に切り替えることが可能。 また、テレサの周波数に共鳴するらしく、その性質を活用したレーダー的な役目も果たす。 ダブルスラム ルイージとグーイージが二人同時に行うスラム。 一人では動かせない巨大な物も破壊できる。 実は一部のオバケでも可能。その場合は通常の倍のダメージを与えられる。 ハイパーバキューム 今作から追加された新アクションその5。 中盤でオバキュームを改良したことにより得た強化形態で、専用のコンセントにつなぐことで通常では吸い込めない巨大な物さえも吸い尽くす。 バーチャルブー 通称「VB」。見た目はまんまバーチャルボーイ。 今作の通信機で、オヤ・マー博士曰く「商品化されたら大ヒット間違いなし」とのこと。皮肉にも程がある。 やはりというべきかゴーグルのように装着し、やはりというべきか画面は赤と黒の2色で表示される。 性能の方はマップ機能、オヤ・マー博士との通信機能、ラボへの転送装置付きと超スペック。 【アイテム】 エレベーターボタン 抜き取られたエレベーターのボタン。 各フロアのボスオバケを倒すと入手でき、その度に行けるフロアが増えていく。 お金 コイン、お札、金塊、パールの総称。 オヤ・マー博士からアイテムを買う際に使用するのだが、クリア時の所持金でエンディングのランクが変化するため、高ランクを狙う場合は如何に出費を抑えるかがポイントとなる。 宝石 各フロアに6個ずつある。 フロアごとに異なるデザインをしており、集めたものはベースラボのギャラリーから閲覧可能。 全ての宝石を集めると…? 黄金のホネ オヤ・マー博士から購入する金色の骨。 持っていると倒れた時にオバ犬が現れ、復活させてくれる。 お金さえあれば複数本を所持する事も可能。勝てないボスも突破できるかも? テレサマーカー テレサが描かれたカートリッジ。 マップにテレサのいる部屋に印が表示される。 一枚につき一匹のみで、複数いる場合はランダムに表示される。 宝石マーカー 宝石が描かれたカートリッジ。 マップに宝石の位置が表示される。 テレサマーカー同様、一枚につき一個のみ。 【オバケ達】 【ザコオバケ】 ホテルラストリゾートに登場するオバケの軍団。 あのオヤ・マー博士をもってして『危険すぎる』と言わしめる程に凶暴的だが、大半はキングテレサに操られているだけ。 オープニングでは仮面を被りホテルの授業員に変装している。 ラウスト 最も多く登場する青色のオバケ。前作のルノーマに相当する。 体力は低いが、武装したり大量に現れたりと油断できない敵である。 ミニラウスト ミサイズのラウスト。 集団で襲い掛かり、体を回転させて攻撃を行う。 体力は皆無で、ライトを当てて吸うだけでポンポン吸い込める。 サモンラウストによって大量に呼び出される。 ジュエルラウスト 宝石を取り込んだラウスト。 逃げ足が早いからか吸い込みではダメージを与えられない。 スラムを使って体を砕いてしまおう。 ゴールドラウスト 金色に輝くラウスト。 吸い込むと大量のコインや延棒をまき散らす。 一定時間経つと逃げてしまうが、結構長い間部屋にいるので落ち着いて吸い込もう。 アンスト 角張った体が特徴なルブリーに似た怪力オバケ。 その体格や力を活かした突進やプレスを繰り出す。 体が大きすぎるため正面からだとつっかえる。後ろに回り込んで吸い込もう。 ミニアンスト ミニサイズのアンスト。 集団で襲い掛かり、腕を回転させて攻撃を行う。 攻略法はミニラウストと同じ。 サモンアンストによって大量に吐き出される。 ナロスト 細長い黄色のオバケ。 物を投げつけて攻撃をする前作のルハイドのような敵。 たまに投げてくるバナナの皮には注意しよう。 吸い込み中に踏むと転んで吸い込みが中断されてしまう。そのダメージが後々になって響くことも・・・ ナバーナのような厄介な敵でもある。 トリスト 長い腕を持つ紫色のオバケ。前作のルスニクに相当する。 ルイージの背後に忍び寄り不意打ちをしてくる。 その他にも掴みかかってきたり驚かしたりキノピオを攫ったりと多芸な奴。 エリスト 二本の舌を持つオレンジ色のオバケ。 ドアの前に立ち塞がっており、長い舌でルイージを捕まえて攻撃する。 見た目の割に体力は低くダブルスラム一発で倒せる。 テレサ マリオシリーズお馴染みの白いオバケ。 クリアしたフロアに隠れており、全部で15匹いる。 テレサの隠れている部屋はBGMがパイプオルガンの不気味な音楽に変わるため、いつもと雰囲気が違う部屋を見つけたら重点的に調べよう。 全てのテレサを捕まえると…? 【ボスオバケ】 各フロアで待ち構える強敵のオバケ達。 それぞれがストロボに対する対抗策を持っており、吸い込むためには隙を作らなければならない。 倒すとエレベーターボタンが手に入る。立ち位置的には1の絵画オバケに近い。 ガトレー ベルボーイに扮したオバケで最初に戦うボスオバケ。 初訪時は仮面とコートを着込み、フロント業務を行っている。 地下1階のパーキングエリアで荷物整理をしていた際、偶然ルイージと鉢合わせ、戦闘となる。 重い荷物でストロボを防ぎつつ、その荷物を投げつけてくる。 吸い込まれる際に、危うく帽子を残しそうになるものの器用に手だけをオバキュームから出して回収していく。 ミスリー ハウスキーパーに扮するメイドのオバケ。 お客様の荷物には絶対に手を出さないと言っておきながら、オヤ・マーの荷物に興味を示す好奇心旺盛な性格。 5階のゲストルームフロアにて、オヤ・マー博士のカバンを飲み込み逃走。 飲み込んだカバンが引っかかるため普通には吸い込めない。 平らなカバンをこちらも利用してやろう。 ゴロリファット サングラスを掛けた肥満体型の警備員オバケ。3階のショッピングフロアを警備している。 厳つい見た目とは裏腹に小さな物音やビックリ箱にも驚いてしまうほどの神経質。 彼のいる部屋に入ると鉄格子の向こう側に逃げてしまうのでグーイージで追いかけて戦うこととなる。 水鉄砲で狙撃する他、その体型をいかした押しつぶし攻撃をしてくる。ストロボを防ぐサングラスを奪い取ると、慌てて代わりにパーティ用やダンディなサングラスをつけるお茶目な一面も。でもルイージにダメージはないけどね ムッシュテイシェ 2階のアッパーロビーのレストランで料理長を務めるシェフのオバケ。 『料理の命は火力にあり!』をモットーとしており、超火力で黒煙をまき散らしながら料理をしている。 厨房に入ってきたルイージ達が料理の邪魔をしに来たと勘違いし、フライパンを持って襲いかかる・・・のだが、 真の敵はこの後に待ち構えている。 ナルシェスベン 4階のホールフロアでピアノを弾いている音楽家のオバケ。 一見落ち着いた雰囲気に見えるが、名前通りのナルシストで演奏を邪魔されると途端にキレ出す等、前々作のピアン以上にヒステリック。 ラウストを呼び出したり椅子を飛ばしてくる他、後半では自らがピアノに憑依し襲いかかるなど攻撃が多彩。 間違いなく序盤の壁であり、ちょうど操作に慣れてきたころのプレイヤー達を苦しめる。 敗北後は観念して、丁寧な一礼を行い吸い込まれていく。 ホリーボーテ三世 6階のキャッスルフロアに鎮座するキング役のオバケ。 ルイージにエレベーターのボタンを賭けてフロア攻略の挑戦を持ちかけてくる。 彼の元にたどり着くと甲冑を身に纏い、巨大な槍と盾を装備し、ブリキの馬に跨ってルイージに決闘を申し込んでくる。 甲冑の防御は固く、ストロボを完全に防いでしまうものの、 突進攻撃の際に隙が生じるのが弱点。 体力が無くなると剣を地面に刺して抵抗するが、すっぽぬけた剣ごと吸い込まれてしまう。 ニワシー博士 7階のグリーンフロアにいる老人オバケ。 手に持っているジョウロは植物を急成長させる効果があり、フロア内の至る所でルイージたちの行く手を阻む。 また、それによって成長した食人植物を武器にする。 まずは持っている植物を倒すことから始めよう。 敗北時は髭がオバキュームに巻き込まれるも、悪あがきとしてエレベーターボタンを高いところに放り投げてしまう。 ジョーノーズ 8階のスタジオフロアで映画制作をしている監督のオバケ。 新作のカイジュウ映画を撮るつもりだったが、愛用の赤いメガホンを無くしてしまい、意気消沈していた。 メガホンを返すとルイージに気づき戦闘開始…と思いきやルイージにスターとしての素質があると見込んで、強引に映画撮影を始めてしまう。 この時にカイジュウの着ぐるみに憑依したラウストとの戦いとなり、こちらが事実上のボス戦といえる。 よくも悪くも映画が大好きすぎる性格で、撮影のお礼にエレベーターボタンを渡すなど本作唯一の友好的なオバケ。 撮影終了後はフィルムを片手に編集作業へと入るが、この時に吸い込んでしまうことも可能。 …ってか、実績コンプリートのためには嫌でも吸い込む必要がある。 ある程度放置してストーリーを進めると編集が完了し、作品として閲覧することができる。 ホネスキー 9階のミュージアムフロアにいる大柄な原始人のようなオバケ。 ティラノサウルスの化石に憑依し、ルイージに襲い掛かってくる。 化石を破壊されてからは骨を棍棒のように振り回したり、床に叩きつけて衝撃波を放つなどパワー溢れる攻撃を行ってくる。 オバキュームに顔がつまり挑発的な態度を見せるも、持っていた骨が頭に当たり吸い込まれてしまう。 モップラー B2階のメンテナンスフロアを管理する整備士のオバケ。 怠け者でよく昼寝をしているが、ルイージに気づくと排水設備を稼働させてフロアを水没させるなど意地悪な性格。 彼との戦闘はお互いアヒルの浮き輪に乗ってのガチンコ対決になる。 しかし、この浮き輪は慣性が独特で操作に慣れていないと苦戦してしまう。 サーペンティス 10階のデザートフロアにいるクレオパトラのような姿をしたオバケ。 砂を自由自在に操る能力を持ち、砂を様々な形に変形させて攻撃してくるかなりの強敵。 しかし所詮は砂。ピラミッドを進んできたプレイヤーなら対処法はすぐにわかるはず。 むしろピラミッドの中の毒に苦しめられた人もいるとか 吸い込まれる際は胸の前で両手を合わせ、眠るように吸い込まれていく。 ニラ・リラ・グラ 11階のマジックフロアにいる手品師のオバケ3姉妹。 フロアを迷路にするなど、摩訶不思議なマジックでルイージを翻弄する。 時々ケンカをすることもあるが、3人揃ったマジックと戦闘時の連携は完璧なもので、爆弾シャッフルはかなり厄介な攻撃。しっかりと目で追う必要がある。 最後の攻撃は完全に運ゲーなので、骨はたくさん持っておくべき。 キャプテンフッカ 12階のビーチレストランフロアにいる鮫のオバケ。 海賊船の船長を務めており、船に取り憑いて攻撃してくる。 鮫だからか、コイツを吸い込む時のルイージはルアーを操作するような動きをする。 どことなくB級サメ映画に出てきそうなキャラである。 マスカルポーロ 13階のジムフロアのプールを占領するマッチョなオバケ。 プール上から水球を飛ばしたり、口から水を吐き出して攻撃してくる。汚ねぇ… 見た目の割にはプールの水を抜くと排水溝にはまって動けなくなったり、ボールを当てられただけで気絶するなど前々作のマッディー以上に情けない面も。体力もひっくいし。 アフロディージェ 14階のディスコフロアで音楽を奏でる女性のオバケDJ。目元が隠れるほどの爆発的なアフロが特徴。 最初はラウストのダンスチームをけしかけてくる。ボタンを持ったラウストを倒そう。 ダンスチームに勝利すると彼女との戦闘。レコードを投げつたり、高速スピンで攻撃してくる。 アフロで防御しているのでストロボを当てるにはアフロを吹っ飛ばさなければならない。 音楽はアナログ派らしい。 パウダネス・コナー ホテル「ラストリゾート」の支配人。 常にファンデーションを欠かさず、派手なドレスに身を包む妖艶な長身美女。 その正体はキングテレサに心酔するオバケで、彼を解放しルイージ一行をホテルにおびき寄せた張本人。 キングテレサに気に入られるために部下のオバケ達をけしかけ、ルイージの始末を画策する。 オバケネコ パウダネス・コナーのペットである、尻尾が三本あるオバケのネコ。 主人同様プライドが高く、高飛車な性格。 普段は小さな猫だが、戦闘時は恐ろしい化け猫のような姿となる。 キングテレサ シリーズ通してのラスボスであるテレサの王様。 前回、ルイージに敗れ閉じ込められていたが、パウダネス・コナーの手により解放された。 今回は彼女と共謀し、ルイージへの復讐に執念を燃やす。 【ホテルラストリゾート】 「最高のおもてなしを…」 今作の舞台である、パウダネス・コナーがオーナーを務める地下二階を含んだ17階建ての高級ホテル。 表向きは煌びやかな内装が特徴的な豪華なホテルだったが、その実態はおどろおどろしい雰囲気のオバケホテル。 当初はエレベーターのボタンが抜けているため、行けるフロアが制限されているが、各フロアのボスオバケを倒すと手に入るエレベーターボタンをはめ込むことで 他のフロアへと移動することができる。 フロア毎に内装や雰囲気が全く異なっており、中には大海原、砂漠などホテルらしからぬフロアも存在する。 追記・修正は高級リゾートホテルに招待されたお客様がお願い致します。 ただし、当ホテルでは、従業員の安全確保のため オバキュームのご使用をご遠慮いただいております。 手荷物にオバキュームをお持ちのお客様は、従業員を吸い込んだりしないようご注意の上、ホテル内をご散策くださいませ。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ボスと再戦できたらいいんだけどなぁ -- 名無しさん (2019-12-11 22 54 14) 良心から映画監督吸い込まないでクリアーしたやついる? 俺は吸い込まないでクリアーした ランクはBだった -- 名無しさん (2019-12-11 22 58 34) まえまえから おもってた けど なかなか キングテレサ の きじ が できない -- 名無しさん (2019-12-11 23 21 09) 操作性が致命的に合わなくて放置中。あと地下のサメやろうにはめられたわ。あいつ大嫌い -- 名無しさん (2019-12-12 01 05 39) ↑2監督オバケだけは吸い込むの可哀想だよなあ・・・ -- 名無しさん (2019-12-12 10 06 41) キングテレサ最近のキャラだし……え、18年前!? -- 名無しさん (2019-12-12 10 28 53) 未プレイだけどもしかして1みたいにボスオバケは元人間? -- 名無しさん (2019-12-12 11 19 34) 興味あるけど難易度高いらしいな・・・ -- 名無しさん (2019-12-12 13 17 53) キングテレサ戦の最後に吸い込む時のルイージがめちゃくちゃかっこいい -- 名無しさん (2019-12-12 13 39 23) グーイージの考察は3DSルイマン参照 -- 名無しさん (2019-12-12 17 09 41) (テレサの記事すらねぇ…) -- 名無しさん (2019-12-12 20 34 18) なんかキンテレ、シリーズ重ねるたびにでかくなってるような(2も1もやったのだいぶ前だからうろ覚えだけど) -- 名無しさん (2019-12-13 02 16 55) 次の作品ではテレサウルスも出してくれないかな・・・ -- 名無しさん (2019-12-14 02 30 40) アルファドリーム破産の件があってか、プロローグの即座に眠るシーンを見た時は妙に感動してしまった。 -- 名無しさん (2019-12-14 06 08 01) ハイパーバキュームが苦労の割に使うところが少なすぎる。ストーリー上一回、コンプしても三回しか使わないんだもん。 -- 名無しさん (2020-06-01 17 55 50) オバケネコ(猫又)は...攻撃のチャンス&タイミングがちょっと難しい( というかシビア? )上に、黒豹( サーベルタイガー)みたいにルイージに攻撃すべく徐々に徐々に接近...あの海賊鮫と並んでガチで怖いぞ、あいつ。 -- 名無しさん (2020-06-01 20 45 36) 吸い込まれる時のミスリーの声がなんかエロい -- 名無しさん (2021-10-15 19 42 45) 面白いが難易度を操作性の悪さでごまかしてる面が強い -- 名無しさん (2021-10-31 13 06 43) 本家マリオより好き。 -- 名無しさん (2022-02-02 19 56 16) 個人的に、スラムはいまいちだった。使うとスポッと吸い込む感覚がなくなるし、使わないと難易度上がるし -- 名無しさん (2022-02-02 20 11 02) キャプテンフッカはB級サメ映画っていうよりもディズニー映画に出てきそうなデザインやなと思った -- 名無しさん (2022-06-07 15 26 29) この作品のギネス記録って何? -- 名無しさん (2022-08-30 15 01 33) 同じく気になって調べてみたけど何も出てこないね。タグから消していいんじゃない? -- 名無しさん (2023-01-10 10 14 51) 蜘蛛が気持ち悪いこと以外は神ゲー -- 名無しさん (2024-06-28 15 51 50) 名前 コメント
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前ページ次ページゼロウォーズ 夢を見たんだ… 敵に囲まれている夢を…… 俺は今、ルイズの服を洗濯している。 ここに辿り着くのに、様々な事があった。 迷子になったり、道を尋ねようと適当な奴に話し掛ければ 「平民の分際で、その態度は何だ!」とか言われたり、(なんだよ、こいつ等?) 挙句の果てには、「噂のミス・ヴァリエールの使い魔さんですか?」 とメイドさんに聞かれる始末。 (メイドさんに聞かれる事は、問題じゃない……だが、『噂の』って何?) もう疲れた。(さっき寝たばっかなのに……) 第3話 来訪者と貴族とメイド 俺は洗濯を適当に切り上げ、ルイズを起こしに向かった。 このルイズという少女、寝ているときだけはとても静かだ。(騒ぐ奴なんて居ないよな……) 「おい!ルイズ起きろ」 「………………」 ルイズは起きない。俺は色々考えたが、結論 ほっとく事にした。 そして、二度寝をする為に床に寝転んだ。 30分後 突然、ルイズ部屋の扉が開き、赤い髪の女性と赤い生物が侵入してきた。 「ルイズ、いつまで寝てるのよ!」 「うーん……キ…キュルケ?な……何で部屋に入ってきてるのよ!」 「登校時間とっくに過ぎてるから、先生から呼んで来いって言われたのよ」 この時、ルイズの思考回路がようやく作動し始めた。 「私の使い魔は?」 「アレのことかしら」 キュルケは、床で寝ている兵真の事を指差した。 ルイズはベットから跳ね起き、兵真を踏みつけた。 「ねえ……なんで起こさなかったの?」 「うぅっっ…ね…寝てたから…」 「そう…それで起こさなかったの……明日からちゃんと起こしなさいよ!!」 ルイズは、とどめとばかりに兵真の横腹を蹴った。 「ご…ごめん……ん?おい、赤毛の人。隣の奴何?」 兵真は、流れを変えるために赤い髪の女性(キュルケ)に話し掛けた。 「私『キュルケ』って名前があるのよ。そう呼んで、使い魔クン。私の隣に居るのは、私の使い魔サラマンダーよ。 じゃ、私達は行くけど、早く支度してきなさいよ」 そう言って、キュルケは扉を閉めた。 ルイズは手早く支度した。(本当なら「服とって」とかやりたかったのに……) ルイズは、どうやらクラスの人気者のようだ(違う意味で)。教室に入ると、色んな声がルイズに向けられる。 「ゼロのルイズが来たぜ!」 「使い魔召喚できなかったからって、そこら辺歩いてた平民連れてくるなよ!」 等々……聞いていて、他の奴等もバカだと証明してくれる実に良いセリフだ。 こんな安っぽい挑発に乗っているルイズ、教室に偉そうな奴も来た……そろそろ止めるか…… と、思った時『偉そうな奴』が止めた。 「そこ、うるさいですよ」 皆、各々の席に座った。俺はとりあえず、ルイズの隣で立っていた。 自慢じゃないが俺は、飽きっぽい。したがって、『授業』というものが嫌いだ。 今日は、{錬金}と言う物をがテーマらしい。だが…俺は違う事を考えていた。 (サモン・サーヴァント=ゲート開放・そしてコントラクトサーヴァント=ナイツ だから、俺を呼び出したルイズ=ゲートマスターっと思っていたが何か違う…… じゃあ、誰がゲートマスターだ?) 俺はルイズに話し掛けた。 「なぁ、ルイズ。使い魔って、お前みたいな奴は全員持っているのか?」 「ちょっ、今授業中よ。後にして」 「頼む。答えてくれ」 「もー!多分」 適当に答えるルイズ。が、そんなやり取りを教師は見逃さなかった。 「ミス・ヴァリエール、何を話しているんですか?貴方には{錬金}をやってもらいます」 キュルケが即座に反応した。 「止めといた方がいいと思いますけど……」 兵真が反応した。 「良いじゃないか、誰がやってもさ。結果なんてどうせ同じだろ?」 「違うわよ!あの子は特別なの!!」 「???意味がわかんねぇ」 キュルケと兵真がそんなことを横で話していると、ルイズは教壇に向かっていった。 「やります!」 兵真以外の生徒は、机の下に身を隠しながらルイズ説得しようとしている。 兵真がドラマで見た《銀行強盗を説得する光景》を思い浮かべていると、キュルケが話し掛けてきた。 「使い魔クン、怪我したくなかったら隠れなさい!」 (何なんだよ?それに、『使い魔クン』なんて名前じゃねえよ) 「早くしなさい!」 俺は忠告どうり身を隠した。わずか数秒後……何かが爆発した。 キュルケを始めとするその他の連中曰く、 魔法の成功率ほとんどゼロ。そこからルイズの二つ名は“ゼロ”となったらしい。 その後、授業は中止となった。教師は気絶し、俺とルイズは掃除をさせられた。 (ルイズが散らかしたのに、何で俺まで?) そして、昼食。色んな事があり、俺のストレスは限界ギリギリだ。 食堂に入ると、ルイズは俺に「あんたのはそれだから」とか言ってきた。 ポツンと皿の上にパンが有るだけだった。(マジ?マジなの?) 俺は、ルイズから色んな話を聞いた。 例えば…ルイズ達の事、メイジと呼んでいる事や、魔法の事などだ。 そんな中、事件が起きた。喧嘩だ。 喧嘩の内容はだいたいこんな感じ。 金髪少年(ギーシュと言う名前らしい)の二股が メイドさん(『噂の』とか言ってくれた奴。名前はたしかシエスタ) によってバレ、逆ギレと言う内容だ。 朝、シエスタは俺を助けてくれたので、俺はシエスタの味方についた。 「金髪、お前が悪い」 ギーシュは俺に気付き、薔薇を向ける。 「ルイズの使い魔か…まさかそのメイドを庇うつもりかい?」 「だから何?だいたい、二股なんてバカがやる事だ。バカはバカらしく過ごしてろよ!」 こんな挑発に乗ってくるとは、やはりバカだ。 「このギーシュ・ド・グラモン! 君に決闘を申し込む!ヴェストリの広場で待っている!」 と言い残し立ち去った。 「だめ…殺される……」 シエスタが怯えきった表情で言う。 「シエスタ安心しな。俺は、【ナイツ】だ…」 そして俺は、ヴェストリの広場に案内してもらった。 前ページ次ページゼロウォーズ
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グラビティ名 ステ 射程 ダメージ エフェクト 所持 グラビティブレイク 頑健 近単 破壊 ブレイク 地球人 達人の一撃 敏捷 近単 斬撃 【氷】 地球人 サイコフォース 理力 遠単 魔法 【武器封じ】 地球人 シャドウリッパー 敏捷 近単 斬撃 ジグザグ シャドウエルフ 黒影弾 理力 遠単 魔法 【毒】 シャドウエルフ ステルスリーフ 敏捷 遠単 ヒール 【妨アップ】 シャドウエルフ ドラゴンブレス 頑健 遠列 破壊 【炎】 ドラゴニアン 竜爪撃 敏捷 近単 破壊 ブレイク ドラゴニアン テイルスイング 頑健 近列 斬撃 【足止め】 ドラゴニアン シャイニングレイ 理力 遠列 魔法 ジグザグ オラトリオ 時空凍結弾 敏捷 遠単 破壊 【石化】 オラトリオ オラトリオヴェール 理力 遠列 ヒール キュア オラトリオ コアブラスター 頑健 遠単 破壊 追撃 レプリカント スパイラルアーム 頑健 近単 斬撃 【服破り】 レプリカント マルチプルミサイル 理力 遠列 破壊 【パラライズ】 レプリカント 獣撃拳 敏捷 近単 斬撃 【プレッシャー】 ウェアライダー ハウリング 頑健 遠列 魔法 【足止め】 ウェアライダー ルナティックヒール 敏捷 遠単 ヒール 【壊アップ】 ウェアライダー トラウマボール 理力 遠単 斬撃 【トラウマ】 サキュバス 催眠魔眼 理力 遠列 魔法 【催眠】 サキュバス サキュバスミスト 頑健 遠列 ヒール 【妨アップ】 サキュバス 地烈撃 頑健 近単 破壊 【足止め】 ドワーフ スピニングドワーフ 敏捷 近単 破壊 【服破り】 ドワーフ 戦言葉 頑健 自単 ヒール 【盾アップ】 ドワーフ