約 482,802 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/852.html
今俺はハルヒを膝枕している。なんでかって?そりゃあ子供の我侭を 聞けないようじゃ大人とはいえないだろう?まあ俺はまだ自分を大人だとは 思っていないし、周りもそうは思っていないだろう。ただ、3歳児から見れば 俺だって十分すぎるほど大人なのさ。ああ、説明が足りなすぎるか。つまり こういうことだ。 ハルヒは3歳児になっていた。 ことの発端は10時間程前のことだ。休日の朝8時と言えば大半の人間が 「いつ起きてもいい」という人生でもトップクラスであろう幸せを感じつつ睡眠 という行為に励んでいると思う。俺ももちろんそうである。しかし、俺の幸せは 一人の女によってアインシュタインが四則演算を解くことよりもあっさりと瓦解 された。携帯電話がけたたましい音をあげる。携帯よ、今は朝なんだ。頼むから もう少し静かにしてくれ、という俺の願いは不幸にも全く叶えられることはなく、 俺は諦めて携帯に手を伸ばした。溜息をつきながら液晶を見ると思ってたとお りの名前がそこに映し出されていた。言うまでもなくハルヒである。 「キョン!出るのが遅いわよ!」 さすがハルヒだ。休日の朝だというのにこのテンションである。しかも怒っている。 「ああ、すまない。寝てたんだ」 謝る必要性は全くないが、一応謝っておく。こうした方がこいつも大人しくなるだろう。 俺も大人になったもんだ、などと考えているとハルヒが言葉を続けていた。 「まあいいわ、それよりキョン。今日寒いと思わない?」 比較的早く怒りがおさまった--もともと怒ってなどいなかったのかもしれないが--ハルヒが そんなことを言う。 「ああ、そりゃもう12月だからな」 寒くもなるってもんさ。と言ってからもう12月なのかと考える。あと4ヶ月で朝比奈さんが 卒業か・・・あの天使に会えなくなると思うと心を通り越して心臓が直接張り裂けそうだ。 ていうか先月の初めもこんなこと考えてたよな。いや、先々月も考えていた気がする。 「・・・ということで、皆でコタツを買うことになったから・・って聞いてんの!キョン!」 ああ、まずい聞いてなかった。また怒っていらっしゃる。ここは適当に流しておいた方がいいだろう。 「いや、ちゃんと聞いてたぞ。皆でコタツを買いに行くんだろ?で?それをどこに置くんだ?」 「だから有希の家に持ってって皆でぬくぬくするって言ったじゃない。やっぱり聞いてなかったようね。 団員としての自覚が足りないわよ。キョン」 いや、もう十分すぎるくらい自覚はあるわけなんだが・・・。まあハルヒから見ればまだまだ足りないの だろう。そんなことより、今回のハルヒの提案が大して迷惑なものではなかったことに俺は安心して いた。皆でコタツを買って長門の家で暖まろうというだけである。素敵とも思える提案だ。 「すまん。これから精進する。で?何時集合だ?」 「駅前に9時よ。即行で準備しなさい。じゃあね」 と言いこちらの返事も待たずにハルヒは電話を切った。相変わらずである。結局行くんだけどな。 俺に選択肢なんて始めからないのだ。 集合場所に着くと俺以外の面々は当然のように揃っていた。やれやれ、休日だというのに ご苦労なこった。 「おはようございます。キョン君」 おはようございます。朝比奈さん。相変わらず反則的に可愛らしいですね。あなたに会えた だけでも今日ここに来た意味があるというものです。などと俺が至福を味わっていると、 「遅いわよキョン!罰として買ったコタツはあんたが運びなさい!」 俺に指をさしながらそう言うと、ハルヒは近くの電気店の方にスタスタと歩き始めた。ハルヒよ、 お前は遅れなくてもどうせ俺に運ばせる気だったろうが。 「僕も手伝いますよ」 と、いつのまにか隣に来ていた古泉が相変わらずのさわやかな笑顔で話しかけてくる。 「ああ、すまんがそうしてもらえると助かる」 いえいえ、と言う古泉に、 「そういや最近閉鎖空間はどうなってんだ?」 ふと思ったことを聞いてみる。 「閉鎖空間ですか?全くと言っていいほど現れていませんよ。一番近いので3ヶ月前です。 これは今までの最長記録です」 なるほど、あいつもかなり落ち着いてきたんだな。3ヶ月前は何で発生したんだ?何かあった のか? 「いえ、時間帯的に単なる悪夢でしょう。ふふ・・・心配ですか?涼宮さんが」 ニヤニヤしながらこちらを見る。うるせえな、ただ気になっただけだ。そんなくだらない嘘をついた 小学生を見るような目でこっちを見るな。 「やれやれ、あなたもそろそろ素直になった方がいいですよ?」 うるせえよ。そんなことより、 「長門」 俺に呼ばれて長門はいつもの無表情をこちらに向けた。 「お前コタツなんか部屋にあったら邪魔なんじゃねえのか?なんなら俺が持って帰ろうか?」 俺も部屋にコタツなんてあったら邪魔で仕方ないが、長門にだけ迷惑をかけるわけにも いかんだろう。 「・・・大丈夫」 そこで一拍置き、 「どうにでもなる」 と、長門は続けた。そうか、まあ長門のことだ。使わないときはコタツをコンパクトにするだとか、 そういう反則的なことも出来るのだろう。だったら、長門のマンションに置いておいた方がよさそうだ。 「そうか、悪いな」 「・・・いい」 そんなことを話しているうちに俺たちは電気店に着いていた。ハルヒにいたってはもう中に入って いるようで、入り口からでは姿が見えない。 「どうする?探すか?」 「いえ、その必要はないでしょう。なぜなら・・・」 「みんなー!集合よ!いいのを見つけたわ!」 見ればハルヒが電気家具売り場の方からこちらを呼んでいる。 「なるほどね」 「そういうことです」 結果的に言えば、ハルヒの選んだそれは当たりだった。値段の割にはデザインも可愛らしいし --朝比奈さんも満足気だったしな--、大きさも5人が入っても問題のなさそうなものだ った。もともとハルヒは物を選ぶセンスなどは抜群なのだ。 問題はこれを俺と古泉だけでどう運ぶのかということだったが、これは長門の力によって あっさりと解決された。長門が買ったコタツに目を向けながらなにやらぼそぼそと言うと コタツの重みが一切なくなったのである。このような光景--というか、現象というか--を 見ると、俺の周りは非現実的なもんで溢れかえっているんだなと改めて実感する。いや、 もちろんそれが嫌ってわけじゃない。むしろ楽しいと思っているほどだ。 さて、こうなってしまうと朝比奈さんでも片手で運べてしまうのだが、ハルヒの手前まさかそんな ことをするわけにもいかず、俺と古泉はわざわざ「重いものを持っています」といった表情で コタツを運ぶことになった。途中何度か、 「大丈夫?あたしも手伝ってあげようか?」 などと普段見せない優しさを見せんでもいい時に見せるハルヒの提案を、俺と古泉が笑顔で かわすという行為を繰り返しているうちに俺たちは長門のマンションに到着した。 「さあキョン!組み立てなさい!」 「へいへい」 と溜息をつきながら俺はダンボールを開け始めた。こんな扱いを受けているというのに なんでだろうね?全くいらつかないのだ。これが慣れというやつだろうか。だとしたら、 この習性は治したほうがいいのではないだろうか。などと思案している間に古泉の 手伝いもあってか、あっさりとコタツは完成した。まあ、元々組み立てるのが難しいもの でもないしな。 「よし!じゃあ有希!あれ出して」 「わかった」 と、言いながら長門は台所に向かってスタスタと歩いていった。そして数十秒で戻ってくる。 両手には大量のみかんとスナックが抱えられていた。 「おいおい、随分準備がいいな」 「まあね皆には昨日のうちに言っておいたから」 だったら俺にも言っといてくれ。その方が心の準備が出来るってもんだ。 「だって、あんたどうせ暇でしょ?だったら当日に言えば済む話じゃない」 クソ、反論できないのが歯がゆい。ハルヒの言うとおり俺の休日にSOS団がらみ以外 の予定が入ることはほとんどないからだ。谷口や国木田も、 「キョンは休日も涼宮さんと一緒なんでしょ?」 と、誤解を招きそうなことを言ってきたりで、休日に俺を誘うということもない。つまりだ、 俺の休日に予定がないのはハルヒのせいでもあるわけだ。そんなことを知ってか知らずか、 ハルヒはもぞもぞとコタツに体を押し込めながら長門がテーブルに置いたみかんに手を伸ば している。見れば俺以外はもうコタツに入っている。朝比奈さんに至っては、 「暖かいです~」 と、幸せに浸っている。となるとだ、まあここはハルヒの隣に座るのが自然だろう。いや、別に 他意はないぜ?一番近いからそこに座るだけだ。それにハルヒの隣ということを考えなければ ベストポジションだ。なんたって真正面を見れば女神が居るからな。ちなみに長門は俺から見て 右、古泉は左の位置に居る。 「ちょっと!なんであんたがあたしの隣に座るのよ!」 近かったからだ。わざわざ遠回りするのも面倒だろ。 「まあいいわ・・・。結構大きいしね、このコタツ。それにしても暖かいわね」 そうだな。たまにはこういうのもいいよな。 「幸せです~」 と朝比奈さん。本当に幸せそうだ。あなたを見てるとこっちも幸せになってきますよ。 「そうですね。たまにはこんな日があってもいいでしょう」 古泉は俺と全く同じことを考えていたようだ。やめてくれ、微妙に気持ち悪い。 「・・・ぬくぬく」 見れば長門も上機嫌そうである。もうみかんの皮が6枚ほど長門の前に転がっている。 相変わらず素晴らしい食欲だ。 「むう・・・。でもこのまま何もしないのもつまんないわね」 そうか?俺は今日はこのままぼんやりしていたいがね。 「そんなじじくさいこと言ってると早く老けちゃうわよ?」 縁起でもないことを言うな。それにお前も子供じゃないんだから、落ち着けよ。 「ふん。童心をいつまでも持つことは大事なのよ。ね?古泉君」 「ええ、僕もそう思います」 お前は黙っていろ。このイエスマンめ。 「ああ、子供といえば。あんた子供に人気あるわよね?」 ハルヒはあっさりと話を変えた。割とどうでも良かったらしい。しかし、そうは思わんがね。 人気があるといっても。すぐに思い浮かぶのは妹とミヨキチくらいなもんだ。 「ええ~、でもあたしもキョン君は子供に好かれるイメージがありますよ?」 と、朝比奈さんが言う。朝比奈さんがそう言うならそうなのかもしれんと、俺のy=xのグラフ よりも単純にできている脳は勝手に結論を出そうとしていた。 「ね?やっぱりそうよね。じゃあさ、キョン。あんたも子供が好きなの?」 なぜそうなる。 「だってやっぱり好きなものには好かれるじゃない」 「そういうもんか?」 「そういうもんよ」 「まあ、少なくとも嫌いではないな。妹も、特に3歳ぐらいのころはホントに可愛かったな」 言いながら、その時の情景を思い出す。 「ふふ」 「どうかしましたか?朝比奈さん」 「いえ・・・。きっといいお兄さんだったんだろうなあと思いまして。目に浮かびます」 もちろん今もいいお兄さんですけどね。と、朝比奈さんは付け加えた。 「あたしもそれに関しては同感ね」 おお、ハルヒに褒められるとは。これ以上光栄なことはないね。 「もうすこし感情を込めなさい。感情を」 「ばれたか」 「当たり前でしょ?ふわぁ~。なんか喋ってたら眠くなっちゃった」 「あたしもです~」 と、朝比奈さんもハルヒのあくびがうつったのか小さなあくびをした。 「眠っちゃいましょう。もう二人寝てるし、あたし達だけ起きてても仕方ないわ」 言われてからそういえば長門と古泉が全く話に参加していなかったことに気づいた -いや長門に関してはいつものことだし、古泉も一度適当な相槌を打っていた気はするが-、 半立ちになりながらコタツの左右を覗き込むと本当に二人とも寝ているようだ。二人の 寝顔を見ながら、俺はなんだか安心してしまった。この二人はSOS団のことを信頼しきっている のだ。だからこんなにぐっすり眠れるのだろう。そう思うと嬉しいというか喜ばしいというか、そんな 気分になる。 「あんたは寝ないの?」 「いや、俺はいいや」 大体二人で横になったらどっちみち俺は寝れねえよ。などという俺の思考はハルヒには届かないだろう。 「ふ~ん、じゃあみくるちゃんも寝ちゃったみたいだし。あたしも寝るわね」 正面を見ると、女神の姿が見当たらない。おそらくハルヒの言うとおり、お眠りになってしまわれたの だろう。 「お菓子、一人で全部食べちゃダメよ?」 食べねえよ。ていうか無理だ。俺はお前や長門のような何回拡張パックをダウンロードしたかわからない ような胃は持ち合わせちゃいない。 「じゃあ、おやすみ」 ハルヒはそう言いながら寝転がる。 「ああ、おやすみ」 俺はその後、何十分かはわからないが。結構長い時間ぼんやりとしていた。ただ、俺も眠かったのだろう。 頭をコタツのテーブルに突っ伏すとそのまま眠りについてしまった。今日は本当にいい日だ。おそらく面倒事も 起こらない。さっきも言ったが、こんな日があってもいい。 だが、俺のそんな思いは目覚めとともにあっさりと否定された。 「・・・起きて」 静かな、しかしどこか強制力のある声が耳元からする。 「・・・起きて」 二度目のその言葉で俺は目を覚ました。目の前に見慣れた無表情がある。長門だ。 「ああ、長門か今何時だ」 「13時」 そうか、まだ1時間しか経ってないじゃないか。だったらもう少し寝させて・・・、 「キョン!起きたのね!キョンもトランプしましょ!」 いつもの11倍ぐらい目を輝かせながらハルヒはコタツの向こう側からこちらを見ている。 しかもなぜか朝比奈さんの背中に抱きつきながら-いわゆる強制おんぶ状態だ-だ。 「おいおいなんだ?とんでもないテンションだな」 「聞いて」 長門が話しかけてくる。長門がこんなにも自ら口を開くことははっきり言って珍しいことだった。 だから、俺はなんとなく嫌な予感はしていたんだ。 「なんだ、どんな厄介ごとだ?」 「・・・おそらく涼宮ハルヒの精神は14年ほど退行している」 見ればハルヒがターゲットを朝比奈さんから、長門に変えている。長門はハルヒに背中から抱きつかれながら 無表情でそんなことを言っている。なんてシュールな絵なんだ。そしていつもながらとんでもない話だ。 「あ~、精神だけか?」 「・・・そう」 そりゃあ厄介だ。 「そう。厄介です」 と、古泉がそれに反応した。 「見た目も退行してくれていれば、もう少しやりやすかったのですが」 「ふふ・・・さっき古泉さん、涼宮さんに抱きつかれて慌ててましたもんね?」 朝比奈さんがそんなことを言う。 「いえいえ、そんなに睨まないでください。不可抗力ですよ」 古泉はパタパタと両手を振る。別に睨んでなどいない、まあ不可抗力なんだしな。 仕方のないことだ。若干もやもやするがそれは気のせいだ。 「長門よ、そのこうなった・・・」 原因は?と尋ねようとして俺はやめた。なんとなく推測出来るし、多分俺のせいだろう。 だったらそんなことをわざわざ聞く必要はない。 「いや、これは何時ごろ治るんだ?」 ハルヒは長門に抱きつきながらびょんびょん跳ねているため、長門の顔は無表情のままがくがく 揺れている。ハルヒ、やめなさい。長門の頭が取れかねん。 「確定は不可能。ただ長い時間はかからない」 そうなのか? 「・・・そんな気がする」 なるほど、それが長門の意見か。今は長門が意見を言うということもそこまで珍しいということでもない。 「僕もそう思いますよ。これは一時的なものでしょう。まあ、多少厄介ですが。みんなで遊んであげれば、 自然と元に戻るはずです」 「ああ、俺もそんな気がする」 「ただ、トリガーというかキーというか。そういうものがある可能性は否めませんが、それもおそらくは簡単に 見つかるでしょう」 言いながら、こちらを見る。期待していますよと言わんばかりだ。やれやれ、また俺が握っているのか? そのキーとやらを。 「じゃあ、今日は皆で涼宮さんと遊びましょう!ね、涼宮さん」 「うん!」 と、ハルヒが朝比奈さんの問いかけに対して明るく可愛く答えている。今のハルヒに母性本能がくすぐら れているのだろうか。朝比奈さんもまんざらでもなさそうだ。 「じゃあ、キョン!トランプ!」 太陽の笑顔をこちらに向けてトランプを手渡してくるハルヒに対して俺は、 「へいへい」 と、命令に従いトランプをシャカシャカと切り始めた。結局ハルヒの精神が幼児化したところで、俺の ポジションが変わることはないのだ。 「あ!でもトイレ行きたい。キョン!ハルヒが帰ってくるまでに配っててね!」 そう言いながらトイレの方に歩いていった。どうやら記憶はあるらしい。そりゃそうか、俺の名前も覚えてる しな。あとこの頃のハルヒは自分のことを名前で呼んでたんだな、可愛らしいこった。 「みなさん、提案があります」 と、古泉がなにやら喋りだした。 「これから多分数多くのゲームをすることになると思うのですが・・・」 そりゃそうだ、なんたって身体はそのままだからな。体力はものすごいだろう。 「ええ、ですが。そのゲームにおいてですね、涼宮さんを最下位にさせるということは出来るだけ 避けたいんです」 ああ、なるほどね。俺は古泉の言いたいことを瞬時に理解した。ほかの二人もそうだろう。 「確かにな、そんなことになったらもっと厄介なことになりそうだ」 「ええ、ただ彼女は勘がいいですからね。手加減しているのを聡られないようにしなければ いけません」 そうだな、しかしまあ骨の折れる作業だ。 「仕方ありません。それに、こういうのも楽しいでしょう。僕は嫌いじゃないですよ」 確かに退屈はしなそうだな。その時、とたとたと足音が聞こえた。どうやらハルヒが帰ってきた ようだ。 「あ!配っててくれたんだ!ありがとうキョン!」 と、俺にいつもより数割増しの笑顔を向ける。おいおい、勘弁してくれ。素直なハルヒなんて 俺の想像の範囲内には居ないんだ。俺が混乱しつつある頭を何とか正常に戻そうとしている と、あろうことかハルヒはその混乱を増幅させる行為をとりやがった。すなわち、俺の脚の間に ドスンと座ったのである。そりゃあもう堂々と、それが当たり前のように。 「おい、何をしている」 「キョン!イス代わりになって~」 ああ、うんそういうことか。でもな、朝比奈さんでもいいじゃないか。 「う~んそれでもいいんだけどさ、みくるちゃんちっちゃいんだもん」 と、言いながらこちらを見上げる。顔が近いよ、顔が。それと髪からものすごくいい匂いがする。 これはまずい、どう考えてもまずい。 「いや、でもな・・・その・・人をイス代わりにするのはあまりいいことじゃないぞ?」 俺は何とか平静を保ちながら-これは奇跡的なことだ、自分の精神力に感服するね-、 ハルヒに言い聞かす。だが、 「うう・・・キョンはいや?」 と、ハルヒに潤んだ瞳で見上げられれば「嫌だ」などと言えるわけがない。 「ええとだな・・・その・・・」 「わかった・・・。じゃあ古泉くんのところに・」 「ハルヒ!」 「ふぇ?」 「嫌じゃないぞ、全然嫌じゃない。だからここに居なさい」 もちろんこれは古泉の為だ。さっきも大分困ってたみたいだからな、そうだお前の為なんだ。 だから古泉よ、そんなニヤニヤ顔でこっちを見るな。朝比奈さんもそんなに優しい目でこちら を見ないでください。 「え・・・?うん!ありがとう、キョン!」 そう言いながら思いっきり抱きついてくる。いや、だからそういうのはまずいと言ってるだろうに。 「あ~、ハルヒよ。前を向いた方がいいぞ。トランプがしづらいからな」 「あ、うん。ごめんね」 と、素直に前を向く。かくしてようやくトランプまでこぎつけた。これからおそらく何時間も遊ぶのだ。 それが終わる頃には俺はもしかしたら、死ぬんじゃないだろうか?そんなことを俺は本気で考えて いた。 結論から言うと俺は何とか死なずにすんだ。勝因はなんといっても、 「キョンの身体かたーい」 と、言いながら朝比奈さんの方にハルヒが途中で移動してくれたことだ。それでも移動するまでは トランプのババ抜きをしている時にハルヒが最初にあがると嬉しさのあまり俺に抱きついたり、先ほども 述べたのだがハルヒからやたらいい匂いがしたりと、俺のHPはもはや限界まですり減らされていた。 途中で朝比奈さんの方に行ってくれなかったら、間違いなく命はなかっただろう。その時に若干喪失感 みたいなものを味わったが、まあそれも気のせいに違いない。 それと、古泉の言っていた懸案事項も全く問題にならなかった。なぜって?そりゃあハルヒが 何をやらしても強かったからさ。元々3歳の割には語彙が多いなとかは思っていたが、頭の 回転の良さも昔からだったらしい。結局手加減どころか本気をだしても俺達がハルヒにかなうこと はなく、終始1位と2位をハルヒと長門が取り合うという形でゲームは行われていった。ただ、途中 人生ゲームをする時は朝比奈さんに漢字や意味を聞きながらうんうんうなづいてプレイしていたから 4位になっちまったけどな。ちなみに最下位は古泉だ。もちろん、手加減などしていなかったが。 そうして楽しかった時間はあっという間に過ぎ、ハルヒの、 「ねむ~い」 の一言で4時間にも及んだゲーム大会は終わりを告げ、俺以外の4人はあっさりと眠りについて しまった。ちなみにハルヒはといえばコタツには入らず、俺に膝枕をさせながら毛布をかけて眠りこけ ている。 ここでようやく冒頭に戻る。俺はなんとなくハルヒの頭をなでていた。なあハルヒよ?楽しかったか? 今度起きたら元に戻っていてくれよ?子供のお前も好きだけど、俺はやっぱり・・・。俺がありえない 程恥ずかしいことを考えているとパチッとハルヒが目を開けた。ばっちり俺と目が合う。 「ハ・・・ハルヒ・・・?」 「ねえキョン・・・」 「うん?」 「キョンはハルヒのこと好き?」 え~とだな、このハルヒは子供の方のハルヒだよな?ああ、間違いないだろう。自分のこと「ハルヒ」 って言ってるしな。じゃあ、大丈夫だ。嘘をつく必要もない。ハルヒの頭をなでつけながら俺は出来る だけ優しい声で言った。 「ああ・・・好きだよ」 「ホント?」 「本当だ」 「元に戻っても?」 おいおい、こいつわかってやってんのか?いや、まあ大丈夫だろう。ハルヒはこれを夢と処理するはずだ。 「ああ・・・元に戻ってもだ」 「ふふ、ありがとうキョン」 と、ハルヒは更に言葉を続けた。 「あたしも・・・好きよ」 !!驚いてハルヒの方を見るが、ハルヒはもう眠ってしまっていた。いや、さすがにこの早さで寝るのは ガリレオ・ガリレイが天動説を唱えるくらいありえない。俺はおそるおそるハルヒの頬をつねってみるが、 何の反応もない。本当に眠ってしまったようだ。 「ふう」 俺はしばらく考えてから寝てしまうことにした。考え事なんてもともと俺の性分じゃないんだ。そんなもの は古泉あたりにまかせておけばいい。俺はそう決めてかかると、眠りの世界に身を委ねた。 起きると、周りにはもう朝比奈さんと古泉の姿はなかった。右の方を見ると長門がみかんをパクついて いる。お前、それ何個目だよ。 「長門、みんなは?」 「もう帰った。あなたたちもそろそろ帰った方がいい」 そうか、言われて時計を見れば確かにもう結構な時間である。これは帰った方がよさそうだ。 「ハルヒ、帰るぞ」 「ん・・・ううん」 そういいながらもそもそと起き上がる。 「え!うそ!もうこんな時間?どうして起こしてくれなかったのよ!」 どうやらもとのハルヒに戻っているようだ。なんとなくわかってたけどな、だからみんなも帰ったんだろう。 それよりお前はばっちり起きてたし、誰よりもはしゃいでいたぞ。 「いや、俺たちは全力でお前を起こそうとしたがどうしてもお前が起きなかったんだ」 「ホント?有希?」 「本当」 と、長門はゆっくり頷いた。 「そっか・・・」 なんだか少し寂しそうだ。 「すまん・・・無理矢理にでも起こせばよかったか?」 「ううん、いいのよ。ありがとね」 おいおい、元に戻っても素直なまんまか。勘弁してくれ。 「なあに変な顔してんのよ」 「いや、なんでもない」 そう言いながら、帰る準備を進める。さて、 「じゃあ、帰るか」 「そうね」 「じゃあな、長門。いろいろありがとな」 「いい」 「バイバイ有希、また来るからね」 「・・・わかった」 長門がゆっくり頷くのを確認してから俺たちはマンションのドアを閉めた。 帰り道、ハルヒがこんなことを言い出した。 「ねえキョン」 「なんだ」 「あたしね・・・変な夢を見たの」 やっぱりきたか、でもなハルヒそれは夢じゃないんだぜ。 「どんな夢だったんだ?」 なんとなく聞いてみたが、おおよそハルヒの回答は予想がついた。なんたってみんなに 甘えたおした挙句、最後には俺にあんなことを言われたんだ。ハルヒにとっては悪夢 以外の何物でもないはずだ。 「それがね」 と、ハルヒはこちらに顔を向けながら続ける。そして笑顔で顔を輝かせ、 「すっごくいい夢だったのよ!」 と、言ってのけた。おいおい、待ってくれその反応は反則だ。クソ、顔が熱い。ハルヒの 方を見れん。 「ちょっと、何で顔をそらすのよ。ていうか顔赤いわよ?キョン」 夜でもわかるくらい俺の顔は赤いのか、恥ずかしい話だ。仕方ない、喋ってごまかそう。 「あ~、ハルヒよ。俺も変な夢を見たんだ」 「へ~、どんな夢よ?」 「それがな」 俺は言葉を続ける。 「ものすごくいい夢だったんだ」 なぜか、ハルヒの顔が朱に染まった。 fin
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5842.html
2人の絶叫だけが長門の部屋に残り、俺たちは奈落の底に落ちていった 永遠とも思える落下の後、ドスンと落ちた俺は腰を打ちつけていた しかし思ったほど衝撃は少ない やれやれと思って立ち上がろうとしたら、上からハルヒが落ちてきた ぐえっ 「アイタタタ・・・・・・」 おいハルヒ、早く下りてくれ。かなり重いぞお前 「ハァ?女子に向かって重いだって? あんた、全地球人類を敵に回すつもり? それとも何よ、あたしが重いって言うの? 重い女は嫌いって事?」 いやハルヒさん それとこれとは別でしょう ただ上から落ちてきただけですから 「やっぱちょっとダイエットすべきかなー。あたしさー、最近もしかしたらみくるちゃんより重いかも知れないのよね ねえキョン、どう思う? あたしもうちょっと痩せた方がいいの?まあ・・・あんたがそう言うんなら、頑張ってみないこともないけどさ」 ハルヒ頼む 悩み事はとりあえず俺の上から下りてからにしてくれ。じゃないとお前のいい匂いで卒倒しそうだ 「ふふーん、キョン あんたもだいぶ正直に物が言えるようになってきたわね 団長として嬉しいわよ。やっとあんたが真人間になりつつあると思うとね」 ああ もう好きに言ってくれ。こうやってるのも悪くない気分だけど今はそんな場合じゃないだろ 「分かってるわよもう」 ハルヒは俺の上から飛び降りて制服のスカートを直した 「ねえ。見てキョン!あれ!」 ハルヒが指さす方向には何人かの男女が見えた もちろんすぐに正体は分かる。SOS団と佐々木の1派が争っているのだ 「行くわよキョン!急いで!」 ハルヒは猛ダッシュで駆け出し、俺は慌てて後を追いかけた。30秒ほど走ってかなり近づいた 「有希!今助けるからね!」 そう叫んで走り寄ったハルヒの体は、ゴーンという音を立ててまたもや跳ね返された ハルヒ大丈夫か?吹っ飛んできたハルヒを危うく受け止め、そっと横たえた 「いったぁーっ・・・」 鼻を押さえてうずくまるハルヒを抱きかかえながら俺はあらためて、自分が来た世界を眺めた 空にはまばゆいばかりの星空がきらめき、地面は真っ黒で何も起伏がない 明らかに地球人の常識からはかけ離れた場所だ ここから15メートルほど離れた場所で戦う者たちの姿が見えた 激しく動き回っている赤い光はあれは古泉か。この世界じゃあいつの能力も使えるらしいな 少し離れた場所で右往左往している朝比奈さんは、なぜか時々点滅していた 数秒間消えたかと思うとまた現れる そして横たわっているのは長門だ。まだ意識が戻ってないのか ピクリとも動かないその長門の足元に立ちはだかり、周防九曜と思われる長い黒髪の女子と激しい攻防を繰り返しているのは・・・ 俺の背中にまた鳥肌が立った 振り下ろされるナイフの鈍い光沢、そして脇腹に突き刺さった冷たい金属の感触が、俺の全身から冷や汗を絞り出させた あ、あ、朝倉涼子がどうしてここにいる?しかも長門を守るようにして そうか、あいつは長門のバックアップだったっけ 長門がピンチなのを見て駆けつけたのか? 周防九曜は両手の指先から次々と光線のようなものを出し、朝倉を貫こうとする 朝倉涼子はまるでそれを割り箸でも掴んでるかのように手づかみにして、さらにはボキッと折っていた 両者の攻防は互角に見えたが、なかなか朝倉は攻勢に転じられないようだった 朝比奈さんから少し離れた所には、いた!あいつがいる 顔を見ただけで殴りつけてやりたいぐらいにムカつく野郎が あの藤原が朝比奈さんに手のひらを向け、朝比奈さんの動きに合わせて小さく振っている そのたびに朝比奈さんはあちこちに逃げ回り、時折りピカッと光って姿を消す 未来人同士の戦争がどんなものなのか、もちろん俺に知る由はないが、おそらくおれはあれでものすごい戦闘を繰り広げているのだろう 赤い光と化した古泉の周囲には分散した青い光が取り囲んでいる あれは橘京子のものなのだろうか、その1つが時々古泉に向かって突進し、古泉は全身でそれを跳ね返す 青い光は力を失って地面に落下するが、古泉からも光の破片がキラキラとこぼれ落ちており、多少はダメージを負っているのが分かった 予想していた通り、激しい戦闘の真っ最中だったが、俺にとっての気がかりはいまだに目を覚まさない長門と、そして彼らから少し離れた所にいる1人の少女だった ハルヒの言った通り、やはりあの新入生だった クルッと巻き毛の天然パーマなのか、繰り広げられる戦闘に目を輝かせながら手に持っているオーパーツを軽く左右に振り回している 俺はハルヒを地面に横たえて、ぶち当たったバリヤーを調べてみた 長門のマンションを覆っていた柔らかいものとは違って、ガラスのように固い物体だった 手で叩いてみてもガンガンと響くだけで向こう側には届かない どうやらあっち側からはこちらは見えないようだ 大声で古泉の名を呼んでみても何の反応もない 俺は再びハルヒを抱え起こし、揺さぶってみた。おいハルヒしっかりしろ、大丈夫か? 鼻を真っ赤に腫れ上がらせたハルヒがウーンとうなる 「いったぁー、何よ今度はいったい」 またバリヤーみたいだな。しかも今度はえらく固いぞ 「またこじ開けて入ればいいじゃないの」 ハルヒは鼻に手を当てながら立ち上がり、俺がやったようにドンドンとそれを叩いてみた 横たわったままの長門に懸命に声をかけるが当然反応がない 「うーん、ダメねえこれじゃ」 ハルヒは何事かをわめきながらひたすらバリヤーを殴りつけ、地面との隙間に指を突っ込んでこじ開けようとしている 何とかならないかハルヒ?このバリヤーをぶち破る方法は 「それは無理だよキョン」 また後ろから佐々木の声がした。こいつもついてきやがったのか 「どうやらあっちで起こってる事はこっちからはどうしようもないみたいだね」 おい佐々木、もういい加減にしろよ こんな無駄な争いをして何になるんだよ お前はこれで満足なのか? あいつらに戦わせてお前はここで高見の見物かよ 「だってそうしろって言われたんだからしょうがないじゃないか 大将はのこのこ敵前に出ていくことはないって それが仲間の意見ならば、僕は喜んで従うね」 仲間だと?何なんだよその仲間ってのは こんな変な世界で、ハンディがある相手を叩きのめすのがお前らの戦いなのか? それがお前らの仲間なのか? 「ふふっ。キョン 僕にとっては彼女たちはまだあまりよく知らない存在だ 突然目の前に現れて神様になって下さいとか言われていくら僕でもそんな事を真に受けたりはしないさ だけどねキョン、そんな事を言っている連中でも僕を慕ってくれてるんだ それを仲間と呼んでどこがいけないのかい?」 だったらお前も中に入って堂々と戦えよ 俺もハルヒもこの中に入れろ それから長門を目覚めさせてやれ お前らの下らん神様理論なんかはどうでもいい 条件を対等にしろ 何だかんだ言いながら結局お前らのやってることは卑怯以外の何物でもないじゃないか 長門の能力が怖いから眠らせて、ブチ切れたハルヒを恐れて中に入れようともしない それがお前の仲間とやらのしてる事じゃねーか 何が仲間だよアホらしい 俺たちの団長を見てみろよ アホで向こうみずで後先を考えない事ばっかりしてるけど、あいつの仲間を思う気持ちはお前なんかには負けはしない 何が大将は奥でじっとしてろだよ うちのハルヒを見てみろ あいつなら、団員を助けるために核融合炉にでも飛び込む覚悟はあるぞ それが俺たちの団長だよ。SOS団の自慢の団長だよ 「そしてキョンの大好きな彼女だってのか?」 そうだよ 俺はハルヒが大好きだ あんなバカな女だけど、俺たちを思ってくれる気持はこの銀河系の誰にも負けはしない あれが俺の大好きな女だ 俺は1人では何もできないけどな、ハルヒと一緒ならどこにだって行けるぞ 佐々木はちょっと遠い目になった 「変わったな・・・キョン」 当たり前だろ もうお前を自転車に乗せて塾に通ってた頃の俺とは全然違うんだよ 見つけたからな。一生かけて守ってやりたいと思う相手を 「うらやましいよ、キョンが そんな風に自分を変えられた君が」 お前は自分を変えようとは思わなかったのか? 「思わなかったよ だって変える必要がなかったからね このみんなに会えるまではね。チームSOSの仲間に出会うまでは」 チームSOS?何だそれは? 「ははは 君にはまだ言ってなかったかな?恥ずかしいんだけどちょっとインスパイアさせてもらったよ。僕たちのチームだ 『静けさを大いに楽しむための佐々木のチーム』だ」 それならSOSチームなんじゃないのか?順序が逆だぞ 「細かい事はいいんだよ別に 何となく語呂がよかったからさ」 SOSの名を聞きつけたハルヒが佐々木を見つけ、両腕をブンブン振り回しながらやってきた 「ちょっとあんた、いつまでこんな卑怯な事やってんのよ。あたしを中に入れなさい。もちろんキョンもね」 「それはできないわ涼宮さん。 みんなにきつく言われてるから。あなたが入れるのは最後の仕上げだけ」 「いいから早く入れなさい!今すぐに!」 「ご自分でお入りになったら?」 「ええそのつもりよ。キョン!もうそんな女は放っといていいから。体当たりしてでも突入するわよ」 はいはい団長さま 「キョン!本気でそんな事するつもりか?」 当たり前だろ。俺は団長のボディガードだ 団長の行く所ならたとえ地獄にでもお供するぜ ましてや仲間を助けるためなんだ。SOS団に不可能はないんだよ 「キョン!そんな優等生の分からずやに何言っても無駄よ。まあ同級生のよしみもあるんでしょうけどね」 「待って!それはさせられない」 佐々木の体が大きく震え、クリーム色をしたモヤモヤした物体がハルヒの体を包み込んだ 「ちょっと!何よこれ!動けないじゃないの!キョン!助けて!」 俺は急いでハルヒを包んでいる靄の中に飛び込んだ と思ったらハルヒの体を通り抜け、反対側に出ていた もう一度やっても同じだった 俺の指先はハルヒに触れる事もなく、そのまま通過して飛び出してしまう 何だこりゃ?ハルヒ? 「キョン・・・・・・」 待ってろハルヒ、すぐに助け出してやる おい佐々木、もうやめろ。ハルヒに手を出すんじゃねえ 他のヤツラならともかく、お前にこんな事をさせたくない だからハルヒに手を出す事だけはやめてくれ 「じゃあ君が身代わりになるかい?」 ああ それでいいのなら俺は構わない 「キョン!あんたいったい何言ってんのよっ!」 ハルヒ みんなを助けてくれ 長門を助けろ、お前ならできる 長門さえ起こしてしまえばこっちのもんだ 「ちょっとキョン!」 さあ佐々木、さっさとやれ。俺を好きにしていいからハルヒを助けろ 「ふっ 君が代わってくれても意味はないんだよ あくまで団長は涼宮さんだからね」 いいから変われ 俺とハルヒを入れ替えろ 「それはできない。今の時点での危険因子は涼宮さんだからね」 くっそう 引っかからないかさすがに 俺の背後にはクリーム色の靄にからめられたハルヒがもがいている 「キョン!キョン!」 俺は佐々木を睨みつけたままで 何か策はないかと思い巡らしていた バリヤーの向こうでの戦いはいったいどれぐらいの時間に及んでいるのか 古泉も朝比奈さんも、もちろん朝倉涼子も、もうかなりのダメージを受けているはず ほとんど防戦一方の戦いにはたして勝ち目はあるのか 仮に長門が目を覚ましたとしてあの調子で戦いに参加する事はできるのか? 幾つもの疑問が頭を駆け巡る 俺とハルヒはこのまま 仲間が必死で戦ってるのを見殺しにしてしまうのか・・・ 「キョン、キョン」 ハルヒの声も苦しそうだ。俺は佐々木に背中を向け、ハルヒの方に向かった ハルヒどうした?苦しいのか? 「大丈夫よ、動けないだけ だけどキョン、こんな悔しい想いは初めてよ。何もできないで負けちゃうなんて・・・ 有希・・・ごめんね・・・一番つらい時に一緒にいられなくて みくるちゃん・・・あんなに頼りなかったのに、必死で戦ってるのに何もしてあげられなくて 古泉くんも・・・いつもわがまま聞いてくれたのに、最後はこんな形になるなんて ごめんね・・・これじゃ団長失格だよね。偉そうな事ばっかり言ってたのに 結局何もできないだけだなんて」 俺の目の奥で何かがはじけた 何か真っ赤なものがパーンとはじけた 俺はゆっくり向き直り、佐々木に静かに告げた 佐々木・・・ハルヒを出してくれ、今すぐに 「それはできないと言っただろ 君に代わっても何の意味もない事ぐらい分かっているはず」 そうか・・・ 俺は肩を落とし、力なくうなだれた そして次の瞬間、全速力で佐々木に向かって走っていた もう何も考えられない ただ無性に腹が立っていた どうせ何もできないのなら、せめてこいつだけにはひと泡吹かせてやりたい 俺をバカにしたいのならいくらでもすればいい だけどこれだけは絶対に許さん ハルヒをバカにする事だけは許さない 俺たちの団長を、俺の大好きなハルヒをバカにする事だけは許せなかった 「ちょ・・・キョン?」 俺は上体を丸めて佐々木に襲いかかった 何かを叫んでいたような気がするが覚えていない ショルダータックルをぶちかますつもりだったのだが、予定した場所に佐々木はいなかった 空気が漏れるようなシュッという小さな音が聞こえたような気がする 俺は勢い余ってそのまま突進し、バリンという音とともにもんどりうって倒れ込んだ 「キョン!」 気がつくと空気の匂いが違っていた。血なまぐさい臭いが鼻をついた 誰の血の臭いなのかと頭を上げると、目の前には小さな女の子が倒れていた これは?どんなカラクリなのか、俺はバリアーを抜けたようだった そして俺が体当たりしたのはこの子なのか 俺の横に転がっている新入生の手に握られたオーパーツを見て、俺は本能に任せて行動した 素早くその手からオーパーツを奪い取り、バリヤーの外にいるハルヒに向かって走り出した いったい今日はどれぐらい走ってるだろうか。少しは運動能力の向上に役立つだろうか そんな事を考えていると耳元に誰かの声が聞こえた 「・・・・・・とうとう来た・・・私のきれいな・・・その瞳・・・・・・」 横目でちらりと見ると周防九曜が俺の動きを追っていた 長い黒髪がブラリと横に拡がり、次の瞬間、それが一斉に俺を目がけて飛んできた 追いつかれる前にバリヤーの外にたどり着こうと必死で走ったが、恐ろしいスピードで追いかける槍のような黒髪の方がはるかに早かった 「キョン!」 「キョンくん!」 誰かの悲鳴が聞こえたような気がした 俺の耳元にシュルルルといううなりが聞こえ、今にも無数の槍に貫かれるかと覚悟した瞬間、ブシュブシュブシュと何かが突き刺さる音が聞こえた ハルヒ・・・ ハルヒ・・・ 俺は・・・もう・・・・・・ あれ?痛みがない 呆然とする俺に何か柔らかいものが覆いかぶさった 「早く渡して!」 誰かにそう言われてハッと気がついた 聞き覚えのあるこの声は、朝倉涼子! 「あなたならあのバリヤーを貫通できるはず!走って!」 俺は異を唱える事もせず、ハルヒに向かって走った 再びシュルシュルといううなりが後ろから聞こえ、俺は首をすくめた ブシュブシュブシュ 「キョンくん・・・」 朝倉・・・ 俺の体にかぶさるようにして朝倉涼子が倒れ込んできた 暖かい液体が俺のシャツを濡らす。これは・・・血? 「キョンくん・・・あの時は本当にごめんね。 自分が間違っていたことがやっと分かった 長門さんの気持ちもね」 朝倉! 「せっかく戻って来られて、キョンくんにちゃんと謝ろうって思ってたのに。またこうなっちゃった しょせん私はやっぱり、ただのバックアップにすぎないって事かしら? さようなら、キョンくん。できたら私の事は、あまり悪い思い出にしないでほしいな」 朝倉! 体中を周防九曜の長い槍で貫かれた朝倉涼子は やがていつかのようにサラサラと砂になって崩れ落ちていった 俺はオーパーツをまだ持っている事を確かめた バリヤーの側にいるハルヒからはあと少しの距離だ 俺は残りの距離を猛ダッシュに賭けた。バリヤーの向こうにいるハルヒに手渡す これが突き破れなかったら、その時は俺も終わりだ 周防九曜の槍に貫かれて、朝倉のようにサラサラと消滅する事もできず、血にまみれた無残な死体を晒すのか オーパーツを持った右手をバリヤーの向こうにいるハルヒに必死で突きつけた ハルヒ、これを持ってこっちに入って来い! 不思議な事に、オーパーツは苦もなくバリヤーを突き抜けた 佐々木が作ったクリーム色の靄すらも通り抜けて、ハルヒはしっかりとそれを握りしめた また背後からシュルシュルと唸りが聞こえてきた。身を隠せるものは何もない。助けてくれる朝倉ももういない 俺は目を閉じた そして・・・・・・ 何も起こらなかった 体中を串刺しにされる感覚も、焼けるような激痛もなかった そして俺の後ろに誰かが立っている感覚を感じた こわごわ目を上げてみると、そこには見慣れた制服姿の小柄な女子が立っていた 周防九曜が放った長い黒髪の槍を片手で鷲づかみにしていた 「ああ・・・・・・あなたは・・・ここにいてはいけない存在・・・・・・不快な・・・とても不愉快なもの・・・・・・」 周防九曜は次々と槍を繰り出し、その女子はそれを片手で受け止め続けた 見上げる俺の全身に安堵感が広がる あまりの安堵に体中がガタガタと震え出すほどだった 長門・・・・・・ ついに復活したのか長門・・・ 長門は氷のような無表情を崩さないまま あの懐かしい淡々とした口調で 「・・・・・・お待たせ」 そうつぶやいて、九曜の攻撃を跳ね返し続けていた 「・・・・・・離れないで」 長門は右手で攻撃を受けとめながら左手をバリヤーの外に伸ばした 長門の左腕が5メートルぐらいに伸び、ハルヒの腕を掴んだ バリバリバリと激しい音を立てながら、バリヤーごとハルヒを中に引きずり込んだ 俺は転がり込んでくるハルヒをしっかり受け止めた これでついに役者が全員揃った。SOS団の勢ぞろいだ どんな仕組みになってるのかなんて俺には分からない だけど今、団長以下5人のSOS団メンバーがついに終結したのだ 形勢が一気に逆転した 長門はめまぐるしい動きで周防九曜の攻撃を防ぎながら詠唱し、古泉に群がっていた赤い光を叩き落とす さらには朝比奈さんと藤原との間に白い光の壁を作った 古泉は力を回復して再び橘京子に襲いかかり、朝比奈さんは変な悲鳴を上げながら 「わ、わた、わたたたたたーっ!」 と叫んで藤原と一緒に姿を消した ハルヒがバリヤーの中に入ったのを見た佐々木も中に入ってきて、クリーム色の靄を俺たちに向かって放ってきたが、オーパーツを握りしめたハルヒが無造作にそれを踏みつぶした 俺はしっかりとハルヒの手を握りしめていたが、ハルヒはその手をそっと放した 俺たちの前でガードしていた長門の前に出た すかさず周防九曜が槍を放つが、それらは全てハルヒの手前で力なく失速して落ちた ハルヒの全身から不思議な光が発光している 古泉が最も恐れていた事態がついに訪れたのか 自分の力を自覚したハルヒが、怒りのあまりにとんでもない大暴走を引き起こそうとしているのか? おいハルヒ 危険だぞ長門の後ろに戻れ 「・・・・・・やめなさい」 ん?ハルヒ? 「もうやめなさいって言ってるのよ」 初めて聞くハルヒの低い声だ 腹の底から響くようなハルヒの重低音だった 俺はこの時初めて気がついた 本気で怒った時のハルヒは口数が少なくなるのだと 「有希、もういいわ。無事で何より」 長門も攻撃を収めた 「古泉くん、元の姿に戻りなさい。みくるちゃんも、もう帰ってきなさい」 古泉は赤い光球から人間の姿に戻り 「ふぇぇぇぇぇーっ。 7億年前まで遡っちゃいましたぁ」 と言う朝比奈さんは気絶した藤原の手を掴んで戻ってきた 佐々木率いるチームSOS(この名前は使いたくないな)も攻撃の手を休め じっとハルヒを見つめている オーパーツを奪われた新入生はキョトンとしていたが ニッコリ笑って立ち上がった ハルヒはゆっくり歩いて古泉の前に立った さすがの古泉も疲れた表情で肩で息をしていたが、近づいてきたハルヒを見てわずかに頬を緩めた しかし次の瞬間、俺の心臓も凍りついた パンと乾いた音がして、ハルヒが古泉の頬を叩いていた 「副団長がこんなつまらない争いごとに巻き込まれてどうするのよ! 私の指図もなしに独断専行は許さないわよ!」 古泉は呆然としていたが、ハルヒの目に浮かんでいた大粒の涙を見て顔をこわばらせた 「申し訳ありません、団長」 ハルヒはそのまま朝比奈さんの元に向かい、やはり頬を叩いた 「みくるちゃんはあたしのかわいいマスコットなんだから、こんな危険なことしちゃダメじゃないの!」 朝比奈さんは目をくるくるさせていたが、ハルヒに抱きしめられて大声で泣き出した 「みくるちゃん、ごめんね、無理させて。あたしが早く来れなかったばっかりにこんなひどい目にあわせちゃって」 「すっすっすっ涼宮さーん」 しばらく抱き合っていた2人だったが、やがてハルヒが体を離した 再び俺と長門の前に戻ってきて、やはり長門の頬もパンと叩いた 長門なら軽く避ける事もできたのだろうが、黙ってハルヒの平手打ちを受けた 「有希、有希、あんたはね、何でも1人で抱え込んでるんじゃないの つらかったら、1人でいるのがつらい時は電話しなさいっていつも言ってたでしょ? あたしたち仲間なんだから、どうして今まで何の相談もしてくれなかったのよ!」 抱きしめられてもまだ無表情の長門だったが、大きく見開かれたその両目から、大粒の涙がぽろりとこぼれた 「・・・・・・申し訳ない」 そしてハルヒは俺の前に戻り、俺をグーで殴りつけた おいハルヒ、何で俺だけグーパンチなんだよ 「うるさいバカキョン!あんたは全部知ってたんでしょっ! 知ってるくせに何で私に何も言わなかったのよ! あんたの責任が一番重いんだからね! 一番下っ端のくせに!一番あたしと一緒にいたくせに! あんたがもっと早く話してくれたらこんな事にはならなかったのに! 有希も古泉くんもみくるちゃんも、こんな目に会わずに済んだかもしれないのに!」 いやハルヒ これにはいろいろと事情があってだな 「黙りなさいっ!!!」 ハルヒは再び俺をグーで殴った そしてハルヒはくるっと体を反転させて佐々木に指を突きつけた 「神さまになりたいのなら好きにすればいいわ 世界を作り変えたいのならいつでもどうぞ ただし、1つだけ言っておくわ あたしの大事なSOS団員に指一本でも触れたら、今度はただじゃおかないからね! あんたがどこの世界のどんな神さまだろうと、あたしが必ず探し出してこの世から消し去ってやる!」 佐々木はしばらく呆然とハルヒを見ていたが やがてクスクス笑いだした 「さすがは涼宮さんね やっぱり私はかなわないわ ちょっとだけだけど神さまなんて言われていい気になってたのかもしれないわね ごめんね涼宮さん あなたの大事な仲間をこんな所にまで連れて来てしまってごめんなさい でも1つだけ分かってほしいの あの子は全然悪くないから あの子のために、この世界を作り直すエネルギーを分けてほしいって頼まれて それで周防さんにも協力してもらって今回の作戦になったの 責任は全て私にあります。憎むなら私を憎んで下さい だけどこの子は別だから。一人ぼっちでここで生きていくのがかわいそうだと思ったから だからこの子だけは許してあげて」 ハルヒは無邪気に笑う新入生をじっと見た 「あなた、名前は?」 「名前はまだありません」 「もう北高はやめちゃうの?」 「えっと、まだ決めてません」 「そう、じゃあいいわ。でもこれはもうしばらく預かっとくから、後で学校に取りに来なさい」 「はい!」 ハルヒはそれ以上何も言わずに戻ってきた 呆然とする古泉と、泣きじゃくる朝比奈さん、そして無表情のままで涙をこぼす長門を俺の前まで引っ張ってきた 「さあキョン、帰るわよ」 ああ これだけ暴れりゃ充分だろ 暴れ足りないのはハルヒだけじゃないのか? 「・・・キョン」 え? 「マジで殺されたいの?」 ・・・・・・ 「帰るわよ」 俺たちは輪になって手をつないだ 「みんな、目を閉じて元の世界を念じるのよ 有希のマンションのあの部屋をね」 「・・・・・・それでは不足・・・・・・終わらせない・・・・・・」 後ろから小さな声が響き、長い髪の毛を狼のように空気で膨らませた周防九曜が襲いかかってきた ハルヒの持っているオーパーツを目がけてギラギラした光の束が襲いかかる すぐに反応したのは長門だった 高速呪文を唱える余裕はなく、長門は瞬間移動でハルヒの前に立った 「有希!」 長門は小さな体を太い光に貫かれ、その目を大きく見開いている 「有希!」 「長門さん!」 長門! 「・・・・・・いい・・・・・・肉体の損傷は無視できるレベル」 周防九曜はその長い髪が大きく膨れ上がり 小柄な体を5倍ほどの大きさに見せていた 「・・・・・・ここで終わる事はできない・・・・・・あなたは美しくない・・・・・・」 長門が素早く詠唱し、俺たちを包むように、白い光の壁が発生した 「早く戻った方がいい」 「・・・・・・あなたは美しくない・・・・・・この場所にはふさわしくない」 周防九曜の体もオレンジ色の光に包まれ、ゆっくりと空中に浮かびあがった すかさず長門が追従し、同じように空中に浮かんだ 「有希!もうやめなさい!もういいのよ!」 「このインターフェイスを残しておくのは危険。私が始末する」 おい長門、もうやめよう。こんなの放っといてみんなで帰ろうぜ 「それはできない。このインターフェイスは暴走を始めている」 暴走? 「そう」 「・・・・・・私は今日、習いました。言葉の意味を・・・・・・これはお花です。とても美しい・・・・・・あなたが好きです・・・・・・お前は死ね」 長門、こんなの相手にして大丈夫なのか? 「勝算はある。早く退避を」 おい佐々木、ここは危険だ。お前も全員連れて帰れ ハルヒ、俺たちも帰ろう 「でも有希が・・・」 長門が勝算があるって言うんだから信じようぜ 「有希・・・」 「・・・・・・私は、歩きます。遠くのお空に。明日は、お肉を、食べました」 見守っているうちに周防九曜の様子が明らかにおかしくなっていた 第1形態が指からの光線の矢、第2形態は髪の毛の槍 とするとこれが第3形態なのか、オレンジ色の球体に包まれたその体から次々と光の束が長門に向かってほとばしった 長門は素早く詠唱しながらその光を直前で跳ね返し、返す刀でオレンジ色の光に切り込んでいった 「キョン、私たちはこれで戻る事にするよ」 ああ佐々木、ここは危険だ 「君たちも無事帰ってきてくれよ」 もちろんだとも。気をつけてな 佐々木と橘京子、そして藤原の姿が消えた おいハルヒ、俺たちも帰ろう 「でも・・・有希が・・・」 帰ろうとしないハルヒの気持ちは俺にもよく分かる ようやくハルヒにも今までの俺たちの行動が読めてきたのだろう 自分の知らない場所で行われてきた壮絶な出来事に目を丸くし、また長門を1人残しておけないという気持ちは俺たちももちろん一緒だ 上空で繰り広げられるすさまじい戦闘に、俺たちは目を奪われていた 周防九曜は次々と攻撃を繰り出し、長門はそれを防ぎながら何やら光を出して攻撃もしていた 下から見ている俺たちには戦況はさっぱり理解できない やがて飛び道具では埒が明かないと見たのか周防九曜は距離を詰め、再び黒髪の長い槍を四方八方から突き立ててきた 何本かずつまとめて払い落していた長門だったが、そのうち数本が無残に体を貫いた 「有希!」 「私は大丈夫。それより早く帰還すべき」 「あんたを置いて帰れるわけないでしょう!」 「置いて行っていい。必ず戻る」 「本当?」 「本当」 「絶対に帰って来なさいよ!有希!」 「約束する」 まだ名残惜しそうなハルヒをせきたて、俺たちは再び手をつないだ するとまだあの新入生が残っているのに気がついた。おい、お前はこっちに来なくていいのか? 「ここが私の世界ですから」 こっちは今から危険な状態になるかもしれないんだぞ 「構いません。その時はそちらの世界に行きます」 絶対生きろよ、こっちでもあっちでもいいから 「はい!ありがとうございます先輩」 「さあみんな祈って!向こうに帰れますように。・・・・・・有希が無事に帰って来れますように」 足元が激しく揺れ、時間移動とも次元震ともまた違う感覚の後で、俺たちは再び固い地面に立った 「ほわーっ」 朝比奈さんの溜息とともに、ようやく地球に帰ってきた事を実感した 出発点と同じ、長門のマンションだった。そこにはまだ佐々木たちがいた 「無事帰ってきたね」 ああ 「どんな様子だったの?」 まだ長門と周防が戦ってるよ どうやら異常動作を起こしたらしい 「本当に申し訳ない。我々の仲間なのに何もできなくて」 まあしょうがないだろ。何しろまともに会話もできないヤツだったからな 「古泉くん」 「はい?」 「みんなを連れて帰って」 「えっ?」 「みんなを家まで送ってあげて」 「しかし長門さんがまだ・・・」 「いいから!」 「はい、では後はよろしくお願いします」 古泉はまだ泣きじゃくっている朝比奈さんを抱き起こし、佐々木たちも連れてマンションを出ようとした 「ふん、結局規定事項の確認のみか、骨折り損とはまさにこの事だな」 藤原がつぶやいて立ち上がった 「俺はここで失礼するぜ。どうやらこれ以上の展開はなさそうだしな。ところであんた」 こいつは俺の朝比奈さんをあんた扱いするのか?許さん 朝比奈さんがビクッと体を震わせた 「は、はいっ?」 「つまらない任務だったけど、あんたと戦えてよかったよ」 「ふぇっ?」 「まさか7億年前に連れていかれるとは思わなかった」 「あっ、あっ、あれはその涼宮さんの・・・」 「途中で時間の流れについていけなくなった。気絶するとは時間移動員失格だな おかげさまですごいものを見せてもらった。さすがは歴史にその名を残している人物だけの事はある これは禁則だけどな」 「えっ?えっ?」 「あんたに出会えてよかったよ、朝比奈みくるさん。今度会う時は・・・その・・・禁則だ」 「へ?」 「ありがとう、大先輩」 藤原は意味不明な禁則事項を連発しながら朝比奈さんと握手を交わし、佐々木に軽く頭を下げ、俺たちを一瞥してその場から消えた 「何なのよあいつはいったい」 「わわわわたし・・・・・・」 どうやら藤原ってのは朝比奈さんよりもまだ未来の人間なのか しかしちょっと聞こえたけど、朝比奈さんが歴史に名前を残すとか 「じゃあ、あとで必ず連絡を下さい。何時になっても待ってますから」 古泉はそう言って残りの全員をまとめ、マンションを出ていった 俺は別に帰れとも言われなかったのでそのまま残っていたが、誰もいなくなるとハルヒが口を開いた 「さあキョン、もう一度行くわよ!有希を助けに」 へっ そう言うと思ってたよ団長さま どこまででもついていってやるぜハルヒ 地獄の底まででもな 俺とハルヒは手をつないで、再び長門の部屋の額の前に立った 「行くわよキョン」 ああもちろんだとも 呼吸を合わせ、まさに飛び込もうとする寸前に 「・・・・・・行かなくていい」 背後から小さな声がかかった 「有希!」 長門!帰って来れたのか? 「帰ってきた」 長門は布団をすっぽり首までかぶっていた 黒い瞳は大きく見開かれたままだ 「有希!よかった!帰ってきてくれて」 「帰って来ると約束した」 長門・・・ 無事だったか 周防はどうなったんだ? 「・・・・・・周防九曜は消滅した。暴走を止めることはできなかった」 あの新入生は? 「まだあそこにいる。でもまたこの世界に来たいと言っていた」 「本当に?有希?」 「そう。そのオーパーツを取り戻しに来る」 「これ?」 「そう。それは彼女にとってとても大事なもの」 「ふうん・・・・・・」 なあ長門 「何?」 ちょっと布団めくってもいいか? 「ちょっとキョン!こんな時に何エロ目線になってんのよっ!」 違うぞハルヒ ちょっと心配だったから 長門が傷ついてるんじゃないかと思ってな 「・・・・・・見ない方がいい」 ん? どうしてだ長門? 「通常の神経構造を持っている人間にはこの状態はかなりショックを受けるはず。だから見ない方がいい」 「有希!あなた怪我したの?どうなの?」 「肉体の損傷はすぐに再生できる。でも少し時間がかかる」 「有希・・・・・・」 ハルヒは構わずに布団をめくり上げようとする 俺は・・・すまん長門・・・ ちょっと耐えられそうになくて、思わず目を背けてしまう 「万が一にもこれを映像化しようなどという野望があるならここは自粛すべき」 長門は内側から布団を押さえ、ハルヒに抵抗していた 「医療技術者でもこの状態は正視に耐えないレベル・・・見ないで」 「有希、本当に大丈夫なの?」 「大丈夫」 おいハルヒ、長門が嫌がってるんだ、もうやめておけ 「分かったわよ・・・」 「頼みがある」 「何?有希」 「・・・・・・もう帰ってほしい」 「ん?」 「・・・・・・肉体の回復がうまく進行しない。エラーが発生している」 何か問題があるのか長門? 「情報処理にエラーが頻発している・・・・・・原因は・・・・・・禁則」 長門? それまでまっすぐ上を見つめたままの長門が首だけを横に曲げた その寸前に、大粒の涙が頬を流れ落ちるのが見えた 「・・・・・・お願い・・・・・・帰って・・・」 長門・・・・・・ ごめんな お前の気持ちに・・・・・・俺は応えてやれなかった それが・・・お前の禁則なのか? 俺の目の奥が、なぜかじんわりと熱くなってきた 長門の禁則の理由が何となく理解できる すまん長門 それでもまだ長門の布団を引っぺがそうとしているハルヒを引きずるようにして、俺は長門の寝室を出た 「有希!来週には絶対学校に来るのよ!」 「・・・・・・それは約束できる」 「じゃあね!絶対よ!」 長門 「・・・・・・・」 また部室でな 「・・・・・・・ありがとう」 俺とハルヒは長門の部屋を後にし、黙ったままでエレベーターに乗った マンションの玄関を出ると、そこには佐々木が待っていた 「ごめんなさいね涼宮さん。いろいろ迷惑かけて」 「もういいってば」 「長門さんは帰ってきたの?」 「今帰って来たわよ」 「周防さんは?」 「・・・・・・戻らなかった」 「ふうん、やっぱりか。結局私は仲間を守れなかった あなたはちゃんと全員を無事に連れて帰ってきたのにね。やっぱり私はリーダー失格か」 「そんな事ないわよ、どうしようもない事もあるし」 ああそうだよ佐々木。周防は暴走していた ああするしか方法はなかったみたいだからな あの長門がそう言ってたんだから 「だけどキョン、僕がもっとうまくやれば、その暴走を食い止められたかもしれない」 それは結果論だろ 周防は帰って来れなかったけど、後は全員無事だったんだから もうそれでいいんじゃないか? あの新入生もまた帰って来るよ。オーパーツを受け取るためにな 「そうか・・・・・・君がそう言ってくれるのなら・・・納得するよ。ねえ涼宮さん?」 「ん?」 「周防さんはいなくなっちゃったし、藤原さんは元の世界に戻った だけど私と橘さんはまだこの街にいるわ もしかしたら、また私たちが出会う事もあるかもしれないんだけど、その時は・・・・・・」 「その時は?」 「友達として会ってくれるかな?」 ハルヒはまだ怒りを含んだ目で佐々木を見ていたが、しばらくしてその目が柔らかく光った 「もっちろんよっ!一緒に冒険した仲間なんだから! これからもまた、不思議探しの旅に出るのよ!」 おいハルヒ これだけものすごい体験をしておいてまだ足りないのかよ それに北口周辺なんかに不思議が落ちてるはずないって これだけやってもまだ学習してくれないのかお前という女は 「当たり前じゃないのバカキョン これからは不思議を発見するだけじゃなくて作りだすのよ 誰かが言ってたでしょう! 『待ってるだけでは冒険は訪れてくれない』ってね!」 ほう その誰かってのはもしかしたら頭に黄色いリボン巻いて 仲間を危険にさらすのが得意な北高の女子の事じゃないでしょうね? 「それは今までの話よ!これからはね、あたしがあんたたちを守ってあげるんだから!」 やれやれ このバカの脳下垂体を解剖して、一度長門に学術調査でもしてもらいたいもんだ 「佐々木さん!あんたたちもこれからは準団員として認定してあげるから、たまには不思議探索に加わる許可を与えるわ」 「本当に?ありがとう」 「その時は新人として十分にこき使ってあげるから覚悟しときなさいねっ!」 「はい!団長!」 何だこの2人はいったい 完全に意気投合してるじゃないか 史上最悪の神様のツートップだ 1958年ワールドカップのブラジル代表チームでも勝ち目はないだろう ハルヒと佐々木はしばらく盛り上がっていたが 「じゃあ帰るね涼宮さん」 「うん、またね」 「じゃあねキョン、涼宮さんをお願い」 これ以上何をお願いするんだよお前は?もう勘弁してくれ マンションの前で佐々木と別れ、俺はハルヒと手をつないだ 7階の窓から誰かが見下ろしている気配も感じたのだが、残念ながら俺にはどうする事もできない 銀河系中の長門マニアに殺意を持たれてしまったのか それとも喜んでもらえたのか やれやれだよ全く リンク名 その4に続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/564.html
金 は人類の発展の中で生み出された素晴らしいシステムである。 このシステムがあって現代社会は成り立っているのだといっても過言ではない。 しかし、長所ばかりではない。 金に価値がありすぎるために金を巡っての争いが起きたり、 金をあまり持たない者が社会的に弱い立場になったりする。 今の日本には、物々交換していたころの人々のような暖かみが必要だろう、とたまに思ったりする。 さて、かくいう俺も金の無い高校生のひとりだ。しかし、今、俺は金が必要だ。 金が無い高校生が金を稼ぐためにすることといえば、そう―― 「バイト・・・ですか?」 部専用の癒し系メイドさんがきょとんとした顔で答えた。 「そうです。朝比奈さん、なにかいいバイトご存知ありませんか?」 「知りませんね・・・。すいません。私バイトしないので。 でもどうしてお金が必要なんですか?」 そうだな。うるさい団長様もまだ来てないことだし、今の内に話しておくか。 「長門と古泉も聞いてくれ。実はだな。」 俺は自分の計画していることを他の3人に話した。 「あー。そっかー。そうですよね。そっかー・・・。」 朝比奈さんは納得したように手を叩いた。 一方、長門は何一つリアクションする事なく、黙々と読書を続けている。聞いてたのか? 「聞いていた。」 そうか。ならいいんだが。何かリアクションがないと聞いてないのかと勘違いしてしまう。 「それはまた、面白そうな話ですね。でもやるなら涼宮さんにバレないようにしないと。 バレたら色々と面倒そうです。」 古泉がニヤケ顔で言う。面倒になるから、ハルヒがいない時にこの話をしたんだよ。 「それで、資金は誰が出すのですか?なんなら 機関 の方で用意させてもらっても結構ですが?」 それじゃあ意味が無いだろう。何の為にやると思っているんだ?資金は俺達で出すに決まっているだろう。 「冗談です。そんな本気な顔しないでください。」 古泉はニヤケ顔を崩さず小さく手を振る。 お前の冗談は冗談に聞こえない。それに笑えないぞ、古泉。 「すみません。僕にギャグセンスは無いもので。 でも、あなたがクリスマスにやったあれよりは良いと思いますがね。」 やめろ!あの時の話はするな!思い出したくない。1秒たりとも思い出したくないぞアレは。 「キョンくん、それだと私もお金が足りないんですけど・・・。」 俺が古泉を睨んでいると、横で朝比奈さんが言った。 俺は顔を朝比奈さん専用スマイルに切り替えて応対する。 「それだったら、朝比奈さんも一緒にバイトを探しましょう。」 「僕も一緒にいいですか?」 古泉が割り込んでくる。 「お前にはもうバイトがあるだろう。赤い玉になってぴゅんぴゅん飛んでりゃいいじゃないか。」 「閉鎖空間も随分ご無沙汰でしてね。仕事が来ないんじゃ稼ぎようもありませんよ。」 古泉は肩をすくめてみせた。俺がその怪しい古泉の動きをじっと見つめていると、 「何て、冗談です。僕は充分お金を持っていますよ。」 冗談に聞こえないし、どこから冗談かわからないし、笑えないし、自慢くさいし、憎たらしい。 「おやおや、嫌われたものですね。」 古泉はまた肩をすくめて見せた。お前は1日に何回肩をすくめているんだ。 「そうか・・・あの店だったら雇ってくれそうですね・・・。」 俺がバイト先はそこにしようかと考えていた時、 「ヤッホーー!!遅れてゴッメーン!」 うるさいのが来た。 「ん?何これ?求人情報誌?」 ハルヒが俺が長テーブルに置いていた求人情報誌を手にとる。 「何あんた。バイトなんかするの?」 「しねぇよ。それは古泉のだ。」 と、嘘をついておく。古泉は一瞬驚いたような顔をしたが、 「ええ、ちょっと高校生らしくバイトでもしてみようか、と持ってきたのですが、 見たところ僕向きなバイトは無いようです。 やっぱり僕は部室でボードゲームをしてる方が気楽でいいですよ。」 と、冷静に対応した。ちっ、もうちょっと困れよ。 「ふーん。」 ハルヒは求人情報誌を古泉に渡し、またいつもと同じ場所に座った。 「王手。」 「お手上げです。」 今日もまたいつもと同じSOS団の風景だ。 俺と古泉は、古泉のボロ負けの将棋を楽しみ、 朝比奈さんは編み物、長門は読書だ。 我等団長様は、電脳界の不思議探しと銘打って ネットサーフィンをしながらニヤニヤしている。何がそんなに面白いのだろうか。 そして黙々と時間は流れ―。 ぱたん。 本が閉じられる音。これがこの団解散の合図だ。 「今日はみんなで一緒に帰りましょ!」 ハルヒが元気ハツラツな顔で言う。 「悪いハルヒ。俺と朝比奈さんはこれから少し用事があるんだ。」 そういうと、ハルヒは元気ハツラツな顔を解き、口をへの字にして、 「何よぉ、つれないわね。まぁいいわ。有希、一緒に帰りましょう!」 「そう」 古泉を忘れているぞ、ハルヒ。 ハルヒ、長門、古泉と別れ、俺は朝比奈さんと肩を並べて大森電気店に向かった。 「やぁ、いらっしゃい。今日はどうしたんだい?」 店につくと、店主さんが愛想のいい笑顔で話しかけてきた。 「いやぁ、今日は少し、お願いがありまして。」 俺は店主さんに事情を説明した。 「そういうことかい。丁度、お手伝いさんが欲しいと思っていたところなんだよ。 うちでいいなら、よろしく頼むよ。」 「本当ですか!?」 朝比奈さんと俺は同時に言った。 「ああ。ところで、土日はいいとして、平日はどうするんだい?」 「早めにお金を貯めたいので、俺は平日も学校が終わったら来ることにします。」 「お嬢ちゃんは?」 「えーっと・・・。キョンくんがそうするならわたしもそうしようかな。」 「わかった。準備しておくね。じゃあ、今日は帰って明日また来なさい。」 「はい。ありがとうございました。」 俺と朝比奈さんは、声を合わせてお辞儀をし、その場をあとにした。 次の日。 「キョン、今日も来なさいよ。」 「何処にだ。」 「決まってるじゃない。SOS団部室よ。」 わかっている、と言いかけて俺は口を止めた。そうだ、今日からバイトだ。 「すまんなハルヒ。俺はしばらく顔を出せないと思う。」 「えっ?どうして?」 「バイトがあるんだ。」 俺がそう言うと、徐々にハルヒの眉が吊り上がっていった。 「なーに言ってるのキョン!!バイトなんかよりSOS団を優先させなさいよ、SOS団を!」 「この間の不思議探索パトロールのときのおごりで、俺の所持金が底をついてしまったんだよ。 俺も苦労してるのさ。」 「何が苦労よ!!そもそもあんたが集合時間に遅れなきゃいいんじゃない!!」 ハルヒは立ち上がって言った。眉がますます吊り上がる。 「俺は他の団員のために自らおごりを引き受けているのさ。」 「下手な嘘つくんじゃないの!どーせ毎日寝坊してるだけでしょう?」 「それに、あんたが来なけりゃ・・・!!」 ハルヒはそこまで言うと、口を開けたまま静止した。どうした? 「・・・いや、何でもない。」 ハルヒはそう言うと、黙って席に着いた。なんだってんだ? そんなことをしていると、担任の岡部が教室に入ってきた。 「よーし。ホームルーム始めるぞ。」 そして放課後。 ハルヒと別れを告げて、俺は学校を出た。 校門まで行くと、朝比奈さんが両手で鞄を持ちながら立っていた。可愛らしい。 「朝比奈さん。」 俺が言うと、朝比奈さんはこちらに気付いたらしく、ぱたぱたと駆け寄ってきた。 「行きましょうか。」 大森電気店につくと、店主さんは丁度大型テレビの入ったダンボールを運んでいるところだった。 「やぁ、来たね。」 店主さんはこちらに気付くと、顔を上げてそう言った。 「こんにちは。」 「はい、こんにちは。じゃあ、まず作業服に着替えてもらうね。」 作業服? 「うん、これ。」 店主さんは服のわき腹の部分を摘まんでぴらぴらさせる。 緑色のこの服、これが大森電化店の作業服らしい。 「奥に用意してるからね。そこで着替えてきて。」 「わかりました。」 電気店の奥のドアを開けると、畳が敷かれている小部屋があった。 ここが店主さんの移住スペースらしい。さらに奥に2階に続く階段がある。 ちゃぶ台の上に、二人分の作業服が置いてあり、その上にメモ書が置いてある。 これに着替えてね だそうだ。 「じゃあ着替えますか。」 「待ってください。」 朝比奈さんはきょとんとする。 「ここで二人で着替えるわけにもいかないでしょう。 俺は少しの間外に出てますから、その間に着替えてください。」 そう言っても朝比奈さんはまだきょとんとしていたが、 10秒ほどして意味が理解できたらしく、顔を赤らめて、 「あっ、そうですよね。着替えるところ見られるのはお互い恥ずかしいですよね。 すいません。それじゃあお先に。」 朝比奈さんになら俺の下着姿を見られても問題ないが。 とかくだらないことを思いつつ、俺は部室の時と同じように一礼して部屋を出た。 「どーぞ。」 朝比奈さんの可愛らしい声を確認し、俺はドアを開けた。 中には、作業服の朝比奈さんがいた。 メイド服の可愛さには劣るものの、これはこれで別の可愛さがある。 まぁ朝比奈さんが着ればどんな服でも可愛く見えるのだが。 「じゃあ、次はキョンくんどうぞ・・・。 私は店長さんに仕事を貰ってきますね。」 そう言うと朝比奈さんは部屋を出てぱたぱた走っていった。 さて、着替えるか。 初めての電化店での仕事は意外にも、かなりしんどいものだった。 主な仕事は大型の電化製品を運ぶことで、 その他には店の商品に値札をつけたり、商品の確認、などなど。 電気店の仕事がこんなにきついものだったとは。 バイトの終了時刻は夜9時。 その頃になると、俺も朝比奈さんもへろへろになっていた。 「お疲れさん、今日の給料だよ。」 給料が入った封筒が手渡される。 今日は帰ったらすぐ寝よう。 今日もまたあのしんどい上り坂をのぼり、登校。いやになるね。坂にエスカレーターでもつけてくれないものだろうか。 教室に入るや否や、ハルヒが大声で言ってきた。 「キョン!あんたが働いているところ何処?」 「大森電気店」 俺は鞄を机に置きながら答えた。 「えっ、そうなの?」 ハルヒは意外そうな顔をする。 「どうしてだ?」 「いや、みくるちゃんも急にバイト始めるとか言い出して、 ひょっとしてあんたたち同じところに働いてるんじゃないかって思ってたんだけど。」 思ってたんだけど・・・?俺達は同じところに働いているはずだ。 でもハルヒがそう言っているってことは・・・。 「朝比奈さんは何処で働いているって言っていた?」 「近所の喫茶店だって。」 「へぇ。」 喫茶店?何故嘘をついているんだ、朝比奈さんは。 とりあえず、朝比奈さんにも何か理由があるのだろうから、ハルヒに本当のことを言うのはやめておいた。 今日は日曜日。不思議探索パトロールの日だが、俺と朝比奈さんは欠席することになった。 「おはようございます。」 俺が電気店に着いた時、朝比奈さんはもう作業服に着替え、作業を始めていた。 真面目だな、この人は。これでドジがなければどれだけ有能な店員だろうか。 「彼女は真面目で助かるよ。」 と、店主さんが笑いながら小声で言った。 「ところで朝比奈さん。」 「何です、キョンくん。」 「あなた、ハルヒにバイト先嘘教えてましたね。何故です。」 俺がそういうと朝比奈さんはビクッとした。何故驚く。 「だって、私とキョンくんが一緒に働いてることを涼宮さんがしったら、 また涼宮さん モゴモゴ・・・」 なんかモゴモゴ言っているが、何をいっているのか分からない。 まぁいいか。 日曜日なだけに、平日よりも客の数が多い。 それに合わせて俺達の仕事量も増える。日曜日だから時間も長いし。 ふと時計を見ると、もう正午になっていた。あと半日、頑張れ俺。 「キョンくぅぅーん。これ、重くて持てないんですけどー。」 店の奥から朝比奈さんの声が聞こえてきた。はいはい、ただいま。 見ると、そこにはいつも持っているののテレビの段ボール2倍ぐらいのサイズの段ボールがあった。 段ボールの中身は冷蔵庫らしく、とても一人じゃ持てないだろう。 「俺はこっち側持ちます。朝比奈さんはそっち側持ってください。」 「あ、はい。」 俺と朝比奈さんは、合図と共に、同時に段ボールを持ち上げた。 段ボールを縦じゃなく、横に持った方が効率が良いというのは後で気付いたことだった。 俺と朝比奈さんは、段ボールを持ったまま店先にでる。 どすん。 「っと。これでよし。」 「ありがとうございました、キョンくん。助かりました。」 朝比奈さんが俺に向かって微笑む。 いえいえ、お礼なんていりません。あなたのその微笑みだけで充分です。 むしろお釣りがくるぐらいです。 ふと、フフフ、と微笑む朝比奈さんの背後の人影に気付き、 俺はぎょっとした。 無表情少女とニヤケ顔青年に挟まれた団長様が、そこにいるではないか。 「どういうこと?」 俺と目があうなり、ハルヒはそう言った。 「どういうことって、バイトだって言っただろう。」 「そんなことじゃないのよ。」 ハルヒの声がいつもより少しだけ冷たい気がしたのは気のせいじゃないだろう。 「みくるちゃん。」 ハルヒは朝比奈さんをじろりと睨む。朝比奈さんはハルヒの視線に身体をビクッとさせる。 「あなた、喫茶店に働いてるって言ったわよね。」 「言いました・・・。」 何だ何だこの険悪ムードは。ハルヒ、朝比奈さんを睨むんじゃない。 「キョン。なんであんたみくるちゃんと同じとこでバイトしてるって言わなかったの?」 ハルヒは今度は俺をギロリと睨んで言った。 「なんでって言われてもねぇ・・・。」 気付けば、この険悪ムードに圧倒されて、店の周りの客はいなくなっていた。 営業妨害だ、ハルヒ。 「帰るわ。」 ハルヒは不機嫌そうに踵を返すと、そのままずんずんと歩いていった。 何だってんだ。 バイト先を隠していたのがそんなに気に食わなかったのか? それにしてもそんなに怒る事はないだろう。ったく何考えてるのやら。 「ごめんなさい・・・私のせいです・・・。」 朝比奈さんが涙目で言った。何故朝比奈さんが謝る必要があるんですか。 「だって私が・・・・・・涼宮さんを騙そうと・・・」 朝比奈さんはそのまま俯いたまま、しばらく硬直し、 顔を上げると、何が起こったか把握できていない店主さんのところに駆け寄っていって言った。 「すみません・・・。突然ですみませんが私、今日でやめます。」 次の日、ハルヒはまだ不機嫌オーラを漂わせていた。 「今日もバイトがあるから。」 俺がそういうと、ハルヒは窓の外から視線を外さず言った。 「あっそ。みくるちゃんと頑張ってね。」 何なんだ、一体。とりあえず朝比奈さんの事を伝えるとするか。 「そうそうハルヒ。朝比奈さん昨日でバイトやめたから。」 そう言うと、ハルヒは少しだけ目を見開き、俺を見て、 すぐにまた元の不機嫌な表情に戻って窓の外に目をやった。 「そう。」 偶然にも帰りの廊下で朝比奈さんに会った。 聞いたところによると、今度こそ本当に近所の喫茶店でバイトをするらしい。 コーヒーをひっくりかえさないか不安だが。 そんな事を思いつつ、今日もまた大森電気店に向かう。 朝比奈さんと一緒じゃないと、仕事にやる気が出ない。 しかし、最近頭の中はバイトのことばっかりだ。バイト中毒か? 目的のために頑張らなくてはならないからな。うん、頑張れ俺。 バイトを続けてる間にあっという間に金曜日になってしまった。 もうバイトも慣れてきた頃だ。 さて、と。バイトいきますか、バイト。 と、自転車で坂を下っていると、見覚えのあるふわふわした髪の少女が目に入った。 「朝比奈さん!」 俺は自転車のブレーキをかけ、朝比奈さんの近くに停車する。 「あ、キョンくん。」 朝比奈さんは、もうすっかりハルヒに怒鳴られた時のブルーモードを脱したようだ。 一方のハルヒはまだ不機嫌オーラをムンムンさせているのだが。 「一緒に帰りましょう。鞄、持ちますよ。」 俺は朝比奈さんの鞄を受け取ると、空いている自転車の前かごの中に入れた。 「どうです、喫茶店の方は?」 「いやぁ、私のドジで店の人に迷惑をかけっぱなしです。」 朝比奈さんは右手を握り拳にし、自分の頭をコツンと叩いて、舌を出した。可愛い。 しかし、 ドジ ねぇ・・・。 俺の頭の中にコーヒーの入ったお盆をひっくり返して涙目の朝比奈さんの姿が浮かんだ。 そもそもハルヒが「みくるちゃんをドジっ娘にする!」 とか言い出さなければ朝比奈さんがこんなにドジをすることはなかっただろう。 「全く、ハルヒは朝比奈さんに迷惑かけてばっかりですね。」 「いえいえ、気にしてませんよ。」 朝比奈さんは微笑む。 「いえ、あんなのには一発ガツンと言ってやればいいんです。 『迷惑だ!』ってね。そうすればハルヒも少しはおとなしくな――」 「仲いいわね、二人とも。何の話かしら?」 突然発せられた声は朝比奈さんの声ではない。振り返ると、その声の主が立っていた。 「ハ・・・ハルヒ・・・」 「私が迷惑だって?」 ハルヒがいつものように眉を吊り上げる。声が微妙に震えてる気がしたのは気のせいだろう。 「いや、冗談だ、すまん。本気にするなよ。」 「ふーん。」 朝比奈さんは、ハルヒの姿を見るなり黙り込んでしまった。 「ハルヒ、今日SOS団は?」 「休んだわ。ノリ気じゃなかったのよ。 それで、帰るついでにキョンに荷物持ちでもさせようと思ってたけど・・・。」 ハルヒは自転車の前カゴをちらりと見る。 「先客がいるみたいね。」 そう言うと、ハルヒは俺をキッと睨みつけ、坂を駆け下りていった。 何だってんだ。最近機嫌が悪いな、あいつ。 横を見ると、朝比奈さんがまたブルーモードに突入していた。 俺はブルーモードの朝比奈さんを喫茶店まで送りとどけ、 また大森電化店に向かった。 足が痛い。筋肉痛だ。 「やぁ、また来たのかい、キョンくん。大丈夫かい?働きすぎじゃないかい?」 「いえいえ、大丈夫です。高校生の体力を甘く見ないで下さいよ」 俺は強がって見せたが、本音を言うと疲れていた。 しかし、 あの日 まで時間が無いんだ。弱音など言ってられない。 「さて、まずは何をすればいいですか?」 「じゃあ、そのテレビを運んでくれ。」 日が落ちてきた。バイト終了まであと30分だ。 「この段ボールも運ばなくちゃな。」 段ボールの取っ手を掴む。む?力が入らない。 疲れすぎか。ふぅ。 俺は一息置いて、今度は腰に力を入れてそれを持ち上げた。 これを店先に・・・っと。ん? やけに足元がふらふらとする。思わず手を離してしまった。 何だこれは?重力の感覚がおかしい。 上に引っ張られているような、身体が逆さになっているような。 あれ?視界が・・・ぼやけ・・・て・・・・・・。 目を開けると、そこには白い天井が広がっていた。 「お目覚めですか?」 横を見ると、古泉がナイフで林檎の皮を剥いている。 「あなたの看病をするのも2度目ですね」 看病?というとここは・・・。 上体を起こしてみる。病室だ。左手には点滴の針が刺されている。 「どうして俺はここにいる?」 「覚えていないのですか?あなた、バイト中に倒れたそうですよ。」 バイト中・・・。ああ、そうか。段ボールを運んでいる時にいきなり視界が真っ暗になったんだ。 古泉はしゃりしゃりと黙々と林檎を剥いている。 「ハルヒは?」 俺は無意識に聞いていた。 「涼宮さんですか・・・。一緒に見舞いに行こうと言ったのですが、行かないと。 説得したんですがね。どうしても行かないと聞かなくてですね・・・。 何やら様子が変でした。それで仕方無しに僕だけで来たんですよ。」 古泉は林檎を剥き終わると、それを一口サイズに切り、皿にのせる。 「長門と朝比奈さんは?」 「今頃彼女を説得していると思います。」 古泉はおもむろに紙袋からもう一つ林檎を取り出す。もういらねぇよ。 古泉が、3個目の林檎を剥きおわる頃、廊下からコツコツと足音が聞こえてきた。 遅れて、誰かが喚く声も。 「・・・と・・・ちゃん・・・・・・ないって・・・・・・。」 ハルヒ?次第に足音と共に声が大きくなってくる。 「行きた・・・ない・・・言って・・・しょう?」 ハルヒだ。 「有希!!離して!!行きたくないのよ、キョンのところなんか。」 ハッキリ聞こえるぐらいの距離になってきた。 「離しなさい!!あの馬鹿キョンなんかほっとけば――」 「あなたは勘違いをしている。」 声がドア前ぐらいにきたところで、長門がハルヒの声を遮るように言った。 「何をよ。」 不機嫌な声なハルヒ。 「彼のこと。」 「キョンのこと?」 「そう。」 俺の事? 「どういうことよ。」 「彼がバイトをしていた理由。」 長門は淡々とした口調で言う。 「え・・・?」 「知ってる?」 「オゴリで金欠なんでしょ。そう言ってたわ。」 「違う。」 「・・・?・・・違うって?」 ハルヒはきょとんとした声で言う。 まさか、おい、長門。 「彼はあなたの誕生日プレゼントを買う為に働いていた。」 バラしやがった。俺の苦労が水の泡だ、バブル崩壊だ。 …。 沈黙が流れる。ハルヒは押し黙ってしまったようだ。 つられてこちらも黙ってしまう。 1分ほどたって、ハルヒが口を開いた。 「ちょっと1人にさせて。」 足音が、来た方向とは今度は逆の方向に響いていった。 それから10秒ほどして、がちゃり、と音をたて、静かに病室のドアが開いた。 長門と、付き添うように朝比奈さんが立っている。 長門は俺を見て、首を1ミクロンだけ下に動かし、部屋を出て行った。 なんだってんだ? 「じゃあ僕もそろそろ帰ります。林檎、食べてくださいね。」 古泉はニコリと微笑み、たたんでいたブレザーを羽織って、一礼して出て行った。 それから30分ぐらいたっただろう。 コンコン。 ドアがノックされた。 「どうぞ。」 がちゃり、と音を立て、ドアが開き、ハルヒがゆっくりと入ってきた。 「お前がノックして入ってくるなんて珍しいじゃないか。」 俺は笑って言う。 ハルヒは俯き気味だ。聞いているのか? 「聞いてるわよ。」 小さく言った。 ハルヒはとぼとぼとした足取りで俺の横まで来ると、古泉が座っていた椅子にすとん、と腰掛けた。 しばらく沈黙が続いた。 「林檎剥くわ。」 ハルヒはいきなりそういって、古泉が残していったナイフと林檎を手にとる。 林檎なら古泉が山のように剥いていってくれたが、まぁあえて言わないでおこう。 しゃりしゃりという音だけが病室に響く。 「痛っ!」 突然小さくあげられた悲鳴はハルヒのものだった。見ると、ひとさし指からじんわりと血が出ている。 「あー。何やってんだ。」 俺はハルヒの手をとり、ティッシュで血を拭いてやると、新しいティッシュで傷口を縛ってやった。 「あ、ありがと・・・。」 ハルヒはぎこちなく礼を言う。 俺はハルヒが剥きかけの林檎とナイフを手に取り、残りの皮を剥いてやった。 「・・・・・・あんた意外に器用ね。」 「林檎の皮剥きだけは得意だ。」 ハルヒはそのまま、傷口に巻かれたティッシュをじっと眺めていた。 「どうした、元気ないじゃないか。」 俺がそう言うと、ハルヒはしばらく黙り込んだあと言った。 「有希から聞いたわ。」 「聞こえてた。」 またしばらく黙り込む。こんなにおとなしいハルヒは珍しい。 「バイトで倒れたんですってね。」 「ああ、ちょっとクラッてきてな。情け無いぜ。」 「そんなに頑張っていたの?」 「まぁ俺なりには頑張った方だと思うが。」 「みくるちゃんがバイトしてたのも?」 今更隠す必要もないので本当のことを言ってやった。 「ああ、お前のプレゼントを買うために金を貯めてたのさ。」 「・・・・・・。」 再び沈黙が続く。今日は沈黙デーなのだろうか。 「キョン。」 少しだけ大きな声で言った。そして今度は小さく弱々しい声で、 「ごめんね・・・。」 ・・・・・・。 「ごめん、本当にごめんキョン。私、何も知らないで勘違いして。 皆の気持ちも知らないで・・・。ごめん。許して。」 ハルヒは俯き気味で言った。 ……こんなに弱々しいハルヒも可愛いな。しかし―― 「やっぱりお前は笑顔が似合う。」 俺が言うと、ハルヒは何の事を言われているのかわからなかったらしく、 ぽかんと口を開けた。 「ハルヒ。許してくれもなにも、俺は最初から怒っちゃいねぇさ。 多分朝比奈さんもな。だからもう気にするな。 いつものような笑顔を見せてくれ。」 俺がそういうと、ハルヒは少しだけ目を見開いた。 そして、両目を右手で覆って、小さな声で言った。 「ありがとう・・・。」 ハルヒはそのまますくっと立ち上がると、 病室のドアの辺りまで歩いていき、立ち止まって振り向かずにもう一度言った。 「ありがとう・・・・・・キョン・・・。」 そしてハルヒはそのまま病室を出て行った。 ドアの足元に2,3滴の大粒の雫が落ちていた。 がちゃり。 きた!! パァァァァァン!! 「誕生日おめでとーーう!!」 突然のクラッカー攻撃に、流石のハルヒも驚いたらしく目を見開き、口をぽかんと開いた。 よし、いいぞその表情。俺は手元に控えていたデジタルカメラで、その間の抜けた顔を撮ってやった。 部室の窓にはクリスマスの時のように、スプレーで ハルヒ 誕生日おめでとう と書かれている。 ただし、今回これを書いたのは俺だけどな。 「どうぞ、こちらへ。」 古泉はハルヒを団長席に案内する。 「ありがと、古泉くん。」 ハルヒはいつものように団長席に座り、斜め上方向に人さし指を突き刺して言い放った。 「さぁ、あんた達!!私を祝いなさーい!!」 なんだそのふてぶてしさは、と思いつつ、だが、これがハルヒらしいな、とも思っていた。 クリスマスのときと同じく、今日も鍋を持ってきた。 今回は俺特製鍋だ。学校で鍋を作ったりすると生徒会の方がうるさいが、 こんな日ぐらい騒いでもばちはあたらないだろう。 それで、食事風景だが、長門は毎度のごとく力士のようにもりもり食べ、 朝比奈さんは、ちまちま少しづつ肉をちぎりながら可愛らしく食べており、 古泉は何か横でべらべらと鍋に関するうんちくを並べていたが、ぶっちゃけ聞いていなかった。 ハルヒはというと、肉と野菜の位置がどうこうだとか、具がどうこうだとか、 俺の鍋に色々と文句をつけつつ長門に負けないぐらいのスピードで肉を頬張っていた。 俺が自分がほとんど食べていない事に気付いたのは具が全部無くなった時になってのことだが、まぁいいだろう。 「それでは、涼宮さんへのプレゼントタイムとしましょう。」 司会っぽく言うが、お前を司会にした覚えは無いぞ、古泉。 勝手に仕切るな。とか思いつつ、俺達はプレゼントタイムに入った。 最初にプレゼントを渡したのは長門だった。 綺麗な包装がされており、ハルヒが開けてみると、中には 何やらカタカナがやけに多いタイトルのハードカバーが入っていた。 SF学園モノ、だそうだ。どういうジャンルだ? 長門はハルヒに無言でプレゼントを渡すと、またいつものように本を取って 窓辺のパイプイスに座って読書を始めた。 こんな時ぐらい読書はやめようぜ、長門。 次にプレゼントを渡したのは朝比奈さん。 紙袋の中から取り出したのは、少し大きめのテディベアだった。 テディベアはどっちかというと、ハルヒより朝比奈さんが持ってるほうが似合うが、 まぁハルヒも喜んでいるのでそれは言わないでおこう。 「僕からはこれです。」 といって古泉が取り出したのは小さな箱だ。なんだこれ? 「フフフ、まぁ見ててくださいよ。」 古泉がその箱をパカッと開けると、オルゴールが流れ始めた。 ん・・・?この曲は、ハルヒが文化祭でやったENOZの曲じゃないか。 「そうです。僕の知り合いに作ってもらいました。」 「すごいじゃない!ありがとう古泉くん。」 ハルヒはオリジナルのオルゴールに感激していた。 「じゃあ次は俺のプレゼン――」 そこまで言った時、俺はとんでもない光景を目にした。 なんと、長門が本を窓の外に向かって投げているじゃないか。 長門はすくっと立ち上がると、ハルヒの背中をちょんちょんとつついて言った。 「風で本が飛ばされた。拾ってくる。」 ハルヒは不思議そうな顔をする。 「いや、長門、お前今自分で――」 と言ったところで、突然俺の唇が動かせなくなった。アリかよ!反則だ! 長門がすたすたと部室を出て行くと、ようやく俺は長門の呪縛から開放された。 「あ、お水が切れてる・・・。汲んできますね。」 そう言って今度は朝比奈さんが出て行った。 「じゃあ、僕はトイレにでも、ね。行ってきますよ。」 古泉はニヤケ面でドアのところまで行き、俺に小さくウインクをして出て行った。寒気がしたね。 二人だけになっちまった。 「・・・それじゃあ、次はあんたのプレゼントを発表しなさい!」 ハルヒは何故三人が出てってのかということをつっこむ事無く、そう言った。 「ほらよっ。」 俺はバッグに入れていたそれを、ハルヒに投げてやった。 小さい箱はちゃんと包装してある。 「ちょっと、もうちょっと丁寧に渡しなさいよ。」 「悪い。」 ハルヒは口をへの字にして、箱の紐を解き始めた。 そこに入っていたのは・・・。 「これ?」 ハルヒはそれを摘まんで、ぶら下げて見た。 黄色いリボンだ。 言っておくが、そこらで売ってる安いリボンではない。 高級リボンだ。派手すぎず、地味すぎず、さりげない加工が随所にちりばめてあり、 布も高級な物を使用している。見た目よりも驚くほど高ぇんだぞ、それ。 「ふーん。あんたセンスないわね。」 なんて事を言うんだ。 「冗談よ。素敵じゃない。」 ハルヒは、今してるリボンを解いて、俺がたった今プレゼントしたそれを結び始めた。 「どう?」 髪にリボンを結び終わったハルヒは得意気に言う。 「いいじゃないか。」 普段のハルヒより輝いて見えるのは気のせいではないだろう。 「仕方が無いわね。」 何が仕方ないんだ。俺は何も言って無いぞ。 という俺の言葉を無視し、ハルヒは結んだリボンを解き始めた。 そして、 「今日はサービスよ。」 とニヤリと微笑むと、今度はリボンを頭の後ろ側で結び始めた。 ハルヒがそれを結び終わった時に、俺はハルヒが何をしようとしていたのか理解した。 「ポニーテールか。」 「そ。・・・その、好きなんでしょ?」 「ああ。」 ハルヒの頭の後ろのしっぽのところがぴょこんと動く。 それを見て、俺は思わず笑みを浮かべてしまった。 「ハルヒ。」 「何?」 俺はいつかの日のように言ってやった。 「似合ってるぞ。」 fin
https://w.atwiki.jp/echizen/pages/483.html
「ふえるミチコさん --越前摂政危機一髪!?の巻」 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 こんばんは。生活ゲームに参りました。 よろしくおねがいします。 芝村 さんの発言 記事どうぞ 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 http //cwtg.jp/ogasawara/wforum.cgi?no=4138 reno=4107 oya=4107 mode=msgview 宰相府から護衛ACEをつけていただけるとの事なので、召喚ACEはこのように書いています。 芝村 さんの発言 OK 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 最初に、ゲーム内容についてご相談させてください。 4案あります。 1)越前藩国の慰霊公園(竜の攻撃の後に建てたA Sの霊園及び慰霊碑がある)にて献花。 2)宰相府にて宰相と会談。議題は文殊分散化についての相談。 3)越前藩国の藩立学校を視察 4)それどころじゃないので、越前藩部隊として戦闘対応。 どれがよさそうでしょうか? 芝村 さんの発言 どれでも? 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 Q:敵の暗殺を迎え打つなら、1)か2)だと思います。芝村さんのお勧めはどちらでしょうか? 芝村 さんの発言 A1:1 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 わかりました。では、慰霊公園にて。 すみません、もう少し質問があります。 芝村 さんの発言 ええ 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 Q1:あさぎさん(缶)は必要ですか? (壁30の護衛として。ただ、アリアンの都合もあります) Q2:越前藩王はいた方がいいですか? Q3:いた方が良い場合、アイドレスを着ておいた方が良いですか?現状編成に入って 芝村 さんの発言 A1:いらんだろう A2:いいんじゃね。 A3:とくには? 護衛はだすよ。 あさぎはねえ。アリアンの傍においとこか。 ねらわれるかも 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 わかりました。では、花を買って、護衛の方と一緒に慰霊公園に向かいます。 越前さんは同行無しで。 芝村 さんの発言 OK 2分待ってね 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 花束は、大きな束一つと、小さな束を二つ買っておきます。 芝村 さんの発言 OK /*/ ここは越前藩だ。 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 宰相府からの護衛は、どなたが来ていますか? 芝村 さんの発言 アメルダがいるね。 剣をもってる 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「初めまして。越前摂政の黒埼です。いつも藩王がお世話に。」 芝村 さんの発言 アメルダ:「いえ」 アメルダ:「護衛をつとめさせていただきます」 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「ありがとうございます。心強いですね。 では、いきましょうか。」 花束3つを持って、慰霊公園へ向かいます。 Q:公用車くらいは出せるでしょうか? 芝村 さんの発言 A:ええ 派手なキャデラック 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 慰霊公園へ行く道すがら、越前藩国の町並みを観察します。 芝村 さんの発言 静かそうだ。 上は、うるさいが 空襲警報がなっている アメルダ:「大変ですね」 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「こんな中でわざわざ献花に出るというのも、ちと場違いだったでしょうかね。」 芝村 さんの発言 アメルダ:「いえ。真の事情はおききしています。もちろん、献花も目的でしょうけど」 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「慰霊公園には、いずれ行かねばと気にしていました。 今回も迷いましたが、いくなら今しかないかな、と。」 芝村 さんの発言 アメルダ:「そうですね」 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「この状況で、慰霊公園に来る国民はいないでしょう。 静かにお参りができそうです。」 後は、慰霊公園まで言葉少なに。 芝村 さんの発言 はい ついたよ 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 花束は自分で持って、慰霊碑に向かいます。 着いたら、まずは花束を慰霊碑に捧げます。 芝村 さんの発言 はい。 アメルダは頭をさげた 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 Q:スペーススペルキャスター、ないし宇宙の賢者が持つ知識として、お経を上げることはできますか? 芝村 さんの発言 知識で20だ 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 r:お経を上げます。知識24です。 芝村 さんの発言 成功した アメルダが変な顔している 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 お経の後で、慰霊碑に彫った言葉を読み上げます。 【前触れもなく命を奪われた方を悼みます】 【我々はこの悲劇を忘れはしないでしょう】 【今はただ、安らかにお休み下さい。 】 【 我が、そして我らが越前藩国 一同 】 「まあ、見よう見まねでしたからね。変なところもあったかな。」>アメルダに向かって。 芝村 さんの発言 アメルダ:「あ、いえいえ」 アメルダはこまってる 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「・・・供養とは、死者と語り、歴史を語り継ぐ事だと、私は思います。」 慰霊碑に向かいながらしゃべります。 「今の越前藩が、ここに眠る犠牲者の目にどう映るか、あの悲劇をどうすれば防げるか、考える。考えて、実行する。」 「それが、越前摂政として私がやるべき供養です。それを為すには、もっと時間が要ります。まだ、彼らのところには逝けません。」 「お許しを。そして、安らかなれ。」 慰霊碑に向かって手を合わせ、頭を下げます。 芝村 さんの発言 拍手が聞こえる 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 振り返ります。 拍手はアメルダさんですか? 芝村 さんの発言 いや 黒服だ 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「・・・この場で拍手というのは、無粋じゃないかね。」 芝村 さんの発言 ミチコ:「たいした茶番。そう思わない?」 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 苦笑する。「ええ、正直。」 芝村 さんの発言 ミチコは銃を抜いた。 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「私を取り除いたところで、文殊はもう止まりませんよ?」 「odさんもいる。分散化プロジェクトももうすぐ終わる。」 Q:アメルダさんはどう動いていますか? 芝村 さんの発言 アメルダは動いてない 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 打たせて取る、かな。まあ、それでも。 芝村 さんの発言 ミチコ:「od、ね。ありがとう」 ミチコ:「殺しておくわ」 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「働き者だなあ。」 Q:逃走経路ってありそうなもんでしょうか。 芝村 さんの発言 A 同じ姿のが、八体でてきた 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 Q:持っている銃はどれも同じですか? 芝村 さんの発言 ええ 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 Q:普通の銃でしょうか。それとも、私が見たことのなさそうな形ですか? 悪童屋・四季 さんが会話に参加しました。 芝村 さんの発言 A 聖銃だ 悪童屋・四季 さんの発言 聖銃をたたき落とします。 芝村 さんの発言 自爆した。 爆発の難易は40だ 装甲いくつ? 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 Q:自爆を情報戦で止める事はできますか? 芝村 さんの発言 A 難易50 悪童屋・四季 さんの発言 装甲ですね。 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 ぐふ。私一人だと48か。 悪童屋・四季 さんの発言 防御:39 35+4(スイトピー補正)=39 ますらおの鎧(+5)=44 とりあえず、耐えれそうです。 芝村 さんの発言 耐えきった。 ミチコ:「おどろいた」 悪童屋・四季 さんの発言 「ふう・・・。死ぬかとおもった」 芝村 さんの発言 ミチコ:「化け物ね」 ミチコ:「戦車でもいまのはふっとぶわよ」 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「申し訳ない。今日は出ずっぱりらしいのに。」>悪童さん 悪童屋・四季 さんの発言 「まあ、いろいろ鍛えてもらったからね」 芝村 さんの発言 アメルダはうなずいたあとで黒埼に助言した。 評価+4された 悪童屋・四季 さんの発言 「いや、今はここを切り抜けよう」 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 Q:自爆したのは一体だけですか? 芝村 さんの発言 A ええ 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 Q:越前部隊はこのターン、摂政分隊(私のみ)とそれ以外(補佐分隊)という構成です。 補佐分隊が他所で待機しているものとして、彼らと同調して情報戦を行い、EAIシステムの効果を載せる事は可能ですか? 芝村 さんの発言 残り七体が動き出した 悪童屋・四季 さんの発言 「自爆装置を止めて下さい」 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「了解。」 悪童屋・四季 さんの発言 「さすがに体がもたない」 芝村 さんの発言 一斉に襲いかかった。 悪童屋・四季 さんの発言 先に一方方向に突っ込む事はできませんか? 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 Q2:今の「自爆装置を止めてください」をもって、元帥の効果を得ることはできますか? 芝村 さんの発言 A2 いいですよ 評価はいくつ? 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 私が48、助言をうけて+4、あと元帥効果。 +5でよかったでしたっけ?<元帥効果 悪童屋・四季 さんの発言 はい 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 では、48+4+5=57となります。 えーと、敵の自爆装置の効果を止めるのと、むしろ接触前に自爆させるのだったら、どっちがいいです? >悪童さん 芝村 さんの発言 成功した。 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 もう止めるしかないか。 芝村 さんの発言 とめたよ。 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 了解です。 芝村 さんの発言 敵七体の一斉攻撃評価は52になる。 アメルダは剣を振るった。 弾が地面に落ちた。 アメルダ:「急いで、片付けてください」 悪童屋・四季 さんの発言 こちらの攻撃でいいのでしょうか? 芝村 さんの発言 ええ ARは6だ 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 私は詠唱25、宇宙の賢者の助言で+2することもできます。 悪童屋・四季 さんの発言 敵の評価は52でいいのでしょうか? こちらは白兵攻撃:44 35+2(藩王)+3(拳法家)+4(スイトピー補正)=44 強靭刀(+5)=49 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 ぬ。足らんか。助言入れます? アメルダさんの方が高そうだけれども。<助言 芝村 さんの発言 52だよ。 アメルダが助言入れて+4 悪童屋・四季 さんの発言 えっと、こちらは馬にのっているので有利な位置からの攻撃で修正つきませんか? こちらはAR12からスタートです。 芝村 さんの発言 なるほど。f:で+2修正 差分三 やってみるか 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 Q:私が詠唱を行い、援護射撃とする旨のf:を通すことで、修正を足せないでしょうか? 芝村 さんの発言 足せる。 修正2: これで成功かな 悪童屋・四季 さんの発言 はい #死ぬかと思った 芝村 さんの発言 成功した。 七人を倒した。 笑われたぞ 死体が拍手している。 そのまま動かなくなった。 悪童屋・四季 さんの発言 治療師で浄化しておきます。 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 「お経でも唱えておきましょうかね。」 悪童屋・四季 さんの発言 死体、黒埼さん、アメルダさん、自分等 とりあえず、ミチコさんは全部偽物ですか? 芝村 さんの発言 浄化した。 偽物だね。別人だ 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 r:odさんの安全を確認します。 さっき会話で時間稼ぎしてるときに、odさんを引き合いに出してしまったので・・・。>悪童さん向け説明 芝村 さんの発言 /*/ はい。おつかれさまでした。 odは攻撃受けていない。 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 おつかれさまでした。悪童さん、ありがとうございました。 悪童屋・四季 さんの発言 お疲れ様でした いえいえ 間に合ってよかったです。 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 いやあ、怖かった。もうミチコさん出てきた時にはどうしたものかと。 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 では、こんなところでしょうかね。 ちなみに、アメルダさんからの感情って何か変化ありましたか? 芝村 さんの発言 はい。 +1+1でした 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 了解です。ありがとうございます。 芝村 さんの発言 秘宝館には1,1で依頼できます では解散しましょう。おつかれさまでしたー 黒埼紘@越前藩国 さんの発言 お疲れ様でした。
https://w.atwiki.jp/fvstreamergta5/pages/340.html
プロフィール 名前 水面(みなおもて) ヒロ(ひろ) 出身地 日本 誕生日 1992年7月4日(31歳) 転入日 2024年2月11日(0年3日間) 職業 メカニック(MAX勤務) プレイヤー カラメソ・カラメン 告知等 X(旧Twitter) 配信場所 twitch + 目次を開く 閉じる プロフィール 基本情報 人間関係印象表 所有車両 エピソード ア-カイブ 基本情報 過去情報 生い立ち 父 ヤクザ(ヒロが12歳の時に死亡。44歳で亡くなる) 母 一般人(病弱、持病持ち、質素な生活を好む。65歳) + ※ネタバレ注意 開く 閉じる ヒロ12歳のある日、両親が二人きりで出かけている時に父が襲撃される。襲撃者は、知らぬ間に敵対ギャングに寝返っていた父の舎弟であった。 舎弟の姿に油断した父は、そのまま銃撃されあっけなく死亡。狙いは父のみで、母に危害は及ばなかった。 このことにより、ギャングや義理人情を知らない人間に対して嫌悪感を抱いている。 また警察や司法に対しては、父死亡の時の対応により不信感を持っている。 子どもながらに、警察の捜査がおざなりに感じたこと(ヤクザとギャングによる事件だったからか)と、元舎弟やギャングが負った刑罰がそこまで重くないものと感じたことに起因する。 今現在は、ギャングや警察の振る舞いに影響するような、司法とは別の力が必要なのではないかという考えを持っている。 街に来るまでの経緯 色々な国や街を日雇い労働をしながら放浪していて、偶然この街に流れ着いた + ※ネタバレ注意 開く 閉じる 父の死は深く心に残っているが、少年期の記憶、そして現場で直に父の死を見たわけではなかったのが幸いし、表に出るような大きなトラウマは残らなかった。よって、人とのコミュニケーションは普通にできるし、ごく普通の生活をしてきた。 しかし、自身では気づいていないが、深層心理では人を心から信用することができない精神状態になっている。 そのため、今まで友人は一人もおらず、職についても数日と続けられない日々を過ごしてきた。自分では、性格として「飽き性」なのだと思っている。 長い年月、病弱な母と共に暮らし、自分の分の生活費などのために日雇いなどの仕事をしながら生活を続けてきた。(父の残した遺産により、母一人であれば母の寿命までは恐らく医療費、生活費に困ることはない状況となっている) そんなある日、ヒロの生き様・様子を心配した病弱な母から、突然家を追い出された。 その時手元にあったお金を使いながら色々な国や街を放浪し、日雇い労働をしつつ流れに流れ、この街(ロスサントス)に流れ着いた。 性格 義理人情を重んじ、逆に軽薄な者に対しては不信感や嫌悪感を持つ 人間関係 印象表 yyyy/mm/dd 印象 yyyy/mm/dd 【好敵手】 【好印象】 【期待】 【対立】 【胸熱】 【最推し】 【覚醒期待】 【苦手】 【信頼】 【不安】 【厄介】 所有車両 - 開く 閉じる エピソード - Day.1~ Day.1~ 2/11 水面ヒロ 1日目 - 開く 越してきたアパートで起床。さっそく街に繰り出し、食料と飲料、足を探そうとしたところ、可愛いおると出会い、行動を共にすることとなる 安車でもいいのでとにかく移動手段をということで車を購入。また車を購入したディーラーで接客してくれたハン・ローから、メカニックであることを聞き、体験でもいいからメカニックをやらせてくれないかと頼み込み、ハン・ローから社長に話してみると約束をもらう。 その後、建築バイト中にハン・ローから連絡があり、ハン・ローの勤めるメカニックの社長が話をすると言っていると伝えられる。 建築バイト後、色々ありながらも急いで7231番地のMAXというメカニックに駆けつけ、社長・天海優と会い、無事にメカニックに就くこととなった。 2/12 メカニック研修か? 2日目 - 開く 友人の可愛いおるにメカニックに就いたことを報告し祝ってもらう。 MAXにてカスタマイズのやり方を学ぶ。また高級車ディーラーにて目標とする車のカタログを眺めて、モチベーションを高めていくのであった。 パン屋にて、八乃木ニキから「折り紙うん⭕️💩」を貰う。とりあえずポケットの奥底にしまい込む。 2/13 どうやって金貯める?3日目 - 開く (衛星なし)ダウジングを行い想像以上の収入に驚く メカニックの出勤中のための服としてツナギを買いに行く。その際、不知瑠衣と四宮豊にお世話になる。 メカニック仲間から、レースについて教えてもらう。その後、中野カズの車の助手席に乗り、レースを体験。新たな目標を得る。 ア-カイブ - Day.1~ Day.1~ 配信日 day 配信タイトル 2/11 1日目 水面ヒロ 1日目 https //www.twitch.tv/videos/2059694729 2/12 2日目 メカニック研修か? 2日目 https //www.twitch.tv/videos/2060604814 🔝ページTOPへ
https://w.atwiki.jp/high-card/pages/27.html
15 XYZ High-Card 2018.5.30 作:杉本太祐 演出:永島真之介 楽曲提供 Sakuya他 CAST ヘイタ:永島真之介 チヒロ:守田衣織 ケイ:尾﨑孔亮 ウキョウ:村田勇也 and High-Card !
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/538.html
身体中の脂肪が自然発火して人体蝋燭化現象が起きそうな太陽を受けつつ俺は緩やかに急勾配を登っている 俺とはもちろんキョン(本名不明)の事であり何故登っているかと言うとそれはもちろん学校へ行く為だ 多量の汗を吸収し最早不快感しか与えない制服を上だけでも思いっきり脱ぎ捨てたい所だが、生憎他にも生徒が居る中でそんな事をする度胸は無い 大体何故こんなにも暑い。地球温暖化の影響ですかコノヤロー 「よお、キョン………」 今の俺には肩に置かれた手にすら殺意を覚えるな 谷口、その手を離せ。触られるだけで俺の体温が上がる 俺はチャック魔神のお前とは違って股間から熱を放出する事ができないんだ 「大変そうだねぇ?キョン」 くそっ、国木田、何故お前は汗一つかかないんだ。笑顔キャラは殆どが完璧な設定か 「まぁ、聞いてくれたまえキョン。」 知るか。俺にはお前のナンパが失敗した話など外国で誰かが転んだという報告よりどうでもいい それよりはその身体中を汗に塗れた姿を俺の眼中から消せ 谷口による『海に出会いを求めに来る奴は大抵モテない』説を聞きたくも無いのに聞いている途中で校舎へ着く事が出来た BGMが有ると多少は疲れが軽減できるのかもな。今度調べて見よう それはそうと谷口、その節はピッタリお前に当てはまるんじゃないのか? 所変わって一年五組 人は目標物だけを視界に入れることは出来ず少なくとも周囲の景色は多少なりとも入る訳で つまり自分の席に行くためには前後の席も目に入る訳だ 俺の後ろの席の奴は頬杖をして窓の外を睨んでいる それで微笑み、少なくとも無表情でも浮かべていれば絵画と見紛うほどの美しさがあるが、いかんせんその顔は眉間に皺を寄せるほど不機嫌オーラを振りまいている そう、その後ろの席の奴こそ我等が『世界を大いに盛り上げる為の涼宮ハルヒの団』通称SOS団団長にして涼宮ハルヒ 不機嫌な理由は暑さゆえだろう。時折鬱陶しそうに顔につく髪をはらっている 俺としてはポニーテール萌えなんだがな 「あたしも扇いでよ」 俺が下敷きで扇ぎだした途端それか。もうちょっと人に物を頼む態度ってもんを考えて貰いたいもんだな 「断る。今は人に尽くしてやるほどのエネルギーも惜しいんでな」 「ふん」 また不機嫌そうに頬杖をつき、時折髪を払っている 担任の岡部が入ってきた所で下敷き団扇はしばし中断を余儀なくされる 大体この暑いのに何もするなってのは拷問だよな こうして見ているだけでも暑苦しい岡部による暑さに負けるなという意味の主張は5分の刻に渡った 眼を覚ませば夕方だった 服が汗を吸って濡れている まぁ、あれだ。暑さで体力を殺がれている所に世界史だぞ?眠くならない訳が無いよな? 「…………」 誰に対するか分からない言い訳を打ち切って下校の準備をする 「やっと起きたのね」 思わずゾっとしたね 感情を憎悪だけ含めたような声だ。しかも偉く不機嫌な 声だけで人を殺せそうな者はコイツの他有るまい 涼宮ハルヒ 我等が(以下略)は俺の目の前で腕組みをしながら俺を見下ろしてる 感情で人を殺せたら俺は既に死んでいるだろうな。そんな感じだ 「SOS団の活動にも来ないと思ったらのんきに寝てるとはね……」 静かに言いはなつ うん、怒られるよりはるかに怖いな、コレは 「………同じクラスなんだから起こせばよかったじゃないくぅあ!?」 無言で脛に蹴りを入れられた お前、それは反則だろう 「………!」 抗議の声を上げようとした所を、思わず飲み込んだ だってそうだろ?普通怒っているだろう状況で今にも泣き出しそうな表情をされていたら呆気にとられるよな? まぁ、そんな一瞬の躊躇が不味かったのかハルヒは既に走り去っていた 抗議の為上げようとしていた手が虚しく宙を掴んでいる 「ヤレヤレ……貴方にも困った物ですねぇ」 教壇からいつもの如くニヤケ面を携えた古泉が現れる ―――――――いつから其処に居たんだよ、お前は 「大規模な閉鎖空間が発生していましてね。それも今日はコレで4回目です。流石に疲れてきました」 そうかい、それはご苦労なこった。で、俺に何の様だ 「何の様だ、は無いでしょう?原因は貴方にあるんですよ?」 何でだ 「前にも言ったでしょう?涼宮ハルヒさんが不機嫌になると閉鎖空間が発生すると」 そういや言ってたな。あの灰色の空間には良い思い出が無い。思い出したくも無かったよ で、何で原因が俺にあるんだ 「心当たりは無いんですか?」 全くな 「……SOS団の活動に来なかったり、乙女心を理解しない発言をしたりと色々と思いつくんですけどねぇ」 乙女心って何の話だ 「物の例えです。とりあえず、今すぐ涼宮さんに謝って来て下さい」 何故俺が謝るんだ むしろ危害を加えられた俺が謝って貰いたいんだが 「………鈍感ですねぇ。いいから行って下さい。それが無理なら実力行使しかありませんが…………」 実力行使ね。お前が俺より力が有る様には見えないがな 「お忘れですか?僕には機関の仲間だって居ます。」 含みを聞かせたようだがどうにも演技に見えるな。なんつーか胡散臭い 「そうですね、例えば………」 どうやら実力行使の内容を考えているようだが絶対に謝らんぞ、俺は 「貴方の生爪を一枚一枚剥いで指に一本ずつ針を刺し、じわじわと痛みを強めていきながら精神を弱らせ 発狂寸前の所を僕の言う事を聞く奴隷同然に仕立てあげる事だって出k「キョンッ!いっきまーす!!」 いや、本能がそうしろって伝えていたもんでね 俺は今ならカール・ルイスを越える自信すらある 背後から聞こえてくる物騒な言葉は完全無視だ、無視 でもコレは逃亡じゃないぞ?小泉の意見に耳を貸してやっただけだ。うん、そうだ 誰だって高校生で廃人にはなりたくないんでな 教室から走り出して下駄箱に来るまでに既に汗が吹き出ている。かなり不快だ でもそんな事を言っている場合じゃないな、俺の人生が掛かっているんだ。 まぁ、焦りの所為かね。俺は一つ重大な事を見落としていた 校門まで走ってようやく気付いたよ 俺はハルヒの家を知らないってことにな こんな当たり前の事に今更気付くとは俺もどうかしているな。暑さの所為か ってそんな場合ではない!このままじゃ俺廃人フラグ一直線ktkr!!! ………焦っているな。かなり焦っている 冷静になれ俺。小泉に………じゃない、古泉に聞けばいい話じゃないか! 「涼宮さんの家ならあちらですよ」 「………いつから其処にいた」 「そんな事気にしてて良いんですか? 早くしないと組織の筋肉質の猛者たちが数人やって来て毎夜毎夜の肉欲の宴、 ムッキムキ黒人男性とうh「キョンッ!発進する!」 またこのパターンか と言うか古泉、実力行使がグレードアップして無いか……? 走る、走る、走る 廃人となるのを防ぐ為!平穏な老後を過ごすため!俺は走るぞ!古泉ィィィィ!!! ………うん、暑いね 思考が現実逃避を初めつつ、やっとハルヒに追いつく事が出来た 体に纏わりつく制服は不快指数上昇すること現在進行形なわけだが、そんな事も言ってられない 「おいっ!」 叫びにも近い声で腕を掴んだ所為か、ハルヒは驚愕の二文字を浮かべている。少々罪悪感にかられるな、これは 「!?………な、何よ」 何ってそりゃあ…………うん、何だろうね とりあえず謝れといわれたが………… プライドと貞操………まぁ、天秤にかけるまでも無いよな 「………スマン」 とりあえず深々と頭を下げた 黒人マッチョとうほっ、よりはこっちの方が遙かにマシだ 呆気にとられていたハルヒの顔にいつも通りの表情が戻ってくる あぁ、コレで良かったんだよな とまぁ、今後の心配が一つ無くなった 「はいっ!活動をサボった罰ね!」 途端にコレは無いだろう ハルヒが俺に渡した紙には町内の地図と、巡回経路と書かれていた。俺の目がおかしくなければな 「………なんだ、コレは」 「だぁーかぁーらぁー、サボった罰。其処に書かれている経路を今から三周して来なさい」 マジか 「大マジ」 …………今に至って、この選択肢も間違いだった気がするな そうそう、こーいうやつだったよ、涼宮ハルヒって奴は 「いやぁ、お疲れ様です」 ▼ニヤケ面が現れた!▼ →殴る 蹴る 暴行 うほっ ………とかやってる場合じゃないな。そんな事する気力もない。最後のはやるつもりもない 「どうやら閉鎖空間の拡大も止まったようです」 それは良かったな。所で俺も今非常に不機嫌なんだが、一度殴らせてもらって良いか? 「それは困りますね。今はMPも尽きかけな仲間の援護に行かなければ行けませんから」 そうかそうか、とっとと行け。お前の姿は見たくない 「そうですか。それでは………おっと、くれぐれも涼宮さんの機嫌を損ねないで下さいね?」 言われなくともさ 俺だってマッチョに貞操を捧げたり廃人にはなりたくない。将来やりたい事もあるんでな とりあえず今は、この巡回経路とやらを回るのがベストなんだろうな………… まぁ、思いっきり後悔する羽目になったけどな ただ座っているだけでも汗が吹き出る暑さの中、町内を回っていると少々自殺願望すら出てくる もし体型に困っている人にはお勧めだ。精神を削る代わりにやせる事が出来るぞ …………なんてな すっかり暗くなったが別段涼しくなる訳でもなく昼間と同じく暑い。嫌がらせか 目前にその姿を見せる我が家。中では妹がアイスを貪っている事が容易に想像できるな。殺意を覚える そんな事に気を取られていた所為か、街灯で照らされる我が家の戸の前に人影が有った事には暫く気付かんかったがな どうやら私服に着替えたらしいその人物……… 「………ハルヒ?」 そう、我等が(中略)団長涼宮ハルヒ そういえばハルヒってだけ聞くとホスト部も思い出すな。どうでもいいが それより、そのハルヒが何でうちの前にいるかっ、てのが問題なんだよな 「!?キョ、キョン!?なんでここに!?」 「いや、なんでも何も此処は俺の家なんだが」 「そ、それもそうよね…………」 何だ?夢遊病の症状でも出たのか?……いや、夢遊病ってのは子供とかに発祥するんだっけか 「あ、あたしはアンタがサボらずやってるかと思ってきただけよ」 いや、何もきいて無いですけど 「うるさい!それより、ちゃんと回ったんでしょうね!三回!」 それは俺の状態から察してくれ。後、声を小さくしてくれ。 「フ、フン………!まぁ、いいわ。ちゃんと回ってきたみたいだし」 ご理解いただけて光栄ですな 「とりあえず、あたしはこれで帰るk「あれ?キョンくん、お友達?」 妹よ、いつの間に出てきた ってかハルヒ、見る見るうちに顔色が悪くなっていくんだが……… 「キョン………」 何だ 「こんな小さい子を連れ込むなんて、アンタまさかロリコn「妹だ」 「……何でこうなってんの?」 「さぁな」 今俺はハルヒと向かい合って正座している状態にある。何故かって?ほら、元凶がやってきたぞ 「さ、どうぞ~粗茶ですが~」 あぁそうだ。俺の妹(本名やっぱ不明)が元凶だとも 帰ろうとしたハルヒを引きとめなし崩しに家に上げた妹は好奇の眼差しでハルヒを眺めている ハルヒの方というとこれまた不思議な事に妙にしおらしい いつもの如く城の明かりを一人で補えそうな輝きを放つ太陽の様な歓喜ではなく美しく咲いた花のように見るものを幸せにさせる微笑である う~ん、詩人だねぇ ハルヒのこんな様子を見たのは何時だっけな………そうだ、朝倉の転校の理由を探りに行った時だったな こいつもこんなにしてりゃ可愛いのにな。谷口曰くAランクプラスは伊達じゃない…………か 「………何見てんの?変な事考えてたらブッ飛ばすわよ」 感情が顔に出てたか?ソリャ行かんな、どうやら俺はポーカーフェイスが苦手らしい にしても何時にも増して怪訝な目つきだな。其処まで信用無いのか、俺 「まぁいいわ、あんたに何か出来る度胸があるとはおもわな」 い、と続けようとしたんだろうな。まぁ、どの道聴こえなかったが 唐突に、雷が鳴った 「……嘘」 ハルヒが小さく呟いている。ソリャそうだろう 先程まで快晴―――夜でも快晴って言うのか?―――だった空には台風でも来たかのように雨雲が敷かれ、雨に交えて雷まで降り注いでいる 多分この雨の中帰る事は不可能だろう。俺の目で見ても明らかだ 「ねー、ハルにゃん泊まっていきなよ」 「え、」 何か色んな感情をごちゃ混ぜにしたような声だったな。其処まで嫌か 所で妹よ、いつの間にそんな略称で呼べるほど仲が良くなったんだ? ハルヒが成すがままに引っ張られていくと、俺の携帯が鳴った 液晶画面に表示された文字には嫌な予感を覚えざるを得なかったがな 「………古泉」 『はい、何でしょう』 「また閉鎖空間がどうとか言うんじゃないだろうな」 『いえ、寧ろその逆……でしょうか』 逆? 『ええ、この転校は恐らく涼宮さんの望んだ事でしょう。恐らく彼女は何かこうまでしてしたい事が有るのではないでしょうか』 大雨を呼んでまでしたい事って何だ。結果といえば家に帰れなくなったぐらいだぞ しかもそのお陰で俺の家に泊まる事になってしまってるしな。悪い方にしか転がってないように思えるが 『………ホンット鈍感ですね。貴方は』 知るか。大体溜息混じりにそんな事を言われる筋合いは無いぞ 『まぁいいです。とりあえず涼宮さんの機嫌を損ねないように気をつけて下さい もしそんな事になったら貴方のこれからの人生を黒人6白人4の割合で密着されて過ごしてもらいブツッ!!』 最後に雑音が混ざったのは少々強くボタンを押しすぎた所為だな 風呂場のほうから、妹の楽しそうな声とハルヒの悲鳴が聞こえた 「天空×字拳!!!」 ボスッと言う音と共に俺の体は多少の熱気を帯びたベットへと沈む。なぁに、やってみただけさ それにしても今日は疲れたな、精神的にも肉体的にも。ぐっすりと眠ることができそうだ 「………」 背中に違和感を感じるな。別に霊感の類が俺に有るとは思っちゃいないんだが………… 「ねぇ、キョン………」 扉を少し開けてハルヒが目だけを覗かせている。目目連か、お前は しかし見ようによっちゃ体を隠してるようにも見えるな 「笑ったら死刑だからね」 そう言ってハルヒは扉を開けた。俺はお前の姿を見て笑う要素があるのかが疑問だがな とまぁ、そんな疑問は一瞬で解決された その姿は見慣れてはいるんだが見慣れていないというかソイツが着る事がありえないと言うか 解説が面倒だから今起こったことを有りのままに話すぜ ハルヒがメイド服を着ていた き、気の迷いとか夢オチとかじゃねぇ……もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ……… 「…………」 「…………」 両者、当然の如く絶句。何だこれは?なんか言った方がいいのか? その思案をどう取ったのか、先に口を開いたのはハルヒの方だった 「あんたの妹に服剥かれたから仕方なく来てるのよ。これしか持ってなかったし……」 剥くって。というか常時メイド服を携帯してるのか、お前は 「うるっさいわねー………クリーニングに出そうとしてただけよ」 ああそう。じゃあその格好にはつっこまないでやるよ。これ以上いじったらまたニヤケ面から脅しが入るかもしれんからな 「で、何か用か」 「…………!」 おや。何気ない発言のつもりだったが何かが癪に障ったんだろうか。ハルヒの顔がゆっくりと紅潮していく。謝った方がいいのか? 「わ、私はただあんたが眠れてるかどうか確かめに……団員の健康管理も団長の役目なのよ!」 そうかい、それは初耳だよ。生憎雷で眠れなくなるような精神はして無いし、あんたの無茶な罰ゲームのお陰でぐっすりと眠れそうだとも ピシャァンといった感じに、雷が鳴った 「!」 「うおっ!?」 いやぁ、心臓が止まるかと思いましたね ハルヒが、俺に抱きついていた 「げふぅ!?」 この奇声は俺の物だ。だって仕方ないだろう?運動部で普通にレギュラー取れる奴が腹に思いっきりタックルして来たんだ。 いや、抱きつきなんだけどな 握力×スピード=破壊力らしいしな。後一つ何か有ったっけか まぁとりあえず俺はハルヒから加えられた運動エネルギーで後方のベットへと倒れこんだ訳だ。頭が痛い 「………ハル、ヒ?」 自分の腹部辺りに顔を埋めているハルヒに目を向けてみた。少し肩が震えている こんな女の子らしい面を普段も出せば可愛いもんなのにな それはさておき………どうするかねこの状況 「………悪かったわ」 ハルヒが顔を上げた。いやぁ、俺としてはもうちょっとこうして居たかった………いや、変な意味じゃないぞ。か弱い女の子を慰める為だ、ウン 「………雷、怖いのか?」 どうやら逆鱗に触れてしまったらしい。俺の顔の横からボスッ、と拳をベットに叩き付ける音がした ハルヒが顔を近づける。このままキスで来てしまいそうなほどに………変態みたいだな、俺 「…………悪い?」 怖いんですが、ハルヒさん なるほど、ハルヒは雷が嫌いなのか。また一つ知識が増えたな。それはそうとやっぱりホスト部を(以下略) それじゃあどの道この天候じゃ帰る事が出来なかった訳ね。GJ、GJだ妹よ ………止めた、現実逃避しても何にもならん。とりあえず俺の目前で今すぐ俺を殺しそうなこの団長様を落ち着かせねばな もし殺気だけで人が殺せるのならば俺は既に死んで………あれ、コレ前にも言ったな 「まぁ、落ち着け、ハルヒ」 と言うわけで説得を試みる。コイツをこのままにしておくとあのニヤケ面から黒人マッチョを召還されかねない 「雷が怖い事なんか気にするな、うん、その方が女の子らしくて可愛いと思うぞ、俺は」 ふっ、こんな事もあろうかと………思っていたわけではないが、谷口の話す『女性のおだて方』を伊達に聞き流してた訳じゃないぜ いや、駄目だよな聞き流してちゃ しかしどうやらハルヒも段々落ち着いてくれてる様子。谷口、お前案外役立つな。チャックさえちゃんと閉めればもてるかもよ 「まぁ、いいわ………」 ミッションコンプリート!トラトラトラ!我奇襲に成功セリ!!!我奇襲に成功セリ!! ・・・・・・・よし、落ち着け俺。素数を数えて落ち着くんだ しかし世の中そんな訳にも行かないんだな 「その代わり………一緒に寝なさい!」 「はぁ?」 いつもの如く、ビシィっと指を刺す 「団長を守るのは団員の役目でしょ!」 いやぁ、それも初耳だわ てか一緒に寝るって添い寝か?健全な女子高生にしては危機感が足りないのではないかね? もしかして人が混乱する状況が続くのにはなんかの因果関係があるのか? 今度長門にでも聞いてみるか。俺が理解できるとも思えないがな などと一般論を組み立ててみた物の ………正直、たまりません まぁそんなこんながあって俺は今ハルヒと添い寝中なわけだ 添い寝といってもハルヒは布団を頭まで被って俺の胸の辺りに顔を埋めているがな 雷の音が何処かでする度に肩が震えるのは愛おしさを感じずには居られない ………………とは言ってみたものの、このままでは俺の理性が持つかどうかが疑わしい 落ち着け俺。素数を数えて落ちつ……ける訳がない 生憎俺は同級生が成り行き上宿泊する事になり挙句の果てに一緒のベットで寝るというそれなんて(ry な展開には免疫が無い 谷口なら何か対策を練れそうだな。まぁプラスに転がる事は十中八九とは言わず十ありえないだろうが 「…う……うぅ………」 ふとハルヒの声が聞こえた。声といっても出来るだけ声を抑えようとした泣き声だってのは俺でも分かる 其処まで怖いのか、雷が 「えーと、ハルヒ、大丈夫だ。俺が付いてるから」 言った後に思ったが何が大丈夫なんだろうな 年頃の少年少女が一緒に寝ているというのは雷よりはるかに危ないと言うのが一般論という物だろうに それはそうと今俺が言ったセリフは思い返してみるとかなり恥ずかしい事を言った気がする。まぁ、仕方が無いよな。状況が状況だ。不可抗力と言う奴だよ 「…………ずるい」 ハルヒが顔を上げると同時に俺の胸ぐらを引っ張った あ、そんな勢い良くすると頭ぶつかr ゴンッ ………ほらな 「ずるい!不公平よ!」 ハルヒの言う事が一回で理解する事ができないのは既に規定事項と言った所か。ハルヒの目に溜まってる涙が痛さの為か怖さの為かは区別できんな で、何が不公平なんだ 「私はっ……!いつも……!あんたの事……!かんがえ…!のに……!」 泣くのを我慢しながら無理矢理声を出している事は俺にだって解る。その前に今驚くべきは内容のはずだ 考えている?ハルヒが?俺の事を? 「…………いつの間にかっ……あたしは………あんたの事ばっか想ってるのに…………なのにっ!」 ハルヒの瞳から涙が一粒、流れる ―――ああ、そういうことか これがどういう事かは馬鹿でも解る。俺が解るくらいだからな 「なんで………あんたはっ、落ち着いていられるのよ……!今だって………私は………!」 声を無理矢理出そうとするハルヒの様子は―――不謹慎かもしれんが―――反則的なまでに可愛い。ポニーテールだったら襲ってたかもしれないな でも今は、この消えてしまいそうに儚げな………折れてしまいそうなほどにか弱い団長様を包んでやる 俺は、ハルヒを抱きしめた 「!?」 「…………平気な訳、無いだろ」 聴こえるかどうかも微妙だったが、精一杯絞り出した声だ。それでも伝わったと思える そう、平気な訳が無かった。コレでもさっきから煩悩を消す為に余計な事を考えるのに集中していたんだからな 「俺だって、ハルヒが好きだ」 我ながら芸の無い告白だとは思ったがな。シンプルイズベストって言葉もあることだ、問題は無いだろうよ 俺の腕の中でハルヒは微動だにもしなかった。 ……………妙に沈黙が怖い しかし、以心伝心と言う奴だろうか。ハルヒのやらんとする事が解り、抱いている腕の力を緩めた ハルヒは横になった状態で器用に上へと登ってくる 俺の唇に、ハルヒの唇が重なった 「……ん…………」 ハルヒの口から小さく声が漏れる 唇を重ねたまま、数秒か、数十秒か、数分か………時間の感覚が無かった 唇を離すと、いつもの様なハルヒの笑顔が其処にはあった その笑顔に惹かれる自分を自覚し、自分がやはりこのお方に惚れている事を自覚する それでも照れ隠しにと、俺は声を発する 「…………これで俺はお前の彼氏、って事か?」 ハルヒの笑顔に合わすように少し笑いを含んだ声で聞いてみた。今はコレでいいはずだ 案の定、ハルヒは笑顔を崩すことなく…… それも何処か嬉しそうな声で答えた 「そう、ね………そう名乗る事を………許可してあげ、る………」 そう言った後、ハルヒがベットへ崩れる 緊張が解けたのやら安心感やらが要因か、直ぐに寝息を立て始めていた。その寝顔が何処か嬉しそうに見えたのは気のせいじゃないだろう、多分 その寝顔を見ていると何か悪戯をしてやりたくなったが……どうやら俺も限界な様だ 精神的にも肉体的にも疲れたしな。寧ろ今まで良くもったものだ それでも襲ってきた睡魔に軽く抵抗した 「………オヤスミ」 俺は小さくそういって、ハルヒの頬に唇を当てた。何故唇にじゃないかって?俺もそれなりに恥ずかしいのさ その行為が活動限界点だったか、俺は睡魔に身を任せて瞼を閉じた 「ってきまーす」 そういって家を出る。昨日の天候が嘘だったかのように快晴だ しかし降り注ぐ太陽光線は熱気を届け熱気はいまだ残る湿気に熱を蓄えその熱をゆっくりと放出せいでじめじめとした暑さが続いている 回りくどく言ったが兎に角暑い 早くも玉のような汗をかきつつ、俺は太陽への呪いの言葉を呟き続けた。傍から見れば変な奴だな、こりゃ 「キョーンッ!」 制服を取りに帰っていた団長殿がやってくる その表情は湿気も吹き飛ばすように溌溂としたものだった。見る者を安心させる笑顔、と言った所か。性格さえ知らなけりゃな 因みに迎えに来てもらったのは俺の要望ではない。そこん所勘違いしないように そんな事を考えて居ると、ハルヒが俺の腕に抱き着く。オイ待て、何処のバカップルだ、これは 「いいじゃない、恋人になったんだし。問題は無いでしょ」 視線が痛いな。それだけで精神に大ダメージだ と、言おうとしたがハルヒの笑顔を見ているとその気力を削がれる いや、別に無気力になるわけじゃないぞ?何となく認めてしまうといった感じの方だぞ? とりあえず今は暑さに負けない様、胸を張って歩かせてもらうよ なんてたって、この団長様の彼氏な訳だしな――― end
https://w.atwiki.jp/2ndchecker/pages/189.html
ヒロノとは 配信内容 関連人物 用語集 ヒロノとは 24歳男性配信者の事。 現在教師を目指している。 Wiki編集者募集中。 ヒロノ ◆配信での活動 配信ページ チャンネル名 ustream hirono255 #hirono255 justin hirono0520 UstreamChecker ヒロノ リンク Twitter hirono255 配信内容 ○凸待ち(基本的に人は来ない) ○ゲーム実況 エロゲ SFC PS1 PS2 PS3のゲーム ○麻雀配信 ○雑談配信 関連人物 プリお 衝動的なシノダ テル 用語集
https://w.atwiki.jp/sentai-kaijin/pages/4987.html
【名前】 邪面獣ジャグチヒルドン 【読み方】 じゃめんじゅうじゃぐちひるどん 【登場作品】 魔進戦隊キラメイジャー 【登場話】 エピソード1「魔進誕生!」 【所属】 ヨドンヘイム/ヨドン軍 【分類】 邪面獣 【闇獣】 ヒルドン 【担当邪面師】 無し 【邪面】 蛇口→ハンドルを回すと水道の水が出てくる地球の器具 【モチーフ】 蛇口、ヒル、タコ? 【詳細】 ヨドンヘイムに生息する巨獣ヒルドンに、地球の器具「蛇口」を模した邪面をかぶせた邪面獣。 ヒルドンの能力で触手を振動させることで空中を飛行し、蛇口の邪面から濁ったヘドロを排水しながらそれを媒介として生まれるベチャットを巻き散らし、周囲を汚染する事ができる。 この撒き散らしたヘドロでヨドン魔法陣を描き上げ、大軍勢で攻め込む為の侵略のゲートを開く事を目的に行動する。 上述の能力でヨドン魔法陣による侵略ゲートを開こうと目論み、地球に出現するとヘドロを撒き散らしながら破壊活動を行う。 当初は飛行形態だったが着地すると同時に人型となり、更にヘドロで汚染を進めていった。 そこへレッドキラメイストーンをキラメンタルによって魔進マッカへと形作った熱田充瑠が参戦。 逃げ遅れたクラスメイト達がジャグチヒルドンが近づくビルの屋上にいることに気がついた充瑠は、 スケッチブックへ瞬く間に「スペシャルスーパー消防車」をデザインし、 レッドキラメイストーンはそのキラメンタルに導かれて魔進ファイヤへと変形。 そして充瑠はキラメイチェンジしてキラメイレッドとなり、魔進ファイヤが伸ばしたはしごを登ってキラメイバスターでジャグチヒルドンを大きく吹き飛ばす。 が倒すまでには至らず体制を整え魔法陣を再び描き始めるが、レッドのキラメンタルによって他のキラメイストーンは、 充瑠が思い描いたイメージに沿ったキラメイ魔進へと変形。 その連続攻撃によって邪面を破壊され、触手を切り落とされた挙げ句、最期はキラメイストーンボンバーを受け爆散した。 以後、いきなり巨大で目立つ邪面獣を送り込むのはコストに見合わないため、事前に邪面師を送り込んで闇エナジーを稼がせた上でそれを元に邪面獣を地球へと移送することで、邪面師+邪面獣でトータルの被害数を増やす作戦にシフトすることになる。 なおクランチュラはジャグチヒルドンが失敗した魔法陣を用いた大規模侵攻用ゲートの作成を諦めていなかったらしく、EPISODE14にてSL邪面を使い再び「地獄環状線魔法陣大作戦」としてゲートを作ろうと試みていた。 失敗に終わってしまったが。 【余談】 前作に引き続き、第1話に巨大怪人が登場した。 「ヒルの巨獣『ヒルドン』に蛇口の仮面をかぶせた」という事で複数のヒルが寄り集まった身体に蛇口を模した頭部を持つ。 蛇口をモチーフにした怪人は『超力戦隊オーレンジャー』のジャグチャック/バラジャグチ(前作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』のカリブディスマイナソーはモチーフの一部として含まれている)以来、ヒルをモチーフにした怪人は『天装戦隊ゴセイジャー』のケサランパサランのペサラン挫以来となる。 もともとのヒルドンがどういう姿なのかは不明だが、公式サイトを見る限り邪面以外はベース元と大差無い模様。
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/88.html
参考:すぷれい http //supurei.untokosho.com/ 344 :名無しさん@秘密の花園:2008/04/09(水) 02 23 41 ID 4HBt5F7G このハルヒ、ペアルックしたくてわざわざ カーディガンも用意した上でことに及んだんだろうなと 幸せいっぱいに妄想してみる。 さりげなく、ハルヒの脚の間に膝を入れている長門に、 攻守逆転の布石を打つ熟達の技を感じた。 345 :名無しさん@秘密の花園:2008/04/09(水) 03 49 00 ID aLJmmRum あのまま足を動かすとハルヒがふじこるわけですね 346 :名無しさん@秘密の花園:2008/04/10(木) 00 02 18 ID g5K+wf03 ハルヒ総受け 347 :名無しさん@秘密の花園:2008/04/10(木) 02 21 50 ID wtOiEYSH 344-345 あ…ありのまま 今 起こった事を話すわ! 『あたしは有希を押し倒してポジション逆転に成功したと 思ったらいつのまにかイかされてた』 な… 何を言ってるのか わからないと思うけど あたしも何をされたのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった… 騎乗位だとか電気アンマだとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてない もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ… 348 :名無しさん@秘密の花園:2008/04/10(木) 13 58 00 ID G8TaxRNY 改変コピペですら萌えてしまう・・・ハルヒ恐るべし