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ミチノキミイラツメ(道君伊羅都売) コシノミチノキミイラツメの別名。
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今俺はハルヒを膝枕している。なんでかって?そりゃあ子供の我侭を 聞けないようじゃ大人とはいえないだろう?まあ俺はまだ自分を大人だとは 思っていないし、周りもそうは思っていないだろう。ただ、3歳児から見れば 俺だって十分すぎるほど大人なのさ。ああ、説明が足りなすぎるか。つまり こういうことだ。 ハルヒは3歳児になっていた。 ことの発端は10時間程前のことだ。休日の朝8時と言えば大半の人間が 「いつ起きてもいい」という人生でもトップクラスであろう幸せを感じつつ睡眠 という行為に励んでいると思う。俺ももちろんそうである。しかし、俺の幸せは 一人の女によってアインシュタインが四則演算を解くことよりもあっさりと瓦解 された。携帯電話がけたたましい音をあげる。携帯よ、今は朝なんだ。頼むから もう少し静かにしてくれ、という俺の願いは不幸にも全く叶えられることはなく、 俺は諦めて携帯に手を伸ばした。溜息をつきながら液晶を見ると思ってたとお りの名前がそこに映し出されていた。言うまでもなくハルヒである。 「キョン!出るのが遅いわよ!」 さすがハルヒだ。休日の朝だというのにこのテンションである。しかも怒っている。 「ああ、すまない。寝てたんだ」 謝る必要性は全くないが、一応謝っておく。こうした方がこいつも大人しくなるだろう。 俺も大人になったもんだ、などと考えているとハルヒが言葉を続けていた。 「まあいいわ、それよりキョン。今日寒いと思わない?」 比較的早く怒りがおさまった--もともと怒ってなどいなかったのかもしれないが--ハルヒが そんなことを言う。 「ああ、そりゃもう12月だからな」 寒くもなるってもんさ。と言ってからもう12月なのかと考える。あと4ヶ月で朝比奈さんが 卒業か・・・あの天使に会えなくなると思うと心を通り越して心臓が直接張り裂けそうだ。 ていうか先月の初めもこんなこと考えてたよな。いや、先々月も考えていた気がする。 「・・・ということで、皆でコタツを買うことになったから・・って聞いてんの!キョン!」 ああ、まずい聞いてなかった。また怒っていらっしゃる。ここは適当に流しておいた方がいいだろう。 「いや、ちゃんと聞いてたぞ。皆でコタツを買いに行くんだろ?で?それをどこに置くんだ?」 「だから有希の家に持ってって皆でぬくぬくするって言ったじゃない。やっぱり聞いてなかったようね。 団員としての自覚が足りないわよ。キョン」 いや、もう十分すぎるくらい自覚はあるわけなんだが・・・。まあハルヒから見ればまだまだ足りないの だろう。そんなことより、今回のハルヒの提案が大して迷惑なものではなかったことに俺は安心して いた。皆でコタツを買って長門の家で暖まろうというだけである。素敵とも思える提案だ。 「すまん。これから精進する。で?何時集合だ?」 「駅前に9時よ。即行で準備しなさい。じゃあね」 と言いこちらの返事も待たずにハルヒは電話を切った。相変わらずである。結局行くんだけどな。 俺に選択肢なんて始めからないのだ。 集合場所に着くと俺以外の面々は当然のように揃っていた。やれやれ、休日だというのに ご苦労なこった。 「おはようございます。キョン君」 おはようございます。朝比奈さん。相変わらず反則的に可愛らしいですね。あなたに会えた だけでも今日ここに来た意味があるというものです。などと俺が至福を味わっていると、 「遅いわよキョン!罰として買ったコタツはあんたが運びなさい!」 俺に指をさしながらそう言うと、ハルヒは近くの電気店の方にスタスタと歩き始めた。ハルヒよ、 お前は遅れなくてもどうせ俺に運ばせる気だったろうが。 「僕も手伝いますよ」 と、いつのまにか隣に来ていた古泉が相変わらずのさわやかな笑顔で話しかけてくる。 「ああ、すまんがそうしてもらえると助かる」 いえいえ、と言う古泉に、 「そういや最近閉鎖空間はどうなってんだ?」 ふと思ったことを聞いてみる。 「閉鎖空間ですか?全くと言っていいほど現れていませんよ。一番近いので3ヶ月前です。 これは今までの最長記録です」 なるほど、あいつもかなり落ち着いてきたんだな。3ヶ月前は何で発生したんだ?何かあった のか? 「いえ、時間帯的に単なる悪夢でしょう。ふふ・・・心配ですか?涼宮さんが」 ニヤニヤしながらこちらを見る。うるせえな、ただ気になっただけだ。そんなくだらない嘘をついた 小学生を見るような目でこっちを見るな。 「やれやれ、あなたもそろそろ素直になった方がいいですよ?」 うるせえよ。そんなことより、 「長門」 俺に呼ばれて長門はいつもの無表情をこちらに向けた。 「お前コタツなんか部屋にあったら邪魔なんじゃねえのか?なんなら俺が持って帰ろうか?」 俺も部屋にコタツなんてあったら邪魔で仕方ないが、長門にだけ迷惑をかけるわけにも いかんだろう。 「・・・大丈夫」 そこで一拍置き、 「どうにでもなる」 と、長門は続けた。そうか、まあ長門のことだ。使わないときはコタツをコンパクトにするだとか、 そういう反則的なことも出来るのだろう。だったら、長門のマンションに置いておいた方がよさそうだ。 「そうか、悪いな」 「・・・いい」 そんなことを話しているうちに俺たちは電気店に着いていた。ハルヒにいたってはもう中に入って いるようで、入り口からでは姿が見えない。 「どうする?探すか?」 「いえ、その必要はないでしょう。なぜなら・・・」 「みんなー!集合よ!いいのを見つけたわ!」 見ればハルヒが電気家具売り場の方からこちらを呼んでいる。 「なるほどね」 「そういうことです」 結果的に言えば、ハルヒの選んだそれは当たりだった。値段の割にはデザインも可愛らしいし --朝比奈さんも満足気だったしな--、大きさも5人が入っても問題のなさそうなものだ った。もともとハルヒは物を選ぶセンスなどは抜群なのだ。 問題はこれを俺と古泉だけでどう運ぶのかということだったが、これは長門の力によって あっさりと解決された。長門が買ったコタツに目を向けながらなにやらぼそぼそと言うと コタツの重みが一切なくなったのである。このような光景--というか、現象というか--を 見ると、俺の周りは非現実的なもんで溢れかえっているんだなと改めて実感する。いや、 もちろんそれが嫌ってわけじゃない。むしろ楽しいと思っているほどだ。 さて、こうなってしまうと朝比奈さんでも片手で運べてしまうのだが、ハルヒの手前まさかそんな ことをするわけにもいかず、俺と古泉はわざわざ「重いものを持っています」といった表情で コタツを運ぶことになった。途中何度か、 「大丈夫?あたしも手伝ってあげようか?」 などと普段見せない優しさを見せんでもいい時に見せるハルヒの提案を、俺と古泉が笑顔で かわすという行為を繰り返しているうちに俺たちは長門のマンションに到着した。 「さあキョン!組み立てなさい!」 「へいへい」 と溜息をつきながら俺はダンボールを開け始めた。こんな扱いを受けているというのに なんでだろうね?全くいらつかないのだ。これが慣れというやつだろうか。だとしたら、 この習性は治したほうがいいのではないだろうか。などと思案している間に古泉の 手伝いもあってか、あっさりとコタツは完成した。まあ、元々組み立てるのが難しいもの でもないしな。 「よし!じゃあ有希!あれ出して」 「わかった」 と、言いながら長門は台所に向かってスタスタと歩いていった。そして数十秒で戻ってくる。 両手には大量のみかんとスナックが抱えられていた。 「おいおい、随分準備がいいな」 「まあね皆には昨日のうちに言っておいたから」 だったら俺にも言っといてくれ。その方が心の準備が出来るってもんだ。 「だって、あんたどうせ暇でしょ?だったら当日に言えば済む話じゃない」 クソ、反論できないのが歯がゆい。ハルヒの言うとおり俺の休日にSOS団がらみ以外 の予定が入ることはほとんどないからだ。谷口や国木田も、 「キョンは休日も涼宮さんと一緒なんでしょ?」 と、誤解を招きそうなことを言ってきたりで、休日に俺を誘うということもない。つまりだ、 俺の休日に予定がないのはハルヒのせいでもあるわけだ。そんなことを知ってか知らずか、 ハルヒはもぞもぞとコタツに体を押し込めながら長門がテーブルに置いたみかんに手を伸ば している。見れば俺以外はもうコタツに入っている。朝比奈さんに至っては、 「暖かいです~」 と、幸せに浸っている。となるとだ、まあここはハルヒの隣に座るのが自然だろう。いや、別に 他意はないぜ?一番近いからそこに座るだけだ。それにハルヒの隣ということを考えなければ ベストポジションだ。なんたって真正面を見れば女神が居るからな。ちなみに長門は俺から見て 右、古泉は左の位置に居る。 「ちょっと!なんであんたがあたしの隣に座るのよ!」 近かったからだ。わざわざ遠回りするのも面倒だろ。 「まあいいわ・・・。結構大きいしね、このコタツ。それにしても暖かいわね」 そうだな。たまにはこういうのもいいよな。 「幸せです~」 と朝比奈さん。本当に幸せそうだ。あなたを見てるとこっちも幸せになってきますよ。 「そうですね。たまにはこんな日があってもいいでしょう」 古泉は俺と全く同じことを考えていたようだ。やめてくれ、微妙に気持ち悪い。 「・・・ぬくぬく」 見れば長門も上機嫌そうである。もうみかんの皮が6枚ほど長門の前に転がっている。 相変わらず素晴らしい食欲だ。 「むう・・・。でもこのまま何もしないのもつまんないわね」 そうか?俺は今日はこのままぼんやりしていたいがね。 「そんなじじくさいこと言ってると早く老けちゃうわよ?」 縁起でもないことを言うな。それにお前も子供じゃないんだから、落ち着けよ。 「ふん。童心をいつまでも持つことは大事なのよ。ね?古泉君」 「ええ、僕もそう思います」 お前は黙っていろ。このイエスマンめ。 「ああ、子供といえば。あんた子供に人気あるわよね?」 ハルヒはあっさりと話を変えた。割とどうでも良かったらしい。しかし、そうは思わんがね。 人気があるといっても。すぐに思い浮かぶのは妹とミヨキチくらいなもんだ。 「ええ~、でもあたしもキョン君は子供に好かれるイメージがありますよ?」 と、朝比奈さんが言う。朝比奈さんがそう言うならそうなのかもしれんと、俺のy=xのグラフ よりも単純にできている脳は勝手に結論を出そうとしていた。 「ね?やっぱりそうよね。じゃあさ、キョン。あんたも子供が好きなの?」 なぜそうなる。 「だってやっぱり好きなものには好かれるじゃない」 「そういうもんか?」 「そういうもんよ」 「まあ、少なくとも嫌いではないな。妹も、特に3歳ぐらいのころはホントに可愛かったな」 言いながら、その時の情景を思い出す。 「ふふ」 「どうかしましたか?朝比奈さん」 「いえ・・・。きっといいお兄さんだったんだろうなあと思いまして。目に浮かびます」 もちろん今もいいお兄さんですけどね。と、朝比奈さんは付け加えた。 「あたしもそれに関しては同感ね」 おお、ハルヒに褒められるとは。これ以上光栄なことはないね。 「もうすこし感情を込めなさい。感情を」 「ばれたか」 「当たり前でしょ?ふわぁ~。なんか喋ってたら眠くなっちゃった」 「あたしもです~」 と、朝比奈さんもハルヒのあくびがうつったのか小さなあくびをした。 「眠っちゃいましょう。もう二人寝てるし、あたし達だけ起きてても仕方ないわ」 言われてからそういえば長門と古泉が全く話に参加していなかったことに気づいた -いや長門に関してはいつものことだし、古泉も一度適当な相槌を打っていた気はするが-、 半立ちになりながらコタツの左右を覗き込むと本当に二人とも寝ているようだ。二人の 寝顔を見ながら、俺はなんだか安心してしまった。この二人はSOS団のことを信頼しきっている のだ。だからこんなにぐっすり眠れるのだろう。そう思うと嬉しいというか喜ばしいというか、そんな 気分になる。 「あんたは寝ないの?」 「いや、俺はいいや」 大体二人で横になったらどっちみち俺は寝れねえよ。などという俺の思考はハルヒには届かないだろう。 「ふ~ん、じゃあみくるちゃんも寝ちゃったみたいだし。あたしも寝るわね」 正面を見ると、女神の姿が見当たらない。おそらくハルヒの言うとおり、お眠りになってしまわれたの だろう。 「お菓子、一人で全部食べちゃダメよ?」 食べねえよ。ていうか無理だ。俺はお前や長門のような何回拡張パックをダウンロードしたかわからない ような胃は持ち合わせちゃいない。 「じゃあ、おやすみ」 ハルヒはそう言いながら寝転がる。 「ああ、おやすみ」 俺はその後、何十分かはわからないが。結構長い時間ぼんやりとしていた。ただ、俺も眠かったのだろう。 頭をコタツのテーブルに突っ伏すとそのまま眠りについてしまった。今日は本当にいい日だ。おそらく面倒事も 起こらない。さっきも言ったが、こんな日があってもいい。 だが、俺のそんな思いは目覚めとともにあっさりと否定された。 「・・・起きて」 静かな、しかしどこか強制力のある声が耳元からする。 「・・・起きて」 二度目のその言葉で俺は目を覚ました。目の前に見慣れた無表情がある。長門だ。 「ああ、長門か今何時だ」 「13時」 そうか、まだ1時間しか経ってないじゃないか。だったらもう少し寝させて・・・、 「キョン!起きたのね!キョンもトランプしましょ!」 いつもの11倍ぐらい目を輝かせながらハルヒはコタツの向こう側からこちらを見ている。 しかもなぜか朝比奈さんの背中に抱きつきながら-いわゆる強制おんぶ状態だ-だ。 「おいおいなんだ?とんでもないテンションだな」 「聞いて」 長門が話しかけてくる。長門がこんなにも自ら口を開くことははっきり言って珍しいことだった。 だから、俺はなんとなく嫌な予感はしていたんだ。 「なんだ、どんな厄介ごとだ?」 「・・・おそらく涼宮ハルヒの精神は14年ほど退行している」 見ればハルヒがターゲットを朝比奈さんから、長門に変えている。長門はハルヒに背中から抱きつかれながら 無表情でそんなことを言っている。なんてシュールな絵なんだ。そしていつもながらとんでもない話だ。 「あ~、精神だけか?」 「・・・そう」 そりゃあ厄介だ。 「そう。厄介です」 と、古泉がそれに反応した。 「見た目も退行してくれていれば、もう少しやりやすかったのですが」 「ふふ・・・さっき古泉さん、涼宮さんに抱きつかれて慌ててましたもんね?」 朝比奈さんがそんなことを言う。 「いえいえ、そんなに睨まないでください。不可抗力ですよ」 古泉はパタパタと両手を振る。別に睨んでなどいない、まあ不可抗力なんだしな。 仕方のないことだ。若干もやもやするがそれは気のせいだ。 「長門よ、そのこうなった・・・」 原因は?と尋ねようとして俺はやめた。なんとなく推測出来るし、多分俺のせいだろう。 だったらそんなことをわざわざ聞く必要はない。 「いや、これは何時ごろ治るんだ?」 ハルヒは長門に抱きつきながらびょんびょん跳ねているため、長門の顔は無表情のままがくがく 揺れている。ハルヒ、やめなさい。長門の頭が取れかねん。 「確定は不可能。ただ長い時間はかからない」 そうなのか? 「・・・そんな気がする」 なるほど、それが長門の意見か。今は長門が意見を言うということもそこまで珍しいということでもない。 「僕もそう思いますよ。これは一時的なものでしょう。まあ、多少厄介ですが。みんなで遊んであげれば、 自然と元に戻るはずです」 「ああ、俺もそんな気がする」 「ただ、トリガーというかキーというか。そういうものがある可能性は否めませんが、それもおそらくは簡単に 見つかるでしょう」 言いながら、こちらを見る。期待していますよと言わんばかりだ。やれやれ、また俺が握っているのか? そのキーとやらを。 「じゃあ、今日は皆で涼宮さんと遊びましょう!ね、涼宮さん」 「うん!」 と、ハルヒが朝比奈さんの問いかけに対して明るく可愛く答えている。今のハルヒに母性本能がくすぐら れているのだろうか。朝比奈さんもまんざらでもなさそうだ。 「じゃあ、キョン!トランプ!」 太陽の笑顔をこちらに向けてトランプを手渡してくるハルヒに対して俺は、 「へいへい」 と、命令に従いトランプをシャカシャカと切り始めた。結局ハルヒの精神が幼児化したところで、俺の ポジションが変わることはないのだ。 「あ!でもトイレ行きたい。キョン!ハルヒが帰ってくるまでに配っててね!」 そう言いながらトイレの方に歩いていった。どうやら記憶はあるらしい。そりゃそうか、俺の名前も覚えてる しな。あとこの頃のハルヒは自分のことを名前で呼んでたんだな、可愛らしいこった。 「みなさん、提案があります」 と、古泉がなにやら喋りだした。 「これから多分数多くのゲームをすることになると思うのですが・・・」 そりゃそうだ、なんたって身体はそのままだからな。体力はものすごいだろう。 「ええ、ですが。そのゲームにおいてですね、涼宮さんを最下位にさせるということは出来るだけ 避けたいんです」 ああ、なるほどね。俺は古泉の言いたいことを瞬時に理解した。ほかの二人もそうだろう。 「確かにな、そんなことになったらもっと厄介なことになりそうだ」 「ええ、ただ彼女は勘がいいですからね。手加減しているのを聡られないようにしなければ いけません」 そうだな、しかしまあ骨の折れる作業だ。 「仕方ありません。それに、こういうのも楽しいでしょう。僕は嫌いじゃないですよ」 確かに退屈はしなそうだな。その時、とたとたと足音が聞こえた。どうやらハルヒが帰ってきた ようだ。 「あ!配っててくれたんだ!ありがとうキョン!」 と、俺にいつもより数割増しの笑顔を向ける。おいおい、勘弁してくれ。素直なハルヒなんて 俺の想像の範囲内には居ないんだ。俺が混乱しつつある頭を何とか正常に戻そうとしている と、あろうことかハルヒはその混乱を増幅させる行為をとりやがった。すなわち、俺の脚の間に ドスンと座ったのである。そりゃあもう堂々と、それが当たり前のように。 「おい、何をしている」 「キョン!イス代わりになって~」 ああ、うんそういうことか。でもな、朝比奈さんでもいいじゃないか。 「う~んそれでもいいんだけどさ、みくるちゃんちっちゃいんだもん」 と、言いながらこちらを見上げる。顔が近いよ、顔が。それと髪からものすごくいい匂いがする。 これはまずい、どう考えてもまずい。 「いや、でもな・・・その・・人をイス代わりにするのはあまりいいことじゃないぞ?」 俺は何とか平静を保ちながら-これは奇跡的なことだ、自分の精神力に感服するね-、 ハルヒに言い聞かす。だが、 「うう・・・キョンはいや?」 と、ハルヒに潤んだ瞳で見上げられれば「嫌だ」などと言えるわけがない。 「ええとだな・・・その・・・」 「わかった・・・。じゃあ古泉くんのところに・」 「ハルヒ!」 「ふぇ?」 「嫌じゃないぞ、全然嫌じゃない。だからここに居なさい」 もちろんこれは古泉の為だ。さっきも大分困ってたみたいだからな、そうだお前の為なんだ。 だから古泉よ、そんなニヤニヤ顔でこっちを見るな。朝比奈さんもそんなに優しい目でこちら を見ないでください。 「え・・・?うん!ありがとう、キョン!」 そう言いながら思いっきり抱きついてくる。いや、だからそういうのはまずいと言ってるだろうに。 「あ~、ハルヒよ。前を向いた方がいいぞ。トランプがしづらいからな」 「あ、うん。ごめんね」 と、素直に前を向く。かくしてようやくトランプまでこぎつけた。これからおそらく何時間も遊ぶのだ。 それが終わる頃には俺はもしかしたら、死ぬんじゃないだろうか?そんなことを俺は本気で考えて いた。 結論から言うと俺は何とか死なずにすんだ。勝因はなんといっても、 「キョンの身体かたーい」 と、言いながら朝比奈さんの方にハルヒが途中で移動してくれたことだ。それでも移動するまでは トランプのババ抜きをしている時にハルヒが最初にあがると嬉しさのあまり俺に抱きついたり、先ほども 述べたのだがハルヒからやたらいい匂いがしたりと、俺のHPはもはや限界まですり減らされていた。 途中で朝比奈さんの方に行ってくれなかったら、間違いなく命はなかっただろう。その時に若干喪失感 みたいなものを味わったが、まあそれも気のせいに違いない。 それと、古泉の言っていた懸案事項も全く問題にならなかった。なぜって?そりゃあハルヒが 何をやらしても強かったからさ。元々3歳の割には語彙が多いなとかは思っていたが、頭の 回転の良さも昔からだったらしい。結局手加減どころか本気をだしても俺達がハルヒにかなうこと はなく、終始1位と2位をハルヒと長門が取り合うという形でゲームは行われていった。ただ、途中 人生ゲームをする時は朝比奈さんに漢字や意味を聞きながらうんうんうなづいてプレイしていたから 4位になっちまったけどな。ちなみに最下位は古泉だ。もちろん、手加減などしていなかったが。 そうして楽しかった時間はあっという間に過ぎ、ハルヒの、 「ねむ~い」 の一言で4時間にも及んだゲーム大会は終わりを告げ、俺以外の4人はあっさりと眠りについて しまった。ちなみにハルヒはといえばコタツには入らず、俺に膝枕をさせながら毛布をかけて眠りこけ ている。 ここでようやく冒頭に戻る。俺はなんとなくハルヒの頭をなでていた。なあハルヒよ?楽しかったか? 今度起きたら元に戻っていてくれよ?子供のお前も好きだけど、俺はやっぱり・・・。俺がありえない 程恥ずかしいことを考えているとパチッとハルヒが目を開けた。ばっちり俺と目が合う。 「ハ・・・ハルヒ・・・?」 「ねえキョン・・・」 「うん?」 「キョンはハルヒのこと好き?」 え~とだな、このハルヒは子供の方のハルヒだよな?ああ、間違いないだろう。自分のこと「ハルヒ」 って言ってるしな。じゃあ、大丈夫だ。嘘をつく必要もない。ハルヒの頭をなでつけながら俺は出来る だけ優しい声で言った。 「ああ・・・好きだよ」 「ホント?」 「本当だ」 「元に戻っても?」 おいおい、こいつわかってやってんのか?いや、まあ大丈夫だろう。ハルヒはこれを夢と処理するはずだ。 「ああ・・・元に戻ってもだ」 「ふふ、ありがとうキョン」 と、ハルヒは更に言葉を続けた。 「あたしも・・・好きよ」 !!驚いてハルヒの方を見るが、ハルヒはもう眠ってしまっていた。いや、さすがにこの早さで寝るのは ガリレオ・ガリレイが天動説を唱えるくらいありえない。俺はおそるおそるハルヒの頬をつねってみるが、 何の反応もない。本当に眠ってしまったようだ。 「ふう」 俺はしばらく考えてから寝てしまうことにした。考え事なんてもともと俺の性分じゃないんだ。そんなもの は古泉あたりにまかせておけばいい。俺はそう決めてかかると、眠りの世界に身を委ねた。 起きると、周りにはもう朝比奈さんと古泉の姿はなかった。右の方を見ると長門がみかんをパクついて いる。お前、それ何個目だよ。 「長門、みんなは?」 「もう帰った。あなたたちもそろそろ帰った方がいい」 そうか、言われて時計を見れば確かにもう結構な時間である。これは帰った方がよさそうだ。 「ハルヒ、帰るぞ」 「ん・・・ううん」 そういいながらもそもそと起き上がる。 「え!うそ!もうこんな時間?どうして起こしてくれなかったのよ!」 どうやらもとのハルヒに戻っているようだ。なんとなくわかってたけどな、だからみんなも帰ったんだろう。 それよりお前はばっちり起きてたし、誰よりもはしゃいでいたぞ。 「いや、俺たちは全力でお前を起こそうとしたがどうしてもお前が起きなかったんだ」 「ホント?有希?」 「本当」 と、長門はゆっくり頷いた。 「そっか・・・」 なんだか少し寂しそうだ。 「すまん・・・無理矢理にでも起こせばよかったか?」 「ううん、いいのよ。ありがとね」 おいおい、元に戻っても素直なまんまか。勘弁してくれ。 「なあに変な顔してんのよ」 「いや、なんでもない」 そう言いながら、帰る準備を進める。さて、 「じゃあ、帰るか」 「そうね」 「じゃあな、長門。いろいろありがとな」 「いい」 「バイバイ有希、また来るからね」 「・・・わかった」 長門がゆっくり頷くのを確認してから俺たちはマンションのドアを閉めた。 帰り道、ハルヒがこんなことを言い出した。 「ねえキョン」 「なんだ」 「あたしね・・・変な夢を見たの」 やっぱりきたか、でもなハルヒそれは夢じゃないんだぜ。 「どんな夢だったんだ?」 なんとなく聞いてみたが、おおよそハルヒの回答は予想がついた。なんたってみんなに 甘えたおした挙句、最後には俺にあんなことを言われたんだ。ハルヒにとっては悪夢 以外の何物でもないはずだ。 「それがね」 と、ハルヒはこちらに顔を向けながら続ける。そして笑顔で顔を輝かせ、 「すっごくいい夢だったのよ!」 と、言ってのけた。おいおい、待ってくれその反応は反則だ。クソ、顔が熱い。ハルヒの 方を見れん。 「ちょっと、何で顔をそらすのよ。ていうか顔赤いわよ?キョン」 夜でもわかるくらい俺の顔は赤いのか、恥ずかしい話だ。仕方ない、喋ってごまかそう。 「あ~、ハルヒよ。俺も変な夢を見たんだ」 「へ~、どんな夢よ?」 「それがな」 俺は言葉を続ける。 「ものすごくいい夢だったんだ」 なぜか、ハルヒの顔が朱に染まった。 fin
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涼宮ハルヒの遡及ⅩⅠ 終った……のか……? 俺は茫然と呟いていた。なぜならとても凌ぎきれそうにないと想像せざる得なかったあの怪鳥の集団が完全に消滅したのだから。 それも長門とアクリルさんが二人で放った、たった二発の融合魔法――フュージョンマジックによって。 「終わり? 何言ってんの?」 が、俺をあっという間に現実に引き戻したのは、肩越しに振り返ったアクリルさんの不敵な笑みである。 ……その頬には嫌な汗を一滴浮かばせていたからな。 ついでに言うなら隣に肩を並べて佇んでいる長門は振り返ることすらしていない。 そうだな。おそらくそれはその視線の先に在る者のためだろう。 ああそうだ。さっきと同じくらいの大群がまた、俺たちに迫って来てやがるんだよ。悪いか。 「嘘よ……」 ん? 「こんなの嘘よ……」 心細く呟いているのは俺の腕の中にいるハルヒじゃないか。それも前髪で瞳を隠して全身が震えてやがる。 どうしたんだ? 「だって……この世界は、あたしの想像が現実化している世界なんでしょ……?」 まあな。俺と古泉がそれを教えたもんな。 「だったら!」 ハルヒがどこか涙を浮かべた瞳で睨みつけてきた。 「何でみんなを危ない目に遭わせなきゃいけないのよ! あたしはみんなで面白おかしく過ごせることを望んでいるわ! なのに何でみんなを苦しませてるの!?」 ハルヒが慟哭の叫びをあげている。 確かにそうだな。お前は無理難題を吹っ掛けることは多いが、それでも俺たちを苦しめてやろう、などと思ったことは一度もなかったよな。 「蒼葉さんの時もそうだった……あたしは、ただ面白い世界であってほしいだけなのに何で……」 その通りだ。お前は誰も不幸にしたいと思っちゃいない。少し方向性はズレているがそれは間違いないだろうぜ。 だからさ、 「誰もあなたと一緒に居て不幸だと思ったことはない」 え? 俺のセリフを取ったのは長門。お前なのか? 「その通りです。僕も涼宮さんに出会って不幸だなんて感じたことはありません」 「あたしもです。あ、でもあんまり恥ずかしい格好させられるのは……」 「みんな……」 「だとよハルヒ。てことは今、この状況でさえもお前のことを恨んでる奴なんかいないってことだ。SOS団にはな」 俺はこの場に似つかわしくないであろうとびっきりの笑顔を浮かべている。 「キョン……」 「だからさ気にするな。必ずこの世界から脱出できるさ」 「で、でも……あの怪鳥の数とか世界の異常気象とかは……」 「何か勘違いしているようだけど、あたしたちに襲ってくるこの世界はハルヒさんの意思じゃないわよ」 割ってきたのは唯一SOS団とは無関係の異世界人さんである。 「だって、もうこの世界は『一つの世界』として定着してしまっている。それは異世界という意味。つまり、ハルヒさんの力はもうこの世界に及んでいない。なぜならハルヒさんも元の世界の一部だから。世界を越えてまでその力が作用されることはないの。 要するに今、この世界はあたしたちを完全に敵とみなしたってことよ。当然よね。だって、あたしたちはこの世界を滅亡させようとしているんだから」 ……なんつう説明だ……いいのか……? 「ついでに言うなら、アサヒナさんの……えっと、ミクルミサイルだっけ? アレが確実にこの世界を滅亡できるってことを意味していることでもあるわ。だからこそあたしたちを、正確にはアサヒナさんを排斥しようと躍起になってるわけだしね」 「え? じゃあ世界を滅亡させよう、なんて考えなければ攻撃されないってこと?」 「……元の世界に戻るにはこの世界を崩壊させるしかない、って言ったはずだけど」 戸惑いながら問うハルヒに、苦笑を浮かべて応えるアクリルさん。 が、次の句は再び襲いかかって来た怪鳥の大群によって阻まれてしまったのである。 再び、大激闘が始まる。長門とアクリルさんと古泉の。 長門とアクリルさんは怪鳥の群れに突っ込み、なんとヒットアンドアウェイ作戦で一羽一羽を各個撃破していくんだ! 確かに作戦としては間違いじゃない。 集団に突っ込んでしまえば向こうの同士討ちも誘発できる。ただし、それは長門とアクリルさんが相手よりも素早く動き回れる、ってことが絶対条件だ。 空を飛ぶ怪鳥相手に、魔法で飛ぶ二人が動きで負けないのだからとんでもない話だ。 んでもって、古泉は古泉で、俺たちを守るこの赤い球を消すわけにはいかず、笑みが消えた必死の形相で現状維持を図っているんだ。 くそ……また見ているだけなのかよ……俺にも何かできることはないのか…… 「キョン見て……」 俺にどこか愕然とした声をかけてきたのはハルヒだ。 「何だ?」 「よく見てよ……さくらさんと有希を……」 ん~~~正直言って、あまりに動きが早いんでなかなか細かく見ることが難儀なんだが…… 目を細めてみる。 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?! 俺もまた驚嘆した。 「嘘だろ……まさか……」 「そうよ……これじゃあの時とまったく同じよ……」 俺とハルヒの震える声が響く。 そう……長門とアクリルさんが肩で息をし始めているんだ……しかも動き回っているわけだからその度に小さな光が点々と反射してやがる…… つまりそれは疲労が蓄積し始めてるってことだ。 無理もない。さっきから怪鳥の大群を相手しているだけじゃなく、大地がもうないわけだからずっと『飛んだ』まま戦い続けているってことになるからな。 それは魔力とやらを放出し続けているって意味だ。 体力と同じで魔力だって器量を越えれば必ず尽きるときがくる。 そしてそれが意味することは―― 「じょ……冗談じゃねえぞ……今、ここにいる古泉も含めてこのままじゃ……」 「分かってるわよ! だから、あたしたちにも何かできないことはないの!?」 ハルヒが叫ぶ。 その気持ちは痛いほど解るさ。俺だってあんなことは二度とごめんだ。 だが俺たちに何ができるというのか。 確かに今の俺は、ゲーム作りした時に創り上げた数多くの中の一つのゲームの時の妙な力は使えるが空を飛べるわけじゃないんで役には立てない。 さっきも言ったが、ハルヒの大技は朝比奈さんが戦列に加わることができない以上、使えない。 いったいどうしろと……って、いや待てよ! 「ハルヒ、お前だ! お前が呼ぶんだよ!」 それは俺の思いつき。しかし、確実に来るだろうと予感できるもの。 「って、何をよ!?」 「前にゲーム作りした時にお前が宇宙戦艦を呼べたじゃないか! アレを呼べ! おそらく、いや絶対に来る! だって、俺にだって妙な力があったんだ! だったら!」 「そっか!」 ハルヒが満面に勝気な笑みを浮かべて、しかし、即座に瞳を伏せてマジ顔に変化! 「来なさい――」 静かに呟き、そして『かっ』という効果音が聞こえてきそうな勢いで瞳を開き、 「ザ・デイオブサジタリアス!」 ハルヒが吠えると同時に空が割れ、その暗闇の空間から、深紅に輝く、とあるトレーディングカードをテーマにした物語に出てきた天空を大いなる翼で羽ばたく神の竜を彷彿とさせるデザインの、一機だけではあったが、戦艦が現れたのである。 「行くわよ! キョン!」 「もちろんだ!」 戦艦に乗り込むべく、ハルヒは俺に手を差し出し、迷わず俺はその手を取った。 「あ、あの?」 古泉が戸惑いの声を漏らして、 「古泉! お前は朝比奈さんを守っていろ! 俺とハルヒが抜ければその赤玉も小さくより強固にできるだろ! なんせ守る人数が減る訳だからな!」 俺は勝気っぱいの笑顔で吠える。 もっとも俺がこう言っている時でもハルヒと俺は深紅の戦艦にトラストされている。 完全に中に入ったとき、俺が最後に見ていたのは古泉と朝比奈さんの戸惑っている表情だった。 が、それでいい。 頼むぜ古泉。 そう心の中で呟き、俺とハルヒはコクピットへと駆ける。ま、入った順番の関係で俺が後ろ、ハルヒが前ではあったがな。 …… …… …… …… …… …… 古泉一樹は感慨深げに上空を眺めていた。 深紅の戦艦がゆったりと動き始めた様を、今、自身は親友という念を抱いている少年を見送るが如く眺めていた。 もし、自分自身が創り出した赤い結界球の中にいなければ、その風圧で古泉一樹の柔らかな髪は揺れていたかもしれない。 「まったく、あなたという人は……」 ひとつ、ため息交じりの呟き。しかし、その表情には自嘲気味ではあったが笑顔が浮かんでいる。 おそらくは彼の親友は見たことがない笑顔。 そこには仮面ではない本当の本物の素直な古泉一樹の笑顔があった。 もっとも、たった一人だけ、その笑顔を見止めた者もいる。 「くすっ、古泉くんってそんな風に笑うこともできるんですね」 「朝比奈さん……」 無邪気な笑顔を向ける朝比奈みくるに、古泉一樹が苦笑を浮かべる。 どことなく照れくさかったから。 「しかしまあ」 が、もう一度、上空へと視線を移し、 「確かに、彼の言うとおり、これで僕は結界球を縮小させ、強化することができます。あなただけを守ることに専念できるということです」 「よろしくお願いしますよ。もう少しですから」 「はい」 などと会話しつつ、しかし、古泉一樹はとある提案を思いつく。 むろん、それは嘘ではないのだが、受け入れてもらえる提案かどうかが判らなかったので、 「ところで僕があなたに近づけば近づくほど、もっとより強固にできるのですが? なぜなら、結界球は範囲が小さければ小さいほどより強固になるものですから」 「どういう意味でしょう?」 もちろん、朝比奈みくるはキョトンと問う。もっともみくるミサイル発射態勢のままではあるが。 「つまり、僕があなたを抱きしめられるくらい近づけば、という意味ですよ。そうすれば、ほとんど一人分の範囲しか必要ありませんし、今、僕が創りだせる一番強固な状態にできることでしょう」 しかし、朝比奈みくるの反応は顔を赤らめるわけでもなく、また慌てふためくわけでもなく、 「ふふっ、ゴメンだけどそれはいいです。だって意識してしまってミサイル充電に支障を来たしそうですから。そうなってしまえば、キョンくん、涼宮さん、長門さん、さくらさん、そして古泉くんに迷惑かけちゃいますから」 それだけを笑顔で言うと、再び瞳を伏せ、精神を集中させる。 ふぅ……やっぱりですか…… そんな彼女を見たあと、古泉一樹は再び視線を上空へと、正確には涼宮ハルヒが呼び、今は自分たちのやや前にある深紅の戦艦を、どこか残念な諦観の笑顔を浮かべて眺めていた。 古泉一樹には解っていた。 朝比奈みくるが一番最初に呟いた名前、正確にはあだ名を聞いて、それを確信させられてしまったから。 彼女にとって誰が一番大切なのかを。 なんとなく辛いことでもあったのだが、古泉一樹はそれをどういう訳かすんなり受け入れている自分に気がつき、どこか吹き出したくなってしまったのである。 …… …… …… …… …… …… 「キョン、あんたが操縦して! あたしは砲撃するからちゃんと当たるように動かすのよ! あと、絶対に有希とさくらさんを巻き込まないようにね!」 「言われんでも分かっている!」 ハルヒが一段高い、コントロールパネルに、ブラインドタッチでいうホームポジションで指を置き、俺はその下で四つに分かれたレバーを軽やかな手つきでさばいていた。 もちろん、二人とも勝気な笑顔を浮かべたままだ。 そりゃそうだろう。 前回と違い、今度は見ているだけじゃない。俺たちだって長門やアクリルさんのために、朝比奈さんや古泉のために戦うことができるんだ。 以前の蒼葉さんのことを思い出せば、どんなに危険なことだろうと、このやる気全開の高揚感がそれを地平線の彼方へと追いやれるってもんさ。 「行くわよ! 連続発射! 撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て!」 おいおい本当に楽しそうな声だな、つか撃つのはお前だ。 などと心の中でツッコミを入れる俺の表情も笑顔が途切れていない。 眼前では、ハルヒの狙撃が怪鳥を確実にヒットする光景が映し出されている。 まあ数は半端なく多い訳で、しかも、この怪鳥もその嘴の奥から怪光線を発射できるんだ。当然、戦艦を衝撃が襲うことだってある、というか襲いまくってきている。 俺の目の前のパネルには、戦艦の破損情報が逐一送られてきており、いくらこの船が強固なものだろうと、相手の数が数である。 当然受け続ければいずれは沈むことだろう。 もっとも、俺とハルヒにとってはそんなことはどうでもよかった。 「こらキョン! ちゃんと操縦しなさい! 一匹外しちゃったじゃない!」 叱咤してくるハルヒの声は妙に明るいしな。 などと、どこか場違いなくらい無邪気な俺たちの耳が軽い金属音を二つ捉えた。幻聴じゃない。確実に聞こえたんだ。 何だ? ――外部回線ONを申請する。互いの声が聞こえるように。可能なはず―― 「んな!?」 「ちょっと! 今の声、有希!?」 ――そう。わたしは今、精神感応魔法、テレパシーであなたたち二人に声を届けている。彼女の使用する魔法をプログラム化しインプットした今の私はこれが可能。しかし彼女はこの戦艦の機能を知らない。だから声をかけるのわたしの役割―― きちんと説明してくれた長門に、ハルヒがやや戸惑いながら外部回線をONに切り替える。 「聞こえる? 有希」 『聞こえる。そちらは』 「こっちも大丈夫よ」 『あなたの方は?』 ん? 俺に聞いているのか? というか、ハルヒが聞こえているなら俺にも当然聞こえていることくらい長門にも解かっているはずだが? 『ええ、あたしの方も大丈夫よ。これで、もっと連携しやすくなるわね』 って、何だアクリルさんに確認していたのか。 俺は思わず苦笑を浮かべてしまったね。 『それにしても助かったわ。空飛ぶ魔法を使いながら攻撃をしてたからちょっと疲れてきてたのよ。でも、この艦隊のおかげで足場ができたわけだし、かなり楽に魔法を使えるようになるわ。あたしも、んで勿論、ナガトさんもね』 外部モニターに映るアクリルさんが俺たちの方を、正確にはコクピットに向けてウインクをしてくれている。 どうやら本当に俺たちは役に立っているようだ。こんな嬉しいことはない。 『そう。そしてこれで大技を使いやすくなる』 長門? などという疑問はアクリルさんが放った魔法によって、驚嘆と供に解明された。 『スターダストエクスプロージョン!』 そう! あの銀河を駆ける数多の流星群を彷彿とさせる魔法が放たれたんだ! 撃ったのは勿論アクリルさんだ! 怪鳥群の一角に確実に大きな風穴を空ける! って、どうして今の今までこの魔法を使わなかったんですか!? 『簡単に言わないでよ。この魔法って三つの魔法を同時に使うようなものなんだから。空を飛んで、防御魔法を使って、コイズミくんの防御結界の威力を高める魔法を使ってたらこの魔法は使えないの。だって、あたしは複数魔法同時使用は五つだから』 『わたしにとってはあなたが五つの魔法を同時使用できることの方が信じられない。どうやっても、わたしは三つまでしか使えなかった』 『それも凄いわね。あたしたちの世界で複数魔法を同時使用できるのは、あたしを含めてたった四人よ。しかも三つ以上となるとあたしと蒼葉の二人だけね。魔法を使い始めてすぐのナガトさんが三つ使えることが驚き。ひょっとして魔法使いの才能あるんじゃない?』 『そう』 ううむ。思いっきり雲の上の会話だな。見ろよ。ハルヒだって目が点になってるぜ。 『それはともかく、じゃあナガトさんも当然いけるわよね?』 『もちろん』 どういう意味だ? 『スターダストエクスプロージョン』 んな! 長門が棒読みに呟くのが聞こえてきたと思ったら、またもや流星が放たれたんだ! もちろん、怪鳥群の一角が完全に吹き飛ぶ! って、凄すぎるから! 『キョンくんとハルヒさんのおかげよ。この戦艦が足場になってくれているおかげで、あたしたちは空飛ぶ魔法を使うことなく、攻撃に専念できるから』 『そう』 二人の満足げな声が聞こえて、 「よぉし! なら、あたしたちも負けてらんないわよ!」 「ああ!」 ハルヒと俺もまた、いつまでも傍観者でいるつもりはなく、長門とアクリルさんを乗せたまま、再び怪鳥の群へと攻撃を再開する。 そうだな、こう表現しても間違いないだろう。 俺たちの快進撃が始まった、と。 涼宮ハルヒの遡及ⅩⅡ
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番号 施設CD 避難所 氏 名 年 齢 住 所 1 66 小野小学校 オガタ ヨシハル 58 野蒜字下沼 2 66 小野小学校 オガタ ミチコ 54 3 66 小野小学校 オガタ イズミ 25 4 66 小野小学校 アベ ダイスケ 32 5 66 小野小学校 アベ メク゜ミ 30 6 66 小野小学校 アベ リュウノスケ 7 7 66 小野小学校 阿倍 来春 6 8 66 小野小学校 阿倍 銀工 4 9 66 小野小学校 アイウラ ユキエ 小野字裏丁 10 66 小野小学校 アイウラ ユキオ 11 66 小野小学校 アイウラ カツミ 12 66 小野小学校 アイウラ カナ 13 66 小野小学校 アイウラ レイナ 14 66 小野小学校 アイウラ タカユキ 15 66 小野小学校 アワノ ヤスナリ 48 小野字裏丁 16 66 小野小学校 アワノ ヒロコ 46 17 66 小野小学校 アワノ トシフミ 14 18 66 小野小学校 アワノ サキ 16 19 66 小野小学校 アワノ 誠智 19 20 66 小野小学校 モギ カツコ 91 小野字裏丁 21 66 小野小学校 モギ タダシ 65 22 66 小野小学校 モギ ミチコ 57 23 66 小野小学校 モギ ミツヒロ 36 24 66 小野小学校 ヤギ マサヨシ 66 25 66 小野小学校 ヤギ キミエ 62 26 66 小野小学校 アサノノリコ 33 27 66 小野小学校 アサノ リナ 1 28 66 小野小学校 ダイマル キエツ 83 29 66 小野小学校 ダイマル マサコ 82 30 66 小野小学校 ダイマル ヒデコ 75 31 66 小野小学校 ダイマル ヨシノリ 55 32 66 小野小学校 ヤギ ミチコ 36 33 66 小野小学校 エンド゛ウ タツオ 83 34 66 小野小学校 ササキ シュウイチ 62 35 66 小野小学校 ササキ カズコ 58 36 66 小野小学校 ササキ トヨコ 88 37 66 小野小学校 ササキ カズフミ 28 38 66 小野小学校 ササキ ユウ 30 39 66 小野小学校 イシヤマ トシコ 74 40 66 小野小学校 イシヤマ ユウコむ 56 41 66 小野小学校 ヒラタ タカヒロむ 18 42 66 小野小学校 オオモリ セイイチ 64 小野字町 43 66 小野小学校 オオモリ キミエ 56 44 66 小野小学校 オオギヤ ゼンザブロウ 63 小野字町 45 66 小野小学校 オオギヤ ハルエ 60 46 66 小野小学校 エンドウ ケイエツ 54 47 66 小野小学校 エンドウ アキコ 54 48 66 小野小学校 エンドウ タマコ 84 49 66 小野小学校 イシガキ ユミコ 55 小野字町 50 66 小野小学校 アツミ ミサオ 57 小野字町 51 66 小野小学校 アツミ ヤスコ 58 52 66 小野小学校 オオモリ キエコ 78 53 66 小野小学校 アツミ トモミ 31 54 66 小野小学校 キムラ トクユキ 78 小野字町 55 66 小野小学校 キムラ マチコ 78 56 66 小野小学校 オクダ カズコ 84 57 66 小野小学校 キョウゴク キョウコ 75 58 66 小野小学校 カシワ カズコ 70 小野字町裏 59 66 小野小学校 タダ フジエ 67 小野字町 60 66 小野小学校 ドイ ノリコ 50 小野字町 61 66 小野小学校 サトウ ヨウコ 57 小野字町 62 66 小野小学校 カタオカ キミエ 58 小野字町裏 63 66 小野小学校 ソエタ ヤスシ 78 小野字町 64 66 小野小学校 ソエタ ミナコ 74 65 66 小野小学校 橘川 ヒロミ 46 小野字町 66 66 小野小学校 ソエタ タカシ 76 小野字裏丁 67 66 小野小学校 ソエタ トクコ 73 68 66 小野小学校 カンノ トシイチ 86 小野字町 69 66 小野小学校 カンノ マスコ 83 70 66 小野小学校 カンノ タケシ 56 71 66 小野小学校 カンノ ヤスシ 52 72 66 小野小学校 オガワ クニオ 96 小野字裏丁 73 66 小野小学校 オガワ タカコ 90 74 66 小野小学校 シモザワ ヨシト 71 小野字町 75 66 小野小学校 シモザワ マサコ 83 76 66 小野小学校 オオイズミ カネオ 80 小野字町 77 66 小野小学校 オオイズミ トミイ 84 小野字町 78 66 小野小学校 オオイズミ マサアキ 56 79 66 小野小学校 イシヤマ ヒデトシ 90 小野字町 80 66 小野小学校 イシヤマ シゲコ 84 81 66 小野小学校 イシヤマ カオリ 76 82 66 小野小学校 スガワラ タカシ 73 小野字町 83 66 小野小学校 スガワラ ウタコ 72 84 66 小野小学校 スガワライサム 47 85 66 小野小学校 スガワラ マユミ 45 86 66 小野小学校 スガワラ トヨカズ 21 87 66 小野小学校 スガワラ リョウタ 19 88 66 小野小学校 カメヤマ ヒトシ 80 小野字裏丁 89 66 小野小学校 カメヤマ リツコ 74 90 66 小野小学校 カメヤマ ヒロシ 50 91 66 小野小学校 オオエ エイイチ 83 小野字裏丁 92 66 小野小学校 オオエ エツコ 78 93 66 小野小学校 オオエ タケヨシ 56 94 66 小野小学校 オオエ キミコ 55 95 66 小野小学校 オオエ トモコ 26 96 66 小野小学校 タカマツ ミノル 87 97 66 小野小学校 タカマツ セツコ 80 98 66 小野小学校 タカマツ シンヤ 52 99 66 小野小学校 タカマツ エイコ 52 100 66 小野小学校 タカマツ ダイスケ 21 101 66 小野小学校 サトウ シンイチ 60 102 66 小野小学校 サトウ ヨウコ 57 103 66 小野小学校 サトウ ユカ 23 104 66 小野小学校 サトウ セイコ 86 105 66 小野小学校 フクハラ カズヒロ 55 小野字町 106 66 小野小学校 フクハラ スミコ 53 107 66 小野小学校 フクハラ トモキ 26 108 66 小野小学校 フクハラ イチロク 87 109 66 小野小学校 フクハラ アヤコ 81 110 66 小野小学校 ゴトウ クニエ 67 小野字町裏 111 66 小野小学校 タカハシ シンヤ 64 112 66 小野小学校 タカハシ タカコ 64 113 66 小野小学校 タカハシ コウジ 39 114 66 小野小学校 タカハシ ミカ 38 115 66 小野小学校 タカハシ キミカ 13 116 66 小野小学校 タカハシ チヒロ 11 117 66 小野小学校 サクライ ミナイ 46 118 66 小野小学校 サクライ ミナコ 18 119 66 小野小学校 サクライ カンジ 15 120 66 小野小学校 サクライ ナオヤ 11 121 66 小野小学校 カメヤマ ノリコ 67 122 66 小野小学校 カメヤマ コウジ 37 123 66 小野小学校 カメヤマ ミカ 42 124 66 小野小学校 カメヤマ リョウ 6 125 66 小野小学校 ソエタ タカシ 76 小野字裏丁 126 66 小野小学校 ソエタ トミコ 73 127 66 小野小学校 オオタ マサヒコ 52 小野字裏丁 128 66 小野小学校 オオタ スミエ 52 129 66 小野小学校 オオタ キエラ 77 130 66 小野小学校 オオタ マサコ 85 131 66 小野小学校 ゴトウ ヨウイチ 69 小野字裏丁 132 66 小野小学校 ゴトウ ミエコ 64 133 66 小野小学校 ゴトウ ユミヨ 92 134 66 小野小学校 ゴトウ マサミツ 40 135 66 小野小学校 ゴトウ ミスズ 40 136 66 小野小学校 ゴトウ カレイ 15 137 66 小野小学校 ゴトウ マサタツ 13 138 66 小野小学校 イマミヤ ミエノ 76 139 66 小野小学校 イマミヤ フミオ 53 140 66 小野小学校 イマミヤ ヨウコ 48 141 66 小野小学校 イマミヤ ユウセイ 16 142 66 小野小学校 カンノ フジコ 80 小野字裏丁 143 66 小野小学校 カンノ ミチオ 86 144 66 小野小学校 カンノ カズヒコ 57 145 66 小野小学校 カンノ トモコ 54 146 66 小野小学校 カンノ ショウゾウ 84 147 66 小野小学校 カンノ サツキ 77 148 66 小野小学校 カンノ ヒロアキ 51 149 66 小野小学校 カンノ コウタ 18 150 66 小野小学校 チバ ナオカズ 53 151 66 小野小学校 チバ ミエコ 42 152 66 小野小学校 チバ ミツキ 13 153 66 小野小学校 アマヌマ ヒロユキ 49 小野字裏丁 154 66 小野小学校 アマヌマ ミツコ 46 155 66 小野小学校 アマヌマ ユウゴ 16 156 66 小野小学校 アマヌマ ユウキ 14 157 66 小野小学校 アマヌマ ユカリ 12 158 66 小野小学校 マサキ ヨシコ 73 小野字裏丁 159 66 小野小学校 マサキ ヒデキ 45 160 66 小野小学校 マサキ アイコ 46 161 66 小野小学校 マサキ カスミ 12 162 66 小野小学校 マサキ ユウサク 10 163 66 小野小学校 マサキ ミホ 8 164 66 小野小学校 アベ トモコ 34 165 66 小野小学校 アベ 結友 12 166 66 小野小学校 アベ 祥有 9 167 66 小野小学校 アカマ ノブヒロ 57 168 66 小野小学校 アカマ チエコ 53 169 66 小野小学校 アカマ セツコ 84 170 66 小野小学校 アカマ ユミ 27 171 66 小野小学校 ゴトウ ヒデユキ 36 172 66 小野小学校 ゴトウ ミカ 34 173 66 小野小学校 ゴトウ ダイチ 12 174 66 小野小学校 ゴトウ マサコ 10 175 66 小野小学校 ゴトウ トシオ 49 176 66 小野小学校 ゴトウ ヒサコ 41 177 66 小野小学校 ゴトウ チホ 15 178 66 小野小学校 ゴトウ ケイカ 11 179 66 小野小学校 ゴトウ トシコ 180 66 小野小学校 タカヤマ ヒロユキ 39 小野字町 181 66 小野小学校 タカヤマ サチコ 39 182 66 小野小学校 タカヤマ ユイ 17 183 66 小野小学校 タカヤマ イズミ 15 184 66 小野小学校 タカヤマ ダイキ 11 185 66 小野小学校 タカヤマ ヒロコ 67 186 66 小野小学校 ショウジ カオル 58 小野字町 187 66 小野小学校 ショウジ ユウコ 56 188 66 小野小学校 ショウジ ヒロミ 30 189 66 小野小学校 ショウジ ヤスコ 83 190 66 小野小学校 ミウラ シンイチ 51 191 66 小野小学校 ミウラ ミツコ 75 192 66 小野小学校 キシ シノブ 36 193 66 小野小学校 キシ ユミ 36 194 66 小野小学校 キシ ミズキ 14 195 66 小野小学校 キシ タクマ 12 196 66 小野小学校 キシ キョウコ 56 197 66 小野小学校 ドイ タカシ 55 198 66 小野小学校 アベ 66 199 66 小野小学校 アベ ユウコ 64 200 66 小野小学校 ササキ 周男 60 201 66 小野小学校 ウツミ カズエ 54 202 66 小野小学校 ウツミ ツギヨ 88 203 66 小野小学校 ヤマナカ ヤエコ 74 204 66 小野小学校 ヒシヌマ カズアキ 17 205 66 小野小学校 ヒラタ ツヤノ 82 206 66 小野小学校 ヒラタ ノブコ 54 207 66 小野小学校 ミウラ ナナコ 20 208 66 小野小学校 ミウラ カズキ 16 209 66 小野小学校 ミウラ ヨシオ 80 210 66 小野小学校 ミウラ ヨシロウ 87 211 66 小野小学校 ミウラ マサコ 70 212 66 小野小学校 アイザワ ユウスケ 22 213 66 小野小学校 チバ トシロウ 59 214 66 小野小学校 チバ チズコ 57 215 66 小野小学校 チバ ヒロコ 30 216 66 小野小学校 タカハシ アユミ 38 217 66 小野小学校 タカハシ ユウスケ 7 218 66 小野小学校 タカハシ リュウヘイ 5 219 66 小野小学校 タカハシ 望寧 60 220 66 小野小学校 アキサワ ヨシノブ 61 221 66 小野小学校 アキサワ ヨウコ 60 222 66 小野小学校 アキサワ トモコ 36 223 66 小野小学校 スガワラ マモル 224 66 小野小学校 サイトウ ヒロアキ 225 66 小野小学校 エンドウ コウジ 226 66 小野小学校 ヨコヤマ ユウジ 227 66 小野小学校 ナカダ ミユキ 228 66 小野小学校 キシ ユウコ 229 66 小野小学校 ヤマウチ マサヒロ 230 66 小野小学校 シコダ マリコ 231 66 小野小学校 カドタ ユリコ 232 66 小野小学校 サトウ リュウイチ 233 66 小野小学校 ノセ ナオコ 234 66 小野小学校 アベ ユキコ 235 66 小野小学校 アベ タケヒコ 236 66 小野小学校 武内 瑠美 237 66 小野小学校 サトウ ナナセ 238 66 小野小学校 サトウ ネネ 239 66 小野小学校 大友 佳代 240 66 小野小学校 大友 史也 241 66 小野小学校 高橋 新一 242 66 小野小学校 鈴木 英子 243 66 小野小学校 鈴木 健太 244 66 小野小学校 鈴木しょう平 245 66 小野小学校 千葉 かづ子 246 66 小野小学校 千葉 きみ子 247 66 小野小学校 千葉 ゆりえ 248 66 小野小学校 千葉 麻美 249 66 小野小学校 千葉 麻美 250 66 小野小学校 千葉 一茂 251 66 小野小学校 千葉 ひでゆき 252 66 小野小学校 安倍 恵子 253 66 小野小学校 安倍 みなみ 254 66 小野小学校 安倍 信 255 66 小野小学校 安倍 副有 256 66 小野小学校 安倍 ミツコ 257 66 小野小学校 安倍 詩織 258 66 小野小学校 安倍 裕美 259 66 小野小学校 三浦 利昭 260 66 小野小学校 三浦 慶子 261 66 小野小学校 三浦 伸也 262 66 小野小学校 三浦 年子 263 66 小野小学校 三浦 風夏 264 66 小野小学校 三浦 航貴 265 66 小野小学校 秋田 光男 266 66 小野小学校 秋田 マサ子 267 66 小野小学校 鶴田 光将 268 66 小野小学校 茂木 美紀 269 66 小野小学校 茂木 康幸 270 66 小野小学校 茂木 いく子 271 66 小野小学校 茂木 ゆり子 272 66 小野小学校 茂木 心一朗 273 66 小野小学校 茂木 ゆきな 274 66 小野小学校 阿部 信吾 275 66 小野小学校 阿部 蓮 276 66 小野小学校 橋本 和行 277 66 小野小学校 橋本 裕子 278 66 小野小学校 橋本 文男 279 66 小野小学校 鶴田 慧理 280 66 小野小学校 相浦 笑美子 281 66 小野小学校 尾形 喜代 282 66 小野小学校 尾形 優斗 283 66 小野小学校 橋本 恵子 284 66 小野小学校 橋本 和明 285 66 小野小学校 橋本 輝男 286 66 小野小学校 橋本 美彩季 287 66 小野小学校 橋本 和奈 288 66 小野小学校 千葉 佐奈恵 289 66 小野小学校 千葉 悠華 290 66 小野小学校 千葉 大誠 291 66 小野小学校 相浦 幸男 292 66 小野小学校 相浦 克美 293 66 小野小学校 相浦 ゆきゑ 294 66 小野小学校 相浦 加奈 295 66 小野小学校 相浦 幸奈 296 66 小野小学校 相浦 尚幸 297 66 小野小学校 畑中 武則 298 66 小野小学校 畑中 ふみ 299 66 小野小学校 畑中 拓哉 300 66 小野小学校 畑中 裕哉 301 66 小野小学校 畑中 勉 302 66 小野小学校 畑中 絹子 303 66 小野小学校 土井 英博 304 66 小野小学校 木村 敏子 305 66 小野小学校 木村 良隆 306 66 小野小学校 菱沼 和弘 307 66 小野小学校 嶋田 久利 308 66 小野小学校 嶋田 利和 309 66 小野小学校 多田 雄 310 66 小野小学校 多田 雄子 311 66 小野小学校 多田 敬子 312 66 小野小学校 千葉 さい子 313 66 小野小学校 千葉 加央里 314 66 小野小学校 千葉 秀幸 315 66 小野小学校 千葉 佳奈恵 316 66 小野小学校 千葉 君子 317 66 小野小学校 田沢 勝次 318 66 小野小学校 田沢 巳智子 319 66 小野小学校 田辺 詩織 320 66 小野小学校 高平 真智子 321 66 小野小学校 尾形 多賀子 322 66 小野小学校 尾形 さゆり 323 66 小野小学校 佐々木 良子 324 66 小野小学校 佐々木 和子 325 66 小野小学校 佐々木 次郎 326 66 小野小学校 渋谷 勝彦 327 66 小野小学校 渋谷 妙子 328 66 小野小学校 安部 守 329 66 小野小学校 氏家 源 330 66 小野小学校 佐々木 仁 331 66 小野小学校 佐々木 幸美 332 66 小野小学校 菅野 浩二 333 66 小野小学校 鶴田 美枝 334 66 小野小学校 相澤 千一 335 66 小野小学校 相澤 恵子 336 66 小野小学校 相澤 ゆり 337 66 小野小学校 千葉 登喜男 338 66 小野小学校 鹿野 正己 339 66 小野小学校 尾形 博巳 340 66 小野小学校 古川 康廣 341 66 小野小学校 小畑 一臣 342 66 小野小学校 木村 良博 343 66 小野小学校 西ヶ谷 晴志 344 66 小野小学校 西ヶ谷 恵美子 345 66 小野小学校 小畑 倫子 346 66 小野小学校 小林 陽子 347 66 小野小学校 内海 京子 348 66 小野小学校 平田 松 349 66 小野小学校 成沢 孝志 350 66 小野小学校 成沢 孝子 351 66 小野小学校 成沢 雄毅 352 66 小野小学校 赤松 353 66 小野小学校 赤松 354 66 小野小学校 安倍 幸雄 355 66 小野小学校 安倍 律子 356 66 小野小学校 福原 清
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ギミチョコ!! BASIC MEDIUM HARD SPECIAL Level 4 6 9 10 Objects 123 203 337 560 BPM 220 TIME - Artist BABYMETAL Version VOLZZA2 動画 攻略 名前 コメント ※攻略の際は、文頭に[BASIC] [MEDIUM] [HARD] [SPECIAL] のいずれかを置くと、どの譜面に関する情報かが分かりやすいです。 コメント(感想など) 名前 コメント ↑攻略と無関係の曲に対するコメントはこちらでお願いします。あまりにもかけ離れた内容は削除される場合があります。
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金 は人類の発展の中で生み出された素晴らしいシステムである。 このシステムがあって現代社会は成り立っているのだといっても過言ではない。 しかし、長所ばかりではない。 金に価値がありすぎるために金を巡っての争いが起きたり、 金をあまり持たない者が社会的に弱い立場になったりする。 今の日本には、物々交換していたころの人々のような暖かみが必要だろう、とたまに思ったりする。 さて、かくいう俺も金の無い高校生のひとりだ。しかし、今、俺は金が必要だ。 金が無い高校生が金を稼ぐためにすることといえば、そう―― 「バイト・・・ですか?」 部専用の癒し系メイドさんがきょとんとした顔で答えた。 「そうです。朝比奈さん、なにかいいバイトご存知ありませんか?」 「知りませんね・・・。すいません。私バイトしないので。 でもどうしてお金が必要なんですか?」 そうだな。うるさい団長様もまだ来てないことだし、今の内に話しておくか。 「長門と古泉も聞いてくれ。実はだな。」 俺は自分の計画していることを他の3人に話した。 「あー。そっかー。そうですよね。そっかー・・・。」 朝比奈さんは納得したように手を叩いた。 一方、長門は何一つリアクションする事なく、黙々と読書を続けている。聞いてたのか? 「聞いていた。」 そうか。ならいいんだが。何かリアクションがないと聞いてないのかと勘違いしてしまう。 「それはまた、面白そうな話ですね。でもやるなら涼宮さんにバレないようにしないと。 バレたら色々と面倒そうです。」 古泉がニヤケ顔で言う。面倒になるから、ハルヒがいない時にこの話をしたんだよ。 「それで、資金は誰が出すのですか?なんなら 機関 の方で用意させてもらっても結構ですが?」 それじゃあ意味が無いだろう。何の為にやると思っているんだ?資金は俺達で出すに決まっているだろう。 「冗談です。そんな本気な顔しないでください。」 古泉はニヤケ顔を崩さず小さく手を振る。 お前の冗談は冗談に聞こえない。それに笑えないぞ、古泉。 「すみません。僕にギャグセンスは無いもので。 でも、あなたがクリスマスにやったあれよりは良いと思いますがね。」 やめろ!あの時の話はするな!思い出したくない。1秒たりとも思い出したくないぞアレは。 「キョンくん、それだと私もお金が足りないんですけど・・・。」 俺が古泉を睨んでいると、横で朝比奈さんが言った。 俺は顔を朝比奈さん専用スマイルに切り替えて応対する。 「それだったら、朝比奈さんも一緒にバイトを探しましょう。」 「僕も一緒にいいですか?」 古泉が割り込んでくる。 「お前にはもうバイトがあるだろう。赤い玉になってぴゅんぴゅん飛んでりゃいいじゃないか。」 「閉鎖空間も随分ご無沙汰でしてね。仕事が来ないんじゃ稼ぎようもありませんよ。」 古泉は肩をすくめてみせた。俺がその怪しい古泉の動きをじっと見つめていると、 「何て、冗談です。僕は充分お金を持っていますよ。」 冗談に聞こえないし、どこから冗談かわからないし、笑えないし、自慢くさいし、憎たらしい。 「おやおや、嫌われたものですね。」 古泉はまた肩をすくめて見せた。お前は1日に何回肩をすくめているんだ。 「そうか・・・あの店だったら雇ってくれそうですね・・・。」 俺がバイト先はそこにしようかと考えていた時、 「ヤッホーー!!遅れてゴッメーン!」 うるさいのが来た。 「ん?何これ?求人情報誌?」 ハルヒが俺が長テーブルに置いていた求人情報誌を手にとる。 「何あんた。バイトなんかするの?」 「しねぇよ。それは古泉のだ。」 と、嘘をついておく。古泉は一瞬驚いたような顔をしたが、 「ええ、ちょっと高校生らしくバイトでもしてみようか、と持ってきたのですが、 見たところ僕向きなバイトは無いようです。 やっぱり僕は部室でボードゲームをしてる方が気楽でいいですよ。」 と、冷静に対応した。ちっ、もうちょっと困れよ。 「ふーん。」 ハルヒは求人情報誌を古泉に渡し、またいつもと同じ場所に座った。 「王手。」 「お手上げです。」 今日もまたいつもと同じSOS団の風景だ。 俺と古泉は、古泉のボロ負けの将棋を楽しみ、 朝比奈さんは編み物、長門は読書だ。 我等団長様は、電脳界の不思議探しと銘打って ネットサーフィンをしながらニヤニヤしている。何がそんなに面白いのだろうか。 そして黙々と時間は流れ―。 ぱたん。 本が閉じられる音。これがこの団解散の合図だ。 「今日はみんなで一緒に帰りましょ!」 ハルヒが元気ハツラツな顔で言う。 「悪いハルヒ。俺と朝比奈さんはこれから少し用事があるんだ。」 そういうと、ハルヒは元気ハツラツな顔を解き、口をへの字にして、 「何よぉ、つれないわね。まぁいいわ。有希、一緒に帰りましょう!」 「そう」 古泉を忘れているぞ、ハルヒ。 ハルヒ、長門、古泉と別れ、俺は朝比奈さんと肩を並べて大森電気店に向かった。 「やぁ、いらっしゃい。今日はどうしたんだい?」 店につくと、店主さんが愛想のいい笑顔で話しかけてきた。 「いやぁ、今日は少し、お願いがありまして。」 俺は店主さんに事情を説明した。 「そういうことかい。丁度、お手伝いさんが欲しいと思っていたところなんだよ。 うちでいいなら、よろしく頼むよ。」 「本当ですか!?」 朝比奈さんと俺は同時に言った。 「ああ。ところで、土日はいいとして、平日はどうするんだい?」 「早めにお金を貯めたいので、俺は平日も学校が終わったら来ることにします。」 「お嬢ちゃんは?」 「えーっと・・・。キョンくんがそうするならわたしもそうしようかな。」 「わかった。準備しておくね。じゃあ、今日は帰って明日また来なさい。」 「はい。ありがとうございました。」 俺と朝比奈さんは、声を合わせてお辞儀をし、その場をあとにした。 次の日。 「キョン、今日も来なさいよ。」 「何処にだ。」 「決まってるじゃない。SOS団部室よ。」 わかっている、と言いかけて俺は口を止めた。そうだ、今日からバイトだ。 「すまんなハルヒ。俺はしばらく顔を出せないと思う。」 「えっ?どうして?」 「バイトがあるんだ。」 俺がそう言うと、徐々にハルヒの眉が吊り上がっていった。 「なーに言ってるのキョン!!バイトなんかよりSOS団を優先させなさいよ、SOS団を!」 「この間の不思議探索パトロールのときのおごりで、俺の所持金が底をついてしまったんだよ。 俺も苦労してるのさ。」 「何が苦労よ!!そもそもあんたが集合時間に遅れなきゃいいんじゃない!!」 ハルヒは立ち上がって言った。眉がますます吊り上がる。 「俺は他の団員のために自らおごりを引き受けているのさ。」 「下手な嘘つくんじゃないの!どーせ毎日寝坊してるだけでしょう?」 「それに、あんたが来なけりゃ・・・!!」 ハルヒはそこまで言うと、口を開けたまま静止した。どうした? 「・・・いや、何でもない。」 ハルヒはそう言うと、黙って席に着いた。なんだってんだ? そんなことをしていると、担任の岡部が教室に入ってきた。 「よーし。ホームルーム始めるぞ。」 そして放課後。 ハルヒと別れを告げて、俺は学校を出た。 校門まで行くと、朝比奈さんが両手で鞄を持ちながら立っていた。可愛らしい。 「朝比奈さん。」 俺が言うと、朝比奈さんはこちらに気付いたらしく、ぱたぱたと駆け寄ってきた。 「行きましょうか。」 大森電気店につくと、店主さんは丁度大型テレビの入ったダンボールを運んでいるところだった。 「やぁ、来たね。」 店主さんはこちらに気付くと、顔を上げてそう言った。 「こんにちは。」 「はい、こんにちは。じゃあ、まず作業服に着替えてもらうね。」 作業服? 「うん、これ。」 店主さんは服のわき腹の部分を摘まんでぴらぴらさせる。 緑色のこの服、これが大森電化店の作業服らしい。 「奥に用意してるからね。そこで着替えてきて。」 「わかりました。」 電気店の奥のドアを開けると、畳が敷かれている小部屋があった。 ここが店主さんの移住スペースらしい。さらに奥に2階に続く階段がある。 ちゃぶ台の上に、二人分の作業服が置いてあり、その上にメモ書が置いてある。 これに着替えてね だそうだ。 「じゃあ着替えますか。」 「待ってください。」 朝比奈さんはきょとんとする。 「ここで二人で着替えるわけにもいかないでしょう。 俺は少しの間外に出てますから、その間に着替えてください。」 そう言っても朝比奈さんはまだきょとんとしていたが、 10秒ほどして意味が理解できたらしく、顔を赤らめて、 「あっ、そうですよね。着替えるところ見られるのはお互い恥ずかしいですよね。 すいません。それじゃあお先に。」 朝比奈さんになら俺の下着姿を見られても問題ないが。 とかくだらないことを思いつつ、俺は部室の時と同じように一礼して部屋を出た。 「どーぞ。」 朝比奈さんの可愛らしい声を確認し、俺はドアを開けた。 中には、作業服の朝比奈さんがいた。 メイド服の可愛さには劣るものの、これはこれで別の可愛さがある。 まぁ朝比奈さんが着ればどんな服でも可愛く見えるのだが。 「じゃあ、次はキョンくんどうぞ・・・。 私は店長さんに仕事を貰ってきますね。」 そう言うと朝比奈さんは部屋を出てぱたぱた走っていった。 さて、着替えるか。 初めての電化店での仕事は意外にも、かなりしんどいものだった。 主な仕事は大型の電化製品を運ぶことで、 その他には店の商品に値札をつけたり、商品の確認、などなど。 電気店の仕事がこんなにきついものだったとは。 バイトの終了時刻は夜9時。 その頃になると、俺も朝比奈さんもへろへろになっていた。 「お疲れさん、今日の給料だよ。」 給料が入った封筒が手渡される。 今日は帰ったらすぐ寝よう。 今日もまたあのしんどい上り坂をのぼり、登校。いやになるね。坂にエスカレーターでもつけてくれないものだろうか。 教室に入るや否や、ハルヒが大声で言ってきた。 「キョン!あんたが働いているところ何処?」 「大森電気店」 俺は鞄を机に置きながら答えた。 「えっ、そうなの?」 ハルヒは意外そうな顔をする。 「どうしてだ?」 「いや、みくるちゃんも急にバイト始めるとか言い出して、 ひょっとしてあんたたち同じところに働いてるんじゃないかって思ってたんだけど。」 思ってたんだけど・・・?俺達は同じところに働いているはずだ。 でもハルヒがそう言っているってことは・・・。 「朝比奈さんは何処で働いているって言っていた?」 「近所の喫茶店だって。」 「へぇ。」 喫茶店?何故嘘をついているんだ、朝比奈さんは。 とりあえず、朝比奈さんにも何か理由があるのだろうから、ハルヒに本当のことを言うのはやめておいた。 今日は日曜日。不思議探索パトロールの日だが、俺と朝比奈さんは欠席することになった。 「おはようございます。」 俺が電気店に着いた時、朝比奈さんはもう作業服に着替え、作業を始めていた。 真面目だな、この人は。これでドジがなければどれだけ有能な店員だろうか。 「彼女は真面目で助かるよ。」 と、店主さんが笑いながら小声で言った。 「ところで朝比奈さん。」 「何です、キョンくん。」 「あなた、ハルヒにバイト先嘘教えてましたね。何故です。」 俺がそういうと朝比奈さんはビクッとした。何故驚く。 「だって、私とキョンくんが一緒に働いてることを涼宮さんがしったら、 また涼宮さん モゴモゴ・・・」 なんかモゴモゴ言っているが、何をいっているのか分からない。 まぁいいか。 日曜日なだけに、平日よりも客の数が多い。 それに合わせて俺達の仕事量も増える。日曜日だから時間も長いし。 ふと時計を見ると、もう正午になっていた。あと半日、頑張れ俺。 「キョンくぅぅーん。これ、重くて持てないんですけどー。」 店の奥から朝比奈さんの声が聞こえてきた。はいはい、ただいま。 見ると、そこにはいつも持っているののテレビの段ボール2倍ぐらいのサイズの段ボールがあった。 段ボールの中身は冷蔵庫らしく、とても一人じゃ持てないだろう。 「俺はこっち側持ちます。朝比奈さんはそっち側持ってください。」 「あ、はい。」 俺と朝比奈さんは、合図と共に、同時に段ボールを持ち上げた。 段ボールを縦じゃなく、横に持った方が効率が良いというのは後で気付いたことだった。 俺と朝比奈さんは、段ボールを持ったまま店先にでる。 どすん。 「っと。これでよし。」 「ありがとうございました、キョンくん。助かりました。」 朝比奈さんが俺に向かって微笑む。 いえいえ、お礼なんていりません。あなたのその微笑みだけで充分です。 むしろお釣りがくるぐらいです。 ふと、フフフ、と微笑む朝比奈さんの背後の人影に気付き、 俺はぎょっとした。 無表情少女とニヤケ顔青年に挟まれた団長様が、そこにいるではないか。 「どういうこと?」 俺と目があうなり、ハルヒはそう言った。 「どういうことって、バイトだって言っただろう。」 「そんなことじゃないのよ。」 ハルヒの声がいつもより少しだけ冷たい気がしたのは気のせいじゃないだろう。 「みくるちゃん。」 ハルヒは朝比奈さんをじろりと睨む。朝比奈さんはハルヒの視線に身体をビクッとさせる。 「あなた、喫茶店に働いてるって言ったわよね。」 「言いました・・・。」 何だ何だこの険悪ムードは。ハルヒ、朝比奈さんを睨むんじゃない。 「キョン。なんであんたみくるちゃんと同じとこでバイトしてるって言わなかったの?」 ハルヒは今度は俺をギロリと睨んで言った。 「なんでって言われてもねぇ・・・。」 気付けば、この険悪ムードに圧倒されて、店の周りの客はいなくなっていた。 営業妨害だ、ハルヒ。 「帰るわ。」 ハルヒは不機嫌そうに踵を返すと、そのままずんずんと歩いていった。 何だってんだ。 バイト先を隠していたのがそんなに気に食わなかったのか? それにしてもそんなに怒る事はないだろう。ったく何考えてるのやら。 「ごめんなさい・・・私のせいです・・・。」 朝比奈さんが涙目で言った。何故朝比奈さんが謝る必要があるんですか。 「だって私が・・・・・・涼宮さんを騙そうと・・・」 朝比奈さんはそのまま俯いたまま、しばらく硬直し、 顔を上げると、何が起こったか把握できていない店主さんのところに駆け寄っていって言った。 「すみません・・・。突然ですみませんが私、今日でやめます。」 次の日、ハルヒはまだ不機嫌オーラを漂わせていた。 「今日もバイトがあるから。」 俺がそういうと、ハルヒは窓の外から視線を外さず言った。 「あっそ。みくるちゃんと頑張ってね。」 何なんだ、一体。とりあえず朝比奈さんの事を伝えるとするか。 「そうそうハルヒ。朝比奈さん昨日でバイトやめたから。」 そう言うと、ハルヒは少しだけ目を見開き、俺を見て、 すぐにまた元の不機嫌な表情に戻って窓の外に目をやった。 「そう。」 偶然にも帰りの廊下で朝比奈さんに会った。 聞いたところによると、今度こそ本当に近所の喫茶店でバイトをするらしい。 コーヒーをひっくりかえさないか不安だが。 そんな事を思いつつ、今日もまた大森電気店に向かう。 朝比奈さんと一緒じゃないと、仕事にやる気が出ない。 しかし、最近頭の中はバイトのことばっかりだ。バイト中毒か? 目的のために頑張らなくてはならないからな。うん、頑張れ俺。 バイトを続けてる間にあっという間に金曜日になってしまった。 もうバイトも慣れてきた頃だ。 さて、と。バイトいきますか、バイト。 と、自転車で坂を下っていると、見覚えのあるふわふわした髪の少女が目に入った。 「朝比奈さん!」 俺は自転車のブレーキをかけ、朝比奈さんの近くに停車する。 「あ、キョンくん。」 朝比奈さんは、もうすっかりハルヒに怒鳴られた時のブルーモードを脱したようだ。 一方のハルヒはまだ不機嫌オーラをムンムンさせているのだが。 「一緒に帰りましょう。鞄、持ちますよ。」 俺は朝比奈さんの鞄を受け取ると、空いている自転車の前かごの中に入れた。 「どうです、喫茶店の方は?」 「いやぁ、私のドジで店の人に迷惑をかけっぱなしです。」 朝比奈さんは右手を握り拳にし、自分の頭をコツンと叩いて、舌を出した。可愛い。 しかし、 ドジ ねぇ・・・。 俺の頭の中にコーヒーの入ったお盆をひっくり返して涙目の朝比奈さんの姿が浮かんだ。 そもそもハルヒが「みくるちゃんをドジっ娘にする!」 とか言い出さなければ朝比奈さんがこんなにドジをすることはなかっただろう。 「全く、ハルヒは朝比奈さんに迷惑かけてばっかりですね。」 「いえいえ、気にしてませんよ。」 朝比奈さんは微笑む。 「いえ、あんなのには一発ガツンと言ってやればいいんです。 『迷惑だ!』ってね。そうすればハルヒも少しはおとなしくな――」 「仲いいわね、二人とも。何の話かしら?」 突然発せられた声は朝比奈さんの声ではない。振り返ると、その声の主が立っていた。 「ハ・・・ハルヒ・・・」 「私が迷惑だって?」 ハルヒがいつものように眉を吊り上げる。声が微妙に震えてる気がしたのは気のせいだろう。 「いや、冗談だ、すまん。本気にするなよ。」 「ふーん。」 朝比奈さんは、ハルヒの姿を見るなり黙り込んでしまった。 「ハルヒ、今日SOS団は?」 「休んだわ。ノリ気じゃなかったのよ。 それで、帰るついでにキョンに荷物持ちでもさせようと思ってたけど・・・。」 ハルヒは自転車の前カゴをちらりと見る。 「先客がいるみたいね。」 そう言うと、ハルヒは俺をキッと睨みつけ、坂を駆け下りていった。 何だってんだ。最近機嫌が悪いな、あいつ。 横を見ると、朝比奈さんがまたブルーモードに突入していた。 俺はブルーモードの朝比奈さんを喫茶店まで送りとどけ、 また大森電化店に向かった。 足が痛い。筋肉痛だ。 「やぁ、また来たのかい、キョンくん。大丈夫かい?働きすぎじゃないかい?」 「いえいえ、大丈夫です。高校生の体力を甘く見ないで下さいよ」 俺は強がって見せたが、本音を言うと疲れていた。 しかし、 あの日 まで時間が無いんだ。弱音など言ってられない。 「さて、まずは何をすればいいですか?」 「じゃあ、そのテレビを運んでくれ。」 日が落ちてきた。バイト終了まであと30分だ。 「この段ボールも運ばなくちゃな。」 段ボールの取っ手を掴む。む?力が入らない。 疲れすぎか。ふぅ。 俺は一息置いて、今度は腰に力を入れてそれを持ち上げた。 これを店先に・・・っと。ん? やけに足元がふらふらとする。思わず手を離してしまった。 何だこれは?重力の感覚がおかしい。 上に引っ張られているような、身体が逆さになっているような。 あれ?視界が・・・ぼやけ・・・て・・・・・・。 目を開けると、そこには白い天井が広がっていた。 「お目覚めですか?」 横を見ると、古泉がナイフで林檎の皮を剥いている。 「あなたの看病をするのも2度目ですね」 看病?というとここは・・・。 上体を起こしてみる。病室だ。左手には点滴の針が刺されている。 「どうして俺はここにいる?」 「覚えていないのですか?あなた、バイト中に倒れたそうですよ。」 バイト中・・・。ああ、そうか。段ボールを運んでいる時にいきなり視界が真っ暗になったんだ。 古泉はしゃりしゃりと黙々と林檎を剥いている。 「ハルヒは?」 俺は無意識に聞いていた。 「涼宮さんですか・・・。一緒に見舞いに行こうと言ったのですが、行かないと。 説得したんですがね。どうしても行かないと聞かなくてですね・・・。 何やら様子が変でした。それで仕方無しに僕だけで来たんですよ。」 古泉は林檎を剥き終わると、それを一口サイズに切り、皿にのせる。 「長門と朝比奈さんは?」 「今頃彼女を説得していると思います。」 古泉はおもむろに紙袋からもう一つ林檎を取り出す。もういらねぇよ。 古泉が、3個目の林檎を剥きおわる頃、廊下からコツコツと足音が聞こえてきた。 遅れて、誰かが喚く声も。 「・・・と・・・ちゃん・・・・・・ないって・・・・・・。」 ハルヒ?次第に足音と共に声が大きくなってくる。 「行きた・・・ない・・・言って・・・しょう?」 ハルヒだ。 「有希!!離して!!行きたくないのよ、キョンのところなんか。」 ハッキリ聞こえるぐらいの距離になってきた。 「離しなさい!!あの馬鹿キョンなんかほっとけば――」 「あなたは勘違いをしている。」 声がドア前ぐらいにきたところで、長門がハルヒの声を遮るように言った。 「何をよ。」 不機嫌な声なハルヒ。 「彼のこと。」 「キョンのこと?」 「そう。」 俺の事? 「どういうことよ。」 「彼がバイトをしていた理由。」 長門は淡々とした口調で言う。 「え・・・?」 「知ってる?」 「オゴリで金欠なんでしょ。そう言ってたわ。」 「違う。」 「・・・?・・・違うって?」 ハルヒはきょとんとした声で言う。 まさか、おい、長門。 「彼はあなたの誕生日プレゼントを買う為に働いていた。」 バラしやがった。俺の苦労が水の泡だ、バブル崩壊だ。 …。 沈黙が流れる。ハルヒは押し黙ってしまったようだ。 つられてこちらも黙ってしまう。 1分ほどたって、ハルヒが口を開いた。 「ちょっと1人にさせて。」 足音が、来た方向とは今度は逆の方向に響いていった。 それから10秒ほどして、がちゃり、と音をたて、静かに病室のドアが開いた。 長門と、付き添うように朝比奈さんが立っている。 長門は俺を見て、首を1ミクロンだけ下に動かし、部屋を出て行った。 なんだってんだ? 「じゃあ僕もそろそろ帰ります。林檎、食べてくださいね。」 古泉はニコリと微笑み、たたんでいたブレザーを羽織って、一礼して出て行った。 それから30分ぐらいたっただろう。 コンコン。 ドアがノックされた。 「どうぞ。」 がちゃり、と音を立て、ドアが開き、ハルヒがゆっくりと入ってきた。 「お前がノックして入ってくるなんて珍しいじゃないか。」 俺は笑って言う。 ハルヒは俯き気味だ。聞いているのか? 「聞いてるわよ。」 小さく言った。 ハルヒはとぼとぼとした足取りで俺の横まで来ると、古泉が座っていた椅子にすとん、と腰掛けた。 しばらく沈黙が続いた。 「林檎剥くわ。」 ハルヒはいきなりそういって、古泉が残していったナイフと林檎を手にとる。 林檎なら古泉が山のように剥いていってくれたが、まぁあえて言わないでおこう。 しゃりしゃりという音だけが病室に響く。 「痛っ!」 突然小さくあげられた悲鳴はハルヒのものだった。見ると、ひとさし指からじんわりと血が出ている。 「あー。何やってんだ。」 俺はハルヒの手をとり、ティッシュで血を拭いてやると、新しいティッシュで傷口を縛ってやった。 「あ、ありがと・・・。」 ハルヒはぎこちなく礼を言う。 俺はハルヒが剥きかけの林檎とナイフを手に取り、残りの皮を剥いてやった。 「・・・・・・あんた意外に器用ね。」 「林檎の皮剥きだけは得意だ。」 ハルヒはそのまま、傷口に巻かれたティッシュをじっと眺めていた。 「どうした、元気ないじゃないか。」 俺がそう言うと、ハルヒはしばらく黙り込んだあと言った。 「有希から聞いたわ。」 「聞こえてた。」 またしばらく黙り込む。こんなにおとなしいハルヒは珍しい。 「バイトで倒れたんですってね。」 「ああ、ちょっとクラッてきてな。情け無いぜ。」 「そんなに頑張っていたの?」 「まぁ俺なりには頑張った方だと思うが。」 「みくるちゃんがバイトしてたのも?」 今更隠す必要もないので本当のことを言ってやった。 「ああ、お前のプレゼントを買うために金を貯めてたのさ。」 「・・・・・・。」 再び沈黙が続く。今日は沈黙デーなのだろうか。 「キョン。」 少しだけ大きな声で言った。そして今度は小さく弱々しい声で、 「ごめんね・・・。」 ・・・・・・。 「ごめん、本当にごめんキョン。私、何も知らないで勘違いして。 皆の気持ちも知らないで・・・。ごめん。許して。」 ハルヒは俯き気味で言った。 ……こんなに弱々しいハルヒも可愛いな。しかし―― 「やっぱりお前は笑顔が似合う。」 俺が言うと、ハルヒは何の事を言われているのかわからなかったらしく、 ぽかんと口を開けた。 「ハルヒ。許してくれもなにも、俺は最初から怒っちゃいねぇさ。 多分朝比奈さんもな。だからもう気にするな。 いつものような笑顔を見せてくれ。」 俺がそういうと、ハルヒは少しだけ目を見開いた。 そして、両目を右手で覆って、小さな声で言った。 「ありがとう・・・。」 ハルヒはそのまますくっと立ち上がると、 病室のドアの辺りまで歩いていき、立ち止まって振り向かずにもう一度言った。 「ありがとう・・・・・・キョン・・・。」 そしてハルヒはそのまま病室を出て行った。 ドアの足元に2,3滴の大粒の雫が落ちていた。 がちゃり。 きた!! パァァァァァン!! 「誕生日おめでとーーう!!」 突然のクラッカー攻撃に、流石のハルヒも驚いたらしく目を見開き、口をぽかんと開いた。 よし、いいぞその表情。俺は手元に控えていたデジタルカメラで、その間の抜けた顔を撮ってやった。 部室の窓にはクリスマスの時のように、スプレーで ハルヒ 誕生日おめでとう と書かれている。 ただし、今回これを書いたのは俺だけどな。 「どうぞ、こちらへ。」 古泉はハルヒを団長席に案内する。 「ありがと、古泉くん。」 ハルヒはいつものように団長席に座り、斜め上方向に人さし指を突き刺して言い放った。 「さぁ、あんた達!!私を祝いなさーい!!」 なんだそのふてぶてしさは、と思いつつ、だが、これがハルヒらしいな、とも思っていた。 クリスマスのときと同じく、今日も鍋を持ってきた。 今回は俺特製鍋だ。学校で鍋を作ったりすると生徒会の方がうるさいが、 こんな日ぐらい騒いでもばちはあたらないだろう。 それで、食事風景だが、長門は毎度のごとく力士のようにもりもり食べ、 朝比奈さんは、ちまちま少しづつ肉をちぎりながら可愛らしく食べており、 古泉は何か横でべらべらと鍋に関するうんちくを並べていたが、ぶっちゃけ聞いていなかった。 ハルヒはというと、肉と野菜の位置がどうこうだとか、具がどうこうだとか、 俺の鍋に色々と文句をつけつつ長門に負けないぐらいのスピードで肉を頬張っていた。 俺が自分がほとんど食べていない事に気付いたのは具が全部無くなった時になってのことだが、まぁいいだろう。 「それでは、涼宮さんへのプレゼントタイムとしましょう。」 司会っぽく言うが、お前を司会にした覚えは無いぞ、古泉。 勝手に仕切るな。とか思いつつ、俺達はプレゼントタイムに入った。 最初にプレゼントを渡したのは長門だった。 綺麗な包装がされており、ハルヒが開けてみると、中には 何やらカタカナがやけに多いタイトルのハードカバーが入っていた。 SF学園モノ、だそうだ。どういうジャンルだ? 長門はハルヒに無言でプレゼントを渡すと、またいつものように本を取って 窓辺のパイプイスに座って読書を始めた。 こんな時ぐらい読書はやめようぜ、長門。 次にプレゼントを渡したのは朝比奈さん。 紙袋の中から取り出したのは、少し大きめのテディベアだった。 テディベアはどっちかというと、ハルヒより朝比奈さんが持ってるほうが似合うが、 まぁハルヒも喜んでいるのでそれは言わないでおこう。 「僕からはこれです。」 といって古泉が取り出したのは小さな箱だ。なんだこれ? 「フフフ、まぁ見ててくださいよ。」 古泉がその箱をパカッと開けると、オルゴールが流れ始めた。 ん・・・?この曲は、ハルヒが文化祭でやったENOZの曲じゃないか。 「そうです。僕の知り合いに作ってもらいました。」 「すごいじゃない!ありがとう古泉くん。」 ハルヒはオリジナルのオルゴールに感激していた。 「じゃあ次は俺のプレゼン――」 そこまで言った時、俺はとんでもない光景を目にした。 なんと、長門が本を窓の外に向かって投げているじゃないか。 長門はすくっと立ち上がると、ハルヒの背中をちょんちょんとつついて言った。 「風で本が飛ばされた。拾ってくる。」 ハルヒは不思議そうな顔をする。 「いや、長門、お前今自分で――」 と言ったところで、突然俺の唇が動かせなくなった。アリかよ!反則だ! 長門がすたすたと部室を出て行くと、ようやく俺は長門の呪縛から開放された。 「あ、お水が切れてる・・・。汲んできますね。」 そう言って今度は朝比奈さんが出て行った。 「じゃあ、僕はトイレにでも、ね。行ってきますよ。」 古泉はニヤケ面でドアのところまで行き、俺に小さくウインクをして出て行った。寒気がしたね。 二人だけになっちまった。 「・・・それじゃあ、次はあんたのプレゼントを発表しなさい!」 ハルヒは何故三人が出てってのかということをつっこむ事無く、そう言った。 「ほらよっ。」 俺はバッグに入れていたそれを、ハルヒに投げてやった。 小さい箱はちゃんと包装してある。 「ちょっと、もうちょっと丁寧に渡しなさいよ。」 「悪い。」 ハルヒは口をへの字にして、箱の紐を解き始めた。 そこに入っていたのは・・・。 「これ?」 ハルヒはそれを摘まんで、ぶら下げて見た。 黄色いリボンだ。 言っておくが、そこらで売ってる安いリボンではない。 高級リボンだ。派手すぎず、地味すぎず、さりげない加工が随所にちりばめてあり、 布も高級な物を使用している。見た目よりも驚くほど高ぇんだぞ、それ。 「ふーん。あんたセンスないわね。」 なんて事を言うんだ。 「冗談よ。素敵じゃない。」 ハルヒは、今してるリボンを解いて、俺がたった今プレゼントしたそれを結び始めた。 「どう?」 髪にリボンを結び終わったハルヒは得意気に言う。 「いいじゃないか。」 普段のハルヒより輝いて見えるのは気のせいではないだろう。 「仕方が無いわね。」 何が仕方ないんだ。俺は何も言って無いぞ。 という俺の言葉を無視し、ハルヒは結んだリボンを解き始めた。 そして、 「今日はサービスよ。」 とニヤリと微笑むと、今度はリボンを頭の後ろ側で結び始めた。 ハルヒがそれを結び終わった時に、俺はハルヒが何をしようとしていたのか理解した。 「ポニーテールか。」 「そ。・・・その、好きなんでしょ?」 「ああ。」 ハルヒの頭の後ろのしっぽのところがぴょこんと動く。 それを見て、俺は思わず笑みを浮かべてしまった。 「ハルヒ。」 「何?」 俺はいつかの日のように言ってやった。 「似合ってるぞ。」 fin
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「あのね、母さん。明日、映画見に行ってくるから」 「そうなの。じゃあ、シャンペン抜きましょう」 「な、なに言ってんの!?」 「あら、和風がよかった?お赤飯にする?」 「そんなんじゃないわよ!」 「そんなのじゃないって何が?」 「あう」 「ただ映画行くだけなら、わざわざ前日に言って行かないでしょ」 「それはその、5本立てオールナイトだから、帰るの次の日の朝になるし……」 「ゆっくりでいいわよ。朝帰りはかえって『お泊りしてきました』って言ってるようなものだし」 「……////」 「合宿のときは、平気で泊まってきたじゃない」 「あの時とは、ちょっと、事情が違うというか……」 「それだけ聞けば十分。あまり聞いても話したくなるだけだから聞かないわ」 「……うん。そ、それとね」 「お父さんでしょ? 明日、明後日と珍しく家にいるから」 「う、うん」 「心配いらないわ。母さんに一任してちょうだい」 「あの、母さん」 「ん?」 「あ、やっぱりなんでもない」 「……じゃあひとつだけ」 「は、はい」 「ハル、欲しいものは欲しいって言わないと手に入らないわ。言ったからって、手に入るとはかぎらないけど」 「……」 「なぞかけになっちゃったかしら? ごめんね。母さん、引出しが少なくて」 「ううん、そうじゃない」 「ありがと。やさしい娘でよかったわ」 * 「おや、ハルヒさん、おでかけで?」 「たまの休みにモンハンやってるような中年に話すことはないわ」 「ほら見ろ。パーティ全員女の子だぞ」 「どうせネカマでしょ」 「それは父さんだ。ちなみに中学生ということになってる」 「ほかに時間の使い方はないわけ?」 「じゃあ、駅前で中学生でもナンパしてくるか」 「イタ過ぎ。そんなこと、やってるの?」 「ケーキセットおごって、お話するだけだぞ。おまえもやるか?」 「誰がやるか!」 「今ので信じるとは、ハルヒ君もおちゃめだな」 「あんたとは二度と話しない」 「せめて披露宴で『花嫁の手紙』だけはやってくれ」 「ぴーぴー泣かせてやるから覚悟しなさい!」 「『花束贈呈』で返り打ちにしてくれる」 「ハル、お父さんと遊んでて時間はいいの?」 「あ、やばい。行ってくるね!」 「母さん、うちのドラ娘だが、今日はいまひとつ切れがなかった。どこへ行ったんだ?」 「帰りは明日になるみたい」 「えーと、聞いてする後悔と、聞かないでする後悔は、どっちがまし?」 「もう、後悔してるって顔ですよ」 「そのとおり」 「すぐ顔に出るところもそっくりね」 「隠そうとして、全然隠せてないのが、ツンデレの真髄なんだ」 「そのアヒル口も。ほんと親子ね」 「また合宿か何かか?」 「それとは事情が違うらしいわ」 「う。母さん、深刻なダメージだ」 「察しがいい親も考えものね」 「ハルヒに話すなって言われてないのか?」 「ええ。お父さんの動きを止めればそれでいいみたい」 「ふう。じゃあ投了だ。勝てる気がしない。勝てた試しもない」 「私たちも出掛けましょうか?」 「育つもんだな、子供ってのは」 「娘時代には、母親なんて何がおもしろいんだろうと思ってましたけど、どうしてどうして」 「楽しそうだな、母さん」 「悲しそうね、お父さん」 「ま、あんな凶暴な娘になるとは思ってもいなかったが」 「あんなやさしい娘になると思ってましたよ」 「俺たちも出掛けるか?」 「わたしたちも、お泊りにしませんか?」 * その日の待ち合わせは午後だった。 おそい朝食を食べた後、いつもの2倍の時間をかけてお風呂に入り、昨日から悩みぬいて選びぬいたコーディネートのうちから、天気予報と温度予報を考慮に入れつつ、ひとつを選んで着替えた。このあたしが、あらゆる意味において、勝負に手を抜くなんてことは有り得ない。あいつの趣味はいまいちわからないから、子供っぽくない程度に大人っぽい、普通におしゃれでかわいいという程度だけどね。それと髪型は言うまでもないわね。 着替えるとそれだけでアドレナリンが出て、臨戦モードになる。へんな言い方だけど、 「さあ、どっからでもかかってらっしゃい!」という状態。「矢でも鉄砲でも持ってこい」という感じね。 そう、今回は事情が違う。 あいつが、はじめてちゃんと誘ってきた。 「今週の土日空いてるか?」 「空いてるかって、このところ毎週あんたの顔見てるように思うんだけど、気のせいかしら。まあ、一回ぐらい土曜の市内探索はお休みにしても構わないわ。で、何?」 「たまには、デートってものをやるのも悪くないと思ってな」 「それはかまわないけど。デートって?誰と誰が?」 「おれとおまえが」 「あんたとあたしが?」 「駄目ならいい」 「あんたね、それはむしろ礼儀を欠くってもんだわ」 「おまえに言われると新鮮だな」 「ほんとに失礼なやつね。で、どこへ行くの?」 「安心しろ、プランはある。あと予約を入れなきゃならんところがあるんで、あらかじめ聞いたんだ。OKってことでいいか?」 「いいけど。……あんた、土日って言った?つまり土曜と日曜ってこと?」 「ああ」 「……」 「……黙るなよ」 「……あたしだってたまには黙るわよ」 「……そうか」 「……オールナイトの映画でも見ることにしとくわ」 「え?」 「アリバイよ、アリバイ。必要でしょ? そりゃ、あんたは要らないかもしれないけど……」 「ああ……すまん」 「あやまるな」 「すまん」 「んっとにもう」 言い方は、あいかわらず遠まわしでヘタレだったけど、それはどうだっていい。 いままでも「そういうこと」がなかった訳じゃない。どさくさというか、雰囲気に流されてというか、相手の過剰な反応にこれまた過剰に反応してしまってというか、「キス以上、○○未満」みたいなことは何度かあった。そりゃ同じクラスに同じ部活、登校時は家まで迎えに来る、部活後は街で一緒にすごして家まで送らせる、時々はお互いの家へ行って部屋にあがりこみ、帰ったらいつもの長電話。月火水木金土日、おはようからおやすみまで、起きてる時間の大部分をいっしょにいるのだから、そうならない方が不思議なくらいだ。 その度にあたしたちは踏みとどまった、正確にはどちらかが「ぶちこわし」にした。 (あたしが)相手をつきとばしたり、ぶんなぐったり、(主にあいつが)冗談にしたり謝ったりで、なかったことにした。 「ハル、あなた見た目はいいんだから、もっと自信持ちなさい」 自信は、あるにはあるけど。それと「見た目は」って親に言われると少しへこむわよ、母さん。 「ちょっと私の言いたいこととは違うけど。そうね、すごく具体的に言うと、たとえば、こう腕で自分を抱いて上目づかいで言ってごらんなさい。一発だから」 母さん、母娘でこの破壊力。やばいって。 それにね、なんて言うか、それじゃ意味がないの。それをしていい相手なら、あたしはきっと悩んでない。 私がしたいのは、あいつと取引したり、あいつを籠絡させたりすることじゃないの。あいつは、あたしが、そんなことしないと思ってる。それは、あたしの勘違いかもしれないけれど、勝手な願望かもしれないけど、あいつは確かにバカキョンのエロキョンだけど、それにあたし自身が報いたいと思ってる。……まるっきり空回りかもしれないけど。 「ふふ。誰に似たのか、頑固者ね。ハルのそういうところ、好きよ。母さんも本気でさっきのをお勧めしたい訳じゃないわ。ただ、自分のやり方に素直なことと、自分の気持ちに素直なことは、時々反比例するのよね」 何故だか、こんな会話をあたしは思い出していた。 * ハルヒは約束の30分前には来ていた。というのは、俺が着いたのが30分前だったからだ。本当のところ、こいつが何時からここにいたのかはわからん。1時間前ではないと思う。1時間前に俺が来たときは、こいつの姿はなかったからだ。ああ、言いたいことはわかる。そろそろふたりとも、待ち合わせには時間通りに着けば良いのだと学んでもいい頃だろう。 「はぁはぁ。 おそい、罰金!」 息切らせて何言ってるんだろうね、こいつは。 「で、どこ行くの?」 二人分の切符を買い、俺たちは、いつも街へ出掛ける時とは反対方向のホームへ向かった。 「そういや、おまえ、親のこと、『親父』『母さん』って呼んでたな」 「それが何?」 「いや、何でもないが」 そう、本当に何でもないことなんだが。 「そう。で、あんたは?」 「うちは、『父さん』『母さん』だが」 「まあ、あんたが『パパ』だ『ママ』だって言ってた日には、この手で地球を壊したくなるわね」 「やめてくれ」 頼むから。 「何言ってんの?」 「おまえこそ、パパ、ママって柄じゃないだろ?」 「うっさいわね。……小さい頃はそう言ってたみたいだけど、物心ついたら変わったわ」 「何故だ?」 「まあ母さんは『ママ』でもいいと思うけどね。……あんたも会ったでしょ、うちの親父」 「ああ」 「あんた、あれを『パパ』なんて呼べると思う?」 「……無理だ」 いろんな意味で。 「めずらしく意見が合ったわね。ま、そういうことよ」 そう言ってハルヒは「ふう」とため息をついた。 「どういう訳か、あんたのことは気に入ってるみたいだけど。まったく、どこがいいのかしらね」 全然分からんが、あの人を敵にまわすよりは数百倍ましな事態だってことは俺でもわかる。いろんな意味でな。 * あたしたちが降りたのは坂の多い街の駅だった。というより、街自体が坂にあると言った方が正しい。 果たして、それは普通のデートだった。 あたしたちは並んで歩き、時にはかわるがわる手を引いて、バカな言い合いをしながら、お店をひやかし、ハイスコアを塗り替えたり、小さなぬいぐるみをゲットしたり、ご飯を食べたりした。 「おじさん、大盛りちょうだい。ツン抜きで」 「ひょっとして、つゆ抜きか?」 「うっさい。わざとよ、わざと」 「わざとはいいが、いつも通りの『ツン』だぞ。正直、その方が何故だか安心するが」 「あんたを安心させるようじゃ、あたしもおしまいよ」 こいつは、ほとんどいつも通りに見える。いつも通りにやる気なさげで、それはそれでむかついたけど、ほっとしたのも事実だ。そして、いつもなら、さすがのこいつでもしないような失敗をいくつかしでかして、あと普段なら聞いてなさそうで聞いているあたしの話を、何を考え込んでるんだか、何度か聞き逃して、そういうなんでもない出来事があたしの気分を少しだけましにした。 * 「この店、まだあったのね」 「覚えてるか?」 「お父さんに会ってから、忘れた思い出はひとつもありませんよ」 「……君、あの月を彼女にプレゼントしたいんだが」 「グラスをお持ちます。ラ・グランド・ダムの1985年でよろしいでしょうか?」 「結構。……母さん、当たり年だ」 「ええ。今の方は?」 「ああ、あのオーナーの娘さんなんだ。オーナー、亡くなってな。この店も人手に渡ったんだが、なんやかんやで、彼女が継ぐことになった」 「『なんやかんや』の解決って、お父さん得意だものね。時々いつ仕事してるんだろうって思うけど。……ほめてるんですよ」 「わかってる」 「それで今日はお祝いなのね。3人で来ようと思ってたの?」 「ガキに飲ませる酒はないが、シャンパンぐらい付き合わせても構わんだろ」 「お月様、ほんとはハルにあげたかったのね?」 「そんな役は彼氏に譲るさ。アホ娘には『頭になんか湧いてんじゃないの?』と言われるのがオチだ」 「次は4人で来れますよ。シャンパン・グラス越しに月、ってルビッチの映画?」 「ああ、『極楽特急 Trouble in Paradise』(1932)だ」 「何に乾杯します?」 「バカ娘のあわれな彼氏に」 「じゃあ、お父さんのアヒル口に」 * そうしているうちに、あっという間に日が暮れて、街に夕闇が訪れた。あたしたちは肩を並べて、今日何度もそうしたように、ゆっくりと坂を上った。 夕食は、とても小さなレストランで、こいつが選んだとは思えないほど趣味がよく、料理もおいしかった。 あたしたちからすれば、祖父にあたるくらいの歳に見える人が、絵に描きたくなるような所作で給仕をしてくれた。料理が終わって挨拶に来た女性が料理長(シェフ)で、長年別のところで働いていたが、数年前ようやく二人だけでこの店を始めたのだと話してくれた。二人は夫婦だった。 「よくあんなお店、知ってたわね」 「探したんだ。ハルヒ、おまえの母さんの話をしてくれただろ?」 「え?ああ、母さんが若い頃、小さなレストランをやってたって話ね」 「そういうのがいいな、と思ってな」 「そうなんだ」 「ああ」 * 「お父さん、キョン君を気に入ってるのね」 「どっちかっていうとニガ手なタイプだけどな。ありゃ普通の奴だろ?」 「ふふ。そうね」 「右も左もわからなくて、いきがってた若い頃な、自分じゃ危ない橋も渡ったし、それなりに甘いも酸いもかみわけたと思ってたバカの鼻っ柱を折ったのは、ああいう奴だ」 「……」 「10回やれば奇策を弄するこっちが8,9回は勝てるだろうがね、ああいう奴に本気になられたら最後の1回は負ける。こっちは、それが致命傷になる。だから歳とって知恵がついてからは、6回勝てたら引き上げて、あとの勝ちは譲ることにしてる。譲られた勝ちでも、ちゃんと受け取ってくれるんだ。あいつらにとって大事なのは勝ち負けじゃないからな。勝ち負けでないものの価値をちゃんと知ってるというか」 「ハルに本気になってくれる人がいて、よかったわ」 「いなけりゃいないで、かまわんがな。母さん、ありゃ、ちょっと美人に育ちすぎたぞ。惜しくってたまらん」 「ふふ、親バカね」 「バカ親父だよ」 「めずらしく酔ってますね。こういうのも楽しいわ」 「これくらいの酒で酔うものか。ちょっと夜景が揺れてはいるが」 「はいはい」 「だが酔ってるのは俺じゃない」 「ん?」 「夜の方だ」 * 最後にあたしたちは、坂の上の洋館がある通りに出た。 「ここなんだが……」 「へえ、あんたが選んだにしちゃ、ずいぶんマシなところね。泊まれるの?」 「この洋館だけはホテルになってる。というか元々そのために建てたもんらしいが……」 「そう。なにしてるの? はやく行くわよ」 「おい、ハルヒ」 「入り口に突っ立ってちゃ、いい迷惑よ。話があるなら内で聞くわ」 部屋は予約してあった。週末の、こんないい場所なら当然だろう。 予約までして、女を連れてきて、それをまだ何を迷うのだろう。あんたがそんなだから、あたしはこんなに不安なのに。わかってんのかしらね、このバカ。 「おい、ハルヒ」 なによ。 「つれてきた俺がこんなこと言うのは、おまえのいう『失礼』ってやつだと思うが、……おまえ、わかってるのか?」 あたしは激高した。気づくとこのバカのえりもとを絞め上げ、ぶん投げようか絞め殺そうか、そのどちらでもできるよう、腕に力をこめた。そして、どちらかを決めてる途中で、やっと声が出た。 「あたしはあんたとちがってバカでも暇人でもないの! 女をホテルに連れ込んで『わかってるのか』ですって? ふざけんのもいいかげんにしろ!! あたしはね!!」 だけど、襟をつかんだのは失敗だった。両手がふさがってしまう。顔を、目から流れ落ちるものを、隠せやしない。 「……あ、あたしは、あんたと、そういうことになっても、いいと思ってる」 どれだけの時間、泣いていたのかわからない。 気づくと手を放して史上最低のバカの胸に額をつけていた。顔を隠そうとしたのだと思う。 バカはあたしの背中に手をまわして、ぽんぽんとあやすようにしていた。でも、今欲しいのは、こういうやさしさじゃない。どうして何も言わないの? あたしの一世一代の告白を何だとおもってるんの? 女に、ううん、あたしにここまで言わせておいて、何でこいつは黙っていられるの? こいつはバカだ。救いようがない阿呆だ。 誰かの声がしたような気がして、あたしは我に返った。次にしたことは、自分の体をこいつから引きはがすことだった。そうして、こいつの顔を覗きこんで、その目を見た。目の中に顔を真っ赤にして泣きはらした女が映っていた。 「ハルヒ?」 名前を呼ばれて理解できた。目の中に映っているのはあたしだ。それから、今こいつはあたしにやさしくしてるんじゃない、あたしがこいつに甘えてるだけなんだ。 こいつはあたしの意思を「尊重」しようとした。あたしはそれを「優柔不断」だと思って怒った。こいつがあたしに、この「大切なこと」を決めさせようとしてると感じたから。そのあたしは、こいつに決めさせようとして、そこから逃げたと、なじっているのだ。 一気に冷えた頭は猛スピードで考え始めた。あたしはこいつをどうしたいのか?こいつとどうなりたいのか?そのためになにをやったのか?やろうとしたのか?こいつはあたしにとって何で、あたしはこいつにとって何なのか?あたしに決められるのはどれで、決められないのはどれか?何故このどうしようもないバカのことを、わたしはこんなにも好きなのか? 「……まだ、あたしのターンよね?」 違ってても、あんたの沈黙を1パスとみなすわ。それと、こいつはあのアホキョンのニブキョンよ。へたに「手加減」して「期待」した、あたしが間違ってたのよ。話して通じる相手じゃないと知ってたわ。まさか、ここまでとは思わなかったけどね。だったら手加減抜きで、やるしかない。本気にさせたあんたが悪いんだからね!覚悟しなさい! 「耳かっぽじってよく聞きなさい! 『あんたとそうなってもいい』って? 冗談じゃないわ! あんたじゃなきゃ嫌! あんたじゃないと駄目! 今日のこと、あんたが誘ってくれたとき死ぬほどうれしかった。今日一日、おかしくなりそうなくらいドキドキしたけど、生まれてから一番ってくらいに幸せだった。自分が自分じゃなくなっちゃいそうで、一日中、ううん、あんたに会ってから、あたしはずっと不安だった。でもそんなことは、もうどうだっていいの。あたしはあんたが好き。もう、どうしようもないくらい。言えっていうなら、100万回だって言ってやるわ。あたしはあんたが好き! あたしはあんたが好き!!」 体中の酸素を使いきって、あたしは息が続く限りまくしたてた。もう駄目だ。酸欠と恥ずかしさとで死にそう。いや、死んでやる。キョン、あたしが死んだら、お墓はいらないわ。鶴屋山の、この町が見下ろせるあの場所に立って、一年に一度でいいからあたしを思いだして泣きなさい。それから・・・。というバカな心の声は、あの「やれやれ」と言ってるみたいなため息に中断した。 「おまえにはかなわん」 って、今何か言ったわ。よくわからない。怖くて顔が見られない。足に力が入らない。 ちょっと、部屋が傾く、床が近づいて来……。 「ハルヒ!」 呼び止められ、抱き止められた。一瞬、気が遠くになって、向こう側が見えた気もするんだけど。どうやら、あたしには、まだこの世ですることがあるらしい。そうだよね、キョン? 「おい大丈夫か?」 「ちょっと酸欠。今、少し天国と天使が見えたわね」 「告白して失神する奴があるか」 「だったら……少しは、普段から、やさしくしなさい。危機一発じゃないと助けに来ないヒーローなんてお呼びじゃないわ」 「呼ばれなくても、ずっとそばにいてやる。こんな危なっかしいやつ、放っておけるか」 「あんた、生意気よ。ちゃんとあたしに惚れてるって言いなさい」 「ああ、惚れてるさ。会った時からずっとだ。何度押し倒そうと思ったかわからん」 「へたれキョン。エロキョン」 「見た目も頭も、性格以外は最高で、道行く男どもは、みんなおまえを見る。俺がどんな気持ちだったか分かるか?」 「バカじゃないの? あたしはあんた以外、目に入らなかったわ。集中力を欠いてるのよ。あたしの気持ちに気づかなかった当然の報いね」 「おまえこそ、俺の気持ちを信じなかったくせに。それから、俺にも言わせろ」 「溜めこんで、それ以上バカになったら困るから、特別に聞いてあげる」 「ハルヒ、おまえが好きだ」 「おそい!! どれだけ待ったと思ってんの?」 「……人の告白に駄目出しするなよ」 「これはあたしの恋路よ。誰の文句も受け付けないわ」 「俺の恋路でもあるだろ。この唯我独尊女!」 「ま、惚れた弱みもあるし、聞くだけ聞いたげる。次!」 「おまえが世界で一番好きだ!」 「比較の問題じゃないでしょ。次!」 「俺にとっておまえみたいなめちゃくちゃな奴は宇宙でたった一人だ!」 「長い!それに今は『ツン』はいらないの!」 「そういうおまえの態度はどうなんだ?」 「うるさい!次!」 「ずっといっしょにいてくれ」「あんたがそばにいてくれるんじゃなかったの?次!」 「おまえがいない人生は考えられない」「いっしょにいるだけじゃ駄目よ!次!」 「おまえの笑顔がずっと見せてくれ」「あたしが泣いたらどうすんの?次!」 「俺を逃がしたら、これ以上の男は現れないぞ」「それはこっちのセリフよ!次!」 「俺にはおまえが必要だ」「あんただけじゃない!次!」 「愛してる」「気持ちだけじゃ駄目だって言ってるの!次!」 「おまえは俺が守る」「無理!」「そうだな」「そうだな、じゃないでしょ!次!」 「付き合ってくれ。断られても、この言葉は二度といわない」「それじゃ脅迫よ!次!」 「俺のファーストレディになってくれ」「オバマか?次!」 「結婚しよう」「ちゃんと手順を踏みなさい」「そんな普通のことでいいのか?」「じゃあ、かけ落ちしてあの親父から逃げきれるの?」「無理だ」「次!」 「駄目だったらクーリングオフしてくれ」「笑いもボケもいらない。次!」 「はぁはぁ。……なんでそんなセリフがポンポン出てくんのよ?ヘタレのくせにスケコマシね」 「はぁはぁ。……おまえが言わせてるんだろうが。日ごろの努力の賜物だ。ずっと考えてりゃこれくらい出てくる」 「へー、あんた、そんな努力してたんだ?ずっと考えてたの?」 「……」 「そこで黙るから、あんたはヘタレなのよ」 「やれやれ。もう言葉は打ち止めだ」 「なにす……うぷ」 こいつの唇があたしの口をふさぐ。ようやく、やっとのことで。ほんと手が掛かる。本気であたしに魅力を感じてるのかしらね。 「ムードないわね、あたしたち」 「そんなものは、どうにでもなる」 「……ちょっとは言うじゃない」 「惚れなおしたか?」 「言っとくけど、恥ずかしいセリフは、あたし以外には禁止だからね」 今度はあたしがこいつの口をふさぐ。 * 事が終わって、あたしたちは眠り、目覚めた。 世界は相変わらず退屈でままならなくて、あたしたちは相変わらず不器用で素直じゃなくて、そして一緒だった。 「……ほんとよく寝るよな」 「……何よ、最初にダウンしたの、あんたの方じゃない。その間抜け面見てると、こっちまで眠くなったのよ」 「ふう、でも悪くないな」 「そうね、悪くないわ。おはよ、キョン」 「おはよう、ハルヒ」 それから、お互いに腕をまわして体温を確かめ合った。その心地よさにまどろみながら、あたしたちはもう少しだけ眠ることにした。 * その後の事で、語るべきことはあまりない。 遅い朝食を食べ、坂を降り、バカな言い合いをしながら駅へ向かって、電車に乗り帰途に着いた。途中、母さんの「朝帰りうんぬん」の発言を思い出したので、こいつに振ったら、予想以上の狼狽ぶりだったとか、それを見て大笑いしてやったとか、どうでもいい話だ。こんなことでは、今回のあたしの貸しはちっとも減らないしね。もう一生かけて回収してやるしかないわね。 そういう訳で、あたしは大いにしかめっ面をして家のドアを開けた。 「おかえりなさい、ハル。 ん、どうかしたの?」 「どうもこうもないわ。あいつに何か期待する方が間違ってんのよ」 「何かって、何が?」 「何もかもよ! まったく、あたしだったから、よかったようなものの……」 「あら、よかったの。よかったわね」 「よくないわよ! まあ、よくなくなくもなかったけど……って何言わせるのよ!」 「ふふ。お父さん、ドンペリ入りまあす!」 「な、何言って……げ、親父、どうしたの、その顔? 縦線入ってるけど」 「ああ、おかえり……」 「死にそうね。ちょっと大丈夫?」 「ああ、おかえり……」 「駄目だ、こりゃ。ねえ、母さん、何かあったの?」 「私たちは、何もなかったわよ」 「なんか母さん、今日、ちょっと親父入ってるわよ」 「だって、お父さん、あの調子だもの」 「その分、母さんがご機嫌なのが、少しこわい」 「ほら、ハル」 「ドン・ペリニョン! しかもロゼ?」 いくらするのよ? 「ホストクラブじゃあるまいし、何十万もしないわ。子供が生まれた年のお酒を買っておいて、っていうのが昔流行ったのよ。それにハルの生まれた年はシャンパーニュの気候も、1990年ほどじゃないけど、申し分なかったし。こういう年にできたワインは、置いておいて後で飲むのが良いの」 いや、それにしても、お酒じゃないような値段するんじゃないの? 「ほんとはね、夕べお父さんのお友達がやってらしたお店に行ったの。港が見下ろせる、とても景色のいい場所でね。そこは、そのお友達のおじいさまが日本に来られた時に建てられた建物で、お父さん、その家を買い取ってお店にする時にお手伝いしたみたい。ちょっと大変な交渉事って、お父さん、得意中の得意だから。それで、我が家に娘が生まれた時に、お祝いにって、そのお友達が下さったのがこのシャンパン。ね、ちょっといい話でしょ?」 「うん」 それでも、すごい額のお祝いだけど。 「お友達、亡くなられてね。その建物も手放すことになったんだけど、また買い戻して、今度はその娘さんが引き継がれることになったの。お父さん、今回も『お手伝い』したらしいわ。そのお祝いが夕べ、そのお店であって」 「そうだったの? ごめん」 「いいのよ。私にもお店に行くまで、お父さん、何にも言わないんだもの。それにお店はいつでも行けるけど、あなたのは一生に一度のことですもの。そのかわり、今度は4人で行きましょ。母さん、ピアノ弾くって約束しちゃたし」 「え、ほんと?」 「ええ。素人に毛が生えたようなものだけれど、一応練習しなきゃね。天国にいる先生に恥かかせられないわ。そ・れ・と、今日はお酒に合った豪華な夕食にするわよ。母さん、準備にかかるから、お父さんをよろしくね」 よろしく、って言われてもね。おーい、親父、生きてる? 「ああ。……あいつとは最近どうなんだ?」 最近と言っても、さっき別れたばっかりだしねえ。 「ぐふ!! ……娘、ど、どこでそんな荒技を?」 なに言ってんの? アタマ、大丈夫? 「以前なら『アイツって誰よ?』的なツンデレ返しで、いくらでもツッコむ隙があったのに」 かあさん、これ、もう駄目みたい。新しいの出そうよ。 「うう、せめてとどめを刺してくれ」 「ハルヒと親父2 ー おとまり」から削除されたラブシーン ハルヒと親父2その後 一周年一周年 その1 一周年 その2 一周年 その3一周年 その後ー腕の腫れ、氷の癒し
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───2時5分。 まったく遅いわね!キョンのくせに! 絵本絵画展終わっちゃったらどうするのよ! あたしから誘ってあげたデートだというのにこんな大事な日に遅刻するなんて何考えてんのかしら! 今日は美容院に行って髪型セットしてきたっていうのに。 やっとポニーテール結える長さになったんだからね! それにしてもおっそいわ… あったまきた! 電話かけてやる……って携帯持ってくるの忘れたわ。 仕方ないわね。 すぐそこの電話ボックスに行ってるからその間に来るとかそういうのは無しだからね! …… ───────… はぁはぁ… しまった、もう2時15分じゃないか。 道端で偶然会った長門に誕生日プレゼントなんて買ってる場合じゃなかったな。 ハルヒがまだ待っててくれるといいんだけど… 早く電車よ…もっと急いでくれ! 駅についたときには待ち合わせに大きく遅れて20分を過ぎていた。 罰金どころでは済まされないだろう。 あれ、ハルヒは? 待ち合わせ場所にはものすごい人だかりができていた。 「おい…見ろよあれ」 「うわー…やべえなこれ」 野次馬がなにやら騒いでいた。 そんなことはいい。 早くハルヒを探さないと。 …ん?なんだあれ。 人だかりの方を見ると駅前の街頭やら電話ボックスやらがめちゃくちゃに壊れていた。 看板やらベンチまでも突き飛ばして、乗用車が…壁に激突していた。 おいおい…運転手、大丈夫か? 「うわぁ…助けるの遅くない?」 「待ち合わせでもしてたのかなぁ……かわいそうに」 「高校生くらい女の子だって……」 ……… なんだこの胸騒ぎは? それよりハルヒはどこだ? 人が多すぎてこれでは探すに探せない。 奥には救急車が来て回転灯が辺りを赤く染めていた。 まさに今怪我人を運ぼうとしているところらしい。 ──ドクン。 何か胸騒ぎがする。 まさか…おい、邪魔だ! どけよ!どけよ! 「──ってえな。なんだよ…」 うるせえ!そんなことはどうでもいい! 救急車が行く前に少しだけ確認させてくれ! バタン。ピーポーピーポーピーポ…… 間に合わなかった。 ハルヒは待ち合わせ場所にはいなかった。 きっと遅刻なんだ。あいつも。 もしくは怒って帰っちまったか? そんなはずはないと思いつつも携帯に電話をかけてみる。 ………電話にでない。 心臓がバクバクと音を鳴らしている。 まさかな。あの被害者はハルヒじゃないだろう。 世界を創造するほどのハルヒがこんな事故に巻き込まれるはずがない。 女の子だって言ってたな。彼氏とのデートだったんだろうか。 かわいそうに… 待ち合わせしていて急に事故に巻き込まれたんだろうか。 運のない人だったんだ…… でも、ハルヒじゃないんだよ。 ハルヒは今どこかでこの事故を見て怯えてるんだよ。 怖かっただろ?遅れてゴメンな。 そういって抱きしめてやるから…早く来てくれ。ハルヒ。 野次馬が減って入れ替わりで警察がやってきた。 事故車はそのままだがさっきよりは見晴らしがいい。 警官がバッグらしきものを手にとって中を物色しながら無線で話していた。 「えー、事故発生。14時15分ごろ」 なんだよ…俺がちょうど駅につく直前くらいじゃないか。 「遺留品の身分証明書の写真にて本人と確認……被害者氏名、涼宮ハル───」 ……今…な、なんて言ったんだよ? 何かの聞き間違いだろ? そんな事務的な口調で… 「えー、涼しい宮に……」 …… 「何やってんのよ!バカキョン!」 背後からの突然の大声にびっくりして振り向くとハルヒがすごい形相でこちらを睨み付けていた。 「罰金!罰金!何分待ったと思ってるのよ! あんまり遅いからどっかで迷子になってるんじゃないかと思ってぐるっと駅を一回りしてきたのよ! それなのになんでこっちに来てんのよまったく!」 ハルヒの眉は左右とも吊り上り物凄い怒りをあらわにしているのに、 なぜか口元は少し笑っていた。 「お前…無事だったのか…?」 「無事!?あんたの遅刻のせいでさんざん待たせといて無事はないでしょ!」 俺は嬉しかった。 なぜだかとっても安心した。 ……ハルヒ。 偶然か…それともハルヒの力なのか。 涼宮さんという事故の被害者はハルヒとは全くの別人だった。 今日は全部俺のおごりだ。なんでも言ってくれ。 「あったりまえよ!明日も明後日もずーっと一生あんたのおごりにしてやるんだからね!」 一生か…それもいいかもな。 そう思えた夏の午後であった。
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ヒロシ プロフィール 通称:ヒロシ、台湾のヒロシ 名前の由来:ヒロシが自ら名乗っている為 性別:男性 ナディア厨 なんと台湾人 でも日本人と同じかそれ以上にテニミュに詳しい 出演作品 【スイーツ】引いた!(VIP吹き替え) 【リア充】(手塚役) VIPPERで1公演全部吹き替えしてみた (乾役)
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ヒロノとは 配信内容 関連人物 用語集 ヒロノとは 24歳男性配信者の事。 現在教師を目指している。 Wiki編集者募集中。 ヒロノ ◆配信での活動 配信ページ チャンネル名 ustream hirono255 #hirono255 justin hirono0520 UstreamChecker ヒロノ リンク Twitter hirono255 配信内容 ○凸待ち(基本的に人は来ない) ○ゲーム実況 エロゲ SFC PS1 PS2 PS3のゲーム ○麻雀配信 ○雑談配信 関連人物 プリお 衝動的なシノダ テル 用語集