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11 36 キョン「はぁ、なんでこんなに遅く帰らなきゃいけねんだよ。」 俺はハルヒに付き合わさせられて遅く帰っていたときだった。 もぞもぞと動いていた物があった。 それを見てみると視界が暗くなった。俺が覚えている事はこれくらいしか無い。 7月6日 午後4 00 SOS団部室 ガチャ ハルヒ「みんないる~て、有希と古泉くんだけ~、みくるちゃんは。」 古泉「朝日奈さんなら少し遅れてくると、そういえばキョンさんは。」 ハルヒ「キョンだったら今日は休みよ。」 ハルヒ「なんか暇だから今日は帰るわ、古泉くんと有希も早く帰りなさいよ。」 古泉「そうですかではお言葉に甘えて帰らしてもらいます、では。」 続く
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スガワラノミチザネ(菅原道真) スガワラミチザネの別名。
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ヒロヒトシンノウ(2)(裕仁親王) 皇族の系譜に登場する人物。 第124代天皇ショウワテンノウ(昭和天皇)となる。 関連: ヨシヒトシンノウ(4) (嘉仁親王、父) クジョウサダコ (九条節子、母) ナガコジョオウ (良子女王、妻) シゲコナイシンノウ(3) (成子内親王、娘) サチコナイシンノウ(2) (祐子内親王、娘) カズコナイシンノウ (和子内親王、娘) アツコナイシンノウ(4) (厚子内親王、娘) アキヒトシンノウ(2) (明仁親王、息子) マサヒトシンノウ(2) (正仁親王、息子) タカコナイシンノウ(5) (貴子内親王、娘) ショウワテンノウ (昭和天皇) 別名: ミチノミヤヒロヒトシンノウ (迪宮裕仁親王)
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「ねぇ、キョン。ゲームで1upキノコとかあるじゃない。」 「ああ。」 「『1人増える』ってどんな感じなのかなぁ?」 「……。」 「増えるといってもドッペルゲンガーみたいに同時に存在してるわけじゃないじゃない? 自分が死ぬともう1回、って感じで自分が出てくるわけでしょ?それってどういう現象かなぁ?」 「……。古泉、パス。」 「え……、長門さんお願いします。」 「……あ「お茶のお水汲んできますね!」さひ……。」 「そもそも最初は『3人』で始まってるじゃない? 自分『3人』って何?」 「涼宮ハルヒが1人増えた。」 「なんですと!?!? いったい何食ったんだ!?」 「1upキノコ。1人増えたことによって今4人いる。」 「なんだよその1upキノコって、おい4人!?」 「ミスしても大丈夫。」 「『ミス』にも引っかかるし、『大丈夫』にも突っ込み所があるな。」 「ああん! もう! また穴に落ちたわ! あと100機は欲しいところね!」 「とりあえず1upキノコで自分が増えるのは納得したわ。」 「どうやったら納得できたんだよ。」 「自分の死体はどうなるの?」 「……。」 「敵のキノコにぶつかったくらいで死ぬのも納得いかないわね。」 「毒キノコなんだろ……。触ったくらいで死んでしまう猛毒の。」 「納得できないけどまあいいわ。それより自分の死体よ!」 「1upキノコが納得できて猛毒が納得できないのかよ! 死体? 古泉任せた。」 「長門さん、どうぞ。」 「……待ってわたしが水汲みに行く、いつもお茶を淹れてもらっているお礼。」 「いいえ! これはあたしの役目なんです!」 「……………………………………………………。」 「…………長門、そんなに俺を見つめるな。そうだな、死体が生き返ってスタート位置にワープするんだろ。」 「納得できないわ! ワープできるならとっとと敵のボスの所まで行きなさいよ!」 「知るか!」 「問題発生。」 「どうした? 死体が歩き出したか?」 「違う。待機中の3人の涼宮ハルヒが実体を得た。」 「な!? それは非常にまずいんじゃないのか!?」 「幸い3人とも意識はなく、閉鎖空間で寝ている。今頃古泉一樹が驚いていると思われる。」 「神人が暴れているのか。」 「涼宮ハルヒにとって死体と2人目以降の存在について納得のいく答えが見つかった。もう収まるはず。」 「あいつ以外誰も納得できない答だな。」 「んー、穴が死体で埋まって平坦になれば楽なのに~。」 「あいつら絶対おかしいわ。」 「ゲームだからな。おかしいのはお前だ。」 「だって垂直跳びで身長の3倍以上の高さを跳べるのよ!? 身長が170cmとして、えと510cm、5mの高さ跳べるのよ!? それだけじゃないわ! 5mどころか、うん100m以上の高さからちゃんと着地して、 何事もなかったかのように走りだせるのよ!」 「お前にぴったりのゲームがある。あとで貸してやる。」 「あ、ありがと。それはともかく、なんであんなに高さ関連に強いわけ!?」 「えーとだな、そう! ドクター中○が発明した靴があるだろ? あれだ。あれを履いているんだ。」 「あのジャンピングシューズ!? うそよ! ありえない! だってあたしあれ買ってみたけどジャンプどころか転んで捻挫しただけだったわ! とんでもない不良品よ!」 「買ったのかよ。……それはいつの話だ?」 「小学生のころ。」 「だからだ。今は改良されている。しかもプロが履いているからな。」 「!」 「情報の伝達に齟齬が生じるかもしれない。でも聞いて。 ドクター○松がノーベル物理学賞にノミネートされた。」 「オーケイ! アイシー! アンダスタン! わかった! 悪いがノミネートを削除してくれ。」 「大丈夫。すでに削除済み。」 「長門、愛してるよ。」 「もっと冷静な時に言って欲しい。」 「くぉらぁ! このクソ主人公!!! なんで膝の高さから落ちて死ぬのよ! 根性見せなさい!!」 「キョン、ゲーム機まで貸してくれてるのに言うのはなんだけど、なにあのゲーム!? あそこまでひ弱な主人公初めて見たわ! 」 「ああ、史上最弱の主人公として有名なゲームだ。」 「最弱過ぎ! スタートして1秒で死んだわ!」 「それを考えると100m落ちても無事な髭オヤジの方がいいだろ?」 「そうね。少なくとも現実世界の人間より弱い主人公よりマシだわ。 それより聞いて! さらに不思議なことがあるの!」 「……キノコを食べると大きくなることか? 花を食べると火の玉が出せるようになることか?」 「……それも不思議ね。170cmの人が2倍の身長に。340cm! ちょっとどういうこと!?」 「しまった。……おい長門!急いでどこへ行く!?」 「朝比奈みくるとお茶の水汲み。」 「そうか、手伝おう!」 「ちょっとキョン! キョン!! ……古泉くん、あなたならわかるわよね? どうしてキノコを食べると大きくなるのか。」 「そ、そうですね。キノコといった菌類や植物には解明が進んでいない部分が多くて 今でも新種発見や、新しい薬効成分が見つかったりするそうです。 大きくなったり火の玉が吐けるキノコや花が存在してもおかしくありません。」 「さすがは古泉くん! と、言いたい所だけどさすがに骨格は変わらないんじゃない?」 「いえ、大人を子供にする『APTX4869』という薬がありまして…」 「本当!?」 「よろしくお願いします。」 「わかった。wせdrftgyふじこlp」 「子供の古泉くんってかわいかったですね♪」 「……。」 「ふう。長門さん、ありがとうございます。まさか小学生になるとは……なぜか睨まれているんですが?」 「また穴……。あたし、もしかしてヘタクソ?」 「この前聞くのを忘れてたわ。ちょっとキョン! 聞いてる!?」 「ああ、当然だ。だから朝比奈さんも一緒に聞いてください。長門、お前もだ。」 「なんで鍵を閉めるんですか~~!?」 「何やってるの? で、キョン! 100mの高さから落ちて無事な主人公がなんで穴に落ちて死ぬのよ?」 「古泉。」 「長門さん。」 「……………。」 「え、えっと涼宮さんお願いします。」 「あたし!? んーと、あれ? キョン! あたしの質問よ!」 「正直わからん。古泉任せた。」 「長門さんお願いします。」 「あたし、長門さんならわかるんじゃないかなって思うんですけど。」 「え、有希わかるの!?」 「……………………………………………………………………………………………………らぴゅた。」 「! だからさすがに助からないのね!? さっすが有希!!」 「すまん長門! 俺たちが悪かった!」 「ごめんなさい! あたしが調子に乗ってました。ごめんなさい!」 「お願いしますよ長門さん。早く機嫌直してください。」 「なんでもおごってやるから早くこの落ちてきたロボットを何とかしてくれ!!!!」 「あと申し訳ないんですがあの天空の城も何とかして欲しいんですが……」 「ここは上空1万m、この穴に落ちたら命はない。……あぁ、ミスった! ダメ! 緊張するわ!」 「ねぇ、キョン……。人の命ってお金で買えるのかなぁ……。」 「なんだ、えらく深い話じゃないか。」 「今まであんまり意識してなかったけど、ちょっと気になってきて……。」 「そうだな、病院や薬が買えるとかで金持ちと貧乏人の寿命の差が出てきてる事を考えると、 金で命は買えると言えるかもしれん。」 「それって寿命を買ってるわけじゃない? そうじゃなくて命そのものってどうかな?」 「う~ん、クローン技術はある意味金で命を買ってると言えるかもしれんな。」 「その費用って金貨100枚くらい?」 「…………真剣に考えてた俺がバカだった。コイン100枚で1upって話じゃねぇか!!!」 「重要な話よ! あの巨大な金貨なら十分価値があるわ!」 「ハルヒよ、あれはデフォルメだ。実サイズだと画面2ドット分がせいぜいだ。わかるか?」 「ええ!? ちが……うの……?」 「なんでショック受けてんだよ。」 「あれだけ大きい金貨だと人間とか買えるのかな、と思ったんだけど……。クローンなんてもっと無理よね……。」 「えらく問題発言だぞ。それは。」 「金の価格が暴騰している。」 「そうきたか……。」 「昨日と比べ3倍の値段がついている。経済はもちろん、半導体機器製造にも影響が出るのは間違いない。 このままでは弱小国の破綻や戦争が勃発し世界が崩壊する可能性がある。」 「閉鎖空間じゃなくても世界を危機に陥れることができるのか……。」 「でも任せて。情報操作は得意。佐渡島の金脈を復活させた。あと石見銀山に金の鉱脈を追加した。 埋蔵量は現在地球上にある金の量の倍。」 「………。」 「…………ちが……うの……?」 「……違うな…。」 「うわwww無限増殖wwwキタコレwwwww」 『緊急事態。待機中の涼宮ハルヒが増え始めた。』 「……ハルヒめ、とうとう気づいたか!」 『このまま増えすぎると閉鎖空間を内側から破るかもしれない。 だからあなたに待機中の涼宮ハルヒの有機情報連結の解除の許可を求めたい。』 「俺に!?」 『あなたは彼女の鍵。早く、許可を。』 「えらく信頼されているな。だが『急いで! 許可を!』な、えっと長門?」 『早く! 時間がない!』 「落ち着け、大丈夫だ。倍々ゲームでなくて1人ずつ増えてるだろ?」 『……増えている事には変わりない。』 「今何人だ?」 『125人目、126人目、!! 全員消えた。』 「長門は知らないだろうが、裏ワザに『無限増殖』ってのがあるんだ。 だが『無限』といいつつもなんだかコンピューターの関係で 126人以上はマイナス扱いで死んだらゲームオーバーになるんだ。」 『恐らく2進数の補数によるマイナス表現と思われる。』 「さすがだな、長門。……まあいつでも相談してくれ。少しでも力になりたい。」 『感謝する。あなたに負担ばかりかけていて申し訳ない。……ひとつお願いがある。』 「なんだ?」 『涼宮ハルヒが遊んでいるゲームの内容が知りたい。詳しく教えて欲しい。』 「ああ、お安い御用だ。今度の土曜日に俺んちに来てくれ。同じのがあるぞ。」 『ぜひお邪魔したい。』 「タイムオーバーまで無限増殖。どれくらい増えたかしら♪ !!! なんでゲームオーバーなのよ!!! あんだけ1up、1upって言ってたじゃない!!」 「ねぇ、キョン……。生物って神秘よね。ちゃんと寿命があってそれまでに子孫を残す。 細胞分裂には限界があって、その限界を超えてしまった細胞はもう分裂しない。 でもそのルールから外れて細胞分裂するものは癌となってその生命体自体を殺すの。」 「………無限増殖しすぎてゲームオーバーになったんだな?」 「………なんでわかったのよ?」 「みんな一度は通る道だからな。どうせどっかのサイトみて試したんだろ? 注意書きなかったか?」 「あとで見た。もっとわかりやすく書くべきだわ。」 「でもやり方がわかったんだろ? カウントして増やせばいいじゃないか。」 「3時間やって成功したのは1回こっきりよ……。キョン! あんた出来るの?」 「ああ、百発百中じゃないがそれなりの成功率だと思うな。」 「教えなさい!」 「へっ?」 「やり方教えなさいよ! いいわ、今度の土曜日にあんたの家に行くわ。決定!!」 「なっ! 俺の都合は無視かよ!」 「なに? どうせ暇してるんでしょ? それとも何か都合が悪いことでもあるの?」 「い、いや…。そうだ朝比奈さん! ついでに俺んちに来ませんか? 長門、古泉、お前らもどうだ!?」 「了解。」 「あ、有希……」 「いいいですね。さすが団長、たまにはレクレーションでテレビゲームというのもいいアイディアだと思いますよ。」 「あの~あたしテレビゲームはよくわからないんですが……。」 「大丈夫ですよ! すぐ覚えれますよ。」 「ん~~~っんん、いいわ! キョンの家に朝9時集合よ!」 「9時!?」 「古泉、今日はなんで俺の味方してくれたんだ?」 「いえ、長門さんが本当に人を殺しそうな視線を送ってきたので……。」 「……すまん、長門。」 「……………………………………いい。」 「……すまん。」 「5分前に来たのに最後なんですね……。さすがにキョンくんも迷惑じゃないですか?」 「みくるちゃん、最後なのはまだ顔を洗ってるキョンよ。」 「おふたりが早く来すぎてドタバタしたせいだと伺っていますが?」 「そうよ有希、1時間前に来るのはご家族にも迷惑よ!」 「……着いたのは同時のはず。」 「そこでジャンプ! そう、ちょっとずらして。で、もう一回ジャンプ!」 「! 出来た! 出来たわ!! いい感じよキョン! もうコツは掴んだわ!!」 「う~ん、さすがに最終面は難しいわね。そろそろストックがなくなってきたわ。」 「おい、ハルヒ、「うっさい! いま話しかけんな!」…。」 「うそ、ゲームオーバー!? もう一回…。」 「おいハルヒ。ハルヒ~。ハルハル~~。」 「シャミがなついてるのはキョンくんと有希ちゃんだけなんだよー。ずるいよー。」 「ねこさんいいなぁ。いいなぁ。」 「長門さんの番ですよ。」 「うりゃーーーー!! よしスター出現!!」 「あがり。」 「また長門の勝ちだな。まさかトランプの裏表の特徴を全部記憶しているとか?」 「全部ではない。汚れや傷のあるものだけ。」 「まじかよ……。」 「では次はトランプ以外のゲームをやりましょうか?」 「うぉ!? どこにそのボードゲームを隠してたんだ!?」 「よっしゃー!! クリアー!!! やった!! やったわキョン! あれ?」 「あなたはずるい。わたしのプレイ時間がなくなった。」 「長門、あのゲームは面白いか?」 「ユニーク。20年以上の前のゲームにしてはハイクオリティ。」 「そうか。クリアできたか?」 「正規ルートはクリアした。だがまだ全部終わっていない。」 「全部?」 「マイナス面。」 「そ、そうか。」 「あー!! 何回やっても何回やってもエアーマンが倒せないわ!! キョンに電話しよ!」 スーパーハルヒ 完
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サークル名 あんかけスパ 代表者名 チヒロ HP http //ankake.iza-yoi.net/ 活動時期 2009年~ 名古屋の同人サークル。 本業だけあってグラフィック"だけ"は綺麗 作品一覧 妖々剣戟夢想 東方紅輝心
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「涼宮ハルヒの歓喜~サンタが町にやって来た~」の続編です。 12月25日。今日が本当のクリスマスだ。 しかし、町は気の早いもので華やかな装飾は剥がされ始め、 次は正月へと向けて彩りを変えている。 学校も明日から冬休みに入る為、終業式という事で学校に来たのだが、 「う~…」 どうやら俺はサンタのトナカイ探しやらパーティーの後の一件で 雪の降る真冬に外をウロウロ歩き回ったせいで 少し風邪を引いてしまったらしい。 しんどい…咳が止まらない…休めば良かったかも。 しかし、熱っぽいのはそれだけが理由ではないだろう。 クリスマスが終わったというのに俺は未だに浮かれ気分が抜けない。 昨日の夜は結局、眠れずじまいだった。 一晩中、落ち着かなくてモソモソと動いていた。 とうとうやっちまった…俺はとうとうやっちまったのだ…あのハルヒに… いきなりあんな事やるなんてあの時の俺はどうかしちまってたのか!? いきなりハルヒに抱きついて、今でも思い出すと 恥ずかしくて顔が真っ赤になりそうな台詞吐いて、 手を繋いで…やばい、また熱が出てきた。 その後、結局ハルヒを家に送り届けるまでの道で 2人共、照れと恥ずかしさでお互いまともに顔を見る事も 言葉を交わす事さえも出来なかった。 別れ際の「おやすみ」が精一杯だった。 俺はどんな顔してりゃ良いんだ? ハルヒはどんな顔して後ろの席に座るのだろうか? 緊張してきた…やっぱり今日は学校休めば良かったかも。 昨日の夜は全っ然、眠れなかったわ…。 どんな顔して学校行けば良いのよ? 普通に「おはよう」とか言って席に着けば良いかしら? でも、それだと何にもなかったみたいに受け流す冷たい嫌な女だわ… かと言って今更、可愛い子ぶりっ子なんて出来ないし!したくもないし! あぁ!!もう!!こんなの中学までで散々慣れてたはずなのに! なんでキョン如きにこの私がここまで悩まなされきゃいけないのよ! 雑用係のくせにいきなり団長様を抱き締めてくるとか反則よ! キャラ崩壊の危機だわ! とりあえず、今日は早めに学校行って絶対、キョンより先に席に着かなきゃ。 やっぱり何事も最初が肝心なのよ! イニシアチブは常に私が握っておかないと! 「あいつ…なんでもう教室にいるのよ!!」 早いわ!早過ぎるわよ!だってまだ7時半前よ! 全校生徒のほとんどがまだ来てないし、絶対に私が一番乗りだと思ってたのに! 教室に二人っきりなんて余っ計に気まずい空間じゃないのよ! 仕方が無いわ、とりあえず時間稼ぎに部室棟に…あっ…… 突然、教室の扉が開き、キョンと目が合った。目の前に立っている。 「おぅ…」 2人共、突然の事に驚いて固まっていたかと思うと咄嗟に視線を逸らした。 「あの、その、何だ……」 「……な、何よ?」 黙ってないで何か言いなさいよ! 「い、いや…お、おはよう…」 「おはよう…」 「…ちょっとトイレに行ってくる!」 キョンは廊下に出てトイレの方へと歩いて行った。 びっくりしたぁ~…何でいきなり出てくんのよ!?バカキョン!! びっくりしたぁ~…何で突然目の前に現れるんだよ!?ハルヒ!! でも、これで予想外とはいえ何とか挨拶は出来た。 これで少しは落ち着いて行ける!(はず…) 教室に戻るとハルヒはこちらに背を向けて窓の外の遠くの方を眺めている。 配置から考えるに俺の方から声を掛けないと行けない状況のようだ。 くそっ、やられた…せっかく朝に弱い俺が頑張って早くから学校に来て ポジションを先取してたのにトイレに行ったせいで攻守交代だ…。 席に座って待っているとキョンが戻ってきた。 やっぱりまだ恥ずかしくて顔を見る事が出来ない。 わざとらしいかなと思いつつ、頬杖をつきながら 窓の外の空から降ってくる雪を見ていた。 「今日は早いんだな」 あんたのせいよ! 「ま、まぁね…終業式だし、一年の最後くらいはきっちり締めたいじゃない!? あんたこそ、早いわね!」 「あぁ、そうだな…」 なんて可愛くない返事しか出来ないのよ!私! 2人しかいない朝の静かな教室に気まずい沈黙が流れる…… 突然、キョンが咳き込んだ。 「あんた、風邪引いてんの?」 「あぁ、ちょっとな」 「うつさないでよね、別に今日くらい家で寝ときなさいよ! どうなっても知らないわよ!」 違うわよ!私の馬鹿!そんな言い方無いでしょうが! 「いや、今日だけは何があってもちゃんと学校来たかったから」 え? 「いや、その…あの…昨日のあれ、な……」 そこまで言ってキョンは顔を逸らし、会話が途切れた。 「まさか、あんた、あんな事しといて冗談でしたとか言うつもり!?」 そんなのマジ、許さないわよ…。 「いや!違う!あれだ…それは何というか…逆だ…」 「逆?」 「昨日のあれな…あれ、本気だから。 それだけはメールや電話じゃなくて今日、ちゃんと直接会って言いたかったんだ。 そうしないとお前に怒られそうだからな」 「あ、ありがと…」 と、言うハルヒの俯きながら見せた、はにかんだ笑顔はすこぶる可愛く 熱に浮かれた頭と理性は吹っ飛びそうだった。 「なぁ、ハルヒ…」 「な、何?」 ハルヒは顔を上げ見開いた目をこちらへ向けている。 「今日、終業式出るか?」 「え?」 「いや、通知表も貰ったし、今日やる事って終業式くらいだろ? 学校サボって抜け出さないか?」 ハルヒが俺を無理矢理連れ出す事は何回もあったが、 俺からハルヒを引っ張り出すのは初めてのような気がする。 「サボってどうすんのよ?」 「なんか今日はハルヒと2人だけでいたい気分なんだ」 昨日の夜から何度もシミュレーションしてきたとは言え、 実際、口に出すと我ながらなんてキザな台詞だ… 「私は別に良いけど…でも、あんた風邪引いてるんでしょ!? こんな寒いのに外に出るなんて無茶したら…」 そういうハルヒの手と鞄を俺は有無を言わさず取り上げ、歩き出した。 「ちょっとキョン!どこ行くのよ!?」 そんなの決めちゃいない。 「今日は…デ、デートだ!!」 やっぱり今日の俺は相当、熱がある。暴走気味だ。 俺達は2人で何回、この坂道を行き来したのであろう? まだ生徒の数も片手で数えられるほどにしかいない坂道は雪で凍っていた。 足を滑らせないよう一歩ずつ踏みしめながら歩く。 ハルヒと2人で歩くなんて散々慣れていた事なのに今日はいつもと違う。 俺が前を歩き、ハルヒの手を引いている。 心臓が脈打ち、ただ一緒に歩いているだけで素直に嬉しい。 坂を下った所でハルヒが足を止めた。 「キョン!これからどうするのよ!?」 確かにここまで来ちまったが、さて、どうしよっかな? 「まだ何も決めてないが…」 そういうとハルヒは溜息をついて呆れたような顔をしている。 「あんた、本当に計画性のかけらも無いわね!」 お前にだけは言われたくない! ハルヒは鞄から昨日、俺があげた手袋を取り出し、はめていた。 「ほら!あんた、風邪引いてるんでしょうが!」 と、ハルヒは俺の鞄を無理矢理あさり、 昨日ハルヒから貰ったマフラーを取り出して俺の首を思いっきり締めてきた。 「く、苦しい、息が出来ないって!」 「いい気味よ!キョン如きが私に命令するなんて100万年早いの!だから罰よ!」 と、言うハルヒは俺に太陽のような笑顔を向けていた。 2人でこの道を横に並んで歩いていこう。 どっちが前でも後でもなく、2人並んで手を繋ぎ。 横を向けばあなたの顔が見える場所。 ここは他の誰にも譲りたくない指定席。 あなたの目が、鼻が、耳が、頬が、髪の毛が誰より近く見える場所――― ただ、雪の中を2人で手を繋いで歩いていた。 どこへ行くか、とか何をどうするかなんて目的がある訳じゃない。 ただ、俺はハルヒと一緒にいたかっただけ。誰にも邪魔されずに。 「ねぇ、キョン」 ハルヒはボーッとした顔で訊ねてきた。 「ん?なんだ?」 「あんたバスって乗った事ある?」 なんだそりゃ? 「そりゃあるに決まってんだろ」 「じゃあ、あのバスってどこまで行くか知ってる?」 ハルヒが指差す先には停留所に白いバスが止まっていた。 「さぁ?マニアじゃないから知らんな」 「じゃあ、乗ってみましょう!どこに向かうか探検よ!」 そんなハルヒの子供じみた思いつきはいつもの事だから驚きはしない。 むしろ、外は寒いからバスで移動するっていうのは悪い手じゃないな。 バスに乗ると朝にも関わらず誰も乗っていなかった。 人が集まる場所とは反対方向に走っているからだろう。 「空いてるな」 どこに座るかと考える間もなく、ハルヒは一番奥へとズンズン進んで行く。 「やっぱりバスは一番奥の席に限るわね!」 と、やたら嬉しそうな笑顔をしてドカッと座り込んだ。 「まぁ、奥は席が広いからな」 「あと、乗ってる人間全部が見渡せるのが良いのよね! この世の支配者~!って感じで!」 いや、それは意味が分からん…。 バスはゆっくりと音を立て雪の中を走り始めた。 揺れる度に隣に座るハルヒの細い肩がぶつかる。 バスが静かに動きを緩めて止まった。 停留所で誰かを乗せるようだ。 「さぁ、どんな面白い人が乗ってくるかしら?」 別に普通の利用客だと思うがな。 バスに乗ってきたのは老夫婦だった。ゆっくりと歩を進めている。 二人とも身体のどこかが悪いのだろうか? お互いがお互いを支え合うよう、補い合うようにこちらへと歩いてくる。 おじいさんの方が俺達に話し掛けてきた。 「おや?珍しい。この時間に人が乗ってるとはの」 「こちらどうぞ」 ハルヒは立ち上がって席を譲ろうとした。 「ありがとう。どう?一緒に座りましょうよ」 おばあさんは柔和な笑顔で俺達に促してきた。 「うちのばあさん、一番後ろの席が好きでな。 広いから夫婦で座っても誰か他の人とも一緒に座れるからって。 それが好きなんじゃよ」 俺達は席を詰め、おじいさんは優しく笑いながらおばあさんをそっと座らせた。 バスは再び、ゆっくりと走り始めた。 「君らのその制服、北高じゃろ?」 おじいさんは俺達に視線を向けている。 「はい」 礼儀正しいハルヒは久し振りに見た気がする。 おばあさんが笑いかけてきた。 「と言う事は終業式をサボって2人でデートね?」 「これ、ばあさん!」 見事にバレた…色々言われたら面倒だな。と考えた俺を見透かしたようだ。 「ふふ…大丈夫よ。私達も高校生の時にお互い授業や式を抜け出ししたものよ、 昔は見つかると大変だったけど」 おばあさんは昔を懐かしむように笑っている。 「このバスに乗っておるという事は港に行くんじゃな?」 港? 「終点じゃよ。最近は港にデートへ行くのが増えておるらしいからの。 よくある、そこで結ばれたら一生結ばれるだなんだの言う話じゃよ」 「私達の頃は何もなかったから2人でいるのに都合が良くて 港へ行ってたけど、時代は変わってるのね」 2人は笑っている。 「あそこで初めて結ばれた2人っちゅうのは恐らく儂らの事じゃよ」 「またその話ですか、おじいさん。いつも言ってるんですよ、この人」 恐らく、その噂や伝説を広めたのがこの2人なんだろう。 まぁ、生き証人が目の前にいる訳で嘘はついてないから文句も言えないが。 「喧嘩もいっぱいしたし、一生結ばれるなんてそんな可愛いものじゃないけど それはそれで悪くはない、楽しいものよ」 2人の幸せそうな笑顔を見ていると納得せざるを得ない。 「じゃあ、儂らはここで。席を譲ってくれてありがとう」 おじいさんは俺に意味ありげな視線を投げ掛けてきた。なんだ? 2人はバスを降りて行った。 「ああいう夫婦って良いよな…」 俺は何気なくぽつりと思った事を口に出しただけだったのだが… 「なっ、何言ってんのよ!?バッカじゃないの!?」 何故かハルヒは真っ赤になって怒り出した。 「でも、まぁ面白そうね!キョン!港に行きましょう!」 おいおい、まさかあんな伝説を信じた訳じゃないだろな? 「そういう伝説は見過ごせないわ!何かあるかもしれないじゃない! 不思議探索よ!ねっ!」 まぁ、時間を潰すには最適か、俺が引っ張り出した事もあるしな。 ハルヒがこんなにご機嫌になるなら断る理由も無い。 メールが来た。ハルヒと2人同時に終業式をサボったから また谷口あたりがからかいのメールでも寄越したんだろう。 無視だ、無視。 バスは静かに終点へ滑り込んで行った。 終業式も終わり、部室に足を運んでみると長門有紀の姿しか見えなかった。 「おや?長門さんだけですか?皆さんはどうされました?」 「朝比菜みくるは先程来室し、すぐに立ち去って行った。あとの2人は不明」 そうですか…彼と昨日サンタクロースに貰ったゲームをやりたいと 思っていたのですが、いないのでは仕方がありませんね。 「では、僕もここでしばらく時間でも潰しましょう」 港に着いて歩いてみると綺麗に舗装はされてあるが平日と言う事もあり、 誰も人がいないようだった。 きっと夜景が綺麗になる時間に人が集まって来るのだろう。 時折吹く強い潮風がハルヒの髪を巻き上げる。 「うぅ~…寒いわね!!」 何に対して怒ってるんだ? 雪が海に散りばめられる宝石のように落ちては消えていく。 「まぁ、景色としてはなかなかのものね!とりあえず合格にしといたげるわ!」 またハルヒは訳の分からない事を言っている。 寒さのせいで鼻水が出てきた…。 「汚いわね!!ほら、これ使いなさいよ!!」 ハルヒは鞄の中からポケットティッシュを出してきた。 「ありがと、これ貰って良いか?」 「好きにしなさい!!」 さっきから笑ったり怒ったり忙しい奴だ。 そういうハルヒを見てるのは面白いんだけどな。 「何、ニヤニヤしてんのよ!?気持ち悪いわね!!」 「ん~?いや、コロコロと表情が変わるから面白い奴だなぁ~と思って」 俺は今、意地悪な笑い顔になってるに違いない。 「う、うるさいわね!!」 ハハ…今度は真っ赤になって照れてる。本当に面白い、そして… 「…可愛いな」 お、今度は驚いて目を見開いている。 「バ、バ、バッカじゃないの!?あんた何!? さっきから私の事、馬鹿にしてんの!?あんまり調子に乗ってると…」 ―――!!! ハルヒのよく動く唇を塞いだ。 町の喧噪は消え、静かに降る雪も動きを止めた。 風の音だけが遠くで聴こえる。 時間が止まったかのようだった。 「……ちょっと調子に乗り過ぎたからまた罰金かな?」 「本当に調子に乗り過ぎよ…馬鹿…」 ハルヒは俺の手を握り締めたまま俯いている。 「もうちょっと雰囲気とかタイミングってもんがあるでしょうが… 本当にデリカシー無いわね、バカキョン…」 「ハハ…すまん。あと俺、風邪引いてるのすっかり忘れてた…ハルヒにうつるかもな」 ハルヒが抱きついてきた。 「もし風邪引いたら責任取りなさいよね…」 「そうだな、分かった。」 この笑顔をずっと守っていこう…俺はそう誓って 昨日よりも、もっと強くハルヒを抱き締めた。 「あと、ハルヒ……」 「……何よ?」 「お前の唇って柔らかくて暖かいな」 鞄で思いっきり殴られた。 新しく手に入れたボードゲームの説明書を読みながらゲームの研究をしていた。 彼にはかなり大きく負け越してしまってますからどうにかして 勝ちを積み重ねていかないと卒業までに逆転するのは難しそうです。 彼は僕の予想ではきっと人類史上、類い稀なるゲームの達人、 恐らく天才なのではないかと考えています。 まぁ、彼以外とはあまりゲームをやる事はないのですが…。 そういう意味では彼も涼宮さんに選ばれた特異なる人間の一人なのでしょうか? そんな事を考えていると携帯が鳴った。どうやらメールが来たようです。 機関から?閉鎖空間発生?彼らはどこへ行ったのでしょうか? また彼は凉宮さんに何かしでかしたのでしょうか? 「長門さん」 長門有紀は何かを察知しているのか、もうすでに僕の方へ視線を向けていた。 「もし彼らが来たら伝えておいて下さい。急なバイトが入ってしまいました、と」 「…了解した」 ハルヒは照れているのか俺の顔を全く見てくれない。 と言う俺も心臓が破裂しそうなのだが…。 気が付いたらお昼を過ぎていた。どおりで腹が減る訳だ。 どこかで昼飯でもと思ったが、終業式も終わってる時間だろうし、 途中で何か買って部室で食べようと言う事になった。 学校へ戻る為、バスが来るのを待つ停留所は寒い。 缶コーヒーを買って2人で手を暖め合った。 バスに乗るとハルヒはまた一番奥の席へとズンズン進んで行った。 よっぽど一番奥の席が好きなんだな…。 この時間帯は乗客もまばらで俺達の他には数人しか乗っていない。 ハルヒは俺の手の上に細く長い指を絡ませている。 車内は暖房が効いていて暖かい。 エンジンの心地良いリズムと揺れも相まってハルヒは眠気が襲ってきたのであろう。 俺の肩に頭を乗っけて眠りこけている。 子供のような寝顔だ。 かくいう俺も少し眠くなってきた…。 俺も少し居眠りしようかと考えた、その矢先だった。 大きな音と衝撃と共に目の前が雪化粧に包まれたように真っ白になった――― 大きな音と衝撃で目を覚ますとどっちが上か下か分からくなっていた。 キョンが私に覆い被さってきている。 「ちょっとキョン!いくら何でも調子に乗り過ぎよ! バスの中で私の寝込みを襲うなんて変態にもほどがあるわよ、エロキョン!」 キョンの体を突き飛ばそうとした。しかし、キョンからの返事はなかった。 「キョン……キョン?」 私の肩にキョンの腕がただ力なくぶらりと垂れ下がっていた。 ふと手に暖かい感触が残る。 血だった。 キョンが頭から血を流していた。 「嘘…いや…」 私はキョンにしがみついていた。 「嘘でしょ…冗談でしょ…やめてよ、キョン…ねぇ、キョン…」 自然と涙が込み上げてきた。人前でなんか泣いた事ないのに…。 「キョン!!!キョン!!!いやぁぁああ!!!!!!!!!!!」 私はありったけの大声で彼に向かって叫んだ――― 長門さんからのメールを見てズキンと胸に何かが刺さるような感触がして重くなった。 私が病院に向かうと彼らの家族、そして彼らのクラスメイトの何人かがいた。 キョン君の妹さんはキョン君の名前を呼びながら泣いている。 その中に長門さんと鶴家さんが静かに立っていた。 「みくる…」 鶴家さんは目を赤く腫らしていた。 事の詳細を訊ねると雪道でスリップした大型トレーラーが 彼らの乗っていたバスに突っ込み、バスが横転してしまったらしい。 その時にキョン君は頭をぶつけ、意識が無く現在、手術中だと言う事だ。 凉宮さんは精密検査を受けているらしい。 凉宮さんはキョン君が咄嗟に体を投げ出し、覆い被さったお陰で ほとんど無傷だったようだ。 精密検査を終えて出てきた凉宮さんはずっと 泣きながらキョン君の名前を叫んでいた。 凉宮さんの叫びが責められているようで胸に強く深く突き刺さる。 キョン君の手術は長引いた末に終わったようだ。 まだ意識は戻らず予断を許さない状態で集中治療室にいる。 私は…私には… 「ねぇ、キョンは…キョンはどうなったの?ねぇ、教えて!!」 私はひたすらに病院の廊下でそればかり叫んでいた。 それ以外に何も関心は無かった。 手術は終わったとは聞いた。でも、その後は誰も何も言わない。 キョンのご両親と医者がこちらへと歩いてきた。 お母さんの方が声を掛けてきた。 「あなたがハルヒさん?」 「はい、彼に……一目だけでも良いので彼に会わせて下さい!!」 キョンのご両親は医者の方へちらりと視線をやり、医者が頷いた。 「あなたも事故にあったのにこんな事頼むのもあれなんだけど 行ってあげてくれないかしら?」 キョンは眠っていた。 顔に傷も無いせいだろう、本当に眠っているようにしか見えなかった。 私は彼の手をそっと握った。 きっと私が無傷だったのはキョンが体を張って守ってくれたからだろう。 「ありがとう、キョン」 涙が溢れてきた――― その時だった。私の手をキョンの手がそっと包んできた。 キョンの目が静かに開く。 「キョン…キョン!!」 状況が掴めてないのかキョンは虚ろな目をしている。 「キョン!!」 こちらに視線を向けてきた。 「ハルヒ……」 私の涙がキョンの手に落ちた。 「ハルヒ、無事だったんだな……」 「…馬鹿。なんでこんな時まであんたは…人の心配する前に自分の心配しなさいよね」 私は無理して笑った。 「だ、団長命令よ…早く元気になりなさい… SOS団の活動はまだまだいっぱいあるんだから… それに…これからは…一緒に…2人で…」 私は声を出そうと思ったが、涙に遮られた。 「ハルヒ…」 「…何よ?」 「実は昨日の夜の…ドキドキであまり寝てないんだ……」 「…うん」 「だから、ちょっと寝かせくれないか…」 「…うん」 「…そんなに泣くなよ、笑ってるハルヒの方が俺は好きだぞ」 「…うん」 「おやすみ……ハルヒ…」 「おやすみ……キョン…」 2人は柔らかく、暖かく、そっと唇を重ねた……。 それは永遠よりも遥かに長い長い…一瞬の出来事だった―――― 私は…私には…止められなかった…。 分かっていても止める事は出来ないし、 止めてはいけない事だとも十分、承知していた…。 覚悟はしていた。でも…我慢出来ず、最後に一目だけでも会いたくて キョン君にメールをした…返事は来なかった…後悔だけが残る…。 自分の無力さに…そして皆で過ごした日々に…。 あれから三日後。 キョン君の葬儀を終えた私と長門さんは彼女の、凉宮さんの元へと向かった。 小泉君はあれ以来、姿を見せていない。 凉宮さんはキョン君の死が受け入れられず、まだ病院にいる。 治療室から運び出される時も彼の手を離すまいとしがみついていた。 凉宮さんの病室の前まで辿り着いたものの、なんと声を掛けようかなどと 入るのを躊躇っていると、声を掛けられた。 彼にいつもの笑顔はなく、暗く沈んだ顔をしている。 「小泉君……」 「先程、彼に会いに行ってきました。何というか…まだ実感が湧きませんね…」 「…私もです、小泉君はもう大丈夫なんですか…」 彼は寂しそうに首を横に振った。 「もはや世界は僕らの手の届かない状態になりつつあります。 大きく改変される事になるかもしれません。 機関の人間も様子を見守るしか出来なくなってしまいました…」 彼は彼なりにここ数日、大変だったのだろう。 キョン君や凉宮さんの事に思いを馳せつつ…。 「先程、彼のご両親からこれを預かってきました」 と、小泉君は封筒を取り出した。 「凉宮さんへの預かり物です。彼のノートに挟んであったようです」 僕ら3人で病室に入ると凉宮さんは重く暗く沈み、 ベッドの脇にある椅子に座って空を虚ろな目で眺めていた。 どうやら僕らの声は届かないらしい。 「これは彼から凉宮さんにあてた手紙のようです。ここに置いておきます」 窓際に封筒を置いて僕らは立ち去った。 凉宮さんに掛ける言葉も思い付かなかったからだ…。 凉宮さんの病室の前のベンチに座ると朝比菜みくるが静かに泣き出した。 「朝比菜さんは…」 誰もいない暗い病院の廊下に僕らの声が響き渡る。 「…この事実についてご存知だったんですか?」 朝比菜みくるは何も答えずにただ黙って頷いた。 「そうですか…だからクリスマスにサンタクロースが空を飛んでいる姿を 皆で見ようと提案なさったんですね…」 「…せめてこんな形になるとは言え、最後に皆で想い出を残したかったんです。 …私はこの出来事を見届ける為だけにこの時代に送られたと言っても 過言ではありません。それほど今回の事は未来においても重大な事なんです」 「…彼を助ける事は出来なかったんですか?」 言葉に出して酷い事を聞いてしまったと後悔した…。 助けられるものなら助けていただろう。その時、長門有紀が口を開いた。 「…これは彼の寿命。どういう形であれ、今年12月25日時点での彼の死は 確定していた。変更する事は不可能。例え、それは凉宮ハルヒの力をもってしても。 それはあなた達が一番よく理解しているはず」 これは長門有紀なりの僕らへの慰めの言葉なのだろう…。 「はい…今回の事は…未来では……き、規定……」 「朝比菜さん…」 僕は首を横に振り、彼女の言葉を遮った。 「少なくとも、僕らSOS団の人間にとって…… 彼の死は……決して、規定事項なんかじゃありません。決して……」 「……そう」 長門有紀は静かに頷いた。 12.24 ハルヒへ いきなり柄にも無く、手紙を書いてみようと思う。 何故なら、興奮して眠れないからだ! お前はどうなんだろうか?ハルヒ。 全く気にもせずに涎垂らしたアホ面で眠っているのだろうか? しかし自分自身でも不思議なんだ。 正直、お前に初めて出会った時は見た目はまぁ、悪くはないが、 頭の中身がぶっ飛んだおかしな女だとしか思っていなかった! 髪型も短くする前は時々、変だったしな。 それが新しく部活作るから手伝えってネクタイ引っ張られて階段の踊り場に 連れて行かれた時はカツアゲでもされてるような気分だった。 しかもSOS団なんて世の中の不思議を探す為とかいう妙な目的の元、 珍奇な集団を作って、俺は巻き込まれた感たっぷり。 でも、今は楽しい! 長門や朝比菜さん(まぁ、仕方が無いから小泉も入れといてやろう)、そしてハルヒ。 団長のお前がいてこそのSOS団だ。 お前がいるから楽しいし、面白いから俺もついつい部室に足を運んじまう。 最初は朝比菜さんと一緒にバニーガールの衣装で SOS団の勧誘ビラ配りしたり、(まぁ、あれはあれで悪くはなかったが…) コンピュータ研から無理矢理パソコン取り上げたり、 何の知識も無い俺にHPを立ち上げろと命令してきたり、 なんて無茶苦茶な奴なんだと呆れてばかりいた。 でも、考えたらハルヒと一緒にいる時はいつも笑える楽しい事ばかりだ。 皆で不思議探索をするのもなかなか見つからないが悪くはないし、 七夕に一緒に短冊作ったり 夏休みに孤島に合宿行ったり(夏休みは結局、ほとんどSOS団の皆で遊んでたし) 学園祭の為にSOS団の皆で映画作ったり(大喧嘩もしたが…) クリスマスには何故か鍋パーティーが恒例になったり、 雪山で遭難なんて事もあったな。 サンタが空を飛ぶなんていう不思議な事にもようやく巡り会えたし、 お前と過ごしているうちに俺のハルヒへの想いも少しずつ変わってきたんだろうな。 次は初詣か?俺の願い事はもう決まってるが教えないぞ。 人に教えたら願いが叶わないからな。 とにかく、これからももっと楽しいイベントが盛りだくさんだな! で、結局、俺は一体、ハルヒに何が伝えたいのかと言うとだな、 いきなり結論だが、昨日の夜、お前を抱き締めて言った事。 あれは本気だ。結構、緊張したがな。 そういや、ハルヒからのちゃんとした返事は貰ってないが、 何となく流れ的にOKだったのかな、と勝手に解釈しとくぞ。 だから、次のバレンタインチョコは義理じゃなくて本命でくれよな。 それともう一つ、ハルヒに頼み事があるんだ。 俺達、来年は受験生だろ? ハルヒがどこの大学に進むのか知らないけど、 きっと今の俺じゃ手も届かないような所だと思う。 だから頼む。俺に勉強を教えてくれ。 俺も頑張って1年でどうにかしてお前の成績に追いつくから。 だからハルヒ、一緒に同じ大学に行こう! そしてな、大学でまた俺達で新しいサークルを作ろう! その名も『SOS団』!!!! 悪くないアイデアだろ?問題は俺の成績なんだがな…。 これからまだまだたくさん楽しい事、笑える面白い事があるだろうし、 喧嘩をする事もきっとあるかもしれん。 だけど、これからもずっと宜しくな、ハルヒ!! SOS団・団員その一、兼雑用係のキョンより SOS団・団長様、そして世界で一番大切な恋人、ハルヒへ p.s.不思議探索の時の遅刻罰金制だけどな。 あれ、俺、一回も遅刻した事ないぞ。 皆、来るのが早過ぎるだけだ。あれだけは考え直してみてくれ。 枯れたと思っていた涙が溢れ出してきた…。 彼の深く、優しい想いが胸の中に流れ込んでくるようだった。 私も昨日の夜、眠れずに考えていた。 初詣のお願い事を…バレンタインにキョンにあげるチョコレートを…。 SOS団の皆でお花見行って…七夕には笹の葉飾って… 夏休みには合宿行って…海で泳いで… 学園祭では出し物やって… クリスマスには鍋パーティーやってプレゼント交換して… まだまだやりたい事がいっぱいあった…… なんでもっとあなたに優しく出来なかったのか… なんでもっとあなたの前で素直になれなかったのか… 後悔と寂しさの涙ばかりが頬を伝っていく…。 なんでもっとあなたと過ごす時間をかけがえの無いものだと大切に出来なかったのか… なんで…… ごめんね、キョン……そして、ありがとう、キョン…… 溢れる想いはもう言葉にならなくなった…… ただ、あなたと、もっと…ずっと…ずっと一緒にいたかった―――― The End 涼宮ハルヒの嫉妬へ続く
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S・ハルトシュラー 「全霊を込めて創作しているのなら、優劣などつけられぬはずだ」 創作のエネルギーが集まって誕生した創造と発現の神。 “創発の魔王”の異名を持つが、その姿は女性である。 創作物にして創造主というその性質のため、自身の“設定”すら変えることができるという。 ちなみに現在の設定は── ハルトシュラー S. Hartschuller (1988~1990) 始めは、ただの言葉に過ぎなかった。 しかし──その言葉に命を吹き込んだ者たちがいた。 言葉は彼らの手によって力を得、形を成し、そして動き出した。 そして彼女は、彼らの望みを叶え、彼らの魔王となった。 謎の芸術家。 出身地や生没年代はおろか、性別すら不明で諸説ある。 小説、絵画、音楽、料理に至るまで様々な分野で膨大な量の作品を遺すが、 自分のことについては一切を明かさなかった。 後に「創作家は作品でのみ語るべき」という運動が起こり、 「ハルトシュラー主義」と呼ばれた。 が、そもそもハルトシュラー様自体の設定が「作曲家で魔王で幼女で享年2歳」などと、とうに破綻している。 人間としての顔は万能の芸術家だが、真の彼女は人間的な意味での創作だけでなく魔術や神の所業についても造詣が深い。 彼女の住まいである謎の洋館、「迷い家」の書斎には幾千もの禁書が眠っているという。 自身の設定すら変えられる為、様々な姿で現れるが、基本的に威厳のある少女として登場する。 感情を表に出す事はあまりないが、怒らせるとあまりの威圧に周りが凍りつくほど。 「家族」に対して何らかの想いを抱いているようだが…? 倉刀とは良好な師弟関係。未熟者として呆れる場面もあるが、彼の技量を認め成長に期待し見守っている。 美作とは暴走しがちな彼女に呆れつつも、倉刀と同じく師弟関係は良好。 柏木とは袂を分けた対立関係だが、お互いに技量を認め高く評価している。 「自身の設定すら変える事ができる」という設定上、その戦闘能力はもはやインチキと言うべきレベルである。 ただし「物語が成立しない強さなど創作者として無粋」と普段はその能力の大半を封印しており、 そのデタラメな力を行使する事はまず無い。 普段の戦闘では自身の生み出した各種拳法、武器では日本刀を使う事が多い。 『ゲートオブマヨヒガ』と呼ばれる召喚術も使い、各種武器や存在を召喚して戦う事も。 容姿は設定すら変えられる為様々だが、10歳前後の少女で ゴスロリファッション、長い髪にカチューシャをつけた姿が多い 髪の色は金髪または銀髪。目の色も赤・金・青・緑と絵師により様々。 彼女を題材としたイラストは創発でも数が多い
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【選手名】ヒロ 【所属チーム】ひだまりスケッチ(パワプロ2011) 【守備位置】 投/(捕2・三2・外2) 【フォーム】オーバースロー{小松(オ)} オープン3 【投打】 左左 【弾道】 4 【ミート】C 68 【パワー】B 77 【走力】E 41 【肩力】C 61 【守備力】E 48 【エラー回避】C 64 【球速】 143㌔ 【コントロール】 B 74 【スタミナ】 B 70 【変化球】ドロップ2 ナックル5(アバタボール55号) スクリュー2 【特殊能力・投手】 ピンチ2 打たれ強さ2 ノビ4 回復2 重い球 一発 奪三振 威圧感 【特殊能力・野手】 パワーヒッター 威圧感 ブロック ムード○ 体当り(リードレベル普通) 【特殊能力・その他】人気者 先発型 完投 (両耳ヘルメット) 【背番号】1 【誕生日】6月15日
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涼宮ハルヒの遡及ⅩⅢ 何か、とてつもなく面白い夢を見た気がした月曜日の朝。 ただ、それが何かをどうしても思い出せないまま、いつものように強制ハイキングコースを踏破し、休日明けの気だるさを感じながら、教室へと入った途端、 「ほら見てキョン! 一気に下書きまでだけど最後まで書きあげたわ!」 赤道直下の真夏の笑顔でハルヒは俺に三十枚はあろうかというA4用紙を突き付けてきた。 「てーと、一昨日言ってたアレか?」 「うん。なんかその日の晩、バンバンアイディアが出ちゃって昨日一日、これに費やしてたのよ。でもまあ、こういうのも悪くないわ。自分の想像が瞬時にそこに現れるんだから」 なるほどな。 俺が一昨日、何気に呟いたクリエイターの話にハルヒが乗った訳だが、それにしてもここまでやるとはね。いやマジで恐れ入ったよ。 相変わらずとんでもないバイタリティだ。 …… …… …… 何だ? 妙な違和感を感じたような気がしたんだが…… まあいいだろう。おそらく気のせいだ。 「んじゃあまあ、どれどれ」 呟き、俺は原稿に目を通す。 ほほぉ。文化祭の時の映画の続編か。 さすがはハルヒ。多方面に高い才能があるのはここにも表れている。 下書き段階とはいえ、臨場感もあるし、キャラクターの表情も豊かだ。んでコマ割も完璧に近いものがある。絵ももちろんレベルが高い。 あーでもページにまたがる見開きはやらなくていいぞ。 「へぇ、今回はユキも味方になるんだな」 「ふっふうん♪ 少年漫画の王道ってやつよ! 昨日の敵は今日の友! それにやっぱSOS団の誰かを敵にしたくないしね!」 それはいい傾向だ。お前が長門、朝比奈さん、古泉のことが大事になってきている証拠だ。 「ん? 何だ? ひょっとして俺も出てくるのか……?」 少し渋面を作って感想を述べる俺に、ハルヒが、あの悪だくみニヤリ笑いを浮かべて、 「感謝しなさいよ。あんたにも役を作ってあげたんだから。でもまあ、あんたには何の特徴もないからね。だからバトルには参加させられなかったけど」 自信満々に説明してくれる。 ……別に無理に俺の役なんぞ作らなくてもいいのだが……モブキャラにだってできないだろうに…… って、 「おい、俺が何で異世界人とやらと知り合いなんだよ? いったいどういう伏線で?」 「決まってるじゃない。サイドストーリーよ」 「あのなあ、どこにサイドストーリーがあったんだよ。読者に想像力を働かせろってか?」 「別にいいじゃない。今回、初めてやってみたんだから、次回はもっと良くなるわよ。それよりも続きを見てよ」 「ああ解った……」 ふむふむ。 ユキが味方として蘇ってきたのは異世界人ではあるが同じ『魔法使い』の彼女の言葉に心を動かされて、か。 「ところでハルヒ、この異世界人の魔法使いって、ユキと比べると随分、派手な姿の魔法使いだな。バニーとかチアまではいかんがノースリーシャツにホットパンツで生足全開て。結構露出度も高いし」 「はぁ? それくらいで何で『派手』なのよ?」 「それに、この魔法使いの髪の色って桃色だろ? 充分派手だと思うが?」 「へっ?」 あん? 何だ? ハトが豆鉄砲喰らった顔して。 「いや……何であんたがその魔法使いの髪の色が桃色だなんて分かったのかなって……? まだ下絵段階だし、あたしも言ってないし、別に着色もしてないのに……」 え? あ、そう言えば何で俺は桃色だなんて考えたんだろ……いや待てよ? 「ハルヒ、お前今、『分かった』って言ったよな? てことはお前も桃色にするつもりだったってことか?」 「う、うん……でもまさかキョンに気づかれるとは思わなかったけど……」 二人しばし沈黙。 ぐ、偶然だよな…… 「ま、まあそれはお前の行動パターンだから俺が読めたってことだ! 深く考えなくてもいいだろう!」 「そ、そうね! なんだかんだ言ってもあたしとあんたは一緒にいることが多いもんね! お互いがお互いの考えなんておおよそ見当つくわよね!」 そうだそうだ。俺とハルヒの付き合いだ。そうこともあるさ。 で、実は後々思ったんだが、どうも俺たちのこの会話の時の教室中の視線がなんとも生暖かったようなのだ。 当然、今の俺は気付くことなんてできなかったがな。 さて、それよりも続きを…… 「……なあハルヒ、これ、本当に長門なのか?」 「どういう意味?」 俺が指差したのは異世界の魔法使いと供に戦うユキのシーン。 「いや……なんとなく長門なんだけど長門じゃないような気がしてな……」 「ああ、それ有希よ間違いなく。ただ、改心したユキはヘアカラーが変化したのよ。グレーアッシュからシアンに。ほら、昔あったじゃない、星座をモチーフにしたプロテクターを着て戦うバトルマンガ。その中の双子座の戦士の性格が二つあって、アニメだと善の時の髪の色はシアン、悪の時の髪の色はグレーだった訳だけどそれに倣ったの」 なるほどな。つーか、よく知ってるなお前。 「ふっふぅん♪ あたしは少女漫画よりも少年漫画の方が好きよ。だって、そっちの方が不思議な展開と力で満ち溢れてるもの」 確かに。というか、お前の朝比奈さんへのセクハラは多分に一部の少年漫画の影響を受けているような気がしてならんかったからな。 …… …… …… 何だ、この感覚は? このマンガの二人、ユキと異世界の魔法使いの立ち振る舞い…… まるで、どこかで見た気がする。 しかもどういうことだ? ハルヒは長門と、と言う風に言っていた。このデッサンも確かに長門のはずなのに…… しかし俺には長門と別の誰かが被っているようにすら見える。 おかしい。そんなことはあり得ない。 だいたい魔法が登場する時点で現実からは外れているんだ。 もし見たことがあるとしたら夢の中以外に答えはないじゃないか。 「どうしたのよ?」 「あ、いや……なんでもない……」 「ん? 変なキョン」 ハルヒは何も気づいていないのだろうか? まあ問うのは止めておくけどな。 こんなことをこいつに言えば、力の限り馬鹿にされるか、俺の頭を切開して夢の中の記憶を引き摺り出そうとするか、するかもしれん。 そんなこんなで今日も放課後だ。 放課後と言えば、もう完璧に習慣化しているので旧館の一角『文芸部室』に勝手に足が向く。 んで、今日はハルヒが掃除当番だから先に着き、長門、朝比奈さん、古泉に軽く挨拶して、長門が読書する姿を横目に捉えながら、朝比奈さんが注いでくれたお茶で喉を潤しつつ、俺の白星しか増えない将棋を古泉と指している。 しばらくするとハルヒが入ってきた。 「ごっめ~~~ん! みんな、揃ってる?」 見ての通りだ。 などと軽く言葉を交わしつつ、今日は月曜日であるにも関わらず、明日がどういう訳か祭日と言うことで、ハルヒは団長机の椅子に仁王立ちになった。 「みんな! 明日は特別不思議探索の日に設定するからね! 集合はいつも通り、光陽園駅北口午前九時! 一番最後に来た奴が奢りだから!」 満面の300W増しの笑顔で高らかに宣言するハルヒ。 まあいつものことだから、今更何の感慨も持たないが。 が、どういう訳か、俺はハルヒの次のセリフに言い知れぬ違和感を抱いたんだ。 「探索目的は、宇宙人、未来人、超能力者、そして異世界人よ! 原点回帰! 明日こそ必ず見つけるわよ!」 いったいどういうことなんだ? これはいつもハルヒが言っていることじゃないか。 どうして俺は違和感を抱くんだ? などと言う俺の内に広がる違和感は、しかしいずれ時が経てば水面に広がる波紋のように消えていくんだろうな、という思考も頭を過った。 と、このときはかなり気楽に考えいたのだが。 どういう訳だろう? どうやら違和感を抱いていたのは俺だけではなかったらしい。そのことは翌日の不思議探索で知らされることになる。 「ねえキョン」 「何だ?」 何の因果か、いつも通り俺が一番遅かったんで、いつも通りみんなにお茶を奢って、いつも通り班分けしたのが今日に限ってはいつもと違い、同じ班になったのはハルヒだったりする。 で、最初はなかなかテンションが高かったハルヒなんだが、公園から街中を散策する道すがら、どんどん神妙になっていった。 これは何を意味するのだろう? 「うん……昨日、見てもらった漫画なんだけどね」 「あれか」 「アレって妙なのよ。昨日、キョンが指摘した通りで、あたしも家でもう一回読み返してみたらキョンと同じ感想を抱いたの」 「と言うと、異世界人の魔法使いの髪の色が桃色だったり、ユキの髪の色がシアンだったり雰囲気が違うって言ってたことか?」 「そうよ。あたしもそう感じたの。あの感覚って何なのかな? 実のところ、既視感ってのとも違う気がしてるのよね」 確かにな。それは俺も思ったことだ。 「しかし、だとするとどういう意味になるんだ? それじゃあまるで、俺たちはそういうことがあったのに記憶を操作されて記憶を消された、ってことになるのか?」 などと言った俺が馬鹿だった、なんて普段の俺ならそう思うかもしれん。 もっとも、今回は違った。 「あ……!」 ハルヒが愕然とした声を漏らす。 「まさか……!」 俺もまた、自分が導き出した答えに言い知れぬ驚きの声を漏らしたんだ。 そして二人して自分の懐をまさぐり、同時にお互いに手の中の物を見せ合う。 それは、まったく記憶にない、しかし持っていた、と確信を持って言えるものだった。 俺たちは淡い光沢を放つ神秘的な黒い石を互いに見せ合って、 「キョン、もしかしてあたしたち、この石の持ち主、宇宙人だか未来人だか超能力者だか異世界人だか知らないけど、そういう存在に遭ったのかな?」 「かもしれないな。俺もそんな気がした」 「てことはさ!」 ハルヒの笑顔が300W増しプラスさらなる輝きを放つ。 「また遭えるかもしれないわね! んで今度こそ、記憶を消されないように友好関係を結ばなきゃ!」 ああそうだ。 何故だろう? 俺はこのとき、ハルヒの提案をいつものように聞き流すでもなく、本気で受け入れる気概を抱いたんだ。 理由か? そうだな。おそらくは忘れていけない何かを忘れさせられてしまったからだろう。 確信はない。しかし漠然とではあるがそう感じる自分が居る。 そして、おそらく――いや、間違いなくハルヒも同じことを考えただろうぜ。 どこの誰かは判らん。俺たちの記憶を消した理由も知らん。 けどな、ハルヒ相手に記憶操作なんて大胆な真似をしたところで、完全に消すことなんざできる訳がないんだ。 近いか遠いかは知らんが、将来、必ずあんたのことを思い出すだろうよ。 そうなったら、ハルヒがどういう行動に出るかは容易に予想できるってもんだ。 もちろん、その時は俺もハルヒに付き合うぜ。 おっと、ハルヒと俺だけじゃないよな。 ハルヒが会心の勝ち気な笑顔を浮かべて空を指差している。 「待ってなさいよ! 宇宙人、未来人、異世界人、超能力者の内のどれか一つの肩書を持った人! あたしとSOS団が必ず見つけ出してあげるんだから!」 だとさ。正体不明の誰かさん。 涼宮ハルヒの遡及(完)
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イルミナティ クリー・スクラル戦争の直後、トニー・スタークの提案により超人界のトップを集めて結成された秘密会議。 対照的な悪の秘密結社として、カバルが存在する。 近年までその存在が明らかにされていなかった(近年になって設定を後付けされた)。 ハルクを宇宙に送る決断をし、ワールド・ウォー・ハルクを引き起こす原因となった。 シビルウォー直前に登録法に対する賛否で完全に分裂。一度解散状態となるが、シークレットインベージョンの際に再招集が掛かり、存続していく事となる。 異なるユニバース同士が衝突して起きるインカージョンが起きた際には、世界を守る為とはいえ平行世界の破壊すら画策していた。 タイムランズアウトではイルミナティのメンバーに消されたキャップの記憶が戻ったことで、悪行が露見したためにアベンジャーズやSHILEDに追われることになった。 良かれと思ってやってる事が、余計な事ばかりで裏目に出て、下手なヴィランの集まりより性質の悪い集団とも言える。 2016年、今までのイルミナティとは全く関係なく、ザ・フードがこのチーム名を名乗り、新たに活動を開始している。 メンバー アイアンマン 劇中、彼の着ているアーマーによって会合の時期を推察できる ネイモア(サブマリナー) ハルク追放の際、意見の不一致から脱退 後述のカバルにも参加する。 リード・リチャーズ インフィニティガントレットでちょっとおかしくなった事も プロフェッサーX メンバーの意思に偽りが無い事を確認する役目も期待されていた 言葉を発する事のできないブラックボルトの意思をテレパスで伝える役目も Dr.ストレンジ ブラックパンサー 初回の会議でこのメンバーが全てを決めてしまうことの危険性を察知して脱退する。 この時点で後のシビルウォーを予見していたと言える。 ブラックボルト スティーブ・ロジャース ブラックボルトの死後に参加。インカージョンの際にとある理由で、記憶を消され追放される。 メンバー(MARVEL NOW!後) リード・リチャーズ トニー・スターク ブラックボルト ブラックパンサー Dr.ストレンジ ハルク ビースト メンバー(タイムランズアウト) リード・リチャーズ ブラックパンサー アマデウス・チョー ハンク・ピム ハルク ビースト キャプテン・ブリテン メンバー(ヴィラン) フード(フッド)が組織したヴィランの組織で、上記のイルミナティとは無関係。 ザ・フード タイタニア アブソービングマン サンダーボール 元レッキング・クルー。元々ガンマ爆弾の権威であり知性派である。次第に他のレッキング・クルーのメンバーとは疎遠になる。 マッドシンカー エンチャントレス ブラックアント