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「チィ、しぶとい。一体どんだけ居るのよ。面倒くさいわね」 「ックックック。文句を言うでない。好きなだけ殺していいんじゃ。悪くは無いじゃろ?」 「あんたと一緒にしないでくれ。にしても、完全に殺さなきゃ動きを止めないなんてな」 そう言い合いながら襲いかかる人々を切り刻みまくっている〝レッドキャップ〟〝赤マント〟〝口裂け女〟。 腕や足が無かったり、服が真っ赤に染まっていながらも、人々は攻撃を止まる様子は無い。 腕が無ければ噛付きや蹴りで攻撃し、足が無ければ這い蹲って攻撃してくる。止めをさしてやっと動かなくなるのだ。 さらに、《行き交う人々》にいたっては、暫くすれば傷が治っていくという始末だ。 「ふぅ、流石にしんどいな。けどなあ、ここで止まる訳にはいかねえんだよ」 辛そうにしながらも、《行き交う人々》の契約者は戦いを見続けている。 亡霊たちを戦わせるだけなら良いが傷を治すには相当のエネルギーが必要になる。 だが、《行き交う人々》の発動も傷の回復も止める気は無い。 〝レッドキャップ〟達を攻撃していた軍団が、突然、彼らの動きを止めるように手足に纏わりついてくる。 「何だ!? いきなり!?」 「知らないわよ!? この、離しなさいよ!」 3・4人程度なら、簡単に振り解く事が出来るが、十数人単位で抑えつけに来るのだ。 これによって、3体は動きを制限されてしまう。 「鬱陶しいのお。ん? 何じゃ、この音は?」 そんな中、何かが近付く音が聞こえてくる。それは、エンジン音を轟かせ、猛スピードで3体が居る所に突っ込んでくる。 満足に動けない彼らは、それ……大型トラックを初めとした車の突撃をモロに喰らってしまった。 「ッつ、皆!?」 「大丈夫。素体が無事なら修復可能」 その様子を目撃し、慌てる〝テケテケ〟を淡々となだめる美咲。だが、その顔には薄らと焦りが浮かんでいる。 それによって、出来た隙を狙っていたのか。 パッーンと言う、銃声が聞こえ美咲の腹部に銃弾が命中した。 「ッく――!」 ドサッと、崩れ落ちそうになった体を片手で支え。銃弾の飛んできた方角を見れば、数人の人間が虚ろな表情のまま此方に銃口を向けている。 その全員の指が、引き金を引いた瞬間。 「――――――――危ないんだよねッ!」 大鋏を投げ捨てた〝テケテケ〟が、ズザザァァと、音を上げて移動し美咲を庇う様に壁になった。 美咲の身長の半分程度しかない〝テケテケ〟では、壁になった所で本来それ程の期待は出来ないが、倒れている今ならば問題は無い。 パッーン、パッーン、パッーン、パッーン、パッーン………………… 全員の銃弾が尽きた所で、やっと銃声は鳴り止んだ。と、同時に〝テケテケ〟が倒れる。 「結局、まともに当たったのは最初の一発だけか……。まぁ、当たった事に変わりはねぇな」 銃撃の嵐に気を取られていた間に、近づいていたらしく。美咲が顔をあげたのとほぼ同時に、彼女の首元に、《行き交う人々》の契約者は刃を突き立てる。 呼び出した4体は、全員動けそうにない。その上、あとの2体を呼び出しても、刃が首を裂く方が早いだろう。 「俺達の勝ちだ。最期に何か言う事は有るか?」 「そうですね。実の所、感謝してるんですよ。復讐に来てくれた事を、殺しに来てくれた事を」 「何だ。止めてくれる人を望んでいた、とでも言いたいのか?」 「いえいえ。だって……相手が殺意を持って来たのなら。 ――こっちが、殺しても問題ないでしょ」 クスリと、笑った気がした。 美咲の背後に居る《行き交う人々》の契約者には、彼女の表情は分らない筈だと言うのに。 確かに、確実に。笑ったのを感じた。 それに、なにか嫌な気配を感じ反射的に刃を引いた。 ガキン、と美咲の動脈を切り裂くはずの刃は、何か硬いものに当たったような音を立てる。 血が噴き出す事はおろか、刃に血が付いた様子も無い。 その事態に、必殺となる攻撃が効かなかった事に、《行き交う人々》の契約者は叫びをあげる。 「なっ、何でだ?! 《七人みさき》に契約者の肉体強化の能力は無い筈だろ!?」 「ええ。《七人みさき》にはそんな力は有りませんよ。ズッ、く。 今のは、ッツく。〝硬気功〟です。そして、……これが〝軟気功〟」 傷口を指で広げて、貫通せず体に残っていた弾丸を取り出すながら喋る美咲。 取り出すたところで、淡く光る左手を傷口に当てると、見る見るうちに傷口が治されていく。 「多重契約者? いや、そんな訳はねえ。《七人みさき》の契約コストは相当の筈だ。 多重契約なんて、普通は出来る訳が無い」 「私をいいえ、《七人みさき》を調べたなら知ってる筈ですよね? 【七人みさきに殺された者は七人みさきになる】って話ぐらいはね。 〝レッドキャップ〟達の様に使役するだけじゃ無くて、私自身がその能力を使用する事も出来るんです。 まぁ、無条件って訳でも有りませんけど。そして――」 そう語る美咲の影が、本来の物を残して左右に3つに分かれていき、計7つの影が出来上がる。 新しく現れた影が盛り上がり、それぞれ人の姿と成っていく。具体的にいえば、美咲と同年代の少女の姿へと変わった。 「「「「「「「私達が、《七人みさき》本来の姿です」」」」」」」 それは、《七人みさき》と美咲が契約する際に、元になった亡霊である少女たちの姿だった。 彼女達が現れると同時に、辺りの《百匹目の猿現象》に操られていた群衆がバタバタと倒れていく。 「そしてさ」「《七人みさき》によ」「出会った者はだね」「高熱にですね」「襲われる」「な~んて」「話もありますよ」 髪型が、服装が、性格がそれぞれ違う7人の少女達が交互に喋る。 その内容から、《行き交う人々》の契約者は美咲が他の都市伝説の力を使った理由と、群衆が倒れた原因を理解した。 「殺した都市伝説を取り込んで支配出来る上に、存在するだけで相手を病気にさせるってのか?」 「その通り。とは言え、発病の能力は一般人にしか効果は無いんだけどね」「まぁ、こういう時には便利だけどよ」 「最近は、私達が出てくる機会も無かったからな」「久しぶりに外に出れて嬉しいです」「同感」「ホントにラッキーだよ」 「まぁ。都市伝説が相手だとあまり役に立たないうえ、五月蝿くなるだけですしね」 ブーブー、と文句を言いだす亡霊少女達を美咲はさらりとスル―し、周囲を亡霊で固め始めている《行き交う人々》の契約者に目を向ける。 「彼女達が全員揃わないと、発病の力は使えない上に、人並みの力しかないので取り込んだ都市伝説に戦わせる方が手っ取り早いんですよ。 ともかく、先に貴方の奥さんを潰しときましょうか。〝さとるくん〟居場所を教えて下さい」 「オーケー。……あのビルの最上階に居るみたいだね」 「……っ! させるかぁぁぁぁッ!!!!」 〝さとるくん〟が指を指すビルを見た《行き交う人々》の契約者は、眼の色を変えて亡霊達と共に飛び掛かって来た。 その反応は、自分から〝さとるくん〟の示したビルが正しいと言っているようなものだった。 「〝鬼女〟」 美咲や《七人みさき》を仕留めようとした彼らは、その一言で現れた和服の美女に触れること無く、まとめて吹き飛ばされた。 「大盤振る舞いじゃないか。妾まで呼ぶなんてさ」 「仕方がないでしょう。私を含めた本体や〝さとるくん〟じゃあ攻撃力に欠けるんだから。 ついでに、あのビルも潰して貰おうと。どんな都市伝説かは分かりませんけど、街の人達を操っているのが居るみたいですから」 額に小さな角がある彼女は、〝鬼女〟と言う名の通り鬼の一種である。 ただし、普通の鬼のように他者を圧倒する筋力は持っていない。その変わりに有するのが、多種多様な術式だ。 まぁ、身体強化の術式を修めて居るので殴り合いも出来なくはない。 それ故に彼女は、《七人みさき》に取り込まれている都市伝説で、トップの実力の持ち主と言える存在なのだ。 「成程ね。発動者が死ねば支配が解ける可能性も有るって事かい? そう言う事なら分かったよ」 先程の一撃で気絶した《行き交う人々》の契約者を一瞥し、ビルを見やる〝鬼女〟。その右手には、目に見える程の力が集まっていく。 集まった力は、腕先から肘までを渦巻きながら纏われている。 力の集束が止むと同時に身体ごと右腕を引き、ビルに狙いを定め撃ち出そうとしている。 それを阻もうとしている者は、誰も居ない。 操られた人々は、《七人みさき》の力で倒れ、男性は気絶したままだ。 「っりゃあぁぁぁぁぁぁァァァ!!!!!!!」 その〝鬼女〟の一声と共に、ビルに向かって爆音を響かせながら螺旋を描き放たれた――。 油断していた、と言うべきだろう。 呼び出された都市伝説を全て倒され、《七人みさき》に止めがさされる。 そう思っていた《百匹目の猿現象》の契約者である女性は、提げていた双眼鏡でその様子を見ていた。 夫の刃が防がれたり、少女が増え支配下の群衆が倒れたり、現れた少年によって自分の居る場所を知られた事も解った。 だが、これだけ離れて居れば大丈夫だと思っていた。 「ヒッ」 故に、現れた和服の美女に都市伝説ごと夫が倒され、双眼鏡越しに目が合って、恐怖に包まれる。 だからなのか、もしくはまだ余裕を感じていたのかその場を動きはしなかった。 だが、和服美女の腕に集まって行く力に、不味いと思いビルから去ろうと行動を起こした。が、遅すぎた。契約によっての身体強化が全くない彼女には、逃げる事は叶わなかった。 閃光に包まれて消えゆく中で、《百匹目の猿現象》の契約者が最期に思ったのは、娘の仇を取れなかった無念と夫の無事だった。 気絶から目覚めた《行き交う人々》の契約者が最初に目にしたのは、妻が居るビルが崩れて行く光景だった。 呆然とそれを見て居た彼だったが、段々と眼の前で起こっている事を理解していった。 「な、あ、な、~~~~~~~!!!」 言葉にならない悲鳴を上げ、呆然とする《行き交う人々》の契約者を尻目に美咲達は話し始める。 「うん。相変わらず凄いですね。〝鬼女〟の一撃は、もう二度と敵には回したくないですよ」 「そんなに褒めないでくれよ。で、如何だい? 成果は有ったかい?」 「大丈夫みたいだよ。敵意や殺意みたいなのが周りの人達から感じなくなったから」 〝さとるくん〟の言葉通り、苦しみながらも向けられ続けて居た自分達への害意が無くなった事に成功と判断した。 「んじゃ私達の出番もお仕舞い?」「おいおい。まだ、出たりねぇぞ」「それは、同感だな」 「えと、私は別に……」「素直に」「遊びた~い。転がってる奴らで遊びた~い!」 群衆を抑えるために呼び出された《七人みさき》の本体たちが口々に文句を言ってくるが、美咲は呆れたように溜息を吐いて言った。 「何を言ってるんですか。抵抗するのを分ってて、戻す訳がないでしょう。倒れてる人達への止めお願いしますよ」 「「「イェーイ!!!」」」「「よし!」」「やった」 そこら中に落ちている武器を手に、苦しんでいる人々に襲い掛かる少女達。 発病の力によって満足に反抗もできずに、群衆は確実に殺されていく。 何が起こっているのか? 自分達が先程まで何をしていたのか? そんな疑問を抱えたままに殺されていく。 「「「アハ、アハハハハハハ!!!!!」」」「「クス、クスクスクス!!!」」「フ、フフフフ!!!」 殺しまわる少女達の笑い声に、男性は気を取り直した。 「止めろ! 支配が解けたのならこの人達は関係無いだろう?!」 周りの出来ごとに焦って、《行き交う人々》を再び展開し、亡霊少女達を止めさせようとする。 「言ったでしょう。殺意には殺意で返すと、操られていようと何だろうと。いえ、私達に遭遇した時点で変わりはありません」 「そう言う事。《七人みさき》に、僕達に出会った時点でこの人達が死ぬのは確定してるんだよ」 それを遮るように美咲と〝さとるくん〟が語り、 「そもそも、捨て駒だったんだろう? 今更何言ってるんだい」 阻むように〝鬼女〟が彼らの前に立つ。 「それは……ッ!」 「反論なんかしなくて良いよ。それじゃ、僕は戻らせてもらって良いかな? する事も無いみたいだし」 「そうですね。良いですよ、戻ってて下さい」 〝さとるくん〟が消えても、《行き交う人々》の契約者に余裕は生まれない。 そもそも、敵戦力として数えて居なかったのだ。居なくなっても変わりは無い。 警戒しているのは〝鬼女〟と呼ばれた眼の前の女性だ。 先程、都市伝説ごとまとめて吹き飛ばされたのだから当然だろう。 「ついでに、他の皆も回収しておきますか。何時までも、倒れたままで居られても困りますし」 倒れていた〝テケテケ〟と車の群れに潰されていた3体の都市伝説も〝さとるくん〟と同様に美咲の中に戻っていく。 その最中も人々を殺し尽していた少女達は、満足したのか飽きたのか美咲の傍に寄って来た。 もう既に、その場に居たほぼ全ての人間が息絶え。残りの全員も、呼吸を荒くしたり血を吐いたりとかなり衰弱している。 ヤバイ、その一言が、今の《行き交う人々》の契約者の頭を占めている。 自分達の力だけでは〝鬼女〟を倒す事が出来ず、自分達に仲間が居る訳でもない。 だからこそ、この状況を打破するため、〝鬼女〟よりも先に美咲や少女達に矛先を向けて襲いかかろうとし、 「判断としては、間違っちゃいないね。けどまぁ、させる訳が無いけどね。土式――」 辛うじて息の合った群衆とまとめて、地面から突き出た石の槍にその身を貫かれた。 「ガ……ッハ!!」 「操技っとね」 「カハッ。ぐ、そっ。ヒューヒュー」 〝鬼女〟が創りだした槍に穿たれ、倒れていた全ての人間は止めを刺され、命を落としていった。 そんな中で《行き交う人々》の契約者である男性だけは微かだが息が有った。 しかし、すでに都市伝説を維持する力は無いようだ。 その様子に、何かを思いついたような表情を見せる美咲。 集まっていた亡霊少女達に何かを告げて、彼女達もそれに賛同する。 「その傷だと、もう長くは無いみたいですね。最期の手向けとして良い物を見せてあげますね」 「良、イ物? な、んノ、事だ」 「秘密だよ~。美咲っち、こっちは良いよ」 「それじゃあ、初めますか。これだけ居ると、私だけじゃ大変ですからね。」 7人が手を掲げると、死んだ人たちの体から人魂と呼べる様な光の球が出て来る。それは、吸い込まれるように《七人みさき》の手に向かっていく。 無数の光球が湧き出る様子は、とても綺麗で幻想的な光景であり。確かに美咲の言った通り、良い物と呼べるかもしれない。 だが、それも光球の正体が何なのか知らないから感じられる事だろう。 「綺麗よね。これが所謂、命の輝きってヤツなのかしらね」 「言い得て妙だな、命の輝きとは。確かに、その通りだ」 この光球は、知識や経験・能力と言った物が凝縮されたモノの塊であり、その人の生きた証と言っても良い。 《七人みさき》に殺されている事を条件に、人間や都市伝説に関係なく人型の存在にのみ現れる。 これを吸収する事によって、別の都市伝説を《七人みさき》に取り込むことが出来るのだ。 「い~っぱい集まったね。これだけ有れば、今日の分は大丈夫かな?」 「大丈夫どころかお釣りが来る位ですね。あなた達や〝鬼女〟も出したのに、消費分以上が集まりました。」 また、都市伝説を使うために必要なエネルギーの代わりにも出来る。 ただし、消費した分は決して戻らず、都市伝説や契約者の方がエネルギーが多い。 この機能によって、美咲は都市伝説に取り込まれる事無く、ギリギリのラインで人間としての自分を保っているのだ。 薄れゆく意識の中で、その様子を見ながら《行き交う人々》の契約者は、自分達の復讐が失敗した事を理解した。 いや、余計に力を蓄えさせてしまった分、逆効果だったとしか言いようが無いのかもしれない。 そもそも、前提から間違っていたのだ。《七人みさき》を相手に、物量戦で戦おうとした事が。 それを理解したのかは分らないが、悔しさと無念さを感じながら彼は、息を引き取った。 「うっし、全部集まったみてぇだな」 「そ、そうですね。あ、あれ? 〝鬼女〟さんは何処に」 「ええと。やる事やったから戻るって言って、戻りましたよ」 「私達も戻る」 「あぁ。そろそろ、移動しないと不味いかもしれん。戻るとしよう」 「むぅ~。しょ~がないか」 そう言うと、出て来た時とは反対に、亡霊少女達の体は影に沈んでいき。6つの影は美咲の影へと合わさった。 残ったのは、無数の死体とたった1人の少女の姿。その少女……美咲は急ぐ様子も無く、のんびりと街を去っていく。 「うわ?! 何じゃこりゃ……」 「辺り一面、死体だらけですねぇ……」 美咲が離れてから十数分後程で、入れ違いになるように黒服と女性の2人がやって来た。 彼らは、一番近くに居た事とその能力の関係から、組織がこの街から観測した都市伝説の調査を命じられたのだ。 それでやって来た現場は、死体だらけ。組織の人間として、それなりに人の死は見て来た2人も唖然としている。 「取り合えず、この街封鎖しとくべきか」 黒服が携帯で本部に連絡し、現場の状況を報告し街の封鎖を依頼する。 組織の方も、報告の内容から隠蔽が難しく時間がかかると判断し封鎖を決定したようだ。 「取り合えず。調べてみましょうか、危険は無いって私の《女の勘》が言ってますしぃ」 黒服の電話の間に、気を取り直していたらしい女性がそう告げる。 彼女は、女性限定の都市伝説である《女の勘》の契約者だ。その的中率は90%とかなり高い。 「だな。そんで、誰を調べれば良いんだ。教えてくれ」 「ええと、ですね。…………あ、あの人ですねぇ」 「アイツだな。んじゃま、調べるとしますかな」 女性が示した死体へ向かう黒服。 その死体は、他の幾つかと同じく地面からの槍によって体を貫かれている。 それは、《行き交う人々》と契約していた男性だった。 「さぁて、教えてくれ《残留思念》。此処で、何が起きたのかを」 《行き交う人々》の契約者の死体に手を当てて、黒服は都市伝説の力を発動させた。
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とある廃工場で、銃声が響き渡る 発砲音が響くたび、雄叫びが一つ、消えていく 「がああああああああああ!!!!」 麻薬中毒者が、雄叫びを上げて警官たちに突撃してくる 一人の中年警官は、怯むことなく発砲した 撃ち出された弾は吸い込まれるように麻薬中毒者に命中した 麻薬中毒者は、ただの麻薬中毒者ではなく…今、学校町を騒がせているコーク・ロア支配型の被害者 そして、それに向かって撃ち出された銃弾もまた、ただの銃弾ではなかった 銃弾は相手の体内に入り込むと同時に、中に入り込んでいた液体が体内へと溶け込んでいき…コーク・ロア支配型の被害者は、びくりと体を震わせて、その場に倒れた 銃弾に込められていた液体は…薬品は、コーク・ロア支配型の影響を除去するものだ 「組織」が、コーク・ロア支配型の被害者を救済するために使っている薬品と、同じものだ 「よし、これで最後だな…無事かー?」 「はい。坂上は…!?」 「こっちも無事だ」 コーク・ロア支配型被害者達と応戦していたのは、三人の男性警察官 「……皆さん、ご苦労様でした。被害者達を回収しましょう」 そして、それらに指示を出していたのは、一人の女性警官だ 女性警官の名前は広瀬 美緒 …「組織」に通じて、学校町の都市伝説絡みの事件を、もみ消し続けている その代償として、都市伝説絡みの事件の解決を「組織」に任せているのだ そんな彼女が、部下を伴って、コーク・ロア支配型被害者の制圧に…都市伝説絡みの事件に動くなど、異質な光景である 「まったく。こんな銃弾、どこで手に入れたんだ?」 「…あなた達を、わざわざ都市伝説絡みの事件に関わらせたのです。余計な質問は受け付けません」 中年警官の言葉に、広瀬は冷たくそう答えた その表情は、酷く苦々しい 本当ならば、彼女は部下を都市伝説絡みの事件に巻き込ませたくはないのだ しかし、彼らはどうしても、都市伝説事件に関わっていってしまう …ならば 前もって、危険度の少ない都市伝説事件に関わらせて、危険な都市伝説事件と関わらせないようにするしか、ない それが、彼女が見つけ出した答えなのだ だが、それでも…彼女からは、迷いが消えない 「…それでは、この場は任せます。私は、残党がいないか、調べてきますから」 「一人で行かない方がいいんじゃないか?現場は慣れてないだろ」 「…馬鹿にしないでください。訴えますよ?勝ちますよ?」 中年警官の言葉にそう答え、彼女は廃工場の奥へと踏み込んでいく …「組織」から得た情報によれば、コーク・ロア支配型の被害者達が暴れている傍には、高確立でその支配者が存在する 恐らく、遠く離れすぎると、指令が届かないのだろう ……ならば、この廃工場内に、先ほど部下達が制圧した被害者達を操っていた者がいる可能性は高い 広瀬は銃を手に、警戒して歩く ……ぴちゃり、ぐちゃり 小さな音が、聞こえてきた 「………?」 ゆっくりと 警戒しながら、そちらに向かう そして 「----っ!!」 彼女は、見てしまった 死体を喰らう、犬を 顔が、手が、脚が 犬達に、食い散らかされている、その現場を 血の匂いが、辺り一面に漂っている 「う………」 嘔吐感を堪える広瀬 後ずさった拍子に…カタン、と、小さく、音がなってしまって ぴくり 犬達が、一斉に、広瀬の方を向いた 慌てて、犬達に銃を向ける しかし、一匹の犬が、そんな事に構う事なく、広瀬に向かって飛び掛り 「っぎゃん!!??」 「…!」 何者かに、弾かれた 「大丈夫ですか?」 「…影守、さん?」 かごめかごめの契約者、影守蔵人が、広瀬と犬達の間に割り込んできていた 刀を構え、犬達を睨みつけている 「何故、あなたがここに…」 「コーク・ロアが出没したって報告がきたから、僕に仕事が回されたんです…どうやら、契約者は既に、口封じされた後のようですが」 犬達が、唸り声をあげて広瀬と影守を睨みつける ……その、犬達の、向こう側から 「……「組織」の狗か」 かつん、と足音をたてて 尾なしの犬を引き連れた、灰色のコートを着た男が、姿を現した 冷たい眼差しで、広瀬と影守を睨みつけてくる 「あなたが親玉ですか?」 「…そうだ、と言ったら、どうする?」 刀を向けてきた影守に、男は嘲うように、そう言った 「組織」には、既に悪魔の囁きとコーク・ロア騒動の主犯の顔と名前は、情報が入ってくる …朝比奈 秀雄 影守の元に寄せられたその情報で見た写真の顔と、男の顔は一致していた 「その身柄、拘束させてもらいます」 この部屋は、扉が壊れてしまっていて、「かごめかごめ」の能力を発動できる状況下ではない そして、一応、上からの指示は「拘束しろ」と言うものである 殺せ、ではない だから、影守は忠実に、それに従おうとした 鍛えられた脚力で一瞬で朝比奈に近づき、みね打ちで相手を気絶させようとして ---っが!!と 鈍い音が、響く 「……!?」 片手で 影守の刀は、朝比奈の片手で、あっさりと受け止められた ぎろり、朝比奈が影守を睨む 「…私を、拘束する?……「組織」の狗風情が……私に、敵うとでも思っているのか!?」 「う、わっ!?」 「…影守さんっ!?」 ぶんっ!!と 影守の体は、朝比奈によって壁に向かって放り投げられ…広瀬の横を通り過ぎて、壁に叩きつけられた どごぉん!!と大きな音が響き渡り……壁が、崩れる 人間一人を片手で放り投げて…その衝撃で、壁が砕ける どれだけの怪力で投げたのだ? そして、その力で叩きつけられて…人間は、生きていられるのか? 広瀬は、急いで影守に駆け寄った 骨を痛めたのか、影守がうめいている 「影守さん……影守さん!」 「…駄目、です…相手に、背を、向けちゃ……!?」 己に駆け寄ってきた広瀬の背後で…朝比奈が、大きく息を吸い込んだ様子が、影守には見えた 逃げろ 本能が、そう叫ぶ 「っ…!?」 痛みを堪えて起き上がり、影守は自分を覗き込んできていた広瀬の体を、抱え上げる その、直後 朝比奈の口から吐き出された炎が、室内を包み込んだ 「-----うわっ!?」 ごぉうっ!!! その炎の先端は、中年警官たちがコーク・ロア被害者達を回収していたその部屋にも、ほんの少し入り込んだ どさり その炎から逃げてきた影守が…広瀬を庇うように抱きかかえた状態で、倒れこむ 背中を炎が掠ったのか、酷い火傷を負っていた 「…っ影守さん!影守さん、しっかりしてください!」 「おい!救急車を呼べ。早く!!」 広瀬が、気を失いかけている影守に必死に呼びかける その傍で、中年警官は若い警官に、救急車を呼ぶよう指示する 「…だ、大丈夫、ですから……これくらい、なら、「組織」で所持している、霊薬で…」 「しかし………!」 影守を、じっと見つめる広瀬 …その頬を、一瞬、光るものが伝ったように見えたのは、気のせいか? 「…私の、せいで………っ」 影守を見つめる、広瀬の体は 小さく、小さく、震え続けていたのだった to be … ? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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天地に、「組織」の人達の事を徹にどう説明すればいいのか尋ねてみた紗奈。 考えている様子の天地に代わり、辰也が口を開く。 「「組織」の事を隠したままにするか、それとも、伝えるか。そこで変わるだろう」 天地以上に事務的な口調で続ける。 「天地、葬儀の手続きを行っているのは、どのナンバーだ?」 「…C-NoとD-Noだ」 「それなら、純粋な「組織」の黒服って事もないだろう。葬儀屋と言う事にしておけ。「組織」は警察とも一部協力関係にある。その従兄とやらに事情の説明を求められたら、そちらに任せる手もある」 「組織」の事を隠したままにするか…話すか。 …徹も都市伝説と関わっている以上、「組織」と無関係でいる、という訳にもいかないだろう。 ただ、徹が、従妹の両親の死に「組織」の一部の黒服が関わっていた、と知ったら…「組織」を嫌いかねない。 「組織」の中にも、自分達に警告してくれた黒服や、天地のように良い人もいるのに…誤解されたくはなかった。 折を見て、「組織」の事を話すべきだろう。 「…とりあえず、そう言う事にしておいてくれ。一応、俺も葬儀には立ち会うから、ある程度フォローする」 「…分かりました…ありがとう、ございます。「組織」の事は…今は無理でも、折を見て、話したいと思っています」 ――― 「…都市伝説も、人間も、命である事に代わりは無い」 「……?」 獄門寺の言葉に、紗江が立ち止まる。 「……あの時、俺が切ったのは元は人間だっただろう…だが、今は黒服と言う都市伝説だった」 「俺は、今までも都市伝説を殺してきている。「退治」と言う名目で」 「……っ」 「……初めに、都市伝説を斬ったのは、12歳の頃だ。その時点で、俺はとうに、命を奪うと言う行為を行っている」 「その時も……あの、黒服を切った時も。どちらも、俺の意志で行った事だ。天倉が謝罪する事ではない」 「……っでも」 「…どちらにせよ………俺は、役目をやり遂げる為にも。いつかは、この手を血で染める必要性がある。ただ、それが早いか遅いかそれだけだ」 12歳…そんな幼い頃に、初めて都市伝説の命を奪った、と獄門寺は言った。 昨日、人を殺した自分よりもずっと前から、彼は奪った命の重さを抱えて生きていた。 「……せめて、お前達が無事だったならば、良かった……………お前達の両親を助けられなくて、申し訳ない」 獄門寺が、紗江に頭を下げた。 「…引き止めてすまなかった。俺は、これで」 「ぁ………」 そう言って、獄門寺は歩き出した。 獄門寺の姿が視界から消え、一人その場に残された紗江。 獄門寺は、命を奪った事を忘れず…それでも前に進もうとしている。 だから、自分も逃げてはいけない。 紗奈を、護る為にも。その手を、血で汚させない為にも。 もう、戻れはしないのだから。 ただ、獄門寺と話していて……獄門寺が、背負った物を護ろうとして、戻れない、深い所へおちていくような…そんな錯覚を覚えた。 ――― 障子が開いて、紗江が戻ってきた。 ここに来た時と同じように紗奈の隣に座る紗江に、紗奈が尋ねる。 「おかえり、紗江ちゃん。獄門寺君と話、出来た?」 「…うん」 「そっか…なら、良かった。 あ、門条さん達に聞いたら、徹兄には「組織」の人達の事…「組織」の事を話すかどうかで変わるみたいなんだけど…今は、葬儀屋さんって説明しておく事になったよ。 徹兄も契約者な以上、「組織」と無関係でいるわけにも行かないだろうし… 「組織」の事は、折を見て、話したいなって思ってるの。 門条さんも、葬儀に立ち会ってくれるみたいで…フォロー、してくれるって」 「そうなんだ… 門条さん…色々と、ありがとうございます」 紗江が、天地に頭を下げる。 「いや…大したことじゃない」 しばらくして、紗江が、迷いながらも口を開く。 「………あの、門条さん…私達、本当に「組織」を抜けてもいいんですか…?」 自分達に色々としてくれた天地達に対して、申し訳ないと思う気持ちと、「組織」に居るのが怖いという気持ちがぶつかりあっていた。 「ああ。さっきも言った通り、お前達は被害者だ。それに、もう暗示も解けている。お前達の好きにすればいい。A-No.666の実験に協力していた残党共にも、邪魔はさせない」 はっきりと答える天地。 「―――ええと、それじゃあ……私達、「組織」を抜けたいです」 続く…?
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死の行軍 都市伝説の説明 レミング(タビネズミ)は個体数が一定以上に達すると集団で海や川に飛び込んで死ぬ、というもの。 「現象系」の都市伝説なので力を持つには人との契約が必要 契約による能力 「契約者が指定した生物と半径10km以内にいる同種族の生物を自殺させる」という能力 指定した生物が人でも契約者に効果は出ない 能力対象の生物達は24時間以内には自殺する 能力対象の人は能力が発動した時点で感情といえる感情は無くなる 制約は 指定する生物は契約者から5km以内で姿が認識できてないといけない 自殺方法は指定できない 24時間以内に拘束されているなど自殺できる状況にならなければ能力は解除される
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占い愛好会の日常 06 「…………ふむ」 既に使われていない空家の一つ。 その目の前の電柱に、一人の老人が腰かけていた。 工事の際に足場となる杭に尻を乗せ、眼下の空家を眺めている。 老人を追っていただろう黒服が中へと踏み込んでから十分。 建物の中からは何の音もしない。 「……つまらんの」 隙を見て女の黒服の乳でも揉んでやろうかと策を練っていた老人は、退屈そうに足をプラプラとさせる。 家屋の中で何が起こっているのか、外からでは分からない。 しかし何かが起こっているだろうことは、老人にも推察できた。 黒服が入る前には微弱ながらも空家から漏れていた気配が、今はほとんど消えている。 つまり、今まで張っていた結界を、侵入者が出た事により強化したのだろう。 そしてそれは、黒服が中でどうなったのかを容易に想像させた。 もし勝利したのなら、結界が強化されるはずもない。 恐らく黒服は捕縛されたか、殺されでもしたのだろう。 「今悪事を働こうとしておる者は悪魔の囁きだけじゃと思っていたが……」 面倒くさそうに、老人が呟く。 愛好会のメンバーに被害が出るような状況は出来るだけ避けたい。 不穏な因子は、取り除くに限るのだが、 「敵戦力は未知数じゃからの」 老人は、強い。 それは一つの事実だ。 しかし、彼より強い都市伝説など、それこそ星の数ほどいるだろう。 例えば、遥か昔から神話として語られるような存在。 例えば、実体そのものがない存在。 中国における最古の都市伝説であっても、それらに太刀打ちする事は難しい。 「…………さて」 まずはあの家屋に潜む都市伝説について調べなければならない。 逃げだしておいて今更帰り辛いが、愛好会のメンバーを動員すればある程度の情報は集まるだろう。 老人は静かに、その場を離れようとして 「…………む」 ふと、一人の女性が眼下の道、その100メートル程先を歩いているのを発見した。 タイトなスーツに身を包んだその女性は、老人好みのナイスバディである。 「…………ふむ」 老人の頭の中で、女と眼下の家屋内にいる都市伝説の存在が天秤にかけられる。 それは一瞬の拮抗もなく、女に大きく傾いた。 「……ほっほっほ」 黒服の一人が殺されているのだ。 その原因である眼下の家屋についても、組織が勝手に調査でもするだろう。 老人はそう己に納得させて、電柱から飛んだ。 彼にとっての生きがいは、エロス。 一度それを目の前にしてしまえば、老人の目からそれ以外の要因は簡単に消え去る。 「ほっほっほ」 暗い夜道に、老人の笑い声が響き渡った。 【終】 前ページ 表紙に戻る 次ページ
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「足売り婆さん」 やあ、久しぶり。娯楽遊だよ☆俺ってさ、部活系の話にしか出てないよね。一応契約者なのに。そうそう、最近この辺で都市伝説 を見たって情報が有るんだ。これって俺の出番だよね☆ 遊「この辺で出るって聞いたんだけどなぁ」 そんなことを言いながら歩いていると、お婆さんの声が聞こえた 「足は要らんかえー足は要らんかえー」 この声、この台詞。間違いなく『足売り婆さん』。足は要らんかと聞いてきて、要ると答えれば足を無理矢理付けられ、要らないと答えれば 足をとられる、と言うものである。 遊「足売り婆さんか。…いくよ、サーカス☆団!」 遊はそう言ってポケットからテントを取り出した。そしてそこから… 「団長~呼びました~?」玉乗りをしながらジャグリングするピエロが 「アンタ達、団長がお呼びよ!」「「ガウ!!」」熊やライオンを従える猛獣使いが 「団長」「あたし達に」「「お任せ下さい!!」」空中ブランコを華麗に操る男女が 「……がんばります」綱渡りをする男が、飛び出してきた。 遊「よし、今回のターゲットはそこにいる『足売り婆さん』だよ☆」 足婆「足は要らんのかえ?」 ピエ「そこにいるやつですね~」 猛獣「生憎、足なら間に合ってるわ」 足婆「要らんのなら…寄越せ!!!」 猛獣使いのその言葉に反応し、足売り婆さんが飛び掛ってくる。しかし、 ピエ「危ないですよ~婆さん」 その攻撃はピエロの大玉で阻まれてしまう 足婆「な……」 空中「僕たちの」「絆を」「「見せてあげる」」「よ!」「わ!」 空中ブランコの男女が足売り婆さんを高く飛ばす。 綱渡「……!」 綱渡りの男が棒で足売り婆を突き上げる 猛獣「レオ、あの火の輪を潜りなさい!」「ガルル!!」 猛獣使いに命令されたライオンが火の輪に飛び込む。…足売り婆を巻き込みながら 足婆「ぐ…熱い…焼けるぅ……!!」 当然、足売り婆の体は燃え上がる。 遊「よし。ここまですればもう動けないよね。さ、〈勧誘〉してやって☆」 ピエ「了解しました~」 遊がそう指示すると、ピエロたちは足売り婆を紐で結んだ。そしてピエロたちは目の前に不思議な穴 のようなものをつくり…そこに足売り婆を放り込んだ 遊「さ、これでお前も僕のサーカス団の仲間入りさ☆『サーカスは人拐い』…これが俺の契約した都市伝説だよ☆」 ピエロたちが放り込んだのは異空間にあるサーカスの楽屋。そこに入れられれば強制的にサーカス団の一員となるのだ。 遊「ふぁーあ。お前たち、もう戻っていいよ☆」 「「「「「では、お言葉に甘えて」」」」」「「ガウッ!」」 こうして娯楽遊の都市伝説退治が終わるのでした 続く
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ある噂があった。それはとてもありえないような噂。 例えば、某大型服屋の女経営者は、子供を誘拐しているとか。 例えば、某モデルは、カラスを操る音波を出しているとか。 例えば、某やくざの跡取り息子は、実は女の子だとか。 そんな馬鹿馬鹿しい噂の一つ。 誰かが語る。友達の友達が……。 誰かが聞く。ルーモアという店には……。 誰かが見る。有名な雪男が……。 誰かが体験する。気がつくと覚えのない場所に……。 誰かが吸う。そしたら女に……。 誰かが知る。 「学校町には都市伝説が実在する」 という都市伝説があることを。 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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人肉料理店とその契約者 06 ――北区の山―― 「へ~。あのにーちゃん、契約者だったのかー」 「直ぐに行ってしまわれたので、何の都市伝説と契約していたかは解りませんが」 昨日の事を話しながら歩く二人。 「それにしても、ホントにこんなトコに居んのか?都市伝説」 「えぇ、気配は確かにこちらからしています」 「まぁ、オーナーがそう言うなら…って、なんだありゃあ!?」 「ふむ、あの方々、都市伝説ですよ?」 「マジでっ!?」 二重に驚く少年。その間にも彼等は近付いてきて…… ?「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 ?「「「「「「待てぇ~!!!」」」」」」 「はっや!?」 「先頭の方は人間のようですが、かなりの速度ですね」 あっという間に視界から消えていった。 「…なんでだろ?スゲー必死で逃げてんのはわかんだけど、助けちゃダメな気がする」 「あちらの三人も都市伝説のようですよ?聞いてみましょうか」 オーナーが示す方向を見ると、少し離れた位置に人影が見える 「おぉ?都市伝説のバーゲンセールだな。んじゃ早速…」 「大丈夫だとは思いますが、一応警戒は怠らないで下さいね?」 「りょーかいっ!すいませ~んっ!」 言うが早いか三人組に声をかける。 ?「はい?」 少年「えーっと、都市伝説の方ですか?」 ?「……なんだ?お前等?」 オーナー「これは失礼、私は都市伝説【人肉料理店】、こちらは少年、契約者です」 少年「あ、人肉料理店っつっても人襲ったりはしないっすよ?」 慌てて自己紹介して、敵意が無い事を表わす。わざわざ怒らせる趣味はない。 ハク「あ、これはどうもご丁寧に。私、ハクと申します」 コン「コンだ!」 禿「禿と申します」 少年「ども、少年です。んでちょっと聞きたいんスけど、向こうで走り回ってる人達知ってます?」 ハク「ああ、先頭で走っているのが」コン「私達の契約者だ!」 禿「追っているのは私の契約している都市伝説達ですね。ちなみに私は彼が所属している組織の担当者です」 少年「組織?」 聞き慣れない名前に首を傾げる。傍らのオーナーに尋ねてみると、 オーナー「聞いた事がある、程度の事しか知りませんね」 禿「あなた方は最近学校町に?」 オーナー「ええ、つい先日越して来たばかりです」 少年「なーなー禿さん、組織ってナニ?」 禿「ついでに、ここ最近に起きた事件も話しておきましょうか。組織とは――― ~~~~説明中~~~~ 少年「はへ~。組織に首塚、そんで夢の国、か~。もうちょい早くきてりゃーオレらも戦えたのになー」 オーナー「一足遅かったみたいですね」 自分達の知らぬ間に始まり、終わっていた出来事。驚愕と、少しの悔しさを滲ませる少年。 ハク「いやいや、戦わないに越した事はないですよ。それに女の子なんでs」 少年「 オ レ は 男 だ っ !!」 思わず叫ぶ。しかしここは確実に否定しておかなければならない。少年にも男としてのプライドがある。 ハク「ご、ごめんなさ「まあ見た目は殆ど変わってませんが」 少年「ごふぁっ」 にこやかに致命傷を与えるオーナー。少年の男のプライド、ズタズタ。軽く涙目。 禿「男?もしやマッドガッサーの攻撃ですか?」 オーナー「おや、知っていましたか」 禿「はい、先程連絡が受けまして。夢の国の一件でしばらく学校町を離れていた筈なんですが、最近になって仲間を連れて戻って来た、と」 オーナー「ふむ、治療法はご存知で?」 禿「ユニコーンの角を使えば治療は可能ですが、今組織には在庫が無いそうです」 未だにオーナーの一言から立ち直れない少年。 少年「…オレは男だ……女の子じゃないんだ…………男なんだよ………」 コン「女体化する前と見た目たいして変わってないって事は、元々女の子っぽかったんじゃなのいか?」 少年「」 追い討ち掛けられた上に図星をさされる。御臨終です。 禿「初対面の人間をあまりいじめてはいけませんよ?」 コン「いやいじめてないって」 流石に見兼ねたのか止めに入る禿さん。 禿「そんなに気にしないで下さい。彼女達は少々悪戯好きですが、悪気は無いんですよ」 少年「……禿さん」 禿「それに男らしさというものは、外見のみで決められるものではありません。内側から滲み出るものも重要なんですよ?」 少年「禿、さん…!ありがとうございますっ……!」ハク・コン「「……なにあれ」」 少年の中の禿さん株、うなぎ登りです。 オーナー「所で先程から気になっていたんですが……あなた『エベレストの全裸筋肉男』に似ていますね?」 少年「それはオレも最初に会った時思ったけど、体格全然違うぜ?」 禿「いえ、それは私ですよ?」 少年「…え?でも……」 禿「証拠を見せましょうか?噴ッッ!!」 掛け声と共にピンク色のオーラ吹き出しながら膨れ上がる肉体。2㍍を超えた辺りで膨脹は停まるが、その威圧感は尋常ではない。 禿「これが!私の!!鍛え上げられた鋼鉄の肉体ですっ!!!」 オーナー「なんと…」 コン「…やっちゃったよ」 ハク「ドン引きですね」 そんな中、一人無言の少年。 少年「………!」フルフル オーナー「どうしました、少年?」 少年「スゲェェェェエェェェェェェェッ!!!!!」 ハクコンオーナー「「「」」」 なぜかいきなりテンションMAX。その勢いのまま禿さんの身体をぺたぺたと触り始める。 少年「スゲーや禿さんっ!!つーかどうなってんのコレ!?なんかでてるし!!!」 禿「これは兄気!厳しい修業の果てに得た、男の中の男の証っ!!」 少年「おぉぉおおぉぉぉっ!!!」 ハクコンオーナー「「「……え~」」」 話に着いていけず、取り残される都市伝説達。 しかし事態はそんな三人を置いて進んでいく。 少年「禿さん!オレを………………オレをっ、弟子にして下さいっっっ!!!!!!」 ハクコンオーナー「「「イヤチョットマテ」」」 少年の凄まじい提案に、思わず突っ込む。そのお陰で我に返ったのか口々に説得を始める。 コン「君、少し落ち着け!?」 ハク「そうですよ!考え直して下さい?まだ間に合いますから!」 オーナー「しょ、少年。初対面の人間相手にそれはちょっと……」 そんな三人の声が聞こえていないのか、禿さんだけを見つめる少年。 だが…… 禿「…残念だが少年、それはできない」 少年「なんでですか!?オレがこんな姿だからですかっ!?」 禿「少年、外見は問題ではないのだよ。これは私の問題なのだ。私は未だ修業中の身。弟子を取る事は……出来ない」 少年「………そ、そんな………」 禿「だが少年よっ!同じ高みを目指す者同士、共に高め合うことに何の問題は無いっ!!」 少年「………っ!禿さんっ…………ありがとうございます!!」 ハクコンオーナー「「「」」」 がっしりと抱き合う二人。再び置いてけぼりの三人。 そして完全に忘れられているかごめかごめの契約者と兄貴達。 青年「まだかぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁっ!!???」 兄貴「「「「「「やらないか?」」」」」」 終 前ページ次ページ連載 - 人肉料理店とその契約者
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「コーク・ロアに支配された人間が、なぁ」 適当に獲物を物色した帰り、マッドガッサーは似非関西弁の女性と合流し、並んで歩いていた 時刻は、そろそろ深夜を回る こんな時刻に、ガスマスクの男が若い女性と並んで歩いていても通報されなこの街は、本当にありがたい 「爆やんも、二回くらい襲われとるやん?相当数が増えとるんちゃう?」 「…支配型で、支配している対象を増やしてるんだよな?だとしたら、あいつが狙われたのは完全に能力目当てだろ。コーク・ロアの能力で支配された状態でも、契約している都市伝説の能力は使えるからな」 …やはり、この街は危険か? いや、だが、同時にここまで動きやすい街はない ここを逃さない手はないのだ ……それに、魔女の一撃の契約者は、この街に住んでいるとある対象に、異様に執着している そっちの目的が叶うまでは、この街にいたいところだが… 「………だとしても、やばいかね?」 「…ヤバイんちゃう?」 …気配が 二人に、ゆっくりと近づいてきていた ざわざわと、何かが近づいてくる感覚 「…走るぞっ!」 「りょーかいっ!」 言うが早いか、二人は駆け出す しゅるしゅると、背後から迫ってきていた気配が、途端に隠す事をやめた 漆黒の闇の中、黒いそれが迫ってくる 「げ、この髪は…………うぉわっ!?」 「んみゃっ!?」 しゅるり 髪は、何時の間にか、二人の真正面からも迫ってきていて あっと言う間に、二人の体を絡めとった 「-------っ!!」 ごがっ!! 「マッドはん!?」 マッドガッサーの体が、塀に叩きつけられる その衝撃で、からんっ、と……被っていたガスマスクが、落ちた 「おや、こりゃまた……随分と、可愛らしい顔してたんだな」 すたん、と 塀の上に降りる影…髪をわさわさと不気味に伸ばす、黒服 「ってめ……」 「よぉ、また会ったな」 ニヤリ、その黒服はマッドガッサーを見下ろして笑った 髪は、完全にマッドガッサーと似非関西弁の女性を束縛し、その動きを封じている 「あー、そんなに睨むなや。殺すんじゃなくて、お持ち帰りするよう言われてんだから……生け捕りとか、そう言う方針で行くならいくで、もっと早く決めとけってのな」 「生け捕りて……マッドはんに何する気や!?」 「さぁ?俺は聞かされてないし、っつか、具体的には聞きたくねぇや」 似非関西弁の女性の言葉に、その黒服は肩をすくめてみせた …生け捕りにしたマッドガッサーを、「組織」はどうするつもりなのか? 正直、考えたくもない 突然変異の個体、その特殊な研究対象を、「組織」がどうするか…考えなくとも、大体想像はつく 「…そう言や、マッドガッサーは生け捕りにしろって言われてっけど、その仲間に付いては指定受けてないな…どうすっかねぇ」 「!」 黒服が何気なく呟いたその言葉に、ぴくり、マッドガッサーが反応したように見えた …そうだ、マッドガッサーの仲間については、何も指示が出されていない つまりは、処分しろと言う事なのだろうな、と黒服は考えた 特に、「13階段」に対しては、そうなのだろう 「組織」の裏切り者で、しかも、あんまりよろしくない…今ではもうなかった事にされている計画の、生き証人のようなものだ 見つけ次第始末しろ、といわれてもおかしくない …個人的に、ちょっと可愛がった事もある対象だから、自分が「13階段」を追う事にはなりたくないものだ、黒服はそう考えていた ついでに……今、捕まえている似非関西弁の女性 そっちも、始末は勿体無いよなぁ さて、どうにかならないものか 考えていて……マッドガッサーが自分を睨みつけている事に、黒服は気づいた 「---っは、いいね、その目。人を殺した事がある奴の、殺意交じりの眼差し、ってか?」 はっきりとした、敵意、殺意 自分の大切なものを護ろうと言う、獣の目 今のマッドガッサーの眼差しは、そう言う目だった 「仲間が大切か?…………都市伝説の癖に、契約者でもない人間と仲良く、とは珍しいもんだ」 「お前だって、都市伝説だろうが」 「あぁ、そうだよ?」 そうだ、自分も、都市伝説だ くっく、と黒服は笑う 「元人間の…都市伝説に飲み込まれて、都市伝説と言う化け物になっちまった存在だよ?」 すたん、と塀から降りて、マッドガッサーに近づく 髪によって動きを束縛され、しかし、マッドガッサーは鋭く黒服を睨み続けていた …かつて、殺戮を行った経験がある者の、殺意の眼差し それを、黒服は真正面から受け止める 「どうせ、都市伝説なんざ、人間から見りゃあ化け物だ。そんな化け物と契約してくれる人間だって希少だってのに……その化け物と、契約もしてないのに、一緒に行動するような人間がいるなんてな。どんな手を使ったんだか」 「…ッマッドはんの事、悪く言わんといてや!」 あぁ、随分と慕われているじゃないか 都市伝説の癖に、化け物の癖に 俺はうまくいかなかったってのに、こいつはうまくいきそうだってかい? ……気に食わないねぇ? 「まぁ、そう言いなさんなや?……今、俺はあんたらの命を握ってる状態なんだぜ?」 「……彼女だけでも、放せ」 黒服を睨みつけたまま、マッドガッサーが低い声で告げてくる 完全に動きを束縛された何もできない状態だと言うのに、それでも護ろうとでも言うのか? 「嫌だ、って言ったら、お前さんはどうする?」 「…そう、だな」 …ぎりっ、と 束縛された腕を、マッドガッサーは無理矢理動かそうとする 無駄なことを 黒服は、マッドガッサーを束縛する力を強めていく 「無理に動かすと、腕が引きちぎれるぜ?」 「…マッドはん!」 ぎり、ぎり……と マッドガッサーが動かそうとするその腕を、束縛し続ける ……しかし 「-------っ、う、ぁ」 「っ!」 ぶちり 束縛していた黒服の髪を、半ば引きちぎるように…その腕に髪を食い込ませ、肉を、骨を切らせ出血しながら…マッドガッサーは、無理矢理に右腕をうごかした その指を、口元まで運んで ぴぃいいいいいいいい…………----------------- 高い、口笛の音が、周囲に響き渡った ひゅうっ、と 風の音が、辺りに響いて 直後、激風が黒服に襲い掛かった 「っく……!?」 立つ事すらままならない、激風 まるで、竜巻が自分の場所にピンポイントで直撃してきたかのようなその風に、黒服は体勢を崩した その拍子に、マッドガッサーと似非関西弁の女性を束縛していた髪の力が、緩む 叫び声のような、何かの鳴き声が、風の音に混じって響く 再び襲い掛かってきた激風に、黒服は体を飛ばされ、塀に体を叩きつけられた 直後、目の前を…何か、巨大な、巨大な 鳥のような生き物が、通り過ぎていったのを、確認する 「ぐ……くそ、何だってんだ…?」 …風が、やんで マッドガッサーの姿も、似非関西弁の女性の姿も、消えていた 残っているのは、引きちぎられた髪の毛と……マッドガッサーが流した血痕だけだ 「…まさか、さっきのが…例の、巨大都市伝説か…?くそ、マジでマッドガッサーの仲間かよ」 舌打ちする 事実を確認できたのはいいが…これは、やっかいだ 今回は逃走に使用したようだが、あれに暴れられては洒落にならない 流石に、報告するしかないだろう 黒服はため息をついて、懐から携帯を取り出した 「怪我はないか?」 「うちは平気や…それより、マッドはん、腕」 「都市伝説だから平気だよ。後でジャッカロープの乳でも分けてもらうさ」 ぶらり、半ば使い物にならなくなった腕をぶら下げつつ、マッドガッサーは似非関西弁の女性にそう答える 彼女に怪我がなかった事実に、酷くほっとしている自身に、マッドガッサーは気づいていた 「なぁ、アレが、ひょっとして前に話とった秘密兵器?」 「あぁ。あいつがいりゃあ、いざとなりゃどこにでも逃げれるぞ」 「って、逃げる専用かいっ!?」 「約束なんだよ、荒事には手を出させないっつぅ」 ばさり 二人を逃がしたその巨大な存在は、翼をはばたかせ、高く、高く飛び上がっていっている それは、軽く見積もっても軽飛行機くらいの、巨大な存在 これがヘタに暴れれば、何がおきるかわかったものではないし…それこそ、本格的にあちこちの組織に目をつけられる 「マッドはん?…考え込むのもええけど、まずは早よ教会に入って治療しよや?」 「ん……あぁ」 …自分は、「組織」には生け捕りにされようとしている だが、仲間は…どうなるか、わからない それこそ、始末でもされかねない それを、改めて自覚する …だからと言って、今更計画を諦めるつもりもなく ……いや、半ば、その計画など、どうでもよくなってきているはずなのだが しかし、それを手放す気にもなれず 「…しばらく、潜むぞ」 「うん?……おおっぴらに動かん、って事?」 「あぁ、多少は動くが……ちまちまやっても、目をつけられていくだけだ…………一気に、やってやる」 それだけの知識を、自分は思い出している …この学校町を全体を、一気にガスで包み込んでやる その準備が、必要だ 「…後で、他の連中にも言うつもりだが………身を引きたくなったら、いつでも引けよ?俺がこれからやろうとしている事は成功するかどうかわからないし、何より…他の都市伝説契約者たちにかぎつけられたら、本格的に戦いになるだろうしな」 「……今更、何言うとるん」 苦笑してくる、似非関西弁の女性 …あぁ、本当に今更だな、と 感覚がなくなってきた右腕の事など忘れながら…マッドガッサーもまた苦笑したのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち
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《テケテケ》 下半身のないきみが線路の側にいたのを見付けたのはたまたまだ。 たまたま、きみが寂しそうにしていたのが目に入った。 次の日も、その次の日も、その次の次の日も。 ただ寂しそうに、きみはそこにいたから。 あまりにも寂しそうにしていたから。 ぼくは思わず声をかけてしまった。 きみが『テケテケ』という都市伝説だとわかっていても声をかけたのはきみの横顔に見惚れたから。 いつまでも見ているだけじゃ埒が明かないから。 ぼくと、きみとの距離が縮まらないから。 だから声をかけた。 口下手なぼくが都市伝説とはいえ女の子に声をかける日がくるなんて今でも信じられない。 今のぼくはきっと声をかけていないだろう。 声をかけた時のきみは、とても驚いた顔をしていたね。 まさか自分に声をかけてくる人間がいるなんて思いもしなかったんだろう。 でも、あの時のぼくは声をかけずにはいられなかった。 きみの力になりたいなんて正義感溢れる理由じゃなく、きみのことが知りたかったから。 下半身がない、人間じゃない、そんなのはどうでもよかった。 きみの横で、きみの笑顔が見たかった。 ただそれだけだった。 ――ぼくはきみに恋していたんだ。 声をかけられて驚いたきみの顔、顔を真っ赤にしたぼくを見て笑う顔、拗ねて頬を膨らませた顔。 どれもこれも愛しかった。 寂しそうな顔が消えたことが、ぼくのちっぽけな自尊心を満たしてくれた。 でも――ぼくは知らなかった。 きみが女の子じゃなくて男の娘だったなんて。 下半身がないから騙された。 都市伝説なんて大嫌いだ! 前ページ連載 - ぼくの物語