約 2,160,310 件
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3379.html
【拝戸直の人殺し 第十四話「サンジェルマンの悩み」】 「7001 0000 7002 0000 1210 800D 1220 800C…………。」 組織の施設内部、薄暗い部屋の中。 パソコンの前で数字をぶつぶつと呟きながらキーボードで打鍵を続ける女性。 上田明也の契約する都市伝説【赤い部屋】である。 「都市伝説をデータ化するなんて……。 本当に出来るのかなあ、確かに私たち都市伝説は人の噂を母体にしてるけど……。」 パソコンに突き刺さっているのはDの文字が刻まれたUSBメモリ。 そのUSBメモリとパソコンをグルッと囲むように複雑な文字の書かれた護符が貼ってある。 「茜さん、作業の調子はどうですか?」 「まあ進捗度15%ってところですかねえ、明也さんはどうしてますか?」 「何やらCOA世界で面倒に巻き込まれているようです。」 「むぅ……、じゃあ私も助けに行きましょうかね。」 「流石の彼でも貴方がいきなり現れたら心配やら心労やらで胃に穴が空くと思います。 今は貴方一人の身体じゃないのですから。 本来はこの解析作業やらプログラミングやらして頂いているのもどうかと思っていて……。」 「でもまあ私だけニートしてる訳にもいかないじゃないですか。 橙さんが現実世界の情報収集、彼方さんが現実での戦闘、明也さんが……事務処理。 となったら私が電脳関係担当するしか無いじゃないですかぁ。 ていうかあれです、私じゃなくて私のキャラで助けに行けば良いですしー。」 そういって赤い部屋は再びエメラルド色のパソコンに向かう。 「そのパソコンの調子はどうですか?」 「ああー、すごく調子良いですぅ。 強いて言えばもうちょいグラフィックメモリをですねえ……。」 「……ネトゲの為ですか。」 「これだけはやめられない!」 「止めませんけどね。パソコンから出る電磁波もお腹の子供に悪影響な可能性が……」 ブツッ 赤い部屋はパソコンの電源を躊躇いなく切った。 強制終了である。 このパソコンはサンジェルマンが自らの都市伝説「オーパーツ」内部の都市伝説を利用して作ったパソコンで、 これを彼は自分の友人の著作から名前を取って「エメラルド・タブレット」と呼んでいた。 対都市伝説攻撃を防ぐために素材の一部に霊石を使った無駄に豪華なパソコンである。 当然壊れたら大変だ。 だが赤い部屋は容赦なくそれを強制終了した。 「ちょっと引きこもってきますね。」 「…………ちなみにノーパソの電磁波程度なら問題無いそうです。」 「じゃあノーパソバージョン作っておいてください。」 「……はい。」 赤い部屋は迷うことなく彼女の空間に引きこもってしまった。 サンジェルマンはUSBメモリ内部の「死神」の状態の確認と、 パソコン内部の作業中のデータが壊れていないかの確認を開始する。 無事だった。 サンジェルマンはため息を吐いた。 「くそ……、明也さんが落ち着いたと思ったら! 直さんの殺人癖が眼着けられるし! なんでこんなに問題が続くんだ! くそっ!くそっ!くそっ!」 『どうしたんだい、ご機嫌斜めだね。』 『まあそれも仕方ないか、そもそも異常な人々は居るだけで社会の秩序を乱すんだ。』 『だから幾ら問題が起きても仕方ないと思わないか?』 「ああ、フェリシアですか。」 『人間の私にはどうにもこの組織ってのは居づらくてね。』 『ていうかなんだいあのトイレは?トイレと思えぬ嬌声が響いてるんだけど。』 引きつった笑みを顔に貼り付けて表れたのはフェリシアである。 彼女はサンジェルマンの契約者だ。 「何って……、トイレですけど。」 『あんなのハッテン場じゃないか!』 「トイレってハッテン場じゃないんですか……?」 『もうやだこの組織!出て行かせて貰うぞ!』 「あ、逃げないでええええええ!」 フェリシアは泣いて走り去ってしまった。 彼女も一応乙女である。 恐らく女子トイレで怖い思いをしたのだろう。 しかしそれよりも仕事が溜まっている。 サンジェルマンは彼女を追いかけることを断念して仕事をすることにした。 F-№に割り振られている分の任務をそれぞれの黒服に再び割り振る仕事である。 一つ間違えると簡単に死人が出るので結構熟慮せざるを得ない。 「これは……、久しぶりの戦争に対する介入か。 №5師弟に割り振りますかね、めっちゃバトりたがってましたから。 次は調査系の任務、№6ですね。 地味な都市伝説退治は……、№77に任せましょうか。 COA関係の任務はE-№が受け持ってるのか……。 まあ私の仕事はもう終わってますからね、聖杯の確保とユティさんの安全確認ができた以上、 私がやることはありません。 最悪でも上田さんがなんとかするから大丈夫、かな。」 書類を分けて次々に判子を押すサンジェルマン。 伝説の錬金術師とは思えない地味さ加減である。 「鵺の討伐任務もさっさと終わらせないとな……。 でもなんで私の所にこの任務来たんでしょうか。 まあ直くん使えば倒せる相手では有ると思いますが、まあ私は任務こなすだけですし。 別に良いか。」 突然、サンジェルマンの机の上の電話が鳴る。 電話をかけてきたのはCOA内部のE-№を手伝って働いているF-№の黒服だった。 F-№はトップと一般黒服の距離が性的な意味でも近いアッー!トホームな職場なのだ。 「やばいっす№0!」 「どうしたんですか№555」 「COAのユグドラシル内部に今すげえ人が来てるっす! ていうか話しちゃった!」 「誰ですか?」 「なんかA-№0と話しちゃったっぽいっす!」 「え゛?」 「その上自分ってばA-№0に雑用を命じちゃったっぽいっす!」 「……555さん?」 「なんすか?」 「貴方にお誂え向きの任務があるので帰ってきてください。」 「解ったっす!あとまだすごい人が居たンすよ! 伝説の中華の鉄人が屋台で店だしてたんスよ! あの麻婆豆腐は……」 サンジェルマンは通話を終えると深くため息を吐く。 またC-№辺りに何か言われるに違いない。 そうなったら 「トップが現場に出て仕事をすることは組織全体の士気上昇につながります!」 とか 「トップが現場の実情を知ることはとても重要なことです!」 とか言い訳することにしよう、とサンジェルマンは決めた。 「それはそうとこれじゃあ研究もおちおち出来ませんねえ。」 学校町には沢山の問題がある。 教会勢力、行方不明者の増加、COA。 さらに日本中の様々なところで今日も都市伝説による事件は起きている。 もっと言えば日本だけではない、世界中で同様の問題が起きているのだ。 これでは彼の望む“異常”の研究などできるわけがない。 再び電話が鳴る。 二人同時に連絡だ。 「こちら913、アメリカに潜入してたんですけど大量の兄貴に囲まれてしまいました。」 「こちら333でーす、なんか南極で巨大な兄貴を発見しました。」 「掘られてきなさい。」 「「良いんですか!?」」 「ええ、貴方には休憩が必要です。 しばらく仕事のことを忘れてハッテンなさってください。」 「うわああああい!やったぜ!」 「こんな大きいのだと壊れちゃうよう!」 「良いなぁ……。」 通話を終える。 サンジェルマンは今日も忙しい。 本日三度目のため息を吐いた。 「さて、死神の契約書の改良を始めましょうか。」 そう言ってサンジェルマンは引き出しから工具を取り出した。 【拝戸直の人殺し 第十四話「サンジェルマンの悩み」fin】
https://w.atwiki.jp/trpgken/pages/2778.html
□トレーラー 「彼女を楔にするしか…」 「なら繰り返せばいい、彼女が救われるまで」 「ああ、だからお前が嫌いだよ」 「私、こんな風になっちゃった…」 「相当な大規模作戦に」 「都市伝説の活発化が」 「俺は、もう決めたんだ」 「道は2つに1つしかない」 「恭介はどっちを選ぶ?」 都市伝説と契約者TRPG キャンペーン 『怪異緊急対策特命室 夜雀たちの事件簿』 「File.6:闇夜」 __暗澹は、もう足下へ □ハンドアウト(敬称略) ■神無月・恭介 京都から帰還して一昼夜。本邸からそのまま同行した土御門遙と共に、貴方たちは特命室へ帰還した。遙と顔をつきあわせた後から室長の顔色がよくないことに加えて状況は切迫している。遙の説明を受けた上層部は木暮三葉の殺害も視野に入れた上で大規模な計画を立案、特命室は最前線での接触を命じられた。おそらく君の説得が功を奏しない場合、木暮三葉は何らかの形で心を折られ殺害されるだろう。そんな訳で特命室の面々を集め三葉説得の作戦会議が開かれた。 ■生川・紗良々 作戦会議のために集まった特命室の面々に、先行して実測を行っていたテントウとノッカーがいた。恭介へのダメだしがてら報告を上げに来た彼らによれば、現在木暮神社は侵犯不可で、ノッカーすらも入れなかったという。テントウのカメラで映しても、広がるのは暗い闇のみ。ほとんど情報を得られないで帰還した彼らだが、わかったことがあったという。 「侵犯禁止、多分あれ、エクソシストの術式です」 「おー、向こうに誰かいやがるな」 ・・・ふと、あなたの脳裏に浮かぶ人間がいたが。勘違いだろうと思い直してお茶をすすると、その熱さに全て忘れてしまった。 ■薄瀬・幸 ”闇夜”は真に強大な力を有するらしく、この所都市伝説の行動が非常に活発で『組織』も対処に追われている。更に組織の都市伝説達も妙にぴりついている。意思ある者は一様に「何かに呼ばれている」と述べている。”闇夜”を叩く大規模作戦も多面になると推測されており、本体を叩くために回される人員は多くない。それもあってかやれあちらでぬしさまが回収されたの、やれ向こうでどどめ匣がイベントを起こしただので作戦直前にも大忙しだ。そんな中、カイチが妙に暗い顔をしているのだが・・・。 ■灰ヶ峰・紅葉 _それは、本当に突然だった。打ち合わせやら実務やらで特命室の面々が出払い、たまたま室長室へ君がやってきたとき。ガチャリ、と部屋の扉が開いた。そして入ってきたのは。どう見てもそうとしか見えない、しかもタイタニックと契約を果たしている、血まみれの「灰ヶ峰・紅葉」だった。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2028.html
それは、エニグマ姉妹がうっかりと誘拐未遂にあってから、数日後 「…先日は、ボクの姉が大変と迷惑をかけたようで。申し訳ない」 帰宅にある診療所を訪れたその青年は、そう口にして 深々と、まるで土下座でもせん勢いで、頭を下げてきたのだった 彼が青年だとわかったのは、そのコートや服装が男物だったせいだ そうでなければ、その中性的な顔立ちや体付き、それに、髪を結ぶ真っ白なリボンのせいで、女性と間違いかねない もっとも、ドクターは彼が男性であると即座に見抜いたのだが、それはドクターだからこそわかったことであり、通常は判断が難しいだろう 「なるほど、可愛いものを見ると見境がなくなる、か……まぁ、気持ちはわからないでもないな」 「同意を得られたのをありがたいととるべきか否か。ただ、やっぱり誘拐は犯罪な訳で」 ドクターの言葉に、青年…仲介者は、表向きは眉一つ動かさず ただ、心中では複雑な気分だった 「どうにも、姉さんは都市伝説や都市伝説契約者相手だと理性のタガが外れやすい。その辺り、もう少ししっかりしてくれるとありがたいのだが…」 「……ふむ?君のお姉さんは、都市伝説や都市伝説契約者を見分ける能力でも持っているのかね?」 「姉さんも契約者だから、その関係でわかるのだろう………まぁ、契約以前から、わりとその辺りの勘は良かったが」 ある意味で、その勘が困った方向に活用されている訳で 問題の人物の弟である仲介者としては、姉をどうにかしなければ、と言う思いはない訳ではなのだが……「自分では無理だ」、ととっくの昔に諦めていて、姉の恋人にその辺りを間か背っきりだからタチが悪い 「…ところで。ケーキはお気に召さなかっただろうか?」 「え?」 「あ、その…」 …診療所の面々 彼女らの前には、ケーキが差し出されていた どれもこれも、可愛らしくデコレーションされた一人用のケーキ 仲介者が、謝罪の気持ちをこめて作ってきたものだ 彼の姉の誘拐未遂の被害者であるエニグマ姉妹達だけではなく、その関係者の分もきっちり作ってきているのが、彼らしい 「…ふむ、そうだな。いただこうか。メアリー、すまないが紅茶を淹れて来てくれないか?」 「あ、はい」 メアリーにそう言って、ドクターは自分の前に出されていたケーキに手を伸ばした フォークをいれ、一口分、口へと運び……じっくりと味わい、ふむ、と頷く 「店で出していても、充分通用するレベルだな」 「美しいレディにそう言われるのは、悪い気がしないな」 ドクターの素直な感想に…仲介者の淡白な顔に、ようやく感情らしい感情が浮かんだ ドクターは笑って、メアリーが運んできた紅茶を受け取った 仲介者は、ほっとしたように、自分が作ったケーキを食べてくれている面々を見つめている 「美味しいであります!……こちらも、一口食べて見たいであります!」 「はいはい。それじゃあ、お姉の分も一口こっちにくださいね……あぁ、ほら、口の周りにクリームをつけて」 仲介者の謝罪相手である、エニグマ姉妹も、ケーキは気に入ってくれたようだった 彼女たちの様子を、仲介者はじっと見詰めて 「…………?」 ……ふ、と その視線が…姉妹の、妹の方へと固定される 「むぐ?……どうかしましたか?」 その視線に気付いて、首をかしげる妹 そんな妹に………そっと 仲介者の細い手が、伸ばされた 「え?」 す、と頬に触れる手 その手は、かすかにひんやりと冷たさを伴っていた じっと、じっと 仲介者の色素の薄い瞳が、眼鏡越しに彼女を見つめる 「あ、あの………?」 「……………あぁ、すまない」 つい、と その指先が、彼女の頬を軽く撫でる 「君の頬にも、クリームがついていたもので」 「は、はぁ…」 な、何だったのだろう? 男性に、あぁまでも至近距離で見つめられるというものは……女性としては、なんとも、鼓動が不可抗力で早くなってしまうもので 若干、頬を赤らめてしまっている妹 「………」 それを、仲介者は静かに見つめていた (………かすか、だが………何らかの、都市伝説の影響……) …ぱらり 仲介者が傍らに置いていた「光輝の書」のページが、勝手にめくれる (…その可能性…………52%………駄目だな。彼女の体に悪影響を及ぼしているかどうかまでは、今の僕では判断できない…) 彼女から感じた、何らかの都市伝説の気配 だが、仲介者には、それが彼女にとって有益なものか、不利益をもたらすものなのか、判断はできず その点を指摘してもいいものか否か、判断に迷うのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 仲介者と追撃者と堕天使と
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4991.html
「氷肌玉骨にして熱血の少女」 こんにちは、初めまして…。私は氷山 熔火(ひやま ゆうか)。ようかじゃないですよ。氷麗ちゃんのお友達、です… 自慢ではないですが氷のように透き通った肌をしている、とよく言われます。 火山みたいに煮え滾る熱い血をもっている、と自負しています。そんなどこにでも居ない女子高生、です…。何だろう、この自己紹介 熔火「今日も良い朝日です…。こんな日は早起きしてジョギングに限りますね」 私の毎朝の日課、ジョギング。毎日の運動は健康な身体を作ります 心なしか身体も暖まってきましたよ。ぽかぽかです…。さて、次はあの角を曲がって… 熔火「…っ!!」 角を曲がった私が見たものは。巨大なハンマーを振るう赤い人(?)と… その傍らで真っ赤に染まる…血と青痣で赤と青に染まる氷麗ちゃんでした 熔火「あ」 その光景を見て、私の心に…怒りに火がつく 熔火「ああああああああああああ!」 私はいつの間にか高く飛び上がって…赤いハンマー使いにとび蹴りをかましていました 『がふっ』 熔火「あなた…てめぇよぉ! 私の氷麗ちゃんに何してんだ…このキチ●イハンマーがぁッ!!」 私は氷麗ちゃんを傷つけたこのゴミクズに馬乗りになり、殴る蹴るを繰り返す…絶対にゆるさねぇ! 熔火「死ね、死ね、死ね、死ね…! 地獄で侘びろ!」 『ぐふっ…がっ…み、ミタ、ナ…』 私は怒りに任せ…熱い気持ちに任せ、ハンマー使いをタコ殴りにする そう、冷静さを失い、激情に任せて…攻撃を続けたんだ だから私は。「既にこいつがハンマーを持ってねぇ」なんてそんな初歩的なことにも気づかず、気づけず。 故に頭上にハンマーが来ていることも察せずに… 『私をミタやツは…私のように真っ赤に染まれ!』 氷麗「あぶな…っ」 無慈悲に振り下ろされるハンマーを…遠隔操作で私の体を砕かんとするハンマーを、避けることも受け止めることも出来なかった。 私の体は。粉々に砕け散った… ああ、畜生。頭に血が上ってた…この氷山熔火、一生の不覚だ… 目の前の都市伝説、『赤ハンマー』に手痛い、というか体中痛い打撃を受け、 血塗れになって痣だらけになっている私は白雪氷麗。ゲーム研究部の部員で、熔火ちゃんの友達… 紆余曲折あって、この『赤ハンマー』に襲われて、だから私は応戦した。 契約都市伝説『雪女』で応戦したわけだけれど。最初に不意打ちで一発貰ってしまったせいか、苦戦を強いられた …そして結局、このザマ。惨め。『雪女』の方は雪だから大丈夫だったけれど…私は一歩も動けない ああ、これはもう、終わったかな… まぁまぁ楽しい人生だったわ。 「ああああああああああああ!」 と、目を閉じかけた私の耳に響く、私の目を覚ます声。熔火ちゃんの声だ 熔火「あなた…てめぇよぉ! 私の氷麗ちゃんに何してんだ…このキチ●イハンマーがぁッ!!」 熔火ちゃんは私に止めを刺さんとする『赤ハンマー』にとび蹴りを当てる 助けに来て、くれたんだ… 熔火「死ね、死ね、死ね、死ね…! 地獄で侘びろ!」 とび蹴りを当てて体制を崩した『赤ハンマー』に馬乗りになりつつ、殴る蹴るを繰り返しながら、罵倒する熔火ちゃん 少し言葉遣いが乱れているけど、私のために…あら? さっきから『赤ハンマー』と呼んでいるが。 この都市伝説…“ハンマーを持っていない”…? さっきまでは持っていたのに…? 氷麗「……!」 上を見上げると、熔火ちゃんの上には『赤ハンマー』がもっていたハンマーが。 こいつ、ハンマーの遠隔操作もできたの…!? 『私をミタやツは…私のように真っ赤に染まれ!』 氷麗「あぶな…っ」 咄嗟に危険を知らせようと声を上げたときにはもう既に遅く。 鮮血で真っ赤に染まったハンマーは、無慈悲に容赦なく振り下ろされ。 熔火ちゃんの身体は、肉体は。 粉々に 砕 け 散 っ た … 私の、せいで。私がもっと早く、気づいていれば… 『くひっ…ははははは! わわ、私を見るからこうなるのよ…! さて、少し邪魔がはいっ、入っちゃったけど…』 振り下ろしたハンマーを携え、『赤ハンマー』が私にゆっくりと近づく。 粉々に砕け散った熔火ちゃんの身体を間近で見ていた私は、当然茫然自失になっていたので そのさまを目を虚ろにして眺めている。 『つつつ次はああ貴方よ…! わた、私みたいに真っ赤に染まりなさいいいい!』 ハンマーが私に振り下ろされる。 当たったら死ぬだろうけど…友達も守れなかった私に生きる価値など既にない。 だから… 『雪壁…』 …? 既に私の頭はハンマーで潰されているはずなのに、私の頭はしっかりと形を保っている。 というか、何時までたってもハンマーが落ちてこない。これはいったい…? 『まったく、氷麗ったら…今の攻撃は避けられたでしょう?』 私の契約都市伝説、『雪女』が雪で壁を作り、ハンマーを受け止めていた 赤槌『くっ…』 雪の壁を砕こうとしている『赤ハンマー』だが、苦戦しているよう… 氷麗「どう…して…?」 私は自分の傷口と血液を凍らせて応急処置しながら、『雪女』に尋ねる。 雪女『どうしてって…決まってるじゃあないですか。都市伝説が契約者を守るのは当たり前ですよ?』 氷麗「違う…」 そうじゃない。そんなことを聞いてるんじゃない。 雪女『え?』 氷麗「私が聞いてるのは、それが出来るのならどうして…熔火ちゃんを助けてくれなかったのか、ってこと…」 雪女『………』 しばらくの沈黙の後、雪女は口を開いた――いや、雪の壁を作ってハンマーを受け止めている雪女は当然向こうを向いているので、 私からは雪女の口元は見えないのだが、声がしたという理由からそう判断しただけなのだが 雪女『…できなかったんですよ。私も、ギリギリまであの赤ハンマーがハンマーを遠隔操作していることに気がつかなかった…気がつけなかったんです。 だから間に合わなかった…。その時は私の体も砕かれていて雪の量が足りなかったから、そこまで届かなかったんです…ごめんなさい』 申し訳なさそうに『雪女』は言う 氷麗「……いえ、貴女のせいじゃない。私が、もっと早く気づいていれば…。 もっと早く察していれば、あの子は攻撃を受けずに済んだ。 熔火ちゃんは、死なずに済んだのに…」 ……めったに感情をもらすことがない私の目から、雫が落ちてくる。頬が濡れて、止まらない 雪女『え?』 と、『雪女』は驚いたような声を上げる 雪女『何を言っているんですか? 氷麗。あの子、熔火さんはまだ死んでいませんよ?』 え? 氷麗「……え?」 そんなわけない。そんなはずはない。私の目に焼きついて離れない。だってあの子はハンマーに叩き潰されたんだから 動くことも助けることも出来ず、無残にあっけなく圧死したんだから。 赤ハンマーに真上から叩き潰されて、 氷麗「粉々に、砕け散ったんだから」 ………ん? あれ?『粉々』? 『粉々に砕け散った』…? 待てよ、待てよ…おかしくないかしら? 『ぐちゃぐちゃに潰れた』なら分かる。けど、人間が…脊椎動物が、 氷麗「ハンマーで叩かれて粉々に砕け散るなんて、ありえない…」 そう、私の親友熔火ちゃんは、まるでガラスのように――薄氷のように、割れて砕けてしまったんだ 雪女『…ああ、そろそろ限界です…ね!』 とうとう雪の壁が破壊される。しかしそれを破壊したハンマーの勢いも殺され、つまり仕切りなおしの状態になったわけだ 赤槌『ああ…恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいッ! 顔から火が出そうだわ…だから叩き潰す!』 と、ハンマーを『赤ハンマー』の顔面に、氷の弾丸が飛んでくる 赤槌『…え?』 「これで冷えました?」 弾丸が飛んできた方向から聴きなれた声がして、そこに見慣れた少女の姿が …あの位置は、雪女の雪が積もった場所で…そして何より。 熔火ちゃんが、砕かれた場所… 雪煙が晴れ、影の正体が露になる。そう、そこにいたのは、やっぱり… 熔火「ありがとうございます雪女さん…お陰で、頭が冷えました」 まるで、あの時の破壊が無かったかのように。氷細工のように美しい少女が佇んでいた 赤槌『お前、は…! さっき確実に殺したはず…このハンマーで! まさか、まさか私がしくじったとでも言うのか!? ああ恥ずかしい! 私がハンマーで仕留め損ねるなんて…!』 熔火「いえいえ、確かにしっかり砕かれましたよ、私は…。だけど残念なことに、私は砕かれたくらいじゃ死にません」 熔火ちゃんは赤ハンマーを指差しながら、ポーズを決めて、次の言葉を言い放つ 熔火「恥ずかしさで焼けてしまいそう? だったら安心してください。この私、氷山熔火の熱血で、貴女の頭を冷やして差し上げ…」 氷麗「熔火ちゃん!」 良かった。良かった。良かった…熔火ちゃんが生きてて、良かった……! 私は思わず、熔火ちゃんに抱きついていた 熔火「~///」 ……ん? あれ? 熔火ちゃんから湯気が出てる? というか熔火ちゃんがどんどん痩せていってる? 熔火「駄目ッ…です氷麗ちゃん…こ、こんなところで…!」 雪女『……』 氷麗「え? な、何? どうしたの熔火ちゃん!? 大丈夫!?」 熔火ちゃんはなぜか顔を赤くしているし、雪女は冷ややかな目でこちらを睨んでいる。どうしたのかな… よく分からないけどこのままではまずいと思ったので、熔火ちゃんから身体を離した すると熔火ちゃんはしばし残念そうな表情をした後、自分の頭に手を当てる。すると熔火ちゃんの顔の赤みが消え、湯気も出なくなった 熔火「氷麗ちゃんにこんなところで抱きつかれるなんて……頭がフットーしちゃったよおっっ…」 氷麗「沸騰しちゃったの!?」 大事件だ。でも一体どうしてそんなことに… 雪女『氷麗、貴女はハーレムラノベの主人公ですか…?』 相変わらずの冷ややかなジト目で、雪女は私に言う 氷麗「え? ハーレムラノベに喩えるなら私はヒロインその3あたりだと思うんだけど」 クーデレポジション的な。自分で言うのもなんだけれど 熔火「こほん。では気を取り直して…。 『赤ハンマー』。私のこの煮え滾るような熱血で、貴女の頭を冷やして差しあげます……!」 どうやら立ち直った様子の熔火ちゃんは、律儀に待っていてくれた『赤ハンマー』に向き直り、ポーズをキメながらそう言った 赤槌『やってみなさい。貴女が私をどうこう出来ると思っているなら、そのふざけた幻想ごと叩いて打破して壊して砕いて、潰してあげる…って何言わせんのよ!』 顔をより一層真っ赤にしながらハンマーを構えつつ熔火ちゃんに飛び掛ってきた。照れるならやらなければいいのに… 熔火「『封氷被鎧(アイスタンク)』」 熔火ちゃんは身体に氷を鎧のように纏い、ハンマーを受け止めてしまう。もしかして、これが熔火ちゃんの契約都市伝説…? 氷を操るタイプの都市伝説は結構あるけど… 赤槌『くっ…硬い! ならば私も…「落槌注意(フリーフォール)」…ってどうしてさっきから私に恥ずかしい台詞ばかり言わせるのよぉ!』 熔火ちゃんの上空にハンマーを転送する『赤ハンマー』。そのハンマーは重力に従い、熔火ちゃんの頭上へ落ちる…咄嗟に避けようとする熔火ちゃんだったが、間に合わず、ハンマーは熔火ちゃんの頭部を砕く… 赤槌『ふんっ。口ほどにも無いわね。私を辱めるからそうなるの…え?』 頭部を砕かれたはずだが、見ると熔火ちゃんの首から上がどんどん凍っていき、頭が完成すると元の熔火ちゃんに戻った 熔火「今のは…痛かったですよ?」 赤槌『っ!! どうして!? 貴女それでも人間なの!?』 熔火「ええ、勿論人間ですよ。それにさっき言ったでしょう? 私は砕かれても死なないって」 何これ、私の応急処置なんか目じゃないくらいの再生能力…「氷で肉体を修復する」それが熔火ちゃんの能力!? それならさっきの雪女の発言にも合点がいく…! ん? 「氷で肉体を修復する」? それってもしかして…じゃあ熔火ちゃんの契約都市伝説ってまさか… 氷麗「『ハボクック』…?」 私がぼそりと呟くと、『赤ハンマー』は何かに気が付いたように表情を変える 赤槌『「ハボクック」…!? まさか、貴女の契約都市伝説は「氷山空母」!? 計画のみに終わった、氷で出来たイギリスの航空母艦! 氷で出来ているから、「水さえあれば凍らせて損傷を補修できる」というあの…!』 熔火「おや、なかなか鋭いですね二人とも。ええそうですよ。私の契約都市伝説は『氷山空母』。私の身体は氷で出来ています」 雪のような美白と、氷のように透き通った肌を持つガラス細工のように美しい氷肌玉骨の少女、氷山熔火。けれどまさか、本当に肉体が氷で出来ていたなんて…! 熔火「だから私は冷気で空気中の水分を凍らせることが出来ますし…身体が砕かれても凍らせればすぐに元通りです。空中の水分の凍らせ方を工夫すればこんなことも出来るんですよ…? 食らいなさい、氷の巨砲、『銃凍砲(クレバスカノン)』!」 熔火は器用に氷の大砲を作ると、そこから氷の砲弾を飛ばす 赤槌『その程度!』 しかし『赤ハンマー』はそれを難なく打ち落とし、叩き壊す 氷麗「…! 『雪女』、私たちも…!」 雪女『はいはぁーい♪』 氷麗「『寒射寒撃雨霰(サンキューブリーザード)』!」 広範囲にわたって吹雪や霰を発生させ、敵にぶつける技『寒射寒撃雨霰』。本来なら味方も巻き込んでしまう諸刃の剣だけれど、私の読みが正しければ… 熔火「そう、その通り…氷で出来ている私にとって、吹雪は寧ろメディアラハンです!」 ベホマズンではなかった。ケアルガでもなかった。熔火ちゃんはどうやらメガテン派らしい… …と、いうか。私今までこういうのに名前つけたこと無かったんだけど。これはまさか、熔火ちゃんのペースに乗せられてる…? 幼馴染ながら恐ろしい子…! 赤槌『ぐっ…吹雪で前がよく見えないわ…! だがっ』 『赤ハンマー』のハンマーが長く伸び、先端の鈍器が反対側にも出現する。そして彼女は、それを高速回転させた 赤槌『「回転木槌(ハンマーゴーランド)」! 』 すると扇風機のように――扇風機以上の強風が、暴風が発生し吹雪を吹き飛ばした 吹雪が晴れれば視界も開ける。視界が開けば当然―― 赤槌『また私に恥ずかしい台詞をォォオオオオ!!! 死ね! 血に塗れて赤く染まれぇ!!』 高速回転するハンマーを瞬間移動を利用して『射出』する! そのハンマーは真っ直ぐ私の方に―― 『くひっひ…そっちの『氷山空母』の契約者には効かないだろうけど、貴女には十分有効でしょう――だから先に片づけてあげるわよぉ!!!』 この速度――しかも遠隔操作が可能……避けるのは不可能ね。雪の壁でガード? いや、この回転では破壊されてしまうでしょうね… その前に本体を倒す? ……いえ、さすがに間に合わないわ。一体どうしたら―― 熔火「これ以上氷麗ちゃんを傷つけさせない……!」 すると私の目の前には熔火ちゃんの背中が。熔火ちゃんが身を挺して守ってくれた…… 赤槌『くっひひひひひひひ……!』 『封氷被鎧』を展開し、回転するハンマーを受け止める熔火ちゃんだったが、しかし当の赤ハンマーは「笑っていた」。これは、嫌な予感…… 赤槌『ひっ、引っ掛かったわねぇ! 必殺……鬼殺し火炎ハンマー!』 やはり予感は的中した。赤ハンマーの高速回転するハンマーが火を放ったのだ。摩擦によるものか、都市伝説の力かは定かではないけれど―― でも、熔火ちゃんの身体は氷……! 氷タイプに炎技は「こうかばつぐん」……つまり! 熔火「くっ……氷の私に対しては、炎による攻撃が有効……!」 「……とでも、思っていたんですか?」 炎のハンマーを受けて体が溶けているが、余裕そうなセリフを吐く熔火ちゃん。……強がりとかじゃ、ないよね……? 熔火「そんなに熱いのが好きならあげますよ……飛びっきりに熱いやつをね! 『指火山(マグマズルフラッシュ)ッ!』」 熔火ちゃんは指を銃のように構えると、指先から弾丸を飛ばしました。……マグマの。 赤槌『ああああああああああ!!!! 熱い熱い熱い熱いッ!!! こ、氷使いじゃなかったの!? 多重契約者……しかも高温と低温、真逆の能力だなんて!』 確かにそうだ。氷とマグマ。高温と低温。凍結と燃焼。全くの真逆の能力――これらを同時に扱うのは非常に難易度が高く思える 熔火「まぁ、確かにこの二つの能力――高温と低温同士折り合いをつけるのは苦労しましたけどね」 赤槌『何なんだ、この能力……! 名前からしてマグマ……『ペレ』か?『ヘーパイストス』か? 『ミノア噴火』か? くっ……! か、顔が焼ける……! 熱い熱い熱いッ!』 顔を押さえながら狼狽える『赤ハンマー』。熔火ちゃんのファインプレーだ 赤槌『い……いや、そうね。どんな都市伝説かなんて重要じゃない……それに、私の顔が焼けるように熱いのなんていつものことじゃないか…… 最初から、恥ずかしさで……顔から火が出そうなんだか、ら!』 誰かと会話しているのか、あるいは自分自身に語りかけているのか――どちらにしてもともかく、赤ハンマーは冷静さを取り戻したようだ。 いや、冷静さというのは正確ではないと思う。羞恥心に苛まれているのだし。 まぁ、とにかく調子が戻った赤ハンマーは、やはりハンマーを飛ばしてきた。私に向かって 赤槌『あんたを狙ったところでそこの二重属性女が守ってくるんでしょう。だったら――そっちから壊すまでよ』 ……ではなく、そのハンマーは熔火ちゃんに向かって飛んでいた 熔火「無駄ですよ。打撃だろうと斬撃だろうと炎だろうと氷だろうと、私に物理攻撃は通じません!」 『氷山空母』の能力によって、氷の鎧を身にまとい、ハンマーを受け止める熔火ちゃん 赤槌『――かかったわね?』 しかし、その瞬間、赤ハンマーの口角がにやりと上がった 熔火「んぐ……ああああああああああああああああ!!!」 すぐに熔火ちゃんの悲鳴が聞こえる。どういうこと? 熔火ちゃんに鈍器は通じないはずなのに……! 赤槌『ビンゴ。やっぱりね。いくら氷でできていようと所詮人間。電気を流せば痺れるわ。 名付けて「雷神の鉄槌(トールハンマー)」……じゃないわよ私! 何名づけてんのよ! ああ恥ずかしい恥ずかしい! 』 顔を真っ赤にして騒ぐ赤ハンマー。でも、それどころではなく、熔火ちゃんは電撃を浴びている。 確か『氷山空母』は海水を使用することを前提に作られているし、強度の関係上パルプが混じっている。 混じりけのある水は、特に海水は電気をよく通す――つまり電気は効果覿面っ!! 赤槌『さて……厄介な壁役を封じられたし、貴女だけなら余裕よ。傷口は凍らせてある程度処置したみたいだけど、 それでも打撲や骨折まではどうしようもないでしょう……? ただでさえ一度ぼこぼこにした相手、満身創痍とあれば、ねぇ?っと!』 そう言いながらハンマーを飛ばしてくる赤ハンマー。その通りだ。一応動くことはできるとはいえ、この身体では満足に動けない 氷麗「それはどうかしらね……『雪女』!」 雪女『いえす、まむ!』 何故か軍隊みたく返事した雪女は、能力で猛吹雪を生み出す――攻撃力よりも、視界を奪うことに重点をおいた吹雪を。 そして吹雪に紛れてハンマーをかわす。……『雪女』に手伝ってもらって。 赤槌『くっ……またしても! み、見えない……!』 さて、この状況、はっきり言ってどうしようもない。だから一時撤退だ。私達は吹雪に紛れ、その場を離れた。 そして、吹雪が止む。吹雪が止めば、視界も晴れる 赤槌『ん……? あいつらはどこに行った? 逃げたのか……おや』 何かを見つけた様子の赤ハンマー。いや、見つけたのは何かではなく誰か。具体的には熔火ちゃんだった 赤槌『おやおや。随分と薄情なお友達じゃないか。私のハンマーで痺れたこいつを置いていくなんてさぁ。じゃ、止めと行くわよ――』 先ほどの『雷神の鉄槌』を、今度は手に持ったハンマーから直接電撃を流し込んで行う赤ハンマー 赤槌『死になさい!! 感電死させた後で、たっぷり真っ赤に染めてあげ………!?』 「『噴火の魔剣(ヒートソード)』。そんなに真っ赤なのが好きなら、真っ赤な炎で焼いてあげますね?」 しかし、その瞬間、赤ハンマーは背後から燃え盛る剣で刺されていた。貫かれていた。そう、これは勿論―― 赤槌『二重属性女……! な、何故……!? 確かにあなたは目の前で倒れて……!』 熔火「ああ、ごめんなさい。それ、偽物なんです」 氷麗「私が氷で作った、ね。私だって多重契約くらいしてるのよ?」 赤槌『多重契約者――貴女もか! いったい何の都市伝説……ぐふっ』 ただでさえ赤い身体を、鮮血と炎で赤く染めながら赤ハンマーは言う。 赤槌『さっきの剣、芯はマグマだった……それに氷で人を作る能力……この都市伝説は ……いや、どうでもいいわね。こうなったら切り札を切らせてもらうわよ――打撃だけどッ!』 血を吐きつつ、恥ずかしいと言いながらハンマーを飛ばしてくる赤ハンマー。一見すると、ただのハンマーだけど……これが切り札? 熔火「氷麗ちゃん、危ない!」 身体がぼろぼろになっている私は、ただのハンマーでも十分に危ない。なので、熔火ちゃんは私をかばった。 かばって、ハンマーを腕に当て、『氷山空母』の力で弾いた。 熔火「ぐはっ……!?」 その瞬間、熔火ちゃんの背中から胸にかけて、焼けたような穴が開いた――そう、丁度そこの赤ハンマーと同じように。 氷麗「……! あ、貴女……! 熔火ちゃんに何をしたの……!?」 赤槌『く、くふ、くっふひひひ……き、決まったみたいねぇ。私の切り札、「偽り写し記す大槌(ヴェルグ・アヴェスター)」ってね……。 私は「赤ハンマー」として当たり前のことをしただけよ……あの女を、私と同じようにした』 氷麗「ま、まさか……!」 赤ハンマーは、出会った相手を『ハンマーで殴り』、『自分と同じように』真っ赤にしてしまう現代妖怪。 まさか、この『ハンマーで殴る』という部分と、『自分と同じようにする』という部分を拡大解釈して……!? 赤槌『その通り……ハンマーを当てた相手に、自分の今のダメージと状態異常を写す。これが私の切り札よ……ぐふっ』 血を吐きながら、不気味に笑いながら、赤ハンマーは言う。 熔火「そんな……さっきから何度も氷で補修してるのに、傷が塞がらない……!」 そういえば、赤ハンマーの方に気を取られて、惨状の方に気が行って、気が付かなかったが、 よく見ると熔火ちゃんの胸部から滴り落ちる血は、何だが煮えたぎっているように見える。 いや、さらによく見るとこれは――マグマ? 赤槌『へぇ。そこの女、体は氷で出来てるのに血液はマグマなのね……ぐふっ。まるで、火山、だわ…… ねぇ、私も種明かししたんだし――教えてくれてもいいんじゃない? 貴女たちの、二つ目の契約都市伝説……げほっ』 氷麗「『つらら女』。雪女と近縁種、もしくは同一とされる妖怪」 熔火「ごほっ……ちぇ……『チェルフェ』……ですよ。チリの火山に住む、岩と炎で出来た怪物です……ぐふっ」 情報1に対し、2では割に合わない――とも思ったけれど、ここは素直に答えておいた。 別に隠すほどのことでもないし。 しかし、赤ハンマーの傷口が開くのと、悪化するのと比例するように――同調するように、熔火ちゃんの容体も悪化しているようだった。 まぁ、同じ傷なのだから当然か。……しかし、その悪化も『氷山空母』で治せないところを見ると、本家本元の『偽り写し記す万象』より使い勝手がよさそうだ。 赤槌『貴女たちにはこっぴどくやられたけれど――それでも私と同じにできた。 叩き潰して、真っ赤に塗りつぶせた。……だから、今回はこのあたりで満足しておきましょう。 でも、覚えておきなさい――』 血まみれで、息も絶え絶えに、生まれたての――死にかけの小鹿のように、赤ハンマーは捨て台詞を吐いた 赤槌『次は勝つ。完膚なきまでに潰す。叩いて潰して塗りつぶす。真っ赤に深紅に紅蓮に――鉄槌下して塗り上げる。 首を洗って待ってなさい。腕を磨いてまた来るわ』 流血に慣れたのか――あるいは、都市伝説ゆえか。先ほどと打って変わって、途切れることなく言った。 そして、一呼吸おいて、 赤槌『それじゃあ、また会いましょう……って、何格好つけてるのよ、私! 負けたくせに! 最後のも一矢報いただけだし(ハンマーだけど)、 結局2つ目の都市伝説の謎解きは諦めちゃったし――格好つけられる要素がないでしょう! 何を大物ぶってるのよ、恥ずかしい恥ずかしい恥ず…………』 と、ただでさえ赤い顔を一層紅く染めながら、騒いでいた、喚いていた赤ハンマーは突然にも、忽然と姿を消してしまった。 文字通り跡形もない――ほかの誰かに消滅させられた、とは考えにくいだろう。それならばもっと反応していいはずだ。 少なくともただで不意打ちでやられるような都市伝説ではない――そう言い切れる。そのくらいには強かった。 氷麗「空間移動系、かな……」 私の部活仲間であり、同級生であるところの、任天堂寺君――彼の契約都市伝説、『ゲーム脳』を思い出した。 これは敵による攻撃でなく、避難、逃亡であると考える。彼のそれと同じ、もしくは似た、『空間移動系』――あるいは、『異空間生成系』の能力であると推察した。 でも、赤ハンマーにはそんな逸話ないわよね……。もしかして、あの赤ハンマー…… と、思案する私だが、その思考は強制的に中断させられることとなる。 熔火「つ、ら、ら、ちゃーん!!!」 氷麗「ぐえっ」 ぐえっとか言ってしまった。乙女チックの欠片もないし、女子力なんて微塵もなかった。 でも許してほしい。傷だらけの肉体に、自分と同じくらいの身長、体重の女の子が飛びついては、こんな声も出ようというものだ。 え? 何キロか、ですって? 女の子にそういうことを聞くものじゃない――と、取ってつけたような女子力を発揮しておきましょう。 熔火「無事でよかったよー氷麗ちゃん! 心配したんだからね! 痛くなかった?」 痛いのは今だし、無事でよかったも心配したも私の台詞だ。 氷麗「それは私の台詞だよ――本当、死んじゃったかと思ったんだから。 ああ、そういえば――もう大丈夫なの? さっきの傷……」 熔火「ええ。どうやら永続するタイプの呪いじゃないみたいですね。あるいは射程外に出たのかも」 氷麗「へぇ……。それにしても、ハンマーの遠隔操作までならまだしも、発火や発電、伝説を拡大解釈、曲解した呪いに、そして最後の消失マジック。 私にはどうも、あの都市伝説が……『赤ハンマー』が、野生の都市伝説とは思えないのよね」 熔火「確かにそこは私も気になっていました。おそらく契約者持ち――それも、多重契約者だと思いますよ」 炎までならギリギリ曲解と言えなくもなさそうですけれど、発電や消失までとなると、ね…… と、熔火ちゃんは言った。直情的で情熱だが、冷静で思慮深いのが彼女、氷山熔火ちゃんなのだ。 その矛盾した人間性こそが、性格こそが、あのつじつまの合わない二つの都市伝説――低温と高温、『氷山空母』と『チェルフェ』を同時に扱える理由だろうか。 気になったので、私は熔火ちゃんに聞いてみた。 すると、別に隠すほどのことでもなかったらしく、 熔火「そうですね。私が先に契約したのは『氷山空母』の方ですけれど、この二つの都市伝説。 『氷山空母』と『チェルフェ』――氷の体と熔岩の血液。氷を融かすマグマと、マグマを固める氷。 この二つに折り合いをつけるのは、相当苦労しました。 折り合いをつけられたのは、私の性質のこともありそうですけれど――もう一つの、3つ目の契約都市伝説も、理由の一つ、きっかけの一端でしょうね」 一呼吸置き、 熔火「『マクスウェルの悪魔』――熱力学第二法則のエントロピー増大則に逆らう、化学の悪魔。温度差を生む都市伝説。それがあったからこそ、ここまでうまく馴染んだんだと思います」 計画中止に終わった兵器に、火山のUMAに、思考実験――性質どころか種類も違う、3つの都市伝説を同時に操るだなんて。 親友ながら恐ろしい。 氷麗「熔火ちゃんはすごいなぁ……私の契約都市伝説は、みんな似通ったものなのに」 冷気を操る『雪女』、氷を人間に変える『つらら女』。似通ったというか、同じといってもいいくらいだ。 熔火「氷麗ちゃんもすごいですよ。似たような2つの都市伝説から、全く別の能力を解釈するなんて……格好いいですよ」 格好いいと言われるほどのことでもないと思うが、しかし褒められて悪い気はしない。 否定しないのは熔火ちゃんらしいと思ったし、女子に対して格好いいはどうかとも思ったけれど。 氷麗「くすっ……ありがと」 私は小さく微笑んで、素直にお礼を言った。 熔火「つ、氷麗ちゃん……」 熔火ちゃんの頭から湯気が出た。……顔が若干赤い? 扱えてると思ったけれど、扱い切れてないのかしら? 雪女『鈍いですね……心まで氷柱ですか、貴女は』 と、ひどいことを言う『雪女』のことは無視した。私にだって感情くらいある。 名前は氷柱だが、心は雪解け水だ。 熔火「あ……あの……その……」 どうやらもじもじしている様子の熔火ちゃん。花を摘みに行きたいのか――と聞くほど、私はデリカシーに欠けてない。 花も恥じらう乙女なのだ。さりげなく行かせてあげるべきだろう―― 熔火「その……今から一緒に、お食事、行きま、せんか……?」 氷麗「そんなにかしこまらなくても、改まらなくても、もちろんOKよ」 友達なんだし、顔を赤らめながら、もじもじしながら言う必要はないと思うのだけれど。 まぁ、改めて誘うのも小恥ずかしいということなのかな? 氷麗「じゃ、行こうか?」 と、私は熔火ちゃんの手を引いた――すると、じゅっという音と共に、熔火ちゃんの頭が消滅した。 というか蒸発した――全然制御できてない。仕方ない子ね…… 氷麗「もう……折り合い付けたんじゃなかったの?」 私は氷麗ちゃんの頭に――頭だった位置に手をかざして、冷気を放った。 冷気を操れるのは何も『雪女』だけではないのだ。 熔火「あ……ありがとうございます」 頭部は氷に戻ったが、目はまだとろーんとしている。まぁ、そこは自分でどうにかできるだろう。 瞬きとかすれば。 氷麗「しっかりしてよね……大好きな熔火ちゃんが蒸発しちゃったら、すっごく悲しいんだから」 涙腺も表情筋も固い私も、大声で泣き喚いちゃうわよ。そんな格好悪い真似、させないでよね。そう言った。 熔火「あ、あぅ……」 またもや真っ赤になって湯気を出してる熔火ちゃんだが、流石に高校生にもなってあぅ……はないでしょ。 ライトノベルか。 そういうのが許されるのはフィクションだけだと思うが、まぁ可愛いのでよしとした。 氷麗「それで、どこに行こうか? 満身創痍だけれど、まぁ、傷をいやすためにもデートと洒落込みましょうか」 その後、食事に行くまでに何度も熔火ちゃんの頭部再生に手を焼いた――冷やした。 まったく、本当に……熔火ちゃんは、私がいないと駄目なんだから。 続く EXIT
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2317.html
「足売り婆さん」 やあ、久しぶり。娯楽遊だよ☆俺ってさ、部活系の話にしか出てないよね。一応契約者なのに。そうそう、最近この辺で都市伝説 を見たって情報が有るんだ。これって俺の出番だよね☆ 遊「この辺で出るって聞いたんだけどなぁ」 そんなことを言いながら歩いていると、お婆さんの声が聞こえた 「足は要らんかえー足は要らんかえー」 この声、この台詞。間違いなく『足売り婆さん』。足は要らんかと聞いてきて、要ると答えれば足を無理矢理付けられ、要らないと答えれば 足をとられる、と言うものである。 遊「足売り婆さんか。…いくよ、サーカス☆団!」 遊はそう言ってポケットからテントを取り出した。そしてそこから… 「団長~呼びました~?」玉乗りをしながらジャグリングするピエロが 「アンタ達、団長がお呼びよ!」「「ガウ!!」」熊やライオンを従える猛獣使いが 「団長」「あたし達に」「「お任せ下さい!!」」空中ブランコを華麗に操る男女が 「……がんばります」綱渡りをする男が、飛び出してきた。 遊「よし、今回のターゲットはそこにいる『足売り婆さん』だよ☆」 足婆「足は要らんのかえ?」 ピエ「そこにいるやつですね~」 猛獣「生憎、足なら間に合ってるわ」 足婆「要らんのなら…寄越せ!!!」 猛獣使いのその言葉に反応し、足売り婆さんが飛び掛ってくる。しかし、 ピエ「危ないですよ~婆さん」 その攻撃はピエロの大玉で阻まれてしまう 足婆「な……」 空中「僕たちの」「絆を」「「見せてあげる」」「よ!」「わ!」 空中ブランコの男女が足売り婆さんを高く飛ばす。 綱渡「……!」 綱渡りの男が棒で足売り婆を突き上げる 猛獣「レオ、あの火の輪を潜りなさい!」「ガルル!!」 猛獣使いに命令されたライオンが火の輪に飛び込む。…足売り婆を巻き込みながら 足婆「ぐ…熱い…焼けるぅ……!!」 当然、足売り婆の体は燃え上がる。 遊「よし。ここまですればもう動けないよね。さ、〈勧誘〉してやって☆」 ピエ「了解しました~」 遊がそう指示すると、ピエロたちは足売り婆を紐で結んだ。そしてピエロたちは目の前に不思議な穴 のようなものをつくり…そこに足売り婆を放り込んだ 遊「さ、これでお前も僕のサーカス団の仲間入りさ☆『サーカスは人拐い』…これが俺の契約した都市伝説だよ☆」 ピエロたちが放り込んだのは異空間にあるサーカスの楽屋。そこに入れられれば強制的にサーカス団の一員となるのだ。 遊「ふぁーあ。お前たち、もう戻っていいよ☆」 「「「「「では、お言葉に甘えて」」」」」「「ガウッ!」」 こうして娯楽遊の都市伝説退治が終わるのでした 続く
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4560.html
「戦う漫画家達」 中央高校、漫画研究部の部員の一部は、歩きながら漫画のネタを探している 「貴様等ッッ! 何か良いネタは見つかったか?」 独特の立ち方と独特な台詞回しそう言うのは部長の新希浩彦(あらきひろひこ)。好きな漫画はジョジョの奇妙な冒険、である 「私は、まらみちゅかってにゃいぃわ」 呂律の回らない喋り方で答える彼女は部員の御佐倉 南乞(みさくら なんこつ)。好きな属性はふ●なりである(しかし作者がふ●なりに全く興味がない、というか寧ろ苦手な上、エロを書く気が全くないため、この設定が生かされることはないだろう。この学園では設定なんてなんの意味も持たない) 「相変わらず呂律が回ってナイナイナイアガラね…」 綾乃ギャグでツッコむ彼女は七森海月(なもりみつき)。好きな漫画はゆるゆり、そして本人もレズビアンである 「俺も見つかってないわ。つーか漫画描くのめんどくさい。いや寧ろ生きていくのがめんどくさい。チーズ蒸しパンになりたい」 ダルそうにぼやく彼は宙智栄昭(そらちひであき)。好きな漫画は銀魂である。甘いものとマヨネーズと辛い物が好きな生活習慣病予備軍である 「僕もまだ見つかってないよ。何か見つかるといいけど」 冷静に言う彼は大庭洋(おおばひろし)。好きな漫画はDEATHNOTEと、とっても!ラッキーマンである 「ティヒヒ、わたしもまだ見つかってないですよー」 不思議な笑い方で言う小柄な彼女は碧城優女(あおきうめ)。好きな漫画はひだまりスケッチ、好きなアニメはまどか☆マギカである 「だけどオラワクワクしてきたぞ! どんな面白ぇネタが見つかるのか!」 やけにテンションが高い彼は酉岾彰(とりやまあきら)。副部長で、好きな漫画はドラゴンボールとドクタースランプアラレちゃんである 優女「きゃあ!?」 突然優女が何者かに襲われた。赤い毛布に包まった怪しい男だ。その男の毛布に優女が包まれた 南乞「うめひゃぁん!」 しかしそんな南乞の叫びも遅く、優女は魔界に連れ去られてしまった ―魔界― 『ケケケケケケ! これでまた俺のコレクションが一つ増えた…。さぁ、俺の玩具にしてやるよ』 優女「こんなのってないよ…あんまりだよ…」 『じゃあ先ずは大人しく喰らっとけ』 そういって、どこからか取り出した刃物を投げる『赤い毛布』 優女「っ…え、えいっ!」 突然、優女の体が麺のようなもの…焼きビーフンに変わって散らばり、刃物を全てかわしてしまった 『チッ…! てめぇ契約者か…!』 優女「うん。そうだよ。『蒼樹うめの主成分は焼きビーフン』っていうの」 『くそ…だが! レッドフレイム!』 何故か『赤い毛布』の手から炎が飛び出し、優女を襲う 優女「きゃ…! うぅ…熱いよ…」 『ここは魔界だ。そして俺はここの主だ。俺は! 俺が許可した人物だけは! この世界で魔法が使えんだよ!』 ―現世― 浩彦「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ! 『俺は赤い毛布に包まった怪しい男を見た思ったらいきなり碧城が消えていた』 な…何を言っているのかわからねーと思うが俺も何が起きたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった… 催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」 洋「まぁ、恐らく『赤い毛布』って都市伝説で、その能力で魔界に連れ去ったんだと思うけど」 彰「それならオラに任せてくれ! オラの契約都市伝説『鳥山ロード』。オラとオラの許可したものだけが通れる目的地までの道を作り出せるからな!」 『鳥山ロード』。漫画家、鳥山明は愛知から空港で出版社と原稿のやり取りをしていたわけだが、その空港への往復が不便だったため、上京を考えていた。 しかし、巨額納税者である鳥山が愛知から離れるのは困るため、とある自治団体が鳥山の自宅から空港へ直結する専用の道路を作った…そんな都市伝説である 栄昭「んじゃどうするよ。無論優女は助けるとして、あの『赤い毛布』のヤローは?」 南乞「もちろん私達のぉおお優女ひゃぁんをしゃらったんらもん。ボコボコにしゅるのぉおおよお゛お゛お゛ぉ」 海月「ちょっと何言ってるのか分からナイナイナイアガラよ…。でも決まってるわ。みつき達の仲間を傷つけた奴は一人残らず――」 海月「――罰金バッキンガムよ」 ―魔界― 優女「…でも。魔法が使えるのは貴方だけじゃないんだよ。マミさん!」 「ティロ・フィナーレ!」 優女が叫ぶと、どこからか中学生にしては胸の大きい、金髪ツインドリルの少女が現れ、『赤い毛布』をリボンで縛って巨大なマスケット銃で撃った 『かはっ…なんだ!?』 優女「ティヒヒ、知らないの?『見滝原町のモデルは群馬県』なんだよ? 」 『見滝原町のモデルは群馬県』。まど☆マギの舞台、見滝原町は現実の群馬県がモデルである、という都市伝説。 これにより優女は、まどマギに登場する魔法少女や魔女を、最大で5人まで召喚することができるのだ。しかし、ワルプルギスの夜とクリームヒルトはそれ1体までしか召喚できず、ワルプルギスは2週間に1回、クリームヒルトは1ヶ月に1回しか召喚できない。 また、女神まどかは召喚すると、戦った後酷い頭痛と疲労と筋肉痛に襲われ、2週間は寝込んでしまう。しかも、2ヶ月に1回、一人しか召喚できない。また、自分が魔法少女になることもできる 『ぐ…毛布のお陰で痛くはねぇ…。痛くはねぇけど許さねぇ! 来い!』 『赤い毛布』が叫ぶと、どこからともなく沢山の魔物がやってきて…優女に襲い掛かった 優女「っ! ほむらちゃん! 杏子ちゃん! さやかちゃん! 織莉子ちゃん! 数が多すぎる…!」 黒髪ロングの暁美ほむら、赤髪ポニテの佐倉杏子、青髪ショートの美樹さやか、銀髪ロングの美国織莉子が現れ、魔物と戦う 『ケケケケケケ! 全然足りねぇよ! このままじゃジリ貧だなぁ?』 そんなことを言いながら、瞬間移動で『赤い毛布』は優女の後ろに現れ、蹴飛ばした 優女「きゃあ!」 『ケケケ! どうやら不意打ちだと『蒼樹うめの主成分は焼きビーフン』とやらは使えねぇみたいだなぁ? じゃ、死ね』 魔法少女達が捌ききれなかった魔物たちが、怯む優女に容赦なく襲い掛かる 『ケケケケケケケ! ま、形くらいは残してやっから安心しな!』 醜く嗤いながら叫ぶ『赤い毛布』。優女は能力を発動しようとするが、間に合わない… ???「…時よ止まれ! ザ・ワールド! …そして時は動き出す」 瞬間、優女を襲っていた魔物は皆ナイフで貫かれていた 『!? チッ、仲間が来やがったか…。だが、幾らなんでもやられるのが早すぎる…!』 催眠術や超スピードなんてチャチなもんじゃ断じてねぇ早さで退治された魔物達。 結論から言ってしまえば、これをやったのは新希浩彦である。『荒木はスタンド使い』。ジョジョの作者荒木飛呂彦はスタンド使いである、という都市伝説。浩彦はこれにより、ザ・ワールドの時間停止を使って魔物を撃退したのだ 浩彦「貴様かッ? 俺達の仲間の優女を攫ったのはッ!」 彰「返答しだいでは容赦せんぞ…!」 洋「君は…僕が裁く」 海月「みつき達の優女ちゃんに酷いことしたわよね? 罰金バッキンガムされる覚悟はできてるんでしょうね?」 南乞「絶対に許しゃにゃいぃ!!」 栄昭「俺達の大切な仲間を襲う奴ぁ…黙って見過ごす訳には行かねぇ!」 とんでもなく格好良く登場する漫研部員達 優女「みんな…助けに来てくれたんだ…!」 海月「ええ! 優女ちゃん、これで安心アンコールワットよ! さぁ、みつきの胸に飛び込んでおいで!」 栄昭「やってる場合か!」 『な…なんだてめぇら…?』 あまりの濃すぎるメンバーにたじろぐ『赤い毛布』 浩彦「おっと! 自己紹介がまだだったなッ! 漫画研究部部長、『七人目のスタンド使い(ラッキーセブン)』、新希浩彦だッ!」 彰「オッス、オラ同じく副部長の酉岾彰! 『竜が如く(ドラグーンロード)』って呼ばれてるぞ!」 洋「同じく部員、『三國無双(トリプルミーニング)』の大庭洋だよ」 海月「みんなのハートにドッキューン☆ 『光の4剣士(セルフカルテット)』七森海月だぴょん♪」 「「「「…………」」」」 空気が凍った。 海月(あれー…? もしかして今のは…痛い?) 栄昭「こほん。えー…上に同じく『未来神話ジャーヴァス(フューチャーパーソン)』、宙智栄昭だ。よろしくゥ~…」 南乞「お゙ぉおォおんにゃじく、『白川三姉妹におまかせ(ミサクランゲージ)』御佐倉南乞(みしゃくらにゃんこちゅ)らよお゛お゛お゛ぉ」 優女「そして同じく、『天外魔境(チダマリスケッチスイッチ)こと碧城優女だよっ!」 『なんだ!? 最後から二番目の奴は全く聞き取れなかったぞ!? …まぁ、どうでもいいか 何人増えたところで同じことだ! ここは俺の魔界(フィールド)! 端っからてめぇらに勝ち目はねぇんだよ!』 大きく叫び、炎の魔弾を飛ばす『赤い毛布』 浩彦「『ウェザー・リポート』ッ! 天気は大雨暴風!」 突如、大雨と暴風が巻き起こり炎を消してしまった。新希浩彦の契約都市伝説、『荒木はスタンド使い』の能力である 『なっ…畜生…毛布がぬれて上手く動けねぇ…』 海月「えへへへへ、今がチャンスよ! 食らいなさい、なもブレード!」 唯の出刃包丁である 『な…な… ケケケ! 引っかかったなアホが!』 そう言うと、至近距離で毛布から棘を飛ばした 海月「きゃあ!?」 南乞「きゃぁあああ あぉ! みちゅきひゃぁん!」 『まだまだぁ! ズタズタに引き裂いてやる! 魔剣・レッドクロス!』 毛布の中から取り出した、特に何の変哲もないサーベルで海月を切り裂く『赤い毛布』 海月「きゃ、あ…」 『ケケケケケケケケケ! 一人死んだなぁ? どうだよあの痛いレズ女がやられた気分は!?』 彰「痛いレズ女…海月の…海月のことかァああああああ!!! 『鳥山ロード』!!!」 『ケケケケ…ぐはっ!』 突如、目の前に現れた彰に殴り飛ばされる『赤い毛布』。『鳥山ロード』の能力で『赤い毛布』までの自分専用の道を作ったのだ 海月「みんなー!みつきまだ死んでないよ!? なもトリプルキック!」 『グボァ!!!』 上空から突然現れた海月が『赤い毛布』にとび蹴りをした。三人で 『な…てめぇ…生きてやがったのか! …だが、確かに剣で切り裂いたはず…!』 海月「『なもりは4人いる』のよ? 一人死んだくらいじゃ死なないわ。さらに言わせてもらうとね…。みつき達は、斬ったくらいじゃ死なないわ!」 海月「「なもアタック!」」 『がはぁ!』 今度は、さっき斬られて死んだはずの海月たちが2人で『赤い毛布』に体当たりした 『な…なぜ生きてるんだ! ふざけるな! 人間の分際で…!』 海月「『なもりは分裂するクラゲ型生物』なの。じゃ、改めて名乗らせてもらうわね…」 海月A「見えざる不憫な主人公! なもレッド!」 海月K「主人公以上に主人公な影の主人公…というか光の主人公! なもイエロー!」 海月Y「クールなイエローのストッパー。なもブラック」 海月T「ブラックに憧れるガチレズ腹黒乙女! なもピンク!」 海月「…って言っても全部みつきだけど! 5人揃って…」 海月’s「「「「「ゆるゆり戦隊、なもレンジャー!!!」」」」」 後ろでカラフルな爆発は…なかった 『ふざけやがって…! 死ね!』 海月Aに向かって魔弾を飛ばす『赤い毛布』。しかし… 海月A「\アッカリーン/」 魔弾は海月Aの体をすり抜けた 『何!? コイツ攻撃が当たらないのか!?』 海月K「食らえ!」 『ぎゃあああ!!』 海月K「…安心しろ。峰打ちだ」 海月Y「倒せよ!」 『てえめぇらァ…なめやがって…! 俺は都市伝説だぞ! てめぇら人間ごときに…!』 そう叫び、今度は栄昭に炎を飛ばすが… 栄昭「よっと」 簡単に避けられてしまった 『ちっ…外したか…。ならこれで…どうだ!』 爆発する大量の魔弾を飛ばす『赤い毛布』 (ケケケ…バーカ、この魔弾はフェイクなんだよ。コイツが魔弾に気をとられてる隙に後ろから…) 栄昭「…バレバレなんだよ」 後ろから奇襲をかけようとした『赤い毛布』に、栄昭の木刀が炸裂する。『空知は未来人』の能力で未来予知をしたのだ 『がはぁ!!! て…てめぇええええええ!!! もう怒ったぞ! ここは俺の魔界! 全滅呪文をとにゃえてへぇええぇ゙やるのぉおお!!』 叫ぶ『赤い毛布』の呂律がおかしくなる 『にゃ…にゃんらこれは!? うまく喋れねぇ!』 南乞「『みしゃくら語』よお゛お゛お゛ぉ。他人のぉおお口調をみしゃくら語にしゅるのぉおおことがれきるのぉおお」 『にゃにいぃってるかわからねぇ!』 非常にシュールな会話である 洋「安心しなよ。君の言葉も聞き取れないから。じゃ…『キラー・クイーン』!」 洋の姿が浩彦そっくりになる。そして、洋の投げた岩が『赤い毛布』に当たり…爆発した 『ぁあああ あぉ゛ぁあああ あぉ゛ぁあああ あぉぁあああ あぉぁあああ あぉ゛! てめぇ…何しやがったのぉおお…』 洋「何でもかんでも人に聞こうとせず、少しは自分で考えたらどうだい?」 洋の契約都市伝説、『大葉つぐみ=ガモウひろし=鷹野常雄』。自分が見たことのある人間、及び人型都市伝説に変身し、その能力をコピーできるのだ いわばFEシリーズの『コマンド』のようなものである。ちなみにバグることはない 優女「洋さんすごい! わたしも頑張っちゃうよ! 」 そう叫ぶと、見る見るうちに優女が巨大な怪物に変身し…歩いていく 『にゃ…何らよこれは! 俺は都市伝説らぞ! 『赤いぃ毛布』らぞ! てめぇら人間にゃんかに…人間にゃんかにぃいぃぃぃっよぉおお゙いぃぃぃっよぉおお゙!』 優女「ウェヒヒヒ、『赤い毛布』さん、さよなら!」 『あ』 ぷちっ。『赤い毛布』は優女に踏み潰された。あっけない決着である 浩彦「どうやら倒したようだな。よくやったぞ碧城ッッ!」 優女「ティヒヒ、ありがとうございます」 彰「んじゃ、帰るか!」 こうして、『赤い毛布』を倒した戦う漫画家達は、『鳥山ロード』に乗って家に帰っていくのであった… 続く…
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4168.html
光彦「よぅ正義、[明美(アケミ)]。元気にしていたか。」 駅から出ると、懐かしい声が聞こえる。そう、正義の父親、[黄昏光彦(ミツヒコ)]である。 正義「あ、お父さん!」 半年と軽く言うが、それも結構長い時間。正義は嬉しそうに父親に駆け寄った。 しかしいつかのように抱きつくでなく、ただ話しかけるだけ。そう、正義はもう中学生なのだ。もう子どもではない、という事らしい。 正義「お兄ちゃんとはどうだった?」 光彦「あぁ、飯は上手だったな。少なくとも、明美以上だな。」 明美「えぇ、ミツ、それは酷いんじゃない?」 大王「(いつまでこの会話は続くんだ?)」 少々長かった団欒も、ふいに正義の母の言葉で止まる。 明美「そろそろ家に行きましょうよ。足が疲れちゃった。」 光彦「まったく、親子の再会をじゃまするとは。」 明美「なによ。それなら私も裂邪と感動の再会をさせてよ。『ママぁー!』『裂邪ぁー!』って。」 正義「えー、お兄ちゃんはそんなんじゃないよ。」 約2名の笑いが起こったところで3人を、いや、【恐怖の大王】を含めて4人を乗せた車は走り出した。 大王「(思えば、俺が世界征服に乗り出せないのは、この両親の所為でもあるな。子ども思いで、明るくて。おかげで少年もこの始末か。)」 正義「そういえば、なんでお兄ちゃんは来なかったの?」 光彦「また散歩と言って出て行ったよ。よほど正義に会うのが恥ずかしいんだろうな。」 明美「いや、きっとこの綺麗な私に会うのが」 光彦「そういえば正義、学校はどうだったんだ?」 正義「楽しかったよ!あ、そういえば修学旅行のお土産まだだったね。あとで渡すよ。」 明美「もう、マサヨシまで無視?お母さん寂しいんですけどぉ。」 ―――なんだかんだで、これから正義が住む事になる家に着いた。 光彦「よし、じゃあ荷物を家に入れるか。」 正義「ねぇ、お兄ちゃん探しに行ってもいい?」 光彦「ん?別にいいが、なんでだ?」 正義「だってお土産、一緒に渡したいから。じゃあ行ってきまーす。」 明美「いってらっしゃーい。気をつけるのよ。」 光彦「(まぁ、大丈夫だろうな。)」 外へ出て少し経った頃に、大王が正義に話しかけてくる。 大王「少年。あんなやつに、プレゼントを渡すのか?」 正義「・・・別にいいじゃん。『罪を憎んで人を憎まず』って言うしさ。」 大王「煮込む煮込まないは分かったが、アメと鞭は大事だと思うぞ。俺なら良い事をしてから、だと思うが。」 正義「『悪い子だからあげない』って言っても逆に悪くなる方が多いよ。それより、『少年』って呼ぶのはもう止めてよ。」 大王「あぁ分かったよ、『少年』。」 正義「だから!もうボクは中学生だよ!子どもじゃないんだよ。」 大王「そう言っているうちは子どもだ。そうだな、俺が大人になったと認めた時に『少年』と呼ぶのを止めてやる。」 正義「うぅ、うん、分かった。でもどうやったら認めるんだよ?」 大王「無論、『幹部になったら』だ。」 正義「やっぱり大王には認めてもらわなくていい。まだ世界征服狙ってたのか。」 大王「(まったく、いつまで経っても少年は『少年』のままだな。)そういえば、何故『大王』なんだ?」 正義「え?大王は大王じゃん。」 大王「友やコインは『くん・ちゃん』付けだろ。なら俺は『大王様』、少なくとも『大王さん』じゃないのか?」 正義「えぇ、じゃあ大王が世界征服を諦めたら“バッサァァァ・・・”考えてあげても・・・。」 突如、目の前に謎の生物が現れた。都市伝説である事はすぐに分かる。 しかしゴミ袋かと思っていたら赤く光る目があり、蛾のような羽があり、さらに脚がある、というリアクションに困る姿をしているのだ。 いったい何の都市伝説なんだ?考えている暇もなく奴は急降下して攻撃をしようとしてくる。 ?都市伝説「・・・、喰、う。」 大王「・・・、戦うのみだな。」 正義「そうみたいだね。大王、いくよ!」 その言葉に反応し、大王が上空に黒雲を広げる。 大王「さて、何で行く?」 正義「んと、『槍の日』で行こう。あれなら避けられないはず。」 大王「なるほど、では行くか!」 黒雲にスパークが走り、大量の槍が降ってくる。まさに『槍の日』。しかしあの都市伝説は槍をするすると避けていく。 大王「これを避けるとは、なかなかだな。」 正義「でも、これならどう!?」 正義はおもむろに降ってくる槍の1つを手に取り、敵へと投げつける。 正義「(上に気を取られている隙に横から来る、下手に避ければ上の攻撃に当たる。これを避けられるか?)」 正義の作戦さえも、あの都市伝説は軽く避けてしまう。遂に雲の外に出てしまった。 大王「くっ!想像より速いようだな。もっと量が多ければ避けられんだろうが、修行不足か。」 不意に向こう側、おそらく槍を投げた方向から、悲鳴のような叫びが聞こえる。 大王「ん?さっきの槍が通行人にでも当たったか?」 裂邪「正義ィ!お前か!?こんな所で槍投げんな!」 その声は、どう聞いても正義の兄、裂邪の声だった。その声に正義が反応するが、 ?都市伝説「あ゛、さっきの・・・。」 正義「あ、お兄ちゃんいたのッ、って増えてるゥ?!」 声の方を向くと、裂邪の後に都市伝説と思わしきものがシェイドの他に3体ほどいた。 正確には火の玉、謎の小動物、あと正義が反応している事から、おそらくあの小学校高学年ほどの少女も都市伝説だろうか。 裂邪「無視すんな!まぁいい、そこの【モスマン】もろとも―――」 ?小動物「なぁ主、あのおっさんは誰バク?」 大王「(まさか更に契約したというのか?それともあの少女も契約者なのか?って)『おっさん』?!」 シェイド「アイツカ?【恐怖の大王】ダ。」 ?都市伝説×3「えッ!?【恐怖の大王】ッ?!」 大王の正体を知ると突然、あの3体が慌てふためきだした。何故かは黄昏兄弟とシェイド、大王も分からなかった。 大王「ん?俺はそんなに有名なのか?」 正義「コインちゃんも知ってたからね。最近生まれた都市伝説は知っている、とかかな。」 シェイド「落チ着ケ。契約者ニ恵マレズ、今デハタダノ『おっさん』ダ。」 大王「だから何故『おっさん』なんだ!?」 相手にされないのでつまらなくなったのか、急にあの【モスマン】という都市伝説が裂邪に向けて目からビームを放つ。 裂邪「あっつぅ!」 正義「お兄ちゃん!」 大王「目からビーム、か。少々厄介だな。」 モスマン「・・・、腹、減った・・・。」 裂邪「チックショウ、モスラかよ!シェイド![バク]![ウィル]!」 その命令に反応し、シェイドは長い爪のような姿に変形して裂邪の右手に付き、[バク]と呼ばれる小動物は熊ぐらい大きさのキメラのような姿に変身し、 [ウィル]と呼ばれる火の玉は急に増え、1列に連なり鞭のようになって左手に付いた。 正義「かっこいい・・・。」 大王「言うと思った。いいから戦うぞ!」 正義「分かった。大王、変身だ!」 大王「無茶を言うな!行くぞ。」 そう言うと、黒雲から剣が2本降ってくる。大王は普通に手に取り、正義は手にとってから、すぐに【モスマン】に向かって行った。 正義「てりゃあぁぁ!」 【モスマン】はゆっくりと、上へ飛翔していった。「あ。」という声は既に遅く、“ゴンッ”という鈍い音が鳴る。 向こう側からやってきた裂邪に正義がぶつかって、尻餅をついた。正義は涙目になりながら打ったところを撫でていた。 裂邪「ッつったぁ~!正義!どこ見てやがる!?」 正義「もう!策もなしに突っ込んできて!」 裂邪「バカか!俺はお前と違って大人なんだ!何の考えもなしに敵に突っ込むかバーカ!どうせお前はこの1年間なんの成長もしていないんだろ!? 俺がいなくなった後も都市伝説に説教かまして、彼女とイチャイチャしてたんだろ?!」 正義「成長したよ!もうボクは中学生だよ!?それに説教は大事な事だし、ボクには彼女なんていないし!」 大王「・・・、やっぱり、子どもだよな。特に兄の方が。」ボソッ 空腹で苛立っているのか、【モスマン】は空中からビームを乱射する。 正義と大王は修行のおかげもあって、難なく回避する。裂邪は、ふとみるとバリアで守られているようである。 大王「“チッ”便利な都市伝説だな。誰の能力だ?」 正義「あの女の子だよ。シャボン玉みたいにバリアを張ってた。」 大王「あいつも契約者か。シェイドと火の玉のを武器、そして盾付きとは豪勢だな。」 正義「ほんとだよ、いざって時に手に負えなくなりそう。でもあの子は都市伝説みたいだよ。」 大王「そうか、では4体と契約か?飲み込まれてても知らんぞ。」 裂邪はウィルを鞭のように扱うが、攻撃は一向に【モスマン】には命中しない。 こちらも策を練るが、あいにく大王は飛び道具を降らす事はできず、雷は外れた時のこちらへの被害が不安、なかなか良い手が出ない。 裂邪「―――そうだ、おいおっさん!雨降らせ!」 大王「またおっさんだと!?それが人に物を頼む態度か!」 正義「(お兄ちゃんの事だから、やはり何か手が?ここはおとなしく聞いておこうか。)大王、ここは。」 大王「・・・、仕方がないか。」 大王は上空に、太陽も隠れるほど黒雲を広げ、大量の雨を降らせる。 大王「これでお望みの量か?!」 裂邪「ウヒヒヒヒ、よくやった!ウィル!『百物語』!」 裂邪の命令に反応し、ウィルが何十体にも増え、周りに散らばり、まるで蝋燭の灯火の様になる。 ふと、少女が歌を歌いだす。おそらく『さっちゃん』であろう、おそらくそのはずだ。 ウィル「「うおぉぉぉーん!バナナ半分なんて可哀想で~い!」」 周りから鳴り響く叫びと共にウィルの炎の色が青くなる。 大王「まさか、『さっちゃん』を聞いて泣いているのではないだろうな?」 正義「あれ、寒くなってきた?あ、霧!?」 気がつくと、周りにだんだんと霧が立ち込めてきた。おそらくこれが裂邪の作戦なのであろう。 正義「この霧で視界を悪くして、隙を突く、かな?」 大王「なるほど、完敗だ。あの火の玉のに周りを冷やす能力があったのか。能力をよく理解している。」 しかし正義は霧の中を注意深く見回し、【モスマン】を探す。 正義「でも・・・、あそこか。緑色の光も見える。たぶん火の玉のやつだね。」 大王「おい、まさか横取りする気か?それは良くないんじゃないのか?」 正義「悪いけど、『同じ事』を、そう何度も繰り返させない。」 ゆっくりと放った、その言葉の重みは、誰よりも大王が知っていた。あえて黙認し、正義を【モスマン】のところへ向かわせた。 正義は駆け足で【モスマン】のところへ向かう。その姿がだいぶ見えた時、その影に跳びかかる。 正義「てぇえりゃあぁぁー!」ブン! ベシィッ! その剣を、正義は力強く、【モスマン】の頭に叩きつけた。峰打ちとでも言おうか。そのまま【モスマン】を霧の外へと弾き飛ばした。 【モスマン】は軽く気を失っているようだったが、ゆっくり起こし、そのまま説教が始まるのであった。 正義「―――だから人を食べるなんて絶対にダメ!だからといっていくら空腹でも他人の物を奪うのもダメだよ。 困っている人を助けたりしてそのお礼として食べ物を貰うんだよ。分かった?―――。」 大王「(このご時世にお礼に食事を与えてくれる、心優しい人間などいるのだろうか?)」 なにか悔しそうにしている裂邪を余所に説教は終わり、【モスマン】はフラフラと空へと戻っていった。 正義「これからは人のためにがんばるんだぞぉー!」 モスマン「分かっ、た・・・。」 正義は手を振り終えると、すぐに兄の方を向く。無論『あの悲劇』を繰り返さないためである。 あの時目を離したから、犠牲者が出た。だから次は絶対に目を離さない。それが正義の『誓い』である。 大王は、正義の気持ちや考え、今かすかに目に溜まった涙の訳は、長く共にいるためだいたい分かる。 だからこそ、その次の行動に驚かざるを得なかった。正義が、裂邪に抱きついたのである。 正義「お兄ちゃん、久しぶりぃ!」ガスッ 裂邪「“ゴキッ”おごぉ!あ・・・ばら・・・ぼね?つ・・・っか・・・足・・・痛・・・」 正義「お兄ちゃん、寂しかった?また一緒に暮らせるからね!」 シェイド「平和ダナ。」 大王「・・・?あぁ。」 大王は何故こんな事をしたか分からなかった。攻撃をするために飛びかかったのだとさえ思った。『兄だから』という理由もすぐに出たが、 なにかそれでは片付かない違和感がある。大王の疑問の回答は帰ってくる事はなく、正義は質問を投げかける。 正義「ところで、やっぱりその女の子達と契約したの?」 裂邪「・・・まぁな、『夢幻泡影四天王』、俺の世界征服のための俺の仲間だ。」 正義「まだそんな事言ってたの!?お父さんと一緒だったのに世界征服を諦めてないなんて!」 裂邪「悪いか!すぐに諦められる夢なんて見ねぇよ!俺は一生諦めない!人の夢は終わらねぇ!」 正義「最後の言葉どっかで聞いたよ?!」 やはり口喧嘩が始まった。しかし『いつも通り』ではなく、若干正義の歯切れが悪い。なにか・・・。 大王「もういいだろ、兄を見つけたんだから。親も心配するぞ?」 正義「あ、そうか。お兄ちゃん、もう帰るよ。」 裂邪「シェイド、『シャドーダイブ』で[ミナワ]達を先に俺の部屋に。」 裂邪の命令により、シェイドの能力で自分の契約している都市伝説は影の中へと溶けるように入っていった。 大王「どういう事だ?お前は帰らないのか?」 裂邪「お前らが迎えに来たんだから、俺が部屋に帰ったら不自然だろ?それに親父達にミナワ達を見られる訳にはいかんし。」 大王「ん?契約者以外でも見えるタイプなのか?」 裂邪は数分硬直し、驚いたように言葉を放つ。 裂邪「見えないやつもいるのか!?」 正義「え?う、うん。例えば幽霊系は、基本的に契約者か都市伝説の被害者にしか見えないらしいよ。」 大王「俺も見えない、はずだ。」 裂邪は何故か黙りこくっていた。考え事でもしているのだろうか。 正義「ほら、もう帰るよぉ?」 こうして、3人はゆっくりと家へ帰るのであった。 光彦「おぅ、帰ってきたか。」 正義「ただいまぁー!」ガラガラ 明美「おかえりぃ、裂邪、マサヨシ。」 裂邪「あ、母さん久しぶり。」 少々雑談があった後、正義が父親と裂邪にいつかのお土産を渡す。 正義「そしてこれが、修学旅行のお土産。水族館で買ったんだ。はい。」 そう言って、ガラスの中に白い線で作った水中生物が入っている置物を出した。父親にはイルカが、兄にはクラゲが入っているものを渡す。 光彦「ん、面白いな。何なんだこれは?」 裂邪「あら綺麗!・・・ありがとう。」 正義「ふふん。」ニコッ 光彦「ところで食い物はどこだ?クッキーとか無いのか?」 明美「もう、今いいところなのに。腐ると危ないからって買ってません。」 光彦「うっ、すまんすまん。ちょっと分からんかった。」 明美「裂邪が『ありがとう』って言ったのよ。信じられる?」ボソボソ 光彦「本当か?まいった、聞き逃したなぁ。」ボソボソ 家族が団らんしている部屋の外では、大王が考え事をしていた。何故少年とその兄の会話が変だと思えるのか?何かが違う。 本当に些細な違いだが、まるで少年らしくなく感じる。 ふと、もう1つある事に気付く。こんな事を考えているようでは世界征服なんてしていられないと。 どうやら少年の甘さがうつったようだ。ゆっくり甘さを忘れていかなければならないな。 ―――世界征服への道は遠い。 第2話「初仕事」―完― 次回予告4コマ――― ☆資料をまとめ☆ ???「『若者の骨粗しょう症に迫る』『キスをすると骨がもろくなる?』『牛乳のススメ』・・・。」 ???「おそらくこの事件によって沸いてきた記事だろうが・・・。本当にこの事件はその程度のものなのか?」 ???「何人もの人間が同じ事にあっているんだぞ。いったいどういう事なんだ?」 ―――教えてくれ 都市伝説よ――― ●謎の人物現る?!真相は、webで!(コラ では第3話に続きます。 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2617.html
4月某日 喫茶店 ルーモアにて 「…そうか。「日焼けマシンで人間ステーキ」の青年のアルバイト先にも、悪魔の囁き感染者はいなかったか」 「はい、今のところではありますが」 黒服とTさんは、悪魔の囁き騒動に関する事で、情報交換を行っていた 電話でも話せる事ではあるが、直接顔を合わせて情報交換を行うのが一番だ 「朝比奈 秀雄の三つ目の都市伝説に関しましては、まだ、正体が確定できません。いくつか、心当たりはあるのですが…」 「…怪力に高い防御力、炎と毒のブレスか……心当たりはあるが、それでだけはあってほしくない、と考えたいところだな」 Tさんの言葉に、全くです、と小さく苦笑する黒服 …「組織」内部でも、これでは、と予測は立てられ始めている…の、だが まだ、核心できるほどの情報は少ないのだ もっとも、朝比奈 秀雄の最後の都市伝説がそれであると「認めたくない」だけなのかもしれないが 何せ、それは……あまりにも、強力すぎる都市伝説だ 単体契約でも、それと契約した瞬間に飲み込まれる可能性が高い それを含めた多重契約をしているのなら……朝比奈自身の「器」は、はたしてどれだけ強大なのか それを考えるのが、恐ろしいのかもしれない 「それと…朝比奈 秀雄に、都市伝説の契約書を横流ししていました「組織」の裏切り者が、判明しました」 「…「コーラにはコカインが含まれている」の支配型の契約者が増大した原因を作った者か」 「はい…H-No.9。「病は気から」に飲み込まれた存在です。私は担当部署が違いますので詳しくは知りませんが、元々は研究班に所属していたようですね」 …「13階段」の契約者たる広瀬 辰也にとっては、因縁のある相手である事を、この黒服も把握している 彼が、今回のその事実を知ったならば…H-No.9が「組織」から離脱し、討伐対象になっている事を知ったならば…復讐の為に、先走った行動をしなければ良いのだが この黒服は、それを心配する 「それと……その、朝比奈 秀雄の目的なのですが。翼の実家の権力以外にも、狙っているものがある可能性が、出てきました」 「……それはもしや、「小瓶の魔人」か?」 Tさんの口から、「小瓶の魔人」と言う単語が出て 黒服は、思わず眉をひそめた …まさか、だが 「あぁ、朝比奈 マドカから聞いたんだ」 「…やはりですか」 彼女の軽率さに、かすかに頭痛のようなものを覚える 相手が、Tさんだから良かったものを あのような存在については、あまり口外すべきではない 「黒服さんも、それについて知っていたか」 「…日景家を訪問した際に、その小瓶を拝見しました。小瓶の中から、威圧感を感じる程の強い都市伝説の気配を感じました…あまり、長くそばにいると、その威圧感に押しつぶされるのではないかと言う錯覚を覚えましたよ」 「なるほど、本物か」 はい、と頷く黒服 …朝比奈 秀雄が、その存在を把握している可能性がある 朝比奈 マドカが、その存在を口走ってしまっている可能性が高いからだ こう言っては悪いが、彼女は後先を考えない部分がかなり、あるようだから そうじゃなくとも、酒の勢いで口走ってしまった可能性も、高い 「…Tさん、申し訳ありませんが。その事は、できればご内密に」 「あぁ、わかっている。願いをかなえる都市伝説を保有している、と言うのは………不幸を招く情報だからな」 自身も、そう言った経験をしているからだろうか 神妙な表情のTさん 「「日焼けマシンで人間ステーキ」の青年は、その情報は」 「把握しています。あの子も、朝比奈 秀雄はその小瓶も目的としている可能性が高いのでは、と言っていました」 だからこそ、翼は余計に、朝比奈 秀雄を倒さなければ、と考えている …たとえ、その命を奪う事になろうとも だが、優しい翼の心が、肉親殺しと言う業に耐えられるとは思えない ……だから いざと言う時は、自分が、翼の代わりに手を下そう 黒服は、そう決意する 「……黒服さん。背負い込みすぎないようにな」 「はい。お心遣い、ありがとうございます」 黒服の表情から、何かを感じ取ったのだろうか Tさんの言葉に、黒服は小さく苦笑して答えた さて、あと、Tさんに伝えていない情報は何であったか 黒服が、情報を整理していると …からん…ころん… 「あ、いたいた。Tさーん、黒服さーん」 「おにいちゃーん」 店内に、Tさんの契約者の舞と、リカちゃんが入ってきた そして、舞の後を付いて来るように、ゴスロリ服の少女が入り込んでくる その少女の姿に覚えがある黒服は、おや、と小さく声をあげた 「ヘンリエッタさん?」 「おぉ、D-No.962か」 「…あれ?黒服さん、知り合い?」 首を傾げた舞に、はい、と答える黒服 てとてと、舞達は黒服とTさんの席へと近づいてくる 「私の上司が担当しております、契約者さんです」 「うむ。そして、望の友達なのじゃ!」 どこか誇らしげに、ない胸をはってそう言ったヘンリエッタ ヘンリエッタの声に、Tさんが聞き覚えがあるような表情を浮かべたのだが、黒服は気づいていない 「なぁ、Tさん。あのユニコーンの兄ちゃん、やっぱり、悪魔の囁きにとり憑かれてたみたいだぞ」 「…!また、遭遇したのか?」 頷く、舞とリカちゃん 黒服も、眉を潜める 「…また、悪魔の囁きにとり憑かれている者が、現れたのですか?」 「うむ、妾が調べたのだから、間違いないのじゃ!」 再び、胸を張って言うヘンリエッタ 黒服は、難しい表情を浮かべる 「…近頃、「リア充爆発しろ」の能力によるものと思われる爆発事故が多発していまして。「組織」としては、その契約者が悪魔の囁きに騒動に関連している可能性を調べていましたが……ユニコーン、ですか」 ユニコーンは、貴重な都市伝説だ 確か、ヨーロッパでも数えるほどしかユニコーンと契約した存在はいない 後で、「薔薇十字団」に問い合わせれば、何かわかるかもしれない 新たな情報を手にして、黒服は思考をめぐらせるのだった to be … ? Tさん「コーク・ロア:お嬢さん」へ 前ページ次ページ連載 - とある組織の構成員の憂鬱
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2099.html
「・・・・・・は?」 「いや・・・その・・・スマン!」 黒服は呆然とし、翼は黒服に土下座してる 中々にカオスな状況だけど仕方ないだろう 「・・・・・・」 「・・・・・・」 私が二人居るんだから 事の起こりは冬休みの最終日 翼と一緒に参加した都市伝説退治のバイト 内容はとある小学校の『写った人を引きずりこむ鏡』 本当はもっと別の都市伝説かもしれない けど、今現在の情報じゃそれ位しかわからない そんな都市伝説の鏡を壊すのが私達の仕事だった 「でも、鏡って事は非生物よね?普通に割って終りじゃないの?」 「多分それでいい筈だ・・・ただ、不気味だから誰もやりたがらないってだけだろ」 成る程ね まぁ、そのお陰で私達に仕事が回ってくるんだからありがたい事なのかもしれない 「気になるとすれば・・・『鏡を処分して来る』って言い残して出て行った教員が戻ってきた時には鏡の事を忘れてたって所か」 「・・・記憶を操作する?」 「かもしれねぇな」 そんな事を話しながら怪談を登ったその先に あった 「見た感じは普通の鏡だよなぁ?」 「でも、確かに都市伝説の気配はするわ」 今のところは何の変哲も無いただの鏡 だけど、其処からする気配は確かに都市伝説の物で・・・ 鏡に映っている私の顔が ニヤリ と笑った 「っ翼!!」 「な!?」 鏡に映る私が腕を伸ばし 鏡から生えた腕に腕を掴まれ引っ張られ引きずり込まれそうになった所で ガシィッ と翼が私のもう片方の腕を掴んだ 「翼!!」 「ちょっ!?踏ん張れ!!」 今、私は右腕を鏡に物凄い力で引っ張られ 左腕を翼に全力で引っ張られている状態で 下手するとそろそろ足が地から浮きそうな訳で そんな状態の私に踏ん張れは幾ら何でも無茶振りってそんな事言ってる場合じゃない!? このまま引きずり込まれる訳には・・・あ 「・・・翼」 「んだよ!?」 「先に謝っとく・・・買って嬉しいはないちもんめ!!」 「なぁ!?」 人間の身体にはリミッターが付いていると言う そのリミッターを外した状態が俗に言う火事場のクソ力と言う奴らしく 対象の肉体を操る事に関してはかなり強力な部類に入る『はないちもんめ』の能力なら 翼のリミッターを外す位は造作も無い ただ、絶対明日辺りに筋肉痛で苦しむだろうけど・・・翼が 何はともあれ 火事場のクソ力を発揮した翼が、物凄い勢いで私を引っ張り スポンッと言う音と共に 私達は後ろ向きに倒れた 「ったぁ・・・大丈夫か?」 「何とかね・・・」 とりあえず翼の上から退く 「成る程、確かにこの鏡さっさと処分した方が良いな・・・」 「確かに・・・あんな簡単に引きずり込めるなら、何で行方不明者が出て無いんだろう?」 「さぁな・・・ん?」 怪訝そうな翼の声 何かあった? 「なぁ・・・その右腕の・・・何だ?」 「え?」 言われて気付く そう言えばまだ、右腕を掴まれてる様な・・・「あいたたたた・・・」ん? 右側を向くと 「あれ・・・?」 「は・・・?」 私がもう一人居た 「「はぁっ!?」」 「って事があってな」 「スイマセン、全然状況が判りません」 黒服が頭を抱えながら言う そりゃそうだ、私だって全然判らないんだから 「つまり簡単に言うとね、あの鏡は『引き摺り込んだ相手に成り代わる鏡』だったのよ だから犠牲者が出ても鏡の中から偽者が出てくるから誰も行方不明者が出てなかったのよ で、今回も本当ならそこの『私』を引き摺りこんで私が成り代わる筈だったんだけど、引きずり込む所か逆に引っ張り出されちゃったからこんな愉快な事になったって訳」 得意顔で説明する私の偽者・・・何か腹立つわね 「取り合えず鏡本体は割って処分したんだけどな・・・コイツはその・・・望と同じ顔してるし退治するのは躊躇われたと言うか何と言うか・・・」 「私としては即刻処分して欲しいところだけどね」 「酷いわね?一応私は貴女なのよ?」 「同じ顔で同じ声のが目の前にいるのが凄い気持ち悪い」 不気味ってレベルじゃないわ 「黒服ぅ!!本体が苛める~!!」 がしっと半泣きで黒服に抱きつく偽者 何処からかピシッと音が鳴った 何の音かしらね? 翼、何でそんな脅えた顔してるの? 「いや・・・その・・・処分は流石に可哀相ですし、少し様子を見「何?黒服は偽者の味方なの?」いえ、味方とかでは無く」 黒服が珍しくあたふたしてる・・・本当に珍しい 「黒服って優しいよね 私、黒服のそういう所好きよ?」 黒服にしがみ付いたままそんな事をのたまう偽者に 次はブチッと音が鳴った 「黒服・・・取り合えずその子から離れましょうか「え?いや、その」良いから「・・・はい」 私から離れた黒服詰め寄る本体を他所に私は翼の隣に移動していた 「お前・・・」 「流石は私の本体、アノ位でヤキモチなんて可愛いわよねぇ?」 「わざとか、わざとなのか」 「当然でしょう?私はあの子と違って年上趣味は無いの、どちらかと言うと年下・・・ショタ派よ」 「聞いて無ぇよ・・・結局お前は何なんだ?」 「写った相手に取って代わる鏡の都市伝説が、あの子を写した事で出来上がった『写った時点での望のコピー』よ」 「・・・わかんねぇ」 「翼の頭には少し難しいかもね」 良くわからないと言った風な顔をする翼を小馬鹿にする様に言ってやると、翼は絶句した どういう因果か、折角鏡の外に出られたのだ 精々、現世を楽しませてもらうとしよう 続く? 御神楽 詩織 鏡から出て来たもう一人の望 顔も声も同じなのに名前まで同じだとややこしいので望の本名である詩織を名乗っている 望より少し素直で少し意地が悪い 身体能力も望と全く同じ 『はないちもんめ』の支配権行使だけ使える よって、望の様に金を渡した相手を新たに支配下に置く事はできないが、望が支配下に置いた相手なら操れる 後は『鏡を使った移動』 あらゆる鏡に出入りできる 都市伝説なので基本的に成長しないが、望が鏡に映る事で更新される 望とは利き腕が逆
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2515.html
夜の空を魔女が飛ぶ 箒にまたがる魔女一人 街を見下ろし、飛び回る 「ひっひ……相変わらず、夜もきらびやかだねぇ?」 繁華街の上空を飛びながら、魔女は1人、そう呟く 北区などはそうでもないが、この繁華街の辺りは、夜でもきらびやかで、まるで昼間のように明るく感じる …人間は文明を発達させ、夜を恐れなくなった 夜の暗闇を作り出した光で照らし、恐れなくなっていった 本当に、恐れていない? それは違う、と魔女は思う 本当に恐れていないのならば…都市伝説は、生まれやしない 人間が本能的に闇を恐れるからこそ、都市伝説は生まれ続ける 少なくとも、魔女の一撃たる彼女はそう考えていた だからこそ、夜の明るい街の上空を飛ぶのが楽しいのだ …畏怖すべき対象から目を逸らし、明るさを保つ事でそれを忘れようとしているその様子が、滑稽で仕方なくて それでも、適当に飛んで見下ろしたら、後はすぐに帰るだけだ 目撃されても面倒である ………ただ この日は、いつもと違った 迫ってきた気配に、感じた悪寒 急浮上し、超スピードで接近してきたそれを避けた まるで、竜のような巨大な生き物が、一瞬前まで魔女が飛んでいた場所を通過していく その尻尾の先では、ちろちろと赤い炎が燃えていた 「ひっひっひ……話に聞いている、カイザーとか言う都市伝説かい!」 ぐぉおおおおおおおおん!! 魔女の言葉に答えるように、竜……カイザーが吼えた 背中には、誰も乗せていない だが、カイザーの契約者は、恐らくこちらが見えている位置にいるだろう、と魔女は推理した どうやら、契約者が指示を出す必要がある都市伝説であるらしいから、相手がこちらを見えていなければ意味がない …もっとも、カイザーと契約者が視覚を共用できると言うのなら、別なのだが… おぉおおおおおん!! カイザーが吼える その口の中で、ちろちろと炎が燃えていた 「…っひっひっひぃ!まともに戦っても勝ち目はなさそうだねぇ?」 ならば まともに戦わないに、限る 魔女は、懐から小さな子瓶を取り出すと、カイザーに向かって投げつけた 炎が吐かれる直前にカイザーに当たった小瓶は、ぱりん、と割れて薬品をカイザーにぶちまける ぐぉおん!? 途惑った鳴き声をあげるカイザー 体の自由が利かなくなったのだろう、飛び方がおかしくなる 魔女が投げつけたのは、麻痺薬だ しばし、体が痺れてうまく動けない事だろう ……うっかり、地上に落ちたらどうするのか? まぁ、その時はその時だ 多分大丈夫だろう、多分 万が一の時は、「組織」がどうにかするだろうし そう、他人事のように考えながら、魔女はさっさと逃走しようとした …………しかし ぐぉおおおおおん!!と再び聞こえてきた咆哮 直後、魔女を灼熱の炎が掠った 「おぉっと!?………もう、回復したってのかい!?」 見れば、カイザーは既に体の自由を取り戻していた …おかしい いくらなんでも、早すぎる ぎらり、爪を剥き出しにして、飛び掛ってくるカイザー ひらり、ひらり アクロバティックに飛び回りながら、魔女はそれを避けて…再び、麻痺薬を投擲した ばりん!と小瓶がくだけ、薬がカイザーを襲う 再び、体の自由を奪われたカイザーだったが… …ぴろんっ♪と どこからか、電子音のような音が、響いた様な気がした どこからか現れた、小さな薬瓶 その中身が、カイザーの口に注がれて 次の瞬間、カイザーは体の自由を取り戻す!! 「っちぃ!!…ゲーム系の都市伝説、とか言ってたねぇ。まさか、ゲーム自体と連動しているのかい!?」 ゲームから生まれた都市伝説 もし、その本体が、ゲームの中に存在するとしたら? 傷ついても、毒や麻痺を喰らおうとも …ゲームの中でアイテムを使えば、回復する? 「冗談じゃないよっ!?」 ますます、自分では歯が立たない 魔女は、何とか逃げ道を確保しようとするのだが、カイザーは執拗に魔女に襲い掛かってくる 契約者を探すのだが…どこにいるのか、わからない 恐らく、繁華街のどこかのビルの屋上辺りから見ているのだろうとは思うのだが… どうする? 仲間に助けを求めるか? だが、空中にいる自分を助けられる仲間など… ………いや 「…ひっひ。いいタイミングで来てくれたねぇ?」 空が、曇りだす 雲一つなかった夜空が、暗雲で埋め尽くされていく ばちっ、ばちっ、と その雲の中で…かすかに、雷が光った 「----サンダーバード!!」 魔女の一撃の呼びかけに、答えるように カイザーに向かって、特大の雷が落とされた ばちばちと、雷がカイザーの体を焼いた 雄叫びを上げて、カイザーはビルに向かって落下していく 「……っとと!?」 雷の衝撃は、あまりにも大きくて その衝撃破に、魔女の体も吹き飛ばされた 慌てて、体勢を整える 「---っぶな……ひっひ、でも、助かったよ」 空を見上げて礼を言うと、ごろごろと雷が鳴った …とりあえず、助かったようである ほっと、息を吐いた 「わたしゃ、ただ空を飛んでいただけなのにねぇ?………問答無用とは酷い相手だよ、まったく」 ……とまれ 相手が、想像以上に厄介らしい事はわかった 恐らく、サンダーバードの雷で焼かれたとは言え……また、復活してくるだろう 魔女の一撃は、さっさと教会まで逃げ帰る事にしたのだった そして 魔女の一撃の予想は、当たっていた 「げんきのかけら」 ぴろんっ♪ 「まんたんのくすり」 ぴろろんっ♪ 黒焦げになったカイザーだったが…契約者たる竜宮がゲーム内でカイザーにアイテムを使っていくと、それに連動するように、カイザーの傷が癒えていく あっと言う間に、元の姿に戻る 「ドラゴンタイプも持ってるから、でんきタイプの攻撃にも強いんだけどなぁ……うーん、もっと気をつけないと駄目だね」 ぴこぴこ、旧式のゲームボーイを弄り、カイザーのステータスを見ながら、竜宮は考え込む 「「そらをとぶ」は秘伝技だから忘れられないとして…んー、「かえんほうしゃ」「きりさく」「はかいこうせん」じゃなくて、技を入れ替えてみようかな…?」 むむむ、と少年は1人 己の契約都市伝説の技の選択に、悩むのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち