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ゼロと原作のコラボSS ある日、松田に呼び出された葉隠 「松田っち、俺を呼び出して何のようだべ?」 「…お前の脳が徒氏相応でなく馬鹿すぎるのが気になってな… …すこし検索してみようと思う。」 「ななっ!?そうみせて洗脳するきだな!?」 「…どうしてそういう結論に行き着く。 まぁいい、少し貴様の脳の構造を調べさせてもらうぞ。」 言うや否や葉隠の頭に大量のコードが取り付けられる 「どれどれ…むっ?何だこれは!?勉強や運動など基本的雑学の知識を養分として その知識を消去する代わりにオカルト話やオーパーツなど下らん知識を詰め込む力が 極端に発達している!? これは…想像以上に面白いぞ!!」 数分後 「どうだったべか?」 「…いい研究データが取れた、また、暇なら寄ってくれ」 「だべ。今度、レムリア文明のことでも語り合いながらお茶でもするべ。」 そういって葉隠は去っていった その後、松田は葉隠の記憶消去による脳発達のメカニズムを研究するうちに 人の記憶を忘れさせる方法を思いつくのであった …そう、これがゼロの事件の幕開けになるとも知らずに…
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「霧切さん、もう逃げ場はないよ。ここで決着をつけよう。……クロは――僕の心を盗んだ犯人は君だ」 とうとう追いつめた。ここには逃げ場はない――ここは僕らの教室、入り口の前に僕が立っている。 「苗木君のクセに生意気ね……」 ―――――― 僕は霧切さんの事が好きだ。けれど、最近避けられている。 僕が何か迷惑をかけた訳じゃない。 全く身に覚えもないし、第一理由がない……だって霧切さんも僕の事好きなはずだし。 ――これには確信を持てる。僕なりにウラをとった、霧切さん直伝のやり方で。 だというのに何故か避けられる。普段なら一緒に登校して、一緒に下校する。 たまに寄り道したり、休日に遊びに出かけたりもする。―もちろん助手として霧切さんの手伝いをさせてもらうこともある。 ここ最近はそれらのイベントが一切発生しない。このままじゃこの気持ちを伝えないまま別れてしまう。 それだけは避けないと…… ―――――― 僕はようやく霧切さんを追いつめた。 ――理由を付けて別行動しようとする霧切さんを、無理やり連れてきた。と言い換えてもいいけど。 道中、なぜ僕を避けるのか問いただすも、はぐらかされて解決しない。 自分の意志を律する霧切さんの心を開くため、僕は徹底的に霧切さんを論破する事にした。 「ねぇ霧切さん、知っているとは思うけど、僕は霧切さんの事がすごく気になるんだ」 「そう、ありがとう苗木君」 いつもの様にややもすれば険しい、と取られる目つきで僕を見やる。 ――ただし、僕は霧切さんの組んだ腕が少し動いたのを見逃さなかった。 だからここで間髪を入れず 「霧切さんも僕の事気になってるよね?」 「何を言っているの苗木君【そんな事あるはずがないじゃない、からかっているのかしら?】」 何も知らずにこう返されたら深く傷ついたろう。だけど…… 「それは違うよ!…山田クン」 霧切さんの発言の矛盾を容赦なく撃ち抜く。その為に皆に協力してもらったんだから。 「はいですぞー。実は苗木誠殿に頼まれて……」 「山田クン、前置きは良いから」 僕が彼の名前を呼ぶと、あらかじめ待機してもらっていた山田クンが教室に入ってきた。 ―山田一二三の証言― 「実は今週のゴミ当番はこの僕でして、昨日の七夕の短冊をこっそりチェックしていたのですぞ」 「それも下書きの方を」 ―まただ、霧切さんの腕が少し動いた。 「何故か霧切響子殿の下書きが大量に見つかりまして、それも何度も何度も消した後が残っておりました」 ……僕は見ていたんだ。昨日霧切さんが短冊を何度も書き直していたのを 「山田君…あなたって人は最低ね」 「それは違うよ。僕が山田クンに頼んだんだよ。前に霧切さんに教わった通り、ゴミを漁るのも時には必要なんでしょ?」 探偵の汚れ仕事として、時にはゴミ漁りも必要なのだ、思わぬ情報を入手することがある。 「続けてもよろしいですかな?」 「うん」 「そこには、確かに霧切響子殿の筆跡で『苗木君とずっと一緒にいられますように』と書いてありました」 わざわざ山田クン愛用のカメラで撮影した、確たる証拠品を持参してもらった。 「どうかな霧切さん?これでもとぼけるつもり?」 証拠の存在で、霧切さんが少したじろいだ。 「っ……それは探偵と助手として―という意味よ。他に他意はないわ」 「素直じゃないね」 「お生憎様、私には愛想も愛嬌もないわ。そうよ【私みたいに愛想の悪い女】が素直になるはずがないわ」 霧切さんの笑顔はとても可愛いのに……僕は自分の価値観を肯定すべく次の証拠を突きつける。 「それは違うよ!…セレスさん」 山田クンの時と同様セレスさんの名を呼ぶ。 「…全く、わたくしをこんな事で呼びつけるなんて」 ―セレスティア・ルーデンベルクの証言― 「結論から申し上げますわ。…霧切さん貴女、苗木君の事を特別に思っていますわね」 「苗木君と過ごす貴女は、以前に比べとても表情の変化に富んでいらっしゃいますもの」 「何を言うのかと思えば…セレスさん、それは勘違いよ」 「いいえ、私も探偵の貴女とは方向性が違いますが、持っていますのよ。…観察眼というものを」 「――ギャンブルに於いて、相手の心理や考えを見抜くのは基本ですわ」 …セレスさんの口調には実感がこもっていて、妙に聞き入ってしまう。 「だから、それは探偵と―」 「いいえ、あれはそんな義務感で繋がれた関係では表れない表情ですわ」 「貴女がご自分で気付いていらっしゃらないというなら、探偵の看板は返上なさった方がよろしいかと…」 珍しく霧切さんがやりこめられている。ここぞとばかりに僕も加勢をする。 「そうだよ。霧切さんの笑顔はとても可愛いんだから」 ギリッと睨みつけられた…笑顔が可愛いのに。 「…よしんば私の笑顔が可愛いとしましょう。それに万一、苗木君が私の事を好きだとしましょう」 どれも本当の事なのに…… 「それでも、私と苗木君は住む世界が違うのよ。…2人が結ばれることはないわ。御伽噺じゃあるまいし」 霧切さんは自分の発言に気付いているだろうか、暗に僕に気があると認めていることに。 「私は探偵という日の当たらない世界の住人。あなたはまだそこまで深入りしていないわ。あなたにはもっと相応しい人がいるわ」 霧切さんの心配ももっともだ。彼女に合う前の僕なら進んで影と関わろうとはしなかっただろう。 でも、ごめんね霧切さん。すでに遅いんだ。 「それは違うよ!…十神クン」 また1人級友を呼ぶ。 こうやって少しずつ霧切さんの心の壁を破壊していく。 「ふん、苗木ごときが俺を呼びつけるなど……」 ―十神白夜の証言― 「いいか霧切。わざわざこの俺が時間を割いてやってるんだ。二度は言わんぞ」 十神クンも、勿体つけた言い回しをする。関係ないけど、不快感を覚えさせる話し方だよね。 「そこにいる苗木の奴が、愚民の分際でこの俺に頼み事をしてきたのだ。……分かるか霧切?」 十神クンの挑発的な目が霧切さんを睨めつける。 「………」 霧切さんは何も答えない。―そうだろう……いくら何でも分かるはずがない。 「奴は貴様の助手になるためと抜かして、十神家が握る裏社会の情報を欲したのだ」 十神クンが僕の事も睨んでくる。……流石に全部は見せてもらえなかったが、普通の人よりは陰の世界に詳しくなった。 「僕はね、霧切さんと住む世界が違うなんて思っちゃいないんだ」 「でも、霧切さんがそういう事を気にすると思って、敢えて陰の世界の住人になることを選んだんだ」 「だって、霧切さんの役に立ちたいから……ずっと側に居たいから」 届け僕の気持ち!霧切さんに伝わってくれ 「馬鹿ね…普通の人ならそんな愚は犯さないわ。自ら望んで命を危険にさらすなんて、ね」 突き放すように、呆れた顔で僕に告げる。…でもその顔から少し険がおさまったように見える。 「でもね、あなたが私の為にそんな事をする必要はないの」 「だって、僕は霧切さんの事……」 「なに?好きとでも言うの?あり得ないわ…【苗木君が私を好きになるはずがないもの】精々、憧れがいいところよ」 「自分には無いものを持っている人間に、惹かれているだけよ―特に私みたいに珍しい、女探偵なんかにね」 僕の言葉を待たずに、霧切さんが勝手に自己解決を試みる。 それも自虐的な笑みを浮かべて。 ―どうして素直になってくれないのだろう、僕が好きなのはそんな笑顔じゃない! 「それは違うよ!…朝日奈さん」 僕の言葉に耳を貸さないつもりなら、第三者の意見だ。 「うわー、なんか漫画みたいだね……」 ―朝日奈葵の証言― 「ねぇ霧切ちゃん、苗木ってば前に私やさくらちゃんに聞いてきたことがあるの」 「『霧切さんはどんなプレゼントなら喜んでくれるだろう』って、普段お世話になってるお礼とか言ってたけど」 「その割には物凄く真剣に選んでたよ。あれは絶対霧切ちゃんに気があるよ。私にも分かるくらいだったよ」 女の勘って奴なのかな…僕としては、分からないようにそれとなく尋ねたつもりだったんだけど。 「何々?オモシロそーなことやってんじゃん」 僕が話を続けようとしたら闖入者があらわれた。 「江ノ島さん?」 僕が今回呼んだ証人には入っていなかったのに…… ―江ノ島盾子の証言― 「え?これ告白なの?んでなに、皆が証人?そっかー霧切って、なんか素直じゃなさそうだもんね」 「苗木君?」 想定外の出来事で僕が動揺していると、これまで追い詰められていた霧切さんが、少し落ち着きを取り戻したようだった。 でも僕が何か言うより早く 「私様も証言していいんだよね?実はこの前苗木に『流行りのデートスポットを教えて』なんて言われてさ~」 「顔を真っ赤にしながら『霧切さんを喜ばせたいんだ』とか言っちゃって、最初はオモシロそうだから教えるつもりだったんだけど」 「途中で飽きちゃったから、適当な所教えといたの。そんじゃあね~」 いきなり現われたと思ったら、あっという間に去っていった。本当に気まぐれな人だ。 「…ともかく、これで僕の気持ちも分かったよね?」 少し苦笑いをしながら、改めて霧切さんを見つめる。「第三者から客観的に判断を下してもらえれば、疑いなようがないよね」 江ノ島さんの証言の最中、俯いていた霧切さんだが 「いいえ、信じられないわ。…だって、あなたがわざと言わせてる可能性があるもの」 あくまで否定するつもりらしい。 こちらを睨みつけながら否定してくる。―ただ、霧切さんの両手は、何かを堪えるかのように強く握りしめられている。 「どうして僕を信じてくれないのさ!」 「信じろという方が無理なのよ!……だって今朝―それも早朝に、舞園さんの部屋から出てくるところを見てしまったの」 悔しそうに顔を歪め、また僕から目線を逸らしつつ、辛そうに声を絞り出してくる。 「確かに私はあなたのことが……。でも、その感情を持て余していて、自分の心が乱されるのを恐れていたの」 「何とか気持ちを整理しようと努力していたわ、それでも、あなたの事を考えれば考えるほど………」 「だからこそ今朝のは衝撃的だったの、あなたが舞園さんの部屋から出てきたから」 「【私の自惚れだったのよ、苗木君に好かれているなんて……勘違いも甚だしいわね】」 全部すれ違いだ。単なる誤解だ。―そう口にしたところで霧切さんに分かってもらえるとは思えない。 だから僕は最後の切り札を 「それは違うよ!……舞園さん」 「霧切さん…あれは誤解なんですよ」 後一押し!そう確信できたからこそ、舞園さんを最後に選んだんだ。 ―舞園さやかの証言― 「霧切さん、昨日が何の日か知っていますか?」 「七夕でしょ。それくらい知ってるわ」 舞園さんから何を言われるのかと身構えていた霧切さんだが 虚を突かれたみたいで、訝しげな表情で舞園さんを見ている。 「……霧切さんはご存知無かったようですが、一応私の誕生日だったんです」 「ごめんなさい、忘れてたわ。本当にごめんなさいね。遅くなったけど、おめでとう」 友人の誕生日を忘れているなんて霧切さんらしくないな 「いいんですよ。どうせ、ずっと苗木君に夢中だったから忘れてたんですよね」 「舞園さん!」 意地の悪そうな笑みを浮かべた舞園さんに、からかわれている霧切さん。 あんなに反応してくれたら僕も嬉しい。 「話をもどしますね。…実は昨日、休日だったこともあってファンの皆さんと交流会があったんです」 「そのせいで昨日は苗木君からプレゼントを貰えなかったんです」 「それで私が翌朝、つまり今朝にお願いしたんです。―これが今朝の事件の真相です」 「そんな、でも……だったら何故部屋から」 まだ納得いかないようで、僕と舞園さんを弱々しく見据えようとする。 「「ただ、お茶を出した(ご馳走になった)だけです(だよ)」」 期せず声が重なってしまった。 「そんなの、そんなの………」 自分の思惑が外れたのが悔しいのか、唇を噛み締める霧切さん 「苗木君、後少しですよ。霧切さんを論破して下さい!」 「ありがとう舞園さん。…ありがとう皆」 僕は証人になってくれた皆にお礼を告げて、霧切さんと向き合った。 そうして僕は霧切さんを論破すべく、最後の言弾を装填した。 最後は他の誰でもない、僕の気持ちを言葉にして撃ち込むんだ! 「霧切さん」 僕は一歩霧切さんとの距離を縮めた。 「来ないで」「認めないわそんなの……」「苗木君のクセに…」 違う……僕が撃つべき矛盾じゃない。また一歩、一歩霧切さんに近づいて行く。 「からかわないで」「私みたいな女」「私とあなたは住む世界が……」 もう少しだ!手の届くところまであと少し…… 「あなたが好きなのは私じゃないでしょ」 そうじゃない…そうじゃないんだよ。僕は今、霧切さんの目の前に立っている。 「【あなたが好きなのは舞園さんでしょ】」 「それは違うよ!!僕が好きなのは霧切さんだよ」 間髪を入れずに僕の言弾が霧切さんの発言の矛盾を打ち砕いた――。 ―――BREAK――― 「そんな、嘘よ……騙されないわ……」 こんなに狼狽える霧切さんを見たのは初めてだ。 目線は僕に合わさぬように落ち着きなく動き回っているし 雪原を思わせる美しく怜悧な顔立ちも朱に染まり、嬉しそうな、悲しそうな、表現しづらい表情だし 自分の腕で、まるで心を見透かされない様に胸を掻き抱いている。 「そんな、そんなはず…だって苗木君は舞園さんが…」 未だに自分の負けを認められないのか、ぶつぶつと僕が否定した、誤った認識を呟いている。 「霧切さん、もう一度言うよ……僕が好きなのは霧切さんなんだ。そして霧切さんも僕の事が好き。これは事実なんだよ」 僕は確信を込めて言弾を撃ち込んだ。 「……苗木君は本当に私の事を?」 とうとう霧切さんを論破する事が出来たみたいだ。 その場にまるで、彼女を支えていた糸が切れたようにへたり込んだ。 「そうだよ。さっきからそう言ってるじゃないか」 「本当に本当なの?」 珍しく、僕が見下ろしながら話す。クラスメートはほとんど僕より背が高い。 いつもと違い、僕をとても弱々しく下から見上げてくる――まるで叱られた子どもが許しを請うように。 途端に、僕は居た堪れなくなり、跪きながら霧切さんを抱き寄せた。 「な…えぎ、くん……」 張りつめていた糸が切れたのか、少し呆然とした声音で僕の名を呼ぶ。 霧切さんを論破した――その事実は予想に反して、達成感や充実感はなく ただひたすらに霧切さんへの愛しさがこみ上げてきた。 ―だから僕は 「霧切さん、僕は君が大好きだ」 ―彼女の耳元で 「この気持ちに嘘偽りはないよ」 ―僕に出来うる限りの愛を撃ち込む 「この先、一生を共にする覚悟の上だよ」 ―彼女の心の壁を撃ち砕く 「探偵の助手としてだけではなく」 ―愛の言弾を 「1人の男として」 「……苗木君のクセに生意気ね」 ―そんな、2人で居るときには口癖になっている霧切さんの呟き。 左頬に感じていたぬくもりを失いつつ、僕は霧切さんの目を見つめた。 「こんな、プロポーズ紛いなこと……」 今度は霧切さんも目線を逸らさず、僕を見つめながら「でも、嬉しい」 ―その頬ははっきりと分かるくらい赤く 「私も苗木君が好き」 ―いつの間にか僕の背中に回されていた手に、力がこもった 「探偵の助手としてだけではなく」 ―霧切さんの瞼が閉じられて、僕も目を閉じた。 「1人の女として」 もうお互いに言葉は必要じゃなかった。 唇で感じる互いの熱――普段よりずっと高いであろう体温 聞こえてくるのは自分の心音か相手の心音か、あるいはその両方か…… 唇を介して、互いの全てを循環させあっているような錯覚 頭の中で火花が飛び散っている気がする。 ただ、そんな幸せな時間は、クラスメートの―確か証人を頼んだ覚えのない 「君たち!不純異性交遊は校則違反だぞ!」 の一言で台無しにされてしまった。 ――そういえばここは教室だった。今更ながらに僕らは羞恥心を覚えた。 1人を除き、皆見下すような、羨むような、詰るようなそんな目で見てくる。 除かれた1人は、ただ執拗に校則違反を訴えてくる。 ふと、隣を見やると、僕と同じく羞恥に彩られながら、苛立ちを覚えている霧切さんと目があった。 「ねぇ石丸君、私達は校則違反などしていないわ」 「何を言うんだね霧切君!」 えっ!?流石にこれは言い逃れ出来ないでしょ。現行犯逮捕だよ。 照れ隠しにしても、無理がある―そんな風に思っていたら 「ねぇ…苗木君もそう思うでしょ?」 なんて、石丸クンから目線をこちらにやる霧切さん。だから咄嗟に 「そうだよ。僕達は校則違反をしてないよ」 つい、そう答えてしまった……… 「何を言うんだね苗木君。どう見たって【校則違反】だろう!」 強く断定してくる石丸クン けれど、霧切さんの目を見つめていたら答えが浮かんできた。 ―だって『ここまで言えば分かるわね?』と目が訴えかけてくるんだから。 すぐに思い浮かんだ。でもこの答えは……ええーいままよ 「それは違うよ!…僕は今、霧切さんに告白した。それもプロポーズしたんだ」 石丸クンの発言で、静まり返っていた教室内が騒然とし始めた。 うぅぅ…これはなんて羞恥プレイなんだ。恥ずかしさに心を折られそうになりながら、石丸クンを論破する。 「そして霧切さんの同意を得た。この時点ですでに婚約状態と言えるんじゃないかな?」 多少論理に綻びが見える気がするが、ここは力業だ。 「そうよ。婚約したとあれば、結婚するのは秒読み段階よね」 霧切さんも石丸クンを論破するのに追い討ちをかけてきた。 「石丸クンの言う校則違反は『不純』だよね?僕達は婚約したんだから全く不純ではないよ」 「その…夫婦なら純粋だよね」 自分の発言の恥ずかしさに今更ながら顔を伏せたくなる。 が、霧切さんの更なる発言に僕は凍りついた。 「そうよ。だから私達がこれから、いわゆる夫婦生活を送っても何ら問題ないわ」 「……霧切さん?」 いつの間にか熱くなって周りが見えていないのか、僕が少し冷静になったからなのか ……石丸クンを除く周囲の空気が凄く冷たい事に気がついた。 一方石丸クンはどうやら論破されてしまったようだ。すごすごと立ち去ってしまった。 「これで、邪魔者は居なくなったわね」 「いや、でも他の皆が……」 僕が反論する間もなく、口を塞がれてしまった。 そしてこの日から僕達は『超高校級の夫婦』の称号を冠する事となったのだ。 ―――――――
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霧切「今日は『いい夫婦の日』だそうよ、苗木君」 苗木「へえ、そうなんだ」 霧切「……」 苗木「あれ? 霧切さん?」 霧切「今日は『いい夫婦の日』だそうよ、苗木君」 苗木「それは今聞いたけど……」 霧切「……」 苗木「あの……」 霧切「……いい夫婦と言うのは、みなまで言わずとも意思の疎通を図れるものよ。 私達はまだまだのようね」 苗木「えっ!?」 霧切「? 何よ、その顔は」 苗木「それってつまり……その、僕と霧切さんがいずれ夫婦に……」 霧切「! ち、違うわ。そろそろ私が一から十まで説明しなくても分かるようになれと言ってるのよ」 苗木「そ、そっか」 霧切「ええ」 苗木「……」 霧切「……何?」 苗木「ぼ、僕は霧切さんといい夫婦になりたいかなって思うんだけど……」 霧切「!? ……苗木君のくせに生意気よ……」 苗木「駄目かな……?」 霧切「い、言わなくても分かるわよね」
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「えー、霧切さんも来ないの?」 「あの人、去年も来なかったでしょ…や、別に強制とかじゃないけどさぁ」 「相っ変わらず、後輩のクセにノリ悪いな。仕事中も無愛想で、やたら睨んでくるし」 「超高校級って、皆そんな感じか? …ま、苗木とか朝日奈は別だけど」 仲間の悪口を言われても口答えをしなかったのは、別に冷静だったとか、そういうんじゃない。 出来なかっただけ。 ただ衝動的な憤激を、言葉や行動に移すほどの意気地が、僕に無かっただけだ。 ポニーテールが直毛になるほど怒り心頭な朝日奈さんを、なんとか視線で宥めて、僕は先輩たちに頭を下げる。 僕たちが未来機関に所属してから数年。 彼女も思ったことをそのまま口に出さずに留まれるくらいには、余裕のある大人に成長した。 「すみません、ちょっと…その、上手く誘えなくて」 「ああ、うん、いいよ。気にすんな」 課の先輩の中でも比較的温厚な人が、頭を下げる僕の肩を軽く叩く。 「苗木が誘って来ないってことは、誰が誘っても来ないんだろ」 「ったく、使えねえな…幹事役だろ、お前ら」 「人集めもまともにできないんじゃ、この仕事辛いよ?」 後ろからヤジを飛ばす他の先輩に愛想笑いを向けて、ちょうどそこで、空気が凍った。 気まずい間。 先輩たちの視線がみんな、僕の後ろの方へ。 僕は振り返らずとも分かる、この極寒のような雰囲気には慣れている。 「…霧切、ちゃん」 「…お早う、朝日奈さん。…お早うございます、先輩方」 果たしてどこから聞かれていたのか、それとも素知らぬ仏か。 こちらの気まずさなど知ったことかと言わんばかりに、いつもの調子で挨拶をする。 すっと後ろで束ねた髪に、折目整ったスーツ姿。キャリアウーマン、という言葉が相応しいだろう。 「……」 僕にだけ挨拶を交わさず、彼女はそのまま通り過ぎて、自分のデスクへと足を運ぶ。 通り過ぎる瞬間、まるで北風が通り過ぎたかのように、冷やりとする。 一瞥。 一瞬だけ視線を感じるけれど、僕がそれに応じる頃には、彼女はもう僕の方を見ていない。 先輩のうち一人が、勝ち誇るような憐れむような、何とも言えない笑みを僕に向ける。 それから席を立ち、霧切さんの背中を追って行く。 汚い言葉は使いたくないけれど、胸糞が悪い。 誰の、せいだと、 いや、違う。誰かのせいなんかじゃない。 あの人が苦手だからって、何でもかんでもの非や責任を、あの人に押し付けていいわけじゃない。 彼女が僕に怒っているのは、他の誰でもない僕のせいなのだから。 「ねえ、霧切ちゃん、」 「お早うございます」 何か言いたげな猫撫で声を、叩き伏せるようにして霧切さんが返した。 めげていないのか、それとも鈍いのか、男の先輩は構わず霧切さんの背に付き纏う。 霧切さんが嫌がっているのが分かる。 普段は丁寧で落ちついた諸々の所作が、ほんの少しだけ乱暴になるのだ。 彼女から先輩を遠ざけるなんて権利は、僕にはない。 ほんの先程だって、友人を庇うための言葉さえ、それを発する勇気さえ、持ち合わせていなかったんだ。 「何、苗木と喧嘩してんの?」 「……は?」 「いつもは苗木の方が、コバンザメみたいにくっついてくじゃん」 「…それが、先輩に何か関係があるのですか?」 愛想のない台詞はいつも通りだ。 それよりも、声音。 どんな時でも凛とした調子を崩さないはずの霧切さんが、苛立っている。 もともと自分の領域に踏み込まれることを、極端に嫌う人だ。秘密主義というやつだろうか。 僕も、嫌いだ。 僕が悪く言われていることは良い、慣れっこだし、何より正しい評価だ。 けど。 彼女の領域に土足で踏み込んでいくような、その先輩の言動が、嫌いだ。 それは、僕がけっして踏み込まないように保ってきた一線だ。 大切に育てている花壇を踏み荒らされるような、理不尽への苛立ち。 「ねえ、霧切ちゃんは忘年会来ないんだって?」 「…そんな気分になれなかったので」 「なんで? いいじゃん、座って酒飲んでるだけでいいんだぜ」 「……大勢で騒ぐのは苦手で」 「あ、そうなの? じゃ、二人っきりとかのが良いんだ? 意外と大胆だねぇ…」 先輩たちは、もちろん止めることなどしない。いつもの同僚の悪ふざけだ。 せいぜい、また始まったよ、と顔をしかめる程度。 この手の誘いに真っ先に爆発しそうな人物、すなわち朝日奈さんは、以外にも大人しく踏みとどまっていた。 その顔は、怒りよりも不安によって歪められている。 彼女がそんな顔をしているのは、とても、似合わない。良くも悪くも、太陽のような人だ。 笑うか、怒るか、どちらにせよ、元気でいて欲しい。 何がそんな顔をさせているのだろう、と思い至り、その不安げな瞳が僕を見ていることに気付く。 「いっつも苗木のお守ばっかで疲れるっしょ?」 「……」 「たまには霧切ちゃんのが甘えたいんじゃない?」 「……」 「どんだけ酔っても、俺が介抱してあげるけど? なんなら、ベッドの上まで―――」 限界、だった。 今、自分がどんな顔をしているのか分からない。 ただ、視界の端の朝日奈さんの顔が青ざめているのが見えた。 「なえ、」 彼女が呼ぶより早く、僕は足を踏み出していた。 朝日奈さんの言葉に反応して、他の先輩方も僕を見る。 二歩目、三歩目。早くなる足、大きくなる歩幅。 霧切さんのデスクと真逆、扉へと向けて、急ぐでもなく、けれども逃げるように。 彼女に背を向けて、僕は部屋を後にする。 もう、聞いていたくなかった。 言葉を聞くだけで、場面を想像してしまうのが嫌だった。 僕のお目付け役のような存在から解放されて、どこか楽になったような表情の霧切さん。 見たこともないような朗らかな笑みで、談笑とともに酒を飲み。 とろり、と眼が潤み、眠気を訴えるように表情が解け、ベッドに体を預ける、無防備なその姿を。 意識も疎らなうちに、薄皮を剥くようにして衣服を剥ぎ取られ、慣れない刺激に身を捩じらせ、あの凛と響く声で――― そういうことをする、と、あの先輩は言っていたのだ。 僕がそれを阻む権利なんて、どこにもない。 選ぶのは霧切さんの意思。 彼女はきっと、拒むだろう。 けれど、それは絶対じゃない。 そして、いつまでも拒むわけじゃない。 あの先輩を霧切さんが今は苦手としているだけで、きっと彼女が心を許せるような存在が現れた日には。 僕の「そんなことしないでほしい」なんて願望が、彼女を止める権利になるわけじゃない。 理性を、自分を制御するためにフル動員していた。 ので、自分が今どこを歩いているのかにも気付くことが出来なかった。 片腕が何かに引っかかり、ガクン、と体がつんのめる。 「苗木ってば!」 朝日奈さんの声。 やっぱり、元だけれどアスリートなだけある。 同じくらいの体格なのに、その腕を引かれるだけの力で立ち止まってしまった。 「…あ、…朝日奈さん」 「ずっと、呼んでたんだよ…聞こえてなかった?」 それでも息切れしているのは、本当にずっと僕を呼んでくれていたんだろう。 声も少しだけ掠れている。 引きとめたは良いけれど、何を言うために追ってきたのかは忘れてしまったらしい。 あの頃から変わらない、彼女らしい直情さに、思わず頬が緩んでしまう。 とりあえず侘びとして、近くにあった自販機から適当にスポーツ飲料を買って手渡した。 「その、…まずは、ゴメン」 ペットボトルの蓋を開けて、数口だけ飲んで、それから落ちつくまで待って。 深呼吸を挟んだら、もう落ちついていた。 その辺りのリラックス法や精神力も、やっぱりアスリートのうちに鍛えたものなのだろうか。 僕にも、それくらいの心の強さがあればいいのに。 「苗木が抑えてくれなかったら、私また、先輩たちに殴りかかってたかも…」 「そ、そんなことないよ。朝日奈さんは」 「いいよ、庇わなくて。…苗木、そういう面倒な役回り、全部自分でひっかぶってんじゃん」 「いや、ホントに、そんなことないってば」 「あるよ。だから最近疲れてて、ちょっとテンション低いじゃん。何度も溜息吐いてるのとか、全部知ってるんだから」 私のブレーキ役でしょ、先輩たちとみんなのクッション役でしょ、それに、と朝日奈さんは続ける。 そこから先を口籠ったので、彼女が誰のことを言おうとしているかは分かった。 「……私、許せない。…許せないよ」 「何を?」 「苗木だって、許せないでしょ?」 表情は暗く、声は重い。 昔の彼女なら怒りのままに、顔を赤くして怒鳴り散らしていることだろう。 やっぱり朝日奈さんは、大人になったと思う。 その、色んな意味で。 「霧切ちゃんを無理に口説こうとして、苗木まで引き合いに出して、本人の目の前で悪く言って…」 「……うん、僕は、…大丈夫だから」 「アンタが大丈夫でも!」 ぐわし、と、肩を力強く掴まれる。 「霧切ちゃんは、大丈夫じゃないの! 分かる!?」 「うわ、っと、朝日奈さ、危なっ…」 「霧切ちゃん、自分と比べて苗木のことを悪く言われるのが、一番嫌なんだよ! 釣り合ってないとか、お守役だとか!」 「…だって、」 「『私のせいで苗木君が貶められてる』って、それが一番傷ついてるんだよ!」 「だって、……事実、でしょ」 揺さぶるようにしていた朝日奈さんの腕が止まる。 声も、表情も。 初めての光景を目にする、子どものような表情に戻る。 「僕とずっとコンビみたいに扱われて、他でもない霧切さんが…一番迷惑してるはずだ」 「…本気で言ってんの、苗木?」 「僕だってそんな…霧切さんを縛る枷みたいには、なりたくないんだ。だから、」 だから、それに、だって。 言い訳を繋ぐための言葉は、驚くほどするすると口から零れる。 だから、彼女が誰に狙われようが、口説かれようが、僕が干渉しちゃいけないんだ。 守ってあげなきゃ、なんて自惚れはする余地もないし、第一彼女自身が守られるような弱い人じゃない。 「…一昨日、苗木が霧切ちゃんを、誘いに行ってからだよ。二人がおかしいの」 「……」 「何が、あったの?」 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 『なんだったら、ホラ、お代は僕が持つからーっ!!』 『…必死ね、貴方』 両手をかざして懇願する僕を、相変わらずの涼しい目で霧切さんは見据える。 『それより、ホラ…手が空いているなら、こっちの書類もお願い』 『……はい』 いっそ潔いくらいに流されて、やっぱり今回もか、と撃沈した僕は、逆らう気力もないので書類を受け取った。 特に誰に命令されたわけでもないけれど、書類の抜けや不備の整理を、彼女は自ら買って出ている。 彼女が推敲するお陰で、特に朝日奈さんや葉隠君が誤字脱字でどやされることは格段に減った。 それだけなら、喜ばしいことなんだけど。 『助かるわ、苗木君』 『あ、そう…あの、僕、明日朝早いから、もう帰って良い?』 『そこの書類が終わったら、コーヒーを淹れて来てもらえるかしら?』 『はい……』 こんな感じで、延々と有無を言わせず僕に手伝わせている僕としては、もう少し仕事に不熱心でもいいんじゃないかと。 というか、こうまで誘いを断り続けられると、なんか、もう、何のために僕は手伝っているのか。 もう少し手伝わせていることに負い目とか、ないんですか。 『ないわ』 『さいですか…』 一刀両断、切捨て御免、快刀苗木を断つ。 『逆に聞くけれど、じゃあ貴方は私を誘う口実だけのために、親切にも手伝ってくれているの?』 『いや、そうじゃないけどさ…』 『なら、いいでしょう』 書類の山に阻まれて、表情は見えないけれど。 なんとなく、霧切さんが満足げに笑っているのが分かった。 想像して、僕も思わず頬を緩めてしまう。 ここで憤慨したり不貞腐れるならともかく、笑ってしまうのだから、もう手伝う以外に他の道はない。 『何度も言っているでしょう。大勢で騒ぐ、なんていう柄じゃないの』 『いや、それは分かってるんだけど…』 『私がいると、空気も重くなるわ。気も遣わせてしまうし。お互い疲れるだけでしょう?』 『いてくれるだけで、いいんだけど…』 『……』 何故か、間になる。 答えに窮するようなことを、何か言っただろうか。 『いっ、痛いっ!』 机の下で、ヒールに蹴られてしまった。割と容赦のない威力で。 『……しつこいわ、苗木君』 言う割に、珍しく上機嫌で霧切さんは笑った。 書類の向こう側から、楽しげに。 仕事の恐ろしく早い彼女は、先程まで壁のようにそびえていた書類を、もう肩の高さにまで減らしてしまった。 僕が手伝っている意味はあるのだろうか。 いや、そりゃ朝日奈さんや葉隠君よりはまだ出来るけれど。 僕以外にも彼女を手伝おうとする人は何人もいるだろうに。 『そんなに、私とお酒が飲みたいのかしら…?』 『え? あ、や、うん…まぁ』 『…煮え切らないわね。私を酔わせて、何をするつもりなのかは知らないけれど』 『いや、僕じゃなくて、あの先輩がね』 『え?』 ひぃん、と、空気が音を立てて凍った。 『……あの、今年は絶対に連れて来い、って』 書類越しに、目が合った。 『……、そう』 『いや、あの、みんな! 霧切さん、普段出ないからさ、楽しみに…』 見たことのない、表情だった。 いつもの知性を感じさせる落ちついた笑みや、時折見せる思索に耽る物憂げではなく。 本当の、無。 目を見開き、唇を少し震わせた、本当の無表情。それが、少しだけ怖く見えて、咄嗟にわけもわからず言い訳を募らせた。 『……その、霧切さんがあの人のこと苦手だっていうのは、知ってるんだけど』 『…知ってて、誘おうとしたの?』 『いや、それは、』 『……』 『…あの、先輩が、その……霧切さんのこと、好きみたいで』 ガタ、と、何かが机に当たった音がした。 震えていたのは、僕だったのか、それとも霧切さんだったのか。 『…何でそれを、貴方が…取り持つような事…』 『と、取り持つって、僕は別に、何も…』 『あんな下心丸出しの、下半身で物事を考えているような、見え透いた、女を口説くことしか能が無い男に…!』 『霧切さん、色々本音漏れてるって! 先輩だよ、一応…』 どうでもいい、とばかりに、彼女は頭を振って、椅子から立ち上がった。 どさ、と、書類が音を立てて崩れ、机の下にバラバラに散らばる。 反射で拾おうとして、がし、と襟首を掴まれ、体が宙ぶらりんの状態で止まる。 どういう力が働いているのか、僕よりも細い彼女の腕は、そのまま僕の体を後ろの戸棚に叩きつけるようにして押し付けた。 『貴方は、私を差し出そうとしたの…!?』 縋るような、瞳だった。 【続く】
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セレス「あら、苗木君。何を書いてますの?」 苗木「願い事の短冊だよ。明日は七夕だからね」 セレス「ああ、七夕…。これっぽちも興味がないので、すっかり忘れていましたわ。 …あなた、まさかそんな迷信を本気にしている訳ではないでしょうね?」 苗木「…それは、まあ…。でも年に一回のお祭りみたいなものだからね。 せっかくだから、セレスさんも何か書いてみたら? 皆書いてるし」 セレス「…参考までに聞いておきますが、あなたは何を書きますの?」 苗木「ボクは『もっと皆と仲良くなれますように』…かな」 セレス「……『皆と』、ね……あなたらしい、ちっぽけな願い事ですわね。 こんな時ぐらいもっと欲を出せばいいでしょうに」 苗木「そ、そうかな…。でももう書いちゃったし、今回はこれでいくよ。 …それで、セレスさんはどうする? まだ短冊余ってるよ?」 セレス「……遠慮しておきますわ。わたくしは欲しい物は自分の力で手に入れますから」 苗木「ああ、そう…」 (セレスさん、もしかして機嫌悪い…?) ~七夕当日~ 苗木「皆、色々書いてるな。どれどれ…『もっと強くなれますように』…これは不二咲さんのだ。 『天下無双』…これは…やっぱり大神さんか…」 苗木「…ん? こっちの短冊は誰のだろう。名前が書いてない。 ……『早く素敵なナイト様が迎えに来てくれますように』……」
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霧切「はぁ…」 苗木「あれ、霧切さん ため息なんかついてどうしたの?」 霧切「触れたくても触れられない禁断の想い… 苗木君、あなたはそんな想いに胸を焦がしたことがあるかしら?」 苗木「え、霧切さん、そんな想い人がいるんだ」(すごいショックだ…) 霧切「いつも同じ時間にバスに乗って来て、いつも同じ場所に座る 他の乗客もその場所だけは空けておくの」 苗木「なんか特別な人なんだね」 霧切「吸い込まれるようなつぶらな瞳 きっと私の視線には気づいているとは思う でも、あえて目を合わせないようにしているみたい」 苗木「恥ずかしがり屋なのかな?」 霧切「子供にも大人気 ある時、何も知らない子供が抱きつこうとしたけど 止めなさいと叱りつけてやったわ」 苗木「え?それはちょっと酷いんじゃ…」 霧切「そんな仕事熱心な盲導犬のラブが愛おしくてたまらないの」 苗木「犬かよっ!!」
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「苗木……絶望しなよ……」 江ノ島盾子が発した言霊、『絶望』を撃ち込まれた苗木誠は倒れる。 弾丸からは絶望が発され、彼は壮大な絶望に襲われる……しかし、 「ボクは……希望を失わない!!」 その中でも希望を捨てず、江ノ島盾子に、苗木誠は言霊『希望』を撃ち込む。 当たりのけぞる江ノ島。弾丸から希望が発せられるけれども、彼女は倒れない。 「……………」 「……………」 流れる無言。 立ち上がる苗木。何も無かったように振る舞う江ノ島盾子。 互いの視線が交差する。 「ふふふふ……アハハハハ!オマエの『希望』……アタシに効くとでも思った?」 「そっちこそ。ボクに、キミの『絶望』が効くと思ったの……?」 両者にらみ合い。殺伐した雰囲気。いつまでも続くかと思いきや、 次の瞬間、小さく笑い合う二人。 「「いや、効いたよ」」 「絶望がなければ、希望を希望として認識することはできない」 「希望がなければ、絶望を心の内に生じることはない」 「超高校級の絶望、江ノ島盾子。…キミの絶望があるからこそ」 「超高校級の希望、苗木誠。…オマエの希望があるからこそ」 「ボクは超高校級の希望を抱くことができる」 「アタシは超高校級の絶望を感じられる」 二人のその表情は互いに互いの存在を認め合ってる印。 「……………」 「……………なーんて、苗木、アタシ達、良いコンビじゃん!!」 「ちょ、ちょっと!江ノ島さん!!……ち、近いって!!……みんな見てるんだから!!」 「うぷぷぷぷぷ……男の子としては女の人と急接近!な感じで嬉しいんじゃないの~?苗木クン」 「モノクマ、お前もからかうな!! ……って、あ、あれ……?江ノ島さんとモノクマってイコールじゃ……」 「「うぷぷぷぷぷぷぷ」」 「本編最後の、復活のモノクマ……?の考察からきた設定だよ!!」 「江ノ島盾子さんとボク、モノクマは別個体、別自我なのです!!」 「………!!」
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【ダンガンロンパ】霧切響子の正体はカップ麺の妖精Part6 レス ID タイトル 備考 12 JLe8o+LA 木こりの泉ネタ 21 9WpGQIBF 桃太郎ネタ 82-84 9BYChGxH 心理テスト 93 D/4EDjKZ プレゼント 147-149,153-156,160-164 QJYWGyVz ラブレター 185-187 luqEVhLt ~限定BOXジャケ写撮影の舞台裏~ 206-210 Je0mBVPY アルバム 220-222,227 QAthxLCD 大人ナエギリ番外編 243 nbKEob19 ハロウィーン 292-295 vWXHo6Li 大人ナエギリ番外編 初冬は編み物日和 302 2G8KoXmD 文化の日 322-329 IkrAoBUq アルバム 339-342 FD4XIGbF カップ麺の妖精 367 //QbMDHv 響子お姉ちゃん 403,409,411 aa69NxsU,EU2Pr3cu ポッキーの日 406-407 5+rDOKCl ポッキーの日 422-426 PKaeT+X/ 大人ナエギリ 良い夫婦の日 465 94keAT5Z ロボコップ 473-477 2PrsnZcT お尻ペンペン 501-504 M/vAzZqn Sギリさん→しおギリさん→照れギリさん 528-535 gwUgv0S2 甘え下手な霧切さんとちょい意地悪苗木君 546 jNP0Ei2v いい夫婦の日 552-557 EPVO9PfS 結婚式 563 voV8Mfgf 和式or洋式 568 RfWF67OB ハグ 572-577 qUDMHlzC 妊娠六ヶ月 603 qJzjogOK 大人ナエギリ 初雪 609-610 R9Ozk5U3 大人じゃないナエギリ 師走は炬燵で蜜柑 642-643 l4PS4/L0 ぎゅっ 657 +NLd6po7 浮気調査 662 yY0DT1QF 657続き・分岐1 665-670 E+3oc8sV 657続き・分岐2 678-680 dCLFf+f6 662続き 691-695 gGvL9nTD スレ一周年記念 756 +tISrNiE 大人ナエギリ花札編 一枚目 松に鶴 757 +tISrNiE 大人ナエギリ花札編 二枚目 梅に鶯 758 +tISrNiE 大人ナエギリ花札編 三枚目 桜に幕 759 +tISrNiE 大人ナエギリ花札編 四枚目 藤に時鳥 772 UxxCpWgp 大人ナエギリ花札編 五枚目 菖蒲に八橋 773-774 UxxCpWgp 大人ナエギリ花札編 六枚目&七枚目 牡丹に蝶&萩に猪 785 DH9ZL0ID 大人ナエギリ花札編 八枚目 芒に月 786 DH9ZL0ID 大人ナエギリ花札編 九枚目 菊に盃 787 DH9ZL0ID 大人ナエギリ花札編 十枚目 紅葉に鹿 788-791 DH9ZL0ID 大人ナエギリ花札編 十一枚目&十二枚目 雨に番傘&桐に鳳凰 853-857 oqo1KQVE 口移し霧苗編 867 BQ2IEuaF 口移し舞霧編853-857続き 870 ULmFUS7n 867続き 897-898 /QcyxDrG エッチな本
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277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/14(火) 00 51 47 石丸「すまない、みんな……実は泊まれる部屋が八部屋しかないのだ!二人ずつに分かれて泊まってくれたまえ!」 ↑ これやった時のメンバー分けが激しく気になる 282 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/14(火) 01 04 29 277 朝比奈×さくらちゃんは鉄板過ぎて困る。 大和田×石川の兄弟部屋。 不二咲×腐川のちーちゃん逃げてー部屋。 セレス×山田の女王様と下僕部屋。 苗木×十神のある意味鉄板部屋。 舞園×桐切のダブルヒロイン部屋。 絶望姉妹部屋。 葉隠と桑田君のなんか余った部屋。 こんなんで 相部屋ネタ 292氏 282にセリフをつけるなら 「朝比奈よ、我と同じ部屋で構わぬか?」 「あったりまえじゃん!親友でしょ、私たち!」 「それじゃ、一緒に朝まで語りつくすとするか、兄弟!」 「夜更かしなど風紀が乱れるような行為は本来良くないのだが、男同志の語らいというなら話は別だ!了承したぞ!兄弟!!」 「あ、あのぅ‥、わ、私も‥ うう‥ (だめだ‥、割って入れる雰囲気じゃないよぅ‥)」 「わたくし、相部屋には慣れていませんの。困りましたわ」 「とはいってもですなぁ、一人だけ部屋を独占する訳にはいきませぬぞ、安弘多恵子殿(ry」 「という訳で、わたくしはこの汚らしい雄豚犬付の部屋で我慢致しますわ。 本名で呼ぶなっつてんだろうが、この腐れ豚飯が!!」 「ひぃぃ、誰かぁお助けくだされぇぇええ!!」 「ふん、相部屋だと。不愉快だな。 おい苗木」 「え、なに十神君?」 「お前を俺と一緒の部屋に入れてやる。感謝するんだな」 「ちょっと、十神君。いきなり勝手に決められても困るよ」 「ふん、的外れな意見だな。 言っておくが、俺とペアを組まなければ、困るのはお前の方だぞ?苗木」 「え?」 「お前の背後で妙に牽制しあってる女が二人見えないか?」 「‥‥‥‥‥」 「決まったな、行くぞ」 「どうやら、苗木君は十神君と一緒の部屋に泊まるみたいですね」 「ええ‥、そうみたいね」 「残念でしたね、霧切さん」 「意味が分からないわ。どうして私がそんなことで残念がる必要があるの?」 「あら、そうですか? まぁいっか。それじゃ良かったらお部屋ご一緒しません?前から霧切さんとは二人きりでお話したいと思ってたんです」 「別に、断る理由はないわね」 「どうしようぅ‥大和田君以外に頼りにできる友達いないよぅ‥。誰とペアを組めば良いんだろう‥」 「呼ばれて飛び出て邪邪邪邪~ん!! ねぇねぇちーたん。私もさ、愛しの眼鏡様があのモヤシ野郎にNTRられちゃってねん! ちょうど、フ リ ~ なのよーんんん!!!さびしんぼ同士、二人で身体を慰め合わない?」 「逃げなきゃ!」 「逃がさないぃぃいいいいい!!!ゲラゲラゲラゲラ!!」 「うぷぷぷぷ‥。久々に残念なお姉ちゃんと一つの部屋で一人っきりなんて‥、楽しみ楽しみ」 「すみません、誰か!部屋を代わっては頂けませんか!割とマジでヤバいんで!」 「俺の占いによると、残りもんには福があると出たべ!」 「うんまぁ、面倒なことに巻き込まれるより100倍マシなのはマジで良~く分かった」 続き by294氏 292 付け加えるなら 苗木・十神部屋では十神が黙って読書してるんだけど、沈黙に耐えられなくなった苗木が「十神くん、トランプとかやらない?」 とか空気読めてるんだか読めてないんだか言い出して、十神も最初は「黙れ。誰がそんな庶民の遊びに付き合うか」とか言ってたのに 結局やり始めて意外な激闘になってたり 「どういうことだ……確率的にその役はできるはずが……!」「え、いや……ごめん」 隣の霧切・舞園部屋では壁際で耳当ててる二人 ジェノさんから逃げたちーちゃんは大和田・石丸部屋に保護されて、桑田・葉隠も合流して5人でワイワイと そして残姉ちゃんと一緒に寝起きドッキリの準備を始める妹様 ----
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他人とは深くかかわらない。なぜなら無駄な感情を抱いてしまうから。 「霧切ちゃん!ドーナツ・・・違う、お昼一緒に食べようよ!」 クラスメートが今日も話しかけてくる。 「ごめんなさい。気持ちだけ受け取っておくわ」 クラスメートは残念そうに「そっか・・・じゃ、また今度ね!」と言い、いつもの友達の集まりに入っていく。 そう、これでいい。 探偵に無駄な感情は命取りとなるから。 かといって断りを入れたこの教室にいるのも心地悪い。 (まだまだ・・・ね) そう思いつつ霧切響子は教室を出て行く。 すれ違い間際に会ったクラスメート――短い黒髪に鼻の辺りにそばかすがある、とても無口な少女。 いつも彼女からは死のにおいがする。そして、自分と同じ超高校級の「何か」と明かしていない彼女。 似ている、いや、何かが決定的に違う。それが何かは分からないけれど。 ただひとつだけ分かることがある。彼女と自分は決して関わりあう存在ではないことだと。 昼食の断りを入れたのもやはりお腹は空いている。 購買部に行こうかと思ったとき、微かに違和感を感じ、その正体もすぐに分かった。 (開いてる・・・) 関係者以外立ち入り禁止の赤い扉が微かに開いていたのだ。 好奇心―それが探偵だからなのか、やはりだたの一人の人間だからなのかは分からないが― 霧切は気配を隠し息を潜めながらその扉を覗く。 「・・・っ!?」 そこにいたのは 会うべき相手 学園長 クラスメート 苗木誠 だった。 何故学園長が?何故ここに?何故苗木誠が?何故ここに?何故、何故 何故苗木誠が学園長と二人きりで隠れるように会って、お互い笑顔で話している? 疑問だけが霧切の中で増幅していく。 理解できない状況に霧切は混乱するばかりだった。 「・・・っはっっ!」 息苦しくなり、霧切は慌てて女子トイレに駆け込む。 幸い誰もいなく、霧切は気持ちを落ち着かせるためにハンカチを水に濡らし頬に当てる。 (・・・ひどい顔) 鏡に写る自分は顔色が悪く目が潤み、髪が乱れていた。 いつ何があっても冷静に。そう思っていたのに。 いざとなればこんな有様だ。 自分が嫌になりつつ、先程の状況を整理する。 と思ったが、まだ混乱しているのか頭が思うように働かない。 ただ、自分がやるべきことは一つある。 (これだけは・・・成功させる) 「き、霧切さん。め、ずらしいね、霧切さんが用があるってさ・・・はは」 放課後、苗木誠を植物園に呼び出し、あらゆる手段を使って白状させようと思っていたのだが・・・ (そうも怯えるものかしら・・・) 一応脅迫用として巨大花の近くに連れてきただけなのにこれはやりすぎたか・・・ と思いつつも霧切は気にせずに訊ねる。 「私が聞きたいのはただ一つ。苗木君、あなた昼休みに何してたの?」 「え?」 「誰かと話していなかった?あの場所で」 観察眼によって感じた変化。 「な、んの事かな?ボクは【赤い扉の場所】なんか行ってないよ」 「あら、私は『あの場所』としか言っていないわ。 でも苗木君は今『赤い扉の場所』といったわね。誰もそこだなんて言っていないのに。」 すると苗木はしまった、どうしよう、やばいよ、どうしたらいいんだ、という表情になる。 (・・・分かりやすすぎるわ) そう思いつつ霧切は続ける。 「苗木君は昼休み、赤い扉のところで誰かと話していたわ。その人物はどうしてあなたと話していたのかしら?」 「ど、どうしてって・・・霧切さんは・・・」 「何?」 「霧切さんはどうしてそんなにムキになってるの?」 「っ・・・?」 ムキに?私が?感情的に? 「・・・ムキになってなんかいないわ」 「けど・・・。もしか、・・・いや」 何故か苗木は迷う表情になり、意を決したように口を開く。 「霧切さんの言うとおりだよ。ボクは昼休み、赤い扉の場所で学園長と話をしていたよ。」 学園長―その単語に反応してしまう。 「えっと・・・霧切さんがなんでそんなに怒ってるのか分からないけど」 「怒ってる・・・?」 「それに・・・泣きそうな顔してる」 そんなこと、と言いかけた時、胸が痛くなった。 (なんで・・・) あんな人に対して感情なんか持っていないはずなのに。ただ会って絶縁を言い渡すだけなのに。 「・・・そのさ、詳しいことは明日の朝、図書館で話すよ。・・・いいよね?」 今すぐ知りたい、けれど、苗木誠の言うとおりにするしかない。そんな気がした。 「分かったわ、・・・明日の朝6時30分に図書室で待ってる。・・・必ずよ。」 夜、霧切は自室にいた。 行儀は悪いと思いつつも、ベットに仰向けになって推理小説を読む。 コーデリア・グレイ―何故か幼いときから好きな探偵の一人だ。 好きになった理由は覚えていない。ただ、好きだった。 「・・・はぁ」 読んでいても目が滑る。内容がまったく頭に入らない。 時計をちらりと見る。深夜1時27分。 早く明日になれ・・・そう霧切は強く願う。 ただ、遠足を楽しみに待つ子供のような無邪気な願いではなかった。 翌朝、6時。 結局昨夜はまったく眠れなかった。霧切は自室を出、足早に図書室を目指す。 約束の時間よりも30分も早いのは承知だが、自室にいる気分でもなかった。 ただ、早く真実を知りたい。それだけだった。 早歩きだったため少し息が上がっているが、気にせずに図書室の扉を空ける。 そこには―――学園長が立っていた。 「・・・え?」 何故?昨日の混乱をより超える混乱が霧切を襲う。 「な・・・んで」 「おはよう、霧切響子さん」 低く、大きく、優しい声。変わらない大好きだった声。ずっと追いかけていた声。 「おと・・・」 「朝、早いんですね。まだ6時過ぎですよ」 とやさしく微笑む。まるで他人に接するように。 「・・・はい、おはようございます。『学園長』」 すると学園長は少し悲しそうな微笑みになる。 その変化に気づき、霧切は眉間に皺を寄せる。 「霧切さん、学園は楽しいですか?」 本当に心の底から心配して訊ねる様な声色だった。 そんなのやめて、ともう一人の自分が叫んだような気がした。 今更心配するつもり?憐れむつもり?今更・・・今更・・・ 「・・・みんな親切ですよ。あなたに心配される必要はありませんから」 感情を抑えたつもりだが、口調が荒くなってしまった。 「そうですか、よかった」 とやさしく微笑む。変わらない微笑み。いつも見ていた微笑み。 「ふふ、いつも授業中に当てられたら完璧に答えるそうですね。 またいつも教室の金魚にも餌やりしてると。」 え・・・?何でそんなことをこの人が知っているの? 「・・・まさか」 苗木・・・誠? 動機や証拠はない。だけど何となくそんな気がした。 「ねえ、霧切さん。1つ聞いてもいいですか?」 「何でしょうか」 「霧切さんは、探偵の仕事に誇りをもっていますか?」 霧切は思わず学園長の顔を見つめた。 私を・・・霧切を馬鹿にしているの?そんな怒りが込み上げてきた。 「・・・学園長は探偵という存在をどう思っていますか?」 「そうだね・・・」 そういうと学園長は考え込むような仕草をし、微笑みながら言った。 「私は推理小説を幼いころからよく読んでいました。 素晴らしいと思いますよ。どれだけ本を読んでも、私なんかは探偵にはなれないけれど。 だからこそ霧切響子さん、あなたには憧れているのかもしれませんね。」 憧れている?そんな言葉を何の意味があって言っているの? そう思いつつ霧切は答える。 「私は探偵・・・いえ、霧切という名に誇りを持っています。 私は普通の人とは違う。探偵として私は生まれ死んでいく。最初から全て決まっている。」 ただ真っ直ぐ。学園長だけを見つめて霧切は続ける。 「けれど、逃げたりしない。私は自分に・・・自分自身に誇りを持っている。 霧切の名の下に生まれた自分に誇りをもっているから。」 本当の気持ち。心の底からの純粋な気持ち。誇り――それが霧切にとっての生きる理由だった。 それを捨てたあの人が許せない。まるで自分自身を否定されたような気がしたから。 「強いんですね。・・・僕がいうのもなんですが、霧切さん。 少し、誰かに甘えてみるのもいいですよ」 その言葉は何故か学園長としてではなく、「あの人」として言われたような気がした。 「・・・はい」 自然に出てきた答え。 霧切が答えたと同時にチャイムが鳴った。起床のチャイム。 「では、私は仕事がありますので。霧切さん、また」 「あ・・・」 行ってほしくない、まだもっといたい、話したい、もっと、もっと―そんな感情が溢れ出る。 「学園長が好きな探偵は誰ですか」 不意に出た言葉。 学園長は足を止め振り向き、優しく言った。 「コーデリア・グレイですよ」 「っ!」 思い出す、昔の記憶。 『パパ、なによんでるの?』 『女の人が探偵の本だよ』 『えー、おんなのひとがたんていなの?おかしいよー』 『はは・・・響子にはコーデリア・グレイのような女の子になってほしいと思ってるんだがね』 『こーでりあ?へんななまえー、すきなの?』 『ああ、僕の好きな探偵の一人だよ』 『じゃあ、パパがすきならわたしもすき!こーでりあみたいなおんなのひとになる!』 懐かしくて、あたたかくて、哀しい思い出。 「・・・あ」 気がつけばそこに学園長はいなかった。 霧切はあわてて図書室を出る。 そこにいたのは―寝癖がはみ出ながらパーカーを被り、ズボンはパジャマのままの苗木誠だった。 「あ・・・ははは、お、はよう」 「・・・おはよう」 霧切は予想外の展開に戸惑いつつ、続ける。 「遅れるなんていい度胸ね。もういいわ、それじゃあ」 「えっ!?や、ちょ、まって!?ごめん!本当にごめん!奢るから!」 言わないのね、あなたが全部仕向けたことだって。 あの時赤い扉をわざと開けていたのも、学園長を図書室に呼び出したのも、全て。 「・・・ありがとう」 「え?霧切さん何か言った?」 おかしい人、と霧切は思う。 霧切は振り向き、静かに言った。 これがはじめてこの学園に来てからの偽りのない笑顔。 「苗木君のくせに生意気よ」 「霧切ちゃん!ドーナツ・・・じゃないや、お昼一緒に食べようよ!」 クラスメートが今日も話しかけてくる。 「いいわ、食べましょう。誘ってくれてありがとう。」 クラスメートは一瞬驚きの表情を見せながらも、すぐに笑顔になる。 霧切は微笑みながら後ろを向く。 「戦刃さん、あなたもどう?」 「・・・え?」 後ろの席に座るクラスメート。関わりあう存在ではないとおもっていた人。 いや、この学園に人達と関わりあうことなんてないと思っていたけど。 「そうだよ!せっかくなら女子みんな集まって食べようよ!」 「むくろー、強制同行だかんね。女子会開いちゃったり!」 「ふむ・・・女子会とは・・・何だ?」 「えっとですね、女の子だけが集まって食べたり飲んだりしながらおしゃべりすることですよ」 「女子会だと!?ならば我々も男子会というものを開いて対抗するぞ!男子は絶対入会だ!」 「面白そうじゃねえか兄弟、入るぞ!」 「ボ、ボクも入るよ!」 「はぁー?そんなむさくるしいのには入りたくねえよ!」 「お、俺本当は葉隠ヤスコっていう名前で・・・」 「ヤスコ・・・ヤス・・・ちらっ」 「うふふ、何でこっちを見やがるんですか山田君」 「くだらん・・・俺は不参加だ」 「わ、私も不参加よ・・・び。白夜様の会なら考えてあげてもいいけど・・・」 「あはは、みんな元気だなぁ」 少しだけなら―あの人の言葉を借りて言うのなら―甘えてみてもいいかな。 あの人のことを許したわけじゃない。まだ話したいこと、言いたいこと、いっぱいある。 けれど、何か。あの人に出会えたことで何かが軽くなったような気がした。 かといって忘れたりするものじゃない。ずっと、大切なもの。 (ありがとう) 霧切は確かに思う。この平和な時がずっと続くように。 このクラスメートたちと一緒にいたい―と。