約 2,840,877 件
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/566.html
個人的には、旬の食材もそうだけど、秋の味覚として映えるのは乳製品だと思う。 焦げ目のついたチーズや、芯から体を温めるホワイトソース。 シチューやグラタンに入れてみたり、ちょっと変わり種を選べばピザやキッシュ、温かいものは肌寒い日にこそ、だ。 「……ホットミルク、飲む?」 「……いただくわ」 ベランダの網戸越しに、椅子に座って膝を抱えている彼女に呼び掛けた。 声はどこか虚ろで、単調で、秋の寒さを感じさせる。 「今日はお酒、飲まないんだね」 「……そういう日もあるのよ」 「考え事?」 「…物を考えてない時間なんてないでしょう」 「体調が悪いとか」 「…だったら家に籠ってるわね」 切りがなさそうなので、とりあえず僕用のマグカップに口を付ける。 沸騰させないように温めたミルクに、スプーン一杯のハチミツ。ハニーミルク、という奴だ。 一口飲めば、甘みと温かさが体中に広がって、勝手に溜息が出る。 霧切さんのマグカップには、バニラエッセンスとシナモンスティック。風味を楽しみたい人向け。 美味しいはずなのに、彼女はまだ口を付けようとしない。 ふ、と、彼女の視線を追えば、見事な中秋の名月。 いつもなら、それを肴に、と、喜々として自分からコルクを開けるような人なのに。 「……苗木君、貴方は、…」 「何?」 「……いえ、何でも」 我が家に来てから、今日はずっとこんな感じだ。 虚ろをさまよっていた視線が、ふと僕を捕らえて、何かを言いたそうに口を動かして、それでも躊躇って口を噤んで。 なのに、ソファーからは動こうとしない。 気にはなるけど、なぜか急かしたくはなかった。 彼女が言い淀んでいるほどのことを、自分から進んで聞く気にはなれない。 「……ごめんなさいね」 「何が?」 「鬱陶しいでしょう、沈んだ客人が、ずっと家に居座って」 抱えた膝を、少しだけ強く抱き寄せる霧切さん。 彼女を鬱陶しいと感じたことなんて一度もないけれど、きっとそういう答えを求められているワケじゃない。 「…何があったの?」 「……、たいしたことじゃないのよ、本当に」 そう言って、眉尻を下げたまま、無理矢理に微笑もうとする。 その笑みがあまりにも痛々しくて、胸が締め付けられる心地までする。 彼女が言いたくないなら、僕も聞きたくなんてない。 けれど、そんな笑顔だけはして欲しくなかった。 彼女が抱えている苦悩を、悲痛を、普段は凛とした表情の裏に隠している、その重さを。 「…こういう弱みを見せられる相手、苗木君くらいしかいないから……ごめんなさい」 隠しているということは、つまり見られたくないということで。 だから僕も、彼女と接する日々の中では、出来るだけ気付かないフリをする。 けれどその重さや弱みを、僕にだけ見せてくれるというのなら。 見せてくれる間だけは、それを受け止めてあげたい。 その間だけ、彼女のためだけの存在でありたい。 傲慢だろうか。 「…ホットミルク、飲んで。霧切さん用のスペシャルブレンドなんだから」 「コーヒーみたいな言い方をするのね…」 パーカーを脱いで、霧切さんの細い肩に、そっと羽織らせる。 驚いたように此方を見上げる霧切さん。 構わず、その後ろに座る。 「苗木君…?」 「飲んで」 子猫を抱きかかえるように、怯えさせないように、後ろからゆっくりと、その肩を抱く。 抱きしめるのではなく、温めるため。 その肩はパーカー越しなのにとても冷たくて、両腕を回すと、ふるり、と、少しだけ震えた。 「……セクハラよ、苗木君」 「訴えていいよ」 言いながらも、強く拒まれたりはしない。 両の掌を温めていた、霧切さん専用のマグカップを、彼女はただじっと見つめていた。 「…ずるいわ、貴方は。私が拒めないのを知ってて…」 「霧切さんの嫌な事は、僕はしないよ。嫌なら、離れようか」 「ダメ」 きゅ、と、存外に素早い仕草で、袖を掴まれた。 「……霧切さん?」 「……」 沈黙が、夜に染み入る。 月が陰って、しん、と寒さが深くなる。 マグカップから立ち上る湯気は、夜風に晒されて、ゆらゆらと。 「…女の弱いところを、こういうところでくすぐるから…貴方は天然って言われるのよ…」 「……」 「独りが好きなくせに、側にいて欲しいだなんて…面倒な女でしょう、私は」 「今に始まったことじゃないから」 す、と、目尻から一筋の光が零れていた。 あまりに綺麗で、見惚れそうになる。 眺めていると、涙はそのまま、首元に回した僕の手のひらに落ちた。 「……温かい」 ホットミルクにようやく口を付けた彼女が、涙も拭わず、染みいるように呟いた。
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/61.html
それは、アルターエゴが発見された後の話だった。 黒幕に、バレないよう出来る限り接触を控えていた僕らだが、 それでも時々ファイル解析の進捗具合を確かめる為に、度々「入浴」という形で脱衣所へ訪れていた。 まあ、実際に女子たちが入浴することもあったんだけど……それは、その時の話だ。 「……ふう、いいお湯だったわ」 「そう、良かったね」 「えへへ~、やっぱりこんなところでも、ああいう大浴場があると嬉しくなっちゃうね!」 「……うむ」 入浴後、食堂に集まったのは僕(一応言っておくけど、覗きとかしてないからね)、霧切さん、朝日奈さん、大神さんの四人。 夜時間までにはまだ時間があったし、朝日奈さんの誘いで僕も食堂でコーヒーを貰いつつ、話をすることになったんだ。 殺人事件が起きて、「おしおき」されて……そして、次々につきつけられる「動機」……こうした非日常的な状況においても、 敢えてこういう時間を取らないと、僕らの心の均衡は保たれないのかもしれない。 「…………」 そんな僕の気持ちが、表情に現れていたのか、朝日奈さんが声をかけてくれた。 「苗木!どうしたの、そんな顔をしちゃって!元気を出せ出せ!」 他のふたりも僕の気持ちを汲み取ったのか、朝日奈さんの元気な声に協調するかのように頷く。 「そうだ…ここで気落ちしていたら、奴らの思うツボだ」 「…貴方もお風呂に入ってきたら?入れるときに入った方がいいわよ。気分転換にもなるだろうしね」 「あはは、ありがとう。でも、いいよ。男ひとりで大浴場に入るっていうのも、何だかさびしいものがあるし」 葉隠君を今度誘ってみようか……十神君は鼻で笑いそうだし。 (しかし、それにしても…) 僕はちらりと他の三人を眺めた。風呂上りということもあってか、少し薄着だ。その……こう、ほのかな色気というものを感じる。 僕も年頃の男なんだし、そう思うことは悪いことじゃない…よね? 大神さんはそんな僕の目線に気づいたのか、(いつも以上に)険しい表情で僕を見咎める。 「……苗木よ」 「は、はい!」 「そういう妄想は、やめろ。朝日奈が嫌がる」 「はい!」 威厳のある重々しい言葉に僕は思わず返事をしてしまう。そこで霧切さんも気づいたのか、ジト目で僕を睨んでくる。 「成程…ね。こういう閉鎖的な状況に置かれているのだし、苗木君は年頃の男の子だから、そう思うのは悪くないわ。 むしろ、健全な男の子だという証拠でしょうね。誰かに性欲を抱いてしまうのも、仕方がないこと」 「へ…せいよく?」 ほへっとした表情で、朝日奈さんが呟いた。 (そんな…はっきりと性欲だなんて言わなくても…) 厳しい目で霧切さんは僕を睨み付けていたが、大神さんが腕組みをしながら、朝日奈さんを眺める。 「ふむ…だが、確かに朝日奈の身体は程よく筋肉が締まっている良い体だ」 「えっへへ~!伊達に水泳をやってるわけじゃないからねっ!」 得意げに胸を叩く朝日奈さん。………胸、か。 「苗木君?」 自分の名前が呼ばれて、振り向く。 (………!) すごい形相だ。いや、一見無表情に見えるかもしれない。 けど、彼女から教えて貰った【観察眼】でよく見てみると―――、何だろう。 この、希望ヶ峰学園における絶望とはまた別のベクトルの絶望感を感じさせる、圧迫感と緊張感と冷たさは。 「そうね、彼女は胸が大きいものね」 「へ?霧切ちゃん、何言ってるの?」 「………」 霧切さんの発言に虚を突かれるのは、朝日奈さんと大神さん。 「確かに…筋肉を鍛えながらも、女性らしさを失わない朝日奈の肉体は素晴らしいな」 「ふへっ!?さ、さくらちゃんまで何言ってるの!」 顔が真っ赤だ。…そうだった、彼女は下ネタとかそういうのは苦手なんだったんだっけ? だが、ここで弁解しておかないと、僕がただのスケベということになってしまう。 「い、いや、違うよ!た…確かに、朝日奈さんの胸は大きくて、つい目が追っちゃうし、女の子として可愛いところがあると思うけど!」 ………つい、必要のないことを言ってしまうのは、追い詰められているからだと解釈して貰いたい。 「ふうん、だそうよ。朝日奈さん」 「ふぇっ!ちょ、な、苗木ぃーっ!何言ってんのよぉ!苗木のバカ!アホ!痴漢!すけこまし!変態!ヘタレ!」 (いや、最後のは関係がないんじゃ…) とにかくそういうことに免疫のない彼女は、ぷしゅーっと煙を吹きそうな程真っ赤になりながら、手足をじたばたさせて抗議してくる。 (大神さんは……) ふと彼女へ視線を向けると、当然ながら険しい表情を僕に向けてくる。…四面楚歌とはこういう状況のことなんだろう。 「……ふむ、良い時間だな」 と、そこで時計を見上げて、呟く大神さん。確かに時計の針は22時前を指していた。そろそろモノクマのアナウンスが来るだろう。 ……良かった。このままだと、学級裁判時並みの緊張感に僕が卒倒するところだった。 「もう!苗木は座禅でもして、煩悩を消してしまえーっ!ばかっ!」 「…夜だ。ふたりとも気をつけろ」 朝日奈さんと大神さんはそう言うと、部屋へと帰ってしまった。 立ち入り禁止区域となっている食堂を出て、取り残されたのは僕と霧切さん。 (…まずいな) 気まずい。気まずすぎる。このまま別れればいいんだけど……、それじゃ何だか僕がスケベとして見られたままで終わりそうだ。 ……その誤解だけは解いておかないと。 僕はちらりと霧切さんの顔を見る。 (……怖い) だが、このまま黙っているわけにもいかなかった。 「あ、あのさ……、僕は別に朝日奈さんの胸が大きいからどうとかそういうわけじゃなくて…」 確かに朝日奈さんは、どこか健康的な色気というものがある。確かに体つきはスポーツをしているだけあって均整がとれており、 だからと言って、女性らしさを失っているわけではなかった。 「なら、どういうこと?」 クールという一言では言い切れない程の冷たい声で、無機質に聞いてきた。 ……学級裁判で、犯人を追及するときの霧切さんよりも容赦がないような気がするのは、気のせいじゃないと思う。 「そうね、朝日奈さんはスタイルいいわよね。たとえ苗木君がむっつりスケベじゃないとしても、目が奪われるのは仕方がないと思うわ」 (それじゃまるで、僕がむっつりスケベみたいじゃないか…) だけど、あの状況じゃ反論はできないよな…。 小さく僕は溜息をつく。どうしたら、彼女を説得できるのだろう。 そう考え込んでいると、霧切さんはじっと僕を眺めたあと、ふいっと視線を背ける。 「…そうね。私の身体は貧相だものね」 (……え?) まて。彼女は何を言っているんだ? 彼女の発言は、今までの会話の流れからして矛盾している。――裁判のせいで、思考がそれっぽくなってしまった僕は考える。 今までの会話で集めた言弾は――― 【朝日奈の体型】 【大神の証言】 【苗木のバカ】 (……いやいや、最後のは違うだろ) とにかく、僕は彼女の真意を知る為にも、発言の矛盾を突く。 「待って!それは違うんじゃないかな? 飽くまで話題になっていたのは、【朝日奈さんの体型】についてだよ?」 「…!」 霧切さんは、なぜか僅かに『しまった』と動揺が顔に表す。 「…別に、いいじゃない。私だって女よ。あそこで朝日奈さんばかり褒められたら、複雑な気分じゃない。 大神さんだって、そう思ったはずよ?」 「ご、ごめん…」 反射的に謝る。でも、理由はそれだけなんだろうか? 「謝られたら、余計に複雑になるじゃない……って、それは私の身体が貧相だということを認めるわけね?」 「ち、違うよ!」 何だか変な話になってしまった。 霧切さんの体型か……、思わず僕は霧切さんの全身を眺めてしまう。確かに胸は朝日奈さんと比べて、控えめかもしれない。 だが、それでも膨らみは確認できるし、すらりと手足の伸びたスレンダーなスタイルは、モデルのようだ。 それらしい服を着れば、江ノ島さんといい勝負が出来るんじゃないかと思うぐらいだ。 (むしろ僕は…) 「ふう。いいわ、別に私は気にしていないし。苗木君が朝日奈さんの身体を舐めるようにみても、私には関係ないし」 素っ気なくそんな言葉が返ってきた。 「その、さ……霧切さんは怒るかもしれないけど、僕は霧切さんのスタイルもいいと思うんだ」 「!?」 「お、怒らないで聞いてくれる?確かにその……む、胸は朝日奈さんのが大きいとは思うけど、 霧切さんの身体はほっそりしているし、より女の子らしいと思うんだ。肌も白いし…すごく綺麗だと思うよ」 「なっ……!」 怒ったのかな? そう思って僕は、霧切さんの顔を覗き込む。が、彼女はそんな僕に気が付いて、視線を逸らす。 「そう、言葉だけではなんとでも言えるものね」 「ええ…っ?」 「だって…貴方が朝日奈さんばかりを見ていたのは、事実でしょう?」 なぜかこの時、一瞬だけだけど、彼女が年相応の少女らしい表情を見せたような気がする。それでも、僕は言葉を続ける。 「そ、それはそうだけど……ほら、朝日奈さんって普段から露出の多い服装をしてるじゃない?」 ジャージに隠れてはいるけれど、ランニングシャツはいつも彼女の胸の膨らみで胸元が肌蹴られているし、 履いている短パンだって丈がかなり短い。彼女はその辺り気にして着用しているのではないと思うのだけれど…。 「でも、霧切さんって…ほら、お風呂上りでもいつものような服装を着てるじゃない?」 「確かに…そうね。なら苗木君は、私が露出度の高い服を着てくれたら、私を見てくれるのかしら?」 「へ?」 ……なんだか、今日の霧切さんはおかしい気がする。 「いいわ、そこまで言うのなら試してみましょう」 そう言うと、彼女はいきなりその場で上着を脱ぎ捨てて、ネクタイを緩めはじめる。 「え、あ、ちょ、ちょっと!霧切さん!?」 だが、彼女はじっと僕を睨んだままシャツのボタンを外しはじめた。その度に彼女の白い肌が見え隠れし、胸元まで開かれる。 黒い下着が見え隠れしており、彼女の白い肌と対照的に印象づけられた。…思わず僕は、それに魅入ってしまっていた。 「……ど、どうかしら。朝日奈さんと比べて、その…胸は、小さいかもしれない、けど…」 「う、うん、その……凄く、いい…」 ごくりの生唾を呑み込む。思わず僕がその胸元へと手を伸ばそうとしたその時――― 「うぷぷぷ!不純異性交遊はっけ~ん!」 もちろん、その声の持ち主は青狸……ではなく、モノクマのものだった。 そうだ、すっかり忘れていた。…僕らはヤツに監視されているんだった。 「ハァハァ…ボクはそのまま続けて貰ってもいいんだけどね?ほら、校内の風紀が乱れるじゃない? 野外プレイだなんて、苗木クンもやるぅ~☆」 「ば、ばかっ!そういうんじゃない!」 「またまたぁ~…仕方がないよね、だって苗木君は健全なえっちな男子なんだもン!」 そんなやり取りを僕とモノクマがしている間に、霧切さんは素早く上着を着て、ネクタイも締めなおしていた。 「……苗木君放っておきましょう。それと、今日のことは忘れること」 「へ?」 「い い わ ね !」 「は、はひっ!」 無表情に凄んでくる霧切さんに僕は、そう返事をするしかなかった。…モノクマの姿はいつの間にか消えていた。 「……分かった。苗木君がそういう趣味だということは分かった。」 「へ?あ、いや、別に露出の多い服が好きってわけじゃ…」 「兎に角、今日のことは忘れて。おやすみなさい。夜だから気を付けるのよ」 早口で捲し立てる霧切さん。そう言い置くと、彼女は踵を返して、そのまま自身の部屋へと歩いて帰った。 ……帰り際、彼女の頬が赤くなっていたのは気のせいだろうか。
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/749.html
「苗木君は霧切さんのことが好きなんですか?」 「――ッ!? ゲホッ、ゲホッ……! 急に何言い出すの舞園さん!?」 今日は週に一度の休みなので、午前中に食堂で僕が舞園さんとお茶を飲んでいたら、前触れもなく彼女がそう聞いてきた。 さっきまで、他愛もない雑談をして笑っていたから「冗談言わないでよ」なんて言おうと思ったら、舞園さんの表情は真剣そのもので、その瞳は真っ直ぐ僕を捉えていた。 「冗談じゃないですよ。苗木君の日頃の様子から考えた結果、私がそう思ったんです」 「ひ、日頃の様子って……例えば?」 「ええとですね、例えば……」 そう言って舞園さんは人差し指を口に当てながら僕の「日頃の様子」とやらを思い出しているようだった。 僕がドギマギしながら彼女の言葉を待っていると不意に後ろから声をかけられた。 「あら、何だかとても面白そうなお話をされているようですわね? よろしければ、わたくしも混ぜてくださる?」 「セレスさん!」 いつもの本心を隠したような笑みを顔に貼り付けたセレスさんが、こちらの承諾を待たずに僕の隣に座った。 今の話の流れの何が面白そうなのか僕には全く分からない。 「苗木君が霧切さんを慕っている――という話でしたわよね? 舞園さん」 「そうなんですけど、セレスさんもそう思いますよね?」 「ええ、わたくしも間違いないと思いますわ……わたくしというものがありながら、嘆かわしいことですわ」 「……ちゃっかりアピールしないでください。私だって、苗木君とは一番気心知れた仲なんですよ? そこの所、忘れないでくださいね? そもそも、苗木君と過ごしているのは私なんですから、セレスさんはどこか別の場所に行ってもらえませんか?」 「うふふふ。言ってくれますわね。舞園さん、あなたなかなか面白いですわ」 二人ともニコニコと笑っているけど、なんだか僕には得体のしれない恐怖が感じられた。何でこんなことになったのか、全く訳がわからない。 とりあえず、今すぐこの場から離れたい衝動に駆られた僕に追い打ちをかけるように、舞園さんが再び同じ質問をしてきた。 「まぁ、セレスさんはどうでもいいとして……それで、苗木君は霧切さんが好きなんですか? 」 「ちょ、ちょっと待ってよ! そもそもどうしてそういう風に思ったの!? 僕が霧切さんをそんな――」 「私が何かしら?」 「うわぁああっ!!」 「きゃっ!」 突然後ろから、なんとなく今一番現れてほしくないと思っていた人物の声がして僕はつい叫んでしまった。 それで舞園さんを驚かせてしまったみたいで、彼女も小さく悲鳴をあげた。 「ちょっと、急に叫ばないでくれる? 耳が痛いわ……」 「確かに、今のは品のなさすぎる叫び声でしたわね」 「ご、ごめん。それで、霧切さん……ど、どうしたの?」 僕は後ろを振り返って、いつも通りポーカーフェイス……じゃなくて、何だか物凄く不機嫌そうな顔をしていた霧切さんを見上げた。 「どうしたのって……こちらの台詞よ。あれだけ大きな声で私の名前が出されてたら、私が気になるのも当然でしょ?」 「うっ……!」 「それで、何を話していたの?」 「いや……それは舞園さんが……」 何だかよくわからないけど、僕は自分の今の状況が決していい状況ではないということだけを本能で感じ取っていた。 熱くもないのに変な汗が出る。その時だ。 「――仕方ないですね。苗木君行きましょうか」 「へ? い、行くってどこに?」 急に立ち上がって、移動を促してきた舞園さんに僕は目を白黒させて見ているしかなかった。 こんな状況なのに、どこかへ行くなんてとてもじゃないけどできない。 でも舞園さんはセレスさんや霧切さんのことは全く気にしていない様子で、僕の腕に両腕を絡めて引っ張る。 「来れば分かりますよ。というわけでセレスさんに霧切さん、ちょっと失礼しますね」 「え、ちょ、ちょっと! 舞園さん!」 そう言うと舞園さんは戸惑って動けない僕をズルズル引きずる。 何かを叫んでるセレスさんを無視して舞園さんはどんどん食堂の出口へ向かって歩いていく。背中に霧切さんの鋭い視線も感じる。 けれど僕は、舞園さんは華奢な身体に見えるのに、どこにこんな力があるんだろう――と呑気に思っていた。 するとちょうど出口である人物と鉢合わせすることになった。 「お! 苗木じゃん! ちょうど今探してたんだよねー! って、舞園は何してんの?」 「や、やぁ江ノ島さん」 「こんにちは、江ノ島さん。私は今から苗木君と用事があるので、失礼しますね」 「いやいや! これから苗木と用事があるのはあたしの方だから!」 「!」 「……苗木君と用事、ですか?」 江ノ島さんの言葉に一瞬ピクリと舞園さんの眉が上がる。チラリといつもより冷たい視線を舞園さんに向けられて僕の背筋に悪寒が走った。 「今日の午後は一緒に娯楽室でダーツをしよう、って苗木と約束してんの! だから苗木は借りて行くよ」 「本当ですか、苗木君?」 「そ、そうなんだよ舞園さん! 先週からの約束だから、ごめんね!」 「そういうことだからさ、苗木を離してやりなよ」 「……先約なら、仕方ないですね。苗木君に約束を破らせるわけにはいかないですし……わかりました」 良かった。僕は舞園さんが分かってくれたことに胸を撫でおろしてほっと息をついた。 ようやく腕を離してくれた舞園さんと別れて、僕は江ノ島さんと娯楽室へ向かった。でも、本当は江ノ島さんと約束なんかしてなかったんだ。 「江ノ島さん、助かったよ! 僕が困ってるのに気付いてあんなことを言ってくれたんだね」 「まぁ、あんた明らかに嫌そうな顔してたからね。それよりさ、嘘だったとはいえせっかく娯楽室に来たんだからダーツやらない?」 江ノ島さんが満面の笑みで提案してきて、僕は断る理由もないし、むしろ感謝しているくらいだったからもちろんそれに応じた。 あっという間に楽しい時間は過ぎて、夕食時になってしまった。 「江ノ島さん本当にダーツ上手いよね。ここに来てから初めてやったなんて信じられないよ」 「ナイフ投げるのと違って的が動かないから簡単じゃん? でも楽しかったよ、サンキューね、苗木!」 「僕こそ、楽しかったよ! ありがとう、江ノ島さん!」 ナイフ投げる状況ってどんな状況だよ――って思ったけど、それはもちろん心の奥に秘めておいた。そして僕は江ノ島さんとの会話を楽しんだ。 「マジお腹すいたんだけど」と彼女が言うので一緒に食堂に行くことになった。でも僕はすっかり午前中のことを忘れていて、少し後悔することになった。 「苗木君! やっぱり来ましたね! 夕食時だから来ると思ってました」 「あ、舞園さん」 「苗木君、食事の後付き合ってくれますか? 江ノ島さんとの約束はもう済みましたよね?」 僕を見るなり笑顔で近づいてくる舞園さん。可愛いし、よく話しかけてくれるのは嬉しいんだけど、今日は朝からなんだか怖い気がする。 「えー、まぁあたしはもう苗木に用事ないけど……」 「えっ」 江ノ島さんをすっかり頼りにしていた僕は、その言葉が残念だったけどいつまでも彼女に迷惑をかけるわけにもいかない。 「わ、わかったよ舞園さん」 「ふふっ、良かったぁ! じゃあ苗木君、食べ終わったら私の部屋に来てくださいね? 私待ってますから!」 僕が返事をすると目を輝かせて楽しそうに食堂を出て行く舞園さん。なんとなくため息をついて僕はゆっくりと食事をとった。 ……ちょっと今日は味が分からなかったな。 食事を済ませた僕は約束通り舞園さんの部屋を訪ねた。 女の子の部屋を訪ねるのは少し緊張するけどまぁ、何かあるわけじゃないし大丈夫か。 インターホンを押すと舞園さんがすぐに出てきてくれて、僕を部屋へ通した。 「遅かったですね、苗木君。来てくれないかと思いました」 「いや、まさか舞園さんとの約束をすっぽかすわけはないよ。それで僕に何の用事?」 「朝の続きです」 「……霧切さんのこと?」 「はい!」 舞園さんは笑っているけど、なんだか威圧感のようなものを感じる。すべての質問に答えなければいけないような、そんな威圧感だった。 「どうして、僕が霧切さんを好きだと思ったの?」 「だって苗木君、いつも午後の自由時間は他の人に一切目もくれず霧切さんを誘いに行ってるじゃないですか…… 私、苗木君が何度も霧切さんに桜の花束とかイン・ビトロ・ローズとかプレゼントしているのも知ってるんですよ?」 「そ、それは……」 「それに比べて私含め、セレスさんや江ノ島さん……他の人たちを誘うのは今日みたいに週に1回の休みの日の午前中か、午後のどちらかだけですよね? ちなみに必ずどちらかは霧切さんを誘ってますよね? 今日は違いましたけど」 なんでそんなに知ってるのかすごく怖い。いつも舞園さんは「エスパーですから」って言って笑うけど、ちょっとこれはアレじゃないかな。 腐川さん的なアレじゃないかな――と僕は背筋を震わせた。とりあえずここで僕がすべきことは反論だと思ったんだけど僕の視界が横転してそれどころじゃなくなってしまった。 「な、何をするの舞園さん!?」 僕が倒れたところは彼女のベッドの上。かすかに舞園さんの良い香りが鼻孔をくすぐって変な気持になりそうになるのをぐっと抑えた。 でも、舞園さんが僕の上に跨ってどんどん顔を近づけてきた。≪超高校級のアイドル≫にこんなに迫られて興奮しない男は男じゃないと思う。 「私じゃ、ダメですか……?」 「え? ま、舞園さん? それって、どういう――」 ――バンッ! 突然大きな音がした。その方向を反射的に見ると、開かれたドアの所に霧切さんが立っていた。 いつも通り無表情なんだけど、なんだか物凄く禍々しいオーラを感じる。 「……何を、しているの?」 「き、霧切さん! ちがっ! こ、これには訳があって! そう、転んだんだよ! 転んでたまたまこんなことに……!」 「あー、鍵かけ忘れちゃってたみたいですね。でもそれよりも、苗木君が彼女に浮気の現場を見られて言い訳をしている人みたいなことを言っている方がショックです…… これはもう確定ですね……はぁ……」 いまだ僕の上に跨ったままの舞園さんが、ため息をついて苦笑しながら霧切さんを見ている。霧切さんも舞園さんを睨みながらカツカツとヒールの音を立てながら近づいてきた。 「あ、あの……舞園さん、とりあえず降りてくれない?」 「……仕方ないですね」 自由になった僕はすぐに起き上がってベッドから降りた。霧切さんがスッと目を細めて舞園さんを一瞥したあと僕を睨みつけた。 僕は息が止まりそうになり、無意識のうちに背筋を伸ばして固まった。 「苗木君、あなたはまだ何かここに用事があるかしら?」 「いえ、特にありません」 「そう。じゃあ、行きましょうか。舞園さん、邪魔したわね……」 「い゛っ!? いででででっ! 霧切さんっ、痛い痛い痛い痛いッ!」 グイッと僕は霧切さんに耳をつかまれてそのまま廊下へ引きずられた。痛すぎる。霧切さんについて行かないと耳がちぎれる勢いだったから、僕は必死に歩いた。 こんなところ他の人に見られたくない――って思った時に限って誰か居るんだよね。 「あらあら、霧切さんに苗木君。どうなさったんですか? まるで浮気現場を見られた夫が立腹した妻に引きずられているように見えるのですが」 「セレスさん……あなたには、関係ないわ」 「そうですか……残念ですわ。今から苗木君を夜伽にお誘いしようと思っていましたのに……」 「……夜伽?」 「ちょっ! 何言ってるんだよ、セレスさん!」 「あら、夜伽の意味が分からないのですか? ええと、確か辞書には、” 女が男の意に従って夜の共寝をすること”とあったはずですわよ」 「意味の解説とか要らないから、お願いだから余計なことを言わないで!」 「……苗木君、どういうことかしら?」 どうしよう。霧切さんがポーカーフェイスじゃない。明らかに怒ってる。目が怖い。 「ぼ、僕そんなの知らないよ! 変なこと言うセレスさんは無視していいから!」 「……それもそうね」 「うあっ! 痛い痛いッ……!」 霧切さんはやっぱり僕の耳を引っ張る。もう色々と心身ともに痛くて僕の目には涙が浮かびだした。 そして、霧切さんの部屋に放り込まれてやっと僕の耳は解放された。 けれど、一切しゃべらなくなった霧切さんと同じ部屋に居るこの状況。気まず過ぎて逃げ出したい。でもこのまま出て行くわけにもいかない、よな? 「あの? 霧切さん……怒ってる?」 「……」 プイッ、と僕から顔をそむけてベッドに腰掛けている霧切さん。もう、僕にはどうしたらいいか分からなかった。僕の手には負えない気がした。 何を言ったらいいか分からなくて、しばらく沈黙が続いた。けれど、黙り込んだままだった霧切さんがようやく口を開いてくれた。 「……今日は、誘ってくれなかったわね」 「え?」 「……いつも誘ってくれるのに……他の女の子とずいぶん楽しそうにしていたわね」 あれ、見間違いかな。霧切さんの顔が赤い、気がする。いや本当に赤くなってる。 「き、霧切さん?」 恐る恐る僕は霧切さんに声をかけて顔を覗き込んだ。すると急に背けていた顔をこちらに向けて僕を睨んできた。 「苗木君……舞園さんと何をしていたの? セレスさんと何をするつもりだったの?」 「い、いや僕は何も……」 「わ、私だってできるのよ?」 「はい?」 霧切さんが何を言っているのかよくわからなくて「何が出来るの」って言おうと思ったら腕を引っ張られた。 今日は一体何度腕を引っ張られたり、言葉を呑んだりしているだろう。そして、体勢が崩れて僕は霧切さんの隣に座る形になった。 すると霧切さんがギュッと僕に抱き着いてきた。必然と、僕の胸板に霧切さんの柔らかいソレが押し付けられてしまう。 「ど、どどどどどうしたの!? 霧切さん!?」 僕が大慌てで尋ねると霧切さんは少し離れて、顔と顔がくっつきそうな距離で、でも少し俯いて上目づかいで言った。 「……私だけを見てくれないと……嫌よ?」 「――ッ!!」 なんだ、これ……。攻撃力半端ない。鼻血出そう。出ないけど。 いつもクールで表情もあまり変えることのないあの霧切さんが、頬を紅潮させて瞳を潤ませて、しかも上目づかいでとんでもないことを口にしている。 「何よ……その反応……」 「え、い、いや……霧切さんが可愛すぎて悶絶してただけだよ」 「か、可愛いだなんて……」 「嘘でも冗談でもないよ。 本当に可愛いよ、霧切さん。みんなに嫉妬してたんでしょ? そんなところもすごく可愛い…… でも、僕はもともと君しか見てないから安心して?」 「……本当かしら? 舞園さんと居るときのあなた、まんざらでもなさそうだったわ。 私が来なかったら簡単にキスとかしてたんじゃないかしら。そんな人の言うことなんて――んっ!?」 言葉で信じてもらえないなら行動で示すしかないと思った。だから反論を続けようとしていた霧切さんの口を僕は塞いだ。もちろん僕の口で。 経験は無かったけれど、霧切さんが可愛すぎてもう我慢がきかなかった、というのが本音。 「――む、はっ…………僕はこんなこと、霧切さんにしたのが初めてだし、霧切さんにしかしないよ」 自分で言っててかなり恥ずかしい。霧切さんの顔を見るのも恥ずかしかったけど、ここは男だ。頑張って真っ直ぐ彼女を見つめた。 霧切さんはというと、一層顔を赤くして目を泳がせている。こんなにうろたえている霧切さんを見ることは皆無に等しいからすごく、何か、来る。 そして霧切さんがためらいがちに、僕をやっと見つめ返してくれた。 「……ねぇ、もう一度してくれるかしら?」 「……あの、ごめん、止まれなくなっちゃいそうだから……」 「いいわよ」 「えっ?」 「私は……あなたになら何をされてもいいわ……だから、もう一回……ね?」 「~~~~~っ!!」 今度は照れながら微笑んで最高の殺し文句を言ってくれた霧切さん。ここまで言われたらもう何も遠慮はいらないよね! 僕と霧切さんの夜は、まだまだ終わりそうになかった、というか僕には終わらせる気が無かった。 ◇◇ ――翌日 「あら、霧切さんそれは……ふふっ。もうわたくしたちの入る余地はなさそうですわね、舞園さん?」 「……悔しいですけど、そうみたいですね。でも、私は諦めません!」 「……? 二人とも何かしら?」 「……気づいていないのですか? それなら、霧切さん耳を貸してくださる?」 僕には三人が何を話しているのか聞こえなかった。 でも、セレスさんが内緒話をするように霧切さんの耳元で何かを囁いた瞬間、霧切さんが急に顔を赤らめて首元を手で押さえた。 「あ……しまった……」 それを見て僕は気づいてしまった。自分の失態に。そして――やっぱり来た。 「苗木君! ちょっとあなたに言わなければならないことがあるわ!」 「ごめん、霧切さん! 次は気を付けるから許して!」 「まぁ! 次、だなんて苗木君は見かけによらず随分と旺盛ですのね」 「苗木君、私も食べがいがあると思いますよ!? だからいつだって乗り換えてもいいんですからね!?」 「舞園さんたちは、黙っててちょうだい! ちょっと、苗木君! 逃げるなんて苗木君のクセに生意気よ!」 ――もう嫌だ! 早くこの学園から出たい! 学園生活が終わるという50日目がはるか遠くに感じた朝だった。 おわり
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/491.html
「ねぇパパ、なんでボクにはママがいないの?」 「…それはねパパとママが離婚したからなんだ」 「どうしてリコンなんかしたの?スキだからケッコンするんでしょ?ママのことキライなの?」 「ママの事は嫌いじゃないよ、むしろ好きさ」 「多分ママもパパの事が好きだし、勿論君の事も好きだよ」 「じゃーなんでリコンしたの?」 「家族のためかな」「カゾク?」 「家族って言うのはパパとママと君の事だよ」 「その為にパパとママは離婚したんだよ」 「よくわかんないよ」 「そうだね。パパも本当はよく分からないよ。本当にこれで良かったのか……」 「へんなパパ」 「それより今日は遊園地に行く約束だろ?早く着替えないといけないよ」 「うん。ボクね~もうひとりでできるようになったんだよ」 「偉いな~流石パパとママの子供だ」ナデナデ ――遊園地―― 「はぐれないように手を繋ごうね」「うん」 「何から乗ろうかな?」「ボクね~あのおウマさんにのりたい」 「よし、じゃあ並ぼうか」 「あ~楽しかった。またかえるまえにのろうね」「そうだね……」 「パパどこみてるの?」 「あっ!キョウコおばちゃんだ」 「久しぶりね。元気にしてた?」「うん!げんきだよ。いまね~パパとおウマさんにのってたの」 「見てたわよ。とっても楽しそうだったわね」 「うん!スッゴくたのしいんだ。あとでもういっかいパパとのるやくそくなんだ」 「そうだおばちゃんもいっしょにのろうよ!いいでしょパパ?」 「勿論いいとも」「誠君……」「さっ響子さんと乗っておいで」 「やったーはやくのろうよ」「慌てないで。ちゃんと並ばないといけないのよ」 「はーい。きょうはおしごとおやすみなの?」「えぇそうよ」 「だったらたくさんあそぼうね」「たーっぷり遊びましょ」 「キョウコおばちゃんつぎあれにのろうよ」 「つぎはあれ…それでそのつぎはあれ………」 「はいはい…遊園地は逃げたりしないんだからそんなに慌てないの」 「パパとも遊ばなくていいの?」 「パパがおばちゃんとあそんでおいでっていったんだよ」「……そう」 「おなかすいたなぁ」「朝からあれだけ遊んだらそりゃお腹も空くさ」 「時間もちょうどいいしお昼にしようか」「わーい」 「…響子さんもどう?お弁当作ってきたんだ」 「ありがとう―でも私も作ってきたの」「じゃあたべっこだね」 「「「いただきます」」」 「はいあーん。パパのつくったタマゴやきとーってもおいしいでしょ」 「そうね。とっても美味しいわ」 「ボクにもたべさせてー」 「はいあーん」 「あれ?おばちゃんのつくったタマゴやきパパのとおなじあじだー」 「そうよ…だってあなたのパパが私に教えてくれたもの」「響子さん……」 「ウィンナーもタコさんだし、リンゴもウサギさんだね」 「それもパパに教わったのよ」 「へーふたりってなかよしなんだね」「……」「……」 「ごちそうさまでした」 「「御馳走様でした」」 「ねーつぎはパパもいっしょにあれにのろうよー」 「観覧車か…」「折角だから乗りましょうか」 「はやくはやくー」 「わースッゴくたかいねーボクんちどこだろー」 「ちゃんと座らないと揺れて危ないだろ」「危ないから座りなさい」 「はーい……さっきからパパもおばちゃんもおそとみてないね」 「そ…そうかな」「そうかしら」 「うん。とくにおばちゃんはさっきからボクかパパしかみてないよね」 「久しぶりに会うからよ」 「ふーん。あっあれボクのかよってるようちえんかな」 「つぎはあれねーそこでみててねー」「あれは何かしら?」 「最近できた子供向けの迷路だよ。低い生け垣で作られてあってね」 「親が上から観れるようになってあるんだ」「へー」 「あれは小学校高学年向けだけどあの子は迷わず出てくるんだ」 「見ててごらん」「本当だわ。スイスイ歩いて……もう出てきたの!?」 「えへへただいまー」 「偉いぞ流石パパとママの子供だ」「凄いわね……」 「こんなのかんたんだよ。ほかのとこよりかたいじめんに」 「よくていれされてるきのほうこうへいけばいいもん」 「!!……アナタが鍛えたの?」「いいやママの血だよ……」「そう……」 うと…うと… 「もう大分眠そうね」「おいでパパがおんぶしてあげよう」「…うん…」 「今日はありがとうね。この子も凄く喜んでたよ」 「いいえ―私もこの子に会いたかったし」 「確かにこの子の才能は凄いわね……」 「私を見つけるのも観覧車でも…それにさっきの迷路でも」 「そうなんだ…正直僕もどうしていいか分からないよ」 「君と別れたのもこの子の為を思ってしたんだし」 「そうね…。私もあなた達に危険が及ばないよう敢えて別れを選んだのに」 「僕が取り立ててこの子を鍛えたわけではないのに」 「この子はどんどん成長している」 「僕らの選択は本当に正しかったんだろうか」 「どうかしらね…少なくともあの時の決断に間違いは無かったと思うわ」 「私は生まれながらの探偵―常に危険は付き物」 「それなのに一時とはいえ家庭を持てたのは幸せだったわ」 「だからこそ、その幸せを誰かに壊されるわけにはいかない」 「壊される前に自分で崩し―こうして陰からあなた達を見守るしかないの」 「響子さん…そもそも僕が探偵業を辞めて欲しいなんて言うから」 「いいのよ。その選択は正しかったんだから」 「だからこうして月に1~2度逢うことが出来るのだし」 「辛くない?」「確かに辛いけど…あなた達を失う事の方がもっと辛いわ」 「――もう出口か」「そうね…またね誠君」 「またね響子さん」ちゅ 「この子にもしてもらえるかな?」 「えぇ勿論…バイバイ私の希望」ちゅ
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/893.html
やっぱり苗木君に似ているわね、というのが話してみた感想。 「誰とでも友達になれるのが私の特技です!」と自負するだけはある。 こまるちゃんが話題を出して、苗木君がたしなめながらもみんなに振る。 仲の良い兄妹ね――ちょっと焼いてしまうくらい。 私が来てからだいぶ時間が過ぎたけれども、会話は尽きない。 今日来ていないメンバーの話や高校生活のこと。 今自分たちがどんなことをしているかを聞くだけでも楽しかった。 「あ、僕ちょっとお手洗い言ってくるね」 会話がひと段落したところで苗木君が席を立った。 はいはーいとこまるちゃんが笑顔で見送る。 と、苗木君が見えなくなった途端。 こまるちゃんがやおら表情を真剣にしたかと思うと 「え、えーっとですね……女性の方にだけ聞いてほしいことがあるんです……」 そう切り出してきた。 「ど、どうしたのこまるちゃん?」 「なんだべ?悩みの相談だったら俺っちが一番だべ!」 「葉隠なんて一番しちゃダメな人じゃない……」 「葉隠はわかるけどよー。なんで俺や山田もダメなん?」 「えーっと……そのー……」 「ほらー。こまるちゃん困ってるでしょう?いいから向こういったいった!」 「そこまで言われると、逆にどんな内容か気になりますな」 「……桑田くん、盗み聞きしたら嫌いになっちゃいますよ?」 「あー、あたしも桑田さん嫌いになっちゃうかも~。いい人だと思っていたのに……」 「おーしお前らこまるちゃんのそばに行ったらぶん殴る!」 「……完全に操られてますわね」 「仕方がありませんな。大事な話のようですし。 ではこちらでは『外道天使☆もちもちプリンセス』の素晴らしさを改めて……」 「誰も聞きたくないべそんなもん……」 なんて会話を横目にしながら女子は机の一方に集まる。 苗木君は置いておいて……贔屓目に見ても相談しづらい男子メンバーだ。 込み入った話なら女子だけで話すというのは正解だろう。 「えーと……それでこまるちゃん、話というのは何ですか?」 みんなが集まったところで、舞園さんが切り出す。 「は、はい……実は……お兄ちゃんのことなんですが……」 まあそうだろう。苗木君がいなくなってから持ちかけたのだから。 問題は内容だ。……彼が一体どうしたというのだろう。 「うー……すいません!ちょっと先に経緯を説明します!」 「そうね、それでいいわよ。そのほうが私たちもわかりやすいだろうし」 「私としてはスパッと言ってほしいのですけれども」 「こらっ、セレスちゃん!」 「こまるちゃん、ゆっくりでいいですからね。」 と、ここで苗木君が戻ってきた。 「……あれ?何かあった?」 「う~……お兄ちゃんはいいからむこう行ってて!!」 「苗木君、悪いんですけれど少しだけ離れていてもらえませんか? ……こまるちゃんと女子トークです」 「まさか盗み聞きする……なんてことはないですわよね、苗木君?」 「い、いや……そういうことなら別にいいけど」 何を話すつもりなんだ?とつぶやきながら桑田君達のほうへ向かう苗木君。 「えっと……大丈夫ですか?こまるちゃん」 「あ、ありがとうございます……じゃあ、えっと、状況から……説明します。。 実はですね、私……お兄ちゃんには今日のお昼にこっちに着くと言っていたんですが…… 実際は午前中には駅に着いていたんです」 「……は?」 「つまり……、嘘の時間を教えていたと?」 「……はい」 「なぜそのようなことをしたのかしら?」 「いやー、ちょっとお兄ちゃんの家に突撃して、どんな暮らししてるのか見てみようと。 事前に行ったら絶対入れてくれないだろうし」 「ああ、なるほどね……こまるちゃんかわいいじゃん。」 えへへへーとこまるちゃんが照れ笑いを浮かべる。 ……本当こういうしぐさが苗木君そっくりだ。 しかし……今のところ、何も問題ないようなのだけれど。 うん?…………苗木君の家? 途端。嫌な予感がした。 「それで?苗木君の家には行けましたの?」 セレスさんが会話を続けるよう促す。 こまるちゃんも「は、はい!」と真剣な表情に戻った。 それはいいのだけれど……私はこの会話がどこに行きつくか大体わかってしまった。 それと同時に嫌な汗が背中をつたう。 「それで、お兄ちゃんの家に突撃したまではよかったんです。 住所もお母さんたちから聞いてましたし」 「さすがに苗木君でも、いきなり行ったら入れてくれなそうですね」 舞園さんが苦笑いしながら言う。 「ええ、そうなんです。お兄ちゃんたら全然入れてくれなくて。 扉の前で思いっきり叫んでやるぞー!って脅したらようやく入れてくれました」 「こ、こまるちゃんすごいね……」 「すごいしぶしぶでしたけどね。それで、ここからが本題なんですけれど……」 ああ、嫌な汗が止まらない。 「お、お兄ちゃんが……同棲しているかもしれないんです!!!!」 「「「………………………………………………」」」 その発言を聞いた途端。3人の目が一斉にこちらを見る。 「……?どうかしましたか?」 「いえ、なんでもないですよー?うふふふふ」 「ええ、なんでもないですわよ。それより、なぜそのような結論に?」 「あ、はい。えっとですね……まず、お兄ちゃんの家に入ったとき、ブーツキーパーがありました。 見えにくい位置にあったのでお兄ちゃんも気が回らなかったのかもしれません」 「ふむ……なるほど」 「あー……苗木そういうのにぶそうだからねー……ねえ霧切ちゃん?」 「……ええ、そうね」 「それよりこまるさん。まず、とおっしゃいましたわね。それ以外にも何か?」 「はい。……こっそり覗いた洗面台に色違いの歯ブラシが2本ありました。 あとはお茶碗などの食器が2組ずつあったり。極めつけはベッドにあった2つの枕! ……あまりにベタ過ぎて、私を驚かすドッキリだったんじゃないかと思うくらいです……」 でもそんなことできる兄じゃないんですよねぇ……とこまるちゃんがぼやく。 「家にいたのはお兄ちゃんが着替えるまでの短い時間だったのでこれくらいですが…… お兄ちゃん鈍いので私が気付いたことにすら気づいていないかもしれません…… それに……その、実はもう別れてしまっていて、その人が忘れられない兄がそのままにしてる…… とかだったらつらいじゃないですか!!」 「うーん……それはないんじゃないかな……」 「と、とにかくですね!お兄ちゃんに彼女がいるのか、同棲しているのか……気になって。 それで……みなさんが何か知っていないかな……と。 ……どうかしましたか?」 「「「いえ、何も」」」 こまるちゃんの相談内容を聞き終えた3人が一斉にこちらを向く。 朝比奈さんとセレスさんそのいやらしい笑みをやめなさい舞園さん笑っているようだけど目は笑っていないわよ 誠君不測の事態だったのはわかるけれどせめてもう少し何かできたんじゃないかしらなんで私は今日出張に行っていたのだろう ああもう早くここから逃げ出したい消えてしまいたい 「こまるさん。安心してくださいな」 「え?」 「!!」 「残念ながらわたくしははっきりとした答えは存じません。 ですが……この霧切さんが何と呼ばれていたかはご存じでしょう?」 「あ……!超高校級の探偵!」 「そうですよ。霧切さんならきっと調べてくれますよ。 ……それどころか霧切さんは今の話だけで推理できてるんじゃないですか?」 「ほ、本当ですか!?」 「え、ええ。そうね……」 先ほどから舞園さんの視線が痛い…… 「き、霧切さん!ぜひお兄ちゃんの彼女がどんな方なのか調査をお願いします!」 手を握られ、懇願される。 誠君とちがってこの子は積極的なのね。先ほどの話が本当ならなかなかの観察眼も持っているみたいだし 探偵にむいているんじゃないかしら――なんて現実逃避をしてしまう。 と、ここで朝比奈さんが 「ねーねー。こまるちゃんはお兄ちゃんの彼女を調べてどうするの?」 「え?」 ……そうだ、こまるちゃんは調べてどうするつもりなのだろう。 ……別れさせるつもりです!とは言わないだろうけど。 こまるちゃんはいったいなんと答えるのか……思わず緊張してしまう。 「別に、どうもしませんけれど?」 「「「「…………は?」」」」 だからその答えを聞いたとき、思わず目が点になってしまった。 周りの3人も同じらしい。 「だってお兄ちゃんが選んだ人ですもん。きっといい人ですよ。心配はしていません。 ただ……私に黙っているってひどくないですか!?秘密にされたらどんな人か気になってしまうじゃないですか!!」 ……なんというか。 「……苗木君、信頼されてますね……」 舞園さんがやや苦笑い気味に言う。 「まぁ……彼の性格なら当たり前でしょう」 「うん……苗木だしね」 ほんと……仲のいい兄妹なのね。 と、気が緩んだところでセレスさんが 「そうですわね……では、そんなこまるちゃんに1つアドバイスを差し上げますわ」 「アドバイス?……なんでしょう?」 「今後霧切さんを呼ぶときは"お義姉さん"と呼んだほうがよろしいですわよ。 ……いずれそうなりそうですし。」 「………………は?え?」 その一言を口にした。 こまるちゃんがこちらを見たまま固まってしまう。 おそらく顔を真っ赤にした私を。 ……なんというべきか頭が真っ白になってしまった。 ……こんなときはなんというべきだったか。 「……えっと、はい……なえ……誠君と……お付き合いさせていただいてます……」 ……普通こういうのは男の人が言うものではないのかしら。 言った後に若干後悔した。 そのまま、何も言えない私とこまるちゃんがたっぷり見詰め合い―― 「…………おにいちゃん!どういうこと!?説明を要求する!!!!」 「な、なんだよいきなり!!」 妹さんが誠君のもとへ駆けて行った。 赤くなったままの私を残して。 ……私たちにも説明しなさい、と訴えてくる3つの視線をどうかわそうかしら…… 結局、男子メンバーにも事の経緯を知られてしまった。 「かわいい妹がいて霧切と同棲してる……って苗木どういうことだおい!?」 「拙者からひと言。リア充爆発しろ!!」 「付き合ってるのはバレバレでしたけど、もう同棲してるなんて……ショックです」 「高校のときからよく2人でいたのに、これ以上何を隠すのかと」 「実は結婚してましたーって言われても驚かないかもねー」 「うう……お兄ちゃんがこんな綺麗な彼女作るなんて意外だよ……」 「ふわぁぁ……よく寝たべ。うん?みんなどうしたんだべ?」 なんて会話を、誠君と2人で顔を赤くしながら聞いていた。 いつかは知られてしまうことだろうけど……こんな形になるとは予想外だった。 ……こまるちゃんが来たとき、もう少し何とかならなかった?という視線を誠君に向けてみる。 誠君は真っ赤な頬をかきながら 「えっと……こんなことになって……ごめん。気づかなくて」 と少しずれた謝罪の言葉を口にした。 ……もちろん、私も本気で怒っているわけではない。 「別にいいわよ……いつかは……その、言わなきゃいけないことだし」 「う、うん。……ありがとう」 「こらそこ!いちゃいちゃしない!まだ質問は終わってないんだからね!」 まだまだ質問の嵐は収まりそうにない。 ……みんな明日大丈夫なのかしら? 「みんな乗れたかな?」 まさかこんなことになるなんて……と小さくため息をつく。 ようやく解散したのは終電……とまではいかないけど、かなり遅い時間だった。 やっぱりみんな明日も予定が詰まっているらしく、それぞれタクシーや電車で帰って行った。 残っているのは僕と響子さん、それと 「なによ、ちゃんと帰るから心配しないでよ」 なぜかまだ帰らないこまる。 そのままそっぽを向いてしまったが、時折こちらに振り向く。 ……僕に言いたいことがあるのだろう。 飲み会最中質問攻めにしてきたくせに……これ以上何かあるのか? やがて、ゆっくりとこっちを向き 「あ、ありがとね……今日無茶を聞いてくれて」 「お、おう……」 「すっごい楽しくて…次も誘ってくれるって言ってもらえて。 すごいうれしい…お兄ちゃんのおかげ」 お礼を言われた。面と向かって言われるのは久しぶりな気がして……妙に落ち着かない。 次の瞬間 「でもっ!黙って彼女作って同棲して!お兄ちゃんのくせに生意気だよっ!」 そう叫んだかと思うと、駅に向かって走り出した。 ……あいつらしいや。 思わず苦笑い。 「幹事お疲れ様。誠お兄ちゃん。……ふふふ」 「や、やめてよ響子さん。もう……」 響子さんはあの後開き直ったかのように堂々としたいつもの態度に戻っていた。 もちろん僕をからかうのも忘れない。 ……そこはゆずれないのか…… ほんと、今日の飲み会はいつもより大騒ぎだった 「それともう1つ!」 「あれ?」 見ると、妹が途中でこちらを振り返って叫んでいた。 …まだなにかあるのだろうか しかし、こまるは僕ではなく、響子さんを見ながら。 そして、わずかに考え込むようなしぐさをした後 「えっと…響子お義姉ちゃん!お兄ちゃんをよろしくおねがいします!」 「……ええ、こちらこそよろしくお願いします。こまるちゃん」 …そんなやりとりをした。 その言葉を聞いて、こまるは満面の笑顔になると――今度こそ振り返らずに走っていった。 「……いい妹さんね」 「ははは……にぎやかなだけだよ」 こんな形になってしまったけれど……響子さんとこまるは結構仲良くなれたみたいだ。 ただ…きっと帰ったら今日のことを両親に報告するんだろうなぁ…。 早く連れてきなさい!と電話口で叫ばれる未来がありありと目に浮かぶ。 それならばいっそ。 「ねぇ……響子さん、お願いがあるんだけど」 「?何かしら、誠君」 「今度、2人で旅行に行かない?行先は……僕の実家だけど」 「……あら、いい考えね。じゃあ苗木君、そのあと私の実家に行くのはどう?歓迎するわよ」 「……いいね。じゃあ明日さっそく予定の確認しようか」 「……いっそ違う報告もしちゃう?」 「ん?何かほかに報告することあるっけ?」 「……まあ急ぐ必要はないわね。……指輪もないし。とりあえず帰りましょ誠君」 「ちょ、ちょっと一人で納得しないでよもう。最後なんていったの?」 「なんでもないわよ、誠お兄ちゃん」
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/423.html
大和田「不二咲!俺の子どもを産んでくれ!」 不二咲「ええっ!?」 大和田「頼む!他に頼める奴がいねえんだ!」 不二咲「そ、そんなことできないよぉ」 大和田「なんでだ!俺がヤンキーだからか!?」 不二咲「ち、ちがうよぉ、そうじゃなくって…」 十神「おやおや、随分嫌われてるようだな」ニヤニヤ 大和田「!?」 十神「不二咲だって粗暴で喧嘩以外能のない男の子どもは産みたくないんだろう」 大和田「てめえ…もういっぺん言ってみやがれコラ!」 十神「何度でも言ってやる。理解できるまでな」 不二咲「ふ、二人とも喧嘩はやめてよう…」 不二咲「それに大和田君の子どもは産めないよぉ…」 十神「そうだ、なぜなら不二咲は大和田ではなく俺の子を産むのだからな」 不二咲「……ええええ!?どうしてそうなるのぉ!?」 十神「決まってる。俺が優秀だからだ」 大和田「ケッ。自分で言ってりゃ世話ねえぜ」 十神「俺は事実を言ったまでだ。と、言うわけで俺の子を産んでくれるな?不二咲」 不二咲「と、十神君まで…もうやだよぉ」 桑田「おい十神、俺の不二咲ちゃんを泣かせてんじゃねえよ!」 不二咲「桑田君!?」 大和田「またややこしい奴が来やがったな」
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/87.html
ナレ(舞園さんといい雰囲気になりました) 舞園「苗木君・・・・・・」 苗木「ま、舞園さん・・・・・・?」 霧切「待ちなさい、苗木君。そのまま行くとあなたは不幸になるわ。 舞園さんはとても意志が強い子だけど、それが逆に将来あなたを裏切るかもしれない。 むしろ、苗木君には行く先々で的確なアドバイスを与えて見守るような人がふさわしいと思うわ。」 舞園「まるで自分がふさわしいみたいに言うんですね霧切さん。 むしろそういう人って、いざとなったら容赦なく仲間も切り捨てるんですよね。 そんな人が苗木くんにふさわしいとは思えません、苗木君もそう思いますよね?」 葉隠「くー苗木っちだけなんでこんなにモテるべ!あれだな、モテモテになる古代のオーパーツ手に入れたんだな! おれにもそれ寄こすべ!それがだめならこの書類にサイン入れるべ!!」 苗木{なんだろう、二人とも言ってる通りな事しそうなのは気のせいかな。あと葉隠黙れ!}
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/175.html
あれから数年の時が立ち 絶望によって崩壊した世界もほぼ復興した。 案外世界というか人類はしぶとい。 僕は霧切さんを誘って希望ヶ峰学園に来ていた。 正確には「元」希望ヶ峰学園跡地。 そこにあるのはただの廃墟。 他が復興していく中で都内の中心に位置するにも関わらず 誰の手も入らず、ただ時の流れに身を任せ朽ちかけていた。 理由は恐らくみんな目を背けたいんだと思う。絶望という忌まわしいものから・・・・・・。 僕達が記憶を喪わされて閉じ込められたと錯覚させられた事件から、 何の因果か何度も「絶望」対「希望」の戦いの場になった。 正直僕もあまり目を向けたくなかった。 霧切さんもそうなんだろう。 誘った時、一瞬表情が強ばったのを僕は見逃さなかったし、 今、こうして二人で学園の入り口に立ってすぐ横に居るのに話しかけ難いオーラが出てる。 「・・・・・・苗木君、貴方がここに私を誘った意図が掴めないんだけど?」 重苦しい空気の中、僕が話しかける前に霧切さんが口を開いた。 霧切さんの性格だろう。重苦しい空気だろうが、何だろうが疑問や矛盾点、 整合性がとれない問題に直面したら迷わず挑む。 霧を晴らすために切り裂くように、鋭く。 ここにきて曖昧な反応をすれば霧切さんは不機嫌になる。 はぐらかされるのが何より嫌いだと言う事は経験でわかってる。 僕も迷ってる時じゃない! ポケットの中に入ってる箱の感触を確かめながら自分に言い聞かせる。 「何ていうかさ、この場所ってつらかったこと、悲しかったことが多かったよね」 自分でも確かめるようにゆっくり話す。 「友達との思い出を失くしたり、人の生き死にに直面したりさ。絶望と戦ったり・・・・・・」 何か思い出したんだろうか、霧切さんが目を伏せた。 「でもねそれだけじゃないよね?この学校での本当の意味での学園生活は短かったけど あんなに濃密で楽しかった時間は記憶を消された程度じゃ『失われない』よ。それに・・・・・・」 言葉を切って霧切さんを見つめる。 「霧切響子さんに会えた。」 黙って僕を見つめていた彼女の目が大きく見開かれる。 「それだけでここは僕にとって凄くかけがえのない場所なんだよ。一度失いかけたけど 『再会』したのもここだし、・・・状況は異常だったけど。」 そこま話して緊張が少し抜けたのか僕は自然にふっと笑えた。 「・・・・・・まあ、そういう意味でなら私にとってもかけがえのない場所ね」 そうつぶやいた霧切さんの顔は少し赤くなっていた。 「それで苗木君はその『かけがえのない場所』で何がしたいのかしら?」 だから二人で来たのよね?とあの不敵な笑みを浮かべている。 ・・・・・・気づかれちゃったかな?まあいいや。彼女に隠し事なんて僕には無理だし。 「霧切さん以前に言ってたよね?『手』を見せる事になるのは家族になる人だけだって」 もう一度ポケットの中で箱を開ける。 「随分昔の事を覚えてるのね?でもあの時黒幕を追い詰めるために皆に見せてしまったわね」 そう言ってさりげない動作で僕から目をそらす。 「そうなんだけどさ。あの時の見せるって『状況も含めて』って事だよね?」 そう言いながら僕は霧切さんの左手を取る。 「こんな風にさ。・・・・・・いい?」 彼女は顔を真っ赤にしながら微かにうなずく。 僕自身もおそらく真っ赤だろうな。 手袋をゆっくり外し、素手になった薬指に指輪を嵌める。 めちゃくちゃ緊張して手が震えた。 「二人だけの結婚式だね。」 自分でも分かるくらい声まで震えてる。 「・・・・・プロポーズじゃなくて?」 意外そうに聞いてくる。 「プロポーズ兼結婚式かな?ほらやっぱり皆の前で手袋外すのは抵抗があるでしょ?」 「神父さんもいないし教会でもなく廃墟の前よ?」 「僕は響子さんに誓うからいいよ、それにほら」 さりげなく彼女を下の名前で呼んで元学園正面の建物を指差す 「?」 「あそこの棟が倒れかけてこっちの棟にひっかかてちょっと強引だけど十字架に見えない?」 我ながら強引で単純だなあと思う。 彼女もすぐに理解した。 そして僕がここに誘った本当の意味も理解したのだろう。 「もう、苗木君の癖になm」 「それは違うよ、響子さん!」 彼女の決め台詞を遮る。 「もう、誠の癖に生意気ね・・・・・・。私も誠に誓うわ!」 照れながら宣言する彼女は本当にきれいだった。 終わり
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/805.html
結姉「わたし、まだ死ぬって決まったわけじゃないのになあ…」 霧切「お姉さまが露骨にフラグを立てすぎてしまったのが原因よ。あれでは、お姉さまが死なないと思う方がびっくりだわ」 結姉「そこまで言う!? ……もう、わたしはどうしたらいいの!?」 霧切「フラグを折ればいいのよ。お姉さまならできるわ」 結姉「……できるかな?」 霧切「ええ。それに私としても、フラグを折ってもらわなくては困るわ」 結姉「えっ?霧切ちゃんが困るようなことは別に無いような…」 霧切「あるわ。……お姉さまが死んでしまったら、私は、誰を心の支えにすればいいの…?」 結姉「えっ…」 霧切「私は、お姉さまが私を肯定して、支えてくれているから、前に進めているのよ… お姉さまがいなかったら、私には、こんなに強大な組織を敵にまわすことなんて、とてもできないわ…」 結姉「……ごめんね、霧切ちゃん。わたし、もう弱音は吐かないよ。絶対に生き延びてみせる。絶対に、お姉さまとして、ずっと霧切ちゃんを支えてみせる。だから、そんな顔しないで…」 霧切「……約束よ…?」 結姉「うん、約束する。わたしたちは絶対に、新仙たちに屈したりなんかしない!」 霧切「ええ!」 「「希望は、前に進むんだ(のよ)!」」
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/440.html
六枚目:牡丹に蝶 & 七枚目:萩に猪 天香国色、百花の王。 それは多くの文人墨客に愛された、高嶺の花。 見事な牡丹を描いた水墨画、テレビではその作者の生涯を追うドキュメントをやっていたはずなのだけど。 「牡丹鍋、食べたいわね」 これぞ、リアル花より団子。色気より食い気。食いしん暴バンザイである。 「…何よ。言いたいことがあるならはっきり言いなさい」 「…牡丹繋がりにしちゃ、随分縁遠いなぁ、と」 「牡丹と食には切っても切れない関係があるのよ。お酒なら司牡丹、甘味なら牡丹餅…あ、お萩もいいわね」 「節操無いんだから、ホント…」 薄紅色の花びらを重ねて咲く様は、まさに王様の装飾。 彼女の言うように、牡丹の美しさや風格から、その名前を冠した食べ物は多い。 「郷土料理を出す料亭で、一度だけ食べたことがあったけれど…あの濃厚な味わいが忘れられないわ」 「牡丹鍋には及ばないけれど…今日は豚汁だからさ、それで、」 「御馳走様」 それで手を打って食べていかないか、と、尋ねる前に。 これもこれで、いつも通りの流れである。 ウチのソファーがお気に入りのようで、ゴロゴロとくつろぐ霧切さん。 適当にチャンネルを変えては、気に入る番組がないのか唸っている。 僕としてはさっきのドキュメンタリーでも見たいのだが、生憎現在リモコンの主は霧切さんだ。 どちらにせよ料理中だし、しばらくはテレビに霧切さんの相手を任せよう。 「そういえば…苗木が」 「へ?」 唐突に名前を呼び捨てられて、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。 驚いて振り向けば、彼女もまた驚いたようにこちらを見ていて、それから急に吹き出した。 「ふふっ…違うの、あなたのことじゃなくて…でも、そういえばあなたも『苗木』だったわね」 「…正真正銘、本物の苗木誠だけど」 「ゴメンなさい、馬鹿にしようとしたわけじゃないのよ。昨日事務所からの帰りにね…」 彼女が言うには、よく通る商店街の花屋で、牡丹の苗木を見かけたらしい。 一緒に売られていた花瓶もきれいで、思わず衝動買いしそうになったとのことだ。 「衝動買い好きだよね、霧切さん」 「自分の欲望に正直に生きるのよ、私は」 歌うように言ったその言葉を、僕は感慨深く聞いていた。 かつて、学園に共に通っていた頃。 彼女はまるで、欲望や好奇心を押し殺したように生きていた。 見ているこっちまで息苦しくて、どうにかして素直になってほしくて。 良くも悪くも、今は見る影もない。 『もともと私生活はだらしないのよ…私は』 初めて彼女の部屋を訪れた時、少しだけ恥ずかしそうに、そう言われたのを覚えている。 『あなたは私を、その…何でも出来るような堅苦しい優等生、くらいに思っているかもしれないけど』 少しくらい欠点がある方が、親近感も湧く。 そう思っていられたのは、最初の数か月だけだったなぁ…。 「最近、仕事帰りにあなたの家に寄るのが日課になってしまっているわ…」 「夕飯作る時間もないんでしょ? 事前に連絡あれば、一人分も二人分も作るのに大差ないし」 「そうやってあなたが甘やかすから、私はどんどんつけあがるのよ…」 自覚はあるようだ。 もともとだらしない、と、彼女は言った。 公私の区別をはっきりと分けているから、悟られないだけだ、と。 それなら、だらしない一面を僕に見せてくれているということは、 僕は霧切さんの『私』の中に勘定されていると、考えてもいいのだろうか。 「ま、それならこれも…一種の特権かな、なんて」 「…特権?」 「だらしない霧切さんのお世話をさせてもらえる権利。人によってはご褒美かもね」 「……」 無言の抗議と共にソファーから飛んできたゴミを軽くかわして。 ソファーの向こう、おそらく少し拗ねている顔を想像して、思わず頬が緩む。 いつも凛として佇む彼女。 決して無理をしているワケじゃないだろうけど。 その苦労や、背負ってきた信念を、僕は知っているつもりだ。 だから僕の家に来ている時くらいは、羽を伸ばしてほしい。 大根、玉葱、人参、蒟蒻、じゃが芋に油揚げ。 奮発したバラ肉を大きく切り、沸騰させて灰汁を取ったら、隠し味の酒粕も。 豊富な具材が、栄養が、温かさが。 明日からの彼女を助けるエネルギーになってくれますように。 「それで、結局買わなかったの?」 手休めついでに、『苗木』の行方を聞いてみる。 「予算は問題なかったけれど、置く場所に困りそうだし…思い留まったわ」 「ああ…それに、出張中は手入れ出来ないしね。残念」 『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』。 牡丹は美人の形容の代表句でもある。 彼女の家に、苗木が飾られている光景を想像する。 白い部屋に美女一人、牡丹一輪。 なかなか絵になるな、と、ぼんやり感じ入っていると、 「…苗木君、お腹空いたわ」 唐突に、すたすたとジーンズ姿の霧切さんが台所に上がり、そのまま冷蔵庫を漁る。 「待って、今作ってるから」 「待てない。…あら、卵の燻製があるじゃない」 僕の言葉も待たずに、暴君はビールを片手に卵のパックを開ける。 うん、美女には違いないんだけど。 あの諺が示すような大和撫子からは、程遠い存在かもしれない。 「…『立てば酒持ち、座ればご飯、歩く我が家の女食客』ってところかな」 「…ちょっと。それ、誰のこと?」 耳疾く聞きつけた霧切さんの追及の視線を逃れつつ、僕は豚汁の味を見た。 牡丹鍋よりも、彼女は気に入ってくれるだろうか。 【続く】