約 439,955 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8429.html
ペルソナ4より花村陽介、巽完二、クマを召喚 ゼロのペルソナ 第1章 運命 ゼロのペルソナ 第2章 皇帝 前半/後半 ゼロのペルソナ 第3章 女帝 ゼロのペルソナ 第4章 女教皇 前編/後編 ゼロのペルソナ 第5章 剛毅 前編/後編 ゼロのペルソナ 第6章 戦車 ゼロのペルソナ 第7章 刑死者 前編/後編 ゼロのペルソナ 第8章 月 前編/後編 ゼロのペルソナ 第9章 隠者 ゼロのペルソナ 第10章 悪魔 ゼロのペルソナ 第11章 正義 ゼロのペルソナ 第12章 恋愛 前編/後編 ゼロのペルソナ 第13章 死神 前編/後編 ゼロのペルソナ 第14章 星 ゼロのペルソナ 第15章 法王 ゼロのペルソナ 第16章 魔術師 前編/後編 ゼロのペルソナ 第17章 塔 ゼロのペルソナ 第18章 節制 前編/後編 ゼロのペルソナ 第19章 太陽 ゼロのペルソナ 第20章 審判 前編/後編 ゼロのペルソナ 第21章 愚者 前編/後編 ゼロのペルソナ 最終章 世界 前編/後編
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1688.html
二度目の虚無の曜日。 今日ばかりは僕も衛兵の仕事が無く、才人もルイズについていく授業がないので、僕たちにとっても休日なのだ。 もっとも才人は一昨日に、授業中に他の女の子のスカートをのぞいているということで、暫く授業に連れて行く事はしないとルイズが言っていたので、既に昨日から休日状態だが。 この二度目の休日を前にして、特にやることのない僕らは、いつものように厨房で朝食を取っていた。 既にご飯抜き期間は終わっているのだが、僕たちの貧相な食事が改善されたわけではないので、未だに食事事情は厨房に依存している。 衣食足りて礼節を知る。それらをキチンと行わないで、頭ばかり下げろと言うルイズは、実に横暴である。 ああいう相手には、絶対に頭を下げたくない。 頭というものは、そう簡単に下げられるものじゃあないんだ。 それはともかく、いつも厨房に世話になって場かりでは心苦しいので、何か手伝いたいと申し出た結果、 「才人、ちゃんと拭いてください。まだ濡れているじゃあないですか」 「そんなこと言っても、うまくできねぇんだよ」 「ですから、コントローラーの十字キーを回すようにして……」 「十字キーって、いったい何ですか?」 「シエスタは気にしないでください」 現在の皿洗いに至っているのである。 正直、迷惑にならず手伝えるのがコレと、後はウェイターしか無かった所為なのだが。 ちなみに皿洗いはシエスタも含め、ほぼ残りの人数全員でやっている。 「こんなもんか?」 「そうそう、そんな感じです」 才人が拭いた皿をこっちに見せてくる。先程までとは、湿り気が格段に違う。 ちゃんと親指を使うか使わないかで、皿洗いの加減は大きく変わるのだ。 ちなみに才人が一番少なく、僕が一番多く洗っている。 「ノリアキさんて、器用なんですね」 「まぁ、これはコツさえつかめればすぐ出来ますから」 といいながら、スタンドを使いながら洗っているので、早くて当たり前なのだが。 「ほんと、ノリアキさんて何でも出来るんですね」 皿洗いが終わった後、他の厨房の人たちの休憩に合わせて、僕らも彼らの話に混じる。 相変わらず、僕は才人と違って距離を取る人間が少なくない。 魔法が使えると勘違いされたままなので、一歩引かれているのはそうだが、それ以上に、やはりスタンドが見えてないのだと考えてしまった時、ひどく冷めてしまうのが原因なんだろう。 そんな僕に対しても、気軽に話しかけてくれたりするシエスタの存在に僕は頭が下がる思いである。 馴染み深い容姿といい、シエスタという女性は人の心を和ませる女の人だ。 側にいるとホッとする気持ちになる。 こんな事を言うのも何だが、恋をするとしたら、あんな気持ちの女性がいいと思います。 それに、オオホーン! オホン! オホーン! ムネ オオホーン! も綺麗ですし。 そういうわけで僕はこの時間、シエスタと他愛のない話をしていたのだった。 ちなみに才人はその間、主にマルトーさん達コック集団に絡まれている。 これも一重に、マルトーさんの才人贔屓のたまものなのだが。 安らぐ時間ではあるが、流石にいつまでも厨房にいるわけには行かない。 邪魔をしてしまっては、せっかく手伝いを申し出たことも無駄になるからな。 僕たちは程々で、厨房に別れを告げ、広場へと向かう。 日課となっている武器の素振りを行うためだ。 この素振りは、意外なことに才人の方が言い出したことであった。 才人が武器を持てば、左腕のルーンが光り出し、身体能力が上昇するのは既に解っている。 それを才人自身が試したいと言い出して、素振りや打ち込みを日課として加えたのだった。 まぁそういうわけで、広場にたどり着いたは良いが、肝心の練習スペースがなかった。 具体的にいうなら、いつものように屯所近辺の広場で練習をしに来た僕らを、使い魔、使い魔、使い魔達の群れが迎えたからだ。 どうやら休みということで、学園の生徒達が使い魔の羽を伸ばさせているらしい。 「サボろうか?」 「言い出したのは才人の方でしょう。……確か、本塔脇の広場なら、人も居ないはずです」 そういうわけで、さぼりたそうにチラチラ広場を横目に追う才人と共に、僕は本塔脇の広場へと進路を変えた。 まぁこの一週間、暇な時間はいつも身体を動かしていたため、その気持ちは分からなくもない。 別に、目的があってこの行為に及んでいるわけじゃあないしな。 たどり着いた本塔脇の広場には、案の定、人影はない。 平日にこんな所による人間なんていうのは、まず居ないからな。当然だろう。 そういうことで、才人は早速デルフリンガーを手に取り、素振りを始める。 素振りをする必要のない僕はこの時間を、いつものように槍を加えたスタンドの動き方を模索する時間として使う事にした。 己を知るという事は、なかなか良い教訓である。 ゲームだって、キャラの癖をよく知っていれば、CPUに負けることなんて無いのだ。 格ゲーの実力だって、連コインした数だけ強くなるのだから。 「ハッ!」 とりあえず、いつものように適当に槍を振ってみる。 流石に某無双のように、いとも簡単に振り回すことは出来ない。 スタンドを使えば身長的には何とか足りるものの、余り速く振り回せないため、コレなら何も持たずに動いた方がマシだ。 どうしても使うというのなら、足場か力点の一つとして使うのが、一番効果的だろう。 穂先をもって、殴りかかるのもいい。 パワーの無いスタンドだが、これならばそこそこにダメージを与えられるだろう。 ただ槍自体が重いので、握っている間は、大きく人型を崩せないのが問題だな。 試しに槍の穂先を握って、標的用に用意した木片へと突き刺してみた。 ガッシリと刺さって、ちょっとやそっとでは抜けそうにない感じである。 これならばつかむ所が無いような場所であっても、ハイエロファントを使った移動が出来る。 その後、色々試した結果、大体一回で最大移動距離は100mぐらいと言う結論に至った。 僕はその距離を身体によく教え込み、槍の穂先を元の柄へと戻す。 と、才人の方もどうやら素振りを終えたようだ。汗をぬぐいながら、僕の方へと歩いてくる。 「どうでしたか?」 「全然ダメ」 才人はそういって、思いっきりため息をついた。 このやりとりも、既に素振りを始めた時から、ほぼ毎日繰り返されているやりとりだ。 しかしいつものように、手元にデルフリンガーがない。 「相変わらず、ちゃんと切れねぇんだよなぁ」 僕は才人が先程から打ち込んでいたモノ……やや太めの木に藁を巻いて、人の胴体くらいにしたものを見る。 その木には、所彼処に斬りつけた後が残っているが、実際に切れている箇所は殆どない。 一カ所だけ、切断寸前まで切られた箇所があるものの、そこにはデルフリンガーが食い込んだままとなっている。 何があったのだろうか? 気になって、僕は才人に尋ねてみた。 「何故、デルフリンガーが刺さってるんですか?」 「抜けなくなったんだよ」 成る程、スッゲー解りやすいッ! この上ないシンプルな説明に、そう思うが、僕が聞きたいのはそんな事じゃない。 聞きたいのは、どういう過程で彼処に刺さったか、だ。 「質問を変えよう。どうやって、あんな抜けないような所まで、デルフリンガーを突き刺したんだい?」 「いや、決闘の時みたいにスッパリいくと思ったんだが、中々切れねえからさ。感情にまかせて思いっきり斬りつけたらさ、腕のコレがパァーって光って、いきなり身体がこう、軽くなってさ、グサーッと……」 「それはつまり、こういう事ですか? 『いらいらしてた自分の心境に合わせて、だんだん力が強くなった』……と」 「Exactly(そのとおりでございます)」 成る程。精神状態に合わせて、ルーンは発光の具合を変えるのか。そしてそれに併せて、才人の力も上昇すると。 そういう所はスタンドに近いな。 改めてコレがなんなのか、少し気になる所だ。 この世界のものであるのは間違いないのだが。 ……以外と、デルフリンガー辺りが何か知っているかもしれない。 「デルフ。何か解りますか?」 そう思ってデルフリンガーに喋りかけるも、返事はない。 そういえば、先程から一度も喋っていなかったな。 何か、喋れない理由でもあるのか? 「先程からデルフが何も言わないのは、コレが原因でしょうか?」 「……多分、そうじゃねえか?」 よく見ると、鍔の先の部分が木に引っかかってカチャカチャ出来ないようだ。 不思議剣の癖に、カチャカチャしないと喋れないのか!? 僕らはデルフの、その良く解らないメカニズムについて考えようかと思ったが、このままでは余りにもデルフが可愛そうなのでやめておく事にした。 「ともかく才人、何とかしてデルフをここから抜きましょう」 「でも、どうやって抜くんだよ」 「ここまで食い込んだのなら、その逆も出来るはずです。僕ら二人で、思いっきりデルフを引っ張りましょう」 「でも握る所、柄しかないぜ?」 「忘れましたか? 才人。僕には『コレ』があります」 そういって僕はスタンドを発現させる。 このハイエロファントを使えば、力を無駄なく引っ張ることに使えるはずだ。 具体的には、才人がデルフリンガーの柄を持ち、僕はハイエロファントで鍔の頭、やや刃がむき出しになっている箇所をつかむ。そして僕はそのハイエロファントの手を引っ張るという方法だ。 普通なら、そんな所は危ないのだが、デルフは錆び錆びの上、スタンドはスタンドでしか傷つけられない。気にする必要もないだろう。 「それでは才人。オー・エス! で同時に力を込めて引っ張りましょう」 「何か綱引きみたいだな。……解った」 僕は一つ、コホンと咳払いをして呼吸を整え、ハイエロファントの触手を強くつかむ。 普通は、生身の人間からはさわれないのだが、スタンドは精神の力。出来ると思えば出来るのだ。 「では」 「オー・エス!」 「オー・エス!」 「「オー・エス!」」 「「オー・エス! オー・エス! オー・エス! ………」」 しかし、未だデルフリンガーは木から抜ける気配がない。 「才人、もっと気張ってください!」 「コレで全力だつーの!」 「呼吸を調整すれば、力がもっと出るはずです」 「つっても、どうすんだよ」 ……確か、記憶によれば…… 「一秒間に十回呼吸を…」 「できるか!」 間違えた。コレはジョースターさんがいっていた、波紋の呼吸法だ。 寧ろ出来るなら、称えてやってもいいと思う。 そうではなくて、誰にでも出来そうなこと…… 「二回、鼻で息を吸って、口から一息に空気を吐くんです。肺の中の空気を1ccも残さないように!」 「…後半のは、関係ねえ気もするが…… 解った!」 これなら、息が荒くなることもなくならず、リズムに合わせて力を入れることが出来る。 僕もその呼吸に合わせて、力を込める。 「……」 「アッ!」 端から見れば、僕はパントマイムをしているようにしか見えないと気がついたのは、引っ張ってる最中に、通りかかった女性……確か学園長の秘書とかいう、ロングビルの奇異の視線を浴びた時であった。 何もない所を、力一杯、息を荒くして引っ張る男というのは、さぞかし奇異に見えるだろう。 いや最悪、構図的に、才人の後ろ姿、さらにいえばお尻を見て、興奮していたように見えなくもない。 何でこんな所に居るんだ! と心の中で毒づく。 「まぁ、人に言えない趣味は色々ありますものね」 そういいながら、ロングビルは僕に哀れみの視線を向けてくる。 止めろ! そんな目で僕を見るな! 何でいつも僕がこういう目に遭うんだ! こういうトラブルは才人の役目だろう! そう思いながらも、僕は弁明の言葉を考えるが、いいものが思いつかない。 そもそもスタンドがらみの事で、いい言葉が思いつくというのなら、元の世界でも疎外感なんて感じるわけがないだろう。 そうこうしている内に、ロングビルはそそくさとこの場から立ち去っていった。 最後まで僕に哀れみの視線を向けながら。 僕と才人は、何も言えずにその後ろ姿を、ボケーッと見送った。 しかし、何故彼女はこんな所にいたんだ? ここは本当に何もない所だ。偶に人が居ないことを利用して、色々やっている人間も居るようだが、彼女もそういう類なのだろうか? まぁ、今の僕には関係のないことだ。 それより! 「才人。少し、その木から離れてください」 「花京院、何をするつもり……」 僕はスタンドの手に精神を集中させる。 それに併せて、破壊のエネルギーが、雫となってその腕からポタリポタリと流れ出す。 「おい! それじゃデルフも巻き込まれるだろ!」 「僕はバカではありません。自分というものを知っている」 僕だって、才人が素振りをしている間に、いろいろとスタンドについて試してきたのだ。 再び腕に集中された破壊のエネルギーに、神経を集中させる。 既にエメラルドスプラッシュを放つのに、十分なエネルギーは溜まっているが、このままでは才人のいう通り、デルフリンガーを巻き込む。 だから僕は、その力をさらに一点に集中させ、よりピンポイントに対象を破壊する姿をイメージする。 記憶の僕にも出来たことだ。僕にだって出来無いことはない。 そして心を落ち着け、その力をエメラルド色の固まりへと変えて、デルフリンガーを挟んでいる木に叩き込むッ! 「『エメラルド・スプラッシュ』!」 拡散ではなく、密集されて放たれた、その破壊のビジョンは、デルフリンガーを挟んでいた木の、上半分だけをボグォーンと綺麗に吹き飛ばす。 一点集中型のエメラルドスプラッシュ。 普段はショットガンの様に拡散させて放つエネルギーを、拳大まで圧縮して打ち出す。 こうすることでより確実に、相手を狙撃(シュートヒム)出来る。 が、まだ集中が甘いせいか、普通のエメラルドスプラッシュより威力が弱い。 もう少し努力が必要だな。 「やっと自由に慣れたぜ。全く相棒、もう少し大事に扱ってくれよ」 「いやぁ、わりぃ。まさかあんな事になるなんて…… すまねえ、花京院」 「いえ、良いんですよ」 そう思うのなら、今すぐ走ってロングビルの誤解を解いてもらいたいものだ。 まあ初めからこうしていれば、誤解なんて起きなかったのだが。 しかし、こうも色々続くと、もう一度素振りをしようなどという気力は起こらなくなるな。 「ともかく、一回部屋に戻りましょう」 「おう」 あのわがまま桃色自称ご主人サマも、今頃、うだうだと管を巻いているのだろう。 僕たちは、一度ルイズの部屋に戻ることにした。 正直に言うと、お風呂に入りたいのだが、夜になりきっていない今は、まだ誰かに目撃される恐れがある。 具体的には、厨房や屯所の人間にだが。 二人で居る所を観られ、また先程の様な誤解をされるのはゴメンだ。 僕は足下に置いておいた槍に手を伸ばす。 「痛ッ……!」 「どうした!?」 僕は突然、右の手のひらに鋭い痛みを覚え、思わず声を出した。 何があったのかと、思わず手のひらを見る。 そこにはうっすらと、切り傷が浮かんでいた。 「傷…? 一体何処で切ったんだ?」 思わず、首を傾げる。 少なくとも、今日、皿洗いをしていた時点では存在していなかった。 だとすると切ったのは、それ以降……つまり、広場に行ってからということになる。 しかし、広場ではずっと槍を持っていたので、切り傷が付くとは思えない。 だとすると、切り傷がつくことがあり得るのは、デルフリンガーを引っ張った時だが…… スタンドが物理手段で傷つくなどということは 絶 対 に あり得ない。 おそらく誤って、デルフの刀身のどこかに触れてしまったのだろう。 「大丈夫かよ」 「ええ、思ったほどの事はありません。驚いただけです。早く行きましょう」 これ以上考えて、才人に変な心配をさせることもあるまい。 いろいろあったことを振り払うかのように、僕は足早に、ここを立ち去ることにした。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 「そういえば、デルフ」 「あん?」 ルイズの部屋へと行くための、既に登り慣れた階段の途上。 僕は手に持ったデルフに、気になっていたことを質問する。 「才人の左腕のルーン。アレについて何か知りませんか?」 「あ、俺もそれが少し来になってんだ」 僕の質問に、才人が同調する。 今回の事といい、なにやら解らないことが多すぎる。 こういう時は、僕らの辞書的存在である、デルフに聞くのが手っ取り早い手段である。 ちなみに、異世界から変える手段云々について聞いてみたが、流石にそれについては解らないらしい。 デルフは暫く、刀身をふるわせ、やがてカチャカチャと鍔をならした。 「何か、こう、頭の隅にひっかかってんだが…… 随分昔のことでな……」 「刀身と一緒に、頭まで錆びたんですか?」 「うるせ」 「つか、お前、一体何処が頭なんだよ」 「多分、柄」 つか、と接続して訪ねられたので、柄と答える。 才人は何か受けているようだが、ネタにしては余りにも微妙すぎる。 山田君、座布団を持って行きなさい。 と、もうルイズの部屋の前まで来てしまった。 三階だから、そもそもそれほど遠くないからな。 僕は部屋のノブへと手を伸ばす。 すると中から、ルイズとキュルケの話し声が聞こえてきた。 「どうい……味? ツェル……トー」 「だから、ノリ……と……トに丁度良い……を手に入れ…………そっちを……使い……」 「おあいにく………使い……僕の使う道……なら間に合ってるの」 「あ~ら、それなら…………」 なにやら中で揉めているらしい。 そもそもあの二人が一緒で、もめごとが起こらなかったケースを見たことがないんだ。当たり前の事か。 僕は今までのことから、これから起こることを想像し、才人にここを離れることを促す。 「才人、今すぐ回れ右です」 「? どうしたんだよ?」 しかし遅かった。 僕たちが、部屋を去ろうというタイミングで、キュルケがドアを開いたのだった。 「あら、ここにいたのね。丁度よかったわ」 「丁度良いわ。あんた達自身に決めて貰いましょう」 キュルケとルイズが、なにやら僕らの方へと詰め寄ってくる。 見るとキュルケの手には、なにやら小綺麗な槍と剣が。 先程の会話内容から察するに、どうやら僕たちがどちらの道具を使うか、について揉めているようだ。 「ねぇ、ノリアキ? 今、あなたの持っている槍と、私の持っている槍、どちらがステキ?」 そういってキュルケは、僕に槍を渡してくる。 その際、 「あなたの持っている槍、本当は80エキューだそうよ。それに比べてアタシの槍は、正真正銘300エキュー。女も武器も、ゲルマニアの方がいいわよ」 等と言ってきた。 きっとあの店主は「いつもは半額以下で売ってるモンねー」とか思っていたに違いない。 そう思うと、少し、店主に対する怒りが沸いてくる。 まあそれはともかく、僕は受け取った槍をまじまじと見つめる。 うん。成る程。近くで見ればかなり綺麗で、刀身は美しい光を放っている。 続けて、僕の持っている槍を見る。 悪くはないが、アレに比べれば分が悪い。槍だけであれば、間違いなくキュルケの持っている方だ。 しかし、コレは槍を選ぶだけの問題でないのは、キュルケとルイズの様子を見れば解る。コレはどちらを選ぶかということでもあるのだ。 正直に言うと、どちらも選びたくない。 方や高慢ちきでムネもない、自称ご主人様。方やおっぱいは大きいが、気まぐれな六股、いや七股女。 ルイズにするべきか! キュルケにするべきか! コイツは迷うッ! 迷うッ! 暫く二人にジーッと見つめられる中、僕は一か八か、適当に言いつくろってその場を逃れる手段に出た。 「せっかくだから、僕はこっちの赤い扉……じゃあない! この、僕が持っている槍を選びます!」 その一言で、キュルケは驚愕に、ルイズは勝ち誇ったような表情になる。 だが、僕にルイズを選ぶつもりはないので、言葉を続けていく。 「しかしッ! 槍自体で言うのならキュルケの槍を選ぶ!」 その一言に、二人の表情が逆転した。 しかし僕はまだ言葉を続ける。 「だが僕はッ! ルイズにこの槍を買ってくれと頼んだ。だから、この槍は僕自身の手で選んだ槍だ」 自分でも言っていて苦しい話だ。コレで誤魔化せるわけがない。 だから僕はスケープゴートを用意する。 「だから君たちの決着をつけると言うことに対しては公平じゃあ無い! だから、使い魔という以外に負い目のない、才人が決めるのがふさわしいと思う! 僕もそれに決定に従おう!」 「俺ぇ!?」 彼女たちにしてみれば、互いに決着をつけられればそれで良いのだ。 僕は才人を差し出して、二人の出方を見ることにした。 当の才人は、いきなり自分の名前が出てきたことで、おろおろとしている状態だ。 許せ、才人。後でお茶を煎れてやるから。 「下僕はアタシの槍を……」 「あなたの選んだ槍じゃないでしょ? 第一、槍自体はあたしのを選んだのよ?」 「「じゃあ……やっぱり」」 そういって二人は才人の方に詰め寄る。 「「どっち?」」 キュルケが、ルイズが才人を睨む。 才人は一層を混乱した様子で、額に汗を浮かべながら二つの剣を見、その後、僕に恨めしそうな視線を向けてきた。 だが僕は気にしない。 「言っていることが滅茶苦茶」 何時の間にやら部屋から出てきたタバサが、僕に対してそんなことを言ってきた。 というか、部屋にいたのか。 僕はタバサの、その都合の悪い言葉を無視して、才人の様子を伺い続ける。 どうやら才人の方も決まったようだ。 才人は一度、大きく息を吸ってから、答えを出した。 「その、二本とも、ってダメ?」 才人に出来るであろう、目一杯可愛げな表情を浮かべ、そんなことを言い出した。 流石才人! そこに痺れもしないし、憧れもしない。どっちかっていうと引く。 案の定、才人は二人に思いっきり蹴っ飛ばされる。 その顔はどこか、やり遂げたようにすがすがしい。 才人のその勇気ある行動! 僕は軽蔑の意を表す! 「ねぇ」 「なによ」 「そろそろ、決着をつけませんこと?」 「そうね」 「あたしね、あんたのこと、大っ嫌いなのよ」 「わたしもよ」 「気が合うわね」 「……決闘よ!」 まぁ、そんな調子で、才人がどちらの剣を使うかについて、ルイズとキュルケが決闘するということになったのだった。 さて、どうなる事やら。 To be contenued……
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1351.html
朝食を厨房で取った僕と才人は、その辺をぶらぶらと歩いている。 こんな事をしていたなら「また、ご主人様をほったらかしにして!」等と、僕らの自称ご主人様、ルイズが激昂するだろうが、今日はあいにくそんなことはない。 というか、未だに部屋で寝ている。 一応、起こしたのだが「今日は虚無の曜日だから……」と二度寝を始めてしまったからだ。 仕方なく、僕らは洗濯物だけは洗っておいてやった。全く、世話の焼ける。 ともかく、アレである程度は自分を律せられるルイズが、二度寝をするという事は何かあるのだろう。 そう思って適当なメイドに話しかけて聞いてみれば、今日は僕らの世界で言う日曜日のようなものらしく、学校も休みで、衛兵やメイドも、最低限の数しかいないとのこと。 昨日、説教する余裕があるなら、それぐらいのことは教えておけ! とルイズに言いたい。 そうとわかれば、僕も寝る余裕があったろうに。 まあともかく、この暇な時間を放置するわけにも行かないと、この機会に学園の回れる所を回っておこうと才人が言い出し、僕もそれに同行して、現在に至っているわけだ。 ちなみに、今は本塔の中庭の辺りを散策中である。 「……顔をつっこむ程度で許してやるか………」 「なぁ、花京院。何ぶつぶつ言ってんだよ」 「……いや、やはりぴかぴかになるまで舐めさせるのが……」 「お~い、花京院」 「……しかし、女性用のを舐めさせて、精神的に再起不能というのも……」 「無視すんな~」 才人がさっきから、しきりに話しかけてくる。実に鬱陶しい。 今の僕の頭の中は、貴様に対する、昨日の事への報復を考えることで忙しいんだ! 結局、僕はあの後ほぼ一睡もすることなく、朝を迎えることとなった。 普段なら徹夜程度なんて事はないのだが、厨房での無茶な体勢での長時間の気絶。 昨晩のキュルケの部屋でのグダグダ。 ルイズの部屋での延々とした愚痴。 その全てが合わさって、僕は今、精神的にも、肉体的にもかなりヤバイ状態にある。 先程、鏡で確認したら、かなり凶悪な顔つきになっていた。 目元はつり上がって、表情全体に影が差し、瞳は生気が消えたように暗い。 白目の所は赤く充血し、瞼の重さに耐えかねて眉間にしわが寄っている。 前髪は幽鬼の如くぐったりとしなって、僕の顔の半分を隠している。 僕自身、こういう奴がいたら犯罪者と見まごうことだろう。 事実、シエスタなどは出会うなり、悲鳴を上げた。 一番スゴイ反応を返したのは、マルトーさんだ。僕の顔を見るなり包丁を持ち出してきた。 最近はこんなトラブルばかりだ。 ここに来てからというもの、どうもついていないな。 そう、僕は考えながら、またうつむいて報復の過程を考える作業に戻る。 「うおっ!」 「あ、わりぃ。呼びかけても、反応しねぇからさ」 「眠いんですよ……」 唐突に隣を歩いていた才人が、僕の肩を揺さぶった。 体調不良でふらふら気味の僕は、その揺れに逆らうことが出来ず、ドシィインと尻餅をついた。 ズボンが土でひどく汚れた。 まさか、ここまで寝不足が効いているとは。 ……報復するにしても、コレは一度仮眠を取る必要があるな。 僕はぱんぱんと、土埃のついたズボンをはたきつつ、立ち上がる。 そして精一杯、今できる限りのまじめな顔をして、才人の肩をつかんで名前を呼ぶ。 「才人」 「な、何だよ?」 「僕は暫く仮眠を取ります」 僕はただそれだけを言って、才人の肩から手を離し、そのまま戻ってきた方向へ、回れ右する。 才人は暫く、何がなんだか解らないといった様子で、しばし呆然としているようだ。 この隙に、僕はさっさと戻ってきた道をふらふらとした足取りで進む。 「え!? ちょ、おい待てよ!」 ようやく状況を認識した才人がそんな声を挙げたのは、既に僕が寮の方へと通じるアーチまで、たどり着いてからのことだった。 そういうわけで一足先にルイズの部屋までたどり着いた僕は、颯爽と寝る準備に入る。 今なら近くにマニッシュボーイがいても、僕は夢の世界に入ることに躊躇はないだろう。 布団を敷いて、毛布にくるまり、僕はそのまま身体の状態に任せ、目を閉じた。 「げげげ、下僕の分際で、二度寝の上にご主人様に起こされるなんて…… こここ、これは本格的にお仕置きが必要なようね……」 混濁しきった意識の中で、少女のそんな声が耳に入る。 嫌な予感がした。 僕はとっさに毛布を振り払い、混濁した意識を一気に現実まで引き上げる。 そこには大きく右腕で鞭を振り上げるルイズの姿があった。 アレで叩く気か? 冗談じゃない! 「『ハイエロファント・グリーン』ッ!」 僕はスタンドを発現させ、ルイズの部屋の四隅にある調度品に、ひも状にほどいたスタンドを引っかける。 そしてそこを基盤として、天井付近に蜘蛛の巣のように張り巡らせ、そこを縦横無尽に逃げ回る。 魔法で狙撃することのできないルイズは、部屋の下で必死に鞭をふるっているだけだ。 「コラァ! 避けるんじゃないわよッ! おとなしく降りてきて、叩かれなさい!」 「断るッ!」 結局、狭い部屋で行われた僕とルイズの鬼ごっこは、暫くして早めの昼飯を済ませた才人が乱入したことにより、ルイズの標的が才人に変わるまで延々と続けられた。 「全く、あんた達は使い魔や下僕としての基本がなってないようね!」 ルイズは才人をイス代わりにして、僕の方へと向き直る。 だんだん言われ慣れてきたせいか、反発は覚えるものの、下僕と言われるのに怒りを覚えなくなってきた。 こういう慣れ方は、実に不本意だ。 「下僕、聞いているの!?」 「あうっ!」 さっきから、僕がよそ見や何か違うことに意識を取られるたび、何故かルイズのイスになっている才人が鞭で叩かれている。 その姿を見ていると、復讐をするのがカワイソウになってくる。 でも昨日のことを思い出し、腹が立ったのでまた、よそ見をする。 「よそ見してるんじゃないわよ!」 「ひぃん!」 再び、才人が鞭で叩かれる。 ……叩かれた後、才人がなま暖かい目でルイズを見ているのは、気のせいだと思いたい。 初めての親友候補が実は変態マゾ野郎でした。なんて、僕には人生リタイア級の衝撃だ。 それはともかく、結局ルイズの話は昨日の夜の説教の焼き増しだった。 もっとご主人様に尽くすべきだの、貧乳は正義だの、下僕と使い魔にはみっつのUが必要だの。 僕は適当に聞いているフリをして流し続けた。 その所為か、たびたびルイズも鞭をふるって才人を叩く。 そのときのルイズは妙に生き生きとしていた。コイツもなのか。 途中でルイズがお昼の休憩を挟みつつ行われた、ルイズの下僕&使い魔講義はおいかけっこを含めて、3時間という長大な記録をたたき出した。 まあ、よくもそれだけ舌がまわるものだ。 座り心地が悪かったのか、途中からは普通のイスに座って行われたのだが。 ともかく、その不毛な下僕&使い魔講義が一区切りつくと、ルイズは席を立って制服とは違う、別の服を着せるよう、僕らに指示を出した。 正直、またあの様な不毛な講義を開催されてはたまらない。 僕は大人しくその要求に従い、ルイズに服を着せた。 ちなみにまな板や、ロリコンに興味はありません。 僕に着せ替えられたルイズは、僕たち二人の方を向いて言う。 「外出するわよ。さっさと馬の用意をして」 「外出?」 「そうよ、あんた達もついていくの」 これはまた脈絡のないことだ。 何故。聞かずにはいられない! 「僕たちもですか。しかし、どうして?」 「明日から衛兵の仕事を再開するのに、槍が無くてどうするのよ。使い魔の方も、それなりに武器を使いこなせるみたいだし」 この一言に、僕は非常な衝撃を受けた。 あの高慢ちきでケチで、差別主義者の自称ご主人様が、僕らにモノを与えるだって!? 間違いない。コイツはラバーソウルの化けた偽物だ! 「珍しい……」 才人がつい、僕らの思いを口に出す。 それを聞くなり、ルイズがこちらをジロリと睨んできた。 「どうしてよ」 「お前って、ケチだと思ってた。飯とかひどいし」 どうしてお前はそう、思ったことをすぐ口にする! いっそ封鎖してやりたい気分になったが、特にルイズは気にした様子もなく、それどころか、何故か得意げな表情になって言い放つ。 「あんまり贅沢させると、癖になるでしょ? 必要なモノはきちんと買うわよ。私は別にケチじゃないの」 訂正。やはりいつものルイズだ。 これほどテンプレート的な高慢ちきも、中々いないだろう。 まだ出会って三日だが、実に人物像がつかみやすいな。 そういうわけで僕らは馬に乗って、初めての、異世界街見学というのを体験することになったのだった。 To be contenued……
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1813.html
「きゃああああああああああ!」 30mはあろうかというゴーレムの落とす影は、強烈なプレッシャーになる。 その重圧に、最初にキュルケが悲鳴を上げた。 そしてその悲鳴を合図に、ここにいる全員が蜘蛛の子を散らすようにして逃げていく。 未だ、身体に縛られて思うように動けない、僕と才人を除いて。 「おい、おいていくなよ!」 才人が去っていくキュルケの背中に叫んだ。 しかし、キュルケはそのまま本塔の方へと走り去っていってしまう。 自力で何とかするしかないか。 幸い、僕にはスタンドがある。 パワー自体は強くないが、このくらいの縄、刃物さえあれば切断は可能だ。 まず、僕は今この広場にある刃物は、僕の槍、デルフリンガー、キュルケの買ってきた剣の3つだ。 デルフは論外だ。威力は兎も角、切れ味は鈍い。第一、今タバサの竜がくわえているしな。 次にキュルケの買ってきた剣。コレが一番の候補だが、これまたタバサの竜がくわえたままだ。 となると、切りづらいが僕の槍しかないか。 僕はハイエロファントを、立てかけておいた槍に向かって伸ばす。 と、それに合わせたかのように、我に返ったルイズが此方へ駆け寄ってきた。 「な、何で縛られてるのよ! あんた達!」 「お前等が縛ったんだろうが!」 兎に角、駆け寄ってきたルイズは、僕達の縄に手を掛け、それをほどこうとする。 しかし、男二人を縛り上げている縄だ。そう簡単にはほどけないだろう。 案の定、ルイズはその縄の前に悪戦苦闘している。 そうこうしている合間にも、ゴーレムの影は刻一刻と此方に迫り来る! 僕も急ぎ、槍の穂先を外そうと試みるが、今に限って中々外れない。 クソッ! こんな時に! 「ルイズ! お前だけでも逃げろ!」 「く、このロープ!」 良し、何とか外れた。 が、今から槍の穂先をたぐり寄せても、どうやら間に合いそうにない! そんな僕の頭に、いつぞやと同じような選択肢が浮かぶ。 3択-一つだけ選びなさい ①ハンサムの花京院は突如、起死回生の案が思い浮かぶ。 ②誰かがきて助けてくれる。 ③踏みつぶされてペシャンコ。現実は非情である。 僕の理想は2だが、キュルケは既に逃げ、タバサは既に上空。どうがんばっても間に合いそうにない。 ルイズは僕らと同じ立場だから、アテにはならない。 となると1しかないが、ハイエロファントで引っ張り上げようにも、3人同時は辛いし、何よりとっかかりになる物が無い。 となればッ! 「エメラルドスプラッシュ!」 僕は自分めがけてエメラルドスプラッシュを放つ。 これなら多少怪我は負うが、命は助かるッ! 「え!? ……きゃあ!」 「お、おいちょっと待……うぐあっ!」 「ぐうッ!」 とっさに撃ったエメラルドスプラッシュは加減が効かず、縄を引きちぎって、僕ら三人の身体は大きく宙に舞い上げられた。 思わず食いしばった歯が唇を切ったのか、口内に血の味が広がる。 が、そんな痛みは全身の激痛に比べれば……ッ! 直後、地面に身体が叩きつけられた衝撃に加え、才人、ルイズの身体が、僕の上へとのしかかる。 その衝撃に思わず、意識が飛びそうになった。 が、何とか意識を一枚繋いで、二人の様子を確認する。 才人や、ルイズは落下の衝撃が弱まった御陰で、意識を持っている様だ。すぐには動けないだろうが、逃げることは出来るだろう。 とりあえず、首の皮一枚だが、命は繋がったか。 幸い、ゴーレムの動きがのろく、大雑把なのでもううっかり進路上にでも出てしまわない限り、大丈夫であろう。 が、身体の痛みはどうしようもないな…ッ 何とか、未だに激痛のする身体を持ち上げ、僕はゴーレムの様子を見る。 先程までは影しか見えなかった、そのゴーレムはいやにずんぐりむっくりな体型をしていた。 そしてその肩の所には、黒いローブをまとった人影。おそらくアレが、侵入者。つまりこのゴーレムを操っているメイジだろう。 残念ながら、ローブのフードを深くかぶっている為、顔は解らない。 わざわざ姿をさらしているのは、自信の現れだろうか。 其奴はこっちをちらりと見、どうでも良いかと判断したのか、僕らを無視して本塔の方へと近づいていく。 「痛ぅ… 何なのよ、もう!」 「ぐぅっ…… 花京院! もう少し、やり方があるだろ!」 「助かっただけマシです。贅沢を言わないでください」 「お前なぁ…」 どうやら二人も起きたようだ。 二人は震える体を動かして、互いに肩を貸すような体勢でゴーレムを見上げる。 「しかし、なんなんだよ。あれ」 「わかんないけど、巨大なゴーレムね」 二人が見たままの感想を述べた。 あんなに大きくては、生半可な城壁では意味がないだろう。 「あんなデカイのアリかよ……」 「あのサイズのゴーレムを操れるなんて、トライアングルクラスのメイジに違いないわね」 トライアングル。確か、分け方としてはスクウェアの下のクラスだったか。 「アレでトライアングル…… ということは、スクウェアはもっと大きいゴーレムを操れるんですか?」 「サイズ的にはあのくらいが限度だけど、スクウェアクラスとなると、もっと機敏だったり、全身が鉄で出来てたりするわね」 アレよりも凄いのが居るというのか。 全身土で出来てるとはいえ、重量だけならン百トンぐらいありそうなのだが。 常識が通じない世界だと思ったが、まさかここまでとは。 まさしくファンタジーだな。 しかし、一体何が目的で…… 「どうして、こっちの方に来るのよ!」 キュルケの悲鳴にも似た大声によって、僕の思考は中断される。 見れば、キュルケが丁度ゴーレムの進路上に突っ立っていた。今にも踏まれそうな状況だ。 上空のタバサも気がついたのか、キュルケを助けようと急降下しているが……アレでは間に合いそうにない。 だが、そこは丁度さっきエメラルドスプラッシュを放った場所と、今僕がいる場所の一直線上。 つまり、 「僕がスタンドの力で、簡単に引っ張り上げられる! 『ハイエロファント・グリーン』ッ!」 引っ張られたキュルケの身体は、低空で風を切るようにして、僕達の方へ引き寄せられた。 「大丈夫ですか?」 「え、ええ。助かったわ……」 キュルケは少し呆然とした感じの表情で、僕の顔を見ている。 しかし、とっさのことだったので、引っ張る時にスタンド越しではあるが、思いっきりキュルケのムネを触ってしまった。 その、何というか、大きいことは良いことだと思います。 柔らかくて、張りがあって…… って、何を考えている、僕はッ! そうやって、僕の思考があちら側に行っている間に、巨大なゴーレムは本塔の辺りに付き、その大きな上体を反らして、拳を思いっきり本塔の壁に叩きつけた。 ッ!? 本来、見えないはずの衝撃が、見えたような錯覚を覚える程の強さを伴い、空気を伝わって広場全体に広がる。 まるで耳栓をしている人間の横で、銅鑼を叩いたような感じである。 その衝撃が広場に伝わりきったのを確認して、黒ローブの人物は腕を下げる。。 すると、召使いが王の命令を聞くようにゴーレムはゆっくりと本塔から腕をどけた。 「なッ!」 そこで僕の目に入ったのは、傷一つついていない壁。 あの衝撃を耐えられる耐久度。一体、何で出来て居るんだ? 驚かずには居られない! それは黒ローブの人物にとっても意外なことだったらしく、しばし、その動きを停止させていた。 そしてしばし間をおいて、ゴーレムはもう一度上体を捻って、パンチの体勢を造った。 今度は先程と違い、振り上げられたその腕が、鈍い光を放っている。 明らかに土じゃあない。 あの光沢は、金属の物だ。 「……宝物庫!」 突然、ルイズが声を上げた。 宝物庫。いったい何のことだ? 「思い出したわ。ここは丁度、宝物庫の裏手になるのよ」 「ってことは、つまり泥棒か」 「凄く大胆な泥棒ね」 「盗賊といった方が正しい気がします」 成る程、あくまで盗むのが目的だったから、僕達を無視して本塔に近づいた訳か。 音がしなかったのは、この大胆な盗難行為を隠蔽するためか、兎に角、人を寄せない為なのは間違いない。 だとすれば、ここに僕らが来たのは相手にとっては大誤算ということなのか。 と、すると、次はどんな行動を取ってくる? そう思っている内に、二回目の衝撃が辺りに走る。 今度は先程より強烈だ。 しかし相変わらず、壁には傷一つついていない。 それを見、黒ローブの人物は突然、此方に向きを変えた。 今度は此方を確認する。という感じではなく、明らかに此方に狙いを変えたといった風である。 どうやら、強行逃走に目的を変えたようだ。 「あんた達も運が無かったねぇ!」 黒ローブの人物が声を上げ、右手を振り上げた。その手には、教鞭程度のサイズの杖が握られている。 それに合わせ、ゴーレムも同じように右腕を振り上げる。 「恨むのなら、こんな所にきちまった、自分の不運を恨みな!」 その言葉と共に、ゴーレムはその振り上げた右腕を振り下ろしてきたのだった。 To be contenued……
https://w.atwiki.jp/subcul40/pages/59.html
ゼロのしま なんぶ グミ 依頼主 目的 場所 難しさ お礼 パス 備考 アイテム 依頼主 目的 場所 難しさ お礼 パス 備考 ジバコイル パラスを たいほする ゼロのしま なんぶ B61F ☆8(1300) ◎ひかりのかべ 3N+W &KHR 22CJN8TN 3MWH &YM@ クヌギダマ クヌギダマと たんけん ゼロのしま なんぶ B66F ☆8(1300) リゾチウム QMKN 8HPF %-T==#9Q -X#+ C#0M ジバコイル コラッタを たいほする ゼロのしま なんぶ B77F ☆8(1300) ブロムヘキシン そのた 3S7J YFN5 0#5@JCNP 1=38 %Q0Y ハネッコ アゲハントを たすける ゼロのしま なんぶ B84F ☆7(1000) キトサン そのた -7X4 3@2J 13HNーX=3 2HJ8 -N+H ジバコイル イシツブテを たいほする ゼロのしま なんぶ B94F ☆9(1500) リゾチウム そのた 64Y& @HCR 64X77X#Q NN5S &Q07 ズガイドス ゴンベを さがす ゼロのしま なんぶ ☆7(1000) しあわせのタネ 0476 2P6H 2PWTCX5W @45# W1Y9 ムックル カバルドンを さがす ゼロのしま なんぶ ☆7(1000) しあわせのタネ そのた H917 C=@S 8SY7=W=H -X1T K-5X ☆アイテム 依頼主 目的 場所 難しさ お礼 パス 備考 タマゴ(♂) 依頼主 目的 場所 難しさ パス 備考 タマゴ(♀) 依頼主 目的 場所 難しさ パス 備考 依頼主が仲間になる依頼 依頼主 目的 場所 難しさ 種族・性別 パス 備考 おうごんのま依頼 依頼主 場所 難しさ お礼/種族・性別 パス 備考 たからさがし依頼 依頼主 探すアイテム 場所 難しさ お礼/種族・性別 パス 備考
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7009.html
「戦闘妖精雪風」よりメイヴ雪風を召喚 ゼロの戦闘妖精-01 ゼロの戦闘妖精-02 ゼロの戦闘妖精-03 ゼロの戦闘妖精-04 ゼロの戦闘妖精-05 ゼロの戦闘妖精-06 ゼロの戦闘妖精-07 Intermission 01 Intermission 02 ゼロの戦闘妖精-08 ゼロの戦闘妖精-09 ゼロの戦闘妖精-10 ゼロの戦闘妖精-11 ゼロの戦闘妖精-12 ゼロの戦闘妖精-13 Intermission 03 ゼロの戦闘妖精-14 ゼロの戦闘妖精-15 ゼロの戦闘妖精-16 ゼロの戦闘妖精-17 ゼロの戦闘妖精-18 その1
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/252.html
「ヴィオラートのアトリエ~グラムナートの錬金術士2~」のヴィオラート・プラターネが召喚される話 ゼロのアトリエ-01 ゼロのアトリエ-02 ゼロのアトリエ-03 ゼロのアトリエ-04 ゼロのアトリエ-05 ゼロのアトリエ-06 ゼロのアトリエ-07 ゼロのアトリエ-08 ゼロのアトリエ-09 ゼロのアトリエ-10 ゼロのアトリエ-11 ゼロのアトリエ-12 ゼロのアトリエ-13 ゼロのアトリエ-14 ゼロのアトリエ-15 ゼロのアトリエ-16 ゼロのアトリエ-17 ゼロのアトリエ-18 ゼロのアトリエ-19 ゼロのアトリエ-20 ゼロのアトリエ-21 ゼロのアトリエ-22 ゼロのアトリエ-23 ゼロのアトリエ-24 ゼロのアトリエ-25 ゼロのアトリエ-26 ゼロのアトリエ-27 ゼロのアトリエ-28 ゼロのアトリエ-29 ゼロのアトリエ-30 ゼロのアトリエ-31 ゼロのアトリエ-32 ゼロのアトリエ-33 ゼロのアトリエ-34 ゼロのアトリエ-35
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2389.html
15話 燃えさかる炎の壁の前で、ルイズは杖を構える。 この壁はただアイツの弾丸を防ぐだけではない。 炎が作る強烈な光は、私の姿さえも隠してくれる。 だからアイツにはわたしの姿は見えない。 わたしの爆発が一体どういう仕組みで起きるのかは、アイツには分からない。 ここから頼りになるのは自分の記憶力と集中力だ。 壁が焼け落ちて穴があいて、それをキュルケが炎の壁で覆うまでのわずか数秒に、 キュルケの手鏡で確かめた、床中に広がるガレキや燃えカス、消し炭の位置。 大きさとか材質は何でもいい。 問題はそれがどこにあるかだ。 それが生命線になる。 まず狙うのは、炎の壁から一番近くて、狙いやすい場所。 そこに転がっているガレキだ。 炎の壁はアイツの視界を遮るが、同時に自分の視界も遮っている。 記憶を頼りにあたりを付けて、おぼろげに見えるものをそれと決めつけてやるしかない。 大丈夫、杖の先に自分がそれと思うものさえあれば、理論上は魔法はかけられるはず。 「錬金」 蚊の鳴くようなか細い声で、しかし確かにルイズは呪文を唱えた。 込めた魔力はほんのちょっぴり。 成功すれば、小さな爆発が起きるハズ。 いけるか―― ボン! やった! 成功したんだ。 失敗魔法だけれど、それでも確かに爆発してくれた。 今のルイズにとっては、それで充分だった。 そう喜ぶのもつかの間、ルイズは次に錬金をかける対象を探す。 狙いは今錬金をかけて爆発させたガレキの、さらに向こうに転がる燃えカスだ。 炎の壁のせいで、視界はすごく悪い。 本当におぼろげで、かすかにしか見えない。 記憶にある、手鏡が写した位置を頼るしかないくらいだ。 どうか、成功して。 そう祈って、ルイズは再び杖を構えた。 ほんの一分前まで、ラングラーはただ一つのことしか考えていなかった。 すなわち、「どうやってホワイトスネイクを殺すか」である。 火のメイジの女のことはあまり大きくは考えていなかった。 真空でガードしながら接近し、一発くれてやればそれでケリのつく相手だと見ていた。 だが、今は違う。 何故か壁を焼いて開けられた穴。 何故か穴を覆う炎の壁。 そして、何故か起きた爆発。 いずれも、戦局にどう関わってくるのかが全く読めない。 穴に関しては、開いて得するのは主にこっちだ。 穴さえあればそこからいくらでも跳弾を送り込んでやれるのだから。 炎の壁はそれを防ぐためのものなんだろうが、ハッキリ言って無駄だ。 確かに炎の壁はこちらの攻撃を阻止するが、火力が強すぎて穴の向こう側からの攻撃も通さないだろう。 つまりただ開けた穴を塞いだのと同じなのだ。 なので、この二つは全く無視してしまっても問題なかった。 だが、爆発は無視できない。 何故、一体どういう仕組みで爆発が起きたのかがそもそも分からない。 先ほどのドアを吹き飛ばした爆発と同様に、 メカニズムの全く分からない現象は多くの危険が付きまとう。 できればあの爆発には近づきたくないものだ、と思っていたその時、 ボォン! 再び爆発が起きた。 爆発したのは、炎の壁から約一メイルの床。 さっきより、ラングラーに近い場所だ。 しかも今の爆発は、さっきのそれより大きい。 「こっちに……近寄ってきたのか……?」 じり、とラングラーが下がる。 この正体不明の爆発に対して、ラングラーは明確に恐怖を感じていた。 「うまく、いった……」 自分を励ますようにぽつりと呟いて、また杖を構え直す。 次から次へと、より遠くにあるガレキや燃えカスに錬金をかけなければならない。 そうでなければ、アイツに対するプレッシャーにならないから。 ルイズが考えた策。 それは、自分の爆発を利用してラングラーに過度のプレッシャーを与えること。 先ほどキュルケの部屋のドアを吹き飛ばすのに成功したように、 ラングラーは自分の爆発のメカニズムを知らない。 当然だ。 どんな魔法を使っても失敗して、それが爆発になるようなヤツなんて、自分以外にいるハズがない。 だからこそプレッシャーをかけられる。 そうルイズは考えた。 もちろん、ただ爆発を起こすだけではアイツもちょっと警戒するだけで終わってしまう。 プレッシャーをかけるには、それがラングラーに対して確実に危険なものだと思わせなければならない。 そのための、だんだん近づいていく爆発地点と、どんどん大きくなる爆発の規模だ。 付け焼刃の策だなんて事は自分が一番よく理解してる。 それでもやるしかない。 そう言い聞かせて、記憶にあるガレキの位置とおぼろげに見える影とを符合させ、呪文を唱える。 「錬金」 だが―― 「ば……爆発、しない?」 失敗したのだ。 記憶が間違っていたのか、それとも見えている影が違ったのか。 いずれにしても、錬金はかからなかった。 (ど、どうしよう、どうしよう! 失敗なんてそんな、ウソでしょ? せっかく覚えたのに、どこが間違ってたの? それとも見えた影が違ってたの?) 思わずパニックになるルイズ。 それほどまでに彼女は失敗を恐れていたのだ。 失敗によって生まれる間は、キュルケへの大きな負担となる。 炎の壁を維持し続けるのはキュルケの役目だし、 おまけにキュルケはラングラーの弾丸の「呪い」のために、あと1分と少しで死んでしまう。 ラングラーに対するプレッシャーまでもが弱まってしまうかもしれないのだ。 この作戦はラングラーがどれだけ爆発に対して恐怖を感じるかに全てがかかっている。 ラングラーが爆発を「自分にとって危険ではない」と思うのならば、 さらに言えば、「爆発は多少無視してしまっても構わないものだ」とでも思ったのなら、 その時点で作戦は破綻する。 そうなったなら、それで終わりだ。 キュルケは死に、ホワイトスネイクは敗れ、そして自分も……。 (お、落ち着くのよ……落ち着かなきゃ。 もう失敗はできないんだから、次こそは、次こそは絶対に成功させないと!) ルイズは震える手で杖を構える。 もう失敗できない。 絶対成功させないといけない。 絶対に、絶対に、絶対に、絶対に……。 僅かなタイムロスさえも危険を生むこの状況である。 ルイズが自分を責めるのは仕方ないこと。 そして彼女が自分自身を追い詰めることも、また仕方のないことだ。 だが、これでは。 そのときだった。 ホワイトスネイクが、すっと足を半歩だけ前に出した。 あまりに露骨で、目立つ一歩だった。 そして、まるでルイズの心中を察したかのようなタイミングでの一歩だった。 目ざといラングラーはそれを見逃さず、 ドンドンドンッ! 鉄クズをホワイトスネイクに撃ち込んだ。 放たれた鉄クズは一直線にホワイトスネイクへと向かい、そして叩き落とされる。 単純に真正面から飛んでくるだけなら、ホワイトスネイクであればどうにでもできるのだ。 「……ドウシタ、ラングラー? 跳弾ガ飛ンデ来ナイヨーダガ……撃チ忘レカ?」 「とぼけたツラして抜かすな……この爆発……お前が仕組んだのか?」 背中がじわりと湿るのを感じながら、ラングラーは問う。 「……クククク……サテ、ドーダカ……」 「ホワイトスネイク、テメー……」 ラングラーが焦りに顔をゆがめる。 爆発が襲って来ない分で失われるはずだったプレッシャーは、ホワイトスネイクが着実に取り戻した。 そして、ちらとホワイトスネイクの目がルイズに向けられる。 一週間前に自分を見た、失望の目ではない。 覚悟に満ちた、座った目だ。 それでいて、どこか温かい目だ。 その目を見て、ルイズはホワイトスネイクの言いたいことを理解した。 「オ前ニ、任セル」 少しだけ安心した気がした。 ルイズは、杖を構える。 炎の壁の向こうの影。 記憶に刻んだ、ガレキの場所。 その二つをもう一度符合させる。 どれがより完全に一致するか、どれが本物のガレキか? そして見極め、呪文を唱える。 「錬金」 (どうした……? 爆発が、止んだぞ。 ただのハッタリだったってのか? それとも……一体何だ?) ラングラーが、爆発に対して疑いを持ち始める。 あれは自分にとって大したものではないのではないか。 恐怖し、危険視する必要なのないのではないか、と。 そのラングラーに、ホワイトスネイクの声がかかる。 「オット、私バカリ見テテイイノカ? ラングラー」 ドォン! 「爆発が、近ヅイテクルゾ」 さらに爆発。 絶妙なタイミングだった。 距離は炎の壁から――いや、ラングラーから6メイル。 基準をラングラーに変えたのは、炎の壁よりもラングラー側に爆発の位置がズレできたからだ。 爆発の規模は先ほどのそれよりさらに大きくなった。 (う、ウソだろう……爆発が、また始まりやがった! しかも、さっきより近い! さっきより大きい爆発だ! 一体どんなルールでこいつは起こっている? 一体どんなメカニズムだ? 考えろ、考えろ! 爆発するたびに距離が近くなって、爆発の規模まで大きくなっていやがる! このまま俺のとこに来たら、一体どれだけの爆発になるんだ? 俺はそれを避けられるのか? 防げるのか? 逃げられるのか?) 「規模モサッキヨリ大キイナ……オ前ノ所ニ辿リ着ク頃ニハ、ドレダケノサイズニナッテイルノカナ……。 クククク……スゴク……楽シミダトハ思ワナイカ?」 ドォオン! 「ナア、ラング・ラングラー」 さらに、爆発。 ラングラーからの距離5メイル。 さきほどの爆発から10秒と経っていない。 かなり近い感覚での爆発だ。 (決着ヲツケルツモリダナ、ルイズ……急ゲヨ、時間ハ残リ30秒ヲ切ッタ) 「ハァー、ハァー、ハァー……そ、そんな……バカな……そんなバカな!」 ドゴン! また爆発。 ラングラーからの距離4メイル。 さっきの爆発から、僅か5秒の間隔。 「う、ウソだ……こんなものが、こんなワケの分からんものがあるわけが……」 ドッゴォン! さらにまた爆発。 ラングラーからの距離3メイル。 さっきの爆発からの感覚は、また5秒。 見えない蛇(スネイク)が這いずりながら近づくように、爆発地点はラングラーへと着実に近づいていた。 「ほ、ホワイトスネイクッ! お前が仕組んでるんだろう! 俺には分かってるんだ! こ、こんなもので、このオレを攻撃しようとするなど、弱っちいテメーにお似合いだぜッ! く、クソッ、来るなッ! オレに近寄ってくるんじゃあねえッ!!」 ドンドンドンドンドンッ! 後ずさりしながら、ラングラーが爆発の起きた地点に弾丸を撃ち込みまくる。 しかし、 ドッゴォオンッ! さらにまた爆発。 ラングラーからの距離2メイル。 間隔はまた5秒。 見えない蛇ではない。 見えない、そして「無敵の」蛇が、舌なめずりしながらラングラーに迫る。 「クソがァーーーーーーーーーッ!!」 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!! ヤケクソになって弾丸を撃ちまくるラングラー。 しかし、 ドッグォンッ!! 爆発。 ラングラーからの距離、1メイル。 ついに、1メイルまで来ていた。 蛇は鎌首をもたげてラングラーを睥睨し、今まさに飛びかからんとしている。 ラングラーはさらに後ろに下がり、とうとう壁に背がついた。 もう逃げられない。 こいつは追ってくる。 俺を吹き飛ばしに、追ってくる。 もう、ホワイトスネイクどころじゃあない。 「ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、な、何が……一体、何が、オレに近づいて……」 その瞬間、 「『一手』遅レタナ、ラングラー」 突然頭上からかかる声。 はっとして見上げた瞬間、 ズギュン! ホワイトスネイクの指が、ラングラーの額にめり込んだ。 模様の浮かんだ白い魔指は、ズブズブとおぞましくラングラーの脳を弄り、 魔指の主たるホワイトスネイクの下半身はドロドロになって壁に溶け込んでいた。 まるでナメクジのような、ヒルのようにな、溶かしたその身でガレキの陰や壁を這いずって、 いつの間にかラングラーの頭上まで来ていたのだ。 これがホワイトスネイクの液化能力。 その身をドロドロに溶かし。自由自在に壁を移動することを可能とする。 また溶かす対象はホワイトスネイクだけに留まらず、それゆえにこの能力はさらなる応用を持つのだ。 脳髄に氷を流しこまれたかのように、ラングラーの全身に鳥肌が立つ。 身体はぴくりとも動かない。 声も上手く出せない。 だが耳は聞けた。 目も動いた。 その眼を必死に動かして、驚愕した。 (バカな……そんな、まさか……) あり得ないことが起きていた。 信じられないことが起きていた。 (ヤツは……ここで、オレを攻撃しているのに……何故……) (何故ヤツが入口のところにいるんだ!?) ラングラーの眼は、薄笑いを浮かべて入口に立つホワイトスネイクの姿を、確実に捕えていた。 ホワイトスネイクは、確実にラングラーに攻撃しているというのに……。 「て、てて、て、めえ……おれ、に、な、にを……」 「ナアニ、大シタコトジャナイサ」 そう言ってホワイトスネイクはゾッとするような笑みを浮かべ、 「全部貰ッテイクダケダ」 ラングラーの脳から、2枚のDISCとともに指を引き抜いた。 奪い取ったのは「記憶」と「スタンド」のDISC。 ラングラーにとっての全てはラングラーの手を離れ、ホワイトスネイクの手に収まった。 ラングラーの首ががくんと折れて、棒きれのように倒れていく。 ホワイトスネイクはその首根っこを引っ掴んで捕まえると、 窓から出て行って、 「久シ振リダガ、上手クイクカナ?」 楽しそうにそう言うと、ラングラーの体を思いっきり投げ飛ばした。 空中に投げ出されたラングラーの体はしばらく女子寮の壁と平行に飛んで、 ぐしゃっと鈍い音を立てて壁に接触した。 ラングラーの体はそのまま落下するかにみえたが、 ズボンの裾が壁の装飾に引っ掛かって逆さづりにぶら下がった。 吊られた男(ハングドマン)の一丁上がりだ。 これは10年ほど前に、記憶とスタンドを奪ってやった後に出来上がる廃人をどう処理するか、 プッチと話し合ったときに思いついた方法だ。 ホワイトスネイクは適当なところにぶら下げてイカれた文句の二つ三つでも加えてやれば、 気違いの猟奇犯の仕業にでも見えるんじゃないかと適当に言ってやった。 そうしたら意外にもプッチが同意したのでやってみたところ、これが中々上手くいったのだ。 しかし、自分たちが疑われずに済んだだけで世間の方はバカみたいに騒いでまわったため、 同じことを2回、3回とやったらそこらじゅうで防犯意識が高くなり、かえってやりづらくなってしまった。 吊られた男作戦はそれっきりだったので、これが実に10年ぶりの復帰となるわけだが、 思いの外上手くいった。 やはり自分自身の「記憶」に刻まれている方法ならば、 そしてスタンドとしての精密動作性をもってすれば、何年経ってからやってもうまくできるものだ、 とホワイトスネイクは感慨深く思った。 後始末も終わったところで、ホワイトスネイクは室内に戻る。 「モウイイゾ」 ホワイトスネイクの声とともに、炎の壁は溶けるようにして消えうせた。 そして、最初に開けた壁の穴からもぞもぞと二人が這い出てくる。 「お……終わった、のね……」 そう真っ蒼な顔で言うのはキュルケだ。 「か……勝ったの? わ、わたしたち、本当に?」 そしてルイズが心配そうに言う。 「アア、終ワッタシ、勝ッタ。戦イハコレデ終ワリダ」 ホワイトスネイクはボロボロの体でそう言いながら、別のことを考えていた。 (オカゲデ私ノ策ヲ使ウ必要ハナクナッタ) そう、ホワイトスネイクは元々ラングラーに勝つための策を用意していた。 にも関わらずそれをやらなかったのは理由がある。 (一ツハ、ハッタリデ相手ノ注意ヲ逸ラス、トイウノガホンノチョッピリ盲点ダッタッテコトダ。 ヨクヨク考エレバコノ世界デ魔法ヲ使ッテ爆発起コスヤツナンテルイズシカイナイノダカラ、 『ルイズの魔法が爆発を起こす』ッテコトサエバレナケレバ最高ノハッタリニナルノニナ。 マタ音デ他ノ生徒ガ起キル、トイウリスクハ『爆発の音を小さくする』コトデ解消デキタ。 ソシテコレハラングラーニプレッシャーヲカケル一手段サエナッテイルノダカラ……マッタク、ヨク考エタモノダ) ルイズが考えた策は、ホワイトスネイクから見てもできすぎたくらいに上出来だった。 だから、それを理解した瞬間に彼が最初に用意した策はどこかに消えてしまっていたのだ。 (ソレニ、私ノ策ヲヤルニハキュルケガ『時間切れ』ニナル必要ガアッタカラナ……。 確実ダッタコトニハ変ワリナイガ、リスキーデアッタコトモマタ確カダ。 ヤラズニ済ンダノハヨカッタ事ト考エルベキカナ) ホワイトスネイクの考える策は、 「キュルケが無重力化して、その影響が出る領域に自分とラングラーが入ること」が前提条件だった。 つまり…… (私ハ『キュルケが死なず、しかし確実にダメージを受けて無重力化する』ヨーニ仕組ンデイタワケダ) ホワイトスネイクはそうなるようにキュルケを射線から逃がしていたのだ。 何故とか、どうしてとかいう言葉はここでは意味をなさない。 「勝つために必要だったからやる」のがホワイトスネイクなのだ。 (シカシ、詰メヲ私ニ頼ッテイルノデハマダ甘イ。 オマケニソノ頼リ方モ乱暴ダ。 『多分気付カナイカラ、ソノウチニ襲ッテクレ』トイウノデハ、希望的観測ニスギル。 オカゲデ私ハ液化能力ドコロカ『残像』マデ使ウハメニナッタンダカラナ……) とはいえ、 (私ノ策ハ事態ガ良イ方向ニ転ガルキッカケニナッタシ、全クノ無駄デハナカッタ。 ソシテ戦イニハ勝利シタ。ヒトマズハコレデ良シトスルベキカ) そうホワイトスネイクは、心の中で締めくくった。 一方、 「あー、そう……とりあえず、医務室に行きたいわね。 それで、ぐっすり眠りたいわ……。 あんなに魔法つかったの久々だし……」 そう言ってふらふらと歩くキュルケの後に、のそのそとフレイムが続く。 フレイムも、この策に一役買っていた。 キュルケが担当した炎の壁。 キュルケはそのために、ギリギリまで精神力を切り詰めなければならなかった。 無論、壁を焼いて穴を開けるための魔力さえも。 そのために、フレイムにその部分を担当させたのだ。 もちろん、フレイムにはキュルケの部屋の壁を焼き落として穴をあけて出てきてもらっていた。 入口から堂々と出たらラングラーの目に留まるので、それは避けなければならなかったからだ。 「……ルイズ」 唐突にキュルケがルイズの名を呼んだ。 ルイズに背を向けたまま名を呼ぶ態度に、眉をひそめてルイズは答える。 ホワイトスネイクもそちらを見た。 「……何?」 「『ゼロ』にしてはなかなかやるじゃない。 ちょっと、見なおしたわ」 一瞬間があって、それからルイズは誇らしげに笑みを浮かべ、 「当然よ! わたしを誰だと思ってるの? わたしはルイズ・ド・ラ・ヴァリエールなんだから!」 そう言って、ふふんと薄い胸を張る。 キュルケはそれに振り向かずに、 「……ふふ、それ自慢になってないんじゃない?」 「な、なんですってえ!?」 「はいはい、分かったわよ。 今日は疲れてるから、また明日にしてくれる?」 そう言ってルイズをいなして、キュルケはまたふらふらと歩いて行った。 その後ろ姿を見て、 (人間トハ、相モ変ワラズ回リクドイモノダ) ホワイトスネイクは前の世界と変わらない人間の在り方にため息をつき、 「何よキュルケったら。せっかく勝ったのに『認めてあげるわ』ですって? ふんだ、もう大変なことになっても助けてあげないんだから……」 ルイズはキュルケの態度に若干の憤りを示し、それと同時にみるみるうちにその感情をしぼませた。 「ルイズ、ドウシタ?」 「……これ」 「コレ?」 「お父様に買ってもらったベッドも、お母さまに買ってもらった箪笥も、お姉さまに貰った化粧台も……」 「アア、全部消シ炭ニナッタナ」 「ああ、じゃないでしょうがああああああああッ!! どうするのよこれ! 全部で一体いくらすると思ってるの!? 「知ラン」 「知らん、じゃないわよ! もとはと言えばあんたが指示したことじゃないの! ああどうしよう、このことが知られたらどれだけお父様やお母さまに、いや、お姉さまもすごく怒るわ! ああどうしよう、どうしよう、どうしよう……」 「命ハプライスレスダ」 「何上手いこと言った気になってるのよ!!」 「気ニスルナ。ジョークダ」 「笑えないわよ!」 「慰メニナラナカッタカ?」 身体はボロボロのくせに、もういつもの調子でホワイトスネイクはルイズをからかい始めていた。 ルイズも本当なら傷だらけのホワイトスネイクを気遣ってあげるつもりだったが、 色も未来もお先真っ暗な室内とホワイトスネイクの態度で堪忍袋の緒が切れた。 「……ちょっとあんた、そこに直りなさい。修正してやるから」 「オ断リダ。私ハ少シ休ム」 「ダメ。あんたには誰がご主人様で、誰が使い魔なのかを教育してやる必要があるもの。 そこに直りなさい。……そうだ、いいものがあるわ」 妙に座った声でルイズはそう言うと、炭化した抽斗から何かを取り出した。 ルイズはそれを手に取り、軽く空中で振るう。 ピシャッ、と心地よい音がした。 鞭である。 しかも乗馬用の鞭だ。 その品質と耐久性は推して知るべきものがある。 「……何スル気ダ」 ため息混じりに尋ねるホワイトスネイク。 「何って、決まってるでしょ?」 ピシャッ、ピシャッと鞭を鳴らしながら一歩ずつルイズは近づき、 「しつけの悪いバカ蛇を、たぁ~~~っぷりと教育してやるのよ!!」 突然鬼のような形相に変わって、鞭を振り上げるッ! だが―― 「付キ合ッテラレルカ」 鞭が当たる直前にホワイトスネイクはフッと消えた。 自分で自分を解除して、逃げたのだ。 うまくやるものである。 人間ではこうはいかない。 「こらっ! バカ蛇! 逃げるな! 出て来なさーーーいッ!!」 ルイズはやみくもに鞭を振るうが、ホワイトスネイクが出てきそうな気配は全くない。 結局ルイズは、日が昇るまで鞭を片手にあちこちを歩き回るハメになるのであった。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/416.html
「このギアッチョによォォ~ 容赦しねェだと?ええ?おい やってみろクソガキがッ!!」 とは言え、男―ギアッチョには最初からフルパワーで行く気はなかった。よってたかってピンク頭に野次を投げかけていたガキ共は、ギアッチョの凍てつかんばかりの殺気に恐れをなして蜘蛛の子を散らすように我先に逃げ出していたし、年齢から考えて教師であると思われるハゲ野郎は仲間を呼びに行ったのかもうこの場にいない。ちなみに当のピンク頭は彼の下で腰を抜かしている。 ―そのオレに恐れることなく立ち向かってくるガキ・・・どうやらこいつが筆頭格の強さを持っていると理解していいようだ―ギアッチョはそう考えた。こいつをブッ倒し、奴らの戦意を喪失させてからここを出る。なかなかいい作戦じゃあねえかおい。 「今ここでオレのジェントリー・ウィープスを全開にすればこの中庭を丸ごと凍らせるのはたやすい・・・しかし逃げ出したガキ共にそいつを見られると面倒なことになりそうだからなァァ~~」 「何をぶつぶつ言ってるのよ!くらいなさいッ!」 キュルケが言い放ちざま大型の火弾を打ち出すが、ギアッチョはそれを意にも解さずキュルケに向かって歩き出す―氷でシールドを作ることもせずに。その余裕ぶりにキュルケはカチンときたが、「いいわ、ナメているのならそのまま燃え尽きればいい」と思いなおした。2・・・1・・・着弾ッ!! バシュウゥウゥウッ!! 「なッ・・・!!」 しかし火弾はギアッチョに当たる寸前、大量の水をブッかけられたかのような音を立てて「消え去った」!! 「そんな 嘘でしょ・・・!?」 眼前の出来事を信じられないキュルケは2発、3発と火弾を放つ。しかしまぐれであれという彼女の 願いも虚しく、彼に撃ち出された火弾はその全てが直撃寸前に消滅するッ! ギアッチョは歩き続ける。氷のように冷たい眼でキュルケを見据えて。 「炎ってよォォ~~・・・」 ザッ・・・ザッ・・・ 「一般的には火が激しくなったものを言うんだが・・・」 ザッ・・・ザッ・・・ 「実際に火が激しいはずの単語には炎じゃなくて火が使われることが多い」 ザッ・・・ザッ・・・ 「噴火だとか火柱だとかよォー・・・ 」 ザッ・・・ザッ・・・ 「なんで噴炎って言わねぇーんだよォォオオォオーーーッ それって納得いくかァ~~おい?」 ザッ・・・!ザッ・・・! 「オレはぜーんぜん納得いかねえ・・・」 ザッ・・・!! 「な・・・何なの・・・こいつ・・・」 キュルケはもはや完全に敵に呑まれていた。ギアッチョがついに目の前までやってきたというのに―構えることすら出来なかった。そして。 バキャァアアッ!! 「なめてんのかァーーーーッこのオレをッ!!炎を使え炎を!チクショオーーームカつくんだよ! コケにしやがって!ボケがッ!!」 キュルケは宙を舞った。 「うぐっ・・・い・・・痛ッ・・・ フフ・・・だけどおかげで眼が覚めたわ 今よフレイムッ!!」 「ムッ!?」 どこからか現れた化け物が―実際にはギアッチョの眼に入っていなかっただけだが―彼に向かって火炎を吐き出す!しかしそれも彼に当たる直前にことごとく消え去ってゆく。「・・・まだ理解しねーのか?え?おい 隙を突こうが無駄なんだよッ・・・・・・」 そこまで言ったところでギアッチョは気付いた。今火を噴いた化け物の存在に。 「・・・なんだァ~?こいつがてめーのスタンドってわけか・・・?」 とは言ってみたが・・・どう見てもこれは「ビジョン」ではない。実体である。 ―いや・・・そういうスタンドがあってもおかしかねー・・・世の中にゃ無生物に命を与える スタンドもいるくれーだからな・・・―ギアッチョはそう思いなおすとキュルケに眼を戻し、 「こいつでブチ割れなッ!!」 直触りを発動しようとしたその時。 ドゴォッ!! 「うぐぉおぉッ!?」 上空からギアッチョに空気の塊のようなものが撃ちつけられた! 「タバサ!」 キュルケが日の落ちかけた空に向かって叫んでいる。 「ナメやがって・・・上かァーーッ!?」 ギアッチョが見上げた空には。 バサッ これまたどう見ても実体の― 「ドラゴン・・・?」 ―それに乗ってこっちを見下ろしている少女。そして何より彼女の後ろに二つの月が 「・・・なんだ・・・ありゃ・・・」 二つの、月が。 ―ここはトリステイン王国の― 「マジで・・・別世界だってェのか?」 流石のギアッチョも呆然とせざるを得なかった。 ルイズはじりじりとギアッチョに近づいていた。正直自分が何かの役に立つとは思えなかったが、因縁の相手のはずの自分を体を張って助けてくれたキュルケを見殺しになど出来なかったのだ。キュルケは「とっとと逃げなさいよゼロ!」と必死に眼で語っているが、そこは妙な意地を張らせたらトリステイン一のルイズである。聞き入れるわけがなかった。 一方ギアッチョは―静かに沸騰していた。 ここが花京院もビックリのファンタジー世界だとほとんど確定してしまった以上、とりあえずは武器を収めて情報の収集にかかるのが最善手だろう。しかしギアッチョに売られた喧嘩を見過ごす選択などあるはずがない。 「後のことは・・・てめーらをブッ倒してから考えるッ!!そっちが空中にいるってんならよォォ~~ ちょっとだけ本気をださせてもらうぜェェェー!!」 ギアッチョの足元が凄まじい速度で凍っていく。それはギアッチョの靴を覆い足首を覆い・・・ルイズは眼を疑ったが、どうやら氷のスーツを形成しようとしているらしい。 ―マズいッ!! 少女は遅まきながら確信した。何だかよく分からないがこいつの魔法はヤバい!この氷の発生速度、スーツを形成する精密さ、何よりそれが無詠唱で行われているということ!更にこの殺人をも厭わない覚悟!どこまで暴れるつもりか知らないが・・・死人は出る!絶対にッ!そしてそれを阻止するチャンスは今ッ、このスーツが完全に形成されるまでの間しかないことを! ルイズは反射的に動いていた。反射的に―だが決死の覚悟で、ギアッチョに飛び掛ったッ!完全にタバサに気を取られていたギアッチョは一瞬反応が遅れ、そして―ルイズの殆ど頭突きのようなキスをまともに「食らい」、頭からブッ倒れた! 「ガフッ!!てめー何をしやがったァァ~~!?毒か!?スタンド・・・いや魔法かッ!?」 ギアッチョとは逆方向にブッ倒れたルイズは、よろよろと立ち上がりながら告げた。 「・・・契約よ・・・!」 「・・・ああ?どういう事だッ!ナメやがって クソッ!・・・・・・ぐッ!!?」 ギアッチョの左手が光り始め、 「っづぁああぁああぁあああああッ!!!」 その甲にルーンが浮かび上がったッ! こいつを説得するなら今しかない!ルイズはギアッチョの前に仁王立ちになる。 「聞きなさい!あなたがどれだけ強いか知らないけどここには300のドラゴンを一人で倒した 偉大な学院長や太陽拳を使える先生がいるのよ!これ以上騒ぎを起こせば先生方は 黙ってないわ!万一囲いを破って逃げ出せたとしてもあなたみたいな危険人物は四六時中追っ手に追われ続けるわよ!悪魔の軍団を一人で倒せるような追っ手達にね!」 半分以上は今適当にでっちあげた話だったが、 「・・・」 ギアッチョには思いのほか効果があったようだった。ルイズは疑われる前に話を進める ことにする。 「ま、貴族を3人も殺そうとしたんだから今のままでもまず終身刑は免れないわね ちなみにあなたが入るのは水族館と呼ばれる脱獄不能の監獄よ!」 これもデタラメである。 「・・・で、てめーはオレにそれを聞かせてどうしようってんだ?え?おい」 食いついたっ!ルイズは心中でガッツポーズをした。 「話は最後まで聞きなさいよ あなたが罪を問われない方法が一つだけあるわ・・・ 私の使い魔になることよ!」 「・・・・・・一応聞いとくが・・・そのツカイマってのは何なんだ」 「主の剣となり盾となるものよ」 「・・・・・・」 一瞬の逡巡の後、ギアッチョは舌打ちをしながらもルイズに答えた。 「まぁいいだろう・・・この世界のことがわかるまではここにいるのも悪い選択じゃあねぇ」 実際は一度使い魔になってしまえば死ぬまで契約は執行されるのだが―今それを 言うとこいつはまたブチ切れるだろうと思ったのでルイズはとりあえず黙っておくことにした。 ←To Be Continued・・・ 前へ 戻る 次へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5096.html
「NARUTO」のうちはイタチが召喚される話。 ゼロの写輪眼-1 ゼロの写輪眼-2