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むかしむかしのお話です。 日本には「だいだらぼっち」という大きな大きな男が住んでいました。 甲州の土を集めて山を作ったのが富士山で、そのため甲州は盆地になったとか、 ある時びっくりして涙を流したら浜名湖になったとか、 羽黒山に腰掛けて、鬼怒川で足を洗ったなど、とにかく大きな巨人であったようなのです。 その上巨大なだけではなく、鉄を扱う方法を人々に教えてあげたり、 日本という国の形を今のようにしたりと、とても賢くて強かったと言います。 なにより、だいだらぼっちは子供達と仲の良い、優しくて気のいい男なのでした。 けれど、いつの頃からかだいだらぼっちの姿はこの国から消えてしまいました。 いったい、何処に行ってしまったんでしょうね? <トリステインの踏鞴法師> ルイズが呼び出した使い魔は、とにかく大きな使い魔でした。 それは「天を突くほど」というのが比喩では無い程の巨大な黒い男。 右手を伸ばせばゲルマニア領まで届き、一歩二歩と踏み出せば火竜山脈に到着する。 契約するためにタバサの竜に乗せてもらって、半日飛び続けてやっと頭までたどり着く。 立っているだけで日が翳り、脚にぶつかった雲が雨を降らせるので、時々移動しないと農作物に被害が出てしまってルイズも困る。 そんな、大山脈も膝丈までしか届かないような巨人だったのです。 けれどその大男は、見た目に反して賢くて優しい巨人でした。 巨人は目の前に飛んでいたちいさな竜と二人の女の子に向かって、自分の事を「だいだらぼっち」だとそっと名乗ります。 名乗った時に口から飛び出た突風に飛ばされたルイズ達を慌てて手の平でそっと掴んで、 おそるおそる地面に降ろす姿など、こっけいにすら見えたと言います。 その時女の子達が無事で良かったとおんおん泣いたせいで、トリステイン魔法学院の隣には大きな湖が出来たのでした。 だいだらぼっちは人の世界の仕組みもよく理解していて、 海でクジラをひょういと捕まえてメザシのようにバリバリ食べたり、火竜山脈の火竜をペロリとたいらげてしまう事はあっても、 人が飼っている牛や馬、騎士の竜やメイジの使い魔に手を出すような事は決してしなかったと言います。 そんなこんなで、だいだらぼっちと魔法学院の人々は仲良く暮らす事ができていたのでした。 そんなある日、幼馴染がすごく大きな使い魔を召喚したと聞いて、トリステインの王女さまが学校へやってきました。 アルビオン浮遊大陸にある、昔好きだった人に渡した恋文を貰ってきて欲しいと言うのです。 それを聞いていただいだらぼっちは、ひょういと平地を一跨ぎして、アルビオンを掴み取りました。 そのままぐいっと引っ張って、アルビオンを王女さまの所に持ってきます。 王女さまは突然現われた王子さまと再会を喜びわんわん泣きましたが、また別れないといけないと言います。 なんでもアルビオンにはレコンキスタという人達がいて、アルビオンを自分の物にするために王子さまを殺そうとしていると言うのです。 そこでだいだらぼっちはアルビオンの端と端を持って、ペキリと二つに折ってしまいました。 その片方を王子さま達が、もう片方をレコンキスタ達が取って、半分ずつにすれば良いと言うのです。 王子さま達はすっかり感心してしまいましたが、納まらないのはレコンキスタです。 アルビオンの半分どころか、世界の全部を欲しがっていたレコンキスタは、船団を組んでもう半分のアルビオンに攻めてきます。 大きな船が100隻、ちいさな船まで数えれば500隻という大軍です。 その着になればトリステインの端から端までをひと月で燃やしてしまえる大艦隊です。 しかし、だいだらぼっちは慌てず大きく息を吸い込み唇をすぼめて、ひゅうい!と思い切り息を吹きかけます。 途端にどんな台風よりも強くて恐ろしい風がまきおこり、大艦隊をそらの彼方に飛ばしてしまいました。 レコンキスタが居なくなったので平和になったアルビオンの人達は、だいだらぼっちにお礼をしたいと言いました。 そこで、だいだらぼっちは国中のお米を貰う事にします。 あつめたお米を、ラグドリアン湖から掬った水と一緒に火竜山脈の火山に入れて、だいだらぼっちはお米を炊きました。 炊き上がったご飯を丁寧に潰して、とてもたくさんの「のり」を造って、それを使って二つに割ったアルビオンをくっつけたのです。 アルビオンの人達はとても喜び、王子さまとトリステインの王女さまは、それを記念して結婚したそうです。 それからしばらく平和に暮らしていただいだらぼっちとルイズでしたが、ガリアという隣の国の王様がルイズを攫おうとしました。 しかもなんと、お母さんに酷い事をするぞとタバサを脅して、誘拐させようとしたのです。 子供が大好きなだいだらぼっちは、これには怒りました。 だいだらぼっちはひょういと一跨ぎでガリアの首都リュティスまで行くと、街を跨いで踏ん張ります。 そうして、大きな身体に見合った、大きな大きなウ○コをお城の上から落としたのです。 悪い王様は困ってしまって、やがてゴメンなさいもうしませんと泣き出しました。 おかげでタバサのお母さんは助けられたので、だいだらぼっちはウ○コを海に流したそうです。 そんなだいだらぼっちの活躍で、やっと平和がきたと思ったのですが、またまた問題が起こってしまいます。 サハラの砂漠に住むエルフという人達が、だいだらぼっちを攻撃しに来たのです。 でもだいだらぼっちは大きいし、なにより大地の化身であったので、エルフの魔法はちっとも効きませんでした。 それでも彼等はだいだらぼっちを虚無の使い魔と呼び、悪魔である虚無の担い手と使い魔をやっつけると息巻いています。 よくよく聞けば、サハラには悪魔の門というものがあって、そこから何か困った物が出てくると言っていました。 しかもその門は、だいだらぼっちやルイズが居ると開いてしまうかもしれないのでした。 そこでだいだらぼっちは、またもサハラをひょういと一跨ぎ。 シャイターンの門を引っこ抜いて、手の平でコネて潰してしまうと、ウ○コと同じように海へポイっと捨ててしまいました。 こうして今度こそ平和になったハルケギニアで、だいだらぼっちはずっと皆と仲良く暮らしたそうです。 ゼロのルイズと呼ばれていた女の子も、おおきな使い魔を召喚したちいさな魔法使いとして、 「ちびのルイズ」と呼ばれながら、だいだらぼっちと共に皆と仲良く暮らしましたとさ。 めでたしめでたし。
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前ページ次ページぷぎゅるいず 別に流行ってる訳じゃないし正しくは は だから美しい日本語が好きなんでしょうね 不条理SSぷぎゅるいず始まるよー 今日もなんだかんだとルイズとキュルケは『仲良く喧嘩しな』です 「あ、チェコちゃんだ」 「何してるのかしら?」 ずっぽりとチェコちゃんの背中のファスナーからフレイム君が登場です 「「!!」」 さらにフレイム君の背中のファスナーからずぼっとタバサちゃん大登場 ((何ソレーーーーーー!!)) ぷぎゅるいず 第4話~どうでもいい歌手の歌の歌詞にはいちいちつっこむくせに自分がファンの歌手の歌につっこみを入れられるとバーサク状態になる女教師~ 「OH YAH!!マイフレンド マリコヌル 聴いたかい?」 「どうしたんだい?そんなに慌ててレイナール? まるでワイフに逃げられた旦那みたいだぜ」 「オウ・・・SHIT!!俺としたことがクールじゃないじゃないか」 「HAHAHA!!それだったら俺みたいにホットになればいいさ それでいったいどうしたってんだい?」 「そうそう、この魔法学院にあの『土くれのフーケ』が侵入したらしいZE!!後、お前はふとってるからホットなだけだろ」 「OH,イッツ クール!!それは本当かい?」 「ああ、本当さ、宝物庫がぶっ壊れてまるでスクランブルエッグだぜ」 「オーウ なんてこった」 「「「「うっとおしい!!」」」 さて、クラスメイト全員のつっこみが二人に入った所で場所を移してここは校長室 「困った事になったもんじゃあ・・・・・」 頭を抱えて困り果てているのはご存知、エロの申し子 オールド・オスマン 「さりげにその紹介酷くね?」 その隣で険しい顔をしているのはトミノ御大じゃないや・・・・コルベールです 「最近のアニメキャラは・・・・を舐めたいキャラが、って何言わせるんですか!!」 以外とノリがいいコルベールさんとオールド・オスマンですが、他の教師の方々は揃いも揃って鎮痛な面持ちをしています 何故ならば、『土くれのフーケ』が宝物庫を破壊して学院秘蔵の宝物を奪っていったからです 「だれか『破壊の獣』を取り返しにいこうと言う物はおらんのか!!」 とオールド・オスマンが教師達に向かって激を飛ばしますが誰もうなだれるばかり 「まったく、嘆かわしい・・・」 そんな落胆するオスマンに近づくメイドの影が一つ、 「自分で行って下さい」 その時、チェコちゃんの一言で大宇宙の時が止まった そんな学院から遠く離れた空の上、浮遊大陸アルビオン うっすらと繁った森の中、一人の女の子がおりました その耳は普通の人と違って、とんがっています、この女の子の名前はティファニア、 今はまだ面識も何もありませんが世界に4人いる虚無の使い手の一人です 彼女は今、友達が欲しいと言う理由で召喚の儀式を行う最中です 「出てきて下さい お友達」 その言葉と共に、あらわれたのは・・・・・・ 「ん?どこだここ?」 白衣を着た、女医さんでした 「あ、あのー」 恐る恐る声をかけようとして・・・・ 「はああああん」 女医に胸を揉みしだかれました 「な、何をするんで・・・はああああん」 今度は耳をペロペロされました 大きい宮殿グラン・トロワ、ジョセフさんは大概、ここにいて悪事を企んでいます そんな彼の使い魔は・・・・・・ 「飯・・・・食え」 「・・・・・・・あの、これ石・・・」 前回、宝物庫を破壊した女性、カナトママです 食卓には前回持って行った宝物庫の残骸が乗ってます 「喰え」 「・・・・・・はい」 泣きながら石を食うジョセフさん そして 「父上も大変だなぁ」 「カァちゃん容赦ねぇからな」 サンタさんが帰っちゃったので新しく召喚した使い魔 カナトちゃんと釘バットのお手入れしながらイザベラ様は父の姿を見守るのでした 「・・・・・あなたは新種のバックベアードかなんかなのですか?」 目の前でふぉおおおおとか言ってる手足の生えた目玉を見て今日も教皇は頭を抱えます 「いったい・・・・なんだろう これ?」 今日も なかいまさひろ は絶好調です 場所は戻って時間が止まった魔法学院 「い、いや、わしは学園長じゃから動くのはちょっとな・・・」 冷や汗を流しながらチェコちゃんを諭すオスマン 「そ、そうですぞ、学園長には学園にいてもらわなくては」 コルベールも再起動して冷や汗をかきながら説得します そんな時、バンと扉をぶち破って三つの光が 「話は聞かせて貰いました!!この件私たちのお任せ下さい!!」 破壊の爆発!!正義の証!!ルイズ!! 赤い情熱!!炎の微熱!!キュルケ!! 青い疾風・・・氷の刃・・・タバサ・・・・ 私達、三人揃って、魔法学院美少女戦隊!!トリステレンジャー!! 「何をしているのですか三人とも・・・・・」 「じゃ、頼んじゃおっかの」 三人の派手な登場とまるでファーストフードのサイドメニューを頼むかのようなオスマンに コルベールの大切な髪の毛が数本抜け落ちました 神の左手、メイドのチェコちゃん メイドと言う名の究極生命体(アルティメットシング) 神の右手はなかいまさひろ わさびじょうゆで美味しく頂く 神の頭脳はカナトママ すべて力づくで解決する そして記することすら憚られる・・・・・・・・・・・・・・エロ保険医 この四人にひきづられて私はこの世界にやってきた 誰か私の名前を聞いて下さい ○○○・ブリミル・○○○・ま○○○○ 第5話予告 強大な敵が次々と少女達の目の前に現れては強敵(友)として倒れてゆく その屍と涙の先に彼女たちは何を見るのか? 次回:明日を掴む為に今日を撃て!!に続く 前ページ次ページぷぎゅるいず
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11 生徒たちと獣王 前ページ次ページ虚無と獣王 三日間の自宅謹慎を終え、ルイズたちは久しぶりに部屋から出る事を許された。 以下、謹慎中の出来事について。 謹慎中にワインを痛飲した者及び痛飲させられた者は、翌日全く記憶のないメイドに向かってひとしきり恨み節を吐いた後、揃って水の秘薬を持ってくるよう命じた。 当然二日酔い対策である。 一番飲んでいた筈のシエスタが、当日の記憶がない事以外全く酔いの跡を残していない事について、ルイズとキュルケは理不尽だと思ったが口には出さなかった。 頭は痛いわ気持ちは悪いわで、そんな元気すら湧いてこなかったからである。 幸い水の秘薬の効果によって二日酔いからは脱出できたが、その分想定外の出費に懐は寒くなった。 レポート作成の為に図書室に行くのは許可された為、謹慎組は自然とそこで顔を合わせる機会が多くなり、そこでも少しのトラブルが起きた。 王室に関しての参考文献を探していた筈のギムリが何故か学院の古い設計図を発見したり、 水兵について調べていたマリコルヌが突然ハァハァ言い始めたり、 ギーシュとモンモランシーが犬も喰わない痴話喧嘩を始めたり、 毎日図書室に入り浸っているタバサが煩い連中を纏めてエア・ハンマーでふっ飛ばしたり。 そのレポートに関しては、ルイズ・モンモランシーは独力で、キュルケは帰ってきたタバサの協力で、ギーシュ達はレイナールのアイディアをほぼパクッて終了させた。 出来に関しては推して知るべし。 自習にしてまでクロコダインの話を聞こうとしたコルベールは、無事に話は聞けたものの、後で学院長に知られ酷く叱責された。当たり前だが。 この時、クロコダインが東方ではなく異世界から来た事が発覚し、ルイズ・コルベール・クロコダインにはオスマンから厳重な緘口令が敷かれた。 異世界から来たクロコダイン、異世界にゲートを繋げたルイズの情報が外部に知られた場合、余り愉快な事態にはならないと考えられた為である。 「さて、そんなこんなで謹慎期間が終了した訳だけど」 フェオの月、ティワズのオセル、夕食後。 ヴェストリの広場に1人の少女が仁王立ちしていた。 桃色の髪にスレンダーな肢体、言わずと知れた『ゼロ』のルイズである。 彼女はいつもの制服姿ではなく、綿のシャツに乗馬用のズボンと活動的な服装で、手には何故か乗馬用の鞭を持っていた。 そして胸を張り、威厳に満ちた表情で告げる。 「監督として今回の訓練における意気込みをみんなに聞いておきたいと思います」 「その前に質問があるのだが」 ルイズの前に体育座りをしている男子生徒4人の中の1人、『青銅』のギーシュが手を上げた。 「なにかしら、ギーシュ」 「本当に監督をする気なのかい?」 「何か問題でも?」 質問に質問で返される。ギーシュはこの少女を如何に説得して監督降板してもらうか考えてみたが、彼女のこれまでの言動を顧みるに説得するだけ無駄だという結論を得た。 「いや、特に無いという事にしておくよウン」 「なら結構。ハイ、ではギムリから抱負を述べるように」 「それでいいのかギーシュ。というのはさておいて、取り敢えずいきなり突っ込むのはやめて連携をしたい。誰か指示を頼む」 ルイズは少し考えてから答える。 「確かレイナールと一緒のクラスよね? コンビで行動、その都度レイナールが指示という体制でいいかしら」 「まあそれが確実だろうな。了解」 「では次、マルコリヌ」 「情けないぞギーシュ。えーと、立ってるだけじゃダメだからとにかく動こうと思う……。だから、誰か指示してくれると助かる」 んー、とルイズは考え込んで、本人に誰の指示で動きたいか聞いてみる事にした。 「そうだね、最初はギーシュかレイナールに頼もうと思ってたんだ。『ゼロ』のルイズの指示で動くのなんて嫌だって。でも今のキミの服を見ていると何か悪し様に罵りながら指示を」 ルイズは彼に最後まで語らせず、強引に言葉を重ねる。 「レイナール、面倒を掛けるけど指示してあげて」 「……了解。正直気が乗らないけど、多分今の君ほどじゃないだろうし……」 「その通りよ。あと昔『戦場では常に前から攻撃が来るとは限らない』って言われたのを思い出したわ、何でかしら」 「頼むから実行しないでくれよ……。それにしてもヴァリエール家では娘にそんな事まで教育しているのかい?」 「いえ? わたしが小さい頃、親に話をねだった時に聞かされただけなんだけどね」 ルイズは軽く肩をすくめて見せる。 「そういえばヴァリエール公は無類の戦上手と父上から聞いた事があるよ。流石に戦場の機微に通じているんだなあ」 すっかり感心した口調のギーシュに、ルイズは訂正を入れた。 「教えてくれたのは母様なんだけど」 「あまり他人の家庭事情に首を突っ込みたくないんだけど敢えて聞こう。何故母親……?」 「ギーシュ。私の父様はこう言っていたわ。『宮廷でも家庭でも生き長らえるコツはただひとつ。自分より強い相手とは戦わない事だ』って。それを踏まえた上で、答えを聞きたい?」 「答えって何だい? ボクはシツモンなんてシテイナイヨ?」 カクカクと答えるギーシュを見て、ルイズはため息をついた。 「貴方長生きするわきっと。って話が逸れたわね。えと、次はレイナール」 「どうかと思うなギーシュ。そうだね、前回で相手の攻撃範囲は大体判ったから、『ブレイド』の長さを伸ばしてみたいと思う。あとは連携の指示を上手くしないとなあ」 「『ブレイド』は最初から伸ばさず必要な時だけ長くすると効果的かしら。それと、連携については最初から上手くいく訳ないんだから気楽にね」 レイナールは少し感心したように言う。 「結構考えているみたいだね、ヴァリエール。他には何かあるかい?」 「それなりにはあるけど、まずは一戦交えてから、ね。さあ、皆の意気込みは分かったからそろそろ始めましょうか」 「いやいやいやちょっと待って! ぼくは? ぼくの意気込みや抱負は聞かないのかい!?」 慌てて抗議するギーシュ。呼び出してあったワルキューレが同じ素振りをする辺り、芸が細かい。 「仕方ないわね。じゃあ一応聞くけど」 「畜生覚えてろよ……。ワルキューレの武器にバリエーションをつけた。攻撃用に長槍と小盾、防御用には剣と大楯を装備させたんだ。今回は武器のみの変更だけど、いずれワルキューレ本体も用途に合わせて変更していく予定さ」 得意げに語るギーシュにルイズ達は驚きを隠せなかった。 「ちょ、ちょっと待って! ギーシュが至極まともな事を言ってるんだけど!? どどどうしよう、どうしたらいいの!?」 「そんな!! 二股がばれてひたすらおろおろしていたあの姿は擬態だったとでも!?」 「おお……お助けください、始祖よ……!」 「君たち、僕の家が代々軍人を輩出している事を忘れてないか……? 畜生、ホントに覚えてろよ……」 低い声でぶつぶつ呟くギーシュの横で、ワルキューレがその動きを正確にトレースしていた。正に高度な技術の無駄使いである。 しばらくして、一時の驚愕から何とか立ち直ったルイズが監督として改めて檄を飛ばした。 「さ、さあ! 何か有り得ない事が起こった気がするけど多分気のせいだから気にせず行くとするわよ!」 「「「了解!」」」 「畜生! ホンットに覚えてろよ!!」 そんな学生たちを見つめている影があった。 学院長の秘書、ロングビルである。 彼女には、今、深刻な悩みがあった。 それはオールド・オスマンのセクハラの所為でも、コルベールのアプローチとも言えない様なアプローチの所為でも、何か勘違いした男子学生(稀に女学生)からの恋文の所為でもない。 いや、正確にはそれらの事も悩みではあったのだが、深刻ではない。今のところは。 深刻なのは、彼女がとうに捨てた筈の祖国が現在内戦状態になっている事にあった。 内戦自体はどうでもいい。せいぜい互いに殺しあってくれれば重畳というものだ。 問題は、決して表舞台に出ることの出来ない者が身内に居る事である。 内戦でどちらの陣営が勝利したとしても、彼女が見つかればどうなるか、想像するまでもなかった。 出来る事ならば早急に彼の地を離れる必要がある。しかし、彼女と彼女と暮らす孤児暮らす孤児たちを戦火の及ばない場所に移し、生活を安定させるには大金が必要だ。 そして学院長秘書としての俸給では、そんな大金は捻出できない。 (意外とここは住み心地が良かったんだがねぇ) 屋根のある場所で寝泊まりが出来、出てくる食事は豪華で美味い。俸給だって悪い訳ではない。 ある目的の為に就いた秘書という仕事も、それなりに遣り甲斐はあった。 だがロングビルには判っている。自分のこの感情はただの感傷に過ぎない。義妹と同じ年代の子供たちを見た所為だろうか。 あくまで仮の姿である筈の『ミス・ロングビル』が、無意識のうちに定着しつつあったのかもしれないが、それは本来の自分ではなかった。 (そろそろ店仕舞いの準備をしないとねぇ) そう思い、もう一度学生たちの方を見る。 小太りの生徒が足を縺れさせ、青銅の人形に激突していた。見ていた桃色の髪の生徒が何事か怒鳴り、眼鏡の生徒が頭を抱えている。 それは傍から見れば訓練ではなく寸劇の様で、相手をしていた気のいい(とロングビルは判断した)使い魔も苦笑しているのが判った。 その光景は、もしかしたら自分が世の中の事を何一つ知らなかった頃に過ごしていたかもしれない光景。 その光景は、もしかしたら隠れ住んでいる義妹が過ごせる筈だったかもしれない光景。 やはり寸劇のように見える訓練から目を逸らし、ロングビルは思う。 意外とここは住み心地が良かった、と。 やがて彼女は感傷を振り払い、中庭ではなく本塔を見つめる。 その眼は、獲物を狙う猛禽類のものだった。 「どうしたの、クロコダイン?」 訓練が一段落し、ギーシュ達が地面にへたり込む中、1人元気な監督が己の使い魔に声を掛けた。 「いや、さっき誰かの視線の様なものを感じてな、気配を探ろうとしたんだが……」 そう言って周囲を見回す。 「気のせいだったか……?」 他人の視線など露ほども感じなかったルイズは「そうなんじゃない?」と気楽に答える。 「まあ、それにしても、だ」 地べたで荒い息をつく4人に、クロコダインは感想を述べた。 「接近戦を担当する人間が多すぎるだろう。ギーシュの人形や接近戦を学びたいレイナールはともかく、他の2人は後ろから魔法を使ってもいいんだぞ」 「ちょっと待って! いくら相手がドットメイジでも魔法が直撃したら怪我どころじゃ済まないわよ!?」 思わず声を上げるルイズに、クロコダインは笑って答える。 「オレはここの魔法については素人だが、魔法で敵の動きを鈍らせたり目晦ましをしたりする事は出来ないのか?」 その言葉に、ルイズ達は車座になって話し始めた。 「どうだろう、つまり攻撃魔法じゃなくて、支援としての魔法という事かい? 授業ではそんなの習ってないと思ったけど」 「でも工夫次第でなんとかなりそうじゃないか? 土の系統魔法なら地面を錬金する事で足止めとか出来そうだ」 「相手の目の前で『着火』を使えば目晦ましになるのかしら……」 「風魔法で土煙を上げるとかでもいいんじゃないかな」 今まで考えた事が無かった魔法の使い道だけに、彼女らの会話も盛り上がる。 「戦う時に自分の有利な条件を多く作る事が出来れば生き残る確率はそれだけ高くなるだろう。逃げを打つ時も同様だ」 どすん、と座り込み胡坐をかくクロコダインに、ルイズは少し怒ったように言った。 「貴族は敵に背を見せないものよ、逃げるなんて以ての外だわ」 対して、クロコダインは窘めるように答える。 「それはそれで立派な考えだが時と場合によるだろう。例えばどうしても果たさねばならない目的がある場合、余計な戦闘を避け撤退するのも一つの道だ」 「むー……、それはそうだろうけど……」 些か納得のいかない主に、使い魔は笑顔を見せた。 「誇りを重んじる気持ちはオレにもよく分かるが、無理をして無謀な攻撃をしても良い結果は得られんぞ。命あっての物種とも言うしな」 「……」 理性では一理あると判断しても、感情がそれを許さない様子のルイズの顔を覗き込む。 「何も敵を前にして無条件で逃げろと言ってる訳じゃない。引けない戦いという物も確かに存在するしな。だが、何事にも柔軟な発想で臨んでほしいという事だ」 クロコダインはそう言うと、ルイズを肩に乗せ立ち上がった。 「きゃ!」 「今日はもうお開きにしよう。ルイズは寮の入口まで送っていこうか」 「え、でも、別に大丈夫よ」 ギーシュ達の手前もあり、赤面する顔を見られたくなくてそんな事を言うルイズだったが、 「そうもいかん。主をただ見送るだけではシエスタあたりに怒られそうだからな」 そう言われては断る事も出来ない。 怒った時のシエスタは妙な迫力があって怖いのをルイズは知っていた。酔った時はもっと怖い事も。 取り敢えず久し振りにクロコダインの肩に乗るのも悪くないと言い聞かせてみる。誰に言い聞かせているのか。自分にだ。 「も、もう、仕方ないわね! 送るからにはちゃんとエスコートしなきゃ駄目なんだからね!」 使い魔である獣人に無理を吹っ掛けるその態度は、どう見ても典型的な照れ隠しだよなあとギーシュ達は思った。 前ページ次ページ虚無と獣王
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前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 「女王陛下、ロマリア巡礼団……ただいま、ただいま帰還いたしました!」 「ミシェル、それに皆さん。よくぞ、よくぞ帰ってきてくれました」 そう、あのサビエラ村での戦い以来、帰路を急ぎに急いできたミシェルたち一行がとうとう母国への帰還を果たしたのだ。 ミシェル以下銃士隊、ギーシュ以下の水精霊騎士隊の誰もが薄汚れた姿とボロボロの身なりのままで、一目見ただけでアンリエッタにも彼女たちの苦労が忍ばれた。 隣に控えているアニエスも感無量といった様子で、表情こそ抑えているものの、後ろに回した手がわずかに震えている。反対側に控えたカリーヌは感情が見えないが、帰ってきた彼女たちを見る目は穏やかだ。 ミシェル、ギーシュらはアンリエッタにロマリアであったことの詳細をすべて報告した。ロマリアがもはや闇の勢力の手の中にあること、そして消息不明となった才人とルイズのことを。 「申し訳ありません姫様。わたくしたちの力が足りないばかりに、姫様の大切なご親友までも」 「いいえ、あなたたちの責任ではありません。ロマリアからの通達があったときに、わたしも覚悟を決めていました。ルイズとサイトさんの身になにかあったことは間違いないのですね。なに、ルイズのことです、きっとどんな困難も乗り越えて帰ってきてくれるでしょう。それよりもミシェル、あなたこそサイトさんを失ってよく戻ってきてくれました」 「わたしも姫様がミス・ヴァリエールを信じていると同じようにサイトを信じています。きっとあいつは帰ってきます。帰ってこないなら、こっちから探しに行きます。そのためにも、わたしが先に折れちゃだめなんです」 強い意志を秘めたミシェルの眼に、アンリエッタやアニエスは、以前のミシェルとは大きく違ったなにかを感じた。 一方で、ルイズの母であるカリーヌの表情はやはり読めない。娘への信頼感か、可愛い子には旅をさせろと思っているのか、それとも若かりしころにくぐってきた冒険の数々を思い出しているのだろうか。ティファニアはそんなカリーヌの姿に、遠い思い出のかなたの母を思い起こしていた。 失ったものは大きい、だが同時に得たものも大きかった。なにより、アンリエッタは欲していた情報を手にすることができたのだ。 「ロマリアが、教皇陛下がそんなことになっていようとは、世の中の人は想像だにしないでしょうね。ですがこれで、聖戦に対するわたしの姿勢は決まりました。なんとしてでもロマリアを止めなくては、ハルケギニアは人間とエルフの共倒れになってしまうでしょう」 「女王陛下、我ら水精霊騎士隊は全力で陛下をおささえします。聖戦に迷っている貴族の中で、我らの家族親類の説得はお任せください」 「ありがとう、ミスタ・グラモン。あなたのお父様が聖戦反対に回ってくださればとても心強いですわ。ですが、トリステイン一国が聖戦反対にまわったところでたかが知れているでしょう。アルビオンのウェールズ様にはわたしからお話しするとして、ゲルマニアかガリアのどちらかでも聖戦反対に回らせることができれば」 トリステインは小国で発言力は弱い。アルビオンも復興中で、トリステインと今では国力に大差はない。大国であるガリアとゲルマニアの両国の発言力は強いけれど、ロマリアはジョゼフを虚無の担い手である英雄王として大々的に宣伝している。ジョゼフがロマリアと手を組んでしまった以上、ガリアの立場を動かすには王座交代でもしないことには不可能だろう。もう一方のゲルマニアは、アルブレヒト三世が俗物なために強いほうにつくだろう。正義感を持たずに勝ち馬に乗ろうとするだけのあの男を説得するのはかなり困難だ。 このままでは、最悪ハルケギニアは聖戦賛成派と反対派の国で戦争になる。いや、教皇にとってみればそれも望むところなのだろう。 アンリエッタはつくづくトリステインの力のなさにむなしさを覚えた。女王などともてはやされたところで、自分の意思の届くところなどはハルケギニアから見たら猫の額のような範囲にすぎない。 「アルビオンはヤプールの策謀で大きな傷を負って、やっと立ち直りかけているところです。あまり無理を言うことはできません。それにしても、次はロマリアのヴィットーリオ聖下が下僕にされるとは、ヤプールの陰謀の根はどこまで深いというのでしょうか」 ヤプールはこれまで、数々の常識を超えた作戦でハルケギニアを狙ってきた。残念ながらこちらはその度に後手後手に回るしかなく、歯がゆい思いをし続けてきた。 しかも、今度はアルビオンと違ってトリステインの力が及ばないロマリアの、教皇が敵である。よく考えたものだ、このままではハルケギニアは自滅の道を一直線となる。 奴は以前、サハラでの戦いで戦力の大半を失ってしばらくおとなしくしていたが、裏では陰謀の根を張り巡らせていたということか。それが、ファーティマが襲われたことからも考えて、ついに表立って動き始めたということなのか。 宇宙は広く、アンリエッタたちがロマリアの異変もヤプールの仕業だと勘違いしてしまったのも仕方がない。だが、真実がどうだとしても問題の深さが緩和されるわけではなかった。 アンリエッタの憂鬱は、そのままここにいる全員の憂鬱であった。こちらは小国トリステインと満身創痍のアルビオンの二国に対して、敵はハルケギニアの精神世界の支配者であるロマリアと大国ガリア。力関係の是非など考えるまでもなく頭が痛くなってくる。どう考えても真っ向から戦って勝てる相手ではない。 だが、どうにかしなくてはハルケギニアは滅びる。なにか、状況をひっくり返す妙案はないものかと考えても、アンリエッタにも、アニエスやもちろんギーシュたちにもなにも浮かびはしなかった。 ところがそのときである。謁見の間の硬く閉ざされた扉が激しく外から叩かれ、女王陛下に緊急の知らせがと兵士が伝えてきた。 「何事ですか、わたくしは今些少の用に関わっている暇はないのです」 「お、恐れながら女王陛下に申し上げます。たった今、アルビオンから緊急の竜騎士が参りました。ウェールズ国王陛下より、アンリエッタ女王陛下へと緊急の書状を持参したのことです」 「ウェールズ様から! わ、わかりました。すぐに通しなさい」 アンリエッタはウェールズから緊急の知らせと聞いて動揺したが、ウェールズから自分へということであれば少なくともウェールズの身になにかが起きたわけではないと気を落ち着かせた。 厳重な身体検査を受けた使者が謁見の間に通され、使者の手から書状がまずはカリーヌに手渡された。もしも怪しげなところがあれば即座に仕掛けごと撃滅するためだ。 「問題はありません。確かにアルビオン王家からのものです、魔法の封印は解除しました。どうぞ」 「ありがとうございます。皆さん、お話の途中ですが、しばし失礼いたします」 玉座に座ったまま、アンリエッタはウェールズからの書状に目を通し始めた。 澄んだ瞳が広げられた書状の上をすべる。その様子を、アニエスやミシェル、ギーシュたちはじっと控えたまま見守り続けた。 しかし、書状を読み進めるアンリエッタの表情がしだいに険しくなり、冷や汗さえ浮かび始めたではないか。 「こ、これは……なんということでしょう」 「じ、女王陛下、ウェールズ国王陛下はいったいなんと言ってきたのですか?」 アンリエッタのただならぬ様子にアニエスが質問した。むろん、ほかの皆の視線もアンリエッタに注がれる。だが、アンリエッタは彼らの疑問に答えることなく怒鳴るように命じた。 「アニエス、すぐに竜籠の準備を! グリフォンでもマンティコアでもかまいません。アルビオンに使者を送る、最短の方法を用意しなさい。それからカリンさま、大至急ここにミス・エレオノールを呼んでくださいませ!」 「ひ、姫様? いったいどうしたと」 「事は一刻を争います。とにかく先に手配をしてください。それにミシェル、疲れているところをすみませんが、あなたにもアルビオンに飛んでもらいます」 有無を言わせないアンリエッタの剣幕に、カリーヌを除く全員が圧倒されていた。 しかし、アンリエッタをここまで慌てさせ、かつミシェルを必要とする事態とはいったいなんなのであろうか? アンリエッタはアニエスが手配のために出て行き、カリーヌが召還文を託した使い魔を飛ばすと、呼吸を落ち着かせて話し始めた。 「皆さんにもこれからお話しします。ですがどうやら、事態は我々が考えているほど単純ではないようです」 緊張したアンリエッタの口から、ウェールズが伝えてきたアルビオンで発生した”ある問題”と、それに関する相談が語られた。 カリーヌを除く全員の顔が驚きを隠せずに歪む。いったいアルビオンでなにが起きたというのであろうか? そして、それがトリステインにどう関係してくるというのであろうか? それはこの前日、東方号がキングザウルス三世に襲われている頃にアルビオンで起きていた。 内乱から立ち直り、復興を進めているアルビオン王国。その首都ロンディニウムのハヴィランド宮殿で、ひとつの異変がウェールズ新国王のもとに持ち込まれていた。 「陛下、陛下! 大変、大変ですぞ!」 「どうした大臣? そんな慌てふためくと、せっかく平和が来てほっとしている民が不安がるぞ、落ち着いて報告したまえ」 「申し訳ありません。ですが陛下、信じられないことです。宝物庫においでください。我が王国の秘宝が、あの宝箱が動き出したのです」 「な、なんだって!」 仰天したウェールズは、休憩時間の紅茶も放り出して駆け出した。 ハヴィランド宮殿の宝物庫、そこには王国が伝統とともに受け継いできた数々の宝が仕舞われていたが、そこの奥深くに収められた一抱えほどもある金属の箱が鈍い光を放っていた。 「こ、これは……確かに動いている。伝説では、この数千年間、なにをしても開く気配すらなかったというのに」 ウェールズの目の前で不思議な光を放つ銀色の箱、それはアルビオン王国に、一説では始祖の時代から伝わっているとされ、守り通すように伝えられている家宝であった。見た目は銀色の金属の箱だが、実際になにでできていて何が入っているのかは誰も知らない。開けようとしても、どんな力も魔法も通じなかった。ウェールズ自身も、子供の頃は遊び道具にしているうちにむきになって開けようといろいろ試みたものの、結局傷ひとつつけることはできなかったのだ。 それが、今このときに開こうとしている。いったい何故? しかし、その疑問に答えが出る前に、箱は静かに開き、その中のものをウェールズの前に現した。 「こ、これは……岩、か?」 箱の中に入っていたのは、一抱えほどの黒々とした岩であった。 唖然とするウェールズ。なんということだ、我が王国が代々守ってきた秘宝の中身がただの岩? これだけもったいつけて開いた宝箱の中身がただの岩だというのか? 落胆の暗さでウェールズの目の前がくらくらと歪む。しかし、落胆するのはまだ早かった。 「へ、陛下、岩が、岩が光り始めました!」 「なに? な、なんと!」 岩が突然まばゆく輝き始めた。 これはいったい? やはり、王国の秘宝はただの岩ではなかったというのか! 光は岩を包んで膨れ上がり、やがて子供ほどのサイズになると唐突に消えた。そして、そこに残っていたのは。 「きゅう~?」 あっけにとられるウェールズたち。なんと彼らの目の前には、赤い体をした見たこともない生き物が、眠たげな顔をしてちょこんと立っていたのだ。 「こ、これは……これが、我が王国の秘宝の正体……?」 見るからに弱そうなとぼけた姿。これが、数千年来守ってきた秘宝? このちっぽけで奇妙な動物に、なんの意味があるというんだ? 混乱するウェールズたちの前で、不思議な生き物は子供のように無邪気にぴょんぴょん飛び跳ねて周りを見渡していた。その様子に、敵意などは感じられない。 というよりも、むしろ愛くるしささえ感じさせる容姿に、その場に立ち会っていた女性兵士のひとりはうっとりと顔を緩めていた。 だが、ウェールズはふと、その生き物が首からひも付きの小箱を提げているのに気づいた。 小箱の中身は、手紙と、ある”贈り物”。差出人の名は、平賀才人。 そして、この手紙と贈り物が、ハルケギニアの運命を劇的に動かすスイッチになることを、まだ誰も知らない。 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
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前ページ次ページTALES OF ZERO 午後からは授業はなく、生徒達はそれぞれ自由に時間を過ごしていた 昼食を終え、ルイズと合流したクラースは彼女に個人授業を行っている 「良いか、落ち着いてやるんだ…魔法を使うのに必要なのは精神力と集中力だからな。」 「解ってるわよ、それくらい。」 解りきった事を言われて、ルイズはクラースに向かって怒鳴る 二人から離れて、才人とタバサが見学していた…最も、タバサは本を読んでいるが 「何であの子まで一緒にいるのよ…先生はさっきまであの子と一体何を…。」 「ほらほら、文句は後で聞いてやるから…まずは、目の前の事に集中するんだ。」 クラースの言葉に話はそこまでにして、ルイズは目の前の標的に目をやった それは、魔法練習の為にクラースが作った藁人形だ 「さあ、ルイズ…ファイアーボールを唱えてみるんだ。」 軽く頷くと、ルイズはルーンを唱えだした…落ち着いて、落ち着いて…と、心の中でも唱えている そして、ルーンを唱え終え、目標に向かって杖を振るった 直後に爆音が響き、目標となっていた藁人形は木っ端微塵に吹き飛んだ 「おお、人形が吹っ飛んだ……で、あれってファイアーボールなのか?」 「違う。」 確かに魔法は発動し、藁人形に命中した…が、あれはファイアーボールではない その名の通り火球を飛ばす魔法なのだから…決して爆発する魔法ではない 「ああ、もう…どうして成功しないのよ!!」 失敗した事に腹を立て、地団駄するルイズ…クラースは爆破された藁人形を見て、口を開いた 「そうだな…まあ、今のは10点といった所だな。」 クラースの評価を聞いて、ルイズは目を丸くさせた まさか、これくらいで得点がもらえると思わなかったからだ 「確かに、ファイアーボールは発動しなかったが、目標には当たったからな…努力点というやつだ。」 今までのルイズの魔法は、目標とは見当違いの場所が爆発を起こしていた 木だったり、壁だったり、噴水だったり…今だって、周辺の土が抉られている 今のは珍しくも目標に当たった…それを評価しての10点である 「そう…ま、まあ、慰めぐらいで受け取っておくわよ。」 初めて魔法の事で褒められたのに、素直に嬉しいと言えないルイズ ふと、ルイズはクラースの召喚術の事で疑問を浮かべた 「ねぇ、クラース先生…先生が使える魔法ってあの妖精みたいなやつだけなの?」 「シルフだ…まあ、前に話したように今はオパールの指輪しかないからな。シルフしか呼び出せん。」 召喚術の話を始めたので、興味を持ったタバサは二人に歩みよった 才人もその後へと続き、クラースは続きを話す 「精霊は多種多様に存在する…地水火風、分子、闇、光、月、そして根源を司るもの、様々だ。」 「そんなに…先生って、それを全部使役してたの!?」 「まあな…しかし、私が精霊達と契約出来たのは仲間達がいたからこそだ。」 クレス達と出会ったからこそ、彼は偉大な召喚士としてその名を残す事が出来たのだ 出会わなければ、その名が知られるどころか、召喚術が完成していたのかどうかさえ危い 「ふーん…ねぇ、私でも先生の召喚術が使えたり出来るの?」 「どうかな。私も数々の手順を踏んで使えるようになったし…簡単に使えるのはエルフぐらいだな。」 実質、前にハーフエルフであるアーチェは自分が契約した精霊を簡単に召喚してみせた しかも三体同時召喚まで…あの時ほど、エルフとの差を実感して涙目になりそうだった事はない 「そう…なら、良いわ。先生みたいにそんな悪趣味な刺青と格好はしたくないし。」 「またそんな事を…良いか、これは私が研究に研究を重ねた末に考案した召喚士の…。」 「失礼するよ。」 そんな時、彼等の耳にキザったらしい声が聞こえてきた 振り返ると、そこにはギーシュの姿があった 「ギーシュ、何であんたが…。」 「僕はミスタ・レスターに呼ばれて来たんだ…君の力を貸して欲しいってね。」 「ああ、もうそんな時間か…じゃあ才人、始めるか。」 突然、自分が名指しされた事に驚く才人…クラースは道具袋に手を伸ばした 一体何を…そう聞く前に、クラースはロングソードを取り出した 「さあ…剣の稽古の時間だ。」 「だ、大丈夫なのかな…俺。」 ロングソードを両手で持ち、才人は目の前の相手を見つめる そこには、ギーシュが作り出したワルキューレが一体佇んでいる 「準備は良いか……よし、始めてくれギーシュ君。」 「解りました…行くよ、才人。」 クラースの言葉に、ギーシュはワルキューレを操りはじめた 剣を構え、ワルキューレは才人に接近する 「わっ、来た!?」 向かってくるワルキューレ…一気に間合いをつめ、剣を振り下ろしてくる 咄嗟に才人は剣を構え、ワルキューレの攻撃を受け止めた 「くっ…このっ!!」 左手のルーンが輝く…受け止めた剣を弾き返し、バックステップで才人は後ろに下がった そして、反射的に決闘の時に見せたあの技を繰り出す 「魔神剣!!!」 剣を振り払うと、剣圧がワルキューレに向かって地面をかけていく その一撃を受けたワルキューレは、ごとんと地面に倒れこんだ 「おおっ、あれだ…あの時、僕のワルキューレを吹き飛ばした…。」 ギーシュはまたあの技を見て驚いていた…それはルイズも同じである 「あれって、一体どういう仕組みで放てるの?魔法?」 「そうだな…解りやすくいえば闘気と言う、人間の中にあるエネルギーを剣に集中させ、剣圧として飛ばしているんだ。」 解るような、解らないような…とりあえず、魔法とは違う事は理解した その間に才人はワルキューレに接近すると、続けて技を繰り出す 「飛燕連脚!!!」 二連撃の蹴りと剣による突き…その攻撃に、ワルキューレは破壊される 「ああ、僕のワルキューレが…。」 「はぁ、はぁ、はぁ…ふぅ。」 落ち込むギーシュに対し、才人は呼吸を整えて剣を振るう 一度、二度…と剣を振り回し、最後はくるりと回して高々と掲げる 「それにしても…まさか、僕のワルキューレを使って剣の稽古とはね。」 そう、ギーシュが此処に呼ばれたのは、才人に剣の稽古をさせる為だった クラースが帰ってきた時に、彼は彼らしい長い謝罪を行った その全てを振り返ると長くなるので省略すると、彼は何でもすると言ったのだ 自分に出来る事でお詫びがしたいと…その結果がこれである 「ほぼ実戦に近い状況で才人を鍛えられるからな…今後の為に鍛錬は必要だ。」 この未知の世界にある脅威…それに備える為に いざという時は、才人は自分自身でその身を守らねばならないから 「さて…ギーシュ、次を出してくれ。」 「解りました…今度は負けないよ、サイト。」 再びギーシュは才人に向かって薔薇の杖を振った 花びらが一枚、地面に落ちて新たなワルキューレを生み出す 「次か…よし、こい!!」 一体倒して自信がついたのか、剣を構えなおして才人は新たなワルキューレに挑む 相手の攻撃をかわし、慣れているかのように剣技を繰り出す 「(あの剣技、やはりアルべイン流…動きも、何処となくクレスに似ているな。)」 そんな才人の動きを見ながら、クラースは考えを巡らせる 今の彼は剣を持った事のない、素人とは思えない動きを見せている 「(まともに剣を振るえなかった彼がああなるとは…伝説のルーンの力とは凄いな。)」 クラースは左手の甲を見る…そこには、才人と同じルーンが刻まれている 同時に、オスマンから聞かされた話を思い出した 『ガンダールヴ?』 『そうじゃ、お主らの手に刻まれしルーンはかつて、伝説の使い魔に刻まれしルーンなのじゃ。』 帰って来た後、クラースはコルベール経由でオスマンに呼び出された そこで、自分と才人に刻まれたルーンが伝説の使い魔のものである事を知らされた 『そのルーンを宿した使い魔は、ありとあらゆる武器を使いこなしたという伝説があるでな。』 『成る程、コルベール教授が言っていたのはそれか…それなら、才人の事もある程度納得出来る。』 決闘の時に見せた才人の力の源を、クラースはようやく理解した が、すぐに新たな疑問が生まれる 『そんな使い魔のルーンが刻まれたのは…ルイズが召喚したからですか?』 『解らん…その辺の事は全く解らんのじゃ。何故ミス・ヴァリエールなのか…』 うーむ、とオスマンが唸る中、クラースはその答えの手掛かりについて考えた 爆発しか起こらない魔法、異世界人である自分達を召喚した… そして、伝説の使い魔のルーン…彼女は他のメイジとは違った、特殊なメイジなのかもしれない 『兎に角、お主だけには伝えておこうと思ってな…じゃが、くれぐれも…。』 『解っています…時がくるまでは誰にも言うな、ですね。』 『うむ、これが公になれば色々と不味い事になるからの…当然君達もじゃ。』 この事は、ルイズと才人にも秘密にしておいた方が良いだろう 話した所で、今はまだその事実を受け止めきれないだろうから 『ところで…ミスタ・レスター、お主等は一体何処から来たのじゃ?』 『何処と言われても…私は貴方達が言うロバ・アル・カリイエから来たのですが…。』 建前上の、本来自分達の出身地ではない東の国の名を口にする 『では、君がグラモン家の息子と決闘した際に見せたあれ…あれは一体何なのじゃ?』 『あれは…東で生み出された新たな魔法のようなものです。事情により詳しい事は言えませんが。』 召喚術の詳細を言えず、そういう事で誤魔化そうとする だが、オスマンはそれで納得したようではなく、鋭い眼差しを向け続けている 『そうなのかのぅ…ワシにはあれは魔法とは思えんのじゃがなぁ。』 『………。』 クラースは思った…この老人に、本当の事を話すかどうかを しかし、彼は学院の最高責任者で国との繋がりもある…迂闊に話さない方がいいのではないか そう思考を巡らせていた時、ノックの音が室内に響いた 『む、誰じゃ?』 『私です、オールド・オスマン。』 ドアが開き、ミス・ロングビルが学院長室に入ってくる 『王宮の勅使、ジュール・ド・モット伯が御出でになられたのでお伝えに来たのですが…。』 『おお、そう言えば今日じゃったな…忘れておったわい。』 そう言うと、改めてオスマンはクラースの方を見る 『すまんな、王宮からの使いが来たようでな…話はこれくらいにしようかの。』 『はい…では、これで…。』 取りあえず話が終わったので、クラースはすぐに退室しようとする その際、ミス・ロングビルがジッと見つめている事に気付いた 『ん、何か?』 『あっ、いえ…素敵な指輪をされていると思ったので…。』 指輪…とは、クラースが嵌めているオパールの指輪の事である 唯一の契約の指輪なのでなくさないよう、クラースは肌身離さず身につけている 『これか…これは、私が魔法を使う上で重要な術具なのでね。』 『そうですか…でしたら、さぞ貴重な品なのでしょうね。』 そう言ったロングビルの目が、一瞬獲物を狙う獣のように見えた 瞬きすると、そこには普段彼女がする美しい表情があった 『ふむ……では、オールド・オスマン、それにミス・ロングビルも…失礼。』 気のせいだと思い、二人に一礼するとクラースは学院長室を退室した しばらくして一息入れると、後ろを振り返る 『(オールド・オスマン…流石この学院の学院長をしているだけあって、鋭いな。)』 それに、普通の人とは違うオーラと言う者を纏っているような気もする 侮れない…そう思った時、扉の向こうから大きな音が響いた 『あだっ、ミス・ロングビル、年寄りをもっといたわらんかい。』 『オールド・オスマン、今回ばかりは我慢の限界です。貴方は何度セクハラすれば……。』 ロングビルの怒声とオスマンの情けない声が聞こえてくる…そこに先程の威厳は微塵も無かった 自分の勘違いだったか…等と考えつつ、クラースはその場を後にするのだった 「…生、クラース先生!!」 ルイズの声が聞こえ、クラースはそこで回想を中断して顔を上げた 「どうしたの?何か考え事してたみたいだけど…。」 「ルイズ…いや、何でもない。さて、才人の方は…。」 彼女の質問をはぐらかして才人の方を見ると、彼の周りにワルキューレの残骸が点在していた クラースが回想している間に、既に6体のワルキューレを倒していたのだ そして、七体目のワルキューレとの模擬戦も終わりを告げようとしていた 「魔神飛燕脚!!!」 魔神剣と飛燕連脚を組み合わせた奥義…それが、最後のワルキューレに炸裂する 前回同様、ワルキューレは奥義を受けて粉々に砕けちった 「ま、負けた……こうまであっさり倒されると、僕は自信をなくしそうだよ。」 今自分が作れる7体全てを倒された事に、ギーシュは軽くショックを受ける 「へへ、楽勝だ…ぜ?」 得意げになる才人だが、突然彼の身体を疲労感が襲ってきた 自身を立たせる事が出来ず、地面に尻餅をつく 「サイト、大丈夫?」 ルイズが心配そうに声を掛けるが、前のように気絶はしなかった 立ち上がろうにも身体が上手く動かせず、地面に座りこんだままになる 「な、何か急に疲労感が…何で?」 「無理をしたな…まだ十分な鍛錬もしていないのに、奥義なんか使うからだ。」 クラースはアップルグミを取り出して、才人に渡した グミを頬張る才人…疲労感もある程度なくなり、立ち上がる 「あ、ありがとうございます……で、それってどういう事ですか?」 「そもそも奥義とは、元となる特技を極限まで鍛えた上で初めて使えるものだ。」 「だから、まだ鍛錬の足りない貴方にはそれを使いこなす事が出来ない…。」 クラースの言葉を理解したタバサが補足する…その補足が正しい事を、クラースは頷いて答える 「極限までって…どれくらい鍛えれば良いんですか?」 「そりゃあ、使用率100%にすれば良いんじゃないかい?」 身も蓋もない言い方をすれば、ギーシュの言うとおりである 「まあ、君に奥義はまだ早い…鍛錬を続けるんだな。」 「はーい…まあ、こうやって剣を使うのも何か楽しいし。」 剣を振るう事に楽しさを覚えた才人は、剣を振り回す 素人に比べれば上なのは確かだが、クレスに比べるとまだまだ動きが雑である 今はまだ見習い剣士…しかし、今後も鍛えればそれなりに上達するだろう 「ああ、此処でしたか。」 そんな時、本塔の方からコルベールが此方に向かってやってきた 「コルベール先生、どうして此処に?」 「いえ、ミスタ・レスターが此処にいると聞きましてね…それにしてもこれは?」 眼鏡を掛けなおしながら、コルベールは散乱するワルキューレの残骸を見る 「ああ、才人の鍛錬にとね…彼のワルキューレを使わせてもらった。」 「結果は、僕のワルキューレが前回同様全部やられましたけどね。」 「ほほう、それはすごい。流石はガンダー…モガッ!?」 危うくガンダールヴの事を話しそうになったコルベールの口を、クラースが止める 「えっ、何?ガンダー…。」 「気にしなくて良い、こっちの話だ。そんな事より…コルベール教授、私に何か用かな?」 「モガモガ…は、はい、今日もミスタ・レスターの話を伺いたいと思いまして…。」 一言一言を強調した言い方に、自分の失態に気付いたコルベールは本題に移った 彼は時折、クラースから色々と故郷の事について話を聞きにやってくる 情報交換の為、故郷の事をはぐらかしながら彼との交流を行っていった 「そうか…皆、今日は此処までだ。私はコルベール教授の所に行ってくる。」 「解ったわ…でも、この前みたいに夜遅くまでにはならないでよ。」 了解…と答えると、クラースはコルベールと一緒に彼の部屋へと向かっていく そしてこの場がお開きになったので、4人もそれぞれの場所に帰っていった 「うーむ……遅くならないようにとは言ったんだがな。」 その日の夜、そろそろ学院の者達が眠りに着く時間…… 女子寮へ向かって歩きながら、クラースは呟く コルベール教授と話しているうちに、すっかり夜が更けてしまった 「色々興味深い話は聞けたが…これでは、またルイズに説教されてしまうな。」 頭の中で自分が説教される姿を浮かべ、苦笑するクラース そろそろ女子寮が見える…そんな時、ドサッという音が聞こえた 「ん、何だ?」 それは女子寮から聞こえ、気になったクラースは足を速める その間にも、小さな悲鳴と共に再び落下音が聞こえてきた 「まただ…一体何が…。」 ようやく女子寮が見え…クラースはジッと暗闇の先を見てみた すると、女子寮の前で男が二人、黒焦げになって倒れていた 服装からして、学院の男子生徒のようである 「これは…まさか、何者かが学院に…。」 一瞬、そう思ったクラースだったが…… 「キュルケ、そいつは誰なんだ!恋人はいないっていってたじゃないか!!」 突然、上空から声が聞こえ…クラースは上を見上げた 女子寮の三階付近…ある一角で三人の男子生徒が浮かんでいる 「なんだ、あれは…一体何をしているんだ?」 まさか、覗き…だとしたら、何て大胆な その間にも押し合い圧し合いしながら何か叫ぶ彼等だが、突如炎が彼らを襲う 炎に飲まれ、魔法を維持できなくなった彼等は地面に落下した 「おおっ、落ちた…大丈夫なのか、彼等は?」 放っておく事も出来ず、取りあえず彼等の元へと駆け寄ってみる 焼かれて三階から落ちたにも関わらず、一応彼等は生きていた ピクピクと動く5つの物体…その一つにクラースは近づく 「おい…大丈夫か?」 「畜生、キュルケの奴…やっぱり俺の事は遊びだったんだな。」 クラースの言葉が聞こえてないのか、生徒は独り言を呟く キュルケの名が彼の口から出たので、他の四人を見てみる 「よく見れば…全員キュルケの取り巻きの男子生徒達だな。」 恋多き女性を自称するキュルケが、何人もの男子生徒をキープしているのを知っている 此処にいるのは、よく授業や食事の時などに彼女とよくいる美青年達だ 「んん…あっ、お前はゼロのルイズの使い魔!?」 その時、倒れていた生徒がようやくクラースの存在を認知した 「ようやく、私に気付いたようだな…大丈夫か?」 「くそぉ…あんたももう一人の使い魔みたいにキュルケとよろしくやるつもりなんだろ?」 「もう一人の使い魔…才人の事か?彼がどうしたんだ?」 「とぼけるなよ、さっきもう一人の使い魔がキュルケと一緒にいるのを見たんだぞ。」 彼の話から察するに、今キュルケの部屋には彼女と才人がいるらしい こんな夜遅くに、歳若い少年少女が一緒とは… 「教育上良くないな…ルイズとの事もあるし、見過ごすわけにはいかんな。」 キュルケとルイズの家の関係を思い出し、女子寮の中へ入ろうとする その前に、此処に倒れた五人を放っておくのは忍びない 「そうだ…君、彼等にこれを食べさせてやってくれ。」 クラースは道具袋からアップルグミを取り出し、五つ分を彼に渡す 「それを食べれば元気になる…君の分もあるからな。」 じゃあな、と後の事をその生徒に任して女子寮の中へと入っていった この少年がギムリである事をクラースが知るのは、まだ先の話である 「さて…此処に才人がいると言われて来てみれば…。」 女子寮に入り、三階に上がってキュルケの部屋の前にクラースはやってきた 中に入ると、際どい下着をつけたキュルケ、その彼女に押し倒されている才人がいる 「あら、ミスタ・レスターじゃありませんか。」 「く、クラースさん…助けて……。」 キュルケの胸に埋もれながら、クラースに助けを求める才人 そんな彼の姿に、クラースはため息を吐いた 「まったく…見損なったぞ、才人。まさか君がそんなに節操がない男だったとは…。」 「ち、違いますよ。俺はただ、帰りが遅いクラースさんを迎えに行こうと思って…そしたら…。」 キュルケのサラマンダーに捕まり、此処に連れ込まれてしまった… そう言おうとした時、キュルケが更に胸を押し付けた 「見ての通り、私達は取り込み中ですの…何でしたら、ミスターも一緒に如何ですか?」 「悪いが遠慮させてもらうよ。それに才人にとっても教育上良くないから連れ帰らせて貰う。」 即答すると、クラースは二人に歩み寄ってあまり乱暴にならないように引き剥がした 「さあ、帰るぞ才人…こんな所ルイズに見つかったらどやされるぞ。」 「は、はい…でも、どやされる前に手と足が出そうですけど。」 彼女が怒ると言葉より先に手と足が出る事は、才人自身が身をもって経験している 違いないな、そう言って二人はキュルケの部屋から立ち去ろうとする 「ちょっと、お待ちになって…ミスタ・レスターは読書がお好きなのですよね。」 帰ろうとする二人を呼び止めると、キュルケは近くにあった箱に手を伸ばした がさごそと中身を探し、その中からあるものを取り出す 「でしたら、これを差し上げますわ…私には不要な物ですので。」 「ん、それは?」 「これは『召喚されし書物』と言って、我が家の家宝ですの。」 そう言って、手に持っている本をクラースに差し出す 気になったクラースはそれを受け取ると、どんなものかと見てみる 「召喚されし書物って…どういう本なんだよ。」 「何でも、魔法の実験中に偶然召喚された物だそうよ…それを、私のおじい様が買い取ったの。」 「……これは鍵が掛かっているな。」 よく見ると、これはケースになっていて問題の本はこの中に入っているようだ だが、クラースの言うとおり鍵が掛かっているのでケースは開かない 「鍵なら此処にありますわよ。」 何時の間に忍ばせていたのか、胸の谷間からケースの鍵を取り出す わざわざ本体と鍵を分けたという事は、単にプレゼントするというわけではないらしい 「成る程、本体はくれると言っても鍵までとは言ってないな…で、交換条件は?」 「察しが良いですわね。今宵私と付き合っていただければこの鍵を差し上げますわ。」 キュルケとしては、クラースを自分の男にしたいとの魂胆である 周囲の男子生徒や教師とは違うその知的な所と魔法、そして大人の雰囲気に惹かれたからだ えっ、俺は…等と呟く才人を他所に、クラースは本をキュルケに突き出す 「そういうのならお断りだ…これは返す。」 キュルケに本を押し付けると、才人を連れて出て行こうとする 断られると思わなかったのか、彼女は目を丸くして驚く 「えっ、ちょっと…ミスターはこの本が欲しくないの?」 「気にはなるが、そうまでして欲しくはないな…それに、後が怖い。」 女の怒りと恨みは恐ろしい事を、クラースは32年の人生から熟知している それでも諦めきれないキュルケは、自身の胸をクラースに押し付ける 「そう仰らずに…私、ミスターに十分すぎるほどの興味を持っておりますの。」 「だから、私は……ん?」 しつこいキュルケを一喝しようと、クラースは振り返る だが、その時初めて彼女が指輪をしている事に気づいた 「キュルケ、その指輪は?」 「これですか?これはこの本と同じく我が家の家宝の一つ、炎のガーネットですわ。」 そう言って、彼女は指に嵌めたガーネットの指輪を二人に見せる 蝋燭の炎に照らされ、宝石は淡い輝きを放っていた 「炎のガーネット?それって唯の指輪じゃないの?」 「ええ、火の魔法の効果を高める作用があるの。普段はおめかし位にしか使ってないけど。」 自分の魔法には自信があるから…ドーピングのような真似はしたくないらしい ふーんと何でもないように見つめる才人に対し、クラースはジッと指輪を見つめている 「それは…そのガーネットの指輪は……すまん、ちょっと見せてくれ。」 急にクラースは態度を一変させ、指輪をよく見ようと近づいた だが、そんなクラースにキュルケは抱きつき、顔を近づける 「ただでは見せられませんわ…ねぇ、ミスター?」 「いや、だからその指輪を……。」 クラースの喰い付きに、ここぞとばかりに色気を振りまくキュルケ 先程のように振りほどこうとせず、クラースは戸惑いを見せている 「クラースさん、どうしたんですか?その指輪が一体……。」 才人が尋ねようとした時、後ろのドアが突然開いた 誰だろう…と、才人が振り返り、それを見て驚いた 「る、ルイズ!?」 入ってきたのは、ルイズだった…しかし、それだけで才人が驚いたわけではない 彼女は今、誰から見ても解る様に、どす黒いオーラを身にまとっている クラースもキュルケも、ルイズが入ってきた事に気づいて振り返る 「ルイズ、丁度良かった。実は彼女が……。」 クラースが何か言おうとしたが、彼女の気を察知して何も言えなくなった その間に、ルイズがずかずかと二人に近づいていく 「クラース先生…この馬鹿犬なら兎も角、まさか貴方がツェルプストーの色香に惑わされるなんて。」 「ま、待てルイズ、私は唯彼女の指輪が……。」 「物につられたってわけ!!!」 更に怒り出すルイズ…普段人の話を聞かない彼女は、怒ると更に話を聞かなくなる 取りあえずキュルケから離れると、才人に話を振った 「才人、キュルケの指輪に見覚えがないか?」 「ええっ、ちょっと…何も俺に話振らなくても。」 「そうじゃない、よく見てみろ。」 そう言われて、才人はジッとキュルケの指にはめられた指輪を見る 蝋燭の火によって淡い輝きを見せるガーネットに、才人も気付いた事があった 「あっ、そう言われると何処かで見た事が………ひょっとして!?」 「ああ、間違いないと思う…まさか、こんな近くにあったとは。」 二人の会話にキュルケは疑問を浮かべるが、相変わらずルイズは怒ったままだ 「ちょっと、サイトも先生も…この期に及んで言い逃れする気?」 「ルイズ、昼間話しただろう。私の召喚術は契約の指輪を使って行うものだと…。」 「それと今の状況が何の関係があるのよ!!」 怒っているルイズには、クラースの言葉を理解する事が出来なかった 仕方なしに、才人がルイズに解りやすく伝える 「だから、今キュルケがしてんのがクラースさんの契約の指輪かもしれないって事だって。」 「それがどうしたって……えっ、ええ~~~~~!!!!!!」 才人の言葉に、ようやくルイズも理解できたらしく、大きな声を上げる 三人の視線がガーネットの指輪に集い、キュルケ自身もそれを見つめる 「これが、ミスタ・レスターの?でも、これって先祖代々から続く品だと聞いていますけど?」 「まあ、似ているだけかもしれんが…ちょっと貸してみてくれないか?」 手を差し出し、クラースはガーネットの指輪を渡すよう頼む だが、キュルケはそんなクラースの手から指輪をはめた手を遠ざける 「構いませんけど…タダで、というのも味気ないですわね。」 「ツェルプストー、あんた…。」 ルイズの反応を見て笑みを浮かべながら、彼女は少し考える しばらくして、「そうだわ」という声と共に、ある考えが彼女の脳裏に閃いた 「私のお願い事を聞いて下されば、この指輪を貸してあげますわ…何、簡単な事ですから。」 「お願い事?」 「そう、明日は虚無の曜日、つまりお休みだから……フフフ。」 三人に向けて、キュルケは微笑む…蝋燭の火に照らされたその微笑は、とても艶美なものだった 前ページ次ページTALES OF ZERO
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合計: - 今日: - 昨日: - 先回171国会と、今回173国会の請願書で 『国籍選択制度の見直しを求めることに関する請願』を紹介議員として提出されていらっしゃいますが http //www.shugiin.go.jp/itdb_seigan.nsf/html/seigan/1712286.htm http //www.shugiin.go.jp/itdb_seigan.nsf/html/seigan/1730617.htm 河野太郎先生のホーム及びブログを検索しても該当する請願内容の記事が発見できませんでした。 http //www.taro.org/index.php http //www.taro.org/gomame/index.php 上記内容の『国籍選択制度の見直しを求めることに関する請願』をインターネットで検索したところ、 在仏日本人会に行き当たり、http //www.nihonjinkai.fr/ そのサイト内で上記のタイトルと同様な請願書を発見しました。 国会提出の請願書と同じであるとの確証はありませんが、参考までに。 以下のもののようです。 http //www.nihonjinkai.fr/seigan3.pdf 主旨としては、 『早急に法の形骸化や不平等を伴わず、確実に国籍選択制度を運用する施策を明確にして下さい。一方の選択 肢として、日本弁護士連合会の国籍選択制度に関する意見書(平成20年)の考慮を望みます。意見書では、これらの 対象者が国籍選択義務の適用がないように国籍選択制度の見直しを求めています。人権擁護という観点からすれば、 この意見書に沿った見直しが望まれます。よって、以下の請願を致します 請願項目 一刻も早い国籍選択制度の見直し。』 ・・・とあり、この請願書に関しては、 どうも、この日本弁護士連合会の国籍選択制度に関する意見書(平成20年)が肝のようです。 ※意見の趣旨のみ・・・全文は以下リンクをご参照願います。 http //www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/data/081119_3.pdf ・・・上記意見書からポイントを指摘しておきます。 1、国籍選択制度自体を 『基本的人権の保障に関して重要な意味をもつ法的地位である国籍 を一律に奪い、アイデンティティーの自己決定権の侵害などの人権侵害』と定義し、 国籍選択義務の適用がないように、国籍法を改正することへの意見 2、国籍法15条1項に基づく国籍選択の催告に関して・・・ 『異なる国籍の両親から生まれた複数国籍者や外国籍者との婚姻に より自動的に複数国籍となった者について同催告をなすことは人権侵害』と定義し、 国籍法15条1項に基づく国籍選択の催告を、しない運用を維持することを要望。 3、国は、国籍が基本的人権の保障に関連して重要な意味をもつ法的地位である こと、・・・、 『国籍選択制度のほか、国籍留保制度、自ら他の国籍を取得した場合の国 籍喪失制度などについても、複数国籍保持を容認する方向での新たな国籍制度 を検討』することへの具申 ※上記3、に関しての私見(文案まとめ人)として、 国籍とは、「基本的人権の保障」なのか?「国家の成員としての地位」なのか? また、国家主権を考えたときの国籍の意義として、 「国家の主権を体現する国民としての国籍の二重基準は許されるのか?」 「日本にとって、国家主権よりも人権が上位優先課題なのか?」 もし、上記の内容に則した請願および意見書であるのならば、 自民党政治家の河野太郎先生と、 日本弁護士連合会に、その真意を問いたい。 文責・文案まとめ人
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元スレURL 【SS】せつ菜「イヤホンが壊れました!」 概要 歩夢さんと一緒に買いに行きます! タグ ^優木せつ菜 ^上原歩夢 ^天王寺璃奈 ^園田海未 ^桜内梨子 ^近江彼方 ^短編 ^コメディ ^あゆせつ 名前 コメント
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前ページ次ページとりすていん大王 色々とありつつ始まります とりすていん大王 9回目 「特急、ラ・ロシーェル発、アルビオン行き~、ラ・ロシーェル発、アルビオン行き~ご乗船ありがとうございます」 お父さん一行はラ・ロシーェルの桟橋でアルビオン行きの船に乗りました 「やはり飛空船は駅弁だね」 「そうね、ワルド様、あとお茶ですわ」 「駅弁サイコー」 「まぁ タバサったら(ぽっ)」 「ツェルプストー自重しなさい お父様お茶どうぞ」 「ははは(ずずず)」 なんだかんだと一行が呑気にご飯を食べている間に船はアルビオンに到着しました そして・・・ 色々すっとばして舞台はアルビオン城の礼拝堂、お父さん一行はいきなりピンチに見舞われたのです 「ふふふ、そうだ僕はレコン・キスタだ!!」 「ワルド様!!」 「ルイズ、僕と共に行こう」 「ワルド様、頬にご飯粒がついてますわ」 「え?ああ、急に場面が変わるからさ」 ウェールズ王子の胸に杖をつき立てルイズを無理やり小脇に抱えたワルドが勝利の高笑いを響かせます 「はははは、ウェールズ王子の命!!僕の花嫁ルイズ!!そしてアンリエッタの手紙、目的は全て達した!!」 今までの存在感の無さが嘘の様にその存在感をアピールするワルド お父さんもルイズが人質となっているので動けません 「ははは!!お前らもレコン・キスタに参加すれば命は助かるぞ!!」 その言葉に反応したのは意外にもモンモランシーでした 「ふ、ふざけないでよ!!誰がレコン・キスタなんかに参加するものですか!!」 その言葉を聞いた瞬間にワルドの顔が能面のように感情を無くしました そして厳かに告げます 「そうか、だったら選べ、今 僕に殺されるかレコン・キスタの兵士に陵辱の限りを尽くされ死ぬか」 ぎりりと歯を強くかみ締める音が二つ、ルイズとモンモランシーの二人です そして・・・ その声はぴたりと重なりました 「「誰があんたの思い通りになるんもんですか!!」」 「なら纏めて死ね!!ライトニング・クラウド!!」 強力な雷撃がモンモランシーを襲います モンモランシーが恐ろしさの余り、目を瞑ったその時、目の前に立つ影がありました 「お、お父様!!」 そうです、お父さんがみんなの前に出て魔法をその身で受けたのです お父さんの所々が黒く焦げ、煙が上がってます 「ふふふ、さすがモンモランシー伯 だが次はどうかな!!」 勝利の美酒に酔いながらワルドがさらにお父さんに向けて一撃を放ちました 「いやぁ!!」 「やめてぇ!!」 モンモランシーやルイズの絶叫が礼拝堂に響きました ですが当のお父さんは何かを確信したように呟いたのです 「・・・きたか」 瞬間、お父さんの眼前の地面が爆発しました そして出てきたのは 「おでれーたー!!俺様 相棒と大とうじょぉーーう!!」 デルフリンガーを持った黒髪の少年でした 「師匠、おくれてすんません!!」 いきなり現れた黒髪の少年なんとデルフリンガーで魔法を吸収してしまいます 「な、なんだと!?うぉおお!?」 いきなりの闖入者にワルドが驚いていると急にワルドの足場が崩れ落ちましたその拍子にルイズを離してしまいました 「し、しまった」 慌ててルイズを捕まえようとしたワルドの前に地面から7体の戦乙女を模した青銅のゴーレムが現れてワルドの邪魔をします 「乙女の心を踏みにじるヤツ・・・」 土煙の中からあの男の声がします 「乙女の夢を壊すヤツ・・・」 段々と薄れていく土煙にあの見覚えのあるシルエットが写ります 「そんな女性の敵は、このギーシュ・ド・グラモン・・・いや」 モンモランシーは高鳴る胸を押さえ、ワルドは薄れゆく土煙を鋭い目つきで睨み、ルイズは不安そうな瞳で見つめ、 キュルケは戸惑い、タバサは無表情ですが素早く次の行動を頭の中で計算し、お父さんは深く頷きました 「新しく生まれ変わったこの僕!!ギーシュ・ザ・グレートが許さない!!」 土煙が晴れたそこには、以前お父さんに(無理やり)修行の旅に連れて行かれて久しい級友、あのギーシュ・ド・グラモンが立っていました そして彼を見て一同は叫んだのです 「「「「「へ、へ、変態だぁーーー!!」」」」」 ギーシュの姿は筋肉ムキムキの体に青いブーメランパンツ一丁にマントを羽織り、杖と同時に何故かバカみたいにデカい斧をぶら下げてるのですから 「・・・・・・いい」 「へ?タバサ何か言った?」 「ううん」 心なしかワルキューレもアマゾネス化してるような気がします 「な、なんなんだ一体?ぶべらぁ!?」 突然の闖入者たちに放心状態になっていたワルドがいきなり吹っ飛ばされました ふたりに殴られたのです 「いくぞ、サイト!!」 「おう、ギーシュ!!」 さらに二人の闖入者は互いに顔を見ると頷き拳をおもいっきり振り上げました 「「往生せいやぁ!!」」 ガゥワコーンと言う音をたててワルドが吹っ飛んでいきます 「たわらばぁ!!」 奇妙な声を上げてワルドが空の彼方へと飛んで行きました まぁ吹っ飛びながらも 「僕はあきらめないぞー」 とか言ってるので大丈夫でしょう 礼拝堂ではお父さんとモンモランシーの魔法の治療で一命を取り留めたウェールズ王子と城で別れルイズにキュルケとモンモランシー、タバサが ギーシュが掘った穴を潜り抜けアルビオン城を脱出したのでしたが、何故かこの礼拝堂に残った影が三つ 「さて、ギーシュ、君は逃げなくてよかったのか?」 堂々と仁王立ちで押し寄せてくるレコン・キスタの大群を見つめサイトはにギーシュに問いかけます 「モンモランシーを虐めた奴らを許せはしないな、そういうサイト、君こそウエストウッド村に待ってる人がいるんだろ?」 「あいつらをほおっておくとテファになにするかわからないからな」 お互いの顔を見てにやりと笑うギーシュとサイト、そして 「やぁ、二人とも では殿を務めようか」 お父さんが二人の前に歩み出ると二人は恭しくお父さんに礼をしました それを見てお父さんは頷くとあらん限りの声でこれからレコン・キスタの大群相手に始まる大活劇の為に気を入れたのです 「ぶるうううああああああああああああああああああ!!」 続く 前ページ次ページとりすていん大王
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前ページ次ページゼロと波動 学院の入り口ではロングビルとシエスタが馬車の御者台に座って待機していた。 街を歩けば誰もが振り向くであろう理知的でグラマラスなメガネの美女と、 隣の美女に負けない豊かな胸の健康的な少女が並んで座っているのだから、ちょっとした絵画に見えないこともない。 そして幌付きの荷台にはルイズ、キュルケ、タバサが乗っており、ルイズとキュルケがぎゃあぎゃあと何かを言い合っている。 その中でタバサは我関せずといった風に革張りの装丁が施された分厚い本を読んでいた。 こちらも御者台の二人に負けない美少女ぞろい。 大人の女から年頃の娘、あと何年かで年頃になりそうな娘。 巨乳、平原。 美女に美少女。 正によりどりみどり。 金持ちの貴族でもこれだけ集めるのは至難の業だろう。 間違いなく極上のハーレムだった。 ここにいるのがギーシュならブリミルに感謝しただろうし、マリコルヌなら死んでしまっていたかもしれない。 幸せ死にというやつだ。 だが、そんな普通の男なら歓喜する極上ハーレムもリュウにとっては自分が保護者にでもなったような気分でしかない。 「あ!リュウさん!こっちですよー!」 リュウに気づいたシエスタが大きく手を振る。 「ダーリン!」 キュルケも気づき、荷台から身を乗り出して負けじと手を振る。 「ちょっと!人の使い魔に向かって何がダーリンよ!?」 ルイズが噛み付く。 「使い魔ったって、リュウは人間なんだから別に恋愛感情抱いてもいいじゃない。なんならあなたもフレイムをダーリンって呼んでもいいわよ?」 「冗談じゃないわ!そもそもトカゲじゃない!」 「んまっ!?トカゲとは失礼ね!サラマンダーよ!?火竜山脈産のサラマンダーなのよ!?ブランドものよ!!?」 自分の使い魔をトカゲ呼ばわりされてヒートアップするキュルケ。 「・・・うるさい」 タバサが本から目を離さないまま、隣に立てかけていた自分の背丈より長い杖を手に取ると短く「サイレント」の呪文を詠唱する。 途端に荷台からは一切の音が消え、静寂が訪れた。 キュルケとルイズは相変わらず何か言い合っているが、口をパクパクさせるだけで声が出ていない。 声が出ないから、二人は取っ組み合いを始めた。 「・・・ちょっと狭いかもしれんが、俺もこっちに座らせてくれ」 リュウは荷台の惨状を見て大きく息をつくと、荷台に乗るのを諦めて御者台に座ることにした。 「わあ!リュウさんだー!リュウさんだー!!」 シエスタが隣に座ったリュウの腕にしがみつく。 自分の腕に頬と胸を擦り付けてくるシエスタに戸惑うリュウ。 リュウは女性の扱いがとても下手だった。 走り出した馬車は至って平穏に山道を進んでいた。 次々と木々が後ろに流れていくのを見ているとちょっとした遠出のようで、とても今から盗賊を退治しにいくようには思えない。 そんな平穏極まりない山の中を小一時間ほどシエスタの他愛無い話など聞きながら進んでいたが、話が一区切りついた辺りでリュウが口を開いた。 「ところで・・・フーケは捕まるとどの程度の罪になるんだ?」 この世界での罪に対する罰とはどの程度のものか知らないリュウが尋ねる。 「もしフーケが平民なら良くて打ち首、悪ければ拷問の末に晒し首でしょうね。貴族ならどういう裁定が下されるかは私には判りかねます」 ロングビルが素っ気無く答える。 「フーケは魔法が使えるんだろう?貴族なんじゃないのか?」 解せないといった感じで聞くリュウ。 「貴族は必ずメイジですが、メイジが必ずしも貴族とは限りませんよ。貴族の名を剥奪されたメイジもいますから」 ロングビルの整った顔に陰が落ちる。彼女は溜息をつくと最後に一言付け加えた。 「私みたいに・・・」 いつの間にかキュルケが荷台から顔を出してリュウとロングビルの会話を聞いていた。 毎晩遅くまで勉強と魔法の練習をしているルイズはキュルケとの肉弾戦に飽きると、馬車の揺れの心地よさに勝てず眠りこけてしまっていた。 一方、夜更かしは美容の大敵と睡眠時間バッチリのキュルケは遊び相手を失ってしまい、暇を持て余していたのだった。 「あら?ミス・ロングビルって貴族じゃなかったの?なんで名を剥奪されたのか聞いてもいいかしら?」 興味津々な顔でロングビルが口を開くのを待つ。 「ごめんなさいね、あまり話したい過去じゃないの」 ロングビルが怒るでもなく、寂しげに答える。 「そりゃそっか、ごめんなさい」 キュルケはばつの悪そうな顔で素直に謝ると、荷台の中に戻っていった。 が、すぐにもう一度現れるとシエスタを引っ張っる。 「っていうか、あなた何でダーリンにくっついてるのよ!こっち来なさい!」 もちろんキュルケの力程度では微動だにしないシエスタではあったが、 貴族の命令とあれば逆らうわけにもいかず「ふぇ~~」などと情けない声をあげながらキュルケと共に荷台に消えていった。 荷台はロングビルとリュウだけになった。 しばらく沈黙が続いたが、やがてリュウは荷台の連中が誰もこちらに来ないのを確認してから口を開いた。 「盗んだ物を返してもらえないだろうか」 前をしっかりと見据えたまま告げるリュウ。 ロングビルがぎょっとした顔でリュウの方を向く。 ――バレているのか?―― もし自分の正体がバレているのなら、この男が相手では万に一つも勝ち目は無い。 何しろ形容し難いほどの殺気をバラ撒き、30メイルのゴーレムを瞬く間に消し去った男だ。 トライアングル・クラスのメイジである自分にはどう転んでも勝てまい。 いや、それどころか、スクウェア・クラスでも勝てるとは思えない。 それでも必死で戦う術を模索する。 負けるワケにはいかないのだ。 ――勝てないまでも、せめて逃げることさえできれば―― が、やはりいくら頭の中でシミュレーションしてみても自分が勝つことはおろか、逃げきれる予測にさえ辿り着かない。 襲い来る絶望感に鼻の奥がジンジンと痛み、体中の毛穴が開く。 口の中はカラカラに渇ききってしまっているが、最大限に平静を装ってなんとか言葉を搾り出す。 「どういう意味でしょう?」 「そのままの意味だ。俺にはあんたが殺されなければならないほどの悪人には見えない」 真っ直ぐ前を見るリュウの顔には表情がなく、何を考えているかを窺い知ることが出来ない。 「ミスタ・リュウ。貴方は私を誰かと勘違いしていませんか?」 脈拍が上がり、背中にはいやな汗がじっとりと浮かぶが表面上にはいっさい出さず、あくまで白を切り通そうとするロングビル。 リュウはロングビルの方に顔を向けると、真剣な顔で告げた。 「俺は”土くれのフーケ”に死んで欲しくないんだ」 ロングビルの目つきが急に鋭くなり、口調も変わる。 「・・・いつ判ったんだい?」 理知的だった美女の顔は消えてなくなり、野生の荒々しさが宿った猫科の動物のような美しさを醸しだす。 誤魔化しきれないと悟り、ロングビルでいることをやめたのだ。 それと同時に自分の命運はこの男の掌の上にあることを覚悟する。 今、リュウの隣にいるのはまさに”土くれのフーケ”だった。 「一番最初にあんたに出会ったとき、少なくともあんたは秘書ではないと思っていた」 「そんな最初から?まったく参ったね・・・”土くれのフーケ”様がなんてざまだい・・・」 ロングビル、いや、フーケがため息をつきながら天を仰ぐ。 「で、あたしがフーケだと判ったのは?」 「学院長室にあんたが入って来たとき、あんたはルイズを見て驚いていた。そして、すぐに安堵したような顔をした」 「・・・で?」 「あんたは大木が直撃してルイズは死んだと思い込んでいたんだ。ところがそのルイズが学院長室にいた。 死んだと思っていた人間が目の前にいるんだ、驚くだろうさ。そして安堵した。少なくとも、殺してしまったと悔いていたんだろう」 フーケはしばらく黙ってリュウの顔を見つめたあと、諦めたように口を開いた。 「あんた、いったい何者なんだい?デタラメに強いだけじゃなくて周りも良く見えてるし頭も回る。なんであたしはこんなのを敵に回しちゃったんだろうねぇ」 言って、大きな溜息をつく。 「盗んだものを返してくれないか?」 リュウがもう一度言う。 「いいよ。元々返すつもりになってたしね」 あっさり了承するフーケ。 「あんたの言うとおり、あたしはあの貴族の娘が死んだと思ってたからね。物を盗るのに誰かを死なせてたんじゃあ、あたしの中じゃ仕事は失敗なのさ。 仕事が失敗してるのに獲物は手元にあるなんて納得いかないだろ? ただ、返そうにも学院が本気になって警備に力を入れたんじゃあ、流石のあたしでもメンドウだからね。 適当な廃屋にでも置いといて、そこに案内しようと思ってたんだよ。 そしたらどうだい、あの娘が生きてるじゃないか。 それで返すか返さないかで迷ってるうちにあんたに正体を見抜かれちまった。ホント、あたしも焼きが回ったねぇ」 「悪いことは出来ないもんさ」 リュウが笑った。 フーケも笑った。 それは裏の世界に生きている人間とは思えないほど、明るく輝くような笑顔だった。 「あんた、いいヤツだね」 フーケは笑うのをやめると、真面目な顔になる。 「でもね、『破壊の珠』は返すけど、あたしは”土くれのフーケ”を辞めるワケにはいかない。何しろ金が要るからね。 平民がまともに稼いでも手に入る金なんてたかが知れてるしさ。それじゃ足りないんだ。 ・・・たとえ捕まって晒し首になるとしても、あたしには金が要るんだよ」 リュウを見つめ、寂しそうに呟く。 「あんたは悪人に見えないと言ってくれたけど、あたしは悪人なんだよ・・・」 フーケは自分がなぜこんな話をリュウにしているのか解らなかった。 『もう盗みはしない』と言ってその場をごまかし、後で隙を見て消え去るのが一番の手だと頭では理解しているはずなのに、自分はリュウに洗いざらい喋ってしまっている。 「なんでだろうね、あんたといると調子が狂うよ・・・で、どうする?あたしはフーケを辞めないと宣言しちまったよ?あたしを捕まえるかい?」 この男は正義感が強い。さっきはもしかしたら見逃してくれるかも知れないと思ったが、盗みを辞めないと断言した以上は自分を捕まえるだろう。 先ほどもシミュレーションした通り、この男から逃げ出せる可能性は殆どないと考えていい。 ”ごめんね、ティファ。もうお金を渡してやれそうにないよ・・・” フーケは覚悟を決めると、再び逃走するための作戦を幾重にも考え始めた。 「いや、好きにすればいいさ」 だが、リュウから返ってきた言葉は意外なものだった。だから、聞き返してしまった。 「え?」 「好きにすればいいさ。俺はフーケの正体が誰なのか知らない。どうやら少し居眠りしてしまったようだ」 「・・・なんで・・・見逃してくれるんだい?」 「言っただろう?俺にはあんたが悪人には見えない。それだけだ」 リュウは真っ直ぐに前を見つめ、力強く言った。 リュウは見た。 『金が要る』と言ったときのフーケの顔を。 それは自身の欲の為ではなく、必要に迫られた悲壮感漂うものだった。 おそらく誰かのために多額の金が必要なのだろう。 自分から大貴族であるルイズやキュルケに頼めばそれなりの額は工面してもらえるかもしれない。 だが、もしそうしてフーケの為に金を用意しても、きっとフーケはその金を受け取らない。 自分がフーケのためにしてやれることは、何も無かった。 目の前にいる人間すら助けることのできない自分。 多少は人より力が強いかも知れないが、それが一体なんだと言うのか。 己の無力さに歯噛みするリュウ。 それに街で聞いた話ではフーケは金持ちの貴族からしか盗まないらしいし、彼女の行動から人の命を奪うこともしないことを知った。 決して褒められたことではないが、誰かの為に何かを成そうとするフーケの行為を止めることなど、無力な自分にできるはずがなかった。 「そんな顔するんじゃないよ。あたしは盗賊なんだよ?」 リュウの思いつめた顔を見て、フーケはリュウが何を思っているのかを悟った。 「さっきも言ったけど、あんたってば本当にいいヤツだね。あんたに気にかけてもらえるなんて、あの貴族の娘が羨ましいよ」 フーケは更に言葉を続けようとしたが思い直して口を閉じ、しばらく無言でリュウの顔を見つめる。 「・・・このまま道なりに進みな。1時間もすれば小屋のある広場に出るからね。その小屋の中に、箱に入れて置いてあるよ」 フーケはメガネを外し、髪を束ねていた結紐を解く。長く美しい緑の髪が風に煽られ大きく広がる。 「ロングビルはこれで終わりだよ。『破壊の珠』が手に入らなかったから、もう学院にいる意味ないしね」 「そうか。何か伝えておきたいことはあるか?」 リュウが尋ねる。 「そうだね・・・オスマンのジジイに礼でも言っといてくれると嬉いね。 あんたの秘書をやってたことに文句はなかった、給料の額だって満足してるって。”土くれのフーケ”様が感謝してたってね。 実際、あのジジイは平民のあたしにも十分良くしてくれたよ。セクハラだけはどうにも我慢ならなかったけどね」 フーケが少しだけ寂しそうに、しかし笑顔で言う。 「物盗りが何言ってやがるって話だけどね」 そう付け加えてけらけらと笑うフーケ。 陽光に照らされるフーケの笑顔はとても眩しく、美しかった。 「元気でな」 リュウが短く言う。 「あんたもね」 フーケは馬車の手綱をリュウに手渡すと、ぐっと顔を近づけた。 「このフーケ様が敵わないって思った相手なんだ、よく顔を見せとくれ」 しばらくリュウの顔を見つめたあと、突然自分の唇をリュウの唇に合わせる。 「な!?何をする!!?」 滑稽なほど慌てふためくリュウ。とにかく、色恋沙汰とは縁遠い男だった。 「見逃してくれた礼だよ。悪くはないだろ?これでも自分の見てくれには自信があるんだ。 ホントは一晩ぐらい相手してやっても良かったんだけどね、それをしちまうと、あたしがあんたに惚れちまいそうだからさ。残念だけどやめとくよ」 フーケはじっとリュウを見つめると、とびきりの笑顔で片目をつぶる。 「じゃあね」 それだけ言うと御者台から飛び降り、フーケはそのまま森の中に消えていった。 ――惚れちまいそうだから・・・か。もう、どっぷり手遅れだよ。 ホント、”土くれのフーケ”がなんてざまだい・・・―― 馬車を見送りながらフーケが自嘲気味に呟いた。 「さて・・・なんて言い訳するかな・・・」 リュウは一人になってしまった御者台の上でルイズ達にどう説明しようかと悩むのだった。 前ページ次ページゼロと波動
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キュルケは、ゲルマニアの人である。 彼女はゲルマニア貴族の中でも評判の美女だが、身持ちがかたく、どちらかというと無口で陰気な人柄であった。 しかし、彼女も十代の頃は炎のように燃え上がりやすく、恋多き奔放な乙女だったそうだ。 それがどうしてこのようになってしまったのか、人に尋ねられても彼女は決して語ろうとはしなかった。 ある春のこと。トリステインのモット二世という若い貴族が、たまたま彼女と話す機会を得た。 「良い季節になりましたね」 挨拶がてら時候を話題にすると、キュルケは不機嫌な顔になった。 「私は春が嫌いよ」 「それは、またどうして」 冬や夏が嫌いというのはよく聞くけれど、春が嫌いだと言う人は珍しい。 キュルケは遠くを見るような目をしていたが、ぽつりぽつりと、学生時代のことを語り始めた。 その当時、彼女はトリステイン魔法学院へ留学生としており、多くの男子生徒を恋路に明け暮れていた。 二年生への進級試験として、毎年この時期には使い魔を召喚する儀式が行われる。 この時キュルケは立派なサラマンダーを召喚して、風竜を召喚した親友と共に大いに注目を浴びた。 でも、もっとも注目を浴びたのは、ルイズという女子生徒が召喚した使い魔だった。 彼女が召喚したのは、見たこともないおかしな服装をした平民の女だったのである。 その女は遥か遠い国からやってきたものらしく、初めは戸惑っていたようだが、すぐに、はいはいとルイズに従った。 「夫に先立たれて子供もなく、親類の家に厄介になろうと思っておりましたところ、あなたに召喚にされました。これも何かのご縁でございましょう。どうぞ、使い魔にしてくださいませ」 女はこんなようなことを語っていたそうだ。 人間の使い魔なんて……と、ルイズは不満そうだったが、担任の教師に促されたことと、相手の従順さも手伝って、結局この女を使い魔にした。 その夜。キュルケは何となくルイズとその使い魔の様子が気になり、隣部屋であったことを幸いに、そっと聞き耳をたててみたが、別に変わった様子はない。 なんだつまらないと思って、その夜は約束していた相手もいなかったので、早々にベッドに入ってしまった。 ところが、その夜はどうにも寝つきが悪く、寝ているのか起きているのか、よくわからない状態が長く続いた。 そんな中、ふと耳をすませてみると隣の部屋から、何か声が聞こえる。 「痛い……痛い……」 ルイズの声で、そんなことを言っているようだった。 キュルケは朦朧とした気分であったので、最初は変な夢を見るわねえ――ぐらいにしか思わなかった。 だが次第に意識がはっきりしてくるに従い、得体の知れない胸騒ぎがしてきたので、使い魔を従えて、そっとルイズの部屋までいってみることにした。 ドアの前まで近づいたところ、サラマンダーが異常に興奮し始めた。 これに嫌なものを感じたキュルケは、いつでも炎を飛ばせるように杖を振るって呪文を唱え、蹴破るようにして部屋へ踏み入った。 部屋には、ぎょろりとした丸い目玉の、藍色の怪物がいた。 キュルケが攻撃魔法を放つ前に、怪物は乱杭歯をむき出して一声叫ぶと、窓を突き破り外へ逃げ出していった。 学院中は大変な騒ぎとなり、生徒も教師もほとんど総員のような形で怪物の行方を追ったが、結局怪物はそのまま姿を消してしまった。 使い魔の女は、どこにも姿が見えなかった。 しかし、ルイズの部屋には、女が着ていた衣服と、その女の皮が残されていたという。 「それで、そのルイズという女子生徒はどうなったのですか?」 モットが聞いたが、キュルケは詳細を語ることはなかった。 ただ、 「あの子は、髪の毛と頭の一部しか残ってなかった」 このように、いつも以上に陰鬱な表情で語ったという。 ※トリステイン王立図書館蔵、『古今怪異録集』より――