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前ページ次ページゼロと波動 学院の入り口ではロングビルとシエスタが馬車の御者台に座って待機していた。 街を歩けば誰もが振り向くであろう理知的でグラマラスなメガネの美女と、 隣の美女に負けない豊かな胸の健康的な少女が並んで座っているのだから、ちょっとした絵画に見えないこともない。 そして幌付きの荷台にはルイズ、キュルケ、タバサが乗っており、ルイズとキュルケがぎゃあぎゃあと何かを言い合っている。 その中でタバサは我関せずといった風に革張りの装丁が施された分厚い本を読んでいた。 こちらも御者台の二人に負けない美少女ぞろい。 大人の女から年頃の娘、あと何年かで年頃になりそうな娘。 巨乳、平原。 美女に美少女。 正によりどりみどり。 金持ちの貴族でもこれだけ集めるのは至難の業だろう。 間違いなく極上のハーレムだった。 ここにいるのがギーシュならブリミルに感謝しただろうし、マリコルヌなら死んでしまっていたかもしれない。 幸せ死にというやつだ。 だが、そんな普通の男なら歓喜する極上ハーレムもリュウにとっては自分が保護者にでもなったような気分でしかない。 「あ!リュウさん!こっちですよー!」 リュウに気づいたシエスタが大きく手を振る。 「ダーリン!」 キュルケも気づき、荷台から身を乗り出して負けじと手を振る。 「ちょっと!人の使い魔に向かって何がダーリンよ!?」 ルイズが噛み付く。 「使い魔ったって、リュウは人間なんだから別に恋愛感情抱いてもいいじゃない。なんならあなたもフレイムをダーリンって呼んでもいいわよ?」 「冗談じゃないわ!そもそもトカゲじゃない!」 「んまっ!?トカゲとは失礼ね!サラマンダーよ!?火竜山脈産のサラマンダーなのよ!?ブランドものよ!!?」 自分の使い魔をトカゲ呼ばわりされてヒートアップするキュルケ。 「・・・うるさい」 タバサが本から目を離さないまま、隣に立てかけていた自分の背丈より長い杖を手に取ると短く「サイレント」の呪文を詠唱する。 途端に荷台からは一切の音が消え、静寂が訪れた。 キュルケとルイズは相変わらず何か言い合っているが、口をパクパクさせるだけで声が出ていない。 声が出ないから、二人は取っ組み合いを始めた。 「・・・ちょっと狭いかもしれんが、俺もこっちに座らせてくれ」 リュウは荷台の惨状を見て大きく息をつくと、荷台に乗るのを諦めて御者台に座ることにした。 「わあ!リュウさんだー!リュウさんだー!!」 シエスタが隣に座ったリュウの腕にしがみつく。 自分の腕に頬と胸を擦り付けてくるシエスタに戸惑うリュウ。 リュウは女性の扱いがとても下手だった。 走り出した馬車は至って平穏に山道を進んでいた。 次々と木々が後ろに流れていくのを見ているとちょっとした遠出のようで、とても今から盗賊を退治しにいくようには思えない。 そんな平穏極まりない山の中を小一時間ほどシエスタの他愛無い話など聞きながら進んでいたが、話が一区切りついた辺りでリュウが口を開いた。 「ところで・・・フーケは捕まるとどの程度の罪になるんだ?」 この世界での罪に対する罰とはどの程度のものか知らないリュウが尋ねる。 「もしフーケが平民なら良くて打ち首、悪ければ拷問の末に晒し首でしょうね。貴族ならどういう裁定が下されるかは私には判りかねます」 ロングビルが素っ気無く答える。 「フーケは魔法が使えるんだろう?貴族なんじゃないのか?」 解せないといった感じで聞くリュウ。 「貴族は必ずメイジですが、メイジが必ずしも貴族とは限りませんよ。貴族の名を剥奪されたメイジもいますから」 ロングビルの整った顔に陰が落ちる。彼女は溜息をつくと最後に一言付け加えた。 「私みたいに・・・」 いつの間にかキュルケが荷台から顔を出してリュウとロングビルの会話を聞いていた。 毎晩遅くまで勉強と魔法の練習をしているルイズはキュルケとの肉弾戦に飽きると、馬車の揺れの心地よさに勝てず眠りこけてしまっていた。 一方、夜更かしは美容の大敵と睡眠時間バッチリのキュルケは遊び相手を失ってしまい、暇を持て余していたのだった。 「あら?ミス・ロングビルって貴族じゃなかったの?なんで名を剥奪されたのか聞いてもいいかしら?」 興味津々な顔でロングビルが口を開くのを待つ。 「ごめんなさいね、あまり話したい過去じゃないの」 ロングビルが怒るでもなく、寂しげに答える。 「そりゃそっか、ごめんなさい」 キュルケはばつの悪そうな顔で素直に謝ると、荷台の中に戻っていった。 が、すぐにもう一度現れるとシエスタを引っ張っる。 「っていうか、あなた何でダーリンにくっついてるのよ!こっち来なさい!」 もちろんキュルケの力程度では微動だにしないシエスタではあったが、 貴族の命令とあれば逆らうわけにもいかず「ふぇ~~」などと情けない声をあげながらキュルケと共に荷台に消えていった。 荷台はロングビルとリュウだけになった。 しばらく沈黙が続いたが、やがてリュウは荷台の連中が誰もこちらに来ないのを確認してから口を開いた。 「盗んだ物を返してもらえないだろうか」 前をしっかりと見据えたまま告げるリュウ。 ロングビルがぎょっとした顔でリュウの方を向く。 ――バレているのか?―― もし自分の正体がバレているのなら、この男が相手では万に一つも勝ち目は無い。 何しろ形容し難いほどの殺気をバラ撒き、30メイルのゴーレムを瞬く間に消し去った男だ。 トライアングル・クラスのメイジである自分にはどう転んでも勝てまい。 いや、それどころか、スクウェア・クラスでも勝てるとは思えない。 それでも必死で戦う術を模索する。 負けるワケにはいかないのだ。 ――勝てないまでも、せめて逃げることさえできれば―― が、やはりいくら頭の中でシミュレーションしてみても自分が勝つことはおろか、逃げきれる予測にさえ辿り着かない。 襲い来る絶望感に鼻の奥がジンジンと痛み、体中の毛穴が開く。 口の中はカラカラに渇ききってしまっているが、最大限に平静を装ってなんとか言葉を搾り出す。 「どういう意味でしょう?」 「そのままの意味だ。俺にはあんたが殺されなければならないほどの悪人には見えない」 真っ直ぐ前を見るリュウの顔には表情がなく、何を考えているかを窺い知ることが出来ない。 「ミスタ・リュウ。貴方は私を誰かと勘違いしていませんか?」 脈拍が上がり、背中にはいやな汗がじっとりと浮かぶが表面上にはいっさい出さず、あくまで白を切り通そうとするロングビル。 リュウはロングビルの方に顔を向けると、真剣な顔で告げた。 「俺は”土くれのフーケ”に死んで欲しくないんだ」 ロングビルの目つきが急に鋭くなり、口調も変わる。 「・・・いつ判ったんだい?」 理知的だった美女の顔は消えてなくなり、野生の荒々しさが宿った猫科の動物のような美しさを醸しだす。 誤魔化しきれないと悟り、ロングビルでいることをやめたのだ。 それと同時に自分の命運はこの男の掌の上にあることを覚悟する。 今、リュウの隣にいるのはまさに”土くれのフーケ”だった。 「一番最初にあんたに出会ったとき、少なくともあんたは秘書ではないと思っていた」 「そんな最初から?まったく参ったね・・・”土くれのフーケ”様がなんてざまだい・・・」 ロングビル、いや、フーケがため息をつきながら天を仰ぐ。 「で、あたしがフーケだと判ったのは?」 「学院長室にあんたが入って来たとき、あんたはルイズを見て驚いていた。そして、すぐに安堵したような顔をした」 「・・・で?」 「あんたは大木が直撃してルイズは死んだと思い込んでいたんだ。ところがそのルイズが学院長室にいた。 死んだと思っていた人間が目の前にいるんだ、驚くだろうさ。そして安堵した。少なくとも、殺してしまったと悔いていたんだろう」 フーケはしばらく黙ってリュウの顔を見つめたあと、諦めたように口を開いた。 「あんた、いったい何者なんだい?デタラメに強いだけじゃなくて周りも良く見えてるし頭も回る。なんであたしはこんなのを敵に回しちゃったんだろうねぇ」 言って、大きな溜息をつく。 「盗んだものを返してくれないか?」 リュウがもう一度言う。 「いいよ。元々返すつもりになってたしね」 あっさり了承するフーケ。 「あんたの言うとおり、あたしはあの貴族の娘が死んだと思ってたからね。物を盗るのに誰かを死なせてたんじゃあ、あたしの中じゃ仕事は失敗なのさ。 仕事が失敗してるのに獲物は手元にあるなんて納得いかないだろ? ただ、返そうにも学院が本気になって警備に力を入れたんじゃあ、流石のあたしでもメンドウだからね。 適当な廃屋にでも置いといて、そこに案内しようと思ってたんだよ。 そしたらどうだい、あの娘が生きてるじゃないか。 それで返すか返さないかで迷ってるうちにあんたに正体を見抜かれちまった。ホント、あたしも焼きが回ったねぇ」 「悪いことは出来ないもんさ」 リュウが笑った。 フーケも笑った。 それは裏の世界に生きている人間とは思えないほど、明るく輝くような笑顔だった。 「あんた、いいヤツだね」 フーケは笑うのをやめると、真面目な顔になる。 「でもね、『破壊の珠』は返すけど、あたしは”土くれのフーケ”を辞めるワケにはいかない。何しろ金が要るからね。 平民がまともに稼いでも手に入る金なんてたかが知れてるしさ。それじゃ足りないんだ。 ・・・たとえ捕まって晒し首になるとしても、あたしには金が要るんだよ」 リュウを見つめ、寂しそうに呟く。 「あんたは悪人に見えないと言ってくれたけど、あたしは悪人なんだよ・・・」 フーケは自分がなぜこんな話をリュウにしているのか解らなかった。 『もう盗みはしない』と言ってその場をごまかし、後で隙を見て消え去るのが一番の手だと頭では理解しているはずなのに、自分はリュウに洗いざらい喋ってしまっている。 「なんでだろうね、あんたといると調子が狂うよ・・・で、どうする?あたしはフーケを辞めないと宣言しちまったよ?あたしを捕まえるかい?」 この男は正義感が強い。さっきはもしかしたら見逃してくれるかも知れないと思ったが、盗みを辞めないと断言した以上は自分を捕まえるだろう。 先ほどもシミュレーションした通り、この男から逃げ出せる可能性は殆どないと考えていい。 ”ごめんね、ティファ。もうお金を渡してやれそうにないよ・・・” フーケは覚悟を決めると、再び逃走するための作戦を幾重にも考え始めた。 「いや、好きにすればいいさ」 だが、リュウから返ってきた言葉は意外なものだった。だから、聞き返してしまった。 「え?」 「好きにすればいいさ。俺はフーケの正体が誰なのか知らない。どうやら少し居眠りしてしまったようだ」 「・・・なんで・・・見逃してくれるんだい?」 「言っただろう?俺にはあんたが悪人には見えない。それだけだ」 リュウは真っ直ぐに前を見つめ、力強く言った。 リュウは見た。 『金が要る』と言ったときのフーケの顔を。 それは自身の欲の為ではなく、必要に迫られた悲壮感漂うものだった。 おそらく誰かのために多額の金が必要なのだろう。 自分から大貴族であるルイズやキュルケに頼めばそれなりの額は工面してもらえるかもしれない。 だが、もしそうしてフーケの為に金を用意しても、きっとフーケはその金を受け取らない。 自分がフーケのためにしてやれることは、何も無かった。 目の前にいる人間すら助けることのできない自分。 多少は人より力が強いかも知れないが、それが一体なんだと言うのか。 己の無力さに歯噛みするリュウ。 それに街で聞いた話ではフーケは金持ちの貴族からしか盗まないらしいし、彼女の行動から人の命を奪うこともしないことを知った。 決して褒められたことではないが、誰かの為に何かを成そうとするフーケの行為を止めることなど、無力な自分にできるはずがなかった。 「そんな顔するんじゃないよ。あたしは盗賊なんだよ?」 リュウの思いつめた顔を見て、フーケはリュウが何を思っているのかを悟った。 「さっきも言ったけど、あんたってば本当にいいヤツだね。あんたに気にかけてもらえるなんて、あの貴族の娘が羨ましいよ」 フーケは更に言葉を続けようとしたが思い直して口を閉じ、しばらく無言でリュウの顔を見つめる。 「・・・このまま道なりに進みな。1時間もすれば小屋のある広場に出るからね。その小屋の中に、箱に入れて置いてあるよ」 フーケはメガネを外し、髪を束ねていた結紐を解く。長く美しい緑の髪が風に煽られ大きく広がる。 「ロングビルはこれで終わりだよ。『破壊の珠』が手に入らなかったから、もう学院にいる意味ないしね」 「そうか。何か伝えておきたいことはあるか?」 リュウが尋ねる。 「そうだね・・・オスマンのジジイに礼でも言っといてくれると嬉いね。 あんたの秘書をやってたことに文句はなかった、給料の額だって満足してるって。”土くれのフーケ”様が感謝してたってね。 実際、あのジジイは平民のあたしにも十分良くしてくれたよ。セクハラだけはどうにも我慢ならなかったけどね」 フーケが少しだけ寂しそうに、しかし笑顔で言う。 「物盗りが何言ってやがるって話だけどね」 そう付け加えてけらけらと笑うフーケ。 陽光に照らされるフーケの笑顔はとても眩しく、美しかった。 「元気でな」 リュウが短く言う。 「あんたもね」 フーケは馬車の手綱をリュウに手渡すと、ぐっと顔を近づけた。 「このフーケ様が敵わないって思った相手なんだ、よく顔を見せとくれ」 しばらくリュウの顔を見つめたあと、突然自分の唇をリュウの唇に合わせる。 「な!?何をする!!?」 滑稽なほど慌てふためくリュウ。とにかく、色恋沙汰とは縁遠い男だった。 「見逃してくれた礼だよ。悪くはないだろ?これでも自分の見てくれには自信があるんだ。 ホントは一晩ぐらい相手してやっても良かったんだけどね、それをしちまうと、あたしがあんたに惚れちまいそうだからさ。残念だけどやめとくよ」 フーケはじっとリュウを見つめると、とびきりの笑顔で片目をつぶる。 「じゃあね」 それだけ言うと御者台から飛び降り、フーケはそのまま森の中に消えていった。 ――惚れちまいそうだから・・・か。もう、どっぷり手遅れだよ。 ホント、”土くれのフーケ”がなんてざまだい・・・―― 馬車を見送りながらフーケが自嘲気味に呟いた。 「さて・・・なんて言い訳するかな・・・」 リュウは一人になってしまった御者台の上でルイズ達にどう説明しようかと悩むのだった。 前ページ次ページゼロと波動
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「・・・・」 失神しているルイズの前で、おとーさんは困っているように見えます。 すると、ドアが開いてある人物が顔をだしました。その人物はおとーさんにここに至った経緯を説明してくれました。 その人物は(こんなドアあったっけ?)と、家に新しく出来たドアに近づいてじろじろ見ていました。 すると、突然ドアが開いて、中を覗こうとした女の子と鉢合せをしてしまいました。その距離実に20センチ。女の子は固まっていましたが、その人物は吃驚することもなく気さくに話しかけました。 「やぁ、僕りすのターくん。カリフラワーじゃぁないんだよ」 その台詞をちゃんと聞いたかどうかは分かりませんが、女の子はターくんが話し終わると同時に失神して倒れてしまいました。 「旦那。と、言うわけなんですよ・・・」 おとーさんはその話を聞いた後、おもむろにベッドの方を見ました。 ター君はその様子をみてポンと手を叩き「なるほど」と呟きました。 二人はベッドへルイズを運びました。おとーさんはター君へこの部屋に入らないようにと告げるとそのまま自分の家にター君を帰しました。 「・・カリ・・フラワー・・・んんんん」 ルイズは少々うなされている様でした。 おとーさんはそんなルイズを見てしばらく待ってからルイズを起こしました。 ルイズは飛び起きると目の前にいるおとーさんを捕まえて 「あああ、あのドアの向こうは、どど、どうなってるのよ!!!」 おとーさんは不思議そうにルイズを見ています。ルイズはその様子を見て(あれは夢だったのかしら?)と考え 「な、なんでもないわよ」 と言い、おとーさんに着替えを手伝うようにいいました。おとーさんは服を取りに行く為にルイズに背を向けると「くすくす」 と笑っていました。 着替えが終わり支度を済ませたところで 「朝食にいくわよ。付いて来なさい」 ルイズはおとーさんにそういいました。 (なんかこの使い魔私をバカにしてるみたいなのよね。食事で上下関係をハッキリ認識させてやるんだから) ルイズはそんな事を考えながら部屋を出ました。 するとキュルケとばったり出会ってしまったのでした。 「あら、ルイズ。おはよう」 「・・・おはよう、キュルケ・・」 ルイズはあからさまに嫌そうな顔をしています 「この白いゴーレムがあなたの使い魔?よく召喚できたわね~」 「うるさいわねぇ。正真正銘、私が召喚したんだからケチつけないでよ!!」 「そんなに怒らなくてもいいじゃない。フフッ・・・これが私の使い魔、フレイム。サラマンダーよ。しかも火竜山脈の・・・。 好事家に見せたらきっとかなりの高値をつけてくれるでしょうね・・・。」 キュルケとルイズがサラマンダーを見ると、おとーさんとフレイムが見つめ合っていました。そのうちフレイムは滝のような 汗を流し始めついには地面に這い蹲りました。 「フレイムどうしたの?・・・まぁいいわ、行くわよ」 サラマンダーの行動に首を傾げるキュルケでしたがそのままどこかへ行ってしまいました。 「あんた、何やったの??」 ルイズがおとーさんに尋ねると、おとーさんは一言こういいました。 「おとーさん・・・にらめっこ強い」 それを聞いたルイズはその場で吹き出して笑い始めました。 おとーさんはそんなルイズをみてなんだか少し嬉しそうでした・・・
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元スレURL 海未「すみません、遅れました」ストン ブゥー 概要 関連作 タグ ^高坂穂乃果 ^園田海未 ^南ことり ^西木野真姫 ^星空凛 ^小泉花陽 ^矢澤にこ ^東條希 ^絢瀬絵里 名前 コメント
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哩「……転んで縄が絡まってしまった。やけんいじめて」 京太郎「文脈がつながってないですよ」 哩「動けないのをいいことに後輩に乱暴されて……よかね」 京太郎「勝手に盛り上がらないでください。後、部室で転んで亀甲縛りはどうやっても無理ありますよ」 哩「……一人で縛るんちょっと大変やったとよ?」 京太郎「むしろどうやったんですか!?」 哩「さあ!ここに動けない女の子がおるんよ!?いじめるしかなかやろ!?」 京太郎「もうやだこのドM部長」 ガラッ 仁美「まーたやりよる」 美子「部長も好きやねー」 京太郎「先輩方!」 哩「ちっ、邪魔が入ったか」 仁美「なんもかんも部長のせいやから」 美子「あんまりやりすぎっといかんよ?」 京太郎「そうです、もっと言ってやってください」 美子「今日はうちらがやるんやけんね?」 京太郎「……はい?」 仁美「よし、部長は端っこの方に縛ったまま置いといて……」 哩「こ、こら!なんばしよっか!!」 美子「いつも部長や姫子ちゃんばっかり……うちらも、してほしかとよ?」 京太郎「えっと……それはどういう…」 仁美「早い話3人でってことやね」 京太郎「なんですかそれ!お二人は真面目な人だと思ってたのに!!」 仁美「かわいい後輩は欲しいし?」 美子「うちも……少しならいじめられてよかよ?」 哩「こらー!離せー!!放置プレイはよかけど寝取られは好かん!!」 仁美「普段独占してるし……ゆっくり、ね?」 美子「ね?胸はあんまなかけど……好きにしてよかよ?」 京太郎「ちょ……待っ……」 哩「離せー!!」 その後4人に増えました カンッ!!
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キュルケは、ゲルマニアの人である。 彼女はゲルマニア貴族の中でも評判の美女だが、身持ちがかたく、どちらかというと無口で陰気な人柄であった。 しかし、彼女も十代の頃は炎のように燃え上がりやすく、恋多き奔放な乙女だったそうだ。 それがどうしてこのようになってしまったのか、人に尋ねられても彼女は決して語ろうとはしなかった。 ある春のこと。トリステインのモット二世という若い貴族が、たまたま彼女と話す機会を得た。 「良い季節になりましたね」 挨拶がてら時候を話題にすると、キュルケは不機嫌な顔になった。 「私は春が嫌いよ」 「それは、またどうして」 冬や夏が嫌いというのはよく聞くけれど、春が嫌いだと言う人は珍しい。 キュルケは遠くを見るような目をしていたが、ぽつりぽつりと、学生時代のことを語り始めた。 その当時、彼女はトリステイン魔法学院へ留学生としており、多くの男子生徒を恋路に明け暮れていた。 二年生への進級試験として、毎年この時期には使い魔を召喚する儀式が行われる。 この時キュルケは立派なサラマンダーを召喚して、風竜を召喚した親友と共に大いに注目を浴びた。 でも、もっとも注目を浴びたのは、ルイズという女子生徒が召喚した使い魔だった。 彼女が召喚したのは、見たこともないおかしな服装をした平民の女だったのである。 その女は遥か遠い国からやってきたものらしく、初めは戸惑っていたようだが、すぐに、はいはいとルイズに従った。 「夫に先立たれて子供もなく、親類の家に厄介になろうと思っておりましたところ、あなたに召喚にされました。これも何かのご縁でございましょう。どうぞ、使い魔にしてくださいませ」 女はこんなようなことを語っていたそうだ。 人間の使い魔なんて……と、ルイズは不満そうだったが、担任の教師に促されたことと、相手の従順さも手伝って、結局この女を使い魔にした。 その夜。キュルケは何となくルイズとその使い魔の様子が気になり、隣部屋であったことを幸いに、そっと聞き耳をたててみたが、別に変わった様子はない。 なんだつまらないと思って、その夜は約束していた相手もいなかったので、早々にベッドに入ってしまった。 ところが、その夜はどうにも寝つきが悪く、寝ているのか起きているのか、よくわからない状態が長く続いた。 そんな中、ふと耳をすませてみると隣の部屋から、何か声が聞こえる。 「痛い……痛い……」 ルイズの声で、そんなことを言っているようだった。 キュルケは朦朧とした気分であったので、最初は変な夢を見るわねえ――ぐらいにしか思わなかった。 だが次第に意識がはっきりしてくるに従い、得体の知れない胸騒ぎがしてきたので、使い魔を従えて、そっとルイズの部屋までいってみることにした。 ドアの前まで近づいたところ、サラマンダーが異常に興奮し始めた。 これに嫌なものを感じたキュルケは、いつでも炎を飛ばせるように杖を振るって呪文を唱え、蹴破るようにして部屋へ踏み入った。 部屋には、ぎょろりとした丸い目玉の、藍色の怪物がいた。 キュルケが攻撃魔法を放つ前に、怪物は乱杭歯をむき出して一声叫ぶと、窓を突き破り外へ逃げ出していった。 学院中は大変な騒ぎとなり、生徒も教師もほとんど総員のような形で怪物の行方を追ったが、結局怪物はそのまま姿を消してしまった。 使い魔の女は、どこにも姿が見えなかった。 しかし、ルイズの部屋には、女が着ていた衣服と、その女の皮が残されていたという。 「それで、そのルイズという女子生徒はどうなったのですか?」 モットが聞いたが、キュルケは詳細を語ることはなかった。 ただ、 「あの子は、髪の毛と頭の一部しか残ってなかった」 このように、いつも以上に陰鬱な表情で語ったという。 ※トリステイン王立図書館蔵、『古今怪異録集』より――
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前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第18話 遠い星から来たお父さん 前編 エフェクト宇宙人ミラクル星人 緑色宇宙人テロリスト星人 登場! トリステイン王国の首都、トリスタニア 今日も、トリスタニア一の大通り、ブルドンネ街は人々でごったがえしていた。 あのツルク星人と銃士隊との戦いからも、すでに5日が過ぎ、人々はたくましい生命力と商魂を発揮して、 あちこちの店から威勢のいい声が飛んで、騒々しいが平和な賑わいを見せていた。 そして、そんななかを歩くひときわ目立つ6人組の一団があった。 端的にいえば、桃色と青色と赤色の髪をした少女が3人と、緑色の髪の眼鏡をかけた妙齢の女性が ひとりに、黒髪のメイドがひとり、あとたくさんの荷物を抱えてひいこら言っている黒髪の少年がひとりだった。 「こらサイト、早く来なさい。いつまで待たせるのよ」 「こ、この……こんな量、ひとりでどうにかできるわけないだろう。もう20キロは軽くあるぞ……もうだめだ」 両手いっぱいに野菜やらワインやらを持たされていた才人は、とうとう根を上げて地面にへたり込んでしまった。 それを見たルイズは不機嫌そうなまなざしを彼に向けたが、かばうようにその半分くらいの荷物を持っていた メイド、シエスタがこぼれ落ちた才人の荷物を拾い上げながら言った。 「まあまあ、いきなり不慣れな仕事をさせられてもうまくいくはずありませんって。本来わたしの仕事ですから サイトさんは楽にしてください」 シエスタはそのまま才人の持っていた荷物の半分を取り上げると、自分の荷物に加えて、あっという間に ふたりの荷物の量が逆転した。そしてそれをよいしょっととさほど問題なく持ち上げる。彼女の華奢な 体つきからは信じがたいが、この世界は地球と違って電化製品など無く、家事仕事はすべて手作業でこなさざるを 得ないために、メイドなんて仕事をしていれば、自然体力も現代の高校生の平均など軽く突破する。 才人のほうもハルケギニアに来て以来、いろいろと鍛えてはいるがまだ1ヶ月とちょっと、筋肉がつくには まだまだ早い。目の前で、今まで自分が必死になって運んでいた荷物を軽々持つ女の子に、情けなさを 感じるものの、やせ我慢にも限度がある。 「サ、サンキュー、助かったよシエスタ」 「いえいえ、どういたしまして」 本来ならこの反対であるべきだが、現実はいかんともしがたい。 それを見ていたルイズは当然呆れた顔をした。 「まったく、荷物運びもろくにできないなんて、ほんとどうしようもない駄目犬ね」 「この、人の苦労も知らないで……だいたい必要の無いお前の荷物が5つもあるじゃねえか」 才人の反論に、ルイズは「知るか!」というふうにそっぽを向いた。 と、そんなふたりが愉快に見えたのか、キュルケが笑いながら話しかけてきた。 「こーらルイズ、そんなこと殿方に言ったら嫌われる一方よ。かわいそうなダーリン、ねえこんな薄情な子 置いておいて、あたしともっと楽しいところ行かない?」 「ツ、ツェルプストー!! あんたまた勝手に人の使い魔に何言ってくれてるのよ!!」 ルイズはむきになって怒鳴るが、当然それはキュルケの予想のうち。 「あーら、使い魔と馬車馬の区別もつかない誰かさんとは違って、わたしは正当な評価と待遇を与えて あげようとしてるだけよ。さっ、重いでしょ、わたしが手伝ってあげるわ」 キュルケが杖を振って『レビテーション』を使うと、才人の荷物のいくつかが宙に浮き上がった。 ルイズは、それで才人がキュルケに「ありがとう」と笑顔を向けるものだからさらに気に喰わない。歯噛み しながら才人に持たせていた荷物をひとつふんだくるように取り上げた。 「か、かんちがいするんじゃないわよ。使い魔の面倒を見るのが主人の当然の務めなんだから、別に 当たり前のことしてるだけなんだからね!」 「それ、元々お前が衝動買いしたアクセサリーだろ、しかも一番軽いやつ」 ルイズの右上段回し蹴りが才人のこめかみにクリーンヒットした。才人は荷物を放り出して悶絶したが、 数秒後には荷物を拾って起き上がってきたからさすがである。 そんな様子を、タバサが後ろからいつものようにじーっと眺めていた。 とはいえ、それでも荷物の量は最初の1/3程に減って、だいぶ軽くなっていた。 「ふう、とりあえず助かった。死ぬかと思った」 やっと一息つけて、才人はうきうきしながら立ち上がった。 が、喜んだのもつかの間、やっと減った荷物の上に、またどかどかと新しい荷物が積まれていった。 「げ!? ロ、ロングビルさん?」 見ると、ロングビルが眼鏡の下から涼しい瞳でこちらを見ていた。 「またまだですよサイトくん。年に一度のフリッグの舞踏会、必要な物はまだたくさんあるんですからね」 「ひえーっ!」 思わず泣きそうな声を才人はあげた。 彼らは今、翌日に迫った魔法学院の年一度のイベントである『フリッグの舞踏会』のための食料品や 飾りつけのための品をいろいろと買い込むために、このブルドンネ街までやってきていた。 ただ本来なら、学院お抱えの商人が必要な物資を学院まで運んできてくれるのだが、今年は3度にわたった 怪獣災害のせいで、直前になってキャンセルになり、秘書に復帰したロングビルが直接買出しに来たというわけだ。 が、なぜシエスタはともかく才人以下の顔ぶれがいるかというと。まずロングビルがたまたま空いていた シエスタに買出しの同行を頼み、シエスタがそれをまた、たまたま食堂に来ていた才人に。 「ちょっとした買出しなんですが、よろしければ、いっしょに来てくれれば、うれしいな、なんて……」 それで1も2もなく承諾した才人だったが、それをルイズにかぎつけられて。 「あんた、またあのメイドとふたりでどこ行くつもりよ!?」 それでルイズも無理矢理同行することになり。 学院を出発したと思ったら、これまたたまたまキュルケに見つかって。 「タバサ、ルイズが街に出かけたの。あなたの使い魔じゃないと追いつけないから、またお願いするわ」 と、キュルケがタバサを巻き込んでシルフィードで追っかけてきて、最終的にこうなったという三段コンボであった。 だが、いざ来てみれば、とても1人や2人では運びきれない量になったから、結果的に人手が増えたことは 幸いであった。 やがて昼も過ぎ、才人が死にそうになり、ルイズとキュルケの手もいっぱいになり、タバサまで買い物袋を 持たされたところでやっと買い物は終わり、駅に停めてあった馬車に荷物を運び込んだところでようやく皆は 一息をついた。 「はーあ、疲れた。まさか舞踏会ひとつにここまで物がいるとは思わなかった」 「はい、わたしもここまでとは思いませんでした。でも、わたしだけじゃ3、4往復はすることになったでしょうから、 助かりました。皆さんありがとうございます」 馬車のふちに腰掛けながらシエスタが皆にお礼を言うと、才人は照れくさそうに、ルイズたちはなんでもなさそうに 「どういたしまして」 と、答えた。 「じゃあ、ロングビルさんが戻ってきたら出発だな……お、うわさをすれば」 見ると、駅の係員に料金を払いに行ったロングビルが戻ってくるところだった。 だが、うかない顔で戻ってきたロングビルの口から出たのは予想しない言葉だった。 「え、出発できない?」 「ええ、どうもこの先の街道で事故が起きたらしくて、しかもどうやら王立魔法アカデミーの馬車だったらしくて、 当分のあいだ通行止めですって」 それを聞いたタバサ以外の全員の顔が「ええーっ!」というようなものになった。 「それで、通れるのはいつごろになるんですか?」 「早くて日暮れ、遅くて明日の朝ですって、悪くしたら今夜はここに一泊することになるかもね」 やれやれと、ロングビルは肩を落とした。 だが、合法的に外泊できるとわかったキュルケやルイズは頭の切り替えが早かった。 「早くて日暮れなら、こんなところにいる理由はないわね。ダーリン、あたしといっしょに遊びにいきましょう。 すっごく楽しい大人の遊び場に招待してあげるわ」 「キュルケ!! 勝手に手を出すなって何度言えばわかるのよ! 来なさいサイト、舞踏会用のドレスを買いに行くわ!」 「ぷ、お子様用のドレスなら、あたしのお下がりをあげましょうか?」 「き、きーっ!! この成長過剰色ボケ女ぁ!!」 というふうに、アボラスとバニラさながらのバトルに突入してしまった。 才人としてはバニラに原子弾を撃ち込む気にはなれなかったから、経過を見守っていたが、漁夫の利を 狙うようにシエスタが才人の手をとってきた。 「いまのうちいまのうち……サイトさん、わたしといっしょに来ませんか? こないだ来た時にすっごくおいしい ブルーベリーパイのあるお店見つけたんです」 「え……でも」 「いいですから、早く!」 そう言って強引に連れて行こうとしたが、才人がしぶったために結局はふたりに見つかり、誰についていっても ほかの恨みを買うことになるため、仕方なくタバサとロングビルも連れて食べ歩きに行くことに落ち着いた。 そうなるとさすが女性5人のパワーはすごいもので、あっちの店からこっちの店へと、たったひとりの男性である 才人はただただ連れまわされることになった。 「ほらサイトさん、あっちがさっきわたしが言ってたお店です。ささ、早く早く」 「ちょ、シエスタ、そんなに引っ張るなよ。ルイズ、お前も杖を取り出すな!」 「なに言ってるの? 使い魔が不埒なことをしないように見張るのは主人のつとめじゃない。さあ、こっちよ、 ブルーベリーパイなんかよりクックベリーパイのほうがおいしいんだから」 こういうふうにふたりが才人を取り合えば、キュルケが余裕の態度で笑って見て。 「まったく、そんな子供っぽいのばかり食べてるから胸が成長しないのよ。あら、タバサあなた何食べてるの? ちょっと味見させて……苦っ!?」 「はしばみ草のパイ……」 「あ、請求は王立魔法学院のオスマン学院長宛にお願いします。はい、はい、全部です。ふっふっふ、 待ってなさいよあのセクハラジジイ」 それで、最後にロングビルが領収書を取りながらついていくといったところである。 だがやがて、長い夏の日差しもしだいに赤くなり、薄暗い空にうっすらとふたつの月が見え始めた。 「そろそろ日が落ちるな。そろそろ帰らないか?」 いいかげん何かを食べさせられるのにもくたびれた才人は、疲れた声でそう言った。 「む、そうね。そろそろ店も閉まってくるころだし、街で聞いた話じゃ街道の事故はまだしばらくかかるって いうし、宿をとりましょうか?」 シエスタと才人の腕の取り合いを続けていたルイズも、ようやく力を抜いてくれた。 ただ、宿、といっても半分が貴族のこの面子を泊められるだけのレベルのホテルとなると、今彼女達の いるほうと反対側にしかなく、それなりに歩く必要があった。だがそこでシエスタが大きく手を上げて言った。 「じゃあわたしに任せてください。以前来たときに近道を見つけたんです。ショートカットです」 そう宣言すると、さっさと才人の手を引いて裏道に入っていく。もちろん慌ててルイズ達も後を追う。 だが、裏道をいくらか進んだところで、道はとぎれて、目の前に瓦礫と、焼け焦げて荒れた家々が 立ち並ぶだけの廃墟に行き当たってしまった。 「あ、あら? おかしいですね……以前来たときには、ここを道が続いていたのに」 あてが外れて呆然とするシエスタの背中に、ルイズの冷たい視線が突き刺さる。だが、後から来た ロングビルがこの廃墟を見て言った。 「このあたり一帯は1ヶ月前のベロクロンの襲撃で燃え落ちたところですね。けれど、再建には表からやって いくものだから、裏通りのこのへんにまでは、まだ再建の手が及んでないんでしょうね」 「ど、どうもすいません。わたしが差し出がましいことをしたばっかりに」 シエスタは何度もぺこぺこと頭を下げて平謝りしたが、今更引き返したところで、本道へ出て宿まで 行くのは時間がかかりすぎる。そして、キュルケやルイズは元々気の長いほうではない。 「いいわ、ここを突っ切っちゃいましょう」 キュルケがかけらも迷わずに言った。 「えっ!? そんな、危ないですよ」 その言葉にシエスタは驚いて止めようとした。こういう廃墟には、喰いっぱぐれたごろつきやチンピラの 溜まり場になっていることがよくある。女子供ばかりの一団など、いいカモと思うに違いなかったが、 才人の背中にかけられていたデルフリンガーがカタカタ笑いながら言った。 「心配ねーよ、メイドの娘っ子。お前さんが盗賊の立場になって考えてみろ、この面子にそこらのチンピラが敵うと思うか?」 「あ」 言われてみればそのとおり、キュルケとタバサは学院で1、2を争うトライアングルクラスの使い手、 ルイズの爆発の威力は学院の者なら知らぬ者はなく、ロングビルも学院長の秘書を任されるほどの 使い手と聞く。実はこのときまだロングビルは魔法を使えないままだったが、盗賊フーケとして裏の世界で 長年生きてきたキャリアは伊達ではない。そして最後に才人はメイジに勝つほどの剣の使い手、 このなかで非戦闘員なのはシエスタ本人くらいだ。 「じゃあさっさと行きましょう。こんな廃墟で日が暮れたら面倒だわ」 そういうわけで、一行は廃墟のなかを歩き始めた。町並みが崩壊しているとはいえ、通り道としては 使われているらしく、人が通れるように道は整理されていた。 そのなかを、一行は才人を先頭に、周りに注意しながら進んだ。 「誰もいないようだな……」 幸いにも、懸念していた盗賊の襲撃などはなかった。もしかしたら、先日のツルク星人の一件で、 ここに居た人々は逃げ出したのかもしれない。 だが、ある廃屋の角を曲がったとき、急に廃墟の先が開けて、半径70メイルくらいの、学校の運動場くらいの広場に出た。 「ここは……?」 一行は、歩を止めてその広場を見渡した。さっきまでの狭苦しい雰囲気とは裏腹に、夕日が広場全体を 紅く染めて、一種の美しさすら感じる。 「ここは、この地区の集会場かなにかだったのかしら?」 キュルケがぽつりとつぶやいた。 広場は、土がほどよく踏み固められていて、かつては多くの人がここを歩いたのだということがわかる。 周囲が廃墟でなければ、子供の遊び場としてちょうどいいだろう。 しばらく彼女達は、ぼんやりとその光景を見回していたが、才人の視界に、なにか光るものが入ってきたかと 思った瞬間、彼の頭にこつんと小石のようなものが当たったような痛みが走った。 「いてっ!」 思わず頭を押さえたが、たいしたものではなく、すぐに痛みは治まってこぶもできていないようだった。 「なんだ?」 身をかがめて才人は自分に当たった何かを探した。すると、彼のすぐ足元に小さく透明なものが 転がっているのをが見つけた。 「ビー玉?」 それは、彼の言ったとおり、地球ではラムネのビンに普通についてくるようなありふれた形と色のビー玉だった。 なんでこんなものがと、才人は不思議にそのビー玉を見つめていたが、そのとき彼の右手の廃墟から 唐突に声がした。 「返して!」 「!?」 とっさに彼らはそれぞれの武器をとって身構えた。才人がデルフリンガーを握って前に立ち、両脇に ルイズ達が立って、背後にシエスタをかばう体勢だ。 だが、廃墟の影から出てきたのは、盗賊などとは似ても似つかない、才人の腰くらいの背丈しかない、 年のころ7、8才くらいの茶色い髪の毛をした小さな女の子だった。 「アイのビー玉、返して!」 その子は、才人のそばまで駆け寄ると、恐れる様子もなく才人に手のひらを差し出して要求してきた。 才人は一瞬驚いたが、返さない理由など何も無い。にっこりと笑うと、その子の手のひらの上にビー玉 を乗せてやった。 「これはきみのだったのか、ごめんね」 ビー玉を受け取ると、そのアイという子は宝物を取り返したように、満面の笑みを浮かべた。 「ありがとうお兄ちゃん」 「君の宝物かい、まるで魔法がかかってるみたいにきれいなビー玉だね」 「そうよ、おじさんからもらった、アイの宝物なの」 アイは、うれしそうにそのビー玉を才人達の前にかざした。才人やシエスタにとっては、夕日を浴びて 輝くビー玉は大変きれいに見えたが、宝石を見慣れたルイズやキュルケにはただのガラス玉でしか ないようだった。 「ふーん。でも、特に魔法がかかってるようには見えないわね。たんなるガラス玉みたい」 「そんなことないの! これはおじさんが、いつでもお父さんとお母さんに会えるようにってくれた、 魔法のビー玉なの!」 それを聞いて、彼女達はすでにアイの両親がもう二度と彼女と会えないところに行ってしまったんだ ということを悟った。 「ご、ごめんね。けど、お姉ちゃん達も魔法使いなんだけど、魔法がかかってるようには見えなかったから」 「じゃあ見せてあげる! これをかざして見ると、見たいものがなんでも見れるんだから!」 そう言うとアイはビー玉をキュルケに差し出した。 「うーん……やっぱり、なにも見えないわ」 キュルケは、それをかざして見てみたが、やはり何も見えなかった。順に、タバサ、ロングビル、シエスタにも 回して見てもらったが、やはり何も見えなかった。 「……」 「……悪いけど、マジックアイテムの類じゃないわね」 「そんなこと言っちゃかわいそうですよ。皆さんだって、小さいころに自分だけの宝物とか大切にしたことあるでしょう」 アイは、すっかり泣きそうな顔になっている。 そして最後にルイズと才人の番になった。どちらが先に見るかは少しもめたが、才人が持ってふたりで 同時に覗き込むということで落ち着き、いざ、とばかりにふたりは夕日にかざしたビー玉の中を覗き込んだ。 すると。 (わっ、なんだこりゃ!?) ビー玉の中が一瞬泡だったかのように見えた後、ビー玉の中に映像が映った。いや、直接ふたりの 頭の中に映像が投影されたといったほうがいいだろう。その風景にふたりは見覚えがあった。 炎に包まれたトリスタニアの街、その街並みを踏み潰しながら暴れまわる一匹の超獣。 (ベロクロン……) それは、1月前に初めてベロクロンがトリスタニアに現れたときの映像であった。 やがて空からグリフォンや飛竜の軍団が立ち向かっていったが、ミサイル攻撃によって、あっというまに 全滅していった。 勝ち誇るベロクロン、足元には逃げ遅れた人々が炎にまかれながら必死に逃れようとしている。 そんな中に、ふたりは手を取り合って走るふたつの人影を見つけた。 「アイ、頑張って走るのよ!」 「お母さん、こわいよお」 ひとつはアイ、もうひとつは彼女の母親であった。 親子は、暴れまわるベロクロンと、街を覆う炎から必死に逃げ延びようとしていた。だが、ふたりの すぐ隣の石造りの建物に、流れ弾のミサイルが当たり、ふたりの頭上に大量の岩が降り注いできた。 「アイ! 危ない!!」 「あっ! お母さん? お母さーん!!」 背中を突き飛ばされて、前の地面に転がり込んだアイが振り返って見えたものは、目の前を埋め尽くす 瓦礫の山だけだった。 「お母さん? ……わあぁぁっ!!」 たかが8才程度の子供に、その光景を受け入れるのはあまりにもきつすぎた。 街を覆う炎はさらに勢いを増して、泣き叫ぶアイの周りを包んでいく。だがそのとき、路地からひとりの 男性が飛び出してきた。 「きみ、はやく逃げるんだ!」 「でもお母さんが、お母さーん!」 男はアイを抱きかかえると、すぐさま安全なほうへ駆け出した。 映像は、ふたりが炎から逃げ切ったところで再び泡に包まれて終わった。 「そうか……最初のベロクロンの襲撃のときに」 ビー玉を下ろし、悲しそうに才人は言った。 「お兄ちゃんにも見えたのね!?」 「うん、それでそのとき助けられたおじさんから、このビー玉をもらったんだね」 アイにビー玉を返して、才人はそう聞いた。 「そうよ、アイ、ひとりぼっちになっちゃったんだけど、おじさんがずっと守ってくれたの」 誇らしそうに言うアイに、ルイズも優しくたずねた。 「いい人ね。こんな時勢じゃ、子供を狙う人攫いもあとを絶たないってのに。でも、こんなすごいアイテムを 持ってるってことは、高名なメイジなのかしら?」 「わかんない、おじさんはおねえちゃんたちみたいに杖を持ってないし、でも、いろんなところを旅してきた から、すごく物知りなのよ」 どうやらアイには難しい質問だったらしい、ルイズが苦笑すると、後ろにいたキュルケ達が驚いたように言った。 「ルイズ、あんたたち、そのビー玉に、その子の言うものが見えたの?」 ルイズと才人がうなづくと、キュルケは今度こそ本気で驚いた。 「ええっ!? なんでわたし達に見えないのに、ゼロのあなたと平民のダーリンが!? どんなマジックアイテムよ、それ」 「平民はシエスタもでしょ。ゼロは関係ないわよ、マジックアイテムにもいろいろあるってことでしょ、知らないわよ」 突っ返すように答えたが、ルイズには自分と才人にだけ見えた理由に心当たりというより確信があった。 ふたりに共通することは、ウルトラマンAと同化しているという一点しかない。もちろんそれを口に出すことはしないが。 と、そのときアイの出てきた廃屋から、ひとりの男性が現れた。 「アイちゃん」 それは、たった今アイのビー玉で、ルイズと才人が見たあの人だった。 年齢は見たところ40前後、やや丸顔で、年相応に薄くなり始めた頭頂部と、短く伸びたひげ、服装は ハルケギニアで標準的な平民のもので、特徴らしい特徴のない、普通の男性に見えた。 「あっ、おじさん」 アイは、彼の姿を見つけるとうれしそうに駆け寄っていった。 「あまりひとりで遠くに行ってはいけないよ。危ないからね」 「うん、アイね。このおねえちゃんたちとね!」 まだ会ったばかりだというのに、アイは彼にルイズたちのことを紹介していった。元々かなり奔放な子なのだろう。 とはいえ、まだ名前も言ってないのだから、途中からルイズ達が自己紹介していったのだが。 「そうですか、あなた方がこの子と遊んでくれてたんですか、どうもありがとうございます」 「えっ、いやわたしたちは……ううん……」 そう言われて、6人は顔を見合わせたが、まだ日が落ちるまでには少し時間があることから、ちょっとだけ アイと遊んであげることになった。 「わーすごーい、お姉ちゃん氷でなんでも作れるんだ。次はお馬さん作って」 「……なんでも、じゃないけどそれなりには、お馬さんね、了解」 「んじゃ、いくわよタバサ、あたしたちの芸術センスを見せてあげましょ」 「危ないからあまり近づかないでね。飴は好き?」 アイは、タバサが作った氷の塊をキュルケが炎で溶かして動物の像を作るのを、ロングビルからもらった お菓子を食べながら楽しそうに見ていた。 「すみません、見ず知らずの人にこんなに親切にしていただいて、あの子もしばらく遊び相手がいなかったものですから」 男が頭をぽりぽりとかきながら、すまなそうに言うと、シエスタが笑いながら答えた。 「お気になさらずに、みなさんああ見えて優しい人ばかりですから。それに、子供ははだしで外を走り回って遊ぶ ものでしょう。ふふ、わたしも行ってきます」 シエスタも、そう言って輪に入っていった。 残ったのは、彼と才人とルイズ。 「ルイズ、お前は行かないのか?」 「ふん、ヴァリエール家の人間がツェルプストーといっしょに遊べるもんですか!」 「わたしも遊びたいって顔してるように見えるのは気のせいだろうね」 2月近くもつき合って、才人もそこそこルイズの顔色が分かるようになってきていた。 だが、冗談はさておき、キュルケたち5人の意識が向こうに向いていることを確認すると、才人は小声で 男に話しかけた。 「ところで、あなたはこの星の人じゃありませんね」 すると、男とルイズの目が一瞬見開かれた。 特に、ルイズはバム星人のときのようなことになるのではと、懐の杖に手をかけたが、才人は軽く手で 制して話を続けた。 「あのビー玉は魔法なんかじゃない、ハルケギニア以外の星の高度な科学力で作られたものだ」 「……驚きましたね。確かに、私はこの星の人間じゃありません……そういえば、あなたもこの星の 人には見えない服装ですね。その服の合成繊維なんかは、この星の技術力では到底作れないでしょう」 彼は、一目見て才人のパーカーがポリエステル製であることを見破ったようだ。才人とルイズは、 正体を知られたことでその宇宙人が、何か反応を起こすかもと警戒したが、彼には殺気のようなものは 一切感じられなかった。 彼も、才人とルイズに敵意がないことを感じ取ったらしく、穏やかな口調のまま話を続けた。 「あなた方も、悪い人ではないようですね。はい、この星の人の姿を借りてはいますが、私はこの星の 住人ではありません。ミラクル星、それが私の故郷の名前です」 「ミラクル星人、やっぱりそうだったんですか」 その名前を聞いて、才人は万一のためにいつでも取り出せるよう用意していたガッツブラスターの 安全装置をかけなおした。 ミラクル星人、怪獣頻出期には数多くの侵略宇宙人が地球に襲来したが、その中でもごくわずか ではあるが地球人と友好を結んだ平和的な星人もいて、ミラクル星人もそんななかのひとりだった。 「心配ない、ルイズ、この人に敵意はないよ」 「ほ、本当に?」 ルイズは才人の言葉に怪訝な顔をしたが、少なくとも宇宙人に関しては自分より詳しい才人が そう言うのだからと、ゆっくり杖から手を離した。 「わかったわ、あんたを信じる。けど、なんでわざわざハルケギニアに来たの?」 「あなたは、この星の人ですね。私の星は、ここよりも文明が進んでいるのですが、文化が遅れ気味 でしてね。それで、豊かな文化形態を持っている、このハルケギニアにそれを学びに来たのです」 「留学生ってわけ……ヤプールの手下じゃないのね?」 彼はこくりとうなづいた。 「私がここに来たのは、ハルケギニアの暦で5年前です。そのあいだ私はガリアやロマリア、アルビオン から東方まで、様々な文化風習を学んできました。そして最後にこのトリステインに来たのですが……」 「そこで、ベロクロンの襲撃に会い、アイちゃんと出会ったんですね」 「ええ、あの子は家族ともどもロマリアからこちらに逃れてきたそうです。あそこは、寺院による重税と 異端狩りが激化しているそうですから、恐らく彼女の両親も新教徒だったのでしょう。ですが、ようやく ガリアまで逃れてきたところで、領主同士の対立の紛争に巻き込まれて、父親はそのときに。そして 母親といっしょに必死で逃げ延びてきたこのトリステインでも……」 才人とルイズはやりきれない思いでいっぱいになった。年端もいかない子供が国から国へと逃げ延びる のには、いったいどれほどの苦労があっただろう。しかも、逃げ延びてきた場所でも安住の地は無く、 両親までも失って、あんな小さな子に何の罪もないのに、なぜそんな残酷な目にあい続けなければならないのか。 「悲しいものです。なぜあんな純粋な子供が苦しまねばならないのでしょう。しかも、この世界の 大人達は、皆、神のため、正義のため、国を救うためといって彼女のような子供を作り続けています。 ヤプールは明確な侵略者ですが、そんな人々はいったい正義をかかげて何がしたいんでしょう。私は、 それだけはわかりませんでした」 ふたりとも、返すべき言葉が見つからなかった。 「でも、あなたとめぐり合えたから、今あの子はああして笑っていられるんでしょう」 耐え切れなくなった才人がそう言うと、彼は悲しそうな顔をした。 「いえ、実を言うと、私はもう自分の星に帰らなければなりません。ミラクル星では、大勢の仲間が 私の帰りを待っています。どうにか、あの子の引き取り先も見つかりました。裕福な商家ですから 大丈夫だと思います。ですが、あの子が寂しがるといけませんので」 「あのビー玉を渡したんですか」 「はい」 どこまでも優しく、ミラクル星人の男は言った。 やがて、太陽も山陰に姿を消しかけ、ルイズ達はアイといっしょに、旅立たねばならないミラクル星人を 町外れにまで送っていった。 別れ際に、アイは涙を浮かべて言った。 「おじさん、どうしても行っちゃうの?」 「ごめんよ。おじさんもいつまでも君といっしょにいたい、けれどもおじさんの国ではおじさんの友達が ずっとおじさんの帰りを待ってるんだ。心配はいらない、そのビー玉を見れば、いつでもおじさんに 会えるから……じゃあ、行くね」 彼は、アイの頭を優しくなでると、夕闇の中を一歩、一歩と歩いていった。 そして、20歩ほど歩んだところで、彼は振り返りながら、ゆっくりとフクロウを擬人化したような ミラクル星人本来の姿に戻った。当然それを見てキュルケやシエスタ達は仰天したが、彼は 穏やかな声で最後に別れの言葉を告げた。 「さようなら、アイちゃん」 そう言うと、ミラクル星人の姿は、すうっと夕暮れの暗闇のなかに消えていった。 「おじさーん!!」 輝きだした星空に、アイの声だけがどこまでも響き渡っていた。 「宇宙人にも、あんな善良な人がいるのね」 「人間なんかよりずっとな」 ルイズと才人は、それぞれひとり言のようにつぶやいた。 やがて完全に日も落ち、双月が太陽に代わってあたりを照らし始めた。 だが、そのとき天の一角が割れて現れた真赤な裂け目から、巨大な円月刀を持つ怪人が降り立った ことに、気がついた人間はいなかった。 「ゆけ、テロリスト星人よ。ミラクル星人から、この世界の調査資料を奪い取るのだ!」 「ふはは、たやすいこと。奴を抹殺し、資料を奪ってやる。そして、この星のガスはすべて我々 テロリスト星人のものだ!」 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
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前ページ次ページとりすていん大王 色々とありつつ始まります とりすていん大王 9回目 「特急、ラ・ロシーェル発、アルビオン行き~、ラ・ロシーェル発、アルビオン行き~ご乗船ありがとうございます」 お父さん一行はラ・ロシーェルの桟橋でアルビオン行きの船に乗りました 「やはり飛空船は駅弁だね」 「そうね、ワルド様、あとお茶ですわ」 「駅弁サイコー」 「まぁ タバサったら(ぽっ)」 「ツェルプストー自重しなさい お父様お茶どうぞ」 「ははは(ずずず)」 なんだかんだと一行が呑気にご飯を食べている間に船はアルビオンに到着しました そして・・・ 色々すっとばして舞台はアルビオン城の礼拝堂、お父さん一行はいきなりピンチに見舞われたのです 「ふふふ、そうだ僕はレコン・キスタだ!!」 「ワルド様!!」 「ルイズ、僕と共に行こう」 「ワルド様、頬にご飯粒がついてますわ」 「え?ああ、急に場面が変わるからさ」 ウェールズ王子の胸に杖をつき立てルイズを無理やり小脇に抱えたワルドが勝利の高笑いを響かせます 「はははは、ウェールズ王子の命!!僕の花嫁ルイズ!!そしてアンリエッタの手紙、目的は全て達した!!」 今までの存在感の無さが嘘の様にその存在感をアピールするワルド お父さんもルイズが人質となっているので動けません 「ははは!!お前らもレコン・キスタに参加すれば命は助かるぞ!!」 その言葉に反応したのは意外にもモンモランシーでした 「ふ、ふざけないでよ!!誰がレコン・キスタなんかに参加するものですか!!」 その言葉を聞いた瞬間にワルドの顔が能面のように感情を無くしました そして厳かに告げます 「そうか、だったら選べ、今 僕に殺されるかレコン・キスタの兵士に陵辱の限りを尽くされ死ぬか」 ぎりりと歯を強くかみ締める音が二つ、ルイズとモンモランシーの二人です そして・・・ その声はぴたりと重なりました 「「誰があんたの思い通りになるんもんですか!!」」 「なら纏めて死ね!!ライトニング・クラウド!!」 強力な雷撃がモンモランシーを襲います モンモランシーが恐ろしさの余り、目を瞑ったその時、目の前に立つ影がありました 「お、お父様!!」 そうです、お父さんがみんなの前に出て魔法をその身で受けたのです お父さんの所々が黒く焦げ、煙が上がってます 「ふふふ、さすがモンモランシー伯 だが次はどうかな!!」 勝利の美酒に酔いながらワルドがさらにお父さんに向けて一撃を放ちました 「いやぁ!!」 「やめてぇ!!」 モンモランシーやルイズの絶叫が礼拝堂に響きました ですが当のお父さんは何かを確信したように呟いたのです 「・・・きたか」 瞬間、お父さんの眼前の地面が爆発しました そして出てきたのは 「おでれーたー!!俺様 相棒と大とうじょぉーーう!!」 デルフリンガーを持った黒髪の少年でした 「師匠、おくれてすんません!!」 いきなり現れた黒髪の少年なんとデルフリンガーで魔法を吸収してしまいます 「な、なんだと!?うぉおお!?」 いきなりの闖入者にワルドが驚いていると急にワルドの足場が崩れ落ちましたその拍子にルイズを離してしまいました 「し、しまった」 慌ててルイズを捕まえようとしたワルドの前に地面から7体の戦乙女を模した青銅のゴーレムが現れてワルドの邪魔をします 「乙女の心を踏みにじるヤツ・・・」 土煙の中からあの男の声がします 「乙女の夢を壊すヤツ・・・」 段々と薄れていく土煙にあの見覚えのあるシルエットが写ります 「そんな女性の敵は、このギーシュ・ド・グラモン・・・いや」 モンモランシーは高鳴る胸を押さえ、ワルドは薄れゆく土煙を鋭い目つきで睨み、ルイズは不安そうな瞳で見つめ、 キュルケは戸惑い、タバサは無表情ですが素早く次の行動を頭の中で計算し、お父さんは深く頷きました 「新しく生まれ変わったこの僕!!ギーシュ・ザ・グレートが許さない!!」 土煙が晴れたそこには、以前お父さんに(無理やり)修行の旅に連れて行かれて久しい級友、あのギーシュ・ド・グラモンが立っていました そして彼を見て一同は叫んだのです 「「「「「へ、へ、変態だぁーーー!!」」」」」 ギーシュの姿は筋肉ムキムキの体に青いブーメランパンツ一丁にマントを羽織り、杖と同時に何故かバカみたいにデカい斧をぶら下げてるのですから 「・・・・・・いい」 「へ?タバサ何か言った?」 「ううん」 心なしかワルキューレもアマゾネス化してるような気がします 「な、なんなんだ一体?ぶべらぁ!?」 突然の闖入者たちに放心状態になっていたワルドがいきなり吹っ飛ばされました ふたりに殴られたのです 「いくぞ、サイト!!」 「おう、ギーシュ!!」 さらに二人の闖入者は互いに顔を見ると頷き拳をおもいっきり振り上げました 「「往生せいやぁ!!」」 ガゥワコーンと言う音をたててワルドが吹っ飛んでいきます 「たわらばぁ!!」 奇妙な声を上げてワルドが空の彼方へと飛んで行きました まぁ吹っ飛びながらも 「僕はあきらめないぞー」 とか言ってるので大丈夫でしょう 礼拝堂ではお父さんとモンモランシーの魔法の治療で一命を取り留めたウェールズ王子と城で別れルイズにキュルケとモンモランシー、タバサが ギーシュが掘った穴を潜り抜けアルビオン城を脱出したのでしたが、何故かこの礼拝堂に残った影が三つ 「さて、ギーシュ、君は逃げなくてよかったのか?」 堂々と仁王立ちで押し寄せてくるレコン・キスタの大群を見つめサイトはにギーシュに問いかけます 「モンモランシーを虐めた奴らを許せはしないな、そういうサイト、君こそウエストウッド村に待ってる人がいるんだろ?」 「あいつらをほおっておくとテファになにするかわからないからな」 お互いの顔を見てにやりと笑うギーシュとサイト、そして 「やぁ、二人とも では殿を務めようか」 お父さんが二人の前に歩み出ると二人は恭しくお父さんに礼をしました それを見てお父さんは頷くとあらん限りの声でこれからレコン・キスタの大群相手に始まる大活劇の為に気を入れたのです 「ぶるうううああああああああああああああああああ!!」 続く 前ページ次ページとりすていん大王
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誰にもわからない。わかるはずが無いんだよ、地球の馬鹿供め!!フハハハハハハ・・・・・ -- ヤプール人 (2010-02-21 17 22 35) 最近じゃ巨大ヤプールばっか有名で、こっちは忘れられてる様な・・・ -- 名無しさん (2010-02-21 21 31 52) よく考えればこの姿が元祖なんだよな -- 名無しさん (2010-02-21 22 29 08) 番組見てて思ったがこの映像はどうやって撮影しているのだろうか -- 名無しさん (2010-02-22 20 32 30) そんなに知りたくば教えてやろう。我々、異次元人ヤプールの映像は複数の着ぐるみを着たスーツアクターがTAC共の作戦会議室で動き回りフイルムの特性を生かしたソラリゼーション効果で撮影したものなのだぁぁぁ!! -- ヤプール人 (2010-02-22 21 52 25) なるほどなあ しかし雰囲気のよく出てる絵だ -- 名無しさん (2010-02-22 22 11 13) ヤプール人乙!雰囲気が出ていていい絵だなぁ。因みに俺はメビウス以降の玄田さんヤプールが好きだったり。玄田さんボイスでのアッハッハッハッハ!!って笑い方が個人的に大好き。 -- 名無しさん (2010-02-23 08 47 06) なんの作品の絵? -- 名無しさん (2010-02-23 11 57 27) 「ウルトラ5番目の使い魔」の異次元の悪魔を知らぬとはな、全く・・・愚かな人間共よ!! -- ヤプール人 (2010-02-23 14 11 47) ↑五個上の解説どうも、しかし全然わかりませんでした。 -- 名無しさん (2010-02-23 18 58 43) つまり撮影のセット自体は同じということでしょう。MAT~MACまで、基地のセットは部分的に改修して使いまわしてたらしいし。オイルショックでセットの維持費がままならくなったのが、MAC全滅の裏事情。 -- 名無しさん (2010-02-23 19 57 30) 不景気とは怪獣よりも恐ろしいものか…>MAC全滅 -- 名無しさん (2010-02-24 22 32 18) 特撮はいつの世も予算との戦いだ。着ぐるみを改造して新しい怪獣を作り、シーンやセットを流用し、他作品からも機材やミニチュアを借りてこないと到底間に合わない。そんな厳しい環境の中で数々の傑作を生み出し、今の基礎を築いた人こそ特撮の神様、円谷英二監督だ。 -- 名無しさん (2010-02-26 17 34 04) ↑よくぞ言ってくれた!最近の玩具会社の犬になり下がった腐れ東○どもにのしつけて言ってやりたい。金なんかなくても情熱と愛さえあれば素晴らしい作品は作れるんだと。 -- 名無しさん (2010-03-10 13 54 34) かつてスーパーマンを演じたクリオストファー・リーヴが本当のスーパーマンであったように、おそらく円谷英二監督はウルトラマンだったのだろう。 -- 名無しさん (2010-03-19 23 23 48) ヤプールの着ぐるみは後にレボール星人に改造されました。 -- 名無しさん (2010-04-25 18 57 52) そして巨大ヤプールの着ぐるみはそのままでウルトラマンタロウに再登場したのは有名な話 -- 名無しさん (2010-04-27 15 24 34) 劣化しまくりで別物にしか見えなかったがな。。 -- 名無しさん (2010-04-29 17 45 10) 劣化のし過ぎで別の怪獣にされてしまったテレスドンよりはましなほう。 -- 名無しさん (2010-04-30 22 39 54) 劣化した着ぐるみでもウルトラファイトのような人気作を生み出すことはできる。予算よりも大事なのは、表現と構想力だ。 -- 名無しさん (2010-07-05 13 32 35) ウルトラ史上最凶の悪魔。 -- 名無しさん (2010-10-23 12 25 29) マイナスエネルギーの集合体だから絶対悪、しかも完全に滅ぼすことはできないから無限に蘇ることができるという、まさに悪魔そのものと呼んでいい存在 -- 名無しさん (2010-12-01 18 26 46) 超8兄弟の黒い影法師の正体はヤプールだったのではなかろうかと思ってる -- 名無しさん (2010-12-02 00 41 09) ゆけぇーっベロクロン! -- 名無しさん (2011-02-12 03 01 07) 名前の元ネタは家畜人ヤプーだそうで。 -- 名無しさん (2011-04-09 17 02 44) 最近はすっかり空気ですけど。まぁいつか最悪のシナリオひっさげて現れるんでしょうけど -- 名無しさん (2011-04-11 00 48 08) ↑案の定期待を裏切らない最悪の形で復活してくれました! -- 名無しさん (2011-06-21 16 34 25) 何てこった。最近大人しくしていたと思ってたら、よりによって、聖地をエルフから奪い取って復活を遂げるとは… -- 名無しさん (2011-06-21 22 03 55) しかし、エンペラ星人、レイブラッド星人、ジュダには、うだつが上がらない。 -- 名無しさん (2011-08-04 14 26 52) ↑デスレム、グローザム、メフィラスといった同列の奴らには軽く見られてたしね -- 名無しさん (2011-08-04 14 39 47) ヤプールの声優してた人は今ではわからないらしい。あの憎憎しげな声はエースというドラマに不可欠なものだった -- 名無しさん (2011-11-30 17 37 33) 誰の心の中にでもいる悪魔、だからヤプールとの戦いは終わることはない -- 名無しさん (2012-08-18 03 32 57) しつっこさでは最近ベリアルが並んできたな -- 名無しさん (2013-02-15 00 24 19) 悪魔は地に伏してもいつか必ず蘇る -- 名無しさん (2013-11-11 23 56 36) 名前 コメント
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注)本SSは『HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました』スレに掲載された作品です。 「HELLSING」のアーカードを召喚 ゼロのロリカード-01 ゼロのロリカード-02 ゼロのロリカード-03 ゼロのロリカード-04 ゼロのロリカード-05 ゼロのロリカード-06 ゼロのロリカード-07 ゼロのロリカード-08 ゼロのロリカード-09 タバサとゼロの吸血鬼 ゼロのロリカード-10 ゼロのロリカード-11 ゼロのロリカード-12 ゼロのロリカード-13 ゼロのロリカード-14 ゼロのロリカード-15 ゼロのロリカード-16 ゼロのロリカード-17 ゼロのロリカード-18 ゼロのロリカード-19 ロリカードとギャンブラー-1 ロリカードとギャンブラー-2 ゼロのロリカード-20 ゼロのロリカード-21 ゼロのロリカード-22 ゼロのロリカード-23 ゼロのロリカード-24 ゼロのロリカード-25 ゼロのロリカード-26 ゼロのロリカード-27 ゼロのロリカード-28 ゼロのロリカード-29 ゼロのロリカード-30 ゼロのロリカード-31 ゼロのロリカード-32 ゼロのロリカード-33 ゼロのロリカード-34 ゼロのロリカード-35 ゼロのロリカード-36 ゼロのロリカード-37 ゼロのロリカード-38 ゼロのロリカード-39 ゼロのロリカード-40 ゼロのロリカード-41 ゼロのロリカード-42 ゼロのロリカード-43 ゼロのロリカード-44 ゼロのロリカード-45 ゼロのロリカード-46 ゼロのロリカード-47 ゼロのロリカード-48 ゼロのロリカード-49 ゼロのロリカード-50 ゼロのロリカード-51 ゼロのロリカード-52 ゼロのロリカード-53 ゼロのロリカード-54 ゼロのロリカード-55 ゼロのロリカード-56 ゼロのロリカード-57 ゼロのロリカード-58 ゼロのロリカード-59 ゼロのロリカード-60 ゼロのロリカード-61 ゼロのロリカード-62 ゼロのロリカード-63 ゼロのロリカード-64
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「モノノ怪の形と真と理、お聞かせ願いたく候」 ただの薬売りを名乗った相手から放たれたその言葉に、無能と呼ばれた王は笑った。 モノノ怪 枕返し 一の幕 ――ペルスランはかくの如く語る。 全てのことの始まりはガリアに二人の王子が生まれたことでございます。 ジョゼフとシャルル。そう名付けられた兄弟は大層仲良く育ちました。 兄であるジョゼフが物心つくまでは…… 「そう、王族でありながら弟と違って兄は全く魔法の才能に恵まれなかった!」 ですが弟にはそんなこと関係なかったのです。周囲がなんと言おうと、シャルル様にとってジョゼフが最愛の兄であることになんら違いはなかったのですから、ですがジョゼフは別でした。 自分より優れた、己の理想とも言える弟に優しくされることに耐えられなかったのです。 ジョゼフは荒れていきました、日ごと部屋に籠もり酒と女と遊戯に溺れーーしかし一日中たりとも魔法の修練を欠かさなかったのは自らと弟君への凄まじい執念からでございましょう。 そんな折り、この国を揺るがす事件が起きたのです…… 「父は死の床で余を己が後継者に指名したのだ!世の民草、リュテュスの乞食どもにまで無能と知られた余がガリアの王だと!?」 それはこれまでなにも持たなかった彼にとって唯一弟に勝てる部分でありました。だからこそ零れものの玉座であると知りつつも言ってしまったのです。 「どうだシャルルよ、余こそがガリアの王だ!」 (おめでとう、兄さん) その一言を聞いた瞬間ジョゼフの心は砕け散ったのでしょう。最愛の弟を手に掛けしまった哀れな王はもはやもはやひきかえせない道へと足を踏み出してしまったのです。 「そうだ、余は弟殺しの狂王である。して薬売りよ、これを聞いても尚モノノ怪などと言う世迷い言をのたまうか?」 「まだモノノ怪の真をお聞かせ頂いておりませぬ故」 「真、だと?」 まさか、本当にお忘れになられたので御座いますか!? ならば仕方ありますまい、この老骨が墓の下まで持っていくつもりでございましたが全てお話したしましょう。シャルル様が残した真を…… あの日はやけに朝焼けが目に痛い朝でございました、いつも通りシャルル様を起こそうとシャルル様の部屋に向かった私めはそこで信じられないものを見たのでございます。 「さて、一体何をご覧になったので?」 涙ながらに抱き合うシャルル様とジョセフ殿下のお姿でございます。 「な、何を申すか!」 「これは異な事を。所詮戯言と笑ったのは貴方の筈、それよりもお気を強くお持ちください、さもないと……」 ーー返されますよ? モノノ怪 枕返し 二の幕 (ニハッ、ニハ、ニハハニニニニハハハッハ) 「な、なんだ今の笑い声は!?」 「どうなされました?話の途中に、急に立ち上がるとは」 「お前たち何を企んでいる!?」 「これは異なことを私たちは何も企んでなどおりませんし、それにーー企むのはあなたの十八番じゃありませんか」 失礼、どうやらほんとうに殿下はおぼえておられない様子、ならば続きを話させいただきましょう。あの日、あの時私めが見た光景のことを。 (悲しまないで兄さん、ガリアの為にはこれが一番いいんだから) ――ペルスランの語りと共にジョゼフの脳裏に記憶にない光景がいくつも閃いた。 「なんだ、なんだこれは」 そう、私めが見たのでは互いにに抱き合い、涙を流すシャルル様とジョゼフ殿下の姿なのです。 (これ以上オルレアン公派を押し留めることはできないんだ、僕が頭にならなければ間違いなく計画もなにもなく自分たちだけで蜂起する。そうならばこのガリアを真っ二つに割る内戦が起きる) そしてお二人が語る内容は、シャルル様暗殺の筋書きでございました。 「うっ、嘘を、嘘を申すな!」 誓って嘘では御座いません。 (頼んだよ兄さん、僕には政の才能はなかった。だからこの命兄さんに捧げよう、だからお願いだ僕が愛するこの美しいガリアが二つに分かれて争うハメにだけはならないようにして欲しい) シャルル様は自ら進んで死にに行ったのです。 刺客の正体が分からなかったのも当たり前の話で御座います、凶弾に倒れたシャルル様ご自身が魔弾の射手であろうとは誰も想像だにしますまい。 (ニハッ、ニハハ、ニハハ!) 「五月蝿い、やめろ!もうその笑い声をやめろ、やめろっ!」 (ニハッ、ニハン、ニイハ――ニイハン) 「やめろ、やめ、やめめめめ」 ――くるりとジョゼフの頭の裏返る、そこに張り付いていたのは人の顔の胴体を持つ小鬼であった。 (ニイサン、にいさん、兄さん、兄さん!兄さん!) ――最愛の弟の顔をした小鬼が、くるりと首をねじ回す。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 しかしそれは所詮幻覚。 自身が生み出した夢、幻。 だが今ので分かってしまった、そうだ――余は……いや俺は…… 「そしてあなたは弟君の願いに従い、王としてこの国を導いた」 そうだ、無能と言われても気にならなかった。どんな汚いことも進んでやった。すべては、全ては…… 「けれどやがて耐えられなくなった」 「なん、だと……」 「呷ったのでしょう?エルフの毒薬を」 そうだ、俺は耐えきれなくなって呷ったのだ。心を狂わせるエルフの猛毒を、だが…… 「だがそれでもあなたは狂えなかった」 カチン モノノ怪 枕返し 大詰め 「それでも、あなたは狂えなかった」 そうだ、それでも俺は狂えなかった。 シャルルへ向けた親愛の情をどうしても捨て去ることが出来なかったのだ。 「その結果貴方は」 最愛の弟を一方的に謀殺したと言う偽りの記憶をでっち上げ。 「心に満ちる愛情を、憎しみだと誤魔化して」 大切なものを失った傷を見ないようにして 「狂ったふりで」 非道なふりで 「孤独なまま、王として君臨し続けてきたのですね」 そうだ、それこそが俺の"虚無" 「それこそが枕返し」 心に蟠る、石の如く固まった妄念の結晶 「貴方はそれを裏返された」 愛おしい愛おしいシャルル、お前を殺したままおめおめと生き続けることなど出来ようか。 「だから貴方は」 だから俺は 「「毒の力を借りて、己が心を捻じ曲げた」」 カチン ――その言葉を呟いた瞬間、ジョゼフの首が真横に折れた。 ――べきべきと音を立てながら曲がる曲がる 「こ、これは一体な、何が!?」 ――ぐるんぐるんと首が回る、ジョゼフの頭が裏返る。 「毒の沼の底に沈めた弟への愛、腐り果て、虚無の石で封じて尚沸きあがろうとするその思い」 気づいてしまえば立ち行かぬその思いを裏返す欺瞞こそこのモノノ怪の正体。 ――やがてジョゼフの首の回転は止まった、そこの後頭部に四本の腕と四本の足でへばりついているのはシャルルの顔。 ――聖人の如く笑みを浮かべたシャルルの生首が、ジョゼフの頭と溶け合っていた。 「二人で決めていた弟の死に耐え切れず貴方はエルフより授かった毒を煽った」 ――それが真 「毒によって凍り付いた心をごまかす為に、あなたは弟への愛情を憎悪と偽った。その欺瞞に挟まれた貴方の心に妖が取り付いた」 ――それが理 シャルル! シャルル!シャルルゥゥ! ニハ、ニハニハニニニハハハ、ニィィハァァァーン! 「そして、その最愛の弟を裏切り毒へと逃げたことこそが」 シャルルよ、シャルルよ、愛しい我が弟よ。 ――モノノ怪の形 愚かな兄を、許せ カチン 「(うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!)」 「枕とはすなわち貴方の想い、それを返すとは己のすべてを裏返すことに他ならない」 「これは一体!? ジョゼフ殿下が捲れて……」 「肉体も、魂も、心さえも」 「ひぃぃぃぃぃぃ」 「すべてが裏返り、愛憎さえ一つになるその間隙に、枕返しは枕を返す」 (ニハァァァアアアアアアアアアアアアアアア!) 「もう一度返されますか?」 「否」 「本当に?」 「否否否否否、断じて否!」 「ほう……」 「この思い気づいてしまえば立ち行かぬ! 俺は間違っていた、間違っていたのだ。シャルルは――聖人でもなければ君子でもなかった。ただの俺の愛しい弟だった」 「俺の心だけならばいい、だがシャルルの本当の姿まで穢すのならばこんな毒などいらぬ! この俺の手で枕返しなど八つ裂きにしてくれるわ!」 「ならば解き――」 (――兄さん) 「……放つ!」 『解き放ぁぁぁぁぁぁぁつ』 モノノ怪 枕返し 終幕 すべてが終わった後、そこには膝の上に眠る姪を乗せたまま玉座に腰掛けるガリアの王の姿があった。 眠るとも死んでいるともつかないその顔は、これまでペルスランが見たことないほど穏やかで優しげだった。 「やれやれ、面倒臭い」 そう言うと薬売りが商売道具の入った行李を担ぎ上げた。 「さて帰りますか……」 その時行李の引き出しから天秤が地面に音を立てて落ち、そしてジョゼフの時とは比較にならないほど大きく傾いた。 その様子に薬売りは若干驚いたような表情を見せると、ゆっくりと口元を緩めた。 「成程、毒を垂らした杯は二つ。どうやらこのもう一匹、厄介なモノノ怪がいるようですね」 ――次回、女郎蜘蛛 続――かない! 「モノノ怪」より薬売り