約 1,871,410 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7415.html
前ページ次ページゼロのメイジと赤の女王 翌朝、早々に目覚めた陽子はとりあえずいいつけを済ませようと、そっとルイズの部屋を抜け出した。 広い廊下を歩きながら周囲を見て回るが、無駄に大きな城は何がどこにあるのかさっぱりわからない。 「・・・さて、水場はどこにあるんだろう」 少し困ったようにひとりごちた陽子に、冗祐が助言する。 「使用人をつかまえて訊いたほうが早いのでは?」 「そうだな、これだけ広いのなら働いている人も大勢いるか・・・」 「ならば丑の方角に、人が」 「わかった、ありがとう」 教えられた方向へ向かえば、遠くから人影が向かってくるのが見えた。彼女――――どうやら女性だ――――は陽子に気づくと軽く目を見張って、にこりと笑んだ。 切りそろえられた黒髪と白い肌に散ったそばかすの愛らしい、陽子とそう歳の変わりなさそうな少女だ。 「お早うございます。・・・えーと、新しい使用人の方ですか?」 陽子は苦笑して首を振る。 「お早う、・・・わたしは使用人ではないよ。どうやら昨日、ルイズという子に召喚されたらしくって」 「まあ。・・・それじゃ、あなたがミス・ヴァリエールの使い魔さんですか?」 驚いた様子の少女に、陽子は苦笑したまま尋ねる。 「・・・もう、そんなに有名か?」 「ええ。召喚の魔法で平民を呼んでしまったって、それは噂になっていますわ」 「そうか・・・」 どうやら人間が召喚されたことは本当に珍しいことらしい。これはしばらくは見世物かなと辟易する陽子に、少女が小首を傾げた。 「それで、ミス・ヴァリエールの使い魔さんは、こんなに早くにどうされたんですか?」 「ああ、彼女に洗濯を申し付けられて・・・そうだ、すまないけれど、洗濯する場所を教えてもらえないか?」 少女はそうですかと屈託なく笑んで、片手に下げた籠を示してみせる。中にはシーツか何かだろうか、白い布が丸められて詰め込まれていた。 「わかりました。私も丁度向かうところだったんです。一緒に参りましょうか」 「助かる。・・・わたしは中陽子。あなたは?」 少女は珍しいお名前ですねとにっこりして、先導して歩き出した。 「シエスタと申します。平民同士、これからよろしくお願いしますね、ヨウシさん」 他愛無い話をしつつ洗濯をしながら、陽子はシエスタにうまく表現できない不思議な感覚を覚えていた。 無礼にならないように気をつけてはいたが、あまりに視線をやるのでシエスタも見られていることに気づき、少々居心地が悪そうに訊ねる。 「・・・あの、ヨウシさん?私に何かついてますか?」 「・・・あ!・・・いや、」 ぶしつけを恥じるように陽子は視線を逸らし、そしてようやく彼女に感じるものが何かに思い至る。――――郷愁、だ。 「・・・じろじろ見てしまってごめん。なんだか、懐かしい気がして。・・・わたしが昔住んでいたところの人々が、シエスタのような綺麗な黒髪をしていたんだ」 「まあ、そうなんですか」 シエスタはわずか陽子にさした影に気づかぬ振りで笑って見せた。召喚というものがどういうものか、学院に住み込みで奉仕しているシエスタは多少ではあるが知っている。 シエスタと同年代か少し下のように見えるこの少年は、いきなり家族や友人や馴染んだ場所から引き離されたのだ。心細い中に懐かしさを感じるものを見つければ気にもなるだろう。 それにシエスタは曽祖父譲りの髪色を気に入っていたので、褒められたことは単純に嬉しかった。 「この色、珍しいでしょう。曾お祖父ちゃん譲りなんです。私の地元でも、この髪は私の家族だけなんですよ。 もしかしたら、ウチの曾お祖父ちゃんとヨウシさん、同郷だったのかもしれませんね」 「・・・・・・だったら、面白いね」 苦笑交じりに答える陽子に、シエスタは余計なことを云ってしまったことを悟る。 ふるさとのことはタブーなのかしら――――召喚されてしまった身であるならばそれもあるのかもしれない、あるいはもっと複雑な事情かもと考えて、シエスタは話題を変えることにした。 「ところで、人が使い魔として召喚されるなんて今までになかったって話ですけれど、ミス・ヴァリエールはヨウシさんになんておっしゃっていました?」 「ああ・・・」 陽子は思い出すようにすいと視線を上に向ける。 「・・・そうだね、普通人が召喚されることはないって云っていたな。それで、使い魔は主人の目となり耳となり、そして主人を守る存在だって云ってたけど、わたしには無理だから雑用とかをやるようにって」 「まあ。それじゃ、使い魔というよりは使用人に近いんですね。そうですよね、幾ら何でも人間にそんな危ないことはさせられませんよね」 「そうだね。・・・よし、シエスタ、これで洗濯物は全部?」 ぱん、と最後のシーツの水気をきって、陽子はシエスタを見た。シエスタは空の籠を見下ろし、笑顔でシーツを受け取る。 「はい、これでお終いです。・・・すみません、私の分まで手伝ってもらっちゃって」 陽子も薄く笑んで答える。 「案内してもらったお礼代わりに。また何かあったら頼りに行ってしまうかもしれないし」 「ああ、それならいつでもいらしてください。私、基本的に厨房周りにいますから。もしいなくても厨房の誰かに聞けばどこにいるか教えてもらえると思います。それから、」 シエスタは陽子の脇に絞ってある白いレースを手に取った。 「ついでに、これも干しときますね。乾いたらミス・ヴァリエールのお部屋まで持っていきますので」 少し迷ったが、陽子は素直にシエスタの好意を受けることにした。 「ありがとう。じゃあ、お願いしても構わないかな」 「どういたしまして。それでは、私戻りますね」 「うん、ありがとう、シエスタ」 「いいえ。それでは」 礼をしてぱたぱたと駆けていくシエスタの背を見送り、さて、陽子は聳え立つ白亜の城を見上げた。金波宮とはまるで違う建築様式で造られた城は朝日を受けきらきらと輝いている。 「・・・それじゃ、お姫様を起こしにいこうか。そろそろ良い時間だろう」 呟いて、朝特有のざわめきに溢れ出す城をストロベリーブロンドの髪の少女の元へと歩き出した。 「ルイズ。ルイズ、朝だよ」 「んー・・・。あと5分・・・・・・」 「・・・どこかで見た光景ですね」 「煩いぞ冗祐」 余計なことを呟く使令を黙らせて陽子はルイズを呼ぶ。少女はむにゃむにゃとなにやら呟いて顔をしかめ、むーと寝返りをうち朝日に背を向けた。意外に寝起きはよくないようだ。 「ルイズ。そろそろ起きないと、遅れてしまうんじゃないか?起きて、ルイズ」 「うー・・・。うるさいわねえ・・・」 身体を軽く揺さぶられ、とうとう観念したようにルイズがむっくりと起き上がる。手の甲でこしこしと目元をこすると、ようやくそこで陽子の存在に気づく。 「ひぇっ?!あ、あんた誰よ?!どういう訳で私の部屋に入ってきてるの?!」 「・・・どういう、って。ルイズが起こせと云ったんだろう」 悲鳴さえ上げられて、陽子は流石に呆れ返る。盛大に寝惚けているにしても忘れられているとは思わなかった。 「あなたが昨日召喚した使い魔だ。もう一度自己紹介が必要か?」 「・・・・・・・・・。あー。・・・あー・・・、そうだったわね。・・・いいえ、自己紹介は必要ないわ」 ルイズは可愛らしく欠伸をしながら、ベッドの上に座り込んだ。服、と単語だけで命じられ、陽子はベッド脇の制服を彼女に渡す。 「下着」 制服を受け取ったルイズは次いでそう告げた。まだ眠たそうで、とてものこと意識がはっきりしているとは思えない。 「どこにあるの?」 「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってる」 妙に間延びした口調に苦笑を噛み殺しながら適当に一揃い取り出して彼女に渡す。ルイズはのっそりした動きで下着を身につけた。 「服」 「その服は違うの?」 「着せて」 こどもではあるまいしと陽子は呆れたが、はたと思いついてなまぬるい顔をする。・・・そういえば、王になった直後はいつでもどこでも女官がついてまわり、なんでもやろうとしてくれたことを思い出す。 特に陽子を着飾らせることについてはそれが使命とばかりにものすごく燃えており、どれだけ簡素な格好で赦してもらうかが重大な問題だった。ちなみにその攻防戦は現在進行形である。 (・・・・・・そんなもんなんだろうか) どうせ同性なんだしと陽子はいまだ寝惚け眼のルイズにブラウスを着せだした。 老人ホームのボランティアで要介護者の着替えを手伝ったときのことを思い出しつつだったことは、ルイズには云わないほうがいいかもしれない。 前ページ次ページゼロのメイジと赤の女王
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/458.html
前ページ次ページゼロの使い魔クロス シンがシルフィードと言うウィンドドラゴンに咥えられたまま召喚され、タバサの使い魔となって既に四日が過ぎた。 召喚された当日の夜に、タバサの部屋でようやく気絶から目覚めたシンが最初にした事はタバサとの情報交換であった。 タバサ側からはシンが自分の使い魔になったと言う事、シンを咥えていたドラゴンの事、そして今自分のいる学院の事等を。 そしてシン側からは自分は元軍人だったということ、自分がいた場所は恐らくこの世界ではないと言う事等を伝え合う事となったのだった。 無論、タバサもシンの情報は最初から鵜呑みにはしなかった、だが、あまりにも自分が知っている世界の常識と異なる情報からその事実を認識する事になったのだ。 タバサは日頃から本を読み漁り続けていると言う事から学生でありながらも下手な学者よりも遥かに知識に精通している。 その為、シンが言っているプラントと言う言葉、ナチュラルとコーディネイター、そして月が一個と言う話を聞くにつれて、異世界からの訪問者と認識するようになったのだ。 事実、この世界ハルケギニアにはこういった「異世界からの訪問者」と言う伝承は以外に多い、もっとも、多くの人間はそんな事を信じはしないが… だが、タバサはシンの瞳をじっと見つめ、嘘を言っていないという確信を得たために、シンの言葉を信じることにしたのであった。 そして、タバサは幾つかの条件をつける以外は基本的にシンの自由を許す形を取ることとなったのだ。 まずはシルフィードが会話可能だと言う事を他の人間に漏らさないこと、そして近郊の森に小屋を構えてそこで一緒に住んでほしいと言う事。 前者の理由はシルフィードは貴重な種族で、そのことがアカデミーの研究者たちに知られると実験材料に提出しろと言われかねないということだった。 元々シンもそういった連中には激しい嫌悪を抱く性質なので前者の条件はあっさりと飲んだ。 そして後者はシルフィードもずっと話せない、そして寝るときに一人では可哀想だというタバサなりの優しさである。 シンも、最初食われそうになった事もありやや警戒していたが、そもそもの原因が自分の誤解だと知るとその罪滅ぼしをかねてそれを承諾したのだ。 トリステイン学院近郊の森 シンとシルフィードの小屋 「きゅいきゅい、朝よ朝、おきて、お話、お話の続き~」 「ふわぁぁ…、わかったわかった、朝食の用意するから少し待てって…」 そんなこんなで学院からやや離れた森で同居する事となったシルフィードとシンの朝は非常に早く、日が昇るとほぼ同時に始まる。 これは学院についたら喋れなくなるシルフィードが先にシン相手に出来るだけお話をしたいという思いがあっての事だった。 というのも、シンは学院についた後シルフィードと自分の食事のせめてもの礼として食堂で働く事になったからだ。 最初はお話の時間が少なくなると渋っていたシルフィードだったが、シンが食べ残しで出たお肉を持って帰ると言う事で何とか納得したようだった。 実際シンは余り物や調理した時に残った野菜屑等を貰って帰り、それを簡単に調理して朝食にし、シルフィードもそれを食べるのが楽しみになっている。 「それで、昨日は何を話してたんだっけ?」 「えっと~…そうそう、ヨウカンって子とであったときの事だったわ」 「ヨウカン? あぁ、ヨウランの事かあいつとであったのはアカデミーの食堂で…」 シンはまるで妹に語る様にシルフィードに調理した肉や野菜を与えつつ、自分の食事を食べながら思い出話をシルフィードに聞かせる。 シルフィードにとっては未知の世界の言葉ばっかりだったが、それでも人間の話が聞けると言うだけで嬉しいのかいつも満足そうだった。 人間とドラゴンと言う姿の違いさえ気にしなければ、まるで兄妹の会話のように自然な会話が二人の間では繰り広げられていた。 「で、アイツは唯の事故だって言うのに俺の事を変なあだ名で… って、そろそろやばいな」 「きゅいきゅい… 太陽が大分昇っているのね、そろそろシンのお仕事の時間、早く乗って、急いでいきましょう」 放っておけば何時までも続きそうな二人の会話だが、そうもいかずシンの仕事の時間が近づくと一度お開きになる。 ちなみにシンとシルフィードがどうやって時間を知っているかと言えば、シンが作った簡単な日時計で時間を計っているのだ。 朝食が終わり、仕事の時間が近づくとほぼ同時にシンは荷物を入れたバッグを手に持ち、シルフィードの背中に乗って学院の食堂へと向かう。 ちなみにその飛行中は学院に近づくと言う事から会話が殆ど出来ないのでシルフィードも減速はせず、かなりの速度で向かうようにしている。 トリステイン学院 食堂裏口 食堂の裏口付近まで来るとシルフィードは減速し、そのまま着陸する、そしてそれとほぼ同時にシンがシルフィードの背中から降りて裏口から食堂に入る。 「今日もサンキュー、シルフィード、また帰りも頼む」 「きゅいきゅい~~」 その寸前、裏口に入るかはいらないかの時にシンは何時もそう簡単にシルフィードを労ってから内部に入る。 そしてシルフィードもそれを聞き、シンが入るのを見届けた後に再びゆっくりと飛行を始め、空のお散歩を開始するのであった。 「おはようございます、マルトーさん」 「おう、来たなアスカ、ほれ、今日のノルマだ、確り頼むぜ!!」 「了解です」 調理服に身を包んだシンが食堂に入ると同時にその食堂を取り仕切る料理長であるマルトーに声をかけ、マルトーもそれに返事をしながら野菜の束をシンに渡す。 之はシンが幾らサバイバルやある程度の食事が出来るとはいえ調理師としての実力は持ってない事から、野菜の皮むきや下拵えを担当する事になったからである。 ちなみに、この食堂で働こうとシンがマルトーに頼み込んだときには少しひと悶着が起きたりもしている、それを少し語るとしよう。 マルトーはこのトリステイン魔法学院で働いてこそはいるが、本来は魔法が使えるからと威張り散らしている貴族が大嫌いな人間である。 もっとも、それはマルトーが特別と言うわけではない、この世界での平民―魔法が使えない人々―が当然のように抱いている感情である。 しかし、魔法を持たない平民はどれだけ足掻いても魔法が使える貴族には勝てない、そういう考えがこの世界には蔓延している。 だからいかに嫌悪の感情を抱いたとしても、反逆の刃を向ける事は出来ず、ただひたすらに耐えるしか出来なかったのだ。 そして、そんな彼らから見た、タバサの使い魔となったシンの姿は「貴族に媚を売っている裏切り者」と印象であった。 最初は使い魔、つまりは奴隷同然の扱いを受けるだろうとして同情されかけたのだが、タバサは一切そんな事を行わなかったからである。 特に、同じように召喚されたサイトと言う少年がその主であるルイズに犬扱いされている事からも、シンへのそういう逆風は強くなっていた。 だからこそ、シンが最初に働かせてほしいと言っても、マルトーは当然のようにそれを拒絶し、ご主人様の貴族に養ってもらえと言い放った。 だが、シンは拒絶されても何度も、何度もマルトーに頼み込んだ、途中で怒ったマルトーがシンの顔を蹴り飛ばしても、それでも頼み込んだのだ。 そんなシンの必死な態度にほだされたのか、マルトーはたった一つだけの質問をした、雇うか雇わないかの判断のために。 「お前は何でそんなにここで働きたいんだ? 別に働かなくてもあのタバサって貴族様ならひどい扱いはしないだろう?」 そんなマルトーの問いに、シンは必死な表情をして答えた。 「俺は、迷惑をかけたくないだけです、タバサには色々と助けてもらっているから、少しでも、迷惑をかけたくない、だから働きたいんです。」 そんなシンの言葉を聞いたマルトーは、覗き込むようにしてシンの瞳をじっと見つめていたが、柔らかな笑みを浮かべると、シンの頭を軽くなでる。 「迷惑をかけたくないから、せめて食い扶持くらいは自分で…か、顔を蹴って悪かったな、下拵えや皮むきくらいはできるな?今日から働いてもらうぞ?」 「あ、ありがとうございます!!」 そのシンの言葉に偽りは混じっていないと思ったマルトーは、シンの顔を蹴った事をわびると近くにあった予備の調理服をシンに手渡しながらそういい。 そしてシンもその調理服を受け取ると、まるで少年のような無垢な笑顔を浮かべて、マルトーに深く礼をすると近くの少女―シエスタと言うらしい―に案内されて更衣室に向かっていった。 しかし、シンは気付いていなかった、過去の自分なら間違いなく蹴られればマルトーに襲い掛かっていたと言うのに、何故今の自分は我慢していたのかと言う事を。 失う事への潜在的な恐怖に蝕まれてしまった己の心の歪みにシンは気付かないまま、トリステインでの日常生活に馴染み始めていたのであった…… 閑話休題 野菜の下拵えや皮むきくらいならシンも中々の手捌きをみせらる事ができ、まったく出来ないと思い込んでいたマルトーをほんの少しだけ感嘆させたりしていた。 とはいえ、その皮むき技術などもサバイバル技術の延長線上の為、細かい細工技術はさすがにシンでは出来ないのもまた事実であり。 そういう細工部分は一緒に皮むき等の下拵えをしているメイド達、特に最初にシンと会話してきたシエスタと言う少女によく習う事になっていた。 シンはさすがコーディネイターと言うべきか、技術の吸収は早く、最初は足手まといの部分もあったがどんどんと急成長していた。 その成長速度は、シンから約一日遅れで食事抜きの期間賄い食を貰う御礼にと手伝いに来たサイトが激しい闘志を燃やす程でもあった。 そして、シンも元々の性格柄か相手にライバル視されてスルーできない性格で、その結果発生するサイトとシンの競争のお陰で下拵えの終了速度はどんどん早くなっていたりする。 「よ~し、アスカ、今日はそれでいい、後はサイトに任せてデザートの配膳の手伝いを頼む」 「え… いいんですか?」 「あぁ、下拵えも大半終わったからな、訓練もかねて残りはサイトに任せたい、だからお前はシエスタ達の手伝いを頼む」 マルトーのその言葉にシンは頷き、デザートの配膳準備をしていたシエスタ達の手伝いに向かう。 ちなみにこの食堂では基本的に配膳はメイド達が行うようにしている為、シンがその手伝いをすると言うことは女学校に紛れ込んだ男一人の状態になる。 そして、シンの顔立ちも決して悪くは無いどころかかなりランクは高い、その結果メイド達の中にはシンと御近づきになろうとするものも出てくる。 もっとも、女性に非常に弱いシンにとってそのアプローチを回避する有効な手段が思いつかないのでシエスタに話しかけてそこから抜け出ると言う形になる。 そんなラブコメな空気を見ていたサイトは「シンの癖に… いや、逆に考えよう、キラやアスランじゃ無くてよかったと…」と、不思議な言葉を呟きながら皮むきを続けていた。 配膳開始間際はシエスタと一緒に配っていたシンだったが、4人程回ったところであらかたの配り方を理解し、シエスタと別行動を取るようになった。 多少のぎこちなさはあったが、女性陣には美形といえるシンが配膳してくれると言う事で案外良好な受け入れ方をされていた。 そして、シンが自分が担当する最後の人物にデザートの配膳を終えたそのとき、食堂の隅のほうに不自然な人だかりをみつけ、そちらの方に向かって歩いていった。 「申し訳ありません!! 申し訳ありません!!」 「まったく、之だから平民は… いや、平民ごときに配慮を期待した僕が愚かだったのかもしれないね」 その人だかりの中心では、明らかに貴族のお坊ちゃまと言う感じの男がシエスタに何か因縁をつけている様な光景が広がっていた。 状況をよく理解できていなかったシンは幸い付近にいたタバサの姿を認めて、状況を聞こうと声をかけた。 「なぁ、いったい何がどうなっているんだ?」 「……二股の痴情の縺れ、そして少女に責任転換」 シンの疑問にタバサは本を読んだまま、はしばみ草のサラダを食べながらあっさりとそう答える。 そして、シンはそれだけの情報でも大体の状況を理解し、シエスタを助けようと人だかりを割って中にはいっていく。 「貴族を侮辱した平民を処刑してもいいんだが… 女性相手に手を上げるのは紳士ではないな、そうだ、この侘びに一晩僕に付き合ってもらおうか な?」 最初は憤怒の表情だけであったが、実はスタイルも顔も良いシエスタを好色な瞳で見始めたその貴族は自分の夜伽の相手をしろとシエスタに言い寄る。 貴族に平民は逆らえない、その事を生まれた時からずっと教え込まれたシエスタは、悲痛な表情を浮かべてそれを受け入れようとした…その時。 バッキィィイイ!! 「いい加減にしろよ、アンタは!!」 憤怒の表情を浮かべたシンが、全力の右拳でその貴族の顔を殴りつけ、シエスタと貴族の間に割ってはいる。 「ウグッ… 平民…いや、ミス・タバサの使い魔か、貴様、使い魔ごときが貴族に手を上げて唯で済むと思っているのか!!」 「あぁそうでした、アンタはお偉いお偉い貴族様でしたね、でもな、仲間が言い掛かりつけられている所を見逃せるもんか!!」 最初は挑発するように、そして後半では殺気さえも伴った威圧感を漂わせながら、シンはその貴族に対してそう反論する。 「…シエスタに謝れ、そうすれば俺も謝ってやるさ」 ゆっくりと、戦闘態勢にはいり、殺気を隠さないままその貴族を威圧し続けるシン。 そして、その貴族も、幾つもの実戦と修羅場を潜り抜けてきたシンの威圧に押し負けるように怯み、冷静さを取り戻したので謝ろうとしていたのだが… 「おいおい、ギーシュの奴魔法も使えない平民、しかも使い魔ごときにびびってるぜ」 「そりゃその程度の奴はモンモランシーにも、あの一年の女にも捨てられるよなぁ」 「所詮ドットメイジなのに二つに手を出したのが大間違いって事か?」 外野から聞こえるシンと対峙している彼―ギーシュ=ド=グラモン―を嘲る声により冷静さを失い、逆にシンに対して憎悪を抱くようになっていた。 「ふ、フフフ…… いいだろう、貴族に手を上げた君に、死刑されるだけの君にちょっとしたチャンスをやろう、ヴェストリの広場で決闘だ!!」 そして、ギーシュはその憎悪の感情のままに、自分の理性が「やめろ、謝ったほうが安全だ」と警鐘を鳴らすのを無視して、シンに対して決闘を申し込んだ。 「…謝る気は無いんだな?」 「くどい!! どうしても謝らせたいなら僕を、このギーシュ=ド=グラモンを決闘で破りたまえ、平民の使い魔君」 シンの最後通達と言える声にも、ギーシュは冷静さを取り戻せないままそう言い放ち、決闘の場所であるヴェストリの広場へと向かっていった。 そして彼らを取り囲んでいた貴族たちも、面白い見ものが始まるといった表情で次々とギーシュの後に続いていったのであった。 そんな貴族達にまるで路傍の石でも見るかのような視線を向けていたシンだったが、シエスタが座り込んだまま怯えている様子だったので声をかける。 「大丈夫かシエスタ?」 「こ、殺されちゃいます!! 私が私が犠牲になればアスカさんは… お、お願いです、決闘なんてやめてください!!」 シンの言葉に反応するように、シエスタは必死にシンにしがみつき、決闘をやめるようにと懇願する。 だが、シンはそんなシエスタを落ち着かせようと頭をなでながら、優しい笑みを浮かべながらこういったのだ。 「大丈夫、シエスタは、俺が守るから」 場違いともいえるような、まるで一見すればプロポーズのようなその言葉を受けてシエスタの脳内はオーバーヒートを起こし、シエスタの動きは完全に止まる。 シンはそんなシエスタの様子を見て、何とか落ち着いてくれたと言う誤解をすると食堂の更衣室へと向かっていく。 そんなシンからしばらく遅れて更衣室に向かったシエスタの視界に飛び込んできたのは、衣服を脱ぎ捨て、下着一枚になっているシンの姿だった。 「俺は、ああいう奴らが許せないんだ、力を持っているのに、守る事が出来るって言うのに、力の無い人達を虐げる奴らが…」 そんなシエスタの行動を、「何故決闘を受けるのか?」という疑問によるものだと思ったシンは、自分の内心を吐露し始める。 「だから俺は、軍人になった、そんな奴らを止めたくて、一人でも多くの人達を守りたくて……」 そう言いながらシンは荷物の中に入れていたパイロットスーツを身に纏い、ナイフとハンドガンを装着していく。 段々と鋭くなっていくシンの気配、だが、シンの内心を聞いているシエスタやマルトー、食堂に居る人間達はそれ以上に悲しさを覚えていた。 そう、内心を吐露しているシンのその声は、まるで帰る場所を探して泣きじゃくっている子供の声のように聞こえていたから…… 「でもさ、結局どれだけがんばったって守れない人達も居た、倒せない奴らも居た、でも、やっぱり俺は諦められないんだ…だから」 そこでシンは言葉を区切り、深く、深く深呼吸をすると、決意を秘めた表情を見せ、自分へとの宣言を行った。 「だから、アイツは、ギーシュ=ド=グラモンは、俺が倒す!!」 そんなシンの決意を秘めた言葉に、食堂に居る面々は感激し、シンを激励しながら送り出していき、シンも其れに応えるように片腕を上げると、決闘の場所へと歩いていくのであった…… おまけ 今回のNGシーン そんな貴族達にまるで路傍の石でも見るかのような視線を向けていたシンだったが、シエスタが座り込んだまま怯えている様子だったので声をかける。 「大丈夫かシエスタ?」 「こ、殺されちゃいます!! 私が私が犠牲になればアスカさんは… お、お願いです、決闘なんてやめてください!!」 シンの言葉に反応するように、シエスタは必死にシンにしがみつき、決闘をやめるようにと懇願する。 だが、シンはそんなシエスタを落ち着かせようと頭をなでながら、優しい笑みを浮かべながらこういったのだ。 「大丈夫、シエスタは、俺が守るから」 場違いともいえるような、まるで一見すればプロポーズのようなその言葉を受けてシエスタの脳内はオーバーヒートを起こし、シエスタの動きは完全に止まらなかった。 「は、はい!!そ、その、全身全霊尽くしますので、末永くお願いします!!」 突然のシエスタの言葉に逆にフリーズを起こした我らがシン、ようやく言葉の意味を理解して必死に弁解しようとしたが。 「いや~、アスカ、そういう事か、なるほどねぇ、惚れた女のために決闘を受ける… 泣かせるじゃねぇか、だが、男ってのはそうじゃなきゃ な!!」 料理長であるマルトーが先に行動、シンの背中をバンバンたたくとコック達に声をかけ始める。 「よ~し、お前ら!!今日のディナーメニューの変更だ!! アスカが決闘から帰ってきたらシエスタとの披露宴だ、手を抜くなよ!!」 「「「うぃ~~~~っす!!!!」」」 そんなマルトーの言葉に、同じくシンの「愛する人のため決闘に挑む平民」の姿に感激したコック達が腕によりをかけた料理作りを開始し始める。 「なんで、なんでこうなるんだ…… なんなんだよ、これは……」 あまりの急展開にシンはそう漏らしたのだが、もはやシンの言葉を聞く人間はその場には誰も居なかったという…… 前ページ次ページゼロの使い魔クロス
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5761.html
前ページ次ページゼロと波動 ルイズが激しい後悔の念に苛まれている頃、リュウは中庭を歩いていた。 「ああ言ったはいいが、何を捕まえればいいのか判らんな・・・」 最初、野草やキノコは猛毒を持っている種類もあるだろうが、哺乳類なら見知らぬ種類でも大丈夫だろうと思っていた。 が、よく考えたらここは地球ではない。 哺乳類だからといって、必ずしも食べて大丈夫とは限らないのだ。 もしかしたら猛毒を持った哺乳類がいるかもしれない。 知識のない自分が知らずに食べてしまえば一撃でアウトだ。 「さて、困ったな・・・」 腕を組みつつ中庭をうろうろしていると、後ろから声をかけられた。 「リュウさん、何してるんですか?」 見ればシエスタが乾いた洗濯物を持って後ろに立っていた。 「食うものをどうしようかと思ってね。この土地の知識がないから、何を食えばいいのかわからなくて困ってる。 この辺りに食べることのできない動物なんてのはいるのかい?」 「う~ん・・・毒をもった動物とかってあまり聞いたことないですけど、どうなんでしょう・・・? 少なくともこの辺りにはいないと思いますよ」 首をかしげてしばし考えるシエスタ。 「それよりも、食事でしたらこちらにいらしてください。私たちの賄い用の食事でも良ければお出しできますよ」 「そうか、すまない、お願いできるかな」 「はい!」 満面の笑みで答えると、シエスタはリュウを厨房に連れて行った。 「それにしても・・・ガタイも見事だが、食いっぷりも見事だね・・・」 厨房を預かる料理長であるマルトーが舌を巻いた。 「よく身体を動かすからね。食わんことには始まらん。それにしても美味かったよ。こんなに美味い飯は久しぶりだ」 数人分はあろうかという食事をあっさりと平らげると、満足して頷くリュウ。 「ははは!お前さん、気持ちいいヤツだな!気に入ったよ。好きなときに来てくれ。賄いでよければいつでも、好きなだけ食わしてやる!」 マルトーは豪快な笑顔で不器用なウィンクをすると厨房の奥に消えていった。 「マルトーさん、照れてますね。さっさと奥に行っちゃった」 そんな二人のやりとりを見て、シエスタも嬉しそうだ。 「さて、ご馳走にもなったし、何か手伝えることはないかな?」 「そんなのいいですよ!困ったときはお互い様ですから!」 シエスタは慌てて断ったがリュウもひかない。 「今までのところ、困ってるのは俺だけだ。何か力になりたい、手伝わせてくれ」 一向にひく気配のないリュウに、シエスタが折れた。 「じゃ、じゃあ、デザートを運ぶのを手伝ってもらえますか?」 デザートの乗ったカートをリュウが押し、シエスタがデザートをそれぞれ卓上に配る。 そんな作業を続けていると、フリルなどあしらったやたら派手なシャツを着た生徒の懐から落ちた小瓶がシエスタの足元に転がってきた。 「あの、落とされましたよ」 小瓶を拾い上げ、差し出すシエスタ。 が、聞こえなかったようで相手は気づいていない。 「あの、落とされましたよ」 先ほどより大きな声で再び小瓶を差し出す。 「あれ?それはモンモランシーの香水じゃないか!ギーシュ!やっぱり君はモンモランシーと付き合ってたんだ!」 落とした本人とは違う生徒がそれに気づき、囃し立てた。 「ち・・・違うよ!美しい薔薇は誰か一人のためのものではない、皆のものなんだ、だから、誰か特定の人とは・・・」 マントの色の違う少女が一人、ギーシュと呼ばれた少年に近づく。 少女に気づくとギーシュの顔から一気に血の気が引いた。 「ケ・・・ケティ!違うんだ、これは・・・」 バチンッ! 言い切る前に頬に走る衝撃。 「ひどい!やっぱり私のことは遊びだったんですね!」 目には涙が溜まっている。 「ち・・・違うんだケティ・・・」 叩かれて赤くなった頬をさすりながら取り繕おうとするギーシュを尻目に走り去る少女。 「・・・何が違うのか、説明してもらおうかしら・・・」 ギーシュが声のした方を振り向くと金髪に縦巻き髪の少女が額に青筋を浮かべながらギーシュを睨んでいた。 ギーシュの頭にシエスタから奪った小瓶の中身をぶちまける。 「モ・・・モンモランシー・・・」 香水まみれになりながらも慌てて何か言おうとするが、口を開く前に先ほどとは逆の頬に再び衝撃が走った。 「やっぱり説明してくれなくてもいいわ。私よりあの女がいいってことは分かったから」 力いっぱい頬を叩くと小瓶をギーシュに投げつけ、モンモランシーと呼ばれた少女も肩を震わせながら去っていった。 「ち・・・違うんだ・・・」 力なくうなだれるギーシュ。 嫌な予感がしたシエスタはとばっちりが来る前に退散するべく、さっさと配膳を続けようとした。 「・・・待ちたまえ・・・」 そんなシエスタをギーシュが呼び止める。 「は・・・はいっ!」 飛び上がって返事をするシエスタ。 恐怖の為に直立不動のまま震えている。 まずい!貴族を怒らせてしまった!! 後悔するがもう遅い。 「僕が気づかないフリをしたんだ。それぐらいの機転は利かしてくれても良かったんじゃないかね?」 シエスタの顔からは血の気が引き、身体は傍から見ても判るほどブルブルと震える。 「も・・・申し訳ありません!!」 必死に頭を下げて謝るシエスタ。 「おかげで君は二人のレディを傷つけてしまった・・・どうしてくれるんだね・・・」 「申し訳ありません!!」 繰り返し、必死で頭を下げる。 逆恨みも甚だしいが貴族には逆らえない。 貴族にとっては平民のシエスタなど、立場的にも実力的にも気分ひとつで殺してしまえる相手だ。 ただ、もう、ひたすら謝って機嫌を直してもらう他ない。 「君はおかしなことを言うな・・・」 完全に萎縮してしまっているシエスタとふんぞり返ってそれを見下しているギーシュの間にリュウが割って入った。 「な・・・なんだね!?君は!?」 突然の闖入者にシエスタから目を離すギーシュ。 見れば身長こそ自分と同じぐらいだが、オーク鬼のような身体をした男が目の前に立っていた。 男としての本能がどう転んでも勝てないと警鐘を鳴らす。 思わず一瞬怯んだギーシュだったが、それでもすぐに考えを改めた。 勝てないのは生身同士の場合の話だ。 見たところこいつは平民、こちらは魔法が使える。負ける要素などひとつもない。 そこまで考えると、再びふんぞり返るギーシュ。 「おかしなこととはどういうことだね?」 威圧的にリュウを睨みつける。 「君は二股をかけた。そしてそれがバレた。確かにきっかけはシエスタだったかも知れないが、バレて困るようなことをしていたのは君自身だ。君にシエスタを責める道理がどこにある?」 ギーシュの視線を正面から受け止め、静かに語るリュウ。 そうだそうだと囃し立てる周りの生徒たち。 至極当然のことを言われて言い返す言葉に詰まる。 だいたい、理不尽なことはギーシュ自身にもわかっていた。ただ、たまたま関わってしまったメイドに八つ当たりしようとしたに過ぎない。 それに少々痛めつけたところで所詮平民だ。それで自分の気が晴れるならいいじゃないか。 そもそも、なんで平民風情にこんなことを言われなければならないのだ。 徐々に怒りのボルテージが上がるギーシュ。 そこで彼は気づいた。 こいつ、昨日の儀式でゼロのルイズに召還されたヤツじゃないか。 いちいち平民の顔など覚えてはいないが、こんな体格のヤツがそうそういるはずがない。 相手を馬鹿にした笑みを浮かべる。 「・・・そう言えば君は・・・昨日の儀式でゼロのルイズに召還された物乞いじゃないか。 あまりにみすぼらしいので覚えているよ。 そうかそうか、平民のクセに貴族に対する礼儀がなってないと思ったが、ゼロのルイズの使い魔か・・・ 流石は”落ちこぼれ”のゼロ!使い魔の躾ひとつできないとはね!」 リュウは無表情のまま、まくし立てているギーシュを静かに見つめ続ける。 「君をこの場で処分してあげてもいいんだけど、一応は貴族の使い魔だ。土下座して許しを請うというのなら、考えなくもないよ」 周りに聞こえるように、ことさら大きな声で告げるギーシュ。 「躾がなっていないのは君の方だし、謝らなければならないのも君の方だ。そんなことでは貴族だなんだという前に、人としての程度が知れるぞ」 予想外の反撃にギーシュの顔が真っ赤に染まる。 もう許さん。この馬鹿は一度痛い目にあわなければ解らないらしい。 「申し訳ありません!!私ならどんな罰でも受けます!リュウさんは関係ないんです!!」 必死で取り繕うシエスタを完全に無視するギーシュ。 「わかった・・・そこまで言うなら、決闘だ。それでどちらが正しいかを決めようじゃないか」 決闘という言葉を聞いて更に蒼白になるシエスタ。 「リュウさん!謝ってください!今ならまだ間に合うかも知れません!!」 リュウに謝るよう、必死に懇願する。無表情にギーシュを見つめていたリュウは温かい視線をシエスタに向けると、笑顔で答えた。 「心配してくれて有難う。でも、大丈夫だ。安心してくれ」 そしてギーシュに向けて言い放つ。 「物事の正しい、正しくないを決闘で決めるというのは愚者の極みだとは思うが、それで君が納得するというなら仕方ない。相手になろう」 「どこまでも腹が立つヤツだな!今更謝っても遅いからな!ヴェストリの広場だ!広場を血で染めてやる!!逃げるなよ!!」 吐き捨てるように叫ぶと、怒りに肩を震わせながらギーシュは食堂から出て行った。 決闘と聞き、一気に盛り上がる野次馬たち。 甘やかされて育ってきた貴族の子供たちにとって、こんな面白そうなイベントなど滅多にない。 皆、我先にとヴェストリの広場に向かって食堂を出て行く。 食堂の端の方で何やら騒ぎが起こっていたようだが、今のルイズにはどうでもいいことだった。 とにかく何とかしてリュウを探し出し、謝って仲直りしなければ。 でも、なんて謝ればいいのだろう。 どんどん沈んでいくルイズだったが、何気なく人がまばらになってきた騒ぎの方にふと目を向けた。 なんと、そこにリュウがいるではないか。 「え!?なんでリュウがここにいるの!?」 よくわからないが、そんなことは今はどうでもいい、きっとブリミルの思し召しなのだろう。 とにかく、行って謝らないと! 急いで席を立つとリュウの元に走る。 「リュウ!!」 泣き出しそうな顔でリュウに駆け寄るルイズ。 「ルイズか、いいところに来てくれた。ヴェストリの広場の場所を教えて欲しいんだが。シエスタに聞いても教えてくれないんだ」 突然の質問に目が点になるルイズ。 リュウは最初、シエスタにヴェストリの広場の場所を聞こうとしたのだが 「殺されてしまいます。行ってはいけません」 の一点張りで一向に教えてくれない。 そこに丁度ルイズが現れたのだ。 ルイズは謝ろうとしてリュウの元に来たはいいが、突然のことにワケがわからない。 何故にヴェストリの広場?? 「えと・・・話が見えないんだけど・・・ヴェストリの広場に何の用があるの??」 「ちょっとな」 理由については答えないリュウ。益々ワケがわからない。 目を白黒させているルイズにシエスタがすがりつく。 「リュウさんを止めてください!!リュウさんが・・・リュウさんが殺されちゃう!!」 泣き喚きながらルイズの肩を揺さぶるシエスタ。 意外な腕力を発揮するメイドにルイズの身体ががっくんがっくん揺さぶられる。 「ちょちょちょ!!?ととととりあえずずずず落ち着きなさいいいいい!!もげる!!肩がもげる!!!」 半ば失神しかけているルイズに気づき、ようやく開放したシエスタは、事の顛末を説明した。 ことの重大さを理解するにつれて、ルイズの顔色も徐々に変わる。 「ちょっとバカリュウ!!!何考えてるのよ!!!」 謝る云々どころの騒ぎではない、このままでは本当に殺されてしまうかもしれない。 慌ててリュウを探して首をめぐらす。 「あの平民ならもう広場に行ったよ」 親切な野次馬が教えてくれた。 どうやら、広場の場所を野次馬に教えてもらってさっさと行ってしまったらしい。 「あああ!!もうっ!!」 ヴェストリの広場目指して駆け出すルイズとシエスタ・・・ だったが、スカートを両手で摘みあげて走るシエスタはあっという間にルイズの視界から消えた。 ・・・何あのメイド、どんな脚してるのよ・・・ 「逃げずによく来たね。その勇気だけは褒めてあげよう」 やたらと芝居がかった口調と仕草でリュウに・・・というよりは野次馬たちに向けて言い放つギーシュ。 「僕に弱い者をいたぶる趣味はない。最後の忠告だ。泣いて土下座するなら今なら許してやらないでもないが、どうする?」 大見得をきりながら声高に言うギーシュ。 「お前はおしゃべりをしに来たのか?」 それを冷たくあしらうリュウ。 ギーシュの額に青筋が浮かぶ。 「いいだろう・・・後悔するがいい!!」 叫ぶと同時にギーシュは自分の杖である薔薇の造花を振る。 造花から1枚の花びらが落ち、地面に辿り着くと花びらは等身大の鎧を纏った女性の像となった。 「僕の二つ名は『青銅のギーシュ』。土のメイジ。 メイジはメイジらしく、魔法で戦うものだ。よってこの青銅のゴーレム・・・ 僕は優雅にワルキューレと名づけているんだけどね、このワルキューレがお相手するよ。よもや卑怯とは言うまいね?」 ギーシュの顔に残虐な笑みが浮かぶ。 忽然と現れた青銅の像に「ほう」と感嘆の声を漏らすと、腰を落として身構えるリュウ。 「魔法とは随分と便利なものだな。別に構わんさ、本気でかかってくるといい」 ギーシュは自分のワルキューレを見た生意気な平民が顔面蒼白になる無様な姿を楽しみにしていた。 が、ワルキューレを見ても片眉を多少上げるだけで、余裕さえ感じさせるリュウにギーシュのイライラは更に募る。 もっと驚いたらどうだね!?思わず口から出そうになるが、そんなことを言えば負けを認めてしまうことになるので慌てて言葉を飲み込む。 だが、リュウにしてみてもギーシュは未知の相手だ。別に余裕でいるわけではない。 ただ、歴戦の勇士であるリュウにとって、特に戦いの場においてはあらゆる事象に対して常に冷静にしていなければならないという経験と本能が、第三者に対して余裕ある態度に見えているだけに過ぎない。 そして、恐ろしいスピードで対戦相手を分析していく。 ・・・若いな・・・戦いの状況下で感情が完全に表に浮き出てしまっている。 それに実戦経験もほとんどないらしい。 視線がせわしなく動いているし、呼吸も荒い。 だいたい、相手の力量も解らないのに自分の手の内を最初から宣言するなど自殺行為だ・・・ そこまで考えてから、改めて気を引き締める。 ただし、だからと言って弱いかどうかとは別問題だ。 元々のポテンシャルが高ければ経験の差など埋めてしまうかもしれないし、魔法とやらがどのようなものかもまだ解らない。 相手が格闘家なら身体つきや筋肉のつき方、視線や微妙な筋肉の動きの変化である程度の予測はつくが、今回はそれが役に立つとも思えない。 とにかく、慎重にかかるしかないな・・・ と、丁度そこにようやくルイズとシエスタが追いついた。 「ちょっとリュウ!!何してるのよ!早く謝りなさい!今ならギーシュも許してくれるかもしれないわ!!」 必死に叫ぶルイズ。 「ゼロのルイズ、残念だが、それはない。彼は僕の怒りを買ってしまった。最早、泣こうが土下座しようが、許すつもりはないよ。」 「ギーシュもギーシュよ!だいたい、貴族同士の決闘は禁止されてるじゃない!!」 キッと視線をギーシュに向け、非難の声をあげる。ゼロと呼ばれたことにも腹がたつが、今はそんなことを気にしている場合ではない。 「禁止されているのは貴族同士の場合だろう?彼は平民だ。なんら問題はない」 「それは・・・それは今までそんな馬鹿げたことがなかったからでしょう!ドットとはいえ、メイジのアンタに平民のリュウが勝てるわけないじゃない!!」 目に涙を滲ませながら尚も食い下がるルイズ。 「最初に口を挟んできたのは、そのリュウとかいうみすぼらしい物乞いだ。だいたい、僕に文句を言う前に、使い魔の躾ひとつできない無能な自分を責めるべきではないのかね」 無慈悲に告げるギーシュ。 必死に言葉を続けようとするルイズにリュウが声をかける。 「大丈夫だ、ルイズ。」 「でも・・・ホントに殺されちゃうのよ!アンタわかってないのよ!平民では貴族には絶対に勝てないの!!」 リュウは、最早溢れ落ちる涙を拭きもせずに必死で決闘を止めようとするルイズをじっと見つめた。 あの無駄にプライドの高いルイズが自分自身への中傷の言葉には反論すらせず、 ただひたすら決闘を回避させようとしている。 どうやらルイズは俺を本気で心配してくれているようだ。 流石に床で飯を食えと言われたときはどうかと思ったが、やはり根は優しい子なのだろう。 ならば俺も応えてやらねばならない。 暖かで優しい笑みをルイズに向ける。 「ルイズ、君はもう少し自分の使い魔を信じた方がいい。それに、自分で言っただろう?使い魔は主人を守るものだと」 リュウの言葉にきょとんとするルイズ。 リュウは何を言っているのだろう? 危機に陥っているのは私じゃなくて、リュウの方ではないか。 「詳しいことは解らないが、彼が君を馬鹿にしていることは解る。とりあえず、彼には君に謝ってもらうさ」 そう告げると改めてワルキューレに向かって構えた。 リュウはルイズの”誇り”を守ると言ったのだ。 そう理解したとき、ルイズの顔が熱くなった。 「ふん。いくらでも謝ってやるさ。まあ、僕に勝てればの話だけどね」 再び残虐な笑みを浮かべるギーシュ。 リュウの周りの空気が一気に張り詰める。 「俺は・・・俺より強いヤツに会いにきた」 前ページ次ページゼロと波動
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1208.html
トリスティン魔法学院とその関係者達は、いつもと変わらぬ平穏を享受していた。 ルイズが土くれのフーケを倒したという噂も、いつの間にか語られなくなり、一部を除いてルイズの存在は忘れ去られてしまった。 そんな中、ロングビルは思いがけない客の来訪に驚いていた。 オールド・オスマンから、書庫の資料を持ってきてくれと頼まれたロングビル。 彼女は、よりによってルイズを一番馬鹿にしていたと言われている『微熱のキュルケ』からルイズに関する話を聞きたいと言われたのだ。 「ミス・ツェルプストー、今は仕事中ですので、後ほどにして頂けませんか?」 「手間は取らせないわ、『土くれのフーケ』の隠れ家があった場所を教えて欲しいの」 ロングビルは思いがけない質問に、二度目の驚きを隠せなかった。 「ふ、フーケの隠れ家ですか? なぜ貴方がそんな事を…」 「教えてくれるの?くれないの?どっちなのよ」 キュルケは多少不機嫌そうに喋る、ロングビルは隠す理由もないと思い、フーケの隠れ家があった場所を教えた。 キュルケは居場所を聞くと、一言礼を言ってその場を立ち去った。 翌日、虚無の曜日。 この日は休日であり、学院の生徒達も思い思いの休日を過ごし、普段とは違った騒がしさがある。 町に出かける者もいれば、楽員の周辺で魔法を使って遊ぶ者もいるし、図書室で読書に励む者もいる。 この日の午前中に、風竜と呼ばれるドラゴンが魔法学院から飛び立ち、フーケの隠れ家跡へと向かっていった。 ロングビルは塔の窓からそれを見かけると、魔法学院の馬を借り、ドラゴンの後を追った。 「きゃああああああー!?」 風竜の上でシエスタが叫ぶ、生まれて初めての空の上、生まれて初めての高さに、シエスタは驚いていた。 「あら、貴方空は初めてかしら、あまり叫んでいると舌を噛むわよ」 シエスタの後ろからキュルケが声をかける。 「……シルフィード、遊んじゃ駄目」 『きゅい、きゅい!(お姉さま、この人太陽の臭いがするの、不思議な人!)』 「そう」 シルフィードと呼ばれた風竜が遊んでいると気づいたのは、主であるタバサだった。 テレパシーのようなものでシルフィードの言葉がタバサに伝わる、タバサはテレパシーを使わずに言葉で命令する。 端から見れば、竜と人間がお互いの言葉で会話しているという妙な光景だが、メイジと使い魔の関係を知るものであれば特に驚くことはない。 しかし、平民の出であるシエスタは『本当に会話できるんだ、凄いなー』と、今更といえば今更な感心をしていた。 いつものメイド服をはためかせて、平民の少女は空を行く。 一方、ロングビルは馬を走らせていた。 キュルケが風竜に乗っていると確信したロングビルは、200メイル以上の距離を開け、馬で後を追っていた。 念のためにどこからか調達した花束も持ってきている、これを跡地に添えると言えば、自分の行動が疑われることもないだろう。 (情報の収集と、今後のために…) ロングビルの表情は、凛とした『有能な秘書』ではなく、既に『土くれのフーケ』のものになっていた。 フーケの隠れ家があった場所、つまり、ルイズの起こした爆発の爆心地は、とても凄惨な出来事の現場とは思えないほど美しかった。 「綺麗…」 空からその光景を見たシエスタが、思わず言葉を漏らす。 考えようによっては不謹慎だと思われたかもしれない。 しかし、池となり、周囲に草花の生い茂るこの場所は、キュルケにもタバサにも少なからず感動を与えていた。 シルフィードが池の傍らに着地し、三人は地面に降りる。 シエスタは地面に降りてすぐにシルフィードに臭いを嗅がれ、頭をこすりつけられて困惑していた。 どうやらよほど気に入られたらしいが、それを知るのはシルフィードの言葉が分かるタバサのみ。 キュルケは美味しそうな臭いでもするのかしら?と、これまた危ないことを考えていた。 三人は、改めて池を見る。 クレーターは雨水を貯めて池となり、周囲に草花を生い茂らせ、見る者の心を楽しませていた。 誰が持ってきたのか分からないが、小舟までそこに置かれている。 この光景を見て、土くれのフーケを道連れにルイズが死んだ場所などと、誰が思うだろうか。 「凄いわね、短い間にこんなたくさんの花が咲くなんて」 「不自然」 キュルケが感心するが、タバサはどこか納得いかないと言った感じだ。 何に納得できないのだろうと、ふと考え込む、答えはすぐに見つかった。 花の種類が揃いすぎているのだ、誰かが庭園の手入れをするように、規則正しく様々な種類の花が並んでいる。 トリスティン魔法学院とその周辺では見られなかった種類のものまで生えている。 「あ、これ煮込むと美味しいんですよね」 てどこか的はずれなことを言うシエスタに、キュルケとタバサは思わず吹き出した。 「花を見て食べ物の話をするんだから、もう。ところでさっきから気になっていたんだけど…そのバスケットは何?」 キュルケがシエスタの持っているバスケットを指さす。 「あ、これですか?これはお供え物です」 「オソナエモノ?」 「はい」 そう言うとシエスタはバスケットの中を見せた、中にはイチゴのタルトが入っている。 「何、あなたピクニック気分で来たの?まあこの景色を見たらそれも悪くないと思うけど…」 そう言ってキュルケが不機嫌そうな顔をする。 シエスタは、キュルケの訝しげな視線を受けて、慌てて弁解した。 「ち、違います、ピクニックじゃなくてお供え物です」 「だからそのオソナエモノって何の事よ」 シエスタはバスケットの中からタルトを一切れ取り出すと、それを紙に包んだ。 「何やってるの?」 キュルケの質問に答えながら、池の側に寄って、紙に包んだタルトを地面に置いた。 「私、お爺ちゃんから教わったことがあるんです。年に一度、死んだ人に生きている人と同じように接して、その人の残してくれた教訓を忘れないようにするそうです」 そう言ってバスケットから小さな花束を取り出し、紙に包んだタルトの脇に置いた。 「ひいお爺ちゃんはちょっと変わった人でした、東方の果て、ロバ・アル・カリイエから『竜の羽衣』というマジックアイテムを使って飛んできたと言うんです」 シエスタは立ち上がり、キュルケに向き直る。 「ロバ・アル・カリイエから飛んできたなんて誰も信じていません、でも、ひいお爺ちゃんは、亡くなった人にはお供え物をするんだとか、手を合わせて祈るんだとか、いろんなことを教えてくれたんです」 シエスタの言葉に、キュルケが感心したように呟く。 「へぇ、不思議な習慣があるのね、でも食べ物を捨てるのと一緒でしょ、貴族ならともかく平民にはそぐわない風習じゃない」 「違いますよ、その分は粗食で我慢するんです、喜びは皆で分け合って皆で楽しみ、悲しみは皆で分け合って皆で慰めるって、そう言ってました…って、ごめんなさい!私、貴族様にこんな事まで喋って…」 シエスタが両手で自分の口元を隠し、慌てて謝る。 「別にいいわよ、東方の果ての話なんて滅多に聞かないし、それに…」 キュルケは池を見た、今までの悲しみを洗い流すかのように光が反射し、水面が輝いている。 「ルイズなら”こんなんじゃ足りないわよ”なんて言って怒るんじゃないの?そのタルト私たちの分もあるんでしょう、私も一口分、オソナエモノにさせて貰うわよ」 「私も」 ずっと黙って話を聞いてたタバサも、キュルケと一緒になってお供え物をするという。 シエスタは、それこそ輝くような笑みを二人に見せた。 『きゅいきゅい!』 突然、シルフィードが鳴き出した、シルフィードが誰かを見つけたと理解したタバサは、シルフィードの示す方を見た。 そこには、馬に乗ったロングビルがいた。 池の周囲に生えた草花に驚いたのか、惚けたような表情のままこちらに近づいてくる。 「…驚きましたわね」 そう呟いて馬から下りたロングビル、その手には花束が握られていた。 「ミス・ロングビル…貴方も?」 キュルケの言葉に、ロングビルは静かに頷いた。 「ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、シエスタ。…私も混ぜて貰えないかしら」 そう言ってロングビルも、加わり、四人は悲しみを乗り越えるように、ルイズの思い出話をした。 途中でロングビルが、「平民を連れてくるなんて珍しいわね」と疑問を口に出したので、シエスタと知り合う切っ掛けを話すことになった。 そもそもキュルケがシエスタを連れてきたのは、シエスタがルイズの死に動揺していたのがきっかけだ。 いつもように食堂で朝食を取っていた時、ルイズが死んだといううわさ話をしている貴族に「本当ですか!?」と問いかけてしまったのが始まりだった。 ぞの貴族達はシエスタを乱暴に払いのけると、メイドが貴族の話に口を出すなと言って怒り出した。 それを制止したのはギーシュだった、彼は良くも悪くも純粋で、女性が傷つけられようとしているのを見て黙っては居られないらしい。 もっとも、相手はギーシュより実力が上の『ライン』だったので、ギーシュは青ざめながら弁解する羽目になった。 噂を聞きつけたキュルケが、ルイズの死は本当なのかと二人に問いつめなければ、ギーシュはボコボコにされていただろう。 それがきっかけとなり、キュルケとタバサは、シエスタと知り合ったのだ。 そのお礼といっては何だが、ロングビルはこの池に花が植えられ、小舟が置かれている理由を三人に話した。 (烈風カリン殿が話していた『ルイズが小さい頃遊んでいた池を…』って、この事だったのね…何よ、厳しいフリして親ばかじゃない) ルイズが小さい頃遊んでいた池を再現したものだと説明し、キュルケ、タバサ、シエスタの三人は、たまらず涙を流した。 その頃、ルイズは森の奥を歩いていた、人間が近づかないような奥地であり、オーク鬼やトロル鬼の出現が危惧される地帯でもある。 吸血鬼の鋭敏な感覚と、高い記憶力のおかげで道に迷うことはない。 ルイズは可能な限り遠回りをして、トリスティンの城下町に向かっていた。 「……あら?」 ふと、歩みを止める。 巨大な樹木の根元に、女戦士のものと思われる白骨死体が転がっていた。 鎧はぐちゃぐちゃにひしゃげており、圧倒的な力で破壊されたのだと想像できる。 白骨に近づくと、周囲の茂みからガサガサと音がして、大きな動物が姿を現した。 トロル鬼と呼ばれる亜人種が現れ、ルイズを取り囲んだ。 象のような皮膚にゴリラのような体格、単純なパワーでは人間の遙か上を行くトロル鬼は、小さいトロルと違い、人間の敵として認識されている、なぜなら彼らは人間を『食べる』からだ。 一人の少女の周囲には五匹のトロル鬼という、きわめて絶望的に見える状況がそこにあった。 「そういえば…まだ、ちゃんと試してなかったわ」 そう言いながら、ルイズは足下に落ちている剣を拾った。 固定化の魔法がかけられている長剣は、持ち主が白骨死体となったにもかかわらず、錆びずに輝いている。 ルイズはそれを無造作に、正面にいるトロル鬼に向かって、投げた。 バァン! と音を立てて、トロル鬼の体は爆発したかのように左右に裂け、ぐちゃりと血の滴る音を立てて地面に崩れ落ちる。 固定化のかけられたはずの剣は、その衝撃に耐えきれず砕け、破片は周囲の木々を傷つけ、穿ち、散らばった。 『グオ?』 他の四匹は何が起こったか分からず、一瞬首をかしげるが、次の瞬間には怒り狂ってルイズへと飛びかかってきた。 そして…ぐちゃりと音が鳴る。 ルイズの腕が、飛びかかってきたトロル鬼の分厚い大胸筋を貫いていた。 「安心して… 木の根っこが養分を吸い取るかのように 理にかなったとても自然な事よ」 ズギュンッ! To Be Continued …… 7< 目次
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4446.html
前ページ次ページZERO A EVIL あの決闘の後、ルイズの日常は大きく変化していった。 ルイズと決闘したギーシュは、一時は命の危険もあったが、水の秘薬と治癒の魔法のお陰で一命を取り留めた。 ギーシュを振ったはずのモンモランシーは、ギーシュが運ばれた医務室にすぐさま駆けつけ、付きっきりで看病していた。 ギーシュが目覚めた時など嬉しさのあまり泣き出してしまい、ギーシュを困惑させるほどだった。 回復したギーシュは、以前とは違い他の女の子に手を出すことはなくなり、今はモンモランシー一筋になっている。 自分を看病してくれたモンモランシーに惚れ直したようだ。二人の仲睦まじい姿は、多くの生徒に羨ましがられていた。 ギーシュにとっては正に怪我の功名といったところだった。 幸せいっぱいのギーシュは決闘の事などすっかり忘れていたが、他の生徒達はそうはいかない。 あの決闘を見たり、聞いたりした生徒達のほとんどが同じ事を考えていた。 “次は自分の番かもしれない” ルイズはギーシュのワルキューレを破壊できるほどの力を持っているし、何より恐ろしいのはあのスピードだ。 メイジが魔法を使うには詠唱をする必要があり、それには少し時間がかかる。 あのスピードで突撃されたら、詠唱中に攻撃を食らってしまい、ギーシュと同じように医務室行きだろう。 奇襲をかければ勝てるかもしれないが、失敗した時は自分の命が危ない。 そんな命懸けの戦いに挑む生徒がいるわけもなく、多くの生徒が導き出した結論はルイズを避ける事だった。 それは陰でルイズの悪口を言っていた平民達も同じだった。 教師達もルイズに対して避けるような対応をする者が多かった。 決闘の後にルイズは学院長室に呼ばれたが、注意を受けただけで何の処罰もなかった。 オスマンは、ギーシュがルイズを侮辱していた事、決闘はギーシュから申し込んでいる事、ギーシュの命に別状が無い事等を罰しない理由に挙げていた。 だが、以前からオスマンはルイズを贔屓目で見ていると思っている教師も多かったので、納得のいかない者も少なくなかった。 結果として、ルイズを避ける教師が増えてしまったのである。 こうしてルイズは、馬鹿にされる事はなくなったが、みんなに恐れられ避けられる存在になってしまった。 そんなルイズに対して、今までどおりに接する者もいた。 ルイズの隣の部屋に住んでおり、ルイズの事をよくからかっていたキュルケだ。 生徒達の間では、ギーシュの次に医務室送りにされるのはキュルケだろうと噂されていた。だからきっと、キュルケもルイズを避けるだろうと誰もが思っていた。 だが、そんな予想とは裏腹にキュルケのルイズに接する態度はいつもと変わらなかった。 むしろ、魔法は使えなくてもそれを補えるような力を隠し持っていたルイズに対し、『微熱』の二つ名を持つキュルケは対抗心を燃やしていた。 最近は親友である青い髪で無口な少女、タバサに付き合ってもらい魔法の特訓をしているようだ。 そして一番の変化といってもいいのは、メイドのシエスタがルイズの側によくいるようになった事だ。 ルイズの事を放っておけないシエスタが、よく世話を焼くようになったからである。 他のメイド達がルイズを怖がって近づかないため、まるでルイズ専属のメイドのように見える。 最初は戸惑っていたルイズだったが、自分の事を信じると言ってくれただけでなく、優しく抱きしめてくれたシエスタと仲良くなるのに時間はかからなかった。 今では、シエスタはルイズの事を親しみを込めて「ルイズ様」と呼んでいる。 ルイズはシエスタにそう呼ばれて嬉しいはずなのだが。 「貴族を名前で呼べるのは光栄な事なのよ。あ、あなたの忠誠心に答えて許可してあげるんだからね」 と、またしてもプライドが邪魔をして素直な気持ちを言葉にすることはできなかった。 だがシエスタは、素直になれない不器用なルイズの性格を知っていたので、特に気にもしなかった。 そんな感じで二人の関係は良好だった。特にルイズは、この学院に来てからほとんどしていなかった親しい人との会話を楽しんでいた。 あの決闘以来、左手のルーンが光を放つ事も、不思議な力を発揮する事もなかった。 使い魔の石像も変化は無く、今では多くの生徒達に待ち合わせ場所の目印に使われていた。 そして、あの不思議な夢も見ることはなかった。 だが、ある日の夜。 ルイズは寝る前にシエスタに髪を梳かしてもらっていた。 桃色がかったブロンドの長い髪はルイズの自慢であり、毎日の手入れは欠かせないのだ。最近はシエスタに髪を梳かしてもらうのが日課のようになっていた。 髪を梳かし終わったシエスタを見送るために部屋の外に出ると、そこをキュルケに目撃されてしまった。 「あら、ルイズじゃない。今日もお気に入りのメイドをはべらせてご満悦みたいね」 「こ、この子はそんなんじゃないわよ!」 「ふーん。男が寄り付かないから、てっきりメイドの女の子に手を出してるのかと思ったわ」 「どうしてそうやっていやらしい事しか考えられないのかしら。これだからゲルマニアの女は嫌なのよ!」 いつものように口げんかが始まり、側にいるシエスタはおろおろするばかりだった。 「まあ、あなたのような貧相な体じゃ色恋沙汰とは無縁でしょうけど」 「ななな、なんですって!」 「本当の事を言っただけじゃない。精々これからの成長に期待でもしなさいな、それじゃあね」 そういってキュルケは自分の部屋に入っていった。後には悔しがるルイズとシエスタだけが残される。 「な、何よ、あの女! ちょっと人より胸が大きいからって!」 「ルイズ様、女は外見より中身で勝負ですよ!」 シエスタは励ましてくれるが、自分より胸が大きいシエスタに励まされても嬉しくなかった。 シエスタと別れた後、着替えて眠ろうとするが、苛々しているせいでなかなか眠ることが出来ない。 今日は嫌な夢を見そうな予感がした。 ルイズは夢を見ている。 前と同じ不思議な夢を…… 夢の中のルイズは葉巻を咥えた大男だった。 ルイズには多くの子分達がおり、無法者の荒くれ集団クレイジー・バンチと呼ばれ恐れられていた。 ある時、サクセズ・タウンという街に金があるという噂を聞きつける。 ルイズは金を手に入れるために子分達と街に訪れ、街の住民達の生活を脅かしていく。 だがある日、街に行っていた子分のパイクがある男に敗れて逃げ帰ってきた。 別行動していた他の子分二人も、その男と後から現れたもう一人の男に敗れたと聞き、ルイズの怒りが燃え上がる。 ルイズは復讐の為に、子分達全員を引き連れてサクセズ・タウンに向かった。 たった二人に自分達が負けるはずがない。それに自分には最強の武器であるガトリング銃がある。 ルイズは自分達の勝利を確信していたが、街に入った瞬間予想外の事態が起こる。 街には罠が仕掛けてあったのだ。ルイズは罠のせいで多くの子分を失ってしまう。 数少ない残った子分達と二人の男に戦いを挑むがルイズは敗れてしまう。 敗れたルイズは本当の姿へと戻っていく。 ルイズの正体は、スー・シャイアンの連合軍によって全滅させられた第7騎兵隊の生き残りの馬だった。 馬に死んだ騎兵達の恨みと憎しみが宿り、ルイズが生まれたのだ。 場面が切り替わり、ルイズの姿も変わる。 次のルイズは拳法家であり、義破門団という拳法家集団の頭領を務めていた。 義破門団に仲間意識は無く、ただ同門なだけであり信頼関係などとは無縁であった。 同門であっても隙があれば命を取られる。真の強さとは、そこまでしなければ求められないとルイズは思っていた。 義破門団の他にも、大志山という山に拳法使いの老人が居り、心山拳という拳法を弟子達に教えていた。 肉体より精神に重きを置き、人としての強さを追及する心山拳は、ルイズの考える強さとは正反対であった。 自分とは違う強さの考え方を持つ心山拳の老師とは、いつか戦う事になるだろうとルイズは思っていた。 そして、その機会は意外と早く訪れる。心山拳の老師がいない隙をついて門下生達が、老師の弟子達を襲ったのだ。 弟子の仇を取る為に、老師と生き残った一人の弟子がルイズ達に戦いを挑んできた。 老師と弟子の力はかなりの物で、義破門団の精鋭達が次々と敗れ去っていく。 そして遂に、老師と弟子はルイズの前までやってくる。ルイズも暗殺拳の使い手の二人を呼び出し、最後の戦いが始まろうとしていた。 だが、老師は暗殺拳の二人と戦い始め、ルイズの相手を弟子に任せたのだ。 ルイズはこの若い弟子が自分に勝てる訳がないと思っていた。 しかし、老師は弟子に心山拳の奥義「旋牙連山拳」を託していたのだ。弟子が放つ奥義を喰らいルイズは敗れてしまう。 ルイズを倒した弟子は、力を使い果たした老師の最後を看取り、老師の死に涙を流していた。 そしてまた場面が切り替わる。 だが今度のルイズは今までと違い、山の頂上のような高い場所で下にいる二人の人物を見ているだけだった。 一人は金髪の剣士風の男、もう一人は長い黒髪のメイジ風の男だった。 どうやら黒髪の男が金髪の男に一方的に話しかけているようだ。黒髪の男の話は、金髪の男に対しての恨み、妬み、憎しみに溢れていた。 そして、黒髪の男は最後の言葉を言い放つ。それは、金髪の男への憎しみが込められた魂の叫びだった。 「あの世で俺にわび続けろ、オルステッドーーーーッ!!!!」 その言葉を聞いた瞬間、ルイズは跳ねるようにベッドから飛び起きた。 「はぁ…はぁ…はぁ…」 まるで全速力で走った時の様に息が乱れている。 男の最後の叫びは、忘れる事ができないほどの衝撃をルイズの心に与えていた。ベッドの上で息を整えようとするが思うようにいかない。 男の一方的な会話を思い出そうとしたが、その部分だけがまるで霞がかかったようにぼやけており、思い出す事ができない。 だが、オルステッドと呼ばれた金髪の男に憎悪の感情をぶつける男の姿は鮮明に思い出す事ができた。 あそこまで誰かを憎んだ人間を見るのは初めてだった。 ふと、自分も我を忘れてギーシュを殺しかけた事を思い出す。シエスタのお陰で今まで忘れていたが、一歩間違えれば自分は人殺しになっていたのだ。 そう考えると急に体が震えだす。 ベッドの上で息を整えながら、両手で自分の震える体を抱きしめていると、無性にシエスタに会いたくなった。 シエスタに抱きしめてもらいたいと考えている自分に情けなさを感じるが、自分一人では体の震えは止まりそうもなかった。 幸い今日は虚無の曜日なので、授業は休みである。 ルイズは着替えを済ますと、シエスタに会うために部屋を後にした。 しばらく探し歩いていると、食堂でシエスタを見つけることができた。 思わず走りだしそうになるが、何とか踏み止まり、小走りでシエスタに近づいていく。 「おはよう。シエスタ」 「あ、ルイズ様。おはようございます」 笑顔であいさつしてくれるシエスタを見た瞬間、体の震えも止まり、夢のせいで陰鬱だった気分も晴れやかなものになっていく。 顔には無意識に笑みが浮かんでいた。 「何かいいことでもありましたか?」 「どどど、どうして!」 「いえ、朝から嬉しそうな表情をしていらしたので」 「べ、別になんでもないわよ。シ、シエスタに会えたから嬉しかった訳じゃないんだからね!」 恥ずかしくなったルイズは慌てて否定するが、誰が聞いても本音を喋っているようにしか思えなかった。 「そうですか。それより、朝食がまだでしたらすぐご用意できますよ」 「あ、うん。お願いね」 ルイズは、シエスタが厨房に向かって歩いていくのを眺めながらある事を考えていた。 シエスタに会って少し話をしただけで、あの夢も自分の身に起こっている不思議な事も忘れることが出来る。 ルイズはシエスタに心から感謝すると共に、シエスタが自分にとって大切な存在になりつつあるのを感じていた。 ちょうどそのころ、学院長室ではオスマンとコルベールが難しい顔で話し込んでいた。 「どうじゃね、ミス・ヴァリエールの様子は?」 「あの決闘騒ぎ以来、特に問題は起こしておりません」 「そうか。彼女のルーンがガンダールヴの印だと君から報告を受けた時はどうなるかと思ったが、どうやら心配のしすぎだったようじゃの」 ルイズとギーシュの決闘が行われていた時、オスマンはコルベールからルイズのルーンについての報告を受けていた。 コルベールの調べでは、ルイズのルーンは伝説の使い魔『ガンダールヴ』の印と同じであるらしい。 だが、始祖ブリミルと共に闘った伝説の使い魔のルーンが、使い魔の主人であるルイズに刻まれているのは不可解であった。 二人がそのことについて議論をしていると、オスマンの秘書であるミス・ロングビルが何やら慌てた様子で学院長室に入ってくる。 ルイズが決闘でギーシュに重傷を負わせ、その場から逃走したというのだ。 その後、ルイズやその場にいた多くの生徒達から事情を聞いたオスマンはルイズを処分しない事を決める。 教師達の反発も予想されたが、『ガンダールヴ』のルーンの事を公にするわけにはいかなかった。 この事が王宮に知られてしまえば、ルイズが戦争の道具に使われてしまう可能性もある。オスマンはそれだけは避けたかった。 結果として、ルイズは生徒だけでなく教師にまで避けられるようになってしまったが。 「最近はメイドの一人と仲良くしているようで、笑顔で話している姿も見かけますな」 「それは良かった。あのままではミス・ヴァリエールが不憫すぎるからのう」 ルイズが一人で孤独に過ごしているのを不憫に思っていたオスマンは、ルイズを理解してくれる者がいることを我が事のように喜んでいた。 「ところでオールド・オスマン。例の王宮からの知らせについてですが」 「うむ。土くれのフーケという盗賊がトリステインを荒らしておるという話じゃったな」 「ええ。魔法学院の宝物庫も狙われる可能性があるので注意するようにと」 「宝物庫には強力な固定化の魔法がかけられておるし、外壁自体も頑丈に作られておる。あまり心配はいらないと思うがの」 「あの壁を破るとなると、相当な物理衝撃が必要ですからな」 トリステイン魔法学院の宝物庫は強固な守りを誇っている。フーケがいかに優れた盗賊であろうとも、簡単に突破できるものではなかった。 「連中が心配しているのは“破壊の杖”じゃろうな」 「危険すぎるので厳重に保管するようにと王宮から託された物ですな」 「あの杖の破壊力は人が使っていいものではないからのう。盗賊なんぞに奪われたら一大事じゃわい」 そんなオスマンとコルベールの会話を学院長室の前で盗み聞きしている者がいた。 オスマンの秘書ミス・ロングビルだ。だが、その正体はオスマン達が話していた土くれのフーケその人であった。 前ページ次ページZERO A EVIL
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2250.html
トリステインに午後の日光が差し込む頃。 学院付きのメイド、シエスタはルイズとタバサ、キュルケと敷地内にてばったりと出会っていた。 「タバサさん、ルイズさん。お二人とも、キュルケ姉さまに胸成分が吸い取られています!」 キュルケの時が止まった。 「……は?」 「な?」 「なんですって!!!」 ふたりのちっこい背の子供が声を揃える。例の蒼とピンクの髪の子のことである。 「解説します! キュルケ・フォン・アウグスタ・ツェルプストーは、親しくなった間柄の、他人の 胸囲と身長成分を、自分と同じかそれより下の水準にまで吸い取る能力を持つので すッ!」 「なに言ってるのか全然わからないわ!」そういうキュルケとは裏腹に。 「それで、どうなるの? 教えてシエスタ!」 そう叫んだルイズと、タバサはシエスタの視線に釘付けになっていた。 シエスタはコホンと咳払いをした。 「続けます。被告である、キュルケ氏においては、魔法学院入学後、一年間のバスト のサイズが飛躍的に伸びていることが我が方の秘密調査で明らかになっています」 「なんでそんなこと知ってるのよ!」 「メイドの特権です。そして、その現象は被告が主たる被害者のタバサ氏と仲良くな ってからの期間と合致します!」ビシィ! 「ちょっとまって!」 どこからか、『異議あり!!!』との声が響き渡る。 「当たり前でしょう! 私とタバサは仲良くなってからのほうが長いんだから」 はたまた、どこかからなのか? 静かな、厳しい声がキュルケの反対論を封じきった。『却下します』 ルイズもしきりに頷く。 「そうか……どおりで、私とアンリエッタ姫様が幼少同じ食事をしたのに、胸のサイ ズにこんなに差が出たのも……」 「間違いないでしょう。キュルケさんの能力がルイズさんに及ぼした結果です。そし て、おそらくその能力は、ツェルプストー家に代々伝わる能力なんですわ」 「ちょ、ちょっとルイズ。それにシエスタも。いったいどうしちゃったの?」 「……母さまもエレオノール姉さまも、胸のサイズが小さいのに、ちい姉様一人だけ 胸がおっきいのは、ツェルプストー家と一切かかわりを持たなかったからね……」ルイズはぶつぶつと何かを考え込み始めた。なぜかわずかに微笑んでいる。 「わかったわシエスタ。ヴァリエール家の人間が代々ちょっとだけ胸のサイズが小さいのは、なにもかもキュルケたちのせいってわけね!」 「Exactry(その通りでございます)」 「そんなわけないでしょう!」 「ツェルプストー家にかかわるものは、皆見事ままでのひんぬーだ…… これは認めましょう。恐ろしい能力……まさにスタンドね…… これがッ! これがッッ!! ツェルプストー家伝統のスタンド『エコーズAct4』!!!」 「シエスタ、変なナレーション入れないでちょうだい! タバサ、あなたも何か言ってよ」 シエスタは大上段に立ち上がり、宣言した。 「親愛なる淑女たちよ、今こそ立ち上がるのです! わが偉大なる共産胸革命のためにッ! 思い出すのです。あのキュルケ姉さまにたわわと実る脂肪細胞の行く分かは、確実 にあなたたちへと配当されるべきのものだったのです。おふたがた、今こそ、不当 に乳成分を搾取している乳支配階級を打倒し、すべての女性が美しい微乳の持ち主 となる日を目指すのですぅ!」 「……」 「タバサ、どうしたの?」 「把握した」タバサがつぶやく。 「するなッ!」 そういったキュルケのフードのすそをちんまりと小さな手がつまんだ。タバサの手だ。 「……かえして」キュルケの目を見据えて言う。その眼光はとても冷たい。 「かえしなさいよっ!」ルイズも切なく叫ぶ。 「な、なんなのこの待遇……」 第五・一章 S・H・I・E・S・U・T・A ! ――――→To Be Continued...?
https://w.atwiki.jp/moejinro/pages/1892.html
PEPPERMINT 朝になりました。村の広場に甘噛みされたBBLさんの死体が見つかったようです...。 PEPPERMINT /chjoin メイドイン BBL ☆祝☆読売ジャイアンツ34回目のセ・リーグ優勝おめでとうございます!! PEPPERMINT 村人の皆様、今日も一日ゆっくりしていってね! 3 (メイドイン) こんぶて P鯖だと強気は平常運行 BBL 補足 1次リーグ時代の優勝9回 2次リーグ時代の優勝34回 合計43回目の優勝 PEPPERMINT 昼の部スタートです! 1 (ぺんぎん村) リヴァイン 【霊CO】ラスフィーノさんは ○ 3 (メイドイン) Mrチキン ここでBBLさん!? 3 (メイドイン) うんちや あるぇー噛まれた 1 (ぺんぎん村) メゾピ おはよーです 3 (メイドイン) ラスフィーノ ラスさん○かー 1 (ぺんぎん村) シエスタSS まあそうだよな 1 (ぺんぎん村) EVANS ジャイアンツおめです。 1 (ぺんぎん村) カルシファー BBLさんか・・・ 3 (メイドイン) ACT そこか 1 (ぺんぎん村) リヴァイン まぁ狂でみちゃうなぁ 1 (ぺんぎん村) アーリリーザ 占い結果 jittoさん● 1 (ぺんぎん村) jitto じゃあ、狂か・・・・真? 1 (ぺんぎん村) あかみさと もうアーリさんの占いが遅いのは恒例やね そしてラスさん○ね 3 (メイドイン) PEPPERMINT ラスさんまるなのかーそーなのかー 3 (メイドイン) Mrチキン まぁ無難 1 (ぺんぎん村) EVANS BBLさん確○っぽいとこで噛まれてなかったから人外かと思ったんだけどな 1 (ぺんぎん村) jitto 俺!? 3 (メイドイン) こんぶて すごい素村臭だったから狐探す気0グラムかな 1 (ぺんぎん村) るみや 狂濃厚ですなぁラスさん BBLは腰を掛けた 1 (ぺんぎん村) おおかみん ラスさんはたぶん狂かな 1 (ぺんぎん村) メゾピ 逆囲い来ましたね 1 (ぺんぎん村) リヴァイン ふむ 3 (メイドイン) こんぶて 狼は吊られる自信がありそう 3 (メイドイン) PEPPERMINT なかなか霊媒噛みにいきませんね! 1 (ぺんぎん村) EVANS 逆囲いかどうかは、まだわからないですけど、どうなんでしょうね 1 (ぺんぎん村) リヴァイン メゾピさんJittoさんが逆囲いかどうかだなぁ 3 (メイドイン) ニキハウス 今日のジャイアンツは散々でした… 1 (ぺんぎん村) アーリリーザ 今日は結構頑張ったんですが・・・>遅い 1 (ぺんぎん村) カルシファー 私もちょっとBBLさん怪しんでたんでsけどね 1 (ぺんぎん村) あかみさと ラスさんに続いてまたほぼ吊られる日に●なのね 1 (ぺんぎん村) リヴァイン まぁどっちにしろ占い吊りかね今日は 1 (ぺんぎん村) るみや jittoさんが白くみえる件 3 (メイドイン) BBL お疲れ様でした 1 (ぺんぎん村) EVANS どうせもうアーリリーザさん狼なのはわかってたからこっちから釣っちゃいます? 1 (ぺんぎん村) メゾピ 私はあかみさと-アリリーサ-jittoだと思ってます 3 (メイドイン) ラスフィーノ ここで占いつるのか 3 (メイドイン) うんちや おつです 3 (メイドイン) PEPPERMINT おつおつぽー 3 (メイドイン) BBL やっぱり噛まれないと私怪しいですよねw 3 (メイドイン) ニキハウス お疲れ様です 3 (メイドイン) ラスフィーノ おつかれさまー 3 (メイドイン) マダム いらっしゃい 3 (メイドイン) コピル お疲れ様ですーー 3 (メイドイン) xバーバラx おつかれさまでした 1 (ぺんぎん村) おおかみん あかみさとさん怖いよね 1 (ぺんぎん村) jitto まぁ・・・皆の判断に任せるけどさぁ…・ 3 (メイドイン) xバーバラx 狐怖いな 3 (メイドイン) Mrチキン おつかれさま 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 狼ってさ 1 (ぺんぎん村) あかみさと メゾピさんはやたら私たたきすぎだわー どの辺怪しい? 1 (ぺんぎん村) カルシファー まぁ今日は占いローラですかねぇ 3 (メイドイン) ACT お疲れです 1 (ぺんぎん村) シエスタSS まだ3残りだよな? 1 (ぺんぎん村) リヴァイン 村ならここは頑張って無実証明してほしいかなぁ 1 (ぺんぎん村) EVANS ぼくはGaryaさんとかオススメします。あと狐候補としてシエスタさん。 3 (メイドイン) こんぶて まぁアーリリーザさん残してもしょうがないっしょ 1 (ぺんぎん村) カルシファー 最大そうなりますね 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 人数減ってきたし 3 (メイドイン) こんぶて 霊結果●まだ1だぜw 1 (ぺんぎん村) リヴァイン 3W確定してるから○吊ってる余裕あんまない 1 (ぺんぎん村) カルシファー 占い吊って2かな 1 (ぺんぎん村) シエスタSS もう狼の数減らしたい 1 (ぺんぎん村) Garya …彼が狐である可能性もほとんどないだろうな。今日は予定調和だ。 3 (メイドイン) BBL ラスさん狂ならおおかみんさんあたり噛んで狐確認してほしいなあ 3 (メイドイン) Mrチキン ローラーで2にはなるかな 1 (ぺんぎん村) あかみさと ただ私視点メゾピさんは村目で見えてるんだよね・・・ かなり早いうちから意見変えてないし 3 (メイドイン) ニキハウス ローラー続行でしょう、黒吊れてない 1 (ぺんぎん村) メゾピ 発言からそれっぽいと思うのもありますけど、狼の噛みが銃殺を恐れてないので、どこかで囲ってる可能性が大っていうのも 1 (ぺんぎん村) リヴァイン 占いがキツネの可能性もあるかもね 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 組織票も恐いしな 3 (メイドイン) ラスフィーノ まぁそうだな、霊いきてるし 3 (メイドイン) ラスフィーノ 占いからか 1 (ぺんぎん村) jitto 確かに組織票は怖いな・・・・ 1 (ぺんぎん村) リヴァイン 狼キツネ把握してないけど大丈夫か?本当に 1 (ぺんぎん村) Garya それだけ狼が居るってことでしょう 1 (ぺんぎん村) メゾピ Mrチキンさん噛みのあと、グレー噛みが入ってるので、ラスさんの真偽がわかったタイミングと考えてもぴったり 3 (メイドイン) BBL というかネタっぽい発言が多いからGaryaさん共有かと思ってました 1 (ぺんぎん村) あかみさと 囲いだっていうならアーリ狼の場合メゾピさんがかなりの囲い位置じゃないですかー そこで叩いてくるなら、んー・・・ 3 (メイドイン) こんぶて これで狼が霊媒噛んだら完全に慣れてない人に狼って話になるけど、狼は噛み先不安 狐怖いよね普通に 1 (ぺんぎん村) Garya 正直私はEVANSさん村にしか見えないのと 3 (メイドイン) ラスフィーノ 狐怖いね、普通にやれば狼は勝てる展開だから 1 (ぺんぎん村) Garya シエスタSSさんがグレランから逃れようと発言してたところから彼女が狐であるように見えます 3 (メイドイン) ニキハウス Garyaさんは発言村人っぽかったので、寡黙でしたけど 1 (ぺんぎん村) メゾピ Mrチキン噛みの地点ではラス真もケアしてたと考えると、余計にあかみさとさんが黒く見えるんですよ 3 (メイドイン) BBL 占いの内訳がラスさん狂のアーリリーザさん狐だったら泣く 1 (ぺんぎん村) リヴァイン メゾピは狂からの●ってみてるからなぁ今のトコ 1 (ぺんぎん村) EVANS あれ?Garyaさんからはぼくは結構人外に見えてもいい一だと思ったけどな 3 (メイドイン) ラスフィーノ だからあえて霊残してると見た 1 (ぺんぎん村) Garya が、まぁ今日は占いロラ続行でいいかと。 1 (ぺんぎん村) jitto ●出しされたオレ視点で申し訳ないが、俺はアーリさん吊りたい 1 (ぺんぎん村) リヴァイン だよね 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 彼女と言われたのは初めてだなw 1 (ぺんぎん村) おおかみん メゾピさんは村でみてます 3 (メイドイン) BBL ネタっぽい発言だけど確かに村って気はしましたね 1 (ぺんぎん村) メゾピ やっぱ吊るんですか、アーリリーサさん 1 (ぺんぎん村) あかみさと ラス真考慮おかしくなくない?ざっぱり切る方がおかしいと思うが 1 (ぺんぎん村) シエスタSS てれるぜ! 1 (ぺんぎん村) リヴァイン まぁどっちにしても占いロラーしないとやばいからねぇ 1 (ぺんぎん村) EVANS シエスタちゃん! 1 (ぺんぎん村) Garya 囲い全くないのはどうかと思うのでやはりるみやさんかあかみさとさんが狼だと思いますね、どっちかというとるみやさんだと思う 1 (ぺんぎん村) るみや どっちにしろアーリさんは吊ってしまいたいですのう 1 (ぺんぎん村) アーリリーザ ローラー完遂派なので反対はしません 1 (ぺんぎん村) Garya あかみさとさんはSGに見えます 1 (ぺんぎん村) リヴァイン アーリさん真やキツネだったらやべーけど・・・真は無いか 3 (メイドイン) ニキハウス というか普通にしゃべってますね、今 3 (メイドイン) こんぶて これ狩人生きてそうなのも困る 1 (ぺんぎん村) Garya まぁ、メゾピア-あかみさとっていうのもあるっちゃあるけどね 3 (メイドイン) BBL シエスタさん狼だったらどうしよう 村で見たいけど 1 (ぺんぎん村) jitto オレ視点では真はない!!! 3 (メイドイン) BBL 本当だ 3 (メイドイン) PEPPERMINT 狩人の腕の見せ所ですね (T) EVANS > 昼投票とかできましたっけ 3 (メイドイン) PEPPERMINT チラッ 1 (ぺんぎん村) アーリリーザ 黒出してるからそうでしょうw 1 (ぺんぎん村) あかみさと こんな叩いてくる相方いやだわ私・・・>Garyaさん 3 (メイドイン) BBL チラッ (T) > EVANS できませぬー。 (T) EVANS > はい 1 (ぺんぎん村) メゾピ 5吊りもあるし、狐ケアでもーちょっと生かしてもいいと思うんですけどね、アーリリーサさんは 1 (ぺんぎん村) リヴァイン んー自分的にはるるさんちょっと人狼視かなぁ 1 (ぺんぎん村) jitto どうもメゾピさんは俺を黒だと思ってるらしいが・・・ 1 (ぺんぎん村) リヴァイン るみやさん だった失敬 1 (ぺんぎん村) るみや 占い内訳を真狼狂で考えると消去法でアーリさん狼っぽい感じが 3 (メイドイン) こんぶて メゾピアーあかみさとだとこの噛みはなさそうなきがするなぁ 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -----残り2分----- 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----残り2分----- PEPPERMINT -----残り2分----- 1 (ぺんぎん村) リヴァイン まぁそうなるね 1 (ぺんぎん村) EVANS もうほとんどグレラン大会状態だね 1 (ぺんぎん村) jitto ま、そりゃそうだわ>アーリさん 3 (メイドイン) BBL あかみさとさんは人外な気もします 1 (ぺんぎん村) リヴァイン 真狐狂とかだったら泣く 1 (ぺんぎん村) メゾピ というか、中身判断しにくいので吊っちゃいたいって感じですけどね、jittoさんは 1 (ぺんぎん村) るみや で残りで気になるのがシエスタさん 1 (ぺんぎん村) Garya おっとメゾピアじゃなくてメゾピだった失礼ー 1 (ぺんぎん村) シエスタSS ペグられたしな 1 (ぺんぎん村) Garya シエスタさんは吊っても良いと思うけど明日かなって 3 (メイドイン) BBL 今回判断が難しいので自信無いですが 3 (メイドイン) PEPPERMINT メタだとスク水とか完璧に人外 1 (ぺんぎん村) シエスタSS それは 1 (ぺんぎん村) リヴァイン 少なくとも今日は占いだーね 3 (メイドイン) BBL w 1 (ぺんぎん村) シエスタSS 反抗するぞ 1 (ぺんぎん村) カルシファー 今日は占いですねぇ 3 (メイドイン) ニキハウス すごいメタだ 3 (メイドイン) ACT www 1 (ぺんぎん村) jitto 占いだな 1 (ぺんぎん村) おおかみん バーバラさん真でみるとほとんどぐれーだし 3 (メイドイン) ラスフィーノ まぁメゾピは吊ってくれなきゃ困る位置 1 (ぺんぎん村) あかみさと そですね ロラ完遂しますか 1 (ぺんぎん村) るみや まぁ狂はアーリさん吊りますか 3 (メイドイン) PEPPERMINT だけどメタに寄ると見ない名前に油断してしまう 1 (ぺんぎん村) るみや 今日はっ 1 (ぺんぎん村) アーリリーザ 生かしてくれるならもしろん狐探し頑張りますよ 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -----残り1分----- PEPPERMINT ------残り1分------ 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----残り1分------ 3 (メイドイン) BBL メタだとペパさんは狂人 3 (メイドイン) PEPPERMINT NO! 1 (ぺんぎん村) アーリリーザ もちろん、だ もうやだ 1 (ぺんぎん村) メゾピ なんか共有噛まれたあたりのうわぁとかわざとらしいので、jittoさんを黒目って感じちゃったらもう逆転しそうにないです 1 (ぺんぎん村) EVANS jittoさん逆囲いに見てる人って今のとこどんなもの? 3 (メイドイン) こんぶて あかみさとさんなら経験もあるんだろうし、狼が不利じゃない限りこの噛みにならないんでない 1 (ぺんぎん村) リヴァイン 無理かな・・・ 3 (メイドイン) Mrチキン 可能な限りメタは排除して考えるようにしてるけど 1 (ぺんぎん村) Garya 逆囲い見えなくもないけど狂からの囲いっていうのがどうも微妙 1 (ぺんぎん村) リヴァイン ラスさん吊って●出たならまだ考えたけど○だしねぇ 3 (メイドイン) こんぶて 狼が割りと吊れる予定ならしらんが 1 (ぺんぎん村) おおかみん 可能性としてはあるよね 1 (ぺんぎん村) あかみさと 気にはなるけどどうだろう 3 (メイドイン) Mrチキン 誤爆とかは困るんだよなぁ( -ω-) 3 (メイドイン) BBL バーバラさんの占いは理由が理由だけにメタ推理してしまった 1 (ぺんぎん村) Garya あくまで可能性なだけで他にも怪しいところはいっぱいあるよね、いきなり喋りはじめた私とか 1 (ぺんぎん村) あかみさと 自分でw 1 (ぺんぎん村) リヴァイン www 3 (メイドイン) BBL やらないほうがよかったかな PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 3 (メイドイン) ニキハウス メタは本当は考慮したくないけど、流石に寝言は無視しても、あれかなぁって感じなので吊りたくなります 1 (ぺんぎん村) るみや えっ PEPPERMINT 夜が近づいて参りました。皆様、今日の尊い犠牲者を投票にてお選びください。(会話ストップ) 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----狼会話スタートです----- PEPPERMINT 投票は私にTellにてお伝えください。 3 (メイドイン) Mrチキン ですよねぇ 3 (メイドイン) PEPPERMINT メタはあっていいとおもうけどねー 2 (おいぬさま) シエスタSS むむむ (T) リヴァイン > アーリリーザさんでよろしく (T) メゾピ > アーリリーサさん 3 (メイドイン) ラスフィーノ でもあの誤爆 (T) EVANS > アーリリーザさん 2 (おいぬさま) シエスタSS ヘイトがこっちきた (T) カルシファー > アーリーリーザさんで 3 (メイドイン) PEPPERMINT とくにモエ人狼においてはねー 2 (おいぬさま) シエスタSS まずいなー (T) Garya > アーリリーザさん 3 (メイドイン) ラスフィーノ 全然、夜になってすぐだったから 3 (メイドイン) BBL あの寝言は狼の会話っぽいですからね 2 (おいぬさま) あかみさと うむ、雲行きが・・・ 3 (メイドイン) Mrチキン ありなしは自由だと思ってますが、私個人の考え方というか楽しみ方として 3 (メイドイン) BBL 放置するのもなあ 3 (メイドイン) ラスフィーノ まぁしゃーない 3 (メイドイン) Mrチキン 純粋に推理したいのですw 2 (おいぬさま) アーリリーザ よく考えたらラスさん白でバーバラさん食われた時点で私の真ないよねw (T) jitto > 占ローラー遂行、アーリリーザさんへ1票 3 (メイドイン) コピル ((;゚Д゚)オレシラナイ (T) るみや > 投票 > アーリリーザ さん 3 (メイドイン) ラスフィーノ 毎回新キャラでくるといいよw 3 (メイドイン) PEPPERMINT うむー 3 (メイドイン) xバーバラx 迷ったんですけどね 3 (メイドイン) Mrチキン でも、推理しようとしてると誤爆に困るw 3 (メイドイン) PEPPERMINT だから 3 (メイドイン) こんぶて でもその前から占いの内訳は確定気味だったからいいんじゃないw 2 (おいぬさま) シエスタSS まあw 2 (おいぬさま) アーリリーザ 狐か狼確定 3 (メイドイン) PEPPERMINT ゴバクしてしまった側としては 3 (メイドイン) ラスフィーノ まーそうだね 3 (メイドイン) BBL ラスさんは狂ぽかったですね 2 (おいぬさま) シエスタSS とりま誰に入れよう 3 (メイドイン) PEPPERMINT あざとくなく、誠実な弁解が 3 (メイドイン) ラスフィーノ ●だし噛まれてるから 3 (メイドイン) PEPPERMINT もとめられるのです 3 (メイドイン) こんぶて 今回のラスさんの占い先は舐めすぎw 3 (メイドイン) ラスフィーノ もうつまらないんだよ、●バンバンだしたいけど 3 (メイドイン) PEPPERMINT そしてまたタイマーをおしわすれたのです 2 (おいぬさま) あかみさと ラスさん狐がかすかに! 3 (メイドイン) Mrチキン w 3 (メイドイン) BBL 酷い言われようだw 3 (メイドイン) ラスフィーノ 中々そうもいかなくて 3 (メイドイン) コピル もう二度としません(´・ω・`) 2 (おいぬさま) アーリリーザ 私で動きそうにないから私で良いですけど 3 (メイドイン) PEPPERMINT たぶんそろそろ・・ 2 (おいぬさま) シエスタSS じゃあ今日はどこだろう 3 (メイドイン) ラスフィーノ いやまぁ今回はね 3 (メイドイン) PEPPERMINT 一分前かな?! 3 (メイドイン) BBL 誤爆はまあしかたないですよ 2 (おいぬさま) シエスタSS 狂 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -----残り1分----- 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----残り1分------ PEPPERMINT ------残り1分------ (T) おおかみん > カルシファーさんに投票 3 (メイドイン) PEPPERMINT うん 3 (メイドイン) ラスフィーノ P鯖の奴はうらなってやらねーと 3 (メイドイン) PEPPERMINT ゴバクはいいのよ 2 (おいぬさま) あかみさと とりあえずメゾピさんにでもいれるか 2 (おいぬさま) シエスタSS メゾさんにいれとくわ 3 (メイドイン) ラスフィーノ 誓いを立ててスタートしたので 3 (メイドイン) PEPPERMINT 昔の人はいいました 2 (おいぬさま) アーリリーザ メゾさん了解 (T) あかみさと > メゾピさん投票です (T) シエスタSS > メゾさんで 3 (メイドイン) PEPPERMINT 誤爆はMoE人狼の華 3 (メイドイン) BBL 私なんて占い騙りで身内切りするかどうかの会話誤爆して味方が先に吊られました 3 (メイドイン) ラスフィーノ どうしても本気多弁さけてるようにみえちゃうよねw (T) アーリリーザ > メゾさんで 3 (メイドイン) こんぶて なんだその誓いww 3 (メイドイン) PEPPERMINT それをくつがえすのはプレイヤーの華 2 (おいぬさま) シエスタSS 最悪 3 (メイドイン) BBL とあるホモの迷言 2 (おいぬさま) シエスタSS あした吊られそうなら 3 (メイドイン) Mrチキン まぁ狂人占い騙りでマクロ誤爆したことありますがw 2 (おいぬさま) シエスタSS 狩人COとかどう? (T) Garya > 【独り言】私も怪しいのかなぁ。なるべく村発言がんばったつもりでしたけど… 3 (メイドイン) BBL あの時か! 2 (おいぬさま) あかみさと ありかも 3 (メイドイン) Mrチキン 必死に弁明して、どうせならと議論時間けずってやりましたよ!w 2 (おいぬさま) あかみさと 一日はもつ 2 (おいぬさま) シエスタSS 残り2分まで粘ってみる PEPPERMINT さらばアーリリーザさん...あなたの勇姿は3秒くらい忘れない。 3 (メイドイン) ラスフィーノ ちょっとあれだね 2 (おいぬさま) あかみさと おう PEPPERMINT /chjoin メイドイン PEPPERMINT 日没です。おとなもこどももおねーさんも寝る時間です。 3 (メイドイン) BBL 私が超狼認定された奴! PEPPERMINT 役職の方は私にTellにて役職行動をお伝えください。 2 (おいぬさま) あかみさと アーリさんお疲れ 3 (メイドイン) Mrチキン w 3 (メイドイン) ラスフィーノ もうちょっと役職ほしかったぜ 3 (メイドイン) ニキハウス これで、ほぼ殴り合いか 2 (おいぬさま) シエスタSS おつん (T) jitto > この流れマジ怖wwww 3 (メイドイン) ラスフィーノ ちょっと3-1で吊り多いのは 3 (メイドイン) こんぶて るみやさん囲ってるのかどうかだけがすごい気になる 3 (メイドイン) ラスフィーノ 正直、信頼勝負にならなかったらまったりするね 3 (メイドイン) Mrチキン なんだろう、明日辺り霊媒噛みそうな気がしてきてる (T) リヴァイン > 霊】ほら・・・結果なんだろ?恥ずかしがらずにだせよ・・・ 3 (メイドイン) コピル moe人狼動画見てて、出た誤爆!こいつはくせぇーーーーー!狼のにおいがぷんぷんするぜー! (T) > Garya どうかな!? 3 (メイドイン) コピル とか思ってたのが自分が誤爆しました。 3 (メイドイン) ニキハウス 私も囲いっぽいと思いますね>るみやさん 3 (メイドイン) ラスフィーノ 別に誤爆したって●とは限らないんだよね (T) リヴァイン > なんか違う気がするからやり直し 2 (おいぬさま) シエスタSS だれいこう・・ 2 (おいぬさま) シエスタSS 少し忘れてたw 2 (おいぬさま) あかみさと んー・・・ 3 (メイドイン) BBL 囲いしてるとしたらラスさんの占い先だけで見たいかなあ 3 (メイドイン) xバーバラx ですね 内容にもよりますが (T) リヴァイン > 霊】ほら・・・スキなんだろ?いいから結果だせよ・・・ こうだな 3 (メイドイン) ニキハウス ひとりごと言う方もいますしね 3 (メイドイン) BBL さすがにここで囲うのは勇気がいる気が 2 (おいぬさま) シエスタSS EVAさんか (T) > リヴァイン え。でも・・・あいつはクロかったよ・・・でもうわさとかされると、恥ずかしいし。 2 (おいぬさま) シエスタSS jiさんかな (T) Garya > 【独り言】あと厨二病頑張って演出したけど完全スルーで悲しかったです。本気で痛い子に見られたのでしょうか…[ションボリ] 3 (メイドイン) こんぶて でもこの狼はすごい無難な占い先選択してるから、すすんで囲おうとはしなそうなんだよなぁ 2 (おいぬさま) シエスタSS メゾさんも 3 (メイドイン) アーリリーザ はいれてる? (T) > リヴァイン やりなおすなw 2 (おいぬさま) あかみさと Jittoさんは結構あやしまれてた気がする 3 (メイドイン) xバーバラx おつかれさまです はいれますよ 3 (メイドイン) BBL 入れてますよ 3 (メイドイン) ラスフィーノ kk 3 (メイドイン) ニキハウス お疲れ様です 2 (おいぬさま) あかみさと 狐狙い? (T) リヴァイン > ばっか恥ずかしがることなんかねーよ よっし●きた なんか気になったんだものw 3 (メイドイン) BBL お疲れ様でした 3 (メイドイン) コピル お疲れ様ですー! 3 (メイドイン) ACT おつです (T) > Garya まだ傷は浅いぞ 3 (メイドイン) うんちや おつですー 3 (メイドイン) アーリリーザ ありがとうございます 3 (メイドイン) Mrチキン 個人的には強気誘導+アーリさんの一番最初の○でメゾピさん怪しいけどLWはわからんなぁ 2 (おいぬさま) シエスタSS いや 3 (メイドイン) Mrチキン おちかれさま (T) BBL > 独り言 なんかシエスタさんから誤爆がw 3 (メイドイン) xxモモxx お疲れ様です 2 (おいぬさま) シエスタSS 狐はついで 3 (メイドイン) ニキハウス メゾピさんも怪しいですね、それだけに黒出しが気になる 3 (メイドイン) アーリリーザ タイピング遅いと致命的ですね 3 (メイドイン) Mrチキン ちなみに (T) Garya > 【独り言】[ウワーン] 3 (メイドイン) Mrチキン 占い結果は 2 (おいぬさま) あかみさと んー 2 (おいぬさま) あかみさと 霊でも噛む? 3 (メイドイン) Mrチキン PT発言で一度夜のうちに発言しておくといいです 3 (メイドイン) Mrチキン 誤爆注意ねw 2 (おいぬさま) シエスタSS いっとくかー 2 (おいぬさま) あかみさと GJあれば狩COはやりやすくなるかも 3 (メイドイン) こんぶて あとおおかみんさんはいい加減吊って欲しいなw 3 (メイドイン) ラスフィーノ PT発言よりか 3 (メイドイン) ニキハウス 私もタイピング遅いので共有になるとヒヤヒヤです 2 (おいぬさま) シエスタSS だなぁ 2 (おいぬさま) あかみさと 狐見られる率は上がるけどw 3 (メイドイン) アーリリーザ 誤爆しちゃったからなぁw 3 (メイドイン) ラスフィーノ 普通に、コマンドのほうがいいよ 3 (メイドイン) BBL おおかみんさんは狐考慮して狼が噛むべき 2 (おいぬさま) シエスタSS まあなw 3 (メイドイン) Mrチキン コマンド? 2 (おいぬさま) あかみさと じゃあ霊行きますねー 2 (おいぬさま) シエスタSS tellよろ 3 (メイドイン) BBL 噛まないなら知らないって考えてます 3 (メイドイン) コピル コマンド? 3 (メイドイン) こんぶて /ch1 3 (メイドイン) BBL ドラクエ? 3 (メイドイン) こんぶて で発言かけばよくね 3 (メイドイン) ラスフィーノ @@@/ch3 こんぶてさんやっぱり狼でした! (T) あかみさと > リヴァインさんをかみくだく攻撃! 3 (メイドイン) アーリリーザ 実はMoE自体長くないので色々手一杯でした 3 (メイドイン) Mrチキン ああ、マクロで毎回うてってことね (T) > あかみさと こうかはばつぐんだ? 3 (メイドイン) xバーバラx ああ そんな感じはしましたね 3 (メイドイン) ラスフィーノ 村なら夜のうちに考察すべきだし (T) あかみさと > 悪で抜群ってことはエスパーか?w 3 (メイドイン) Mrチキン その辺りは操作の好みですな 3 (メイドイン) ラスフィーノ 気がついたこといろいろ書いて、メモって発言んするといいよ 2 (おいぬさま) あかみさと 明日あさって山場かなー 2 (おいぬさま) シエスタSS だな 3 (メイドイン) ラスフィーノ いやPTチャットは 2 (おいぬさま) シエスタSS グレランだし 3 (メイドイン) こんぶて 俺は面倒だからしなかった まぁログ読んで狼は探したけど 3 (メイドイン) ラスフィーノ 好みとか以前に 2 (おいぬさま) あかみさと うむ 2 (おいぬさま) シエスタSS もういつつられてもおかしくはない 2 (おいぬさま) あかみさと 共有さんミスリー頼むぜぇ 3 (メイドイン) ラスフィーノ 対応ができないでしょう、占い先5箇所とか 3 (メイドイン) PEPPERMINT ゴバク防止は 3 (メイドイン) ニキハウス しかし、役職あるとメモとる時間なくて辛いですね、役職自体久々だったので余計に 3 (メイドイン) PEPPERMINT いろいろ喋る前に 3 (メイドイン) PEPPERMINT ふむ 3 (メイドイン) PEPPERMINT とか、いれとくと 3 (メイドイン) Mrチキン 5箇所? 3 (メイドイン) PEPPERMINT 傷が浅くすむ 2 (おいぬさま) シエスタSS カルさん結構流されやすいのかなぁ PEPPERMINT -----残り2分----- 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----残り2分----- 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -----残り2分----- 2 (おいぬさま) あかみさと あ、そういや忘れてたけど霊噛み通ると狩COはかなりしづらくなるね 3 (メイドイン) BBL ショートカットキーで切り替えるようにすると誤爆減るかもしれませんね 3 (メイドイン) ラスフィーノ 占い先は人外だと 3 (メイドイン) コピル ふむふむ 3 (メイドイン) ラスフィーノ 多く準備するから 2 (おいぬさま) シエスタSS そうなるとやはりオレにキそうだし 3 (メイドイン) BBL 私はそれで誤爆しづらくなりました 3 (メイドイン) PEPPERMINT あたりあわりないセリフでchテストを兼ねて喋るってかんじかね 2 (おいぬさま) あかみさと シエスタさんの強誘導期待してます! 3 (メイドイン) ラスフィーノ 理由も含めたら、やっぱりコマンドでメニューやショートカットで打ったほうが良いな 3 (メイドイン) アーリリーザ メモとか全くでした。自分がどこ占ったのかも忘れそうで 3 (メイドイン) Mrチキン それで誤爆したからやめましたけどね・・・(複数マクロ 2 (おいぬさま) シエスタSS ちょれーちょれー 2 (おいぬさま) シエスタSS もうパパっと誘導しちゃうわ 3 (メイドイン) ラスフィーノ 誤爆は誤爆したって言えばいいような 3 (メイドイン) アーリリーザ 誤爆防止策、参考になります 3 (メイドイン) PEPPERMINT 私はchクリックしてるなあ 3 (メイドイン) Mrチキン 可能性いったら全部あるからスタイルや操作の好みになりますよw PEPPERMINT ------残り1分------ 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -----残り1分------ 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -----残り1分----- 3 (メイドイン) ニキハウス 逆にコマンドが怖くて普通にクリックしてます 2 (おいぬさま) あかみさと キャーカッコイイー! 3 (メイドイン) PEPPERMINT そそ 3 (メイドイン) ラスフィーノ 僕もクリックですw 3 (メイドイン) こんぶて メゾピの発言からjittoさんみたら確かにかなり人外だったw 3 (メイドイン) PEPPERMINT 普通にクリックが案外鉄壁 3 (メイドイン) ラスフィーノ 書いておいて、クリックw 3 (メイドイン) BBL 自分がやりやすいのでいいのですよ 3 (メイドイン) xバーバラx chクリックですかね 自分は 3 (メイドイン) BBL それが結論 3 (メイドイン) Mrチキン 方法はいろいろあるので 3 (メイドイン) Mrチキン 自分好みでためすといいのです (T) jitto > 今更申し訳ない、狼って設定何人でしたっけ?(この会話カットでwwww 3 (メイドイン) PEPPERMINT そだなー (T) > jitto 4人設定だよ! 3 (メイドイン) コピル すいません、ちょっとリアルでトラブル起きて落ちます 3 (メイドイン) ラスフィーノ 質問 3 (メイドイン) Mrチキン おちかれさま 3 (メイドイン) xバーバラx おつかれさまでした 3 (メイドイン) アーリリーザ はい、普段から色々やって見ます 3 (メイドイン) ニキハウス はい、お疲れ様でした 3 (メイドイン) ラスフィーノ PTチャットって 3 (メイドイン) BBL あら (T) > jitto カットはしないよ!めんどうだし! 3 (メイドイン) アーリリーザ おつかれさまでした 3 (メイドイン) BBL お疲れ様でした 3 (メイドイン) ラスフィーノ PT組んでないと話せないよね? 3 (メイドイン) ACT おつです 3 (メイドイン) ラスフィーノ おつかれさまー 2 (おいぬさま) シエスタSS 日記とか作んないけどw 3 (メイドイン) Mrチキン 発言できないといわれますけど 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 2 (おいぬさま) PEPPERMINT -------終了。会話ストップ------- 2 (おいぬさま) あかみさと (´゚д゚`) 3 (メイドイン) Mrチキン ログのこるので 3 (メイドイン) Mrチキン よびだせますよ 3 (メイドイン) ラスフィーノ テステス (T) jitto > 馬鹿発言恥ずかしいwwww 3 (メイドイン) ラスフィーノ ほんとだ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8538.html
前ページ次ページ三重の異界の使い魔たち ~第10話 勇気と闘いと覚醒と(中編)~ シエスタは廊下を駆けていた。スカートのすそを摘まみながら、学院の中を走り続ける。埃を 立てながら足を駆る、行儀悪い姿。そのはしたない様は、普段の彼女であればありえないものだ。 それだけ、今シエスタは焦っていた。今朝から仲良くなった使い魔の少年、サイトが、貴族と 決闘することになったのだから。平民にとって、魔法を使う貴族は絶対的な存在。杖の一振りで 不可能を可能にしてしまう、別格の人種である。そんな相手に、自分と同じ平民であるサイトが 勝てるわけがない。 ――なのに、サイトさんたら! それにもかかわらず、サイトは自分の制止を全く聞き入れなかった。なんの根拠があるのか、 大丈夫だといって聞く耳を持たなかった。 このままでは、大変なことになってしまう。貴族と本気で戦ったら、怪我することはまず間違い ない。否、それどころか、殺される可能性の方が高いのだ。 それに、シエスタができることなんて何もない。シエスタもサイトと同じ平民。貴族に逆らう ことなんて不可能なのだから。 ――だけど、ムジュラさんたちなら! しかし、あの少年と共に召喚された者たち、サイトの使い魔仲間たちならば、話は別だ。特に、 ムジュラの仮面というあの使い魔。被った相手を魔法が使える様にしてくれるらしい彼ならば、 きっとサイトを助けてくれる。 そう考えたからこそ、シエスタは一心不乱に走っていた。何処にいるのか判らない仮面と妖精の コンビを、必死になって探し続ける。 「しかし、広い学院だな。本当に施設全部きっちり使っているのか?」 「ホントだね、掃除しなきゃいけないシエスタたちは大変そう」 そうして学院中を探索すること約一刻、ようやく廊下の向こうに見知った影が2つ見えた。 「ムジュラさん! ナビィさん!」 そちらへ向かいながらも呼び掛けると、2名はこちらに向き直ってくる。 「噂をすれば、だな」 「Hello、どうしたのシエスタ? そんなに慌てて」 不思議そうにする両者に追いつくと、シエスタは息を切らせながら答えた。 「さ、サイトさんが……」 「サイトが?」 「どうかしたのか?」 体ごと首を傾げる2名に、荒い息のまま叫ぶ。 「き、貴族の方と、決闘を!」 「ええっ!?」 「何やってるんだ、あいつは」 驚くナビィと呆れるムジュラの仮面に、シエスタは縋りついた。 「ですから! ナビィさん、ムジュラさん! サイトさんを助けてあげてください!」 「うん、判った!」 「せいぜい遊ばせてもらうか」 答えたムジュラの仮面が視線を向けると、何かの魔法を使ったのだろう、廊下の窓がひとりでに 開く。 「シエスタ、決闘は何処でやってるの!?」 「はい、ヴェストリの広場です!」 ナビィの質問に答えると、2名の使い魔たちは互いに顔を見合わせた。 「昨日行った広場だね。急ごう、ムジュラ!」 「そうだな、行く前に終わっていてもつまらない」 言うが早いか、ナビィが真っ先に窓から外へ飛び出していき、ムジュラの仮面もその跡を 追おうとする。その背中に、シエスタは呼び掛けた。 「待って、私も連れて行ってください!」 サイトには今朝の洗濯や、配膳の申し出等、色々と親切にしてもらった。ムジュラの 仮面たちが助けに向かうとしても、サイトの安全を確認してからでなければ安心できない。 「ふうん?」 すると、ムジュラの仮面の眼に何やら意地の悪そうな光が宿った。かと思えば、シエスタの体が 俄(にわか)に浮き上がる。 「なら、ご希望に沿うようにしようか」 面白がっている様な声音で言うムジュラの仮面に、不安が湧いてくる。その不安の通りか、 シエスタの周りに夕焼け色の靄(もや)のようなものが立ち昇りだした。その靄は、凄まじい 速さで窓の外へと伸びていく。よくよく見てみれば、その靄は動いているらしく、川の様に 外へと流れていっている。 「あ、あのう、ムジュラさん……?」 「さて、急ぐぞ」 シエスタの不安も何処吹く風とばかりに、ムジュラの仮面自身もその靄の中に入ってくる。 「あの、どうするんですかっ!?」 「向かうだけさ、広場へとな」 何か妖しいものの籠(こも)った声で告げられると、浮き上がった体が動くのを感じた。 「っ、きゃああぁぁ!!」 その次の瞬間、もの凄い加速がシエスタに襲いかかる。とんでもない力に引っ張られる様な 感覚に、思わず悲鳴が飛び出していた。視界も定まらない程の高速に目が回りそうだ。 感じたこともない速度に怯えていると、やがてそれは終わりを迎えた。 「着いたぞ」 ムジュラの仮面の言葉が耳に届くと、シエスタの体が急に止まる。すると、周りの靄が 霧散して、シエスタの体が地面に落ちた。 「痛っ!」 臀部(でんぶ)から落とされた痛みに小さく悲鳴を上げると、シエスタはムジュラの仮面に 抗議の眼を向ける。 「いたた、ひどいです、ムジュラさん!」 「ん? リクエストには応えているはずだが?」 悪びれずに言うムジュラの仮面に、シエスタはサイトが彼を性悪と評していたことを思い 出した。しかし、すぐにそんな場合ではないことを思い出す。 「そうだわ、サイトさんは」 立ち上がってみると、シエスタは周囲に学院の生徒たちが輪を作っていることに気がついた。 そして、ムジュラの仮面が着いたといった通り、ここがヴェストリの広場であることも。 ――ここ、ヴェストリの広場で、しかも人垣の真ん中……ってことは! 「がはっ!」 状況を把握した瞬間、シエスタの背後から苦し気な声が聞こえてきた。次いで、すぐ後ろの 地面に、何かが叩きつけられた様な音が響く。 「ぐ、……っそったれ……」 慌てて振り返れば、果たしてそこには件の少年、サイトの倒れた姿があった。 「サイトさん!」 「サイト!」 先に広場へ来ていたのだろう、ナビィと声を揃えて倒れたサイトの許へ跪く。見れば、彼は 悲惨な有様だった。顔の半分は紫色のあざに覆われて、片目が腫れの中に埋まってしまっている。 頭も打っているのか、それとも切れているのか、まだ固まっていない血の跡が目についた。 鼻からも血が滴(したた)り、荒い息をついている口の中さえも鮮血の色に染まっているのが見える。 着ているものも酷い状態だ。あちらこちらが裂けていて、そこから生々しい切り傷が覗き、青い服に 赤茶けた染みを作っている。 傍から見て、完全な満身創痍(まんしんそうい)だった。 「サイトさん、大丈夫ですか!?」 「くっ……」 シエスタの声が聞こえているのか、いないのか、サイトが苦しそうな声を上げる。そんな状態で あるにもかかわらず、彼は苦悶の声と共に起き上がろうとした。 「さ、サイトさん!? 無茶しないでください!」 慌ててそれを押しとどめようとすれば、サイトは開いている方の目でシエスタを見てくる。 「シエスタか……かっこ悪いとこ、見せちゃったな……」 黒髪の少年の言葉は、そんなことだった。声の感じは苦笑じみていたが、腫れた顔では表情として 表れない。 「そんなこと言ってる場合ですか! 早く手当てしないと!」 「そうだぞ、平民」 聞こえてきた声に目を向ければ、サイトの決闘相手であるヴィリエ・ド・ロレーヌが、嘲笑の 滲んだ眼でこちらを見据えていた。 「全く、勝ち目なんて全く無いというのに、不様な真似を続けて。どうして素直に自分の無力を 受け入れないのかね?」 傲慢な調子で、溜息を吐かれる。これほど痛めつけた相手に対し、そんな侮蔑的な言葉しか 放てないヴィリエに、シエスタは激しい嫌悪を抱いた。同時に、これだけサイトを圧倒しながらも、 自身は全く無傷だという、貴族に対する恐れの感情も。 嫌悪と恐怖の感情で板挟みになり、動けずにいると、サイトがシエスタの手を振り切ってしまう。 「言ってろ……てめえの風が退屈なんで、眠くなっちまった、だけだよ……」 そんな強がりを言いながら、サイトは立ち上がった。そこへ、面白がっている様な声が上がる。 「そんな様で、よくも言えたものだな」 ムジュラの仮面だった。仮面の使い魔は、同僚である少年をじろじろと見る。 「邪気は抜けても、やはりオレもモンスターか。流血と苦悶を前にすると、胸が躍る」 楽しそうに言うムジュラの仮面に、サイトは赤いつばを吐きながら言った。 「悪趣味な奴……」 「ヒャハハ。まあ、そう言うな。それより、早く被れ」 オレも遊びたいんだ、と急かすムジュラの仮面に、サイトは言い放つ。 「いやだ」 「なに?」 「ええっ!?」 「サイトさん!?」 サイトの返答に、ムジュラの仮面、ナビィ、シエスタは、三者三様に疑問の声を上げた。 「これは、俺の喧嘩だ……ムジュラは、関係ないだろ……」 途切れ途切れに、だがはっきりと言うサイトを前に、ムジュラの仮面はその目を真っ直ぐに 見つめる。 「本当に……いいんだな?」 念を押すムジュラの仮面に、サイトは頷く。すると、ムジュラの仮面がまた楽しそうに言った。 「ヒラガ、昨日言ったことを覚えているか?」 「ん、なんだよ……?」 サイトが聞き返せば、何気ない調子でムジュラの仮面は答えた。 「使えない道具は、タダのゴミでしかない」 傍で聞いていたシエスタは、その言葉にぞっとする。言葉の内容もさることながら、そんな残酷な 台詞を平気で言えるムジュラの仮面に背筋が震えた。 「その意味が判るか?」 そんなシエスタの怯みに構うことも無く、ムジュラの仮面は続ける。 「お前の心身、あの小僧に勝つために使い、それができないというのなら、お前の命、その程度の ゴミだったということだ」 それは極論すぎるとシエスタは思ったが、そんなことを平然と、その上面白そうに言うムジュラの 仮面に唖然とし、言葉にならない。 一方、その挑発めいた言葉を受けたサイトは、つまらなそうな声を出す。 「あの冗談みたいな台詞、こんな場面で使いやがって……」 「気に入らないなら、ゴミじゃないと証明するしかないな」 見下す様な言われ方で、サイトがますます反抗心を見せた。 「ああ、してやろうじゃねーかよ……」 その返事を受けると、ムジュラの仮面の眼が楽し気に光る。 「あの子鬼のように失望させるなよ、被り手」 そう言うと、ムジュラの仮面は思い出したように付け加えた。 「そういえば、ヒラガよ」 「まだ、なんかあんのか……?」 サイトが訝しむと、ムジュラの仮面の声の質が変わる。 「お前には、オレが優しく見えるのか?」 「え……?」 「せっかく出してやった助け船を蹴られ、それを許してやるほどに、オレが優しく見えるのか?」 その声に、今度こそシエスタは戦慄した。否、ナビィも、サイトも、一様に竦み上がっている。 ムジュラの仮面の笑い声――面白がっている様な陽気な声のはずなのに、それには全く温度が 感じられなかった。軽い調子で言われているにも関わらず、異常な程に暗いものを感じさせた。 笑いながらも、周囲から熱を奪い、暗がりへ引き込む、妖しの声。この世ならざる音声に呑まれ、 シエスタたちは息も凍るような感覚に襲われていた。 「まあ、どうでもいいことだな」 かと思えば、次に放たれた一言に、温度が戻る。そこで、サイトが腫れた顔に浮かんだ冷や汗を 拭った。 「ど、どうでもいいなら、聞くなよ……」 「そうだな、ヒャハハ……」 上擦り気味の声で返すサイトに、ムジュラの仮面は意外と甲高い笑い方で応える。シエスタは、 段々と後悔の念を抱きはじめていた。助けを求める相手を、思い切り間違えたのかもしれない。 「おい、いつまで待たせるんだ?」 そこへ、ヴィリエの苛立った声が上がる。そういえば、なんだかんだですっかり無視してしまって いた。その間、まったく攻撃を仕掛けてこなかったのは、余裕があるのか、意外と律儀なのか。 「ああ、休憩終了だよ」 「違う」 サイトがヴィリエに言い放った瞬間、別の声が上がった。誰の声かと思ったら、シエスタの目が 青い髪と長い杖を持った影に留まる。いつの間に来ていたのだろうか、サイトたちの主、タバサが すぐ傍にいたのだ。 「休憩でなく、決闘が終了」 淡々とした声で告げるタバサに、サイトが片目に反抗的な光を灯す。 「なんだよ、それ……」 「言った通りの意味。これ以上は許さない」 言葉の通りか、タバサは鋭い瞳でサイトを見据えた。その眼差しに、直接向けられているわけでも ないシエスタまでもが息を飲む。静かでありながら有無を言わせない迫力に、ムジュラの仮面の 時とはまた違った寒さが背筋に走った。 一方、それを直に受けているサイトの方は、真っ向からその眼を見返している。 「まだ、決着ついてないだろ……」 「これ以上続けても無駄」 反論するサイトではあるが、タバサは聞く耳を持たない。 「貴方はそんなぼろぼろになりながら、相手に一撃さえ入れていない。これ以上やっても、結果は 見えている」 「っ……」 論理的に続けるタバサに、サイトは言葉を返せない様だった。そこまで言うと、タバサの雰囲気が 微妙に変わる。 「貴方はよく闘った。でも、これ以上無理したら、本当に命の保証はない」 「けどっ……!」 尚も抗議するサイトだが、タバサは首を横に振った。 「庶子と言われたことを怒ってくれるのは嬉しい。だけど、貴方がそこまで無理することはない」 「それだけじゃねえんだよっ!」 俄に響く、サイトの叫び。空気を震わせたその訴えに、一瞬タバサは気圧されたように見えた。 「あんな奴に虚仮(こけ)にされたまま、自分の友達の悪口も取り消せないまま、そんなだせえ 奴のまま、終わりになんてできるかよ……!」 拳を握りしめながらも、サイトの言葉は終わらない。 「確かに、俺はムジュラみたく、魔法使ったりできない」 出てきたのは、弱気とも思える言葉。しかし、そこにこめられているものは弱さと正反対の それだ。 「ナビィみたく、感覚共有ってやつも、できない」 痛みのためか、微妙に調子が外れた声。それでも、サイトははっきりと言葉を紡いでいく。 「でも、俺にだって、意地ってもんがあんだよ……!」 言葉と共に、サイトの瞳に火が灯った。片方しか開けられていない眼が、強い意志で燃え 上がる。 「痛めつけられようが、何されようが……、一矢も報いらんねえまま、やられっぱなしで いられるか!」 力強い叫び――それを真っ向から受けたタバサは、シエスタの目には動揺している様に 映った。相変わらず、立っているのがやっとにしか見えないというのに。言っていることは、 まるで子どもの駄々の様なのに。サイトから発せられる気迫は、とても大きく感じられた。 最早、言葉でサイトが止まりそうにないことは明らかだ。タバサもそれが判っているの だろう、どうすべきか悩んでいるように見える。例え、彼女が魔法でサイトの自由を奪ったと しても、それで決闘相手であるヴィリエが納得するだろうか。 そういえば、去年彼女とヴィリエが諍(いさか)いを起こしたという話を、シエスタは思い 出した。無理に中断させようとすれば、かえって話がこじれるかもしれない。 なんともしがたい状況に、シエスタは焦燥感を募(つの)らせることしかできなかった。 それに歯がゆさを感じていると、唐突に拍手の音が聞こえてくる。 驚いてそちらに目を向けてみれば、1人の金髪の少年がこちらに近づいてきているところ だった。 学院の生徒たちは、この昼の決闘騒動を、見世物の一種として捉えていた。娯楽も刺激も 少ない学院生活の中の、降って涌いたショーを楽しむ感覚で、ここに集まっていた。 タバサとヴィリエのクラスメイト、ギーシュ・ド・グラモンもまた、その1人だ。 彼も別段、この決闘に何か思うところがあるわけではなかった。周囲の者たちの多くとと 同様、ただの興味本位でここにいるだけだ。 しかし、彼は他の者たちとは違う点が一点だけあった。それは、どちらかというと平民の 使い魔の方に興味を持っていたという点だ。 とはいっても、彼は平民という存在に関心を持っているわけではない。他の貴族たちと 同程度には見下しているし、魔法が使えない下等な存在だと考えている。 魔法が使える貴族に逆らうこともできないくせに、陰でこそこそと罵(ののし)っては、 いざメイジを目の前にすればへこへこするだけの連中。そんな誇りも何もない、つまらない 人種だというのが、ギーシュらトリステイン貴族の多くが持つ平民観だった。 しかし、タバサの召喚した、黒髪の使い魔。あの少年は、そんな自分たちの考える平民とは 違って見えた。 「タバサは関係ねえだろうが!」 貴族に対して臆することも無く、自分の主を侮辱した相手を思い切り怒鳴りつける。そのことに 驚いた者は、きっとギーシュだけではなかっただろう。特にギーシュは、彼の怒り方に関心を覚えた。 女性への侮辱に対する怒り、それはギーシュも共感できることだったからだ。 だから、フェミニストを自任するギーシュとしては、むしろ平民の使い魔の方を応援する気に なっていた。ラインクラスの風メイジであるヴィリエが平民に負けるとは本気で思っていなかったし、 気持ちだけでも味方に立ってやろうと思ったのだ。 そして、決闘は大多数の予想通りに展開していった。平民の使い魔はヴィリエに全く歯が立たず、 ヴィリエの繰り出す風で一方的に痛めつけられていく。風の鎚(つち)に体を打ちつけられ、風の 刃に血飛沫を上げられる。 黒髪の少年は何度も吹き飛ばされ、何度も倒れ込んだ。その度に起き上がっては、何度も何度も ヴィリエへと突っ込んでいく。幾度も傷つきながらも、使い魔の少年は諦めずにヴィリエに挑み 続けた。その不屈の意志を以って戦う姿に、少年に対する感情がただの興味から少し変化する。 どれほど傷ついても、心が折れることなく戦い続ける。それは、むしろ自分たち貴族が持つべき 姿勢に思えたからだ。だからこそ、平民でありながらそれができるこの使い魔を応援する気持ちが、 ますます大きくなっていった。 「痛めつけられようが、何されようが……、一矢も報いらんねえまま、やられっぱなしで いられるか!」 そして、満身創痍になりながらもそんな叫びを上げる使い魔に、とうとう気紛れを起こす。 「いや、なかなか大した根性だね、使い魔君」 拍手をしながら、ギーシュは使い魔たちの許へ歩み寄っていく。すると、件の使い魔はこちらを じっと見据えてきた。 「誰だ、あんた……?」 「おっと、失礼。僕の名はグラモン伯爵家四男、ギーシュ・ド・グラモン」 バラの造花をあしらった杖を振りながら、軽く自己紹介をする。すると、ヴィリエが険のある声を 投げてきた。 「ギーシュ? なんのつもりだ?」 明らかに不愉快そうな眼が向けられてくる。 「まさか、決闘の邪魔をしようなんていうんじゃないだろうね?」 「邪魔をするだって? まさか! そんな無粋なことをするものか」 大仰に手を広げて、否定を示す。こういうことは、多少芝居っ気が必要なものだ。 「ただ、性分というのかな。こういった多くの観衆が集まる中では、どうにも体がうずいてしまってね。 何か自分も注目を集めたくなってしまうんだよ」 言いながらも軽くバラの香りを楽しむ仕種を取り、平民の使い魔の方へ目を向ける。 「それに、そちらの使い魔君にも少し興味が湧いてね」 「興味……?」 訝しむ平民に、軽く頷いてみせた。 「魔法が使えない身でありながら、どこまでも貴族に立ち向かっていく。そんな平民がいることに、 何故か素直に感動してしまったようだ」 言い終われば、ギーシュは杖を小さく振った。すると、バラの造花から花弁が1枚零れ、使い魔の 許へと飛んでいく。そして、それはギーシュの掛けた錬金の魔法で剣に変わり、黒髪の少年の傍に 突き刺さった。刃渡り70サント程のミドルソードだ。 「判るかい? それは剣、君たち平民が僕たち貴族に抗うために生み出したものだ。本気で決闘を するつもりなら、その青銅の刃を手にしたまえ」 そこまで言うと、ギーシュはヴィリエに向き直った。 「失礼、ヴィリエ。横槍を入れてしまったね。けど、君だとて丸腰の平民が相手ではつまらない だろう?」 肩をすくめながら言えば、ヴィリエは声を上げて笑った。 「ハッハ、君も酔狂だな、ギーシュ? まあ、別に武器を与えるくらい構わないさ」 もっとも、とヴィリエは付け加えた。 「今更そいつに勝ち目が増えるとは思えないけど?」 ヴィリエが辛辣に言った通りか、既に使い魔の少年は限界に見える。自分で贈っておいてなんだが、 とても剣を取って闘える様な状態ではなかった。 ギーシュはそう思ったが、一方、黒髪の少年の方は剣に手を伸ばそうとする。しかし、それは 直前で遮られた。彼の主、タバサによって。 「駄目、これを取ったら、相手はもう容赦しない」 小さく首を振りながら告げるタバサ、その表情は、心なしかいつもの無表情と違って見えた。 そして、それを向けられた方は軽い笑みで応えている。 「言ったろ……? 俺にも、意地があるって……」 言いながら、タバサの制止をやんわりとどけ、剣に手を伸ばす。 「そりゃ、痛いのは嫌だ……死ぬのだって嫌だ……」 だけど、と使い魔は続けた。 「あんな奴に、負けたくねえ……勝ち目があろうと、なかろうと……」 瞬間、その半開きの目が燃え上がる。 「下げたくねえ頭は、下げられねえっ!」 言い放った言葉と共に、その手が剣の柄を握り締めた。 ~続く~ 前ページ次ページ三重の異界の使い魔たち
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4389.html
618 名前:バカップルイズ〜そして彼女はやさぐれる〜 予告編[sage] 投稿日:2006/12/06(水) 22 15 41 ID 2uLuydTw バカップル、と申したか。 「おはようルイズ」 「おはようサイト」 「……」 「どうしたのサイト」 「いや……起き抜けに可愛いルイズの顔見られる俺はハルケギニア一の幸せ者だと思ってさ」 「やだもう。わたしだってこんなにカッコイイサイトの顔で目を覚ませるんだもの、ハルケギニア一幸せな女だわ」 「ルイズ……」 「サイト……」 目を瞑った二人の顔が徐々に近づいていく。が、唇が触れ合う直前に二つの快音が鳴り響く。 揃って悲鳴を上げる二人を鬼のような顔で見下ろして、ハリセンを握り締めたシエスタが厳かに言う。 「婚前交渉禁止」 「はいルイズ、あ〜ん」 「んー、おいしい。それじゃサイトも、あ〜ん」 「うーんおいしい。さすがルイズの手料理だな」 「サイトのために頑張って作ったんだもん、当たり前じゃない」 「そうか。いやあ幸せだなあ。あ、そうだルイズ」 「なあにサイト」 「いやなに、今度はルイズを食べたいな、なんて」 「やだもう。エッチなんだから」 そう言いつつも、顔を赤らめて体を寄せるルイズ。才人もそれに答えて肩に手を回そうとしたところで、 またも鳴り響く二つの快音。悲鳴を上げる二人に、ハリセンを握り締めたシエスタが厳かに言う。 「婚前交渉禁止」 「ああルイズ、お前はどうしてそんなに可愛いんだ」 「ああサイト、あなたはどうしてこんなにカッコイイの」 「俺はルイズのためなら七万どころか世界全部の軍隊相手に単騎駆けしてみせる」 「わたしもサイトのためなら世界全部の軍隊を爆殺してみせるわ」 「ああルイズ」 「ああサイト」 ベッドのそばで抱き合う二人。そのままベッドに入ろうとしたところで、またも二つの快音が。 悲鳴を上げる二人のそばで、ハリセンを握り締めたシエスタが厳かに言う。 「婚前交渉禁止」 619 名前:バカップルイズ〜そして彼女はやさぐれる〜 予告編[sage] 投稿日:2006/12/06(水) 22 17 24 ID 2uLuydTw 「あらあらシエスタさん、どうしたのそんなに真っ赤なお目目で」 「もう限界ですカトレア様! あの二人ときたら時間も場所も考えずにイチャイチャイチャイチャ……」 「うーん、だけどあの二人を抑えられるのってあなたしかいないし」 「もう無理です気が狂いそうです。ああ、わたしの平穏な生活を返して……」 「困ったわねえ」 カトレアはさほど困った風でもなく、頬に手を当てて首を傾げる。 いろいろ大変なことを乗り越えてバカップル化した才人とルイズが「結婚許さなきゃ死ぬ」とルイズパパに迫って 強引に結婚を認めさせたが、「せめて結婚するまでは慎みを持ってくれ」とのお言葉により、 二人に一番近いシエスタが婚前交渉阻止役を任ぜられたのである。 ちなみに阻止できなかった場合晒し首。さすがルイズパパ、女相手でも容赦ねえ。 「何とか頑張ってちょうだいな。二人が喧嘩したときなだめ役がいないと本気でハルケギニアが吹き飛びかねないし」 「あの、ひょっとしてわたしってイケニエですか」 「世界の危機を救うのだから英雄と言ってもいいわよ。いいわねえ勇者なメイドさん。今流行だわ」 「拝啓母さん、シエスタはもう限界です。先立つ不幸を」 「あ、そんなことしてる間に二人のシルエットが重なって」 「婚前交渉禁止ぃぃぃーーーっ!」 ハリセン片手に飛び出すシエスタ。もはや日常風景である。 嫉妬に狂うエレオノール姉様、影響を受けてバカップル化するギーシュとモンモランシー、 愛があればゾンビでもいいじゃんと屍姦に走る清貧女王、ヘタレ同士仲のいいフーケとワルド、 ハゲが煮え切らないので逆レイプを狙うキュルケ、ハリセンを振るうシエスタの姿に惚れるタバサ、 子供たちに手を出すべきか否かと葛藤するティファニア、ナルシストなジュリオ、 相変わらずぼけてるんだか鋭いんだか分からないカトレア姉様などなどを加えて、 シエスタの日常はますます混沌を深めていく! やさぐれながらもなんだかんだで飼い慣らされてる彼女に明日はあるのか!? エロパロ板ヤマグチノボルスレ待望の新作「バカップルイズ〜そして彼女はやさぐれる〜」近日公開! そしてこれ書いた俺後悔! バカップルの魅力は彼ら自体でなく周囲が振り回されることにあると思うのですよ、はい。 あとこれ見れば分かると思いますけどワタシシエスタダイスキデスヨー。 620 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/12/06(水) 22 18 03 ID 2uLuydTw あ、近日公開とか嘘だから真に受けないでね。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2321.html
「皆さん!ここがわたしの故郷のタルブ村です。」 シエスタが満面の笑みを浮かべて情景を眺めていた。 金色に光り輝く農村の風景は、それはそれは美しかった。 「へえー。凄いじゃないの!」 お気に入りの飛燕の近くによったキュルケもまんざらではなさそうだ。 「これが邪鬼先輩の守った景色ですか。」 飛燕が塾生達を代表するかのように発言する。 塾生達は、みな一様に目を細めてその風景を眺めていた。 「そうだ!おじいさまの墓参りの前に一度家に寄っていきませんか?歓迎しますよ。」 シエスタが振り返って皆を見つめる。 誰も異存の声など上がろうはずがなかった。 「かあー!こりゃうまいのう。」 一号生達の中でも極めつけの酒好きである、松尾が率先して村の名物のワインを飲む。 「行儀良くしなさい!ここはシエスタの家よ。」 そこへルイズの鋭い声が飛ぶ。 「構いませんよ。いい呑みっぷりですね。 きっと父も喜んでいますよ。」 ニコニコと擬音が出そうな笑顔を貼り付けたシエスタの父が言う。 この男、風貌こそ邪鬼そっくりであるが、その性格は温厚そのものである。 最初こそその風貌に戸惑った一号生たちではあるが、もはや慣れたようだ。 「まあ、そういうことだからお言葉に甘えましょうよルイズ?」 「……この料理も美味しい。」 そんなキュルケとタバサを、ルイズは恨めしそうに見る。 誰かがストップ役にならないと、騒ぎが止まらないことをよく知っているがために、騒ぐ側に回れないのだ。 そこへこっそりと忍び寄ったシエスタがルイズに耳打ちをする。 (いざとなったら私が止めますのでルイズ様も楽しんでくださいね。) 思わずシエスタの方を向くルイズ。だが、即座に納得した。 シエスタがこっそりと視線を向けている先には、富樫に虎丸、田沢に松尾のお祭り男カルテットが立っていた。 確かに、酔っ払ったあいつらなら真空殲風衝で簡単に止めることができそうだ。 そのことに納得したルイズは、自分も言葉に甘えて楽しむことにした。 夜はまだ長い。 「押忍!一番松尾、マイケルジャクソンのスリラーを歌います!」 「下手くそ!少しは面白くしなさいよ。」 「……(無言で首を縦に振っている)」「確かにあれじゃイマイチね。」 「ぬぬ!それでは塾歌をピンクレディーの振りつきで歌います。」 「ちょっと!なにいきなり脱ぐのよって、何よそれーーー」 いきなり脱ぎだす松尾。 その下には女物の下着が着想されていた。 「エクスプロージョン!」 一番騒いでいるのがルイズのため、注意しきれないシエスタがいたような気がするが、それは気のせいである。 そして翌朝。 「うーーーー。頭いたーい。」 ルイズが頭を押さえながら起きてきた。 どうやら二日酔いらしい。 「ルイズ様。二日酔いにはこの薬がよく効きますよ。」 即座にシエスタが緑色の飲み薬を手渡す。 良く見ると、その左手には、お盆の上に飲み薬を入れたコップが立体的に積まれていた。 類まれなバランス感覚をようするシエスタだからできるわざである。 受け取ったルイズは、小さな声でシエスタに感謝の言葉を捧げると、一息で飲み干した。 「ッッッッッ!にっがーい!これなんなの?」 その味に思わず涙目になったルイズがシエスタに問いかける。 「これはハシバミ草から作った特製のお薬です。苦いのは当然ですよ。 そうでないと二日酔いを後悔しないから、とおばあ様が良く言ってましたし。」 思わずルイズは納得した。これ程苦いならば、そういう効果もあるだろう。 「それでは、他の方にもお薬を配ってきますね。」 ルイズは、そうして立ち去ろうとするシエスタの後ろを、タバサが付いていっているのに気がついた。 「余ったら全部もらう約束。」 ルイズの隣を通り過ぎる瞬間、聞いてもいないルイズに、タバサが呟いた。 一瞬絶句して、思わず振り返ったルイズであるが、その時には二人はすでに外に出ていた。 「まさか、アレを全部飲むつもりなの?」 ルイズの疑問である。 時は昼過ぎ。 小さなタルブの村にはあまりにも不釣合いなほど大きい墓の前に、塾生達が集合していた。 ルイズ達は気を利かせて墓の外にいる。 まずはシエスタが簡単な報告をしていた。 「おじいさま。私はおかげさまで元気に過ごしています。 ようやく真空殲風衝も使いこなせるようになりました。 おじいさまから見れば、未熟もいいところではあると思いますが、 大豪院流の系譜を絶やさないように努力をしていくつもりです。」 シエスタの近況報告が続く。 学院に入ってからのこと。知り合いができたこと。真空殲風衝が使えるようになった決闘のこと。 次々と話が続いていく。 そうして、最後に一号生達の方を振り返って祖父に紹介した。 「それにおじいさま。今日は珍しいお客様が来ていますよ。」 そう言ってシエスタは、墓の前から退いた。 学ランを着用した塾生達が、無言で前へと歩み寄る。 秀麻呂は、幻の大塾旗を挙げていた。 ピタリと邪鬼の墓の前で全員が歩みを止める。 そんな中、桃が一人前へと進み出た。 邪鬼の墓をじっくりと見つめる桃。 ここに邪鬼の遺骨などは何もないことは知っている。 しかし、この墓地に漂う雰囲気は、まさしく邪鬼のそれであった。 故に、 塾生達はここに邪鬼の魂が眠っていることを確信していた。 「押忍!邪鬼先輩、報告します!」 そうして桃もまた報告をしようとした。 ようやく念願かない、宿敵藤堂兵衛を打ち倒したことなど、報告すべきことは山ほどあった。 (だが、) 桃は思う。 その全てを報告することに何の意味があろうかと。 彼は、邪鬼先輩は、俺達を信じて男塾を託したのだ。 ならば、 「俺達は日々男を磨いています。 近い内に必ずや男塾に戻り、後輩達にも男塾の魂を伝えていく所存です。 以上、失礼します!」 短い言葉ではあったが、桃は全ての想いを載せたつもりであった。 ふと桃は、否一号生達は不思議な声を聞いた気がした。 (大義であったな。これからも男塾を頼んだぞ。) 短い台詞ではあったが、それは紛れもなく邪鬼の声であった。 ふと、全員の目に熱いものがはしる。しかし、誰もそれを放とうとはしない。 今ここで涙を見せれば、邪鬼先輩に怒られるのは火を見るよりも明らかなのだ。 だからこそ桃は 「全員、邪鬼先輩に敬礼!」 声を張り上げることにした。 あらかじめ打ち合わせをしていたかのように、全員の敬礼が綺麗にそろう。 それはそれは色気のある敬礼であった。 男達の使い魔 第十六話 完 NGシーン 雷電「むう、あ、あれは!」 虎丸「知っているのか雷電!?」 雷電「あれぞまさしく古代中国において伝わる環韻(わ・いん)!」 最近のワインブームにおいてワインを楽しむようになったかたも多いだろう。 一般にワインの起源は、古代ギリシアやメソポタミアのあたりと言われているが、これは事実とは異なる。 かつて古代中国は殷の時代、蒲党主(ふ・とうしゅ)と言われる武道家がいた。 彼は晩年ある技をひたすらに練っていたことで知られる。 その技は、果物の蔓を使って敵を拘束する技であるが、鍛錬に鍛錬を重ねた彼の技は格が違った。 彼が一度蔓を手に持つと、それは一瞬にして大きな円環を描き、敵が言葉を発するまもなく縛り上げたという。 故に人々はその技を環韻と呼ぶようになった。 彼がこの技を練習する仮定で、たまたま落ちた葡萄が発酵し、今で言うワインとなったという。 なお、この際に彼の技名が西洋やハルケギニアに伝わりワインとなり、人名が日本に伝わり、音を変え葡萄酒と呼ばれるようになったのは、諸君等もご存知の通り、実に有名な話である。 余談ではあるが、中国の東北地方において、いつまでも泣き止まない子供に 「環韻にするぞ」 と言って怒鳴りつけるのはこの故事から来ていることは言うまでもないであろう。 民明書房刊 「お酒と武術の歴史」(平賀才人著)