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クリフトとアリーナの想いはPart7 169 :【ルーシア】1/7 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/03/16(金) 13 20 58 ID +sx+E7nd0 「きゃー、クリフトさん、見てください、あの青くてプルプルしてるのはなんですかあ?」 「またかよ、勘弁してくれよ…。」 ルーシアの歓声に、御者席に座っていた勇者は頭を抱えて呟いた。 一行が世界樹の上で拾った、ルーシアと言う天空に住む少女。 羽を痛めて天空に戻れないという彼女を連れて、地上に降りたのは数日前のことだった。 地上に降りるのが初めてと言うルーシアは、見るもの全てが珍しいらしく、 馬車から頭を突き出し、何かに目を止めては馬車を降りて走り出す。 天空の塔に入るために必要という天空の装備を揃えるため、海鳴りの祠に向かう一行であったが、 その道行きは、遅々として進まなかった。 ルーシアの声に、勇者以外にもう1人、不機嫌そうに眉根を寄せた者がいる。 アリーナだった。 旅の仲間達は、ここ数日のルーシアの止め処もない質問の嵐に疲れて、 ルーシアに何かを聞かれても、適当にあしらうようになっていたのだが、 クリフトだけは、生来の生真面目な性格故、根気良くルーシアの質問攻めに付き合っていた。 自然、ルーシアも、クリフトにもっぱら話しかけるようになる。 今では、クリフトはルーシアにつききりの状態となっていた。 今も、 「ああ、あれはスライムですよ。世界樹にはいないんですか。 弱いですが、一応モンスターですから、余り近くによってはいけませんよ。」 「ええ~、あれ、モンスターなんですかあ。あんなに可愛いのに~。」 ルーシアの言葉に、クリフトがクスクス笑う声が聞こえてくる。 「スライムが可愛いなんて、ルーシアは面白いことを言いますね。」 アリーナが馬車の後ろを振り返ると、クリフトがルーシアの頭をぽんぽんと叩いていた。 アリーナは思わす、馬車を飛び降り、2人の元に駆け寄った。 「クリフト!こんなにしょっちゅう馬車を止めてたら、全然前に進まないじゃない!」 いつになくきつい語調のアリーナに、クリフトは驚いたような顔をした。 ルーシアも怯えたようにクリフトの後ろに隠れる。 それを見て、アリーナは眉間の皺を深くした。 「皆が待ってるんだから、早くして!」 投げ捨てるように言うと、アリーナは2人から顔を背け、その場を足早に立ち去った。 「アリーナさんは、どうしてあんなに怒ってるんですかあ。」 ルーシアの不思議そうな声を背中で聞きながら、 アリーナは、それが知りたいのは自分の方だと思った。 アリーナ自身、何故、ここのところ自分がこんなに苛々するのか、理由が分からなかった。 しかし、この苛々があの天空の少女に関係していることだけは、何となく分かる。 彼女が一緒に旅するようになってから、どうも気分が良くない。 ―――あの子が、ああやって皆に迷惑をかけるからだわ。 アリーナは自分自身にそう言い聞かせた。 結局、その日はほとんど前に進まないままに、一行は森のそばで足を止めた。 「へえ~。シチューはこうやって作るんですかあ。」 夕食の準備をするクリフトの隣に、ルーシアがへばりついていた。 いつもであれば、夕食の準備をするクリフトの隣はアリーナの特等席であり、 クリフトを手伝いながら(と言っても、ほとんど手伝いになっていないのであるが)、 その日にあったことを色々とおしゃべりをするのはアリーナの楽しみの一つだった。 しかし、ルーシアが来てからは、アリーナが割り込む隙間がない。 アリーナは仕方なく、不機嫌のオーラを漂わせながら、ミネアと一緒に食器を並べていた。 周囲の仲間達は、そんなアリーナを腫れ物を扱うように遠巻きにしていたが、 アリーナは仲間の反応にも気づかず、クリフト達の会話に一心に耳を済ませていた。 「天空人は、ホントは、食べ物を食べる必要はないんですよお。 でも、単に楽しみとして食事をすることはあるんです。」 クリフトさんのお料理はおいしいから、つい私も食べちゃいます、というルーシアに、 クリフトは「それは光栄ですね。」と嬉しそうに笑った。 アリーナは、その笑い声を聞いた瞬間、手にした食器を地面に叩きつけた。 木でできた食器は、壊れはしなかったものの、大きな物音に皆が驚いて振り返る。 アリーナは、自分の行動に自分でも驚いたが、ルーシアを睨むと声を張り上げた。 「何よ、食べなくてすむんだったら、食べないでよ! 食べ物がいつもいっぱいあるわけじゃないんだから!」 アリーナのいつにない乱暴な態度に、クリフトが叫んだ。 「姫様!」 その厳しい声音に、アリーナは思わず身構えたが、反抗的な目でクリフトをにらみ返す。 クリフトはそれを見てため息をつくと、ルーシアに、 「少しの間、この鍋を見ていてくれますか?」 と言い置くと、アリーナの方を向いた。 「姫様…。ちょっとこちらに。」 アリーナは、頬を膨らませると、しぶしぶクリフトに付いて行った。 皆から離れると、クリフトは静かな声でアリーナに尋ねた。 「姫様、最近、一体どうなされたのですか?」 「…。」 「確かに、ルーシアは、何かと我々とは相容れない部分があるかもしれませんが、 地上人ではないのですから、多少は仕方ないじゃありませんか。」 アリーナは、相変わらず頬を膨らませたままだったが、ふとあることに気がついた。 「クリフト…。何でルーシアを呼び捨てにするの?」 クリフトが女性を呼び捨てにするのは非常に珍しいことだ。 クリフトはアリーナの質問に面食らったような顔をした。 「姫様、私の話を聞いて…。いえ、ルーシアの呼び名の件は、 彼女がそう呼んで欲しいというものですから。」 天空では、皆から呼び捨てにされていたので、他の呼び方をされると寂しいらしいんですよ、 と優しい目をしていうクリフトに、アリーナの中の苛立ちが再び顔を覗かせる。 「だったら、もし、私が呼び捨てにして欲しいって言ったら、 クリフトは私のこと、呼び捨てにしてくれるの?」 「な、何をおっしゃるんですか。そんな畏れ多いこと、とんでもありません。」 ぶんぶんと物すごい勢いで手を振るクリフトに、アリーナはいつになく距離を感じた。 ―――今まで、クリフトを遠くに感じたことなんかなかったのに…。 まるで、ルーシアが、自分に取って代わってしまったかのようだ。 アリーナは、じわりと目の奥が熱くなって下を向いた。 そのとき、遠くから能天気な声が聞こえてきた。 「クリフトさーん、お鍋、焦げてますけど~。」 ほてほてとこちらに向かってくるルーシアに、クリフトは額に手をやった。 「ルーシア…。『見ていて』というのは、そういう意味ではないんですが…。」 と、クリフトの額に当てた手がそのまま止まる。 アリーナも、はっと顔を上げた。 2人のそばまで来たルーシアは、不思議そうな顔をして2人を見たが、次の瞬間、 アリーナに突き飛ばされた。 「きゃあ、何するんですかあ!」 アリーナは、ルーシアの前に立つと、背中でルーシアに声をかけた。 「そのまま、立たないで!向こうの木まで這って移動して!」 既にクリフトは、アリーナの横で剣を構えている。 2人の視線の先を追ったルーシアは、ブルホークの集団が森から現れたのを見てとった。 「うわわ、これもまた、初めて見るモンスターですね…。」 のん気に呟くルーシアに、アリーナが叫ぶ。 「ルーシア、早く!クリフト!」 アリーナの声に、クリフトが、はい!と答えてスクルトの呪文を詠唱する。 防御の光が完成すると同時に、アリーナは前に飛び出した。 その隙にクリフトはルーシアを抱えて、ほとんど放り出すように木の陰に置いた。 「いたた。乱暴ですねぇ。」 ルーシアの抗議に全く耳を貸さず、クリフトは踵を返すとアリーナの元に走り寄った。 「姫様!」 ブルホークの鋭い角で怪我をしたアリーナにすかさずべホイミをかけると、 クリフトは手近の1頭を剣で切り倒した。 回復したアリーナが再び前に出てブルホークの横面を蹴り飛ばす。 アリーナが奮闘している後ろで、クリフトは左手を掲げ、死の呪文の詠唱を始めた。 「闇の遣い魔達よ、我が呼び声に答えよ…。」 クリフトの左手に黒い気が溜まる。 クリフトがアリーナに声をかけた。 「姫様!」 それに応じてアリーナがクリフトの横に飛びずさった。 「ザラキ!」 魔物達は、一瞬にして灰となった。 ふう、と肩で息をつく2人の後ろから、ぱちぱちと拍手が聞こえた。 「すごいすごい、お2人は、ものすごく息が合ってるんですね~。」 ルーシアがはしゃいだように手を合わせている。 「もしかして、お2人は恋人同士なんですかあ?」 ルーシアの無邪気な質問に、剣を背中に収めていたクリフトが固まった。 「な、な、な、な、何を!?ルーシア、あなたは…。」 パニックに陥っているクリフトに、ルーシアはのほほんと首を傾げてみせる。 「ええ、違うんですかあ?だって、あんなに息がぴったんこなのに…。」 アリーナも何となく自分の頬が熱くなっているのを感じ、クリフトを見上げた。 クリフトは、赤くなったり青くなったりしていたが、アリーナに見上げられ、 飛び上がるように背筋を伸ばすと、 「そ、そうでした、シチューが焦げてるんですよね!鍋を見に行かないとっ!」 と叫び、焚き火に向かって脱兎のごとく駆け出した。 「へんなクリフトさんですねぇ。」 首を振るルーシアに、アリーナが慌てて言い訳をする。 「あ、あのね、ルーシア、別に私とクリフトは恋人なんかじゃないよ。」 「ええ、そうなんですかあ?でも、お2人の間には、他にはない強い絆が見えますよお。」 天空人の私には分かるんです、と胸を張るルーシアを、アリーナは疑わしそうに見つめたが、 それでも、ルーシアの言葉はアリーナの胸にほんわりと暖かく広がった。 ―――強い絆、かあ。 何となく、頬が緩んでくるのが分かる。 さっきまでルーシアに感じていた苛立ちも、何故か嘘のように消え去ってしまったようだった。 それからというもの。 「アリーナさん、見てください~!すごいきれいなお花ですう!」 「わあ、ホント!ねえ、クリフト、これで花冠作れそう!?」 ルーシアの行動にアリーナが便乗するようになり、旅の進行はさらに遅れることになった。 「何なんだよ、あいつら…。アリーナ、一体どういう風の吹き回しなんだ?」 勇者は御者台の上で胡坐をかいて、花冠を作り始めた3人を眺めていた。 その後ろから、マーニャが顔を出した。 「大方、クリフトに『姫様が一番大事です』とか何とか言われたんじゃないの?」 いつものことじゃない、と笑うマーニャに、 「ったく。まあ、この前みたいにピリピリされるよりはいいけどさ…。」 旅が進まねえんだよなあ、と勇者はため息をついた。 その後、何とか天空の塔までたどり着き、いろいろあったが、一行は、 ルーシアと別れを告げ、再び旅を続けることとなった。 のべつ幕なしに歓声を上げていたルーシアがいなくなり、一行の日常は元に戻ったが、 「何だか、あの『見てください~!』が聞こえないと、妙に静かに感じるわね~。」 伸びをしながら言うマーニャに、クリフトがうなずいた。 「いなくなってはじめて、人の良さってわかるものですね。 いえ、ルーシアは一緒にいるあいだも ちゃんといい子でしたけど。」 慌てたように付け加えるクリフトに、マーニャがニヤニヤと笑った。 「あんたは大変だったものね~。ルーシアに付きまとわれたおかげで、 大好きな姫様のお世話もロクにできなくてさあ。」 マーニャの言葉に、クリフトが真っ赤になる。 クリフトの隣にいたアリーナも、一緒になって赤い顔をした。 マーニャは面白そうに、赤くなった2人の顔を見比べた。 「ホントに面白いわね、あんた達。いいから、ほら、アリーナ。 これからはゆっくりクリフトに世話を焼かせて上げなさい。」 マーニャはアリーナをクリフトに向かって押し出すと、 あとはごゆっくり~と手を振って馬車に戻って行った。 後に残された2人は、しばらく気まずそうに突っ立っていたが、 クリフトがコホンと咳払いをすると、アリーナに話しかけた。 「姫様…?陽気も良いようですし、しばらく、馬車を降りて歩きますか…?」 アリーナは、顔を上げると、目を輝かせてうなずいた。 「うん、クリフト、一緒に歩きましょ!」 「ああ、でも、一応マントはお召しくださいね、それから飲み水も持った方が…。」 クリフトが忙しそうにバタバタと用意を始める。 それを見て、アリーナは嬉しそうに笑った。 ついこの前までは、クリフトに細々と世話を焼かれることを、何となくうるさく感じていた。 でも、今は、クリフトがいろいろと構ってくれることが、こんなにも嬉しい。 ―――私とクリフトは、強い絆で結ばれているんだから…。 ―――いつまでも、一緒に歩いて行こうね、クリフト。 アリーナは、心の中でそっとクリフトに呼び掛けた。
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クリフトのアリーナへの想いはPart6 917 :828ペギー ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/02/10(土) 12 01 21 ID x91RMrEZ0 ここは、モンバーバラの劇場。 パノンをスタンシアラ王のところに連れて行きたいと頼む一行に、座長は、ある条件を出した。 その条件とは。 勇者一行のうち、地元であるマーニャ・ミネア以外の誰かが、劇場で拍手喝采を浴びたら、パノンを連れて行っても良い、というのだ。 「しかし、あのおやっさんの考えてることは分かんないよなぁ。 素人の俺らに芸をさせて、どうしようってんだ?」 楽屋で首をかしげる勇者に、マーニャはひらひらと手を振った。 「いつものことよ。新しい才能の発掘が座長の道楽なのよ。」 そして、にんまりと楽しそうに皆を見回した。 「…で?誰が芸をやるわけ?」 「はいはいはーーい!」 アリーナが元気良く手を上げた。 「私が、大岩を空手で割ってみせると良いと思う~!!」 「お、それいいな!」 身を乗り出す勇者に、クリフトが慌てて叫ぶ。 「だめです!姫様にこのようなみだらなところで芸をさせるなど!」 「ちょっと!今の言葉は聞き捨てならないわね。」 目を三角にしたマーニャに、トルネコがおずおずと声をかけた。 「マーニャさん、私に駄洒落ショーをさせていただけませんか?」 「…は?」 「私の駄洒落、スタンシアラ王には通じませんでしたが、ここならばっ!」 「…。」 無言のマーニャに代わってクリフトが答えた。 「いいですね。トルネコさんの駄洒落は面白いですから、きっと受けますよ。」 「…面白がってたのはお前だけだ、クリフト。」 勇者が小さい声でつぶやいた。 案の条、トルネコの駄洒落は全く受けなかった。 「皆さん、私のお腹のことばっかり言って、聞いてくれやしない…。 ねえ、私って、みんなが言うほど太って見えますかね。」 うなだれて戻ってきたトルネコの肩を、ブライがぽんぽんと叩いた。 「気にされるなトルネコ殿。かくなる上は、わしが高等魔法で客をあっと言わせてみせようぞ!」 「…どうしてこう、オヤジ連中ばかりが出たがるのかしら…。」 胸を張ったブライに、マーニャはひそかにため息をついた。 ブライは運が悪かった。 最前列に酔っ払いの集団がいて、舞台に出たブライにブーイングの嵐をかませたのだ。 「かえれ!かえれ!」「ブーブー!」 「…っこの、無礼者!」 ブライの杖の先から氷の柱がほとばしった。 「何考えてるのよ、じーさん!ヒャドでお客さんなぎ倒すなんて、この劇場が閉鎖になっちゃったらどうすんのよ!」 怒り心頭、といった感じのマーニャだったが、ブライは全く聞いていなかった。 「このブライ、こんなはずかしめを受けたのは、初めてですぞ!」 「ちょっと、人の話しを聞きなさいよー!!」 「姉さん落ち着いて!ここでドラゴラムはだめよ!!」 うなだれるトルネコ、怒りに体を震わすブライを遠くから見守る若者3人組。 「ねえ、クリフト、やっぱり私が大岩割を・・・。」 「だよなあ、アリーナ。」 「だめですったら、だめです!」 そこへ、先ほどから部屋の隅で静かに座っていたライアンが声をかけた。 「どうだろう、クリフト殿。我々2人で剣舞を踊るというのは。」 「けんまい…?何それ?」 はてなマークを顔に貼り付けた勇者に、クリフトが説明した。 「剣を使って行なう舞のことですよ。『けんぶ』とも言います。 …そうですね…私の剣舞は、本来、神に捧げるものですが…。」 クリフトは、顎に手をあてて考えんでいたが、ややするとライアンに向き直った。 「…神学的な解釈の部分を除けば、こちらで踊っても許されるかと思います。」 よし、とライアンが、腰を上げながら言った。 「拙者の方は、宮廷の典礼用のものだが、何、基本は変わらん。 拙者とクリフト殿なら、ぶっつけ本番でも大丈夫だろう。」 ライアンとクリフトは、多少の打ち合わせを行なったのみで、舞台に上がった。 筋骨隆々の堂々たる戦士と、すらりと端正な神官の取り合わせに観客は沸いた。 「おお!新顔だー!」「なんかやれー!」「とりあえず脱いどけ!」 盛り上がる観客の声援とやじに、ライアンは顔をしかめた。 「男に向かって脱げとは、今日の客は趣味が悪すぎる。」 「仕方ありません、はじめましょう、ライアンさん。」 2人は剣を抜くと、切っ先を合わせた。 演技が始まると、観客は、2人の息のあった舞に釘付けになった。 ライアンは猛々しく直線的な動きで、迫力のある太刀筋を残し、クリフトの優美で繊細な剣の動きが、柔らかくそれに絡む。 「わー、クリフト達、かっこいいね!ソロ!」 舞台裾でこれを見ていたアリーナは、隣の勇者に囁いた。 勇者は目を輝かせて2人の演技に見入っていたが、次第にそわそわし始め、とうとう、「俺もやりたーーい!」と、剣をひっつかむと舞台に飛び出した。 クリフトは、いきなり飛び出てきた勇者に、ぎょっと目を見張った。 一瞬注意が逸れたところに、ライアンの剣が斜め上から舞い降りてきた。 クリフトは、はっと体をそらせたが、間に合わない。 ライアンの剣の切っ先が、神官服を斜めに切り裂いた。 ざすっ。 アリーナの悲鳴が上がった。 ライアンは、剣を振り下ろした格好のまま、固まっていた。 クリフトも、体をのけぞらせた姿勢のまま、動かない。 勇者は、蒼白な顔で凍りついたように棒立ちになっていた。 観客席は静まり返り、咳一つ聞こえてこない。 そのとき。 ばさ。 クリフトの肩から神官服が滑り落ちた。 クリフトは、ぎりぎりのところでライアンの刀をかわしていた。 並みの人間であれば、完全に袈裟切りになっていたところだ。 しかし、体さえ傷つかなかったものの、ライアンの鋭い剣先は、クリフトの服を右肩から左裾にかけて、アンダーシャツに届くまで、ざっくりと切り破っていた。 神官服は重い。 切られた神官服は、その重みに耐えかね、アンダーシャツもろともクリフトの体を滑り落ち、クリフトは、片肌脱ぎの状態になった。 「!!!!」 観客席はどよめいた。 「なななっ!」 クリフトはパニックになって服をかき集めようとしたが、そのとき、アリーナの心配そうな声が耳に入った。 「クリフト、大丈夫!?」 振り向くと、アリーナが今にも舞台裾から飛び出しそうにしている。 それを見て、クリフトの頭は一瞬にして冷えた。 このまま、クリフト達が演技途中で引っ込めば、一行の目ぼしい演し物は、あとはアリーナの大岩割くらいしか残っていない。 クリフトは、ぐっと歯を食いしばると、ライアンに言った。 「ライアンさん、このまま続けましょう!」 …勇者はこっそり舞台裏に消えていた。 「…なーんか、客が前よりエキサイトしてない?」 再開した演技を、客席の後方で見ていたマーニャがミネアに尋ねた。 「そりゃあやっぱり、ストイックな神官服からのチラ見せっていうのは万人共通のそそるコンセプトですもの♪」 クリフトさんお肌も綺麗だし、と嬉しそうに言うミネアに 「…ミネア、あんたって一体…。」 マーニャは呆れた視線を向けたのだった。 2人の演技が終わった後は、拍手喝采、アンコールの嵐が鳴り止まなかった。 座長は2人を絶賛し、クリフトとライアンに対し、旅が終わったら是非戻ってきて劇団に参加して欲しいと言ったが、 毛布を体に巻きつけたクリフトは、涙目で答えた。 「二度とゴメンですっ。私は人前で踊ったり脱いだりするのはイヤですよ。」 この後しばらくは、勇者はクリフトに口を聞いてもらえなかったらしい。
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クリフトのアリーナへの想いはPart5 89 :【姫さまの手作りケーキ】 ◆cbox66Yxk6 :2006/04/27(木) 12 22 57 ID By/mwePC0 今年もこの日がやってきた。 クリフトは神官衣の襟を正すと、鏡の中の自分に向けて叱咤する。 「大丈夫だ、クリフト。あの辛い旅でさえ切り抜けてきたおまえじゃないか。大丈夫。おまえは十分強い。大丈夫・・・」 なにやら面妖なことを呟き続ける不審神官だったが、これは致し方ないことだったのかもしれない。 今日は、クリフトの誕生日。そしてそれはアリーナの手作りケーキが届く日。 毎年毎年、クリフトはこの日を複雑な思いで迎えていた。誕生日ということもあってか、この日ばかりは王もブライも、アリーナがクリフトとふたりっきりで過ごすことを黙認してくれている節がある。それは正直嬉しい。邪魔が入らず、愛しい者と過ごせる時間はとても貴重だから。 ただ、同時に試練の日でもある。それはアリーナの手作りケーキ。過去これを食べて無事でいられたためしがない。大抵はそのあまりのまずさに「失神」してしまうのだ。 それをアリーナは喜びのあまり気を失った、もしくは疲れのたまっているクリフトが眠ってしまったと思っているようだが、断じてそれはない。 あの気の遠くなるような味、否、実際に気が遠くなるのだが、どうしたらあのような味になるのか。世界最大の謎とされてきた「進化の秘法」が明らかとなった今でさえクリフトの前に立ちはだかる大いなる謎である。 だが・・・。 「今年こそは・・・今年こそは耐え抜いてみせる!」 そして今年こそは姫様と・・・。 (らぶらぶな時間を過ごしてみせる!!) 神官にあるまじき煩悩といえるかもしれないが、若い男としてこの願望は普通だったのかもしれない。 クリフトが鼻息荒く気合を入れなおしていると、部屋の扉が小さく鳴っていまだエプロン姿のアリーナが姿をみせた。手には少し形の崩れたお手製ケーキ。 クリフトは湧き上がる恐怖心を無理矢理煩悩で押し込め、笑顔で出迎える。 「ようこそおいでくださいました」 クリフトの運命や如何に!! 90 :【姫さまの手作りケーキ】 ◆cbox66Yxk6 :2006/04/27(木) 12 24 39 ID By/mwePC0 (バージョン・1) 「おいしゅうございました」 さりげなく紅茶でケーキの塊を流し込んだクリフトが、青ざめた顔で笑う。胃が悲鳴をあげ、背筋をいやな汗が伝うのを自覚していたが、食べてしまったものは仕方がない。あとは運を天に任せるのみだ。食前に飲んだパデキアの効力に期待しつつ、クリフトは早急に事を推し進めようとする。 「姫様・・・」 真摯な顔を作り、アリーナの手を取る。いざらぶらぶタイムへと意気込んだ矢先、世界が反転するようなめまいが襲ってきた。 思わずよろけたクリフトは弾みでアリーナを押し倒してしまう。 「え、ちょっと、クリフトったら」 展開早すぎ!! 焦るアリーナだったが、クリフトの身体が不自然に弛緩するのを感じ、恐る恐る目を開けた。 と、そこには綺麗な青い瞳を伏せたクリフトの顔。 「やだぁ、また寝ちゃったの?」 毎年毎年、仕方のない人ね。 不満半分といった表情で呟いたアリーナだったが、ごそごそとクリフトの身体の下から這い出すと、人形のように端正なクリフトの顔をじっと眺めた。 「でも、あなたの寝顔を見るのも悪くないわ」 好きよ、クリフト。 アリーナは顔をそっと近づけると、己の唇をクリフトのそれに重ね合わせた。 91 :【姫さまの手作りケーキ】 ◆cbox66Yxk6 :2006/04/27(木) 12 25 23 ID By/mwePC0 (バージョン・2) ややいびつなケーキを切り分け、意を決して口に運んだ瞬間、クリフトは目を瞠った。 「おいしい・・・」 それはまさに奇跡。アリーナのケーキはいままで食べたどんなケーキよりおいしかった。 クリフトが思わず呟いた賛辞にアリーナは、少し照れたように笑った。 「実はね、今日は料理長にアドバイスしてもらいながら作ったの」 いつも焦がしちゃってたから。 いままでの作品の数々を思い出したのか、アリーナが少し遠い目をした。そして目の前のケーキに視線を戻す。 「相変わらず、形は変だけどね」 来年はもっと上手に作るから。 はにかむアリーナにクリフトの胸が高鳴った。 「姫様」 思わずアリーナの手を握り、距離を詰める。 いつもと違うクリフトの様子に戸惑ったアリーナだったが、真摯な瞳にまっすぐに応える。 「姫様・・・私は幸せ者です」 僅かに瞳を潤ませながら呟くクリフトに、「いやね、大げさよ」と笑ったアリーナだったが、クリフトの胸に頭をもたれさせると緋色の瞳を伏せた。 「料理長が教えてくれたの。ケーキにいろいろなものを入れる必要はありません、て」 必要なのは、相手に対する愛情だけでいい、と。 「だからね、あのケーキ」 私の愛情純度100%よ。 囁かれた言葉に、クリフトは嬉しさのあまり気が遠くなった。
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レベル制限B地区 パック:滅びの呪文詠唱(P) 03136426 永続魔法 フィールド上に表側表示で存在するレベル4以上のモンスターは全て守備表示になる。 ホルスの黒炎竜 LV6やサイレント・ソードマン LV5、 絶対魔法禁止区域発動下における通常モンスター等には通用せず、すり抜けて攻撃される。 このカードだけでなく、グラヴィティ・バインド-超重力の網-、平和の使者をすり抜ける黒蠍-罠はずしのクリフには要注意。その他、お注射天使リリー、不意打ち又佐にも注意が必要になる。これらの★3以下攻撃力1500未満のモンスターには、光の護封壁を使用することでシャットアウトできる。
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クリフトとアリーナへの想いはPart9 207 名前 おかわりをどうぞ ◆e.sLpeggy21/5  Mail sage 投稿日 2008/06/10(火) 22 26 34 ID zYTHveF10 「クリフト、おかわり!」 旅の途中、焚き火を囲んでの夕食。 空になったシチューの皿を突き出すアリーナに、勇者が目を剥いた。 「おいおい、アリーナ、まだ食べるのかよ~。 全く、そのちっこい体のどこにそんなに入るんだ?」 「ちっこいは余計よ!」 2人のやり取りに苦笑しながら、クリフトがアリーナの皿にシチューを注ぐ。 「はい、姫様。これで最後ですよ。余りお召しになるとお腹を壊しますからね。」 「えー…。じゃあ、大事に食べよ。」 アリーナは口を尖らせながら、ゆっくりとスプーンを動かした。 そうすると、とたんに優雅な雰囲気が漂うから不思議なものである。 「しっかし、ホントに良く食べるわね~。城でもそんなに食べてたの?」 マーニャが、こちらはシチューはそこそこに、酒のグラスを傾けながら笑った。 アリーナが、行儀よく口をナプキンで軽く叩いてから答えた。 「そうでもないかな。お城の食事はこんなに美味しくなかったもの。」 「え?だって専門のシェフとかいるんでしょ?」 「うーん、そうだけど…クリフトの作るご飯の方が、美味しい。」 「あっらー、聞いた?クリフト~!! 専門家の料理より、あんたの料理の方が良いってよ!」 ここぞとばかりにマーニャがからかいの言葉を入れる。 クリフトは真っ赤になった。 「そ、それは、単に、お城よりも旅をしている方がお体を動かされますし、 空気が良いから美味しく感じられるだけであって…。」 「こら、クリフトやめんか、こっちに跳ねる。」 両手でおたまを持って鍋をガシャガシャ掻き回し始めたクリフトに、 ブライが顔をしかめた。 「そんなことないよー、クリフトのご飯、本当に美味しいよ? お城に戻っても、ずっとクリフトのご飯が食べられたら良いのに。」 アリーナの発言に、その場の空気が固まった。 クリフトも、両手でおたまを握り締めたまま硬直している。 しかし、当のアリーナは、周囲の変化に全く気がついていないようで、 シチューを一口食べると「ほら、美味しーv」と満面の笑みを浮かべた。 ようやく金縛りが解けた勇者が小さい声でマーニャに囁いた。 「なあ、さっきのアリーナの発言って…、 いわゆる『君の作ったみそ汁が飲みたい』って奴じゃねーの?」 「まあ、客観的にはそう聞こえるけど、ねぇ…。」 2人はクリフトを同情の目で見た。 クリフトは、いまだ硬直したままだ。 「さすがに気の毒過ぎて、からかう気も起きないわ…。」 マーニャはため息をついた。 しかし、パーティにはもう1人、空気の読めない人間がいたのであった。 「いやはや、アリーナ姫のお言葉、まるでプロポーズのようですな。 わっはっはっは!」 ライアンは肩をゆすると、ヒゲを震わせて笑った。 「しかし、料理も上手いし手先も器用、クリフト殿だったら 拙者も嫁に欲しいくらいだのう。はっはっは!」 どうやら、ライアンにしては珍しく、酔っているらしい。 楽しげに笑うライアンに、場はますます固まった。 「…とりあえず、メラゾーマかましていいかしら…。」 マーニャの呟きに、周囲の連中が否とも応とも答えなかったのは、 どちらと取って良いものか。 そこにアリーナが口を出した。 「だめよー、ライアンの嫁だなんて。」 そして頬を膨らませたまま、クリフトを振り返った。 「ねえ、クリフト?」 クリフトは握り締めていたおたまを鍋の中に落とすと 「は、はい、いえ、私は神に仕える身ですから、結婚などと…」 と、しどろもどろに語り始めた。 「…それ以前に、ライアンさんの嫁ってところに突っ込めよ…。」 勇者が、はーっとため息をつきながら額に手を添えた。 と、アリーナが再び声を上げた。 「あれ?ライアンさん寝ちゃった?」 ライアンは、いつの間にか後ろに倒れて高いびきをかいていた。 「…ミネア、あんたラリホーかけたでしょ。」 「メラゾーマよりは穏便ですでしょ。」 姉妹のひそひそ声はアリーナには届かなかったようだ。 「なーんだ、きちんと釘を刺しておこうと思ったのに。 クリフトは、ずっとサントハイムにいるんだって、ね?」 無邪気に笑うアリーナに、再び姉妹がひそひそ声を交わした。 「…ミネア、あんたアリーナにもラリホーかけときなさいよ。」 「それは嫌です、クリフトさんに恨まれちゃいますもの。」 クリフトは、アリーナの笑顔に弱々しい笑みを返した。 「ええ…そうですね、私はサントサイムの臣下ですから…。」 そして、鍋の中からおたまを救い出し、しばらく鍋をかき回していたが やがて顔をあげて微笑んだ。 「姫様…今日は特別です。あと一杯だけ召し上がりますか?」 「わ、いいの!?やった、ありがとう、クリフト!」 「…姫様には、たくさん私の料理を食べていただきたいですから。」 そう言うと、クリフトは、誰にも聞こえないくらいの小さい声で付け加えた。 「…せめて、こうやって、料理をお作りすることができる間に…。」
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◆ 登場人物一覧 ルーガルー戦記 1 2 3 4 5 6 オズワルド ステファン ルートヴィヒ フェリクス ウェルシュ ゲルト フィオン ハンス ゾフィヤ クレメンス エディ アプサラス ベルティルデ シメオン ドロシー ギィ ジル レオンハルト ドロシー ディーク シュテラ リヒャルト ヴェルナー グレートヒェン カレル バルタザール カスパル ミヒャエル ユーリエ アレクシス コンラート ユーリエ コリドラス シェイ ダーフィト コンラート ノトカー カーク カーク マーティン テオドール フランツ ハンス ゾフィヤ グレートヒェン フィオン ルートヴィヒ シロウ サシャ ツィスカ ギィ ベルティルデ イングリッド リエヴル トール リヒャルト ジークムント シュテラ ライナー ラートリー テオドール ヴィクトリア ミヒャエル オクタヴィア カサンドラ トーマス カサンドラ ゲオルグ☆ アプサラス ゲオルグ タイガ ロー・シェン イングリッド ヴェルナー リーゼロッテ ロヴィン ローレル ノーラ アデル アイリ ユーリエ ノトカー マリエッタ ヒース ローズマリー ジェフロイ ナイジェル☆ エリオット ナネッテ エリオット☆ スピンオフ他 塔 宝島 君といつまでも 女神候補生A 女神候補生B 春の天使争奪戦 士官学校 ギィ キアラ リーゼロッテ アイリ シュテラ ツェーザル アプサラス カレル カサンドラ ダーフィト ディーク カーク ヴェルナー ミヒャエル エレオノーレ コンラート ナイジェル ゲルト ロヴィン ベルティルデ サシャ ナネッテ シェイ サシャ ダーフィト コンスタンツェ アイリ エディ コンラート ヒンメル ゲルト ジル テオドール ライナー イェンス オズワルド イングリッド アデル シルキー ヒース タイガ オズワルド フィオン カシム ジークムント ジークムント ウェルシュ イングリッド ベルティルデ ベネディクト ジークムント オズワルド フィオン ギィ エディ トール トール シュテラ シロウ フェリクス ユーリエ ウェルシュ ノトカー ラヴィ タチアナ マチス アレクシス リヒャルト クリフ ドロシー ノトカー クラリッサ☆ イルマ オズワルド ゾフィヤ ジェフロイ ラヴィ アヴェ ツェーザル☆ エレオノーレ ギィ ローザミスティカ☆ ジークムント ヒンメル☆ マリエッタ ラヴィ☆ ロヴィン ドロシー エリオット☆ コンスタンツェ カサンドラ シュテラ ヴィクトリア ナネッテ セルウィン メルヒオル めりー☆ ローゼンハイム☆ ※☆マークつきのキャラはNPC ※並び順は各村名簿順 名前順一覧 アイリ オズワルド コンスタンツェ ダーフィト バルタザール ユーリエ アヴェ カーク コンラート タイガ ハンス ラートリー アデル カサンドラ サシャ タチアナ ヒース ライナー アプサラス カシム ジークムント ツィスカ ヒンメル ラヴィ アレクシス カスパル シェイ ツェーザル フィオン リーゼロッテ イェンス カレル ジェフロイ ディーク フェリクス リエヴル イルマ キアラ シメオン テオドール フランツ リヒャルト イングリッド ギィ シュテラ トーマス ベネディクト ルートヴィヒ ヴィクトリア クリフ ジル トール ベルティルデ レオンハルト ウェルシュ グレートヒェン シルキー ドロシー マーティン ロヴィン ヴェルナー クレメンス シロウ ナイジェル マチス ロー・シェン エディ ゲオルグ ステファン ナネッテ マリエッタ ローズマリー エレオノーレ ゲルト セルウィン ノーラ ミヒャエル ローレル オクタヴィア コリドラス ゾフィヤ ノトカー メルヒオル ※総勢83名(除くNPC) ※重複を含むと、176名 作成・ねこみち 2012/11
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クリフトのアリーナの想いはPart12.5 815 3 名前 1/2 Mail sage 投稿日 2013/03/06(水) 19 56 32.53 ID a+6ZngR80 手にした本を机に勢いよく置くと、静かな深い青の瞳をアリーナに向けた。 「ああ、分かりました。もう私めは姫様のお付きに値する人間でございません。お暇を頂きとうございます」 その日はなぜかクリフトは、いろいろ心労がかさみ苛立っていた。そしてその苛立ちの果てに、決して普段なら口に出さない一言をアリーナに言い放った。 「別にいいわよ。クリフトなんか、ドコでも行けばいいのよ」 売り言葉に買い言葉。アリーナも勢いで、クリフトに言い返していた。 「では、好きにさせて頂きます」 恭しくアリーナの方に頭を深々と下げて、クリフトは部屋を退出して、扉を閉めた。 「イーだ」 閉じられた扉に向けて、クリフトが置いていった本を一冊、アリーナは投げた。投げた本は扉にぶつかり派手な音を立て落ちた。そしてアリーナは扉を開くのを膝を抱えて待っていたが、何時までも開かない扉に寂しそうに見つめていた。 「うーん」 大木の枝の上でアリーナは大きく伸びをした。ブライは長い間木の下で小言をアリーナに言っていたが、諦めたのか数刻前にいなくなっていた。普段であれば、クリフトが諦めず、まだクドクドと言っている筈だったが、あの事以来、アリーナの前には現れていなかった。 口うるさいクリフトがいなくなれば、清々している筈の自分の心は、何故か悶々としていた。 (なんなのよ、これは) 理由は何となく分かっていた。でもどうすればいいかは分からなかった。 「もう、クリフトのバカ」 木の上で呟き、顔を上げると、目の前に窓を隔てた廊下にその当事者が、ハッとした表情を浮かべて、アリーナを見つめていた。そしてバツが悪そうに、口元に手をやりながら、立ち去ろうとしていた。 「待って」 そう口にした時は木の枝を蹴って、窓を蹴破っていた。弾けるような音と共に硝子が陽の光の中で煌めいた。 「姫様!! 何て無茶を為されるのですか。万が一、姫様に何かありましたら――」 手にした本を落とした事にも気づかずに、クリフトは駆け寄ってくるなり、いつものようにお小言を始めた。決して甘い言葉じゃないけれど、私の耳をくすぐった。 「うん、無茶よね。今度からは気をつけるわ」 お小言を止める為に、私はクリフトの背中に手を回した。 「ひ~め~さ~ま~」 震えるクリフトの声に、私は顔を上げようとした。でもさせまいとするクリフトの両手に阻まれた。手の間から見える顔は赤色に染まっていた。 「申し訳ありません。お暇を頂いた私が差し出がましい事を申し上げました事をお詫び致します」 真面目過ぎるクリフトの言葉に私はため息を吐いた。 「うーん、私はドコにでも行けばいいと言ったけど? クリフトは私の傍にいたくないの」 「そういう事はありません!! 」 「そう、じゃ。ドコでも行ってもいいわよ」 「ええ、姫様の行く所、ドコまでもついて行きます」 確約を取り付けた私はクリフトを自分の腕から解放した。 その時、私は今まで違う感情が奥底から湧き上がっている感覚を覚え、戸惑った。 クリフトの怒る姿、回りくどい言い草のお小言までも愛おしいと感じてしまったのは始まりかもしれない。 「ありがとう。これからも悲しませたり怒らせてしまうかもしれないけど、着いて来てね」 「ええ、私めの命にかけましても」
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クリフトとアリーナへの想いはPart.9 934 名前 737  Mail sage 投稿日 2009/04/26(日) 13 46 45 ID zl3V/Yqy0 この喧嘩ネタは時の砂をオチに使いたかったのですが、 ケンカに発展しなくて止めたバージョンがあります。 ↓分岐ということで読んでください。 「なんでそこで勇者の名前が出てくるのよ? 勇者は関係ないじゃない!」 「いいえ!関係ありますともっ!!」 「何の関係があるって言うのよ!?」 「姫様は無神経すぎるんですっ! 私の気持ちなんてちっとも分かって下さらない!!」 「クリフトの気持ちって何よ!?」 「私が姫様のことを愛しているということですっ!!」 クリフトはハッとする。アリーナはその大きな瞳をさらに丸々とさせていた。 アリーナは頬を紅く染めることは全くなく、 完全に脳裏にない不意打ちの言葉をくらったような表情であった。 クリフトは自らの発言が時期尚早であったと嘆いた。 「……………………………。」 アリーナのその表情と微妙な沈黙に耐え切れなくなったクリフトは 思わず先ほど手に入れた“時の砂”を振りかざした。 砂がさらさらと舞い、時がぐるぐると巻き戻されてゆく。 「平気よ。クリフトはマーニャの心配でもしてればいいじゃない!」 アリーナが先ほどと全く同じ言葉を紡ぐ。 クリフトは時が戻ったのだと自覚した。 言葉を選んでから口を開く。 「………いいえ。私はアリーナ姫が一番心配なのです。」 「何よ、さっきはマーニャと二人で楽しそうに―――――」 アリーナはクリフトを見る。 少し悲しそうな憂いを含んだクリフトの瞳にアリーナは言葉を失った。 「…………………………。」 二人は無言で見つめ合う。 「うーん……。クリフトが反論しないからケンカにならないわねぇ。」 少し離れたところで二人の様子を見ているマーニャが呟いた。 「ま、アリーナが一応嫉妬らしき態度を見せたし、まぁいっか。」 「ちっともよくねぇよ。」 マーニャの側にいた勇者が反論した。 「あのさぁ、こういう命賭けてる場所では もうちょっと真面目にやってくれない?」 「あら、あたしはいたって真面目よ。 “真面目に不真面目”なのがあたしのモットーなの!」 「下らない屁理屈言ってんじゃねーよ!」 勇者とマーニャは火花を散らして睨みあう。 無言で見つめ合うクリフトとアリーナ。 その神妙な雰囲気にアリーナは耐えきれなくなったのか、 アリーナが沈黙を破った。 「ま、まぁ海賊の宝も無事見つけたし、一件落着ね! 勇者、もう帰りましょう!」 アリーナは勇者とマーニャの元へ駆けていった。 その後姿をクリフトはじっと眺める。 勇者と会話をするアリーナ。 二人には身分など関係なく、いたって自然体であった。 自分も勇者のようにアリーナと出会えていたら、 あのように対等に接することが出来ていたんだろうか。 クリフトは悲しくなった。 「おーい、クリフト!リレミトで帰るぞ~!」 うつむいた顔を上げると、勇者が笑顔でこちらを見ていた。 クリフトが駆け寄ると、勇者はつい先ほど手に入れたはぐれメタルの剣を差し出した。 「クリフト、これお前が使えよ。ずっとマグマの杖じゃ飽きるだろ?」 「勇者さんはいいのですか?」 「オレはほら、天空の剣 待ちだから。」 勇者からはぐれメタルの剣を受け取る。最強の攻撃力の剣だ。 クリフトはなんだかこれが勇者からのエールのような気がした。 「ありがとうございます…………頑張ります。」 (これで少しは肉弾戦がマシになって、ザラキの頻度が減ればいいけど……。) 勇者の本心をクリフトは知る由もなかった――――。 《おわり》
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本当はクリアリが好き 440 名前が無い@ただの名無しのようだ :02/10/16 01 11 ID vLrfr6pI ここはハバリアの宿の一室、女のおしゃべりの声が聞こえます。 先日パーティーに加わったアリーナ姫も楽しそうに参加しております。 女性が4人もそろえば話題も色めいたことになるのは当然で・・・・ 「・・・んでアリーナはどんな男がタイプなのよ?」 と聞くのはこの手の話にノリノリなマーニャ姐さん。 「・・・うーん、強い人かな!?あんまり考えたことないな~」と話が自分に振られると困った様子の姫。 「アリーナさんこういうこと苦手そうね」とミネアさんが微笑みます。 「うん、同年代の遊び相手はクリフトしかいなかったし」と姫も微笑かえします。 「そのクリフトは?」と勇者ちゃんが興味深げに聞きます。 「クックリフト!?」アリーナ姫は予想外の質問に少々動揺した様子。 「あー、クリフトいいじゃん。頭いいし、顔もそこそこだし」と姫の動揺を察したマーニャ。 「常識ありますしね」と続くミネア。 「やさしいしね~」と追い討ちをかける勇者。 「いやっクリフトとは幼馴染でずっと一緒にいるから、何ていうかほら・・・」と否定する姫、なぜか顔が少々赤くなっています。 「やさしいしね~」と追い討ちをかける勇者ちゃん。 「いやっクリフトとは幼馴染でずっと一緒にいるから、何ていうかほら・・・」と否定する姫、なぜか顔が少々赤くなっています。 「あっそうなの?んじゃあたしクリフトの恋人に立候補しちゃおうかな~道中長そうだし」とマーニャ。 「姉さん!・・・でもクリフトさんなら悪くないわね~」とミネア。 「ズルーい、私も参戦する~」と勇者ちゃん。 3人がからかいモードに入ったとは知らずにアリーナ姫は焦り始めました。 (クリフトに恋人が出来ようが私には関係ないわっ・・・でも・・・) 「あれ!?どしたの?アリーナ。黙りこくちゃって、もしかしてクリフトのこと・・・」と横目な勇者ちゃん。 「んなことないっ!でもみんなクリフトはやめといたほうがいいとおもう、うん。強くないしっ」と言い訳姫。 「あー私は男に強さなんて求めないわ。んでもクリフトって結構強いと思うわ、こないだの戦闘もいいザキっぷりだったし~」とにやにやマーニャ。 「そっそれにクリフト、高所恐怖症だし。塔では涙ぐんでたし」とタジタジ姫。 「高いところなんてそう行くものじゃないですし」とさらりとミネア。 「えーっと、水も怖いって・・・・」と冷や汗姫。 「別に問題ないでしょ、そのくらい」とにっこり勇者ちゃん。 「そっそもそも頭かたいしこうゆうこと苦手なはずよ」と自分のことを棚にあげ必死な姫。 「浮気しなくていいじゃない」ととどめのマーニャ、2人も頷きます。 「・・・・とっとにかくクリフトはやめといたほうがいいと思うわ。そう、今日は疲れたし明日も早いんでしょ、もう寝よ」 とアリーナ姫はそそくさと逃げるようにベットに潜りこみました。 それを見ながら3人はにんまりと笑ったのでした・・・・・ 翌日から・・・ 「いったーい、クリフト~ホイミして」 「はい、勇者さん大丈夫ですか?」 (ホイミできるのになんで自分で治さないのよっ) 「クリフトさん~、これ運んでもらえますか?重くって」 「馬車の中へでいいんですね?ミネアさん」 (おいっ!さっきその荷物片手でもってなかったっけ?) 「クリフト~~」 「わわっマーニャさんっ!!抱きつかないでくださいっ」 (・・・・・・・!!!) とアリーナ姫をやきもきさせる3人のクリフトくんへの露骨なアプローチ(ただしアリーナ姫の前のみ)が始まったのでありました。 ついでいうとクリフトくん、なぜかスタンシアラ、滝の流れる洞窟、世界樹、天空への塔といった高いところ、水のあるところは必ずスタメンにさせられたのでした。 (おしまい)
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日記/2011年02月22日/遊戯王OCG 【ナチュル】 2011-02-23 残ったカードで…ナチュル組みました。 【デッキ(40)】 【モンスター(21)】 《ナチュル・チェリー》×3 《ナチュル・コスモスビート》×3 《ナチュル・モスキート》×3 《ナチュル・ビーンズ》×3 《ナチュル・パンプキン》×3 《ナチュル・クリフ》×3 《巨大ネズミ》×3 【魔法(10)】 《地獄の暴走召喚》×3 《サイクロン》×2 《ハリケーン》×1 《強制転移》×3 《死者蘇生》×1 【罠(9)】 《神の宣告》×1 《リビングデッドの呼び声》×1 《リミット・リバース》×3 《激流葬》×1 《砂塵の大竜巻》×3 【エクストラデッキ(15)】 《ナチュル・ビースト》×2 《ナチュル・パルキオン》×2 《ナチュル・ランドオルス》×1 《ナチュル・ガオドレイク》×1 《アームズ・エイド》×1 《A・O・J カタストル》×1 《氷結界の龍 ブリューナク》×1 《ブラック・ローズ・ドラゴン》×1 《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》×1 《スターダスト・ドラゴン》×1 《ギガンテック・ファイター》×1 《スクラップ・ドラゴン》×1 《氷結界の龍 トリシューラ》×1 《ナチュル・モスキート》を置いて自爆特攻するデッキですね。 《地獄の暴走召喚》か《リミット・リバース》が来ないと多分勝てないんじゃないかなぁと。その程度のものです。 《ナチュル・チェリー》・《ナチュル・ビーンズ》・《ナチュル・クリフ》・《巨大ネズミ》を入れているので 通常戦闘においては悪くないんですが、それが通用しないと…半分終了のお知らせです。 《切り込み隊長》・《地霊術-「鉄」》辺りで特殊召喚手段をもう少し増やしても良いなぁ等と思いつつ。 ナチュルを使ってみて思うのは、ドローソースの無いテーマデッキはダメだなぁと。 ある程度効果でドローしないと引き依存の運ゲーにしかならないです。 このデッキももう少しロック力が高ければねぇ。 やはり召喚を無効化する《ナチュル・フェニックス》的なものが出ないと勝てないかな。 初手に《ナチュル・ビースト》と《ナチュル・パルキオン》を並べても効果モンスターに簡単に割られるんで、 《ナチュル・ランドオルス》を出すと今度は手札に魔法カードが足りないという。 ナチュルにもワームのアレみたいな優良サポートがピンでも出て欲しいですね。シンクロさんの一部を切り取った魔法・罠も絵的には好きですけど。 名前 コメント ◇◆前へ/次へ/目次へ