約 632,048 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/102.html
人里から遠く離れた小さな山に、多くのゆっくりが暮らす森がある。 日当たりの良い広場があり、きれいな川が流れ、木の実を付ける広葉樹で構成されており、 小鳥は囀り、げっ歯類以上の大きさの哺乳類はおらず、妖怪も人間も足を踏み入れないというそこは、ゆっくり達の理想郷であった。 そんな美しい森に、とても生存本能の強いゆっくりぱちゅりーが居た。 他のゆっくりぱちゅりーは自らの運命…先天的に病弱で、長生きする事は叶わない自らの体質を受け入れている。 だが流石にこのゆっちゅりーは格が違った。自らの運命を自らの手で(ゆっくりなので手は無いが)変えようと強く思っていた。 ある日ゆちゅりーが短時間の散歩を楽しんでいると、木の洞に詰まって身動きが取れなくなっているゆっくりまりさがいた。 ふと、ゆちゅりーの拙い思考回路があるアイデアを生み出した。 まりさ種はゆっくり達の中でも殊に活動的だ。その点では、ゆちゅりーの理想と言ってもいい。 そのゆまりさの健康で活動的な肉体を得れば、自分もああなれるのではないか。 無論、肉体を手に入れると言っても脳を移植する訳ではない。元よりゆっくりにそのような知識は無い。 あるのは本能だけ。故に、他者の肉体を得る方法はただ一つ。―――食べる事だけだ。 ゆちゅりーは虚ろな表情で、ゆっくりとゆまりさににじり寄る。 「ゆっ!たすけてくれるの!!?ゆっくりひっぱってね!!!」 「…………」 ゆちゅりーは答えない。というか、聞こえていない。今のゆちゅりーにあるのは強烈なまでの食欲だけだ。 「ど、どうしたの!!?さっさとたすけてね!!!」 「…………」 偶然にも周囲にゆっくりの姿は無い。まるでゆっくりの神があるいは悪魔がセッティングしたかのような状況である。 もうゆまりさの体温すら感じられる程に肉薄している。耳障りな雑音も聞こえない。 ぶよぶよと震える皮は美味そうとしか考えられない。 普段は友愛を喚起させられる体臭も今では食欲をそそる香りだ。 肌身離さずかぶっている帽子や、美しい金色の髪に至るまでが御馳走に見える。 そして、 「ゆ゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!や゛め゛で!!!や゛め゛でよ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 思い切り良く頬に食らいついた。その瞬間、口の中をかつて無いほどの至福が駆け抜けた。 ―――すごい。こんなにまりさがおいしいなんて。ゆめみたい。 全身が四散しそうな程衝撃的な味は、ゆちゅりーを虜にした。 一心不乱にゆまりさを喰らう。否、このゆちゅりーはゆまりさをただ食っているのではない。愛しているのだ。 今のゆちゅりーの最大限の愛情表現こそがこの共食いという最も恐るべき行為だった。 「う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!どうじで!どうじでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 一口齧る毎に、一声絶叫される毎に、ゆちゅりーは心身共に活力に満ちて行くのを実感していた。 このような感覚は生まれて初めてだった。母の蔓に生まれ、目を覚ました時ですらここまでの爽快感は無かった。 「ぐがが……お゛ぼぉ゛……ゆ゛……ゆ゛ぐぐ……ゆ゛っぐり゛ざぜでね゛!!!!!」 それがこのゆまりさの最期の叫びだった。後はただゆまりさの残骸を余さず食う音だけが響いていた。 「むきゅぅーん……」 ゆちゅりーは涙した。一時の激欲に身を任せて友を食べてしまった自責の念で。 もう二度と自分の知らない場所にまで連れて行ってくれた相手と会えない悲しみで。 そして、身も心もかつてない程のゆっくりに満ち溢れている喜びで。 もっと。もっとこのエネルギーが欲しい。友を喪うのは悲しいけれど、それを遥かに上回る喜びが得られるのなら。 「だから……!(福山潤の声で)」 翌日の朝、ゆちゅりーは森の中を全速力で駆け回っていた。恐らくゆっくりまりさと同等の速度だろう。 ゆちゅりーは感動している。速く走れるとはこんなに素晴らしいことなのか。それもこれもまりさと一つになったお陰だ。 もっとだ。もっと食べれば、もっと生きていられる。もっとゆっくりできる。そう、食えば食う程―――強くなる。 ……新たな餌を、発見した。 数年後、そこにはかつての貧弱さなど微塵も感じさせない力強いゆっちゅりーが居た。 体躯は通常のゆっくりより一回りも二回りも大きく、その眼力に他のゆっくりはただ畏れるしかなかった。 今やゆっくりれみりゃさえもゆっちゅりーには近付かない。 ぱちゅりー種でありながら餌を横取りされたゆっくりれみりゃの群れ十匹を返り討ちにするような怪物に逆らう程、ゆっくりも馬鹿ではないのだ。 そう。今やこのゆっちゅりーはこの森に住まうゆっくり達の王なのである。 好きな時に好きなゆっくりと共にゆっくりし、好きな時に好きなゆっくりを食べる。それが王の在り方だった。 だが、王はこの生活にも飽きてきた。以前とは比較にならない位強大な生命力を得た王にとって、通常のゆっくりでは物足りないのだ。 もっと。もっと大きくて栄養のある餌が欲しい。際限無い欲望を持つという点では、人間の王とゆっくりの王は大差無かった。 決意するのに、そう時間はかからなかった。王はこの楽園を捨て、新天地へ向かう事を決意した。 大丈夫。今の自分は強い。ゆっくりれみりゃやゆっくりフランでさえ自分を恐れて近付かない程に。 どんな敵が現れようと打ち倒し、食べるだけだ。 そうして王は向かった。幻想郷の中心部にある人間の里へ。 森を出て三時間、里の外れの外れにある小さな集落を発見した。 地面にしゃがみ込み何かをしている人間が居る。第一村人発見である。王はこいつが記念すべき最初の人間だと決定した。 射程距離まで音を立てず慎重に移動する。まだだ。あと十ym(ゆっくりメートル)。あと八ym、六ym、よし今だ―――! その瞬間、人間がこちらに気付いた。だが構うものか。後は飛び掛り、組み伏せ、食い尽くすだけなのだから。だが…… 王は知らなかった。ゆっくりと人間など、同じような物だと慢心しきっていた。 世界で最も強かったのはゆっくりフランで、自分はそれ以上の生物なのだと勘違いしきっていたのだ。 そう、つまり―――ゆっくり内での序列がどうあれ、ゆっくりである限り人間の食料に過ぎない事をまるでワカっていなかった。 「ごらー!おらの畑で何しとるだァー!!」 食い物である筈の人間はそう叫ぶと、手に持った棒切れを振りかざし、王の頭に振り下ろした。 ぐしゃり。 決定的な音を、王は確かに聞いた。懐かしい感覚。自分の意識から立ち昇る死の匂い。 嫌だ。せっかく生きられるようになったんだ。こんな絶望から逃げる為に同胞まで食ったんだ。 助けて、助けて、助けてまりさ。れいむ。ありす。にとり。うどんげ。にいと。あやや。てんこ。ちぇん。さくぽ。れみりゃ。フラン。 助けろ!私は、私はお前らの王なんだぞ……!! と、ありえない光景を見た。森に居た多くの仲間達が自分を見ている。ああ、やっぱり助けに来てくれた……皆! 「たすけろ、だってさ」 「おお、いやだいやだ」 大勢の仲間が、嫌な笑顔でこちらを見ていた。 どうしてこんな顔を向けられるんだろう。 どうしてこんな事になってしまったんだろう。 わたしはただ、みんなとゆっくりしたかっただけなのに…… 「おーい母ちゃん。こんなもんが畑を荒らしとったぞー」 「あんらーお前さんそりゃ『ゆっくり』だよぉ。それを里に持っていくと高く売れるんだわー」 「へぇそうかい。そいじゃちょっくら売ってくらぁ。おぅ、種蒔きは代わりにやっといてくれよ」 「そんな事言ってまた遊んでくるんじゃないんだろうね!いやだよこの間みたいに土産とか言ってエロ同人誌五十冊も買って来るのは」 「へっへっへ、もうあんな事はしねえよぉ。んじゃ行って来る」 「全く。気を付けて行って来てなあ!最近は妖怪が出るとか言うけんねー!」 「おおう!妖怪なんざ俺のコブラツイストでボッコボコにしちゃるけん!」 「調子いい事言うんだから。妖怪になんて勝てる訳……おや、何だいこりゃあ」 彼女の足元には文字が刻まれていた。そこはかつての王が息絶えた場所だ。そこにはこう書かれていた。 「ゆっくりしていってね!!!」 DEAD END
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2832.html
この物語は、幻想郷の日常を淡々と描写したものです。過度な期待はしないでください。 原作キャラ崩壊、独自設定、パロディーなどなんでもあり。 以上に留意した上でどうぞ。 パティシエールな小悪魔3 「美味しい! 何ですかこの肉まん?! まるで舌の上でとろけるような感じです!」 一口その肉まんを齧った小悪魔は、そのあまりの柔らかさに驚いた。 明らかに普通のものよりも柔らかく、とろりとした肉汁が溢れそうになっている。 「これは、確かに今まで食べたことがないほど柔らかいわね」 隣で同じように肉まんを食べたパチュリーも、驚いている。 「どうです、中国四千年の味は?」 特製肉まんを賞味する二人に、テーブルの向かいからニコニコしながら声をかけたのは紅美鈴。 紅魔館の門番であり、赤い髪に緑色の中華風衣装を纏った、気を使う程度の力を持つ妖怪である。 ここは紅魔館の門の内側に作られた、門番のための詰所。 美鈴は紅魔館内にも自室を与えられていたのだが、勤務時間中以外も何かと便利なので、この詰所で過ごす事が 多かった。 今日は美鈴にとって、久々の休日であった。 門の外では、代わりの妖精メイドが門番を務めている。 とはいっても、上空を含めた紅魔館の周りには美鈴が気を張り巡らせて、侵入者があった場合にはすぐ判る ようにしていた。 大体、危険な侵入者は殆どが空からやってくる。紅白とか白黒とか。 そういう意味では、外に立っていなくても警備は出来る。 毎日外に立っているのは、紅魔館の示威行為であり、デモンストレーションでもあるのだ。 余談だが、幻想郷の人里では、美鈴の人気は高い。親しみやすい雰囲気の美貌で、紅魔館一のナイスバディー、 その上拳法の達人だが、普段はのんびりとした性格で、礼儀正しく人間にも好意的である。 人里の男どもが勝手にやっている人気投票では、優勝したこともあるくらいだ。そのため、紅魔館には美鈴を 一目拝もうと遠巻きに見に来る里の者や、腕試しと称して殴られに来る者など、様々な人間が現れる。 いつも適当にあしらっているそれらの対応が、危険な侵入者よりよほど多いので、今日はその相手をしなくて いいだけ気楽な様子だった。 閑話休題。 今日のお茶会は、美鈴の招待で、門番詰め所の中の部屋で行われていた。 メニューは、美鈴特製、新作ゆっくりれみりゃの肉まんと、仄かに甘い香りが漂うジャスミンティー。 なんでも、この前小悪魔に貰ったクリーム・ブリュレのお返しに、新作点心の味見をして欲しいとの事だった。 美鈴は非番の日には時々、パチュリーや小悪魔のお茶会に参加し、点心をご馳走する事があるのだ。 「この柔らかさ、まるで高級霜降り肉のような… いや、もっと溶けて無くなる様な儚さ…」 きらきらと目を輝かせて賞賛する小悪魔。 このれみりゃの肉まんは、幸せな味がする。 栄養状態も最高で、思う存分ゆっくりしていたのだろうな、と小悪魔は感じていた。 美鈴は、小悪魔の幸せそうな顔に気を良くして言った。 「そう、そこでこれ、ゆっくりれみりゃの豚トロ饅頭なんて名前でどうでしょう?」 「そうね、鮪のトロは、人肌で脂肪分が溶けるので食すと溶けるように柔らかいと聞くわ。 食べたことはないけど、こんな感じかしら?」 パチュリーはいつか本で読んだ、未だ見ぬ外界の食材へと思いを馳せているようだ。 「食べるたびに熱々の肉汁がぴゅっぴゅっって飛び出してきますよ。とってもジューシィで美味しいです!」 「我等が紅魔館のパティシエール、小悪魔にそこまで褒めてもらえるとは、嬉しいですねえ」 「いえいえ、私のお菓子作りなんかただの趣味ですから。そんなに凝った物は出来ませんし… それにしてもの肉まん、中から肉汁がトロトロと溢れてきて、普通のゆっくりれみりゃの肉まんともぜんぜん 違いますよ、どうやって作ったんですか?」 「それは禁則事項です」 「それって、私の口癖、真似しないで下さいよぅ」 美鈴と小悪魔は、仕える主こそ違え、同じ紅魔館に住む者として仲が良かった。 赤いロングヘアーが共通する二人は、傍目には姉が美鈴、妹が小悪魔という姉妹のような雰囲気だ。 それを眺めてパチュリーは目を細める。 「お正月には、この豚トロ饅頭で飲茶スタイルのパーティーやりましょうか?」 「飲茶スタイルって?」 美鈴の提案に、パチュリーが疑問系で聞き返す。 「飲茶スタイルは、給仕用のワゴンにコンロや鍋を載せて、テーブルのそばで注文に応じて料理をする。 っていう形式の事ですよね? 居ながらにして屋台料理の雰囲気が味わえるという」 小悪魔は知っている範囲で答えた。 それに美鈴が相槌を打つ。 「そうそう、それですよ。 豚トロ饅頭を蒸かす以外に、ゆっくりめーりんを使った刀削麺の実演なんかもやっちゃいますよ? あいつら、面の皮が厚いから丁度良さげだし」 「あ、あの包丁で削って作った麺を、そのまま鍋の中に放り込むのですか? 良いですね、美鈴さんと咲夜さんの競演なんて、見てみたいなあ」 「中身はピリ辛ピザまんだから、坦々麺風スープかな」 もうもうと湯気を上げる大釜の前でナイフを構え、目にも留まらぬスピードでゆっくりめーりんの皮を削る 美鈴と咲夜。 小悪魔はその横で、ピリ辛のスープを作っている… 二人の楽しげな会話を聞くパチュリーの頭の中には、そんなビジョンが鮮明に浮かんだ。 「まあ、館の食堂なら良いけど、図書館ではやらないでね。 これ以上部屋の湿度を上げられたらかなわないわ」 「あー、私も泣きます」 最近特に、かび臭い本の手入れが大変なのだ。 パチュリーの言葉に本来の司書の仕事を思い出した小悪魔は、一転して本当に泣きそうな顔をしている。 それを見た美鈴は、思わず苦笑してしまう。 「はいはい、じゃあ食堂で」 そんなわけで、新作、ゆっくりれみりゃの豚トロ肉まん試食会は好評のうちに終了した。 美鈴は最後まで作り方を教えてくれなかったが、 「この肉まんは、仕込みが肝心でちょっと時間がかかるんです。 作り方は中国四千年の秘儀なんで秘密ですよ。特に咲夜さんには見せられませんからね。ウフフ…」 などと、意味深な事を言っていたのだった。 大図書館に戻った後、小悪魔は蔵書を整理しながら、クリスマスに作るケーキのレシピを考えていた。 (クリスマスにはやっぱり、ブッシュ・ド・ノエルが良いかな? チョコレートクリームが沢山要るから、ゆっくりちぇんを発注しようかな… でも、悪魔がクリスマスを祝うのも変な気もしますが…ケーキくらい良いですよね) パチュリーは中央のテーブルで本を読んでいたが、考え事をしているのか、どこか集中できない様子だった。 小悪魔を見ると、唐突に口を開く。 「美鈴の豚トロ饅頭だけど」 「はい?」 パチュリーの目が、悪戯っぽくきらっと輝く。 「中国四千年の秘密と言われると、是が非でも暴きたくなるわね」 流石、ノーリッジの名前は伊達ではない。 その知識欲は、自身に知らないことがあるのを許せないかのようである。 確かに小悪魔も、気にならないと言ったら嘘になる。 料理人としての好奇心が、あの肉まんの秘密に迫りたいと囁くのだ。 「でも、どうやって探るんですか? 流石に私やパチュリー様が嗅ぎ回ると、目立ちすぎて美鈴さんにばれちゃいますよ?」 「そうね、そこで、これを使ってみようと思うんだけど…」 「むぎゅ…ぎゅ…ぎゅ…ぎゅ…」 「チルノフの冷蔵庫で冷やされていた所為か、妙に顔色が悪くてガタガタ震えてるわね?」 小悪魔はパチュリーの取り出した直径15cmほどの水晶球と、同じく15cmほどのゆっくりぱちゅりーを見ると、 パチュリーのやろうとしている事に合点がいくと同時に、ちょっと残念気味に言った。 「ゆっくりに偵察させる気ですか? まあそれはともかく、その子は使えないと思いますよ」 「どうして?」 「外見は変わってませんけど、中身いじっちゃいましたから。 その子の中身の生クリームを半分抜いて、代わりにコーヒーゼリーを入れてありますから、 多分まともに動けないと思います」 小悪魔はパチュリーの手からゆっくりぱちゅりーを受け取ると、ちょっとシェイクしたり揉んだりした後に、 頭頂部に太目のストローを突き刺した。 「むぎゅっ!」 その瞬間だけ大きく痙攣したゆっくりぱちゅりーだが、それ以外は真っ青な顔でぶるぶると震えるのみだ。 「どうぞ。新しいデザートを試作中だったんです。ちょっと試食してみて頂けますか?」 パチュリーはそれを受け取ると、恐る恐る飲んでみた。 太目のストローを咥えるパチュリーの口に、白と黒のマーブル模様の液体が吸い込まれると、透けるように白く 細い喉がコクコクと微かに上下する。 「んっ、ちょっと喉に絡みつくような感じがするけど、トロっとして美味しいわ、これ!」 そう言うパチュリーは、唇に付いた白い生クリームを舌でペロッと舐めとる。 その光景に小悪魔はにっこり微笑むと、パチュリーに見えないように小さくガッツポーズをした。 「それ、ドロリッチなんとかって名前で、外界で流行っている最新スィーツだそうです。 山の上の神社の巫女さんに教えてもらったんで、試しに作ってみたんですけど」 「ふぅん、外界では不思議なものが流行るのね… それはともかく、あの娘は巫女じゃなくて…」 「まあ良いじゃないですか、青巫女さんのほうがわかり易いですし」 そうこうしているうちに、ゆっくりぱちゅりーは萎んでしわしわの干物のようになってしまう。 「思わず飲み干してしまったわ…どうしましょう」 「とりあえず厨房にストックしてある加工前の子なら居ますが、あんまり期待できないと思いますよ? 加工所で食用に育てられた子は、殆ど体力無いですし…」 「まあ実験だし、いいわ、一匹持ってきてくれない?」 「むきゅぅ…」 そんなわけで小悪魔に持ってこられた、直径15cmほどのゆっくりぱちゅりー。 箱から出され目は覚ましているが、半眼で眠そうな表情をしている。 まあこれは、ゆっくりぱちゅりー種に共通する特徴だが。 パチュリーは水晶球とゆっくりぱちゅりーをテーブルに置くと、何やら呪文を唱え始めた。 水晶球とゆっくりぱちゅりーの上に手をかざすと、それぞれの下に光り輝く魔方陣が出現し、今までうとうと していたゆっくりぱちゅりーが、急に痙攣したように動きを止める。 「むきゅ!」 それと同時に、水晶球にはテーブルの反対側からゆっくりぱちゅりーを覗き込む小悪魔の姿が映し出された。 「えっと、これはこの子の見ている景色。って事ですか?」 水晶球を指差しながら尋ねる小悪魔に、パチュリーは頷く。 「それだけじゃなくて、こちらからその子を自由にコントロールする事が出来るわ。 ゆっくりは構造が単純だから、魔法がよく効くわね」 なるほど、術をかけた相手を、遠隔操作出来る魔法らしい。水晶球はモニター代わりのようだ。 パチュリーが水晶球の上に両手をかざすと、ゆっくりぱちゅりーはきょろきょろと辺りを見回し始めた。 それと同期して、水晶球の景色も左右に動く。 「リンクはOKのようね、行くわよ、ドロリッチ2号!」 「むきゅっ!」 ドロリッチ2号というのはこの子の名前らしい。パチュリーが号令をかけると、ドロリッチ2号は、 ぽよん、ぽよんと軽い音を立てながら跳ねて前進する。 「うっ」 数歩行ったところでドロリッチ2号は急停止し、パチュリーは口に手を当てる。 「どうしたんですか! パチュリー様!?」 「…酔うわね、これ」 水晶球を覗き込んで青ざめるパチュリーを見て、不安になる小悪魔だった。 「大丈夫かなあ、これで…」 結論から言うと、ゆっくりぱちゅりーをリモートコントロールし、美鈴の豚トロ饅頭製作現場をスパイする、 「ドロリッチ計画」は頓挫した。 4機もの精鋭を送り込んだのだが、全て稼動不能という散々な結果に終わったのだ。 2号は気分の悪くなったパチュリーがコントロールを失った間に、小悪魔が止めるより早くテーブルから落下、 3号は階段を昇る途中で同じくコントロールを失い転落、 4号は扉に挟まれ作戦行動不能、 5号は庭に出たところで、うろついていたゆっくりれみりゃに捕食されてしまった。 「全く…、想像以上に…脆弱な種ねえ…、こんなので良く…今まで絶滅しないで…居るわね…」 青ざめた顔で、ぜいぜいと肩で息をして憤るパチュリー。 小悪魔は、ぱちゅりーの操縦で酔ってふらふらしているパチュリーをなだめながら、これ以上食材を無駄に するのは避けたいと思っていた。 「まあ、この子達は天然ものじゃなくて、加工所の養殖ものですから…あぁ、勿体無い…」 「やっぱり、食用のゆっくりを転用するのは無理があるわね」 「そういう問題でも無いような気がしますが…」 「仕方が無いわね、こんな事もあろうかと、密かに用意していたアレを出すわ」 パチュリーは暫く考えた末、ついに虎の子の最終兵器投入を決めたようだ。 「…まだやるんですか?」 何だか目的と手段が入れ替わっているような気もする小悪魔だが、パチュリー様は結構頑固なので、 言い出したら聞かない所がある。 (それに、こんなに楽しそうな主を見るのも久しぶりだ、自分も結構悪戯は好きだし、もう少し付き合おう…) 小悪魔は傍観するだけだと甘く見ていたのだ。その時までは。 パチュリー様が魔法の実験に使う小部屋から、見慣れない一匹のゆっくりを抱えて戻ってきた。 直径15cmほどの饅頭形態に、側頭部に蝙蝠のような羽。遠目にはゆっくりれみりゃの様に見えたが、めーりんの 様な赤い髪。おまけに、細くて黒い尻尾も見える。 (これって、もしかして…) 「こぁ!」 それが鳴いた。 小悪魔はある確信を得たが、あえて尋ねてみた。 「あのぅ、それって…」 「そう、あなたのゆっくり、“ゆっくりこぁ”よ」 「こぁ!」 「やっぱり…でも初めて見ました」 「そうね、だって、私が魔法で作り出したんだもの。 ゆっくりちぇん以上の俊敏性と、れみりゃやふらんより速く飛べる羽と強靭な牙、めーりんより強い皮膚と 赤い髪、もちろん知能も強化してあるし、必殺技も仕込んであるわ。 これが、“私の考えるちょっと強いゆっくり”よ!」 「こぁ!こぁ!」 パチュリーの説明に合わせて、何だか自慢げに鳴いてみせるゆっくりこぁ。 「えー、“さいきょうのゆっくり”じゃないんですか…」 自分で突っ込んでから、そんなのは自分に似合わないな、と思う小悪魔だった。 「でも何で…?」 と言いかける小悪魔を制し、パチュリーが続ける。 「本当はあなたへのクリスマスプレゼントにしようと思ってたんだけど。 あなた、咲夜が“ゆっくりゃざうるす”の話をするの、いつも羨ましそうに聞いてたでしょ? まあ、いつもお世話になってるから、これ位良いかなって。 ちょっと早いけど丁度良いわ、これから実戦投入よ」 「こぁ!」 「パチュリー様…」 照れ隠しなのか、ツンデレ口調で早口のパチュリー様。 本当は、クリスマスの朝にこっそり枕元に置いておくつもりだったのだろう。 アレな理由で先に貰ってしまい、サプライズは無くなったが。いや、今十分驚いた。 逆に、こんなに顔を真っ赤にしてプレゼントを渡してくれるパチュリー様が見られたのだ。 小悪魔は嬉しさで感無量だった。 「悪魔がクリスマスプレゼントなんて、貰っても良いんでしょうか?」 「ここは幻想郷、何でも受け入れる場所でしょ、そんな細かいこと誰も気にしないわ。 でもそうね、渡すタイミング外しちゃったから…お歳暮だとでも思えばいいでしょ?」 気恥ずかしさが増したのか、真っ赤な顔でツンツンした態度のパチュリー。 「ありがとうございます!」 「こぁ!こぁ!」 嬉しさは伝播するのだろう。 小躍りしそうにはしゃぐ小悪魔につられたように、ゆっくりこぁも嬉しそうにしている。 「さあ、感動のご対面のところ悪いけど、あなたには早速その子を操縦してもらうわよ。 私たちには、その子しか残されてないの」 パチュリーの言葉に、我に帰る小悪魔。 「でも私、そんなのコントロールできませんよ?」 水晶球を指差して言う小悪魔に、パチュリーが返す。 「大丈夫よ、私の魔法で、あなたの意識をこの子の中に飛ばすの。 それで、シンクロ率も上がって思ったようにコントロールできるわ」 「それってもしかして、幽体離脱とかいう厄いものでは…?」 何やら危険な香りを感じた小悪魔は、恐る恐る聞いてみる。 「大丈夫よ、危なくなったらすぐに引き戻してあげるわ」 「はぁ…」 あんまり大丈夫じゃないような気もするし、何より折角パチュリー様から貰ったプレゼントを、危険な目には 遭わせたくないと思うが、パチュリー様はやる気だ。 むしろその為に渡されたのだから。 仕方なく覚悟を決める小悪魔だった。 「お願いします…」 「こぁ!」 何故だかやる気満々のゆっくりこぁと、椅子に座る小悪魔。 パチュリーはにっこり笑うと、それぞれの額に手をかざす。 その手前に光り輝く魔方陣が現れると同時に、小悪魔は意識を失い、そのままテーブルに伏してしまう。 次の瞬間、テーブルに伏している自分の姿が見えた。 不思議な光景だな、と小悪魔は思う。 寝ている自分の姿を外から眺めるなんて、めったに出来ることではないだろう。 「シンクロ率は80%以上ね、どう、調子は?」 後ろからパチュリー様の声が聞こえる。 (はい、大丈夫そうです) 「こぁ!」 自分の考えた言葉とは違う鳴き声が発せられた。 やはり、自分がコントロールしているとはいえ、この子はこぁとしか喋れないようだ。 だが、人語を喋れない事と、頭の良さは別である。 小悪魔には、生まれてから今までパチュリー様に育てられた、この子の記憶の断片が感じられた。 パチュリー様は私にばれない様に、苦労してこの子を育てたようだ。 そして、パチュリー様の私への感謝の気持ちと、この子の、育て親であるパチュリー様への感謝の気持ち、 両方が感じられるその記憶の断片は、とても暖かいものだった… (ありがとうございます、パチュリー様) 「こぁ!こぁ!」 「凄いわね、シンクロ率100%よ」 ゆっくりこぁはパチュリー様に向き直ると、感謝の意を込めた挨拶をした。 パチュリー様は、水晶球に表示される数字を見て驚いた様子だが、こちらを見るとにっこりと笑う。 こちらの思いは、言葉にならなくともなんとなく伝わっているのだろう。小悪魔はそう思った。 (今までありがとうございました、行ってきます) 「こぁ!」 パチュリー様に挨拶をして、ゆっくりこぁは飛び立った。 小悪魔は、普段と同じように側頭部の羽を動かすことが出来、あまり違和感を感じることは無かった。 普段から空は飛べるが、本当に羽を使って飛んでいるわけではない。魔力を使って浮き上がっているのだ。 ゆっくりこぁも、よく分からないがそんな不思議な力で飛べるのだろう。 図書館を飛び出したゆっくりこぁは、門番の詰め所を目指した。 ゆっくりれみりゃの肉まんは、詰め所の奥のキッチンで作られたようだ。 秘密があるとすれば、その先だろうと思ったのだ。 「こぁ!」 「うー? うー?!」 紅魔館の庭に出たこぁは、ゆっくりれみりゃを見つけた。 ゆっくりれみりゃもこちらを見つけたようだ。 仲間だと思ったのか、食べ物だと思ったのか、ニコニコしながら近寄ってくる。 だが、こんな所で遊んでいるわけにはいかない。 こぁは、飛行速度を上げた。 その飛行速度は、ゆっくりれみりゃよりずっと速く、その高度はずっと高かった。 「ぅーっ!」 ゆっくりこぁは、今まで籠の中で飼われていた。無論、パチュリーがこっそり育てていたからである。 はじめて見る外の世界は光に溢れ、広く、清々しい空気に包まれている。 外の世界を自由に飛びまわれるって、こんなにも素晴らしいものだったんだ。 こぁの意識を感じ取った小悪魔も、嬉しくなる。そういえばこんなに自由に飛ぶのは、久しぶりだ。 「こぁ!」 そのころ大図書館では、パチュリーが水晶球を見て目を瞠っていた。 「凄い、シンクロ率が150%を超えたわ。 俄かには信じられない値ね…」 無論、危険なことがあれば、意識は引き戻すつもりだ。 傍らでテーブルに伏している小悪魔を、ちらりと見る。 ゆっくりれみりゃを振り切ったこぁは、門番詰め所にたどり着いた。 中に美鈴が居る様子は無い。 幸いにも自室に戻ったのか、出掛けているのか。 この隙に、こぁは詰め所の中へと入り込む。 控え室の奥には洗面所や小さな炊事場があり、簡単な調理が出来るようになっている。 そこにはコンロの上に蒸し器が載っているのが見えた。そこで豚トロまんを蒸しあげたのだろう。 しかし、蒸し器の中は綺麗に片付けられ、周りにもそれらしいものは置いていない。 「こぁ!」 さらに奥の階段を目指す。 こぁの意識が、更に奥にある階段に何かがあると囁くのを感じていた。 上に通じる階段は仮眠室へ。下に通じる階段には、小悪魔は入ったことがない。 (この階段は、地下牢に通じていると聞いたことがあります。この紅魔館は、中世ヨーロッパの城を改装して、 そのまま幻想郷入りしたものだそうですから。 詰め所の地下には、当時の敵の侵入者や不審者を閉じ込めたり、拷問したりする部屋があると…) (ちょっと怖いですが、行ってみよう…) 薄暗い階段に、ちょっとびくびくしているこぁ。 だが、ここで引き返すわけにはいかない。 小悪魔はこぁの意識を宥めながら、先へと進む。 (この先に、美鈴さんの言っていた秘密が?) 地下の扉の奥からは、「う゛う゛う゛…」という、うめき声のようなノイズが漏れてくる。 よほど凄惨な現場が待っているのであろうか?果たして中国四千年の秘儀とは? 「ギギギ…」 体全体を使って扉を押し開けると、そこは奥の牢屋に通じる小部屋の様である。 壁際には、奇怪なオブジェが置かれていた。 壁に固定されているらしい棚のような木の板の上に、ゆっくりれみりゃの頭が置かれている。 その顔は上に向けられ、その口には上から固定された大きな漏斗が差し込まれている。 暗く見難かったので、最初は頭だけのゆっくりれみりゃ、胴なしに見えたが、そうではない。 木の板は前後に分割されており、半円形にくりぬかれた部分に挟まれるようにれみりゃの首が嵌っているのだ。 ピンク色の服を着た胴体は、木の板の下に見える。 そして驚くべきことに、その体はぶくぶくと肥大化し、通常のれみりゃ種より2倍は大きい。 ピンク色の服は、肥え太った胴体ではちきれそうに膨らんで、まるでボンレスハムのようだ。 その丸々と太った足でも、通常のれみりゃよりはるかにふとましい体を支えられないのか、床に座り込むような 形で手足を時折じたばたさせている。 「う゛ぷぅーっ、う゛ぷぅーっ」 弱々しい叫び声も、口に差し込まれた漏斗の所為か、太りすぎた所為なのか、濁音交じりで聞き取りにくい。 (何ですか、これ…でもどこかで見たような?) 小悪魔はこんなに太ったゆっくりれみりゃは見たことがない。 通常の状態では、胴体つきのゆっくりれみりゃはここまで大きくならないのだ。 ゆっくりれみりゃには骨格が無いので、あまり大きくなると自重で潰れて動けなくなる。 今目にしているゆっくりれみりゃは、まさにそんな状態だ。 だが、どこかで見たような気もする。不思議な感覚だった。 と、そのとき部屋のさらに奥にある牢らしき部屋から物音が聞こえた。 こぁは飛び上がって驚き、咄嗟に壁の近くの物置らしき所に飛び込む。 体が小さいから出来た芸当だ。 小悪魔は恐怖に怯えるこぁの意識を宥めつつ、奥の部屋へと意識を集中した。 そこから現れたのは、美鈴その人であった。 ニコニコしながら、ゆっくりれみりゃに話しかける。 「さ、食事の時間ですよ、おぜうさま!」 そして、奥の牢屋らしい部屋からリボン付きの子ゆっくりを5,6匹持ってくると、壁に固定されている ゆっくりれみりゃに近づき、子ゆっくりをごろごろと漏斗に流し込んだ。 「ゆっ、ゆっくりやめてね!」 「れみりゃいやぁー!」 「れいむおいしくないよー!」 「だべだいでぇー!」 叫ぶ子ゆっくりに構わず、美鈴は木の棒で上から子ゆっくりを突き、漏斗の真ん中のれみりゃの口に繋がって いる穴にぐいぐいと押し込んでゆく。 「むぎゅ、やべでっ!」 「いだいいだいだい!押さないでね!ゆっくり押さないでね!」 「ぶぺっ!ぶごっ!」 漏斗の中で潰されながら叫ぶ子ゆっくりたちと、 「ぶぅ゛ーっ!ぶぅ゛ーっ!」 漏斗を咥えさせられ叫び声も上げられず、涙を撒き散らしもだえるれみりゃの頭。 餡子がのどに詰まると呼吸が出来ないのか、その顔は青くなったり赤くなったり忙しい。 その机の下では、ぶくぶくに太った体がじたばたと無駄な足掻きを続けている。 中々にシュールな光景だ。 そのうち、子ゆっくり達は美鈴の手によって、無理やりゆっくりれみりゃの口の中に押し込まれてしまった。 小悪魔は、この光景が何かに似ていると考えていたが、暫くしてそれを思い出す。 (そうだ、フォアグラだ、これ) フォアグラというのは、人為的に太らせたガチョウやアヒルのレバーを使った料理を指す。 このれみりゃと同じように首を固定して、漏斗で無理やり餌を与え続けると、レバーに脂肪が蓄積されて、 いわゆる脂肪肝と同じような状態になるのだ。 それを使ったフォアグラ料理は、脂が乗って軟らかく、世界三大珍味の一つと呼ばれる。 そういえば先程のとろけるような肉まんの食感、それもフォアグラに良く似ている。 このゆっくりれみりゃの仕込みだろう作業も、以前、大図書館の資料で見たことがあるフォアグラの写真に そっくりだった。 先ほどの疑問が解消し、美鈴の作業の秘密が分かって、小悪魔はほっとしていた。 だが、ゆっくりこぁの意識はそうではなかったようだ。 はじめて見る恐ろしい光景、怖そうに見えるお姉さんに怯えてしまい、小悪魔が意識を緩めた弾みで、思わず 泣き声をあげてしまったのだ。 「…こぁ!」 小悪魔がしまったと思うより早く、美鈴がこちらに気付いて振り返る。 「おやぁ? いつの間に逃げ出した子が居るのかな?」 (まずい、逃げなきゃ!) 「こぁ!」 だが、恐怖で萎縮してしまったこぁの体は、震えたまま動かない。 目前まで迫った美鈴は、獲物を前にした豹のように、目を輝かせて微笑んでいた。 「みぃつけた!」 恐怖心で震えるゆっくりこぁの意識は、冷たく、暗い闇となり、小悪魔の意識も覆い隠してしまった… 「はっ、ここは!?」 がばっと起き上がった小悪魔。その肩から椅子の上へ、ぱさりと毛布が落ちる。 「図書館よ、私があなたの意識を引き戻したの。 驚いたわね、シンクロ率が急に200%を超えて、危険な波形が見えたのよ。 一体何があったの? 大丈夫?」 パチュリー様が話しかけてくるが、それどころではなかった。 「すみません、あの子が危ないんです! 話は後で!!」 小悪魔はダッシュで図書館を出る。 階段を駆け上り、中庭へと飛び出す。 そこから、詰め所まで飛んで行く。 勿論、普段は歩いて行くのだが、今はゆっくりこぁが心配で気が気ではなかった。 美鈴さんに秘密を探っていたことがばれても、何とかしなければならない。 このままでは、あの子はゆっくりれみりゃの餌にされてしまうかもしれないのだ。 クリスマスにはちょっと早かったけど、パチュリー様から頂いた大事な子だ。 短い間だったが、暖かい記憶も共有したし、一緒に空も飛んだ。 そんな子を失ってしまったら、パチュリー様に申し訳が無い。 飛行の風圧なのか、それとも別の何かか。小悪魔は目尻から暖かいものが零れるのを感じながら、詰め所へと 飛び込んだ。 「美鈴さん! その子は駄目なんです!!」 詰め所の部屋の中には、美鈴と、テーブルの上で肉まんをパクつくゆっくりこぁが居た。 そのゆっくりとした様子は、すでに打ち解けて仲の良い家族のようだ。 その無事な姿を確認すると、小悪魔はその場でへたり込んでしまう。 「はぁ、良かった…」 「どうしたんですか、そんなに慌てて?」 「こぁ!」 のんびりと声をかけてくる美鈴と、小悪魔を見るなりその胸に飛び込んでくるゆっくりこぁ。 「すみません、この子はパチュリー様から頂いたプレゼントなんです。 美鈴さんが食べちゃったんじゃないかと心配になって…」 小悪魔は、ゆっくりこぁの髪を撫でながら言った。 あえて地下室の事については触れないように。 「この子を見つけたときに、小悪魔の気の流れを感じたんですよ。 だから、多分パチュリー様の差し金であそこに忍び込んだんだと、ピンと来ました。 何より、見たことの無い珍しいゆっくりでしたからね」 やはり小悪魔の感じたとおり、美鈴にはすでに察しがついていたようだ。 「良かった、本当に良かった…」 「こぁ!」 「でも、地下室のアレ、咲夜さんには秘密ですよ。 中庭で増えすぎたゆっくりれみりゃの間引きは任されているとはいえ、アレはショックでしょうから」 笑いながら言う美鈴。 小悪魔も尤もだと頷いて見せた。 「とにかく、この子は多分世界で一匹だけの存在なんです。 私はこの子を育ててみようと思います」 「こぁ!」 「分かりました。 まあ、咲夜さんも“ゆっくりゃザウルス”飼ってるし、私もれみりゃ飼育してますから、何かあったら相談に 乗れると思いますよ?」 そう言う美鈴の言葉を聞いて、この二人は当てにならないだろうなあ、と思う小悪魔だった。 終 by 神父
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1242.html
暗い嵐の夜だった。 犬走椛は見張り小屋の屋根の上に座り込んでいた。 彼女の千里眼が映す光景は絶望。その絶望を撮していたカメラは今、遺品として彼女の手元にある。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 小山ほどの大きさはあるゆっくりの大群が、幻想郷を埋め尽くそうとしていた。 椛の目には人間達が必死の抵抗を試みる様子が、最期の足掻きをする様子がはっきりと見て取れた。 人間の里。 里の多くの人間が妖怪と戦う力を持っている。だが、大きさが違いすぎた。 最強の蟻が最弱の象には勝てないように、巨大なゆっくりには人間の火力では到底致命傷を与えることは出来なかった。 無力な人間は蹴散らされるのみ。無駄死にのみが繰り返される。 そう、人間では。 巨大なゆっくりの前に立ちはだかる一人の半獣。 天に向かうバッファローホーンには可愛いリボン、聖獣ハクタクの血を引く上白沢慧音の火力であれば規格外のゆっくりであっても対抗できうる。 初撃、無数のレーザーに貫かれたゆっくり霊夢が爆散する。 それを見て慌てて宙に逃げたゆっくりれみりゃの背後から同じく無数の小弾が迫り、ゆっくりれみりゃを再生不可能なレベルにまで破壊する。 空中で破壊した。それがいけなかった。 ゆっくりれみりゃを一言で言い表すと「動く肉まん」である。 中の餡は水分を含んで重く、しかもれみりゃ自身の体温で常にホカホカ。 冷まさないと口に入れることすらおぼつかない。 そんなものが空中で粉々になった。元の体積は人間の数千万倍以上。 破片の重さだけでも十分凶器になる。そんな規模の代物がホカホカで加速しながら降ってきたのだ。しかも、降りしきる雨の粒に勝るとも劣らない密度で。 よけられるはずがなかった。 1回のミスで戦列は崩壊。かろうじて生き残った者も行進するゆっくりの群れに潰されたり、最期の力を振り絞って立ち向かったりした。 戦力のほぼ全てを失った人間の里にもはや為す術はなく、黙って嵐が立ち去るのを待つしかなかった。 あとに残るのはホカホカの肉片と冷たくなりつつある肉片。 「「「さめてもおいしいよ!!!」」」 話を数日戻す。 悲劇の数日前から幻想郷は大雨に見舞われていた。発達した秋雨前線と大型台風により、地表をそのまま削りそうな嵐が吹き荒れていた。 八雲紫などは「オンダンカは嫌ねぇ」などと藍相手にグチっていた。 その頃はまだ彼女にもグチるだけの余裕があった。 ある家庭では雨漏りの対処に追われ、あるゆっくり加工工場では出荷が滞り、原料のゆっくりがダブついていた。 その加工工場では備蓄ゆっくりが過去最高レベルで寿司詰めになっていた。 「おしくらまんじゅうにもあきたよ!!!」 「つぶれまんじゅうになっちゃうよ!!!」 そんなゆっくり達の鳴き声に付き合う見張りの職員は、いい加減うんざりしながらペットのゆっくり霊夢に餌をやりに事務室に戻っていく。 「霊夢さんは俺の嫁、これジャスティス」 三十路童貞はそんなことを呟きながら、ゆっくり霊夢が焼き芋をパクつくのを眺める。眺めるだけならよかったが、 餌の形状から連想ゲームが始まり、ついつい股間がヒートアップしてしまった。 クールダウンに多大なエネルギーを消費した職員はそのまま昼寝を始める。 「きもいったらありゃしないよね!!!」 いびきを立てる職員が寝ている傍らでシエスタと決め込むゆっくり霊夢も物騒な寝言を吐く。 そのまま1人と1体は永遠の眠りを始めた。 だれのせいという訳ではなかった。 見張りをサボった職員にしても、彼1人でどうこうできた事ではないし、 今回の大雨を予見できなかった工場の設計者が悪いという事でもない。 ただ単純に運が悪かった。 数日間降り続いた雨によりダダ余り状態の水は各地で様々な許容値を突破し、下水を逆流し、とうとう工場内に流れ込んだ。 「ゆー!?」 「つめたいよ!」 「おぼれちゃうよ!ゆっくりたすけてね!」 だが悲しいかな。この世界に溺死する饅頭などありはしない。 水を吸い込んだ饅頭はどんどん膨張していく。饅頭の膨張率というものはあなどれない。 腹一杯饅頭を食した後に水を飲んだ人間の胃が破裂したこともあるのだ。 膨張するゆっくり達はただでさえすし詰め状態であった状態からさらにぎゅうぎゅう詰めになり、そしてついに臨界点を突破した。 のちに「ゆっくり融合現象」と名付けられるその現象は、 ゆっくりに強力な圧力を加えることでゆっくり同士が分子レベルでの融合現象を起こし、巨大な1体のゆっくりとなるというものだ。 結果、数百体のゆっくり同士が融合し、巨大なゆっくりが都合数百体出現した。 現象の命名者である東風谷早苗はこう語る。 「もう二度と奇跡を信じたりしないよ」 そして悲劇が起こった。 「ミッシングパー「いきなりおおきくならないでね!!」 「びっくりするよ!!!」 「夢想天生最後十びょ「ほんきにならないでね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 巨大なゆっくり達は雨を吸収し、さらに巨大化していく。 だが、幻想郷は狭い。膨張していくゆっくりの一部はいつしか天界に到達し、水平方向のスペースはもはや限界だった。 そして圧力は再び臨界点を突破する。融合したゆっくりは幻想郷とほぼ同じ大きさ。 1体のナマモノとしては大きすぎた。自重で崩壊する超巨大ゆっくり。 残骸は地上に降り注ぎ、地盤をめくり上げ、成層圏にまで到達させた。 幻想郷滅亡の日であった。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/995.html
ティガれみりゃ その3 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ』の続きになります。 時系列は、ティガれみりゃ1→ティガれみりゃ2→本作、となります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 今回のエピソードには、本家東方のキャラが出演予定です。 口調やキャラなど、壊れ気味かもですが、ご容赦あれ。 すみません、まだ続きます。 また、今回のエピソードは長くなってしまったので、前編後編に分割しました。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 ======================== 3、誇りをかけた試練(前編) 「ゆぐぅ……もっと…ゆっくりじだがっだ、よ……」 とある山の、とある森。 一匹のゆっくりれいむが、今まさに力尽きようとしていた。 あちこち皮が破け、その傷と口から大量のあんこを吐き出している。 しかし、この森に充満する甘い匂いは、このれいむだけが原因ではなかった。 「みんな……れいむもゆっくり……そっちへいくよ……」 れいむが語りかけた先、 れいむの眼前、左右、背後、 そこには膨大な量のあんこが飛び散り、地面や木に染みを塗りたくっていた。 所々にリボンや帽子の残骸が垣間見えるそれは、大量のゆっくり達の死骸であった。 赤ちゃんから、大人まで、原型をとどめないその数は200を越えていた。 「ゆぅ……くやじぃ、ょ……」 視界がぼやけ、意識が朦朧としていく。 そんな状態でなお、この惨状を生み出した元凶の影が、目に焼き付いて離れない。 耳をすませば、今なおアノ恐ろしい鳴き声と歌が聞こえてくるようだ。 その歌い手の主、たった一体のゆっくりによって、 れいむの家族も、友達も、喧嘩相手も、同じ森に住むまだ見ぬ同胞達も、 みんなみんな殺されてしまったのだ。 圧倒的な力で、抗いようの無い絶望を撒き散らしたそのゆっくりを、れいむは決して許さない。 その憎悪の炎だけが、れいむの命を辛うじてつなぎ止めていた。 ……もっとも、許すも許さないも、どうせ自分はこのまま死んでしまうのだろう。 ゆっくりのあんこ脳であっても、その事実だけはハッキリ認識できた。 「むっきゅーっ! まだ生きてるのね!」 「……ゆ、ぅ?」 聞いたことの無い声だった。 ゆっくりと目を開き、最後の力を振り絞り、声の主を見上げるれいむ。 そこには人間の少女に似たゆっくりが立っていた。 「大丈夫!? しっかりしてね!」 れいむを心配する少女。 よく見れば、少女もまたゆっくりであるようだった。 『ぱちゅりー、どうしたの?』 「むきゅ! まだ生きているれいむがいたのよ、まりさ!」 ぱちゅりーと呼ばれたゆっくり、 即ち胴体付きのゆっくりぱちゅりーの背後から、重たそうに跳ねて近づく巨大なゆっくり。 れいむはそれを知っていた。とっても強くて大きくて優しいゆっくり、ドスまりさだ。 それも一匹ではない。 二匹、三匹、四匹……次々とやってくる。 さらには普通のサイズのまりさやアリス、ちぇんにみょん、 何十匹ものゆっくりが、木々の隙間を跳ねてきた。 「ゆゆゆ?」 わけがわからなくなる、れいむ。 疑問と困惑があんこ脳を支配し、一時的に痛みも恐怖も忘れさせていた。 「むきゅー。もう大丈夫よ、れいむ」 ボロボロのれいむを優しく抱え上げる、ゆっくりぱちゅりー。 「ゆぅ……おねぇさんたち……だれ?」 「むきゅ! よくぞ聞いてくれたわ!」 ゆっくりぱちゅりーは、れいむを抱えたままドスまりさら仲間へ向き直る。 「わたしたちは、ゆっくりフォース!」 「ゆっ!?」 「ティガれみりゃを倒すために集まった、ゆっくりなれじすたんすよ!」 高らかに宣言する、ゆっくりぱちゅりー。 れいむは、力を振り絞って、ゆっくりぱちゅりーに懇願する。 「おねぇーさん、れいむをみんなの仲間にしてね! れいむもティガれみりゃを許せないんだよ!」 口からあんこを吐き出しながら、されど目には炎を宿して叫ぶれいむ。 ティガれみりゃと戦う上で、この傷だらけのれいむがどれほど役に立つかはわからない。 けれど、その気高いゆっくりマインドだけは、ぱちゅりーやドスまりさ達にも痛いほど伝わった。 なぜなら、その場に集まる殆どのゆっくり達が、ティガれみりゃの犠牲者だったから。 故に、そのれいむの申し出を断るゆっくりはいなかった。 ぱちゅりーを筆頭に、数多のゆっくり達が、れいむに歓迎の言葉をかける。 「「「「「ようこそれいむ! ゆっくりしていってね!!」」」」」 * * * 「うっめっ! むっちゃうめぇっ!」 「まんまぁぁぁーーっ!たしゅげでぇぇぇぇっ!!」 「やめでぇぇぇぇっ! れみりゃのあがぢゃんたべないでぇぇぇぇぇっ!!」 通称・ゆっくりフォースが、そのメンバーを増やしていた頃。 とある湖畔で、胴体付きれみりゃの親子が、複数のゆっくり達に襲われていた。 親だと思われるれみりゃが一匹、その子供が4匹。 親れみりゃは四肢をもがれ、地面にころがされている。 四肢の切り口は、強引に食いちぎられ、断面から肉汁があふれている。 その親れみりゃの前で、4匹の子供達はリンチされ、食い散らかされていく。 「むーしゃむーしゃ♪」 「なにこのにくまん!むっちゃうめぇ!」 「すっごくゆっくりできる味だぜ!」 れみりゃ達を襲っているのは、3匹のまりさ種だった。 それも、もっとも性悪といわれ、専門家達からがゲスまりさと分類される種だ。 「うわぁぁぁぁぁん! しゃくやぁぁぁ! はやぐぎでれみりゃとあぢゃんをたすけるんだどぉぉぉぉ!!」 泣きわめく親れみりゃ。 そんな親れみりゃを、見下すゲスまりさ達。 「おお、おろかおろか」 「うるさいにくまんだぜ!」 「よわいれみりゃは、ゆっくりたべられるんだぜ!」 そう言って、一匹の子れみりゃを丸呑みにして、咀嚼していくゲスまりさ。 「うぎゃぁぁぁ!!」 「うわぁぁぁぁぁっっ!!」 子れみりゃの断末魔と、親れみりゃの悲痛な叫びが湖畔の森に響き渡る。 「ぎゃおぉぉぉーーーーっ! ぎゃおぉぉぉぉーーーーっ!!」 怒りと悲しみで、ゲスまりさを倒そうと体をジタバタよじる親れみりゃ。 だが、四肢の千切られたその体では、文字通り手も足もでない。 「ったく、うるさいにくまんだぜ!」 ゲスまりさがピョンと跳ね上がり、親れみりゃの顔に体当たりをくらわす。 「ぷぎゃぁぁーーーっ! いたいぃぃぃぃーーーっ!!」 苦痛の叫びを上げ、ボロボロと大泣きする親れみりゃ。 「まんまぁぁぁ! がんばてぇぇぇぇ! こいちゅらやっちけてぇぇぇぇ!」 いじめられる親を見て、これまた泣き出す子れみりゃ。 なんとか助けて貰おうと、親れみりゃを応援する。 「ブサイクなにくまんのぶんざいで、なまいきだぜ!」 「うっぎゃっ!」 気分を害したゲスまりさが、跳ね上がり、子れみりゃを押しつぶす。 「どうだぜ! まいったかだぜ!」 「「「うぎゃ! ぷぎゃ! いだっ! ゆぎぃ!」」」 何度も何度も、子れみりゃ達をプレスしていくゲスまりさ。 間もなく、子れみりゃ達は物言わぬ肉まんの残骸と化してしまった。 「ああああああっ! れみりゃのあがじゃんんんんんっ!!! 目の前で全ての子供を失い、白目を向きながら泣き叫ぶ親れみりゃ。 その脳裏に、子供達と過ごした日々が浮かぶ。 森の中でアリスに襲われ、妊娠した日の戸惑い。 自分の体内で新たな命が育まれていくのを感じた感動。 とっても痛かった出産と、それ以上に可愛い赤ちゃんとの対面。 はじめて「まんまぁ~」と呼んでもらえた時の嬉しさ。 一緒に顔中を汚して食べた、さくやとくせい・ぷっでぃんの甘さ。。 立てるようになった子供達に、れでぃーのたしなみとして歌とダンスを教えた日々。 いままでも、そしてこれからも、自分と赤ちゃんたちには楽しくて素敵な毎日が待っている。 だって、れみりゃたちは、とってもえらくてかわいくてつよい、こーまかんのおぜうさまなのだから! だから、今日だって、メイドの言いつけをやぶってでも、 一緒に遠くまでお散歩に来たのに。 それなのに。 あかちゃん。 なんで。 「……あかちゃーん、あかちゃーん♪ ……とぉーってもかわいいどぉー♪」 親れみりゃは、放心状態となり、空想の中で子供達と遊びだした。 一方、ゲスまりさ達は、そんな親れみりゃの様子を見て、ふざけだす。 「おいおい、せっかくのにくまんをつぶしてどうするんだぜ♪」 「おっと、ついやっちまったんだぜ♪」 「そうだぜ、でも心配はいらないんだぜ♪」 ニヤニヤと笑みをこぼしあうゲスまりさ達。 「……う、う~~~~?」 そのゲスまりさ達の言動に、現実に引き戻され、 不安な気持ちでいっぱいになる親れみりゃ。 「「「だって、にくまんはまだこんなにあるんだぜ!」」」 そう言って、いっせいに親れみりゃに噛みつくゲスまりさ。 「うぎゃぁぁぁ! やめてぇぇぇ! れみりゃはにくまんじゃないどぉぉぉ!!」 「なに言ってるんだぜ! どうみたってお前はにくまんだぜ!」 「そうだぜ! 肉汁だってこんなにアツアツウマウマなんだぜ!」 「かんねんするんだぜ! このぶさいくなにくまんが!」 「ちがうのぉぉー! れみりゃはぷりてぃーなこーまがんのおぜうさまなのぉっ! にくまんでもぶさいくでもないのぉぉぉ!!!」 「なにいってやがるんだぜ!」 「そうだぜ! このにくまん!」 「おぜうさまにこんな尻尾なんかあるわけないんだぜ!」 そう言って、尻尾にかぶりつくゲスまりさ。 尻尾。 そう、この親れみりゃは、胴体つきは胴体つきでも、 希少種であるゆっくりゃザウルスであった。 しかも、元々ゆっくりゃザウルスであったわけではない。 ついこの間まで、紅魔館に住み着き、メイド達に甘やかされて育った、 ごくごく普通の胴体付きれみりゃであった。 だが、子供を産み、子育てを経ていく間に、れみりゃの体に異変が起こった。 ある朝、起きたらゆっくりゃザウルスになっていたのだ。 ゆっくりゃザウルスとなった親れみりゃを見て、 普通の胴体つきれみりゃである子れみりゃ達は、たいそう感激し、 「まんま、かぁっこいいどぉ~~♪」と、ことあるごとに褒め称えた。 ただでさえ子供達と優しいメイドに囲まれ幸せだったのに、 さらにこんなにも素敵な体になって、いいんだろうか!? しばらくの間、親れみりゃは幸福感でいっぱいになった。 だが、いくつかの誤算が、親れみりゃの幸福に水を差す。 メイド達が、館の外へ出してくれなくなったのだ。 いつもは定期的にお散歩に行けたのに、 今ではどこかへお出かけしようとするたび、 名前を忘れた門番に呼び止められ、連れ戻されてしまうようになった。 自分は、こーまかんのあるじなのに! こんなにかっこよくなった自分を、いろんな人に見せてあげたいのに! そしたらきっと、みんな喜んで、褒め称えて、自分と赤ちゃんにぷっでぃーんをくれるのに! 腹をたてたれみりゃ親子は、たまに館にやってくる、箒にのった少女に頼み込み、 こっそり館の外へ連れ出してもらったのだ。 けれど、そこで二つの誤算があった。 一つは、遠くへ来すぎて、館へ帰れなくなってしまったこと。 そして、もう一つは、このゲスまりさ達にからまれたことだ。 たしかにゲスまりさ達は、いつもれみりゃ親子がエサとして与えられるゆっくりより大きかった。 その体長は、帽子を抜かしても50cm前後はあるだろう。 だが、そこはくさっても捕食種・れみりゃ。 殆どが子供とはいえ、れみりゃ5匹に対して、 少しばかり大きいエサが3匹いたところでものの数ではないと思っていた。 しかし、それが大間違い。 親れみりゃは、ぎゃぉ~~とゲスまりさに襲いかかったが、あっさりよけられ、 逆に3匹のゲスまりさのコンビネーションの前に、なすすべもなく体当たりされ続け、 あっという間に泣き出してしまった。 すると、あんなにも強くて格好良いと思っていた親れみりゃがやられたことで、子れみりゃ達もすっかり意気消沈。 子供達だけで狩りをしたことが無いこともあり、パニック状態に陥ってしまう。 その隙を突かれ、子れみりゃ達も、さして抵抗するでもなくゲスまりさ達のオモチャとなってしまった。 これこそが、館のメイド達がゆっくりゃザウルスを外へ出したがらないかった理由だった。 当のれみりゃ達は、何故か"最高に強そうで格好良い"と感じるのだが、 ゆっくりゃザウルスへの変化はパワーアップでも何でもないのだ。 むしろ、全ての面において弱体化しており、 その戦闘力は、れみりゃ種の中でも最弱と言っても過言ではない。 しかし、なまじ物珍しく、また肉まんとしてもより肉厚が増えて美味しくなっているため、 ゆっくりを愛好する人間達や、れみりゃの味を知っているゆっくり達から、しばしば狙われ命を落としてしまう。 それを知らず、勘違いしたが故に、このれみりゃ親子の悲劇は起きた。 「おねがいやべでぇぇぇぇ! れみりゃをたべぢゃだべぇぇぇぇぇっっ!」 「「「むーしゃむーしゃだぜぇ~♪」」」 泣き叫び哀願する親れみりゃと、構わずれみりゃの尻尾を食べ続けるゲスまりさ達。 親れみりゃにとって、永遠に続くかと思われた生き地獄は、 断続的な地響きと、その後に続く鳴き声……"とってもエレガントでイケている"と 親れみりゃが苦痛を忘れて聴き惚れた歌によって、遮られた。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』 「だれだぜ! じめんをゆらすのをやめるんだぜ!」 「なんだぜ? だれがうたってるんだぜ?」 「だれだぜ? まりさたちのしょくじをじゃまするのは!」 きょろきょろ左右を見回すゲスまりさ達。 しかし、見えるのは、湖と木と緑と潰れた肉まんと今たべているにくまんと……。 「ゆっ? だれもいないんだぜ?」 「おかしいんだぜ!」 「もういちどかくにんするんだぜ!」 ゲスまりさは警戒を怠らず、3匹がそれぞれ背中を合わせて、死角を無くす。 ゆっくりらしからぬコンビネーションは、この3匹が長年をともにし、 いくつかの修羅場を乗り越えてきたことを示していた。 「……うぅ?」 一方、一時的にとはいえ、解放された親れみりゃもまた、 "エレガントでかっこよくて綺麗な声の"歌の主を、目だけを動かして探す。 『ティ~ガティ~ガティガ♪』 「「「姿をあわらせだぜ!」」」 いらつくゲスまりさ達。 何度みても、そこには異常は確認できない。 見えるのは、湖と木と緑と潰れた肉まんと今たべているにくまんと……。 ……緑? この緑は葉っぱじゃない。 それによく見ると動いている。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』 ゲスまりさ達は、その視界に入っている緑を追って、徐々に顔を上げていく。 同じく、その緑色の存在に気付いた親れみりゃも、つられて瞳を上へ向ける。 そして。 「「「うぶっぼげぇぇぇ!!!」」」 「うーーーーーーっ!!!」 声にならない驚愕の叫びと、まるで神にでも出会ったかの如く感嘆に染まった叫びが、湖畔に重なる。 ゲスまりさと、親れみりゃが見上げた先、 そこには、超巨大ゆっくり・ティガれみりゃの満面のしもぶくれスマイルが広がっていた。 ゲスまりさの視界に入っていた緑色は、ティガれみりゃの足先だったのだ。 『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~~♪』 「げぇぇぇぇぇぇぇっっっ!」 「う~~~~~~~~♪」 ゲスまりさと親れみりゃを見つけ、お得意のダンスを披露するティガれみりゃ。 ゲス達は恐怖で青ざめさせ、親れみりゃは興奮で顔を紅潮させている。 「か、か、か、か……かっこいいどぉーーー!!!」 目をキラキラと輝かせる親れみりゃ。 自分がゆっくりゃザウルスになった時も、鏡を見ては惚れ惚れしたものだが、 いま目の前に立っているれみりゃは、そんな自分から見ても格が違う! 「ま、まさに、かりしゅまだどぉ~~~♪」 ゲスまりさ達に虐められ、子供を目の前で失い、絶望のさなかにあった親れみりゃにとって、 このティガれみりゃの存在は鮮烈だった。 これこそ、自分達れみりゃが目指すべき姿! れみりゃ達の救世主! れみりゃの完成系! れみりゃの最終兵器! れみりゃを終わらせたれみりゃ! 「れみりゃが歩いたばしょなど、このれみりゃはすでに2000年前につうかしてるんだどぉ~~♪」 ……と、錯乱するほどに、親れみりゃは感動を覚えていた。 一方、ゲスまりさ達といえば、 口をパクパクさせたまま動けずにいた。 あまりにも違いすぎる大きさは、それだけで相手の戦意と思考を喪失させる。 まして、こざかしくもこれまで何度かの修羅場を切り抜けてきたゲスまりさ達だったからこそ、 いま目の前にいる巨大なゆっくりが、いかに絶望的な存在かを本能的に察してしまっていた。 本能的な恐怖が体を萎縮させ、ゲスまりさの体を、こおりつかせて動けない状態にさせていた。 『うっ~う~♪ れみりゃとおんなじれみりゃがいるどぉ~♪』 「うーうー♪」 ティガれみりゃに呼ばれたことが嬉しくて、うれしそうに反応する親れみりゃ。 立ち上がり、一緒に踊ろうとして…… 「うっぎゃぁぁっ!」 体の無い部分を動かそうとして痛みがよみがえり、 四肢と尻尾を食べられてしまっていたことを、嫌でも思い出す。 『う~~~?』 そんな親れみりゃの様子を不思議そうに眺めるティガれみりゃ。 やがて、肉餡の脳が、的はずれな答えを導き出す。 『わかったどぉ~♪ おなかがすいてうごけないんだどぉ~♪』 ティガれみりゃは言うや否や、 足下でかたまっているまんじゅうを一つつまみ上げる。 「た、たすけるんだぜ!」 「し、しらないんだぜ、まりさは無関係なんだぜ…」 「そうだぜ、それにきっとそのまりさが一番おいしいんだぜ…」 「ど、どぉじでぞんなごどぉいうんだぜぇぇぇぇっ!!!??」 ゲスまりさは、いかにもゲスらしく、自分のためだけに仲間を売り払おうとする。 『うーー、うるちゃいおまんじゅうだどぉーー』 ティガれみりゃは、つまみ上げたゲスまりさに、少しだけ力を込める。 『うるちゃいと、つかれたれみりゃがたべられないんだどぉー! しずかにしないとたーべちゃうぞー♪』 「ぷぎょげっ!」 ティガれみりゃの指に込められた力に耐えきれず、瞬時にパァーンと弾けるゲスまりさ。 ちょっとしかるだけのつもりでも、ティガれみりゃの力は、普通のゆっくりにとっては致命的な威力となってしまう。 『う~~~♪ れみりゃしっぱいしちゃったどぉ~~♪』 てへっ♪と舌を出しておどけるティガれみりゃ。 「や、やめるんだぜ~~~~!」 二匹目のゲスまりさをつまみあげるティガれみりゃ。 『しぃぃ~~~~だどぉ♪』 ティガれみりゃは、おとなしくするよう告げるが、 生命の危機にさらされた生物が、それでおとなしくなるわけもなく。 「はんすんだぜ! このでかにくまん! まりさよりあっちのまりさの方がおいしいんだぜ!」 「やぁべろぉぉぉ! ぞんなごどいうなぁぁぁぁ!」 『う~、おまんじゅうのくせにれみりゃのいうこときかないなんて、なまいきだどぉ』 いつまでたっても静かにならないゲスまりさ達に、 ティガれみりゃは、ぷくぅ~と頬を膨らませる。 「ぎょえぇ!」 無意識的につい力がこもってしまったのか、ゲスまりさがパァーンと弾け飛ぶ。 『うーーーっ! どぉーしてうまくいかないんだどぉー!』 いらつき、3匹目のゲスまりさをつまみあげるティガれみりゃ。 「や、やめてほしいでございますだぜ…」 卑屈に下手に出るゲスまりさ。 一方、ティガれみりゃはゲスまりさの言葉など聞かず、 ポケットに手を入れガサゴソと動かした後、そのまま空の手を取りだした。 『うっう~~~! すぴあ☆ざ☆ぐんぐにるを、忘れてきちゃったどぉ~~♪』 "れみりゃのおっちょこちょいさん♪"とでも言いたげに、 自分の頭を軽く叩き、頬を赤く染めるティガれみりゃ。 ちなみに、"すぴあざぐんぐにる"とは、 ティガれみりゃがポケットの中にしまって持ち歩き、 ゆっくりを狩る時に愛用する、立ち枯れた木のことだ。 ティガれみりゃは、その木の枝にゆっくり達を突き刺して、 "とくせいゆっくりだんご"を作って食べる習性があった。 「ま、まりさにひどいことすると、ドゲスたちがだまってないんだぜ、わかったらさっさと……」 ゲスまりさは、相変わらずティガれみりゃに自分を見逃すよう説得を続けていた。 しかし、ティガれみりゃ相手にそんな交渉は意味も無く、 「ゆべしっ!」 次の瞬間、押しつぶされて体を四散させていた。 『う? またやっちゃったどぉ♪』 しかたない、それじゃ次のおまんじゅうで……。 ティガれみりゃは足下をみるが、そこには既にゲスまりさはいない。 それはそうだ。 3匹のゲスまりさは、他ならぬティガれみりゃによって殺されたのだから。 『う~~~! これじゃ、れみりゃにごはんをあげられないどぉ~~~!』 鼻の上のあたりを真っ赤にしてジタバタするティガれみりゃ。 『しゃくやーー! はやくれみりゃたちにぷっでぃんもってきてぇーー!』 と、お決まりに、いもしない従者の名前を呼ぶが、当然誰かがくるはずもない。 『うー……』 しかたなく、短い手と膝をつき、顔をよせて、 小さな親れみりゃに話しかけるティガれみりゃ。 『うー、ごめんだどぉ。おまんじゅうなくなっちゃたんだどぉー』 ティガれみりゃは詫びるが、 それに対して親れみりゃの方は全く気にする素振りもない。 それどころか、自分達をいじめたあの3匹のゲスまりさを、 まったく寄せ付けず倒してしまった強さに、ただただ感動していた。 「うーうー♪ れみりゃは気にしないどぉー♪ それより助けてくれてありがとうだどぉー♪」 『う~~? いいのぉー?』 ティガれみりゃからすれば、別に助けたつもりもなかったので、 ただただ自分のミスを許してくれて、おまけに何故か御礼を言われたことに気分を良くする。 『うー♪ ちっちゃなれみりゃは優しい良い子だどぉ♪ れみりゃは、れみりゃにごほうびをあげたいどぉー♪』 「うっ? ごほーび?」 『そうだどぉ♪ なんでも言ってねぇ~♪』 うっふんとウィンクし、 うんしょ、うんしょと立ち上がるティガれみりゃ。 「……うぅー」 親れみりゃは考える。 そして、自分の置かれた立場を思い出した。 迷子になってしまったこと、子供を失ってしまったこと。 次々に悲しみがよみがえってきて、自然と涙が流れてくる。 『うーっ! どぉーしたんだどぉ?』 「うーーー! うーーー! うーーー!」 『う~~、れみりゃに泣かれると、なんだかれみりゃもかなしくなるどぉ~~』 困ったような笑顔のまま、ティガれみりゃは目尻にうっすら涙を浮かべる。 「……う~、れみりゃ、おうちにかえりだいどぉ」 嗚咽をすすりながら、親れみりゃは口を開く。 そう、おうちへ帰ろう。 そして、ぷっでぃんを食べて、さくやに慰めてもらって、ふかふかのベッドで眠ろう。 親れみりゃは、それだけを強く願い始める。 『う~~♪ わかったどぉ~~♪』 「うっ?」 『れみりゃがいっしょにおうちを探してあげるどぉ♪』 ティガれみりゃは、潰さないよう、優しく手の平の上に親れみりゃを乗せ、 自分の顔の前へ持ってくる。 至近距離で互いの顔をじっと見つめ合う、ティガれみりゃと親れみりゃ。 『う~~♪ ちっちゃいれみりゃだどぉ~~♪』 「う~~♪ おっきぃれみりゃだどぉ~~♪」 自然と笑顔になる、ティガれみりゃと親れみりゃ。 『うっうー♪ ちっちゃいれみりゃもかわいいどぉー♪』 「うっうー♪ おっきぃれみりゃもかっこいいどぉー♪」 互いを褒め合い、たたえ合う2人(?) ティガれみりゃは、親れみりゃを自分の頭の上に乗せる。 「う~! すっごい高いどぉー! 風がきもちいいどぉー♪」 痛みも忘れ、喜ぶ親れみりゃ。 実際、既に手足はだいぶ再生しており、 ふりおとされないようティガれみりゃの頭にしがみつくくらいのことはできるようになっていた。 最弱といえど捕食種れみりゃ。ゆっくりゃザウルスとなっても再生力は健在である。 『うー、それじゃいっくどぉー♪』 「うーっ♪」 よったよったのしのし。 よったよったどったどった。 頭の上にゆっくりゃザウルスを乗せて、 ティガれみりゃは湖に背を向けて、森を進んでいく。 ……紅魔館は、湖の対岸にあるのだが、 そんなことはティガれみりゃも親れみりゃも知らなかった。 2人はそろって楽しげに、うぁうぁダンスのリズムを取り始める。 『「うーうーうぁうぁ♪ うーうーうぁうぁ♪」』 楽しげに歌って踊るうち、親れみりゃは、 自分の中に芽生えつつあった嫌な疑問を払拭しはじめていた。 疑問。 それは、あのゲスまりさ達がたびたび口にした内容。 "れみりゃ達はおぜうさまではなく、たべられちゃうにくまんなの?"という不安。 けれど、そんなのは気のせいだ。 あのいじわるなゆっくり達がウソをついたに決まっている。 (だって、こんなにも可愛くて強いティガれみりゃが、にくまんなわけないもん!) 親れみりゃは、強く確信し、ティガれみりゃにあわせて快心のリズムを刻んでいく。 『ティガ☆』 「れみ☆」 『りゃ☆』 「うー♪」 『「にぱぁ~~~♪」』 にぱぁ~のタイミングでティガれみりゃと親れみりゃは、 その下ぶくれスマイルを最高に輝かせた。 あまりにも歌も踊りも素敵だったから、気持ちよくて楽しかったから、 だから2人は気付かなかった。 ティガれみりゃの進む先、空中を浮遊する1人の少女の姿を。 人とも妖怪とも違う、もっと強くもっと恐ろしい、幻想郷からは本来姿を消した存在。 甘ったるい桃ばかりに飽きて、塩からいツマミを探していたその"鬼"の存在に。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ4・誇りをかけた試練(後編)』 ============================ (あとがき) どうも、ティガれみりゃ第三回です。 すみません、ちょっと長くなってしまったので前編後編わけました。 ……というか、風邪をこじらせてしまいまして、 そろそろ意識が朦朧としてきたので、とりあえずここで区切らせていただきます。 (ほんとはこの先が書きたくて、このエピソード作ったのにorz) それと、本当にどうでも良いことではあるんですが、 そろそろモンハンが元ネタのタイトルが尽きてきました……。 byティガれみりゃの人 ============================ 続 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/524.html
前? さて。 小一時間ほど休憩したところで、俺はゆっくり魔理沙へのお仕置きを再開することにした。 残る赤ちゃんゆっくり霊夢は四匹。 赤ちゃんゆっくりアリスを喰らって空腹感を満足させた姉妹たちは、家族が殺されたにも関わらずに箱の真ん中でのんびりと昼寝をしていた。 やれやれ、自分たちの立場が分かっているのかね? ゆっくり魔理沙は相変わらず大きさに合わない小さな箱に圧縮されて息苦しそうにしながら、殺された姉妹のことを思い出しているのか、現在の状況を振り返っているのか、ゆぐゆぐと嗚咽を洩らしていた。 その表情、たまらん。 俺の愛するゆっくり霊夢は猿轡を噛まされながら沈んでいる様子だった。 もうちょっとだけ我慢してほしい。 すぐ終わるからさ。 「おーい、起きろー」 俺は姉妹の箱を両手で持ち、がたがた揺らした。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちは驚いて跳ね起き、混乱した頭で四方八方に飛び回る。 「ゆっ、じしんだよ!?」 「ゆゆゆ、すごいゆれてるよ!」 「ゆっくりできないよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっくりさせてえええええぇぇぇ!!!」 ああっいい! いいよその表情! 悲鳴! ゾクゾクする! 俺は悦に浸りながら振動を止め、ゆーゆー泣き出した姉妹たちににっこりと笑いかけた。 「やぁ、起きたかい?」 「ゆっ、おにいさん!?」 「いまのはおにいさんがやったの!?」 「れいむたちのおひるねのじゃましないでね!」 「おにいさんとはゆっくりできないよ!」 相変わらず自分たちの立場を理解していない上から目線。 こいつらにもう少し知能があれば、第二のペットにしてやるのに…… とりあえず怒りの矛先が俺に向けられるのは何となく申し訳ない気分になってしまうので、責任を転嫁させてもらうことにしよう。 「悪いね。君たちのお母さんに、君たちをゆっくりさせるなと頼まれたんでね」 「ゆっ!?」 姉妹たちが母親を見る。 ゆっくり魔理沙は寝耳に水の衝撃発言に呆気に取られて反応が遅れる。 そりゃそうだろう。いきなり自分の名を出され、しかも事実無根の罪を被せられたのだから。 いやまぁ、事実無根の罪を被せるのは今に始まったことではないけど。 当然のように、ゆっくり魔理沙は否定の言葉を口にしようとする。 「うそだよ! まりさはそんなこと言わないよ!」 「って、言ってるけど、信じる?」 普通のゆっくり家族なら、母親を信じ、俺をなじる。 だが、この家族は既に普通の家族ではない。 俺がそうした。 「うそいってるのはおかあさんのほうだよ!」 「れいむたちをゆっくりさせないなんてひどいおやだね!」 「もうおやじゃないよ! おねえちゃんたちをころしたわるいゆっくりだよ!」 「わるいゆっくりはゆっくりしね!」 「「「ゆっくりしね!! ゆっくりしね!!!」」」 もう何度目になるか分からない、ゆっくりしねコール。 憤怒と憎悪が込められたそれは、本来決して母親に向けられるべきものではない。 しかしこの赤ちゃんゆっくりたちにとって、目の前のゆっくり魔理沙が既に母親でもなんでもなかった。 姉妹を見殺し。 食事を独り占め。 昼寝すら邪魔をする。 果たして、こんな自分たちをゆっくりさせないゆっくりが存在していいのだろうか。 否。 母と呼んだ存在はもう記憶の彼方に抹消した。 目の前にいるのは『敵』だ。 自分たちのゆっくりを脅かす敵なのだ。 ――なんと素晴らしい、明後日の方向に捻じ曲がってしまった的外れの怒りか! 俺は感動の涙と笑いが同時に来てしまい、思わず顔を背けてしまった。 こいつら面白すぎる。 「ゆっくりしね!」 「ゆっくりせずにしね!」 「おにいさん、あのまりさをころしてよ!」 「そうだよ! れいむたちがゆっくりできるようにまりさをころして!!!」 おおぅ、とうとう俺にまでお願いし始めた。 いかなる手段を用いても、目の前に鎮座して姉妹たちをいじめては喜んでいる(そう赤ちゃんゆっくりたちには見えている)ゆっくり魔理沙を排除したいのだろう。 で。 その対象、極めて冤罪(いや罪はあるか)を多くかけられているゆっくり魔理沙はというと、 「な゛んでぞんな゛ごどい゛う゛の゛おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 やっぱり咽び泣いていた。 休憩を挟んだおかげで、体力や気力は少し持ち直したらしい。廃人……いや廃ゆっくりにはまだならずに済みそうだ。 いいねいいねー。 泣くゆっくりはやっぱり可愛いな! 涙を流して必死な表情のゆっくりだけを集めた家に住めたら俺死んでもいい。 管理が大変なんで自分ではやらないけどさ。 これでも現実は見ているつもりである。 「では、準備があるので少々お待ちを」 俺は牙を剥いて(比喩)ゆっくり魔理沙を威嚇している姉妹たちを置いて一旦外に出た。 太陽はまだ昇ったばかりで、気温はまだまだ涼しいとは言い難いが、それでも日中の熱気に比べれば大分緩やかだ。 なんか濃密な時間を過ごしたせいで、もう昼間になってた気がしていたんだが……まだ八時といったところか。 俺は加工所で購入した二つの箱のうち、赤ちゃんゆっくりアリスが入っていたほうではないもう一つの大きな箱を手に取った。 大きいといってもサッカーボールが収納出来る程度の大きさである。 木造の箱は中身が暴れているせいか、ごとごと揺れていた。 活きがいいな、これなら期待出来そうだ。 俺は箱を持って家に戻ると、わざと音を立てて床に箱を置いた。 予想通り、好奇心旺盛な赤ちゃんゆっくり霊夢たちが先程までの怒りをすぐに消し、興味津々に眺めだす。 「ゆっ、なにそれ?」 「ゆっくりできるの?」 「ゆっくりしていってね!」 うむ、ではご期待に添えようじゃないか。 俺は全員の注目が集まっていることを確認すると、勢いよく箱の蓋を開いた。 途端、 「うー!」 中からゆっくりれみりゃが飛び出し、家の中を羽ばたきだした。 赤ちゃんだったゆっくりアリスとは違い、こちらはちゃんと成人(成ゆっくり?)したサイズである。 無論、赤ちゃんゆっくり霊夢など一口で食い殺してしまうだろう。 突然の捕食種の登場に、赤ちゃんゆっくりたちは目に見えて怯えだし、固まってぶるぶる震えだした。 「ゆ、ゆーっ!!?」 「れ、れみりゃだ、こわいよー!」 「ゆっくりできないよ、たすけてーっ!!!」 「れいむたちはおいしくないよぉぉぉ!!?」 ゆーゆー泣き出す姉妹たち。 くはっ、萌え狂う! っと、鼻血を出している場合ではない。 「れ、れみりゃはあっち行ってね! まりさたちに近付かないでね!」 ゆっくり魔理沙は身動き出来ないながらも、必死にれみりゃを追っ払おうと睨みつけている。 ゆっくりれみりゃを怖がるのは何も赤ちゃんだけではないからな。 俺のマイスウィートラブリーエンジェル・ゆっくり霊夢も怯えて固まってしまった。 ああごめんよ、我慢してね。 俺はゆっくりれみりゃが入っていた箱の底からスプレー型の小瓶を取り出すと、ゆっくり霊夢の箱に小瓶の中身をしゅっと吹きかけた。 「う、うぁー!?」 卑しくもこの中で一番丸々太っていて美味しそうなゆっくり霊夢の周囲を旋回していたゆっくりれみりゃは、霧状の粉末がゆっくり霊夢の箱に飛び散るのと同時に慌てて離れだした。 あぅ、泣き顔のれみりゃもかわええのぉ。 でも胴体付きは駄目だ。流石の俺もあれだけは可愛がれねぇ。 紅魔館の周囲にはあの豚どもがうようよ生息してるのか……あまり想像したくない光景だな。 そういえば咲夜さんも駆除が追いつかないって俺に愚痴を洩らしていたな……って、今はそんなことどうでもいいか。 「えー、注目。このスプレーはゆっくりれみりゃが嫌がる香りを吹き付ける優れものです。これがあればゆっくりれみりゃには襲われません」 「ゆっ!? じゃあはやくれいむたちにちょうだい!」 「ゆっくりしないでいそいでかけてね!」 スプレーの説明をすると案の定、助かりたい一心の赤ちゃんゆっくりたちが騒ぎ出す。 俺はそれを無視して、ゆっくり魔理沙を入れた箱にスプレーを吹きかけた。 「あ、あかちゃんたちも助けてあげてね!」 ゆっくり魔理沙は子供に責められてボロボロになりながらも、それでも子供たちを助けてやってくれと哀願してくる。 うーん、ゆっくり魔理沙にしているのが勿体無いくらい家族思いのやつだ。 二週間前、仲間が殺されたのをケロっと忘れたゆっくりと同一人物とは思えんぞ。 まぁ、箱の中にいる限りスプレーがあろうとなかろうと助かるって分かってない辺りが、ゆっくりのゆっくりたる所以なのかもしれないが。 ああでも香りが付けばゆっくりれみりゃが近寄らなくなるので、その分心労は減るかもな。 「さて、最後はこれだな」 俺は姉妹たちの箱にスプレーを吹きかけた。 途端、安心したようで赤ちゃんゆっくり霊夢たちは大はしゃぎする。 「ゆー♪ これでもうあんしんだね!」 「れみりゃをこわがらなくてすむね!」 「やーいやーい、れみりゃのばーか!」 中にはゆっくりれみりゃを小馬鹿にした顔で貶すゆっくりまで出る始末。 ゆっくりれみりゃは悔しそうに、だけど近づけないのでうーうー遠くから唸っていた。 このうーうーってやつ可愛い。 「とりあえず、これで箱は全て安全地帯となったわけですが」 自分自身にもスプレーを吹きかけ、俺は姉妹たちの箱の前に立つ。 「でも、君たちにスプレーが直接かかったわけじゃないから、箱の外に出ると安全ではなくなるわけです」 「……ゆ?」 「そ・こ・で」 俺は邪悪……もとい天使の微笑みを浮かべて、 「君たちのうち、三匹をそこから出してあげます」 「ゆ、ゆーっ!?」 赤ちゃんゆっくりたちはにわかに騒ぎ出した。 「や、やめてね! れいむたちをここからださないでね!」 「え、なんで? あれだけ出たいって言ってたじゃないか、良かったね!」 「よ、よくないよーっ!?」 「そとにでたられみりゃにたべられちゃうよ!」 「おにいさん、れいむたちをそとにだすまえにれみりゃをゆっくりなんとかしてね!」 「ごめんね! お兄さんじゃゆっくりれみりゃには勝てないんだよ!」 激嘘。 「でも大丈夫! 君たちにはチャンスがあるよ!」 「な、なに!?」 「ゆっくりしないでいってね!」 「今からゆっくり魔理沙に問題を出します。君たちがゆっくりれみりゃに捕まる前に回答することが出来たら、君たちを解放してあげるよ!」 つまりは今までと同じである。 当然、 「ゆっ、それはだめだよ!」 「おかあさんはれいむたちをころそうとしてるもん!」 「おかあさんじゃゆっくりできないよ!」 「おかあさんはころしていいかられいむたちをたすけてね!」 反発が起こる。 今まで助ける機会がありながらも問題に答えず、姉妹たちを見殺しにしてきた母。 今更そんなゆっくりを信用出来るはずがない。 「ぞん゛な゛ごどな゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉ!!! ま゛り゛ざはぢゃんどれ゛い゛むだぢを゛だずげる゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 そして、こちらは信頼を裏切り続けるゆっくり魔理沙。 答えられるはずもない無理難題を押し付けられ、逆恨みを買いまくっているあまりにもゆっくり出来ない哀れな存在。 激しく嗜虐心をそそります、はい。 ぶっちゃけ、そろそろ子供たちを見捨ててもいいと思うんだ。 愛しているのに、その愛が全然、まったく、これっぽっちも伝わらない悲しさ。 同情を買う? いいえ、滑稽です。 「残念ながらルールの変更は認められません。精々、ゆっくり魔理沙が回答に辿り着けることを祈っていてください」 「そんなのしんじられないよ!」 「どうせおかあさんじゃこたえられないよ!」 赤ちゃんゆっくり霊夢たちが発言するたびにゆっくり魔理沙の心がザクザク傷付けられていく。 最っ高! 「何を言っても駄目でーす。それではゲーム、スタート!」 「「「「ゆ、ゆっくりしていってよー!?」」」 「お、おねえちゃーん!!!」 俺は四匹のうち、末っ子だけを残して、三匹を外に出した。 するとすぐに、空腹でイライラと部屋中を飛び回っていたゆっくりれみりゃが、歓喜の表情で突撃してきた。 「ぎゃおー! たーべちゃうぞー♪」 「や、やだぁー!!!」 「ゆっくりやめてね!!!」 「ゆ゛っぐりでぎな゛い゛よ゛お゛お゛おぉぉぉぉぉ!!!」 赤ちゃんゆっくりたちは涙目ながらも生存本能からか高速で散開。勢いを止められず、ゆっくりれみりゃは先程まで三匹がいた床に激突する。 「う、うわぁー!!!」 泣き出すゆっくりれみりゃ。 か、かわえぇ! っと、見とれている場合ではない。 このままでは不公平だしな。 俺はゆっくり魔理沙に向き直った。 「では問題です」 「は、はやく出してね!」 「いやいや、遠慮すんな。いつも通りゆっくり答えろよ」 「ゆっくりできないよ!!! はやくもんだい出してね!!!」 俺の後ろでゆっくりれみりゃに捕獲されないよう、必死に逃げ惑う子供たちの姿が見えているのだろう、ゆっくり魔理沙が俺を急かす。 やれやれ、仕方無いな。 「では問題です。『れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!』これを千回言ったら子供たちを助けてあげるよ」 あ、『問題』じゃねーやこれ。 まぁいいか。 ゆっくり魔理沙は驚いて目を見開いていた。 「そ、そんなこと言えないよ!」 「じゃあ、赤ちゃんをゆっくりれみりゃに食われるのを黙って見てるんだな」 「そ、それはだめだよ!」 「じゃあ言うんだ。途中でつっかえたりしたら、もう一度初めからやり直しだからな」 「ゆっ……」 諦めたように瞼を閉じ、ゆっくり魔理沙は息を吐き出した。 言いたくない台詞を言わなくてはいけない葛藤。 だが、それでも親の愛が勝るのだろう。 ゆっくり魔理沙は大声を上げた。 「れ……れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」 「おーいお前ら、お母さんがこんなこと言ってるぞー!」 「ゆっ!?」 突然赤ちゃんたちに話を振る俺に驚くゆっくり魔理沙。 ブランコや滑り台などの遊具を使って必死に逃げ惑っている赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、突然の母の暴言にまたも怒りを曝け出す。 「な゛ん゛でぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」 「やっばり゛おがあ゛ざん゛じゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛っぐり゛じね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 「ち、ちがうよ! おかあさんはれいむたちをたすけようと」 「はいアウトー! 規定の台詞以外の言葉をしゃべったのでもう一度最初からね!」 「ゆっくり!?」 そう、これはどれだけなじられようともゆっくりれみりゃに自分の子供を差し出す台詞を言い続けなければならない拷問。 今頃それに気付いたのか、ゆっくり魔理沙の瞳から涙が止め処なく溢れ出した。 「ひ、ひどいよぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざだぢがな゛に゛をじだのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「シチュー落っことしたじゃねーか」 もう忘れたのかよ。 「ほら、早く言わないと千回言い終わる前に子供たちが全員食べられちまうぞ?」 「ゆ……」 再びの葛藤。 だがやらないと子供は助からない。 ゆっくり魔理沙は泣き顔で、もう一度言葉を繰り返し始めた。 「れ、れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」 「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「れ゛み゛りゃはまりざのあがぢゃんをゆっぐりだべでいっでね! れ゛み゛り゛ゃはま゛り゛ざの゛あがぢゃん゛をゆ゛っぐり゛だべでい゛っでね゛っ゛!!」 糾弾され、涙声になっても、今度は言葉を止めずに言い続けるゆっくり魔理沙。 この全てに絶望したような顔、素晴らしい! これだからゆっくりいぢりは止められないのだ。 さて、ではそろそろ赤ちゃんゆっくり霊夢たちのほうに視線を移してみよう。 「うー! うー!!」 「こっちにこないでねぇぇぇ!!?」 「れいむっ、こっちだよ、はやく!」 「ゆっ、ありがとうおねえちゃん!」 成体のゆっくりれみりゃじゃ潜り抜けられないようなブランコや滑り台の小さな隙間を使い、上手く攻撃をかわしている。 なかなかやるなぁ。もしかしたらペット用ゆっくりになれる素質の持ち主かも。 対するゆっくりれみりゃはかなりご機嫌斜めのようだった。 自分より格下の存在であるゆっくり霊夢、しかも赤ん坊をなかなか捕食出来ないのだから当然だろう。 しかも加工所からここまで、何も食べていないのだ。空腹も怒りに拍車をかけている。 考えなしに広い場所へ行かず、真っ先にこの場所へ陣取った姉妹たちの作戦勝ちといったところかな。 ……まぁ、実はゆっくりれみりゃが嫌がる香りを浴びた箱にぴったりくっついていれば、このゲーム楽に勝てたりするんだけどね。 そこに気付かない辺りは、やはりゆっくりといったところだろう。 「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね……れみりゃは……」 呪詛のようにぶつぶつ呟き続けるゆっくり魔理沙。 その声は、ここにいる全てのゆっくりに聞こえている。 逃げ惑うゆっくり姉妹たちはゆっくりれみりゃの攻撃を避けながら、ずっとその言葉を聞き続けていた。 母でありながら自分たちの死を願う、その言葉を。 何度も、何度も。 そして。 ついに一匹の赤ちゃんゆっくり霊夢が、キレた。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!! う゛る゛ざぐでゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 リボンの番号を見るに三女か、赤ちゃんゆっくり霊夢3が怒りに頬を膨らませてゆっくり魔理沙の元へ走り出した。 どうにかしてゆっくり出来ない声を止めようと考えたのだろう。 しかしそれは、なんという自殺行為。 「うー♪」 「おね゛え゛ぢゃん、に゛げでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「……ゆっ!?」 周囲に障害物はない。 身を隠す場所は、何も無い。 ゆっくりれみりゃはこの上なく無邪気な笑顔を浮かべ、何も遮るもののない赤ちゃんゆっくり霊夢3までの距離を、高速で飛翔し零とした。 妹の悲鳴に赤ちゃんゆっくり霊夢3が振り向けば、そこには眼前にドアップで迫るゆっくりれみりゃの姿。 「うー!」 「ゆゆゆ、ゆっくりまっ……ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 頭上へと昇ったゆっくりれみりゃは、その身体を急降下させて赤ちゃんゆっくり霊夢3を押し潰した。 飛び散る餡子。 平べったくなった饅頭の肉体。 「れ゛い゛む゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆ゛……ゆ゛べっ……」 姉の悲痛な悲鳴。 それに身体を弱々しく震えさせながら、反応する赤ちゃんゆっくり霊夢3。 大量の餡子を吐き出しながら、それでも赤ちゃんゆっくり霊夢3は生きていた。苦しそうに呻きながら、必死に現在の状況から逃げ出そうともがいている。 無論、それを見逃すほど、ゆっくりれみりゃは捕食種としてお人好しではない。 「うっうー♪ たべちゃうぞー♪」 「ゆびゅぅ!? れ、れ゛い゛む゛のがら゛だをだべな゛い゛でねっ!?」 赤ちゃんゆっくり霊夢3の頬に齧りつくゆっくりれみりゃ。そのまま少しずつ、ゆっくりと味わうように咀嚼していく。 皮が千切れ、餡子が溢れ出る都度、赤ちゃんゆっくり霊夢3は絹を裂くような悲鳴を上げる。 「や゛め゛でぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「うー♪」 しかしその悲鳴も、ゆっくりれみりゃにとっては食事を彩る調味料としかならない。 いや、それとも、ゆっくりの悲鳴など鼻から耳に届いていないのか。 兎にも角にもゆっくりれみりゃは上機嫌で、赤ちゃんゆっくり霊夢3の身体を全て完食してしまったのだった。 「ま゛、ま゛り゛ざのあがぢゃぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん゛!!!」 ゆっくり魔理沙は耐え切れず、慟哭の涙を流した。 自分の言葉のせいで、子供が死んでしまった。 その嘆きは如何ほどのものなのだろうか。 ……まぁ、それはそれとして。 「はいアウトー。指定された言葉以外の発言をしたからもっかい最初からねー」 「ゆっぐ!?」 ゆっくり魔理沙はしまった、といった風に目を見開いた。 そう、これは子供が食べられてしまっても、自制しなければならない罠でもあるのだ。 ゆっくり魔理沙は少し先のことも考えずに本能のまま行動してしまった結果、ただでさえ少ない救出の確率を更に下げてしまったのだ。 慌てて再び「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言うが、もう遅い。 先程までの70回くらいは全てパーだ。 「うっうー♪」 ゆっくりれみりゃは口の周りに餡子を付けながら、上機嫌に羽根を広げて舞い上がる。 そして先程残してきた姉妹、残り二匹の元へと向かった。 「お゛ね゛えぢゃんがぁぁぁ……」 「ゆっ!? ゆっくりしてたらたべられちゃうよ! ここからはなれようね!」 ゆっくりれみりゃの接近に気付いた赤ちゃんゆっくり霊夢1は姉の死にぐずぐず泣き崩れる妹のリボンを加えて、滑り台の下へと引っ張る。 間一髪。ゆっくりれみりゃの牙は赤ちゃんゆっくり霊夢5を傷付けることなく、逆に超スピード(といってもあくまでもゆっくり基準なのだが)のまま滑り台に激突し、顔面の激痛で大粒の涙を零した。 「う、うぁー! うぁー!!」 顔を真っ赤にして泣き叫ぶゆっくりれみりゃ。頬ずりしたい。 姉妹はその様子を確認すると、今度はブランコの方に移動を開始した。 気付いたゆっくりれみりゃも、ふらふらと後を追う。 「ゆっ、おいかけてきたよ!」 「だいじょうぶだよ! ゆっくりまかせてね!」 心配そうな妹の声に力強く頷き、赤ちゃんゆっくり霊夢1は前方にぶら下がったブランコを口に加えてずりずりと後退し、限界まで引っ張ると口を離した。 勢いよく吹き飛んだブランコは、無防備に近付いてきたゆっくりれみりゃへと一直線に激突する。 ばしん、という思わず目を背けてしまう光景と音。 「うぁーーー!!!」 余程痛かったのだろう、弾き飛ばされたゆっくりれみりゃは、地面にへばりついてわんわんと泣き出してしまった。 萌ゑる。 一方、捕食種への反撃が見事に決まった姉妹たちは、大喜びで飛び跳ねていた。 「ゆっゆっゆー♪ おねえちゃん、すごーい!」 「ゆゆーん♪ ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでいってね!」 二匹して勝利のダンス。箱に取り残されている末っ子ゆっくりも遠目に見える姉妹の活躍にはしゃいでいた。 しかし、勝利の美酒に酔いしれる三匹の餡子脳は、まだ死神が遠のいていないことに気付いていなかった。 突如。 頬をすり合わせて喜びを表現していた姉妹の片方、赤ちゃんゆっくり霊夢3が、赤ちゃんゆっくり霊夢1の眼前から一瞬で消失した。 「…………ゆ?」 赤ちゃんゆっくり霊夢1は何が起こったのか、一瞬では理解出来ない。 妹は何処へ行った。 と。 視界の端に、引っかかるものがあった。 黒い、点々とした影。 それが、何処かへと続いている。 赤ちゃんゆっくり霊夢1は無意識に、その黒い影の先へ視線を移した。 そして。 妹は、そこにいた。 「……」 物言わぬ亡骸となって。 大量の餡子を撒き散らしながら。 「ど、どお゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」 泣きながら妹に駆け寄ろうとする赤ちゃんゆっくり霊夢1。 刹那、 ごぅん! 一迅の風が舞う。 赤ちゃんゆっくり霊夢1の頬をかすめ、ブランコが眼前を通り過ぎ、また戻っていった。 餡子を少量、付着させて。 ――つまり、なんだ。 妹は、ブランコとぶつかって、死んだ。 ブランコを動かしたのは自分。 だから。 妹を殺したのは。 「あ……ああぁ……あ゛あ゛あああ゛ああ゛あ゛あああ゛あああ゛あ゛あぁぁ゛ぁ゛あ゛ぁあ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あ゛ああ゛ああ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁ゛あぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢1はこれでもかというくらいの大声量で悲鳴を上げた。 生まれてからずっと一緒にゆっくりしてきた妹。 それが、死んだ。 自分が殺してしまった。 ゆっくり出来なくしてしまった! 赤ちゃんゆっくり霊夢1は半狂乱になり、しっちゃかめっちゃかに周囲を飛び跳ね、奇声を上げながら床に自分の身体をぶつけ始める。 身体の痛みで、心の痛みを少しでも和らげようとしているのだろうか。 だけど、そんな余裕でいいのかな? 「うー!!!」 ようやく泣き止んだゆっくりれみりゃが、逆襲のために赤ちゃんゆっくり霊夢1の下へと向かう。 悲嘆に暮れて自傷を繰り返す赤ちゃんゆっくり霊夢1は、それに気付かない。 箱の赤ちゃんゆっくり霊夢7は立て続けに姉を失い、泣き叫んでいたため反応が遅れる。 ゆっくり魔理沙は目を瞑って同じ言葉を繰り返す機械のようになってしまっているため、既に見えていない。 「あ゛ぁあ゛あぁ゛ぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛ああ゛……ゆ゛っぐり゛ぃ!?」 「うっうー!!!」 ゆっくりれみりゃは飛び跳ねる赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭を見事にキャッチすると、加速を付けたまま壁に投げつける。 思ってもみなかった突然の激痛に、赤ちゃんゆっくり霊夢1は正気を取り戻して悲鳴を上げた。 「い、い゛だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!!」 口から餡子を吐き出しながら苦しみ悶える。 ゆっくりれみりゃはそんな赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭上に陣取り、赤ちゃんと比較して三倍以上もある大きさの身体でプレス攻撃を仕掛けた。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 絶叫。 ゆっくりれみりゃはその声に満足した様子で、またプレス攻撃をする。 何度も、何度も。 「や゛めでぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛お゛お゛おお゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」 明らかに殺すことが目的ではない手加減した攻撃。 食べるためではなく、苦しめるためだけの攻撃に、赤ちゃんゆっくり霊夢1はただひたすら泣き叫ぶ。 苦しい。 痛い。 助けて。 そういった感情が、見ている俺のほうにも伝わってくるようだ。 だけど、ゆっくりれみりゃは攻撃の手を休めない。 もうそろそろ死ぬ、といったところでプレス攻撃を止め、赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭に齧り付き、中の餡子を吸い上げ始める。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃ!!! や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! れ゛いむ゛のあ゛ん゛ごずわな゛いでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 身体の中身がどんどん失われていく感覚。 段々と、赤ちゃんゆっくり霊夢1の顔から生気が抜け落ちていく。 しかし後ちょっと、というところで、ゆっくりれみりゃはまた動きを止めた。 今度は赤ちゃんゆっくり霊夢1の身体に自分の身体を押し付け、直にそのまま押し潰そうとする。 先刻のプレス攻撃と比べて、一瞬の激痛が何度も往復するのとは違う、永劫に感じられる苦しみが続く拷問。 激しい圧迫感、赤ちゃんゆっくり霊夢1は瀕死で朦朧としているが、痛みにびくんびくんと身体を震わせる。 もう悲鳴を上げる元気もないのだろう。 ただ、掠れた呻き声を上げながら、苦痛の涙でぐしょぐしょになった顔を激痛で更に歪ませるだけ。 やがて赤ちゃんゆっくり霊夢1は耐えられる限界を超え、身体のあちこちから餡子を撒き散らせながらぷちっと潰れ、絶命した。 「うっうー♪」 ゆっくりれみりゃは大勝利、とばかりに軽快に飛び回る。 復讐を完遂させて満足なのだろう。 幸せそうな笑顔で、飛び散ったゆっくりの死体をぱくぱくと食べ始めた。 「うー♪ うまうまー♪」 「お゛ね゛ぇぢゃん゛だぢがぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ぁぁ!!!」 その光景を見て、滂沱の涙を流すのは箱に閉じ込められ、唯一死亡を免れた姉妹の末っ子。 その泣き顔にクるものを感じながら、俺は未だに「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言い続けているゆっくり魔理沙の箱を蹴り、言ってやった。 「おい、もういいぞ」 「……ゆっ?」 「もう全員死んだ。良かったな、お前の言ったとおり食べて貰えて」 「……う゛わ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛あ゛あぁぁぁ!!!」 ああ、いい。 何度聞いても、ゆっくりの絶望の悲鳴というものはいいものだ。 その後、俺はゆっくりれみりゃを捕まえ、元々入っていた箱に再び閉じ込めた。 こいつにはまだ用がある。後でまた出してやるからな。 で。 七匹もいた赤ちゃんゆっくりたちも、ついに残すところ一匹だけとなってしまった。 可哀想なのでこいつだけ森に返してやろう……なんて気はない。 だが、そろそろゆっくり魔理沙も精神が限界に来ている。 さっきから「燃え尽きたぜ……真っ白によ……」みたいな感じでボケーっとしている姿は、誰が見ても廃人一歩手前だ。 壊れると、楽しみがなくなってしまうからな。 なので、いい加減子供と再会させてあげることにした。 ゆっくり魔理沙と赤ちゃんゆっくり霊夢7を箱から出してやる。 感動の親子の再会だ(いや、ずっと顔は見えていたが)。 「れ……れいむ……れいむぅぅぅ!!!」 子供の姿が手に届く場所にあると認識したゆっくり魔理沙は、もう離さないとばかりに赤ちゃんゆっくり霊夢7に駆け寄った。 色々辛いこともあったが、これからは二人仲良くゆっくりしていこう! そんな感じで喜色満面の笑顔を浮かべている。 だが。 「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆっぐりぃぃぃぃ!!?」 突然、娘に腹の部分(?)を噛み付かれ、悲鳴を上げた。 「な、な゛にずるの゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」 所詮プチトマト程度である大きさの赤ちゃんゆっくりに噛み付かれた程度、成長してバレーボール程度になった成人ゆっくりにとって箪笥の角に小指をぶつけたくたいの痛みでしかない。 だが、相手が自分の娘というのなら話は別だ。 身体の痛みより、心の痛みのほうが何倍も自分を傷付けることだろう。 「う゛る”ざい゛! ゆっぐりじねぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!!! や、やめてねっ!!! お母さんのからだを食べないでねっ!!!」 「お゛まえな゛んが、お゛があざんじゃな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!!」 痛みにぶんぶん身体を捩じらせ、振りほどこうとするゆっくり魔理沙。 だが怒りに濡れる瞳の赤ちゃんゆっくり霊夢7は、死んでも離さないとばかりに噛み付くのを止めない。 そこにいるのはゆっくりすることなどもはや眼中にない、憎悪の塊。 自分の姉妹全員を悉く皆殺しにして悦に浸っている母を抹殺しようとする怒りの権化。 俺が誘導したとはいえ、なんという勘違い。なんという思い込み! 感動しすぎてちょっと涙が出てきた。 「ぢがう゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ!!! お゛があざんはれ゛い゛むだぢを゛だずげよ゛う゛どじだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!?」 「う゛ぞづぎま゛りざはゆ゛っぐり゛じな゛いでじねぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 「い゛だぁ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁっ!!? い、い゛……い゛い゛がげんに゛゛じでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛べぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!?」 お、ついに堪忍袋の尾が切れたのか、ゆっくり魔理沙が怒声を上げた。 力強く跳躍して自分の皮ごと強引に娘を吹き飛ばすと、今までの鬱憤を晴らすかのごとく、赤ちゃんゆっくり霊夢7に体当たりを仕掛ける。 「ま、ま、まりざがどれだけくろうしたのか、分かってるのぉぉぉ!!?」 「ゆぎぃぃぃぃぃ!!?」 「それなのに、み、みんなでゆっくりしねって……そんなのひどすぎるよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「やめでぇぇぇぇ!!! れ゛いむのあん゛ごはみでぢゃうよ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「まりざ、もっどゆっぐりじだがっっだのにぃぃぃぃ!!! れいむだぢがぁぁぁぁぁ!!!」 「いだいよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!! ごめ゛んなざい゛ずる゛がらゆ゛る゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 何度も何度も体当たりされて吹き飛ばされる赤ちゃんゆっくり霊夢7は、もう自力で動けないくらい重傷だ。 だが、涙で視界がぼやけ、更に怒りでいっぱいいっぱいのゆっくり魔理沙は、そのことに気付かない。 「おがあざんはおがあざんなんだよぉぉぉ!!! ちゃんどわがっでるのぉぉぉぉぉぉ!!?」 「わ、わがっ……ゆぴっ……も、もう……ぴげぇっ」 「だいへんなのはれ゛いむ゛だぢだけじゃないんだよぉぉぉ!!? ま゛りざだっでゆ゛っぐりでぎながっだんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「ゆっ……じだ……だよ……」 「う゛わ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あぁあ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ああ゛ぁあ゛ぁ゛ぁあ゛ぁっ!!!」 「……」 「あ゛あ゛ぁ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁあ゛あぁ゛ぁぁ゛ぁああ゛ぁあぁ゛ぁぁあ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!」 「ストップ、そこまでだ」 事の成り行きを見守っていた俺は、事態が終わったことに気付いてゆっくり魔理沙の身体を持ち上げた。 未だ興奮冷めやらず、といった様子でふーふー荒い息をついているゆっくり魔理沙は、逃れようとじたばたもがく。 「は、はなしてねっ! まりさはまだ……」 「下をよく見ろ」 「……ゆっ?」 言われて、はっと気付いたようにゆっくり魔理沙は視線を下に移す。 そこには、 「……」 物言わぬ亡骸と化した潰れ饅頭が転がっていた。 「ゆ゛、ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」 「いやー、すごい殺しっぷりだったな! 自分が気に入らないなら子供だって簡単に殺す! 酷いゆっくりだな、お前は!」 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!! ま゛りざはぢがう゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「えー、どう違うんだよ。今さっき自分で殺したんじゃないか。自分の子供を。助けてって言ってたのに!」 「う……う、う゛る゛ざぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁい゛!!! も゛どはお゛兄ざん゛がゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛ひとだがら゛い゛げな゛い゛ん゛でしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「はぁ? 何言ってるんだ、俺はちゃんとお前にも答えられる問題を出してやったぞ。それをゆっくりしすぎて答えられなかったんだから、お前が悪いに決まってるだろ」 勿論生死に関わる状況に追い込んだのは俺だから俺が悪い。 だけど子供を殺したばかりの罪悪感の塊であるゆっくり魔理沙は、俺の言葉を鵜呑みにしてしまう。 元々、悪いことをしたという負い目はあったのだ。 箱に詰められたときに、それに気付いていた。 そのまま全員殺されていてもおかしくはなかった。 でも、生き延びることを許された。 そして、助かるチャンスはいくらでもあった。 どれもこれも、無理難題――例えば変形してみせろとか、大空を舞ってみろとか、赤ちゃんを全員食えとか――ではなかった。 ゆっくりせずにちゃんと考えれば、答えられていたはずなのだ。 だけど、答えられなかった。 何故? それは。 自分が、ゆっくりしていた、から。 赤ちゃんを助けるために、真に全力ではなかった、から。 それに気付いた時、ゆっくり魔理沙の瞳から涙がぽろりと零れた。 今までのように騒いだりしない。 ただ、何かを悟ったような、そんな憑き物が落ちたような顔だった。 「……ころして」 「なに?」 「まりさをころしてね……赤ちゃんたちがいないなら、もうゆっくりできないよ……」 俺は驚いた。 まさかゆっくりが自分の殺害を依頼するなんて。 それ程までに、自分の子供が大切だったのだろう。 仲間のことはすぐ忘れたというのに。 過去に何かあったのだろうか。 ……まぁ、興味ないけど。 「殺して欲しいのか?」 「うん……ゆっくりせずにころしてね……」 「だが断る」 「……ゆっ!?」 ゆっくり魔理沙が驚愕の表情で俺を見上げる。 俺はニコリと、天使のような慈愛の表情を浮かべた。 「俺は自分の手で何者かの命を奪うのは大嫌いなんだ。だから、お前は殺さない」 だって、殺すと反応がなくなってつまらないから。 「もっと苦しんでもらうよ、ゆっくり魔理沙」 続く。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/552.html
おれ設定込みです。 以前スレに出ていたネタ、絵を元ネタにしています。 「いいかめーりん、頼んだぞ」 「じゃおおおおん!!」 勢いよく答えたのはゆっくりめーりん 丈夫な肉体と「何かを守る」習性をもつゆっくり 「気をつけるんだぞ、腹が減ったら野菜を食べていいぞ」 「じゃおおおおん!!」 そう言って主人は人里へと出かけて行った。 小料理屋を営む弟の婚礼のため今日は夜まで戻らない。 その間この畑を戻るのがめーりんの仕事 「じゃおおおん!!」 柵の切れ間の門に立ち畑番の任務が始まった。 数時間後 「ZZZ…ZZzzz…」 堂々と午睡を取るゆっくりめーりん これさぼっているのではない。計画的休息である。 畑番という集中力と根気を要する任務をこなすためには この「しえすた」が必要なのだ。少なくともめーりんはそう考えている。 「う~!たーべちゃーうぞ~!!」 そこに飛来したのは「こーまかんのおぜうさま」ことゆっくりれみりゃ そのお目当ては 「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」 「おいちいね!!」 御食事中のまりさの親子 少し前に「しえすた」中のめーりんに 「ゆっくりしていくね!!」と元気よく挨拶して入ってきた。 なおこの畑はゆっくり達に「めーりんのところ」という名で知られる 有名なゆっくりスポットであることを記しておく。 「た~べちゃ~うぞ~!!」 「ゆゆ!!ゆっくりにげてね!!」 「まりさはおいちくないよおお!!」 れみりゃから逃れるべく畑中を駆け回るまりさ親子 小石を蹴とばし畝に突っ込み猛烈な勢いで逃げていった。 「ZZZzzz…ZZzzz…」 この状況においても「しえすた」を続ける胆力の持主ゆっくりめーりん 畑番を任されるゆっくりは一味ちがうのだ。 「うっうー!!おーいしかったどぉー♪」 まりさ親子を平らげたらしく畑に戻ってくるゆっくりれみりゃ 次なるお目当ては 「ZZZzzz…zzz…」 皮の厚さに定評のあるゆっくりめーりん 計画的休息はいまだ続行中である。 「うあうあ♪あかあか♪」 めーりんをひょいっと持ち上げるれみりゃ 「じゃおっ!?」 この状況でついに覚醒したゆっくりめーりん 「じゃおおおおおおおおおおお ついにその実力が発揮 「う~!」 されなかった。平然とめーりんにかぶりついたれみりゃ だが様子がおかしい。 「んガ・が・がgがgg…」 肉まんフェイスを真っ赤に染めて悶えだす 「ghががdcgガg…」 「じゃお・・・??」 「がらいどおおぉおおおぉ!!じだがびりびりずるどぉおお!!」 めーりんの中身はぴりりと辛いピザまん、れみりゃには少々きつい 「ざぐやああぁ~!!ざぐやああぁ~!!」 そのまま飛び去っていくれみりゃ 「じゃおおおおん!!」 ゆっくりめーりん、勝利の瞬間である。 振り返れば自分以外が齧った痕のある野菜がいくつか目につくはずであるが 常に前を見続けるめーりんが気づくはずもない。 あるいは見てもわからないかもしれない。 ゆっくりめーりんが加工場で扱われないのは「皮が厚い分餡が少ないから」 丈夫な肉体に対しておつむのほうはさっぱりなのだ。 「皮の商品化に漕ぎ着ければあるいは…」というのがある加工場研究部員の談 「じゃおおおおおん!!」 悪辣なるれみりゃを撃退し意気軒昂なゆっくりめーりん たっぷりとった「しえすた」のおかげで疲れもない。 まさに気炎万丈といった様子 と、そこに近寄ってくる一匹のゆっくりまりさ 何やらにやついた笑みを浮かべている。 「めーりん!」 「じゃおおおん!!」 勢いよく返事をするめーりん 「きょうからここはまりさのゆっくりぷれいすだよ!!」 「じゃおっ!?」 「だからめーりんはでていってね!!」 いきなりやってきてとんでもないことを言うゆっくりまりさ 「じゃおおおおおん!!」 当然臨戦態勢にはいる激烈なるな闘争心の持主ゆっくりめーりん。 「とられるのがいやならこのまりさをたおしてね!!」 と叫んだまりさは 猛烈な勢いで逃げ始めた。 「じゃおっ?」 理解できない行動に困惑するめーりん たたかうはずなのになんでにげるの?うしろむきでたたかうの? この不測の事態に直面しためーりんは 「じゃおおおおおん!!!」 逃げるまりさを追いかけ始めた。攻撃は最大の防御である。 何か重要なことを忘れているような気もしたがめーりんには関係なかった。 まりさとめーりん 二匹の姿が見えなくなったころ 「むきゅ、うまくいったわね」 物陰から出てきたのはゆっくりぱちゅりーとその子供達 先ほどのまりさの家族である。 噂に名高い「めーりんのところ」に来てみたところ 「簡単に入れる」「邪魔するめーりんはいっつも寝てる」という噂に反して れみりゃを撃退するほどの実力者が番をしていた。 ここでぱちゅりーは一計を案じた。 その結果がこれである。 「むきゅ、みんなゆっくりしていくわよ。」 「「「ゆっくりちていくよ!!」」」 一方まりさを追跡するめーりんは岩だらけの川辺に来ていた。 追っていたまりさは先ほど見失った。 いったいどこへ…と辺りを見まわしためーりんは途轍もないものを目にした。 まりさが泳いでいる!! 「じゃ、じゃお!!??」 あの特徴的な帽子がすいーっと水面を流れていくのである。 帽子に乗って下っているのではないことにめーりんは驚愕した。 まさかまりさが泳ぐなんて!! 「じゃおお~ん!! 激烈なるな闘争心の持主ゆっくりめーりんは猛烈な勢いで追い始めた。 「ほんとうにあのめーりんはばかだね!!」 「むきゅ、かんたんにひっかかったわね」 しばらくのちの畑の会話 逃げたはずのまりさもそこにいる。 「あのぼうしのもちぬしのおかげだわ」 ゆっくりめーりんを撒くために使ったのは ここに来る途中で拾った帽子に小石を詰めたもの うまくやれば沈むことも転覆することもないいいおもちゃになる。 ゆっくりはお互いを帽子で識別する。 動く帽子の中に誰もいないことに気づくのはいつになるやら 「ばかはあつかいやすくてたすか…」 「むきゅ?どうしたの」 固まったまりさの視線の先に目を向けるぱちゅりー そこにいたのは 「う~!しかえしにきたどぉ~!」 「やられたままじゃこーまかんのめんつにかかわるどぉ~!」 数匹のゆっくりれみりゃ どうやら先ほどのれみりゃが姉妹を連れてきたらしい。 れみりゃには珍しい仲間意識の持ち主のようだ。 「う~!でもあかいのがいないど~」 「でもまんじゅうはいるど~」 「「「でなーだど~!!」」」 夕刻の迫る畑にゆっくり一家の断末魔が響いた。 その日の夜遅く すでに高く上った月の下 主人は人里から帰ってきた。 「いや、すまないなめーりん。遅くなっちまった」 だが畑にはいくつかのゆっくりの帽子が転がるのみ めーりんの姿はない。 「まさかやられちまったのか?」 だが畑の被害はあまりない。ではめーりんはいったいどこへ? 「じゃおおおおおおおおおおおん!!!!」 「めーりん!」 盛大な叫び声をあげて泥まみれになりながら駆けてくるのは 大いなる忠誠心の持主ゆっくりめーりん その口にはしっかりとゆっくりまりさの帽子が咥えられていた。 「そうか入ってきたやつを追ってたのか。」 「じゃおん!!」 「よくやったぞめーりん。今度も頼むな。」 「じゃお~ん!!」 ゆっくりめーりんは今日も畑に立ち続ける。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4512.html
鬼意山はれみりゃを使ったビジネスを行っていた。 所有しているれみりゃ専用繁殖施設『れみりゃ牧場』では毎日500を超えるれみりゃが産声を上げていた。 鬼意山はれみりゃの様々な使い道を考え、大小胴有り胴無し構わずに売り払って金を儲けたのだ。 今回女子大生である私はそんなれみりゃ牧場を見学することになった。 理由は大学の課題で『どこでもいいので施設を見学してレポートを書け』と言われたからだ。 近いし面白そうだと思い、試しに電話してみたら喜んで見学を許可してくれた。 「今日は無理を言ってすいません。よろしくお願いします。」 「こちらこそ。我がれみりゃ牧場をじっくり見てくれると嬉しいです。」 話してみたがかなりの好青年であった。 この年齢でここまで大きな企業をつくり出すとは末恐ろしい方である。 「見学の前に軽く説明しますね。ここのれみりゃは様々な使われ方をするのです。 それによって飼育方法も変わるんですよ。」 「なるほど~。使われ方って言うと食用とかですか?」 「まぁ色々ですね。れみりゃはかなり多くの活用法が隠されているんです。 では順を追って案内しながら説明していきますね。」 鬼意山が最初に案内してくれたのは胴有りれみりゃの出産部屋であった。 れみりゃは基本単体生殖で子孫を増やす。 ある程度ゆっくりできる、つまり十分な栄養を取れていれば勝手に子供ができるのだ。 植物型も動物型もあるが、胴無しから胴有りが産まれることは無いという。逆も同じだ。 だがこの施設ではれみりゃ1匹1匹をそんなゆっくりさせたりはしない。 どうして、と私が聞いてみるとこう返ってきた。 「何故って?非効率的だからですよ。どんどん増やして出荷しないといけませんから。 わざわざ自然に子供ができる時を待つようなことはしません。 第一、れみりゃはとてもワガママなんです。ゆっくりさせたら調子に乗って手に負えません。」 「じゃあどうやって子供をつくらせるんですか?」 「この部屋を見れば分かるはずです。とりあえず回ってみましょうか。」 私は鬼意山の案内されるがままに室内を見学した。 そして私は驚いてしまった。 部屋の中央には大きなベルトコンベアーが存在しており、 それを挟むように左右にれみりゃが首だけ出して固定されている。 れみりゃたちは前のめりの態勢で首だけロックされていたのだ。 そして、その内約半数のれみりゃたちの頭には茎が生えており、小さい赤れみりゃがぶら下がっていた。 茎が無いれみりゃもいたが、それは動物型出産のタイプらしい。 「れみりゃにはオレンジジュースや繁殖薬などを混ぜた栄養剤をチューブで直に体内に送っています。 その中には子供に影響が出ない特殊な幻覚剤が含まれているのです。 ほら、れみりゃたちの顔を見てください。とても幸せそうでしょう?」 私はれみりゃの顔を見てみた。確かにどのれみりゃもとてもゆっくりした表情をしている。 なるほど、これで子供が発生する条件を無理やり満たしている訳だ。 「おっそろそろ第14班の子供が産まれる時間ですね。コンベアーを見ててください。」 「あの~、14班って…?」 「1~20班にれみりゃを分けていて、時間差で子供が産まれるようにしているんです。 一斉にポンポン産まれると今後の処理に支障をきたしますからね。」 しばらくコンベアーを見ていると、何かが流れてきた…。 「うぁうぁう~!みゃんみゃぁぁぁぁ!!!」 「どきょだどぉ!しゃびしいどぉ~!!」 「うぁうぁう~♪うみゃれちゃどぉ♪」 「なぎゃしゃれるどぉ♪たのちいどぉ~♪」 流れてきたのは赤れみりゃだった。沢山の赤れみりゃがコンベアーで流れていた。 反応は様々だが、まだ産まれたばかりの赤れみりゃはただ流されるしかなかった。 「産まれた赤れみりゃはああやってコンベアーで次のステップに運ばれます。 ここでは1日500匹近くの赤れみりゃが産まれています。」 「500!?すごいですね~!!」 「こっちに来てください。流された赤れみりゃは次の部屋でランク付けされます。」 次の部屋に案内されると、そこでは様々な機械が流れている赤れみりゃを検査していた。 そして検査が終わった赤れみりゃはいくつものアームでひょいひょい運ばれていた。 「ここで赤れみりゃの質の検査をして格付けし、用途別に分配します。 肌、中身、服に見える外皮部分、帽子などを検査し優秀な個体などを判断します。」 「へぇ~…。そう言えばアームが色んな箱に赤れみりゃを入れてますねぇ…。」 赤れみりゃたちは親のことなどそっちのけでコンベアーを楽しんでいた。 「うぁ~♪おもしりょいどぉ♪うぃんうぃんだどぉ♪」 「うぁうぁっう~!」 「おぜうしゃまはおにゃかしゅいたどぉ!」 「しゃくやぁ~!おにゃかしゅいだんだどぉ!」 ヒョイヒョイヒョイッ 「う~♪たきゃいたきゃいだどぉ♪」 「おしょらちょんで…うべしっ!」 「いぢゃいどぉぉぉぉ!じゃぎゅやぁぁぁ!!!」 そして終着地点でアームに掴まれ箱に放り込まれた。 箱には『ペット用』『ストレス解消用』『食用』『餌用』と書かれていた。 鬼意山は丁寧に説明してくれた。 「ペット用は最も質が高く将来有望な赤れみりゃが選ばれます。 全体の1割にも満たない数ですが…。 この赤れみりゃたちは人間のペットとしてのノウハウを徹底的に教えられます。 ワガママな性格や飼う上で邪魔な本能を排斥し人間と共に生きるための 知識を叩き込むのです。」 「ストレス解消用はペット用から外れた質の悪い赤れみりゃが選ばれます。 赤れみりゃのまま冷凍保存して出荷したり、ある程度成長させてから 出荷したりします。名前の通り虐待目的の方に人気がありますね。 後ボクシングジムでもよく注文を受けます。 基本飼育は大部屋で家畜のように適当に育てますね。 一応食べられますが食用と比べると味は劣ります。」 「食用は質がそこそこで人間が食べても支障の無い赤れみりゃが選ばれます。 完全に家畜の牛や豚と同じ扱いですね。ある程度育ったらレストランなどに 出荷されます。もちろん個人で買う方もいますね。 わざとすぐ食べずに、育てて子供を食べるといった用途にも使えます。 あと加工して食品にしたりもします。」 「餌用は最も質が低くどうにもならない駄れみりゃが選ばれます。 育てる価値も無いのですぐにミンチにされて加工され、 他のれみりゃの餌にこっそりと混ぜられます。」 「ほほう…。まさに格差社会ですね…。」 「では順番に分けられたれみりゃたちを見てみましょうか。」 1、ペット用 まずはペット用の部屋に入った。 透明なガラスで仕切られた部屋には子れみりゃたちがおり、 教員と思われる人間の発言を真剣に聞いていた。 「分かりますか?好き嫌いはいけません。出されたものはしっかり食べましょう。」 「わかったどぉ~!!」 「それと、飼い主の許可無しでダンスを踊ってはいけません。不快に思う方もいますからね。」 「き…きをつけるどぉ…。」 「へぇ…。れみりゃとは思えないほど真面目ですねぇ。」 「あれは相当訓練を積んだれみりゃたちですよ。 最初に人間の強さを教え込み、自分たちが人間より下の立場だとれみりゃたちに認識させます。 れみりゃは再生力が高いので死なない程度に傷めつければすぐに屈服します。 後は親切丁寧に世話や躾を行い人間に対しての恐怖心を忘れさせ、 人間に従うことこそがおぜうさまの使命だと刷り込めばああなります。」 「なるほど…。手間がかかってる分優良な個体ができるんですね。」 「ちなみにあの中でも金バッジに届くれみりゃはほんの一握りしか出ません。 ここは金バッジの最高級品以外は販売しない方針なので、金に満たなかった れみりゃたちは残念ながらストレス解消用に回されます。」 2、ストレス解消用 次に案内された部屋はストレス解消用、つまりサンドバックれみりゃを養殖する部屋だ。 部屋ではサンドバック目的で育てられているとは思えないほどれみりゃたちがゆっくりしていた。 広い部屋でれみりゃたちがダンスを踊り、餌箱の中身を食い荒らし、さくやさくやと喚き散らしている。 「ず…ずいぶん好き勝手やってるんですね…。」 「ストレス解消用は特に躾をする必要がありませんからね。 それにワガママな方が殴った時すっきりするでしょう?」 「あっそれもそうですね…。いい子だったら殴りにくいですよね…。」 れみりゃたちはマジックミラーの仕切りで私たちの存在に気付いていなかった。 ここでは人間は極力関わらず、機械で餌の追加や掃除などを行う。 人間に慣れてしまわないようにだ。それと関わるとウザいからでもある。 「痛みとは無縁の環境で育てた方が暴力を受けた時の反応がいいんですよ。 それに再生力が高いので多少ボコボコにしたってすぐに再利用できますしね。」 「再生力が仇になる訳ですね。ちょっとボコボコになった光景を見てみたいかも…。」 「お見せしますよ。何匹かはサンプルとして実験しますから。」 移動した場所ではサンプルに選ばれたれみりゃが従業員に殴られていた。 両手を縛られ天井に吊り下げられた状態だ。まさにサンドバックである。 「おらおらおらおらっ!!!!」 バギッドゴッガスッガスッ!!!! 「いだいどぉぉぉぉぉぉ!!!!ざぐやにいいづげでやるぅぅぅぅぅっ!!!!」 「言えるもんなら言ってみろやぁぁぁ!!!このやろっおらおらおらっ!!!!」 ドスッバキッゲシッボキッガスッ!!!! 「う゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!!!ごべんだざい゛い゛い゛ぃぃぃぃぃぃっ!!!」 従業員は何かあったのか必要以上にれみりゃをぶん殴り、蹴り上げていた。 確かにストレス解消の他、ボクシングでも使えそうである。 「ふぅっ!さっぱりー♪」 「うぁっうぁっうぁっ…!!!」 「痙攣してやんの。オレンジジュースを少量かけて再生の具合を見ないとな…。」 れみりゃは殴られた場所と口から、肉まんの具的物体を噴き出し痙攣していた。 あんな状態でも再生してしまうと聞き私は驚いた。何だか不憫に思えてしまった。 「うぁ…う~…。」 「まだ10分しか経ってないのにもう治りかかってるぜ…。」 「う…?う゛ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!やべでっぐるなどぉぉっ!!!!」 「次は死ぬ一歩手前からの再生時間を計るぞ…おらおらおらおらぁっ!!!!」 「キリが無いので次の食用の説明に入りますね。」 「…お願いします…。」 3、食用 次に訪れた場所はまさに地獄絵図な場所だった。 家畜の牧場みたいな所にブクブクと太ったれみりゃが大量にいるのだ。 皆うーうーと鳴きながら餌を貪り食らっていた。 「人間の食卓に上がるれみりゃたちです。当然れみりゃたちは知りませんが…。 ここでは太りやすく栄養満点な餌を好きなだけ食べさせています。 そして適度な大きさ、脂、肉質になったれみりゃは次々と巨大クレーンで運ばれ、 加工部屋に送られて加工されます。 ここは成体の部屋ですが、産まれたばかりの赤れみりゃをすぐに加工する場所もあります。」 「味は違うんですか?」 「ええ、成体は熟成した濃厚な旨みのある肉となります。ハムやウインナーにも最適です。 逆に赤れみりゃはあっさりとした味わいで肉本来の味わいを楽しめます。」 鬼意山に連れられ今度は加工部屋にやって来た。 「言っておきますけどれみりゃとは言え結構凄惨な光景が広がってますよ。 耐性の無い方が見ると気分を害する可能性がありますが…。」 「大丈夫です!私は牛の目の前でステーキが食べられるぐらいですから!」 「…良く分かりませんが了解しました。来てください。」 …やっぱり見なきゃ良かった。私は袋に顔を突っ込みそう思った。 そこではれみりゃたちが次々と解体され、中身を搾り取られていた。 中には丸ごとスモークされているれみりゃもいた。 「や゛べでぇぇえ゛え゛え゛え゛っ!!!!あづいのやだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 「うぅぅわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!いぢゃいぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」 「ざぐやにいいづげ…うぎょえぇぇぇぇぇぇ…うげひっ!!!!」 「ぐ…ぐりゅじぃどぉぉぉぉ…ちゅぶ…れ…うぎゃげぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」 響き渡る断末魔の悲鳴、絶望と恐怖と激痛が支配する恐るべき部屋であった。 だが悔しいことに匂いだけは良かった。いい匂いなのだから仕方がない。 「こっちは赤れみりゃですよ。赤れみりゃは小さいので丸ごと加工してしまいます。」 「こちらも何とまぁ…。子供が見たら泣きますね…。」 上のフックに大量の赤れみりゃがぶら下がっており、もうじき訪れる死を前に泣き叫び暴れていた。 「だじゅげでぢゃどぉぉぉぉぉ!!!!」 「みゃんみゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!じゃぎゅやぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 フックにぶら下がった赤れみりゃの下から炎が噴き出し、赤れみりゃたちを包み込む。 こうやって程よく表面だけ焼き上げて生きたまま真空パックで出荷するのだ。 ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ… 「あじゅいっあじゅいどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!」 「うぁっうぁっうぁっうぁっ…。」 痙攣し始めた頃が火あぶりを止めるタイミングだ。すぐに赤れみりゃたちは アームに掴まれ真空パックで仮死状態のまま保存される。 「こうすることで日持ちさせるようにします。 生きた赤れみりゃを食べて反応を楽しみたい方の要望に答えて生まれた加工法です。」 あぶられた赤れみりゃたちはブラブラと不気味にぶら下がっており動かなかった。 「餌用はもっとすごいですよ。楽しみにしててください。」 「ははは…。そうですか…。」 4、餌用 「餌用の赤れみりゃは即座にミンチにして他のれみりゃの餌になります。 ここからでも赤れみりゃの愉快な声が聞こえてくるでしょう?」 耳を澄ましてみると、奥から食用以上の叫び声が聞こえてきた。 「うわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!」 「やぢゃどぉぉぉぉぉぉっぅぶっ……ごボぉお゛っ……!!」 奥に行くとさっきより更に恐ろしい光景が目に飛び込んできた。 餌用に認定された赤れみりゃが巨大な箱から一気に巨大ミキサーに放り込まれていたのだ。 ミキサーは刃を光速回転させ、中に入れられた赤れみりゃを次々とバラバラのミンチにしていった。 箱にしがみ付き助けを求める赤れみりゃや、未発達な羽で必死に飛ぼうとしている赤れみりゃもいたが、 最後には等しくミキサーに落ちグチャグチャにされミンチとなった。 「私はここでよくコーヒーを飲んで赤れみりゃで作ったハンバーグを食べてますよ。 ミキサーでミンチにされる音と赤れみりゃの悲鳴が最高に食欲を増幅させてくれるのです。」 私は思わず引いてしまった。やっぱりこの人普通じゃない…!少し彼に恐怖を覚えた。 「…ははは…(見た目だけなら格好良くてタイプだったのになぁ…。」 私は少しがっかりしながらミキサーから目を背けていた。夢に出そうで怖い…。 「まぁ一通り説明と案内を終えましたが、何か質問はありますか?」 「あっはい。今回胴有りの見学をしましたが、胴無しはどんな感じなんですか?」 「胴無しはつまらないですよ。しゃべりませんし鳴くだけですし…。 多分普通の豚や鶏の加工と変わらないと思いますよ。 でも見たいのなら案内しますが、どうしますか?」 「止めておきます…。ちょっと気持ち悪くなっちゃって…。」 「そうですか…。今日はご見学、ありがとうございました。」 お土産に赤れみりゃの一口肉まんも貰ったが、とても食べる気がしなかった。 そしてレポートをこれから書くことを考えると、ちゃんと書けるか不安だった…。 帰り道…自転車で家まで走っているとたまたま野原を歩き回るれみりゃの家族を発見した。 「う~♪あかちゃんかわいいどぉ~♪」 「うぁうぁ♪みゃんみゃぁ~♪」 「…ゆっくりしてるね!」 私は何となく話しかけてみた。れみりゃは警戒心など微塵も無く自ら近づいてきた。 「う~♪おぜうさまのかわいいあかちゃんだどぉ!あかちゃんにあまあまあげるどぉ!」 「う~ん。あまあまは無いけどこれならあげる!2人で食べてね!」 私はお土産でもらった肉まんをこともあろうにれみりゃにプレゼントしてしまったのだ。 だがれみりゃ家族は大喜びだった…。 「う~!おいしいどぉ!なかなかはなしのわかるにんげんだどぉ~!!」 「みゃんみゃぁ~おいちいどぉ~♪」 「じゃ、私はこれで…。」 私は何だかれみりゃに同情していた。せめてあの家族には幸せになって欲しいと願った。 私が自転車でそこから離れてすぐ、あの場所から声が聞こえた…。 「う~!おぜうさまにもっとたべものをよこすどぉ~!!!」 「うるせぇ!!さっきチンチロで負けてイライラしてんだよっ!!!」 「うべぎゃ…みゃん…みゃ…っ。」 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あっ!!!!あがぢゃぁぁぁぁぁん!!!!」 …私は何も聞いてない…何も見ていない… 私は黙ってその場を立ち去った。 そして、ゆっくりに安息の場所など無いことを再確認させられた。 人は常に他の生き物を犠牲にした上で今の生活をしているのです。 好き嫌いして食べ物を残さないようにしよう!!! by七連星の人 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2277.html
※リハビリ的な何かなので読まないの推奨 「かっぱっぱ〜かっぱっぱ〜♪」 さらさらと言う擬音がぴったりなほど穏やかに流れる清流。 そこからどこか間の抜けた、それでいてなんとも憎めない声が聞こえていた。 緑の帽子を被った、ゆっくりにとりだ。 主には川の中や川岸で生活するゆっくりだ。 にとりは川の真ん中でぷかぷかとに浮いている。 水面から顔だけだした(ゆっくり自体が顔だけと言えるが)状態である。 大きな眼をパチクリさせながらにとりは空を見ていた。 彼女の頭上に行われている戦いを。 「う゛ー!う゛ー!」 「ゆゆ! ゆっくりゆっくりふゅーじょんしていってね!!!」 空には二匹のゆっくりが居た。 片方はゆっくりれみりあ。 もう片方はゆっくりうつほ。 二人がどうして出会ったか。そんなこまけえこたぁいいんだよ! 問題は、今の状況である。 うつほはれみりゃに頬を擦りつけている。ゆっくり間ではよく見られる親愛の印である。 が、それを受けるれみりゃの方はと言うと。 「う゛ゥゥゥゥゥー!!!!!」 泣いていた。しかも普段泣き虫なところを考えても尋常じゃないくらいの泣きっぷりである。 その理由はすぐわかった。うつほに擦りつけられている頬の部分がどんどん灰になっているのである。 「う゛ー!あ゛づい゛ー!」 泣きながらもなんとか離れようとする。が、あまりの熱さに動きも鈍くなっている。 しかもうつほはれみりゃの状態に気づいてないので、すぐに間を詰める。 つまりチェックメイトである。 「ゆゆー! うつほとゆっくりしてね!!!」 「ざぐや゛ー!!! う゛ー!!!」 その地獄絵図をにとりは目の当たりにしていた。 正直なところ、「うわなんかめんどくせーからぎったんぎったんにひきさいてやろうか。」と思っていたのだが とりあえず水の中にいる限り安全だろう。そう思って高みの見物としゃれこむとした。 自分の方が低い位置にいるくせに。 「?」 異変に気づいたのはその時だった。 なんだか先ほどよりれみりゃとうつほが近くに見える。 いや近づいているのだ。うつほの熱はついにれみりゃの羽根にまで及んだのだろう。 片羽になったれみりゃはバランスを取ることさえできずにフラフラと下に落下していく。 うつほはそれに今だに気付かないのでそのまま一緒に降りてくる。 つまり 「う、う……う…………」 「ゆ? しずかだねれみりゃ!うつほもいっしょにおやすみするよ!」 「か、かっばぁああああああああああああ!!!!こっちこないでぇえええええええ!!!」 【あとがき】 200X年 ゆ虐wikiは核の炎に包まれた。 だが人類とゆっくりは死滅しなかった。 でも俺は死滅しそうだよパトラッシュ。 by バスケの人 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/580.html
ゆっくりいじめ系322 ゆっくりボール虐道無 阿求×ゆっくり系8 ゆっくりボール2虐道 ゆっくりいじめ系353 ゆっくりボール3虐環無 ゆっくりいじめ系357 ゆっくりボール3-2虐環捕無 ゆっくりいじめ系365 ゆっくりボール3-3虐制無 ゆっくりいじめ系375 ゆっくりボール4虐家捕無 ゆっくりれみりゃ系いじめ31 ぷっでぃ~ん天国虐捕無 ゆっくりいじめ系401 びりゃーど虐家道無 その他 ゆっちぇす?そ ゆっくりいじめ系412 必殺コンボ?虐 ゆっくりれみりゃ系いじめ36 ゆっくりぼーる5虐家道 ゆっくりいじめ系436 ゆっくりみだら1そ家性無 ゆっくりいじめ系438 ゆっくりみだら2そ家性無 ゆっくりいじめ系442 ゆっくりみだら3そ家性無 ゆっくりいじめ系448 ディスコミュニケーションそ無 ゆっくりいじめ系458 ゆっくりみだら4そ家性無 ゆっくりいじめ系484 鬼意さんVSドス 1虐 ゆっくりいじめ系485 鬼意さんVSドス 2虐性 ゆっくりいじめ系486 鬼意さんVSドス 3_1制 ゆっくりいじめ系487 鬼意さんVSドス 3_2虐 ゆっくりいじめ系500 ゆっくりみだら5虐無 ゆっくりいじめ系513 ゆさくや1 ゆっくりいじめ系525 ゆさくや2_1 ゆっくりいじめ系526 ゆさくや2_2 ゆっくりいじめ系529 ゆっくりみだら6 ゆっくりいじめ系559 ゆさくや3虐制家 ゆっくりいじめ系573 ゆさくや3.5虐そ無 ゆっくりいじめ系582 淡々とゆっくりを尾行してみたそ家環無 ゆっくりいじめ系589 淡々とゆっくりを尾行してみた 2虐環家無 ゆっくりいじめ系597 虐待おばば虐無 ゆっくりいじめ系602 淡々とゆっくりを尾行してみた3虐環家捕無 ゆっくりいじめ系607 ゆっくりみだら7虐性捕無 ゆっくりいじめ系620 ゆさくや4虐捕無 ゆっくりれみりゃ系いじめ42 ゆっくりみだら8虐性家無 ゆっくりれみりゃ系いじめ43 ゆっくりみだら9虐性無 ゆっくりいじめ系650 虐待おばば2虐無 ゆっくりいじめ系665 ゆっくり研究虐家無外 ゆっくりいじめ系684 鬼意裁き虐無 ゆっくりいじめ系697 野生のゆっくり ゆっくりいじめ系749 現代ゆっくり虐家無 ゆっくりいじめ系753 殺されたお兄さん制性無 ゆっくりいじめ系760 とうぎじょう虐薬共無 ゆっくりいじめ系782 非ゆっくり過敏症虐家無外 ゆっくりいじめ系814 ゆー園地虐そ共機料無外 ゆっくりいじめ系818 すっきりしたくないありす虐そ性無 その他 M? ゆっくりいじめ系850 ゆっくり研究2 ゆっくりいじめ系865 二択 ゆっくりいじめ系876 二択2 ゆっくりいじめ系890 技巧派まりさの誕生_1 ゆっくりいじめ系891 技巧派まりさの誕生_2 ゆっくりいじめ系893 虐待おばば3 ゆっくりいじめ系916 ゆー郭 ゆっくりいじめ系921 ゆー郭2 その他 ゆっくりボール乙? ゆっくりれみりゃ系いじめ51 ゆっくりゃへのおしおき? ゆっくりいじめ系964 ミニマムゆっくり ゆっくりパチュリー系いじめ3 ぱちゅりー? ゆっくりいじめ系993 バレンタインデイ ゆっくりいじめ系995 普通のゆっくり虐め ゆっくりいじめ系1007 見守るドスまりさ ゆっくりすいか系いじめ1 ゆっくりすいか ゆっくりいじめ系1139 やねのうえのゆっくり ゆっくりいじめ系1107 ゆくぶつかん ゆっくりいじめ小ネタ172 ほしれいむ ゆっくりいじめ系1193 れいむをまもるもの ゆっくりいじめ系1199 ゆっくりできた日々1 ゆっくりいじめ系1209 ことばのろう ゆっくりいじめ系1218 ゆっくり ゆっくりいじめ系1231 こんにゃゆっくちいりゅかな? ゆっくりいじめ系1240 でーしーえす ゆっくりいじめ系1274 虐兄とドス ゆっくりいじめ系1280 ゆっくりのがっこう ゆっくりいじめ系1291 ありす ゆっくりいじめ系1301 ゆっくりできた日々2 ゆっくりいじめ系1307 ゆーろ ゆっくりいじめ系1342 お食事会 ゆっくりいじめ系1347 まりさのおうち ゆっくりいじめ系1378 かみいじめ ゆっくりいじめ系1409 ルールある虐待_01 ゆっくりいじめ系1410 ルールある虐待_02 ゆっくりいじめ系1411 ルールある虐待_03 ゆっくりいじめ系1453 ゲスまりさ調教_01 ゆっくりいじめ系1454 ゲスまりさ調教_02 ゆっくりいじめ小ネタ216 うんうん ゆっくりいじめ系1472 うんうん2 ゆっくりいじめ系1484 ゆっくりを退化させよう ゆっくりいじめ系1502 初物お兄さん ゆっくりいじめ系1530 髪の毛で綱引き ゆっくりいじめ系1571 ゆっくり問答? ゆっくりいじめ系1595 ねじこんでみた ゆっくりいじめ小ネタ234 しゃぶれいむ? ゆっくりいじめ系1645 れいコン ゆっくりいじめ系1652 ふぐぅ! ゆっくりいじめ系1659 おうち宣言を最大限尊重してあげた ゆっくりいじめ系1902 カッパの住処 ゆっくりいじめ系1906 ぱんちゅりー ゆっくりいじめ系1967 ゆんどら 1 ゆっくりいじめ系1968 ゆんどら 2 ゆっくりいじめ系1974 ゆっくり人間(クロスオーバー作) ゆっくりいじめ系1995 ゆっくりいじめ系2002 新物質 ゆっくりいじめ系2016 げっぺるどんがァーッ! その他 ゆっくりスレ? その他 実録!虐待SSの作り方? ゆっくりいじめ系2033 ゆっくり学部虐待科 ゆっくりいじめ系2045 馬鹿なの?寝るの? ゆっくりいじめ系2057 あるレイパーの更正 ゆっくりいじめ系2076 飽きた ゆっくりいじめ系2088 力 ゆっくりいじめ系2124 お帽子 ゆっくりいじめ系2126 せつゆん ゆっくりいじめ系2142 ドスモス ゆっくりいじめ系2164 巨大ゆっくりの饗宴(前編) ゆっくりいじめ系2165 巨大ゆっくりの饗宴(中編) ゆっくりいじめ系2166 巨大ゆっくりの饗宴(後編) ゆっくりいじめ系2170 ゆれんたいん ゆっくりいじめ系2174 新たなる?ゆっくり ゆっくりいじめ小ネタ340 矢ゆっくり ゆっくりいじめ小ネタ341 ゆっくりになったお兄さん ゆっくりいじめ小ネタ351 敬いお兄さん? ゆっくりいじめ小ネタ369 ゆっかりクッキング? ゆっくりいじめ小ネタ391 ゲスに情けなど不要!? ゆっくりいじめ系2198 とあるHumyonの憂鬱 ゆっくりいじめ系2254 100スレ記念1 ゆっくりいじめ系2255 100スレ記念2 ゆっくりいじめ系2256 100スレ記念3 ゆっくりいじめ系2257 100スレ記念4 ゆっくりいじめ系2258 100スレ記念5 ゆっくりいじめ系2259 100スレ記念6 (完結) ゆっくりいじめ小ネタ405 ふえちゃうぞ! ゆっくりいじめ小ネタ409 うんうんイーター? ゆっくりいじめ小ネタ416 めだま? ゆっくりいじめ系2349 やさぐれいむ ゆっくりいじめ小ネタ425 うんうんする理由? ゆっくりいじめ系2377 まりさのあい(前編) ゆっくりいじめ系2378 まりさのあい(後編) ゆっくりいじめ小ネタ428 奇跡の声? ゆっくりいじめ系2406 レイパーの動機 ゆっくりいじめ小ネタ441 虐待おばば4? ゆっくりいじめ小ネタ450 赤ゆの底力? ゆっくりいじめ系2465 どのゆっくりがこのみ? ゆっくりいじめ系2488 あおりぼん ゆっくりいじめ系2493 やさぐれいむ2 ゆっくりいじめ系2509 魔剣ゆギャリア ゆっくりいじめ小ネタ470 えたーなるばーじん? ゆっくりいじめ系2523 目が見えない少女 ゆっくりいじめ系2586 まりさと子るーみあ ゆっくりいじめ系2597 飼いゆっくり ゆっくりいじめ系2602 うんうんと4匹 ゆっくりいじめ小ネタ484 コネタ集?? ゆっくりいじめ小ネタ489 ゲス家族? ゆっくりいじめ小ネタ492 21かもしれない? ゆっくりいじめ系2682 365匹を虐殺してみた1 ゆっくりいじめ系2683 365匹を虐殺してみた2 ゆっくりいじめ系2684 365匹を虐殺してみた3 ゆっくりいじめ系2685 365匹を虐殺してみた4 ゆっくりいじめ系2686 365匹を虐殺してみた5 ゆっくりいじめ系2695 副工場長れいむに勝手にパラレル ゆっくりいじめ小ネタ502 ゆっくりしていってね!? ゆっくりいじめ系2719 ある愛護団体のお仕事 ゆっくりいじめ小ネタ519 ゆ虐1発ネタ?集?虐他性巨希ゆゆっくりいじめ小ネタ520 コード?虐無 ゆっくりいじめ小ネタ524 ドス・・・?制汚無 ゆっくりいじめ系2836 ありす虐待エンドレス1他性家 ゆっくりいじめ系2842 ありす虐待エンドレス2虐改家無 ゆっくりいじめ系2843 ありす虐待エンドレス3-A虐家共無 ゆっくりいじめ系2844 ありす虐待エンドレス3-B虐滅環家無 ゆっくりいじめ系2845 ありす虐待エンドレス『母』虐家共無 ゆっくりいじめ系2846 ありす虐待エンドレス『まりさ』虐家共無 ゆっくりいじめ系2847 ありす虐待エンドレス『再会』虐滅家共無 ゆっくりいじめ系2848 ありす虐待エンドレス4虐環家無 ゆっくりいじめ系2849 ありす虐待エンドレス『れいぱー』虐性家無 ゆっくりいじめ系2852 ありす虐待エンドレス0虐家無 ゆっくりいじめ小ネタ554 ゆっくりカスタムキット?虐改無 ゆっくりいじめ系2906 ゆっくりが生き残れる理由虐環家無 ゆっくりいじめ小ネタ557 平凡な虐待?虐家無 ゆっくりいじめ系2915 ○んぶーぶ○ーど Y虐他無現 ゆっくりいじめ系2918 駄作!!虐汚家無 ゆっくりいじめ系2936 死神のいたずら虐他汚家ゆ ゆっくりいじめ系2958 なつやすみのじゆうけんきゅう虐環実家無 ゆっくりいじめ小ネタ587 クリスタルお兄さん? ゆっくりいじめ系2997 ゆっくりの手、略してゆてて 1 ゆっくりいじめ小ネタ595 ぶりんぶりん?虐汚家無 ゆっくりいじめ系3036 ゆっくりの言葉の読者への影響虐他実家無 ゆっくりいじめ系3045 ゆっくりの言葉が読者に与える印象(制裁編)制他実家無
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1862.html
『どろっ☆わーずぅ』 幻想郷のはずれ、鬱蒼とした森の奥で、 ニコニコ笑みを浮かべ続ける者がいた。 「う~♪ ぷっでぃ~ん♪」 幾重にも重なった木々の葉によって、ほどよい強さとなった日光を浴びながら その自慢の下ぶくれを広げるのは、胴体有りのゆっくりれみりゃだ。 落ち葉を集めた絨毯に、切り株のテーブル。 密集する枝に大きな葉っぱを重ねたハンモック……。 苦労して少しずつ作り上げた"こーまかん"がそこにはあった。 そんな"こーまかん"の出来映えと、これからのゆっくりした日々を想像しながら、 れみりゃは倒木のソファーに腰かけて"うぁっ☆うぁっ☆"太ましい体を揺らして、幸せを噛みしめる。 「でみりゃのがぁ~い~あかじゃ~ん♪ ゆっぐりうまれでぐるんだどぅ♪」 くぐもった声でひとりごちり、肥大化した下膨れ顔を優しく撫でるれみりゃ。 すると、肉まんハンドの温もりを感じてか、大きな下ぶくれの奥から"うー♪"という小さな声が聞こえてきた。 「うーうー♪」 その声を聞いて、くねくね体を揺らして喜ぶ、れみりゃ。 このれみりゃは、"にんっしんっ"をしており、出産を近くにひかえていた。 ただでさえ大きな下ぶくれ顔は、通常の2倍以上に膨らみ、 その下ぶくれの奥からは、もう一つの下ぶくれ顔が既にのぞきはじめている。 れみりゃにとって、この"にんっしんっ"は二度目の出産であった。 一度目の出産でその苦労を味わったれみりゃは、"こーまかん"で万全の準備をすると同時に、 先に生まれた子どもに狩りを行ってもらいながら、出産にそなえて安静を保っていた。 「でみりゃってば、おりごぉーさんだどぉー♪ かりしゅま☆にんぷっさん☆だどぉ♪」 ゆっくりを満喫して、自画自賛を繰り返すれみりゃ。 すると、木々の隙間を抜けて、一回り小さいれみりゃがパタパタ低空を飛んできた。 「まんまぁー♪ れみぃ、ごぁんとってきたどぉー♪」 「うっうー♪ でみりゃのあがじゃ~ん♪」 小さなれみりゃを見つけて、立ち上がるれみりゃ。 紅白のお饅頭を"うーしょうーしょ♪"と抱えて飛ぶ、そのれみりゃこそ、狩りを任せていた子れみりゃだった。 「おかえりだどぉー♪ でみりゃのあがじゃん、さっすがだどぉー♪」 れみりゃは子れみりゃを出迎え、その頭を帽子の上から撫でてあげる。 子れみりゃは抱えていた饅頭を地面に落として、両頬をおさえて体を揺らす。 「うれしぃどぉー♪ まんまぁーにほめてもらえたどぉー♪」 親子のスキンシップは、やがてれみりゃ種特有の"だんす"へと変わっていく。 こーまかんのダンスホールで繰り広げられる"うぁうぁ☆だんす"を経て、 れみりゃと子れみりゃは、仲良くお饅頭を食べていく。 「「あまあま☆でりしゃすぅー♪」」 顔の周りを汚しながら、あっという間に食事を終えるれみりゃ親子。 食後、互いの"おぐし"を撫でたり梳かしたりしながら、 れみりゃと子れみりゃは、食後のコミュニケーションに花を咲かせた。 話題の中心は、これから産まれてくる"べびりゃ"のことへ自然と移っていく。 「れみぃは~♪ おねぇーちゃまになっちゃうんだどぅ♪ うぁうぁ☆うっうー♪」 「う~~♪ でみりゃのあがじゃん、でみりゃそっぐぃで、かぁ~わいいどぉ~♪」 当たり前な、けれどかけがえのない時を満喫する、れみりゃ親子。 すると、子れみりゃが何かに気付いたように"うぁ☆"と立ち上がり、親れみりゃの方を向いた。 「そうだどぉー♪ まんまぁーにしょうかいするどぅ♪」 「う~~? あがじゃん、なぁ~にぃ~?」 幸せを疑うことなく、重たい頭を少しだけ傾けるれみりゃ。 子れみりゃは自信満面に下ぶくれスマイルを輝かせて、ぴょんぴょん体を跳ねさせた。 「めしつかいができたんだどぅ♪ ごーまがんのそとでうろうろしてたのを、れみぃがひろってあげたんだどぉー♪」 「あーぅあぅー♪ あがじゃん、すごいどぉー♪」 れみりゃは、まだ小さいのに召し使いを従えるようになった我が子を褒めちぎる。 まんざらでもない様子の子れみりゃは、興奮気味に、その召使いを呼んだ。 「しゃくやぁーくるんだどぉー♪ まんまぁーにしょうかいしてあげるぅー♪」 子れみりゃの声が森に響いたそのわずかな時間を置いて、 ぺきぺきと枝を踏みしめる音とともに、こーまかんに"めしつかい"が入ってきた。 子れみりゃは確かに"めしつかい"と呼んでいた。 けれど、そこに姿を現したのは…… 「……う、うぁ!?」 疑うことなく微笑む子れみりゃの後ろで、 れみりゃは俄に体を強ばらせた。 * * * この仕事を始める時、私は周囲から反対を受けた。 けれど、私は確信していた。この新しい"ゆっくりとの在り方"を。 だから、私は今日も森へ入っていく。 用が有るのは、"ゆっくりれみりゃ"や"ゆっくりふらん"と呼ばれるゆっくり。 それも人間の幼女のような、それでいてぬいぐるみのような体を持った連中だ。 比較的どこでも見るようになった"ゆっくりれいむ""ゆっくりまりさ"とは違い、 それらの種類は数も少なく、また比較的夜行性であるために、探すのにはコツがいる。 ……まぁ、コツといっても大したことじゃない。 それに、そのコツを考え得たからこそ、私はこの仕事を始めたわけだが。 私は、いつもようにスカートとエプロンを着て、頭に銀髪のかつらとヘッドドレスをつける。 これで準備万端。あとはメイド服とは不揃いな籠を背負い、森の真ん中で、お腹から声を出せばいい。 "おぜうさまぁーおやつの時間ですよー" 私の声が、森の中でこだまする。 そんなことを2~3回繰り返すうち、目的のゆっくりが、あちらの方からやって来る。 "うっうー"とか"さくやー"とか"ぷっでぃ~ん"とか言いながら、 ゆっくりれみりゃが、次々と私の前に姿を現していく。 何も私が探すことをしないでも、向こうから喜び勇んでやって来てくれるのだ。 まったくちょろい仕事だ。 歯ごたえの無さに少々の虚しさを覚えなくもないが、それは贅沢というものだろう。 私は、テキパキとれみりゃ達との応対を進めていく。 れみりゃ達は、私のことを本能レベルですり込まれた従者"さくや"だと信じ切っている。 私はかいがしいメイドのふりをして、 同時にはお仕えすることはできないと断ってから、一軒ずつ"こーまかん"を訪ねることを約束する。 "ゆっくりりかいしたどぉー♪ れみりゃ達はおりこーさんだからゆっくり待ってあげるどぅ♪" れみりゃ達はそう言って、うぁうぁ踊ってそれぞれのカリスマをアピールしだす。 どうやら、そのダンスが上手い順番に"さくや"を"こーまかん"に招いても良いということらしい。 私は、れみりゃ達の順位づけが終わるまで、優しい微笑みを被ったまま、ゆっくりと待つ。 たまに合いの手を入れたり、れみりゃ達を褒めたり、頭を撫でてあげたりすることで、 なお一層の信頼をれみりゃ達から勝ちうることができる。 そうして、今日もまた、私は"こーまかん"に招かれた。 すると、そこには私を招いたれみりゃの親らしきれみりゃがいた。 親れみりゃはどうやら妊娠をしているらしく、 肥大化した下ぶくれ顔からは、もう一つの顔がのぞいて"うー"と鳴いている。 ……おや? 親れみりゃの方が、私を見て体を強ばらせた。 どうやら、この親れみりゃは人間の存在に警戒心を持っているようだ。 以前、人間に飼われていたか、虐められたことがあるのだろう。 "あがじゃん、にげるんだどぉー!" などと叫んで、私と子れみりゃの間に立つや否や、"ぎゃおー!"と両手を上げて威嚇を始めた。 この後も何軒も"こーまかん"を回らなければならない。 私は手早く仕事を始めることにする……。 * * * 「あぁぁー! ざぐぎゃぁぁー! だずげでぇぇーー!!」 「まんまぁぁぁーー!?」 鬱蒼とした森の奥、れみりゃの"こーまかん"で、他ならぬれみりゃが泣き叫ぶ。 人間に対して警戒感を持つれみりゃは、 子れみりゃが連れてきた人間が良からぬことをたくらんでいるのを察し、 子れみりゃを守るべく、人間へ必殺の"ぎゃおー!"を繰り出し、牽制しようとした。 ……が。 メイドの格好をした人間に、たっぷり下ぶくれた頬を2~3回ビンタされると、 れみりゃは力なく腰から砕け落ち、じんじん痛む頬を押させながら泣き出してしまうのだった。 「うー! こいつぶれぇーものだどぉー!」 自分の母親に手をあげた"めしつかい"を罰するべく、トテトテ近寄っていく子れみりゃ。 「まんまぁーいじめたらゆるさないんだどぉー! さくやなんてだいきらいだどぉー!」 「あぁぁー! あがじゃんだべだどぉー! にげどぅんだどぉぉぉー!」 子れみりゃは、人間へ向かって無防備に頬を膨らませる。 親れみりゃは、うびぃーうびぃーと嗚咽を漏らしながらも、子れみりゃを逃がそうと叫んだ。 「まんまぁーだいじょーぶだどぅ♪ れみぃはおつよいから、めしつかいなんかにまけないんだどぉー♪」 「う~~! ぢがうのぉ~~! あがじゃんにげでぇ~~!」 人間との力の差を理解していない子れみりゃと、 かつて人間によってひどい目に遭わされたことのある親れみりゃとの会話は終始交わらない。 そのかみ合わない会話に見切りをつけた人間が、子れみりゃの背中の羽へ手をのばした。 人間の手には、大きな洗濯ばさみ状の物が握られている。 「う、うぁ?」 子れみりゃがその違和感に気付くより早く、 人間はその巨大洗濯ばさみで、子れみりゃの羽の付け根をパチンと止めて固定する。 「う~! やめるんだどぅ! れみぃのかわいいおはね"ぎゅっ"しちゃだめなんだどぉー!」 羽の付け根を拘束される感覚に、子れみりゃが不満を露わにする。 そして、子れみりゃは、じたばた暴れるうちに、自慢の羽が固定されて動かないことに気付く。 「う~! ぎゅっしてるのとってぇー! これじゃぱたぱたできないどぉー!」 人間はそれを気にもとめず、子れみりゃを後ろから抱えて持ち上げると、 自らも切り株に腰かけ、その膝の上に子れみりゃを座らせた。 「ちがうどぉー! ぞれはでみりゃだぢのてーぶるだどぉー! すわっちゃだめぇー!」 子ども達との幸せなディナーを夢見ていたテーブルに、人間が腰かけている。 その光景に、れみりゃは叫びをあげながら、這うように近寄っていく。 一方、人間は子れみりゃが暴れて傷つかないように、 その下ぶくれの下側に片手を回し、撫でるように、叩くように、くすぐるように、"たぷたぷ"を開始した。 「や、やべるんだどぉー! へんになっちゃうどぉーー!」 「うわぁぁー! でみりゃのあがじゃ~~ん!!」 たぷたぷ。たぷたぷ。たぷたぷ。たぷたぷ。 人間は、れみりゃ達の声を無視して、子れみりゃの下ぶくれに刺激を与え続ける。 「う、うぁ、うぁぁ、あぅ、あぅぅ……」 最初こそ不快感をあらわにしていた子れみりゃだったが、 やがて体から力が抜けていき、完全に戦意を失ってだらんと虚脱状態になる。 「ううう……はちたないどぉー……おぜうさま、けがされちゃったどぉー……」 「あがじゃーん! じっがりぃー! じっがりずるんだどぉぉーー!!」 人間は、子れみりゃが抵抗しなくなったのを確認してから、 慣れた手つきで子れみりゃの"おべべ"を脱がしていく。 「あーぅ、あぅー……」 辛うじて声を振り絞る子れみりゃだったが、それで人間の動きは止められない。 人間は背中に背負っていた籠に、子れみりゃから脱がした"おべべ"をぽいぽい放りこむ。 「だめぇー! あがじゃんのだいじだいじ、ぽぉーい☆しないでぇぇー!」 あっという間にドロワーズいっちょうの格好にさせられてしまう子れみりゃ。 恥ずかしさから、子れみりゃは涙ぐみながら顔を紅潮させる。 人間はそんな子れみりゃの足をつかみ、大人が悪さをした子どもの尻を叩く時のように、 自分の膝の上で四つんばいの格好を取らせ、ドロワーズに手をかける。 「あぁぁー! どーが、どーが、ぞれだけばぁぁー!」 人間のやろうとすることに気づき、親れみりゃは人間の足にすりよって、懇願する。 「おでがいでずぅー! "どろっ☆わーずぅ"だけばぁー! それがだいどゆっぐりできだいんでずぅー!」 「ま……まんまぁ……だすげ……れみぃの……どろっ……わーずぅ……」 「あがじゃんー! でみりゃのあがじゃんじっかりー!」 子どもの声に奮起し、れみりゃは再度立ち上がり、人間の足をつかんで揺さぶろうとする。 「う~~! あがじゃんの"どろっ☆わーずぅ"は、まんまぁーがおまもりするんだどぉーー!!」 必死に叫んで、人間を止めようとする、れみりゃ。 しかし、人間はそれに対して、親れみりゃを蹴り飛ばすことで返事を済ませた。 「ぶんぎゃぁぁーー! いだいよぉぉー! ざぐぎゃぁぁぁーー!!」 人間は転がり回る親れみりゃから子れみりゃに注意を移し、作業を再開する。 破いたり汚したりしないように慎重に、されど子れみりゃに抵抗する暇を与えないように迅速に、 人間は、子れみりゃの「ドロワーズ」を脱がせて籠へ入れた。 「ぼぉぉーやだぁぁー! でびりゃごーまがんにがえるぅぅー!!」 人間が子れみりゃを完全に裸にするのと同時に、 親れみりゃは錯乱しだし、子どもと"こーまかん"を後に、逃走を開始した。 しかし、黒い小さな羽をいくらパタパタ動かしても、 身重で運動不足な太ましい体を素早く動かせるわけもなく。 れみりゃの逃走に気付いた人間によって、あっというまに追いつかれ捕まえられてしまう。 「すっぽんぽんはいやだどぉー! でみりゃはおぜうさまなんだどぉーー!」 人間の表情は変わらない。 親だろうが子だろうが、人間は淡々とルーチンワークをするだけだった。 『でみりゃの"どろっ☆わーずぅ"がぁぁーー!』 その日、森の片隅からは、そんな声が時間を置いてたびたび聞こえてくるのだった。 * * * 家に戻り、私は重たくなった籠を土間へ下ろした。 中には、ゆっくりれみりゃ御自慢の"おべべ"と"ドロワーズ"が何着も入っている。 人間からすればサイズの小さな衣服だが、量が量だけに、相当な重さになる。 採集の仕事の後は、いつも肩と背中が痛くなって、温かいお風呂が恋しくなってたまらない。 ……とはいえ、これで上げられる利益を思えば、そうそう苦とも言っていられない。 私は籠かられみりゃの"おべべ"と"ドロワーズ"を取り出して、 仕事後の充足に満ちた吐息をついた。 養蚕で作られる絹糸に比べれば質は落ちるが、 ゆっくりれみりゃの着衣はそれなりに上等な質を持っている。 それに気付いたのは、もう1年も前のことだ。 この点に関してのみ言えば、 だてにお嬢様を自称していたり、"おべべ"を大事がっていたりするわけではないらしい。 ちょっとした加工を施すだけで、 養蚕よりもはるかに手早く、多くの量を得ることができる。 もちろん、元が野生のゆっくりれみりゃの服だということで、忌避する人も少なくはない。 けれど、それを気にしない人向けや、同じゆっくり用の着衣として売るだけでも、相当な財がなされる。 そして、何よりも。 ゆっくりれみりゃは"ドロワーズ"をはいているのだ。 幻想郷の女性にとっては、人気の高い下着であるが、 その製造方法や原材料を知るものは、存外限られ、貴重なものとなっている。 そんな中、私は見つけたのだ。 天然自然に、その"ドロワーズ"があることに。 他の人がどうやってドロワーズを用意しているかは知らないが、 私はれみりゃやふらんがドロワーズをしていることに気付き、この仕事を始めることを決心したのだ。 人間、妖怪、神様、飼いゆっくり……。 ドロワーズ無くして、幻想郷の衣生活は成り立たない。 ドロワーズこそ幻想郷を裏から支えているものといっても過言ではない。 周りの人はばかにしていたが、私は違った。成功を確信して行動に移した。 決して需要の無くならない、そして限りなく元手のかからない仕事…… まさに幻想の産物……幻想郷にふさわしい仕事ではないか。 * * * すっぽん! 森の奥、月明かりの下で、乾いた音が響いた。 その音は、肥大化したゆっくりれみりゃの下ぶくれから、新しい生命が産まれたことを示す音だった。 「う~~♪ でみりゃのあがじゃんだどぉ~~♪」 「れみぃのいもうちょ☆か~わいいどぉ~~♪」 新しく産まれた命に対し、その命の親と姉が喜びを露わにする。 その歓声に導かれるように、産まれたばかりの命は立ち上がり、歓声に応えた。 「ぎゃおー♪ たーべちゃうぞぉー♪」 ばぁーんと両手をバンザイの形で広げて、笑顔を輝かせる新しい命……。 その姿は、普通のゆっくりれみりゃとは違っていた。 「うぁー☆うぁー☆」 「れみぃのいもうちょ☆かりしゅまだっどぅ♪」 改めて見た赤れみりゃの姿に、興奮する親れみりゃと姉れみりゃ。 その赤れみりゃは、"れみりゃザウルス"の格好をしていた。 「すっごいどぉ~♪ さっすがはでみりゃのあがじゃんだどぉ~~♪」 「おねぇーちゃまだどぉー♪ いっしょにゆっくりするどぉー♪」 "れみりゃザウルス"は、ゆっくりれみりゃにとって憧れの姿の一つ。 その姿で産まれた赤れみりゃを、親と姉は祝福し、むぎゅーと抱きついた。 「うっうー♪ まんまぁーもおねぇーちゃまも、くるちぃどぉー♪」 エレガントな笑みは崩さぬまま、少しだけ苦しげな声をあげる赤れみりゃ。 親れみりゃと姉れみりゃはハッとして、赤れみりゃを抱く力を弱めた。 「う~~♪ あがじゃんごめんごめんだどぉ~~♪」 「れみぃ☆うれしてくついやっちゃうんだどぉ~~♪」 ニコニコ微笑んで謝る、親れみりゃと姉れみりゃ。 そんな二匹を、赤れみりゃも笑顔で許す。 ……しかし、次の瞬間。 月光がより強くあたりを照らした時、赤れみりゃは無邪気に首を傾げた。 「う~~♪ まんまぁーもおねぇーちゃまも、すっぽんぽんだどぉー♪」 「「うっ、うぁ!?」」 その一言に、ぴたっと笑顔を凍り付かせる、親れみりゃと子れみりゃ。 そう、この2匹は、人間に"おべべ"と"ドロワーズ"を捕られてしまったままであった。 「どろっ☆わーずぅまでないどぉー♪ はしたないどぉー♪ おぜうさましっかくだどぉー♪」 「「うっ、うわぁぁぁーーーー!!!」」 赤ちゃんだからこその、歯に衣を着せぬ物言いに、 親れみりゃと姉れみりゃは現実を思い出して、泣き叫んでしまう。 「ないちゃだめだどぉー♪ れみぃはかりしゅま☆ぼでぇーがあるからー♪ あんっしんっなんだどぉー♪」 赤れみりゃは、泣いてしまった親と姉を慰めるべく、立ち上がって自慢の恐竜ボディーを披露する。 そして、産まれて初めての"のうさつ☆ダンス"を踊り出すのだった。 「うっうー☆うぁうぁ♪ れみ☆りゃ☆うー♪」 * * * 「れみりゃザウルスですか?」 得意先の紅魔館の門番さんからその話を聞いた時、私は思わず反芻した。 曰く、紅魔館の中でもたまに出現し、野生でも極まれに姿を現す希少種らしい。 恐竜のヌイグルミを産まれながらに着込んだようなれみりゃ……。 私は脳内で、次なる仕事の成功を思い描きはじめる。 れみりゃ種がすっぽり入ってしまうようなヌイグルミ……そこからいったいどれだけの綿が取れるだろうか? 私は、得意先からの帰り道、自ずと足が軽くなるのを感じた。 おしまい。 ============================ プライベートで人生の選択に迫られる中、 思い悩んでいたら、いつの間にかれみりゃSSが出来ていたというこの不思議……。 by ティガれみりゃの人 ============================ このSSに感想をつける