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ゆっくり虐めSS ~YDF~ ゆっくり地球防衛軍2017 中編 その1 [[前編その2 ゆっくりいじめ系2342 ゆっくり地球防衛軍 前編 その2]]からの続きになります 読みづらいとの声がありましたので、文を練り直しましたがあまり変わっていないと思います。 これが作者の文章力の限界です。 前回の後書きで前後編か前中後編になると言いましたが、結局前中後編になりました。 「ストーム1に続けぇぇぇ!!」 「「「「「おおおおおおおおおおおお!」」」」」 あの戦い以来、負け戦続きで諦めかけていたYDFに何か筋金が入ったようであった。 今まで恐怖の対象でしかなかったゆっくり、しかしそれが彼の活躍により兵士達の中で「憎むべき侵略者」と書き換えられたようなのだ。 現に他のチームでもゆっくり達にそれなりの損害を与えている。 現在もレンジャー5、6とストーム1による、地下鉄に巣食ったゆっくり達の戦いが行われている。 この戦いでもかなり被害を抑え、そして奴らの半分以上を掃討したようだ。 作戦区域内の無人カメラが捉えた映像が流れている。 同時刻 =地下鉄構内= 「ゆぅ、ぱちゅりーれいむつかれたよ・・・はやくおうちにかえろうよ・・・」 「むきゅ・・・そんなこといわれても・・・」 「ありすもよ!だいたいなんでここからうごかないの?じっとしてるのはとかいはじゃないわ!!」 「むきゅ!いまでていったらふくろのねずみよ!いまはあいてのうごきをゆっくりぶんせきするのよ!」 「ゆぅ・・・ゆぅぅ!!まりさぁぁぁ!!なんでかってにいなくなっちゃったのぉぉぉ!?ばかぁぁぁぁ!!」 「ひとりだけにげるなんてとかいはじゃないわぁぁぁ!りーだーぁぁぁ、どごにいるのぉぉぉ!!」 「ばりざぁぁぁ!!ばぢゅりーだぢはどぼすればいいのぉぉぉ!!」 「「「ゆーん!ゆーん!ゆーん!」」」 この3匹のゆっくり達は少し前の戦いで主戦力であり、リーダー格のまりさ種を全滅させられた。 他にも3~4匹いたようだがそいつらはどうでもいいらしい。 しかしそのリーダーまりさは自分達が優勢なうちは、 「いくじなしさんはさっさとしぬんだぜ!!」 と前線で戦っていたようだが、ストーム1が合流し形成が逆転すると 「ゆっふっふ、みんながおとりになってくれるんだぜ!まりさはせんりゃくてきてったいだぜ!そろーり、そろーり!」 と言って一人逃げ出そうとしているところに集中砲火を受け、殺されたのだが・・・。 部下の前では頼れるリーダーだったようだ、だが自分がピンチになると本性を出すタイプらしい。 とんだゲス野郎め。 そしてまりさが逃げ出したため、不利になり逃げ込んだのがこの地下鉄構内らしい。 構内は所々崩落しており、今出口になるのは地上と地下を結ぶ2箇所の階段だけだ。 その出口はレンジャー5、6が固めているため、もう既に袋の鼠なのだが・・・気づいていないようだ。 今の数ならこの2チームとストーム1を突っ込ませれば勝てる・・・だが、奴らとて死に物狂いとなればこちらの被害もかなり大きくなる。 そんな危険なことをさせるわけにはいかないだろう。 それに狭い地下では奴らの強酸餡子を避けるのも難しくなってしまう。 「隊長!この後どうするんですか?」 「うむ、このまま両方から攻めても勝てるがこちらの被害も増えてしまうだろう」 「よって、わざと片方の道を開けて攻め込み、そこで逃げたところを待ち伏せしよう。我々レンジャー6が追い込むから君達レンジャー5が待ち伏せしてくれ。」 「まかせろ!なんてったってこっちにはストーム1がいるんだ。1匹も逃がしゃしないぜ!なぁストーム1!」 「・・・・・」 「頼むぞ!!」 「了解した!気をつけろよレンジャー6」 「本部!こちらレンジャー5、ゆっくり達をわざと逃がし、待ち伏せて攻撃します!この作戦の許可を!」 なるほど・・・現場のとっさの判断にしてはなかなかいい案じゃないか。 「許可する!!だがゆっくり達を逃がすなよ!」 「レンジャー6了解!」 「火炎放射隊!配置に付きます!」 合図と共に火炎放射器「灼熱火炎砲」を持った隊員達が銃口を地下入り口に向ける。 「よし、威嚇攻撃開始!!」 「くらえええええええええ!!」 「この饅頭野郎!!」 「汚物は消毒だーーーっ!!」 火炎放射隊が攻撃を始めたようだ、ゆっくりたちが錯乱している。 「あぢゅいいいいいいいいい!!ありすのぎゅーてぃぐるへあーがぁぁぁ!!」 「でいぶのおりぼんがぁぁぁ!!」 「むぎゅうううううう!!ばぢゅりーのちてきなおぼうじがぁぁぁぁ!!」 たまらずに逃げ出した、さすがに炎の壁がが押し寄せてくる状態では作戦だのと言っていられないようだな。 ありす、れいむと出口から飛び出してくる。 おや? ぱちゅりー種が出てこない・・・ 地上に上がる前に死んだのだろうか。 「今だ!ショットガン、撃て、撃てぇーーーっ!!」 「お前達がくるまでは平和だったんだぁぁぁ!」 「よくも俺の町を、家族をぉぉぉ!!」 「宇宙に帰れぇぇぇ!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!あづいぃぃぃ!いだいぃぃぃ!でいぶなんにもわるいごとじてないのにぃぃぃ!!」 「ゆうううううう!ありずのおべべがぁぁぁ!かれんなおはだがぁぁぁ!!」 技術部による最新式ショットガン「ガバナーSX」の一斉掃射だ。 彼らによるとこれは装弾数を減らした変わりに拡散力を上げ、散弾の数を増やし、1回の攻撃力を極限まで上げた銃らしい。 至近距離での全弾命中時の攻撃力はスナイパーライフルの一撃を超える恐ろしい銃になったようだ。 「ぼっど・・・ゆっぐりじだがった・・・」 「どがぃは・・・な・・・ありず・・・が・・・」 さすがに至近距離での一斉射撃を与えれば奴らに反撃を許さずに葬れるようである。 最近分かったらしいが、ゆっくりはかなり痛みに弱いらしい。 戦闘スイッチとでも言うのだろうか、一旦戦いになるととても手ごわいが非戦闘状態からの不意打ちを行えば比較的簡単に無力化できるようだ。 すなわち、精神的にピンチに追い込めば簡単に勝てる。 しかし一度でも相手を優位に立たせてしまい、気持ちをノらせてしまうととうてい勝つことはできない。 このゆっくりの、「思いこみの力」に奴らを攻略する鍵があると私は考えている。 「本部!ゆっくり達を全滅させました!」 「この作戦は成功だ、レンジャー6は帰還せよ。」 「了解!」 「ストーム1・レンジャー5森隊長は念のため構内を確認してから退却しろ、レンジャー5隊員は周囲の警戒を怠るな」 「こちら森、了解!」 「・・・・・」 しかし、あのぱちゅりーは一体何処にいったんだ? カメラに死骸は映っていない・・・ あれは・・・帽子の燃えカスか。 まさか死骸も跡形も無く燃え尽きたということはあるまい。 となればカメラの死角か・・・? 「むぎゅうううう!!」 「うわぁっ!」 「!!・・・」 しまった!まだ生きていたのか! 私はあわててカメラを切り替える。 なんということだ、森隊長がぱちゅりーの下敷きにされて呻いている。 カメラの画面奥に瓦礫の中の地下鉄車両が映っている。 そうか、あの中に隠れて火炎放射をやり過ごしたのか・・・ ぱちゅりー種は他の種に比べて知恵があると聞いていたが、あんな状況でここまでやるとは思わなかった。 「むっきゅっきゅ・・・、ふいうちでゆっくりけいせいぎゃくてんね!」 「ぐぅぅ・・・」 「・・・・・」 「むきゅきゅ、さわがないでそのいたいいたいさんをすててね。すてないと、このたいちょうさんをころすわよ」 「・・・・・」ガシャン 「ストーム1!俺のことはいいから早くこいつを・・・ぐあああ!」 「だまりなさい!!このおまぬけさん!! 「・・・・・」」 「ほのおにまかれたあと、ひのついたおぼうしさんをすててでんしゃさんにかくれたのはゆっくりりこうなぱちゅりーだけのようね」 「・・・・・」 「れいむたちはばかだからこんなことにもきづかないのね、ほんねをいうとあんなばかどもはぱちゅりーのむれにはじゃまなのよ!」 「う、ぐぁぁ・・・」 「だいたい!まりさだってぱちゅりーのさくせんのおかげでかてたのに、うぬぼれてひきょうものだからはやじにするのよ!」 「ぐぅぅ、くそっ・・・ストーム1・・・これを・・・」 「それなのに!ぞれなのにぃぃぃ!ありすもれいむもまりさばっかりほめて!」 「・・・・・」 「しんにつよいのはあたまのよいものなのよ!むぎゅう!いくらちからがつよくてもばかものはゆっくりながいきできないのよ!!」 「・・・・・」 「そうよ!かしこいぱちゅりーはゆくゆくはどすをもしはいするそんざいになるはずなのよ!そうしてぱちゅりーは・・・むきゅ?」 ぱちゅりーが自分の世界に浸っているうちにストーム1はこっそりと森からなにかを受け取っていたようであった。 あれは・・・ 「かしこいばぢゅりーのえんぜづぢゅうにかっでなごどをずるなぁぁぁ!なに!?いまなにじだの!」 「・・・・・」 「むしずるなぁぁぁぁ!!ぞれをばぢゅりーにわだぜぇぇぇ!!」 「渡してやれっ!ストーム1!」 「むぎゅうっ!?」 次の瞬間、ストーム1はぱちゅりー目掛けてパイナップルを投げつけた。 無論、本物のパイナップルではない。 中に火薬がたっぷり詰まった、手榴弾と言う名の殺人パイナップルである。 「むきゅ!!ごっくん!!」 大口開けて熱弁していたのが仇となり、ぱちゅりーの口の中目掛けて投げ込まれた手榴弾は見事に彼女の体内にINすることになった。 「ぱ、ぱちゅりーになにをのませたの?」 「・・・・・」 「お、お、おこらないからとくべつにこたえるけんりをあげるわ・・・」 「5・・・6・・・7・・」 「な、なんなのおおおおお!?おじえろおおおおおお!!」 「・・・10、ざまぁみろ饅頭め!」 「ゆっぶうううううううううううう!!」 ぱちゅりーは読んで字の如く、木っ端微塵になった。 確かに体内で手榴弾が爆発したらどんな生物でも生きてはいられないだろう。 しかし・・・2人とも命知らずな真似をするものだ。 「くそ・・・酸を浴びちまった・・・」 「・・・・・」スッ 「すまない、ストーム1」 「・・・・・」 「ふふふっ・・・でも勝ったぜ・・・」ニヤリ 「・・・・・」ニヤリ 「本部!こちら森、生き残っていたゆっくりぱちゅりーを撃破した。これより帰還する」 まったく・・・帰ったら指令室に呼びつけなければな・・・ 「了解した、帰路も気を抜くなよ」 勝った・・・向こうの総合戦力は分からないが、今回はこちらの圧勝だろう。 しかし、気を抜くわけにはいかない。 レンジャー5,6チームは4時間後に通常種との戦闘が、ストーム1は2時間後に飛行戦力(れみりゃ・ふらん種)との戦闘が待っている 人間たちの復讐はまだ始まったばかりである。 中編その2に続く
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※虐め成分は少ないです。 ※超俺設定満載でお送りします。 ※ゆっくりが賢かったり強かったりします。 ※主人公のゆっくりの台詞を他と区別する為に、各“「」”の前に、 “@=ゆっくり・R=れいむ・A=ありす・⑨=ちるの”等の記号を付けています。 ※音を無理矢理文字表記しています。 読み難いかもしれません。 ※海より深く、山より高く、空より広い心でもってお読み下さい。 【ゆっくりぷれいすを探して… ~放浪者達~】 「ありがとうございます! おかげで無事収穫を迎えられそうです!」 「それは良かったですね。 美味しい野菜が出来るよう祈ってますよ」 依頼人は感謝の言葉を述べて帰っていった。 俺は報酬の金額を帳簿に記録し、大切に金庫にしまった。 ?「ゆっ! こんかいのしごともだいせいこうだったね!」 その言葉の主は人間ではない。 俺の相棒の“ゆっくり”だ。 「ああ、お前の働きのおかげで野良ゆっくりの群れを潰す事が出来た。 あの依頼人の畑はきっと大豊作になるな」 ?「とくせいの“ひりょう”をたっぷりとまいたしね!」 俺は、相棒に今回の仕事の首尾を聞く。 「途中で正体がばれたりしなかったか?」 ?「だいじょうぶ、この“かざり”のおかげでうまくまぎれこめたよ!」 「その飾り、奪っておいて正解だったな」 ?「ゆん! みんな、すっかり“わたし”を“れいむ”だとしんじきっていたよ!」 そう言い終わると、相棒はゆっくりと飾りを取り払う。 すると、相棒の言葉遣いも態度も雰囲気も、全てがガラッと変わった。 ?「でも、髪の毛がちょっと邪魔だったかしら?」 「まぁ、普段が“ハゲ饅頭”だからな」 ?「ちょっと! それは禁句だっていつも言ってるでしょ!!」 跳ねながら抗議する相棒、その姿は顔の付いた饅頭としか言い様が無い。 そう、俺の相棒はかなり変わったゆっくりなのだ。 ……………。 ………。 @「お兄さん、わたしを雇わない?」 そう言って、一匹のゆっくり…、 後の相棒が俺の店を訪ねて来た時、俺は夢でも見ているのかと思った。 「何だ…? ハゲ饅頭…!?」 @「ハゲ饅頭じゃないわ! ゆっくりよ! ゆっくり謝罪を要求するわ!!」 俺の目の前で飾りどころか髪の毛すらない饅頭が怒って跳ねている。 自称ゆっくりだが、饅頭との境目は顔だけと言っても良かった。 「あのな、俺は忙しいんだ。 自称ゆっくりに構っていられるほど暇じゃないんだよ」 @「知ってるわよ。 お兄さん、悪いゆっくりを退治しているんでしょ? そのお仕事を、わたしに手伝わせて欲しいんのよ」 「おいおい、ちょっと待てよ…」 突然の出来事に頭が混乱しているが、このゆっくりは俺の仕事に詳しい様だ。 こいつの言う通り、俺の仕事は害ゆっくりの駆除だ。 だが、こいつは害ゆっくりとは言え同属の駆除を手伝わせろと言っている。 餡子脳が残念なのかとも思ったが、先程からの受け答えはしっかりしている。 態度も堂々としたもので、尋常では無い雰囲気を纏っている。 「なぁ、お前自分の言っている事の意味が分かってるか?」 @「勿論よ! わたしは悪いゆっくりが許せないのよ!」 こいつは本気だ…! そう思わせる何かがあった。 「何か事情があるみたいだな? 詳しく話してみろ。 話次第だが、場合によって考えてやる」 @「ゆっくり聞いて、ゆっくり考えて、ゆっくり決めて!」 自称ゆっくりは、何故悪ゆっくりを憎むのかを話し出した。 @「お兄さん、わたしの姿を見てどう思う?」 「どう見てもハゲ饅頭だ、ゆっくりの髪を剃ったらこんな感じになるのかな?」 @「ゆぐぐ…! あんまりハゲ饅頭って言わないでね! 非常にデリカシーに欠ける言葉よ!」 「何でそんな姿になったんだ? 悪いゆっくりに毟られたのか?」 @「実はわたしは、産まれた時から髪も飾りさえも無かったんの…」 「ふーん?」 つまり、“奇形”ってやつか? 思わず口を突いて出そうになったが、さっき注意されたばかりなので何とか堪える。 @「お兄さんも知っていると思うけど、ゆっくりは飾りの無い仔を虐めるのよ。 わたしは髪さえ無いから、とても辛い生活を送っているのよ…」 「よく今まで、生きてこられたな?」 @「小さい頃は殆ど他の仔がいない場所にいたから、 虐められる事は少なくて、大事には至らなかったの」 「それで、今はどうしてるんだ? 誰にも見つからない様に常に隠れて生活しているのか?」 @「ううん。 いつまでも隠れ通す事なんて出来ないわ。 だから、わたしは自分から皆の前に出て行ったわ」 「普通に考えれば、そこで殺されて終わりなんだが?」 @「ええ、普通ならね…。 でも、わたしは普通じゃなかった…。 飾りも髪の毛も無いわたしには、生き残る為の力が備わっていたの」 そう言うと、こいつは口の中から何かを取り出した。 「何だそれ? れいむ種のリボンか?」 @「ええ、その通りよ。 これは、わたしを虐めていたれいむのリボン…」 「奪ったのか?」 @「わたしが過去に犯した忘れることの出来ない罪の証よ…。 ある日、隠れ住んでいた巣が見つかって、れいむが殴り込んで来たの。 揉み合いの争いになって、わたしは生き残る為に必死に戦ったわ。 気が付いた時には相手は冷たくなっていた…。 私は重い罪を犯したの…」 「……………」 @「どんなゆっくりにも家族はいるわ…。 例え襲われたにしても、わたしがれいむの命を奪ったのは事実…。 わたしはそのれいむの家族に謝りに行く事にした。 でも…」 そこまで言うと、こいつは悲しみを堪える様に涙ぐんだ目をぎゅっと閉じた。 @「でも、わたしは謝りに行けなかった! 怖かったのよ!!」 「……………」 @「わたしだって死にたくない! でも、罪は罪! 償わなくちゃいけない! だから、わたしは最期の夢を叶えてから、れいむの家族に会いに行こうと決めたの」 「それは…?」 @「一度でいいから、飾りを付けてみたかったの…。 争っている時に外れた飾りだから、ゆっくり出来ない臭い(所謂死臭)はしなかったわ。 でも、それを持って家族に会いに行けば、私の説明を信じてもらえる。 そのリボンを“巻いた”わたしは、確実に殺される筈だったわ…」 (髪の毛が無いので、“結べない”から“巻いた”のか…) そんな事を考えたが、空気が読めていない感じがするので言うのは止めた。 @「夜になっていたから、次の日の朝にれいむの家族の所に向かう事にしたの。 れいむのリボンを巻いたまま一晩を過ごしたわ…。 翌朝、目覚めたわたしは頭に妙な違和感を感じたけど、リボンの所為だと思ったわ。 でも、違ったの…」 「何が違ったんだ?」 @「いつもの様に他の仔の目を避けてれいむの家族に会いに行ったわ。 でも、その途中運悪く他の仔と出合ってしまったの。 わたしは咄嗟に逃げようとしたんだけど、向こうの反応がいつもと違ったの。 普通のゆっくりに会った時の様に、“ゆっくりしていってね!”と挨拶されたわ。 わたしは驚いたわ。 挨拶されるなんて今まで一度も無かった。 虐められる事無く、相手がそのまま立ち去ってしまったんですもの」 「………?」 @「理由は分からないけど、助かった事に感謝して、家族の巣に急いだわ。 わたしは死を覚悟して、巣の中に入っていった。 でも、私に掛けられた声は、やっぱり“ゆっくりしていってね!”だった。 わたしはゆっくり説明したわ、わたしがれいむを殺してしまったという事を…。 でも、返ってきた言葉は予想外のものだったの」 「どんな言葉だったんだ?」 @「“よるになってもおうちにかえってこなかったうえに、 やっとかえってきたとおもったら、じぶんはころされたなんていってるよ? なにかゆっくりできないものでもたべたの?”って…。 まるで、わたしがれいむであるかの様ににこやかに話しかけてくるの! 気味が悪くなったわたしは、つい逃げ出してしまったわ…。 走って、走って、もう足が痛くて動けなくなる位走ったわ…。 気が付いたら、わたしは池の近くにいたの。 そこで初めて真実に気が付いたわ…」 「………!」 @「水面に映っていたのは、飾りも髪の毛も無い醜い“ゆっくり”じゃなかった! 黒い髪に紅白のリボンを巻いた“れいむ”だったの!」 「な、何だって!?」 @「驚いて振向いても、誰もいない…。 それは紛れも無いわたし自身の姿だったの…」 「い、一体どういうことなんだ…?」 @「詳しい事は私にもまだ分からない…。 でも、その後色々試して分かった事があるの。 わたしは、ゆっくりの飾りを身に着けると、そのゆっくりに姿が変わる…! そして、その飾りの持ち主に成り済ます事も出来る…!」 「………!?」 そこまで話すと、こいつはゆっくりと一息吐いた。 俺も突拍子も無い話の連続に大分混乱していたので、大きく深呼吸をする。 「俄かには信じ難い話だな…。 何か証拠はあるのか?」 @「今から、お兄さんの目の前でれいむに変わって見せるわ。 それなら信じてもらえる?」 「そんなに直ぐに変われるのか?」 @「ええ、最初は時間が掛かったけど、今では簡単に変わる事が出来るわ」 「じゃあ、やって見せてくれ」 @「分かったわ」 そう言うと、こいつはリボンを舌で体の中心に固定した。 そして、まっすぐ前に伸ばして右にゆっくり動かし、体の左側に素早く移動させた。 その後、リボンを頭に乗せたかと思うと…! @「しゅいしゅいしゅいしゅいしゅい、しゃきーん!」 「うおおっ!!?」 こいつの体が次々と形を変えいく! 徐々に頭部から黒い髪の毛が生えてきて、地面にまで届くほど伸びた! 最後に小さな稲妻の様な光が走り、紅白の飾りが顔の横と頭の後ろに現れた! それはあっと言う間の出来事だった! 俺の目の前で、一瞬で“ゆっくり”は“れいむ”に変身したのだ! R「ゆっ! れいむはれいむだよ! ゆっくりしていってね!」 「そっ、そんな馬鹿な…っ!!?」 俺はというと、驚きの余り開いた口が塞がらない。 思わずこんな顔のまま表情が固まってしまう。 → (゚Д゚;) R「ゆっふん! れいむのあまりのびぼうにことばがでないみたいだね!?」 「は、話し方や性格…、態度まで変わるのか…!」 R「そうだよ! これがこのおりぼんさんのもちぬしのれいむなんだよ! ゆっくりりかいしてね! あまあまさんちょうだいね!」 どうやら、“れいむ”は余り褒められた奴ではなかったらしい…。 呆然としている俺の前で、“れいむ”はリボンを外した。 飾りは消え、髪の毛も縮んでいき、やがて元の“ゆっくり”の姿に戻った。 @「どう? これで信じてもらえたかしら?」 「あっ、ああ…。 全く理解は出来んが、信用せざるを得ないな…」 @「私はこの力で今まで生き延びてきた。 今まで寂しかった分を取り返す為に、色んな仔達と出合って話をしたわ。 でも、良い事ばかりじゃなかった…。 皆良い子ばかりじゃなかった! 自らのゆっくりを優先する余り、他のゆっくりを平気で侵害する奴がいる…! 許せない…! ゆっくり出来ないのは私だけで十分なのよ!!」 「お前、そこまで…!」 俺は、このゆっくりの話に完全に心を打たれていた! 姿こそ不気味で、常識では計り知れない奇妙な能力を持っているが、 その心はとても熱い思いを持っていた! 青臭いまでの正義感…、それはかつて俺がこの仕事を始めた時に持っていた…、 今ではすっかり失ってしまった思いと同じであった。 その消えた筈の思いが…、熱い炎が再び俺の中で燻り始めていた! 「お前の気持ちは良く分かった。 お前に俺の仕事の手伝いをさせてやる。 いや…、俺の相棒になってくれ!!」 @「お兄さん…!」 こうして俺達は、最高のパートナーになったのだ! ………。 ……………。 俺は相棒との出合いを思い出し、再び熱い思いが蘇るのを感じた…。 @「お兄さん、何ぼーっとしているの?」 「あっ、ああ…、ちょっと昔の事を思い出していたんだ…」 @「ふーん? まぁ、良いわ。 わたしはお腹が空いたから、ゆっくり食事にしない?」 「そうだな、折角報酬も入ったんだから、ちょっと贅沢に外食にするか」 @「あら、それは良いわね」 そう言うと、相棒は赤いカチューシャを取り出した。 @「だったら、わたしもおめかししないとね!」 鏡の前に立ち、舌でカチューシャを見せ付ける様に前に突き出し、素早く左側に伸ばす。 そこから、舌を右下に引いて体の中央で止める。 そして、カチューシャを頭に乗せた瞬間…! @「しゅわぃいいい…、ぴしゅう、ぴしーん!」 鏡に映った相棒の姿が左右反転したかと思うと、 相棒は金髪に赤いカチューシャを身に着けたゆっくりありすに変わっていた。 A「ごうかなでぃなーは、とかいはのありすにこそふさわしいのよ! おにいさん、ありすをみせまでえすこーとしなさい!」 「やれやれ…」 確かにハゲ饅頭の姿で出歩く訳にも行かないだろうが、 果たしておでんの屋台の料理に、“とかいは”は存在するのだろうか…? A「でねぇ~? ぶちょ~がせくはらするから、おくさんにうったえてやったのよ~! そひたらおくさんかんかんにおこって~、りこんだ、いしゃりょうだのおおげんか! つぎのひのぶちょうのかおったら、みてられなかったわ~!」 隣ではんぺんを齧りながら、俺は肩身の狭い思いをしていた。 相棒は止せば良いのに酒飲んで酔っ払ってやがる…。 始末の悪い事に絡み上戸で、隣のおっさん相手に滅茶苦茶言っている。 何でゆっくりのお前が、都会のOLみたいな事言ってんだよ! 「うっひゃっひゃっひゃっひゃwwwww! それは見てみたかったなぁ~www! でも、何となくぶちょ~のきもひも分かるぜぇ~www? こんな美人があひてじゃ~、つひ手も出るってもんらぁ~www」 A「ゆほほほほっ! おだてたってなんにもでなひわよ~!」 隣のおっさんも相当酔っているらしい…。 こいつは笑い上戸かよ…。 語尾の“www”が限りなくウザイ…! あんまりしつこいと芝刈るぞ! 酩酊の余り、ゆっくりありすが人間に見えている様だ…。 「うんうん、わかる、わかるよ~(泣)!」 その上、店のゆっくりちぇんまで同情して騒ぎ出した。 誰だ酒を飲ませた奴は!? 泣き上戸なのか知らんが、(泣)とか久しぶりだぜ! しかも、店の親父は止めもしない。 お前、それでもちぇんの飼い主か!? 店の名前は“ゆっくりしていってね!”でも、もうちっともゆっくり出来ねぇよ! A「おやじぃ~、もっとさけもってきなさぁ~ひ!」 「今夜は飲みあかすぞ~wwwwwwwww!」 気が付いた時には空いた酒瓶が山の様になっていた。 俺幾ら持って来たっけ…? 慌てて財布の中身を確認するのであった…。 A「ゆぃ~、ひっく! もうのめなひわぁ~」 「そりゃあ、あれだけ飲めば当然だ!」 完全に泥酔していて跳ねる事さえ儘ならない相棒。 仕方なく、抱きかかえる様にして自宅兼店舗に運ぶ。 A「おすなよ~!? ぜったひおすなよ~!!? むにゃむにゃ…」 「まったく、一体どんな夢見てるんだ…?」 ……………。 ………。 相棒は今回の仕事の夢を見ていた。 群のれいむを一匹誘拐し、その飾りで変身した相棒。 誰にもばれる事無く、群に紛れ込む事に成功した。 この群は最近長が交代したのだが、その新長がとんでもない奴だった。 今までの長は人間に関わらない様に注意し、接触を厳しく禁じていたのだが、 新長は若い頃から度々村に接近し、畑に侵入しては野菜を荒らす常習犯だった。 狡猾な事に、一度荒してから次に荒らすまでかなりの期間を開けていた為、 警戒が薄れた頃に再度畑を荒らされる事になる。 その上、目欲しい物を予め調べておき、他の物には手を出さずに直ぐに立ち去る為、 犯行の途中を目撃する事が難しかったのだ。 その腕前に憧れてかは分からないが、次第に群の若い世代を中心に人気を集めていき、 ついには新長の座を手にするにまで至った。 さて、新長の座に着いたは良いが、そんな素行の悪いゆっくりであった為、 今までの長の教えが気に入らなくて仕方が無かった。 本人(本ゆん?)の考えからすれば、人間は野菜をゆっくりに提供する為に存在する、 便利な奴隷位にしか思っていない。 いや、野菜は勝手に生えてくるものであり、人間だけがそれを独占している、 人間は悪い奴だから奪って当然だとでも思っているのかもしれない。 そんな訳で、群のゆっくり達にこんな事を言ったのだ。 「みんな、よくきいてね! ずるいにんげんたちがおやさいさんをひとりじめしているのはゆるせないよ! おやさいさんはまりさたちにたべてもらうためにはえてくるんだよ! だから、おやさいさんをたべてあげるために、にんげんたちのはたけにいって、 おやさいさんをとりかえしてこないといけないよ!」 「ゆゆっ!? まえのおさはそんなこといわなかったよ!?」 「まえのおさはこっそりにんげんたちとあってやくそくしていたんだよ! にんげんたちのはたけにだれもはいらないようにするかわりに、 ときどきおさだけがおやさいさんをわけてもらうっていうやくそくをね! まえからあやしいとおもっていたから、まりさはこっそりあとをつけたんだよ! そしたら、そんなことをはなしていたんだよ!」 「ゆっ! まえのおさはひどいやつだったんだね! じぶんだけおやさいさんをたべるなんてずるいよ!」 「だからまりさはときどきにんげんからおやさいをとりかえしてきたんだよ! みんなのおやさいさんをにんげんからまもったんだよ!」 「おさ、ありがとう! おさのくれたおやさいさん、とっておいしかったよ!」 「ここで、おさはあたらしいおきてをつくるよ! これからはじゆうににんげんたちのはたけにいっていいよ! あそこはもともとまりさたちのゆっくりぷれいすだったんだよ! それをかってににんげんさんたちがうばってしまったんだよ! まりさたちのおやさいさんをとりもどさないといけないよ!」 「で、でも! にんげんはこわいよ!?」 「だいじょうぶ! このまりさがじきじきにおしえるよ! まぬけなにんげんたちはとられたことにきがつかないよ!」 「さすがおさ! たよりにしてるよー!」 「ゆっくりおやさいさんをとりもどすよーっ!!」 「みんなのゆっくりのために、まりさたちはたたかわないといけないよー!!」 「ゆぉおおおおお! おーさっ、おーさっ、おーさっ、おーさっ!!」 その新しい掟が出来てすぐ、付近の村の畑で甚大な被害が発生した。 長の交代による影響で暫く畑への侵入は無かったので、 少し油断していたところを一気に攻め込まれたのだ。 今までは新長とその仲間という極少数による被害で済んでいたが、 今度は群全体という比べ物にならない数での侵害である。 畑にある物全てを根こそぎ奪われてしまい、 被害にあった畑は踏み均されて硬くなり、再び耕す事さえ困難になってしまう。 その上恐ろしい事に、新長の指導により的確な侵入が行われ、 大群であるにも拘らず未然に防ぐ事が出来なかった。 このままでは畑に止まらず、いつ家屋が被害を受けるか分からない。 もし、そうなれば村は全滅の危機に瀕してしまう…! そんな訳で、最近ゆっくり駆除屋として注目を浴びだした俺達に依頼が届いた。 依頼を受けた俺は、まず群の一匹を捕獲。 “友好的”な“話し合い”の結果、“平和的”に群の情報を聞き出す事に成功した。 その情報から、新長と対立するグループがある事が分かった。 そこで、俺はそのグループを利用する事にした。 相棒に、群から誘拐したゆっくり(れいむ種)に化けてもらい、 対立グループのリーダーであるれいむと接触してもらう。 「しんおさのなかまのれいむが、れいむにいったいなんのようなの?」 R「しーっ、こえがおおきいよ」 「こんなところによびだして…。 しんおさのめいれいなの?」 R「しんおさはかんけいないよ。 れいむのどくだんのこうどうだよ」 「だとしたら、ますますりかいできないわ。 いったいなにをたくらんでいるの?」 R「じつは…、れいむはれいむのなかまになりたいんだよ」 「………? りゆうをはなしてくれない?」 R「しんおさにはもうついていけなくなったんだよ! たにかにゆうのうかもしれないけど、よわいものをないがしろにしているよ! としおいたりびょうきのゆっくりをすこしもたすけないよ! ちいさなこどもたちは、まいにちつらそうにしているよ! このままだと、みんなゆっくりできなくなるよ!」 「たしかに、そうだね…。 いまのおさはわかくてげんきのあるゆっくりしかみていないよ…」 R「だかられいむは、れいむにあたらしいおさをやってほしんだよ! れいむのおかあさんもいもうとも、れいむにとってもかんしゃしているんだよ!」 「れいむ…」 俺の筋書き通りにリーダーを説得し、次の長として群を治める様に仕向ける。 下手に現長を消すと、指導者を失った群が暴走する恐れがあるからだ。 次に、相棒は現長と接触し、次の標的となる畑を誘導する。 その畑に予め罠を仕掛けておき、侵入したところで一網打尽にするのだ。 今までは何処がいつ狙われるのか全く予測できなかったので対応できなかったが、 次にどの畑が狙われるのかが分かっているならば問題無い。 「れいむ、はなしがあるっていってたけど、いったいなに?」 R「おさ、まずはこのおやさいさんをたべてほしいよ!」 「おいしそうなおやさいさんだね! む~しゃ、む~しゃ、しあわせー!」 R「ねっ? とってもおいしいでしょ?」 「ほんとうだね! どこでてにいれたの?」 R「にんげんのむらのあるはたけからとってきたんだよ! れいむひとりだったからすこししかもってかえれなかったけど、 まだまだたくさんあったから、むれのみんなでとりにいこうよ!」 「それはいいかんがえだね! きめたよ! つぎのもくひょうはそのはたけにけっていだよ!」 こうして、群の次の標的の誘導に成功した。 後は罠とも知らずにやって来るのを待つばかりである。 「奴等、やってきますかね?」 @「大丈夫よ! おじさんの美味しい野菜に釣られて、確実にやって来るわ!」 「ああ! この野菜、何ていう名前か知らんが“結構イケルな”! スタミナがついて、疲労回復に効きそうだ!」 @「唯一つ残念なのが、お兄さんの部屋のゴミ箱の中の紙屑の臭いがする事ね」 「失礼な事言うな! あれは“青臭い臭い”じゃない、“迸る若さの香り”だ!」 @「どちらにせよ、臭いのよ!」 「あのー…? こう言っては何ですが、ゆっくりに食べられるより、 あなた方に食べられている量の方が多い気がするんですが…」 俺達は、モリモリ食べてドンドン元気になった! この野菜は食べると何だか気分までハイになってくるみたいだ!! テンション上がってきたぜぇええええ!!! @「来たわ! 長のまりさが先頭よ!」 「ヒャッハー! 戦闘準備だぁ!!」 罠とも知らずゆっくり達がやって来た。 なるほど、今まで誰にも侵入する姿を見られなかった訳だ。 少数単位で集まって、物陰に潜みながら、周囲の様子を伺っている。 地面を跳ねずに姿勢を低くしてゆっくりと這っており、 遮蔽物が無く目立つ所では、素早く移動して次の陰に隠れる。 しかも体に草や葉っぱを貼り付けて茂みに潜む為、日中でも気付き難いだろう。 何より、皆が一言も声を上げず、目で合図を送っている。 @「思ったよりやるわね…」 「長の奴、技術も凄いが、指導力もかなりのものだな」 @「でもまぁ、もう少し利口ならよかったんだけど」 「奴の驚く顔が楽しみだぜ」 群が畑に辿り着いた。 まりさは一言も話さず、目と口と舌…、体を使って、群に指示を出す。 群のゆっくり達は指示を受けて頷くと、それぞれの持ち場に移った。 一班は出入り口の確保、一班は周囲の警戒、一班は野菜の回収…、 全てのゆっくりが予め決められた仕事に従事する。 こんなに警戒されていては、まともに近づく事も出来ない。 落とし穴等も考えたが、地面を棒で突く等して発見された事もあったそうだ。 どうやら、周囲の状況に応じて、逐一まりさが指示をする事で対応しているらしい。 ゆっくりとは思えない大した統制だが、大きな弱点が存在していた。 「こういう場合、司令塔が潰れると脆いんだよな…」 R「おさ、ちょっとこっちにきて!」 「ゆっ! れいむ、しずかにしないとだめだよ! にんげんにきづかれちゃうよ!?」 R「ゆっくりごめんなさい! でも、これをみてほしいんだよ!」 「ゆゆっ、これは!? おやさいさんがいっぱいのってるよ」 R「ねっ? すごいでしょ! これをもってかえればとってもゆっくりできるよ!」 「ゆ~ん…。 でも、おおきくてうごかせそうにないよ…」 R「みんなでひっぱればいいんだよ! みんなでちからをあわせればうごかすことができるよ!」 「ゆゆっ! それはめいあんだよ! れいむはすごくあたまがいいんだね!」 R「ゆんっ! とうぜんだよ! あんこがちがうんだよ、あんこが!」 (相棒の奴、ちょっと調子に乗ってるな…?) 「みんなー! ちからをあわせてひっぱるよー!」 「ゆーえす! ゆーえす!」 野菜を満載した台車を引っ張る為に、見張り役まで集めるまりさ。 目の前のお宝に意識が集中しすぎて、 気が付けば大声を張り上げて指示を飛ばしている。 さっきまでの慎重さなど欠片も無く、咄嗟の判断など不可能だろう。 「みんなー、ちょっとさかになってるよー! ちからをこめておさえてねー!!」 R「きをつけないと、おやさいさんがつぶれちゃうよー!」 畑から何とか台車を引きずり出し、少し坂になった道に出る。 坂道なので放っておいても自然に台車は下へと動いていくが、 それでは台車が崖に当たってしまうので、 全員で下側から押さえながらゆっくりと坂道を降っていく。 かなり重たい台車なので、全員が必死になって押さえている。 俺達は全てのゆっくりに逃げ場が無くなるこの瞬間を待っていた。 「今だ、相棒っ!」 「ゆっ! みつかった!?」 R「りょうかいだよ、おにいさん!」 「れいむ!? なにいってるの!?」 相棒が台車の車輪の留め金を外す。 今まで台車を押さえていたと言うよりは、台車に押されていたゆっくり達。 重力に従い、徐々に加速していく台車。 速度の上昇に伴い、次第に底部が削られていくゆっくり達。 遂に耐え切れなくなり、長と後何匹かが押さえるのを止めて離れてしまう。 すると…。 “ギシッ、ギッ、ガタンッ、ガガガガガガッ!!!” 支えを失った台車は、ゆっくりの群を轢き潰しながら崖へと進んでゆく。 「ゆわぁあああ!? ゆっくりこっちにこな…、ゆげっ!」 「ど、どいてね! れいむはにげるよっ! ぢゅびっ!!」 「ゆぎゃああああ! がらだがげずれるぅうううう!!」 群がる饅頭を踏み潰し、餡子の轍を作りながら進む台車。 最後の一匹は、台車の降下速度で押さえ付けられてしまい、動く事も出来ない様だ。 「ゆぎぃいいい! うごけないよぉおおおお!?」 そして台車は最高速度で崖に激突した。 「ぐぎゃ!!!」 真っ黒な飛沫が飛び散った。 予め緩衝材として布団を置いておいたので台車は壊れなかったが、 布団の方は餡子塗れでドロドロになっている。 R「あれじゃあ、つかいものにはならないね!」 台車が完全に停止してから、それまで呆然としていたまりさが動き出した。 「ゆっ!? れ、れいむ! なんでこんなことしたのっ!?」 R「ゆ? それはね…」 「頼まれたからやったのさ!」 「な、なんでれいむとにんげんがいっしょにいるのぉおおおっ!!?」 俺と相棒はまりさの前に立ち塞がっている。 「じゃまなにんげんとうらぎりもののれいむはせいさいだよ! みんなゆっくりしないでやっつけてね!」 「ゆっくりしないでしねぇえええええ!!!」 生き残ったゆっくり達が、まりさの指示で飛び掛ってくる! 俺が相手してやっても良いが、結果は分かり過ぎている。 ここはゆっくり同士、相棒に任せる事にしよう。 「頼んだぞ、相棒!」 R「まかせてね、おにいさん!」 相棒は既に紅白のリボンを外している。 俺は青いリボンを取り出すと、相棒に投げてやった。 相棒はそれを舌で受け取ると、すっと右側に構える。 そのまま、体の中央に向けて触れるか触れないかギリギリの所へと舌を翳す。 そして青いリボンを頭の上に乗せると…! R「ぴろりー、ぴろりーろり! ぴろりー、ぴろりーろり! ぴぽっ! しゅるるる…、がしゃん! ぱぁ~ん、がしゃん、がしゃん!」 相棒の黒髪と紅白の飾りが消え、青い髪と生えてきた。 最後に青い菱形の塊が顔の上を走ったかと思うと6枚の細長い羽に展開した。 ⑨「あたい、さんじょうっ!」 舌で“ビシッ!”と自分を指す相棒。 全く持って根拠の無い自信に満ち溢れた姿である! 「れ、れいむがちるのになったぁ!!?」 ⑨「いっとくけどあたいは、さいしょっからワライマックスよっ!!」 相棒の変化を見て驚くゆっくり達。 一瞬怯んだが、直ぐにまた攻撃を再開した。 「へんなちるのはゆっくりしねぇえええ!」 ⑨「いくわよっ! あたいのひっさつわざ…!」 そう言うと、相棒の羽が体から離れてゆく! ⑨「ぱーと⑨!」 羽が広がったところでクルッと一回転する相棒。 次の瞬間、周囲のゆっくりは上下二つに分かたれた。 「むれのゆっくりたちが!!?」 ⑨「きまったわ…!」 離れた所で見ていたまりさを残して、群のゆっくりは全滅した。 ⑨「おにいさん、かざりをとってほしいなっ!」 飾りを取ってやると、相棒はハゲ饅頭の姿に戻った。 「お、おまえはいったいなにものなのっ!!?」 @「覚えておきなさい、通りがかりの…」 「ハゲ饅頭だ」 @「違うって言ってるでしょおおおおおっ!!?」 「こ、こんなゆっくりできないやつが、まりさのじゃまぉおおおおおっ!!?」 @「違うわよっ!? 通りがかりのゆっくりだからねっ!!?」 「はげまんじゅうはゆっくりしねぇえええええっ!!!」 怒りに我を忘れたかの様にまりさが突っ込んでくる! 不意を突かれて相棒は避ける事が出来ない! @「ゆっ!?」 「ゆわぁあっ!!?」 その時、相棒とまりさの間の空間に歪が生じ、飛び掛ってきたまりさを弾き飛ばした。 「(何か良く分からんが)今だ、相棒!」 @「ゆん!」 相棒が歪みに向かって飛び込むと、相棒の姿も歪みだす! そして真っ直ぐにまりさへと向かって加速していった! @「ゆぁーっ!!」 相棒の凄まじい体当たりを受けてまりさは宙に吹き飛ぶ! 「もっと…、ゆっくり…、ゆぼぉ!!」 地面に落ちたまりさは、断末魔を残して爆散した! @「ゆふぅ…。 今のは何だったの…?」 「俺にも分からねぇよ…」 相棒には、まだまだ俺も相棒自身も知らない謎が隠されている様だ…。 「道が餡子でグチャグチャだな…。 どうしたものか…」 @「そうねぇ…? 畑にでも撒いてみる?」 俺達は掃除という名の後始末に追われる事になった…。 ………。 ……………。 @「ゆぅ~ん…。 もう餡子は見たくない…」 「おい、起きるんだ、相棒!」 @「ゆぅ~ん? お兄さんが揺れてる~?」 「お前も揺れてるんだよ! いいから早く起きろ!」 @「何よぉ~? 気持ち良く寝てたのにぃ…」 「そんな暢気な事言ってる場合じゃない! 地震だ! かなり激しい! 早く逃げないと潰れ饅頭になっちまうぞ!!」 @「ゆぇえええっ!!?」 俺達は慌てて着の身着のまま家の外に飛び出す。 間一髪で家が崩れる前に脱出する事が出来た。 「あ、危なかったぁ~!」 @「ゆぅ、ゆぅ…! 何よ! この家、こんなに脆かったの!?」 「そりゃまあな…。 格安で買い取ったわけだし…」 @「どうするのよ!? 家財道具その他、全部瓦礫の下敷きよ!?」 「金庫と通帳、印鑑なら持ち出したが?」 @「れいむのリボンは!? あのリボンは失くす訳には…!!」 「あのリボンは頑丈な箱に入れておいたから潰れてはいないだろう…。 ただ、この中から探し出すとなると…」 @「ゆわぁあああああっ!!」 「よ、よせっ! 怪我するぞっ!?」 @「構わないわっ! 絶対に見つけだすんだからっ!!」 「落ち着けって! 朝になったら、業者に頼んで瓦礫を片付けてもらうから! 保険金も手に入るから、見つかるまで別の家で過ごそう!」 @「ゆぅううううう…、れいむぅうううううっ!!!」 相棒の悲痛な泣き声が夜の闇に吸い込まれていった…。 泣きたいのは俺も一緒なんだけどなぁ…。 今夜は何処で眠れば良いのだろうか…? 【おまけ】 「なぁ相棒、お前って結局どんな種族のゆっくりな訳?」 @「ゆぅーん…。 わたしにも分からないのよね…」 「え~? じゃあ、両親はどうなんだ?」 @「実は両親の顔も分からないの…。 覚えていないんじゃなくて、見た事が無いんだと思う…。 小さい頃は殆ど一人ぼっちだったし…」 「そうか…。 悪かったな変な事聞いて…」 @「気にしないで。 わたしも私自身の事を知りたいと思っているし…」 「小さい頃から苦労の連続だったんだろうな…」 @「ええ、わたしは自分がゆっくりできる場所を探して彷徨い続けたわ…。 でも、どこもわたしのゆっくりプレイスじゃなかった…」 「……………。 今は…、今はどうなんだ…?」 @「今は…、とってもゆっくり出来ているわ」 「まだ…、探しているのか…?」 @「さぁ…? どうでしょうね…?」 【後書き】 こんな滅茶苦茶なお話を最後まで読んでいただきありがとうございました! どこに投稿するべきか非常に悩みましたが、これで良いのでしょうか? 書いている内にどこかで聞いた事のある話になってしまいましたが、 初期のコンセプトは自由に別の種族に変わるハゲ饅頭だったんです…。 もしかすると続きを書くかもしれませんが、 その時はまた最後までお付き合い頂ければ幸いです。 それでは、皆様の健康と幸運を願って…。 このSSに感想をつける
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※嘔吐描写注意 「ゆっくり食べてね!」 どこかの場所、いつかの時間。 一匹のゆっくりが、一心不乱に大量の何かを食べ続けている。 その様子を、イスに腰掛けてじっと見つめる男が一人。 「はぐはぐはぐはぐがふがふがふがふがふむちゃむちゃむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……」 汚らしい食べ方のためにゆっくりの周りはぐちゃぐちゃになっていたが、そんな事は気にもせず、延々と食べ続けるゆっくり。 男もその様を叱る事もなく、ただじっと眺めていた。 「がふがふがふがふむちゃむちゃむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……ゆげふ! ゆげぇぇぇ……」 不意に、ゆげゆげとアンコと何かの混じったものを吐き出すゆっくり。 びちゃびちゃと先ほど食べていたものを汚していくその音は、人間のするそれと全く同じものである。 違うのは、吐き出すものの色が黒い事と、発するのが甘い臭いだという事だけだ。 「ゆげぇぇぇ……え”ふっ! ゆ、ぜびぃ……ぜびぃ……ゆぅ……がふがふがふがふむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……」 ある程度吐いて落ち着いたゆっくりは、また山を崩す作業に戻った。 食べすぎで吐いたというのに何故か更に食べるゆっくりをこのまま放置しておけば、吐き戻しすぎて死ぬだろう。 だが、死へ確実に近づいているゆっくりを止める事もなく、男はじっと見続けている。 「がふがふがふむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……ゆげぇ! え”ろ”ろ”ろ”ろ”ろ”ろ”……」 案の定、もう限界を超えているゆっくりは、それほど食べない内にまた吐き戻してしまった。 パンパンに膨らんでいた顔が、みるみるうちにしぼんで元の下膨れ饅頭へと戻っていく。 その目にはうっすらと涙が浮かび、顔色は真っ青になっている。 「げほっ、がぼっ! ゆ”……ゆげぇ……」 荒い息をついて、ぐったりとその場に潰れるゆっくり。 それを見て、これまでじっと見つめていた男が靴音高く近づいてきた。 「んげほっ、え”ほっ……ゆ、ゆっぐりだべるよ……だから、ごっち、ごないでね……」 青い顔に恐怖の色を浮かべて、男から少しでも離れようと試みるゆっくり。 その様子を見て何か思ったのか、男はその場に座り込んだ。 ゆっくりの顔から恐怖の色が消え、僅かに血色を取り戻すと、そのまま山に近づいていった。 「ゆっぐりだべるよ……だべるよ……」 必死の形相でじりじりと山に近づいていくゆっくり。 僅かに動くだけで戻しそうになりながらも、近づく事はやめない。 「だべるよ……だべっ! ……え”ろろろろろろろ……」 長い時間をかけて山のふもとまで来たゆっくりは、食べる直前に自分で吐き出したものの臭いに負け、その場にアンコをぶちまけ始めた。 ドボドボと音を立てて凄まじい勢いで流れ出るアンコは、しばらく 「んげろろろろろろ……おげぇぇぇ! げふっ! え”ふっ! ゆべぇぇぇぇぇ……」 元の大きさに戻っても吐き続けるゆっくり。 顔色は紙の様に白くなり、顔には何の表情も浮かんではいない。 後数分で、顔中のアンコを吐き出してしまうだろう。 ここはゆっくりの処理場。 ここに連れて来られたゆっくりは、ここにある仲間の死がいを全て食い尽くすか、即座に殺されるかのどちらかを選ぶ事となる。 ほとんどのゆっくりは死がいを食べる方を選ぶが、どれもが食べきれずに終わる事となる。 数百匹分のゆっくりの死がいは、一人や二人では食べきれないほどに多量にあるのだから、元から不可能な事だ。 それでも挑戦をやめないのは、ゆっくりが間抜けだからなのか。生きたいという想いが強いからなのか。 それは人間には分からない。 男は『それ』をつまみあげて山に投げ置いた。 てっぺん辺りに落ちた顔は、周囲と同じく苦悶の末に死んだ事を物語っている。 そこまでの苦しみを味わっても、決して自分から死にたいと言うゆっくりがいない事が、男には不思議でたまらなかった。 ――次のゆっくりに、ちょっと聞いてみようか。苦しんだ末の死と、苦しむ事ない一撃の死と、どっちが良いのかを。 そう考えつつ、男はゆっくりと部屋を出て行った。 おしまい ゲロ吐くゆっくりいじめものを短くまとめてみようと思ったら、こんなんが出来ました。 なんだこれ。 by cyc=めて男 このSSに感想を付ける
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何の苦痛もなく暮らすゆっくりがいます 食い意地の張った名無しのお姉さんの日常独白形式です 虐待描写は無いに等しいです 借り物設定、俺設定あり ------ゆっくりは何でできているの?------- What are little girls made of? Sugar and spice And all that s nice, That s what little girls are made of. 私が小さい頃、父が私と遊びながら歌っていた歌がある。 女の子は何でできてるの? 私はそんな風に歌われている女の子になりたかったが、ある時からその歌を歌うことをやめた。 それでも得意の菓子作りだけはやめられない……悔しいけど、そういうものよね。 私は目の前で堕落の限りを尽くす饅頭を見つめながらため息をついた。 「ゆゆっ!おねーさんだ、ゆっくりみていってね!」 「おねーさんゆっくりしていってね!」 「おねーさん、とかいはのありすはきょうもうつくしいでしょう?」 「むきゅー、びようのためにゆっくりすいみんをとったわ」 不愉快な声を聞きながら私は飼育箱にいる饅頭たちを見比べた。 れいむは肌艶もいい、まりさも今日は髪が乱れていない、ありすは自惚れ入ってお手入れに時間かけてないな。 ……ん?ぱちゅりーが珍しく生き生きしてる。 饅頭たちは私の言葉を待って目を輝かせて見つめている。こっちみんな。 「発表しまーす、今日一番可愛いのは……ぱちゅりーです」 そういうと饅頭たちはいっせいにぱちゅりーの方を向く。 「一番になったぱちゅりーには一番たくさんお菓子をあげるね」 「むきゅー?!」 当のぱちゅりーは自覚がないのかきょとんとしている。ぱちゅりーは今まで一番になった事がない。 他の3つに比べればまだまだだが貧弱饅頭の努力が実ったという事で今回は一番にして褒めてやることにした。 「ゆっ、あしたはれいむがいちばんになるよ」 「まりさももっときれいになってやるぜ」 「そうだね、頑張って綺麗になってね」 「ぱちゅりーゆっくりきれいになったよね」 「まえよりずっとげんきになったぜ」 「む、むきゅ?そう?」 普通なら罵声が上がりそうなものだがこの饅頭たちには三つの事を教えてある。 綺麗になったらもっとたくさんお菓子が食べられる。 可愛くない事を言ったりしたりするゆっくりはお仕置きされる上、ご飯が食べられない。 毎日綺麗になる努力をして頑張ったゆっくりからたくさん食べられる。 だからここで自分の方が、なんていえば餌抜きになるのを饅頭たちはよく知っている。 「ああああぱちゅりーにまけるなんてえええ」 ありすだけが自分の努力不足を認められないでいる。このありす、身体(といっても生首だけど)のお手入れが得意で最初から綺麗な方だった。 最初の方はずっと一位だったが最近はれいむたちが追いついてきて一位でない日の方が増えてきた。 「二位は……れいむもまりさもどっちも頑張ってるから二人とも二位。一番ダメなのはありす」 最近では面倒だから適当に順位をつけていたがありすを最下位にした事はなかった。 「ああああああああああありすがいちばんだめなのおおおおおおおお????」 あ、しまった。ストレスかけちゃダメ。 「かわいいありす、聞きなさい」 饅頭におべっか使うのも癪だがこうでも言わないとこいつは人の話を聞かない。 「ぱちぇりーが一番なのは今まで頑張ってきたから、れいむとまりさも頑張ってきた。ありすは今日、なにか頑張った?」 ありすは箱の中で少し考え、ようやく思い出したのか俯いた。本当に何もしてなかったのか、この饅頭。 別に何も努力しなくてもいいんだがストレスかけさせることだけはさせたくない。 「わかったのなら明日から真の都会派ビューティーを目指しなさい。可愛くなるのは好きでしょう?」 自分でも意味不明な事を言っているがありすは納得してとかいはびゅーてぃーを目指す決意を固めたようだ。 そして私は用意した餌をそれぞれの飼育箱に放り込んで部屋を後にした。 「もう頃合かな。あれだけストレスかけないようにしたんだから相当甘みはない筈……」 甘い饅頭は既に食傷気味だった。 家を出て、裏の小屋へ向かう。元々は鶏小屋だったが今ではあの小綺麗な饅頭の餌用の饅頭繁殖小屋だ。 一応今も鶏はいる事はいるが日中は庭を走り回っているし、夜は基本梁の上で寝ている。 最終的に自分がおいしく食べるためには餌の管理もしっかりやっておいた方が安心する。 あの小奇麗な饅頭に何を食べさせてもいいんだけど一応別の饅頭で一回濾過しておきたいというのはある。 まあ、天然物もそれはそれで好きだけど、人里近くに住む饅頭は人家のゴミを食べている可能性があるから。 天然物は基本的に山奥で採取することになるんだけどね。 「饅頭生きてる?」 「ゆゆゆっ!!!」 あからさまにゆっくりできない人が来たと言わんばかりの饅頭たちだが気にしない。鶏小屋に入って鶏が騒いだって気にする人はいないでしょ? 物置小屋の床の上には透明な箱がいくつか並んでいる。その中には大人饅頭がそれぞれ詰められていて大きめの箱には頭から何本も茎を生やした母親饅頭が何匹かいた。 何故か茎の数が昨日と変わっていない。 「あれ?もうとっくに落ちてると思ったのに。餌が足りなかったかな?」 「ゆっ、そうだよ、まだうまれてないよ。ゆっくりまっててね」 「ふうん……」 原因はすぐにわかった。母の一念岩をも通す、生まれ落ちたらゆっくりできないからずっと枝についていろと母饅頭の祈りが通じたようだった。 しかしよく見れば本来なら枝から離れる大きさであり、既に枝についたまま私の方をしっかりと見つめている。 生まれていてぶら下がっているのか、未だ生まれていないのか判別方法は簡単。 「ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっくりちていってね!!」」」 饅頭の条件反射に笑いたくもなるが母饅頭は真っ青な顔をしていた。 「ち、ちがうよ。いまのはれいむがしゃべったんだよ、あかちゃんはしゃべってないよ」 しかしそんな言葉など聞き流して饅頭の頭の茎の根元をつかむとグラグラ揺すった。 「やめてえええれいむのあかちゃんがおっこちちゃうううう」 枝の赤ん坊は事実上生まれている。単に枝に引っかかっているのと同じこと。 やがて小さな饅頭は枝からぽろぽろと零れ落ち、感動の親子対面となった。 まあコレくらいは許す。というかコレをやっておかないと美味しくならない。 「おかーしゃん、やっとおかおみれたあ」 「おかーしゃんおにゃかしゅいたー」 子供がすべて落ちる。生やした茎の数からするとちょっと赤ん坊饅頭の数が少ないが最近消費量増えて連続出産させてるから仕方ないか。 あの四匹用にそれぞれまりさ、ありす、ぱちゅりーの三匹同時に相手させて常に四種類取れるようにしてたからなあ。 饅頭の数を数えているうちに母饅頭の頭から茎がもげ、赤ん坊饅頭はそれにかじりついた。 最初が肝心、ここで最初で最期の幸せな想い出を作ってもらおう。 さて、このれいむはしばらく休ませて別のを母体にしよう。 赤ん坊饅頭がすべて腹を満たし幸せそうに母親に擦り寄っているのを確認し、私は母饅頭の髪をつかみ箱から取り出す。 「いいいだいいいいいいいいいいばな゛じでえええ」 「おかーしゃーん!!」」 空いている透明な箱に収め、さっさと回収作業開始。 髪が抜けそうになって頭皮の痛みに涙目になっていた母饅頭はようやく私の行動を理解したようだ。 「やめてええ゛え゛え゛れ゛い゛む゛の゛あ゛がち゛ゃんも゛っでがな゛い゛でえ゛え゛え゛え゛え゛」 私は鶏小屋で卵を拾うように生まれて間もない赤ん坊饅頭を拾っていく。 「ゆゆゆ?おかーしゃんはどこー?」 「おかーしゃんのところにちゅれてってね!」 「むきゅむきゅ?」 「とかいはのありすのかわいしゃにみとれてるにょね」 疑うことを知らない図々しいチビ饅頭は口々にそんなことを言うが拾った饅頭が入るのは母親とは違う別の箱。 「まずあなたたちはこっち、大丈夫よ」 とりあえず先に四種各一匹を完全防音の箱に入れ周囲の刺激から隔離する。こいつらが音も外の様子もわからなくなった所で残りの赤ん坊饅頭を見下ろす。 「おねーしゃん、れいむをおかーしゃんのとこりょにちゅれていってにぇ!」 「お母さんの所には連れて行かないよ、これからずっとゆっくりできない場所に連れて行ってあげる」 そういうとチビ饅頭たちは火がついたように泣き始めた。 「まっでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛れ゛い゛む゛ばな゛に゛ざれ゛でも゛い゛い゛がら゛あ゛がち゛ゃんばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 母親の悲痛な叫びにそれが脅しではない事を悟るチビたち。生まれたばかりのまっさらな餡子が次第に甘みを帯びていく。恐怖はこいつらの餡子を甘くする。 死んだ瞬間から本当の意味で饅頭になるこいつら、餡子を腐らないよう日持ちさせる方法って知ってる? そう、餡子の糖度を極限まで高めるの。 牛肉は三週間、鳥は十二時間、魚は数時間。 普通の動物なら死後硬直の関係で熟成期間というものがあるのだけど、こいつらに関してはそれがない、まるで動物ではないというかのように。 それでも私達はおいしくする方法を知っている。 小箱の四匹は小奇麗な饅頭の部屋においておき、先ほど回収した生まれたての大量のチビ饅頭を台所へ持ち込んだ。 「ゆゆっおかーしゃんのことろへゆっくちかえちてね?」 饅頭が何か喚いてるけどさて、飼ってる家畜のために餌の準備を始めましょうか。 私は饅頭に向き直って美味しくなるための呪文を唱える。 「あんたたち、実は親に捨てられたの」 本当は生む気がなくて枝についているうちに殺したかったの。 でも生まれちゃったから代わりに私が殺してあげる事になったの。 なんで私がって?だって子供殺したらゆっくりできなくなるもの。 だから汚れ役を私が引き受けたの、お母さんがゆっくりするためにね。 あんたたちのお母さん、演技うまいよね、アレだったら誰も子供殺しを依頼した母には見えないもんね。 うん、恨むならお母さんを恨みなさい。 お母さんは自分がゆっくり生き残るためにあんた達を捨てたの。 「おお、非道非道」 ……呪文長いよ。 言っておくが私は虐待お姐さんでもドSでもない。普通の動物は苦しまないようにさっさと絞めないと美味しくなくなるのにこいつらだけは逆なんだから全く面倒くさい。 鶏だったら逆さ吊りにして首落すだけなんだけどな。 とりあえず涙でふやけない様に布巾もたくさん用意したし、逃走防止に竹串で串饅頭にしたし、あとはあの家畜好みの甘~い饅頭に仕上がりますように、っと。 「もう一つ教えてあげる。あんたのお母さんね、できるだけあんた達を苦しめて殺して欲しいって。そういう約束だから」 胡散臭い方法だが言質は取ったのでまあ大嘘って訳ではないのだが。 包丁まな板菜箸お玉木杓子竹串鉄串爪楊枝タコ糸骨抜き擂り粉木当り鉢ささら簡易バーナー下ろし金ピーラー裏ごし器スライサーはさみ焼き網シノワやっとこ肉叩き、必要な道具はすべて揃えた。 「ゆっくり苦しんで逝ってね」 「「「「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」」」」 あ、私の耳栓忘れた。 小奇麗な饅頭用にこのチビ饅頭を加工する。最終的にゆっくりだとわからなくなるように、髪の毛やら目玉やら歯やら舌やら丁寧に取り除く、もちろん生きたままで。 途中虐待お兄さんから教わった四十八の虐待技をいくつか試してみるがチビ饅頭だと加減が出来ずにオレンジジュースのお世話になることもしばしば。 いい加減チビ饅頭用の加減を覚えないと余計な金がかかって仕方がない。 今回収穫分の処理を終え、ご褒美お菓子がようやく完成した。 これじゃ足りないないなあと思いつつ、再び物置小屋へ戻る。来週収穫する分の種まきのためだ。 面倒な揺さぶり作業を終え、明後日収穫する茎付き饅頭の様子も確認。明後日はたくさん取れるから今回はまあ我慢しておくか。 収穫ごとの面倒な作業も終わり、小屋の隅の鶏スペースから卵をいくつか失敬しつつ私は小奇麗な饅頭の部屋へ行く。 チビ4匹の箱を開けると思った以上におとなしくしていた。私が覗き込んでいることにも気付いていないようだった。 チビ饅頭の箱に菓子を入れておいた所為か親から引き離された事など忘れて菓子を貪っていた。 「む~しゃむ~しゃ」 「ちあわせ~♪」 先週生まれた姉の成れの果てだというのにのんきなもんだ、このまま死ぬまでのんきに育って欲しい。 菓子を食べつくした所で私はチビ饅頭に声をかけた。 「ねえ、おちびちゃん」 「ゆゆっ?」 顔を上げたチビ饅頭を箱から出し手に乗せ、私は透明な箱の中でお洒落に余念がない四匹の饅頭を見せる。 「あそこにいるの、すごく綺麗なゆっくりでしょう?」 そういうとチビたちはぽかーんと口を開けて饅頭たちを見つめていた。 母親以外ほかの饅頭を見たことがないこのチビでもあいつらの美しさはわかるらしい、私には何がどう違うのかよくわからないけど。まあやつれた母親よりはずっと綺麗かな? 「しゅごーい……」 「きれい……」 チビの視線に気付いたか食材たちは優雅(……なのか?)に微笑んだ。 「これからね、貴方達はここであんな風に綺麗になるためにゆっくり過ごすの」 「ゆ?」 この小指の先ほどの餡子脳にもわかるように説明する。 近いうちにあの饅頭はもっとゆっくりできるところに行く。空いた部屋に入って次に綺麗にゆっくりするのは自分達、ご飯はいつも美味しくて甘いお菓子がついてくる。 箱の中はゆっくりし放題のベストプレイスであると。 チビは簡単に信じてくれた。実際に綺麗なゆっくりがゆっくり過ごしてる様子を見れば納得するしかない。 「ゆゆー!れいむゆっくりちゅるよ!」 「ゆっくりきれいになりゅよ!」 嬉しそうなチビ饅頭たちだったがその時、一匹が忘れかけていた事を言う。 「おかーしゃんは?おかーしゃんと一いっしょにきれいににゃれにゃいの?」 当然聞かれるとは思っている。答えはいつも同じ。 「お母さんはね、貴方達を生んで凄く疲れてるからゆっくり元気にさせているんだよ」 「おねーしゃんやいもうとたちはー?」 「今お母さんを元気にさせるためにお姉さんのお手伝いしてくれてるんだ。お母さんが元気になればみんなゆっくりできるよ」 「まりさもおかーしゃんゆっくりしゃしぇるのてちゅだうー」 「ううん、大丈夫よ。他の皆が手伝ってくれてるから。何で貴方達が特別にここに連れてこられたか教えてあげようか?」 「むきゅ?しりたいでしゅね」 「それは貴方達がほかのどのゆっくりよりもゆっくりして可愛かったから」 うそうそ、適当、超テキトー。 「だから貴方達は特別なゆっくりなの、もっと綺麗になってお母さんをびっくりさせようね?」 「「「「はーい」」」」 チビ饅頭はあっさり信じた。今度はでかい饅頭の方に話をすると綺麗な自分に憧れている赤ちゃんという事であっさり面倒を見るといった。 同種同士なら問題は起こりにくい。あとは頃合を見てでかい方を箱から出すだけ。 一応、赤ちゃんをいじめるのは美しくない行為だと教えたのでいじめる事はないだろう。 「ゆっくりきれいになってね!」 「ゆっくりきれいになるよ!」 箱の中からは元気な声が八つ聞こえてきた。 さあ、明日はあのデカ饅頭からようやく中身を取り出す日だ。 二ヶ月に一度の私の楽しみ、極上の食材が明日手に入る。 それだけで私の顔は自然と笑みを浮かべていた。 小奇麗な饅頭は食材用。時々食肉用の家畜に名前をつけて大事に可愛がる人がいるでしょう?あれとおんなじ。 潰して中身の餡子を食材にするだけなのに何故こんな面倒なことをするのかといえば理由は二つ。 一つは甘さ控えめにするため。 餌用は極限まで甘くして食材にとっては最高の菓子になるように作っているが、どれほど甘いものを食べさせてもストレスのかからない餡子脳は甘くならない。 虐待された饅頭は甘いが甘すぎてよほどの甘党でなければ食べられない上に非常に太りやすい食材だ。なので体重が気になる乙女としては甘さ控えめで自分の好みに調整できるくらいの方がいい。 お菓子好きにとって体重との戦いは最重要課題なのだ。 そしてもう一つの理由。 楽しく頭を使わせることでうまみやコクを増やすため。 無理矢理頭を使わせるとストレスがかかって甘くなるが、自分が綺麗になるための努力や工夫ならあの饅頭はストレスなく進んで少ない餡子脳を働かせる。 多頭飼いするのも向上心を持たせたり他人のアイディアを取り入れたりとよい方向で頭を使うからだ。 虐待饅頭が美味いのは己にふりかかる理不尽な暴力に対して必死に理由を求めるからで、使いすぎて頭が心ごと壊れると間違いなく味は最高だ。 けれども甘みも最高、カロリーも最高になってしまう、これは乙女にとって非常に辛いもの。 それを解決するためにこんな面倒な方法を使っている。 この方法が見つかってから私は潰した饅頭の中身で菓子を作って友人や職場の人間に配っている。 甘すぎず、しかし濃厚。最高の食材だ。 あの饅頭が材料だと気付かない人が多いのでその件は黙っている。おかげで私は職場ではお菓子作りの好きな女の子らしい女性と見られている。 女の子は何で出来てるの? 砂糖 スパイス 素敵な何か そんなこんなで出来てるわ。 そう、私はお砂糖とスパイス、そして人には明かせない何かでできている。 私はお菓子が好き、花を見るのが好き、愛らしい小物やキラキラ光る小石が好き。穏やかな陽だまりで日向ぼっこするのも好きだ。 けれど。 時々それがあの饅頭を思い出させて嫌な気分になる。 女の子なら誰でも持っているその菓子や可愛いものが好きな感覚をあの饅頭は持っている。 女の子は綺麗で可愛くありたがる。自己満足のために、愛しい人を手に入れるために、時に同性からの羨望の眼差しを受け悦に入るために。 私は饅頭の群れがそんな女の浅ましさを披露しているさまを見た。 この性別不詳の饅頭は、時として女よりも女らしい思考をしてみせた。 その瞬間、まるで自分がこの饅頭と同じだと言われたような気がした。 私は決して美人ではないけれど、石を投げられるほど不細工でもない。 何の特徴もない可もなく不可もなくそれこそ群れた饅頭のように。 大して美人でもないくせに、と男どもに笑われながらも着飾ることをやめられない。 私達が見るあの饅頭のように私たちも端から見ればどれも同じ、そういうことなのだ。 今まで腹の立つおやつとしか考えなかった私だが正体不明の腹立たしさの理由にに思い至りしばらく虐殺に走った。このとき虐待お兄さんと知り合ったがそれはまた別の話。 しばらくして、饅頭を殺しても私が女である事は変えようがないのだと気付いて虐殺はやめたが、おやつ集めと称して森に入ることは続いている。 それ以上に種別名の元ネタにされた人たち見たら悩むのが馬鹿馬鹿しくなったというのもある。 結局私は私、饅頭は饅頭ということ。 何も饅頭に乙女になれとか、駄目な女は饅頭になれとかそういうことではない。 誰かがこの饅頭たちは人間を映す鏡と言ったけれども残念ながら私は饅頭じゃない。少なくとも饅頭を見て己を省みるような事はしない。 「次は何を作ろうかなあ」 小屋で回収した卵を台所へ持ち込み、私は明日の予定を考える。 「ぱちゅりーの生クリームが上手くいっていたら明日の晩御飯はシチューね、後で鶏絞めとかないと。失敗して甘くなったら……」 んーと小さく呻いて私は手を叩いた。 「ババロアにするか。卵があるからありすはウフ・ア・ラ・ネージュのソースに使おう、残ったらシュークリームに入れればいいか」 残った皮や顔側について甘くなった部分はバラして食材饅頭の餌にしよう。 「そういえば由蔵さんがそろそろ冬用に豚潰す時期だっけ?まりさとれいむは晒し餡にして由蔵さんの豚肉と交換してもらおう」 明日は仕事も休みだし、朝から一日お菓子作りが出来るんだ。 そう思うと明日が楽しみで仕方なかった。 休み明けの職場、午後のお茶時。 誰かが外部から持ち込まない限り、お茶請けは裏の工場で作られている製品か開発室の試作品。 流石に皆饅頭には飽き飽きているようで、上司はメタボな腹を揺らしながら甘さ控えめシュークリームを絶賛している。 誰も中身のカスタードと生クリームがゆっくりだとは気付いていない。この流通課の人にはわからないみたい。 一人、小首をかしげているのは虐待お兄さん、職場の先輩であり虐待術の師匠でもある。流石に気付いたようで小声で話しかけてきた。 「これ、ゆっくりの中身だよな?」 「ばれましたか」 「甘くしないなんて虐待技を身につけた君らしくない調理法方だな」 「だって虐待すると甘すぎて……でもコレの餌は虐待技で甘くしてますよ?自分が美味しく食べるために手間は惜しみませんから。そうだ、来月暇あります?」 虐待お兄さんは私からの誘いに不思議そうな顔をした。 「知り合いが豚を潰すんですよ、よかったら一緒に手伝いに行きませんか?豚を絞めるのには虐待はありませんけど、解体作業とか新しい虐待技のヒントになるかもしれませんよ?」 しかし虐待お兄さんは首を横に振りながら苦笑する。 「俺は餡子以外の内臓には興味ないんだ」 「それは残念です」 由蔵さんが美味しくなあれと育てた豚も、私が美味しくなあれと育てた饅頭も、どっちも同じ食べ物なのに。 「そういえば社員旅行の観光コースどうします?やっぱり秋の虐待散策コースですか?」 「そりゃ当然、君はどうする?」 「んー、幻の芋饅頭栗饅頭姉妹も気になるんですが、幻追いかけるより素直に河原で鮭ときゅうり饅頭捕まえて酒飲んでますわ」 ちなみに河童饅頭はきゅうりの漬物が入ったおやき風の饅頭だ。 「河童饅頭にまで食欲掻き立てられるとは……」 「……饅頭に加虐心煽られる人に言われたくありません」 こうして午後の穏やかな時間がすぎて行く。 その後終業間際に急遽ドス饅頭と群れ饅頭が運ばれてきて伝票製作と工場への移送で残業になったが、それほど嫌な気分にはならなかった。 工場へ送られるドス饅頭たちを見送りながら、鼻歌交じりに餡子玉を口にする。 ゆっくりはなにで出来てるの? What are YUKKURI made of? 餡子 小麦粉 Beans Paste and dough. 不気味な何か And all that s eerie, そんなこんなで出来てるわ。 That s what YUKKURI are made of. 「……お前、また勝手に中身えぐったな?」 「いいじゃないですか、ほんの数百グラムですよ?」 ドス饅頭の餡子は大味で美味しくないとは思った。 end のちがき 初投稿 お姉さんは加工所の流通課、集荷場勤務 食いネタは幽々子様の専売特許だかそんなことは気にしない。 餌用饅頭の加工風景は気が向いたら書いてみます タイトルの元ネタは鵞鳥小母さん 男の子は何で出来てるの? What are little boys made of? 男の子は何で出来てるの? What are little boys made of? カエル カタツムリ Frogs and snails 小犬の尻尾 And puppy-dogs tails, そんなこんなで出来てるさ。 That s what little boys are made of. 女の子は何で出来てるの? What are little girls made of? 女の子は何で出来てるの? What are little girls made of? 砂糖 スパイス Sugar and spice 素敵な何か And all that s nice, そんなこんなで出来てるわ。 That s what little girls arc made of. このSSに感想を付ける
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※すみません文字コードがなぜか変なことになってました。 誰も読んでないかもしれませんが、内容は変わっていません。 寒い、季節はすっかり冬。 コタツに入って暖かいものでも食べたくなる季節だ。 というわけで車に家で飼ってるゆっくりれいむとまりさを乗せて、スキー場へと出発した。 早朝に家を出たというのに時間は既にお昼を過ぎている。 道中、高速道路では「ゆっくりできない!」とれいむとまりさが騒ぎたて、 山道に入ってからは舗装されていない道路の凹凸で「き゛も゛ち゛わ゛る゛い゛!」と餡子をゲーゲーと吐く始末。 更に道に迷って結果がこれだ。 「ほら、ついたぞ」 車のドアを開け、れいむとまりさに降りるように促す。 ふたりとも口から餡子と涎を垂らしながら真っ青な顔をしている。 「ゆー…、ゆっ、ゆげぇー!!」 俺が声を掛ける事でのそりのそりと車から這いずり出てきたが、着地の衝撃の性か風船の様に頬を膨らませた後、 ドロッとした餡子を口から吐き出した。しばらくして落ち着くと仲良く揃ってぺっぺと口の中の残りカスを吐き捨てていた。 そんなふたりは放って置くとして、車のトランクから今日の為に買った素敵なアイテムを取り出す事にする。 「ふたりともこれを見ろ!」 トランクから取り出した素敵なソリをふたりの前に差し出した。 ソリの大きさはゆっくりをふたり乗せるのに丁度いい大きさ、このサイズの物を探すのに苦労した。 素敵なソリにふたりとも目の色を変えて喜ぶと思ったがそうでもなかった。 しばらく素敵なソリを見つめた後、ふたりとも顔を見合わせやれやれと言った感じでため息を吐き よっこらしょと言わんばかりにめんどくさそうに乗り込み、早く引けよと言わんばかりの目でこちらを見ていた。 れいむが前、まりさが後ろ、ピッタリと収まっている。 ゾリゾリゾリとソリが雪を掻き分けながら進んでいく、ゆっくりふたり位なら引く方も特に重さを感じない。 背中かられいむの「ゆっ~♪ゆっ~♪」という楽しそうな声が聞こえてくる。 機嫌が直ってよかったと思いながら、ふたりの方を確認すると、どうやらまりさの方はまだ機嫌が悪いらしい。 いつにも増して人を舐めきったような表情をしている。 がよくよくまりさの顔を見ると、まりさの口元がかすかに震えている。内心では楽しんでいるようだ。 ソリを引きづりながら歩き、しばらくしてゲレンデについた。 ふたりを遊ばせる為に、端っこの方でソリを滑らせるのに適した場所を探す。 適度な傾斜をのぼり、ソリを滑らせる準備をする。 れいむはこれから何がおきるのか判ってないのか不思議そうな顔でキョロキョロしている。 まりさはいたって無表情に前だけを見つめていた。 「スィー」 スィー、手を離すと重力に従ってソリは徐々に加速し坂道を下っていく。 ある程度加速した所でふたりの元気な声が聞こえてきた。 「ゆーーーーー!!!!」 ここで気が付いたのだが、良く考えると下で受け止めないと危ないんじゃないだろうか? 事故になる前に気が付いてよかったが、良く考えた結果、ソリは進路上にあった木に正面からぶつかっていた。 滑って転ばないようにゆっくりと坂をおり、木の前に転がっているふたりの元に行く。 ふたりとも木に向かってなにやら文句を言っている。まりさの方は文句を言いながら体当たりもしていた。 体当たりしたまりさから、グキッという音が聞こえて来た。まりさの方を見ると顔が凄いゆがみ方をしていた。 当たり所が悪かったのかまりさはフラフラしながら「きょ…きょうはこのぐらいにしといてやるんだぜっ…」と言っている。 良く見ると歯が一本欠けているが本人は気づいてないようだ。 そんなふたりを横目に、そばで引っくり返っているソリを持ち上げもう一度ふたりの前に持っていく。 ふたりとも一瞬、たじろいてみせたが、欲望に負けてソリに乗り込んだれいむを見ると続いてまりさもソリに乗り込んだ。 さあ、もう一滑りというところで、まりさが「れいむはずるいんだぜ!まりさもまえにのりたいんだぜ!!」と文句を言い出した。 「ここはれいむのとくとーせきだよ!まりさはそこでゆっくりしていってね!!」とれいむを譲る気が無いようだ。 このままでは喧嘩になってしまうので、れいむにこっそりと後ろの方がゆっくり出来ることを教えてやる。 すると、れいむは直ぐにまりさに席を譲ると言い出し、断る理由がないまりさもすぐに承諾した。 まりさが歓喜の小躍りをしている所で、れいむは「おお、あわれあわれ」とニヤニヤしながら言っている。 まりさは聞こえていないのだろうか。 「じゃまだぜ!」「どいてね!」、ソリの上で前後を入れ替えようとするふたりだが、お互い相手が邪魔で動けないと文句を言い合っている。 一度ソリから降りてもう一度乗ればいいのだが、プライドが高いのか、気づかないのか、結局お互いをぐいぐい押し合い、 丸い体を歪めながら徐々に体位を入れ替えていった。入れ替わる頃にはゼーハーと息を荒げて、汗をだらだらと流していた。 まあ、乗ってしまえば後は俺が引くだけなので、フーフーと息をしながらもふたりとも楽しそうだ。 俺は先ほどと同じように端っこの方の適度な傾斜を上り、ソリを滑らせる準備をする。 「スィー」 「「すぃーーーー!!!」」 スィーと再びソリが加速していく、ハッ!この感じ前にもどこかで… そうだこのままで前と同じようにふたりの乗ったソリは下に立ってる木に正面からぶつかってしまう。 先ほどの経験が生きることで、今度は考えることなくこの危機的状況に気がついた。 しかし、気がついても間に合わないものは間に合わない。 「ゆーーーーー!!!!」 先ほどと同じようにふたりの元気な声が聞こえてくる。 ふたりとも本当に楽しそうだ。 さすがに3回目はふたりとも怖がってソリに乗ろうとはしなかった。 まあ、十分楽しんだのでソリはもういいだろう。 次は何をしようかとフラフラと歩いていると、雪が綺麗に積もりあまり踏み荒らされていない所を見つけた。 ここならいいかもしれない、さっそくふたりを抱きあげ適当にポイッと投げる。 投げられたふたりはやわらかい雪の上に落ち、直ぐに起き上がると、はしゃいで辺りを飛び跳ね始めた。 楽しそうにはしゃいでいるふたりに狙いを定めて手で固めた雪だまを投げつける。 コントロールには自身は無いが、ゆっくり相手だとなぜか面白いように当たる。 ふたりは少しはなれたところで「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」と抗議を始めるが、かまわず雪だまを投げ続ける。 しばらくして、無駄だと判ったのか抗議するのをやめ、こちらの方をじっと見ている。 俺が雪だまを投げるのをみて避けるつもりなのだろうか、雪だまが当たるとそれに反応するようにピョンと飛び跳ねていた。 避けようとするのも無駄だと悟ったのか、今度はその辺の雪を口に含みモゴモゴしている。 雪だまを作ろうとしている様だが、体温で口の中の雪は溶けしまうだろうしどうするのだろうか? 様子を見ていても、一向に雪だまを投げてくる気配はない、何度も何度も口に雪を含んでモゴモゴしている。 「と゛う゛し゛て゛な゛の゛ー!!」とれいむが先に泣き声をあげた、どうやら雪だまを作るのを諦めたしまったようだ。 一方、まりさの方は黙々と雪だまを作る作業を続けている。が、なにやらまりさの様子がおかしい、小刻みにブルブルと震えだし動かない。 れいむも異変に気づき慌ててまりさに声を掛けている。「ま゛り゛さ゛!と゛う゛し゛た゛の゛!」必死に頬をこすり合わせて介抱しているが、 まりさの様子は変わらない。俺も慌てて近づいてまりさを拾い上げようとするが、既にまりさは白目を向いたままピクリとも動かなくなっていた。 「ゆ゛っく゛り゛し゛す゛き゛た゛よ゛!ま゛り゛さ゛!!」 まりさが動かなくなった後もれいむは必死に頬をこすり合わせていた。 しかし、そのれいむの様子もおかしくなっていく。 「ま゛ま゛ま゛ま゛ま゛ま゛ま゛り゛り゛り゛さ゛さ゛さ゛さ゛」 まりさと同じように小刻みに震えだし、普通に喋ることも出来ない様だ。 「な゛な゛な゛ん゛た゛か゛ゆ゛っ゛く゛り゛し゛て゛き゛た゛よ゛ーー!!」 それがれいむの最後の言葉だった。 れいむもまりさと同じように白目を剥き動かなくなってしまった。 さわるとふたりとも冷たくなっていた。 人間で言うところの凍死だろうか、さっきまでは元気に遊んでいたのになぜ…。 ふたりの亡骸をもって車にもどると辺りはすっかり暗くなっていた。 余りにも楽しくて時間がたつのも忘れていたようだ。既に時間は夜の8時を回っている。 車の中のエアコンで温まりながら、俺はふたりと一緒に過ごした日々を思い返していた。 思い返していると目頭が熱くなるが、もうふたりは帰ってこない。 せめて食べることでふたりには成仏して貰おうとふたりの亡骸に手を伸ばした。 そのままかぶりつく…シャーベット状の餡子が口の中で溶け水っぽい甘味が口いっぱいに広がる。 …まずい、…あまりのまずさに涙が出てくる。 それ以上口にするのを躊躇っていると、ふたりの体がピクリと動いた。 かすかな動きは徐々に大きくなっていき、体からはなにかの水滴があふれ出してきた。 「「ゆ゛っ゛く゛り゛し゛た゛け゛っ゛か゛が゛こ゛れ゛だ゛よ゛!!」」 ガタガタと震えながらふたりが喋った。 どうやらエアコンで温まって生き返ったようだ。 ふたりは身を寄せ合い頬擦りしてお互いの体を温めているようだ。 だが、外の気温がエアコンを入れていても車内の温度はあまり上がらない。 ふたりを暖めてやる方法はないかと考えているとトテモいいものを発見した。 普段タバコを吸わない俺は使ったことが無いがきっとトテモ暖かいに違いない。 待ってろよふたりとも直ぐに暖かくしてやるからな。 ふたりの体がすっかり温まり、憎たらしい表情に戻ったところで、そろそろ家に帰らないとまずい事に気がつく。 しかし、外はいつの間にか吹雪とも思えるほど荒れていた。この状態で帰るのは危険と判断した俺はスキー場の受付に行き、 近くのペンションを紹介してもらい今日はそこに泊まる事にした。 そのペンションの名前は「シュプール」、スキーの滑った跡と言う意味だ。 おわり このSSに感想を付ける
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ここはゆっくり牧場。 のどかにゆっくりと暮らすゆっくり達。 「ゆっくりおいしくなるよ!」 「いっぱいゆっくりしてもちもちになるよ!」 みんな、饅頭としての誇りにあふれている。 少しでも美味しくなって、消費者に届きたい。 そんな願いを持っていた。 だが、牧場出身のゆっくりから大量の危険物質が発見されてしまう。 被害を抑えるため、同時期に出荷されたゆっくり達はすべて廃棄処分に。 「どぼじでええええ?!れいむおいじいのにいぃぃ!!ぢゃんどだべでよぉおお!!!」 「まりざ、きけんじゃないのにい!ちゃんとおいじぐなっだんだよぉおお!?」 「おねがいだがらだべでよぉおおっ!!」 牧場に返品されてきたゆっくり達は、みなプライドをズタズタにされていた。 せっかく美味しくなったのに。 せっかく一生懸命育ったのに。 「おねがいだよぉおお!!のござないでだべでええええ!!!」 とある家では、オヤツにゆっくりを食べている最中にニュースで事件を知った。 半分だけ食べられ放置されたれいむ。 その半分の眼には涙があふれていた。 痛いけど嬉しかった。 ちゃんと人間に美味しく食べてもらえていたのに。 自分の体のことは自分が一番よく知っている。 「れいむにはめらにんはいっでないのにぃいいい・・・」 「うるさい汚染饅頭!死んだらどうすんだボケクソ!」 あまい、と笑顔でいっぱいだった顔はそこにはない。 その目はまるでウンコでも見ているよう。 半分になったれいむは声をあげずにないた。 なんのために生まれたのだろう。 なんのために痛い思いをしたのだろう。 れいむは足りない餡子で答えを探したが、結局それは見つからなかった -- 2008-10-07 18 30 30
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書きたかった事 本スレ90の 316さんの書き込み 『「おまんじゅうさん」とか呼び続けたら物言わぬ饅頭になるかも知れん』 からインスパイアされて 言葉責めとかやってみたかった 作者 チェンマガツ その男には日頃から疑問に思う事があった。 最近現れたゆっくりと呼ばれる奇妙な不思議生物は本当に生物と呼んでいいのだろうか。 詰まるところあいつらは饅頭なわけで、饅頭を生物とするのは明らかに間違っていると思っていたのだ。 誰かに聞いても答えられるはずのない疑問であることは承知しているのでそこはやはり本人達に聞いてみるのが早いのだろう。 そう思い立ち男は早速行動に起こした。 人間の集落の周りにある森に出かければすぐにでもゆっくりは見つかった。 日の当たる広場に二匹の成体ゆっくりが寄り添って仲良く昼寝をしていた。 ゆっくりまりさとゆっくりれいむだ。どうやらカップルらしい二匹を起こすように男は挨拶をする。 「ゆっくりしていってね」 「「ゆっくりしていってね!!」」 さっきまで寝ていたのに脊髄反射のように挨拶を返してきた。 「ゆゆっ、ゆっくりねていたのにおこさないでね」 「ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだからゆっくりでていってね!!」 「少し君たちに聞きたい事があるんだけどいいかな?」 ふくれていたれいむに出て行けと怒鳴るまりさを完全に無視して男は質問する。 「君たちは何だい?」 「ゆゆっ、れいむはれいむだよ」 「まりさはまりさだよ」 「いや、そう言う事ではないんだよ」 やはりかと男は思った。ゆっくりと初めからまともな会話ができるわけはないのだ。 「お兄さんは人間だ。なら君たちは何だ?」 「れいむはれいむだよ!!」 「まりさはまりさだよ!! なんかいもいわさないでね!!」 あまりの会話の成りたたなさに男は頭を抱える。 どうしてもこいつらから質問に対する答えを聞きたいのだが、どうやら誘導質問をせざるをえないようだ。 「そしたられいむ。れいむはゆっくりだよね?」 「うん、れいむはゆっくりしているよ」 「そうじゃないんだ……、もういい。まりさ、君はゆっくりだな」 「ゆゆぅ、そうだよ!! まりさはゆっくりだよ」どうやらまりさは男の質問の意味が分かったようだ。 「まりさは賢くて助かる」 「それにまりさはかりもじょうずでかっこいいんだよ!!」 「ゆっへん」まりさはお腹を突き出して偉そうな表情をした。 男がしまったと思ってももう遅い。 誉めるとすぐこうなるのだから言葉を選んで会話をせねばならないと思い直す。 「それじゃあまりさ、お兄さんは人間だ。人間は動物だ。わかるな?」 「ゆっくりりかいしたよ!!」 「それなら、まりさはゆっくりだ。するとゆっくりはなんだ?」 これでようやく疑問が解決すると男は思った。しかしそううまくいくわけがない。 「おにいさんしらないの? ゆっくりはゆっくりだよ!! ゆっくりりかいしてね」 「……」 男は改めてこう思うのだ、やはりまともな会話ができるわけはないのだと。 それなら仕方ないと誘導質問に切り替える。 「お兄さんから見ればゆっくりは饅頭に見えるんだが?」 男の質問は実に簡単なものだ。結局のところお前らは饅頭だろということだ。 しばし時間が止まったように二匹のゆっくりが固まった。 男の言葉をゆっくりと頭の中で反芻し、ゆっくりとその言葉の真意を読み取った。 そして突然二匹は怒り出した。 「どおじでぞんなごどいうの!! れいむはおまんじゅうじゃないよ!!」 「まりさはまりさだよ!! おまんじゅうさんはあまあまでしょおおお!? そんなこともわからないの? ばかなの? しぬの?」 二匹は大激怒である。二匹は目をつり上げ、涎を飛ばしてきながら今にも襲いかからんとばかりに跳ねながら叫んできた。 まりさの言葉にカチンとくる部分があったがそれくらいで潰してしまうほど男の沸点は低くない。 「だってどう見てもそうじゃないか……。いや、まてよ……」 ふと男は面白そうな事が思い浮かんだ。 自分達が何であるかを分からせる必要がありそうだ。 「お前達うちに来てくれないか。うちにくれば饅頭を食わしてやる」 「ゆゆっ!! おまんじゅうちょうだい!!」 「ほんとうにくれるんだぜ!?」 「ああ、食わしてやるから。ちょっとの間付き合ってくれよ」 「れいむをゆっくりつれていってね!! それでおまんじゅうちょうだいね!!」 「まりさもいくんだぜ!!」 「そしたら早速行こう。気が変わらないうちにな」 男が家でちょっとした実験をするために二匹を連れて帰る事にした。 両脇に二匹を抱えてやると随分ご満悦そうにゆっくりしだした。 普段見慣れない風景とか地面から解き離れた感覚とかそういった部分にゆっくりは惹かれるのだろうか。 男は二匹を連れて家に帰ってきたのはいいものの、実験の準備はまったくしていない。 この実験には腕の立つ菓子職人が必要だったがそれには思い当たる節があった。 自身がゆっくりをとてもよく観察して、人間に友好的なドスまりさを作り上げたと評判になっている和菓子屋の店主だ。 ひとまず二匹をあまり物を置いてない寝室に招待し、適当なご飯を置いてその主人の元へと出かける事にした。 「ふむ、その実験は実に興味深いな」 「そこで実験に必要なものを旦那に作って欲しいんですよ」 「そういうことなら喜んで協力しましょう。なんなら場所も提供しますがどうですか? 家の奧にあるゆっくり用の部屋が空いてるんでそこを使っていいよ」 「いいんですか。家ではそんな部屋が無いんで願ったり叶ったりです。喜んで使わせてもらいますよ」 「ついでに私も観察させてもらうけど問題はないよな」 「ええどうぞどうぞ。それじゃあ約束のものはいつできますか? 出来上がればすぐにでも実験を始めますけど」 「実験結果が面白そうだから今から作り始めて明日の午後までには作っておくようにするよ」 「それは有難い。そしたら明日の晩にまた尋ねることにしますね」 「そしたら明日の晩にお待ちしてます」 この実験に使われる物の費用に関してはそれほどかからない上、商品開発のヒントに繋がったと喜んでタダにして貰えたのも助かった。 明日になればゆっくりが何であるかの答えが出るやもわからない。 そして次の日。男はもう二度とゆっくりは飼うまいと心に刻んでいた。 わずか一日を一緒に過ごしただけだがあれほどにまで騒がしい生物とは思わなかった。 もちろん野良のゆっくりだというのもそうなのだろうが、いちいち大声で叫ばれたのではかなわないのだ。 どうせ耳がないから互いに大声でないと聞こえないとかそんなことなんだろう。 体罰を与えて機嫌を損なわせて実験に支障がでても困ると思ったが、 よく考えればそのときは別のゆっくりを捕まえてくればいいだけだった気付き愕然とした。 約束の時間通りに男は二匹を連れて和菓子屋に到着した。 「ゆゆっ、おいしそうなにおい!!」 「あまあまのにおいだぜ!!」 二匹は店内に充満した美味しそうなお菓子の匂いに反応していたが、今日はあとでたらふく食わせてやると伝えてあるのでねだってくる事はなかった。 「二匹を連れてきました。例のものはできてますか?」 「ああ、完成してるよ。それと少し色をつけといたからきっと実験結果がもっと面白くなるよ。それじゃあ部屋に案内するよ」 「それは楽しみだ。それじゃあお前らもいこうか」 「あまあまたのしみだね!!」 「はやくちょうだいね!!」 「ああ、協力してくれたらいくらでもくわしてやるよ」 そう言って二人と二匹は和菓子屋の横に併設された家の奧に設けられたゆっくり用の部屋へと入っていった。 床が掘り下げられたその部屋の中にはいくつか台が用意されていた。 「手前の台の上に二匹を置くと良い。その高さからなら飛んで逃げやしないだろう」 「わかりました」 指示された台は男の腹の位置くらいまである台で、ゆっくり二匹が並んで乗るとそれ以上身動きは取れそうにない台座であった。 「ゆっ、ちょっとたかいね……」 「おにいさんゆっくりおろしてね」 「今降りると饅頭を食わせるわけにはいかないんだが?」 「ゆ゛ゆ゛っ!!」 「ゆっくりがまんするね!!」 「是非そうしてくれ」 測られたようにゆっくりが飛び降りようとしない高さであるようだ。さすがゆっくりをよく観察しているだけのことはある。 そして別の台にはいくつか皿が乗せてあり、皿に載せたものが分からないよう布で覆ってある。 皿の枚数は六枚ある。それぞれに要望通りの物が収まっているのだろう。 「ちなみに左の皿から順番通りに並べてあるから。あとそれと……」 店主はゆっくりに聞こえぬよう男に耳打ちをしてきた。 その内容を聞き男は笑顔のままで身震いする。男が思いもしてなかった内容にさすがとしか言いようがない。 「確かに面白くなりそうですね」 「だろ? あとは好きなようにやってくれ」 そう言うと店主は男とゆっくりを置いて部屋を出て行った。 話によると隣の部屋から実験の様子を観察するらしい。 男はゆっくりに振り返ると不安そうな表情をするゆっくり達が見返してきた。 「さて、それじゃあ昨日の質問の続きをしようか」 男は六枚の皿が置かれた台を挟んでゆっくり達と対峙した。 この位置に立てば右から順に皿の上の物をゆっくり達に見せていけばいいということらしい。 そっと自分だけが見えるように布をめくるとそこには一般的な大きさの饅頭が二個鎮座していた。 「では、もう一度聞こうか。お前達は饅頭ではないのか?」 「ぷくぅぅぅ。ちがうよ!!」 「おにいさんまりさおこるよ!!」 「はいはい分かった分かった。じゃあこれを見てくれ」 そう言いながら男は最初の皿の中身を見せた。そこにあるのもを見てれいむとまりさは色めき立つ。 「おまんじゅうさん!!」 「まりさにはやくちょうだいね!!」 「そうかこれは饅頭だよな」 男は並べられた二つの饅頭を皿ごと二匹の目の前まで持ってきて見せた。 「二つとも饅頭だな」 「そうだよ!! はやくれいむにちょうだい!!」 「二つとも饅頭なら問題ない」 男は持っていた皿を台に戻して次の皿の布をめくる。 ゆっくり達は饅頭を食べたいとうるさく叫んでやまない。 「静かにしてないと饅頭はやらないぞ」その一言でゆっくりはあっさり静かになった。 次の皿の上にはゆっくり側から見れば先程のもの変わらないものが乗っていた。 「またおまんじゅうさん!!」 「静かにしてろ。これならどうだ?」 そういって皿の上の物を二つとも180度回転させる。 するとそこには饅頭にあるものがくっついていた。 実に良くできているその代物はどうやら寒天か何かで作られているようで近くで見ても本物となんら損傷はない。 「ゆゆっ、さっきよりおいしそうなおまんじゅうだぜ」 「そうか、やはりお饅頭か」 男が聞く前にまりさが答えたが二つめの皿に乗せられたものも饅頭であると答えた。 しかし先程のまっさらな饅頭とは異なる点がそこにはある。ゆっくりの目玉のようなものがくっついているのだ。 プルプルと震えるその眼球は饅頭に加えられたアクセントくらいにしか思わないらしい。ケーキに乗せられた苺くらいの感覚なのだろう。 「それなら次の皿はどうだ」 ここまでの反応は概ね予想していた通りだ。三皿目の反応もそう変わらないだろうが見せてみることにする。 布を外せばそこには饅頭にゆっくりの閉じた口のような皺が入っている。 これもやはり本物と変わらない出来だ。店主の観察眼と造形技術に舌を巻くしかない。 「おにいさんはやくれいむにちょうだい!!」 「これは饅頭か?」 「「そうだよ!! おまんじゅうだよ!!」」 さて問題はここからである。この先からのゆっくり達の反応が重要となってくる。 男がおもむろに四皿目の布を外すとそこにあった饅頭は二種類の構図が見て取れた。 一方は歯を食いしばり固まっているもの、もう一方が口を開けて固まっている物だった。 口を開いた方をよく見れば歯はどうやら飴細工らしい。本物と比べれば少し透明感と艶が目立つがそれでもよく見ないと分からないほどだ。 どちらにも眼がついており、もはや禿ゆっくりの標本のようだ。 「れいむ、これは何だ?」 「おまんじゅうだよ!!」 「そうか。まりさはどう思う」 「ゆゆぅ……」まりさは返答に困った様子を見せた。 「どうしたまりさ。これは何だい?」 「さっきよりもおいしそうなおまんじゅうだよ!!」 「そうか、わかった」 ここにきてようやく二匹に違いが現れた。まりさの方が違和感を覚え始めたようだった。 たしかに目の前にあるものは饅頭だが、何かおかしいと思っているのだろうか。 少し表情が曇ったまりさを余所に男は淡々と次の皿に向かう。 五皿目の布を外すとそこにはもはやゆっくりと呼べそうなものが並んでいた。 れいむ種を元に造形されたそれは子ゆっくりサイズで、目は開かれ口は笑顔のゆっくりした表情の饅頭に、これもまた飴細工であろう髪の毛が被せられている。 隣り合う二つの饅頭に差は見て取れない。両方とも本物と違う点はれいむ種の紅白飾りが無く動かないという点だ。 「れいむ、これも饅頭か?」 ここでさすがのれいむも返答が止まった。 「これは……、おまんじゅう? ゆっくりできてないれいむ?」 「さっきの饅頭と比べるとどうだ」 「ゆゆっ!! このおまんじゅうはれいむのまねをしてるだけだよ!!」 「ということはこれも饅頭だな」 「そうだよ。ゆっへん」 れいむは見事に饅頭である事を看破してやったと言わんばかりに威張る。 「ではまりさ、これは何だと思う?」 「まりさもおまんじゅうだとおもうよ!!」 「そうかならこうするとどうだ」 男は饅頭を一つ持ち上げるとゆっくりの声真似をした。 「ゆっくりしていってね!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「これは饅頭か?」 二匹は挨拶を返したままの表情で固まってしまっている。 「どうした? これは饅頭じゃないのか?」 「れいむはゆっくりびっくりしたよ」 「……」まりさは黙り込んでしまった。 「饅頭が喋るだけでまるでゆっくりみたいだよな?」 「ゆゆゆゆっ!!」 「おまんじゅうといっしょにしないでね!! ゆっくりあやまってね!!」 「そうか? お前達もさっき普通に挨拶返しただろ。ならこうしてみるか」 男は手に持ったままの饅頭を真上に放り投げた。ゆっくり達の視線は自然とそちらに向かう。 「やめてね!! ゆっくりおろしてね!!」男の声真似だが二匹は完全に饅頭から発せられたものと誤解した。 「どぼじでなげたの゛おおおお」 「ゆっくりやめてね!!」 「何言ってるんだ。饅頭だよ饅頭」手に戻ってきた饅頭を二匹に見せて男は笑う。 「やっぱり饅頭はゆっくりなのか?」 男の問いに二匹は答えなくなってしまった。二匹のなかで何かが変わろうとしているようだ。 これは最後の皿でどうなることやら、男はそっと残されていた皿に手を伸ばして布をはずす。 その皿を見てれいむとまりさは凍り付いた。 最初から見せてもおそらくこの反応が見えるであろうその饅頭の出来には男も驚くしかない。 完全にゆっくりを再現した饅頭がそこにはあった。 五皿目のものに飾りを付け加えるだけでやはり見栄えが違う。 店主の饅頭の出来に感心して見入っているとれいむがついに動いた。 「ゆ、ゆっくりしていってね」 「れいむどうしたのあれはおまんじゅうだよ?」 「まりさこそどうしたのあれはれいむだよ?」 ついにきた!男は心の中でガッツポーズをする。おそらく隣の部屋の店主もほくそ笑んでいるだろう。 れいむの行動も仕方ないほどの饅頭の造形の良さということだろう。 それと同時にれいむの中では心と行動の差が生まれている証拠である。 心ではこれが饅頭だとわかっている。しかし体はゆっくりであると認識して挨拶をしてしまった。 「どうしたれいむ」 「おにいさん、そこにいるのはれいむだよね!!」 「確かめてみるか?」 男はれいむを持ち上げ最後の皿に近づけてやる。 すぐさま食べる様子をみせてないところを見るとれいむはこれを饅頭とはみていないようだ。 「ゆっくりしていってね!!」 再びれいむが挨拶をしてもその声が虚しく部屋に響くのみだ。もちろん饅頭からの返答はない。 「どうだれいむ、さっきのは饅頭でこいつはれいむか」 「ゆゆゆゆっ」 穴が空きそうなほど饅頭を凝視するれいむに男は追い打ちを掛ける。 「やっぱり饅頭はゆっくりでゆっくりは饅頭じゃないか?」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!! でいぶはちがうよ゛!! ぞれはおまんじゅうだよ゛!!」 れいむは自身は饅頭である事否定したが、混乱している頭で考え続けていた。 目の前のあれはなんだ。饅頭なのかゆっくりなのか。 今にも動きそうな饅頭を片手に持ちれいむの目の前で男はつぶやく。 「実はこいつはなとてもゆっくりしているゆっくりなんだよ。本当にゆっくりできるゆっくりは動かずに一言も喋らずに笑顔でいるゆっくりのことをいうんだ。」 その言葉に二匹は息を呑む。 「それに比べたらお前達はゆっくりできてないなあ。大声で叫ぶし、忙しく跳ね回る。ゆっくりしていってねというだけなら人間でもできるぞ」 その言葉はゆっくりにとって最大の屈辱である。 ゆっくりできていない人間に自分も同じだと言われてしまったのだ。 そして皿の方を見てみれば自分よりも幼い子ゆっくりの全く動く事のない真のゆっくりを見せつけられている。 自分達はゆっくりなのにゆっくりできてない。 本当にゆっくりするっていうのはああいうことなのか。 今までの自分達の行動を振り返ればなんとゆっくりできていなかったことか。 そのショックにより二匹は動けなくなった。 いや、動かなくなった。これならゆっくりできる。これがゆっくりするということだ。 れいむは男の腕の中で、まりさは台の上で完全に固まってしまった。 片手の物を何度も空中に放っても反応を示さない。 「本当は饅頭なのになあ」 二匹は一度動かないと決めたらテコでも動くつもりはないようだった。 「お疲れ様でした」 「なかなか面白い結果になりましたね」 「二匹とも即座に動かなくなるのは少し予想外だったかな。もう少し抵抗というか反抗してくれると思ったけど 「これも饅頭の出来があまりにも良かったからですよ」 「そう言って貰うと嬉しいね。作った甲斐があったよ。大量生産は難しいけどいつかは商品として店に置く事にするよ」 「そのときは買いに来る事にしますね」 「味の方も確認してみてください。改良点があれば直しておくんで」 「ではさっそくいただきますね」 男は店主の薦めもあり一皿目から順に一個ずつ食べていく。 「本体の饅頭はやはり美味しいですね」 「ありがとうございます」 男が美味しそうに饅頭を頬張るにもかかわらず二匹のゆっくりは固まっている。視線もどこか中空を見たままでまったく動かさない。 「れいむとまりさはゆっくりしてますね」 「他のゆっくりもいつもこうだといいんけどねぇ」 二皿目、三皿目、四皿目と続けて食べる。 「目の部分は饅頭と違う食感がたまりませんね」 「季節によっては梅味にしようかなんて考えてます」 「そりゃ良さそうだ」 「歯の部分はサーッと溶けるようにするのが苦労したなぁ、饅頭の中に硬い物があったらびっくりしちゃうからね」 「確かに。さわやかな甘みもいいですね」 男が美味しそうに饅頭を食べても二匹は相変わらず動かない。 五皿目、六皿目は髪と髪飾りの飴細工についての苦労を聞かされた。 髪の毛のように細い飴を作るのに、棒状にした飴を折りたたんでは延ばし、さらに折りたたんでは延ばしを一時間は繰り返したそうだ。 「そうすることでようやく髪の細さに飴が仕上がるというわけだ。面倒だから色は直接塗ったけどね」 「なるほど美味しいお饅頭ありがとうございました」 「いえいえ、それじゃあ残りの奴らはどうしましょうか?」 「まあ二匹にはゆっくりと見てて貰いましょうか。その前に味見だけしておきます」 そういって改めて台に乗せられていたれいむとまりさを残った饅頭のほうに向ける。 いくら触られても何の反応も示さない。 「もうまるで饅頭だな」男が呟くのも無理はないほどに饅頭だった。 「まあこれで動き出しても饅頭よりゆっくりできてないわけだけどね」 これが決定的だった。もはや二匹は動く事はない。 自分達が饅頭以下であるはずがないとでも言わんばかりだ。 そして男は残された饅頭の目や口といった装飾の無い部分だけを一囓りする。 「うん饅頭だ。それじゃあ、そろそろ正体を明かしてやってください」 「わかりました」 男の合図で店主が残りの饅頭達に手を伸ばす。 一つの皿にまとめられた饅頭達は一つ一つピンセットとナイフで拘束が解かれていった。目にはめられていたセロファンを外すと一様に涙を流し、唇や歯の癒着を切り離してやると声を出し始めた。 「「「「ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!」」」」 滝のように涙を流しながら必死に叫ぶ子ゆっくり達がそこにいた。 自分達は饅頭じゃない。気が付いてくれ。痛いから助けてくれ。 心で呼びかけても気が付かなかった目の前の二匹にきちんと聞こえるように叫んだ。 ここにいるのはあるものは飾りを奪われ、またあるものは髪を剃られ、口を閉じられ、目も奪われ、すべてを奪われた子ゆっくり達である。 するとどうだれいむとまりさは微かに動きを見せた。 二匹の心の動揺が手に取るように分かる。 饅頭が動き出した。男が美味しそうに食べた饅頭が急に動き出したのだ。 じゃあさっきお兄さんが食べたのは饅頭だったのかゆっくりだったのか。 あれは饅頭が喋っているだけだ。 でもゆっくりではないのだろうか。一番右の饅頭はどうみてもれいむだ。 しかしあんなに叫んでいるようではゆっくりできていないゆっくりだ。 あれ? やっぱりゆっくりななのか? いやいやあれは饅頭のはずだ。 それとも……。 「饅頭はゆっくりでゆっくりは饅頭だよ」 そうかそれならりかいができる。あれはまんじゅうでありゆっくりなんだ。 ということはじぶんたちもまんじゅうでありゆっくりなんだ。 そうか。じぶんたちはまんじゅうなのか。 れいむとまりさは考えるのを止めた。 あとがき わからなかったら人に聞く!ということでゆっくりを問いただしてみた。 ゆっくりが饅頭だと決めつけてかかってるから条件が平等ではないけどそこは華麗にスルーしてください。 あと同じようなネタがあるそうなので目新しさはないかもしれないです。 和菓子屋さんは自分のSSに出てきた人を再登場させてみたり。飴細工もできるようにしちゃった(ノ∀`) プロットなしの走り書きだからおかしいところもスルーしてください
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一応幻想郷設定です 虐待というよりは考察に近いです 無数の漫画パロ表現が出てきますので注意 設定スレや他作品等からゆっくりの独自解釈を行っています ある晴れた休みの日、縁側に座っていると庭の茂みから何かが飛び出してきた。 「ゆっへっへっ!こんなおうちはにんげんにはもったいないんだぜ!まりささまがもらってやるんだぜ!」 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスにするよ!ばかなにんげんはさっさとでていってね!」 「あまあまをもってくるんだぜ!そうすればまりささまのどれいにしてやるんだぜ!」 おいおい、良かったのかそんな事言っちまって。 言っとくがオレは最初からクライマックスだぜ。 1分も経たないその間に全て片付いていた。 潰れたトマトのように餡子を飛散させてぺちゃんこになったまりさ、 肉まんを割るみたいに縦からまっぷたつになって痙攣しているれいむ。 木に強烈に叩きつけられて体を大きくへこませて餡子を吐いているもう一匹のまりさ。 「ゆ”…ゆ”…」 まだ息がある事を確認すると、男はまりさの前に静かに歩んでいった。 「だぢ、だじゅけてぐだざい…ごべんなざい…」 すかさず、男はまりさの底部を踏み抜いた。 「ゆぎゃああああ!!!!!!」 「お前が死ぬなら…あと一時間後かそこらがいい…そうなる風にお前の底部をフッ飛ばしておいた」 まりさの底部から流動的な餡子がじっとりと少しずつ漏れ出していく。 この分なら出餡多量でいずれ死ぬだろう。 「まりさ、お前が死ぬ前に聞きたい事がいくらかある。答えてもらおうか」 「まりさの…まりさのあんこが…どぼぢて、どぼぢでこんなことするの…?」 「もう一本もらっとくぞ」 男は直後にまりさの潰れていない方の底部を再び踏み抜く。 「あぐあぎゃああぁーーーー!!!!」 「いいか…喋っていいのはオレが質問した事だけだ!一言につき一発踏み潰す! 聞き返しても踏むッ!クシャミしても踏むッ!黙ってても踏むッ! 『いいからあまあまもってきてね!』とか言ったらまた踏み潰すッ! いいな!注意深く神経使って喋れよ…!」 「ばがりまぢだぁ!!ごだえまず!!!」 さらに踏み抜いた事で餡子の流出が加速している。 話を聞き終えるまで間に合うか男はふと不安になった。 こいつらは幻想郷に突然現れた「ゆっくり」という生物である。 体の構成物質が全てお菓子の饅頭と同じもので構成されているというトンデモ生物である。 そして体は人間の首に相当する頭部のみ。おまけにその顔は幻想郷で有名な人物を模している。 ここにいる魔法の森の魔法使い、そして先程の博麗の巫女を模したものが代表的なもの。 最もスタンダードで数の多い種である。 そして人間の言葉を使う事ができ、突然現れて「ゆっくりしていってね!」と呼びかける。 ただそれだけの珍妙で無害な存在である。 …だったのはもはや昔の話。 時々知能の低い存在が人里に現れては農作物や人間の住居、食料を狙ってやってきては駆除される。 これらの連中は軒並み性格が悪く、話す言葉も聞くに堪えない暴言ばかりである。 こういった存在ばかりが姿を現す故に、ゆっくりは人々にとって迷惑な存在と化していった。 それ故に人々はゆっくりをただの害獣としか思わなくなっていった。 人前に現れたゆっくりはただ潰されるのみ。 だが、この男は普通の人間とは少し違っていた。 「さてまりさ、質問だ。なぜここに来ようと思った?」 「あのまりさとれいむににんげんさんのおうちをもらおうってざぞわれたからです!!!!」 「イヤそれはいい。オレが聞きたいのは、なぜ人間に勝てるかと思った事だよ」 「ゆ”っ!?!???」 「昔から気になってたんだ。なぜゆっくりは勝ち目の無い喧嘩を売る? そもそもなぜ人間の事を見下しているんだ?」 男はどうでもいい疑問を抱いてはそれを解決し、納得するのを好んだ。 現代語で言えばトリビアを求める、と表現すればわかりやすいかもしれない。 もちろん普通の人間はゆっくりなんてどうでもいい存在の事は大して気にしない。 しかし男はこういった下らない事ばかりを気にする性質だった。 刑事コロンボが好きで細かい事が気になると夜も眠れない、というタイプの人間なのだろう。 「そう言えばお前、オレを奴隷にしてやる、とか言ってたな。 聞いた話だと皆お前達みたいなゆっくりは人間を恐れないどころか、格下の存在に見ているそうだ。 お前達には人間がどういうものに伝えられてるんだ?」 現在のゆっくりの特徴として、人間に対し警戒心が薄いという事が挙げられる。 どの動物に対しても警戒心が皆無のゆっくりも存在するが、人間には一際その傾向が強い。 人間を見れば「ゆっくりしていってね!!!」と隠れもせずに挨拶したり 「おにいさんはゆっくりできるひと?」と問いかけたり、 「あまあまちょうだいね!!」などと食べ物を欲しがる。 目の前のまりさの様に性格が悪い個体、一般にゲスと言われる存在はそれどころではない。 まず一言目に食べ物の要求など、何らかの自分本位の命令である。 自分の命令を人間が聞くと信じて疑わず、 ましてや自分が怒った人間に攻撃されるという発想は微塵も無いのだろう。 当然、怒りを買った人間に潰されるのが大方の結果であるが。 「ゆ”…にんげんざんは…ゆっくりにあまあまをぐれで…やざじくしてくれるってぎいだよ…」 まりさはビクビクガタガタと震えながらしどろもどろで答える。 「イヤ、違うだろ?お前は言葉を選んで答えているな。 重要なのは本音の内容だよ。さあ遠慮はいらん、思う存分ぶちまけてみろ」 「…ゆっ!にんげんさんはめいれいすればなんでもきくってきいたよ! いうこときくのはゆっくりよりばかでよわいからだって…! だからあまあまもってくるのがとうぜんなのにどうしてこんなことするの…!?」 「何だと、この野郎」 「ゆ”ゆ”っっっ!!???!?」 サッカーボールを横に弾くように、軽く蹴り飛ばして木の幹に衝突させる。 まりさはまた餡子を吐き、痙攣している。 「しまったな…思う存分ぶちまけろと言ったのは自分なのに手が出てしまった。 しかしあんまりお前が馬鹿すぎるからって事でさ…こらえてくれ」 「ゆ…ゆ…ゆぶ…」 息も絶え絶えのまりさを眺めながら男は考えを巡らす。 なるほど、ゆっくりにとって人間は明らかに格下の存在として認識されているらしい。 その根拠の理由になっているのは恐らく言う事を聞く、という事なのだろう。 出会った野生の動物に気紛れで食べ物を与えてしまう人間は少なくはない。 ましてや人語を話す珍妙な生物だ。面白がって与えてしまうのも無理はないだろう。 それがゆっくりに対して良くないのだ。 例えば犬の場合だ。犬を飼うにあたって、何よりも先に注意しなくてはいけない事がある。 しつけ云々はあるが、そのしつけを行う前提の問題である。 「人間は犬より偉い存在なのだ」と認識させる事である。 この前提がまずできていないと、犬は飼い主の言う事を聞かない。 それどころか逆に犬が人間を部下やペットのように認識してしまう事すらありうる。 外の世界ではこれを怠った結果、しつけのできない権勢症候群という状態になってしまうそうだ。 犬は彼ら自身の判断基準でヒエラルキーを決定付けている。 誤ってこれらの判断基準で自分が格下と判断される行動を取ってしまうと、犬は上下関係を誤る。 代表的なものを言えば、食事を先に食べる権利である。 イヌ科の動物は集団で狩りを行うが、その獲物を最初に食べる権利はリーダーが持っている。 下位の個体はおこぼれや食べる部分の少ない部位で我慢するしかない。 こういった習性を持っているため、エサをお預けもなしに自由に食べさせたり、 人間達の食事より先にエサを与えてしまうと自分の方が偉いと勘違いをしてしまうのである。 こういった,ゆっくりにとって格下に認識されてしまう行為がエサやりなのだろう。 さらに言えば自然界ではエサは強いものがありつける存在だ。 小型の肉食獣が獲物を手に入れても、ライオン等のさらに大型の肉食獣に奪われてしまう事も珍しくない。 ゆっくり達もまた同族からエサを奪う、というのはごく普通に行われている光景である。 これらの事からゆっくりは自分が強いからエサを渡した、可愛いから食べ物をくれた、と判断するのだろう。 そうなるとゆっくりの頭の中では相手は自分よりも弱い、外見的等に劣っている存在だと認識される。 その認識が重なって戦いもしていないのに「人間は弱い存在」「可愛い自分にエサを貢ぐ存在」 …などと命知らずの常識を作り上げるのだろう。 最も全てのゆっくりがこういった思想をする訳ではない。 知能が高い存在は人間との実力差を認識した上で食べ物をくれた、と理解できるし 性格のいい個体はその人間の行為に感謝し、相手が劣っているなどと傲慢な発想をしない。 しかし知能の平均値自体が低い野良ゆっくりにはそういった事を期待できない。 弱肉強食の世界に生きる個体にとっては自分が強い、相手が弱い、というのが基本的な基準なのである。 よく彼女らが人間を発見すると言う事である、 「かわいいれいむにごはんをちょうだいね!」 「まりささまにそのごはんをわたすんだぜ!!」 と言うのは彼女らなりの命令・脅迫のつもりである事が多いのである。 人間には全くそう映らないので気紛れでエサを与えてしまう者も存在する。 そうしてしまう事がまずいのである。 ゆっくりは「自分に恐れをなしてエサを渡した」と解釈し、人間は弱いという誤認を深めていく。 それが会話を通して他のゆっくりに伝播し、人間を舐めきったゆっくり達が増えていくのである。 「で、本当の強さがわからなかった馬鹿がこいつって訳か」 男は痙攣するまりさを見てつぶやく。 「ゆ”…ゆ”るぢで…だすげて…くだざい…」 ゆっくりにも当然、話を鵜呑みにしたりはしない位の知恵はある。皆無なものもいるが。 しかしゆっくりは自分にとって有益なものを最優先する。 彼女らの言葉で言えば「ゆっくりできること」である。 故に、人間が強い、彼らの住居や食料を狙うと危険だという発想は 「ゆっくりできないもの」としてなかなか認識しようとしないのである。 その結果、人間は弱く下等で利用できる存在、というのがゲスの中で定着し、 ゲスでないゆっくりも人間はエサをくれたり遊んでくれるゆっくりできる存在、として認識されるのである。 現実逃避もいい所の、生存本能の存在を疑いかねない習性である。 「知りたい事はこれで十分。止めを刺してやる」 男はまりさに足を乗せ、ゆっくりと体重をかけていく。 「ゆぎゃああ”ぁあ”あ”あーーーーーー!!!! どぼぢで!?にんげんざんはゆ”っぐりできるっでぎいたのにい”い”ぃぃいぃーーーー!!! どれ”い”にぢでごぎづかうはずなのに”いぃーーー!!!」 「自分を知れ…そんなオイシイ話があると思うのか…? お前の様なゲスゆっくりに」 体が圧迫され、外傷からあふれ出すように餡子がどんどんと漏れ出していく。 激しい苦痛と共にまりさの頭にあったのは疑問や憤慨から、次第に後悔へと変わっていった。 話が違う、人間が馬鹿で弱いなんて全くの嘘っぱちじゃあないか。 何もできずにこのまま殺される。何で、こんな奴に勝てるなんて思ってしまったんだろう? 「ゆ”っぐりじたけっかが…ごれ”…ゆべし!!」 ぶぢん、と黒い餡子が飛び散った。 命を弄んでいるとは男は思えなかった。 こんなゆっくりを生かしておいても何もいい事はないだろう。 ただそれだけの気持ちであった。 男は何か心に満足感を感じていた。 理解できない事が理解できた、そんな爽快感である。 別に虐待には大して興味はないが、 ゆっくりについてあれこれ聞いてから殺すのもいいかもしれないな… 今回はゲスだったが、他の奴だったらどうなのだろう? 男は次から次へと疑問と好奇心がムンムンわきあがってくるのを感じた。 「ん?」 遠くから人間の声の様なものが聞こえてくる。 「ゆゆっ!にんげんさんのおうちがみえてきたよ!」 「あそこにたくさんのたべものをひとりじめしてるんだね!!」 「それはゆっくりできないね!!とりかえしにいくよ!!」 複数のゆっくり達がこの家を目指してきているようだった。 「おあつらえむきじゃあないか!」 男はつぶやくと、唇の端を緩めた。 ゆっくりが人間を舐めきった態度を取る理由を考察しつつ ヘイトを充たすために思わず書き上げてしまった。 独自解釈につき異論は大いに認める。 このSSに感想をつける
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※嘔吐描写注意 「ゆっくり食べてね!」 どこかの場所、いつかの時間。 一匹のゆっくりが、一心不乱に大量の何かを食べ続けている。 その様子を、イスに腰掛けてじっと見つめる男が一人。 「はぐはぐはぐはぐがふがふがふがふがふむちゃむちゃむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……」 汚らしい食べ方のためにゆっくりの周りはぐちゃぐちゃになっていたが、そんな事は気にもせず、延々と食べ続けるゆっくり。 男もその様を叱る事もなく、ただじっと眺めていた。 「がふがふがふがふむちゃむちゃむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……ゆげふ! ゆげぇぇぇ……」 不意に、ゆげゆげとアンコと何かの混じったものを吐き出すゆっくり。 びちゃびちゃと先ほど食べていたものを汚していくその音は、人間のするそれと全く同じものである。 違うのは、吐き出すものの色が黒い事と、発するのが甘い臭いだという事だけだ。 「ゆげぇぇぇ……え”ふっ! ゆ、ぜびぃ……ぜびぃ……ゆぅ……がふがふがふがふむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……」 ある程度吐いて落ち着いたゆっくりは、また山を崩す作業に戻った。 食べすぎで吐いたというのに何故か更に食べるゆっくりをこのまま放置しておけば、吐き戻しすぎて死ぬだろう。 だが、死へ確実に近づいているゆっくりを止める事もなく、男はじっと見続けている。 「がふがふがふむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……ゆげぇ! え”ろ”ろ”ろ”ろ”ろ”ろ”……」 案の定、もう限界を超えているゆっくりは、それほど食べない内にまた吐き戻してしまった。 パンパンに膨らんでいた顔が、みるみるうちにしぼんで元の下膨れ饅頭へと戻っていく。 その目にはうっすらと涙が浮かび、顔色は真っ青になっている。 「げほっ、がぼっ! ゆ”……ゆげぇ……」 荒い息をついて、ぐったりとその場に潰れるゆっくり。 それを見て、これまでじっと見つめていた男が靴音高く近づいてきた。 「んげほっ、え”ほっ……ゆ、ゆっぐりだべるよ……だから、ごっち、ごないでね……」 青い顔に恐怖の色を浮かべて、男から少しでも離れようと試みるゆっくり。 その様子を見て何か思ったのか、男はその場に座り込んだ。 ゆっくりの顔から恐怖の色が消え、僅かに血色を取り戻すと、そのまま山に近づいていった。 「ゆっぐりだべるよ……だべるよ……」 必死の形相でじりじりと山に近づいていくゆっくり。 僅かに動くだけで戻しそうになりながらも、近づく事はやめない。 「だべるよ……だべっ! ……え”ろろろろろろろ……」 長い時間をかけて山のふもとまで来たゆっくりは、食べる直前に自分で吐き出したものの臭いに負け、その場にアンコをぶちまけ始めた。 「んげろろろろろろ……おげぇぇぇ! げふっ! え”ふっ! ゆべぇぇぇぇぇ……」 吐き過ぎて子ゆっくり並の大きさになっているが、それでも流れ出てくるアンコ。 壊れた蛇口の様に流れ出る黒とは対照的に顔色は紙の様に白くなり、顔には何の表情も浮かんではいない。 後数分で、顔中のアンコを吐き出してしまうだろう。 ここはゆっくりの処理場。 ここに連れて来られたゆっくりは、ここにある仲間の死がいを全て食い尽くすか、即座に殺されるかのどちらかを選ぶ事となる。 ほとんどのゆっくりは死がいを食べる方を選ぶが、どれもが食べきれずに終わる事となる。 数百匹分のゆっくりの死がいは、一人や二人では食べきれないほどに多量にあるのだから、元から不可能な事だ。 それでも挑戦をやめないのは、ゆっくりが間抜けだからなのか。生きたいという想いが強いからなのか。 それは人間には分からない。 男は『それ』をつまみあげて山に投げ置いた。 てっぺん辺りに落ちた顔は、周囲と同じく苦悶の末に死んだ事を物語っている。 そこまでの苦しみを味わっても、決して自分から死にたいと言うゆっくりがいない事が、男には不思議でたまらなかった。 ――次のゆっくりに、ちょっと聞いてみようか。苦しんだ末の死と、苦しむ事ない一撃の死と、どっちが良いのかを。 そう考えつつ、男はゆっくりと部屋を出て行った。 おしまい ゲロ吐くゆっくりいじめものを短くまとめてみようと思ったら、こんなんが出来ました。 なんだこれ。 by cyc=めて男 このSSに感想を付ける
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ある昼下がり。 川沿いを歩きながら妹紅は暇を潰していた。 いつもならば、こういう時はバ輝夜との殺し合いか慧音と会うか家事に勤しんで過ごしている。 しかし今日に限って輝夜はなんの動きもなく、慧音も忙しくて会えない。家事も終わってすることもなく、じっとしているのも退屈だった妹紅は外へ散歩に出ていた。 竹林から少し離れた所に川がある。自然のあふれるこの光景も、長い年月の果てに緑が育ち、枯れ果て、川が荒れ、水が引いて、様々な形で変化している。 妹紅は昔の風景を一つ一つ噛みしめるように思い出しながら歩いていた。 「ゆっ!」 「ゆゆっ!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくり! ゆっくり!」 「ゆっくりしてだって」 「おお、めでたいめでたい」 「……」 台無しだった。 川辺で水でも飲んでいるのか、妹紅の目の前ではゆっくりれいむの家族達がしきりに騒いでいる。情緒もへったくれもないその光景に思わず妹紅はため息をついた。 「お姉さんどうしたの?」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっ! ゆっ!」 妹紅に気づいたゆっくりが妹紅の側へ寄ってくる。 頭を抱える妹紅。しかし嫌がってるわけではない。別に暇とはいえゆっくりと過ごす気なんてなかった妹紅としては微妙な状況だが、他にやることもなく、ちょっとはゆっくりしていくのも有りかと思っていた。 「ゆっ!」 「ゆゆっ! ゆっくりっ!」 「ゆっくりちていってね!」 「……」 なんだか、やたらと声が多いな……。 疑問に思った妹紅は、あらためて妹紅はゆっくり達の数を数え始める。 普通のゆっくりれいむが1匹、お母さんゆっくりが1匹、なんかうざいのが2匹。 そして今、草をかけ分けながら妹紅の側へ来ようとしているちびゆっくり達が。 「……うおっ」 草が邪魔で数え間違えているかもしれないが、適当に数えても20匹以上いた。産んだばかりなのだろうか、もしそこにいるお母さんれいむだけで産んだなら随分珍しい出産数だろう。 そのちびゆっくりの多さに驚きながら、妹紅の頭の中にふとある考えが浮かんだ。 ……これだけ数がいるなら楽しめそうだ。 「あんたら、まだここにいるの?」 「ここはれいむ達のあそびばだよ!」 「あそびばだよ! あそびば!」 妹紅の言葉にぴょんぴょん飛び跳ねるれいむ達。この川辺は自分たちのものだと主張しているらしい。 「別にここを奪ったりはしないよ。私はこれから行くところがあるけど、その後で一緒にゆっくりしてもいいか?」 「いいよ! れいむ達しばらくいるよ!」 「お姉さん一緒にゆっくりしようね!」 「ああ」と返事をして立ち去っていく妹紅。 まずは準備のために、自分の家へと戻っていった。 妹紅が用意したのは、まずその辺でゆっくりしすぎた結果がこれだよ!と倒れているゆっくりちるの。ゆっくりちるのは、たとえ倒れていても体温は冷たいので上手く炎を調節し、ちるのが溶けないように、手が凍結しないようにして運んでいく。 次に用意したのが細身の竹。太い竹ならいくらでも生えているが、脆すぎず、固すぎない竹を探すのは意外に手間がかかった。 最後に家から小刀などを持ち出すと、妹紅は元の場所まで戻ってきた。 「あ! お姉さん!」 「ゆっくりしていってくれるの!」 「たくさんゆっくりしていってね!」 約束通り現れた妹紅に飛び跳ねながら喜びをあらわにするゆっくり達。まだ飛び跳ねられないちびゆっくりは、体をぷるぷる震わせながら喜んでいた。 妹紅は持ってきたゆっくりちるのを地面に置く。 「お姉さん! この子とはゆっくりできないよ!」 「冷たいよ! 凍えるよ!」 さらに持ってきた風呂敷を広げ、ちびゆっくりたちを集めていく。 「ゆっ! ゆゆっ!」 「お、お姉さん!」 「早く離してね! すぐに離してね!」 しかし妹紅は手を止めず、そのまま20匹いたゆっくり達は風呂敷に包まれてしまった。 「ゆゆっ!」 「くるぢひよ! ゆっくりできないよ!」 「早く離してね! すぐに離してね!」 残された普通のれいむが足下にまとわりついて離れないが、妹紅は気にした様子もなく、そのままうざいゆっくり達の側へいく。 「ゆっくり離してだって」 「おお、こわいこわい」 何か言っていたが気にすることもなく、うざいそれを蹴り飛ばした。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆっ!」 「おおおぉおぉおおおぉおぉっ!」 地面に当たって二度三度跳ねながら、川へと落ちていった。 何か叫んでいるようだが、川の底で叫んでも聞こえない。水を含んで体が膨張していく。 「酷いよ! お姉さんとはゆっくりできないよ! 早くどこかへ行ってね!」 妹紅の足に体当たりをするれいむ。さすがに歩いている最中に体当たりされて転けかけるも、踏ん張る妹紅。 このまま体当たりを続けられたら敵わないと、妹紅はゆっくりを踏みつけておいた。 「ゆ゛っ!」 体が少し潰れ、痙攣するゆっくり。すぐに動く事はできないだろう。 妹紅はそのままお母さんゆっくりへと近づいていく。一瞬の出来事でどんどんいなくなる子供達にお母さんゆっくりは状況が理解できず、川辺で固まったままだった。 「よっと」 お母さんゆっくりを持ち上げて、そのまま運んでいく。途中で「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛あ゛ぁあ゛っ!」「がえ゛じでぇえ゛え゛ぇえ゛え゛ぇえ゛ぇっ!」と暴れ始めるが、妹紅の手が緩む事はなかった。 ゆっくりちるのの側まで戻ると、妹紅はお母さんゆっくりをその上に乗せる。 「ひ゛ぃぃい゛い゛ぃあ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛ぁっ!」 徐々に冷たくなっていくお母さんゆっくり。ほどよい冷たさになったところで持ってきていた小刀を取り出すと、妹紅はお母さんゆっくりの頭の上の部分を横に切り取り、あんこを露出させた。 「あ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛っ! あ゛だま゛! あ゛だま゛がぁあ゛あ゛がぁあ゛あ゛っ!」 「よし、準備できたっと」 満足げに呟く。先ほど踏みつぶしておいたゆっくりが、また妹紅の足下にやってきた。 「お、お゛があ゛ざんっ、お゛があ゛ざん、がえじでぇええぇぇえっ!」 「ああ、ちょうど良いところに来た」 そう言うと、先ほどよりも強めに力を込めて踏みつける! 「ゆ゛っ!」 地面にゆっくりが軽くめり込んだのを確認すると、妹紅はその上に腰を下ろした。 「ゆゆうい゛い゛い゛ぢあ゛ぁあ゛ぁおあ゛あ゛あ゛ぁっ!」 椅子にされたゆっくりの絶叫が響く中、持ってきた竹の先に糸を括り始める。 括り終わると、結んだ風呂敷に手をいれ、ちびゆっくりを取り出した。 窮屈さから解放され、顔に花を咲かせるちびゆっくり。 「おねえさんありが──」 ぶすりと、釣り針を刺した。 「いだい゛ぃい゛い゛ぃい゛い゛っ!!」 「さて、なにが釣れるかな」 竹をしならせ、餌のちびゆっくりを川へ投げ込む。 穏やかな気候の中、妹紅の釣りが始まった。 「ゆっぐり゛り゛ぃい゛い゛いぃいい゛ぃいっ!」 竿を通じて当たりが来る。なかなか強い引きが大物を予感させる。 「よっし来たっ!」 竿を引っ張り上げる。釣り糸の先には、ちびゆっくりとその餌に噛みついて離れない魚の姿があった。 「う゛う゛う゛う゛ぅう゛う゛う゛っ!」 水を含んで脆くなった体に、食いついた魚の重さで引き千切られそうになるちびゆっくり。 妹紅としてみればちびゆっくりを丸呑みできるような大物に期待しているのだが、さすがになかなか食べてはくれず、釣れては半端に欠けるちびゆっくり達をさらに川へ戻して釣りを続けている。 しかし今のちびゆっくりほど脆くなったらもう無理だろうと思ったのか、魚を外すと、そのままちびゆっくりを針から外して川へ放り投げた。 「あ゛ぁぁぁあ゛あ゛ぁぁぁっ!」 川に落ち、分解していくちびゆっくり。巻き餌代わりにはなるだろう。 最初に落としたうざい奴らは、もう全部食べられてしまったのか、川を見てもそれらしい跡は見あたらなかった。 釣った魚を手に持ち、お母さんゆっくりの元へ行く。 「ゆ゛っぐり゛……ゆ゛っぐり゛ぃいいぃい……」 何匹か投げ飛ばされていったちびゆっくり達の末路に悲しむお母さんゆっくり。そのゆっくりの頭に魚をのせ、あんこを穿っていく。 「ゆ゛っ! ゆ゛っぐり゛っ!」 冷たくなったあんこが妹紅の手を急激に冷やすが気にせず、開いた穴に魚を入れ、そのまま埋めていった。 「あ゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛あ゛ぁぁ……っ」 瞳孔が開き、僅かに痙攣するお母さんゆっくり。 そんなお母さんゆっくりの横に、もはや絶命して動かなくなったちびゆっくりの姿がある。風呂敷から取り出し、先ほどちるのの上に置いておいたちびゆっくりだ。 妹紅はしっかり冷やされたちびゆっくりを手にすると、また釣りを再開するために戻っていく。 れいむに腰を下ろすと、そのままちるのの冷気で冷やされたちびゆっくりを口にいれる。 しゃりっとした感触とちびゆっくりのあんこの甘みが、妹紅を笑顔にした。 「そろそろ、もうちょっと大きめの大物が釣りたいな~」 風呂敷から新たなちびゆっくりを取り出す。外に出されたらどうなるか既に理解しているちびゆっくりは、既に震えながら泣き叫んでいた。 変わらずちびゆっくりに釣り針を刺し、そのまま川へと放り投げる。 しかし今回はいつもと違っていた。 「えっ?」 水音がしない。妹紅の竿にも、ちびゆっくりが落ちた感触がなかった。 「うー♪ うー♪」 「ゆ゛っく゛り゛ぃい゛いい゛ぃいいぃっ!」 「……」 どこからともかくやって来たゆっくりれみりゃに、空中で受け止められ、そのまま齧られていた。 思いもしなかった獲物に言葉を失う妹紅。 「……まぁ、大物かな?」 「うまうま♪」 すぐにちびゆっくりを平らげるゆっくりゃ。その口には釣り針が引っかかっているが、場所が良かったのか痛みに耐える様子はない。 妹紅は側に寄せようと、釣り竿を大きく引っ張る。 ゆっくりゃの体が大きく横に伸びた。 「うっ! う゛ぁあ゛あ゛あっ!」 激しい痛みと力に、羽ばたいて抵抗するが、ゆっくりゃの力は人に逆らえるほどはない。 ほどなくゆっくりゃは釣り上げられ、妹紅の手の中に収まった。 「うー……!」 引っかかった針が痛むのだろう、涙を浮かべたまま妹紅に怒りを向けるゆっくりゃ。肉まんなその頬が膨れている。 しかし妹紅は気にすることなく羽をもぎ取る。 「い゛ぎぃあ゛あ゛ぁぁあぁぁっ!!」 邪魔なものがなくなったとばかりに、そのままゆっくりゃに齧りついた。 「ごめ゛んな゛ざいいいいいいい!!」 謝られても、美味しいし。妹紅に止める気はまるでない。 ものの5分もしない内に、ゆっくりゃは妹紅のお腹の中に収まった。 残った羽は、一端燃やし、ほどよく火が通ったところで齧る。 噛めば噛むほど味が出てくる、魚の干物のようなそれは酒のつまみに持ってこいで、妹紅もお気に入りの一品だ。 羽を咥えたまま、新たに餌をつけ、釣りを再開する妹紅。思わぬところでつまみも手に入り、魚も入れ食いで気分は上々だ。ゆっくりに散歩を邪魔された時はどうなるかと思っていたが、これはこれでいい暇つぶしになっていた。 竿にまた当たりが出る。先ほどよりも強い引きに、妹紅の期待は高まった。 「よぃ……しょっと!」 両手に力を込めて引き上げる。 「ケロケロ! ケロケロ!」 「カッパ! キュウリ!」 「……」 釣れたのは、外道だった。 「……」 「ケロケロ!」 「にとりー!」 ちびゆっくりに食いついて離れないゆっくりケロちゃんとにとり。 もうお腹いっぱいになっていた妹紅に食欲はなく、ちびゆっくりから針を外すと、そのまま3匹とも地面へ落とし、燃やしていった。 「ゲロゲロゲロ!」 「み゛、み゛どり゛ぃぃい゛いっ!」 「……ゆっ、ゆ゛っく゛り゛……」 ゆっくりの臭いに、焼ける蛙の臭いを思い出す妹紅だった。 妹紅が腰を上げる。気づけば日は夕暮れ。そろそろ用事も終わり、慧音が訪ねてくるかもしれない。バ輝夜は居留守で充分だけど、慧音に無駄足を踏ませるのは可愛そうだ。せっかく大漁だったのだから、慧音にも分けてあげよう。 釣り自体気まぐれであり、普段もしているわけではない妹紅に取って釣り竿はただ荷物になるだけだ。竿を真ん中でおり、糸を外して置いていく。 座られ続けたれいむは数時間前からピクリとも動かない。体は完全に硬直し、今やただのオブジェと化していた。 ゆっくりちるのの上に乗せていたお母さんれいむを、炎で解凍していく妹紅。氷が溶けきり、どうにかちるのから外れそうだ。 両手で抱え、そのまま膝を使って持ち上げた。 「……うっ……ゆっ……」 かすかに聞こえてきた声に、思わず妹紅は抱えているものの顔を見た。 「……ゆっ……」 「まだ生きていたんだ」 子供の多さからタフそうだと思っていたが、それにしてもその生命力の高さは妹紅を随分驚かせた。 元来た道を戻っていく妹紅。その間にも、お母さんれいむは希に声を上げる。生きてはいるものの、あんこを魚に陵辱され、ちるのの冷気で冷凍されている、このまま放っておけば死んでしまうだろう。 妹紅はずっと考えていた。 こんな生命力のあるゆっくりでデザートを作れば、バ輝夜はとても喜んでくれるだろう。 いつか輝夜に食べさせるため、魚臭いあんこでなんのデザート作るか考える妹紅だった。 End 妹紅 → もこたん釣りしたお! お母さんゆっくり → クーラーボックス ふつうのゆっくり → 椅子 うざいの → 撒き餌 ちびゆっくり → デザート 兼 餌 ゆっくりゃ → 昼ご飯とつまみ チルノフ → ゆっくりした結果がこれだよ! ■話を書く前の気持ち 実際ゆっくり餌にしたら何が釣れるだろうな ↓ ゆっくりゃが釣れるんじゃね? ↓ それじゃゆっくり餌にゆっくりゃ釣って虐待しようぜ! ■書き終わった後 もうれいむでいいや……。 by 762 このSSに感想を付ける