約 736,849 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4004.html
『ゆっくりつり』 今日、俺は近くの神社の祭りに来ていた。 休日で仕事も無く、たまには祭りでも行くかと思い来たのだ。 焼きそば、ラムネ、チョコバナナなど俺が祭りを堪能しているとあるものが目に入った。 「お!ゆっつりじゃねーか!」 目の前には大きな看板にカラフルな文字で「ゆっくりつり」と描いてあった。 「小さい頃、俺もハマって、2千円も使ってかーちゃんに怒られたっけ・・・。 懐かしいな、いっちょやっか!おっちゃん大人一人!。」 「あいよ。」 おっちゃんは座っている椅子の横から、餌付きの糸を取り出し、男に渡した。 「あー!ちっくしょう!」 そんな声が隣から聞こえた。どうやら小学生ぐらいの子が失敗してしまったようだ。 それもそのはず。ゆっくりつりはかなり難しいのだ。 ゆっくりつりのゆっくりは大きなプラスチックの桶に入っている。 そのゆっくりを小さい針の付いた竿で釣るのだ。 ちなみに餌は甘い匂いのする謎の練り餌である。 これは、男が少年の頃から変わっていない。 ゆっくりつりは、かなり簡単そうに思えるが、やってみると凄く難しいのである。 「うーん、やっぱまりさかな。簡単だし。」 まりさ種は好奇心が強いため餌に食いつきやすいのだ。 男は餌をまりさに近づける。 釣りのルアーのように美味しそうな動きをさせながら。 まりさは餌をジィーっと見つめている。そして・・・ 「・・・あまあまさんはまりさにたべられてね!!」 食いついた。 「来たっ!」 ここからが勝負である。 体力があるまま、上に引き上げると糸が切れてしまうため。 下でゆっくりを弱らせないといけないのである。 男は竿を縦に動かし、まず口に針を引っ掛けた。 「むーしゃ むーし…!? ぴぎぃ!! いじゃいぃぃぃ!!!」 男は引っ掛かったことを声で確認すると竿を横に動かし始めた。 「やめぢぇえええ!! いちゃいよおおおおおおおお!!」 ちなみに桶にはオレンジジュースが少しだけ浸してある。 弱らすときに、ゆっくりの皮が裂けるのを伏せぐ為や 針から抜け出したゆっくりの傷口を早く再生させるためである。 もちろん、栄養剤としての効果も含まれている。 「ぴぃいいいいいいいいいい!!! やめてにぇえええええええええええ!! ぢんじゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 赤まりさの周りのゆっくりは赤まりさを哀れな目で見ている。 赤まりさもこのように学んだのに、それを活かせないのは餡子脳の故か。 赤まりさは床を滑らされ体力を消耗してきた。 死んだゆっくりを持ち帰っても意味がないので、 そろそろ男は釣り上げる事にした。 男の得意技『壁当て』だ。 方法は簡単、勢いをつけて壁にぶつけるだけだ。 「ゆあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! ぶちゅがりゅう゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」 ペチョンッ!! そんなよわよわしい音だが赤まりさには大ダメージだった。 「ち゛・・ぬ゛っ・・・! ち゛んじゃ・・・う゛っ・・・・!」 まりさはそんな事を言いながら男に釣り上げられた。 まりさの針を外し、オレンジジュースが浸ってあるお皿に入れた。 隣の小学生たちが 「すげぇー!!」 と言っている。少し気持ちいい。 おっちゃんが1匹釣り上げたので、もう一個餌を貰った。 持ち帰りは1人、2匹までらしい。 釣れなくても1匹貰えるらしい。 ちなみに、俺の地元では取れたら取れただけ貰える。 取れなかったら貰えない。 地元ルールがあるんだな・・・・・。 2匹目の獲物はどいつにするかはすぐ決まった。 あの、大きなありすだ。 明らかに大きいありすは、あのおっちゃんの罠だという事は分った。 しかし、男には分っていても挑まなければいけない時がある・・・! 「大きなありす」といってもテニスボールぐらいのサイズだ。 だが、さっきのピンポン玉赤まりさに比べれば凄く大きい。 男はありすの前に餌を落とした。 しかし、先ほどのまりさのように餌を動かすが反応はない。 口に穴の痕が多数有る事から、『餌は危険だ』 と言う事が頭に焼き付いているのだろう。 駄目か・・・、と思ったとき。 「あみゃあみゃな においがちゅるわ!! とかいはにゃ ありちゅに ぴったちでゃわ!!」 なんと、あの大きなありすの後ろに居た赤ありすが餌に向かって飛び出してきたのであった。 そして、赤ありすが餌に食い付こうとした時。 「ちびちゃんだめぇええええええええええええええ!!!」 「ゆ゛ッ!」 大きなありすが赤ありすに体当たりしたのであった。 その隙を見逃さず、男は大きなありすの口の中に餌を振り入れた。 「ゆっ!! ぴぃい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 浅く針を掛けるとハズれてしまうため、男は糸が切れるギリギリまで糸を張った。 どうやら、声からしてガッチリ、ハマったようだ。 それにしても、結果はともあれ。 貴重な餌を奪おうとした赤ありすに男は苛立ちを覚えた。 「・・・このチビが・・・・・・・・・・・・!!・・・・・・。 ・・・・・・・良い事思いついちまった・・・・・・・・・!・・・。」 この大きいありすは子どもな為、親と言う事は無い。 それに、この性格からしてレイパーと言うこともないだろう。 そのため、同じありす種という事で仲良くなったのではないか。 大きなありすは良い個体だが、 赤ありすはさっきの行動と言え、ゲスの素質があるのではないだろうか。 「さっきのチビ助、捕まった大きなありすから逃げてやがる・・・・・。 やっぱりとんだゲスだな・・・・・。 まあいい、最高のお仕置きをしてやるよ。」 男は竿を横に動かした。 オレンジジュースのおかげもあってか、重い体でもぬるぬると動く。 「よし、滑るな。」 そう言って、男はありすが滑る事を確認すると、 赤まりさの時と同じように動かし始めた。 「い゛じゃい゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! お゛に゛い゛さ゛ん゛や゛め゛て゛く゛ださ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 体重のある分痛みも強いのだろう。 大きなありすは、赤まりさの時よりよく叫んでいる。 しかし、そんなのは関係ない。 男の目的は『大きいありすを釣り上げる』から 『ゲスチビをぶち殺す』に変わったからである。 大きいありすを滑らし続けながらもさっきのゲスチビを男は捜した。 「・・・・・・・・・・居た! あの野朗、角でやり過ごそうとしてやがる。」 男は大きいありすをその角目掛けて移動し始めた。 まわりのゆっくりはピー ピーいいながらありすを避けている。 「ゆ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ゆ゛っく゛り゛でき゛ない゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 大きいありすは竿に身を任せ、どんどん加速していく。 目標になっている赤ありすは、なにかが自分に迫ってきて恐怖に怯えている。 「く゛る゛に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ばでぃずは゛と゛か゛い゛は゛に゛ゃん゛だじょお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!! ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ ぴぃッ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 そして・・・ 2匹は激突した。 ぐちゃり…と音を立てて。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゆう?」 赤ありすは潰されなかった。 なぜか?、答は簡単 『角に居たから』 だ。 恐る恐る目を開けた赤ありすの前には 「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」 体中からカスタードをはみ出させた大きなありすが居た。 「・・・・ゆ・・・・・・っ゛・・・・・・・ぐり゛・・・・じね゛っ・・・・・・! ・・・・ゲ・・・・ス゛・・・・・め゛っ・・・・・・!」 弱りきった大きなありすは男に釣り上げられた。 そして・・・・・赤ありすの上に落とされた。 「ゆぴゃッ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 赤ありすは死んだ。恐怖に怯えながら。 「あ~ ごめん、おっちゃん。1匹、関係ないの潰しちゃったわ。」 「ああ、別にいいよ。いっぱいいるしな。」 それだけの命であった。 それから、2匹のゆっくりを手に入れた男は神社を後にした。 そして、帰り道。 「あー、すっきりした。あのゲスチビの最後の表情最高だったぜ。」 「・・・・・ん?」 男の持つ、ビニール袋の中でなにかがもぞもぞしている。 男はビニール袋に目線まで持ち上げてみると 最初に釣り上げたまりさが動き始めたのだ。 人間で言う全身打撲だというのに、 約30分である程度まで動けるとは驚きの生命力である。 「・・・・・ゆ・・・・ゆう・・・?・・・・こょこょ・・・どきょ・・・・?・・・・・・・・」 「すげーなー ゆっくりって、まあいいや。」 男はビニール袋の結びを取ると、中からまりさを取り出し手のひらに置いた。 まりさは初対面の男に対して緊張しているのか、怯えているのかプルプルしている。 「ゆっ・・・ゆっくりしてい「 い た だ き ま す ! 」 まりさは口の中に放り込まれた。 「くちょくちょ・・・・うん! ゆっくりの踊り食いは最高だな!」 お わ り 補足(※ありすはスタッフがおいしくいただきました) あとがき 初投稿SSです。 批判お待ちしております。 きよ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2251.html
注:容姿描写等は、あくまでもこの作品内のみのものです。 朝、村の男が畑へ出てみると、こそこそと作物を齧っている影を発見した。 ゆっくりめ、と思い後ろから近づき、その物体を掴む。 「おらあっ!クソ饅頭め、ぶち殺してやる!」 「に゛ゃあ゛!」 掴まれたゆっくりは涙を浮かべ、カタカタと震えている。 そのゆっくりを見て、男はおやっと思った。 男もそんなに見かけたことのない希少種、ちぇん種であった。 「わ、わるかったよー、ごはんがたりないんだよー」 「……………………」 その姿を見て、男の怒りが急速に薄れていった。 「……分かったよ、少しでいいなら持ってっていいぜ」 「あ、ありがとう!おじさんいいひとだね、わかるよー!」 ちぇんは作物を少し貰い、お礼を言って帰っていった。 ちぇん種は基本的に素直で可愛らしいので、人間達の間では非常に人気が高い。 もちろん程度にもよるが、このように畑を荒らしても許されることは多かった。 そして、その光景を一匹のゆっくりが遠くから見ていた。 十分ほど後、男が畑仕事を始めると、再びゆっくりが作物を齧っているのが見えた。 またかよ、と思い近づき、先ほどと同様に後ろから掴む。 「ごめんだぜ!おなかがへっていたんだぜ!」 それはまりさ種であった。 このまりさは人間に捕まっても少しも慌てていない。 さっきのちぇんと同じように、作物を分けて帰してくれると信じ切っていたのだ。 「てめえ、俺の畑になにしやがるうううう!!!!」 「ゆびゃ!」 男はまりさを地面に叩きつけると、力一杯、何度も踏みつける。 「死ね、この饅頭が!身の程をわきまえやがれ!」 「な…………なんでなんだぜ…………」 まりさ種はちぇん種と違い、自分勝手で図々しい。 畑を荒らしたり、家に上がりこんで自分の家宣言をすることなど日常茶飯事である。 そのため人間達の間では、ゆっくり随一の嫌われ者であった。 当然ちぇん種との扱いの差は天地の開きがあるのだが、そんなことまりさは知る由も無かった。 またある所に、一匹の瀕死のぱちゅりーが道で倒れていた。 石か何かでケガをしたようで、皮の一部を失って餡子が流出している。 そこに一人の女性が通りかかり、ぱちゅりーに気付く。 「た、大変!大丈夫!?」 「むきゅ……いたい……」 「待ってて、すぐ助けてあげるからね!」 急いで女性はぱちゅりーを、治療のために連れて帰る。 ぱちゅりー種は物分かりがよい分、人間の恐ろしさも熟知している。 そのため人間に危害を加えようとしない傾向が他のゆっくりよりも強い。 よって人間からは頭のいい、迷惑をかけない良いゆっくりだという認識を受けていた。 女性は再び家を出ると、近くをひたすら走り回った。 すぐに目的のゆっくりが見つかった。家族連れのれいむ種で、赤れいむも何匹かいる。 「いいゆっくりね、少し借りるわ」 「なにするの!れいむをはなしてね!」 「おねーしゃん、やめちぇね!」 「おかーしゃんをはなちぇー!」 赤れいむ達の声など聞く耳持たず、母れいむを家へ連れて帰る。 そしてすぐにぱちゅりーのいる部屋ではなく、台所へ向かった。 「はやくおうちにかえして…………ゆぎゃああああ!!!!!」 女性はれいむの皮を剥ぎ、中の餡子も少し貰い、ぱちゅりーの元へ急ぐ。 幸いぱちゅりーは、まだ死んではいなかった。餡子を入れ、れいむの皮を使い縫合する。 餡子があれば、ゆっくりはなかなか死なない。小一時間すると、餡子を得たぱちゅりーは完全に回復した。 「むきゅ、ありがとう、おねえさん!」 「いやいや、助かってよかったわ」 すっかり元気になったぱちゅりーは、森へと戻っていった。 ぱちゅりーが帰ったのを見届けてから、女性は台所へ戻る。 大きく皮を剥がれたれいむは、餡子を流出しきって死んでいた。 ほぼ皮だけとなったれいむを持って、赤れいむ達の元へ戻る。 「あ、さっきのおねーしゃん!」 「おかーしゃんをかえちてね!」 「ええ、分かってるわよ。ほら」 女性は母れいむだったものを、赤れいむ達に投げつける。 「お、おかーしゃんがああああ!!!!!」 「どぼちてえええええ!!!!!」 「ゆっくちできにゃいよおおおお!!!!!」 「あなた達のお母さんのおかげで、一匹のゆっくりの命が救われたわ!ありがとう!」 れいむ種はぱちゅりー種と違い頭が悪く、まりさ種同様平気で人間の食べ物を食べたり、人家に侵入したりする。 数が多いこともあり、人間達の間ではやはり嫌われ者であった。 またある夜、青年が森を歩いていると、ゆっくりみょんが体付きれみりゃに襲われていた。 「まつんだどぉ~☆」 「ちんぽおおおお!ちんぽおおおおおおお!」 ゆっくりみょんは卑猥な言葉を発するとはいえ、その性格に関しては意外と礼儀正しい。 そのため女性からはともかく、男性には好かれることが多かった。 「この肉まんが!喰らえ!」 「だどおおおおおお!!!!!!」 青年のパンチを喰らって、れみりゃは吹っ飛び、ピクピクと痙攣している。 体付きれみりゃは可愛さも頭脳も、数あるゆっくり種の中で最低レベルに位置する。 しかもれいむ種やまりさ種にはまともな者もいるが、体付きれみりゃにはほぼ皆無。当然嫌われ者である。 「さあ、今のうちに逃げるんだ」 「ありがとうだちーんぽ!」 青年に礼を言うと、ゆっくりみょんは森の中へ姿を消していった。 しばらく歩くと、似たような光景を再び目にした。 「うー!うー!」 「たすけてえええええ!!!!!」 今度は襲っているのは体無しれみりゃ、襲われているのはゆっくりアリスである。 ゆっくりアリスは青年を見るやいなや、青年に助けを求めた。 「お、おにいさん、たすけてくれてもいいわよ!」 「……………………」 「な、なんならおにいさんのいえを、ありすのいえにしてあげてもいいわ!」 「そうか、じゃあやめとくわ」 青年はそう言うと、ゆっくりアリスを掴み上げた。 「ほれ、こいつやるよ」 「んほおおおおお!!!なんでええええ!!!」 「うー!うー!」 ゆっくりアリスは人間へは物的被害はもちろん、精神的にも害を及ぼす。 それは手当たり次第に他のゆっくりをレイプし、またその時の顔が非常に醜いということだ。 小さな子供を持つ主婦からは、子供の教育に悪いと特に評判がよろしくない。 ゆっくりれみりゃは、青年に掴まれたありすをガツガツと貪る。 「ゆぎゃあああああ!!!!!」 「うー!うー!」 「うーむ、さすがに可愛いなぁ」 体無しれみりゃは捕食種ながら、その外見はゆっくりの中でも屈指の可愛さを持つ。 しかも体付きと違ってうーうー呻るだけでウザくないので、かなり人気が高い。 もちろん、れいむ種やまりさ種をよく食べるというのも人気の理由の一つである。 青年はれみりゃの食事が終わるまで、ゆっくりしてその光景を眺めていた。 さて、それらの噂を耳にしたゆっくり達で、悪巧みを企む者達がいた。 ゆっくりちぇん、ゆっくりぱちゅりー、ゆっくりみょんの3匹である。 彼らは先の話のちぇん達のような者達と違い、彼らの種にしては珍しい、ゲス気味のゆっくりであった。 「むきゅ、わたしたちには、にんげんはやさしいわ」 「ごはんもらいほうだいだね、わかるよー」 「にんげんをりようするんだちーんぽ!」 早速3匹で人里へ赴く。 人気者の3匹が勢ぞろいしている光景には、多くの人間が目を細めた。 「あらあら、可愛らしいゆっくり達ですね」 一人の少女が3匹に声をかける。 すると3匹は待ってましたとばかりに、少女に要求を始めた。 「むきゅ、わたしたちがかわいいのは、とうぜんよ!」 「だからごはんをよこすんだちーんぽ!」 「ひろいいえもねー、わかってるよねー」 「あらあら……分かりました。ではどうぞ、私の家へ」 少女はにっこり微笑むと、自分の屋敷に3匹を招いた。 その門には「稗田」と標識があったが、ゆっくりにとってこれが何を意味するかは無論知らなかった。 そしてその家で、3匹は知ることになる。 ゆっくりの種になど関係なく、どんなゆっくりも虐待する人間がいることに。 彼らが屋敷を出てくることは、二度となかった。 終 過去作 ゆっくり鉄骨渡り ゆっくりアトラクション(前) ゆっくりアトラクション(後) ありすに厳しい群れ(前) ありすに厳しい群れ(中) ありすに厳しい群れ(後)
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1059.html
その日は縁日だった、何気なく立ち寄ったゆっくり屋で、私は子ゆっくりを買うことにした 子ゆっくりはテニスボールくらいの大きさで、みんな元気に跳ね回っていた 私は隅っこにいた、ゆっくりれいむを一匹買うことにしたのだが 「いやだよ!まりさとはなれたくないよ!」 「そうだよ!まりさはれいむといっしょにいたいよ!」 などと、野良ゆっくりだった頃の友達だろうか?れいむを連れて行こうとする私にまりさが抗議をする 怒ったテキ屋の兄ちゃんが、ゆっくり棒で軽く殴るが連れて行かせまいと、れいむの前に立って体を膨らませて威嚇している ゆっくりの美しき友情に心底感動した私は、当初の予定を変更して、この仲の良いゆっくり達を全て買い取ることにした 「一匹飼うのも二匹飼うのもそう変わりません、仲の良い友達同士、離れ離れにするのは酷なことですからね、二匹とも買い取りましょう」 「そうか、いやぁ~すみませんね、お兄さん」 仲間と離れ離れにならず、みんなで一緒にいられると聞くとゆっくり達はとても喜んでくれた 「ゆゆ~!ありがとうおにーさん!」 「まりさたちをゆっくりかわいがってね!」 君達を可愛がる?そんな事をする気は毛頭無い こうして二匹のゆっくりを購入した後、途中で射的をしたり、綿飴やりんご飴を買ったりして家路についた 道中、ゆっくり達は歌を歌ったり、仲間と一緒にとび跳ねたりして楽しそうにしていた 見ていると本当に心がなごむ、愛らしい姿なんだろう、最も私には不快にしか映らないが お腹がすいたというので千切った綿飴を少しあげると、喜んで食べてくれた 「おにいさんはゆっくりできるひとだね!れいむとってもゆっくりできるよ!」 「おいしいおかしだね!とってもおいしいよ!」 普通のゆっくり達ならお菓子を奪い合ったり、喧嘩をするが、このゆっくり達は平等に綿飴を分け合って食べている ゆっくり達の顔はどれも名前の通り、安心しきった、ゆっくりとした表情をしていた あぁ、早くこの顔を絶望に歪ませたい 家に着くと、ゆっくり達はさそっくお家宣言を始めるゆっくり達 「おっきなおうちだね!れいむたちのゆっくりプレイスにするよ!」 「まりさたちにぴったりのおうちだね!」 家に入るとすぐに自分たちのお家宣言をする、これはゆっくりの悪い癖だ、このセリフのせいで虐待されたゆっくりはどれだけ居るのだろうか? ともかく玄関先で騒がれては近所迷惑になってしまう、私はゆっくり虐待用の部屋にゆっくり達を連れていき、籠から出してやる ゆっくり達は無邪気に飛び跳ねながら楽しそうにしている虐待し甲斐のあるゆっくり達だ 「おにいさん!おなかへったよ!」 「ごはんをもってきたらまりさたちのおうちでゆっくりしてもいいよ!」 何がおなか減っただ、身の程をわきまえないとひどい目にあうということを教え込んでやる 楽しそうに飛び跳ねているれいむの髪を掴んで、乱暴に持ち上げる 「いっ!いたいよおにいさんゆっくりおろしてね!」 痛みに顔をしかめながら、れいむは私をぷくーと膨れて睨みつけてくる お友達が痛い目に逢っているのを見るなり、まりさもぷくーと膨れて怒っている 「おにいさん!れいむのかみをつかむのやめてあげて!」 友達が痛い目にあうと、自分のことのように怒る、良い子だな本当に、だからこそ痛めつける 「ははは、すまないね僕は良いゆっくりにも、悪いゆっくりにもとても厳しいお兄さんなんだ 特にこのれいむは心の汚れた悪いゆっくりだから、特別痛めつけてやるんだよ」 私の滅茶苦茶な説明を聞くなり、れいむは涙声で反論する 「ひどいよ!ひどいよ!れいむはいいゆっくりだよ!」 うるさいゆっくりだ、お仕置きが必要だな、私は素早くポケットから縫い針を取り出すとれいむの後頭部に軽く突き刺す もちろん、これで殺すわけではないあくまで浅く突き刺す、しかしれいむにはとても痛かったようだ 「ゆ゛っ゛!いだぁい!」 れいむの声がうるさいので、泣きわめくれいむにゆっくり用の猿轡をつけると、加工所のベストセラー商品、透明な箱に入れる ちなみに、この透明な箱の底には薄く水が張っておいた、少しでもゆっくりに不快な気分になってもらうための一工夫だ 中でれいむはふごふご言っているが無視 まりさはれいむを傷つけた私に向って怒鳴り始めた 「ひどいよおにいさん!まりさたちのおうちからでていってね!」 馬鹿なゆっくりだな、ここは先祖代代受け継いできた家だ、貴様らの家だと笑わせるな 「ここが君のうち?馬鹿言わないでくれ、先祖代代受け継いできた家なんだぜ 君みたいな身の程知らずの馬鹿には死ぬまで苦しんでもらうよ」 私はまりさの帽子を取り上げると、まりさの頭を針で何度も突き刺す 「ゆゆっ!いだいおにーさんやめて!やめて!」 まりさは針から逃げようと右往左往逃げ回る、愉快な奴だ 軽く蹴り飛ばすと「グッびゅ!」と鳴きながら転がっていく 箱の中でれいむがまたふごふご言いだした、大事なお友達が痛めつけられるのをよく見とけ、ボケが 痛みで動けないまりさをれいむと同じ様に、透明な箱に入れる そして、箱の中に河童印の唐辛子スプレーを吹きかける 「ゆぎゅっ゛つ゛!い゛だぁ!」 体中に焼けるような痛みを感じて、鼻水と涙を流しながらまりさは悶え苦しむまりさ 苦し紛れに飛び跳ねているから、透明な箱中に鼻水や涙が飛び散っている、汚いゆっくりだ さて、少し運動もしたし腹が減った夕食にでもしよう 私は虐待部屋から出るとすぐ、食事を始めた 炊き立てのご飯に昨日のカレーの残りと温泉卵を乗っける、独り身だと夕食なんたこんなもんだ 食べ終わるとすぐに私はゆっくり虐待部屋に向かう 食事の間中も頭の中はゆっくりを痛めつけることで一杯だった、こんな私は巷で話題のゆっくり虐待脳なのだろうか? 私は虐待部屋に戻ると、透明な箱に入っていたれいむとまりさを乱暴に引きづり出した れいむは箱から出るなり私に体当たりをしようとする、しかし、長い間底部が水に浸かっていたせいか、ふやけてうまく跳ねれない かといって、罵詈雑言を吐こうにも猿轡を噛んでいてはそれも叶わない、結局膨らむだけにしたようだ 一方まりさはさっきのスプレーでのどを痛めたのか、しきりに咳をしている ざまぁみろゴミ虫め 「君達も疲れているだろう、このダンボールの中で寝なさい」 出来るだけ優しく言ってやったが 「ん~!んんむんむ~!」 「おにいさんのいうことなんかきかないよ!とっとときえてね!」 だそうだ、人の好意も素直に受け取れない糞ゆっくりは…こうだ! 二匹の髪を掴むと、ダンボールの中に手加減して叩きつける 「ゆ゛っ!ひどいよおにーさん!」 「ん゛ん゛んぅ!ん゛~む゛ぅん!」 「ゆっくりできてないよ!れいむだいじょうぶ!れいむ!」 まりさは体が少しへこむ程度で済んだが、れいむは違った 水を吸ってふやけていた底部が破けて、餡子が滲み出できている 痛みに身をよじって体を揺らしている、おおきもい、きもい こんなに痛がるなら猿轡を外してからやればよかった、そうすればれいむの苦しむ声をたっぷり聴くことができたのに 少し軽はずみな行為をしてしまった事を恥じながら、れいむの猿轡を外す 「ゆ゛ぅえ゛っぐ…ひ゛っぐれ~むのあしが!」 「おちついて!ゆっくりなおるからおちついてね!」 「ゆっぐ…ひっ…ぐ…ゆっゆ」 「おちついて!だいじょうぶだよれいむ!」 ゆっくりにとっての足の部分が破けたショックで、過呼吸気味のれいむを落ち着かせようと、まりさが頬擦りを始めた 頬擦りはゆっくり達の友愛の証でこれをする方もされる方もゆっくりできるらしい しかし、私に貴様らをゆっくりさせる気は全く無い ゆっくり共の入ったダンボールを持ち上げると、上下左右に素早く小刻みに揺らす 中のゆっくり達はピンポン玉のように、あっちに飛んだりこっちに飛んだりして、ダンボールにぶつかる度に悲鳴を上げているいる これなら、ゆっくりピンボールとか作ったら売れそうだな 「じしんだよ!こわいよいやだよ!」 「いだいよ!いだっひぅあしがいっだいよぉ!」 まりさは地震と勘違いしてしまったようだ、眼を固くつぶって震えながら転がっている、馬鹿な奴だな れいむの方は揺れて転がることで傷口がどんどん広がっている、漏れ出す餡子の量も多くなってきている ここで殺すのもありだが、もう少し生かしてやることにした ダンボールから二匹を出すと、まりさが私に泣きついてきた 「おにーさん!このままじゃれいむがしんじゃうよ!いままでのことゆるしてあげるかられいむをなおして!」 「まりさだけでもにげて!このままじゃまりさがゆっくりできなくなるよ!」 「れいむはだまっててね!まりさはれいむといっしょじゃなきゃゆっくりできないよ!」 この言葉には普通の人なら感動するだろうが、私には骨の髄までゆっくり虐待の血が流れている どんな感動的なことをしたとしても、それがゆっくりなら虐待するまでだ 「なるほど、まりさはれいむのことを治してあげたいんだね?」 「そうだよ!ゆっくりしないでれいむをなおしてね!」 「しょうがないな、私なりのやり方で治してあげるよ!」 私は素早くれいむを仰向けにすると、濡れてふやけた底部の皮をむりやり剥ぎ取る 「ゆっ!いだい!いだぁい!いだい!」 「れ…れいむになにするのー!しね!しね!」 まりさは顔を真っ赤にして私に突撃してくる、それこそ私を殺すつもりの体当たりだったのだろう しかし、しょせんはゆっくり、痛くもかゆくもない、むしろぷにっとして気持ちいい だが、ゆっくり風情が人間様に楯突くとはどういうつもりだ 私は力の差を教えるためにも、まりさを捕まえると、右目の部分に噛み付き、引きちぎった 口の中が程よい甘さでいっぱいになる、しかし私は辛党だ、ゆっくりなど食べても不快な気分にしかならない 嫌々、何度か咀嚼してすぐに吐き捨てる、左目は縫い針で何度も突く、突き刺すたびに目からは餡子とは違った、透明な液が噴出する 言葉にならない叫びを発するまりさを思い切り殴りつける、後頭部がへこんで口からボトボトと餡子をおう吐し始めた ふぅ…すっきりした、たまにはこんな風にワイルドに痛めつけるのも悪くない 第一、れいむに関しては本当に直してやるつもりだったんだ、それを死ね、などと言われたら少しくらい怒ってもしかたないではないか 「こないでぇ!いじめるのはまりさにして!こないで!」 「ぎぃ!う!うっぷうっ…おぇ~」 さて、れいむはというと、さっきまりさにやった折檻がよほど恐ろしかったようだ 足のない身で、必死に私から離れようとしている まりさの方は、噛みちぎられた右目のあった場所と口から、命の源の餡子を垂れ流している 左目はどんより濁って、なにも映してはいないようだ しかし、れいむの「いじめるならまりさにして」発言は良く聞こえたようだ 「びどぉい!でいむびどいよ!」 と、餡子を口から飛ばしながら叫んでいる、それから一分とかからずまりさは息を引き取った まりさが死んだことを確認すると、私はまりさの底部をれいむのように剥ぎ取った 私は、逃げようとするれいむに近付くと、出来るだけ穏やかな表情を作って話しかける 「れいむ、今から私は君の体の治療をする、痛くするつもりは毛頭無い けど、もし逃げようとしたり、泣いたり、私を不快にするようなことをしたら、ただではすまないよ」 「わわかったよ!にげないしなかないよ!」 それなら良い、私はまりさから剥ぎ取った底部をれいむの底部に張り付ける、ぴったりとはいかなかったが ゆっくりは単純でいい加減な生物だ、すぐに癒着するだろう 「これで大丈夫、しばらく動かなければきちんと歩けるようになるよ」 「ゆっ!それじゃあうごかなふぎゅ!」 すかさずれいむを踏みつける 「何かしてもらったら、普通はありがとうございましたって言わないかな?」 「ゆぐ…ありぎゃとうごじゃいまちた!」 痛みに耐えてれいむはお礼を言った、この男に逆らえば絶対にゆっくりできない、というのがゆっくりブレインにもよく分かった それからしばらくすると、れいむの皮とまりさの皮はきっちり癒着して、普通の状態に戻っていた 「良し、治ったね、それじゃあちょっとジャンプしてくれ」 「ゆっ!わかったよ!ぽよーん!」 なるほど、きちんと癒着しているようだジャンプ力も問題ない れいむが不快な擬音を口にして飛び上った瞬間、私はれいむの底部をけり上げた 「ゆぎゅ!」 移植したばかりだった、れいむの底部は簡単に破れた 痛みに悶絶するれいむを無視して、まりさの死骸から口を削ぎ落とす そして底部の破れた場所に、無理やり押しあてる 「ぎゅぅ!!!いふぁい!いだいぢだい!」 「黙れ、殺されたいか」 「ぎゅ!っつ…ん…む」 私のことを本当に恐れているのだろう、れいむはすぐに静かになった それから五分後、れいむは底部に口を持つ、世にも珍しい二つの口を持つゆっくりになっていた その結果に満足した私は、れいむを小さな透明な箱に入れると、今日一日の疲れを癒すべく寝室に向かった 一方れいむは、男への怒りで体中が爆発しそうだった 透明な箱はれいむのサイズより一回り小さかったが、男に無理やり押し込められた、身動き一つ取れない なんで可愛いれいむがこんな目に会わなきゃいけないの? 腹立たしげにれいむは呟いた 「「ゆっくりできないよ!」」 れいむは驚愕した、自分の体から死んだはずのまりさの声がしたのだ 「「まっまりさ!いきてたの?」」 しかも、不気味な事に自分の言うことを真似してくる これは、まりさの霊がれいむを祟りに来たんではないか そう思うと、体中から冷や汗が出てくる 「「れっれいむはわるくないよ!」」 「「しんでるくせにふざけないでね!」」 「「まねしないでよ!」」 「「ねぇ!やめてよ!」」 「「れいむはわるくない!ほんとだよ!」」 「「おねがいだから!まねしないでね!」」 「「やめてやめてれいむはわるくないよ!」」 れいむは朝まで自分の発した声に怯えていた 私は朝起きると、朝食をしっかり取ってから虐待部屋に直行した 中ではれいむが何やらぶつぶつ言っている、そして同時に死んだはずのまりさの声も聞こえてくる、どうやら成功したようだ 「おはようれいむ、昨日はよく眠れたかい?」 「「おにーさん!たすけて!まりさがどこかにいるよ!れーむのまねをするよ!」」 私は塩水をたっぷりれいむにかけてやった 「「ぎゅぅ!からいよ!くるしいよ!」」 「朝のあいさつはおはようございますだろ、言ってみなさい」 「「おはようございます!」」 「よろしい」 れいむは辛い辛いと騒いでいたが、いきなり真っ青になって私に体の異変を訴えてきた 「「ゆ゛っ!へんだよ!すっごくへんだよ!」」 「何が変なんだい、言ってごらん、れいむ」 「「れいむのあしがあじがわかるんだよ!へんだよ!おかしいよ!」」 私は苦笑してれいむの疑問に答えてやった 「それはね、君にまりさの口を移植してやったからさ、君の足にはまりさの口があるんだよ」 「「そそんなはずないよ!いやだよおくちはひとつでいいよ!」」 真実を教えてやったのに、そこまで言うなら仕方ない、れいむを透明な箱から取り出すと床に落とす ゆっくりの底部は頑丈で弾力がある、普通のゆっくりならこれ位痛くもかゆくもない しかし、れいむは違った 「「いだぁい!いだぁいよなんで!」」 れいむの底部には、まりさの口が付いていた ゆっくりの口はそう頑丈じゃない、裏返してみると何本か歯がへし折れていた 騒ぐれいむを無視して、私は一メートル四方の超巨大透明な箱を持ち出す 中にたっぷり塩を入れると、その中にれいむを放り込む れいむは底部を塩の床につけるなり、辛い辛いと騒ぎだした 騒げば騒ぐほど、底部の口から塩がれいむの体内に入っていく あと数分もすれば、このれいむは大嫌いな塩でお腹いっぱいになれるだろう 「ゆっくり味わって食べなよれいむ、塩はたくさんあるんだから」 「「いや!たすけて!ゆっくりできないよ!からいよ!くるしいよ!たすけて!」」 二つの声で何かに助けを求めるれいむ ゆっくりにとって、塩は大量に摂取すれば死の危険性もある食糧だ、帰ってくる頃には苦悶の表情で死んでいるだろう 朝から愉快なものが見れた私は、虐待部屋から出た後すぐにゆっくり加工所に向かった そう、私はゆっくり加工所で働いているのだ、家に帰っても虐待、職場でも虐待 私はこの世で最も幸せな男なのではないだろうか、といつも思う 自分の本当に好きなことを職業にできたのだから 作:ゆっくりな人 以前書いた虐待 ゆっくりカーニバル 臭い付きゆっくり(上) 臭い付きゆっくり(下) このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2073.html
虐待描写薄め。と言うかほとんどないかも 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~♪ゆぎゃっ」一本の矢がゆっくりれいむを貫く。 「どうしたの、れいむ?ゆがっ」突然のれいむの絶命に驚く間もなく、ゆっくりまりさも矢の餌食になる。 「なんだ、普通のゆっくりか」茂みから現れた男が、自らが狩った獲物に落胆した声を出す。 彼は、名もなき狩人。この山の山菜と山の動物を狩ることを生業としている。 突如、ゆっくりと呼ばれる物が大発生し、彼の住む山にも多く見かけるようになった。 だが、彼の暮らしは1つの取引が増えただけで、大して変わらなかった。 「おきゃあちゃぁぁぁん」「ゆっくりできないよぉぉぉ」「しょりじょうはいやぁぁぁぁぁぁ!」 山菜や、捌いたシカや猪、熊の肉や皮を人里に卸すように、赤子ゆっくりを処理場へ卸すこと。 それが増えた取引の内容であった。 ある日、取引を終えて、家に帰る途中のこと。 いつものように、古い洋館から聞こえる音色を聞いていたとき、黒い帽子をつけた金髪の一匹のゆっくりを見つけた。 最初は、ただのまりさ種かと思い、気にも留めていなかった。だが、よく見ると違う。 金髪ではあるが、短髪。黒い帽子ではあるが、帽子の先に月を模したような飾り。 「ゆっくり…ルナサ?」 男がそう呟くと、聞こえたのかゆっくりがこっちに振り返る。 「ゆっくりしたけっかが、うつだよ…」 ルナサを模したゆっくりが、けだるそうに呟く。 珍しいものを見つけた。男はそれを掴みあげると、そのまま家に持って帰った。 「はぁ…」家についても、ゆっくりるなさ(いま命名)はまだ沈んでいた。 生態資料用の事典に記載ないゆっくり。まずは中身を調べてみなくては。 るなさの後頭部を目立たないように傷をつける。 「うぁぁぁぁぁぁぁ!」さすがに悲鳴を上げるるなさ。その傷口にスプーンを刺し、中身をすくう。 「あぁぁぁぁ…わたしのなかみが…きあつがさがる…」 嘆き、沈むるなさを尻目に、すくった中身を食してみる男。 「甘さの中にほんのりとした苦味…これはビターチョコか…」 傷口をココアでふさぎ、これはどうしたものかと考えたが、とりあえず今日は寝ることにした。 「あぁ…きょうだけでこんなひどいめにあうのなら、あしたはもっとひどいめにあうんだろうか…うつだ…」 るなさの嘆きがまだ続いていた。 次の日、るなさは変わり果てていた。要するに死んでいた。 口の中を調べてみると、舌と思われる部分を噛み切ったようだ。 ゆっくりって、舌を噛み切っても死ぬのか?そもそも自殺できるのか?と色々考えたが、死んでしまったものはしょうがない。 とりあえず、今日のの朝餉にしよう。 「…ぐはっ!にがっ!!」 るなさの遺骸に入ったチョコは、昨日とは比べ物にならない凄まじい苦味があった。 かろうじて、味はチョコだとはわかる。だが、甘味が全く消えていた。 なんとか、るなさを腹に収める。この味は、外の世界から来た『99.99%』というラベルの貼ったチョコに似ているなと、忌まわしいことを思い出した。 数日後、いつものように、古い洋館から聞こえる音色を聞いていたとき、今度は白い帽子ののゆっくりを見つけた。 「めるぽ!」 また、事典にないゆっくりである。 「え、えーっと、ゆっくりメルラン?」 男がそう呟くと、ゆっくりがこっちに向って叫ぶ。 「ゆっくりはっぴーになってね!めるぽ!」 やかましいな、と思いながらも、ゆっくりめるらん(命名)を持ち帰る男。 「はっぴーはっぴーめるぽっぽ~」家に帰っても、まだ明るい、というか明るすぎるめるらん。 動物の毛皮から血を抜くように、目立たぬ場所に傷を入れる。中身確認である。 「ささってるささってる!めるらんになにかささってるよ!」 ちょっと危ないんじゃないか?と思うような、悲鳴というより喜びの叫びをあげるめるらん。 「白くて甘い…ホワイトチョコか」 「おいしい!?めるらんのなかみおいしい!?しろくてどろっとしたなかみおいしい!?」 中身を食べられたと言うのに、この超ハイテンション。さすがに男はちょっとイラついたのかめるらんを叩く。 「がっ!したのね?!もっとしてもいいよ!めるぽ!」 ますますテンションが上がってしまったのか、さらに叫ぶめるらん。ガッと叩き返す男。 「めるぽ!」ガッ「めるぽ!」ガッ「めるぽ!めるぽ!」ガッガッ 「めるぽめるぽめるぽめるぽ!」ガッガッガッガッ! その繰り返しは、いつまでも続いた。 男の方も脳汁が流れ出そうなほどにテンションが上がってしまっていた。 ・ ・ ・ ・ 男が我に帰ったとき、めるらんは無残な姿になっていた。叩きすぎたのであろう。 だが、このめるらんの恍惚とした死に顔は何だ?こんな顔で死ねるのか? とりあえず、めるらんの遺骸を食すことにした。食べ物を放置することはできない。 「…あんまぁ~~~」 疲れが一発で吹き飛ぶような甘さ。というか、甘すぎる。普通の砂糖でもここまで甘くはない。 とりあえず、さっきの狂乱の疲れは取れたようだ。 また、数日後。古い洋館近くに行くと、茶髪で赤帽子のゆっくりを見つけた。 「今度はリリカか…」 「ゆっくりしていってね!」 まあ、これも珍しいと、男はまた持って帰った。 「ここがりりかのおうち?ゆっくりしていってね!」 家にゆっくりりりか(命ry)を持ち帰った男は、りりかの中身確認を淡々とはじめた。 「うぎゃぁぁぁぁぁ!なにをするの!おじさん!ゆっくりできないよ!」 「…普通チョコクリームだな」 「なかみをたべないでよおじさん!ゆっくりできないよ!ゆっくりできないやつはゆっくりしね!」 なんというか、りりか自身は事典には載っていないのだが、行動は普通のゆっくりそのものである。 「ほら、はやくりりかにゆっくりごはんをもってきなさいよ!いってることわからないの?ばかなの?」 悪態をつくりりかに、かなりイラッとした男は、りりかをボコる。 「ゆべっ!なにするのよ!(ガッ)ぎゃっ!やめてよ!(ガッ)ゆっくりさせてよぉぉぉ!」 男の折檻が続く。やがて限界が来たのか 「ぼっどゆ゛っぐりじだがっだよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 と、なんとも普通な断末魔を上げてりりかは死んでしまった。今回は素だった。 遺骸を食してみたものの、やっぱり普通のチョコクリームだった。 後日、プリズムリバー姉妹の下に、とあるファンから、チョコの香りのする香水がプレゼントされた。 男は姉妹の大ファンだった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4333.html
現代もの ゲス、レイパー、ドス バッジ設定あり 俺設定 虐待分薄め? 「ゆっくりの失踪事件、ですか?」 渡された資料に目を通しながら、俺は編集長に言った。 都内にある、とある出版社の編集部。俺はここでゆっくりの総合雑誌である『月刊ゆっく り』の作成に携わっている。 ゆっくりの生態から飼い方、取引価格の相場に法改正の動き、愛でに虐待と何でもござれ の雑誌だ。愛でと虐待のページがそれぞれを好む読者への配慮として閉じられているため、 全体の半分が袋とじという妙な外見となっている。 五十代も半ばを過ぎた上司は、かけた眼鏡を押し上げてから俺の言葉に頷いた。 「ペットの盗難事件じゃ……ないようですね」 最初に考えたのはそれだ。 希少種や有名なブリーダーのしつけを受けたゆっくりは高値で取引される。それを狙った 犯行がかつて流行ったが、労力の割りに合わなかったのか、すぐに下火になった。 現在起こっているゆっくりの盗難は極端な虐待派か、極端な愛で派のどちらかというのが 実際のところだ。 今回もそんなところだろうと思ったが、資料によると被害を受けているのは―― 「失踪しているのは野良が大半だ。飼いゆっくりのケースもあるが、報告は少ない。 加工所の野良対策部からの情報が23件、飼い主からの情報が5件だ」 「……これ記事にする価値、あるんですか?」 俺はそう言わずにはいられなかった。ゆっくりが、特に野良がいなくなることなど珍しく も何ともない。 現代日本に突如として現れた謎の動く饅頭、ゆっくり。奴らは生物として、種として、異 常と言えるほどに弱い。 他の動物に食料にされ、池や川に落ち、車に轢かれ、辛味を食して中身を吐き、人間に潰 される。 今回もどうせ人目につかないところで死んだのだろう。 しかし編集長は、そんな俺の考えを見通したかのように言った。 「ただ死んだのならば無いだろう。だが死んだのではなく『いなくなった』のだ。 仲間であるゆっくりの目の前で、忽然と消えたらしい。 飼いゆっくりの方は、飼い主が直接目にしたケースが無いから何とも言えないが……」 言うなれば、ゆっくりの神隠しか。俺はこの件に興味を持った。 どこから来たのか解らず、言葉を話し、中身は餡子。そんな不思議ナマモノに、新たな不 思議が加わるかもしれない。 子供のような好奇心に感情を揺らされ、俺は笑みを浮かべていた。 「分かりました、締め切りはいつですか?」 「雲をつかむ様な話だからな、そもそも記事にならないかもしれん。 取りあえず二週間後としておくが、形にならなくても報告はしてくれ」 他の仕事も有るが、終わる目処は付いている。差し当たっての問題は無いだろう。 俺は編集長に頭を下げ、自分のデスクに戻った。 タバコを咥え、火をつけようとすると隣のデスクの同僚から「禁煙です」と言われた。 そんなことは分かってるよ、癖だちくしょうめ。ちょっと前から喫煙所以外では吸えなく なった。世間での流行りらしい。 俺はタバコを箱に戻すと、混沌としたデスクの上を整理し始めた。 結局その日は、資料を読むのと、事件に遭った飼い主に取材のアポを取るので終わってし まった。 ――ゆっくり失踪事件―― 「八雲出版『月刊ゆっくり』のものですが」 2日後、静かな住宅街にある一軒の家の前で、俺はインターホンに向かっていた。 取材に応じてくれた飼い主の一人の家だ。かなり大きな庭付き一戸建てである。裕福な家 庭なのだろう。 ここの夫人はゆっくりれいむを一匹飼っていたが、一月ほど前に失踪したらしい。 機械越しに二、三言葉を交わした後で、飼い主である夫人の案内でリビングに通された。 金をかけている。家の中に入っての第一印象はそれだった。家具はどれも気品漂うものだ。 茶を淹れると言って席を離れようとした夫人に、飼っていたゆっくりの写真は無いか、と 尋ねた。 「それでしたらアルバムが有りますので、持って参ります」 「いえ、一枚だけで結構ですので、なるべく新しいものをお願いします」 あら残念、とばかりに夫人は肩を竦め、リビングから出て行った。 危ないところだった。電話での態度からすると、夫人はれいむを溺愛していたようだった。 アルバムを見ながらの解説付きゆっくり自慢なんてのは堪らない。 「これが、私の飼っていたれいむです」 戻ってきた夫人から差し出された写真には、しつけ度最低を表す銅色のバッジをリボンに 付けた、バスケットボール程のでっぷりと肥え太ったゆっくりれいむが写っていた。 下膨れの身体に、にやけた口元。垂れた目尻に、つり上がった目元。そして撮影者を見下 すような視線。 栄養状態が良かったからか肌のツヤ、髪質は申し分ないものの、間違いないだろう。素人 の金持ちがゆっくりを飼うと、甘やかしてしまって大概はこうなる。こいつはゲスれいむ ――『でいぶ』と呼ばれる存在だ。 出された紅茶を一口飲んでから、俺は本題を切り出した。 「それで、失踪していたゆっくりの話ですが……」 それからが大変だった。よくもここまで舌が回るものだと感心するほど、夫人は飼ってい たれいむについて語り始めた。 自分がどれほどゆっくりを可愛がっていたか。 どれほど可愛かったか。 失踪したことでどれほど自分が悲しんだか。 それらを延々と語った。 「食事は毎日最高級のゆっくりフードを三回、おやつには有名なパティシェ監修のケーキ を与えていましたわ。 それでもグルメなんでしょうね。より美味しい食べ物をねだって来て、その時の眼差し が愛らしくて……」 こちとらコンビニ弁当が主食だというのに、いい身分だ。挙句にそれにさえも満足できな いとか、甘やかすにもほどがある。 「れいむに食べさせるために、評判のお菓子屋を回るのが趣味になってしまいました。 でも可愛いれいむのためですもの、苦労も喜びのうちですわ」 飼い主は嬉々としてやっているし。親バカならぬ飼い主バカだ。仕事柄この手の人間には よく会うが、何度目でもうんざりする。 「部屋はすぐに庭に出れる日当たりの良い二十畳ほどの部屋を与えてあげましたし、庭の 外にも出たいと言うので塀にれいむ用の出入り口を作ってあげました。 とってもきれい好きで、少しでも部屋が汚れるとちゃんと掃除の必要があると伝えて来 ますのよ」 俺の部屋なんてボロアパートの6畳1R……やめよう、これ以上は自分が惨めになる。 それときれい好きなら自分で掃除ぐらいしろと。 「自尊心も強くて、おもちゃで遊んであげようとすると、それは自分のものだと主張して、 小さな身体で必死にじゃれついてきて、本当に可愛らしかったものです。 他にも……」 じゃれてるんじゃなくて、攻撃していたんだろう。れいむが飼い主と自分の立場を理解し ていたとも思えないし。あ、遠い目してる。これは止まらないな。 だが聞きたいのは失踪の瞬間の状況だ。これ以上このマシンガントークに付き合ってはい られない。夫人に目をやると、涙を流して悲しみに嘆いている。俺は気づかれないよう溜 め息をついて、気合を入れるように紅茶を飲み干した。既に冷めてしまっている。 それから何とか夫人を宥め、失踪当時の状況を尋ねたものの、大した情報は得られなかっ た。 その日れいむは昼食を食べるといつものように(午後の日課らしい)家の外に出かけてい ったが、夕食の時間になっても帰らない。飼いゆっくりの証であるバッジには発信機が付 いているため、それを頼りに探したが見つかったのはバッジだけだった。近所の公園に落 ちていたバッジは無理やり外された様子も無く、周囲には何の痕跡も無かった。 そこで夫人は公園に住んでいる野良のゆっくりに尋ねてみたという。 野良ゆっくりたちは、確かにバッジを付けたれいむが来ていたこと。 そのれいむは「自分をゆっくりさせろ」と繰り返し、非常にゆっくりできなかったこと。 現れてしばらくしてから、れいむは突然消えたこと。 以上のようなことを久しぶりの「あまあま」に舌鼓を打っていた野良たちは、食事の邪魔 をされたことに気分を害しながらも餡子まみれの口で答えたらしい。 その野良を命の危険があるところまで叩きながら聞いたというので、間違いは無いだろう。 最初は野良が食べている「あまあま」が、自分の飼いれいむだと思ったらしい(結局ただ の饅頭だったとか。ゆっくり好きの人間が与えたのだろう)。 愛で一辺倒の飼い主かと思ったが、飼いれいむを食われたと勘違いして怒り心頭だったと はいえ、中々ワイルドなことをするものだ。 自身もゆっくりを飼っているのに野良にはそんなことができるのか、とそれとなく言って みたが 「ウチのれいむと薄汚い野良ふぜいを一緒にしないで下さい!」 と烈火のごとく怒られてしまった。藪蛇だったか。 収穫はそれだけだった。結局何も分かっていないに等しい。 その後も何日かけて被害に有った飼い主のうち、アポの取れた人に話を聞いたが、有力な 情報は無かった。 共通点といえば、飼い主は揃って飼いゆっくりを甘やかしていたことぐらいだ。 そして必然的に、その全てが筋金入りのゲスゆっくりだった。ゆっくりに筋も金も無いが。 ある飼い主を訪問したときは、そんなゆっくりのホームビデオを延々と見せられて辟易し たものだ。 食事、部屋、飼い主の対応。ありとあらゆる環境に対して文句を言い、飼い主を罵倒する。 無能だ。この奴隷が。じじい。ばばあ。 貧弱な語彙であらん限りのい悪態をつく。 こんなゲスをよく可愛がれますね、とリニア長野ルートばりの限りなく迂遠な言い方で尋 ねてみたが 「いやあ、この素直じゃないところが可愛くてね。ツンデレっていうやつ? 内心では感謝しているのに口を開けば憎まれ口が出てくるのが良いんだよ」 と根本から理解していないようだった。ダメだこいつ、もうどうにもならない。 「仕方ない……野良をあたるか」 最後に尋ねた飼い主の家を出た後、タバコに火を点けながら俺は呟いた。 報告件数こそ多いものの、野良よりも飼いゆっくりへの調査を優先させてきた。 飼いゆっくりならば話を聞く相手が人間だから、まともな情報が期待できると踏んだのだ が、あてが外れた。 ゆっくりが直接の情報源となると信頼性に欠けるが、連中は失踪の瞬間を目の当たりにし ているのだ。 ペット自慢ばかりで肝心の目撃証言の出ない飼い主を相手にするよりは幾分マシだろう。 取材を始めた時とは正反対の思いを持って、一番近い現場に足を向けた。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「はいはいゆっくり」 俺の目の前には赤リボン饅頭と黒帽子大福。ゆっくりれいむとまりさの番だ。 お決まりの挨拶に、本日5本目となるタバコの煙を吐きながら適当に返した。 ここは団地の中にある公園。ちょっとした林があるため、野生動物が数多く棲む中々良い 場所だ。 目の前の饅頭が大量に住み着いてなければ、だが。 「おじさんはゆっくりできるひと? れいむといっしょにゆっくりしていってね!」 都会に住む野良には珍しく、中々純粋な個体のようだ。 俺は仕事柄相手にする機会が多いが、基本的にゆっくりは好きではない。 生意気だったり、媚びたりする態度が気に入らないし、仕事も当初は政治部を希望してい たのだ。 だがこのれいむを見ていると、少しは考えを改めてもいいかもな、と思う。 「にんげんさんはあまあまをもってきてね! そうしたらまりさがいっしょにゆっくりし てあげるよ!」 前言撤回。やはりゆっくりは嫌いだ。 「ちょっと聞きたいんだが、この辺りで最近突然いなくなったゆっくりっているか?」 ゆっくりでも取材の相手だ。一応の礼儀として、まずは平和的に尋ねる。周囲の目もある し、それで情報が得られれば、それに越したことは無い。 だが短い目で見れば、ゆっくりは暴力で従えた方が良い。どうせこの十数分、一度きりの 関係である。信頼させて情報を引き出すなど非効率的だ。 「じょうほうりょうとしてあまあまをもってきたらおしえてやらないこともないよ!」 人が優しく聞いているのに、いきなり見返りの要求か。やはり饅頭相手に礼など意味のな いものだ。この仕事を始めてからそう思うのは何度目か。それでも一度目は礼儀なんても のを考える俺は、律儀なのか馬鹿なのか。多分、後者だろう。 「はやくしてね! さっさとしてね……ゆぐぐ!?」 「質問に答えろ」 たわ言を抜かしたまりさを踏みつけ、俺は再度尋ねた。相手が無礼を望むならこちらも相 応のやり方をするまでだ。 足もとにれいむが体当たりを仕掛けてきたが、持ち上げて八つ当たり気味に地面に叩きつ けた。 ぴくぴくと痙攣しているし口から餡子が漏れているが、死にはしないだろう。あと30分 ぐらいは。 足もとのまりさがれいむ、れいむと騒がしくなったので踏む力を強めた。 「騒ぐな叫ぶな喚くな。れいむのようになりたくなかったら、聞かれた事に答えろ」 「わがりまじだぁぁぁ! なんでもごだえまずぅぅう!」 だから静かにしろって言ってるだろうが。二度とここを訪れる事は無いだろが、周囲の人 間に白い目で見られるのはやるせない。 一部興奮するような目で見ているもの、同調するような視線を送ってくる者もいるが。 違う。あくまで取材の手段だ。俺に虐待趣味は無い。 「この辺りで、最近突然いなくなったゆっくりはいるか? 事故で死んだとか何処かに行って帰って来なくなったとかじゃなく、他のゆっくりが見 ている前で消えたやつだ」 靴の裏でぐりぐりとまりさをえぐる様にして聞くと、恐怖に導かれてぽつぽつと喋り始め た。 「い、いなくなったのはありすだよ! とってもびじんで、とってもゆっくりしてたよ! みんながありすのことがだいすきで、ごはんやたからものをあげていたよ!」 美ゆっくりなのを利用して、他の野良に貢がせていたのか。中々ゲスなようだ。 「まりさもいつかありすとすっきりして、ゆっくりした赤ちゃんがほしかったよ! ありすはいつも「ゆっくりさせてね」っていっていたから、まりさとの赤ちゃんがいれ ばゆっくりできたはずだよ!」 お前れいむと番じゃなかったのか。浮気か、ありすが失踪したかられいむに乗り換えたの か。どちらにしろ碌な個体じゃないな。 「でもある日いきなりいなくなっちゃったんだよ!」 ありすのおうちにあったごはんやたからものは、みんなでわけたよ! あまあまおいし かったよ! のうこうなかすたーどだったよ!」 野良のくせに甘いものなんて蓄えていたのか。 それもどうせ貢がせたものだろう。 「これだけおしえてあげたんだから、まりさをはなしてね! さっさとはなしてね! お わびにあまあまちょうだいね!」 これ以上はこいつから聞ける情報は無いだろう。そう判断した俺は、目玉にタバコを押し 付けて火を消し、悲鳴をあげるまりさを踏み潰した。 しまったな。殺すつもりまではなかったのだが、ついイラっとしてやってしまった。 周囲には数匹のゆっくりが怯えた表情でこちらを見ている。自分達を害する存在を目の当 たりにして逃げるなり隠れるなりしないのは愚かとしか言いようが無い。 だが、更に情報が欲しい俺には好都合だ。とりあえず友好を示そうと、俺は微笑みながら ゆっくり達に向かって歩いていった。 その後近くに住む他のゆっくりを何匹か尋問してみたが、似たようなことしか聞けなかっ た。 ありすが消える瞬間を見たやつもいたが、まるで役に立たなかった。 目の前で突然消えた、ということを拙い語彙で言うだけだったのだ。 それにしても無礼な饅頭たちだった。人の笑顔を見て、引きつった表情で逃げ出すのだか ら。その結果、公園に餡子の山が出来てしまった。 残ったゆっくりは甘いものが食べられるのだから、感謝してほしいものだ。 そんな事を考えながら、俺は次の現場に向かった。 そうして10余りを回ったところで一旦職場に戻った俺は、頭を抱えていた。 進展は無い。幾つかあった目撃証言も、消えるようにいなくなったという意味のものばか りだ。ゆっくりの言語能力では詳しい説明など無理だったのだ。 俺はデスクで取材のメモを読み返しながら、何か発見はないか、と考えていた。 一匹目。飼い。ゲスれいむ。目撃者は野良。失踪当時、その野良は饅頭を食していた。 二匹目。飼い。れみりゃ。目撃者野良さくや。「じゅーしーなでぃなー」を野良れみりゃ と食していた。 三匹目。飼い。ゲスまりさ。目撃者無し。現場に残ったバッジに餡子が付着していた。 「……ん?」 ふと思い立って、更に読み進める。 四匹目。野良。ありす。貢がせ。目撃者野良れいむ。巣にカスタードの蓄え。 五匹目。野良。ゲスまりさ。目撃者無し。巣に甘味。 六匹目。野良。ゲスまりさ。目撃者野良まりさ。周辺のゲスの憧れ。 「何だこれは……どういうことだ」 七匹目。野良。ドスまりさ。群れを奴隷のように扱う。目撃者群れの多数。巣に大量の甘 味。 八匹目。野良。レイパーありす。目撃者被害者の野良まりさ。 九匹目…………。 …………。 異常だった。失踪したゆっくりのほぼ全てがゲス。それはまだいい。 問題なのは、その現場のほとんどには甘味が関係していること。飼いゆっくりならまだし も、目撃者となった野良にとって甘味は縁遠いものだ。 野良ゆっくりが甘味を手に入れる手段は少ない。最もありえるのは人間から貰うことだが、 事件のほぼ全ての場合で、関係したゆっくりが、しかも愛想の良くない都会の野良が甘味 を受け取っていたなどという偶然があるだろうか。 次に考えられるのは同族食いだが、これはゆっくりの間で禁忌とされている。可能性とし ては低い。 嫌われもののゆっくりが制裁されて食われたということは考えられるが、周囲のゆっくり に好まれていた貢がせありすやゲスの憧れ的存在だったまりさ、他のゆっくりに襲われて も撃退可能なドスなどの場合には可能性は薄くなる。 何か有るのかも知れない。俺は席を立った。 次の現場ではれいむが失踪していたが、やはりゲスで、失踪後発見した甘味を周囲の仲間 で食べたという。それはいなくなったれいむだったんじゃないか、と直接の目撃者のゆっ くりを含め、身体に聞いたが否定された。 その後さらに幾つかの現場で同じ事をしたが、結果は変わらなかった。 それに、最初に訪問した飼い主は、自分の目で、目撃した野良がゆっくりではない只の饅 頭を食していたことを確かめている。 やはり同族食いではないと考えるべきだろう。 俺はもう一度メモに目を通した。 れいむの場合は饅頭。おそらく中身は餡子だろう。 れみりゃは「じゅーしーなでぃなー」。おそらく調理された肉。 まりさは餡子。 ありすはカスタード。 現場に残っていた、目撃者である野良が食べていたものは、どれも『失踪したゆっくりの 中身』だ。ほぼ間違いなく、失踪ゆっくりは目撃ゆっくりに食われてしまったのだろう。 しかし目撃ゆっくりは同族を食べていない。いや、『食べたと思っていない』。彼らが食 べたのは『ただの饅頭』、もしくはその中身だ。 目撃ゆっくりは失踪ゆっくりを食べた。 しかし同族食いを認識していない。 目撃ゆっくりが食べたのは失踪ゆっくりの中身もしくは饅頭。 失踪ゆっくりは消えるようにいなくなった。 つまり―― 「ゆっくりがただの饅頭になった……?」 ゆっくりは飾りで互いを識別する。親子でもなければ、目の前で飾りが外されても、それ が誰だか分からなくなってしまう。 もっとも識別が出来ないだけで、「ゆっくりできないゆっくり」とは認識できるのだが。 もしも別のゆっくりが飾りのない、目も口も髪も無い「ただの饅頭」に突如変化してしま ったら、その瞬間を実際に見ていたとしても、ゆっくりが消えて饅頭が残ったように見え ないだろうか……? 「馬鹿馬鹿しい」 とは思いつつも、俺はその考えを捨てきれないでいた。普通ならありえない。だが相手は 普通の存在ではない。ゆっくりだ。もともとが動く不思議饅頭なのだから、普通の饅頭に なってしまうことだってあるかもしれない。 だが何故ゲスゆっくりばかりなのか? 俺は加工所の研究部へと電話をかけた。ゆっくりに関することなら、やはりあそこが一番 だ。 何と言ったらいいものか悩んだが、ストレートに 「ゲスゆっくりが普通の饅頭に変化する事例について知らないか」 と聞いてみた。これだけ聞いたら、正気を疑われるかもしれない。相手も戸惑っていたが、 思い当たる節があったのか、一人の研究者を紹介してくれた。 三日後、俺は都内のある大学の研究室を訪ねていた。部屋の入り口でノックをし、いらえ を聞いてからドアを開ける。 「いらっしゃい。待っていましたよ」 迎えてくれたのは、見たところウチの編集長よりも若い男だった。それで教授だというの だから大したものだ。互いに名刺を出して挨拶をする。 勧められた革張りの応接用ソファに腰かけ、ぐるりと部屋の中を見渡す。 普通の部屋だ。正直、拍子抜けした。 ゆっくりの研究者と言うから、その研究室たるや、ありとあらゆるゆっくりグッズで埋め 尽くされ、壁一面が水槽に改造されていて、各種のゆっくりが飼育されている。そんな光 景を想像していた。 それがどうだ。ドアノブに子ゆっくりのカバーなんて掛かっていないし、ゴミ箱はホーム センターで売っているプラスチック製のものだ。掛け時計は振り子にゆっくりが使われて いないし、観葉植物に刺してある栄養剤も普通。本棚は流石にゆっくり関係の本で埋め尽 くされているが、ゆっくりの入った水槽なんてものも無い。 出された茶菓子は饅頭だったが、まさかこれが……? 「ゆっくりではありませんよ」 はっとして顔を上げた。目の前にはまだ若い教授がにこにこと笑って座っている。 「ここに初めて来た人は、みんな同じことをする。部屋にあるものが、ゆっくり製じゃな いかって部屋を見渡すんです。だがそんなものは見当たらない。そこでお茶菓子には饅頭 を置いておく。するとお客さんはこう思うんです。ひょっとしたらこれがゆっくりじゃな いか、ってね」 どうやらこの教授の悪戯に、ものの見事に引っかかってしまったようだ。俺は苦笑するし かなかった。 「そりゃあ実験室では大量のゆっくりを保管していますがね、ここには赤ゆっくり一匹い ませんよ。自分の研究対象を無碍に扱うことはしませんし、虐待趣味は僕にはありません。 大体、誰よりもゆっくりの不可解さを知っている僕に言わせれば、あれを食べるなんて 蛮勇もいいところだ」 二人で一しきり笑いあったところで本題を切り出すと、教授は表情を引き締めて一つのビ デオを取り出し口を開いた。 「ゆっくりが単なる饅頭に変化する事例についての話、ということでしたね。一般の雑誌 の方からそう言われたので、些か驚きました。口で説明する前に、実際に実験の様子を見 てもらった方が早いでしょう。これは先日学会で発表したばかりのもので、研究誌以外の 記者さんに見せるのは初めてなんですよ」 そう言って再生されたビデオは一匹のまりさを飼育した実験経過を収めたものだったが、 その内容は凄まじいの一言に尽きた。 与える食事は最高級、部屋は広く快適で、飼育員はまりさの望みは何でも聞き、奴隷とし てまりさに扱われ、そして自身もそう振舞っていた。 数日前にれみりゃを甘やかして育てていた飼い主を訪れた際に、れみりゃのホームビデオ を見せられたのを思い出した。その飼い主はお嬢様に仕える下僕と言った態度でれみりゃ を飼っていたが、このビデオのまりさに対する飼育員の態度はそれを遥かに超えている。 ブラウン管を叩き割りたい衝動を抑えきれなくなった頃、『それ』は起こった。その時画 面の中ではまりさと飼育員が会話をしていた。 「どれいはさっさとごはんをもってくるんだぜ! まりさをさっさとゆっくりさせるんだ ぜ!」 「分かりました、まりさ様。まりさ様がゆっくりすると私もゆっくり出来ますので」 この「まりさがゆっくりすると自分もゆっくり出来る」というのが、ビデオの中で飼育員 が事あるごとに言っていた言葉だった。それに対してまりさは「かんだいなたいど」で笑 いながら許可してやる、というのが毎度のパターンだった。 「どれいのくせにゆっくりするなんてなまいきだぜ!」 だが今回は違った。飼育員はまりさをゆっくりさせようとしているにも関わらず、まりさ はそれに異を唱えたのだ。 「しかしまりさ様、まりさ様をゆっくりさせるのが私の役目です」 「うるさいんだぜ! まりさがゆっくりするのはとうぜんなんだぜ! なんでそれでどれいをゆっくりさせてやらなきゃいけないんだぜ! どれいのゆっくりなんかどうでもいいんだぜ! まりささえゆっくりできればいいんだぜ! わかったらどれいはゆっくりせずに、まりさをゆっくりさせるんだぜ! このよでただひとりゆっくりできる、えらいまりささまをゆっくりさせ…………」 まりさが意味のある言葉を喋れたのはそこまでだった。いや、言葉に限らず、何か意図の ある行動を一切取れなくなった。電源の落ちたロボットのように、全ての活動が止まって しまったのだ。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ」 数秒後、突如としてまりさが痙攣し始めた。目の光は消え、口は半開きになり、「ゆ」の一文字だけを壊れたテープレコーダーのように繰り返している。 精神崩壊でも起こしたのか、と俺は思ったが、事態はそんな単純なものではなかった。 まりさの壊れた声が続く中、まりさの帽子が無くなってしまった。輪郭がぼやけたかと思 ったら、空気に溶けるようにして消えてしまったのだ。 それだけでも自分の目を疑う光景だったが、まりさの変化はまだ終わらない。 帽子に続くように髪の毛が消え、目玉と口が周囲の皮に包まれるように消えた。 「開始から12日と5時間37分。実験成功」 飼育員の声がしたかと思うと、カメラがまりさにズームアップする。飼育員はまりさを回 転させて全方向を見せ、最後にまりさをナイフで切り、切断面をカメラに向けた。 そこには皮に包まれた黒い餡子だけが有った。もうまりさには帽子は無い。髪の毛も目も 口も無い。小麦粉の皮で餡子を包んだだけの存在、ただの饅頭になった。 「いかがでしたか?」 教授がビデオを止め、穏やかな声で尋ねてくる。俺は先ほどまで見ていたものに呆然とし、 どういうことか、と返すので精一杯だった。自分の喉から出たのを疑問に感じるほどに震 えた声だった。 俺とは対照的に平静な教授は、少し考えてから更に問いを重ねた。 「あなたは、ゆっくりは何故ゆっくりなのだと思いますか?」 質問の意図が分からない。俺は口を閉ざしているしかなかった。何しろビデオの内容だけ で、思考回路は糸口が見えないほど絡まってしまった。復旧には時間がかかる。 「聞き方が悪かったですね。ゆっくりをゆっくりたらしめている本質は何だと思います か? 刃物ならよく切れること。馬なら早く長い距離を走れること。人間なら二本の足で 歩くことと発達した知能でしょう。ではゆっくりでは?」 教授の落ち着いた声を聞いているうちに、ようやく少し冷静さを取り戻してきた。俺は考 え、口を開いた。 「……飾りを着けていること?」 「それは特徴的なことですね。ですがゆうか種のように飾りを持たない種もいますし、人 間も飾りを着けることはあります」 「饅頭であること」 「確かに大部分のゆっくりは饅頭ですが、ただの饅頭を見て、これはゆっくりだ、とは思 いません。本質とは言えないでしょう」 「人の言葉を喋ること」 「中々良いところを突いてきましたね。ですがそれは人間が喋ることが前提ですから、ゆ っくり自身には関係の無いことです」 そうして思いつくままに答えてみたが、どれも正解ではないようだった。俺は諦めて、投 げやり気味に言った。 「…………分かりませんね、降参です。そもそもゆっくりなんていう人間と饅頭を混ぜた ようなものに、本質なんてものあるのですか? 何を言っても人間か饅頭、どちらかの本 質になりそうな気がしますが。ゆっくりはゆっくりっていう生き物だからゆっくりなんで しょう」 教授は俺の言葉を聞いて、にこりと笑った。 「正解です」 「はい?」 「今あなたが言った通りですよ。『ゆっくりはゆっくりという生き物だからゆっくり』。 ナゾナゾのようですが、これに尽きます。その名にあるように、ゆっくりと言う言葉がゆ っくりの全てです。正確には『他者をゆっくりさせる』というのがゆっくりの本質と言え るでしょう」 俺はなるほど、と頷いた。ゆっくりは他者に出会うと、挨拶として「ゆっくりしていって ね」と言う。ゆっくりさせてね、ではなく、ゆっくりしてね、でもない。他者をもてなす ための言葉である「ゆっくりしていってね」。それはどんな種のゆっくりでも、赤ゆっく りでもゲスでも変わらない。 「れみりゃ種は相手が人間でも、自分に仕えることを要求します。それは本人の言うとこ ろの『えれがんとなおぜうさま』に仕えることが、相手にとってゆっくりできることだと 考えているからです。ゲスもそうです。自分をゆっくりさせることで相手がゆっくりでき ると信じているのです」 全ては相手をゆっくりさせるため。それこそがゆっくりの存在意義。かつて『ゆっくりは 棚に仕舞われたまま忘れられた饅頭が変化したものだ』と言われたことがあった。人をも てなすために作られた饅頭が存在を忘れられ、その無念の思いからゆっくりになるのだと いう。何を馬鹿な、とその時は一笑に付したが、今ではそんな話を信じてもいい気持ちに なる。 「ゆっくりが初めてこの世に現れた時、現在のように脆弱でもありませんでした。感情の 起伏は乏しく、表情の変化も皆無でした。 しかし人はそのようなゆっくりを望まなかった。異物であるゆっくりを排除する理由を 正当化するために、または保護欲を満たすために脆弱なゆっくりを求めた。嗜虐心をくす ぐるような、あるいは与えた愛情に反応するような変化のある感情と表情を求めた。その 結果、ゆっくりは人の望む存在へと進化しました。全ては人をゆっくりさせるために。 ゆっくりは自身の性質がどんなに変化しても、他者のゆっくりを望むものなのです。 しかしビデオのまりさは違います。他者ではなく、自分がゆっくりすることだけを考え てしまった。そしてそれを当然のことと考えてしまった。そうなってしまったゆっくりは、 最早ゆっくりであることの本質を失ってしまった。だからゆっくりではなくなってしまっ たのです」 そう述べた教授は、どこか寂しい目をしていた。 単なる実験材料に向ける、無機質な目ではない。この人はこの人なりに、ゆっくりに思い 入れがあるのだろう。 記事が出来たら雑誌を一冊届けると約束をして、研究室を辞した。 帰りがけに教授は実験論文のコピーを渡してくれたが、ひどく難解な内容だった。日本語 で書かれているのが救いだが、読むのに四苦八苦だった。取材やデスクで記事を書いてい た時間よりも、これを読むのに費やしたほうが長かった。おかげで出来上がりは締め切り ギリギリになってしまった。 そんな苦労に関わらず、出来た記事はオカルト色の強いものになってしまった。論文は学 術的な格調高い文章だったが、大衆読者を意識して書くと、どうしてもそうなってしまう のだ。 もっとも、ゆっくりの存在自体がオカルトとも言えるので、問題は無かった。「そんなも んだ」で全てがすむ。それがゆっくりというものだ。深く考えないほうが、あの不可思議 な存在を楽しめる。 都内にある、とある出版社。俺は今日もここでゆっくりについての記事を書く。配属され た当初は早く別の部門に行きたいと考えていたが、最近では好奇心を刺激してくれる良い 職場だと思えるようになった。 タバコが吸えないのが難点だが。 相も変わらず散らかったデスクで、いつもと変わらず原稿に向かう。今書いている記事は 虐待派と愛で派の討論企画についてだが、見事なまでに平行線の論議で、まとめるのが大 変そうだ。どちらも自分の主張こそ正しいと言っているが、きっとゆっくりはどちらの扱 いをされても満足なのだろう。 ゆっくりは他者をゆっくりさせることが望み。虐待派はゆっくりを虐待することでゆっく りできるし、愛で派は愛でることでゆっくりできる。究極的には根本は同じ。どちらも自 分がゆっくりすることを考えている。 人間なのだからそれで良いと俺は思う。自分の人生を、自分のために生きられないなんて 真っ平だ。比べて、そう生きた結果饅頭になるだなんて、ゆっくりはなんて不自由な生き 物なのだろう。 そんなことを考えてると、向かいのデスクの同僚が壁に貼られた「禁煙」の紙を指で叩い て示してきた。どうやら無意識のうちにタバコを咥えていたらしい。 俺は箱にタバコを戻すと、軽く溜め息をついて仕事を再開した。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4505.html
一応幻想郷設定です 虐待というよりは考察に近いです 無数の漫画パロ表現が出てきますので注意 設定スレや他作品等からゆっくりの独自解釈を行っています ある晴れた休みの日、縁側に座っていると庭の茂みから何かが飛び出してきた。 「ゆっへっへっ!こんなおうちはにんげんにはもったいないんだぜ!まりささまがもらってやるんだぜ!」 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスにするよ!ばかなにんげんはさっさとでていってね!」 「あまあまをもってくるんだぜ!そうすればまりささまのどれいにしてやるんだぜ!」 おいおい、良かったのかそんな事言っちまって。 言っとくがオレは最初からクライマックスだぜ。 1分も経たないその間に全て片付いていた。 潰れたトマトのように餡子を飛散させてぺちゃんこになったまりさ、 肉まんを割るみたいに縦からまっぷたつになって痙攣しているれいむ。 木に強烈に叩きつけられて体を大きくへこませて餡子を吐いているもう一匹のまりさ。 「ゆ”…ゆ”…」 まだ息がある事を確認すると、男はまりさの前に静かに歩んでいった。 「だぢ、だじゅけてぐだざい…ごべんなざい…」 すかさず、男はまりさの底部を踏み抜いた。 「ゆぎゃああああ!!!!!!」 「お前が死ぬなら…あと一時間後かそこらがいい…そうなる風にお前の底部をフッ飛ばしておいた」 まりさの底部から流動的な餡子がじっとりと少しずつ漏れ出していく。 この分なら出餡多量でいずれ死ぬだろう。 「まりさ、お前が死ぬ前に聞きたい事がいくらかある。答えてもらおうか」 「まりさの…まりさのあんこが…どぼぢて、どぼぢでこんなことするの…?」 「もう一本もらっとくぞ」 男は直後にまりさの潰れていない方の底部を再び踏み抜く。 「あぐあぎゃああぁーーーー!!!!」 「いいか…喋っていいのはオレが質問した事だけだ!一言につき一発踏み潰す! 聞き返しても踏むッ!クシャミしても踏むッ!黙ってても踏むッ! 『いいからあまあまもってきてね!』とか言ったらまた踏み潰すッ! いいな!注意深く神経使って喋れよ…!」 「ばがりまぢだぁ!!ごだえまず!!!」 さらに踏み抜いた事で餡子の流出が加速している。 話を聞き終えるまで間に合うか男はふと不安になった。 こいつらは幻想郷に突然現れた「ゆっくり」という生物である。 体の構成物質が全てお菓子の饅頭と同じもので構成されているというトンデモ生物である。 そして体は人間の首に相当する頭部のみ。おまけにその顔は幻想郷で有名な人物を模している。 ここにいる魔法の森の魔法使い、そして先程の博麗の巫女を模したものが代表的なもの。 最もスタンダードで数の多い種である。 そして人間の言葉を使う事ができ、突然現れて「ゆっくりしていってね!」と呼びかける。 ただそれだけの珍妙で無害な存在である。 …だったのはもはや昔の話。 時々知能の低い存在が人里に現れては農作物や人間の住居、食料を狙ってやってきては駆除される。 これらの連中は軒並み性格が悪く、話す言葉も聞くに堪えない暴言ばかりである。 こういった存在ばかりが姿を現す故に、ゆっくりは人々にとって迷惑な存在と化していった。 それ故に人々はゆっくりをただの害獣としか思わなくなっていった。 人前に現れたゆっくりはただ潰されるのみ。 だが、この男は普通の人間とは少し違っていた。 「さてまりさ、質問だ。なぜここに来ようと思った?」 「あのまりさとれいむににんげんさんのおうちをもらおうってざぞわれたからです!!!!」 「イヤそれはいい。オレが聞きたいのは、なぜ人間に勝てるかと思った事だよ」 「ゆ”っ!?!???」 「昔から気になってたんだ。なぜゆっくりは勝ち目の無い喧嘩を売る? そもそもなぜ人間の事を見下しているんだ?」 男はどうでもいい疑問を抱いてはそれを解決し、納得するのを好んだ。 現代語で言えばトリビアを求める、と表現すればわかりやすいかもしれない。 もちろん普通の人間はゆっくりなんてどうでもいい存在の事は大して気にしない。 しかし男はこういった下らない事ばかりを気にする性質だった。 刑事コロンボが好きで細かい事が気になると夜も眠れない、というタイプの人間なのだろう。 「そう言えばお前、オレを奴隷にしてやる、とか言ってたな。 聞いた話だと皆お前達みたいなゆっくりは人間を恐れないどころか、格下の存在に見ているそうだ。 お前達には人間がどういうものに伝えられてるんだ?」 現在のゆっくりの特徴として、人間に対し警戒心が薄いという事が挙げられる。 どの動物に対しても警戒心が皆無のゆっくりも存在するが、人間には一際その傾向が強い。 人間を見れば「ゆっくりしていってね!!!」と隠れもせずに挨拶したり 「おにいさんはゆっくりできるひと?」と問いかけたり、 「あまあまちょうだいね!!」などと食べ物を欲しがる。 目の前のまりさの様に性格が悪い個体、一般にゲスと言われる存在はそれどころではない。 まず一言目に食べ物の要求など、何らかの自分本位の命令である。 自分の命令を人間が聞くと信じて疑わず、 ましてや自分が怒った人間に攻撃されるという発想は微塵も無いのだろう。 当然、怒りを買った人間に潰されるのが大方の結果であるが。 「ゆ”…にんげんざんは…ゆっくりにあまあまをぐれで…やざじくしてくれるってぎいだよ…」 まりさはビクビクガタガタと震えながらしどろもどろで答える。 「イヤ、違うだろ?お前は言葉を選んで答えているな。 重要なのは本音の内容だよ。さあ遠慮はいらん、思う存分ぶちまけてみろ」 「…ゆっ!にんげんさんはめいれいすればなんでもきくってきいたよ! いうこときくのはゆっくりよりばかでよわいからだって…! だからあまあまもってくるのがとうぜんなのにどうしてこんなことするの…!?」 「何だと、この野郎」 「ゆ”ゆ”っっっ!!???!?」 サッカーボールを横に弾くように、軽く蹴り飛ばして木の幹に衝突させる。 まりさはまた餡子を吐き、痙攣している。 「しまったな…思う存分ぶちまけろと言ったのは自分なのに手が出てしまった。 しかしあんまりお前が馬鹿すぎるからって事でさ…こらえてくれ」 「ゆ…ゆ…ゆぶ…」 息も絶え絶えのまりさを眺めながら男は考えを巡らす。 なるほど、ゆっくりにとって人間は明らかに格下の存在として認識されているらしい。 その根拠の理由になっているのは恐らく言う事を聞く、という事なのだろう。 出会った野生の動物に気紛れで食べ物を与えてしまう人間は少なくはない。 ましてや人語を話す珍妙な生物だ。面白がって与えてしまうのも無理はないだろう。 それがゆっくりに対して良くないのだ。 例えば犬の場合だ。犬を飼うにあたって、何よりも先に注意しなくてはいけない事がある。 しつけ云々はあるが、そのしつけを行う前提の問題である。 「人間は犬より偉い存在なのだ」と認識させる事である。 この前提がまずできていないと、犬は飼い主の言う事を聞かない。 それどころか逆に犬が人間を部下やペットのように認識してしまう事すらありうる。 外の世界ではこれを怠った結果、しつけのできない権勢症候群という状態になってしまうそうだ。 犬は彼ら自身の判断基準でヒエラルキーを決定付けている。 誤ってこれらの判断基準で自分が格下と判断される行動を取ってしまうと、犬は上下関係を誤る。 代表的なものを言えば、食事を先に食べる権利である。 イヌ科の動物は集団で狩りを行うが、その獲物を最初に食べる権利はリーダーが持っている。 下位の個体はおこぼれや食べる部分の少ない部位で我慢するしかない。 こういった習性を持っているため、エサをお預けもなしに自由に食べさせたり、 人間達の食事より先にエサを与えてしまうと自分の方が偉いと勘違いをしてしまうのである。 こういった,ゆっくりにとって格下に認識されてしまう行為がエサやりなのだろう。 さらに言えば自然界ではエサは強いものがありつける存在だ。 小型の肉食獣が獲物を手に入れても、ライオン等のさらに大型の肉食獣に奪われてしまう事も珍しくない。 ゆっくり達もまた同族からエサを奪う、というのはごく普通に行われている光景である。 これらの事からゆっくりは自分が強いからエサを渡した、可愛いから食べ物をくれた、と判断するのだろう。 そうなるとゆっくりの頭の中では相手は自分よりも弱い、外見的等に劣っている存在だと認識される。 その認識が重なって戦いもしていないのに「人間は弱い存在」「可愛い自分にエサを貢ぐ存在」 …などと命知らずの常識を作り上げるのだろう。 最も全てのゆっくりがこういった思想をする訳ではない。 知能が高い存在は人間との実力差を認識した上で食べ物をくれた、と理解できるし 性格のいい個体はその人間の行為に感謝し、相手が劣っているなどと傲慢な発想をしない。 しかし知能の平均値自体が低い野良ゆっくりにはそういった事を期待できない。 弱肉強食の世界に生きる個体にとっては自分が強い、相手が弱い、というのが基本的な基準なのである。 よく彼女らが人間を発見すると言う事である、 「かわいいれいむにごはんをちょうだいね!」 「まりささまにそのごはんをわたすんだぜ!!」 と言うのは彼女らなりの命令・脅迫のつもりである事が多いのである。 人間には全くそう映らないので気紛れでエサを与えてしまう者も存在する。 そうしてしまう事がまずいのである。 ゆっくりは「自分に恐れをなしてエサを渡した」と解釈し、人間は弱いという誤認を深めていく。 それが会話を通して他のゆっくりに伝播し、人間を舐めきったゆっくり達が増えていくのである。 「で、本当の強さがわからなかった馬鹿がこいつって訳か」 男は痙攣するまりさを見てつぶやく。 「ゆ”…ゆ”るぢで…だすげて…くだざい…」 ゆっくりにも当然、話を鵜呑みにしたりはしない位の知恵はある。皆無なものもいるが。 しかしゆっくりは自分にとって有益なものを最優先する。 彼女らの言葉で言えば「ゆっくりできること」である。 故に、人間が強い、彼らの住居や食料を狙うと危険だという発想は 「ゆっくりできないもの」としてなかなか認識しようとしないのである。 その結果、人間は弱く下等で利用できる存在、というのがゲスの中で定着し、 ゲスでないゆっくりも人間はエサをくれたり遊んでくれるゆっくりできる存在、として認識されるのである。 現実逃避もいい所の、生存本能の存在を疑いかねない習性である。 「知りたい事はこれで十分。止めを刺してやる」 男はまりさに足を乗せ、ゆっくりと体重をかけていく。 「ゆぎゃああ”ぁあ”あ”あーーーーーー!!!! どぼぢで!?にんげんざんはゆ”っぐりできるっでぎいたのにい”い”ぃぃいぃーーーー!!! どれ”い”にぢでごぎづかうはずなのに”いぃーーー!!!」 「自分を知れ…そんなオイシイ話があると思うのか…? お前の様なゲスゆっくりに」 体が圧迫され、外傷からあふれ出すように餡子がどんどんと漏れ出していく。 激しい苦痛と共にまりさの頭にあったのは疑問や憤慨から、次第に後悔へと変わっていった。 話が違う、人間が馬鹿で弱いなんて全くの嘘っぱちじゃあないか。 何もできずにこのまま殺される。何で、こんな奴に勝てるなんて思ってしまったんだろう? 「ゆ”っぐりじたけっかが…ごれ”…ゆべし!!」 ぶぢん、と黒い餡子が飛び散った。 命を弄んでいるとは男は思えなかった。 こんなゆっくりを生かしておいても何もいい事はないだろう。 ただそれだけの気持ちであった。 男は何か心に満足感を感じていた。 理解できない事が理解できた、そんな爽快感である。 別に虐待には大して興味はないが、 ゆっくりについてあれこれ聞いてから殺すのもいいかもしれないな… 今回はゲスだったが、他の奴だったらどうなのだろう? 男は次から次へと疑問と好奇心がムンムンわきあがってくるのを感じた。 「ん?」 遠くから人間の声の様なものが聞こえてくる。 「ゆゆっ!にんげんさんのおうちがみえてきたよ!」 「あそこにたくさんのたべものをひとりじめしてるんだね!!」 「それはゆっくりできないね!!とりかえしにいくよ!!」 複数のゆっくり達がこの家を目指してきているようだった。 「おあつらえむきじゃあないか!」 男はつぶやくと、唇の端を緩めた。 ゆっくりが人間を舐めきった態度を取る理由を考察しつつ ヘイトを充たすために思わず書き上げてしまった。 独自解釈につき異論は大いに認める。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/740.html
俺とゆっくりの話 2の続きです 善良なゆっくりがいます 注意 「ふふふ…れいむ、いままりさがすっきりさせてあげるからね…」 「Zzz…Zzz…」 ゆっくりとれいむに忍び寄るまりさ しかしもう少しというところで後ろの戸が開いた 「ゆゆっ!?」 「なんだおまえ、まだ起きてたのか?」 あのおじさんだった、なんで寝てないんだよこの腐れほもさぴえんすが 「すこしねむれなかっただけだよ!!おじさんはまりさとれいむをあんみんさせてね!!」 「眠れないんだろ?俺も仕事がひと段落したんだが眠れなかったんだ、少し話でもしようぜ」 「…いいよ、でもたのしくなかったらすぐねるからね」 その人間は何個か飲み物とお菓子のようなものを持って来てまりさに進めた まりさはもしかしたら毒が入っているかも…と考えたが自分はこの家で一番偉いれいむと夫婦の関係だ、その自分を殺すことはないだろう… その時のお話の殆どはこの人間の仕事の愚痴とかだった 正直そんな話をまりさが聞いても面白くない、だが出されたお菓子は美味しかったので黙って聞いた 「そんなにいやならしごとなんてやめればいいんだよ…」 すこし眠くなってきたまりさが言う 「そうもいかん、仕事をしないと俺もれいむもお前もゆっくりできなくなるからな」 ゆっくりするためにゆっくりできない「仕事」をする?まりさにはますます理解できない だがさいごに人間の言った言葉だけは理解できた気がした 「お前は俺が嫌いだと思う、俺もお前は嫌いだ、でも俺はお前に死んでほしくない、だから早く人間のルールを覚えてほしい、俺のためでもお前のためでもない、れいむのためにな」 結局人間より先に寝てしまいれいむとすっきりできなかった 次の日、人間は仕事に行った 今がれいむとすっきりするチャンスだ だがれいむにさそわれて散歩に出かけている今、すっきりすることはできない、さすがに草すらない路上ですっきりするのはためらわれた 「れいむぅ!たすけて!!たすけてね!!」 その時一匹のちぇんが飛び出してきた、しかも帽子がない まりさはとっさにれいむをかばい、ちぇんを攻撃した 「だめだよ!!かざりのないゆっくりできないちぇんはゆっくりどっかいっt「だめだよ!!まりさ!!」」 なぜだれいむは止める?自分は飾りのないゆっくりできない奴を追い出そうとしただけなのに? 「どうしたのちぇん!!これじゃあどのちぇんかわからないよ!!」 「わからないちぇんはゆっくりでていっt…「うるさいよ!!!!」」 しかも怒鳴られた、こんなに怒鳴られたのは初めてだ 「やせいのちぇんのかぞくにぼうしをとられたんだよ、よくわからないよ…」 このちぇんはシルバーバッチを持つちぇんだ、飾りをなくしたら人間かゴールドバッチを持つゆっくりの所に行けばいいことは知っている 「ごめんねちぇん、ちょっとおしりみせてね!!」 ちぇんのおしりにはバーコードのような模様が焼き付けられていた、れいむはこの模様が本物だと理解した 「じゃあちぇんはゆっくりついてきてね!!いっしょにかこうじょにいこうね!!」 「かかかかこうじょーはだめだよ!!ゆっくりできないよぉ!!」 「だいじょーぶだよ!ゆっくりできないのはわるいゆっくりだけだよ!!」 まりさはいきたくなかったがれいむはみょんを連れて加工場まで向かってしまった 仕方なくまりさもついて行くことになった 加工場まで来たれいむはゆっくり専用入り口で係員を大声で呼ぶ、係員は一瞬怪訝そうな顔をしたがれいむがゴールドバッチをつけているのを見るとすぐに笑顔になった 「どうしたんだい?」 「このちぇんが帽子を取られちゃったみたいなの!!」 「おにいさん!ちぇんのぼうしをつくってほしいよ!わかってねー!」 「はいはい、わかったよ、10分程まっててね!」 そう言って係員はちぇんを抱えて奥の部屋へと消えていった このときまりさは理解した、れいむは帽子のないゆっくりを助けてあげると言って加工所に引き渡したのだ 加工所に子供を売る(もしくは自らを売る)ことでお菓子をもらって飢えをしのいだという話もある、さすがれいむだ、自分の妻になるだけあって頭もいい 「さすがだね!れいむ!!ちぇんをうっておかしにするなんてれいむはあたまがいいね!!」 「なにいってるの!?まりさ!!だいじななかまをうったりはしないよ!!」 「ゆ?」 しばらくたってさっきのちぇんが帽子をつけて出てきた 「ゆっくびっくりぃ!??!?!?!???!ぱぴぷぺぽろろっか!?!?!?!?」 このとき、まりさの餡子脳は完全に破壊された 加工場がゆっくりを助けた、れいむは帽子のないゆっくりを攻撃しようとしなかった 何もかも理解できない ちぇんがれいむと加工所の職員にお礼を言っている、そんなのはどうでもいい ここは加工所だ、それは間違いない、なのになぜあの人間はれいむに優しく微笑み、ちぇんの帽子を作ったのか? ありえない アリエナイ ソウカ、ヤットワカッタ、アイツラハユックリジャナインダ… 「ゆゆゆゆゆうふふふのうかりんにかっちゃったぁ!」 まりさが体内のぺにぺにを戦闘準備させ、れいむにおそいかかる 「やめてね!!まりさ!!どうしたの!?」 だがまりさは止まらない、あわててれいむは加工所の職員の後ろに隠れた 「うふふふふふぎゃあ!!」 職員の足にぺにぺにを突き刺さん勢いで突撃するまりさ まりさのぺにぺには真っ二つになった 「ふんじゃらhf8うえghvsばvsじゃヴぁjhvばhscぺにぺにますたーすぱーくっC言語!!!」 そんな言葉を残し、ぺにぺにから精餡子を噴き出しながらまりさは絶命した 俺が仕事から帰ってすぐ、加工所の職員がれいむを連れてやってきた れいむはふさぎこんで一言もしゃべらなかったが加工所の職員から大体話は聞いた、そしてその理由も 最近分かったことでまだ市販の飼育書にもほとんど乗っていないことだが野生のゆっくり(特に一番生意気な亜成体)がゴールドメダルをもつ飼いゆっくりと一緒にいると壊れることがあるらしい 詳しい話だと野生ゆっくりの常識では考えられない行動を飼いゆっくりがとり続けるため餡子が一時的に麻痺し、気絶してしまう そのご何らかの結論を出すことができれば復活するが多くは精神的に壊れてしまうらしい しかし壊れてもれいむとすっきりしようとするとは…やつは真剣にれいむを愛していたんだろうな… そのご、れいむは三日間、何も食べようとはしなかった。まりさは自分が殺したという罪悪感が募っていたのだろう 日に日に痩せて行くれいむが心配になった俺は今日も食べようとしないなら無理やりにでも口に入れてやろうとした だがその日れいむに助けてもらったというちぇんがお礼を言いにやってきた、帽子に金色のバッチを付けて ちぇんに励まされ、何とかれいむは持ち直すことができた いまではれいむとちぇんは夫婦として仲良く暮らしている、とはいってもお互い飼い主がいるから毎日一緒に遊んだりお泊りしたりする程度だが… ちなみに野生ゆっくりまりさの間に「かこうじょにいくとむりやりぺにぺにからすっきりさせられてころされてしまう」といううわさが流れ加工所をより一層怖がるようになったのはただの余談である あとがき なんか最後、いろいろ狂ってる内容になった やっぱ自分は戦争もの書いている方がいいのだろうか? 8月19日 2209 セイン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/108.html
前編 四日目 女心と秋の空。 井戸の上空にひたすら広がる青い空を仰ぎ見て、れいむはそんな常套句を思いだしていた。 昨日までのしとしと降りは霧散消散。 いまはからっとした陽光に包まれた穏やかな秋晴れ。 昨日から寝ていないゆっくり二匹にとって、その朗らかな心地よさは毒のようなもの。重たい目蓋をこじあけて、死を意味する居眠りを何とか堪えた。 その日差しが直接入り込むにはまだ時間が早かったが、入り口付近を淡く白い光が包み込んで、井戸の中はほの暗い。 井戸の腐ったような胸に詰まる臭いも今はそれほど強くはなかった。 乾燥した空気が井戸の底までおりてきて、ゆっくり二匹の湿りきった体に心地よい。 陰干しされたゆっくり二匹。 体から水気がゆっくりと蒸発して、元のもちもちとした肌が戻ってきた。 同時に、昨日から続いていた落下もようやく止まって一安心。 大分底に近づいてはいたが、井戸の上から見下ろせばまだ十分視界に入る位置だった。 「すっきりー!」 晴れやかに宣言するれいむ。 まりさはうつむき加減で言葉は発しないが、悪くない気分らしい。吐く息がゆっくりと穏やかだった。 「かゆいのは、大丈夫?」 「……うん」 れいむの言葉に、弱弱しい声をだして頷くまりさ。 と、同時にそれと同じ角度で頷いていたれいむ。 あれ、どうしたんだろう? 意図しない自分の動きにハテナマークを浮かべるれいむ。きょろきょろと視線を走らせて、ようやく気がついた。 ゆっくり二匹のふっくらしたほっぺた。 ぴったり強くこすり合わせていたその小指ほどの先端が、今見るとまりさの頬とぴったり皮膚が繋がっていた。その皮膚を通じて、まりさの動きに引きづられていたゆっくりれいむ。 「ゆっくりー!?」 驚愕のれいむ。 雨でぐずぐずになった皮をこすりあわせているうちに結合していたらしい。 皮自体は乾燥して弾力を取り戻したが、お互いのほっぺは強固にくっついたまま。 二匹は思わず視線を合わせた。 「くっつくよ!」 れいむが叫ぶと、その頬の動きのままにびろんとのびる二人の皮。 奇怪な有様だったが、ゆっくりれいむは妙に嬉しそう。 「これじゃあ、ずっといっしょだね!」 れいむの言葉にこめられた親愛に、まりさは頬を吊り上げてかすかな笑顔。 わずかな仕草なのに、心の底からの嬉しさがほっぺのつながりと通じてれいむに伝わってくる。 相変わらず状況は絶望的で、体力は落ちていくばかり。おなかもぺこぺこ。 でも、目の前のゆっくりと再び親友に戻れた。それだけで単純なゆっくり二匹の心は晴れやかだった。 「……おなかすいたね」 続くまりさの呟きも、声色自体は疲れ果ててはいたが、口調自体はいつものもの。 れいむもお腹はぺこぺこだ。壁にはりついたムカデやナメクジをぺろぺろ舐めとっても何の足しにもならないし、美味しくない。 でも、自分はまだいい。消耗しきったまりさの方が心配だった。落下してから何も口にしてないのではいだろうか。 「まりさ、右のほっぺに蟻さんがいるよ!」 その言葉に、ぺろんと伸びるまりさの舌。 まりさの顎の方へ向けて行進していた蟻たちが一瞬で姿を消した。 だが、すぐに顎の傷のほうから次々と蟻たちが出現しては、引き続きまりさの舌に飲み込まれていく。 「もっと沢山たべたい……」 蟻んこでは腹の足しにならないのだろう。まりさの虚ろな表情に元気は戻らなかった。 我慢している顎の傷の痒みは相当のものらしく、言葉が尽きるなり、ごしごしと患部を壁にこすりつけるまりさ。 顎の付近から、ぶわっと羽虫が舞い上がった 寄るところもなく宙を漂う羽虫。だが、まりさの蠢動が治まるなり顎の傷のあたりへ戻っていった。 「ゆううう!」 途端に、またびくびくとむずかりだすまりさ。その顎には我が物顔に再び行進をはじめる蟻の行列。一様に極小の餡の粒を背負っている。 どうやら、わずかに開いた傷口から漂う甘い香りが、井戸の住民たちにかぎつかれたようだ。恐らくは、傷口が虫たちにほじくりだされているのだろう。 そんな様子は自分からでも確認できるらしく、暗い眼差しで虚空を眺めるゆっくりまりさ。 れいむは少しでもまりさの気持ちが紛らわせようと口を開いていた。 「ここからでたら、虫さんは全部つぶしてあげるからね!」 「……」 「そして、美味しいものを沢山たべようね!」 「……」 「野いちごとか、沢山食べようね!」 ひっきりなしに話しかけるれいむ。 太陽を一杯に浴びた野草や、まるまるとした昆虫、リスなどの小動物。その味わいを夢想する。 その中でも最近食べた一番美味しい食べ物はあれだろう。 ぼんやりと、れいむは回想に入る。 数ヶ月前、月明かりに誘われて家の周りに遊びに出たゆっくりれいむとその姉妹。 野犬の遠吠えも聞こえない、静かな満月の夜だった。 家の入り口近くに何匹も連なって月の鑑賞会。まん丸な月を眺めるゆっくりたち。息を吸い込んでお月様のように丸く膨らんだり、ぴょんぴょんと跳ねて少しでもお月様に近づこうとしたりと、思い思いに楽しんでいる。 だが、突如として月明かりに影が差す。 見上げたゆっくりたちの視線の向こうに、月を背負ったシルエットが一つ浮かんでいた。 「ゆ?」 その正体がわからなくて首を傾げるゆっくりたち。 ニンゲンに似た体つきだけど、それにしては手足が短い小さな体。ぱたぱたとはためく翼もニンゲンのものじゃなかった。 目をこらすと、 朧な月の光にその姿が浮かび上がってくる。 丸い顔に満面の笑顔を浮かべて、短い手足を一杯に広げた生き物。誰かにおめかしされたのか、ピンクの服と帽子、 そして赤いリボンが愛らしい。 幼子のような笑顔のまま、その生き物は鳴いた。 「うー! うー!」 その可愛らしい生き物はご機嫌そのもの。だが、ゆっくりたちは気がつかなかった。意味のわからない呟きをもらすその口元に輝く、剣呑な牙を。 それは、紅魔館に最近住み着いたゆっくり亜種だった。空を飛ぶ吸血種で、その上に幼児のような体と手足がある、極めつけの希少種。 主に似たその生き物を、紅魔館の者は親しみをこめ、こっそり「れみりゃ」と呼んでいた。 そんなれみりゃは、発見されたからずっとメイド長咲夜に世話をされてきた筋金入りの箱入り娘。いつもは館の奥で大切にされていて、単独での外出が許されていなかった。たが、今日は素敵な満月。ついつい心踊る月明かりに誘われ、抜け出してきたのだろう。 つきっきりで世話をする咲夜の姿も、今日はどこにも見当たらない。 過保護な従者のいない久しぶりの自由を謳歌して、ご機嫌なれみりゃ。うーうーと、幸せそうに月夜を飛び続ける。 気がつけば、ずいぶん遠くまできていた。 くーくーと鳴り始めるお腹の虫。そろそろ戻ろうかなと迷い始めていた。けど、帰ればこの楽しい夜が終わってしまう。 そこで出くわしたのが、いつも餌として与えられているゆっくりれいむの一群だった。 まさに渡りに船。 「ぎゃおー♪」 ご機嫌に、怪獣のような叫びを発するれみりゃ。 咲夜が怪獣のキグルミを着て演じた台詞をそのままなぞっただけの幼い咆哮。 ゆっくりたちは奇妙な闖入者に戸惑って、逃げるべき相手か、判断がつかなかった。 だが、そんなゆっくりたちは次の台詞で震撼する。 「たーべちゃうぞー!」 宙から、ふわりとこちらへ飛んでくるれいりゃ。その口の牙が月光を帯びて鈍く光った。 「ゆっくりやめてね!」 慌てて、一目散に家へと逃げ込むゆっくりたち。 だが、出入り口は一つ。一度に入れるのはせいぜい二匹まで。 「はやくしてね!」 最後尾のゆっくりれいむが急かすが、その声が不意に止む。 れみりゃに牙を突き立てられ、引きずられていくゆっくりれいむ。 「お゛があざーん……!」 ぱたぱたとはためく翼の音とともに、母を呼ぶ声も遠ざかる。 「うー♪」 見守るゆっくりたちの前で、れみりゃは捕らえたれいむを抱え込む。 同時に、れみりゃの口からじゅうううと鈍い音が響きだした。 「ゆ、ゆゆゆゆゆゆ!?」 自分の体に何が起こっているのかわからないゆっくりれいむ。 だが、みるみる頬がこけ、皮がビロビロに伸びはじめてようやく気づく。れみりゃは、ゆっくりの中身を急激に吸い上げていた。 「い゛や゛あ! ゆっぐりじでよおお! ずわ゛な゛い゛でええええ!」 しかし、言われてジュースを飲むのを止める幼児などいない。 うまうまと、たっぷりの甘さを味わいながらちゅーちゅーと吸い続けた。 次第に、白目をむくゆっくりれいむ。 「ゆ"っゆ"っゆ"っ」 細かく痙攣を始めるが、れみりゃはジュースの器がどうなろうが一切気にとめない。喉の渇きのまま、最後まで一気に飲みきるだけ。 ふにゃふにゃにのびたれいむの、最後の雫を吸い込もうとれみりゃが一呼吸したそのとき。 猛然と転がる岩のようなゆっくりがいた。 「ゆっ! ゆっ!」 異変に気づいたお母さんれいむだった。 ぷっくり膨らんだからだを揺すって、どすどすと入り口かられみりゃに向けて一直線。 「うー?」 只ならぬ振動に顔をお母さんれいむに向けるりみりゃ。 瞬間、お母さんれいむは飛んだ。 月夜を背景に、膨らんだ全身をばねにして見事な飛翔。 そのまま、れみりゃの顔面へと飛び込んでいく。 ぺちっと、情けない音がれみりゃの顔面で響いた。 もんどりうって倒れる一団。 「うあー! うあー!」 れみりゃはうつぶせ倒れこんで、起き上がりもせずただ泣き叫ぶ。 これまで、食事といえば昨夜が手配したゆっくりれいむかゆっくりまりさ。お嬢様に粗相のないよう、処理されたものばかりだった。 だからこそ、まさか獲物に反撃されるとは夢にも思っていなかった。 ショックでわんわんと泣き出すれみりゃ。いつもなら、ダダをこねていれば光の速さで咲夜が飛んできて自分を慰めてくれる。 でも、ここは紅魔館から遠く離れたゆっくりたちの巣。 絶望的にれみりゃは孤独だった。 「うあ!」 唐突にれみりゃが感じた激しい指先の痛み。 見れば、一匹のゆっくりれいむが復讐だとばかりに噛み付いている。振り払おうとするその腕に、さらに噛み付く別のゆっくり。 続いて、背中にどすんとのっかった重みはお母さんれいむ。息がつまって、れみりゃの体がのけぞる。その隙に残りのゆっくりたちも意を決して競って背中に乗り上げてきた。もうれみやは飛ぶどころか、起き上がることすらできなくなる。 「うっ……!」 もういやだ、早く帰して。今日はプリンのお夜食なんだから、もう帰る! そんな思いをこめてゆっくりたちを見つめる。 だが、紅魔館自体を知らないゆっくりたちに容赦する理由は微塵もない。 「うっ!」 れみりゃの短い叫び。 見れば、指先に噛み付いていたゆっくりれいむがついにその丸い指先を噛み切ったのだ。 指先からほくほくと、肉まんの湯気。 「うっ……うっ!」 赤く灼熱した焼印を押し付けられたような指先の激痛。 苦痛から、もはや声にならない悲鳴がれみりゃの口をつくが、むーしゃむーしゃと味わうれいむには聞こえていないかのよう。 「おいしいよ!」 ほくほくの笑顔でそのお味を家族にご報告。 その言葉が契機になって、一斉にゆっくりたちが殺到する。 あんぐりと、れみりゃの指先やほっぺにくらいついた。 「う゛っ、あ゛ーっ!」 れみりゃは元々柔らかい肉まんのようなものなのか、強く噛み付くとゆっくりに、抗うことなくぽろぽろと千切られていく。 「むーしゃ、むーしゃ」 一斉にれみりゃを咀嚼するゆっくりたち。 はふうと、同時に吐き出される至福のため息。 「しあわせー!」 「ゆっ! ゆっ!」 わが子の嬉しげな様子を穏やかな視線で見つるのは、お母さんれいむ。 れみりゃがもう何もできなくなったことを確認して、その翼を口でぺりぺりと剥ぎ取る。 咥えたまま向かった先は、れみりゃに吸われてぺしゃんこになったわが子の元。そっと、くわえてきた翼をわが子の前へ置く。 けれど、もはやわが子は目も見えていないようだった。白目をむいて震え続けるだけのゆっくりれいむ。 お母さんれいむは、無言で我が子を見下ろしていた。 れみりゃを味わっていたゆっくりれいむの一匹が、その様子に気づいて駆け寄ってくる。 「早くよくなってね!」 元気付ける言葉は、虫の息となったれいむにも聞こえたのだろう。 応えるため、口を緩慢に開こうとする。 「ゆっ……く……」 だが、もれたのは言葉にならないあえぎだけ。 やがて、言葉の代わりに大きく吐き出される吐息。あえぎ声。 それっきり、ゆっくりれいむは動かなくなる。 きょとんとその様子をうかがう子供たち。何が起こっているのだろうと小首を傾げる。 お母さんれいむは頬をすりよせて、抜け殻となったわが子の目を閉じてあげた。 沈痛な沈黙。 「ゆっ!」 短い呟きが、わが子の亡骸に向けられて静かに響いた。 やがて、お母さんれいむはくるりと振り向く。皮だけと成り果てたわが子から離れて、れみりゃのもとへ。 「うー!」 うつぶせにむせび泣いていたれみりゃと静かに向かい合う。 相変わらずの無表情のまま沈黙を守るお母さんれいむ。 すると、れみりゃを味わっていたゆっくりれいむのうち一匹が、れみりゃの指先を見つめてぽよんと飛び跳ねた。 「ゆっくり治っているよ!」 見れば、千切られたばかりの指先がじわじわと元に戻りつつある。吸血種ならではの再生力だった。 その様子を、相変わらずじっと見つめるお母さんれいむ。 お母さんれいむは声もなく動き出し、れみりゃの服の襟首をくわえ込む。そのまま、ずりずりと家の方へ引きずり出した。 ゆっくりれいむたちは不思議そうに母親の行動を眺めていたが、そのうち一匹が母親の意図を悟る。 「まいにち、ごちそうだね!」 その言葉で他のゆっくりたちも気づく。れみりゃは一晩で元通り。食べ過ぎなければ、いつだって美味しいご飯になるということを。 一斉にれみりゃに飛び掛るゆっくりたち。れみりゃの翼を、耳を、指を、靴の先を、それぞれ思うがままに咥えて、一心不乱に家の方向へ。 「うっ! うっ!」 異常なゆっくりたちの団結に、怯えて泣き叫ぶれみりゃ。だが、もう遅い。れみりゃの姿は、ゆっくりとれいむたちの住処へと消えていった。 それから数ヶ月、豊かな食生活が続いたゆっくり一家。 だが、その幸運も不意に消えてしまった。 いつも家の中に縛られて転がっているれみりゃが可哀想だと、ゆっくり家族たちが気を利かせて日向ぼっこ。 「うー! うー!」 家の方が居心地がいいのか、出ていきたがらない素振りのれみりゃだったが、日向でゆっくりさせてあげないと体に毒だと無理やり引っ張り出す。餌にすら親切なゆっくり一家だった。 逃げないよう縄でがんじがらめにして、お天道様の下に転がしておく。 「うあああーっ!」 嬉しいのか大声ではしゃぎ、のたうちもがくその声を背に、ゆっくりたちは気ままに遊び場へ散らばっていく。 日没まで存分に遊んで帰ってきたゆっくちが見たのは、れみりゃを縛った形のまま地面に横たわるロープと、そのロープを覆いつくさんばかりの真っ白な灰だった。 これは何だろうと疑問の答えを見つけるよりも早く、灰は草原を吹きぬける風に舞い上がげられる。 そのまま、近くを流れる小川へ押し寄せられ、流されていった灰。よくわからないので、ゆっくりたちはすぐに忘れる。 結局、逃げられたと結論づけて、今日もお母さんれいむの待つ家の中へ、ゆっくり姉妹は仲良く連れ立って入っていった。 おいしい食べ物のことを思い出して、だらりとれいむがよだれをたらしているうちに、時刻はいつしか夜を迎えていた。 今日は誰も井戸をのぞきこんだりはしなかったが、明日もこの小春日和が続けば、ゆっくり仲間か暇なニンゲンあたりが ふらっとこのあたりを通りかかるかもしれない。 それまで、耐えられるよねと自分に自問する。 全身は、力をこめ続けていたせいで、がちがちにこわばっていた。身じろぎするたびに体がきしんで痛みが走る。 眠らないでいた頭はぐらぐらと揺れて気が遠くなりそうな程。ぼんやりとなる瞬間もあるけど、死ぬよりはマシと思うしかない。 それに、嬉しい兆候もあった。 お昼に少し元気を取り戻したものの、日暮れ前にはもうぐったりして動けなくなっていたゆっくりまりさ。 だが、夜が深まるにつれて何やらもぞもぞと体を動かしていた。 まりさが先に力尽きることが最大の不安だっただけに、その復活はれいむにとっても望ましいことだった。 後は誰か、誰でもいいから、この井戸を覗き込んでもらうだけ。 そうだ、お願いの言葉を今からきちんと考えないと。 どことなく前向きなゆっくりれいむ。 そのれいむの思考を邪魔する、カサカサというまりさからの音と、時折の「ゆ……」とうめき声。 だが、れいむは気づかないまま、助け出されたときのお礼の仕方をのんきに考えはじめていた。 五日目 考えすぎたのが悪かったのだろうか。朝から、れいむの頭は朦朧としていた。 眠らないまま、どれだけの時間を過ごしただろう。 力を抜かない、眠らない。 それだけを守って、それだけしか許されないこの世界で生き抜くうちに、れいむは少しずつ現実とつながる意識が薄れていた。 空が明るくなって、かろうじて五日目に入ったことはわかる。 けれど、もう何年も閉じ込められているような気分だった。 この空虚でゆっくりと流れる時間を、一人だけで過ごしていたら今頃心が壊れていたかもしれない。 だが、隣にぴったりとくっつくまりさの存在が、れいむの心に頑張らないとと、わずかな種火となってくすぶった心を焦がしている。 昨日からちょっと調子が悪いらしくて、話しかけても何も応答が無い。 でも、いるということだけで心強いのだ。 「れいむう……」 そのまりさが、一日ぶりに自分から話しかけてきた。 井戸の暗闇から届く、のったりと間延びした呼びかけ。 「どうしたの、まりさ!」 そのことが嬉しくて、応じるれいむの声は弾んでいる。 まりさの次の言葉は中々発せられなかったが、ゆっくり待った。 「……ようやく、かゆい理由がわかった」 時間を大分おいた一言は、れいむに「よかったね!」の合いの手を躊躇わせるほどに疲れきった声。 どうしたのだろうと訝りつつ、やはりまりさの言葉を待つしかないゆっくりれいむ。 そのとき、ゆっくりれいむはわずかな光を感じた。 見上げると井戸の縁を、太陽がわずかに踏み越えようとしている。 ほかほかのお日様がでれば、まりさも元気になるかな。 「あのねえ」 まりさの呟き。 日差しはどんどん高くなる。光の領域が、井戸の縁から内側へ、みるみる広がってきた。 「れいむ、きらいにならないでね……」 よくわからない言葉がれいむの困惑を誘う。 さらなる説明を求めようとした、その時。 ふっくらとしたお日様の気配が二人を包んだ。ゆっくり二匹の元へ届いた、晴れやかな日差し。 光に照らし出されたまりさは、口を半開きにして惚けたような顔。 そして、顔半分を覆いつくす黒。 目を凝らすと、その黒い帯は光を受けて一斉に動き出した。 「ゆーっ!」 黒い帯。それは、まりさの顔にたかる幾百もの虫たち。地虫、羽虫、カトンボ、ゲジゲジ。数え切れないほどの虫たちが光の襲撃を受けてうごめき、逃げ惑い、光から隠れた。 最も手近なまりさの中へ。 まりさの右のほっぺに開いた無数の穴へと、我先にと逃げ込んでいた。 「ゆっ! ゆっ! ゆううううっ!」 目の前10cmで繰り広げられる光景のおぞましさに、満足な叫びもあげられないゆっくりれいむ。 虫たちはまりさの傷口から入り込み、中身を食い荒らしながら、奇妙な巣を勝手につくりあげていた。 まりさは、もう心が消えうえせたかのように、微動だにしない。開いた口からだらだらとよだれをたれ流して、右頬だけがぷるぷると微妙に震えている。 その虚ろな目が、怯え震えるれいむを見つめていた。 れいむは「れいむ、きらいにならないでね……」というまりさの言葉を思い返す。 きっと、今自分はまりさを化け物を見るような目で見ているのだろう。 「しっかりして、まりさ! 外にでたらすぐに治療しようね!」 真正面にまりさの惨状を見据えて、心を燃え上がらせての激励。 ほのかに、まりさの瞳に生気が戻る。 「ありが……」 だが、お礼の言葉は最後までいえなかった。 「うっぐ!」 言葉を遮ったのは、まりさの口からわらわらと巣立つ羽虫たち。 凍りついたれいむに、なぜか笑いかけるまりさ。 「……卵産みつけられちゃった」 気を失いそうになるれいむ。 まりさからは、低い笑い声がもれてくる。 「うふふ……うふふ」 これまで聞いたことの無い、奇妙な笑い方。 もう、れいむの言葉は届きそうに無かった。 それに、その虫たちを見ているとれいむに浮かぶ不安が一つ。 まりさの餡を全部食べ尽くしたら、この虫たちはどうするのだろう。 答えは、まりさと連結した自分のほっぺた。おどろくほど容易い進入経路。 「だずげでえええ! 今ずぐ、だずげでえええええええ!!! だずげでええええええええ!!!」 幼子のように泣き叫ぶも、声を聞き届けて顔を覗かせるものなど誰もいない。 ただ、驚いた羽虫たちをぶわと舞い上がらせただけ。 やがて、惨劇を見せ付けた太陽は井戸の外へ、早々に引っ込んでいく。 後には泣きじゃくるれいむと、まりさの乾いた笑い声。 そして、それを覆い尽くす虫たちの気ぜわしい羽音や足音だけがいつまでも響いていた。 六日目 何度目か、すでにれいむはわからなくなりつつある太陽の出現。 昨日、叫び疲れてぐったりと力を使い果たしたれいむ。もう、口を開くのも厭わしい。 まりさも虫たちに蹂躙にされるがままになっていた。 もううめきすら聞こえない。生きているのか、死んでいるのか、もう判別のつけようがなかった。 ゆっくりれいむは、そんなゆっくりまりさを見つめながら、自分の最期を見つめる思いだった。 きっと、自分もこんな死に様なのだろう。 ありありと見せつけられた絶望。 だが、先ほどまでの狂おしい恐怖はすでに感じなくなっていた。何もかも、あやふやな夢の中にいるよう。ぼんやりと、厚い膜を張ったような精神状態。 心が磨耗しきっていた。 もうすぐまりさのように、うふふ、うふふと笑える幸せな世界に旅立てるのだろうか。 先に行けて、まりさはもいいなあと、れいむはまりさをうらやましくさえ感じていた。 だが、れいむがやっかむ必要もないだろう。 そのときは、確実に近づいていた。すでに、自分を取り巻く全てに何の現実感も感じられなくなりつつある。 だから、れいむは妄想か夢を見ているかと思い込んで見逃すところだった。 はるか井戸の上には、見下ろす一人の女性の姿。 「久しぶりに昔の家にきてみたら、こんなところに……あなたたち、何をしているのかしら」 耳障りのよい、落ち着いた女性の声。 井戸に響き渡る、待ちかねた来訪者の声だった。 「ゆっ! ゆゆゆゆっ!」 助けて、出して、ごめんなさい、お願いします。言うべき感情がれいむの口をあふれて、まったく形をなさない。ただ興奮と哀願だけが噴出して始めていた。 声をかけてきた女性は、逆光でよくわからないにがサラサラの金髪に、白いケープが目に入る知的で楚々とした印象。 自分たちに降りた蜘蛛の糸を握る唯一の人物。 「勝手に入ってごめんなさい! 出られないの! お願い、助けてください!」 「あら、かわいそうに」 ゆっくりに向けられた女性の声色は心底哀れんでいるようだ。 優しい人かもしれない。 ゆっくりれいむは期待と不安の眼差しで女性を見つめる。 「心配しなくていいのよ。今、助けてあげるわ」 逆光で顔立ちはわからないが、その女性はにっこりと微笑んでいた。 その笑顔に、沸き立つ安堵の想い。知らず、体の力が抜けかけるゆっくりれいむ。 だが、ここで沈んでは何にもならない。必死に堪えた。 「待っててね。今、家からロープか何かもってくるから」 身を翻して姿を消す女性。 でも、れいむに不安はない。女性の言葉は心底の同情に満ちたものだったから。 しばらくして、言葉の通りに戻ってきた女性。 「ありがとう、おねーさん! お願いします!」 ゆっくりまりさの言葉に小さく頷いて、女性は井戸の上からするするとロープを下ろしていく。 あと、ちょっと。あとちょっとでれいむの口が届きそうになる。 あーんと、大きく口を開くゆっくりれいむ。 その口が届こうとする、そのまさにほんの手前。 「ところで、ここからじゃ暗くてよく見えないのだけど、あなたたちのお名前を教えてもらっていいかしら?」 女性の機嫌を損ねたくなくて、れいむはロープを噛みに行く動作を止めた。 「ゆっくりれいむと、ゆっくりまりさだよ!」 疲れ果て、声を出すのも億劫だったが、精一杯の愛嬌をこめて応えてみせる。 「へえ、良くあなた方の組み合わせを見かけるけど、だいぶ仲がいいのね」 なぜだか、突然始まる女性の世間話。 早く、早く! れいむの心の声が鐘楼のように鳴り響くが、ここで焦って全てを台無しにするわけにはいかなかった。 「うん、親友だよ!」 正直に答える。 すると、ロープの先端がプルプルと震えだした。 震えているのはロープと、その根元を握る女性の手。 女性は不意に笑い出した。まりさのような、乾いた笑い方だった。 「アハハハ。ホント、あなたたちはいつも仲がいいわよね。守矢神社のときもそう。私のことを放って二人で解決しちゃうくらいだし。本当にまりさとれいむは仲良いわね」 ゆっくりに、女性の言葉の意味はわからない。 ただ、ふつふつと湧き上がる怒りだけが伝わってきた。 「おねーさん、ロープをもう少しのばしてね!」 只ならぬ気配に不安になったれいむが思わず催促してしまう。 それが引き金だった。 「……あら、手が滑ったわ」 恐ろしいほどの白々さを響かせる声。 それとともに、ロープは一気にゆっくりれいむの元へ届き、そのまま丸ごと井戸の底へ落ちていった。 「ゆっ、ゆー!」 れいむの絶叫の最後に、着水したロープの音が無情に響く。 「どうじで、ごんなごどずるのお……」 涙目で見上げると、女性は無表情でゆっくりたちを見下ろしていた。 唯一の蜘蛛の糸が、この瞬間明らかに断ち切られようとしている。 「おねーさん、怒らせていたらごめんなさい! だから、お゛ね゛がい゛! もう一回、お願いじまずうううう!」 れいむにできるのは、同情を誘う哀願のみ。 それでも、井戸の上の女性に効くかどうかは、すでに疑わしくなりつつあった。 「私なりに考えてみたのだけど、せっかくそこでゆっくりしているのに、お邪魔するのは悪いわよね?」 女性の気を遣ったような言葉が放たれるが、その根底に横たわるのは隠そうともしない悪意。 「やだあっ! もうここでゆっくりじだぐないいい! だがら、だずげでぐだざあい!!!」 「でも、大丈夫。今、素敵なお友達をそっちにおくるから、もっと楽しくなるわよ」 会話ではなかった。 ゆっくりれいむの嘆願を存在しないものとして、にこやかに語りかける女性。 優しげに井戸に響く女性の言葉が消えるやいなや、何かを投げ込んでくる。 ひゅうううと、井戸の空気を切る何かが、れいむの顔へ一直線。 そのペラペラの物体が光を透かして、れいむにはそれが何かわかってしまった。 自分と向き合って落ちてくるのは、同じゆっくりれいむ種。ただし、中身がこそぎ落とされた上に、頭を切り落とされたゆっくりのデスマスク。 ぺちゃりと落ちて、身動きできないれいむの顔に張り付く。お互いの唇を重なって、ぺったりと。 「む、むぐううううう!」 同種の死骸といきなりのマウストゥマウスに、声にならない悲鳴。 「喜んでもらえて嬉しいわ。それじゃあ、リクエストにお答えして、もう一匹、お友達がそっちにいくわよ」 すでにひどい衝撃を受けているゆっくりたちへ向けて、さらに何かを投げ入れた女性。 れいむがデスマスクを払いのけるのと同時に、ぺっちゃっと水っぽいものが落ちてきた。 れいむは顔面で受け止めたそれの正体に気づく。 「ゆっ! ゆっくりパチュリー!?」 すでに亡骸となっているゆっくりパチュリーだった。いや、パチュリーが死んでいるのはよくあることなので、さしては驚かない。 問題は、その頭部。 ご自慢の三日月の飾りをつけた帽子が破れ、頭全体がぐちゃぐちゃに中身をかき回されていた。 死に顔は歪みきった苦悶の表情。どんな苦痛を経れば、こんな顔で死ぬのだろうか。 井戸の上から見下ろす女性、アリスの微笑みはお茶会に呼ばれた淑女のように楚々とした笑顔だったが、れいむには空恐ろしくて仕方なかった。 不意に、れいむの鼻腔をつんとした臭気が突き上げる。 気がつけば、周囲にたちこめた甘く腐ったような匂い。 パチュリーの中身が発酵して、強いにおいを放っていた。 その腐った餡はパチュリーを受け止めた二匹の顔のあちらこちらに飛散して、嫌な匂いをこびりつかせる。 「ゆっ!?」 ぶうんと喧しい音。れいむの耳元で騒ぎだす虫たちだった。匂いの強さに惹かれ、わらわらとれいむへも忍びよる虫たち。 見たことも無い大きさのムカデが、まりさの頬からにょっきりと頭をのぞかせる。 「や゛あ゛あ゛! よ゛ら゛な゛い゛でええええ!」 我を忘れ、いやいやと餡子を振り落とそうとするれいむ。 それが致命的だった。 ずるりと、壁からずり落ちるゆくりれいむの体。その動きを止めてくれていたまりさも、すでに押し返す力はない。 二匹とも、ずり、ずり、ずりと下がっていく。 「ゆぐうう! ゆぐうううううう!」 踏ん張ろうとしても、もう遅い。 落下は加速的に早まって、どんどん近くなる水面。遠くなる外の世界。 やがて、井戸に派手な水音が響き渡った。 その反響が収まると、もうゆっくりれいむたちは井戸の上から見えなくなる。 満足げに見届けたアリスは、井戸の上に新たな板を敷き、重石をのせた。 「それじゃあ、ゆっくりしていってね」 くすりと品のいい笑顔を残して、アリスは去っていく。 後には、もう何年も忘れ去られたような古井戸だけが残されていた。 七日目 井戸の底は、光の欠片もない真の暗黒。 出口はすでに閉ざされ、れいむは完全に日時の感覚を失っていた。 ここは井戸の底。にごりきった水面から、頭一つだけ上に離れた壁面。 朽ち果て、崩壊した石壁のでっぱり。そこへゆっくりれいむは口をひらき、顎が外れんばかりにくらいついていた。 れいむのほっぺにくっついたまりさは半身を水面に沈めている。 時折、ぶくぶくと気泡を吐き出して、虚ろな目で浮き沈みを繰り返す。 水に沈んだことで虫たちはある程度外に逃れてはいたが、代わってボウフラたちにまとわりつかれていた。 むわっと、淀んだ水の匂いがきつい。 そんな有様に、れいむはもう終わりが近づいてきたことを自覚しはじめる。 石積みブロックに喰らいついている顎も、がくがくと小刻みな震えが止まらない。 井戸は完全に封印されて、もはや人目につくことも望めなかった。 「うふふ……」 あぶくの合間に、相変わらずの親友の笑い声。 おそらく、ゆっくりまりさはもうダメだろう。 まりさの心が死んでしまうまでに、まりさへ大好きだったことをもっと伝えておけばよかった。 喧嘩してひどいことを言ったことを、謝りたかった。 でも、もう届かないし、口を離せば即座に二匹とも水面に転がり落ちるだけ。 ボロボロとひっきりなしにれいむの涙が零れ落ちていた。もう、何もかもが手遅れ。 せめて、死ぬ前にお母さんに会いたい。 会って、あの柔らかい体に飛び込んで大変だったよと、今までの話を伝えたい。 可哀想に、ゆっくりお休みと、受け入れてくれるお母さんの胸に甘えながら死にたい。 とっくに叶わなくなった、哀れな夢。 もう全てを諦めて、水に沈んでしまおうかと、何度も考える。 けれど、その惨めさが悔しくて悔しくて、れいむは結局石壁にかじりついていた。 このまま、果てて死ぬだけだとわかりきっていた、無駄な抵抗。 どれぐらい時間がたっただろう。 ほんのりと明るさを感じていた。 見上げるゆっくりれいむ。鮮烈な光を放つ天から、小さな、人に似た存在が何体も連れ立っておりてくるのが見えた。 天使というものだろうか。 ああ、自分は死のうとしているのだ。 なぜだか冷静に、れいむは天使たちを眺めていた。 天使たちはれいむの下に回りこむと、その体を掴む。 浮遊感。 ゆっくりれいむは井戸から静かに上昇していく。 ああ、ここから出られるなら、死んでもいい。 安らかなれいむの表情。 外の日差しの強さを感じながら、れいむはゆっくりと目を閉じる。 白く霞みがって遠のく意識。 その心地よさに身を任せていた。 「これで、いいのかしら?」 アリスは人形たちに引き上げさせているゆっくりれいむを見やりながら、傍らのゆっくりまりさに語りかけていた。 そのゆっくりまりさは、井戸の中にいるまりさと別の個体、アリスが最近飼いならしているゆっくりまりさだった。 「ありがどううううう!」 今は仲間の姿を見つめながら、アリスに涙声でのひたすらにお礼を繰り返している。 アリスに唇に苦笑がこぼれていた。 「私は本当にまりさに甘いわね」 昨日の夜、ゆっくりれいむたちの様子を夕食の話題に伝えたところ、仲間を助けて欲しいと泣きすがられてしまった。 どれだけひどくそのほっぺを抓りあげても、一向に黙ろうとしない。「箱」で脅されても「おねがい、だずげであげで!」と泣き喚かれて、アリスも少しだけの譲歩。 やがて人形に抱えられて、気を失ったゆっくりれいむが運び上げられてくる。 「まったく、暢気なものね」 楽しげにゆっくりれいむのほっぺたを、白く形のよい指先で弾いて遊ぶ。 れいむは昏睡したように起きる気配もない。 つづいて、れいむのほっぺたにくっついてまりさが姿をあらわした。 太陽の下、主だった虫たちはぽとぽとと井戸へ落ちていく。水をくぐったことも少し虫を減らしたのだろう。少しだけ、マシなまりさの顔。 「ゆ……?」 そのおかげか、光の眩さに目を覚ますまりさ。瞳にやんわりと光が戻ってくる。 やがて、視覚した目の前の光景に、光が強くなるまりさの瞳。 そこは、夢にまでみた外の世界だった。風がそよそよ心地よく、草むらの青い匂いが薫る森の中。 外にでたの……? 目を凝らしても変わりはない。 紛れもなく、外の世界だった。 ……助かったんだ。 救出を認識するなり、心の奥底から蕩けそうな安堵感に包まれてじんわりと涙がにじむ。 「ゆ、ゆっくりいいいい……」 続く喜びに体が震えていた。 心にこみあげる暖かさに、ほろほろと涙が止まらない。 幸せな気分で流す涙は、なんて気持ちがいいんだろう。 こうして見える全ての景色は、いきなり奪われて、奇跡の果てにようやく戻ってきたあたりまえの世界。 いや、もうあたり前の世界には見えなかった。 世界がこんなに素敵なことに、ゆっくりまりさは気づいてしまっていた。 果てしない空、どこまでも跳ねてゆける自分の体、愛情を確かめ合える友達。それがどれだけ貴重なことか、まりさには心から知ることができた。 さあ、この素晴らしい世界で、心行くまでゆっくりしよう。 まずは、ゆっくりと何をしようかな。 思いつくことは沢山ある。ずっと井戸の中でしたいと熱望していたこと。美味しいものを食べる、遊びまわる、安全な場所でゆっくりする…… だが、それにも増してまずしなければならないことがある。自分を許し、励まし続けてくれたゆっくりれいむに感謝と改めてお詫びをすること。本当にありがとう、そしてごめんなさいと、蕩けるまでゆっくり全身をこすり合わせたい。 その後はひたすらゆっくりしよう。体は大分ぼろぼろだけど、仲間たちに虫をとってもらってゆっくり休めば、きっとまた元に戻れる。 ゆっくりとした日常に戻れる。それだけで、もう涙が止まらない。 とめどなく頬を伝う暖かな落涙。 アリスはそんなまりさにそっと顔を寄せていた。 ようやく、まりさはアリスに気づく。 れいむをひっぱりあげる、人形たちの姿にも。 「……お姉さんが、助けてくれたの?」 「そうよ」 アリスの簡潔な言葉を受けて、心を突き上げてくる感謝の思い。 「あっ、ありがどう……! ほんとに、ほんとに、あ゛り゛がどうううううう!」 最後の力を振り絞ったゆっくりまりさの言葉を、アリスは優しげな眼差しで受け止めていた。 「あらあら。涙で顔がくしゃくしゃよ。女の子がそんな顔を汚しちゃだめよ」 「うん」 茶目っ気たっぷりに語りかけられて、ゆっくりまりさははにかんだ笑みで頷いた。 「それじゃあ、しっかり顔を洗ってきましょうね……」 「ゆ?」 アリスの言葉の意味を問い返す暇もなく、まりさに近づく影があった。 薄皮一枚で繋がるまりさとれいむの間をすうと抜けた影は、アリスの上海人形。 上海人形が両腕に抱えるのは、鈍く銀色の輝きを放つ、大きな大きな断ち切り鋏。 「ゆ?」 次の戸惑いの声がまりさの口からもれたとき、すでにその体は落下を始めていた。 断ち切られていた自分とれいむとの皮膚の結合。 下には、何も無い空間が口をあけているだけ。 それからの光景は、やけにゆっくりと見えた。 再び、井戸の口に沈み込む体。あと10cmでもずれていれば、縁にあたって外に転がり出るというのに、 体はすっぽりと井戸の中央。 すぐさま、暗闇が視界を支配する。 落下を続けながら天を見上げるゆっくりまりさ。 井戸の口はどんどん小さくなって、かつての光景のように遠ざかっていく。 もう、一緒に落下を耐えた友達はそこにはいない。 どこまでも落ちていく。 あれえ、夢かなあ。 惚けた台詞を呟くやいなや、底に着水して激しい水しぶき。 思ったより衝撃がないのは、水中に住む先客がまりさの体を受け止めれてくれたからだった。 井戸の底からぷかぷかと浮かぶのは、無数のゆっくりまりさたち。 すでに中身が井戸に溶け出して、ぶよぶよに膨らんだ皮だけが浮かんでいる残骸だった。 アリスが捕まえて、懐かなかったゆっくりまりさの成れの果て。 この井戸は、アリスの処分場となっていた。 しかし、まりさにそんなことはわからない。わかりたくもない。 「ゆ……ごぼ……ごぼぉ……」 まりさの体にできた虫食いの空洞から生まれる盛大なあぶく。 そのわき立つ水面の向こうで、閉ざされた井戸の天井をぼうっと眺めていた。 水をすった皮がぶよぶよに膨らみ始め、自分の皮で覆われていく視界。 ぎゅうぎゅうの皮におしこまれ、目の玉がとびだしそうに痛い。まるで、巨大な綱で常に締め上げられているよう。 間断ない痛みは、虫にたかられていた時以上に時の進みをゆっくりと感じさせた。 死ぬほど苦しい。でも、自分を殺すこともできない。 もう考られること一つ。いつ死ねるのかなということだけ。 中身の完全な腐敗、溶解まで後一週間ほど。 まりさのゆっくり生活は、ようやく折り返し地点を過ぎたところだった。 後編
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1263.html
博麗霊夢は、境内の森の裏の湖畔で釣りをしていた。 霊夢の釣りの腕前は、幻想郷に住む人間においては、1、2を争う程の腕前の持ち主であった、 まあそれも無理の無い事だった、博麗神社の夕食のグレードはその日の釣果に大きく左右されるのだから。 ここには食料が豊富にある、さまざまな魚、たくさんの野草、いろいろな獣、そして最近増えてきた「ゆっくり」・・・。 霊夢は、「ゆっくり」という生き物が多少苦手だった、彼女にとって、ゆっくりはまっすぐすぎる、 しかし、何事にも例外という物は存在する、そしてそれはゆっくりの中にも・・・。 「れいむ・・・。」 「分かってるわよ。」 霊夢は荷物の中の、もぞもぞと動く大き目の鞄にきびすを返すと、自分の後ろ手の森に注意を走らせる、 ごそごそと鞄から出てきた金色と肌色のまるっとした生物・・・ゆっくりアリス(以下ありす)である、 ゆっくりアリスは他のゆっくりよりは知能が高いが、霊夢と行動を共にするこのありすはとりわけ物分かりが良かった、 霊夢からすれば、自称都会派のありすは、そのプライドをくすぐってやりさえすれば、とても扱い易いゆっくりだった、 まあいつも接している面々が面々だ、至極当たり前の話だ。 「ゆっくりがいる・・・。」 「ええ、近くに来てるわ・・・。」 きぃきぃ煩い鳥の鳴き声と、ごうごうという風のうねり、そして小さいが確かに存在する気配・・・、 瞬間、二人が声を上げる。 「「うえッ!!。」」 二人は上空の木々の上に動く物体を確認する、ゆっくりれみりゃだ! そしてそこに居たのは、標的の姿を確認し、もはや興奮を隠さない二人。 「れっれっれっ、れみりゃ!!!」 「おっおっおっ、おにく!!!」 二人は既に叫んでいた、そしてさすがのれみりゃもこの異常な状態に気付かざるを得ない。 「うー! う? うーっ! うーっ!」 危険を感じたのか、身を翻し飛び去ろうとするれみりゃ、しかし二人はその時既に行動に移っている、 霊夢はビー玉大の陰陽玉を二発打ち出していた、それは正確にれみりゃの羽の付け根を打ち抜き、れみりゃは力なく墜落する、 そしてその墜落の地点と思われる場所を目掛け、猛然と飛び跳ねるありすの姿、 そして、ドサッという音とほぼ同時に「ハァ…、ハァ…。」という荒々しい吐息が撒き散らされはじめる、 「れみりゃあああ!かわいいよおおおおっほおお!」 「うーっ!!うーっ!!」 「よろこんでくれてうれじい゙いい゙いぃ!そのしたったらずもがわい゙いい゙いっふうぅぅ!」 「ざぐやー!!ざぐやあぁ!!」 「うおっほおおぉぉぉぅ!!かわいいイ゙ってねイ゙くよイ゙くよイ゙グすっきりー!!!」 「う…、う…。」 (・・・残念ね、咲夜が興味あるのはちゃんと体が付いてる本物だけ・・・それに毎度毎度咲夜に出てこられちゃ堪んないわよ。) そんな事を考えつつ、数十メートル先のゆっくりによるゆっくりの陵辱現場に、ゆっくりと向かう霊夢、 「ぼうしがわい゙いぃ゙ぃ!!、イ゙くよイ゙くよすっきりー!!!」 「ゔ…ゔ…ゔあ゙ぁ゙…。」 「あおじろいかみもがわい゙いぃ゙ぃ!!、イ゙くイぐイ゙くすっきりー!!!」 「………ゔー…。」 いつも思うが、その気になったありすは凄まじい、本物もびっくりだわね・・・、などと考えつつありすに声を掛ける霊夢。 「はーい、そろそろ終わりよー。」 「んふふふふすっきりー!!!・・・・・えー、もうなの?」 「そう、お茶受けになってみる?」 「・・・・・しょうがないわね・・・。」 ありすが体の下のれみりゃから飛び降りる、そこには半分以上朽ちてなおぴくぴく動き続けるれみりゃと、 そこから十数本生えた茎、そしてそこに付いた大量のれみりゃの仔たち、 巫女は手際よく茎を根元から引きちぎり、大きな財布のような物に突っ込んでいく、 これはスキマポケットといい、ある妖怪から間借りしたスキマと現実をつなぐ道具で、ある河童を口車に乗せ作らせた物だ。 (持つべき物は友達よね・・・。) そして巫女は仔れみりゃを捕獲し終えると、おもむろにれみりゃに齧りついた。 「むーしゃ。むーしゃ。」 「・・・・・あいかわらずきもちわるいわ、さいあくだわ・・・」 「・・・食べ物はね、腐りかけがいちばん美味しいものよ・・・・・しあわせー!!」 霊夢の胃腸の頑丈さは、幻想郷に住む人間においては、1、2を争う程の頑丈さの持ち主であった・・・。 そして短い食事は終わり、二人は湖に放置してきてしまった釣り竿の場所へと戻って行った、 霊夢も食べられなかった部分はスキマポケットに放り込んである、 この道具にゆっくりの骸や宴会の食べ残し、野草等を放り込んでおけば、中のゆっくりたちは適当な栄養と 長い半自動スキマツアーによる適当な恐怖でいい感じに育ち、ポケットの中に手を伸ばせば食べ頃のゆっくりに当たるのだ、 ああ、なんて便利な道具なんだろう。 ゆっくりが幻想郷に出現してからというもの、博麗神社の台所事情は確実に好転していた、 二人はある意味で相性のいいコンビだった、 ありすは大喰らいの他のゆっくりと違い、すっきりさえさせていれば、咲夜たちが宴会に持ち込んだお茶菓子の残りで十分に食わせていける、 それに霊夢は加工所などに頼らずともゆっくりを増やせるわけだし、ありすは安全に、確実にすっきりできる、 しかし、ゆっくりたちの間ではこのコンビの脅威は語られていない、 なぜなら、この二人から逃げおおせたゆっくりは、現在のところ、いないからだ。 かなりぶっ飛んだ設定ですが、「そうなのかー」ぐらいのノリでとらえてくれれば嬉しいです。 それと巫女ファンの人、ごめんなさい。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4144.html
※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。(十回超の予定) ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』5 カートの上に四匹のまりさ共を乗せ、俺はある一室に入った。 この部屋は、通常の人間の居住空間になっており、 家具や調度が一通り揃っていた。 実際に、俺はここで寝泊まりをすることになる。 八畳ほどのこの部屋には、 冷蔵庫や布団をはじめ、必要な生活用品が揃っている。 特殊なのは、壁のうちある一面が全面鏡張りになっていることだった。 そして、部屋の一角には頑丈なケージがあり、 およそ2m余り四方を区切っている。 この部屋に、まりさ種の四匹を放した。 カートの籠から持ち上げ、部屋の真ん中に投げだしてやる。 「ゆぎゅっ!」 顔面から板張りの床に叩きつけられ、呻く親まりさ。 俺を見上げて悪態をつく。 「ゆゆっ!!なにやってるんだぜごみくず!! このまりささまをいたいめにあわせて、ぶじですむとおもってるのかだぜ?!」 無視して、今度はバスケットボール大の子まりさを出す。 こちらはケージの中に放り込む。 「ゆぎゃ!」 「なにしやがるんだぜ!?」 「あやまったってゆるしてやらないんだぜ!どげざするんだぜ!!」 少しの間喚いていたが、 やがて部屋全体を見渡し、様子を見てとると、 親まりさが予想通りの言葉を吐いた。 「ゆゆっ!!ここはまりささまのゆっくりぷれいすにするんだぜ!! おい、ごみくず!!しごとをめぐんでやるんだぜ? はやくあまあまをよういするんだぜ!!」 「はやくするんだぜごみくず!!」 「ここでもどれいにしてかいごろししてやるんだぜ!! まずはかんしゃのどげざをするんだぜ!!」 「あまあま!!あまあま!! もってきたらしーしーをのませてやるんだぜ!!」 相変わらずの罵詈雑言を聞き届けると俺は息をついた。 早速始めることにする。 まず、ケージの中の三匹の子まりさ。 その後に親まりさの順で、おれは手早く帽子を取り上げた。 「ゆっ!!?なんのつもりなんだぜ?!」 「まりささまのおぼうしがああああ!!」 「ごみくずううううう!!かえせええええええ!!」 「ごみくずはじぶんのたちばがわかってないんだぜええ?! しつけなおしてやるからぼうしをかえすんだぜえ!!」 「返してほしければ、俺から奪い返してみろ」 「ゆっ?」 俺の前にいる親まりさが、小馬鹿にした笑みを浮かべた。 「じぶんがなにをいっているのかわかってるんだぜ? まりささまにけんかをうっているんだぜ!? もしかしてまりささまにかてるとおもっちゃったんだぜ? ばかはすくいようがないんだぜ!!ゲラゲラゲラゲラ!!」 子まりさともどもひとしきり嘲笑した後、 真顔に戻ってまりさは侮蔑の視線を送ってきた。 「ぼうしをかえすんだぜ、ごみくず。 こうかいしないうちにかえしたほうがいいんだぜ。 いまならはんごろしでゆるしてやらないこともないのぜ?」 俺は手に握った帽子をぐしゃぐしゃに握り潰し、ズボンの裾に突っ込んだ。 まりさの目が怒りに燃え上がる。 「ごみくず…… くそのやくにもたたないおまえを、 まりささまはきょうまでがまんしてかってきてやったんだぜ? それはまりささまのなさけだったんだぜ。 そのまりささまにたいして、おまえはそんなたいどをとるんだぜ?」 「おとうさん!!そいつをころすんだぜ!!」 「こわれたどれいはようずみなんだぜ!! たっぷりいじめころしてやるんだぜ!!」 「はじめておとうさんのけんかがみられるんだぜ!!わくわくだぜ!!」 子まりさ共が口々に叫ぶ中、親まりさは宣告した。 「もうあやまってもゆるさないんだぜ。 いくらないても、あやまっても、まりささまはゆるさない。 じっくりとなぶりごろしてやるんだぜ。 ごみくずはたっぷりこうかいしながらしぬんだぜ!!」 親まりさが跳び、俺の足に体当たりをしてきた。 直径50cmの饅頭の体当たりは、さすがにそれなりの質量がある。 不意打ちで喰らえば、尻餅をついてしまいそうだ。 しかし正面から向かってくる今、まるでダメージにはならない。 親まりさは何度も何度も体当たりを繰り返してきた。 俺はそれを見下ろしながら黙っていた。 十分ほどそうしていた後、 ぜえぜえと息をつきながら、親まりさはこちらの顔色を伺っていた。 なぜ倒れないのか不思議そうな顔だ。 「痛くない」 俺がそう言うと、愕然として口を半開きにした。 子まりさ共が、おかしいとばかりに口々に叫ぶ。 「おとうさん!おあそびはもうおわりにするんだぜ!!」 「そろそろとどめをさしてやるんだぜ!!」 「ゆ、と、とどめなんだぜ!!」 親まりさは数歩下がってから、 助走をつけて全力で体当たりをしてきた。 俺は少しばかり腰を落として構えただけで、小揺るぎもしなかった。 ぜひ、ぜひ、息をつくまりさの前に屈み込み、その顔を覗き込む。 「な、なんでなんだぜ……?」 その左頬を、右腕で力を込めて殴りつける。 これだけ成長した饅頭なら、 そう慎重に手加減しなくても、そうそう死ぬことはないだろう。 「ぐびゅえっ!!」 あえなく悲鳴を上げる親まりさ。 俺は親まりさの頭を左手で押さえつけ、同じ場所を殴り続けた。 「ゆがびゅっ!!ぼびゅっ!!ばっ!!ゆびぃっ!!ぼぉ!!」 何十発殴っただろうか。 親まりさの顔面の左側は、今や全体が内出血ならぬ内出餡で黒ずんで腫れあがり、 左目は開かなくなっていた。 手を休めて眺めていると、ごほごほと咳き込み、 口から少量の餡子とともになにかをばらばらと吐き出した。 歯だ。 腫れあがってでこぼこになった左頬を、そっと触れる。 「ゆぎぃ!!」 それだけで悲鳴が上がった。 左頬をつまみ、つねり上げてやると、涙を流して呻いた。 「やべで!!やべで!!づねらだいでええええ!!」 「ゆっくりぷれいすにするって言ったな?」 「いだい!!いだい!!いだいいいいいい」 また左頬を殴りつける。 「ゆびいいい!!」 「俺の話を聞くんだ。いいな?」 状況が掴めていない様子で、不思議そうに親まりさの右目が俺を見上げる。 また右手を振り上げてやると、親まりさは泣き喚いた。 「ぎぎばず!!ぎぎばずうう!!なぐらだいでえええええ!!!」 「ここをゆっくりぷれいすにするって言ったな?」 「ばいいい!!いいばじだあああ!!」 「いいだろう。ここは俺の部屋だが、俺から奪ってみろ。 俺を倒せば、この部屋はお前らのものだ。お前らの帽子も奪い返せる」 半ば子まりさの方を向きながら、俺は説明した。 「この部屋に住めば、毎日山ほどのあまあまが運ばれてくる。 沢山の人間達や美ゆっくり達がお前たちの世話をするし、すっきりもし放題だ。 楽しい玩具だってふかふかのクッションだっていくらでも、前の部屋なんかより沢山ある。 お前らはここで存分にゆっくりできるんだ」 その言葉を聞き、それまで呆然と成り行きを見守っていた子まりさ共は、 声を奮って親まりさを叱咤激励した。 「おとうさん、たちあがるんだぜ!!なにしてるんだぜ!?」 「まりさたちはゆっくりしたいんだぜ!!」 「おぼうし!!ゆっくりぷれいす!!はやくするんだぜ!!」 「ゆ……ゆ……」 哀れっぽい視線を、子まりさ達、そして俺に向ける親まりさ。 がたがたと震えている。 「さあ、準備運動はここまでだ。 お互い本気で戦おうじゃないか」 そう言って俺が立ちあがると、親まりさの顔が一瞬歪み、次に命乞いをした。 「も、もうやべで……」 「なに、やめるのか?」 「まりささまは……もうたたかえないんだぜ……」 「やめるって言ってるぞ」 子まりさ共のほうを向いてそう教えてやると、 ケージの中で三匹の子まりさ共は飛び跳ねて激昂した。 「なにいってるんだぜ!! まりさたちがゆっくりできなくなってもいいんだぜえ!?」 「おぼうし!!おぼうし!! おぼうしがないとゆっくりできないいいい!!」 「はやくたたかええええ!!なにふざけてるんだぜえええ!!? おとうさんはつよいっていつもいってたんだぜええええ!!」 「ゆあぁ……ゆあぁ……」 呻く親まりさ。 この饅頭は、以前まではあの家の主に君臨し、 普段から子供に対しても威張り散らしていた。 面倒を見もせずに親れいむ達に任せ、それどころか旨いものを横取りしてもいた。 その親まりさを子まりさ達が慕っていたのは、ひとえに強さへの羨望と尊敬によるものだったのだ。 帽子を奪われ、ゆっくりぷれいすを前にした今、 その親まりさが戦わないとすれば、 子まりさが今まで親まりさの横暴に耐えてきた意味がなくなる。 ここで子まりさ達が親まりさの降参を許すはずがなかった。 親まりさにも、それはよくわかったようだ。 「ごべん……ごべんだざい…… まりさ……だだがえだい……」 「ばやぐじろおおおお!!ぐぞまりざあああああ!!」 叫ぶ子まりさ達に、俺は確認した。 「始めていいんだな?」 「はやくはじめるんだぜ!!さっさとやられるんだぜ!!」 「ゆ、やべぶぎゃぁ!!」 懇願しようとする親まりさの口内を、つま先で蹴り抜く。 これだけの大きさの饅頭はそうそう蹴り飛ばせるものじゃないが、 それでも親まりさは少しばかり浮き、後方に着地して倒れ込んだ。 「ゆばぁ……あがぁ……」 涙を流しながらえずく親まりさの口から、また歯がこぼれる。 前歯が殆どいかれたようだ。 「やべで……やべびぇっ!!」 腫れあがった左側面にローキックを叩きつける。 「びぎぃいい!!びぎぃいいい!!!」 飛び跳ねてもんどりうつ親まりさ。 ここにきて親まりさはようやく立ち上がった。 しかし、こいつが選んだのは闘うことではなく逃げることだった。 「にげるなああああ!!なにしてるううううう!!」 「さっさとたたかえええええ!!」 「まりさたちがゆっくりできなくてもいいのかああああ!!? それでもちちおやなんだぜえええええ!!?」 「ぶひゅう……!ぶひゅう……!!」 部屋の隅に背中を押しつけ、泣きながら荒い息をつく親まりさ。 俺はあえて追わず、子まりさ共に向かってルールを説明した。 「勝負が終わる条件はふたつ。 親まりさが死んだときと、子まりさ達が負けを認めたときだ。 あいつが死ぬか、おまえ達が負けを宣言すれば、勝負は終わりだ」 おかしなルールだが、これはもとから勝負ではない。 「負けた時点で、お前たちは俺の奴隷になる。 そうなったらゆっくりさせない。ずっとゆっくりさせない。 これから先、お前らが死ぬまで、 あまあまももう食べられない。すっきりもできない。 遊ぶ時間なんかないし、眠ることも許さない。 永遠に痛めつけ続けてやる。 ここで負ければ、お前たちは、 ずっと、ずっと、永久に、ゆっくりできない」 まりさ共の顔色がみるみるうちに青ざめていった。 ゆっくりすることが全てに優先し、 ゆっくりするために生きているゆっくりにとって、 それは死刑宣告よりもずっと恐ろしい成り行きだろう。 「だだがえええええ!!だだがえええええええ!!」 「ぐぞまりざあああああああ!!!わがっでるのがああああ!!!」 「ゆびゅうううう!!ゆびゅううううう!!」 涙を流し続ける目を見開き、親まりさは鳴き声を発していた。 闘うしかない。 それはわかっていたが、体がついていかなかった。 がたがた震えつづける体を引き摺り、親まりさは少しずつ前に出てきた。 俺の目の前にやっとのことで辿り着くと、 親まりさは息をついてから、緩慢な動きで体当たりをしてきた。 ぼでんと足に当たった後、親まりさは悶絶した。 「びぃいいい!!いだい!いだいよううう!!」 歯が折れ、腫れあがった顔面では、 体当たりをすると自分が痛い目を見ることになる。 ゆっくりの唯一といっていい攻撃手段が、ここにきて用をなさなくなった。 この一発で、親まりさは早くも音をあげた。 「だべでずうう……だべでずうう……だだがえまぜん…… ばりざをだすげでぐだざい……だずげでぐだざい……」 「負けか?」 「まげまじだあ……ばりざのまげでずうう……」 「お前には聞いてない。お前の子供たちに聞いてる」 親まりさの顔が絶望に歪む。 「負けか?」 「まげじゃないいいいい!!!がづ!!がでええええ!!」 「だだがえええええええ!!!ばがあああああ!!ぐぞまりざあああ」 「がでええええ!!ぼうじがえぜええええええ!!! ゆっぐりでぎないのいやだあああああああ!!」 「じねえええええ!!!がでなぎゃじねえええええ!!! まりざだぢをゆっぐりざぜないぢぢおやはじねえええええ!!!!」 「むりだよおおお……いだいよううううう……」 ぼろぼろぼろと涙を流し、子供たちを見つめる親まりさの頭を、 俺はしたたかに踏みつけた。 「あぎゅううっ!!」 踵で踏みつける。踏みつける。何度も何度も踏みつける。 「あぎゅ!!ぐゆう!!びゅう!!びゅ!!ぎゅぶぃいい!!」 踏みつけるたびに上顎と下顎を叩きあわせる音が響く。 次に右足を頭に押し付け、体重をかけて押しつぶす。 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 押しつぶしながら、ゆっくりと足を左右にこじってやる。 ぺきぺきと、口の中で歯が折れる感触が伝わってきた。 「ゆうぐううううううううううう!!!」 失禁した。 よく見ると脱糞もしている。押しつぶしたせいもありそうだ。 足をどけて開放し、また横に蹴り飛ばす。 「さあ、頑張って帽子を奪い返そうか」 俺が近づいていくと、親まりさは必死に起き上がり、 ずりずりと這いながら逃げていった。 再び部屋の角にすがりつく親まりさの上に、 俺は覆いかぶさるように立ちはだかった。 「ゆぐ……ゆぐ……ゆぐじでぐだざいぃ………」 「命乞いなら子供に言うんだな」 そう言ってやり、今度は右頬を蹴りつける。 壁に両手をついて体を支えながら、俺は蹴り続けた。 「ばっ!!ゆびぃ!!びぃ!!ぎゅう!!ゆぶじびぇっ!!」 何十発と蹴っていくうちに、右側もぱんぱんに腫れあがった。 もう親まりさの顔面に腫れていないところはなくなった。 黒い風船のようにいびつに膨れ上がり、一回り大きくなったように見える。 両目は開かず、歯もほぼ全部抜け落ちた状態だ。 「あいいいいいぃぃぃぃ……あいいいいいぃぃぃぃ…………」 小休止をして眺める。 親まりさは、今や壊れたおもちゃのように音をたてるだけだ。 「負けか?」 「ば……ばりざは……ぼう……」 「じねえええええ!!じねぇええええええ!!」 子まりさ共の叫びは、もはや「闘え」でも「勝て」でもなかった。 「おで……おでがい………ばりざ……ばりざの…おぢびぢゃん……」 見えない目で、声を頼りに親まりさは子供のところへ這いずっていった。 ひどく遅い歩みを、休憩がてら邪魔せずに見守ってやる。 親まりさにとっても必死だろう、今やすがれるものは子供だけだった。 ケージの格子に頬を押し当て、親まりさは懇願した。 「ゆぶじで……ゆぶじで……」 「もどれええええ!!ぐぞまりざああああ!!」 「だだがえまじぇえん……いだい…いだいんでずううう…… まえもみえだい……がらだがいだぐで……はねられだい……」 「まげるなあああ!!だだがえ!!だだがえええ!! まりざざまはづよいんだろおおおおおお!!?」 「おぢびぢゃん……おぢびぢゃん……」 「負けたら永遠にゆっくりできない。 思いつく限りの方法でいじめ抜いてやる。 それでもいいなら、お父さんを助けてやるんだな」 俺が念を押してやると、 子まりさ共は恐慌をきたし、ケージにしがみつく親まりさに体当たりを始めた。 「いげえええええ!!ぐぞまりざあああああ!!」 「ゆぎゅうぅ!!」 腫れあがった顔には、ケージの格子ごしでも痛みは大きいようだ。 それでも親まりさは離れようとせず、子まりさに懇願を続けた。 「おぢびぢゃん……おぢびぢゃん…ゆぶっ…… ばりざの……びぃ!……がわいいおぢび……ぶっ……ぢゃん…… おどうざんを……おどうざんをだず……げで……… いいごだがら……あびゅう!………………おでがい……おでがい……」 負けを認めたとき、子まりさ共の末路は決まっている。 それがわかっていながら、この親は自分の命を懇願していた。 口では猫なで声を出していても、このまりさは全く子供を愛していない。 餡子脳でもそれぐらいはわかるようで、 子まりさは懇願されるほどに憎悪をむき出しにして罵った。 「ぐぞまりざあああ!!ぎだないがおをみぜるなあああ!!」 「だまれ!!だまれ!!だまれ!!だまれえええええ!! おまえだげはゆっぐりずるなぁあああああああ!!!」 「じねええええ!!おまえがじねええええ!! だだがっでがっでじねええええええええ!!!」 体当たりでは飽き足らず、 格子の隙間からはみ出る親まりさの皮膚に噛みつき始めた。 「あいいいぃ!!」 弾かれるようにケージから離れる親まりさ。 「話し合いは終わりだな」 「ゆぶ!ま!まっで!!まっでぐだざい!! ごどもだちはごんらんじでるだげなんでず!! いま!いまばなじあいをぉ……ゆぎいいぃ!!」 親まりさのお下げを引っ掴み、引きよせる。 泣き喚き謝り懇願する親まりさを、俺は殴り続けた。 皮が裂かれて中の餡子が出ないように打ち方には留意し、 ひたすら打撲傷のみを与え続ける。 こめかみを殴りつけた。 体中を張り手で叩き続けた。 口をこじ開けて下顎を踏みつけた。 逆さにして頭を床に叩きつけ、底面を何度も踏みつけた。 持ち上げて、顔面と言わず顔と言わず背中と言わず壁に叩きつけた。 全身が赤黒いいびつな饅頭と化し、親まりさは床に転がっていた。 もはや、髪がなければどこが顔なのかよくわからない。 それでも、荒い息と断続的なうめき声、 そして流れ続ける涙が、意識を保っていることを示していた。 もともと、ゆっくりは人間と違い、気絶も発狂もしない。 人間なら苦痛から精神を守るためにそういう現象が起こることもあるが、 ゆっくりの精神にそんな高度な活動は不可能だった。 「あび……………ゆび……………」 呻く親まりさ。 ここまでしても、俺の心は全く晴れなかった。 それどころか、こいつらに対する憎悪と、そして虚しさがつのるばかりだ。 こんな脆弱で醜い生き物が、俺の家族を殺し、俺の人生を壊した。そしてそうさせたのは俺だ。 「お前らの負けだ」 俺は宣告した。 「ゆゆっ!?」 「なにをいってるんだぜごみくず!!くずまりさはまだいきてるのぜ!!」 「あれ、いきてるのぜ?」 「いきてるんだぜ!!まだうめいてるんだぜ!!」 「もういい。負けだ。俺が決めた」 文句を言う子まりさ共に、俺は繰り返した。 「やくそくをまもるんだぜ!!ごみくず!!」 「おぼうしかえせええええええ!!」 「今度はお前らの番だ」 俺の言葉に、子まりさ共がびくりと身を震わせる。 親まりさの戦いを見て、自分たちでは勝てないことぐらいはわかるようだ。 俺は子まりさ全員をケージから出して言った。 「三匹一緒にかかってこい」 「ゆ!?」 「さんにんならかてるのぜ!!」 「ごみくずはつくづくばかなんだぜ!! ひとりにかったからってちょうしにのってるんだぜ!? さんにんならまけるわけがないんだぜ!! なぶりごろしにしてやるんだぜえええ!!」 詳細は省く。 今、俺の前には、ぐずぐずの風船になって転がる親まりさと、 全身の半分を赤黒く腫れあがらせた子まりさ三匹が転がっている。 やや面倒になったので、子まりさのほうは親ほどには傷めつけていない。 それでも全員、言葉にならない呻きを漏らして涙を流している。 「今日からお前たちは俺の奴隷だ。いいな?」 俺は言い渡した。 答えがなかったので、一匹ずつ蹴りつける。 「あじゅ!!」 「ゆびゃっ!!」 「だいぃいいい!!」 「ゆがぁあ!!」 「返事をしろ。いいな?」 「「「「いいいいいいでずううううう!!」」」」 「立て」 のろのろと立ち上がる子まりさ達。 親まりさは全身の痛みに苦悶しながら、だいぶ遅れてどうにか立ち上がった。 「背中を向けろ」 子まりさ達がすぐに背中を向ける。 親まりさはずるずると床の上で回転したが、あらぬ方向を向いて止まった。 両瞼が腫れあがり、目がふさがっているので自分の向きがわからないようだ。 「あいぃいいい!!」 髪を掴んで持ち上げ、強引に背中を向けさせる。 俺は太い注射器を取り出すと、 背中を向けて並んだまりさの一匹を選び、 背中に注射器を突き立てた。 「ぐいいいいい!!いだいごどじだいでええええええ!!!」 悲鳴をあげる子まりさの内部に、注射器内の液体を注ぎ込む。 オレンジジュースだ。 どれだけ消耗していても、これを与えればゆっくりは回復する。 三匹の子まりさ、そして親まりさに、同じように処置を施す。 親まりさには表面のキズがいくつかあったので、 小麦粉の溶液をちょいちょいと塗り込む。 放っといてもいいが、なにかのはずみで傷から餡子が漏れないとも限らない。 これで、しばらくおけば普通に動き回れるようにはなるはずだ。 その前に、最初の子まりさに命じる。 「こっちに来い」 怯えながら、子まりさはこちらに這いずってきた。 その頭を押さえつけ、したたかに殴りつける。 「ぎびゃああっ!!」 「お前、さっき俺に「痛いことしないで」と命令したな」 「べいれいじゃありばぜええんん!!おでがいでずうううう!!」 「同じだ。いいか、饅頭共、お前らは俺の奴隷だ 奴隷に、俺に対して要求する権利はない。わかったな?」 言いながら、俺は同じ箇所を何度も何度も殴りつける。 「あぎいいいいわがりばじだあああああ!!!」 さんざん殴り、子まりさの右頬はぱんぱんに腫れあがった。 再び、背中からオレンジジュースを流し込む。 二度手間だが、上下関係ははっきりさせておく必要がある。 他のまりさ共も、がくがくと震えながらこちらを見ていた。 しばらく待った後、俺は頃合いを見て壁のスイッチを押した。 とたんに、鏡張りになっていた一面の壁が、隣の部屋の光景を移した。 この壁はマジックミラーで、鏡の状態と透明な状態を、 ボタン操作で切り替えることができるようになっていた。 今は向こうからも見えるようになっている。 部屋の向こう側は、本当のゆっくりプレイスだった。 部屋の間取りはこちら側と同じく八畳程度だったが、 壁には草花や青空や動物たちがデフォルメした可愛らしい画調で描かれ、 ふかふかのクッションやソファがあちこちに山ほど積まれている。 ブランコや滑り台や砂場、遊び場や玩具もふんだんにあった。 部屋の隅には餌場があり、いつでも砂糖水が飲め、 定期的にお菓子が補充されるようになっている。 そこには大小さまざま、およそ十数匹のゆっくり共がくつろいでいた。 ソファに寝転び、滑り台で遊び、家族で歌を歌う。 この部屋には常時二人ほどの人間が世話係を勤めており、 好き勝手に垂れ流される排泄物をはしから処理したり、 求められれば遊び相手になったりしていた。 「ゆぅうううううう…………!!」 おおむね体力を回復させたまりさ共は、 眼前に広がるゆっくりプレイスに目を輝かせた。 「ゆぅうううう!!すごいのぜ!!とっっっってもゆっくりできるのぜ!!」 「あれはまりささまのゆっくりぷれいすにするんだぜ!! あいつらはおいだしてやるんだぜ!!」 自分たちの状況を完全に忘れて騒ぎ立て、壁に体当たりする子まりさ共。 壁が破れないとみるや、俺の方を向く。 「おい、ごみくず!まりささまをあっ……」 俺の顔を見たとたんに、状況を思い出したようだ。 子まりさは失言に気づき、口を閉ざして震えだした。 親まりさは失言こそしなかったものの、期待に目を輝かせていた。 その目が、すがるように俺を見上げている。 「俺は言ったはずだ。ずっとゆっくりさせないと」 そう言ってやりながら、俺は失言した子まりさを踏みつける。 「びゅぇええっ!!」 何度も踏みつけてやりながら、俺は説明する。 「あのゆっくり共はお前らとは関係ない。 あいつらはあそこでゆっくりするが、お前らはここでずっと苦しんでもらう。 わかったな」 「ゆひぃぃいいい………」 慈悲を求めるように目を潤ませるまりさ共。 「わかったな!」 「わがりばじだあああ!!」 踏みつけていた子まりさを蹴り飛ばし、親まりさに叩きつけると、 ようやく返事が返ってきた。 ゆっくりプレイス側のゆっくりが、不安げにこちらを見つめていたが、 隣にいる世話係の人間が説明してやると安心したようだ。 どこか侮蔑を顔に浮かべ、にやつきながら眺め始めた。 踏みつけた子まりさにオレンジジュースを軽く注入してから、 親まりさ共に言ってやる。 「さて、その前に、飯の時間にしようか」 「ゆゆっ!?」 まりさ共の目が輝く。 オレンジジュースを注射器で注入されてはいても、 口からではないので味は楽しめないし、満腹感もない。 人間でも、栄養剤をいくら注入されても腹は膨れないのと同じことだ。 すでに丸一日、こいつらには何も食わせていない。 さんざん甘やかされてきたこいつらにとって、空腹は耐えがたいだろう。 口には出さずとも、軽く飛び跳ねて催促するまりさ共。 通信機で連絡をつけると、ほどなくして食事は運ばれてきた。 食事が、隣のゆっくりプレイスに運ばれる。 そこに運ばれてきたのは、信じられぬようなごちそうだった。 大皿に盛られたケーキ、プリン、フルーツ。 数多のトッピングがちりばめられたあまあまだ。 かつてこのゲス共が食べていたものとは比べものにならない高級品である。 「ゆっ!!ゆっくりできるごはんだよ!!」 「あまあま~、あまあま~!!」 「あわてなくてもたくさんあるからね!!なかよくゆっくりたべようね!!」 隣のゆっくり共の声が聞こえてくる。 マジックミラーで遮ってはいても、 スピーカーによって、こちらによく声が通るようにしてある。 「あまあま……あまあまたべたいぃ……」 「おなかすいたぁぁ……」 涎を垂れ流しながら、マジックミラーにへばりつくまりさ共。 向こうのゆっくり共は一心不乱に食べている。 「うっめ!めっちゃうっめまじうっめ!うっめ!ぱねぇ!!」 「むーちゃ、むーちゃ……しあわせえぇぇぇ!!」 「ちちちちちちあわちぇええええ!!」 「すっっごくゆっくりしてるよぉぉ……」 「ゆっくりしたいよぉぉぉ………」 「おにいさん……まりさにも、まりさにもあまあま……」 「お前らの飯はない」 俺の言葉に愕然とするまりさ共。 「ゆゆっ!ご、ごはんのじかんだよ?」 「向こうのゆっくり共のことだ。お前らに関係ない」 「おねがいします!ごはん!ごはんくださいぃぃぃ!!」 要求してきた子まりさの顔面を爪先で蹴る。 「びぃゆううう!!」 「さっき言ったはずだ。 お前らは俺に負け、奴隷になった。 もう飯はやらない。ましてあまあまは一生食べられない」 「ぞんな………ぞんな………」 「ゆっぐり、でぎだい………」 「何度でも言う。お前らはもう一生ゆっくりできない」 絶望と悲しみに大口を開けて震えるまりさ共。 子まりさが一匹失禁した。 「ちちちちあわちぇー♪」 「む~ちゃ!む~ちゃ!ゆっきゅりできりゅよぉぉぉ!」 ゆっくりプレイスの赤ゆっくりの歌が響く中、 まりさ共は絶望の淵にいた。 しかし、まだまだこいつらには余裕がある。 今後しっかりと、さらなる絶望を堪能してもらわなければならない。 とりあえず、少しずつ段階を踏んでいく。 この部屋にまりさ共と共に寝泊まりしながら、 最初のうちは手を下さず、餌を与えずに放置した。 ゆっくりという生物(と呼ぶべきなのかどうか)は、 非常に脆い反面、おそろしく頑丈な面もある。 どれだけ傷をつけられようと、 体内の中心部にある中枢餡が破壊されるか、 もしくは中の餡子があらかた漏れ出さないかぎり死なない。 餓死や病死という死因もあるが、 適当に室内で世話していれば、よほどのことがないかぎり病気にはならない。 餌は、一月ほど与えなくても大丈夫らしいが、 食欲はおそろしく旺盛なので、 一日抜いただけでも天地がひっくり返ったように暴れる。 まずは食からだ。 三日目にして、すでにまりさ達はこの世の終わりのような表情で、 だらしなく床に寝そべっていた。 初め、三匹の子まりさは親まりさを罵っていた。 「おまえのせいだ!!おまえがまけたせいでゆっくりできないんだ!!」 「さんざんいばってたくせにぜんぜんよわかったんだぜ!! くそまりさのうそつき!!ぺてん!!さぎ!!」 「やかましいんだぜええ!! おまえらだってまけたんだぜ!!ごみくず!!」 傷があらかた回復した親まりさは、子まりさに叫び散らしていた。 もはや威厳も何もないが、力だけはあり、 子まりさ共に襲いかかられても勝てる。 もはや暴力だけで、親まりさは子まりさ共を恫喝していた。 何度となく掴み合いの喧嘩、というか殺し合いを始めたが、 その度に俺が蹴りをくれたので、ほどなく罵り合うだけに留まった。 そして今、疲れきって体力もなく、 四匹とも力なく床に横たわるだけである。 一日中、獣じみた呻きを発するか、ぶつぶつと文句を言うばかりで、 暴れたり罵ったりする気力はないようだ。 最初の頃は俺に食事を懇願していたが、 その都度顔中が腫れあがるほど殴られたため、 いまではびくびくして俺に近づかないようにしている。 それでも、一日に五度の隣の食事が始まると、 全員でマジックミラーにへばりついた。 幸福にのたうちながら舌鼓をうつゆっくり共の姿を、 涙と涎を垂れ流しながら恨めしそうに眺めていた。 このゲスまりさ共は、かつて俺の部屋でずっと主として君臨していた。 他のゆっくり共を目下に従え、ふんぞり返って威張っていた。 そのプライドが、これまでまりさ共の口を閉じていたが、 ついに親まりさの心が折れた。 「おねがいです!まりさたちにもわけてください!!」 プライドをかなぐり捨て、向こうのゆっくり共に物乞いを始めたのだった。 それを皮切りに、子まりさ共も喚き始める。 「おねがいしますうう!!」 「おなかがすいてしにそうなんですううう!!」 「すこしだけでいいですから!!あまあまくださいいいい!!」 隣のゆっくり共がこちらを振り向いた。 その後、ゆっくり同士でひそひそと何事か囁いていたが、 やがてこちらを向いて言った。 「ひとごろしまりさにあげるあまあまはないよ!!」 「ゆっくりくるしんでね!!」 「そんなあああああ!!おねがいしますうううう!!」 「ば~きゃ!ば~きゃ!」 「よだれでべちょべちょ!みっともないね!!」 「おちびちゃんたちはあんなふうにならないよね!!」 「うん!あんなばかにはぜったいならないよ!!」 その時は、食事が残らず食べ尽くされるのをじっと見守るしかなかった。 その日、次の食事がやってきた時も、まりさ共は懇願した。 懇願するまりさ共を、始めのうちは罵っていた隣のゆっくり共だったが、 やがて、それまで部屋の中心で食べていた食事を、 まりさ共の鼻先にまで押しやってきた。 「あああああありがどうございまずううううう!!!」 「あまあま!!あまあまありがどうございまずううううう!!!」 分けてもらえると思い、嬉し涙を流して叫ぶまりさ共。 しかしそこまでだった。 まりさ共の目の前に積み上げられた食事を、ゆっくり共が食べ始めた。 マジックミラーに遮られて手を出すこともできず、 すぐ目の前で、まりさ共は食事を見せつけられることになった。 「む~ちゃ♪む~ちゃ♪しあわせぇ~♪」 「このくっきーあまあまだよぅ~♪ゆっくりぃぃぃぃ~~」 「たべないの?とぉ~~~ってもゆっくりできるよぉ~? む~ちゃむ~ちゃ……しししししあわせぇぇ~~~~!!」 まりさ達の方を向きながら、ことさら美味そうに食べてみせるゆっくり共。 涙を流し、まりさ共はぎりぎりと歯噛みしていた。 ゆっくりという生物は、弱い者を苛めるのが大好きである。 どんなに性格がよさそうに見えるゆっくりでも、 自分より弱い者や無抵抗の者を見ると、たちまち嗜虐心を燃え上がらせる。 その陰湿さは、俺自身が体験してきてよく知っている。 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎいいいいいいい!!!」 怒りと悔しさと空腹に歯ぎしりするまりさ共。 「ゆぎぎぎぎ~~~♪」 「おなきゃすいちゃ~♪あみゃあみゃくだしゃ~い♪」 マジックミラーごしに、赤ゆっくり共がまりさ共の顔真似をしてみせ、 大人ゆっくり共がそれを見て笑う。 親たちが喜ぶのを見て、赤ゆっくり共はあの手この手でまりさ共をからかう。 地獄だった。 その地獄が、食事のたびに繰り広げられた。 続く