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笑顔の仮面をかぶって、私は魅音を部屋に招いた。 魅音は脳天気に、私のことをまるで疑いもせずに部屋にあがってくる。 「落ち着いた雰囲気の部屋だね」 そう言って微笑む魅音の表情が、私の手によってこれからどんな風に崩れていくのか今から楽しみで仕方ない。 魅音をテーブルに着くように促す。 「学校はどう?」 「新しいガッコはやっぱりつまらないです。一応通ってはいますけど、気分が乗らないときはサボらせてもらっています。全寮制だとなかなかそうはいかないですからね」 「あはははは。やっぱり聖ルチは辛かったか」 「ちぇー、お姉も一度閉じこめられてみろってんです」 「あはは、ごめんごめん。ケーキ買ってきたからさ。一緒に食べよ?」 魅音が持ってきた箱を開けると、チーズケーキが2つ入っていた。 私達はそれを食べながら、しばしの間たわいもない話を交わした。学校のこととか、そんなことを色々と。 でも楽しげに話を合わせながらも、そんなもの今の私にとってはどうでもよかった。 考えてみればこんな感じで魅音と話すのは久しぶりだ。けれど、やはりもう私達は……戻れない。 「ああ、そうそう。私、この前ちょっと面白いもの手に入れたんですよ」 「へぇー? 何々? どんなもの?」 「ええ、今持ってきますね」 和んだ頃合いを見計らって、私はテーブルから離れ、居間のタンスへと向かっていく。 引き出しを開けて、目的の得物を取り出す。 以前、不良に絡まれたときに葛西に頼んで調達したスタンガンだ。その固い手触りに、にんまりとした笑みがこぼれる。 あくまでも魅音には見えないように……表向きはただ勿体ぶるように、私は背中に隠した形で魅音の元へと戻っていく。 にこにこと笑顔を浮かべる魅音へ、一歩一歩近付いていく度に、私の中のどす黒いものがにじみ出てくる。早くこの感情を解放しろ、ぶちまけろと私を急き立てる。 あは……あははは……あはあははは……もうダメだ。もう我慢出来ないや。くっくっ……くっくっくっくっ……。 込み上げてくる笑いを押さえきれず、私の口元が歪む。 けれど、それを見てもまだ魅音は私が上機嫌で笑っているのだと、無防備に気を許している。本当に馬鹿な奴だ。つくづく救いようがない。 私は魅音の隣にまで近付いた。 「ねえ詩音。面白いものってどんなの? 早く見せてよ」 瞳を輝かせてそんなことを言ってくる魅音。 そして、そこで私は笑顔を消した。 冷淡な視線で魅音を見下ろす。 「……え? 詩音……?」 それはほんの数秒の出来事だったけれど、魅音の表情を凍り付かせるのには十分だった。そう、そんな感じに……束の間に手に入れた希望を失ったときの表情を見たかった。 「ええ。今、見せてあげますよっ!!」 私は最大出力に設定したスタンガンを魅音に押しつける。ろくに悲鳴を言う事も出来ず、魅音は気を失った。 居間へと魅音を引きずってから、私は手早く服を脱がした。 身に着けていたものすべてを剥ぎ取り、猿ぐつわも噛ませておく。そして、万歳させた格好で両手をガムテープで傘に括り付け、そして両足も同様に大股開きの格好で箒にガムテープで括り付ける。 よし、これで準備完了。 さて、これからどうやっていたぶろうか? 屈辱的でインパクトが強く、それでしかも体にはダメージが少なくて済む方法。そもそも、陵辱なんてものがそんな類をまとめたものだけど……。 魅音の白い裸体を見下ろしながら、私はしばし黙考する。たわわに実り、整った双丘にくびれた腰。バランスよく肉が付いたその体は、双子の私が見ても男なら放ってはおかないだろうと感じた。 (……なんだ、あるじゃない。典型的なのが) 唇を歪め、私は非常時用に用意していたロウソクとライターを持ってくる。場合によってはクリスマスとかにも使えるかもしれない、カラフルなロウソク。 魅音の右隣に座り、ロウソクに火を点けて腹の上に掲げる。 ロウは瞬く間に溶け、ロウソクを伝って流れた。 そして……最初の一滴が魅音の腹に落ちる。 途端、魅音の体がびくりと蠢く。目を瞑ったまま、悶えた表情を浮かべ小さく呻く。 ぽた ぽた ぽた……と続いてロウが魅音の腹に落ちる。 「…………っ!? ……んん~っ!!」 魅音が目を覚まし、体をよじらせた。自分が全裸であるということに気付き、顔を赤くする。 「あは。……起きた?」 「んん~っ!? んっ、ん~っ!」 けれど、魅音には首を振って悶えることしか出来ない。あはは、いい気味だ。 一滴、一滴ロウが魅音の腹に垂れるたび、体をくねらせる。 「んんん~~っ! んん~~っ!」 必死に魅音が抗議の呻き声を上げるが、私にはむしろそれが心地いい。 「くっくっくっ。どうやらお腹はやめて欲しいみたいだねえ。それじゃあお姉はどこがいいのかなあ?」 優しく魅音に訊いてみる。勿論、魅音に答えられるはずがないし、仮に答えられたとしても私に応じるつもりは無いけれど。 「んんっ! んぐんんんんぐっ、んぐぅううううぅっ!」 私は空いた左手を魅音の右乳房に置く。むっちりとした弾力と滑らかな肌触り、そして温もりが私の手のひらから十二分に存在感を訴えてくる。 私は魅音の乳房を自分好みの力加減で撫で回し、揉みしだき、そしてときには乳首を摘んで愛撫する。 「んんっ!? んっ……んふぅ~~っ!」 私の手のひらで魅音の乳首がはしたなく勃起する。 こりこりとした感触が実に嗜虐心をそそる。 「へぇ~、お姉は胸も弱いんですねえ。じゃあ、こうしたらどうですかねえ……。くっくっ」 「んっ!? んむぅうううぅっ!!」 必死の形相で首を横に振る魅音を見ながら、私はロウソクを魅音の胸の上へと……ゆっくりと移動していく。 ロウソクの先でじわじわと大きくなる滴を私は愉悦の視線で……そして魅音は怯えた視線で見詰める。 ポタリ 「んむううううぅぅぅぅ~~~~っ!?」 固く勃起し、敏感になった乳首に滴が落ちた途端、魅音は背中をのけぞらせた。 ポタポタと熱いロウが魅音の胸に落ちるたび、魅音が身悶えする。 あははは、こりゃあ面白いや☆ 「よしよし、胸でこれなら……あっちの方はどうかなあ?」 そう言って、私はにたりとした笑みを魅音に見せつける。 魅音はロウが落ちたわけでもないのに、びくりと震えた。 「んむぅっ! んむんむうぅ、むううぅぅっ!!」 暴れる魅音をよそに、私はロウソクを魅音の秘部へと持っていく。 固く閉じた蕾がどんな刺激を魅音に与えるのか、想像しただけで楽しい。 「止めて欲しい?」 戯れにそう聞いてみた途端、魅音は何度も頷いてくる。 「そう。止めて欲しいんだ。……そうだよね。全裸にされてその上ロウソクをあちこちに垂らされるのって、恥ずかしいし熱くて嫌だよねえ」 私の台詞を慈悲だと思ったのか、媚びた視線を魅音が私に向ける。 それに対して、私はもう一度優しく微笑み返す。 「でも駄目」 「んん~~~~~~~っ!!」 私は微笑んだまま魅音の秘部にロウを垂らす。 再び絶望の色に瞳が染まる様が、また愉しくて仕方ない。 「あはははははははは。あの園崎魅音が……園崎家次期頭首様ともあろうお人が、全裸でロウソクを垂らされて悶えて……くっくっくっ。ざまあありませんね。この前見せた姿はどこに行ってしまったんです? あはははははっ!!」 「んん~~っ!! んむうううぅぅ~~っ!!」 そう、ここにいるのはただの玩具。この私、園崎詩音という鬼の生け贄。 「でもお姉? まさかこのまま終わるなんて思っちゃいないですよね? どうせこんなのは過ぎてしまえば何の傷もあんたに残さないんだから」 そうだ。こんなもので済ますつもりはない。 私が受けた屈辱、恥辱……あのときに失ったものはこんなものじゃない。 「んんっ! ふうっ……んっ……むううぅっ!」 あのとき私が魅音にされたように、私もまた魅音の秘部を愛撫していく。秘唇を中指と人差し指でなぞり、そして秘芯を転がして弄ぶ。 「あははは。何? お姉……感じてるんだ。全裸にされて両手両足を拘束されてロウソク垂らされた挙げ句、こんな風にされて感じてしまうんですねお姉は。あはは……園崎家時期頭首様はとんだ変態女ですねえ。こんな姿、他の人が見たら何て思う事やら」 「ん~~~~っ! んんむぅ~~~~っ!」 「言い訳なんてしても無駄ですよ。ぱっくりと恥ずかしい部分を開いて……しかもその上クリトリスをこんなにも大きくして、感じてないなんて言ったところで説得力ないです」 そう言いながら、私はぬちゃぬちゃと淫靡な水音を魅音に聞かせる。私の手の中で魅音の秘部は熱く高ぶっていた。 「じゃあ……もうこれで準備は良さそうですね。お姉」 私はロウソクに舌を這わせ、唾液をまとわりつかせていく。 そして、それを魅音に見せつける。 「ふふ……お姉? 今からこれがお姉の中に入るんですよ? 気分はどうですか? こんなものがお姉の初めての相手なんですよ。これでお姉の純潔が失われるわけです。うふふふふ……」 「ん~~っ! ん~~~~~~っ!」 それは嫌だと魅音が喚き立てる。 ああ、実にいい気分だ。 この背徳感……堪らない。背筋がぞくぞくして、思わずこっちまでイってしまいそうなくらいだ。 私は興奮に浸りながら、魅音の入り口にロウソクをあてがう。 「ん~~~~~~~~~~~~っ!!」 そして、魅音の悲鳴を聞きながら、一気にロウソクを魅音の膣内へと挿入した。 魅音は背中を大きく仰け反らせ、そしてぽろぽろと涙を流した。いい……実にいい。その顔をもっと見せろ。もっともっと苦痛と絶望に歪ませるがいい。 遠慮なんかするものか、このまま奧まで犯して、子宮が壊れるくらいに突きまくってやるよ。 「んんっ! んっ……んんっ……んっ……」 ロウソクを出し入れする度、魅音の口から喘ぎ声が漏れる。くっくっくっ……さあ、いつまで耐えられる? これから先、嫌って言うほどイかせてやるよ。あははははははは。 “……あれ?” 激しく魅音を犯しながら、妙な違和感に私は眉根を寄せる。 何かがおかしい。 魅音は初めてのはずだ。初めてのはずなのに……。 「んっ……んむぅっ! んん~~っ!!」 どうして、全然……破瓜の血が流れないんだ? それは、ときには激しい運動とかで処女膜が破れることがあるということくらいは私だって知っているけど……。 けれど、これはそうじゃない。 予感めいた何かが頭をよぎって、私は魅音の口から猿ぐつわを外した。 「はぁっ……あっ……くっ……んっ」 荒く熱い……そして甘いものが混じった吐息が魅音の口から漏れる。 「…………どういうことですか? お姉……まさか、初めてじゃない何てこと……あります?」 でもそんなはずはない。だって魅音が誰かと付き合っていたとか、そういうことをしていたとか……そんな話は聞いたことがない。 でもそれならどうして? 涙を流しながら、魅音が私を見詰め返す。 「……詩音だけが……あんな風にケジメを取らされるなんて……ひっく……あんまり……なんだもの。……だから……私も……あのときの人達に頼んで……」 “……え?” 魅音の嗚咽を聞きながら、私は意識が遠くなるのを自覚した。 「あの人達だってね。……ひっく……詩音のことをただの慰み者にしようとかは……思ってなかった。なるべくなら……っく……詩音に負担が掛からないように……すぐに終わるようにって、気を遣ってた。命令だから仕方なく……って……ひっく……」 ちょっと待てちょっと待てちょっと待て……。それじゃあ何? それじゃあ、私が魅音にしたことって結局……何なの? ついさっきまで感じていた興奮なんて、どこかに消し飛んでいた。魅音の涙から目を離すことが出来ない。 「詩音がね、悟史の好きだって分かって……私、詩音と悟史に幸せになって欲しかったんだよ。……っく……えっく……だって……いつも詩音ばっかり……可愛そうで、私達は同じ双子なのに……何でいつも詩音ばっかり……こんな……こんな……」 嗚咽混じりの魅音の言葉が、私の頭の中で何度も繰り返される。 私が悟史君を好きになったように、魅音だって悟史君を好きだったとしても何の不思議も無い。……私達は同じものを好み、そして愛すのだから。それを……それなのに、この馬鹿は私にくだらない義理立てをして……自ら……。本当に馬鹿。 この馬鹿は人を騙すために涙を流すことなんて出来ない。 そんな涙だから、私の中に宿った乱暴な感情……復讐心だとか嫉妬だとか……そんなものが、まるで水に溶けるように消えていく。 私の目からも…………涙が溢れた。 自分が情けなくて……魅音にあまりにも申し訳なくて……。こんなことしても、何にもならないって分かっていたはずなのに……。 「ごめん。……魅音。本当に……ごめん。私……私……」 涙で視界がにじんで、魅音の顔がよく見えない。私の顔がくしゃくしゃに歪む。 泣きながら私は魅音の秘部からロウソクを抜き、そして拘束を解いた。 「ううん。……だって私は……それでも私の意志だったけど。でも詩音は本当に……無理矢理……だから、もっともっと、辛かったんだよね。……っく」 そして私達は泣きながら互いを抱きしめ合う。今までため込んでいたものを涙と一緒に洗い流していく。 腕の中から伝わってくる魅音の温もりが、今となっては愛おしかった。 そしてそれは魅音も同様なのか、ぎゅうっと私の体を抱きしめてくる。 男女の愛じゃない。けれど、愛おしい相手の体温を感じる幸福感が私を包む。 ああ、好きな相手と肌を重ねるってこういう感じなのか……。我ながら場違いだと思いながら、ふとそんなことを考える。いや……考えてしまう。 だって私達はまだ、愛し合う形でそういうことをしたことは無いから。初めてがそんなのじゃなかったから……。 小さく、心臓が震える。 「……ねえ……魅音」 「うん……詩音」 一旦上半身を離し、視線を交錯させる。 それだけで私達に言葉はいらなかった。だって、私達は同じだから。 ゆっくりと顔を近づけ、目を閉じる。 そして……魅音と唇を重ねた。柔らかくて優しい感触が伝わってくる。 すぐ目の前から伝わってくる魅音の吐息。魅音の存在がこれ以上なく近くに感じられる。 『……んっ』 私たちは同時に唇を離した。 私はその場に座りながら、無言で上着を脱いでいく。 薄い布地を床に置き、ブラを外す。 そして……魅音が私に覆い被さってきた。 魅音の柔らかい温もりが私の上半身に絡み合い、そして細い指が私の肌を優しく愛撫する。くすぐったいような……それでいてどこかほっとするような不思議な感じ。 「あっ……ん」 魅音が私の左胸に口を寄せる。 乳首を舌で転がし、ちゅうちゅうと吸い付く。 その刺激に、私の乳首は堅く尖っていく。 私の胸を吸う魅音の頭に、私は腕を回す。何だか、魅音が赤ちゃんみたいに思えて可愛かった。 私はそのまま魅音の頭を撫でていく。魅音の柔らかくて滑らかな髪が、愛おしい。 「ふぁっ……あっ……ん……」 ぬらりとした魅音の舌。そしてむっちりとした唇。肉感的な刺激が気持ちよくて、私は自然と声を漏らしてしまう。 もっとして欲しい……と、私は魅音を抱きかかえる腕に力を込めた。 魅音の左手が私の上半身を撫でて、そして下半身へと移動していく。私のスカートをまくり上げていって、その中へと入り込んでくる。 「んんっ……ふぁっ……あっ」 下着の中にまで入り込んできた魅音の指が、私の敏感な部分を刺激する。熱を帯びた私の秘部は、既にとろとろに潤っていた。 「あっ……ああっ……んんっ」 魅音の指が細やかに蠢くたび、私は甘い喘ぎ声を漏らし、ぞくりとした快感に浸る。 でも……魅音はどうなんだろう? 薄ぼんやりとした頭でそんなことを考える。 私は左脚の膝を立てて、魅音の秘部へとあてがった。 その途端、一瞬びくりと魅音の体が震えた。 私の太股から生暖かく粘っこい感触が伝わってくる。どうやら魅音も感じていたらしい。露出した秘部を私の太股にこすりつけてくる。 花開いた魅音の秘部が、私の脚の上で切なく踊る。まるで花を握り潰そうとでもいうように、強く押しつけられる。 「…………んっ」 私は魅音の頭を私の胸から離させた。 理由は簡単。魅音をもっと近くに感じたかったから……魅音をこれ以上我慢させたくなかったから。 私は上半身を起こし、右脚も曲げ、捲り上がったスカートの中から、びしょびしょに濡れた下着を脱いでいった。 「魅音……来て」 「……うん」 私達は互いに互いの太股を交差させ、秘部を密着させた。 「下の口はそうは言ってないみたいだなあ」なんて馬鹿でステレオタイプな台詞があったりするけど、私達はそれこそ秘部でキスをするかのように互いを求め合う。 何度も秘唇を重ね合わせ、秘芯を擦り寄せ、蜜を絡めていく。 果てを知ることなく性感が高まっていく。自分が溶けていくようで、それでいて満たされていくような不思議な錯覚。 もう、この行為を止めることは出来なかった。ブレーキの壊れた機関車のように、どこまでも突き進んでいく。 魅音の悦びを感じる。詩音の悦びを伝える。 『はぁっ……あぁっん……んんっ……くぅん』 熱い喘ぎ声が重なる。 体が……心が重なる。 そう……今このとき、私は魅音でありそして詩音だった。 涙が流れる。 それはようやく一つに戻れたという嬉しさであり、そしてこんな形でなければ戻れなかったという切なさの涙だった。 『ああぁっ。……はぁっ……あぁんっ……んんっ……んああああっ……はぁっ……』 互いの嬌声がどんどん高くなる。 体が熱くて堪らない。 全身が悦びに包まれる。 一瞬……ふわりとした感覚に我を失って……。 『あっ……ふぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっん!!』 私達は……ううん、「私」は果てた。 一つになったまま、まどろみへと落ちていく。 今のこの気持ちを絶対に忘れないと誓いながら。 魅音とか……詩音とか、悟史君……鬼……人間。そんなものすべてを抱きしめたまま……。来年の綿流しの頃、自分がどうなっているかなんてまるで知らないまま……。 ―END― -
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今日は綿流しの祭り。 奉納演舞が行われている間、神様である僕は社の中にいないといけない。 もう少し梨花やその仲間達と一緒にいたいけれど仕方がない。 僕はみんなの中には入っていないけれど、それでも彼らと一緒にいるのは楽しい。 正直言って一人で社の中にいるのはほんの少し寂しいのだけれども、それも仕方のないこと。 おや……? 祭具殿の前に人影が見えるのですよ? そのまま僕はその影に近づく。……その人影は富竹と鷹野だった。 富竹がかちゃかちゃと錠前をいじっている。 「……まったく。鷹野さんも好きだね」 「うふふふ。……なんていっても、これは私のライフワークですからね」 あぅあぅ。祭具殿の中を見ようというのですか? 罰当たりな奴らなのです。 でも、僕は別に彼らを罰するつもりはない。見たければ別に見ても構わないと思う。 それにきっと、独りぼっちでいるよりは幾分かましだと思うのです。 かちゃっ 軽快な音を立てて南京錠の留め金が外れる。 「開いたよ。……じゃあ鷹野さん。僕はここで見張っているから、君は中を見てればいい」 「くすくす。あら? ジロウさんは一緒に来てくれないの?」 「……知ってるだろ? 僕はこういうのは苦手なんだ。それに、鷹野さんの邪魔もしたくないしね」 富竹は曖昧に笑った。 「邪魔なんて事ないわよ? 少なくとも、一人でこんな暗いところにいるよりはずっとましよ」 「ちょっ……ちょっと、鷹野さん……」 鷹野は富竹の腕を掴み、強引に祭具殿の中へと引きずり込んでいった。 暗闇の中で独りぼっちよりはましという鷹野の言葉に共感を覚え、僕は少しだけ苦笑した。 彼らの後に続いて、僕も社の中に入っていった。 ランタンの灯りの中、ぱしゃぱしゃとフラッシュをたいて、楽しげに鷹野が写真を撮っている。 その傍らに富竹は立っていて……社の中にある拷問道具や解剖道具に恐々としながらも……楽しげな鷹野を見て笑っていた。 「うふふふふふふ☆ なるほどね。……こんなものが日本にもあったなんて驚きだわ。そしてきっとその意味は……ああ、ひょっとしてこういうこと? じゃあ、人食い鬼伝説の元は……。すごいわ……今までは仮説にすぎなかったけど。これなら……」 見ているものはおどろおどろしいけれど、まるで子供の様に夢中ではしゃぐ鷹野。それは普段の鷹野が見せない鷹野で……僕から見ても、何故か微笑ましいような気がした。 「ほらほら、ジロウさん……これ見て? これどうやって使うか知ってる?」 鷹野が床に落ちていたペンチのような道具を拾い、それを自慢の宝物のように富竹に見せる。 「いや……出来れば聞きたくないかなぁ……。あはは……今夜夢に出てきそうだ」 「んもぅ……ジロウさんの恐がり。……くすくす☆」 心底楽しそうに、鷹野が口に手を当てて笑う。 と、……ふっと鷹野は一瞬、寂しげに微笑んだ。 「……ありがとう。ジロウさん。無理言ってこんな事に付き合わせてしまって……」 「いや、僕の方こそ久しぶりに鷹野さんの笑顔が見られて嬉しいよ」 快活に笑う富竹。 「ねぇ……。ジロウさん?」 鷹野はそれだけを言って、富竹へと近づいていく。 「……?」 そして、富竹の前で一瞬立ち止まり――。 「んっ」 鷹野は富竹の頬に両手を添え、キスをした。 富竹は不意をつかれて驚いたようではあったけれど……すぐに目を閉じて、彼女を優しく抱き寄せた。 鷹野が唇を離す。 「ねぇジロウさん……。ここで、抱いて下さらない?」 「ええっ?」 富竹は今度こそ驚きを隠せなかった。 ……それは僕も同じだった。彼女は祭具殿を何だと思っているのですか。あぅあぅあぅあぅ。 あまりにも突然な展開に、僕も富竹も思わず赤面してしまう。 「ちょっ……ちょっと待ってよ鷹野さん。……こんなところでかい?」 「ええ。そうよ」 「ダメだよ……人が来たら……。それに、実を言うとさっきから誰かに見られている気がして……」 「大丈夫よ。奉納演舞が終わるまでは誰もここには来ないわ。それに、見られているなんて気のせいよ」 「でも。……ほら、僕はゴムを持っていないし……」 「……構わないわ。そんなのいらないもの」 そう言って鷹野は富竹の胸に顔を埋める。 「お願いよ……ジロウさん。貴方が欲しいの」 「…………鷹野さん………………」 富竹はしばらく呆然と鷹野の肩に手を置いていたが……やがて意を決して、彼女を抱き寄せた。 「本当にいいんだね? 鷹野さん」 「ええ……、ジロウさん」 鷹野は頷いた。 んんっ くちゅっ くちゅっ そこにあるのはランタンの光だけ。薄暗がりの中で、彼らはキスをした。 あ……あぅあぅあぅあぅ。彼らは本当にここで始める気なのですか? あぅあぅ。 二人とも目を閉じて……濃厚に舌を絡め合い、唾液を交わす。 「んんっ くふっ ううぅ」 時々漏れる鷹野の声が艶めかしい。 僕は間近で見ながら、息を呑んでいた。 キスを交わしながら、鷹野の右手が富竹の体をなぞって……大きく膨らんだ股間へと移動していく。 富竹もまた、右手で鷹野の豊満な乳房を揉みしだいていた。 二人が唇を離す。 「ふふふっ。ジロウさんのここ……最初は嫌だって言っておきながら、もうこんなに大きくなってるわよ?」 「いや、それは……鷹野さんがあまりにも魅力的だからだよ。……仕方ないじゃないか」 「んふふ。……じゃあ、そういうことにしておいてあげる」 妖艶に微笑んで、鷹野は上着をまくり上げた。 あぅあぅ……前々から思ってはいましたけど、やっぱり鷹野の胸は大きいのですよ。生で見るとまた迫力が違うのです。 僕は富竹と一緒に、鷹野の胸に目を奪われていた。 鷹野はその豊満な乳房に上着を乗せたまま、自分の背中に手を回し、ブラのホックを外した。 ぷちり と音がして、淡いピンク色をしたレースのブラジャーが下に落ちる。 ゆさっ ゆさっ と鷹野の乳房は揺れた。 そして、その場で立て膝を付いて、ベルトを外す。 ジッ……ジジジッ ゆっくりと焦らしながら富竹のジッパーを下ろしていく。 富竹の息が……荒く祭具伝に響く。 鷹野はキャベツの葉を剥くように富竹のズボンを脱がし、そして下着を下ろした。 びんっ とそそり立つ富竹の男性器が露出する。 あ……あぅあぅ☆ 富竹も意外と立派なものを持っているのですよ☆ 圭一のがオットセイ☆なら、富竹のはトド☆なのです。 「んふふっ」 鷹野はその胸で富竹のものを挟み込む。 富竹の亀頭が、その双丘の隙間から顔を出していた。 「ああっ……鷹野さん……」 鷹野が富竹の亀頭をくわえ、富竹は喘いだ。 むにむにと胸で富竹のトド☆を刺激しながら、首を揺すって亀頭に舌を絡めていく。 富竹の尻にきゅっとえくぼが出来る。 「……ふふっ。ジロウさんって本当にこれが好きね? 私の胸の中でますます固くなってきたわよ」 「ああ……最高だよ。鷹野さん」 恍惚の表情を浮かべる富竹。 「んふふふふふふ」 再び富竹のものを口に含み、愛おしげにパイズリを再開する鷹野。 ちゅくっ ふと、僕は股に力が入るのを感じた。 こっそりと袴に右手を入れて確認してみる。……そこは湿っていた。 あ……あぅあぅ。困ったのです。僕も見ているだけじゃ堪らなくなってきたのです。 い……いいですよね? 少しだけなら……。梨花も近くにいませんし、彼らに僕の姿は見えないのですから。 そのまま右手で股間を擦り、左手を巫女装束の中に入れて右の乳房を揉みしだく。 どうやら自分で気付かないうちに火がついていたのか……僕の体は敏感に刺激を伝えてきた。 はぁはぁ と、彼らの声に混じって僕の吐息も祭具伝に響いていく。 「じゃあジロウさん。……今度はあなたが私にしてくれない?」 すっ と突然鷹野は行為をやめ、立ち上がった。 このままパイズリで富竹をイかせるのは、鷹野の本意ではなかった。 「ああ、分かったよ。鷹野さん」 靴と一緒にズボンを完全に脱いで……今度は富竹がその場に座り、鷹野のズボンと下着を下ろしていく。 富竹と同様に、鷹野も靴と床に落ちたズボンを脱いだ。 ランタンの光に、てらてらと鷹野の恥毛が光る。 「鷹野さん。……僕はもう……」 「挿れたいの? ……ええ、いいわよ。私もそうして欲しかったの」 焦点の定まらない目で、鷹野は言った。 富竹が立ち上がると鷹野は富竹の上着をまくり上げ、そして富竹の鍛え上げた体に胸を押し付けた。 そして富竹が鷹野の腰に手をやって彼女を支えると、鷹野は左脚を富竹の右脚に絡めて腰を浮かし……その形で富竹は鷹野の中へと挿入した。 「ん……ふうっ んんっ」 立ち上がったまま、富竹がゆっくりとピストン運動を開始すると、鷹野は富竹の背中に手をまわしてしがみついた。 富竹のものが鷹野の中を出入りするたびに、結合部からぬちゃりと粘り気のある液体が滴り落ちていく。 僕はもう、完全にその光景に目を奪われていた。 「あふん あんっ うんっ んんっ」 鷹野の嬌声に、かつての僕のそれとイメージが重なる。 僕は鷹野の嬌声に導かれるまま、中に男の人のものが入ってきたときの感覚……僕の中をえぐりそして満たした、熱くて固い肉の感触を脳内に再現する。 それは執拗に僕の奥を突き、そして肉壁を……ひだをかさで擦る。 僕もそれを貪欲に締め上げ、もっと奥へ奥へと腰を動かす。 抗うことの出来ない強い力に責められ、自分の自我が壊れていく快感。 今、鷹野が味わっている感覚がまさにそれだった。 「ジロウさん……私……もうっ」 「我慢できないのかい?」 富竹が訊くと、鷹野は目を瞑ったまま頷いた。 「じゃあ、もう少し激しくいくよ?」 そう言って富竹は鷹野のお尻に両手をやり、彼女を抱き上げた。無論、挿入したままで……。 鷹野が両脚を富竹の腰にまわし、抱っこされたまましなだれかかる。 「あふんっ」 富竹が再びピストン運動を開始する。ただし、今度は先ほどよりもスピーディに……。 ぬちゅっ ぬちゅっ ぬちゅっ ぬちゅっ 「あっ あっ ああっ あっ ああああっ」 富竹の腰の動きに合わせて鷹野の喘ぎ声が響く。 富竹もその声に興奮しているのか、ますます腰の動きを激しくしていく。 「鷹野さん。凄いよ……」 夢中で腰を振る富竹。 「あふうんっ あうううぅっ」 鷹野には富竹の言葉に応える余裕がない。 彼女は必死で富竹にしがみつき、ただ喘ぐことしか出来なかった。 僕もまた夢中で、自分で自分を貪っていた。 一旦落ち着いていた指の動きが、もう二度と止まれないスピードで僕をたかめていく。 このまま立っているのが辛いのです。 いつの間にか僕は腰を曲げていて……、小刻みに腰も動かしていた。 舌を出して喘ぎながら、富竹と鷹野の行為を見続ける。 見続けることしか出来ないのが、あまりにも辛い。幻でもいいから、もう一度彼に抱かれたいと願ってしまう。 だから、僕は止まることが出来ない……。切ないほどに、僕の膣は僕の指を締め上げることを止めようとはしない。 「ああっ。鷹野さん。鷹野さん。鷹野さん……」 「ジロウさん。ジロウさん。ジロウさん……」 二人は互いに名前を呼び合い。少しでもお互いを一つにしようと固く抱きしめ合う。 鷹野の喘ぎ声がどんどん高いものになっていく。 肉と肉が打ち合う乾いた音と、粘液が出す粘り気のある音が、より早く、そしてより強くなっていく。 「鷹野さんっ。僕……もうそろそろ……」 「イクの? ジロウさんっ? いいわっ! そのまま出して……私の中に出してっ!!」 鷹野がそう言うと、ラストスパートだと、富竹が機関銃のように腰を振って……。 「あっ あああああああああっ!!」 「んっ くうんんんんんんんんんっ!!」 「あぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅっ!!」 僕達は同時に達した。 くたっ と富竹に体を預ける鷹野。 はぁはぁと荒い息を吐きながら、達した余韻に浸る僕。 鷹野の秘部からは富竹が放出した精液がどろどろと流れ落ちている。 鷹野は薄く涙を流していた。 そしてそんな鷹野の頭を、富竹は優しく撫でていた。 そして僕は気付いたのです……彼らは、本当に心の底から互いを愛し合っていたのだと……。 もうすぐ奉納演舞が終わる時間……。 そう……彼らの時間も、もうすぐ終わる。 それを思い出すと、僕の心は少しだけ痛んだ。 私が持っていたポケットティッシュを使って、私達は自分の体についた体液を拭いた。 奉納演舞が終わる頃には私達は着替えも済ませ、祭具殿を出ていた。 綿流しを行っている沢へと向かう。 ふと、ジロウさんは立ち止まった。 「ねぇ鷹野さん……。一つ訊いてもいいかい?」 「なぁに? ジロウさん」 「どうして今日は急に……こんなことを……」 何を今さら……、と言うよりいつも今さらな人なのよね、この人って……。 私は苦笑した。 「保険よ」 彼は首を傾げた。 「ううん。……いいのよジロウさん。今は分からなくて……」 私がそう言うと、彼は分からないながらも納得してくれたようだった。 くすくす。この保険という言葉の意味が分かったとき、あなたはどんな顔をするのかしらね? そう……これはきっと保険。私は今夜貴方を殺すの。 でも、きっと心のどこかで貴方を殺したくないって思ってる。あなたに……これから罪にまみれる私に、どこまでも付いてきて欲しいって願ってる。 正義感の強い貴方のことだから、きっと私には付いてきてくれないんでしょうけど……でもこれでも来てくれないのかしら……? 今日は私の受精しやすい日なのよ? ジロウさん。だからひょっとしたら、貴方と私の子供が出来るかもしれない。 ああ、そうね。もし本当に貴方の子供が出来たなら、貴方を殺して、やがて私が用済みになって、彼女らに命を狙われたとしても……生き抜く強さを得られると思うわ。 私は心の中で呟く。 ジロウさん……ありがとう……そして、ごめんなさい。 私の罪を流す事なんて出来ない無意味な儀式……綿流しが行われている沢までは、あともう少し……。 遠いお囃子に耳を傾けながら、私は笑みを浮かべた。 ―END― ―最多の可能性― ダン、ダン、ダン。 僕は祭具団の中で地団駄を踏んでいた。 あぅあぅ。何でまた今回も圭一と詩音がここに来るのですか? お前達がいると富竹と鷹野が何にもしないのです。最後のときぐらい二人きりにさせてあげるのですよ。 何でこの終わった世界での、数少ない僕の楽しみを邪魔するのですか? ダン、ダン、ダン。 僕は聞こえるはずのない地団駄を続ける。 ただ、まるでその音を聞いているかのように怯える詩音がほんの少しだけ不思議だった。 「…………ね。あなた……悟史君。………………よね?」 あぅあぅ。何を言っているのですか。いいから詩音と圭一はここから出ていくのです。 ダン、ダン、ダン。 やがて、ギイイイィィィィィッと音を立てて富竹が扉を開け、顔をのぞかせた。 あぅあぅ。時間切れなのです。結局、この世界でも鷹野と富竹のえっちはお預けだったのです……。 僕はがっくりと肩を落とした……。
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『こ……。……こんばんは……沙都子』 ……電話の向こうから聞こえてきたのは、梨花の声だった。 どこか探る様な、怯える猫を思わせる声……。彼女らしくない、私の嫌いな梨花……。 『あの……さ、沙都子……?』 「……今日も、帰ってこないつもりですかしら?」 『あっ……ぅ……』 口調も同じなら困らせたときの態度も同じ。ああ、本当におふたりは仲がいい……。 『梨花~。梨花の番なのですよ~。早くこないと飛ばしますですよ~』 こちらはいつも通り、ふわふわと間延びした羽入さんの声。 「……ほら。羽入さんが梨花を呼んでらしてよ?」 『あっ……。あのね、沙都子。良ければあなたも……』 「今日は梨花が掛けてきましたのね……。それで、どうですの? 夏祭りの塩梅は? いつ頃にやるのか、もう日時は決まりまして?」 『う、うん。八月の下旬頃にやる目処がついたの。だから会合で家を空けることはもうないから……』 「……会合では、でしょ……」 『え? 何か言った? 沙都子』 つっけんどんな態度を緩めて、矢継ぎ早に話す中に小さく嫌味を混ぜてみたけれど、梨花には伝わってはいなかった。 『それでね、今こっちには圭一とレナも来てるの……』 ……なるほど。だからいつもの様に羽入さんではなく、梨花が電話を掛けてきましたのね。 『ふたりとも、今日は魅音の家に泊まるから。だから……沙都子も来なさいよ』 「…………ふうん。そう、ですの……」 焦らすことも兼ねて、私はすぐに返事はしないで話しを振り、梨花とのおしゃべりを楽しむことにした。 六月の綿流し祭りだけじゃなく、新しいお祭りを雛見沢に起こそう。 綿流しに私のお誕生日会と、勢いに乗ったみなさんの思い付きを魅音さんが受け止め、形にする為の話し合いを、七月に入ってから魅音さんのお家で行われていた。 その会合には村の人なら誰でも参加ができるのだけど、私は一回出たきりで、それからは遠慮していた。……別に北条家だから、という理由じゃなく。 梨花と羽入さんをお家の外でくらい、家族水入らずにしてあげようと思ったから。 それが効き過ぎて少し、おふたりの傍に居辛くなったけど、それも今だけだと信じているから……。 同じ梨花にやっかいになる私と羽入さんでも、私は他人。 居候はいつの日か、このお家を出て行くのだし……このくらいの扱いがちょうどいいのですわ……。 『ちょっと圭一! 聞こえたわよ! 私のアイスを勝手に盗らないで。羽入ー、お願い! 圭一から……羽――』 梨花の声が途切れて、遠退く感じがして……そして、受話器越しに電話主の変わる気配がした。 『はろはろ、沙都子』 詩音さんに似た砕けた挨拶。でも違う。羽入さん。 梨花と同じ苗字。梨花と同じ白い肌。梨花と同じ血を引く綺麗なひと。 『今日も僕と梨花は帰らないので沙都子はいつも通り、留守番をお願いしますのです。お土産はお魎のおはぎとカボチャ料理でも持って帰るのです』 『羽入! なに勝手なこンッ?! ぷ、あっ! ちょっ……と止めな』 ……チン。 羽入さんに変わってからいつもの……それにくちゅむちゅと、おふたりがキスをする音がしだしたから、電話を切った。 ちゃぶ台は折り畳まないで、上にはまだほとんど答えの埋まっていない夏休みの宿題が出しっ放しにしてある。それをお布団を引くのに邪魔にならない所に除けて自分の分のだけ、顔の所に月明かりが来る様にお布団が引いてある。 さっきの……おふたりの声も何もかも考えずに窓の所へ行こうと。変に前しか見ていなかったから、足元にあった枕を変な風に踏んづけてしまった。 「っう…………うあああーッ!!」 爪先で踏んでアキレス腱を痛いくらいに伸ばされて、いらつきが痛みを何倍にもしてそれがいらつきを倍にして……私は思い切りその枕を蹴飛ばしていた。いけない――と後悔しながら、開いた窓から落ちていく枕をただ見つめていた。でもあれが自分のだったらと……実際あれは自分の枕だったと気付き、私はほっとした。 「はぁ……梨花……」 窓辺に寄り、すでに用意してあった“私の匂い”のする梨花の枕にほおずりをしながら窓枠に座る。梨花の特等席ともいえるそこは、今夜だけは私だけの席。 「……ああ。すごく匂う……。臭いですわ……」 自分の恥ずかしい匂いに、私は真っ赤になって……なのに梨花は、眠るときにこの匂いが気にならないのですかしら……。他人の、それもあんな所の匂いなのに……。 いけないことをしている、という後ろめたさが神経質にさせているから……? 他の人よりも鼻が優れ、だから圭一さんや梨花から「犬っこ」だの「犬耳メイド」だのと……。 そんな不名誉な二つ名を忘れようと私は頭をぶんぶん振って、パンツを“半分だけ”脱ぎ……とその前に。 ひと月前の夜もこんな明るい夜でしたわね……。そしてなぜか、次の日から梨花と羽入さんは私から距離を置きだしたのですわ……。 白くて丸い月を見上げている内に鼻の奥がつんと痛くなって……私はお部屋の明かりを消した。 窓枠に座る梨花と、彼女の足元に正座をする羽入さん。 私もあの綺麗なおふたりみたいになれたら……。 そんな想いも始めはあった月光浴。 「はあっ、はあ……んっ! はあっ……んんうーッ!」 両膝でぎゅっと窓枠を締めて腰を前後に揺らすと、胸と足の付け根に挟まれたパンツも揺れていた。 「ぱんつは半脱ぎが萌えるというか常識」と圭一さんたちが。それと梨花をまねしてやってみているのだけど……こういうのは自分ではなく、見ている相手を楽しませる格好なのだと思う。 「ふあっ…………く、ぅ……」 大きくなった“肉の芽”をぎゅうっと、股間の下の枕で押し潰す。すると股……女性器からぬるぬるしたものがじゅわっと出て、枕に染み込まれていく。そのときに声が出るのを我慢した方が“長く持つ”ことを、何度か試している内に知った。 「……ああ。ん……あぁ……。くっ……んふ……」 腰の動きは緩めに、肌着を胸の上にずり上げておいて、窓枠の背にむき出しの胸を押し付ける。 「……ぁぁ…………私のもこんなに……」 そこは梨花が寄り掛かっていた所。梨花の背中……。羽入さんが後ろから梨花に圧し掛かり、横にはみ出るほど押し付けられる場所……。 今は……ふたりきりではないから、そんなことはしていないと思うけど。だけど……場所を選ばないひとたちだから、もしかすると今夜も……。 「ん……っ! ンうッッ!」 思わず浮かんだおふたりの姿にジェラシーを感じ、それを潰そうと腰の前後運動に横の動きを加えた。だから胸にも同じ動きが伝わって……。 「ンっ! あん! おっぱいがあ……こ、こねこねして、あっ! ンアっ!」 子供っぽくて、羽入さんもそう言っているし……。でも、気持ちが高ぶってくると胸の先がじんじんして、どうしても「おっぱい」と言ってしまう。 「アはああっ! イくっ! あ……っ! い……あ、ふああッ!!」 でも梨花の……ことあるごとにいたずらしてくるときも「沙都子のでかぱいをボクに寄越しやがれなのですー」って。あの梨花でもそんな風に言うのだから、私もいいかな……って。 「りい……っ……梨花のお顔をぱふぱふしてえっ……さ、さしアっ? ああッ……あああっ!!」 イく瞬間、我慢していた声で“具体的”に言葉にして、まず一回……。 おふたりの女性器から白い、たくさんのどろどろしたモノが出てくるのと同じ、私もおしっこといっしょに粘液を……それが梨花の枕と、足首にも垂れ流れてきた。 はあ…………月、が綺麗……。今夜はもっと……独りでだって一晩中、やってやりますわぁ……。 疲れて、顔と胸とで窓枠の背に寄り掛かって、私は空ではなくて畳を見ていた。弓なりに反った上半身が息継ぎで揺れて、色濃い影となって畳に写っていた。 「はあむ、ふぅ……ん…………」 もう一つ、今度はリコーダーをおくちに、飲み込むくらいに深く咥え込む。 まだ買ってからひと月の、真新しい縦笛。羽入さんの……縦笛。 時々ぷう、ぷ……と音がするけど、別に笛の練習をしているわけじゃない。練習といえば練習なのだけど……。 ぷっ……ぷぽぴっ! ぴゅ! ぷっ! ぴぷっ! また少し、頭が締め付けられるみたいにぼう……となって、息継ぎが激しく、だからリコーダーも調子っぱずれの高い音しか出なくなってきた。 フェラチオ……という行為。 富田さんと岡村さんが持っていたエッチな漫画に載っていて……梨花が羽入さんにしていた行為の内の一つ。 笛の本体に歯が当たらない様に、喉の奥まで飲み込んでは出すを繰り返す……。 ことのほか八重歯が邪魔をして、フェラチオの難しさを思い知る。それに、なるたけ鼻で息をするべきなのだろうけどその際に、よだれを飲み込もうとすると、いつもむせるのが悔しい。 「……ぷあっ……」 息苦しさと顎の疲れで、おくちからリコーダーを抜く。この後にお風呂に入るから、おくちとリコーダーから滴るよだれも気にせず、肌着と胸に吸わせておく。 とりあえずフェラチオの練習は一休みして、よだれ塗れのリコーダーを胸に挟む。これも漫画を手本にして、梨花が嫉妬をする胸をむにゅっと寄せてぐにゅぐにゅと谷間の笛をしごく。ほほ、私にはパイズリの方が合っていますわね。 窓枠の上で体育座りをする格好で、両膝の内側でもリコーダーを支える。膝も上下に動かせて、膨らんだ先端部分を咥えさらに大きく、リズミカルなパイズリになっていく。 「……ん……ぅ……アふ……」 ぴ……ぴぃ……ぃ……。 連結部分がアクセントになって、知らず知らずの内に声が漏れ、音が漏れ出る。 元々つるつるした表面なので、滑りが良ければそんなには難しくはなかった。難しいといえば……。 「ひゃ……あーっ!」 背中とおしりの二点だけで体を支えているからバランスが取り辛い。で、熱が入り過ぎると今回の様にお部屋の方へドテっと。初めてのときは本当にお外に落ち掛けて……。あれはまだ記憶に新しいですわ……。 万が一、梨花と羽入さんが帰ってきたとき、すぐに気が付ける様にと窓に座ってやることにした。見られたときが練習の成果を試すとき。そして私が、梨花の代わりに羽入さんを受け止める……。 改めて、梨花の枕を鞍代わりにして窓枠に馬乗りになる。リコーダーは、先端をおしりの穴に当てて、窓枠の背との間につっかい棒にしておく。 「ん……っ。んん……」 腰を後ろに押して、おしりの中に……多少の痛みをも巻き込んでリコーダーを入れていく。 「……んっ! あはあっ!!」 ずぬ……んとリコーダーの先端が入り込む瞬間がもっとも痛く、そして遥かに気持ちが良くて……。 「んん……あっ、くっ――」 ぷぴ――――ッ!! 「あぁあっ? ぃ……いや……っ」 だから入れただけでイくのはいいのだけど……。 はしたない声は意外と出なかったけど、その分リコーダーがとんでもなく大きな音をたててしまった。 「あっ、アッ、イヤ! おならが止まら……んんっ?! やァ……っ」 ぷっ、ぷっ、ぷぴ! ぷぷーう……ぴぷうーっ! がくがくと体の揺れる余韻も、恥ずかしい音で愉しむことができなくて……。 「とりあえずお風呂に入って……。梨花の枕を洗いませんと……」 さっきの音が誰かにでも聞かれていたらかと思うと……もう、続きをする気分にはなれなかった。 その日の夜に干した梨花の枕は、次の日の午後を回っておやつの時間になる頃にはふかふかになっていた。 梨花と羽入さんはというと…………私の分のおはぎまで食べてしまったから明日帰る、という電話を羽入さんが寄越して、その日も帰ってはこなかった。
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前篇 俺は…男になった……いや『して貰った』。そう。昨夜、羽入と…寝た。気持ち良かったな…。あんな『イイ事』があったら男はハマってしまうよ…金を出してでもしたくなるよな?正直、大人が『そういう店』に通う意味が分からなかった。 でも…今なら分かる。こんな気持ち良い事を覚えたら、病付きになっちまうって。朝日が差し込む部屋の中で寝起きの俺は感慨深く、昨夜の出来事を思い出していた。 羽入の憂いを帯びて切なそうな表情や、汗ばんでシットリした身体…熱く受け入れてくれた『羽入』を…。そんな『羽入の味』を思い出すと、朝勃ちしている息子に更に血が通って硬く張り詰めていく。 もし羽入が横に居たなら、のしかかって、また…してしまうだろう。でも羽入は居ない。一緒に寝て、起きたらもう居なかった。布団に残った甘いお菓子の様な羽入の匂いが 『さっきまでここに居たんだ』 って分かって俺は嬉しくなる。寝る前に羽入が言っていた『手解き』が夢で無く、今夜また出来るって…。そう、互いに触れ合って口付けし、あの蕩けてしまう行為を羽入に手取り足取り教えて貰えるんだと思うと……興奮してくるんだ。 その日は何も手に付かなかった…。授業中もボンヤリと昨日の夜の事を思い出しズボンにテントを張っていただけ。放課後に部活をしていても上の空で、ずっと羽入を見ていた。 普段と変わらない可愛いらしさで皆と過ごす羽入…。でも俺と目が合うと、恥ずかしそうに目を細めて微笑むんだ。そうこうする内に長い一日が終わり夜の帳が降りて…ワクワクしながら羽入を待つ。 「…いち……圭一…。起きてくださいなのです」 「ん…あ?あ…羽入…」 待つ内に寝てしまった様で、羽入に揺り起こされる。 「あうあう☆こんばんはなのです」 寝間着なのだろう。昨日と同じ、白い長襦袢姿の羽入が俺の横に座っていた。…てか、どうやって俺の部屋に入ったんだろうな?昨日といい今日も。まあ良いや…細かい事は気にしない。待望んでいた時間がやってきた…そっちの方が重要だ。 「…こんばんは。…あ……そのさ、こっちに来るか?」 こんな時に気の利いた事を言えなかった自分が情けない。何か『姦る気満々』みたいだよな…いや、そうなんだけど………じゃなくて!違う!もっとこう、羽入が喜びそうな事を言いたかったんだ…はあ。鬱だ…。 「あう~。じゃあ御邪魔しますのです」 そんな感じで混乱する俺に寄り添う様に羽入が移動し、腰を降ろす。あの甘い匂い…俺を酔わせる『女の匂い』を漂わせながら…。 「は、羽入。もっとこっちに来いよ」 俺は羽入の肩を抱いて、自分の方に引き寄せる。すると羽入が嬉しそうな顔で身体を…密着させるんだ。柔らかい胸を腕に押し付けてピッタリとさ…。 「圭一…。ん~…」 昨日とは違い、今日は羽入から積極的に攻めては来ない。でも誘っては来る。ニコニコ笑って、目を閉じて俺の方に顔をあげて口付けしろとねだるんだ…堪らねぇぜ、やっぱり可愛いよな。 「よ、よし!キ、キ、キスするぞ…良いか?」 「ふふ…♪良いですよ……ん…う」 こういう時って聞かない方が良いんだと思う、でも一応了承は得ておきたかった。手探り状態なのだ。少なからず彼女にリードして貰わないといけないだろう。そう、教えを乞う立場なのだから。 そして俺は、恐る恐る羽入と唇を重ねる。壊れ物を扱う様に丁寧に…。 「ん…ふ…。ふ…あむ…♪ん…んっ。んう…」 羽入の柔らかい唇に甘噛みして舐める。すると…彼女も同じ様に返してくれる。 嬉しそうな声を洩らしながら、俺の舌を優しく唇で甘噛みして舌先でチロチロってさ…。「んっ!…ふうぅぅ…ん!んうぅ…」 半ば強引に口内に舌を侵入させて、歯茎に舌を這わせる。すると羽入がビクッと身体を震わせて…すぐに身体の力が抜けていくのが分かる。お菓子の様な甘い味が俺を興奮させ、羽入の口内に奥へ奥へと侵入させる。 「あふぅ…あうぅ…。はっ…ん…ん…。けぇいち…もっと……もっとぉ…んふぅ」 羽入の『味』が欲しくて堪らなかったんだ。必死になって舐めて、噛んで…調子に乗って、唾液をさ…送り込んでみたんだ。 「は…はふ…。…んくっ!ん…」 音で分かるよな?羽入が俺の唾液を美味しそうに飲み込んだのが。それが嬉しくて、更に唾液を口内に送った。そして羽入も同じ様に俺に……甘い御褒美をくれる。 「はあはあ…。圭一…続きは灯を消して…布団の中でしたいのです…」 『女の子はこういう時に顔を見られたら恥ずかしいのですよ』 寝間着代わりのTシャツをギュッと握り締められ、そう言われたら…俺は言う通りにするしか無い。本当は羽入をずっと見ながら…の方が良いけど。 部屋の灯を消して、羽入と布団の中に潜り込む。横向きに寝転がってピッタリと寄り添って…始まるんだ。羽入の『手解き』が…。 「あうあう…圭一…まずは、ここなのですよ。優しく…優しく揉みほぐして欲しいのです」 羽入が俺の手を取って、胸に押し当てる。掌で柔らかい胸を優しく揉む、首筋に顔を埋めた羽入から、甘さの混じった声が聞こえてくるまで…。 「あ…。あ…ん…もう少し強めに…はっ…そうです。上手ですよ…んっ!」 空いている手で長襦袢の帯を緩め、中へと侵入させ、胸に指を埋めて夢中になって揉みしだく。手の平の中で形を変え、押し返す柔らかさ…きめ細かい肌のスベスベした感触に息子に血が通い始める。 徐々に硬くなっていく乳首を手の平で転がし、片手を尻の方に動かす…。揉んでみても良いよな? 「あ、うあうぅ……。んふぅっ…。っは…はあはあ…。あっ…」 身体をヒクヒクと震わせて、甘えた声で首筋に吐息を吹き掛ける羽入…。太股から尻の方に手を滑らせていくと、ピクッて身体を微かに跳ねさせ、期待した様な声を出すんだ。 「んう…。ふあぁ…あ…っ…。あはぁ…」 「柔らけぇ…」 そう呟くと、羽入が俺の腰に足を絡ませて口を開く。 「んう…圭一のお手々…気持ち良いの…ですよ。あふ…。は…」 甘えた声で息を乱しながら、羽入の手が俺の下半身を撫でる。 そして小さな手が息子に触れて…優しく揉まれるんだ…。下着越しとは言っても気持ち良い…親指の腹で亀頭を擦られ、思わず腰が引けてしまう。 「は…。ふふっ…。圭一は敏感なのです…。大丈夫…僕が慣らしてあげるのですよ…ん…あ」 羽入がそう言って、下着の脇から手を忍ばせ、息子を逆手で持つ。そしてゆっくりゆっくり扱くんだ。痒い所に手が届かない様な、もどかしい位の力と速度で…。 でも、それが逆に気持ち良い…だから俺は羽入の乳首を摘んで指で転がす、羽入をもっと悦ばせたくて…。そして、もっと『良く』して貰いたいから…。 「んっう!は…。あ、あふぅ…あっ!」 乳首を引っ張りながら転がすと羽入が啼き始める。 『気持ち良くて堪らないのです…』 そう伝える様に首筋に吸い付かれ、俺は身体をゾクゾクと震わせる。羽入の鼻息が当たって小さな唇、舌が…這い、軽く吸われてくすぐったいけど気持ち良いんだ。 いつしか羽入の両手が下着の中に入っていた…。根元から絞る様に扱かれ、手の平の中で亀頭が圧迫されながら揉まれて、頭が蕩けてしまう。敏感な場所を刺激され、俺は…羽入に腰を押し付けて発情する。 「は…っん!あ…あ…らめれすぅ…ふうぅぅん!」 羽入の小さな身体に覆い被さって、プルプルと震える乳首を口に含んで舌先で舐める。小刻みに力強く…そして唇で挟んで転がすと羽入の啼く声が大きくなっていく。それに加えて尻を触るか触らないか位で撫でると悦ぶんだよ。 思い付く限りの愛撫を試して、羽入の反応を見て覚える。『ああ、これは気持ち良いんだ』とか『くすぐったいだけみたいだ』とか…。『女の部分』以外の羽入の気持ち良い所を手探りで探しているのだ。 「は…はっ…。けぇいちぃ…あっ!けぇいち!んっ!ふあぁ…っ」 「う…う!…くふっ…そんなにしたら…で、出ちまう…」 熱くなっていく羽入の体温に包まれて、強く扱かれ限界が近付く。でも…羽入が急に愛撫を止めて、俺にしがみついてくる。 「あ…は…我慢我慢ですよ…んっ!刺激に慣れないと…女の子を満足させる事が出来な、い…あっ!あうぅ!」 『待て』をされた俺は羽入の胸を吸い、舐め回してねだる。そう、羽入のピンピンに硬くなった乳首を赤ん坊みたいに吸って…甘噛みしてさ。 「あうぅ!そ、そんな赤ちゃんみたいに吸っちゃ…あんっ!ひうぅ!」 そう言いながら俺の頭を抱き締めて、秘部を太股に擦り付けてくるんだ…。これって、俺が羽入を『堪らなく』させているって事だよな?そう考えると嬉しくて、俺は羽入の胸をねぶり回し続ける。 「んっ!んあ!あ…んっ!あ、あうぅ~っ!」 髪を振り乱して喘ぐ羽入は俺を更に興奮させるんだ…。汗でしっとりした身体で抱き付いて、俺の稚拙な愛撫に息を弾ませて、発情期の獣みたいに腰を擦り付ける姿を見たら…『もっとに乱して』みたくなる。 「は…あ…はっ…。け、けぇいち…僕…僕…切ないのです……」 羽入がトロンと蕩けたスケベな顔をして、俺の手を下腹部に誘導して要求する。つまり口に直接出しては言わないけど、ここら辺が頃合なのだろう。次に進めるタイミングが良く分からない俺をフォローしてくれているのだと思う。 「はふ…。あ…。あ…んんっ…。ここを…触って欲しいのです…」 俺は羽入の『土手』から、柔らかい割れ目に指を滑らせる。 「あ…あう…。ん…あ……あっ…」 優しく縦に擦ると羽入の表情が弛む。フニャって…ほら、犬の耳の裏を揉んでやると凄く気持ち良さそうな表情になるだろ?簡単に言うなら、そんな表情だ。 「はっ!…ああ…。んんっ!んう…っ」 擦りながら、たまに軽く押すとビクッて身体が跳ねる。そして表情が更に弛んで 『蕩けちゃうのです…』 と顔に出てしまう。秘部を愛液でずぶ濡れにし、ヒクヒクと痙攣させて…。 「け、けぇいちぃ…あうっあうぅっ…意地悪したら嫌なのれす」 指を滑らせる速度を、速めたり遅くしたりして変化を付けてみると、終いには自分から腰を動かして指に擦り付ける様になる。ああ…そっか。『コレ』良いんだ。じゃあ『コッチ』は? 「あうぅ~…い、良いのれふぅ…。はっ…もう少し強くし、て…ほしっ…あんっ!」 空いている片手でクリトリスを転がす。人差し指の腹でクリクリってしてやるんだ。すると羽入が気持ち良さそうな甘い声で啼き、息も絶え絶えになって目を潤ませる。 「はあはあ…あっう!んっ!うぅ…はあぁ…」 羽入が微かに目と唇を開けて、頬を上気させ布団を握り締める姿は堪らなかった。 身体の力なんて抜け切っていて、足を大きく広げて…いやらしい格好だぜ。それにしても女の子を悦ばせるのって楽しいんだな。だから、もっともっと悦ばせ方を知りたくて羽入に聞いてみるんだ。 「羽入。次は何しようか?羽入がされたい事…あったら俺、頑張ってみるよ」 「あ、あふ…けぇいちのお口で舐めて貰いたいの…れすぅ。んうぅ、僕の…僕の大事な所をペロペロチュウチュウして、あうっ…気持ち良くして欲しいのれすよ…はあはあっ」 『女の子は舐めて貰うと凄く気持ち良いのですよ』 そう付け加えて教えてくれた後、自分の手で秘部を拡げて、真っ赤に充血しトロトロに濡れそぼった秘部を俺に見せつける。甘酸っぱい『牝の匂い』を漂わせて…。 「じゃ、じゃあ…舐める…ぞ?良いんだな?本当にするぞ?」 はは…聞くだけ無駄だよな?正直、俺は羽入の発する『牝の匂い』に吸い寄せられてるんだ。あと好奇心だよ。『どんな味がするんだろう?』とか『直接嗅いでみたい』とか…。 だから、羽入が 『やっぱり駄目なのです』 とか言っても…多分、してしまうだろう。期待を裏切られるのが嫌だから、ちっぽけな理性が予防線を張ろうとしている。 まだ今なら駄目だと言われても諦めが付くし、違う事を試せる。でも…だ、無理矢理してしまったら羽入は怒るだろう。そうしたら、もう羽入と触れ合う機会が無くなるかも知れない。羽入との仲は大切にしたいから、だから予防線のつもりで聞いたのだ。 「くすくす…良いのですよ。圭一に舐めて貰いたいのです。あうあう…………あう?もしかして緊張しているのですか?」 了解を貰って、俺は顔を羽入の下腹部に近付ける。でも、なかなか…その…舐める事が出来ない。いやしたいんだけど緊張して、鼻先までしか近付ける事が出来ないんだ。 「ま、まあ…うん。舐めるのとか初めてだからさ…ははっ。何だか恥ずかしいと言うか、勿体ないと言うか…凄い緊張するよ」 嘘は付きたく無いし、手解きして貰う側だから俺は羽入に正直な答を返す。すると羽入が身体を起こして、俺に抱き付いて口を開く。 「圭一は可愛いのです。あうあう、じゃあ…僕と一緒にしてみますか?」 「え…一緒に?」 一瞬、何を言っているのか分からなかった。でも羽入が続けて言うんだ。 「僕と圭一の気持ち良い所を、一緒に舐め合ったら恥かしくないのですよ?僕も圭一と気持ち良くなりたいのです」 子供をあやす母親みたいに優しい声で助け船を出してくれる。俺は嬉しくなる。 羽入の優しさ、そして『待て』が終わった事に。また、あの気持ち良い事をして貰えるんだと分かってさ。 「まずは、ふふっ…脱がせて欲しいのです」 そう言いながら、俺のTシャツと下着を脱がせる。慌てて、俺も羽入の長襦袢の帯に手を掛ける。手が震えてなかなか帯を解く事が出来ないでいると手伝ってくれるんだ…。 そして何とか帯を解き、俺は長襦袢を肩から滑り落とす。本当の意味で初めて見た羽入の一糸纏わぬ姿は…雪みたいに白くて綺麗だった。昨日も綺麗だったけど、今日は更に…。 「横向きに寝て欲しいのです」 そう言われ、羽入に寝かされる。横向きになった俺の目の前には羽入が足を横に崩して座っていてさ…少し間を置いて、顔を俺の足の方に向け、同じ様に横向きに寝転がるんだ。 「んっ!…ふ…うぅ…あ…ああ…」 羽入の指が息子に触れて…その後、ゆっくり暖かい口内に飲まれていく。昨日と違って、焦らす様に徐々に…でも昨日と同じ様に甘く吸い付き、舌を亀頭に絡ませながら…。 「くちゅっ…くちゅっ…ちゅっ…。ちゅぷっ…ぷ」 羽入が足を開いて誘ってくる。俺は彼女の甘酸っぱい匂いに引寄せられ、顔を近付ける。そして目の前で切なそうにヒクつく『羽入』に恐る恐る舌を這わせてみる。 「ん…ふっ…。ふぁ…ちゅぷ…ちゅぷっ…じゅるっ」 不思議な味だった…。それは味が無いんだ…でも羽入の体臭と同じ甘い匂いはするんだ…そして俺を酔わせる『牝の匂い』も…。エロ本なんかで『美味しい』とか言っていたけど違うじゃねぇかよ。 「は…ん…くちゅっ…んうぅっ…。あ、あむぅ…は…ぷっ…ちゅぽっちゅぽっ」 けど…嫌いじゃない…むしろ好きかも知れない…この羽入の味は。唾液まみれのヌラヌラした舌に亀頭を舐め回されながら、俺は秘部を舐める。彼女がしてくれている様に、舌先で割れ目に沿って上下に這わせる。 「んっ!んふぅっ…ふ…あぁ。…ちゅっぱ!ちゅばっちゅばっ!ちゅっ!」 小刻みに吸われ、舌で弾かれる。ピンッ!ピンッ!てさ…。皮を全部剥かれて指を添えて根元で固定し『口だけ』で愛撫される。プルプルな唇が引っ掛かって、凄く気持ち良くて…それこそ性交と同じ位に。だから俺も返してやるんだ。 「はっ…はっ!っあ!?あうあうあううぅぅ~っ!!」 指で秘部を拡げて、クリトリスを吸ってみたんだ…思い切りさ。舌に力を入れて弾き、又、ねっとりと唾液を絡ませて舐めあげると…とうとう『乱れた』んだ。 「んあぁっっ!あふぅっ!!あ、あうあうっっ!!けぇいちぃっ!す、凄く気持ち良いのれすぅっ!!あっ!!もっと!もっと吸って…吸ってぇっ☆」 サカリのついた羽入におねだりされ、俺は背中にゾクゾクとした震えを感じた。初めて羽入を本気で感じさせているんだって分かってさ…その証拠に腰を俺の顔に押し付けて甘えてくるんだ。 「あふぅ♪ちゅぶっ!ぷぶっ!んうぅっ!はぷ…ちゅばっ!ちゅばっ!」 俺のしたい様にさせていたら、切なくて疼いて堪らなかった…手解きをすると言った手前、我慢していたのだろう。 だから仕方無く自分で秘部を擦り付けて耐えていた…でも今は気持ち良くて…嬉しそうに腰を振ってはしたない音を発てながら、息子を愛しそうにしゃぶり回している。 頬や上顎に亀頭を押し付けザラザラな舌の表面で擦られ、唇を引っ掛けながら敏感な部分をヌルンヌルンと出し入れ…そんな激しく愛撫されたら腰が砕けてしまう。 「は、羽入っ!あくっ…す、すげぇっ!!はっ!はっ!」 互いに顔を下腹部に埋めて激しく愛撫し合い、腰をガクガク震わせて…強烈な快感に身体が支配されて更に求め合う。片手で尻を揉みながら羽入の膣に指を挿入して小刻みに掻き、クリトリスを転がし続ける。 そして羽入は息子の皮が戻らない様に手で根元を持って亀頭の裏を舐め回す、スッポンみたいに吸い付いてベロベロと大胆に口内で溶かされる。 「んぶっ!はっ!じゅっぷ!じゅっぷ!じゅっぷ!ふうぅんんっ!!」 俺は羽入に伸し掛かられ、主導権を握られてしまう。両手の親指と人差し指で息子の根元を持って、残りの六指がタマを揉むんだ。ウネウネと指で揉み揉み…って、 射精を促す様にさ。 「う…!ふっ…!くっうぅ!はっ!」 さっきから、腹に力を入れて耐えてはいる。と言っても、こんな事されたら限界が近付いてしまう。こうなったら最後、あとは楽になりたくて力を抜くだけ…牡の本能だ。 「ふ…!…はあ…はあ……っ!?」 「は…駄目です。んうぅ…もっと我慢しないと…くちゅ…いつまで経っても慣れないのですよ…ぴちゃ…」 でも、そんな俺の考えは羽入には御見通しの様で…息子の根元を締められて、控え目に舐められるんだ。込み上げてきている欲求を無理矢理抑えさせられた俺は仕方無く、彼女の秘部への愛撫を再開する。 「あんっ!あうぅっっ!じ、上手になってきたのですぅうっ…ううっ!あっ!あっ…らめれすぅ…そ、それ…蕩けちゃうぅっ!」 熱を帯びてジンジン疼く息子の為に、俺は愛液で口の周りをベタベタにさせながら、必死に羽入に奉仕する。絶え間なく舌の表面で割れ目に沿って擦る。縦に横に…時に突いて。。 そしてとうとう見つけた、羽入の『弱い所』を。そこをねちねち…ずっと攻めると…グイグイと腰を押し付けて、サカってくる。…膣に舌を挿入してみたら凄く良いらしい。 「んうぅっ♪あはぁっ!ああっっ!はっ!はっ!はっ!」 舌を目一杯挿入し、力を入れて小刻みに何回も突く。舌先で感じる『羽入』の狭さ、熱さ…そして味。鼻面に当たる柔らかい秘部の感触と愛液、それらに俺は酔う。 「あうあうっっ!!やっ…あっっ!!あ、あふっっ!!」 羽入を『良くさせる』コツが分かり始めた俺は、続いてクリトリスを指で摘む。多分こうしたらもっともっと啼かせられるから…。 間近で『羽入の女の子』を見て分かったのは、クリトリスって息子と『同じ様なモノ』だって事だった。少しだけ皮が被っていて…でも自己主張しているんだよ…。息子でいう所の亀頭と同じ。そりゃあ気持ち良いよな? 「あうぅっ…!ら、ららめなのれすようぅ…!もっと優しくぅ…あっっ!!」 舌先で膣内を蹂躙し、クリトリスをねちねちと愛撫。 そんな快感から逃れようとする羽入の尻を片手で押さえて、素早く舌を出し入れし、人差し指と親指の腹でこね繰り回すんだよ。『駄目』とか『優しく』とか言われても止められない。 こんなに乱れた姿を見たら、堪らなくなってしまう。けど羽入が俺からの拘束を抜け出して顔を向き合わせ、頬を重ね合わせて呟く。 「はあはあぁ…駄目ですよ圭一…。ん、焦らなくても僕が教えてあげるのです。…まだ背伸びしなくても良いのです」 上気した顔で息も絶え絶えになった羽入が優しく俺を諭す。彼女が言わんとしている事は、つまり『やり過ぎ』と言う事だろう。 「…でも圭一は頑張ったから御褒美をあげるのです……んっう…」 「あ、ああぁ…はにゅ…う」 そして、腰を浮かせた羽入が俺の息子に手を添えて…膣内に導いてくれる。 「んっう…。はあぁ…大きいの、ですぅ…ふっ…」 俺の胸板に手をついて、甘い声を洩らしながら羽入が身体を倒す。 「んふ…圭一のおちんちん、大きいから…っ…ちょっとだけ苦しいのです」 蕩けた微笑みを浮かべた彼女が、俺の頭の横に手を動かして身体を支える。やっぱり凄いコレ…。ただ膣内に入っているだけ…羽入は動いてすらいないのに…息子が強い刺激を受けてヒクつく。 「羽入ぅ…。はあぁ…っ。あ、暖かい…気持ち良いよ…」 俺は羽入の背中に手を回して抱き締める。暖かい羽入の体温と絡み付く愛液、そして熱く受け入れてくれる柔らかい膣の感触が心地良い。 「圭一も熱くて…硬くて逞しいのです。じゃあ…今から、本当の『営み』の仕方を教えてあげるのです…んっ…。あ…ふっうぅ…」 羽入が緩慢な動きで腰を前後させ始める。息子を刺激に慣らすかの様に徐々に速く、そして遅くして、時折腰を捻って膣肉で絞られる。 「うあっ…くっ…ふ。は…!う…」 「んぅっ…どうです?けぇいち…良いですか?こ、これだけでも気持ち良いですか…。あっ…う…。ぼ、僕の奥にぃ…あっ…当たってる…の…分かりますですか?」 「わ、分かる…コ、コリコリしてて…くぁっ!す、吸われる…す、すげぇ…」 『奥』が何なのかは良く分からない…多分だけど子宮口…かな?俺の知っている限りでは、それ位しか思いつかない。凄いんだ…コリコリとした感触、弾力があってヒクヒクって…亀頭に優しく口付けされた時に似たゾクゾクした快感に俺は虜にされる。 「ふ…う。こうやって始めは優しく優しく…んうっ、蕩けさせてあげて欲しいのです。例えば、こんな『やり方』もあるの…はっ…ですよ…あうっ…」 続いて教えて貰ったのは、グリグリと円を描く様に腰を動かして、膣の奥に擦り付ける動き…。身体を起こした羽入が軸にして動く。息子全体に絡み付く膣壁が擦れ、柔肉で揉まれるんだよ。そして狭い膣の中で撫でられて、熱で溶かされる。 「んうぅ…んっ♪は…あ…あっ。こ、こうですよ…は…。おちんちんの先で女の子の…くふっ…お、奥をクリクリってぇ…ひうぅ…するのですぅ…。 け、圭一も同じ様に動いて欲しいのですよ…」 羽入が俺の手を握って、そう促す。俺は今にも達してしまいそうな快感に耐えながら、羽入とは逆回転で膣内を掻き回す。 「こ、こうかよ?く…も、もっと速くした方が良いか?はあはあ…」 クチュクチュと結合部から発せられる水音と、羽入の微かな喘ぎに俺は更に欲情する。ふにゃりと蕩けていく羽入の顔や、俺の動きに反応して身体を震わせる姿が見れて嬉しくてさ。 「こ、のまま…あっ…このままあと少し続けてくださ…い。んあ…あ…上手…ですよ」 羽入の腰を持って息子で掻き回しながら、火傷しそうな熱さを伝えてくる柔らかい膣肉の感触を堪能する。段々と我慢が出来なくなって…突き上げたいという衝動に駆られる。 「は、にゅ…う。ふ…お、俺もっと気持ち良くなり…は…たい!なっ、良いだろ?もう我慢出来ねぇ…」 艶めかしい微笑みを浮かべた羽入が微かに頷いて、腰を打ち付け始める…。快感を得て息子がジンジンと疼く。そう、腰砕けになりそうな気持ち良さが俺を支配する。 「はっ…はっ…っん!あっ…。あっ!」 羽入が腰を打ち付けると、膣壁に擦られ絡めとられ…熱い柔肉の中で溶される。膣内の波打ったヒダに亀頭から根元まで締められて揉まれるんだ。分かるか?ウネウネってさ…隙間無くピッタリ吸い付いて揉まれるんだよ。 「ふっ!く…あ!すげぇ気持ち良いっ…。うおっ!」 羽入が抽出する速度を速め始めると、控え目だった水音が激しくなり、身体同士がぶつかる音と合わさって部屋に響く。それに比例して、羽入の喘ぐ声も大きくなっていく。 「んあっ!あうっ…あっ!!あはぁっ!」 俺の腹の上に手をついて、足を大きく広げて息子に貫かれて啼いていた。切なそうだった声が悦びに満ちたものに変わる。その艶っぽい姿を見ていたくて俺は射精感に耐える。 「んっ!んっ!んはぁっ!ど、どうです?これ、がっ!あひっ!本当の男女の営みな、のですよぅ!」 羽入が根元まで息子を飲み込んで前後に腰を揺すぶりながら、甘えた声で問い掛けてくる。俺は大きく頷く事しか出来ない。息子に加わる刺激で達するのを耐えるのに必死だから…。それでも『昨夜』よりは善戦…と言っても羽入任せだけど…うん。頑張っていると思う。 「はあはあっ…!じ、じゃあ…けぇいちをもっと気持ち良くさせてあげるのですよ…ふっ…んんっ!」 『圭一には、まだ刺激が強すぎるかも知れないのです…だから』 羽入がそう言って、息子の根元を指で締めて射精出来ない様にしながら、腰を浮かせる。 一方、今以上に『気持ち良い事』と聞いて俺は期待に胸を躍らせる。息子に更に血が通い硬く張り詰めていくのが分かる。 「ふふっ…いきますですよ…。…んふぅ♪あ…」 「っあ!!」 再び羽入が腰をゆっくり沈めると俺の身体が強烈な快感でビクッと跳ねる。今までより…強く膣肉で締付けられ、吸い付かれて絞られているんだ。敏感な亀頭を隙間無くギチギチに包み込まれて…る。 「くっうっっ!!はっ!!は、はにゅうぅ!や、やめっ!」 我慢出来ない快感…今にも達してしまいそうな、強烈な刺激に意識が遠のきそうになる。追い討ちをかける様な、羽入の上下前後左右に振る情熱的な腰使いが堪らない。 「あっ!!か、硬くて凄くっぅっ!良いのです!あふぅ♪お、女の子は『こんな事』も出来るので、すよ!!あひぃっ!あっあっああっっ!!」 熱に浮かされて一心不乱に腰を振る羽入に我慢出来なくなり、俺は下から思いきり突き上げる。彼女がそれに合わせて腰を捻り、膣奥に亀頭を押し付ける。 「っ!ふっあっっ!!おちんちんがぁっっ!ガンガン当たっ、て…るのれすっ!ひあぁっ!!あうぅあうっ!!!あんっ!!」 下から突き上げて羽入の膣奥に亀頭を叩き込む。そのコリコリした感触に俺は達してしまいそうになる。一突きする度に、キツく絞られている息子が食いちぎられそうな程、キュウキュウに締め付けられる。 「あうっっ!!ら、らめれすっ!!けぇ、けぇいちぃっ!激し、すぎ…あんっ!!!ぼ、僕、壊れちゃいます!!はっ!あっは…んあっ!!!」 俺の腰の上で羽入が身体をのけ反らせ、嫌々する様に首を左右に振り、悲鳴にも似た声で甘く啼く。 「くっうぅ!羽入っ!羽入っ!!」 そんな彼女の喘ぎ、仕草に俺の動きは更に激しくなる。腰がバカになって止まらないんだ。羽入に押さえ込まれている欲望の捌口を求めて…突く。 「んあっ!!はっ!!あっあっ!あっ!!!…あんんっ!んむぅっ!!」 羽入の身体を抱き寄せ、尻を掴んで本能に身を任せて乱打する。腰砕けになりそうな羽入の膣肉を抉る様に激しく…。 髪を振り乱して喘ぐ彼女の柔らかい唇を無理矢理こじ開けて、舌を侵入させ蹂躙する。それを嬉しそうに舌で絡め取り、唾液を含ませてくる羽入の淫らな姿に興奮する。 「んっ…ふぁっ!あ、あふ…くちゅっ!ちゅぱっ!んんっ!!…ふ……!ああっ!!!」 「くふっ!うっ!」 羽入が身体を捩らせる。そして息子を締めていた指が不意に外され、頭の後ろに腕を回された。それをきっかけに既に限界だった俺は羽入の膣内に欲望を吐き出す。 「はあ…!はっ…!んんっ…んあ…。あう…あう」 息子が脈動する度に羽入の身体が震える。そして俺の身体も…。互いの汗ばんだ身体を抱き合い、撫で、口付けしながら溶け合う。 俺はブルッと大きく身体を震わせて精液を彼女の膣内に注ぐ。敏感になった息子が締められ揉まれる感覚。この自慰では味わえない快感を少しでも長く感じていたくて、羽入の尻を鷲掴みして、前後に揺らす。 「くっうっぅ…!はぁ…はぁ…!」 背筋がゾクゾクする惚けてしまいそうな刺激を堪能していると羽入が腰を捻る。グリグリって…あの動きをさ。 「あうあう…。けぇいちがビクンビクンしているのです。ふふ………」 痛みにも似た強い刺激を受けて、俺は口をパクパクと動かし、酸素を求めて喘ぐ。すると羽入が耳元に顔を埋めて囁くんだ。 『このまま…もう一回してみますか?』 ってな…。 俺は熱に浮かされたまま微かに頷く。……また羽入の『手解き』が始まる。 …俺の顔に羽入の蕩けきった顔が近付いてくる。甘い甘い『発情した女の匂い』を漂わせながら…。 - 後篇に続く
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北条悟史と園崎姉妹の関係は、始まる前から歪んでいた。 悟史と魅音の間に陰りを生み出した、ダム戦争における園崎家と北条家の確執と、公に存在を認められていない詩音が悟史との面会を重ねるには、魅音として振舞うしかなかった、双子を忌まわしきものとする園崎の因習と。 様々な理由はあったにしろ、魅音と詩音の姉妹はあくまで『魅音』として、同じ人間として悟史と関わり続けていた。 ほんの少し安らげる空間を用意してくれていた、遠慮がちに自分たちを見つめる教室の『魅音』と、野球チームで叱咤してくれていた、屈託なく接してくる興宮の『魅音』――『詩音』。 一歩引いて自分たち兄妹と接していた『魅音』が自分に心を開いてくれている嬉しさ、純粋に『詩音』の気遣いをありがたく思う喜び。二種類の感情が複雑に絡み合い、悟史にとって今や二人とそれに対する感情は、全く別の存在だと頭で理解していても尚、切り離せないものになってしまっていた。 悟史にとって彼女たち姉妹は、二人で一つだった。 だからといって――こんな事態になるなんて、誰ひとり予想していなかった。 「っ……み、魅音……し、おん、さん……っ!」 悟史が表情を歪め、苦しげな声を漏らす。 椅子に座った彼の足元にひざまずく、上気した頬も妖艶な詩音の唇が彼の先端を咥え、吸い上げ、その隣で困惑と羞恥で頬を赤らめる魅音、唾液と先走りの滴る肉棒を懸命にねぶる。 「くすくす……きもち、いい、ですか? 悟史くん……」 詩音の舌先が速度や緩急を変え、時には先っぽを柔らかくくすぐりながら、悟史のものを這う。 「し、詩音さんっ……」 瓜二つな顔をした姉妹たちの奉仕、特に詩音の巧妙な技によって、悟史のものがどんどん固く熱を持っていく。 「み、魅音……そ、そろそろ……」 悟史の手がポニーテールを結わえた頭に触れ、魅音がぴくりと肩を小さく震わせた。 「さとし……」 彼を見あげるのは、理性など消し飛んだようなとろんとした眼。それでも彼女は不安そうに傍らにいる双子の片割れをちらりと見やる。 「大丈夫ですよ。お姉がちゃーんとイクまで、待っててあげますから」 「へ、変な言い方しないでよぅ……」 余裕をもった笑みで応える詩音に不平を零しながら、既に敷かれている布団の上で、魅音は悟史と向かい合う。 悟史の両手が、魅音のすらりとした太腿を掴む。その中心は既に濡れてひくひくと震えていた。 「じゃあ、いくね……?」 その入口に押し当てられた悟史のものが、ちゅくっ、と音を立てながら、魅音の中にゆっくりと飲み込まれていく。 「んぅ……」 ぎゅっと眉根を寄せて両手で口を塞いで、魅音は必死に恥ずかしい声を押し殺す。 亀頭の部分が見えなくなったところで、悟史が動きを止めた。 「……あ」 小さな声を漏らし、魅音は徐に口を塞いでいた両手を離して、悟史へ戸惑った視線を向ける。 「さ、悟史……あの……な、なんで……っ」 「どうしたの? 魅音」 悟史はいつものように微笑んで軽く腰を揺する。悟史のものの先端が、魅音の柔らかく浅い部分に擦れてくちゅくちゅと粘着質な音を立てた。 その奥が物欲しそうにきゅうっと締まり、無数の襞が手招きするように蠢き始めるのがわかる。 「ど……どうしたの……って……それは……え……う、うぅ……」 最後の方はもう言葉にならず、魅音は全身を縮こませて肩を震わせた。 焦らされている体の熱を持て余す。早く最後まで入れて欲しいと叫びたい。そうでなければ、今にも自分から腰を振って悟史のものを咥えこんでしまいそうだ。だがそんな恥ずかしい事は出来るわけがない。 これ以上ないほど真っ赤な顔をして半泣きになる魅音の様子に、悟史はくすくすと笑い、 「意地悪してごめんね、魅音」 固くなったものを奥まで一気に押し込む。 「ひぁああぁっ!」 急な刺激に魅音は甲高い悲鳴を上げた。満足そうに微笑んで彼女の頭を撫でて、悟史は動き始める。 「っ……! ん……あ、あ……んんっ……」 硬く目を閉じて、魅音は声が上がるのを必死で我慢する。それでも悟史に揺さぶられる動きに合わせて、唇の端から甘ったるい小さな喘ぎ声がどうしても零れていく。 そんな遠慮がちな様子と裏腹に、異物を受け入れる魅音の中は蜜で溢れ、いやらしく音を立てて締めつける。 「魅音、だいじょうぶ? 辛くない?」 「へ、平気……悟史の、好きにして、いいよ」 いつもそうするように、悟史は魅音の頭を撫でる。ぴくっと引き攣るように締まった襞を擦り上げるように、悟史はそこを掻き回す。 「あ……あぁっ」 魅音が上半身を反らせる。腰を打ちつけて揺さぶる度に、ふるふると揺れる形のいい大きな胸に、悟史は手を這わせて揉みしだく。まだ柔らかな薄い桃色の先端を指で転がし、爪を立ててくすぐると、あっという間に反応して固くなった。 「ひぁっ! そ、そこはいや……いや、だめぇっ」 固く尖った胸の先端を唇で咥え、舌で転がし、強く吸い上げる。 「……あ! ん、ぁ……」 電気でも流されたように敏感に跳ねる魅音の体に合わせて、膣壁が収縮して悟史のものを刺激し、奥の方が先端に吸いついてくる。別個の生き物のようにうねって、代わる代わる波打つように絡みついてくる肉厚の襞が肉棒の全体を刺激してきて、実に気持ちがいい。 何度も何度も、抉り込むように魅音の中を突き上げる。 「っ、ふ……うぁ……あぁああぁっ!」 弱弱しい切羽詰まった嬌声を上げて、魅音は爪を立てないように気をつけながら悟史の体に縋りつく。普段の彼女を知る誰がこんな姿を想像するだろう。悟史もまた強く腰を打ちつけて、魅音の背中に両腕を回し、細い体を抱き寄せた。 抱きしめあった悟史と魅音の体が同時に震える。 まだ少し脈打つものを魅音の中から引き抜くと、やや遅れて真っ白い蜜のような液体がとろとろと溢れた。 布団に横たわった魅音は、薄く桃色に染まった白い肌に光る玉の汗を浮かべて、仰向けになっても形の崩れない豊かな胸と細い肩を揺らし、繰り返し熱い吐息を零す。 悟史は大きく息を吐き、あたりに散らばった魅音の長い髪を指で梳く。 んっ、と小さく身を捩る魅音の赤く染まった頬を見て、悟史はつい口を開いた。 「……気持ちよかった?」 答えの代わりに飛んできた枕を、悟史は顔面でキャッチする。その視線の先で、魅音がぷるぷる震えながら眦を吊り上げて睨みつけていた。全裸で。 「変なこと訊くなぁ! おじさん、悟史をそんな子に育てた覚えはないよ?」 「ごめんごめん。そんな変な意味じゃないよ、ないってば」 布団の上で子供みたいにじゃれあう二人の間に詩音が割り込んでくる、全裸で。 「ぶぅー。ちょっと。二人とも、私のこと忘れてません?」 ぷうっと頬を膨らませる詩音。その可愛らしい仕草と裏腹に、秘所は太腿まで滴らんばかりに濡れていた。 「お姉と悟史くんがあんまり盛り上がるから……私のことも、満足させて下さいね?」 すいっと細められた詩音の瞳が、誘うようにとろりと光る。 「むぅ……う、うん、頑張るよ」 こくんと小さく息を呑むと悟史は詩音の背後にまわって、再び熱を持ち始めた分身を詩音の秘所にあてがう。 「――……ッ!!」 少しずつ、少しずつ悟史が自分の中に沈んでいく感覚に詩音は身震いする。 ふと、妖しげな笑みを浮かべた魅音がその正面に回り込み、ぺたんと座りこんだ。 「どうしました? お姉……っ」 「いっつもいつも、悟史も詩音も私のこといじめるんだから……私だって責めるのっ」 「お姉が? ……攻める?」 二人に挟まれているこの状況も忘れて、詩音は思わず、ぷっ、と吹き出す。 「む~! 笑ってられるのも今のうちだからね!?」 それがいたく気に入らなかったようで、魅音はさっきの詩音とよく似た膨れっ面になった。 白い指を豊かな胸に触れさせ、細い指先でピンク色の先端を優しく摘む。 「……っ! く、ぁ……!?」 痺れるような刺激に詩音が声を上げる。 「ふふーん、詩音も、こうされるの好きなんだぁ……」 一度絶頂に飛ばされ、すっかり出来上がっているようで、魅音はうっとりと潤んだ眼で詩音の胸の先端を弄繰り回す。指先を円を描くように転がして、指で挟んでひねったり。 「えへへー……詩音、気持ちい? とっても顔が赤いよぅ?」 普段の部活を取り仕切る部長の顔をして、魅音が笑う。 「ちょ、お姉……ッ」 その度にきゅうきゅうと中が締まるらしく、時折悟史が快楽に顔を歪める。それでも、額に汗を浮かべて苦しげに息を荒げながらも、微笑む悟史には妙に余裕があった。 「あはは……珍しいね、詩音さんが、押されるの」 大人しそうな外見をしていても、雛見沢症候群L5を精神力でねじ伏せた男である。そう簡単に快楽には屈しない。 「な、何をっ……ぅあっ! あ、あうっ! あ、あぁー……ッ!」 いつも他人をからかう立場にいる詩音にとって、翻弄される立場に回されるのは実に面白くなかった。 だが、敏感な体の中や胸の突起を、弄られ、擦り上げられ、掻き回されて、否応がなしに体が快感に反応する。 魅音の指が詩音の豊かな胸を優しく揉み、撫でさすり、先端をなぶる。じゅくじゅくと音を立てて出し入れを繰り返す悟史が膣襞の一つ一つをめくり上げる。秘部の隙間から溢れた愛液と先走りが混ざり合ったものが太腿を伝い落ちて、空気にさらされて冷える感覚。 その全てが詩音の全身を奥底から焼き尽くす。 「ああ! も、もうっ……! あ、あぁあ……っ!」 四つん這いになった恥ずかしい格好のまま、詩音は腰を振り始める。振らずにはいられない。もっと、もっと悟史を感じたい。めちゃめちゃに掻き回されて快感を貪りたい。 蜜で満たされた壺を掻き回す水音に肉体がぶつかり合う音が混じる。 長い髪を乱して詩音が喘ぐ。 だらしなく開いた唇から舌先に銀色の縦糸がかかる。 間近で、真正面で、魅音が愉悦の表情を浮かべてそれを眺めていた。 「あは……ぁ、すごい……すごいよぉ、お姉ちゃん……お姉、ちゃぁん……」 まるで詩音に同調したかのように、魅音もまたいよいよ理性を失いはじめる。 「さ、悟史の……ね、おっきいのが……お姉ちゃんの中、ん、出たり入ったりして……え、えっちな音立ててぇ……っ、お姉ちゃんの体が、あ……ゆ、揺れてるの……ぁ……っあぁ……!」 目の前にいる詩音と悟史の痴態と自分自身が発する言葉に酔って、恍惚とした魅音の蕩けた甘い声が、毒薬みたいにやけに鼓膜に響き、思考ごと脳が痺れる。詩音は思わず身震いした。 「おねえ……あんた……ッ、あ……っく……!」 悟史の吐き出した白濁と、魅音自身の蜜で濡れたそこに、ぐりっと指を突き立てて、調子に乗った『妹』にお仕置きする。 この私を責めようなんて百年は早いのだと。 「ひぁあ……っ」 体を震わせて魅音が啼く。その困ったような表情と声が、火のつき始めた詩音の反抗心やら加虐心やらに油を注ぐ。 「はあ、はぁ……ッ……わ、私と悟史くんを見て、こんなにしちゃうなんて……全く、いやらしい子ですね、あんたは……!ふふ、さ……悟史くんも、こ、こんなに固くしちゃって……わ、わかりますよ……私の中で、びくびくしてるの……!」 次々と襲い来る快感に悶え、肩で息をしながらも詩音は反撃に出る。 たとえ大好きな人が相手でも、やられっぱなしなのは性に合わない。それは目の前にいる妹の役割だ。 同じ声、同じ顔、同じ身体をしていても、魅音と詩音――姉と妹の根本的な性質は全く異なっている。 姉のように、相手を翻弄して手玉に取って支配するような芸当は妹には出来ないし、また、相手の加虐心や征服欲をそそる、妹の虐め甲斐のある表情や仕草は姉には出せないものだ。 けれど、数年前のあの時を境に、二人を表す名、二人を取り巻く環境は変わってしまう。 妹は誰かに屈することは許されない存在に、姉は人の目から隠されるべき存在に――入れ替わってしまった。 それは秘密。もしかしたらみんな気づいているのかもしれない、だからこそ、口にしないことそのものに意義がある、口にしないことで成り立つ秘密。 「あ、お、お姉ちゃ……ん……ぁ、あ……」 「……ふふ、詩音……ッ!」 我を忘れて互いを感じ合う、鏡のように瓜二つの姉妹は、その生涯の秘密を他者――悟史の前でぶちまける。悟史の前でだけ、本来の姿に戻る。それこそが彼に対する服従の証であるかのように。 「魅音……魅音っ!」 詩音を責め立てながら、悟史が呼びかける。 悟史はどちらを呼んでいるのだろう。壊れるその寸前まで傍に寄り添い続けた魅音なのか、淡い偽りに包まれながらも穏やかな時を過ごした『魅音』なのか。 魅音と詩音の表情が切なげに揺れる。けれど、そんなことはどうでもいいのかもしれない。彼女たちは元々ミオンであり、シオンでもあるのだから。 いっそのこと自分が髪をポニーテールに結いあげて、この子に髪を下ろしてリボンを結ばせて、本来の姉妹としてプレイしてみようか。 ああ、それは面白いかもしれない。後で二人に提案してみよう。戯れに詩音は考える。 「ど、どうしたの……あ、お姉ちゃ……? ん、ぁ」 ぼうっと熱に浮かされた魅音の唇に軽く口づけをし、体を揺さぶられながらも詩音は気丈に微笑む。 「思いついたんです……ふふ、とっても、楽しい事を、ね……」 詩音は悟史以外の男に尽くすつもりはさらさら無いし、魅音も自分で恥じている弱虫で甘えたがりな一面を悟史以外の男には見せられない。 だから、詩音の奉仕を受け止めるのも、魅音を心ゆくままに責め立てるのも、北条悟史ただ一人だけに許された特権なのだ。 心にも体にも大きく違いを作ってしまったのに、生まれる前から共にいた姉妹は今もなお、二人で一人の存在であるかのように一人の人を想う。 もはや説明の必要もないほど詩音は悟史に狂っている、彼女自身も自覚している。 そして魅音もまた。好きになってはいけないと思いこもうとして、忘れようと必死になって、いっそ他の男を追いかけてみても。結局は悟史の手を振り切れない。 北条を差別する園崎の娘であるはずの魅音と共にあり続けた悟史。かつて詩音が凶行に及んだ際に叫んだ溢れんばかりの憎しみ、それでも彼はぎりぎりまで魅音を手元に置き続けてきた。そして二人の意志はあの6月を越えた絆を紡ぎだす。 それこそ、何回同じことがあろうとも、何百年同じことを繰り返そうとも。 愛情と憎悪にまみれ、愛着と執着が交差し、美しいだけじゃない、だからこそ複雑で強固な二人を結ぶ絆。 詩音は多少と言わずに嫉妬を感じた。 でも、それは悟史と魅音も同じこと、と彼女は気を取り直す。 例えば、初めて悟史と詩音が一緒にいる光景を目にした時の――そう、『悟史の隣にいたのは私なのに。沙都子以外で悟史が頭を撫でるのは私だけなのに』と、茫然自失となった魅音の顔が示すものとか。 飴玉一つ食べるにも自分のご機嫌を伺っていた幼いころと変わらない、この子の不安そうな媚びるような顔。それを初めて目の当たりにした時の悟史の、いけない秘密を知ったような、照れたような、びっくりした顔とか。 こっちだって、誰も知らない悟史と魅音の顔を知っているのだ。 「ああっ! あぁん! お姉ちゃ……お姉ちゃあんっ!」 わざと大きな音が立つように、詩音は魅音の中を掻き回す。長いポニーテールや大きな胸を揺らしながら、魅音は焦点の定まらない瞳で甘えた啼き声をあげる。魅音の痴態に悟史の分身が張り詰めていく。 指先に絡みつく魅音のぬかるんだ熱と、膣内を蹂躙する悟史のものに、詩音は否応がなしに昂ぶっていく己の全身を感じた。 悟史と『妹』――詩音がこの世で最も、そして唯一執着する男と女は、今もこれからもずっと、ずっと彼女だけのもの。 やがて三人は絶頂を目前に迎える。 狂っている、いや、狂わせられているのかもしれない。 溶け始めた思考の中、漠然と、唐突に詩音は思う。 それは本当に、本当に恐ろしいことだけど――思うのだ。 詩音が求めたままに彼女の想いを黙って受け入れ、魅音を赦し彼女の弱さを優しく包み込んだ悟史。 その穏やかな声、優しく頭を撫でる手が麻薬のように沁み渡り、姉妹の心を少しずつ溶かし、壊し、狂わせ――奪っていく。そうして姉妹は堕ちて行った。 それを悟史は分かっていてやっているのではないか。 愛情に見せかけた罠を張って、自分たちを苦しめてきた園崎家の娘たちを意のままにすることが、彼の復讐なのではないか、と。 だが次の瞬間にその思いつきは波に浚われていく。 詩音の人物評価は大抵当たらない。これもまた彼女自身も自覚している。それにたとえ罠だとしてそれが何だというのだろう。その程度のこと、彼と彼女らを引き離す要素には成り得ない。 取り返しがつかない程、互いに縛られきっている。それでいいと溺れている自分たちがいる。 だから、それは遥か高みに上り詰めると共に、あっけなく消えていった。 ――――― 体を洗って休め、服を整える頃には、雲の隙間から月が覗いていた。 もっと暗くならないうちに終わらせなきゃ、と事が済んでからいつも揃って云い合っている割には、それが実現したことはない。お若い事で。 魅音と詩音は園崎家の門に並んで、帰宅する悟史の背中を見送る。 「さて。お姉、じゃあ今夜は二人で楽しみましょうか」 ぽん、と詩音の手が魅音の肩に置かれた。 「ふ、ふぇ?」 魅音はびっくりして後ずさるが、軽く置かれているように感じるはずの双子の片割れの手は、まるで磁石のように離れない。 「悟史くんをより悦ばせられるように、私と『特訓』しましょうね? お・ね・え☆」 戸惑う魅音に、詩音はとびっきりの微笑みを見せた。 そしてまた秘密は増えていく。
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悟史くんが目を覚まして数週間。 2年近く寝たきりだった悟史くんはまだまだ思うように身体を動かすことが出来ずベッドの上での生活だけど、悟史くんに話しかけて返事が返ってくる、そのことがすごく幸せに感じられる。 毎日診療所に通い、悟史くんとお話したり身の回りの世話をしたり… 病床に漬け込んで付きまとう私をうっとうしく思ってるんじゃないかという心配もしたけど、悟史くんは“そんなことないよ、詩音には感謝してるよ”と優しく笑いかけてくれた。 今はまだ親しい友人という関係だけど、私が望むような関係になれるのも時間の問題なんじゃないかという希望的観測をしている。 ただ一つ気がかりなことは、もし仮にこのまま悟史くんと恋仲になれたとしても、どうもその先…身体の関係に結びつきそうもないということだ。 なぜそう思うのか、それは悟史くんの性の知識に問題がある。 歳の近い圭ちゃんなんかと比べて、明らかに悟史くんはそっち方面に疎い。 まぁ圭ちゃんを引き合いにするのは妥当とも言えないけど… 悟史くんは圭ちゃんのような変態ではないので女の子の前でそんな話題をしようとしないのは分かる。 でも違う、話題を避けているだけでなく明らかに知らないのだ。 みんなでふざけて品のない話題がでた時、悟史くんは沙都子とまるっきり同じを反応をする。分かっててとぼけてるレナさんなんかと違う、あれは完全に分かっていない反応だ。 何より決定的なのは診療所で洗濯する下着。毎日のようにこびり付いているのだ、夢精の跡が、それはもうべったりと。 断言できる、悟史くんはオナニーをしていない。いや、オナニーを知らない。 私ももう高校生だ。好きな人と一緒にいたいってだけじゃない、性的な欲求だってある。 でもオナニーも知らない悟史くんと性的な関係を築く図がどうしても想像できなくて、募る欲求をうまく抑えられなくて… 正直に白状すると私は最近、葛西に頼んで欲求不満の解消を手伝ってもらった。 今でもそれを過ちだとは思っていない。恋愛の情とは違うけど葛西と繋がれたことは嬉しく思うし。 それでもやっぱり好きな人と心も身体も繋がりたいというのは女の子として当然のこと。 そしてそれはこのままの悟史くんでは到底無理なのだ。 ならば私が、悟史くんに人並みの性の知識と欲求を持ってもらうように仕向けなければ。 とは言っても、まず何をすればいいものか… いきなり悟史くんの病室で正しいセックス講座なんて開くわけにはいかないしなぁ。 あぁそうだ、まずはオナニーのこと教えてあげなきゃ。 このままじゃ悟史くんはほぼ毎日のようにパンツを汚してしまうだろう。 悟史くんも汚れたパンツ出すのは恥ずかしそうにしている。 でも自分で洗いにいく体力はないし、どうして汚してしまうのかも分からないんだろう。 うん、そうだ。そのことをさりげなく教えてあげよう。 朝、診療所が開くのと同時に私は悟史くんの病室にやってきた。 ここ数日、悟史くんのパンツは汚れていなかった。おそらく今日辺りは溜まっていたものが噴出してしまっているだろう。 ちょっとかわいそうだけど悟史くんの為だ、今日はそれを指摘してあげようと思う。 コンコン、まだ寝ているかもしれないから控えめにノックする。 「悟史くん?起きてますか?」 「あぁ、どうぞ詩音。起きてるよ」 「お邪魔します、悟史くん。よく眠れましたか?」 「うん、昨日はちょっと暑かったけどね。ちゃんと眠れたよ」 「それは良かったです。朝早くから押しかけちゃってごめんなさいです」 「ううん、いいよ。ここにいると一日中退屈なんだ。詩音が来てくれて話し相手になってくれると嬉しいよ」 「あはは、お役に立てて光栄です。それで早速なんですけど洗濯をしちゃおうと思うんです。 申し訳ないんですけど今着てるやつも洗濯に出しちゃってください」 「えぇ?今着てるのもかい?」 「はい。昨日は暑かったから大分汗かいたんじゃないですか?」 「う、うん、確かにぐっしょりだ。わかったよ」 悟史くんは患者用の寝巻きを脱ぎ始めた。キメ細かく透き通るように白いきれいな肌が露になる。 そのまま見ていたいけど、悟史くんに悪いので作業をして目を逸らしておく。 下の寝巻きは布団の中で脱いだみたいだ。腰から下は布団を掛けたまま、脱いだ寝巻きを私に差し出す。 「じゃあ、よろしく頼むよ」 「あ、悟史くん下着もですよ」 「し、下着はいいよ。昨日替えたし」 やっぱり渋ったか。 「汗かいたままだとよくないですよ。新しい下着で一日気持ちよく過ごさないと。すぐ新しいの用意しますから」 「む、むぅ…」 かなりしぶしぶだけど悟史くんは下着も脱いで渡してくれた。 悟史くんから受け取った下着は…うん、重い。やっぱり私の予想通り昨夜は夢精をしてしまったようだ。 よし。ここからが勝負だ。さりげなく、うっかり気付いてしまった風を装って… 「あ、あれ?」 下着の股間部分を持って私は言う。 「なんか、随分湿ってますね…」 「あ、う…、むぅ」 悟史くんは、真っ赤になって俯いてしまった。湿った部分の中をひっくり返し中身を確認する。 白濁した液体が下着を汚していた。 「さ、悟史くん、あのコレって…」 「む、むぅ…その、精液だと思う」 「…ですよね」 多分、おねしょだと勘違いされるのがイヤだったんだろう。悟史くんは真っ赤になりながらも、ごまかさずに答えてくれた。 少なくとも、それが精液だと言うことは知っているようだ。 「ご、ごめん。汚くして。どうも寝てる間に出ちゃうみたいなんだ…」 「いえ、気にしてませんから。その、聞いたことあります。夢精って言うんですよね?」 「そうなんだ?」 「え、えぇ。男の人は溜まると夜中に勝手に出ちゃうって。…あの、悟史くんて、その…ぉ、オナニーとかしないんですか?」 「えっと、おなにーって何だい?」 「ぁ、ぅんと、その自分で精液を出すんです。ホントにやったことないんですか?」 「う、うん。おかしいのかな?」 「普通は中学生くらいから男の子はみんなやるみたいですよ?圭ちゃんなんかもしょっちゅうやってます。」 あ、見たわけじゃないですよ。と付け加えておく。 「圭一も…そっか、知らなかったよ。でもそれに何か意味があるのかな?」 「い、意味は…まぁ色々ありますけど。そうやって自分で出しておけば、寝てる間に勝手に出ることもなくなるみたいですよ?」 「そっか、オナニーをしてなかったからいけなかったんだね。分かった、じゃあ今度からちゃんとオナニーするようにするよ」 あぁ、なんて純粋なんだろう悟史くん。こんな純粋な悟史くんにオナニーする宣言させてしまったことに 若干罪悪感を覚えるけど、彼のためでもあるんだからしょうがない。 このまま知らずにいても困るんだろうし。 「で、どうしたら精液が出てくるんだろう?」 うん、そっか、そうだよね。やったことなきゃ分かるはずもないか。 でもどうしよう、女である私が男の子のオナニーの仕方知ってるなんてエッチな子だと思われてしまうだろうか。 そんなにカマトトぶる気もないけど、言葉にするのはやっぱり恥ずかしい…いや、いまさらか? 多分悟史くんは気にしない、というより基準が分かってないから気付かない…かな。 「あ、えっと、本で読んだんですけど、擦るんだそうです」 「こする?何をだい?」 「ぅ、ぉ、おちんちんを、です…」 「むぅ、…擦るだけでいいのかな?」 「えーと、いやだめかな。そのまま擦るんじゃなくて…」 あー、もうしょうがない。やっぱり悟史くんには性の知識は皆無だ。 このままじゃ到底私が悟史くんに抱いてもらえる日なんて訪れないだろう。 もう恥ずかしがってはいられない。私が悟史くんを導いてあげねば。 「悟史くん、悟史くんはおちんちんが大きくなってしまうこと、ないですか?」 「ん、あるよ。朝起きたときとかは大きくなってる。」 「朝以外では?例えばその、エッチなことを考えてしまったりとか、エッチな場面を目撃してしまったりとか…そうゆう時に大きくなりません?」 「え、エッチな?…む、むぅ」 そんなに予想外の単語だったのだろうか?悟史くんは真っ赤なまま狼狽し、考え込んでしまった。 しばしの沈黙の後、悟史くんは口を開いた。 「そ、そういえば昔、いつだか忘れたけど、学校で魅音のスカートがめくれてパンツが見えてしまったことがあったんだ。あの時は、うん、たしかにちんちんがむず痒いような変な感じがして、…おっきくなってたんだろうね。ズボンの上からでもちんちんが分かりそうですごく恥ずかしかったのを覚えてるよ」 「そうそう、そうゆうのです」 うーむ、昔の事とはいえ悟史くんがお姉のパンツに欲情してたなんて聞くとなんとなく癪に障るな…。 くそ、今度腹いせに圭ちゃんのをおっきくさせてやる。 「あ、あと野球の試合のとき…あの時の魅音は多分詩音だよね?ほら、詩音とハイタッチしようとして僕、間違えて詩音の胸を触っちゃったじゃないか?詩音の胸すごく大きくて柔らかくて、初めての感触でさ、すごいドキドキしたらちんちんも大きく堅くなっちゃって…。しばらく元に戻らなくて大変だったんだよ」 「ぁ、ぅ、そ、そうだったんですか…」 さ、悟史くん、私の胸でおっきくしてくれてたんだ。 さっきはお姉に悪態ついたけど、いざこう言われると、かなり恥ずかしい。まぁ、そりゃ嬉しい、けどさ。 「あ、ご、ごめん恥ずかしいこと思い出させちゃったかな?」 「ぃ、いえ、全然。…コホン、まぁそうゆう風にですね、エッチなことでおちんちんを大きくしてから擦るんだそうです。さらに擦りながらもエッチなことを考えた方がいいみたいですよ」 「えっちなことを考えて、大きくする…?」 「そうです、さっきみたいなエッチなシーンを思い出したり、女の子の裸を想像してみたりしながら擦ってればそのうち精液が飛び出してきますから」 「うん、そうか。でも、勝手に裸とか想像したりしたらその子に悪いんじゃないかな?」 「あ、うーん、まぁ、確かにそうゆうの嫌がる女の子もいますけど…でも普通そんなこと気にしないです。どうせ分からないんだし。悟史くんてホント律儀ですねぇ」 「む、むぅ、そんなことないけど。でもやっぱりそんなこと勝手に想像するのは申し訳ないよ」 悟史くんはいい案だったけど実現不可能だとでも言うような雰囲気で俯いてしまった。 勝手に想像できないって、許可でも取るものだと思っているのだろうか。 つまり許可があれば安心して想像できるのかな。 「…その、例えば、わ、私なら想像してもかまわない…ですよ。」 「…え?えと…し、詩音?」 あぁぁ、私何馬鹿な事口走ってんだ。引かれた。絶対引いたよね悟史くん。 どうぞ私の裸想像してくださいって言ったようなもんじゃないか。バカ詩音、どうする?なんとか誤魔化さないと。 「…な、なーんて私のなんて想像しても面白くないですよね。ははは。その、気にしないでください例えばってだけなんで。別に許可なんていらないんですから悟史くんの好きな子を勝手に想像すればいいんですよ。そうだほら、レナさんとかどうですか?レナさんも別に気にしないと思いますし。あとは梨花ちゃまとか。梨花ちゃまは巨乳に想像しないと怒るかもですけど…。あ、沙都子は駄目ですよ沙都子は。あは、あははは」 「あ、いや、あの詩音がそう言ってくれるんなら僕は詩音の裸を想像することにするよ」 「ぁう。さ、悟史くん。別に無理してくれなくていいんですよ?ホントに、悟史くんの好きなようにすれば」 「うん、だから僕の好きなようにするよ。僕は詩音の裸を想像したい。詩音、僕が想像してもいいかい?」 「あ…は、はい。どうぞです…」 悟史くん、私を想ってオナニーしてくれるんだ…。単なる社交辞令かも知れないけど。 いや、悟史くんのことだからホントに、許可を取ってない女の子のことなんて想像できないだろう。 きっと律儀に許可を得られた私のことだけをオカズにしてオナニーするはず。悟史くんはそういう人だ。 …見てみたい。悟史くんが私をオカズにしてオナニーするところ。 「あの、悟史くん。今、一度試してみますか?」 「い、今!?オナニーをかい?そ、それはさすがに恥ずかしいよ」 「布団の中ですれば見えないから大丈夫ですよ。ちゃんと正しく出来てるか教えてあげられますし」 「む、むぅ…むぅ。た、確かにみんな普通にやっていることならちゃんとできなきゃまずいのかな。一度ちゃんと教えてもらった方がいいって気もするけど…でも」 悟史くんは腕組みをしながらうんうん唸っている。 さすがにコレは無理だろう思って聞いてみたことだったけど、悟史くんは真剣に悩んでいるようだ。 「し、詩音が嫌じゃなければ、指導してもらおうかな…」 「私は嫌じゃないですよ。じゃあその、悟史くん頑張りましょうね」 「う、うん。よろしく頼むよ」 わ、わ。ホントにいいんだ。悟史くんここでオナニーしてくれるんだ。 好きな男の子がオナニーするところ目の前で見学できるなんてすごい出来事だ。 逸る気持ちを抑えて一つ咳払いをする。 「コホン、えと、まずは…」 まずは服を脱いでもらおうと思ったけど、気付けば悟史くんはさっきから布団の中で全裸のままだった。 結局グダグダ話してて私が替えを用意してあげなかったせいだ。まぁ脱ぐ手間が省けて結果オーライか。 「服は脱げてるんで、さっき言ったようにエッチなことを想像してみてください」 「うん、わかった」 悟史くんの視線が私の全身に注がれる。 頭のてっぺんからつま先まで下ると、悟史くんは深く呼吸をして視線を胸に釘付けた。 おそらく悟史くんの頭の中で私は上半身の服を脱がされブラジャーを取り払われているところだろう。 そう考えていると体がかぁっと熱くなるのを感じる。 私の胸はどんな風に想像されているんだろう。 今後実際に見せるようなことになったとして、想像と違くてがっかりされたりしないだろうか。 そんないらぬ心配をしている間に悟史くんの視線は私の下半身へと移ってゆく。 あぁ、分かる。今まさに私が一糸纏わぬ姿とさせられたのが。 だって薄い布団越しに股間の隆起がはっきりと見て取れるから。 恥ずかしさで金縛りにあったみたいに身体が動かない。 けど何とか気持ちを落ち着かせ私は次の指示の言葉を搾り出さねば。 「―――そしたら、ぉ、おちんちんをそっと擦ってみてください」 「ん…」 悟史くんは股間に手を伸ばし、ぎこちない手つきでそれを擦り始めた。 あぁ、でも違う。さすが悟史くんだ。 当然握って擦ると思っていたが、悟史くんは掌で上から撫でている。 「そうじゃなくて、その…」 勝手に見たり触ったりしては申し訳ないので、私は彼の布団の中に手をいれ、彼の手をソレを握るように誘導する。 「こうやって握って、上下にそっと…そう、そんな感じです」 ゆっくりと撫でるような擦り方だけど、初めての悟史くんにはそれだけで十分な刺激だったようだ。 「あ…なんだか、コレ不思議な感覚だね。んぅ…」 快感を感じているのだろう。ただ恥ずかしそうだった悟史くんの表情は恍惚としたものに変わってゆく。 「気持ちいいですか?」 「ん、うん。多分これは…気持ちいいんだと思う、んっ、はぁ」 「悟史くんが気持ちいいと感じるように徐々に強く擦っていってください」 そんなこと言わなくてもこの頃になると悟史くんは、自分で更なる快楽を求めて陰茎に強い刺激を与え続けている。 息は荒くなり、時折くぐもった声が漏れる。その間中、悟史くんの視線は私の身体に注がれたままだ。 初めは胸と股を行ったりきたりしていた視線も、今や股ぐらに集中して離れない。 悟史くんの視線を受け、その彼の大事なところが快楽に溺れている様子を目の当たりにすると私自身のソコが彼を悦ばせているような錯覚に陥り、いやらしくヒクつくのを感じた。 「ぅ、はぁっ、はぁっ…」 腕の動きが早くなり、悟史くんは快感に喘ぐ。 あぁ、彼と快感を共有できないのがもどかしい。 「はぁっ……あっ、あっ、あっ!」 悟史くんは突如前屈みになって大きく目を見開いた。 しまった!私が惚けている間に彼はもう絶頂間際だ。そのままでは布団を汚してしまう。 「悟史くん待って!」 「あっ…あぁぁぁぁぁっっ!!」 慌てて彼に駆け寄り、彼の股間から布団を引き剥がしたが手遅れだった。 勢い良く飛び出した白濁液は布団に飛び移り、さらに勢いの収まらないソレが辺りに撒き散らされる。 まずった、後処理のことをすっかり失念していた。正しく教えるとか豪語しといてなにやってるんだ私は。 おまけに悟史くんの大事なところ勝手にしっかり見ちゃったし。 それも射精する瞬間という、おそらくもっとも恥ずかしい場面をだ。 初めて見た悟史くんのソレはなんてゆうか、うん、結構小さい方だとおもう。 アダルトな雑誌に出てる人や、葛西のものみたいな太くて逞しい肉棒っていう感じではなく、小さい子が精一杯背伸びして胸を張ってるような。 男の子はペニスが小さいのを気にするのかもしれないけど、私は悟史くんのがコレでちょっと安心した。 別に太いのを入れられるのが怖いっていう意味じゃない。 こんな可愛い悟史くんに自己主張の激しいグロテスクな逸物が付いていたらなんか嫌だからだ。 彼同様にいとおしくなるような可愛らしいペニス、萎えていく様子が可愛くてついじっくりと見入ってしまった。 女の子に間近で股間を凝視されているという状況もかかわらず、彼はソレを隠そうとする様子もない。 初めての絶頂の余韻にすっかり惚けてしまっているようだ。 肩で息をしながら、ぼんやり天井を眺めている。 私はベッド際においてあったティッシュBOXに手を伸ばし、悟史くんの飛び散らした液を丁寧にふき取っていく。 「ごめんなさい、悟史くん。ちゃんと教えるって言ったのに、布団を汚させてしまって」 「ぅん…あ、ご、ゴメン詩音。僕また汚しちゃったね。あぁっ、詩音の顔にも付いちゃってる、ゴメン汚いのに」 え?あぁ、本当だ。私の顔と髪にもベットリしたものが付いている。 「い、いえ私がちゃんと教えなかったから悪いんです。えっと、今更になっちゃいましたけど、イキそうになったら…ってわかります?最高に気持ちよくなって、精液が出てきそうっていう感じになったらティッシュか何かで受け止めるんです」 「うん、わかったよ、ごめんね」 「今回のは悟史くんのせいじゃないですってば」 そう言いながら私は自分に付いたものもティッシュでふき取った。 コレが付き合ってて初Hの後とかだったら、顔に付いたのを舐めて汚くないですよアピールしてあげてもいいんだけど。 付き合ってもない女の子にそんなことされたら多分引くだろうから自重しておく。 「…それにしてもオナニーってすごく疲れるんだね。でも、なんていうか…すごく気持ちよかった、かな。あんな感覚初めてだったよ。」 相変わらず惚けた表情のまま悟史くんはつぶやく。 だいぶ疲れたようだ、病み上がりなのにちょっと無理させてしまったかもしれない。 「男の子はみんなオナニー大好きですからねぇ。いままでしてなかったのが悟史くんぐらいなものですよ。」 「む、むぅ…でもみんながしたがるのなんか分かったよ…これは、ちょっと病み付きになりそうだ。」 「悟史くんー、でもオナニーばっかりしてちゃ駄目ですよ。あ、あと間違っても人にオナニーしてるなんて言っちゃ駄目ですよ。」 「えぇ?やっぱりコレちょっといけないことだったんじゃないかい?」 「ぅと、まぁいけなくはないですけど、恥ずかしいことではありますねぇ。」 「むぅ…それを詩音の前でするなんて…僕は今日とんでもなく恥ずかしいことをしたんじゃ…ないかと…思ぅ……」 「悟史くん?」 目蓋が落ちている。口元からは小さな寝息が聞こえた。疲労と絶頂による虚脱感とで眠くなってしまったようだ。 全裸のままではすぐ風邪を引いてしまうだろう。私は急いで着替えを用意し、下着と寝巻きを着せてあげた。 布団も汚れたから別のに替えて洗濯しなくては。 洗濯ものをまとめて病室を出る前にもう一度悟史くんの顔を見る。 無垢な寝顔をみると、幼い子を騙していたずらしたような、そんな気になってちょっぴり良心が痛む。 「ごめんね、悟史くん。おやすみ」 額に軽くキスをして、私は病室を後にした。 さてと、今日は絶好の洗濯日和だ。 -
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「あっはは、今度は梨花が鬼の番でしてよ! 」 「みー。本当に角の生えた鬼さんに捕まってしまったのです」 「あうあう……ボクは鬼なんかでは無いのです!! 」 かわいい……どうしてなのだろうか。あのような小さな女の子は純真で無垢なんだろうか。汚れなんて何も無い天使のような存在。いや、天使よりも至上の何か。神様が与えてくれた奇跡とでも言えばいいのだろうか。 無邪気に走り回る小さな女の子たちを見るとぽうと体の下半身の芯が熱くなって…… 『元気だねえ沙都子たちは』 また空気が読めない胸のでかい女が私の心に土足で入り込んできた。いつもいつもいつも邪魔ばかりする、汚い大人への発育の始まっている女。私もその過程にいることはもちろん自覚している。心も体も汚れを浴びる大人への階段。避けることのできない悲しい道。そんな中に自分もいるのが侘しい。 せめてあの子達はそんな汚れを浴びて欲しくは無い。見たくない。汚されたくは無い。 ……違う。心の表はあの子達を心配している。底は違う。汚れを知らないあの子達の純真を骨まで食べたい。知ってしまう前に食い尽くしてあげたい。 沙都子ちゃんのあのタイツに包まれた足と気丈を振るいながらも本当は弱々しい心のうちを締め上げたい。 羽入ちゃんの二本のそそり立った角を舐りまわしたい。 梨花ちゃんのあの黒髪の中の顔をうずめて毛髪を吸い取ってあげたい。 気にも掛けずに話し込んでくる魅ぃちゃんの戯言を流しながら私は再びあの無垢な三人を視姦し始めた。 私がこんな性癖を持ったのはなぜだろうか。気が付いたら小さな、しかも自分と同じ女の子に興味を持ち始めていた。子供のときに見た大人、母親と父親の汚い大人の内を知ってしまったからだろうか。 それとも、雛見沢には魅力的な同い年の男子がほとんどいないことが起因したのか。 わからない。もしかしたら誰も、獣すら持っていない狂った異常な性癖を授かって私は生まれ出でたのかもしれない。 「んはぁ……すごい……かぁいいよう……んくぅ」 家のベッドに潜るといつも始まる私の慰み。俗に言うおかずはあの小さな三人の写真。 毎日、ローテーションを組んであの子達を犯し、犯されるのだ。羽入ちゃんの角が私の秘裂に食い込んでくる。私の垂れ流した淫液で濡れた角が怪しく光る。 「羽入ちゃん駄目……んああ! 大きいのが……いっぱいだから……ね」 自分の指を引き抜いていく。自分の出したよだれにまみれた指先を舐め回す。 さらなる刺激を求めて、私はおかずを変えた。それは一昔前の写真だ。昔と言っても片手で数えられるぐらい年数。写っていたのはショートカットの似合う笑顔の眩しいかぁいい子…… 「もっとレナを見て、ん! もっと頂戴……ねっ……」 よつんばいになった私は写真の少女を凝視し両手の指で秘裂をかき回す。 「あっ……」 真っ赤に腫らした突起に触れた瞬間に私は絶頂を迎えた。 「ハア……はあぁ……良かったよ……礼奈ちゃん……」 私が最後におかずにしたのは紛れも無い、幼い頃の私の写真だった。汚れをまだ知らない綺麗なころの私自身を私は犯したのだ。 今日の部活は鬼ごっこだ。鬼は圭一君。いっせいに皆散っていく。 ───わざと捕まってやろう……まずは 圭一君に気付かれないように速度を落として私は捕まった。 「はぅぅ、レナが鬼になっちゃった……」 「レナさーん! こちらでしてよ! 」 少しだけ掠れて艶めかしい声が私を呼ぶ。沙都子ちゃんだ。 ───ふふ。すぐに捕まえて、お持ち帰ってあげるね。 狙いを定めて一気に距離を詰めた。やはり小さな女の子の足じゃあ到底私には及ばない。弱々しさの見える沙都子ちゃんのその非力さに私は劣情を感じた。 「捕まえたよ。沙都子ちゃん!」 激しい息切れを起こす沙都子ちゃんを抱き留めるように捕獲した。 「はあ、はあ……レナさんには適いませんわね……」 生温かい息と肌からにじみ出る沙都子ちゃんの汗を目一杯堪能する。その汗と息を舌の上に乗せたいという衝動が巻き起こるがここは自重しておく。その代わりに黄金の輝きを引き放つ髪の毛に自分の頬を擦り付けてあげる。 「はっ、はうぅぅ。気持ちいいよう……」 「もう、レナさん。くすぐったいですわ」 でも今日の沙都子ちゃん……何か変だった。いつもの調子を出せてない…… そんな感覚。いつもでも見ているから私には分かる。特に運動した後には必ずと言っていいほどに顔を紅潮させて…… 「あの、レナさん……」 体育の授業のあったその日の放課後に小声で沙都子ちゃんに相談を持ちかけられた。 帰宅しようとした矢先の思いがけない出来事に気持ちが上昇していくのが分かる。 「どうしたの……沙都子ちゃん? 」 ゆっくりと諭すように天使に話しかける。しかしながら俯いたままで顔を朱に染めているだけだった。とてもいい顔。 「大丈夫だよ、沙都子ちゃん。誰にも話したりはしないから」 「…………」 上目遣いでこちらを見てくる沙都子ちゃんに気が遠くなるのを覚えてしまう。これだ。沙都子ちゃんの時折見せるこの弱々しさ。気丈さとのギャップに私は魅入られて深みに落ちていってしまう。いつものこと。 意を決したように沙都子ちゃんは口を開いた。 「私、最近胸の辺りが……こう、なんていうか熱くなってしまう……と言いますの?特に運動した後は衣擦れみたいになって、じんじんと……疼いてしまうんですの」 疼くという卑猥な言葉が出てくるなんて……沙都子ちゃん…… 「そ、そうなんだ。沙都子ちゃんもそういう時期になっちゃったんだね……」 冷静を努めて説明を行う。 「経験がお有りなんですの? 」 「大人になるときはどうしても敏感になる時期か来てしまうものなの。レナや魅ぃちゃんはもう済んだかな……」 沙都子ちゃんが苦しんでいるのは一種の成長痛だろう。疼いてしまうという表現も決して彼女は卑猥を以って話したのではない。でもこれは無二の好機だ。私の頭の中であらゆる算段が繰り返される。冴えた頭が照らし出したのは…… ───本当に持ち帰ってしまおう 「……ねえ、沙都子ちゃん。レナの家に来ない? その痛みについて色々と対処の仕方を教えてあげるから……」 「本当……ですの? 」 「大事な仲間のためだからね……おいでよ」 圭一君が普段連呼している仲間という言葉を餌にして返事を待つ。 「ありがとうございますわ、レナさん。話をしてよかった……」 「ふふふ、じゃあ行こう。すぐに楽になるから……ね」 疼痛に悩む純真な沙都子ちゃんが釣れた。欲望が現実になるのはもう、時間の問題だけ。これで九分九里、未発達の青い女の子をこねくり回すことができるはず。だってもう釣れてしまったんだから。陸に揚がってしまうのだから。 私の頭の中には二重、三重に性欲プランが構築されている。トラップの達人でさえ回避はできない。欲情にまみれた笑顔を貼り付けて私は沙都子ちゃんの手を取った。 自宅に招きいれた私は自室に招き、性の講義を始めた。 沙都子ちゃんは疼痛を防ぐために。私は沙都子ちゃんを料理するために。 「良い、沙都子ちゃん? 今あなたを悩ませている疼痛……胸の疼きはね、成長痛って呼ばれているものなの」 「成長痛……」 まっすぐに私を見据えている沙都子ちゃんの視線をジンジンと感じながら、私は言葉を続けた。 「そう。人が大人の階段を登り始める時期に必ず訪れてくるものなの」 「大人の……では私は大人になり始めているんですの? 」 沙都子ちゃんの表情が少しだけきらめきを放ったような気がした。 「……沙都子ちゃんは大人になりたい……? 」 答えを聞きたくない質問を私は投げかけた。 「……ええ。早く大人になりたいですわ」 心の底がゾッと急激に冷え込んでしまうのを覚えた。 「早く大人になって、にーにーやレナさんのような立派な強い人間になって生きていきたいんですの……」 「でも、大人になることは辛いことだと思うよ。いろんな汚いものを体と心に刻み込まれる……それはとても……」 「いいんですの」 私の言葉は中途で遮られた。 「そのようなものを全て受け入れて、立派な人になれるのだと私は思っていますわ」 「沙都子ちゃん……」 そんな……嘘だ嘘だ。あんな汚らわしい存在に夢を見ているなんて……腐りきった大人に早くなりたいなんて……じゃあその無垢な笑顔は何? 澄み切った瞳とあなたの弱々しい心は何だったの? 買うことのできないその純真さをあなたは捨てようとしているの? 私が毎日どんなに沙都子ちゃんを想ってきたか……駄目だ、沙都子ちゃん。腐り切って、賞味期限が過ぎる前に何とかして…… 食べなきゃあなたを。 いいよ、沙都子ちゃん。あなたがその気なら。あなたの思いを尊重してあげる。 でもそれは体裁だけ、外側だけ。食べるための口実のために利用する。 「話が逸れましたわね。本題をお願いしますわ」 「まず、沙都子ちゃん。運動をした後に特に痛くなっちゃうこと多くない? 」 「ええ、おっしゃるとおり……今日の体育の後なんかすごくて……」 今も疼きがあるのだろうか。胸の辺りを押さえながら沙都子ちゃんはつぶやいた。 「衣服との擦れ合いによってそれは起こってしまうことが多いの。それを防ぐにはね胸の突起……つまり、うん、沙都子ちゃんの乳首を保護してあげれば軽減するの」 乳首という言葉にぴくりと体を震わせたのは気のせいじゃあない。 「じゃ、じゃあどうやって保護すれば……」 「適当なシールみたいなのを貼ってあげるの……」 「シールを貼ればいいんですの……」 ふふふ、本当なら適当なブラを当ててあげれば擦れあいは防げる。でも、この子は無知。だから少しばかり恥ずかしいことを吹き込んであげる。小さな子供にいたずらを掛けるロリコン魔の気持ちが少しだけ理解できた。 「シールって言われましても具体的にどのような……」 小首をかしげた沙都子ちゃんにさらなる嘘を吹き込んであげた。 「一般には絆創膏がいいんだよ、沙都子ちゃん……」 「そう、絆創膏を貼るんですの……」 「貼り方も教えてあげなくちゃね……沙都子ちゃん、お洋服脱いでくれるかな」 沙都子ちゃんの目がくっと見開いた。わずかな赤みを帯びている瞳が揺れ動く。 「ぬ、脱ぐんですの? 」 少し軽率だったかな。でも…… 「沙都子ちゃん、よく聞いて。これはあなたのために、あなたが大人になるためにやっていることなの。恥ずかしいことかもしれないけれど、沙都子ちゃんの成長のためにレナはね、言うの。あなたが立派な大人の人になって欲しいから。ね、だから……」 自分に妹がいたらこうやって諭していくのだろうか。考えを張り巡らせて、私は言葉を選んでいった。そうしていけば目の前にいる幼女は…… 「ごめんなさい、レナさん……レナさんがこんなに親身になってくれるなんて……ありがとう」 ほら、大人という言葉を出せば沙都子ちゃんは簡単に折れてくれる…… 一見はわがままそうな感じだが押しにはとことん弱い女の子…… 「レナさんが……私のねーねーみたいに……」 そして筋金入りの甘えん坊さん…… 「ふふ、じゃあねーねーの言うこと聞いてくれる? 」 「はい、分かりましたわ……」 そうして沙都子ちゃんは自分の上着を脱ぎ始めた。 「これでよろしいんですの? ……やっぱり……恥ずかしいですわね」 上半身をさらけ出した沙都子ちゃんが目の前にいる。紅潮した顔を携えて、胸の辺りを両腕で隠している。その困惑した顔とみずみずしい素肌が私の唾液の分泌を促す。溢れる生唾を飲みながらじっくりと舐めるように見た。 「じゃあ、腕をどかしてみようか、沙都子ちゃん……」 「……わかりましたわ」 ゆっくりと両腕を下に降ろしていく。 「んっ……」 突起が空気にさらされて、くぐもった厭らしい声を沙都子ちゃんは吐いた。 毎晩オナニーで夢想していた幼女の乳首が今、目の前にある。夢みたいな光景に私の胸の突起も勃起してきた。 「はうぅ、沙都子ちゃん、少し赤くなっちゃてるね……」 沙都子ちゃんは二つの突起は真っ赤に腫らしていた。歳にしては大きめの膨らみに付いた沙都ちゃんを疼かせる神経の集まり。 「はい、これが……たまらなく……疼いて仕方がないんですの……」 少し涙を浮かべている沙都子ちゃんにくらくらになりながらも、私は冷静を呼び戻す。 「うん、じゃあ、絆創膏の貼り方を教えるね。とりあえず、今はレナの指が絆創膏だと思ってね」 沙都子ちゃんの後ろに回りこみ、抱き込むようにして両手を沙都子ちゃんの体の前面に回した。 「……ひぅ! 」 両の人差し指の腹でそっと突起を抑えてあげる。待ちに待った幼女の突起に触れた。 ───幼女の……甘えんぼ幼女の乳首が私の指に…… コリコリしてあげたいけれどここはまだ我慢。 「こうやってね、突起を包み込むようにしてあげるの……こうして動かしても、あまり痛みを感じてしまうことはないはずだよ……」 指の腹を押し付けたまま左右に揺すってやると…… 「んん、レナさん……そ、そんなに、動かしちゃあ……」 こうやって艶めかしく鳴いてくれる。そんな鳴き声されると……もう…… 「あ、あっあっ! レナさん……指が……」 「ほら……こんなに動かしても大丈夫……鬼ごっこしても缶蹴りしても大丈夫だね……」 ごめんね、沙都子ちゃん、でも大人になるためには必要なんだよ?私の愛撫に耐えられなくなったのか、私にのしかかるようにして体重を預けてきた。心地よい重みが私を支配する。 「レナさん……何か、痒くて……んぁぅ、あ、熱いのが……」 ふふ、きちゃってる、きちゃってる…… 「これで絆創膏の貼り方分かったよね……」 目をつむって大きく息を吸っている沙都子ちゃんを見下ろす。ゆっくりと頷いた沙都子ちゃんに対して私は再び言葉を紡いだ。 「じゃあ次は、今まで溜まってた凝りと張りを解消させるマッサージ教えるね」 「はい……それを行えば、さっきの……痒いのと熱いのが……取れるんですの……? 」 私の膝の上に乗っている沙都子ちゃんは大きな瞳を潤ませながら問いかけてきた。 「お願いしますの、レナさん。私……もう何か、おかしく……なって」 さっきのがよほど効いたのだろう。私の手を握り締めて必死に哀願してきている。 「でも、ここじゃ駄目。沙都子ちゃん、ここじゃ風邪引いちゃうから。ね?お風呂場に行こう? 」 「お風呂……はい、行きますわ……お風呂……」 「まず背中と髪を洗ってあげるね沙都子ちゃん」 こくりとうなずく沙都子ちゃんの背後に回ると、泡を立てたスポンジを体に当ててあげた。でも…… 「……んん、やぁ、レナさん、スポンジが……」 スポンジの刺激に敏感な肌が耐えられないのだろうか。あてがうごとに吐息を漏らしていく。このままごしごしと直接乳首を擦ってあげたい衝動に駆られるのだがここも抑える。内心はバクバクなのだけど。 そこで私はスポンジから泡だけを取り、素手で体の隅々まで洗ってあげることにする。洗い終えた私は、沙都子ちゃんのふんわりとした髪の毛を洗いにかける。 「痛くない? 沙都子ちゃん? 」 「はい……とても優しくて気持ちいいですわ……」 まだ青々しいにおいを放つ沙都子ちゃんの髪を指先に憶えつけるように触姦する。 「んん、気持ち……いい……なんだか本当のねーねーに洗われているみたい……」 ……そう。私は今この子、姉になってあげているのだ。いきなり獣になってこの子を襲ったらねーねー失格になっちゃうから……まだまだ泳がせないと。 「それじゃあ、次はマッサージですわねレナさん」 体を清めた私たちはついにマッサージの準備に取り掛かる。沙都子ちゃんはこの胸の疼きを止め様として躍起になってる。もうすぐだよ沙都子ちゃん。いっぱいほぐしてあげるからね。 「そのマッサージは……あの……痛いのですの? 」 「ううん。全然そんなことない。むしろ、疲れや凝りが取れて気持ちいいの」 だって……性感……マッサージだもの…… 純情さをひしひしと見せ付けてくる沙都子ちゃんに少しの罪悪感を感じる。駄目なねーねーでごめんね。 お風呂場の床にバスタオルを敷き詰めて直に座っても痛くないようにする。沙都子ちゃんに座るように指示し私はローションを手に取った。 「これ? これは肌の滑りをよくするためのものだよ。これを塗っておけば痛みを抑えてマッサージできるの」 「この……ローション? をレナさんはどうして今も持っていますの? レナさんも時折マッサージをしていますの? 」 微妙なところを突いてきた沙都子ちゃんに対して注意して答えた。 「う、うん。レナも時折やるの。……気持ちいいし美貌にも良いんだよ? だよ? 」 まぁ、マッサージといってももっぱら下半身のマッサージだが……もちろんこのローションも自分のオナニーのために使ってたものを転用したものだ。これを使って何度も沙都子ちゃんを夢想したことか…… 「それでは、お願い致しますわ」 妄想中にいきなり振られた私は急な鼓動の高鳴りを抑えながら、その幼幼しい肌に、まずは肩口から液を流し込んでいく。重力に従って下半身に垂れていくその感触を沙都子ちゃんはどう感じているのか…… 「な……にか……ぬるんぬるんしたのが、いっぱい……来ていますわ」 両の肩口からたくさんのローションを垂らしてやる。かぁいい、かぁいい幼女のために奮発して使用する。 「じゃあいくよ……」 私の指が沙都子ちゃんの肩口に触れるとびくりと体を震わせた。最初は方から首にかけて本当のマッサージのように解きほぐしてやる。 「あっ……いい」 柔らかな肌に触れることがついにできた。内心の緊張が私の指を震わせる。 「すごい、良いですわレナさん……でも、あの……お胸のほうにも……していただかないと……駄目なのでは……」 ───ふふ、お部屋でやった前戯が効いちゃったのかな…… 胸のほうへと両手を滑り込ませて沙都子ちゃんの膨らみに引っかかるようにしていたローションの塊を円心状に押し広げてやった。 「くぅうん!! ぬるぬるが……何か……私、獣に体を舐められてるみたいですわ」 鋭いんだね沙都子ちゃん。獣はあなたのすぐ近くにいるよ。近くにいて息荒げてごちそうの下ごしらえをしてるんだよ。 液によって艶めかしく光っている沙都子ちゃんは本当に全身を舐め尽されたみたいになっていた。 そのまま自分の両の手で膨らみを押しあげて本格的に揉みしだいていく。 「んん……はぁ……レナさん……」 吐息がさらに大きくなっていくのを実感した私は核心の迫る。 「突起のところもやっちゃわないとね……」 満足ができなくなった私、沙都子ちゃんもかな……ついに乳首に刺激を与える。 「はぁぁぁ! そこですの! そこがたまらなく……あ」 人差し指と中指でこりこりと朱に腫らした突起をこねてやる。 「あ、あっあ! じんじんして……おかしくなって……」 目を瞑って見知らぬ快感に酔い痴れている沙都子ちゃん。その頬は桃色に紅潮していた。ときおりびくんと体を震わせていくのがとめどない情欲を誘う。 「こうやって解していくの。どんどんどんどん楽になっていくからね……」 手に力を込めて摘み取るようにして刺激を与える。ぬるりとしたローションにまみれているから痛みではなく快感に転じているはずだ。 「やぁ……なんか……ん、熱いのが……お胸だけだったのに、足の間にもきゅっと何かが来てて……」 いけない子……ただのマッサージなのにイきそうになってるなんて…… 「もうすぐだよ……もう少ししたら楽になるから」 かなり脱力を見せている沙都子ちゃんを抱き留めてやる、そして意を決してもらう。 「!? レ、レナさん! そこは……」 脚の間にあるもう一つの突起に指を差し入れた。ここを弄べばすぐにころっと達してしまうだろう。 「ここを刺激をしてやれば、もっともっとすぐに楽になるからね……」 「……恐い……恐いですわレナさん。私……何か……恐いのが来てしまいそうで……」 思ったとおりの反応。ここまで予測どおりだと何か微笑みが漏れてしまう。 「じゃあ、やめる? 恐いなら……ねーねーの言うこと聞けないなら……やめてもいいんだよ」 ねーねーの言う事を聞けない悪い妹には鞭が必要だ。ぱっと指の動きを止めた。 「どうするの……一生、疼いたまま暮らしていく? 」 くっと目を見開いた沙都子ちゃんは首を懸命に振りながら哀願してきた。 「い、嫌ですわ、ねーねー、私疼いて疼いて仕方がありませんの……」 「……だから? 」 「お願い……続けてくださいませ! 私を早く早く……楽に」 哀願幼女に心と下半身を打たれた私は思わず性欲に素直な妹を抱きしめてやる。 「ごめんね沙都子ちゃん……レナ少し言い過ぎちゃったね……でも大事な妹を思って 言ってしまったの……許してね……」 「はい、ねーねー。私もごめんなさいですわ。ねーねーの気持ちを蔑ろにしてしまって……だから、ねーねーの思うように……続けてぇ……」 スイッチが入っちゃった沙都子ちゃん。イかせてあげるからね……たっぷり。 再び私は上半身の突起と下半身の突起に手を添わした。もう両方とも真っ赤に充血していた。 「ほら、こっちのほうも撫でてあげるといいんだよ? 」 「あぅ……ああ! やぁ、壊れて……しまいそう! 」 結構強めにクリトリスを刺激してあげるのだが、なかなか粘っている。触った瞬間イってしまうと思ったのだが…… 「はうぅ……レナ少し疲れちゃった……」 少し指を休ませようと動きを留めた瞬間だった。ぐっと私の手が掴まれた。 「いや! やめないで下さいませ! ねーねー、もっとコリコリしてぇ!! 」 もはや私の指の動きではなくて、沙都子ちゃんの力だけで愛撫が持続された。 「あ、ああっ! ねーねー! レナねーねーぇ!!!! 」 一段と体を振るわせた私の淫乱妹は自分の意思と力で絶頂に達した。 私の指に絡みついた愛液を、渇望していたそれを一滴も残さずに私は口に入れた。 「ふふ……いけない子……」 「年上の方とお風呂に入るのはにーにー以来ですわね……」 情事を終えた私たちは一緒に湯船に浸かっていた。ちょうど私が沙都子ちゃんを後ろから抱くような形をして湯を浴びている。 「悟史くんとはよくこうやって一緒に入ってたんだ……」 「ええ、懐かしいですわ……でも」 沙都子ちゃんが振り返り私のことを見つめた。 「今は……優しくて綺麗なねーねーがいますから……寂しくなんかありませんわ」 「沙都子ちゃん……」 私は目の前にいる妹をぎゅっと抱きしめてあげた。 お風呂からあがった私は沙都子ちゃんの体を丁寧にふき取り、例の絆創膏を手に取った。 二つの絆創膏を二つの突起に貼り付けていく。 「これで、疼痛を防げるはずだよ……沙都子ちゃん」 「ありがとうございます。これで鬼ごっこもへっちゃらですわね」 何も知らない沙都子ちゃん。これで私だけの絆創膏幼女の完成だ。これからは毎日下着の下に絆創膏を貼って登校し、授業を受け、ご飯を食べ、部活に勤しみ、罰ゲームを 受けちゃうのだ。その姿を想像したら、沸々と性欲が溢れてきた。 「ねーねー、今日は本当に感謝していますわ」 家の玄関で帰り支度をしている沙都子ちゃんを見送る。家に来たときとは違い嬉々とした表情の笑顔を見せてくれる。 「沙都子ちゃん、私の家に泊まっていっても良かったのに……」 「お気持ちはうれしいですわ……でも梨花と羽入さんを待たせてしまっていますから……」 玄関を開けると夕暮れのオレンジが差し込んでくる。 「……ねーねー……あの」 表情が弱々しくなった。愛撫しているときに見たあの哀願するような瞳。 「また……体が疼き始めたら……あのマッサージ……もう一度お願いしても……」 もちろん私はそれを快諾する。かぁいいかぁいい、妹のためだから…… 「もちろん……またおいで……」 沙都子ちゃんがいなくなった後、私は一人ベッドに潜り込む。刻み付けた沙都子ちゃんの味や感触を自分のものにするためだ。沙都子ちゃんは私のことをねーねーと呼んでいたが…… ふふふふふ、それはあの子の賞味期限が過ぎる前までの話。ただの形骸。これからあの子は私の愛撫を求めてくるだろう、優しい優しいねーねーの気持ちいいマッサージを。 その日が来るまであの子を骨の髄まで味わってやろう。少しでも拒絶を見せたらまた鞭を振るえばいい。あの子はとても従順そうな幼女だから。 三人の幼女のうち一人は陥落した。残りは古手羽入ちゃんと古手梨花ちゃん。 次はどちらを噛んでやろうか。気の弱そうな羽入ちゃんのあの角を味わってみたい。 少し斜に構えたところのある梨花ちゃんのぺたぺたの胸をさらけ出してあげたい。 ……決めた。羽入ちゃんにモーションをかけよう。梨花ちゃんの胸も魅力的だが、あの角の方が引かれる。というかあれはいったい何なのだろうか。硬さは? においは?味は? そして、あの子は意外と……エロい。圭一君が話していた猥談に目を輝かせて参加していたのを知っている。陥れるのには絶好の獲物だ。あの角で貫いてもらうのも良いし、角を舐めながら羽入ちゃんの秘所を責め立てるのもまた一興。エロ幼女の本性を暴いてやろう…… 次なる獲物の夢を見ながら、私は沙都子ちゃんのにおいの付いた指先を自分の秘所に突き入れた。 <続く>l 変態レナ 羽入編 -
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← メギドラオン。 それは極大の火力に他ならない。 単純な破壊力だけに絞って言えばリンボ自身の本来の宝具よりも数段上を行く。 龍脈の龍を経由してその身に会得した異世界の魔法。 蘆屋道満程の術師であれば、それを最上の形で扱いこなすなど朝飯前の茶飯事だった。 更に禍津日神・九頭竜新皇蘆屋道満として完成された素体をもってすれば尚の事。 結果として歓喜のままに解き放たれた最上の炎は屍山血河舞台の総てを焼き尽くし。 後に残された者達は、当然のように敗残者らしい姿を晒す憂き目に遭った。 「これはこれは」 アビゲイル・ウィリアムズは右腕を黒焦げの炭に変えられ。 新免武蔵は髪房を焼き飛ばされた上、炎の中に生存圏を捻出する為に多刀の半分以上を溶かさねばならなかった。 そして伏黒甚爾の損傷が一番重篤だ。 彼は左腕を肩口から消し飛ばされ、それだけに留まらず左胴全体に大火傷を被っていた。 如何に彼が天与呪縛のモンスターであると言えども、これは紛うことなき致命傷だった。 「皆様お揃いで、随分と見窄らしい姿になりましたな」 らしくもなく息を乱した姿に溜飲が下がったのかリンボは満足げに彼の、そして彼らの有様を嘲笑する。 一番被害の軽い武蔵でさえ二天一流の強みを大きく削ぎ落とされた形。 アビゲイルと甚爾は四肢を三肢に削がれ、後者に至っては生命活動の続行さえ危うい容態にまで追い込まれている始末。 無様。 神に弓引いた者達の顛末としては実に"らしい"体たらくではないか。 そう嗤うリンボだけが唯一無傷だった。 三人が負わせた手傷もダメージも、メギドラオンの神炎が晴れる頃にはその全てが消え失せてしまっていた。 「…大丈夫、二人とも」 「私は、なんとか。でも…」 アビゲイルの眼が甚爾を見やる。 甚爾は答えなかった。 それが逆に、どんな返事よりも雄弁に彼の現状を物語っている。 “…こりゃ駄目だな。流石に年貢の納め時らしい” 冷静に自分の容態を分析して判断を下す。 此処まで数秒足らず。 自分の肉体の事は嫌という程よく分かっている。 何が出来るのかも、何が出来ないのかも。 以上をもって伏黒甚爾は自分の末路を悟った。 “不味い仕事を受けちまったな。タダ働きの果てがこれじゃ全く割に合わねぇ” ほぼ間違いなく自分は此処で死ぬ。 反転術式なんて便利な物が使える筈もない。 マスター経由での治癒も見込めず、体内は主要な臓器が半分程焼損している有様だ。 今こうして生き長らえている事が奇跡と言っても決して大袈裟ではなかった。 “従っても歯向かっても、結局汚れ仕事やるような奴は長生き出来ねぇってか。…返す言葉もねぇな” あの時。 伏黒甚爾は、アイドルの少女を射殺した後――芽生えた違和感に逆らわなかった。 大人しく尻尾を巻いて逃げ帰った。 それでも結局こうして屍同然の姿を晒すに至っているのはどういう訳か。 問うまでもない。 そういう訳なのだ。 散々暗躍して来たツケか、どうやら往生際という奴が回ってきたらしい。 何か途轍もない幸運に恵まれて生き長らえる事が出来たとしても隻腕の猿など何の使い物にもなりはすまい。 つまり此処で自分は、ごくあっさりと詰んだ訳だ。 仕事人らしくひっそりと…呆気なく。 似合いの末路だ。 甚爾は満身創痍の体の可動域を確かめながら自嘲げに笑う。 とはいえこれで最後なら、もう後先考える必要もない。 最後に死に花咲かせてアビゲイルにバトンを渡せばそれで終いだ。 “化物退治の英雄になるつもりなんざ端からねえんだ。ド派手な英雄譚なんざ、持ってる奴らに任せとけばいい” 例えば、得体の知れない神に魅入られているガキだとか。 例えば、差し向けられた呪いも力も全部真っ向斬り伏せちまう剣客だとか。 華々しい勝利や首級はそれが似合う奴らに任せるのが絶対的にベターだ。 能無しの猿がやるべき仕事はその手伝いと後押し。 奴らが気持ちよく本懐果たせるように裏方仕事で敵を削り、死ぬ前に野郎の吠え面が見られればラッキーと。 そうまで考えた所で、 『猿では儂は殺せぬ。誅せぬ。一芸、一能、道具を用いようと知恵を使おうと、人の真似を超えませぬ』 『黄金ほどの衝撃もない。 雷光ほどの輝きもない。 火焔ほどの鋭さもない。 絡繰ほどの巧拙もない。 鬼女ほどの暴力には、些か足りない』 ――違和感。 自らの意思と相反して隻腕に力が籠もった。 その右腕を見下ろす視線は忘我。 次に浮かんだのは苦笑だった。 「俺も懲りねえな」 "違和感に逆らい続けると、ろくなことがない"。 結局の所猿は猿なのだろう。 然り。 この身に正義だの信念だのそんな大層な観念は今も昔も一度だって宿っちゃいない。 只強いだけの空洞。 そしてその空白を埋める物は、もう未来永劫現れる事はない。 自分も他人も尊ぶことない。 そういう生き方を選んだのだから。 そんな青を棲まわせる余地なぞ、この体に一片だってあるものか。 それは今も変わらない。 きっとこれからも。 何があろうとも――。 「フォーリナー」 リンボの五指は今や指揮棒だった 振るその度に呼吸のような天変地異が発現する光景は悪夢じみている。 地震。火災。雷霆に怪異の跳梁、束ねた神威を放てばそれは必滅の審判と化す。 傷口が炭化して血すら流れない欠けた体で地面を蹴り、それらをどうにか掻い潜りながら。 すれ違う僅か一瞬、甚爾はアビゲイルへと耳打ちをした。 「――――――」 少女の眼が見開かれる。 だめよ、と口が動いた気がした。 それに耳は貸さない。 伝えるべき事は伝えたと、猿は戦端へ戻っていく。 “しかし流石に坊さんだな。人の陥穽探しは得意分野か” 捨てられるものは残らず捨てた。 何だって贅肉と断じて屑籠へ放り込んだ。 それをとっとと焼き捨ててしまわなかったのが"あの時"の失敗。 だから今回は歯車たれと。 依頼人のオーダーを完璧にこなして座へ帰る、そういう役割に殉ずるべきだと。 そう決めていた。 今だってそのつもりだ。 なのに猿は何処までも愚かしく。 そして、何処までも人間だった。 ――後先がなくなった。 未来が一つに定まった。 後任は用意出来ている。 何より今この場を仕損じれば、その時点で仕事は失敗に終わるのが確定している状況。 そんな数々の理由が…言い訳が。 英雄が生前の偉業をなぞるが如くに。 術師殺しの男に、その愚行をなぞらせる。 「…さて」 右腕は問題なく動く。 両足の火傷も軽微だ。 内臓の損傷は重度。 失血で脳の回りは悪い。 何より片腕の欠損がパフォーマンスを著しく低下させている。 仕事人として、術師殺しとして片手落ちも良い所だ。 以上をもって伏黒甚爾は結論付ける。 ――問題ない。 「やるか」 悪神と化したリンボを討たずして仕事の続行は有り得ない。 ならばその為に今此処で死力を尽くそう。 この違和感に逆らって。 この衝動に従って。 甚爾は地を蹴った。 無形の魔震を斬り伏せながら吶喊する。 嘲笑うリンボへ獰猛に笑い返して、男は愚かのままに突き進んだ。 呪霊の海が這い出でる。 禍津日神の呪力によって無から湧き出す百鬼夜行。 それを切り払いながら進む甚爾の奮戦は隻腕とは思えない程に冴え渡っていたが、しかしそれは大局に何の影響も及ぼしていなかった。 「健気なものよ。これしきの芸当、今の儂には無限に行えるというのに」 夜行は攻め手の一つに過ぎない。 甚爾を嘲笑うように九頭竜の顎が開き、九乗まで威力を跳ね上げた魔震を炸裂させた。 アビゲイルが鍵剣を振るって空間をねじ曲げる。 そうして出来上がった脆弱点を武蔵が押し広げ、力任せにぶち破った。 だが足りない。 無茶をしても尚砕き切れなかった震動の余波が彼女達の体を容赦なく蹂躙する。 武蔵が血を吐いた。 アビゲイルが片膝を突いた。 されど休んでいる暇などない。 甘えた事を宣っていれば、足元から間欠泉宛らに噴き出した呪炎の泉に呑まれていただろう。 「チェルノボーグ、イツパパロトル」 二神が列び立って天元の桜を迎撃する。 暗黒と吸精が、女武蔵の体を弾丸のように弾き飛ばした。 彼らは次の瞬間にアビゲイルの喚んだ触手に呑み込まれ即席の牢獄へ囚えられたが、それも所詮は僅かな時間稼ぎにしかならない。 空に瞬く赫い、何処までも赫い太陽。 先刻三人が見た最強の魔法を嫌でも想起させるそれが弾ければ、地上はまたしても熱波の地獄に置き換わった。 「メギド」 メギドラオンに比べれば遥かに威力は落ちる。 だがそんな事、何の救いにもなりはしない。 最上に比べれば威力が幾許か落ちる。 ――だから何だというのだ。 「では十度程、連続で落としてみましょうか」 今のリンボが繰り出せばどんな術でも致命の威力を纏う。 ましてや格が低いという事は、即ち連射に耐える性能であるという事でもあり。 稚気のように言い放たれたその言葉は、彼女達に対する死刑宣告となって降り注いだ。 「絵画を楽しむ趣味は御座いませんでしたが。なかなかに愉しい物ですなぁ、絵筆で何か描くというのも」 この体を筆に、この力を絵具に。 自由気ままに絵を描く。 世界という名の白紙を塗り潰す。 そうして描き上げるのだ、色とりどりの地獄絵を。 地獄の業火より逃れ出んとする不遜者があれば直ちに罰を下そう。 羅刹王を超え髑髏烏帽子を卒業し、現世と地獄を永久に弄ぶ禍津日神と化したこの蘆屋道満の眼が黒い内は斯様な不遜なぞ許さない。 「このようになァ」 「あ、ぎ…!」 鍵を掴み立ち上がろうとした巫女の右足が吹き飛んだ。 リンボの放った呪詛が鏃となって無慈悲に罪人を誅する。 「如何ですか、アビゲイル・ウィリアムズ。純真故に怒る事すら正しく出来ない哀れな貴女」 全身の至る所に火傷を負い、酷い部分は炭となって崩れ始めているその様相は悲惨の一言に尽きる。 そんな彼女の姿にはこの状況でも尚何処か退廃的な美しさが宿っており、それを嬉々と感傷しながらリンボは綴る。 「主の仇を討つ事は愚か、彼女へ引導を渡したのと同じ攻撃で為す術なく膝を突かされる気分は。 是非とも、えぇ是非とも、この九頭竜新皇蘆屋道満へお聞かせ願いたい。それはさぞや芳しい蜜酒となりてこの身を潤すでしょうから」 「…とても痛くて、辛いわ。泣いてしまいそうになるくらい」 向けられるのは只管に思慮等とは無縁の悪意。 生傷に指をねじ込んで穿り返すような嗜虐。 それに対し滔々と漏らすアビゲイルの声にリンボは笑みを深めたが。 そんな彼に対して巫女は、鍵を杖によろよろと立ち上がりながら言う。 「可哀想な御坊さま。貴方は、私に怒ってほしいのね」 「ほう、これはまた面妖な事を仰る。 確かに、ええ確かに銀の鍵の巫女たる貴方が髪を振り乱し目を剥いて怒り狂う姿を見たくないと言えばそれは嘘になりますが」 ギョロリとリンボの眼が動いた。 「言うに事欠いてこの拙僧を哀れと評するとは…いやはや、異界の感性というのは解らぬ。 こうも満ち足り、満ち溢れて止まらないこの霊基が貴女には見えぬのですかな? 今まさにこの蘆屋道満は過去最高の法悦のままに君臨し、御身らの奮戦さえ喰らって地平線の果てへ漕ぎ出さんとしているというのに!」 「ええ。貴方はきっと…とても可哀想なひと。酷い言葉と、棘のような悪意で着込んでいるけれど……」 今のリンボは奈落の太陽そのものだ。 底のない黒を湛え、脈打ち肥え太る破滅の熱源。 既にその性質は赤色矮星と成って久しい。 彼はあるがまま思うがままに全てを呑み干すだろう。 まさに至福の絶頂。 哀れまれる理由等何もない。 「本当は…とても寂しいのね。 分かるわ。その気持ちを、私は何処かで知っているから」 巫女はそんな彼の逆鱗を、その指先で優しく撫でた。 「どれだけ手を伸ばしても届かない誰かに会うために歩き続ける。 星に手を伸ばすみたいに途方もない事だと知りながら、それでも諦められない何か。 頭のなかに強く、そう太陽みたいに焼き付いて消えない憧憬(ヒカリ)……」 …朧気に揺蕩う記憶が一つ、アビゲイルにはあった。 それはきっと"この"アビゲイルに起こった出来事ではない。 魂の原型が同じだから、存在が分かれる際に偶々流れ込んでしまっただけの記憶と想い。 ある少女の面影を探して、きっと今も宇宙の果てを旅しているのだろうもう一人の自分の記憶。 「だからお空を見上げているのでしょう。あなたは」 「――黙れ」 そんなものを抱えているから、アビゲイルはこうして悪逆無道の法師へと指摘の杭を打ち込む事が出来た。 昂るばかりであったリンボの声色が冷たく染まる。 絶対零度の声色の底に煮え滾る怒りの溶岩が波打っている。 その証拠に次の瞬間轟いた魔震は、先刻彼女と武蔵が二人がかりで抉じ開けた物より更に倍は上の威力を持って着弾した。 「ン、ンンンン、ンンンンンン…!」 それはまさに極大の災厄。 自分で生み出した呪符も百鬼夜行も全て鏖殺しながら、リンボは刃向かう全てを押し潰した。 立っている者は誰も居ない。 猿が倒れ。 巫女が吹き飛び。 剣豪でさえ地に臥せった。 「…いけない、いけない。神たるこの儂とした事が餓鬼の戯言に揺さぶられるとは」 誰一人禍津日神を止められない。 天を目指して飛翔する禍津の星を止められない。 力は衰えるどころか際限なく膨れ上がり、無限大の絶望として悪僧の形に凝集されている。 彼こそが地獄、その体現者。 この偽りの地上に地獄の根を下ろし。 いずれは世界の枠さえ飛び越えてありとあらゆる平行世界を悪意と虐殺の海に変えるのだと目論む邪悪の権化。 そんな彼の指先が天へと伸びた。 昏き陽の輝く空には鳥の一匹飛んでいない。雲の一つも流れていない。 孤独の――蠱毒の――お天道様が口を開けた。 白い歯と真っ赤な舌を覗かせながら、神に挑んで敗れた愚か者達を嗤っている。 「とはいえ今ので多少溜飲は下がりました。拙僧も暇ではありませんので、そろそろ幕を下ろすとしましょう」 そうだ。 これは太陽などではない。 斯様な悪意の塊が天に瞬いて全てを笑覧する豊穣の火であるものか。 彼男の真名(な)は悪霊左府。 かつて藤原顕光と呼ばれ、失意の内に悪霊へ堕ちた権力者の成れの果て。 蘆屋道満の盟友にして、彼の霊基に宿る三つ目の柱に他ならない。 「因縁よさらば。目覚めよ、昏き陽の君」 其処に収束していく呪力の桁は最早次元が違った。 単純な熱量でさえ先のメギドラオンを二段は上回る。 放たれたが最期、全てを消し去るに十分すぎる凶念怨念の核爆弾だ。 全ては終わる。 もの皆等しく敗れ去る。 「この忌まわしい縁の悉く平らげて、三千世界の果てまで続く大地獄の炉心と変えてくれよう――」 太陽が瞬くその一瞬。 リンボの高らかな勝利宣言が響き渡る中。 「ぞ……?」 …しかし彼はそこで見た。 視界の中、倒れた三人の中で誰よりも早く。 灼け千切れた体を動かして立ち上がった女の姿を、見た。 その姿は見る影もない程ボロボロだった。 勇ましく啖呵を切ってのけた時の清冽さは何処にもない。 死に体と呼んでもそう的外れではないだろう。 二天一流を特殊たらしめる多刀も今や二振りが残るのみ。 足を止めて死を受け入れても誰も責めないような、血と火傷に塗れた姿格好のままで。 それでもと、女武蔵は立ち上がっていた。 「――」 その姿を見る蘆屋道満。 惨め、無様。 悪足掻き、往生際悪い事この上なし。 罵る言葉なぞ幾つでも思い付くだろう醜態を前にしかし彼は沈黙している。 得意の嘲笑を口にするのも忘れて。 道満は――リンボは己が霊基の裡から浮上する光の記憶を思い出していた。 “…莫迦な。そんな事がある筈がない” 既視感。 本願破れて失墜し。 常世総ての命を殺し尽くすとそう決めた己の前に立ち塞がった男が、居た。 青臭くすらある喝破は子供の駄々とそう変わらなかったが。 それを良しとする神が笑い。 愚かしい程真っ直ぐなその男に、英雄に――剣を与えた。 あの光景と目の前の女侍の姿が重なる。 有り得ぬと。 布石も理屈も存在すまいと。 理性ではそう解っているのに何故か一笑に伏す事が出来ず、リンボは抜き放たれたその刀身を見つめ呟いていた。 「――神剣」 都牟狩、天叢雲剣、草那芸剣。 神が竜より引きずり出した都牟羽之太刀。 霊格では到底それらに及ぶべくもない。 禍津日神は愚か羅刹王にさえ遠く届かないだろう、桜の太刀。 それが何故ああも神々しく目映く見えるのか。 あれを神剣だなどと、何故己は称してしまったのか。 「…そう。貴方がそう思うのならきっとそうなんでしょうね、蘆屋道満」 「……否。否否否否否否否! 有り得ぬ! そんな弱い神剣がこの世に存在するものか! 世迷言を抜かすな新免武蔵ィ!」 「残念吐いた唾は飲めないわ。他でもない貴方自身が"そう"認識したんですもの。 うん、ちょっと安心しました。私、まだちゃんと貴方の敵であれてるみたいね」 これは神剣等ではない。 宿す神秘はたかが知れており。 神域に届くどころか一介の宝具にさえ及ばないだろう一刀に過ぎない。 だがリンボは先刻確かにこれに神の輝きを見た。 かつて己を滅ぼした、あの雷霆の如き光を。 悪を滅ぼしその企みを挫く――忌まわしい正義の輝きを見た。 「…銘を与えるなら"真打柳桜"。繰り返す者を殺す神剣」 勝算としてはそれで十分。 リンボの示した動揺が武蔵の背中を後押しする。 他の誰でもない彼自身がこの剣に神(ヒカリ)を見たのなら。 それこそは、これが目前の大悪を討ち果たし得る神剣なのだという何よりの証明だ。 たとえ贋作の写しなれど。 贋物が本物に必ずしも劣る、そんな道理は存在しない。 「――おまえを殺す剣よ、キャスター・リンボ!」 「ほざけェェエエエエエエ新免武蔵! 光の時、是迄! 疑似神核並列接続、暗黒太陽・臨界……!」 桜の太刀、煌めいて。 満開の桜に似た桃光が舞う。 見据えるのは空で嗤う暗黒の太陽。 地上全てを呪い殺すのだと豪語する奈落の妄執。 これは呪いだ。 これらは呪いだ。 改めて確信する。 こいつらが存在する限り、あの子達は笑えない。 あの二人が共に並んで笑い合う未来は決して来ない。 …それは。 爆ぜる太陽の猛威も恐れる事なく剣を握る理由として十分すぎた。 「伊舎那、大天象ォォ――!!」 「――狂乱怒濤、悪霊左府ゥゥッ!!」 光と闇が衝突する。 成立する筈もない鬩ぎ合い。 それでも。 負けられぬのだと、武蔵は臨む。 その眼に。 あらゆるモノを斬る天眼に。 桜の花弁が、灯って―― ◆ ◆ ◆ 必中、そして必殺。 古手梨花のみを殺す、古手梨花を確実に殺す領域。 時の止まった世界を駆ける弾丸、それは沙都子の先人に当たる女が駆使した運命の形だった。 人の身に生まれながら神を目指した愚かな女。 自分自身でもそう知りながら、しかし只の一度として諦める事のなかった先代の魔女。 今となっては彼女さえ沙都子の駒の一体でしかなかったが。 それでも梨花に勝つ為ならばこれが最良の形だろうと沙都子は確信していた。 上位の視点から異なるカケラを観測する術も持たぬ身で、百年に渡り黒猫を囚え続けた女。 彼女が振るった"絶対の運命"は後継の魔女、今は神を名乗る沙都子の手にもよく馴染んでくれた。 …止まった世界の中を弾丸が駆け。 そして古手梨花は為す術もなく撃ち抜かれた。 胸元から血が飛沫き、肉体を貫通した弾丸は彼方へ飛んでいく。 「チェックメイトですわ、梨花」 夜桜の血による超人化。 それも即死までは防げない。 梨花が頭と心臓への被弾だけは避けていたのがその証拠だ。 そんな解りやすい弱みを見落とす沙都子ではなかった。 部活とは、勝負とは相手の弱みを如何に見つけどう付け込むか。 仮に自分でなくとも、部活メンバーであるなら誰しも同じ答えに辿り着いただろうと沙都子は確信している。 「最後の部活…とても楽しかった。今はこれで終わりですけど、すぐに蘇らせますから安心してくださいまし」 決着は着いた。 役目を終えた領域が崩壊する。 それに伴って止まった時間も動き出した。 世界に熱と音が戻る。 心臓を破壊された梨花の体がぐらりと揺らぎ、地面へ吸い込まれるように倒れていき… 「――なってないわね、沙都子」 完全に崩れ落ちる寸前で、踏み止まった。 ――え。 沙都子の眼が驚愕に見開かれる。 演技でも何でもない。 本心からの驚きに彼女は目を瞠っていた。 馬鹿な。有り得ない。そんな筈はない。 弾丸は確実に命中していた――心臓を破壊した確信があった。 それに何十年分という体感時間を鍛錬に費やして技術を極めた自分がこの間合いで動かない的相手に外す訳がない。 じゃあ何故。 どうして。 答えが出る前に思考は中断された。 梨花の拳が、沙都子の呆けた顔面を真正面から殴り飛ばしたからだ。 「が、ぁッ…?!」 鼻血を噴き出して転がる。 只殴られただけだというのに、先刻刀で斬られた時よりも酷く痛く感じられた。 垂れ落ちる血を拭いながら立ち上がる沙都子の鋭い視線が梨花の顔を見据える。 「どう、して。どうして生きているんですの…! 私は外してなんかない、確実に貴女の心臓を撃ち抜いた筈ですのに!」 「さぁね。私にも…答えなんて解らない。所詮借り物の力だもの。小難しい理屈や因果なんて知らないわ」 そう言い放つ梨花の瞳には或る変化が生じていた。 桜の紋様が浮かび、発光しているのだ。 梨花にはこの現象の理屈は解らなかった。 しかしそんな彼女の裡に響く声がある。 『それは"開花"。夜桜(わたし)の血が極限まで体を強化したその時に花開く力』 …夜桜の血を宿した者は超人と化す。 これはその更に極奥の極意。 流れる血をまさに花開かせる事で可能となる正真の異能だ。 『元々兆候はあったけれど…まさか実戦で使えるまでに至るなんて。梨花ちゃんはつくづく夜桜(わたし)と相性がいいのね』 開花の覚醒は夜桜の力を数倍増しに強化する。 古手梨花は夜桜と成ってまだ数時間という日の浅さだが、しかし初代も驚く程の速度でこれを発動させる事に成功した。 北条沙都子が彼女に対して用いた絶対の運命――領域展開はまさに確殺の一手だった。 認めるしかない。 あれは梨花にとって本当にどうする事も出来ない詰みだった。 梨花もそれをすぐに悟った。 失われた記憶の断片が自分に告げてくる底知れない絶望の感情。 この運命からは逃げられないと、古手梨花の全てがそう語り掛けてきた。 「私は、こんな所で終われないと強く強く思っただけ」 「…ッ。そんな事で……そんな事で、私の運命を破れるわけが!」 「あら。私の通ったカケラを全部見てきた癖にそんな簡単な事も解らないの? 良いわ、改めて教えてあげる。運命なんてものはね、金魚すくいの網よりも簡単に打ち破れるものなのよ」 だとしても。 まだだ、と。 今際の際に梨花は詰みを回避する唯一の手段を捻出する事に成功した。 それが開花。 夜桜の血との完全同調。 簡単にとは行かなかったが。 それでも確かに古手梨花は、北条沙都子が繰り出した絶対の魔法を打ち破ってみせた。 「勝ち誇った顔をしないでくださいまし。たかが一度私の鼻を明かしたくらいでッ!」 「言われるまでもないわ。こっちもようやく温まってきた所なんだから」 これにて戦いは仕切り直し。 沙都子が銃を向け、梨花は切っ先を向ける。 『だけど気を付けて。その体は、開花の負担に耐え切れていない』 そんな事だろうと思っていた。 奇跡とはそう簡単に起こるものではない。 奇跡の魔女となる可能性を秘めた少女も、人の身では依然その偉業には届かないまま。 中途半端な希望は脳内に響く初代の声によって否定される。 『貴女の開花は"奇跡"。肉体の死を跳ね返す、本家本元の夜桜にさえ勝り得る異能』 生存の可能性がゼロでない限り、小数点の果てにある奇跡を手繰り寄せて自身の死を無効化する。 それこそが梨花の開花。 沙都子は絶対の魔女として急速に完成しつつあるが、神の因子を得た今の彼女でもまだ真なる絶対(ラムダデルタ)には程遠い。 だから彼女が扱う絶対の魔法には穴があった。 人間にとっては"無い"のと同義と言っていいだろう限りなくゼロに近い穴。 真なる奇跡(ベルンカステル)と袂を分かった梨花のそれもまた、沙都子と同様に穴を抱えていたが。 絶対のなり損ないと奇跡のなり損ないとでは本来あるべき相性の構図が反転する。 絶対の中に生まれた小数点以下極小の「もしも」を梨花の奇跡は必ず手繰り寄せる事が出来るのだ。 故に梨花は生を繋いだ。 しかしこんな、夜桜の血縁にさえ例がない程の芸当をやってのけた代償もまた甚大だった。 『二度目の開花で貴方は完全に枯れ落ちる。だから事実上、次はないと思っていい』 一度きりの奇跡。 まさに首の皮一枚繋いだ形という訳だ。 仮に沙都子がもう一度あれを使って来る事があればその時点で今度こそ梨花の敗北は確定。 断崖絶壁の縁に立たされたのを感じながら――それでも梨花は恐れなかった。 「行くわよ、沙都子」 「…来なさい、梨花!」 地を蹴って刀を振るう。 弾丸が脇腹を吹き飛ばすが気になどしない。 恐れず突っ込んだのは結果的に正解であった。 “力が、使えない…!?” 当惑したのは沙都子だ。 先刻まであれだけ漲っていた力が、急に肉体の裡から出て来なくなった。 消えた訳ではない。 確かに体内に溜まっている感覚がある。 なのに出力する事だけがどうやっても出来ない。 もう一度時を止めて撃ち殺せば済むだけだというその想定が、不測の事態の前に崩壊する。 ――沙都子は術師ではない。 だから当然知る筈もなかった。 領域の展開は確かに絶技。 生きて逃れる事は不可能に近い。 だが反面弱点も有る。 領域を展開して暫くの間は、必中化させて出力した術式が焼き切れるのだ。 従って今、沙都子は時を止められない。 黒猫殺しの魔弾を放つ事が出来ない…! “もう一度あれを使われたら、その時こそ私の負け” “もう一度あれを使えれば、私の勝利は確定する” ――最後の部活。 その制限時間が決まった。 北条沙都子の術式が回復するまで。 それが、この大勝負と大喧嘩のリミット。 梨花はそれまでに沙都子を倒さねばならず。 沙都子は、その刻限まで逃げ切れば勝ちが決まる。 有利なのは言わずもがな沙都子の方だ。 しかし彼女は、梨花から逃げ回る事を選ばなかった。 間近に迫る刀を躱す。 降臨者化を果たした体は完成度で決して夜桜に劣らない。 だからこそ梨花の斬撃を紙一重まで引き付けて躱し、その上で間近から頭部に向け銃弾の乱射を見舞うような芸当さえ可能だった。 梨花はこれを桜の花を出現させて受け止めさせ対処するが、先のお返しとばかりに沙都子の拳が鼻っ柱をへし折った。 次いで腹を蹴り飛ばされ、もんどり打って転がった所をまた銃撃の雨霰に曝される。 「は、はッ…! どうですの梨花ぁ……! 貴方が私に勝てるわけ、ないでしょうが!!」 「げほ、げほ…ッ。はぁ、はぁ……良いじゃない、そっちの方がずっとあんたらしいわよ沙都子。 神様気取りなんて全然似合わない。あんたはそうやって感情を剥き出しにして、生意気に向かってくるくらいが丁度いいのよ……!」 「その減らず口も…いつまで利いてられるか見ものですわね!」 群がる異界の羽虫を斬り飛ばし。 殺到する触手は斬りながら逃げて対処する。 湧き上がらせた桜の木々が触手を逆に絡め取って苗床に変えた。 異界のモノ…沙都子を蝕む冒涜的存在を片っ端から捕まえて殺す食虫花。 古手梨花は徹底的に、神としての北条沙都子を否定していく。 「そう――こんなの全然似合ってない。らしくないのよ、あんたが黒幕とか悪役とか!」 「私をこうしたのは梨花でしょうが!」 「解ってるわよそんな事! だから、引きずり下ろして同じ目線でもう一回話をしようとしてるんじゃない…!」 鉛弾が右腕を撃ち抜いた。 刀を握る力が拔ける。 知った事かと左手で沙都子を殴った。 沙都子の指が引き金から外れる。 知った事かと、沙都子も右手で梨花を殴る。 そうなると最早武器の存在すら彼女達の中から消えていく。 能力も武器もかなぐり捨てて。 二人は只、思いの丈をぶつけ合いながら殴り合っていた。 「そんなまどろっこしい事してられませんわ…! 私が勝って貴方を思い通りにすればいいだけの話じゃありませんの! 雛見沢を、私達を……私を捨てて何処かへ行こうとする梨花の言う事なんて信用出来る訳がありませんわ!」 沙都子が殴れば。 「うるさいわね、馬鹿! 捨てるだの何だのいちいち言う事が重いのよあんたは…!」 梨花も負けじと殴り返す。 容赦のない拳は肉を抉り骨をも砕く。 だが双方ともに、人間などとうに超えているのだ。 少女達は可憐さを維持したまま無骨な殴り合いに興じていく。 「外の世界に行きたい。今まで知らなかった景色を見たい。そう願う事が悪いなんて話は絶対にない!」 「貴女がそんなだから私がこうして祟りを下さなければいけないのでしょうが…! あんな監獄みたいな学園で、背中が痒くなるような連中に囲まれてちやほやされて暮らす未来。 それが……そんなものが、梨花の理想だったんですの? ねえ、答えて――答えなさいよッ!」 「そんな、わけ…ないでしょ――!」 そうだ、そんな訳はない。 憧れがなかったとは言わない。そういう世界に。 何しろ百年の日々は自分にとってそれこそ監獄だった。 雛見沢の古手梨花以外の何者にもなれない。 オヤシロさまの巫女。 古手家の忘れ形見。 村人みんなに愛される村のマスコット。 自分は只、そんな世界から一歩踏み出してみたかっただけ。 自分の事なんか誰も知らない世界で自由に生きてみたかった、それだけ。 そしてその横に…一つ屋根の下で一緒に暮らして来た親友が居てくれたらとそう思ったのだ。 「雛見沢症候群も安定して、何処にでも行けるようになった。 そんなあんたと一緒に外へ出て、色んな物を見てみたいと思った。 だからあんたを誘ったのよ。お山の大将になるのが目的だったなら、あんたみたいなお転婆連れてく訳ないじゃないッ」 「だったら…! 私とずっと二人で居れば良かったじゃありませんの! 梨花が一緒に居てくれたのなら、梨花さえ一緒に居てくれたら……! 私だって大嫌いでしょうがない勉強も、いけ好かないお嬢様気取りの連中も…我慢出来たかもしれませんのに!」 一際強い拳が打ち込まれて梨花が蹌踉めき後退する。 荒い息が口をついて出る。 夜桜の血を宿し、仮に一昼夜走り続けても疲れないだろう体になったにも関わらず酷く呼吸が苦しかった。 見ればそれは沙都子も同じのようだ。 「ッ…。それは、……本当に後悔してるわよ。誓って嘘じゃない」 理由や因果を求める等無粋が過ぎる。 彼女達は今、かつてない程に本気なのだ。 だから息も乱れる。汗も掻く。拳が痛くなるくらい力も込める。 「すれ違いがあったとかそんなのは体のいい言い訳に過ぎないわ。 …私はあの時、周りの連中を振り切ってでもあんたに会うべきだった。 ふて腐れてむくれたあんたの手を引っ掴んで側に居てやるべきだった。 病気が治って狂気が消えても、……あんたの心に残った傷までなくなった訳じゃないって事、忘れてた」 北条沙都子には傷がある。 人間誰しも心の傷くらいある。それは確かにそうだ。 でも沙都子のそれは常人と比にならない数と深さであると、梨花は知っている。 両親との不和とそれが生んだ悲しい惨劇。 叔母夫婦からの虐待。 兄への依存とその顛末。 村人からの冷遇。 全て解決した問題ではある。 過ぎ去った過去ではある。 だとしても…心に残った傷痕まで消える訳ではない。 その傷が雛見沢症候群なんて関係なく不意に疼き出す事も、きっとあるだろう。 それをかつての自分は見落としていた。 蔑ろにしていた、見ていなかった。 …それが古手梨花の"業"。 「――なにを、今更」 梨花の告白を聞いた沙都子は思わずそう口にした。 湧いて出た感情は怒りとやるせなさ。 後者は見せる訳にはいかないと。 そう思ったから唇を噛み締めて拳を握る。 そのまま梨花の横っ面に叩き付け殴り飛ばした。 「誰が…! 信じるって言うんですの、そんな言葉……!」 梨花は拳を返してこない。 されるがままだ。 地面に倒れたその胸へ馬乗りになって沙都子は拳を振り下ろした。 「何度繰り返しても、何度閉じ込めても! 私がどんなに工夫して殺しても甚振っても追い詰めても…! それでも最後の世界まで雛見沢の外を目指し続けたわからず屋の梨花! 必死に説得してどうにか心をへし折っても、きっかけ一つあればそうやってまた外の方を向いてしまう! そんな貴女の言う事なんて……! 何一つ信用出来ないんですのよ、馬鹿ぁッ!」 何度も何度も。 何度も何度も振り下ろす。 鼻が砕けて歯がへし折れる。 顎が砕けて目玉が潰れ、顔を顔として識別するのが不可能になっても沙都子はそれを続けた。 「私は…! 外の世界なんて一生知らないままで良かった!」 何が悲しくて大好きな雛見沢を捨てなければならない。 そうまでして見る価値があるのか、あんな世界に。 「外なんて大嫌い、勉強も都会も全部だいっキライ! 何処もかしこも排気ガス臭くて五月蝿くて暑くて…雛見沢の方がずっといい! 何が良いんだかさっぱり解らない甲高いだけの歌声をバカみたいな音量で流してありがたがってる神経もさっぱり解らない!」 井の中の蛙と呼ぶならそれでいい。 あの井の中には全てがあったから。 北条沙都子が幸福に生きていける全てが揃っていた。 「…私は!」 梨花も同じだとばかり思っていた。 そして今も、自分と同じになるべきだと思っている。 「私は……あの家であなたと一緒に居られたなら、只それだけで良かったのに!」 …それが北条沙都子の"業"。 此処に二人は互いの業をさらけ出した。 梨花の手が。 ずっと無抵抗だった彼女の手が動いて、沙都子の拳を受け止める。 次の瞬間沙都子は顔面へ走る衝撃によって吹き飛ばされた。 顔を再生させながら梨花が立ち上がる。 沙都子も呼応するように立ち上がった。 仕切り直しだ――梨花は再び刀を、沙都子は再び銃を握って相手に向ける。 「…ねえ、沙都子」 「…何ですの、梨花」 忌まわしい花だ。 視界にちらつく花弁を見て沙都子は思う。 桜は嫌いだ。 門出の季節をありがたがる気にはなれない。 "卒業"なんて誰がするものか。 この業は、これは、私のものだ。 誰にも渡さない。 一生、世界が終わったって抱え続けてやる。 「私が勝った時の罰ゲーム。今の内に言っておくわね」 そんな沙都子に梨花はこんな事を言った。 沙都子はそれを鼻で笑う。 負ける気などさらさらないのだ、何だっていい。 どんな罰ゲームだって受けてやるとそう不遜に示す。 「ボクは…もう一度、沙都子とやり直したいです」 「――――」 そんな沙都子の思考が止まった。 魔女としての言葉ではなく。 敢えて猫を被り、自分のよく知る"古手梨花"として話す彼女の言葉。 「外の世界への憧れはやっぱり捨てられません。 沙都子の言う通り、ボクは何度だって雛見沢という井戸の外を目指してしまう。 そしてボクの隣に沙都子が居て、二人で同じ景色を見る事が出来たらいい。そんな夢を見てしまうのです」 「…何、を。言って――話、聞いてませんでしたの? 私は……!」 「解っています。だからこれは沙都子にとっては罰ゲームなのですよ」 それはあまりにも愚直な言葉だった。 馬鹿げている。 何を聞いていたのかと思わず反論しそうになったが、罰ゲームの一語でそれを潰された。 理に適っているのがまた腹立たしい。 相手が嫌がる事でなくては罰にならないのだから。 「沙都子が勉強したくなるように、定期テストは毎回ボクら二人の部活にしましょう。 負けたら当然罰ゲーム。それなら沙都子だってちょっとはやる気が出ると思います」 「…付き合ってられませんわそんなの。毎回カンニングでクリアしてやりますわよ、面倒臭い」 「みー。沙都子はやる気になれば出来るタイプだと思うので、そこは実際にやってみて引き出していくしかないですね。 ちなみにボクの見立てじゃ沙都子は二回目くらいから真面目に勉強してくるようになる気がしますです。 部活で負けた罰ゲームを適当にこなすなんて、ボクが許しても魅ぃの部活精神が染み付いた沙都子自身が許せない筈なのですよ。にぱー☆」 「む、ッ…。見透かしたような事を言うのはおやめなさいませッ」 そんな未来は来ないと解っていてもついつい反応してしまう。 威嚇する犬のように声を荒げた沙都子に、梨花は微笑みながら問い掛けた。 「沙都子は、どうしますか?」 「……」 「ボクが負けたらその時は言った通りどれだけだって沙都子に付き合います。 それでも外を目指してしまったら、沙都子が頑張って止めてください。 何なら決して外に出られない…そんなカケラを作って閉じ込めたって構わないのですよ。 ボクに勝って先に進んだ沙都子ならきっとそういう事も出来るようになるでしょうし」 梨花の言う通り、きっと遠くない未来にはそんな事も可能になるだろう。 沙都子にはそもそもからして魔女となる素養が秘められている。 其処にリンボの工作と龍脈の力が合わされば、最早そう成らない方が難しい。 カケラを自由自在に渡り歩きはたまた自ら作り出し。 思うがままに神として振る舞える存在として"降臨"する事になる筈だ。 そう成れれば当然、可能である。 古手梨花を永遠に閉じ込めて飼い殺す封鎖された世界。 ガスが流れ込む事のない猫箱を作り出す事なぞ…朝飯前に違いない。 「私、は…」 自分自身そのつもりで居たのに。 今になってそれが何だかとても下らない考えのように思えて来るのは何故だろう。 梨花のあまりに場違いで暢気な言葉に毒気を抜かれてしまったのだろうか。 魔女の力。 神の力。 絶対の運命。 永遠の牢獄。 魅力に溢れて聞こえた筈の何もかもがつまらない漫画の、頭に入ってこない小難しい設定のように感じられてしまう。 「私は…梨花と雛見沢でずっと暮らしていたい。それだけで十分ですわ」 そうして北条沙都子は原初の願いに立ち返った。 此処にはもうエウアもリンボも関係ない。 願いは一つだったのだ。 其処にごてごてと付け足された色んな恐ろしげな言葉や大層な概念は全て自らを大きく見せる為の贅肉に過ぎなかった。 「ちゃんと罰ゲームでしょう? 梨花にとっては。 あの息苦しい学園にも、人混み蠢く東京にも出られないで私と一緒にずっと暮らすなんて」 「…みー。ボクは猫さんなので、沙都子の眼を盗んでお外ににゃーにゃーしちゃうかもしれないのですよ?」 「その時は首根っこ引っ掴んででも捕まえて連れ帰ってやりますわ。逃げ癖のある猫だなんて、ペットとしては面倒なことこの上ありませんけど」 一瞬の静寂が流れる。 それから少女達はどちらともなく笑った。 「――くす」 「……あはっ」 「どうして笑うのですか、沙都子。くす、くすくす……!」 「ふふっ、ふふふふ! 梨花の方こそおかしいですわよ、あははは……!」 もっと早くにこうしていればよかった。 そう思ったのは、果たしてどちらの方だったろう。 或いはどちらもだろうか。 答えは出ないまま刀と銃が向かい合う。 彼女達の部活が…終わる時が来た。 「ごめんなさいね、梨花」 沙都子が口を開く。 その笑みは何処か寂しげだった。 部活はいつだって全力勝負。 手を抜く事だけは絶対に許されない。 それが絶対不変の掟だ。 だから沙都子はこの瞬間も、自分に出来る全力で勝ちに行く。 「終わりですわ」 少女達が想いを交わし合っていた時間。 互いの罰ゲームを提示し合い、久方振りに通じ合って笑い合った時間。 その間に沙都子の勝利条件は満たされていた。 領域展開の後遺症。 術式が戻るまでのインターバル。 それはもうとうの昔に―― 「…梨花……」 名前を呼ぶ。 梨花は答えない。 体が動く事もない。 時は、既に止まっていた。 引き金が引かれる。 弾丸が発射される。 二度目の開花は死を意味し。 そして開花以外にこの死を逃れる手段はない。 ――たぁん。 長い大喧嘩を締め括るには些か軽すぎる、寂しい破裂音が響いた。 ◆ ◆ ◆ 「――莫迦な」 目を見開いて溢したのは悪僧だった。 美しき獣と称されたその視線は天空へと向けられている。 嘲笑う太陽は既に笑っていない。 代わりに響いているのは、消え逝く悪霊の断末魔であった。 「莫迦な――莫迦な莫迦な莫迦な莫迦なァッ!」 剣豪抜刀と暗黒太陽。 一閃と臨界が衝突した。 起こった事はそれだけだ。 その結果、嗤う太陽は中心から真っ二つに両断された。 文字通りの一刀両断。 それはまるでいつか、この女武蔵という因縁が自身に追い付いてきた時の光景を再演しているかのようで… 「偽りの…紛い物の神剣如きが何故呪詛の秘奥たる我が太陽へ届く!」 溶け落ちる太陽はリンボにとっての悪夢へと反転した。 最大の熱を灯して放った一撃を文字通りに斬り伏せられた彼の顔に最早不敵な笑みはない。 この有り得ざる事態に動揺して瞠目し、冷や汗を垂らしていた。 太陽を落とす花という不可思議を成就させた武蔵はそんなリンボへ凛と言い放つ。 「黒陽斬りしかと成し遂げた。此処からが本当の勝負よ、蘆屋道満…!」 「黙れェ! おのれおのれおのれおのれ新免武蔵! 我が覇道に付き纏う虫螻めがッ!」 駆ける武蔵を包むように闇色の球体が出現した。 それは一層だけには留まらない。 十、二十…百を超えてもまだ重なり続ける。 呪詛を用いて造った即席の牢獄だ。 彼程の術師になれば帳を下ろす技術を応用して此処までの芸当が出来る。 しかし相手は新免武蔵。 そう長い時間の足止めは不可能と誰よりリンボ自身がそう知っている。 急がねば――そう歯を軋らせた彼の左腕が、不意に切断されて宙を舞った。 「…ッ! 死に損ないめが、邪魔をするなァ!」 「憎まれっ子世に憚るって諺、お前の時代にはなかったのか?」 隻腕の伏黒甚爾が釈魂刀を用いて切り落としたのだ。 普段なら容易に再生可能な手傷だが、今この状況ではそちらへ余力を割く事すら惜しい。 暗黒太陽…悪霊左府はリンボの霊基を構成する一柱である。 以前にもリンボは武蔵によってこれを両断されていたが、今回のは宝具による破壊だ。 受けた痛手の度合いは以前のそれとは比べ物にならない程大きい。 「いい面じゃねぇか。似合ってるぜ、そっちの方が道満(オマエ)らしいよ」 不意打ちが終われば次は腰に結び付けていた游雲へ持ち帰る。 咄嗟に魔震を発生させ、羽虫を振り払うように甚爾を消し飛ばそうとしたが――この距離ならば彼の方が速い。 リンボの顔面に游雲が命中しその左半面が肉塊と化す。 あまりの衝撃に叩き伏せられたリンボが見上げたのは嘲笑する猿の顔だった。 「古今東西何処探しても安倍晴明の当て馬だもんなオマエ。ようやられ役、気分はどうだい」 「貴、様…! 山猿如きが軽々と奴の名を口にするでないわッ」 立ち上る呪詛が怒りのままに甚爾を覆う。 しかし既にその時、猿は其処に居ない。 片腕を失って尚彼の速度に翳りなし。 天与の暴君は依然として健在であった。 無茶の反動に耐え切れず游雲が千切れ飛ぶが、それすら好都合。 ギャリッ、ギャリッ、と耳触りな金属音を響かせて。 甚爾は折れた游雲同士をぶつけ合い擦れ合わせ、その折れた断面を鋭利な先端に加工。 綾模様の軌道を描いて飛来した無数の呪詛光の一つが腹を撃ち抜いたが気にも留めない。 痛みと吐血を無視して前へ踏み出す。 その上で棍から二槍へと仕立て直した特級呪具による刺突を高速で数十と見舞った。 「づ、ォ、おおおおォ……!」 如何なリンボでもこの間合いでは分が悪い。 相手はフィジカルギフテッド。 純粋な身体能力であれば禍津日神と化したリンボさえ未だに置き去る禪院の鬼子。 呪符による防御の隙間を縫った刺突が幾つも彼の肉体に穴を穿ち鮮血を飛散させた。 「急々如律――がッ!?」 「黙って死んでろ」 こめかみを貫かれれば脳漿が散る。 猿が神を貫いて惨たらしく染め上げていく冒涜の極みのような光景が此処にある。 一撃一撃は致命傷ではなく自己回復――甚爾の常識に照らして言うならば"反転術式"――を高度な次元で扱いこなせるリンボにとっては幾らでも巻き返しの利く傷であるのは確かにそうだ。 だが塵も積もれば山となるし、何より重ねて言うが状況が悪い。 左府を破壊された損害とそれに対する動揺。 それが自然と伏黒甚爾という敵の脅威度を跳ね上げていた。 猿と蔑んだ男に弄ばれ、蹂躙されるその屈辱は筆舌に尽くし難い。 リンボの顔に浮いた血管から血が噴出するのを彼は確かに見た。 「■■■■■■■■■■――!」 声にならない声で悪の偽神が咆哮する。 物理的な破壊力を伴って炸裂したそれが今度こそ甚爾を跳ね飛ばした。 すぐさま再び攻勢へ移ろうとする彼の姿を忌々しげに見つめつつ、リンボは武蔵を閉ざした牢獄に意識を向ける。 “そろそろ限界か…! しかし、ええしかし――今奴に暴れ回られては困る!” 今この瞬間においてもリンボは目前の誰よりも強い。 指先一つで天変地異を奏で、気紛れ一つで視界の全てを焼き飛ばせる悪神だ。 にも関わらず彼をこうまで焦らせているのは、ひとえに先刻経験した予想外の痛恨だった。 重なる――あの敗北と。 輝く正義の化身に。 星見台の魔術師に。 彼らの許へ集った猪口才な絡繰に。 何処かで笑うあの宿敵に。 完膚なきまでに敗れ去った記憶が脳裏を過ぎって止まらない。 そんな事は有り得ないと。 理性ではそう理解しているのに気付けば武蔵の"神剣"を恐れているのだ。 “恐るべしは新免武蔵! 忌まわしきは天元の花! よもやこの儂にまたも冷や汗を流させようとは…! しかし得心行った。奴を討ち果たすには最早禍津日神でさえ役者が足りぬ! 拙僧が持てる全ての力、全ての手段をもってして排除しなければ――!” 猿の跳梁等どうでもいい。 さしたる問題ではない。 武蔵さえ消し飛ばせれば、あんな雑兵はいつでも潰せる。 かくなる上はとリンボは瞑目。 修験者の瞑想にも似たらしからぬ静謐を宿しながら意識を芯の深へと潜らせ始める。 「天竺は霊鷲山の法道仙人が伝えし、仙術の大秘奥…!」 それは単純な攻撃の為にあらず。 疑似思想鍵紋を励起させ特権領域に接続する仙術の領分。 安倍晴明を超える為に用立てた技術の一つ。 かの平安京ではついぞ開帳する事叶わなかった秘中の秘。 反動は極大、この強化された霊基で漸く耐えられるかどうかという程の次元だが最早惜しんではいられない。 「特権領域・強制接――」 全てを終わらせるに足る切り札。 嬉々と解放へ踏み切らんとしたリンボ。 しかしその哄笑は途中で途切れた。 肉食獣の双眼が見開かれる。 彼の肉体は、触手によって内側から突き破られていた。 それは宛ら寄生虫の羽化。 宿主を喰らい尽くして蛆の如く溢れ出す小繭蜂を思わす惨劇。 「ぞ、…ォ、あ?」 片足を失った巫女が笑っていた。 その手に握られた鍵は妖しく瞬いている。 「貴、様」 リンボは勝ちに行こうとしていた。 此処で全てを決めるつもりでいた。 後の覇道に多少の影響が出る事は承知の上で、絶大な反動を背負ってでも目前の宿敵を屠り去るのだと腹を括った。 そうして始まったのが擬似思想鍵紋の励起とそれによる特権領域への接続。 只一つ彼の計画に陥穽があったとすれば、励起と接続という二つの手順を踏まねばならなかった事。 それでも十分に正真の天仙へも匹敵し得る驚異的な速度だったが、"彼女"にとってその隙は願ってもない好機であった。 「――巫女! 貴様ァァァァァァァァ!」 「大丈夫よ。抱きしめてあげるわ、御坊さま」 接続のラインに自らの神性を割り込ませた。 無論これは演算中の精密機械に砂を掛けるも同然の行為。 特権領域とリンボの疑似思想鍵紋を繋ぐ線は途切れ。 逆にアビゲイルが接続されているかのまつろわぬ神、その触腕が彼の体内へ流れ込む結果となった。 臓物をぶち撒け。 洪水のように吐血しながら絶叫するリンボ。 その姿に巫女は微笑み鍵を掲げる。 全てを終わらせる為、絞首台の魔女が腕を広げた。 「さようなら」 リンボの断末魔は単なる雑音以上の役目を持てない。 命乞いか、それとも悪態か。 定かではないままに処刑の抱擁は下され。 外なる神の触手が…かつて彼が求めた窮極の力が――悪意と妄執に狂乱した一人の法師を圧殺した。 …その筈だった。 だが――しかし。 血と臓物に塗れたリンボが。 血肉で汚れたその美貌が白い牙を覗かせた。 「これ、は…?」 途端に神の触腕が動きを止める。 巫女の笑みが翳る。 其処に浮かんだのは確かな動揺だった。 「…油断を」 それが、この処刑劇が半ばで遮られた事を他のどんな理屈よりも雄弁に物語っており。 「しましたねェエエエエエエエエエエアビゲイル・ウィリアムズ! ――――急々如律令! 喰らえい地獄界曼荼羅ッ!」 →