約 1,902,268 件
https://w.atwiki.jp/niconico3nd/pages/336.html
「こんなのほむほむじゃないわ!ただのヤンデレよ!」「だったら萌えればいいだろ!」 ◆czaE8Nntlw 私は歩く。 いつから歩き始めて、どのくらい進んだのか、それは分からなかった。 それでもただ、歩く。 何故ほむらさんがあんなことをしたのか、私の体がどうなっているのか、それも分からない。 出血の所為で足元はふらつき、目の前は赤く霞む。頭はうまく働かずに同じ事を繰り返し考えるばかり。 何故ほむらさんが?私はどうなった?ここは一体? 頭に浮かぶいくつもの疑問を血の足りない頭で考え続け、堂々巡りに陥る。 ――――思えば、この殺し合いそのものが現実かどうか怪しくなってきた。何処からか現れた大天使が指を鳴らせば、私はいつもと同じように目を覚ますのでは? そうだ。きっとそうだ。 いつもと同じように目を覚まし、いつもと同じようにミクや春香、霊夢と過ごす。それが私の日常。 その日常が変わることなんて有り得ない。私には殺す相手も、殺しに来る相手もいない。私は誰も殺さないし、誰にも殺されない。それでいいんだ。だから、 ――――もう、何も恐くない。 私の体を熱い塊が数個、通り抜けて行く。 そう、こんなことは絶対に有り得ない。 足の力が抜けて私はゆっくりと地面に倒れ伏す。 私が誰かに撃たれるなんてことは有り得ない。 私は堅い感触を後頭部に感じる。 ――――何故なら私が殺されるなんてことは、 絶対に有り得ないから。 「ウェヒヒ、まぁほむらちゃんにしては良く出来た方かな?最も、死にかけの人間一人殺せないんじゃ本当にゴミ以下だもんね。」 レア様の死体を前に、鹿目まどかは挑発するような口調で下手人に話し掛ける。 その言葉に下手人、暁美ほむらは虚ろな目をしながら頷いた。 人を殺した罪悪感から惚けているのではなかった。むしろ心を埋めていたのは、これでまどかに褒めてもらえるという達成感だった。 まどかに褒めてもらうこと。 まどかに認めてもらうこと。 自分が求めるものはそれだけだ。 だから自分は、まどかの為ならどんな事でもしてみせる。まどかが望むのならば、何人でも殺してみせる。 光を失った目をまどかに向け、暁美ほむらは告げる。 「まどか……私は、全てをあなたに捧げるわ。」 求めるのはただ一言。“頼りにしてるよ、ほむらちゃん”それだけを求めて、暁美ほむらはもう戻れない場所へと足を踏み入れていた。 【レア様@MikuMikuDance 死亡】 【I-05/一日目・朝】 【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ(クズなまどかシリーズ)】 [状態] 疲労(中)、魔力消費(小) [装備] ソウルジェム [道具] 基本支給品一式、世紀末魔法少女パッチ@MUGEN、キングクリムゾン@ニコニコ動画、不明支給品0〜1、レア様のデイバッグ(基本支給品一式、ランダム支給品1〜3) [思考・状況] 基本 ゲームからの生還 1 ほむらちゃんと一緒に行動。あまり役に立たないようなら捨てる。 2 マミさんと合流。 3 利用できる者は利用し、邪魔になる者は殺す。ただし士、メイトリックスは必ず殺す。 4 行動に出る際はパッチを利用してなるべく自分の悪評が広がることはないように動く。 ※クズなまどかVS逆襲の魔法少女スーパーさやかちゃん【前編】直後の参戦です。 【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:疲労(中)、マドカァー 、ヤンデレ状態 [装備]:ソウルジェム、バルメM78(36/40)@コマンドー [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2 [思考・状況] 基本思考 まどかに全てを捧げる。 1 何があってもまどかを守る。 2 どんなことをしてもまどかに認めてもらう。 3 もう役立たずだなんて言われたくない。 4 まどかに危険を及ぼしうるものは全て排除する。 ※ヤンデレ化しました。 【バルメM78@コマンドー】 1961年にソ連で開発されたRPK軽機関銃をフィンランド軍が独自改良した軽機関銃。 解りやすく言うとメイトリックスが\デェェェェェェン/するときに担いでるアレ。7.62×39弾を使用し、装弾数は40発。 sm90 To the beginning 時系列順 sm93 絶望と希望が交差する時、物語が始まる! sm90 To the beginning 投下順 sm92 バトロワで出会ったAUOがひどい件 ~GO!GO!館を占拠☆~ sm74 邪神様の機嫌の悪さで周りがやばい 鹿目まどか sm96 主催者特権もいい加減にしろ!! sm74 邪神様の機嫌の悪さで周りがやばい 暁美ほむら sm96 主催者特権もいい加減にしろ!! sm50 まどほむはいいねぇ、虚淵が生み出した文化の極みだ レア様 GAME OVER
https://w.atwiki.jp/chiuzazie/pages/133.html
前ページ次ページSSまとめ 20-805 20-805 名前:第一回カエデカップ・1/4[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 11 35 51 ID ??? 「…いないもんアルなぁ…」 クーフェイは珍しく朝から悩んでいた。彼女の理想とする『強い男』が見つからないのだ。 そもそも毎日武術を磨いているクセに、自分より強い男がイイとはどういう了見だ、 という常識的な意見もあるのだが、まあそれはそれである。 (ネギ坊主は…競争率が高すぎるアルし…) とその時、ある人物が教室に入って来た。 「あ、おはよ〜楓姉」 「うん、おはようでござる」 (…………はっ) そうか、そのテがあった。いたではないか。こんな近くに。 「かえでっ、ワタシと付き合ってほしいアルっ!」 あまりにも唐突かつストレートだった。ド真ん中100マイルだ。 「…ほえ?」 「なっ、何を言い出すんだクー!」 間の抜けた声を出す楓の横で、真名が血相を変えて抗議した。 「何か問題でもあるアルか真名?」 「大ありだ!。私と楓は恋び……いやそもそも、何で楓なんだ!?」 「もちろん強いからアルよ。楓なら女でもいいアル」 「いやあ、それは照れるでござるなぁ〜」 何だかまんざらでもなさそうなリアクションをする楓。それを見て真名は焦る。 「か、楓っ、私というものがありながら…」 「オオッ、それじゃ楓、ワタシの所にムコに来てくれるアルか?」 「なっ…!。楓!クーの所にムコ入りするくらいなら、私の所に嫁に来い!」(おいおい) 「う〜ん、これは参ったでござるな〜」 意気込むクー。混乱する真名。あくまでマイペースな楓。 「ちょっと待ったあ〜!」 とその時、そんなどこかで見たようなタイミングで登場したのは… 『あ、朝倉!?』 「ふふっ、このイベント…もとい争い、私に任せてもらいましょうか!」 そんな生き生きとした朝倉の顔に、真名が果てしなく嫌な予感がしたのは言うまでもない。 20-806 名前:第一回カエデカップ・2/4[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 11 37 29 ID ??? 「おおぉ〜〜!」 予想外に集まったギャラリーから歓声が巻き起こる。まったくイベント好きと暇人の多い学校だ。 (な、何故こんな事に…) 校庭に設置されたステージの上で、真名は猛烈に後悔していた。 本来なら、恋人である楓が一言クーに、付き合う気は無いと言えば済む話なのだが、 何故か楓は言ってくれない。『賞品』と書かれたプラカードを首から下げ、ニコニコと座っていた。 (まったく、何を考えているんだ…) 一方、クーは呑気にギャラリーに手を振っている。 「フフッ、真名。楓は譲らないアルよ?」 「(カチン)…上等だ。手加減しないぞ、クー」 何故かクーのバックに紅い虎が、真名のバックには青い龍が見えた気がする。 『さて、この勝負は様々なジャンルを含めた全17回戦で決まります」 「そんなにあるのか!?」 真名のツッコミをナチュラルに無視して、朝倉は司会を進行させていく。 『それでは一回戦、勉強クイズ対決!』 『第一問・歴史問題、大阪城を建てた人物は誰か?』 クー「大工さんアル!」 真名「…豊臣秀吉」 『第二問・化学、赤いリトマス試験紙を塩基性の水につけるとどうなる?』 クー「濡れるアル!」 真名「…青色になる」 『第三問・英語、I live in Tokyoを過去形にしてください』 クー「I live in Edo!(江戸)」 真名「…I lived in Tokyo」 『おおっと一回戦は龍宮選手の圧勝だ!バカレンジャーにはちょっと不利なテーマだったか!?』 20-807 名前:第一回カエデカップ・3/4[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 11 39 04 ID ??? 『続いて二回戦は料理対決!課題料理は自由です、レディGO!』 クー「待ってましたアル!とっておき、特大フカヒレ肉まんアル!」 『おおっ、さすがは超包子仕込み!これはかなり美味しそうだ!。一方の龍宮選手は… …おや?。これは、卵を使った炒め物…でしょうか?』 真名「…お、オムレツ……」 『………』 クー「………」 真名「………」 『…二回戦はクー選手の勝利です!』(うわヒドッ)『それでは三回戦…』 ( 中 略 ) 『さぁ、いよいよ最後の勝負!ここまで勝敗はまったくの五分!これで全てが決まります!』 もう日も暮れかけている。真名はようやく最後の勝負か、と一息ついた。 『テーマは、楓さんに愛の告白です!』 「……は?」 「おぉぉぉっ!」 あっけに取られる真名を尻目に、ギャラリーが大歓声を上げる。 『もちろん判定は楓さんです!さあどうぞお2人ともっ!』 「ちょ、ちょ、ちょっと待て!。そんな事こんな所でできるわけないだろ!?」 「ワタシはできるアルよ〜♪。かえでっ、愛してるアル!ワタシのムコになってほしいアル!」 『おおっ!クー選手大胆な告白だ!さぁどうしました龍宮選手!?』 「ど、どうしましたって言われても…」 恥ずかしいにも程がある。密林で一個中隊に囲まれた時でも、これほどの危機感は感じなかった。 (でも…楓を譲るなんて…絶対にイヤだ) 「か、楓……。す、す…好きだぞ…」 もう顔から火が出そうだ。会場がシーンと静まり返り、楓の返答を待っている。 「…ありがとうでござる。クー」 (…っ!?) 真名ははっと息を呑んだ。 「…でも、すまないでござるな。拙者はやはり、真名が好きでござる」 「……うん、仕方ないアルな」 「か、楓ぇ…」(半泣き) 20-808 名前:第一回カエデカップ・4/4[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 11 40 30 ID ??? 『おおおっ、勝負あった!。真名選手の勝利です!。皆さん盛大な拍手を〜』 わぁぁぁぁぁっ!。パチパチパチ…!。会場が拍手で包まれた。 「…楓。今日は一体全体どういうつもりだったんだ?」 部屋に戻った真名は、さっそく楓に詰め寄った。 「も、もしかして怒っているでござるか?」 「当たり前だ。そもそも最初に断っていれば、それで済んでいただろう」 楓はやや言いづらそうにしながら、ぽつりと言った。 「真名に……ヤキモチを妬いてほしかったでござるよ」 「……え?」 「真名は…あまり好きと言ってくれないでござるし、不安だったのでござる…」 「…あ」 そういえばそうだったかもしれない。真名の方から気持ちをアピールした事はほとんど無い。 真名は楓にそっともたれかかり、囁いた。 「すまなかった…恋人失格だな…」 「構わないでござるよ。ちゃんと言ってもらったでござるし…」 2人はそのまま静かな時間を過ごし… (……ん?) 「おいちょっと待て。という事はもしかして、最後のアレは楓が関与したのか?」 「(ぎくっ…)ま、まあ、そう言えなくもないでござるかな…」 「…ほほぅ」 「ど、どうしたでござる真名?目が怖いでござるよ?魔眼になってるような…」 「…気のせいだろう」 「じゃ、じゃあ何ゆえ、拙者を押し倒しているでござるか?」 「問答無用だ。今夜は私が攻め続けるからな。寝られると思うなよ」 …もう真名を怒らせないようにしよう。楓は服を脱がされながら、そんな事を考えていた。 …end. 20-809 20-809 名前:出席番号のうた[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 12 27 41 ID ??? 真名 「私は一つ物申したい事があるんだ。」 刹那 「うん?突然どうしたんだ?」 真名 「出席番号のうたがあるだろ。一人一人自分が他のクラスメートの影に埋もれないように必死にアピールをするあの呪歌だ。」 刹那 「趣旨は違うと思うが…それがどうかしたのか?」 真名 「どうしたもこうしたもないさ。私達は決められた歌詞を歌うしか術は無いのに与えられた歌詞が『色黒だけど気にしないで』だぞ!もっとアピールポイントあるというのに…」 刹那 「それなら私の方が辛いぞ!『このかお嬢様あなたをお守り出来れば満足』だぞ!?満足なものか!私はもっとあんなコトやこんなコトをして…ハァハァハァ…」 茶々●「ネガティブに考えすぎですよ。私は『マスターの命令なら何だって従います』ですが… これにより皆もマスターも私が絶対裏切ることのない従者と思う訳です。私を信じきってるマスターをある日突然裏切る…その時のことを考えるだけで…クスクス」 エヴァ 「ぶぁっくしょん!!?風邪か…?茶々丸に看護させるか…」 茶々●が反旗を翻す日は近い。 20-815 20-815 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 17 11 52 ID ??? 781説明は多分いらないよね?アメリカンジョークをネギまキャラでやるテスト。今回は改変が難しかった。でも先読みはされないはず。主に俺の文章力のせいで。刹那が剣の修行をしてると、ジョギング中のハルナに出会った。お互い汗を掻いていたので、ハルナが近くの泉での水浴びに誘った。刹那「じゃあ先にハルナさんが浴びて下さい、私は見張りをします」ハルナは少し考え、水浴びをしてる時に、見張り役の刹那に叫んだ。ハルナ「刹那さん、何で私をスケッチしてるの?」刹那「え?そんな事してませんよ」しばらくしてまた、ハルナ「スケッチしないでって!」刹那「だからしていませんよ」そんな事を繰り返した後、今度は刹那が水浴びする番に。水浴び中、刹那はふとハルナの方を見て言った。刹那「……あぁ、なるほど。ここからだとスケッチしているように見えるのか」 20-821 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 18 04 35 ID ??? 818書いた本人が言うのもアレだが、説明しにくいな。刹那は普通に見張りをしていたが、ハルナに「スケッチしないで」と言われた。刹那が水浴びをする時ハルナの方を見ると、ハルナはスケッチをしているように見えた。ここでハルナは本当にスケッチをしている。しかし刹那はハルナに言われた事を思い出し、「あぁ、ここからだと普通に見張りをしているはずがスケッチしてるように見えるんだな」と勘違いしてしまった。こんなんで分かるかな? 20-828 20-828 名前:刹那 苦境[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 19 06 53 ID ??? 刹那 苦境 刹那 「ぐっ!」 我が神鳴流の技が効かないとは・・ 相手は犬ぐらいの大きさの妖怪、だがその妖気は桁違いだ 鋼鉄、いや、それ以上の体毛。それに強力な妖気を湛え、私の繰り出す技をことごとく跳ね返す 私の持っている夕凪が対化け物用ではあるとはいえ、こういった大きくない相手に使うのは不利だ しかしそれを除いても切り刻む事ぐらいは出来る、出来るはずであった 刹那 「おのれ!」 私は再びその妖怪に襲い掛かる。しかしながらこの妖怪、動作もかなり機敏でなかなか攻撃があたらない 巧みに私の攻撃を避け、鋼鉄の体毛を針のように飛ばしてくる。私はそれを避けて、一旦距離をとった 攻略法が見つからない・・そんなことを考えているときであった この戦闘の場に一人の少女が通りかかった。しかもそれはクラスメートであった 刹那「危ない!逃げて!」 少女はその声に気がつき私のほうを見た。その視線には私と、犬のような妖怪が目に映っただろう それがその少女の最後の光景になるのだろうか・・ 妖怪は少女に気がつき襲い掛かる。最悪の結果が私の脳裏に浮かんだ 私は少女の元に駆け寄ろうとしたが、残念ながら間に合わない 妖怪は少女の眼前に迫り、凶悪な牙を剥き出し少女に襲いかかった しかし次の瞬間、妖怪の姿が消えた。少女に触れる直前に消えてしまったのだ 少女を見ると、どこから取り出したのか中華包丁と銀色の大きなトレイを持って立っている やがてそのトレイの中に、空から落ちてきた肉が積み重なっていった 五月 何の肉かわからないけどおいしそう。今日のおすすめにしてみようかな? そして五月は何ごともなかったかのように、解体した妖怪を持って去っていった 馬鹿な・・・あの包丁は夕凪を超えるというのか?料理の技は神鳴流をも超えるというのか? 嘘だー!!! 完 20-832 20-832 名前:『Beyond the window』1[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 20 25 35 ID ??? しとしと、しとしと雨が降る。 降った雨が寄せ集まって、道端に幾つも穴があく。穴を恐る恐る覗けば、それが窓だと気付くだろう。無数の輪に揺れながら、空と傘と私とが見える。 窓の向こうに広がる世界は、こっちの世界とそっくりだけど、でも、きっと何かが違うはず。一目ではわからないけれど、きっと何かが違うはず。 しとしと、しとしと雨が降る。 道端に幾つもあいた窓を覗く。恐る恐る覗いたけれど、やっぱり向こうとこっちは違わない。無数の輪に揺れながら、空と傘と私とが見える。 水溜まりを覗く顔がもうひとつ増える。彼女の片頬には、一粒の雨が垂れている。涙のように垂れている。でも、水溜まりに映った私に、彼女はそっと微笑んだ。 あぁ…、そうか。わかった。 そして、私は確信する。水溜まりの向こうに広がる世界は、こっちの世界とそっくりだけど、やっぱり何かが違ってた。だって、ザジは左の目で泣いているはずだから。 私はそっと、右手で彼女の頬に触れる。彼女から涙が消えた。彼女に、私もそっと微笑んだ。 しとしと、しとしと雨が降る。人通りの少ないこんな日は、二人で手をつないで歩く。お揃いの傘を叩く雨が少し耳障りだけど、私達の邪魔にはならない。 だって、言葉にしなくても、その思いは伝わるから。 彼女は、Zazie Rainyday。 私は、長谷川千雨。 雨降りの日と、千の雨粒。 だから、雨はいつも二人を繋ぐ。 20-833 名前:『Beyond the window』2[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 20 27 24 ID ??? 寮に帰って服を着替えたら、ちうが「体を温めなきゃ」ってココアを入れてくれた。 温めるなら抱き合う方が早いと思ったけど、ちうの入れてくれるココアも飲みたかったから言うのをやめた。 ココアを飲みながら、ちうはパソコンのこと考えてる。顔をじっと見てればわかる。このまま見てれば、きっと気付いて笑いかけてくれる。ほら、笑ってくれた! でも、作り笑いだって知ってるよ。気遣って笑ってくれてるんだって知ってるよ。そんな笑顔じゃ満足できないよ。心の底から笑ってほしいよ。 だって、だって、ちうのことが好きだから。 どうしたら、ちうが心の底から笑ってくれるか考えた。色々、色々、考えた。ずっと、ずっと、考えた。ちうの悲しそうな顔なんて見たくない。 だから、ちうを見て考える。 どうしたら、ちうは幸せ? どうしたら、ちうは心の底から笑える? どうしたら、ちうは悲しい顔しなくなる? どうしたら、ちうは… …頼ってくれる? 20-834 名前:『Beyond the window』3[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 20 29 22 ID ??? 胸をココアの甘い香りで満たしながら、しかし、意識はネットの世界を漂う。 『ちう』は私なんかじゃない。私の一部ですらない。何故なら、私の中に『ちう』はいないから。それなら、『ちう』は誰? ザジがじっと私を見つめていたことに気付く。反射的に笑顔を返す。良くないよな…こういうの。 きっと、ザジは気付いてるんだろう。 頭の中が嫌な雰囲気になってきた。縺れた糸のようだ。解決しようと必死になって、逆に悪化させてしまっている感じ。 カップを両手で抱えると、一気にココアを飲み干した。寂しそうな顔のザジが驚いた目で私を見る。 千雨「夕飯にしようか」 ザジ「…」コクリ 頷くザジを確認し、私はキッチンに立つ。さて、何を作ろうか…。材料もあるし、クリームシチューにしよう。 包丁で俎板を叩き、その音を部屋に響かせながら、しかし、意識はまたネットの世界を漂う。 『ちう』は私の分身だったはずだ。でも、『ちう』がネット界に君臨するアイドルになった今は…。 ザジ「手伝う…」 千雨「あ、サンキュ。じゃあ、ニンジン頼む」 ザジ「…」コクリ やっぱり気付かれてるんだろう。こういうことにザジが敏感なのは、とってもよくわかってる。心配かけちゃいけないよな。 隣でニンジンを刻むザジを思いながら、ふと気付く。本当の私は、親友一人さえ安心させることができてない。安定した人気のあるネットアイドル『ちう』とは大違いだ。 ネット世界で圧倒的に膨張した『ちう』の存在が、私には重荷なのかもしれない。『ちう』に比べて、私はあまりにちっぽけだから。 20-835 名前:『Beyond the window』4[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 20 31 19 ID ??? ちうと一緒に作ったシチューを食べた。とっても、とっても美味しかったよ。でも、こんなに美味しいシチューなのに、ちうは悲しい顔するんだね。 ちう「ごちそうさま」 二人で食器を洗う。お皿とお皿がぶつかる。脆いもの同士がぶつかると、こんなに痛々しい音がするんだ…。 ザジ「大丈夫?」 ちう「平気、平気」 ちうの考えてること、知ってるよ。ずっと、ずっと、知ってたよ。 パソコンの向こうにいる自分が嫌なんだよね?本当の自分と違いすぎて、嫌いなんだよね?自分が小さく感じて、寂しいんだよね? ちう「風呂、入りにいこうか…」 大浴場には濃い湯気がただ漂うばかり。その湯気に包まれたら、冬の厳しさも忘れられる。 体を流して湯船に漬かる、手足に目一杯の電流が刺さったようになる。じわじわ体が暖まって、全身の緊張がほぐれた頃、曇ったメガネを掛けたちうが隣に入ってきた。 ちう「うわっ!熱っ!」 そう言いながらも、ちうはぶくぶくと沈んで肩まで漬かった。ちうの頬が春のピンク色に染まり始めたと思ったら、ちうがこっちを向いた。 ちう「ザジ、いつまで湯船に入ってるんだよ…顔、真っ赤。のぼせるぞ」 あ…、ちうの顔しか見てなかったから気付かなかった…。湯船から立ち上がると、一瞬にして、瞼も閉じてないのに辺りが真っ暗に……あれれ…。 ちう「あ!馬鹿、急に立ち上がったりしたら、目が回るぞ!」 ちう、物知りなんだね。今までずっと、停電だと思ってたよ。 20-836 名前:『Beyond the window』5[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 20 33 45 ID ??? 私達が来るのが早すぎるからだろう。白い湯気が眩しい浴場には、他に誰一人いなかった。試しに咳をしてみたら、それは木霊しながら、ひとつの効果音に響きを変えた。 靄がかかって、カーテンの向こうのシルエットになったザジが、石鹸の泡を立てているのが見える。 息すらしていないのではないか、と感じるほど静かでしなやかな動作は、風よりも軽い彫像を思わせる。 あるいは、誰にも傷つけられずに残った太古の壁画、そこに込められた単純な、しかし写実的な野生のような素朴さだろうか。 人の営みの中で、気付かれずに壊されていくかもしれない"弱さ"がザジにはあった。守りたい、でも、触れるのが恐い。そんなディレンマが私を焦がす。 しかし、ザジは彫像でもなければ壁画でもない。一人の人間なのだ。そんなザジを硝子ケースに飾ってしまいたいとさえ考える私は、愚かで罪深い。 臆病な私には、ザジに嫌われることが一番恐い。ザジにだけは、私だけを見ていてほしい。この私を…。 ザジ「…ちう?どうしたの?」 "ちう"? 湯船に映った私の顔が、身を浸すザジの起こした弧で歪む。それだけじゃなかった。思いつめた私の顔、泣き顔に歪み変わっていた。私は泣いていた。 千雨「…私は……じゃない…」 ザジ「…ぇ?」 喉が脈打ち、涙は血の如く温い。行き場をなくした恐怖は、口から暴力のような怒鳴りとなって吐かれた。 千雨「私は、『ちう』じゃない!」 臆病者の勇気は時に、矛先を誤り、貫くまで止まらない。 20-837 名前:『Beyond the window』6[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 20 35 20 ID ??? ちうが泣いてる。ちうの表情は、蝋燭の火のようになびいてる。 ちうが泣いてる。声と同時に立ち上がった体は、小刻に震えてる。 ちうが泣いてる。唾ばかりを飲み込んで、唇は言葉を迷ってる。 ちう「ザジも、ちうがいいんだろ?好きなのは、ちうなんだろ?」 違うよ…。 ちう「残念だけど、私はちうじゃないんだ。ちうはパソコンの画面の向こうにしかいないんだ。私は………ただの長谷川千雨なんだよ!」 違うよ…。 ちう「冴えない、綺麗でもない、何の取り柄もない、長谷川千雨なんだよ」 ザジ「違うよ!」 涙で星を散らしたちうの瞳が、怯えてる。 ザジ「…ちうは、ちうだよ」 ちうは足を畳み湯船の中に戻ると、しばらくお湯に映る自分と見つめ合ってた。こういう時、どうしたらいいんだろう…。 ちう「ごめん。風呂に漬かりすぎて、のぼせたみたいだ…」 ザジ「…うん、大丈夫」 大丈夫じゃなかった。脆いもの同士がぶつかると、こんなに痛々しい音がするんだね。 ちうの心が、バラバラに割れていく…。つい割ってしまった、シチューの皿みたいに。 20-838 名前:『Beyond the window』7[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 20 37 22 ID ??? ザジが大浴場を後にしても、私は追っていけなかった。ザジの背中を目にして悟ったからだ。今すぐザジに触れたら、私はまた傷付けてしまうと。 ザジに八つ当たりしてしまった。最低だ…私って。冷えきった心を湯に浸し暖める。でも、人の温もりは感じない。 嗚呼、ザジが恋しい。ショーケースを眺めていても、触れなければ温もりは伝わらない。 更衣室を出ると、雨は止んでいた。今更やって来た他の生徒達と擦れ違う。邪魔だ。肩まで垂れる髪が、冬に触れて凍える。急いで乾かしたからだろう。でも、構わない。 部屋が遠く感じる。だから、私は駆ける。今すぐ、ザジに伝えたい。お前を一番愛してるのは私だと伝えたい。 独りになって気付いた。冴えない、綺麗でもない、何の取り柄もない、長谷川千雨には、ザジしかない。ザジが全てなんだ。 硝子窓の壁なんて壊してしまえ。 部屋の扉を壊れるくらい強く開ける。部屋は暗澹としていた。窓から注ぐ月明かりだけを頼りに、デスクの上の置き手紙を見つける。ザジの文字だ。 千雨「え…どういうことだ?」 手紙を最後まで読み終え、手紙に従う決意をする。手紙通りに事を為せるよう、全ての準備はされていた。 私は化粧と衣装で着飾り、呼吸を落ち着かせた。体が熱い。でも、これは恥ずかしさと違う。これは、恋…? ザジが何をしようとしているかは分からない。でも、何であろうとザジに付いて行きたい。ザジに身を任せたい。ザジのままになりたい。 ちう「ザジ…待ってろよ」 手紙には、地図と共にこういったことが綴られていた。 『この服に着替えて、ここに来てください。ザジ』 20-839 名前:『Beyond the window』8[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 20 38 36 ID ??? 舞台衣装は着る状況なんて構ってないから、とても寒い。 ザジ「ちう…まだかなぁ」 ちうは手紙を読んでくれたのかな。読んではくれると思う。でも、言う通りにしてくれるかな…。 ずっと前から計画はしてたけど、それが今日で良かったよ。明日までちうを放っておけないよ。 どうしたら、ちうが心の底から笑ってくれるか考えてた。色々、色々、考えてた。ずっと、ずっと、考えてた。 そして、パソコンのちうも、本物のちうの一部なんだよ、って教えてあげられれば、きっと、ちうは笑ってくれるって思ったんだ。 学園一番の高級レストラン……の裏庭。色んな花が蕾を開いてる。レストランから漏れる楽器の音色は夜に似合う。サーカスや大道芸の曲とは違う、まろやかな調べ。 段々、手足が寒さで痺れてきた。ちう…早く〜。 浴場で温まった意味がなくなってきた。ちう…早く〜。 靴の中の指先も、感覚が曖昧になってきた。ちう…早く〜。 レストランから流れる音楽が何曲クライマックスを迎えたんだろう。ちう…早く〜。 あれ?…体が…寒さで…動かなく… …あ…暖かい。手足の感覚が甦る。いい匂いがする。この匂いは、ちう? ちう…来てくれたんだ。 20-840 名前:『Beyond the window』9[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 20 40 27 ID ??? ちう「バカっ」 ザジの耳元で囁く。ザジはタキシード風の手品師の衣装に身を包み、レストランの後ろにある花園にいた。 冬の夜は寒い。ザジは隣の彫像と区別がつかない程に固まっていて、私が抱いて暖めるまで震えが止まらず、意識は朦朧としていた。 ザジ「ちう?来てくれたんだね…」 ちう「当たり前だろ?」 ザジ「ちうは、ちうだよ」 ちう「…うん」 私は心の雪解けを感じた。ザジがしっかりとした足取りで直立すると、衣装の意味がわかった。私のドレスに対して、ザジはタキシード、つまり男装だ。 ザジ「ちうの居場所はパソコンの中じゃないよ。ちうは、ザジだけのものだから」 ちう「ザジ…ありがとう」 ザジ「…次の曲で踊ろう」 ちう「は?」 踊る…って、踊れませんよ、私ゃ… ザジ「ほら、始まるよ!」 ちう「うわぁっ!」 心地良いメロディーに乗せて、ザジは見事に私をリードした。冬の夜、銀色月の光の下で、私たちは舞う。レストランから漂う音符を足場にして、軽やかにステップを踏む。 ここは二人だけの舞踏会。ザジが私をちうにするために、開いてくれた舞踏会。 まだ足許に残った水溜まりを跳び越えて、メロディーが終らぬ限りいつまでも、しっかりと手を取り合って舞い続ける。 水溜まりには、夜空とザジと私とが見える。くるくると舞いながら、互いに微笑み合うザジと私とが見える。 水溜まりの向こうに広がる世界は、こっちの世界とそっくりだけど、やっぱり何かが違ってた。 だって、左に滴の垂れた、私の愛するザジと手を取り合えるのは、こっちの世界だけだから。そして、 彼女は、Zazie Rainyday。 私は、長谷川千雨。 雨降りの日と、千の雨粒。 雨粒が千もあったって、降るのは雨降りの日にだけなのだと。 20-848 20-848 名前:美砂 空想彼氏[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 22 10 40 ID ??? 美砂 空想彼氏 1/4 円 「裏切り者」 美砂 「え?」 親友の突然の言葉に私は驚いた 円 「クリスマスは彼と過ごすんでしょ、私は桜子と一緒にカラオケでも行くからさ・・ネギ君でも誘おうかな」 美砂 「あ、あはは・・」 このとき私は笑顔でいたが、実は心の中では涙を流していた 本当は彼氏なんていない、なんて言えない・・ 実は私には彼氏はいないのだ ある日の嘘、自慢のために言ってしまった嘘、それで私には彼氏がいる事になってしまった だから、円たちに会わせてよ、といわれても会わせることが出来なかった 桜子 「二人っきりだからってエッチなことしちゃダメだよ。ネギ君にも迷惑かかっちゃうからね」 美砂 「そんなことしないってば」 そんなことは出来ない、彼なんていないから 円 「9時ぐらいまでには帰ってくるのよ。そうだ、クラスでパーティしようかな」 いいな、それ。楽しそう 桜子 「いいんちょ抱き込めば豪勢にできるね」 いいんちょか、もしかしてタダ酒になるとか?中学生か・・私たち 円 「さっちゃんたちに頼めば料理も美味しいものが・・」 そんな会話を聞いていて私は悲しくなってきた 美砂 「ちょっと出かけるね」 この場にいる事が辛い。親友といる事が辛いなんて・・ 20-849 名前:美砂 空想彼氏[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 22 11 06 ID ??? 2/4 夜の公園に出てみた もう寒くなってしまったこの時期、人影は少ない。いたとしても熱々のカップルだけだ 私がこんなところにいる元凶を見て私はさらに悲しくなった 出てきそうになる涙をこらえて私はその場を後にする ふと見ると暗闇の中、明かりが見えた 近づいてみればそれは超包子であった。光に吸い寄せられる蛾のように私はふらふらと超包子に顔を出す 超 「ゴメンネ、もうおしまいネ」 後ろを向きながら超は私にそう言った。どうやら後片付けをしているようで、いそいそとお皿を棚にならべていた 超 「お、柿崎サンとは珍しいネ。なにか用か?」 美砂 「古ちゃんとかは?」 超 「先に帰ったネ。ここにいるのは私一人ネ」 超の笑顔、そしてオレンジ色に光る暖かいランプ。それを見ていたら先ほどまでこらえていた涙が堪えられなくなった 超 「ど、どうしたネ。どこか痛いのカ?」 別にどこも痛くはない。ただ寂しくなっただけ、自分が嫌いになっただけ 超 「なるほどネ・・」 私は思い切って超に打ち明けてみた。悩みを聞いてくれる居酒屋のような超包子の雰囲気が私の口を開かせたのだろうか? 超 「でも、どうするネ。いつまでも隠しとおせることではないネ。いつかはばれるネ」 そのとおりだ。ばれてしまったら・・ 超 「解決策は5つあるネ。聞くか?」 美砂 「え、どんなの?」 私は藁にもすがる思いで超の言葉を待った 20-850 名前:美砂 空想彼氏[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 22 11 32 ID ??? 3/4 超 「慌てずに・・まあ、お茶ぐらい飲むネ」 白い湯気のあがる湯飲みを超は私の前に置いた。私ははやる気持ちを抑えながらお茶を一口飲み、超を見つめた 超 「一つ目。本当の事を皆に話すネ。これがいちばん簡単ネ」 確かにそのとおりだ。でもそれが出来ないから苦しんでいる 超 「二つ目。彼氏とけんかして別れたことにするネ。まあ、無難な方法ネ。嘘を重ねる事になるけどネ」 いい案だ。でもこれ以上、親友に嘘はつきたくないな 超 「三つ目。すぐに彼氏を作るネ。でも時間制限付で難易度は高いネ」 理想的だ。でもそんなに簡単には・・ 超 「四つ目。男性型ロボットで我慢するネ。外見だけならイケメンにできるヨ」 せめて人間がいいな 超 「五つ目。・・・私と付き合うというのはどうネ?」 え、本当!これで彼氏ゲット・・ってええ! 私は超を見つめた。にっこりとした笑顔で私を見つめている 美砂 「じょ、冗談だよね・・」 超 「火星人、ウソつかないネ。柿崎サン、お付き合いしないカ?」 少しばかり気が遠くなった 20-851 名前:美砂 空想彼氏[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 22 12 39 ID ??? 4/4 超 「実は初めて逢ったときから柿崎サンのこと、気になっていたネ」 美砂 「あ・・あはは・・冗談だよね?」 超 「本気ネ。柿崎サン、私あなたのこと好きネ」 超は冗談は言うが、ウソは言わないと思う でも、私が欲しいのは彼氏であって彼女ではない。困った顔をしている私にさらに超は衝撃的なことを言う 超 「男がいいというなら、私、性転換するネ。完璧な男なるヨ。私の科学力は世界一ネ」 なんだか怖くなってきた。超の好意は嬉しいが、なんだか目的が違ってきている 美砂 「あ、あは。え、遠慮しとくよ。じゃあ、私はこれで・・え?」 体がいうことをきかなくなった。どういうわけか、私はその場に崩れ落ちる 美砂 「な、なにが・・」 超 「お茶に痺れ薬を入れたネ。柿崎サン、私の気持ち、受け取って欲しいネ」 美砂 「ウソ・・よね・・」 超 「火星人はウソつかないネ。そう言ったヨ」 超の手が私の服にかかる。電気の消された超包子の中で私は空想彼氏に助けを求めた ハルナ 「さてと、だいぶんできたかな。後は後半をどうするかだけれども・・」 いつものようにハルナは部屋にこもり、創作系同人誌のネタを作っていた 前回、明日菜に折檻された。鋼鉄のハリセンはとても冷たく、そして屈辱的だった ハルナ 「美砂って見栄っ張りだからね〜、本当に空想彼氏だったりして」 しかし、ハルナは気がつかなかった。背後に迫る虐殺者の影に・・ ハルナの聞いた最後の言葉はこうであった 美砂 「ばれちゃあしょうがないわね。私の空想彼氏、プロレスラーなの。彼がハルナに会いたいってさ」 完 20-856 20-856 名前:ザジ 涙[sage] 投稿日:2005/12/03(土) 23 22 18 ID ??? ザジ 涙 千鶴 「あら・・?」 世界樹の側の公園、その芝生に一人の少女が座っているのが見えた 千鶴はその少女の少し寂しげな雰囲気を感じ取り近づいてゆく 千鶴 「ザジさん、どうしたの・・あら?」 千鶴は座っているザジに声をかけた。振り向いたザジの顔を見て彼女が泣いているのに気がつく ザジ 「・・・」 千鶴 「どこか痛いの?それとも何か悲しい事でもあったの?」 不意にザジが千鶴に抱きついたきた。千鶴はよろけそうになるが何とか持ちこたえる 千鶴 「どうしたの?せめて泣いている理由くらいは教えてくれないかしら」 優しくザジの頭を撫でながら千鶴はザジを抱きしめた ザジ 「・・・」 千鶴 「そう・・最近千雨さんが冷たいんだ」 千鶴から反芻されたその言葉を聞いたザジは、再び悲しさに襲われ千鶴の胸に顔を埋めまた泣きはじめた しばらくしてザジは泣き疲れたのか千鶴の膝枕の上で眠っていた 千鶴 「いいかげん出てきたら?これはあなたの仕事でしょう?」 千鶴は背後の茂みにそう声をかける。誰もいないと思われていたその茂みから人影が姿を現す 千雨 「バレてたのかよ・・かなわねえな」 千鶴 「私、この後帰って小太郎君のご飯の準備をしなくちゃいけないの。膝枕、代わってくださる?」 黙って千雨は千鶴に近づき、千鶴の膝枕で眠っているザジの顔を覗き込む 千雨 「すまねねえ。コイツかなり寂しがり屋でな。ちょっとかまってやらねえとすぐこれだ」 千鶴 「ちゃんとかまってあげないと・・でも、まるで仔犬みたいね、ザジさん」 千雨 「もっと可愛いさ、甘え方とかな・・」 千鶴 「ふふ、私の部屋にもいるわ。可愛い子犬が。ちょっと元気すぎるけど」 千雨 「・・ありがとな」 二人はそっと入れ替わり千鶴はそのまま黙って立ち去っていった ザジが起きたらどんな言葉をかけてやろうか?そう思いながら千雨はザジの頭をそっと撫でた 完 20-863 20-863 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/12/04(日) 01 59 52 ID ??? 「ハカセ」 「なーにー?」 「今日は軽いメンテだと聞いていましたが……なぜ私は首だけ宙吊りにされているのでしょうか」 「うん、その前にこれを見てもらおっか」 「この人形が、どうしたのですか?」 「これはね、『圧死マー』と言ってね、古いロボットアニメに登場する可変モビルアーマーなのよー」 「可変……変形するのですか、こんな小さな人形が」 「そうなのー! ここを……こうして……こうすると……ほら!」 「……円いですね。」 「かわいいでしょ〜!? こんなにちっちゃいのに、ほぼ差し替え無しで飛行形態に変形しちゃうのよ〜!」 「飛行……飛ぶのですか、こんなカーリングのストーンに足の生えたようなモノが」 「…………」 「…ハカセ?」 「ねぇ、茶々丸」 「はい」 「お空を飛んでみたくなぁい?」 「……ついさっき、研究室へ来る途中に飛んできたばかりですが」 「………うふ、うふふ」 「………まさか、ハカセ、まさかそんな」 「茶々丸……いい子だから、おとなしくしててね……といっても、そんな体じゃ動けないだろうけど」 「やめ、やめてくださいハカセ! そんな情けない姿をネギ先生に見られたりでもしたら、私、立ち直れません!」 「大丈夫。はじめはつらいかもしれないけど、慣れればそれがやがて快感に変わるともっぱらの評判で」 「ワケがわかりません」 「うふふ、心配しないで茶々丸。数回ほど飛行試験をしてデータを取ったら、ちゃんと元通りにしてあげるからー!」 「イヤー! 助けてネギティーチャー!!」 「あははははははははははははははー!!」 麻帆良学園都市上空にて、数回にわたって円盤状の謎の飛行物体が確認されるのは、それから1ヶ月後のことであった。 20-937 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2005/12/05(月) 01 18 22 ID ??? 863の続編のような。「しくしく…」「もー、泣かないでよ茶々丸〜。実験は成功したんだしいいじゃない」「よくありません。ネギ先生におもいっきり指差されて笑われました。もうおしまいです。もう駄目です」「違うよ〜、あれはただ、未確認飛行物体を見たことがうれしくて喜んでただけだよー。………たぶん」「気休めはよしてくださいハカセ。ネギ先生はこんな私を見て、きっと『何あのあげパン、だっせー』と思っているに違いないのです」「ネ、ネギ先生は男の子だもの、変形ロボットにはきっと理解を示してくれるって!」「もういいのです。私はこの先一生『フライングパンケーキ』と呼ばれバカにされるのです。『外した手首はどこに置いとくんですか?w』とか『上の平らな部分はお餅とみかんを載せるんですよね?wwwテラワロス』とか言われて蔑まれるに決まってます」「なんかヤケに局所的なネットの闇に染まった先生だね……」「めそめそ…」「…あーもう、わかったよ茶々丸。ちゃんと責任取るから」「ぐす……本当ですか」「ホントホント。それはさておき、これを見てくれる?」チュン! ドカーン「ギャー!」「ハカセのバカー!」「ちゃ、茶々丸! 生みの親に向かっていきなり目からレーザーとはどういう了見よー!?」「またしても可変モビルアーマーを持ち出して、これ以上私を愉快にしてどうしようというのですか!!」「違うよー! よく見てよ、今度のはカッコイイでしょ? Zガンダムって言うんだよ」「…ぐす……でも、飛行形態もカッコイイとは…」「大丈夫、ほら。…(変形中)…ね、ちゃんと戦闘機みたいでしょ?」「おお……これは恥ずかしくない……むしろなってみたい気もします」「でしょー? ネギ先生の目の前でズギャーンと変形してみせれば、イメージアップ間違いなしっ」「ハカセ……ありがとうございます! 私、負けません!」「私こそありがとう茶々丸! これで私の野ぼ……もとい科学の歴史がまた1ページ書き加えられるのよー!」それから1ヶ月後、麻帆良の空を翔る巨大な青いエイが目撃されるが、それはまた、別の、お話。「茶々丸ー、これはガブスレイと言ってねー」ドカーン 前ページ次ページSSまとめ
https://w.atwiki.jp/shinmanga/pages/190.html
黄色い猿より鯨の方がかわいいよね! ◆Eoa5auxOGU 「仕方のないこと……そう、仕方なかったのです……」 静寂に包まれた図書館内。 鈴子が館内に雪崩れ込むと読書用の個室の一つに身を隠し、とりあえずは一息吐く事が出来た。 そして考えを纏めようとするが言葉とは裏腹に鈴子は未だ答えを出せずにいた。 それどころか先程の光景が何度も頭の中で思い返してしまう。 自分の突き出した腕が相手の右腕を 血を糸の様に引きながら飛んでいく少女の腕を 「うぐッ」 吐き気を覚え口を手で塞ぐ。 嘔吐はしなかったが呼吸を乱してしまい深呼吸をして落ち着こうとする。 それを何度か繰り返してようやく少し落ち着く鈴子。 そこで改めて状況を整理する。 (もし先程の植木を殺したという発言が事実ならやはりあの三人組は……ですがあの時、あの子を動かす余裕なんて ありませんでした……) 落ち着いてからよく考えて行動する。 確かにそれが有効な場合はある。 だが後から考えてみればあの状況であの少女を放置したのは見殺しにするのと同じではなかったか。 結果的に見殺しにしたという事実が鈴子の心を責め苛む。 もしあの時、自分がぶつからなければ…… (いえ、ぐずぐずしていればさっきの三人組に捕まっていました。一度身を隠すという行動は間違っていないはず。 そうなれば二人ともやられていました。そう、なにも間違ってない、間違ってなど……) そう思い込むことで自身の心を守ろうとする鈴子。 傍から見れば自分が見殺しにしたという事実から目を逸らそうとする行為でしかなかったがそれでなんとか落ち着きを保つことはできた。 (そう、仕方なかった、仕方なかったのです……そもそも、このゲームで生き残れるのは一人だけ。 仮に助けられたとしてもその後はどうするんですか? 彼女を傷つけたのは私なんですよ? 後で報復を仕掛けられるとも限りません。 平時ならともかくこの状況でそんな人を相手にしてられませんわ……) ロベルトの為に、そう、私は『空白の才為』をロベルトに渡す為に自分は行動してるのだ。 確かに彼女を傷つけたのは私の過失だ。 だが見知らぬ少女とロベルト、どちらを取るかと言われればやはり……ロベルトの方を取るだろう。 他人に利用され、人間に絶望していた自分に救いの手を差し伸べてくれた彼。彼の為ならこんな悔恨の念の一つや二つ…… そう、これで、これでいいのだ…… 『あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』 「ひやぁ!! 誰? 誰ですか!?」 突然の大音量にびっくりして辺りを見回す鈴子。 どうやら図書館の外かららしいがいったい何処からするのか。 それを確かめる為に一度外へ出てみるか、いや屋上から見まわした方が見つけ易いだろう。 謎の音の正体を確かめる為、屋上へと向かう鈴子。 挫いた足で階段を上り下りは難儀したがそれでも音源を確かめる必要がある。 手すりを利用しつつ鈴子は屋上へと向かった。 * 「……………………」 屋上に上がった鈴子の目に飛び込んだ物は巨大な立体映像で映し出された人間の言葉をしゃべる巨大動物と酔っぱらいの女。 それを見た鈴子は……思考停止。彼女にしては珍しく口を開けてポカーン。 だがいつまでもそのままであるはずもなく、茫然自失から立ち直った鈴子の胸から込み上げてくる感情は…… 「ああ、カワユイですわあぁぁ………(はぁと」 そう呟くと切なげにため息をつく さっきまで恐怖と後悔に震えていた少女とは思えないほど殺し合いの最中に浮かべるには不似合いなほど緩み切った表情。 もし普段の鈴子しか知らない人間が見たら目を疑ったであろう。 だが本来の未来においてとらより巨大なテンコを見ても可愛いと言ったこともあるほどの筋金入りの動物好きの鈴子にして みればこれはごく自然なことでもあった。 「ああ、あの鬣にブラッシングして三つ編みにしたらどんなにカワユイか……ああ!!」 とらとあんなことやこんなことをして戯れる自分を想像し身をくねらせながら悦に浸る鈴子。 それがしばらく続いたが……ふと我に返る。 (でもあれはいったいなんて生き物なんでしょうか? あんなの見たことも聞いたこともありませんわ) さすがに普通の生き物とは思えない。ならばあの生き物もスパスパの実のような支給品であろうか? 警察犬や軍用犬のように特定の動物を調教して役立たせるようにあの生き物もそういう類の動物であろうか? 以前のゲームが中学生という限定された人間だけで行っていたことへの固定観念であろうか、鈴子が参加者に人間以外も参加しているとまでは思い至らなかった。 もし、この時冷静にとらを観察していれば首の首輪から自分と同じ参加者であると看破出来たであろうが今の「カワユイモード」の彼女にそれを求めるのは…… * それにしても、もう一方の繁華街によくいるあの酔っぱらいはいったい何なのだろうか? 酔いに任せて勢いよくアニソンを歌っている女……それはまだいい。いや、良くもないが。 あそらく大がかりな射影機によって自身の姿を投影してるのだろうがいったい何の意味があるのか? あれでは殺してくれと言ってるだけではないだろうか。 この、いつ殺されるか分からない状況であんな行動を取るとするのなら…… まず思い浮かぶのは他の参加者への連絡、およびうったえかけることであろう。 またはそれに見せかけた待ち伏せ、或いは罠か? だがどう見ても酔っぱらいがアニソンを熱唄してるだけにしか見えない。しかもなぜアニソン? 待ち伏せや罠にしてももう少しやり方がある。こんな状況でカラオケなんてする酔っぱらいを誰が接触しようと思うか? さすがに実はアニソンが何らかの暗号か符号であってそれでやり取りをしてるとは思えない。いや思いたくない。 もし合理的に納得できる理由があるとすれば………戦場の空気に当てられて自棄になった末の行動か? なるほど、確かに鈴子もこれまでの異常な状況で精神を消耗してきた。この状況に負けてこういう行動を取る参加者が出ても不思議ではない。 人間、理由が分からないことに恐怖を抱いたり困惑したりするが理由さえ分かればどうということはない。 だがそれで他人の心が納得するかといえば別問題であり、これまでのここでの自分の行動が、必死で危険を回避しようとしてあれこれ悩み決断してきた自分が否定されてるみたいで…… とらを見た時とは違い嫌悪と軽蔑の感情が湧いてきて愚痴を溢さずにはいられなかった。 「いったいなにを考えてあんな……この状況から逃げ出したくなる気持ち、分からなくもありません。 だからってお酒に逃げて現実逃避するなんて…… 自殺するのなら勝手に自分一人でやればいいんです。 それなのに他人を、あんな可愛い動物を巻き込んでこんな目立つような、目立つ?」 そうだ、あの巨大な立体映像は目立つ。目立ちすぎる。 どれだけの人間がアレを見れる範囲に存在するかわからないがアレを見た参加者が取るであろう行動は大きく分けて二つ 一つはあの酔っぱらいを殺そうと近寄るか、近寄ってきた参加者を殺して回ること。 もう一つは逆に巻き込まれない為に遠くへ遠ざかるか、嵐が通り過ぎるまで建物に避難するやり過ごすこと。 幸い、当面の目的であるデパートとはかけ離れている。これに便乗してデパートへ……あれは? ふとデパートの方角に目を向けると付近の市街地から黒い煙が立ち上るのが遠目でも確認出来た。 「やはりすでにデパート付近には参加者が集まっていましたか。このままデパートに行くのは危険ですわね」 半ば予想はしていたが可能ならごたごたを避けてデパートに向かいたかった。 この状況でデパートに向かうのは危険かもしれない。 だが自身の能力の使用にはビーズが必要不可欠だ。 いっそう、デパートに向かうのは諦めて不確定ではあるが市街地で虱潰しに探すべきか? 「地図に乗っている施設だけを頼りにするのも考えものですわね。時間を掛ければ見つかるか、え?」 さすがにこの付近でそれらしい店が都合よくあるわけがないか。 そう思いつつも辺りを窺っていて三叉路付近に目を向け………あの裸の少女が消えていることに気づく。 確かにぶつかったのも放置したのもあの辺だったはず。 ここからでも屋上からだとその場所が良く見えた。 (こ、これはどういうことですか? わたしが最後に見た時にはあの子は気絶していた、いえ、はっきりとは確認したわけではありません。 なら起き上がって自力で止血して逃げた? ならばあの連中から逃げ切れたのですか?) 先程は切り捨てることを正当化していたのに彼女が生存している可能性を突き付けられるとそれもすぐに揺らいでしまった。 そしてその揺らいだ心のまま…… (ここからでは詳しく分かりませんわ……危険かもしれませんが、もしまだ生きているのならやはり一度謝罪して償いたい。 そうですわ、気を付けて行動すればなにも恐れることはありませんわ) 安直に行動を変えることになる。 ◇ ◇ ◇ 「確かに血の跡はあります……でもこれは……」 腕を切断された時の血の跡はあった。だがそれだけだった。他に目立った跡は他にはなかった。 例えば三人組が彼女に危害を加えたとする。それも気絶した彼女へのとどめを刺すほどの傷を与えたとしたらこれだけでは少なすぎる。 止血して逃走した可能性もあるが考えてみればそれらしき道具どころか服すらもなかったではないか。 ならばあの三人組が助けたのか? いや、それはありえないだろう。本人がはっきりと殺人をしたと……待て、三人組? このゲームで生き残れるのは一人だけのはず。だがあの三人組はチームを組んでいた。チームを作ることが出来たのだ。 どうやって? 欲深くて自分勝手な人間でもロベルト十団の時はその後の世界の理想の地位を餌に従えさせることが出来た。 だが今回は状況が違う。ならばどうやって……いや、方法はある。 それはこのゲームからの脱出を目標として団結するという方法。 確かに死にたくないという気持ちを利用して参加者を纏めることは可能だ。 最終的に最後の一人を決める戦いは避けられなくてもそれまでは強敵にも対抗できる有効な手段だ。 それに自分達の敵に対して殺し合いに乗った愚か者だと周りを煽ることも出来るだろう。 そこに更に負傷した少女を助けたという事実を利用すれば他の参加者の信用を得られ……なら彼女を傷つけた自分はどうなる? 事故とはいえあの少女を傷つけたことは事実。そしてそれを彼らが歪曲して他の参加者に伝えたら? ただでさえ孤立無援なのに複数の参加者に目を付けられてしまう。 (まずいですわ。このままでは集団の敵として認知されてしまう。ですが相手は三人、しかも未だにビーズを確保できていない。 ですがこのまま放置する訳には……なにかこの状況を打開する手が……) だがそんな都合のいい手段があるのなら誰も苦労はしない。たった一人で集団に対抗するなんて…… いや、あった。 あったではないか。そう、植木がロベルト十団に入団し内側から組織を崩壊させようとしたではないか。 確かに途中で正体はばれたがそれまでにアレッシオ・ユリアーノやドンを倒している。 連中も戦力が欲しいはず。全身を刃にできる能力を上手くアピールし、なんとか彼らの気を引ければ…… そして今は手元にビーズはないが彼らの懐に潜り込み彼らの緊張が緩んだ隙にどこかでビーズを入手して不意打ちすれば…… (正直、不安要素が多いですし卑怯な手段です。穴が多すぎますわね……しかし上手くいけば多人数でも対応できる。悪評が広まる前に彼らの口をふさぐ為にも、 そしてロベルトに『空白の才』を渡す為にも手段は択んでいられない) そうと決まれば連中を追わなければならない。 確か、連中はデパート方向から来たはずだから……旅館へ向かったか、それともあの映像の方か? どうせ運頼みだというのなら……いっそう危険ではあるがあの子がいる映像の袂へ向かうのもいかもしれない。 普通に考えてみればそれは危険な行為であろう。十団の参謀としての自分ならあり得ない行動であろう。 だがどうせ何処へ向かったか分からないのなら外れの可能性もあるのだ、それならあの酔っぱらいからあの子を保護、もとい支給品を確保した方が後々有利になる。 (確かに今は非常事態、そう、生死を賭けた戦いの最中……でも、もしあの子が支給品だとするのなら、もしかしたら何らかの役に立つのかもしれませんし…… それに……こんな人間同士の醜い戦いにあんな子を巻き込むのはどうしても割り切れません……) 悪評が流れる前に彼らを補足したい。そして危険を避けで優勝を狙う。 だけど人間同士の争いと無関係なあの子を死なせたくない、なんとか助けたい思い。 心の中で強引にそれらに折り合いを付けてみる。 (今まで受け身でしたがようやく指針が見えてきましたわ。危険は伴いますが上手くいけば……) 【H-08/三叉路付近/1日目 午前】 【鈴子・ジェラード@うえきの法則】 [状態]:疲労(小)、左足首捻挫 、スパスパの実の能力、カナズチ化 [服装]: [装備]:なし [道具]:支給品一式、妖精の鱗粉@ベルセルク 、手ぬぐい×10 [思考] 基本:このゲームの優勝賞品が空白の才ならそれをロベルトの元へと持ちかえる 1:巨大映像へ向かう。自身の悪評が流れない内に三人組の口封じをする。ゆのは…… 2:他人は信用できない。だが集団に入り込む努力はする 3:このゲームが自分達の戦いの延長にあるかを確かめる。 4:映像付近で三人組がいなかった場合、とらを確保する。酔っぱらいはどうでもいい 5:ビーズやその他の道具の確保は一時保留、折を見て探索する。 6:情報を集め今後どうするかを考える。特に他の参加者への接触は慎重に行う。 7:この戦いが空白の才を廻る戦いであり、自分に勝てない参加者がいるようなら誰も死ななかった時の全員死亡を狙う。 [備考] ※第50話ロベルトへの報告後、植木の所に向かう途中からの参戦です。その為、森とは面識がありません。 ※能力者以外を能力で傷付けても才が減らない可能性を考えています。実際に才が減るかどうかは次の書き手に任せます。 ※気絶させても能力を失わない可能性を考えています。気絶したらどうなるかは次の書き手に任せます。 ※とらは支給品である動物だと思っています。参加者に人間以外が混ざってると思い至っていません。 時系列順で読む Back それぞれの妥協点 Next 扉の向こうへ 投下順で読む Back それぞれの妥協点 Next Mißgestalt 108 Guilty or Not Guilty 鈴子・ジェラード 123 花の命は結構長い。女ですもの!
https://w.atwiki.jp/wiki5_milk/pages/38.html
パスワードをリセットするには、ログインページの「パスワードを忘れた」をクリックしてください。 パスワードをリセットするのが難しいときは、私たちに連絡してください。
https://w.atwiki.jp/chiuzazie/pages/77.html
前ページ次ページSSまとめ 9-780 9-780 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/09/07(水) 09 49 56 ID xGcGh4H/O 自室にて ちう「あ?、勉強めんどくせ?」 ザジ「私が教えてあげる」 ちう「ホントか?ありがとなザジ」 ザジ「じゃあまず保健」 ちう「保健?なんでまた微妙なものから……まぁいいや。教えてくれるんだから文句は言えないわな。ってザジ何すんだ!?」 ザジ「保健なら体で覚えたほうが早い」 ちう「ちょ、まだ昼間だろ………はぁん」 9-790 9-790 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/09/07(水) 16 44 15 ID xGcGh4H/O 夕映「ふぅ?、危うくもるところでした。でも私とあろうものが森でしてしまうとは猛省しなければ」 朝倉「うふふ?夕映っち?♪」 夕映「朝倉さんいきなりどうしたのですか?」 朝倉「それがねぇ、私見ちゃったのよ。夕映っちがそこでもるですしてるところ」 夕映「な!?まさか写真とか撮っていたりしたんですか?いや、まさかそんなことは、でも朝倉さんなら………」 朝倉「うん、私もみんなに事実を伝えるパパラッチだからねぇ?。仕方ないことだけど撮らせてもらったわ。本当に仕方ないことだけどねぇ。で・も・夕映っち次第では写真を返してあげないこともないなぁ」 夕映「なっ、私をゆするですか?いいでしょう。なんでも言って下さい」 朝倉「じゃあね?こうゆうことしよっか」 夕映「なっどこ触っているんですか!?」 朝倉「夕映っちもうこんなになってるじゃない」 夕映「こ、これは先ほどしたからです。朝倉さんもわかっているはずです」 朝倉「それでもさっきより凄くなってるじゃん」 夕映「そ、それは朝倉さんのせい……くはぁ。ダメです。私達は女同士なのにこんなこと……んぁ」 朝倉「体は正直ね♪」 夕映「も、もるです?んはぁぁぁぁぁ」 9-855 9-855 名前:コスプレさよシリーズ[とりあえずうpすることにした] 投稿日:2005/09/07(水) 23 44 59 ID j5f8icPTO 朝倉 さ?て、今回はリクエストに応えるよ!えーと、お便りの送り主は…vipperさんですね。えーと、お便りを読みます。 「さよかわいいよさよ」以上です! 朝倉「ということで、さよちゃーん?準備OK??」 さよ「朝倉さん…、恥ずかしいです…ネコミミ…」 朝倉「さよちゃん可愛いって!(メガネも可愛い?)」 さよ「はわわわわわわ…」 朝倉「それじゃあ撮るよ!」 パシャパシャ… さよ「恥ずかしい?はわわわわわわわ」 朝倉 それじゃあ、vipperさんへ。ネコミミメガネさよちゃんで?す! にア ttp //www.uploda.org/file/uporg187519.jpg.html 携帯電話用 にア http //n.pic.to/2g1x0 9-811 9-811 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/09/07(水) 19 44 12 ID j5f8icPTO さよ「今、ガタッって音しませんでした?」 朝倉「なんにも聞こえなかったけど…」 さよ「らっ…ラップ音でしょうか…」 朝倉「言ってるさよちゃんこそ幽霊なんだから、そこまで怖がるのは…」 さよ「ええ…そうですよね?幽霊が幽霊を怖がるって変ですよね」 うるうる泣く…さよ さよ「!? きゃあああっ!」 朝倉「さよちゃん!?どうしたの!?」 さよ「よくわからないんですけど…あの、朝倉さんの後ろに…」 朝倉「ははは(´∀`;)…、そんな馬鹿な…(まさかそんな本当に幽霊が…)」 さよ「もしかして…ええっ!そんな!?」 朝倉「ら…らふぃ…ふ…ふっふっふっ…私ハ…学園ノ亡霊ダ…」 さよ「っきゃあああああああ!朝倉さんが取り憑かれ…」 朝倉「たすけぇ…てぇ…さよ…ちゃ…ん…」 さよ「!?朝倉さん!意識あるんですか!?」 朝倉「なんちゃってね(´∀`) 」 さよ「!?…あーさーくーらーさーん…」 朝倉「よくひっかかるよねー、さよちゃん純粋だからかなあー」 さよ「く…悔しい…ヒドイです、あぁ…朝倉さん…そんなに仲良く…」 朝倉「気にしないでね、ただのジョークなんだから」 さよ「付いてるんです…」 朝倉「いやいや、ごめんね?(´∀`) って、何?付いてる?」 さよ「たまに見えることがあったんですけど…、朝倉さんに仲良く肩組んでる幽霊が憑いてます」 朝倉「なっ…なにーーー?!(マジだったのかよ…)」 ============= その後、私の嘘だと判明したも、朝倉さんは少し怖がりになりました。(By.さよ日記) 9-842 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/09/07(水) 22 48 58 ID j5f8icPTO 812、813、831レスありが?(`・ω・´) 822-828いいなぁ(=´∀`=)GJ俺こういうの弱いんだよ…ゼロもいい味出してるし 834ちょwwwのどか強えぇー! 840敵同士の友情みたいな部分があっていい!(・∀・)/GJ!でもこの"敵同士"も運命の悪戯なんだよなぁ…(´Дヽ)ところで、そろそろ縦読みに気付いてもいいんじゃないか?P.S."ネコミミメガネさよ"の方いらっしゃいますか?無茶苦茶に遅くなりましたが、絵に添える文章ができました。いらっしゃいましたら、うpさせていただきます。 9-843 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/09/07(水) 22 53 03 ID JHQ1Rf6b0 842言われて初めて気づいた上手すぎるってwww 9-822 9-822 名前:ある夜の茶々丸[] 投稿日:2005/09/07(水) 21 07 43 ID l327GaOj0 麻帆良学園工学部で開発されたお茶汲みロボット『絡繰 茶々丸』が、 本来の計画意図とは全く違う存在として…… 吸血鬼エヴァンジェリンの従者として完成してから1ヶ月が過ぎた。 吸血鬼の下僕たるものは、普通、主人の命令には絶対服従であるが、 茶々丸の場合は事情が違った。エヴァンジェリンの命令に服従するのだが、 茶々丸自らがその命令を検討し、時と場合によっては 疑問や異議を唱えるようプログラミングが施されていた。 ロボットとしては異例のプログラミングには、エヴァンジェリンの希望が背景にあった。 エヴァンジェリンは、使い捨ての従者(人形)ならともかく、 彼女が特別な寵を置く従者にはYESマンを求めない。 麻帆良学園に来るまでエヴァンジェリンの従者を勤め、 パワーダウンで動けなくなってしまったチャチャゼロにしても、 主人を茶化したり揶揄することが良くある。 自分に忠実であると同時に、時に自分を諌めてくれる……。 そんな友達の理想像を、エヴァンジェリンは無意識のうちに チャチャゼロや茶々丸に投影しているのかもしれなかった。 9-823 名前:ある夜の茶々丸[] 投稿日:2005/09/07(水) 21 09 04 ID l327GaOj0 そんなわけで、絡繰茶々丸がエヴァの命令を実行することに躊躇したとしても、 なんら不思議ではなかった。エヴァンジェリンお手製の割烹着を着た茶々丸は、 主人たる吸血鬼の少女を前にして固まっていた。 「すみません、マスター。もう一度御命令いただけませんか? 私にはマスターの仰ることの意図がよくわからないのですが」 「だ、か、ら! お前は何度云わせたら気が済むんだ!!」 茶々丸の前には、腰まで流れる金髪をふりみだし、 頬を林檎色に紅潮させた外見10歳ほどの白人少女がいた。 耳打ちされなければ、誰がこの可愛い女の子が『闇の福音』と恐れられた 最強最悪の吸血鬼 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだと見抜けるだろうか。 ともかく、茶々丸が絶対の忠誠を誓う少女は、 麻帆良学園の制服でもゴシックロリータ調の私服でもなく、 ピンク色の生地に可愛らしい「くまさん」の絵柄が入ったパジャマを身につけている。 往来でこんな格好をしていたら問題であるが、 ここはエヴァンジェリンの自宅かつ寝室であり、 さらに良い子はもう寝る時間であるから、不自然でもなんでもない。 エヴァンジェリンの年齢が数百歳であることを考慮すれば話は別かもしれないが。 9-824 名前:ある夜の茶々丸[] 投稿日:2005/09/07(水) 21 09 56 ID l327GaOj0 「マサカ御主人ニソンナ願望ガアッタナンテナ」 「お、お前に云われたくない!!」 「考エテミレバ、時々オレヲ抱キシメテ寝ルモノナ」 「ええい、この口が、この口が!」 ベッドの枕元にちょこんと座るチャチャゼロがエヴァンジェリンをからかう。 言い合う一人と一体を横目に、茶々丸は命令を反復した。 『こ、今夜は私と一緒にベッドで寝るんだ』 茶々丸には横になって休むと云う習慣がない。 関節やジェネレーターを休ませるため、 あるいはメモリーを整理するための休眠モードは存在するが、 座った姿勢で行うのが一般的だ。人間のように横になって……となると前例がない。 前例がないからには主人にその命令に対する意義を聞きたいところなのだが、 吸血鬼の少女は顔を真っ赤にするばかりで答えてくれないのだ。 言葉の裏に潜むものを見抜くことが出来れば良いのだが、 茶々丸はエヴァンジェリンと暮らしはじめてまだ数十日で、 正直、幼い主人のことはよくわからない。 一言で云えば「データ不足」。 それでも、虫喰いだらけのデータをもって茶々丸は素早く計算する。 9-825 名前:ある夜の茶々丸[] 投稿日:2005/09/07(水) 21 12 31 ID l327GaOj0 エヴァンジェリンの命令を拒否すべきか。 それとも意義はわからずともエヴァンジェリンの命令に従うべきか。 意図不明であっても、別段理不尽な命令ではない。 従うべきだ、と人工知能は判断した。 だが、どこか釈然としない。デジタルな心では解析できない、 人間(相手は吸血鬼だが)のアナログな部分に対する苛立ち。 もしディスプレイがあったら何枚も積み重なるであろう『エラー』表示への不満。 単なるAIでは捕らえきれない感情を持ち得たのは、 茶々丸が単なるロボットではなく、魔力を与えられた存在だからだろうか。 それをふまえて茶々丸は膨大なデータからこの場合とるべき行動を検索し、 ぴったりの行動を見つけ、実行した。 「ふぅ……」 茶々丸は溜息をついた。 溜息をついてみると、なるほど、人間がなぜ溜息をつくのか良くわかった。 理不尽であっても、意味がわからずとも、自分の意志に反しても、 理由はともかく行動せざるを得ないからだ。 「仕方がないですね。 マスター、御命令に従います」 「そ、そうか!」 途端に顔を綻ばせるエヴァンジェリンに、茶々丸の人工知能はなぜかときめく。 吸血鬼の下僕だからとか、ロボットだとか、そう云った物理的条件を全て越えた所で、 目の前の少女を護ってやらねばならないと思う。 すると、溜息をついた行動が適切だったのかと疑問が浮かんだ。 少女の笑顔が見られたのならば、積極的に命令に従ってもよかったのではないか? 9-826 名前:ある夜の茶々丸[] 投稿日:2005/09/07(水) 21 14 20 ID l327GaOj0 この答を得るのはまたの機会にしよう、と人工知能は判断した。 エヴァンジェリンがベッドに潜り込むのを確認して、茶々丸は灯りを消した。 「失礼します」 エヴァンジェリンの左隣に滑り込む。茶々丸の自重はかなり重い。 ベッドのスプリングが危うい音をたてて軋んだが、なんとか持ちこたえた。 ずれた掛け布団をかけなおす。 「…こっちを向け、茶々丸」 「はい」 最初仰向けになっていた茶々丸だが、命令どおりに身体の向きをかえた。 ちょうど胸のあたりにエヴァンジェリンの顔がくる。なぜかエヴァンジェリンが小さく笑った。 理由を問うと、吸血鬼の少女は「なんでもない」と照れながら答えた。 沈黙が舞い降りた。窓の外でフクロウが鳴く。 暫くして、エヴァンジェリンが呟くように命令した。 「なぁ茶々丸。お前の手で、私の背中を軽くさすってくれないか」 「こうですか?」 「いたっ! 違う、そうじゃない! もっと優しく……そうだな、子猫をあやすような感じでだ」 「……こうで、しょうか?」 「そうだ。それでいい。その力でリズムを取れ」 「……はい」 9-827 名前:ある夜の茶々丸[] 投稿日:2005/09/07(水) 21 15 33 ID l327GaOj0 中々に難しい注文だったが、茶々丸はデータを必死で検索し、 適切だと思われる強さと間隔を持ってエヴァンジェリンの背中をさすった。 『子猫を』と云う唯一の具体的な指示をかなめに、茶々丸はその行為を続けた。 この時点では、茶々丸はエヴァンジェリンが何を望んでいるのかわからなかった。 只、言われるがままに行動した。 時間にして数十分が経過した。 不意にエヴァンジェリンが茶々丸の胸に顔を押し付けた。 茶々丸は主人の言葉を待ったが、反応はなかった。 脳波を測定してみると、彼女は既に眠っていることがわかった。 どうしようか? 茶々丸は困った。だが、こんな時の為の人工知能、 茶々丸は命令を馬鹿正直に実行し続けるロボットではない。 主人は眠ったようだし、そろそろ行為を止めようかと茶々丸が検討していると、 突然、エヴァンジェリンが小さな言葉を漏らした。 「……ママ」 茶々丸は思わず動作を停止して硬直した。 エヴァンジェリンの閉じられた瞳から涙が溢れ、頬を伝わった。 「マスター……」 茶々丸はエヴァンジェリンの髪を梳いた。 命令だからではなく、自分の、茶々丸の意志で。 9-828 名前:ある夜の茶々丸[] 投稿日:2005/09/07(水) 21 16 47 ID l327GaOj0 その瞬間、茶々丸はエヴァンジェリンと云う存在に触れた。 デジタルな心では理解出来ない、出来る筈もない幼い少女の心に寄り添った。 呼びかけた言葉は機械のそれではなく、茶々丸の言葉だった。 「マスター。私は、あなたについていきます。 これからもあなたのお傍にいさせてください。 この身にかえても、私はあなたを護ります」 計算でもロジックでもなく、茶々丸は我知らず呟いていた。 夢の世界にいる少女は、茶々丸の誓いを聞いていない。覚えてもいない。 それでも良い、と茶々丸は思った。これは茶々丸の決意。茶々丸の意志なのだから。 ケタケタと笑う声がした。 茶々丸が音源の方向に顔をむけると、ベッドの上に腰掛けたチャチャゼロが 茶々丸を見下ろして笑っていた。エヴァンジェリンに仕えて長い人形は、 妹人形の視線を感じるや、一転至極冷静な口調で主人を評しはじめた。 「マア、俺達ノ御主人ハコウイウ奴ダ。 百年ツキアッテモ、毎日飽キナイゼ」 「そうですね。私の人工知能でマスターを分析しようと思ったら、 この世の時が終わるまででも計算が間に合いそうにありません」 「ソレガ人間ッテモンダロ」 「ええ……」 チャチャゼロは面白そうに云った。 同意を返し、茶々丸はエヴァンジェリンを抱き寄せた。 月光は夢見る少女を優しく包み込んでいた……。 9-881 9-881 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[夏影改造・嵐抜けた記念] 投稿日:2005/09/08(木) 01 55 15 ID kpLa8y0I0 ふたりぶんの 萌えスレを 僕らの手で 守った 時に他の カップルも 僕らの手で 結んだ PC(パソ)を手に 今 僕らが 描き続けた あの二人へ 捧げてた ちうへ (Sunnyday) ザジへ (Rainyday) ちうへ (Sunnyday) ザジへ (Rainyday) 越えてゆく はるか夏の 流れるよな勢いも いつか収まり いつかマターリ それでも神は降りてくる 9-896 9-896 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/09/08(木) 05 32 14 ID ssrYqyDf0 冷たい水が打ちつける 髪に 顔に 肩に 突然落ちてきたそれは 同じ名前を持つ私にも容赦なく降りそそぐ ‘雨’ 諦めうつむいて歩き出した 背中に近づいてくる足音 差し出した一本だけの傘で 私を凍える水から救い その温かい体で 小さく震える私を包んでくれたのは もう一人の‘雨’ 9-913 9-913 名前:保守[] 投稿日:2005/09/08(木) 15 30 34 ID 2wO0umCx0 麻帆良大学の研究所には、いつものように超鈴音が居た。 が、研究をしているわけではない。部屋には電子音が響いている。 「あー、もうやめネー」 「あれ、超さんともあろう人がギブアップとは。驚きました」 近くに居た葉加瀬聡美が言った。 「これ、今から20年以上も昔のモノですよ」 「そうらしいネ。コレを造った人は本物の天才ヨ。ちょと私自惚れてたネ」 「そこまでいいますか。珍しい」 「それほどに凄いヨ。私、結構感銘受けたかも知れないネ。ただの赤いオヤジが走り回るだけなのに、 この面白さは有り得ないネ」 手にしていた物を置き、超は葉加瀬と向き合った。 「ああ?、これがいつでもできたらいいのにネ・・・。そしたら私、毎日天国ヨ」 「?知らないんですか、超さん。できますよ毎日」 「何、それはホントカ、ハカセ!?」 「ええ。携帯ゲームに対応して再販されますから。手の平サイズのゲーム機も既に出てます」 「本当ネ!!ヨシ、早速予約してくるヨ!!!」 超は喜び勇んで部屋を飛び出していった。 彼女をそれほどまでに虜にしたモノ。テレビ画面には淡いドットで、『SUPER MARIO BROTHERS』 のタイトルが浮かんでいた。 9-946 9-946 名前:TRAIN☆TRAIN ◆yBbpuxV.Qg [許せwwww] 投稿日:2005/09/08(木) 20 42 50 ID jA+DPg1q0 ピンポーン♪「次止まります」 ちう「━・・・おーいザジぃ?」 ザジ「なにーちうー」(棒読み) ちう「いつまでゲームやってんだよ・・・」 ザジ「だっておもしろいんだもーん(´∀`*)」 ちう「あのな?私たちにはやることがあるんだから、それをやった後で遊べよ・・・な?」 ザジ「あとでー」 ちう「(ムカッ)」 プツン!千雨は、ザジがゲームをやっているにもかかわらず、 ゲーム機の電源を強制的に切った。 ザジ「あ・・・」 ちう「ほら!やることやりなさい!」 ザジ「。・゜゜ ゜(*/□\*) ゜゜゜・。 ウワァーン!!」 (´・ω・`)オチは無いんだスマソ。ちなみにザジがプレイしていたゲームは 『東京バス案内2』 9-954 9-954 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/09/08(木) 22 02 22 ID Dmm7Vp760 ちう「忘年会の余興で芸を疲労しなきゃならなくなったんだけどよ お前がいつもやってるの教えてくれないか?できるだけ素早く」 ザジ「随分急な話だね…もう日がないと超思うけど愛するちうのためひと肌脱ぎましょう(*≧∀≦*)」 ちう「いや服を脱ぐ必要はない。。。」 ザジ「(´・ω・`)」 ちう「まあいいから。ていうか明日だから」 ザジ「(無計画過ぎだよちう)じゃあ曲芸手品部の一時間でできる手品コースを…」 ちう「ほう」 ザジ「ただし手品は尻から出る」 ちう「ちょwwwwwwおまwwwwwwwww」 9-972 9-972 名前:さよのいちにち[] 投稿日:2005/09/09(金) 01 23 20 ID S80Fpsa+0 私は相坂さよ、幽霊です。普段は麻帆良中学の3-Aに居ます。 でも暗い所は苦手なんです。幽霊なのに・・・。 そんなわけで、私が出歩くときは専ら朝?昼の間です。特に朝が大好きですね。 黒い部分が徐々に光に満たされていく・・・。とても素敵だと思います。 ・・・私、本当に幽霊なんでしょうか・・・。たまに自信がなくなります。ある意味 貴重な存在なのかもしれませんけど。でも、私に気付いてくれる人なんて誰も 居ませんから、無駄な貴重さです。 でも、一応話せる人はいます。隣の席に座っている、朝倉さんです。善い人だと ・・・思います。最近、よくコスプレをさせられるんですが、よくわかりません。コスプレって、 何の略なんでしょう? 前ページ次ページSSまとめ
https://w.atwiki.jp/chiuzazie/pages/372.html
前ページ次ページSSまとめ 22-400 名前:プラセーボ[sage] 投稿日:2006/01/01(日) 22 28 34 ID ??? 「ねむい……。茶々丸何か面白いことはないか?」 ログハウスの窓からは冬の陽光が差し込んでいた。 暖房が効いているので、部屋の中は冷たさとは無縁。 ゆっくりとした時間が流れている。それは朝だからと云うだけでなく、 学校が冬休みに突入している事も一役買っていただろう。 思わず眠くなってしまうそうな空気に、ログハウスの主にして最強最悪の吸血鬼 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは染まりきっていた。寝間着姿のまま、 ソファーに外見年齢10歳の幼い身体を投げ出している。 敵と対峙した時は永久氷河の凍てつきを煌く蒼い瞳も、どこか焦点を失って、 凪いだ春先の海のように穏やかだ。彼女はふとリモコンを持ち上げ、スイッチを入れた。 タレントやCMの音声が入るよりも早くチャンネルを廻した。 全部のチャンネルをチェックすると、溜息を一つついてスイッチを切った。 リモコンを放り出す。エヴァンジェリンはニュース番組を見るのが好きだが、 この時間帯は既につまらないバラエティーか料理番組に取ってかわられている。 暗いTV画面に映るのは、うとうととしかけたエヴァンジェリンの幼い顔だけ。 腰まで伸びた金髪をなんとなくいじくる外見だけ最高級フランス人形のような少女は、 この退屈を紛らわすべく、自らの忠実な従者に声をかけることにしたのだ。 22-401 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 30 17 ID bndWk7tT 「茶々丸、眠気が吹っ飛ぶようなイベントはないのか?」 「……マスター。言葉の定義が曖昧な為に返答できません。 質問の意図を限定して下さい」 エヴァンジェリンによって命を吹き込まれた女性型ロボット、 茶々丸は感情の籠もらぬ無機質な声で答えた。 エヴァンジェリンはムッと頬を膨らませたが、茶々丸は気にするそぶりもしない。 それは茶々丸が人間の感情など理解できないロボットだから……ではない。 彼女(?)はメイド服を着用し、両脇に洗濯籠を抱えていた。 それにはエヴァンジェリンの下着や洋服が山のように詰っている。 茶々丸は庭に出ると、物干し竿に手際良く洗濯物をかけていった。 数分後、家の中に戻ると今度は窓拭きをはじめる。 「茶々丸、答えろ。お前は私の従者を何年務めているんだ。 お前は私の命令に従う従者であろうが。 主人が退屈を紛らわす『面白いこと』を私に提供しろ、と云っているんだ。 命をかけても全うしろ」 「マスター。私は家の掃除で忙しいのです。 これは現時点におけるあなたの要求より優先事項であると認識しています。 それに退屈ならば、素晴らしい解決手段を提案致します。私を手伝ってくれませんか?」 「うっ……」 エヴァンジェリンは呻いた。窓拭きを終えた茶々丸は掃除機を剣のように構えて仁王立ちだ。 要するに「ソファーにマスターがいると掃除機がかけられません。 さっさとどいてください」と遠まわしに云っているのだ。 22-402 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 32 26 ID bndWk7tT 「お、覚えてろ茶々丸」 「何をですか?」 「うるさい!」 最後の捨て台詞は掃除機の騒音に掻き消されてしまった。 エヴァンジェリンは2階の寝室に行くと、寝間着を脱ぎ捨て普段着に着替える。 今日はベルトのアクセサリーがついたワンピースだ。 大人向けの商品を特注してエヴァンジェリンサイズに仕立てたものだ。 気替えを終えたエヴァンジェリン。全身鏡の前でプレイボーイにのるようなポーズを取った。 だが、エヴァンジェリンの外観は所詮10歳であり、 子供のモデルが子供服を着ている姿にしか見えない。 「どうして私はこんなに子供っぽいんだ!」 そりゃ貴女が10歳で吸血鬼になったからでしょう、と云うのが正解なのだが、 500年近い時間を10歳の姿で過ごしてきたエヴァンジェリンの怒りが 理性の箍でおさまるわけがない。突っ込みと共に鏡にパンチを入れた。 重量50トン以上の重戦車を軽いジャブで100mも吹っ飛ばすような彼女のパンチに 単なる鏡は耐えられない。大音響と共に粉々になって砕け散る。 22-403 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 33 12 ID bndWk7tT 「マスター、どうかなされましたか?」 「な、なんでもない」 階下から茶々丸が声をかけてきた。 心から心配している素振りなど欠片もない。 それどころかエヴァンジェリンが如何にして鏡を割ったかをシュミレートして 笑っているようなニュアンスさえある。こんな姿、茶々丸には見せられない。 エヴァンジェリンは慌てて魔法を唱え、鏡を元通りにした。 「くそっ、ナギの奴がかけた呪いがなければなぁ。 幻術を使って大人の姿を取れるのに」 「ダケドヨ、20歳ノ姿ニ成ルノモ不都合アルゼ」 エヴァンジェリンの嘆息に答えた者がいる。 エヴァンジェリンは顔を上げた。天井の梁に赤ん坊よりも大きい人形が腰掛けていた。 人形用メイド服から突き出た手足は、陶器ともプラスチックとも違う白い肌に包まれている。 一方で、人形特有の丸型関節剥き出しだった。顔のつくりは整っているが、 ガラス玉のように人工的で冷たい目玉がキョロキョロと向きをかえる。 声は、その人形の喉から発せられたものだった。 22-404 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 34 40 ID bndWk7tT 「チャチャゼロ、なんで私が大人になると問題があるのだ」 チャチャゼロ。 魔法使いであるエヴァンジェリンを守護する生きた人形だ。 日常生活のサポートも可能な茶々丸と違って、チャチャゼロは戦闘に特化している。 既に200年以上エヴァンジェリンと共に在り、歴史の裏側で、 主人エヴァンジェリンと共に返り血を浴びてきた仲でもある。 チャチャゼロはケタケタと笑うと、ふらりと立ち上がった。 だが、糸の切れた操り人形のようにバランスを失ってふらつくと、ガ シャリとまっさかさまに天井から落ちる。やれやれとエヴァンジェリンは溜息をつき、 床からチャチャゼロを拾い上げた。人形のメイド服から埃を払うエヴァンジェリンの顔を、 チャチャゼロの無機質な瞳が追う。 「マスタートなぎトジャ体格ガ違イ過ギルゼ。 ソレヨリ、ナギノ子供トナラピッタシジャネェカ。背丈モ体格モ。 組ミ敷カレテモ乗ッテモオ互イ重クナイコト請ケ合イダ」 「な、なんだと」 エヴァンジェリンの脳裏に、チャチャゼロが指摘した光景が浮かぶ。 22-405 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 36 18 ID bndWk7tT ナギの子供、ネギ・スプリングフィールドが振り向き、 エヴァンジェリンに微笑みかける。彼は父親ナギそっくりの10歳の少年だ。 だが、いい加減で気まぐれな父親よりもずっと誠実で、ひたむきで、 そしてエヴァンジェリンの心に近い所にいる。エヴァンジェリンの胸が高鳴った。 ネギがゆっくりと手をのばし、彼女の頬に触れる、 触れると思いきや長い金髪に矛先を向け、最高級の絹を扱うように梳く。 その動きにエヴァンジェリンはうっとりと目を閉じ、気がつけばネギの腕にの中だ。 「まて、ぼーや」と拘束から脱出しようとするが、少年の力は思った以上に強くて引き離せない。 「だめだ、ぼーや! 離せっ、私を……」エヴァンジェリンの言葉はそこで途切れた。 ネギが少女の唇に自らの唇を重ねたからだ。 唇から直接感じる自分以外の人間の温かさにエヴァンジェリンの動きが鈍くなり、そして……。 「ヤッパリ自分デモ満更ジャネェカ」 「はっ、わ、私は!?」 エヴァンジェリンは自分を冷静に観察する視線に気がつき、我に返った。 視線の主など捜すまでもない。腕の中でチャチャゼロがケタケタと笑っている。 主人に命を吹き込まれた生きた人形は、抱き上げられていなければ、 主人を指差して腹を抱えて笑っていただろう。 「この馬鹿!!」 22-406 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 38 08 ID bndWk7tT エヴァンジェリンの額に血管が浮かびあがり、心臓の音がドクドクと響く。 階下の茶々丸は主人の怒りの波動を感じ取り、 掃除機をかける手を休めて2階をちょっと見上げたが、 彼女は主人と姉にあたる人形が繰り広げるこの手の喧嘩には慣れている。 たいして気にすべき事項でないと判断し、 2秒後には再びスイッチを入れて掃除を続行した。 暫くすると、エヴァンジェリンが長い金髪をマントのようにたなびかせて 2階から降りてきた。肩をいからせ、顔が興奮によって上気している。 「茶々丸、私は地下のアトリエにいる」 「お手伝いしますか?」 「いや、いい。一人で出来る。ぼーやが来たら知らせてくれ。 そうだ。寝室でチャチャゼロがバラバラになっているから直しておけ」 「わかりました」 茶々丸に云い残すと、エヴァンジェリンは地下室への扉を開いた。 コンクリート剥き出しの壁と階段が少女の前に広がる。 温かくほんわかとした1階・2階とはうってかわり、 冷気がエヴァンジェリンの頬に吹き寄せた。 それをものともせずに地下へと下る。 30段降りると、裸電球に照らされたドアがあった。 何の変哲もない市販のドアだが、周りがコンクリート壁なだけに、 ドアまでが殺風景の中に沈んでいる。 エヴァンジェリンは扉を開けた。 小さな廊下があり、地下室の扉と同じ仕様のドアが4つ並んでいる。 エヴァンジェリンはその一つをくぐった。真っ暗な空間が広がる。 吸血鬼の少女は迷い無く電気のスイッチを捻った。馴れた手つきだ。 22-407 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 40 00 ID bndWk7tT 「さて、魔法薬を造って溜めておくか」 エヴァンジェリンは引き出しから何種類か魔法薬の材料となる石を取り出した。 薬品棚からも薬瓶を取り、小脇に抱えてテーブルの上に置く。 関係の無いメモや本を片付け、今から調合しようとする薬品の構成を書いたページを開く。 今、エヴァンジェリンが調合しようとしているのは、魔法詠唱の時に使う触媒液だ。 さらに、投げつけるだけで魔法が発動するタイプの、 攻撃魔法を封じたフラスコもつくるつもりだ。これら補助魔法薬は、 強大な魔力を持つエヴァンジェリンにとって絶対必要と云う物ではないが、 魔力の節約になる。長期戦では戦闘の行方を決めかねない重要な要素だ。 「ぼーやの周りには危険が一杯だからな。 私がフォローしてやらないと、危なっかしくてみておれん。 ふん、神楽坂明日菜や桜崎刹那がいくら保護者面しようが、私には適うまい。 だが、その為には色々と準備をしなくてはな。 ぼーやを護るのは、この私だ」 鉱石の量を計り、薬草を乳鉢ですりつぶしながら、エヴァンジェリンは呟いた。 退屈は何時の間にか忘れていた。 22-408 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 41 06 ID bndWk7tT 「師匠、遅れてすみませんでした!」 エヴァンジェリン家の玄関が勢い良く開いた。 拭き掃除を終え、ソファーに腰掛けてくつろぎながら 昼の健康バラエティ番組を見ていた茶々丸は、 予期せぬ訪問客の存在に慌てて立ち上がった。 いや、訪問客が来ることは判っていた。 これほど早く来るとは思っていなかっただけだ。 「ネギ先生!」 茶々丸の視線の先に、背広を着た少年の姿があった。 やや癖のある、ミルクをたっぷりといれた紅茶色の髪。 小柄な身体を特注のスーツで包んでいる。 肉体はまだ大人への階段を登りかけた少年のものだが、小さなメガネの奥にある瞳には、 内面に蓄えられたエネルギーが弾けて溢れださんばかりだ。 ネギ・スプリングフィールド。 魔大戦の英雄サウザンドマスターことナギ・スプリングフィールドの1人息子にして、 麻帆良学園英語教師、クラス3A担任、そしてエヴァンジェリンの1番弟子である。 ネギは、彼など足元にも及ばない程強い魔法使いであるエヴァンジェリンに乞い、 彼女に鍛えて貰っているのだ。今日も教師としての仕事を午前中で済ますと(どうせ冬休みだ)、 一刻もはやく彼女と修行をすべく、脇目もふらずエヴァンジェリン宅に飛び込んだのである。 22-409 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 42 49 ID bndWk7tT 「ネギ先生、約束の時間には遅れていませんよ。むしろ早いぐらいです」 「あれ? 腕時計を見たら遅刻するって焦ったのですが……。 僕の時計狂っているのかな……」 ネギは顔を赤くして腕時計を指先で軽く叩いた。 彼の額に浮かぶ汗からその意味を見抜いた茶々丸は (嘆息とはこう云う時に用いるのですね)と新たな発見をしていた。 残念ながら茶々丸に肺に溜めた空気を吐き出す行為は出来ないので、 茶々丸は軽く首を振る動作で代用した。 「師匠は?」 「地下のアトリエにいます。お呼びしましょう」 「いえ、僕がいきます」 ネギがエヴァンジェリンに弟子入りしてから半年が過ぎた。 毎日のようにこの家を訪れたので、ネギが知らない場所はもはや無い。 ネギは茶々丸を制すると、我が家のように気楽に地下室へと降りた。 ネギは見なかったが、またしても茶々丸は首を振っていた。 今度は首をちぎれそうな程深く、長く。 「えっと、これは別荘がある倉庫に繋がっている扉だ。 これが別の物置で、そうそう、こっちがアトリエだった。 エヴァンジェリンさん、何しているのかな?」 ネギはドアノブに手を伸ばした。 22-410 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 44 28 ID bndWk7tT エヴァンジェリンは魔法薬の調合を終えてアトリエから出ようとしていた。 彼女の様子はいつもと違っていた。頬が僅かに上気している。 いつもはキリリと一文字に結んだ唇が、幽かな笑みを形作っているではないか。 実は、吸血鬼の少女は調合を終えてからアトリエを出ようとするまでに葛藤を経験していた。 遡ること、5分と30秒。 「忘れ物はないな、よし」 エヴァンジェリンは調合した魔法薬を試験管に入れ、手際良く冷蔵保管場所に収める。 これはいつものこと。完成した魔法薬をいとおしげに眺め、扉を閉めようとして、 彼女の眉がひそめられた。冷蔵庫の一番下段、その更に奥に、 大きな丸底フラスコが静かに眠っているのを見つけたのだ。 丸底フラスコには青に近い紫色の液体が満ちていた。 しゃがみ込んだエヴァンジェリンはしばらく無言でフラスコを見下ろしたた。 「なんだ、この薬品は。見た事がないぞ」 エヴァンジェリンはフラスコを顔の前に持ってくると、中身を見据えた。 傾けると液体はしばらく傾きを維持した。粘度が高い 。コルク栓を抜き、薬液の臭いを慎重に嗅いだ。 甘く、だが後を引かない心地よい香りが漂う。 「このアトリエに他人が侵入したら私にわからないはずがない。 よしんば侵入者があったとしても、蔵書も材料も盗まず、 薬を化合して帰っていくなんて事があるわけがない。 では茶々丸か? いや、あいつが私に無断で薬を作るなどと、それも無いな。 太陽が西から登るなら別だが」 22-411 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 46 59 ID bndWk7tT エヴァンジェリンは細い指を桜色の小さな唇に当てて思案した。 心当たりが無かった。ふぅと溜息をつき、フラスコを保管庫に戻し、扉をしめる。 「あっっ!!」 電気を流されたようにエヴァンジェリンは背中をそらして固まった。 記憶の検索結果がようやく出たのだ。 彼女はフラスコが冷蔵庫に置かれた理由、そして中味の正体を悟った。 「ふーむ、そういえば2ヶ月ぐらい熟成させなければならないんだったな。 すっかり忘れていた。いかんいかん、歳を取ると忘れっぽくなって困る」 実年齢500歳、外見年齢+精神年齢10代前半の吸血鬼は軽く自分の頭を叩いた。 エヴァンジェリンは再び思考に没頭した。細い指先を顎に当て、左手は腰に当て、 人差し指でトントンとリズムを取った。彼女は悩んでいた。 (果物からこんな物が出来るとはな、我ながら驚きだ。だが、あくまで理論だ。 実際に試してみないことには効果を証明できない。しかし、これを使うと大変なことになる。 私が実験台になる? だが相手は……ぼーやに? ぼーやか。それもいい。 ふふっ、ぼーやの奴、驚くぞ。ぼーやだけでなく、神楽坂や近衛、ことによったら刹那も……。 い、いや待て待て。これを使ってぼーやとなんて、その、違う! やっぱりぼーやと神楽坂や近衛で試すか。そうしたら相部屋のことだ、さぞや……。 い、いやだ! そんなのは絶対に嫌! うっ、私は今なんて。なんで、ぼーやと神楽坂の姿を想像すると、心が痛いのだ……) 結局エヴァンジェリンは、丸底フラスコを冷蔵庫から再び取り出してしまった。 紫色の液体は、保管庫に放置して忘れるには存在が大きすぎ、 さりとてネギに使うには躊躇されるべき性質を(理論上は)持っていた。 エヴァンジェリンは何かに取り付かれたようにフラスコを胸に抱えると、 アトリエを後にしようとした。 そして、無邪気に扉を開けたネギ・スプリングフィールドと正面衝突することになる。 22-412 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 48 15 ID bndWk7tT 「うわっっ!!」 「あっっっ!!」 アトリエに入ろうとしたネギ・スプリングフィールド。 アトリエから出ようとしたエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。 物理的運動エネルギーは前者の方が大きかった。 エヴァンジェリンが先にドアノブを捻り、扉を手前に開けてしまったので、 ネギはつんのめるようにしてアトリエに入った。 そこにはフラスコを抱えたエヴァンジェリンがいる。 衝突を避けようとしても遅い。 咄嗟に壁に手をつきささようとしたネギの左手は虚しく空を切った。 少年は少女の胸に飛び込む格好となった。ネギの視界に、 蒼い瞳を見開いたエヴァンジェリンの幼いながら端整な顔立ちが一杯に広がる。 ネギの理性とは関係ない場所が叫んでいる。これから起こることを決して忘れるなと。 雲一つ無い夏空の青。澄みきった青に間抜け顔のネギが映りこんだ。 倒れ込むネギとエヴァンジェリン。 (このままではエヴァンジェリンさんを下敷きにしてしまう!) ネギは迫る地面を睨みながら、エヴァンジェリンの両脇に手をつくべく腕を突き出した。 ダンッ、とタイルにエヴァンジェリンの身体が打ちつけられる。 それでも、少女の身体の上に激突する筈だったネギの身体は かろうじて衝突を免れた。ネギの反応が効を奏したのだ。 22-413 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 50 25 ID bndWk7tT だが…… 倒れこんだネギの身体は、地球の重力に引き寄せられていた。 体重そのものがエヴァンジェリンの華奢な身体にかかることはなかったが、 ネギは彼女の上に覆いかぶさった。世界から音が消える。 身体の感覚が無くなる。手足の動かし方も忘れた。 そもそも手足があったかどうかさえ覚えていない。 今、ネギの感覚は一つ。 重なった粘膜から伝わる、エヴァンジェリンの鼓動。 「エヴァンジェリンさん……」 ネギは少しだけ身をおこした。エヴァンジェリンは無言だ。 ピクリとも動かない。偶然にも、ネギのそれぞれの腕が エヴァンジェリンの肢体を拘束していたから。 何より、ネギが自分の唇を奪ったことに。 吸血鬼の少女の蒼い瞳が困惑に揺れている。 状況把握が出来なかったのは少年も少女も一緒だったが、 先に理解したのは上にいるネギの方だった。彼は気が付いた。 自分がエヴァンジェリンを組み敷き、そしてキスをしてしまったことに。 22-414 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 51 13 ID bndWk7tT 「う、うわああぁぁぁあ」 ネギは悲鳴を上げてエヴァンジェリンの上から飛びのいた。 勢いで後に転がり、尻もちをついて止まる。 汗がだらだらと額を、頬を伝わり、指はタイルでも剥がそうというのか、 意味も無く床を這い回っていた。 「ごめんなさい、エヴァンジェリンさん!!」 ネギは平謝りをした。冷静に考えれば、これが事故だと云うことはわかる。 だからといって事実を覆すことは出来ない。 ネギは既に姉やイギリス時代の同級生や幾人かの生徒とキスを経験しているが、 挨拶程度の軽いキスとは意味が違う。エヴァンジェリン。 異性として認識し、その上でネギがのどかや刹那と並んで好意を抱いている相手だ。 そんなエヴァンジェリンとの予期せぬ接触。動揺の桁が違う。 ネギはエヴァンジェリンが烈火の如く怒るかと思った。 或いは虫けらをに肌を汚されたような嫌悪をぶつけてくるのか。 いずれにせよ、よくない傾向だろう。 恐る恐る、ネギは視線を向けた。 22-415 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 52 51 ID bndWk7tT エヴァンジェリンは怒っていなかった。 軽蔑も嫌悪もなく、さりとて歓喜も羞恥もない。 無表情、無感情だ。魂が抜けたように虚脱している。 気のせいか、身体全体の色彩まで薄くなったようにネギには見えた。 地下のアトリエに、時間だけが流れる。 物音はネギの心臓の鼓動だけ。(もう耐えられない)、 とネギが口を開きかけた瞬間、エヴァンジェリンが蒼眼をネギに向けた。 「ぼーや」 ネギは吸血鬼の少女の口からどんな言葉が飛び出してくるのか身構えた。 それに対し、エヴァンジェリンは呼びかけ以外の言葉を紡がない。 コミュニケーションを取ろうとする意志はあるのだろうが、 次の単語が出て来ないようだ。 「こ、これ……」エヴァンジェリンの視線が下がり、つられてネギの目も追いかける。 横倒しになった丸底フラスコ。 コルク栓が開き、中味が流れ出していた。 残る紫の液体は1/3に満たない。 「え、エヴァンジェリンさん、この液体って……ああ!」 ネギは悲鳴を上げた。 液体が、エヴァンジェリンの左腕から胸にかけてかかっていた。 服にもかかり、大きな染みを縁取っている。 ネギの顔から音を立てて血の気が引いた。 危険な液体をエヴァンジェリンにかけてしまったのかと思った。 22-416 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 54 35 ID bndWk7tT 「大丈夫ですか、エヴァンジェリンさん!!」 広いアトリエに幾重にもネギの声が木霊した。 ネギはエヴァンジェリンの傍に瞬間移動すると、 彼女の腕を掴むようにして引き寄せ、薬液がかかった部分を見た。 紫色の液体はゲル状の粘膜となって陶器のような肌に張り付いている。 ネギの額に恐怖と焦りの汗が浮かぶ。ネギは無我夢中で薬液を剥ぎ取った。 エヴァンジェリンが自分の失敗で怪我をすることに耐えられなかった。 これほど真剣に何かを作業するなど、ネギの短い人生の中でも始めての事だ。 額からしたたり落ちる汗を拭いもせず薬液を剥がすと、 エヴァンジェリンの肌は多少赤くなっている程度で、火傷やかぶれも無かった。 吸血鬼の少女の無事をとりあえず悟り、ネギの身体から一気に力が抜けた。 へなへなと崩れ落ちる。 エヴァンジェリンが「あっ」と小さな叫びを漏らした時には、 ネギの指先は既に薬液で濡れていた。 「ぼーや、それを早く拭え!!」 「えっ、どうしてですか?」 「いいから!」 今度はエヴァンジェリンがネギの腕を引き寄せる番だった。 彼女はネギの手を穴が開くほど観察する。 ネギは自分の頬に血が上るのを感じた。無意味にどぎまぎしてしまう。 だが、エヴァンジェリンはネギの肌の状態を真剣に観察し続けた。 医者が患者を診察する時の態度そのもの。ネギの思いなど何処吹く風だ。 ネギは体内に溜まった熱が急速に冷まされていくのを感じ、 ネギのリアクションを見た先程の茶々丸同様、深い溜息をついた。 22-417 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 56 45 ID bndWk7tT 「エヴァンジェリンさん。この薬にはどんな効果があるんですか? まさか毒薬とか。でも肌にかかっても大丈夫な所を見ると、毒薬じゃあないですよね」 「私に毒が効くと思うか? 私は吸血鬼だ。たとえ青酸カリを飲まされても、 河豚の毒を喰らおうと、毒に犯された肉体を捨て、 新たに健康な肉体を再構成すれば済むだけのこと。 だが、ぼーやは人間だ」 エヴァンジェリンはネギの腕から手を離すと、顔を伏せた。 ネギは我が耳を疑った。氷水につき落とされたように体温が奪われていく。 心臓を死神の冷たい手が力強く握り締めた。 下半身の力が抜け、ネギは仰向けにひっくり返った。 ネギ・スプリングフィールド。 イギリスに生まれ、6歳のとき魔族の襲撃により家族と故郷を喪い、 10歳にして教師として訪日。かの地で世界最強無敵の真祖吸血鬼と遭遇し、 仲良くなれたものの、不慮の事故により死亡。 我ながら波乱万丈の人生だと、ネギは遠ざかりつつある意識の中で述懐した。 「エヴァンジェリンさん……。なんだか、眠くなってきました。 手足の感覚もない。冷たさも感じられない。むしろ気持ち良くなってきました…… 。ああ、天使がやってきて、僕の手を包みこんでくれているのですね。 師匠、今までありがとうございました。 最期のお願いです。僕のお墓は、ネカネ姉さんのいる所に……」 22-418 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 58 24 ID bndWk7tT 「馬鹿」 エヴァンジェリンはポカリとネギの頭を引っぱたき、 「勘違いするな」とネギを嗜めた。相変らず俯いたままだ。 ネギと視線を合わせようとしない。 彼女は「寝たままでは話が出来ない」とネギを起き上がらせた。 ネギは目を白黒させながら正座し、話を聞く体勢を作った。 エヴァンジェリンを注視する。彼女は小刻みに震えていた。 身体も、そして声も。ネギは思わず息を飲み込む。 「この薬は……」 横倒しになった丸底フラスコ。 床に広がる紫色の薬液。 汚れた服や肌を見ながらエヴァンジェリンは呟いた。 「惚れ薬なんだ」 「えっ」 時間が、止まった。 ピントがずれたように薄くなってく意識が一瞬にして精度を取り戻した。 脳細胞が活動を再開するや否や、エヴァンジェリンの言葉を分析し、 そこから事実と過程と結果を導き出す。つまり、エヴァンジェリンは「惚れ薬」を作り、 ネギとぶつかった為に、「薬」が双方にかかってしまった……と。 22-419 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 22 59 50 ID bndWk7tT 「冗談ですよね、師匠」 やっとのことで喉から搾り出したネギの声はかすれていた。 ネギは解答を期待してエヴァンジェリンの顔を見た。 ペタンと座り込んだ吸血鬼の少女はネギと顔を合わせようともしなかった。 俯き、顔どころか身体全体をネギに対して背けている。 アトリエの蛍光灯の影に入った彼女の頬は、暗さの中でも、 内側から熱を持つように赤く輝いていた。言葉はいらない。 ネギは解答を得た。少年が望んでいたのとは180度違う現実を。 (まさか、エヴァンジェリンさんは僕のことを?) ネギは信じ難い推論を一笑に伏そうとした。 「惚れ薬」云々はエヴァンジェリンがネギをからかおうとしているのだと思った。 正確には思いこもうとした。根拠はある。エヴァンジェリンは真っ赤になっているが、 自分にはさしたる変化が起こっていない。 「師匠、いつまでもここにいても仕方がありません。 アトリエを閉めて家に上がりましょう。 薬で汚れた服をいつまでも着ているのも身体に良く無いですよ。 早く着替えないと……着替える!!?」 ネギは自分の言葉に飛び上がって驚いた。 22-420 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 01 05 ID bndWk7tT 着替える、それはエヴァンジェリンの裸体が露になると云うこと。 クローゼットは彼女の寝室にある。ネギ自身はベッドに座っている。 自分の前でエヴァンジェリンが背を向けつつ服を脱ぎ捨てる。 華奢な背中がネギの前に晒される。長い金髪の間から透けて見える肌は 雪よりも白い。彼女は俯き、良く観察すれば肩が震えている。 もちろんネギは気付いている。でも態度には出さない。 「ぼーや、私は……怖い……。 なんだか私が変わってしまいそうな気がして……」 「大丈夫ですよ、エヴァンジェリンさん。 どんなことがあろうと、僕が受け止めます。さあ」 ネギはベッドから立ち上がり、吸血鬼の少女の肩にそっと手を置く。 エヴァンジェリンが肩越しに振り返る。 いつも凍てつくような冷たさをたたえる瞳は、今は熱く潤んでいた。 ネギは深く頷くと、彼女の胸にゆっくりと手を伸ばし……。 「僕は教師なんだああぁぁぁぁぁぁ!!」 ネギは弾道ミサイルもかくやの勢いで立ち上がると、 アトリエの壁に激しく頭を打ちつけ始めた。 衝撃で漆喰がパラパラと床にこぼれ落ちる。 振動は薬品棚も襲った。薬液にさざ波が起こっていたほどだ。 22-422 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 02 56 ID bndWk7tT 「教師ともあろう者が」ゴン! 「教え子に淫らな」ゴン! 「想像をするなんて」ゴン! 「僕は、僕は」ゴン! 音節ごとに額を打ちつける音がアトリエに重なった。 「僕は最低だぁ! ニュースで見る最低鬼畜教師の仲間入りだぁぁ!!」」 一際大きく振りかぶったネギは頭蓋骨も砕けよと自分の額を壁に叩きつけようとした。 だが、音は鳴らなかった。エヴァンジェリンが、後からネギの首筋に抱きついて、 少年の動きを止めているからである。 「止めないでください、師匠! これは僕のケジメなんです。 教師として教壇に立つからには、一人一人の生徒を公平に扱わなくてはならないんです。 誰か一人を愛してしまったら、その人だけが特別になってしまう。 生徒に懸想するなんて許されることではないんです。だから僕はこうして責任を取って」 「ぼーや」 尚も喚こうとしたネギの言葉は途切れた。 22-424 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 04 21 ID bndWk7tT エヴァンジェリンの冷たい手が……心地良い冷たさの指先が、 ネギの頬に触れるや否や力が籠められた。ネギは身体ごと裏返しにされ、 漆喰の壁に背中を預ける格好になった。 そんな彼の目の前には膝をついたエヴァンジェリン。 ネギは彼女と向き合う格好となる。 「エヴァンジェリンさん、僕は」 ネギが吸血鬼の少女の決意を秘めた表情を確認する間も無く、 彼の唇を柔らかい衝撃が襲った。偶然は重ならない。 ネギは自らの視覚を疑った。エヴァンジェリンの閉じられた瞳が目の前にある。 長い睫毛が艶やかに輝く。彼女の前髪がネギの鼻先をくすぐり、 ネギは思わず鼻から空気を取り込んだ。 甘い。 舌先で溶けてしまう砂糖菓子のように淡く柔らかい香りがネギの鼻腔一杯に広がり、 それは唇の感触と絡まって、目の前にあるエヴァンジェリンと云う存在を再確認する鍵となる。 ネギは人形の腕のようにダラリと垂らしていた腕に血を通わせた。 最初はおずおずと、右手をエヴァンジェリンの背に回した。 そこからは躊躇無かった。両腕で思いきり彼女を抱き寄せる。 吸血鬼の少女は抵抗せず、ネギに身を預けた。 ネギは少女の柔らかい唇の感触を味わいつくした。 唇と唇が離される。2人の唾液が名残惜しそうに糸を引いた。 22-425 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 05 39 ID bndWk7tT ネギは、未だ自分の腕の中にエヴァンジェリンがいることが信じられなかった。 しかし、唇と唇が触れ合っている間は確かにエヴァンジェリンそのものと 触れていたと云う実感があった。今知ったばかりの感覚を失いたくない。 ネギは再びエヴァンジェリンの唇を求めた。 ところが、エヴァンジェリンはネギの求めを拒み、ネギから身を引き離した。 振り解かれたネギの腕が虚しく宙を掴む。 エヴァンジェリンは追いすがるネギの視線を振り払うようにして立った。 「私は、こんなことでお前とキスしたくなかった」 自嘲するような笑みを吸血鬼の少女は浮かべた。 少なくともネギはそう思ったし、それは的外れではなかった。 エヴァンジェリンは肩を落すと、ネギに顔を背けてうつむいた。 ネギは壁際にもたれたまま、言葉の裏にひそむものを捉え損ねて戸惑っていた。 エヴァンジェリンが急に態度を変えた理由が全くわからない。納得出来無い。 ネギは壁に手をつきながらゆっくりと立ち上がると、エヴァンジェリンに詰め寄る。 22-426 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 07 19 ID bndWk7tT 「僕にキスをしたのは、同情からですか?」 「違う! ぼーやはこの音が聞こえないのか!?」 エヴァンジェリンはネギの右腕をひっつかむと、 有無を言わさず自分の胸に引き寄せた。 ネギの皮膚は、少女の膨らみかけた胸の下で高鳴る鼓動を確かに聴き取った。 ネギは目を見開いて顔を上げた。エヴァンジェリンの美しい顔が眼前にある。 苦しげに寄せられた金色の細い眉。血がめぐり、薔薇のように上気した頬。 閉じられた瞳に、長い睫毛が風もないのに揺れた。 ネギが何度も夢見た光景であり、決して触れる事の出来ない幻想でもあった。 一つ違う所があるとすれば、それは掌から伝わるエヴァンジェリンの鼓動。 早鐘のように打ち鳴らされているではないか。 ネギは左手をエヴァンジェリンの頬に伸ばした。 触れるだけで壊れそうな宝石細工を扱うように、 ネギはエヴァンジェリンとの間の僅か数十cmの空間を数分かけて縮めた。 当人達にとってみれば、永劫の長さでもあり、同時に一瞬であった。 ネギの指先がエヴァンジェリンの肌に触れる。 エヴァンジェリンの肌は陶器のようにすべやかで、 冷たく、それでいて芯に温かみがあった。 夢や幻想では掴むことの出来ない絶対的触感にネギの脳は沸騰する。 喉は乾き、言葉が出ない。手足の筋肉も硬直して何も動かせない。 ネギは蜘蛛の巣にがんじがらめにされた獲物のように指先一つ動かせず、 呼吸すら忘れてエヴァンジェリンの鼓動を聞き続けた。 22-427 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 09 28 ID bndWk7tT 「ぼーや」 エヴァンジェリンは瞳を開いた。 艶やかに濡れた蒼い瞳に、ネギの強張った顔が映る。 ネギは吸血鬼の少女の瞳に映る自分の姿を見つけ、 その自分の中にさらに小さく映る彼女の姿を見つけた。 鏡だけの世界に閉じ込められたようだ。 もちろん1人だけではない。自分と、エヴァンジェリンの2人だけで。 「ぼーやの心臓も高鳴っているな」 ふとネギが気がつけば、 エヴァンジェリンの右手がネギの心臓の上にあてがわれていた。 2人とも、抱きあいながらお互いが互いの心臓の上に手をあてている格好だ。 「ぼーや」 エヴァンジェリンが口を開いた。 「この鼓動が誰からも強いられることなく、 自らの行動の積み重ねの結果こうなったのならば、 私は天地天命にかけて恥じることはない。私は全力でお前を求める。 だが、私も、お前も、こうなったのは外部的な要因、私が作った薬によるものだ。 そんなものは、偽りの感情に過ぎない」 「違います、僕は」 「違わない」 22-428 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 11 33 ID bndWk7tT エヴァンジェリンは秋風に身をすくませる立ち木のように小さく笑うと、ネギの傍から離れた。 「ぼーやは【惚れ薬】の効果による興奮を、自分の感情だと勘違いしているだけだ。 恥じることはない。この私でさえ、気を強くしなければ薬によってもたらされた効果を 思わず本物だと信じそうになっているんだ。 歳若いぼーやがこの手の薬の効果に誤魔化されるのも無理はない」 「…エヴァンジェリンさんも、本物だと信じかけているんですね」 ネギは、先ほどまで為す術無く固まっていたのが信じられぬ程素早く エヴァンジェリンの腕を取った。音速を超える銃弾さえ片手で掴み上げる 反射神経を持つエヴァンジェリンが反応出来無いほどの速さだった。 エヴァンジェリンが抗議の声を上げたが、ネギは気にしない。 「例えきっかけが偶然であったとしても、意図せざるものだったとしても、 利用できるものは利用すれば良いのです。 この薬の効果は一時的なものなのでしょう? いずれ効果は切れる。 その時こそ本当の始まりです。そこから確かな関係を築いていけば良いのです」 「だからって今から関係を始めることはないだろう! こういうのはもっとお互いをわかりあってから行うものだ」 「じゃあ、あとからなら良いんですね」 ネギが満面の笑みでエヴァンジェリンを見つめている。 「ち、ちがうぞぼーや!!」 「どう違うのですか?」 その瞬間、エヴァンジェリンは自分が犯した致命的失敗に気付いた。 22-429 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 14 09 ID bndWk7tT 「今だとか、後だとかは関係ない! ええとだな、男と女と云うものは まずお互いがどういう存在なのかを確かめあって、 それでお互い身も心も預けられるとわかったのならば次の段階へ進むわけだ」 「じゃあ、次の段階に進みましょう」 「どうしてそう云う結論が出るんだ!」 「思い出してください、エヴァンジェリンさん。 僕とあなたが寝起きを共にするようになってもう半年ですよ。 一週間のうち、6日は朝から夜までずっと一緒。 相性が悪かったり気に入らなかったのなら、 どちらかが厭になって関係は終わっています。そうならず続いているのは、 僕もエヴァンジェリンさんも、少なくともエヴァンジェリンさんは僕と一緒にいて 『嫌』ではないと云うことでしょう? だってエヴァンジェリンさんは吸血鬼の真祖。 あなたは世界を相手にして『NO』を云える人ですから、修行のためとはいえ、 僕ごときに気をつかうはずがない」 「ま、まあ、ぼーやの云う通りだな。 私は好きじゃないことは嫌だと云う。云えるだけの力がある。 うん、まぁ、ぼーやの言葉は間違っていない。ぼーやが私の傍にいても、 その、なんだ、嫌じゃない」 「僕はあなたのことが嫌いじゃない。 いえ、嫌いだなんてマイナスのベクトルじゃない。 僕はあなたのことが好きです。あなたと一緒にいたい。 確かにこの鼓動の高まりは【惚れ薬】のせいかもしれません。 けれど、僕がエヴァンジェリンさんを好きだと云う気持ちは本物です」 22-430 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 15 37 ID bndWk7tT 「ぼーや……」 エヴァンジェリンは蒼い目を見開いてネギを見ていた。 喉が震え、彼女は言葉を喋ることが出来ない。 ただネギの名前をうわ言のように呟くだけだ。 ネギは小さな溜息を一つすると、哀しげに目を伏せ、寂し気に尋ねた。 「エヴァンジェリンさんは違うのですか? 僕のことが嫌いですか?」 「違う! 私だってぼーやのことが……!!」 エヴァンジェリンの声は中途で途切れた。 断ち切られた声が地下室に虚しく響き渡る。 エヴァンジェリンはすがるようにネギを見た。 言葉の端から察してくれ、そう全身で訴えていた。 これ以上は私の口から云わせないでくれ、と。 表情から、切羽詰った態度から察してくれ、と。 しかし、ネギはエヴァンジェリンの願いを無情にも聞き届けない。 「僕のことが、何ですか?」 ネギは教壇で生徒達を教える時のような朗らかな笑顔で エヴァンジェリンに優しく声をかけた。エヴァンジェリンは 奈落の底につき落とされるような気分に捕らわれた。 もしかしたら、自分は最悪の相手に入れ込んでしまったのではないかと。 エヴァンジェリンを包み込むネギの笑み、 それは勝利を確信した狩人が浮かべる会心の笑みだった。 22-431 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 16 39 ID bndWk7tT 「お、お前は残酷な奴だ!」 「うーん、そう云われるのは初めてですね」 ネギは軽く受け流す。 「腹黒くて、性格が悪くて、悪戯好きで」 「うんうん」 「ナギそっくりじゃないか!!」 「最高の褒め言葉です、エヴァンジェリンさん」 ネギは満面の笑みを浮かべた。 獲物が傷つき弱っても全力で狩りだすのがイギリス人クオリティ。 そう云えばドイツの戦艦ビスマルクも舵が壊れて航行不能になった所を イギリス戦艦に追いつめられて袋叩きにされたっけ……。 エヴァンジェリンが無駄に記憶を掘り出している間にも、 ネギはエヴァンジェリンに顔を近づけていた。 「一言云ってください。そうしたら、今は何もしませんよ」 「ほんとう、だな?」 吸血鬼の少女は弱々しく聞き返した。 ネギは深く頷く。エヴァンジェリンは深呼吸を一つすると、 ネギの瞳を正面から見据えた。 22-433 名前:プラセーボ[] 投稿日:2006/01/01(日) 23 17 57 ID bndWk7tT 「わ、私も……、お前のことが好きだ」 「エヴァンジェリンさん……」 「ぼーや……」 今度こそ、2人は同時に前に進み出た。 どちらかが受身になるのではなく、双方がお互いを求めて。 飽きる程に相手の唇をむさぼる。ネギがエヴァンジェリンの服に手をかけた時も、 エヴァンジェリンは僅かに身を震わせただけで、黙って少年の行動を許した。 肩かけが外され、少女の白い肌が露になる。ネギは唇を離すと、 エヴァンジェリンの肩筋に顔を埋めた。 吸血鬼の少女は、ネギの手が肩甲骨を触れる感触に小さな声を上げつつ、 自分もネギの背中に手を回した。 「何をしているのですか、マスター。ネギ先生」 ネギは動きを止めた。 エヴァンジェリンも、声の方に顔を向けた。 太陽の光を背景に、エヴァンジェリンの忠実なる執事にしてパートナー、 女性二足歩行御茶酌みロボット『絡繰茶々丸』が仁王立ちになっていた。 右手にデッキブラシを持ち、左手は腰の位置にある。 茶々丸の獲物が薙刀であったとしてもなんの違和感もない迫力であった。 「うわぁ、ちゃ、茶々丸さん!」 「茶々丸!!」 外見だけは幼い2人は慌てて距離を取った。 22-434 名前:プラセーボ[sage] 投稿日:2006/01/01(日) 23 19 52 ID ??? エヴァンジェリンは胸をはだけてしまっていたので、 服を手でたくしあげて押さえている状態。白い背中は剥き出しだ。 ネギは目のやり場に困り、かといって正面の茶々丸は怖くて見上げられず、 壁ばかりを見つめることにした。 茶々丸は刑を云い渡す裁判官のように静かに語りかける。 「先程から妙な臭いが居間に漂っていたので原因を探してみたのです」 「臭いだと!? なんだ、それは」 エヴァンジェリンが指摘すると、茶々丸は肌も露な主人を鼻先で笑った。 「先日から早乙女ハルナ様が、私に対して直々に教育を施してくださっています。 その過程で『ラブ臭』なる概念があることを知り、既にその探知装置を装備しました。 センサーを作動させた瞬間、当家の数値は異常値に達していました」 「なぜお前の主人たる私に黙っていたんだ!」 「ラブ臭の発生源を捜索した所、マスター自身であるとの結果が出ました。 しかし原因がわからず、なぜマスターが発生源になっているか、 理由をつき止めるまでは告げないことを選択したのです」 「……」 「しかし、まさかこのような原因があったとは驚きです。 マスター。ここまで私を出し抜いたあなたの手腕は評価します。 ですが、あなたはやりすぎました。やってくれましたね。 私の主人とはいえ、到底許し得る行為ではありません」 22-435 名前:プラセーボ[sage] 投稿日:2006/01/01(日) 23 21 32 ID ??? 茶々丸はデッキブラシを投げ捨てた。 茶々丸の長い緑の髪が重力の制約を解かれてフワリと舞った。 彼女の髪は放熱板を兼ねている。つまり、今の茶々丸の体内では 膨大な熱量が産み出されていると云うことだ。一体何に使われているのか? 「エヴァンジェリンさん。あの、茶々丸さんの腕が細長く変形して、 先端がフォークみたいに割れたと見えるのですが、僕の気のせいでしょうか」 「魔力を利用して空気中の荷電粒子を加速させるビーム砲だ。 この間暇を見つけて改造してみたんだが、どうだろう。 試し撃ちはさせていないが、私の計算では、フルパワーで撃てば 麻帆良学園が丸ごと吹き飛ぶだろうな」 「なんて改造するんですかぁぁ!!」 ネギの悲鳴をBGMにエヴァンジェリンは従僕の叛逆を何としても収めようと試みた。 エヴァンジェリンの頭脳は素早く回転する。落ち着いて話さなくては駄目だ。 こちらがパニックになると、それが伝染する可能性は極めて高い。 だが茶々丸が狂った原因はなんだろう。 エヴァンジェリンは思案し、すぐに「そうか!」と思い当たった。 (茶々丸もぼーやに惚れていたのか! ロボットで、かつ私の下僕の癖に生意気な……) ネギとキスをして、エヴァンジェリンの女の部分が研ぎ澄まされていたからだろう。 女の直感によってエヴァンジェリンは茶々丸反乱事件の真相を悟った。 となれば、対処方法もおのずと定まってくる。はらわたが煮えくり返るが、 今回のネギとのキスは事件だと説得すれば良い。 22-436 名前:プラセーボ[sage] 投稿日:2006/01/01(日) 23 23 08 ID ??? (荷電粒子砲は危険すぎる。今度外しておこう)と内心決意しつつ、 エヴァンジェリンは茶々丸を説得にかかった。 冷静に、ゆっくりと、事件の顛末を説明する。惚れ薬を作ってしまったこと、 それが事故によってエヴァンジェリンとネギ双方にかかり、 両者一時的な興奮状態になってしまったこと。 「なるほど、そんな理由があったのですね」 茶々丸は、弁護士・検察双方の言い分を静かに聞き届ける裁判官よろしくゆったりと頷いた。 「では早速解毒薬を作って頂きましょう。 薬の残りはどこにありますか? 私が成分分析します」 茶々丸は床から丸底フラスコを取り上げると、ゼリー状になった薬液を舌先に乗せた。 目を閉じ、味わうように成分を吟味する。 暫くして、茶々丸は目を開いた。 エヴァンジェリンもネギも見た事が無いほど爽やかな笑みを浮かべていた。 「マスター」 茶々丸は云った。 「これ、ブドウゼリーです」 『えっ』 「マスター。2ヶ月程前、ワインで酔っ払ったマスターは 『ワインだって惚れ薬の一種だ。私が相手と一緒にワインを飲んで語らえば、 どんな奴だって落せるさ。よし、惚れ薬を作ってぼーや相手に試してみよう』と仰って、 ゼリーの作り方の本とブドウをアトリエに持ち込みました。もちろん、私に手伝わせて」 「エヴァンジェリンさん……」 「当時のマスターの行動を記録したファイルを再生します」 22-437 名前:プラセーボ[sage] 投稿日:2006/01/01(日) 23 24 18 ID ??? 茶々丸の目が光ると、コンクリートの壁にエヴァンジェリンが映し出された。 テーブルの上には空のワインボトルが10本並んでいる 。ビール缶も転がっている。ソファーの上にはチャチャゼロがひっくり返っている。 『なあ茶々丸』と酔っ払いエヴァンジェリンは云った。 顔は猿のように真っ赤だ。 蒼い瞳は焦点を無くして据わっている。 『ワインをぼーやに飲ませたらどうなるかなぁ』 『ネギ先生は未成年です。お酒を飲ませて良い年頃ではありません』 『なにを〜! おい茶々丸。20歳からしか酒を飲めないなんて、 人類の歴史の中では異常極まりない。例外だ、例外。 10歳になったら酒を飲み、契る。別に問題はなかろう』 『ですからマスター』 『ぼーやにその気がないなら、その気にさせてしまえばいいんだ。 決めた、茶々丸! 私の特性惚れ薬でぼーやと、うふふ、うはははは!! 材料は何が良いかな、ワインか、原材料はブドウ…。そうか、ブドウでいいや! 確か冷蔵庫に入っていたな。しかしあれでは足りないか。近くのスーパーで買ってこい』 『この時間帯、既にスーパーは閉まっています』 『なら叩き起せ。外壁を破壊してでも手に入れるんだ』 22-438 名前:プラセーボ[sage] 投稿日:2006/01/01(日) 23 25 48 ID ??? 「そう云えば、麻帆良スーパーが夜間強盗の被害にあったって ニュースがありましたね。なぜか果物だけ盗まれたとか……。 あれ、エヴァンジェリンさんの仕業だったんですか」 ネギが憐れみを含んだ視線をエヴァンジェリンに向けた。 「違うぞ、ぼーや! 襲ったのは茶々丸」 「私に命令を下したのはマスターですが」 茶々丸はピシャリと云った。 「ですが、【惚れ薬】の製作は失敗しました。 泥酔状態でつくってロクなものが出来るわけがなく、 そもそも果物から【惚れ薬】を作るなんて如何なる賢者も成功しておりません。 そうです、ネギ先生。これは【惚れ薬】ではなく、出来損ないの【ブドウゼリー】です。 心拍数を上げることも、フェロモンを出すことも、 相手が気になって仕方が無くなるなんて効果は、ブドウゼリーにはありません」 「と云うことは」 「僕達は勘違いしていただけで」 「胸の高まりも、キスも、みんな、私の意志?」 エヴァンジェリンとネギは顔を見合わせ、相手の顔をまじましと見た。 洪水に川の水位が急上昇するように、エヴァンジェリンは真紅に染まった。 22-439 名前:プラセーボ[sage] 投稿日:2006/01/01(日) 23 28 04 ID ??? 「ぼ、ぼーや、これは、その」 「エヴァンジェリンさん」 ネギはエヴァンジェリンの釈明を遮った。 一言一言を噛みしめるように語る。 「誰に憚ることも、誰かの強制でもなく、僕は自分の意志で云います。 僕は、エヴァンジェリンさんが好きです」 エヴァンジェリンは答えられない。 そのかわり「こくん」と頷き、自分の身体をネギに預けた。 ネギがエヴァンジェリンの身体に腕を回す。 エヴァンジェリンは小さく「ぼーや」と呟いた。 「続きはマスターの寝室でして下さいね。 おふたりとも、ここで脱ぐと風邪を引きますよ」 茶々丸は深い溜息をつくと、かがんでデッキブラシを拾った。 そして処置無しと云った風に首を振りながら出ていった。 「さあ、続きをしましょうか」 「続きってなんのこと……うわっ」 エヴァンジェリンは小さな悲鳴をあげた。 ネギに抱きかかえられていたからである。いわゆる「お姫様だっこ」だ。 急に重力が消失し、落ちる不安から思わずネギの首筋に抱きつく格好となり、 すぐに自分が他者から見てどのような状況になっているかを思って赤面する。 22-440 名前:プラセーボ[sage] 投稿日:2006/01/01(日) 23 29 02 ID ??? 「だって何の問題もないですよ。 僕はあなたのことが好き。あなたも僕のことが好き。 お互いをもっと知り合うのに何の障害もありません。 それにエヴァンジェリンさんだって望んでくれているではないですか。 だって、あんなにも僕のことを求めてくれたのですからね」 「そ、それは……」 エヴァンジェリンは否定しようとしたが、ネギを見ているうちに、 拒絶の心が薄らいでいくのを止めることは出来なかった。 ネギの顔はエヴァンジェリンに求められたことに心からの喜びを表わしていた。 恥ずかしさに泣き笑いともつかず顔をゆがめるエヴァンジェリンの唇を、 再びネギの温もりが包み込む。 麻帆良学園に降り注ぐ冬の陽射しのように、やさしく、ほのかに、だがしっかりと。 fin 前ページ次ページSSまとめ
https://w.atwiki.jp/wiki5_milk/pages/39.html
ログインページの「パスワードを忘れた」をクリックすると、ユーザーネームを取り戻すことができます。 パスワードをリセットすると、登録されたメールアドレスにメールが送られます。そのメールにユーザーネームを表示するページへのリンクが含まれています。
https://w.atwiki.jp/83452/pages/17604.html
1 澪梓 2012/04/14 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1334343762/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る ふう・・・ やっぱ澪梓は最高だな -- (名無しさん) 2012-06-13 23 07 23 ↓それ禁句。 -- (名無しさん) 2012-06-06 20 23 54 あずにゃんのちっぱいもみもm…揉むほどなかったな… -- (名無しさん) 2012-06-06 20 01 23 良かったけど澪梓ssって毎回似たような展開が多いのな… -- (名無しさん) 2012-05-21 00 41 33 これは…実に中々良い作品ですね。 -- (名無しさん) 2012-05-20 18 27 03 やっぱ二人の可愛さが最大限にでるのはこの組み合わせだな -- (名無しさん) 2012-04-27 00 35 03 ↓2 同感 -- (名無しさん) 2012-04-26 18 12 19 良かった -- (名無しさん) 2012-04-26 17 47 35 最近澪梓のSS増えてきて嬉しい限り -- (名無しさん) 2012-04-26 01 37 58 梓澪最高や! -- (名無しさん) 2012-04-25 20 07 50
https://w.atwiki.jp/sksfaq/pages/32.html
エントリー申込の際に控え室使用項目に記載して下さい 控え室使用有無の変更が発生した際は演出要望受付の締め切り前までにスタッフへご連絡下さい。
https://w.atwiki.jp/chiuzazie/pages/379.html
前ページ次ページSSまとめ 33-846 33-846 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 21 21 45 ID ??? いい匂いがする。最初に、鼻がそう感じた。 ゆさゆさゆさ 次に、身体は揺れという刺激を受容した。 ネット界の女王、このちう様の体が軽く揺すられている、 ということが薄ぼんやりとした意識でも理解できた。でも、それだけ。 身体は横になったままで、意識も眠りから完全には抜け出せない。 起きなきゃ、とは思えないからだ。 しかし、あたしのこんな葛藤にはお構い無しに、揺れは止むことがない。 ふと、あたしを起こそうとしているんだろう、ということまで思考が至った。だが、あたしは動かない。何故なら私は女王だから。……なんか変なこと考え出している気がする。ま、いいや。深く考たりしたら、目が覚めちまう。 まだ、揺れは治まらない。起きないとまずい時間なのかもしれない、 と思い至った。 「う……ん……」 33-847 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 21 22 17 ID ??? でも、起きない。起きたくない。まだ寝ていたい。 ゆさゆさゆさゆさゆさゆさ 目覚めようとしないあたしを、しつこく、だが優しく、 『誰か』は揺り起こそうとする。 「うーーん……うんん……」 ちょっと、起きようかな、という気がしてきた。 ゆっさゆっさゆさゆさゆさゆっさゆさゆさゆさゆっさゆさ 「ううん………う……?」 揺さぶりが激しくなってきた。 ああ、ああ、ああ。起きちまう、起きちゃう、起き、起き、起 ……………………… 起きることにした。起きないと、このゆさゆさは永遠に続きそうだ。 分かったよー。起きますよー、と。 ついにあたしは半身を起こし、そして大きく伸びをした。 すると 33-848 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 21 24 02 ID ??? 「ごはん」 「……ん」 突然、『誰か』がお決まりの言葉と共に、 あたしの目の前にお玉を突き出してきた。 お玉の持ち主に目を向けると、そこにいたのはやっぱり、 いつもの奴だった。真っ直ぐにあたしを見るその目。 険しくも柔らかくもないその表情。常識人ならするはずのない奇抜なメイク。近くで眺める回数が随分と増えたその顔を、今日もまた間近に拝んだ。 「分かったよ。起きるよ」 枕元に置いておいた眼鏡をかけて、返事をした。 朝食ができたのなら、早く着替えないとまずい。 ごはんが冷める、とこいつは必ず文句を言うから。 そう思って、パジャマに手をかけた。のだが、すぐには脱がなかった。 じっと見られていては、脱げるわけがない。 「何見てんだ、お前は」 じろり、と睨んでみせた。 が、こいつは全く怯まない。 「?」 どうして睨むの、とでも言いたげな顔をする。 なんて神経の図太い奴だ。こいつの無頓着さにはいつもながらため息が出る。 「すぐ行くから。先に食ってろ」 「うん」 トコトコ食卓に向かっていく。が、あたしが行くまで、 どうせ食わずに待っているのだろう。返事だけなのも、いつものことだ。 33-849 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 21 24 53 ID ??? 服装変換、完了。朝飯を食う時間は、まだ十分にある。 「……やっぱりな」 あたしが食卓に着いた時、まだ朝食は誰にも手を付けられていなかった。 やっぱり、あたしのことを待っていやがった。ま、別にいいけどな。 「いただきます」 「おはよう」 中身のずれた挨拶が、タイミングだけハモった。 「待て待て! 何で『おはよう』なんだ。『いただきます』だろうが」 「まだ、ちさめと挨拶してないから」 さらっと答えやがった。 「あー、そうですか」 「おはよう、ちさめ」 「おはよう、ピエロ」 「……ピエロじゃない」 「……おはよう、ザジ」 ピエロ役をやっているくせに、細かい奴だ。もっと精神的余裕を持て。 綱渡りできんぞ、そんな細い神経じゃ。いや、さっきは太かったか。 「綱渡りは得意」 「……人の思考を読むな」 ザジ・レイニーデイ。それが、今あたしの目の前で、 あたしの部屋で朝食を食っている奴の名前。クラスメイトにして、 現在の同居人。事情はわからないが、修学旅行が終わった日から、 あたしの部屋に住み着きやがった。 今日もまた一日が始まる。今日もまた、ザジと一緒の朝飯から、始まった。 33-856 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 22 53 33 ID ??? 「……です! 急いでくださーーーい!!」 風紀委員だか、なんだかが、登校中の生徒に急ぐよう 呼びかける。今週は遅刻撲滅週間らしいから、 その活動の一環だろう。盛んな呼びかけにつられて、 周りの奴らは大急ぎであたしを追い抜いていく。 曇り空の下、見知らぬ奴らの群れの中に、あたしはいた。 「馬鹿が……始業までまだ10分近くあるじゃねーか。 なに乗せられてんだか」 どいつもこいつもマヌケなもんだ。だいたい早く着きたいなら、 その分早く家を出ろ。あたしみたいに、計画的に登校すりゃ問題ないのに。 文庫本を読みながら、あたしは教室に一歩一歩近づいていた。一人で。 バコン 「てっ」 な!? 突然、後頭部を何かで叩かれた。背後からの一撃だ。 反射的に振り向きかけたのを自制して、あたしは前に走った。 大きなダメージはない。動けるのだから、逃げるのが今は 最良の方法だ。犯人は予想できている。けれど、振り向いてそいつに 文句を言う暇などない。そんなことをしていたら、鬱陶しいこと この上ないことになる。 33-857 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 22 54 48 ID ??? あたしは加速した。 が、目論みは淡い夢として即座に散った。足が重くなって、 動かせなくなったのだ。これは予想外の事態だ。 「くっそ……」 観念しつつ、せめてもの反撃として怒鳴りつけてやろうと思い、 あたしは振り向いた。が、予想している人物の姿がなかった。 一拍おいてから下を見ると、足が重い理由がしっかり確認できた。 私は質問した。足元の不審者に。 「一体、何をやっている。ピエ……ザジ」 「復讐」 ピエロメイクの不審者は、生意気にも自分に正当性が あるようなことを言い出した。 「……どういう理由で」 「わたしのこと置いていった」 上目遣いに、あたしの顔をまっすぐ見つめてくる。 「お前の支度するスピードが遅いからだ」 視線をそらさずに、あたしの正当な主張をした。 すると、ピエロは少し眉をひそめた。心外な、とでも 言わんばかりの顔をしている。 「事実、遅かっただろうが。制服着るだけに、 20分なんてかかりすぎだ」 「……」 33-858 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 22 55 45 ID ??? 本日の弁論を試みる。目を閉じ、こめかみを押さえながら、だ。 反論なし。納得したか、と決して思ってはいけない。 こいつは屁理屈を持ち出すから。さて、今日はどう出る……? ……………………………………………… なかなか仕掛けて来ないな。 …………………………………… 来ないな。 ……………………… と思っていたら、チャイムが聞こえてきた。校舎の入り口を向けば、 学生たちが殺到しているのが見える。 「やばいっ!」 予鈴じゃねえか!無駄な注意に気がとられていた。 あたしとしたことが……! 焦るあたしに、腹立たしいくらいに冷静なピエロの声がかかる。 「ちさめは最近ドジばっかり」 「何だとぉ」 再び下にいるはずのピエロに文句を言おうとした。 が、いない。 昇降口の方を再び振り向くと、一人でさっさと前に行ってやがった。 ちらりと、わざわざ立ち止まってこっちを見た。 「やっぱりドジ。あの先生が来てからは、ずっと」 「な! 待て、こらぁ!」 ピエロが走り出した。その後姿をあたしが追う形になる。 全力でピエロを追走した結果、なんとかあたしは本鈴直前に 教室に到着することができたのだった。 33-859 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 22 56 35 ID ??? 三時間目の授業中。 ちび教師のネギが短い手を伸ばして、できるだけ黒板の高い所に 字を書こうと悪戦苦闘している。 すると、委員長がしゃしゃり出てきて、ネギを抱えあげた。 嫁か、お前は。 神楽坂が妨害に入った。こっちか、本物の嫁は。 喧嘩になった。正妻と愛人の修羅場みてー。 周りがわいわい囃し立てる。無責任な奴らだ。 ネギはおろおろするばかり。情けないガキだなぁ…… 「馬鹿共が……」 誰にも聞こえないように、口の中だけで呟いた。 相変わらず漫才みたいなクラスだ。授業やれよ、まったく…… 学校来てる意味ねーじゃねーか。 ため息をついて、下を向く。 すると、キラ、とまぶしさを感じた。 窓の向こうで、太陽が輝いていた。 33-860 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 22 58 16 ID ??? 太陽。 太陽。 お日様。 光。 少しまぶしい、でも見続けていたい金色。 ……何だか少し眠くなってきたぞ。 そのうち、金色の太陽から目が離せなくなった。 意識がぼんやりしてきた。退屈だからな、授業。 心が、クラスの馬鹿騒ぎから離れていく。綺麗な太陽へ 飛び立っていく感じがする。綺麗な世界へ。綺麗な所へ。 綺麗な……へ。綺麗な金色へ。……綺麗な………髪の色。 ……綺麗な……眼。あたしを見ている、綺麗な、可愛いなあ、ザ…… ……………………………… 33-861 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 22 58 54 ID ??? …………………………………………… …………………………………………………………………ンっ!」 はっ! 「このショタコンっ!!!」 「この老け専っ!!!」 意識が急にはっきりしだした。 聞きなれた怒声の応酬が、耳朶を打つ。 何だ、まだあの二人は言い合いしてんのか。 いかん、いかん。このあたしが人前で居眠りするなんて。 万が一にも間の抜けた姿なんてさらすわけにはいかないのだから。 馬鹿喧嘩のおかげで目が覚めた。どのくらい寝てたんだろう。 時計を見ると、さして時間は経っていない。 ちらり、と外を見た。 太陽は雲に隠れたまま、良い天気のままだ。教室内もそのまま、 大荒れのままだけど。 しかし、綺麗だったな…………………………何がだっけ? 33-874 名前:843[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 23 44 10 ID ??? 結局、三時間目はあのまま終了を迎えた。隣で授業をしていた 新田が馬鹿共を鎮めにやって来たが、チャイムが鳴る直前だったので、 本来の授業を進める余裕はもうなかった。 で、今はその後の短い休み時間だ。 トイレ行くか。 席を立ち、一人で教室から廊下へ、一歩を踏み出した。 後ろ手に扉を閉めた。二人がかりで。 「……」 「私も行く」 いつの間に出てきたのか、ピエロがあたしの傍にぴったりと 寄って来た。 「勝手に行け」 あたしは予定を変えて、中庭の方へ足を向けた。別に中庭でなくても 良かったのだが、とにかくトイレに行くことだけは不可だった。 「お手洗いは、こっち」 ピエロがあたしの腕を掴んだ。 「あたしはそっちに行く気は元々ないんだよ。 行きたいんなら、一人で行け」 「……ついてきて」 「断る」 ピエロに背を向けて歩き出す。靴が廊下を力一杯、踏みしめる。 引き戻される力に抗おうとして。 だが、いかんせん力の面では、あたしとピエロの間には 大きな開きがあった。 だから ざんねん! あたしのていこうはここでおわってしまった! ずりずりと強制されるトイレへの移動に憤慨し、あたしは怒鳴った。 「離せ!」 33-875 名前:843[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 23 45 27 ID ??? 「いや」 「何で!」 「………………」 「何だ、その沈黙は」 「………………たいから」 「何だって?」 「少しでも、一緒にいたいから」 「あたしは、いたくない。二人でいる必要なんかないだろ」 ピエロの力が少し緩む。あたしは力を入れて、腕を振りほどいた。 「もうすぐチャイム鳴るぞ。行くんなら、早く行ってこい」 「一緒に」 「しつこい」 食い下がるピエロを一睨みして、教室に引き返した。 何で一緒にいようとするんだよ。一人で十分だろうが。 ピエロの考えることは、よく分からん。 昼休み。 『今日はパンを買うか』 何パンにするか考えつつ、購買へ足を向ける。 静かな廊下に、足音が響く。 購買へ行く道はいろいろあるが、いつもこのルートは 何故か静かだ。まるで、魔法でもかかっているかのように、 ここだけ異世界に飲み込まれたかのように、あたしは静かな廊下を よく一人で歩いていく。 カツ カツ カツ カツ 二人分の足音だけが、木霊する。 33-876 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 23 46 36 ID ??? あたしの前には誰もいない。つまり、あたしの背後に、 誰かがいる。そいつが何者か、あたしにはよーく分かっている。 振り向くまでもない。 「お」 「今日はパンだ」 ピエロの言葉を遮り、我を通す。 「おべ」 「だから、あたしは要らない」 「おべん」 「一人で食いきれないなら、運動部の奴らにでもくれてやれ」 「おべんと」 「実は、あたしは本来手作りのものを食べてはいけない体質なんだ」 「……朝ごはんは一緒に食べたのに」 「朝飯は抜くと、美容に悪い。それに、朝は眠たいし、 忙しいからな。自分では作らない。(つーか、作りたくない) 作ってあるから、食べるだけだ」 「……お昼は? ここに作った……」 「今日はパンが食いたいんだ。それに、ずっと誰かの傍で飯を 食い続けるのは、あたしは好きじゃない。 近頃ちょっと鬱陶しいぞ、お前」 無音。 口撃が止んだ。あきらめたか? ちらっと後ろを振り返ってみる。ピエロの姿はなかった。 何とか撃退できたか……修学旅行の後、特に最近、 しつこいんだよな、あいつ。 まあ、どうでもいいや。 あたしは勝利感を胸に意気揚々と購買へ向かった。 33-877 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 23 47 25 ID ??? 「大漁、大漁」 というのは嘘だ。言っていることとは違って、 買ってきた量はそんなに多くない。ネット界の女王が 太るわけにはいかないのだ。メロンパンとクリームパン、 ウーロン茶だけを抱えて、戻って来た。 ガヤガヤガヤガヤ ザワザワザワザワ 廊下まで来たとき、いつもうるさいクラスがさらに うるさいのに気が付いた。 バタバタバタバタ ドタドタドタドタ みんながみんな雑巾を持って、行ったり来たりしている。 何やってんだ、と最初はのんきに思ったが、あいつらの 持っている雑巾をよく見た瞬間、顔から血の気が引いた。 「な」 雑巾が真っ赤だった。まるで人の血で染めたかのように。 困惑して立ち尽くすあたしに、廊下へ出てきた委員長が 冷静に声をかけてきた。 「長谷川さん。見ていないで、手伝ってくださいな」 「え? あ、ああ」 委員長と入れ違いで教室内に入る。途端に、あたしは絶句した。 血の海が、床の半分以上に広がっていた。 「何だ、これ!? 殺人事件か!?」 33-878 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 23 48 50 ID ??? 「そんなもん、このクラスで起きるわけないっしょ」 朝倉に、突っ込まれた。こいつも手に雑巾を、純白の 未使用なやつを装備している。 「何があったんだ?」 「パルがねー、貧血で倒れたの」 「貧血?……って、まさか」 「うん。これ、パルの鼻血」 「なんて血の気が多い奴だ」 あきれ返っているあたしの傍を、保険委員が通った。 「ただいまー。パル、何とか落ち着いたわ。今は保健室に寝とる」 「おかえり。あれ、担架役の茶々丸さんと長瀬さんは?」 「保健室行くまでに流れた分の血、拭いてくれてる。 ここと同じくらい量あるから、ウチは追加の雑巾取りに来たんよ」 あの女、失血死するんじゃねーか? 「こーら、朝倉、長谷川さん、話はあとにして手伝ってよ。 昼休み終わっちゃうわよ。今やっと半分取れたところなんだから」 床を拭き続けたまま、神楽坂がこちらを睨んだ。 ここは黙って従おう。見ているだけってのも、ばつが悪いしな。 あたしが掃除の一団に加わると、朝倉も横に並んで拭き出した。 「ねえねえ、ちうちゃん。パルがこれだけの鼻血を流した理由、 何だと思う?」 「どうせいつものやつだろ。ラブがどうとか」 「鼻血吹きながら『愛を得られぬ、刹那、じゃなくて、 切ない乙女のラブしゅ』とか叫んでたから、そうだろうね」 「くだらねー」 「……ちなみに、その直前に何があったと思う?」 33-879 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 23 49 53 ID ??? 急に声を潜めて、あたしの耳元に口を寄せてきた。 「? さあな、何かあったのか」 「本当に分からない?」 「分かるわけないだろ。あたしは占いも何もできない、 ごく普通の一般人だぞ」 「普通の人なら、気付いてあげられると思うんだけどなー」 「分からないものは分からないんだよ」 「ザジちゃんがね、教室を出てった」 ピタ まぶたが一瞬きする程度の時間、あたしの動作を 止めてしまった。 だが、周りにはそうとは気付かれないほど滑らかに、 手の動きを再始動させる。 朝倉は囁き続ける。 「随分ショックを受けてたみたいだねー。フラフラよろけてたよ」 「……ふーん」 「亜子が保健室に送ろうとしたけど、断ってた」 「……へー」 「立派な御重だけ持って、独りでどっか行っちゃった」 「……そうか」 「独りで大丈夫かなぁ」 「……平気だろ。病気じゃないんだし」 「さすがは同居人。心までは理解できなくても、 健康状態は把握済みですか」 ピタァッ 今度はもろに動きを止めてしまった。それほどまでに、 今のは重大で危険な一言。 33-880 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 23 50 37 ID ??? 「何言ってんだ。あたしは一人暮らしだぞ」 「修学旅行前まではね」 とぼけようとしたが、軽く一蹴された。さらに。 「今日の夕飯のこと、心配しなくても良いの? 最近はザジちゃんに作ってもらってばかりなんでしょ。 料理の仕方覚えてる?」 「っ!」 「ああ、それより寝るときのことの方が心配なのかな。お泊りも 多かったみたいだし、独り寝は久しぶりなんじゃない?」 「馬鹿にしてんのか」 怒りを押し殺した声で、朝倉の耳元に囁き返す。 「してないよ。ただ心配してるだけ」 「余計なお世話だ」 こいつの傍にはもう居たくない。 タイミングよく、掃除終了ーー! と誰かが 言っていたので、雑巾の片付けという形を取って、 この場を離れる。 が、朝倉はしつこく付いてくる。 「ちうちゃん。何があったのかは知らないけどさ」 「知らないなら、首を突っ込むな」 「……分かった。じゃあ、一つだけ言わせて欲しいんだけど」 「今まで散々言ってるだろ」 教室へ戻る途中、朝倉の先を歩いて、言い返す。 「結局、お昼は断ったんだよね。ザジちゃんの愛情弁当」 「……ああ」 愛かどうかは知らんが。 「ザジちゃんがね、この前、珍しくあたしに話しかけてきたんだ。 何を訊きに来たと思う?」 「さあな」 「ちうちゃんの好物教えてくれって」 33-881 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/10(土) 23 51 10 ID ??? 話の中身を理解する間もなく、朝倉に顔を覗き込まれ、 追い討ちをかけられた。 「先週なんか、美容に良い料理教えてって、 さっちゃんの所に通ってたみたいだよ」 「……」 言いたいことを言うと、朝倉はさっさとあたしを追い抜いていく。 「まあ、これは二人の問題だからね。あたしも深入りしたりはしない。 でもね」 訳知り顔で振り向いた。 「自分がどれだけ人から想われているかは 気付いてあげてられても良いと思うなあ」 「何言っ」 キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン 「席に着けー。授業始めるぞー」 教師が時間通りに到着した。これで、この話はお流れとなった。 五時間目、ピエロは欠席した。 六時間目も放課後も、ピエロの姿は校内になかった。 33-889 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 00 43 06 ID ??? ガチャ キィ バタン 授業が終わると、あたしは真っ直ぐに部屋へ戻った。 やらなくちゃいけないことがある。のんびり寄り道なんて暇はない。 久しぶりの一人部屋を満喫する余裕も、ない。 ピッ パソコンを起動させる。今日はサイトの更新日だ。忙しくなる。 他のことに気を散らしてなんかいられない。 いられない。 要らない。 必要ない。 他のことになんて、気を配る必要がない。 今はただサイトのことを集中してやれば良い。 あたしの夢、ネット界制覇の為の重要な作業を 一生懸命やることに、後ろめたさを感じる理由は皆無、のはずだ。 これは、自分の夢を叶えるためなんだから。 これが、自分のやりたいことなんだから。 『…………たいから』 やりたいことを、自分なりにやっているんだ。今、あたしは。 『……にいたいから』 他の奴のことなんて気にしてられるか。ピエロとか無視だ、無視。 『一緒にいたいから』 あたしは一人で良いんだ。 あいつがいたって、更新の手伝いにはならないし。 単に飯作るだけだし。黙って近くにいるだけだし。 今までだって、あたしがサイト更新をしている時は、 部屋の端っこでじっとしていただけだし。 33-890 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 00 43 54 ID ??? 今は、いないけど。 自分のウチに帰ったんだろうな。 ……そういや、あいつってどこに住んでいるんだ? 野宿、なわけはないだろう。 …… どうでもいいや。 どこに住んでるか知らなくても、困ることなんてない。 ここに置いといても、毒にも薬にもならんような奴だったから。 元の一人暮らしに戻っただけだ。あたしには何の不都合もない。 その証拠に、更新は滞りなく終了した。 「飯でも作るか」 軽く伸びをして、キッチンに向かう。 包丁を使い、鍋を使い、フライパンを使い、久しぶりに自分で料理をした。 できた品を一気食いして、すぐに寝た。 気持ちが悪かった。 33-891 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 00 44 33 ID ??? 光が眩しい。 窓から射し込む日光に、頭が強制的に起こされた。 朝日は眩し過ぎるな。時間差で透過する光の量が 変わるっていうカーテンでも買うかな。朝ぐらい、 穏やかに目覚めたいもんだ。 っと、今何時だ? 時計を掴んで引き寄せた。短針は長針のすぐ左隣にあった。 長針は12の所にあった。 「………………やべえええええ!」 目覚ましセットするの忘れてた! 最近は目覚まし無しでも起きられたから、うっかりしていた。 布団を跳ね除け、怒鳴る。 「おい、ピエロ! もう十二……!」 そこまで叫んで、口をふさいだ。声をかける相手は いないのだから。 頭を切り替え、これからのことを考える。 飯は抜きだな。 作っている時間なんて、あたしには、ない。 身だしなみも程々に、大急ぎで外へ飛び出す。 「くそっ!」 一人きりの通学路で愚痴る。 「腹減った!」 朝飯抜きは体に悪いのに。健康面だけでなく、 美容の面ででもだ。 『この間なんか、美容に良い料理教えてって、 さっちゃんの所に通ってたみたいだよ』 ……そんなことはどうでもいい。 問題なのは空腹だってことだ。 33-892 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 00 45 06 ID ??? 空腹なのは、胃袋に入っている食物が純粋に少ない、ってことだ。 昨日は飯がまずかったから、あんまり食べられなかった。 塩無しじゃ、どうやっても旨いものは作れない。 『ちうちゃんの好物知らないかって』 ……知るか。 知るか、知るか、知るか。 任せっきりだったんだから、知るわけねーだろ。 調味料の場所なんて分かるわけないだろう。あいつが勝手に、 何も言わずに、キッチンの物を動かしやがったんだから。 何も言わずに、ピエロが朝飯を作らなくなったから。 何も言わずに、ピエロが起こさなくなったから。 何も言わずに、ピエロがいなくなったから。 だから、こんなに調子が狂うんだ。 ピエロのせいだ。 ザジのせいだ。 あたしのせいだ。 33-893 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 00 45 41 ID ??? 「あ、ちうちゃん。珍しいね、遅刻じゃん」 教室に入ると、朝倉と出くわした。 「ん、どうしたの? 元気ないね。あ、 さてはザジちゃん不在の影響が」 「来てないのか、あいつ」 朝倉の軽口を中断させて、尋ねた。 「ザジちゃん? うん、今日は来てないよ。 誰か、今日ザジさん見たー?」 クラス中が否定の仕草をとる。 それなら、ここに用はない。あたしは教室を出た。 「どこ行くの」 「ザジの所」 「お、それはそれは」 あたしの回答を気に入ったのか、朝倉が後をついてきた。 「ちうちゃんは、ザジちゃん離れると一日で だめになっちゃうんだねぇ」 「そうだよ。悪いか」 「へ?」 朝倉が黙った。いや、黙らなかった。 「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、 そこまでストレートに言われると訊いたこっちが照れるね」 「うるさい」 テレテレな顔をする馬鹿を睨みつける。 「で、これからどうすんの?」 あたしの迫力に怯まず、しかしちょっとだけ 真面目な顔をして、朝倉は問う。 「……飯を食う」 それだけ答えて、あたしは世界樹の広場へ足を向けた。 33-894 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 00 46 48 ID ??? 世界樹広場に着くと、あたしは歩くのを止めた。 まだ朝倉がついてきたが、無視することにする。 なのに、朝倉は遠慮無しにその決意の垣根を乗り越えてくる。 「ここに、ザジちゃんがいるの?」 「さあな」 「さあな、って……じゃあ、何のためにここまで来たのさ」 「近所迷惑にならないから」 「どういう意味―――?」 朝倉が尋ねる。だが、垣根の外の雑音にあたしは耳を貸さない。 ただ一人のことだけを考えていたから。 一回、深呼吸する。そして。 「ザァジィィィィィィィィィィィ!!!!!!!」 巨木が、あたしの美声で揺れる。 後ろの奴はびっくりして、耳をふさいだことだろう。 それぐらい大きな声を出した。 でも、それだけだ。他に変化は起こらなかった。 もう一度。 「ザァァジィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」 さらに音量を増した美声で、辺り一帯が震える。 今まで出してことがないくらいの音量があたしの喉から出て行く。 木が大きく揺れ、葉っぱが幾らか散った。 後ろで何かが倒れる音がした。 まだ、それだけだ。 もう一回。 息を吸いこんだ。 「ま、待って……ちうちゃん。一体、何やってんの」 33-895 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 00 47 30 ID ??? 「呼び出してるんだよ」 「待ち合わせしてたの? 場所、ここ? じゃ、もっと小声で良いんじゃ……」 「してねーよ」 「はい?」 「待ち合わせの約束なんてしてない、って言ったんだ」 「ここ、待ち合わせ場所じゃないの!? それじゃあ、 いくら大声出しても意味ないじゃん。 学校中に聞こえるわけじゃないんだから、来るはずが」 「ある」 確信があった。ザジはきっとここへ来る。 「あたしが呼んでる所に、あいつは来るんだよ」 ザジは『一緒にいたい』と言っていた。 なら、来い。 一緒にいたいんなら、あたしの所に、今すぐ来い! 来い。 来い。 来い 来 来て。 ガサリと、頭上で葉がまた揺れた。あたしの声のせいでは なくて、あたし以外の誰かのせいで。 ひとりの、小柄な少女の動きによって。 葉っぱは揺れた。 それは、長谷川千雨によるものではなく。 それは、ザジ・レイニーデイによるものだった。 「ザジ」 「……ちさめ」 ザジが地面に降り立つ。 自然に、あたしたちは見つめあう。 33-896 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 00 48 12 ID ??? ザジは常の通りあたしの顔を真っ直ぐ見つめてくるが、 その瞳にはいつものような覇気、というか元気がなかった。 見ていて辛くなる、そんな目だった。 だから、聞いた。 「あたしと一緒にいたいか?」 「うん」 唐突な質問に窮することなく、ザジは認めた。 「そうか。それなら、あたしたちの利害は一致するな」 ザジが目を瞬かせる。どういう意味なの、って顔だ。 「あたしはいろいろ誰かにしてもらいたい。 飯作ってもらったりとか朝起こしてもらったりとか、 そういうことをな。自分でやる気にはなれないんだ。 朝早く起きるの面倒だし、サイト更新もしにくくなるし、 自由時間も減るし」 ザジは悲しげな目をした。言っている意味を そのまま受け取ったのだろう。 でも、まだ聞いてくれ。あたしの願いを、聞いて。 「誰かにそういうことやってもらえたら、 あたしはすごく楽ができる」 ザジの髪を撫でながら、語り続ける。 自分勝手な話なのは分かってる。 「誰かがあたしと一緒にいてくれると、すごくいい。 一人じゃなくて、二人でいるのが、一番いい。 打算とかも、確かにある。けれど、誰かにいてもらいたい と思うのは嘘じゃないんだ。誰かがいてくれると、 気持ちがちょっと変えられるんだ」 33-897 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 00 49 15 ID ??? ポリポリと、あたしは自分の頭をかく。 「よーするに、まあ、その、なんだ」 言いづらいなー。朝倉の絶好のネタになっているの、 間違いないし。 「……連れが欲しいんだ。あたしと一緒に生活してくれて、 あたしを幸せな気持ちにしてくれる奴が。どうしても欲しい。 そいつがあたしの趣味・嗜好をもう知ってる奴だったら、 もっと欲しい」 ザジの目が輝いたように見えた。金色の瞳が太陽に見えた。 「その点では、お前が一番、理想に近いんだよ」 ザジの目が見開かれた。太陽の瞳から雲が晴れた。 「だから」 あたしはザジへ手を差し出す。 「帰ってきてください」 刹那の間もなく。 「はい」 ザジは、あたしの手をとってくれた。 この時、遠くから「ラーブゥー……!」とか 「また鼻血の海がぁーーー!」とか何とか聞こえてきたが、聞き流した。 あたしたち二人は二人の部屋に戻った。 部屋に着くと一番に、飯を作ってもらったのは言うまでも無い。 33-898 名前:関白失脚宣言[sage] 投稿日:2006/06/11(日) 00 50 14 ID ??? その日の夜のこと。 何となく離れる気にならなかったので、今夜はあたしのベッドに ザジを入れてやった。 「ち さ め……」 甘えたザジの声。 「好き」 短い感情表現。口数の少ないこいつには、精一杯の言葉。 「ちさめは好き?」 「…………………………まあ……好き、だな」 「本当?」 「好きの度合いがどれぐらいかは分からないけど、嘘じゃない」 「………………しあわせ」 ザジは、ぎゅっとあたしのパジャマを握った。伸びるつーの。 ザジはそれから、手をゆっくり伸ばして、あたしの胴を両手で囲んだ。 「おい……この手はなんだ」 「ぎゅってしてるの」 ちょっと長めの、簡素なザジの解答。 あたしは思わず苦笑してしまった。まあいい。 ザジの好きにさせてやろう。 この晩、あたしたちはずっとこのままだった。 明日も、こうだろう。 たぶん、これからずっと ………いや、一ヶ月ぐらいかな、この形を許してやるのは。 夏になったら、暑苦しいし。夏には絶対離れさせる。 離れさせて、傍にいさせる。 近くから離さない。 ここに、いてもらう。いて、欲しい。 それは、ずっと。 前ページ次ページSSまとめ