約 2,167,073 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1325.html
魔道戦屍リリカル・グレイヴ Brother Of Numbers 第三話「死人と姉妹」 ある次元の管理外世界においてレリックを回収した時空管理局のとある一部隊、その前に一人の男が両手に二丁銃を持ち棺を背負って現われた。 その男は一言の言葉も一切の警告も無く、手にした巨大な二丁銃を乱射して部隊の者を次々と撃ち倒していく。 まるで無慈悲な死神の如く。 「糞っ! 糞っ! 糞おおおおっ! 死体野郎が墓場に帰りやがれ!!!!!」 武装局員の一人が唾を撒き散らしながら殺傷設定の射撃魔法を二丁銃の死人に乱射するが、その貧弱な弾幕では強靭な死人兵士の身体を破壊するには至らない。 隻眼の死人兵士はその射撃魔法をまるで意に介さずに悠然と武装局員に近づき至近距離から手の巨銃を突き付けた 「や、や、やめ…」 武装局員の懇願が言い終わる前にその巨大な拳銃、ケルベロスが火を吹き武装局員の意識を闇に落とした。 「ちっ! 本部、こちら第15分隊。ウォーキング・デッドと交戦中! 早急に増援部隊の派遣をお願いします!!」 その様を遮蔽物越しに見ていた他の武装局員の一人が舌打ちしながら増援部隊の支援要請を送るがその通信は無駄に終わる。 武装局員の通信が終わるや否やグレイヴは肩に火器を満載した棺桶デス・ホーラーを担ぎ、この戦いを終局に導く準備を終えていた。 デス・ホーラーがその強固な装甲を開き大量の小型マイクロ・ミサイルの顔を覗かせる。 そして空中に発射されたそのマイクロ・ミサイルはデス・ホーラーの誘導制御を受けて遮蔽物に隠れていた武装局員達に正確に向かって行った。 これがデス・ホーラーの全方位型攻撃の一つ“Dooms Rain”である、無慈悲な裁きの雨は爆炎を巻き起こして武装局員の部隊の全てを戦闘不能に落とす。 そしてその場には背中に十字架を刻まれた最強の死人兵士だけが一人立っていた。 ここは地下深くの違法な地下施設、そこで今日もまた姦しい姉妹が無口な兄にワガママ攻撃を炸裂させていた。 「腹減った~メシ食~わせ~」 「減ったっす~死ぬっす~」 「グレイヴ~早くメシ~」 ナンバーズ3馬鹿姉妹であるセイン・ノーヴェ・ウェンディが手にナイフとフォークを持ってテーブルを叩いて騒ぐ。 「お前ら少しは落ち着け」 「ま~たっく。お食事の時くらい静かにできないんですか~?」 「ノーヴェ、静かに」 騒ぐ3馬鹿姉妹にナンバーズ年上組み、トーレ・クアットロ・チンクが口を開く。 ちなみにあまり口数の多くない姉妹(セッテ・オットー・ディエチ・ディード)はその様子を静かに眺めていた。 そこに大量の皿を乗せたお盆を持ったグレイヴがやって来る、お盆の上の皿にはサラダとグレイヴ特製マカロニグラタンが湯気を昇らせていた。 ちなみにグレイヴはエプロン(チンク姉のお手製、ウサギさんのアップリケ付き)を掛けているので随分と所帯染みている。 「うわ~いメシメシ~」 「メシっす~」 セインとウェンディが真っ先に食いつき、他のナンバーズもその二人に呆れながらも料理に手を付け始める。 その穏やかな食卓の中でふとセインが口を開いた。 「そういえば、ドクターとウーノ姉は?」 「ドクターとウーノは何やら研究室に篭っているぞ」 「ほほ~う…」 「なるほどっす…」 チンクの答えにセインとウェンディは何やら含みを込めた笑みを見せる、その様子にノーヴェが不思議そうな顔をする。 「何だよお前ら、何か心当たりでもあんのかよ」 「もちのろんろんっすよ~」 「ふふふ。ドクターとウーノ姉は今きっと…」 そのノーヴェの言葉にセインとウェンディは最高の爆弾的回答を投下した。 「「エッチしてるんだよ(っすよ)!!」」 凍った。その場の空気が完全に凍りつき、ナンバーズ全員の思考と動きを止めた。 「ふ、ふ、ふ、二人ともな、な、な、な、何を言ってるんだ!? そんな言葉をどこで覚えた!?」 セインとウェンディの言葉の威力にやっと正常な思考を取り戻したチンクが顔を真っ赤にして二人に問い詰めた。 「えっと~。この前クア姉が教えてくれた♪」 「そうっす~」 次の瞬間にはチンクは目にも止まらぬ速さでクアットロにナイフを突き付けていた。 「クアットロ…妹達に何を吹き込んだ? 正直に言えば楽に殺してやる…」 「ちょっ、チンクちゃん…殺すのは確定なの? 私はただ“ちょっとした性教育”をしただけで…」 一触即発のチンクに引きつった顔で怯えるクアットロ、そしてセインとウェンディの言葉の意味を知らないナンバーズは不思議そうな顔でグレイヴに質問を投げていた。 「グレイヴ、さっきの言葉の意味は何ですか?」 「なあグレイヴ、エッチって何だ?」 「何なの?」 「教えてください」 「教えて」 上からセッテ・ノーヴェ・ディエチにオットーとディードの双子コンビである。 この質問攻めにグレイヴは苦笑しながらその場で事の成り行きを見ていたトーレに助けを請うような視線を向ける、だがトーレは諦めろと言って苦笑いで返した。 今日もこのファミリー(家族)は騒がしく楽しい日々を送る。 レリック絡みの事件に出現する黒衣の生ける屍ウォーキング・デッドの噂は様々な管理世界に広まった。 ガジェットを従えAMF下において圧倒的な銃火器の制圧力を以って管理局の魔道師を蹂躙する様は多くの世界の人間に衝撃を与える。 レリック関係の事件という事もあり機動六課も独自に戦う死人に関する調査を各方面から進めるが、死者を兵器にする技術などはどこの世界にも残されていなかった。 そしてスカリエッティの下に彼の探していた聖王の器が発見されたという報告が届く。 「さて。では現場にはクアットロとディエチ、それにセインに行ってもらおうかな……」 スカリエッティはモニターの映像でガジェットの動きと現場にレリック確保に向かったルーテシアの動きを追いながらウーノと共に敵情報の収集を続ける。 そこに案の定、装備を整えたグレイヴが現われた。スカリエッティは少し不満に顔を歪める。 グレイヴの性格を考えれば聖王の器がどういうものか知れば確実に任務の障害になりかねないと判断したが故の苦渋の感情だった。 「やあグレイヴ。今日は彼女達だけで大丈夫だよ、君のデス・ホーラーも調整が必要だろう? 今は休みたまえ」 「………」 そのスカリエッティの言葉にグレイヴは即座に虚実の匂いを感じる。 かつて組織の殺し屋として様々な人間を見てきたグレイヴにとってはいかに巧妙に隠そうともスカリエッティの言葉の裏の意図を読むなど容易な事だった。 グレイヴはいつもどうり無言で転送装置の準備をして現場に飛んだ。 その様子をスカリエッティは呆れて、ウーノは少しばかり怒りを抱いて眺めていた。 「あ~。やっぱり行ってしまったね~」 「ドクターよろしいのですか!? このままでは作戦に支障が出かねません!」 「まあ、良いじゃないか? こういうハプニングも楽しいものだよウーノ」 スカリエッティは楽しそうにモニターを眺めて戦況を確認する、最強の死人兵士が再び機動六課の魔道師達との戦いを繰り広げようとしていた。 その日、休暇を楽しんでいた機動六課のフォワードメンバーは偶然にもレリックコアと身元不明の少女を発見する。 事態は六課隊長陣も出動しての大規模な戦闘に発展した。 そして発見されたレリックコアと身元不明の少女を乗せたヘリが謎の戦闘機人の砲撃を受ける。 だがその攻撃はなのはの防御に防がれ、なのははフェイトと共に襲撃犯である二人の戦闘機人を追い詰める。 クアットロは飛行能力の無いディエチを抱えて追いすがるなのはとフェイトの追撃から逃げようとしたのだが、執拗な追撃に挟み撃ちを受け地上に落ちたのだった。 「ちょっ…ちょっとこれはヤバイ感じね~」 「そんな事、言ってる場合じゃないよクアットロ…このままじゃ…」 その二人を前後から挟み込むようになのはとフェイトが下り立ち射撃魔法の掃射の準備をする。 「もう逃げられないよ! 大人しく投降しなさい!」 なのはが声を張り上げた次の瞬間、地獄の番犬の名を持つ二丁銃ケルベロスの吐き出す15mm口径魔力ダメージ弾頭が雨の如く降り注ぎ、なのはとフェイトを襲った。 「くっ!!」 「きゃあっ!!」 なのはとフェイトはその突然の攻撃に防御障壁を削られ思わず悲鳴を上げる、そしてクアットロとディエチの下に最強の死人兵士ビヨンド・ザ・グレイヴが下り立った。 グレイヴは下り立つと同時になのはとフェイトにケルベロスの銃弾で弾幕を張りながらクアットロとディエチに語りかけた。 「クアットロ、ディエチ…早く逃げろ」 グレイヴはなのはの放ったアクセルシューターを撃ち落しフェイトの撃ったプラズマランサーをデス・ホーラーで防ぎながら二人に視線をやって早く逃げるように促す。 その強い意志と優しさを秘めた瞳を見たディエチはグレイヴの服の裾を掴んで小さく呟いた。 「分かった…絶対に帰って来てね、グレイヴ」 そのディエチの言葉にグレイヴは優しく微笑んで返し、クアットロに視線を移して口を開いた。 「クアットロ……ディエチを頼む」 「え…ええ分かりました。それじゃあ、あなたも気を付けてくださいね? 勝手に死んだらダメですよ?」 「…ああ」 グレイヴの小さな返事を受けてクアットロとディエチはその場を離脱する。 フェイトが逃げる二人に向かってバルディッシュを構えて飛び掛ろうとするがそこにグレイヴが放った“Dooms Rain”のマイクロ・ミサイルの雨が降り注ぎ爆炎を上げた。 炎が晴れた時にはクアットロとディエチの姿はなかった、そして場にはグレイヴとなのはとフェイトのみが残される。 その時グレイヴのインカムにスカリエッティからの通信が入る。 『あ~グレイヴ。聞こえてるかい?』 「……」 『デス・ホーラーに付いた新機能を使ってみてくれないか? 実戦での性能をチェックしたくてね、それに彼女達のような強力な魔道師には有効な機能だよ?』 グレイヴはその通信を受けて眼前のなのはとフェイトを見る、確かに今までの有象無象の武装局員から比べられない強さである。 故にグレイヴはデス・ホーラーの新機能を使うのにためらいはなかった。 インカムから送られた信号に反応しデス・ホーラーは髑髏を模られたその顔を怪しく光らせてその力を発揮する。 「くっ!」 「これは! AMF!?」 グレイヴの背負っていた棺桶がその髑髏の目を光らせた次の瞬間、場に今までの比でない強力なAMFが発生してなのはとフェイトを苦しめる。 それは後にスカリエッティが聖王のゆりかご内部に設置するものと同じ規格の次世代型AMFである。 従来のガジェットでは出力不足と過剰な重量の問題で実用化できなかった代物であったが、この最強の死人兵士にはこの程度の重量ではなんの問題も無かった。 リミッターによる抑制と高濃度のAMF下で力を著しく削がれたなのはとフェイトにグレイヴは容赦なくケルベロスの銃弾を叩き込む。 二人のバリアジャケットは引き裂かれ魔力ダメージに赤く焼けた柔肌を空気に晒した。 「はああああ!!!」 フェイトがザンバーフォームになったバルディッシュの金色の刃を振り下ろしグレイヴに斬り掛かるがグレイヴはその斬撃を交差させたケルベロスで防ぐ。 軋みを上げる両者の得物だが高濃度のAMF下でのバルディッシュの刃は無慈悲にも単純な膂力で押し返される。 フェイトがいかに優秀な魔道師とて死人兵士を相手に常人が正面から打って出て、勝てる要素など無いのだ。 「くっ…」 バルディッシュの刃を押し返すケルベロスの圧力にフェイトは苦悶の顔を見せる。 「フェイトちゃん! こうなったら…」 そこになのはがカートリッジをロードして、形成できる最大限の誘導弾を作り出してグレイヴに発射した。 「アクセル・シュート!!!」 無数の誘導弾が精密な軌道を描きながらグレイヴに発射され、その全てがなのはの弾道コントロールを受けたそれは正確にグレイヴの頭部や腹部に命中した。 その誘導弾の攻撃にグレイヴの頭部から煙が立ち上り、彼の身体は地面に倒れ伏した。 なのはとフェイトはこの死人兵士からやっと戦闘能力を奪うことができて重い溜息をついた。 「ふぅ~…やっと止められたね…」 「うん…」 そしてなのはは通信をロングアーチに繋いで報告を入れる。 『こちらスターズ01。ウォーキング・デッドを無力化しました、至急ヘリの準備を…』 しかしなのはが通信で言葉を全て言い切ることは無かった、何故なら倒れた筈の死人兵士が背の棺に手を掛けていたのだから。 次の瞬間になのはとフェイトの意識は刹那に断たれ、その場に倒れ伏した。 グレイヴは即座に立ち上がると同時にデス・ホーラーの機関銃銃身から大量の銃弾を発射しながら360度回転して周囲に弾丸を余す所なく吐き出す大技“Bullet Dance”を行ったのだ。 弾丸を刻む舞踏の前に成す術なく敗れたなのはとフェイトをグレイヴは幾分かの憐憫をもって眺める。 死んだフリなんて古典的な手に引っかかった事も含めてだが、やはり何の罪も無い少女を傷つけるのはあまり良い気分ではなかった。 そのグレイヴの下にナンバーズの6番セインが彼女の能力ディープ・ダイバーで地中から現われた。 「セインちゃん到着~! さあグレイヴ~あたしの身体にしがみ付いて~。一緒に脱出~、ってなんかもう終わってるし…」 グレイヴを自身の能力で救出しに来たセインだが既に戦闘はグレイヴの勝利で戦いは終わりを告げていたのだ。 「それじゃあ帰ろうかグレイヴ。あっ! そうだ。それと無力化できたらフェイトお嬢さまを連れて来いってドクターが言ってたから…」 そう言って倒れたフェイトの腕を掴もうとするセインだがそれはグレイヴの手で遮られた。 「えっと…どうしたのグレイヴ?」 「……セイン…駄目だ」 「えっ!? でも…」 「駄目だ」 「う~…分かったよ…グレイヴがそう言うなら」 やっと納得したセインの頭をグレイヴは優しく撫でる、セインはまるで子犬のように喜んで笑顔を見せた。 「でも、ドクターには何て言えばいいかな~?」 「…通信は切ってあるから問題無い」 「そっか、なら別に良いや。それじゃあグレイヴ~これ内緒にしておくから今度またプリン頂戴♪」 「…ああ」 こうして死人は妹を連れてその場を去る、後には彼の残した大量の薬莢と気を失った魔道師が二人残されていた。 続く。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3214.html
《ミッドチルダに住む人々よ!今この地は未曾有の危機に直面しておる!!》 《先日起きた地下水路崩壊も然り!そして諸君らの記憶にも新しいアグスタ襲撃も然りじゃ!!》 《これらはガジェット及び不死者と、それらを造った者達の手によって引き起こされた事なのである!!》 《そしてアグスタ襲撃事件の際、我々管理局は最大の策を投じたにも関わらず敗れた!!》 《即ち!このままでは我々の滅亡は必死であろう!ならば我々はこの滅亡の危機を運命として受け入れなくてはならぬのか?》 《否!断じて否!!我々管理局はこの未曾有の危機に対し、新たな策を投じた!それが彼らエインフェリアである!!》 《彼らエインフェリアは人型のデバイスである!その姿形に人型兵器と思う者達も多いであろう……》 《しかし!!彼等はこのミッドチルダの魔導技術の粋を集め造られた存在!決して質量兵器などではない!!!》 《その証拠に見よ!彼らの勇姿を!!この映像は先日起きた地下水路崩壊の際に撮られた物である!》 《彼等は魔法を用いて!たった二体の手により、この複数存在するガジェット及び不死者の群れの悉くを殲滅させたのである!!》 《即ち彼等こそが、未曽有の危機に対する対抗手段なのじゃ!!》 《そして我々管理局はこのエインフェリアを量産する用意がある!その名も…アインヘリアル計画である!!》 《この計画が実行に移れば、もうこのような幼い子供にデバイスを持たせる必要は無くなるのだ!!》 《聞け諸君よ!彼等エインフェリアは弱き者を守る盾であり、強き者を挫く剣なのである!!》 《今!我々に必要な物は未曾有の危機を脱する力なのだ!その力は今まさに此処に存在しておるのじゃ!!!》 リリカルプロファイル 第二十話 陳述会 ガノッサ提督による演説は二時間にも及び、モニターにはエインフェリアの姿が映し出され、その中にはクロノ提督の姿も存在していた。 そして…その演説を冷ややかな目線を送り見つめるレジアス。 「いよいよ始めたか…ワシも急がねばならんな……」 そう一言呟くとモニターを切り、一人黙々と何かを打ち込む作業を始めるレジアスであった。 …一方此処は機動六課に存在する会議室、この部屋は防音機能が完備されており、外部に情報が漏れない造りになっている。 その部屋に、はやてとゲンヤそしてギンガの姿があった、目的は先日行われた共同戦線の情報交換を行う為である。 それぞれ情報を交換する中、はやては写真が貼られた資料をゲンヤに渡すと、黙って受け取り目を通す。 写真には後ろ髪を結った茶髪の少女の顔とその少女が持っていた無反動砲が写っており、資料の内容は少女が持っていた銃についてであった。 銃の名は表面上に書かれており、イノーメスカノンという。 解析の結果、命中精度・威力などが非常に高く多種多様な弾丸を撃ち出すことが出来ると、 だがその重さは尋常ではなく、とてもではないが写真に写る少女が持ち運び出来る代物ではないと綴られていた。 その内容に沈黙するゲンヤ、その表情に既に確信にも似た表情で話しかけるはやて。 「やっぱり…彼女達は……」 「あぁ、戦闘機人だ……」 ゲンヤの言葉に俯くギンガ、そしてはやては自分の考え出した答えが正しかったといった表情を見せる。 するとはやては失礼ながらゲンヤの妻、つまりギンガの母の事を調べたと話し始める。 …ゲンヤの妻、クイントは戦闘機人に関する調査を行い、その後原因不明の事故により死亡した。 そしてクイントの意志を引き継いだゲンヤが戦闘機人に関する情報を集めている事を掴んだと話す。 しかし当のゲンヤは自らの仕事が忙しく、中々情報を集められてはいない状況であった。 そこで今回の事件を機に、はやてが代わりに戦闘機人の情報を集めると提案、その為今まで得た情報を引き渡して欲しいと頼み込む。 するとゲンヤは目を閉じ腕を組み考え込む、その後暫くして目を開き、口がゆっくりと動き出す。 「…悪いがそれは出来ねぇな、事は戦闘機人だけの問題じゃあ無いんでな」 ゲンヤの答えに困惑するはやて、事は戦闘機人だけでは無い? …それはどういう事か再度聞いてみるがゲンヤは一切答える事は無かった。 暫く静寂が部屋を包むと呆れた様子でため息を吐くはやて、その顔は諦めに似た様子を表していた。 「…分かりました、戦闘機人の件は諦めます、そん代わり……」 「あぁ、連絡役も兼ねてギンガの機動六課への出向を許可しよう」 機動六課が掴んだ戦闘機人の情報をギンガというパイプラインによってゲンヤに伝える、 その為の出向でもある今回の申し出に応えたゲンヤは、ギンガと共に席を立ち会議室を後にする。 一人会議室に残されたはやては大きくため息を吐くと、流石自分の師匠なだけあって一度決めた事に対してガンとして動かないな…と思うであった。 一方ゲンヤと共に機動六課の通路を歩いていると突然ギンガが質問を投げかける。 「何故はやて二佐の申し出を断ったんです?」 「…クイントと同じ轍を踏ませない為に……だな」 その意味深な言葉に首を傾げるギンガだが、ゲンヤの目は遠く何かを見つめているようであった。 その頃なのははシグナムが運転するワゴン車に同乗していた、その理由は先日保護した少女が眠る聖王医療院に向かう為だ。 そしてシグナムもまた聖王教会に用があるらしく、次いでに乗せて貰っているのだ。 そしてなのはは、ワゴン車をマジマジと観察していると、ふと質問をかける。 「このワゴン車…シグナムさんの車なんですか?」 「あぁ、渋いだろう?」 シグナムの含み笑いにになのはは頬を掻く、話によると聖王教会にいた頃、 食事の配給などの仕事が多くあった為、沢山の荷物を運べるという理由で購入したと話す。 そんなシグナムの話を聞いているうちに聖王医療院に着くと、なのははシグナムと別れの挨拶を交わし医療院へと足を運ぶ。 医療院内ではシャッハが出迎えており、なのはは保護した少女の詳細を聞くとシャッハは快く応える。 保護した少女は人工生命体でフェイトやエリオと同じ境遇であると。 故に現場に残されていた生体ポットの中身の可能性がかなり高く、周りのガジェットが破壊されていた事から危険性があると指摘されていると。 そんな内容を通路を歩きながら聞きつつシャッハと共に少女が眠る部屋へ赴くと、其処はものけの殻であった。 シャッハは驚き開いている窓を覗くと、対象の少女が外へ出ようと走っており、 シャッハは窓から飛び降りるとデバイスを起動させ少女の前を塞ぎヴィンデルシャフトを構える。 少女は目の前に現れたシャッハに驚き、しりもちをつくと――― 「ふ………ふえええぇぇぇぇぇぇん!!!!」 「えっ?…………えぇ!?」 少女の泣き声に思わず戸惑うシャッハ、すると入り口からシャッハを追っていたなのはが姿を現し、少女を慰める。 そして病室を抜け出した理由を聞くと母親を探す為に抜け出したと、ぐずりながら話す少女。 少女は人工生命体である、母親など存在するハズがない、その記憶は元の遺伝子が持っていた記憶なのかもしれない。 しかしそんな素振りを一切見せず、なのはは少女の目線に合わせ見つめる。 「お名前いえるかな?」 「ヴィヴィオ……」 ヴィヴィオはそう名乗ると、なのははヴィヴィオの母親が見つかるまで自分が母親代わりになると約束を交わす。 するとヴィヴィオは、「なのは…ママ?」と恐る恐る口にすると笑みを浮かべ答えるなのは、 そのやりとりが何度も続くとヴィヴィオはすっかり泣き止み、その光景を見て唖然としているシャッハ。 するとシャッハの後ろで聞き慣れた声が響き、振り返ると其処にはアリューゼの姿があった。 「あっアリューゼ!?いつからそこに!?」 「…デバイスを起動させて、そのガキに向けているところからだな」 つまり一部始終見られていた事であり、顔を真っ赤に染めるシャッハに対し呆れた様子を見せるアリューゼであった。 それから数日後、ヴィヴィオはすっかりなのはに懐き、そのまま機動六課で面倒を見る事となった。 だがその代わり定期的に聖王医療院にて検査を行うという条件付きであるが。 そして今日はなのは、フェイト、はやての三人で聖王教会に赴いていた、その理由とはなのはとフェイトに機動六課の真の目的を伝えられる為だ。 三人は教会内に存在する会議室に赴くと三人は敬礼を行う、会議室にはカリムを中心に右の席にクロノが座っており はやてはクロノの隣の席、なのはとフェイトは左の席を順に座ると、クロノは早速説明を始める。 機動六課…いやかつての六課はカリムのレアスキル、プロフェーティン・シュリフテンによってもたらされた預言に描かれた、 ミッド滅亡を阻止する為に組織された部隊で、それは今も変わっていないと話す。 そして預言の内容を二人に告げると沈黙し、沈痛な面持ちを醸し出していた。 「取り敢えず今後は、中つ大地の奉の剣であるエインフェリアと、法の塔である地上本部を壊滅させない事だな」 今回の件でクロノは奉の剣をアインヘリアル計画の事と判断していると、するとはやてが質問を投げ掛けてきた。 「でも…あのエインフェリアって何なん?ただもんとちゃうのは分かるんやけども…」 「ガノッサ提督が説明していただろう、あれは人型デバイスだ」 命令を絶対に従う忠実なる存在、その姿はまさに奉公の剣であると。 そのエインフェリアの量産計画、アインへリアル計画の是非を問う公開意見陳述会が近く執り行われるという。 つまり、事を起こすとすればこの日が絶好ともいえる。 無論、事を起こそうとしている存在とはスカリエッティとレザードであるのは間違いない。 つまりその日こそが世界の命運を分ける日とカリムは考えており、皆もそれに賛同していると。 そして機動六課の真の目的の為に尽力して欲しいと綴ると三人は一斉に敬礼し、会議は終了となった。 それぞれが自分の部隊もしくは仕事場に戻る中、カリムは自分の予言に目を通していた。 一行目に書かれている“歪みの神”もしこれがレザードの事を指すのであれば我々は神と対峙しなければならないのか? だが我々の信仰に神は存在しない、それにあのような傍若無人な存在が神であるハズがない。 そう自分を言い聞かせ不安をぬぐい去ろうとするが、それでも不安は募るばかりのカリムであった。 場所は変わり此処はゆりかご内に存在する生体ポットが並ぶ部屋、その中でルーテシアは一つの生体ポットを見つめる。 生体ポットにはNo.XIと書かれたプレートが掲げられており、ポットの中には紫の長髪の女性が眠っていた。 「お母さん……」 そう一言呟くルーテシア、自分の目的は母親の病気を治し一緒に暮らす事、その為にはNo.XIと刻まれたレリックが必要なのである。 そして母親を助ける為に自分は修羅にも夜叉にもなる、その決意を胸にルーテシアは一つお辞儀をするとその場を後にした。 その頃スカリエッティは管理局に潜伏しているドゥーエと連絡を取っていた。 その理由は地上本部壊滅のタイミングを計る為である。 「つまり公開意見陳述会、この時が最も適しているというのだね」 「はい、ドクター」 モニターに映るドゥーエは頷くとスカリエッティに地上本部のセキュリティ情報を渡す。 確かにドゥーエの言う通りこの機を逃す手はない、それにゆりかごの方もほぼ修復を終えている。 つまりこの日こそ決起する時!…そう考え狂気を含む笑みを浮かべるスカリエッティであった。 一方、自室にてレザードは陳述会の内容に顎に手を当て考え込み、先日の戦闘で現れたエインフェリアの姿と見比べる。 今回の陳述会に出されるエインフェリアは巨大で標準的な魔力を生む動力炉に遠距離砲が配備され、まるで戦車のような姿をしており、まさに質量兵器その物であった。 その量産機とは到底思えない姿に不敵な笑みを浮かべるレザード。 「滑稽な…質量兵器を禁じている管理局が、このような形を取るとは……」 その性能も自分達が造り出したナンバーズとは程遠い存在、寧ろレザードは人型のエインフェリアに興味を持っていた。 彼らの材質は恐らくベリオンの内部に使われている物と同じダマスクス、アーティファクトの一つであるダマスクス製法書によって作成したのだろう。 そしてこの異常なまでの戦闘力、それはまさしく管理局側の戦闘機人と呼ぶに相応しいと言っても過言ではなかった。 スカリエッティは今回の陳述会を機に本格的に計画を始める様子、そして陳述会には必ず機動六課及びエインフェリアを出してくるだろう。 つまりは総力戦、そして自分もまた出ざるは終えないだろう…眼鏡に手を当て真剣な面持ちを浮かべるレザードであった。 その頃セイン・ノーヴェ・ウィンディの三人は今回の計画の際に進むであろう道を知る為、町に繰り出していた。 …尤もそれは名目で本当はある目的のため、町を練り歩いているのである。 三人はスーツに備え付けられている私服モードを利用し、ノーヴェは紺のGパンに白い半袖のシャツ、ウィンディは膝ほどの深緑の半ズボンに赤いTシャツ、 そしてセインは黒いダボッとした長ズボンに白いパーカー、更に黒いキャップとサングラスを掛けていた。 セインは先日の戦闘にて顔が割れている可能性がある為の処置である。 それでも街に繰り出したい理由は、町の中に点在する公園で売られているアイスを手に入れる為、それだけの為である。 そして三人は公園に存在するアイス屋へ赴くと、ウィンディはストロベリー、ノーヴェはオレンジとバニラのダブル、 セインに至ってはチョコミントにチョコチップ、更にマーブルにトッピングチョコをまぶした物を注文する。 「…セイン、そんなに頼んで大丈夫なのかよ?」 「知らないのノーヴェ?こう言うのは別腹って言うのよ」 「なるほど…セイン姉は腹が二つ有る訳か」 「……そんな訳無いじゃないッスか」 ノーヴェの天然さに呆れるウィンディ、恐らく基礎となる遺伝子がそれをさせるのだろう。 そんな事を考えるも三人はそれぞれのアイスを手にし、ベンチに座ると食べ始める、 セインに至っては、がっついて食べており、その光景に頬を掻く二人。 そしてアイスを食べ終えるとベンチから立ち公園を離れ、当初の目的を遂行する為、行動を始める。 そして最短ルートを調べ、そのルートを進みセインの目標の地である地上本部へ辿り着く。 そして見上げる三人、この地を今度の戦闘で壊滅させてみせる、そう意気込む三人であった。 それから数日後、此処地上本部の近くに存在するホテル内では、翌日に行われる公開意見陳述会の準備に追われていた。 そして表の中庭にはアインへリアル計画によって創り出されたエインフェリアが三体並んでおり、 その大きさは十メートル以上にも及ぶ、どうやら動力炉の大きさに合わせて造られているらしい。 そして警備には本局の局員数十名、会場内は機動六課のなのはとフェイト、そして地上本部の局員の手によって行われ 残りの機動六課はホテル周辺を警備する事が決定していた。 そしてなのはとフェイトは一足早く会場入りする為、フェイトは車の用意をしており、 隊舎入口にはフォワード陣とヴィヴィオが見送る為に並んでいる、するとなのは達はスバルとエリオを呼び寄せる。 「スバル……レイジングハートの事お願いしていい?」 「私も…エリオ、バルディッシュの事お願いね」 会場ではデバイスを持って入ることは出来ない、その為最も信頼できる人物、スバル達に持ってて欲しいと頼むと快く応じる。 そしてなのははヴィヴィオに目線を合わせ、優しく話しかける。 「それじゃあ明日までには帰ってくるから、ちゃんと病院に行くんだよ?」 「ぜったいに?……やくそくだよ、なのはママ」 ヴィヴィオの問い掛けに力強く頷くと指切りをするなのは、そしてその光景に自分の過去が重なり暗い顔を見せるティアナ、 …かつて自分の兄は指切りした後、二度と戻ってくる事は無かった…… …だがなのはさんに限ってそんな事が起きるハズが無い!そう自分の考えを自重するように拳を握るティアナ。 その後なのは達を見送ったヴィヴィオは定期検査の為、ヴァイスが操縦するヘリで一路聖王医療院に向かうのであった。 翌日、他のメンバーもまたホテルへと赴き厳重な警備の中、公開意見陳述会は開始される。 陳述会ではガノッサがアインへリアル計画の必要性を熱く語っており、状況は賛成の方に傾きつつある中、レジアスの姿は見受けられなかった。 そして、陳述会会場から数十キロ離れた先にナンバーズとルーテシアにゼスト、 そしてベリオンがそれぞれの役割を果たす為の配置についており、それを確認したクアットロはスカリエッティと連絡を取る。 「ドクター、此方は配置は完了しましたぁ」 「ご苦労様…では始めるとしようか……」 スカリエッティの合図の下、今此処に“ラグナログ”計画は発動したのである…… 前へ 目次へ 次へ オマケへ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3344.html
…此処は南地区アルトセイムから離れた地方、街並みは炎と煙に包まれ 至る所に瓦礫やガジェットの残骸が犇めき、管理局員の必死な救護活動が行われている上空では カノンの猛攻により体力を削られ、肩を寄せ合うように対峙するオットーとディードの姿があった。 リリカルプロファイル 第三十二話 次元戦 二人の目先にはカノンが勝利を確信している為か高笑いを浮かべていた。 戦況は二人の劣勢、カノンは広域攻撃型と謳ってはいるが、 その高い魔力は攻・防にも起用しており、万能型と言っても過言ではない程の実力を持っていた。 「さてと…そろそろ終わりにするかぁ!!」 そう言ってカノンは左手を向けるとディードが飛び出し、オットーは右手を向けてレイストームで援護 だがカノンはそのままプロテクションを広げ、ディードのツインブレイズを受け止めつつ更にレイストームを辺りに四散させる。 そしてサンダーストームをディードに向けて撃ち抜き、更にオットーまでを巻き込みその身を貫く。 二人は絶叫を上げている中でオットーはレイストームを応用したバリアを発動、 カノンの攻撃に耐え抜こうとしていたが、カノンは更に追い討ちとばかりにエクスプロージョン撃ち放ち バリアは一瞬にして砕け散り周囲は二人を中心に炎と雷に覆われ、下に広がる街並みに到達する程であった。 そして攻撃が止むと中央では二人が必死な形相で睨み付けている中で、 カノンは止めとばかりに手を向け、二人は覚悟を決めたかのように互いを庇い合う。 しかし次の瞬間、カノンの右側から赤い光が現れカノンを吹き飛ばし道路へと激突させる、 そしてカノンが佇んでいた場所には赤い光の正体、ヴィータが姿を現していた。 ヴィータは局員達の要請を受け此処へ急行したところ、 エインフェリアを発見、すぐさまラテーケンハンマーを打ち込んだのだ。 しかしナンバーズまで居たのは予想外であり、ヴィータはナンバーズを睨みつけていると 道路から激しい爆発音と共に魔力を感知、目線を向けると雄叫びを上げるかのようにカノンが魔力を放出していた。 「なんだぁ!!人の楽しみを邪魔しやがって!!!」 「チッ!全然効いてねぇみてぇだな」 ヴィータは一つ舌打ちを鳴らし睨みつけていると、カノンは左手を向けて アースグレイブを唱え地上から大量の岩の刃が襲いかかる。 ヴィータはフェアーテを用いて次々に交わしていく中、 オットーとディードは先程のダメージが未だ抜けきっていないせいか、動きが鈍く オットーの右肩に岩の刃が掠り血が流れ、ディードはツインブレイズにて迎撃を行うも 対処しきれず、幾つか攻撃を受ける状態が続いていた。 その姿を目の当たりにしたヴィータは、二人の下へ移動すると 巨大なパンツァーシルトを張り、岩の刃を次々に防いでいった。 「何故…助ける?」 「知らねぇよ!体が勝手に反応しちまったんだ!!」 助ける理由なんて無かった、相手はあのナンバーズである、 だが二人の必死な行動を見てついつい体が動いてしまった、 ヴィータはそう答え頬を掻き始めると、カノンが上空へと上がりヴィータと対峙する。 「貴様…そんな人形を庇うとはな!!」 「んだと?テメェだって似たようなもんだろうが!」 「ほう?それを言うなら貴様とて主に作られた“道具”であろう!」 カノンの言葉にナンバーズは無表情ながら拳が震える程握りしめていると ヴィータもまた目を蒼くして激怒の表情を浮かべる。 奴、カノンは自分の事を道具だと罵った、嘗てのヴォルケンリッターであれば聞き流す、若しくは肯定すら出来る言葉であるが、 今の彼等ははやてを護る守護者にして家族である、それははやて自身が望んだ繋がり、 それを三賢人の“道具”とも言えるエインフェリアに言われる、しかも蔑むかのように… カノンが放った言葉はヴィータの神経を逆撫でるには十分であり、 グラーフアイゼンでカノンを指し睨みつける。 「テメェはぜってぇバラす!!」 「お前一人で何が出来る!」 未だ余裕の顔を浮かべているカノン、するとヴィータの両隣にオットーとディードが寄り始め ヴィータは警戒すると二人はカノンを見つめ構え始める。 「お前ら…何のつもりだ!」 「助けてくれた恩は返す……」 小さく囁くかのようにディードは言葉を口にすると、同じく小さく頷くオットー。 その姿に少し戸惑うも軽く笑みを浮かべ、カノンと対峙するヴィータであった。 一方次元海ではクロノ率いるクラウディアチームがドラゴンオーブ目指して航海していた。 すると前方から多数のアインヘリアルが姿を現す、どうやら護衛はエインフェリアだけでは無いようである。 クラウディアは砲撃による迎撃を行うも対象が小さい為、思うように迎撃をする事が出来なかった。 其処でクロノは足場を作るように指示、そして結界・フィールドを応用した足場を作り上げると クロノを先頭にロウファ、ジェイクリーナス、那々美が表に出て相手をする事となった。 戦況はクロノの優勢、次々にアインヘリアルが落とされていき順調に航海していく中で オペレーターである夢瑠から連絡が入る、それは前方から強力な魔力が二つ現れたというものである。 それは十中八九エインフェリアであると考えたクロノは警戒を促していると 二つの内の一つから巨大な魔法が放たれた事を確認、すぐさまクラウディアはバリアを張り巡らせ対処 暫くすると巨大な魔法がクラウディア全体を飲み込み、周りに纏わりついていたアインヘリアルが次々に爆発 クラウディアはなんとか攻撃を防ぎきると、目の前には杖を向けたイージスと杖を持ち見つめるミトスの姿があった。 「ほぅ…あの攻撃を防ぐとはな」 「どうやら一筋縄では行かぬようだ」 ミトラは顎に手を当て答える中、クラウディアは引き続き目的の対象である二体へと進路を向け クロノは作戦を練り上げながら二体を睨みつけていた、 するとクロノの存在に気が付いたイージスが見下ろす感じて見つめ話しかけてくる。 「ほぅ?かつての“上司”も来ていたとは……」 自分の手でかつての上司を葬る、それはそれで一興であると笑みを浮かべながら述べ その態度にロウファが前に出て反論しようとしたところ クロノに肩を掴まれ小さく頭を横に振ると、今度は不敵な笑みを浮かべ述べる。 「ふっ…そうだな、ならばかつての“上司”として…馬鹿な“部下”の後始末をしないとな!!」 そして…不本意ではあったがエインフェリアを率いていた自分との決着を付ける、 そう決意ある瞳で睨みつけ答えていると、“部下”であるロウファ達が 自分達も一緒にケジメを付ける、自分達はクロノ提督の“部下”であると話し “部下”達の計らいに嬉しく感じ、一人では無い事を再確認したクロノは 改めてエインフェリアと対峙し決着を付ける覚悟を決めた。 先ずクロノが先手とばかりにスティンガーレイを撃ち抜く、 その数は50を上回っており四方を埋め尽くすかのように迫るが ミトラとイージスはバリアを張って此を防ごうとした、だがクロノは更に追撃し その数を増やすと二体は四方に飛び回りスティンガーレイを回避していく、 すると今度はジェイクがレストレインフレイムと呼ばれる魔力矢を撃ち放ちクロノの魔力弾に接触すると 連鎖的に爆発、流石の二体もこの猛攻に耐えきれず、飛び出すかのようにクロノ達に接近する。 「今だ!夢瑠!!」 「了解で~す!」 そう言って夢瑠はボタンを押すとクラウディアの周囲に結界が張られ エインフェリアを結界内に閉じこめる事に成功した。 「これでもう逃げ場所はないぞ!」 「…それは此方の台詞だ、我々を閉じこめた事その身で後悔するがいい!!」 ロウファの言葉にミトラが答え不敵な笑みを浮かべると、第二幕が開始される。 先ずはクロノとジェイクが先手を打ち二体に向けて魔力弾を撃ち込む 次に那々美からストライクパワーとアクセラレイターの ツインブーストを受けたロウファがミトラに向かい接近戦を仕掛けるが ミトラはバリアを張り攻撃を防ぐ、するとロウファの持つデバイス、ドラグーン・タイラントから 二発薬莢が排出されると、先端の刃が魔力に覆われ始め強化させると力強く振り下ろし ミトラのバリアを打ち砕く、だがミトラは杖を向けて直射砲を撃ち抜きロウファを吹き飛ばした。 一方でイージスもまたロウファに追い討ちを仕掛けようとしたところ、 魔力矢が襲いかかり出鼻を挫かれイージスは見下ろすと、 其処にはボーガン型のデバイスを向けていたジェイクの姿があった。 「貴様の相手はこの俺だ!」 「おのれ人の分際で!なめるな!!」 イージスは簡単にジェイクの挑発に乗り、杖を向けて魔力弾を発射 その数は20を上回り更には誘導性も含まれている為か、吸い込まれるかのようにジェイクに襲いかかる。 イージスの攻撃が迫る中、ジェイクはカートリッジを一発消費させて、ディジーズニードルと呼ばれる魔力矢を複数撃ち出し迎撃すると 那々美がブーストアップ、バレットパワーをジェイクにかけ、それにより威力を高めたレストレインフレイムを撃ち放つ。 するとイージスはバリアを張り対処しようとしたが、レストレインフレイムがバリアに触れた瞬間、大爆発を起こす。 それを目撃したミトラはイージスの援護に向かおうとしたところ、復活したロウファに足止めを食らう。 一方でクロノはイージスを先に仕留めるとばかりにスティンガースナイプを撃ち出すが イージスはバリアを張りつつクラウディアに目標を定め、ジェイクごと消し去ろうと強力な魔力砲を撃ち抜く、 しかし那々美のオーバルプロテクションによってクラウディア全体を包み込みイージスの魔力砲を四散化させた。 するとオペレーターである夢瑠から驚きの一報がクロノ達の耳に届く。 それは先程、ドラゴンオーブの砲撃により、ミッドチルダ南地区アルトセイム地方が消滅したという知らせである。 つまりこれはドラゴンオーブの攻撃を五発受けた事になり崩壊まで残り二発となった事を意味する。 事態は急を要する、此処でいつまでも足止めを食らっている訳には行かない、 早急にエインフェリア達を殲滅しなければならない、其処でクロノは念話を使って作戦を提案、 メンバーはそれぞれ頷くとクロノの指示の下攻撃を開始する。 先ずはロウファがミトラを足止め、その中でクロノはイージスの牽制に務めていた。 一方でジェイクは那々美からブーストを再度掛けて貰うとカートリッジを三発消費 デバイスをイージスに向けて構え足下にはミッド式の魔法陣が広がっていた。 それを確認したクロノはイージスがジェイクを気付かないように此方に注意を逸らしながら誘導 そして絶好のタイミングを見計らってジェイクは攻撃を仕掛けた。 「これが!俺の最高の技だ!」 次の瞬間、デバイスから高速の矢が放たれイージスに当たる度に爆発、 更にその爆発により舞い上がりながら、尚ジェイクは撃ち抜いていく。 そして止めとばかりに最後の矢に全魔力を乗せて狙いを定める。 「奥義!ギルティブレイク!!」 撃ち抜かれた最後の矢は吸い込まれるかのようにイージスに迫り見事に頭を打ち抜くと 先程以上の大爆発を起こし、イージスは頭部を失い力無く落ちていき爆発したのであった。 「おのれ!貴様よくもイージスを!!」 仲間をやられ怒りに満ちた表情を浮かべる中でジェイクは続けて魔力矢を発射、 しかしミトラはバリアにて攻撃を受け止めていると、 ロウファが那々美の下に駆け寄りブーストアップ、フィールドインベルドとストライクパワーを指示、 那々美はロウファにツインブーストを掛けるとすぐさまミトラに迫りカートリッジを三発消費する。 「この一撃ですべてを断つ!!」 ロウファは持っていた槍型デバイスでミトラに攻撃、ブーストの効果もあってか簡単にバリアを砕くと、 引っかけるように引きずり見回し最後は強力な魔力の竜巻を起こす。 「奥義!ジャストストリーム!!」 ロウファが起こした竜巻はミトラの身を切り刻みながら上っていき結界を破壊、 更に立ち上り次元海に放り出されるのであった。 しかしミトラは未だ起動しており、持っていた杖をクラウディアに向け構えると 足下に巨大な魔法陣を広げ詠唱を始める、それを目撃したクロノもまた足下に魔法陣を広げ詠唱を始める。 「虚空を伝う言霊が呼び覚ませしは…海流の支配者の無慈悲なる顎門!!」 「悠久なる凍土…凍てつく棺のうちにて永遠の眠りを与えよ!凍てつけ!!」 互いに強力な広域攻撃魔法の準備が整うと躊躇う事無く撃ち抜く。 「ダイダルウェイブ!!!」 「エターナルコフィン!!」 そしてミトラが放ったダイダルウェイブは水流が竜を象り襲いかかる中で クロノのエターナルコフィンは周囲を白銀に染め上げ吹雪くとダイダルウェイブと激突 激突した場所ではエターナルコフィンがダイダルウェイブを凍らせ、 ダイダルウェイブがエターナルコフィンを押し返すという状況であった。 戦局は五分と五分に見える状況であるが、徐々にではあるが確実にクロノが押し始めていた。 そしてみるみるうちにダイダルウェイブが凍り付きミトラの目前で一気に勢いを増し、 巻き込むようにして凍結、ミトラはダイダルウェイブごと氷のオブジェと化した。 「…砕け散れ!!」 クロノは一言呟きスティンガーレイで氷のオブジェを破壊する、 そして感傷に浸る暇もなく夢瑠にエインフェリアの撃破を伝え 夢瑠は本局に打診する中でクロノ達は何事も無かったかのようにクラウディアへと戻るのであった。 時間は遡りクロノ達がエインフェリア撃破する前アルトセイムが消滅した頃、 その一報を本局から伝えられたはやては、流石に焦りの色を見せていた。 そして目前にはエインフェリアの一体、リリアが不敵な笑みを浮かべて対峙している。 今現在はやては、リリアと戦闘を行っており、戦況は互いに実力を探るかのような状況であった。 しかしドラゴンオーブの第五射により地表の振動は更に増し、海も荒れ果て、空は曇天と化し、 これ以上の状況の悪化は防がなければならない、先ずは目先の問題から片づけよう。 そう判断したはやてはシュベルトクロイツをリリアに向け宣言する。 「…んじゃまぁ、時間も無いちゅう事でサクサクと終わらせたるわ!」 そう言うなり体から大量の魔力が溢れ出し、シュベルトクロイツを剣に変えると 両足にフェアーテを纏い背中のスレイプニールを羽ばたかせ一気に加速 瞬時にリリアの背中を捕らえると一気に振り下ろし、背中をバッサリと斬りつける。 余りにもの一瞬な為か驚きの表情と共に振り返ると既にはやての姿は無く、 寧ろ後ろをとられており、剣からハンマーに切り替えたシュベルトクロイツが容赦無くリリアの右こめかみに直撃する。 そして吹き飛ばされるリリアであったが、弓型デバイスをはやてに向けエイミングウィスプと呼ばれる聖属性の誘導弾を撃ち出す、 しかしはやてはプロテクションとパンツァーシルトを合わせた二重魔法障壁を発動、エイミングウィスプを防ぎきった。 「くぅ!話と違うじゃないか!!」 「残念やったな、もう今までの私とは違うんよ」 吹っ切れ真の夜天の王となったはやての実力は、既にエインフェリアでは相手にならない程までに至っていた。 故に不敵な笑みでリリアを見上げる中、シュベルトクロイツをハンマーから剣に戻し 刀身を炎で纏うと飛竜一閃を撃ち払い、リリアに攻撃するとリリアはバリアを張り攻撃を受け止める。 するとはやては更に魔力を込め威力を高めるとリリアのバリアは砕け、リリアは腹部に大きな風穴を空ける。 更にリリアの目の前に移動するとシュベルトクロイツを杖に変え左から右に振り払い 続いて右から左下へと振り下ろし、下から上へ振り上げ、リリアを高々と吹き飛ばし そのまま杖を向けると魔法陣を広げ詠唱、投射面にはミッド式の魔法陣の姿もあった。 「此で仕舞いや、かませ犬」 そしてはやてはフレーズヴェルグを撃ち出し、リリアはまるで蒸発するかのように消滅した。 はやての圧倒的な強さに地上の局員が唖然としている中、それに気が付いたはやては急かすように窘め 局員達は急くように行動を開始、それを確認したはやては小さく頷くと ユニゾンしているリインが魔力を感知したとの知らせが入り はやては早速その方面に目を向けると、其処には決して忘れる事が出来ない人物の姿があった。 「アイツは…レザード!!」 どうやらレザードの行き先はヴァルハラの様で、 まさか三賢人と手を組むのではないのか不安を感じたはやては 現場を他の局員に任せ、気付かれないようこっそりと後を追うのであった。 場所は変わり廃ビルの中では手を組んだティアナとウェンディがリディアと対峙をしていた。 その中でティアナはウェンディに作戦と指示を与える、 だが当のウェンディはふてくされた顔をする、どうやら仕切られるのが不満なようである、 だがティアナは全く気にかけない様子を表していると、リディアがスターダストと呼ばれる四発の強力な衝撃波を発射、 二人は左右に飛び回避、剥き出しの柱を背にすると、 ウェンディが柱から飛び出しエリアルショットを撃ち抜き牽制、 しかしリディアはフレークフラップと呼ばれる魔力の散弾で迎撃 更に攻撃を加えウェンディに迫る中、ウェンディはライティングボードを盾にして攻撃を防ぐ。 ウェンディがリディアの相手にしている頃、ティアナはリディアの後ろに回り込もうと移動していた。 だがそれに気が付いたリディアが振り向き、フレイムシュートと呼ばれる炎の矢を撃ち抜くが ティアナは飛びかかるかのように柱に逃げ込み、フレイムシュートが撃ち抜かれた場所は大きく穴を空けていた。 そしてリディアはティアナが隠れた柱に狙いを定めフレイムシュートを撃ち抜くと 覚悟を決めたかのようにティアナが飛び出し、後方では撃ち抜かれた柱が砕ける中、 手にはダガーモードに切り替えたクロスミラージュが握られており、リディアに迫る。 しかしリディアは冷静に対応、弓をティアナに向けて魔力矢を撃ち抜き直撃する、 …だが、ティアナは陽炎のように消え去ると、幻影のすぐ脇からオプティックハイドを解除し 手にはダガーモードを握った低姿勢のティアナが下から上に突き刺すように襲いかかった。 流石のリディアも此には驚きの表情を隠せないでいたが、ティアナの攻撃が直撃する刹那 弓を盾にして間一髪ティアナのダガーを防ぎ、更にティアナの鳩尾辺りを右足で蹴り飛ばす。 その衝撃はティアナが直撃した床にひびが入る程に強く、ティアナはその場にて痛みと苦しみに動けないでいると リディアは冷静さを取り戻し、弓を向け先程と同様フレイムシュートを撃ち出そうとした、 だが次の瞬間、ティアナの後方からウェンディが対消滅バリアを張ったライティングボードに乗ってリディアに迫り リディアは咄嗟に左に回避、脇腹を掠める程度に終えるとウェンディに切り替えて矢を放つ。 しかしウェンディはライティングボードの面の部分をリディアに向けて攻撃を防御、 更に滑り込むように進みティアナに近づくと手を差し出す。 「ティアナ!早く乗るッス!!」 するとティアナは差し出された手を握りウェンディの背中にしがみつくと、 ウェンディはライティングボードを走らせ、更にフローターマインをばらまき廃ビルを脱出 そのまま高々と上空に上がり廃ビルを見下ろした瞬間、廃ビルが爆発した。 「……器物破損ね」 「今はそんな事言ってる場合じゃ無いッスよ!!」 あくまでも冷静なティアナに対しウェンディはつっこんでいると、破壊された廃ビルの中からリディアが姿を現し見上げていた。 そして弓をこちらに向けるとカートリッジを二発消費、バスターシュートと呼ばれる完全威力重視の魔力矢を撃ち放つ。 バスターシュートは見る見るうちにウェンディに迫り、ライティングボードに直撃、 その衝撃に体を揺さぶられている中でリディアは大量のエイミングウィスプを撃ち放つ。 「ウェンディ!避けて!!」 「合点承知ッス!!」 そう言ってライティングボードを縦横無尽に走らせ、アクロバティックにエイミングウィスプを回避していく それを見たリディアは更にエイミングウィスプを追加、 するとウェンディは急降下して廃ビルの間を縫うように進むが、 未だ多くのエイミングウィスプが追いかけてくる状況であった。 「くぅ!振り切れないッス!!」 「ウェンディ、そのままの速度を維持して」 そう言うとティアナは後ろを向きクロスミラージュを構えると魔力弾を撃ち放ち、 追ってくるエイミングウィスプを次々に撃ち落としていく、そして全てを撃墜させたティアナは前を向き ウェンディは横目で見ながらもティアナを賞賛していると、狭い廃ビルの出口に差し当たる場所に、リディアが待ち構えていた。 どうやら今までの攻撃は此処に誘導させるものであったようだ。 既に出口を塞がれ逃げ場のない状況の中、ティアナはウェンディに対消滅バリアを前方に集め更に加速するように指示 ウェンディは早速前方にまるで両刃のような対消滅バリアを張り更に加速、 そしてウェンディの後ろではティアナがカートリッジを二発消費してクロスミラージュを構えていた。 そしてリディアからスターダストやフレークフラップなどが撃ち放たれる中 ティアナはバリアブルシュートやクロスファイアなどで迎撃、次々に相殺させながら接近すると リディアはシールドを張りライティングボードの先端の刃がバリアと接触する、 だが完全に受け止める事は出来ず弾き飛ばされたが、体勢を崩したまま反撃 バスターシュートを撃ち抜き、二人に迫ってくる。 「どっどうするんッスか!?」 「任せて!」 慌てるウェンディに対し力強く答えるとエクストラモードを起動、 ティアナの黒いリボンが白く十字の部分は緑に染まり、バリアジャケットもまた同じく緑色に染まり始め、 クロスミラージュは白く輝き、更に周囲には光り輝く粒子を纏っていた。 そして立ち上がりバスターシュートと対峙するとクロスミラージュを平行に構え 白く輝く粒子エーテルが集まり出し強力な直射砲、サンダーソードを撃ち出しバスターシュートを相殺 更にはリディアの下へと迫りリディアは右へと回避、難を逃れた。 「チッ!外したか…」 「…つうかティアナ、その姿はなんなんッスか?!」 急激に魔力が高まり姿も変わったティアナに質問を投げ掛けるが ティアナは「パワーアップよ」と一言だけ答えリディアに目を向けると、 リディアもまたティアナの変貌に驚いた表情を浮かべていた。 しかしすぐに冷静さを取り戻し弓を向けるとティアナは次の作戦を指示、 ティアナはリディア目掛けてライティングボードから飛び降りると リディアが迎撃とばかりにフレークフラップを撃ち出す、 だがティアナはクリティカルフレアと呼ばれるエーテルの散弾を撃ち出し相殺 強烈な光が二人の間を分かち、リディアは目を凝らす中で ウェンディは前方に対消滅バリア製の刃を張ったライティングボードを振り下ろす しかし難なく避けられ寧ろ攻撃を仕掛けられそうになるが、 ティアナが援護に入りリディアの出鼻を挫くと、ウェンディはエリアルキャノンを撃ち抜きリディアを吹き飛ばす。 しかしリディアはゆっくりと起きあがりティアナに攻撃を仕掛けてくると ウェンディが盾となり攻撃を防御、ティアナはエーテル製のクロスファイアを撃ち抜くが、エイミングウィスプにて撃破される。 正面では此方の攻撃は撃墜されてしまう、つまり不意な攻撃でないと倒すことが出来ない… そうティアナが呟きながら考えているとウェンディから一つの提案を持ちかけられる。 「そんな!それじゃあアンタが!!」 「大丈夫ッス!なんせ私は戦闘機人何ッスから!!」 そう言って胸を張るウェンディ、ティアナは暫く考えその提案に乗ると早速作戦を実行する。 「頼むッスよ!ティアナ!!」 「…ティアでいいわ」 親しい人物からはそう呼ばれているとウェンディに目を合わさずに ティアナは答えると、ウェンディは喜びに満ちた表情で返事をし、 二人はライティングボードに乗りリディアの頭上を旋回、 その中でリディアは幾つかの攻撃を仕掛けていくとライティングボードが急降下 真っ直ぐリディアに迫り先端には刃が作られており、ウェンディ・ティアナの順に並び身を屈めていた。 だがリディアは臆することなく攻撃を仕掛け続けライティングボードはリディアに接触するか否かの瀬戸際の場所を通り抜け リディアは過ぎ去ったライティングボードに仕掛けようとしたところ、 後方に乗っていたティアナがリディアを通り過ぎるタイミングを見計らって飛び降りていたらしく、 右手に持っていたダガーモードのクロスミラージュでリディアを斬りつける。 ティアナの攻撃によりリディアは左上から右下にかけて大きな切り傷を付けられたが リディアは報復とばかりにティアナに向けてバスターシュートを撃ち抜く そしてバスターシュートがティアナに触れた瞬間、ウェンディへと姿が変わり驚く表情を浮かべるリディア。 「ヘッ…私達の作戦勝ちッス!!」 そう言って勝利を確信した表情を浮かべながら地面へと落下していくウェンディ そしてリディアの後方からライティングボードに乗りウェンディの姿を解除したティアナが、 右手にダガーモードのクロスミラージュを握り締めリディアへと接近 リディアはとっさに魔力矢を放つがティアナの右こめかみ左頬と肩をかすめる程度に終わり 寧ろライティングボードの刃が腹部に突き刺さり更にティアナの渾身の一撃がリディアを首を捕らえ跳ねた。 ティアナの幻術によりお互いの姿を変えウェンディに ダガーモードのクロスミラージュを一本渡す事で成立した作戦は成功したのであった。 その後…ティアナはウェンディの下へ駆け寄り様態を調べ医療チームに連絡 暫くしてマリーと共に医療チームが到着し、ディエチとウェンディを搬送する。 その中、タンカーに運ばれているウェンディがティアナの名を呼びティアナはウェンディに駆け寄った。 「私達…敵同士だったッスけど……親友ッスよね?」 「…………えぇ」 ティアナは小さく頷き答えると、安心したのかゆっくりと目を閉じ運ばれるウェンディ そして搬送を見届けたティアナはスバルの身を案じ、その場から立ち去るのであった…… 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2430.html
(もしも容疑者が、絞られている四人の内誰か一人としたら……どうしてアリバイ工作もしなかった?) L change the world after story 第4話「初事件・解決編」 Lは、この事がずっと気がかりでならなかった。 ここまで念入りな犯行をするなら、何故アリバイの方にも手を回さなかったのか。 まずこの犯行そのものが、突発的なものとは思えない。 それなりに計画を立てた上での犯行なのは明確……それなら、アリバイに気を回さないのはおかしい。 (今挙げられている四人は全員白で、ちゃんとしたアリバイがある者が逆に犯人か…… いや、とにかくこの四人に関してまずは調べてみるべきだ。 家宅捜索をしてみて、決定的な証拠そのものは出てこなかったとしても、証拠を処分した痕跡が出てくるかもしれない。 もしも出てこなかったならば振り出しだが、出てきたならその人物に絞って推理は可能だ) 何はともあれ、やはり家宅捜査に出るしかない。 令状を発行出来次第、容疑者四人の自宅に乗り込んだ方がいいだろう。 Lは板チョコを全て食べ終わり、口周りを軽く拭いて綺麗にする。 とりあえず今は、この四人のうち誰かと仮定して推理を進めるとしよう。 (仮に、アリバイ工作が出来なかった理由が犯人にあるとすると……いや。 もしかして、出来なかったのではなく敢えてしなかった?) 犯人には、アリバイを作れなかった原因があったのではなく、敢えてしなかったのではなかろうか。 ふと、そんな考えが過ぎったが、それにはデメリットだけで一切メリットが無い。 まずありえないだろう、そう考えてここで一度この事を考えるの打ち切る。 今は、別の事柄に注目して推理を進めた方がいいと判断しての結果である。 この四人の中で、そんな時間に呼び出しが可能な人物は1人……被害者の恋人しかいない) Lが注目したのは、深夜の三時頃という死亡推定時刻。 考えてみれば、四人の中でこんな時間に被害者を呼び出せそうなのは恋人ぐらいなものである。 例え親しい仲であるとは言え、職場仲間や恋人の妹から呼び出されたとして、果たして被害者が応じるだろうか。 絶対にないとまでは言い切れないものの……恋人に比べれば、可能性はかなり低い。 (恋人が殺害したというのなら、さよならというあのメッセージの意味も一応分かるは分かる。 そして、もしあのメッセージに他に意味が、それも私の思っている通りのものがあるとしたら……そうだ。 それなら、アリバイも解決できる) ここでLは、先程デメリットしかないと考えた己の考えを打ち消した。 ほんの僅かではあるが、状況次第ではアリバイが無い事が逆にメリットとなる可能性があるのだ。 そしてそれは、見事なまでにこの状況と一致している。 (ここは、クロノさん達に、家宅捜索に出てもらいましょう。 それでもしも何かが出てきたら、黒と見ていい……もうこれは、徹底的に調べ上げるしかない) Lは給湯室から出て、再び無限書庫に向かっていく。 現時点で一番怪しいのは被害者の恋人……ここは賭けに出て、彼女に狙いを絞ってみよう。 そして少しでも疑わしい要素が発見でき次第、徹底的に調べ上げる。 かつて、夜神月がキラであると断定した時の様に……僅かでも何かを感じさせられる相手には、積極的に挑むのが一番である。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「すみません、今戻りました」 「あ、Lさん」 Lは無限書庫のドアを開き、中に足を踏み入れる。 すると……そこには、新たに一人の来訪者がいた。 先程、書類を提出しに出て行っていたなのはが戻ってきていたのだ。 「どうも、なのはさん……その様子だと、お話はユーノさん達から聞いたようですね」 「はい……何だか、大変な事になっちゃってますね」 「ええ、結構大変です。 今も、どうするべきか考え中です……クロノさん、そちらの方で何か進展はありましたか?」 Lはすぐにユーノの側まで浮き上がって、モニターを覗き込む。 すると……そんな彼に対して、二人はある吉報を告げた。 たった今、丁度事態に進展があったのだ。 『それなんだが、被害者の自宅を調べていた局員から連絡があったんだ。 どうやら、妙な写真があったらしい』 「写真……それ、今すぐ見られますか?」 『そう言うと思って、もう準備は出来てるよ』 エイミィはすぐさま、被害者の自宅から見つかった一枚の写真をモニターに映し出す。 そこに写っているのは、手を繋ぎながら互いに微笑みあっている一組の男女。 そして男性の方は、他でもない被害者である。 だがこれはどこからどう見ても、仲が良いカップルの写真にしか見えない。 一見、妙な点など何も無さそうだが……しかし。 「この写真、一緒に写っているのは、恋人さんじゃないですね?」 『ああ、そうなんだ』 すぐにL達は、その妙な点に気が付いた。 被害者と一緒に写っているのは、被害者の恋人ではない別の誰かだったのだ。 局員達も、聞き込みの時点で恋人の顔を確認しているので間違いない。 「二股、浮気。 そういうことですね」 「でも、元恋人って可能性もあるんじゃないんですか? 昔付き合っていたけど、今は違うとか……」 『いや、それは考えにくい。 写真の裏にバックナンバーが入っていたんだが、それは丁度一週間前のものなんだ』 クロノがそう言うと同時に、エイミィが写真の裏側を映し出す。 そこには確かに彼が言ったとおりに、丁度一週間前のバックナンバーが入っていた。 つまり、この写真は一週間前のものであると同時に、被害者とその女性との関係を証明している。 「被害者と恋人さんとは、半年前からの付き合い。 しかしこの女性は、被害者と少なくとも一週間前には関係があった。 これで被害者の恋人が、尚更怪しくなりましたね」 「メッセージと、犯行時刻の事とでですか?」 「ええ、ユーノさんもお気づきでしたか」 ユーノもどうやら、Lと同様の理由で恋人が怪しいと考えていたらしい。 そして、ここにきて被害者の浮気が発覚するという事態。 動機としては十分であり、さよならのメッセージもこれで筋が通った。 もうここまできたら、他の者達は横に置き、彼女一人に狙いを絞るのみであるが…… もしも本当に、動機が浮気だったとしたら、一つだけ確認すべき事がある。 Lはモニターに目を向けたままの状態で、なのはへと尋ねてみた。 「なのはさん、一つ質問します」 「はい、何ですか?」 「もしもあなたが仮に、ユーノさんと付き合っているとして。 そのユーノさんが他の女性と親しくしている所を目撃したら、どう感じます? 無論、友人としてではなく異性としてで」 「ふぇっ!?」 「ちょ、ちょっとLさん!?」 いきなりの発言に、なのはとユーノは顔を赤くして驚いた。 一体、こんな時に何を言い出すのか。 二人とも、そう反論しようとするが、対するLの表情はかなり真剣なものであった。 しかしなのはにとって、これはそう簡単に答えられる質問ではない。 (ユ、ユーノ君と私と……確かにユーノ君とは、昔からずっと一緒だったし。 よく皆からも、付き合ってるんじゃって言われるけど……) 自分に最も近しい異性であるユーノ。 そんな彼に対し、好意を抱いているか否か。 Lの質問には、この様な意が含まれている。 確かに、ユーノに対して他の男性とは違う感情を少なからず抱いているのは事実であるが……そんな事、すぐにここで言えるわけがない。 それは告白も同然の行為である。 (なのはが、僕の事をどう思ってくれてるか…… もしも、僕となのはの気持ちが同じだったとしたら……) そしてそれは、ユーノの方も同様であった。 彼もまた、なのは同様に顔を赤くして、完全に言葉を失っていた。 そんな二人の様子を見て、周囲の司書達はニヤニヤと笑っている。 予てから様々な噂があったこの二人だが、果たしてここで何か進展があるのか。 誰もがそれを期待していたが、残念ながら今はそれどころではない。 『やれやれ……Lさん、もっと普通に言ったら?』 「ええ、どうやらそうした方が良かったみたいです。 一応、一般的な女性の意見もと思ったのですが」 ここで、エイミィが二人に対し助け舟を出した。 正直な話、彼女もこのままどういう反応を二人が見せるのかというのは、興味があった。 だが残念ながら、今は事件の方を解決させるのが優先である。 『お前らしくもないな、ユーノ。 Lが何を言いたいのか、少し考えれば分かるだろ?』 (じゃあクロノは、あんな質問されて冷静でいられるのか?) 内心、ユーノはクロノに毒づいた。 ここでそれを口に出さなかったのは、なのはの事も考えてであった。 しかし、そんなクロノもこの様子では、どうやらLの言葉の意味には気づけたらしい。 すぐにユーノは冷静さを取り戻し、Lが何故あの様な質問をしたかということについて考えた。 そしてその答えを出すのには、然程時間はかからなかった。 「被害者の恋人が犯人で、且つ、動機が浮気だったとしたら、普通は浮気相手に対しても殺意を抱く筈だって事ですか?」 「ええ、そうです。 大概この手の事件というのは、浮気をした恋人とその浮気相手と、両方に対して犯行を行うものです。 しかしながら、今この時点における殺人事件についての報告は、この事件に関して以外管理局には入っていないと」 「それってまさか……?」 『近々、浮気相手の方も殺害する計画を立てているということだな』 犯人は更に罪を重ねる危険性がある。 Lが言いたかったのはこの事であり、同時にこの最悪の事態を危惧してもいた。 「昨日の今日ですから、流石にすぐ犯行には及ばないでしょう、ですが。 逆に言えばそれは、時間が経てば危険だという事です。 恋人さんが犯人でさえなければ、そもそもありえはしないでしょうが、現状犯人である可能性が一番高いだけに警戒すべきです」 『じゃあ、そろそろ家宅捜索に入って事実を確認してみるか?』 ここでクロノは、そろそろ家宅捜索に入るべきかどうかを尋ねてみる。 現在の状況を考えれば、動き出すには十分すぎる理由がある。 状況証拠的に、被害者の恋人を最重要参考人として扱うことは大いに可能。 そうなれば、家宅捜索には容易に踏み切れる。 事実Lも、先程まではそう考えていた……だが。 「いえ、もう少しだけ待ってもらえませんか? 今出てきた事実ですが、もしかすると私の引っかかりと繋がる可能性があります。 行動に出るのは、それをはっきりさせてからにしたいです」 しかし今は、先程までとは少し状況が変わった。 先程は、それ以上の推理材料が全くなかったからそう考えていた。 だが今は、新たな推理材料が出てきてくれた。 これが、己の中で引っかかっていたことに見事に結びついてくれたのだ。 『引っ掛かり?』 「ええ、今のを聞いて完全に分かりました。 犯人が何故アリバイを用意しなかったのですが、する必要がなかったからです。 考えてみてください、犯人がこれで連続殺人を犯したとして、その片方の犯行時刻にアリバイがあったとしたらどうします?」 「あ!!」 Lの言わんとしている事を察し、なのははやや大きめの声を出して驚いた。 彼の言うとおり、犯人が新たな犯行を計画しているとする。 そして、そちらにはちゃんとしたアリバイ工作を考えているとしたら、犯人を挙げるのは極めて難しくなってしまう。 『あのメッセージを次の犯行時にも現場に残せば、完全な連続殺人ということになる。 外部には一切公表して無い以上、便乗した者の犯行という線は完全に消えてしまう。 そうなれば、局員が犯人ででも無い限りは流石に同一犯による犯行として処理されざるをえない。 そして、その時にもしもアリバイがあってしまえば、例え前の犯行時にアリバイが無かったとしても無意味になる。 これが犯人の狙いか……!!』 「両方共にアリバイを用意しなかったのは、それが不可能だったから。 もしくは、自分を特別視されないように仕向ける為でしょう。 それぞれにアリバイが有るのと無いのとでは、逆に完全に無いのよりも、怪しまれる可能性は少なくなります」 犯人は敢えて一回目の犯行のアリバイを用意しないで、二回目の犯行で己の無実を証明するつもりでいる。 これは、かつてのキラ事件において、己が監視されている事に気付いた月と同様の行動である。 完璧すぎては逆に怪しまれるかもしれないと判断し、そうならない様にアリバイを有る場合と無い場合と、二つ用意してきたのだ。 だとすると、このままではまずい。 「当たり前の事ではありますが、二度目の犯行はこれで尚更防がなければならなくなりました。 しかし、現時点での逮捕は難しい。 同行してもらったとしても、長期の行動制限は状況的に少々厳しい、はっきり言って最悪です」 『だったら、その浮気相手の方に常時監視をつけといて、犯行の現場を押さえるとか? それなら殺人未遂の現行犯で逮捕できるしさ。 何も起こらなかったら、まあそれはそれで何も無くて良かったってことで』 「それが妥当な判断ではあるでしょう、ですが。 厄介な事にそれだと、一度目の犯行に関しては裁く事が出来ません」 『だが、それでも新たな犯罪を防ぐ事は出来る』 「しかしそれでは、私の気が治まりません。 こんな形で犯人を逮捕するのは、はっきり言って嫌です」 『なっ!?』 Lのこの発言には、誰もが驚き呆れさせられた。 あろう事か彼は、自分が嫌だからという理由で犯人逮捕に踏み込まない気でいるのだ。 これは以前にも月達から指摘されたが、Lは完全な勝利を目指そうとする傾向がある。 その悪い所が、今ここで露出してしまったのだ。 『ふざけるな!! 人命がかかっているのに、何を言い出すんだ!!』 「そうですよ、Lさん!! 確かに、気持ちは全く分からない訳でもないですけど、そんな事を言ってる場合でもないじゃないですか!!」 当然ながら、これにはなのはやクロノ達が猛反論する。 ユーノとエイミィも、二人ほどではないにしても勿論Lに対して不満を告げた。 Lとしては、当然ながら不満な展開である。 しかしながら、それでも人命が第一というのは分かっている。 「……そうですね、人命は大切です。 分かりました、何としてでも一回目の犯行を立証する方法を考えますが、一応お願いします。 浮気相手の方が何者なのかを早急に調査して、所在が分かり次第気付かれないよう監視を」 『……一応、か』 「ええ、一応です」 Lの言い方に対し、クロノは少々苛立つ。 先程はマイペースだと言ったが、ここまでくると流石に度が過ぎている。 一気に場の空気は一変し、険悪なものへと変化した。 このままでは流石にまずい。 そう判断し、とっさにエイミィが口を挟む。 『え、えっとさ。 家宅捜索の方は結局どうするのかな?』 「勿論お願いします。 これで証拠を始末した痕跡すら見当たらなければ、今までの議論は無駄になりますが。 それを確かめる為にも、実行しませんとね。 一応任意でですから、断られる場合を想定して、令状等の準備も。 まあ犯人の考えがこちらの予想通りでしたら、寧ろ断らずに受け入れてくれるとは思いますが」 「案外、動かぬ証拠とか見つかるといいんですけどね。 こう、見落としていた何かとか」 ユーノもとっさのフォローを入れる。 実際に、何か意外な証拠が見つかるという可能性はゼロではない、だから気を落とすなと。 そしてそこへ、なのはも続けて口を開いた。 彼女もまた、何気ないフォローのつもりであった……しかし。 「それにもしかしたら、焦った犯人が口を滑らせるかもしれませんよ?」 その一言は、Lに行動へと移させる引き金となった。 「……そうですね。 それでいってみましょうか」 「ふぇ?」 なのはの言葉を聞いたと同時に、Lの中で考えが纏まった。 犯人をどう逮捕するか、完全に策が出来上がったのだ。 やや強行的な手段であるが、同時に効果的でもある方法が。 出来るならば、もう少しだけ物的証拠を出して追い詰めたかったが、仕方がない。 「Lさん、もしかして?」 「ええ、上手くいけば犯人を逮捕出来ると思います。 クロノさん、少し家宅捜索の前に準備をしてもらってもいいですか?」 『準備だと?』 「はい、ここからは魔法の出番です」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「家宅捜索ですか?」 「ええ、犯人の疑いがある方には全員一斉に検査を行っています。 けどまあ、安心してください。 逆に言えば、これで何も見つからなければ、あなたは犯人ではないということですから。 それにこれは任意ですから、無理ならば断ってくれても構いませんよ」 それから数十分後。 クロノは数人の局員を引き連れ、容疑者―――被害者の恋人の自宅へとやってきていた。 Lの指示通り、家宅捜索に入ることにしたのだ。 ちなみにここで、全ての容疑者宅を一斉に検査をし始めたといったのは真っ赤な嘘である。 行うのは彼女一人に対してだけであり、彼女の警戒心を抑える為にワザとこの様に言ったのだ。 『口が巧いなぁ、ハラオウン提督』 『流石っていうか、何と言うか。 でもよ、何で提督が自分から動き出したんだ? Lさんから聞いた策は、別にそんなに難しいことじゃないってのに』 『確かにそうだよなぁ……』 局員達は、クロノの口の巧さに感心する一方、何故彼がこうして動いているのかが気になっていた。 非番の所を付き合ってもらっているとはいえ、彼は提督である。 この様に自ら動くというのは、地位を考えればどうにも考えにくかったのだ。 一体どうして、クロノはこうしているのか……それは言うまでもなく、Lが原因である。 (L……お前の策が本当に上手くいくかどうか、目の前で見せてもらおうじゃないか) クロノは先程のLの発言により、一気に彼に対しての不快感と敵対心を覚えた。 しかしながら、彼の実力を認めていることもまた事実であった。 ここまで状況を整理できたその推理力は大したものであり、世界一の探偵というのも頷ける。 憎めない奴、というのは少々妙な言い方ではあるが、何とも言えない気持ちを覚えたのは確かであった。 だからだろうか、こうして目の前で彼の策を見たくなったのである。 「そうですか……分かりました。 それじゃあ、その間私は外の方にいればいいでしょうか?」 「いえ、大丈夫ですよ。 寧ろ中にいてもらった方が、質問等がある時に楽ですから」 「分かりました。 それでは、中へどうぞ」 相手は家宅捜索に素直に応じてきた。 この反応に、少々ではあるがクロノは眉を細める。 普通、あなたには容疑がかかっている、だから家宅捜索をさせてほしいと言われ、こうもすんなり受け入れるだろうか。 例え犯人で無かったとしても、自宅に踏み入られるとあれば堪ったものではない。 何かしらの戸惑いや、もしくは拒絶反応を確実に見せるはずである。 そうなれば仕方が無い、令状を発行するなり、それなりの手続きを取らなければならない。 いや、寧ろそうしなければ普通はこんな真似などできない。 はっきり言って、相手も完全に同意してくれる場合というのは極めて稀なのだ。 だからクロノは、この段階では捜索を断られるのを覚悟していた。 しかし彼女は、至って冷静に、驚く様子も無く自分達を受けいれてきたのだ。 これではまるで、自宅を捜索されるのが分かりきっていたかのようである。 自分が怪しまれるというのを、見越していたとしか思えない。 (やはり、か) これでより一層、この女性が怪しくなった。 クロノはすぐさま、他の局員達へと念話でその旨を伝える。 その後、彼等は彼女に案内され、家屋へと足を踏み入れようとする……が。 「……」 「おい、どうした?」 「あ、ああいや、その……少し緊張しちゃいまして」 一人、やけに緊張している者がいた。 オレンジ色の髪の毛をツインテールにした、若い女性である。 クロノはそんな彼女を見て、優しく微笑みかけた。 「大丈夫、肩の力を抜いて。 気持ちは分かるが、落ち着いてやれば大丈夫だ」 「は、はい……ありがとうございます」 クロノの言葉を聞き、彼女は一度大きく深呼吸する。 そして、ホンの少しだけ天を仰いだ後、気を引き締めて中へと入っていった。 これで、被害者の自宅に入るという第一関門は突破。 後は証拠を始末した痕跡をどうにかして見つけ出し、策を実行すればいい。 すぐに局員達が一斉に動き出し、家の中を隅々まで捜索し始める。 Lの言うとおりならば、確実にある筈だというある物を探して。 『これは……提督、ありました!!』 『本当か!!』 そして数分後に、一人の局員がそれを発見した。 庭先に置かれていた、恐らくは次のゴミの回収日に捨てる予定であろうゴミ袋。 その中には、Lが言ったとおりの物―――大量の灰があったのだ。 この念話を受け、クロノは即座に全局員へと同じく念話で指示を出す。 準備は完全に整った、後は策を実行するのみである。 早速クロノは、容疑者の女性と共にその場へと向かっていく。 「すみません……この灰は? 何か、それなりの量の物を燃やしたみたいですが」 クロノは部下からゴミ袋を受け取り、その中にある灰を手に取った。 紛れも無く何かを燃やしたという証拠であり、そして推理通りならば燃やした物は犯行当時の衣類。 上着、ズボン、手袋、靴下、靴。 返り血が付着してしまったであろうもの全てである。 「ああ、これは昨日間違えて燃やしてしまったんです。 洗濯物を干していたんですけど、ストーブの火の不始末で……ほら、奥の部屋も、畳とかが駄目になってません?」 「そうですか……それは災難でしたね」 『やはり、素直に認めるわけが無いか……部屋はどうだ?』 『言うとおり、黒く焼け焦げた痕跡があります。 本当に不始末では無いのなら、恐らくは自分の手でやったものだと思われますね』 女性の言うとおり、奥の部屋には畳が焼け焦げた後があった。 どうやら、これはかなりの念の入れようである。 御蔭でこの問題は、これ以上追及するのは難しいだろう……ただし。 それはあくまで、普通の場合である。 Lの考えた策は、この普通を覆すとんでもない代物なのだ。 そしてクロノは終に、その策の実行へと踏み切る。 「それじゃあ、いきなり家宅捜索に出てしまった御詫びも兼ねまして、我々の方で修復しましょうか?」 「え……?」 修復。 クロノの口から出たその一言を聞き、被害者の顔が一気に凍りついた。 まさか、そんな馬鹿な。 彼女は、まさにそう言わんばかりの表情を露にしていた。 そしてクロノはそんな状態の彼女へと、容赦無しの追い討ちをかける。 「ええ、修復魔法ですよ。 この程度の量の灰でしたら、何とか燃える前の衣類に戻す事が出来ますしね」 「そ、そんな魔法があるんですか?」 「はい、結構皆さん驚かれるんですよ。 まあ、信じ難い魔法でしょうから無理は無いですがね」 女性の悪い予感は、完全に的中してしまった。 灰を元通りにするなどという魔法があるなんて、思いもよらなかった。 このままでは確実にばれてしまう。 (そんな……でも、断れない。 断ったら、それは私が犯人だって言うようなものじゃないの……!!) 自分の不始末で失ったものが元通りになると言われ、それを嫌がる者などまずいない。 ましてやこの状況では、別に修復などしなくていいと言えば完全に怪しまれる。 自分は証拠を燃やして処分しましたと、そう言ったも同然なのだから。 しかし、それをせずともこのままでは証拠が出てしまう。 最早……逃げ道は無かった。 「それじゃあ、はじめますよ」 クロノはゴミ袋へと掌を向け、そっと目を閉じる。 すると、その直後。 ゴミ袋は一瞬眩く光り……そしてその光が収まった時。 その中には灰は一粒も無く、代わりに彼女が最も恐れている代物―――血塗れの衣類があった。 「そんな……」 女性はその表情に絶望を露にし、膝から床に崩れ落ちた。 己が罪を犯してしまったという事実が、完全に発覚してしまった。 ここからの言い逃れは、もはやどう足掻いても出来ない。 「どうやら、決定的な証拠が出てきてしまったな」 クロノはそんな彼女へと、無表情で言葉をかける。 それと同時にバインド魔法を発動させ、手錠代わりとしてその両腕を即座に拘束した。 女性はこれに対し、全くの抵抗を見せない。 己の罪を、完全に認めていた。 「完璧だと……思ったのにね。 対して驚いてるようには見えないけど、やっぱり最初から私に狙いをつけてたのね?」 「ああ、そちらの考えが全て分かったからな。 あのメッセージも、今後の事を考えてやったもので間違いはないんだろう?」 「ええ、そうよ。 次にあの女を殺す時、私には完璧なアリバイがある様に考えてたわ。 連続殺人なんだから、これで私は容疑者から外れる。 晴れて白って思ったんだけど……残念ね」 「一応、メッセージの意味も聞いて構わないか?」 「そのまま、さよならって意味よ。 あれでも一応、好きだった相手だったものね」 己の目的と、そしてメッセージの意味。 女性はクロノの問いに対し、素直に答えていく。 全てがばれた以上、隠し事などしていても無駄だと悟ったからだ。 だが……彼女はこの時、己が墓穴を掘った事に気付いていなかった。 そしてその事実を認識するのは、このすぐ直後である。 「まさか、こんなに巧くいくとはな」 「え?」 「あれをよく見てみろ」 クロノは女性に対し、ゴミ袋を指差しながら呟いた。 女性はすぐにそれを見て……そして、驚き声を失った。 それも当然である。 何故ならそのゴミ袋には、血塗れの衣類など入っていないのだから。 先程と同じく、大量の灰が入っていた状態なのだから。 「え……え!? ど、どういう事?」 「修復魔法なんて、そんな便利なものは最初から無かったという事だ。 そういう風に見せかけてた……幻術を使ってな」 「幻術!?」 先程の光景は全て、幻術で見せかけた偽物である。 女性はそんなクロノの答えに、大いに驚愕した。 これこそが、Lの考えた策。 犯人に対して幻術を用い、その自白を促すという強行手段である。 効果は見ての通り絶大……しかし。 「で、でも自白じゃ完璧な立証にはならないわよ!! それにこれなら、強要されたって取る事も……!!」 自白だけでは、逮捕に踏み切るのは不可能。 ましてや状況的には、そう言う様に強要されたとも取れる。 これを武器に、言い逃れる事は出来る。 そう思い、彼女は開き直ったのだ。 だが……それも無駄な足掻きに終わる。 「いや、残念ながらあなたの有罪は確定だ。 犯人であるという決定的な証言が出てきてしまったんだからな」 「証言って、何を根拠に……あっ!?」 ここで女性は、己がとりかえしのつかないミスを犯した事に気付いた。 先程のクロノの問いに対し、つい素直に答えてしまったのだ。 自分が犯人でなければ知りえない情報……犯行現場に残されていたメッセージについてを。 まんまと乗せられてしまった。 見事なまでに、嵌められてしまったのだ。 「現地の捜査に当たっている局員以外にあの情報は開示していない。 唯一例外としてあれを知っているのは、書き残した犯人だけだ。 そして君は、それの意味についてまでも完璧に答えてしまった。 こうなっては最早、言い逃れは出来ないぞ?」 立証は出来た。 これで、全て終わったのだ。 女性の顔に再度絶望の色が浮かび、そして地面に両手をついて崩れ落ちた。 「……結構えげつないわね、管理局のやり方って」 「だそうだぞ、L」 クロノは軽く溜息をつき、通信機器のモニタースイッチを入れる。 ここまでのやり取りは、実は全て無限書庫にも筒抜けであったのだ。 ただし、犯人に余計な警戒心を覚えさせぬ様、モニターの電源は切って音声のみにしてである。 そして今、ようやくモニターが入ったわけなのだが…… 『お疲れ様です、クロノさん』 「……おい、何だこれは?」 『モニターの電源をお切りになられている間に、ユーノさんに用意してもらいました。 一応、人前に姿を現す時は、こうするのが私のスタイルでして』 モニターに映し出されたのは、無限書庫の風景などでは無かった。 それに代わって、真っ白な背景に特殊な字体で『L』の一言が唯一書かれているだけの、一枚絵が映し出されていたのだ。 聞こえてくる音声も、肉声ではなく機会音声になっている。 これは、Lがこれまでの活動で己の顔を隠す為に使い続けてきたものである。 彼はクロノがモニターを切っている間に、これをユーノに用意してもらっていた。 こうして被害者の前に顔を出す際、万が一の事があっては困るからという配慮である。 『今回の一番の功労者はあなたです。 ありがとうございました、ティアナさん』 「いえ、そんな……私こそ、お役に立てて光栄でした。 ありがとうございます!!」 Lはこの逮捕劇における最大の功労者―――ティアナ=ランスターへと礼をした。 先程、やけに緊張をしていたあの少女である。 彼女は実は言うと、捜査に当たっていた局員ではない。 いや、それ以前に局員ですらない民間人なのだ。 そんな彼女が何故、この場にいるのか。 その話は、つい十数分程前に遡る。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「クロノさん、そちらで幻術魔法を使える方はいませんか?」 『幻術だと?』 「ええ、犯人を追い詰めるにはこれが必要不可欠なんです」 Lは己の策を実行するに当たって、幻術魔法が必要不可欠であるとクロノに告げた。 一体、幻術を使って何をするつもりでいるのか。 先程のなのはの発言を聞き、何かを思いついたようではあるが……ここでクロノが、ある最悪の可能性に気付く。 『まさかお前、被害者に幻を見せて脅すつもりか?』 「脅迫はしませんが、その考えで正解です。 まず今の状況を整理しますが、犯人は十中八九被害者の恋人と見て構いません。 しかし犯人は、殺人の証拠を一切残していないと思われます。 だが……証拠を処分したという証拠は確実に有ります、それこそが犯人の最大の弱点です」 『それって、どういう事?』 「この証拠が殺人の証拠であると犯人に見せ付けられれば、言い逃れは出来ないということです。 しかし残念ながら、私が先程までこの書庫内で見た資料の中には、それが可能そうな魔法はありませんでした。 ですから、ここはそれがある様に見せかけます」 「……もしかして、Lさん!?」 Lが何を言わんとしているのか、真っ先にユーノが気付いた。 それは、脅迫等よりも遥かに性質が悪い代物。 正真正銘の問題行為……幻術による証拠の捏造である。 少しばかり遅れて、クロノ達もそれに気付いた。 無論、賛成など出来はしない。 『一体何を考えているんだ!! そんな方法、例え犯人を逮捕できたとしても……』 「いえ、これで逮捕するつもりは毛頭無いですよ」 『何?』 しかし、Lはそんなクロノ達の言葉をあっさりと流した。 彼とて、己の為そうとしている事が問題行為である事ぐらい分かっている。 これで犯人を逮捕すれば、逆に自分達が糾弾される事になるであろう事ぐらい予想できている。 だが……これが決定打で無いのならば、話はまた別である。 「幻術で証拠を捏造する目的は、逮捕ではなくあくまで自白です。 自分が犯行を行ったと、そう発言させられさえ出来ればいいんです」 「一体、どういう事なんですか?」 「犯人の逮捕に必要なのは、何も証拠だけではありません。 なのはさんが先程言ったように、捜査上我々と犯人しか知らない証言があれば、それでもOKです。 そして現在、それに最も適しているものが一つあります」 『適している……そうか、犯行現場のメッセージ!!』 「ええ、犯人があれの存在を口にするように誘導させられれば、それでチェックメイトです。 おまけに犯人は、こちらがメッセージの筆跡を頼りに迫ってくるのではと思っている可能性が高い、逆にそこを突きます。 犯人が自白するまで一切メッセージの存在は口にせず、ギリギリの所でさりげなくその意を尋ねる。 これ以上ない、理想的な攻撃です」 証拠を捏造する真の目的は、犯人を自白させた上で、更に決定的な証言を得る事であった。 そしてその証言は、捜査に当たっている局員と犯人以外に知る者がいない、あのメッセージについてである。 己が完全に敗北したと思いこんでいる相手から、それを聞き出すのは容易い。 皆がこの方法に納得し、そして最善であるとも思った。 だが……現状、これを実行するのには問題が一つある。 『駄目だ、L。 確かに効果的な作品だとは思うんだが……これを実行に移すのは不可能だ』 「まさか、いないのですか?」 『ああ。 残念だが、捜査に当たっている局員には一人も、幻術を使える者がいないんだ』 今この場には、幻術魔法を使える魔道士が一人も居ないのだ。 これでは、幾ら策を実行に移したくとも不可能である。 尤も、Lとてこの状況を全く想定していなかったというわけではない。 使える者がいないならば、すぐに探すまでである。 「なら近隣の担当に連絡して使える方を、いえ、いっそこの野次馬の中にいるかどうか聞いてください。 この程度の事でしたら、民間人がご協力しても問題は無いはずですよね?」 『お前……さりげなく、とんでもない事を言ってくれるな』 「駄目ですか? なのはさんやユーノさん達も、元々は民間の立場でありながらも管理局に協力し、その後管理局入りしたと聞いてますが」 行動を移すならば早い方が断然いい。 Lはインターネットで仕入れた情報を武器にし、クロノと交渉をする。 ユーノ達の様な前例があり、更に彼等の時と違って格段に危険度は低い。 断られる理由は無い。 無論、これで使い手が居なければ素直に局の方へと要請はする。 『だが、もし相手が犯人でなかったら責任問題だぞ?』 「ですから、犯人であると100%確信出来た状況で使いますよ。 まあ、それでも万が一という可能性も一応考えて、失敗した時には報告書にこう書いてください。 無限書庫司書長が人質に取られ、無理矢理やらされた、と」 「ちょっと、何言ってるんですか!?」 『……自分がどうなるか、分かって言ってるのか?』 「ええ、私の推理が正しいと確信して言っています」 Lは己の推理が正しいと確信しているからこそ、この様な無茶な発言をさらりと言う事が出来た。 もはやこれには、ユーノ達も溜息しか出ない。 こうなれば、どう言っても彼は己の意見を曲げないだろう。 尤も、彼の推理が正しいであろう事は皆分かっている。 ならばここは、やるしかないだろう。 『……こちらで無茶と判断出来次第、作戦は中断する。 この条件でいいな?』 「ええ、ありがとうございます。 それでは早速、お願いできますか?」 『ああ、分かった。 エイミィ、いなかった場合に備えて近隣の部隊にも連絡を頼む』 『はいはーい、もうやってますよっと』 「仕事が早くて助かります、エイミィさん」 『ま、クロノ君の考えは御見通しだもんね』 エイミィの手際の良さに感心をしつつ、クロノ達は局員に指示を出す。 もしもこの野次馬の中に幻術の使い手がいてくれれば、それ程都合のいい事は無い。 そうなってくれる事を願いつつ、Lは報告を待つ事にした。 しかし、待っている間に何もしないというわけではない。 「ユーノさん、今のうちに少しお願いしたい事があります」 「何ですか?」 「私の声を機会音声に変更する手段を、すぐに用意してもらえますか? それと、少しペイントソフトを使わせてください」 「機会音声にペイントソフトですか? 一体、何を……もしかして顔を隠す為ですか?」 「ええ、ここからは一般の方と、そして犯人を相手に姿を見せる可能性が高くなります。 それに備えまして……」 『L、見つかったぞ。 幻術魔法を使える者が一人いた』 Lが己の考えを告げようとした、その瞬間であった。 クロノから、幻術魔法の使い手が見つかったという報告が入ったのだ。 それを聞くと同時に、Lは素早くポケットへと手を伸ばし、先程食べていた板チョコの包み紙を取り出す。 そしてそれに指で覗き穴を空け、簡単な仮面を作ったのだ。 まさかこんなに早く見つかるとは思っていなかったので、この場はこれで代用しようというわけである。 傍からすれば、異様な事この上無い訳ではあるが。 『……何の真似だ、L?』 「いえ、気にしないで下さい。 それよりも今は、事件の方をどうにかするのが先です。 それで、後ろの方がそうですね」 『ああ。 すまないが、自己紹介を頼めるかな?』 クロノは、後ろに立つ一人の少女へと声をかけた。 彼女が先程見つかった、幻術を使える一般人。 Lが求めていた人材である。 『はい、初めまして。 私はティアナ=ランスターといいます』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『それじゃあ、僕達は現場の後始末に入る。 ユーノ、L、色々と助かった』 そして話は現在に戻る。 犯人の女性は局員に連行され、事件は無事に解決した。 残るは事後処理だけであり、ここでL達の役目は終了する。 ティアナに関しては、後日に感謝状が贈与される事となり、彼女も大変嬉しく感じていた様であった。 ちなみに、これは同様の立場であるLにも当てはまる事ではあるのだが、これはL自身が断った。 尤も、その代わりとしてちょっとした要求をしたわけなのだが。 「それではクロノさん、エイミィさん、お願いしますね」 『……あまり期待はするなよ。 幾ら犯人逮捕に協力してくれたとはいえ、無茶な要求なんだからな』 『こっちはまあ、問題無さそうだよ。 使い古しのなら、それなりに良いのがありそうだしね』 クロノには、ここ数十年の間にミッドチルダ内で起きた事件に関する資料を。 エイミィには、使い古しのもので構わないので、パソコンを要求を。 それぞれ、報酬としてLは要求したわけである。 最初は、それはどうかと思ったが、Lがいなければ犯人は捕まえられなかった。 その為、出来る限りの事はしようと二人はLへと告げたわけである。 (それにしても、ティアナさんのあの喜びよう。 気持ちは、分からないでもないですが……) Lはここで、ふと事件解決時の事を思い出す。 あの時のティアナは、かなりの様で喜んでいた。 あれは、感謝状を貰える事に対してというよりも、自分自身の力が役に立ったという事を嬉しく思っていた様に見えた。 思い返してみれば、野次馬の中から彼女が見つかったのもやけに早かった。 彼女は局員達の問いかけに対し、何の抵抗も示さず、素早く立候補したのではと考えられる。 (今この場で言うべきことではない、が。 ティアナ=ランスターさん、少し引っかかりますね) 気にしすぎかもしれないが、Lにはどうも彼女の事が引っかかっていた。 ティアナという名前、いや、ランスターという性に関して、後でユーノに調べてもらうのがいいかもしれない。 何も無ければそれに越した事は無いのだが、もしもという可能性があるからだ。 (ユーノさんも、何か感じたのでしょうか?) ふと、Lはユーノの表情を伺う。 彼ももしかしたら、自分と同じ様に考えているのかもしれないと思ったのだ。 しかし、残念ながらユーノは何かを考えているといった様子ではない。 単に彼女から何も感じなかったのか、それとも感じてはいたが気のせいであると考えたのか。 どちらにせよ、後々この事は話すつもりではあるが…… (ん……なのはさん?) ここでLは、なのはが何かを考えているらしい様子であったのに気が付いた。 ユーノではなく、彼女の方が自分と同じ事を感じたのか。 しばし、彼はその表情をうかがってみる。 だが……どうも彼女は、自分とは違う事を考えているらしい事にすぐ気付く。 (ティアナちゃんかぁ。 幻術は十分な腕前だったみたいだけど……) 「なのはさん?」 「あ……すみません、何ですかLさん?」 「いえ、何か考え事をしていたように見えましたので。 ティアナさんの事、ですか?」 「ええ、ちょっと。 幻術以外にも、何か魔法が使えるのかなって思って」 なのはが気にしていたのは、ティアナの使える魔法についてであった。 状況の把握こそ音声だけでしか出来なかったものの、彼女の幻術が高いレベルである事は十分認識できた。 それ程の腕前の持ち主なら、他にもそれなりに魔法が使えるのではとふと考えたのだ。 そしてLは、そう考えたその理由を即座に見抜く。 「なのはさんは、ティアナさんが将来管理局入りするのではと思ったわけですね」 「……凄いですね、Lさん」 「まあ、今のは直感みたいなものです」 Lは驚くなのはへと、大した事ではないという風に答える。 しかし、実際のところは直感ではなく、ちゃんと考えてこの答えは出してある。 彼女の先程の喜び様は、将来管理局に入りたいと思っており、その管理局に協力できたからではと、そう考えたのだ。 それならば、一応分からなくは無い。 「しかし、どうしてその様にお考えを?」 「大した理由は無いですよ。 ただ、いい魔道士になれるんじゃないかなって思ったから」 なのはは微笑を浮かべてLに答える。 ティアナは将来、優れた魔道士になれるのではと直感した。 それは紛れも無い事実である……が。 実はこの時なのはは、昨日告げられた親友のある一言についても、同時に考えてもいたのだ。 ―――私、自分の部隊を持ちたいんよ (自分の部隊かぁ……もしはやてちゃんがここにいたら、今から狙いをつけてたりしたかもね) 彼女ならやりかねない。 そう思って、なのはは思わず苦笑してしまった。 勿論、そんな彼女の夢には喜んで賛成している訳ではあるのだが。 (でも……強ち、笑い話でもないか) なのはは、静かにLへと視線を向ける。 昨日の空港火災に続き、今し方見せた見事な推理力。 彼程の能力を持つ者など、そうはいない。 もしも同じ部隊で共に戦う事となれば、相当の力になってくれるだろう。 恐らくは、はやてもそう考えている筈である。 (はやてちゃんはきっと、Lさんを自分の部隊に入れたいって思ってるだろうね)
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1777.html
第2話 魔法のある世界 剣崎達はティアナ達に連れられて、この世界のことを知る人物がいるという場所に向かっていく途中である。 「すみません。剣崎さん、飲み物持ってもらっちゃって。」 「いいっていいって。」 「ところで、この場所知っている人ってどんな人?」 橘がそう聞くとスバルが答えた。 「え~と、元々はこの世界に住んでたって聞いてます。今は任務があるからって私たちも来たんです。」 スバル達が会話しながら歩いていると、その人物がいるところに着いた。 「ここなのか?」 「はい」 剣崎達が着いた瞬間この世界の住人なのはとフェイトとはやてが剣崎達のところに来て 「あなた達がティアナが話してた人たち?」とフェイトが問いかけた。 「はい。そうですけど・・・。」「じゃあ、名前教えてくれるかな?」 「俺は剣崎一真だ。」「橘だ。」「・・・相川始だ。」「俺は上城睦月です。」 と剣崎達は自己紹介を終え、はやて達も紹介を終えこの世界のことを説明を始めた 「では説明します。ここはあなた達がいた世界とは違います。」とはやてが言う 「え?そんな・・・」「バカな・・」剣崎達はショックを隠せない。 「でも、ここは日本ですよね?」「はい。ここは日本の海鳴市。ティアナから報告があったんやけど、 あなた達が戦ってたのは一体なんです?もしかしたら私たちも協力しますんで。」 剣崎達は先ほど戦ったアンデット達のことそして、バトルファイトのことをはやて達に話した。 「もしかしたら、スカリエッティが関係してるかも・・・」 「スカルエッティ?誰だそいつ?」フェイトはスカルエティや今まで起きたことを剣崎達に話、そして 「よし、じゃあ俺たちの世界が危ないけどこっちも危ないから、俺は協力するよ。」と剣崎が言った。 「け、剣崎?」「剣崎さん?本気なんですか?」橘と睦月は協力には否定して、始は「俺は剣崎に 賛成してる。今の状況を考えてみろ。」それは始が珍しく橘と睦月に言って 「もしかしたら、 あなた達が追っている天王路って人もスカリエッティに協力している可能性があると思うんだけど」 フェイトがそういって「たしかに・・・今はここで争っている場合じゃない。」 橘がはやてに向かってこういった 「俺たちしばらくの間協力する。それでいいか?」橘が言って「本当ですか~?ありがとうございます。」 「だけど、そのまえに、任務があるんだけど協力してくれるかな?」となのはがいい。 「あなた達の力もみたいしね」フェイトもこういい。 「じゃあ、剣崎さんと始さんはスバルとティアナのところで、橘さんと睦月さんはエリオとキャロのところでいいですか?」 「「「「ああ」」」」 始と睦月は何かに気づいた 「なあ、いつから俺は相川さんから始さんになったんだ?」「俺もそう思った。」 「え?ああ、それはやね、え~と・・・」とはやては顔真っ赤になっていた。 「始さんてお兄さんって感じがするんよ~。うち兄弟いなかったから」 「そうか・・・悪いことをした」始は謝った瞬間 「はやてちゃん。クラールヴィントが対象をキャッチ」 「みんな。頼むよ」 「「「「はい」」」」と新人フォワード達がいい 「俺たちもやるぞ。」 「「ああ」」「はい」 剣崎達も戦闘の準備を始めた。 そして、任務が開始された。 「マッハキャリバー」 「クロスミラージュ」 「ストラーダ」 「ケリュケイオン」 「「「「SET UP」」」」 彼女たちが自分たちの相棒をの名前を呼んで。先ほどの服が代わった。 そして剣崎達は自分たちのバックルを出し 「「「「変身」」」」 剣崎、橘、睦月の前にカテゴリーAが描かれた光が現れ剣崎はブレイドに、 橘はギャレン、睦月はレンゲルに変身し、始はマンティスアンデットの力を借りカリスに変身した。 「これが、剣崎さんたちの力なんや・・・」そうはやてがいい。 ブレイドとギャレンはラウズアブゾ-バーにQとJを入れ。 「「アブソーブクイーン」」「「フュージョンジャック」」 ブレイドとギャレンはジャックフォームとなった。 そして、その相手が剣崎達にとっての初出撃となった。 「よし。今だ。」 「サンダー、スラッシュ」 「ドロップ、ファイアー」 「トルネード、ドリル」 「スクリュー、ブリザード」 「ライトニングスラッシュ」 「バーニングスマッシュ」 「スピニングアタック」 「ブリザードゲイル」 「ディバインバスタァァァァー」 「クロスファイアー・・・・シューーート」 「一閃必中・・・・はあああああああ」 「フリード、ブラストフレア、ファイア」 「対象からレリックを確認リィンお願いできる?」 「はいですぅ。」 剣崎達のお陰で任務が終わり剣崎達はなのは達が今住んでいる、ミッドチルダに移動した。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/457.html
スレ住人の皆様 VS系単発SS 二代目スレ181氏 リリカルなのはVSゴリラ 二代目スレ243氏 高町なのはVSねぎま 二代目スレ295氏 高町なのはVSウォッシュアス 三代目スレ158氏 高町なのはVSバカボンのパパ 三代目スレ260氏 なのはさんVSマサルさん 三代目スレ368氏 なのは 対 ヘドラ 四代目スレ24氏 高町恭也VSロリータ番長 TOPページへ このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2836.html
「敵、完全に沈黙しました」 その報告を受けたクロノは安堵の溜息と共に艦長席に深く腰掛けた。 まったく想定していなかった事態ではあったが、なのはとヴィータの奮闘のおかげで、無事に殉職者を出すことなく本局に戻る事ができそうだ。 (それにしてもあのAMF搭載型の機械兵器、いったい何だったんだ?今回の魔力反応と何か関係が?第一、あの遺跡にあんな物がある筈がない。 間違いなく、外部からの介入によるものだ。だとしたら、一体何の為に襲撃してきたんだ?管理局に喧嘩を売るのが目的なら、僕達が生還できないようにする為にもっと多く送りこんでくる筈だ。 いや、管理局を唯の実験相手に選んだだけだとしたら?) 疑問は次々に湧いてくる。 その疑問に答えを出すには・・・ (まずは調査だな。だが、今すぐという訳にはいかないな。遺跡内部にあれがいる可能性もあるんだ。ここは一度報告してから、増援を待つのが得策か・・・) そうやってクロノが今後の方針を考えていると 「はい、クロノ君お疲れ様」 補佐のエイミィがコーヒーを持ってやって来た。 「ありがとう、エイミィ」 「なーに、これくらいお安い御用だよ。それよりも、一体何だったんだろうね、あれ。さっき、データバンクにアクセスして調べてきてみたんだけど、全くのアンノウン。どこでも確認されてないね」 「だろうな。分かっているのはAMFを搭載してるってことくらいだ」 「あれ?そういえば、なのはちゃん達が捕まえたって言ってた男の子は?」 「いや、なのは達によれば次元漂流者らしい。だから無関係の可能性が高い。かといって、シロと決め付けるにはまだ早いんだが・・・」 クロノはそう言いながら、レイヴンとシャドーの画像をエイミィに見せた。 「うっわー。可愛げのない顔してるね~。こりゃ、昔のクロノ君といい勝負だわ」 「・・・悪かったな、無愛想で」 「もー、そんなに拗ねないの!ハラオウン艦長!」 苦笑しながらクロノの背中をはたくエイミィ。 「でもよかったよ、一人も殉職者がでなくて。ホント、なのはちゃんとヴィータちゃんには感謝だね」 「そうだな。正直、あの二人がいなかったら結構危なかった」 「うんうん。あれ?そういえば、肝心のお二人さんは?」 「連絡がとれない。あの二人に限って、万が一なんてことはないと思うが・・・」 そう言いながらも、クロノは嫌な胸騒ぎを覚えていた。 最後に繋がりかけたヴィータとの通信。 あの時、ヴィータの声が必死だった様に聞こえたのだ。 (万が一なんてない。ない筈だ・・・!) だが、万が一の事を考えて行動するのも艦長の仕事である。 「エイミィ、急いでなのは達との通信の復旧を頼む。それと、医療室に連絡。大怪我をした奴はいないらしいが、念のため、空きのベッドを5つ程確保するように伝えてくれ」 「了解。それじゃ、私も持ち場に戻るね」 同時刻、遺跡周辺では、機械兵器の残骸の回収が行われていた。 しかし、戦闘直後であることに加え、雪がちらつく程の寒さのおかげで、作業は遅々として進んでいなかった。 そんな中、C班所属の一般隊員がやる気なさげに作業を行っていた。 「うー、寒ぃ寒ぃ。早く、アースラに戻りたいぜ」 「そーだな。大体、何だったんよこの機械兵器は」 「んな事俺に聞くな。それを考えんのは、ハラオウン艦長や高町隊長の仕事さ」 「違えねぇ」 「しかし、あれだ。高町隊長やヴィータ副隊。あの人ら、マジで人間か?って思っちまうぜ、ホント」 「あー、分かる分かる。俺らがあんなに苦戦してたのにあっという間に薙ぎ払っていくんだもんな。正直、あれは次元が違いすぎるわ」 「あれで俺らより年下なんだもんなぁ。末恐ろしいったら、ありゃしねえぜ」 「全くだ。・・・ん!?おい、あれ!」 と、タバコをふかしていた隊員の一人が空のある一点を指差した。 そこには・・・ 「おーおー、噂をすればヴィータ副隊長・・・。ん!?高町隊長はどうしたんだ?」 「つーか、一緒にいんのはあの飛竜とガキじゃねえか!!」 事態を飲み込めないまま二人の目の前に、ヴィータとシャドーは降り立った。 「ヴィータ副隊長!ご無事でし・・・」 「敬礼はいい!!そんな事より、アースラと連絡できるか!?それと本隊の位置は!?」 慌てながら上官に対して敬礼をとろうとする二人を怒鳴りつけるヴィータ。 何故、彼女がこんな態度をとるのか全く呑み込めない彼らは、目を白黒させるばかりで質問に返答することすらすっかり忘れてしまっていた。 そんな二人の様子をみて焦りを募らせたヴィータが再び怒鳴ろうと一歩踏み出す。 しかし、レイヴンが機先を制するようにヴィータより早く口を開いていた。 「高町なのはが大怪我を負った。応急手当は済ませたんだが、意識不明のままだ。このままだと命に関わる。今、移送中だ」 「「・・・!!」」 レイヴンの言葉を信じられずにヴィータを見返すジョンとウィリアム。 しかし、否定の言葉は返ってくることはなかった。 「事実だ!それより急げ!早く本隊と合流したい!」 「り、了解しました!本隊は現在ポイントX0Y5にいます!おい、連絡を・・・」 「アースラ聞こえますか?こちらポイントX10・・・・」 叱責され、我を取り戻した隊員たちが即座に行動を開始する。 それを苛立たしげに見据えると、ヴィータは再び飛び立っていった。 Another View (Raven) いつの間にか雪は止んでいた。 しかし、気温は低いままだ。 (消耗してなければいいんだが・・・) 応急手当から既に10分が経過しており、体が冷えてきていても不思議ではない。 先程合流した隊員の話によれば、本隊はここからさらに10分程の場所にいるらしい。 怪我の具合を考えれば、正直ギリギリだ。 (問題は、治癒魔法とやらがどのくらい効果があるかってとこだな・・・。まあ、俺が考えても事態は変わらないんだが) そんな事を考えながら空を見上げる。 惑星Zi(ズィー)と違い、月は一つしかでていないが、綺麗な夜空だ。 “あのオーガノイドの研究が終わったら、みんなでピクニックに行こう” ふいに死んだ父の言葉が思い出された。 そういえば、あの日も今日の様な星の瞬く夜空だった。 「・・・」 次々に嫌な事ばかり思い出す。 ―――自分の駆るジェノザウラーが惜敗し、右手に消えない傷跡を残したあの日 ―――シャドーが度重なる戦闘の度に無理を重ね、終に赤熱化し、行動を停止したあの日 ―――デススティンガーに無様にも敗北した、あの日 そのいずれの日も、雲一つ無い、月の綺麗な夜ではなかっただろうか? (感傷だな。情けない) 苦笑する。 そんなことは唯の偶然に過ぎない。 今夜が晴れているからといって、高町なのはが必ず死ぬわけがないのだ。 だが、このままでは彼女が危ないのも確かである。 と、そこまで考えてレイヴンは自嘲的な笑みを浮かべた。 (何を考えているんだか・・・。彼女が生きようが死のうが俺の知ったことじゃあないだろう) だが、自分がこの異世界で行動していくにあたって、恩を売っておくにこしたことはないのもまた事実。 その為には、彼女に助かってもらった方が都合がいい。 (結局、俺の本質は変わっていないってことなのか) Another View End (Raven) いつまで経っても見えてこない本隊にヴィータの焦りは、最高潮に達していた。 実際には、まだ2分程しか経過していない。 しかし、今のヴィータには1分が1時間にも1日にも感じられた。 (くそっ!まだなのかよ!もたもたすれば、それだけなのはがヤバクなるってのに!) 後ろを見やるヴィータ。 そこには翼を広げ、ヴィータの最高飛行速度に遅れることなく追従してくるシャドーがいた。 そして、その中には未だに意識不明のなのはがいる筈だ。 彼女の状態を思い、焦りとは別に後悔の念がヴィータに芽生える。 (くそ!もっと私が注意してればあんなことには!いや、それより、なのはの不調に何で気付けなかったんだ!) ヴィータは、速度を落とさぬままに自分を責め始めた。 (第一、予兆はあったじゃないか!あんなに消極的ななのはは初めてだったろ!なんであの時に注意しなかったんだチクショウ!) そこまで考えてヴィータはあることに気が付いた。 そういえば、レイヴンはなのはの不調に気付いていた様なことを言っていなかったか? “今一番気を付けなければいけないのは、お前だ” そう、確かこう言っていた筈だ。 不安を紛らわせる為もあったが、ヴィータはレイヴンに思わず尋ねていた。 「おい!レイヴン!」 「何だ?」 「お前、確かなのはの不調に気付いたようなこと言ってたよな?一番気を付けなくちゃいけねえってよ」 「・・・ああ、言ったがそれがどうした?」 「何でなのはの状態が分かったんだよ?初対面だろ?」 「・・・」 沈黙するレイヴン。 しかし、彼の表情を見たヴィータは地雷を踏んでしまったと悟った。 なぜなら、どこまでも無表情になっていたからだ。 「い、いや。答えたくねーんならそれでいい。別に無理して話さなくても・・・」 「お前と同じさ」 「いい・・・え?」 「俺も今回と似たような経験があってな。あんな思いは二度としたくないからなのか、それ以来他人の不調には敏感になった」 「・・・」 「それだけだ。・・・おい、あれが本隊じゃないのか」 レイヴンがある地点を指差す。 そこには大勢の隊員が行き来しており、テントまで張られていた。 ヴィータとシャドーの姿を認めたのか、担架をもった隊員が向かってくる。 それを見て一安心したヴィータが先程のことを謝ろうとレイヴンに向き直った。 「ん?どうした?」 「・・・悪かったな、変な事聞いてよ」 「気にするな。俺は気にしていない」 「・・・」 「急ぐぞ、もたもたするな」 「ああ、分かってるよ!」 レイヴンとヴィータが本隊と合流するほんの数分前、クロノはアースラの艦長室で彼の母でもあり、総務統括官でもあるリンディ・ハラオウンと通信を行っていた。 内容は勿論、なのはの負傷についてである。 「というわけで、本局医療班へ通達を。待機レヴェル3でお願いします」 「分かりました。すぐに手配します」 一見すると、とても親子とは思えないほど両者の会話は淡々としていた。 しかし、それは内心の動揺を必死に押し殺していることの表れでもある。 「それと高町なのはの親族への連絡を。最悪の場合も考えなければなりません」 「それは私が直接伺いましょう。・・・それはそうとクロノ?」 今まで見せていた総務統括官としての顔を消し、母としての表情になったリンディはクロノを柔らかく諭すような口調になって言った。 「今回の事はあなたの責任ではないわ。だからそう自分を責めるのはよしなさい」 「そんな事は・・・!」 「顔を見ればわかるわよ。“自分も現場に行っていれば”っといったところね。でもクロノ、今回のあなたの判断は決して間違っていないわ。私があなたの立場でもそうしていたに違いないもの」 「ですが・・・」 「過ぎたことを悔やんでも仕方がないわ。今は出来ることをするしかないのよ。だから、冷静になって。試しにこれからするべき事を言ってごらんなさい」 「・・・なのはを収容したらすぐに医療室に運ばせて、応急処置。後に本局へ転送」 「その後は?」 「武装隊の連中も動揺しているでしょうし、今日は引き上げさせます。事後調査は日を改めて行うことにします。むしろ重要なのは、ヴィータと一緒にいる、次元漂流者と思しき人物のほうです。今回の襲撃事件と何らかの関わりがないか、事情を聞くべきです」 「正解よ。でも、事情聴取はあなたがする必要はないわ」 「え?」 「あなたもなのはさんのことが心配でしょ?尋問に関しては、こちらから一人、執務官を送るから、あなたも本局に戻っていらっしゃい」 「母さん・・・」 「むしろフェイトやはやてさん達への連絡を頼めるかしら?さっきも言ったと思うけど、私はこれから高町さんのお宅に直接向かうから」 「分かりました。では・・・」 「落ち着いて行動するのよ、クロノ」 通信画面が消える。 途端、クロノは大きく溜息を吐いた。 リンディと会話していて疲れたというわけではない。 むしろ、今から本格的に心が疲れることをしなくてはならないのだ。 (ふう、フェイトやはやて達に何て言えばいいんだ) もっともストレスのかかる仕事―――親族への直接連絡―――はリンディが行ってくれるとはいえ、義妹や親友へなのはの負傷を伝えるのも充分に堪える仕事である。 だからといって投げ出すわけにはいかない。 これは他の誰でもない、アースラ艦長クロノ・ハラオウンがやらなければならないことなのだから。 (ああ、本当に世界はこんな筈じゃないことばっかりだ) 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2963.html
時は未来――2004年。 現在の所持金は僅か240円。 持ち者はバイクとヘルメット、今日の日付の新聞のみ。 これが五代雄介を取り巻く現在の状況である。 そして極めつけは、五代が現在いるこの場所。 ――海鳴市 「……ってどこだっけ?」 現在地、不明。 暫くバイクを走らせた五代は、ようやくこの場所の地名を記した看板を見つける事が出来た。 が、しかし。 五代にとって海鳴市などという地名は聞いたこともない。 まず東京ではないのは間違いないとして、何処かに海鳴という名前の街があったかと思考する。 されど、それはやはり冒険家として様々な土地を渡り歩いてきた五代にすら聞き覚えのない地名であった。 しかし五代は、現在の状況をそれほどの危機だとは考えていない。 普通の人からすれば、これこそ最大のピンチなのではとも思えるような状況でも、 五代はいつだって乗り越えてきた。それはやはり冒険家として鍛えられた魂あっての物なのだろう。 そんな五代がまず選んだ道は、なんとかして東京へと戻ること。 そして、自分が住んでいたポレポレへと戻り、再び冒険の準備を整えること。 確かにここが未来――3年後の世界だという事は意外ではあるが、多分自分にはどうしようもない。 それならば、この未来を冒険することが今の自分に出来る最善の行動だと判断したのだ。 「それじゃあ、まずはここが何処なのか……そこから調べないと」 取りあえず、五代は大きな国道を探すことにした。 恐らく国道を道なりに進めば、何処かで大きな高速道路にぶつかるか、 県境を現す標識、もしくは何らかの位置を示す物と巡り合える筈だからだ。 そう考えた五代は、海鳴市の公道の上、バイクを疾走させるのであった。 EPISODE.02 捕獲 同日、次元空間航行艦船アースラ、作戦会議室―――05 42 p.m. 時空管理局が保有する巡航L級戦艦。なのは達が時空管理局と出会うきっかけにもなった船である。 ここに現在集合しているのは、艦長であるリンディ・ハラオウンに呼び出された 高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、アルフ、それからクロノ・ハラオウン以下アースラスタッフの一員だ。 それぞれが自分に用意された椅子に腰掛け、リンディが話を始めるのを待機している。 本日、学校はまだ始まったばかりという事で、なのはもフェイトも早めに帰宅することが出来たのであるが、 帰宅してからややあって、休む間もなく再びリンディによって収集されたのである。 ここに八神はやて及びヴォルケンリッターが来ていないのは、恐らくリンディが気を利かせたからなのだろう。 まだ学校が始まったばかりということもあって、色々な準備や、何よりも家族皆で過ごせる時間を尊重させてあげたい、と。 それに何より、今回の任務にそれほどの戦力は必要ないと判断されたのだろう。 といっても、恐らく後からこれをはやてが聞けば、「何で私らだけ呼んでくれへんかったん!?」等と騒ぎ出すのだろうが。 さて、一同が揃ったところで、リンディが軽く咳払いをした。 「えー……学校が始まったばかりなのに、何だか悪いわね?」 「いえ、気にしないでください」 「私達は望んでこうしてる訳ですから」 ばつが悪そうに言うリンディに、フェイトとなのはが揃って微笑む。 リンディはそれに安心しながらも、二人の優しさに少しばかり嬉しくなる。 「それじゃあ、今回の任務を簡単に説明するわね。エイミィ」 「はい、取りあえず……これを見てください」 と、リンディの言葉に応えるように、エイミィがスクリーンに一枚の画像を映し出した。 なのは達はそれを食い入るように見つめるが、映し出された画像はピントが合っていないのかぼやけてよく見えない。 何となく、空に浮かんだ黒い影のように見えはしたが。 「これは、今朝この第97管理外世界で撮影されたものです」 「私達の世界で……?」 「ええ、なのはさんにはこれが何に見えるかしら?」 問われたなのはは、うーんと唸りながら、画像を見つめる。 画像がぼけていて「黒い影」程度にしか見えないのに、何に見えるのかと聞かれても困るに決まっている。 エイミィがスクリーンに映し出された写真をスライドさせ、次の画像に切り替える。 今度の画像もまた、先ほどと余り変わらない黒い影にしか見えないが――― 「うーん、ツノがある……?」 「そう。二対の巨大な角を持った、未確認飛行体です」 「今朝ほんの小さな次元震があって……コレがこの世界に紛れ込んだみたいなの」 なのはが答えたのは、何かツノがある黒い影。現状ではそれ以上に言いようがない。 リンディとエイミィは、それをこの世界に今朝紛れ込んだばかりの未確認飛行体と説明する。 「それは、ロストロギアなんですか?」 「……現状では何とも言えませんが、恐らくは」 フェイトの質問に、リンディが答える。 次にスクリーンに映し出されたのは、なのは達が住む国――日本列島の簡単なマップだ。 マップに映し出された赤い線は、中心あたりから始まり、だんだんと東京方面に向かいながら移動している。 現在は、位置で言う所の、神奈川県付近で点滅しているが。 「今朝確認された未確認飛行体は、長野県中央アルプスで確認され、 ゆっくりと移動を開始しました。この進路からして、恐らく目的地は東京方面だと思われます」 「それで……今はどの辺りを移動してるんですか?」 「30分程前に、遠見市で確認されたのが最も新しい情報です」 エイミィの報告を聞いたフェイトが、その顔色を強張らせる。 遠見市と言えば、ほんの1年前までは自分が仮の住まいとして生活していた場所。 海鳴市の隣町であり、それはつまり自分達の街に接近しているということになる。 いつの間にかなのはも真剣な表情に変わっており、集められた一同もこの作戦の目的を理解し始めていた。 「もう解ってると思うけど……今回の任務は、この未確認飛行体の捕獲です。 武装局員が海鳴市の一部に結界を張り、アルフさんがそれの補助を担当。 なのはさんとフェイトさんが未確認飛行体を牽制し、クロノが捕獲する。 作戦の説明は以上です。 質問は?」 一気に作戦の全容を説明するリンディ。最後に「質問は?」と一言付け加えるが、一同は特に聞き返すことも無かった。 なのはもフェイトもここまでの説明で作戦の内容は理解出来たし、ついでに言うとあまり時間がないという事も理解出来た。 要はもうすぐ海鳴に侵入しつつある未確認飛行体が、海鳴に入った瞬間に結界を展開。それを捕獲しなければならない、という事だ。 作戦自体は非常に単純。これまで数々の事件を解決してきたなのはにとって、この程度の事件なら何の問題もないと思えた。 リンディも一同の表情に安心しながら、言葉を続ける。 「それじゃあ、早速ですけど、もう時間があまりないわ。 未確認飛行体が海鳴市を出る前に、作戦を開始します!」 リンディの掛け声に、なのは達は大きな声で「はい!」と返事を返した。 ◆ 海鳴市上空―――06 27p.m. 夕方6時ともなると、4月の空は既に薄暗い。もうすぐで日も完全に沈み切るだろう。 そんな夕方の空の下、なのはとフェイトはバリアジャケットに身を包み、各々のデバイスを構えていた。 その表情は緊張に強張っており――といっても、それは当然なのだろう。 相手は戦闘能力も何もかもが謎に包まれた未確認飛行体なのだから。 そんな時、なのはら二人の目の前に空間モニターが展開された。 相手は今回の作戦を共に行うこととなったクロノだ。 「なのは、フェイト……もうすぐ未確認飛行体が作戦エリア内に侵入する。準備はいいか?」 「うん、私はいつでも大丈夫だよ」 「うん……私も、なのはと一緒なら怖いものは無いよ」 なのはがフェイトをちらりと見ると、フェイトは少し照れたように顔を背けた。 そんなフェイトに、「頑張ろうね」と、明るい微笑みを向けるなのは。 フェイトは嬉しそうにうん、と頷くと、力強くバルディッシュを握り締めた。 なのはと一緒の任務で、なのはに頑張ろうねと言われたからには、もう百人力である。 「来たよ、フェイトちゃん!」 「うん……行くよ!」 と、そうこうしている内に、気付けばなのは達の視界に真っ黒の未確認飛行体が入っていた。 速度は恐らく、普通の車と同じくらいか、それ以上。結構な速度である。 上空にいた数名の武装局員が結界魔法を発動し、アルフがそれを強化する形で補助する。 なのはが足もとに桜色の魔法陣を展開し、フェイトが未確認飛行体に向かって飛び出す。 「いいか、なのは。結界はそれほど広範囲に展開できる訳じゃない。出来るだけ迅速に仕留めるんだ」 「りょーかいっ! 私に任せてクロノくん!」 言うが早いか、なのはが構えたレイジングハート本体から三枚の魔力で出来た翼が飛び出した。 同時にレイジングハートの切っ先にも、桜色の魔法陣がいくつか展開される。 「一応聞くけどクロノくん、結界の防御力は完璧なんだよね?」 「あ、ああ……その筈だけど……なのは、まさか……」 「それじゃあ安心! 一撃で仕留めるから、そっちは任せるよ!」 「ちょ、ちょっと待てなのは! 目的は捕獲であって撃墜じゃな――」 「わかってるよ! だから安心してクロノくん!」 クロノの言葉を聞いているのか聞いていないのかは定かではないが、なのははとにかく止まるつもりはないらしい。 「ディバインバスター」のチャージに入ったなのはは、飛び回る未確認飛行体に照準を定める。 逃がすつもりはない。一撃で行動不能に追いやってしまえば、こちらの勝ちだ。 クロノにとってはそれは不安でたまらないのだろうが。 「なのは、私が牽制して動きを封じるから、その隙を狙って!」 「わかったよフェイトちゃん。フェイトちゃんもすぐに離脱してね!」 なのはの自身に満ち溢れた表情に、フェイトは安心したように微笑み、うん、と一言頷いた。 同時に、フェイトが漆黒のマントを靡かせて、未確認飛行体に突撃する。 ハーケンフォームに変形したバルディッシュは、金色の魔力光を噴出しながら、唸りを上げる。 どうやらフェイトもフェイトで、手加減をするつもりはないらしい。 「はぁぁぁぁぁっ!」 勢いよく、正面からフェイトは未確認飛行体へと斬りかかる。 何処かクワガタムシにも似た形をしたそれは、前方に突き出た大きな角でバルディッシュの魔力刃を受け止める。 飛び散る火花に、二つが傷付け合う甲高い金属音が響く。 しかしフェイトも怯む事はない。すぐにバルディッシュを未確認の角から引き抜くと、上空に飛び上がった。 未確認はフェイトに構わず前方へと進み続ける。その姿はまさに、羽根を羽ばたかせるクワガタムシの如く。 その刹那、フェイトはクワガタムシの背中に、輝きを放つ緑の宝石が埋め込まれていたのを見逃さなかった。 「そこがコアか……!」 言うが早いか、フェイトはバルディッシュを振り上げて、再びクワガタムシの背中へと並んだ。 この程度の速度なら余裕で追いつける。寧ろ速度に関してはこのクワガタよりもフェイトの方が圧倒的に上だ。 フェイトは、バルディッシュの魔力刃の切っ先を、勢いよくクワガタムシの背中に輝く緑の宝石へと叩きつけた。 「――――――ッ!!」 「よし……効いてるっ!」 刹那、緑の宝石は火花を散らし、クワガタムシがふらりとよろめいた。 同時に聞き取る事が不可能な言語を洩らすが、フェイトはそれを気にしない。 どうやら背中への攻撃が弱点らしい。フェイトはよろめいたクワガタムシの背中に、再び魔力刃の一撃を叩き込む。 今度は高度を下げて、クワガタムシはフラフラと下降していく。 と、そうこうしていると、フェイトの頭の中になのはの声が流れ込んでくる。 「フェイトちゃん! ディバインバスター、発射するよ!」 「うん、わかったよなのは!」 見ればなのはのレイジングハートは既に切っ先に桜色の魔力を目一杯に溜めこんでいた。 あれを爆発させて、このクワガタを打ち抜くのだろう。 フェイトはすぐにクワガタから離れ、なのはの元へと飛んで行く。 「ディバイィィィィィィィィィン……―――」 同時に、なのはがゆっくりと口を開いた。 対するクワガタムシも、何とか高度を取り戻し、ゆっくりとではあるが元の高さへと戻っていく。 なのはとの距離もだんだん縮まっていくが、問題はない。 なのは的には撃ち落としてしまえば一緒だ。 「バスタァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」 そしてなのはは、レイジングハートは溜めこまれた魔力を、一気にクワガタムシ目掛けて解き放った。 それは周囲の者全員にも聞こえるほどの轟音を放ちながら、クワガタを撃ち落とそうと加速していく。 瞬間、漆黒のクワガタムシはなのはが放った桜色の光に飲み込まれた。 ◆ フェイトの目の前で、なのはが砲撃を放っている。 あのクワガタムシは見事になのはのディバインバスターに飲み込まれ―――否。 何か様子がおかしい。なのはの表情が、強張ったまま変わらない。 なのははただ真剣な面持ちで、ディバインバスターを照射し続けている。 刹那――― 『押し切られます』 「うそ……っ!?」 「そんな……!?」 レイジングハートの警告音が響いたかと思うと、なのはの目の前―― ディバインバスターの魔力照射部から、漆黒のクワガタムシが飛び出してきたのだ。 つまりあのクワガタムシは、ディバインバスターの光の中を、構うこと無く前進していたという事になる。 驚く暇も与えられないままに、なのはとフェイトの二人は咄嗟に左右へと飛びのき、クワガタムシとの激突を避ける。 「そんな……ディバインバスターの直撃で無傷!?」 『ドンマイです、マスター。次、行きましょう』 と、驚くなのはをよそにレイジングハートは第二射の発射を要請する。 だが、そうしている間にクワガタムシは既になのは達を置き去りに遥か後方へと進んでいた。 どうやらあのクワガタムシになのは達を襲うつもりはないようだが――それでも、アレを倒さない事には任務成功とは言えない。 故になのはは諦めない。なのはのプライドが、このまま諦めることを許さないのだ。 再びレイジングハートを構え、カートリッジをロードさせる。 「なのは、今からチャージしてちゃあの未確認飛行体が結界を出るまでに間に合わないぞ!」 「安心して、クロノくん。今度は結界、持たないかもしれないけど……絶対撃墜するから!」 「ちょ……だからそれじゃ困るんだよ!」 「大丈夫だよ、クロノ。今度は私もいるから」 と、クロノは焦って抗議するが、今度はフェイトが答える。こうなったなのはとフェイトはもう止まらない。 なのはに至っては一撃目を防がれた事による悔しさか、今度は心なしか目付きも変わっているように見えた。 次は先ほど以上に魔力を集束させる。相手の防御力が想像以上であるなら、自分はそれ以上の魔力をぶつけるまで。 ただのディバインバスターで無理なら、特別版ディバインバスターEXで。それで無理なら、もっと凄い魔法で。 フェイトもなのはと並んで、足元に黄色の魔法陣を展開させ―――魔法のチャージに入る。 「私のプラズマスマッシャーとなのはのディバインバスターで、あの未確認飛行体を撃墜します!」 「いや、だから目的は撃墜じゃなくほか―――」 「行くよ、フェイトちゃん!」 最早クロノの言葉に聞く耳など持たない。 二人とも、意地でもあのクワガタムシを撃墜して持ち帰るつもりだ。 そんな事を言っている間にも、二人の眼前にチャージされた黄色と桜色の魔力光は増幅していき――― ◆ 黒いクワガタムシが、凄まじいパワーで結界を内側から圧迫する。 二対の角が結界の壁にぶち当たるが、それでもクワガタムシは無視して突き進もうとしているのだ。 アルフは結界を保つため、必死で補助魔法を掛け続けるが――― しかし、それももう時間の問題だ。あと少しでこの結界は絶対に崩壊する。 何故なら。 「全力全壊!」 「疾風迅雷!」 なのはとフェイト。二人が叫んだと同時に、二色の閃光はクワガタムシ目掛けて奔っていた。 結界を破壊しようとただひたすらに力押しするクワガタムシの背後から二色の閃光が迫り、 クワガタムシごと結界を撃ち貫こうとしているのだ。 クロノは最早呆れた表情でそれを見るしか出来ず、アルフはアルフで必死の形相。 とにかく耐えようと、補助魔法を掛ける腕に力を込める。 が、そんな努力も虚しく―― 「駄目だ……あたし一人じゃ、結界を保てな――ッ」 と、アルフが歯を食いしばるように言葉を紡ぐが、それは最後まで間に合わず。 同時に、二色の魔力光は結界を貫き、遥か彼方の空へと吸い込まれていく。 結界が破壊される寸前、結界全体に亀裂が入ったために、アルフが言うまでもなくクロノはもう諦めていたのだが。 そうして、二人の魔法により放たれた光の照射が止んだとき―――そこにあのクワガタムシの姿はなかった。 そんななのはの眼前に現れた空間モニターに映るエイミィの表情は、苦笑い。 『未確認飛行体、ロストしました』 「あれ……撃墜しちゃった?」 「逃げられたんだよ!」 二人の会話に割り込んで、クロノが大声で怒鳴った。 結果として、二人の魔法はあのクワガタムシを加速させる結果となったのだ。 何かの装甲のような物を身に纏った頑丈な体は、魔法では傷を付けられないということなのだろうか。 光に押され、そのまま遥か彼方へと飛んで行ったクワガタムシは、既にアースラ側からの追尾を振り切っていたという。 それが今回の結果。つまり、作戦は失敗だ。 そんな結果に、なのはとフェイトは大きく肩を落としていた。 ◆ 平成13年4月―――科学警察研究所。 ようやく平和になった世界。勿論そんな平和な世の中に未確認生命体などが現れる筈もない。 ――にも関わらず、科学警察研究所……通称「科警研」の科学者である、榎田ひかりは職場へと呼びだされていた。 大切な一人息子である冴との貴重な親子の時間を削ってまで来たのだ。それはやはりつまらない理由である訳もなく。 榎田は、眼鏡の奥の鋭い眼光で、白衣の男を見据え、言った。 「で、ゴウラムが消えたってどういうこと?」 「そのまんまの意味です……ここに保管されていたゴウラムが、突然消えたんですよ」 「ちょっと待って意味がわからない。 消えるって何? 監視カメラは!?」 呆れた口調の榎田に、白衣の男もまた困ったようにパソコンのキーボードを操作した。 男が操作することで、パソコンの画面に小さなスクリーンが映し出された。 そこに映っているのは、「ゴウラム」と呼ばれる戦士クウガの力強い味方。それを保管していた一室だ。 カメラに映し出されたゴウラムは、最初は何の動きも見せなかった。が、やがてその羽根を開くと、ゆっくりと浮かび上がり―― 背中に埋め込まれた翠の霊石――アマダムが、力強く光を放ち始めた。 その光はどんどん強さを増して行く。やがて一瞬ではあるが、カメラに映った全ての映像が緑の光によって遮断された。 カメラに何も映らなくなるほどという事は、それこそよっぽど強力な光を放っていたのだろう。 ややあって、カメラがその視界を取り戻した時――― 「ゴウラムが消えてる……」 「はい……そういう訳です。何が何だか……」 ゴウラムは、その姿を消していた。 榎田はその肩を大きく落としながらも、パソコンの画面をじっと見つめている。 こればっかりは対処のしようもなかった、というかまさか未確認との戦いが終わって 三ヶ月も経過してからゴウラムがその姿を消すとは誰も思わなかっただろう。 もしも戦士クウガが「聖なる泉」を枯らした際には、ゴウラムは砂になる。という説は聞いた事はあったが、 流石に消えるというのは予想外だ。 榎田は腕を組んで、思考する。 五代雄介とBTCSが姿を消したという報告は警視庁から連絡されていたが、もしかしたらゴウラムも何らかの関係があるのだろうか? しかし、未確認との戦いも終わった今、何故彼らが消えるのかがわからない。もしかすると、まだ何かするべき事があるから? だがそれならば何処かでクウガかゴウラムの目撃情報が出る筈である。 「……何にしても、今はどうしようもないわね」 考えても今は推測の域を出ない。榎田は、大きくため息を落とした。 消えてしまった者をどうこう言っても仕方がない。 とりあえず今自分に出来る事と言えば、ゴウラムが消えた事に関する報告資料をまとめる事くらいしかない。 また帰るのが遅くなってしまう事に、我が子への罪悪感を感じながらも、榎田はポケットから携帯電話を取り出した。 仕事で帰りが遅くなる場合は、冴が待つ自宅へと「かえれないコール」を掛けることにする。というのが、榎田親子の約束なのであった。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2652.html
レアスキルとSランク揃いの集団を裏技的に組み上げたキメラじみた部隊。 ゆえに機動六課は疎まれている。 もしもなにか問題を起こせば地上本部のレジアス中将が嬉々として潰しにかかるだろう。 一部の隙も見せられない。 ゆえに内部監査への対策は練りに練ってまさに完璧というレベル。 受け答えも意表をついたものまでありとあらゆる想定をし尽くした。 これでだめならなにをやっても無理。 そんな状態だったはずなのに・・・・・・。 突然舞い込んだみんなの休暇。たまにはみんなで温泉旅行。 魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。 第15.6話たまにはちょっと一休み―温泉旅行へ行こう― 「監査にひっかかったーーーー!?」 絶叫のようなヴィータの悲鳴が部隊長室に響き渡る。 集まってもらったみんなも呆然とした表情。 「で、で、でもどうして?あれだけ万全に対策練ったのに・・・・・・。」 「せやな。フェイトちゃん・・・・・・。」 「ルールはきっちり守るように身体で覚えさせたのに。」 「せやな。なのはちゃん・・・・・・。」 「クルマ叩き壊したり施設叩き壊したり人叩き壊したり訴えられるような問題は起こしてないな。」 「せやな。はんた・・・・・・・。」 「人体実験も最近はやってないし・・・・・・。」 シャマルの言葉に波が引くような勢いでみんなが一斉に距離を取る。 もちろん私もリインも・・・・・・。 いつかやりかねないと思っとったが、まさか本当に・・・・・・。 「あ、あはは。やだな。もう、冗談よ。空気が重かったから冗談を言ってみただけよ。」 「あー、本当にびっくりしたわー。シャレになっとらんよ。」 「まったくだぜ。いつかやりかねないと思ってたからな。」 「はやてちゃんとヴィータ、後で私が作ったイチゴショート御馳走してあげるわね。」 「「謹んで遠慮します。」」 「遠慮しなくていいわよ。みなさんもいかが?」 シャマルの黒い笑みに全員が必死に首を振る。 もげるんじゃないかってくらい必死に・・・・・・。 「それならご馳走になるとしよう。」 「ワン。」 命知らずがいたよ。 1人と1匹も・・・・・・。 でもバレンタインのチョコ普通に食べ取ったし、平気なんかなぁ。 部屋の雰囲気が和やかなものに変わりつつあった。 「それで、なんで監査とかいうのにひっかかったんだ?」 「「「「「「「「「あっ・・・・・・。」」」」」」」」」 はんたの言葉に全員が思い出したかのような相槌をうったのはどうかと思う。 気を取り直して私は口を開いた。 「監査にひっかかった理由やな。なぁ、なのはちゃん。」 「なに?はやてちゃん。」 「昨日何時から何時まで働いとった?」 「んー、早朝にフォワードの朝練やって夜にフォワードの訓練見てデータまとめて資料整理して報告書書いてたから・・・・・・。」 「フェイトちゃんは?」 「私も同じくらい・・・・・・かな。」 「ヴィータは?」 「私もそんなもんだな。」 「シグナム。」 「私もだ。」 「はんた。」 「フルタイム。」 「フォワード4人。」 「「「「同じくです。」」」」 「ええと、その、つまり・・・・・・。」 どこかなのはちゃんが申し訳なさそうに口ごもりながら申し出てくる。 ティアナも薄々感付いたのだろう。 もっとも他のみんなは首を傾げるばかりだが。 思わずため息が漏れる。 「そうや。平たく言えば『前線メンバーのお前ら働きすぎ。過労死してマスコミに騒がれると面倒だからちゃんと休めやゴルァ』ってところや。」 後ろめたそうに皆が一斉に目を逸らす。 まったく冗談みたいな話や。 サボってて監査にひっかかったんならともかく働きすぎで監査にひっかかるなんて・・・・・・。 まぁいい。今回呼び出したのは次の用件が本命や。 「それでや。皆揃って休み取ることになったんやけど、せっかく皆一緒なんやから温泉旅行なんてどうや?って思って呼び出したんよ。」 反対の声は上がらなかった。 ======== 「くぅーーーー、生き返るわーーーー。」 「はやてちゃん、もう少し言葉選ぼうよ。」 「ええやないか。せっかくの貸しきりなんやから。」 「シーズン外れでねらい目だったよね。でもあの垂れ幕はどうにかならなかったの?」 海鳴温泉といえば読者には分かってもらえるだろうか。 無印原作5話のあの温泉のことだ。 平日のど真ん中、シーズン外れのこの時期に1泊2日の小旅行。 働きすぎということで与えられた休暇を消化しながらみんなのリフレッシュとレクリエーションにもなるこの企画。 さすがはやてちゃんだと思う。 ただ、はやてちゃん・・・・・・。 「時空管理局様御一行って垂れ幕はさすがに・・・・・・。」 「手配したんはシャマルやて。シャマル?」 「ええと、その、ついうっかりいつもの癖で・・・・・・。」 あははと苦笑いしているシャマルさん。 バスで到着した一行を出迎えた温泉宿の入り口にでかでかと『時空管理局様御一行』なんて垂れ幕があって 全員が引き攣った顔をしたのは見間違えじゃなかったらしい。 まぁ、不思議な名前の一行が度々訪れているみたいだから向こうも詮索しなかったのだろう。 宿帳をみたら明後日からナンバーズ様御一行という人達が止まるみたい。 ナンバーズって宝くじの会社の人かなとか思いながら、温泉に浸かる。 そういえば以前にみんなでこうやってゆっくりしたことっていつだったかな。 記憶に全然無いことに今更ながら気がつき、日々の疲れを癒す。 「そういえば母さんとレティさん、どうしてここに?」 長い髪をタオルで束ねたリンディさんとレティさんにフェイトちゃんが尋ねる。 あれ?そういえばなんでいるんですか? 物凄く自然にいたから気がつかなかったけど。 「あら、フェイト。私達がいるとまずい?」 「ええと、そうじゃなくって・・・・・・。」 「なんてね。冗談よ。レティがグリフィス君から聞いていたからちょうどいいって便乗させてもらったの。 クロノもミッドにいたら引きずってこれたんだけどね。」 「まったく、グリフィスに事の顛末を聞いたときは呆れてものが言えなかったわ。 働きすぎで監査にひっかかるなんて冗談もいいところね。」 「ええと、その、すみません。」 「ほらほら、今日は休暇なんだから仕事の話はなしよ。たまにはこうやってのんびりしましょう。ね?」 リンディさんの言葉に皆が思い思いにくつろぎ始める。 スバルなんかたれぱんだみたいに今にもたれてしまいそうなほどにくつろぎモードに入っている。 その横にいるティアナも同様に。 お風呂から上がったら宴会で、その後は・・・・・・。 そのとき、カラカラっと露天風呂の仕切りが空けられる音が響く。 あれ?貸切じゃなかった? 湯煙の向こうから現れた金髪の見事な肢体の持ち主は・・・・・・・ってええ!? 「あら?もしかしてはやてさん達?」 「カリムさん!?なんで!?」 「ああ、私が報告がてら手を回しておいた。」 レティさんが言うには騎士カリムも働きすぎらしい。 シスターシャッハが常々休むように行っていたのだが聞き入れないので今回の強攻策になったらしいが・・・・・・。 ただ、シスターシャッハ。 寝起きでヴィンデルシャフトを叩きこんで昏倒させて連れて来るってどれだけ・・・・・・。 目が覚めたカリムさんはもう開き直って休暇をとるしかなかったらしい。 あははと笑い声が露天風呂に響き始める。 そんなとき、はやてちゃんのアレが始まった。 「しかし、みなさん。たいそうなものをお持ちで・・・・・・。」 はやてちゃん、本当にその癖はどうにかならないのかな。 私達の身体の一部を凝視しながら手をわきわきさせて近づいてくるはやてちゃんに皆が距離を取り始める。 知らないはずのティアナとスバルも何かを感じたのだろう。 もっとも大まかな推測はついているのだろう。 「あれ?そういえばキャロは?」 逃げた矢先、ふと気がついたスバルの声に皆が辺りを見回す。 あれ?そういえばいないね。 露天風呂の前までは皆一緒だったから迷子ってことはないはずなんだけど・・・・・・。 「エリオくーん。一緒にお風呂はいろー。」 竹で作られた衝立の向こうにある男湯のほうから声が聞こえてきたのは気のせいですか。 ======== 「キャ、キャロ。こっち男湯、男湯!!」 「でも、11歳以下なら大丈夫ってほら・・・・・・。」 慌てたエリオに応える声。 思わずティアナは頭を抱えた。 まぁ、薄々は感じてはいたけど、羞恥心はないのだろうか。 辺境育ちとか差し引いてもちょっと問題があるように思える。 冗談抜きに管理局の教育プログラムに組み込むよう上申しようかしら。 「だったらこっちで入っていくといい。洗うからそこに並べ。」 「あ、はい。」 「わかりまし・・・・・・ってはんたさんの・・・・・・すごく大きいです。」 エリオ!!主語を消すな主語を!! いったいなにがすごく大きいのか。 隊長たちもさっきまでのざわめきがパタリと止んで、耳をダンボにしている。 「そのうちエリオもこうなるさ。」 「でも、僕のは指1本ぐらいで・・・・・・。」 「エリオ君。1本半はあると思うよ。」 「でもはんたさんみたいに拳1つはないよ。それにほら、ぼこぼこで血管が浮き出てるし。」 はい?いまなんておっしゃりやがりましたか? 指1本とか拳1個の大きさのもの・・・・・・。 ぼこぼこで血管が浮き出ている・・・・・・。 リンディ提督がレティ提督の肩をきゃーきゃーいいながらバシバシ叩いている。 カリムさんはシャッハさんにいろいろ耳打ちしているが、刻々と顔の赤さが加速している。 まじまじと自分の拳を見つめている隊長達。 いやいや、そんなことがあるはずはない。 思い浮かべた身体部位を頭をふって振り払う。 そんな私達に追い討ちをかけるように会話が進む。 「あの触ってみてもいいですか?」 「かまわんぞ。」 「うわぁ。すごく硬いです。まるで鋼みたいだ。」 「わー、本当だ。すごい・・・・・・。」 「僕ももう少し硬くしたいんですけど、まだまだ柔らかくて・・・・・・。」 「成長すれば大丈夫。」 「わふ。」 硬いってなんですか!? 成長すればってちょっと・・・・・・。 キャロもどこ触ってるのよ!! いや、きっと聞き間違えたんだ。 きっと身体を洗うのに軽石なんか持ち出して洗ってるから硬いとかいってるんだ。 そうだ。エリオもキャロもスポンジだった。 きっとはんたのはビッグサイズの軽石なんだ。 ぼこぼこなのは軽石なんだ。 こすりすぎて血管が浮き出ちゃったんだ。 うん、そうに決まっている。 「やっぱり大きくて硬いほうがいいんでしょうか。」 「どれだけ使えるかが重要だな。大きさや硬さは二の次でいいと思う。」 「わー、ポチさんのもとっても硬くて、フリードよりすごいかも。」 キャロ、アナタなにをしているんですか。 ってフリードよりっていったいなにが!? ぶんぶんと首がもげそうな勢いで必死に頭を振る。 「あの、その、ぶらさがってみても・・・・・・。」 「かまわないが?」 「あの、私もお願いできますか?」 「いいぞ。2人いっぺんで。」 「「わー。すごいや。」」 どこにぶらさがってるんですか!?!?!? 子供とはいえ体重40kg前後はあるのに。 というか持ち上がるんですか!? 折れないんですか!? 「いつか僕もそうなりたいです。」 「エリオ君ならきっと大丈夫だよ。」 「わふ。」 悶々とした想像が頭に残ったまま、会話がぱたりと止んだ。 あれ?そういえば妙に皆静か・・・・・・って。 「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーー。隊長たちしっかりしてー!!!!!!!!!!。」 顔を真っ赤にして気絶しているなのはさん達の姿思わず悲鳴を上げた。 ======== 「あー。一生の不覚やったわ。せっかくのチャンスが・・・・・・。」 「なのはちゃん、大丈夫?」 「ええ、だいぶ収まってきました。フェイトちゃんは?」 「私はもう平気。でも、母さん達、タフですね。」 「タフじゃなければ生きていけないわよ。」 「スバルは?」 「うー、だめー。」 湯上りの女の子の群れ。 そう書けば色っぽいはずなのに、その半分が顔を真っ赤にして横になっているあたり色気がない。 中でも一番熱いお湯のところにいたスバルが一番重症だった。 ゴシップ好きが女の子のサガとはいえ、こんなことに自分がなるなんて・・・・・・。 まったく恥ずかしいところをみせてしまったものだ。 でも、本当にあんな会話・・・・・・。 思い出したら顔が再び熱くなってくる。 指一本とか拳1個ってきっとたぶん・・・・・・アレだよね。 小さい頃に見たお父さんとかお兄ちゃんのものを思い出してさらに顔が熱くなってくる。 「ただいま戻りました。」 「同じく戻りました。」 「いったいどうしたんだ?」 「わん。」 そんなとき、戻ってきたはんた君達3人と1匹。 視線は自然と下半身に向いてしまう。 「どうしたじゃないだろ。てめぇ、いったいエリオ達になに触らせてやがるんだ!!」 ヴィータちゃんとはんた君、本当に相性悪いのかな。 そんなときだった。 真っ先に突っかかっていったヴィータちゃんの背後からシグナムさんが口を開いた。 「しかし、私も是非触らせてもらいたいものだな。」 レティさんとリンディさんが口に運んでいたビールを勢いよく噴出す。 あ、シャマルさんが転んだ。 唖然としたような表情のティアナとフェイトちゃんとはやてちゃん。 あ、あのシグナムさん、今なんて・・・・・・。 「あ、シグナム副隊長もですか。やっぱり興味ありますよね。」 「ああ、鋼のような硬さとは実に興味深い。」 「ちょちょちょちょちょシグナム。おま・・・・・・なにいってやがるんだ!!」 「だから、温泉の会話の続きだろ?ヴィータ。」 「違う。そうじゃなくてどこ触ろうとしてやがるんだよ。このムッツリ!!」 「・・・・・・?二の腕を触るのがムッツリになるのか?」 「「「「「「「「二の腕?」」」」」」」」 はんた君達とシグナムさんを除いた全員が一斉に疑問の声を上げた。 「ええ、そうですよ?力瘤つくっても僕のはまだこんなに小さくて・・・・・・。」 「でも指1本半は絶対にありますよ。」 「拳1つって・・・・・・」 おもむろに浴衣の袖を捲り上げて力瘤を作ってみせるはんた君。 あ、本当だ。たしかに拳1つある。 「硬いとか柔らかいとか!!」 「僕のはまだ少しぷよぷよなんですよ。でもはんたさんのは凄いですよ。」 「ほう。これは凄いな。硬くてしなやかで、まるで鋼のワイヤーが詰まっているようだな。」 「・・・・・・ぶらさがるとか。」 「こうやってぶら下がらせてもらったんです。こういうことしてもらった記憶がないので・・・・・・。」 「私もちょっと憧れがあったんです。」 そう言ってはんた君の二の腕にエリオ達がぶら下がるとなんでもないかのように持ち上げる。 ああ、なるほど。 エリオ達って肩車とかそういうこと、してもらったことないんだ。 それなら納得・・・・・・って。 「それで、二の腕じゃないならなんだと思ったんだ?ヴィータ。」 「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・。」 「ああ、ヴィータ。ちょっと落ち着いてー。」 自身のバリアジャケットのように真赤な顔をして奇声を上げて暴れはじめるヴィータちゃん。 いや、気持ちは分かるけどさ。 シャマル先生が必死で止めているけど、またシグナムさんが当身で黙らせるのだろうか。 それにしても・・・・・・。 「バトー博士がいなくてよかった。」 「ハハハハハハハ、まったく四六時中盛ることしか考えてないムッツリスケベのエロガキがこんなにいたなんて天才のボクも想定外だったよ。 機動六課あらためムッツリスケベ小隊にしたらどうだい。ハハハハハハハハハハハ・・・・・・。」 慌てて辺りを見回すけど当然バトー博士はいない。 ああ、幻聴が聞こえる辺りもうだめだ。 このカオスな場をどうすればいいんだろう。 狂乱しているヴィータ達とは正反対にしげしげと興味深そうにはんた君の腕に触れているレティさんとリンディさんが あまりにもミスマッチで・・・・・・。 さっさと寝てしまおう。 ======== 「それにしても紛らわしい会話だったわね。」 「あの、みなさん、いったいなんだと思ってたんですか?」 「それはその・・・・・・。」 「まぁ、あれだ。」 「その、ねぇ。うん、あれよ。あれ。あはは・・・・・・。」 純真なキャロの言葉に私やヴィータ副隊長、シグナムさんが歯切れ悪くどうやってごまかしたものかと口ごもっている。 リンディ提督たちはまだ宴会場でお酒を飲んでいるみたいだからここにはいないし。 なのはさん達がフェイト隊長に視線でなんとかしろと訴えているのがはっきりわかる。 私もすがるような目を向けているのだろう。 昏倒しているスバルがうらやましい。 みんなの前に押し出されるように出てきたフェイト隊長はしばらく考え込んだかと思うと口ごもりながら言葉を紡ぎ始める。 「ええと、キャロ。あの、ええと・・・・・・男の子と女の子の身体の違いってわかるかな?」 「はい。男の子にはオチ・・・・・・むぐっ。」 「言わなくていいから。」 フェイト隊長の言葉に口を塞がれたままのキャロがこくこくと頷く。 「それで、みんなはそれの話だって勘違いしちゃったんだ。間違いは誰にでもあるでしょ?」 「はい。」 「うん。いいお返事。それじゃこの話はここでおしまい。」 「あの、フェイトさん・・・・・・。」 「なに?キャロ。」 「それじゃ、ええと大きさとか硬さって重要なんですか?」 ああ、キャロもきわどい質問を・・・・・・。 助けを求めるようなフェイト隊長の視線。 なのはさんやはやて部隊長は視線を合わせないようにしている。 ヴィータ副隊長達も同様に・・・・・・。 そして私も・・・・・・。 「ティアナはどう思う?」 「教えてください。ティアナさん。」 そこで私に振るんですかー!? ああ、ほんとうにどうしよう。 ええと、うーん、あー、そうだ!! 「それよりエリオ達のはどうだったの?指1本や拳1つなんかじゃないんでしょ?」 ヲイヲイと言わんばかりの視線が突き刺さる。 でも、しかたないじゃないですか。 他にどうやって切り返せって言うんですか? 「はい。指1本や拳1つどころじゃなかったです。」 「そうよね・・・・・・はい?」 なんかおかしいところがあった。 指1本。これは大丈夫。 拳1つ。これも大丈夫。 どころじゃなかった。これも大丈・・・・・・夫じゃない!! 本当に!? そんな視線を感じたのか戸惑いながらキャロは言葉を続けている。 「エリオ君のはえーと、うん。クロスミラージュって感じでした。」 ちょ、ちょっと待ってキャロ。 クロスミラージュって・・・・・・まじですか!? キャロの言葉は止まらない。 「ポチさんのはグラーフアイゼンって感じで、はんたさんのは・・・・・・うーん?」 え?ちょっとなんでそこで悩むのよ。 いったいどんな大きさなのよ。 ちょうどいいものがあったのか、ぽんと手を打つキャロ。 そのまま拳を握り締めると天高く突き上げた。 「ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールってかんじでした。」 「・・・・・・ヴォルテール?」 「違います。ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールです。」 拳を突き上げて叫んでいるキャロ。 ええと、龍召還で呼べるフリードともう1匹のほうがそんな名前だったか。 どれだけ大きいのよ? 「分かりますか?ティアナさん。ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールなんです。」 「ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールなのね。」 「そうです。ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールなんです。」 突き上げる拳に何の意味があるのか。 高々と突き上げる拳が重要らしい。 あと、ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールのアクセントも・・・・・・。 まぁ、なにはともあれ、この話はここで終わったからよしとしよう。 その後、休暇が終わっていつもの機動六課に戻ったのだけど、 数日間はクロスミラージュやグラーフアイゼンを見るたびに顔を赤くする隊長達の姿と、 ヴォルテールを見てみたいと訴えるヴィータ副隊長の姿が見られた。 追伸 エリオのをヴァイス陸曹とグリフィスさんが興味本位で覗き込んだところ心を圧し折られたらしい。
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/479.html
時空管理局が解散した。いきなり何を言うんだ? と言われても困るが、とにかく解散したのである。 時空管理局に所属する魔導師達は揃って職を失う事となったが、それでも皆新たな職を見付けて 第二の人生を歩んでいた。八神はやてとヴォルケンリッター達はお好み焼き屋を始め、 ハラオウン家はクリーニング屋を始めた。そんなある日の事… 「それではシャツ3枚とジャケットですね。仕上がりは明日の3時になりますので。」 「よろしくね。」 「ありがとうございました。」 クリーニング屋を始めてしばらく経つが、そのかいあってクロノも仕事に随分慣れて来た。 すると買い物に出かけていたフェイトが帰って来た。 「買い物帰りで済まないけど手伝ってくれないかな? 今日は少し忙しいんだ。」 「ハァ…ハァ…そ…そんな事より…。」 「ん?」 その時のフェイトの顔はまるでとんでもない物を見てしまったかのように真っ青になっていた。 「どうしたんだ? そんな血相変えて。」 「お…落ち着いて聞いて…。な…なのはが…なのはが見付かった…。」 「な…なんだって!? 本当か!? 何処で何をやってるんだあいつは!」 「それが…。」 フェイトは目から大粒の涙を流し始めた。 「お…落ちぶれて…ホームレスに…。」 「な…なにぃ…。」 フェイトはついには泣き出し、クロノも愕然とする他無かった。 一方ハラオウン家の経営しているクリーニング屋の近くの公園でボロボロのコートに身を包み、 目をサングラスで隠したなのはが物陰に隠れて双眼鏡で何かを覗いていた。 そして覗いた先に映っている一人の男の姿を追い、今度はコートの中からカメラを取り出し、 木の陰に隠れて盗撮を始めた。そして男が近所のマンションの中へ入って行く所まで撮った時、 それを遮るかのようにクロノとフェイトの二人が号泣しながら走って来たのである。 「なのは!」 「あ…。」 「何をやってるんだお前は!」 「あ…あ…し~っ。」 クロノとフェイトに迫られたなのはは戸惑うが、この二人とて戸惑いを隠せない。 「職が無いんならどうして言ってくれなかったんだよ! こんな落ちぶれた姿見たく無かったよ!」 二人はひたすらに号泣するしか無かった。時空管理局解散以後行方不明となっていたなのはが まさかこんな落ちぶれた姿で発見されるなど…誰だって泣きたくなる。 「とにかくすぐウチに来い!」 「そうだよ! ウチの仕事もやっとどうにか軌道に乗って来て、今ちょうど自給600円の バイト探してたところなんだよ!」 「あ…ま…まって…今仕事中なの! じゃましないで!」 「な…なにぃ!?」 「仕事って何!?」 「浮気調査なの!」 なのはは不機嫌そうに走り出した。 「今、依頼人の旦那さんが浮気相手のマンションに入る所だったの! 決定的瞬間を 撮り損ねちゃったじゃない! もうバカ!」 「…。」 一体なのはは何をやっているのか。まだ状況のつかめない二人は唖然とする他無かったが、 なのははマンションへ向けて走り、階段を幾つも登って行く。 「何処行ったの!? 依頼人の旦那さんは! ん…? 相手の部屋の窓が開いてるの…。」 そして、そ~っと中を覗いてみると… 「あ…。」 何とまあ依頼人の旦那と浮気相手が物の見事に何かやってますよ。しかも相手からも 見つかってしまい、これは非常に気まずい。 「し…失礼しました! 覗くつもりじゃなかったんです! 物騒ですからこの窓閉めておきましょうか?」 「あ…すみません…お願いします。」 そうしてなのははゆっくりと窓を閉めるが、その瞬間にカメラで二人の浮気現場を映像に収めていた。 「高町探偵事務所!?」 なのはから渡された名刺を見たクロノとフェイトは驚きを隠せない。 「ほ…本当に…本物の探偵になったのか!?」 「どうして探偵なんてやってるの!?」 「そういう話はまだ今度なの…。」 高町なのは 職業探偵 自称変装の名人 おわり 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ