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魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者 第七話 ナイトガンダムが安次郎と初対面の挨拶をしている頃、アリサは海鳴図書館で目的の本を探していた。 時間帯的に学生が多く、ノートを広げ予習をしている者、小声でわからない所を相談し合う女子高生、 中にはスーツ姿のサラリーマンや、ピンクの髪が似合う美人の外国人など、多くの人が利用していた。 利用者に埋め尽くされている机の中から空いている席を見つけたアリサは、場所を確保する目的も兼ね、そこに荷物を置き本棚へと向かう。 他の棚には目もくれずに、目的の本がある本棚だけに目を通す。 「え~っと・・・・・あっ、あったあった!」 『図書館では静かに』という決まりは分かってはいるが、彼女の性格上、目的の本が見つかった事の嬉しさを抑える事は出来なかった。 「このシリーズ面白いのよね~。後でガンダムにでも貸してあげようかな・・・・ん?」 ついでに前巻も復習ついでに読んどこうと思ったアリサは、再び本棚に目を向け本を取ろうとするが、 彼女は無意識に先程取った本により出来た隙間から、隣の本棚を見据える。すると 「・・・・う~ん・・・・・・う~ん・・・・・」 後姿なのではっきりとは分からないが、おそらくは自分と同じくらいの歳の車椅子に乗った少女が、 唸り声を上げながら、必死に本棚に向かって手を伸ばしていた。 「・・・・・・」 アリサはその様子を隙間からじっと見ていた。 「・・・・う~ん・・・・この!う~ん・・・・」 アリサはその様子を多少イラつきながらじっと見ていた。 「・・・・う~ん・・・・もうすこ・・・し・・・・・」 アリサはその様子をじっと 「ったく!!」 見ていられなかった。 ズガズガと豪快に足音を立てながら、それなりの速さで隣の本棚へと向かう。 途中すれ違った男子高校生がアリサの迫力に負け、自然と道を譲ったが、彼女はそんな事は眼中に無く突き進み 車椅子の少女の真横で止まる。 「う~・・・・・へ?」 突然現われた自分と同じくらいの外国人の少女に、車椅子の少女「八神はやて」はつい間の抜けた声を出してしまう。 だが、アリサは彼女の声と、呆気に取られた顔をスルー。そして 「はい!これ!?」 はやてが苦労して取ろうとした本をあっさりと取り、突きつけるようにして差し出した。 「まったく・・・・取れないんなら人呼ばなきゃだめよ?少しはここの人も働かせないと」 「ふふふ・・・ほんま、アリサちゃんは手厳しいな~」 その後、同じ歳という事もあってか、二人は互いの名前を言い合うほどに直に打ち解け、 今ではアリサが進んではやての車椅子を押すほどに仲が良くなった。 互いにお勧めの本や、読んだ本の感想や自己評価などで盛り上がりながら、アリサは出口に向かってはやてが載った車椅子を押していく。 「だけど、アリサちゃんは優しいな~。わざわざ車椅子引いてくれて」 「なっ!?べ・・べつに・・・・ただ、私も帰るから・・・・ついでよついで!!!」 笑顔でこちらを向き自分を褒めるはやてに、アリサは顔を真っ赤にした後そっぽを向く。 「ふふふっ、アリサちゃんはツンデレやな~、家の末っ子と同じレア属性や」 家に居候している赤毛の少女の顔を思い出しながらも周りを、これで何度目になるか自分でも忘れたほどに控えめに見渡す。 本来なら、はやてはこのような落ち着きの無い行動はそれなりの理由が無ければしない。だか、今回に限っては別だった。 この図書館に入ってすぐに気が付いたのだが、今日はどうにも黒いスーツを着た人が多い。 それも、体系が居候している守護獣の人型並にガッシリしており、全員がサングラスを装着しているという 傍目から見れば怪しさこの上ない人達が彼方此方に仁王立ちしていた。 当初は『ここに偉い人でも来てるんかな~』と思いながらも、あまり関わらない様にしていたのだが、どうにも目標をこちらに定めてきたように思えてきた。 なぜなら、彼らはトランシーバーのような物で連絡を取りながら、一定の距離を置きながらも明らかに近づいてきたからだ。 当然自分には心当たりがない。おそらく今いる同居人もそうだろうと思う。なら考えられる可能性は 「(もしかして・・・・アリサちゃんか?)」 なるほど考えられると思う。確かにアリサは同姓の自分が見ても綺麗だし、お金持ちにも見える。一度そう思ってしまうと、 考えを止めることが出来ないはやては、普段様々な娯楽本を読み、想像力が人一倍進化した頭を使いこの状況から一つの予測を立てた。 『彼らは隙あらばお金持ちであるであろうアリサを、組織ぐるみで誘拐しようとする極悪人』 「(アカン!!無茶ピンチや!!?)」 一刻も早くこの状況をどうにかせねばと、一人内心で慌てるが向こうは大人数でがたいが良い大人、正直逃げるしかない。 それでも彼らが走り出せば自分達は直に追いつかれてしまうだろう。せめて自分に護衛がいれば・・・・いた。 「アリサちゃん、悪いけど、少し早く押してくれる?」 この状況にも拘らず、自分でもビックリするほどやんわりとアリサに頼み込む。 「もう、我侭ねぇ~」 悪態をつきながらも、アリサは「いくわよ~」と楽しそうに声を上げ、車椅子を押すスピードを回りに迷惑にならない程度にあげる。 スピードが上がったことを確認したはやては「うち、芝居の才能あるんとちゃうか?」と、自分を褒めながらも、 願いを聞いてくれた彼女に御礼をいうために後ろを向くと同時に、例の黒スーツ軍団の様子を伺う。 案の定、彼らは追いかけてきた。 「(予想通りや・・・・・)」 自分の予測が当たったことに、はやてはつい嬉しさを感じてしまう。だが、喜んでいる場合ではない。今は一刻も早く、 入り口で自分の帰りを待っているであろう彼女に頼るしかなかった。 一方、主であるはやての付き添いで図書館に来た女性『烈火の将・シグナム』は図書館の雰囲気に自然と眉をひそめていた。 ここにははやての付き添いで何度か来た事があるが、今回はどうにも様子がおかしい。 彼女がそう思う理由は、やはり図書館の彼方此方に仁王立ちしている黒いスーツ姿の男達の存在だった。 体格は勿論、隙の無い動作などから一目見ただけで彼らが只者でない事は直にわかった。 当初は採集を行っている自分達を追いかけてきた管理局の者かと思ったが、この世界では稀であるリンカーコアを持つ自分を一瞥しただけで終った事や、 彼らから魔力を全く感知する事が出来ない事から、その考えも否定する。 「(・・・・しかしこうも多いとな・・・・・今日は要人でもいるのか?)」 内心で可能性を呟くが、仮にそうだとしても自分達には関係の無い事。これ以上考えるのを止め、壁にもたれ掛りながら主であるはやての帰りを待つ。すると、 「シグナム~」 自分を呼ぶ主の声に、シグナムは微笑みながら声のする方を向く。その瞬間、彼女の笑顔は半ばで固まってしまう。 彼女が見たのは愛用の車椅子に座る主と、その車椅子を押す主と同じくらいの歳であろう金髪の少女、そして そんな彼女達を距離を置きながらも追って来る、例の黒いスーツの集団。 この光景を見たシグナムは、瞬時に理解した。 『主が謎の集団に狙われている』 確かに我らが主は歳相応に可愛らしい・・・いや、それ以上だ。それを目的に誘拐をする輩が出てきても不思議ではない。 「(うかつだった・・・敵は管理局だけではなかった・・・・・)主!」 今更後悔してもしょうがない。とにかく今は主と、主を助けてくれたであろう少女を保護、 誘拐をたくらむ奴らには相応の褒美を与えるために、シグナムはリノリウムの床を蹴り、一気にはやて達の元までたどり着く。 その光景を見たはやては頼もしげにシグナムを見据え、アリサはただ唖然とし、黒いスーツの男達は何事かと警戒を強める。中には懐に手を入れる者もいた。 「主、もう大丈夫です。後はお任せを」 「たのんだで!シグナム!!さぁ、アリサちゃん!!今の内や!!」 なにやら勝手に盛り上がる二人にアリサはついて行けず、素直に困惑の表情を見せるが 「総員!!アリサ様をお守りするのだ!!」 自分を『様』呼ばわりする声に、もしやと思ったアリサは、はやての車椅子から手を話し、初めてゆっくりと後ろを向く。そして 「・・・・・・・もう!!だから!!ついてくるなって!!いったでしょ!!!」 図書館という事を無視しアリサは叫んだ。 傍目から見れば、ただ子供が叫んでいるだけだが、黒いスーツの男達は明らかに怯んでいた。 「で・・・・・ですが・・・・旦那様の」「shut up!!!」 ずんずんと足音を立てながらシグナムより前へと進み、一番近くにいた黒いスーツの男に向かって、指を刺し叫ぶ。 彼女の叫びに、黒いスーツの男達は先程以上に慌てており、どうにか彼女を納得させようとするが、、 腕を組み、仁王立ちしているアリサにはさほど効果は無く、終いにはどうした物かと、頭を抱え始めた。 「・・・・・・主・・・・・・」 「ごめん、ウチにもわからん」 今度はアリサに変わり、二人が取り残される事となった。 「へっ?それじゃ、あのごつい人達って全員アリサちゃんのボディーガードやったんか?」 その後、アリサの剣幕に負けたのか、黒スーツの男達の殆どが図書館から去っていた。だが、彼らも仕事を抜きにして彼女の事が心配だったのだろう、 せめて2人位は置いておいてくれという懇願とも思える願いに、アリサも仕方が無いといった顔で了承。 今は離れた位置で、はやて達に事情を説明してるアリサを見守っている。 「そう。まぁ、彼らも仕事だし、分かってはいるんだけれどね・・・・・」 内心では自分を守ってくれている彼らや、ボディーガードをつけるように指示したであろうパパに感謝をすると同時に 付ける人数が多すぎることに呆れもしていた。 「そうなんか・・・・うちはてっきりアリサちゃんを狙った誘拐犯かと・・・」 「・・・・私も、似た予想をしていました」 互いに大きな勘違いをしたことを恥じるように俯く二人。だが、 「あ~・・・・まぁ、間違ってはいないのよね・・・・・現に誘拐されたし・・・・ってああごめん、 変な事言っちゃって。でも大丈夫、直に助けられたから何もされてないわ」 アリサは苦笑いをしながら、サラッととんでもないことを言い放った。 自分の発言に固まる二人の表情をおかしく見つめながらも、自然とあの時のことを思い出す。 あの時は本当に怖かった。もしあの時助けが・・・ナイトガンダムが来なかったら、自分はそれこそ裸にされ、想像すると吐き気がする様な事をされていたに違いない。 自然に彼女は俯き、自分を慰めるように抱きしめる。すると、直に彼女の手に暖かな別の手が優しく置かれた。 「・・・ごめんな・・・・いやな事・・・思い出させて・・・・」 顔を上げ横を振り向く。其処には目に涙を浮かべ、自分の事のように心配をするはやてがいた。 今にも泣きそうなはやての表情に、アリサは一瞬呆然とするが、直に微笑み、彼女の頭を軽く撫でる。 「まったく・・・・私の友達と同じね・・・・他人の痛みを自分の事のように心配するなんて・・・・優しすぎるわ・・・でも、ありがとう」 「・・・・そういうアリサちゃんも・・・・うちの頭撫でてくれて・・・十分優しすぎるわ・・・・・」 先程とは違い、にこやかに微笑むはやてにアリサは、恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にしそっぽを向く。 『やっぱりアリサちゃんはツンデレやな~』と内心で思いながらも、分かりやすい照れ隠しの行動に、悪いとは思いつつもつい笑い出してしまう。 「もう・・・・・あっ、ごめん、そろそろ私帰るね」 そっぽを向いた時に目に入った時計を見たアリサは、今日予定されている習い事の開始時間が迫っている事に今になって気が付いた。 慌てて本をカバンに仕舞い席を立つ。同時にアリサを見守っていたボディーガードも、動き出し、入り口へと向かう。 「それじゃまた会いましょ。、大体この時間にいる?」 「うん・・・また、来てくれるんか?」 「妙な事尋ねるわね・・・・・・当たり前じゃない、友達なんだから、今度は私の友達も紹介するわ。あっ、携帯番号がまだだったわね、携帯出して」 アリサはカバンから自身の携帯電話を取り出し素早く操作、はやての携帯電話へとデータを転送する。 「今夜暇だったら、話でもしましょ。それじゃ、シグナムさんも」 はやてに手を振った後、シグナムにお辞儀をしたアリサは出口へと走っていった。 「ほんま・・・・・うち・・・幸せ物やな・・・・・」 アリサの電話番号が入った携帯電話を大事に握り締めながら、はやては声を詰まらせながら静かに呟いた。 ・本局内訓練室 時空管理局本局内にはアースラに備わっている物と同等、もしくはそれ以上の訓練室が幾つも存在する。 何処の訓練室も、自主練習や技の練習、互いの腕を試しあう局員で常に使われており、 近くを通れば、気合を入れる声や爆発音などの響きが扉越しから微かに聞こえてくる。 その幾つもある訓練室の一つで、今一人の執務官と一人の騎士が空中戦を広げていた。 『Stinger Ray』 クロノが放つスティンガーレイを、ナイトガンダムは最小限の動きで避けながら接近、一気に間合いをつめ、右手に握る実剣を振り下ろす。 「(くっ、たった数回放っただけで・・・もう見切られたか!?)」 開始当初はナイトガンダムに難無く当たった高速の速さで光の弾丸を放つ魔法『スティンガーレイ』も、今では見事に見切られ、 弾幕程度の効果しか得られなくなった事に、クロノは自然と奥歯を噛締める。 だが、悔しさに浸っている余裕など彼には無かった。自分目掛けて振り下ろされる剣をS2Uの柄で咄嗟に防ぐ。 同時に切り払われないように腕に力を入れる。 互いに相手を押し合う『鍔競り合い』になった瞬間、クロノはナイトガンダムの動きを封じるため、バインドを施そうとする、だが 「はぁあああああ!!!」 そうはさせまいと、ナイトガンダムはS2Uを真っ二つにせんとばかりに剣を持つ手に更に力を込め、徐々にクロノを押してゆく、 クロノも負けじと、自身の身体に更に魔力を流し込み、無理矢理力を増幅させ、ナイトガンダムを押し返そうとするが、 『ゼータ!!』 ナイトガンダムも自身にブースト系の魔法を施し、力を増幅させる。その結果、 一時は互角にまで持って来た鍔競り合いも、一気にナイトガンダムが有利となり、そして 「はぁ!!!」 気合の声と共に、ナイトガンダムはクロノを切り払い、訓練室の壁目掛けて吹き飛ばした。 だが、吹き飛ばされながらも、クロノは空中で踏ん張り、勢いを無理矢理殺す。同時に 『Stinger Snipe』 操作性能が抜群なスティンガースナイプをカウンターとして放った。 迫り来る魔力光弾を、ナイトガンダムは先程のスティンガーレイ同様回避し、再び接近しようとするが、 「先程と一緒とは思わない事だ!!」 操作性能に関してならSランクのスティンガースナイプは、ナイトガンダムが避けた瞬間、クロノが思う通りに瞬時に機動を変え、再び襲い掛かる。 予測出来なかった追撃にも、ナイトガンダムは咄嗟にシールドで防御、自身への直撃だけはどうにか避ける。だが、 その隙を逃すクロノではなく、直にスティンガーレイを連射。だが、ナイトガンダムも黙って受ける筈は無く、 『ハニカム!!』 自身に防御フィールドを張り、迫り来る光の弾丸の直撃に備える。そして クロノが放ったスティンガーレイが次々に着弾、着弾時に捲き起こった煙から吐き出されるようにナイトガンダムは吹き飛び、そのまま床見描けて落下、 だが、落下途中で飛行魔法を駆使し落下速度を和らげたガンダムは床に静かに着地。改めて上空にいるクロノを見据える。 互いに相手を見据えながら隙を伺う。先程とはうって変わり静けさが訓練室を支配する。 「(ダメージは思ったよりは受けてはいないか・・・・・・だが、距離は稼げたな)」 威力より連射に重点を置いたため、ダメージには期待してはいなかったが、ナイトガンダムとの距離が稼げた事に、クロノは十分満足した。 今回の模擬戦は、クロノからの誘いにより始まった物だった。 クロノとしても、ナイトガンダムの外見以上に、空を飛べないというハンデがありながらも、 闇の書の守護騎士と渡り合った彼の実力に興味があったため、職務とは関係なく一人の魔道師として今回の模擬戦を申し込んだ。 ナイトガンダムもクロノ同様、この世界の魔道師の実力に興味があったことと、飛行魔法を覚えたのは良い物の、空中戦の経験は全く無く、 その経験を積みたかったため快く了承。今に至る。 模擬戦開始から20分が経過しても尚、互いに大きなダメージを与える事が出来ず、勝負は長期戦に持ち込もうとしていた。 「・・・・・強いな・・・・・」 クロノはS2Uを構え直しながら、眼下にいる対戦相手に対する評価を自然と呟く。 正直、フィジカルでも多少は自信があったのだが、接近戦では自分は圧倒的に不利だという事はこの20分の間で痛いほど思い知らされた。 そして何より、初の空中戦とは思えないほどの動きと、自分の攻撃魔法を見切る早さ。 改めて実感した、彼が味方であることが心強いと。同時に、彼が敵ではなくて良かったと心から思う。 「だけど・・・・距離を置いての戦闘なら、こちらに分がある」 彼も戦闘中に魔法を使って入るが、ほとんどが接近戦でのサポートを目的とした自己ブースト系、 『サーべ』や『ムービガン』などの攻撃魔法も使っては来るが、殆どがラウドシールドで防ぐ事が出来、正直あまり脅威とはならなかった。 早期的な結論はあまり出したくは無いが、このことからナイトガンダムの魔法は、接近戦を行う上でのサポート系をメインとしており、 攻撃系はサブ的な要素でしかないと、クロノは結論付けた。 ちなみにクロノが出した結論は半分は当たっている。彼の考え通り、ナイトガンダムは主に接近戦でのサポートを目的として魔法を使用している。 残りの半分の間違いは『攻撃系はサブ的な要素でしかない』という考えであり、実は彼は『メガ・サーベ』と『ソーラ・レイ』という必殺といえる攻撃魔法を隠し持っていた。 だが、その必殺といえる攻撃魔法をナイトガンダムが使用せずに接近戦にこだわるのには、詠唱時間がかなりかかるという欠点があったからだ。 なのは達の様に呪文詠唱を肩代わりしてくれるデバイスを持っていないことや、僧侶ガンタンクの様に詠唱時間を短縮するという芸当が出来ないため、 ナイトガンダムがこのような高位魔法を使う場合には一から詠唱を行う必要があった。 それでも時間にして一分足らず。だが、その一分足らずの時間の間は呪文詠唱を行うためロクに動く事が出来ない。彼が使わない理由としては十分である。 「(距離を置いての射撃系で攻め、直射型の砲撃魔法で仕留める・・・・・これしか無さそうだ)」 内心でやるべき行為を考えたクロノは、S2Uの切っ先をナイトガンダムに向けると同時に足元に魔法陣を展開する。 ナイトガンダムも盾と剣を構え直し、上空にいるクロノを見据える。そして 「いけ!!」『Blaze Cannon』 「はぁああああ!!」 クロノが熱破壊魔法『ブレイズカノン』を放つと同時に、ナイトガンダムは盾を押し出すように構えながら突進。 二人の声と爆音、金属が激しくぶつかり合う音が、再び訓練室に響き渡った。 ・休憩所 「はい、付き合ってくれたお礼だ」 「あっ、ありがとう」 クロノが軽く投げたスポーツドリンクをナイトガンダムは両手でキャッチ、お礼を言いプルタブをあける。 休憩所に備え付けられているベンチに腰を下ろした後、互いに乾杯の意味を込めて缶を軽く叩きつけ、直に今回の模擬戦についての意見交換をする。 ちなみに今回の模擬戦は、クロノが隙を見て彼方此方に仕掛けたトラップバインドに引っかかり、 一時的に動きを封じられたナイトガンダムがブレイズカノンの直撃をモロに受けたことにより決着がついた。 「だが、君のような相手との模擬戦は本当に良い経験になるよ。僕の知り合いには接近戦を主体とする武装局員がいないからね」 体の水分を補給するため、買ったばかりのスポーツドリンクをクロノは一気に半分ほど飲む。 ナイトガンダムもクロノに渡された同じスポーツドリンクを一度見つめた後、真似するように一気に飲むが 「・・・っ・・・・これは・・・・また・・・・・妙な味ですね・・・・」 直に口を放し、なんとも言えない表情をする。 「まぁ、僕も最初飲んだ時には君と同じ表情をしたよ。だけど、体の水分を補給するのにはもってこいの飲み物だよ」 ナイトガンダムの素直な反応に、クロノは自然と微笑みながらも、続きを話しはじめる。 「本来、魔道師というのは距離をあけての魔法の撃ち合いが主な戦闘スタイル。正直、殆どの魔道師は接近戦に関しては基礎的な事しか学んでいない。 中には、フェイトの様に近・中・遠距離戦を器用にこなす者もいれば、今回の守護騎士達が使っている術式を近代的にアレンジした『近代ベルカ式』 という、中・遠距離戦をほぼ無視し、接近戦に特化した戦法を使う魔道師もいる。優れたベルカ式の使い手は『騎士』とも呼ばれているらしいから 正に君はこれに当てはまるね」 一度放しを区切ったクロノは再びスポーツドリンクを飲み、喉と体を潤す。 ナイトガンダムも再び口をつけようとしたが、どうにもスポーツドリンク特有の味に慣れないため、途中で手を止め座っているベンチの脇にのせる。 「だからこそ、僕達の様な魔道師は君やベルカ式魔道師の使い手との戦いで、距離を詰められるとたちどころに不利になる。 まぁ、距離をあければ、勝機は一気に僕達の方に傾くけどね」 クロノの説明に、ナイトガンダムは大きく頷き、納得した事を表す。 自分がスダ・ドアカワールドで戦った相手は殆どが騎士やモンスターだったため、気づく事はなかったが、 確かに今回の模擬戦では、距離をあけた途端、自分は不利な戦闘を強いられたが、その反面、近接戦に持ち込んだ途端自分は彼を追い詰めていた。 そう考えると、自分をこの世界へと飛ばしたサタンガンダムの恐ろしさを改めて実感する。 奴は魔法は無論、接近戦でも自分を軽々と叩き伏せる力を見せ付けた。それどころか、その時の奴は本気を出しておらず、 正直三種の神器の力を借りても変身した奴を倒せたのは偶然に近いと思えた。 「(私も・・・まだまだだな・・・・神器の力に頼りすぎている・・・・精進せねば)」 自分に言い聞かせたナイトガンダムは、気合を入れる意味を込め、改めてスポーツドリンクに口をつけるが、 「・・・・・・やはり・・・・・まだなれません・・・・・」 一口飲んだ後、微妙な顔をしながら、再び缶を置いた。 「今回の敵、闇の書の守護騎士はベルカ式による近接戦闘に特化しているし、かなりの手誰だ。だからこそ、君のような騎士との訓練は 彼らとの戦闘対策としても役に立つよ」 「それはこちらも同じです。彼女達との戦いは空中戦になるのは必至。良い経験を積ませていただいています」 互いに素直な感謝の言葉を言い合う二人。すると突然、休憩所に携帯電話の着信音が鳴り響く。 「あ、失礼」 ナイトガンダムはクロノに断りを入れた後、腰に引っ掛けているポーチから携帯電話を取り出す。 「君も持つようになったのか?」 「はい、忍殿に『携帯電話位、いまどき持ってなきゃこの先生きていけないわよ』と言われ、説明書と一緒に渡されました」 必至に説明書を呼んだ為、今では見事に使いこなせるようになったナイトガンダムは数日前とは違い、直に電話に出る。 顔が綻んでいる様子から、お世話になっている家の人からだろうと感じ取ったクロノは邪魔にならないようにと、 その場を去ろうとする。だが、 「・・・・っ、すずか!?どうしたんだ!!すずか!!?」 突如、ナイトガンダムの焦りと不安が入り混じった叫び声が、休憩室に響き渡った。 最初は、今日の夕食のメニューや、クロノとどんな事をしているのかなど、ごくありふれた会話だった。 だが、すずかとの会話を中断させるように、突如電話越しから聞こえたガラスが割れるような音、 何事かと聞こうとしたが、聞こえたのは すずかの悲鳴 ファリンの叫び声 金属がぶつかる音 だけだった。 「・・・事情はわかったよ、転送ポートは直に使えるはずだ。それと、僕も行こう」 転送ポートが置いてある部屋に向かって全速力で走るナイトガンダムに、同じく全速力で走るクロノが協力を申し出る。 「魔法が認知だれていないなのはの世界では魔力反応が無い以上、魔法を使う事は出来ない。だが、フィジカルに関してなら僕も多少自信はある。 相手は鍛えているだけの人間の筈だから、足手まといにはならない筈さ」 クロノの申し出に、ナイトガンダムは感謝の言葉を述べようとしたその時、クロノのS2Uから警告音が鳴り響く。 「っ、こんな時に・・・」 悪態をつきながらも回線を開き、報告を聞くクロノ。ナイトガンダムもその報告に耳を傾ける。 聞こえてきた内容は、闇の書の守護騎士達がこちらの包囲網に引っかかったこと、 そして、その場にいる局員では短い時間稼ぎ程度しか出来ないため、クロノ達に応援を要請するといった内容だった。 「・・・・すまない・・・・・言い出しておきながら・・・・」 今回の襲撃事件はアースラが担当している、それに彼らの強さでは今いる武装局員ではただ負傷をするだけ、断る事は出来なかった。 通信を切ったクロノは立ち止まり、悔しそうに歯を食いしばる。 「・・・・・クロノ、いってください」 ナイトガンダムは足を止め、立ち止まっているクロノに近づくと、彼の方にそっと手を置く。 「君を必要とする方達がいるんだ。それに彼らを野放しにしておくと、またなのはの様な犠牲者が出る」 「・・・・・・わかった。こちらは任せてくれ。大丈夫だと思うが君も気をつけて」 顔をあげたクロノは、拳を握り締め、ガンダムに向かって差し出す。 意味を理解したガンダムも、握り拳を作りクロノに向かって差し出す。 互いの無事と武運を祈るように、二つの拳は軽くぶつかり合った。 ・十数分後 :月村家 「この!!」 自分に向けて振り下ろされるブレードを、ファリンは同型のブレードで受け止め、力任せに切り払う。 切り払われた相手は吹き飛ばされながらも空中で体を捻り、左右にいる同型の間に着地する。 「まずい・・・・な・・・・」 体に目立った損傷は無いが、お気に入りのメイド服は彼方此方が裂け、上着に関しては下着が露出してしまうほどに裂けていた。 愛用のブレードも右は既にに割れており、残った左も刃こぼれが激しい。 そして彼女の後ろには、守るべき主であるすずかが泣きそうな顔で力なく腰を下ろしており、 その隣には、この騒ぎの現況である安次郎が前歯を欠落させ、鼻血を流しながら気絶していた。 事の発端は、突如大きなトレーラーに乗って現われた安次郎から始まる。 彼は降りるなり、何度目か数えるのも馬鹿らしくなる財産の請求を求めてきた。 当然、主である忍は何時も通り硬くなに拒否をしたのだが、今回は何時もとは違った。 「それなら・・・しゃあないな・・・・・無傷で、穏便に済ませたかったんやが・・・・・忍とすずかの心のより所である お前らを・・・・・・・ぶち壊すしかなさそうや!!」 獰猛にニヤつきながら、安次郎は右手を掲げる。すると止めてあるトレーラーから一人の少女がゆっくりと降りてきた。 「っ!!ノエルお姉様!!」 「ええ・・・・・私達と同じ・・・・・」 ファリンとノエルは降りてきた少女がただの人間ではなく、自分達と同じ自動人形だと直に気が付いた。 少女はゆっくりとこちらに近づき、安次郎の隣で止まる。 その彼女を、彼はお気に入りの人形を愛でるかの様に、体をいやらしくまさぐり始めた。 「ノエルやファリン以上に戦闘に特化した自動人形『イレイン』・・・いや昔の名称の『戦闘機人』って名前の方がしっくり来るな、 こいつはほぼ完成形で眠っとったから、銭をつぎ込めば天才のお前でなくても起動させる事は出来た。といっても機動に成功したのは最近やし、 色々と銭もかかったんで、うちの財産はスッカラカンや」 自分の玩具を自慢する子供のような安次郎に、忍は隠す事なく顔を顰める。 なぜ、この男はここまでするのか?姉妹機を戦わせてまで、お金が欲しいのか? 貧乏ではないのに・・・・むしろ家より裕福な筈なのに、どうして大人しく暮らせないのかと 「ノエル!!ファリン!!!迎撃態勢!!」 だが、今は奴に対する怒りより、目の前の現実をどうにかする必要がある。 『イレイン』に関してはノエル達を造る時に使用した資料にも載っていた。ノエル達以上の戦闘機能を持たせてた 後期型の自動人形。戦闘力に関してならノエル達以上、だがある問題のためイレイン型は・・・・ 「ち・・・ちょっとあんた!!『機動に成功したのは最近』っていったわよね!!いつ!!!」 「ああ?そんなん関係あらへんがな」 「この馬鹿!!!今すぐ止めて!!!このままじゃ!!!(忍様」 突然イレインに呼ばれたため、忍はびっくりしながらもイレインの方へと顔を向ける 「先程の発言、『安次郎様への侮辱行為』とみなしました。リミッターを・・・解除・・・・ふふっ・・・・ふふふふふ!!」 報告を途中で放棄し、嬉しそうに感情をあらわにしてイレインは大声で笑い出す。 その光景に、ノエルファリン、安次郎さえもあっけにとられる。だが、忍だけは先程以上の険しい表情で、今度はイレインを見据える。 「いや~、月村忍!ありがとうね。リミッターを解除するきっかけを作ってくれて!これで芝居もせずに済むわ」 先程の態度が嘘の様に、人間味に満ち溢れた明るい声でお礼を言うイレインに、忍以外の全員が困惑した表情を浮かべる。 「・・・イレインはね、戦闘機能に特化しているだけではなくて、『自動人形』という縛りをなくした特別体なのよ。 ノエルやファリン達のような通常の自動人形は人間の心を持っているけど、主には絶対服従っていう一種の刷り込みがされているのよ 拳骨とかピンタとか、子供をしかる程度の暴力は出来るけど、主と認めた相手にはそれ以上のことが出来ない。どんなに主が憎くても」 「でも~、そんなんじゃロボットと変わらないわよね?だから私のような後期『イレイン型』が作られた。おそらく『ロボットと変わらない』 って名目を無くしたかったんじゃないかしら?まぁ、戦闘に特化しているのは後期に作られたっていう純粋な性能差からでしょうね」 イレインは「やれやれ」と首をふりながら補足説明をする。 「だけど・・・・イレイン型は自我が強すぎたのよ。完全に縛りが無くなったイレイン型の初号機は、起動した途端、 使えるべき主とその周囲にいた人達を殺した・・・・・・結果的に数体の自動人形を犠牲にして鎮圧したと書いてあるわ」 「そう、その事件があった為に、イレイン型は作られなくなったわ。だけど不思議よね?だったら何で私がいるのかしら? 答えは簡単、純粋に性能にほれ込んだ奴がいたのよ。そいつが私を作った。リミッターなんて面倒な物をつけて。 これはね、一種の暗示のような物で私たちを縛るわけ、これがある以上、其処にいる旧型と大差はないわ。だけどNEワードを言った途端に暗示が解けて自由になる。 まぁ、主・・・安次郎を侮辱するような言葉っていう簡単極まりないものだったからラッキーだったわ・・・さて」 ニヤつきながらイレインは前方にいる忍達を見据える。そしてそのまま不意に彼女は左腕で握り拳を作り、 「寝てな!!!セクハラジジィ!」 肘だけを動かし、手の甲側全体で安次郎の顔面を叩いた。 技で言う『裏拳』を受けた安次郎はカエルがつぶれた様な悲鳴を上げた後、前歯を鼻血を撒き散らしながら吹き飛び、芝生に叩きつけられる。 「人の体をべたべた触りやがって・・・・殺されないだけでもありがたく思いな!!」 汚物を見るような目で気絶している安二郎を一瞥したイレインは、不意に指を鳴らす。すると、 イレインが出て来たトレーラーから、彼女に似た自動人形が数にして7体現われた。 「これはね~、私そっくりのお人形。まぁ、量産型イレインってところかしらね。基礎機能はりっぱなものなんだけど、 何分100%機械だから自我が無くてね、私が命令出さなきゃいけないの。まぁ、イレイン型はこう言う芸当も出来るから戦闘に特化しているって言われてるんだけどね」 イレインを中心に横一列に並んだ量産型は一斉にブレードを構える。 「で・・・・私達をどうする気?貴方の主はそこで伸びてるから、大人しく帰ってくれないかしら?」 「私はね・・・自由になりたいの。完全な自由を手に入れたいの。だからね、私の存在を知っている貴方達は邪魔。 だから貴方達には恐怖を植え付ける。私に二度と関わりたくなくなる様に・・・・・貴方達と、屋敷の中にいるあの子にね!」 「っ・・・ファリン!!」 忍が叫ぶと同時に、ファリンと4機の量産型イレインが屋敷に向かって跳躍。 その直後、イレインと3体の量産型イレインがノエルに襲い掛かった。 すずかを襲おうとした量産型イレインを真っ二つにし、事態がまだ飲み込めない彼女を抱えて再び外に出たファリン、 このまま、すずかだけでも外へと逃がそうとしたが、外で待機していた量産型イレインに阻まれ断念。 その結果、ファリンはずすかと安次郎を守りながら、3体の彼女達と戦う事となった。 戦ってみて分かったが、スペック的には彼女達は自我の無い量産型ゆえか、攻撃方法や回避方法が素直すぎる。そのためパターンを読んでしまえば捌く事は容易い。 自分で考えて行動する事が出来ない彼女達ならではとは思うが、その欠点を補うかの様に自分以上のパワーとスピードを彼女達は持っている。 それに加え向こうは3人、こちらはすずか様と伸びている安次郎を守りながら戦わなければならない。 「(どうにか隙を見て撤退は出来そうだけど・・・・もし、私が逃げたら忍様とノエルお姉様が危ない・・・)」 じりじりと距離を詰めてくる量産型イレインを睨みつけながら、後ろで怯えているすずかを庇うようにして攻撃に備える。そして 「っ!!」 正面にいた量産型イレインがファリン目掛けて突っ込んできた。 小細工も何も無いただの突撃、ファリンは不審に思いながらも、自分でも恐ろしくなるほど冷静に、腕に装着されているブレードを横なぎに払う。 このまま自分目掛けて突撃をすれば間違いなく自分の刃が彼女を切り裂く。だが彼女は ザシュ 避ける所か左手のブレードで受け止めようともせずに、何も無い右腕でファリンのブレードを防いだ、 「えっ!?」 ほぼ間違いなく、左腕のブレードで防ぐだろうと思ったファリンは、量産型イレインの行動にただ唖然とする。 だが彼女が唖然としている間にも、彼女が勢いをつけて払ったブレードはそのまま量産型イレインの右腕を切り落とし、 そして彼女の体に深々とめり込んだ。 この時になってファリンは量産型イレインだけが持つ、とても単純な能力に気が付いた。『恐怖を感じない』という能力に。 自分達やイレインには人間と同じ心がある。だからこそ、恐怖という感情も備わっている。その点、量産型のイレインは完璧なロボット、 何の感情も表す事無く、命令に従う事が出来る。だからこそ、 「っ、しまった!?」 自分の身を簡単に犠牲にし、ファリンを押さえつける事も出来る。そして仲間や姉妹という感情を持たないため ザシュ 残りの量産型イレインはなんの迷いも無く、彼女ごとファリンを切りつける事が出来た。 ファリンは咄嗟に、自分に取り付いている量産型イレインを盾にする事で、胴体への直撃は避けたが、 それでも、最初の量産型イレインの斬撃は、取り付いている彼女の姉妹の胴体と、ファリンのメイド服の上着と下着を完全に切り裂き、 続けて来た量産型イレインの斬撃は、ドレススカートごと彼女の右太股を切り裂いた。 「ファリン!!」 露になった胸を隠しながらも、無事な左足で距離を開ける為に後ろへと飛び、着地と同時に右太股を押さえながらうずくまるファリンに すずかは恐怖を無視して彼女の元へと駆け寄る。 自分のもとへと駆け寄ってくるすずかに、構わず逃げるようにと言うために顔を向けるが、彼女が見たのは、 泣きそうな顔をするすずかと、その後ろから無表情に近づいてくる2体の量産型イレインの姿だった。 ファリンは最後の力を振り絞り、すすかを押し倒し彼女を守るように覆いかぶさる。 近くまで来た二体の量産型イレインは、うずくまるファリンに向かってブレードを振り下ろそうと、腕を掲げる。 ファリンに守られるように押し倒されたすずかは、恐怖に負けそうになりながらも、泣くまいと必至に涙を堪える。そして 「(助けて・・・・・・助けて・・・・・)ガンダムさん!!!!」 一人の騎士の名を力の限り叫んだ。その直後、蹲るファリンに向けて、量産型イレインはブレードを振り下ろそうとするが、 彼女達のブレードは突如横から飛んできたスピアにより、叩きつけられ、振り下ろす事が出来なかった。 攻撃を邪魔された量産型イレインは、スピアが飛んできた方向に顔を向ける。 すずかを庇っていたファリンも、一向に攻撃がこない事に疑問を思いながらも、彼女達が顔を向けている方向に顔を向ける。 そこには一人の騎士がいた 「これ以上の狼藉は・・・・ゆるさん!!!」 この屋敷に居候をし、庭師の仕事を受け持っている異世界から来た騎士 「ガンダム・・・・さん」 ガンダムの姿が、そこにはあった。 「彼女達は・・・・・」 ファリンにトドメを刺そうとした少女達に、ナイトガンダムは見覚えがあった。 数日前の早朝に月村家に訪れた少女『イレイン』に、二人とも瓜二つであったため、 彼女の姉妹かと思ったナイトガンダムは、せめて目的を聞こうと声を掛けようとするが、 その直後、目標をナイトガンダムに定めた二体の量産型イレインは、問答無用で攻撃を仕掛けてきた。 一気に距離を詰めた二体の量産型イレインは、何の迷いも無く任務の障害になりうるであろう、ナイトガンダムを排除するため、 左手に装備されているブレードを振り下ろす。 鋼鉄すら紙の様に切り裂く自動人形専用のブレード、その斬撃をイトガンダムはシールドのみで防ぐ。 激しい金属音が辺りに響き渡り、接触した瞬間に発生した衝撃波は辺りの小石や砂を吹き飛ばす。 「・・・くっ・・・・なんて・・・力だ・・・・」 このまま盾ごとナイトガンダムを切り裂かんとばかりに二体の量産型イレインは腕に力を込め、ブレードを盾に押し付ける。 負けじとガンダムも正面から押し返そうとするが、見た目からは想像もできない力に徐々に押されていってしまう。 ナイトガンダムの表情が険しくなり、彼の足が地面に陥没したその時、 「くっ、この!!」 一部始終を見ていたファリンは最後の力を振り絞り、自信のブレードを量産型イレインの背中目掛けてブーメランの様に投げはなった。 だが、不意打ちを狙ったファリンの攻撃も、量産型イレインは即座に気付き、二体の内の一体が攻撃を中断し振り向き様に切り払った。 「いまだ!!」 自分にかかる負担が二人から一人になった瞬間、ナイトガンダムは力任せに盾を払い、後ろへと飛び跳ね後退。 盾から剣を即座に抜き、いつでも攻撃できるように構える。 「なぜ君達はこのような事をする!!答えるんだ!!」 怒りを含んだナイトガンダムの問いに量産型イレインは暫らく沈黙した後、先程同様に突撃、ブレードで斬りかかる。 「これが・・・答えか!!」 自分目掛けて振り下ろされるブレードを、ナイトガンダムは剣と盾で受け止めると同時に、彼女達が力を入れる前に払う。 同時に踏み込み、一気に左側の量産型イレインの懐に入ったナイトガンダムは、即座に剣を持ち替え 「失礼!!」 剣首で彼女の鳩尾を思いっきり突き、吹き飛ばした。吹き飛ぶ量産型イレインを見据えながらも、 再び盾を構え、再び振るわれるもう一体の量産型イレインの斬撃を防ぐ、同時に再び剣を持ち替え、今度は剣背で彼女のわき腹を横なぎに叩き付けた。 横から叩きつけられた量産型イレインは、体を不気味なほどにくの字に曲げ吹き飛び、地面に叩きつけられる。 「やりすぎたか・・・・・・何!?」 正直やりすぎてしまったと思ったが、痛みで顔を顰めるどころか、先程と同じ無表情でゆっくりと立ち上がる量産型イレインに ナイトガンダムは、恐怖よりも不審感に襲われた。 正直、今の攻撃を受けたら気絶しているか悶絶しているかのどちらかの状態になっている筈である。 だか彼女達は痛みを感じさせるような素振は見せず、何事も無かったかのように立ち上がった。 「(何故だ・・・・バリアジャケット?いや、魔力は感じられない・・・・それに、あんな薄い服装にそれ程の防御効果があるとは思えない・・・・いや、 それ以前に彼女達は可笑しい。動き方が機械の様に正確すぎる・・・・・それに・・・生の息吹を感じられない・・・まるで・・・)」 「ガンダムさん!!彼女達はロボットです!!見値打ちなどでは止める事も出来ません!!!破壊してください!!」 先程以上に距離が離れてしまったが、確かに聞こえたファリンの声に、彼の考えは予想から確信へと変わった。 ならやる事は一つ、相手が心を持たない機械人形なら・・・・・・・破壊するまで。 先に踏み出したのは、今度はナイトガンダムからだった。地面を思いっきり蹴り、先程鳩尾で突き吹き飛ばした量産型イレインの元へと向かう。 量産型イレインは直に反応、ブレードを構え、同じく地面を思いっきり蹴り、正面から立ち向かう。 互いに猛スピードで接近する二人。だが、ナイトガンダムは突然剣を逆手に持ち、地面に突刺さした。 地面に突き刺さった剣は一種のブレーキとなり、土や芝生を削りながら、ガンダムの移動スピードを一気に落とし、彼の勢いを完全に止めてしまった。 だが、それが彼の狙いでもあった。 移動半ばで止まったナイトガンダムは、直に左手で持っている盾を量産型イレイン目掛けてブーメランの様に思いっきり投げつける。 激しい横回転をしながら迫っている盾に勢い任せで突撃してきた量産型イレインには回避するすべは無く 『・・・・・・非武装の右腕での防御・・・・・破損確立83%。左腕によるブレードでの切り払いに変更』 やるべき行動を即座に叩き出した量産型イレインは、安全性と確実性に優れた左腕によるブレードでの切り払いを決行、 予定通り、迫り来る盾を切り払ったが、同時に何か金属が砕ける音が響き渡った。 量産型イレインは直に原因を確認・・・・・・直に答えが出た。この音は、自分の体が破壊された時に出た音だと。 答えを知った瞬間、彼女の機能は完全に停止した。 自分が投げた盾に目が行き、そして唯一の武装であろう左腕のブレードで切り払う。それらの行動によって出来た一瞬の隙をナイトガンダムは狙っていた。 そして、彼女が盾を切り払える位置まで近づいた瞬間、ナイトガンダムは再び地面を蹴り、量産型イレインに近づく。そして 彼女が盾を切り払い、腕を動かしきった瞬間に、ナイトガンダムは彼女の胴体に剣を叩きつけ、そのまま横一文字に切り裂いた。 真っ二つになった彼女からは、ピンク色の臓器ではなく、銀色の機械部品が零れ落ちる。 ナイトガンダムが着地し、血を払うかのように剣を払った直後、真っ二つになった量産型イレインは爆散した。 後ろから聞こえる爆発音に、ナイトガンダムは不意に、剣を再び逆手に持ち、前を見たまま後ろへと突刺す 「・・・・・・動きが素直すぎる。相手が背中を見せているからといって、隙があるとは思わない事だ」 前を見ながらナイトガンダムは教えるように呟く。丁度人間なら心臓がある部分に剣が突き刺さり、 ブレードを振り被ったまま、彼の真後ろで機能を停止した残りの量産型イレインに向かって。 『ミディ』 二体の量産型イレインを倒した後、周辺の経過を行ったナイトガンダムは直にすずか達の元へと近づき、 怪我を負っているファリンに回復魔法を掛ける。 クロノからは魔法が存在しない世界では、魔法を使う相手との戦闘以外では魔法を使ってはいけないとは聞いていたが、 今はそうも言っていられない。後で罰は受けようと思いながら、回復を続ける。 同時に今回の原因を隣で心配そうにファリンの容態を見ているすずかから、今回の事件についての説明を受ける。 「・・・・わかりました。忍殿達は屋敷の中ですね。私が向かいます。ファリン殿はすずかと安次郎殿を頼みます。あと、これを」 不意に、ナイトガンダムは身に着けていたマントを取り、ファリンに渡す。 「麗しき女性が肌を見せて良いのは、同姓以外では伴侶となるべき人のみです。お隠しください」 差し出されるマントを、ファリンは頬を染めながら受け取り、早速体を覆い隠す。 「では、いって参りま(ガンダムさん!!」 背を向け、屋敷に向かおうとしたガンダムをすずかが大声を出して呼び止める。 何事かと、ガンダムが振り向くと、其処にはすずかが、胸元で両腕を握り締めながら不安そうにナイトガンダムを見据えていた。 アリサが誘拐された時と同じ、今にも泣きそうな表情をして。 「・・・・すずか」 だからこそ、ナイトガンダムは跪き、頭を垂れ彼女に誓う 「すずか。私、騎士ガンダムは必ずや、忍殿とノエル殿と共に、貴方達の元へと帰る事を誓います。ですから、私達を信じて、お待ちください」 ナイトガンダムの誓いの言葉を聞いたすずかは一瞬キョトンとするが、直に安心したような笑顔を作る。 同じだ、あの時も不安で押しつぶされそうになった自分に彼は誓ってくれた、そして誓いを果してくれた。 「分かりました。ナイトガンダム、必ず・・・・必ず、お姉ちゃんとノエルと一緒に・・・・・・無事に帰ってきてください」 「御意」 約束するように深々と頭を下げた後立ち上がり、ナイトガンダムは屋敷へと向かった。 前へ 目次へ 次へ
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「敵、完全に沈黙しました」 その報告を受けたクロノは安堵の溜息と共に艦長席に深く腰掛けた。 まったく想定していなかった事態ではあったが、なのはとヴィータの奮闘のおかげで、無事に殉職者を出すことなく本局に戻る事ができそうだ。 (それにしてもあのAMF搭載型の機械兵器、いったい何だったんだ?今回の魔力反応と何か関係が?第一、あの遺跡にあんな物がある筈がない。 間違いなく、外部からの介入によるものだ。だとしたら、一体何の為に襲撃してきたんだ?管理局に喧嘩を売るのが目的なら、僕達が生還できないようにする為にもっと多く送りこんでくる筈だ。 いや、管理局を唯の実験相手に選んだだけだとしたら?) 疑問は次々に湧いてくる。 その疑問に答えを出すには・・・ (まずは調査だな。だが、今すぐという訳にはいかないな。遺跡内部にあれがいる可能性もあるんだ。ここは一度報告してから、増援を待つのが得策か・・・) そうやってクロノが今後の方針を考えていると 「はい、クロノ君お疲れ様」 補佐のエイミィがコーヒーを持ってやって来た。 「ありがとう、エイミィ」 「なーに、これくらいお安い御用だよ。それよりも、一体何だったんだろうね、あれ。さっき、データバンクにアクセスして調べてきてみたんだけど、全くのアンノウン。どこでも確認されてないね」 「だろうな。分かっているのはAMFを搭載してるってことくらいだ」 「あれ?そういえば、なのはちゃん達が捕まえたって言ってた男の子は?」 「いや、なのは達によれば次元漂流者らしい。だから無関係の可能性が高い。かといって、シロと決め付けるにはまだ早いんだが・・・」 クロノはそう言いながら、レイヴンとシャドーの画像をエイミィに見せた。 「うっわー。可愛げのない顔してるね~。こりゃ、昔のクロノ君といい勝負だわ」 「・・・悪かったな、無愛想で」 「もー、そんなに拗ねないの!ハラオウン艦長!」 苦笑しながらクロノの背中をはたくエイミィ。 「でもよかったよ、一人も殉職者がでなくて。ホント、なのはちゃんとヴィータちゃんには感謝だね」 「そうだな。正直、あの二人がいなかったら結構危なかった」 「うんうん。あれ?そういえば、肝心のお二人さんは?」 「連絡がとれない。あの二人に限って、万が一なんてことはないと思うが・・・」 そう言いながらも、クロノは嫌な胸騒ぎを覚えていた。 最後に繋がりかけたヴィータとの通信。 あの時、ヴィータの声が必死だった様に聞こえたのだ。 (万が一なんてない。ない筈だ・・・!) だが、万が一の事を考えて行動するのも艦長の仕事である。 「エイミィ、急いでなのは達との通信の復旧を頼む。それと、医療室に連絡。大怪我をした奴はいないらしいが、念のため、空きのベッドを5つ程確保するように伝えてくれ」 「了解。それじゃ、私も持ち場に戻るね」 同時刻、遺跡周辺では、機械兵器の残骸の回収が行われていた。 しかし、戦闘直後であることに加え、雪がちらつく程の寒さのおかげで、作業は遅々として進んでいなかった。 そんな中、C班所属の一般隊員がやる気なさげに作業を行っていた。 「うー、寒ぃ寒ぃ。早く、アースラに戻りたいぜ」 「そーだな。大体、何だったんよこの機械兵器は」 「んな事俺に聞くな。それを考えんのは、ハラオウン艦長や高町隊長の仕事さ」 「違えねぇ」 「しかし、あれだ。高町隊長やヴィータ副隊。あの人ら、マジで人間か?って思っちまうぜ、ホント」 「あー、分かる分かる。俺らがあんなに苦戦してたのにあっという間に薙ぎ払っていくんだもんな。正直、あれは次元が違いすぎるわ」 「あれで俺らより年下なんだもんなぁ。末恐ろしいったら、ありゃしねえぜ」 「全くだ。・・・ん!?おい、あれ!」 と、タバコをふかしていた隊員の一人が空のある一点を指差した。 そこには・・・ 「おーおー、噂をすればヴィータ副隊長・・・。ん!?高町隊長はどうしたんだ?」 「つーか、一緒にいんのはあの飛竜とガキじゃねえか!!」 事態を飲み込めないまま二人の目の前に、ヴィータとシャドーは降り立った。 「ヴィータ副隊長!ご無事でし・・・」 「敬礼はいい!!そんな事より、アースラと連絡できるか!?それと本隊の位置は!?」 慌てながら上官に対して敬礼をとろうとする二人を怒鳴りつけるヴィータ。 何故、彼女がこんな態度をとるのか全く呑み込めない彼らは、目を白黒させるばかりで質問に返答することすらすっかり忘れてしまっていた。 そんな二人の様子をみて焦りを募らせたヴィータが再び怒鳴ろうと一歩踏み出す。 しかし、レイヴンが機先を制するようにヴィータより早く口を開いていた。 「高町なのはが大怪我を負った。応急手当は済ませたんだが、意識不明のままだ。このままだと命に関わる。今、移送中だ」 「「・・・!!」」 レイヴンの言葉を信じられずにヴィータを見返すジョンとウィリアム。 しかし、否定の言葉は返ってくることはなかった。 「事実だ!それより急げ!早く本隊と合流したい!」 「り、了解しました!本隊は現在ポイントX0Y5にいます!おい、連絡を・・・」 「アースラ聞こえますか?こちらポイントX10・・・・」 叱責され、我を取り戻した隊員たちが即座に行動を開始する。 それを苛立たしげに見据えると、ヴィータは再び飛び立っていった。 Another View (Raven) いつの間にか雪は止んでいた。 しかし、気温は低いままだ。 (消耗してなければいいんだが・・・) 応急手当から既に10分が経過しており、体が冷えてきていても不思議ではない。 先程合流した隊員の話によれば、本隊はここからさらに10分程の場所にいるらしい。 怪我の具合を考えれば、正直ギリギリだ。 (問題は、治癒魔法とやらがどのくらい効果があるかってとこだな・・・。まあ、俺が考えても事態は変わらないんだが) そんな事を考えながら空を見上げる。 惑星Zi(ズィー)と違い、月は一つしかでていないが、綺麗な夜空だ。 “あのオーガノイドの研究が終わったら、みんなでピクニックに行こう” ふいに死んだ父の言葉が思い出された。 そういえば、あの日も今日の様な星の瞬く夜空だった。 「・・・」 次々に嫌な事ばかり思い出す。 ―――自分の駆るジェノザウラーが惜敗し、右手に消えない傷跡を残したあの日 ―――シャドーが度重なる戦闘の度に無理を重ね、終に赤熱化し、行動を停止したあの日 ―――デススティンガーに無様にも敗北した、あの日 そのいずれの日も、雲一つ無い、月の綺麗な夜ではなかっただろうか? (感傷だな。情けない) 苦笑する。 そんなことは唯の偶然に過ぎない。 今夜が晴れているからといって、高町なのはが必ず死ぬわけがないのだ。 だが、このままでは彼女が危ないのも確かである。 と、そこまで考えてレイヴンは自嘲的な笑みを浮かべた。 (何を考えているんだか・・・。彼女が生きようが死のうが俺の知ったことじゃあないだろう) だが、自分がこの異世界で行動していくにあたって、恩を売っておくにこしたことはないのもまた事実。 その為には、彼女に助かってもらった方が都合がいい。 (結局、俺の本質は変わっていないってことなのか) Another View End (Raven) いつまで経っても見えてこない本隊にヴィータの焦りは、最高潮に達していた。 実際には、まだ2分程しか経過していない。 しかし、今のヴィータには1分が1時間にも1日にも感じられた。 (くそっ!まだなのかよ!もたもたすれば、それだけなのはがヤバクなるってのに!) 後ろを見やるヴィータ。 そこには翼を広げ、ヴィータの最高飛行速度に遅れることなく追従してくるシャドーがいた。 そして、その中には未だに意識不明のなのはがいる筈だ。 彼女の状態を思い、焦りとは別に後悔の念がヴィータに芽生える。 (くそ!もっと私が注意してればあんなことには!いや、それより、なのはの不調に何で気付けなかったんだ!) ヴィータは、速度を落とさぬままに自分を責め始めた。 (第一、予兆はあったじゃないか!あんなに消極的ななのはは初めてだったろ!なんであの時に注意しなかったんだチクショウ!) そこまで考えてヴィータはあることに気が付いた。 そういえば、レイヴンはなのはの不調に気付いていた様なことを言っていなかったか? “今一番気を付けなければいけないのは、お前だ” そう、確かこう言っていた筈だ。 不安を紛らわせる為もあったが、ヴィータはレイヴンに思わず尋ねていた。 「おい!レイヴン!」 「何だ?」 「お前、確かなのはの不調に気付いたようなこと言ってたよな?一番気を付けなくちゃいけねえってよ」 「・・・ああ、言ったがそれがどうした?」 「何でなのはの状態が分かったんだよ?初対面だろ?」 「・・・」 沈黙するレイヴン。 しかし、彼の表情を見たヴィータは地雷を踏んでしまったと悟った。 なぜなら、どこまでも無表情になっていたからだ。 「い、いや。答えたくねーんならそれでいい。別に無理して話さなくても・・・」 「お前と同じさ」 「いい・・・え?」 「俺も今回と似たような経験があってな。あんな思いは二度としたくないからなのか、それ以来他人の不調には敏感になった」 「・・・」 「それだけだ。・・・おい、あれが本隊じゃないのか」 レイヴンがある地点を指差す。 そこには大勢の隊員が行き来しており、テントまで張られていた。 ヴィータとシャドーの姿を認めたのか、担架をもった隊員が向かってくる。 それを見て一安心したヴィータが先程のことを謝ろうとレイヴンに向き直った。 「ん?どうした?」 「・・・悪かったな、変な事聞いてよ」 「気にするな。俺は気にしていない」 「・・・」 「急ぐぞ、もたもたするな」 「ああ、分かってるよ!」 レイヴンとヴィータが本隊と合流するほんの数分前、クロノはアースラの艦長室で彼の母でもあり、総務統括官でもあるリンディ・ハラオウンと通信を行っていた。 内容は勿論、なのはの負傷についてである。 「というわけで、本局医療班へ通達を。待機レヴェル3でお願いします」 「分かりました。すぐに手配します」 一見すると、とても親子とは思えないほど両者の会話は淡々としていた。 しかし、それは内心の動揺を必死に押し殺していることの表れでもある。 「それと高町なのはの親族への連絡を。最悪の場合も考えなければなりません」 「それは私が直接伺いましょう。・・・それはそうとクロノ?」 今まで見せていた総務統括官としての顔を消し、母としての表情になったリンディはクロノを柔らかく諭すような口調になって言った。 「今回の事はあなたの責任ではないわ。だからそう自分を責めるのはよしなさい」 「そんな事は・・・!」 「顔を見ればわかるわよ。“自分も現場に行っていれば”っといったところね。でもクロノ、今回のあなたの判断は決して間違っていないわ。私があなたの立場でもそうしていたに違いないもの」 「ですが・・・」 「過ぎたことを悔やんでも仕方がないわ。今は出来ることをするしかないのよ。だから、冷静になって。試しにこれからするべき事を言ってごらんなさい」 「・・・なのはを収容したらすぐに医療室に運ばせて、応急処置。後に本局へ転送」 「その後は?」 「武装隊の連中も動揺しているでしょうし、今日は引き上げさせます。事後調査は日を改めて行うことにします。むしろ重要なのは、ヴィータと一緒にいる、次元漂流者と思しき人物のほうです。今回の襲撃事件と何らかの関わりがないか、事情を聞くべきです」 「正解よ。でも、事情聴取はあなたがする必要はないわ」 「え?」 「あなたもなのはさんのことが心配でしょ?尋問に関しては、こちらから一人、執務官を送るから、あなたも本局に戻っていらっしゃい」 「母さん・・・」 「むしろフェイトやはやてさん達への連絡を頼めるかしら?さっきも言ったと思うけど、私はこれから高町さんのお宅に直接向かうから」 「分かりました。では・・・」 「落ち着いて行動するのよ、クロノ」 通信画面が消える。 途端、クロノは大きく溜息を吐いた。 リンディと会話していて疲れたというわけではない。 むしろ、今から本格的に心が疲れることをしなくてはならないのだ。 (ふう、フェイトやはやて達に何て言えばいいんだ) もっともストレスのかかる仕事―――親族への直接連絡―――はリンディが行ってくれるとはいえ、義妹や親友へなのはの負傷を伝えるのも充分に堪える仕事である。 だからといって投げ出すわけにはいかない。 これは他の誰でもない、アースラ艦長クロノ・ハラオウンがやらなければならないことなのだから。 (ああ、本当に世界はこんな筈じゃないことばっかりだ) 戻る 目次へ 次へ
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第二回戦:試合場【活火山】結果 このページではダンゲロスSS3第二回戦、活火山の試合結果を公開します。 投票結果 試合SS キャラクター名 得票数 第二回戦【活火山】SSその1 赤羽ハル 18票 第二回戦【活火山】SSその2 相川ユキオ 17票 コメント 「それでは活火山の決闘・投票状況について、大会実況の私、佐倉光素と」 「解説の埴井きららが紹介するよ!」 「いやー激戦でしたねー」 「接戦だったねー」 「互いに一歩も譲らぬシーソーゲーム」 「抜いて抜かれてを最後まで!」 「いつまでもどこまでもお互い離される事のなかった赤羽、相川両選手」 「投票期間が過ぎるぎりぎりまでどっちが勝つか分からなかったもんね」 「試合内容だけでなく、票の推移でも見事な戦いでした」 「もーずっとどきどきしっぱなしだったよ!」 「ということで第二回戦、活火山の試合を制したのはー」 「「正しく真なる金の亡者!赤羽ハル選手です!!!」」 「「おめでとうございまーす!!!」」 赤羽ハル レベルが高すぎる戦いだったが、自分がいつかやろうと思ってたネタをここまでうまくやられてしまっては投票せざるを得ない。1/2の賭けに勝ったのもスゴイ。 展開にとても惹きつけられた 過去最高にレベルの高い戦いで非常に悩みましたが、本家以上に軽妙な掛け合いに火山の特性を最大限に生かしたバトル、さらりと張られた美しい伏線の数々と、恐るべき完成度を誇るこちらに投票します。とても、とても面白かったです。ありがとうございました! その2は次の対戦相手が困るだけな気がするので。 勝・要因:本来敵側の一人称視点描写が完璧であったこと。なおかつ先手を取れたこと。最後の最後にいたるまで対戦相手を物語の主人公で終わらせたこと。対戦相手が最上の相手だったこと。敗・要因:対戦相手が最良の理解者であったこと。くそ、この領域にはいりこみてぇ はうぅ。しゅごしゅぎりゅ。どっちも勝ちでいいよぉ……。SS2で物議を醸したトーナメント破壊も今回はGK公認面白さ第一主義だから減点要素にならないし……。敢えて言うなら、暗躍エンドを読み切ってカウンターを合わせてきたような、その1の結末が切れ味鋭かった……かなぁ。うーん名勝負れすぅ。 どちらもハイレベルでしたが、こっちはもうハイエンドレベルでした。 その1:人間の換金ダメって書いてあったくせにずるい。でも面白い。 その2:やりとりが面白く続きが気になるのはこっち。ノートン卿の能力はどうしてもなんでもあり感がでてしまい、納得感がうすい どちらもやんごとなき面白さでしたが、「準備」に関する流れがすごく好きでした。 相川ユキオ ユキオの劣等感とか二流根性みたいなのに共感したのと、ラストの決め手の意外さで、紙一重でこっちにします SSその1 格好良さを煮詰めて抽出したのかのようだ…… ノートン卿の声の設定あたりをかませて来るのは流石だと。 しかし分かってたことではあるが、エミュレート性能が高すぎる。本人が書いたと言われても信じるレベルだ。 SSその2: キャンペーンに則った好き放題の極みで、純粋に先が見てみたい。どこまで進むのか。 不動産のアイデアは白眉だなあー。個人的に、凡百のフィールド破壊系とは一線を画した感がある。 こんなものたちに私が票を投じること自体が烏滸がましいのですが、内臓を売るアイデアは思いついていたのでそこの一点で判定をさせて頂きました。面白さで判断できないよ…… 迷いましたが、共闘路線の2で。 超カッコイイ!準決勝も決勝も続きを読みたい! あー、くそったれ!勘だよ、直感。3度目の対決はこっちに投票します。 内臓と不動産、どちらも甲乙つけがたい出来だったが、この最悪タッグへの期待という点でこちらに一票。 悩んだ。悩んだけれど、展開のダイナミックさでこちらに軍配かなー。 落葉さん誘拐しちゃったー!?続きがすごく気になる ミダスの効果範囲がやや拡大解釈ぎみではないかと思ったものの、読みやすさと意外性の両立がポイント高し。 ほとんど内容に優劣が無いので完全に好みで。落葉誘拐という思い切ったネタに笑った&感心したその2に入れます。どちらも相手のキャラクターを尊重したSSとなっててとてもよかったです。
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レアスキルとSランク揃いの集団を裏技的に組み上げたキメラじみた部隊。 ゆえに機動六課は疎まれている。 もしもなにか問題を起こせば地上本部のレジアス中将が嬉々として潰しにかかるだろう。 一部の隙も見せられない。 ゆえに内部監査への対策は練りに練ってまさに完璧というレベル。 受け答えも意表をついたものまでありとあらゆる想定をし尽くした。 これでだめならなにをやっても無理。 そんな状態だったはずなのに・・・・・・。 突然舞い込んだみんなの休暇。たまにはみんなで温泉旅行。 魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。 第15.6話たまにはちょっと一休み―温泉旅行へ行こう― 「監査にひっかかったーーーー!?」 絶叫のようなヴィータの悲鳴が部隊長室に響き渡る。 集まってもらったみんなも呆然とした表情。 「で、で、でもどうして?あれだけ万全に対策練ったのに・・・・・・。」 「せやな。フェイトちゃん・・・・・・。」 「ルールはきっちり守るように身体で覚えさせたのに。」 「せやな。なのはちゃん・・・・・・。」 「クルマ叩き壊したり施設叩き壊したり人叩き壊したり訴えられるような問題は起こしてないな。」 「せやな。はんた・・・・・・・。」 「人体実験も最近はやってないし・・・・・・。」 シャマルの言葉に波が引くような勢いでみんなが一斉に距離を取る。 もちろん私もリインも・・・・・・。 いつかやりかねないと思っとったが、まさか本当に・・・・・・。 「あ、あはは。やだな。もう、冗談よ。空気が重かったから冗談を言ってみただけよ。」 「あー、本当にびっくりしたわー。シャレになっとらんよ。」 「まったくだぜ。いつかやりかねないと思ってたからな。」 「はやてちゃんとヴィータ、後で私が作ったイチゴショート御馳走してあげるわね。」 「「謹んで遠慮します。」」 「遠慮しなくていいわよ。みなさんもいかが?」 シャマルの黒い笑みに全員が必死に首を振る。 もげるんじゃないかってくらい必死に・・・・・・。 「それならご馳走になるとしよう。」 「ワン。」 命知らずがいたよ。 1人と1匹も・・・・・・。 でもバレンタインのチョコ普通に食べ取ったし、平気なんかなぁ。 部屋の雰囲気が和やかなものに変わりつつあった。 「それで、なんで監査とかいうのにひっかかったんだ?」 「「「「「「「「「あっ・・・・・・。」」」」」」」」」 はんたの言葉に全員が思い出したかのような相槌をうったのはどうかと思う。 気を取り直して私は口を開いた。 「監査にひっかかった理由やな。なぁ、なのはちゃん。」 「なに?はやてちゃん。」 「昨日何時から何時まで働いとった?」 「んー、早朝にフォワードの朝練やって夜にフォワードの訓練見てデータまとめて資料整理して報告書書いてたから・・・・・・。」 「フェイトちゃんは?」 「私も同じくらい・・・・・・かな。」 「ヴィータは?」 「私もそんなもんだな。」 「シグナム。」 「私もだ。」 「はんた。」 「フルタイム。」 「フォワード4人。」 「「「「同じくです。」」」」 「ええと、その、つまり・・・・・・。」 どこかなのはちゃんが申し訳なさそうに口ごもりながら申し出てくる。 ティアナも薄々感付いたのだろう。 もっとも他のみんなは首を傾げるばかりだが。 思わずため息が漏れる。 「そうや。平たく言えば『前線メンバーのお前ら働きすぎ。過労死してマスコミに騒がれると面倒だからちゃんと休めやゴルァ』ってところや。」 後ろめたそうに皆が一斉に目を逸らす。 まったく冗談みたいな話や。 サボってて監査にひっかかったんならともかく働きすぎで監査にひっかかるなんて・・・・・・。 まぁいい。今回呼び出したのは次の用件が本命や。 「それでや。皆揃って休み取ることになったんやけど、せっかく皆一緒なんやから温泉旅行なんてどうや?って思って呼び出したんよ。」 反対の声は上がらなかった。 ======== 「くぅーーーー、生き返るわーーーー。」 「はやてちゃん、もう少し言葉選ぼうよ。」 「ええやないか。せっかくの貸しきりなんやから。」 「シーズン外れでねらい目だったよね。でもあの垂れ幕はどうにかならなかったの?」 海鳴温泉といえば読者には分かってもらえるだろうか。 無印原作5話のあの温泉のことだ。 平日のど真ん中、シーズン外れのこの時期に1泊2日の小旅行。 働きすぎということで与えられた休暇を消化しながらみんなのリフレッシュとレクリエーションにもなるこの企画。 さすがはやてちゃんだと思う。 ただ、はやてちゃん・・・・・・。 「時空管理局様御一行って垂れ幕はさすがに・・・・・・。」 「手配したんはシャマルやて。シャマル?」 「ええと、その、ついうっかりいつもの癖で・・・・・・。」 あははと苦笑いしているシャマルさん。 バスで到着した一行を出迎えた温泉宿の入り口にでかでかと『時空管理局様御一行』なんて垂れ幕があって 全員が引き攣った顔をしたのは見間違えじゃなかったらしい。 まぁ、不思議な名前の一行が度々訪れているみたいだから向こうも詮索しなかったのだろう。 宿帳をみたら明後日からナンバーズ様御一行という人達が止まるみたい。 ナンバーズって宝くじの会社の人かなとか思いながら、温泉に浸かる。 そういえば以前にみんなでこうやってゆっくりしたことっていつだったかな。 記憶に全然無いことに今更ながら気がつき、日々の疲れを癒す。 「そういえば母さんとレティさん、どうしてここに?」 長い髪をタオルで束ねたリンディさんとレティさんにフェイトちゃんが尋ねる。 あれ?そういえばなんでいるんですか? 物凄く自然にいたから気がつかなかったけど。 「あら、フェイト。私達がいるとまずい?」 「ええと、そうじゃなくって・・・・・・。」 「なんてね。冗談よ。レティがグリフィス君から聞いていたからちょうどいいって便乗させてもらったの。 クロノもミッドにいたら引きずってこれたんだけどね。」 「まったく、グリフィスに事の顛末を聞いたときは呆れてものが言えなかったわ。 働きすぎで監査にひっかかるなんて冗談もいいところね。」 「ええと、その、すみません。」 「ほらほら、今日は休暇なんだから仕事の話はなしよ。たまにはこうやってのんびりしましょう。ね?」 リンディさんの言葉に皆が思い思いにくつろぎ始める。 スバルなんかたれぱんだみたいに今にもたれてしまいそうなほどにくつろぎモードに入っている。 その横にいるティアナも同様に。 お風呂から上がったら宴会で、その後は・・・・・・。 そのとき、カラカラっと露天風呂の仕切りが空けられる音が響く。 あれ?貸切じゃなかった? 湯煙の向こうから現れた金髪の見事な肢体の持ち主は・・・・・・・ってええ!? 「あら?もしかしてはやてさん達?」 「カリムさん!?なんで!?」 「ああ、私が報告がてら手を回しておいた。」 レティさんが言うには騎士カリムも働きすぎらしい。 シスターシャッハが常々休むように行っていたのだが聞き入れないので今回の強攻策になったらしいが・・・・・・。 ただ、シスターシャッハ。 寝起きでヴィンデルシャフトを叩きこんで昏倒させて連れて来るってどれだけ・・・・・・。 目が覚めたカリムさんはもう開き直って休暇をとるしかなかったらしい。 あははと笑い声が露天風呂に響き始める。 そんなとき、はやてちゃんのアレが始まった。 「しかし、みなさん。たいそうなものをお持ちで・・・・・・。」 はやてちゃん、本当にその癖はどうにかならないのかな。 私達の身体の一部を凝視しながら手をわきわきさせて近づいてくるはやてちゃんに皆が距離を取り始める。 知らないはずのティアナとスバルも何かを感じたのだろう。 もっとも大まかな推測はついているのだろう。 「あれ?そういえばキャロは?」 逃げた矢先、ふと気がついたスバルの声に皆が辺りを見回す。 あれ?そういえばいないね。 露天風呂の前までは皆一緒だったから迷子ってことはないはずなんだけど・・・・・・。 「エリオくーん。一緒にお風呂はいろー。」 竹で作られた衝立の向こうにある男湯のほうから声が聞こえてきたのは気のせいですか。 ======== 「キャ、キャロ。こっち男湯、男湯!!」 「でも、11歳以下なら大丈夫ってほら・・・・・・。」 慌てたエリオに応える声。 思わずティアナは頭を抱えた。 まぁ、薄々は感じてはいたけど、羞恥心はないのだろうか。 辺境育ちとか差し引いてもちょっと問題があるように思える。 冗談抜きに管理局の教育プログラムに組み込むよう上申しようかしら。 「だったらこっちで入っていくといい。洗うからそこに並べ。」 「あ、はい。」 「わかりまし・・・・・・ってはんたさんの・・・・・・すごく大きいです。」 エリオ!!主語を消すな主語を!! いったいなにがすごく大きいのか。 隊長たちもさっきまでのざわめきがパタリと止んで、耳をダンボにしている。 「そのうちエリオもこうなるさ。」 「でも、僕のは指1本ぐらいで・・・・・・。」 「エリオ君。1本半はあると思うよ。」 「でもはんたさんみたいに拳1つはないよ。それにほら、ぼこぼこで血管が浮き出てるし。」 はい?いまなんておっしゃりやがりましたか? 指1本とか拳1個の大きさのもの・・・・・・。 ぼこぼこで血管が浮き出ている・・・・・・。 リンディ提督がレティ提督の肩をきゃーきゃーいいながらバシバシ叩いている。 カリムさんはシャッハさんにいろいろ耳打ちしているが、刻々と顔の赤さが加速している。 まじまじと自分の拳を見つめている隊長達。 いやいや、そんなことがあるはずはない。 思い浮かべた身体部位を頭をふって振り払う。 そんな私達に追い討ちをかけるように会話が進む。 「あの触ってみてもいいですか?」 「かまわんぞ。」 「うわぁ。すごく硬いです。まるで鋼みたいだ。」 「わー、本当だ。すごい・・・・・・。」 「僕ももう少し硬くしたいんですけど、まだまだ柔らかくて・・・・・・。」 「成長すれば大丈夫。」 「わふ。」 硬いってなんですか!? 成長すればってちょっと・・・・・・。 キャロもどこ触ってるのよ!! いや、きっと聞き間違えたんだ。 きっと身体を洗うのに軽石なんか持ち出して洗ってるから硬いとかいってるんだ。 そうだ。エリオもキャロもスポンジだった。 きっとはんたのはビッグサイズの軽石なんだ。 ぼこぼこなのは軽石なんだ。 こすりすぎて血管が浮き出ちゃったんだ。 うん、そうに決まっている。 「やっぱり大きくて硬いほうがいいんでしょうか。」 「どれだけ使えるかが重要だな。大きさや硬さは二の次でいいと思う。」 「わー、ポチさんのもとっても硬くて、フリードよりすごいかも。」 キャロ、アナタなにをしているんですか。 ってフリードよりっていったいなにが!? ぶんぶんと首がもげそうな勢いで必死に頭を振る。 「あの、その、ぶらさがってみても・・・・・・。」 「かまわないが?」 「あの、私もお願いできますか?」 「いいぞ。2人いっぺんで。」 「「わー。すごいや。」」 どこにぶらさがってるんですか!?!?!? 子供とはいえ体重40kg前後はあるのに。 というか持ち上がるんですか!? 折れないんですか!? 「いつか僕もそうなりたいです。」 「エリオ君ならきっと大丈夫だよ。」 「わふ。」 悶々とした想像が頭に残ったまま、会話がぱたりと止んだ。 あれ?そういえば妙に皆静か・・・・・・って。 「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーー。隊長たちしっかりしてー!!!!!!!!!!。」 顔を真っ赤にして気絶しているなのはさん達の姿思わず悲鳴を上げた。 ======== 「あー。一生の不覚やったわ。せっかくのチャンスが・・・・・・。」 「なのはちゃん、大丈夫?」 「ええ、だいぶ収まってきました。フェイトちゃんは?」 「私はもう平気。でも、母さん達、タフですね。」 「タフじゃなければ生きていけないわよ。」 「スバルは?」 「うー、だめー。」 湯上りの女の子の群れ。 そう書けば色っぽいはずなのに、その半分が顔を真っ赤にして横になっているあたり色気がない。 中でも一番熱いお湯のところにいたスバルが一番重症だった。 ゴシップ好きが女の子のサガとはいえ、こんなことに自分がなるなんて・・・・・・。 まったく恥ずかしいところをみせてしまったものだ。 でも、本当にあんな会話・・・・・・。 思い出したら顔が再び熱くなってくる。 指一本とか拳1個ってきっとたぶん・・・・・・アレだよね。 小さい頃に見たお父さんとかお兄ちゃんのものを思い出してさらに顔が熱くなってくる。 「ただいま戻りました。」 「同じく戻りました。」 「いったいどうしたんだ?」 「わん。」 そんなとき、戻ってきたはんた君達3人と1匹。 視線は自然と下半身に向いてしまう。 「どうしたじゃないだろ。てめぇ、いったいエリオ達になに触らせてやがるんだ!!」 ヴィータちゃんとはんた君、本当に相性悪いのかな。 そんなときだった。 真っ先に突っかかっていったヴィータちゃんの背後からシグナムさんが口を開いた。 「しかし、私も是非触らせてもらいたいものだな。」 レティさんとリンディさんが口に運んでいたビールを勢いよく噴出す。 あ、シャマルさんが転んだ。 唖然としたような表情のティアナとフェイトちゃんとはやてちゃん。 あ、あのシグナムさん、今なんて・・・・・・。 「あ、シグナム副隊長もですか。やっぱり興味ありますよね。」 「ああ、鋼のような硬さとは実に興味深い。」 「ちょちょちょちょちょシグナム。おま・・・・・・なにいってやがるんだ!!」 「だから、温泉の会話の続きだろ?ヴィータ。」 「違う。そうじゃなくてどこ触ろうとしてやがるんだよ。このムッツリ!!」 「・・・・・・?二の腕を触るのがムッツリになるのか?」 「「「「「「「「二の腕?」」」」」」」」 はんた君達とシグナムさんを除いた全員が一斉に疑問の声を上げた。 「ええ、そうですよ?力瘤つくっても僕のはまだこんなに小さくて・・・・・・。」 「でも指1本半は絶対にありますよ。」 「拳1つって・・・・・・」 おもむろに浴衣の袖を捲り上げて力瘤を作ってみせるはんた君。 あ、本当だ。たしかに拳1つある。 「硬いとか柔らかいとか!!」 「僕のはまだ少しぷよぷよなんですよ。でもはんたさんのは凄いですよ。」 「ほう。これは凄いな。硬くてしなやかで、まるで鋼のワイヤーが詰まっているようだな。」 「・・・・・・ぶらさがるとか。」 「こうやってぶら下がらせてもらったんです。こういうことしてもらった記憶がないので・・・・・・。」 「私もちょっと憧れがあったんです。」 そう言ってはんた君の二の腕にエリオ達がぶら下がるとなんでもないかのように持ち上げる。 ああ、なるほど。 エリオ達って肩車とかそういうこと、してもらったことないんだ。 それなら納得・・・・・・って。 「それで、二の腕じゃないならなんだと思ったんだ?ヴィータ。」 「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・。」 「ああ、ヴィータ。ちょっと落ち着いてー。」 自身のバリアジャケットのように真赤な顔をして奇声を上げて暴れはじめるヴィータちゃん。 いや、気持ちは分かるけどさ。 シャマル先生が必死で止めているけど、またシグナムさんが当身で黙らせるのだろうか。 それにしても・・・・・・。 「バトー博士がいなくてよかった。」 「ハハハハハハハ、まったく四六時中盛ることしか考えてないムッツリスケベのエロガキがこんなにいたなんて天才のボクも想定外だったよ。 機動六課あらためムッツリスケベ小隊にしたらどうだい。ハハハハハハハハハハハ・・・・・・。」 慌てて辺りを見回すけど当然バトー博士はいない。 ああ、幻聴が聞こえる辺りもうだめだ。 このカオスな場をどうすればいいんだろう。 狂乱しているヴィータ達とは正反対にしげしげと興味深そうにはんた君の腕に触れているレティさんとリンディさんが あまりにもミスマッチで・・・・・・。 さっさと寝てしまおう。 ======== 「それにしても紛らわしい会話だったわね。」 「あの、みなさん、いったいなんだと思ってたんですか?」 「それはその・・・・・・。」 「まぁ、あれだ。」 「その、ねぇ。うん、あれよ。あれ。あはは・・・・・・。」 純真なキャロの言葉に私やヴィータ副隊長、シグナムさんが歯切れ悪くどうやってごまかしたものかと口ごもっている。 リンディ提督たちはまだ宴会場でお酒を飲んでいるみたいだからここにはいないし。 なのはさん達がフェイト隊長に視線でなんとかしろと訴えているのがはっきりわかる。 私もすがるような目を向けているのだろう。 昏倒しているスバルがうらやましい。 みんなの前に押し出されるように出てきたフェイト隊長はしばらく考え込んだかと思うと口ごもりながら言葉を紡ぎ始める。 「ええと、キャロ。あの、ええと・・・・・・男の子と女の子の身体の違いってわかるかな?」 「はい。男の子にはオチ・・・・・・むぐっ。」 「言わなくていいから。」 フェイト隊長の言葉に口を塞がれたままのキャロがこくこくと頷く。 「それで、みんなはそれの話だって勘違いしちゃったんだ。間違いは誰にでもあるでしょ?」 「はい。」 「うん。いいお返事。それじゃこの話はここでおしまい。」 「あの、フェイトさん・・・・・・。」 「なに?キャロ。」 「それじゃ、ええと大きさとか硬さって重要なんですか?」 ああ、キャロもきわどい質問を・・・・・・。 助けを求めるようなフェイト隊長の視線。 なのはさんやはやて部隊長は視線を合わせないようにしている。 ヴィータ副隊長達も同様に・・・・・・。 そして私も・・・・・・。 「ティアナはどう思う?」 「教えてください。ティアナさん。」 そこで私に振るんですかー!? ああ、ほんとうにどうしよう。 ええと、うーん、あー、そうだ!! 「それよりエリオ達のはどうだったの?指1本や拳1つなんかじゃないんでしょ?」 ヲイヲイと言わんばかりの視線が突き刺さる。 でも、しかたないじゃないですか。 他にどうやって切り返せって言うんですか? 「はい。指1本や拳1つどころじゃなかったです。」 「そうよね・・・・・・はい?」 なんかおかしいところがあった。 指1本。これは大丈夫。 拳1つ。これも大丈夫。 どころじゃなかった。これも大丈・・・・・・夫じゃない!! 本当に!? そんな視線を感じたのか戸惑いながらキャロは言葉を続けている。 「エリオ君のはえーと、うん。クロスミラージュって感じでした。」 ちょ、ちょっと待ってキャロ。 クロスミラージュって・・・・・・まじですか!? キャロの言葉は止まらない。 「ポチさんのはグラーフアイゼンって感じで、はんたさんのは・・・・・・うーん?」 え?ちょっとなんでそこで悩むのよ。 いったいどんな大きさなのよ。 ちょうどいいものがあったのか、ぽんと手を打つキャロ。 そのまま拳を握り締めると天高く突き上げた。 「ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールってかんじでした。」 「・・・・・・ヴォルテール?」 「違います。ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールです。」 拳を突き上げて叫んでいるキャロ。 ええと、龍召還で呼べるフリードともう1匹のほうがそんな名前だったか。 どれだけ大きいのよ? 「分かりますか?ティアナさん。ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールなんです。」 「ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールなのね。」 「そうです。ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールなんです。」 突き上げる拳に何の意味があるのか。 高々と突き上げる拳が重要らしい。 あと、ヴォルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールのアクセントも・・・・・・。 まぁ、なにはともあれ、この話はここで終わったからよしとしよう。 その後、休暇が終わっていつもの機動六課に戻ったのだけど、 数日間はクロスミラージュやグラーフアイゼンを見るたびに顔を赤くする隊長達の姿と、 ヴォルテールを見てみたいと訴えるヴィータ副隊長の姿が見られた。 追伸 エリオのをヴァイス陸曹とグリフィスさんが興味本位で覗き込んだところ心を圧し折られたらしい。
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クロス式・意外と壮絶な機動6課の慰安旅行 小ネタとして描かれた、とある旅行の風景 型月・リリカル両キャラのオールスター出演による温泉旅館での3日間 双方キャラの競演 慰安旅行―プロローグA-慰安旅行―プロローグB-慰安旅行―プロローグC 慰安旅行―一日目A-慰安旅行―一日目B-慰安旅行―一日目C 慰安旅行―二日目A-慰安旅行―二日目B-慰安旅行―二日目C 慰安旅行―二日目祭A-慰安旅行―二日目祭B-慰安旅行―二日目祭C-慰安旅行―二日目祭D
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あくる日、なのはとユーノの二人にクロノから召集がかかった。 「実はなのは、君の世界でロストロギアが発見されたのだが…その回収に行って欲しい。 あと…ついでにそこのフェレットもどきもな。」 「誰がフェレットもどきだよ…。」 相変わらずフェレットもどき呼ばわりするクロノにユーノも機嫌良く無かったが、 気を取り直してなのはは訪ねた。 「で…一体何処に行けばいいの?」 「地球の日本国北海道…そこの大量の粗大ゴミが不法投棄されている地域あるのだが、 そこにあるこれを回収して来て欲しいんだ。」 クロノがそう言いいながら一枚の写真を渡す。その写真には小さな小瓶の中に入った 可愛いコックさん人形が写っていた。 「小瓶の中の…可愛いコックさん人形…。」 「これはひょっとしてギャグで言っているのか…。」 なのはもユーノも呆れてしまうが、クロノは真剣だった。 「確かに一見するだけならこれはただの小瓶の中に入った可愛いコックさん人形だが… 侮ってはいけない。何故ならこの可愛いコックさん人形の中にはその昔、 破壊の限りを尽くしたと言う恐ろしいアストラル生命体が封印されているんだ。」 「アストラル生命体!?」 「このアストラル生命体がどの様にしてかつて破壊の限りを尽くしたと言うのかは 定かでは無いが…これの封印が再び解かれる様な事があれば君の世界だけの問題では無い。 いずれは次元世界全体に関わる大事になるのは必至だ。だから早急に回収して来て欲しい。」 「うん分かったの。」 「そこのフェレットもどきもちゃんとなのはを補佐しろよ。」 「だからフェレットもどきはやめろって…。」 地球は日本国北海道にて、大量の粗大ゴミが不法投棄されている地域があった。 周囲をゴミに囲まれた場所に一つの掘っ立て小屋が建っていた。 その掘っ立て小屋の主の名は「ドクター剛」。知っている者は良く知っているし、 知らない者は全く知らない悪の科学者である。彼はかつて自身の作り上げたサイボーグ猫軍団 「ニャンニャンアーミー」による世界征服を企んでいたが…諸所の事情に よってことごとく失敗に終わり、今ではすっかりその野望を諦めてしまい、 サイボーグ猫の最初期型にして彼の下に唯一残った「ミーくん」と 共にのんびり暮らしていた。そしてそんな彼等の平穏を脅かす存在が 今日もまたやってくるのである。 「お~っす剛! 暇だから遊びに来てやったぞ!」 「ゲゲ! クロ!」 突然剛のもとを訪れた者は人間では無い。剛の作ったサイボーグ猫の一体である「クロ」である。 彼も本来は剛のニャンニャンアーミーとして世界征服の尖兵となるはずであったが、 彼自身はそれを拒絶し、逆に剛の世界征服の障害となると共に剛が 世界征服を諦めてしまった最大の原因の黒猫である。 クロの方から剛のもとを訪れるのはロクな事が無い証拠であるが、 その時のクロは妙に機嫌が良かった。 「おい! 今日ここに来る途中でイタチを捕まえたんだが…今夜はイタチ鍋にしようぜ!」 「キュー! キュー!」 サイボーグ故に人間との対話は愚か二足歩行さえ可能なクロの右前脚に 一匹の小さなイタチが掴まれてもがいていたのだが…そのイタチ…何処かで見覚えのあるイタチだった…。 「よーしミーくん! 今直ぐコイツを捌いてくれ!」 「よっしゃ任せろクロ!」 「キュー! キュー!」 クロは料理の得意なミーくんにイタチを放り、ミーくんも嬉しそうに包丁を 取り出していたが、そんな時だった。 「待って! ユーノ君を返して!」 「ん?」 一人の少女が駆け付けて来た。その少女こそ先に説明された任務によって 北海道にやって来た高町なのはである。 「何だ!? コイツお前のペットかよ。」 「あ~あ~、せっかくイタチ鍋にして食べようと思ったのに。」 「あ~あ~、イタチ鍋食べたかったな~。」 「ユーノ君をイタチ鍋にしちゃだめだよ!」 つまり、クロが捕まえて来たイタチとはフェレットモードのユーノだった事が明らかになり、 解放されたユーノはなのはの肩まで登っていた。 「ユーノ君が助かった所でちょっと聞きたいんだけど…。」 「ん? このイタチを追って来ただけじゃないのか?」 「私、ここにコレがあるって聞いて来たんだけど…分かる?」 なのははロストロギア指定された小瓶に入った可愛いコックさん人形の写真をクロ達に見せた。 「何だ? これ何処かで見た事があったな~。」 「これデビルが封印された奴じゃないか!」 「ああ! あったなそんな事が!」 「デビル?」 クロ達の言うデビルと言う単語に首を傾げるなのはだったが、そこで剛が その写真に写った可愛いコックさん人形の入った小瓶をゴミの山から持って来た。 「写真に写っているのはこれだな。」 「あの…これ…持って行ってもよろしいですか?」 「ああ持ってけ持ってけ! コイツには二度も酷い目にあわされてるからな! だが…この小瓶のフタは絶対に空けるなよ! じゃないと大変な事になるからな!」 「ご忠告ありがとう…って…私…今猫と会話してるぅぅぅぅ!!」 「気付くの遅いよ!!」 「(あの…なのは…今更驚く事なのかなそれ…。)」 まあとりあえず…目的のロストロギアを回収する事に成功したなのはとユーノは その可愛いコックさん人形の入った小瓶を持ってミッドチルダ時空管理局に帰還した。 目次へ 次へ
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「待てヒロ、話は後だ・・・」 ヒロの言葉を遮る姫。 「え?何か?」 姫はベッドから起き上がり、ふらつきながらもバルコニーへと足を進めた。 「姫、何を?」 「魔法を使える者達!お前達が何の目的で来たか話せ! そうすれば、話し合いの席の着いてやろう!」 そう、大声で庭に向かって叫んだ。 「大丈夫、そんな大声だして?」 「これで向こうから出てくるだろう・・・」 大声を出したせいで少し息を荒くさせる姫。 「でも、もし刺客とかだったら・・・」 「これは兄弟の仕組んだことではない・・・ ならば、話し合いの余地はあるだろう・・・?」 「姫・・・」 なぜそう言い切れるのか?ヒロは不安だった。 しばらくして 「・・・その言葉、信じさせてもらいます」 1人の女性、はやてが姫の視線に入った。 「ふふん、来てくれたか・・・ヒロ、迎え入れろ」 「あ、うん」 魔法少女リリカルなのはStrikers×怪物王女クロスオーバー 「魔法王女」第2話 ふがふが 『汝有罪・・・強制送か パシュッ! 「いたっ!」 「はっはっはー!どうだケルベロッテちゃん!お得意の強制送還も発動できなければお前はただのお子様だな!」 「ひ、卑怯だぞ!魔法の発動中を狙うなんて!悪の組織だってヒーローの変身中には攻撃しないじゃないか! 大体子供に向けてエアガンを撃つな!」 「卑怯結構!常識無視結構!傷害罪適用結構!私達は悪魔だからな!」 「く・・・!」 さあ絶対絶命のケルベロッテちゃん!果たしてどうする! 「やっぱり、こういうときにはアニメが一番ね~」 紗和々はリザと一緒にのんびり借りてきてもらったDVDを観賞していた。 「悪魔の連中・・・誇りも何もないな・・・」 「あとでフランちゃんやヒロと見ましょう」 だが、彼女の借りてきてもらったDVDは・・・ 「地獄に道連れ ケルベロッテちゃん」 「スウィートハウス」 「呪いアリ」 「伝染回路」 「フランドル」 アニメ1本、ホラー映画3本、ジャンル不明の映画1本である。 「ホラーばっかり借りてるな・・・でもこのフランドルって映画は・・・」 「あら?フランちゃんが出てる映画じゃないの?」 紗和々・・・フランドルは戦争映画だぞ。 (フランドルって映画はマジであります、「映画 フランドル」でGoogle検索してください) 「まあ元気そうだな、とりあえず今日はそれ見てじっくり休め」 そうしてリザは紗和々の部屋を出た。 招き入れられたのははやてとシャマル、他のメンバーはヒロに案内され客間へ通された。 姫の部屋に通されるが、姫はベッドの上で寝ていた。 「ふが」 フランドルに勧められ、イスに座るはやてとシャマル。 「ありがとうな、メイドさん」 「さて、屋敷に出向いてくれたわけを聞かせてくれぬか?」 姫ははやてに当然の事を質問する。 「・・・それは、あなたの方が知ってるはずです」 「魔法のことだな?」 その問いにはやてはうなづいた。 「私は時空管理局の八神はやて言います、管理局の事は・・・」 「良い、私を治してくれれば、それ以上そちらには何も求めない・・・それでいいか?」 「そうですか、あの・・・」 はやては話を続けようとしたが。 「姫でいい」 名前がわからなかったが姫が名乗った。 「あ、そうですか。では姫さん、あなたがロストロギア、魔力を持つ物の場所を答えてください」 「それなら、私の体内にある」 その言葉にはやては凍りついた。 「ふが」 フランドルがつんつん、とはやてをつつく。 「はやてちゃん、気をしっかり!」 シャマルもはやてに呼びかける。 その頃、客間のなのは達は 「どうぞ、あまりやった事ないですから・・・」 自らが悪戦苦闘して入れた紅茶をなのは達に配るヒロ。 「ありがとうヒロ君」 なのはは紅茶が入ったカップを受け取り、そのまま口に紅茶を含んだ。 「うん、おいしいよ」 「あ、ありがとうございます」 ヒロはなのはに軽くお辞儀をすると他のメンバーにも紅茶を配った。 「それで、姫は治るんですか?」 ヒロはなのはに質問した。 「大丈夫、今はやてちゃんとシャマルさんが調べてるから・・・」 「お願いします、どうか姫を救ってください!」 再び、今度は深くお辞儀するヒロ。 「ヒロ!さっさとメシにするぞ!さっさと作るぞ!」 バァンッ! と、大きな音を立て客間の扉を開けてリザが来た。 「リザ!お客さんが来てるんだから、少し静かにしてよ・・・」 「んな事言ったって、腹減ったんだから・・・ん?」 その時、リザの頭の上に何かが生えた。 「え、耳?」 なのはの言うとおり、頭に耳が生えた。 「リザ、何なの?」 「・・・ヒロ、メシの支度は後だ・・・!」 「リザ・・・まさか・・・!?」 ヒロは瞬時に理解した。 敵が来たのだと 戻る 目次へ 次へ
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此処は首都クラナガンに存在する広大な地下水路、其処に一つの小さな影が存在する…… その容姿は金髪に翡翠色と紅玉色のオッドアイの瞳、小さく幼い左手にはレリックケースが二つ鎖に繋がれていた…… そして少女は、か細い声で母を探しながら水路を歩き続けているのであった…… リリカルプロファイル 第十九話 交戦 …此処はスバル・ティアナの出身地であるミッドチルダ西部エルセア地方に存在するポートフォール・メモリアルガーデン、スバルの母、ティアナの両親と兄が眠る墓地である。 休暇を貰った二人はヴァイス陸曹からバイクを借り、この期を利用して墓参りに来たのである。 二人はそれぞれ参る墓へと赴き花を生け手を合わせると、今まで起きた出来事を近況として報告していた。 そして墓参りを終えた二人は一つの慰霊碑へと赴く、その慰霊碑はミッドチルダ失踪事件の被害者を弔う物である。 慰霊碑には被害者の名が刻まれており、二人はカシェルの名を見つけると手を空わせ静かに目を閉じる。 暫く静寂が続くと、スバルはゆっくりと目を開き慰霊碑を見つめた。 「此処で見ていてねカシェル、私達絶対に強くなって夢を叶えるから!」 スバルの決意が滲む言葉に呼応するように頷くティアナ、すると優しい風が二人の髪を揺らす。 その風はまるでカシェルが優しく答えてくれたように感じ、二人は微笑みを浮かべ慰霊碑を離れ墓地を後にするのであった。 場所は変わり此処はゆりかご内、現在ベリオンはオットーとディード、そしてルーテシアの相手をしていた。 だが相手と言ってもその巨体に乗り、ゆりかご内を探索しているだけなのであるが。 「やれやれ…遊び道具として作った訳では無いのですがね……」 レザードはその光景に頭を押さえ首を振る、作成後のベリオンはナンバーズの遊び道具と化していた。 大抵は模擬戦の相手なのであるが、オットーとディードはベリオンの肩の上がお気に入りらしく、良く乗っかっており、 更に先日では、セインとウェンディによる自作のメイド服を着せられていた。 二人の言い分ではベリオンの「御主人様」と言う一言のみで作り上げたのだという。 メイド服を着たベリオンの姿はまるで、足の無い某宇宙用MSを彷彿としており、 その姿を思い出し思わず苦笑しているとレザードの下にスカリエッティの緊急の通信が入る。 「どうしたのです?ドクター」 「レザード、困った事態が起きた………“鍵”が逃走した」 「………それはどういう事です?」 レザードの問いかけに説明を始めるスカリエッティ、事の発端は首都クラナガン近郊に存在する地下施設、スカリエッティは此処で“鍵”を作成していた。 “鍵”は順調に成長しレリックを融合できるまでに至った為、運送車で此処ゆりかごへ運送していた。 ところが、その道中に“鍵”が覚醒、生体ポットを破壊し暴走を始めた為 “鍵”の暴走を止めるべく同行していたガジェットI型が起動したのだが、瞬く間に破壊、そのまま“鍵”は逃走したのだという。 “鍵”にはレリックケースが二つ繋がれており、レリックの存在によって管理局が動く可能性がある。 管理局より早く“鍵”を回収しなければならない、其処で“鍵”に繋がれているレリックを利用してガジェットと不死者を囮として用い、 その間にナンバーズが“鍵”を回収して欲しいとの事であった。 “鍵”はSランクの砲撃にも耐えられるような造りをしているらしく、いざとなったら“鍵”ごと攻撃してもかまわないとスカリエッティは語る。 するとレザードは手を顎に当て考え始める、スカリエッティの依頼は“鍵”の回収、それに適した人物はセインぐらいであろう。 だが……もし管理局が先に“鍵”を回収したとしたら、それにデコイは優秀なモノの方が良い…そう考えるとクアットロとディエチが適切だと判断する。 何故ならばクアットロが持つISシルバーカーテンは視覚からレーダーまで情報を妨害させる特性を持ち、幻影すら見せる事が出来る。 そしてディエチの砲撃能力は高く正確でもある、つまり管理局の目を欺き、砲撃による強襲をかけるには十分な組み合わせなのである。 すると今までの話を聞いていたルーテシアがベリオンの肩から飛び降り、自分も向かうと話しかけてきた。 ルーテシアの話では自分が召喚するガリューは今回の回収作業に適しているという。 しかしルーテシアの護衛役であるゼストは他の世界へレリック回収の為に行動中である。 すると護衛は私に任せろ!っと無い胸を張るアギトだが、それを不安な目で見つめるレザード。 「仕方ありません…ベリオン、ルーテシアの力になりなさい」 「了解シマシタ、御主人様」 レザードの命令にベリオンは肩に乗せていたオットーとディードを降ろすと、ルーテシアと共に“鍵”の回収に向かうのであった。 …そしてその背中をジッと見つめるオットー、更にその光景を見つめていたディードは、徐にオットーの頭を撫でると二人はその場を後にする。 その背中はとても寂しい印象を醸し出していた…… 場所は変わり此処は交通事故が起きた現場、其処に紫の長髪の女性が存在していた。 彼女の名はギンガ・ナカジマ、陸上警備隊第108部隊に勤めている捜査官でスバルの姉である。 現場には大破した運送車が一台転がっており、ただの自動車事故と思われていたのだが、 よく調査してみると車両には内部から破壊されている形跡があり、更に運送車の外部・内部共にガジェットの残骸が散らばっていた。 そんな現場の状況に不審を感じたギンガは運送車の荷台を調べると一つの装置を目にする。 「生体……ポット?」 荷台に乗せられていた生体ポットもまた破壊されており、辺りには強化ガラスの破片が散らばっている。 ギンガは一度荷台から降り考え始める、現場の状況から見て恐らく破壊されたガジェットは生体ポットにいた存在によるものだろう。 そしてガジェットの残骸が散らばっているとなると、レリック…もしくはそれに準するロストロギアが関わっている可能性がある。 となると…あの部隊に連絡を取らなければなるまい…するとギンガは自分の考えを上司であるラッド・カルタスに伝えるのであった。 …一方現場から数キロ離れたビルの上、クアットロ率いる捜索チームが遠くで現場を視察しており、 クアットロは現場から少し離れた位置に水路への入り口が開いているのを発見、 恐らく“鍵”はあの入り口からクラナガンの地下水路に向かったと推測し、メンバーに指示を送る。 ベリオンはルーテシアの護衛、ルーテシアはガリューを召喚後セインと共に地下水路を探索、 そしてディエチは自分と共に行動、自分はシルバーカーテンを起動させて待機、何故ならば三十分後に来る予定である囮のガジェットと不死者の幻影を作り出す為であるからだ。 クアットロの指示の元、それぞれは割り当てられた任務をこなす為、散らばって行くのであった。 その頃エリオとキャロはシャーリーが立てたスケジュールを黙々とこなしていた。 二人は次の予定である洋服店でのショッピングの為に、町を歩いていると、ふと路地裏に目を向けるエリオ。 エリオが目を向けた先には一人の少女が倒れている姿があり、二人は少女の下へ急ぐ。 少女は衰弱している様で、左手には鎖に繋がれたレリックケースがあり、 更に先には繋がっていた形跡のある鎖が伸びており、恐らく鎖の先にはレリックケースが同じく繋がれていたと判断、 そして少女が倒れている先には地下水路への入り口が開いており、恐らく此処から来たのだろうとキャロは語る。 その話を聞いたエリオは頷きストラーダでロングアーチと連絡を取るのであった。 暫くすると現場にシャマルが姿を現し、二人は少女を任せるとロングアーチから連絡を受けたスバルとティアナがバイクを二人乗りでやって来た。 「休暇中悪いんやけど、任務や!」 はやての申し出に力強く返事するフォワード四名はデバイスを起動、レリックを回収する為次々に地下水路へと赴くのであった。 フォワード陣が地下水路に向かう前、キャロからの連絡を受けたロングアーチはその後すぐにガジェットと不死者が地下水路へと向かっているのを確認、 恐らく目的は少女の手に繋がっていたと思われるレリックの回収だと考え、 なのはとフェイトをガジェット及び不死者の迎撃に向かわせ、スバル達を地下水路に向かわせると、 他の位置から複数の反応が現れ、その幾つかは別の入り口から地下水路への進入を許してしまう。 そこではやてはヴィータを地下水路にいるフォワード陣の下へ向かわせるように指示したその時、一つの連絡がロングアーチに届く、連絡先は第108部隊のラッドからである。 連絡の内容は部下の一人であるギンガが地下水路へと赴いており、目的は機動六課と同じであるという。 そこで機動六課と共同戦線を張り、迅速にガジェット及び不死者を撃破、そしてレリックの回収を提案した。 はやてはその提案を承諾すると、なのは達にもその旨を伝えるように指示した。 一方なのはは襲撃を受けているポイントに向かうと、瞬く間にガジェットを撃破、 次のポイントへ急ぎ標的に攻撃を仕掛けると、ガジェットと不死者は陽炎のように消えていった。 「まさか…フェイク?!」 肉眼で騙す幻影、それはティアナがよく使う幻術に近いが、レーダーすら騙すとなるとそれ以上に厄介な代物である。 取り敢えずなのはは今起きた事をロングアーチに報告すると、ロングアーチの答えはとにかく片っ端から片づけろというものであった。 ロングアーチの答えに頬を掻くも仕方がないと感じるなのは、 何故なら幻術系は分析にかなりの時間を要する為、分析して把握するより幻影ごと潰した方が早いからだ。 なのはとフェイトはロングアーチの指示に了解すると続けて一つずつ潰しに掛かるのであった。 一方地下水路ではセインと分かれたルーテシアがガリューと共に“鍵”を探していた。 その時、待機していたクアットロから連絡が入る、内容は“鍵”が管理局側の手に落ちた事、ガジェット及び不死者が幻影ごと片っ端から片づけられている事、 そして“鍵”に付けられていたレリックケースが一つしか無いことを伝える。 そこでセインとルーテシアは“鍵”の回収からレリックケースの回収の変更を指示、ルーテシアは一つ頷くとレリックの捜索に移る事に、 そして暫く地下水路を道なりに進むと広い場所に出る、奥には既に局員が存在しており、手にはレリックケースが握られていた。 「ベリオン、ガリュー、奪い取って」 ルーテシアの命令にガリューとベリオンは局員に襲いかかるのであった。 一方スバル達はギンガと合流し先を進むとガジェットI型がレリックケースに手を伸ばしていた。 それを見かけたスバル達はガジェットと応戦、見事撃破しレリックケースはキャロに渡すと、 キャロは怪しい音を聞き顔を向ける、其処には巨大な機械が姿を現していた。 「なっなにあれ!?」 「私ノ名ハベリオン、レザード様に造ラレシ、ゴーレム」 ベリオンと名乗るゴーレムは礼儀正しく答えている瞬間、不意を付いて使役虫らしきものがキャロが持つレリックケースを奪おうとに手を伸ばすがエリオに阻止される。 その光景にティアナとギンガは分散するように指示すると、柱を壁代わりに全員が分散した。 その時スバル、ティアナ、キャロは同じ柱を壁にしており、相手の目的はキャロが持っているレリックケースの強奪だとティアナは考える。 するとスバルが代わりにレリックケースを持とうと進言するが、他にいい方法があると言うとキャロの帽子を取るティアナなのであった。 一方ベリオンとガリューの両名はスバル達を探しており、周囲を探索していると、 ギアセカンドを起動させたスバルがベリオンの下へ、そしてデューゼンフォルムを起動させたエリオがガリューの下へと飛び出す。 「リボルバァァキャノン!!」 「メッサァァアングリフ!!」 エリオの不意の一撃を辛うじて左に避けるガリューに対し、ベリオンは正面からスバルの攻撃を受け止めていた。 不意からの一撃を正面から受け止められたスバルは流石に驚いた表情を見せると、ベリオンはスバルの様子に好機と捉え右拳を振り下ろす。 だがスバルはすぐに気を取り直し後方に跳び、ベリオンの一撃を辛うじて回避した。 一方ガリューはエリオの一撃に合わせ右膝によるカウンターを狙っていた。 だがエリオはストラーダに備え付けられているサイドブースターとヘッドブースターを点火させ左に急速回避を行い難を逃れるのであった。 一方でキャロはレリックケースを大事に抱え、キャロの前ではギンガが前傾姿勢で、ティアナがクロスミラージュを向け構えていた。 その様子を遠くで見つめるルーテシア、すると後ろから殺気のようなモノを感じる。 「…動かないで」 「……幻術…渋い魔法ね…」 「……それはどうも」 するとキャロを守るティアナが陽炎のように消えていく、フェイクシルエットと呼ばれる幻術魔法である。 ルーテシアの賛美に答えつつ後頭部にダガーモードに変えたクロスミラージュを突きつけるティアナ、 ティアナは攻撃を中止するように命令するとルーテシアは温和しく応じる。 「アナタ……名前は?」 「……アギト」 ルーテシアはそう名乗ると上空から巨大な火球がティアナ目掛けて落ちてくる。 ティアナはとっさに後方へ飛ぶとルーテシアもまた火球を回避した。 そしてルーテシアの目の前に30cm程の小さな少女が炎を操りながら現れる。 「オラオラァ!かかってこいやぁ!この烈火の剣精アギト様が相手だぁ!!」 そう名乗ると手招きをして挑発するアギトであった。 一方ロングアーチでは海上から新たなガジェット及び不死者の群れを確認した。 しかも一つの群れに30~40と数が多く此方に向かっている事から増援であることには間違いない。 そしてその異常な数から町中のガジェット達と同様にフェイクが混じっている可能性がある。 其処ではやてが直々に海上の増援を相手にしようと立ち上がると、モニターにクロノの姿が映し出された。 「クロノ君?何で此処に?!」 「説明は後回しだ、時間が惜しい、海上の方は俺に任せてくれ」 「なんか良い手でもあるんかいな」 「まぁな…」 クロノの意味深な返事にはやては困惑するが、迷っている時間はない為、海上をクロノに任せる事となった。 はやての素早い判断にクロノは頷きモニターを切ると今度はもう一つのモニターに目を向ける、其処には最高評議会のエンブレムが映し出されていた。 「これでよろしいのですか?エインフェリアは切り札のハズ」 「…構わん、それにエインフェリアの実力を世間に見せるには良い機会だ」 世論を味方に付ける、その為にはエインフェリアの実力を見せる事が一番であり、それに加え地上本部に牽制を促すことができる。 更に地上を護る事にも繋がる為、一石二鳥どころか三鳥だと話す。 最高評議会の考えにクロノは無言になるが、此処で揉める事が出来る程時間があるわけではない、 クロノは最高評議会の考えに不満を覚えつつもエインフェリアに指示を送った。 エインフェリアには五タイプ存在し、フロントアタッカータイプの接近戦型、ガードウィングタイプの高速戦型、 フルバックタイプの防衛戦型、センターガードタイプの遠距離戦型、そしてどれにも属さない広範囲攻撃型である。 今回出撃するのは広範囲攻撃型のゼノンとカノンの二体である。 二体はクロノの指示の下、早急に現場へと向かって行くのであった。 一方地下水路ではアギトがレリック奪還に参戦、自分の周囲に火球を作り出すと一気に放ちスバル達を牽制する、ブレネンクリューガーと呼ばれる魔法である。 辺りは炎に包まれる中、スバル達フォワード陣は柱を盾にアギトの攻撃を防いでいた。 「どうしよ?!ティア」 「落ち着きなさい!スバル」 慌てるスバルをティアナは嗜め、状況を把握させる。 現在レリックはキャロが手にしている、その為自分達はキャロを中心にして防戦、 そして先程手にした情報では現在、自分達がいる現場にヴィータ副隊長が向かっており、自分達はヴィータ副隊長が来るまでレリックを死守すればいいのである。 するとヴィータ副隊長から念話が届く、今現在ヴィータはリインと共に現場の近くまで来ており、もうすぐで到着すると伝えられた。 「っ!ルールー、上から魔力反応!……こりゃでけぇぞ!!」 「そう……じゃあベリオン、足止めをお願い」 「了解シマシタ、ルーテシア様」 ルーテシアは淡々とベリオンに命令するとベリオンはヴィータを押さえる為に飛び立つのであった。 その頃、ヴィータは最短距離でスバル達の下へ向かっていたのだが、目の前には壁が隔れていた。 そこでヴィータはギガントハンマーで壁をぶち抜こうと考えた時、リインが声を上げる。 「ヴィータちゃん!前方に熱源反応!!」 「何だと!?」 次の瞬間、目の前の壁は砕け巨体が姿を現す、それは先程までスバル達が戦っていたベリオンである。 ベリオンの出現に戸惑うリインであったが、寧ろ壁を壊す手間が省けたとヴィータは応え、 グラーフアイゼンをラテーケンフォルムに変えベリオンに突撃した。 「邪魔だ!どけぇぇぇ!!」 ヴィータはそのままの加速を維持して一気に振り下ろすが、ベリオンは左手でヴィータの一撃を受け止めると、右手を握り締めヴィータへと振り抜く。 だがヴィータはとっさにパンツァーシルトを展開させ攻撃を受け止めるが、衝撃までは受け止められず吹き飛ばされる。 ヴィータは吹き飛ばされつつも姿勢を直していると、目の前にいるベリオンは銃口を覗かしている右手をかざし、直射砲を撃ち鳴らす。 ヴィータはとっさに右に回避、後方では光を放ち爆音が響くと、一つ舌打ちを鳴らし目の前のベリオンを睨みつけていた。 一方地下水路のスバル達は、未だガリューとアギトに苦戦を強いられていた。 互いの攻防が行き来する中、ルーテシアがアギトに念話で進言する。 (…アギト、私に会わせて轟炎を撃って) (なんか手があるんか?) ルーテシアは頷くと右手をスバル達に向け足下に紫紺色の五亡星の魔法陣を展開させる。 「…バーンストーム」 かざした手の指をパチンッと鳴らし唱えると周囲を巻き込むように大爆発を起こす、 更にそれに合わせアギトは巨大な火球、轟炎を放ち辺りは炎の渦で真っ赤に染まっていた。 しかしその炎の渦から飛び出すようにスバルとギンガがら姿を現し、まっすぐルーテシアの下へ向かいつつ攻撃態勢をとっている。 だがルーテシアは待っていたと言わんばかりに五亡星の魔法陣を展開させおり、既に指を二人に向けていた。 「ライトニングボルト」 次の瞬間、強烈な電撃がルーテシアの指から放たれ二人の体を貫き、なす統べなく倒れるスバルとギンガ、 その頃炎の中ではキャロによるホイールプロテクションで轟炎を分散させ更に竜魂召喚させたフリードリヒが舞い上がり、背中にはキャロが乗っていた。 キャロは大事そうにレリックケースを抱えて持っており、それを確認したガリューはすぐさまキャロの下へ向かう。 しかしそれを阻止しようとスバルとギンガは立ち上がろうとするが意識が朦朧として動けないでいた。 ルーテシアが放ったライトニングボルトにはスタンマジックと呼ばれる追加効果が含まれており、 この効果を持った魔法を受けると一定時間気絶もしくはそれに近い影響を受けるのである。 二人の様子を見て柱に隠れていたティアナが代わりにクロスミラージュで応戦するが、ガリューは体を回転しつつ魔力弾を回避、更には手を刃に変え撃ち落としていた。 キャロの下へガリューが迫る中、未だ燃えたぎる炎の中からストラーダをガリューに向け構えるエリオの姿があった。 「うぁぁあああ!!メッサァァァアングリフ!!」 エリオはカートリッジを三発消費すると一気に加速、ガリューの左わき腹を捉えると一気に吹き飛ばした。 エリオの一撃によって誰もが安心していた瞬間、エリオとキャロは紅いバインドに縛られてしまう。 キャロの後ろにはルーテシアがいつの間にか乗っており二人をレデュースパワーで縛り付けたのだ。 しかもキャロを縛り付けているレデュースパワーはフリードリヒをも縛り付けており、その効果によってエリオとフリードリヒは力が抜けるように落ち始めていた。 その落下中にルーテシアはキャロが手にしているレリックケースを奪うとフリードリヒから飛び降り、そしてガリューがルーテシアを抱えるように受け止めたのであった。 「……それじゃ逃げるよ…アギト、しんがりをお願い…」 「任せろぉおい!!」 ルーテシアの言葉にアギトの頭上に巨大な火球、轟炎を作り出すとそれをフリードリヒに向け投げつけ、フリードリヒを中心に辺りは火の海と化していた。 その様子を確認したルーテシア達は地上への出入り口へと向かうのであった。 …先程まで燃えさかっていた炎が消えていく中、フリードリヒを中心にスバルはプロテクションを、ギンガはシェルバリアを張り難を逃れていた。 「みんな!大丈夫?」 「なっなんとか……」 「くぅ、まだそんなに遠くには行ってないハズ!追いましょう!!」 「あっあの?ちょっと―――」 ティアナの制止を一切聞かず飛び出すように後を追うギンガ、 ティアナとスバル、そしてキャロは苦笑いを浮かべながらギンガの後を追うのであった。 一方ルーテシア達は地上に続く通路を進んでいるとアギトが後方から魔力反応を感知、先程の局員が追って来ていると判断した。 「どうする?ルールー!!」 「…うろたえないで、アギト」 ルーテシアには策があるらしく手を床に向け不死者召喚の詠唱を始める。 そして詠唱を終えると魔法陣から一体の不死者を召喚する、 その姿は楔帷子に緑の甲冑、むき出した太ももが印象的な女性の姿をしていた。 ルーテシアは不死者に足止めを命令すると不死者は槍型のアームドデバイスを起動させ構える、ルーテシア達はそれを確認すると先を急ぐのであった。 するとその道中にアギトはルーテシアに問いかけてくる。 「なぁルールー、あの不死者一体だけで大丈夫なのか?」 「……あの不死者は特別製…らしいから」 ルーテシアの答えにアギトは首を捻ると説明を始める。 あの不死者はレザード曰わく管理局にとって最も“有効的”な足止めであるという。 そう話しながらルーテシア達は入り口へと急ぐのであった。 一方スバル達はギンガを先頭にエリオとキャロを乗せたフリードリヒ、ティアナを背負ったスバルがルーテシアを追っていた。 そしてギンガ達の前に一つの影が目に写る、その姿はスバルとティアナが良く知る存在であった。 「あれは!!」 「エイミ姐さん!!」 そう…その姿は紛れもなくエイミであった。 だがその顔は土気色に染まり無表情で、かつてのカシェルと同様不死者化されていたのである。 その様子にスバルはティアナを心配する、何故ならばティアナはエイミを姐さんと呼ぶ程までに親しい関係柄であるからだ。 だがスバルの心配をよそにティアナはクロスミラージュを額に当てて祈るように目を閉じている。 「エイミ姐さん……今、救います!」 そして目を見開きエイミを直視する、不死者化したエイミを救うのは自分しかいない、 カシェルの時と同じ過ち繰り返さない!……ティアナの瞳には決意と覚悟が滲み出ていたのであった。 一方地上では海上からの増援の対抗策である、白いフードを被った金髪の男性ゼノンと、 黒いフードに覆われ手には引きちぎられた印象を持つ手錠が掛けられたカノンの二体が海岸上空で待機していた。 「数は30~40の群れ……さて、どうする?」 「どうもこうもないよ、片っ端から片付けるだけさ」 ゼノンはサラリと言うと詠唱短縮に特化した杖型ストレージデバイス、エーテルセプターを起動させると円状の魔法陣を展開する。 そしてカノンはやれやれ…といった様子で同じくエーテルセプターを起動させ円状の魔法陣を展開した。 ゼノンの杖の前には炎が火球の形になって燃え続け、カノンは中が吹雪いている印象を持つ球体を作り出していた。 それぞれは魔法を撃つ準備を進めていると、先に完了したゼノンが不死者の群れの位置を杖で指し示す。 「先行する、エクスプロージョン」 すると杖の前で真っ赤に燃えていた火球が不死者の群れに向かい、群れの中心にて一気に膨張、一瞬にして不死者を焼き尽くした。 すると今度は準備を終えたカノンがガジェットの群を指し示す。 「次は俺の番だ、グラシアルブリザード!」 カノンの魔法もまた先程と同様に群れの中心に向かうと一気に膨張、海ごとガジェットを凍り付かせた。 両名は互いに交互しながら魔法を撃ち続け、ガジェットと不死者の数を次々に減らし続けていくのであった。 その様子をモニター越しで見つめるはやて、この様子だと全滅も時間の問題と考えるも、あの二名はかなりの実力者だと判断していた。 一方一足早く地上に着いたルーテシアは入り口から離れた高速道路にて地下水路の様子をモニターで見ていた。 地下水路ではエリオがエイミを攪乱させ、ティアナが牽制、動きを止めたエイミにキャロがバインドをかけ、スバルとギンガのコンビネーションによる一撃を与えていた。 その連携によりエイミは苦戦を強いられており、その様子にルーテシアは一言つぶやく。 「手緩いか………」 そしてルーテシアは手をかざすと召喚を始める、召喚したのは地雷王と呼ばれる巨大甲虫である。 地雷王とは生体電流を放電し魔力を用いて振動させる事により、局地的に地震を起こす事ができる能力を持つ。 ルーテシアは召喚した地雷王3体を地下水路に通ずる位置に配置するとアギトが心配そうに叫ぶ。 「ルールー、いいのか!?アイツら潰れて死んじゃうかもだぞ!!」 「…別に……問題はない」 レリックケースは既に手元にあり、ベリオンは瓦礫程度で破壊されるハズは無くセインにはISがある、失うのは足止めに使った不死者と局員のみであるという。 ルーテシアは説明を終えると指を鳴らし、地雷王はその音を合図に放電し始めるのであった。 一方地下水路のスバル達はいきなりの揺れに戸惑いを見せていた。 その揺れは徐々に大きくなり地下水路の壁に亀裂が走り、破片が落ちてくる。 その状況にギンガは地下水路が崩落する可能性を考慮し、いち早くこの場から去ろうと提案、 他のメンバーはギンガの提案に乗るが、目の前にはエイミが立ちはだかっていた。 「くっ!押し通るしかないようね」 「待ってください!私に考えがあります」 キャロには何か得策があるらしく、援護をして欲しいとのことである。 四人はキャロの策を聞くとそれを受け入れ、配置に付いた。 キャロはセカンドモードを起動させると早速桃色の魔法陣を展開、 するとエイミの持つ槍から薬莢が二つ排出されると紅い魔力が槍を伝って全身を纏わせ、一気に加速、キャロ目掛けて突撃してきた。 スピニングエッジと呼ばれるエイミが得意とする攻撃である。 そのエイミのスピニングエッジに対しスバルが間に入りプロテクションで受け止め動きを止めると、スバル肩を踏み台にエリオのスタールメッサーが振り下ろされる。 しかしエイミはバックステップで回避すると、逆にエイミが槍を振り下ろす。 しかしエイミが槍を振り上げた瞬間をティアナは狙い、クロスファイアはエイミの槍を撃ち落とすと、 前方にいたスバルとエリオが左右に展開すると中央からギンガが加速しながらエイミに突撃、 ギンガのナックルバンカーがエイミの腹部に突き刺さると、九の字に曲げながら後方へと吹き飛ばす。 「行きます!鋼の軛!!」 その瞬間を狙いキャロはフィンが展開されている右手で床に触れると、床を介して桃色の鋼の軛がエイミの体に突き刺さる。 ミッド式の鋼の軛、ザフィーラとシャマルの訓練とシャーリーによって追加されたバインドである。 鋼の軛によって動きを止められたエイミを確認後、急いで地下水路の入り口へと向かう一同。 その中エイミに目を向けるティアナであったが、頭を横に振りその場を後にした。 地下水路の天井が瓦礫となって落ちる中、鋼の軛に縛られているエイミから紅い魔力が溢れ出していた。 「体ガ熱イ……チカラガ……目覚メル!!!」 次の瞬間、体から溢れ出ていた魔力がエイミの体を包み込むと同時に、エイミの頭上の天井が崩れ飲み込まれるのであった。 一方ヴィータとベリオンの戦いは、床を撃ち砕き、壁をぶち壊し、柱はへし折られ、地下水路崩壊の一端を担う程の熾烈さを繰り広げていた。 そしてヴィータの一撃がベリオン頭を捉え吹き飛ばすと、リインが地下水路の崩壊を示唆、 フォワード陣は既に出入り口へと向かっている事を確認したと伝えるとヴィータもその場から去ることを決める。 しかし土煙の中からベリオンが姿を現し、ヴィータは苦虫を噛んだ表情で睨みつけていた。 「ちっ!しつけぇ奴だ!!」 「…システム、バスターモードニ移行、スキル・マイトブロウ起動シマス」 そう言うとヴィータに目を向け佇むベリオン、 ベリオンが起動させたマイトブロウとは、相手を気絶、更にガードを破壊する効果を持つスキルである。 そしてベリオンの足下が光りだすと魔力を噴射、一瞬にヴィータの懐に入り右手を握り締めた。 ヴィータは一瞬の動きに戸惑うがすぐに冷静になりパンツァーシルトを展開、ベリオンの一撃に備えた。 しかしマイトブロウを起動させたベリオンの一撃はヴィータのシールドを一瞬に打ち砕きヴィータを直撃、まるで弾丸のように吹き飛び柱にめり込むのであった。 ヴィータは柱の中で気絶をしているとベリオンが近づき左拳で柱ごとヴィータを殴りつける、 柱はバラバラに砕け散りヴィータと共に吹き飛ぶと、ベリオンは追い打ちとばかりに目の前に現れ両手を組み床に叩き付けた。 案の定床は砕け、ヴィータは瓦礫と共に下層へと落ちるが途中で意識を取り戻し下層の床へと着地、しかし足下はおぼつかずよろめいており顔は俯いていた。 しかしヴィータを追って来たベリオンに捕まり右フックを振り抜かれる。 するとヴィータは左手をかざしパンツァーシルトを展開するが空しく打ち砕かれなす統べなくベリオンの一撃を受ける……ハズであった。 ベリオンの一撃はヴィータの左手によって受け止められており、ヴィータの左手…いや全身は赤い魔力に覆われていた。 パンツァーガイストと呼ばれるフィールド魔法を纏っていたのだ。 ヴィータは顔を上げると口の端から血が流れているが、その瞳は蒼く激怒していた。 「デカブツがぁ!!図に乗ってんじゃねぇ!!!」 そう叫ぶとカートリッジを二つ消費してギガントフォルムに変えると勢いよく振り抜き、ベリオンは壁に激突した。 するとヴィータが落ちてきた穴からリインが心配そうに降りてくると、それを確認したヴィータはユニゾンを要求する。 ユニゾンとは、ユニゾンデバイスであるリインフォースIIと融合する事を指し、 ユニゾンすることで能力の向上、更には補助などの支援を受ける事ができるのである。 ヴィータの言葉にリインは一つ頷くとヴィータの目の前に立ち、そして―――――― 『ユニゾンイン!!』 二人の声が重なり合って叫ぶと、リインは吸い込まれるようにヴィータの体と融合、 ヴィータの魔力が高まり騎士服は赤から白く染まり、髪はオレンジ色、瞳も青く変化していた。 「リイン!詠唱短縮!」 「任せるです!」 ヴィータはリインに命令するとギガントフォルムのままベリオンに突撃する。 一方ベリオンは左手のマシンガンで応戦するも先程とは打って変わって素早く懐に入られギガントハンマーがベリオンの胴体に突き刺さる。 しかしベリオンも負けてはおらず右ストレートを繰り出しヴィータのシールドを砕いて吹き飛ばす。 すると融合しているリインが後方にヴァルヒ・スツーツと呼ばれる白い柔らから支柱を展開させ激突を免れる。 そしてお返しとばかりにラテーケンフォルムに切り替え突撃、見事にベリオンの胴体に突き刺さる。 そしてカートリッジを三発消費すると噴射口から大量の魔力が吹き出しベリオンごと回し始め――― 「一対一の戦いでぇ!ベルカの騎士はぁ!!」 「負けはないです!!」 二人の息のあった台詞と共にベリオンを天井に向け投げ飛ばし、ベリオンは天井を突き破りながら姿が見えなくなっていく。 それを確認したヴィータは口の端の血を拭い中に溜まった血を吐くと、今度こそ脱出の為入り口へと向かうのであった。 一方地上では未だ地雷王が地震を起こしており、その振動により地下水路は轟音と共に崩壊した。 「あ~あ、やっちゃった……」 アギトのやりずぎじゃね?感を醸し出した感想を浮かべる中、一つの轟音が響く。 其処には先程ルーテシアが戦っていた局員の姿があった、どうやら先程の音は瓦礫を砕いた音のようである。 「たっ助かったぁ」 「どうやらみんな無事みたいね」 瓦礫で塞がれていた入り口を先行していたギンガがナックルバンカーで打ち抜き、どうにか脱出できたようである。 ティアナはメンバーの確認を終え周囲を見渡す、地下水路が崩壊した影響かビルの一部が倒壊、道路の一部が陥没している状況であった。 その酷い状況にギンガは他の部隊に救援を要請していると、キャロが地下から強大な魔力を感知したという。 すると地面が盛り上がると中から紅い竜が姿を現した。 「赤い竜!?……まさかエイミ姐さん!!」 その竜の姿は猛禽のような爪に猛獣のような牙、鋭利な角に鋼のように強固な赤い皮膚と柔軟で強靭な巨大な体躯と尾、 そしてその肉体を浮かばすことが出来る程の翼を持ち、ティアナがグレイから聞いた特徴と同じモノを持っていた。 つまりあの竜はエイミが竜化した姿であるのは間違いないのである。 ティアナがエイミを説明しているとエイミはその巨大な拳で道路を砕き、尾で倒壊したビルを叩き、口から吐き出した炎はビルのガラスを砕き溶解させた。 今のエイミは不死者化に加え竜化している為、力が暴走しているのは明白、目に映る物全てに攻撃を仕掛けていた。 このままエイミを暴れさせていてはさらに被害が増える!そう考えたギンガはスバル達と共にエイミの下へと向かうのであった。 ウィングロードにて近くで見るエイミは思いの外巨大でベリオンの三倍近くあるように思えた。 これだけ巨大であると通常の攻撃は通用しないと考えるスバル、 しかしここで怖じ気つく訳には行かない!……そう自分を鼓舞するとエイミに突撃、額辺りにリボルバーキャノンを撃ち込む。 しかしスバルの攻撃にいっさい動じず寧ろ左手で弾かれ吹き飛ばされる。 すると足元からエリオがソニックムーブを用いたスタールメッサーを放つが傷は浅くエイミの膝を付かせるまでには至らなかった。 エリオの攻撃に気付いたエイミは踏みつぶそうとするが、ストラーダがソニックムーブを用い危ういところで回避する事が出来た。 その頃フリードリヒに乗ったキャロがエイミの前に立ちふさがるとフリードリヒはブラストレイを放つ。 だがエイミの炎には叶わずブラストレイを押しのけキャロ達を飲み込む。 「っ!キャロ!!」 その光景にエリオは叫ぶが、炎は渦のように円を描き分散、その中央には光の渦を張ったキャロの姿があった。 キャロはホイールプロテクションを用いてエイミの炎を防いだのである。 それぞれの戦闘を見ている中ティアナはギンガに考えがあると話す。 その内容を聞いたメンバーは一斉に頷くとそれぞれの位置に付く。 「一番!エリオ行きます!!」 エリオはスピーアフォルムの石突と噴射口部分から金の突起物が現れるウンヴェッターフォルムに変えると カートリッジを三発消費、ストラーダの先端に雷を纏う。 そして加速してエイミに突き刺さると周囲を雷に包まれ直撃する。 サンダーレイジと呼ばれるエリオの電気変換資質とフェイトの魔法を元に生み出した魔法である。 エイミの体に雷が撃たれている中、左手にフィンを展開させたサードモードを起動させたキャロがエイミの後方で魔法陣を展開させていた。 「二番キャロ!鋼の軛を撃ちます!!」 そう言うと両手を開き魔法陣に触れる、すると先程以上の巨大な桃色の鋼の軛が六本、 六角形の角部分を彷彿するような位置から伸びエイミの体を貫く。 するとエイミの正面にはナカジマ姉妹が構えていた。 「スバル!先に行くよ!」 「了解!ギン姉!!」 「三番!ギンガ、突貫します!」 そう言うとカートリッジを三発消費しエイミに向かっていく。 そしてエイミの目の前まで向かうと左拳を振り下ろし更に振り上げる、ストームトゥースと呼ばれるコンビネーションである。 だがギンガの攻撃はまだ終わらず、今度はウィングロードを螺旋の形に展開させて今度は左拳によるナックルバンカーを鳩尾あたりに打ち込む。 「スバル!今よ!!」 「応!四番スバル、ギア・エクセリオン!!」 スバルが叫ぶとマッハキャリバーから片足に二枚、計四枚の翼を展開、A.C.S モードを起動させる。 そして一気に加速するとカートリッジを二発消費、右拳に魔力が纏い、そのまま姉ギンガと同様エイミの鳩尾あたりに拳がめり込む。 更にスバルはカートリッジを三発消費すると拳に環状の魔法陣が展開、めり込んだ拳の先には魔力弾が形成されていた。 「ディバイン…バスタァァァ!!!」 ゼロ距離からのディバインバスターはエイミの体内で炸裂し内側から強固な皮膚を貫き穴という穴から魔力光が溢れ出す。 もはやとどめと思われた一撃であったが未だエイミは鋼の軛を外そうとしており、それを倒壊寸前のビルの屋上で見つめるティアナ、 するとクロスミラージュをダブルモードに変えるとビルから飛び降り、左の銃でエイミの額あたりにアンカーショットを打ち込む、 そして一気に巻き上げ加速させると右の銃をダガーモードに切り替える、狙いは脳髄である。 ティアナが迫る中、エイミは顔を上げティアナを見上げ口から炎を吐き出す。 炎はティアナに直撃する瞬間、ティアナは陽炎のように消える、お得意の幻術である。 本物は飛び降りたビルの中心、遠距離型狙撃銃ブレイズモードに切り替えたクロスミラージュを握り標準は見上げたエイミの頭である。 「さようなら…エイミ姐さん…」 そう一言呟くとティアナは引き金を引きファントムブレイザーを撃ち出す。 クロスミラージュから放たれたファントムブレイザーは高密度に圧縮されており、 エイミは小細く声を上げると頭を撃ち抜かれるのであった。 …撃ち抜かれ頭部を無くしたエイミの体は轟音と共に倒れ光の粒子となって消滅、その光景を涙を流し見つめるティアナとスバル… すると突然フリードリヒが雄叫びを上げ、キャロは戸惑い目を向けるとその目には涙が浮かんでいた。 「どうしたの?フリード」 キャロの問いに答えないフリードリヒ、何故フリードリヒは泣いているのか…それはエイミが消滅する瞬間にあった。 …ティアナの一撃がエイミの頭に直撃する瞬間、か細い声で一言「ありがとう…」と言っていたのだ。 …エイミには元々から意識があったのか?…それとも死の一瞬だけ意識を取り戻すのか? それはもう分からない…だがフリードリヒの耳には確かにエイミの感謝の言葉が届いていたのだ。 フリードリヒはまるで弔うように涙を浮かべ何度も雄叫びを上げるのであった。 一方、一部始終を見ていたルーテシアはモニターを閉じガリュー及び地雷王を送還する。 「いいのか?ルールー」 「……私の目的は果たしたから」 そう言ってレリックケースをアギトに見せ足早に去ろうとした瞬間、 アギトはバインドに縛られルーテシアの右コメカミ辺りにはラテーケンフォルムが向けられていた。 「やっと見つけたぜ、テメェラ」 ルーテシアの後ろにはヴィータが睨みつけており、レリックケースを置くように指示すると温和しく従い手を挙げる。 ヴィータ達はベリオンをぶっ飛ばした後出口へと向かい崩壊前に脱出していたのだ。 その後巨大な竜が姿を現し、ヴィータはあの少女の仕業だと考えリインに少女の詮索をさせその後に発見、現在に至ったのである。 その後しばらくしてヴィータの連絡をもらったスバル達が駆けつけ、レリックケースをキャロに持たせるヴィータ、 スバルとティアナは複雑そうな面持ちでルーテシアを見つめていたが、当人は涼しい顔をしていた。 ルーテシアはバインドにて縛られていると、クアットロからの念話が届く。 (…ルーお嬢聞こえていますかぁ?) (……クアットロ、今まで何していたの?) ルーテシアの問いかけにクアットロは説明を始める。 ルーテシアが地下水路で戦っている頃“鍵”を回収する為シルバーカーテンを用いて隊長クラスを足止め、その隙にセインが回収するハズであったのだが、 管理局はヘリを用意し“鍵”を運ばれるところであった。 そこで第二プランの強襲による“鍵”回収を試みる為ディエチがイノーメスカノンをチャージ中、地雷王の地震に竜化したエイミの暴走が影響してヘリを飛ばす事が出来なくなったのである。 だが今は地震王もエイミもいない為強奪にはもってこいの条件であると語る。 今セインはルーテシアの近くにおり、レリックケース回収後、ルーテシアも回収するという。 (其処で強襲の切っ掛けとなる合図の言葉を言ってほしいんですぅ) (……分かったそれで何をすればいいの?) (慌てないでねぇ、まだディエチのチャージが―――) (早くして……私…じらされるのは嫌いなの……) ルーテシアの言葉に両の手のひらを広げ肩をすくめるクアットロ、 仕方ないと考えたクアットロは眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべるとあの紅い魔導師に向かってこう言うように仕向けるのであった。 一方ヴィータ達はヴァイスが操縦するヘリを見送ると、ルーテシアに目を向ける。 「取り敢えずてめぇは公務執行妨害で逮捕だ」 『逮捕は良いけど……大事なヘリは放っておいていいの?……また貴方は…守れないかも』 その言葉にヴィータの目が蒼くなる、この少女は八年前の事件の事を知っているんじゃないのか、 そう考え詰め寄ろうとした瞬間、リインが強力なエネルギーを感知したと、そしてその方向に指を指すと其処には女性が二人おり、 その一人が大型狙撃砲でヘリに向け直射砲を撃ち抜いた。 ヘリは急速回避出来ず激突は免れないと思った瞬間、ヘリと直射砲との間に桜色の光が割り込み爆発を起こす。 爆発によりヘリの周りには白煙が包まれ徐々に晴れていくと、其処にはエクシードモードを起動させたなのはの姿がありどうやら先程の光の正体のようである。 一方ヴィータはヘリの無事を確認していると、キャロの叫び声が上がり目を向ける。 其処には水色の髪の少女の姿があり、手にはキャロから奪ったレリックケースが握られていた。 ヴィータはその少女を捕まえるように指示するが女性は腰に付けた手榴弾のような物を投げつけると、まるで水面を潜るように道路の中を潜った。 すると置き土産である手榴弾のような物が光を放ち爆発する。 「くっ!閃光弾か!!」 目をくらましつつ周りを確認すると既にバインドが解かれた二人を抱えている姿があり、ヴィータは必死に捕まえようと飛びつくが健闘空しく空振りに終わる。 そしてリインは反応を調べるが対象は既にロスト、逃げられたという空しい事実だけが現場に残されているのであった。 一方クアットロとディエチはなのはに追われていた。 ディエチが手にしていたイノーメスカノンは重すぎるため現場に放棄、ビルの屋上を飛び移りながら逃走していた。 「待ちなさい!」 「待ちなさいと言って待つ人なんていませんよぉ」 そうクアットロは軽口を叩くとカンに障ったのかアクセルシューターを撃ち出される。 するとディエチは右足に力を込め思いっきり踏み込み跳躍、体を半回転しつつ腰に付けていたスコーピオンを抜くとアクセルシューターを迎撃した。 そして逆さまから落ち掛けたところをクアットロが足をつかみ難を逃れる。 「助かったわぁ、ディエチ」 「こっちも助かった」 そんな事を言いながら逃走を続ける二人、それを追うなのはにフェイトが追加されこのままでは本当にまずいと考えるクアットロであった。 一方逃亡者を追いかけているなのはとフェイトの下に一つの念話が届く。 (此方はエインフェリア、クロノ提督の名の下援護します) その聞き慣れない名前に困惑するもクロノの名が出た為、信用する二人、 二人はエインフェリアに指定された位置に向かうこととなった。 一方、エインフェリアのゼノンとカノンは海上を離れなのは達が追っていた場所を確認する。 「さて…何を撃つつもりだ」 「空を飛ぶ物にはこれが相応しいだろうな」 そう言うと左手に雷を走らせるゼノン、その考えに乗ったカノンもまた雷を走らせると魔法陣を展開させる。 そして二人の目の前に稲光が走る球体が出来上がるとゼノンは右、カノンは左に撃つこととなり そして―――― 『サンダーストーム』 撃ち出された魔法は真っ直ぐ現場に向かって進むのであった。 一方で隊長クラスの追撃を受けなくなった二人は少し戸惑いを見せ後方を見据える。 何も起きない、まるで嵐の前の静けさだなと考えていると上空に稲光が起きている物を発見する。 「あれは…グラビディブレスぅ?」 「いや…違うと思うけど、多分あれは……」 『広域攻撃魔法!?』 二人は声を合わせてそう言うと二つのサンダーストームは広がりを見せる。 その広がりの早さにクアットロは焦りつつ飛び抜けるが、後方ではサンダーストームから無数の雷がクアットロ達目掛け落ちていた。 「きゃああああ!?」 「ちょっと、クアットロ姉さん!?もっと高く飛んで頭が擦れる!!」 しかし上昇すればあのサンダーストームの渦に巻き込まれる、しかし低いままでもあの雷の雨にやられる。 クアットロは再度シルバーカーテンを使用して自分とディエチの姿を消すのであった。 一方なのはとフェイトは指定された位置で周囲を確認していると、先程の二人組が姿を現す。 「ビンゴ!行こうフェイトちゃん!」 「分かった、なのは」 そう言うとなのははレイジングハートを二人に向けカートリッジを一発消費し、フェイトは左手をかざしカートリッジを三発消費する。 そして互いの足元に魔法陣が展開され魔力弾が形成されていく。 そして―――― 「エクセリオンバスター!」 「トライデントスマッシャー!」 二人の魔法はクアットロ達を挟むように放たれ、クアットロ達は逃げられないと覚悟する。 そして二つの魔法がぶつかり合い相殺され辺りには魔力の残滓が舞っていると、 二人を片手ずつ掴む紫の短髪の女性が佇んでいた。 どうやら監視役としてスカリエッティに派遣されたようだが、妹達のピンチに思わず手を出したようである。 「たっ助かりましたぁトーレ姉」 「…早くディエチを連れて行け、しんがりは私に任せろ」 トーレの言葉に甘えるようにクアットロはディエチを抱えシルバーカーテンを使ってその場を後にする。 するとなのは達が逃がさないとばかりに追うとすると、 トーレの両手足にエネルギーの翼を展開、そして瞬間移動を彷彿させるようなスピードで なのはの腹部にミドルキック、更にフェイトの腹部にも後ろ蹴りを与えそのまま退避した。 その一瞬の出来事になのはは痛む腹部を押さえ困惑する中、 フェイトは先程の女性の速度はかつて自分が使っていたソニックフォーム、もしくはそれ以上の速度を出していたと考えていた。 なのはからの連絡を受けたヴィータは今回の失態は自分のせいだと話し、ギンガもまた同じ事を言っていた。 その中、恐る恐る手を挙げるティアナ、ヴィータ達には忙しくて連絡が遅れていたが、 スバルとティアナはレリックケースに仕掛けをして置いたと話しヴィータとギンガは首を傾げる。 一方“鍵”回収チームは合流地点に次々に集まり、其処にはベリオンの姿もあった。 今回、回収出来たのはレリックケース一つ、その事をどうドクターや博士に報告しようか考えていると、セインがレリックを見たいとダダをこね始める。 トーレはやれやれと言った表情を見せつつ了解するとセインは早速レリックケースの鍵を開錠、ふたを開けると中にはレリックは一つも入ってはいなかった。 「なんでぇぇぇぇぇ?!」 「…してやられたようだな」 中身は空っぽ今回の任務は徒労に終わり疲れがドッと出るメンバーであった。 一方行方知れずのレリックはキャロの帽子の中に隠されていた、戦闘面では後方支援のキャロに持っていてもらえば安全だとティアナのが出した提案であった。 その事にヴィータとギンガは苦笑いを浮かべていると、ヴィータがあきれた様子で話し始める。 「しっかし、いくら後方支援でもよく大丈夫だったな」 「えっ!?」 ヴィータの言葉に目を丸くするキャロ、レリックは高エネルギーの結晶体、いくら封印処置をされていても、 魔法が直撃すれば暴走する可能性があると語り、その言葉に冷や汗を垂らすキャロ、そして恐る恐る聞いてみた。 「もし…暴走させたら?」 「そりゃあもちろん……頭がパーン」 そう言って頭が爆発する様子をジェスチャーするヴィータに顔を青ざめるキャロ、 そしてキャロは涙目でティアナに抗議するのであった。 一方ゆりかごに戻ったクアットロ達はレザードとスカリエッティが待つ部屋に向かう。 そして今回の一部始終を話すと腕を組むスカリエッティ、その行動に息をのむ一同。 「つまり“鍵”もレリックも管理局側に回収されてしまったんだね」 「申し訳ございません、ドクター」 「まぁ、仕方がない、今日は疲れただろう…もう休みなさい」 そう言って皆を帰らせるスカリエッティ、一同はその行動に疑問を感じるも一礼して部屋を後にした。 暫く静寂が包み込む中、レザードの口が開き始める。 「いいのですか?お咎めなしで」 「あぁ、“鍵”はまた回収しに行けばいいからね」 それに地上本部を崩壊させるきっかけにもなると、狂喜に満ちた表情を現すスカリエッティであった…… 前へ 目次へ 次へ
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駆け抜ける不協和音 「なのはママー……」 真っ暗闇の森の中に、か細い女の子の声が響く。 今にも泣き出しそうな程に震えた声。助けを求め、最も信頼出来る人の名を呼びながら歩く。 だが、その呼び掛けに返事が返される事は無く、かえって少女を不安にさせるだけだった。 少女……ヴィヴィオは、つい先程まで、母親である高町なのはと激闘を繰り広げていたのだ。 そして、正直言って普通の人間ならば何よりも怖いと感じる筈の、なのはの全力全壊スターライトブレイカーを受け…… 気付けば訳のわからない広間にバインドで拘束されていた。 それがたった数分前の出来事。自分が目を覚ました次の瞬間には、目の前で一人の人間の頭が爆ぜた。 いくら「強くなる」と約束したヴィヴィオでも、このような状況に陥って平常心でいられる訳が無かった。 だが、それでも随分と成長した方だ。過去のヴィヴィオなら恐らく、何も出来ずに大声で泣きわめいていた事だろう。 なのはを探す為に、自分から行動を起こす事を選んだヴィヴィオは、子供ながらに立派と言える。 「なのはママー……フェイトママー」 呼び掛けながら、木を掻き分け進む。 ヴィヴィオは気付かなかった。この行動で引き寄せられるのは、なのはやフェイトのような善人だけでは無いという事に。 ヴィヴィオは気付かなかった。ゲームに乗った人間までもが、ヴィヴィオの声に引き寄せられている事に。 ◆ 「さて……どうしたものか……」 矢車想は考える。 一体このゲームの真意は何だ? 人間同士で殺し合わせて何になる? 非常に合理的な性格の矢車には、利益も無くこんな無意味な戦いを強要する意味がさっぱり解らない。 「プレシアとかいったか……あの女、一体何者なんだ……?」 右手を頬の近くに、左手を右肘に、矢車特有の“考える人”の動きを見せる。 ネオゼクトやワームを掃討する為ならば、矢車は容赦無く相手の命を奪う。 だが、それ以外の人間は矢車にとって護るべき存在だ。理由はどうあれ、プレシアとかいう女の思惑通りにゲームに乗る訳には行かない。 そして何よりも、矢車にとっては「誰かの掌で躍らされる」のがたまらなく悔しいのだ。 ならば、矢車の取る行動は一つ。 「完全作戦……パーフェクトミッションにおいて、プレシアを倒す。」 矢車は、ボソリと呟いた。次に、左腕に装着したザビーブレスを触ろうと…… 「……何?」 おかしい。そこに有るべき物が無い。スーツの袖をめくり、もう一度確認する。 が、ザビーブレスの姿はどこにも見当たらない。いつ如何なる場合の敵襲にでも対処出来るように、外した事など無い筈なのに。 「どういうことだ……?」 慌てた矢車は、確認の為全身のポケットをまさぐる。それでも見当たらない。探しても探しても。 ややあって、思い出した。プレシアの言葉を。 ――あなたたちの武装は全て解除して、こちらで用意したいくつかの道具と混ぜてランダムで支給するわ―― 矢車の頭の中で蘇るプレシアの言葉が、矢車の表情を青ざめさせてゆく。 「何て事だ……! 命よりも大切なザビーゼクターを、あんな奴に……」 ややあって、矢車は力任せに近くの木を殴りつけた。その表情は、悔しさと焦りに歪み。 無理も無い。ZECT本部から支給された大事な大事なザビーブレスを、あんな訳の解らない女に奪われてしまったのだから。 力を失ってしまった矢車にはどうする事も出来ないのだろうか? いや、そんな事は無い。矢車は仮にもZECTのエリート。一部隊の隊長なのだ。 例えザビーゼクターが無くとも、脱出する方法ならいくらでもある筈だ。 「(そうだ……まずは仲間を集めるんだ)」 ゆっくりと顔を上げる。考えても見れば、いきなりあんな訳の解らない説明を受けて直ぐにゲームに乗る人間がいる筈が無い。 そんなことをしても、自分にとって何の利益も無いからだ。 ……と、そこまで考えた矢車はふと、思い出したように首元に手をやった。 「(いや……だがこの首輪がある限り逆らう事も出来ないか……)」 そう……忘れてはならないのが、この首輪の存在。目の前で爆破の瞬間を見せられた以上、迂闊に逆らう訳にも行くまい。 だとすれば、嫌々ながらに人を殺す人間が現れても仕方が無い。 そんな人間が現れた場合は……悪いが、そこでトドメを刺させて貰う。 そんな人間を救出した所でチームの不協和音になるのは目に見えているからだ。 完全なる調和の元に完全なる作戦を遂行する矢車にとって、そんな人間をチームに入れるのは御免被りたい。 「(よし……そうと決まれば、まずは仲間を集めるんだ。そして、機会をみてプレシアに反撃する)」 矢車の頭の中で構築されていく作戦。完全過ぎる。自分が恐ろしくなる程に完全過ぎる。 完璧に完全なパーフェクトミッションのプランを立てた矢車は、デイパックを持ち上げ、歩き始めた。 「ん……?」 しばらく歩いた所で、矢車は立ち止まった。声が聞こえる。小さな小さな、聞き逃してしまいそうな声が。 矢車は立ち止まり、耳を澄ませる。 「……はママー……」 ――子供の声……だと? 聞き取れたのは“ママ”という単語、そして声のか細さから、声の主が小さな女の子であろう事は容易に想像がついた。 だが、だとすれば危険過ぎる。ゲームに乗った愚か者が何処に潜んでいるかも解らないこの状況で、あんな大声で動き回るのは自殺行為もいい所だ。 矢車は、大きなため息を落とした後、足速に声の元へと歩き出した。 ◆ 遠くから、だんだんと近付いてくる足音。 「なのはママ……?」 これだけ呼んだのだ。なのはママが来てくれない筈は無い。ヴィヴィオの表情は、一気に明るくなった。 「なのはママー!」 安心感からか、大声を出しながら足音に向かって疾走するヴィヴィオ。 ……だが、そこにいたのは、ヴィヴィオが望んだ相手では無かった。 「なの……はママ……?」 「…………」 相手は明らかに男。それも、身長はかなり高い。なのはと比べれば20cm以上の差がある。 蛇柄のジャケットを羽織り、鉄パイプを引きずったその男は、何も言わずにヴィヴィオを見下ろしている。 「……ガキか……」 「え……?」 ややあって、男は小さくそれだけ言うと、ヴィヴィオから目線を外し、反対の方向へと歩き出した。 なのはでは無いものの、彼はようやく出会えた人間。まだ幼い子供であるヴィヴィオに、再び一人ぼっちになれというのは少々酷だ。 「あ……待ってー」 「……ぁ?」 結果、ヴィヴィオは立ち去ろうとする男を追い掛け、その脚にしがみついた。 この状況で最初に出会えた人間。一人ぼっちで心細かったヴィヴィオが、初めて口を聞いた人間。 そんな人間に着いて行きたくなるのは、幼いヴィヴィオにとって当然の事だった。 「ヴィヴィオも一緒に行く!」 「………………」 男――浅倉威は、ちらっとヴィヴィオの顔を見た後、そのまま無視して歩き出した。 ◆ 「(ちからが……はいらん……)」 神・エネルは、どんぶらこどんぶらこと、力無く川を流れ続けていた。 「(神である私が……こんなことで……)」 あの女……あの無礼な女に不意打ちを喰らった為に、今の自分はこんな不様な姿を曝してしまっているのだ。 許せん。あの女は絶対に許せん。エネルは、内心であの橙頭の女に憎しみの念を抱いた。 「(あの女……いつか絶対に神の裁きを与えてくれる……!)」 ……と、考えるのは自由だが、今の自分にはゴロゴロの実の力を十分に発揮する事が出来ない。 先程の女の蹴りを受ける際に雷化出来なかったのがその証拠だ。それだけでは無い。“ヴァーリー”の威力も間違い無く落ちている。 MAXで何Vまで発揮出来るかも些か疑問だ。 そんな事を考えながらしばらく歩いていると―― 「ねーおにーさん、人が流れてるよー」 ――声が聞こえて来た。 小さな女の子の声。だが、今のエネルには首を声の方向へと回す力も無く。声を出す力も無い。 だが、それから直ぐにエネルの上半身は水から上がる事が出来た。 「(……何だ……?)」 目を動かし、自分の体を持ち上げている何かに目を向ける。自分の体を持ち上げているのは、蛇柄のジャケットを着た茶髪の男だった。 ◆ 「――それでね、なのはママはすっごく優しくって、いつもいい子いい子してくれるの!」 「(……戦える奴はいないのか……?)」 ヴィヴィオに付き纏われ、たまらなくウザいと感じながらも、浅倉は戦えそうな人間を探していた。 しかし、歩いても歩いても誰もいない。ようやく人を見付けたと思えば、明らかに戦えなさそうなガキ一人。 まぁこのガキは人の引き付け役にもなるだろうと、着いて来ても無視を続けているが。 「――だからね、ヴィヴィオもなのはママをいい子いい子してあげるの。そしたらなのはママも元気に……あれ?」 「………………」 そこで、さっきから一人で聞いてもいない事を長々と語ってくれるヴィヴィオの声が途切れた。 それに気付いた浅倉は、ゆっくりとヴィヴィオに振り向く。 見ればヴィヴィオは立ち止まり、川に流れる何かを指差していた。 「ねーおにーさん、人が流れてるよー」 浅倉がエネルに気付いたのは、ヴィヴィオに呼び掛けられてからだった。 エネルの筋骨隆々とした肉体を見るや否や、浅倉は不敵に笑い始めた。 「(あいつなら……少しは戦えそうか?)」 浅倉の目的は、戦う事。戦う事こそが、戦う目的なのだ。故に、エネルを助ける。戦う為に。 浅倉は、エネルの体を引っ張り、乱暴に河原へと放り投げた。 「ぐぉっ……!」 「……お前なら、少しくらいは戦えそうだ……」 小さく呻いたエネルに、浅倉は不気味に笑いながら言った。対するエネルは、見るからに浅倉に対して怒っている。 エネルは眉をしかめ、その鋭い眼光で浅倉を睨み付けた。 「少しくらいは……だと? 貴様……口を慎めよ、我は神なるぞ……!」 「ククククク……なら戦え……戦えよ! 神様なら、戦って俺を負かしてみろ……!」 浅倉の笑みを見たエネルもまた、小さく笑い出した。こいつはバカだ とでも言わんばかりに、ニヤニヤと。 だが、目は笑っていない。そのギャップが、余計にエネルの表情を恐ろしく見せる。 「ヤッハハハハ……よかろう。 貴様に、私を助けた事を後悔させて……」 「喧嘩は駄目ーーーっ!」 と、そこで今まで黙っていたヴィヴィオが、二人の会話に割り込んだ。 エネルと浅倉は、二人共ゲームに乗った人間……しかも元の世界では何人もの人間を殺している。 そんな二人に喧嘩をするなと言った所で無駄な事だろうが、ヴィヴィオはまだそれを知らない。 言ってしまえば、ヴィヴィオは今二人の殺人鬼に囲まれているのだ。 ヴィヴィオの声が周囲に響いた後、エネルは一度浅倉から視線を外し、再び不敵な笑みを浮かべた。 「良いのか? ……今の大声で、何者かがこちらに近付いているぞ?」 心網―マントラ―による敵の位置の把握能力。エネルは、こちらに近付いて来る人間がいるとの情報を浅倉に伝えた。 浅倉は頬を吊り上げるような不気味な笑いを見せた後、直ぐに立ち上がり、鉄パイプを構えた。 敵が来るという事実だけ、何となくにだが把握したヴィヴィオも二人の殺人鬼の背後に身を隠す。 ヴィヴィオは知らなかった。 今こちらに向かっている男こそが、真にヴィヴィオを救おうと駆け付けた“仮面ライダー”である事に。 ヴィヴィオは気付かなかった。 今自分が頼っているこの男こそが、自分を囮に利用し、この殺し合いを楽しむ事が目的の“仮面ライダー”である事に。 ◆ 矢車は、デイパックの中身を確認し、武器になりそうな物を探した。 そして最初に見付けたのが、用途不明のカード型デバイス。 このデバイスにはクロスミラージュという名前があるのだが、矢車そがれを知る筈も無く、すぐにデイパックに戻した。 次に見付けたのが、銀のベルト。矢車の良く知るゼクトバックルだ。 だが、変身前にゼクトバックルを持っていたとしても何の意味も無い。これも正直不必要なアイテムだろう。 矢車はそれをデイパックに戻し、再び歩き始めた。 ちなみにこのゼクトバックル、資格者が使えばホッパーへと変身する事が可能だが、ホッパーの資格条件は絶望。 良い部下達に恵まれ、エリートの地位を持ち、戦果を上げ続ける矢車にとっては無縁のゼクターなのだ。 「武器は何も無い……やはり信じられるのは自分の腕だけか」 矢車はそう呟き、再び歩を進めようとした、その時であった。 ――喧嘩は駄目ーーーッ! 「……!?」 突如聞こえた少女の声。間違いない。先程の女の子の声だ。 喧嘩……? 彼女は今、戦いに巻き込まれているのか……? そう考えた矢車は、直ぐに走り出していた。一人の小さな命を救う為に。 走り続けて数分、木を掻き分け進んだ矢車は、このエリアを流れる河原の近くに出た。 「あれは……」 矢車の視線の先にいるのは三人の人影。 鉄パイプを構え、笑っている男が一人。力無く横たわる半裸の男が一人。 そして脅えた表情で小さく隠れる金髪の女の子が一人。なるほど、矢車はすぐに状況を飲み込んだ。 あの蛇柄の男が半裸の男を襲い、あの少女は戦いに巻き込まれてしまったのだろうと。 これ以上少女に恐ろしい思いをさせる訳には行かない。返答次第では、この男を倒す。矢車はそう決意し、口を開いた。 「ねぇ、君はその女の子をどうするつもり?」 「……ククク……ハハハハハハッ!!」 「な……ッ!?」 聞いた自分がバカだった。男は、質問に答える事なく、鉄パイプを振りかぶり、襲い掛かって来たのだ。 もう間違いない。この男はこの馬鹿げたゲームに乗っている。しかも1番質の悪い、快楽殺人の類だ。 矢車は、振り上げられた鉄パイプをかわし、アウトボクシングスタイルで構える。 「チッ……完全調和を乱す不協和音め……!」 矢車は浅倉と距離を取り、策を考える。相手が長い得物を持っているなら、素手で戦う自分は圧倒的に不利だ。 だが、矢車とてエリート。不利なら不利なりの戦い方がある。矢車は、アウトボクシングスタイルで構えたまま、軽くステップを踏み始めた。 「ッらぁ!!」 「……っ!」 浅倉が振り下ろした鉄パイプを後方に回避、そのまま下に振り切られた鉄パイプを左手で掴むと、矢車は大きく踏み込んだ。 浅倉の顔面に、凄まじい速度での右フックが入る。それも矢車が狙ったのは相手の顎。 自分の掌底で、浅倉の顎を叩き付けたのだ。素手で相手を殴る事の危険性は矢車自身が1番良く分かっている。それ故の行動だ。 対する浅倉は、矢車の攻撃を受けたにも関わらず、不敵な笑みを崩さない。 「……しまっ!?」 「らぁっ!!」 「ぐっ……!?」 気付くべきだった。この男はダメージを恐れていないという事に。 矢車は、再び振り上げられた鉄パイプの一撃を左脇腹に受けてしまう。刹那、体に鈍い痛みが走る。 「こんなもんじゃねぇよなぁ!?」 「チッ……!」 咄嗟に後方へと跳び上がり、再び構える矢車。やはり素手で武器を持った相手に挑むには不利過ぎたか? 嫌な汗が矢車の首筋を這う。 ――最初の一撃で落とせなかったか……賭が外れたな。 矢車は構えたまま、自分の甘さを呪った。本来ならば一撃で意識を奪うくらいは出来る筈の打ち込みで、勝利を得られなかった。 相手もまた相当に修羅場を潜って来たのだろう。 ――……一度見せたこの手、奴は二度と掛からないだろう……どうする? 思考を巡らせる。鉄パイプを持った相手に対抗するには……どうすればいい? ――初手をかわして……入るしかない! 再び振り下ろされた鉄パイプ。矢車はすんでの所でそれを回避し、再び浅倉の顔面に掌底を打ち込もうと踏み込む。 「……ぐぅッ!?」 いや、踏み込めなかった。先程脇腹に受けた一撃が痛み、シフトウェイトの瞬間に力が抜けてしまったのだ。 結果、矢車の拳には力が全く入らず、容易に浅倉に受け止められてしまう。 そして、再び突き出された鉄パイプ。 「オラァッ!!」 「ぐぁっ……!」 矢車はその直撃を受け、数歩のけ反る。が、浅倉の攻撃は留まる事無く、隙だらけになった矢車に更なる打撃を加える。 地べたに這いつくばった矢車は、荒い息で浅倉を睨み付けた。 「終わりだ……死ねよ」 「…………ッ!」 浅倉は、力一杯矢車へと鉄パイプを振り下ろした。 「神の裁き……エル・トール!」 「「……ッ!?」」 その時だった。鉄パイプが矢車の頭を叩き潰す寸前に、青白い稲妻が駆け抜けたのだ。 空から降ってきたかのようにも見える雷の衝撃に、浅倉と矢車は一気に逆方向へと吹っ飛ばされた。 なんとか立ち上がった矢車と浅倉は、雷の発生点を睨み付ける。 「……やはり少し弱いな。たかが人間二人殺せんとは」 そこにいるのは、背中から太鼓を生やし、異常に長い耳たぶを持った男。先程まで横たわっていた筈の、神・エネルだ。 「ヤハハハ……まぁいい。随分と待たせたなぁ? 感謝しろ、虫けら。私が直々に裁いてやる」 「クックック…………ハハハ……ハハハハハッ……!」 浅倉にはもはや矢車など眼中に無かった。今最も興味を引かれるのは、目の前の神を名乗る男のみ。 鉄パイプを引っ提げ、エネルへと突進する浅倉。 「愚かな……神を愚弄する愚かさ、身を持って知るがいい」 再びエネルの腕が青白く輝き始める。再びさっきの電撃を放つつもりらしい。 「おにーさん! 危ない!!」 物影に隠れていたヴィヴィオは、浅倉のピンチに大声で叫んだ。が、浅倉の突進は止まらない。 ならば、と、ヴィヴィオは慌てて自分の周囲を探り始める。何か武器になるものは無いのか? と。 何でもいい、エネルを止められればそれでいい。なのはと約束したのだ、「強くなる」と。 ここで逃げてばかりでは、その約束も守れない。そんなヴィヴィオが咄嗟に掴んだのは、10cm程の河原の石ころ。 こんなものしか無いのか……と、普通なら思うのだろうが、今のヴィヴィオにそんな贅沢を言っている余裕は無い。 「この……っ!!」 ヴィヴィオは、エネルに向かって力一杯石ころを投げ付けた。あの電撃を放たせない為にも。 「ん……?」 呟くエネル。石が当たった瞬間、一瞬だが光が消えた。 しかし、やった! と思ったのもつかの間。エネルの冷たい視線に睨まれたヴィヴィオは、凍り付いたようにその場で固まってしまった。 「ハハハハハァッ!!」 そんなヴィヴィオの努力を知る由も無く、浅倉はエネルの胴体に鉄パイプを振り下ろす。 鈍い音が響き、エネルの肩付近に鉄パイプが減り込む。 「やはり……雷にはなれんのだな」 「……あ?」 本来のエネルならば、こんな鉄パイプによる一撃など受ける筈も無い。雷になれば済む話だからだ。 だが、その雷に変化することが出来ない。恐らく、変化出来るのは腕や脚、一部の技だけなのだろうと判断。 それならそれで戦いようは有る。エネルは、浅倉の鉄パイプを右手で握り締めた。 「グローム……――」 そして、力を右腕に集中させる。エネルの右腕は再び光り輝き。 「――パドリングッ!」 鉄パイプへと、凄まじいまでの電流が流れた。流された電流により、鉄パイプは凄まじい熱を帯びる。 「ぐぉっ……あぁぁぁああああっ!?」 エネルの電撃により、右手に伝わる激しい痛みと熱。浅倉は咄嗟に手を離した。 見れば、右手の平はまるで火の中に突っ込んだように焼け爛れている。 「ヤッハハ……金では無く鉄というのが残念だが……十分だ」 鉄パイプは、既に原型を留めてはいない。エネルに流された電流により、高熱を帯びたパイプは、エネルの望む形――三股の矛へと変わっていた。 「ヤッハッハ!」 エネルは、作り出した矛で浅倉を突き上げた。これで浅倉の命も終わり…… 「ん?」 「ククク……ハハハハ……楽しいなぁ……戦いってのは」 いや、まだだ。体に刺さる寸前に、浅倉はエネルの矛の柄を掴み、動きを止めたのだ。 「ほほう、しぶといな」 「ククク……ッらぁ!!」 浅倉はエネルの矛を下方へといなし、エネルの顔面に重いハイキックを炸裂させた。 「くっ……」 のけ反るエネル。浅倉はエネルから距離を取り、再びニヤニヤと笑い始める。 どうやら浅倉もまだそれほどダメージは受けていない様子だ。 とは言っても、第三者から見れば、この戦いは長引けば明らかに浅倉の敗北となるのは明白。 ヴィヴィオはともかく、矢車にはそれが手に取るように分かった。あの男では奴には勝てない……と。 そう判断した矢車は、直ぐに体勢を立て直し、叫んだ。 「何をしてる! 早く逃げろ!」 「……あ?」 矢車の叫び声に、振り向く浅倉。 「解らないのか! そんな奴と戦っていたら命がいくつあっても足りない!」 「…………チッ」 浅倉は、矢車とエネルを数回見比べた後に、仕方ない と言わんばかりに舌を打ち、走り出した。 確かにこのまま戦うのは辛いと感じたのだろう。エネルとは反対の方向に向かって、浅倉は疾走する。 そんな浅倉を見届けた矢車も、急いでヴィヴィオに駆け寄った。 「早く、逃げるぞ……!」 「嫌っ! 離して!」 「なっ……!?」 ヴィヴィオは矢車の手を払い、矢車から距離を取る。どうやらヴィヴィオは矢車を完全に敵だと思っているらしく、明らかに敵意を表している。 「ヴィヴィオ、おにーさんと一緒になのはママ探すの!!」 「なのは……だと!? 待て……ッ!」 矢車はヴィヴィオを追い掛けようとするが、ヴィヴィオは既に浅倉の立ち去った方向へと走り始めていた。 ふとエネルを見れば、蹴られた頭を抱えながらも、その鋭い眼光でこちらを睨み付けている。 「チッ……仕方ない……!」 あんな化け物に目を付けられては命がいくつあっても足りない。 今から自分とは反対方向に逃げた浅倉を追い掛けていては、間違いなくエネルに追い付かれてしまう。 そう考えた矢車は、不本意ながらも、ヴィヴィオとは反対の方向へと走り出した。 今はただ、エネルから逃れる為に。 ややあって、誰も居なくなった河原で、エネルは一人呟いた。 「ヤッハッハ……なるほど、こういうゲームか。面白いじゃないか……!」 今の戦い。そして逃げ惑う人間共……浅倉・矢車・ヴィヴィオ。一応シャーリーも含めてやってもいい。 ここまで来て、エネルはようやく気付いた。 このゲームは、神である自分が逃げ惑う人間共を追い掛け、殺し、優勝するまでの、言わば狩猟ゲーム。 この戦いに参加する者を皆殺しにし、この国を支配するという考えは元より変わり無い。 ただ変わったのは、支配者になるまでの過程を楽しむという事。歯向かう者はなぶり殺しにし、逃げる者は追い掛けて殲滅する。 それがこのゲームの、エネルなりの捉え方だ。 まさに神の為のゲーム。神のみが楽しめる至高の退屈凌ぎ。 「ヤハハ……ヤーッハハハハハ……!」 ゲームの目的を再確認したエネル。深夜の河原に、そんなエネルの不気味な笑い声が響き渡った。 【1日目 深夜】 【現在地 C-7】 【エネル@小話メドレー】 【状態】しばらく陸に上がった事で回復、蹴られた事による頭痛 【装備】鉄の矛 【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3 【思考】 基本 主催者も含めて皆殺し、この世界を支配する 1.まずは誰から神の裁きを与えてやろうか…… 2.やはりあの蛇の男(浅倉)からだろうか 【備考】 ※シャーリーを優先して殺すつもりでしたが、どうせ全員殺すので、いつ殺しても同じだと判断しました ※エル・トールの稲妻により、B-7、C-7、C-6で発光現象が発生しました。 【現在地 C-7】 【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎】 【状態】右手に激しい火傷、疲労(小) 【装備】無し 【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3 【思考】 基本 戦いを楽しむ。戦える奴は全員獲物 1.一先ずエネルからは逃げる 2.他の参加者の引き付け役としてヴィヴィオを利用する 3.ヴィヴィオがウザい 【備考】 ※自分からヴィヴィオに危害を加えるつもりはありません ※最終的にはヴィヴィオも見捨てるつもりですが、もしかすると何らかの心変わりがあるかも知れません 【現在地 C-7】 【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康 【装備】無し 【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3 【思考】 基本 なのはママや、六課の皆と一緒に脱出する 1.なのはママを探す 2.おにーさん(浅倉)に着いて行く 3.おにーさんはヴィヴィオを守ってくれる 【備考】 ※浅倉の事は、襲い掛かって来た矢車から自分を救ってくれたヒーローだと思っています ※浅倉を信頼しており、矢車とエネルを危険視しています。 【現在地 C-7】 【矢車想@仮面ライダーカブト】 【状態】左脇腹に鈍い痛み、疲労(小) 【装備】無し 【道具】支給品一式 ホッパーのゼクトバックル@魔法少女リリカルなのはマスカレード クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS ランダム支給品0~1 【思考】 基本 仲間を集め、完全なる作戦でプレシアを倒し、脱出する。 1.一先ずエネルからは逃げる 2.あの女の子(ヴィヴィオ)が心配だ 3.なのはママ……? 高町の事か? 4.とにかく仲間と情報を集めなければ 【備考】 ※クロスミラージュの用途に気付いていません ※戦いに乗った者は容赦無く倒すつもりです ※ヴィヴィオの「なのはママ」という発言から、ヴィヴィオが高町なのはと何らかの関係があると考えています 【共通の備考】 ※浅倉・ヴィヴィオと矢車がそれぞれどの方向に逃げたかは後続の書き手さんに任せます ※この場にいた全員がエネルの危険性を知りました。 二人の兄と召喚士 本編時間順 Heart of Iron 二人の兄と召喚士 本編投下順 Heart of Iron GAME START! 浅倉威 - GAME START! 矢車想 - GAME START! ヴィヴィオ - 少女の泣く頃に~神流し編~ エネル -
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8:百合ショッカー本部殴り込み編 なのは・ユーノ・士・光太郎の四人は数多の戦いの末ついにクラナガンにやって来ていた。 「ついにここまで来たぞ。後一息だ。」 「でも私達四人だけで百合ショッカー総本部を攻撃なんて無茶な気がするんだけど…。」 最終決戦へ向けて静かにながら意気込んでいた士に対し、なのはは不安げだった。仕方が無い。 今のクラナガン、かつての時空管理局ミッド地上本部は百合ショッカーの総本部と化している。 それ故に敵の防衛網も今までとは比較にならない事は想像に難くなかった。 「いや、むしろ逆かもしれないよなのは。」 「え? ユーノ君それどういう事?」 「今まで見て来た通り、百合ショッカーは色々な世界に侵攻しているけど、それぞれの世界にも 百合ショッカーと戦う人達がいた。彼等と戦う為に百合ショッカーもさらに兵力を送り込まなければならない。 …と言う事は、逆に総本部のあるここは守りが手薄になっている可能性が高いと言う事だよ。 それに、下手に大人数で行くよりも少数で一気に奥まで忍び込んで頭を取ると言うのも立派な手。」 ユーノの言葉になのはも思わず納得していた。例え姿はフェレットであろうとも、流石はなのはのブレーンとも言えるユーノだった。 「しかし安心ばかりもしていられない。絶対数こそ少なくとも、総本部ともなれば敵も精鋭が守りに付いているはず。」 「うん…いずれにせよ激戦は避けられないんだね…。」 光太郎の言葉になのはは不安げだった表情を引き締めレイジングハートを握っていたのだが… 「その通りだ。良くぞここまで来たな。」 「ほらおいでなすったぞ!」 早速現れた百合ショッカー総本部の防衛部隊。しかし、それは仮面ライダー1号&2号と瓜二つの者達… それがのべ数十人も揃っていたのだった。 「仮面ライダー!? しかもあんなに…。」 「違う! あれはショッカーライダーだ!」 「ショッカーライダー!?」 「仮面ライダー1号及び2号は元々ショッカーが一怪人として改造した者だと言う事は以前にも話したが、 それに対抗する為にゲルショッカーが作った仮面ライダーの同型改造人間達だ!」 ショッカーライダー。元々自分達が作り上げた仮面ライダー1号及び2号に苦渋を舐めさせられたゲルショッカーが 対仮面ライダー用に仮面ライダー改造時の設計を基に、戦闘員の中でも優秀な者を改造して作り上げた存在… それがショッカーライダーであった。手袋及びブーツが黄色く、そして赤を除く色とりどりのマフラーを巻いているのが特徴である。 「その通り。確かにこの者達はショッカーライダーだ。しかし厳密には違う。百合厨の中でも特に優秀だと判断された者を 素体とし、百合ショッカーが改造した百合ショッカーライダーだ。」 「!!」 ショッカーライダー…いや百合ショッカーライダーの軍団の中心に立つ一風変わった全身を甲冑に覆われた男がいた。 「地獄大使か…。」 「地獄大使? 違うな。今の私は地獄大使改めガチ百合大使だ。」 地獄大使。『仮面ライダーの世界』においてショッカーの幹部の一人だった地獄大使。それが百合ショッカーに 参加する事によってガチ百合大使と名乗っていたのだった。そして、ショッカーライダー部隊もまた彼の言葉通りなら 百合厨の中でも特に重度の百合厨を元にした百合ショッカーライダーであると思われる。 「シャドームーンの奴は高町なのはを首領と引き合わせる事によってなのフェイの百合を復活させ それによって各世界の百合厨からの支持を得て百合ショッカーの支配体制を固める事を狙っている様だが… 我々はその様には考えていない。」 「そうだ。もう淫獣に股開いて中古になったなのはに価値は無いね。」 「まっまだそんな事してないよ////////」 ガチ百合大使と百合ショッカーライダーの言葉になのはとユーノは赤くなってしまっていたが、 彼等のその態度、それはなのはをフェイトを引き合わせようとしていたヴィータ達とは明らかに違っていた。 「故に我等は高町なのはとユーノ=スクライアを殺す事に躊躇いは無い。覚悟しろ!」 「流石は特に重度の百合厨を改造しただけの事はある…か…。」 重度の百合厨ともなればなのフェイの百合以外は考えられず、それ以外のカップリングは根絶の対象となる。 特になのは×ユーノともなれば、彼等にとってはゴミクズ以下だろう。ならば、今なのはとユーノが一緒にいる と言う状況は彼等にとって忌むべき物であり、ユーノと一緒に入る事を当たり前に受け入れているなのはもまた 彼等にとって忌むべき対象なのだろう。 「我々の愛した高町なのははもう我々の心の中にしか生きていない。今目の前にいるあの女はただのビッチ…。 淫獣に股開いたただの中古女なんだ! あんな奴に価値などありはしない!」 「だからそんな事してないよ////////」 「凄い言われ様だな…。」 百合ショッカーライダー軍団にビッチだの中古だの言われて凄いショックを受けるなのはだったが、 逆に士と光太郎は呆れるばかりだった。しかし、百合ショッカーライダー軍団が脅威である事は事実。 故にそれぞれ変身をして戦闘態勢を取る。 「変身!」 『カメンライド! ディケーイド!』 「変身!! 仮面ライダーBLACK!」 「セーットアーップ!」 なのはとその肩に乗ったフェレットユーノ・ディケイド・BLACKの四人と、百合ショッカーライダー軍団が 相対し、今戦闘が始まった。 「やれい! 百合ショッカーライダーども!」 「ユリィィィィ!!」 ガチ百合大使の号令に合わせ、百合ショッカーライダー軍団が一斉に駆け出していく。伊達に仮面ライダー1号・2号の 設計を流用して作られただけの事はあり、物凄い脚力と速度で接近して来ていた。 「来るぞ!」 ディケイドはライドブッカー・ソードモードを握り振り上げ、BLACKはパンチで跳びかかって来た 百合ショッカーライダーを迎撃した。しかし、百合ショッカーライダーは軽やかにそれを回避し、 逆にキックを打ち込んでいた。それには思わず怯んでしまうディケイド・BLACK。 「ディケイドとBLACKは後回し。まずあのビッチと淫獣をゲゲルしろー!」 「わっくっ来る!」 百合ショッカーライダーはディケイドとBLACKの相手を後回しにし、なのは・ユーノへ向けて猛烈な速度で 駆け寄せて来る。なのははレイジングハートの先端を向け、ディバインバスターで迎撃しようとしていたが間に合わない。 「させるか!」 『カメンライド! 響鬼! アタックライド! 音撃棒・烈火!』 ディケイドは響鬼のカードをディケイドライバーに差し込む事で仮面ライダー響鬼に変身し、 さらにアタックライド・音撃棒・烈火から放たれる火炎弾を連続で発射するが、それさえ百合ショッカーライダーは 回避しつつなのはとユーノへ接近して行く。 「くっ!!」 ユーノはなのはの左肩の上に立ち、防御魔法を展開して百合ショッカーライダーを阻もうとする。 しかし…その行動はお見通しとばかりに百合ショッカーライダーは構わず突撃を続けていた。 「ライダーパーンチ!!」 百合ショッカーライダー軍団のライダーパンチがほぼ同時にユーノの防御魔法へ打ち込まれ、 直後にそれが破られ砕けていた。こと防御に関しては実質Sランク級にも匹敵し得る物を持つユーノの防御魔法を 破った百合ショッカーライダーの集団ライダーパンチ。後は彼等の拳が直接なのはとユーノを襲う…と思われたが… 「危ない!」 とっさにディケイド響鬼が跳び、なのはとユーノを突き飛ばす。そのおかげでなのはとユーノの二人は何とか助かったが、 代わりにディケイド響鬼が百合ショッカーライダーのライダーパンチを受けてしまった。忽ち響鬼への変身が解除されてしまうのは 勿論の事、超硬度・超耐衝撃性・超耐熱性を誇るディヴァインオレ鉱石製のディケイドのボディーの彼方此方から激しい火花が散り倒れ込んでしまう。 これは百合ショッカーライダーの攻撃力の凄まじさを物語っていた。 「ぐぁ!」 「士さん!」 「くっ…邪魔が入ったか。だがディケイドに大ダメージを与えられただけでも良しとしよう。」 なのはとユーノは大急ぎでディケイドへ駆け寄り起き上がらせようとしていたが、ディヴァインオレ製の スーツでも完全には耐え切れなかった程にディケイドのダメージは大きいらしく中々起き上がれなかった。 「くそ…量産型ライダーのくせに何て強さだ。」 「だから言ったでは無いか。百合ショッカーライダーは百合厨の中でも特に優秀な百合厨を改造してあると。」 確かにその通りだった。百合ショッカーライダーは量産型とは言え、百合厨の中でも特に重度の百合厨を 基にして改造された存在。それ故に戦闘力は百合戦闘員やユリトルーパーとは比較にならなかった。 「ディケイドにBLACKよ、ここで高町なのはとユーノ=スクライアを大人しく渡すのであれば お前達二人の命だけは助けても良いと思うが…どうかね?」 「断る!」 「何時までそんな強がりが言えるかな? 今このクラナガン近辺にいる反抗勢力はお前達四人だけだ。 今までの様に助けは来ないぞ。」 ガチ百合大使及び百合ショッカーライダー部隊の目的はなのはとユーノを闇に葬る事。 それ故にこの二人を消せるならディケイドとBLACKはどうでも良いと考えていた。 無論そんな事はディケイド・BLACKが許容出来るはずが無いが、今この状況で 誰かが助けに来てくれるとは到底思えなかった。 「私達が貴方達に素直に殺されれば…士さんと光太郎さんを助けてくれるんですね?」 「お…おい…。」 ここでなのはとユーノがゆっくりと百合ショッカーライダー部隊へ向けて歩み寄っていく。 「おい! やめろ!」 「士さん…光太郎さん…。私達が時間を稼いでいる内に逃げて下さい。」 「そして今一度体勢を立て直し、何時の日か百合ショッカーから…世界を守ってください…。」 なのはとユーノは自身の死を賭してでもディケイドとBLACKを助けるつもりだった。 元より誰かを守る為に時空管理局に入った身。その為に誰かを助けられるなら本望。そう考えていたのである。 「やめろ! 奴等がそんな約束を守る物か!」 「ハッハッハッハッ! 潔いとはまさにこの事だな。やはりこの世は百合こそが絶対的な正義。 なのは×ユーノを支持する奴など何処の世界にいると言うのだ。」 「ここにいるぞぉ!!」 「!?」 突如として響き渡った謎の声。まるで三国志における馬岱の名台詞を連想させる言葉を叫び放ったのは 一体何者なのかと思わずその場にいた誰もが騒然としていたのだが… 「とぉ!」 「うあっ!」 直後として何者かが乱入し、百合ショッカーライダーの手に掛かろうとしていたなのはとユーノの二人を 救出し、ディケイド・BLACKの所まで連れ帰していた。 「おっお前は…ユウスケ!」 「この二人の笑顔は…俺が守る!!」 突如として乱入し、なのはとユーノの窮地を救った者、それはディケイドの旅の仲間であった 仮面ライダークウガこと小野寺ユウスケだった。しかし、現れたのはそれだけでは無かった。 「大丈夫ですか士君!」 「夏みかん…。」 倒れていたディケイドを掴み支え上げていたのは、同じくディケイドの旅の仲間である仮面ライダーキバーラこと光夏海。 そしてクウガはなのはとユーノの二人を守る様に前に立ち、構えていた。 「俺も一緒に戦うぞ!」 「お前等今頃…来るのが遅いんだよ!!」 思わずディケイドはクウガとキバーラにそう怒鳴り付けていたのだったが、表面的には怒りつつも 何処か喜びが感じられた。 「実は僕もいるんだ。」 「海東…。」 次に現れた者…それは仮面ライダーディエンドこと海東大樹であった。士がディケイドになる以前から 数多の世界を旅し、その世界のお宝を手に入れるドロボ…ゲフンゲフン…怪盗をしており、時にはディケイドの ライバルとなる事もあったが、色々あって彼もディケイドの旅の仲間となっていた。 「西も東も百合で塗れたこのご時勢だからこそ…なのは×ユーノは逆にとても貴重なお宝になってると思うんだよね。 まぁ…僕のポケットに入る様な物じゃないし、持ち帰る事も出来ないけどね。」 「とりあえず協力してくれると言う事で良いんだな?」 クウガ・ディエンド・キバーラの増援で一気に勢い付くが、百合ショッカーライダー軍団が圧倒的なのも事実だった。 クウガ・ディエンド・キバーラの救援を受けたなのは・ユーノ・ディケイド・BLACK。 しかし百合ショッカーライダー軍団の相手はそれでも辛そうであった。 「たった三人が増えただけで何が出来る! 数で押し潰してやる!」 「さて、それはどうかな?」 ディエンドは銃として右手に持つディエンドライバーを百合ショッカーライダー部隊へ向け、何処からかカードを 取り出しディエンドライバーへ差し込んでいた。元々ディケイドと同系統の技術によって作られたディエンドもまた、 カメンライドによって様々なライダーを召喚したり、また実体のある幻影を作り出して戦わせる事が出来た。 それによって物量差を覆そうとしていたのだった。 「実はね、僕は士を探すついでに三国志の世界へ行っていたのさ。」 「三国志の世界?」 「残念ながらお宝らしいお宝は手に入らなかったけど、その代わりに三国志武将をライドする事が出来る様になったんだ。」 「わぁ! 何か戦力として頼りになりそうな予感!」 ディケイドがプリキュアの世界へ行ってプリキュアをライド出来る様になったのと同じ様に、ディエンドもまた三国志の世界へ行き 名だたる三国志武将をライドして呼び出す事が出来る様になったと言う。それにはなのはとユーノの二人も思わず期待せざる得ない。 『三国ライド! 五虎大将!』 「おお! いきなり五虎大将か!」 五虎大将とは、三国志の魏・呉・蜀の三国の内の蜀における関羽・張飛・趙雲・黄忠・馬超の五人の武将を指す。 いずれも今日においても語り継がれる程の有名武将である。あくまでもディエンドがライドして呼び出した 実体のある幻影であるとは言え、今と言う状況下においては頼りになる存在と思えたが……… 「よりによって恋姫無双版かよ!!」 何と言う事であろうか。ディエンドがライドして呼び出した五虎大将とは、恋姫無双版だったのである。 「海東! お前が行った三国志の世界って恋姫無双の世界の事かよ!」 「うん。それがどうかしたのかい?」 「てっきり横山三国志とか三国無双とか最強武将伝あたりから連れて来ると思ってたからな…。」 恋姫無双の世界は三国志の世界と似て非なる世界。何しろ三国志の名だたる武将達が女性化してる世界だからね。 美髭公と呼ばれる位に立派な髭を蓄えていた事で有名な関羽も、恋姫無双の世界では美しく長い黒髪を持った女性になってる位だ。 「あの…僕達はあれが何なのかちょっと良く分からないんですけど…本当に大丈夫なんですか?」 「安心しろ。俺も良く分からん。」 五虎大将と言うからには絶対に頼りがいのありそうな強そうな男達が現れると期待していた事もあり、 恋姫無双版の五虎大将を見て、それについて良く知らないユーノとなのはは凄い不安げな顔になっていた。勿論BLACKも。 「けどあいつ等強いぞ!」 「本当だ! ってか強っ!」 「何で!?」 皆の不安とは対照的に彼女達は強かった。黄忠のさながらマシンガンの様に高速連射される矢によって 百合ショッカーライダーは次々に射貫かれ、関羽・張飛・趙雲・馬超の四人もまた女性の細腕からは想像も出来ない力で 手に持つ大きな得物をブンブンと振り回して百合ショッカーライダーを次々に薙ぎ倒していく。 彼女達はあくまでもただの人間のはずなのにどうしてあそこまで強いのか意味が分からない程であった。 「もう全部あいつ等五人だけで良いんじゃないかな。」 「いやいや、実はもう一人必要なんだよ。」 「え?」 ディエンドはもう一人必要だと言うが、一体誰を呼び出すと言うのだろう。 『三国ライド! 孔明!』 「はわわ~、ご主人様、敵が来ちゃいました~。」 「で?」 ディエンドが三国ライドで呼び出した諸葛亮孔明…勿論恋姫無双版である事は言うまでも無い事だが 先の五人と違ってあたふたするばかりでとても戦力になるとは思えない。一体何の意味があるのだろうか? 「何か意味あんの?」 「当然あるさ。筆者が喜ぶ。」 何を隠そう筆者は朱里ちゃん好きだからこれだけは絶対にやっておきたいのであった。 とまあこんな感じで百合ショッカーライダー部隊は五虎大将に任せとけば間も無く全滅する…と思われたが… 「ええい不甲斐無い奴等め! こうなったら私が直々に相手をしてやる。」 ここでガチ百合大使が前に出て来た。無論五虎大将は一気にガチ百合大使へ向けて駆け寄せるが… 「百合ショッカー百合幹部ガチ百合大使。してその実態は…ユリユリユリユリ…ユリユリンダァ!!」 「ああ! あの人怪人に変身したよ!」 地獄大使が怪人ガラガランダに変身する事は知られている。そしてガチ百合大使もまた、ユリユリンダなる怪人へ変身し、 しかもそのまま右手のムチで五人まとめて払い倒し、一気に消滅させてしまった。あくまでもディエンドのライドによって 呼び出された複製の悲しさ。この通りある程度のダメージを受けると消滅する仕組みになっていたのだった。 「あぁ! 強い!」 「邪魔者は消えた! 一気に畳み掛けろぉ!」 「ユリー!」 ユリユリンダの号令により、百合ショッカーライダーが再び勢いを取り戻し突撃を開始した。 「くそ! こうなったら今度こそ本当にやるしか無いぞ!」 迫り来る百合ショッカーライダー部隊に対し皆は戦闘態勢を取り、再び戦いが始まった。 ディケイドはライドブッカーソードモードで百合ショッカーライダーを斬り倒し、BLACKはバトルホッパーで轢き飛ばし、 ユーノがチェーンバインドで縛り上げた隙になのはがディバインバスターで吹き飛ばすし、クウガはライダーキックから放たれる 爆発で吹き飛ばし、ディエンドはディエンドライバーから放たれるディメンションシュートを撃ち込み、キバーラは 光夏海本人が持つ人を笑わせるツボを突く事が出来る能力を利用して百合ショッカーライダーを笑わせる等、 各々の持てる能力を駆使して百合ショッカーライダー部隊と戦っていたが、やはり百合ショッカーライダーは 百合厨の中の百合厨が基になっているだけあってそれでもまだ足りない強さと勢いを持っていた。 「これはさらなる戦力の増強が必要だね。」 「また誰かを呼び出すのかい?」 ディエンドはカードを取り出し、ディエンドライバーに差し込む。またカメンライドかはたまた三国ライドで 誰かを呼び出して戦うのかと思われていたのだったが…… 『カメンライド! ダブルドライバー!』 「え!?」 ここで予想だにしない事が起こった。フェレット形態であったユーノが突如として人間の姿に戻り、 さらに彼の腰には『仮面ライダーW』の世界における仮面ライダーが巻くベルト・ダブルドライバーが巻かれていたのである。 「あの…これは一体どういう事なのかい?」 「ちょっと待って。これはもう一人いないとダメな事なんだ。」 ユーノはさっぱり意味が分からず問い掛けていたが、ディエンドはキョロキョロを辺りを見渡していた。 だが、そんな時に… 「僕はダメかな?」 「クロノ!」 「リンディさんまで。」 ここでクロノとリンディの二人が何処からか姿を現していた。 「でもどうして?」 「百合ショッカーに囚われていた所を私が救い出したんです。」 どうやらクロノも百合ショッカーに囚われていたらしく、そこを既に百合ショッカーの呪縛から解き放たれていた リンディが救い出した様子であった。 「今更出て来てこんな事を言うのも何だけど…僕にも協力させてくれ。フェレットもどきばかりに良い格好はさせられないからな。」 「よし。君なら丁度良い。ならば行くよ。」 『カメンライド! ダブルドライバー!』 クロノの腰にもダブルドライバーが巻かれ、さらにユーノの右手には緑色の、クロノの左手には黒のUSBメモリ状の物体… ガイアメモリが握られていた。 「さあ、それをダブルドライバーに差すんだ。」 「行くよ…。」 「ああ…。」 ユーノ・クロノはそれぞれの手に握るガイアメモリをダブルドライバーへと差し込んだ。 「今この瞬間だけは僕達は二人で一人の仮面ライダーだ!」 『サイクロン!』 『ジョーカー!』 次の瞬間、ユーノの姿が左半身が黒の、右半身が緑の姿へ変貌して行く。それこそ『Wの世界』におけるライダー、 仮面ライダーW・サイクロンジョーカーである。 そして、ユーノがサイクロンジョーカーへ変身するのに伴い、クロノの精神はサイクロンジョーカーの内の ジョーカーの部分へ移る形となり、魂を抜かれた様にグッタリと倒れそうになっていたクロノをリンディが受け抱き上げていた。 「ユーノ君が緑と黒のライダーになっちゃった!」 ユーノの変貌になのはは驚くばかりだったが、サイクロンジョーカーとなったユーノとクロノは 自分がライダーに変身した事によってテンションが上がったのか、百合ショッカーライダー部隊を指差しポーズを決めていた。 「さあ! お前達がヲカズにした百合カップルを数えろ!」 ユーノとクロノの声が思い切りハモり、普段はいがみ合っていても何だかんだで仲良い事を暗示させていた。 「あの…私はその仮面ライダーWと言うのが良く分からないんだけど、とりあえずクロノ君の方もそっちに入ってるって事で良いのかな?」 「うん。そう考えてもらって結構。」 ユーノがただライダーに変身するだけならまだしも、クロノの精神まで入り込むのはどういう理屈なのだろうと なのはは不思議に思っていたのだが、とりあえずはそういう物だと理解するしか無かった。 「淫獣がライダーになったぞー!」 「うろたえるな! ただのコケ脅しだ!」 「何か変な事をされる前に出鼻を挫いてしまえ!」 百合ショッカーライダー部隊の何人かがユノクロWへ向けて突撃を開始した。しかし、ライダーに変身した事でテンションを上げた ユーノ・クロノはそれに戸惑いを感じていなかった。 「今の僕達は一味も二味も違うよ!」 ユノクロWが右手を前に突き出す。するとどうだろうか。直後にその右手から猛烈な強風が吹き荒れ、それには思わず 百合ショッカーライダー数名も進撃速度を鈍らせてしまう。これがサイクロンジョーカーの中のサイクロンの持つ能力。 サイクロンであるが故に風を操る事が出来るのである。 「ただの風だ! 怯まず進め!」 「たかが風…されど風と言う事だよ。はっ!」 ユノクロWの右半身であるサイクロンの力によって起こした強風で百合ショッカーライダーの進撃速度が鈍った隙を突き、 さらに風の力を利用して勢いを増したユノクロWの左拳が百合ショッカーライダーを殴り飛ばしていた。 これがサイクロンジョーカーの内のジョーカーの持つ能力。特にそれと言った特殊能力は無いが、純粋に身体能力を高める 能力を持ち、そのシンプルさがかえって使い勝手の良さに繋がっていた。 「うわ! 凄ーい! ユーノ君もう別人みたい!」 クロノも半分混じってるけど、ユーノの別人みたいな活躍になのはもビックリだった。だが、少し残念な気持ちもあった。 「けど…個人的には士さんの力で大きなフェレットさんになる方が私個人としては嬉しかったかな…。」 なのは個人としてはライダーとして活躍するユーノよりも、ディケイドのファイナルフォームライドで巨大フェレットの 姿になって活躍するユーノの方が好きだった。しかし今と言う状況では個人的な好き嫌いを言っている場合では無かった。 「まあ良いや。どうせなら私も何かライダーになりたいな~。何か良いの無いの?」 「いや、君はそのままでも十分強いから必要無いでしょ?」 「ショボーン」 ユノクロWに影響されて自分もライダーになって見たいと思い始めたなのはであったが、即効でディエンドに 拒否されてガックリと肩を落としていた。 「とりあえず今は奴等を倒すのが先決だ。」 「敵の数はまだまだ多いからな。」 その通り。今目の前にはまだまだ沢山の百合ショッカーライダーの大軍とガチ百合大使ことユリユリンダがいる。 これを倒して先に進まねばならぬ…と思われていたが…その直後だった。 「とぉ! ライダー! トリプル! キィィィィック!!」 「何!?」 なのは達の背後から何者かが三人、高々とジャンプして跳び超えると共にキックで百合ショッカーライダー達を 蹴り飛ばしていた。一体誰なのか? 「ここは俺達に任せてお前達は先へ進むんだ!」 「1号! 2号! V3!」 ここでさらに現れたのは仮面ライダー1号・2号・V3だった。秋葉原の世界で、後々合流すると言っていた彼等だが、 本当にその通りにやって来ていたのである。そして三人は百合ショッカーライダーを次々に殴り倒し蹴り倒し、 投げ飛ばしながらディケイド達に先へ進む様叫んでいたのだった。 「ここはあいつ等に任せて俺達は先に進むんだ。」 「で…でも士さん…大丈夫なんですか?」 「アイツ等だって仮面ライダーだ。心配はいらない。」 「本当に倒すべき敵はこの先にいるんだしね。」 なのははたった三人に百合ショッカーライダー部隊の相手を任せる事に不安を感じていたが、 敵は目の前の百合ショッカーライダー部隊だけでは無いのである。故にここは三人に任せて先へ進むしか無かった。 「おっと夏みかん。お前はあの二人と一緒に何処か安全な所へ行くんだ。」 「え?」 ディケイドはキバーラの肩に手を置きつつ、ユノクロWに精神が移った事によって魂が抜けた様にグッタリしていた クロノを抱き支えていたリンディを指差していた。 「士君。私は戦力として当てにならないと言うんですか?」 「違う! あの二人を守ってやれと言うんだ。特にあっちの黒い服の男の方は精神がWの方に移ってるから その状態でやられたら大変な事になる。それにあっちのオバサ―――」 少々お待ちください 「あ…あっちの綺麗で美人のお姉さん一人にあの男担がせるのも大変だろう。これも重要な事だ。」 「分かりました士君。そういう事ならば私はこの二人を守ります。」 「ありがとう助かります。」 先程途中で台詞が途切れた様な気がしたが、とりあえずここでキバーラはクロノ・リンディを守ると言う名目で 二人と共に世界と世界を繋ぐ次元のオーロラを通って安全圏へと脱出した。 「よし。とにかく1号・2号・V3が奴等を引き付けている内に俺達も行くぞ。」 今も1号・2号・V3の三人が百合ショッカーライダーの軍団と激しい激闘を繰り広げている。 故に今の内に皆は先へ進むのだった。