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スコア シンデレラ・リーグ公式戦 東京-名古屋1回戦 明治神宮野球場(東京1敗) 名古屋 013 010 001-6 東 京 000 000 120-3 (名)○さなえ、黛、Sレイカ-坂東 (東)●竹中、海堂-草薙 戦評 ついに迎えた2022年シーズン。その大事な開幕戦、前年度シ・リーグ覇者の東京は二年連続の優勝を目指し、オープン戦で完封勝利を挙げた竹中を先発マウンドに。一方、二年連続の3位に終わった名古屋は巻き返しの大事な一歩を先発転向したさなえに開幕投手を託した。 試合はビジターの名古屋が主導権を握る。2回、イビルアイが竹中のやや甘めのツーシームにバットを合わせると、ライトへの大飛球は失速することなくスタンドイン。ソロホームランで景気良く先制すると、続く3回はワンアウトで一・二塁のチャンスを迎える。ここで4番に抜擢された花音がライト線を破るタイムリーツーベースヒットを放ち追加点を挙げると、さらに先制ホームランのイビルアイがきっちり犠牲フライ、さらに横山が難しいコースの変化球を上手く合わせてタイムリーヒットとし、この回さらに3点を加える。 一方の東京は、さなえの前に苦しい試合展開。三塁まで進むことが出来ずに打ち崩せない中、5回に花音の末イーベースヒットでピンチを招くと、今日好調のイビルアイにセンター前にタイムリーヒットを浴び、追い打ちの一打を食らってしまう。 そんな名古屋ペースで迎えた7回、東京はクリーンアップの力でノーアウト満塁の大チャンスを迎える。続く宮川はカーブを引っ掛けて内野ゴロとなるが、この間に三塁ランナーが生還し、ようやく1点を返すことに成功する。しかし後続が続かずに追加点は挙げることが出来ず畳みかけることが出来ない。 しかしめげずに8回、三振ゲッツーなどの不運もあったがツーアウト二塁のチャンスに西崎がセンターオーバーのタイムリーツーベースヒット、その西崎を続く丸山がライトへのヒットで還し、二点差へ追い上げて逆転に向けての意気を高めていく。 しかし9回、追い上げる東京に対して名古屋はデッドボールで出塁したわかちゃんが盗塁、続いて加賀が送りバントを決めて三塁まで進めると、続く小喬がしっかり犠牲フライを決めてトドメ。最後はレイカが三人でピシャリと抑えて試合終了。開幕戦はさなえが7回1失点、クリーンアップがイビルアイの3打点を筆頭に全員打点を挙げるなど、投打が噛み合った名古屋に軍配が上がった。 責任投手・本塁打 [勝] さなえ 1勝 [S] レイカ 1S [敗] 竹 中 1敗 [本] イビルアイ 1号 試合詳細 + ... 打撃成績 + ... 守備成績 + ... 投手成績 + ...
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・駄文長文注意。 ・愛で&希少種優遇&独自設定だらけ。 ・希少種は胴付きでかつ能力がチートです。厨二です。そしてガチのHENTAIです。 ・それでも構わないという方はゆっくりどうぞ。 ・重要:おまんじゅうあきさん、HENTAIあきさんリスペクト。でもごめんなさい。 *** 「ん~、ゆっくり狩りなんて久しぶりねー!」 夏の日差しの中、ゆかりん姉ちゃんが大きく伸びをした。 いつもの紫のドレスに白の長手袋。 そして今日は白い日傘をさしている。 「ねえ、ゆかりん姉ちゃん。それどう見ても山に入る格好じゃないよね?」 「いいのよ。私は弟ちゃんに付いてスキマ移動するだけだから」 「南無三っ! 最初から楽する気満々なのは良くないと思いますよっ!?」 「こぼね~。ひじり様、気にしてもしょうがないですよ~。それがゆかり様ですから~」 「……ゆゆ、さりげなく酷いこと言ってない?」 「ゆかりん姉ちゃんこそ、少しは自分の所行を顧みようよ」 その横にいるのはひじり姉とゆゆ先生。 ふたりとも格好はいつも通りだが、流石に足にはトレッキングブーツを履いているし、頭にお飾りのないひじり姉は麦藁帽子をかぶっている。 「なによぉ~? そんなこと言うなら、弟ちゃんのゆっくり袋運んであげないんだからね?」 「スキマって便利だよねっ、ゆかりん姉ちゃん最高!」 「弟さん……」 「弟様ぁ……」 「だってゆっくり袋運ぶのマジで大変なんだよ!?」 ゆっくりが詰まっているだけあって、ひと袋50キロ前後あるし! 生け捕りだから中で動いて運びにくいし! 「それも修行です……と言いたいところですが、少しくらい私が運んであげますよっ!」 「私がゆっくり使って運んであげてもいいのよ~?」 「やめてよふたりとも! そんなことされたら、私が弟ちゃんの側でべたべた出来なくなっちゃうじゃない!」 「「べたべたさせない為に言ってるんです!!」」 「ゆがーん!?」 「いやゆかりん姉ちゃん、ばあちゃんの山なんだし、少しは自重しようよ……」 ショックを受けるゆかりん姉ちゃんに、俺はそっと突っ込んだ。 そもそも俺達が何故ばあちゃんの山にいるかと言うと、うちの村の名物のひとつ、夏巣立ちのゆっくりを捕まえる為だ。 この季節。春に生まれ、梅雨を乗り越えた赤ゆっくり達は、夏がもたらす豊富な餌によって亜成体にまで成長する。 そして、この地域では8月に入ると一斉に亜成体ゆっくりは巣立ちしていくのだ。 その主な理由は三つ。 夏であり、狩りの腕が未熟な亜成体でも十分な餌が取れること。 秋の越冬準備前に縄張りを決められ、その間に番を探せること。 そして、子ゆっくりの成長で巣の中が手狭になり、暑気に当てられたゆっくり達が余裕のある巣穴を希求しだすことが挙げられる。 その結果、この時期の山は、巣立ちしたばかりの亜成体ゆっくりがあちこちで跳ね回ることになるのだった。 赤ゆっくりよりは引き締まり、しかし生体ゆっくり程には固くない独特な食感の皮。 豊富な栄養によって太り、かつ程よく苦労を味わって深みを増した餡。 その味はさる著名な食通をも唸らせた程であり、それゆえにこの村の夏巣立ちゆっくりは貴重な天然食材として珍重されている。 特に、ばあちゃんの山のゆっくりは限りなく自然のままに飼育されていることもあって、質が高いと評判だった。 まあ、ぶっちゃけた話。 狩りを手伝うと結構いい小遣い稼ぎになるのだ、これが。 「なによなによっ!? そんなに私だけべたべたするのが駄目なら、ゆゆとひじりも一緒にべたべたすればいいじゃない!」 「「それでいいなら喜んで!」」 「2秒で懐柔されちゃ駄目でしょおおおおおおぉ!?」 さくっと意気投合しかけた三人に、今度は全力で突っ込む。 なんだその『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない』理論はっ!? 「そもそも今日は村の人と班分けするから一緒に回れるかも判らないんだよ!? つか俺なら絶対別々にするから、自重しようよ三人とも!」 「え~?」 「こぼね~?」 「南無三~?」 「揃ってぼやかない! あとひじり姉は南無三の使い方おかしいから!」 スキマを使って捕まえたゆっくりを運べるゆかりん姉ちゃん。 中枢餡を破壊したゆっくりを使役できるゆゆ先生。 そもそも体力が羆並みなひじり姉。 山でのゆっくり狩りで一番重労働な、ゆっくりを詰めた袋を運ぶことに長けている三人をひとつところに固める理由はない。 村のみんなに声をかけて応援を頼んでいるのだから、輸送力も含めて能力が均等になるよう班分けするのは当然だ。 そして経験上、ゆかりん姉ちゃんは俺と同じ班に回される。 別の班にしても、どうせスキマ移動で俺にちょっかいかけに来るのが判っているから。 だからここは、ひじり姉とゆゆ先生には涙を呑んでもらうしかないのだ。 決して俺が楽をしたいからではない。班決めは俺ノータッチだし。 「なにを騒いでいるのよ……」 「はははっ! 相変わらず弟殿のところは賑やかだな!」 「あ、えーりん姉さんにかなこさん。班分けは決まった?」 そう。班決めでゆっくりを振り分けているのは、本部詰めのえーりん姉さんと、ばあちゃん監督のもと全体の指揮を執るかなこさんなのだ。 決して俺を贔屓したりはしないふたりだが、ゆかりん姉ちゃんの性格と行動を考えれば俺と同じ班にするしかないのである。 まあ……その結果、大抵俺とゆかりん姉ちゃんの班は他の面子が戦力外になるんだけども。 「ええ、決まったわよ。ゆゆことひじりは弟君とは別の班ね」 「南無三っ? えーりん姉さん、今年も別なんですかっ?」 「こぼね~。残念です~」 「ゆゆこは仕方ないでしょ。今年も学校の児童達が来てるんだから。叔母様ひとりに引率させるつもり?」 「こぼね~」 赤と青、いつものナース服っぽい衣装の上から白衣を羽織り、何故か眼鏡をかけたえーりん姉さんがゆゆ先生を諭す。 ま、夏休みの自由研究で、村の名産品である夏巣立ちのゆっくり狩りに参加する子供は毎年いるからな。 ゆゆ先生も叔母さんの飼いゆっくりである以上、叔母さんと同じ班……つまりは児童の引率役として割り振られるのは仕方がない。 「ひじりは母さんと同じ班に入って」 「南無……はい、判りました」 もちろん孫の俺が駆り出されているのだから、娘である母さんも当然駆り出されている。 一緒に野良仕事をしているひじり姉はそこに入ることが多い。 「ということは……今年も私は弟ちゃんと一緒ねっ?」 日傘をくるくる回し、ゆかりん姉ちゃんが笑みを浮かべる。 「……そういう事になるわね。いい? 弟君の邪魔しないで、ちゃんと働くのよ?」 「判ってるわよ姉さん、今年も私と弟ちゃんが一番になってみせるわ」 「ははっ、さすがは三年連続の捕獲量トップ班だな! 今年も期待しているぞ?」 「ゆっかり任せなさい!」 「かなこ、この子をあまり煽らないで……すぐ調子に乗るんだから」 「なに、ゆかりは少し調子に乗って生意気なくらいがいいのさ。その方が私も張り合いがでる」 「指揮する人間が張り合ってどうするのよ……」 ゆかりん姉ちゃんとかなこさんの会話に、えーりん姉さんがそっとこめかみを押さえる。 長女は大変だね、姉さん。 末っ子の俺が言うのもなんだけど。 ちなみに、元が保護ゆっくりだった姉さん達の年齢は厳密には不明だ。 なにしろ生年がいつかも正確には判らないのだから。 ただ……母さんやばあちゃんに拾われた時はみんな子ゆっくりだったので、登録票には拾われた歳が生年として記されている。 その順番で言うと、えーりん姉さんが長女、かなこさんとゆかりん姉ちゃんが同い年で二女と三女、ひじり姉が四女でゆゆ先生が五女になる。 だから、ゆゆ先生とかなこさんは母さんが保護して躾けたあとに叔母さんやばあちゃんに譲られたけど、姉ちゃん達の感覚では自分達は五姉妹なのだそうだ。 えーりん姉さんが何かとかなこさんやゆゆ先生を気にかけるのも、多分その辺があるからなのだろう。 それで苦労してる辺りも、えーりん姉さんらしいと思う。 「それで姉さん、俺達の班にはあと誰が入るの?」 「かなこの処のさなえとすわこよ」 「……人間は俺だけか」 「人手不足だからな!」 「そうだね、人手不足じゃ仕方ないよねー」 でもかなこさん、それ自慢げに言う事じゃないからね? 確かにうちの村は加工場関係者抜くと人口も平均年齢もちょっと笑っちゃうことになるけどさ。 「それじゃみんな、あと30分で出発だから所定の場所に移動しなさい……気をつけるのよ?」 「はい、えーりん姉さん」 「こぼね~。弟様、またね~」 「ゆっかり頑張るのよ~」 えーりん姉さんに促され、所定の位置へと移動するひじり姉達。 それを見送っていると、本部のある方からぽいんぽいんと二匹のゆっくりが跳ねてきた。 緑の髪にカエルとヘビのお飾りを付けたゆっくりさなえと、金髪に目玉の付いた黄色い帽子をかぶったゆっくりすわこだ。 「ゆゆっ……かなこさま、ゆっくりしていってくださいね!」 「あーうー!」 「おお、来たか。弟殿、こいつらが今日一緒に山に入るさなえとすわこだ。宜しくしてやってくれ」 「ん、了解。すわこもさなえも頑張ろうな」 「はい! さなえ、ゆっくりがんばります!」 「あーうー! すわこがんばるー!」 ぽいんぽいんとその場で跳ねながら、すわことさなえが元気に答える。 そのお飾りには、狩猟用ゆっくりであることを示す『猟』と刻印された銀色のバッジが輝いていた。 まあ、狩猟用と言っても能力的にほぼ対ゆっくり限定だから、ゆっくりの多く棲むこの山くらいでしか使えないんだけどね。 *** 「ゆっゆっゆっ……!」 山の中、ゆっくりが踏み固めた道をゆっくりまりさが跳ねていく。 「ゆっくりにげるよ! にんげんさんにはつかまらないよ!」 「はいはいゆっくりゆっくり」 それを歩いて追いかけながら、俺はまりさを観察していた。 バレーボールより一回りほど小さいサイズ。金髪にくすみはなく、まりさ種独特の帽子は黒々としていてリボンも綺麗な白。 うん、この夏巣立ちした亜成体で間違いない。 それもかなり状態の良い個体だ。 「まあ俺に捕まらなくてもいいんだけどなー……さなえ、すわこ、行けっ!」 「あーうー! いっくよー、さなえー!」 「はい、すわこさま!」 俺の号令に応え、すわこが跳ねる速度を上げてまりさを追いかけていく。 それを確かめ、さなえは跳ねながら大きく空気を吸い込んだ。 「まりささん! ゆっくりしていってね!」 「ゆゆっ!? ゆっくりしていってね!?」 「ゆっくりしていってね!?」 さなえの挨拶に立ち止まり、ぽいんと跳ね上がってまりさが挨拶を返す。 その隙にすわこはまりさに近づき、着地するまりさにタイミングを合わせてのしかかった。 「あーうー!」 「ゆびいいぃっ!? ちゅ、ちゅぶれるううううぅ!」 上から押さえつけられ、まりさが苦しげに呻く。 そこに追いつくと、俺はまりさを掴みあげ、背負ってきた袋に放り込んだ。 「おそらをとんでるみたいっ!? ゆゆっ? ここはなんだかゆっくりできるよ? ゆ……ゆゆうぅ……」 加工場特製のゆっくり袋は、中に放り込まれたゆっくりを暗さと狭さと袋に染みつかせた匂いで強制的にゆっくりさせる。 まりさが大人しくなったのを確かめ、俺は袋を背負い直した。 「よくやったぞ、さなえにすわこ。ほら、ご褒美だ」 「ありがとうございます、おにいさん!」 「あーうー! おにいさんありがとー!」 ポケットの小袋から特製かりんとうをふたつ取りだして二匹に与える。 「あまあまー! しあわせですー!」 「あーうー! あまあまー!」 「そっか。そこで大人しくしてろよ?」 このかりんとうは甘さ控えめで、ゆっくりにも食べやすい硬さに焼いてあるので、ゆっくりへのご褒美に丁度いい。 しあわせー、な表情でかりんとうをむーしゃむーしゃするさなえとすわこをその場に残し、俺は獣道を離れる。 草を掻き分けて少し進むと、半坪ほどの窪地に一匹のゆっくりまりさがいるのが見えた。 のーびのーびして、獣道の様子をしきりに伺っている。 さっきの挨拶で余分な声が聞こえたと思ったが、やっぱりか。 「……ゆゆ!? にんげんさんなのぜ!?」 「はいはいゆっくりゆっくり。まりさは巣立ちしたばかりのゆっくり?」 見た感じバスケットボールサイズの成体だし、金髪も帽子もちょっと汚れているからまず違うとは思うが、一応聞いてみる。 「ゆっ? ちがうのぜ! まりさはこのまえおちびちゃんをすだちさせたのぜ! いまはあきさんのしゅっさんっ! にむけてかりをしてるのぜ!」 聞かれたこと以上の事を勝手に喋ってくれるまりさ。 「そーなのかー」 「そうなのぜ! このあたりにさいきんゲスがすみついたってうわさをきいてたから、けいかいしていただけなのぜ!」 こういうところで余計なことを口走って潰されるのがゆっくりなんだが、このまりさはそこまで餡子脳ではないらしい。 むしろ、ゆっくりにとっては重要な、今の俺にしてもそれなりに有用な情報を喋ってくれた。 「情報ありがとう。それじゃ、ゆっくり狩りをしていってね!」 「ゆゆ? ゆん、ゆっくりしていってね!」 俺の挨拶に行っても安全だと判断したのか、まりさはぴょんぴょんと跳ねていった。 うーん。やっぱ、ばあちゃんの山のゆっくりは出来ているなあ。流石かなこさんが容赦なく躾けているだけはある。 「にんげんはまりさをゆっくりさせるんだぜ!」 とか、 「れいむにあまあまちょうだいね! たくさんでいいよ!」 とかのビキィワードは口にせず、人間を見下げたりしないが、かといって人間を必要以上に怖れもしない。 人間は自分達を食べるし、ゆっくりさせてくれない怖い存在。 でも、里に下りて畑を襲ったり、おうち宣言をしたり、『とおせんぼ』しない限りはそうそう制裁されることはない事も知っているのだ。 なので俺も、ああいうゆっくりは何もせず見逃すことにしている。 捕まえたところで選別する時にはねられるから、荷物になるだけだし。 「しかし、ゲスねぇ……」 多分、山の外から流れてきたんだろうけど……タイミングの悪い奴だ。 今回の狩りは夏巣立ちのゆっくりだけを捕まえて、他のゆっくりは見逃すのが基本方針。 だけど、ゲスとれいぱーは除外されてるんだよなー。 街ならともかく、かなこさんが管理して常にある程度の淘汰圧をゆっくりに与えている(今回の狩りもその一環だ)この山に、ゲスやれいぱーは邪魔なだけ。 だから今回も、ゲスやれいぱーは見つけしだい駆除していいことになっている。 もちろん虐待だってOKだ。 ばあちゃんの山のゆっくりを虐待できる機会なんてそうそうないので、中には夏巣立ちのゆっくりよりもゲス虐待目当てな鬼威惨もいる。 俺はそこまでする気ないけど。 ゲスに出遭ったら制裁はするにしても、自分から探そうとは思わない。 それよりも夏巣立ちのゆっくりを探した方がいいからな……主に、俺の懐的に。 夏は何かと入り用だし。 「惜しいわね~。ゲス言動したら、私がスキマ落下の刑にしてあげたのに」 不意に。 背中に柔らかな感触が押しつけられ、耳元で声がした。 「ゆかりん姉ちゃん、地味に怖いこと言わない。あと肩に顎乗せないで」 「ん~? いいじゃない、姉弟なんだし」 「いやそれ姉弟関係ないでしょ。だいたいそれ、くすぐったいんだからさ……」 「んふふ」 俺の抗議を軽やかにスルーして、スキマから身を乗り出したゆかりん姉ちゃんが、俺の肩に首を乗せたまま頬をすり寄せてくる。 といっても、かなこさんみたいに積極的なすりすりじゃなく、そっと押しつけてくる感じだ。 「ん~、弟ちゃん、すべすべ~。でもやっぱり男の子よね、逞しくなってぇ……」 「だからくすぐったいってば……ほら、抱きつかないのっ」 「弟ちゃんったらつれないわね~? せっかくふたりっきりなんだから、もうちょっと甘えてくれてもいいのよ?」 「甘えてたら夏巣立ちのゆっくりを捕まえられないでしょ。今年も捕獲量一番になるんじゃなかったの?」 「大丈夫よ~、もう二十匹、二袋も送っているんだから。少しくらいゆっくりしても他の班は追いつけないわ」 ……その油断は敗北フラグだと思うけどなー。 とはいえ、山に入って3時間ちょっとで22匹はかなりのハイペースなのも確かだ。 巣立ちゆっくりは当然だが大抵単独行動しているから、家族狩りみたいに芋づる式に獲れる訳じゃない。 それを考えると、少しくらいは休憩してもいいか。 「じゃあ、少し早いけどここでお昼にする?」 「ええ、そうしましょ。すわこ、さなえー、こっちいらっしゃーい」 「あーうー」 「はい、ゆかりさま」 草を踏み分け、さなえとすわこが跳ねてくる。 その二匹を迎え、俺は草の上に座り込んだ。 「姉ちゃん、弁当~」 「はいはい」 スキマを開き、ゆかりん姉ちゃんが手を突っ込む。 しばらくして引き抜かれた手には、風呂敷に包まれたお重と水筒が抱えられていた。 「今日のおかずは鶏の唐揚げに卵焼きよ」 「あーうー! すわこたまごやきすきー」 「おむすびはみんなで作ったの。具は食べてみてのお楽しみっ」 「またびっくりおむすびかっ!?」 「この間みたいに実ゆは入ってないから安心しなさい」 「それなら……」 「入っているのは赤れみりゃだから」 「おむすびの具としてはマシだけどそれもどうよ!?」 「……さなえはごはんさんだけでいいですよ?」 お重を開き、わいわい言いつつ弁当を使う。 「あら弟ちゃん、両手が唐揚げとおむすびで塞がってるじゃない……はい卵焼き、あーんっ」 「別に自分で食えるんだけどなあ……あーん」 ゆかりん姉ちゃんが、卵焼きを箸で摘んで差し出す。 それを一口で食べると、卵の旨みと砂糖の甘さがじんわりと口内に広がった。 「ね、美味しい?」 「うん、旨いよ……この味付けはゆかりん姉ちゃん?」 「正解! さすが弟ちゃんね、ご褒美あげる……んっ」 突っ込む間もなく、頬に柔らかな感触が触れる。 小さく差し出された舌が、ちろりと頬を舐めあげていった。 「ぶうっ!? ねっ姉ちゃんっ、こういうところではソレ止めようよっ!?」 「いいじゃないの~、お姉ちゃんの愛の証よっ」 「……」 「あーうー! たまごやき、すわこもー!」 「くす……はい、すわこもあーん」 「あーん! むーしゃ、むーしゃ……しあわせー!」 すわこに卵焼きを食べさせ、姉ちゃんが微笑む。 流石にかなこさんが躾けたゆっくりは、胴なしでも虐める対象にはならないらしい。 まあ、姉ちゃんもゲス制裁派であって虐待派じゃないからな。 「……じー」 ふと気付くと、さなえがこちらを見上げていた。 「さなえは何が食べたい?」 「えっ? あ、さなえは……その、からあげさんがたべてみたいです……」 「ん、それじゃ俺のを半分やるよ。ほら、口開けろ」 「ありがとうございます、おにいさん……あーん」 手に持っていた唐揚げを半分に千切り、口の中に放り込む。 「むーしゃ、むーしゃ……おいしいですー! かなこさまがくださるやきとりさんみたいですね!」 「そりゃ同じ鶏肉だからな……ほら、皮も旨いぞ~」 「ありがとうございます! あーん」 ぱあぁっと顔を輝かせるさなえに俺もゆっくりしながら、残りの唐揚げを食べさせてやる。 「むーしゃ、むーしゃ……しあわせですー! かなこさまがおっしゃるとおり、おにいさんはとてもやさしいにんげんさんなのですね!」 「そうかぁ? 唐揚げひとつでそこまで言うのは正直どうかと思うぞ?」 「そうですか? でもかなこさまはいつも、おにいさんのことをほめていますよ?」 「……そうなの?」 「はいっ」 「うあー……」 姉が自分の知らないところで自分を褒めていた。 それを他人(ゆっくりだけど)から聞かされるのってなんでこう気恥ずかしいんだろう。 「……あいつ、自分のゆっくりに変なこと吹き込んでないでしょうね……」 「へんなことってなんですか?」 「弟ちゃんは自分の婿だとか、そう言う類の事よ」 「いや流石にソレはないだろ……」 「はい! かなこさまは、おにいさんのおよめさんになるのだといつもいっています!」 「んぐうっ!?」 「だじょおぉっ!?」 あ。 喉に。 赤れみりゃが。 「~~っ!」 「あーうー!? お、おにーさーん!?」 「たいへんですゆかりさま! おにいさんが!」 「……ほほぉ。かなこの奴、そんなこと言ってたの……」 「いえ、ほほぉじゃなくてですね!」 「~~~~っっ!!」 「はいはい、お水ね弟ちゃん。麦茶でいい?」 「~~~~~~っっっ!!!」 コップに入った麦茶。 一気に。 流し込む。 「ちゅべたいんだぢょおおおおぉぉ!?」 「~~~~~~~~~~~っっっっ!!!!」 「ああっおにいさんがしちてんっばっとうです!!」 「あーうー!?」 やべえ。 赤れみりゃ。 活きよすぎ……。 「ああ、大丈夫よ。水は飲めたし、あとはこうして背中を叩けば……」 ぽんぽん、ぽんぽん。 「っっ!? っ!! っっっ!!!」 「そろーり、そろーり……」 「ほ、ほんとうにだいじょうぶなのですか?」 「そろーり、そろーり」 「あーうー!?」 「しょろーり、しょろーり……」 「大丈夫、大丈夫……だからすわこ、さなえ」 喉で、赤れみりゃが、じたじた。 「はい?」 「あーうー?」 「そこのゲス一家にお弁当取られないようにね」 「ゆっへっへ……このまりささまが、こっそりごはんさんをいただく……って、なんでばれてるのぜええぇ!?」 「気付かない方が餡子脳でしょ……ほら弟君、吐いちゃいなさい」 ぽんぽん、背中が、叩かれて。 優しく、背中を、撫でられて。 苦しいけど、気持ちいい。 「ゆへへ……ばれちゃしかたないのぜ! このごはんさんはまりささまがいただくのぜ!」 「れいむがむーしゃむーしゃしてあげるよ!」 「まりちゃがたべちぇあげりゅのじぇ!」 「ゆん! そんなことはさせません!」 「あーうー! すわこたちのごはんだよー!」 すわこと、さなえが、ゲスのまえ。 「うるさいのぜ! くそにんげんをたおしたまりささまにさからうのかぜ!?」 「ゆっふっふ、まりさはつよいんだよ! あのくそどれいをやっつけたんだよ!」 「おとーしゃんはちゅよいのじぇ!」 俺が、いつお前らに、倒された? ゲスは本当に、餡子脳だな……。 「それいじょうちかづくのなら、かりますよ!」 「たたっちゃうよー!」 「ゆへん! これをみても、そんなことがいえるのかぜ!?」 「っ!?」 ゲスが、口からナイフを、取りだした。 「ゆっ!? そんなもの……さなえはこわくありません!」 「すわこもだよー!」 「ゆっへっへ……ばかなかいゆっくりなのぜ。このないふさんのさびになるのぜ!」 やばい。 すわことさなえに何かあったら。 かなこさんが、悲しむ……! 「ゆんっ! いくのぜええええぇ!!」 ゲスまりさが、ナイフを振るう。 かなことすわこが、身構える。 二匹を制そうと、口を開く。 ゆかりん姉ちゃんが、背中を叩く。 赤れみりゃが、喉で暴れて。 「~~~~っっ……げほっっ!!!!」 俺は思いきり咳き込んだ。 何かが飛び出していく感覚がして、喉が一気に楽になる。 「おじょらっ!?」 「ゆべえええぇっ!?」 一瞬後。 びしゃりという音がして、ゲスまりさの右目に小さな肉まんが激突した。 「ゆびぇえええええぇぇっ!? ま、まりざのおべべがあぁ~~っ!?」 「ううぅ~、いぢゃいんだじょ~!」 あ、赤れみりゃまだ生きてた。 さすが捕食種、凄い生命力だ。 多分、柔らかい目の部分にぶつかったからだろうけど。 「いだいじょ~……う? こりぇ……あまあまだじょ~!」 潰れた目玉の奥から餡子が滲んできたのか、赤れみりゃの声が嬉しげなものに変わる。 「あまあまちゅーちゅーしゅればいぢゃくなくなるんだじょ~! ぢゅ~っ!」 「ゆがあああああぁぁ!? なんでれみりゃがいるんだぜええええぇ!? ま、まりざのあんごずわないでねえええええぇぇ!?」 「う~! あまあま~!」 「いだいいだいいだいいいぃ! おべべにはいらないでえええぇ!!」 あー……思いがけず捕食種による残虐行為手当が。 ま、ゲスだからいいか。 「ゆぎゃああああぁっ!? れ、れみりゃはばりざだげだべでねええぇ!? がわいいでいぶをだべないでねええええぇ!?」 「おぎゃーじゃんなんじぇぞんにゃごぢょいうんだじぇえええぇ!? ぞんにゃごどをいうげしゅおやはぢねええええぇぇ!!」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおおおおぉぉ!? ぞんなごどいうゲスおぢびじゃんはいますぐじんでねええええぇぇ!!」 ゲスまりさを助けようともせず、親子で罵倒しあいながら逃げようとするゲスれいむとゲス子まりさ。 「げほっ、げほ……ゆかりん姉ちゃんっ!」 「はいはい。弟ちゃんを奴隷呼ばわりしたゲスは送っちゃうわよぉ?」 「ゆっぐりにげるよおおおぉ!!」 「にげるのじぇええええぇぇ!!」 知らなかったのか? 姉ちゃんからは逃げられない。 俺の背中を優しくなで続けながら、ゆかりん姉ちゃんはゲスれいむとゲス子まりさの足元にスキマを開いた。 「ぞろぉーりっ、ぞろぉーっ……おぞりゃっ!?」 「おじょらどんでりゅみじゃいっ!?」 開いたスキマに親子ゲスが吸い込まれる。 「はい、繋げちゃうわね」 そして、そのスキマの真上に開く新たなスキマ。 そこかられいむとまりさが落ちてきた。 「どんでるみだいいいいいいいいぃぃ……どぼぢでまだおぢてるのおおおおおぉ!?」 「ぎょわいのじぇえええええええぇぇ……ゆっ、にゃんで、にゃんでまちゃおちるのじぇえええぇぇ!?」 上と下に開いたスキマの間を落ち続けるゲス親子。 「これはおまけ」 更にゆかりん姉ちゃんは近くの木の枝を何本か手折り、スキマを落ちるゲス親子にぶつかるように投げ入れた。 一緒に落下しだした枝葉が、空中でもがくゲスれいむとゲス子まりさの身体を容赦なく叩く。 「ゆゆっ!? えださんやべでっ、やべでねえぇ! ぢくぢくじないで、えださんはれいむをだずげでねええぇ!!」 「まりじゃを! まりじゃをだじゅげるんだじぇえええええ!!」 更に枝に繁ったままの葉がぶつかり、ゲスれいむとゲス子まりさの身体に緑の葉肉を擦りつけていく。 「「ゆっ……ゆげええええええぇぇぇっ!?」」 ……それだけで、ゲス親子は苦しみだした。 「にがっ! にがあああぁっ!! なにごれえええぇぇ!! なんでえださんもはっぱさんもにがいのおおおぉ!? ゆげええ!!」 「にぎゃいのじぇ、くるちいのじぇえええええええ!! ゆげっ、ゆげっち! げりょ、たしゅ、だじゅげでえええぇ!!」 「姉ちゃん、あれって……」 「ええ、ニガキの枝よ」 ゆかりん姉ちゃんが楽しげに微笑む。 ニガキ。この辺だと普通に見る樹木だ。 木材としては軽く丈夫で加工しやすく、樹皮には殺菌作用があって漢方薬にもなるのだが……。 この木、とにかく苦い。 幹も枝も実も葉も、全ての部位に苦味成分があるのだ。 そんな物に、体表全てが感覚器官なゆっくりが触れ続けたらどうなるか。 「ゆぎゅっ、ゆぎょおおおおぉ! にがっ、にがいいいいいいぃ!! おじょらっ、おぢでええぇ……にぎゃいのおおぉ!!」 「おじょらどんでっ、にぎゃっ! にぎゃいのじぇええぇ!! ぼうやだぁ、まりじゃがえるっ、おうじがえるううううぅ!!」 ……控えめに言って、地獄の苦しみを味わう事になる。 文字通り全身で恐怖と苦痛を感じつつ、ニガキの枝と一緒にスキマを落ち続けるゲスれいむとゲス子まりさ。 「ゆっゆっゆっゆっ……も、もうゆるじでえええぇぇ! ぢんじゃう、ばりざじんじゃうのぜええええぇ……!!」 「うー、うー! あまあまいっぱいだじょー!」 潰れた目玉から赤れみりゃに侵入され、身体の中から餡子を吸われ続けているゲスまりさ。 「……うわぁー……」 「……あーうー……」 それを見て呆然としているさなえとすわこに、俺は声をかけた。 「おーい、戻ってこーい。さっさと飯済ませて狩りに戻るぞー? この辺はこいつらの声でゆっくりも逃げてるだろうし、足伸ばすからなー?」 「まだここでごはんたべるんですかっ!?」 「あーうー!? ゲスおいてどこかいこーよー?」 「当たり前でしょ?」 「何言ってるんだ?」 驚く二匹に、ふたり同時に口を開く。 「ぼうやべでええええぇぇ!!」 「おぢるううううううぅぅ!!」 「にぎゃいいいいいいいぃ!!」 「「たっぷり苦しませたあと、ちゃんと潰すまでがゲス制裁。ここを離れて万が一にもゲスを逃がす訳にはいかないの」」 ゲス達の悲鳴に、俺と姉ちゃんの声が重なった。 *** 「お帰り、弟殿! いやー、今年も見事なものだったな!」 夕方。 山を下りてきた俺達を、かなこさんが出迎えてくれた。 「ふふっ、今年も私達が捕獲量はダントツでしょ?」 「ああ。娘殿とひじりも随分と頑張っていたが、弟殿達には及ばずだ。大したものだな、ゆかり!」 「当然! これが愛の力って奴よ!」 俺の腕に抱きつき、ゆかりん姉ちゃんが得意げに微笑む。 ゆかりん姉ちゃんはゆっくり詰めた袋をスキマで送っただけで、それ以外の労働は俺とさなえとすわこでやったんだが……まあ、言うまい。 楽させてもらったのは確かだからな。 ゲスも潰したあとはスキマ送りで村の加工場に廃棄させてもらったし。 「そうか! 愛なら私も負ける気はないが、今回は素直に褒めてやろう! 弟殿の班のゆっくりは量も質も素晴らしかったからな!」 「あーうー! かなこー!」 「かなこさまー!」 嬉しげに笑うかなこさん。 その足元に、すわことさなえがぴょんぴょん跳ねてきた。 「おお、さなえにすわこもご苦労だった! 弟殿の言うことをちゃんと聞いたか? 良い子にしていたか?」 その二匹を抱き上げ、かなこさんが笑顔を向ける。 そんな育ての親を見上げ――。 「もちろんですっ! れみりゃすぱーくでゲスをせいさいするおにいさんに、さなえはぜったいさからいません! どんなめいれいにもしたがいます!」 「あーうー! すわこはいいこー! すわこはいいこー! だからせいさいしないってゆかりにおねがいしてー! スキマこわいー!」 「「せいさいごはんはもういやー!!」 半泣きの表情で、さなえとすわこは必死にそう訴えた。 「……ゆかり、弟殿?」 「あ、あははは……山でゲスに絡まれたから制裁したんだけど……ちょっと、その子達には刺激が強すぎたみたいでねー……」 「いやー、なんか色々あって、俺が変な能力持ってるって誤解しちゃってさ……あ、天に誓ってその二匹には手を出してないよ? な?」 「「はっはひいいい!! おにいさんはとってもすてきでやさしいにんげんさんですううぅ!!」」 うん、どう見ても俺が無理矢理言わせてる風だねっ。 でも本当に何もしてないんだよ? ゲス達は俺らが食事終わるまで放置して、制裁の仕上げに揉み込んだニガキの葉をたっぷり口に突っ込んでやったけど、それだけだし。 ゲスまりさを喰ってた赤れみりゃなんかちゃんと逃がしてやって感謝されたんだぜ? 「おにいさんのなかはままみたいにぬくぬくだったじょー!」って。 それなのに、この反応。 ……いや、ゆかりん姉ちゃんのノリに合わせてちょっと調子に乗っていたのは認めるけどさ。 「……ふぅ。とりあえず、こいつらはえーりんに診て貰うことにして……弟殿、ゆかり?」 「はっはいっ!?」 「な、なによぉ……!?」 「何故このようなことになったのか……説明して貰うぞ?」 笑顔のまま、怒りのオーラを浮かべるかなこさん。 その迫力に射すくめられながら、俺はゆかりん姉ちゃんと一緒に笑顔で頷きつつ、心の中で呟いた。 『どうしてこうなった?』と。 ・おまけ『ゆっくりさなえは胴付きになりたい』 「ごめんねさなえ、怖がらせちゃって」 「いいんですよゆかりさま。さなえがみじゅくだったのですから……」 「そうも行かないわ。かなこのゆっくりに借りを作ったままなんて私が嫌なの。だから……私にして欲しいこと、ない?」 「してほしいこと、ですか? えっと……」 「何でも言っていいのよ?」 「それならっ、おねがいがあるのですがっ!」 「なに?」 「ゆかりさまのなかみを、ちょっとだけたべさせてください!」 「……え?」 「かなこさまにききました! ゆかりさまのなかみはなっとうカレーさんなんですよね?」 「え、ええ……そうだけど……」 「わたしたちゆっくりさなえは、カレーさんをたべるとどうつきになれるんです!」 「……それ、おまん亜種のさなえだけよ?」 「そうなのですか?」 「まあ、あなたにおまん亜種の餡統が混ざってる可能性はあるし、胴付きの私の中身だから、普通のカレーよりは胴付きになる確率も高いだろうけど……」 「では、おねがいします! すこしでいいですから、わたしにゆかりさまのなかみをたべさせてください!」 「胴付きになりたいの?」 「はい! かなこさまみたいになりたいんです!」 「仕方ないわねえ……弟ちゃんには内緒よ? ……ん、しょ……」 「ゆわぁ……お、おっぱいからでるのですかっ!?」 「他の胴付きは知らないけれど、私達姉妹はみんな、ね……スープだけで具は出せないけど、それでいい?」 「はいっ! それではっ、しつれいしますっ! はむっ……ちゅうっ……!」 「んんっ……!」 「ちゅっ、ちゅっ……ちゅ……あの、ゆかりさま」 「んっ……ん……なに?」 「こういうこと……その、おにいさんと、したかったのではないですか?」 「ふふっ、案じてくれるの? 大丈夫よ、弟君には何度も吸わせてあげてるから」 「そ、そうなんですか……ゆかりさま、すごいです……ちゅう……」 「ん……っ……ふぁ……」 「ゆかりん姉ちゃ~ん、この間貸したルルブ、今度使うことになったからちょっと返し」 「んにゃあああああぁぁっ!?」 「うわああぁっ!? ゆっ、ゆかりん姉ちゃんっ!?」 「!? ち、ちちち違うのよ弟ちゃんっ! これには訳がっ!!」 「しつれいしてます、おにいさん! ちゅーちゅー!」 「ゆかりん姉ちゃん……俺だけじゃ飽きたらず胴なしにまで……」 「ゆっかり斜め上の解釈しないのっ!!」 「だってそれどう見ても搾乳プレ」 「プレイ言わない! 弟ちゃんの時と違ってこれはさなえにとって真剣な行為なんだから!」 「真剣な搾乳プレイ?」 「だからプレイ言わない! ……って、あんっ!」 「ちゅっ、ちゅうっ……ん、ゆっ、ゆううっ……!」 「ええっ? さ、さなえの様子がっ……!?」 「……ヘエーエ、エーエエエー! エーエエー、ウーウォーオオオォー! ララララ、ラァーアーアーアー!」 「ああっ姉ちゃんのせいでさなえがとんでもないことにっ!?」 「ゆっくり聞きの悪いことを言わないでっ! さ、さなえ大丈夫っ!?」 「あ~らはんま~や! みんな~そ~ちんな! ゆっ、ゆっ、ゆ……」 「さなえーっ!?」 「ゆーっ! ゆっくり胴付きになりましたー!!」 「「なんでじゃああああああああぁぁぁぁっ!?」」 このあと、ゆかりん姉ちゃんはさなえ種を胴付きにする素材として、中身を定期的に加工場に提供することになりました。 搾るのは俺です。 いや、本当に……どうしてこうなった!? 過去作品 anko2043 夏のゆっくりお姉さん anko2057 夏のゆっくり先生 anko2151 夏のゆっくり山守さん(前編) anko2154 夏のゆっくり山守さん(後編) 感想、挿絵ありがとうございます。感謝です。
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・21回目 ・ケロちゃんです。 ・虐めません。 ・ていうか、虐めることができません。 ・ていうかSSじゃない。 ・ヨロシクオネガイシマス 二人きりの雨宿り。 それは、シチュエーション。 一つ屋根の下、他人と他人がなんともむず痒い時間を共有する時間。 他人が異性であれ同姓であれ、多少世間話の一つでもするだろう。 他人が人間であったならば。 野生のゆっくりというのは、雨が苦手であるという先入観をゆっくり自身が持っている。 本当ならば、多少ふやけることはあろうとも体全体が溶けるように崩れていくことはないはずなのに、雨に濡れたと感じてしまえばゆっくりの体は雨に流されてしまう。 先入観というものは、人間でも起こりうるが、ゆっくりは、その先入観に陥りやすい人間に近い精神構造を持つ。 ゆっくり達にとっては、『ゆっくりできない』と感じる事柄は、存在意義の消失と同等に感じられ結果、死という形になり自我を消滅させる。 と、小難しいことを並べてみたが、有り体に言えば、死んだふりだと思ったら本当に死んでいた。 つまり、そういうこと。 何故そんな話をしたのかというと。 雨宿りしているゆっくりがいたから。 つまり、そういうこと。 あまり見たことがないゆっくりだ。 薄い茶色の山高帽のような麦藁帽の上目のような飾りが付いていて、その下から綺麗な金髪とまるっとしたにこやかな顔が降り止む気配のない空を見つめていた。 どうやら私が公園の屋根付きベンチに駆け込む前からいたようで、雨に濡れた形跡はないから、飼いゆっくりかもしれないし野良ゆっくりかもしれない。 飼いゆっくりと野良ゆっくりは、野生のゆっくりとは違い、雨=死ぬという先入観がない。 濡れたとしても、せいぜい皮がしばらくぶよぶよになるだけだ。 楽しそうにプールに浮かんでる姿は夏の風物詩ですらある。海では泣き声を上げながら流されているゆっくりを見ることもできるだろう。 この雨に対しての恐怖心のなさはつまり、そういうことだろう。 そんな由無し事を考えつつ雨が止むのを待っていたが、一向に止む気配などない。 ふと、隣の素性不明の山高帽ゆっくりを見ると、嬉しそうに空を見上げていたがやがて何を思ったのかどしゃぶりの雨の中へ出て行った。 首を傾げながら私はそれをただ見送った。 が、数分後には帰ってきた。 滝のような雨の中にいたのに、帽子や皮膚がぐちゃぐちゃになるどころか、先程よりも綺麗になっている気がする。 彼女は二、三身震いして水滴を飛ばした。 少し、私の足の裾にかかったがさんざん濡れているので今更、気にすることもない。 何気なく観察していると身震いしたときにずれた山高帽と金髪の間から、山高帽のゆっくりより二回り小さい緑髪に蛙と蛇の飾りを付けたゆっくりが転がり落ちてきた。 その緑髪ゆっくりは、不恰好に着地したあと、辺りを見回して安堵したように溜息をついてから山高帽のゆっくりに微笑んだ。 山高帽のゆっくりもそれに笑顔で返す。 山高帽のゆっくりはともかく、緑髪のゆっくりは知っている。 郵便ポストに頼んだ覚えがないゆっくりのカタログが入っていたことがあり、なんとなくそれを流し読みしたことがある。 その時、唯一欲しいと思って記憶に残っていたのは、その緑髪に蛙と蛇の飾りのゆっくりで名前はたしか・・・さなえだったか。 山高帽ゆっくりの方の名前は、一向に思い出せないがさなえとの相性が良く共存する種類だということが書いていた記憶がぼんやりとある。 さなえは、さっきから見ている私に気づいたのか、軽くおじぎをしてから、山高帽のゆっくりと一緒に降り止まない雨の空を見上げた。 その姿は愛らしい。 やはり私もゆっくりを飼ってみようか考えていると、雨の中から、横向きの柱のようなものにタイヤがついたような物が、F1カーのように猛スピードでやってきた。 その柱は、雨の中から屋根の下へ走ってきてドリフトターンをしてから停止する。 思わず隅に逃げた私に対して、山高帽ゆっくりとさなえはそれを見て嬉しそうに駆け寄った。 首をかしげる私は、その笑顔の理由にすぐ納得いった。 山高帽ゆっくりよりも二回りほど大きい柱の側面が開き、中から、注連縄を背中に付けた群青の髪色のゆっくりが出てきた。 そのゆっくりは、さなえと山高帽のゆっくりと頬をすり合わせたあと、私の方を見てお辞儀をした。その折、うなじに黄色い飴玉が埋め込まれているのが見えた。どうやら飼いゆっくりだったらしい。 その風格漂う姿に何故か、私もお辞儀を返してしまった。 注連縄ゆっくりはさなえと山高帽ゆっくりと何かを話した後に柱の中へと入っていった。 続いて、さなえが柱の中へと消えていく。 山高帽ゆっくりはというと、しばらく私の方を見ていたが、ふいに口から蓮の葉のようなものを取り出した。 それを私の足元まで持ってきて、柱の中へと去ってしまった。 そのまま柱は発進し、まだ降る雨の中へ消えた。 蓮の葉は、せいぜい先程いたさなえが入る程度の大きさで、とても私が入れるような大きさではない。 だが、その心遣いになにやら晴れ晴れとした気分になった。 その蓮の葉を、頭上に翳しながらまだ降る雨の中歩く。 ゆっくり達が去ったあと、手荷物の中に合羽があることに気づいたのだ。 それでも、山高帽のゆっくりの心遣いに感謝しながら蓮の葉を使うことにした。 道の所々には、あの飼いゆっくり達とは似ても似つかない野生のゆっくり達の死骸が点在している。 その顔は、恐怖に引きつる紅白ゆっくり。 帽子の吸水力が限界を突破したのか、黒いとんがり帽子の中でぐちゃぐちゃになったゆっくり。 雨に対してか親に対してか、鬼の形相を浮かべた赤ん坊ゆっくり。 先程のゆっくり達と対照的なゆっくり達。 どのような人間にもどのようなゆっくり達にも平等に雨は降る。 綺麗なものも、醜いものも雨は洗い流してくれるだろうか。 アトガキ 雨で溶けないゆっくりがいたら楽しそうですよね。プールとかにぷかぷか浮かぶゆっくりとか。 ということで、書いてみました。微妙に守矢一家。 オンバシラー祭りがやってるとのことですが、自分にはいまいちピンとこないお祭りです。 丸いチーズを転がして追いかけるお祭り並みに。 かなこさまのお迎えがあるのに、わざわざ飼いゆのけろちゃんがさなえを迎えに行った理由はさなえが野生ゆっくりだからです。 なんとなくな感覚で、遠くで雨に怯えていたさなえを保護した。後に金バッジ飼いゆへ。 そんなほんわか裏話。書けません。 雨も安心なスィーってことでオンバスィラー。 そんな裏設定。 ご読了ありがとうございました。 やまめあき(仮) 【妄想で書いたもの】 かり ・ふたば系ゆっくりいじめ 963 ト● ・ふたば系ゆっくりいじめ 990 くちばしにチェリー ・ふたば系ゆっくりいじめ 1000 デスクトップガジェット ・ふたば系ゆっくりいじめ 1018 ゆっくりつくーる ・ふたば系ゆっくりいじめ 1054 夢想天生 ・ふたば系ゆっくりいじめ 1064 スペクタクルスパイダーウーマン ・ふたば系ゆっくりいじめ 1091 つるべおとし ・ふたば系ゆっくりいじめ 1118 ゆっくりのおもちゃ ・ふたば系ゆっくりいじめ 1123 いまじん ・ふたば系ゆっくりいじめ 1142 スポイラー ・ふたば系ゆっくりいじめ 1163 ラブドール ・ふたば系ゆっくりいじめ 1172 益虫? 害虫? ・ふたば系ゆっくりいじめ 1189 スィークリング ・ふたば系ゆっくりいじめ 1214 てゐ! ・ふたば系ゆっくりいじめ 1227 ゆっくりは生首饅頭の夢を見るか? ・ふたば系ゆっくりいじめ 1235 箱、無音、窓辺にて ・ふたば系ゆっくりいじめ 1261 世はまこと遊技である ・ふたば系ゆっくりいじめ 1296 かえるのこはかえる どろわ ・つんつんつんつくつんつくつんつん ぬえ ・山女って可愛いよね ・女はつらいよ
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【作品名】NINJA GAIDEN 【ジャンル】ゲーム 【名前】ヴィゴル帝国軍攻撃ヘリ 【属性】攻撃ヘリ 【大きさ】10mぐらい 【攻撃力】ミサイル:戦車砲並みの威力のミサイル 一度に4発発射する 多少の誘導性能あり 機銃:一般的な攻撃ヘリのそれと同じ 【防御力】戦車より3割ほど頑丈 【素早さ】攻撃ヘリ並み 中の人は軍人 【長所】ヘリとは思えない頑丈さ 【短所】杜撰な管理をされてる可能性あり 【参考】 爆破手裏剣:敵の体に突き刺して自動で爆発、ロケットランチャー以上のダメージ 装甲車にも刺さる 【名前】戦車 【防御力】爆破手裏剣も刺さらない装甲を持ち、ロケットランチャー以上の爆発を10発食らっても戦闘続行可能 3スレ目 63 :格無しさん:2009/04/29(水) 01 55 14 ヴィゴル帝国軍攻撃ヘリ考察 ○○AH64D、米軍戦闘ヘリ ○装甲車 空爆勝ち ○学園都市製パワードスーツ 相手より速く動ける ミサイル連発勝ち ×榛名さなえ 眠って墜落負け △どてなし沼 沼に対してはやる事がない 分け ×レム ノートに名前書かれて死亡 榛名さなえ>ヴィゴル帝国軍攻撃ヘリ>学園都市製パワードスーツ
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注意。 この作品には、無茶苦茶な設定が含まれます。 というか、ゆっくり主役じゃないです。 まごうことなきスイーツ(笑)です。何書いてるの、自分。恥ずかしくないの。 彼女なんていないのにさ。 「紅い血の女」 お前は、俺から逃げないでくれるか? 俺は、ひとりぼっちなんだ。誰からも見捨てられた。 孤独なんだ。 お前が家に来てくれてから、俺はとても幸せだ。 だから絶対、俺が死ぬまで側にいてくれ……。 ぴーんぽーん。 冬真っ直中の寒空の下、僕はとある家のチャイムを鳴らした。 いつの間にかズレていた眼鏡を、格好つけて中指で押し上げていると(単にやり易い方法だからだが)、 鍵を開ける音がして、玄関のドアが開いた。 「……大江か。」 玄関にいたのは、同級生の長沢だった。 「……元気みたいだね。おばさんは?」 「お袋ならまだ仕事だ。」 「そう……。」 長沢はくるりと踵を返した。 「ま、入れよ。」 そう言うと、さっさと二階の部屋に戻ってしまった。 「全く……。ピンピンしてるじゃないか。」 僕は長沢の後をついて二階の階段を昇っていった。 見慣れた長沢の部屋に入ると、僕は本題を切り出す。 「それにしても災難だったな。その……。」 「変質者に襲われて、か?」 ……相変わらず、歯に衣着せない奴だ。 「全くだぜ。お陰で折角の平日休みだってのに、部屋に引き籠もりっぱなしだ。」 「何があったんだ?」 僕がそう聞くと、長沢は押し黙ってしまった。 「学校じゃ、詳しいことは話して貰えなかった。普通だったら、手口だとか犯人の服装とか細かく言われるって 言うのに。」 「……。」 「何が、あったんだ。」 長沢はやはり、押し黙ったままだ……。 「ぅゅ……っ!ゆ、ゆっくりしていってね!!!」 突然、ベッドの上にいた、長沢の家のゆっくりまりさが声をあげた。 「ゆ!?おにいさん、おひさ!!!」 そしてぴょんぴょんと跳ねて、僕の足下にすり寄ってきた。 「みきちゃん、おにいさんだよ!!!」 そう言われたみきちゃん――長沢美紀は、少し苦笑いをして、まりさを抱えあげた。 「おう、嬉しいか?」 「うん!!!」 まりさの言葉に、僕も長沢の様に苦笑いを浮かべていた。 「何でこんなに好かれてるのかな、僕は。」 「頼りなさそうな所とか、まどろっこしい所とか、色々長所はあって、判断に困るな。」 「……全部短所じゃないか。」 僕が呆れていると、まりさは長沢の腕の中で頬をぷくりと膨らませた。 「ゆゆ!いくらみきちゃんだからっておにいさんのわるくちはゆるさないよ!!!おにいさんはとてもゆっくり してるからまりさはすきなんだよ!!!」 「へいへい。」 長沢がまりさをあしらっている所で、僕は話を本題に戻す。 「で、何があったんだ。学校じゃ、変な噂が立ってるし。例えば、その……」 まぁ、未成年とはいえ僕らはもうすぐ高校生だ。 その……そういうのは、ねぇ? 「暴行されたとかか?」 「なッ?!」 「おねえさん!!」 やっかいな所でまりさが話に割り込んできた。 「ぼうこうってなにー?」 「乱暴されることだな。ゆっくりだと、無理矢理すりすりー、すっきりさせられ るみたいな……」 こ、こんの……ッ! 「馬鹿!せめてぼかして言えよッ!!」 「これでもぼかしてるぜー?ま、回りくどいことはしないのがあたしの主義だからな。」 そう言ってけらけらと笑いだした。 「……その様子だと、本当に違うんだな。」 「ったり前だぜ。お前も下世話な噂が好きだなぁ。」 「僕が言ってるんじゃない。」 「ふーん、そうか。」 長沢はそう言って、ベッドにぼすんっ、と腰を下ろした 僕、大江健次と長沢は、小学生の頃からの友人だ。 特に何かあった訳じゃない。 何回かクラスが一緒になり、何故だか気が合ってしまったから、 いつの間にか親友と言うか、悪友と言うかの仲になっていた。 男勝りを越して親父臭い口調の長沢だが、見た目はいたって普通の女子だ。黒い長髪で、不良と言う訳ではない。 いや、昔は普通の女の子だった筈だ。それが最近じゃ、口調のせいでか周囲から浮いている。 「なんでだろうかな……。」 「ん?なんか言ったか?」 「いや、別に。」 「それにしても、今日は何でわざわざウチまで来たんだ?」 長沢にそう聞かれて、僕は飲んでいたジュースを噴き出しかけた。 「ゆゆ!?おにいさんどうしたの?」 「げほげほ……、いや、その……。」 「どうせクラスの連中に唆されたんだろ?『恋人の見舞いに行けー』なんてさ。」 僕は不貞腐れてそっぽを向いた。分かってるなら聞くなよ、まったく……。 クラスで僕が冷やかされるのは、今年のバレンタイン、僕が長沢からチョコをもらったからだ。 とはいっても、10円のチ□ルチョコ。……今では20円の物が殆どだというのに、コイツは10円をケチるた めにわざわざ駄菓子屋で買ってきたのだ。 しかも義理チョコで、クラスの男子全員に配る予定が、僕に渡した後はすっかり忘れていたお陰で、僕は長沢の 意中の人扱いされた。 冗談じゃない。 しかも長沢は恥ずかしがるどころか、悪びれた様子もなく、平気でその話をするからタチが悪い。 「機嫌を直せよ、わが恋人。」 「……もういいよ、それは。それより、本当に何があったんだ?」 僕が聞くと、長沢は少し間をおいてから、 「知らん。」 とだけ答えた。 「知らない、ことはないだろ。自分のことなんだから。」 僕が問い詰めても、長沢は難しい顔をして、 「いや、本当に知らん。覚えてないんだよな。」 と嘯く。 「覚えてんのは、昨日ちょっと出かけて帰りまでで、そこから先は無し。朝起きたら病院に居たんだよ。」 「……本当か?」 「本当。なんか変質者ってのも状況判断らしいし。」 「何だよそれ。」 「だって、そりゃ、なぁ。」 長沢は僕に背を向け、後ろ髪を掻き揚げた。 「こんな痕がありゃあな。」 長沢の首には、丸で牙で噛まれたような傷跡が2つ、残っていた。 「こんなの、どう説明しろってんだ?」 日がすっかり暮れた頃、僕は家の近くの公園に居た。 長沢の家で薄気味の悪い事を聞いた僕は、少しばかり暗くなった気分を晴らすため、そこに居る愉快な連中に会 いに来たのだ。 そいつらとは……。 「ゆゆ!!!さなえ、すわこ!!!おにいさんがきたわよ!!!」 「あうー!!!ほんと?かなこ!!!」 「おひさしぶりです!!!」 この公園の遊具に住み着いている、ゆっくりかなこ、すわこ、さなえの3頭だ。 こいつらと会ったのは、小学校五年生くらいの頃。 念願のマイホームとか言って、ここに引っ越してきた時のことだ。 マイホームといっても、実は海外で老後を送っているらしい、遠い親戚の家を改築したものだったりする。 その引越した当日に近くをうろついてたらこいつらを見つけたのだ。 「ゆ!!!おにいさん、きょうはおかしあるの?!」 かなこがさっそくねだり始めた。というのも、僕は度々こいつらにお菓子やら給食のパンやらを食べさせている。 パンに関しては、単に嫌いなものといっても捨てるのが勿体無いから食べてもらっている。 菓子に関しては、なんか、その……義理みたいなものだ。 件のチ□ルチョコを売っていた駄菓子屋で買ってきたやつだから、そんな大したものじゃないけど。 「残念だけど、今日は無い。」 「ゆぅ~。おにいさんたらケチね!!!」 かなこが口を尖らせていうと、 「かなこみたいだよ!!!」 すわこがすかさず、かなこをおちょくる。 「……すわこ、あんたなまいきだよ!!!」 かなこが頬を膨らませてそう言うと、 「かなこにはまけるね!!!」 売り言葉に買い言葉。すわこは胸を張るようなポーズをとる。 「ふん!!!なら、ここでけっちゃくつけるよ、すわこ!!!」 「のぞむところだよ、かなこ!!!」 2頭はそう言うと、互いに頬を押し付け合い、 『うりうりうりうりうりうりうりうりうりうりうりうりぃぃ~!!!』 とおしくら饅頭らしきものを始めた。 「……はぁ。」 途中から、なんだか楽しそうになってる2頭を見て、僕はため息をついた。 「どうされたんですか!?」 そんな僕に寄ってきたのは、3頭の中で一番まともな、さなえだった。 「いや、ちょっと物騒な話でさ……。」 僕が事の次第を話すと、さなえは少し考えているようだった。 『すっきりー!!!』 かなことすわこが喧嘩というかなにかを終えた頃、さなえはようやく口を開いた。 「おにいさん。きょうはもうかえったほうがいいです。」 「え?いや、確かに遅いけどさ、変質者が出た所とは離れてるし……。」 「いいから、かえってください。」 さなえはそういうと、住処の遊具へと跳ねていく。 「どしたの、さなえ。」 「なんでむずかしいかおしてるの?」 そんなさなえを見つけて、すわことかなこが声をかけた。 「……ごめんなさい、かなこさま、すわこさま。おにいさんにはかえってもらいます。」 さなえはそれだけ言って遊具の中に入っていってしまった。 「どうしたのかしら……?」 「ごめんね、おにいさん!!!」 2頭が謝ったが、別に僕は怒ってはいなかった。 ただ、いつものさなえらしくなくて、僕にはすこしばかり不思議に思えた。 どこだ。どこに行ったんだ? こんな時間に出歩くなんて、危ないじゃないか。 最近は冬にも関わらず変な奴が出るというのに。 公園を出た僕は、特に何をする訳でもなく、辺りをうろついていた。 時刻はまだ6時半。だというのに、すでに夜と言えるほど暗かった。 そして、寒い。 「変質者って春出るっていうけどなぁ……。」 そんなことを呟きながら歩いていると 「おい!」 と、声がした。いや、怒鳴られた。 ……驚きのあまり、思わず硬直する僕。 「聞こえてるのか!」 再度怒鳴られたので振り向くと、そこには怒りっぽいことで有名な竹下の爺さんがいた。 「は……はい……。」 ……今日はとことんついてない。 「こんな時間になに出歩いてる!」 「い、いえ、特になにも……」 「理由を聞いてるんじゃない!!」 一際大きい雷が落ちた。 正直、一言注意するだけでいいと思うんだけどな……。 それから、竹下の爺さんが嫌われている最大の原因である、長いお説教が始まった。 基本的には、怒った理由についてのお叱りから飛躍して、いつの時代も変わらない若者論、果ては現代社会の若 者の「心の闇」にまで話は及ぶ。 「兎に角、餓鬼はさっさと帰れ!帰って勉強でもしてろ!」 そう言ったあと、何だかグチグチ言いながら竹下の爺さんは帰っていった。 ふぅ、と僕はため息をつく。いつもなら長いお説教なのだが、今日はあれだけで済んだみたいだ。 早く帰れっていってるのに遅く帰らせる羽目になったら意味がない。 まぁ、もう7時を過ぎてしまったので、充分本末転倒だけれど。 兎に角今日は良いことが無かった。爺さんが言うとおり、早く帰ろう。 そう思って、僕は近道の裏路地を歩いていった。せまくて汚いが、今は一刻も早く帰りたい。 爺さんはそう悪い人では無い、と僕は思っている。基本的には間違ったことで注意はしないし、僕に限って言え ば、締めは真っ当なことを言うし。 「まぁ、話を飛躍させてまで長いお説教を聞かせるのはなぁ……。」 そんな独り言を言っていたときだ。 ふと、僕は足を止めた。 前に人影が見えた。はっきりとはわからないが、背格好からして10歳ぐらいの、金髪の少女のようだ。 何だか見覚えのある、変な帽子を被っている。 見かけない子だな……。 こんな子がいたなら、流石に近所でも話題になるとは思うのだけれど。 そう思って彼女を見ていると、彼女は、 「おねがい。」 そう言って笑った。 その途端、僕に走ったのは、どうしようもない程の 怖さ。 笑顔は屈託の無い、むしろ綺麗で可愛いものだったと思う。 だけどそれにこめられた意味は、大人でもない僕にすら分かるほど明瞭で、そしてただただ 恐ろしかった。 逃げなくてはいけない。直感的にそう思った僕は踵を返して来た道を走った。 声を上げる余裕もない。それほど恐ろしかった。 きっとライオンと対面した獲物、それも、まさに子供の気分だ。 もつれる足を気にも留めず、僕は必死に走って 「おいついたぁ。」 すぐそばに、大きく口を開けた少女の顔が見えた。 犬歯がひどく長くて尖っていたけれど、やっぱり綺麗で―― とても、恐ろしかった。 「うわぁぁぁぁぁ!!!!」 次の瞬間だった。そう、まさに一瞬。 眩い光が通りすぎ、少女は吹き飛ばされていた。 路地に置いてあるゴミ箱にぶつかる音が、派手にしていた。 助かっ……た……? そう思った途端、急に、僕は足に力が入らなくなり、 「うわぁっ?」 前のめりにすっ転んでしまった。 「いてて……。」 起き上がろうとして前を見ると、 「まったく、何をしてるんですか?」 見たことも無い女性がいた。 緑の長髪に、妙な髪飾りを付けて、 なによりも、何故かノースリーブを着た上で二の腕辺りに袖をくくりつけた妙な格好。 普通ならあまり関わりたくないと思わせる服装だというのに、なんだかとても優しい雰囲気のする人だ。 「だから早く帰るように言ったのに。」 ガタン、と音がした。 後ろを向くと、あの少女が起き上がり、こちらを睨み付けていた。 枝のような、翼のようななにかを広げて。 「さがっててください。」 女性にそう言われた僕は、這いずりながら慌てて後ろに下がった。 少女は軽く飛び上がり、 そのまま、滑空してきた。 女性はどこからとも無く、神主さんが持っているような、何かひらひらした紙のついた棒を取り出すと、 軽く振り上げた。 すると、さっきよりも眩い光が走り、あの少女に直撃した。 少女はさっきよりも強く地面に叩きつけられたようで、うめき声を上げている。 「帰りなさい。」 女性は毅然として言った。 「人に危害を加えるようなものに、容赦はしません。」 少女は忌々しげな顔をすると、翼を広げ、夜の空に消えていった。 しばらく訳が分からず、呆然としていると、 「駄目じゃないですか。早く帰って下さいって言ったのに。」 女性が声をかけてきた。 「え、ええと、その……、ど、どなたですか?!」 当然だが、僕はこんな奇抜で綺麗な人に見覚えが無い。 「……まぁ、仕方ないですね。この姿じゃあ。」 女性がそう言った次の瞬間、僕は信じられないものを見た。 不思議だとかいうのを通りこして、不自然だった。 目の前にいた女性が、まさに一瞬にして、 「ゆっくりりかいしてくださいね!!!」 ゆっくりさなえになったのだから。 「ええと、つまり、まとめると、……ゆっくりって人間になれるの?」 「人間ではないですね。」 ゆっくりの姿から、さっきの女性の姿に戻った……さなえでいいんだろうか? 「あくまでゆっくりです。それに、私以外の多くのゆっくりが、人間ではなくて、人間のような容姿の妖怪の姿 を取ります。『始祖返り』って言うんですよ。」 「はぁ……。」 「私達は、私達の生まれ故郷にいるすごい人や妖怪達が力を使った余波で生まれたんです。だから、普段の姿も、 この姿も、その人達の格好を真似してるんですよ。」 たしかに見直してみれば、変な髪飾りはゆっくりさなえがしているものと同じだった。 「あと、すべてのゆっくりがこんな風に姿を変えるわけじゃありません。年を経て、なおかつ自分のあるべき姿 に目覚めたゆっくりだけが、こんな姿になれることもある、ぐらいです。」 「じゃあ、かなこやすわこも?」 「いいえ。お二人はまだ私よりも若いですし……、なにより、ゆっくりがこうなれるというのは、幸せじゃああ りませんから、隠すゆっくりも多いんです。仮に出来るとしても、私には分かりかねます。」 ……というか、さなえってあの2頭より年上だったんだ。 僕の思考はかなり変な方向に飛びっぱなしだったが、ふと、ある大きな疑問が浮かんだ。 「……さっきの女の子はなんだったんだ……?」 さなえは答えなかった。 「あいつもゆっくりだったのか?長沢の奴を襲ったのも、あいつなのか?!」 「……おにいさん。このことは誰にも喋らないでくれますか?」 さなえは、真剣な顔で僕を見ていた。人間のときのさなえの顔は綺麗過ぎて――どこか恐くも感じた。 次の日。 長沢は何事もなかったかのように登校して来た。いつもの様に快濶に喋り、見事なまでに浮いていた。 本人はそれさえも楽しんでいる様な気もしたけれど。 「ちょっといいか、長沢。」 昼休み、僕は長沢を屋上に連れ出した。 周りはいよいよ告白だのなんだのと五月蠅かったが、僕はとにかく無視した。 「なんだよ、大江。」 屋上に着くと、長沢は不満気に尋ねた。 「……今日は、早く帰れよ。夜も出歩かない方がいい。」 長沢の顔が余計に機嫌悪く変わった。 「……お前はいつからあたしの親だか保護者になった?」 「大事な友達のつもりだけどね。」 僕が毅然と言い放つと、向こうも苦々しい顔をして、 「ああ、そうかい。じゃ、こっちの頼みも聞いてくれるか?」 と、言った。 「頼み?」 「あたしもお前も満足する、一挙両得なお願いさ。」 長沢がにやりと笑うのを見て、僕は無性に嫌な予感がした。 そして、下校の時間。 「……長沢。やっぱり勘弁してくれ。」 僕は本当に頭が痛い。というのも、 「勘弁も何も、な。」 「犯人捕まえるとか、無謀だとは思わないか?警察に任せればいいだろ?」 長沢が、犯人を自分で捕まえると意気込んでいたからだ。 「警察じゃ当てになんないんだよ、この場合。」 「いや、だったら余計僕らには無理だろ。」 「心配すんな。それこそびっくりするような助っ人がいるからさ。」 長沢は昼と同じくにやりと笑ったが、僕は凄まじい不安を抱えていた。 『先ほどの少女は、おそらく、ふらんが「始祖返り」したものでしょう。』 『ですが、いくら私達が本物に劣るとはいえ、「始祖返り」したのなら、先ほどのような「光の弾」を撃てない ものはまずいません。』 『と、なれば、不完全な形で「始祖返り」を果たしたゆっくりなのでしょう。故に、彼女の本物と同じく、吸血 することで、あの姿を保っているのです。』 『一体何のために……?』 『分かりません。ですが、放って置ける訳もありません。彼女がどうあれ、ゆっくりのこの性質が、このような 形で表沙汰になれば……あまりに不幸なことになります。』 『私や、私の知り合いのゆっくり達で何とかします。おにいさんは、このことを決して他言しないで下さい。』 「そんじゃま、今日の夜8時にな。」 「……。」 「おい、聞いてんのか、……大江!」 昨日さなえに言われたことを思い出していた僕は、長沢の言葉で我に返った。 「ご、ごめん……。」 「ったく。いいか、8時だぞ。……ってヤベ!、隠れろ!」 長沢はいきなりそう言うと、電柱の影に僕を引きずりこんで隠れた。 「な、何だよ!?」 「竹下のじーさんだ!見つかると厄介だぜ……。」 電柱からこっそり覗くと、確かに竹下の爺さんが歩いていた。何かを探しているようだった。 「別に僕らを探しているような雰囲気じゃなさそうだけど。」 「だから嫌なんだよ。あいつあたしを見つけたら難癖つけて説教するんだよ。」 長沢曰く、竹下の爺さんは、完全に男口調で話す長沢には大層ご立腹なようで、姿を見るたびガミガミ言ってく るらしい。 「女はもっとおしとやかにって……んな古臭いこと言うんじゃねぇっての。あたしの心は充分おしとやかぜ?」 僕としては、それは違うと思う。 「……どうやら行ったみたいだな。じゃ、頼んだぜ。」 「お、おい!」 長沢はさっさと帰ってしまった。 どこだ!どこに居るんだ?! 危ないじゃないか。お前はまだ子供なんだ。 昨日だって、夜遅くにボロボロになって帰ってきた。 何があったと言っても教えてくれない。 あいつと同じように、手遅れにはしたくないんだ。 だから、早く出てきてくれ……。 「塾で一般参加も出来る特別講習があるらしいから」という名目で家を抜け出してきた僕は、待ち合わせ場所で 長沢を待っていた。 長沢が襲われた通りから、少し離れた場所だ。 件の通りは、僕が近道に使う裏路地並みに人の気配の無い、寂れた通りだった。流石に不気味だから、夜ここを 通る人は、まずいない。 「あいつ……何でこんな所通っていったんだ……?」 僕がそんな独り言を呟いていると、 「お前にしちゃあ早いなぁ!!」 と、後ろから長沢の声がした。 「むしろいつも遅刻するのは長沢の方だろ。って、」 そう言いながら長沢の方を振り向くと、僕は言葉を失った。 「お、おにいさん……!!」 「うー?しりあいなのぉー?」 長沢と一緒に、あのさなえを抱えた体付きれみりゃが飛んでいたからだ。 「およ?知り合いなのか?」 長沢がさなえに尋ねる。 「うー。れみりゃはしらないんだどぉー!」 「そりゃお前も言ってたから知ってるって。聞いてんのはさなえの方。」 長沢はそう言うと、僕の方を向いた。 「で。知ってるのか?」 「あ、ああ。僕ん家の近くに住んでるゆっくりさなえだよ。……で、そのれみりゃは?」 僕が聞き返すと、長沢は大層うれしそうににやついて、 「驚くなよ。実はコイツがあたしを助けてくれたのさ。れみりゃ、見せてくれよ。」 「うー!らじゃー!!」 そう言ったれみりゃは一瞬にして、昨日のさなえと同じく、人の様な姿になった。もっとも、体付きのためか、 単により洗練された姿になった、という気もする。 「……あら。反応薄いわね。」 「変なこと言うからじゃないのか?」 「仕方ないじゃないの。にくまんのときはあんな調子なんだから。」 「……ちがいますよ。」 2人の掛け合いを遮って、さなえが言った。そして 「もう、見るのは二度目ですから、ね。」 人の姿になった。 「うわっ、お前もかよ!」 「あら、いいリアクション。」 僕と違って、長沢は大層驚いていた。 「じゃ、お前昨日襲われたのか?!」 長沢の言葉に、僕は頷く。 「それを、このさなえに助けてもらったんだよ。」 「へぇぇ。あたしの方は、襲われて直ぐにれみりゃに助けてもらったけど、血が足りなくて意識が朦朧としてた からな。れみりゃに『何も知らない、分からないと言いなさい』って言われたっきりだったんだよな。」 「仕方ないじゃない。」 「ま、助けてくれて連絡しに昨日来てくれただけでも良しとするぜ。」 そんな息の合った掛け合いをする2人を、さなえはじとりと睨んでいた。 「……何よ。」 「言ったじゃないですか、れみりゃさん。このことに人を巻き込むのはやめよう、って。」 「仕方ないじゃない。みきちゃん乗り気なんだし。異様な強引さがあるのよね、この人。」 「嬉しいぜ。」 照れる長沢。 「褒めてないと思うよ。」 突っ込む僕。 「ともかく、お2人を巻き込んでどうするつもりですか?いくら不完全な『始祖返り』だからって、単純な力だ けで見れば、人間にとっては脅威なんですよ?!」 「分かってるわよ。2人には囮として頑張ってもらうわ。」 まるで、当然のことのように言い放つれみりゃだったが、さなえは頭を抱えてしまった。 ……僕も、気持ちは分かるような気がした。 「ひとまず、2人にはあの路地を歩いてもらうわ。出来るだけゆっくりしていってね。私達の方は、ゆっくりに なって潜んでいるから。」 れみりゃはそう言って、 「うっうー!それじゃたのんだどぉー!」 と肉まんになった。 「……あまり賛成しかねますけど……お2人とも、もしふらんに出くわしたら……ぜんりょくでにげてください ね!!!」 さなえもゆっくりに戻った。 「そんじゃま、作戦開始ってところだな。ビビるなよ?」 長沢は酷く楽しそうだった。 「……はぁ。」 僕はため息しか出ない。何だか、さなえの苦労が分かる気がした。 僕と長沢は2人並んで歩いていた。囮を2人使う意味が良く分からないが、多分ノリだと思う。 あのれみりゃなら充分あり得る。 「なぁ、大江。高校、どうした?」 ふいに、長沢が声を掛けてきた。 「え?ああ、例の進学校。母さんや父さんも乗り気でさ。特に行きたい高校があるわけじゃないし、学力的にも 大丈夫らしいし、そこを第一志望にした。」 「……そうか。」 ……どうしたんだろうか。妙に元気が無い。 「すごいなー、お前。あたしじゃあそこは無理で、結局公立だしな。ホンット、頭いい奴って羨ましいぜ。」 「……褒めるなんて、どういう風の吹き回しだよ。」 「別に。あたしはあたし、お前はお前の道を行くだけだ。」 そう言って、長沢は黙りこくってしまう。 本当にどうしたんだ?さっきまでは犯人を捕まえてやろうって意気込んでたくせに。 今は、なんだか空回りをしてるようだった。 「それにしてもさー、お前、クリスマスはどうするよ。」 「え?ああ、普通に家で過ごすけど。」 「……ふーん。」 「長沢はどうするんだ?」 「あたしも暇だぜ。彼氏いないし、な。」 「まぁ、そうだろうね。色々難ありだし。」 「……大江もそうだろ。お前みたいな陰険な眼鏡に興味ある女なんてそうそう居ないし。おまけに、学力はいい けど馬鹿だし、頼りないし、友達少ないし……。」 「ちょ、ちょっと、いきなりどうしたんだよ。そんなに僕のこと嫌いか?」 長沢は、いきなり立ち止まった。 「お、おい、長沢!」 「だからさ!」 長沢は僕の方を見据えていた。 「あたしがクリスマスに、いや、ずっと一緒に居てやる。」 「え?」 僕の思考はしばらくの間、堂々巡りしていた。 こいつは一体何を言ってるんだ? こいつは自分が何を言ってるのか分かっているのか? そして、僕も。 そして、それを打ち破ったのは、最悪な予兆だった。 「……長沢。いいか。」 「な、なんだよ!?悪いかよ!」 「……顔赤らめてる場合じゃない。」 あのときの、気配だ。 前を見ると、あの時の少女が居た。 僕と長沢は、じりり、と後ずさる。 「走れ!!!」 そして、全力で逃げた。 「れみりゃ!!さなえ!!出番だぁ!!!」 長沢が大声を張り上げる。 だが。 来ない。 「ああ、もう、あいつら何してんだよ!!」 長沢が愚痴る。僕もまるで同じ気分だ。 必死になって逃げるが、相手は空を飛べるのだ。 直に追いつかれる。 「くそっ!死ぬほど恥ずかしい思いしたからって、まだ死にたくないってのに!!」 まったく、僕も同じ気分だ!! 翼の音が耳元まで迫る。なんであの2人、来ないんだ?! 「おいついた。こんどはにがさないよ。」 居ない。こんな時間まで何をしているんだ?! まさか、逃げ出したのか。 お前まで、俺の前から居なくなるのか。あいつと同じように。 頼む、俺が悪かった。もう叱ったりしない。プリンはいくつでも食べていい。 食べてすぐに寝てもいい。後片付けだってしなくていい。 ただ、俺の側で笑って居て欲しいんだ。 ……くそ、何だってこんな時にガタがくるんだ、この体は! 絶対、絶対に見つけるぞ。無くしてたまるか!手遅れになる前に、早く家に帰って、あの笑顔を―― 「倒れるような無理は、しない方がいいわ。」 ……誰だ、あんたは。 「さぁ。それより、お話があるんだけれど、聞いてくれる?」 うるさい。そんなことより、俺は―― 「ほらほら、無理しない。自分の体のことより、ふらんちゃんのことが大事?」 ……なんで、知ってる。 「お話があるって言ったでしょう?少しばかり、酷な話だけど。」 耳元で声が聞こえた途端、少女は光に弾き飛ばされ、影が少女を押さえつけていた。 長沢が急に止まったので、それにつられた僕はやっぱり前のめりに倒れた。 「ごめんなさいね。ちょっとばかり遅れて。」 少女を押さえつけながら、れみりゃは……あまり反省してなさそうな口ぶりでそう言った。 「その……少しお説教をくらってたんです。」 僕の前に降り立ったさなえはそう言うと、少女の前へと歩いていく。 「……じゃま、するな。」 「するに決まっているでしょう。貴方は自分が何をしているのか分かりますか?」 「おじいちゃんには、わたししかいないんだ!だから!!」 「だから、こんな体が欲しいのかしら?」 れみりゃがそう言うと同時に、少女の姿は消え、体の無いゆっくりふらんがいた。 れみりゃはため息をついた。 「まぁ、分からなくも無いわね。あんまんの、それも体付きじゃあないのなら、確かに世話なんて出来ないわね。 好きな人のために自分を高めたいと思うのは、悪いことじゃない。けど、そのために誰かを犠牲にするのは止め なさい。そんなことをして夜の姿を手に入れた所で、あなたのおじいさんは喜ぶと思う?」 「う、うう……。」 「そうよ。」 ふと、横の建物から声が聞こえた。 白い服を着た、紫の髪の女性がいた。 「あなたのおじいさんは、こんなにもあなたを大事にしてるのに。」 隣には、竹下の爺さんがいた。 「本当、だったのか。」 「ええ。」 爺さんはふらんの下に駆け寄った。 「ふらん!!お前は……!」 「う、うう……。ごめんなさい、おじいちゃん……。ふらんは、おじいちゃんをひとりぼっちにしたくなかった の……。ねたきりになっても、いっしょにいたかったの……。」 「ふらん……。」 竹下の爺さんは、ふらんを大切に抱きかかえると、僕らの方を見た。 「……お前ら、」 僕は、てっきり爺さんに因縁をつけられると思った。長沢も同じことを考えたらしく、舌戦の構えをみせたが― ― 「すまなかった!!!」 爺さんから出たのは、謝罪の言葉だった。 ……冷静に考えれば、自分の飼っているペットが人に危害を加えれば、普通は謝る。 まぁ、そうしない人の印象の方が強く感じる現代だけれど、――本来は、それが筋だ。 爺さんは僕たちに頭を下げると、長沢の方を向いた。 「特に、危険な状態になるまで血を吸われたお前には本当に申し訳なかったと思う。俺がいうのもおこがましい が、……許してくれないか。」 「いいさ。別に。」 長沢は、やけに素直だった。 「あたしは、あんたと違って根に持たないのさ。」 ……それが根に持ってるってことだと思うけど。 「すまん、ありがとう、ありがとう……!」 爺さんの方は感動してるから、いいのか。 「れみりゃ。」 先ほどの紫髪の女性がれみりゃに声を掛けた。 「なにかしら。お説教の続き?」 「ええ。勝手に人を巻き込むのはやめなさい。こういうのはえーきさまのお仕事なんだけど、まぁ、いいでしょう。ゆっくりなんだし。」 「これからはもう止めてくださいよ、れみりゃさん……。」 さなえは泣きそうな顔をしている。 「乗った私が言えることじゃないかも知れませんけど、酔狂なことはやめて下さい……。」 「……分かったわよ。」 れみりゃはそう言うと、翼を広げた。 「もうおじ……私のおにいさんが残業から帰ってくる時間だから、失礼するわね。」 「まぁ、言いたいことは無いし、えーきさまでもないからもういいわよ。さなえも、ね。」 「じゃ、そういうことで。」 れみりゃはそう言って夜空へ消えていった。 「私も、すわこさまやかなこさまが心配するといけないので、これで。」 さなえも、同じように飛んでいってしまった。 紫髪の女性は、僕と長沢の方を向くと、 「大変だったわね。あのふらん、どうしても体を持ちたかったらしくて、あんなことをしたみたいなのよ。」 そう言って、ふらんを抱いている竹下の爺さんを見た。 「あのおじいさん、ガンなんだそうよ。」 「え?」 意外だった。とてもそうは見えない。 「まだ初期の段階で、直る見込みはあるんだけどね。入院に必要な費用もあるそうだし。……けど、 ふらんを家に置いて入院したくはないそうよ。」 「……家族に預けりゃいいんじゃないか?でなきゃ親戚とか。」 長沢がそう言うと、紫髪の女性は首を横に振る。 「親戚からは断られたそうよ。それに、あの人……奥さんとお子さんを事故で亡くされたそうよ。だから、あの ふらんを大事にしている。」 紫髪の女性は長沢を見つめる。 「改めていうけど、だから、本当に許してくれるかしら?」 「そこまでいわれちゃあ、なぁ。一層文句つけようがないぜ?」 長沢はそう言って、僕を見た。 「女に怪我させられた彼氏としてはどう思うよ、大江。」 「か、彼氏!?」 「なんかもう、それでいいだろ。あんなこと言っちゃたし。で、どうなんだ?」 そう言われても……。 「いや……別に、長沢がいいなら、いいんじゃないか?」 そう言うしかない。 「じゃ、この話はお開きだ。もう9時だし、帰って風呂入って寝よう。」 長沢はそう言って、1人でさっさと帰っていってしまった。 「……勝手だなぁ、あいつ。」 僕がそう言うと、あの女性は 「ふふふ、恥ずかしいのよ。あの子、なんでこの道を通ってたか知ってる?」 と言って、僕を見た。 「え?……さぁ?」 「ここを抜けると、百円ショップがあるの。そこでマフラーの材料を買ってたんですって。」 ……あいつ、どこまでもケチだな……。 「でも、どうしてあなたはそんなことを……?」 大方、この人もゆっくりなんだろうが、どうしてそんなことまで知ってるのか。 「ふふふ……それはね。」 女性の姿が変わった。 「わたくし、れんあいそうだんにもうけたまわっております……ふふふ。」 例のチ□ルチョコがある、駄菓子屋のマスコット。白石さんがそこにいた。 数日語。僕はあの駄菓子屋を訪れていた。 冷蔵ケースをスライドさせると、そこに白石さんがいた。 「ゆっくりしていってね。……所で、べんちでゆっくりしたいんだけどいいかしら。」 「うん。」 「竹下のおじいさんは、」 ベンチに下ろすために抱えた僕の腕の中で、白石さんは言った。 「ろうじんほーむにはいるそうよ。」 「……そう。」 なんとなく、少し寂しい気もした。あの人のお説教をくらうことも、もうないのか。 「すこしさびしいわね。そうおもわない?あのひとには、もうふらんしかのこっていなかったのよ。」 子供さんが病気で亡くなってから、爺さんはだんだんと偏屈になり、子供が憎くなっていったらしい。 何故、自分の息子が、あそこで遊びまわっているクソガキどもと一緒に居られないのか、と。 そんな爺さんは、次第に親戚中から煙たがれていったらしい。 「けど、あのふらんも、おなじほーむに、ゆっくりせらぴーとしてつとめるそうよ。」 「ゆっくりセラピー?」 「びょうきのひとやおじいさんおばあさんを、なごませてげんきにさせるゆっくりのこと。」 「ふーん……。」 あの時の、無邪気で恐ろしい顔が浮かんだが、僕には、何だかしっくりくるような気もした。 「ねはわるいこじゃないわ。きっとうまくやってける。」 僕はベンチに白石さんを乗せると、隣りに座った。 それから何を話すわけでもなく、それこそゆっくりしていたのだけれど、ふいに白石さんが呟いた。 「『現代ほど、老人にとって孤独な時代は、なかったかもしれない』」 「……?なに、それ。」 「なんでもないわ。もうよんじゅうねんもまえのことばよ……。」 雪がちらつく。 「おいる、ってけっこうつらいものね。いろんなものをうしなっていく。だんだんと。」 「……けど、さ。」 僕は、訳もなく呟く。 「けどさ、爺さんには、ふらんが居る。ああまでして、一緒に居てくれようとしたふらんが。だから、爺さんは 辛くても、楽しい人生を送っていけると思う。」 「ふふ。そうね。」 白石さんはいつもの澄したような顔でそう言うと、体を付けた。 ……どういう原理なんだろうか、これ。 僕がそう思っていると、白石さんはいきなり、 「しょうねん。じんせいのはかばへのしょうたいじょう、うけとれるかしら。」 と言い出して、前を指差した。 その先には、 「……おう。」 やけに顔を赤くした、長沢がいた。 「ゆっくりしていってね!」 ……変な編み物をまとったまりさを抱きかかえて。 「すまん。マフラー無理だった。」 長沢は俯いた。 「だろうね。」 期待はしてなかった。この結果は予想出来たよ。 長沢は俯いたまま、僕の目の前まで歩いてきた。 ひどく緊張してるのが分かった。足と手を同時に出して歩いてたし。 そして、空を仰ぐと、まるで最後通告かのように、こう言った。 「だから、さ。プレゼントはあたしで我慢してくれ。」 「……よく、そんな恥ずかしいこと言えるな。」 「いいだろ。別に。」 「それに、あじはほしょうするよ!!!」 『なんのだ。』 僕と長沢は顔を見合わせた。 「きがあうわね。」 白石さんが茶化す。 「まさかえっちなことかんがえた?それはいけないとおもうよ!!!」 まりさは、小馬鹿にしたような顔で僕に言った。 「じゃあ、何なんだよ、まりさ。」 僕が聞くと、まりさは得意げに、 「けーきだよ!!!みきちゃんがつくったけーき!!!」 「うわっ、馬鹿!言うなって!!」 顔が赤いままの長沢はそう言うと、恥ずかしそうに僕を見た。 ……なんだ、この乙女全開の長沢は。UMAか何かだろうか。 そんな考えが顔に出ていたのか、長沢はぶすっとした口ぶりで、 「……悪いかよ。」 と呟く。 「……まぁ、仕方ないんじゃないかな。うん。」 「どういう意味だよ。」 だって今日は、クリスマスだから。 #もう、ごめんなさいしか言えない。 #タイトルの元ネタは円谷プロの傑作特撮テレビドラマ、「怪奇大作戦」第7話「青い血の女」より。 正直面影全然無いorz あまずっぱくていいですーー!!♪ なんかどきどきしてきちゃいましたよー?これってなんだろ?だろ!? 兎にも角にも良い作品です。ありがとうございます。 -- ゆっけの人 (2009-01-03 18 18 26) 名前 コメント
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フランダースの犬 →pop'n公式 曲名:よあけの道 アーティスト:新谷さなえ キャラクター:Nyami(ニャミ) 遊べるバージョン:AC6,7,8,9,10,11,12,13,14,15 CS Best Hits! CD収録: pop'n music 6 original soundtrack pop’n music Artist Collection「新谷さなえ」 動画: N譜面 みんなの思い出: 名前 コメント
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タクティクスカード(No.T-18) イラスト:nanatise7 総枚数:3枚 配置先:HQデッキ コスト:4 効果: このカードを廃棄する。 エナジー総量が最も多いプレイヤーは、次の自分のターンにコンバットフェイズを行うことができない 拡張セット【少女達の決意】のタクティクスカードの一つであり、このカードを廃棄するが相手にコンバットフェイズを行なわせない効果を持つ。 コンバットフェイズを行なえなければエナジー入手が困難なので、1位が戦闘を行なえない間に自分たちのエナジーを集めることができる。 ただし、自爆や突然の裏切り、無邪気な追跡者などの効果でエナジーを稼ぐこともできる。また、ターンがスキップされるわけではないので着々とロボットが強化されていく点も注意 効果対象は「発動時もっともエナジー総量の多いプレイヤーを対象とする」となるため、発動後のエナジーの変動は関係がなく、複数人が対象になる場合もある。 イラストではカンナガラとFRONTIERが接触しているが、エミリア・ホークのStory Lineに記載されている「ある事故」なのかもしれない。ここからNo Man Left Behindやヴァリアブル・フォーメーションなどに繋がっていくのだろうか? 効果分類 カードを廃棄 ミス・コンタクト コンバットフェイズを行なえない 関連カード カンナガラ FRONTIER Q A Q.ミス・コンタクトが発動したときにエナジー総量が最も多いプレイヤーが複数いた場合はどのような処理になりますか? A.ミス・コンタクト発動時、最もエナジー総量が多いプレイヤーが複数いた場合、その複数が効果の対象となります(コンバットフェイズを行えない)。また、 No Man Left Behindの場合も同様です。 Q.ミス・コンタクト使用後にエナジー総量が最も多いプレイヤーが変更された場合、このカードの効果はどのようになりますか? A.ミス・コンタクトは「発動時もっともエナジー総量の多いプレイヤーを対象とする」効果です。その後エナジー総量に変化があったとしても対象は変動しません。 Q.ミス・コンタクト、ロマーナの休日、終焉の予兆などの効果でコンバットフェイズを行なえないときに[無邪気な追跡者]]、ヴリル・チルドを確認した場合はどのように処理しますか? A.戦闘は行われます。あくまで「(プレイヤーの意思で)コンバットフェイズを行うことができない」のであるのに対し、無邪気な追跡者の効果は強制であるためです。 名前 コメント
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■通称:ええ 三年D組。女子剣道部部長。頭痛や眠気や恋心に悩む女子高生。 枇杷島や菅原のことを事件後も悪くは思っていない様子。
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12月31日 何処かの山奥にて 「ああくそ!何でこんな所でエンコ何か起こすんだこの車は!」 白い煙を噴出している車のエンジンを見てガタイのでかい男が頭を抱えていた。 一応修理キットなんか持ち出しては見たものの、元々機械に詳しいわけではない彼は 蓋を開けた時点で完全にお手上げ状態だったりする。 「…大月先生、だから言ったんですよ、安いレンタカーを借りるのはやめた方が良いって。」 ,- 、 ) キヽ-、... ...... ノ '-' ) ). --、 ノ ノ .ノ =-、 / // } = , ウ -'' ) = =/) =人 = ) ( = = ノ_ノ/ ノノレ '. / ,ノ /(ヒ_] ヒ_ン) ノ7 ( フ !"" ,___, "" i / ヽ フ 人 ヽ _ン 人 ) ノフ >.., ____,, ._イ ノ そういいながら車の助手席から出てきたのは白い水兵帽がトレードマークのゆっくりむらさであった。 「切り詰めるところは切り詰めておかないと、会社から出た予算なんてすぐ無くなってしまうぞ。」 大月と呼ばれたガタイの良い男はむらさに向かってそう反論する。 「切り詰めた結果がこの立ち往生だよ!どうするんですか! まさか夜明けまでこのままじゃあないんでしょうねぇ?」 そんな大月に対してむらさは呆れ顔でそう返答する。 「ちょっと待ってろ!多分この線とこの線をつなげばまたエンジンが…。」 大月はそう言ってエンジンから飛び出たコードとコードをつないでみた。 ガバチョ! …何か、スパークというにはあまりにも異質すぎる音が響き渡った。 むらさと大月はお互いの顔を見合わせ、すぐさま車から離れる。 ドガアアアアアアアアアン! レンタカーはまるでハリウッド映画のような大爆発を起こした。 「あんな大爆発を起こすなんて一体何をやったんですか、先生!」 「しるか、私だって車のことは詳しくないんだ! と、言うかこれ、レンタカーショップにいくら弁償すれば良いんだ!?」 大月はそう言って頭を抱え込む。 そしてそれはむらさも同じだった。 「…本当にどうするんですか、これから向かうホテルはこの山奥にあるんでしょ? ここから歩きなんてしんどいですよ。」 「むらさ、山奥というのはちょっと違うぞ。」 「…は?」 大月の言葉にむらさは首をかしげる。 「これから取材に向かうホテルは実に不思議なホテルでな、 ホテルがある場所はひとつなのだがそのホテルに向かう道は何通りもあるのだ。 こんな山奥に通じる道の先にホテルがあったと言う話もあれば 静かな湖畔の森の影に立っていたと言う話もある。 何故、世界中のあちこちにホテルに通じる道があるのか…その理由は不明だ、 確かなことは一つだけ、そのホテルはゆっくりと人間のホテルだと言うこと。 そしてそのホテルはとてもゆっくりしていると言うことだけだ。」 「…世界中のあちこちにホテルに向かうルートが現れる…それなら別のルートもあったんじゃあ…。」 「どうやらホテル側が指定したルートか全くの偶然じゃないとホテルに行くことは出来ないらしい。 私も、招待状が届いて、それに同封された地図をたどってここまで来たんだからな。」 それが今ここで一人の人間と一人のゆっくりが立ち往生している理由。 この二人はゆっくりの愛を伝える雑誌『月刊ゆっくりラブ』専属のカメラマン。 この二人の下に、ある日突然届いてきた一通の手紙。 手紙の内容は『君の雑誌でウチのレストランを紹介して欲しいからホテルに来て欲しい』と言うものだった。 世にも珍しいホテルから直々の依頼と来れば断る理由もなし、 編集長の許可も下りて意気揚々と取材に向かったのだが…。 その結果がこの現状、世の中って厳しいね。 「…ハァ、本当にどうしたもんでしょうか…。」 むらさは深いため息をつく。 それとは逆に大月は妙に冷静な雰囲気だ。 「そうため息ばかりついては益々ネガティブになってしまうぞ、むらさ。 ここはホジティブに行くべきなのだ!とりあえずヒッチハイクだ!ヒッチハイク!」 大月はそう言うと、車道に出て親指を立てる。 念のために言っておきますが、大月達は車道の側で車の修理をしてました。 「…こんな山奥に車なんてそもそもやって…。」 むらさが大月にツッコミを入れようとしたその時だった。 ジャジャジャ~ン!ジャジャジャジャ~ン! …何処からか、やたらと壮大な音楽が聞こえてくる。 「…先生、何か、何処かで聴いたようなテーマソングが聞こえてきました。」 「…気のせいじゃないか?こんな所で聞こえるはずがない。」 「そうですよね、きっと遭難寸前の不安による幻聴ですよ、ハハハ。」 むらさが乾いた笑いをあげたその時だった。 車道の向こうから、蹄の様な音を上げて何かが走ってくる 最初は遠く過ぎて、一体何がやって来るのか良く解らなかったが、 蹄の音が大きくなるにつれて、その姿がはっきり浮かび上がってくる。 暴れん坊将軍のテーマに乗って、颯爽と駆け抜けてきたそいつは。 _,,.. -- 、__,,..,,__ ,. -<. `ヽァo、`ヽ. , '7´ ) ';`ー゚) '、 ノ ! ; ! i'´ .i ;.' '; _!_ ,! ! /_!_ ,i ,i ,' '; ゝ、 |__」/_」_ ソ ,.イ | i ,' ! (ヒ_] ヒ_ン ).! / ,' !_ハ_! ,ハ"" ,___, "" !コ i ソーr' ! ヽ _ン r'´二.ヽ ', ;' ノノ>.、.,_ ,.イ/´ _iノヽ i _,,.. -‐ァ'"´ ̄`7ー 、.,_ン´ ,,.ィ`i7こ__ノ こ二、ヽ,ハノ ,ト、_/|___>-‐ァ7"´  ̄`ヽ、 `メ、' レ' i iヽ._/ レ' く \/|>-‐──- 、., /| \_ノ\ | ! (二`ヽノヽ_ />''"´ ´ ̄ ̄`"' 、 \| \_,ノ 、 | ) `i Y´_,.] / \ ' , ∧ ,ハ !| / !゚zD゚) / ∨ハ ./ |ハ ',!|レ'"´`'┬'´ ,' / __/ /| i ヽ; | ! \.| .|_/|ヽ、 rヘ. | ;ハ/トゝ / '、 /_ i '; '、/| | |-―v、 | / | (ヒ_] ヒ_ン )_;ハ | ヽ/ |_/| ヾ、, `ヽ../∨ 7,, ,___, "" |/! / ハ| |ヽ、_ ,,.ソ..! | ト、 ヽ _ン '/レ' | | | |_/| ~ヽ..∨´|\| へ、 / / / ノ / / ヽ. |/| レへ `>r-‐,∠ __; イ/| ; イ/_,/ ヽ. \_ \ /´ カナこン´ ` /レ'´ /_,/ i \_ \__________/_/ i \/_/_/_/_/_/_/___/ ,; ノ ヽ | ー 、 ,r',. '" '/~~`ヽ、 | | ; |`ヽ、__ヾ , /;;;;;;; "/! ヽ | i ; | ヽ ,| ヾ、 `) \ !、 ! ;| | | ヽ / ヾ i! | ; | ! , ,i / . | | | | | | ,/,i ,.-'",;、 ,/ ! ;| _ノ | / ,! `ーー'" ノ i; /rrrn ノ / / LLL,,,ノ (,rrn_,,,ノ 何か犬のような何かに乗った、ゆっくりの中でもっとも囚われない事で有名なゆっくりさなえであった。 「…………。」 むらさも大月も、声が出なかった。 驚きもしなかったのではない、 驚きすぎてどうリアクションしたら良いかわからないのだ。 犬?に乗ったゆっくりサナエは呆然としている大月とむらさの目の前を通り過ぎ…。 「ハイヨー!ドゥドゥ!」 キキィイイイイイイイイイ! …ると見せかけてわざわざUターンして二人の前でストップするのであった。 「…むしろ通り過ぎて欲しかったです。」 むらさ、率直な感想ありがとう。 とにかく、二人の前で止まったゆっくりさなえは犬?から降りて二人の元へとやってくる。 「すみません、何か派手な爆音が聞こえたので慌てて駆けつけたのですが…。 何があったのですか?」 そして、むらさと大月にそんな質問を投げつけてきたのだ。 「え?えと、実はホテルに向かう途中にチョット事故っちゃいまして…。」 むらさはチョット脅えながらもさなえに事情を説明する。 「そうですか…それで立ち往生して困っている、と。」 さなえは納得した顔でうんうんと、頷いた。 そして、スグにむらさと大月に向かってこう言った。 「所で、これから向かうホテルって「ゆっくりホテル」って名前じゃないですか?」 「え?何で解ったんだ?」 さなえに目的地を言い当てられて驚く大月。 「ヤッパリそうでしたか、実は私、あそこで清掃員として働いてるんですよ。」 「え?」 「チョット寝坊してしまってこうして急いでいたのですが、目的地が同じなら丁度良い! 私の横綱犬八坂号に乗っていきませんか?」 「えぇ!?」 さなえの申し出に戸惑うむらさと大月。 確かにその申し出はありがたい、自分達だけではこの山奥で立ち往生していたのは確実だからだ。 しかし、むらさも大月もそのさなえの申し出には困惑の色を示していた。 「…どうなされたんですか?別に私にとっては貴方達の送り迎え位苦ではありませんけど…。」 「いや、私たちとしても貴方の申し出はありがたい、ありがたいんだが…。」 大月はそう言って、さなえの後ろを指差した。 _,,.. -‐ァ'"´ ̄`7ー 、.,_ ,ト、_/|___>-‐ァ7"´  ̄`ヽ、 `メ、 く \/|>-‐──- 、., /| \_ノ\ />''"´ ´ ̄ ̄`"' 、 \| \_,ノ 、 / \ ' , ∧ ,ハ / ∨ハ ./ |ハ ', ,' / __/ /| i ヽ; | ! \.| .|_/| | ;ハ/トゝ / '、 /_ i '; '、/| | |-―v、 | / | (◯), 、(◯)._;ハ | ヽ/ |_/| ヾ、, `ヽ .. /∨ 7,,"" ,rェェェ、 "" |/! / ハ| |ヽ、_ ,,.ソ .. ! | ト、 |,r-r-| '/レ' | | | |_/| ~ヽ .. ∨´|\| >.、.,`ニニ´ ,.イ / / ノ / / ヽ. |/| レへ `>r-‐,∠ __; イ/| ; イ/_,/ ヽ. \_ \ /´ カナこン´ ` /レ'´ /_,/ i \_ \__________/_/ i \/_/_/_/_/_/_/___/ ,; ノ ヽ | ー 、 ,r',. '" '/~~`ヽ、 | | ; |`ヽ、__ヾ , /;;;;;;; "/! ヽ | i ; | ヽ ,| ヾ、 `) \ !、 ! ;| | | ヽ / ヾ i! | ; | ! , ,i / . | | | | | | ,/,i ,.-'",;、 ,/ ! ;| _ノ | / ,! `ーー'" ノ i; /rrrn ノ / / LLL,,,ノ 【横綱犬 八坂号】 (,rrn_,,,ノ さなえが後ろを振り向くと、さなえが乗っていた犬?が顔を真っ青にして、全身を震わせていた。 「さ、三人…一人でもつらいのに…。」 震える口調でそんな事を呟いている。 そんな様子の自分の相棒を見て、さなえはずかずかと犬の方に駆け寄る。 「…かなこ様?何でそんなに震えるんですか、彼らが不安がっていますよ?」 「い、いやだってさなえ一人でもヘトヘトなのに、この上三人乗りをする事になったら…。」 「何ですか、仮にも貴方ほどのものが重量が二人増えたくらいで根を上げるというんですか?」 「いや、いくら何でも三人乗りは道交法ゴニョゴニョ…。」 「…良いから貴方は黙っていなさい、良いですね?」 「…ハイ。」 犬?がシュンとした表情でそう頷くと、さなえは二人の元に戻ってきた。 「話はつきました、遠慮なくかなこ様の後ろに乗ってください。」 実に涼しい表情でそう言い放つさなえ。 大月とむらさは困惑の表情でお互いの顔を見合わせた。 「ど、どうします先生?何かあっちは殆ど一方的に話がついたみたいですけど…。」 「…しょうがない、とりあえずあのゆっくりの提案には乗ろう。」 「…そうですね、これで断ったら何かあの犬もっと酷い目に合いそうですもんね。」 「そういう事だ。」 意見をまとめた二人は、お互いにコクリと頷いて、さなえの方へと振り向いた。 「…私たちをホテルにまで連れて行ってくれないか?」 _,,.. -- 、__,,..,,__ ,. -<. `ヽァo、`ヽ. , '7´ ) ';`ー゚) '、 ノ ! ; ! i'´ .i ;.' '; _!_ ,! ! /_!_ ,i ,i ,' '; ゝ、 |__」/_」_ ソ ,.イ | i ,' ! ,ー、 ,ー、 .! / ,' !_ハ_! ,ハ"" ,___, "" !コ i ソーr' ! ヽ _ン r'´二.ヽ ', ;' ノノ>.、.,_ ,.イ/´ _iノヽ i i ン´ ,,.ィ`i7こ__ノ こ二、ヽ,ハノ ', ! ァ'レ' レ' i iヽ._/ レ' 、_)、ノヽ/ / | ! (二`ヽノヽ_ /二_'i | | ) `i Y´_,.]、 __/ / | !| / !゚zD゚) ', /i´'; ` ,.く ヽ、__! !|レ'"´`'┬'´ ヽ、 i._、'; ! / `ー‐‐‐'、ヽ、 rヘ. //ヽ 「ええ、喜んで!」 大月の申し出にさなえは笑顔でそう答えるのであった。 ~☆~ 「さあ、皆さん!つきましたよ~!」 犬?をとめてさなえは後ろに座る大月とむらさにそう呼びかけた。 辺りはいつの間にか赤い霧に包まれ、周りの様子を見渡すことが出来ない。 しかし、そんな状況でも、はっきりと目の前に巨大な赤い建物が建っていることが一目でわかる。 これこそが、大月とむらさが向かう目的地『ゆっくりホテル』である。 「…?どうしたんですか?ホテルに着きましたよ!二人とも!」 一度呼びかけたさなえは返事が返ってこないのが気になってもう一度呼びかける。 しかし、返事は返ってこない。 それはそうだろう。 大月は両手を使って、むらさは帽子を深く被って、 何故か両耳を塞いでいたんだから。 「…何してるんですか、二人とも。」 さなえはそう言ってむらさの帽子を取り上げた。 お陰で早苗の声がむらさの耳に入ってくるようになる。 「…!?あ、目的地に着いたんですか…大月さん!着いたみたいですよ!」 目的地に着いたことを理解したむらさは慌てて大月に体当たりを繰り返す。 「ハッ!もう終わったのか?」 大月も正気に戻ったのか辺りをキョロキョロ見回している。 「一体どうしたんです?まさか八坂号に乗っている間ずっと耳を塞いでいたんですか?」 取り上げた帽子をむらさにかぶせ直しながらさなえは二人にそう言ってくる。 「え?だって?」 「なぁ…。」 二人は複雑な表情でお互いの顔を見合わせた。 …二人が耳を塞いでいた理由、それは走行中のさなえと八坂号のやり取りに会った。 「な、なあさなえ!ちょっと休ませてもらえないかい!?あたしゃもう限界…。」 「何を言ってるんです、遅刻は厳禁ですよ?全力で走ってください。」 「で、でも3人も乗せて走るなんて無茶が出来るわけ…。」 ピシイッ! 「ヒッ!」 「…やさか様、私は黙って目的地に迎え、と言ってるんです。 これ以上口答えするなら、私も考えがありますよ?」 「わ、解った、解ったからムチはやめて!ムチは!」 こんなやり取りが延々繰り返されたのだ。 正直耳を塞いでいなければやってられない。 「…とにかく降りましょうか、大月さん。」 「そうだな、むらさ。」 二人は犬の上から地面に降りたった。 「それじゃあ私はやさか様を駐車場へ止めてきます、 後はご自由になさってください。」 そう言うと、さなえは犬に乗って駐車場に向かおうとする。 「…チョット待ってください。」 と、そこへむらさが呼び止める。 「どうなさったんですか?」 「いえ、一つ質問があるんですが…。」 「何でしょうか?」 「駐車場で犬をとめた後、犬はどうなるんですか?」 「…?そんなの決まってますよ、帰る時までそのままです。」 「そ、そう、そのまま なんだ…。」 なんだか犬?がかわいそうに見えてきたむらさと大月であった。 その気持ちを察してか、犬はむらさたちに向かってこう言った。 「…大丈夫だよ、慣れてるからこういうの。」 …そう言われると余計やるせなくなるんですが。 こうして、ちょっとダウナー気分のまま、さなえと犬を見送る羽目になった二人なのでした。 「…さて、落ち込んでる場合じゃないぞ、むらさ。」 「…そ、そうですね、先生。」 さて、何時までも落ち込んでいる場合ではない。 二人がここに来たのは、ホテルでゆっくりするためではない。 仕事のために、二人はここに来たんだから。 ~☆~ ゆっくりホテルには宿泊客がゆっくりするための施設が沢山ある。 温泉は勿論、エステサロンやトレーニングジムまでホテルの中に設置されている。 そして、食の分野でもまた然り、 和食、洋風、スイーツ、何でもござれな店構えなのだ。 「…取材して欲しいという依頼があったのはこの店でしたよね、先生。」 「ああ、間違いない。」 そして大月とむらさはある店の前に立っていた。 『中華料理店、ホンジャマカ』 看板にはそう刻まれていた。 「それにしても、よく考えたら店の方から取材の依頼なんて珍しい話ですね。」 むらさの言うとおりだった。 普通店の取材というのは、その店の評判を聞きつけて、取材する側から店に依頼するものだ。 取材と言うものがどういうものか作者は知らんがきっとそうだと思ってる。 「それほど、店の味に自身があると言うことだろ?その自身が本物かどうか、見極めるのが我々の仕事だ。 気を引き締めていけよ、むらさ。」 「…ハイ。」 大月の呼びかけに、力強く答えるむらさ。 それを確認すると、大月は店の扉に手をかけた。 「いらっしゃいませ~。」 __ ,___ / ヽ,--- 、.-- ヽ ( i ) . . . . . . . . . . . .\ ) ヽ _ _ ノノ . . . 人. . . i. . . . . .ヽノ ノ>,.- ' . . / ヽ . ヽ . . . . . く / ノ. . ./ . . /.( __,. \ ゞ、__ゝ ゝ ノ . . (. . . .( (ヒ_] ヒ_ン レスヽ /. . 人 . .ヽ ゝ" ,___, " b. ヽ. \ ( /ヽ ( ヽ. . . ヽ _ン 人ヽ .)ヽ ) 片腕有角の仙人 )レ人>,、 _____, .イ )ノ 茨華仙(茨木華扇) 扉を開けて出迎えたのは最近何気に認知度が高い片腕有角のゆっくりかせんだった。 「…まぁ、中華っぽいし妥当なチョイスだな。」 「そうですね、先生。」 大月とむらさは彼女を見てそんな感想を漏らすのだった。 「…あ、そのカメラ…もしかして貴方が大月さんですか?」 その時、かせんが大月を見てそんな質問を投げかけてくる。 「ああ、そうだが。」 大月はそう返事する。 「…思いのほかイケメンじゃね~や。ってか、ただのおっさん?」 かせんはがっかりした顔になってそんな事を呟いた。 「ぐはっ!」 言われた大月は酷いショックを受ける。 「ちょ!先生はちょっとした事で傷つくナイーブな心を持っているんです! うかつなことは言わないでくれませんか!?」 むらさはかせんに向かってそう言ってくる。 「あらそうなんですか、それは気づかなかったわ。 あんな外見でも中身がそうだとは限らないものね。」 かせんは何気に酷い言葉を返す。 「…と、とりあえず我々はこの店の取材に来たんだが… 早速、席に案内してくれないかな?」 ちょっと凹みながらも大月はかせんにそうお願いする。 流石ベテランカメラマン、ちょっと位の精神ショックくらいじゃあへこたれない。 「ああ、そうでしたわね、それじゃあこっちに。」 かせんはそう言って二人の案内を始めた。 大月とむらさは案内されている間に店の様子を一瞥する。 店内は赤を貴重とした典型的な中華料理店だ。 目に付くところと言えば席についているのが必ずゆっくりと人間と言う組み合わせであるくらいか。 しかし、席の数に対してまだ人数は少なく、時間帯的にもちょっとガラガラしすぎている所はある。 「この店は『ゆっくりと人間の絆を深める中華料理店』というコンセプトで一月前にオープンしたの。 もう、固定客が来るくらいには評判になってるけど、まだまだ老舗の「椛飯店」には及ばなくてね。 それで、貴方達にこの店を紹介してもらって店の知名度を一気に上げようってのが店長の魂胆なのよ。」 かせんはそんな説明をしながら大月とむらさを席にご案内した。 大月とむらさが着いた席は何処にでもある中華テーブル。 あの丸くなっている部分をクルクル回すことが出来る奴だ。 「ハイ、これがメニュー、どれも腕によりをかけた一級品ですよ。」 かせんがそう言っていつの間にか頭に載せていたメニューを大月とむらさに差し出した。 メニューに書かれていたのは餃子、炒飯、シュウマイと言ったおなじみの中華メニュー。 「………?」 しかし、大月はそのメニューを見て首を傾げていた。 「そんな顔をして、どうかしたの?」 大月の顔を見て、かせんがそんな質問を投げかける。 「…なぁ、このメニュ~、何だか普通過ぎないか?」 「普通すぎる?」 「この店は『ゆっくりと人間の絆を深める中華料理店』がコンセプトなのだろう? その割にはメニューになんのひねりも無いなと思ってな。」 大月がそう言ったとたん、かせんは口元をニヤリとさせる。 「…流石は一流記者もうその事に気づかれましたか。」 不敵な笑みと共にそう言ってくるかせんに対して、大月とむらさは背筋にゾクリとしたものを覚えた。 「あの、その態度は普通じゃないメニューもあるってことですか?」 何か聞くのも怖いが聞かなきゃ話は進まない。 恐る恐るむらさはかせんに質問を投げかける。 「えぇ、メニューの裏を見て下さい。」 かせんに言われたとおり、大月とむらさはメニューを裏側にしてみる。 『餡かけ』 裏側にはこう書かれていた。 しかもメニューの裏面全部使うくらいの勢いで。 「…え?あの、何ですか、この餡かけって?」 当然の質問がむらさの口から出た。 「これこそがわが店最大の見せ場であります。 ささ、遠慮なくご注文くを!」 かせんは大月達に思いっきり注文を進める。 「えぇ~…。」 むらさは本気で注文するべきかどうか迷ってしまった。 何せメニューの裏には餡かけとしか書かれていないのだ。 値段さえ書かれていない、注文したらいくら取られるか解らない。 それが何より一番怖い。 「…よし、私が注文しよう!」 しかし、迷うむらさを尻目に大月が大声でそう宣言した。 「せ、先生!?こんな得体の知れないものを注文しちゃうんですか!?」 むらさが驚いた顔で大月にそう問いかける。 それに対し、大月はふふんと笑ってこう言った。 「むらさ…記者と言うものは、時には大胆な決断をしなくてはいけないものだ、 そういう時は迷ってはいけない!チャンスは二度とめぐっては来ないのだからな!」 大月のその言葉にむらさはからだの奥がジンと来るのを感じる。 「…え?あんたが注文しちゃうの?」 一方、かせんは注文を聞いてちょっと呆然としていた。 「どうした?お勧めしたのはお前だろ?」 「いや、確かにそうだけど…まさかあんたがが注文しちゃうとは…。」 かせんはどうしたものかしばし考えている様子だったが…。 「…まぁ注文しちゃったのは仕方がないわね、ちょっと待っててね。」 かせんはそう言うと、机の上に置いてあるベルを咥えてチリンチリンと鳴らす。 「店長!8番テーブル人間男から『餡かけ』入りましたー!」 そして大声でカウンターの方へ向けてそう叫ぶ。 それと同時に、カウンターの奥から誰かが出てくる。 _rrf≦三ミ=z、__ ,ィ彡{ft彡ソリ}ルノシハミ≧、 `丶 ,イ{{{(くミ彡彡ミ彡彡三彡'へ、 \ fトミミミミゞ≧三彡彡≦彡三ミt ヽ、 { ;ィ''"`"´ ̄''"´ ̄`~¨ヾ彡彡} 丶 ',ヽ } fi ; ; Yシイf ' ,| \ | リ ; ;,f リ '、 ヽ、 { { ,ィzzェェュ; rェェzz 、、V | ヽ .` ー--f^リ ´ィt テミ _rt テミ`' 〈 /^! ヽ .; |{f! . `゙""´. . `""゙´ リぅi!、 `ヽ丶 . ヾ} ,. .. 、 ノレソ 丶、、 _,. V `i r‐ '´゙ー、_,.‐ ' \ 、 トく___ ` ン´ i| j| 、 ! 、ー--―ァ' ` ,' ;/ } `` 丶、 / j{ j| ヽ'、 、`ー一 ´, / /' イ _,. -‐`ー- 、 | , ' ,/}! l| ヾ、 `"^^"´ // / _,. -'´ `ヽ、 _,」.. ' ,./ ,リ ハ . 丶.__,. イ j{ r '´ ヽ / 《 fi ! ヽ / /'´ ', ヽ-‐ ' , ' ;ソ ヽ / | 〈_ _,.-'´ ,. ' ハ 丶 / | 、´ / / ヽ ` | `亡´__, ' ヽ 出てきたのはパンツ一丁の大男。 どう見てもアメリカ生まれにしか見えないその外見からは中華料理店の店長と言う風貌には見えない。 そしてその手には熱々の餡が入った片手鍋が握られている。 男は足音も立てずに大月の後ろに歩み寄り―― ドバアッ! 片手鍋の中の餡を大月の頭から思いっきりぶっ掛けた! 「ギャアアアアアアアアアアアアア!」 「せ、先生~!?」 大月とむらさの叫びが同時に店内に響き渡った。 「おぉ、流石店長、ゆっくりどころか人間相手でも容赦ない餡かけっぷり。」 かせんは実に冷静な目で頭から餡をかけられてのた打ち回る大月を観察している。 「ウェイトレスさん!?これは一体なんなんですか!?」 むらさはかせんに向かって凄い剣幕で問いかける。 「これこそ中華料理店ホンジャマカ最大の名物、餡かけサービスでございま~す。」 「これの何処がサービス!?熱々の餡なんか掛けられたら唯じゃあ済みませんって!」 「いや、本当はこれゆっくり専門のサービスなんですよ、本当ならあんなふうに。」 かせんはそう言って他のテーブルに視線を向ける。 むらさもかせんの視線を追ってみると、その席に座っていたのはれみりゃと人間の女性であった。 みると、先ほどの男がれみりゃの方に向かって歩いてきている。 勿論、その手には餡が入った片手鍋を持って。 ┏━━━━━┓ ┃ ┃ γ⌒ヽ ┃ ┣━━━━━━┓ ゝ,,__ノ ┗━━━━━┻━━━━━━┛ |||||||||||| (;´⌒. 川|||||||| ( ) ) ,. -───-- 、_ ♪ rー-ノ " `ヽ、. \ _」 i _ゝへ__rへ__ ノ__ `l く `i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、 }^ヽ、 .r'´ノ\ ゝイ,.イノヽ! レ ヽ,_`ヽ7ヽ___ 、_ ノ ハ } \ _人人人人人人人人_ /ヽ/ r'´ ィ"レ´ ⌒ ,___, ⌒ `! i ハ / }! i ヽ > うー! うー! < / / ハ ハ/ ! /// ヽ_ ノ /// i ハ 〈〈{_ ノ } _」  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ ⌒Y⌒Y´ノ /l ハノ i ヽ⌒Y⌒Y´ 〈,.ヘ ヽ、 〈 i ハ i 〉 ノ レ^ゝi>.、.,_____,,...ィ´//レ'ヽハヘノ そして、その熱々の餡はれみりゃの頭上からどばあっとぶっ掛けられた。 「うわ!?」 むらさは一見したらいじめにしか見えない光景に思わず目を瞑ってしまう。 しかし、れみりゃは寧ろ嬉々とした表情で餡まみれになっている。 「う~お姉さん、立派な餡がかかったど~。」 餡まみれになったれみりゃは向かいに据わったいる女性の前へと飛び跳ねていく。 「うわ~おいしそう、いっただきま~す。」 女性は目の前に居るれみりゃを抱き上げるように持ち上げる。 そしてそのまま徐に、れみりゃを餡毎舐め始めた。 「ぺろぺろ、ぺろぺろ…アア肉まんの風味に餡が混ざってたまらないわ…。」 「うっう~れみりゃもおね~さんもあまあまで幸せだど~。」 こうやって二人だけの世界を生み出す女性を餡かけれみりゃ。 ・・・ムラサの内には言いたい事がムクムクと沸いてくる。 まずれみりゃの方はあんな熱々の餡を掛けられて平気なのか、ウチの先生がのた打ち回るほどの熱さなのに。 そして女性の方もあんな熱々の餡を掛けられたれみりゃに触ったり舐めたりして平気なのか? 何よりあの餡を持っている筋肉男は何者なのか?店長か?かせんが店長を呼んで来た以上店長なのか? 「…あれ?お二人さん取材に来たんでしょう?何か質問はないの?」 しかし、今むらさはかせんの言葉にも答えられないくらい頭が混乱していた。 もう一方の大月の方は…。 「あああああああああああああ!」 それ所じゃなかった。 まぁ、頭から熱々の餡を掛けられたのだ、回復まで時間は掛かるだろう。 とりあえず、この店の取材でむらさが学んだことは一つ。 『重大な決断はノリで決めずに良く考えてから決断を下せ。』 ~☆~ 次のページへ
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植苗駅 うえなえ Uenae 美々駅 ←千歳線→ 沼ノ端駅 駅番号:H16 所在地:北海道苫小牧市