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プレイヤー用語 ひみつの友だち 【ひみつのともだち】 どもだちメニューからなる通常のともだちとは別に、ひみつのことばを伝えることでひみつの友だちになることができる。ひみつの友だちは、通常の友達の機能が使えるのはもちろんのこと、自由文を使ったチャットができるようになる。このチャットでは、スピードチャットの定型文と異なり、全角24文字以内の自由文を使うことができる。ただし、NGワードを含む文章は自分では見えるが、相手からは見えないので注意が必要。言葉遣いのチェックもある。 ひみつの友だちになると、友達リストの中でそのトゥーン名が青色で表示される。「ひみつ」と略されることが多い。 ひみつの友だちになるためには、次の手続きを行なう。 招待する側 ともだちメニューを開き、「ひみつリスト」ボタンをクリック 「ひみつゲット」ボタンをクリック 表示された「ひみつのことば」を記録する ひみつの友だちになりたい相手に、上記のひみつのことばを伝える 招待される側 ともだちメニューを開き、「ひみつリスト」ボタンをクリック 下部のボックスに受け取ったひみつのことばを入力する 「ひみつ」を入力ボタンをクリックする なお、ひみつのことばは半角英数文字で「3文字+半角スペース+3文字」のフォーマットとなる。また、発行後は1回限りかつ48時間以内に相手が入力しないと、無効になってしまう。無効になってしまった場合は、再度発行し相手に伝えなければならない。 一つ前のページにもどる
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今日【二つの給付金】というCMがしていて、対象の方は、給付金が支給されます!という内容でした。そこで、早速【二つの給付金】について調べてみました。すると、①臨時福祉給付金~所得の低い方の負担を緩和します~②子育て世帯臨時特例給付金~子育て世帯の負担を緩和します~というものでした。①は、平成26年度分の住民税が課税されていない方が対象らしい。だけど、対象者を扶養している人が課税されている場合や生活保護の受給者である場合などは対象外になるというもの。対象者には、1人につき1万円(1回限り)が支給される。また②は、◇平成26年1月分の児童手当・特例給付を受給している人。◇平成25年の所得が児童手当の所得制限限度額未満の世帯が対象との事。どんな流れで申請書を提出すればよいかわからなかったので、早速大阪市給付金コールセンターに電話して聞いてみました。すると、対象の世帯には7月中旬以降に封書が届けられ、必要書類を揃えて返信する必要があるようです!また、対象の世帯として所得の限度額が決まっているのでそこも聞いてみると、我が家は所得制限限度額の内に入っていたので、確実に給付金を支給されるとの事でした。一回限りの1万円でも大きいので、必ず申請書が到着したら提出したいと思います!
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【検索用 なつのみそれ 登録タグ UTAU な ナカノは4番 曲 曲な 桃音モモ】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:ナカノは4番 作曲:ナカノは4番 編曲:ナカノは4番 唄:桃音モモ 曲紹介 曲名:『なつのみぞれ』 2018年2月、SoundCloudにてロックアレンジ投稿。 歌詞 (作者ブログより転載) 何現象?それ 一生涯曖昧な散弾銃の海で されるがまま息しないでふわり 超体験して受け取るあの子の電波は なんだか褪せた朝焼け色 雨上がり 水たまり その傘に 西向きの影 鮮やかな虹、過ぎて 愛と恋の核実験ドキドキ たぶん忘れたの 抜け道、坂道、帰り道 わがままにきづかずに 声がほらあなたを貫いた 何現象?それ 一生涯曖昧な散弾銃の海で されるがまま息しないでふわり 環状線沿い100mちょっと 海岸線上ふかふか 感じてみたいの無重力 雨上がり 水たまり あの傘にみずいろが跳ねて 吹き抜ける白い風 それとなく揺れる黒い髪 そうなの 夢をみた あなたと急展開から直滑降 左胸はじけて 空の青から言葉がグルグル 全回転して右手に伝わる何かを 突き抜けて飛んでった そんな夢をみた あ、その影から芽が出て揺れてる 懐かしさに揺れている 朝焼けはそのままで 掴もうとも触れられないまま 雨上がり 水たまり その傘に 答えはあるか コメント 名前 コメント
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どうぶつの森
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313 三つの鎖 18 中編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/03/30(火) 22 51 57 ID bAmrO5zr 次の日の朝、梓は部屋から出てこなかった。 体調不良だから休むとドア越しに言った。 昨日の夜、梓は僕に何も言わなかった。僕が何を言っても涙を流すだけで何も言わなかった。 京子さんが僕の肩のテーピングをしてくれた。今日は腕を吊らないことにした。今日の夕方に夏美ちゃんの家にお邪魔する。腕を吊ったままだと心配をかける。 朝食は京子さんが手伝ってくれた。 父と京子さんの三人での朝食。いつもとおり静かな食卓。 食後、僕と父はリビングでお茶を飲んでいた。京子さんは洗面所で歯を磨いている。 「幸一」 父が僕に声をかけた。いつもとおりのポーカーフェイス。何を考えているのか分からない無表情な顔の中で、瞳だけが力強い光を放っている。 「梓とは仲良くしているのか」 脳裏に涙に濡れた梓の表情が浮かぶ。 「まあまあかな。以前より良くなったよ」 半分は嘘だ。梓は僕と二人きりのときは露骨に迫ってくる。 でも、そんな事を父に言えない。言えば梓は遠方にやられる。今まで会ったことのない親類に預けられるだろう。梓が遠方に追いやられるとどうなるか。過去のように再び荒れるに違いない。 いや、それだけではすまない。柔道の稽古で父の同僚の方たちと知り合った時に、父の仕事ぶりを聞く事ができた。父は優秀で厳しい警察官らしい。冷静で冷徹。梓が僕にしたことを知られると、父は冗談抜きで梓を逮捕しかねない。 父は僕を無表情に見つめた。何を考えているのかはその表情からは読み取れない。 「幸一。梓は母親に似ている」 僕は驚いた。僕が覚えている限り、父が僕の生みの親の事に言及したのは初めてだ。 もう一つ驚いたのは梓が母親に似ているという事だ。梓はどう考えても、少なくとも見た目は父に似ていると思う。いつも無表情なところや鋭い目元なんてそっくりだと思う。 「僕を生んでくれた人ってどんな人だったの?」 父は微かに目を伏せた。まるで過去の記憶に思いを馳せるかのように。 「哀れな人だ」 微かな違和感。父の言う意味が僕には分からなかった。相変わらずの無表情に微かに表情が浮かんだ気がしたけど、どんな表情かは分からなかった。 「もし梓の事で何か悩みがあれば、いつでも言いなさい。言えないと思っている事でも心配ない」 父の言葉が胸に突き刺さる。 今の梓の事や春子の事を相談すればどうなるだろう。 言えない。 「ごめんねー。お化粧に時間がかかっちゃった」 京子さんがリビングに入ってきた。相変わらず若々しい。四十代に届く年とは思えない肌の張り。 僕と父を見て京子さんは不思議そうな顔をした。父は湯飲みを置いて立ち上がった。 「行ってくる」 そう言って父は鞄を手に立ち上がった。 「あらいけない。もうこんな時間ね」 京子さんは時計を見て慌てたように鞄を持った。 僕は二人を玄関まで見送った。 「誠一さん。ネクタイが曲がってるわ」 京子さんは父のネクタイを直した。白くて細い指。ふと梓の手が脳裏に浮かんだ。 「幸一君。梓ちゃんをお願いね。今日は早く帰ってくるから」 「今日も遅くなる。頼む」 そう言って二人は出勤した。 僕はキッチンに戻り、おかゆを作った。梓の体調が心配だ。昨日の事がショックで寝込んでいるのかもしれない。 お盆を持って階段を上る。梓の部屋の扉をノックした。返事はない。 「梓。入るよ」 扉を開けると、閉め切られた部屋に特有のむせた空気が流れる。 僕は机の上にお盆を置き、窓を開けた。澄んだ朝の空気が入り込む。ベッドの上で梓は布団を頭までかぶっていた。白い指が布団の端からのぞく。 なぜか京子さんの指先が脳裏に浮かんだ。 「梓。おかゆを作ったよ。食べられる?」 僕は布団の上から梓を揺さぶった。 突然、白い腕が出てきて僕を布団の中に引きずり込んだ。僕の背中に腕が回される。 目の前に梓の顔がある。泣きそうな表情で僕を見つめている。 「好き。兄さん」 梓は震える声で僕に告げた。僕の足に梓の素足が絡まる。 僕は布団を跳ね除けて起き上がろうとしたけど、起き上がれない。梓の手足が僕に絡みつく。 「お願い。抱いて」 耳元に梓の囁き。梓の吐息が熱い。 僕は梓の肩に手を当てゆっくりと押した。そこで初めて梓は何も着ていない事に気がついた。慌てて視線をそらす。その隙に梓は僕に抱きついてきた。 「梓。はなして」 背中に回される梓の腕に力がこもる。 梓は悲しそうに僕を見た。今までに見た事ないような儚い表情。 「私じゃだめなの」 314 三つの鎖 18 中編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/03/30(火) 22 53 32 ID bAmrO5zr 僕は首を横に振った。 「梓は僕の大切な妹だ。それに僕には恋人がいる」 「兄さんが夏美のことを好きなのは知っている。わかっている」 梓の目尻に涙がたまる。 「兄さん。兄さんは私を大切にしてくれた。私に妹としての思い出をたくさん与えてくれた」 背中に回された梓の腕が震える。 「私、兄さんのことをあきらめる。妹で我慢する。もう何も言わない。だからお願い。一度だけでいい。私を女として扱って。妹だけじゃなくて女としての思い出をください」 梓は僕を抱きしめた。服越しでも梓の柔らかい体と熱い体温が伝わる。 僕は梓をゆっくりと引き剥がした。 梓の気持ちは嬉しかったけど、それをはるかに越えて悲しかった。 僕たちは兄妹なのだから。 「ごめん。梓の気持ちには応えられない」 僕はベッドを降りた。梓は上半身だけ起こして僕を見た。 梓の上半身が露になる。透き通るような白い肌、小ぶりだけど形のいい胸、まとめられていない艶のある黒い髪はほつれている。まだ大人になりきってない子供の幼さと大人になろうとしている女性らしい曲線が混ざり合って妖しい魅力を放っている。 血のつながった妹なのに、思わず見とれてしまった。 「何でなの」 梓の声に僕は我に返った。 涙が梓の目尻からぽろぽろ落ちる。落ちた涙が滑らかな梓の肌を伝って落ちた。 僕は梓に背を向けた。 ドアのノブを握り梓の部屋を出ようとした。慰めの言葉をかけようとは思わなかった。それは梓に失礼だと思ったから。 梓は妹ではなくて一人の女の子として僕に接してきた。だったら僕も男として梓をふる。 「お姉ちゃんを抱いたのに、何で私を抱いてくれないの」 何も言わずに部屋を去ろうと思った。それなのに、梓の言葉は僕の足を止めた。 梓の言葉に頭が真っ白になる。 久しぶりに梓がお姉ちゃんという言葉を口にした。 梓の指すお姉ちゃん。 春子。 後ろからひたひたと素足で歩く足音と気配がゆっくりと近づく。 あまりの恐怖に息が詰まる。 「兄さんは脅されたからお姉ちゃんを抱いたの」 僕のすぐ後ろで足音は止まった。 梓の気配をすぐ後ろに感じる。息遣いすらも感じる。 動こうとしても、根が生えたように足が動かない。 「私、お姉ちゃんと同じことはしない。もう兄さんを傷つけたり脅したりはしない」 梓の吐く息が首筋に当たる。 「兄さん。お姉ちゃんに脅されているんでしょ」 梓の細い腕が僕の腰に回される。背中から梓の体温が伝わる。 「兄さんが望むなら、お姉ちゃんを殺してもいい」 梓の言葉に背筋が凍える。 「だって兄さんは脅されてひどい事をされているのでしょ。だったら私が兄さんを守る。兄さんにひどい事をする女は、例えお姉ちゃんでも殺す」 本気だ。 淡々として抑揚に乏しい口調。 それでも梓の気持ちが伝わってくる。 本気で僕のために春子を殺すと言っている。 「兄さんは何も考えなくていい。私が兄さんを守る。だからお願い。一度だけでいい。私を女にして。女として扱って。女としての思い出を与えて」 梓の細い腕に力がこもる。 ぽたりと、涙の落ちる音がした。 僕は梓の腕をほどき、梓のほうを振り向いた。 白い裸身が目に入る。梓は僕を見て笑った。泣き笑いだった。 梓は僕の胸に顔をうずめた。 「梓。お願いだ」 僕は梓の背中に腕を回した。梓の滑らかな背中の感触が手に伝わる。 「お願いだからそんな事を言わないで」 ずっと春子と一緒に育った。 一緒の時を過ごした。 そばにいてくれた。 励ましてくれた。 勉強を教えてくれた。 料理を教えてくれた。 家事を教えてくれた。 315 三つの鎖 18 中編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/03/30(火) 22 56 36 ID bAmrO5zr 辛かった時、笑顔を向けてくれた。 春子にどれだけ助けてもらったか、言葉に尽くせない。 たとえ今は脅され、夏美ちゃんを裏切ることを強制されても、嫌いになれない。 ひどい事をされても、殺されていいなんて思えない。 一緒の時を過ごしたのは梓も一緒だ。 梓が生まれた時から一緒だった。 血を分けた大切な妹。 その梓に、人殺しなんてして欲しくない。 例えそれが僕のためであっても。 梓は顔を上げて僕を見た。不思議そうに僕を見上げる。梓の頬に僕の涙が落ちる。 「兄さん?何で泣いているの」 梓は僕の顔に手を延ばした。頬に梓の小さな手が触れる。 その手が僕の涙をぬぐう。 「梓も春子も、僕にとっては大切な人だ。大好きな妹と姉だ」 梓に傷つけられても、春子に脅されても。 二人を嫌いになれない。 僕の大切な姉と妹だから。 「兄さんの馬鹿」 梓は小さな声で言った。梓の頬を涙が伝う。 僕は学生服の上着を脱いで梓の肩にかけた。梓は学生服の襟をつかんで悲しそうにうつむいた。 涙が床に落ちた。 「兄さん。一つだけ教えて」 梓は顔を上げて僕を見た。 いつもよく見る梓の無表情。瞳だけが悲しげな光を放つ。 「もし私と兄さんが兄妹じゃなかったら、兄さんは私の恋人になってくれた?」 「分からない。梓と兄妹じゃないなんて想像もつかない」 僕は梓を見た。僕の学生服の隙間から梓の白い肌が見える。裾からは細くて柔らかそうな素足が伸びている。 「でも、梓の裸には見とれてしまった」 そう言って僕は目をそらした。 「血のつながった妹なのに。ごめん」 梓は微かに笑った。柔らかい微笑み。 「この変態シスコン。妹の裸に見とれるなんて」 「反論できない。ごめん」 「いいわよ。私も変態だもん」 梓は肩にかけられた僕の学生服に顔を押し付け深呼吸した。 「私ね、兄さんの匂いが好き。いつも兄さんの洗濯前の服を持ち出して匂いを嗅いでいたんだ」 梓は苦笑した。 「私たち、おあいこだね」 僕も苦笑した。そこまで変態じゃない、一緒にしないでと思ったけど、言わなかった。 二人で笑ったのは本当に久しぶりだったから。 梓は僕をまっすぐに見た。 「好き。大好き。兄さんの何もかもが好き」 澄んだ瞳が僕を見つめる。 「愛してる。誰よりも兄さんを愛してる。お願い。私を兄さんの恋人にして」 梓の目から涙が伝う。 血の分けた妹の願い。血のつながった兄と添い遂げること。 歪んでいるけど純粋な願い。 僕はハンカチを手に梓の目元をぬぐった。 「ごめん。梓の気持ちにはこたえられない」 僕は梓に背を向けた。 兄妹。僕と梓は血を分けた存在。 結ばれる事は許されない。 「兄さんの馬鹿。絶対許さないから」 後ろから梓の声。 梓の声は微かに震えていた。 「学校はどうするの」 少ししてから梓は答えた。 「休むわ」 「そう。何かあったら連絡して」 僕は梓の部屋を出た。 316 三つの鎖 18 中編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/03/30(火) 22 58 10 ID bAmrO5zr 閉めたドアの奥から泣き声が聞こえた。 胸が張り裂けそうな悲しい泣き声。 それでも、僕は振り返らなかった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 僕は遅刻した。 梓のご飯を作った分、遅れた。鳥の照り焼きを作って食卓に置いておいた。偽善と分かっていても、そうしてしまった。 一時間目の途中から僕は教室に入った。クラスメイトの視線が突き刺さる。 教師に寝坊と伝えて僕は自分の席に座った。 耕平はドンマイという風に軽く手を挙げた。 春子はちらりと僕を見た。 僕は驚いた。春子の顔は少し腫れていた。 梓の顔が脳裏に浮かんだ。春子と喧嘩とはこの事なのかもしれない。 一時間目が終わった休憩時間に、僕は春子の席に近づいた。 「幸一くん」 僕に気がついた春子が泣きそうな顔で僕を見た。 近くで見るとはっきりと分かる。春子の顔が微かに腫れているのを。 「それは」 僕の言葉に春子は微かにうなずいた。 それだけで僕たちは理解しあえた。 ぱたぱたと足音が近づいてくる。 夏美ちゃんの足音。 「お兄さん!」 扉がガラッと開いて息を弾ませた夏美ちゃんが入って着た。 そのままの勢いで僕に近づく。 「あの、その、ぜぇはぁぜぇはぁ」 肩で息をする夏美ちゃん。 春子は夏美ちゃんを見て笑った。 「夏美ちゃん。どっからどう見ても変態だよ」 「は、ハル先輩。すいません」 春子は立ち上がった。 「春子。どこに」 「もう。女の子が席を立つときに質問しちゃだめだよ。お手洗いに行ってくるだけ」 春子は笑って教室を出て行った。 僕は夏美ちゃんの袖をつかんで目配せした。夏美ちゃんは何も言わずにうなずいた。 二人で教室を出て人気の少ない階段まで移動した。 「ハル先輩の顔、もしかして」 夏美ちゃんは言いにくそうに僕を見上げた。 僕はうなずいた。 「何があったかは聞いていない。今日のお昼休みにでも詳しく聞こうと思う。だからごめん」 お昼には春子と二人でいる。 夏美ちゃんは笑顔で許してくれた。 「いいです。気にしないでください」 お昼に春子から詳しい話を聞こう。 そしてその場に夏美ちゃんが同席していると、詳しい話しをできない。 ごめん。僕は心の中で夏美ちゃんに謝った。 「あの、お兄さん、その」 夏美ちゃんは言いよどんだ。頭を振り、僕をまっすぐに見た。 「梓とは大丈夫でしたか」 今日の朝を思い出す。あれは大丈夫といえるのだろうか。 でも、梓は笑ってくれた。 「大丈夫だよ。見てのとおり怪我もないでしょ」 僕は昨日吊っていた肩をすくめた。本当は固定して吊るした方がいいけど。 「だから今日の夜にお邪魔するよ」 夏美ちゃんの顔が輝く。 「あの、本当にいいんですか」 「うん」 「本当の本当ですか」 「本当の本当だよ」 317 三つの鎖 18 中編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/03/30(火) 23 00 21 ID bAmrO5zr 夏美ちゃんの目尻に涙が浮かぶ。 「ぐすっ、本当ですか、ひっくっ」 僕はうなずいた。夏美ちゃんの目尻から涙がぽろぽろ落ちた。 「ひっくっ、ぐすっ、ひぐっ、無茶、ぐすっ、してないですか?」 「もう大丈夫」 僕は夏美ちゃんを抱きしめた。僕の背中に夏美ちゃんの腕がまわされた。 夏美ちゃんは僕の腕の中で子犬のように震えた。その背中をそっと抱きしめる。小さいけど、あの日僕に勇気をくれた背中。 「もう、ひっくっ、お兄さんとっ、ぐすっ、梓が、ひぐっ、喧嘩しないですか」 「分からない。でも、梓はきっと分かってくれる」 夏美ちゃんは顔を上げて僕を見上げた。涙がとめどなく夏美ちゃんの頬を濡らした。 「梓は僕の妹だ。きっと分かってくれる」 僕はハンカチで夏美ちゃんの顔をぬぐった。 予鈴が鳴る。 「放課後に迎えに行く」 「ひゃい」 夏美ちゃんは涙でぐちゃぐちゃの顔でうなずいた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ お昼休みに僕と春子は校庭に向かった。 この学校の校庭は広くてベンチも多い。日差しをさえぎる木も多くて夏が近づく今でも涼しい。他にもお昼を食べている生徒は多い。 僕たちは他の生徒と離れたベンチに腰を下ろした。 「梓と何があった?」 僕は単刀直入に尋ねた。 春子はうつむいて何も言わない。春子の手が微かに震えている。 「ばれたの?」 何かを言わなくても春子は分かったようだ。 顔を上げて僕を見る春子。今にも泣きそうな頼りない表情。 「梓に言われた。お姉ちゃんを抱いたんでしょって」 春子は目を見開いて僕を見た。口元を押さえ震える。目尻に涙が浮かぶ。 「お、お姉ちゃんね、昨日ね、梓ちゃんに全部ばれちゃった」 涙がぽろぽろと零れ落ちる。 僕は何も言わなかった。春子が自分からばらすはずがない。きっと梓は何か感づいて春子を追い詰めたのだろう。 「そ、それで、ひっくっ、梓ちゃんにっ、ぐすっ、二度と話しかけないでって」 見ていてかわいそうな程春子は涙を流す。 哀れな春子。あれほど梓の事を好きで大切にしていたのに。 これだけの事を春子にされても、憎しみよりも哀れみの気持ちを感じてしまう。 春子は僕を見て目を見開いた。胸の前で手を握り締め震える春子。 「…だっ」 「え?」 小さな春子の声。何て言ったか聞き損ねた。 「やだっ!」 春子の声が校庭に木霊する。 遠巻きに僕たちに視線が突き刺さる。 「そんな目でお姉ちゃんを見ないで!」 春子は肩を大きく上下して荒い息をついく。 脅えたように僕を見上げる。 「春子。落ち着いて」 春子は僕の言う事を聞いていなかった。春子は僕の胸に顔をうずめ背中に腕をまわした。 「お姉ちゃんを哀れむみたいに見ないで」 春子の涙がぽろぽろと僕のシャツに零れ落ちる。 僕は春子の震える背中と頭に腕をまわした。小さな背中そっと抱きしめる。 「お姉ちゃんねっ、分かっていたよ。いつかこんな日が来るって。梓ちゃんにも幸一君にも嫌われる日が来るって」 春子は顔を上げた。涙に濡れた春子の顔。 「こんな事いつまでも続けるのは無理だって分かっていたよ。幸一君は立派だもん。梓ちゃんの鎖が幻だったみたいに、お姉ちゃんの鎖も幸一君はすり抜ける事は分かっていたよ。それでも、その日までは幸一君のそばにいたいの」 僕は春子の頭をゆっくりと撫でた。 「ひどい事をしてもされてもいい。幸一君と梓ちゃんに嫌われても憎まれてもいい。幸一君のそばにいたい。そのためなら他の何もかもどうでもいいって思っていたのに」 春子の涙は止まらない。 「それなのに、梓ちゃんに嫌われたのが、こんなに悲しいなんて。分かっていたのに。自業自得なのに」 春子は僕をぎゅっと抱きしめる。離さないでというように。 318 三つの鎖 18 中編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/03/30(火) 23 03 13 ID bAmrO5zr 「幸一君に憎まれてもいいと思っていたのに。それなのに何でなの。何でお姉ちゃんに優しくするの。何でお姉ちゃんを哀れむの」 僕の服をぎゅっと握る春子の手。 「ひどい事をされるよりも、嫌われるよりも、憎まれるよりも、優しくされるのが一番つらいよ」 震える春子の背中を、僕はそっと抱きしめた。 春子は泣いた。僕にしがみついて、子供のように泣きじゃくった。 昔は逆だった。僕は寂しい時によく泣いた。父さんも京子さんも来られなかった授業参加、梓と二人きりの夕食、運動会の後に楽しそうに帰る家族達を見ながら梓と手をつないで帰った日。 寂しくて仕方がない時、僕は部屋で一人で泣いた。梓の前では泣けなかった。 そんな時、春子は来てくれた。家に来て僕を抱きしめてくれた。寂しくて泣きじゃくる僕を優しく抱きしめてくれた。 春子は僕の姉さんだった。それは今も、これからも変わらない。変われない。 「無理だよ」 僕の言葉に春子は泣いたまま。 「姉さんを嫌うなんて、僕には無理だよ」 最初から無理だった。僕が春子を嫌う事も、春子が僕を脅し続ける事も。 ずっと昔から僕たちは仲の良い姉と弟だった。 今でもそれは変わらないし、変われない。何があっても。 「いつかは分からないけど、梓は姉さんをゆるしてくれる。姉さんが僕と梓を助けてくれたみたいに、僕も姉さんと梓が仲直りできるように協力する」 春子の目的が何であれ、春子は僕と梓の仲直りのためにたくさんのことをしてくれた。 何度も三人で食事に誘ってくれた。 何度も三人で遊びに行く計画を立ててくれた。 何度も料理や家事を教えてくれた。 梓に嫌われていると思っていた頃、一番つらかった頃、春子は何度も僕を励ましてくれた。そばにいてくれた。 「お姉ちゃん、幸一君と梓ちゃんに最低な事をしたよ」 春子は泣きじゃくりながら僕を見上げた。 「もう、嫌なんだ」 「え?」 「大切な三人で傷つけあうのは、もう嫌なんだ」 春子の顔が悲しみに染まる。 「姉さんも梓も、大好きで大切な姉と妹だから」 僕はハンカチを手に春子の涙をぬぐった。 今日、三人の涙をぬぐった。 梓に夏美ちゃんに春子。 三人の涙の重さは変わらない。 三人とも僕にとって大切な人。 春子は僕の胸に顔をうずめた。 「ごめんね。こんなお姉ちゃんでごめんね」 僕の服を春子はつかむ。微かに震える白い手。 「お願い。お姉ちゃんにね、もうちょっとだけ時間をちょうだい。あとちょっとだけ。そうしたら、最初から始められる。幸一君のね、お姉ちゃんに戻れる」 春子は消え入るような声で囁いた。 僕を脅迫し続けた春子が初めて僕の言う事に耳を貸してくれた瞬間。 春子は分かってくれた。 もう、夏美ちゃんを裏切る事も、春子を傷つける事も、しなくていい。 大好きで大切な人同士で、傷つけあわなくていい。 まぶたの裏が熱くなる。視界がにじむ。 僕の涙が春子の頬に落ちた。 春子はハンカチを取り出して、僕の目元を拭いてくれた。春子自身も泣きながら僕の涙を拭ってくれた。 僕たちは泣きながらお互いに涙を拭いた。 涙は止まらなかった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 放課後、僕は夏美ちゃんの教室へ向かった。 夏美ちゃんの教室をのぞくと、夏美ちゃんは頬杖をついてぼんやりとしていた。 切なそうな表情。胸が締め付けられるような悲しい瞳。 僕は声をかけられなかった。夏美ちゃんの横顔がびっくりするぐらい綺麗で見とれた。 立ち尽くして見つめる僕の視線に気がついたのか、夏美ちゃんは僕の方を振り返った。途端に切なそうな表情が消え、明るい笑顔が浮かぶ。 「お兄さん!」 夏美ちゃんの声に僕は我に返った。夏美ちゃんはパタパタと僕に近づき、僕の手を握った。 小さくて温かい手。頬が熱くなるのを感じた。 「行きましょう!」 夏美ちゃんは僕に笑いかけて歩き出した。見ているだけで幸せになれそうな明るい笑顔。 319 三つの鎖 18 中編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/03/30(火) 23 04 33 ID bAmrO5zr 僕は夏美ちゃんに引っ張られるように歩いた。 「まずは買い物に行きましょう!お父さんとお母さんからお金を渡されています。極上のお肉を買って来いって言ってました!」 夏美ちゃんは嬉しそうに買い物の話をする。どこのお店においしいお肉があるか、野菜はどこで買うか、普段は買えない高級なお肉の事。 「ビールも忘れちゃだめだよ」 「そうでした。お父さんもお母さんもお酒を好きですから、忘れたらすねちゃいます」 洋子さんと雄太さんの好きなビールの銘柄を夏美ちゃんは生き生きと話した。いつも家の冷蔵庫にあったから覚えているらしい。二人とも同じビールが好きらしい。 僕の父と京子さんが脳裏に浮かぶ。父は全くお酒を飲まない人だ。京子さんも嗜む程度。 夏美ちゃんは僕を引っ張りながら嬉しそうに今晩のすき焼きの事を話す。 幸せそうで明るい屈託ない笑顔。 その笑顔に僕は見惚れた。 「お兄さん?」 夏美ちゃんが不思議そうに僕を見た。 「何でもないよ」 夏美ちゃんは僕の手をぎゅっと握りしめた。 「私がいます」 僕を見上げる夏美ちゃん。 先ほどとは違う真剣な眼差し。落ち着いた大人びた表情。 「きっと大丈夫です」 梓の事も、春子の事も。 僕は夏美ちゃんの手を握り返した。 「…ありがとう」 夏美ちゃんの言う通りにきっとなる。 いつかまた、梓とも春子とも、仲良くなれる日が来る。 きっと来る。 僕の手を引っ張る夏美ちゃんの手。小さくて温かい掌。 その温もりが嬉しくて心強い。 風が吹く。僕は上を見上げた。 天気は良くない。どんよりとした曇り空。 それでも、きっといつか晴れる。 いつか皆との関係も、きっと良くなる。 「お兄さん?」 夏美ちゃんは不思議そうに僕を見た。 「何でもないよ」 僕は微笑んだ。夏美ちゃんも笑ってくれた。 梓とも春子とも笑い合える日が来る。 いつか、きっと。 戻る 目次へ 次へ
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260 三つの鎖 23 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/03(土) 01 30 57 ID lvsVY0kD 耕平が部屋を出ても梓は見送らなかった。 「梓」 「見送りはいらないって耕平さんも言ったじゃない」 そう言って梓は僕にしなだれかかった。梓の素足が僕の足に絡まる。そのまま僕に頬ずりする。 「梓。離れて」 「いや」 僕の言葉を無視して抱きつく梓。 この一週間、梓はずっとこの調子だ。 看病してくれるのはありがたいし嬉しい。実際問題、体調不良は深刻だった。今でこそ多少ましになったけど、最初は立ち上がるのもおぼつかなかった。 ただ、多少は体調が良くなった今でも僕にべったりとくっついてくる。 「兄さん」 梓の白い指が僕の頬に触れる。冷たくて滑らかな感触。 僕を見上げる濡れた瞳。上気した頬。 梓は僕の頬を愛おしそうに撫でる。僕はその手をそっと掴み、ゆっくりと引き離した。 不満そうに僕を見上げる梓。 「そんなに私が嫌なの」 そう言って梓は僕に抱きついた。柔らかい感触。背中に梓の腕が回される。 「違うよ。風邪がうつる」 「嘘つき」 背中にまわされた梓の腕に力がこもる。 梓は僕を見上げた。無表情な表情の中で瞳だけが強烈な感情を放っている。 劣情なのか、憎悪なのか。分からない。 それでも、こんなのは良くない。 僕と梓は兄妹だから。 「梓。離して」 梓は何も言わずに僕の頬に触れた。冷たい感触。 梓が口を開こうとした瞬間、電子音が部屋に響く。 僕の携帯電話。 僕は手を伸ばしディスプレイを見た。 洋子さんだ。 「もしもし」 『幸一君。体調はどうだい?』 元気そうな洋子さんの声。 少し聞こえにくい。にぎやかな場所にいるようだ。 『実は今空港にいる。これからアメリカに戻る』 そういえば洋子さんは一旦アメリカに戻って、仕事を辞めるための引き継ぎをすると言っていた。 『三週間ほどで帰国できると思う。それまで夏美を頼むよ』 「はい」 『ちょっと待って。娘と代わるから』 僕から離れる梓。不機嫌そうな視線が突き刺さる。 『あ、あの、お兄さん?』 久しぶりに聞く夏美ちゃんの声。 それだけで涙が出そうになる。 「うん。久しぶりだけど、元気にしてる?」 『も、もちろんです!あの、お兄さんの体調はどうですか?』 「大丈夫。もうすぐ登校できると思う」 明日、とは言えない。 それぐらい今の僕の体調不良はおかしい。今までに経験した事の無いぐらい長引いている。 『あ、あの、お兄さん』 「っ!」 股間に服越しに何かが触れる感触に思わず声を漏らしそうになる。 梓が、僕の股間をパジャマの上から触れている。 『お兄さん?』 「い、いや、何でもない」 膝を閉じようとするのを梓は体を入れて防いだ。 そのまま下のパジャマを無理やりおろし、トランクスの上から剛直を撫でる。 『あ、あのですね』 梓の白い指がトランクスの隙間から剛直に直に触れる。 ひんやりとした感触にうめき声が漏れそうになる。 『あの、梓がいいって言えばですけど』 261 三つの鎖 23 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/03(土) 01 32 46 ID lvsVY0kD 梓の白い指が僕の剛直を擦る。 僕は携帯電話を持っていない手で梓を引き離そうとするけど、離れない。 『そ、その、今度、お見舞いに行っていいですか』 梓の赤い舌が剛直の先端をぺろりと舐めた。 「っ!」 『え?お、お兄さん?大丈夫ですか?』 携帯電話から心配そうな夏美ちゃんの声。 「だ、大丈夫だよ」 必死になって梓を引き離そうとするけど、体調不良に加え片手では引き離せない。 梓は剛直を舐めながら擦る。その刺激に意思とは無関係に剛直が固くなっていく。 「お、お見舞いだよね」 『は、はい』 足を使って梓を引き離そうとするのを、梓はかわした。僕の足がむなしく宙を蹴る。 仕返しとばかりに梓は剛直の先端を咥えた。 熱くて湿った感触に体が震える。 「っ、もう治ると思うから、遠慮しとくよ」 『…そうですか』 残念そうな夏美ちゃんの声に胸が痛む。 「っ!」 『お、お兄さん?』 梓の舌が剛直の先端を激しく舐める。 「ちゅっ、じゅるっ、んっ」 しゃぶる音が微かに聞こえる。 「ご、ごめん。電池が切れそうだからもう切るよ。洋子さんによろしく」 『は、はい。お大事――』 最後まで聞かずに僕は電話を切った。 携帯を投げ捨てるように置き、両手で梓を引き離す。体調不良でも、両手なら何とかなる。 地面にペタンと座り僕を無表情に見上げる梓。その瞳が奇妙な光を放つ。 抵抗したせいか、頭痛が激しい。心臓がでたらめに暴れる。息苦しい。 それらを無視して僕は梓を睨んだ。 「梓!なんて事をするんだ!」 ズボンを上げようとする僕の手を梓の手が押さえる。 無視してズボンを上げようとした瞬間、手に激痛が走る。 痛みをこらえて手を見る。 手首の関節が、外されている。 「暴れないで。後ではめるから」 そう言って梓は僕の股間に顔をうずめた。 痛みを無視して梓を引きはがそうとするけど、片手では何もできない。 梓の白い手が僕の剛直を握る。 「っ!止めろ!」 僕の言葉を無視して梓は再び剛直を咥えた。 「んっ、ちゅっ」 ざらりとした舌の感触に背筋が震える。 僕を見上げる梓の視線。熱っぽい光を孕む瞳。 むき出しの華奢な肩。白くて柔らかそうな素足。 頭がおかしくなりそうな嫌悪感と、確かに感じてしまう快感。 「っ!いい加減にしろ!」 無事な方の手で梓の髪を掴み引きはがす。 「いたっ!!」 梓の悲鳴。それでも僕は手を離さない。 艶のある綺麗な長い髪。 「自分が何をしているのか分かっているのか!?」 梓は涙の浮かんだ瞳で僕を睨んだ。 「なによ。妹にしゃぶられて大きくしているくせに」 「梓!」 「痛いから離して」 痛みを全く感じさせない梓の声。 僕は奥歯を噛みしめて梓の髪を離した。 その手に梓の両手が伸びる。 「あぐっ!?」 262 三つの鎖 23 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/03(土) 01 33 56 ID lvsVY0kD 再び手首に激痛が走る。 「この一週間寝てばかりで溜まっているでしょ?大人しくして」 梓は再び僕の足の間に体を滑り込ませた。 引き離そうとするが、痛めつけられた両手では何もできない。 「んっ、ちゅっ、ちゅっ、はむっ」 僕の剛直を咥え、しゃぶり、舐める梓。 「っ!止めろ梓!」 足で梓を離そうとするけど、できない。 執拗に剛直の先端を舐める梓。さらに白い手が剛直を上下に擦る。 梓の唾液でべとべとの剛直と梓の白い手が滑らかに滑る。 血のつながった妹に口でされる嫌悪感と背徳を含む快楽。 「ちゅっ、んっ」 僕を見上げる梓の濡れた瞳。 視線が合った瞬間、感じてはいけない快感が脳天を突き抜ける。 梓に咥えられたまま、僕は達した。 「んっっっ!?」 驚いたような梓の声。 溜まっていたせいか、自分でも驚くほどの量が出る。 「んっ、ごほっ、んっ」 苦しそうにむせる梓。 梓の白い喉が小さく震える。 「んっ、こくっ」 懸命の喉を鳴らし僕のを飲み込む梓。 「っ、やめっ、ろ」 声が震える。 僕の言葉を無視して梓は最後まで飲み込んだ。 口を離す梓。口の端から白濁が微かにこぼれる。それを梓はぺろりと舐めた。 「ふ、ふふ」 梓は座ったまま僕を見上げて笑い声を洩らした。 「ふふっ、あははっ。さすが私の兄さんね。妹にしゃぶられてこんなに出すなんて」 梓の言葉が胸に突き刺さる。 「ねえ、どうだった?血のつながった妹に口でされるのってそんなに気持ち良かったの?」 僕は唇をかみしめた。 「男は刺激されるとこうなるだけだ」 「なによ言い訳して。認めなさいよ。妹にしゃぶられて出しちゃうほど気持ちよかったんでしょ?」 梓は立ち上がって僕の手を握った。激痛とともに手首がはめられる。 「っ!」 「ねえ。どうなのよ。気持ち良かったからこんなに出たんでしょ?」 もう片方の手も激痛とともにはめられる。 手早くズボンをはきなおし、僕は梓を睨んだ。 梓は恍惚とした表情で僕の視線を受け止める。 「兄さん。あんな女より私の方が気持ち良かったでしょ」 その言葉に頭が沸騰する。 「夏美ちゃんの方が気持ち良かった」 梓の表情が凍りつく。顔から血の気が引く。 痛いほどの沈黙が部屋を満たす。 どれぐらいの時間が立ったのだろう。梓は口を開いた。 「そう。そうなの」 静かな梓の声。 でも、そこには怖気が走るほどの激情が込められている。 今更になって言ってはいけない事を言ってしまった事に気がついた。 でも、もう引けない。 無表情に僕を見つめる梓の視線を僕は正面から受け止めた。 梓の手が僕にゆっくりと伸びる。 僕の頬に触れる直前、一階で物音がした。 玄関の開閉の音。階段を上る足音。 足音は僕の部屋の前で止まり、ドアが開く。 「あ、起きてたの?」 僕たちを見て京子さんは微笑んだ。 「幸一君。立てる?」 263 三つの鎖 23 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/03(土) 01 35 04 ID lvsVY0kD 「…はい」 「じゃあ着替えてくれる。今から病院に行くから」 京子さんは僕の額に触れた。 「うーん。熱、下がってないわね」 「お母さん」 梓は不機嫌そうに京子さんを見た。 「別に病院なんかに行かなくても兄さんは大丈夫よ」 「梓ちゃん。今まで幸一君がこんなに体調不良が続いた事なかったでしょ。もしかしたらただの風邪じゃないかもしれないから、一応お医者さんに診てもらいましょ」 京子さんの言う事は正論だ。 梓はそれ以上何も言わなかった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 兄さんが診察を受けている間、私と京子さんは待合室で座って待っていた。 この病院に最後に来たのは、兄さんが入院して、いえ入院させて以来だ。 「梓ちゃんごめんね。幸一君の看病をまかせっきりにして」 「気にしないで」 むしろ私は兄さんを一人占め出来て嬉しかった。 寝ている兄さんの傍にいるだけで幸せだった。 熱を帯びた兄さんの大きな手を握っているだけで幸せだった。 苦しそうな兄さんの寝顔を見ているだけで幸せだった。 「梓ちゃん?」 京子さんは怪訝な表情で私を見た。 「兄さん大丈夫なのかしら」 私を無表情に見つめる京子さん。その表情からは何を考えているか分からない。 「加原さん!」 私と京子さんは声の方向を振り向いた。そこには看護師の女性がいた。 「ちょっと行ってくるね」 京子さんは立ち上がって看護師の方へ歩いて行った。 そういえばここは京子さんが働いている病院だ。 そんな事を考えていると、京子さんが戻ってきた。 「病院の方で欠員が出たからヘルプで働いてくるわ。悪いけど幸一君をお願い」 「分かったわ」 「何かあったら連絡してね。帰るのは日付が変わるころだと思う」 そう言って京子さんは去って行った。 病院の待合室は騒がしい。そんな中一人で私はぼんやりとしていた。 脳裏に浮かぶのは今日の事。 兄さんの精液の味。 私は唇をなぞってため息をついた。 素直に嬉しかった。 兄さんは私で気持ち良くなってくれたんだ。 妹の私を女として見てくれたんだ。 それなのに、兄さんの言葉が脳裏に浮かぶ。 (夏美ちゃんの方が、気持ち良かった) 私は唇をかみしめた。 惨めな気持ちが私を襲う。 屋上で兄さんが夏美を犯している光景。 あれがどれだけ私を打ちのめしたか。 夏美でも、兄さんに抱いてもらえる。春子も、兄さんに抱いてもらった。 私も兄さんに抱かれたい。犯されたい。滅茶苦茶にされたい。 何でなの。兄さんから見て、私に魅力が無いの。 兄さんになら何をされてもいいのに。 何でそこまで兄さんは嫌がるの。 血のつながった妹を抱くのが、そんなに嫌なの。 他人が決めた禁忌なんて、無視すればいいのに。 そんな事を考えていると、兄さんが診察室から出てきた。ふらつく足取りで私の隣に座る。 「どうだったの」 「ただの体調不良だって」 兄さんは怪訝そうに周りを見渡した。 「お母さん、お仕事に行ってくるって。急に欠員が出たらしいわ」 264 三つの鎖 23 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/03(土) 01 35 52 ID lvsVY0kD 「そう」 短い兄妹の会話。 もっと兄さんとお話したい。兄さんの声を聞きたい。 「加原さんの保護者の方いますか?」 受付の人が声を張り上げる。 私と兄さんは顔を見合わせた。 「私、行ってくる」 私は立ち上がり受付に向かった。 「ええと、保護者の方ですか?」 「妹です。付き添い出来ました」 私を見て不思議そうな顔をする受付の人に私は言った。 「診察室に入っていただけますか。先生がお呼びです」 私は診察室に入った。そこには初老の医者がいた。 「どうぞお座りください」 私は言われるままに腰をおろした。 「兄さんに何かあったのですか」 「ああ、心配しないでください。どこか悪いとかいうわけではありません」 じゃあ一体何なの。 「お兄さんは一度この病院に入院していますから記録が残っています。鍛えているだけあって健康そのものです。驚異的な回復力でした。ただですね、今回は何か悩み事でもあるのかと」 最近の内科は個人的な悩みまで聞くのかしら。 「お兄さんの体調不良ですが、どうもストレスが原因と思われる点がいくつかあります。それも強いストレスです」 ストレス。強いストレス。 「健康なのに体調不良が長引くのもストレスが原因だと思われます。何か心当たりはありますか」 「ありません」 医者は首をかしげた。 「お兄さんが悩んでいるのでしたら、その悩みを取り除ける手助けをしてあげてください。どうも悩みをため込んでいて、それが体調不良につながっているように見受けられます」 医者の話はそれで終わりがった。 私は受付で精算してお薬を受け取って兄さんに近づいた。 「梓。先生はなんて言ってた」 「栄養のあるものを食べさせてだって」 「そう」 兄さんは疲れたように言った。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 病院から帰るタクシーの中で兄さんは泥のように眠り続けた。 玄関を開けて家に入ると、おいしそうな匂いがした。 兄さんは気が付いていないようだ。私は兄さんの肩を支えながら兄さんをベッドまで連れて行った。 「今からご飯を作るからちょっと待ってて」 兄さんは何も言わずに眠った。その寝顔は疲れ切っているようだった。 食卓の上にはメモが置いてある。見覚えのある文字。 『京子さんから連絡をもらいました。よかったら食べてください』 名前は書いてなかったけど、誰かは分かった。 キッチンに入ると、お皿にラップがしてあった。鳥の照り焼きとサラダ。コンロには鍋が置いてある。開けるとお粥が入っていた。どれも丁寧に作られている。 私はそれらを全て捨てた。 手早くお粥を作り、できたそれを持って二階に上がる。 部屋に入ると、兄さんは相変わらず眠っていた。 私は兄さんをそっと揺らした。 「兄さん。お粥を作ったけど食べられる?」 兄さんは薄らと目を開け起き上った。 「…ありがとう。いただくよ」 震える手を伸ばす兄さんを制して、私はスプーンを握った。 「その手じゃ食べられないでしょ」 私はお粥を掬って兄さんの口元に持っていった。 兄さんは私を睨んだけど、諦めたように口にした。 「はやく良くなってね」 私は思っていることと正反対の事を口にした。 そんな私を兄さんは疲れたように睨んだ。 戻る 目次へ 次へ
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―――――――――――――――――――――――――――――――─――――――――― エンゼルギア 天使大戦RPG The 2nd Edition ―――――――――――――――――――――――――――――――─――――――――― ┌キャラクター名───────────────┬プレイヤー名──────────┐ │楠木 千早(くすのき ちはや) │炬燵 │ ├──┬────┬──┬──┬──────┬─┴─┬───┬──────────┤ │年齢│ 15│性別│女性│初期アガペー│535│経験点│総 15/消 15│ ├──┴────┴──┴──┴─────┬┴───┴───┴──────────┤ │ライフパス │ダーザイン │ │ 出自/古き血族 │他人 からの好奇心 │ │ 境遇/急転直下 │戦争 からの支配 │ │ダーザイン │ からの │ │ からの │ からの │ ├──────────────┬────┴──┬─────┬──────────┤ │クラス │オーギュメント│タイミング│効果 │ │ギアドライバー │ケテル │オート │成功数+20 │ │サムライ │ホド │ダメ決定 │ダメ+10D6 │ │ナビゲーター: │ │ │ │ ├───────┬──────┴┬──────┴┬────┴──┬───────┤ │肉体: 8│感覚: 6│理知: 3│聖霊: 8│階級: 4│ │運動 3Lv│射撃 1Lv│情報処理1Lv│意志力 2Lv│軍略 1Lv│ │回避 3Lv│整備 1Lv│誘導 1Lv│エーテル1Lv│陳情 1Lv│ │格闘 4Lv│探知 2Lv│事情通 1Lv│芸事 1Lv│ │ │白兵 4Lv│砲術 1Lv│調達 1Lv│話術 1Lv│ │ ├───────┼───────┼───────┴───┬───┴───────┤ │HP: 16│行動値: 4│戦闘移動 9m│全力移動 18m│ └───────┴───────┴───────────┴───────────┘ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 特技 タイミング 技能 修正値 難易度 対象 射程 アガペー ※接合 オート 自動 なし なし 自身 なし 7 覚醒 常時 自動 なし なし 自身 なし なし ※気合一閃 ダメ決定 自動 なし なし 自身 なし 5 カウンター 常時 自動 なし なし 自身 なし なし 鎌鼬 メジャー 格・白 なし 対決 単体 30m/500m 2 蜻蛉斬り リアクション 白兵 -2 対決 自身 なし 3 オニの血族 常時 自動 なし なし 自身 なし なし 二刀流 常時 自動 なし なし 自身 なし なし ☆捻り刃 ダメ決定 自動 なし なし 自身 なし 5 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ヴィークル 種別 肉/感/理/聖 装甲 整備 HDP 携行 戦/全 オサフネ SG 6/3/3/0 25 0 2 ○ 800/8000 九九式高機動空戦主翼 FAST 2 400/4000 強化軽量装甲 装甲 12 ―――――――――――――――――――――――――――――――─――――――――― ヴィークル小計 6/3/3/0 37 4 1200/12000 基本値 8/6/3/8 ナビゲーター修正 その他 6 …………………………………………………………………………………………………………… 合計 行動値:10 14/9/6/8 43 0 4 1200/12000 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 武装 種別 使用技能 装備部位 修/合 攻撃力 対天使 射程 エンゲルシュヴァルト 白兵 白兵 片手 -2/12 +13 ○ 至近 カタナ 白兵 白兵 片手 0/14 +13 ○ 至近 ウェポンラック OP FAST固定 ┗呪法剣 白兵 白兵 片手 -3/11 +12 ○ 至近 ┗カウンターソード 白兵 白兵 片手 -2/12 +10 ○ 至近 (リポスト時) +1/15 ウェポンラック OP H ┗エンゲルシュヴァルト白兵 白兵 片手 -2/12 +13 ○ 至近 ┗カタナ 白兵 白兵 片手 0/14 +13 ○ 至近 追加装甲×3 OP H×3 装甲+6 Pエンブレム(菊水紋)OP 行動値+3 専用カラー(白) OP 意志力判定値+2 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ その他装備/常備化ポイント:4 エンゲルシュヴァルト、カタナ、シュタイルハンドグラナーデ パイロットスーツ、認識票、携帯電話、スコップ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 設定 髪の色:黒 瞳の色:黒 肌の色:黄(ヤシマ人/オニ) 身長:154cm 体重:41kg 外見的特徴:つの 草薙家の遠い傍系にあたる楠木家の出で、 家を継ぐべき兄もいたため、ごく普通に厳しく育てられつつも、ごく普通にちょっと良いと このお嬢さんとしてよくあるような人生を送る予定だったのだが、まず最初に兄、則村と兄 妹二人、黒い天使核の持ち主であることが判明し、GDとしてのレールに乗せられてしまっ たのが不運の始まり。 さらに、そのことを一つの武器として軍の上層部に食い込もうとか調子に乗った父親が”不 慮の事故”で死亡すると、それまで交友のあった人たちが急によそよそしくなる。 そして極めつけには、品行方正文武両道とか思っていた兄が、何時の間にか合衆国に内通し ており、GDとして最初の任務において友軍を全滅させ、シュネルギアに乗ったまま合衆国 へ亡命とかありえないことを成し遂げてしまった。 そんなものは寝耳に水の出来事であったが、裏切者の家族と言うことでさらに有力な保護者 も後援者も、父親の一件からいないということで、三食監視つきの軟禁生活へと突入。 同時期に母は心労で亡くなり、親戚からの連絡が途絶えたりしたため、一人静かに生活して いた。 と、言う事になっているが、実際には、GDがどうしても必要であるが配属されることは 決して無い、軍の記録上には特務としてすら存在しない筈である、和歌山混成特殊戦隊(仮) に身請けされ、謎にあふれた地、和歌山でGDとして活動。 和歌山での記録などはデータが一切残っていないために不明であるが、顕著な戦果を残した が為、この度、フェレシュテ隊(仮)に転属となったのだと思われる。 ちなみに書類上は勿論、前歴が無かったことになっているため、ピカピカの新兵。 あと、和歌山における全ては最重要機密扱いなため他言無用。というかあまり喋って楽しい ものじゃないと思うしね、ちゃんとした基地が無い部隊での戦争とか!(笑) 飄々として適当でいい加減な感じ。落ち着いていて、どんな状況でも何を言われてもどんな 相手にでも変わらず対処する、、、風な猫を被っている。 内実は中々に黒い。結構勝手。そして情が強く執念深い。 父の死の真相と見事に自分を裏切ってくれた兄の行方を密かに探りたいとずっと思っている。 で、犯人とか兄を見つけたら自らの手で始末をつけてやろうとかも思っている。
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325 三つの鎖 31 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2011/02/02(水) 22 02 58 ID o6sBa/R4 三つの鎖 31 お昼休みが終わり、午後の授業が始まっても耕平君は帰って来なかった。 耕平君に告白された後、気がつけば私は教室に戻っていた。どうやって戻ってきたのか、全然覚えていない。 それぐらいに私は動揺していた。 思えば、 告白されたのはこれで二回目だ。 一回目は中学一年生のとき、幸一くんに。 それ以外に告白された事は一度もない。 周りのみんなは、私はモテると思っているけど、実際にはそんな事は無い。実際、今までの人生の中で私に交際を申し込んだのは幸一くんと耕平君だけ。 私がモテない理由は、冷たい人間だからだと思う。幸一くんと梓ちゃん以外の同世代の親しい友達はいないし欲しいとも思わない。他は広く浅い交遊関係しかない。 それだけに、耕平君に好きと言われて自分でも信じられないぐらい動揺している。 幸一くんに好きと言われた時は、全く動揺しなかった。幸一くんが本気じゃないのは分かっていたし、幸一くんは私に恋していたのではなくて恋に恋していただけ。 耕平君は違う。胸が痛くなるほどの気持ちが伝わってきた。 私を好きって。愛しているって。 ここまで男の人に求められたのは、生まれて初めて。 耕平君がそんな風に想っているのを、私は全く気がつかなかった。 そんな素振りは全く無かった。それに耕平君にはいつも恋人がいた。すぐに恋人が変わるとよく噂になっていた。それに耕平君は女子に人気がある。見た目はけっこう格好いいし、話も上手いけど、妙な所で紳士的な男の子。成績も運動神経もいい。 私、耕平君にひどい事をした。耕平君の前で、幸一くんにべたべたしていた。 今なら分かる。好きな人が、他の人にべったりなのが、どれだけ辛いか。 「村田さん?」 クラスメイトに声を掛けられて私は顔をあげた。 気がつけば授業もホームルームも終わっていた。放課後のお掃除のために掃除当番の人たちが机を動かしている。 私は慌てて荷物をまとめて席を立った。クラスメイトは机を運んでいった。 一体どうしたのだろう。私はどうかしている。 耕平君も幸一くんもいない。 私は家に向かって歩き始めた。 耕平君は私のどこを見て好きになってくれたのだろう。 分からない。私に男の人から好きになるようなポイントはあるのだろうか。 私に交際を申し込んできた人は幸一くんと耕平君だけだけど、手を出そうとしてきた人はいた。 中学校や高校での先輩や教師。 みんな立場をかさに迫ってくるような、下劣な男ばかりだった。 もちろん、丁重にお断りした。場合によっては脅迫に近い事もした。 男の人ってなんてつまらないのだろうと思っていた。 相手より上の立場じゃないと、女の子にアタックできない人ばかり。 でも、耕平君は違った。 他にも大勢の女の子がいて、その中には耕平君を好きと言ってくれる女の子もいるに違いないのに、私を好きと言ってくれた。 分からない。何で私なんかを好きになってくれたのだろう。 私が幸一くんの好きになったのは、気がつけばだった。理由なんて分からない。ずっと一緒にいて、それで好きになっていた。 そんな事を考えていると、家に着いた。誰もいない。 自分の部屋に戻り、制服を脱いで私服に着替える。 鏡に映る自分の顔。微かに頬が赤くなっている。 ふいにお昼の事が脳裏によみがえる。 私を抱きしめ、頬にキスする耕平君。 顔が熱くなる。 信じられない。 私は幸一くんを好きなのに、他の男の人に抱きしめられて、頬にキスされて、その事を嫌だと思っていない私がいる。 訳が分からない。私は幸一くんを好きなのに。 今まで、私に似たような事をしてきた男の人はいる。その時は嫌というより、怒りを感じた。付き合ってもいないし、交際を申し込んでもいないのに、 自分の立場をかさにきてそんな事をしてくる男の人に腹が立って仕方が無かった。それ相応の報復をしたけど、心は全く痛まなかった。 耕平君の表情が脳裏に浮かぶ。真剣な瞳で私を見つめ、好きと言う耕平君。 他の人に好きと言われるのが、こんなに恥ずかしく、そして嬉しいなんて。 私の足元に黒い何かが微かに動く。 気がつけばシロが私の傍にいた。つぶらな瞳で私を見上げている。 「シロ。私の事好き?」 わうっと頷くシロ。 326 三つの鎖 31 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2011/02/02(水) 22 04 27 ID o6sBa/R4 「私っておかしいのかな。私ね、幸一くんを好きなのにね、他の男の人に好きって言われて嬉しいと思う自分がいるの。これって変だよね」 わうっと首を横に振るシロ。 「どうして?だって私は幸一くんを好きなんだよ?それなのに他の男の人から好きって言われて嬉しく感じるなんて、おかしいでしょ?」 シロはしばらく私を見つめた後、部屋を出ていった。 少しして階段を上る足音が聞こえてくる。 シロの足音じゃない。人の足音。 「春子。入るわよ」 お母さんが部屋に入ってきた。いつ帰って来たのだろう。時計を見ると、もう遅い時間。 いけない。やっぱりおかしい。 「どうしたの。変な顔して」 お母さんはそう言って私の隣に座った。 「シロが私を引っ張るから、春子に何かあったのかと思ったけど。何があったの?」 そう言ってお母さんは心配そうに私を見た。 お母さんは綺麗だ。きっと昔は男の人に人気があったに違いない。 相談したら、今の私が変な理由も分かるかもしれない。 「お母さん。相談したい事があるけどいい?」 「あら。珍しいわね。もちろんいいわよ」 お母さんはそう言って微笑んだ。確かに、私がお母さんに相談した事は数えるほどかもしれない。自分で言うのも変だけど、私は何でもそつなくこなす方だ。私に迫るろくでもない男の人も、全部自分で処理した。 「で。何を相談したいの?」 ええと。何から言えばいいのだろう。 「あのね、今日、告白されたの」 「あら。交際を申し込まれたの?」 「うん。断ったけど。告白してきたのはクラスメイトの男の子。私ね、その男の子が私を好きって知らなかった。そんな素振りも全く無かったし。だから、すごくびっくりした」 思い出すだけで頬が熱くなる。 「私、その男の子の事は好きでも何でもなかった。意識した事も無かったし、ただのクラスメイトだった。それなのに、好きって言われて、何だか変な気分なの」 お母さんは不思議そうに私を見つめる。 「変な気分って?気持ち悪いってこと?」 「ええと、そう見える?」 「全然。むしろ嬉しそうに見える」 微かに胸に痛みが走る。 幸一くんを好きなのに、他の男の人から好きと言われて嬉しく感じている自分。 「これって変だよね?好きでもない人から好きって言われて嬉しく感じるなんて」 お母さんは呆れたように私を見つめた。 「この子は何を言っているの。そんなの普通でしょ?好きって言われたら、ろくでもない男でもない限り嬉しいに決まっているじゃない」 「だって、私、その男の子の事、好きでも何でもないんだよ?」 お母さんは額を押さえてため息をついた。 「春子。あなた今まで告白された事はある?」 「一応、あるよ」 「幸一君を除いて」 「…無い」 「じゃあ告白した事は?」 私から告白。 幸一くんのあれは、カウントしていいのだろうか。 「一応、あると思う」 お母さんは呆れたように私を見つめた。 「手間のかからない出来た子だと思っていたけど、やっぱりまだ子供ね」 お母さんの言い方に私は少しムッときた。 「そんな事ないよ」 「おおありよ。あのね、好きな人に気持ちを伝えるってね、すごく勇気がいる事なの。それは分かる?」 どうなのだろう。 「春子が幸一君を好きって言うのとは訳が違うわ。好きって気持ちを伝えるのはね、今までの関係が別の関係になるの。より良い関係になるとは限らないわ。相手に拒絶されるかもしれないし。 だから告白するのってすごく勇気がいるの。それだけの勇気をふるって好きって言ってくれるのよ?ろくでもない男でもない限り、嬉しくないわけないじゃない。 私に言わせてみれば、その男の子は結構見どころあるわ。少なくとも、自分の気持ちを伝える勇気がある子だもの。断るなんてもったいない事したわね。付き合ってもよかったのに」 「でも、私、その男の子の事、好きってわけじゃないよ。それなのにお付き合いするなんて、不誠実だよ」 「あのね、春子は男女交際を勘違いしているわ」 私はムッときた。 「何でよ。好きでもない人と付き合うなんて、不誠実だよ」 「そんな事言っていたら、相思相愛じゃないと恋人になれないでしょ。世の中、最初から相思相愛の恋人なんていないわよ」 …確かに、そうかもしれない。 お母さんは諭すように言った。 327 三つの鎖 31 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2011/02/02(水) 22 05 53 ID o6sBa/R4 「男女交際ってね、お互いの事を知ってもらって、お互いの気持ちを伝えあうの。最初は片想いでも、付き合っていたら両想いになるかもしれない」 「…分からないよ」 私には分からない。好きって言ってもらったのが、今日が初めてだから。 「例えばね、お父さんいるでしょ?私も最初はお父さんの事、男の人として意識した事は全く無かったわ」 そう言えば、お父さんとお母さんの馴れ初めは余り知らない。 「確か大学で同じ部活だったっけ?」 「そう。体育会の合気道部だった。部活は上下関係がすごく厳しかったわ。お父さんとは同じ学年だった。 お母さんね、かなりモテたの。でもね、全然嬉しくなかった。私の先輩は根性無しが多くて、女の子をデートに誘うのも先輩の立場でしか言えない人ばかりだったから。 本当にひどいわよ。お酒に酔わせてホテルに連れて行こうとする人もいたわ。交際を申し込んでもいないのに あの頃は男の人が大嫌いだった。高嶺の花って言葉があるでしょ?高嶺の花だから止めておけって男の人はいうじゃない。全員とは言わないけど、男の人には努力して女の人に合わせるっていう発想が無いの。 少なくとも大学時代の部活の先輩はそんな男の人ばかりだった。自分じゃ手が届かないと勝手に勘違いして、上下関係を使うの。本当に腹が立ったわ」 すごく親近感を感じる。お母さんも私と同じ苦労をしていたんだ。 「もちろんそんな先輩ばかりじゃなかったわ。私に助け船を出してくれた先輩もいた。素敵な男の人だったわ。でもね、素敵な男の人って希少価値が高いから、そういう人に限って彼女がいたわ。 私、すごく残念だったわ。私が素敵と思う人は恋人がいるのに、魅力を感じない人ばかりにろくでもないアプローチされるし。 でもね、お父さんは違ったの。まっすぐに私に交際を申し込んできたわ。 はっきり言って全然スマートじゃなかったわ。すごく緊張していたし。でも、そこまで勇気を振り絞って気持ちを伝えてくれたのが嬉しかった。 だから、お父さんの気持ちに応えたいって思ったの」 気持ちに応える? 一体どういう事だろう。 「気持ちに応えるってどういう事?付き合うって事?」 「それもあるけど、本質は違うわ。 気持ちに応えるって言うのは、その人を好きになるって事よ。この人を好きになりたいって思ったの。 男女交際ってのはそういうものよ。交際を申し込んだ側からしたら相手を好きにさせる期間で、交際を申し込まれた側からしたら相手を好きになる期間」 「でも、付き合ってはみたけど相手の事を好きになれなかったらどうするの?」 「別れたらいいじゃない」 「そんなのひどくない?好きでもないのに付き合って好きになれないから別れるなんて」 「あのね、何も交際を申し込まれた人間すべてと付き合えって言っているわけじゃないわ。この人なら好きになってもいい、そう思える人とだけ付き合えばいいじゃない。 それにね、付き合うってことは相手にチャンスを与えるってことなの。交際するから私を惚れさせてみろって事よ。チャンスを活かしきれず惚れさせることができなかったら、それは相手の責任よ」 「なにそれ。すごく上から目線じゃない」 「恋愛ってそういうものよ。惚れたら負けって言う言葉もあるぐらいだし」 「…やっぱり納得いかない」 お母さんは呆れたように私を見た。 「春子ってすごくピュアね」 「だってお母さんの言っている事は分からないよ。好きって言われただけでその人を好きになるなんて、やっぱり変だよ」 「あのね、幸一君を見てもそう思う?」 胸に微かな痛みが走る。 「幸一君って一つ下の後輩と付き合っているんでしょ。梓ちゃんと同じクラスの」 「…うん」 「あの幸一君が妹のクラスメイトに手を出すような男の子だと思う?」 「幸一くんはそんな男の子じゃないよ。幸一くんは紳士的だもん」 「でしょ?仮に幸一君がその子に惚れていても、幸一君はその気持ちを秘めると思うわ。だって幸一君は優しすぎるもの。妹やその友達に迷惑をかけたり困らせたりしたくない。そう思う子だわ。 だからね、きっと梓ちゃんのクラスメイトから告白したんだと思う。春子は知っているの?」 知っている。だって、夏美ちゃんに惚れていく幸一くんを傍で見続けたから。 「知っているなら分かるでしょ?」 分からない。分かりたくもない。 お母さんはため息をついた。 「まだ納得してないわね」 「だって、分からないもん」 「そうね。幸一君の恋人ってどんな子なの?勘だけど、どちらかと言えば見た目は子供っぽい女の子じゃない?」 「…何でそう思うの?」 328 三つの鎖 31 前編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2011/02/02(水) 22 07 32 ID o6sBa/R4 「幸一君の後輩になるわけだから年下でしょ?それに幸一君はどちらかと言えば落ち着いた父性溢れる男の子だから、年上に甘えたい女の子から人気がありそうな気がするの。となれば子供っぽい女の子かと思って」 お母さんの言う事は当たっている。 夏美ちゃんは芯はしっかりしたいい子だけど、普段の言動は子供っぽい。 「幸一君の好みってどちらかと言えば年上のリードしてくれる女の子だと思うわ。だって女の子に対しては奥手だし。それなのに恋人は年下の子供っぽい女の子。何でか分かる?」 分からない。 そんなの、分からない。 幸一くんが夏美ちゃんを好きになった理由なんて、分かりたくもない。 「その女の子が幸一君を好きって言えたからよ。人に好きと言われるのはそれぐらい破壊力があるの」 そんな理由で? 好きって言った。ただそれだけの事で、幸一くんは夏美ちゃんを好きになったの? だったら私はどうなの? 私は毎日好きって言っていた。 それなのに幸一くんは私を好きになってくれなかった。 「真剣に好きって言ってくれる人と一緒にいたら全部とは言わないけど好きになる可能性はあるわ。好きなタイプに関係なくね」 だったら、何で私を好きになってくれなかったの。 そんなの、おかしいよ。 「春子も分かっているでしょ。今日、男の子に真剣に好きって言われて動揺しているじゃない」 「違うよ」 「違わないわ。相手にもよるけど、求められたら応えたいって思うのが普通よ」 「変だよ。じゃあお母さんはお父さん以外の人から好きって言われたら、応えたいと思うの?」 「お父さんより先に言われたらそう思ったかもしれないわ。でも、お父さんの方が先だった。それに今はお父さんを愛している。お父さんも私の好きって気持ちに応えてくれる。もしお父さんが私の気持ちに応えてくれない人なら、他の人を好きになるかもしれないけど」 「なにそれ。順番なんかで決まるの。そんなのへんだよ」 「何言っているの。恋は早い者勝ちよ」 私はその言葉に頭を殴られたような衝撃を受けた。 恋は早い者勝ち。 私に、チャンスはあった。 幸一くんが好きって言ってくれた中学生の時。 あの時、幸一くんと付き合っていれば違った結果になったかもしれない。 幸一くんは私に恋していなかった。恋に恋していただけだった。 私も幸一くんに恋していなかった。あの頃の私にとって、幸一くんは弟でしかなかった。 でも、付き合っていたらその過程でお互いに好きになっていたかもしれない。 私にチャンスはあった。 でも、私はそのチャンスを活かしていなかった。 だから夏美ちゃんに奪われた。 私に幸一くんを好きにさせるチャンスはあった。 あったのに私は何もしなかった。 ただ、幸一くんのお姉ちゃんとしての立場が心地よくて、そのままでいた。 お母さんの言っている事が分かった気がする。 好きって気持ちを伝えるのってすごく勇気がいる。 今の心地よい関係が壊れるリスクを冒してまで自分の気持ちを伝えるなんて、私にはできない。 私にできたのは、子供のように好きって言う事だけ。脅迫して傍に縛り付けただけ。 夏美ちゃんも耕平君は違った。 自分の気持ちをまっすぐに伝えた。 それがどれだけ勇気を必要として、尊い行為なのか。 「春子?」 お母さんは心配そうに私を見つめていた。 「どうしたの。もしかしたら、交際を申し込んできた男の子に変なことされたの」 「うんうん。ちょっと考え事」 「そう」 お母さんはそれ以上何も言わなかった。 心配そうに私を見つめるだけだった。 戻る 目次 次へ
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24 三つの鎖 17 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/03/05(金) 08 43 49 ID RdCiqql3 放課後、僕は吊るしてない方の手に鞄を持ち席を立った。 「幸一君。よかったら家まで鞄を持つよ」 春子が声をかけてくるのを僕は無言で首を振った。寂しそうな顔をする春子。 「幸一。夏美ちゃんが来とるで」 耕平が僕に声をかけた。教室の出口を見ると、夏美ちゃんが扉の端からひょこっと顔だけ出してこっちを見ている。ばればれだよ。 「ありがとう。行くよ」 「ほなさいなら」 「またね」 手をひらひらさせる耕平と考えによっては不吉極まりない挨拶をする春子に背を向けて僕は夏美ちゃんに近づいた。 「夏美ちゃん。どうしたの」 今日は何も約束をしていない。 「お兄さん。お願いがあります」 僕たちは廊下を歩きながら話した。 「明日にお父さんとお母さんが来るじゃないですか」 そう。明日、夏美ちゃんの家族と僕とで夕食を食べる。 「そのですね、二人に料理を作りたいのです。でも私はカレーしか作れません」 「カレー以外のお弁当はどうしていたの」 「オール冷凍です」 なにそのオール家電みたいな言い方。僕は心の中だけでつっこんだ。 「ですから何かお料理を教えてほしいのです」 明日は洋子さんと雄太さんの要望ですき焼きにしようと決まっている。 「すき焼きの他に何か足すのは難しいと思うよ」 「お酒のおつまみになるのでいいです」 お酒のおつまみか。うーん。 靴箱で履き替えて歩きながら僕らは話した。 「お刺身とかはどうかな?切るだけでできるよ」 「それどうなのでしょう。手作りって感じがしないです」 「じゃあローストビーフは?」 「難しそうです」 「いや、スーパーで買ってきてお皿に並べると簡単だよ」 「お兄さん!」 ぷりぷりと怒る夏美ちゃん。ちょっと可愛いかも。 「ごめんごめん。でもそうだね。できるだけ簡単でお酒のおつまみになる料理、か」 「明日牛肉はありますから、お魚か鳥とかどうですか」 「お肉ばかりだね」 脳裏に鳥の照り焼きが浮かぶ。僕が最初に覚えた料理。 「鳥の照り焼きなんてどうかな。それほど難しくもないよ」 「いいですね。それにしましょう」 乗り気な夏美ちゃん。 「でもお肉ばかりでいいのかな。もっと軽いサラダとかのほうがいい気がするけど」 「大丈夫です。お父さんもお母さんもお肉は大好きです。特にお父さんはお肉フリークです。焼き肉に行くといつも家族でお肉の奪い合いになります。いつもは温厚なお父さんもお肉が絡むと人が変わります」 夏美ちゃんと雄太さんと洋子さんの三人がお肉を奪い合う姿が脳裏に浮かぶ。 思わず笑ってしまった。 雄太さんほど大柄な人だとお肉を食べる量も相当なのかもしれない。 「分かったよ。明日はすき焼きと鳥の照り焼きでいこう」 「お願いします」 夏美ちゃんは僕の鞄を持った。両手に鞄を持ち僕の先を歩く夏美ちゃん。その小さな背中が浮かれているのが嬉しかった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 夏美ちゃんの作った鳥の照り焼きはまあまあおいしかった。 一応自炊しているだけあって包丁の扱いは手慣れている。本人いわく「包丁よりもピーラーを持つ事の方が多い」らしいけど。 味見してサムズアップすると、夏美ちゃんも笑顔でサムズアップを返してくれた。 「残りはどうするの」 「今日の晩ご飯のおかずにします。明日また作ります」 作った鳥の照り焼きをお皿に移しラッピングする夏美ちゃん。 昔の光景が脳裏に浮かぶ。キッチンで僕に包丁の持ち方から教えてくれた春子。その料理を無言で食べる梓。 「あの、お兄さん」 夏美ちゃんが心配そうに僕を見ている。 「梓の事、ですよね」 25 三つの鎖 17 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/03/05(金) 08 45 34 ID RdCiqql3 正確には違う。 夏美ちゃんは調理に使った道具を洗いながらぽつぽつ話した。 今日は梓に話しかけても何も言ってくれなかったらしい。放課後もすぐに出て行って話しかけても睨まれるだけだったと。 夏美ちゃんの話を聞きながら僕は自問した。 梓が夏美ちゃんを階段から突き落とした事を伝えるか否か。 「あの、お兄さん」 夏美ちゃんが心配そうに僕を見た。 「その腕とほっぺたは」 それ以上何もいわない夏美ちゃん。それでも続く言葉は分かっていた。 梓に噛み千切られた頬と外された肩に鈍い痛みが走る。唇に感触が蘇る。吐き気を催すおぞましい記憶。恐怖と嫌悪に背筋が寒くなる。 「お兄さん!」 夏美ちゃんの声が遠い。 僕は深呼吸した。熱い息を吐き出す。頭が霞みかかった感覚。 「お兄さん。顔色が真っ青です」 僕の吊るしていない手を握る夏美ちゃん。小さな手から夏美ちゃんの体温が伝わる。ささやかなのに心強い温度。 「歩けますか」 大丈夫と言おうとして失敗した。自分でも思っている以上に消耗している。 「横になった方がいいです」 夏美ちゃんは僕の手を引っ張り歩き出した。僕は夏美ちゃんの手に引かれるままに歩いた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「お兄さん。大丈夫ですか」 夏美ちゃんがコップを片手に言った。心配そうに僕を見る。 あの後、僕は夏美ちゃんのベッドに横になっていた。 「ありがとう。もう大丈夫だよ」 僕は体を起こした。少し横になっただけだけど、気分は楽になった。 夏美ちゃんからコップを受け取り口にした。アイスティー。梓の好きな飲み物。 僕は深呼吸した。不思議と気持ちが落ち着く。 「何でだろう」 「え?」 不思議そうに夏美ちゃんは僕を見た。 「自分でもよく分からないけど、気持ちが落ち着く」 「きっとあれです」 夏美ちゃんは片目を閉じて人差し指を立てた。 「そのベッドには私の匂いが染みついているからです」 空気が固体と化すような感覚。あまりに恥ずかしいというか痛いというかいたたまれない発言に動けない。どう反応すればいいのだろう。 夏美ちゃんは笑っている。素敵な笑顔。いや、空気に合っていない笑顔。 「夏美ちゃん。その発言痛すぎるよ。雄太さんより恥ずかしい事を言っているよ」 お昼の仕返し。夏美ちゃんはショックを受けたように固まった。 「お兄さんひどいですよ!お父さんなんかと一緒にしないでください!」 その言葉を雄太さんが耳にしたら泣くよ。 夏美ちゃんは顔を真っ赤にして僕に抱きついた。僕の腰に細い腕が回される。 僕の胸に顔をうずめて夏美ちゃんは呟いた。 「おしおきです。このままでいてください」 夏美ちゃんの柔らかい体。温かい体温が伝わる。 頭に血が上るのが分かる。 「でもよかったです。お兄さんが元気になってくれて」 夏美ちゃんは僕を見上げた。真っ赤な顔。恥ずかしそうにうつむく。 僕は固定していない腕を夏美ちゃんの背中に回した。あの時、僕に勇気をくれた小さな背中。僕を守ってくれた後ろ姿が脳裏によみがえる。 「お兄さん。あの」 夏美ちゃんが僕を見上げた。少し落ち込んだ表情。 梓の事。 「今は梓とあまり話さない方がいい」 今話しても話は平行線なだけ。それどころか梓を余計に刺激するだけになる。 最悪の場合、再び梓が夏美ちゃんを傷つけるかもしれない。 僕の背中にまわされる夏美ちゃんの腕に力がこもる。 「でも、何かしないと始まらないです」 夏美ちゃんは僕を見上げた。夏美ちゃんの小さな手が僕の頬に触れる。梓が傷つけた頬。ガーゼにそっと触れる。 「それにお兄さんが傷つくのも、梓がお兄さんを傷つけるのも見たくないです」 26 三つの鎖 17 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/03/05(金) 08 47 23 ID RdCiqql3 僕の頬に添えられた夏美ちゃんの小さな手が微かに震える。 夏美ちゃんの目尻に涙がたまる。 「僕はもう大丈夫。夏美ちゃんが勇気をくれたから」 あの時、手を広げて梓から庇ってくれた夏美ちゃん。小さな背中が何よりも頼もしくて嬉しかった。 もう逃げない。 涙をぽろぽろ落とす夏美ちゃん。悲しそうに僕を見上げる。 「やっぱり私のせいですよね」 落ちる涙が僕と夏美ちゃんを濡らす。 「違う」 僕は否定した。もし僕と夏美ちゃんの関係がなくても、いつかは破綻していた。歪な関係は長くは続かない。 夏美ちゃんの頬に涙がとめどなく伝わる。 「お兄さん。別れましょう」 言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった。恐怖に鳥肌が立つ。 まさか。夏美ちゃんは知っているのか。 僕と春子の事を。 「これ以上お兄さんが傷つくのを見たくありません。梓がお兄さんを傷つけるのも見たくないです」 夏美ちゃんはうつむいて僕の胸に額をつけた。 「今は私と一緒にいない方がいいです。梓との関係の修復に専念した方がいいです」 僕の背中に夏美ちゃんの腕が回される。 別れるという言葉とは裏腹に、離さないというかのように抱きついてくる。 「お兄さんと梓の関係が良くなって、その時お兄さんがまだ私の事を好きって思ってくださるのなら」 背中に回される腕に力がこもる。ささやかな力。それでも僕はこの腕を振り払う事は出来ない。 「私は嬉しいです。きっと嬉しくて泣いちゃいます」 夏美ちゃんは顔を上げた。涙でぐちゃぐちゃの顔で精いっぱいの笑顔を向けてくる。 私は大丈夫だと言うように。 「嫌だ」 僕は夏美ちゃんを片手で抱きしめた。吊るした腕がもどかしい。 夏美ちゃんを離したくない。傍にいたい。いて欲しい。 「別れたくない。好きだ。夏美ちゃんが好きだ」 「私もです。お兄さんが好きです。傍にいたいです。傍にいて欲しいです。でも、そのせいでお兄さんが傷つくのは嫌です」 夏美ちゃんは僕の胸に顔をうずめて震えた。 「私何もできません。お兄さんを守ることもできませんし、お兄さんの怪我の治療もできませんし、料理はカレーしかできません。本当に足手まといです。それなのに独占欲は一人前です。お兄さんを一人占めにしたいです」 僕の背中にまわされた夏美ちゃんの腕に力がこもる。 「最初はそれでもいいと思っていました。付き合っていく中でお兄さんにつり合える女になれたらいいと思っていました。でも、そんな時間は無いです」 夏美ちゃんは腕をほどいた。一歩下がって僕を見上げる。 「私がお兄さんを守る方法は別れるしかないです」 違う。違うんだ。 全部僕の力不足だ。梓の事も春子の事も。僕がふがいないから、梓を説得できず、春子には脅迫される。 夏美ちゃんは悪くない。 僕は心の中で絶叫した。何もかもぶちまけたかった。自分の身に起きている事を全て打ち明けてしまいたかった。 「今すぐにとは言いません。明日はお父さんとお母さんも来ますし」 夏美ちゃんはにっこりと笑った。私は大丈夫と主張するように。 「でも、梓がお兄さんを傷つけるばかりなら」 僕を見つめる夏美ちゃんの瞳。強い意志を感じさせる綺麗な瞳。 「私、お兄さんをふっちゃいます」 夏美ちゃんははっきりと言った。声は微塵も震えていなかった。 胸に強烈な罪悪感と羞恥心がわきあがる。 非力なのは夏美ちゃんではなくて僕だ。春子に脅迫されるままに従い、梓には一方的に怪我をさせられて、夏美ちゃんに害が及ぶかもしれないのに夏美ちゃんの傍を離れられない。 夏美ちゃんは違う。僕と別れてでも僕を守ろうとしている。 僕は守っていない。守られているだけ。 「今日はもう帰ってください」 うつむいて夏美ちゃんはそう言った。 僕はかける言葉が無かった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 夏美ちゃんは鞄を持って玄関まで見送ってくれた。 マンションの夏美ちゃんの部屋のドアの外で夏美ちゃんは僕を見上げた。 「お兄さん」 鞄を渡しながら夏美ちゃんは僕を見た。 27 三つの鎖 17 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/03/05(金) 08 48 29 ID RdCiqql3 「明日の事を梓は知っていますか」 僕は何も言えなかった。まだ伝えていない。 色々あったのもある。それでも結局は伝える事が出来なかった。 夏美ちゃんが別れると言うのも仕方がないほど情けなさ。 「伝えると梓が、その、暴れそうだったら、明日は来なくていいです」 そう言って夏美ちゃんはそっぽを向いた。 「私がちゃんとお料理してお父さんとお母さんに御馳走します」 「行くよ」 僕は夏美ちゃんの頬に触れた。夏美ちゃんは無言で僕を見た。 「鳥の照り焼きだけだと物足りないよ」 「すき焼きもします。おいしいお肉をたくさん食べます」 「鍋奉行がいないとだめなんでしょ」 「…失敗した時はカレーにします」 脳裏にカレーを食べる夏美ちゃんと洋子さんと雄太さんの姿が脳裏に浮かぶ。 あまりにリアル過ぎて笑えなかった。 「心配してくれてありがとう。だけど、夏美ちゃんの傍にいたい。僕は夏美ちゃんの事を好きだから」 夏美ちゃんの頬が微かに赤くなる。 「だから」 それ以上の言葉は紡げなかった。 夏美ちゃんの唇が僕の唇をふさいだ。温かくて柔らかい感触。 唇を離した夏美ちゃんはうつむいた。どんな表情をしているのかよく分からない。 「それ以上恥ずかしい事言わないでください。頭が爆発しちゃいそうです」 夏美ちゃんは消え入るような声で言った。 「無茶だけはしないでください」 そう言って夏美ちゃんはドアを閉めた。 僕は立ち尽くした。 唇をなぞる。夏美ちゃんの唇の感触と温もりが残っていた。 戻る 目次へ 次へ