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No.2105 土着神「七つの石と七つの木」 條件:諏訪子2 屬性:擴散 咒力:1 攻擊:2 迎擊:0 命中:4 信仰(1) [戰鬥階段]咒力2 這張符卡在戰鬥中的場合,到階段結束前,對方的領導人失去所持有的決死判定。 (每階段只能使用1次)
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ひとつの物語 プロローグ フランテル大陸の極東地方に彼は生まれた。 彼は、かつては大剣を肩に担ぎ大陸を渡り歩いていた父親に剣術を叩き込まれ、幼少時から鍛錬の毎日を繰り返していた。 だが、彼は剣使いとしては決して優秀な方ではなく、その少し臆病な性格からか剣術よりも自分を守るスベを磨いていった。専ら盾を扱うことを好んだ。 彼が青年と認められた際に、晴れて剣士としての称号を得た。 鋭く尖った剣を構え、硬く重みのある鎧をまとい、目深にかぶった兜に、綺麗に磨かれた盾をもう一方の腕に引っ掛けているその姿は、どこから見てもいっぱしの剣士そのものだった。 彼は町の外でモンスターと闘うことで黙々と経験を積んでいった。 また、その性格からか、よく町人の頼みごとを聞いていた。人に手紙を届けたり、迷子の犬の行方を探したり、時にはモンスター退治を頼まれることもあった。 彼は、この古都の中で、自分自身が比較的力を持っていると確信していた。まだ経験の浅い冒険者がひたすらコボルトを叩いているのを傍目に、何処か心地良い気分になっていつの間にか町の外に出なくなっていた。 遊びに呆ける毎日。だが、彼は孤独だった。 そんなある日のこと。 彼がいつも通り町でゆっくり休んでいると、なにやら町中で叫んでいる女性がいた。 そちらに目を向けると、どうやら軽装に身を固めたアーチャーらしく、その体付きと身に付けた装備品で並みの冒険者でないことがすぐに分かった。 彼は何を思ったのか、そのアーチャーに声をかけた。 この大陸には「RedStone」という伝説の赤い石を求めて、冒険者が大勢集まってきている。 そんな冒険者たちが怒涛を組み、ひとつの集団として集まることでより情報を集めやすく、時には助け合いながらも生き抜いているという噂が、長く町に居座っている彼の耳には届いていた。 その集まりを「ギルド」という。 どうやら彼女はそのギルドを作るつもりらしく、彼に話に乗らないかと尋ねてくる。 彼には時間があった。彼はすんなりと承諾し、彼女が誘った他の仲間がいるらしい場所へと誘導される。 そこには3人の男がいた。 二人のウィザードと一人のビショップ。 片方のウィザードはどこか物静かで、うつむきがちに建物の隅に佇んでいる。もう片方のウィザードはそれとは対照的に、理知的な顔をこちらへ真っ直ぐ向けている。 また、体格の良さげなビショップはこちらには視線を向けずに静かに祈りをささげていた。 剣を腰に据えた彼はすぐに彼らが自分よりもツワモノであるということを悟った。 剣を据えた彼と弓を担いだ彼女が近づくと、こちらに視線を向けていたウィザードが彼女に声をかけた。 「むつみ。」 こうして彼は、ギルド「極道組」の一員として、その旗をあげることとなる。 そして、自分よりも遥かに強い者たちの存在を知ったとき、彼は迷いなく町の外へと旅立っていた。 後にこの大陸に「極道組」の名前が知らしめられることとなる。 少し臆病だった彼はいつの間にか、自分のギルドの為に命を懸ける本物の剣士になっていた。 「極道組よ。永遠なれ・・・」 不慣れな日本語でかいてミマシタ。 -- (ロンギヌス) 2005-08-10 01 24 10 懐かしいですな・・・(´・ω・`)極道も設立から8月で半年になるとです いろいろありましたがまだまだ活動して行きたいと思ってますm(_ _)m --(むつみ#comment(vsize=2,nsize=20,size=40) 名前 コメント すべてのコメントを見る htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。
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『どうぶつの森』では、仕立て屋さんで自分のデザインした服や傘を作成したり、床に張る絵を描くことができます。 ※ただし、64版の『どうぶつの森』では仕立て屋さんがありませんので、ご利用できません。 本展示では、『どうぶつの森』シリーズで作成したデザインを展示しております。 なお、下側のカラフルな模様は、パレットとなりますため、 もしデザインされる方のご参考になれば幸いです。 UFOカービィ 元ネタは、「夢の泉の物語」のコピーに勝手に色ろつけたものです(笑) このころ「1か月に一回、カービィを描こう」と思っていたために、 以下、カービィネタが続きます。 フリーズカービィ 1月に描いたもの。寒い時期だけれど、雪が綺麗な時期です♪ ビームカービィ 2月になると凍えそうにもなるけれど、 もうすぐ春になるという勢いで進みましょう。 ニードルカービィ 3月は卒業シーズンで何かと忙しい時期です。 あわただしいです。 ファイターカービィ こちらは『スーパーデラックス』のファイターです。 4月は入学とか就職とか、新たな挑戦の月です。 がんば~!! ソードカービィ 5月病に負けず、勇ましく進むべし! ハイジャンプカービィ 6月はそろそろ新しい環境にも慣れてきて、 大きく飛翔する月なのです。 アイスメイル せっかくなので、鎧らしきものを作ってみようと思ってやってみました。 コッコ 『ゼルダの伝説』より。 斬っちゃダメ!馬で踏んじゃダメ!!爆弾投げちゃダメ!!! プーカァ 『ディグダグ』より。 ちょっと空気入っていますが、銛は抜いています。 痛いから。 チビヨッシー この子たちは卵生です。 でも、オスorメスの区別があるのかどうかは永遠の謎です。 これが世に言う「マリオの世界七不思議」の一つである(と思う) ヒゲ4人衆 なんだかんだ言いつつ、このヒゲ4人衆は好きです。 そういえば、チビワルイージさんも存在するのでしょうか。 ムゥの顔 『風のクロノア』に出てくるムゥというモンスター…の顔。 ワドルディさん並みに人畜無害の良い子。 メタナイト 一頭身なのにシリアスキャラ。 剣術もさることながら、戦艦まで作っちゃうという、 いろんな意味で偉大なお方。 ワドルディのかさ そういえば傘のデザインが無かったと思って作りました(笑) ちなみに、服として着ると、 白いTシャツの上にベストを着ているような感じにならなくもないです。 2009/07/07
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284 名前: 1/2 2005/06/17(金) 07 35 17 ID ??? おはよう。 起き抜けにあれだが、困ったちゃん報告。 十年以上前、とある中規模(成立卓6~8くらい)コンベンションでのこと GM紹介が終ったところで、質問受付になった。 1人目A「全卓のマスターに質問です。NPCにメガネっ娘はいますか?」 そいつのいた卓だけ妙にウケてるが、周囲の反応はナシ(俺はポカーン) 2人目B「全卓のマスターに質問です。NPCに巨乳キャラはいますか?」 1人目と同卓の人間だった。周囲明らかにポカーン そしてその卓から3人目Cが挙手。顔はニヤニヤ さすがに司会がなにか察知したのか、その卓を避け、別のヤツを指す。 (これは普通だった) 285 名前: 2/2 2005/06/17(金) 07 35 49 ID ??? で、次の質問 しつこくCは挙手をしている しかし、他に挙手する人間おらず。 やむなくそいつを指すが、 司会はその際「NPC以外の質問でお願いします」と釘をさす。 C、ちょっとムっとした顔をするが同卓のやつに耳打ちされ発言 「18禁プレイはOKですか?」 司会、GMに答えさせず、「本コンベンションでは18禁セッションはご遠慮願っています」とか言って終了。 文句言いそうになったCが何か言おうとする前に、「では卓分けは10分後、それまで休憩とします」 ってなことになった。 で、俺がトイレからもどったら、その卓にいたA,B,Cがいなくなってた。 おお、主催者追い出したんだ、やるなぁ……と思ったら、そうではなく 「やりたいシステムなさそうなんで帰る」といって、会場費返却を求め、帰ったらしい。 あいつらが一体何をやりたかったのか、いまだにわからん 名探偵、誰か教えてくれ。 スレ72
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もくじを見る 概要 所持ポケモン 関連項目 コメントフォーム 概要 所持ポケモン No. 名前 特性 通常特性 隠れ特性 関連項目 特性 あ行 ARシステム アイスフェイス アイスボディ あくしゅう あついしぼう あとだし アナライズ あまのじゃく あめうけざら あめふらし ありじごく アロマベール いかく いかりのこうら いかりのつぼ いしあたま いたずらごころ いやしのこころ イリュージョン いろめがね いわはこび うのミサイル うるおいボイス うるおいボディ エアロック エレキスキン エレキメイカー えんかく おうごんのからだ オーラブレイク おどりこ おみとおし おもかげやどし おもてなし おやこあい おわりのだいち か行 カーリーヘアー かいりきバサミ かがくのちから かがくへんかガス かげふみ かぜのり かそく かたいツメ かたやぶり かちき カブトアーマー かるわざ かわりもの がんじょう がんじょうあご かんそうはだ かんろなミツ ききかいひ きけんよち きずなへんげ ぎたい きみょうなくすり きもったま ぎゃくじょう きゅうばん きょううん きょうえん きょうせい ぎょぐん きよめのしお きれあじ きんしのちから きんちょうかん くいしんぼう クイックドロウ クォークチャージ くさのけがわ くだけるよろい グラスメイカー クリアボディ くろのいななき げきりゅう こおりのりんぷん こだいかっせい こぼれダネ ごりむちゅう こんがりボディ こんじょう さ行 サーフテール サイコメイカー さいせいりょく さまようたましい さめはだ サンパワー シェルアーマー じきゅうりょく じしんかじょう しぜんかいふく しめりけ しゅうかく じゅうなん じゅくせい じょうききかん しょうりのほし じょおうのいげん じりょく しれいとう しろいけむり しろのいななき しんがん シンクロ じんばいったい しんりょく スイートベール すいすい すいほう スカイスキン スキルリンク スクリューおびれ すじがねいり すてみ スナイパー すなおこし すなかき すながくれ すなのちから すなはき すりぬけ するどいめ スロースタート スワームチェンジ せいぎのこころ せいしんりょく せいでんき ぜったいねむり ゼロフォーミング そうしょく そうだいしょう ソウルハート た行 ダークオーラ ターボブレイズ たいねつ ダウンロード だっぴ たまひろい ダルマモード たんじゅん ちからずく ちからもち ちくでん ちどりあし ちょすい テイルアーマー てきおうりょく テクニシャン てつのこぶし てつのトゲ テラスシェル テラスチェンジ テラボルテージ デルタストリーム テレパシー でんきエンジン でんきにかえる てんきや てんねん てんのめぐみ とうそうしん どくくぐつ どくげしょう どくしゅ どくのくさり どくのトゲ どくぼうそう どしょく とびだすなかみ トランジスタ トレース とれないにおい どんかん な行 ナイトメア なまけ にげあし にげごし ぬめぬめ ねつこうかん ねつぼうそう ねんちゃく ノーガード ノーてんき ノーマルスキン のろわれボディ は行 ハードロック はがねつかい はがねのせいしん ばけのかわ はじまりのうみ パステルベール はっこう バッテリー はとむね バトルスイッチ ハドロンエンジン はやあし はやおき はやてのつばさ はらぺこスイッチ バリアフリー はりきり はりこみ パワースポット パンクロック ばんけん はんすう ビーストブースト ヒーリングシフト ひでり ひとでなし ひひいろのこどう ビビッドボディ びびり ひらいしん びんじょう ファーコート ファントムガード フィルター ふうりょくでんき フェアリーオーラ フェアリースキン ふかしのこぶし ぶきよう ふくがん ふくつのこころ ふくつのたて ふしぎなうろこ ふしぎなまもり ふしょく ふとうのけん ふみん ふゆう プラス フラワーギフト フラワーベール フリーズスキン プリズムアーマー ブレインフォース プレッシャー フレンドガード ヘヴィメタル ヘドロえき へんげんじざい へんしょく ポイズンヒール ぼうおん ほうし ぼうじん ぼうだん ほおぶくろ ほのおのからだ ほろびのボディ ま行 マイティチェンジ マイナス マイペース マグマのよろい まけんき マジシャン マジックガード マジックミラー マルチスケイル マルチタイプ ミイラ みずがため ミストメイカー みずのベール みつあつめ ミラーアーマー ミラクルスキン むしのしらせ ムラっけ メガランチャー メタルプロテクト メロメロボディ めんえき もうか ものひろい もふもふ もらいび や行 やるき ゆうばく ゆきかき ゆきがくれ ゆきふらし ようりょくそ ヨガパワー よちむ よびみず よわき ら行 ライトメタル リーフガード リベロ リミットシールド りゅうのあぎと りんぷん レシーバー わ行 わざわいのうつわ わざわいのおふだ わざわいのたま わざわいのつるぎ わたげ わるいてぐせ コメントフォーム 名前 コメント すべてのコメントを見る ※こちらは「情報提供欄」です。質問や雑談はご遠慮ください。
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454 三つの鎖 外伝1 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/15(木) 18 51 58 ID MH6Hn2UJ 帰りのホームルームが終わり、私は鞄を手に教室を出た。 今日は梓ちゃんのお誕生日だ。この後、幸一くんと一緒にお買い物してからお料理する。ちょっと豪華な晩ご飯にする予定。 梓ちゃんのご両親はともにお仕事で帰ってこられない。だから、ご両親の分もしっかりお祝いしなくちゃ。 人でごった返す廊下を私はゆっくりと進む。幸一くんの教室まであと少し。 今まで幸一くんと同じクラスだった事は無い。小学校も中学校も。 寂しくないと言えば嘘になる。幸一くんとクラスメイトだったら、毎日がもっと楽しいと思う。 幸一くんのいる教室を覗く。幸一くんは女の子と話していた。 どこかで見たことがある気がする女の子と幸一くんと二人で楽しそうにお話している。 その光景に、胸が痛んだ。 思わず胸を押さえる。 信じられなかった。自分の胸が痛むのが。こんな感情が湧き上がるのが。 幸一くんは私の弟みたいなものなのに。幸一くんが他の女の子と楽しそうにしていても、関係無いのに。 それなのに、私の知らない女の子と楽しそうにお話している幸一くんを見ると、胸が痛む。嫌な気持ちになる。 「どないしたん」 立ち尽くす私に、男の子が声をかけた。 見覚えのある男の子。確か田中君だったと思う。この前のお買い物でも見た。ずっと幸一くんと同じクラスの友達。私とは接点がないから、田中君の事は幸一くんからしか聞いていない。 「村田春子やろ?幸一の幼馴染の」 田中君は私を心配そうに見下ろした。幸一君ほどじゃないけど、身長は高い。細身だけど鍛えているのが分かる。 「幸一に用があるん?」 「あの女の子」 私の視線を先を田中君は見た。 「あれ、俺の彼女や。クラスは別やけど」 田中君の言葉に思い出す。あの女の子、幸一くんと買い物に行った時に見かけた女の子だ。田中君と一緒にいた女の子。 胸のもやもやが消え、代わりに理不尽な怒りがわき上がる。 腹が立った。幸一くんのせいで、こんな気持ちになるのが。 「幸一!幼馴染が来てるで!」 田中君の言葉に幸一くんはこっちを見た。田中君の彼女に挨拶して私の方に来た。 「女の子を待たせたらあかんで」 「ごめん」 「ま、俺の彼女の話し相手をしてくれたんは感謝するわ」 親しげに会話する幸一くんと田中君。 すぐそばに私がいるのに、私を見ていない。 その事に、どうしようもないぐらい寂しさと苛立ちを感じる。 私は幸一くんの腕を抱きしめるように組んだ。胸を押しつけるように抱きつく。 クラスにいる人たちの視線が集中する。 びっくりした表情で私を見下ろす幸一くん。恥ずかしがっていない。その事に腹が立つ。 「行こ」 私は組んだ腕で幸一くんを引っ張るように歩いた。 廊下には生徒が大勢いる。視線が私達に集中する。 いつもは握った手を引っ張るように歩いているから、恋人同士に見られる事はあまりない。でも、今回は違う。腕を組んで引っ張るように歩いている。何も知らない人が見れば、恋人同士にしか見えないだろう。 教師に見つかれば、言い逃れのできないレベル。それでも私は組んだ腕を離さなかった。 「春子。腕を離して」 幸一くんの落ち着いた声。 「先生に見つかったら大変だよ。離して」 お姉ちゃんと腕を組むのは嫌なの。 その言葉が喉元まで出て、止めた。 自分が惨めだった。 私は組んだ腕を解いて幸一くんを見た。 幸一くんは心配そうに私を見つめている。 落ち着いた大人びた眼差し。その瞳に、心臓が暴れる。 「どうした?何かあったの」 心配そうな幸一くん。心の底から私を心配してくれているのが分かる。 「幸一くんが女の子と親しげにお話してるからびっくりして」 嘘じゃないけど、本当でもない。 「田中君の恋人って聞いたけど」 「うん。耕平いるって聞いて来て、そのまま話してた」 「田中君はどこにいたの」 「お手洗い」 そんな事を話しながら、私達は歩いた。 お話の内容は今日の晩ご飯の事に移る。梓ちゃんの好きな食べ物で豪華な誕生日にするために必要な食材。 455 三つの鎖 外伝1 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/15(木) 18 52 49 ID MH6Hn2UJ ローストチキンとシチューにしようって決めた。シユーのお肉はもちろん鶏肉で。 幸一くんと二人でスーパーで食材を見繕う。 食材を吟味する幸一くんの横顔。真剣な表情に、寂しさを感じてしまう。 寂しさを感じる理由を分かってしまった。幸一くんは私といるのに、私を見ていない。見据えているのは梓ちゃんの事。 感情を押し殺して買い物を済ます。お料理の手順を話しながら幸一くんの家に向かう。 私とお話してても、幸一くんが考えているのは梓ちゃんの事。お料理をしている時も、幸一くんが考えているのは、梓ちゃんがおいしいと思ってくれるかどうか。 何で幸一くんは梓ちゃんの事ばかり考えているの。お姉ちゃんがそばにいるのに。お姉ちゃんとお話しているのに。 胸を押しつぶされそうな寂しさ。私の様子に何か感じたのか、幸一くんは心配そうに私を見た。 「春子。どうしたの」 「何でもないよ」 胸中を隠して笑顔を作る。 知られたくない。私がこんな想いをしているなんて。 自分でも認めがたい感情。幸一くんが私の事を見ていないのが、考えていないのが寂しいなんて。 気がつけば幸一くんの家が見えた。私の家の門からシロがしっぽを振って出てきた。 シロは幸一くんに近づき、嬉しそうに体を擦り付ける。 笑いながら家の扉を開ける幸一くん。シロもその後に続く。私もシロに続いて家に入った。 シロは階段を上って行った。梓ちゃんは二階にいるようだ。 「どうするの?」 「たくさん作るから、今から作るよ」 ローストチキンにシチュー、ケーキ。確かに結構ある。 「お姉ちゃんも手伝うよ」 「ありがとう」 そんな事を話しながらキッチンに向かう。幸一くんからエプロンを受け取り、食材を取り出す。 二人で手分けして料理を進める。 幸一くんの横顔をちらりと見る。真剣な表情で料理を進める幸一くん。 胸が苦しくなる。切なさにも似た寂しさで胸が一杯になる。 すぐそばにいるのに、一緒に料理しているのに、幸一くんが考えているのは私じゃなくて梓ちゃん。 手慣れた動きで手際よく料理をする幸一くん。多少注意すべき点はあるけど、十分玄人のレベル。私が教え始めた時は、包丁の持ち方も分かってなかったのに。 それも全て梓ちゃんのため。 「春子?」 訝しげに私を見る幸一くん。 「どうしたの?」 私は何もせずに突っ立っていた事に気が付いた。慌てて食材と包丁を手にするけど、誤って指先を軽く切ってしまった。 私の指の先に、微かに血が流れる。 「大丈夫?」 幸一くんはハンカチで傷口を押さえてくれた。 そのまま傷口を圧迫して止血してくれる幸一くん。 私の指に触れる幸一くんの手が、熱い。 「後は僕がやるから、春子は休んでて」 立ち尽くす私の肩をそっと押す幸一くん。私はされるがままにリビングのソファーに座った。 幸一くんはキッチンに戻っていく。幸一くんの後ろ姿が、小さくなって消えた。 私はため息をついてソファーに深く座った。胸に手を当てる。自分でも嫌になるぐらい、心臓の鼓動をはっきりと感じる。 最近の私はおかしい。切なさにも似た寂しさで、頭がおかしくなりそう。 弟が独り立ちするのって、こんなに寂しいんだ。 自分が必要とされなくなったような錯覚。 ずっとそばにいた幸一くんが、手の届かない場所に行ってしまう。恐怖にも似た寂しさ。 そんな事を考えていると、目の前のテーブルにコップが置かれた。 私の好きなスポーツドリンク。顔を上げると、幸一くんが心配そうに私を見下ろしていた。 「さっきからどうしたの?体調でも悪いの?」 幸一くんが私を心配するなんて、おかしな話。少し前まで心配していたのはいつも私なのに。 そんな事を考えていると、私の額に幸一くんの手が触れる。 「熱は、無いかな」 幸一くんの手。大きくて、温かい。 頬が熱くなる。私は幸一くんの手を離した。 「何でもないよ。ちょっとぼんやりしてただけ」 私はコップに口をつけた。よく冷やされたスポーツドリンクがおいしい。 「指を見せて」 私は幸一くんに手を掲げた。幸一くんはバンドエイドを貼ってくれた。 手に触れる幸一くんの指が、熱い。 「後は僕に任せて」 456 三つの鎖 外伝1 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/15(木) 18 54 07 ID MH6Hn2UJ そう言って幸一くんはキッチンに戻って行った。 その後ろ姿は、大きくて頼もしかった。 それが寂しく感じた。 ローストチキン、シチュー、サラダ、手作りのショートケーキ。 どれも幸一くんが作った料理。 どれも丁寧に作られていて、おいしそう。 席に着いた梓ちゃんもテーブルの上の料理を凝視している。 テーブルの下にはシロも座っている。ちょっと豪華なドッグフード付きで。 幸一くんは私に目で合図した。せーので口を開く。 『お誕生日おめでとう』 「…ありがとう」 梓ちゃんは小さな声で答えた。そのまま料理に視線を戻す。 「食べていい?」 幸一くんが驚いた表情で梓ちゃんを見た。 多分、今まで食べていいなんて聞かなかったんだと思う。 「もちろん」 幸一くんの一言に、梓ちゃんはナイフとフォークを手に取った。 「いただきます」 無表情に料理を口にする梓ちゃん。 でも、瞳は輝いている。 「どうかな」 心配そうに幸一くんは尋ねた。 梓ちゃんは無言。無言で次々に料理を口にしていく。瞬く間にシチューが空になる。 何も言わずにシチューの深皿を幸一くんに差し出す梓ちゃん。 幸一くんも無言で受け取り、キッチンに姿を消した。シロもなぜかついて行く。すぐにシチューでたっぷりの深皿を手に戻ってくる。 「はい」 梓ちゃんは無言で受け取り、再び食べ始めた。 静かな食事は進んでいく。シロも静かにドッグフードを食べている。 デザートのケーキも、梓ちゃんは無言で食べた。一人で4つも食べた。さすが成長期。たくさん食べる。 「ごちそうさま」 相変わらず無表情に梓ちゃんは言った。でも、よく見ると満足そうに見える。食べ過ぎて暑いのか、手で顔をぱたぱたあおいでいる。 幸一くんもそんな梓ちゃんをほっとしたように見ている。 次はプレゼントだ。 「梓ちゃん。お誕生日おめでとう。これはお姉ちゃんから」 私は梓ちゃんに包装されたマフラーを渡した。梓ちゃんは素直に受け取った。 「寒いから、風邪をひかないように注意してね」 「…ありがとう」 無表情に礼を言う梓ちゃん。喜んでくれたかわからないけれど、とりあえずお礼を言ってくれた。 私は横目に幸一君を見た。すごく緊張している。 幸一くん。頑張って。 「梓。これは僕から」 幸一君は梓ちゃんに包装された扇子を渡した。梓ちゃんは何も言わず受け取った。 そのまま立ち尽くす兄妹。 「梓ちゃん。開けてみたら」 梓ちゃんは私の言葉に微かにうなずき、袋を開けた。 落ち着いた色合いの扇子。梓ちゃんが持つと、そのために作られたかのようによく似合う。 無言で扇子を見つめる梓ちゃん。その表情からは、何を考えているか分からない。 幸一君も緊張して梓ちゃんの言葉を待っている。 沈黙は唐突に破られた。 「兄さん」 梓ちゃんは扇子から視線を外し、幸一くんを見た。 どこまでも深い漆黒の瞳が、強烈な意志の光を放っている。 「なんなのこれ。馬鹿じゃないの」 抑揚のない梓ちゃんの声。 「冬なのに扇子?何を考えているの。私に風邪をひけって言うの」 真っ青になる幸一くん。 「いや、いつも手で顔をあおいでいるから」 幸一くんの言葉は途中で終わった。 梓ちゃんが幸一くんの頬を張る音が響いた。 457 三つの鎖 外伝1 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/15(木) 18 55 40 ID MH6Hn2UJ 茫然と叩かれた頬を抑える幸一くん。 「私のことが嫌いならそう言ったらいいじゃない」 奇妙な光を放つ梓ちゃんの瞳を向けられた幸一くん。その姿が、微かに震えている。 「ねえ。どうなの?私のこと、嫌いなの?」 「違う。そんなことない」 幸一くんの声は微かに震えていた。 「じゃあどうなの。私のこと好きなの」 「好きだ。大切な家族だと思ってる」 梓ちゃんの表情が微かに変わる。無表情なそれが、嫌悪の感情に染まる。 「妹のことが好きなんだ。変態シスコン。気持ち悪い」 幸一くんは悲しそうだった。見てられないぐらい傷ついていた。 そんな幸一くんを見て、梓ちゃんは笑った。嬉しそうに笑った。 「私は兄さんが大嫌い」 言うだけ言って、梓ちゃんは背を向けた。リビングを去っていこうとする背中に、私は声をかけた。 「梓ちゃん。待って」 面倒くさそうに振り向く梓ちゃん。 「なに」 「幸一くんに謝って」 鼻で笑う梓ちゃん。 「今のは梓ちゃんが悪いよ。幸一くんに謝って」 「何よ。春子はこの変態シスコンに味方するの」 梓ちゃんの言葉に怒りを覚えた。 幸一くんがどれだけ真剣になって梓ちゃんのプレゼントを選んだか。どれだけ努力をしたか。 それらを全て踏みにじった梓ちゃん。 いくら梓ちゃんでも、許せない。 馬鹿にした表情で部屋を出ていく梓ちゃん。その背中を追おうとする私の肩を、幸一くんが止めた。 「春子。いいよ」 幸一くんは悲しそうに言った。 「だめだよ。さっきのは梓ちゃんが悪いよ」 苦笑する幸一くん。 「僕が変なプレゼントしちゃったから、梓が怒っちゃっただけだよ」 何で。何でなの。 何であれだけの仕打ちを受けたのに、そんなことを言えるの。 幸一くんは悪くないのに。 「ごめん。せっかく買い物に付き合ってくれたのに、こんなことになって」 申し訳なさそうに言う幸一くん。 あれだけの仕打ちを受けても、私を気遣う事ができるなんて。 切なさに似た寂しさが、胸に湧き上がる。 幸一くんは立派に成長している。 成長していないのは、私のほう。 「後片付けするから、春子はゆっくりしておいて」 そう言って幸一くんは食卓の上の食器を運び始めた。 シロはそんな幸一くんに体を擦り付けた。まるで慰めるように。 私は見ている事しか出来なかった。 結局、幸一くんの家に長居してしまった。 幸一くんにかける言葉が思い浮かばなかった。慰めようって思っても、幸一くんは平然としていた。悲しそうに見えなかった。 あれだけ傷ついた様に見えたのに、勘違いだったのかもしれない。 シロは慰めるように幸一くんに体をすりよせるけど、幸一くんは微笑んでシロの頭をなでるだけだった。 帰る私を幸一くんは玄関まで見送ってくれた。 「今日はありがとう」 笑顔でお礼を言う幸一くん。 もう落ち込んでいるようには見えない。 「春子。これ」 幸一くんは包装された小さな箱を差し出した。 「よかったら受け取ってくれるかな」 私はびっくりして箱を凝視してしまった。 「だめかな」 悲しそうな幸一くんを見て、慌てて箱を受け取った。軽くて小さい箱。 「お姉ちゃんの誕生日、まだだよ」 459 三つの鎖 外伝1 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/15(木) 18 57 03 ID MH6Hn2UJ 「これは今日のお礼。誕生日の分は別にあるから」 そう言ってほほ笑む幸一くん。 その表情に、頬が熱くなる。 「あの、開けていいかな」 「どうぞ」 箱を開けると、銀色の指輪だった。見覚えのあるシンプルなデザイン。 梓ちゃんのお誕生日プレゼントを買いに行ったときに、私が見ていた指輪。 「春子が熱心に見ていたから、欲しかったのかなと思って」 幸一くんは私のことも見てくれていたんだ。 苦しく感じるほど胸が熱くなる。 嬉しくて、恥ずかしくて、幸一くんの顔を見られない。 信じられない。今までそんな事は無かった。恥ずかしくて幸一くんの顔を見られないなんて無かった。 「えっと、どうかな」 不安そうに私を見る幸一くん。 「お姉ちゃん、すごく嬉しい。ありがとう」 幸一くんは嬉しそうに笑った。その笑顔を見ただけで心臓の鼓動が乱れる。頬が熱くなる。 「あの、よかったらお姉ちゃんにつけてくれる?」 私は幸一くんに指輪を差し出した。幸一くんは驚いたようだけど、笑顔で指輪を手にした。 幸一くんは私の左手の薬指に指輪をつけてくれた。 左手の薬指。結婚指輪をつける場所。 頭が爆発しそう。 「これでいい?」 不思議そうに私を見る幸一くん。幸一くん、知らないみたい。 ちょっと落ち着きを取り戻した。同時にちょっと腹が立った。 「左手の薬指って、結婚指輪をつける場所って知ってる?」 「え!?」 驚いたように私を見る幸一くん。その表情が赤く染まる。 「幸一くん、お姉ちゃんと結婚したいんだ」 恥ずかしそうに首を横に振る幸一くん。可愛い。 「あれれ。幸一くん、お姉ちゃんのこと嫌いなの」 顔を赤くしたまま首を横に振る幸一くん。 「じゃあ、好き?」 顔を真っ赤にしたまま硬直する幸一くん。 「どっち?」 幸一くんは恥ずかしそうに少しだけうなずいた。 「…大切な家族だと思ってる」 私はそんな幸一くんを見て満足だった。 「ありがとう。この指輪、大切にするね」 銀の指輪。不思議と手になじむ感覚。 「幸一くん。じゃあね」 「今日はありがとう。おやすみ」 「おやすみ」 シロもワンと吠えた。 家には私しかいなかった。 お父さんもお母さんもお仕事。 寂しくないと言えば嘘になる。特に幸一くんと梓ちゃんと一緒にいた後は。 ベッドに横になり、手を掲げる。 左手の薬指にある銀の指輪が、蛍光灯の光を受けて鈍く光る。 頬が熱くなる。 そしてその事が不快じゃない。 ちょっと前まで幸一くんにドキドキしてしまうのが腹立たしかったのに。 自分でも信じられない。 弟としか思っていなかった幸一くん。 幸一くんの成長が嫌だった。 私が必要とされなくなるようで嫌だった。 でも、今は違う。 今の私はおかしい。 幸一くんの事を考えるだけで、胸が苦しくなる。頬が熱くなる。心臓がドキドキする。 昔はそんな事なかった。幸一くんの事を考えると胸が温かくなったけど、それだけだった。 460 三つの鎖 外伝1 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/15(木) 18 57 53 ID MH6Hn2UJ まるで、幸一くんに恋してるみたい。 今まで恋した事は無いから、本当のところは分からない。 幸一くんは私の事をどう思っているのだろう。 幼馴染のお姉ちゃんなのかな。 それとも、一人の女の子として見てくれているのかな。 幸一くんの告白が脳裏に浮かぶ。 少し顔を赤くして恋人になってと言う幸一くん。 私に恋していたのではなく、恋に恋していただけ。 だから私は断った。 あの時、断らなければどうなっていたのだろう。 時計を見る。びっくりするぐらい時間が過ぎていた。 窓の外を見ると、加原の家の電気は一か所を除いて消えていた。 幸一くんの部屋の電気だけついていた。 まだ起きているんだ。 昔、幸一くんは寂しがり屋だった。ご両親が帰ってくるのが遅い時、幸一くんはよく泣いていた。 当時はご両親の帰りが遅い時は幸一くんも梓ちゃんも私の家にいた。 ご両親が帰ってきて加原の家に戻っても、ご両親は明日のお仕事に備えてすぐに寝る。だから幸一くんは寂しいままだった。 私の部屋から幸一くんの部屋を見た時に明かりがついている日は、幸一くんが泣いているのをなんとなく知っていた。 だからピッキングを勉強した。今はもう亡くなったお祖父ちゃんに教えてもらった。 お祖父ちゃんは鍵屋だった。お祖父ちゃんがピッキングを学びたい理由を尋ねた時に、私は弟に会いに行くと答えた。 悪用しないという条件で教えてもらった。 私は小さい時から器用だった。一般の鍵ならすぐに開けられるようになった。 夜、幸一くんの部屋の明かりがついている時に、私はこっそり幸一くんの家に忍び込んだ。 幸一くんの部屋をこっそり覗くと、やっぱり泣いていた。枕に顔を押し付け、声を殺して泣いていた。 声をかけた時の幸一くんの表情は忘れられない。 それ以来、幾度となく幸一くんの部屋に忍び込んだ。泣いている幸一くんを抱きしめてあげた。幸一くんが寝付くまで傍にいて手を握ってあげた。 最後に忍び込んだのは随分昔の話。 幸一くんの部屋の明かりがつくことが無くなった頃、ある夜に私は幸一くんの部屋に忍び込んだ。 そこで幸一くんはすやすやと寝ていた。 その頃の幸一くんは柔道の稽古に通い始めていた。疲れた幸一くんは夜すぐに眠るようになっていた。 少し寂しかったのを覚えている。 それ以来、幸一くんの部屋に忍び込む事は無くなった。夜遅くまで幸一くんの部屋の明かりがついていることも、ほとんど無くなった。 今、久しぶりに幸一くんの部屋の明かりがついている。 朝早く起きて家事をしている幸一くんがこんな時間まで起きているのは珍しい。 もしかしたら、明かりをつけたまま眠っているのかもしれない。 あるいは昔みたいに寂しくて泣いているのかな。 私はピッキングツールを確認して部屋を出た。 久しぶりに幸一くんの部屋に忍び込みたくなった。幸一くんの寝顔を見たくなった。 加原の家の扉を解錠する時、手が震えて時間がかかった。 本当に起きていたらどうしよう。 夜遅くに、幸一くんの部屋で二人っきり。 緊張のあまり手が震える。頬が熱くなる。 今の私は本当に変。幸一くんと二人っきりなんて何回もあったのに、緊張する。 でも、昔と今は違う。 子供だけど、子供じゃない。 もし、何か間違いが起きたら。 幸一くんが、襲ってきたら。 考えたくもないのに想像してしまう。 幸一くんが私を押し倒して、組みふせて、口づけして、私の服を脱がして…。 頭がおかしくなりそうな妄想。 自分でもはっきりと分かる。 もし、妄想の通りの事を幸一くんにされても、嫌じゃない。きっと拒めない。いえ、心のどこかで望んでいるかもしれない。 足音を殺してゆっくりと階段を上る。 私は幸一くんの部屋の前に立った。 何度も深呼吸する。 左手の薬指を見る。暗闇の中でも鈍い光を放つ指輪。 ドアをそっと開ける。 微かに声が聞こえてくる。 幸一くんはそこにいた。 461 三つの鎖 外伝1 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/15(木) 18 59 58 ID MH6Hn2UJ ベッドにうつ伏せになり、枕に顔を押しあてて泣いていた。 必死に泣き声を押し殺していた。 どれだけ泣いていたのだろう。枕は涙でぐちゃぐちゃだった。 私は幸一くんの事を何も分かっていなかった。 血を分けた妹にあそこまで嫌われて、平気なはずないのに。 心配をかけないように必死になっていただけなのに。 私、お姉ちゃんなのに、何も気がついてあげられなかった。 「幸一くん」 私の声に驚いた様に振り向く幸一くん。 涙に腫れた目が痛々しい。 「は、春子?」 何か言おうとする幸一くんを、私は抱きしめた。 背中に腕をまわし、そっと抱きしめた。 幸一くんの背中は、思ったより小さかった。震えていた。 「は、離して」 身をよじる幸一くん。 「何も言わなくていいから」 幸一くんの後頭部に手を当て、そっと抱きしめる。 「お姉ちゃんの前なら、どれだけ泣いてもいいから」 涙でぐちゃぐちゃの顔で私を見上げる幸一くん。涙にぬれた瞳には頼りない光が浮かぶ。 私の背中に幸一くんの腕がまわされる。 幸一くんの手は震えていた。 私に抱きついたまましゃくりを上げる幸一くん。 部屋に静かに響く幸一くんの嗚咽。耳をふさぎたくなるような悲しい泣き声。 幸一くんは頑張っている。梓ちゃんのために必死に努力している。 あれだけ好きだった柔道をやめて、家事に専念している。 お勉強も頑張っている。今でも私にお勉強を教えて欲しいと頼んできた幸一くんを覚えている。梓ちゃんにとって恥ずかしくない兄になりたいって。 家事もお勉強も駄目だったのに、今ではどちらも優秀。 梓ちゃんのお誕生日のために、一生懸命プレゼントを考えている。今日も梓ちゃんのお誕生日のために、梓ちゃんの好きなお料理を作った。 でも、梓ちゃんは幸一くんを嫌ったまま。 何で気がついてあげられなかったのだろう。幸一くんが平気なはずないのに。 「お姉ちゃんが傍にいるから」 私は幸一くんの背中をゆっくりと撫でた。 成績が上がっても、お料理がうまくなっても、気がきくようになっても、大人っぽくなっても、幸一くんは変わらない。 夜、一人で泣いていたころと変わらない。私が傍にいて、手を握ってあげないと眠られなかった幸一くんと変わらない。 昔と同じように、幸一くんにはお姉ちゃんが必要。 「大丈夫だから。お姉ちゃんが傍にいるから」 泣き続ける幸一くんの頭をそっと撫でた。 私にもたれかかったまま静かな寝息を立てる幸一くん。 結局、幸一くんは泣きつかれて眠ってしまった。 眠り続ける幸一くんの寝顔。思ったより幼い寝顔。 涙でぬれた目元。私は涙をそっと拭った。 私の手の銀の指輪が鈍い光を放つ。 指輪をそっと外し、ポケットに入れた。 幸一くんを寝かし、布団をかける。 静かに眠る幸一くんの頬にそっと触れる。 柔らかくて温かい幸一くんのほっぺた。 バスの中で、幸一くんの頬に口づけした記憶がよみがえる。 自分の心臓が微かに暴れる。 私はかぶりを振って部屋を出た。 朝、私は早めに家を出た。 家を出たところで制服姿の梓ちゃんと会った。 梓ちゃんは私のプレゼントのマフラーをつけていた。 「おはよう」 「…おはよう」 挨拶だけ交わして梓ちゃんは去って行った。 幸一くんの家のチャイムを押そうとした瞬間、ドアが開く。 京子さんと誠一さん。幸一くんと梓ちゃんのご両親。 463 三つの鎖 外伝1 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/15(木) 19 02 44 ID MH6Hn2UJ 「春子ちゃん。おはよう!」 京子さんは笑顔で近づいてきた。 「昨日は梓ちゃんのためにありがとうね。」 「いえ、私も楽しかったです」 「幸一君なら家にいるから」 そう言って笑う京子さん。 「春子ちゃん。いつも二人がお世話になっている。昨日も本当にありがとう」 誠一さんはそう言って微かにほほ笑んだ。 幸一くんの面影。幸一くんが大人になったら、こんな人になるのかな。 「さ。行きましょ」 促す京子さん。二人は去って行った。 仲睦まじい二人。少し羨ましい。 雑念を振り払って家にお邪魔する。 幸一くんはリビングでお茶を飲んでいた。 「あれ?春子?」 「幸一くん。おはよう」 「おはよう」 気恥ずかしそうにそっぽを向く幸一くん。 「…昨日はごめん」 「そこはありがとうでいいよ」 「…ありがとう」 幸一くんは立ち上がってキッチンに消えた。すぐにコップを持って戻ってくる。 「どうぞ」 礼を言って受け取る。温かい緑茶。 「指輪、ありがとう」 「どういたしまして。まさか学校につけていかないよね」 心配そうな幸一くん。私は笑った。 学校につけて行ったら没収されちゃうよ。 「幸一くん。見て」 私はブレザーを脱いで、ブラウスのボタンを上から外す。 「え?ちょ、ちょっと!」 顔を赤くして慌てる幸一くん。 「これ。見て」 「だ、だめだよ」 「違うから。見て」 顔を赤くして私の胸元に視線を向ける幸一くん。 私の胸元には細い鎖に繋がれた指輪が見えるはず。 「これは、僕のあげた指輪?」 「うん。指にはつけないで、こうしておくよ」 不思議そうな顔をする幸一くん。 「こうしておけばずっと身に着けておけるでしょ?」 本当は違う。 幸一くんがはめてくれた左手の薬指だと、幸一くんのお姉ちゃんとして相応しくないから。 私は幸一くんのお姉ちゃんだから、左手の薬指に幸一くんがくれた指輪をしているのはおかしい。 「幸一くん。何かあったらいつでも言ってね」 私は幸一くんの手を握った。 「お姉ちゃん、いつだって幸一くんの味方だから」 照れくさそうにそっぽを向く幸一くん。 「…ありがとう」 少し幼さの抜けた横顔。でも、それは見かけだけなのを私は知っている。 「そろそろ学校に行くよ」 私は幸一くんの手を引っ張って立ち上がった。 「今日もお勉強頑張ろうね」 私の言葉に、幸一くんは笑顔で頷いた。 その笑顔に微かに心臓の鼓動が速くなる。 でも、今はそんな事に悩んじゃいけない。 私は、幸一くんのお姉ちゃんだから。 幸一くんに必要なのは恋人の私じゃなくて、お姉ちゃんとしての私だから。 でも、もし幸一くんがお姉ちゃんを必要ないぐらいに成長して、お姉ちゃんとしての私じゃなくて女の子としての私を必要としてくれる時が来たら。 その時には、別の関係になれるかもしれない。 464 三つの鎖 外伝1 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage 2010/07/15(木) 19 04 28 ID MH6Hn2UJ 「春子?どうしたの?」 不思議そうに私を見下ろす幸一くん。 「何でもないよ」 そう言って私は幸一くんの手を引っ張って歩き出した。 戻る 目次へ 次へ
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【検索用 なつのみそれ 登録タグ UTAU な ナカノは4番 曲 曲な 桃音モモ】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:ナカノは4番 作曲:ナカノは4番 編曲:ナカノは4番 唄:桃音モモ 曲紹介 曲名:『なつのみぞれ』 2018年2月、SoundCloudにてロックアレンジ投稿。 歌詞 (作者ブログより転載) 何現象?それ 一生涯曖昧な散弾銃の海で されるがまま息しないでふわり 超体験して受け取るあの子の電波は なんだか褪せた朝焼け色 雨上がり 水たまり その傘に 西向きの影 鮮やかな虹、過ぎて 愛と恋の核実験ドキドキ たぶん忘れたの 抜け道、坂道、帰り道 わがままにきづかずに 声がほらあなたを貫いた 何現象?それ 一生涯曖昧な散弾銃の海で されるがまま息しないでふわり 環状線沿い100mちょっと 海岸線上ふかふか 感じてみたいの無重力 雨上がり 水たまり あの傘にみずいろが跳ねて 吹き抜ける白い風 それとなく揺れる黒い髪 そうなの 夢をみた あなたと急展開から直滑降 左胸はじけて 空の青から言葉がグルグル 全回転して右手に伝わる何かを 突き抜けて飛んでった そんな夢をみた あ、その影から芽が出て揺れてる 懐かしさに揺れている 朝焼けはそのままで 掴もうとも触れられないまま 雨上がり 水たまり その傘に 答えはあるか コメント 名前 コメント
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帰宅する仲間たちを見送り二階へと上がったれいなは、リビングの風景がいつもと異なるのに気がついた。 「なんこれ?こたつ?」 「そーそー。物置の整理してたら出てきてさ」 リビングの真ん中に見慣れない布団つき机が陣取っている。 愛と二人で暮らし始めて何年か経つが、こんなものがこの家にあったなんて今まで聞いたことがない。 初めて間近でみるこたつにれいなは興味津々で近寄った。 「これ、いつ買ったと?今まで見たことないっちゃけど」 「あー・・・・・・だいぶ前に買って、そのままずっと仕舞ってあったからね。知らないのも無理ないかも」 苦笑いを浮かべる愛だが、その目にはどこか陰が差しているように見える。 なにか事情があるのだろうと思ったが、れいなは敢えてそれを尋ねようとはしなかった。 話すべきことなら愛は自分から言ってくる。 そうじゃないことなら、特にこちらから聞き出す必要はない。 そんなことより、まずはこたつだ。 「ね、入っていい?」 「まだ電源入れていないからあったかくなってないよ。それでもいいなら」 「失礼しまーっす!」 いざ、こたつに飛び込まん! れいなは勢いよくこたつ布団をめくった。 が、そこで。 「ちょーっと待ったぁー!!」 鳴り響く甲高い声。にぎやかな足音。 小春を先頭に、仲間たち7人がリビングへなだれ込んでくる。 「田中さんひとりでぬくぬくしようったって、そうはと・・・と、と、と?」 「問屋がおろしまへん!」 「そうそれ!」 「ワタシ田中さんの隣座るー!」 「いーないーなー。ボクもこたつに入りたいんだーなー」 「れいなは詰めが甘いよね。こたつ独占とか許されると思った?」 「日本の冬はヤッパこたつだよネー」 「なに日本人より日本人らしいこと言ってんのアンタ」 あっけにとられるれいなをよそに、次々と自己主張する仲間たち。 正直、やかましくて仕方がない。 「なんでまだおると!さっきみんなで帰りよったやろーがっ!」 「いやー小春が忘れ物したとか言い出してさー。みんなで取りに戻ったら、今度はカメが『サプライズしてこー』とか言って」 騒がしい集団を代表して、里沙がこの状況の説明をしてくれた。 要するに原因を作ったのは小春で、悪ノリしたのは絵里ということか。 驚いたには驚いたが、このサプライズはあまり嬉しくない。 れいな夢のこたつ入りの時間が遠のいてしまった。 「一度には入れるのは四人か。・・・よーっし!こたつ争奪選手権を始めるぞー!イェイイェイ!!」 「やけんなんでそーなると!」 「ルールはー?ねぇルールはー?」 「なんでもいっすよ。なんか案ある人ー?」 「早口言葉!」 「百人一首!」 「ピャーピャー!」 「ツイスターゲーム!!!」 「乗り気!?」 そもそもの当事者である愛とれいなを差し置いて議論が進められていく。 もはや抵抗は無意味だろう。 ツッコミに疲れたれいなが愛のほうを見ると、愛もしょうがないという顔をしてみんなを眺めていた。 「いっくぞー!こたつバトル、スタート!!」 「おー!!!!!」 「・・・・・・おー」 れいなは、小さく右の拳を突き上げた。 ………… 「で、なんでこうなっちゃったの?」 「おっかしなー、こんなはずじゃなかったんだけどなー」 「もー、小春のばかぁー!」 こたつ権をめぐるバトルは、すったもんだの果てに終結した。 仁義なき戦いに勝利した愛、里沙、愛佳、そしてれいなの四人がこたつの中に収まる。 「はー、あったかい。眠くなってきたっちゃん」 「え、寝るの?寝るの?寝ちゃうの?指くわえてこたつを見つめてるかわいそうな絵里たちの前で眠っちゃうの?」 「ひどいよれいな!人の痛みをもっと考えて!」 「小春もこたつ入りたいー!みっつぃー交換しよう!」 「え~、いやですぅー」 初めてのこたつでまどろむれいなには、外野たちのさえずりすら心地良い。 誰になにを言われても、れいなはこのベストポジションを譲る気がなかった。 「詰めたらいけるだよ!田中さん、いれてー!」 「ちょ、やめっ、このアホジュン!あんたでかいけん無理!」 「じゃー私小さいだからダイジョブ!ハッハッハ!」 「無理!狭いー!!」 れいなの右隣にジュンジュンが、左隣にリンリンが割り込んでくる。 一人ならまだなんとか平気だが、二人となるとさすがにきつい。 快適だったはずのこたつが途端に熱くなってきた。 「ぬ、そういうのアリ?んじゃ、おじゃましまーす!」 「コラー!小春ー!」 「とぉーう!」 「うお!びっくりした!」 「あ、乗り遅れた」 「道重さん、よかったらここどうぞ」 里沙の隣に小春が。 愛の隣に絵里が。 愛佳の隣にさゆみが入り込む。 一つのこたつに九人。 明らかに定員オーバーである。 「ねー、愛ちゃん。狭いんだけどー」 「うん、狭いな」 「いいじゃんいいじゃんガキさん。細かいこと言わないのっ」 「絵里はもうちょっと細かいこと気にしたほうがいいと思うよ」 「そんなことより暑い!」 「田中さん暑い?ジュンジュンがふーふーしてあげよっか?」 「きもっ!ジュンジュンきもいよ!」 「あー、耳がキンキンなってきたー」 「ハハハ、みんな仲良しだ!」 狭いし、暑い。 このまま寝たら風邪をひく。 終電の時間も過ぎる。 お風呂にだって入りたい。 それでも、今この瞬間こたつから出たいと思う者はいなかった。 いつまでもいつまでもこうしていられたらいいのに、と誰もが思っていた。
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651 三つの鎖 24 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/07/29(木) 22 57 04 ID GBD9RRaR 放課後、帰りのホームルームが終わると同時に幸一くんは早足に教室を出た。 その様子を不思議そうに見る耕平君。 少しして、梓ちゃんが教室にやってきた。 私と視線が合う。梓ちゃんはすぐに視線を逸らして教室を見回した。耕平君を手招きして呼び寄せる。 「耕平さん。兄さんを知りませんか」 「あいつもう帰ったで」 梓ちゃんの瞳の色が揺れる。背筋の寒くなるような瞳の輝き。 危険な光を放つ梓ちゃんの瞳に気圧されたかのような耕平君。それでも視線を逸らさないあたり、幸一くんの親友だと思う。 「どこに行ったかご存知ですか」 「いや、知らへんわ」 無言で耕平君を睨みつける梓ちゃん。 耕平くんが知っているかどうかは私も分からない。けど、もし知っていたとしても今の梓ちゃんには教えないだろう。 「…お手数をおかけしました。失礼します」 梓ちゃんは去って行った。 耕平君は自分の席に座って、ため息をついた。 「大丈夫?」 私は耕平君に近づき、話しかけた。 耕平くんは顔を上げた。疲れた表情は恐怖で微かにひきつっている。 「村田、梓ちゃんなんかあったんか?」 「どういう事?」 「なんか普通やない」 耕平くんは拳を握りしめた。微かに震えている。 「普通やない。話してるだけやのに、殺されるかと思った」 耕平くんは私を見上げた。 「幸一のやつ、大丈夫なんか」 「本調子じゃないけど、体調は良くなっているみたいだよ」 「誤魔化すなや。俺の言いたい事はそんなんちゃうわ」 私を睨みつける耕平君。 馬鹿な子。 君には何の関係も無いのに。 「私、よく分からないよ」 ため息をつく耕平君。 「じゃあね」 私は教室を出た。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 通学路を僕は走る。 春も終わりに近づいているせいか、暑い。 時々後ろを振り向いて確認する。 梓がいないかを。 幸い梓に追いつかれる事なく目的地に着く。 夏美ちゃんのいるマンション。 階段をのぼりながら、郷愁に近い感情が湧きあがる。ここに来るのは久しぶりに感じる。 ドアベルを鳴らす。返事は無い。どうやら僕の方が先についたようだ。 無理もない。授業が終わった瞬間に全力で走ってきた。 教室でぐずぐずしていると、梓が来そうな予感がした。 メールで夏美ちゃんとここで待ち合わせをした。学校だと、お昼のようなってしまいそうだから。 梓。僕の妹。 僕の事を一人の男として愛していて。夏美ちゃんのお父さんを殺して。 どう接すればいいのか分からない。 どうすればいいのかも分からない。 そんな事を考えていると、階段を上る足音が聞こえてきた。聞き覚えのある足音。 僕の好きな女の子が、階段を上って姿を現す。 「お兄さん!」 夏美ちゃんは泣きそうな顔で僕に抱きついた。 震える小さな背中。僕はそっと抱きしめた。 「お、お兄さん、わたし、わたしっ」 僕の胸に顔をうずめ震える声で僕を呼ぶ夏美ちゃん。 寂しい思いをさせていた。罪悪感に胸が痛む。 652 三つの鎖 24 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/07/29(木) 22 58 27 ID GBD9RRaR 夏美ちゃんは顔を上げた。目尻から涙の雫がポロリと落ちる。 僕はそれをそっと拭った。 「とりあえず上げてもらえるかな」 夏美ちゃんは泣き笑いの表情で頷いた。 仏壇の前で正座し、手を合わせる。 娘を頼む。雄太さんの手紙が脳裏に浮かぶ。 「あの、お兄さん」 夏美ちゃんの声。振り向くとお盆を持った夏美ちゃんが僕を見ている。 「私、部屋にいますね」 「僕も行くよ」 僕は立ち上がって夏美ちゃんの持っているお盆を持った。琥珀色の液体の入ったコップが二つ。 「ありがとうございます」 夏美ちゃんの部屋でベッドに並んで座りコップに口をつける。 アイスティー。走って乾いた喉が潤う。 「夏美ちゃん」 夏美ちゃんは僕を見上げた。並んで座っても夏美ちゃんは小さい。 「その、ごめん。今日のお昼の事も、洋子さんを見送れなかったのも」 夏美ちゃんは首を横にふるふる振った。 「私こそお見舞いに行かなくてすいません」 「いいよ。気を使ってくれてありがとう」 遠慮してくれたんだろう。 梓は、女の子が家に来るのを嫌がる。 春子でも。夏美ちゃんでも。 夏美ちゃんは僕にもたれかかった。温かくて柔らかい感触。 僕は夏美ちゃんの髪に触れた。サラサラしていて綺麗な髪の毛。 「髪の毛、のびたね」 以前はショートだったのに、今は肩にかかるぐらいの長さになっている。 「伸ばそうと思いまして」 夏美ちゃんは顔を上げた。不安そうに僕を見上げる。 「似合ってるよ」 僕の言葉にほっとした様子の夏美ちゃん。 実際、今の髪形もよく似合っている。 小さい時の春子を思い出す。今でこそ春子の髪は背中に届く長さだけど、小さい時は肩にかかるぐらいの長さだった。活動的な春子は短い髪形を好んでいた。気がつけば今のように伸ばしていた。 春子はいつから髪を伸ばすようになったのだろう。 「お兄さん」 夏美ちゃんの声に慌ててしまった。他の女の子の事を考えているのをばれたのかもしれない。恋人といるのに、他の女の子の事を考えるのは失礼だ。 「あの、体調は大丈夫ですか」 「もう大丈夫だよ」 夏美ちゃんの両手が僕の頬を挟む。上気した頬、うるんだ瞳、甘い香り。 目を閉じて顔を近づける夏美ちゃん。柔らかそうで小さな唇。僕も目を閉じた。 お互いの唇が触れる。温かくて柔らかい感触。 啄ばむように何度もキスしてくる夏美ちゃん。甘い香りと感触に頭がくらくらする。 口の中に熱い何かがぬるっと入り込む。夏美ちゃんの舌。 一生懸命に僕の口腔を舐めまわす夏美ちゃんの舌。僕も応えるように舌を絡める。 僕は夏美ちゃんの背中に腕をまわした。少し強く抱きしめる。服越しに夏美ちゃんの柔らかくて温かい感触を感じる。 舌を絡め合ううちに、お互いの体が熱くなるのを感じる。 唇を離す。目を開けると夏美ちゃんの切なそうな表情が目に入る。 微かに乱れた呼吸。甘い香りが鼻につく。 「私、寂しかったです」 僕の胸に頬ずりしながら夏美ちゃんは呟いた。 「ごめん」 夏美ちゃんの髪を撫でながら僕は言った。 顔を上げて僕を見つめる夏美ちゃん。いつもの元気な明るい様子とは違う濡れた視線に頭がくらくらする。 「…忘れさせてください」 夏美ちゃんの小さな手が僕のカッターシャツのボタンをはずしていく。僕も夏美ちゃんの制服のボタンをはずす。 お互いの肌を徐々に晒していく。夏美ちゃんの白くて滑らかな肌。 露わになった僕の上半身に顔を寄せ、すんすん鼻を鳴らす夏美ちゃん。 そういえば、走ってきたから汗臭いかもしれない。 そう考えた瞬間、恥ずかしさを覚える。 653 三つの鎖 24 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/07/29(木) 22 59 55 ID GBD9RRaR 「ごめん。汗臭いかな」 夏美ちゃんは顔を上げた。ブラだけで隠された上半身が艶めかしい。夏美ちゃんは何も言わずに僕の鎖骨を舐めた。 くすぐったい感触に体が震える。夏美ちゃんはさらに僕の上半身に舌を這わせる。 「…お兄さんの匂いと味がします」 夏美ちゃんは僕の膝に乗る。視線の高さが同じになる。顔が近い。濡れた瞳が僕を見つめる。 僕の耳を夏美ちゃんが甘噛みする。くすぐったい。 「…好きです」 耳のすぐそばで囁かれる言葉。熱い吐息。 抱きしめた夏美ちゃんの上半身。直接触れる肌が心地よい。 僕は夏美ちゃんのブラを外した。形の綺麗な胸が露わになる。恥ずかしそうに身じろぎする夏美ちゃん。 小さな手が僕の股間をズボン越しに触れる。すでに硬くなっている。 「…嬉しいです」 頬を染める夏美ちゃん。夏美ちゃんはベッドを下り、膝をついて僕の股間に顔をうずめた。 夏美ちゃんはズボンのチャックを開け、僕の剛直を取り出す。 白くて小さな手が剛直に触れるたびに、自分の意志とは無関係に震える。 夏美ちゃんは剛直の先端を咥えた。熱い舌が先端をゆっくりと舐める。さらに夏美ちゃんの手が剛直を擦る。 小さな白い手が剛直をしゅっ、しゅっと擦る。あまりに淫靡な光景に頭に血が上る。 「ちゅっ、んっ、はむっ、ちゅっ」 夏美ちゃんの唾液と先走り液でべとべとになって滑りの良くなった剛直を小さな手が擦る。剛直の先端を夏美ちゃんの舌が舐めまわすのが心地よい。 「んっ、ちゅっ、じゅるっ」 顔を上げて僕を見つめる夏美ちゃん。濡れたな視線。 その瞳が、梓とかぶる。 僕は夏美ちゃんの頭を撫でた。サラサラの髪の感触。嬉しそうに笑う夏美ちゃん。 夏美ちゃんのむき出しの肩をそっと押した。剛直が夏美ちゃんの口から出てきて、冷たい空気に触れる。 「もういいよ。ありがとう」 夏美ちゃんは頬を染めて僕を見上げた。いつもの子供っぽい仕草からは想像もできないほどの艶を否応なしに感じる。 「お兄さん。全部脱いでくれますか」 僕は頷いて脱ぎだした。 夏美ちゃんもスカートを脱ぐ。薄いピンクのショーツと白くて柔らかそうな太ももが露わになる。 恥ずかしそうにショーツと靴下を脱ぎ、一糸まとわぬ姿になる夏美ちゃん。 夏美ちゃんの体は綺麗だ。背は低いけど、出るところは出ている。白くて滑らかな肌も綺麗だ。胸の大きさは普通だと思うけど、身長が低いせいか大きく見える。 「…そんなに見ないでください」 恥ずかしそうにうつむく夏美ちゃん。可愛い。 「あの、座っていただけますか」 僕は夏美ちゃんの言うとおりにベッドに腰掛けた。 夏美ちゃんは僕の足元に膝ついた。その手には避妊のためのゴム。 「つけますね」 夏美ちゃんは僕の足元に跪いた。そして僕の剛直にゴムを着ける。白くて小さな手がたどたどしい手つきでゴムを着ける動きが、妙にエロい。 立ち上がった夏美ちゃんは僕の肩をそっと押した。ベッドに押し倒された僕を夏美ちゃんは上から見下ろす。 初めての体位。 「…今日は全部、私がします」 頬を染め、濡れた瞳で僕を見下ろす夏美ちゃん。背筋が寒くなるほどの色気を発散している。 夏美ちゃんの小さな手が剛直に触れる。それを膣の入り口に持ってくる。 お互いの性器が触れる。ゴム越しにも夏美ちゃんの膣の入り口が濡れているのが分かる。 「…いきます」 夏美ちゃんはゆっくりと腰を下ろす。剛直が徐々に夏美ちゃんの中に入っていく。 「んっ…あっ…ああっ…!」 少し苦しそうに身をよじる夏美ちゃん。白い胸が揺れる。 それでも夏美ちゃんは腰を下ろすのをやめない。やがて剛直が全て夏美ちゃんの膣に収まる。剛直の先端が子宮の入り口に当たるのを感じる。 荒い息をついて僕を見下ろす夏美ちゃん。 「…久しぶりですから、お兄さんの、大きく感じます」 頬を染め嬉しそうに僕を見下ろす夏美ちゃん。微かに胸がざわつく。 「…動きますね」 夏美ちゃんは姿勢を伸ばしてゆっくりと腰を上げた。 「あっ、ああっ、んっ」 剛直が擦られる感触が心地よい。 半分ほど剛直を抜いて、再び夏美ちゃんは腰をおろした。 「んっ、あっ、お兄さんのが、んんっ、こすれてます」 たどたどしい動きで何度も腰を動かす夏美ちゃん。 白い胸が揺れる。 654 三つの鎖 24 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/07/29(木) 23 01 12 ID GBD9RRaR 僕の胸に手をつき、夏美ちゃんは腰を振る。 夏美ちゃんの声が艶を含む。吐息が甘い香りを放つ。 その姿に、胸がざわつく。 「あっ、んっ、ああっ、んっ!」 嬉しそうに、気持ちよさそうに動く夏美ちゃん。淫靡な表情。 何度も剛直の先端が子宮の入り口にぶつかる。その度に体を震わし、熱い吐息を漏らす夏美ちゃん。 白い胸が大きく揺れる。 微かに頭痛がする。心臓の鼓動がだんだん大きくなるのを感じる。 胸が、ざわつく。 「んっ、お兄さんっ、どうですかっ?気持ちいいですか?」 淫靡に僕を見下ろす夏美ちゃん。 その姿が。 あの日の春子にかぶって見えた。 僕を嬉しそうに犯す姿に。 「きゃ!?」 誰かの悲鳴が聞こえた気がする。誰なのか考える余裕はなかった。 心臓がでたらめな鼓動を刻む。その度に激しい頭痛が僕を苛む。全身から冷や汗が出る。 込み上げる吐き気。震える体。歪む視界。 必死に耐えた。 何度も深呼吸する。徐々に頭痛が引いて行く。心臓の鼓動がもとに戻っていく。 そこで漸く気がついた。 僕が夏美ちゃんを突き飛ばしていた事に。 ベッドの上でお尻をついて呆然と僕を見つめる夏美ちゃん。 「ご、ごめん」 僕は何をやっている。 夏美ちゃんは何の関係もないのに。 手を伸ばして夏美ちゃんの肩に触れる。夏美ちゃんはびくっと震えて僕を見上げた。 「あ、ああ」 脅えた表情で僕を見上げる夏美ちゃん。 「……い」 夏美ちゃんは何かつぶやいたけど、小さすぎて聞こえない。 その姿に不安を感じ得る。 「ごめん。夏美ちゃ――」 「ごめんなさい!!!!」 部屋に悲鳴じみた声がこだまする。 夏美ちゃんの声だと、すぐには気が付けなかった。 「何でもします!!だから、だから、お願いです!!捨てないでください!!嫌いにならないでください!!」 夏美ちゃんの頬に涙が伝う。必死な表情で僕に詰め寄る。 僕を見上げる夏美ちゃん。脅えた表情。 「き、嫌いにならないでください。お願いです」 涙で顔をぐちゃぐちゃにする夏美ちゃん。 「お兄さん好みの女になります。お兄さんの言う事を聞きます。だから、だからお願いです」 脅えきった表情で僕を見つめる夏美ちゃん。涙がとめどなく溢れる。 「す、捨てないでください」 何で。 何でそんな事を言うのだろう。 僕は夏美ちゃんが好きなのに。 夏美ちゃんを嫌いになるはずないのに。 突然、夏美ちゃんは僕の股間に顔をうずめた。 ゴムのついた剛直を握り、口にする。 「な、夏美ちゃん?」 夏美ちゃんは顔を上げた。涙でぐちゃぐちゃの顔。 「んっ、ちゅっ、じゅるっ」 懸命に剛直を舐める夏美ちゃん。 「お、落ち着いて」 夏美ちゃんの肩を掴み、離す。 泣きながら夏美ちゃんは僕の手を振り払った。 「き、気持ちよくします。だから、だから、捨てないでください」 泣きながら僕を見つめる夏美ちゃん。 僕を見ているようで、見ていない。 655 三つの鎖 24 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/07/29(木) 23 03 52 ID GBD9RRaR その痛ましい姿に胸がざわつく。 僕は夏美ちゃんを抱きしめた。 「お、お兄さん?」 脅えたような夏美ちゃんの声。 「ご、ごめんなさい」 「大丈夫。大丈夫だから」 柔らかくて温かい夏美ちゃんの体。 「ご、ごめんなさい。ごめんなさい」 泣きじゃくりながら何度も謝る夏美ちゃん。涙の雫が落ちる。 ふれ合う距離にいるのに、夏美ちゃんが遠くに感じる。 視界がにじむ。涙がこぼれて、夏美ちゃんの肩に落ちる。 びくりと震える夏美ちゃん。 「あ、ああ、あ」 夏美ちゃんは僕の顔を両手で挟んで口づけした。 温かくて柔らかい感触。 「んっ、ちゅっ」 懸命に口づけする夏美ちゃん。 「ひっく、お願いです、嫌わないでください」 泣きじゃくる夏美ちゃん。 「僕は夏美ちゃんが好きだ。嫌いになったりしない」 「お、お兄さんの好きにしていいです。何をされてもいいです。だから、だから、嫌わないでください」 何で。何で分かってくれないの。 僕は夏美ちゃんが好きなのに。 愛しているのに。 僕は夏美ちゃんを思い切り抱き締めた。 「きゃ!?」 夏美ちゃんの唇を強引にふさぐ。 今は、夏美ちゃんの悲しい言葉を聞きたくなかった。 歯と歯の隙間を割って、唇をねじ込む。 「んっ、んんっ!?」 夏美ちゃんの口腔を舌で蹂躙する。 舌を、歯茎を、舐めまわす。 夏美ちゃんも舌をからませ、一生懸命に応えようとする。 それを屈服させるように舌を動かす。 苦しそうに身をよじる夏美ちゃんを、押さえこむように抱きしめる。 夏美ちゃんの口腔を、舌で無茶苦茶にする。 しばらくして、僕は唇を離した。苦しそうにむせる夏美ちゃん。 それでも僕を必死な瞳で見上げる。 「だ、抱いてくれないのですか」 夏美ちゃんの声は震えていた。 「な、何をされてもいいです。お兄さんの好きなようにしてくれていいです」 「僕は夏美ちゃんが好きだ」 夏美ちゃんは僕にしがみついた。 小さな手が僕の背中に回される。 「ひっく、何をされてもいいです。ぐすっ、お兄さんの、ひっく、好きなようにしていいです。だから、だからお願いです。嫌わないでください。捨てないでください」 涙交じりの声で夏美ちゃんは囁いた。 その声から夏美ちゃんの感じる恐怖が伝わってくる。 捨てられるのかもしれないって。 そんな事、絶対にないのに。 何で分かってくれない。 僕は夏美ちゃんを押し倒した。 夏美ちゃんは脅えるように僕を見上げる。 その姿に、胸がざわつく。 僕は一気に挿入した。 「ひうっ!?」 背中を弓なりに反らす夏美ちゃん。 僕は最初から激しく腰を振った。 「あっ!!ああっ!!おにい、さんっ!!ひうっ!?」 苦しそうに身をよじる夏美ちゃん。それなのに顔には、安堵の色が浮かぶ。 ざわつく感情を押さえ、僕は夏美ちゃんを激しく抱いた。激しく犯した。 656 三つの鎖 24 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/07/29(木) 23 06 14 ID GBD9RRaR 膣の奥を何度もつつき、揺れる白い胸を揉み下し、唇を奪う。 身をよじる夏美ちゃんを押さえつけ、腰を動かす。 そうすれば、夏美ちゃんが安心した表情を浮かべるから。 「ひぐっ、すきっ、すきですっ」 泣きながらうわごとの様に呟く夏美ちゃん。その唇を僕は塞いだ。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 靴を履いて僕は立ち上がった。 ジャージにTシャツ姿の夏美ちゃんも靴をはいた。僕は微かにふらつく夏美ちゃんを支えた。 「大丈夫?」 「は、はい。その、平気、です」 脅えた視線を僕に向ける夏美ちゃん。無理もないかもしれない。 夏美ちゃんを激しく抱いた。 身をよじる夏美ちゃんを押さえつけ、唇をむさぼり、激しく犯した。 夏美ちゃんの痛ましい姿を見たくなかったから。 自分でも分かっている。こんなのはよくない。体で誤魔化すような真似はよくない。僕の気持ちを夏美ちゃんに伝えないといけないって。 でも、何度好きって言っても、夏美ちゃんは分かってくれない。 脅えたように僕を見上げ、抱いてとせがむだけ。 「あ、あの、下まで送ります」 「ありがとう」 並んでドアをくぐる。 僕は夏美ちゃんの手を握った。びくりと震える夏美ちゃん。 言葉を交わしても、体を重ねても、僕の気持ちは伝わらない。 僕が夏美ちゃんを捨てるはずないのに。 言葉で表せないぐらい、夏美ちゃんの事が好きなのに。 何で夏美ちゃんは不安を感じているのだろう。 分からない。夏美ちゃんは何も言ってくれない。 夏美ちゃんの部屋は二階だ。すぐに一階のロビーにつく。 僕の手を握る夏美ちゃんの手が震える。 ロビーに梓がいた。 薄いキャミソールにホットパンツという格好。むき出しの華奢な肩に眩しいぐらいに白くて細い素足。暑がりの梓が好む服装。 冷めた視線を僕達に浴びせる梓。その視線が微かに下がる。握り合った手に梓の視線が突き刺さる。 梓の瞳の色が揺れる。 「兄さん。家に帰ろ」 無表情に梓は近づき、僕の手をとった。びっくりするほど熱い手。 梓は何も言わずに僕を引っ張る様に歩き出した。 「夏美ちゃん。また明日」 僕は夏美ちゃんの手を離した。夏美ちゃんの温もりが消える。 泣きそうな顔で立ち尽くす夏美ちゃん。 その姿がだんだん小さくなり、見えなくなる。 夏美ちゃんの泣きそうな表情が頭から離れない。 傍にいたい。でも、そうすると梓が何をするか分からない。 ロビーを出たあたりで、後ろから足音が聞こえた。 振り向くと夏美ちゃんがこっちに走っている。 「お兄さん!!」 夏美ちゃんの手が僕の空いている手を掴む。震える小さな手。 「嫌です!!行かないでください!!」 涙の雫が夏美ちゃんの頬を伝って落ちる。 僕の手を握る梓の手の体温が、さらに熱くなった気がした。 敵意に満ちた瞳を夏美ちゃんに向ける梓。 「兄さんの手を離して」 「いやっ!!絶対いやっ!!」 夏美ちゃんは涙に濡れた瞳を梓に向けた。 「梓はお兄さんの妹じゃない!!いつでも一緒にいられるじゃない!!」 夏美ちゃんの目尻から涙がとめどなく溢れる。 「何があってもお兄さんは梓のお兄さんでしょ!!私は違うんだよ!!お兄さんと別れたら、赤の他人になっちゃうんだよ!!」 頬を伝う涙が地面に落ちる。 「何で私からお兄さんを連れ去るの!!ひどいよ!!私だってお兄さんと一緒にいたいのに!!傍にいたいのに!!お兄さんが休んでた時もお見舞いに行かなかったのに!!それなのに何で梓は私の家まで来るの!!」 夏美ちゃんの一言一言が僕の胸に突き刺さる。 657 三つの鎖 24 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/07/29(木) 23 07 59 ID GBD9RRaR 僕の手を握る夏美ちゃんの小さな手が震える。 僕の手を握る梓の手から伝わる体温がさらに熱くなる。 梓の方を見て、僕は戦慄した。 何の感情を示さない無表情なのに、瞳だけが梓の激情を露わにしている。 怒りと敵意と害意。 「うるさい。黙って」 「これ以上私からお兄さんを奪わないで!!」 梓の瞳の色が揺れる。 夏美ちゃんに梓の手がのびる。梓を振り払おうとして、できなかった。梓の手が魔法のように僕の手の関節を極め、動けない。 僕は夏美ちゃんの腕を振り払った。 「え?」 呆然と僕を見上げる夏美ちゃん。涙に濡れた瞳は信じられない何かを見たかのように見開かれる。 「あ、あ、なん、で」 生気の失せた表情。虚ろな瞳。震える声。 それらを振り払って僕は告げた。 「夏美ちゃん。また明日」 僕は梓の手を引き、その場を早足に離れた。 これ以上いたら、梓はきっと夏美ちゃんを傷つける。 外は既に暗い。夜の涼しさが体にしみる。 僕に振り払われ、呆然とした夏美ちゃんの様子が脳裏に浮かぶ。 胸が、痛む。 夏美ちゃんを傷つけた。 でも、他にどうすればよかったのだろう。 あのままだと、梓はきっと夏美ちゃんを怪我させた。もしかしたら、命を奪ったかもしれない。 梓は僕の腕を抱きしめるように身を寄せた。 「離れて」 僕をの言葉を無視して梓は顔をすりよせる。 瞳が怒りと苛立ちにそまる。 「夏美の匂いがする」 梓の手が僕の頬に触れる。信じられない熱さ。 「夏美を抱いたんだ」 頬から梓の手が離れる。その手が僕の手を握る。 突然、手首に激痛が走る。梓の手が僕の手首を容赦なくねじり上げる。あまりの痛みに僕はたまらず膝をついた。 「なにを」 僕は最後まで言葉を紡げなかった。 梓の唇が僕の唇をふさいでいた。 ふれ合う唇から、梓の体温が伝わる。信じられない熱さが唇を焼く。 唇を割って、熱い何かが入り込む。 「ちゅっ、んっ」 熱い何かが口腔を這いずり回るおぞましい感触。 梓の肩を押して引き離そうとするけど、離れない。万力のように梓の腕が僕を押さえつける。 その間も梓は僕の口腔を舐めまわす。口腔を犯される感触に鳥肌が立つ。 梓の舌をかもうとした瞬間、梓は離れた。 「兄さん以外の味がする」 無表情に僕を見下ろす梓。その瞳は激情に染まっている。 僕は周りを見渡した。幸い、人影は無い。 「梓。こんな事は止めて」 「こんなことって何?好きな人にキスして何が悪いの?」 「僕たちは兄妹だ」 梓の表情が歪む。 「そんなに私の事が嫌いなんだ」 「違う」 梓は大切な妹だ。例え何があっても、血を分けた妹。 嫌いになるなんて、できない。 「違わない」 梓は僕を見上げた。その瞳から狂おしいほどの渇望が伝わってくる。 「兄さん。キスして」 突然の梓の言葉に戸惑う。 「さっき梓が僕にした」 「違うの。兄さんからして欲しい」 658 三つの鎖 24 後編 ◆tgTIsAaCTij7 sage New! 2010/07/29(木) 23 09 44 ID GBD9RRaR 僕の答えは決まっている。 「断る」 梓の瞳が危険な色を帯びる。 「断るなら、夏美を殺す」 全身に鳥肌が立つ。浮足立つ感触。 脅しなのか。本気なのか。 でも、梓は既に三人も殺している。 「別に私を抱いてって言ってるわけじゃないわ。キスしてくれるだけでいい」 梓の視線が僕を貫く。その瞳が問いかける。 キスするのかどうかを。 それとも、夏美ちゃんの命を見捨てるのかを。 夏美ちゃんの笑顔が浮かんで消えた。 僕は梓の顎に手をかけて上を向かせた。 梓は目を閉じた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ お兄さんが私を振り払って梓と帰ってから、私は呆然と突っ立っていた。 何が何だか分からなかった。 ただ、お兄さんは私を振り払って梓と帰った事しか分からなかった。 お兄さんの手を引く梓の姿が脳裏に浮かぶ。私は唇をかみしめた。 何で梓はここまで来るの。 学校でもそう。お昼休みにお兄さんを連れて行った。 そして放課後でも、私からお兄さんを連れて行く。 何で?梓はお兄さんの妹じゃない。いつでも一緒にいられるじゃない。家にお兄さんが帰って来てくれるじゃない。私は違うのに。お兄さんが帰るのを見送る側なのに。 何があっても梓はお兄さんの妹なのに。何があっても血のつながりがあるのに。 私は違う。お兄さんに嫌われたら、捨てられたら、何のつながりも無くなる。赤の他人になるのに。 そこまで考えて激しい恐怖が私を包む。 お兄さんは、私の事を嫌っているのだろうか。 エッチの時も、私が余計な事をしたからお兄さんを怒らせた。 その後も、梓がお兄さんを連れていくのが嫌でみっともない姿を見せた。 結局、お兄さんは私の手を振り払って梓の手を引いて帰って言った。 心臓の鼓動がやけにはっきりと聞こえる。喉がからからになる。 気がつけば私は走っていた。 マンションの外は既に暗くなっている。 お兄さんに会いたい。会って何をしたいのか分からないけど、とにかく会いたい。 謝らなくちゃ。お兄さん、きっと怒っている。梓の関係で大変なのに。病み上がりなのに。それなのに、心配をかけるような事をした。 夜の道を走り角を曲がったところで、私はお兄さんを見つけた。 目の前の光景が信じられなかった。 お兄さんが梓に口づけしていた。 背伸びをする梓の顎にお兄さんの手が添えられている。梓の白い手がお兄さんの頭を抱きしめている。 お互いに目を閉じ、唇をむさぼるようにキスしている。 私は曲がり道の角に隠れた。深呼吸をしてもう一度顔を出して見る。 そこには変わらない光景があった。 (梓ちゃん、すごく積極的になったよね。きっと他の人の目が無い時はもっと積極的だと思うよ) ハル先輩の声が脳裏にこだまする。 (梓ちゃん、美人だもんね。血のつながった妹でも、あんな綺麗な子に迫られたら断れるのかな) 目頭が熱い。視界が歪む。頬を熱い何かが伝う。 私は目の前の光景に背を向けて走り出した。 自分の部屋まで戻り、布団をかぶる。 うつ伏せになり、布団の匂いを嗅ぐ。お兄さんの匂いが微かにする。 お兄さんが梓にキスしている光景が脳裏に浮かぶ。 もう、何も考えたくなかった。 戻る 目次へ 次へ
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プレイヤー用語 ひみつの友だち 【ひみつのともだち】 どもだちメニューからなる通常のともだちとは別に、ひみつのことばを伝えることでひみつの友だちになることができる。ひみつの友だちは、通常の友達の機能が使えるのはもちろんのこと、自由文を使ったチャットができるようになる。このチャットでは、スピードチャットの定型文と異なり、全角24文字以内の自由文を使うことができる。ただし、NGワードを含む文章は自分では見えるが、相手からは見えないので注意が必要。言葉遣いのチェックもある。 ひみつの友だちになると、友達リストの中でそのトゥーン名が青色で表示される。「ひみつ」と略されることが多い。 ひみつの友だちになるためには、次の手続きを行なう。 招待する側 ともだちメニューを開き、「ひみつリスト」ボタンをクリック 「ひみつゲット」ボタンをクリック 表示された「ひみつのことば」を記録する ひみつの友だちになりたい相手に、上記のひみつのことばを伝える 招待される側 ともだちメニューを開き、「ひみつリスト」ボタンをクリック 下部のボックスに受け取ったひみつのことばを入力する 「ひみつ」を入力ボタンをクリックする なお、ひみつのことばは半角英数文字で「3文字+半角スペース+3文字」のフォーマットとなる。また、発行後は1回限りかつ48時間以内に相手が入力しないと、無効になってしまう。無効になってしまった場合は、再度発行し相手に伝えなければならない。 一つ前のページにもどる