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【検索用 いきちかい 登録タグ VOCALOID い 初音ミク 曲 曲あ 梨本P】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:梨本P 作曲:梨本P 編曲:梨本P 唄:初音ミク 曲紹介 曲名:『生きちがい』(いきちがい) 恐縮です。誕生日なので、それっぽい曲を。(作者コメ転載) 歌詞 (piaproより転載) わけもないのに死にたがってしまう わけわかんないまんま生きてしまう それが正しいかはわからない だけど間違ってはいないはずさ そんな詭弁を口にしたとこで 浮かばれない想いも救えずに いつか正しい人になりたいと 祈るばかりで遠ざかっていく 君にとっては それはしかたない 僕にとっては それがゆるせない 生きちがい 生きちがい 生きちがった僕ら 来世ではわかり合えるかな わけがあるから飛びたがってしまう わけわかんないまんま消えてしまう それが間違いかもわからない だから僕はまた口を閉ざした そんな軋轢ばかりが木霊し やがて頭もろくに回らずに いつか正しいようになりたいと 数えるように呼吸繰り返す 君にとっては それはしかたない 僕にとっては それがゆるせない 生きちがい 生きちがい 生きちがった僕ら 来世ではわかり合えるかな 君にとっては それはくだらない 僕にとっては それがやるせない 生きちがい 生きちがい 生きちがった僕ら 来世なんてものあるのかな わけもないのに死にたがってしまう わけわかんないまんま生きてしまう それが正しいかはわからない だけど間違ってはいないはずさ わけがあるから飛びたがってしまう わけわかんないまんま消えてしまう それが間違いかもわからない 何が正しいかもわからない 君にとっては それはしかたない 僕にとっては それがゆるせない 生きちがい 生きちがい 生きちがった僕ら 来世ではわかり合えるかな 君にとっては それはくだらない 僕にとっては それがやるせない 生きちがい 生きちがい 生きちがった僕ら 来世なんてものあるのかな 生きちがい 生きちがい 生きちがった僕ら 来世ではマシになれるかな コメント もっと伸びるべき。 -- 名無しさん (2022-09-11 20 27 15) 聴き返してるけど歌詞が神すぎる -- 名無し (2023-12-10 15 22 19) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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・俺設定あり。 ・『すないぱーうどんげ養成所の最終試験』の続きです。ですからそちらの方をご覧にならないと話の内容がよく理解できないと思います。 ・希少種、通常種差別なく殺してます。ですので希少種好き、特にうどんげ好きはご遠慮下さい。 ・次がラストなのでこれだけでは終わりません。 天然あき れいむは戦慄した。 自分達が標的にされた事に。 自分達は選ばれた存在だ。 そう自負していたれいむはまさか狙われる側になるなんて何かの間違いとしか思わなかった…。 それは他のゆっくりも同じだった。 「まりさがひょうてきなんてなにかのまちがいなんだぜ!!」 うどんげBの相棒であるまりさが叫んだ。 何かの間違い…そうれいむも思いたかった。 しかしちぇんが撃たれた事から狙われている事を理解せざるをえなかった。 「どうじでえ゛え゛え゛!!? ありずはとがいはなのよ゛お゛ぉ!!?」 うどんげDの相棒であるありすはあたふたと喚き散らすだけだ。 そんな中、まだれいむは自分の状況を比較的冷静に理解していた。 逃げなくては…。 れいむはそう判断した。 このまま突っ立っていたら死んでしまうのは二匹の死で明らかだ。 しかし辺りは拓けた野原。身を隠せるとしたら生い茂った草むら位だ。狙撃から逃れる方法等思い浮かびもしない。 結局、下等と見下していた標的ゆっくりと何も変わらなかった…。 「こひゅ!!?」 するとありすの右頬の一部が吹き飛んだ。 明らかに狙撃によるものだ。 このありすは無能だった。 自分は都会派だからもしかしたら狙われないかもしれない…そんな有り得ない幻想を期待し、ただ喚くだけで何もしなかった…。 今ここで突っ立っているというのは自殺志願以外の何物でも無いのだというのに…。 今うどんげには細かい位置を特定してくれる相棒はいない。 だから標的は自分で探さなければならない。 今までとは違う勝手にうどんげ達は焦りが生まれる。折角スコープに捉えても動かれてしまえば中々狙いを定められない。 今この状況ですべきなのは動き回る事だった。 ただ訳もわからず、動きもしないで嘆くのは自ら生きる事を放棄したのと同義だった。 「いぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 右頬を失ったありすは悲鳴を上げる。 今まで痛みらしい痛みを受けて来なかったありすはそれだけで動く事も出来なくなった。 動かない事で簡単に捉えられ、尚且つ叫び声で自分の居場所をうどんげ達にわざわざ教えていた。 全ての行動が逆効果。まさに自殺志願と言って過言ではない。 「ぶひょッ!!?」 ありすの右目周辺が吹き飛ぶ。そしてそれから間髪入れず左の口が破壊され、口内が露になってしまう。 「ほへ!?」 だがそこで狙撃は終わってくれない。 標的を仕留めなければうどんげ達も死ぬのだ、我先にと仕留めるのに簡単そうなありすにうどんげ達は発砲する。 しかし、一刻も早く他のうどんげよりも先に仕留めなくてはならないので急いで発砲する。 だがそれは焦りによって殺すには至れない部位に命中してしまっていた。 結果的にありすは一撃で死ねず、さりとて決して無事ではない狙撃を何発も受けてじわじわ嬲り殺されていく。 「しゃへへえ!!ありじゅはどぎゃッ!!?」 口内が狙撃によって破壊される。舌がちぎれ飛んでいく。 しかしありすの中枢餡には傷は付いておらずまだまだ死ねない。 そんな状況に他のゆっくり達は、 「むっきゅ!いまのうちににげるわ!!」 「にげるがかちみょん!!」 ありすを見捨ててそれぞれ四方八方に逃げ出した。 それを見て口を破壊されたありすは見捨てられた事を理解する。 喋る事が出来なくなったありすの残った左目が逃げていくれいむ達を助けを求めるような眼差しで見ていた。 だがその願いは聞き入れられない。 今は自分の安全すら不確かなのだから…。 そして、助けを求める瞳は新たに放たれた弾丸で吹き飛んで行った。 だが…ありすが死ぬにはまだまだ時間が必要だった…。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 不合格者は死ぬ。 それが冗談ではない事を理解したうどんげ達はもはや強迫概念の塊だった。 殺さなければ殺される。 誰だって死ぬのは嫌だ。しかし、自分の相棒を殺すのには抵抗がある。 ならば最初に一点を獲得する事にした。 その結果がありす集中砲火だった。 「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!」 狂ったように…いや事実狂っているのだろううどんげGがありすに向けて何発もの銃弾を浴びせる。 笑いながら六発の銃弾を発射する。 「……………」 もはや饅頭とも言えない物質に成り下がったありす。 しかしそれでもまだ生きていた。 うどんげGは弾切れになったにも気付かず引き金を引き続ける。 「ゲラア!!ゲラア!!」 何回も何回も引き金を引き続ける。それは完全に壊れてしまっている証であった。 そして、勢いよくありすが爆ぜた。 うどんげDが苦しむありすを見てられず、介錯の要領でトドメを刺したのだ。 そして、これによってうどんげGは残弾0で相棒のきめえ丸を殺した得点3のみで合格点に1点足りず、不合格に決定した。 その瞬間迷いなく教官はうどんげGの頭を撃ち抜いた。 丸いうどんげGの顔がいびつな形に破壊される。 うどんげGはそのまま俯せに倒れ、ビクンビクンと痙攣する。よくて即死…生きていてももうすぐ確実に死ぬ。そんな状態だった。 「残り四匹…早くしないと全員不合格になるぞ…」 教官はそんなうどんげGをいないもの同然に扱い、他のうどんげ達に早くするように言った…。 「ゲラァ…」 カタカタと指が震えるうどんげ達。ガチガチと歯が鳴るうどんげ達。 今まで絶対的に狩る側だった、安全であったうどんげ達に初めて訪れる死の予感。 残り四体。自分の相棒を殺されれば確実に不合格になるこの状況。 誰かが恐怖に押し潰されるのも時間の問題だった…。 ありす 死亡〔残り四匹〕 うげんげG〔相棒きめぇ丸〕 不合格 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 四方八方に逃げるゆっくり達。 それをスコープで追ううどんげ達。 止まれば狙撃される。 それをありすの惨状を見た結果理解した残り四匹は一心不乱に逃げ続ける。 しかし、いつまでも跳ね続けられる程ゆっくりは頑強な生物ではない。 生きている以上は疲労するのだ。 「むぎゅう゛…」 その中でもゆっくり一の貧弱さで有名なぱちゅりーが息を切らして止まっては走り、止まっては走りを繰り返しだす。 一刻も早く逃げなければならない、休んでいるヒマはない。 だが疲労は蓄積され、休み休みになってしまう。それを見逃す程うどんげ達も甘くはなかった。 「もぇぎゅッ!!?」 ぱちゅりーが吹っ飛んだ。 左側の髪の毛がちぎれ、束になった部分が空中を舞う。 「むぎょおおおおおおお!!?ぱちぇのちてきすぎるけんじゃながみがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 ぱちゅりーは叫ぶ。それと同時に自身が標的になった事を理解する。 「むぎゅう゛う゛う゛!!!じにだぶないわあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 髪の毛を失ったショックは大きかったがそれよりも生き延びる事を優先したようだ。 「どうじで!!ぱぢぇなのよ!!ぱぢぇはけんじゃなのよ゛!!!ごろずなら゛…ヒィ…ばかなみょんとかにしなさいよおおおお!!」 体力無いのに喋りながら逃げる体力の無駄遣い以外の何物でもない到底けんじゃとは思えない行為をしながらぱちゅりーは逃げる。 「だいたいぱぢぇはずのうはなのよ゛お゛お゛!!!ごんなやばんなごとずるようなゆっぐりじゃないのにい゛い゛い゛い゛!!!」 どうやらぱちゅりーにとっては跳ねる事は野蛮な事らしい。 それはもはや頭脳派ではなくただの怠け者だ。 しかしいくらぱちゅりーが訴えても狙撃の手は緩められない。 「むぎょ!!?」 ぱちゅりーの頭頂部に痛みが走る。その際の衝撃で吹っ飛びコロコロ転がるぱちゅりー。 近くの草むらに突っ込み何とか止まる。そのまま急いで起き上がるが狙撃される様子がない。 見失ったのか、確実に無駄弾を使わないようにする為か撃たれる気配すらない。 「むきゅ、ここならあんぜんね。さいしょからぱちぇはここがだいじょぶとにらんでいたのよ」 ぱちゅりーはさも当然のような様子であからさまな嘘をつきながらほっとない胸を撫で下ろす。 だがぱちゅりーは何だかゆっくり出来ない気がする事に気付く。 急いでぱちゅりーは転がる前にいた場所を見る。 するとそこには、 「ぱぢぇのけんじゃっぷりがごめられだおぼうじがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 ぱちゅりーの被っていたナイトキャップっぽいお帽子が引き裂かれて転がっていた。 「むぎゅ!だ、だれがぱぢぇのおぼうじどっでぇ゛え゛え゛え゛!!!」 ぱちゅりーは叫ぶ。 だが誰も助けてくれない。 それはそうだ。そんな所行ったら自殺行為以外の何でもない。 それに元々ぱちゅりー達は競争相手であり、仲間でもない。 本当の仲間ですらゆっくりであれば見捨てる状況なので尚更助けに行く奴なんている訳がない。 「むぎゅう゛う゛う゛う゛う゛!!!はやぐどりにい゛ぎなざい゛よ゛でいのうども゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 それにあんな暴言を吐くぱちゅりーに助け等来る訳がない。 そして事態は悪化の一途を辿る。 帽子が撃たれたのだ。 「むぎょおおおお!!?やべなざい゛い゛い゛い゛い゛!!!」 ぱちゅりーは叫ぶ。 だが何の効果もない。 帽子がまた狙撃され、ボロ布に一歩ずつ近づいて行く。 それは狙撃の常套手段。ぱちゅりーもやった事がある方法だ。 一匹を狙撃して行動不能にして放置する。それを助けようとした仲間のゆっくりを射殺する。狙われてる事に気付き、出てこなくなってしまったのなら放置された一匹を死なない位にじわじわと頬の一部を吹き飛ばしたりして痛め付ける。 そして良心の呵責に耐え切れなくなって助けに来た奴をまた射殺する。 そうやって一網打尽にする。それを今やっているだけなのだ。 「やだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?おぼうじがないどゆっぐびでびない゛い゛い゛い゛!!!」 ぱちゅりーは叫ぶ。 帽子が破壊されるのに耐えられず自ら死にに来るか。それとも帽子を見捨てるか。 どちらにしろ二度とゆっくり出来ない事は確実だ。 一方他のゆっくり達は、 「ぱちゅりーがねらわれてるならまりさはあんぜんなんだぜ」 そう言って休みだすまりさ。 「なにがなんだかわからないみょん…」 「ゆうぅ…」 ぱちゅりー以外の三匹が休みだした。 最初からぱちゅりーを助けるつもりなんてないようだ。 元からそんなつもりはないし、それに…、 「ゆ?」 「まりざのおざげがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 こちらも狙われているのだから…。 「どういうことだみょん!? ひとりじゃなかったみょんか!!?」 「まりざの!まりざのおざげがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」 「れいむはにげるよ!!」 狙撃手が一人だと思い込んでいた三匹は驚愕し、動揺する。 もはや休むどころの話ではない。 誰も彼もが必死に生き延びょうと足掻くしかなかった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― うどんげFは焦っていた。 自分の標的であるぱちゅりーを見つけた時にはみょんの相棒であるうどんげEが帽子を撃っておびき出そうとしていたのだから…。 ぱちゅりーの帽子が撃たれた時と発砲の音が一緒だったので誰が撃ったのかすぐにわかった。 ぱちゅりーは弱い。 ゆっくりにしては高い知能があるがそれを考慮しても余りある脆さと弱さだ。 真っ先に狙われるのが目に見えていた。 生き残る為には速攻で自分の手で殺さなければならないとうどんげFは考えた。 だが見つけた時には既にぱちゅりーはうどんげEに狙われていた。 何とかしなければならない。だが何とかする方法が思い付かない。 どうすればいい? 確実にぱちゅりーを殺すには…。 ぱちゅりーが出て来るのを待ち構える。 ダメだ。万が一うどんげEに先に撃たれたらその時点で不合格になり、うどんげGと同じ末路になる。 そんなのは嫌だ。ならどうすればいい、どうすればいい? うどんげFは考える。 ぱちゅりーを確実に殺すには…うどんげEが邪魔だ。 だが同じうどんげを撃つと強制的に不合格と言われた。 どうすればいい…? ぱちゅりーを誰よりも先に、今ぱちゅりーを狙っているうどんげEよりも速く殺さなければ…。 うどんげEをどうにかしなくては…。 うどんげEを…うどんげEをうどんげEを…………………。 すると、プツンと何か糸の切れるような音をうどんげFは聞いた。 そしてその直後、 「ゲ、ゲ、ゲラアアアアアアア!!!」 突然ぱちゅりーの相棒であるうどんげFが狂ったようにみょんの相棒であるうどんげEに殴り掛かった。 「ゲラア!?」 うどんげEには訳が分からない。 いきなり隣のうどんげFが殴り掛かってきたのだから…。 うどんげFはそのままマウントポジションを取り、うどんげEを持っていた銃で殴打する。 「ゲバァ!!?ゲビャア゛!!?」 顔面に何度も、何度も狙撃銃の持つ部分で殴り続ける。その様子を横目に見ている教官は一切止めようともしない。 「先にこっちを殺しておくか…愚策だな…」 そうとだけ呟き教官は残りのうどんげ達を見る。いきなりのうどんげFの暴挙に困惑しているようだ。 止めないのか?と目で訴えているのが教官にもわかった。 「早くしろ、死にたいのか?」 だが教官は抑揚のない、感情のこもっていない口調で試験を続けるように起こりのうどんげ達に告げる。 どうやらうどんげEとFの殺し合いはスルーする方向らしい。 うどんげ達は異論を挟めない。教官に逆らえば、自分達が殺される。 それにわざわざ自分のライバルを減らしてくれるのだ。止めて無駄な時間をかけている暇は無い。 早急に自分の相棒を見つけて殺さなければならないのにあんな時間のかかる殺し方をしてれば誰かに先に相棒を殺されてしまう可能性もある。 そう考えたうどんげ達はうどんげEがうどんげFを殺すのを見て見ぬ振りしたのだった。 「ゲヴア゛ァッ!!?」 「ゲラアアアアアア!!!」 歯が折れ、眼が潰れていく。 だがそれでもうどんげFは攻撃の手を一切緩めない。泣きわめいても、命乞いしても止まらない。 「ゲヒュ…」 何度目の殴打かわからないが、うどんげEは行動が抵抗から痙攣に変わっていた。 だがそれにも気付かずうどんげFは何度も何度も殴り付ける。グシャリ、とうどんげEの中身が飛び散る。 どう見ても死んでいる。 だがうどんげFはそれに気付かず何度も何度も何度も殴り続ける。 「ゲラア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」 うどんげFは止まる様子が一切ない。どうすれば止まるのか誰にもわからない。 だが、その直後に放たれた銃弾が、その事態を否応なく変化させる事となった。 うどんげE〔相棒みょん〕 死亡により不合格 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「むきゅ?」 ぱちゅりーは疑問に思った。 今まで帽子を攻撃していた狙撃が突如止んだのだ。 「むきゅ、どういうこと?」 ぱちゅりーは困惑する。 もしかしたらこれは帽子を取り戻すチャンスかもしれない。 だがそうしてのこのこ出て来たところを狙い撃ちにする為にこうしているのかもしれない。 「むきゅう…むきゅう…」 知恵熱が出そうな程無い知恵を搾るぱちゅりー。 行くべきか?行かないべきか? ぱちゅりーは悩む。 だが帽子が狙撃される気配はない。 そうなれば自然とぱちゅりーの生クリーム脳は都合のいい方向を思案し始める。 「むきゅ…きっとぱちぇのにじみでるけんじゃおーらにいまごろきづいたのね…」 思い上がったぱちゅりーはそう都合よく解釈してむざむざ草むらから出て来た。 実際、帽子を狙撃していたうどんげEはうどんげFに殴り殺されているのでチャンスであるのは間違いないのだが…。 「むっきゅうううん!!やっちょとりもどしたわああああ!!!」 ぱちゅりーは穴だらけになった帽子を取り戻した。 そうして喜びに湧き、帽子を被り直し、 「むびょ…!?」 身体に風穴が開いた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「むぎょ…にゃに…ぎょれ…?」 ぱちゅりーには訳が分からなかった。 いきなり穴が開いた自分の身体。そこから溢れ出る生クリーム。 「ぱちぇの…ながみが…」 茫然自失…といった言葉がピッタリする状態だ。だがそんな事をしているヒマはない。 次の瞬間にはぱちゅりーの髪の毛の右側の部分が吹き飛んだ。ぱちゅりーの中身も巻き添えにして…。 「むぎょあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 痛みに叫び声を上げるぱちゅりー。 「ぱちぇのあだまがあ゛あ゛あ゛!!?さいごうのけんじゃずぎるずのう゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 じたばたと暴れ出すぱちゅりー。そこに正常な思考をする余裕はない。 「やべろお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!ぱちぇはけんじゃなんだぞあ゛あ゛あ゛あ゛!!!おばえらなんがよりぼずうっどずうっどいだいなぞんざいなんだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 撃たれたと思う方向を向いてぱちゅりーは叫ぶ。理論もへったくれもない。 道行く人間に突然話し掛け、「俺高貴だからお前死ね」と言ってるようなものだ。 「ぱちぇをごろぞうどずぶはざっざどじでえ゛え゛え゛え゛え゛!!!けんじゃなぱちぇがめいでいじでるんだがらざっざどじびゅぼ!!?」 だが、ただ喚き散らすなど居場所を露呈させる行いでしかない。ぱちゅりーのけんじゃな頭脳はそれすらも理解出来なかった。 ぱちゅりーはそうして、喚き散らす口を残して、そこから上が吹き飛び、けんじゃな中身を地面に捧げたのだった…。 ぱちゅりー 死亡〔残り三匹〕 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ゲ、ゲラァ…」 うどんげFは顔が蒼白する。 相棒のぱちゅりーが死んだショックではない。 相棒のぱちゅりーを殺せなかったショックだ…。 ぱちゅりーは死んだ。うどんげFではなく、うどんげDの手によって…。 「よし、これでお前は合格だ」 教官がうどんげDに告げる。それはうどんげDが生き延びれるという事を意味する言葉であり、うどんげFが死ぬという事を意味する単語でもあった。 「ゲラァ…」 「ゲラア゛ア゛ア゛!!?」 生き延びたのに元気がないうどんげDと恐怖におののくうどんげF。 「…さて」 「ゲラァ!?」 教官がうどんげFに目を向ける。 「確かに俺は他のうどんげに発砲したら即座に不合格と言った…だから発砲以外の方法で殺すというのはその中には該当しない。まぁ以後は禁止するとして今回は許そう…」 教官はそう言いながらも銃口をうどんげFに向ける。 「ゲ、ゲラア゛ア゛ア゛!!?」 自分と同じうどんげ二匹を葬った銃を向けられてうどんげFは恐怖におののく。 「だがぱちゅりーが死んだ今、お前は不合格が決定した。終わりだ」 それだけ言うと、教官は迷う事なくうどんげFの両肩を撃ち抜いた。 「ゲラア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!?」 うどんげFが激痛にのたうつ。 痛みを一方的に与えるだけだったうどんげFには痛みは耐え難いものだった。 「それで、もう銃を持つのは不可能だろう。終わりまでそこでのたうっていろ」 教官はそれだけ言うと残った二人のうどんげ、AとBに意識を向ける。 「残りはお前達だけだ。時間制限はないがはやく片付けろ」 「「ゲラア゛ア゛!!?」」 教官の有無を言わせぬ迫力に、教官を見てもいないのに恐怖する二匹。 うどんげFの前例にて手出しできなくなった今、互いに生き残りをかけた狙撃勝負が始まった…。 うどんげF〔相棒ぱちゅりー〕 不合格 現段階合格者1名 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ゆっへっへっへ!!ここならあんぜんなんだぜ!!」 草むらに身を隠してほくそ笑むゆっくりまりさ。 すっぽりと草むらに隠れたまりさを狙うのは至難の業だ。 しばらくはまりさの安全は保証されただろう。 しかし、 「れいむもいれでね!!」 いきなりれいむがそこに割り込んでくる。 「な、なにずるんだぜれいぶ!!?」 「うるざいよ!!じゃまなまりざはざっざどじんでね!!!」 「ゆべえ゛え゛!!?」 れいむの間髪入れぬ体当たりにまりさは吹っ飛ぶ。 草むらから飛び出るまりさ。いい的だ。 「ゆひいぃ!!?」 それをまりさも理解したのだろう、顔が恐怖に歪む。 ここにいたら死ぬ。そう考えたまりさは、 「でいぶはじね゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 草むらの居場所を取り返そうと襲い掛かった。 命懸けの力付くの椅子取りゲーム。 負けたら死ぬ。 だが忘れてはならない。 奪い合っている今でさえ、安全ではないのだから…。 草むらで争っていると突然まりさの帽子が吹っ飛んだ。 「ゆひいいい!!?」 まりさの吹っ飛んだ帽子には風穴が空いている。 それだけで狙撃された事を雄弁に語っている。 まりさの黒い帽子は草むらの中でも目立つのだ。 「まりざのぼうじがぁ!!?」 ゆっくりの性として仕方のないとはいえ、まりさは帽子に気を取られてしまう。 それは草むらの領土争いには致命的な隙だった。 「ゆっぐりじねえ゛え゛え゛え゛!!!」 「ゆぶえ゛!!?」 れいむの全力の体当たりがまりさに命中する。 「ゆごぉ…!!?」 まりさは草むらから飛び出、喋る事も出来ず地面にはいつくばる。どうやら会心の一撃だったようだ。 そしてその隙を見逃してくれる程うどんげ達も甘くはなかった。 「ぐぴい゛い゛い゛!!?」 まりさの身体に猛烈な衝撃と痛みが走る。 そしてまたまりさは吹っ飛んだ。 そしてそこに残るのはまりさの一部。 「ゆぎょお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」 髪の毛と身体の一部が撃たれた衝撃で吹き飛んだのだ。 それが致命傷でなかったのはむしろ不幸であった。 「まりざの、まりざのびゅーてぃほーながびのべがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 もみあげ、帽子と続いて髪の毛までも被害に遭ったまりさ。 ショックは大きかったようだ。気が動転してあらぬ方向へ跳ね出す。 隠れられる場所は草むらのみの開けた場所。そこは今やれいむに奪われてしまっている。 そしてまりさが撃たれたという事は狙われているという事…。 今現在狙われている状態で逃げる事等出来る訳無い。それを理解できる程度に賢かったのがまりさにとって不幸だった。 「もうやばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 まりさは子供のように泣き喚く。 逃げ場のない袋小路。一撃で終わらなかった不幸。 自分がもうすぐ殺されるというのを知るのは決して幸福等ではない。せめてもの抵抗か、自棄になったのかわからないが辺り構わず跳ね回るのは助手のいないうどんげ達には効果的であった。 だがそれをまりさがわかる訳がなかった。 「やじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!まりざじにだぶない゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」 大声を上げて無様に跳ね回るまりさ。命の源と言うべき餡子が漏れている事にも気付かない。 だがそうしている限りまりさは狙われない。下手に跳ねている間を狙わずとも、疲労した所で撃ち殺した方が弾数の節約にもなる。 「いれるんだぜ!!ざっざどまりざをながにいれるんだぜ!!」 命を狙われている恐怖に精神を摩耗させているまりさは一度奪われた草むらへ再び突撃を敢行する。 だが傷付き、疲弊した身体で勝てる訳もなく、 「うるさいよ!!!」 「ゆぶぎゅ!!?」 弾き飛ばされ地面に転がる。 「ゆぎゅう゛ぅ゛…」 まりさは呻き声を上げる。だがすぐにそうしている暇はなくなった。 「ゆんぎぃ!!?」 再びまりさの身体の一部が吹き飛ぶ。 今まで何百匹と見つけ、うどんげに殺させてきた右目が粉々に砕け散る。 しかしどうやらそれでもまだ死ねていない。殺さない限り得点にはならない。 まりさの相棒うどんげBは生きる為には絶対にまりさを殺す必要があった。 だがその焦りが手元を狂わせて即死させられないでいたのだ。 「もうやじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 まりさは叫ぶ。 もはやまりさ種であった面影が一切ない顔付き饅頭となったまりさは狂ったように泣き叫ぶ。 「やめでようどんげえ゛え゛え゛え゛え゛!!!おなじゆっぐりでじょお゛お゛お゛お゛お゛!!?」 まりさは叫ぶ。 教官の言葉から狙っているのはゆっくりうどんげである事はわかっていた。 それが自分達の相棒だと考える余裕は残念ながらまりさには無かったが、ボロボロになったまりさが助かる道はもはや情に訴えるしかなかったのだ。 「まりざだぢだっでいぎでるんだよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 まりさは叫ぶ。同じゆっくりである事を訴え、助けて貰おうと。 うどんげ達の切迫した状況を知らないまりさはそれで何とかなると思い込んでいた。 「だれだっでごんなごどざれだらいだいでじょお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!だがらやべでいっじょにゆっぐりじようよお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 だがまりさは忘れていた…。 「ゆぴょお゛!!?」 かつて同じような事を言ったまりさになんて答えたかを…。 “「なにいってるんだぜ?くずがまりさといっしょのわけないんだぜ」” それがまりさの答えだった。 そしてその答えが今まりさに返ってきた…。 左頬に当たる部位が銃弾で吹き飛ぶ。 「ひゅべえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!?ぼべえ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 まりさは痛みよりもさっきの一撃で足音を大きくさせて近寄ってくる死の恐怖に泣き叫ぶ。 まりさを見つけて狙っていたうどんげAに遅れてまりさを発見して焦って撃った結果がこれだ。 しかも運が悪い事にまりさはその時の衝撃でコロコロ転がっていく。跳ねるよりも速い転がりにうどんげ双方の照準からまりさが外れてしまう。 うどんげAはうどんげBを不合格にすれば挑戦者は自分だけなり、邪魔する者がいなくなった後ゆっくりと相棒を殺そうと考えた…と自分に思いこまさせていた。 実際はまだ相棒を殺す覚悟が出来ていないだけだ。 「ゆ…びぃ…」 傷が無い部位が見当たらないといった状態のまりさがょうやく止まる。息も絶え絶え、死ぬまでのカウントダウンも掛かり始めた。 「やじゃ…じびばぶばい…」 まりさは生を渇望する。まだまだゆっくりするのだ。こんな所で死ねない。 まりさは大分無くなった餡子で今までの自分の半生を振り返る。 それが走馬灯というものだとはまりさにはわからない。 かつてまりさは飼いゆっくりとして生を受けた。 金バッジのまりさとありすから生まれたサラブレッドだったまりさは自分が選ばれた存在だと信じて疑わなかった。 餡子を分けた姉妹にすら敵意を持ち、姉妹の中でも一番に固執していた。誰よりも優れている信じ、敵対するものには一切の容赦がなかった。 その結果が実の姉妹を皆殺しというものになったのだった。 まりさにしてみれば偽装工作は完璧のつもりだったのだろう。だが人間の眼を逃れる事は赤ゆっくり程度では無理な話だ。 事が露呈し、まりさは殺処分、両親は管理不行き届きで金バッジ剥奪の後安値で個別に買い叩かれて行った。 金バッジを剥奪された理由が理由である為まりさの両親はまるでまりさの責任を被るが如くに売られていった。 一度剥奪された金バッジは二度と戻る事はない。だからこそ価値があるのだ。 親のまりさは加工所での実験体にされて様々なゆっくりとすっきりを行われたり改造をされたりして日々を満喫している。 つがいのありすは虐待お兄さんに買われ、何とか逃げ出す事に成功するも過酷な野良生活で発狂しれいぱー化。 ある一軒家にいるれいむをすっきりしまくった後、飼い主に見つかって拷問の果てに生き地獄を味合わされているがそれをまりさが知る由も無いし、どうでもいい。 まりさ自身も殺処分される筈だったのだがその攻撃的性格を目を付けられてすないぱーの相棒として同時に買われたぱちゅりー、ちぇん、みょん、きめぇ丸、ありすと共にここにやって来たのだ。 あくまでそれは偶然の事、されどまりさはそれを特別である自分には当たり前の事だと信じて疑わなかった。 その傲慢さが両親を破滅させ、自分を窮地に追い込んだ事にも気付かない。自分はエリートだと信じて疑わない。 だから何時か認められてゆっくりの頂点に君臨する存在だと信じて疑わなかった。 だからあんな「ゲラゲラ」しか言わないゆっくり出来ないクズと我慢して付き合ってやってたのだ。 それなのに…、 「どうじでまりざがごんなべにあばないどいべなびんだぜえ゛え゛え゛え゛!!!?」 まりさは叫ぶ。 嫌だ、こんな所で、ゆっくり出来ないうどんげに殺されたくない。 「うづな゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 気が動転したまりさは起き上がって絶叫する。 同じような行動をしたぱちゅりーがどうなったかさえ思い至れない。 「“ゲラゲラ”わらうじがのうのばいうどんげのぐぜにまりざをうづなあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 まりさは叫ぶ。 まりさを狙っているうどんげにとって最後に残っていた躊躇を消す一言を…。 「まりざがいわなぎゃまどもにえぼのもうべばいぐずなうどんげはざっざどやべろお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 まりさは叫ぶ。 思い上がりも甚だしい叫びを。実際は重要なのはまりさではなくうどんげであるという事にも気付きもせず…それが最後の言葉になるとも知らずに…。 叫んだ直後、大口を開けたまりさの口のど真ん中にうどんげの放った銃弾がぶち当たり、まりさを上と下の二つに分けたのだった…。 続く あとがき 俺は通常種を潰したいんじゃない。ゲスを潰したいんだ。 と、言う訳で最近れみりゃとかうどんげとか何と言うか人があまりやらない種類の虐待ばかりしてる気がします。 個人的には捕食種ならまだしも、必要でもないのに同じゆっくりを殺して何の罪の意識も感じない類のゆっくりはあまり好きではありません。 なのでその影響が作品に出ているのだと思います。あまり受け入れられないタイプの考えだとは思いますが我を貫いていきたいと思います。 ちなみに、うどんげCに比べてうどんげGが楽に殺されているのは命令違反者と単なる不合格者の違いからです。うどんげFについては別の用途があるのでまだ殺しません。 それでは、今回このSSを読んで頂き誠にありがとうございました。 過去に作ったSS ふたば系ゆっくりいじめ 293 おかざりがないとゆっくりできないよ! ふたば系ゆっくりいじめ 311 きゃわいきゅっちぇぎょめんにぇ!! ふたば系ゆっくりいじめ 347 れいむはしんぐるまざーでかわいそうなんだよ!! ふたば系ゆっくりいじめ 397 大好きだよ ふたば系ゆっくりいじめ 447 おきゃあしゃんのおうちゃはゆっきゅちできりゅね! ふたば系ゆっくりいじめ 521 元銀バッジまりさの末路 上 ふたば系ゆっくりいじめ 543 元銀バッジまりさの末路 中 ふたば系ゆっくりいじめ 630 かいゆっくりじゃなくてごめんね!! 上 ふたば系ゆっくりいじめ 631 かいゆっくりじゃなくてごめんね!! 下 ふたば系ゆっくりいじめ 669 おうちのなかでかわれなくてごめんね!! ふたば系ゆっくりいじめ 677 元銀バッジまりさの末路 下 ふたば系ゆっくりいじめ 750 あまあまおいてさっさとでてってね!! ふたば系ゆっくりいじめ 803 雨の日はゆっくり遊ぼう ふたば系ゆっくりいじめ 882 すっきりしたいわあああああ!! ふたば系ゆっくりいじめ 919 元銀バッジまりさの末路 終の1 ふたば系ゆっくりいじめ 920 元銀バッジまりさの末路 終の2 ふたば系ゆっくりいじめ 949 切断マジック(?) ふたば系ゆっくりいじめ 977 ゆっくり祭『どんど焼き』 ふたば系ゆっくりいじめ 1012 すないぱーうどんげ養成所の最終試験 その1
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『ある群れの末路』 12KB いじめ 観察 全滅 引越し 幻想郷 独自設定 タグが間違ってたらすいません 前作「anko4605 腐れ饅頭」に多くのポイントを入れて頂きありがとうございました。 また、感想スレに感想を書き込んで頂きありがとうございました。なるべく今後に活かすように精進いたします。 ある群れの末路 『3・2・1・発破!』 ドドドドドトドーン!!!!! やや篭った爆裂音が響き渡り、辺りにはもうもうと砂煙が立ち込める 『この様に爆発の札を要所要所に埋め込み時間差で爆発させれば、 多くの時間や大量の人手、高価な重機を使わずとも山を切り崩す事ができます。』 「「「「「おおー」」」」」 風が砂煙を払い、崩された土砂をあらわにする。 と、 「ん?」 「あれ・・・なんだ・・・?」 「え???」 「おい!だれか埋まってるぞ!」 「「「なんだって!!!」」」 「メディーック」「フザケンナ!」 その場に居た人達が慌てて土砂に駆け寄り土砂をよじ登ると、 「おい!しっかりしろ!」 「傷はあさ・・・って糞饅頭じゃねーか!」 「なんだと!」 「マジか!」 餡子にクリームとカスタードさらにチョコ、 土の匂いと甘い臭いが混じった空気が緊張感を解きほぐすように人々の顔から険が取れていった。 「脅かすな。」 「人間と糞饅頭の区別も付かないのかよ(笑)」 「遠目だから分からなかったんだよ(恥照)」 『えー、それでは、気を取り直して続いてはパワーシャベルとブルドーザーの実演になります。』 お互いの慌てっぷりを取り繕うように人々は笑いながらお互いを冷やかしていたが、 皆一様に同じ疑問を持っていた。 (何でこんな所に糞饅頭の集団が居たんだ?) *************** 人間の村にやや近い山中にゆっくりの群れがありました。 この群れは人間の群れにやや近い事もあって、 たびたび群れのゆっくりが人間に迷惑をかける事はあったが、 その報復に群れの駆除はされる事がなかった。 それは、人間の側から見て群れの位置が微妙に遠いと感じる所にあったからである。 この群れはありきたりにゆっくりぱちゅりーが長としてそこそこの数のゆっくりを纏めていた。 色々掟はあったがすっきり制限は無かった。 ここは幻想郷の森、いつの間にかおちびちゃんが居なくなる事なんて当たり前だったからだ。 そのため適度に間引かれゆん口爆発は起こる事無く、適正数が保たれていた。 そんな平和な日常の群れに、 ある日ドスまりさがやってきた。 ドスまりさは元は旅ゆっくりだった。 群れから群れへ気ままに旅するゆっくりの事で、 ゆっくりたちの噂話の発信源の一つだったりする。 (一番メジャーなのはあの・・・ウワ!ナニヲ(ry・・・) ドスは群れの前で身の上を話だした。 ある日森の中で目を覚ますとドスになっていた事。 もう森の中で身を隠す生活は無理になった事。 定住のためこの群れに入れてほしい事。 そう群れのゆっくり達の前で話すと、 長ぱちゅりーが判断する前に群れのゆっくり達がドスを歓迎しだした。 ドス信仰はゆっくりにとってゆっくりの拠り所となるものであるからだ。 『ドスはゆっくりをゆっくりさせてくれる守護ゆっくりである』 会った事が無くても「ドスはゆっくりできる」はゆっくりにとって常識であった。 群れのゆっくり達の歓迎の声は「長としてドスを群れに迎える」であったため、 長ぱちゅりーには不安もあったが、 多くのゆっくりの歓迎の声を押し留める事は出来ないと判断し、 長ぱちゅりーが補佐になる事を条件にドスに長の座を譲った。 補佐になった元長ぱちゅりーと元旅ゆっくりのドスまりさは、 お互いの経験を生かし、それなりに上手く群れを運営していた。 だが、亀裂が入るのは早かった。 今まで赤ゆや子ゆをさらっていた妖精たちは、ドスの存在を知ってから悪戯を止めた。 今まで食料にしていた動物たちは、ドスの存在を知ってから群れに近づくのを止めた。 ドスが群れの脅威への抑止力となったのである。 群れに平和が訪れたように見えたが、 それに伴って今まで気にしていなかった問題が顕現し始めた。 ゆん口爆発である。 この群れはすっきり制限が無かったが、今まで色々な要因でゆっくりが居なくなっていたため群れの適正数が保たれていた。 しかし、ドスがその要因を抑止してしまったのである。 さらに、ドスの噂を聞いたゆっくり達が集まったのもゆん口爆発に拍車をかけていた。 補佐になった元長ぱちゅりーはすっきり制限を提案したが、 元旅ゆっくりのドスまりさはこれを拒否。 両者の言い分は群れ全体を巻き込んでの大問題となっていった。 しかし、現実問題として食料が少なくなってきている事実はドスまりさ達も認めていた。 そんな中とんでもない事件が起きた。 補佐になった元長ぱちゅりーの暗殺である。 ゆっくりのゆん生の中で特に大事な子作り問題に関わるすっきり制限は、 ゆっくりのゆっくりを否定するに等しい行為であり、 短絡なゆっくり達が行動に出るには十分な提案であった。 これにより群れの勢力は一気にドス派に傾き、 噂を聞いたゆっくり達がさらに集まってきた。 さらに悪化する食糧問題とゆん口問題そしておうち問題。 補佐になった元長ぱちゅりーが生きていても無法集団になるのは時間の問題かと思われた。 その時 ドスは決断した そうだにんげんのむらにいこう おやさいをわけてもらえばごはんのもんだいはかいけつだよ おうちもわけてもらえばおうちのもんだいもかいけつだね にんげんのおうちはひろくてりっぱだからおちびちゃんをたくさんつくってもだいじょうぶだし ゆっくりしたかわいいおちびちゃんやゆっくりのゆっくりしたすがたをみれば にんげんもゆっくりできるから みんなしあわせになれるよ 次の日 ドスは人間の村に行くことを群れのゆっくりに話した。 ドスが話した「人間の村に行けば全ての問題は解決する」は、 諸問題でギスギスしていた群れのゆっくり達に希望の光を灯した。 そして、群れの殆どのゆっくりがドスと共に人間の村に向かって行った。 この時、にんっしん等で動けないゆっくり達と、 賢いゆっくり達は理由をつけてこの時群れに残った。 ドスが帰ってきた時、賢いゆっくりの予感は当たっていた。 人間の手によってドスだけは帰ってきた。 ずたずたの御飾りとぼろぼろのお下げとぐちゃぐちゃの顔の皮だけになってドスは帰ってきた。 人間達は ずたずたの御飾りを手に 「人間の所へ来ればこの様になるぞ!」 ぼろぼろのお下げを手に 「人間はドスより強いぞ!」 ぐちゃぐちゃの顔の皮を手に 「人間に勝てる糞饅頭は居ないぞ!」 群れに残っていたゆっくり達に人間の強さ怖さ残酷さを刻み込む様に大声で群れ全体に知らしめていった。 しばらくして 群れのあちらこちらでドスが殺されたショックから立ち直った(吐き死ななかった)ゆっくり達が動き出していた。 その行動の殆どが吐き死したゆっくりを片付ける事だったので、その動きは暗い影を帯びていた。 全体的にどんよりとした動きの群れの中で、慌ただしい動きがあった。 それは、れいむとまりさに対しぱちゅりーとありすが声を荒げて説得しているものだった。 (このれいむとまりさはドスが人間の村に向かっている時に群れに入りたいと言ってきたれいむとまりさである。) 「れいむとまりさはこのむれにはいるのはやめるよ!!!」 「そうねまえにすんでたおうちにもどるほうがいいわね!」 「ちがうよ!!! れいむとまりさはこれからにんげんのところへいくよ!!!」 「ゆっくりしてないにんげんをゆっくりさせてあげにいくんだよ!!!」 「にんげんはぜんぜんゆっくりできないかわいそうないきものだからね!!!」 「むぎゅぅ!!!」 「あなたたちもみたでしょ!!! ドスはころされてしまったのよ!!! にんげんはどすよりつよいのよ!!!」 「それはドスがゆっくりしてないドスだったからだよ!!!」 「!!!」xたくさん 「れいむとまりさはゆっくりしたゆっくりだから、 れいむとまりさのゆっくりしたすがたをみればにんげんはぜったいゆっくりできるよ!!!」 「・・・・・・!!!」xたくさん そう言うとれいむとまりさは人間の村の方へ向かって行った。 説得していたぱちゅりーとありすだけでなく、遠巻きに見ていた他のゆっくり達も、 れいむとまりさの姿が見えなくなるまで呆然としてしまっていた。 れいむとまりさの姿が見えなくなってやっと我に返ったゆっくり達は、慌てに慌てた。 群れの長のどすが殺された事だけでも大事件なのに、 群れに入りに来たれいむとまりさが人間の所へ向かったからである。 ぱちゅりーとありすの制止を聞かずに人間の所へ行ったれいむとまりさが何をするか・・・ 何をした所で人間を怒らせるだけだ。 群れのゆっくりではないと言っても言い訳にもならないだろう。 ならば・・・ ぱちゅりーは直ぐに隣のありすと遠巻きに見てたゆっくり達にお引越しの準備をするように伝えた。 あのれいむとまりさが人間を怒らせたら、今度こそ一斉駆除されるかもしれないと説明すると、 群れのゆっくり達は、すぐに慌ただしく荷物を纏めようと走りだしていた。 「ぱちゅりーじゅんびできたわよ!!!」 「むきゅ、みんなゆっくりいそいでおひっこしよ!」 ぱちゅりー達は、いや、この群れの中で賢いゆっくり達は、焦っていた。 急がなければ殺される。 人間が本気になればこの群れのゆっくりは全て殺されてしまう。 生き残る道は住み慣れたこの地を離れる事。 無理をしてでも逃げないと、 ドスを惨たらしく殺す人間の手にかかれば、 こんな群れすぐに全滅してしまうだろう。 ぱちゅりー達は持てるだけの食料を持って人間の村から離れるだけの当ての無い旅路に直ぐに出発した。 群れの跡地に残るゆっくりと食料の問題でひと悶着あったが、 置いていく食料(日持ちのしない物) > 持っていく食料(保存に適した物) と、配分したので、その量の多さに残るゆっくりも騒ぎ暴れる事無く大人しく黙って見送った。 お引越し組みの道中は比較的安全だった。 なぜなら、ドスが死んだ事がまだ知れ渡っていなかったからである。 しかし、死亡フラグの塊のゆっくりである 赤ゆ、子ゆだけに留まらず、逃避行という状況で落ち着きの無くなった成体ゆっくりも死んでいった。 あるゆっくりは草に隠れた段差から転げ落ちて死に、 またあるゆっくりは落ち葉に隠れた沼田場に迷い込んで溶けて死に、 フラグ回収とばかりに、妖精や妖怪が作って忘れてしまった罠にかかって死んだり、 毒キノコや毒草の毒で死に、果ては食虫植物に食べられて死んでいった。 お引越し組みはその数を20程までに減らしていった。 やがて、小さな山二つ半ほどを十日かけて移動したお引越し組みのゆっくり達は、 三つ目の小山の頂上を越えようとしていた。 ここをこえればゆっくれぷれいすがある ここをこえればゆっくれぷれいすがある ここをこえればゆっくれぷれいすがある そう自分たちに言い聞かせながら三つ目の小山を・・・登りきった。 そして、お引越し組みの目に飛び込んできたのは、 世界の果てだった そう表現するほか無いぐらい、行き止まりだった。 山は頂上近くまで切り崩された断崖絶壁をさらし、 その向こうには何も無く、土が剥き出しの更地が広がっていた。 まるでワンホールのケーキを半分に切って横から見たように、 前と後ろ(?)で姿形が全然違う山だった。 「みんないきどまりだよ!!!」 「みんなゆっくりとまってね!!!」 「なにがあったの???」 一様に混乱はしていたが、後ろから来るものに押されて落ちるものは出なかった。 「おやまがここでおわってるんだよ!!!」 誰かが発した一言で、横へ横へと広がりながら、 切り崩された山頂付近に並ぶ形に落ち着いた。 困惑から疲労困憊そして落胆から不安へ 後ろ姿を見ているだけでもそれが分かるほど お引越し組みのゆっくり達の雰囲気の変化は大きかった。 『3』 誰も何も言わない。 此処まで生き残った賢さから引き返してもゆっくり出来ない事が分かっていたから。 『2』 誰も何も言えない。 世界の果てのような光景を見て、頑張っていた気力が萎えてしまい、 切り崩された山の絶壁を迂回しようという体力がもう無い事が分かっていたから。 『1』 震えているものが居た。 おそらく涙を堪えているのだろう。 やがてゆっくり達の大号泣の大合唱が始まるだろう。 しかし、ゆっくりには悲劇に浸る事さえ許されない。 『発破!』 ドドドドドトドーン!!!!! やや篭った爆裂音が響き渡り、容赦無く死神の鎌が振り下ろされた。 「「「「「おそらをとんでるみたい!!!」」」」」 大きな音と大きな揺れと共に、山が消えた。 辺りにはもうもうと砂煙が立ち込めている。 何処からとも無く大きな声が響き渡った。 『この様に爆発の札を要所要所に埋め込み時間差で爆裂させれば、 多くの時間や大量の人手、高価な重機を使わずとも山を切り崩す事ができます。』 「「「「「おおー」」」」」 風が砂煙を払い、崩された土砂をあらわにする。 そこには死屍累々たるお引越し組みのゆっくり達の成れの果てがあった。 どのゆっくりも土砂にまみれ大きく皮が裂けていた。 即死のゆっくりも居たが、かろうじて息のあるゆっくりも居た・・・が、 人間達は土砂に巻き込まれたものがゆっくりだと分かると、 土砂と共にパワーシャベルやブルドーザーで片付けていった。 ざんねん!新たなる新天地を求めてお引越しをしたゆっくり達の旅路は、ここで終わってしまった! *************** 「で、これがあの発破に巻き込まれたゆっくりの集団の真相って訳か・・・」 「はい、そうですそうです。」ヒュンヒュンヒュンヒュン 「っていうかなんかSS風になってるし(苦笑)」 「おお、演出演出(照)」 「信憑性は、確かなんだろうけど・・・」 「隣村がドスまりさの襲撃を受けたのは人間の皆さんご存知のはず、 わたしはドスの帽子とお下げと皮を持っていったおにいさん達の後に付いて行き、 群れのその後を記事にするつもりでそのまま付いて行きました。 その辺りからは自分で見た事、聞いた事を書き、 ドスが村を襲う前の話は、元のおうちに戻ったゆっくり達の取材から書き起こしました。」 「それで・・・演出が入ってSS風になった・・・のか。」 「おお、反省反省(恥)」 「ところで、群れに残った奴らはどうなった?」 「あるものは妖精に遊び尽くされて死に、あるものは野生動物に食い尽くされて死に、 あるものは餓死し、あるものは腐った物を食べて全部出して死に、あるものはカビに侵されて死に、 結局、群れのあった土地に生きたゆっくりは居なくなりました。」 「ふーん。」 ペラッ ペラッ ペラッ 「しかし読みにくいな(苦笑)」 「おお、ひどいひどい。」ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン 「・・・」 「・・・」ヒュンヒュンヒュンヒュン 「ふむ・・・まあいいだろう。 このネタうちが買おう。」 「おお!まいどまいど!」ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュン 後書き() サブタイトル「きめぇ丸レポート」 (調子に乗ってスイマセン) 前作「腐れ饅頭」の裏話として書き始めました。 れいむとまりさが立ち寄った群れの末路の話です。 前作とセットで考えていたので今回も最初の段階から詰め込み過ぎでした。 感想スレで「読み難い」というレスが多くありましたので、 今回は全体を大きく書き直し、ゆっくりの台詞を極力排した形にしてみました。 第三者(観察者・きめぇ丸)視点に絞って書いたつもりですが、 前作と違う形の読み難さがありましたらこれも演出と思って許してください。 最後までお読み頂きありがとうございました
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ゆっくり爆発していってね 後編 22KB 観察 駆除 番い 群れ 自然界 現代 5作目です、前編からお読みくださいませ 群れのゆっくりたちが再び広場に集結したが、それがかなり異常な状態であると誰もが理解できた。 通常は成体ゆっくりだけが参加するこの場に、子ゆっくりどころか巣から出る事が全くない赤ゆっくりまで 総勢200匹近い群れの全てのゆっくりが長を今か今かと待ち侘びていた。 捕食種が活動を始める時間が近い事や、無理して外に出させた赤ゆっくりが愚図り始めた事でゆっくりの中から文句の声が上がり始める。 「みんなしずかに、せいしゅくにしてね!!」 長ぱちゅりーが指定席である、割った竹の上に乗り上げると、眉を吊り上げたゆっくりたちが一斉に長を罵り始めた。 「おさっ、もうれみりゃたちがすがたをあらわすじかんだよ!ゆっくりできないよ!!」 「れいむのあかちゃんがおなかをすかせているよ!!ゆっくりしないですにかえしてね!!」 「むきゅー、いったいなにがはじまるの?なにかあったの?」 様々な反応を示すゆっくりたちに話が進めないでいると、娘ぱちゅりーが何人かの友人を引き連れて長ぱちゅりーの前に立った。 「「「「「ぜんいんしずかにしてね!!!」」」」」 張り合わせた声が広場に響き渡る、しんっと一瞬だけ静まり返ると、その期を逃さず長ぱちゅりーは言葉を発した。 「みんなごめんなさいねっ、いちぶのゆっくりはしっているとおもうけれど、きょうあまあまさんがすのちかくでおちていたわ もしかしたらそれにどくがはいっていたかもしれないの!!いまからみんなをしょうどくをするから、 あまあまさんをたべたゆっくりは、むこうのひろばにあつまってほしいの」 消毒というのは勿論嘘で言い包めるための方便だった。 毒という単語に怯えた一部のゆっくりは混乱するが、長ぱちゅりーが消毒すれば大丈夫だからと落ち着かせ、ゆっくりたちは一斉に列を作り始めた。 長ぱちゅりーは覚悟していた。どれほどのゆっくりが爆弾を抱えているのかと、 なるべく少なくあって欲しいと願いながら細めた眼をゆっくりと開くと、 そこには群れのほぼ半数、100匹近いゆっくりが列を成していた。 「……むきゅう……」 パッと見ると稼ぎ手であるまりさ種が多く、中には子ゆっくりや、極僅かであるが赤ゆっくりまで存在した。 親が取ってきた物を分け与えられたのだろうか、どちらにしてもかなりの損害であるのは明瞭だった。 娘ぱちゅりーとは既に話し合いを終えており、山の中腹にある湖畔で消毒の名目として身体を洗う、ということで決定していた。 長ぱちゅりーは、生涯の別れとなるであろうと覚悟して娘ぱちゅりーを見た。 そこには気丈に振る舞い、爆弾持ちのゆっくりを先導する彼女の姿があった。 事は順調に進むと思えたが、その時――。 一部から甲高い悲鳴があがった、見ると混乱を引き起こさせないためにみょんが持ってきたブルーシートで覆ってあった ありすとまりさの無残な死体が大衆の眼下に曝け出されていた。 暇を持余した子ゆっくりたちが誤ってブルーシートを外してしまったのだ。 「ゆゆ!!あ、あれはありすだよ!ど、どうしてあんなふうになってるの!?」 「わ、わからないよー、わからないよー!」 「むきゅー……な、なんてしにかたなの!?ひどすぎるわ!!」 混乱し始めるゆっくりたち、長ぱちゅりーが杞憂した最悪の展開が引き起こされてしまった。 直ぐに一部からあまあまを食べたせいだ、と声があがり列が崩れ始める。 こうなればもう終わりだ、暴走したゆっくりたちを納得させる事は不可能になってしまう。 「ぜんいんだまってね!!!!!」 混乱を収拾したのは、娘ぱちゅりーだった。 ぱちゅりー種とは思えない程の大きな声で一喝すると、母に代わり近くの岩場に乗り上げゆっくりたちを見下ろした。 「あまあまさんをたべたゆっくりはれいがいなくぜんいんばくはつしてしまうわ!!! ぱちゅりーのありすは……まりさのばくはつにまきこまれてしんだのよ!!」 ごくりと息を呑む一同、夜風に靡かれたありすとまりさの死骸は何も語らない。 「ゆぐうぅう!!あまあまざんをだべだがら、でいぶじんじゃうの!?いやだよぉ……いやだよぉお!!」 「いやなのぜぇ!!ばでぃざはじにだぐないのぜぇ!!!」 「おきゃーじゃあぁん、まだありずじにだぐないよぉおお!!」 自身に突然と降りかかった災いに、皆納得できない様子で騒ぎ立てる。 その不幸の渦中でも娘ぱちゅりーは叫び続けた。 「ぱちゅりーもあまあまさんをたべたわ!みんなもかぞくをまきぞいにしたくなかった…… ぱちゅりーにしたがって、ゆっくりぷれいすからはなれるのよ!!!それとも、たいせつなゆっくりたちをまきぞいにしたいの!?」 涙する者、嗚咽を漏らす者、悲しみにひれ伏す者、群れを襲った悲劇はあまりにも大き過ぎた。 だが、娘ぱちゅりーが功を奏したお陰で皆が皆現実を理解することだけはできた。 長ぱちゅりーは時間がないことを承知の上で、声を荒げ宣言する。 「いまから5ふんだけじかんをあたえるわ!!みんな、かぞくとのわかれをすますのよ!!」 5分という生々しいタイムリミットが、悲しみに身を揺らしていたゆっくりたちを立ち上がらせた。 まりさは新妻のありすと産まれたばかりの赤ゆっくりたちに囲まれて今生の別れを惜しんだ。 「まりざぁああ……どうじで……どうじでぇごんなごどにぃい……」 「ありす、なくのはやめるんだよ!まりさのおちびちゃんたちをたのむのぜ!」 現実を真摯に受け止め落ち着き払ったまりさは家族の前で決して泣く事はなかった、 変わりに涙を流したありすと赤まりさ、赤ありすと一家全員で最後のすーりすーりをし始める。 「おちょうちぁぁん……もっちょゆっきゅちしていってよぉ!!まりちゃともっちょあちょんでほちかっちゃよぉおお!!」 「ありしゅもはなれちゃくないよぉおお!!おちょうしゃん!!」 「ごめんね、おちびちゃんたち……まりさはばちがあたったんだよ……しかたがないんだよ」 まりさには負い目があった、それは自分だけがあのあまあまさんを食べて満足してしまった事で、 この理不尽な仕打ちも自身の身勝手さが産み出してしまった天罰なのだろうと思えて仕方がなかったのだ。 結果としてまりさが食べてしまった事で妻や子供たちは死なずに済んだが、ゆっくりらしからぬ達観した境地にあるまりさは せめて愛すべき家族の前では恰好良い姿のままでいようと、精一杯の笑顔を振り撒いたのだった。 ちぇんは家族との別れを済ます事も叶わず、鋭い表情を浮かべる成体ゆっくりに囲まれて身を縮ませていた。 「おまえのせいなんだよ!!れいむのおちびちゃんがこんなめにあったのはおまえのせいなんだよ!!」 「ゆっくりしないでしんでね!!せきにんをとってね!!ぐずぐずするんじゃないよ!!」 ちぇんとありすは、怒り狂った友人の親たちに取り囲まれている。 あまあまさんを自分たちだけで独占せず群れの仲間たちに分け与えたのが、最悪の形で裏目に出てしまった。 2匹は親との最期の別れも出来ず、友人の親たちが元凶はこの2匹であると決め付けて有りっ丈の罵倒を投げつけている。 友人の子れいむや子まりさも親の脇で泣きながら険しい表情を作って、ちぇんとありすを恨めしそうに睨み付ける。 「ゆあぁあああん!!おがぁあざんっ!!まりしゃはじにだぐないよ!!ぢぇんどありずのせいだよ!!!」 「でいぶだっでじにだぐないよぉおお!!しねっ!!げすのぢぇんとありずはゆっくりしないでじねぇええっ!!」 ちぇんとありすは身を寄せ合い、貴方たちだって満足そうに食べていたじゃないか、と出掛かった言葉の全てを飲み込んで 必死に必死に耐えている。長ぱちゅりーが決めたタイムリミットはもう近い、どうしてこんな事にと隠し切れない涙を流して 俯いていると2匹の親である親ちぇんと親ありすが駆け寄ってきて取り囲まれたゆっくりの壁の隙間から名を呼んだ。 「ちぇんのおちびちゃん!!おかーさんだよー!!わかってねー!!」 「ありすちゃん!?おかーさんよ!!そこにいるの!?」 円陣を組むように取り囲まれたちぇんとありす、その陣の中心に割って入ろうとした親2匹は強い体当たりを受けてよろけた。 見上げるとぎりぎりと歯軋りを立てた友人の親ゆっくりたちが凄まじい形相で立ち塞がっていた。 「どうしてそんなことするの?わからないよー……」 「お、おねがいですっ!ありすちゃんにあわせてくださいっ!!あとでなんどでもあやまりますから!!もうさいごになってしまうのよ!!」 親ちぇんと親ありすは、自分たちの娘の所為で被害が広がってしまった事実を受け止め、親ゆっくりたちの心情を察し罪悪感を感じていた。 だがそれでも、この最期の瞬間だけは母親として娘の支えになってやりたいと切実に願っていた。 しかし納得のいかない友人の親たちは、それぞれ眼を合わせると2匹に無情とも言える台詞を突っぱねた。 「だめだよ!あわせるわけにはいかないよ!!これはばつだよ!!」 「そうだよ!!だれのせいでこうなったのか、ゆっくりりかいするべきなんだよ!!」 親たちの煮えたぎる怒りは最期の時間を与えることさえ許さなかった。 口を歪め眉を吊り上げると大きく身体を膨らませてちぇんとありすを跨った肉壁をより一層強化する。 絶対に進ませない、絶対に触れ合わせない、負の感情が異様な空気を作り出す。 「おねがい……おねがいですっ!!……ありすちゃんっ!!きこえるっ!?おかーさんはありすちゃんのことが――」 「うるさいよっ!!だまってよっ!!つたえさせないよっ!!ゆっくりりかいしたらはなれるんだよ!!」 諦めた親ありすがせめて自分の思いの丈を娘に知っていて欲しいと声を張り上げるも、 その僅かな願いさせも親れいむの轟音に掻き消された、親ちぇんと親ありすはボロボロと砂糖水の涙を流して身体を震わせる。 そして各々の想いを引き離すかのように、長ぱちゅりーの号令が掛かった。 「ありずちゃんっ!!ありずちゃああん!!!!ありずちゃああああんん!!!!」 「ちぇええんっのおぢびじゃぁあああん!!!ちぇええええええええんっっ!!!!ちぇぇえぇえぇええん!!!」 1匹の親まりさに弾き飛ばされるように、娘ぱちゅりーが先導する広場へ向かわされるちぇんとありす、 背後には大好きな母親の悲痛な叫びが聞こえてくる、返事をしようにも今も睨み付けている親まりさがそれを許さない。 友人の子れいむや子まりさが2匹にぶつかってその怒りの矛先を向け、後ろ髪を引かれる思いでちぇんとありすは列に戻っていく。 しんぐるまざーのれいむはこれから文字通りの彼岸へと旅立っていく、爆弾を抱えたゆっくりたちが山を登り始める後ろ姿を見つめていた。 最初に長ぱちゅりーが消毒をすると言った時、捻くれ者のれいむは、きっと消毒というのは嘘で残ったあまあまを 群れのみんなで食べる気なんだと思い込み列には並んでいなかったので、周囲に爆弾を抱えたゆっくりではないと見られていた。 内心、怯えて小刻みに身体をぶるぶると震わせているが、れいむは持ち前の自己中心的な思考がそれを緩和させていた。 (れいむはしんぐるまざーでかわいそうなんだよ!れいむだけはきっとだいじょうぶなんだよ!!) 自分を納得させるようにれいむは心の内で何度も何度も呪文のように詠唱する。 その近くで歩く死者の列を蚊帳の外といった感じにボーっと眺めているれいむの赤まりさが母の異変に気付いて尋ねた。 「おきゃーしゃん、どうしちゃの?ふるえちぇるよ!」 「な、なんでもないんだよ。だいじょうぶだよ!」 死んだような顔をして目の前を通り過ぎていく爆弾を抱えたゆっくりたちと、その家族の別れを惜しむ悲鳴が交差するその場で れいむは根拠のない自信を盾にどうにか立っていた。 直ぐ傍でご近所だった、長ぱちゅりーにれいむだけ優遇されていて不公平だと訴えたゆっくりまりさが通り過ぎる。 まりさはれいむに気付くと一度だけ冷え切った笑みを垣間見せ、列に紛れ込んで消えていった。 (れいむだけはへいきなんだよ!!あんなゆっくりたちとはちがうんだよ!!) れいむの震えは決して止まらない、その時が近付くまで――。 細長い行列を作り、100匹近いゆっくりの列が山の中腹を目指して歩き出す。 背後から泣き叫ぶ家族の声に何度も振り返りながら爆弾を腹の中に抱えたゆっくりたちは前を進む、 突然、前方の集団の方からがパンッと乾いた音が響き、遅れて悲鳴があがった、ついに始まってしまったのだ。 長ぱちゅりーがせめてもの情けとして最期の時間を割いた事が、不幸にも最愛の家族たちに間近で爆散していく凄惨な姿を見せ付ける結果になってしまった。 「ちぇんのおちびちゃんたち、みんなでなかよくくらすんだよー」 ちぇんの母親である親ちぇんは番のゆっくりらんと一度だけ視線を重ね頷くと、振り向いて走り始めた。 背後で残した子供たちの泣き声が聴こえる、しかし親ちぇんは一度も振り返らず死者の列を目指して突き進む。 「おきゃぁあしゃん、いかないでぇええ!!わがらないよぉおおお!!!」 親ちぇんは番のゆっくりらんに残された子ゆっくりの全てを託し、自身は生きて帰ってくる事はないと知りながら子ちぇんを見守り 最期まで側で寄り添っていてあげようと決め込んだのだ。 途中、同じように覚悟を決めた親ありすと合流すると、お互いに顔を見合わせて困ったような顔で小さく笑うと 死者の列に紛れて姿が見えない我が子を呼び続けた。 既に何匹かの爆発が始まっている、荒波の如く悲痛な叫びが交錯する列に2匹は潜り込んだ。 「ちぇえぇええん!!おかーさんがここにいるんだよー!!わかってねー!!」 「ありすちゃんっー!!おかーさんもいっしょにいくわ!!!どこにいるのーっ!?」 親の子を思う願いが天に通じたのか、奇跡的にも僅か前を行く娘の姿を発見し2匹は大声でそちらを呼んだ。 聞きなれた母親の声が伝わり振り返ったちぇんとありすは、その姿を見るなり言い表せないほど嬉しそうに涙を流して母の胸へと飛び込んだ。 「おがぁああざんっ!!わかるよぉおお!!わがるょよぉおお!!!」 「おかーさぁあん、ありす、どっでもあいだがっだ、あいだがっだよぉおおお!!」 自分を想い、死ぬ事すら承知の上で駆け付けてくれた母親の温かさにちぇんとありすは まるで赤ゆっくりに退化したようにわんわんと泣いて身を寄せ合い甘えた。 遠くの方でその様子を羨ましそうに見つめる子れいむと子まりさがいる、2匹の親はここに来てくれはしない。 れいむとまりさは目の前にある家族愛と自身を比較して、孤独に押し潰されそうになっている。 そんな2匹を親ちぇんと親ありすは微笑みこっちに来るように促した。 「おばざん……ま、まりざも……まりざもいっしょにいていいのぜ?……」 「ちぇんとありずにひどいごどじだ、でいぶも……いっしょでい”い”の?」 せめてもの罪滅ぼしのつもりだったのか、親ちぇんと親ありすは慈愛溢れる笑みを浮かべて頷いた。 「「「「おばざああんっ!!」」」」 「だいじょうぶよ、まりさちゃんも、みんなでいっしょにいこうね……みんなでいっしょならこわくないわ!」 「れいむもちぇんもいっしょだよー、みんなみんないっしょだよー!」 深い愛情に包まれた家族が爆発に巻き込まれたのは――ほんの一瞬だった。 ちぇんが爆ぜ、ありすも遅れて爆ぜると、そこには身体の上部を失った屍と無数の穴を開け息絶えた死骸が、物言わぬ小麦粉の塊と化した。 その家族たちが派手にば爆散した様を後ろで見ていた新妻のありすの番であるまりさは、 この断末魔が広がる悪夢の光景とも言える場所でついに押さえ付けていた精神の楔が弾け飛んでしまった。 まりさは何かに取り付かれるようにゆっくりと列を離れると、遠くからこちらの様子を見守っている残されたゆっくりたちに近付いていく。 それに気付いたれいむとみょんが、急いでまりさの足を止めさせ身動きが取れないように伸し掛かった。 「まりさっ!!そっちにいっちゃだめなんだよ!!ゆっくりしないでれつにもどるんだよ!!」 「かんけいないゆっくりがまきこまれてしまうみょん!!いっちゃだめみょん!!」 「はなぜぇえええ!!はなぜぇえええ!!!いやだぁあああっ!!まだぁああじにだぐなぃいいっ!!!」 近くで呆気なく死んでいく仲間たちの惨状に、もうまりさは耐え切れなくなっていた。 あれほど気丈に振舞っていても、つまるところがこの阿鼻叫喚の地獄絵図ではまりさが壊れてしまうのは無理もない。 かくいうまりさの身体を拘束しているれいむやみょんも既に限界は近い、こうして役割を演じる事でどうにか自我を保っている状態に過ぎない。 「いぃやぁだぁぁああ!!まりざはまだやりだいごどだっであるんだぉおおお!!たすげでぇええよぉおおお!!ありぃいいずゅうう!! おぢびじゃぁあんんっ!!いやじゃああっ!!じにだぐないっ!!まだまりざはじにじゃぁぐなぁぁぁああいよぉおおお!!!」 まるでポップコーンが作られていく工程を見ているようにパンッパンッと鈍い音が、あまあまを食べていない残されたゆっくりたちに伝わる。 一つ一つの音が響く度に最愛の者が消えていく事実に涙し、せめてもの願いを込めて名を呼んでいる。 既に見えなくなった娘の事を思い、長ぱちゅりーは群れの仲間たちが消えていく様子をジッと見つめ脳裏に焼き付けていた。 ふと長ぱちゅりーは列を脱線したゆっくりが視界に入るとそれを直視した、列を外れた3匹のゆっくりがこちらにじわじわと近付いているではないかと。 「むきゅー、あれは……まりさ……なの?ど、どうしてっ……!」 身体を封じ込めようと力で圧力を掛ける、れいむとみょんを引きずって、ゆっくりとまりさが這い寄ってくる。 長ぱちゅりーは、ともかく残った者の安全を優先するために急いで巣に避難するように訴えるも、 多くの仲間たちは気が動転しているため耳には伝わらない、雲に掛かった月が顔を覗かせ月明かりを地上が照らすと まりさが生にしがみ付こうと必死の形相でこちらに向かってくるのがよく分かった。 「まりざぁああ!!まりざぁああああっ!!!!」 「ゆわぁあああんっ!!おちょうしゃぁああんっ!!!」 一組の親子が、こちらに迫ってくるゆっくりが自分の家族の者であると気付き身を乗り出す。 ありすとその子供たちだ。 「いけないわっ!!だれか!!!だれもいいからありすたちをとめてぇええ!!!」 押さえ込んむ2匹を背負って徐々に距離を詰めていくまりさに、ありすたち一家が駆け寄ろうと走り出す。 それがどういう結果になるのか容易に想像できた長ぱちゅりーは引き止めるために叫ぶ。 正気を保っていたゆっくりみょんとゆっくりちぇんがありす一家の傍に居た事が幸いした。 まずちぇんが急いでありすたちの前に立ち塞がり、遅れてみょんが背中を押す形でありす一家の動きを封じた。 「だめだよー!!ありすたちもまきこまれちゃうよー!!」 「おねがいはなじでぇえ!!ありずはどうなっでもいいのよ!!まりざがっ!!まりさがぁあっ!!」 新妻のありすが、みょんの身体から逃れようと必死にもがく、 じりじりと這い蹲って距離を詰めるまりさに異変が起こったのは直後のこと。 「ゆがっ!?……ま、まりざ、じぬの!?い”やだぁああああ!!ごんなごどでじにだうあんあ”っ――」 一瞬、まりさの呂律が回らなくなったと思えば全身がみるみるうちに膨らんでいき、 寒天で作られた目玉が内圧に押されて今にも飛び出しそうになった。 呆気なく限界点を超えボンッと音を立てて、まりさの餡子は内部から破裂した。 まりさを抑えていたれいむとみょんは散弾を真っ向から喰らい、機能を停止するように息絶えた。 最愛の番の内臓物である固まった餡子の一部が凄まじい速さでありすの頬を掠めていくのを見て、ありすは番のまりさの凄惨な死に際を理解してしまった。 「いやぁああああぁぁああああ!!まぁありぃいさぁあああぁっ!!!」 「おちょうしゃぁああんっ!!」 ありすを押さえ付けていた、みょんとちぇんはそれらの行為が意味を成さなくなったと判断して 泣き崩れ頭を垂れた一家を背に悲しそうな顔をして離れていく。 入れ替わり、しんぐるまざーのれいむが白目を向いて一家の側に近寄ると、亡骸をれいむの大きな揉み上げで指してぶつぶつと何かを呟いた。 どうも様子がおかしいと長ぱちゅりーは恐る恐る近付くと、カッとれいむは見開いて喚き散らした。 「でいぶはがわいぞうなしんぐるまざーなんだよぉおおおぉおおお!!!!!」 平伏して嘆くありすに徐に伸し掛かり、しんぐるまざーのれいむは気が狂ったようにありすに懇願する。 「ありずはでいぶをだすげなぐっちゃいげないんだよぉおお!!でいぶはしんぐるまざーなんだよぉ!!だすげるのはどうぜんだんよぉおおおお!!!」 「なにずるのっ!?はなじでっ!!まりさぁああ、たすげでっ!!まりざぁああああ!!」 「おきゃぁしゃんをはにゃちゅんだじぇ!!」 れいむはありすを逃がさないように巨体な身体を押し付ける、ありすは突然襲い掛かり訳の分からないことを言い始めたれいむに困惑していると、 傍らで泣いていた赤まりさが親ありすを助けるべく小さく転がって、れいむに意味のない体当たりをしている。 「でいぶはばぐはづじだぐないぃいいい!!ありずだずげでぇえええよぉおお!!でいぶはじんぐるまざぁああなんだよぉおおお!!」 自分だけは大丈夫だと自己暗示を掛けるように何度も胸のうちで繰り返していたしんぐるまざーのれいむであったが まじまじと、ゆっくりたちが爆発して死んでいく現実を突きつけられ、彼女もまりさと同様にメンタルの部分を支えきれなくなった。 誰でもいいから助けて欲しい、あんな惨たらしく死んでいくのは絶対に嫌だ、憔悴しきったれいむは たった今家族を亡くし悲しみに溺れたありすに、それが無駄であるかどうかの判断さえつかずに延命を乞う。 長ぱちゅりーはれいむが『爆発』という単語を発したことと、れいむの背中の表面にゴツゴツとした丸い塊が、虫が地を這う様に移動しているのを目撃し、爆弾持ちであることを瞬時に見抜いた。 どうして爆弾持ちがここにいるのか、という疑問の一切を投げ捨て長ぱちゅりーはとにかく叫んだ。 「みんなとおくににげるのよっ!!れいむがばくはつするわ!!!」 導火線に火がついたしんぐるまざーのれいむを見る一同、れいむの異変を察知して蜘蛛の子を散らすように逃げ出すゆっくりたち。 れいむはまりさと同様に内圧で大きく膨れ始める、それでもありすを離すことはなく助けを求めている。 「だずげでよぉおおお!!でいぶをだずげでよぉおおおお!!!」 「おねがいはなじでぇっ!!はなじでよおぉおお!!!」 そして、しんぐるまざーのれいむは爆発した。 長ぱちゅりーは爆死したゆっくりの死体に下半身だけが残っている事を思い出し、 身を伏せる回避法を選択した事が命を繋ぐ結果になった。 降り注がれたれいむの餡子を寸前のところでかわし傷一つなくやり過す、 存えた長ぱちゅりーは皆の無事を願い周囲を見ると、その光景は凄まじいものだった。 「で、でいぶのあんござんが、おなかがらででるよぉおおおお!!あんござんゆっぐりじないでもどっでぇえよぉおおおお!!!」 腹を割られた子れいむが朦朧とする意識の中で、ピコピコと揉み上げを動かして外に溢れ出た餡子を腹の中に収め直そうとしている。 「まっぐらだよぉおお!!、みんなどごいっだのっ!?ありずをひどりにじないでぇえ!!!」 両目を潰されたありすが、頬からカスタードを撒き散らしながら見知ったゆっくりを探して彷徨っている。 「おちびじゃあぁあん!!おねがいだがらゆっぐりじでいっでね!!ゆっぐりっ、ゆっぐりいぃいい!!」 「ゆぴょぉっ……ゆぷぇ……」 身体を真っ二つに裂かれ、生クリームを盛大に噴出した赤ぱちゅりーにぺーろぺーろと舌を嘗め回す親まりさ、 親まりさ自身も穴の開いたこめかみの辺りから餡子が垂れている。 「お、おぎゃぁああじゃんっ!!うごいでよぉおお!!いっじょにゆっぐりじようよぉおおお!!」 子を庇って無数の大穴を開けた親れいむに反発性のないすーりすーりを繰り返している子まりさなど ほとんどのゆっくりがしんぐるまざーのれいむの爆発の煽りを受けて致命傷となる怪我をしている。 放って置けば助からない、だがどうすることもできない、長ぱちゅりーは振り返り爆心地を見ると ありすとその子供たちの骸としんぐるまざーのれいむの一部であったあんよが残されている。 「むきゅー……みんな、みん……な、いきて……る、ゆっく……り、は……あつ……ま……」 とにかく生きている者だけを集めて二次事故を防ぐ為に長ぱちゅりーは動き出そうとするが、ぺたんっとその場で転がる。 ぱちゅりー種であるが故、病弱な身体の疲労は限界に達していた。 長ぱちゅりーは避難を叫ぼうとしたところで意識が途絶えてしまった――。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 依頼主の老人が提供してくれた古屋、仮設のモニタールームとして機材を詰め込んだ一室で 加工所の職員が唸り声を上げて、小さな画面に食い入っていた。 「この結果じゃ商品化は難しいな……」 モニターには昨夜の出来事が克明に写されていた。 ゆっくり爆弾を食べたゆっくりはもれなく全滅したが、残ったゆっくりもそれなりの数に昇っていた、 群れ全体の3割の生存を監視カメラが捉えた映像を見て確認できた。 それなりの成果はあげた様に見えるが、企画課の職員たちは不満気に煙草を吹かしている。 「あの群れの長っぽいゆっくりぱちゅりーの指示が的確ですね」 「野生にしちゃ賢すぎるな、元飼いゆっくりか?」 長ぱちゅりーを指差して若い男が囁く、ヘッドホンを片耳に充てて音声を拾っているもう片方の職員は長ぱちゅりーの言葉を聞いて興味深そうに頷いた。 「やっぱり分離と分断の指示はこいつが出してるな」 「へぇ、やるねぇ~」 「やるねぇ~、じゃないですよ。この企画通らなかったら主任の立ち位置やばいんじゃないんですか?」 しれーっと目を細めて若い職員は上司である課長を見て呆れた顔をしてみせた。 「まぁでも首は繋がるさ、このぱちゅりーさえ捕獲できればね」 「ん?どういうことです?」 「俺の見立てじゃこいつは間違いなくプラチナ級だよ、実験課のいい土産になるぞ」 プラチナという単語に一番下っ端の職員を除いて全員が息を呑んで目を見合す。 「プラチナだからってどうなるっすか?」 一人ピンとこない様子の若年の職員が尋ねると、課長はにぃっと不敵な笑みを作ってモニターの中の長ぱちゅりーを指差した。 「お前プラチナバッチ持ってるゆっくりの相場って知ってるか?」 「知らないっすけど……」 「外車が新車で購入できるくらいすんだよ、冗談抜きで半端ないぞあれは」 「マジっすか!?……自分の年収より上……なんすか……」 課長はパンッと手を叩くと、職員たちは全員注目した。 「Bプランから変更してCプランでぱちゅりー種だけ捕獲、残りは全処分でいこう、このぱちゅりーさえいれば巻き返しは出来るさ」 「了解っ!」 この後、長ぱちゅりーが築いたゆっくりプレイスは人間たちの手によって、ぱちゅりー種を除いて1匹残らず抹殺された。 加工所に送られるゆっくりの中に長ぱちゅりーの姿があったが、その眼にあるべき輝きは既に失われている。 長ぱちゅりーには塀の中で、幸せかどうかは別にしても貴重品として大切に扱われるゆん生が待っている。 筍の茂る山に再び平穏が戻ると、そこにゆっくりの姿はなかった――。 あとがき 元ネタは某ロボットアニメです、加工所の職員の苗字もそれだったりします 前後編とやや長くなりましたがここまで読んで頂き感謝です、お付き合いありがとう御座いました 今まで書いたもの: anko2166 ゆっくり虐殺お兄さんの休日 anko2155 いつか見た赤染め姉妹たちの憧憬 anko2125 ゆっくりおうちせんげんの末路 anko2103 ゆっくり熟年離婚 書いた人:おおかみねこあき
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「ふたば系ゆっくりいじめ 734 未成ゆん/コメントログ」 こういうゲスゆっくりはいいね、まさかポリバケツに入ってたのがゴッドファーザーだとは・・・ こういう憎めないキャラはいいし、ゲスだけどきちんとルールがあるからゆっくりできる 子ゆっくりがちゃんと制裁されたのもいいね ただあのまりさ、頭良い個体だったから死んじゃったのがちょっともったいないかも -- 2010-03-26 13 51 01 発想がすごいおもしろかった! -- 2010-06-05 12 17 26 ゲスファミリーかっけぇw -- 2010-06-06 21 59 16 面白いね!作者さんからは溢れる才能を感じるね! -- 2010-06-27 23 06 20 みょんとパチュリーの経緯が知りたい -- 2010-07-01 00 01 16 面白いけど 面が三つのサイコロっておかしくないか? -- 2010-08-12 22 28 55 1〜3の目がそれぞれ2個ずつついてるんじゃないかな? そんなのが有るかどうかは知らないけど -- 2010-08-13 11 41 38 カイジに456サイってあったからあんな感じじゃないかな? -- 2010-08-19 18 37 31 みょんがかっこ良すぎる…。ヤクザものの映画に出てきても違和感無い性格だったw -- 2010-08-22 03 41 38 お父さんには幸せになってもらいたかった あれだけ生き抜いてきた最後がこれだなんて、お父さんまりさも子まりさを助け出したれいむも救われなさすぎだろ・・・ -- 2010-09-07 13 06 20 ゲスファミリーすげぇ -- 2010-10-17 17 32 27 まりさざまあ -- 2010-10-27 09 25 33 子まりさざまぁww 親まりさもこんな馬鹿に関わったばかりに可哀想だったね。 愛情が深いってのも良し悪しか。 ゲスファミリーの設定が面白すぎるw ゴッドがコンポスト入りとか、設定だけで楽しませてもらいました -- 2010-10-30 21 01 33 今まで呼んできた中で最高の作品でした。 ありがとう。 -- 2010-12-06 01 06 19 親まりさは優秀だったがあの救いようの無い出来損ないのゴミを 切り捨てる事が出来なかったってのは過酷な世界を生きる野良としちゃあよろしくなかったな。 -- 2010-12-16 23 26 50 挿絵の目つきが怖すぎるぱちゅりーと、真顔だからこそ狂気が際立っているみょんがこええ -- 2011-01-19 03 24 48 普通のヤクザ映画より出来が良いじゃねーかwゲスファミリーカッコ良すぎだなw 親まりさは生きてて欲しかったなぁ。義母れいむが浮かばれないぜ… -- 2011-01-20 02 32 10 人間そのものだよ GJ -- 2011-01-24 13 35 24 ゆっくりのみたゆめ…叶わず、か…。 -- 2011-02-16 18 34 49 超チートまりさが死んだのは良かった はっきり死んだとはなっていないが実は生きていたなんてくだらない展開はない事を祈る 子まりさの死に方があっさりしていてつまらん、もっと練ってほしかった 裏のゲス一家や表のみょん警察などいろんな設定の野良ゆが出てきたがなんかアホらしい これが山の群れのゆっくり達だけの世界で出てきたならおとぎ話でも読むかのように 何も違和感を感じないんだが 設定が現代で普通に人間が暮らしている町で出てくると途端にアホらしくなる -- 2011-07-15 01 11 18 挿し絵のみょんとぱちゅりーの差はなんだwww -- 2011-08-21 01 04 00 何よりも一番上と一番下の絵以外全て怖い -- 2011-09-17 15 51 25 みょんかっけー、挿し絵もかっけーと思うんだが・・・ 明日眼科行ってきますww -- 2011-10-18 22 32 40 みょん怖ぇwww -- 2011-10-19 19 59 04 みょんカッケーーーーー 設定もおもしろい -- 2011-12-22 15 59 12 みょんの中ってどうなっているんだ? 4枚目のぱちゅりーがバカっぽいwww -- 2012-03-28 22 03 29 仁義なき戦いみたいです。ゲスファミリー優秀。 -- 2012-09-09 19 03 14 なんだろう…これ虐待じゃなくて哀しいシリーズだな…… そういえば『ゴッド・お父さん』の成り上がりを他作者が書いてたな -- 2012-11-28 01 36 22 ゲスファミリーのお父さんマヌケすぎだろwwwww -- 2013-01-27 17 43 18 並みのVシネマより面白いかったwwwwwwwww -- 2013-03-26 18 08 06 バッ バカなJOJO第一部より面白い (JOJO見ながらチラッとみていたがいつの間にかSSしか見ていなかった) -- 2013-04-03 14 30 22 親まりさは個人的に生きてて欲しかったなあ…… ちょっと悲しくなったわ…… -- 2013-05-07 02 15 41 挿絵の差がw -- 2013-08-24 22 33 51 挿し絵見て思った。 にんげんさんでも勝てる気がしない -- 2013-12-11 02 33 42 だめなゆっくりが虐待されるのはいいけど、そうじゃなければ切ないよなあ。 子ゆっくりも最後の最後に気付けた分だけ救いがないし。 -- 2015-08-03 22 27 12 挿絵のクオリティがw -- 2015-11-23 01 47 40 凄く面白かったです。本作のみょんとぱちゅりーは広江礼威先生の作品、特に、「BLACK LAGOON」に出てきそうなキャラクターですね。最後に、みょんとぱちゅりー凄くかっこいいです。 -- 2016-07-19 15 09 12 本作読んでる時はまるで広江礼威作品を読んでるいる気分でした。 -- 2016-07-19 15 13 32 訂正、本作を読んでるいる時は、広江礼威作品を読んでいる気分でした。 -- 2016-07-19 18 48 44 三番目のくらっかーあきさんの挿絵を見た瞬間にMELLさんの「Red Fraction」が脳内再生された。 -- 2016-07-19 19 55 21 本作をよんでいる時は、広江礼威先生の作品を読んでいる気分でした。 -- 2016-08-12 23 02 54 素晴らしすぎます。みょんとぱちゅりーカッチェー! -- 2016-08-12 23 23 02 この作品は、まさに、ノワール。この作品はゆっくりノワールだ。 -- 2016-11-09 22 30 49
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割鞘じゅりをお気に入りに追加 割鞘じゅりとは 割鞘じゅりの25%は波動で出来ています。割鞘じゅりの24%は欲望で出来ています。割鞘じゅりの22%は食塩で出来ています。割鞘じゅりの14%は雪の結晶で出来ています。割鞘じゅりの11%は記憶で出来ています。割鞘じゅりの2%はかわいさで出来ています。割鞘じゅりの1%は元気玉で出来ています。割鞘じゅりの1%は血で出来ています。 割鞘じゅり@ウィキペディア 割鞘じゅり 割鞘じゅりの報道 gnewプラグインエラー「割鞘じゅり」は見つからないか、接続エラーです。 割鞘じゅりをキャッシュ サイト名 URL 割鞘じゅりの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る 割鞘じゅりのリンク #blogsearch2 ページ先頭へ 割鞘じゅり このページについて このページは割鞘じゅりのインターネット上の情報を時系列に網羅したリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される割鞘じゅりに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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※お兄さんが試験官です ※虐待要素がほとんど無いです ※⑨というゆっくりがで増す 「ゆっくりテストを受けてね!」 突然だがゆっくりの知能が非常に低いことは知っているであろうか。 しかし、ゆっくりでも知識が高いゆっくりもいるのだがその知識はどれほどか気になるので 知性が高くも低くも無い通常種のゆっくりも含めてテストを行うことにした。 テストは小学一年生のたしざんひきざん①と書いてあるものを使用する。 回答者は れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、みょん、ちぇんというおなじみのメンバーと あと、特別ゲストにらんも入れている。 (席順は左からありす、みょん、れいむ、まりさ、ぱちゅりー、ちぇん、らんの順番) このメンバーでテストに挑戦してもらう。 ちなみに試験官はお兄さんが入る。 (ゆっくり何ぞに任せたらテストじゃなくなるため) 「おっけー、じゃテスト始めるぞー」 「「「「「「「ゆん!」」」」」」」 「あ、後逃げ出そうものならようしゃ無く叩き潰すからいいね? あと点数低いやつはお仕置きな では・・・はじめ!!」 お兄さんの合図とともにゆっくり達鉛筆を口に銜えるようにしてテストを始める。 それと同時にお兄さんはあたりを見渡す。 ぱちゅリー、らんの二匹はすらすらとテストを進めている ちぇん、みょんは少し考えひらめいたという感じの顔をすると少しずつ書いていた。 ありすは少しは知識があるのか頭(?)を捻らせがんばっている。 結構がんばっている姿はかわいらしいが 問題がひとつだけあった それはれいむとまりさだった。 れいむとまりさ種はそこらへんに生息しているゆえ 子供だのえさだのゆん生などでその他のことはまったく考えない奴らなので 頭はよほど悪いほうではないかと思った。 れいむとまりさのほうに視線を向けると わからないという顔をしてテストとにらめっこをしている。 ああ、だめだこりゃ、とお兄さんが呆れ顔でれいむとまりさを見ていると声が聞こえた。 「「おにいさん!てすとできた(わ)よ!」」 目の前に移ったのはらんとぱちゅりーだった。 おお、もうできたのかと関心し らんとぱちゅりーのテストの答案を受け取り採点を始める。 ふむふむ。 と答えと赤ペンを取り出し しゅっしゅっしゅっしゅっしゅっしゅっしゅっしゅっ・・・ と得意げに丸をふっていった。 「らん、すごいなお前。 100点満点だぞ!」 答案をらんに返す。 らんの答案の名前の隣にでかでかと100と書いてあった。 「どうする?らん。 もっと難しいのがあるが・・・」 「ぜひやらせてね!」 とらんが自身ありげに言うので今度はたしざんひきざん②というテストを渡す。 らんはテストを銜えて自分のいた場所に戻っていった。 次にぱちゅりー 「じゃあ、採点だな」 とまた得意げに赤ペンのキャップをはずし そして しゅっしゅっしゅっしゃっしゅっしゅっしゅっしゃっ・・・ 「惜しいなぱちゅりー 80点だ」 「むきゅん・・・」 「もう一回がんばってみろ・・・またできたらもってくればいい 間違えたところは俺が消しといてやる・・・ ほら」 と消しゴムでぱちゅリーの間違えたところを消す 「むきゅ、ありがとう。」 というとぱちゅりーはテストの答案用紙を銜え席に戻る。 しかし席に戻るなりまりさが声をかけた。 (ぱちゅりー・・・とうあんをみせてほしいのぜ・・・) (むきゅぅっ!? なにをいってるのまりさ!) (まりさはたすかりたいのぜ! となりのれいむはぜんっぜんだめなのぜ!!) (だからってかんにんぐはだめよ!まりさ!!) (うるさいのぜ!!ぱちゅりーはだまってとうあんをみせるのぜ!) (むきゅー!いやよ!) とこそこそと話しかけていたがついにまりさの堪忍袋の緒が切れたのか立ち上がって叫んだ。 「ゆっ!いちいちうるさいよ!ぱちゅりーはだまってとうあんをみせればいいのぜ!!」 その声を上げた後体当たりを仕掛けようとしたがすぐにそれを止めた。視線を感じる。 周りを見るとぱちゅりーを除く、すべてのゆっくりから冷たい視線が放たれた。 当然お兄さんからも。 「まりさ・・・」 「ゆっ・・・ゆゆっ!! ちがうよ! ぱちゅりーがとうあんみせろとうあんみせろっていちいちうるさかったからなんだよ! わるいのはぱちゅりーなんだよ!」 と必死の言い訳をする。 しかも他人に罪を擦り付けるとはこのまりさ・・・ゲスだなとお兄さんは呆れ顔で見ていた。 当然解答者からは 「みぐるしいよまりさ!」 「ちんぽー!!」 「しぼうふらぐなんだねー わかるよー」 「ちぇん、こんなわるいことをするとむくわれないんだよ。 わかってね」 「わかったよーらんしゃまー」 と罵声。 そして試験官がまとめに入る 「ま、まりさには罪を擦りつけようとしたし罰を与えんと。 異議は無いか?」 「「「「「「いぎなーし!」」」」」」 「ゆげげっ!」 「おっけーじゃあ、まりさにはれみりゃのえさになってもらおう!! 餡子を吸われてじわじわと死んで逝ってね!!」 「そ・・・そんなぁぁぁぁぁああああああああああああ!!」 「じこうじとくね、むきゅん」 「ぶざまだね!」 「まらぺにーす」 「ばかなんだねーわかるよー」 「ちぇん、ああいうばかのことを⑨っていうらしいよ」 「そうなんだ!らんしゃまはなんでもしってるねー すごいよー」 「まりさは⑨なんかじゃないいいいいいいいいいいいい!!」 再び罵声。 と、言うよりなぜらんが⑨を知っているのかが不思議だが 「おk、じゃあおぜうさまのところに案内してやろう。」 「やだあああああああああああああああたすけてええええええええええええええええええ!!!」 まりさを断音性のあるかごに入れ放置する まりさのことはおいておいてとりあえずまりさが脱落したところでタイムアップ できたところまででいいから見せてくれといい。 答案に採点をする 答案を採点した後それぞれに返す。 結果 1位 らん 100点 2位 ぱちゅりー 80点 3位 ちぇん 60点 4位 みょん 50点 5位 アリス 40点 6位 れいむ 10点 圏外 まりさ (反則行為を行ったため) 0点 となった。 やはりぱちゅりー種はやはり群れでは欠かせない存在だなと感じた 「ぱちゅりーはよくがんばったな。偉いぞ」 「むきゅ~んほめてくれるとうれしいわ」 終わり 「おわりじゃないでしょおおおおおおおおおおおおお!!」 「ん?なんだ、まだいたのか」 「まだいたかじゃないよー ぱちゅりーだけほめてちぇんたちはほめてくれないの?」 「いや、これはあくまでもゆっくりの知性を測るためのものだから ほめても意味無いぞ」 「ち・・・ちんぽぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!」 「そうよ!ありすをほめちぎったってなにもでないんだから!!」 「お前は何が言いたい。」 「ほ・・・ほめたってなんにもでないからね!」 「はいはい、ツンデレツンデレ あ、でもらんはよかったな。 100点とか 森の中で競い合ったら一番になれるんじゃないの?」 「ゆん、ありがとう、おにいさん できたらちぇんもほめてあげてね。」 「はいはい。ちぇん よくがんばったな」 「ゆん、うれしいよー」 「おk、らん、帰るぞ」 「わかったよ」 「じゃあなお前ら。元気でやれよ」 「またね!ちぇん!」 「またあおうねーらんしゃまー ゆ、もうちぇんもかえるよー じゃあねれいむ、みょん」 「けっきょくれいむはほめてくれないのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「まらああああああああああああああああああああ!」 「・・・ありすにもほめてほしかったな」 おまけ(まりさ その後) お兄さんの家の一室 「おーい、れみりゃ~ でてこ~ぅい」 とお兄さんはれみりゃの名を呼ぶとソファーから聞いてるだけでいやになる声がした。 「うっうー☆おにいさんのおよびだしだどぉ~ きっとかり☆しゅまなおぜうさまにいいたいことがあるんだどぉ~ よんだかだどぉ~」 「おお、きたか。 今日のご飯だ。 子供と一緒に味わって食えばいい。」 とまりさをぽいっと投げつける。 「うー☆おいしそうなあまあまだどぉ~ えんりょなくこどもたちとたべるどぉ~」 「そうするといいぞ。あ、そうだ 後、こいつもね一緒に食べな」 と無造作に投げ出されたのはテストを受けたれいむ。 「いたっ!おにいさん!もっとていねいにあつかってね! ・・・ってなんでれみりゃがいるのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! あとなんでれいむがこんなことにいいいいいいいいいい!」 「いやお前テスト点数低かったじゃん。」 「ええええええ!?きいてないよおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「いや、最初言ってたよね『点数低いやつはお仕置きな』って そういうわけだ。 ゆっくり食べられてね!!」 とお兄さんは部屋を後にした。 「「そんなあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 「こどもたち、くるどぉ~」 「う~☆おきゃ~しゃんにゃんぢゃどぉ~」 「う~☆あみゃあみゃがありゅどぉ~」 「おかあさんといっしょにたべるどぉ~」 「いただきまーすだどぉ~」 「いぢゃぢゃきまーしゅだどぉ~」 「「い・・・いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 今度こそ終わり あとがき 何日間かいろんな人のSSを見てきたけど やっぱすげー byさすらいの名無し? このSSに感想をつける
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※独自解釈だらけです。 ※虐待成分は頑張ってみましたが、もしかしたら薄目かも? ※馬鹿みたいに長いです。 ※前作『ふたば系ゆっくりいじめ 277 騙されゆっくり』と前々作『ふたば系ゆっくりいじめ 274 嘘つきゆっくり』をお読みいただいてからお読みください。 先代の長ぱちゅりーは、通常のぱちゅりー種と比べても非凡な才をもって群れに貢献して来た。 だが、どんなに頑張っても、母の偉業を超えたとは思えなかった。 危険な生物が居ない安全なゆっくりプレイスを発見して群れを作り、 見晴らしの良い場所に分散して巣を作らせる事で、お互いの巣を見張り、危険をいち早く察知する。 狩りの担当を分担する事で食糧の確保を容易にした上で、人口統制の為に『すっきりー!ははるだけにすること』と制限を設け、 生まれた赤ゆっくりがある程度育ったら『がっこう』に預ける事で子育ての負担を減らし、群れに教育を施して事故死を防ぎ、社会性を学ばせる。 物々交換の概念を持ち込み、狩りの成果を働きに応じて配分することで原始的な貨幣制度の先駆けを作り、 『おうた』や『おいしゃさん』のようなサービス業が成り立つように社会制度を整える。 お薬になる草の種を丘に蒔き、大量に生えさせておく事でいつでもお薬が使えるようにしておいたり、 悪い事をしたゆっくりを丘の上でお仕置きする事で、『なにがわるいことなのか』を群れに理解させたりする。 これらは全て、元飼いゆっくりだったという先々代の功績である。 年老いた飼い主さんが永遠にゆっくりしてしまった事で身寄りを無くした先々代は、 巷に溢れる野生のゆっくり達が全然ゆっくりしていない姿に一念発起し、ゆっくりを導く事を志したのだと言っていた。 多大な変革をゆっくり達にもたらした偉大な先々代は、自分の娘にもその志を継いで欲しいと願って非情に徹し、厳しく教育した。 生まれたときから長になるべく、帝王教育を受け続けた娘はその期待に見事応えてみせたのだった。 しかし幾ら非凡であったとしても、天才と秀才を比べれば前者に目が向くのが世の常である。 まして子供の頃からその天才を目の当たりにしていれば、いかに秀才とはいえ生まれる感情がある。 それは『劣等感』。 確かにこのぱちゅりーは優秀であった。否、優秀すぎた。 只でさえ人間の教育を受けたゆっくりでありながら、学者であった飼い主から様々な英知を授かり、 それでいてぱちゅりー種にありがちな、知性を鼻にかけた思い上がりの片鱗すら見せなかった。 完璧すぎる母に追い付こうとがむしゃらに突っ走った。 母の功績に縋るのではなく、それを超える何かを常に追い求めた。 気が付けば番を迎える事も無く、孫の姿を見せる事さえ出来ないまま、 偉大なる母は永遠にゆっくりしてしまった。 偉大なる先々代の死を悼み、涙に暮れる群れの嗚咽を背後にして、 母の死に顔を見ながら先代の長ぱちゅりーは思った。 ゆっくりなのに、ゆっくりする事を忘れて頑張った。 それなのに結局母には勝てなかった。 必死に頑張った日々は、徒労に終わってしまった。 ならば。 いつか生まれてくるであろう自分のおちびちゃんは、絶対ゆっくりさせてやろう。 後悔する事のない、幸せなゆん生を送らせてやろう、と。 こうして長ぱちゅりー親子の『勘違い』が始まってしまったのだ。 『勘違いゆっくり』 「……むきゅ………むきゅ……………」 山の裾野に広がる森の中心、ぽっかり開いた場所にある小高い丘を目指して一匹のぱちゅりーが這いずっていた。 何かに酷くぶつけたような打撲傷が顔中に広がる姿は痛々しい物であったが、その顔に浮かべた形相が哀れみを根こそぎ奪っていた。 (むっきゅうぅぅぅぅぅぅ!ぱちぇをゆっくりさせないむのうなむれはゆっくりしね!) 般若もかくやと言わさんばかりの憤怒の相。最も般若は嫉妬の怒りだが、このぱちゅりーが抱いていたのはもっと醜いもの。 『逆恨み』であった。 (あんなみえみえのわなにかかったむのうなまりさのせいで、ぱちぇがこんなおおけがをおったのよ! おかげでおかあさんがひとりじめしていたまりさからとりかえしたすぃーまでこわれちゃったじゃない!) 酷い責任転嫁もあったものだが、ぱちゅりー視点ではこれが事実であり、真実である。 そもそもあのスィーは、それを欲しがった娘の我侭を聞き入れた先代の長が群れの皆にある事無い事吹き込んで、 持ち主のまりさを無理矢理悪者に仕立て上げ、強引に追放する事で取り上げた物だ。 いかに長の言葉とはいえ、本来なら疑うゆっくりも現れておかしくない行為だが、この群れにおいては事情が異なる。 長の言う通りにしていれば、必ずゆっくり出来る。 先々代の優秀さが、群れのゆっくりから『長を疑う』事を忘れさせてしまったのだ。 如何に先々代が優秀であっても、その子孫まで優秀であるとは限らないのに。 (じぶんのてでしけいにできなかったのはくやしいけど、にんげんさんがかわりにまりさをおしおきしてくれるわ! にんげんさんなんかそれくらいしかやくにたたないんだから、しっかりまりさをころしておきなさい!むきゅ!) この半年間、ぱちゅりーの逆鱗に触れて殺されたゆっくりの数は両手の指に余る。 月に三人以上殺している計算だが、実際に悪事を働いたゆっくりはいない。 苛烈な恐怖政治が、皮肉にも秩序を保つ要因になったのだ。 その事が逆に長の権限を高め、更なる虐殺を呼んでしまった訳だが。 鬱蒼と茂っていた森の木々が途切れ、目の前が急に開ける。 群れが根城にしていた丘の天辺で、周囲を見張っていた子まりさが長の帰還に気付き、急いで駆け寄る。 「ゆっくりおかえりなさい、おさ!……そのけがはどうしたの!?……それに、おかーさんたちは……?」 ぱちゅりーの怪我を見て、何事かあった事を悟ったらしい。顔色を変え、詰め寄る子まりさ。 群れを見捨てた事がバレたらまずい、そう考えた長ぱちゅりーは咄嗟にひと芝居打つ事にした。 「むきゅっ!おちびちゃんたちをみんなあつめなさい!いますぐよ!」 「わ、わかったよ!ゆっくりしないで、みんなをあつめるよ!」 ぱちゅりーの血相に気圧されたのだろう、慌てて『がっこう』のある方角へ駆け去る子まりさを見送り、 ぱちゅりーは自身の身の安全を図る為の筋書きを検討し始めた。 しばらくして、丘の天辺に陣取ったぱちゅりーを囲むように沢山の赤ゆっくりと、子供達が集まっていた。 皆の不安そうな視線を浴びながら、ぱちゅりーは精一杯無念そうな表情を作り、告げた。 「……おちついて、よくきいてねみんな。……ぱちぇたちは、にんげんさんのひきょうなわなにつかまっちゃったの。 そして、…………みんな、にんげんさんにころされちゃったわ………」 長の言葉にぴたっと静まる子供達。 だが、泣き出すゆっくりはいない。余りに衝撃的な内容に、理解が追い付いていないのだ。 「……ま、まって!それじゃ、まりさのおかーさんや、おとーさんは……?」 恐る恐る長に問いかけるのは、見張りをしていた子まりさであった。 ぱちゅりーは子まりさを見やり、沈痛な面持ちで頷いた。 「……おちびちゃんたちの、おかーさんたちはね……ぱちぇだけでもにげてって…… のこされたおちびちゃんたちをおねがいって、ぱちぇをたすけてくれたの………」 その答えを聞き、血の気が引く子まりさ。 やがて長の言葉を理解したのだろう、子供達からざわめきが漏れ始め、それは段々と大きくなっていく。 「……うそだ。うそだうそだうそだ、うそだぁぁぁぁあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」 「ゆ゛ぎゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!お゛ぎゃ゛あ゛じゃ゛ん゛がじん゛じゃ゛っ゛だぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 「どぼぢでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛ぇ゛ぇ゛!!がな゛ら゛ずがえ゛っ゛でくでるっ゛でい゛っ゛でだの゛に゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」 「みゃみゃぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!ありちゅいいこになりゅがら゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!み゛ょ゛どっ゛でぎでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛ぇ゛ぇ゛!!!!」 「ぱちぇの、ぱちぇのぴゃぴゃとみゃみゃがぁぁぁぁ!!げほっ、ごほっ……ゆげぇっ!!!」 現実をひたすら否定するもの、戻ってこない父や母を呼び続けるもの、ショックの余り餡子を吐き出すもの……。 森を揺るがす子供達の慟哭はその日の夕刻まで続いたと言う。 しかしぱちゅりーは気付かなかった。 彼女の言葉を聞き号泣する子供達の中に、凍えるような冷たい視線を向けるグループが混じっていた事に。 季節は巡り、春。 うららかな陽気に降り積もった雪が融け、丘の周りに分散する巣が姿を現す。 結局、大人の居ない群れの中で冬籠りを成功させたゆっくりは三分の二にも満たず、そこかしこで犠牲になったゆっくりを偲ぶすすり泣きが聞こえる中、 ぱちゅりーは再び長の地位に就く事になった。 この群れで唯一の大人であり、父や母から自分達の養育を任されたと主張した事もあるが、 涙に暮れる子供達に行った演説が決定打となったのである。 『かなしいのはわかるわ、ぱちぇもくやしいもの。 ……だったらつよくなりなさい!つよくなって、ふくしゅうしなさい!そのためのほうほうはおしえてあげるわ! おかあさんたちのかたきをとりたかったら、ぱちぇについてきなさい!!』 ぱちゅりーのこの言葉で、子供達の親を慕う悲哀はどす黒い復讐の念に変わった。 だがこの演説の本当の狙いはぱちゅりーの手足となる強力な兵隊を作り、自らの屈辱を果たすこと。 あくまでもぱちゅりーにとって都合のいい群れを作る為に、人間と言う敵を利用したのだ。 こうしてぱちゅりーの指導と言う名の独裁と、子供達の特訓と言う名の地獄は始まってしまった。 「むきゅ!にんげんさんははちさんよりつよいのよ!だからはちさんのおうちをもってこれるなら、にんげんさんにかてるわ!」 「そのあまあまはぱちぇのおかげでとれたのよ!だからぱちぇのものだわ!」 「……これはみんなががんばってとってきたんだよ。おさはなにもしてないよね」 「うるさい!ぱちぇのいうとおりにしてればつよくなれるのよ!これもしゅぎょうなのよ! くちごたえはゆるさないわ!こんどなまいきなくちをきいたら『おしおき』よ!」 「…………」 「むきゅう!にんげんさんはかずがおおいわ!だからどんどんすっきりー!してこどもをふやしましょう!」 「……むれにいるのはこどもだけだよ。すっきりー!したらしんじゃうよ?」 「だったらしなないようににんっしんっすればいいのよ!」 「……どうやって?」 「むきゅぅぅぅっ!!それくらいじぶんでかんがえなさい!!」 「「…………」」 「むきゅう、ごはんがすくないわね!かりにでるにんずうをふやしましょう!」 「……かりにでられるこはみんなでてるよ。あとはがっこうのこどもたちぐらいしかいないよ?」 「なら、そのこたちもかりにだしましょう!じゅぎょうのいっかんとしてこどもたちをかりばにだすのよ!」 「……こどもたちだけじゃ、かりはできないよ?どうするの?」 「まりさたちがめんどうみればいいじゃない!もちろん、かりののるまはまもりなさい!」 「「「…………」」」 「むっきゅ!おくすりがたりないわね!まったく、そんなにけがするなんて、なんてむのうなのかしら!!」 「……それは、おさがおくすりになるおはなをたべちゃったからだよね?みんなのけがも、おさのめいれいのせいだよね?」 「おかのおはなは、ぱちぇのおかあさんのおかあさんがあつめてきたのよ!だったらぱちぇのものでしょう!!」 「……とにかく、おくすりあつめてくるね。こんどはたべないでね?」 「そうよ、そうやってどんどんぱちぇにみつぎなさい!そうすればみんなゆっくりできるわ!!」 「「「「…………」」」」 やがて季節は一巡する。 山の裾野に広がる森の中心、ぽっかり開いた場所にある小高い丘が、再び冬枯れの木々に囲まれる。 群れの大部分を占めていた赤ちゃんがバレーボール大からバスケットボール程に成長した頃。 一年前と同じ早暁の空を背景に、長は再び人間の里を襲撃しようとしていた。 「みんな、ぱちぇはにんげんさんがきらいよ! れいむを、まりさを、ありすを、ぱちぇを、ちぇんを、みょんを! あらゆるゆっくりをごみのようにころすにんげんさんが、だいっきらいよ! みんな、ぱちぇはふくしゅうをのぞんでいるわ! ぱちぇのむれのみんな、みんなはどう!? にんげんさんにふくしゅうしたい? にんげんさんがひとりじめするおやさいをとりかえし、にんげんさんをぼっこぼっこにして、 にんげんさんをどれいにしてつぐなわせる、なさけようしゃないふくしゅうをしたい!?」 「「「「「「「「「「ふくしゅう!ふくしゅう!ふくしゅう!ふくしゅう!」」」」」」」」」」 「そうよ、ならばふくしゅうよ! ぱちぇたちのむれはいちどにんげんさんにやぶれたわ。いまやかつてのいきおいもない。 でも!にんずうこそすくないけれど、みんなはいっきとうせんのふるつわものよ! だったらみんなとぱちぇで、……ええと、たくさんのぐんしゅうだんになるわ!! ぱちぇたちをわすれようとするにんげんさんたちにおもいださせましょう! かみをくわえてひきずりたおし、おめめをあけさせておもいださせましょう! おひさまとじめんさんのあいだには、にんげんさんがおもいもよらないゆっくりがあることをおもいださせましょう! ごじゅうにんのゆっくりのぐんだんで、にんげんさんのゆっくりぷれいすをうばいつくしましょう! と、いうわけで、おひさまがのぼるまえにそうこうげきをかけるわ!! こんどこそにんげんさんをやっつけて、みんなのかたきをとりましょう!!」 「「「「「「「「「「えいえいゆーっ!!!」」」」」」」」」」 ぱちゅりーの演説に鬨の声で応える群れ。 当初の半分以下、五十をいくらか下回る程度にまで減ってしまったが、その分質は以前の群れを大きく上回る。 なにしろ一対一なられみりゃとさえ戦える個体がごろごろ居るのだ。 今度こそ勝てるに違いない!! ぱちゅりーはそう確信していた。 勝てるも何も実際には畑泥棒でしかないのだが、復讐に燃える悲劇のヒロイン気取りで自己陶酔しているぱちゅりーには気付かない。 「まりさ、まりさ!」 「……ここにいるよ、おさ」 ぱちゅりーの呼び掛けに応えたのは、あの見張り役の子まりさだった。 バスケットボール大にまで成長した子まりさは、機転が効く上に群れのゆっくり達に慕われており、 それを買ったぱちゅりーに抜擢され、補佐としてその烈腕を振るっていた。 ぱちゅりーにとっても自分の言うことに従順なまりさは非常に有用であった為、今回の遠征では重要な役目をさせるつもりであった、 「まりさ、あなたにとくべつにんむをあたえるわ! せんけんたいになって、わながあるかどうかたしかめるの! でも、わながなくてもそのままとつげきしちゃだめよ! ぱちぇたちがおいつくまで、しゅういのあんぜんをかくほするのよ! ……できるわね!?」 「……わかったよ。おさがおいつくまで、まってるよ」 勿論ぱちゅりーがまりさを押さえたのは、まりさの身を思ってのことではない。 自分より先に美味しいお野菜を独り占めさせないように、抜け駆けを防ぐ為である。 「それでいいわ。……じゃあまりさ、これをわたしておくわね」 そう言って取り出したのは、先を削って鋭く尖らせた木の枝。 口で銜えるしか物を持つことが出来ないゆっくり達が使う、標準的な武器であった。 「これはぱちぇがつくったぶきよ。ふいをうてばにんげんさんにもこうかはあるわ。 これをもっていきなさい。もしもにんげんさんにみつかったら、なかまをよばれるまえにこれでやっつけるのよ!」 「……うん、ありがとう、おさ」 素直に礼を言って受け取るまりさに満足したぱちゅりーは、群れを率いるべく身を翻した。 まりさの目の前に、ぱちゅりーの背中が現れる。 「……これで、ふくしゅうができるよ」 「…………ゆ゛っ゛!?」 一瞬、ぱちゅりーには何が起こったのか理解できなかった。 体を貫く衝撃、一拍遅れて届く激痛。 「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 ぱちゅりーの背中に枝が生えていた。 それは先程、ぱちゅりー自身がまりさに与えた武器。 ぱちゅりーが無防備な背中を晒した瞬間、まりさが渾身の力を込めて突き立てたのである。 「いぢゃい!いぢゃいぃぃぃぃ!!なんでごどじゅるのぉぉぉぉ!!ばりざぁぁぁぁぁ!!」 「だまれ」 「ゆ゛っ゛!?」 普段の従順な態度を一変させ、ぱちゅりーを汚物でも見るかのように見下すまりさに気圧され、ぱちゅりーは思わず黙り込む。 「なにがおかあさんのかたきだ!むれのみんながにんげんさんにころされたのは、みんなおまえのせいじゃないか! おまえがついたうそにだまされたせいで、みんなゆっくりできなくされたんじゃないか! そのうえまりさたちにまでうそをついて、にんげんさんとたたかわせようとするなんて、どこまでみさげはてたげすなんだ! おまえはもうおさじゃない!おまえが!おまえこそがまりさたちのおかあさんたちのかたきだ! みんな!もうこいつのいうことなんてきかなくていいよ!みんなでこいつにふくしゅうするよ!」 そう言われて気付く。全てのゆっくりが、ぱちゅりーに憎悪を込めた視線を向けていた事に。 そして口々に鋭い枝や固そうな石をくわえ、ぱちゅりーににじり寄っていた事に。 蒼白になったぱちゅりーに、まりさの無慈悲な宣告が届いた。 「さあみんな!すぐにはころさないように、でもけっしてゆっくりできないように! いちねんぶんのうらみをこめて!おとうさんとおかあさんのうけたくるしみをなんばいにもして! ゆっくりできないぱちゅりーにぶつけてあげようね!」 「「「「「「「「「「ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりしね!!!!!」」」」」」」」」」 「ゆ゛ん゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 ぱちぇりーは気付いていなかったのだ。 自分がこの群れの為にした事など何も無い事を。 群れのゆっくり達が従っていたのは、このまりさだという事を。 そして…… 今やこの群れの全てのゆっくり達が、ぱちゅりーを仇と恨み、敵を討とうと思っている事を。 必要とあらば仲間の命はおろか、自らの命さえ投げ出す覚悟を決めていた事を。 表面上はにこやかな表情の下で、仇敵に従う屈辱に心の中で血涙を流しながら、それを受け入れていた事を。 そして一年もの長い年月を掛け、用意周到に準備された復讐が、今まさに果たされようとしている事を。 自分の命令に従順な群れに満足し、堕落しきったが故に勘が鈍ったぱちゅりーには気付けなかったのだ。 話は去年の晩秋、群れが人里を目指して総出撃した朝まで遡る。 「おちびちゃんたちはここでまっててね!おやさいさんとりかえしたら、いっぱいむーしゃむーしゃしようね!」 「あかちゃんたちをよろしくなんだぜ!すぐもどってくるから、いいこにしてるんだぜ!」 「……ゆっくりわかったよ!あかちゃんたちはまりさたちがまもるよ!」 群れ全員での総攻撃を狙っていた長ぱちゅりーだが、副将のまりさから『あかちゃんたちはまだ、たくさんあるけないんだぜ!』 と進言され、赤ちゃんの同行を諦めざるを得なかった。 そうするとまた別の問題が浮上する。 赤ちゃんは基本的に手がかかるものだ。それこそ朝から晩まで親が面倒を見なければならないくらいに。 だが、赤ちゃんがいる親だけを残して行く事は出来ない。そんな事を認めたら群れの半数が脱落してしまう。 いくら長ぱちゅりーに秘策ありとはいえ、それだけの戦力を遊ばせておく訳にはいかない。 どうすれば、と頭を悩ませる長に、再び副将のまりさから進言があった。 『なら、せめてこどもたちだけはおいていくんだぜ!』と。 『がっこう』を卒業したゆっくりは親の監督の元で群れの仕事を覚えて行く。 要は半人前の扱いなのだが、今回の出征において全員動員されることが決定している。 現在『がっこう』に在籍しているゆっくりは現在六十人前後。 その内、半年間の義務教育を経て卒業寸前のゆっくりは九人いる。 片手で数えられる程度とはいえ、それだけいれば赤ちゃんの面倒くらいは見ていられるだろう。 まりさの進言にそう結論付けた長は、百人近い群れの赤ちゃんと『がっこう』の生徒達をおいて行く事を決定したのだ。 早暁の空に鬨の声を響かせながら出陣して行く親達を見送る子まりさ。 後に群れの帰還を最初に発見する事になる彼女は、明日『がっこう』を卒業する予定であった。 最年長であった為に子供達のまとめ役として抜擢され、出陣直前まで大人達からレクチャーを受けていたのだ。 遠ざかる大人と成人一歩手前の先輩達の姿を見届け、子まりさは踵を返して『がっこう』へ向かった。 『がっこう』への道すがら、思い返すのはまだ赤ちゃんだった頃に見た、丘の上で必死になって長を説得していたれいむの事。 母はれいむのことを「げす」呼ばわりしたが、子まりさにはそうは思えない。 ゲスとは、自分の為に他人をゆっくりさせない、自分本位なゆっくりの事である。 本当にゲスであるなら、あの時吐いた嘘で何の利益がれいむにあったと言うのだろう? いつも上手なお歌を聞かせてくれたれいむが、涙を浮かべて教えてくれた『おにーさん』のお話は、 まだ赤ちゃんだった子まりさにも解る程に説得力があった。 そしてれいむがぼろぼろの姿で組み敷かれ、群れの皆にゆっくりできなくされていた時、 全てを諦めたようなれいむの目に、寂しそうな、悲しそうな、そして何より悔しそうな無念の表情に、 そして最後の一瞬、痛みとは違う何かに流された涙に。 その死に様を嘲笑う姉妹達の中でただ一人、子まりさだけはれいむが正しいと直感した。 だからそれを嘘と断じ、あまつさえあんなに残酷な『おしおき』を実行した長ぱちゅりーを、子まりさは信じられなかった。 その後に繰り返された『おしおき』を目撃する度、子まりさの疑念は膨らんで行った。 食糧不足で赤ちゃんに食べさせる事が出来ず、やむなく食料庫から盗み出したれいむは殺される程悪かっただろうか? そのれいむの子供であり、親の復讐に燃えて長に襲いかかったちぇんは果たして反逆者の汚名に相応しかったのだろうか? 群れ中の狩りの名人を総動員しても捕る事が難しい蜂の巣を、たった一人で捕るように命じられたみょんは本当に臆病者だっただろうか? それらを指摘して、長を諌めようとして『おしおき』されたまりさ達はどうだろうか? そして今、群れの大人達を率いて人間の畑を襲いに行くぱちゅりーは、本当に正しいのだろうか? 先々代はおろか、先代の治世すら知らぬ子まりさには大人達が持つ長への盲信が無い。 そしてれいむの事件で群れの有り様に疑問を持った子まりさは、ゆっくりらしからぬ深い洞察力を獲得するに至ったのである。 「……やっぱり、おさのいうことはおかしいよ…………みんな、だいじょうぶかなぁ……」 とは言え、子まりさはまだ『がっこう』も卒業していない、半人前とも認められていない子供だ。 親の庇護を受け、授業以外では狩りにも同行できない子まりさが疑問を呈しても 「おちびちゃんにはまだむずかしいことだよ!それよりおへやのおかたづけしなさいね!」 「おちびがそんなむずかしいことかんがえてちゃだめだぜ!それよりみんなとあそんでくるんだぜ!」 などと返され、子まりさの疑問は大人に憧れる子供の背伸び程度にしか受け取られない。 子まりさが幾ら疑問を持ったとしても、子まりさに出来ることは無かった。 精々こうして群れの行く末を憂いることしか出来ないのである。 「……ゆっ!とにかくまわりをみはって、あかちゃんたちをまもらなきゃ!まりさ、がんばるよ!」 子まりさは気分を切り替え、丘の周囲を見回ってまわる。 この季節、越冬の準備をするのはゆっくりだけではない。 熊や猪、蛇などの森に棲息する生物も越冬のために食糧を集めているのだ。 そしてゆっくり達の中身は栄養価の高い餡子。 当然狙われる確率も高く、何時襲われるか解らないのでこうして見張りを立て、警戒しているのである。 そして半分程廻った時、子まりさは見慣れぬゆっくりが丘を見上げて佇んでいる事に気付いた。 「ゆっ!そこにいるのは、だれ!?」 「!?」 そこに居たのは黒いお帽子を被ったまりさであった。 しかし、子まりさには見覚えが無い。 群れの中のまりさのお帽子は皆ピンっと立っている。 あんなに縒れ縒れで、所々破けているようなお帽子を被っているまりさはいない。 髪の毛もあんなにボサボサで、くすんだ金髪をしたまりさもいない。 お肌もボロボロで、細かい傷だらけのまりさもいない。 大きさからすればもう大人なのだろう、この群れでこの大きさのゆっくりなら出征に参加していない筈が無い。 かなり不審ではあったが、とりあえずご挨拶しようと近付く子まりさに、見慣れぬまりさはゆっくりと振り向いた。 「ゆっ!?」 そのまりさには、片目が無かった。 左目の上からあんよに掛けて、大きく抉ったような傷跡があったのだ。 子まりさはその傷の事を知っている。 ゆっくり殺しなど、重罪を犯した罪ゆっくりに対してのみ行われていた刑罰。 『おめめえぐりのけい』。 片目を抉り、群れから永久追放する刑の痕であった。 子まりさも、実際に『おめめえぐりのけい』の受刑者に会うのは初めての事だ。 『がっこう』での授業でも教わったし、度々「わるいこはおめめをとられちゃうんだよ!」と親から叱られた事もあり、 その傷が悪いゆっくりの証である事は理解していたが、粛清の嵐が吹き荒れる今の群れではあまり意味が無い。 先代の長の頃は、この『おめめえぐりのけい』が最も重い処罰であった。 それは先々代が『たとえあいてがゆっくりごろしでも、ゆっくりがゆっくりをころしてはならない』と定めた為であったのだが、 今代の長はあっさりとその禁を破り、長を侮辱したれいむを皮切りに死に至る程過激な『おしおき』を何回も強行した。 反発もあったが、長は『ゆっくりできないゆっくりをおいだしたら、ほかのむれにめいわくがかかる』と反対派を丸め込み、 それでも反対するゆっくりを『こいつらはゆっくりできない』と無実の罪を着せ、『おしおき』で殺していったのだ。 最近生まれた赤ゆっくり達はその恐ろしい『おしおき』しか知らない。 今の群れにとって、悪いゆっくりとは死んだゆっくりの事である。 いくら知識として知っていても、経験の無い子供達にとっては実感の無い、遠い過去の出来事だ。 だから子まりさも、その傷を持ったまりさに平然と挨拶できたのだ。 「ゆっ!まりさおねーさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆ゛っ゛!?……ゆっ、ゆっくじして……い゛っ゛……で…………ゆ゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛ん゛!!! ばりざぁ!!ゆ゛っ゛ぐじじでい゛っ゛でね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ゛!!!!!」 子まりさの無邪気な挨拶に、傷まりさは感極まったように号泣しながら挨拶を返す。 「ゆっ!?」と驚く子まりさだが、それ程この傷まりさにとっては驚天動地の出来事だった。 この『おめめえぐりのけい』の事は、この辺り一帯の群れに広く知れ渡っている。 「かたほうのおめめのないゆっくりは、とてもゆっくりできないゆっくりだよ」 どんな小さな群れであっても、この話は必ず伝えられており、それ故にどの群れも傷まりさを受け入れる事は無かった。 『おめめえぐりのけい』の受刑者の末路は、孤独な野垂れ死にが定番だったのである。 そんな受刑者の中にあって、この傷まりさは二年もの間生き延びて来た希有な例であった。 元々狩りが得意だった事に加え、皮肉にも野山の危険物を見分ける群れでの教育が功を奏した結果である。 追放されたゆっくりが群れに近づき、それが発覚したら群れ総出でゆっくり出来なくされてしまう。 これまでにも何度か試し、その度に追い払われて来たから傷まりさにはそれがよく解っていた。 それが今日、世も明けない内に総出撃していく群れの姿を目にした時、押さえていた思いが爆発した。 (あのおかに、かえりたい!) ゆっくり出来なくされた身であっても、やはり故郷は恋しいもの。 あんなに大勢でどこへ行くのかは知らないが、今ならあの丘を一目見る事くらいは出来るだろう。 それでもう心残りは無い。後はこの苦しいゆん生に、いつ幕が下りても悔いなく逝ける筈だ。 そんな決意を胸に、傷まりさは丘を目指して近付き、子まりさに発見されたのだ。 (……ああ、みつかっちゃった。せめて、さいごにちょっとだけでも、おかでかけっこしたかったなぁ……) 傷まりさの脳裏を諦めが支配する。 覚悟を決めた傷まりさの耳に、子まりさのご挨拶が飛び込んで来たのはそんな時だった。 予想外の優しい言葉に感極まり、号泣する傷まりさが泣き止んだのは、朝日が半分程昇りかけた頃であった。 嗚咽の合間合間に、断片的に挟まれる壮絶なゆん生を聞かされた子まりさは、もらい泣きしながら傷まりさを慰めていたが、 どうしても気になったそれを尋ねずにはいられなかった。 「……ねぇ、おねーさん。おねーさんはどうしておめめをとられちゃったの?」 そう、片目が無いゆっくりは大悪人の証である以上、どんなに善良そうに見えても仲良くは出来ない。 仲良くする振りをして近付き、隙を見てご飯や宝物を奪い取ったり、無理矢理すっきりー!したりするのが目的かも知れない。 今のまりさの双肩には百匹以上の子供達の命が懸かっている。どんな小さな異常でも見逃すわけにはいかなかった。 だが、それを聞いた傷まりさが再び目を潤ませた。 何かを耐えるように唇を噛み締めて涙を堪え、ぽつりぽつりと語り出す。 「……おさがまりさをわるものにしたんだよ…………まりさが……すぃーをひとりじめしてるって………、 あのすぃーは……おかーさんのかたみだったのに…………だいじなだいじな……まりさのたからものだったのに……、 ………ゆっ、ゆえぇぇぇえぇぇん!!!」 そこまで語った所で堰を切ったように泣き崩れる傷まりさの姿に、子まりさは確信した。 (やっぱり、あのおさはうそつきなんだ!れいむおねーちゃんをいじめたのも、おかーさんたちをつれてったのも! みんなうそなんだ!……おさはけんじゃなんかじゃない!おさのほうが、くずだったんだ!) 子まりさと傷まりさの出会いは、双方にとって幸運であった。 子まりさにとって傷まりさは漠然でしかない長への疑いを証明する生きた証拠であり、 傷まりさにとって子まりさは自分の言葉が嘘偽り無い事を信じてくれた恩人である。 子まりさの不信感がピークに達していたこと、傷まりさのホームシックが再燃していたこと。 まさに奇跡の確率で絶好の機会がかち合った、幸運な出会いであったのだ。 子まりさは傷まりさを連れ、赤ちゃんと子供達が集められている『がっこう』に向かった。 そこは入り口を倒木で塞がれた洞窟で、子ゆっくりサイズなら通り抜けられる狭い隙間が倒木の端に開いており、 いざと言うときは、そこを塞いで外敵の侵入を防げるようになっている。 教師役の大人ゆっくりは倒木を乗り越えなければならないが、逆に言えばそうしなければ入れない安全な場所である。 「ゆっくりただいま!」 「……あいことばをいってね!……むしさんがいないなら、あまあまをたべればいいじゃない!」 「あまあまがないなら、むしさんをさがせばいいじゃない!」 「ゆっ!せいかいだよ!……おかえり、まりさ!」 入り口を封鎖している倒木の枝が動き、そこから一人の子れいむが出てきた。 見張りの交代要員である。本来あまり運動の得意でないれいむに任せるような仕事ではないが、 卒業を目前に控えた九人の子ゆっくりは子まりさを除き子れいむと子ありす、そして子ぱちゅりーで占められていた。 ひと月遅れて入学したちぇんやみょんはまだ一人で出すには不安だったし、何より赤ちゃんの面倒を見なければならない。 百匹近い赤ちゃんの世話をしながら危険な見回りなぞできない。 仕方なく、年長組が見張りを持ち回り、残りの生徒達と年長組の子ぱちゅりーが赤ちゃんのお世話をすることにしたのだ。 そして外から聞こえて来た合い言葉に、まりさと交代する為に出て来た子れいむが見たものは、見慣れた子まりさの顔と、 「ゆ゛っ゛!?……まりさ、そのおねーさんはだれなの?」 面識の無い、片目を無くしたまりさの顔であった。 「……れいむ、よくきいて。もしかしたら、いつもまりさがいってることがほんとうかもしれないよ」 「……どういうこと?まりさ、おさのことでなにかあったの?」 「それをせつめいするんだよ。みんなのところでおはなしするから、みはりはすこしまっててね」 そして子まりさは年長組の仲間達に自分の推理を打ち明けた。 それを聞いた子れいむ達の反応は様々であった 「そんなはずないわ!おさはいつでもただしいのよ!」と長の正当性を主張するありす、 「むきゅ!かためをなくしたゆっくりのおはなしなんて、しんじられるわけないでしょう!」と授業で得た知識を元に否定するぱちゅりー、 「でも、さいきんのおさがおかしいのはほんとうだよ?ゆっくりしてなかったよ?」と長への不信感を漏らすれいむ。 喧々諤々と続いた話し合いを収めたのは、子まりさの発言であった。 「おさがただしいのか、まりさがただしいのか、みんながかえってきたらたしかめてみようよ。 まりさおねーさんはもりにかくれていて。みんなにみつからないようにちゅういしてね」 そうしてしばし時が過ぎ。 二百匹を超えた大集団は、ぱちゅりーただ一人の生還を持って全滅したのである。 長ぱちゅりーから群れの顛末を聞かされ、森を揺るがす慟哭に泣き疲れた赤ちゃんと子供達を寝かしつけ、 年長組は再び長の正当性を議論し始めた。 ありすの論調は変わらず長の擁護、最も半数の二人程は半信半疑と言った所。 逆に意見を翻したのはぱちゅりー。こちらは一人が慎重派、もう一人が完全に疑い始めた様子。 れいむは長の涙に同情したのか、片方が長を擁護し始め、片方が長への不信感を露にするも、勢いは無い。 平行線を辿りつつある議論に、まりさはある提案をする。 「じゃあ、とりあえずおさのゆうとおりにしようよ。 おさがただしいならゆっくりできるはずだし、おさがまちがってるならゆっくりできなくなるから、 これからのおさがどういうふうにむれをゆっくりさせるのか、みとどけてからはんだんしよう」 この提案を年長組は全員受け入れた。 実際、幾ら考えても解決しないのならこれからの動向で判断するしかない。 ほぼ博打のような提案ではあったが、現時点ではそれ以外に方法は無かった。 そして彼女達は、いきなりその答えを突きつけられた。 今までの群れでの冬籠りは、それぞれの家庭ごとに行っていた。 しかし今回は話が違う。 何しろ大人が全滅している上、群れの殆どはまだ赤ちゃんなのである。 ならば一カ所に食べ物と群れを集め、全員で冬籠りすべきだと言う意見に、ぱちゅりーはこう返したのである。 「いままでどおりでいいでしょ!かえるひつようはないわ!むきゅ!」 この言葉に唖然となったのは年長組だけではない。 後輩のちぇんやみょんを含む『がっこう』の生徒達の大半が、長の台詞に度肝を抜かれた。 長ぱちゅりーにしてみれば、一カ所に集まるなど言語道断である。 何かの弾みで口を滑らせ、群れを見捨てたことがバレでもしたら、即座に殺されてしまう。 そうでなくても、暗殺の危険性を考えれば皆と一緒にいるより、一人でおうちに籠っている方が安全なのだ。 しかし子供達にとってこれは死刑宣告にも同等の命令である。 長の言葉である以上は従う義務が発生する。だが、素直に従えば待っているのは、死。 年長組においても意見は分かれ、結果ありす二人とぱちゅりーとれいむが一人ずつ年長組を離脱。 群れの三分の一を率いてそれぞれの巣に別れ、冬籠りを開始した。 残されたグループはおうちの貯蔵食糧を持ち寄り、『がっこう』にて共同生活を行うことにした。 そして、春。 分散して冬籠りをしていたゆっくりは物の見事に全滅した。 初めての越冬と、赤ちゃんの食欲を考えに入れず、食糧の計算を間違えて餓死したれいむのグループ。 黒ずんだ何かが大量に茎を生やし、あたかも小さな森のような様相を醸していたありすのグループ。 強度の足りない巣が大崩落を起こし、全員生き埋めとなったぱちゅりーのクループ。 その他にも赤ちゃんだけで越冬しようとして失敗したり、食糧不足の果てに凄惨な殺し合いが起きた巣もあった。 まりさ達、共同生活グループは多少の犠牲者を出したものの、初めての越冬を成功させた。 それはまりさ達だけではなく、あの傷まりさの協力あってのものであり、傷まりさへの偏見は大幅に薄れていた。 また共同生活を提案し、そのリーターシップをとったまりさに対する信頼も大きくなり、 実質まりさは生き残ったグループの長といっても過言ではない立場に就いていた。 同時にそれは、まりさが持っていた現状の長であるぱちゅりーへの不信感を、群れが共有することを意味していた。 しかしまりさはそれを表に出すことを硬く禁じた。 「おさがどんなにあやしくても、おさはまだおさなんだよ。いま、おさにきづかれたら『おしおき』されちゃうかもしれないよ」 こう説得して廻り、はっきり長ぱちゅりーを疑っているゆっくりにも、未だ半信半疑のゆっくりにも、 とりあえず長の命令に従うよう頼み込んでいたのである。 そして長の就任演説を経て、一年間に及ぶ独裁政治が始まり。 長ぱちゅりーは己の態度で持って、まりさ達の不信感を確信に変えてしまったのである。 そして舞台は再び現在に戻る。 ぱちゅりーは今、自分が育てた屈強な兵士達に暴行されていた。 「これでもくらえ!」 「ぴぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 硬い小石を四方八方から吹き付けられ、 「に゛ゃ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「……また、つまらないものをきってしまったみょん」 尖った枝で何度も何度も斬りつけられ。 「こんなやつにおかざりなんてもったいないんだねー!!わかるよー!!」 「や゛べて゛え゛え゛え゛え゛え゛!お゛がじゃ゛り゛や゛ぶがな゛びでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 お飾りを目の前で細切れにされ、 「こんないなかもののあかちゃんなんて、ぜったいうまれないようにしましょう!」 「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ぼう゛ゆ゛る゛ぢでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」 ぺにぺにを切り取られ、それを押し込んだ上で棒切れを突き込んでまむまむを潰し、 「こんなやつがぱちぇのどうるいだなんて、なのれないようにするわ!」 「ばぢぇ゛の゛ずでぎな゛がみ゛の゛げがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! 少しずつ髪を力づくで引き抜かれて、禿げ饅頭にされ、 「ぱちゅりーのきたないおかおをきれいにするね!」 「q゛あ゛w゛せ゛d゛r゛f゛t゛g゛y゛ぶじごl゛p゛!!!!!!」 砂を撒いた木の皮に顔を押し付け、そのままおろし金のように動かしてぱちゅりーの皮を削る。 おおよそ考えつく全ての苦痛を、ぱちゅりーは味わっていた。 たまに「ゆげぇっ!!」と生クリームを吐いても「まだまだおわらないよ!」と強引に押し戻されて、死ぬことも叶わない。 最初に宣言された通り、死なないギリギリを見極めた絶妙な手加減を加えられた生き地獄が延々と続けられていた。 その様子を離れた場所で窺うゆっくりがいた。 傷まりさである。 便利な道具でしかなかった自らの群れに、ゆっくりできなくされているぱちゅりーを無表情で見つめ続ける傷まりさの元に、 クーデターに成功し、今やこの群れの長になったまりさが歩み寄る。 「……まりさおねーさんはやらないの?」 長まりさの疑問に、無表情を崩して苦笑を浮かべて答える。 「まりさのぶんはもうおわってるよ。あのすぃーが、まりさのぶんまでぱちゅりーにしかえししたんだよ。 だからまりさはもういいんだよ。いま、あいつがうけるべきはまりさたちのふくしゅう、なんだからね」 母の形見であったスィーごと罠に掛かった顛末はすでに聞いていた。 傷まりさにはそれがスィーの意志であったように思えたのだ。 ならばその意志を汚す真似はすまい。傷まりさは自然にそう思えたのである。 「……うん、わかった。じゃあ、そろそろしあげにはいるね」 その言葉に感じ入るものがあったのだろう。 一つ頷き、踵を返した長まりさは未だ醜い悲鳴を上げ続けるぱちゅりーの元へ向かう。 「みんな!いっぺんやめてね!まりさとおはなしさせてね!」 その言葉に群れが静まる。先程までの喧噪が嘘のような静寂の中、 「……ゆ゛っ゛……ゆ゛っ゛……」と痙攣するぱちゅりーの耳元へ長まりさが囁く。 「……なんでこんなめにあっているのか、わかってる?ぱちゅりー?」 その言葉に反応したのか、白目を剥いていたぱちゅりーの口から断末魔以外の言葉が漏れる。 「……ぱ……ちぇを……ゆっ………く……り………させ………な……い……げすは………し……ね………」 反省の色の欠片も無い、醜い性根を表したかのような呪詛を聞き、まりさは落胆した。 こいつは、自分が何故こんな目に遭っているのか理解できていない。 これでは、自分達の復讐が成ったとは言い難い。 自分のせいで、自分が無能だったせいで殺されることを自覚させて、より深い絶望にたたき落とさねば、 死んで行った親兄弟達に申し訳が立たないだろう。 しかし長まりさにはこれ以上のアイデアは無かった。 こいつに自分の罪を認めさせる方法が、この拷問以外に思い付かなかったのである。 (……しかたないね。そろそろれみりゃがおきるころだし、ざんねんだけど、とどめをさそう) 心の中でため息をつき、ほぼ一日中続いた拷問を終わらせる決意を固める。 「みんな、このぱちゅりーをもりのそとにたたきだすよ!」 「「「「「「「「「「わかったよ、おさ!」」」」」」」」」」 群れはもうまりさを長と認めていた。 あの過酷な一年の間、このまりさに従っていれば生き残ることが出来た。 それだけでなく、優れた洞察力からくる統率力、計画性、全てにおいて突出していたまりさは群れの憧れでもあった。 その長の言うことをどうして疑うことが出来るだろう? 「それじゃあ、ぱちゅりーをもりのそとまではこぶよ!ゆっくりてつだってね!」 「「「「「「「「「「まかせてよ、おさ!」」」」」」」」」」 虫の息のぱちゅりーを長まりさが跳ね飛ばす。 「ゆ゛っ゛!?」と転がって行く先にいたちぇんが勢いをつけて蹴り上げる。 「ゆ゛ぎっ゛!?」と跳ね飛ばされた先にいたみょんが銜えていた枝で打ち返す。 「ゆ゛びぃ゛っ゛!?」と飛んで行く先にいたれいむがぷくーっ!して跳ね返す。 「ゆ゛がぁ゛っ゛!?」とパウンドする先にあったぱちゅりー達が作った壁にぶつかり、転げ回る。 「ゆ゛ぶっ゛!?」と蹲ったぱちゅりーを、走り寄ったありすが跳ね飛ばした。 ピンボールの玉よろしく、森の木々の合間を跳ね回ったぱちゅりーが森と人里を分ける平原に放り出されたのは、すっかり夜も更けた頃であった。 ……ふああ。あー、さむっ。 また急に冷え込んできやがったな。 いくら夜明け前だっていっても、まだ秋の範疇だろうに。 これは今年の冬も厳しくなりそうだな……。 ……ん?なんだありゃ。 饅頭?……いや、ゆっくりか? あんな飾りも髪も無いゆっくりなんて見たこと無いぞ。 ……うわ、なんだこりゃ? こんなに全身ボロボロになるなんて、何があったんだ一体? ……お、意識はあるようだな。 ってか、この様で生きてるって、ゆっくりってのは随分頑丈に出来てんだな。 前に燃やした奴らはあんなにあっさり死んじまったのに。 ……『ぱちぇの群れを知ってるの?』? お前ぱちゅりーだったのか?いや、あの群れに居たって事は…… ……そうか、お前さんあの時逃げ出したぱちゅりーだな? せっかく逃げ出したってのに、何でそんな重傷負ってんだよ? ……『ゲスなまりさに追い出された』だって? いや、お前さん確か長だったんじゃないのか? ……『ゲスまりさに騙されたゲス達に乗っ取られた』ぁ? よく解らんが、世代交代でもあったのか……? しかしよく無事だったな、この辺りはれみりゃの縄張りだぞ? ……『ぱちぇの群れは、れみりゃを倒せるくらいに強いのよ』って…… なあ、それって強いのは群れであって、お前さんじゃないよな? なのに何でお前さんがれみりゃに襲われない理由になるんだよ。 ……『ぱちぇのお陰で強くなれたんだから、ぱちぇが強いに決まってるでしょう』? おいおい、何なんだそりゃ。三段論法にもなってないぞ。 ……ああ、わかった。 お前、群れでいつもそんなこと言ってたんだろ? そりゃ追い出されるわな。 あのまりさが言ってた通りだわ。とんでもない無能だな、お前。 ……『ぱちぇは長なのよ!何でも知ってる森の賢者なのよ!』って言われてもな。 実際長としては無能だぞ?お前。 そもそも長に必要なのは『古い知識を生かして、新しい何かを創り出す程度の能力』なんだよ。 知ってるだけじゃ役に立たないのさ。 古い掟の問題点を見つけてそれを改善した掟を決めたり、今までの狩りで餌が獲れないなら原因を探って狩り方を見直す。 それが出来るから、長ってのは慕われるんだよ。 何を勘違いしているんだか知らないが、お前が長の器じゃないってのはそのゆっくり達にも解ってたんだろうな。 ……なあ、ぱちゅりー。 お前は、群れの為に何か新しいことをしたのか? ……暴れんなよ。全然痛くないけどな。 ああもう、生クリームが飛び散って汚れちまったじゃねえか。 ……ああ、鬱陶しい! おらよ!どこにでも飛んで行きやがれ! ……結構飛んだな。 ……おや、三軒隣の御仁井さん。こんな所でどうされました? ……れみりゃの調達ですか。そりゃご苦労様です。 ……いえ、ちょっとね…… 無能なぱちゅりーに絡まれて、野良着を汚されちまったもんで。 あんまりムカついたんで、森の方へ思いっきりぶん投げてやったんです。 ……ははは、止してくださいよ。 俺に虐待は向いてませんって。 ……それよりも例の研究は進んでるんですか? 確か、ゆっくりを使った画期的な農法だとか何とか…… 山の裾野に広がる森の中、人間に捕まって投げ飛ばされたぱちゅりーは、奇跡的に生きていた。 しかしその姿は到底無事とは言えなかった。 お飾りも髪も無くし、所々薄くなった皮からはじくじくと生クリームが滲み出している。 それでも尚、残された目には執念の炎が燃えていた。 「……ぱちぇは……おさなのよ………いだいな……もりのけんじゃなのよ………… ……ぱちぇをゆっくりさせるのは…………すべてのゆっくりの……………ぎむなのに……………」 ぱちゅりーに帰る場所なぞどこにもない。 あの丘に向かうのは論外だ。 忌々しいゲスまりさに騙された無能な群れが襲いかかってくる。 人間の里に留まれば今度こそ殺されるだろう。 他の群れに匿ってもらおうにも、お飾りはおろか、髪さえ無くした自分を迎え入れてくれる筈が無い。 行きずりのぱちゅりーを襲ってお飾りを奪おうにも、満身創痍のこの身では到底実行できまい。 まさに八方塞がりの状況。 先程から妙に体がだるい。 悪寒は治まるどころかどんどん悪化してゆく。 あんよの感覚が殆ど無い。 (……そういえば、さっきからぜんぜんいたくないわね……?) 嫌な予感が彼女の脳裏をよぎる。 強ばってなかなか言う事を聞かない体を無理矢理動かして、後ろを振り返ったぱちゅりーの目に、 「……む゛ぎゅ゛う゛ぅ゛う゛う゛ぅ゛う゛う゛っ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ゛!?!?!?!?!?」 見えては行けない筈の光景が見えてしまった。 ぱちゅりーが這いずった後を追うように、白いナニカが線を描いている。 それは、ぱちゅりーの生クリーム。 彼薄皮一枚を残して剥ぎ取られた皮から滲み出した生クリームが、少しずつ、少しずつ、 ぱちゅりーのあんよと言う絵筆によって、冬の森というキャンバスを汚していたのだ。 痛みが治まったのではなかった。最早痛みすら感じない程に、感覚が鈍り切っていたのである。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!じに゛だぐな゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!! だれ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!だれ゛がだずげろ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 一体どこにそれだけの底力があったのか。 誰もいない森の中に、ぱちゅりーの叫び声が谺する。 そしてその谺は、届いてはいけないものに届いてしまった。 突然響き渡る羽音に、ぱちゅりーがピタっと黙る。 恐る恐る目を向けた先にいたのは、 「う~☆あまあまみつけたど~☆」 「どぼじであ゛がる゛い゛の゛に゛れ゛み゛り゛ゃ゛がい゛る゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!」 そう、昼間は眠っている筈のれみりゃであった。 このれみりゃが特別だった訳ではない。 森の奥地は木々が密集しており、昼間であっても尚薄暗い。 木漏れ日に気をつけさえすれば、昼間でもれみりゃが活動するには充分な暗さがある場所なのだ。 その為、ここに足を踏み入れるゆっくりは相当訳ありでもなければ存在しない。 こうしてたまに迷い込んでくるゆっくりは、れみりゃ達にとって最大のご馳走であった。 「う~☆つかまえるど~☆ふゆのでなーにするんだど~☆」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ばな゛ぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!お゛う゛ぢがえ゛る゛う゛う゛う゛う゛う゛!!」 帰るべきお家なぞ何処にも無いことを忘れ、ぱちゅりーは泣き叫ぶ。 「うるさいんだど~☆しゃべれないようにするんだど~☆えいっ☆」 「ゆ゛ぶっ゛…………!!!!」 舌を引っこ抜かれ、お口に石を詰められて、ぱちゅりーは喋れなくなる。 ぱちゅりーが静かになったのを確認すると、れみりゃは満足そうに巣のある老木へ飛んで行った。 それからおよそひと月。 ぱちゅりーはまだ生きていた。 老木のうろを利用したれみりゃの巣には、同じように捕まったゆっくり達が沢山並んでいた。 れみりゃはその日の気分で啜る餡子を変えているようで、様々な種類のゆっくりが用意されている。 しかもこのれみりゃは、死ぬまで餡子を啜ろうとはしない。 死にそうなギリギリまで吸い上げ、痙攣を始める直前で止める。 その加減はまさに職人技と言えよう。 そして餡子を吸い上げたゆっくりの口に、うろに自生していたキノコを詰め込むのだ。 そんな怪しげなキノコなぞ食べたくもないが、それ以外に食糧は無いし、どのみち食べても食べなくてもれみりゃに詰め込まれる事に変わりはない。 どうやら毒キノコの一種らしいそれは、口に含んだ途端に気分が悪くなり、悪寒や幻聴が聞こえ始める。 そして酷い時には幻覚を見るようになる。それも、自分が最もトラウマにしている幻覚をだ。 (だまれえええええええ!!ぱちぇはむのうじゃないいいいい!!) ぱちゅりーを襲う幻覚、それはあのまりさでも罠に掛かったことでもない。 あの人間に言われた一言、それがいつまでもリフレインするのだ。 ………お前は、群れの為に何か新しいことをしたのか?……… (なんで……なんでぱちぇが……もりのけんじゃがこんなめに……) 本当にそうだったか? 本当に自分は森の賢者として相応しかっただろうか? 母の死は本当に母が無能だった所為なのだろうか? あの時、冬籠りの食糧が尽き、実の母を無茶苦茶になじったあの時。 『ごはんもまんぞくにあつめられない、むのうなおかーさんはゆっくりしないでしね!』 『……ごめんなさい、むのうなおかーさんで。せめておかーさんをたべてゆっくりしていってね! …………さぁ、おたべなさい!』 目の前でもの言わぬ饅頭になってしまった母を見て、自分は何を思っていただろうか? 『むのうなおかーさんは、ぱちぇのごはんぐらいにしかやくにたたないわね!』 そんなことしか思ってなかった気がする。 あの時、本当に賢者と呼ばれる程賢かったのなら、食糧を得る手段を思い付けたのではないか? いや、そもそも食糧不足に陥ること自体無かったに違いない。 (……そんな……そんなはずないわ…………ぱちぇはわるくない………わるいのはみんなげすのせいにちがいないわ……) あのまりさ達は本当にゲスだったろうか? むしろ自分より有能だったのではないだろうか? (……ちがう……ぱちぇは…………いだいな……もりのけんじゃなのよ…………) 疑問が浮かぶ度に脳裏で必死に否定するぱちゅりーに、またあの声が聞こえてくる。 ………お前は、群れの為に何か新しいことをしたのか?……… (うるさい!うるさい!うるさい!うるさぁああああいいいい゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!) 春はまだ遠い。 れみりゃが冬籠りを終えて、ぱちゅりーを全部食べ尽くすまで。 幻聴は毎日、ぱちゅりーを責め立て続けた。 ぱちゅりーは最後まで気付けなかった。 自分が賢者でも長でもなく、只の無能なゲスでしかない事を。 ……それを心のどこかで認めてしまっていた事を。 ※気付けば連休中盤だよ!時間懸かり過ぎだろコノヤロー!! お待ちいただいた方々には大変お待たせいたしました! 前作に感想を付けてくださった皆様のご期待に、 「(ハードルを上げるのは)もうやめて!作者の(チキンハートな)ライフはもうゼロよ!!」 状態で悶えながら書いては直し、書いては直し。 気付けば前作を遥かに超える長文になっておりました。 皆様のご期待に応えるべく、作者の筆力の限界まで絞り出しました、 本当にこれで応えられているか不安でいっぱいですが、これ以上お待たせできないだろうとうp決行。 ……どうか皆様のご期待に応えられてますように。 ※まりさについて(補足) 前作『騙されゆっくり』のまりさについて、感想にてさんざん指摘されておりました通り、 あれはまりさの脳内補完によるものです。 実際にれいむを襲っていたときはんなこと一切考えておりません。 何も知らずに死ぬよりも、罪を自覚してから死んだ方がより絶望感は凄いだろうと思い、最後に反省させる描写を入れましたが、 良い奴で終わらせるのは許すまじ!と前々作のまりさの行動を脳内補完させたのですが、 思ったより解りづらかったみたいで、反省しております。 本来作者が作品に解説を入れるのは反則だと思っているのですが、今回は作者の筆力不足によるものですので、 急遽解説を入れさせていただきました。
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『隻眼のまりさ 第八話』 18KB 戦闘 群れ ゆっくりって可愛くかけば可愛いのだよなぁ…。 初めましての方は初めまして 他の作品を見てくださった方はありがとうございます。 投稿者の九郎です。 タイトルどおり前作の続編です。 ――――――――――――――――――――――――――――― ~第七話~ ドスの思い!その存在が生み出すものは… ――――同日、深夜―――― 自分の知識をもって皆のために働こうと そう決心したぱちゅりーにはもう迷いがなかった。 たとえ嫌われようとも自分の理論武装は完璧だ。 何を言われても言い返せる自信がある。 そう考えたぱちゅりーは隻眼のまりさとドスを呼び ここで話の決着をつけようと思った。 それに自分も含めて三匹をとも お互いを大事に思っているのだ。 話をして、わだかまりをなくせば この一件は収束に向かうであろうと そういう思いもあった。 「まりさ、とりあえずドスにも同じ話をしてあげて」 「うん…」 「……………」 だからぱちゅりーは、自分の口からではなく 隻眼のまりさに自分で言わせようとしたのだ。 「ドスは、きめぇ丸って知ってるかな?」 隻眼のまりさは言いにくそうに切り出した。 この二匹は自分より付き合いが長い。 何よりチームを組んでいたもの同士だ。 悪い言い方をすればその裏切り行為とも言える 考えを持っていたことに後ろめたさもあるのだろう。 だがそれも、直接思いを伝えれば理解し合えるはずだ。 その行動は違っても、その思いは同じなのだから。 少し長くなりそうなので、次にどうするかなどを 考えていた矢先 「ゆんやあああああああああああ!!! れみりゃがああああああああああああ!!!」 「!!!」 れみりゃだって、とぱちゅりーは思った。 なんて悪いタイミングで出てくるのだろう。 だが実際今のところはれみりゃの対応が先だろう。 「まりさ!ドス!」 「う、うん!!」 「いくよ!!」 やはり一番切り替えの早かったのは自分だ。 まあでも重い話をしていたのだからそいう言い方は酷かなどという どうでもいい思考をしながらぱちゅりーはドスの帽子に乗った。 「ドス!ドス!前見て!!」 「う、うん!!」 「何よ…これ…」 まさしく自分が危惧していた状況。 例の取引がすんだ直後の出来事。 タイミングから考えてこのれみりゃ達は 人為的に放たれたものと疑いようがない。 二年前のあのときでさえデタラメな数だと思っていたのに 見える範囲でもあの時のざっと倍近く捕食種がいるかもしれない。 「………!!ドス!ドススパークを!!」 「わ、わかったよ!!」 考えるのは後だ。 とにかく今は最低でも自分は冷静でいなければならない。 ドスはもうほとんど自分の指示があるまで動かない、というくらいに 自分の指示につき従っている。 逆に言えば自分が崩れたらこの集落は一気に 崩壊するおそれがあるという危惧もしなければならなくなっていた。 「ドス!かまわないわ!薙ぎ払って!!」 「ドス!一旦洞窟の中に下がって!!」 「ドス!!いいわ!!その位置から仰角10!真っ直ぐ発射!」 ぱちゅりーに言わせればれみりゃに限らず 一般的なゆっくりは動きが単純で至極読みやすい。 特に応用力のなさと行動前の発言がそれに拍車をかけていた。 『目の前にあるものに対してしか反応しない』 これは位置取りにさえ気を使えば全く同じ行動しかしないということ。 『何かをする際、ゆっくり~するよ!と言う』 こちらは実際に自分から何をするか教えてくれるので 指示さえ追いつけば簡単に対応が出来る。 ぱちゅりーの頭には同じような文章が多く並んでいる。 これは敵に限らず味方にも言えるので 指示を出す際にもうまく誘導してやれば こちらの意図を伝えなくても思い通りに動かすことが出来る。 頭の回転が或いは人間より早いぱちゅりーにとっては チェスや将棋をしているのと変わらない。 敵も味方もまさに盤上の駒だ。 「いいわ!!第一次攻撃は成功!!まりさ達は前進して! 私が合図するか危ないと思ったら左右の木の枝の中に避難して! 決して自分たちだけで戦おうとしないでね!!」 隻眼のまりさに指示を出してからしまった、と思う。 あの力を今この場で使ってしまったら ドスだけでなく集落の皆全員に見せることになってしまう。 そう思ってからまあいい、と思い直す。 隻眼のまりさは自らの責任で行動を起こしたのだ。 それに、あれは強力な力だ。 集落が受け入れれば戦力になる。 万が一受け入れられなくとも自分にはもう 理論武装もあるしドスの後ろ盾もある。 なんだ、自分はこんな単純なことに悩んでいたのかと可笑しくなった。 冷静に考えれば当然のことだ。 隻眼のまりさ自体がどうこうではなく 起こった事態に対して必要な対応をしていくだけのことだ。 自分は少々感情で考えすぎていた。 …が、どういうわけか隻眼のまりさは例の攻撃を使わないでいた。 少しはまりさも考えて行動しているのか、とぱちゅりーは感心。 まりさ三匹がれみりゃを倒した。 次にかかってくるふらんに対して回避運動をとっている。 練習どおりの型が出ている。 これなら心配ないなと、地上の戦闘を見ながらぱちゅりーは 既に次の考えに入っていた。 敵を散らして、集まってきたところをドススパークで粉砕。 これを繰り返せば大した危険もなく殲滅は可能。 だがその使用回数には制限がある。 とりあえず次を撃たせたら洞窟の中に引っ込もう。 地上のまりさ達の援護もあればさほど難しくはないはず。 れみりゃはなんだかんだと言っても夜間しか行動しない。 朝まで持ちこたえれば戦術的勝利は収められる。 「ドス!発射準備!!私の言うタイミングに合わせて!」 「ゆっくり分かったよ!!」 まりさ達が周囲のれみりゃに気付かれ包囲され始めたのを確認。 ドスにドススパークの発射体勢をとらせる。 「ドス!!カウントダウン!!3、2、1!!…発射!!」 「発射あああああああああああああ!!!!」 発射直前まりさ三匹はぱちゅりーから見て左に避けた。 上からではドススパークの光が激しくて見えないが きちんと回避できていることだろう。 「ドス!キノコは後いくつあるの!?」 「あと二つしかないよ!!」 あと二発か。 三発ならどうしようかと考えたが 二発分しかキノコが残っていないのであれば 隻眼のまりさ達を再突撃させるのは危険だ。 そう判断したぱちゅりーは後退の指示を出す。 「じゃあすぐに後退!!篭城戦に入るわ!! ドスはすぐに奥へ!!だけど外を見ながら後ずさるのよ!! まりさ達は私の部屋に入って!!」 「ゆっくり分かったよ!!」 ドスがずりずりと後退を始める。 あとは洞窟の中で最低限の迎撃をしながら朝を待てばいい。 ドスはなりが大きいためれみりゃ達の目に付いてしまい 集中攻撃を浴びる危険があるのだが 洞窟に入ってしまえば一、二匹程度が散発的に襲ってくるだけだ。 連携して同時に洞窟の中に突入されれば危険だが 捕食種は通常種よりも優れているという心の余裕からか 連携は勿論のこと戦闘中に他の個体の話を聞くことすらない。 仮に彼らがただ漠然と加工所で生きてきただけである連中ならばなおさらだ。 「まりさ!?」 「何処行くの!?ドスの洞窟の中が安全だよ!?」 隻眼のまりさだけが急に外へ飛び出していった。 まさか、自分の指示に従わない気なのか。 「ゆっくり追うよ!!」 「駄目!!言ったでしょう!?勝手に行動しないで!! ついていったら死ぬわよ!!」 そう考えて先ほどの答えをすぐに打ち消した。 そうだ、隻眼のまりさは単独で戦う練習をしていたのだ。 ならばあえて一匹にさせてみるのも手かもしれない。 このまま外で戦ってくれれば洞窟に入ってくる敵の数も減るだろうし なにより自分達にかまうことなく例の技を使うことが出来るはずだ。 「ぱちゅりー!!どうしてそんなこと言うの!?」 「まりさを助けに行かないと!!」 まりさとドスが的外れなことを言う。 むしろ助けが必要なのはこっちかもしれない。 ドスの大きさに対して護衛が二匹では心もとないし なにより地上戦の指揮を一番うまく執れるのが隻眼のまりさだ。 「あなたたちはもう忘れたの!? 助けることよりも、生き残ることを考えなさい!!」 自分には理論武装がある。 何よりこの状況は利用できるし 仲間が離脱した時の対処法に関しても既に伝えてある。 勝手な行動をした者は自らの力のみで責任を取る。 他者に迷惑をかけた場合はそれも含めてだ。 それに全員が予定外の行動をとればその一匹だけでなく チーム全体に危険が迫る。 「ドスは、村長なんだよ!?皆を守るドスなんだよ!?」 ドスの言葉に苛立ちを覚える。 今はそんなことを言っている場合ではないだろう。 何より、目の前のことにとらわれて何の考えもない行動は 危険であるということを理解していないのか。 「駄目!私にも状況がつかめていないのよ!」 この状況。まりさが一匹いないし 人間達の動向もわからない。 ただ、もしかしたら集落のゆっくりの増加に対する 対策のために捕食種を送り込んだという可能性もある。 本当に集落を壊滅させるつもりなら人間が直々に駆除に来るはずだ。 ならば、集落の肥大化という問題を これにかこつけて解決してしまってもいい。 「れみりゃが何匹いるか!まりさが何処へ行くのか!」 なによりれみりゃがどれくらいいるか 分かったものではない。 隻眼のまりさもこれからどうするかはっきり分かっているわけではない。 ただもしこのまま死んだら問題は自動的に解消されるかもしれない。 それもまたよし、とぱちゅりーは考える。 「この状況で動けば悪い方向にしか行かないわ!」 ただ漠然と戦ったら命を落とすだけだ。 二年前のドスも半死半生だったのだ。 この戦いに出て行けば危険であるだけ。 「自分のことだけ考えて!でないと全滅するわ!」 所詮はゆっくりの身だ。 自分を守ることすら怪しいのに 他者を戦闘中に守りながらなどというのは不可能だ。 「戦えるものだけでも生き残らないと!」 自分達が崩れてしまえば集落に戦えるものがいなくなる。 自分達が残っている限り集落は壊滅しない。 自分達が集落にとっての最後の砦なのだ。 「じゃあぱちゅりーは、ぱちゅりーが生き残ればそれでいいの?」 状況に全くそぐわないドスの冷たい声が聞こえた。 「何を言っているのドス!早く下がらないと危険よ!」 ぱちゅりーは相変わらず早口でまくし立てる。 先ほどの第三射でれみりゃが散っている間に引っ込まないと危険だ。 今は議論している暇などない。 「ぱちゅりー答えて。 ぱちゅりーの作戦は何をするためのものなの? 集落を守るために戦うためなんだよね?」 「今はそんなこと言っている場合じゃ」 「駄目。答えて。 答えてくれないとドスは下がれない」 何を言っているんだ。 死にたいのか。 これは戦いだ。 生か死しかない。 「ぱちゅりーの作戦は生き残るためのものよ! 死にたくなかったら早く下がりなさい!」 ぱちゅりーは焦っていた。 まさか、こんな状況でドスが自分に対して疑念を抱くなんて。 ぱちゅりーの存在意義は物事を考え物事を効率よく進めることだ。 だがそれは考えを実践する者がいるから成り立つのだ。 自分自身に出来ることは少ない。 だからこそ言葉を尽くさなければならなかった。 自分だけがいかに正しいことを考えていたとしても それを信じてついてきてくれる者達がいるからこそ意味を成す。 ドスの考えが及んでいないというのは 頭が悪いというわけではなかった。 ぱちゅりーの頭の回転が早すぎるのだ。 生かすところは生かし、捨てるところは捨てる。 普通に考えれば当たり前のことなのだが それが村長としてドスが決心した内容と食い違ってしまったのだ。 そして今は、この食い違いを議論して解決に導いていくだけの 言葉も時間もない。 ドスの帽子のつばに乗っているぱちゅりーには ドスの表情も考えも全くうかがい知れなかった。 せめて、もう少し早くこの疑問にぶつかっていれば。 せめて、もう少し遅くこの疑問にぶつかっていれば。 袋小路に入り込んだ思考は、そんな意味のないことを考えた。 そして、その疑問に答えられるものなど誰もいなかった。 ――――同日、同時刻―――― 「ドス!危ない!!」 「むきゅっ!!」 「うわあ!!」 危なかった。 出たとたんドスの鼻先にれみりゃが向かっていったので 思い切りジャンプして止めた。 これだけ高く跳べるならもうドスの帽子に自力で乗れるほどかもしれない。 「………!!ドス!ドススパークを!!」 ぱちゅりーの声がする。 隻眼のまりさの位置からではぱちゅりーの姿は見えない。 だが以前上から見ることであたり一体を 全て見渡すことが出来るのだ、と言っていた。 地上から見えない部分を上から見ているため 指示が出せるのだ、と。 自分も、あそこまで跳べるようになれば 指示を出す立場になることが出来るのだろうか。 「……っ!!!」 ドススパークが木々をなぎ倒す。 やっぱりすごい。 自分が使ったあの技の威力もすごかったが 流石にこれほどのことは出来ない。 が、もう自分はかつてのリーダーを、今ここにいるドスを 目指しているわけではないと自覚できているので特別な感慨はない。 ドススパークは撃てなくても 同じことが出来る何かを掴めばいいだけのこと。 そう思った。 「いいわ!!第一次攻撃は成功!!まりさ達は前進して! 私が合図するか危ないと思ったら左右の木の枝の中に避難して! 決して自分たちだけで戦おうとしないでね!!」 「分かったよ!」 「突撃するよ!!」 いつの間にかいた二匹のまりさを連れて 隻眼のまりさは飛び出していく。 もうれみりゃなど全く怖くなかった。 遅いし弱いしとどめも刺せる。 二匹のまりさが足手まといになるとすら考える。 「行くよ!!『あろーふぉーめーしょん』!!」 「「ゆっくり理解したよ!!」」 『ゆっくり理解した』という台詞に怖気を感じた。 何を言っているんだこいつらは。 だったら勝手にゆっくりしてれみりゃに討たれていろ。 自分についてこれるのはリーダーと同じように ついてこようとしている者だけだ。 帽子を少し傾けて木の棒を取り出す。 しかしこれはもう棒というよりは破片などという表現のほうが正しい。 口にくわえてみると鋭い先端が数センチでる程度だ。 まりさはそれを口の横のほうへ移動させる。 正面に突き出して突き刺すのではなく 横に構えて斬るための装備だ。 「あまあまがあったんだどー!」 こちらを目で捉えたれみりゃが嬉しそうな顔で向かってくる。 間抜けめ。 今すぐその表情、潰してやる。 「ふっ!!!」 手を伸ばしてきたれみりゃの左頬にカウンター。 同時にくわえた木の棒で目元に浅く斬り込む。 深く刺さってしまったのなら手放すことも視野に入れる必要があるが 手ごたえはゆるい。 隻眼のまりさはそのまま反動でれみりゃから離れた。 「うー!?いぎゃああああああああああ!!! でびでゃのおべべがああああああああああ!!」 ざまあみろ。 自分があの時どれだけの痛みを味わったか思い知ったか。 「とどめだよ!!」 「ゆっくり死ね!!」 「うー!?いだいいいい!!やべろおおおおおおお!!!」 そのまま顔を押さえてバターンと仰向けに転んだれみりゃに 二匹のまりさが襲い掛かった。 どちらにしてもそう簡単に戦闘復帰できる状態ではなかったが とどめを刺しておくにこした事はないか。 「立ち止まらないで!着いて来て!!」 「分かってるよ!!」 死んではいないが明らかに致命打を食らわせたれみりゃから なかなか離れようとしなかったまりさ二匹を叱咤する。 やはり完全に動かなくなるまで攻撃しないと不安なのだろうか。 それでも自分が走り出すと斜め後方から 二匹のまりさが何とかついてきた。 「右に避けるよ!」 「「ゆっくり理解したよ!」」 「よぐもおおおおおおおおおお!! じねえええええええええええええ!!!」 隻眼のまりさ一匹なら正面から迎え撃つことも出来ただろうが 厄介なのは突き出された『ればていん』とふらんが呼んでいる 木の枝を危惧して回避の指示を出した。 カウンターをとっても後方二匹のどちらかに ふらんの攻撃が当たるのはよろしくない。 胴付きふらんが向かってくる。 ふらんはれみりゃより強いと噂されていたが実際どうなのだろう。 「うー!?どこいったー!?」 「後ろを取ったよ!!回れ、右!!」 「「回れ、右!!」」 正面しか見ていないふらは目の前の目標が消えたことで そのまま前の方をキョロキョロと見回している。 そして方向転換の指示。 だが隻眼のまりさの中ではだんだんと二匹が足手まといだという 想いが強まってきていた。 はっきり言ってこの二匹は遅い。 せっかく修行で得た自分のスピードという特性が 殺されてしまっているのではないかと思い始めていたのだ。 「一点集中!!」 「「一点集中するよ!!」」 まず最初に無防備なふらんの後頭部に体当たりを当てる。 そのままうつぶせに倒れてしまったふらんに集中攻撃。 「ゆっくり死ね!!」 「とどめだよ!!」 「ゆぐびぃ!!」 ふらん撃破。 以前なら一匹倒すたびに嬉しさがあったものだが 今の隻眼のまりさには何の感慨も沸かなかった。 ただ冷静に次にとるべき行動を考える。 「よぐもおおおおおお!!!」 「おがーじゃんがあああああああ!!!」 「ばりざなんがゆっぐりじないでじねえええええええええ!!!」 頃合だ、とまりさは思う。 この数は流石の自分でも手に余る。 これだけの敵を全て避けきるのは大変だろう。 「――――!!??」 その時、自分の中に何かが宿るのを感じた。 そして隻眼のまりさの見えない左目に何かが映った。 それは、無数の『何か』。 それを遊びのように避ける自分。 何か、同じようで違う場面を自分は目にしたことがある。 それが何かは全く分からない。 だが、隻眼のまりさは間違いなく何かの『既視感』を感じた。 一瞬の思考だった。 「ドスのところに戻るよ!!」 「「ゆっくり理解したよ!!」」 すぐに思い直しドスのところへ引き上げるように指示をする。 このような状況、通常のゆっくりなら恐怖のあまり逃げ出していただろう。 だが、なまじ訓練や実戦をこなしてきていた二匹のまりさは 逆に指示があるまで逃げ出さないようになっていた。 故に逃げろ、と言わなければ逃げないのだ。 ドスのところまでは20m程度。 人間のスケールサイズに合わせて言うなら100m以上だ。 急がなければ戻れなくなる。 「ドス!発射準備!!私の言うタイミングに合わせて!」 「ゆっくり分かったよ!!」 ある程度近づいたところでぱちゅりーがドスに発射体勢をとらせた。 今度は間違いなく足元も含めて狙ってくる。 そう判断したまりさは徐々に右へとずれていく。 あまり横に大きく回避したらついてきているれみりゃ達を ドススパークの射線軸上から外してしまうことになる。 「まりさ!!れみりゃが来るよ!!」 「急いで!!頑張って走るんだよ!!」 「頑張ってるよ!!」 「ドス!!カウントダウン!!3、2、1!!」 カウントが始まると同時にさっと横に避けた。 それにならって後ろの二匹が回避行動をとる。 「発射!!」 「発射あああああああああああああ!!!!」 ドススパークが発射された。 そしてその瞬間、例の『既視感』がまたきた。 この技、何か感じるものがある。 いや、ドススパークは二年前リーダーがドスになったときから見ていた。 しかし、それとはまた違う何かを感じていたのだ。 「ドス!キノコは後いくつあるの!?」 「あと二つしかないよ!!」 「じゃあすぐに後退!!篭城戦に入るわ!! ドスはすぐに奥へ!!だけど外を見ながら後ずさるのよ!! まりさ達は私の部屋に入って!!」 「ゆっくり分かったよ!!」 そこで隻眼のまりさは『え?』と思った。 何で?まりさはまだ戦えるよ? 集落のゆっくり達はどうするの? ドススパークもあと二発残ってるんでしょう? こんな弱い奴らから逃げるの? なんで? なんで? 隻眼のまりさだけはそこで固まった。 そして、先ほどのフラッシュバックをもう一度思い浮かべた。 思考も停止していたので先ほどとは違い余裕を持って思い出せた。 あれは何だ? 赤や青の何かがたくさん飛んでくる感じ。 それを何の危機感もなく遊びのように避ける自分。 分からない。分からないけど。 自分はそれを知っている。 そんなまりさの思考に誰も気がつくことなく 洞窟へ下がっていっていた。 隻眼のまりさの頭の中で様々な物が渦巻いていた。 あれは何だ?分からない?でも知っている? 誰が?何故?いつ?何処で?どうして? それもまた一瞬の思考。 その一瞬の間に様々なものが駆け巡った。 以前から、あの時違和感が形になってからずっと考えていた。 ゆっくりって何だ? ゆっくりすることはいいことなのか? ゆっくりすることって何だ? 次の瞬間、隻眼のまりさは洞窟の外に飛び出していた。 「まりさ!?」 「何処行くの!?ドスの洞――――」 後ろから何かが聞こえた。 だが聞こえただけで理解してはいなかった。 恐らく、この戦いの中で何かを見出すことが出来る。 そういうある種の確信が隻眼のまりさの中にあった。 危険だって?無謀だって?悪いことだって? かまわない。 コイン一個じゃ命も買えやしない。 この辺は死臭で一杯だ。 狂うのには慣れている。 構わないさ。 こんなにも高揚したのは、初めてなんだから―――― 続く 次回予告 すれ違った思いはそれぞれの願いの元に動き始める。 もう何も譲れないから。 もう何も、失いたくないから。 次回 隻眼のまりさ ~第九話~ それぞれの孤独な戦い!そして時は動き出す… 乞うご期待! あとがき 結局こういう展開になってしまうのはご愛嬌。 やっぱり私は場面場面を切り抜いて書くより 物語を作ってそれに沿った中でキャラクターを動かす方がいいようです。 結末は既に決まっているのですが なかなか整合性をとるのが大変な気がします。 言い訳がましいですね。すみません。 今後も頑張っていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景