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ゆっくりは弱い、もろい、すぐ死ぬ。 それが世の中の鬼意惨たちの一般的な認識だと思う。 実際にれいむが 「ゆゆ~ん、れいむはまりさとのかわいいおちびちゃんがほしいんだよ!ばかなにんげんはゆっくりしないで早くれいむにおちびちゃんをちょうだいね!!!あとあまあまたくさんもってきてゆっくりしないではやくしね!!!」 とのたまうので、ありすを用意してトイレに行った。 「んほおおおおお!!!とかいはなれいむがいるわああああ!!!ありすがすっきりしてあげるわねえええええ!!!」 「どぼぢでばり゙ざじゃな゙ぐでばでぃずだどお゙お゙お゙お゙!!!!!??」 「れいむってばつんでれねえええ!!!たっぷりすっきりしてとかいはなあかちゃんをあげるわああああ!!!!」 「ゆんやあああ!!!れいぱーのおちびちゃんはゆっくりできないいいい!!!!!」 「「すっきりすっきりすっきりすっきりすっきりー!!!!!」」 5分程トイレにいって戻ってきたらたら、れいむは多重すっきりでもされたのか頭に大量の蔓を生やして、 中身の餡子を吸い取られて黒ずんで、永遠にゆっくりしていたし、 ありすは精子餡を出しすぎてか、ぺらぺらの皮と髪の毛とおかざりが転がっているだけだった。 ほかにもまりさとれいむのつがいが 「まりさはかりがとくいなんだぜ!!!おいしいくささんやむしさんをいっぱいとってこれるのぜ!!!だからにんげんはとっととくささんやむしさんをよういするんだぜ!!!」 「そうだよ!!!まりさはむれでいちばんかりがじょうずなんだよ!!!だからばかなにんげんはしんでね!!!あとおいしいたべものよういしてね!!!あまあまでいいよ!!!」 と、それは論法として間違ってる上に矛盾してる事を言うが、とりあえず近くに生えていたクマザサを与えてみた。 「ゆゆ~ん、くずのにんげんにしてはなかなかよいこころがけなのぜ、まりささまのどれいにしてやるのぜ」 「どぼぢであまあまさんじゃないのー!!!!まったくつかえないどれいだねぷんぷん!!!でもかんだいなれいむはくささんやむしさんをとりあえずむ~しゃむ~しゃしてるからゆっくりしないではやくあまあまもってきてね!!!」 「「む~しゃむ~・・・ゆぎゃあああああ!!!!!!!!まりさ(れいむ)のおくちがきれてあんこさんがでちゃう!!!!!」」 とゆーだのやーだの叫びだして、口から少し餡子を吐き出してた、草ならなんでもいいんじゃないのかよ、そりゃクマザサなんてそのまま食べたら角で饅頭の皮くらいなら切れるだろうけど。 「このくそどれいいい!!!!よくもまりささまにこんなものをたべさせたなああ!!!もうゆるさないよ!!ぷくーするよ!!!!ぷくー!!!!!」 「ぐぢのなががいだいー!!!!ゆんやー!!!!ゆっくりできないー!!!!」 と叫びだしたから、頭の上に生えていたスギの雌蕊を見せびらかしてみると、 「ぷくー!!! ゆっ?ゆふふふ、まりささまのぷくー!!におそれをなしておいしそうなくささんをやっともってきたんだね!!!しかたないからかんだいなまりささまはにんげんのことをどれいにしてあげるよ!!!」 「ゆんやー!!!まりさのぷくー!はゆっくりできないー!!! ゆっ?これはおいしそうな花さんだね!!かわいいれいむがむ~しゃむ~しゃしてあげるよ!!!まりさのぷくー!!におそれをなしてこんなおいしそうなものをすぐにだしてくるだなんてにんげんはまったくぐずだね!!!」 れいむが自己否定するようなことを言い出したが、気にせずスギの雌蕊を2匹の前にやって、おもむろに振り回してやる。 さて皆さんは知っていると思うが、スギはアレルギーを引き起こして風邪に似た症状を引き起こす、いわゆる花粉症というやつである。 ゆっくりごときに抗体抗原反応なんてないだろうと思って与えたみたが、その通りだったようで、 「ゆゆ~ん、なかなかでりしゃすなはなさんなんだぜ、もっともってくるんだぜ!!!!」 「ちょっとくちのなかのけがにしみるけどそこそこおいしいよ!!もっともってきてね!!!」 花粉症で苦しんでいる人間がいるのにゆっくりときたら・・・さすがにちょっとむっとしたので花粉症というものについて教えてみる。さすがゆっくりは思い込みのド饅頭、すぐに反応をしだして。。 「「ゆっぶしょん!!!!!!!!!!!」」 とすさまじいくしゃみと、先ほどの口の中の傷から餡子を吐き出した。 「ゆっぶしょん!!!!くしゃみさんゆっぶしょん!!!ゆべぇ!!!あんこさんでちゃだゆっぶしょん!!!!!」 「ゆっぶしょん!!!!あんこさゆっぶしょん!!!!でちゃったらゆっくっぶっしょん!!!!できなっしょん!!!!」 数分後そこにはぺらぺらになった成れの果てがあった。永遠にゆっくりしてしまったらしい。 ちなみにそこを通りがかったぱちゅりーの親子がその光景をみて永遠にゆっくりしていた、 ゲロ袋とはよく言ったものだ。 しかしこのようにゆっくりをみていると思うことは、ゆっくりは脆弱で確かに簡単に死ぬが、 一度に中身を大量に喪失したり、中枢餡に多大なダメージがいかなければ死なない。 もちろんゲロ袋なんかはちょっとショックな出来事があるだけで自爆するが、それでも中身を失って死んでいる。 それはつまり逆説的にいうならば、ゆっくりは中身を失ったりしない限り死なないということだ。 それを踏まえて前に河童の技師から聞いた機械を作ってみることにした。 なにやら外の世界には重機と呼ばれるえねるぎーとやらを別の方向に作用させる機械があるらしい。 簡単に説明すると発生させたえねるぎーを管を通して別のところに発生させるんだよー と河童の技師が説明してくれた。 そのときに管の中に油を入れておいて、その油でえねるぎーを伝達するらしい。 しかし油というものは高価であり、精製していない油をつかうといろいろ問題があるらしく、 装置のほかの部分でお金をたくさん使うのでなかなかこの装置が作れないということだった。 (現代ならともかく100年程度前までは精製された油脂と言うのはとても高価でした) そこで、ゆっくりをみていて思いついてできた装置をさっそく河童の技師に見せてみたところ 「うん、これはすごいよ、この方法を使えば安く重機を作ることができる!いや~さすがは盟友だね~。さっそくこの情報を元に重機を作ってみることにするよ」 と快く受け入れられた。 とりあえず早速突貫作業をして作ってみるが、一週間くらいはかかるそうなので (後に聞いたが外の世界より数十倍早く作ってたらしい、まったく河童の技術力には恐れ入る) とりあえず家に帰って待つこととした。 10日後、家で好物の揚げごままんじゅうを作っていると何やら地響きがしてきた。 地震なら食材棚にいれているありすが発情してすぐにわかるし、 あげごままんじゅうを作るときは耳栓をしているので何らかの音がしているのかと思ってとりあえず耳栓をはずしてみた 「でいぶのがわいいおちびぢゃんをがえぜえええええ!!!!!!!!あとそのおいしそうなにおいのするあまあまをよこしてはやくしねえええ!!!!!!」 だの聞こえて耳が痛くなったし、このれいむはもう長く使ってしなびてきているのでとりあえずさくっと中枢餡をつぶして始末する。 すると外から先ほどの地響きとともに、山から大岩が転がってくるような轟音が聞こえ、急に火砲を連続して発射するような音しか聞こえなくなった。 ちょっとたつと扉がひらき、こないだの河童が入ってきた。 「いや~こないだ盟友に教えてもらった方法を試してみたら予想以上にうまくいっちゃってさねぇ、いてもたってもいられず完成してすぐに持ってきちゃったよ!どうだいこのパワーショベルは!!」 みてみると、高さが二丈(約6メートル)はあろうかという金属でできた馬車があり、よくみてみるとその高さは蛇が鎌首をもたげたように、手を折りたたんだのを転地逆に見たようになっていた。 「これはね~こないだ幻想入りしたエンジンを改良して、エタノーゆで動くようにして、さらにそこで発生したエネルギーをあんたが考えた”ゆ圧装置”に組み込んで、あの先っぽの部分を大きなスコップみたいに使えるようにしたやつなのさぁ!」 いまいちこの河童の言っている言葉の意味がわからないが、どうやら私の考えたゆ圧装置はうまく動いてくれたらしい。 「でもよく考え付いたよねぇ、油の代わりにゆっくりの餡子とかを使うだなんてさ。確かにゆっくりって生きている限りは中身の餡子は簡単に劣化したりしないから、いやぁこれはよくできた方法だよ」 そう、私は外の世界で油圧装置としてつかわれている装置の油部分を、ゆっくりの餡子におきかえたのだ。 「とりあえずパワーショベルを動かすからみてみなよ、いや~すごいよこれは」 言うが早いか河童は機械に乗り込んで何やら棒を動かし始めた。すると折りたたんだ腕のような部分が動き出し、丁子のような形になったかと思うと、いきなり先端の手のような部分を地面に着きたてた。 すると小山ができるくらいの地面の土がいとも簡単に盛り上がり、そのまま何事もなくぱわーしょべるとやらはその地面を持ち上げてしまったのだ。 「どうだいこの力は!いや~まったくゆ圧装置様々だよ!」 たしかにこの装置はすごい、これがあれば今まで大人数でやっていた作業がいとも簡単に終わらせれるだろう。 そのころゆ圧装置の中の餡子の元となったでいぶは、おそらくゆっくりが今までかんじたことのない苦痛を感じていた (ゆぐぐぐ、せっかくみつけたおうちのなかでれいむのすーぱーむしゃむしゃたいむをやってたら、いきなりあらわれたにんげんさんにひどいことをされちゃったよ、だいたいあのにんげんさんはきゅうりさんのにおいがするのにかわいいれいむにひとくちもきゅうりさんをむしゃむしゃさせてくれなかったよ!) (いきなりれいむのもちもちおはださんをとられるし、ひすいのようなおめめさんはくりぬかれるし、もうおちびちゃんもつくれないよ・・・しかもひんやりしたつつさんに入れられるし、もうなにがあってもあのにんげんさんはゆるさないよ!!!) (そういえばあのにんげんさんはこのつつさんにれいむをいれるまえになにかいってたよ、たしか「ぜったいにしぬことはないらしいから安全だねぇ」っていってたきがするよ) (ゆぷぷぷ、まったくゆっくりしていないうえにばかなにんげんさんだよ!!!れいむがここからでたらまっさきにあのにんげんさんをどれいにしてやるんだからね!) (ゆゆ~ん、そうときまったらゆっ?なんだかきゅうにくるしくなってきたよ!) (ちゅ、ちゅぶれるー!!どぼぢでかわいいれいむがつぶされなきゃいけないのー!!!) (ゆぎゃああああいだいいだいいだい!!れいむをおしつけるのをやめろおお!!!!) れいむはこうして圧力を伝達するだけの物質として、永遠にゆっくりもできないでゆ圧装置が壊れて中身がこぼれて死ぬまで永遠に使われることになった。 あのあと河童はぱわーしょべるを盟友へのお礼として一台譲ってくれ、使い方も教えてもらった。 さてこのように大きなものをどうしたものかと考えていたら、村のほうからお兄さんがやってきた。 なんでも2丈5尺はあろうかと言うどすまりさが現れたので、村人総出で駆除していたらしい。 連絡しにきたお兄さんが言うにはどすの足をちぎって「まりさのあんよがああああ!!!」 アマギって「ゆぎゃあああまりさのみらいをみとおすおめめがああああ!!!」 スパークキノコを採取して「まりさのきりふだがああああ!!!」 なんとなくノリでまむまむを焼いた「ゆんやああああ!!!まりさの誰ともスッキリしたことのない奥まで深いまむまむ、略してマダオがああ!!!」までしたのはいいが、大きすぎて餡子の処分に困っているとの事だった。 そのときにちょうど河童が通りかかって、このパワーショベルの存在を教えてもらったらしい。 そのためちょうどいいということで、私にどすまりさを解体して肥料にする事仕事が回ってきたのだった。 畑を増やすのにも使われそうだし、まったくこれから仕事が増えそうだ。 初めてSSを書いてみました。詰め込みすぎた感がひどい。 初投稿からですが、汚あきを名乗らせていただこうと思います。
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ゆきのなか 35KB 虐待-普通 越冬 「餡子ンペ09」 ・餡子ンペ投稿作品:『親子/期待はずれ』 ・掲載ペースが落ちてると言われる昨今・・・忙しくて書けない時期もあるんですよ。 仕事って時期が重なるんですよね。 『ゆきのなか』 D.O 季節は冬。 ここは、人間の里から少し山の中に入った森の中。 しんしんと降り積もる雪の中、木の根元あたりに、 木の枝や小石が積み重ねられた奇妙な膨らみが見える。 「・・・っくちちちぇにぇ・・・」「すーり・・・むーしゃ・・・」「・・・ちあわちぇー・・・」 もしもここに人間がいて、周囲の音に注意深く耳を傾けたならば、 その膨らみの奥から、人間のしゃべるような声を、かすかに聞き取ることができたであろう。 そして、さらに注意深く周囲を観察すれば、同じような奇妙な膨らみは、 そこらじゅうの木の根元に見つけることができたはずだ。 そんな奇妙な膨らみの一つ、雪と、木の枝や小石に隠された奥には、木の洞がある。 そこには、つがいである2匹のゆっくり、群れの長まりさとれいむが住んでいた。 冬という、ゆっくりにとって死の季節の中にいながら、2匹の表情はとても明るい。 「まりさとれいむのおちびちゃん・・・もうすぐうまれるね。」 「ゆぅん。とってもゆっくりしてるね。」 「・・・(プルプル)」 「ゆぅ~ん。おちびちゃんがおへんじしてるよ~。」 なぜなら、おうちの入り口を完全に閉ざして越冬を開始してから数日、 このつがいの間には、間もなく新しい命が誕生しようとしていたからだ。 ここはゆっくりの群れの生息地。 木の枝や小石で作られた膨らみは、木の洞や洞穴など、巣穴の入り口を塞ぐためのバリケード、『けっかい』であった。 野生のゆっくり達は、雪の降るような冬の季節には、巣穴にこもってゆっくりと過ごし、 寒気を防ぐために入り口を堅く閉ざして、秋に蓄えた食糧で命をつないで春を待つ。 「どぼぢでごはんさんなくなっちゃうのぉぉぉおおお!!」 「ゆぁーん。おきゃーしゃん、おなかしゅいたー。」 「しょうがないよ・・・おぢびぢゃんは、でいぶにゆっぐりだべられでねぇぇぇええ!!」 「ゆびぃぃぃぃぃ!!どぼぢでしょんなことしゅるのー!?」 「もっちょ・・・ゆっぐぢ・・・」 と、たいていの場合、野生のゆっくりにとって、越冬は過酷であり、命がけのものだ。 十分な量の食料確保に失敗すれば、飢餓が親子にすら共食いを引き起こし、 それでも食料が不足すれば、体温を保てず凍死するか餓死する。 巣穴である『おうち』の作りがあまければ、積雪の重みで崩壊、雪と土の中で圧死。 巣穴が頑丈でも、入り口の塞ぎ方がダメだと隙間風でやはり凍死。 こうした悲劇を起こさないため、特に優秀なリーダーがいる群れならば、いくつもの対策を立てて 必死に被害を減らそうと努力している。 ドスまりさの力で頑丈な崖などに洞窟を掘り、共同住宅として群れ全員で冬を越す、 熟練のゆっくり達が協力して、群れのみんなの『おうち』補強工事を監督する。 食料が足りなかったら、人間さんの独り占めしているお野菜を強奪してくる、など。 そんな中で、何より注意されるのが、『越冬前にすっきりーして子供を作らない』ということだ。 「「すっきりー!!」」 「ゆぅん。れいむのかわいいおちびちゃんが、たくさんできたよ~。 まりさ、おちびちゃんのために、はやくれいむにあまあまをとってきてね!」 「なにいってるのぉぉぉおお!?おそとはゆきさんがふってるんだよぉぉぉおおお!!」 「だからなんだっていうの!?つべこべいわないで、はやくごはんをとってきてね!!」 びゅぅぅぅぅううううう 「しゃぶぃぃぃぃいいいいい!!!ゆっぐぢぃぃいいい!ゆっぐぢぃぃぃいいいいいい!!」 「れいむはむーしゃむーしゃするよ!むーしゃむーしゃむーしゃ・・・はぐっ!ばくばくっ!めっちゃうめっ!ぱねぇ!」 ・・・3日後 「どうしてごはんさん、なくなっちゃったの・・・・・・おちびちゃんをむーしゃむーしゃするよ・・・」 こんなことも当たり前のように起こる。 秋の半ば以降にすっきりーしようものなら、にんっしん中だけでなく、生まれてからも子育てのために、 つがいの一方は狩りに参加できなくなる。 越冬中にすっきりーしたりしたら、さらに最悪だ。 食い扶持の増加で貯蔵食料の計算は完全に崩れ、食糧不足で結局一家全滅となる。 つまり、厳しい環境下に生活する野生のゆっくりにとって、 冬+赤ゆっくり=死、というのは、ごくごく一般的な考え方なのだ。 だが、実は先ほどの長まりさとれいむのつがいだけでなく、この群れの中では、現在にんっしん中、 あるいは生後数日以内の赤ゆっくりを抱えた家族が大半を占めていた。 いかに若いゆっくり達とは言え、本能にまで刻み込まれた冬の恐怖を知らないはずはない。 では、なぜあえて越冬が始まった今、ゆっくり達は子供を作ることを選んだのか。 その理由を見ていくため、先ほどのつがいの一方、長まりさの生まれた春の中頃まで時間をさかのぼることにする。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 季節は春。 多くの野生ゆっくりにとっては、長い死の季節を乗り越えたあとの、喜びの季節である。 暖かな陽気。 新鮮で大量にある、ゆっくりした野草や虫。 食料の心配がなくなったことで、成体ゆっくり達はさっそくすっきりーに励み、 新たな命を迎えることでさらに喜びが積み重なる。 「まりさとれいむのおちびちゃん・・・もうすぐうまれるね。」 「ゆぅん。とってもゆっくりしてるね。」 ・・・・・・。 「そうだよね・・。」 「・・・そうだよ。」 ぶるぶる・・・ぷちんっ! ぽとっ! 「ゆぅ・・・ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 まりさも、そんなベビーラッシュの中で誕生し、祝福を受けた赤ゆっくりであった。 だが、生まれて数日経ち、おうちから外を眺めて過ごすようになった赤まりさは、 春の陽気も楽しめず、あまりゆっくり出来ていなかった。 なぜなら・・・ここが岩肌も荒々しい、草木もろくに育たない高山の荒地だからだ。 「ただいま、れいむ・・・。」 「おかえり・・・まりさ。」 「ふぅ・・・ごはんだよ・・・なかよくむーしゃむーしゃしようね・・・。」 「ゆわーい!!むーちゃむーちゃしゅるよ!!」×10 だが、食卓代わりに置かれた平たい石の上には、固い雑草が少々と干からびた虫の死骸だけ。 「むーちゃむーちゃ・・・それなりー。」 「おとーしゃん・・・もっとむーちゃむーちゃしちゃいよ・・・。」 「ごめんね・・・はぁ・・・おうちのまわりに、ごはんがないんだよ・・・」 「どぼぢでしょんなこというにょぉぉぉぉおおお!?」×10 とは言ってみたものの、赤ゆっくり達はそれほど駄々をこねることなく、残念そうに食事を終えた。 父まりさの話が嘘ではないことは、生後3日を迎えてようやく跳ねることが出来るようになったばかりの、 幼いまりさ達にもわかってはいたのだ。 何せ、おうちを一歩踏み出してみたら、眼前に広がるのは砂利や砂ばかりという、 およそ命の喜びとは無縁の世界が広がっていたのだから。 「おちびちゃんたち・・・きょうはもう、ゆっくりすーやすーやしようね。」 「ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくちりきゃいしちゃよ。」×6 「じゃあ・・・まりさが、ふぅ・・・おふとんをよういするね・・・」 だが、森に住む野生のゆっくり達のような、落ち葉や草を敷いたお布団や、 ましてや丁寧に編みこまれたベッドなどというものが出てくるはずもない。 そんなものがあったら、今日の夕御飯になっているのだから。 「おちびちゃん・・・はぁ・・・ゆっくりすーやすーやしてね・・・」 「ごりょごりょちて、ゆっくちできにゃいよぉ。」×6 「ふぅ・・・ごめんね・・・ゆっくりがまんしてね・・・はぁ・・・」 お布団として用意されていたのは、比較的粒の細かい砂(といってもサラサラというには程遠い)を、 平たい石の上に厚めに敷いただけのものである。 まりさ達赤ゆっくりは、この砂にあんよを口のすぐ下あたりまで埋め、身を寄せ合って眠る。 石の上に直に眠る両親よりはマシかもしれないが、少なくともしあわせーからは程遠かった。 まりさ達のおうちは、大きめの石が偶然積み重なってできた隙間に穴を掘って作ったものだ。 風雨や外敵から身を守るという意味で言えば、まあ、そうそう悪くもないものではあったが、 とにかくゆっくり出来ない場所に住んでいる、という感覚のまりさから見たら、 なんだか無機質でゆっくり出来ないおうちに思えてならなかった。 『ここはゆっくりできないよ。まりさはおおきくなったら、ゆっくりぷれいすにいくよ。』 それは、まりさが生まれてからずっと抱き続けていた想いである。 そして、食糧不足で次々と姉妹達が餓死していく中、なんとか生き延びてテニスボール程度に成長したある日、 父まりさが大事なお話がある、と言って姉妹をおうちの近くの崖へと連れて行った。 「ゆわーい!もりしゃんがみえりゅよ!」 「とっちぇもゆっくちちちぇりゅにぇ!」 「おしょらとんでるみちゃーい!!」 「ふぅ・・・。おちびちゃんたち。あの、もりのむこうをみてね。」 「ゆぅ?・・・ゆゆっ!!」 崖からは、山のふもとに広がる広大な森が一望できる。 この眺めのいい崖へのピクニックは、まりさ姉妹にとってはほとんど唯一と言っていい娯楽であった。 大きくなったらあんなところに住むんだ、というのは、姉妹共通の夢であったのだ。 そして、その広大な森のさらに向こうに、木々がほとんどない、平らな土地が広がっているのが見えた。 「あそこはね。・・・にんげんさんがすんでるところだよ。」 「ゆわぁぁぁ。しゅごくゆっくちしちぇるにぇぇ・・・」×3 ゆっくりは、ゆっくりしているものに関しては敏感なものだったりする。 人間から見てもかすんで見えるほど遠くの人里に、まりさ達はとてもゆっくりしたものを感じ取っていた。 里の中を流れる小川、緑に輝く田畑。 人間さんが出入りしている所は、人間さんのおうちだろうか。 だが、まりさ姉妹がゆっくりしている中・・・父まりさだけはまったく別の表情を浮かべていた。 人里を眺めているだけにもかかわらず、歯は限界まで食いしばられ、全身汗まみれ、 口の端からは餡子混じりの泡がゴボゴボとたれている。 「ゆ゛・・・ゆぎぃ・・っ!ゆぅぅぅうう・・・!!」 「おとーしゃん?」 「ゆぎぃぃぃひぃ!にんげんさんはゆっぐりでぎなぃぃぃいいいい!!」 「!?」×3 しばらく脂汗をかき、顔色を赤、青、土色にあわただしく変化させていた父まりさが、突然暴れ始めた。 「ゆびぃっ!!おねぇじゃんっ!だべぇっ!!おぎゃあじゃぁぁん!!」 「ゆぅぅぅ!!おとーしゃん、ゆっくちちちぇにぇっ!ゆっくちちちぇー!」 ・・・・・・。 「ゆぅ・・・ゆぅぅぅ・・・おちびちゃん、ぜったいにんげんさんにちかづいちゃだめだよ。ぜったいだよ。」 「ゆ、ゆっくちりきゃいしちゃよ。」×3 結局、何があったのかは聞けなかった。 まりさ姉妹達だって、餡子による記憶継承の効果で、人間さんがゆっくりできない、 という感覚は両親から受け継いでいるのだが、所詮は両親一代限りのトラウマであり、 れみりゃ等のような、明確な意味でのゆっくり出来なさは記憶を受け継いでいない。 そのため、まりさにとって父まりさからの忠告は、 『人間さんに出会うと確実に死ぬ』と言う様なものではなく、 『ゆっくり出来ない存在で、どんな強いゆっくりでも不用意に近づくと酷い目にあう。』 という程度のものと認識されることになった。 それからさらに月日は流れ、季節が夏の終わりに差し掛かった頃、 他の姉妹全てが命を失う中、最後まで生き延びたまりさが、 独り立ちして親元を離れる日がやってきた。 「おちびちゃん!ゆっくりしていってね!!」 「もうおちびちゃんじゃないよ!ゆっくりがんばるね!ゆっくりしていってね!!」 こうして結局まりさは、親の忠告を無視して森の方へと旅立っていったのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 独り立ちに際して、まりさには一つの計画があった。 その計画は大体以下のようなものである。 1.人間さんの里に行き、そこで一番強い人間さんと勝負して勝つ 2.力を示すことで人間さんからゆっくりプレイスと食料、おうちを手に入れる 3.森や山からゆっくりを呼び集め、人間さんの里をゆっくりのためのゆっくりプレイスにする 4.群れの長になる 5.ゆっくりした美ゆっくりと、ゆっくりした家庭を築く 6.ゆっくりし続けたまりさはいつしかドスになる 意気揚々と山を下り、森に入り、人間でも丸一日ではきかない距離を走破するまりさ。 まりさ自身は気づいていなかったが、山育ちであったため、 足腰の強さとスタミナについては、確かに群れの長にふさわしい逞しさを手に入れていたのである。 そして、ゆっくりの足で言えば、あと一日で人間の里に着こうという森の中で、 まりさの旅は、予想外の形で終わりを迎えることになった。 「ゆぁぁぁぁああああ!!なにこれぇぇぇええええええ!!!」 目の前には、人間の里が霞んでしまうほどの、ゆっくりプレイスが広がっていた。 木々は適度に生えて木漏れ日が優しく降り注ぐ。 地面には若く柔らかな雑草から人間も食用とするような野草まで青々と茂っている。 草ばかりではない。 周囲にはキノコやゆっくりでも届く高さに実った木の実も豊富にある。 その豊かな食料に誘われてか、昆虫からイモ虫まで、取り尽せないほどにいる。 食料ばかりではない。 大きく育った木々の根元を見れば、その多くにはゆっくりが家族で暮らすのにちょうどいい洞がある。 中は小石などもほとんど落ちておらず、すべすべに整えられており、隙間も丁寧に埋められている。 明らかに以前別の群れが使っていたと見られるおうちばかりであった。 今、どうしてゆっくりが住んでいないのか不思議であったが、 一時的な食糧不足で群れごと引っ越すことも珍しくはないので、 ここはかつて別の群れが使い、放棄したゆっくりプレイスだったのであろうと、まりさは理解した。 まりさが放心状態でゆっくりプレイスの中を歩き回っていると、 まりさとは別の場所から独り立ちしてきたのであろう、若いゆっくりの集団が多数、 吸い寄せられるようにこのゆっくりプレイスにやってきた。 「ちぇん、ゆっくりしていってね!!」 「まりさだねー!ゆっくりしていってねー!!ゆわぁぁー、すっごいゆっくりぷれいすだねー!わかるよー!」 「ゆぅん!ちぇんもそうおもう!?ここにはいま、ほかのゆっくりたちはぜんぜんすんでないんだよ!」 「わからないよー!!こんなゆっくりぷれいす、ほっとくにはもったいないねー!」 「ゆっふん!!そうだよ!ここは、まりさたちのおうちにしようね!!」 「わかるよー!!」 こうして、まりさの無謀なゆん生計画は、あっさりと方向転換を向かえ、 人里から近くも遠くも無い、実り豊かなゆっくりプレイスで、一から群れを作る作業が始まったのであった。 そもそも、まりさにしても、ゆっくりしていない人間さんと争うのは、あまり気が進まないことではあったのだ。 まりさほどのゆっくりであれば、相手が人間さんであっても負けることは無いであろう。 しかし、ケンカは痛いしゆっくり出来ない。 それに、万が一相手に遅れをとれば、永遠にゆっくりしてしまうこともあり得る。 また、実のところ人間さんの里を見たこともないので、どの程度ゆっくりしたゆっくりプレイスなのかわかったものでもない。 遠くの、あるかも怪しいゆっくりプレイスより、目の前の極上のゆっくりプレイス。 まりさの、新生活はここから始まった。 ゆっくりしたおうちとご飯は、余りにもあっさりと手に入ってしまった。 さらに、まりさ達のゆっくりとした姿を見つけて、独立したての若いゆっくり達が続々とやって来ては定住を決める。 わずか数週間で、まりさ達のゆっくりプレイスには、大規模、と言って差し支えない規模の群れが形成されていった。 「わからないよー。そろそろおさをきめないと、ゆっくりできなくなっちゃうよー。」 「そうね。せっかく、とかいはなゆっくりぷれいすなんだから、みんななかよくしたいわ。」 「むきゅん!それじゃあ、ぱちぇはまりさがおさになるといいとおもうの!!」 「ゆぅぅー!まりさでいいのぉぉぉおお!?」 「まりさなら、きっととかいはなむれにできるわ!」 「ゆぅ。でもまりさ、もりでのせいかつになれてないよ。わからないこともおおいよぉ。」 「わかるよー。でも、まりさのできないことは、みんなできょうりょくしてあげるからだいじょうぶだよー。」 ・・・・・・。 「ゆぅ。わかったよ!まりさ、このむれのおさになるよ!!」 「むきゅーん!ぱちぇたちにもおてつだいさせてね!むきゅっ!」 流れは自然と生まれ、拡大していく。 まりさは群れの初期メンバーとしてリーダーシップを発揮していた点を考慮され、立候補するまでもなく長に選出された。 なお、幹部メンバーは、このゆっくりプレイスでまりさに初めてであったちぇんとありすのつがい、知恵者ぱちゅりーの3匹。 群れの体制はこの4匹を中心として、急速に固まっていった。 そして・・・ 「このむれのおさはまりさみょん!?みょんたちをむれにいれてほしいみょん!!」 「ゆっくりしていってね!!おうちはたくさんあるよ!・・・ゆゆっ!?」 「どうしたみょん?れいむのおかおになにかついてるみょん?」 「・・・ゆぅ?ゆっくりしていってね。」 「(ゆわぁ。ゆっくりしたれいむだよぉ。)ま、ま、まりさとずっと、ゆっくりしていってね!!」 「・・・・・・?・・・ゆぅぅぅうううう!!?」 ある日群れに加わってきた若ゆっくりの集団に、一匹のれいむがいた。 清楚な物腰、紅く輝く大きなおリボン、そしてゆっくりとした下膨れ。 初めてれいむとあいさつした時に、まりさのぺにぺにに電流が走った。 一目ぼれというものであろう。 結局いきなりすぎて、れいむから正式にOKの返事が来るまでに5分以上かかったが、 まりさは、ゆっくりプレイス、長という立場にくわえて生涯の伴侶まで、あっさりと手に入れてしまったのであった。 季節は夏の終わりという時期。 群れのゆっくり達も、そろそろ新生活に慣れてきた時期である。 早期にこのゆっくりプレイスにやってきたメンバーはつがいを見つけ、にんっしんしている者も多かった。 長まりさとれいむの間にも、何一つ障害はない。 後は、一刻も早くおちびちゃんを手に入れて、ゆっくりとした家庭を築きあげれば、 まりさのゆん生計画は、ほぼ完璧に果されることになるはずであった。 ・・・だが、ある出来事が、まりさとれいむの子作りに待ったをかける。 「むきゅぅぅぅううううん!!まりさがぁぁぁぁああ、おちびちゃんがぁぁぁぁああああ!!」 その不幸は、長まりさの側近筆頭、ぱちゅりーの元に訪れた。 無論、この叫びの対象になるまりさとは、長まりさではなくぱちゅりーのつがいであった、だぜまりさである。 「むきゅ・・・おちびちゃん・・おそとはあぶないって・・・むきゅぅ。」 ぱちゅりーは胎生出産で、子供はまりさ1匹だった。 赤まりさは好奇心旺盛で、将来有望なゆっくりだったが、その好奇心が強すぎた。 「まりしゃ、おとーしゃんとかりにいっちぇくるよ!しょろーり、しょろーり!」 父であるだぜまりさが狩りに行き、母である側近ぱちゅりーがお昼寝している間に、 おうちを抜け出して、群れの喉を潤す泉へと遊びに行ってしまった。 さらに好奇心があだとなって、水草を採集している父、だぜまりさのマネをしてしまう。 水への恐怖よりも、お帽子で泉の上を自在に漂ってみたいという衝動が勝ってしまったのだ。 「まりしゃ、ゆっくちおぼうちにのりゅよ!ゆ!ぷーきゃ、ぷーきゃ・・・ぼちゃん。」 結果はご想像の通り。転覆、水没。 さらに不幸に輪をかけたのは、赤まりさが自分のおちびちゃんであると気付いただぜまりさが、 赤まりさを引き上げるため現場に急行、 「ゆぁぁぁぁああ!!おちびちゃん、まっててね!いまたすけ・・ゆぅっ!?・・・ぼちゃん。」 あわてすぎて転覆、水没。 結局側近ぱちぇは、一気に家族全員を失ってしまったのであった。 特に大きな危険もなく、ここに至るまで群れのゆっくりは増える一方だったため、 失うということに慣れていなかった幹部メンバーは、過剰に反応することになる。 特に側近ぱちぇは、自分自身を襲った不幸ということもあり、 これ以上同じ思いをするゆっくりを増やさないための対策を必死になって考えた。 そして、一つの結論に至る。 「ゆ!みんな、まりさのいうことをよっくきいてね!!」 「ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!」×300 「このむれでは、これからすっきりをきんしするよ!!」 「・・・ゆっぐりでぎなぃぃぃいいいいい!!!」×300 「でもあんっしんしてね!ずっとしちゃいけないわけじゃないんだよ!」 「?」×300 まりさ達幹部メンバーは、期限付きのすっきり禁止令を決定した。 内容は簡単。 要は、冬ごもりに入るまで一切すっきりーしてはダメ。 子作りは、冬ごもり中に行うべし!とのことである。 先にも書いたとおり、通常の群れであればこれは自殺に等しい案だ。 秋の間に集められるのは、成体のつがいであっても自分達の分だけで精いっぱい。 そこに子供が入れば飢え死に確定となる。 しかし、そこにこの群れの強みが加わると、状況が変わる。 何せ、ここは類を見ないほどのゆっくりプレイスで、食糧はおうちの外にあふれるほどある。 秋の間につがいで必死に集めれば、それこそ成体ゆっくり10匹以上は養える蓄えが出来るほどなのだ。 ならば・・・蓄えてしまえばいい。 後は、冬ごもりの季節になったらおうちの入り口をしっかりと閉じて、存分にすっきりーする。 赤ゆっくりはおうちの中で誕生し、お外にこっそり出て行ったりする心配はない。 しかも、両親ともやはりおうちから出ることはないので、にんっしん、子育て中にしんぐるまざーになる心配もない。 ゆっくりとしたおちびちゃん達とたっぷりゆっくりして冬の数か月を過ごし、その間におうちで出来る教育は済ませておく。 おちびちゃん達が子ゆっくり程度、十分に大きく成長した頃に、冬ごもりは終わりを迎えるはずだ。 後は春の恵みの中で、おちびちゃん達は大きく育ち、世界に羽ばたいていくのだ。 「すごーい!!おさはやっぱりてんっさいだよー!」 「わかるよー!」 「むほぉぉぉおおお!!すっきりー!」 群れのゆっくり達は、説明を聞き終わるとともに、目をキラキラと輝かせて幹部達をほめたたえた。 それもそのはずで、餡子で継承されている記憶では、冬ごもりと言うととても楽しいものではない。 餓死、凍死の危険を感じつつ、つがいがいればまだしも、下手すれば一匹で暗く狭い穴の中に閉じこもって過ごすのだから。 それが、死の危険もなく、最上級のゆっくりである『おちびちゃん』とともに過ごせるとなれば、 ゆっくりでなくとも、その喜びはなんとなく理解できるであろう。 そして群れのゆっくり達は以降数カ月間必死で狩りに奔走し、 (中には不幸な事故ですっきりを味わうことも出来ずに命を落とした者もいるが) ほとんどのつがいが無事に冬を迎え、すっきりー出来るだけの蓄えを確保しておうちの入り口を塞いだのであった。 みんな、より大きなゆっくりをちらつかせられた分、意外と我慢強かった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ・・・そして現在の状況に至る。 おうちの奥には貯蔵食糧の山、れいむの頭上にはツタが一本とそこに揺れる6匹の赤ゆっくり。 おうちの中央には、まりさがこの日のために、特に柔らかい枯れ草を編み上げて作った、 おちびちゃん達用の鳥の巣型ベッド。 ふかふか、ふわふわになるように、一生懸命頑張ったよ。 きっと、おちびちゃん達も気に入ってくれるね。 ぶるぶる・・・ぷちんっ! ・・・・・・ぽとっ! 「ゆぅ・・・ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「ゆぅぅん!おとーしゃん、おきゃーしゃん、ゆっくち!ゆっくち!」 「ゆぅ!まりさそっくりの、げんきなおちびちゃんだね。」 「ゆふぅん!でも、れいむにおめめはそっくりだよぉぉ。」 「ぴゃぴゃー!みゃみゃー!れいみゅおなきゃしゅいちゃよ!」 「むーちゃむーちゃしちゃいよぉ。」 「ゆっ!まっててね。おちびちゃんに、つたさんをたべさせてあげようね!」 「ゆっくちむーちゃむーちゃしゅるよ!」 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」 「おちびちゃん、さむくない?」 「ゆっくち!べっどしゃんがふーわふーわであっちゃかいよ!」 「ゆぅ。でも、まりしゃちょっとしゃむいから、しゅーりしゅーりしちぇにぇ!」 「おとーさんがすーりすーりするね!すーりすーり、しあわせー!」 「しゅーりしゅーり、ちあわちぇー!」 「ゆぅん、じゅるいよ!れいみゅもみゃみゃとしゅーりしゅーりしゅるよ!」 「すーりすーり、しあわせー!」 「しゅーりしゅーり!ちあわちぇー!」 まりさがおちびちゃんだった頃、しあわせーと言えばせいぜい、 栄養不足でガサガサな両親の頬とのすーりすーりくらいしかなかった。 さもなければ、手の届かないところにある、木々の緑を眺めている間の、白昼夢の中にだけ。 まりさは思うのであった。 この、ゆっくりとしたおちびちゃんには、まりさの全てを注いで、精一杯しあわせーを与えていこうと。 そうすることが、自分の報われなかった過去を取り返すことにもなるかのように。 「おとーしゃん、ゆっくちないちぇるにょ?」 「ぴゃぴゃ、ゆっくちちちぇにぇ!」 「ゆぅ?ゆふふ・・・おとーさんはね、しあわせーすぎてないちゃったんだよ。とってもゆっくりしてるよ。」 「ゆぅん、へんにゃにょー。」 「ゆふふふ、おちびちゃんたちも、おおきくなったらわかるよ。ゆっくりおやすみなさい。」 「ゆっくちしゅーやしゅーやしゅるよ!・・・しゅーや、しゅーや。」 「・・・・・・ゆっくりしていってね。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 次の日の朝、異変は突然やってきた。 ざくっ! まりさ一家が眠っているおうちの中に、何かが突き刺さるような異音が響いた。 「ゆぅ、ゆ?なんなの?」 「まりさ、おうちのいりぐちで、へんなおとがしたよ。」 「ゆぁーん、ゆっくちできにゃいよぉ。」 「ゆゆぅ。まりさがみてくるから、おちびちゃんたちは、べっどさんのうえでゆっくりまっててね。」 「ゆぴゅぅ・・ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 「ゆぅぅ、なんなのぉ?・・・ゆぁぁぁぁあああ!なにこれぇぇぇぇぇええ!!?」 まりさが入り口に向かうと、おうちの入り口を塞ぐ『けっかい』を、何か見たことない物が貫いていた。 「ゆぅぅぅううううう!!ゆっくりでていってね!ゆっくりはやくいなくなってねぇぇぇええ!!」 それは人間が見たとしたら、子供の手のひらサイズの、先割れスプーンに似ていると思うであろう、 銀色に輝く金属製の道具であった。 金属製のそれは、まりさの言葉を聞くまでもなく、ゆっくりと左右に動かされ、『けっかい』の石や木の枝を崩しながら引き抜かれた。 まりさが、寒気でおちびちゃん達がつらい思いをしないようにと一生懸命塞いだ入り口は、 いともたやすく寒気の中に口を開けてしまったのであった。 「まりさ、どうしたの・・・どうしてけっかいさんがなくなってるのぉぉぉおおお!!?」 「ゆぅぁあああ!ぎんいろのぴかぴかさんが、けっかいさんをこわしちゃったんだよぉぉ!」 訳が分からない相手に、秋の間ずっと待ち望んでいたゆっくりした時間を奪われた衝撃で、 れいむだけでなく、群れの長になったほどのまりさまでもが逃げるという選択肢を忘れ、お外にいるであろう敵に向かって飛び出していった。 そこでまりさ夫婦が見たものは、 先ほどの特Lサイズの先割れスプーンを、長さ1mほどの棒の先端に取り付けた、 槍のような奇妙な道具を手に持つ、一人の人間さんであった。 ちなみにその道具は、人間さんを避けていた、ゆっくり達は知らない道具。 里の人間さんの間では、『あの棒』と呼ばれている道具である。 「ゆ・・・にん、げんさん・・・。」 「ゆぅ?・・・どぼちて・・・?」 これまで、ゆっくりしていないからと、近づかないようにしていた人間さん。 遠くもない所に住んでいるのに、ゆっくりプレイスに一度もやってこなかった人間さん。 それが、雪の降り積もった、ゆっくりがおうちに閉じこもってしまった今、なぜかここにいた。 茫然とした一瞬、その間に、まりさとれいむは、人間さんのあんよでころりと上下さかさまに転がされた。 「「ゆ?」」 そして次の瞬間、 ざくっ!ざくっ! 「ゆ・・・ゆぎひぃぃぃいいいい!!!」 上を向いた2匹のあんよに、『あの棒』が突き刺された。 「どぼぢでっ!あんよさんが、まりさのゆっくりしたあんよさんがぁぁぁぁ!!」 まりさの叫びともとれる問いは、人間さんには聞こえた雰囲気すらみえず無視しされた。 そして人間さんは、崩されたままだった『けっかい』の材料であった、 木の枝や大きめの石を『あの棒』を使って雪に埋めていく。 「どぼ、ぢで・・・。やべでね!げっがいでおうぢをふさがないど、ざむぐでゆっくりでぎないよ!!!」 だが、やはりまりさの声は届かず、人間さんは手際よく木の枝や石を雪に埋めてしまった。 「なんでぞんなごどずるのぉぉおおお!!まりさだぢ、なんにもじでないでじょぉぉぉぉおおお!!?」 さらに人間さんは、もはや邪魔するもののなくなったおうちの入り口から、『あの棒』をおうちに滑り込ませると、 先端のフォーク状になった部分でおちびちゃん達のベッドの端を引っ掛け、崩れないようにそろりそろりと引きずりだす。 そのベッドの上には、まりさとれいむの、5匹の可愛いおちびちゃん達が恐怖と寒さで震え、涙を流していた。 「ゆぴぃ、ゆぴぃぃ・・・ゆっくちちちぇ・・ゆぅぅぅ、ころがりゅぅぅうう、ゆぴぃっ!!」 そして、ベッドに引っ掛けたままの先端を少し持ち上げ、ベッド全体を傾けて、 ゆんゆん泣くおちびちゃん達をころりと転がし落とす。 おちびちゃん達もまりさも状況についていけず、泣くことも出来ずに目を丸くしている中、 主のいなくなったゆっくりしたベッドは、雪をひとすくいかぶせられ、人間さんのあんよでパンパンと踏み固められてしまった。 「ゆ・・・くち、べっどしゃん・・ゆっくちちちぇ。」 「ゆぅ、・・・ぺーりょ、ぺーりょ、・・・ちゅめちゃぃ・・・。」 何が起きているのか未だに理解できていないおちびちゃん達は、 すっかり踏み固められた雪の下にうっすらと見えるベッドの上にもしょもしょと集まって、 ぺーろぺーろしようとして舌を雪に突っ込んだり、あんよをもぞもぞさせて、 ついさっきまで確かに感じていた、ゆっくりとした柔らかさを得ようとしていた。 しかし、当然埋め固められたベッドは二度と柔らかさを取り戻すことはなかった。 「ちゃむいよぉ・・・ゆっくちちゃちぇちぇ・・・」 「ゆっく・・・しゅーり、しゅーり・・・」 そうでなくても生まれたてのおちびちゃん達は、跳ねることが出来ず、這いまわることしか出来ない。 その上、すっかり冷え切ったおちびちゃん達のあんよは、もはやわずかに震える程度にしか動かせなくなっていた。 雪に埋められた、かつてベッドだったモノの上で、5匹のおちびちゃん達は、おうちに戻ることもできず、 身を寄せ合ってなんとか温まろうとすーりすーりしている。 「ゆぅぅううう!!にんげんざん!もうやべでね!まりざはどうなっでもいいがら、おぢびぢゃんをおうぢにいれであげでぇ!!」 そんなことを言っている間に、人間さんは再度『あの棒』をおうちの中に突っ込み、 まりさとれいむが秋の間、必死になって集めた、ゆっくりとしたご飯さんを、山盛りすくい出し、 ビュッ!!・・・・パラパラパラッ。 勢いよく周囲の雪の上にばら撒いてしまった。 「やべでぇぇぇぇええええ!!!おぢびぢゃんのだめの、だいじなごはんざんがぁぁぁああああ!!!」 それも、2回、3回と繰り返される。 まりさには、おうちの中は見えていなかったが、秋の間集めた食料の、実に9割近くは辺り一面にばら撒かれていた。 無論、逆さまにされている上、あんよに大きな穴があいているまりさには、集めなおすことなど出来ない。 結局まりさの声は人間さんに一向に届くことなく、視線すら一度も合うことがなかった。 人間さんはふぅっと一息吐くと、まりさのおうちの木の、人間さんの目のあたりの高さに描いてあった、 すっかり色が薄くなっていた×印を赤の塗料で塗りなおす。 そして、全ての作業が終わったとでも言うように、人間さんは向きを変えると、 こきっ、こきっと首をならし、深呼吸をして、どこかに移動しようと、歩き始めたのであった。 「ゆ・・・まっちぇ・・・」 人間さんが再びまりさ一家の前に通りがかった時、ベッドの残骸の上でぷるぷると震えていた赤まりさが最後の力を振り絞って呼びかけた。 「どうちちぇ・・・?にんげんしゃ・・・ん。」 人間さんは、赤まりさの前を素通りすると、まりさの横を通って、 群れ幹部のちぇんとありすのおうちの方へと、まっすぐ向かっていった。 ざくっ! まりさの後方で、聞き覚えのある音が響いた。 「ゆぅぁあああ!ぎんいろのぴかぴかさん、けっかいさんをこわさないで・・にん、げんさん・・・?」 「わ、わからないよ・・・?」 「ちぇぇぇん!ありずぅぅぅうう!にげでぇぇぇええええ!!」 まりさは叫ぶ。だが、全ては遅すぎた。 「「ゆ?」」 ころりっ・・・ざくっ!ざくっ! 「わ・・・わぎゃらにゃぁぁぁあああ!!!」 「どぼぢでっ!あんよさんが、ありずのどがいはなあんよさんがぁぁぁぁ!!」 「なんでぞんなごどずるのよぉぉぉ!!ありずだぢ、なんにもじでないでじょぉぉぉぉおおお!!?」 まりさの背後で、ありすとちぇん達の叫び、そして、 まだ生まれたばかりであろう赤ありすと赤ちぇんの泣き声が聞こえる。 「ゆぴぃ、ゆぴぃぃ・・・わきゃらにゃぁ、ころがりゅぅぅうう、わきゃら!!」 ばさっ!ばさっ!ぱんっ、ぱんっ! 「しょんにゃ・・・くち、べっどしゃん・・しゃむいわ・・・」 「ゆぅ、・・・ぺーりょ、ぺーりょ、・・・わきゃらにゃ・・・。」 「ゆっくちちちぇ・・・しゅーり、しゅーり・・・」 ビュッ!!・・・・パラパラパラッ。 「やべでぇぇぇぇええええ!!!おぢびぢゃんのだめの、とかいはなごはんざんがぁぁぁああああ!!!」 ・・・・・・。 その後も、まりさの後方では、いくつかの家族の叫び声が聞こえ続けていたが、 それがいくつか続いた頃には、まりさも大声で人間さんに呼びかけたり、ゆっくりに逃げるように叫んだりはしなくなっていた。 ただ、逆さまのまま身動き一つ取らず、涙を流していた。 そしてよく見れば、まりさの遠く前方にも、まりさ同様に上下ひっくりかえされ、 あんよに穴を開けられたまま、声一つ上げずに泣く成体ゆっくりの、つがいの姿がいくつも見える。 そして、バスケットボール大の饅頭達の目の前では決まって、数個の小さな饅頭が身を寄せ合いながら、静かに息を引き取っていた。 まりさの横に、逆さまになっているれいむは、あんよに穴を開けられてから、一度も声を発することなく息絶えていた。 おそらくあんよへの一刺しが中枢餡にまで届いてしまったのであろう、即死であった。 だが、まりさから見れば、それはうらやむべき幸運であっただろう。 「ゆ・・・もっちょ・・・く・・・・・・」 「ゆっぐぢぢでぇ、おぢびぢゃん、ゆっぐぢぢでぇぇぇ。」 ベッドの埋まる雪の上で、身動き一つ取れず凍えていたおちびちゃん達は、結局誰にも助けられることのないまま、 まりさの目の前で苦しみぬいて死んでいった。 これから毎日、あったかいおうちの中で存分にむーしゃむーしゃして、すーりすーりして、 春になったらきれいな草花さんや、あったかい太陽さんの光に包まれて、ゆっくりとしたゆん生を歩むはずだったおちびちゃん達。 だが、今まりさの目の前には、涙まで白く凍りついた、悲しい表情のまま息絶えた5個の饅頭が並んでいる。 「・・・くちちちぇにぇ。・・とーしゃ・・・。」 「・・・・・・ゆ!」 5?・・・おちびちゃんがひとり足りない!! 「・・ゆっくちちちぇにぇ。・・おとーしゃん・・・」 「ゆ・・!ゆっくりしてね!おちびちゃん!おちびちゃぁぁあああん!!」 まりさが、動けないながらも必死で視線をおうちの中に向けると、そこには末っ子まりさの元気な姿があった。 「おにぇーちゃん・・・みんにゃぁ・・ゆっくちちちぇにぇ。」 「おちびちゃん!こっちにきちゃだめぇ!!」 「ゆぴぃっ!」 まりさは、姉達のもとに駆け寄ろうとする末っ子まりさを制止する。 「おちびちゃん!よくきいてね!おうちにごはんさんはある!?」 「ゆ・・・ゆぅ。おとーしゃんのぶんしかにゃいよぉ。」 「・・・ゆぅぅ、おちびちゃん。それはおちびちゃんのぶんだよ。」 「ゆぅ?しょしたらおとーしゃんのごはんしゃんがにゃくなっちゃうよ!ゆっくちできにゃいよぉ!」 まりさは、もう決断していた。 「おちびちゃん。まりさは・・・おとーさんは、もうゆっくりできないよ・・・。」 「どぼぢでしょんなこちょいうにょぉぉぉおおお!?」 「おとーさんは、もうあるけないんだよ。だから、おちびちゃん。はるさんがくるまで・・・ひとりでゆっくりしていってね!!」 「ゆぅぅううう!?しょんなのゆっくちできにゃいよぉぉおおおお!!!」 「だいじょうぶだよ。おちびちゃんは、まりさとれいむのおちびちゃんなんだよ。」 「・・・ゆ・・・ゆぅ。」 「だから、はるさんがくるまで、おうちのごはんをたべて、べっどさんのかわりに、ごはんさんのなかですーやすーやするんだよ。」 それは、まりさの夢。 まりさの最後の希望。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆぁぁぁあああん!!ゆっくちりきゃいしちゃよぉ!!ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 まりさの両親は、人間さんの手によって、山のゆっくり出来ない土地に追いやられた。 まりさは、人間さんの手によって、ゆっくり出来ない最期を迎えようとしている。 しかし、それでも希望は、まりさのゆっくりとした夢は、未来へと輝き続けるのだ。 そして、まりさは余りにも理不尽に幸福な未来を奪われながら、群れのゆっくりの中でただ一匹、 満ち足りた表情で3日間生き延び、その後永遠のゆっくりへと旅立っていったのであった。 そしてただ一匹人間さんの手を逃れた赤まりさは、わずかに残されたご飯さんを食べ、 ご飯さんの山をお布団代わりにして、中に身を埋めて必死に寒さと戦った。 だが、寒さで体温を奪われ続けるため、体温維持のためにむーしゃむーしゃを絶えず続けなければならない。 しかしむーしゃむーしゃを続けると、お布団の代わりになるご飯さんがどんどんと減っていき、体温を維持できなくなる。 そこでさらにむーしゃむーしゃを繰り返す。 しかも、どれだけ体温を維持しても、おうちの入り口を塞ぐ材料も技術もないので、 室温は全く上がらず、状況が改善されることは無い。 結局、赤まりさは、まりさが息を引き取る2日ばかり前に、おうちの食料を全て平らげて、あっさりと息を引き取ったのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 森は春を迎えた。 前年の秋には300匹を数え、冬ごもりの中で生まれた赤ゆを合わせれば1500匹を超えた巨大な群れは、 人間さんの手によっておうちから引きずり出され、一匹残らず死に絶えた。 そして、その亡骸は雪解けとともに溶け、大地に栄養を与えて森の恵みを育む。 それは、雪に埋められた赤ゆっくり達のためのベッドも、冬ごもりのために貯められた食糧も同様である。 沢山の栄養で育った草花や木々は、今年も多くのゆっくりに、ゆっくりとした恵みを与えてくれるであろう。 また、ゆっくり達によって長年整備されてきた木の洞は、 いずれも新たなゆっくり達にとって絶好のおうちになることであろう。 おうちの入り口を塞ぐ『けっかい』の材料にも困ることはない。 なにせ、前の年の冬にも使われた、小石や太い木の枝もそのまま残っているのだから。 ゆっくり達が変わることが無い以上、昨年最高のゆっくりプレイスであったココは、 今年も多くのゆっくりにとって、最高のゆっくりプレイスとなることであろう。 ・・・・・・そう、人間さんの里に、近づこうなどとは考えないほどに。 春を迎え、山にもベビーラッシュがやってくる。 まりさの両親は新しい命を迎え、過酷な生活の中でも少しだけゆっくりしていた。 「まりさとれいむのおちびちゃん・・・もうすぐうまれるね。」 「ゆぅん。とってもゆっくりしてるね。」 「このおちびちゃんたちも、おねえちゃんたちみたいに、げんきにそだってほしいね。」 「そうだね。・・・みんな、げんきにしてるかな?」 「きっとげんきいっぱいだよ。まえのおちびちゃんだって、あんなにゆっくりしたまりさだったもん。」 「そうだよね・・。」 「・・・そうだよ。」 ぶるぶる・・・ぷちんっ! ぽとっ! 「ゆぅ・・・ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 なーんかイマイチ。 挿絵 byキリライターあき 挿絵 by儚いあき 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生 本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ 前日談 ふたば系ゆっくりいじめ 522 とてもゆっくりしたおうち 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん 『町れいむ一家の四季』シリーズ 後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ) D.Oの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る てかこんな大規模な群なのにドススパーク打てる奴が居ないってどゆこと? -- 2018-08-25 19 01 46 フォオオオオオオオオオオオオおっぱいもみたい -- 2017-06-04 07 22 37 しかしこんだけ数がありゃ何組か残ってもいいはずだが わざわざ全滅させる必要も無さそう -- 2014-08-27 04 17 19 ガキはすぐ死んでいくのに外で足破かれて3日生きる糞饅頭の生命力ときたら・・・人間よりはるかに丈夫だなおい -- 2013-08-07 01 05 42 ↓森から群れが消えた日(後編)を読めば分かる -- 2012-08-03 01 38 02 なんか納得できない。 -- 2012-07-29 22 25 49 こういう感情もなく容赦無いSSにはキリライターの絵がすごくマッチするなあ -- 2011-09-27 01 52 37 ↓畑や人里に行く気も失せるようなゆっくりプレイスを作ってゆ害の防止、冬になったら一斉駆除って事じゃないか? -- 2011-08-30 06 56 43 結局人間がここまできた理由がまだわからないんだが・・・ -- 2011-08-27 00 47 47 かつて先祖が散々好き勝手やってきたツケを未だに支払わされてる訳だ、コイツらは。 「森から群れが消えた日」見る限り、山の人達にとっておよそ最悪の部類に属する害獣だし こんなのがのさばってたら当然駆除だわな。恨むんだったら愚かなご先祖達を恨んでね! -- 2011-05-01 14 25 18 う~ん… 人間って怖いね。 -- 2011-04-14 05 57 47 ゆっくりは、弱肉強食のなかでは一番弱い生物だ!! -- 2011-03-18 22 34 32 めっちゃ面白かった!ぱねぇQNQNできた!! ゆっくり出来る森は人間の罠だったのかw 人間が毎年群れを潰すからゆっくり出来る森でいられるんだな -- 2011-03-08 12 57 34 長の考えた策は良かったんだけどな、ゆっくりにしては上出来といえる -- 2011-01-30 13 20 39 やべえ濡れた やっぱ越冬を無理やり失敗させるのはたまらなくQNQNするね! -- 2010-12-02 23 20 17 まあ、かつて散々山荒らしまわったクズ共の子孫で 実際あの場所見つけるまでは人里乗っ取ろうと企んでたアホだし、駆除は当然だな。 -- 2010-11-16 15 45 12 なんかもう虐待いらないわ逆に -- 2010-11-03 23 55 50 淡々とする作業、まさに駆除って感じがして良いですねぇ。 街に来るゆっくりを防止するための防波堤でもあり、ゆっくりホイホイでもある森か -- 2010-10-20 14 49 36 語彙的に無理なんじゃね?ゆっくりの知能で何か説明するのって難しいんだろうと解釈した それに言葉を重ねるより、アレにとって「ゆっくりできない」は存在に関わる最強の脅し文句なんだし十分と思ったとか あとトラウマすぎてその話をする事すらとか無理ゲーとかなんじゃね?w -- 2010-10-07 06 31 53 ↓ それを話そうとすると、顔色変えて発狂して暴れだす始末なんだから無理だろ。 ここらへんがゆっくりの限界なんだよ。 -- 2010-09-28 00 47 17
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注意 「」はゆっくりの発言です。 『』は人間の発言です。 ゆっくりが死にはしませんが、ひどい目にあいます。 独自設定があります。 「ゆっくりめをさますぜ。…ゆ?」 ゆっくりまりさは目が覚めた。そして周りを見渡す。 見たことがない場所だった。コンクリート打ちっぱなしの床、壁、 そして壁の大人のゆっくりでも届かないところに窓がある。 窓とは反対の方向は人間が座る用の椅子がある。 そしてその向こうには曇りガラスのずらすタイプの扉がある。 この景色にまりさには見覚えはなかった。 「ゆっくりめをさますよ。…ゆ?」 番であるゆっくりれいむが起きたようだ。 「れいむ ゆっくりしてってね!」 「ゆっくりしてってね! ここはどこなの?」 「わからないぜ。」「おちびちゃん どこなの?」 まりさたちは周りを見渡しおちびちゃんを探す。 いた。子まりさと子れいむ。生存している2匹の子供も近くで寝ていた。 よくみると自分たちの下にはバスタオルが引かれていて冷たくはない。 一安心するまりさだが、次に考えたのは「自分たちがなぜここにいるか」である。 昨日の夜は、家族と公園の片隅の段ボールのおうちで、 「ゆっくりおやすみなさ~い」 をしたはず。それがなぜ? 「「ゆっくりおきるじぇ(よ)。…ゆ?」」 二匹の子供も両親と同じような反応をする。 ここがどこだかわからないのだ。 季節は初春。春とはいえ、外である公園は寒い。しかしここは暖かい。 そしてタイル張りと曇りガラス。 まりさは餡子の奥にある記憶を引っ掻き回す。 「! もしかしたらここは…。」 「にんげんさんの…」 「「ごはんしゃんがあるのじぇ(よ)!」」 子供たちの視線の先には、たしかにお皿の上に乗ったゆっくりフードがあった。 一目散に駆け寄る子供たち。後からついていく両親。 少し警戒をする両親、だがお腹の空腹には勝てない。 「「「「いただきまーす むーしゃむーしゃ…しあわせ~」」」」 久々に食べた生ゴミでも雑草でもない食事に舌鼓をうつ親子。 「ゆゆゆ もうなくなっちゃのじぇ…」「ごはんしゃんいじわるしてないででてきてにぇ~」 しかし、その量は決して満足できるものではなかった。 「おちびちゃんたち ごはんさんはここまでだよ」 多くはなかったとはいえ、久々の安定した環境下での食事後に、 まったりとする両親。二匹はこの場所がどういう場所であるかを確信していた。 「「きょきょを まりしゃ(れいみゅ)たちの ゆっくりぷれいすにするのじぇ(よ)」」 親二匹の考えは子二匹の宣言で中断された。 「ちょ ちょっとまつのぜ おちびちゃんたち」 「そ そうよ ここは にんげんさんの ゆっくりぷれいすよ」 「にんげんさんの?」 親たちの考えはこうだ。 ここは人間の家。自分たちがここに入った記憶がないっていうことは、 自分たち一家はここの家の人間に拾われたということ。 そして飼いゆっくりになったのだと。 ただ、人間の家でおうち宣言をしたゆっくりがどうなるかは 昔から嫌というほど話を聞いていた。 「にんげんさんの おうちで おうちせんげんは ダメなんだぜ」 「どうして?」 「それはね…」 そこで曇りガラスの扉がガラガラと空く音がした。親子は扉の方を見る。 そこには一人の人間の青年が立っていた。 「「きょきょはまりしゃ(れいみゅ)たちの ゆっくり…むぎゅ」」 青年に早くもテンプレ発言をしようとした子供たちを抑え、 親たちは青年の前に移動する。 「まりさたちを かいゆっくりにしてくれて ありがとう。」 昔の癖で人間の前だと、話し方を変えるまりさ。 「すみません おちびちゃんたちは まだあまりにんげんさんに なれていないので」 すると青年は 『いやいやいや、僕は飼い主じゃないよ』 とにっこり笑いながら右手を振る。その笑顔はとてもゆっくりしているように見えた。 「「ゆ?」」 『えっと、そうだなぁ。僕はお客さんといったところかな。』 青年は左手で自分の顎を触りそう答える。 『さて、おちびちゃんにはお近づきの印としてあまあまさんをあげよう。』 というと青年はポケットからお菓子の袋を出し、子供たちにお菓子を与えた。 「「あまあましゃーん!」」 子供たちはよろこんで食べ始めた。 「「むーしゃ、むーしゃ、にゃんだきゃにぇみゅい…zzzzzzzzz」」 子供たちは眠りに落ちた。両親にはわからなかったが、青年があげたのはラムネである。 「お おちびちゃん!?」 『安心してくれ、毒じゃない。ちょっと眠ってもらうだけだよ。さて、僕は君たちに話をしに来たんだ。』 青年はそういうと人間用の椅子に座る。 『僕と話を聞いてくれたら…』 青年はそこで言葉を区切ると持っていたリュックサックから何かを出す。 『おいしいあまあまさんをあげよう』 それはゆっくりフードの箱だった。箱は金色に輝いている。 「ゆゆゆ! あれはきんいろのゆっくりフードさん!」 れいむが驚く。 「知ってるの? れいむ!」 「にんげんさんが たべさせてくれる フードさんのなかで いちばんしあわせーできる フードさんだよ でもれいむはまだたべたことないよ」 れいむが答える。 『よく知ってるね。』 青年は感心する。まりさも番を褒められて悪い気はしない。 『さっきの僕への対応でも思ったんだけど、もしかして君たちはもと飼いゆっくりだったのかい?』 「「ゆゆゆ! どうしてわかるのぉ!?」」 まりさとれいむは、また驚いた。 青年の指摘通り二匹は金バッチの飼いゆっくりだった。 しかし同じ家で飼われていたわけではなく、隣同士で飼われていた。 二匹とも家の外には出られなかったが、晴れている日には庭で遊ぶことができた。 ある日、まりさは隣の家への金網がほつれていて隣の家の庭にいけることがわかり、 探検がてら庭に行ってみる。 そこには見た目麗しき美ゆっくりがいた。それが今の番のれいむだった。 「それは うんっめいっのであいだったよ!」 まりさは鼻息(?)を荒くして語る。 まりさはれいむに一目ぼれし、それから家人には内緒でちょこちょこと遊びに行った。 ところでこの二軒の家、仲は良くなかった。 それはペットであるゆっくりたちにもわかるほどだった。 二匹は憂えた。そして二軒の仲を良くするための方法を思いついた。 二匹はある日、まりさの家の人にれいむの額から生えたおちびちゃんたちを見せた。 これでまりさの家の人はゆっくりする。そしたら次はれいむの家の人をゆっくりさせよう。 そうすれば二軒の家の人たちは仲良くできる。 『でも、人間は理解してくれなかったわけだね。』 青年は腕を組んで残念そうにいう。 結局2匹そろって捨てられることになった。 おちびちゃんが生まれるまで家の倉庫に居られたのは、家人のせめてもの情けだったに違いない。 そのあとは野良落ちし、公園で生活をはじめるも野良生活に慣れていなく、 はじめは5匹いたおちびちゃんも2匹になってしまった。 まとめるとこういった話なのだが、ゆっくりの話だ。そんなに上手く伝えられるはずもなく、 たくさんの時間もかかったのだが、青年の誘導もありなんとか伝え終わった。 おちびちゃんはというと、まだすーやすーや眠ったままだ。 『なるほどね。君たちはおちびちゃんでそれぞれの家を仲良くしようと思ったんだね。 君たちはゆっくりのロミオとジュリエットだよ!』 青年は目をきらきら輝かせる。 「ろみおさんとじゅりえっとさん?」 『お話の世界だけど、人間でも君たちと同じようなことをした人たちがいるんだよ。 まあ、最後は悲劇だったんだけどね。…さて、今度は僕の話を聞いてもらおうか。』 青年はリュックの中からお茶のペットボトルを取り出すと、キャップを開けて一口飲む。 『君たちは、“愛で派”と“虐待派”って知っているかな?』 「まりさは ならったことあるよ ゆっくりにたいして かわいがってくれるにんげんさんと いじめてたのしむ にんげんさんのことでしょ?」 『そうだった。君たちは元飼いゆっくりだったね。 その“愛で派”なんだけど、ゆっくりを飼いたいが、 お家が、ゆっくり禁止のアパートだったり、ゆっくり嫌いの人間と同居していたりと いろんな理由があって飼えない人がいる。 そういう人たちのために、ゆっくり達と触れ合える場所があるんだ。』 ここで青年はまたお茶を飲んだ。 青年の話をまとめるとこうである。 「ゆっくりカフェ」 ここは、“愛で”派でゆっくりを飼えない人がゆっくりと触れ合えるゆっくりプレイス。 来店したお客が好きなゆっくりを指名し、一緒にお菓子を食べたり、遊んだり、おしゃべりしたりできる。 場所代はかからず、料金がかかるのは自分の飲む飲み物と、ゆっくりに与えられるお菓子類なんかだ。 この話を青年はゆっくりにもわかりやすく丁寧に教えてくれた。 「おにいさん ゆっくりかふぇさんには れいむはいるの?」 れいむは尋ねる。 『ん~、残念ながら普通のれいむ種やまりさ種なんかはいないね。 胴付きれいむなら見たことあるけど。』 青年は残念そうに答える。 基本種でいるのは少し珍しいちぇん種や、ゆっくりにしては頭がいいばりちゅりー種である。 しかし人気はにとり種や、もこう種、ちるの種などの希少種なんだそうだ。 キモカワイイの評判のきめぇ丸、 じゃおーんしか言えないが人懐っこいめーりん種も人気と聞いてまりさは少し驚いた。 ゆっくりの中での人気と違っていたからだ。 「ゆっくりかふぇさんでは みんなゆっくりしているの?」 というまりさの問いに、青年はちょっと考えて、 『ま、大体ね』と答えた。 『今度は“虐待派”の話だ。』 “虐待派”は“容認”はされているが、“歓迎”はされていない。 “虐待派”であることは、おおっぴらに世間に公表できないのである。 就職面接で、「私はゆっくり“愛で派”です。」といえば、 同じ“愛で派”の会社の人と話が合うかもしれないが、 「私はゆっくり“虐待派”です。」といっても、 「いやあ、実は私もなんだよ。」なんて言ってもらえるわけはなく、 ドン引きされて試験も落とされるのがオチである。 せいぜい入社した後の同期の飲み会なんかで お酒の勢いに任せてカミングアウトすれば、 「俺も俺も」って言ってくれる人がいるかもしれないといった程度だ。 虐待も大変である。 まずは場所。ゆっくり達の中身で場所が汚れてしまう。 これらはシートを引くなどすれば少しは軽減できる。 次に騒音。赤ゆぐらいなら環境によっては問題なかったりするが、 成体ゆっくりの悲鳴は防音の環境でないと隣の家まで響いてしまう。 そして処分。終わったあとのゴミをゆっくり専用のゴミ入れに入れなければいけないが、 これが意外とめんどくさい。 そして掃除を完璧にやらないと虫が寄ってきて大変である。 ふき取り忘れの餡子に蟻がたかり、うわぁぁとなってしまう。 虐待用具をそろえるのもお金がかかる。 これも青年がわかりやすくまりさ達に説明した。 ここでまりさは違和感を感じた。体の中枢餡をちくっと刺されたような感じ。 (にんげんさんは なんでこんなはなしをするんだぜ?) 社会的地位のある人、教師などの虐待派がバレると名誉が傷つく人もいる。 “愛で派”と同じように虐待できる環境にない人もいる。 虐待してみたいが、どうしたらいいかわからない人もいる。 『そんな人たちのためにあるのが、通称「ゆっくりハウス」なんだ。』 青年は語る。 ここではもちろん秘密厳守。 入り口で受付しお金を払い、部屋に案内される。中には、ゆっくりがいる。 そのゆっくりをどうしてもいいのだ。 まりさの違和感は徐々に大きくなっていく。 それは既に違和感というよりは悪夢の予感というべきか。 『料金はゆっくりの数や種類なんかで決まるけど、親二匹子二匹の平均的は家族の値段は8000円だ。』 そこで青年は一呼吸置く。両手で隠している口元が歪んだ、気がした。 『君たちは10000円だった。』 「え? どういうこと? いちまんえんさんって?」れいむはわかっていないようだ。 まりさは言葉を出すことができなかった。 『平均よりも少し高いんだよ。なぜだかわかるかい?』 「ねえ しかとさんはゆっくりできないよ。」 「……」 まりさは答えられない。 青年はれいむの発言を無視して話を続ける。 『お店がお客のニーズに合わせて、どんなゆっくりがいいか決めてくれるんだ。 ゲスなゆっくりを制裁したい人、善良なゆっくりを虐殺したい人、 希少種を虐殺したい人なんかもいる。まあ、希少種は値が張るけどね。』 そして青年は壁をペタペタと触る。 『この壁だと壁や床に餡子やクリームがついても丸ごと水洗いできるんだ。 もちろん洗うのはお店の人だけどね。』 「にんげんさん さっきから はなしが…」 そんなれいむの発言を遮って、まりさが口を開く。 「にんげんさん もしかしてここは ゆっくりハウスさんなの?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 青年はまりさの発言に驚く。 『その通りだよ。まりさ。』 青年はまさかゆっくりの方からそう言ってくるとは思わなかったのだ。 『素晴らしい、素晴らしいよ。この時点でわかるなんて、まりさ君はなんて頭がいいんだ! さて、ここで僕は宣言する。君たちが僕に襲い掛からない限り、僕は君たちに危害を加えない。』 ここで青年はれいむの方を向いた。 『れいむ、君にも説明しよう。ここは人間が君たちゆっくりをいじめて殺す。そんな施設さ。 もっとわかりやすくいうと、君たち家族はえいえんにゆっくりする。 すぐにではないけど、おそらく今日中にはね。』 「お おちびちゃんも?」 流石にれいむも状況がわかったようだ。とはいえ、ゆっくりとしてはこれは平均的だろう。 『うん、そうだね。』 「どぼぢでーーーーーーっ」 『あんまり大きな声を出すと、おちびちゃんが起きちゃうよ。 それともこの話、おちびちゃんにも聞いてもらうかい?』 「おにいさん それはおちびちゃんがゆっくりできないから やめてね。」 『まあ、僕がわざわざ起こすことはしないよ。…そうだな。』 青年は一旦虐待ルームから外に出るとあらかじめ置いてあったモノをとってまた戻る。 青年は右手で持っていた、虐待グッズの基本である透明な箱(Sサイズ、防音仕様)を 床に置き、ラムネですやすや眠っている2匹の子ゆっくりを起こさないように 慎重に透明な箱の中に入れ、蓋をしめる。 さらに、透明な箱(Lサイズ)を床に置き、その中に親ゆっくり二匹と子ゆっくりが入った 箱も入れる。ただ蓋は開けたままにしておく。 「おちびちゃんになにをするの!?」れいむが抗議の声をあげる。 『いや、おちびちゃんが起こさないように、音が聞こえない箱の中に入れてあげたんだよ。』 青年は説明した。 「れいむ おにいさんは まりさやおちびちゃんに ひどいことはしないっていってくれから だいじょうぶだよ。』 『危害を加えないって言ったんだけどね。まぁいいや。』 青年は、2匹の目の前に扉の外から持ってきたものを置いた。 また、リュックの中かられいむ種のぬいぐるみを取り出す。 『さて、ここにあるのは皆、君たちのあんよさんを動かなくさせてしまうモノだ。』 青年はチャッカマンを取り出し、火をつける。 「ゆゆゆ ひさんはゆっくりできないよ」 子供を起こさないようにか、まりさが小さくつぶやく。 青年はぬいぐるみの持ち上げ、その底部にチャッカマンを当て『カチッ』と口で言う。 『こうして念入りに足を焼いてしまうと、君たちは動くことができなくなってしまう。』 「ぬいぐるみさんが いたがってるよ やめてあげてね」 同じ種のぬいぐるみだからか、れいむがぬいぐるみを労わる。 『本当に焼いてるわけじゃないってば。…次だ。』 今度はホットプレートを二匹の前に出す。 『これもさっきのと同じように、君たちのあんよさんを動かなくさせてしまうようなもんだ。 ホットプレートさんだよ。』 ホットプレートのスイッチをひねる。もちろんコンセントを入れてはないので温度は変わらない。 また、さっきのぬいぐるみを持ち上げ、ホットプレートの上で押しつける。 『ジューーーー。ジューーーーー。』青年は口真似をした。 ぬいぐるみを細かく揺らす。 『あじゅい! あじゅいよ! あんよさんがあじゅいよー!』 青年はゆっくりの物まねをしながらぬいぐるみを押しつける。 「おにいさん ほっとぷれーとさんがゆっくりできないのはわかったからやめてね」 今度はまりさがいう。 その声はもちろん青年には届いている。だが、 『あじゅいよ! いちゃいよ! やめてね! やめてね!』 青年は続ける。そしてホットプレートからぬいぐるみを離すと床に置く。 その場でぬいぐるみを左右に揺する。 『あんよさん! うごいてねっ! ゆっくりしないでうごいてねあんよさん!!』 ちらっとゆっくりの方に視線を動かすと、れいむはおそろしーしーをしている。 「おにいさんもういいよ! ゆっくりしないでやめてね!」 まりさは顔を振って懇願する。 『その質問に1回だけ答えるよ。断る。…だけど、実際に君らを虐待はしない。 安心してくれ。さて、君たちのあんよさんを動かなくさせるのはこれだけじゃない。』 青年はそれから部屋にある虐待道具を、ぬいぐるみに虐待する振りをしながら説明をした。 聞きたくない音は人間だったら、手のひらで耳を覆うなど何かしらの対抗手段を取れる。 だが、ゆっくりには耳がない。全身で音を聞いているともいわれている。 だから聞きたくない音への対抗手段は遠ざかるしかない。 しかし、親ゆっくり2匹は透明な箱で囲まれているので逃げる手段もない。 青年が一通り虐待道具を説明し終わった時、 れいむは青年と反対方向を向いていて、顔の下にはしーしーと思われる液体がこぼれていた。 動いていないところをみるとまた気絶してしまったのかもしれない。 このれいむは先ほども餡子を少し吐いて気絶してしまったが、 青年によって餡子を口の中に入れられ、オレンジジュースで強引に回復させられた。 まりさは帽子を目深にかぶって視界を消しているが、しーしーは漏らしていないようだ。 『君たちゆっくりがこの世界で見つかって、一番売れるようになったものは何かわかるかい? オレジンジュースだよ。今ではソフトドリンクで一番売れているそうだ。 他にもホットプレートやチャッカマン、鉄串などの売り上げも急上昇したそうだ。 これらを作っている企業はウハウハなんじゃないかな。 そこの企業で働いている人は、とてもゆっくりできることを君たちに感謝しているかもしれないね。』 青年はもはや何のリアクションも示さない親ゆっくりに向かって語る。 『さて、君たちがこれからどうなるか教えてあげよう。 僕がこの部屋から去ると、次にこの部屋に人間さんがやってくる。 だけどこの人間さんはゆっくりハウスの人で君たちには危害を加えない。 君たちの様子を見に来るだけだ。そのあとは少し間があくだろう。 そのあとに来る人間。彼らは君たちを虐待するつもりで来る。 その時が君たちのゆん生が終わる時だ。…ここまで話を聞いてくれたお礼だ。 約束通りさっきのおいしいゆっくりフードさんをあげよう。』 青年は横に置いてあった、ゆっくりフードヘブン味の袋を開ける。 「おにいさん おねがいがあるよ」 まりさに声をかけられた。 『なんだい?』青年は手を止めてまりさの方を向く。 「まりさとれいむは しかたないけど おちびちゃんはたすけてほしいよ」 (まあそもそも何が仕方ないのかわからないが、いいところをつくな)青年は思う。 たしかに、ゆっくりハウスで処置を施し、自宅に持ち帰って放置したり、 公園の野良に制裁させたりするためにゆっくりの持ち帰りはOKである。 だから、おちびちゃんだけじゃなくて家族そのまま持ち帰ることはできる。 『あー、それはダメなんだわ。僕は実家暮らしだし、親がゆっくり嫌いだから。 ここから連れ出してほしいっていうなら聞かないことはないけど、 そのままゆっくり用ゴミ箱に入れるだけだよ。どっちがいい?』 青年がそういうと、まりさは深くため息をついた。 「…おちびちゃんは まりさたちといっしょでいいよ」 『んじゃ、先にれいむを起こすかな。また気絶してるかな?』 青年がれいむの正面に回るとれいむは餡子を吐いて再び気絶していた。 青年は先ほどと同じように、餡子を口に押し込みオレンジジュースで起こす。 「ごべんだざいごべんだざいごべんだざいごべんだざい。」 何故か知らないが、れいむはいきなり謝り始めた。 『いやいや、君たちは何も悪いことはしてないから。落ち着いてね。』 青年は手を振る。 「れいむ おにいさんのはなしは おわったからだいじょうぶだよ。」 まりさはれいむの頬に頬を寄せすーりすーりする。 「ううううううううううぅぅぅぅぅぅ」 れいむは震えている。 『さて、今度はおちびちゃんに目覚めてもらうよ。』 青年は子ゆっくり二匹が入っている透明な箱を開けると、 寝ている二匹をタオルの上に置き、気付けがわりにオレンジジュースを一滴ずつ垂らした。 「ゆ? ゆっくりおはようだよ。」「ゆ? ゆっくりおはようだじぇ。」 二匹に目覚めるが、隣で震えている母親に驚く。 「お おかーしゃん ゆっくちちてね ゆっくちちてね」 二匹は泣きながら母親をぺーりょぺーりょする。 青年はそんなゆっくりたちに構わず、ゆっくりフードを開け、お皿の上に載せる。 『ここにフード置いておくよ。ということで僕はここで帰るから、後は家族でゆっくりしてってね。』 青年は「ゆっくりしてってね」の声を背に部屋を後にした。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― (今回はまた新たな楽しみ方ができたな。) 青年は帰りの電車で回想する。 青年がゆっくりハウスを利用するのは3回目であった。 1回目は、要領が良くわからず、虐待用具の説明がうまくゆっくりに伝わらなく 襲い掛かってきた親まりさを叩き潰してしまい、あとはもうグダグダになってしまった。 2回目は、前回の反省をふまえ、ゆっくりのぬいぐるみを用意した。 部屋にいたのはゲスで、最初こそ威勢よく「さっさとあまあまもってこい!」と勢いこんだものの、 虐待用具を説明するうちに態度を変え、最後は「たすけてほしいのぜ」と土下座する様に満足した。 ただ、子供を隔離をしなかったので、子供を非ゆっくり症にしてしまい、 間接的とはいえ、子ゆっくりを殺すことになってしまった。 青年はこうして恐怖を植え付けたゆっくり達がどうなるのかを店員に聞いたことがある。 「生き残った分は、またハウスに入れたままにしますよ。 恐怖を植え付けられたゆっくりたちは人間を恐れるんですよ。 人間を見ると震えて逃げる。そんなゆっくりたちを虐待するのを好むお客さんがいるんですよ。 まあただ、他の人間の手がかかってしまっているので値下げをさせてもらいますけどね。」 (しかし、面白いなこれ。また給料が出たら来ようっと。) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ゆっくりカフェ「ゆっとぴあ」内―― シュッシュッシュ 「どうも! 清く正しくきめぇ丸です。」 『わはは、今日もキモカワイイよ、きめぇ丸』 「おお、恐縮恐縮」 土曜日の午後ということもあり、お客さんがたくさん入っている。 青年は、トレイにコーヒーと砂糖水、そしてクッキーを載せて運んでいる。 『お待たせいたしました。アイスコーヒーに砂糖水、クッキーでございます。』 青年はトレイに載っていたものをテーブルの上に置いた。 『おお、ありがとう。』 『ご注文は以上ですか?』 『あ、はい。』 『それではゆっくりしてってくださいね。』 『めーりん、今日はクッキーを頼んだから、一緒に食べようよ。』 「じゃおーん、じゃおーん」めーりんが甘えるようにお客さんの胸に飛び込み頬をこすり付ける。 『こらこら、コーヒーこぼしちゃうだろう? もー。』 青年はテーブルから離れた。 ちなみにクッキーは基本的にはゆっくり用だが、人間も問題なく食べられる。 問題ないどころではない。甘さ控えめでおいしいのである。 青年はトレイを脇に挟み、次の注文を運ぶために調理室へ戻る。 調理室へ近づくと声が聞こえる。 「ちょっと、私のお客さんが注文したアイスティーまだ?」 青年がどうしたんだろうと思い入ると、 店のゆっくりである胴つきゆうかが青年の後輩店員に怒っているところだった。 『すいません。すぐ作ります。』 青年はこれまたお店の子ゆっくりのらんの面倒を見ているところだった。 このらんは下痢状態で、誰かが面倒を見ていなければならない。 どうやら昨日、お客さんの持ち込んだ食べ物を食べてこうなってしまったらしい。 本来、お客が自分で持ち込んだお菓子などをゆっくりに食べさせるのは禁止だが、 その禁止事項を破ってしまったお客さんがいたらしい。 本ゆんは大変そうだが、あにゃるからおかゆを出す様はシュールである。 『僕がすぐ作るよ。ゆうかさん、ちょっと待っててくださいね。』 青年が素早くアイスティーを作る準備を始める。 「お早くお願いしますね。」 ゆうかはぷりぷり怒りながら戻っていった。 「ぽんぽんいちゃいよー」子らんが苦しそうにいう。 『はぁ~』後輩はため息をつきながら、うんうんの処理をする。 『お前も大変だな。』青年は同情する。 この後輩は一番後輩ということもあり、 また本人の性格上ゆっくりにあまり強く出られない性格ということもあり、 どうしてもゆっくりからナメられ易い。 特にさっきの胴つきゆうかから目をつけられている。 (そうだ、彼にゆっくりハウスを紹介してみようかな。 それで無事に仕事ができれば何より、副作用が起こったらそれはそれで面白いかもしれないぞ。) 青年は密かに思うのであった。
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ザクッザクッザクッ ここは街から少し外れた住宅街。 豪雪地帯で有名なこの地方は、昨晩から降り続いた大雪で一面銀世界に様変わりしていた。 「おいっちにー」ザクッ「さんしー」ザクッ 男は除雪用のプラスチック製スコップを片手に雪かきに精を出していた。 今朝は晴天に恵まれたので街まで買出しに行こうと、まずは家の前を除雪しているのだ。 「…あ゛ー。腰にくるなー」 男は雪かきを一休みし、トンットンッと後ろ手で腰を叩く。 久しく力仕事らしいことをやっていなかったらしく、そのツケが腰に回ったようだ。 まあそれもあと少し。今日は買出しに車を使うので、車庫前に積もった雪を除雪すれば最後だ。 そう思いながらスコップでスノーダンプ(ソリのように雪を押して運ぶ除雪用具)に雪を掻き集めていく。 そうして雪で山盛りになったスノーダンプを、家の前の道路脇に運び雪を捨てていく。 「しかしこれだけ雪が降ったってのに今日はこの温度かよ。最近は異常気象が多いな」 男は道路脇に捨てて山盛りになった雪を見ながらつぶやいた。 昨晩の大雪の反動か、今日は季節外れの小春日和になったのだ。 真冬には氷点下になる地域なのに、昼の予想平均温度は15度を超えるらしい。 ニュースでは春が来たと勘違いして桜が咲いたとも伝えていた。 このままなら除雪せずとも雪が溶けそうだが、温かいのは今日だけらしい。 明日からはまた雪が降るので、男は今日中に買出しを済ませたかったのだ。 「よし!雪かき完了!さあてさっさと買出しにいくか…あれ?」 除雪を終えて振り返った男の目には、この季節にはありえない生物が写っていた。 「ゆーん!げんかんさんゆっくりあけるんだぜ!」 「かわいいれいむのおねがいだよ!」 「「「「きゃわいくてごめんにぇー!」」」」 ワケがわからないことを叫びながら玄関に体当たりを繰り返す汚饅頭。いやゆっくりだ。 しかしなぜこの真冬にゆっくりが? ここは豪雪地帯なので街の野良ゆも越冬のため巣に篭るはず。 「ゆっ!こうなったらまどさんをわってはいるんだぜ!」 「さすがれいむのまりさだね!ゆっくりがんばろうね!」 「「「「ゆっくちがんばっちぇにぇー!」」」」 そう叫びならが玄関から窓のあるリビング方面にポヨンポヨンと跳ねていこうとするゆっくり達。 なんとなく子ゆっくりは頭の出来が悪そうだ。 「家主の前で窓を割るとか言ってんじゃねーよ!」 ドガガッ! 「「ゆ゛べべっ!」」 男はそうはさせぬと走りこんで親ゆっくり達を一蹴する。 子ゆっくりは親ゆっくりに追従するだけなので無視した。 「ゆ゛うっ!なんでひどいことするの!まりさなにもわるいことしてないのに!」 「「「「お゛がーちゃん!ゆ゛っぐぢー!」」」」 足を止めるだけの軽い蹴りだったので、涙目ながらもすぐに立ち直った親まりさが文句を言う。 親れいむは落ち方が悪かったらしく、雪に頭をうずめてケツを振りながらもがいている。 子ゆっくり達は親れいむを助けに向かった。よく見るとすべて子れいむのようだ。 「これから悪いことをするんだろうが。言っとくがこの家は俺のだぞ?」 「ちがうよ!ここはまりさたちのおうちだよ!にんげんさんはでていってね!」 「…ここは外だぞ。おうち宣言というのは家の中でやるもんじゃないのか?」 「…ゆっ?」 言われてみれば、まだ家の中に入れてない。 外でおうち宣言してもそれは外の話。家の中で宣言してはじめてゆっくりの巣になるのだ。 「それじゃあ無効だな。じゃ俺は用があるから、さっさとお前らは元のおうちに帰れよ」 男はゆっくり虐待にはこれといって興味がないタイプであった。 もちろん自分に害があれば潰すこともあったが、無害であれば放置するスタンスなのだ。 今回ゆっくり達は家に侵入しようとしたが、未遂で終わったのではじめの蹴りのみでとどめた。 この家の窓はゆっくり対策済みの強化ガラスなので、割られることはないのを知っていての軽い処置だ。 「ゆゆっ!まってねにんげんさん!れいむのはなしをきいてね!」 「「「「きいちぇねー!」」」」 やっと雪から脱出できた親れいむが子れいむと共に話しかけてきた。 「にんげんさんのおうちにきたのは、ゆっくりあやまるよ! れいむたちは、はるさんがきたとおもったんだよ! それなのにゆふさんのままで、ごはんさんがなくなったんだよ!」 「「「「おなきゃしゅいちゃー!」」」」 何度か聞きなおすと、どうやらこのゆっくり家族はこの温かさに春が来たと勘違いしたらしい。 しかも春が来たと安心しておうちに貯めた越冬用のご飯を食べきったようだ。しかしいざ外に出てみると雪が積もったまま。 手詰まりになって仕方なく人間の家に侵入しようとしたらしい。 「話はわかったが…というか何で越冬中なのに子ゆっくりがいるんだ?」 親れいむの横には子れいむが4匹いる。 まだ赤ゆ言葉が抜けていないところを見ると越冬中に生んだと思われる。 「ゆん!さむくてすーりすーりしてたら、がまんできなかったんだぜ!」 「れいむにのかわいいおちびちゃんだよ!」 「「「「きゃわいくてごめんにぇー!」」」」 (…どちらにせよ越冬失敗したんじゃないのかな…) 「…そうだな、かわいい子れいむだね。子まりさはいないのかな?」 男は心の中で本音をつぶやきつつ適当に相槌を打つ。 そろそろ買出しに行きたいのだが、ゆっくり達をどうしようか悩んでいた。 馬鹿なだけで潰すほど悪い奴らではなさそうだが、放っておくのも可哀想になってきたのだ。 「ゆぅ…。まりさにのおちびちゃんもたくさんいたけど、いつのまにかいなくなってたのぜ…」 「ん?越冬中で締め切ったおうちの中でいなくなったのか?」 「そうなんだぜ…ふしぎなんだぜ…」 親まりさはかなり落ち込んでいた。 越冬中は寒気が入らないように入り口は念入りにけっかい!で封じてあるのでに子ゆっくりが外に出れるわけがない。 しかもたくさんということは、4匹以上が行方不明ということになる。まさに神隠しである。 「不思議なことがあるもんだな。れいむはなにか知らないのか?」 ビクッ!「れっれいむもしらないよ!わっわからないよー?!」 ビクッビクッ!「「「「わっわきゃらないよー?!」」」」 なんとなく話を振ると、なぜか動揺しておもわずちぇん語になる親れいむ。 子れいむまで動揺している。 (…こいつら親まりさに隠れて子まりさだけ食ったんだろうな…) 越冬用のご飯が足りなかったんだろう。子まりさが食われたのを気付けなかった親まりさに同情する。 しかし、越冬中に子供を作ってしまったのは親まりさの責任でもある。 れいむ種だけ残したのは親れいむの贔屓だろうが、親れいむなりの苦渋の決断だったんだろう。 (…というか、次は親まりさが食われるところだったんじゃないのかな…) 「そっそれでね!はるさんがくるまで、おにいさんのおうちにおいてほしいんだよ!」 最悪でしかも正解になっただろう予想をしていると、親れいむが悪い流れだとおもったのか、むりやり話を戻した。 「悪いがそれはダメだ」 「「ゆがーん!」」 「「「「ゆぎゃーん!」」」」 男はあっさり断る。躾もなってない野良ゆっくりを家にあげる気はない。 しかしこのまま断るのもかわいそうだ。代わりに車庫の中は…いや、新車だし傷つけられたら困る。 となると外で住めるところとなるが、そんな都合がいい場所は…。 ふと、さっき捨てた雪の山を思い出した。 「かわりにお前らのおうちを作ってやるよ」 そう言って、男はスコップを持ち上げた。 「よーし、これでどうだ?」 「「ゆゆーん!すごいよ!すてきなおうちだよ!」」 「「「「ちゅてきー!」」」」 男は雪の山に横穴を掘って雪洞を作った。いわゆる『かまくら』というやつだ。 人間が入る大きさの穴を掘るのはいくら雪とはいえ重労働だが、あくまでゆっくり用。 ゆっくり家族が入る程度に大まかに掘っただけの横穴だが彼女らには十分だろう。 今日の温かさで程よく溶けて固まっている雪洞は、夜になれば凍って簡単には壊れない強度になるだろう。 「よし、お前らはそこに住め。そこに住むなら春までは餌を恵んでやろう」 「「ゆわーい!これでゆっくりできるよ!!」」 「「「「ゆっくちできりゅよー!」」」」 「でだ、俺はもう買出しに…お前ら風に言えば狩に行かなきゃならん。 暗くなる前には戻るから、それまで餌は我慢しろ。 その間に前のおうちから荷物や巣材をもってこい。このままじゃ寒いだろうしな」 「「ゆっくりりかいしたよ!!」 「「「「ゆっくちー!」」」」 そうして車に乗って男は街へ急いだ。 ついでにゆっくりフードというのも買ってこようかな。 と、すっかりかまくらでゆっくりを飼う気になっていた。 男が出かけている間にゆっくり家族は引越しを終わらせた。 「「ゆゆーん!すてきなおうちになったよ!」」 「「「「ちゅてきになっちゃよー!」」」」 親まりさは大まかに掘られた雪穴をふやけながらもお口で丁寧に仕上げた。 親れいむは冷たい雪の地面に拾ったダンボールを3重に敷き、入り口は発泡スチロールで蓋をして快適にした。 子れいむは宝物のビー玉を大事そうに運び込んだ。 外気が流れ込まなければ、かまくらの中は案外温かいものである。 豪雪地帯であるこの地方なら、春までかまくらが溶けることもない。 あとはご飯さえ確保できれば越冬が可能であろう。 「ゆっゆっゆっ!あとはにんげんさんをやっつければ、あのおうちはれいむたちのものだね!」 「さっきはゆだんしたんだぜ!つぎはまけないんだぜ!」 「「「「ゆっくちちねー!」」」」 ゆっくり親子は人間の家をまだ諦めてはいなかった。 さっきは不意打ちでやられたと思っていた。それにお腹が空いていたので力が出なかったのもある。 そこで人間に取り入って、油断させて体力が回復したら改めて襲おうと画策したのだ。 もっとも体力が万全でも人間に敵うわけがないのだが、所詮はゆっくりの浅知恵である。 男はゆっくりに深く関わったことがなかった。それゆえに通用した策であると言えよう。 「「「「おなきゃしゅいちゃー!」」」」 ゴゴッ 「ゆゆっ!おちびちゃんたち!にんげんのどれいがごはんさんをとってくるまでゆっくりしようね!」 ゴゴゴゴッ 「そうだぜ!おちびちゃんたちは、いなくなったまりさにのおちびちゃんのぶんまで、ゆっくりしてほしいんだぜ!」 ゴゴゴゴゴゴッ ビクッ!「そそそそうだね!ままままりさにのおちびちゃんのぶんまでゆっくりしようねねね!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ ビクッビクッ!「「「「ゆゆゆゆっくちしゅるよよよー!」」」」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ 「さっきからなんだかうるさいよ!おちびちゃんがゆっくりできないよ!」 「そとがうるさいんだぜ!まりささまがみてくるんだぜ!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーッ 「ゆっ?」 親まりさは発泡スチロールの蓋を外し、外へ飛び出したとたん無い首をひねった。 発泡スチロールが音を遮断していたのか、外へ出ると思っていたより近くに、そう、まさに目の前に騒音の原因があった。 予想よりも近くにその物体があったため、親まりさにはそれがなんなのか餡子脳では理解できなかった。 鉄でできた歯が激しく回転し、雪を砕き、飲み込むそれは、少しもゆっくりしていない――― シュガッ! 餡子脳が結論を出す前に、回転する歯が親まりさの体に到達する。 無骨な鉄の歯車が一瞬にして親まりさを帽子ごと蹂躙する。 その勢いは凄まじく、悲鳴をあげることもできずあっという間に四散する親まりさ。 かまくらの中でくつろいでいたれいむ達に返り餡子がかかるほどであった。 ビチャチャ! 「ゆゆっ?おちびちゃんがよごれてるよ!ぺーろぺーろ!…しししあわせー!」 「「「「おきゃーしゃんもよごれちぇるよ!ぺーりょぺーりょ!ちちちあわちぇー!」」」」 親まりさの餡子とも知らず、能天気にもしあわせー!を紡ぎあうれいむ達。 親れいむは知らぬ間にしんぐるまざーだ。 しあわせの余韻に浸る間もなく、親まりさを滅した排雪車がローラーを激しく回転させながら、かまくらの入り口を破壊した。 シュガガガガッ! 一瞬で吹っ飛ぶ発泡スチロール。 ガガガガガガガガッ! 次々と砕け散るダンボール。 「なななななんなのこれええええぇえぇえぇ!?!?」 「「「「ゆわーん!」」」」 あまりのことに、ただ叫ぶだけの親れいむ達。叫ぶのも当然だ。 ゆっくりが越冬する期間にだけ活躍する排雪車は、親れいむも初めて見る大型すぃーなのだ。 そのとき、排雪車の震動でバランスを崩した子れいむから、宝物のビー玉が転がり落ちた。 「ゆ!れいみゅのたきゃりゃもの!」 ローラーに向かって転がるビー玉に、慌てて駆け寄る子れいむ。 「ゆゆっ!おちびちゃん!そっちへいったらだめだよ!」 親れいむの叫びも耳に入らず、ビー玉に駆け寄り口に咥える子れいむにローラーが迫る。 シュガッ! 子れいむの目から上半分が掻き消えた。 その口にビー玉を咥えたまま、まるでオブジェのようにその場に佇む子れいむ。 次の瞬間には下半分も後を追うように掻き消える。 身を砕くはずの鉄のローラーは、やわらかい子ゆっくり相手には鋭利なナイフのようだ。 「ゆ、ゆ、ゆわああああああああああああああぁあぁあぁ!?!?」 「「「おにぇーちゃんがー!」」」 ローラーに負けない勢いで叫ぶれいむ達。 目の前で子れいむが死んだことで、事態の深刻さにやっと気付いたようだ。 しかし回りはすべて雪の壁、唯一の出入口は死を運ぶローラーが回っている。 いわゆる詰み状態だ。 「ま、まりさは?!まりさはどこ?!かわいいれいむをたすけてね!!」 「「「きゃわいいれいみゅをたちゅけてね!」」」 れいむ達は状況を打開するため、奥の壁に張り付きながら親まりさに助けを求める。 すでに排雪と満遍なく混ざり合っているとは気付かずに。 叫んでるうちにローラーに巻き込まれたダンボールが引きづられていく。 その上に子れいむを一匹乗せたまま。 「お、おちびちゃん!もどってくるんだよ!!」 「ゆわわわわ!おきゃーしゃん!たすけ」シュガッ! ダンボールごとローラーに消える子れいむ。断末魔は回転音でかき消された。 先ほどと違いダンボールに押しつぶされたのか、子れいむの中身が返り餡子となって降り注ぐ。 ブシャー!! 「いやあああああああああああああ!おちびちゃんがああああああああああ?!」 「「いもうちょがー!」」 モロに返り餡子を浴びた親れいむが叫ぶ。と同時に返り餡子が口に入った。 先ほどおちびちゃんの汚れを舐め取ったときと似た味がするのに気付く。 いや、さっきのあまあまはどちらかと言えば、前のおうちで潰して食べた子まりさ達の味に近い。 あれ?まりさの味?れいむのすてきなまりさはどこ? やっと親まりさが外に出たことを思い出す親れいむ。 その直後にこの有様だ。ということは… 「あああああああああああ!まりさもしんじゃったああああああああああああ?!」 「「おとーしゃん?!」」 一時期は越冬用の食料にしよう考えたとはいえ、番であるまりさの死にショックを受ける親れいむ。 最後の頼みの綱が切れたのだ。この状況では絶望的である。 「おきゃーちゃん!なきゃないで!れいみゅがいりゅよ!」 「お、おちびちゃん…」 次女の子れいむだ。常に家族をフォローする役にあった彼女は、こんなときも親れいむを元気付けていた。 「れいみゅがおちょなになっちゃら、おきゃーしゃんをゆっきゅりさ」シュガッ! フォローするのも時と場所を選ぶべきだろう。 親れいむの前に立っていた次女の後頭部が丸ごと消えた。 顔の前面だけが残り、目玉がドロリと後頭部の穴から流れ落ちる。 そこには親を元気付けようとした笑顔のまま、目玉のない奇怪なデスマスクが出来上がった。 そのデスマスクも次の瞬間には掻き消える。 「れいむのおちびぢゃんがぁあああああああああ!どぼじでこんなことにいいい?!」 「ゆぎゃぎゃぎゃ!えれえれえれ…」 「あああああああああああ!おちびちゃんがなかみをはいちゃったああああああ?!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 あまりの凄惨さに、ゆっくりできなくなった最後の子れいむが中身を吐き出す。 止める間もなくぺらぺらになる最後の子れいむ。 とうとうしんぐるまざーでもなくなった親れいむだけが残った。 「…ゆっくりしたけっかがこれだよ!!!」 親れいむの最後の叫びごと、かまくらは排雪車に砕かれ消えた。 専用の大型排雪車で巻き上げられた雪は、隣を並走していた大型ダンプに排雪される。 そうしてゆっくり親子の残骸も、雪と共に巻き上げられ大型ダンプで運ばれていった。 日が沈みかけたころ、約束どおり男は帰ってきた。 家の前の道路は大型除雪機でキレイに除雪・排雪されていた。 ゆっくり家族がいただろう、かまくらごと。 豪雪地帯の道路は、各自治体が地元業者に除雪作業を依頼しているのである。 「あちゃー。道路は除雪されるの忘れてたや。庭にかまくら作ればよかったな…」 男は除雪されてキレイになった道路の上に立ちながら、バツが悪そうに頭をポリポリ掻きながらつぶやいた。 男の足元にはダンボールや発泡スチロールの破片に混じって、夕日を受けて鈍く光るビー玉だけが残されていた。 二作目になります。今回から名乗るようにしました。 いま書いてる長編がまとまらなくて気分転換に勢いで書きました。 そのためあまり推敲されていませんがご容赦願います。 もう雪はねはイヤだよ…。 作:248あき 過去作 ふたば系ゆっくりいじめ 633 バス停
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ゆっへん!まりさはとってもつよいのぜ! ※現代設定。ゆっくりの俺設定。 ※人間が出ます。 ※斬新でもなんでもないただの虐待。 「ゆゆーっ!くらうんだぜーっ!」 初夏の山の中。午後の木漏れ日が地面に美しい斑を描いている。 「ゆっへん!まりさにかかれば こんなやついちころなのぜ!」 「ゆーっ!すごいよまりさ!あんなにこわいかまきりさんを やっつけちゃうなんて!」 二匹のゆっくりが狩りを行っていた。 「すごい!まりさはとってもつよいんだね!」 赤いリボンをつけたれいむ種、木の実を集めながら、連れの狩りを眺めている。 「あたりまえなのぜ!しょせんはまりさのてきじゃないんだぜ!」 れいむの連れ、黒い帽子のまりさ種は捕らえたカマキリを、どうやっているのか、舌で器用に掴みながら答える。 びくりびくりとうごめく、半分潰れかかった「獲物」を自分の目の前まで持って行き、少し優越感を顔に浮かべてから帽子の中へしまう。 別に食べる訳ではない。カマキリは堅い上に、そのカマで口の中を切ってしまう可能性もある。ゆっくりが食べられるものではない。 これは言うなれば「勲章」なのだ。自分が強いという、証。 「どうしてまりさはそんなにつよいの?ゆっくりおしえてよ!」 れいむもまりさみたいになりたいよ!得意気な様子のまりさに、れいむは飛び跳ねながら尋ねる。 「ゆっ!とくべつなことはなにもしていないんだぜ!まりさは うまれつきとってもつよかったのぜ!」 身をそらして、胸を張るような仕草をするまりさ。 「ゆゆ~ん♪さすがはむれいちばんの”かりうど”だよ~♪」 「ゆっへん!」 そんなまりさを、れいむは熱のこもった視線で見つめる。恐らくはつがいなのだろう、頬が赤く染まっている。 「れいむのためなら どんなやつだってやっつけてやるのぜ!」 そんなれいむにまりさも顔を赤くして答える。あまりむりはしないでね!と心配するれいむにも余裕の表情をみせる。 その顔は貫禄こそ無いが自信に満ち溢れていた。つまる所、このまりさは若かったのである。 「ゆゆっ!そういえばまりさはさいきんかりにあきてきたのぜ!」 狩りからの帰り道、急にまりさが言った。 「ゆっ!?そんなこといったらごはんをむ~しゃむ~しゃできなくなっちゃうよ!?」 れいむはその唐突な発言に顔を青く染める。れいむは狩りが得意ではなかったし、だからこそ狩りの上手なまりさと番になったのだから。 「かんちがいしないでほしいんだぜ!まりさはかりをやめたいわけじゃないんだぜ!」 「ゆゆっ?どういうこと?れいむにゆっくりせつめいしてね!」 「じゃぁゆっくりせつめいするのぜ!それはね…」 しばらくの後、赤く染まり始めた森にれいむの驚きと尊敬に満ちた声が響いた。 次の日、舗装された道路を跳ねているのは昨日の二匹。 二匹の住んでいた森は人間が住んでいる町からやや離れていたがそれでも歩いていけない距離ではない。 人間の3、4倍は時間がかかるが、ゆっくり達にとってもそれは同じであった。 ゆっ!ゆっ!ゆっ!と掛け声をかけながら進む二匹。その目は朝の日差しを受けてきらきらと輝いているが、理由は日差しだけではない。 希望。これからもずっとゆっくりできるという希望。 ゆっくり特有の小馬鹿にして笑っているような表情も心なしか普段より明るい。 昨日の帰り道でのまりさの提案。こんな提案を思いつくなんて、まりさは頭も良いに違いないよと、れいむは思い、頬を緩める。 緩やかな斜面を登りながら、れいむは新しい暮らしに胸をときめかせ、まりさの言葉を思い出した。 「ばかなにんげんたちをやっつけて、まりさとれいむだけのおうこくをつくるのぜ!」 …まりさはもうよわっちいむしさんたちあいてじゃつまらないのぜ!だからまりさはにんげんをかるのぜ! そうしたらまりさがおうさまで、れいむがおうじょさまだぜ! まりさの言葉を、れいむは何度も何度も頭の中で繰り返す。 ―――あぁ!れいむが王女さま!どんな生活が送れるだろう?あまあまを毎日食べて、ずっとすっきりー!をしようか? うぅん。一日中まりさと日向ぼっこをするのも良いな…――― …そうしたらにんげんをどれいにして、ずっとふたりでゆっくりするんだぜ! …ゆっくりー! ずっとゆっくり、その言葉はゆっくりにとって何よりの幸せ。 二匹には失敗の二文字は存在しなかった。 人間は噂でしか聞いたことが無かったが、まったく恐れることは無いように思えた。 まりさは自分の強さを信じていたし、れいむもまりさの強さを信じていたからだ。 坂を登りきり、まりさ達は実にゆっくりとした表情を浮かべながら、下り坂となった斜面を降りていった。 「ゆゆ~ん。やっとついたのぜ」 「つかれたね!まりさ!」 朝早く出かけた二人が町に着いたのは昼前だった。 「おひるにはまだはやいから、それまでここでゆっくりするのぜ!」 「ゆ~ん♪ゆっくりぃ~♪」 「「ゆっくりしていってね!」」 町のはずれの公園の真ん中に位置する芝生の上。お互いに挨拶をして、寄り添って日向ぼっこをする二匹。 天敵のほとんどいない山に住んでいた二人に警戒という概念は無かった。 しばらくして、太陽が二匹を真上から照らし始めた頃、空腹を感じ始めた二匹は昼食をとることにした。 「にんげんのやついないね!せっかく あまあまをみつがせて む~しゃむ~しゃ してあげようとおもったのにね!」 「しかたないから、ここあたりのくささんをたべてやるんだぜ!」 二匹はぴょんぴょんはねて食べられそうな草を口に入れる。 「「むーしゃ、むーしゃ、それなりー」」 人気の無い公園に二匹の声が響く。 ひとしきり食事を終え、二匹が食後のゆっくりをはじめたときに事件が起きた。 「ゆゆっ!まりさ!にんげんだよ!」 「ゆ!ちょうどいいのぜ!しょくごのでざーとをとってくるかられいむはそこでみてるのぜ!」 「ゆゆーん!まりさかっこいいよぉ!ゆっくりおうえんするよ!」 くたびれた作業着姿、恐らくは先ほどまで工事現場で働いていたのであろう20代半ばの男が、ペットボトルの飲料を飲みながら、公園に入ってきた。 男はゆっくり二匹をちらりと見やると、近くのベンチに腰掛けた。 「ゆっ!おい!にんげん!」 まりさが噛み付くように話しかける。しかし男はそんなまりさを黙殺する。 「ゆゆっ!このまりささまがよんでいるのぜ!むしするなだぜ!」 「きこえないの?ばかなの?しぬの?」れいむも加勢する。最強のまりさがいれば恐いものは無かった。 男は沈黙を続ける。先ほどまでの仕事で出た汗を拭き、また一口ペットボトルに口をつける。 「ゆっ!まりさ!にんげんは、まりさにおそれをなしているよ!さすがだねまりさ!」 「ゆっへん!おいにんげん!にげなくていいのかだぜ?まりさはさいきょうのほしょくしゃなのぜ?」 ピクリ、と男が反応する。理由は怒りでも、当然恐怖でもなく、まりさの言ったある言葉に興味が沸いたからに他ならない。 「ゆっ やっときこえたみたいだぜ!にげるならいまのうちなのぜ!はやくしないとぼこぼこにするんだぜ?」 わずかな沈黙。無表情な男と対照的にまりさは余裕の笑みを崩さない。 「…お前は捕食者なのか?」 ようやく男が口を開いた。男が興味を引いた言葉、それは捕食者という言葉。 「そうだよ!まりさはいままでどんなむしさんにもまけなかったんだよ!とりさんだっておっぱらったんだから!」 「ゆっへん!」 男は深くため息をつく、顔に浮かぶ落胆の顔。 「なんだ、そういうことかよ…」 「そういうことなのぜ!」 意味も無くまりさが胸を張る。男の言葉の真意は当然理解していない。 ”新種ゆっくり高価買取り!”仕事現場の傍にあった加工所のポスターの内容を思い出して、男は再びため息をつく。 男は飲みかけのペットボトルをベンチに置いた。饅頭に期待した俺が馬鹿だったな、と心の中で呟く。 「じゃぁ、お前、本気でかかって来いよ、負けたときの言い訳は聞きたくないからな」 「なにいってるの?まりさがまけるわけないでしょ?ば…」 「馬鹿なの?死ぬの?ってか?死ぬわけねぇだろアホ饅頭、お前はたたかわねぇんだろ?黙ってみてろよ」 「ゆぅぅっ!?」 目を見開くれいむを尻目に男は立ち上がる。少し遊ぶか、と呟いたその声は、二匹には聞こえない。男には少し虐待趣味があった。 一方まりさは怒り心頭だった。自分はまだしも愛しのれいむを目の前でアホ饅頭呼ばわりされたのだから。 「ゆぎぎ…!まりさのだいすきなれいむをぶじょくするなんてゆるさないのぜ!いわれなくてもほんきなのぜ!」 この人間は半殺しにして奴隷として生かしてあげようかとおもったが、やめた。 地獄を見せてやろう、負けたときの言い訳をするのは人間の方だ。人間とゆっくりの圧倒的な差を見せ付けて殺してやる! まりさは怒りのあまり歯を食いしばり男を睨む。男は自分の眼光に怯えるに違いないが、いまさら逃がすつもりは無い。 それなのに。 「早くしろよ。まりさは最強なんだろ?それとも怖いのか?かかってこいよ。動かないでいてやるからさ」 ほら、ここだここ、と男は自分の体をぽんぽんと叩く。 その行為が戦いの合図になった。もっとも一方的な虐殺を戦いと呼ぶのであればの話であるが。 「ゆ゛っがああああああああっ!」 まりさは怒りに身をまかせ、男に腹に渾身の体当たりを浴びせた。 ぽすっと間の抜けた音が鳴る。 当たった!勝負はついたも同然だ!その瞬間まりさは感じた。 枕を床に落とした時のような音を立ててまりさは着地する。視線を上げれば激痛に顔を歪めた男がいるはずだ。もしかしたらもう死んでいるかな? ニヤリ、と口の端を上げて、視線を向けた先には 当然ながら無傷の男が立っていた。 「ゆゆっ!?」 まりさの頬を汗が流れる。 いや、落ち着け。まりさは冷静になって考える。あれはやせ我慢をしているのだ、そうに違いない。無様なものだ、と。 とたんにまりさの顔に再び自信が戻る。 「ゆっ!ゆっ!やせがまんしないでさっさとしぬんだぜ!」 浴びせる連打、連打。今度は足だ。 「まりさ!にんげんはもうむしのいきだよ!がんばって!」 「ゆっ!ゆっ!まっててねれいむ!ゆっ!もうすぐこのにんげんをころすからね!ゆっ!ゆっ!」 しばらくぽすぽすと体当たりを浴びせた後、そろそろだろうか、とまりさは考え、人間の顔を見上げる。 「どうなのぜ!まりさのすーぱーあたっくは!まりさのあまりのつよさにてもあしもでないのぜ!?」 男は冷ややかな目でまりさを見下ろしていた。 「なぁ」 「ゆ!やっとしゃべったのぜ!てっきりしんだのかとおもったのぜ!」 「なにやってるんだ?」 「ゆっ!?」 お前こそ何を言っているんだ?まりさは混乱する。 「甘えてくるのもいいけどよ、そろそろかかってこいよ」 無論男は先ほどからまりさが”攻撃”を繰り出し続けているのを知っている。 要は、ただの挑発だった。 「ゆ゛っぎいいいいいいいいい!!なんでへいきなかおしているのぜええええええっ!?」 「あぁ?今の攻撃だったのか。気がつかなかったよ」 ゲラゲラと男は笑い、その笑いはまりさの怒りの炎をさらに燃え上がれせる 「ゆ゛ぎいぃぃぃ!しね!しねぇ!」 懸命な攻撃。だが男は顔色一つ変えない。 まりさ心に暗雲が立ち込める。何故効かない?何故? しばらくして、まりさがゆひぃ、ゆひぃと息を切らし始めた頃、男が口を開いた。 「走ってから体当たりをしたらどうだ?」 「ゆ!」 男の提案を聞きまりさの顔にわずかな光が戻る。 「ゆっ…へっへっへ…!やっぱりにんげんはばかなのぜ!」 「そのかわりそろそろ俺も攻撃するよ?いいな?」 男が言い終わる前に、すでにまりさは助走を始めていた。 「やってやるのぜーーーーーー!」 いままでのゆん生最大の力を込めてまりさは跳んだ。まりさの脳内には粉々に吹き飛ぶ忌々しい人間の姿が鮮明に描かれていた。 「ゆ゛ぎゃっ」 まりさは地面に叩きつけられていた。顔に痛みが走る。 つがいのれいむはしっかりと見ていた。男がまりさの頭をぴしゃりと叩いたのを。男としてはそのまま攻撃を受けてもまったく問題が無いのだが、気まぐれ、という奴だった。 「ゆぎいいい!いちゃい゛い゛いいい!なんでまりさのこうげきがきがないんだぜえ゛ぇぇぇ!」 まりさは顔の痛みと解けぬ疑問に身もだえする。何故?必殺の攻撃が?何故? 「よーし、俺の攻撃な」 もだえるまりさを無視し、男は足を上げ、まりさを踏みつけた。 「ゆ゛んぎっ!」 ギリギリと、男の足がまりさを死なない程度に押しつぶす。 「ゆ゛い゛い゛い゛…!!!」 自慢のお帽子がひしゃげ、脳天から踏まれて行き場を失った体内の餡子が体の外側へと集まる。 限界まで膨らんだ表皮に裂傷が走り、餡子が漏れ始める。 「ばりざぁぁ!?どぼじだのぉ!?はやぐやっづげでよおお!?」 れいむが叫ぶ。計画では、まりさが人間の群を制圧して、奴隷として働かせるはずだったのに。 「ゆ゛ぎ…ぎ…」 まりさは動かない、動けない。圧倒的質量の前に身をよじる事さえ叶わない。 口を必死に閉じているが少しずつ餡子が漏れ出す。涙が滝のように流れ、体液がぞくぞくと分泌される。 その時、不意にまりさを押さえつける力が無くなった。男が足を離したのだ。 白目を剥いてゆひぃ、ゆひぃと息を吐くまりさを、男が見下す。 れいむは何もいえない、何も言うことが出来ない。最強の夫がなすすべも無く倒されたのだから。 「ゆ゛…どぼじで…にんげんのくせに…」 「どうしてか、教えてやろうか?」 男がニヤつきながら言う。まりさはハッと息をのみ、体に虫が蠢く感覚を覚える。嫌な予感がする、とまりさは感じた。 だがもう、全てが遅かった。 「お前が、どうしようもないくらい弱いからさ」 痛みも忘れ、まりさの頭の中が真っ白になる。 自分が弱い?群れで狩りの一番上手い自分が、弱い? 男は追い討ちをかける。 「どうせ、群れで一番強い自分がどうして、なんて思っているんだろう」 何故分かる。やめろ、やめろ。まりさはとってもつよいんだぞ。 「ところで、お前は群れのゆっくり全員と戦って勝てるのか?」 やめろ、やめろ。まりさの中で何かが急速に崩れはじめる。取り返しのつかない、何かが。 「人間はな、お前らの群れなんざ、一人で皆殺しに出来るんだよ」 「ゆ゛っがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああっ!!!」 叫ぶ、叫べば男の声は聞こえないと信じて。まりさは叫ぶ。今まで積み上げてきた何かを守るために。 「それなのに人間を殺そうと思っただぁ?本当に馬鹿としかいえないな。」 それでも男の声は聞こえる、心をナイフで抉るような感覚を感じる。やめろやめろやめろ。 「まりさ!?まりさああああっ!がんばってえぇ!」 ―――あぁ、れいむのこえが聞こえる、頑張らないと。二人の王国のために。 そうだ、こんな男の言葉に苦しめられている場合ではない。なんとかして倒す方法を考えて――― 「まさか、お前、人間を支配しようなんて思ってないだろうな?」 まりさの思考が止まる。 「だとしたら馬鹿の極みだな。お前みたいな弱っちい饅頭がよぉ、身の程を知れってぇんだよ」 れいむの言葉でわずかに持ち直したかに見えたまりさの心は、その一言で見事に砕け散った。 「や゛べろ゛お゛お゛お゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」 決死の覚悟でまりさは男に飛び掛かる。 「やめねーよ、クソ饅頭」 だが男はまりさの顔面を蹴り飛ばす。 「ゆ゛っげえ゛ぇぇぇぇぇぇっ!!!!」 まりさの顔を今まで味わったことの無いほどの激痛が走る。もちもちの肌はべこりとへこみ、目玉が少し飛び出し、白玉で出来たやわらかい眼球が空気に晒される。 普段はやけたような笑顔を浮かべているその口も苦痛と衝撃でこの上なく醜く歪む。 衝撃で、やわらかい草や花しか食べてこなかった金平糖の綺麗な歯が5、6本折れ、砕け散り、口から餡子が流れ出す。 歯茎から無理矢理歯を、それも何本も抜かれる苦痛にまりさはただボロボロと涙を流すことしか出来ない。 自身が宙に浮かぶ感覚を感じ、まりさは縦にぐるんぐるんと回る。それに合わせて口から吐き出す餡子が、涙が、線を描いて飛び散って行く 「ばりざあああああぁぁっ!!!」 どさり。 数メートル吹っ飛ばされたまりさの体は芝生の上に叩きつけられた。 「ばりざっ!しっがりしでええ!ばりざっ!ばりざあ゛あ゛あ゛あああ!!」 れいむの慟哭も虚しく、まりさはぴくり、ぴくりと弱弱しく痙攣するだけだ。 「うわぁ、本当にゆっくりって弱いのな、まぁあの分だと放っておいても死にはしないよな」 ”弱い”という言葉を聴いたからか、少しだけ強くまりさが痙攣したように見えた。 生命力だけは強いからな。と男はれいむの方へ向き直る。仮に死んだところで、死体は自治体か加工所が回収してくれるので問題ない。 「や・・・やべでね!ひどいごどしないでねっ!」 歩み寄る男にひたすられいむは震える。最強のはずの夫をいとも簡単に倒した男に勝てるはずが無かった。 「おでがい・・・もうやめちぇぇえ・・・!!」 男は無言のままれいむの片方のもみ上げを持ち上げる。 「ゆ゛う゛う゛うううぅぅぅぅ!!」 自重を支えきれないもみ上げがブチブチと嫌な音を立てた。 男はもう片方の腕で傍に落ちていた小枝を拾い上げる。 「ゆっ…?なにずるの?やめてね!やめてね!」 男は笑う。こんなことをする人間がその言葉を聞いてやめるだろうか? いや、ないね。男は否定する。 枝を握った腕を振り上げた。 「ゆ…?ゆゆっ!!やめちぇっ!やめ…ピギイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」 アイデンティティの”ゆ”すら付け忘れる程の激痛。 れいむのまむまむと呼ばれる部位に硬い枝が突き刺さっていた。 その枝は、途中で何本かに短く枝分かれしていて、その枝分かれした部分がれいむの中を滅茶苦茶に突き破っていた。 「ゆっ…!ぎっぎっ…」 歯を食いしばり白目を剥いているれいむを眺める。口角から泡が漏れているが問題ないだろう。 男はそのまま、まむまむから飛び出ている枝を掴み直し、鍵を開けるように回し始めた。 枝がれいむの体内を掻き回す。 再び響き渡る悲鳴。つんざくような叫び声。小鳥のさえずり。遠くで犬が吠える声。 まりさは生きていた。 かろうじて動ける程度だったが、とにかく生きていた。 男はもうほとんど飲みつくしてしまったペットボトルの中身をまりさにぶちまける。 多少の糖分がこの飲料には入っている。 糖分を得ることで、いくらかマシになるはずだった。 「よぉ、雑魚。どうしようもないクソ饅頭」 男が話しかける。糖分を得たおかげで、多少の会話くらい出来るはずだが、まりさは言い返せない。 いや、言い返すことが出来るだろうか。 「よかったな。お前は蹴り一発で済んで」 人間で言えば自動車にはねられたようなもの。良い筈が無いが、男はそう言った。 「お前の愛しのれいむとやらはもっと長い間苦しんだんだぜ」 びくっとまりさが震えた。 「かわいそうになぁ、お前が自分の力を知っていればこんなことにはならなかったのに」 弱っちい饅頭ってさ。と男は続ける。 事実、昆虫程度が自分たちの勝てる限界だということを知っていれば、こんなことにはならなかっただろう。 「れ…れい…むは…?」 ようやくまりさが口を開いた。 「あぁ、アレ?あそこに落ちているから、見に行ってやればどうだ」 俺はもうすぐ仕事始まっちまうから。じゃぁな。男はそれだけ言い残すと空になったペットボトルをゴミ箱に捨てて公園を去っていった。 初夏の午後の太陽の下、夏には早いがそれでも眩しい日差しが公園の芝生に降り注ぐ。 さぁっと涼しい風が吹き、まりさのおさげを揺らした。 「れ…い、むぅ…」 ずりずりとまりさが這う。緑色の芝生のキャンパスに黒い餡の線が描かれる。 激痛と喪失感に耐えて、耐えて。ようやく愛しのれいむの赤いリボンの前に立つ。リボンはボロボロになっていた。 「れいぶぅ…ごべん、ねぇ…」 まりさ弱かったんだよぉ、弱っちぃ饅頭だったんだよぉ。涙と餡子をこぼしながられいむの前へ回り込む。 だから、今までどおり山で草さんを食べて暮らそう、今日の分までゆっくりさせてあげるから… そう言おうと思っていた。 「ひっ!」 しかし、言えなかった。 れいむは酷い有様だった。目玉は抉られ、全身が傷だらけ、殴られ続けたためか、体中ぼこぼこになっていた。 「あ…あ…」 何より、れいむのまむまむからおびただしい量の餡子が出ていて、そして、まるでそれをせき止めるかのように枝が刺さっていた。 一度もすっきりしていなかったのに。ゆっくりした赤ちゃんと一緒にゆっくりしようと思ったのに。 その夢は叶わない。己が弱かったから?それもある。あるが、しかし何よりも。 自分が愚かだったからだ。 必死の思いで、れいむを傷を舐める。甘い味が口に広がる。舐める程度では到底直らない怪我だった。 「ま、りさ…」 「あ…ああ…れいぶぅ…」 れいむが無事だった方の目を開けて、まりさを見た。 良かった生きていたんだね。まりさが言いかけたその言葉をさえぎる様にれいむが言い放つ。 「まりさ どうしてまけちゃったの」 沈黙。絶句。微笑みかけたまりさの顔が硬直する。 「れいむを だましたの」 「れいむ ばかだからしんじちゃったんだよ まりさがにんげんさんにかてるって」 「ねぇ あかちゃん つくれなくなっちゃったよ」 「ここはとってもゆっくりしてるゆっくりぷれいすなのに れいむもうゆっくりできないよ」 ねぇ、まりさ。れいむが続ける。 「れいむはもう えいえんにゆっくりしちゃうんだよ」 「まりさのせいだよ」 れいむは動かなくなった。 「ゆ…ゆっ…ゆわああああああぁぁぁ!!」 まりさは叫んだ。幸か不幸か、れいむの餡子を舐めたことで、まりさの体力は叫べるまでに回復していた。 「おうぢがえる!おうぢにがえる!」 逃げ出すように、まりさはずりずりと動き出した。 もう人間には近づかない。まりさは虫さんくらいにしか勝てないんだから。 ずりずりと、公園の出口を目指す。しかし、まりさが己の後ろにある、自分の餡子以外の”黒”に気がつくことはなかった。 「ゆっ…ゆっ…もう少しだよ…」 公園の出口が見えてきた。日が少し傾いてきたが、この分なら今日中に森に帰れるかもしれない。 男に受けた肉体的ダメージはほとんど回復していた。ぽいん、ぽいん、と間の抜けた音を出しながら跳ねる。 ちくり。 「ゆゆっ?」 まりさは跳ねるのをやめた。自分の足に小さな痛みが走ったのだ。 「ゆ、きのせいだよね」 そう決め付け、歩き始める。 ちくり。 「ゆゆっ!」 再び足を止める。今回は痛みの理由が分かった。自分の頬に蟻が喰いついている。 「ゆゆっ!むしのくせにまりさにはむかおうなんて なまいきなのぜ!」 まりさは下で器用に蟻を掴み地面へ叩き付けた。 人間には絶対に勝てない。だが少なくとも自分は虫よりは強いのだから。まりさは、心中に渦巻く屈辱と悲しみを紛らわせるように、叩き付けた蟻を何度も踏みつける。 たいした時間もかからず、蟻は動かなくなった。 「ゆっへん!ざまあみるんだぜ!」 まりさは潰れた蟻を見下して、帰りを急ぐ。 ちくり。 「ゆゆゆっ!」 ぎょっとして振り返る。蟻が生きていた? 否、死んでいる。では何が? 「ゆーん?」 まりさは首をかしげる様な動きをしてから、何とはなしに振り返る。 夕日に赤く染まった公園。その芝生にまりさの餡子が黒く、伸びている。 男に吹き飛ばされた地点から、れいむの場所、そして公園の出口と、公園を上から見たら、まるでLの字を描くような その軌跡は、まるで筆で書いたように、徐々に細くなっている。傷口が塞がっていっているからだ。 だがその細くなっている所が少しずつ太くなっていく。 甘い黒線を補強していくもう一つの黒い存在。 「ゆぎっ!?いぢゃいぃぃ!なんでふえてるのぜぇぇ!?」 蟻に他ならない。 芝生に付着した餡子よりも本体を狙いに来たようだ。 「なまいきなのぜ!いっぱいいるからかてるとおもったの?ばかなの?しぬの?」 男の言葉を思い出す。 ―――人間はな、お前らの群れなんざ、一人で皆殺しに出来るんだよ――― 「まりさだって!ばりざだって!」 おびただしい数の蟻の群に、まりさは立ち向かう。虫になら勝てる、その発想はもはやまりさにとって揺ぎ無いものとなっていたのだ。 致命的な勘違いをしているとも知らずに。 人間には四肢があり、道具を使い、それを作り出す知能がある。 蟻には強靭な顎がある。カマキリには力強い鎌と顎がある。 では、ゆっくりには? 「まりさはおまえたちになんが!まげないのぜっ!」 まりさはひたすらに飛び跳ね、踏みつける。饅頭ごときの一度の跳躍で昆虫を殺すことは出来ない。 まりさはその体格差から辛うじて殺すことが出来ているだけだ。 「ゆぎっ!?あんよがいだいいぃ!?」 しとめ損なった一匹が、まりさの底部に噛み付いた。 まりさがひるんだ隙に一匹、一匹、黒い粒が這い上がる。 ゆっくりは、人に擬態し、大声で人語を話し、大きく膨れ上がることができる。 それは被捕食者にとっては紛れも無く立派な”武器”。だが、それは狩るものの武器ではない。 狩られるものが狩るものに攻めかかる。その攻撃の先に何があるのか。 「ゆ゛うううぅぅ!?なんでのぼってきてるんだぜぇぇぇ!?」 ちくり、ちくり 黒い兵士たちは、愚かな生物を食らわんと次々と這い上がり、その体に食らいつく。 「やめるんだぜぇぇぇ!!ばりざからはなれるんだぜぇぇ!!」 蟻を引き剥がそうと、ごろごろと転がるまりさ、しかしその行為は逆に自分の首を絞める結果となる。 自分の体に地面の餡子を付着させてしまったのだ。 一気に這い上がる蟻。転がっても転がっても、次から次へと食らいつく蟻の攻撃を止めることは出来ない。 「ゆ゛う゛う゛うううぅぅ!!!」 口から、目の中から、まむまむから、蟻が入っていく。体内を喰らわれる痛みにまりさは叫びを上げた。 今度は蟻を引き剥がすためではなく、痛みに耐えるために転げまわる。少しづつ弱まるまりさの動きとは対照的に 蟻たちはどんどんまりさの体内に侵入していく。 「どぼじでぇ…!どぼじでぇ…!」 まりさは呟く。 むしさんになら勝てると思ったのに、と。 まむまむを蟻に食いちぎられ、まりさは一際大きな悲鳴を上げた。 ―――よぉ、雑魚。どうしようもないクソ饅頭――― 男の言葉が、まりさの中で浮かんで反響し、消える。 悲鳴を上げても、その声が聞こえる。まりさは心身ともに文字通り蝕まれていく。 「いちゃいよぉ…!おうぢ…かえるぅ…」 威勢の良さはすっかり消えて、幼児退行したまりさをあざ笑うように、蟻はまりさの体を喰らい、食いちぎる。 傍から見れば穴あきチーズのように見えるかもしれない。 「もう…や゛…べ…ちぇぇぇ…」 まりさが呟くなか、蟻はいよいよ食事を本格化させ始めた。 夕日は地平線に姿を消そうとしていて、空が赤から紫へと変わっていく。 そろそろ、自治体と加工所のゆっくり回収車が野良ゆっくりとその死体を集める頃だ。 公園の電灯に明かりが灯る。 まりさはまだそこにいた。しっかりと生きたまま。 だがもう長くないだろう。右目は喰われ。体の中身も大半が喰らい尽くされてしまった。 どさり、とまりさは横たわる。もはや体の平衡すら保てなくなっていた。 帽子がまりさの頭から落ちる。だが、それを拾う体力すらまりさには残されていない。 「ばりざ…の…おぼ…し…」 目から、空の眼窩から、涙がこぼれる。 激痛と、狭まった視界と薄れ行く意識の中、まりさが最後に見たものは。 「あ゛…ああぁ…」 蟻によって自分の帽子の中から運び出されていく、まりさのカマキリだった。 そのカマキリは男に踏まれて、以前よりも平べったくなっていた。 あとがき 最後までお読みくださりありがとうございます! 自分は今回がSS初投稿なのですが、ゆっくりできたでしょうか? 今回は、特に目新しい虐待方法もないので少しお兄さん達には食傷気味だったかもしれませんが ゆっくりできたのなら幸いです。 ご意見、ご感想等お待ちしております。 次回作を書くかは未定ですが、ご要望があればご自由に。 最後に:作中に出てくる男の作業着なのですが、服のビジョンは浮かぶのに名前が出てこないという大変もどかしい事に…。 ちなみに某いい男が着用しているようなツナギではありません。 紺色の袴みたいなやつ、なんて言いましたっけ?よくゴム製の草履みたいのと一緒に着用するやつ。 よく返り血ならぬ返りセメントがついてるような感じで足首の辺りでダボっとしてるやつ。うーん。
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『お飾りを操る程度の能力』 19KB いじめ 観察 飾り 群れ ドスまりさ 幻想郷 東方キャラ登場、以前から考えていたネタ 「おーい、ドスが来たんでいつもみたいにお願いするわ」 「了解」 野良作業をしていた青年は友人から声を掛けられた。 友人の言葉に返事をすると青年は作業を中断し村の入り口へとやってきた。 そこにはドスまりさを中心としたゆっくりの群れがニヤついた表情でこちらを見ていた。 「おにいさんがむれのいちばんえらいひとだね?」 「まあね、で、何の用?」 「きょうていをむすびにきたよ!はやくおやさいだしてね!」 「「「「「だしてね!たくさんでいいよ!」」」」」 まだ協定の内容すらも伝えていないのに早くも野菜を寄越せと喚く糞饅頭。 どうせ越冬のための食料が無くなって人里に下りてきたクズどもだろう。 いつもの事なので青年は特に気にせずゲス饅頭どもにハッキリ言ってやった。 「協定も結ばないし野菜もやらん、とっとと出て行け」 「ゆ!?そんなこといっていいの?ドススパークをうつよ!」 「撃てば?」 「ゆゆ!?しにたいのぉ!?ほんとうにうつよ!」 「デブまりさのお前が凄んでもちっとも怖くねーよ、ゆっくり理解しろ」 「ドスはデブじゃないぃぃぃぃ!!もうゆるさないよぉぉぉ!!!」 沸点の低いドスまりさはすぐさまドススパークの発射体勢に移る。 だが…… 「ゆ?」 ドスまりさは頭に違和感を感じた。 なんだろう、とってもゆっくり出来ない気分だった。 そう、まるであるべき物がそこに無いかのように。 ドスまりさはその違和感の正体を確かめるべく頭上を見上げた。 「どぼじでドスのおぼうしがうかんでるのぉぉぉぉぉぉ!?」 そこには何と自分の素敵なお帽子が自分の頭から離れ空中に浮かんでいるではないか。 「おぼうしぃぃぃぃ!!ドスのすてきなおぼうしぃぃぃぃ!!」 予想外の出来事にドスまりさはドススパークを撃つのをやめてひたすら叫び続ける。 ぴょんぴょん跳ねても舌を伸ばしても届かない。 そのあまりに必死で無様な姿に青年はニヤリと笑っていた。 そしてドスまりさと共にやってきた糞饅頭達は…… 「ばりざのおぼうじぃぃぃぃぃ!!!」 「でいぶのおりぼぉぉぉぉぉん!!!」 「ぱちぇのおぼうしぃぃぃぃぃ!!!」 「ありすのかちゅーしゃぁぁぁ!!!」 群れのゆっくりの飾りもまた空中に浮かんでいた。 自分の大切なお飾りを取り戻そうと無駄なあがきを続ける所はドスまりさと一緒だ。 「さてと、お次は……」 青年がそう呟くと空中に浮かんでいたお飾りが一斉にビリビリに破けていった。 「「「「「「どぼじでぇぇぇぇぇぇ!?どぼじでおかざりやぶけちゃうのぉぉぉぉぉぉ!?」」」」」」 大切なお飾りがボロボロになって大絶叫を上げるゆっくり達。 それはドスまりさも例外ではなかった。 「「「「「「これじゃもうゆっくりできないぃぃぃぃぃ!!!」」」」」」 修復不能なほどに細切れになったお飾りが落ちてきたがそれを喜ぶ暇もゆっくり達には与えられなかった。 「「「「「「ゆぐぅ!?」」」」」」 ブチブチブチィィィィ!!! 何と自分達の大切な髪の毛が抜けていくではないか。 しかも自然に抜け落ちるのではなく見えない何かに無理やり引き抜かれているような感覚だった。 当然激痛がゆっくり達を襲う。 「「「「「「いだいぃぃぃぃ!!やべでぇぇぇぇ!!がみのげざんぬげないでねぇぇぇぇ!!」」」」」」 だがゆっくり達の懇願も空しく髪の毛は全て抜けてしまった。 「うわっ、いつ見てもハゲ饅頭は醜いなぁ」 青年の言葉にゆっくり達は反応しない。 自分達にとって命ともいうべきお飾りを全て失ったのだ。 もうこいつらに生きる気力はない。 「どぼじでぇ……どぼじでごんなごとにぃぃぃぃ……」 ほとんどのゆっくりがお飾りを失ったショックで永遠にゆっくりしたがドスまりさはかろうじて生きていた。 無駄に生命力が高いのが仇となったようだ。 だがその目に光は無く同じ台詞をただ連呼するだけである。 「終わったみたいだな」 全てが終わった事を確認した村長がやってきた。 「いつもごくろうさん、あとはわしらでやっておくから戻っていいぞ」 「分かりました」 「お前さんがこの村に居てくれてホント助かるわい、お礼はたっぷりするでな、心配要らんよ」 「いえいえ、自分も好きでやっているだけですから」 青年は村長に挨拶するとその場を去った。 ゆっくりの始末は他の村人がやってくれる。 普通に潰したり非常食にしたりと様々だ。 ドスまりさは危険なので念入りに潰して終わりだが。 「ふぅ、にしても俺にこんな能力が身につくとはねぇ」 幻想郷に住んでいるとたまに変な能力が身につく事がある。 人里に住んでいるこの青年もその一人だった。 その能力とは「ゆっくりのお飾りを操る程度の能力」だ。 お飾りをラジコンのように飛ばしたり先ほどのように細切れにしたりゆっくりの体から引き千切ったりなど様々に。 お飾りとはリボンや帽子だけではなく髪の毛もお飾りに含まれるらしい。 青年の力を使えば一切手を出さずにゆっくりをハゲ饅頭に出来るのだ。 ゆっくりにとって飾りは命そのものといってもいいだろう。 何しろこれが無いと同族と認識してもらえないばかりか忌むべき存在として排除される。 そして何より自分の象徴たるお飾りを失っては二度とゆっくり出来ない。 特に群れのリーダーになる事が多いまりさ種は自分に絶対の自信を持っているためその自信の源を失えばどうなるか。 村にやってきたドスの群れの末路が全てを物語っている。。 いかにドスまりさといえど所詮はゆっくり、精神面は通常のゆっくりと変わらないのだ。 この能力のおかげで青年の村はとても平和であった。 他の村では幻想郷の実力者に依頼したりするので出費もそれなりにあるがこの村ではその心配もない。 僅かなお礼でドスを無力化してくれる青年は村の人気者であった。 だが人気なのは村人だけではなかった。 「はろー、いつもながら見事ね」 「またあんたですか」 野良作業を再開した青年の目の前の空間が裂けその中から胡散臭い笑みを浮かべた女が出てきた。 隙間妖怪 八雲紫である。 青年がこの能力を身につけてからちょくちょくやってくるようになったのだ。 珍しい能力ゆえに青年に興味を持ったのかもしれない。 「またとは失礼ね、こんな美女がやってきたというのに」 「で、今度はどこの群れですか?」 「ふふっ、話が早くて助かるわ」 紫は一枚の紙を青年に渡す、地図のようだ。 「これは?」 「ここにね、とても面白い群れがあるの、今回はその群れがターゲットよ」 「面白い?」 「ふふっ、行けば分かるわ」 紫は不適な笑みを浮かべるだけで肝心な事は喋らない。 「いつもこういう情報提供してくれるのはありがたいですが何故ゆっくりに対してこういう事を?」 「幻想郷は全てを受け入れるわ、ただしその扱いまでは保障しません」 「つまり皆に迷惑を掛け続けるゆっくりの扱いはこれで妥当だと?」 「どうかしらね、あなたのご想像にお任せしますわ」 紫はそう言うと再びスキマの中へと消えていった。 「結局彼女の暇つぶしに付き合わされてるだけか、まあ俺もゆっくり虐待は好きだからいいけどね」 暇つぶしとはいえ、それ相応のお礼を貰っているので文句も言えない青年だった。 翌日、青年は地図を頼りにターゲットの場所へとやってきた。 そこは人間も妖怪もほとんど立ち入らないような寂れた場所だった。 「人間との接触を避けてきた賢い個体の群れか?それはそれで楽しめそうだが」 慎重に進むとゆっくりの声が聞こえてきた。 ゆっくりに見つからない程度の距離で群れの様子を探る。 「みんな!えっとうのたべものあつめごくろうさま!これでふゆをこせるよ!」 「たいへんだったけどこれでゆっくりできるね!」 「みんなできょうりょくすればこれくらいとうぜんだよ!」 「そこで!きょうはみんなのためにアイドルのライブをひらくよ!」 「それはゆっくりできるね!」 「アイドルはゆっくりできるよ!」 アイドル?どうせ美ゆっくりが歌を歌うんだろと青年は思った。 ゆっくりなんぞみんな同じ顔なので美ゆっくりとか人間には判別不可能だが。 「それじゃドスとアイドルのとうじょうだよ!みんな!おおきなせいえんでむかえてね!」 「「「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」」」 司会?のまりさの声と共に広場の目の前の洞窟の中から三匹のゆっくりが出てきた。 大きさからいって二匹はドスまりさだろう。 どうやらこの群れは二匹のドスまりさによって管理されているようだ。 仮に一匹が死んでももう一匹が居れば管理出来るというわけだ。 そしてもう一匹はただの成体まりさのように見えるが…… 「「ドスのおちびちゃん!きょうはみんなにおちびちゃんのびせいをたっぷりひろうしてあげてね!」」 「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」 どうやらドスの子供のようだ。 ドス同士から子供が生まれる事は稀なのでまさしくアイドルのように育ってきたのだろう。 「みんにゃ!きょうはまりちゃのライブにきてくれてありがちょう!いっぱいたのちんでいっちぇにぇ!」 「「「「「ゆおおおおおおおおおお!!!」」」」」 ゆっくりのテンションは最高潮だ。 それにしてもアイドル気取りのドスまりちゃがウゼェ。 青年は即座に潰したい衝動を必死に抑えていた。 「まずはいっきょくめ!「こいいろドススパーク」だよ!」 何が恋色ドススパークだ、原曲に謝れ! 青年は心の中で呟いた。 「ゆゆ~ゆっゆっゆぅ~~ん♪ふふぅぅぅん♪ゆふっゆふっゆっゆぅ~~~~♪」 これのどこが歌だ、うんうんを垂れ流す音と変わらんではないか。 ダメだ、もう限界だ、この雑音を聞き続けていたら俺の精神がイカれてしまう。 青年はそう判断すると早速能力を発動した。 「ゆゆ~ん♪ゆふっゆっゆっゆえ~ん♪……?」 ドスまりちゃは気分良く歌っていたが何か違和感を感じた。 しかし今はライブ中だ、ファンを不安にさせるわけにはいかない。 そう思い歌い続けた。 「「「「「ゆ?」」」」」 その違和感は群れのゆっくり達にも伝わっていた。 というか見てしまった。 群れのアイドルであるドスまりちゃがゆっくりできないものへと変わっていく様を。 ざわざわざわ…… 「ゆ?」 声援がいつの間にかゆっくり出来ない呟きに変わり、さすがのドスまりちゃも歌を止めた。 「ど、どうちたの?ゆっくちしちぇね?」 ドスまりちゃが辺りを見渡す。 「ど、どぼじでそんにゃゆっくちできにゃいめでまりちゃをみるのぉぉぉ!?」 自分に向けられるゆっくり出来ない視線にドスまりちゃが叫ぶ。 「おちょうしゃん!おきゃあしゃん!みんにゃがまりちゃをゆっくちできにゃいめでみるよぉぉぉぉ!!!」 ついに両親に泣き付くドスまりちゃ。 しかしその両親さえも困惑気味な顔でドスまりちゃを見ていた。 「どぼじでしょんなめでみるにょぉぉぉぉ!?」 ドスまりちゃの叫びに両親が口を開く。 「おちびちゃん、おぼうしはどうしたの……?」 「ゆ?おぼうち?ゆゆぅぅぅぅぅ!?」 ここでようやく自分の頭に素敵なお帽子が無い事に気づくドスまりちゃ。 「ま、まりちゃのおぼうちぃぃぃ!?どこなのぉぉぉぉぉ!?」 「お、おそらにうかんでるよ……どうしてだろうね……」 「ゆぅぅぅぅぅぅぅ!?」 親の言葉に空を見上げるとそこには確かに自分の素敵なお帽子が浮かんでいた。 「にゃんでぇぇぇぇ!?どぼじでぇぇぇぇ!?まりちゃのおぼうちがぁぁぁぁぁ!!」 ドスまりちゃはぴょんぴょん跳ねて必死に帽子を掴もうとするが無駄だ。 「おちょうしゃぁぁぁん!おきゃあしゃぁぁぁぁぁん!とっちぇぇぇぇぇぇ!!まりちゃのおぼうちとっちぇぇぇぇ!!」 「わかったよ!おちびちゃんのおぼうしさん!おりてきてね!」 「すぐでいいよ!ゆっくりしないでね!」 両親は必死に跳ねるがそれでも届かない。 両親の身長を遥かに越える高さに帽子が浮かんでいるのでどうあがいても無駄だった。 「はやくはやくはやくぅぅぅぅぅ!!!おぼうちないとぜんぜんゆっくちできにゃいよぉぉぉぉ!!」 素敵なお帽子をかぶっていないと多大なストレスに襲われるのだろう。 ドスまりちゃの声にも最初と比べ明らかに焦りや恐怖と言ったものが含まれてきた。 だが両親にもどうにも出来ない、飛行能力のないまりさ種では打つ手なしであった。 「やじゃやじゃやじゃやじゃぁぁぁぁぁぁ!!!おぼうちおぼうちおぼうちおぼうちぃぃぃぃぃ!!!」 ドスまりちゃは既に誰の目から見てもゆっくり出来ないゆっくりになっていた。 最初こそは同情的な視線だった群れもこうもぎゃーぎゃー喚き続けられると不快な気分になってくる。 そしてついに不満が爆発した。 「うるさいよ!おぼうしのないまりさはゆっくりしんでね!」 「おかざりもまんぞくにかぶれないゲスはさっさときえてね!」 「おお、おろかおろか」 「おお、むのうむのう」 「アイドルもいんたいだね!」 「どぼじでしょんなこというにょぉぉぉぉ!?」 群れの皆からの罵倒にドスまりちゃは泣き叫ぶが皆はそれを無視しひたすらドスまりちゃに暴言を吐き続ける。 そんなゆっくり出来ない群れに我慢できなくなった両親のドスが注意する。 「みんな!かわいいおちびちゃんにそんなこといわないでね!」 「そうだよ!そんなこというやつはゆっくりできないよ!」 だが群れの皆も反論する。 「おかざりのないやつをゆっくりできないといってなにがわるいの!?」 「ドスはおかざりのないそいつとれいむたち、どっちがゆっくりできないとおもうの!?」 「ゆぐ!?」 「そ、それは……」 両親もそれには言葉を詰まらせる。 自分のおちびちゃんは大切だ、しかしお飾りの無い奴はゆっくり出来ない。 善良な個体でもお飾りの有無でその対応も変わってしまう、それがゆっくりの変えられぬ性根であった。 そして事態はさらに悪化していく。 ビリビリビリ 「ゆゆぅぅぅぅぅ!?まりちゃのおぼうちがぁぁぁぁぁ!?」 叫び疲れてただ自分の素敵なお帽子を見上げていたドスまりちゃだったが そのお帽子が空中でビリビリに裂けていくと再び叫び始めた。 「にゃんでぇぇぇぇ!?にゃんでなのぉぉぉぉぉぉ!?」 やがて細切れになった素敵なお帽子がようやく落ちてきた。 「あ……あああ……まりちゃの……まりちゃの……ああああーーーーーーー!!!」 細切れになった自分の素敵なお帽子を目の前にドスまりちゃは号泣する。 そんなドスまりちゃに更なる追い討ちが。 「ゆえぇぇぇん!ゆえぇぇぇ……ゆ?ゆゆ?」 耳障りな声で泣いていたドスまりちゃだったが自分の身に異変が起きたのを感じた。 その異変の源は自分が毎日お手入れして綺麗にしていた可愛いおさげからだった。 そのおさげはドスまりちゃの意思とは無関係にピンと横に伸びる。 まるで自らの意思でドスまりちゃから離れようとしているかのように。 「ゆゆぅぅぅ!?おしゃげしゃぁぁぁん!ゆっくちしちぇねぇぇぇぇ!!まりちゃからはなれちゃだめぇぇぇぇ!!」 必死に抵抗するドスまりちゃだがおさげが離れようとする力のほうが強いらしく ドスまりちゃはおさげに引きずられる形になった。 「いぢゃいぃぃぃ!!まりちゃのしゅんそくのあんよしゃんがぁぁぁぁ!!だれきゃぁぁ!!たしゅけちぇぇぇぇ!!」 自慢のあんよを地面に削り取られる激痛にドスまりちゃは泣き叫ぶ。 「お、おちびちゃぁぁぁん!なにしてるのぉぉぉ!?」 「やめてぇぇぇぇ!!そんなことしたらゆっくりできないでしょぉぉぉ!?」 状況について行けず呆然と見ていた両親だったがようやく動き始める。 二匹がかりでドスまりちゃを押さえつけた。 しかしおさげだけはドスまりちゃから離れようとピンと伸びたままだ。 「いぢゃい!いぢゃい!いぢゃいぃぃぃ!!まりちゃのおしゃげしゃんがぬけるぅぅぅぅ!!」 「なんなのぉぉぉぉ!?いったいなにがおきてるのぉぉぉぉぉ!?」 「わからないよぉぉぉぉ!どうしでおちびちゃんのおさげがはなれようとしてるのぉぉ!?」 泣き叫ぶドスまりちゃ、混乱する両親、そしてそれを傍からゆっくりできない視線で見つめる群れのみんな。 「いっぎぃぃぃぃ!!おしゃげしゃんがぁぁぁ!!ぬけるぅぅぅ!!ぬけちゃうぅぅぅぅ!!」 ついにおさげの根元がブチブチと音を立てて抜け始めた。 「やじゃよぉぉぉぉ!!おしゃげしゃんぬけないでぇぇぇ!!まりちゃのたいせつなおしゃげしゃんなのぉぉぉ!!」 ブチ だがドスまりちゃの願いも空しく大切なおさげとやらは完全に抜けてしまった。 「ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!おしゃげがぁぁぁぁ!!まりちゃのおしゃげしゃんがぁぁぁぁ!!!」 完全に抜けるとおさげは使命を果たしたのかその場に落ちて動かなくなった。 「にゃんでぇぇぇぇ!?どぼじでぇぇぇ!?まりちゃなにもわるいことしてないのにぃぃぃ!!」 帽子に続いておさげまで失ったドスまりちゃ。 だが不幸はこれだけではなかった。 「ゆぎぃ!?まりちゃのきんぱちゅしゃんがぁぁぁぁ!?それだけはかんべんしちぇぇぇぇ!!」 ドスまりちゃに残った最後の宝物、さらさらの金髪さんまでもが離脱を開始したのだ。 ぼろぼろ抜けていく金髪、当然痛みもあるがそれ以上に自分のゆっくりが失われる喪失感にドスまりちゃは絶叫する。 「まりちゃいいこになりましゅぅぅ!!だからきんぱちゅしゃんだけはぁぁぁぁ!!おねがいしましゅぅぅぅ!!」 「ゆゆぅぅぅぅ!!おちびちゃんのきんぱつさん!おかあさんからもおねがいするよ!ゆっくりしてねぇぇぇぇ!!」 「みらいをになうおちびちゃんなんですぅぅぅ!!きぼうあふれるみらいをうばわないでねぇぇぇ!!!」 ついに両親はドスまりちゃの金髪に向かって土下座し始めた。 理解不能だがこの金髪さんはおちびちゃんがゆっくりできないから離れようとしていると思い説得を始めたらしい。 しかしそんな両親の必死の説得も空しく金髪は全てドスまりちゃから抜けて地面へと落ちた。 「どぼじでぇぇぇ!?つるっぱげじゃおちびちゃんがゆっくりできないでしょぉぉぉ!?」 「これじゃまりさなのかほかのゆっくりなのかもわからないよぉぉぉぉ!!」 「ま、まりちゃ……つるっぱげ……すきんへっど……あっ……がっ……ごっ……げっ……」 まりさ種にとって帽子と金髪、おさげは自分の象徴そのもの。 それを失ったドスまりちゃにもはや生きる気力はなかった。 「ゆっ ゆっ ゆっ ゆっくち!ゆっくち!ゆっくちぃぃぃぃ!!!」 ゆっくりがゆっくり出来ない極限の状態に陥った時に発症する非ゆっくち症、ドスまりちゃはそれを発症してしまった。 「ぞ、ぞんなぁぁぁぁぁ!?おちびちゃぁぁぁぁん!へんじしてねぇぇぇぇ!!」 「どぼじでぇぇぇぇ!?どぼじでごんなごどにぃぃぃぃ!?」 二度と治らぬ病気に掛かりゆっくり出来ないおちびちゃんとなったドスまりちゃの前でゆんゆん泣き叫ぶ両親。 そんな三匹の様子を見て群れのみんなが呟いた。 「ゆっくりできないんだぜ」 「もうこのドスはだめだね」 「そもそもあのおちびもかわいくなかったよ」 「れいむのほうがずっとかわいいよ」 「まりさのおぼうしのほうがずっとりりしいのぜ」 「きっとあのちびがゆっくりできないやつだからおかざりがにげたんだぜ」 「おかざりにまでみすてられるなんてゲスのなかのドゲスだね」 「いいきみなんだぜ、ゆひゃひゃひゃ!!」 「「!!」」 群れの声は両親にもはっきり聞こえていた。 そして群れへの怒りがこみ上げてきた。 なんだ、こいつらは。 人間とも妖怪とも関わらないように気を配って群れをゆっくりさせてきたというのに。 ゲスな行為をする者には容赦なく制裁をしてきた。 ゲスにならないように必死に教育もした。 仲間同士で協力しお互いを思いやれる優しいゆっくりの群れだったはず。 それがこうもあっさりと崩れ去った。 お飾りが無いというだけでここまで豹変するものなのか。 自分達のしてきた事は何だったんだ。 自分達の苦労を返せ、返せ、返せ! そして両親の怒りは爆発した。 「「このゲスどもがぁぁぁぁぁ!!!ゆっくりしねぇぇぇぇ!!!」」 両親は一斉にドススパークを放ち群れのゲスどもを灰にしていく。 「ゆっぎゃぁぁぁぁぁ!?」 「やめてぇぇぇ!!やめてねぇぇぇ!!」 「あやまるからぁぁぁ!!だかられいむだけはゆるしてぇぇぇぇ!!」 「まりさははんせいしたのぜぇぇぇ!!だからゆっくりさせるのぜぇぇぇぇ!!」 「さっきのはじょうだんですぅぅぅぅ!!あんなことかんがえたこともありません!!だからゆるし……!!」 「おちびちゃんだけはぁぁぁぁ!!かわいいおちびちゃんだけはみのがしてぇぇぇぇぇ!!」 「ま、まりさはにげるのぜぇぇぇ!!でいぶはそこでしぬといいのぜぇぇぇ!!」 「どぼじでそんなごどいうのぉぉぉぉ!?でいぶはしんぐるまざーなんだよぉぉぉ!?」 成体も子も関係ない、このゲスともを全滅させる、それしか両親の頭には無かった。 やがて群れは全滅し両親と非ゆっくち症のドスまりちゃだけが残った。 「さあ、おちびちゃん、ゲスはみんなせいさいしたよ」 「これでゆっくりできるね、ゆふふ……」 両親の目、あれは完全に狂った目だ。 最愛のおちびちゃんがゆっくり出来なくなり、信じていた群れの皆からの裏切りでイカレてしまったのだろう。 「ああなっちゃもうだめだな、あんな状態ではおそらくお飾りを奪っても面白い反応は期待出来ないだろう」 見物していた青年はそう呟く。 「まああのアイドル気取りのドスまりちゃでお腹一杯だけどね、あいつらどうしようか?一応ハゲ饅頭にしとくか」 「それには及ばないわ」 「え?」 突然目の前の空間が裂け中から相変わらず胡散臭い笑みを浮かべた紫が出てきた。 「なんでいつもそんな登場の仕方なんです?普通に出てきてくださいよ」 「この方が楽だし」 「はぁ……そうですか、で、あいつらは放っておいていいんですか?」 「あいつらは私達のほうで処分しておくからって意味よ」 「いいんですか?」 「ええ、部下の稽古相手に丁度いいし」 「はぁ……」 「というわけで、橙、出てらっしゃーい」 「はーい、呼びました?紫様」 紫が手を叩くと空間が裂けその中から橙が現れた。 「今回の課題はアレよ、あいつらを5秒以内に消しなさい」 「はい、分かりました!」 元気良く返事をする橙、直後その姿が消えた。 「「ゆごぉ!?」」 「ゆぴぃ!?」 すると今度はほぼ同時にドス親子の絶叫が。 青年がドス親子に視線を向けた時には既にドス親子には無数の切り傷が出来ておりその体が崩れ落ちようとしていた。 だが体が崩れ落ちる前にその姿は無数の弾幕によって押し潰され消し飛んだ。 こうしてドスの群れは完全に滅んだのである。 「ちょ……一瞬で終わった……」 「紫様!終わりました!」 「……3秒弱、まあいいでしょう、もっと精進する事」 「はい!頑張ります!」 「よろしい、では帰るわよ」 「はい!」 「という事でまた情報あったら伝えにいくわね、それじゃ」 「さようなら~」 紫と橙はスキマの中へと消えていった。 「……何、あのチート、強すぎだろ……」 あまりに一瞬の出来事に呆然とする青年。 「相変わらず妖怪は怖いなぁ、あんなのに狙われるゆっくりが哀れに思えてくるわ」 ならば妖怪よりマシな人間の手で永遠にゆっくりさせてやろう。 それが慈悲というものだ。 青年はそう思いながら帰路についた。 しかし人間も妖怪に負けず劣らず残酷である。 それを青年が理解するのはいつの日か。 今まで書いたもの anko2161 まりさには不幸がよく似合う anko2051 流行り物の宿命 anko2027 まりさと図書館でゆっくり2 anko1982 れいむはゆっくりできない anko1949 まりさと図書館でゆっくり1 anko1875 幽々子のゆっくりいじめ anko1838 まりさつむりはゆっくりできない
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まりさに出会うまで・・・・・ 17KB 愛で 観察 不運 差別・格差 野良ゆ 子ゆ ゲス 都会 現代 虐待人間 独自設定 うんしー ぺにまむ デスラッチ外伝03 ○○あき 作 デスラッチ外伝03 『まりさに出会うまで・・・・・』 ○○あき 作 独自設定が強いです。ゆっくりの食料にお食事前には、不適切な物も含まれるので注意して下さい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 夜を迎えても光を失わない都会、街灯が降り落ちる雪を輝かしていた。 既に地面は薄っすらと雪化粧を施され、穢れた都会を覆い隠す。 街に生きる野良ゆっくりもこの時間は活動する事もなく、公園は一時の静寂を取り戻していた。 そんな公園に現れた、派手な服装に身を包んだ女性。 その手にはぺット用のキャリーバック。 女性は周囲に人がいないのを確認すると、バックの中身を地面へとぶちまける。 『ゆぎぃいぃぃぃだいぃぃぃぃ!でいぶのびゅ~てふるなおかおがぁぁぁぁぁぁ!!』 現れたのは、白く染まった景観を損なう薄汚い饅頭。 痛みに悶えるでいぶを放置して女性は、そそくさと公園を去ってしまう。 でいぶが気がついた時には、既に人の気配はそこには無かった。 『ゆゅ?くそどれぃぃぃどこにいっだぁぁぁぁぁぁぁ!はやくでいぶをゆっぐりざぜろぉぉぉぉぉぉ!!』 いくら喚いても誰も現れない、こうしてでいぶは真冬の公園に捨てられた。 水商売の女性が寂しさを紛らわす為に、ペットを飼うのはよくある話。 それが会話も出来そうなゆっくりを選ぶと言うのも、分からない話ではない。 躾けをされた金バッチゆっくりは、1人暮らしの孤独感を癒してくれる。 だが甘やかすとゆっくりは、すぐにゲス化してしまう。 蓄えた知識をうんうんと共に排出してしまうので、飼い主は注意する必要があるのだ。 常に品行方正を教え続ける事はとても難しい。 家族でもいれば可能なのかも知れないが、その家族がいない心の隙間を埋めるためのペット。 これでは上手くいくはずも無い。 最初はでいぶも飼い主の女性を、ゆっくりさせる使命を果たそうとしていた。 やがては帰宅は早朝、日中は寝て過ごしている女性を疎むようになり。 暴言を吐くようになった頃からは、餌こそ与えては貰えたが会話もしてもらえなくなり。 そして今日、この公園に捨てられた。 金バッチだった知識や容姿も既に過去の物。 糞尿に汚れ運動不足にでっぷりと太った身体が、醜悪な様子を漂わしている。 『ゆぎぃぃぃぃぃ!ぜぇっだいにゆっぐりじでやるぅ!でいぶはゆっぐりずるんだぁぁぁぁぁぁぁ!』 ゲス化はしていても、金バッチを取得できた程の優良種。 捨てられた事をすぐに理解し、野良として生きていく方法を考え始めた。 本能を抑える訓練がされている金バッチの特性は、でいぶに強い能力を与える。 それが黙して目標に近づく事、単純な事ながら野良には絶対出来ない。 でいぶが最初に始めたのは住処の確保。 人目につかない場所にあるゆっくりのおうちの中でも、耐久性や住み心地の良さそうな物件を見て回る。 そうして目をつけたのが人が通れない、建物の隙間に作られたぱちゅりーの住居。 『ゆんゆん!これならでいぶもゆっぐりできそうだよ!』 静かに住居に近づく。 中の様子を隙間から伺うと、ぱちゅりーはまだ眠っている。 それを確認すると一気に、入り口のビニールを捲り上げて中へと突入した。 『ゆっくりしていってね!』 『むきゅ?ゆ・・・ゆっくりしていってね。』 でいぶはおうちに突然進入するなり、挨拶を発してぱちゅりーを本能で硬直させた。 そのままぱちゅりーを押し倒し、ぺにぺにを問答無用で挿入させる。 「すっきりー」等と言う言葉も発せずに、精子餡を注入するでいぶ。 ぱちゅりーのお腹はみるみる膨れだす、こうしてでいぶはぱちゅりーと番となる事に成功した。 子供を自分では無くぱちゅりーに生ませたのは、野良での身重のリスクを避けたかったから。 再び飼いゆを目指さなかったのは、野良が飼いゆになれる成功率の低さを案じたからである。 まさに金ゲスと言えるだけの能力を有していた。 『じゃあいってくるよ』 『むきゅう・・・いってらっしゃい・・』 でいぶは狩も自身で行った、日中は避け深夜に出かける。 繁華街には酒に酔った人間が多く集う。 酔った人間はよく物を落とす、その中には当然食べ物もあった。 それを目ざとく見つけては、住処に持ち帰える。 他にも酔って嘔吐された物が、電柱などの物陰に放置されているのを集めたりもした。 ゴミ箱を漁れば人間にいつか駆除されてしまう。 しかし落し物や嘔吐された物ならば人目につきにくい。 2週間もすると3匹の子供が生まれた。 『ゆっくちうまりゅるよ!』 『ゆ~んかわいいおちびちゃんだよ!ゆっくりしていってね。』 れいむ2匹とぱりゅりー1匹が誕生した。 しかしでいぶは、自身に似ていない赤ぱちゅりーが気に入らない様子。 『ゆゅ?でいぶににてないこがいるね、こんなおちびはかわいくないよ! このちびのせわはぱちゅりーがしてね!ごはんもでいぶのはあげないよ!』 『むきゅう?れいむ・・・それはよくないとおもうわ・・・・』 『なに?でいぶにさからうの?』 『むきゅう・・・・・・・・・ゆっくりりかいしたわ・・・・』 でいぶは2匹の赤れいむだけを溺愛した。 繁華街には普通ならば、野良が口には出来ないようなご馳走が落ちている。 『さぁおちびちゃん、い~ぱいむ~しゃむ~しゃしてね。』 『む~ちゃむ~ちゃちあわちぇ~』×2 『おすししゃんはおいちいにぇ~』 『け~きしゃんはと~ちぇもあみゃあみゃだにぇ~』 下心溢れるサラリーマンのキャバクラ嬢への、手土産だった高級ケーキや折り詰め寿司。 酔った人は、地面に落とした物は食べないし拾わない。 しかしこのご馳走を赤ぱちゅりーが、味わう事は1度も無かった。 母ぱちゅりーの持ってこれる食べ物は、道に生える雑草が精一杯。 『むちゃ・・むちゃ・・・ふちあわちぇ・・・』 『むきゅう・・・おちびちゃんごめんなさい・・・ままがふがいないばかりに・・・・』 母ぱちゅりーも野良としては、かなり優秀な方ではあったが身体能力に自信がない。 残飯に慣れてしまった野良が食べれない雑草を糧とし。 おうちを作る場所やその材料等に、知恵を活かしこれまで生き延びてきた。 そんな能力も金ゲスの前では役には立たず、でいぶの言う事に逆らえず言いなりとなる。 満足に食べる事も出来ず赤ぱちゅりーの成長は、姉に比べてかなり遅くなってしまう。 『やっぱりくじゅはちいちゃいにぇ~』 『けらけらけら~うっきゃりしちぇふんじゃいそうだよ。』 『むきゅう・・・ぱちゅはくじゅじゃにゃいわ・・・・・』 甘やかされゲス化してしまったか、小さい妹を姉2匹は見下し軽蔑する。 ある日、そんな生活が突然終わりを告げる。 でいぶがいつも通り、深夜の狩に出かけた時の事。 この日も繁華街は日常の憂さをはらさんと、やってきた人々で賑わっていた。 物陰で様子を窺い待ち伏せるでいぶ。 「さぁ~今日もいい気分になった所で、愛しの紫ちゃんに会いにいくぞぉ!」 ほろ酔い加減の男性が歩いてきた、その手には手土産の高級ケーキ。 本人はそれ程酔ってはいないつもりで、足早に歩いていてスーツを看板の角に引っ掛けてしまう。 「ふ~ふ~ふ~ん~ってあぁぁぁ!」 その拍子に誤って、ケーキを地面に落としてしまう。 これでもうケーキはお土産には使えない、かと言って持ち帰る事も面倒である。 いつも通りこの男性も、このケーキを放置して去っていくはずだった。 名残惜しそうに見ていたがやがて溜息をつき歩き出した瞬間、でいぶの後ろから大きな声がする。 『りぇいむにょあみゃあみゃさんだぁ~きゃわいぃりぇいむにはやくよこちぇぇ~』 『ゆゅ?おちちゃんどうしてここにぃぃぃ!』 後ろを振り返ればそこにいたのは、テニスボール大まで成長した長女の子れいむ。 母の帰りを待ちきれず、でいぶの狩について来ていたのだ。 その遠慮も何もない大声は、当然男性の耳まで届いている。 自身の失敗とは言え、せっかくの手土産が台無しになったのは気分が悪い。 そこに現れた薄汚い饅頭、しかもその落としたケーキを自分の物だと主張しているではないか・・・・ 「あぁ?誰のケーキだと?」 『ゆゅ!でいぶのあんよさんが・・・どおじでつかまっているのぉぉぉぉぉ!』 『おちょらをとんでるみちゃいぃ~』 子供に気を取られていたれいむは、逃げるタイミングを逃してしまう。 怒った男性の腕は、でいぶと子れいむを捕らえる。 「誰がお前のだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 そして怒りに任せて子れいむを掴んでいる手を、壁に向かって大きく振り切った。 バチィーーーーーーーーーーーーーーーン!! 『ゆ”・・・・・・・ゆ”・・・・・・・・・・・・ゆ”』 子れいむは全力で壁に叩きつけられ壁に張り付き、破裂してそこに餡子の花を咲かせる。 呻き声は上げてはいるが即死状態。 『でいぶのおちびちゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』 「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 壮絶な我が子の死を目の当たりにし、でいぶは絶叫してしまう。 その声が癇に障ったのであろう、男性はでいぶを掴んだまま地面に叩きつける。 『ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!でいぶのこがおのおかおさんがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』 「オラァオラァオラァオラァオラァオラァオラァオラァオラァオラァオラァァァァァァ!!!!」 男性の怒りは更にボルテージを上げていく。 何度もでいぶを地面に叩きつけ、顔が判別つかない程に潰してしまう。 「ぜぇ~ぜぇ~誰が・・・お前等みたいな糞饅頭にやるために、こんなくそ高いケーキなんか買うかよ!」 『で・・・・・・・で・・・い・・ぶは・・・・・・・く・・そ・・・まんじゅうかんか・・・・じゃ・・・』 「いいからさっさと死ねぇぇぇぇぇ!!!」 男性の靴が、でいぶの背中から口を貫き出てきた。 餡子に塗れた靴をでいぶから引き抜くと男性は、寂しそうに背中を丸めて繁華街を後にする。 汚れた姿では愛しい紫ちゃんに会いに行けない、これでは今日の所は帰るしかなかった。 でいぶ一家はこの日、稼ぎ頭と子供を1匹失ってしまう。 これで困ったのは、残された次女の子れいむ。 今まででいぶに甘やかされて育ち、豪勢な物ばかりを食してきた。 しかしこれで、2度と手に入らなくなってしまったのである。 『むちゃ・・ゆげぇぇぇぇ・・こんにゃにぎゃいのなんきゃたべりぇにゃいぃぃぃぃ!! け~きしゃんやおすししゃんがたべちゃいぃぃぃぃ!!』 『むきゅう・・・ごはんさんはそれしかないのよ・・・・・』 『ぱちゅはこけしゃんだいしゅきよ。』 冬に生える植物は少ない、この日もぱちゅりーが獲ってこれたのは雨樋に生えていた苔。 仮に他の植物が見つかったとしても、口の肥えてしまった子れいむには食べる事は出来なかっただろう。 だがこれまで虐げられてきた子ぱちゅりーは、苔や雑草を食べる事が出来る。 不幸に育った事が逆に、野良として生きていく術を与えた。 『りぇいむをゆっくちさしぇないくじゅなおやなんかしゃっしゃとちねぇ!』 『むきゅう・・・おちびちゃん・・・・わかったわ・・・・いっしょにきなさいおちびちゃん。』 子れいむの我侭に大きく溜息をつくと、ぱちゅりーは子ぱちゅりーを連れて出て行った。 そしてこの場所には戻って来る事はなかった。 栄養状態の良かった子れいむは、それから1週間もの間を誰もいないおうちで待ち続ける。 空腹に堪えかねたのか・・・ 『おにゃかちゅいたよぉ・・・ゆゅ?にゃんかあみゃあみゃしゃんのにおいがしゅるよ?』 ついには自分の出したうんうんを食べだす。 幸か不幸か誰も面倒を看ていなかったので、子れいむが出した糞尿でおうちの中は溢れていた。 食べては出し、出しては食べの生活を続ける。 だが需要に供給が追いつかない、やがてはそれすらも出来なくなり動けなくなっていく。 『だれきゃ・・・きゃわいぃりぇいむを・・・ゆっくちしゃしぇてぇ・・・・・・・・』 テニスボール程度だった大きさは、生まれた時のピンポン球にまで萎み。 失った餡の分伸びきった皮が弛んでいて、その姿は陸に上がった干からびたクラゲの様。 その時、おうちを覆っているブルーシートが揺れて、おうちの中に何者かが入ってきた。 『ゆゅ?』 一瞬、母ぱちゅりが戻ってきてくれたのだと喜ぶ。 そして可愛い自分を何日も放置するとは、なんて酷い親だと憤った。 だがそこにいたのは、灰色の毛並みを持つ生物。 『ゆわわわわわわわ!ねずみしゃん・・こっちにこにゃいでぇぇぇぇぇぇぇ・・・いちゃいぃぃぃぃぃぃぃ りぇいむはたべもにょじゃにゃいぃぃぃぃだちゅげでぇぇぇりぇいむじにちゃくにゃぃぃぃぃぃぃぃぃ!』 歓迎されぬ侵入者は、子れいむの伸びた皮から齧っていく。 やがてその牙は、白玉で出来た目をも抉り獲る。 『いぎゃぁぁぁぁりぇいむのしゅきとおるおめめしゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!やめちぇぇぇぇぇ! あんこしゃんたべにゃいでぇぇぇぇ・・げぇ・・・・ぎぃ・・・ぎゅ・・ゆ”・・・・ゆ”・・・・・ゆ”』 そのまま餡子を食べられ、中枢餡に到達してしまう。 半身を喰いつくされて子れいむは、小刻みに震えるだけの饅頭と化す。 それでお腹が満たされたのか、鼠は子れいむを咥えて裏路地へと消えていった。 後には齧られた時に落ちた、お飾りのりぼんだけが残される。 あの時子れいむが我侭を言わなければ、子ぱちゅりーはここに住んでいたはずだった。 これもまたゲスな姉を持った不幸が、逆に子ぱちゅりーにとって幸いしたと言える。 赤ぱちゅりーは母に連れられて、おうちから少し公園で暮らしていた。 『む~ちゃむ~ちゃ・・・・こにょくさしゃんかちゃいわ・・・』 『むきゅう・・・ごめんねおちびちゃん・・・ふゆさんのあいだはがまんしてね・・・』 『みゃみゃだいじょうぶよ、ぱちゅでもにゃんときゃたべりぇりゅわ。』 ここには芝生が生えていたので、なんとか食べるには困らない。 しかし冬の芝生は固く、子ゆには食べ難い。 でもここで我侭を言う程、子ぱちゅりーは馬鹿ではなく、母に苦労をかけまいと必死に草を口に頬張って食べる。 子ぱちゅりーは金バッチを取得するほどの、でいぶの優秀な知能を受け継いでいた。 それ故、自分が置かれている環境を理解し我慢する。 でいぶが生まれつきのゲスでは無かった事で、ゲス資質までは受け継がなかった事は幸いである。 ゆっくりは常にゆっくりしたいと願う生物、我慢は出来ても現在の環境には満足しようもない。 空を見上げれば寒々しい、どんよりと曇った冬空が広がる。 『むきゅ・・・・・・』 それは子ぱちゅりーの気持ちを表しているかの様、急遽拵えのおうちは狭く冬の凍てつく寒さが辛い。 都会に住む野良は冬篭りする事がないので、日々食べ物を集めなければならなかった。 運動の苦手なぱちゅりー種に、得られる食べ物は少ない。 結局は親子2匹で集めても、草しか手に入れる事は出来なかった。 周りを見れば生ゴミや落ちているお菓子を手に入れ、いそいそとおうちに持ち帰る者達。 それがどれほど美味なのか、食べた事の無い子ぱちゅりーは知らない。 こうして赤ぱちゅりーは、不幸を味わいながら成長していく。 春が訪れた頃には、夏蜜柑程の大きさになっていた子ぱちゅりー。 『むきゅ~ん。このくさはとってもやわらくてだべやすいわ~』 新芽の柔らかさを堪能する子ぱちゅりー、この時が生まれて初めてゆっくり出来たのかもしれない。 春はどんなゆっくりも飢える事の無い季節、この頃に子ぱちゅりーは1匹のまりさと知り合う。 そのまりさは飼いゆでありながら、街を自由に闊歩している。 『と~てもさむいところでは、そらさんがきらきらすることがあるんだぜぇ。 いちめんにぴ~かぴ~かしていて、とってもゆっくりできたんだぜぇ。』 『むきゅ~ぱちゅもきらきらさんをみてみたいわぁ~』 『でもゆきさんをすすむのはとってもつかれるのぜぇ、ぱちゅりーにはむりだとおもうのぜぇ・・・』 『むきゅう・・・それはざんねんだわ・・・』 などと飼い主と旅をしているらしく、様々な体験談を聞かせてくれる。 自分の知らない世界の話は、知識が増えていく感じでとてもゆっくり出来た。 もっと仲良くなりたかったが、ほとんど旅に出ていて会う機会は少なく。 それほど間柄を進展させる事は出来なかった。 ある日子ぱちゅりーは、あの旅まりさの様に探検をしてみたいと思う。 行った事のない場所には、自分の知らない事が待っている。 そう考えると何かワクワクするものを感じた。 『むきゅ~いってきま~す』 『むきゅう!むりはしちゃだめよ。』 『わかってるわ。だいじょうぶよまま、ぱちゅももうこどもじゃないわ。』 そう言っておうちを元気よく飛び出していった。 行き先は近所の河川敷、ここならおうちからそれ程遠くもなく問題ないだろう。 『むきゅ~これがかわさんね、とってもひろいわぁ~ぱちゅじゃとてもじゃないけどとびこえれないわ。』 この冬に生まれ、路地裏と公園しか知らなかった子ぱちゅりーには全てが目新しい。 初めて見る物ばかりで興奮しきりで歩きまわる。 気がつけば陽も傾き、その日は河川敷で野宿する事にした。 『む~しゃむ~しゃ・・しあわせぇ~むきゅ?きょうはおほいっさまがとってもきれいねぇ~』 菜の花の新芽を頬張りながら、星空を見上げ冒険気分を満喫する。 まりさの言う世界はきっと、もっと凄いのだろうと想像しながら眠りについた。 1泊の冒険を終えて公園へと戻ってきた子ぱちゅりー。 『これはいったいどうなってるのぉぉぉぉぉぉ?』 子ぱちゅりーを待っていたのは、公園に住むゆっくりの全滅だった。 冒険に出ている間に、公園の一斉駆除が行われたらしい。 母ぱちゅりーも隣のありすお姉さんも、みんないなくなってしまう。 おうちも家族も友人も全てを失ってしまった。 寂しがりのゆっくりが、1匹だけで生きると言うのとても辛い。 『むきゅ・・・・ぱちゅはなんのためにいきているの?こんなゆんせいなら、ぱちゅもままのところにいきたい・・・』 子ぱちゅりーは死にたいと願う。 でも最後にもう1度だけでいいから、あの旅まりさの冒険談話が聞きたいと思った。 それからはまりさに出会えるのを、ただ呆然と公園で空を見上げる日々が続く。 最後の話はどんな冒険だろうか? 死を願いながらも何かゆっくりした気分、なんとも不思議な感覚。 そしてあの旅まりさが帰ってきた。 しかしその表情は暗く、何か落ち込んでいる様子。 話を聞けばまりさの持つ「思い出さん」を残す機械で、みんな永遠にゆっくりしてしまったとの事。 子ぱちゅりーは思った、自分も撮ってもらえば母の所に行けるかも知れないと・・・・ 『むきゅん!ちぇんたちはうんさんがなかっただけよ。うたがうのならぱちゅをおもいでさんにしてみて』 ぱちゅりーはまりさに、自ら被写体になる事を申し入れる。 最後をこのまりさに看取ってもらうのも悪くはない。 結果としてこの行動は子ぱちゅりーに、ゆっくりした生活を与える事になった。 そのゆん生は決して幸せでは無いかも知れない、しかし子ぱちゅりーは常に最悪からは逃れてきた。 これもまたゆん生 この後子ぱちゅりーは飼いゆとなって、まりさの子供を2匹の子供を生んだ。 番のまりさは先に亡くなってしまうが、その後を追うのに10年もの年月を要する。 老衰で亡くなったその顔はとてもゆっくりしていた。 これもまた奇妙なゆっくりの物語 おわり ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー これでデスラッチの外伝も最後となります。ここまで読んでくれてありがとうございました。 この暑い季節に冬の話はどうだろうか?とも思いましたが、 待ってくれている人がいるのようなので投稿させていただきました。 このシリーズは賛否両論あるかとは思いますが、不思議生物なんだから不思議能力を持ってもいいじゃない? ぐらいの軽い気持ちでいてくれたら幸いです。 ふたば系ゆっくりSS感想用掲示板 http //jbbs.livedoor.jp/otaku/13854/ ○○あきのSS感想はこちらへ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1275503703/ 誤字・脱字等あれば勘弁して下さい これまで書いた物 anko1218 ゆ虐ツアー anko1232 ゆ虐ツアー お宅訪問編 anko1243 ゆヤンワーク anko1495 ゆ虐にも補助金を anko1785 ゆうかにゃんはアイドル anko1237 デスラッチ01 雪原のまりさ anko1250 デスラッチ02 まりさの思い出 anko1274 デスラッチ03 まりさとつむり anko1282 デスラッチ04 まりさとおにいさん anko1314 デスラッチ05 まりさとおちびちゃん anko1337 デスラッチ06 まりさとリボン anko1341 デスラッチ07 まりさと春 anko1711 デスラッチ08 まりさの子ぱちゅりー anko1931 デスラッチ09 まりさの写真 (終) anko1296 デスラッチ外伝01 まりさとまま anko1505 デスラッチ外伝02 まりさとめぐりあい anko1276 ゆっくり種 anko1278 ゆっくり種2 anko1291 ゆっくり種3 anko1310 ゆっくり種4 anko1331 ゆっくり種5 anko1350 ゆっくり種6 anko1391 ゆっくり種7 anko1482 ゆっくり種8(終) anko1362 ケーキ anko1527 極上 anko1612 砂の世界 anko1768 永遠の命 anko1779 塗りゆ anko1863 れみりあが愛したおちびちゃん anko1872 疾風ゆっくリーガー anko1942 ゆっくりキング anko1969 ゆクライド anko2032 夏だ!プールだ!まりさと遊ぼう! anko2192 いっかのすえ リーチ (ノ^-^)ノ ⌒ ⊂●⊃
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「ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛はんぜい゛じまずがらゆるじでぐだざい゛い゛い゛い゛い゛」 一匹のゆっくりれいむがお兄さんに捕まった。お兄さんの家に忍び込み大切な母の形見を壊したからだ。 ここまではよくある風景だがこのゆっくりはちょっと違った。 「でいぶはどうなっでもい゛い゛がらおながのあがじゃんだげはだずげでぐだざい゛い゛い゛い゛」 このれいむ実は胎生型妊娠をしていたのだ。幸いなことにお兄さんは虐待お兄さんではなかったので 子供が生まれるまで生かしてもらえることになった。 − − − 1 日 目 − − − 「むーしゃ、むーしゃ…」 れいむは逃げないよう檻に囚われ餌として野菜くずを与えられた。 くずといっても野生の食べ物に比べればはるかに美味しかったがれいむは幸せな気持ちになれなかった。 もうすぐ人間さんに殺されてしまう。そう思うと美味しいはずの食事も味が良く分からない。 「ゆゆっ?あかちゃん?」 その時れいむの腹の中の赤ちゃんが動いた。 「れいむのかわいいあかちゃん、げんきにそだってね」 死の恐怖に怯えていたれいむだが赤ちゃんそ存在がれいむの心を支えていた。 − − − 7 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…れいむとってもうれしいよ」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 『子供に罪はないから生まれるまで待ってやる。だが子供が生まれたらお前は殺すからな』 「ゆゆっ!だめだよ、あかちゃんまだうまれないで!」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 やがて赤ちゃんも諦めたのかれいむの産気は収まった。 「あかちゃんうまれるのはもうちょっとだけまってね…」 − − − 1 0 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 「あかちゃんおねがいだからうまれないでええええ」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 だが赤ちゃんは前回より強い力でれいむの体から出ようとする。 「おねがいだからやめてええええ」 自分の力では抑えきれないと思ったれいむは野菜の芯で自分のまむまむに蓋をした。 そのかいあってかしばらくして産気は治まった。 「あかちゃんがうまれるとれいむがこまるんだよ。おねがいだからうまれないでね」 − − − 1 2 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「おねがいだからう゛まれないでっていってるでしょお゛お゛お゛お゛」 だが今回は赤ちゃんもなかなか諦めようとしない。 まるで『なんでうんでくれないの?じぶんはいらないこなの?』と言っているようだった。 「わがままなあかちゃんだね!れいむそんなわがままなあかちゃんいらないよ!」 怒ったれいむはお腹の中の赤ちゃんを罵倒しはじめた。れいむの気持ちがわかるのか赤ちゃんは大人しくなった。 「こんなできのわるいあかちゃんがいるなんてれいむはふこうだよ」 赤ちゃんは寂しそうにごろりと動いた。 − − − 1 7 日 目 − − − 「い゛だい゛い゛い゛い゛、でいぶのおなががい゛だい゛い゛い゛い゛い゛」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむは激痛でのた打ち回った。 お腹の子供が成長しすぎたせいでれいむの体を圧迫しているのだ。 「れいむをいたいいたいさせるあかちゃんはしね!」 れいむは壁や床にお腹を叩き付けた。何度も何度も… あかちゃんは『いたいよ、なんでこんなことするの?』と言う様にもぞもぞと抵抗したが その動きがよけいにれいむのお腹を痛くし怒りを買うことになった。 「あかじゃんあばれるな!はやくしね!はやくしね!」 やがてお腹の赤ちゃんは動かなくなった。壁に叩きつけられたダメージで死んでしまったのだ。 れいむのまむまむからチョロチョロと餡子が漏れる。 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 「れいむの赤ちゃん中々生まれないな」 「し、しらないよ!れいむはあかちゃんになにもしてないよ!」 「…」 「お、お兄さん?」 「なあれいむ…」 「れれれ、れいむはなにもしてないよ、あかちゃんはげんきにそだってるよ!」 「…そうか」 お兄さんは無言で部屋から立ち去った。 − − − 2 0 日 目 − − − 「うーん、うーん」 お腹に痒みを感じれいむは目を覚ました。何だろうと思いお腹を見ると… れいむのまむまむにウジ虫が入り込もうとしていた。 どうやら腐った赤ちゃんの餡子の臭いに釣られて湧いてきたらしい。 「やめでえ゛え゛え゛!むしさんれいむのなかにはいらないでえ゛え゛え゛!」 れいむはまむまむを壁に擦りつけウジ虫を引き剥がした。 ほっとしたのもつかの間腹の中にちくりとした痛みを感じる。 どうやら気づいたのが遅かったらしくすでに数匹体内にウジ虫が入り込んでいたのだ。 チクチクとした痛みはやがて激痛に変わる。どうやらウジ虫が中枢餡子のあたりまで入ってきたらしい。 「いだいよお゛お゛お゛お゛!むしさんでいぶをだめないでえ゛え゛え゛え゛!」 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 赤ちゃんを殺したことをお兄さんにばれないようにしなければならない。 れいむは痛みをこらえて平静を装った。 「れいむがこの家に来てからもう20日になるな」 「れ、れいむのあかちゃんはゆっくりしているからなかなかうまれないんだよ」 自分が疑われていると思ったれいむは聞かれてもいないのに言い訳を始めた。 「俺あれから考えたんだけどさ。れいむ、赤ちゃんが生まれてもお前は助けてやるよ」 「ゆ、ゆゆっ!?」 「俺も幼い頃母親が死んでさ。だから形見が壊されたときすごい怒ったけど やっぱりゆっくりでも母親は必要だと思うんだ。」 「…」 「生まれてすぐ母親がいなくなるのって悲しいからな。お前の赤ちゃんにもそんな思いさせたくないんだ」 「……」 「あの時のことは水に流してゆるしてやるからお前も赤ちゃんのこと大事にしろよ」 「…ゆ、ゆぐっ」 「れいむ?」 「ゆ、ゆげええええええ!!」 「おいれいむ?どうしたんだ?しっかりしろれいむ!」
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『家族愛だってさ』 15KB 虐待 愛情 現代 長いの書きたい 親子の愛情というのは何よりも強いものである。その愛は人間以外の種にも存在する。だが当然のごとく、家族愛を存在させないことを選んだ種もいる。 しかし家族愛が存在するようで実はしないという、わけのわからない種もごく僅かだが存在する。にもかかわらず本人たち――いや、『それ自体』たちは言うのだ。 「おちびちゃんかわいいよ」 と。 暖かくなってきたこの時期、公園に行けばいくらでもそれらはいる。人間が行き来する公園という場所でありながらなぜそれらがいるのかは誰にもわからないが、とにかくいるのだ。それらは昨日仲間が殺されても、今日もそこに住み続ける。 出て行ったところで変わらないから出ていかないのか、そもそも出て行くという手段を考えつくだけの脳と能力がないのかはわからない。 その何の能もない、まるで世界が産んだゴミのような物体――それが、ゆっくりだ。 どう贔屓目に見ても能無しであるゆっくりの中でさえ最も能無しであるという噂があるれいむ種に関する一般的な認識は「母性が強い」だ。 そのれいむ種と並んでメジャーなまりさ種は、身を挺して家族を守るほどに「父性が強い」と考えられている。 はたしてこの認識は本当なのか。 ジャンパーを羽織って公園のベンチの横にひとり佇むこの男は知っている。 この認識は、真っ赤な嘘であるということを。 「ゆうん!おねーしゃんにはまけにゃいよ!ゆっくちはしりゅよ!」 「いもうとにまけたらあねとしてのぷらいどがゆるしゃないよ!」 今日もゆっくりたちは大声でわめきながら歩きまわっている。いつ見つかって殺されるかわからないのに。 しかし自由な行動をとることを我慢すると、今度はストレスでゆっくりできない。 ゆっくりできれば、生き死には考えない。というより、考える脳がない。 それを考えるとこの2匹は、いや、今生きている全てのゆっくりは。 生きているだけで奇跡だ。 「おい、そこのまりさとれいむ。こっち来い」 「ゆん……ゆゆ?に……にんげんしゃんだあああああ!!」 「ゆ……れいみゅたちはいまかけっこしゃんしてりゅんだよ?くそにんげんにりきゃいできりゅ?」 男は手招きをしてまだ小さいサイズのゆっくりである2匹に声をかけた。姉らしきまりさは人を怖がり、妹らしきれいむは無意味に人を煽る。 産まれたころから一緒にいた2匹であるだろうに、正反対の反応をする。 家族より、世界より、何よりも自分を信じるゆっくりならではの反応だ。 「お前らにな、あまあまをあげようと思うんだ。ほら、チョコレート」 「「ゆゆっ!?あまあましゃん!?」」 男はジャンパーのポケットから一個の一口サイズのチョコレートを取り出し、2匹に見せた。 妹れいむよりは賢そうな姉まりさも、チョコレートの前には思考が停止してしまったようで、涎を垂らしながら妹れいむと一緒に男のもつチョコレートを見つめている。 しかしはっと気がつくと、姉まりさは言った。 「にんげんしゃん……あのね、おかーしゃんとおとーしゃんにもあげてほしいんだよ」 「……ああ、いいぜ」 男は少し含み笑いをした後に了承し、姉まりさは喜び勇んで家があるらしい草むらの中に飛び込んだ。 姉まりさが草むらに入って少しすると、草むらの中からゆっくりのものらしき大声が聞こえてきた。 その声のする方向に男は歩き出す。 「にんげんさんがゆっくりにやさしくするわけないでしょおおおお!?おちびちゃんになんどもおしえたでしょおおお!!」 「ゆ……そ、そういえば、まりしゃわしゅれてたよ……ごめんにぇ、おかーしゃん」 「そうだよ、おちびちゃん……がんばってべんきょうして、りっぱなおとなになってね」 「それよりお前ら、このあまあまを食べないか?」 男は姉まりさと母親らしきれいむのお喋りを上から遮り、チョコレートを見せつけた。 「ゆ……あ、あまあまだあああああ!!」 れいむは男のチョコレートを見た瞬間顔色を変えて男に擦り寄った。 全身が薄汚れたれいむに擦り寄られ、男は露骨に嫌そうな顔をする。 「父親はいないのか?たぶんまりさだろ?」 「まりさはいまかりにいってるよ!それより、あまあまちょうだいね!」 さっきまで人間が怖いことを教えていたれいむは目先のたった一個のチョコレートに夢中で、何も考えていないようだ。 普段の生活そのものに責め立てられる毎日であるゆっくりであるので、この反応は仕方ないのかもしれない。 すぐにまりさは帰ってきた。 「ただいまだぜ!きょうはおはなさんがとれt……」 「まりさがかえってきたよ!だからはやくあまあまちょうだいね!」 「まあ、待て。あっちにお前の子供を忘れてるぞ。あのベンチまで付いてこい」 男はれいむとまりさと姉まりさを引き連れ、妹れいむの所に戻ってきた。 「ゆ!くそどりぇい、やっともどってきちゃにぇ!おそしゅぎりゅよ!ゆぷーっ!!」 両親を呼びに行っていたたった3分足らずの間で妹れいむの中では男はいつの間にやら奴隷ということになっていた。 しかし男はそれに無反応なまま、ベンチに座り、4匹を並べる。 始める前に、男は姉まりさに問う。 「なあまりさ、お前んとこの家族に愛はあるか?」 「もちりょんだよ!まりしゃのおかーしゃんも、おとーしゃんも、れいみゅも、みんなだいしゅきだよ! どんなゆっくりのかじょくも、まりしゃたちの『かじょくあい』にはかてにゃいよ!」 「そうかそうか……うふふ、うふふふ」 男は4匹に見えないように、小さく呻き笑う。 その笑いは、経験と知識と――実績からくる。 「さーて、あまあまをあげようかな」 すぐに笑いを収めた男は、座ったままジャンパーのポケットをまさぐり、少ししてジャンパーから出した握った手を4匹にもよく見えるように開く。 そこにはチョコレートが、『3つだけ』乗っていた。 「おっと、3個しかないや。悪いけど、誰か一人は我慢してくれないかな」 ――その瞬間、4人の眼の色がほんの少し――だけ、変わったように見えた。 4人は顔を見合わせ、無言で話し合う。 まず口を開いたのは、親まりさだった。 「……おちびちゃんも、れいむも、たべたいよね。まりさはがまんするよ、おとーさんだから」 「やったああああああ!!まりさありがとおおおおおお!!」 「え……しょ、しょんな、おとーしゃんもたべちぇよぉ!」 「はやくあまあまよこちぇえええええええ!!」 先ほどのまりさの言うとおりである。 愛に満ち溢れている。 その愛が、どこか少なめなように見えるのは、きっと気のせいだ。 「ほーれ、食え」 男は包装紙を開け、3つのチョコレートをばら蒔いた。 「ゆっひゃあああああ!!」 「あまあましゃんんんん!!」 親れいむと妹れいむがばら蒔かれたチョコレートに跳びかかる。親まりさは笑顔でじっとそれを見ていた。 親まりさのほうを見ていた姉まりさも、少ししてチョコレートのほうに顔を向けたが、既にそこには茶色く染まった砂しか残っていなかった。 「ゆ……ゆゆ!?あまあましゃんは!?」 「ゆ……ありぇ?おねーしゃんのあまあましゃんは?」 自分でもわかっていないようだが、妹れいむは二つ食べていた。 1と2の違いすらついていないほどに幼いか、それかそもそも知能の低い個体なのかもしれない。 「まーまー、まだ探せばあるかもしれないから騒ぐな。今食えなかった奴の分もあるかもな」 男はまたジャンパーをまさぐり始める。4匹は期待に満ちた目で男を見つめていた。 きっと今れみりゃが横を通り過ぎようと、きっと気づかないだろう。 4匹の期待を一身に浴びる男の手は、なんと今度は二つしかチョコレートが乗っていなかった。 「あらら……2つか。まあ、さっき食えなかった奴も2匹だろ?いいんじゃね?」 「ゆぅぅ……れいみゅもたべちゃいけど、しょうがにゃいね……」 「ーっと思ったら!あれまあ!これはさっきのたくさん倍おいしい特別なあまあまじゃないか! よかったなあお前ら!さっき食わないで!さっきなんかよりもっともっと美味い物が食えるぞ!」 もちろんこれは大嘘であり、さっきと全く同じ物である。 しかしゆっくりの思い込みの力をもってすれば、さっきより不味くたってさっきの数倍上等なグルメに変わる。 「さっき食ってないのはそこのまりさ2匹だな?よしお前ら、食え……」 そこまで言ったとき、妹れいむが泣きはじめた。 「ゆぐええええええん!!やぢゃあやぢゃあやぢゃあああああ!!れいみゅもとくべちゅなあまあましゃんたべちゃいよおおおおおお!! れいみゅがたべりゃれにゃいなんてしょんなことやぢゃあああああああ!!」 さっき2個もチョコレートを食べたというのに、1個も食べていない者の前でこの言動である。 両親も少し呆れ始めていたが、そこは子に対する愛情でカバー。 「わかったよ……おちびちゃん。こんどはれいむおかーさんががまんするよ。 とくべつなあまあまは、おちびちゃんふたりでたべてね!」 「え……それじゃ、おとーしゃんはどうしゅるの?」 「いいんだよ、おとーさんとおかーさんは、おとなだから。 しょうらいりっぱなおとなになっておんがえししてくれれば、それでいいんだよ!」 「おとーしゃん……」 目に涙を浮かべている姉まりさを尻目に、妹れいむは涙の代わりに涎を垂らしていた。 もう、男の手から目を離すことはない。 男はその親子愛の劇場に興味があるのかないのか、そもそも見ているのかいないのか。 ただただ包装紙を剥いていた。 「じゃあチビ2匹、食え」 また同じようにばらまき、姉まりさも妹れいむもチョコレートを口に含む。 妹れいむは、下品に食べ散らかす。 「むーちゃ!むーちゃああ!!し、し、ししし、ちあわちぇええええええええ!!」 おいしーしーを撒き散らし、チョコレートで茶色く染まった砂は今度は黄色く染められ、まるで糞尿のようだった。 「こんにゃにおいしいあまあまたべたこちょにゃいよおおおおおおお!!くちのにゃかにてんししゃんがいるみちゃいだよおおおおお!! れいみゅのからだ、いまにゃらおしょらをとべりゅみちゃいいいいいいい!!」 体と口と尿道でその旨さを表現する妹れいむ。 それを見ていた両親は、どこか『いらつき』を感じていた。 自分の意思で譲った親れいむでさえ。 「ゆふふふぅぅぅ~~~……おいちかっちゃー!くしょどりぇい、にゃかにゃかおいちかったのじぇ!」 「むーしゃ、むーしゃ……し、しあわせー」 すぐ横であんなに汚いものを見せられては、特別なあまあまも美味さが半減するというものだ。 下品な妹れいむの食べ様を見せられ、姉まりさはあまり味わうことができずにいた。 しかし食べていない両親は、ただただ嫉妬するだけ。 姉妹は気付いていないが、両親は少しだけ、妹れいむを睨んでいた。 それに気づいているのは、男だけ。 「いやー、お前らの愛はすごいなー」 男は完璧なタイミングで――合いの手を入れる。 「自分より子供を優先かー、さすがの親子愛だなー。 俺ら人間にはそんなこと無理だわー。でもゆっくりならできちゃうんだなー、すげーなー」 ゆっくりしているゆっくり>>>>>>>>>>>>>ゆっくりしてない人間 というふうに考えているゆっくりであり、自分は、自分たちは世界一崇高な存在であると信じているゆっくりである。 こんなふうにナルシズムを刺激してやれば、すぐ乗ってくる。 「も……もちろんだよ!れいむたちはゆっくりなんだよ?じぶんたちのことしかかんがえてないにんげんたちとはちがうんだよ?いっしょにしないでね!」 「そ……そ、そうだよ!まりさはいっこもたべてなくても、おちびちゃんたちがたべてくれたらそれでうれしいんだよ!」 そうかそうか、と軽く頷くだけでそれを流し、また男はポケットに手を突っ込む。 今度こそ4個出てきてくれ、と両親と、姉まりさは祈った。 妹れいむは涎を垂らしていた。 男の手には―― 「あらー、もう1個しかねーわ」 たったの、1個だけだった。 「でもー、おまえらはおちびちゃんに譲るよなー、親なんだからさー」 両親の顔色が、確かに変わった。 「さてそこのちっちゃいまりさ、れいむ。どっちにする?」 「……おとーしゃんにあげ」 「れいみゅがたべりゅよ!!」 男は必死で笑いを堪えながら、妹れいむの口の中にチョコレートを突っ込んだ。 そしてまた同じように、妹れいむは周りの空気を読むことなく、こんな美味いものが食べられる自分がいかに幸せに満ち溢れているかを全力でアピールした。 親まりさも親れいむも、それを見ているだけ。 睨んでいるだけ。 幸せいっぱいの、愛に溢れた家族に、溝ができはじめていた。 「さーて……そういやあと1個、今までよりもずっと、ずううーーっと美味しいあまあまがあったな……これだこれだ」 たった一つのチョコレートを―― 4匹の前に、見せた。 そして、言った。 「『このあまあまを、だれが食べる?』」 まず動いたのは、妹れいむだった。 「ゆ!それはもちろんれいみゅがたべちぇあげりゅ……」 「ふざけるなああああああ!!」 次に動いたのは――親まりさ。 「おまえはさっきからなんこたべればきがすむんだああああああああ!! にこも!さんこも!たくさん!たべすぎだこのくそちびいいいいいいい!!」 今まで1個も食べずに、すべて自己犠牲の精神で譲ってきたまりさが、ついにキレた。 何個食べれば気が済むといっても、妹れいむからしたらたまったもんじゃあないだろう。 自分の親が、自分に食べていいと言ったから食べたのだ。 「まいにち!まいにち!まりさはおちびちゃんのためにかりをしてきてるのに、なんでゆずってあげようってこころがないんだあああああああ!! それでもこどもかああああああああ!!」 ――それでも親か。 男は小さく呟いた。 「ま……まりさ、お、おちついて……」 「れいむはいいよねええええええええええ!?たべてばぁぁーーかりだもんねええええええ!? まいにちまいにちくっちゃねくっちゃね!それでかじをしてるつもりなのおおおおお!?」 まりさの言う「かり」とは、ゴミ漁りのことを指す。 まりさ自身がしていると思っている「かり」も、「かりをしているつもり」でしかないけれど。 まりさは、れいむを攻め続ける。 「う……うるさあああああい!!おまえがたいしたものをとってこれないからわるいんだろおおおおお!! れいむをゆっくりさせないげすはしねえええええええ!!」 母親と父親が、本気でキレている。 そんな様子を、姉妹2匹はよりそって見ていた。 妹れいむは、男に話しかけた。 「く……くしょどりぇいいいいい!!な、なんちょかしろおおおおお!!」 「なんとかっていわれてもな、人んちの事に顔突っ込むのも首突っ込むのもなあ」 「お……おきゃーしゃん、おとーしゃん、やめちぇよお……」 姉まりさは、必死で2匹を止めようとする。 仲裁に入ろうとしたが、親れいむに弾き飛ばされた。 「こどもはだまってろおおおおおお!!」 弾き飛ばされて気絶した姉まりさを、男はそっと拾い上げる。 それはほんの少しの善意からか、溢れんばかりの悪意からか。 「ゆ……く、くしょどりぇい!!どうにもできにゃいなりゃ、しゃっしゃと……」 どこかに行け、というのかと思いきや、妹れいむはとんでもないことを言い出した。 「いちばんおいちいあまあましゃんおいちぇ、しんぢぇにぇ!」 ……救えない。 男は笑いすぎて涙を流しながら、妹れいむにチョコレートを投げてやる。 もっちゃもっちゃと音を立てながら、妹れいむはチョコレートを噛む。 「ち、ちあわちぇえええええええええ!!」 もちろんその大きすぎる声に、気づかないわけもなく。 「このくそがきいいいいい、なにやってるんだあああああああああ!!」 「せいっさいだああああああああああああああ!!」 殺し合い一歩手前なまでに大喧嘩をしていた2匹は妹れいむという共通の敵を見つけ、喧嘩をやめ自分の子を殺しにかかった。 たった10分足らずで、家族愛なんて微塵も残さずに消え去った。 男は手の中の姉まりさを揺らして起こす。 「おい、起きろまりさ、起きろ。これから面白いものが見られるぞ」 「ゆ……きょきょはどきょ?」 半分寝ているような状態のまりさのまぶたをひっつかみ、無理やりその光景を見せる。 その光景を。 自分の両親が―― 自分の妹を―― 潰して、殺している光景を。 「ゆ……ゆわあああああああああああ!! いやぢゃ、いやぢゃあああああ!!ごんなのっ!ごんなの、みだぐないいいいいいい!!みぜないでえええええええ!!」 「駄目だよ、まりさ。現実は受け入れないと」 その後、まぶたは閉じられることはなかった。 ずっとずっと男の手によって開けさせられていた。 5分後、親れいむが親まりさを噛みちぎって殺した時、やっとまりさの瞼はは男の手から解放された。 「どうする?まりさ。お前が信じてたものぜんぶ、ここで消えたよ。 お前が大好きだった妹は親に殺され、お前のことが大好きだった親は殺し合い、家族の愛なんて、最初から『なかった』。 これからどうする?」 「…………」 まりさは何も答えない。 「お前は言ったな、どんなゆっくりにも負けない家族愛だって。 それは夢だよ。つくり話だ。夢物語だよ」 「まりしゃたちの……」 「ん?」 「まりしゃたちの……かじょくは、にせものだったの?」 男の手の平に砂糖水の涙が落ちる。 「いいや、そんなことないさ。ただ、本物でなかっただけさ。 本物でもないし、偽物にもなりきれない。最初っからないってわかってたら、どんなゆっくりも幸せなのになあ」 「…………」 「さて、これからお前も殺すけど、最後に何か言いたいことは?」 「……おとーしゃんとおかーしゃんの……いいつけどおり、りっぱなおとなに……なりたかった、のじぇ」 それを聞いた瞬間――ほんの一瞬だけ。 男のまりさを見る目が始めて「モノ」ではなく「生き物」を見る目になった。 「……そうか、来世に期待しろよ。 次こそゆっくりに産まれないようにな」 男は片手でそう祈りながら、まりさを握りつぶした。 終正あき
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『はんせいしてますごめんなさい』 36KB 虐待 嫉妬 誤解 日常模様 同族殺し 共食い 飼いゆ 野良ゆ 赤ゆ 現代 独自設定 よろしくお願いします ッじめに 善良な個体の虐待です 通常種のみ登場します グロテスクな表現を含みます 以上の点に注意して読まれるようお願いします 1 「おにいざん!!! ごべんばざい!!! おでがいでずがらおうじにいれでぐだざい!!!」 街中の住宅街のとある家の玄関前 一匹のれいむが玄関のドアに向かって必死に呼びかけていた 「もうおにいざんどのやぐぞぐやぶっだりじまぜん! あやばりばず!!! はんぜいじばず!!! だがら、だがらでいぶをもういじどがっでぐだざい! おうじのながにいれでぐばさび!!! おにいいさあああああああああああああああん!!!」 必死の呼びかけが通じたのか、ドアが開き中から一人の中年男性が出てきた れいむは悲痛に歪めていた表情をパァっと明るくして中に入ろうとした 「だれもいれるなんていってねーよ」 男性はそう言うと右足を振りあげてれいむの腹を蹴りつける 「ゆぐぅ!!! ・・・・・・ゆ、ゆゆゆごおお・・・げ、げええええ ・・・・・お・・・おにい・・・・さん?」 完全に油断していたれいむは蹴りをまともに受けてしまい、その場にへたり込んでしまう 苦しそうにうねうねと芋虫のように蠢くれいむ 口からは泡だった泥のような餡子を吐きだしている 「ゆごっ! ゆごごっ・・・! でいぶ・・・あやばっだ・・・のに・・・」 「しらねーよ。 謝ったからなんだってんだよ。 謝ったらそれで全部終わりだとでも思ってんの?」 「でぼぉ・・・でぼおおおおお!」 「でもじゃねーよ。 言い訳してる時点で反省する気ゼロだっていってるようなもんじゃねーかよ」 「ゆ、ゆうううううううううう!!! どぼじでえええええ! どぼじでごんなごどにいいいいい!」 「あーうるせーうるせー。 うぜーからさっさと消えろや」 男性はそう言ってドアを閉めてしまった 後に残されたれいむはただただ泣き続け、そのままそこで一晩明かした 翌日、男性が仕事に出かけに中から出てくると、れいむは一目散に駆け寄って挨拶をした 「おにーさん! ゆっくりいってらっしゃい!」 とびっきりの笑顔で挨拶するれいむ れいむは頑張っていい子にしていればれいむの事を許してくれると考えていたのだ お兄さんはれいむに一目もくれずさっさと行ってしまった だがれいむはあきらめない あきらめてはそこで全てが終わってしまう お兄さんが許してくれるその日まで、頑張り続けるとれいむは心に誓った 「ゆううううう・・・・ おなかがぺーこぺこだよぉ・・・ べーこんごはんさんがたべたいよぉ・・・」 餌を与えられずに庭に放置されたままのれいむは、さっそく空腹に悩まされた 加工所で生まれ、ショップで育ち、外の世界を知る間もなくこの家にやって来たれいむは ゆっくりふーどや人間さんの食べ残しを食べていたので、野生のゆっくりがするような食事はしたことが無かった 背に腹は代えられずいやいやながらも庭にぼうぼうと生い茂った雑草を一口かじってみる 「・・・・・・・・・・・・・・・ゆげえええええええええええええええええええええええ!!!! にがにがでゆっぐりでぎないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」 草を咀嚼していくうちに草の汁が口全体に広がってゆき、苦いという感覚がじわじわとしみ込むように舌へ伝わってくる 耐えられずに吐きだしたが舌や歯茎には味の感覚が残っていた お水でうがいをしようにも水の入った皿などどこにも見当たらない れいむは仕方なく、自分の唾液で口の中が満たされるのを待った とてもこんなものは食べられない しかし、お腹はすいてしまう 何か他に食べれるものはないか辺りを見渡してみる どこを見ても草、草、草・・・・・・ れいむはため息をついて後ろにコロンと倒れた なにも考えずに空に浮かぶ雲を見つめる 「・・・これかられいむはどうすればいいの? ・・・おにいさんはゆるしてくれるのかなぁ?」 白い雲に問いかけるように、れいむは頭の中で不安に思っていることを言葉にした その問いかけに答えるものはどこにもいない 空腹に耐えきれなくなったれいむは観念してもう一度草に挑戦する 一口むーしゃむしゃする度に溢れる汁を何とか飲み込んで、また新たに草を口に入れる 何度か戻しそうになったが、草を無理やり飲み込むことで何とか耐えきった 「むーしゃむーしゃ・・・・・しあわせええええ! このランチさんはとってもとかいはだわぁ!」 向かいの家で飼われているありすがしあわせーと叫んでいる それを聞くと大粒の涙がぽろぽろとおめめから流れ落ちてきた 「ゆぐっ・・・・・・ゆぐううううう! どぼじでええええええ・・・ おにいざあああああんんんんん・・・・・」 れいむは怒られた理由が全く分からなかった 普段のように言われたことを守り、きちんとルールを守って生活していた なのに、突然あんよをぺんぺんされ外に放り投げられたのだ 怒られた理由が分からないままのれいむはただただ悲しくて仕方なかった 2 「おにいざん!? はなじをぎいでね!? でいぶをむじじないでね!?」 固く閉ざされたドアに何度も身体を叩きつけて懇願するれいむ 帰って来たお兄さんと話そうとしたが完全に無視されてしまったのだ れいむがどんなに呼びかけても、聞こえてくるのはテレビさんの音ばかり 「どぼじでっ・・・ どぼじでなんにぼいっでぐれないの!? でいぶはずっどいいごにじでだよ!? どぼじで・・・どぼじでえええええええええ!!!」 「・・・るっせえっつってんだろ!!!」 「ゆぎゃん!」 突然開いたドアが顔面に衝突して吹っ飛ぶれいむ 顔は真っ赤になり歯が何本か折れたが、それでもお兄さんが出てきてくれたことがうれしくて笑顔になる 「おにいさんきいてね! れいむはがんばったんだよ! とってもつらかったけどあきらめなかったんだよ!」 「だから、なに?」 「ゆっ・・・ こ、これからももっともっとがんばっておにいさんをゆっくりさせるよ!」 「で? 反省はどうした?」 「・・・ゆぅ? はん・・・せい・・・?」 れいむはぽかんと口を開けたまま固まってしまった 怒られた理由を思い出すことをすっかり忘れていたのだ 「その様子じゃ反省してないみたいだな。 じゃ、そゆことで・・・」 「まっ! まっでね!? でいぶはんぜいじでいいごにじでだよ!?」 「へぇ、じゃあ何をどう反省したか言ってみろよ」 「ゆぅ・・・ それは・・・」 「やっぱり反省してねーじゃねーか。 口だけの反省ならそこらへんのゲスでもできるわ」 「で、でもぉ・・・でもぉ・・・」 「また『でも』か。 まぁいい、それより飯は食ったのか?」 「ゆん!? ごはんさん!? ごはんさんくれるの!?」 ご飯という単語にもみあげを即座に反応させてピコピコ動かすれいむ 目がキラキラと輝いて、涎がたらりと滴り落ちる 「まだやるとはいってねえよ。 そこに草沢山はえてるだろ?」 「ゆん? ・・・くささんはゆっくりできないよ」 「話は最後まで聞け。 そこに生えてる草を全部食べたら飯食わしてやるよ」 「ほ、ほんとにいいいい!? うそじゃない!?」 「本当だ、まぁせいぜい頑張れや」 「ゆわぁい! れいむ、がんばってむーしゃむしゃするよ!」 お兄さんはそう言ってドアを閉めた 「さっそくむーしゃむしゃするよ! くささんはゆっくりれいむにたべられてね!」 草に向かってそう宣言したれいむはおくちを大きく開けて草にかじりついた お口の中いっぱいに広がる青臭い臭いと、じわじわとにじみ出る苦い草 ゆっくりできない臭いと味を我慢して無理やり口の中へと押し込んで行く 「むうううううじゃあああああむうううううじゃあああああああ・・・・・じばばぜえええええええええええええ!!!」 しあわぜーは本当のしあわせーではなく、無理やりひねり出した言葉だった そうでもしないと、ゆっくりできなさすぎて餡子がおかしくなりそうだった 「げええええええっぷ! ゆぅ・・・まだまだたくさんあるよ。 でも、れいむあきらめないよ!」 草を全部飲み込むと、また次の草を引っこ抜いて口の中へと押し込む ようやくお腹がいっぱいになり、次第に眠くなっていくれいむ しかし、ゆっくりできるべっともふかふかもどこを探しても見当たらない 仕方ないので引っこ抜いた草をしいて、縁の下で眠ることにする 「ゆぅぅぅ・・・ はやくおうちのなかでゆっくりすーやすやしたいよぅ・・・」 冷たい地面に敷いた青臭い草の上へ倒れこむように横になるれいむ 口の中には草の苦い味がまだ残っている 「どぼじでおにいさんはあんなにぷんぷんしてるの? れいむはいったいなにをしたの? わからないよ・・・ おにいさんおしえてよ・・・れいむはいったいなんてあやまったらいいの?」 どんなに考えても、れいむは反省すべき理由がわからない 疲れ切ったれいむは考えがまとまらない内に眠ってしまった れいむは夢の中でべーこんごはんさんをおなかいっぱいむーしゃむしゃした 夢の中でお兄さんはいつものお兄さんに戻って、れいむを優しく介抱してくれる お兄さんはれいむにしていたことを謝って、れいむのことを許してくれた (ゆふふふふ・・・ れいむはおこってたけどゆるしてあげるよ・・・ またいっしょにたっくさーんゆっくりしようね・・・・・) そんな幸せな夢は、突然中断された もみあげを引っ張られて無理やり縁の下から引きづり出されたのだ 「ゆ・・・! ゆゆゆゆううううう!? おにいざん!? でいぶになにずるの?!」 混乱したれいむは身体をぐねぐねとうねらせて必死に抵抗した 外はまだ暗く、おひさまは顔を出していない 「まぁ落ち着け。 おまえにプレゼントしてやろうとおもってな」 「ゆぅ!? プレゼントさん!?」 「そうだ、今さっきジョギングしてたらゆっくりが因縁つけてきたんだよ んで、フルボッコにしてぶっ潰してやったんだわ。 それがこいつ等な」 お兄さんはそう言うと、ビニール袋から二体のゆっくりの死体を取り出してれいむの前へ放り投げた 恐らく番であろうまりさ種とれいむ種が一体ずつ 大きく目を見開いて、口をだらしなく広げたまま絶命している 「ゆげええええええええええええ!? なにごでええええええええええええ?!」 「だからプレゼントだって。 これ中身は餡子でできてるんだからお前食えるだろ? お前の為に持って来てやったんだから遠慮しないで食べていいんだぞ」 「ごんなのだべれるわげないでしょおおおおおおおおおおおおお!? ばがなのじぬのおおおおおおお!?」 「はぁ!? 食えないわけねーだろが! それ食い終わるまでここでみてやるから早く食え。 残さず食え」 「だがらむりだっでいっでるでしょ!? れいむのはなじをぎいでね!?」 「食わなかったらもう許してやらねーぞ。 それでもいいのか?」 「ゆぅ!? なんでそうなるの!?」 「反省してるならくえるよなぁ? なぁ? 反省する気ねえのか、こら」 「・・・はん・・・せい」 反省という言葉を出されたとたん黙ってしまうれいむ まるで魔法をかけられたように従順になってしまう 「早くしろ。 じゃねーともう許してやんねーぞ」 「・・・ゆっくりりかいしたよ」 一撃で踏みぬかれたのか、脳天を潰されてぺしゃんこになった二つの骸 目玉が飛び出て餡子がはみ出だして表情が読み取れないほど激しく損壊している はみ出たその餡子を恐る恐る口に含み、飲み下す 口の中には甘いゆっくりした味が広がってゆく しかし、れいむはまったくゆっくりできない 想像してみてほしい どんなにおいしそうに調理されていたとしても それが人間の肉だと知っていてあなたはそれを食べることができるだろうか 「全部残さずたべろよ。 できるだけ早くな」 お兄さんの声がこんなに恐く感じたのは初めてだった 3 「ゆ、ゆべえ・・・ ゆぎゅううう・・・ ごっくん!」 時刻は昼の十二時をまわり、れいむはようやくゲス番の死体を完食することができた 口の周りにべっとりと餡子をつけたれいむ その顔は大量のカロリーを摂取しているにもかかわらずげっそりとやつれている 「なんで・・・ でいぶが・・・ ごんなべに・・・・」 死臭が体中に染みつき、一秒たりともゆっくりできない お兄さんが打った精神強化剤が無ければとっくに餡子を吐いて永遠にゆっくりしてしまっていただろう 「よし、全部食べたな。 偉いぞ、れいむ」 「ゆぅ!? おにいさん!? れいむをゆるしてくれるの!?」 食べ終わるまでずっとそばにいたお兄さんが漸く口を開いた れいむは期待に腹を膨らませ、もみあげをピコピコさせてお兄さんにすり寄る しかしその淡い期待は一瞬で打ち砕かれた 「はぁ!? 偉いとは褒めたが許してやるとは一言も言ってねーけども」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおお!? でいぶごんなにがんばっだんだよ!?」 「まぁ、頑張り次第では許してやらんこともねーけどよ。 まだまだ頑張りが足りないってこった」 「これいじょうなにをがんばればいいのおおお!? でいぶはもうげんっがい!なんだよおおおおおお!」 「それだけ喚ければ大丈夫だ、問題ない。 れいむ、お前に新しい課題をくれてやろう」 「あたらしいかだいさん!? まだなにかしなくじゃいげないのおおおおおお!?」 「なに、難しいことじゃねーよ。 家の壁を全部なめなめして綺麗にしろ それができたらお前を許してやる」 「・・・なめなめってぺーろぺろのこと?」 「そうだ、この家の壁の汚れをすべてぺーろぺろして綺麗にするんだ」 「ぞんだごぼでぎるばずないでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「それと引き続き庭の雑草毟りもやれよ。 ある程度綺麗になったらまた飯食わしてやるから」 れいむは途方もない課題に茫然自失になった このれいむにとってあまりに巨大なお家をぺーろぺろで綺麗にしなくてはならないのだ それに草も食べ続けなければならない 「誠意をみせろよ、れいむ」 そう言ってお家の中に入って言ってしまうお兄さん 今日はお兄さんの仕事が休みの日で、本来ならお兄さんと沢山遊んで好きなだけゆっくりできる筈だった それがどうだろう いまのれいむには、ゆっくりのゆのじもない 「ゆぅ・・・ とりあえずくささんをむーしゃむしゃするよ・・・」 それでもれいむはあきらめなかった 与えられた課題を一つ一つクリアすれば、れいむは許されてまたゆっくりした毎日が戻ってくる そんな一筋の希望にすがる様に、れいむは草をむーしゃむしゃしていった それから数日後 れいむは草をある程度食べ終えると壁の清掃へと取りかかった 白く塗られた壁は薄らと塵が被っており、れいむが舌で舐めるとそこだけぴかぴかになった 草と違って極端ににがにがな味がするわけではないが、ゆっくりできる味など当然するはずがない 「ゆっくりぺーろぺろするよ・・・ ぺーろぺろ・・・・・」 少しずつ壁の汚れをなめとっていくれいむ ふと、べーこんごはんさんを食べた後のお皿をぺーろぺろした時のことを思い出した ぺーろぺろする時はいつも幸せだったのに、今しているぺーろぺろはただただ虚しい 「みゃみゃ! みちぇみちぇ! あのれいみゅかべしゃんをぺーりょぺりょしてりゅわ!」 「しっ! みちゃだめよ! あのれいむはちょっとあんこがふじゆうなのよ、かわいそうなのよ」 「どうしちぇ? いにゃかもにょなにょ?」 「そんなこといったらとかいはになれないわよ! さ、もういきましょ。 かえったら、ままがぺーろぺろしてきれいにしてあげるわ」 「ゆん! みゃみゃのぺーろぺろはとっちぇもゆっくちできりゅわぁ!」 野良のありすの親子が通りかかって話しているのが聞こえた れいむは清掃をやめて、その親子をじっと見つめていた れいむは生まれてすぐに親から引き離され、金バッチをつけた他ゆんのありすやれいむに育てられた 育ての親の言うことを素直に聞いていたのでゆっくりショップの人間さんはやさしくしてくれた だから、れいむは人間さんの言うことをきちんと守ればゆっくりできると信じている 野良が庭にやってきても無視してやりすごしたし、一緒に遊ぶようなことはなかった 野良は自分勝手でルールをわきまえないとてもゆっくりしていないもの そういう認識を加工所で刷り込まれたれいむにとって野良とはそういう存在だった だが、ありすの親子はとってもゆっくりしていた その理由をれいむは理解できない 「ゆぅ? もしかしてのらはゆっくりできるの? みんなはれいむにうそをついてたの?」 子ゆっくりのころに去勢されたれいむはぼせい(笑)の形成に至らなかった ぼせい(笑)が存在しないため、おちびちゃんはゆっくりできるという感覚も存在しない そのため、ありすの親子がゆっくりしていたのは、親子が一緒だからではなく野良だからという認識にすり替わる 加工所やショップで言われ続けていた野良はゆっくりできない存在という認識が揺らぎ始めた 極度のストレスと疲労が伴ってれいむの判断能力は劣化していたこともあり、疑念が頭をもたげる 「こんなことなられいむものらになりたいよ。 のらがあんなにゆっくりできるなんてれいむしらなかったよ・・・」 あんよがずーりずりと外の世界へと向かって無意識に動いていく 門を出ればすぐに外の世界へと出て行けるのだ 後少し、もう少しでゆっくりできる・・・ 「なにかんがえてるんだろうね・・・ れいむはおにいさんにせいいさんをみせてゆっくりするんだよ・・・」 お兄さんの存在を思い出して足を止めるれいむ もしここで外の世界に出て行ってしまったら、お兄さんはもう二度と許してくれないだろう もう一度・・・もう一度お兄さんとゆっくりするんだ! れいむは確固たる決意の元、与えられた課題へと取りかかった 「お~頑張ってるじゃねーか。 正直ここまでやるとは思わなかったぞ」 「ゆん! おにいさんじゃましないでね! れいむはがんばってるんだよ! がんばってせいいさんをみせておうちにいれてもらうんだよ!」 「そーかそーかいい心がけだな。 そんなれいむにプレゼントをもってきてやったぞぉ」 「・・・ぷれ・・・ぜんと・・・さん?」 プレゼントという単語に凍りついてしまうれいむ お兄さんが抱えている、がさごそと動く段ボールに視線が釘づけになる 「お、その様子だとプレゼントがなんなのか大体察しがついてるようだな じゃあ早速御開帳といこうか。 今日のプレゼントは元気なおちびちゃんでーす!」 お兄さんはそう言って段ボールをひっくり返して中身をぶちまけた れいむ種とまりさ種が五匹ずつ計十匹の赤ゆっくり達が地面にぼとぼとと落ちてくる 「おとおしゃあああん!? おきゃあしゃああああん!?」 「ゆぴいいいいいいいいいいいいいい! いちゃいよおおおおおおおおおおお!」 「まりしゃのおぼうちかえちちぇえええええええ! ゆんやああああああああああ!」 「どびょじじぇごんにゃごじょしゅりゅにょおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「ゆぅ・・・ いたいのはいやなんだじぇ・・・ こわいんだじぇ・・・」 「もうやじゃあああああ! れいみゅなんにもわるいこちょしちぇないのにいいいいい!」 「かわいいれいみゅがなんでこんにゃめに・・・・」 「おきゃあしゃん・・・・ おとうしゃん・・・・・」 「ゆっ・・・ゆっ・・・」 「ゆんやあああああああああ! ゆんやあああああああああああ!」 「おちびちゃんたち!? ゆっくりしていってね!? ゆっくりゆっくり!」 突然外に放り出された赤ゆっくり達は一斉に泣き出した 中には瀕死の者もおり、れいむはどうしていいか判らず狼狽する そんな光景を見てにっこりとほほ笑むお兄さん 「それ、食え」 「・・・・・ゆ ・・・・・お兄さん? いまなんて?」 「食え。 残さず全部食え」 「これ、ゆっくりだよね? おちびちゃんだよね?」 「だからなんだ。 食え」 「で、できないよ・・・ おちびちゃんなんかむーしゃむしゃしたら・・・」 「できぬともうすか。 いま、できぬともうしたか」 「ゆぅ?」 「食わないならお前はもう許さない。 お前はそこで乾いていけ」 「そ、そんな・・・」 「どうした、はやくしろ」 「ゆう・・・・ れいむは・・・」 泣き叫ぶおちびちゃん達 じっとれいむを見つめるお兄さん ゆっくりの中での最大の禁忌である同族食い そしてもう一つの禁忌、おちびちゃん殺し れいむはその片方を既に犯している もう片方も犯せば、れいむは立派なゲスゆっくりになってしまう 「・・・ゆっくりりかいしたよ」 れいむの中で、理性よりもお兄さんへの恐怖が勝った 「おちびちゃんはれいむにゆっくりたべられてね。 はーみゅはみゅ」 「ゆぴぃ!? ゆんやああああああああああ! はなしちぇええええええええ!」 れいむは一匹の赤まりさを咥える 咥えられた赤まりさはぶりんぶりんとあんよを左右に振って抵抗している なかなか踏ん切りがつかないのか咥えたまま動かないれいむ そんなれいむにお兄さんはあるものを注射器で注入した 「ゆひぃ!? ほひひはん?へいふひはひひはほ? ・・・はんはははははははふふはっへひはほ?」 注射器のラベルには『コンポストゆっくり用食欲増進剤 精神強化成分配合』と書かれている れいむは頭がぼーっとして身体が熱くなっていくのを感じると同時に今まで感じたことのない空腹感を感じた まるで三日三晩食事を取らなかったような飢え めがぐーるぐるして、舌がピクピクとひきつる 「はなしちぇええええええええ! まりしゃまじゃしにちゃく『ぐちゃ!』・・・!」 咥えていた赤まりさを噛み潰したれいむ その光景を見て、他の赤ゆっくり達は一斉に逃げ出した 「なんだかとってもおなかがすいたよ! れいむはたっくさんむーしゃむしゃするよ!」 「こっちにくりゅなあああああああ! このげすうううううううううううう!」 一匹の赤れいむに狙いをつけて飛び跳ねるれいむ すばやく回り込んで赤れいむをもみあげでつまみあげる 「はなしちぇえええええええええ! れいみゅをたべにゃ『げちょ!』・・・!」 「しあわせええええええええええええええ!」 光悦の表情を浮かべるれいむ 眼下で息を切らしてお腹に体当たりをくり返す赤まりさに気づく 「きょうぢゃいをこりょしちゃげしゅはまりしゃがせいっしゃい!しゅりゅのぜえええええ! ゆっくちしにゃいでしゃっしゃちょ・・・ゆわあああああああ! はなしちぇええええええ! ゆるしちぇええええ『げしょげしょ!』・・・!」 「しあわせええええええええええええええ!」 「ゆわあ、あ、あ、あ、あ・・・・ みんにゃてべられちゃうのじぇ・・・」 「きょわいよおおお・・・ れいみゅもうしんじゃうにょかなぁ・・・」 「ゆうううう・・・ おきゃあしゃん・・・ おちょうしゃん・・・」 「どびょじぢぇ・・・ どびょじぢぇごんにゃめに・・・」 壁の隅にひと塊りになって震える赤まりさと三匹の赤れいむ れいむは大きく広げた口でそれらを被うと、口を閉じて一気に噛み砕いた 「しあわせええええええええええええええ!」 「ゆっ・・・ゆげえええええええ!」 「ゆっ・・・ゆっ・・・ゆっ・・・」 「しあわせええええええええええええええ! しあわせええええええええええええええ!」 精神的に追い詰められて餡子を吐く赤まりさと既に瀕死になっていた赤れいむ それらを食べ終え、最後の一匹になった赤まりさににじり寄っていくれいむ 「ゆわぁあわわわ・・・・ まりしゃ・・・おいしくにゃいよ? たべちぇもおいちくにゃいよ? おねがいぢゃかりゃこっちにこにゃいでにぇ? まりしゃとゆっくちしてにぇ?」 「かわいいれいむはむーしゃむしゃするよ!」 「ゆんやあああああああああああ『ぷしゃああああああああ!』あああああああああああ!」 赤まりさの下腹部から、おそろしーしーが勢いよく噴出される がたがたと震える赤まりさを前に、れいむは笑顔で宣言した 「ゆっくりいただきます!」 「やめりょおおおおおおおお! しにちゃくにゃあ『ぎっちょん!』・・・!」 「しあわせええええええええええええええ!」 全ての赤ゆっくりを完食し終えたれいむ そんなれいむにお兄さんはこう言った 「見ろよ、あのれいむゆっくりしてないだろ?」 「あんなにかわいいおちびちゃんをたべちゃうなんて・・・ このゆっくりごろし・・・」 「みゃみゃぁ・・・ ありしゅこわいわぁ・・・」 お兄さんの傍らには、先ほどのありすの親子がいた 4 「おにいさん! おにいさんにもらったぶろっくさんで ありすのおちびちゃんがとってもとかいはなこーでぃねいとをしたのよ!」 「みちぇみちぇ!おにいしゃん! ありしゅがんばっちゃわ!」 「すごいなぁ! ありすもありすのおちびちゃんもとっても都会はだな!」 お家の中からは楽しそうなお兄さんとありす親子の声 れいむはそれを聞くと惨めな気持ちになるので聞かないようにしていたが、嫌でも耳に入ってくる れいむが赤ゆっくりを食い殺したあの後、お兄さんはれいむではなくありすの親子を家に入れた お兄さんは新しくありす種が飼いたくなったのでつれてきたとのこと れいむにとってはあてつけにしか思えなかった 毎日のように聞こえるありす親子の生活音 それを聞くたびにいーらいらするれいむ れいむはただただ耐え続け、今日も壁を綺麗にする 「とってもとかいはならんちさんだわぁ! おにいさんゆっくりありがとう! ほら、とちびちゃんもおれいをいいなさい!」 「おにいしゃん! ゆっくちありがちょー!」 「いいんだぞー! いっぱいたべてゆっくり大きくなってね!」 れいむの大好きなべーこんごはんさんの臭いがする 臭いだけ嗅がされておなかが情けない音を立てた もうここ何日もまともなごはんを食べていないれいむにとっては拷問だ 「ゆうううぅぅぅぅ・・・ れいむのべーこんごはんさん・・・・」 空腹を紛らわすために、その辺に生えていた雑草を毟って口に入れるれいむ もう雑草の味には慣れたがちっともゆっくりできない 「みゃみゃ! ありしゅこーりょこりょすりゅからみちぇちぇにぇ! こーりょこりょ!」 「とってもとかいわなこーろころだわぁ! おにいさんもみてあげてぇ!」 「可愛いなぁありす! もっかいこーろころして見せてくれるか?」 「ゆっくちりかいしちゃわ! こーりょこりょ!」 楽しく遊ぶありす親子とおにいさん 前はれいむがお兄さんを一人占めして一緒に遊んでいた 「おにいしゃんしゅーりしゅりしちぇ! しゅーりしゅり!」 「だめよ、おちびちゃん! おにいさんはいまてれびさんをみてるのよ!」 「いや、かまわんぞ。 ほーらこっち来い、すーりすり」 「ゆわぁい! おにいしゃんのおちぇちぇとっちぇもあっちゃかいわぁ! ありしゅ、おにいしゃんのおちぇちぇだーいしゅき!」 お兄さんの手にすーりすりする赤ありす その手はれいむだけに優しくしてくれる温かい手だった 「ありしゅ、にゃんぢゃかにぇむいわぁ・・・」 「ちょっとおひるねにしましょうか・・・ おちびちゃんゆっくりおやすみなさい」 「ありしゅおにいしゃんとねむねむしちゃいわ・・・」 「ああ、いいぞ。 ありすもこっちに来いよ」 「ええ!? いいの!? おにいさんはほんっとう!にゆっくりしたにんげんさんね!」 「それほどでもあるよ。 さぁ、みんなでゆっくりお昼寝しようか」 「ゆぅ・・・ ありしゅ・・・ おおきくなっちゃらおにいしゃんのおよめしゃんになりゅ・・・ゆぴー」 お兄さんとお昼寝するのはれいむの特権の筈だった 今は別のゆっくりがおにいさんの手の中で眠っている 「ぺーろぺろ!ぺーろぺろ! ゆっくりしないでかべさんはきれいになってね! ぺーろぺろ!」 れいむは早くお兄さんを取り戻そうと躍起になった しかし、れいむの小さな舌では壁を綺麗にするのには時間がかかりすぎる まだ四分の一も終わっていないのだ 「ぺーろぺろ!ぺーろぺろ! ぺーろぺr・・・・ゆぐうううううううう!!! なんででいぶがごんなごぢじなぐじゃいげないのおおおおおおおおおおお!? おにいざんあんなにやざじがっだのにいいいいいいいいいいいいいいいい!!! なにがいげながっだの!? なにがわるがっだの!? でいぶはなにぼあやばればいいぼおおおおおおおおおおお?」 壁に額をつけて、ぽろぽろと零れ落ちる涙を見つめるれいむ 奪われてしまったしあわせ 終わらない課題 ゆっくりできない食事 変わってしまったお兄さん 何が問題で、何が悪かったのか れいむにはとうとう答えが分からなかった 永遠と続くと思われた絶望的な生活 だが、そんな日々は突如として終わりを告げる 「おにいしゃんはなしちぇええええええ! みゃみゃあああああああ! どぼしちぇたしゅけちぇくりぇにゃいにょおおおおおおおおおお!?」 「ごめんなばい! おでがいでぶがらおじびじゃんぼばなじでぐばばい!」 「うるせーよこの屑ども。 あんなに可愛がってやったのに恩をあだで返しやがって」 「どぼしちぇこんにゃこちょしゅりゅにょおおおおおおおおおおおおおおおお!? ありしゅなんにもわりゅいこちょしちぇないにょにいいいいいいいいいいい!!!」 「だべえええええええええええええ! ぞんなごどいっじゃだべええええええええ!! おでがいだがらおにいざんにあやばっでええええええええええええええええええ!!」 「はー・・・ どうしようもねえクソ餓鬼だな お前死刑確定だから。 ゆっくり苦しんで死んでいってね」 「ゆぴいいいいいいいいいいいいいいい!!! もうやじゃ! おうちかえりゅううううううううううううううう!」 お兄さんにつかまれている赤ありすと、顔をぐしゃぐしゃにして謝り続ける親ありす そんな二匹をお兄さんは汚物でも見るかのように見ていた れいむが外から家の中を覗くとカーペットの上にシミができている どうやら赤ありすが粗相をしてしまったようだ 「おい、れいむ! いるか?でてこい!」 「ゆぅ、れいむはここだよ。 おにいさん」 庭に出てれいむを呼ぶおにいさん れいむは一目散にお兄さんのところへ跳ね寄っていく 「これ、食え」 「ゆぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」 「おにいざああああああああああああああん! やべべええええええええええええええ!!!」 さも当然とでも言うかのように言い放ったお兄さん 赤ありすはこのお家に来た日に、れいむがおちびちゃんを食い殺しているのを見ていたので必死に抵抗する 親ありすの方は、泣きながら懇願しつづけていた 「おでがいでずがらおちびじゃんぼごろざないでぐだざいいいいいいいいいいいい!!!」 「言ったよなぁありす。 こいつがトイレで失敗しないようにちゃんと面倒見ろって」 「ありずはじゃんどおじえだわ! でぼじょっどめをはなじだずぎにいいいいいいいいいいいい!」 「阿呆が。 今回だけじゃねーだろーが。 こいつが何回失敗したか覚えてるか?」 「ええっと・・・ いち、にい、たくさん・・・ だぐざんでずうううううううううううう!!!」 「だろぉ? トイレの場所も覚えられないゴミ屑は死んだ方がいいよね! ゆっくりりかいしてね!」 「ぞんだあああああああああああ!!! もういっがいだげじゃんずぼぐばばいいいいいいいい!」 「嫌だよ、何度もチャンスやったのにそれを不意にしたお前が悪い」 「どぼじでえええええええええええええええええええええ!!!」 「ゆんやああああああああああああああ! みゃみゃあああああああああああああああ!」 れいむは呆れた トイレの場所も覚えられないなんて、なんてバカなんだろう れいむが同じくらいの大きさだったころはトイレの場所はおろか数や文字まで覚えさせられていた その程度もできないのにれいむのお家で暮らし、お兄さんを一人いじめしていたなんて・・・ 「おにいさん! はやくそのくずをちょうだいね! れいむはおなかがすいてるんだよ!」 「お、れいむはほんとにいい子だな~! 流石は加工所産だけあるな」 「なにいってりゅにょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「やべろおおおおおおおおおお! おじびじゃんぼだべるなああああああああ!」 れいむは子ありすを直ぐにむーしゃむしゃできるように身構えていた 憎きありす親子に自ら制裁をくわえることができるのだ 楽しくないはずがない 「いくぞ~! ほ~れ!」 「ゆぴいいいい! おしょらをとんじぇるみちゃいいいいいいいいいい!?」 「やべろおおおおおおおおおお! おじびじゃんぼだべるなあああああああ!」 放り投げられた子ありす、踏みつけられて身動きとれない親ありす れいむは落下予測地点に先回りして口を大きく開けた その中に子ありすがすぽりと入り、れいむは思いっきり口を閉じた 「ゆんやああああああ! ありしゅまだしにt『びちぃぐちゃ!』・・・!」 「むーしゃむーしゃ! むーしゃむーしゃ!」 子ありすが絶命しても執拗に噛み砕くれいむ まるで今までため込んできた不満を全てぶつけるかのように・・・ 「しあわせえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」 「あでぃずのおじびじゃんがあああああああああああああああああああああああ!!!!」 久々に心の底からゆっくりを感じたれいむ 絶望の真っ只中に叩きこまれたありす お兄さんはそんな二匹をみて満足そうにほほ笑むとお家の中に入って行った 5 「はやくしてね! れいむはおこってるんだよ!」 怒りの声を上げるれいむ 口には錆びた錆びた釘を咥えている 庭にはれいむのほかにありす、まりさ、ぱちゅりー、ちぇんがいる れいむ以外のゆっくりは総出で家の壁をなめて綺麗にしている 「ごべんなべい! あやばりばずがらゆるじでぐださい!」 「もうへとへとなんだぜええええ! おねがいだからゆっくりさせてほしいのぜええええ!」 「むきゅ・・・エレエレエレ。 もっど・・ゆっぐじ・・・」 「わぎゃらないよおおおおおお! ぱちゅりーしっかりしてねええええええ?!」 ぱちゅりーが中身のクリームを吐きだして、心配そうに駆け寄る一同 れいむはそんなゆっくり達に満面の笑みを浮かべて言い放った 「ぱちゅりーはきょうのごはんさんだよ! れいむがむーしゃむしゃするからね!」 「「「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」」 驚愕するゆっくり達を放っておいて、れいむはぱちゅりー近寄ってほっぺをガブリと食いちぎる 「むーしゃむーしゃ・・・・しあわせええええええええええええええ!」 ぱちゅりーを食べたれいむはとてもゆっくりした表情を浮かべた 他のゆっくりは寄り添ってがたがたと震え、恐ろしーしーを漏らす 「なにしてるの!? さっさとかべさんをぺーろぺろしてね! きょうののるまさんをたっせい!するまですーやすやもきんしだからね!」 れいむは咥えた釘を振りかざし、生き残ったゆっくりを仕事へと駆り立てた あれからお兄さんは野良を拾って来て、その野良に何か不都合なことがあるとお庭に放り出した 外に出されたゆっくり達は庭に住んでいるれいむに番や姉妹を食われ、以後奴隷としてれいむの課題を手伝わされている 「よぉ、れいむ。 今日も精が出るな」 「ゆゆ? おにいさん? あたりまえだよ! れいむはがんばってるんだよ!」 「そーかそーか。 で、結局怒られた理由は分かったのか?」 「ゆぅ? りゆうさん? なにそれおいしいの?」 「ふっ・・・そんなもんか。 まあいい、今日でお前のことをゆるしてやるよ」 「ゆーん!? ほんとうなの!? れいむ、もうがんばらなくてもいいの!?」 「ああ、もう頑張らなくていいんだぞ そうなるとそいつらはもういらないよな。 全部食って処分しとけよ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「「「どぼじでぞうなるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」」 涙を流して嘆く野良達はれいむがにじり寄ると直ぐに身構え戦闘態勢に入った 沢山の野良を食らい体調良好なれいむ 僅かな食事しか与えられず貧弱な身体を酷使してきた野良 結果は比を見るより明らかだ 「いぢゃいいいいいいいい! までぃざにひど『ぶすり』ゆぎゃあああああああああああ!」 両目を刺された後まむまむに釘を突っ込まれたまりさ 「わぎゃらないよおおおお! どぼじでごんな『むしゃり』・・・!」 顔面を容赦なく噛みちぎられて断末魔も上げられず絶命するちぇん 「のろってやるううううう! ごのいながぼの『へしゃり』ごべええええええええええええ!」 身体を抑えつけられて不自然な方向へと無理やりへし折られたありす 「れいむのすーぱーむーしゃむしゃたいむはっじまっるよー☆」 物言わぬ饅頭になった四体の野良に、れいむはドヤ顔で言った 苦労の末に獲得したしあわせーな食事 れいむは夢中でむしゃぶりつき、作業着の人間さんがお兄さんのお家を尋ねてきたことに気づかない 「あ、どーもー! お待たせして申し訳ありませ~ん」 「別にいいんですよ。 あれを引き取ってもらえればいいだけなんで」 「はぁーい。 ではさっそく・・・ うわ!これはひどい・・・」 「もう手がつけられなくてどうしようもないんですよ・・・」 明るい声で挨拶をした作業着の人間さんは、れいむを見て絶句した おいしそうに同族を食べるれいむ 口の周りは餡子やカスタードでべたべた ゆっくりが饅頭とは言え見ていてあまり気持ちの良い物ではない 「ええっと・・・ じゃあ、連れて行きますね・・・」 「はい、助かります。 支払いはクレジットでも大丈夫ですか」 「あっ・・・ はい、大丈夫ですよ。 ちょっと待っててください」 「ゆーん! がんばったれいむへのごほうびさんだよ! むーしゃむーしゃ!」 「おい、れいむ!」 作業着のお兄さんが支払い用の端末を取りに行くとお兄さんはれいむを呼んだ れいむは食事を中断され不機嫌そうに膨れるが、お兄さんに呼ばれたので直ぐに笑顔になってすり寄っていく 「おにいさん! れいむがんばったよ!」 「ああ、頑張ったなれいむ。 そんなことより、れいむ。 今日でお前とはお別れだ」 「ゆーん! おうちにいれ・・・ゆぅ? おわ・・・かれ・・・?」 れいむはお兄さんの言っていることが理解できない お別れという言葉に思考がフリーズする 「そうだ、お前は加工所に連れて行って処分してもらう」 「しょ・・・ぶん・・・?」 「永遠にゆっくりさせるってことだ」 「ゆううううううううううううううう?! なんでえええええええええ!?」 「さあ、なんでだろうな。 そんなことよりれいむ、怒られた理由は分かったか?」 「ゆぅ!? ぞんなのわがらないよ!? でもでいぶがんばっだんだよ!? ぜいいざんをみぜでばんぜいじだんだよ!?」 「だろうな、お前は怒られた理由も分からないで俺に謝罪して反省したわけだ」 「ぞうでず!!! でいぶはおごられだりゆうばわがりばぜん! でぼいっじょうげんべいばんぜいじばじだ! あやばりばじだ! だがらでいぶを『・・・だよ』・・・ゆ?」 「もともと理由なんてなかったんだよ。 お前は俺のと言った通りずっといい子にしてた 勝手にむーしゃむしゃすることも、野良っとすっきりして子供を作ることもしなかった お前はゆっくりにしては聞き分けのいいやつだったよ」 「・・・じゃあ、どぼじで?」 「だから理由なんてないっていっただろ。 まぁ、早い話飽きたんだわ」 「・・・あきたさん?」 「そうだ、だからお前を家の中から閉め出した だけどお前は自分が何か悪いことをして追い出されたと勘違いした。 ただそれだけなんだわ」 「どぼじで・・・? どぼじでなのおおおおおおおおおおお!? でいぶがいいごにじでだらあんばにぼめでぐべばぼびいいいいいいいいいいい!!!」 「この数日間、理由も解らないで必死に反省してるお前を見てて十分楽しめたよ まぁ、お前の言葉を借りて言うならゆっくりできたってとこだな」 「じゃあ! じゃあ!!! でいぶをもういじどがっで『それはできない』どぼじでえええええ?!」 「言ったろ、飽きたって。 もうお前がどうなろうが知ったこっちゃない」 「ゆうううううううううううううううううううううう!!!! なまいぎなぐじをぎいでごべんばばい! ばんぜいじでばぶごべんばばい!!!」 「必死だな、おぃ」 泣いて額を地べたにこすりつけるれいむをニヤニヤと見下ろすお兄さん 「おまたせしました~」 作業着の人間さんが戻ってくるとお兄さんはニヤついた顔をキリっと引き締めた 支払いが済むと作業着の人間さんは透明な箱にれいむを入れた 加工所特性のゆっくり専用防音ケースである 「お゛に゛い゛ざあああああああああああああ『パタン』・・・・」 「じゃあ、お願いしますね」 「はい、でも本当にいいんですか? 銀バッチでとっても懐いてるみたいですけど」 「昔はいい子だったんですよ、でも今は・・・」 そう言って庭に目をやるお兄さん 庭にはれいむが食い散らかした野良の死体が散乱している 「・・・確かにこうなったら手放したくなるのも無理はないですよね」 「すみません、情が湧くといけないので・・・」 「あ、はい。 では、またご利用になる時はよろしくお願いします」 「はい。 ありがとうございました」 「いえいえ。 こちらこそ・・・では」 挨拶を終え、乗って来た軽トラックの荷台にれいむを放り込んで出発する作業着の人間さん お兄さんは無言でそれを見送った 「ばんぜいじでばずごべんばばい! でいぶばわるいごでじば! げずばゆっぐぢでじだ! あやばりばずがらゆるじでぐばばい!! おべがいじばず! だのみばず! ごでがらばごごぼをいべがべでいいごにじばず! だがらッ! だがらああああああ!!!!」 れいむは透明な箱の中で、誰に聞かれることもない謝罪を繰り返していた 終 あとがき 前回『anko2410さくのなかとそと』を投稿させていただいた者です どうやら沢山の方に読んでいただけたようで、大変ありがたいことです にとりあきさんには素敵な挿絵を書いていただき、本当にありがとうございます 皆さまにこの場を借りてお礼を申し上げさせていただきます 今回の作品はいかがでしたでしょうか 感想がございましたら感想板に書き込んでいただけると大変助かります 次回の作品の参考にさせていただきたいと考えているので 遠慮なく思ったことを書いて頂ければ幸いです では