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注意 死なないゆっくりがいます。 ぬるめです。 死後のゆっくり 「ゆ、じじぃ!!ここはまりささまのゆっくりぷれいすなんだぜ!!にんげんさんはつうこうりょうをはらっていくんだぜ!!」 俺が道を歩いていると饅頭が話しかけてきたので蹴っ飛ばしておいた。 「ゆぎゃべ!!」 コロコロと道端に転がっていく。すると物陰から伺っていた番らしきれいむが出てきた。 「ばりざぁぁぁぁぁ!!だいじょうぶ!!ゆっぐりじでねぇぇぇ!!」 あたまの茎をゆっさゆっさ揺らしながらまりさに近づいてくる。よく落ちないな。 「ゆぐぐ、だいじょうぶだよれいむ・・・。って、でてきちゃだめでしょぉぉぉぉ!!なんででてくるのぉぉぉぉ!!」 「まりざがじんぱいだからでしょぉぉぉぉぉぉ!!どぼじでぞんなごというのぉぉぉぉぉ!!」 なんかうるさいので黙らすことにした。 「ゆげっ!!やべっ!!ばりざざま・・・ゆべっ!!・・・づよいんだ・・・ゆぼべぇ!!」 「や、やめてね!!れいむにはあかちゃんがいるんだよ!!ゆへへ・・・れいむにはかわいいあかちゃんがいるんだがらてはだせないよね・・・ ゆっぎゃああああああああああ!!やべでえええええええええ!!でいぶにはあがぢゃんいるのにぃぃぃぃぃぃぃ!!」 さて、体は黒ずんでボロボロ、歯はガタガタ。帽子もリボンも見る影もなくなったこの二匹。 無事なのはあえて残したれいむの茎についた赤ゆっくりのみだ。 「ゆぁぁ・・・ごれじゃあもうゆっぐりでぎないぃぃぃ・・・」 「せっがぐあがぢゃんがうばれるのにぃぃぃ・・・」 まあこれだけ痛めつけられていれば自然治癒も難しいだろうからな。 「ゆぅぅぅゆっぐりじだいぃぃぃ・・・いだいのなんどがじでぇぇ・・・」 暇だし少しからかってやるか。 「なんとかしてやろうか?」 「「ゆ"ゆ"っ!」」 一斉にこっちを見るゆっくり。 「くそじじぃ・・・はやぐばりざざまをだずげるんだぜ・・・でないどいだいめみるんだぜ・・・」 「はやぐじでね・・・でいぶのがわいいあがぢゃんがみれなぐっでもいいの?」 こいつら・・・誰がこんなめにあわせたかもう忘れたのか? まあいいやこいつらの餡子脳に付き合っていたら時間がいくらあっても足りやしない。 「ああ、いい方法がある。・・・幽霊になればいいんだよ。」 「ゆうれい・・・?なにぞれ?」 「あ~なんていうか・・・すごくゆっくりしたゆっくりだけがなれる究極にゆっくりした状態・・・かな?」 「ゆ"、きゅうきょくにゆっぐり・・・?」 「ああ、そうすれば俺にも手出しはできないし、永遠にゆっくりできるんじゃないのかな?」 「ゆ"、どうずれば“ゆ~れい”になれるの・・・?」 「簡単さ、幽霊になりたいって強く念じながら眼をつぶるだけでいい。後の手順は俺がやってやるよ。」 「ゆっぐりりがいじだよ・・・ゆっへっへ、にんげんざんはばかだね!! まりざだぢはゆっくりをこえたきゅうきょくのゆっくりをてにいれるよ・・・」 「れいむたちはゆっくりをちょうえつするよ・・・。」 なんだか聞いたことがあるようなないようなセリフを吐いて眼を閉じる二匹。 なにやら必死に念じているようだ。・・・さて、動きも止まったのでさっさと踏み潰させてもらおう。 グシャ!! 「ゆべえっ!!」 グシャ!! 「ゆぼろっ!!」 見事にぺっちゃんこに潰れる二匹。間違いなく死んでいるだろうな。 さて、適当に思いつきで幽霊になればいいなんていったけどほんとうになったりするのかな? っていうかこいつらに魂ってあるのか? などと考えていたら、潰れた饅頭から何か白いものが出てきた。 「ゆ~どろどろどろ~・・・」 「ばけてでるよ~、おどろくの?しぬの?」 「うわっ、マジで出てきた!」 そこには憎たらしい顔と各々の飾り、あとよく幽霊がつける三角のやつ(天冠というらしい)のついた白い丸いものがゆらゆら浮かんでいた。。 「ゆっふっふ、まりさはゆ~れいさんなんだよ!どどろいたでしょ!!これでにんげんさんにもてはだせないよ!!」 「わかったらはやくおかしをちょうだいね!!れいむはおなかがすいたんだよ!!」 「ああ、わかった。・・・ホレ。」 俺は持っていた小さいキャラメルを地面に置いてやった。 「ゆっへっへ、ゆ~れいになったまりささまはむてきなんだぜ。あまあまさんいただくんだぜ・・・むぐむぐ・・・?」 「ゆゆ~ん♪さすがはれいむのまりさだよぉ~。じゃああまあまさんいただくよ・・・むぐむぐ。・・・ゆ?なにこれ?あじがしないよ?」 「ゆゆゆ!まりさもだよ!!やいくそじじぃ!!これはあまあまさんじゃないよ!!はやくちゃんとしたあまあまさんをちょうだいね!!」 「いや、違うよ。それはちゃんとしたキャラメルで甘いものだし。それに味がしないんじゃなくてお前らが食べることができてないだけだよ。 そら、ちゃんとそこにキャラメルあるだろ?」 男が指し示した場所には男の言ったとおりちゃんとキャラメルが原型のままあった。 「ゆ!ほんとだ!ゆっくりいただくよ!・・・むぐむぐ・・・どぼじでたべられないのぉぉぉぉ!!」 「そりゃ幽霊だからなぁ。この世の食い物は食えないんじゃないかな。」 「じゃあどうずればいのぉぉぉぉ!!」 「さあ?どうもしようがないんじゃないかな?」 「そんなのやだぁぁぁぁぁぁ!!」 じたばたと暴れる二匹だが実際俺にはどうしようもないことだしなぁ・・・。 ていうか幽霊だから物食わなくてもいいんじゃないのかね?教えないけど。 「ゆぎぃぃぃぃ!!まりざざまをごんなめにあわぜるばがなじじぃはじね!!ざっざどじね!!」 まりさがこっちにのろのろと突っ込んでくる。 「ゆ!いいよまりさ!!まりさのちょっといいところをれいむにみせてね!!」 「まかせてねれいむ!!」 しかしおそいなこいつら待ってるほうが疲れる。 ようやく俺にたどりついたまりさ。追突する直前に眼を閉じ防御体制をとる。 しかし、まりさのからだは俺のからだをスゥ・・・と通り抜けまりさはそれに気づかぬまま進んでいく。 「まりさーー!!うしろ、うしろ!!」 「ゆ?・・・ゆゆ!!きたないじじぃなんだぜ!!まりささまのこうげきをよけるんじゃないんだぜ!ぷんぷん!!」 そういって再び体当たりを試みるまりさ。だが何度やってもぶつかることはない。 「どぼじでぶつからないのぉぉぉぉぉ!?」 「まあ幽霊だからな。この世のものには干渉できないんじゃないか?」 「じゃあどうずればにんげんざんをだおぜるの!?」 「さあ?無理なんじゃないかな?俺もお前らを倒せないけど。」 「なにぞれぇぇぇぇ!!だまじだね!!ぐぞじじぃ!!」 「騙してないだろ俺には手出しできないんだから。」 「うるざいよ!!ごんなのぜんぜんゆっぐりでぎないよ!!」 ギャーギャー五月蝿いな。害はないとはいえあまりにやかましい。 そういえば前に読んだ漫画にお経で悪霊退散させるのがあったな。やってみるか。 「え~っとどんなんだったかな?確か・・・南無大慈悲救苦救難広大霊感うんたらかんたら・・・」 「「ゆぎゃあああああああああああ!!やべでえええええええええ!!」」 お、効いてる、効いてる。なんか上のほうが薄くなってきてる。 「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカうんたらかんたら・・・」 「「ゆぎゃあああああああああ!!いだいいいいいいいい!!エレエレエレエレ!!」」 なんか吐いてる。・・・これ病気とかを治すときに言う真言だったと思うんだが・・・ 適当でもいいのかな? 「チャー○ーヘッチャラーうんたらかんたら・・・」 「「ゆげげげげげげげげg!!ゆ"っゆ"っゆ"っゆ"っゆ"っ・・・」」 痙攣しだした、何でもいいみたいだな。本当に適当な連中だ。 しばらくして回復すると 「もうゆ~れいさんはぜんぜんゆっくりできないよ!!まりさとれいむをさっさともとにもどしてね!!」 「そうだよ!!もどさないとひどいよ!!ぷんぷん!!」 「そういわれてもなぁ。お前等のからだはもうあんなんだし。」 そういってつぶれた饅頭を指差す俺。 「ゆ!なにいっでるの!!まりざざまのうつくしいからだはあんなにつぶれてないよ!!」 「じゃああの帽子にも見覚えないのか?れいむ、おまえは?あのリボンに心当たりは?額に生えた赤ゆっくりに心当たりはないのか?」 「ゆっ!!た、たしかにれいむのりぼんさんだよ・・・じゃあれいむはいまのれいむはなんなの!?」 「だから幽霊だよ。お前等は死んだの。」 「ゆ、じゃ、じゃああれはまりさっでごど?」 「そうだよ。」 「・・・ゆ、ゆぎゃあああああああああああ!!エレエレエレエレエレ!!」 「ば、ばりざあああああああああ!!エレエレエレエレエレ!!」 あらあら、まりさのもらい吐きでれいむまで・・・ていうか零体になってんのに何はいてるんだろう? そんなことを思っているとなんとれいむの死骸に生えていた赤ゆっくりがぷるぷると動き出した。 もしかして踏み潰したときの圧力で餡子が蔦まで行って成長促進されたのだろうか? ぷるぷるぷる・・・ぷちっ!! 「ゆっくちちていっちぇにぇ!!」 一匹目が生まれた、まりさ種だ。まだはいていた二匹もその声に反応してそちらを向く。 「ゆぅぅぅぅぅぅぅ!!おちびちゃん!!ゆっくりしていってね!!」 「さすがれいむのおちびちゃんだよ!!とってもゆっくりしているね!!」 二匹は赤まりさにすりすりをするが赤まりさのほうはきょとんとしている。 そうしているうちに次々と赤ゆっくりは生まれた。その数7匹。赤まりさが三匹、赤れいむが四匹だ。 う~ん、こいつらの意見に同意するのは不快だが生まれたてのゆっくりはなかなか可愛い。おもわず目をくりぬいてやりたくなる。 「「「「「「「ゆっきゅちちていっちぇにぇ!!」」」」」」」 「おちびちゃんたち!!ゆっくりしていってね!!」 「おちびちゃんたち、れいむがおかーさんだよ!!ゆっくりしていってね!!」 俺から見ると始めての親子の会話なのだが赤ゆっくりたちからするとそうではないようだ。 「ゆぅ?おきゃーしゃん?どきょにいりゅにょ?」 「かきゅれてないぢぇにぇ!!きゃわいいまりちゃがうまれちゃよ!!」 「れいみゅおにゃかへっちゃよ!!ごはんちょーだいにぇ!!」 どうやら赤ゆっくりには親子が見えていないらしい。 「ゆゆゆ!!おちびちゃんたち、おかーさんはここにるよ!!」 「そうだよ!!ちゃんとこっちをみてね!!」 しかしやはり赤ゆっくりには伝わらないらしい。しだいに赤ゆっくりたちも苛立ってきた様だ。 「にゃんじぇおきゃーしゃんたちいにゃいにょぉぉぉぉ!?」 「こんにゃにきゃわいいれいみゅたちをおいてどこいっちゃのぉぉぉ!!」 「やくたたじゅなおやはちね!!ちね!!」 「「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉ!!」」 やはりゲスの子はゲスか。 生まれたばかりだというのにもう口汚くなってるし。 「ゆゆ!!しょこにょおにーしゃん、れいみゅのおきゃーしゃんたちしらにゃい?」 ようやく俺の存在に気づいたらしく話しかけてくる赤ゆっくり。 「さぁ?俺は知らないなぁ?」 白々しくとぼけて見せる俺。と、親の二匹が抗議して来る。 「なにいっでるのぉぉぉ!?おちびちゃんのおかーさんはまりさたちでしょぉぉぉぉぉ!?」 「そんなこともわからないの!!ばかなの!?しぬの!?」 五月蝿い。 「南無大慈悲・・・以下略」 「ゆぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」 「ゆべべべべべべべべべべべべべべ!!」 便利だなこれ。 そこに赤ゆっくりがまたしゃべり掛けてくる。 「じゃあおにーしゃん、かわいいまりちゃたちのためにごはんをもってきちぇにぇ!!はやくちてにぇ、ぐじゅはきりゃいだよ!!」 「いやだよ、・・・ていうかご飯ならお前等の後ろにたくさんあるじゃないか。」 「ゆ?ほんちょだ!あみゃあみゃなにおいがしゅるよ!!」 「なにいっでるのぉぉぉぉ!!ぞれはおかーざんだぢでしょぉぉぉぉぉ!!」 「たべちゃだめぇぇぇぇ!!ゆっぐりでぎないよぉぉぉぉぉ!!」 後ろの餡子の塊に向かっていく赤ゆっくりとそれを必死に止めようとする親二匹だが、二匹には止める術がないので結局・・・ 「「「「「「「む~ちゃ、む~ちゃ・・・ちちち、ちあわちぇ~♪」」」」」」」 「「ゆぎゃあああああああああ!!どぼじでだべじゃうのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」」 赤ゆっくりたちはあっというまに二匹に群がりかなりの量を食べてしまった。 もうほとんど原型は残っていない。 「ゆぁぁぁぁ・・・ばりざのたくましいからださんが・・・」 「でいぶのぷりちーなおかおがぁぁぁ・・・」 赤ゆっくりたちは食べ過ぎたのかすでにおねむの時間のようだ。ゆ~ゆ~寝息を立てて寝ている。 するとそこに何かやってきた。 「う~う~!あまあまさんのにおいがするど~☆う~☆」 「「れれれ、れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」 親の二匹は大声をあげて空中をのろのろと逃げる。だから必要ないというのに・・・。 「う~☆あまあまいっぱいだっど~☆」 その声に気づき二匹も引き返してくる。 「おちびちゃんたち!!れみみゃだよ!!はやくにげてね!!」 「れみりゃはゆっくりできないんだよ!!ゆっくりしてないでいそいでね!!」 当然、聞こえていないので赤ゆ達はゆ~ゆ~寝たままだ。 「おにぃぃぃざぁぁぁぁん!!おちびちゃんたちをだずげでぇぇぇ!!」 「なんでもじまずがらぁぁぁぁ!!おねがいじまずぅぅぅぅ!!」 こいつ等にこんなに子を思う気持ちがあるとは思わんかった。 とりあえずれみりゃに話しかけてみる。 「おい、れみりゃ!」 「う~?おにいさんなんだど~?」 二匹はなにかこちらに感謝のまなざしを向けている。赤ゆを救ってくれるとでも思っているのだろう。 「おのこしはするなよ。」 固まる二匹。 「う~☆わかってるんだど~☆えれがんとなおじょうさまはおのこししないんだど~☆う~☆」 「ゆああああああああああ!!ちがうでしょおおおおおお!!」 「はやぐおちびちゃんたちをたすけでえええええええええ!!」 無視。 そしてれみりゃの食事が始まった。 まず、赤ゆを一匹づつつかみ底部を傷つけ逃げられないようにしていく。 「ゆ~・・・ゆ~・・・ゆ?ゆぎゃ!!まりちゃのあちがあああああああ!!」 全部が済むと一匹づつ中身を吸い出していく。 「う~☆あまあまおいしいどぉ~☆」 「ゆぎゃああああああああああ!!まりちゃ・・すわれっ・・・もっ・・・きゅち・・・」 「「おちびちゃああああああああああああん!!」」 しかし三匹ほど吸い出すと残った四匹を一箇所に集め丸めて固めだした。 赤ゆっくりは死んではいないようだが痙攣している。 「おい、れみりゃ。そいつらどうするんだい」 「う~?れみりゃのおちびちゃんのごはんにするんだどぉ~☆」 なるほど、子持ちだったか。まあれみりゃは捕食種だし見逃してもいいか。 「そうか、じゃあ子育てがんばれよ~」 「う~☆わかったんだどぉ~☆」 そういって飛び立っていったれみりゃ。 「ゆああああああああああああああ!まっでええええええええ!!」 「あがぢゃんおいでげええええええええええ!!」 今は同じく飛べる二匹だが速度がまるで違うし追いつけたところでできることもないだろう。 すぐにあきらめたようだ。 「あああ、れいむのおちびちゃんが・・・」 「まりさとれいむのあいのけっしょうが・・・」 さて、そろそろ飽きてきたし俺も帰るか。そう思って立ち上がると 「ゆ!じじぃ!どこいくんだぜ!!」 「れいむたちをこんなふうにしたせきにんをとっでね!!」 「そんなの知らないよ。お前たちがなりたいって行ったんだから自業自得だろ。」 「「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉ!?」」 そしてそのまま帰る俺。とはいっても村はすぐそこだが。 「まっでぇぇぇ・・・おいでぐなぁぁぁ・・・」 「までぇぇぇぇ・・・まだないにんげんはじねぇぇぇぇ・・・」 面白いのでそのまま村の前まで追いかけさせてやった。 「ま、まっでぇぇぇ・・・・ぜぇぜぇ・・・」 「おいでぇぇぇ・・・いぐなぁ・・・・ぜぇぜぇ・・・」 霊体の癖になんで疲れるんだよ。なんとか村の前に来たゆっくり。、 しかしそこで 「ゆべっ!!」 「ゆぎゃ!!」 まるでそこに壁があるかのように吹っ飛ぶゆっくり。 「ゆぅぅぅ・・・なんでかべさんあるのぉぉぉ・・・」 「いだいよぉぉまりざぁぁぁぁ・・・」 「それは壁じゃないよ。結界だ。」 「「ゆ?」」 「さすがに強いのには効かないが知能の低い低級な霊や妖怪が入れないように結界がしいてあるんだよ。」 「まりざはでいぎゅうじゃないぃぃぃぃぃ!!」 「そっぢにいれろぉぉぉぉぉ!!」 「うるせぇ糞饅頭。ずっとその辺で彷徨ってろ。」 俺はさっさとそこを後にした。 「「ああああああああああ!!まっでえええええええええええ!!」」 残された二匹の幽霊饅頭は絶望したこれからどうすればいいのだろう。 なにをすればいいのかまったくわからない。 「ゆぅぅぅぅぅぅぅ!!でいぶぅぅぅぅぅぅぅ!!ごれがらどうじよぉぉぉぉぉ!!」 「わがらないよぉぉぉぉぉ!!なんどがじでよぉぉぉぉぉ!!ばりざぁぁぁぁぁ!!」 ゆーゆー泣いているとなにか近くの空間が歪んで来た。 「ゆ・・・?なに?」 するとそこから何かが出てきた。 「ふっふっふ、地獄のそこからやってきた。不撓不屈の虐め魂を持つ男・・・虐待おにーサッ!!」 なにやら白装束を着た頭に三角をつけた男が腰を低くし両手を広げて出てきた。 「な、なんなのぉぉぉぉおにいざん!!」 「ふははは!!ゆっくりどもよ!!ようこそこちらの世界へ!!地獄でもさんざん虐めぬいてやるからな!!覚悟しろッ!!」 「「やだぁあぁぁああああああああああああ!!」」 男は再び高笑いを始め二匹の幽霊ゆっくりを捕まえ空間に消えていった。 そして二匹のゆっくりは虐待おにーさんによって死んでもゆっくりできないのでした。 あとがき 最近書いても書いても書きたいことの軸がぶれてしまい消しては書き直しの連続です。 一応これはなんとかなったと思うので楽しんでいただけたなら嬉しいです。 作者 甘党 今まで書いたもの ゆっくりコールドスリープ ゆっくりを効率的に全滅させるには。 ユマンジュゥ きれいなゆっくりの作り方 ゆっくり達のバザール ゆっクエ あるゆっくり達の冬篭りと甘い罠 ラジコンうーぱっく 笛吹き男とゆっくり
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注意 死なないゆっくりがいます。 ぬるめです。 死後のゆっくり 「ゆ、じじぃ!!ここはまりささまのゆっくりぷれいすなんだぜ!!にんげんさんはつうこうりょうをはらっていくんだぜ!!」 俺が道を歩いていると饅頭が話しかけてきたので蹴っ飛ばしておいた。 「ゆぎゃべ!!」 コロコロと道端に転がっていく。すると物陰から伺っていた番らしきれいむが出てきた。 「ばりざぁぁぁぁぁ!!だいじょうぶ!!ゆっぐりじでねぇぇぇ!!」 あたまの茎をゆっさゆっさ揺らしながらまりさに近づいてくる。よく落ちないな。 「ゆぐぐ、だいじょうぶだよれいむ・・・。って、でてきちゃだめでしょぉぉぉぉ!!なんででてくるのぉぉぉぉ!!」 「まりざがじんぱいだからでしょぉぉぉぉぉぉ!!どぼじでぞんなごというのぉぉぉぉぉ!!」 なんかうるさいので黙らすことにした。 「ゆげっ!!やべっ!!ばりざざま・・・ゆべっ!!・・・づよいんだ・・・ゆぼべぇ!!」 「や、やめてね!!れいむにはあかちゃんがいるんだよ!!ゆへへ・・・れいむにはかわいいあかちゃんがいるんだがらてはだせないよね・・・ ゆっぎゃああああああああああ!!やべでえええええええええ!!でいぶにはあがぢゃんいるのにぃぃぃぃぃぃぃ!!」 さて、体は黒ずんでボロボロ、歯はガタガタ。帽子もリボンも見る影もなくなったこの二匹。 無事なのはあえて残したれいむの茎についた赤ゆっくりのみだ。 「ゆぁぁ・・・ごれじゃあもうゆっぐりでぎないぃぃぃ・・・」 「せっがぐあがぢゃんがうばれるのにぃぃぃ・・・」 まあこれだけ痛めつけられていれば自然治癒も難しいだろうからな。 「ゆぅぅぅゆっぐりじだいぃぃぃ・・・いだいのなんどがじでぇぇ・・・」 暇だし少しからかってやるか。 「なんとかしてやろうか?」 「「ゆ"ゆ"っ!」」 一斉にこっちを見るゆっくり。 「くそじじぃ・・・はやぐばりざざまをだずげるんだぜ・・・でないどいだいめみるんだぜ・・・」 「はやぐじでね・・・でいぶのがわいいあがぢゃんがみれなぐっでもいいの?」 こいつら・・・誰がこんなめにあわせたかもう忘れたのか? まあいいやこいつらの餡子脳に付き合っていたら時間がいくらあっても足りやしない。 「ああ、いい方法がある。・・・幽霊になればいいんだよ。」 「ゆうれい・・・?なにぞれ?」 「あ~なんていうか・・・すごくゆっくりしたゆっくりだけがなれる究極にゆっくりした状態・・・かな?」 「ゆ"、きゅうきょくにゆっぐり・・・?」 「ああ、そうすれば俺にも手出しはできないし、永遠にゆっくりできるんじゃないのかな?」 「ゆ"、どうずれば“ゆ~れい”になれるの・・・?」 「簡単さ、幽霊になりたいって強く念じながら眼をつぶるだけでいい。後の手順は俺がやってやるよ。」 「ゆっぐりりがいじだよ・・・ゆっへっへ、にんげんざんはばかだね!! まりざだぢはゆっくりをこえたきゅうきょくのゆっくりをてにいれるよ・・・」 「れいむたちはゆっくりをちょうえつするよ・・・。」 なんだか聞いたことがあるようなないようなセリフを吐いて眼を閉じる二匹。 なにやら必死に念じているようだ。・・・さて、動きも止まったのでさっさと踏み潰させてもらおう。 グシャ!! 「ゆべえっ!!」 グシャ!! 「ゆぼろっ!!」 見事にぺっちゃんこに潰れる二匹。間違いなく死んでいるだろうな。 さて、適当に思いつきで幽霊になればいいなんていったけどほんとうになったりするのかな? っていうかこいつらに魂ってあるのか? などと考えていたら、潰れた饅頭から何か白いものが出てきた。 「ゆ~どろどろどろ~・・・」 「ばけてでるよ~、おどろくの?しぬの?」 「うわっ、マジで出てきた!」 そこには憎たらしい顔と各々の飾り、あとよく幽霊がつける三角のやつ(天冠というらしい)のついた白い丸いものがゆらゆら浮かんでいた。。 「ゆっふっふ、まりさはゆ~れいさんなんだよ!どどろいたでしょ!!これでにんげんさんにもてはだせないよ!!」 「わかったらはやくおかしをちょうだいね!!れいむはおなかがすいたんだよ!!」 「ああ、わかった。・・・ホレ。」 俺は持っていた小さいキャラメルを地面に置いてやった。 「ゆっへっへ、ゆ~れいになったまりささまはむてきなんだぜ。あまあまさんいただくんだぜ・・・むぐむぐ・・・?」 「ゆゆ~ん♪さすがはれいむのまりさだよぉ~。じゃああまあまさんいただくよ・・・むぐむぐ。・・・ゆ?なにこれ?あじがしないよ?」 「ゆゆゆ!まりさもだよ!!やいくそじじぃ!!これはあまあまさんじゃないよ!!はやくちゃんとしたあまあまさんをちょうだいね!!」 「いや、違うよ。それはちゃんとしたキャラメルで甘いものだし。それに味がしないんじゃなくてお前らが食べることができてないだけだよ。 そら、ちゃんとそこにキャラメルあるだろ?」 男が指し示した場所には男の言ったとおりちゃんとキャラメルが原型のままあった。 「ゆ!ほんとだ!ゆっくりいただくよ!・・・むぐむぐ・・・どぼじでたべられないのぉぉぉぉ!!」 「そりゃ幽霊だからなぁ。この世の食い物は食えないんじゃないかな。」 「じゃあどうずればいのぉぉぉぉ!!」 「さあ?どうもしようがないんじゃないかな?」 「そんなのやだぁぁぁぁぁぁ!!」 じたばたと暴れる二匹だが実際俺にはどうしようもないことだしなぁ・・・。 ていうか幽霊だから物食わなくてもいいんじゃないのかね?教えないけど。 「ゆぎぃぃぃぃ!!まりざざまをごんなめにあわぜるばがなじじぃはじね!!ざっざどじね!!」 まりさがこっちにのろのろと突っ込んでくる。 「ゆ!いいよまりさ!!まりさのちょっといいところをれいむにみせてね!!」 「まかせてねれいむ!!」 しかしおそいなこいつら待ってるほうが疲れる。 ようやく俺にたどりついたまりさ。追突する直前に眼を閉じ防御体制をとる。 しかし、まりさのからだは俺のからだをスゥ・・・と通り抜けまりさはそれに気づかぬまま進んでいく。 「まりさーー!!うしろ、うしろ!!」 「ゆ?・・・ゆゆ!!きたないじじぃなんだぜ!!まりささまのこうげきをよけるんじゃないんだぜ!ぷんぷん!!」 そういって再び体当たりを試みるまりさ。だが何度やってもぶつかることはない。 「どぼじでぶつからないのぉぉぉぉぉ!?」 「まあ幽霊だからな。この世のものには干渉できないんじゃないか?」 「じゃあどうずればにんげんざんをだおぜるの!?」 「さあ?無理なんじゃないかな?俺もお前らを倒せないけど。」 「なにぞれぇぇぇぇ!!だまじだね!!ぐぞじじぃ!!」 「騙してないだろ俺には手出しできないんだから。」 「うるざいよ!!ごんなのぜんぜんゆっぐりでぎないよ!!」 ギャーギャー五月蝿いな。害はないとはいえあまりにやかましい。 そういえば前に読んだ漫画にお経で悪霊退散させるのがあったな。やってみるか。 「え~っとどんなんだったかな?確か・・・南無大慈悲救苦救難広大霊感うんたらかんたら・・・」 「「ゆぎゃあああああああああああ!!やべでえええええええええ!!」」 お、効いてる、効いてる。なんか上のほうが薄くなってきてる。 「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカうんたらかんたら・・・」 「「ゆぎゃあああああああああ!!いだいいいいいいいい!!エレエレエレエレ!!」」 なんか吐いてる。・・・これ病気とかを治すときに言う真言だったと思うんだが・・・ 適当でもいいのかな? 「チャー○ーヘッチャラーうんたらかんたら・・・」 「「ゆげげげげげげげげg!!ゆ"っゆ"っゆ"っゆ"っゆ"っ・・・」」 痙攣しだした、何でもいいみたいだな。本当に適当な連中だ。 しばらくして回復すると 「もうゆ~れいさんはぜんぜんゆっくりできないよ!!まりさとれいむをさっさともとにもどしてね!!」 「そうだよ!!もどさないとひどいよ!!ぷんぷん!!」 「そういわれてもなぁ。お前等のからだはもうあんなんだし。」 そういってつぶれた饅頭を指差す俺。 「ゆ!なにいっでるの!!まりざざまのうつくしいからだはあんなにつぶれてないよ!!」 「じゃああの帽子にも見覚えないのか?れいむ、おまえは?あのリボンに心当たりは?額に生えた赤ゆっくりに心当たりはないのか?」 「ゆっ!!た、たしかにれいむのりぼんさんだよ・・・じゃあれいむはいまのれいむはなんなの!?」 「だから幽霊だよ。お前等は死んだの。」 「ゆ、じゃ、じゃああれはまりさっでごど?」 「そうだよ。」 「・・・ゆ、ゆぎゃあああああああああああ!!エレエレエレエレエレ!!」 「ば、ばりざあああああああああ!!エレエレエレエレエレ!!」 あらあら、まりさのもらい吐きでれいむまで・・・ていうか零体になってんのに何はいてるんだろう? そんなことを思っているとなんとれいむの死骸に生えていた赤ゆっくりがぷるぷると動き出した。 もしかして踏み潰したときの圧力で餡子が蔦まで行って成長促進されたのだろうか? ぷるぷるぷる・・・ぷちっ!! 「ゆっくちちていっちぇにぇ!!」 一匹目が生まれた、まりさ種だ。まだはいていた二匹もその声に反応してそちらを向く。 「ゆぅぅぅぅぅぅぅ!!おちびちゃん!!ゆっくりしていってね!!」 「さすがれいむのおちびちゃんだよ!!とってもゆっくりしているね!!」 二匹は赤まりさにすりすりをするが赤まりさのほうはきょとんとしている。 そうしているうちに次々と赤ゆっくりは生まれた。その数7匹。赤まりさが三匹、赤れいむが四匹だ。 う~ん、こいつらの意見に同意するのは不快だが生まれたてのゆっくりはなかなか可愛い。おもわず目をくりぬいてやりたくなる。 「「「「「「「ゆっきゅちちていっちぇにぇ!!」」」」」」」 「おちびちゃんたち!!ゆっくりしていってね!!」 「おちびちゃんたち、れいむがおかーさんだよ!!ゆっくりしていってね!!」 俺から見ると始めての親子の会話なのだが赤ゆっくりたちからするとそうではないようだ。 「ゆぅ?おきゃーしゃん?どきょにいりゅにょ?」 「かきゅれてないぢぇにぇ!!きゃわいいまりちゃがうまれちゃよ!!」 「れいみゅおにゃかへっちゃよ!!ごはんちょーだいにぇ!!」 どうやら赤ゆっくりには親子が見えていないらしい。 「ゆゆゆ!!おちびちゃんたち、おかーさんはここにるよ!!」 「そうだよ!!ちゃんとこっちをみてね!!」 しかしやはり赤ゆっくりには伝わらないらしい。しだいに赤ゆっくりたちも苛立ってきた様だ。 「にゃんじぇおきゃーしゃんたちいにゃいにょぉぉぉぉ!?」 「こんにゃにきゃわいいれいみゅたちをおいてどこいっちゃのぉぉぉ!!」 「やくたたじゅなおやはちね!!ちね!!」 「「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉ!!」」 やはりゲスの子はゲスか。 生まれたばかりだというのにもう口汚くなってるし。 「ゆゆ!!しょこにょおにーしゃん、れいみゅのおきゃーしゃんたちしらにゃい?」 ようやく俺の存在に気づいたらしく話しかけてくる赤ゆっくり。 「さぁ?俺は知らないなぁ?」 白々しくとぼけて見せる俺。と、親の二匹が抗議して来る。 「なにいっでるのぉぉぉ!?おちびちゃんのおかーさんはまりさたちでしょぉぉぉぉぉ!?」 「そんなこともわからないの!!ばかなの!?しぬの!?」 五月蝿い。 「南無大慈悲・・・以下略」 「ゆぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」 「ゆべべべべべべべべべべべべべべ!!」 便利だなこれ。 そこに赤ゆっくりがまたしゃべり掛けてくる。 「じゃあおにーしゃん、かわいいまりちゃたちのためにごはんをもってきちぇにぇ!!はやくちてにぇ、ぐじゅはきりゃいだよ!!」 「いやだよ、・・・ていうかご飯ならお前等の後ろにたくさんあるじゃないか。」 「ゆ?ほんちょだ!あみゃあみゃなにおいがしゅるよ!!」 「なにいっでるのぉぉぉぉ!!ぞれはおかーざんだぢでしょぉぉぉぉぉ!!」 「たべちゃだめぇぇぇぇ!!ゆっぐりでぎないよぉぉぉぉぉ!!」 後ろの餡子の塊に向かっていく赤ゆっくりとそれを必死に止めようとする親二匹だが、二匹には止める術がないので結局・・・ 「「「「「「「む~ちゃ、む~ちゃ・・・ちちち、ちあわちぇ~♪」」」」」」」 「「ゆぎゃあああああああああ!!どぼじでだべじゃうのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」」 赤ゆっくりたちはあっというまに二匹に群がりかなりの量を食べてしまった。 もうほとんど原型は残っていない。 「ゆぁぁぁぁ・・・ばりざのたくましいからださんが・・・」 「でいぶのぷりちーなおかおがぁぁぁ・・・」 赤ゆっくりたちは食べ過ぎたのかすでにおねむの時間のようだ。ゆ~ゆ~寝息を立てて寝ている。 するとそこに何かやってきた。 「う~う~!あまあまさんのにおいがするど~☆う~☆」 「「れれれ、れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」 親の二匹は大声をあげて空中をのろのろと逃げる。だから必要ないというのに・・・。 「う~☆あまあまいっぱいだっど~☆」 その声に気づき二匹も引き返してくる。 「おちびちゃんたち!!れみみゃだよ!!はやくにげてね!!」 「れみりゃはゆっくりできないんだよ!!ゆっくりしてないでいそいでね!!」 当然、聞こえていないので赤ゆ達はゆ~ゆ~寝たままだ。 「おにぃぃぃざぁぁぁぁん!!おちびちゃんたちをだずげでぇぇぇ!!」 「なんでもじまずがらぁぁぁぁ!!おねがいじまずぅぅぅぅ!!」 こいつ等にこんなに子を思う気持ちがあるとは思わんかった。 とりあえずれみりゃに話しかけてみる。 「おい、れみりゃ!」 「う~?おにいさんなんだど~?」 二匹はなにかこちらに感謝のまなざしを向けている。赤ゆを救ってくれるとでも思っているのだろう。 「おのこしはするなよ。」 固まる二匹。 「う~☆わかってるんだど~☆えれがんとなおじょうさまはおのこししないんだど~☆う~☆」 「ゆああああああああああ!!ちがうでしょおおおおおお!!」 「はやぐおちびちゃんたちをたすけでえええええええええ!!」 無視。 そしてれみりゃの食事が始まった。 まず、赤ゆを一匹づつつかみ底部を傷つけ逃げられないようにしていく。 「ゆ~・・・ゆ~・・・ゆ?ゆぎゃ!!まりちゃのあちがあああああああ!!」 全部が済むと一匹づつ中身を吸い出していく。 「う~☆あまあまおいしいどぉ~☆」 「ゆぎゃああああああああああ!!まりちゃ・・すわれっ・・・もっ・・・きゅち・・・」 「「おちびちゃああああああああああああん!!」」 しかし三匹ほど吸い出すと残った四匹を一箇所に集め丸めて固めだした。 赤ゆっくりは死んではいないようだが痙攣している。 「おい、れみりゃ。そいつらどうするんだい」 「う~?れみりゃのおちびちゃんのごはんにするんだどぉ~☆」 なるほど、子持ちだったか。まあれみりゃは捕食種だし見逃してもいいか。 「そうか、じゃあ子育てがんばれよ~」 「う~☆わかったんだどぉ~☆」 そういって飛び立っていったれみりゃ。 「ゆああああああああああああああ!まっでええええええええ!!」 「あがぢゃんおいでげええええええええええ!!」 今は同じく飛べる二匹だが速度がまるで違うし追いつけたところでできることもないだろう。 すぐにあきらめたようだ。 「あああ、れいむのおちびちゃんが・・・」 「まりさとれいむのあいのけっしょうが・・・」 さて、そろそろ飽きてきたし俺も帰るか。そう思って立ち上がると 「ゆ!じじぃ!どこいくんだぜ!!」 「れいむたちをこんなふうにしたせきにんをとっでね!!」 「そんなの知らないよ。お前たちがなりたいって行ったんだから自業自得だろ。」 「「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉ!?」」 そしてそのまま帰る俺。とはいっても村はすぐそこだが。 「まっでぇぇぇ・・・おいでぐなぁぁぁ・・・」 「までぇぇぇぇ・・・まだないにんげんはじねぇぇぇぇ・・・」 面白いのでそのまま村の前まで追いかけさせてやった。 「ま、まっでぇぇぇ・・・・ぜぇぜぇ・・・」 「おいでぇぇぇ・・・いぐなぁ・・・・ぜぇぜぇ・・・」 霊体の癖になんで疲れるんだよ。なんとか村の前に来たゆっくり。、 しかしそこで 「ゆべっ!!」 「ゆぎゃ!!」 まるでそこに壁があるかのように吹っ飛ぶゆっくり。 「ゆぅぅぅ・・・なんでかべさんあるのぉぉぉ・・・」 「いだいよぉぉまりざぁぁぁぁ・・・」 「それは壁じゃないよ。結界だ。」 「「ゆ?」」 「さすがに強いのには効かないが知能の低い低級な霊や妖怪が入れないように結界がしいてあるんだよ。」 「まりざはでいぎゅうじゃないぃぃぃぃぃ!!」 「そっぢにいれろぉぉぉぉぉ!!」 「うるせぇ糞饅頭。ずっとその辺で彷徨ってろ。」 俺はさっさとそこを後にした。 「「ああああああああああ!!まっでえええええええええええ!!」」 残された二匹の幽霊饅頭は絶望したこれからどうすればいいのだろう。 なにをすればいいのかまったくわからない。 「ゆぅぅぅぅぅぅぅ!!でいぶぅぅぅぅぅぅぅ!!ごれがらどうじよぉぉぉぉぉ!!」 「わがらないよぉぉぉぉぉ!!なんどがじでよぉぉぉぉぉ!!ばりざぁぁぁぁぁ!!」 ゆーゆー泣いているとなにか近くの空間が歪んで来た。 「ゆ・・・?なに?」 するとそこから何かが出てきた。 「ふっふっふ、地獄のそこからやってきた。不撓不屈の虐め魂を持つ男・・・虐待おにーサッ!!」 なにやら白装束を着た頭に三角をつけた男が腰を低くし両手を広げて出てきた。 「な、なんなのぉぉぉぉおにいざん!!」 「ふははは!!ゆっくりどもよ!!ようこそこちらの世界へ!!地獄でもさんざん虐めぬいてやるからな!!覚悟しろッ!!」 「「やだぁあぁぁああああああああああああ!!」」 男は再び高笑いを始め二匹の幽霊ゆっくりを捕まえ空間に消えていった。 そして二匹のゆっくりは虐待おにーさんによって死んでもゆっくりできないのでした。 あとがき 最近書いても書いても書きたいことの軸がぶれてしまい消しては書き直しの連続です。 一応これはなんとかなったと思うので楽しんでいただけたなら嬉しいです。 作者 甘党? 今まで書いたもの ゆっくりコールドスリープ ゆっくりを効率的に全滅させるには。 ユマンジュゥ きれいなゆっくりの作り方 ゆっくり達のバザール ゆっクエ あるゆっくり達の冬篭りと甘い罠 ラジコンうーぱっく 笛吹き男とゆっくり
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* 『ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね』のブルーシートまりさが主役。リクエストがあったので。 * 前作にも増して虐成分少なめ。まあ、より前作を味わうためのおまけですんで。 『ゆっくりのみるゆめ』 D.O 「ゆっくりしちぇっちぇにぇ!!!」 ここは商用ゆっくりの総合製造工場、通称「餡工場」。 ここは銀バッジ付以上のような『愛玩用』ではなく『商品用』ゆっくりが日夜生産され続けている。 今回の主人公であるゆっくりまりさもこの工場内で産声を上げた。 「はーい『!』3つ。」 まりさは両親から「ゆっくりしていってね」と返されることもなく、所定のベルトコンベアーに振り分けられた。 赤まりさの等級区分はその活発さの度合いで決められている。 まりさ=活発 れいむ=母性(笑) ありす=都会派(笑) その個性が際立ってこそ購入者も満足するのだ。 まあ具体的には、生まれて第一声のあいさつが元気なほどよりマシな将来が用意されており、 『!』が3つ以上で廉価飼いゆ、2つ~1つで各種ゆっくり商品の生体部品、元気がなければ餡子となる。 「ゆぴっ!ゆぅ、にゃんだかねむきゅなっちぇきちゃよ。すぴーすぴー。」 廉価飼いゆにえらばれた赤ゆたちはあにゃるから睡眠薬入り茎ペーストを注入され、 真空パックに封入後各店舗へと送られる。 こうして彼女たちの命は1匹50円で飼い主に握られることとなるのである。 「ゆぅ、ゆっ?ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!!」 「うわーい!赤まりさだー!ゆっくりしていってね」 「どうだ、M太。元気な赤まりさだろー。」 「うん!すっげー元気!とーちゃんありがとー!」 「むほぉぉおおお!M太はかわいいなぁ!よーしよしよしよし×300。 M太の欲しいものならなんっっっっっっだって買ってあげるからなぁ。」 「ほーら。ごはんやるからな。あぁ、とーちゃん、邪魔。」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおお?」 「ゆっくりしちぇいっちぇにぇ!!!ゆっくりしちぇいっちぇにぇ!!!」 こうしてまりさは溺愛お父さんとM太の家で育てられることとなった。 数日の間は。 「とーちゃん!この『卓上水上まりさ』っての欲しい!買って!」 「んあ?赤まりさは?」 「飽きた。」 「むほぉぉおおお!そんな冷血のM太もかわいいなぁ!よーしよしよしよし×500。」 「おにーしゃん、やめちぇにぇ。おいていきゃにゃいでにぇ。 まりしゃなにかわるいこちょしちゃならあやまるよ?まっちぇにぇ。まっちぇ・・・まっちぇぇぇぇええええ!!!」 こうしてまりさは3日間も食事を忘れられた挙げ句、 家から遠く離れた林へと捨てられた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆぅ。むーちゃむーちゃ、ちょっとちあわちぇー。」 まりさは自分でも集めることができる唯一の食糧、雑草を食べて生き延びる。 草や虫など食べられない大抵の飼いまりさであれば、ここで儚いゆん生を終えていた事であろう。 だが、飼い主のあまりに雑な飼育が、結果として彼女の命を救うこととなった。 彼がこの数日間で与えられた食事と言えば、試供品のゆっくりフード『ミラクルベジタブル』一食分と水のみ。 そもそもこの商品にしてから、野菜の姿を残しつつ風味と食感を完全に除去したという、奇跡の名にふさわしい虐待用品である。 事実上体内に注入されていた茎ペーストのみで生き延びていたまりさは舌が肥えることとは無縁だったのだ。 「なんじぇ?まりしゃにゃにかわるいこちょしちゃにょ? おとーしゃん、おきゃーしゃん。さびちいよぉ。しゃむいよぉ。」 「むきゅ?おちびちゃん一人でこんなところにいちゃあぶないわよ?」 「わきゃらにゃいよ。おとーしゃんもおきゃーしゃんもいなかっちゃんだよ。 おにーしゃんもまりしゃをおいちぇどっきゃいっちゃったんだよ。」 「むきゅーん。大体事情はわかったわ。まだこんなに小さな赤ちゃんなのに。 まりさ、お外はあなたみたいな子供が一人でいると危ないわ。ぱちぇのところにいらっしゃい。」 まりさが林で生活を始めて4日目、初めて言葉を交わした相手は、体高50?を超える一匹の老ぱちゅりーだった。 「むきゅん。このキノコさんはゆっくりできるわ。こっちの木の実さんは殻をとらないとゆっくりできないわね。」 「しゅごーい。ぱちぇおにぇーちゃんはものしりだにぇ。」 「おねーさんなんてよばれたのは久し振りね。こんなおばーちゃんなのに。むきゅむきゅ。」 「おうちはゆっくりにとってごはんとおなじくらい大切なのよ。 雨さんも風さんも、太陽さんからも守ってくれるのよ。」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「山のゆっくりは、穴をほっておうちをつくるけど、そうするとお引越しが大変ね。 できれば人間さんの置いて行った箱さんや布さんを使って作る方がいいかもしれないわ。」 「ぱちぇおねーちゃん。」 「何かしら?」 「なんではじめてあったときひとりだったの?」 「長をやっていた群れから追い出されたのよ。」 「なんで?ぱちぇおねーちゃんはこんなにゆっくりしてるのに。」 「若いドスが来てね。年寄りは引退しろって。 皆のために厳しくしていたけど、自分の娘にまで出て行けと言われた時はちょっと悲しかったわ、むきゅん。」 「・・・・。」 まりさがぱちゅりーから生きていく知識を吸収し、子ゆっくりとなったころ生活に転機が訪れた。 「ふむ、あれが報告のあった巨大ぱちゅりーか。これは珍しいね。」 「湯宇川教授、準備できました。」 「むきゅん。人間さんの気配がするわ。」 「にんげんさんはゆっくりできないよ!ぷんぷんっ。」 「そんなこと言っちゃだめよ。人間さんもゆっくりも、ゆっくりできる相手もいればできない相手もいるの。 でもね、もしもお話しすることがあっても絶対に近づいちゃだめよ。 喧嘩になりそうだったり、反対にいきなりあまあまをくれたりする人に出会ったら、 おうちも宝物も、全てを捨ててでも逃げるのよ。それが生き延びるコツね。」 「むぎゅぅぅううう。まりさ、おうちの裏口から逃げてね!振り返っちゃだめよ!」 「ぱちぇおねーちゃん!いっしょににげてね!もうひとりはいやだよ!」 「・・・おねーさんは一人でならば逃げられるわ。でもあなたがいたら足手まといなのよ。わかったら急いでね。むきゅ。」 「・・・ゆっくりりかいしたよ。」 「ここから太陽さんが顔を出す方にしばらく行ったところにありすとちぇんの群れがあるわ。 ぱちぇの親友なの。お互い生きてそこで落ち合いましょう。」 「おねーしゃん・・・」 「?」 「にんげんさんからにげて、またあえたら、おかーさんってよんでいい?」 「むきゅ、むっきゅーん。これは意地でも逃げきる理由ができたわ! さあ、もう行って!人間さんが来ちゃうわ!」 「むっきゅー!ぱちぇはこっちになんていないわよー!」 「でかいって言ってもしょせんゆっくりか。自分から声出して場所を知らせてくれてるよ。」 「ふむ。そうかね。まあ、そこまでして守りたいものなんて大体予想がつくがね。」 「はぁ。(相変わらずわけわかんねえなあ。まああの巨乳の考えてることなんてどうせ理解できねぇけど。)」 そして、ぱちぇは二度とまりさの前に姿を現すことはなかった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ありす。よろしくおねがいし、・・・するんだぜ。」 「大変だったわね、まりさ。これからはこのむれでゆっくりしていってね。」 「「「「「「わかるよー。」」」」」」 まりさはこれ以来『だぜ』まりさとなった。 だぜまりさは飼いゆや町ゆの間ではしばしばゲスの代名詞として敬遠される。 だが本来は、まりさ種の中でも特に活力とたくましさに優れた個体が生まれつき発現する個性である。 まりさは、もっと強く、たくましく、 大切なゆっくりを守れるような大人になりたいと願い、『だぜ』を語尾に付けるようになった。 「みんなもこの、ほぞんのきくきのみさんをあつめたほうがいいんだぜ。 ざっそうさんもいざってときにはたべられるんだぜ。ほして、おふとんにもできるんだぜ。」 「まりさすごいわー。とってもとかいてきね。」 「ばったさんをつかまえるには、いとさんにみじかいきのえださんをつけてそっとひっぱるんだぜ。」 「ばったさんがかってにくっちゅいてきちゃよー。まりしゃおにぇーちゃんしゅごーい。」 老ぱちゅりーはいなくなったが、その教えはまりさの中に生き続けていた。 いつしかまりさは群れの中心となり、彼女の知識と指導によって十分な食料を集めることができた群れは、 ほとんど被害を出すことなく冬を越えることができた。 ありすから長の座を譲り受けたのはそうして、群れの誰もがゆっくりしていた春のある日だった。 「まりさ。これからもむれのみんなをおねがいね。」 「これからは、まりさがむれのみんなをゆっくりさせるのぜ。みんなもゆっくりてつだってほしいのぜ。」 「まりしゃおにぇーしゃんははとっちぇもときゃいはなおさにぇ。」 「「「「「「わかるよー。」」」」」」 「さーて、んじゃ今日の作業始めんぞー!」 「「「ゆゆっ?」」」 「ほい、チェーンソーよこせ。」 「へいへーい。」 「んじゃ離れてろよ。『ギュァァァァアアアアアン』」 元長ありすとちぇんのとてもゆっくりしたおうち、大きな洞を持った大木が見る間に切り倒された。 あまりに突然の出来事、群れの誰一人として何が起きているのか理解できたものはいなかった。 「このでっけえ木さえどかせりゃ後はあっという間よぉ。とっとと切り株引っこ抜くぞぉ!」 「へいへーい。」 その周囲でも次々と木が切り倒されていく。 人間たちが手をつけていないのは、まりさたちが集会をしていた広場だけだった。 そして、元長ありすのおうち、大きな切り株が丸ごと引っこ抜かれたところで、 ようやくまりさたちは事の重大さに気がついた。 「ゆぁぁぁっぁあああああああ!なにやってるのおにーさぁぁああん! こんなのまったくとかいはじゃないわあああああ!!」 「何ってお前、家建てるんだよ、家。」 「そこはありすとちぇんのあいのすなのよぉぉおおおお! かえしてぇぇぇえええ!もとにもどしてぇぇぇええええ!」 元長ありすは、長まりさ、いや、これまで群のだれもが見たこともない取り乱し様だった。 このおうちは、ありすの親の親の親の代から長女に代々受け継がれてきた大切なおうち。 ありすのゆん生の思い出、そして今は亡き夫である、先々代長ちぇんの温もり、ありすのすべてが詰まっていたのである。 ありすは、ぽよん、ぽよん、と、効果などありようもない体当たりを繰り返して抗議していた。 「かえしてぇぇぇえええ。おねがいよぉぉ、かえしてよぉ・・・。」 「おーい新入りぃ。お前ちょっと杭よこせ。」 「へいへーい。」 「かえしてぇ・・・。かえ『ざくり』・・・・・・。」 ありすはなんの躊躇もなく、あっさりと殺された。 「おーい、お前らぁ。作業中止。ゆっくり駆除先にやっちまうぞぉ!」 「「「へいへーい。」」」 そして、建設作業員にとっては通常作業のひとつ、ゆっくりにとっては大虐殺が始められた。 まりさはそのころすでに、群れの縄張りからはるかに離れた民家の裏に逃げ隠れていた。 ありすが人間に大声で抗議を始めた瞬間、老ぱちゅりーの声が餡子の底から蘇ったのだ。 『おうちも宝物も、全てを捨ててでも逃げるのよ。それが生き延びるコツね。』 まりさは民家の裏に縮こまり、地面に顔を突っ伏して震えていた。 「やじゃぁぁぁあああ!やめちぇにぇ、や『ぞぶり』・・・」 春になり一番最初に群れに誕生した赤まりさが死んだ。 「ゆぁぁぁあああああぁぁぁ。いや『ぐさり』・・・」 秋に一緒にバッタを採った、群れ一番の美ありすが死んだ。 「わがらにゃ『ぶさり』・・・」 元長ありすの娘、まりさと並ぶ次代の長候補だったちぇんが死んだ。 どすり・・・ぶすり・・・ずぶり・・・・・・。 「親方ぁ。これどう処分するんすかぁ?」 「まったく今時ぁゴミもそこらにゃ捨てらんねえ。ごみ袋に放り込んで持って帰るんだよ!」 「「「へいへーい」」」 「ぱちゅりーおがあぢゃぁん、どうぢだらいいのぉ。おがあぢゃんならどうぢだのぉ。」 その日の夕暮れ、群れのゆっくりぷれいすには、ゆっくりの気配を感じさせるものは何一つ残されていなかった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 数日後、まりさは小さなビルの並ぶ街中に居た。 群れに居た時から、人間さんと会ったことは一度や二度ではない。 これまで人間たちは、稀にいたずら(あにゃるにストローを差し込んで空気を吹き込む程度)をしてくるくらいで、 あそこまで徹底的な虐殺をおこなったことなどなかった。 では何故? まりさは気づいた。 群れを潰した人間さんは皆同じ服装をしていた。 まりさは、その日から作業服の人間さんがいない場所を探し求め、気がつけば街中にたどりついていた。 「ここのゆっくりたちは皆ゆっくりできてないんだぜ。」 街中では、人間さんたちはゆっくりに手を出しては来なかった。 むしろ汚いものに触れないように、避けて通るくらいである。 狩りの成果を奪われたり、怪我を負わされる危険を感じるのは、むしろ同族のゆっくり達の方に対してであった。 「このおべんとうさんはちぇんのものなんだねー。わかるー!」 「つべこべいってないでれいむにそのごはんをちょうだいね!」 「ふぎゃぉぉおおおおお!」 「ゆがぁぁぁあああああ!」 「はーい、お前たち両方ゴミ箱へGO!」 「「どぼぢ」」ポイポイッ まりさとしては不思議だが、町ゆは植栽の周りに生える野草などは意外と食べない。 まりさとしては競争相手がいない以上ありがたい話ではあったが。 これは、町ゆの多くが元飼いゆっくりであったため、野草を食べ物と認識できなかったことによる。 まりさは、おそらく人間さんのご飯には、周りの草花ではゆっくりできなくなる毒が入っているのだろうと理解していた。 いつ、どれだけ手に入るかわからないご飯を求めてさまよう町ゆ達は皆、死んだような濁った眼をしている。 やはり、人間さんには極力関わらない方が良い。 しかし、れみりゃ達捕食種が出没するような本物の自然の中で育っていないまりさには、本当の山奥で生き延びる自信はなかった。 結局、危険と折り合いをつけてでもここで生きていく道しか残されてはいなかったのだった。 まりさは、雑居ビル2件に挟まれた、人間では通り抜けできない空間を選び、おうちをつくる。 雨さんにも他のゆっくりの攻撃にも負けない頑丈な木箱を商店の裏から、 雨さんを完全に防ぐ青いシートを公園のごみ箱から、 水や食料を保管する鍋、皿、クッション。 ゆっくり達も寝静まる夜、誰にも見られることのないように作業は続けられた。 そして気づく。 かつて老ぱちゅりーに教わった知識は、山で暮らすためのものよりも街中で暮らすためのものがはるかに多かったことに。 おそらくぱちゅりーは、ゆっくりたちの相食み争うこの街中で生きて、 ついに街中で隠れることもできなくなるほど大きくなった末に山へと移り住んだのであろうことに。 「ぱちゅりーおかあさん。おかあさんはどうやってこんなところでゆっくりしたゆっくりになれたんだぜ?」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そしてある日、まりさのゆん生にとって重要な出逢いがやってきた。 いつもどおり太陽が顔を出す前から食糧確保に励んでいたまりさは、 ゴミ捨て場にぞんざいに放り捨てられていた一匹のれいむと出会ったのだった。 あんよは7割方焼きを入れられており、たとえ回復したとしても這い歩くのがやっとであろう。 リボンはたばこを押しつけられて穴だらけ、もみあげは力任せに引きちぎられていた。 まむまむの位置には刃物を刺した跡が無数にあり、舌も半分ほどの長さしか残されていない。 これ以上無いくらいに、ゆっくりしていないれいむだった。 なのに何故あれほど惹きつけられたのだろうか。 ここまで酷い虐待を受けながらも、他の町ゆと異なり、その瞳に理性の輝きを宿していたから? それとも、彼女がおくちからそっと出した、おそらく生まれて間もないであろう一匹の赤まりさを丁寧に介抱する様が、 あの老ぱちゅりーと自分自身の姿に重なったから? 「れいむ。しゃべれるのかだぜ。そっちのまりさもだいじょうぶかだぜ?」 「だぃ・・じょぶ。・・ゆっく・・・ていt・・ね。」 「ゆ・・くち。」 「にんげんさんにやられたんだぜ。よかったらおうちまでおくるんだぜ?」 「も・・なくなtt・・た。に・げんさ・にこわさr・・て」 「そうかだぜ。ならまりさのおうちにくるんだぜ。そのおちびにもかいほうがひつようなんだぜ。」 「れいむの、旦那のまりさや他のおちびちゃんはいないのかだぜ。」 「?」 「辛いこと聞いてすまないのぜ。でも、このおちびちゃん以外は助からなかったのぜ?」 「れいmは、けっこnもすっきりーもしtことないよ?」 「?このおちびちゃんは?」 「ゆっくりできないにんげんさんのところに、おちびちゃnがいっぱいいたの。 すてらrそうになったとき、おくちにひとりだけかくせたんだよ。」 「じ・・・じぶんがしんじゃうかもしれないときに、じぶんのでもないおちびちゃんをたすけようとしたのかだぜ・・・。 よくそんなことができたんだぜ・・・。」 「だって、おちびちゃnはゆっくりできるんだよ?」 「でも、まりさは『おうちも宝物も、全てを捨ててでも逃げるのよ。』って教えられたのぜ? じゃないと生き残れないって言われたのぜ。」 「でも、おちびちゃんは、たからものよrゆっくりできるよ?」 「ゆっ。」 「ゆぁーはははは!!!れいむは凄いのぜ。 まりさなんて目じゃないくらい強いゆっくりなのぜ!! まりさなんて今までずっと逃げて逃げて全部捨ててきたのぜ! ぱちゅりーも、ありすも、ちぇんも、おちびちゃんたちも。 ゆふぅぅうう、ううぅぅぅぅぅうううぅぅぅ・・・」 まりさは笑いながら泣いていた。 これまで自分は、何一つとして守ってこれなかった。 それは、絶対に無理だと思ったから。 自分は死ぬわけにはいかないと思っていたから。 だが、このれいむは、多くの犠牲を払いながらも、ただ一つだけ、 この、だれの子供とも知れない赤まりさだけは守り通すことができたのだった。 そしてぱちゅりーも、おかあさんも全てを犠牲にしながら自分を守り抜いてくれた。 だが自分は・・・ なぜまりさが泣いているのかわからないれいむは、自分の怪我のことも忘れてオロオロしていた。 そして、自分が助けられたという事実すらよくわかっていない赤まりさは、 「おにぇーしゃんはしゅぎょいにょ?」などと首を(?)かしげていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 奇妙な共同生活が始まった。 餡子のつながりもなく、年齢も育ちもバラバラ。 その上一匹は全身ズタボロ。 だが、まりさは、トラウマと街での生活の中ですっかり鋭くなってしまった目つきを、 ボロれいむと赤まりさに対するときだけは少しほころばせるようになっていた。 そして数日が経ったころ、突然破局は訪れた。 「それじゃあ、狩りに行ってくるよ!」 「いってらっしゃい、まりさ。」 「まりしゃおにぇーしゃん、いっちぇらっしゃーい!」 「ゆ!それじゃあおそうじはじめようね!」「ゆっくち!」 まりさは毎早朝、日の出よりずいぶん早くから狩りに出かける。 大抵は植栽の周りに生える、タンポポやシソなどの採集になる。 人間でもしばしば食用とするこれらの野草ならば、 残飯による味覚汚染を受けたれいむでも食べられるのだ。 そして、留守番は動くことができないれいむが引き受けることになっていた。 「ゆーん!きれいになったn「やあ、れいむちゃん。おひさしぶり!」」 ビルの隙間の前には、れいむの体をズタズタにした張本人、虐待お兄さんが立っていた。 「いやー。探したよー。 だってさぁ、れいむちゃんを捨てた後、家に戻ったら赤ちゃんが一匹減ってるんだもん。 あの赤ちゃんさぁ。 ぼくが、ゆっくりプラネタリウムを作ろうと思ってかき集めた大事な大事な赤ちゃんなんだよー。 わし座のアルタイルって知ってる? あれにするつもりだった、きれいな形の赤まりさだったんだよー。 さぁ。出てきてお話ししようねぇ。」 「おきゃーさ「ゆぁああああああああ!!!!」」 れいむは、赤まりさがまだ虐待お兄さんに見つかっていないことを察知して、 赤まりさがしゃべりだす前に口の中に隠したあと、緊急避難用にと掘っていた穴の中に放り込んで、お皿で蓋をした。 「ゆぅぅぅううう!ゆぅぅぅうぅぅうぅうううう!」 「?しゃべれないの?馬鹿なの?まあ、どっちにしても君の体に聞いてみるだけだからいいけどね。」 そういうと、虐待お兄さんはおもむろに取り出したマジックハンドをれいむに向けた。 「ゆふーん。今日も収穫は上々なのぜ!」 れいむと赤まりさの喜ぶ顔を思い浮かべながら帰路についていたまりさは、しかし 甘い夢の終わりを悟った。 おうちのあるビルの隙間の前には、ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべた人間さん。 そして、その足元には、 親指ほどの大きさの破片に丁寧に分解された饅頭と、れいむのリボンが置かれていた。 「ふぅ。確かにしゃべってたと思ったんだけど、結局悲鳴ひとつあげなかったなぁ。プライド傷ついちゃったよ。」 逃げなければ。まりさの中枢餡はそう告げていた。 しかし、まりさの中枢餡以外のどこかから命令を受けたあんよは、その人間さんに向かって走り始めていた。 「ゆぅぅううううううう!!!」 「え?あれっ?」 不意を突かれた虐待お兄さんは、ゆっくりに股の間を抜けられるという屈辱を受けた。 そしてまりさは、一切迷うことなく赤まりさが隠された穴へと駆け抜けた。 「ゆっがぁぁぁっぁああああああ!!!」 まりさは止まらない。何故れいむに閉じ込められたか分からず、 ベソをかいていた赤まりさを帽子の中に放り込み、再び人間さんの足元へと駆ける。 「2度も抜けさせるかっ!この糞饅頭がぁ!」 だが、まりさは無謀に突っ込むことなく、 おうちの入口あたりに隠してあった延長コードを虐待お兄さんの足元へと放り投げた。 「えっ?うわっ!」 乱雑に絡み合った延長コードに足を取られて転ぶ虐待お兄さん。 そのわきを、まりさはゆっくりにあるまじき速度で駆け抜けていく。 排水溝の中をくぐり、ビルの隙間を抜けて、公園を横切り、まりさはひたすら駆けて、駆けて、駆け抜けていった。 「なんてこった・・・。ゆっくりに翻弄されるとは・・・。」 まりさが疲れ果ててあんよを止めたとき、町には朝日が射し始めていた。 「ゆぅ。りぇいみゅおにぇーちゃんはどうちたの?」 「れいむおねーちゃんは・・・れいむおかーさんは、まりさを精いっぱい守ったんだよ。」 「ゆぅ?れいみゅおにぇーちゃんはおきゃーしゃんにゃにょ?おっかちいにぇ!」 「おかしくないよ、おかしくなんてないんだよ・・・。」 まりさは、それからしばらくの間、困った顔をしている赤まりさにすーりすーりし続けていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 数日後、まりさの住んでいたビルには、 あの恐ろしい、ありすたちを虐殺したのと同じ、作業服を着た人間さんたちがやって来ていた。 虐待お兄さんが、その財力にものを言わせてビルごとまりさたちのおうちを叩き潰してやろうと動いたのだった。 よほど屈辱的だったのだろう。 「これはゆっくりしていられないんだぜ。おちびちゃん、明日の朝は暗いうちにおひっこしするのぜ。」 「ゆーん。ゆっくりりかいしちゃよ。」 「・・・なかなかひとつの場所でゆっくりさせてはもらえないもんなんだぜ。 まりさにももう少しだけ運があったらよかったのに、苦労をかけるんだぜ。」 「おちょーしゃん。」 「?」 「まりしゃはとっちぇもゆっくちしちぇるよ。 おおきくなっちゃらおきゃーしゃんみたいにつよくて、おとーしゃんみちゃいにやさしいゆっくりになりちゃいよ。」 まりさをまっすぐ見つめる瞳はまるで、かつて老ぱちゅりーと見上げた星の輝き。 ビルの隙間で暮らすようになってから見ることのなくなって久しいその光に、 まりさは多くの大切なものとともに失ったかつての自分自身の姿を確かに感じた。 「さぁ、おちびちゃん。明日は太陽さんが出る前にお引越しをしなきゃならないから、早くすーやすーやしてね。」 「ゆっくちわかったよ。おとーしゃん。」 この世界は、ゆっくりに対してあまりにも厳しい。 この赤まりさも、ただひたすらに純粋であり続けることはおそらくできないだろう。 しかしながら、せめて一度、ただ一度でいいからこの赤まりさを心の底からゆっくりさせてあげたい。 それが報われることのなかった自分達の生涯を救う、唯一つの方法であると信じ、まりさは束の間の眠りにつくのだった。 ゲス度を下げるほど悲劇度は増す。でも爽快感は低下。難しい。 ※ちなみに、anko215.txtの登場ゆっくり達には一通り裏設定が存在しています。 水飲み場のゲス、便所ちぇん、小学校ゆうかりん。誰だって、それぞれの過去や葛藤を持って生きています。 などと色々邪推してみるのもSSの楽しみ方なのでしょうか。 実は「ゆうかりんのご奉仕授業」というタイトルで、小学校ゆうかりんのストーリーも掲載予定だったんだけども、 逃れることを許されない過酷な性的虐待、 校長から連日受ける性奴調教を軸として、 数学教師の緊縛SMプレイ→体育教師の青姦スカトロ浣腸プレイ →高学年生の好奇心に任せた壮絶な輪姦と続き、 全校集会での露出放尿プレイあたりまで受けながらも誇りを失わないゆうかりんは夏を迎える、 などと書いたあたりで、 「これ、ゆ虐じゃないんじゃね?」と思ったのでお蔵入りとしました。ていうかご時世的にやばい。 まあ、そんな背景があったということを念頭において、 彼女の言動を読み直していただけたら幸いです。
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『大人のゆっくり』 13KB 小ネタ 調理 番い 野良ゆ 姉妹 赤ゆ 子ゆ 現代 独自設定 ふたばのネタから思いつきました。酒の知識があまりないので、矛盾点が多いかもです。 この世界のゆっくりは、種類を問わず、甘い液体ならば傷が回復してしまう設定です。 筆者はお酒についての知識は余りありません。色々矛盾点があったらすいません。 ゆっくりが濁った液体の中で他のゆっくりが見えたり、会話する事ができるのは、ゆっくりだからという事で…… ここは、とある自然豊かな田舎町の農村。ブドウの産地として全国的に有名であり、殆 どの人々はその栽培、加工で生計を立てている。 そんな人間によって楽園のような場所、そんな場所は”ある生物”にとっても楽園であ ると言える。”ある生物”とは、ご存知ゆっくりである。 ゆっくり達にとって、この村と、その付近は天国だった。天敵になる動物や捕食種は多 少なりとも生息していたが、何と言っても食料に困ることが無かったからである。緑が多 いこの地では、春や夏には木の実や野苺等が豊富であり、秋になればたっくさんのきのこ が採れる。唯一、ゆっくり達の不満は、人間が作っているブドウが食べられない事ぐらい であった。 ゆっくりは小さく、手足を持っていないために、高い所に実っているブドウは食べるこ とができないのだ。木の実は自然に落ちた物を食べることができるが、ブドウが落ちてい ることは殆ど無いのである。しかし、実はこれはゆっくり達にとって幸運だったのだ。も し、ゆっくりが高いところのブドウを取ることができたら、間違いなく人間によって周辺 のゆっくりは大規模な駆除を受けていただろう。この地域の農家は九十五パーセントがブ ドウ栽培をしているので、実害が余り無いゆっくりに対しての対応が、実に甘かったので ある。 「ゆっ! れいむ、まりさのかわいいおちびちゃんたち、きょうはあたらしいおうちを ゆっくりさがしにいくよ!」 「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!!!」」 「ゆーん! おちびちゃんたちはとってもききわけのいい、とってもゆっくりとしたよ いこだね!」 こんなテンプレのような会話を繰り広げているのは、とあるゆっくりの番であるれいむ とまりさと、そのおちびちゃん達のれいみゅとまりちゃである。現在住んでいる巣が、れ いみゅとまりちゃが産まれた事によって狭くなったので、もっと広いお家へと引越しを行 おうとしているようだ。 「ゆぅ~ん……おちびちゃんたちも、とおくへはねていけるぐらいに、あんよがつよく なったよぉ……」 「まりさぁ……れいむとまりさはとぉーってもしあわせだね……こんなにかわいいおち びちゃんたちと、これからもずーっとくらせるんだから……」 そう言って、れいむとまりさはすーりすりを始める。そこに、れいみゅとまりちゃも加 わって、家族ですーりすりをする。野生のゆっくりの中でも、この家族はとても幸せな部 類に入ると思われる。そう、この時までは…… ――数時間後 「ゆーん。これはりっぱなおうちだよ! ここをまりさたちのおうちにしようよ!」 「だめだよまりさ。ここは、ゆっくりできないにんげんさんのおうちだよ! ゆっくり できなくされちゃうかもしれないよ!」 「だいじょうぶだよ、れいむ。なかをそろーり、そろーりとのぞいたけど、にんげんさ んはいなかったよ! ここはあきやさんなんだよ!」 「ゆゆっ! それならだいじょうぶだね!」 「「ゆわ~い!!! ここがあらたしいおうちなんだにぇー!!!」」 一家がやって来たのは、とある人間が所有する物置である。一家が中に入ると、一家が 入っても、まだまだ余裕があると思われる円筒状の入れ物が、幾つか並んでいる。 「ゆっ! あそこのたおれたつつさんに、ゆっくりはいれそうだよ! れいむ、おちび ちゃんたち、ゆっくりあそこにはいろうね!」 「「「ゆっくり(ち)りかい(りきゃい)したよ(しちゃよ)!!!」」」 人間もゆっくりも、必要以上に広い家は、逆に居心地が悪いと感じる物である。この円 筒状の入れ物のお家は、ゆっくり達にとって丁度良い広さで、とてもゆっくりできるよう である。 ゆっくり家族は入れ物の中で、のーびのーびしたり、ごーろごーろをして、一通りゆっ くりした後、早速お家をもっと住みやすくするためのリフォームを行う事に決めたようで ある。 「れいむ、おちびちゃんたち、まりさはおうちをりふぉーむするためのざいりょうさん をさがしてくるよ! ゆっくりここでまっててね!」 まりさは、そう宣言し、外へリフォームの為の材料を探しに行こうと飛び出そうとする のだが…… 「あー、よっこらしょっと!」 人間によって、その行動を阻まれたのであった。 「ゆっくりぃの日ィィィィィェァ! まったりぃの日ィィィィェェァァァァンッ! や っぱり音楽はロックだぜぃ! オーイエー!」 人間はヘッドホンで大音量で音楽を聞きながら、自身もその歌を大音量で口ずさんでい る。口ずさんでいると言うよりは、叫んでいると言ったほうが正しいが…… この物置は、とある農家がワイン造りのために使用している。この物置を所有している 農家は、自分の畑でブドウを生産する傍ら、生産した内の一部のブドウを、自宅の物置を 使ってワインにしているのだ。 ちなみにこの男は、農家の息子である。都会へ出たいが、一人息子の為、この村に残っ て家を継がなければならないのである。そのような事情から、農業にも、ワイン醸造もや る気がまったく無いのである。日頃から適当な仕事をしているので、今日もゆっくりが入 っている事を、完全に見逃してしまったようである。 「おそらがまわってるみたいいいいい!?」 樽の上部にいたまりさが、樽が立てられた事によって底部へと滑り落ちる。 「「ゆべぇ!!」」 そして、そのまま底部にいたれいみゅとまりちゃを潰してしまう。 「「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……」」 まりさに押しつぶされてしまったれいみゅとまりちゃは、若干の餡子を吐いた後、痙攣 を始める。このまま放置しては、間違いなく永遠にゆっくりしてしまうだろう。このレベ ルの傷を治療するためには、あまあまが必要不可欠である。しかし、ここはゆっくり一家 以外には塵一つない樽の中。あまあまなんて、絶対にあるわけがない。しかし、その時で あった。 ジョボジョボジョボジョボジョボジョボ…… 一家の入った樽の中に、赤紫色の液体が注がれていく。樽が満たされると同時に、人間 によって樽の蓋が閉めらた。それにより、一家は樽の外に出ることができなくなってしま った。 (ゆぅ……まりさたちはここでえいえんにゆっくりするんだね……) まりさは一家全員が永遠にゆっくりする事を覚悟した。まりさの両親は、まりさが巣立 つ直前に、まりさの妹の妹れいむを助ける為に、村のはずれの池に落ちて、皮がふやけて 体内の餡子が漏れ出し、妹共々永遠にゆっくりしたのだ。なので、まりさはこの状況がい かに絶望的な物なのかが瞬時に理解できたのである。 しかし、何時まで経ってもまりさの中身が溶け出していく感覚がないのである。まりさ は恐る恐る目を開けてみた。すると、自分の皮はまったく溶けておらず、周りを漂ってい る家族も平気のようであった。それどころか、先ほどまで瀕死の重症だったれいみゅとま りちゃが、赤紫の液体の中を元気に泳ぎ回っているではないか。 「れいむ……? おちびちゃんたち……? おからだはだいじょうぶなの!?」 まりさが家族に問いかける。 「ゆんっ! まりさっ! れいむはなんともないよっ! それに、なんだかげんきがわ いてくるよっ!」 「おちょーしゃん、れいみゅはとってもげんきげんきなんだよっ!」 「まりしゃもなんだじぇ! このあまあまなえきたいさんは、とってもゆっくりできる んだじぇ!」 そう、現在この家族が浸かっているのは、この村の特産品であるブドウの果汁なのであ る。ゆっくり達にとって、極上のあまあまとも呼べるブドウ果汁に浸かった一家は、皮が 水分によってふやけても、あまあま効果により、ふやけた部分が一瞬で回復するため、永 遠にゆっくりすることが無いという訳である。 「それににぇ、おちょーしゃん。このあまあまさんは、ちょっとだけごーくごくしただ けで、おなかがいーっぱいになれるんだよ!」 「お、おちびちゃん! このえきたいさんをのんだのっ!?」 ブドウ果汁は、ゆっくりにとって万能薬であると共に、最高級の食料にもなる。濃厚な ブドウ果汁は、ほんの少量でゆっくり達の満腹中枢を刺激するのである。 「まりさ、ここはさいっこうっのゆっくりぷれいすだね! おそとでのーびのび、ごー ろごろできないのはざんっねんっだけど、ずっとここでゆっくりしようね!」 れいむはこのゆっくりプレイスを大変気に入ったようだ。れいみゅとまりちゃも、れい むと同じ意見の様子である。考えて見れば、捕食種や動物等の天敵の危険もなく、極上の あまあまがいくらでも手に入り、何故だか体の調子もすこぶる良い。そんな条件の揃った この場所は、最高のゆっくりプレイスに違いない。そのように、まりさも考えた。 「そうだねっ! このさいっこうっ! のゆっくりぷれいすで、ずっとゆっくりしてい こうね!」 「「「ゆうううううっー!!!」」」 ――数週間後 「おちびちゃんたち! そんなにはしゃいだら、けがしちゃうよっ!」 「「「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!!!」」」」」 「ゆーん! だいじょうぶだよ、まりさ! あまあまさんのなかにいれば、けがさんは どこかへいっちゃうからねっ!」 元気すぎる程にはしゃぎ回る、五匹のおちびちゃん達。それを優しく叱るまりさと、そ れを嗜めるれいむ。そう、れいむとまりさは数週間前に新しいおちびちゃん達を産んだの である。 「ゆぅぅぅぅん! まりさのいもうとたちは、とってもゆっくりしてるんだぜ!」 「ゆんっ! まりさもれいむと、もっともっとゆっくりしようね!」 それを見て嬉し涙を流しているのは、高栄養の環境下であっという間に成体にまで成長 したれいみゅとまりちゃだ。他ゆんのいないこの環境において、二匹は当然のように番と なった。今、れいみゅのお腹には数匹の新しい命が宿っている。 「「「「「「「「みんなでずっと、ずーっとゆっくりしようね!!!」」」」」」」」 ――二ヶ月後 「ゆ……にゃんだが……うみゃくしゃべれにゃいよ……?」 ゆっくり達に変化が起きていた。どのゆっくり達も上手く言葉を喋ることができなくな ったのである。 「ふぁりざぁ……でみょ、なんだきゃきもてぃいぃよぉぉ……ひっく!」 ゆっくり達がこうなってしまった原因は、ワインに含まれているアルコールである。元 々ゆっくり達が入っていた樽は、ワインを熟成させる為の樽である。ある程度の月日が経 った事によって、樽の中のブドウ果汁が、ワインへと変化していったのである。食料とし て、毎日少量ずつ果汁を摂取していたゆっくり達は、徐々にブドウ果汁の中に発生してい ったアルコールの作用によって酔っ払ってしまったのだ。 しかし、酔っ払って、ふーらふーらしてしまう事以外は問題はないようだ。酔っ払った 時特有の気分の良さは、ゆっくり達にとっても悪くない物ではなかったようだ。ゆっくり 達は、特に気にする事無くそのままの生活を続けていった…… ――そして月日は経ち 「どぼぢでえぎだいざんにゃぐにゃっでりゅの゛お゛お゛お゛お゛!?」 樽の中のワインも無限に湧いてくる訳ではなく、最初に入れられた分しか存在しないの である。たとえ一度の消費量が少量でも、無計画ににんっしんっ! をして増えていった ゆっくり達を長期的に養っていく事など、出来るわけがなかったのだ。 「どぼぢで! どぼぢでな゛の゛お゛お゛お゛お゛!」 「――あん……?」 一人の男が、樽の中からゆっくりの声がしている事に気付いた。彼はこの物置でワイン を製造している農家。つまり、ゆっくりを樽の中に放置した男の親父である。彼は定期的 にこの物置を訪れていた。樽の中がワインで満たされていた期間は、そのお陰もあってゆ っくりがいくら騒いでも聞こえることは無かったが、中のワインが殆ど無くなった今、ゆ っくり達の騒ぎ声が、外に響くことになったのであった。 男が樽の蓋を開けてみると、樽一杯に入っているはずのワインが無くなっており、代わ りに樽の半分の高さまで、増えに増えたゆっくり達が、ぎっしりと詰まっていた。 「ゆっきゅりー!」 「ゆっきゅりしちぇいってにぇーー!」 「ゆっきゅりしちゃいよぉー!」 その全てが赤ゆ言葉を喋っている。いや、赤ゆ言葉ではない。その言葉を発しているゆ っくりのサイズは、赤ゆサイズから成体サイズまで、幅広かったのである。男は考えを巡 らせる。 「ワイン樽に入った、居るはずの無いゆっくり……その代わりに消えたワイン……そう か、こいつら、ワインを全部飲みやがったな?」 樽の中に入ったゆっくりを一匹だけ取り出して、じっくりと観察してみる。じっくりと 見たゆっくりの顔は、『アヘ顔』と言うのがしっくりくる程、憎たらしく、醜い顔である と言える。皮は赤紫色に変色しており、腐っているのではないかと勘違いしてしまいそう である。しかし、男は思った。 (このゆっくり、普通のゆっくりとは違う、とても良い香りがする。食用ゆっくりは何 度か食した事があるが、ここまで良い香りはしなかった。野良で汚そうだが、強制アルコ ール消毒されているだろうから、大丈夫か……?) 男はおもむろにゆっくりを掴むと、そのまま一気に食いちぎった。 「もぐもぐ……上品な甘み、ブランデーチョコを食べたときのように、口の中に広がる 芳醇さ……これは、旨い! 今までのゆっくりが子供のおやつだとしたら、このゆっくり は、正に”大人の味わい”だ!!!!!」 男は、ワイン漬けゆっくりの美味しさに驚愕した。これは商売になる。そんな予感が男 の中に駆け巡っていた。 「「「「ゆっぎゅちぃぃぃ! ゆっぎゅぢじじぇいっじぇねええええええ!」」」 男の考え等知らないゆっくりは、今後の自分達の未来も知らず、アルコールの効果によ って、好きなだけ騒ぎ続けていた。 ――数年後 男が興した会社が東京に進出した。支店長を務めるのは、あのやる気の無かった息子で ある。元々能力はあったらしく、立派に支店長の仕事をこなしているようだ。 会社の目玉商品は『大人のゆっくり』名前は某ふりかけの名前からインスパイヤされて 付けられた。種類もれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇんと豊富。近日中には高 級贈呈品として、中身が抹茶餡のさなえも発売されるという。 ゆっくり加工食品は、ゆっくり加工所がほぼ百パーセントのシェアを誇ってきたが、こ の会社の登場により、シェアの十パーセントを奪われたという。今や立派なライバル企業 である。 男の農村も、今では『ブドウ』の村ではなく、『ブドウとゆっくりの村』として町おこ しを始めた。男の会社の経営する大きな加工施設も建造され、毎日フル可動している。 「一時はワインを樽一つ丸々失うことになると思って青ざめたが、まさかこんな結果に なるとはな。被害者から一変して成功者。本当にゆっくりには感謝しなくちゃな」 男が過去を振り返って、呟く。この事件の本当の被害者は…… 「だずげてええええええ! でいぶだぢがなにがわるいごとじだっでいうのおおおおお おおお!?」 「ゆがああああああ! だれがばりざをだずげろお゛お゛お゛お゛お゛」 男の村で積極的に狩られ、大人のゆっくりの原料として使われるようになった、ゆっく り達なのかもしれない。 END あとがき 実際のワインの醸造は、ある程度タンクで発酵が進んだ状態で樽に移されて、そこから 熟成に入るらしいです。この作品の場合は素人が作ったということで…… 一般人は無許可で酒を作るのは違法と知ったのは作品を書いた後なので、ご容赦を。 コンバートあき いままで書いた作品 anko2495 一番多いゆっくりは anko2498 日本を支える一大産業(本編) anko2501 胴付きになりたかったまりさ anko2503 新たなエネルギー源 anko2504 冷凍ゆっくり anko2514 新発見、ゆっくりの新しい移動法 anko2516 読書の秋 anko2561 すぃーはゆっくりできない anko2737 イヴの夜に anko2751 ゆっくり餅 anko2753 共生 anko2758 作ろう!ドスまりさ! 挿絵:○○あき
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初投稿です。 現代の農村が舞台です。独自設定有り。 無駄に賢いゆっくりがでてきます。虐待とは呼べません。自滅・・・?かな。 『共生する群れと草原のまりさ』 あるところに、ゆっくりしたゆっくりが暮らす理想のゆっくりプレイスがあった。 そこには優秀なドスを長とし、豊富な食べ物、快適な環境、ゲス等一匹もいない 長い時を重ねて繁栄を続ける群れがあるという。 そんな素敵なゆっくりプレイスを求めて、多くのゆっくりが群れに加えてもらおうと数多くやってくるのだ。 「ついに見つけたんだぜ。ここがあの噂のゆっくりプレイスなんだぜ!」 「さすがかわいいれいむのまりさだね!ここなら思いっきりゆっくりさせてもらえるんだね!」 「まりしゃあまあまたくしゃんたべてゆっくちしゅるよ!」 「れいみゅにもはやきゅあまあまもっちぇきちぇね!」 今日も親まりさ、親れいむ。子まりさ、子れいむの お約束とでもいうべきスタンダードな家族がこの群れにやってきた。 その家族に、群れの一員であるありすが気付き、近寄ってくる。 「ゆっくりしていってね!!」 「「「「ゆっくりしていってね」」」」 「ありすたちの群れにようこそ。まりさ達はなんのごようがあってここにきたの?」 「ここならとってもゆっくりできるって噂を聞いてやってきたんだぜ!」 「はやく群れに入れてね!れいむたちは歩きっぱなしで疲れているんだよ!やさしくしないといけないんだよ!」 「ゆっくち!ゆっくち!」 「はやきゅあみゃあみゃをだしぇー!」 ゲス気質が発言の端々から見受けられるが、ありすは落ちついたものだった。 「ちょっとここでまってて。今ドスをよんでくるわ。」 数分後、通常のドスより更に一回り大きいドスまりさが一家の前に現れた。 体長は3mを超え、髪に結び付けられたたくさんのリボン 数々の苦難を潜り抜けてきたのであろう古びた大きな帽子は、風格さえ漂わせていた。 その横には側近のぱちゅりーと先ほどのありすも一緒だ。 ドスの威厳に呆気にとられたまりさ一家をよそに、ドスは語りかけはじめた。 「群れへの参加希望の家族だね。ドスたちの群れは掟をきちんと守ってくれるゆっくりなら、誰でも歓迎するよ。」 「まりさたちなら掟を守ることぐらい簡単なことなんだぜ!」 「かわいいれいむのかわいいおちびちゃんたちも、れいむのきょーいくでしっかりした子に育ってるから安心だよ!」 まりさ一家は掟を守る事なんて簡単だ。はやく群れに入れろとまくしたてる。 ドスは淡々と話を続ける。 「掟も色々とあるんだけどそんなに多くはないし難しくもないよ。掟を破ったらおしおきがあるけどね。」 「まず、群れに入るに当たって最初に約束してもらう掟があるよ。これを守ってもらえないなら 群れへの参加はお断りさせてもらうからね。それだけ大切な約束だよ。」 まりさ一家は、どんな掟でも約束でもちゃんと守るよ!と意気揚々だ。 しかし、ドスの発したその「約束」はまりさ一家にとって驚愕すべきものだった。 全てのゆっくりプレイス、住居、森、山、川、草原、食料、ここにある全てのものは、全てにんげんさんの持ち物である。 全てのゆっくりはにんげんさんと協力して、ゆっくりプレイスの維持に努める。 まりさ一家はドスの言った言葉を理解できず、ぽかんと口を開けたまま固まってしまった。 ゆっくりプレイスがにんげんのもの?? ゆっくりできるおうちがにんげんのもの?? おいしいお花さんや虫さん、食べ物が勝手に生えてくる全ての場所がにんげんのもの?? いつもぜんぜんゆっくりしてなくて、ゆっくりに傍若無人な振舞いをするにんげんと協力?? ただでさえ少ない餡子脳が、ドスの言葉を理解するのには多少の時間が必要だった。 「ど・・・・どうしてそんなこと言うのぉおおおおおおおおおおおおおおお!??!!」 場を包んだ静寂を親まりさと親れいむの絶叫が切り裂く。 「ドスはなにをいってるんだぜ?!ゆっくりプレイスはゆっくりしたゆっくりのものなんだぜ? バカで弱くてまったくゆっくりしてないにんげんのものなんかじゃないんだぜ!!」 「そうだよ!なんでちっともゆっくりしてないじじぃやばばぁと一緒にゆっくりしないといけないの!? にんげんなんてやっつければいいんだよ!!ドスならできるでしょぉおおおおおお!!」 ドスは深い溜息をついて 「これは群れの掟の中でも一番大切な掟だよ。守れないゆっくりは群れには入れてあげられないんだよ。」 ドスのこの言葉に2匹は逆ギレした。 「そんな掟はぜんぜんゆっくりしてないんだぜ!なんで強くてかっこいいこのまりささまが そんな掟をまもらなきゃいけないんだぜ!!」 「そんなバカな掟なんか守ってるドスの群れもぜんぜんゆっくりしてないね!おおぶざまぶざま」 「いくんだぜ!れいむ!こんな群れこっちからおことわりなんだぜ!!」 「そうだね!こんなゆっくりしてない群れなんか、こっちからおことわりだよ!!」 「まりしゃをゆっくちしゃせてくれにゃいどしゅなんかちね!!」 「きゃわいいれいみゅのきゃわいさがわからにゃいどしゅなんてちね!!」 言うが早いか子まりさと子れいむを帽子のなかにいれ、一家はどこかへ行ってしまった。 「ふぅ。やっぱり今回も理解してくれないゆっくりだったね。」 「むきゅう・・・仕方無いわよドス。にんげんさんの本当の凄さがわかってないと この掟を理解するのは難しいわ・・・」 「あの親子、口の悪さからとかいはじゃない雰囲気があったわ。群れに向かえなくて正解よ。」 「せめて、どうしてそんな掟があるのか?って疑問を持って、話を最後まで聞いてくれれば 多少は救いがあるんだけど・・・仕方無いね。」 この群れに参加を希望するゆっくりは後をたたなかった。 しかし、群れへの加入を許されるゆっくりはその1割以下。 ほとんどのゆっくりが、先ほどのまりさ一家のような反応を示すのだ。 ゆっくりはなぜか人間への警戒心が薄い。 全てにおいて人間を、ゆっくりよりも下等な存在と決め付けている。 何の根拠もないこの認識については ゆっくりは人間の顔しか認識できず自分達より小さいと誤認してしまう。 ゆっくりを至上の価値観とするゆっくりにとって、ゆっくりしていない人間は下等な存在である。等など。 学者によっても意見の解れる所であり、結論は導き出されていない。 ゆっくりのなかで、人間とゆっくりとの、覆りようも無い彼我の力の違いを知っているのは 飼いゆっくりとして、厳しい教育を施されたゆっくり 人間の不興を買い、制裁されたゆっくり 虐待鬼意山との、素敵なひと時を過ごしたゆっくり そしてこの群れのように、人間とのコミュニケーションによって 人間とゆっくりの力の違いを認識したもの達くらいなのだ。 まりさは怒り心頭だった。 長い道程を経て辿り着いた「理想のゆっくりプレイス」はまったくゆっくりしていなかった。 にんげんと協力?カマキリさんにだって余裕で勝てる、このまりささまがにんげん如きと! あんな群れに入らなくたって、れいむとおちびちゃんたちと一緒にゆっくりすればいいんだ! れいむも子ゆっくり達も同じ考えだった。 群れもあの群れだけじゃない。他にもあるはずだ。 他の群れに入れてもらえばいいんだ。そう思っていた。 しかし他の群れはどこにも見当たらなかった。 群れがあった形跡すらない。 道中、ゆっくりに会う事はあったが、この近くに群れは、あの奇妙な掟がある群れしかないとの事だった。 まりさ一家は群れを探す事をあきらめ、自分達のゆっくりプレイスを探す事にした。 ちょうど親子4人が住むのに良い具合の、木の洞をみつけるとそこに入り 「ここはまりさたちのゆっくりプレイスだよ!ゆっくりしていってね!!」 お家宣言。これでここはまりさたちのゆっくりプレイスに決定。 「むきゅ?!ここはぱちぇたちのゆっくりプレイスよ!」 「突然なんなの!?とんだいなかものね!早くここからでていきなさい!」 数分後、木の洞の外には、カスタードとクリームまみれのゆっくりだったものが複数存在した。 ゲスには迷いがない。なぜなら自分達が絶対正義という事を疑う事がないからだ。 次の朝、まりさは狩場を探しに周辺を見てまわった。 季節は春。穏やかな気候に生命の息吹が溢れる季節。 きのこやどんぐりがいっぱいありそうな山林。 秋になったらいっぱいむーしゃむーしゃできるだろう。 綺麗なお水が流れる小川。 夏の乾きもこの水をごーくごーくすれば癒せるだろう。 そして小高い丘に登ったまりさは眼下に広がる草原に目を奪われた。 「ゆわぁー・・・・!」 青々としたおいしそうな草が風を受けてたなびいている。 それが目の前にどこまでもどこまでも広がっているのだ。 「すごいんだぜ!これならごはんに困る事はないんだぜ。こんなすごいゆっくりプレイスを見つけたまりさは やっぱり選ばれた(笑)ゆっくりなんだぜ!!」 まりさは早速、手近にある草や虫など、ごはんをいっぱい帽子に詰め込んで帰路についた。 まりさが丘から草原を見渡し、その餡子脳にバラ色の未来を描いていた頃 群れのゆっくりたちはその草原の中で、山菜や野草を収穫していた。 手分けをして、大きすぎず小さすぎず、程よい大きさのわらびやぜんまいなどを、手際良く収穫していく ゆっくりたちは、それぞれ人間にもらった袋を持っており 帽子のようなお飾りに収納スペースを持たないゆっくりであっても 袋のおかげで収穫の効率を上げる事に成功していた。 「みんなおつかれさまなんだねー。今日はこのくらいで終わりにしようねー。わかってねー。」 群れの幹部の一人であるちぇんが声をかけると、ゆっくりたちは収穫を止め ちゃんのもとにあつまり、その日の収穫物を集め始めた。 その量は、群れのゆっくりが200前後と大所帯とはいえとても食べきれるものではない量であった。 「じゃあ手分けして、みんなでにんげんさんの村まではこぶよー。もうちょっとがんばろうねー。」 群れのゆっくりたちは手際よく山菜を分担して袋にいれ、村へと降りていった。 「おお。今日もたくさんもってきてくれたな!ありがとうよ。」 村の入り口ではひとりの農家の男がゆっくりたちを待っていた。 ゆっくりがもってきた大量の山菜を軽トラックに積みこみ 「ほい。何時も通りあく抜きをして乾燥させた山菜だ。もっていきな。」 男は笑顔で、ちゃんの頭を頭をわしわしと撫で、ひとつの袋を手渡した。 ちぇんはくすぐったそうにしながら 「いつもありがとうなんだねー。またもってくるからこれからもよろしくねー!」 人間への感謝の言葉を他のゆっくりたちも次々と口にし、山へと帰っていった。 男もゆっくりがみえなくなるまで手を振り続けていた。 まりさは家に帰ると、れいむに今日みてきた素晴らしいゆっくりプレイスの数々の事をを話続けた。 「さすがはかわいいれいむのまりさだよぉ。すてきなだんなさまといっしょでれいむはしあわせーだよぉ。」 「しゃしゅがまりしゃのおとうしゃんはしゅごいね!」 「むーちゃむーちゃちあわせー!」 一家はたくさんのごはんとたくさんのゆっくりプレイスにその餡子脳をバラ色に染め上げていた。 次の日からもまりさは草原や山林で、狩りに勤しんだ。 草原では、あの奇妙な掟の群れのゆっくりにも遭遇したがどういう理由か、にがい草ばかり採っている。 「ふん!やっぱりあの群れに入らなくて正解だったんだぜ!バカなゆっくりしかいないんだぜ!」 まりさは意気揚々と帽子をごはんでいっぱいにして帰路についた。 ある日、まりさが草原にいくと、あの奇妙な群れのゆっくりが草原から消えていた。 いるのはまりさ一家とおなじように、群れに属さないゆっくりばかりのようだ。 奇妙な奴らがいなくなって清々したんだぜ!などと思っていたまりさの目に 大きな音を響かせながら、人間の乗り物が草原にやってきた。 その乗り物は草原に入ると、根こそぎ草を刈り取りはじめた。 「まりささまのゆっくりプレイスにやってきて無断でおいしい草さんを刈るなんて とんでもないにんげんなのぜ!たっぷりせいっさい!してやるのぜ!」 まりさはその乗り物に向かって走り出した。 どうやら周辺のゆっくりもまりさとおなじ考えらしく 乗り物のまわりにはゆっくりが集まり始めていた。 「草さんを刈り取るにんげんは死ねぇ!」 「せいっさいしてやるよ!」 まりさがその乗り物の近くに来た時、すでに他のゆっくりが乗り物に体当たりをしようとしていた。 まりささまがせいっさいする必要はなかったようだぜ。などと、ぼこぼこにされたにんげんと乗り物を 餡子脳に思い描いていたまりさの目に映ったのは、信じられない光景だった。 バツン。ブチィ!ズガガガガガ。ビチャビチャビチャ。 体当たりをしたゆっくりはその乗り物に切り裂かれ押しつぶされていった。 その乗り物はトラクターとそれに連結された草刈機だった。 草原の草は元々人間が家畜の餌用に育てていたもの。 山菜の収穫も粗方終わった今、草の刈り取りが始まったのだ。 その巨大な農業用機械に、人間でさえ不用意に突っ込んだりしようものなら、命を容易く落とすだろう。 いわんやゆっくりもである。 草刈機の刃は一瞬にして、ゆっくりを切断し、粉切れにしていった。 飛び掛る寸前だったゆっくり達には、刈り取られた草の破片がかなりのスピードで、その饅頭肌に突き刺さる。 「いたいぃいいいいいいいいい!!ぎゅべら」 「れいむのきれいなおめめがぁああああああああ!!」 「らんしゃまぁあああああああああああああ!!」 「だれかぁあああああ!ありすのとかいはなペニペニに刺さった草を抜いてぇええええええ!!」 一瞬にしてゆっくり達は地獄へと叩き落とされた。 トラクターはゆっくりなど存在しなかったように速度を落とす事なく、草を狩り続ける。 まりさは惨状を目の当たりにし、全速力で逃げた。 にんげんに負けるとは思っていないが、あの乗り物はやばい。 それが餡子脳が導きだした結論だった。 1週間後草原の草は人間に残らず刈り取られていた。 「ゆぅ・・・雨さんばっかりで狩りにいけないんだぜ・・・」 季節は梅雨へと移ろいでいた。 おいしい草も全て刈り取られ、食料事情が悪化したところにはじまった雨。 いつまでも降り続く雨で、満足に狩りにも行けず まりさ一家は空腹に耐えていた。 「どうしてごはんさんをとってきてくれないの!まりさ!」 「うわぁーんおにゃかちゅいたよぅー!」 「そんな事いっても、この雨のなか狩りになんていったら、体が溶けてゆっくりできなくなっちゃうんだぜ!」 「その前に、おちびちゃんがゆっくりできなくなっちゃうでしょぉおおお!馬鹿なの!?死ぬの!?」 この一家は梅雨への備えを怠っていた。近場の草原の存在を過信していたのも痛手だった。 まりさが雨の合間に狩りにでかけるが、満足の行くほどのごはんはみつけられない。 雨が降り続ければじっと空腹に耐えるしかないのだ。 しかし、親ゆっくりならまだしも子ゆっくりの体力で、この空腹に耐えることは難しかった。 「ゆっゆっゆっ・・・」 最近では空腹ですっかりおとなしくなっていた子れいむの様子が急変した。 「ゆゆっ!?おちびちゃんしっかりしてね!おかあさんがぺーろぺーろしてあげるからね!」 「って・・・・どうしておちびちゃんのきれいなお肌が、青や緑色になっているのぉおおおおおおおお!?」 栄養失調による体力低下で、免疫力のおちた子れいむの肌にはカビが生え始めていた。 「おちびちゃんしっかりするんだぜぇえええええ!まりさのおちびちゃんなら病気なんかに負けちゃダメなんだぜ!」 「うわーーーーん!れいみゅううちっかりちてー!!」 子れいむは2日後「もっとゆっくりしたかった」と呟きこの世を去った。 群れのゆっくり達は、梅雨の間、巣の中でゆっくりとした時間を過ごしていた。 「むーしゃむしゃしあわせー!」 春の間に、備蓄していた食糧に加え、人間から報酬としてうけとっていた乾燥させた山菜は 保存食として最適だった。巣の中にはビニール袋など人間から譲り受けた防水に役立つアイテムさえあった。 ドスは降りしきる雨の中これからの事を考えていた。 それぞれの家族には十分な備蓄食料を持たせてある。梅雨が例年通りなら問題ないだろう。 だけど梅雨が長引けば、食料は群れの備蓄を放出すれば問題ないが 抵抗力のない子ゆっくりが病気になってしまうかもしれない。 「早く、梅雨さんが終わらないかなぁ。そして夏になったら・・・」 降りしきる雨の中、ドスは夏以降の群れの運営方針を、巣のなかでゆっくりと思い巡らせていた。 夏。 まりさ一家は、小川で喉の渇きを潤していた。 梅雨によって大事なおちびちゃんを一人失ったが 生き残った子まりさだけでもゆっくりとした立派な子に育てよう。 両親はそう心に誓っていた。 涼しい小川で、思い思いにゆっくりしていると、どこからか声がする。 「えー。皆さん暑い中お疲れ様です。それでは用水路の整備を始めます。」 かなりの数の人間が、小川の中に入り草を刈り取ったり、石を動かしたりしている。 川から田畑への農業用水を取り入れる用水路は こうやって定期的に草や石を取り除く事で、効率よく水を田畑に引き込むことができるのだ。 まりさ一家は物陰からその様子を見ていた。 にんげんはなにをやっているのだろう?まったくゆっくりしていない。 なにより、まりささまたちのゆっくりプレイスに、無断で入ってくるなんて許せない! 「おい!くそにんげん!まりささまたちのゆっくりプレイスから早く出て行くんだぜ!」 「まりさは強いんだよ!にんげんなんてイチコロなんだからね!」 「ぷきゅぅううううううううううう!!」 親2匹と子1匹。人間に対して精一杯の威嚇行動を行っている。 これでにんげんが恐れをなして逃げ出すと思っているのだから、餡子脳というのは本当に救いようが無い。 まりさ一家の愚かな行動を、人間達は少々驚きを感じながらみつめていた。 「あれ?ゆっくり??」 「え?今あいつらは村の畑で、農作業の手伝いをしてるんじゃなかったか?」 「ああ。野菜についた虫や雑草を取り除く作業を頑張ってやってるよ。」 「ってことはこいつら群れのゆっくりじゃないのか?」 「はぐれゆっくりってとこだろうなぁ。口汚いし。」 人間達が会話を続けている最中も、まりさ一家は、でていけだの死ねだの五月蝿い事このうえない。 「あー。とりあえず作業の邪魔だな。」 「どこか適当に放り投げておけよ。」 「めんどくさいなぁ・・・」 騒ぎたてるまりさ一家の側に一人の男が近づいていくと、なんの躊躇いもなく子まりさを掴み上げた。 「じじぃ!なにをしてるんだぜ!まりささまのかわいいおちびちゃんを早くはなすんだぜ!!」 「おちびちゃんんん!!?じじぃはゆっくりしないでおちびちゃんを離して死ねぇええええええ!!」 「うぇええええん。きょわいよぉおおお。」 男の足元で、ぽいんぽいんと無駄な体当たりを繰り返す親ゆっくり。 男はそれを全く無視して 「ほらよっと!」 子まりさを、少し離れた藪の中に投げ込んだ。 「ゆぅうう?!おしょらをとんでりゅみたぃいいい・・・!ゆべぇ!」 お決まりの「お空を飛んでるみたい」を叫びながら子まりさは藪のなかに投げ込まれてしまった。 「「おちびちゃんがあああああああああああ!?」 大切な子まりさが人間に投げ飛ばされた事に、驚きの声をあげる親ゆっくり。 「はいはい。お前達も作業の邪魔ですからねー。」 男はそういうと、まりさとれいむを、子まりさが飛んでいった藪にめがけて思いっきり蹴り上げた。 「ゆぶぅううううううううっ!?」 「ゆうがぁあああああああああああっ!!?」 親子3人、仲良く藪の中に叩き込まれてしまった。 「ゆ・・・ゆぅうう。!?れいむ?おちびちゃん?!」 まりさが気付いた時、すでに空は夕焼けに染まっていた。 どうやら気絶してしまっていたらしい。 「ゆぐぐ・・・痛いんだぜ・・・れいむはどこなんだぜ?」 れいむは藪の中に頭を突っ込んだ姿勢で気絶していた。 「れいむ?!大丈夫なんだぜ!!?ゆっくり、ゆっくりしていってね!!」 「ゆう・・ううん。まりさ?ゆぅう・・・痛いよぅ」 藪の中に蹴り込まれたまりさとれいむは、体中擦り傷だらけでずーりずーりと這いずるのがやっとの状態だった。 「おちびちゃんの姿が見えないんだぜ・・・・おちびちゃーん!どこにいるんだぜー?」 「かわいいれいむのおちびちゃんー!ゆっくりしないではやく出てきてねー?」 我が子を探す親ゆっくりの目の前に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。 子まりさは、藪の鋭く尖った枝にあんよから頭まで串刺しにされた状態で、息絶えていた。 「「まりさとれいむのかわいいおちびちゃんがなんで死んじゃってるのぉおおおおおおおおお!?」」 夕焼け空に親ゆっくりの慟哭だけが響いていた。 実りの秋。 人間もゆっくり達もその恵みを享受しようと野山を駆け巡る。 子ゆっくりがいなくなった今、まりさとれいむは二人揃って、冬篭りに備え狩りに勤しんでいる。 さすがにこの時期に子ゆっくりを作る事は、冬篭りの失敗に繋がる事を、二人は理解していた。 なにより、自分達のゆっくりプレイスに、いつでもどこでも人間が現れる事も 二人に子作りを断念させた大きな要因だった。 子ゆっくりが殺されたあの日以来、二人は人間と極力接触しないようにしている。 にんげんはちっともゆっくりしていない。 だが、にんげんの恐ろしさを、この二匹もようやく理解し始めていた。 おうちにしていた洞のある木は、狩りにでかけている最中 人間達に、周りの木々と共に切り倒してしまった。 きのこがいっぱい生えている森の中では、あの奇妙な群れのゆっくりが人間と一緒に きのこ狩りに勤しんでいた。 こっそりとゆっくりたちの中に紛れ込んできのこを取ろうとしても すぐに人間につまみだされてしまう。 どんぐりが実る山林も、人間達によって木ごときりたおされ 倒れた木の枝についたどんぐりは、奇妙な群れのゆっくりたちが丁寧に摘み取り 人間達に差し出していた。 ここに来た時は、家族でゆっくりできると思っていたのに 子は失い、住処は奪われ、ごはんも満足に取る事ができない。 まりさ達は、草原の丘の麓に穴を掘りそこを新しい住処にしていた。 草原に生えているあまりおいしくない枯れ草を、主食として生きながらえていた。 草原を吹く風が冷たくなってきている。もうすぐ冬がやってくる。 おいしくない枯れ草とはいえ、冬篭りのために必要な量はなんとか確保できそうだ。 二人は巣の中で、 次の春になったらたくさんあかちゃんをつくってゆっくりしよう。 おいしいものをいっぱい食べよう。 巣の中で希望に満ちた春を思い描いていた。 雪が当たり一面を白く塗り替えていく。 まだ見ぬ春を夢見てゆっくり達は巣の中で、春を待ち続けた。 冬も終わりを迎えようとしていた。 風に春の予感を感じさせるものの、まだ肌寒い時期である。 群れのゆっくりたちは、通常はドスの住居兼集会所である 大きな洞穴の中で越冬の最中であった。 ドスと200を超えるゆっくりたちが思い思いに春を待ちゆっくりしていた。 越冬も終盤とも言えるこの時期にあっても、まだ貯蔵した食料は十二分に残っている。 この事からも、この群れの越冬対策の優秀さが伺える。 そこへ一人の男が尋ねてきた。 年は還暦間近ではあるものの、山野を歩く足並みは精強そのものだ。 「お邪魔するよ。ドスはいるかい?」 「ゆゆっ!にんげんさんいらっしゃい!ゆっくりしていってね!!」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 ドスの声にあわせて群れのゆっくりが男に挨拶を返す。 「はい。ゆっくりゆっくり。」 ドスと側近達が男の前に歩みでて、人間に軽く会釈すると 男はよっこいしょと、ドスとゆっくり達の前に腰を下ろした。 「にんげんさんが今年の「やくいんさん」なんだね。まだ寒いのにわざわざありがとう!やくいんさん。」 ドスは更に男に頭を下げ礼を言った。 「まあ役員っていっても、村のなかで順番がまわってきただけさね。 こりゃ俺達とお前さん達との約束だからな。俺の祖父さんの頃から続く約束だ。お互いしっかり約束は守らなきゃな。」 「やくいんさん、今年ももうそんな時期になったってことだね?」 「ああ。そうだ。日時は1週間後だ。お前さん達はいつもどおりやってくれればいい。 今年はちと多いか?200くらいいるのかい?」 「ドスをいれて235のゆっくりがいるよ。去年より20くらいおおいかな。」 「そうか。まあ多すぎず少なすぎず、うまく越冬もできそうだってとこだな。」 「うん!そうだね。これもにんげんさんたちのおかげだよ!ゆっくりありがとう!!」 「「「「ゆっくりありがとう!!」」」」 「いやいや。お前さん達の努力の成果だよ。じゃあ1週間後またくるからな。 しっかりと群れのゆっくり達にも話を・・・特に新参とこどもたちにはちゃんと教えておけよ?」 「わかったよ、やくいんさん!1週間後にまたあおうね!!」 男が立ち去った後。 ドスは全てのゆっくり達を前に語りはじめた。 「みんなゆっくりよく聞いてねね!いまからいうことは絶対に忘れちゃいけないことだよ! まえからずっと掟としてみんなにいってきたけど それが正しいことだっていうのを、今度にんげんさんたちが教えてくれるよ。」 「これはドスやみんなのおかあさんの、おかあさんの、そのまたおかあさんの・・・ ずーっとずーっとむかしからの、むれの掟だよ!!ぜったいにわすれちゃいけないよ!!」 「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」」」 期日までの7日間。ドスは群れに、大人はこどもに、古参は新参に。 なんどもおなじことを繰り返し語り続けていた。 俗にいう餡子脳。それに絶対に刻み込むために必要な事なのだ。 「よし。ここでいいぞ。ここなら一望できるし安全だ。」 1週間後。男はゆっくり達と小高い丘の上に立っていた。 眼下には、ススキをはじめとする枯れ草が風にたなびく草原が広がっていた。 ドスをはじめ群れの全てのゆっくりが、ここに集まっている。 まだまだ風も冷たく、ぐずる子ゆっくりもいるようだが 親ゆっくりが必死になだめている。 これから起こる事。 それを愛するわが子にもしっかりとみせておくために。 「はじまったな」 男がそういうとゆっくり達も一斉に草原に目をやった。 草原の端のほうから白い煙があがっている。 煙の下からちろちろと赤い炎も見え隠れしている。 「いいか。これが「野焼き」だ。よく見ておくんだぞ。」 野焼き。 地方によっては火入れとも呼ばれる。 1年に一度、春先に草原の枯れ草を焼却し、春の新芽がしっかりと生えてくるように 草原を整備するのが目的だ。 これを行わないと草原は荒れ、野草などの収穫量も落ちる。 最終的には草原は、鬱蒼とした森林へと姿を代えてしまうのだ。 豊かな恵みを維持するために一年に一度の野焼きは必要不可欠なのだ。 端から上がった炎は少しづつその勢いを増し草原を覆いはじめた。 人間からみてもなかなかに壮大な眺めである。 数百ヘクタールという広大な草原が火に覆われ燃えていくのだ。 ドスや昨年の野焼きを見たことがあるゆっくりたちは じっとその様子を見つめていた。 新参や子ゆっくりはただ呆然とその光景を眺めることしかできない。 話で聞くのと、実際に目の当たりにするのとでは訳が違う。 火の勢いに恐ろしーしーを漏らす子ゆっくりも多数いる。 しかし、眼をそらす事は、ドスによって禁じられている。 草原を燃やしつくす炎の恐ろしさ。 それを実行する人間の力。 そして人間の力によって、ゆっくりプレイスが管理維持されているということを しっかりとその眼に焼き付ける必要があるのだ。 火が順調に草原に燃え広がる頃。 燃える草原の中から、ゆっくり達の悲鳴が聞こえてきた。 「あつぃいいいいいいいいいいいい!!どうして草さんがもえてるんだぜぇえええええ??!」 「なんだかポカポカしてきたよ。やっと春さんが来たんだね!! れいむはしんぐるまざーだから春さんも早めに来てくれたんだね!!遅いくらいだよ! 遅すぎておちびちゃんだけじゃお腹いっぱいにならなっかったよ。ゆゆゆ!・・・・あついぃいいいいいいいいいいいいいい!! どうしてかわいいれいむのおりぼんさんが燃えてるのぉおおおおお!!?」 「ありすのとかいはなおうちがどうして燃えてるのぉおおおおおおおおおおお!!? ま・・・まりさはどこ!?おちびちゃんは・・・?」 「おかぁあしゃあああああああん!どこなのぉおおおおおおかわいいまりしゃを助けてねぇえええええ!」 各々、草原の中の巣で越冬をしていたゆっくりにとって まさに降って沸いたのような大惨事であった。 ゆっくりの体に火が付き、ゆっくりが暴れ周り、それがまた周辺の枯れ草に飛び火する。 その火がまたゆっくりに飛び火する。 ゆっくりにとって阿鼻叫喚の灼熱地獄がそこにはあった。 成体・子・種類、一切の区別無くゆっくりは燃えあがり、黒い炭へとかわっていく。 まりさ一家の巣の近くにも火の手はせまってきた。 「ゆぅぅん?なんだかあったかいんだぜ?春さんが来たのかだぜ?」 まだ寝ぼけ眼のまりさであったが、外から聞こえてくるゆっくり達の悲鳴に なにか恐ろしい事が起きている事にきづいた。 「ゆっ!?れいむ!れいむ起きるんだぜ!なんだか外でゆっくりできない事がおきてるみたいなんだぜ!!」 「ゆーぅーん。れいむまだ眠たいよ。まだ春さんには早いでしょう?ゆっくりしてればいいんだよ。 ゆゆ?なんだかあったかいね?もう春さんが来たの?まりさ?」 「外にでてみないとわからないんだぜ・・・でもなにかとても嫌な予感がするんだぜ・・・」 「なんだか外が騒がしいね。結界さんを外して外の様子を・・・ゆゆっ!」 草原を覆いつくす炎は、ついにまりさたちの巣の入り口に施してある結界 ・・・燃えやすい木の枝や枯れ草で作られた簡易バリケードにも燃え広がっていた。 「「なんで結界さんが燃えてるのぉおおおおおおおおお!?」」 炎は容赦なく燃え広がっていく。同時にその熱量が巣の中に充満し、二人を襲った。 「ゆがぁああああああ。熱いぃいいいいいいいいい!!」 「まりさぁあああああ!早くなんとかしてよぉおおおおおお。」 このままでは二人ともゆっくりと焼饅頭になるだけだ。 外になんとかしてでなければ! まりさはありったけの勇気を振り絞って、結界に体当たりをして活路を見出そうとする。 「ゆがぁああああぁあああ!結界さん早くそこをどくんだぜえええええ!!ゆぎゃああああああ熱いぃいいいいい!!」 まりさの渾身の体当たりは、燃えて脆くなっていた結界をあっさりと吹き飛ばした。 しかし結界から巻き上がった火の粉が体に燃え移り、耐え難い熱さに絶叫するまりさ。 「まりさのすてきなおぼうしさんがぁあああああああ!」 火の手は、ゆっくりにとって大切なお飾りにも燃え移る。 「れいむは今のうちににげるよ!お飾りがもえてるまりさはそこでゆっくり死んでね!」 「どうしてそんなこというのぉおおおおおおおお!?」 あっさりと番を見限り一人だけで逃げようとするれいむ。 しかし炎はそんなれいむに罰を与えるかのように襲い掛かる。 燃え盛るススキの束がれいむの頭上に倒れ掛かってきたのだ。 「ゆぎゃわぁあああああ熱いぃいいいいいい!!まりさぁああああたすけてえええええええ!!」 「れ、れいむぅううう!?」 勢いをました炎はれいむをあっというまに包み込み、その断末魔さえも、燃え盛る炎の中に消えていく。 転がりまわり、なんとか体と帽子についた炎をかき消したまりさではあったが 周囲を炎の壁にはさまれ、帽子も天辺から半分以上燃えてしまい、絶望と迫り来る死にただただ恐怖するばかりであった。 燃え尽きただの炭クズになってしまった番を前に、涙を流すだけのまりさ。 ここでまりさもれいむみたいに燃えて死んでしまうのだと、あきらめかけたその時。 れいむに倒れ掛かったススキがあった場所が、燃え尽き炭だけになっているではないか。 その後ろも炎が散見されるものの、ぎりぎりゆっくり一匹が通れるだけの スペースができあがっている。 まりさは走った。 炎が迫ってないとはいえ、足元の灰のなかではまだ小さな火がくすぶり、まりさのあんよをこがす。 降りかかる火の粉がその饅頭肌に無数の火傷をつくる。 ただ炎から逃れるために、ガムシャラに走り続けるまりさ。 炎の塊が、まりさの右目にふり落ち、目玉はその熱量で爆ぜた。 いつもであれば耐え難い苦痛も、炎の恐怖の前にかき消される。 木の枝が、石が、急勾配の上り坂が、下り坂が、まりさの体を傷つける。 それでもまりさは走り続けた。 炎から逃れ、小高い丘にまりさはたどり着いていた。 しかし、体のいたるところが焼け爛れ、傷からはあんこが漏れ出し あんよは這いずるのがやっとなほどに焼け焦げていた。 炎からは逃れられたものの、明らかに致命傷である。 しかしあの燃え盛る炎からの脱出はまりさの心を安堵させた。 「ドスー!こっちに大怪我をしているまりさがいるよー!!」 ゆっくりの声が聞こえる。 火傷と極度の疲労でよくききとれない。 「とりあえずこっちへ運んで!ぱちゅりーは手当ての準備を!」 「むきゅ!わかったわ!」 大勢のゆっくりたちがまりさを丘の頂上まで運び上げる。 治療のために、群れのぱちゅりーたちがまりさを取り囲む。 「むきゅう・・・ドス・・・このまりさはもう・・・」 「助からないの?」 「これだけの火傷に加えて、あんこさんもかなりの量がでてしまっているわ。 人間さんにもらったオレンジジュースをかけても回復しない・・・ 痛みを和らげる効果はあるけれど・・・そこまでよ。」 「そう・・・・」 まりさはオレンジジュースのおかげで、痛みが少し和らいでいた。 しかし全身を包む脱力感が自分の命がもう長くない事を悟らせていた。 「どうして・・・・ どうしてまりさだけが・・・・こんな目に・・・・・ ドス達はゆっくりしているのに・・・・どうして・・・・」 まりさは一つになった眼から大粒の涙をながしながら、絶望を口にする。 そんなまりさにドスは語りかける。 「それはね・・・まりさ達がにんげんさんと仲良くしてこなかったからだよ」 「う・・・嘘なんだぜ・・・にんげんなんかと一緒にいたって仲良く・・・できるわけないんだぜ」 ドスは大きく顔を横に振った。 「違うんだよ。まりさ。ここのゆっくりプレイスはね。ゆっくりがここに来た時よりも ずーっとずーっと昔から、理想のゆっくりプレイスにするために にんげんさん達が努力して作りあげてきたんだよ。」 「・・・・・・・」 「まりさ。見えるかな?この下の草原が。」 春に青々とおいしい草を茂らせ、これ以上はないと思えたゆっくりプレイスだった草原は 炎が燃え盛り、燃え尽きた枯れ草は炭色になって草原を覆い尽くしていた。 「ど・・・・どう・・・してこんな・・・ことを」 「これは野焼きっていってね。春さんが来る前に枯れ草さんを燃やしてしまって灰にするんだよ。」 「そして春になれば灰を栄養にして、またおいしい草さんが一杯はえてくるんだよ。」 「春になれば群れのみんなで山菜取りのお手伝いをするんだよ。草原も草原に生えてくるものも 全てにんげんさんの持ち物だからね。ゆっくりはお手伝いをしてはじめて報酬を受け取れるんだよ。」 「・・・・・・うそ」 「嘘じゃないよ。それに草原だけじゃないよ。山や川もにんげんさんが、しっかり手入れをしてくれるおかげで おいしい食べ物がいっぱい生えてくるんだよ。」 「いらなくなった木や雑草を刈り取ったり 川の水を畑に流したりしておいしいお野菜さんをいっぱい作るんだよ。」 「群れのゆっくりはにんげんさんと、いつも仲良く一緒にお仕事をしてるんだよ。」 「・・・・・・・・・」 まりさは何も言えなかった。ドスの言う事は素直には信じられない。 だけど・・・目の前に広がる光景・・・ どこまでもどこまでも広がる草原を、人間が焼き尽くしていく。 その圧倒的な炎の力。そしてそれを操る人間達の力。 目の前に広がる覆り様のない現実。 それを死の間際にまざまざとみせつけられて、ようやく人間とゆっくりの力の違いを理解する事ができた。 「まりさは・・・・・どう・・・して・・・・・・・」 まりさは息を引き取った。 最後に何を思ったのだろうか。 人間との力の違いを知らなかった己を呪ったのか。 理不尽な世の中に憤りを感じて黄泉へと旅立ったのか。 それはだれにもわからない。 「ドス・・・」 心配そうに側近のぱちゅりーが声をかける 「残念だけど、これが現実なんだよ。ゆっくりだけの楽園なんて決して存在しないんだよ。」 「にんげんさん。動物さん。昆虫さん。ゆっくり。それぞれ生き方は違うけれど 一緒にゆっくりできる方法を考えずに生きていけるほど、甘くはないんだよ。」 「自分勝手に生きようとすれば、その時はゆっくりできるかもしれない。 でも最後に、そのツケを払わされるのは自分なんだよ・・・この草原のまりさみたいにね。」 村の役員である男は一部始終をじっとみつめていた。 やはりこのドスは賢い。そしてこの群れのゆっくりたちも ドスがいるかぎり人間に害を為すようなことはしないだろう。 自分の祖父さん達の世代は、本当に良い掟を作ってくれた。 ゆっくりを生かすつつ、人間は利を得る。 簡単なようでこれを実行に移すのは至難の業だ。 だが今までこうやってうまくやってこれたのは、祖父さん達の努力と このゆっくりたちの先祖の努力の賜物だろう。 両者共に尊敬に値する。 しかし、群れのゆっくり達はきづいているのだろうか? この賢いドスは、薄々感づいてはいるとは思うが。 群れ以外のゆっくりが、可能な限り草原で越冬する事を選択し 野焼きによって春になる前に一網打尽にできるよう 人間達が行動していることに。 群れに属さないゆっくりが、この草原以外で越冬できないようにするために 山や川、雑木林など、時期をあわせて刈り入れなどの農作業を行い 群れ以外のゆっくりの行動範囲をこの草原に囲い込むようにしていることに。 管理された群れは、すっきり制限などの掟によっていつも一定量に保たれている。 しかし、人間にとって群れ以外のゆっくりは不要だ。 ただ漠然と生きているだけのやつらに、なんの対処も施さなければ 増えるだけ増えて、この村の山野を荒地にかえてしまうだろう。 この国で人間の所有物ではない土地など存在しない。 1?たりとて存在しない。 個人の所有でなければ、国や市町村の共有地として登録されている。 人の出入りが疎らな秘境と呼ばれる場所でさえ例外ではない。 この国には、最初から「ゆっくりだけのゆっくりプレイス」など存在しないのだ。
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『二択』 8KB 虐待 家族崩壊 虐待人間 失礼します。 『二択』 過去作 anko4445 anko4449 anko4452 anko4456 anko4461 anko4464 勢いで書いた部分が大きいので、読み辛いと思います。それでもよろしいという方は、どうぞ。 「ゆっくりしていってね!」 私が公園のベンチで一休みしていると、そんな声をかけられた。 足元を見下ろすと、そこにはゆっくりの一家。 「はいはい、ゆっくりしていってね」 私は取り敢えず返事を返してやる。込められた感情は、珍しいな、が3割、面倒だなあ、が7割くらいだ。 珍しい、と言っても、この一家そのものはまりさとれいむの番に、数匹の赤ゆっくりという一般的な構成だ。 ただ、この公園に住んでいるゆっくりは基本的に人間を恐れているから、非常時に一か八か『あまあま』をもらおうとするもの以外は人間には近づこうとすらしない。 だから、声をかけてきたこの一家が物珍しく感じたのである。 「ゆっ! にんげんさんは、ゆっくりしてるにんげんさんだね!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 そんな私の内心を知ってか知らずか、返事がもらえたことに喜ぶ一家。 そして、 「ゆっくりしてるにんげんさんは、まりさたちにあまあまちょうだいね!」 それが当然というように、そう宣った。 こいつらは、あれか。ただの馬鹿か。 おそらく、返事をしてくれるような人間だったら、あまあまをくれるに違いないと思ったのだろう。 そこには、何の警戒心もない。 最近では珍しいレベルの餡子脳である。 取り敢えず、その甘すぎる考えに現実を見せてやろう。 「れいむ、まりさとそのおちびちゃん達、どっちが大事かな?」 「ゆ? にんげんさん、なにいってるの? そんなことより、あまあまちょうだいね!」 「何言ってるのもなにも、言葉通りだよ。答えてくれたら、あまあまをあげることを考えなくもない。どっちが大事?」 れいむは、困ったように傍らのまりさを見た。 するとまりさは、微笑みを浮かべ、れいむに頷きかける。 れいむはすぐに私に向き直り、 「ゆっ! まりさもれいむも、おちびちゃんのためならゆっくりできないことでもがまんできるよ! だから、おちびちゃんのほうがだいじだよ!」 自信に満ちた表情で、言った。 「そっか」 私は、れいむに対して笑みを返し、 「じゃあ、まりさはいらないね?」 まりさを思い切り踏み潰した。 「………………ゆ?」 顔にまりさの餡子を付けて、残された一家が呆けた表情を浮かべた。 たっぷりと時間を置いて、 「ばりざああああああああああああああああああ!?」 「「「「「おとーしゃあああああああああああああああん!?」」」」」 一家は、面白いくらいに揃った叫び声を上げた。ただし、別に面白くはない。うるさいだけだ。 「どぼじでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおお!?」 すぐに、れいむの叫びは私への抗議へと変わる。 「どうしてって……まりさもれいむも、おちびちゃんのためならゆっくりできないことでも我慢できるんだよね?」 「そんなこといまはかんけいないでしょおおおおおおおおお!?」 「いや、あるよ。だって――」 まりさが大事だったら、おちびちゃんの方を潰してたから。 「…………ゆ?」 私の言葉を聞いて、れいむがぽかん、と口を開ける。 「なにそれえええええええええええ!?」 「いやあ、何それもなにも、人前に出てくるようなゆっくりは潰すのがマナーだしさあ」 言いながら、私は赤ゆっくり達を拾い上げる。 「「「「「おしょらをとんぢぇるみちゃい!」」」」」 「ゆ、はなちてにぇ! かわいいれーみゅがいやがっちぇるよ!」 「おちょーしゃんをころちたくしょにんげんは、ゆっくちちないであやまっちぇにぇ! ぷきゅううううう!」 「ゆんやあああああああ! きょわいいいいいいいい!」 私の手の上で、勝手気ままに騒ぐ赤ゆっくり達。 赤れいむが二匹に、赤まりさが三匹だ。 「おちびちゃんをかえしてねええええええ! いやがってるでしょおおおおおおお!?」 そう要求するだけで何もしないれいむの前に、私は右手に赤れいむ、左手に赤まりさを乗せ、突き出してやる。 「ゆっ! にんげんさん、はんせいしたんだね! そしたら、しゃざいとばいしょうとしてあまあまちょうだいね!」 この後に及んでもまだそんな発言をできるれいむにやや感心しながら、 「まりさ似のおちびちゃん達とれいむ似のおちびちゃん達、どっちが大事?」 もう一度、訊いてやった。 「「「「「ゆううううううううううううう!?」」」」」 驚きの叫びをあげたのは、赤ゆっくり達だ。 れいむは、口をぱくぱくさせているだけである。そろそろ、そういう反応も見飽きてきた。 「早く答えないと、みんな潰すよ?」 だから、取り敢えず急かしてやる。 「ゆ、おきゃーしゃん! まりちゃをたしゅけちぇね!」 反応が一番早かったのは、他よりやや大きな赤まりさだ。 「おきゃーしゃ! れーみゅぎゃきゃわいきゅにゃいにょ!?」 「げしゅのれーみゅにゃんかほっといちぇ、しゃっしゃとまりちゃをたしゅけちぇね!」 それに続き、他の赤ゆっくり達も命乞いを始める。 もう一方のネガキャンをするやつがいるあたり、将来が不安になる――まあ、こいつらに将来なんて無いが。 「さあ、どっち?」 言いながらさらにずい、と手を突き出すと、れいむは砕けるのではないかと思うくらい歯を食いしばりながら、 「れいむににた……おちびちゃんだよ……」 小さな声で、そう言った。 「ゆわーい!」 その言葉を聞き、単純に喜ぶ赤れいむ達。 「ごべんね、おぢびぢゃん……ごべんねぇ……」 「ゆ、おきゃーしゃ、どうちて……」 それと、れいむの泣き顔を交互に眺めながら、赤まりさ達は呆然としていた。 「いやあ、残念だったねぇ、君達」 その赤まりさ達に、私は話しかける。 「でも、仕方ないよ。だってれいむお母さんは、まりさに似てる君達より自分に似てるおちびちゃんの方が可愛いんだから。」 「ゆっ! ちが――」 「違うんなら、どうして『たくさん』いる赤まりさを選ばなかったのかな?」 「ゆぐっ!」 痛いところを突かれ、れいむは押し黙る。「ぼせい」を持つれいむらしい反応だ。 「やっぱり、君達はいらないんだってさ」 「ゆ、おきゃーしゃ、まりちゃは……いらないのじぇ?」 「…………っ」 れいむの沈黙を肯定と取った赤まりさたちは、 「こにょ、くじゅおやあああああああああああ!」 「……ゆっくち! ゆっくち!」 「おきゃー、しゃ」 三者三様の反応を返した。 れいむは目を閉じ、そこから顔を逸らす。 「君達がまりさに生まれたばっかりに、赤れいむ達とずいぶん差が付きましたぁ。悔しいでしょうねえ!」 「ゆ、きゃわいいまりちゃをゆっくちゆるちちぇ――」 そして、左手を、閉じた。 ぐしゃり、という感触がして、左手の上は静かになった。 「ゆ、にん、げん、さん」 何かを言おうとするれいむに、 「さて、どっちのおちびちゃんが大事?」 空いた左手に片方の赤れいむを載せ換え、間髪入れず、私は問う。 「ゆ、あ、もう、やべで……」 「どっち?」 私が詰め寄っても、れいむはがたがたと震えるばかりだ。 そんな時、 「いもーちょをたしゅけちぇにぇ!」 言葉を発したのは、右手の赤れいむだった。 私を含む全員の目が、そこに集まる。 「れいみゅはおねーしゃんだから、いもうちょをまもりゅよ! ぢゃから、いもーちょをたしゅけちぇね!」 キリッという効果音が聞こえそうな表情で、おそろしーしーを漏らしながら、もう一度赤れいむが言った。 「だってさ。それでいい?」 投げやりに私がれいむに聞くと、 「ゆ、おぢびぢゃん、だずげであげられなぐで、ごべんねぇ……。おぢびぢゃんみだいなりっばなおぢびぢゃんにあえで、れいぶば……」 安いお涙頂戴を見せられて不快だったので、取り敢えず右手の赤れいむをそのまま落とした。 「ゆっぎゃああああああああああああああああ!? いぢゃいいいいいいいいいいいいいい!」 即死はしなかったものの致命傷を負い、赤れいむが今日一番の悲鳴を上げる。 「おちびちゃ、すぐにぺーろぺー――」 本能的なものなのか、動こうとするれいむ。 その目の前で、 「ゅぴっ」 私は赤れいむを潰し直した。 すると、れいむは一瞬硬直して、 「おちびちゃん! すぐよくなるからねっ! ぺーろぺーろ!」 すぐにぺーろぺーろを始めた。 潰す前の時点でも無駄だっただろうが、死体にまでやっている姿を見ると、滑稽を通り越して哀れにすら思えるのが不思議である。 「じゃあ、れいむ」 何か、気持ちが萎えてしまったので、私はそろそろ切り上げることにした。 「れいむの『おりぼんさん』と最後のおちびちゃん、どっちが大事?」 「……!」 れいむは、何度も何度も声を出さずに口だけを動かしていたが―― 「おりぼんざん、だよ……」 赤れいむと赤まりさで選ばせた時よりいくらか早く、その結論を出した。 「へえ? どうして?」 「おりぼんざんがなぐなっだら、ゆっぐり、でぎないよ……」 「おちびちゃんがいても?」 「ゆ……ぞう、だよ……」 覚悟を決めた表情で、れいむは言い切った。 「だがら、れいむば、おりぼんざんのぼうが、だいじだよ……」 私は、その言葉を、待っていた。 「じゃあ、れいみゅちゃん。おりぼんさんの方が大事な、嘘つきのれいむお母さんとれいみゅちゃん、どっちが大事?」 潰した一家の残骸をゴミ箱に捨てて、私は元のベンチへと戻ってきた。 そこには、赤れいむだけが残っている。 それを拾い上げ、私は歩き出した。 「ゆ、にんげんしゃん、れいみゅをかいゆっくちにちてくりぇりゅにょ?」 「そうだねえ……」 私は赤れいむの問いに対して、 「れいみゅちゃんは、あまあまいっぱい食べてゆっくり過ごすのと、前と同じように家族と暮らすの、どっちがいい?」 さらに問いを返した。マナー違反? ゆっくり相手だし構わないだろう。 「ゆっ! れいみゅは、あんにゃげしゅとくらすより、あみゃあみゃいっぴゃいたべられるほうがちあわちぇー! ぢゃよ!」 予想通りの答えに、 「そっか」 私は短い応答の言葉を返す。 「まあ、何て答えても、結末は一緒だけどね」 そして、手のそれをゴミ箱に放り込んだ。 後書き もっとじっくりと描写できるようになれば、より良いものが書けるようになるとは思うんですが。難しいです。 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。 それから、感想版にて『台風の目』を考察してくださった3038様、ありがとうございます。
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『まりさは飼われゆっくり7』 26KB 観察 差別・格差 日常模様 群れ 野良ゆ 現代 続けて失礼します ※「anko4326 まりさは飼われゆっくり6」の続きです。 奇妙な胴付きはそれからも自然公園に留まり、要らぬとまでは言わないが特別ありがたいものでもない、まさしく「それなりー」なお節介を焼き続けた。 その活動範囲は自分たち親子に止まることなく、すぐにこの自然公園に住み着く群れのゆっくりたちにまで広がっていく。 群れから胴無しのあんよでそれなりに離れた位置にあるダンボールハウスにそのまま居を構えることにしたれいむは、半分群れから独立して生活しながらも時たま訪れる長を初めとした群れのゆっくりと交流し、あるいは飽きずにやって来る胴付き自身から直接えーゆーたんっ!を聞いて、その動向に関する情報を得ていた。 あの胴付きまりさは自称英ゆんまりさの子孫だそうで、「まりさも、みんなをゆっくりさせるためにがんばるよっ!」と最初にわざわざ宣言したらしい。 本当に捨てゆなのかただの迷いゆなのかは判別できないが、少なくとも元々かなりいいところで飼われていた愛玩ゆに違いない身にしては、薄汚い野良に対して極めて寛容で、身体の汚れにもお飾りの欠損にもケチをつけない。 衣食住すべてが劣悪な野良生活に苦労はしているようだが、それに対して文句も言わない。 何より、そんな中でも自分を二の次にしてまで他ゆんのために尽くすほどの殊勝な子である。 だが、殊勝なだけで許されるほど世の中もゆっくりも甘くない。 お遊戯の世界でない確固たる現実を生きている野良の身にとっては、最終的に出される結果こそが大きな意味を持つ。 そしてこの胴付きまりさの場合、結果に関しては壊滅的なまでに「それなりー」なのであった。 …………。 子れいみゅと子まりちゃの反応がよっぽどショックだったらしい胴付きは、群れのゆっくりのためのご飯さんとして、生ゴミさんを「狩って」くるようになった。 胴無しの身ではお山の自然公園から出て、ゴミ捨て場からゴミ袋を持ち去り、再び戻ってくることは到底出来ない。 そういう点では胴付きの行為は確かにありがたい。 だが、あの時と同じように「しあわせー!になってねえ!」というような満面の笑みで提供されるそれらは、かつての懐かしきあまあまでもゆっくりフードでもなく、所詮は生ゴミ。 お野菜さんの切れ端を初めとしたまともにゆっくりできるものも含まれているが、完全に腐っているもの、ゆっくりにとって毒になる辛いもの、苦いものなどの方がむしろ多い。 そして、それを見分ける術を奇妙な胴付きはまたしても持ち合わせていなかった。 「むーちゃむーちゃ……ゆっぎぇええ!! こりぇ、どくはいっちぇりゅううう!! えれえれえれえれええ!!」 「れいみゅのも しゅっぴゃいよっ! くさっちぇりゅよぉぉお!!」 「ゆゆっ! どうつきさんっ! おやさいさんは どこなのっ!? ゆっくりしないで だしてねっ! たくさんでいいよっ!」 「ゆぁ~ん、これだけなのぜぇ? ……もしかして、ひとりっじめ!してるんじゃないのぜぇ? しぬのぜえ!?」 群れの並みの餡子脳たちにそうやって罵倒されるたび、胴付きは例のおちびちゃんのような顔で泣くらしかった。 気持ちは必ずしも分からないわけではない。 大体群れのゆっくりの方も、それほど賢かったり善良だったりするわけではないようで、胴付きまりさがゆひぃゆひぃ言いながら運んでくる大量の生ゴミに遠慮なく群がり、そこに生えてきたとでも言わんばかり、当然のようにおうちに持ち帰っていく。 「むれいちばん さいっきょうっ!のおとーさんが、ゆっくりかりにいってきたのぜえっ!」 などと家族に虚栄を張るために利用している小ゆん物の惨めな雑魚まりさまでいるとのことだ。 それはさておき、調子に乗っただぜだぜ饅頭等などにいじめられて大泣きを始める胴付きまりさを慰めるのは、長であるぱちゅりーとその番であるありすの仕事。 あなたはゆっくりしているわっ。 みんな、まりさにかんしゃしてるのよっ。まりさは、とってもとかいはよっetc.etc. まるでおちびちゃんの面倒を見ているみたいだわ、という長ぱちゅりーの愚痴にれいむは同意し、同情した。 今ではぱちゅりーとありすが先立って生ゴミの選別を行った上で配給を行っているとのことだった。 …………。 ある日、胴付きは群れのゆっくりやおちびちゃんたちを連れ、自然公園内にある花壇の近くにまで行った。 人間さんにとってはせいぜい丘程度であるこのお山の自然公園には水道が引かれており、人間さん用のトイレもあるし、花壇に水をやるために屋外の水道もあるのだ。 自慢のお手手できゅきゅっと蛇口を捻った胴付きまりさは、怖がるおちびちゃんを無理やり掴み、「しゃわーさんだよっ!」と冷たい流水の中に晒した。 「おみずしゃんは、ゆっくちできにゃいいいい!! とけちゃうよぉおおお!!!」 と怯えて垂れ流されるおそろしーしーも、あにゃるにこびりついているうんうんと一緒に流されていく。 さらに、地面の土や砂埃で全体的にくすんだ色をしていて、親ゆっくりの唾液や自身のうんしーでべっとべとだったおちびちゃんの肌が、本来のきれいですべすべなものになっていく。 責め苦とも言えなくないシャワーさんを終えて胴付きの手に乗せられたおちびちゃんを見て、周囲のゆっくりたちは 「れいむのおちびちゃん、とってもはんっさむ!だよぉお!!! きまってるよぉおお!!」 「ゆゆーっ! まりちゃって、そんなに びゆっくりだっちゃにょ!?」 と歓声を上げ、泣いていた子まりちゃおちびちゃんも、「ゆわぁ……」と笑顔を取り戻す。 そして、地面に置かれた瞬間、まだ乾いていない身体とあんよに土がべったりと付き、一瞬で前より酷い泥団子に戻るのだった。 汚れるだけならまだしも、水気を取る手段も発想もないのにゆっくりを水に濡らすという行為は、さらに酷い結果を引き起こした。 熱い太陽さんが輝く真夏でなくても、体表の肌なら自然乾燥でいくらでも乾く。 じめじめした梅雨さんも過ぎているので、よっぽどじっとしているのでない限り、下部になるあんよがカビるということもない。 しかし、細かい糸のような砂糖細工が何本も織り込まれている髪の毛さんは別だ。 砂まみれでぐしゃぐしゃになった髪の毛にきゅーてぃくるっ!を取り戻してあげようと、おちびちゃんたちのうち数ゆんが冷水だけのシャンプーさんを決行され、後日頭皮をゆカビに侵されることとなった。 「まりちゃのあちゃまが かゆいかゆいだよぉおお!!」 「むーじゅむーじゅしゅるのじぇええええ!! ゆんやあああ!!」 「かいてにぇえええ!! ゆっくりかーりかーりごーしごーししちぇええええ!! しゅぐでいいよおぉお!!」 もったんもったん跳ねて暴れ回り、逆さになって地面に頭を押し付けても、それは小さな饅頭がころんと転げただけに過ぎず、頭皮には緩い一様な圧力しか感じない。 自身あるいは親ゆっくりがお下げや揉み上げで頭を掻こうとしてもふさふさと表面をむず痒く撫でることしかできない。 最終的に、尖った木の枝で「しゅじゅつっ!」を試みた親ゆっくりによって子まりちゃが体を貫かれて永遠にゆっくりし、子れいみゅは髪の毛を毟り取られて禿げ饅頭となった挙句、非ゆっくち症でやはり永遠にゆっくりした。 親ゆっくりたちは胴付きが元凶だと責め、せいっさい!だと騒ぎ立てたが、長ぱちゅりーが胴付きの持つあまあまによる示談を提案すると飛びつくように同意し、事件はともかく一件落着となった。 その後、自分のおちびちゃんにシャンプーさんをして欲しいという親ゆっくりが何ゆんか現れたが、長ぱちゅりーに止められた胴付きまりさがそれに応じることはなかった。 …………。 名誉挽回を図る胴付きは、近づくだけで怖がるような仕草を見せるようになっていたおちびちゃんたちを再び無理やり連れ出し、今度は飼いゆ専用プレイス「ゆっくりプレイス」に赴いた。 毎日子ども達が遊びに来るほど繁盛している公園ではないが、ここにも柔らかな芝生と硬い植垣からなる「ゆっくりプレイス」が設けられており、休日になればクソ飼いゆとクソ飼い主が遊びに来ているらしい。 野良にとっては禁じられた領域とでもいうべき「ゆっくりプレイス」に、胴付きまりさはずんずんと入っていく。 汚い胴無し野良ゆっくりがナメクジのような速度でゆったんゆったん入っていこうとすれば、その丸い体を脚で蹴飛ばされるか、小さなおちびちゃんなら摘み上げられてぽーい!される。 ゆっくりに愛護的な人間さんなら乱暴まではせずとも、少なくとも中には入れさせてくれない。 おちびちゃんたちが中に入れるのは、一般的に保護の対象とされている胴付き形態のまりさがいるからだ。 「まりさたちも ゆっくりなかまにいれてねっ! まりさが おちびちゃんたちの ほごしゃさんだよっ!」 珍しいものを見たとばかりに目を丸くし、「ゆっくりしていってね……?」と挨拶までしてくれる愛で人間さんの横を胴付きはゆっへん!と胸を張って通り過ぎる。 一方で帽子に乗ったり、胸に抱えられていたりするおちびちゃんたちが、大きな人間さんを見て「ゆぴぃぃ……」と鳴く。 「さあっ、おちびちゃんたちっ! ここがおちびちゃんたちの ゆっくりぷれいすっ!だよっ!! たくさんぴょんぴょんしても、ずーりずーりしても、ぜんっぜん!いたくないでしょ? ゆっくりできるあそびばさんで、いーっぱいいーっぱい!ゆっくりしていってねぇっ!!」 「ゆぅぅぅ……ぴょん、ぴょん……ふーかふーか……」 「ゆっくち、できりゅのじぇ……ゆわーいぃ」 人間さんや飼いゆっくりの目を気にしてびくびくそわそわとしながらも、人間さんと同じく自分たちをどうにでも出来る力をもつ恐ろしい胴付きまりさの管理下にいる手前、言われたとおりに「ゆっくり」しなくてはならない。 「くしょのりゃ!!」 「「「ゆひぃっ!」」」 隅の方でおずおずと蠢いていた野良おちびちゃんたちのところに、毛糸のお洋服を着た飼いゆの子れいみゅが跳ねてくる。 その後ろには家族と思しき成ゆんれいむ・まりさと、子まりちゃが付いてきていた。 「にゃんで こうきっ!なれーみゅのゆっくちぷれいしゅに、ぶさいくな くしょのりゃがいりゅにょ!? にゃんなの? そのごみくじゅみちゃいなおかざりは? れいみゅたちゆっくちを、ばかにしちぇりゅにょ? じぇんじぇん!ゆっくちできにゃいにぇえ!! いましゅぐ ちんでにぇ! そしちゃら、きえちぇにぇ!」 「なに かっちぇに まりちゃしゃまをみてりゅのじぇっ!! なまいきなのじぇっ! ずがたかいのじぇっ! げしぇんなのらゆっくちは、くっしゃいうんうんにかおをつっこんでてにぇ! ずっとでいいのじぇっ!!」 「「「ゆぴぃぃぃい……!!」」」 「れいむのかわいいおちびちゃんたちっ! だめだよっ、のらゆっくちにちかづいちゃ……!」 「ゆっくりこっちにもどってくるのぜぇっ! きょういくっ!にわるいのぜえっ!!」 親ゆっくりが汚物を見るように顔をしかめて、野良おちびちゃんたちを見下す。 可哀想なおちびちゃんたちは、自分たちよりはるかに大きなおとなっ!のゆっくりが近付いてきたことでさらに震え上がってしまう。 ゴツゴツのゴム底お洋服を履いた親まりさや親れいむが少し動くたび、ぷしゃっ!とおそろしーしーを漏らしている。 「でみょでみょ、おきゃーしゃっ! おとーしゃっ! こいつりゃ、じぇんっじぇん!ゆっくちしちぇにゃいのじぇっ! むーかむーかしゅりゅのじぇっ!」 「きちゃにゃい くしょのりゃとは ゆっくちできにゃいよっ! くじょっ!しちぇにぇっ!」 「ゆゆぅぅ……たしかにくそのらは ゆっくりしてないのぜ。それなら、さいっきょう!のまりさが ゆっくりせいっさい!してやるのぜ……?」 「まりさまで、だめだよっ! のらゆっくりは、ゆっくりしないでいきてるんだよっ!? がいっちゅう!のうんうんゆっくりなんだよっ!? みてっ! あのぶっさいくなおかおっ! きっとじぶんのうんうんさんをたべてるんだよぉ……!! ゆげぇ! そこらへんのなまごみさんより、ずーっと!きたないよぉ……ゆかびがうつっちゃうよぉぉ……!!」 「ゆゆ~ん、のりゃゆっくちは うんうんゆっくちぃ~♪ まりちゃしゃまの かりぇいな あにゃるふーりふーりだんすっ!で、しっしんするがいいのじぇっ! それぇっ! もりゅん もりゅんっ!もりゅりゅりゅーんっ! ゆきゃっ!うんうんでりゅっ!!」 「れいみゅのうんうん、たべちぇもいいよっ! いっぴゃいあげりゅにぇえっ! ゆんゆんゆーんっ!! ゆぅぅん、れーみゅは まるで てんししゃんぢゃよぉぉおっ! やさししゅぎて ぎょめんにぇえええ!!」 「ゆぅぅぅ!! ゆっくりやめてねっ!!!」 飼いゆっくりがゲスな本性を丸出しにし、ゆっくり特有の間延びした口調で野良おちびちゃんたちへの罵倒の文句を垂れ終わってから、胴付きまりさは颯爽と両者の間に立ちはだかった。 飼いゆから向けられる悪意に野良おちびちゃんたちは完全にやられ、ぴーぴー鳴いておそろしーしーおそろうんうんを垂れ流し、ゲス飼いゆたちの言うとおりのうんうんゆっくりになってしまっている。 「のらゆっくりだって、ゆっくりだよっ! れいむたちとおなじで いきてるんだよっ!! ゆっくりしたいんだよっ!! なのに、どーして なかまはずれにするのっ!? どーして、いじめたりするのっ!? かいゆっくりと のらゆっくりで、なにがちがうっていうのおおお!!?」 「ゆぁ~ん? なにいってるのぜぇ……のらゆっくりは ゆっくりしてないのぜ。ぜんっぜん ちがうのぜ」 「しょんなことも わからにゃいにょ? ばきゃにゃにょ? ちぬの?」 「あんこのうにゃのじぇっ!」 「あんこのうじゃないよっ! まりさは、えいっゆん!なんだよっ! おなじゆっくりとゆっくりできないまりさたちのほうが、よっぽどあんこのうで、ぜんっぜん!ゆっくりしてないよお!!」 胴付きまりさは眉をキリッ!と立てて、両の手を広げて庇うように立ちはだかる。 顎を突き上げてゲスな表情を丸出しにしている小さめのバランスボール大の飼いまりさも同じく、おちびやれいむの前に一歩踏み出した。 「ゆぁ~んっ? どうっつき!だからって、ちょーしのってるんじゃないのぜぇ? げすなくそどうつきは、まりさまのぷくぅ!で いますぐしぬのぜえ!! ぷぅぅっくうううう!!!」 「ゆんっ! なんなの? そんなのぜーんっぜん!!こわくないよっ! ゆっくりしてないよっ! まりさがなーでなーでしてあげるから、ゆっくりしてねっ! そしたら、おちびちゃんたちにあやまってねえ! ほら、なーでなーでぇ!!」 「ゆゆっ! や、やべろおおっ!!! まりざ、おちびちゃんじゃだいんだぞぉおお!! ゆっがあああ!!! やせがまんっ!しないで、さっさとしねえええ!!! ちーちーもらせえええ!! ぷくぷくぷっくうぅぅう!!」 飼いまりさが必死な顔でふくれっ面をし、胴付きまりさがひたすらその頭を撫でる。 次第に飼いまりさはプライドが折れて涙目になり、一方の胴付きまりさもいつまでも「はんっせい!」してくれない飼いまりさの態度にオロオロし始める。 おちびに「おとーしゃんは ざこゆっくりだったんぢゃにぇっ!」と馬鹿にされた飼いまりさが 「ちに゛ぇ ちにぇ゛え゛え゛!! どぼじぢぇ、まりぢゃのしゃいきょーな たいっあちゃり!でちにゃにゃいにょじぇええ!! ゆぴぃぃい……!!」 と胴付きまりさにじゃれ付き始めるが、紛いなりにも上半身の体重をしっかりと支えるほど丈夫な胴付きのあんよに大した効果はない。 「いたくないよっ!」「かんじないよっ!」と胴付きがそれを受け止め始めてからやっと、飼いまりさの飼い主がやって来た。 両者とも「なんにもわるいことしてないっ!」と確信していただろうその場は、英ゆんまりさ曰く飼いまりさが飼い主さんに叱られ胴付きの方は立派な――間違いなく何かの勝手な解釈だろうが――ゆっくりだと褒められて、収められた。 調子付いた胴付きは、ペットの漏らしたクソを片付けている最中の飼い主さんに向かって 「おねーさんっ! かいゆっくりのしつけっ!はちゃんとやってねっ! そのこたち、げすになっちゃうよっ!」 と苦言まで呈したそうだ。 それでもおちびちゃん含め全ゆん無事帰ってきたということは、その人間さんはよっぽど心の広い愛で人間だったのだろう。 あるいは増長した飼いゆにすら強く出られない弱気コミュ障な真性奴隷なのかもしれない。 ぶつくさと負け惜しみを言いながら遠ざかっていく親れいむと飼いおちびちゃんたち、その後ろを必死にぴょんぴょん付いていく涙目の親まりさ。 飼い主のお姉さんになーでなーでしてもらい、ご機嫌直しにあまあまを与えられている。 遠めに胴付きたちの方をちらりと見やり、お前ら野良はこんなあまあま食べられないだろう? といやらしい視線を送ってくる。 親まりさに至っては先ほどの腹いせか、口を大きく開けて麦チョコをくっちゃくっちゃ噛み砕いている様を見せつけ、まだ震えていたらしい涙声で「じーああばせええ!!」と大きく叫んだそうだ。 おちびちゃんたちが羨ましそうな、それでいて絶対に手に入らないことを悟っている表情で、そちらを見る。 胴付きまりさはそんなおちびちゃんたちにそっと寄り添い、飼いゆたちを負けじと睨み返し、自らのお帽子に手をかけた。 うぞぞぞぞぞぞ…… 「ゆんっ! おちびちゃんたちぃっ! まりさたちも、おやつにしようねぇ!」 そう言って胴付きが山盛り取り出したのは、れいむや長ぱちゅりーが教えてやったお山で取れる極上の食べ物――芋虫さんや蝶々さんである。 こちらを見ていた飼いゆや飼い主の人間さんたちが、「まりさたちのおやつがあまりにゆっくりしていた」ためにびっくりして、一斉にうげえええ!と顔をしかめる。 「さあっ! ゆっくりめしあがれっ!」 おちびちゃんたちが震えて身を寄せ集まっている方に、芋虫の山をざーっと寄せる。 恐らくおちびちゃんたちはぐぐっと後ずさりするように身を反らしただろう。 飼いゆとしての教育も経験も受けていない生粋野良のおちびちゃんにとって、胴無しの親が極々たまに取ってくる芋虫さんは確かにごちそうであった。 が、目の前で飼いゆたちが食べている本当のあまあまを実際に見てしまった今ではどうか。 きれいなお洋服とお飾りの”ゆっくりした”人間さんや飼いゆたちが見るからに気持ち悪がっているものを、どう思うのか。 胴付きの手によって引き寄せられ、うねうぬうねええ!!と激しくのたうつこれらは、本当にゆっくりしていると言えるか。 「ゆぅぅ……れーみゅ、いらにゃい……」 「おにゃか、すいちぇにゃいのじぇ……ゆっくち……」 「ゆゆーっ! えんりょ!しなくていいんだよぉっ! おちびちゃんたちのためにとってきたんだからねっ! いっぱい むーしゃむーしゃしようねぇっ! ほーら、いもむしさん、こんにちわあっ!」 「ゆゆぅぅぅ……!!やめちぇにぇ、やめちぇにぇええ!! れーみゅ、いらにゃいっていっちぇりゅにょにぃぃい!!」 「ゆふふー、ほらー、むーしゃむーしゃっ! しあわせ? しあわせえーっ? ゆわわーい!」 「ゆびゅびゅぶぅぅう……むーぢゃむーぢゃぁあ……!! ゆぇぇぇ……!!」 「い、いいのじぇっ! まりちゃはおにゃかいっぴゃぃ……ゆ、ゆぁぁあ……ゆ、ゆんやあ゛あ゛ばばば!!」 小さな体を掴まれた子れいみゅ子まりちゃが、叫んで開いた口に無理やり芋虫を詰め込まれていく。 肉厚でじゅーしー!な芋虫さんたちがたくっさん!お口に飛び込んでくるのは、かつてのおちびちゃんたちにとっては夢にまで見るようなしあわせー!だっただろう。 それなのに、今は何故か目から涙が溢れ、口の中でもぞもぞもぞぉぉ!と蠢く芋虫たちに吐きそうな気持ち悪さまで感じてしまう。 その様子を遠くで見ていた飼いゆたちは、普段の都会派な暮らしとはかけ離れたグロテスクさに驚愕し、お下げや揉み上げで目を覆い、あるものはゆっぷ!えれえれと軽く吐餡してしまう。 何より人間であるクソ飼い主たちが、仮にも自分たちが愛でているものと同じ形をした生物のそんな生々しい姿を見せ付けられて何を思ったのか、想像に難くない。 直後に「らんちさんをたべにかえった」という人間さんたちは、多分二度とここに来ないだろう。 --------------------------------------------------------- 「――ってねっ! おちびちゃんたち、しあわせーしあわせー!っていってくれるんだよっ!! ゆゆぅぅん!! ゆんっ! こんどあのまりさたちがきたら、まりさのいもむしさんをゆっくりごちそうしてあげるんだよっ! ……ゆゆっ! だいじょーぶ!だよっ! おちびちゃんたちっ! またまりさたちがいじわるしてきたら、まりさがゆっくりまもってあげるからねぇ!!」 「ゆはぁ…………」 今現在ダンボールハウスの隣に座り、えーゆーたん!をとうとうと語る胴付きまりさを見て、苦悩多き野良れいむの気分は限りなく重たかった。 胴付きのお帽子のツバに乗せられたおちびちゃんたちが、胴付きが興奮してゆん!ゆん!と動くたび、転げ落ちそうになって「ゆぴぃい!!」と鳴いている。 今日もまた飼いゆ専用ゆっくりプレイスに”遊びに”行くそうだ。 「はぁ……まりさ、もっとゆっくりしたらどうなの。 なんでそんなにあくせくしてるの? しぬの?」 「ゆゆー?」 れいむは自分のおちびちゃんたちを隠すようにダンボールハウスの奥、自分のお尻の下に挟んで、胡乱な目で胴付きを見上げた。 「だって、まりさはえいっゆん!になりたいんだよっ……みんなに、ゆっくりしてほしいんだよっ……! きょうもねっ、むれのみんなが『おちびをよろしくのぜっ!』『あそんであげてねっ! ゆっくりでいいよっ!』 っておねがいしてくれたんだよっ! まりさは、ほいくゆんなんだよっ! ゆっへんっ!」 「ゆっはぁぁぁ……すくいようがないね……」 れいむは既に大体予想できていたことが確認され、諦めの気持ちをより強くした。 「みんなをゆっくりさせるため」という錦の旗を振りかざして行動する胴付きまりさ。 その志や立派かもしれないが、何をしても「それなりー」にしかならないことに焦り、こいつは節度を失っている。 例えば先のおちびちゃんゆカビ事件もそうだし、生ゴミを狩ってくる行為にだって様々な二次的リスクが付きまとう。 「ゆっくりプレイス」でついに飼いゆや人間さんにまで接触し始めた胴付きに、長ぱちゅりーやありすも危機感を募らせているそうだ。 お山の麓まで何往復もして持ち込まれたダンボールハウスでいっぱいになった群れの中心部で、同じくぷれぜんとっ!された特別ふーかふーかな羽毛布団の端にちょこんと埋まりながら、長ぱちゅりーもありすも胴付きに説得をしているとのことだった。 「もっとゆっくりしたら?」と。 しかし、そう言うぱちゅりーたちも、自分たちの放つ言葉が詭弁に過ぎないことをよく理解しているはずだ。 大人しくゆっくりしていろとは言っても、胴無しの群れに胴付きがただ佇んで、どうゆっくりすればいいのか。 胴無しゆっくりと一緒のおうちには入れない。 すーりすーりと頬と頬を合わせ、互いに信頼しあった目線を交わすことも難しい。 番になってくれるものも当然いない。 養子になりたいといってくれるおちびちゃんすらいない。 そもそも成ゆんの方にも胴付きまりさを本当に慕っているゆっくりなど、いないかもしれない。 胴付きまりさのおかげで日々の家事や労働が一気になくなったゆっくりたちは、ひたすらおうちに篭って文字通りゆっくりしたり、すっきりしたりしている。 以前は狩りやその他共同で行わざるを得ない仕事を通じて多少は交流があった群れは、今やただの集合住宅状態。 その中で唯一ゆっくりせず働く、自分たちとは微妙に違う異質な存在。四肢のあるその姿。 同族として認識しないといったことこそなけれど、さて、そのような”ゆっくりしていない”存在、自分たちのためにひたすら奉仕する存在を、ゆっくりたちは一般に何と呼んでいたか。 まりさの帽子の上から、ちっちゃなれいみゅが縋るような目で同種たるれいむを見る。 それはれいみゅの下にある胴付きの暢気な顔と対照的で、その対比にれいむは再び重苦しい気分になった。 英ゆん改め保育ゆんを自称し、おちびちゃんたちの面倒を見ているつもりのおめでたい胴付き。 その”ほいくえん”の実態は、うんうん製造機の厄介払いに過ぎない。 あんよの弱い子ゆっくりが枝や石だらけの群れの中心部で遊びまわるわけにも行かず、昼も夜も狭いダンボールハウスに一家がぎゅうぎゅう詰めになる。 土や埃で薄汚れ、緩いあにゃるまみゅまみゅから常にうんしーを垂れ流して悪臭を発する子ゆっくりは、実ゆっくりのように見ているだけでゆっくりできるような都合のいい存在ではない。 常に何かしらゆっくりできない・ゆっくりしたいと、自分たち親のプライドを傷つけるようなことを呟く。 すっきりーの邪魔にもなるし、生えてきた茎をその場で間引く場合にもやはりおちびがいては気が引けてゆっくりできない。 そんなうざったいだけの、かつ殺せば殺したで群れの掟に違反してしまうわ死臭はしてしまうわの何とも面倒くさい存在を、日中ぐらい胴付きに引き取ってもらえれば都合がいい。 胴付きはおちびちゃんをゆっくりさせる気満々なようだし、きっと楽しくやってる。子育て上手でごめんね!というわけだ。 そういう親ゆっくりのエゴに振り回されている子ゆっくりたちは――食われずに生きているだけしあわせ、かどうかもよく分からないが――何とも可哀想だ。 せめて胴付きがまともな”ほいくえん”をやってくれればいいのに。 「ほいくえんがやりたいなら、せんようのだんぼーるでもよういすれば? それで、しねば?」 と提案したれいむに対して、胴付きは眉をひそめたムカつく泣き顔で 「そんなの だめだよっ! れいむたちにもわるいけど……だんぼーるさんなんかじゃ、おちびちゃんたちのあんよは、ぜんっぜん!ゆっくりできないよっ!」 と反論してきた。 独善ここに極まれり。何が「あんよがゆっくり」だ。 部分に目を捉われていて、大切なことを見失っている。 おちびちゃんたちが嫌がってるのだとストレートに言ってやっても、全然聞かない。 下手におちびちゃんたちが利口でイイ子に「ゆっくちできりゅ……」と振舞っている、振舞わざるをえないのが厄介だ。 一体こいつの目におちびちゃんたちの姿は本当に映っているのだろうか。 何故おちびちゃんたちが泣きそうな顔をしているのが分からないのだ。 いっそのことぱちゅりーが長の権限を以って「ついっほう!」してくれればいいのだが、そうもいかない。 ぱちゅりーは長といってもこんな小規模な群れでは実質的な権力など持たない、ただの意見調整役の知恵者に過ぎない。 それに中身はともあれ胴無しに比べて圧倒的な身体スペックを持ち、自分たちに好意を寄せて献身的に尽くしてくれる胴付きまりさを、生きる上で何が起こるか分からない野良の群れが容易く手放せるわけがない。 群れの多くのゆっくりが都合のいい労働力としての胴付きに「ここでゆっくりしていって」ほしいと思っているだろうし、群れを統べる長の身としては尚更だ。 この奇妙で危なっかしい胴付きに飼い主さんのところに帰ることを促しているのは、恐らく自分だけだろう。 「――いむっ! れいむぅっ! きいてるのっ!? ゆっくりーっ!!」 「ああ、はいはい、ゆっくりゆっくり。れいむのおちびちゃんたちは、きょうも れいむとゆっくりするよっ どうつきさんは きえてねっ……。そしたら、しんでねっ……!」 毎回「れいむのおちびちゃんたちもっ!」と誘ってくるのを、れいむはそのたび突っ返していた。 ゆふーやれやれと立ち上がる胴付きまりさのお帽子から、先ほどの脱力して潰れかけた子れいみゅが依然寂しそうな目を送ってくる。 可哀想なのは、そう、まさにこのおちびちゃんたちだ。 母性というものがあるのだろうれいむの胸に、哀しく熱い感情がこみ上げてきてしまう。 れいむ自身もこの腐敗した世界にわが子を生み堕としてしまったことに何度も懺悔と後悔の念を抱いたが、この自分勝手な胴付きに囚われたおちびちゃんたちこそ、本当に何のために生まれてきたのか。 親ゆっくりにとっては都合のいいときに愛でるだけの憂さ晴らしの愛玩奴隷および非常食。 胴付きまりさにとっても己の英ゆんっぷりを発揮するための道具に過ぎない。 そして、そんなエゴだけで自分たちを好き勝手振り回す存在は、どちらも小さな饅頭にとっては抗えるべくも無い強大さを持っている。 大きさが5倍も6倍も違う成ゆんと、それよりさらに巨大で手足まで備えている胴付き。 何より厄介で泣きたくなる事実として、おちびちゃんたちは親ゆっくりあるいは胴付きの庇護の下にいなければ決して生き延びられないということだ。 危険な地面さんを移動することも出来ないし、ご飯さんも狩ってこれない。 自分だけでは最低限の清潔も保てないので、うんしーするたびにゆカビ感染のリスクが上がる。 下手すると蟻やその他の小さな昆虫にだって捕食されてしまいかねない脆弱な存在。 自分の無力さをこれ以上なく知り尽くしている哀れで醜い可愛い小饅頭たちは、動くものの最底辺にいるゆっくりのさらに最底辺にて虐げられながらも、卑屈になって必死に無価値な生にしがみついているのだ。 しかし、そう嘆くれいむ自身も所詮は無力な饅頭。 草の間をかき分けて颯爽と去っていく胴付きまりさの背を、ただ見送ることしか出来なかった。 --------------------------------------------------------- 「ゆっくりプレイス」についたまりさとおちびちゃんたち。 ある程度近くに来た時点で人間さんの姿も見えず、飼いゆが発する例の特徴的な声も聞こえなかったが、果たしてこの日の「ゆっくりプレイス」は初めてまりさたちの貸切だった。 おちびちゃんたちの顔にわずかに笑顔が宿る。 自分たちより圧倒的にしあわせー!で”ゆっくり”しており、それなのに自分たちをいじめてくる飼いゆや人間さんたちがいなければ、ここは確かにふーかふーかひーろびーろしてゆっくりできる場所なのだ。 「ゆゆんっ! きょうはまりさたちだけだねっ! おもいっきり、ゆーっくり!あそぼうねぇ!!」 「「「ゆ……ゆゆーん♪」」」 小さなおちびちゃんたちが、拙いあんよでもったんもったんとかけっこ!をする。 街にいた頃も今のおうちでも「うるさいよっ!」と禁止されているおうただって、好きなだけ歌って、好きなだけ姉妹やお友だち、そして胴付きさんに褒めてもらえる。 見上げられないほど身体の大きな胴付きさんがやってくれる「たかーいたかーい」は、まさしく「うちゅうっ!」まで飛び上がるほどの高揚感だ。 飼いゆたちの食べているものと比較されなければ、胴付きさんが出してくれる芋虫さんは、ああほら、やっぱりゆっくりしている。 こんなにたくさんのごちそうを、いつもいじめてくるクソ親のいないところで、大好きな姉妹やお友だちたちとゆっくりむーしゃむーしゃし、存分にしあわせー!を分かち合う。 この充実感。この開放感。 まさにここはゆっくりプレイスであり、胴付きさんは英ゆんだ。 「ゆゆ~ん……おちびちゃんたち、とーってもゆっくりしてるよぉ」 おちびちゃんたちの姿を笑顔で見守るまりさの方も、胸がいっぱいになるような温かさを感じていた。 迎えにも探しにも来ないところを見るとまりさを捨てたのであろうお兄さんだが、きっと最後に餞別として、まりさにただのおとーさんに留まらない真の英ゆんになれるチャンスを与えてくれたのだ。 街中や加工所でなく、いつもの小さな自然公園でもない、他ならぬこのお山の自然公園に置いていかれたからこそ、まりさは多くのことを学ぶことが出来た。 野良ゆっくりのことをよく知れたし、他人および他ゆん任せでなく自立的に行動することも出来る。 自分は、やっとほんっとう!のおとなっ!になったのだ。 胸に手を当てて、ぽーかぽーかする達成感を噛み締めていたまりさは、しかし、気付けなかった。 あるいは気付いていたとしても、意味はなかったかもしれない。 貸切の「ゆっくりプレイス」の入り口に立てられた案内の看板。 れいむとまりさのイラストが描かれたそこにはいつもどおりの魔術文字――ここは飼いゆを遊ばせるところです云々といった説明――の他に、真新しいスクロールがもう一枚。 「 一 斉 駆 除 の お 知 ら せ 」 範囲を示す地図と文字だけがプリントされたその殺風景な紙を、まりさは読むことが出来なかった。 つづく ---------------------------------------------------------
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ゆっへん!まりさはとってもつよいのぜ! ※現代設定。ゆっくりの俺設定。 ※人間が出ます。 ※斬新でもなんでもないただの虐待。 「ゆゆーっ!くらうんだぜーっ!」 初夏の山の中。午後の木漏れ日が地面に美しい斑を描いている。 「ゆっへん!まりさにかかれば こんなやついちころなのぜ!」 「ゆーっ!すごいよまりさ!あんなにこわいかまきりさんを やっつけちゃうなんて!」 二匹のゆっくりが狩りを行っていた。 「すごい!まりさはとってもつよいんだね!」 赤いリボンをつけたれいむ種、木の実を集めながら、連れの狩りを眺めている。 「あたりまえなのぜ!しょせんはまりさのてきじゃないんだぜ!」 れいむの連れ、黒い帽子のまりさ種は捕らえたカマキリを、どうやっているのか、舌で器用に掴みながら答える。 びくりびくりとうごめく、半分潰れかかった「獲物」を自分の目の前まで持って行き、少し優越感を顔に浮かべてから帽子の中へしまう。 別に食べる訳ではない。カマキリは堅い上に、そのカマで口の中を切ってしまう可能性もある。ゆっくりが食べられるものではない。 これは言うなれば「勲章」なのだ。自分が強いという、証。 「どうしてまりさはそんなにつよいの?ゆっくりおしえてよ!」 れいむもまりさみたいになりたいよ!得意気な様子のまりさに、れいむは飛び跳ねながら尋ねる。 「ゆっ!とくべつなことはなにもしていないんだぜ!まりさは うまれつきとってもつよかったのぜ!」 身をそらして、胸を張るような仕草をするまりさ。 「ゆゆ~ん♪さすがはむれいちばんの”かりうど”だよ~♪」 「ゆっへん!」 そんなまりさを、れいむは熱のこもった視線で見つめる。恐らくはつがいなのだろう、頬が赤く染まっている。 「れいむのためなら どんなやつだってやっつけてやるのぜ!」 そんなれいむにまりさも顔を赤くして答える。あまりむりはしないでね!と心配するれいむにも余裕の表情をみせる。 その顔は貫禄こそ無いが自信に満ち溢れていた。つまる所、このまりさは若かったのである。 「ゆゆっ!そういえばまりさはさいきんかりにあきてきたのぜ!」 狩りからの帰り道、急にまりさが言った。 「ゆっ!?そんなこといったらごはんをむ~しゃむ~しゃできなくなっちゃうよ!?」 れいむはその唐突な発言に顔を青く染める。れいむは狩りが得意ではなかったし、だからこそ狩りの上手なまりさと番になったのだから。 「かんちがいしないでほしいんだぜ!まりさはかりをやめたいわけじゃないんだぜ!」 「ゆゆっ?どういうこと?れいむにゆっくりせつめいしてね!」 「じゃぁゆっくりせつめいするのぜ!それはね…」 しばらくの後、赤く染まり始めた森にれいむの驚きと尊敬に満ちた声が響いた。 次の日、舗装された道路を跳ねているのは昨日の二匹。 二匹の住んでいた森は人間が住んでいる町からやや離れていたがそれでも歩いていけない距離ではない。 人間の3、4倍は時間がかかるが、ゆっくり達にとってもそれは同じであった。 ゆっ!ゆっ!ゆっ!と掛け声をかけながら進む二匹。その目は朝の日差しを受けてきらきらと輝いているが、理由は日差しだけではない。 希望。これからもずっとゆっくりできるという希望。 ゆっくり特有の小馬鹿にして笑っているような表情も心なしか普段より明るい。 昨日の帰り道でのまりさの提案。こんな提案を思いつくなんて、まりさは頭も良いに違いないよと、れいむは思い、頬を緩める。 緩やかな斜面を登りながら、れいむは新しい暮らしに胸をときめかせ、まりさの言葉を思い出した。 「ばかなにんげんたちをやっつけて、まりさとれいむだけのおうこくをつくるのぜ!」 …まりさはもうよわっちいむしさんたちあいてじゃつまらないのぜ!だからまりさはにんげんをかるのぜ! そうしたらまりさがおうさまで、れいむがおうじょさまだぜ! まりさの言葉を、れいむは何度も何度も頭の中で繰り返す。 ―――あぁ!れいむが王女さま!どんな生活が送れるだろう?あまあまを毎日食べて、ずっとすっきりー!をしようか? うぅん。一日中まりさと日向ぼっこをするのも良いな…――― …そうしたらにんげんをどれいにして、ずっとふたりでゆっくりするんだぜ! …ゆっくりー! ずっとゆっくり、その言葉はゆっくりにとって何よりの幸せ。 二匹には失敗の二文字は存在しなかった。 人間は噂でしか聞いたことが無かったが、まったく恐れることは無いように思えた。 まりさは自分の強さを信じていたし、れいむもまりさの強さを信じていたからだ。 坂を登りきり、まりさ達は実にゆっくりとした表情を浮かべながら、下り坂となった斜面を降りていった。 「ゆゆ~ん。やっとついたのぜ」 「つかれたね!まりさ!」 朝早く出かけた二人が町に着いたのは昼前だった。 「おひるにはまだはやいから、それまでここでゆっくりするのぜ!」 「ゆ~ん♪ゆっくりぃ~♪」 「「ゆっくりしていってね!」」 町のはずれの公園の真ん中に位置する芝生の上。お互いに挨拶をして、寄り添って日向ぼっこをする二匹。 天敵のほとんどいない山に住んでいた二人に警戒という概念は無かった。 しばらくして、太陽が二匹を真上から照らし始めた頃、空腹を感じ始めた二匹は昼食をとることにした。 「にんげんのやついないね!せっかく あまあまをみつがせて む~しゃむ~しゃ してあげようとおもったのにね!」 「しかたないから、ここあたりのくささんをたべてやるんだぜ!」 二匹はぴょんぴょんはねて食べられそうな草を口に入れる。 「「むーしゃ、むーしゃ、それなりー」」 人気の無い公園に二匹の声が響く。 ひとしきり食事を終え、二匹が食後のゆっくりをはじめたときに事件が起きた。 「ゆゆっ!まりさ!にんげんだよ!」 「ゆ!ちょうどいいのぜ!しょくごのでざーとをとってくるかられいむはそこでみてるのぜ!」 「ゆゆーん!まりさかっこいいよぉ!ゆっくりおうえんするよ!」 くたびれた作業着姿、恐らくは先ほどまで工事現場で働いていたのであろう20代半ばの男が、ペットボトルの飲料を飲みながら、公園に入ってきた。 男はゆっくり二匹をちらりと見やると、近くのベンチに腰掛けた。 「ゆっ!おい!にんげん!」 まりさが噛み付くように話しかける。しかし男はそんなまりさを黙殺する。 「ゆゆっ!このまりささまがよんでいるのぜ!むしするなだぜ!」 「きこえないの?ばかなの?しぬの?」れいむも加勢する。最強のまりさがいれば恐いものは無かった。 男は沈黙を続ける。先ほどまでの仕事で出た汗を拭き、また一口ペットボトルに口をつける。 「ゆっ!まりさ!にんげんは、まりさにおそれをなしているよ!さすがだねまりさ!」 「ゆっへん!おいにんげん!にげなくていいのかだぜ?まりさはさいきょうのほしょくしゃなのぜ?」 ピクリ、と男が反応する。理由は怒りでも、当然恐怖でもなく、まりさの言ったある言葉に興味が沸いたからに他ならない。 「ゆっ やっときこえたみたいだぜ!にげるならいまのうちなのぜ!はやくしないとぼこぼこにするんだぜ?」 わずかな沈黙。無表情な男と対照的にまりさは余裕の笑みを崩さない。 「…お前は捕食者なのか?」 ようやく男が口を開いた。男が興味を引いた言葉、それは捕食者という言葉。 「そうだよ!まりさはいままでどんなむしさんにもまけなかったんだよ!とりさんだっておっぱらったんだから!」 「ゆっへん!」 男は深くため息をつく、顔に浮かぶ落胆の顔。 「なんだ、そういうことかよ…」 「そういうことなのぜ!」 意味も無くまりさが胸を張る。男の言葉の真意は当然理解していない。 ”新種ゆっくり高価買取り!”仕事現場の傍にあった加工所のポスターの内容を思い出して、男は再びため息をつく。 男は飲みかけのペットボトルをベンチに置いた。饅頭に期待した俺が馬鹿だったな、と心の中で呟く。 「じゃぁ、お前、本気でかかって来いよ、負けたときの言い訳は聞きたくないからな」 「なにいってるの?まりさがまけるわけないでしょ?ば…」 「馬鹿なの?死ぬの?ってか?死ぬわけねぇだろアホ饅頭、お前はたたかわねぇんだろ?黙ってみてろよ」 「ゆぅぅっ!?」 目を見開くれいむを尻目に男は立ち上がる。少し遊ぶか、と呟いたその声は、二匹には聞こえない。男には少し虐待趣味があった。 一方まりさは怒り心頭だった。自分はまだしも愛しのれいむを目の前でアホ饅頭呼ばわりされたのだから。 「ゆぎぎ…!まりさのだいすきなれいむをぶじょくするなんてゆるさないのぜ!いわれなくてもほんきなのぜ!」 この人間は半殺しにして奴隷として生かしてあげようかとおもったが、やめた。 地獄を見せてやろう、負けたときの言い訳をするのは人間の方だ。人間とゆっくりの圧倒的な差を見せ付けて殺してやる! まりさは怒りのあまり歯を食いしばり男を睨む。男は自分の眼光に怯えるに違いないが、いまさら逃がすつもりは無い。 それなのに。 「早くしろよ。まりさは最強なんだろ?それとも怖いのか?かかってこいよ。動かないでいてやるからさ」 ほら、ここだここ、と男は自分の体をぽんぽんと叩く。 その行為が戦いの合図になった。もっとも一方的な虐殺を戦いと呼ぶのであればの話であるが。 「ゆ゛っがああああああああっ!」 まりさは怒りに身をまかせ、男に腹に渾身の体当たりを浴びせた。 ぽすっと間の抜けた音が鳴る。 当たった!勝負はついたも同然だ!その瞬間まりさは感じた。 枕を床に落とした時のような音を立ててまりさは着地する。視線を上げれば激痛に顔を歪めた男がいるはずだ。もしかしたらもう死んでいるかな? ニヤリ、と口の端を上げて、視線を向けた先には 当然ながら無傷の男が立っていた。 「ゆゆっ!?」 まりさの頬を汗が流れる。 いや、落ち着け。まりさは冷静になって考える。あれはやせ我慢をしているのだ、そうに違いない。無様なものだ、と。 とたんにまりさの顔に再び自信が戻る。 「ゆっ!ゆっ!やせがまんしないでさっさとしぬんだぜ!」 浴びせる連打、連打。今度は足だ。 「まりさ!にんげんはもうむしのいきだよ!がんばって!」 「ゆっ!ゆっ!まっててねれいむ!ゆっ!もうすぐこのにんげんをころすからね!ゆっ!ゆっ!」 しばらくぽすぽすと体当たりを浴びせた後、そろそろだろうか、とまりさは考え、人間の顔を見上げる。 「どうなのぜ!まりさのすーぱーあたっくは!まりさのあまりのつよさにてもあしもでないのぜ!?」 男は冷ややかな目でまりさを見下ろしていた。 「なぁ」 「ゆ!やっとしゃべったのぜ!てっきりしんだのかとおもったのぜ!」 「なにやってるんだ?」 「ゆっ!?」 お前こそ何を言っているんだ?まりさは混乱する。 「甘えてくるのもいいけどよ、そろそろかかってこいよ」 無論男は先ほどからまりさが”攻撃”を繰り出し続けているのを知っている。 要は、ただの挑発だった。 「ゆ゛っぎいいいいいいいいい!!なんでへいきなかおしているのぜええええええっ!?」 「あぁ?今の攻撃だったのか。気がつかなかったよ」 ゲラゲラと男は笑い、その笑いはまりさの怒りの炎をさらに燃え上がれせる 「ゆ゛ぎいぃぃぃ!しね!しねぇ!」 懸命な攻撃。だが男は顔色一つ変えない。 まりさ心に暗雲が立ち込める。何故効かない?何故? しばらくして、まりさがゆひぃ、ゆひぃと息を切らし始めた頃、男が口を開いた。 「走ってから体当たりをしたらどうだ?」 「ゆ!」 男の提案を聞きまりさの顔にわずかな光が戻る。 「ゆっ…へっへっへ…!やっぱりにんげんはばかなのぜ!」 「そのかわりそろそろ俺も攻撃するよ?いいな?」 男が言い終わる前に、すでにまりさは助走を始めていた。 「やってやるのぜーーーーーー!」 いままでのゆん生最大の力を込めてまりさは跳んだ。まりさの脳内には粉々に吹き飛ぶ忌々しい人間の姿が鮮明に描かれていた。 「ゆ゛ぎゃっ」 まりさは地面に叩きつけられていた。顔に痛みが走る。 つがいのれいむはしっかりと見ていた。男がまりさの頭をぴしゃりと叩いたのを。男としてはそのまま攻撃を受けてもまったく問題が無いのだが、気まぐれ、という奴だった。 「ゆぎいいい!いちゃい゛い゛いいい!なんでまりさのこうげきがきがないんだぜえ゛ぇぇぇ!」 まりさは顔の痛みと解けぬ疑問に身もだえする。何故?必殺の攻撃が?何故? 「よーし、俺の攻撃な」 もだえるまりさを無視し、男は足を上げ、まりさを踏みつけた。 「ゆ゛んぎっ!」 ギリギリと、男の足がまりさを死なない程度に押しつぶす。 「ゆ゛い゛い゛い゛…!!!」 自慢のお帽子がひしゃげ、脳天から踏まれて行き場を失った体内の餡子が体の外側へと集まる。 限界まで膨らんだ表皮に裂傷が走り、餡子が漏れ始める。 「ばりざぁぁ!?どぼじだのぉ!?はやぐやっづげでよおお!?」 れいむが叫ぶ。計画では、まりさが人間の群を制圧して、奴隷として働かせるはずだったのに。 「ゆ゛ぎ…ぎ…」 まりさは動かない、動けない。圧倒的質量の前に身をよじる事さえ叶わない。 口を必死に閉じているが少しずつ餡子が漏れ出す。涙が滝のように流れ、体液がぞくぞくと分泌される。 その時、不意にまりさを押さえつける力が無くなった。男が足を離したのだ。 白目を剥いてゆひぃ、ゆひぃと息を吐くまりさを、男が見下す。 れいむは何もいえない、何も言うことが出来ない。最強の夫がなすすべも無く倒されたのだから。 「ゆ゛…どぼじで…にんげんのくせに…」 「どうしてか、教えてやろうか?」 男がニヤつきながら言う。まりさはハッと息をのみ、体に虫が蠢く感覚を覚える。嫌な予感がする、とまりさは感じた。 だがもう、全てが遅かった。 「お前が、どうしようもないくらい弱いからさ」 痛みも忘れ、まりさの頭の中が真っ白になる。 自分が弱い?群れで狩りの一番上手い自分が、弱い? 男は追い討ちをかける。 「どうせ、群れで一番強い自分がどうして、なんて思っているんだろう」 何故分かる。やめろ、やめろ。まりさはとってもつよいんだぞ。 「ところで、お前は群れのゆっくり全員と戦って勝てるのか?」 やめろ、やめろ。まりさの中で何かが急速に崩れはじめる。取り返しのつかない、何かが。 「人間はな、お前らの群れなんざ、一人で皆殺しに出来るんだよ」 「ゆ゛っがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああっ!!!」 叫ぶ、叫べば男の声は聞こえないと信じて。まりさは叫ぶ。今まで積み上げてきた何かを守るために。 「それなのに人間を殺そうと思っただぁ?本当に馬鹿としかいえないな。」 それでも男の声は聞こえる、心をナイフで抉るような感覚を感じる。やめろやめろやめろ。 「まりさ!?まりさああああっ!がんばってえぇ!」 ―――あぁ、れいむのこえが聞こえる、頑張らないと。二人の王国のために。 そうだ、こんな男の言葉に苦しめられている場合ではない。なんとかして倒す方法を考えて――― 「まさか、お前、人間を支配しようなんて思ってないだろうな?」 まりさの思考が止まる。 「だとしたら馬鹿の極みだな。お前みたいな弱っちい饅頭がよぉ、身の程を知れってぇんだよ」 れいむの言葉でわずかに持ち直したかに見えたまりさの心は、その一言で見事に砕け散った。 「や゛べろ゛お゛お゛お゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」 決死の覚悟でまりさは男に飛び掛かる。 「やめねーよ、クソ饅頭」 だが男はまりさの顔面を蹴り飛ばす。 「ゆ゛っげえ゛ぇぇぇぇぇぇっ!!!!」 まりさの顔を今まで味わったことの無いほどの激痛が走る。もちもちの肌はべこりとへこみ、目玉が少し飛び出し、白玉で出来たやわらかい眼球が空気に晒される。 普段はやけたような笑顔を浮かべているその口も苦痛と衝撃でこの上なく醜く歪む。 衝撃で、やわらかい草や花しか食べてこなかった金平糖の綺麗な歯が5、6本折れ、砕け散り、口から餡子が流れ出す。 歯茎から無理矢理歯を、それも何本も抜かれる苦痛にまりさはただボロボロと涙を流すことしか出来ない。 自身が宙に浮かぶ感覚を感じ、まりさは縦にぐるんぐるんと回る。それに合わせて口から吐き出す餡子が、涙が、線を描いて飛び散って行く 「ばりざあああああぁぁっ!!!」 どさり。 数メートル吹っ飛ばされたまりさの体は芝生の上に叩きつけられた。 「ばりざっ!しっがりしでええ!ばりざっ!ばりざあ゛あ゛あ゛あああ!!」 れいむの慟哭も虚しく、まりさはぴくり、ぴくりと弱弱しく痙攣するだけだ。 「うわぁ、本当にゆっくりって弱いのな、まぁあの分だと放っておいても死にはしないよな」 ”弱い”という言葉を聴いたからか、少しだけ強くまりさが痙攣したように見えた。 生命力だけは強いからな。と男はれいむの方へ向き直る。仮に死んだところで、死体は自治体か加工所が回収してくれるので問題ない。 「や・・・やべでね!ひどいごどしないでねっ!」 歩み寄る男にひたすられいむは震える。最強のはずの夫をいとも簡単に倒した男に勝てるはずが無かった。 「おでがい・・・もうやめちぇぇえ・・・!!」 男は無言のままれいむの片方のもみ上げを持ち上げる。 「ゆ゛う゛う゛うううぅぅぅぅ!!」 自重を支えきれないもみ上げがブチブチと嫌な音を立てた。 男はもう片方の腕で傍に落ちていた小枝を拾い上げる。 「ゆっ…?なにずるの?やめてね!やめてね!」 男は笑う。こんなことをする人間がその言葉を聞いてやめるだろうか? いや、ないね。男は否定する。 枝を握った腕を振り上げた。 「ゆ…?ゆゆっ!!やめちぇっ!やめ…ピギイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」 アイデンティティの”ゆ”すら付け忘れる程の激痛。 れいむのまむまむと呼ばれる部位に硬い枝が突き刺さっていた。 その枝は、途中で何本かに短く枝分かれしていて、その枝分かれした部分がれいむの中を滅茶苦茶に突き破っていた。 「ゆっ…!ぎっぎっ…」 歯を食いしばり白目を剥いているれいむを眺める。口角から泡が漏れているが問題ないだろう。 男はそのまま、まむまむから飛び出ている枝を掴み直し、鍵を開けるように回し始めた。 枝がれいむの体内を掻き回す。 再び響き渡る悲鳴。つんざくような叫び声。小鳥のさえずり。遠くで犬が吠える声。 まりさは生きていた。 かろうじて動ける程度だったが、とにかく生きていた。 男はもうほとんど飲みつくしてしまったペットボトルの中身をまりさにぶちまける。 多少の糖分がこの飲料には入っている。 糖分を得ることで、いくらかマシになるはずだった。 「よぉ、雑魚。どうしようもないクソ饅頭」 男が話しかける。糖分を得たおかげで、多少の会話くらい出来るはずだが、まりさは言い返せない。 いや、言い返すことが出来るだろうか。 「よかったな。お前は蹴り一発で済んで」 人間で言えば自動車にはねられたようなもの。良い筈が無いが、男はそう言った。 「お前の愛しのれいむとやらはもっと長い間苦しんだんだぜ」 びくっとまりさが震えた。 「かわいそうになぁ、お前が自分の力を知っていればこんなことにはならなかったのに」 弱っちい饅頭ってさ。と男は続ける。 事実、昆虫程度が自分たちの勝てる限界だということを知っていれば、こんなことにはならなかっただろう。 「れ…れい…むは…?」 ようやくまりさが口を開いた。 「あぁ、アレ?あそこに落ちているから、見に行ってやればどうだ」 俺はもうすぐ仕事始まっちまうから。じゃぁな。男はそれだけ言い残すと空になったペットボトルをゴミ箱に捨てて公園を去っていった。 初夏の午後の太陽の下、夏には早いがそれでも眩しい日差しが公園の芝生に降り注ぐ。 さぁっと涼しい風が吹き、まりさのおさげを揺らした。 「れ…い、むぅ…」 ずりずりとまりさが這う。緑色の芝生のキャンパスに黒い餡の線が描かれる。 激痛と喪失感に耐えて、耐えて。ようやく愛しのれいむの赤いリボンの前に立つ。リボンはボロボロになっていた。 「れいぶぅ…ごべん、ねぇ…」 まりさ弱かったんだよぉ、弱っちぃ饅頭だったんだよぉ。涙と餡子をこぼしながられいむの前へ回り込む。 だから、今までどおり山で草さんを食べて暮らそう、今日の分までゆっくりさせてあげるから… そう言おうと思っていた。 「ひっ!」 しかし、言えなかった。 れいむは酷い有様だった。目玉は抉られ、全身が傷だらけ、殴られ続けたためか、体中ぼこぼこになっていた。 「あ…あ…」 何より、れいむのまむまむからおびただしい量の餡子が出ていて、そして、まるでそれをせき止めるかのように枝が刺さっていた。 一度もすっきりしていなかったのに。ゆっくりした赤ちゃんと一緒にゆっくりしようと思ったのに。 その夢は叶わない。己が弱かったから?それもある。あるが、しかし何よりも。 自分が愚かだったからだ。 必死の思いで、れいむを傷を舐める。甘い味が口に広がる。舐める程度では到底直らない怪我だった。 「ま、りさ…」 「あ…ああ…れいぶぅ…」 れいむが無事だった方の目を開けて、まりさを見た。 良かった生きていたんだね。まりさが言いかけたその言葉をさえぎる様にれいむが言い放つ。 「まりさ どうしてまけちゃったの」 沈黙。絶句。微笑みかけたまりさの顔が硬直する。 「れいむを だましたの」 「れいむ ばかだからしんじちゃったんだよ まりさがにんげんさんにかてるって」 「ねぇ あかちゃん つくれなくなっちゃったよ」 「ここはとってもゆっくりしてるゆっくりぷれいすなのに れいむもうゆっくりできないよ」 ねぇ、まりさ。れいむが続ける。 「れいむはもう えいえんにゆっくりしちゃうんだよ」 「まりさのせいだよ」 れいむは動かなくなった。 「ゆ…ゆっ…ゆわああああああぁぁぁ!!」 まりさは叫んだ。幸か不幸か、れいむの餡子を舐めたことで、まりさの体力は叫べるまでに回復していた。 「おうぢがえる!おうぢにがえる!」 逃げ出すように、まりさはずりずりと動き出した。 もう人間には近づかない。まりさは虫さんくらいにしか勝てないんだから。 ずりずりと、公園の出口を目指す。しかし、まりさが己の後ろにある、自分の餡子以外の”黒”に気がつくことはなかった。 「ゆっ…ゆっ…もう少しだよ…」 公園の出口が見えてきた。日が少し傾いてきたが、この分なら今日中に森に帰れるかもしれない。 男に受けた肉体的ダメージはほとんど回復していた。ぽいん、ぽいん、と間の抜けた音を出しながら跳ねる。 ちくり。 「ゆゆっ?」 まりさは跳ねるのをやめた。自分の足に小さな痛みが走ったのだ。 「ゆ、きのせいだよね」 そう決め付け、歩き始める。 ちくり。 「ゆゆっ!」 再び足を止める。今回は痛みの理由が分かった。自分の頬に蟻が喰いついている。 「ゆゆっ!むしのくせにまりさにはむかおうなんて なまいきなのぜ!」 まりさは下で器用に蟻を掴み地面へ叩き付けた。 人間には絶対に勝てない。だが少なくとも自分は虫よりは強いのだから。まりさは、心中に渦巻く屈辱と悲しみを紛らわせるように、叩き付けた蟻を何度も踏みつける。 たいした時間もかからず、蟻は動かなくなった。 「ゆっへん!ざまあみるんだぜ!」 まりさは潰れた蟻を見下して、帰りを急ぐ。 ちくり。 「ゆゆゆっ!」 ぎょっとして振り返る。蟻が生きていた? 否、死んでいる。では何が? 「ゆーん?」 まりさは首をかしげる様な動きをしてから、何とはなしに振り返る。 夕日に赤く染まった公園。その芝生にまりさの餡子が黒く、伸びている。 男に吹き飛ばされた地点から、れいむの場所、そして公園の出口と、公園を上から見たら、まるでLの字を描くような その軌跡は、まるで筆で書いたように、徐々に細くなっている。傷口が塞がっていっているからだ。 だがその細くなっている所が少しずつ太くなっていく。 甘い黒線を補強していくもう一つの黒い存在。 「ゆぎっ!?いぢゃいぃぃ!なんでふえてるのぜぇぇ!?」 蟻に他ならない。 芝生に付着した餡子よりも本体を狙いに来たようだ。 「なまいきなのぜ!いっぱいいるからかてるとおもったの?ばかなの?しぬの?」 男の言葉を思い出す。 ―――人間はな、お前らの群れなんざ、一人で皆殺しに出来るんだよ――― 「まりさだって!ばりざだって!」 おびただしい数の蟻の群に、まりさは立ち向かう。虫になら勝てる、その発想はもはやまりさにとって揺ぎ無いものとなっていたのだ。 致命的な勘違いをしているとも知らずに。 人間には四肢があり、道具を使い、それを作り出す知能がある。 蟻には強靭な顎がある。カマキリには力強い鎌と顎がある。 では、ゆっくりには? 「まりさはおまえたちになんが!まげないのぜっ!」 まりさはひたすらに飛び跳ね、踏みつける。饅頭ごときの一度の跳躍で昆虫を殺すことは出来ない。 まりさはその体格差から辛うじて殺すことが出来ているだけだ。 「ゆぎっ!?あんよがいだいいぃ!?」 しとめ損なった一匹が、まりさの底部に噛み付いた。 まりさがひるんだ隙に一匹、一匹、黒い粒が這い上がる。 ゆっくりは、人に擬態し、大声で人語を話し、大きく膨れ上がることができる。 それは被捕食者にとっては紛れも無く立派な”武器”。だが、それは狩るものの武器ではない。 狩られるものが狩るものに攻めかかる。その攻撃の先に何があるのか。 「ゆ゛うううぅぅ!?なんでのぼってきてるんだぜぇぇぇ!?」 ちくり、ちくり 黒い兵士たちは、愚かな生物を食らわんと次々と這い上がり、その体に食らいつく。 「やめるんだぜぇぇぇ!!ばりざからはなれるんだぜぇぇ!!」 蟻を引き剥がそうと、ごろごろと転がるまりさ、しかしその行為は逆に自分の首を絞める結果となる。 自分の体に地面の餡子を付着させてしまったのだ。 一気に這い上がる蟻。転がっても転がっても、次から次へと食らいつく蟻の攻撃を止めることは出来ない。 「ゆ゛う゛う゛うううぅぅ!!!」 口から、目の中から、まむまむから、蟻が入っていく。体内を喰らわれる痛みにまりさは叫びを上げた。 今度は蟻を引き剥がすためではなく、痛みに耐えるために転げまわる。少しづつ弱まるまりさの動きとは対照的に 蟻たちはどんどんまりさの体内に侵入していく。 「どぼじでぇ…!どぼじでぇ…!」 まりさは呟く。 むしさんになら勝てると思ったのに、と。 まむまむを蟻に食いちぎられ、まりさは一際大きな悲鳴を上げた。 ―――よぉ、雑魚。どうしようもないクソ饅頭――― 男の言葉が、まりさの中で浮かんで反響し、消える。 悲鳴を上げても、その声が聞こえる。まりさは心身ともに文字通り蝕まれていく。 「いちゃいよぉ…!おうぢ…かえるぅ…」 威勢の良さはすっかり消えて、幼児退行したまりさをあざ笑うように、蟻はまりさの体を喰らい、食いちぎる。 傍から見れば穴あきチーズのように見えるかもしれない。 「もう…や゛…べ…ちぇぇぇ…」 まりさが呟くなか、蟻はいよいよ食事を本格化させ始めた。 夕日は地平線に姿を消そうとしていて、空が赤から紫へと変わっていく。 そろそろ、自治体と加工所のゆっくり回収車が野良ゆっくりとその死体を集める頃だ。 公園の電灯に明かりが灯る。 まりさはまだそこにいた。しっかりと生きたまま。 だがもう長くないだろう。右目は喰われ。体の中身も大半が喰らい尽くされてしまった。 どさり、とまりさは横たわる。もはや体の平衡すら保てなくなっていた。 帽子がまりさの頭から落ちる。だが、それを拾う体力すらまりさには残されていない。 「ばりざ…の…おぼ…し…」 目から、空の眼窩から、涙がこぼれる。 激痛と、狭まった視界と薄れ行く意識の中、まりさが最後に見たものは。 「あ゛…ああぁ…」 蟻によって自分の帽子の中から運び出されていく、まりさのカマキリだった。 そのカマキリは男に踏まれて、以前よりも平べったくなっていた。 あとがき 最後までお読みくださりありがとうございます! 自分は今回がSS初投稿なのですが、ゆっくりできたでしょうか? 今回は、特に目新しい虐待方法もないので少しお兄さん達には食傷気味だったかもしれませんが ゆっくりできたのなら幸いです。 ご意見、ご感想等お待ちしております。 次回作を書くかは未定ですが、ご要望があればご自由に。 最後に:作中に出てくる男の作業着なのですが、服のビジョンは浮かぶのに名前が出てこないという大変もどかしい事に…。 ちなみに某いい男が着用しているようなツナギではありません。 紺色の袴みたいなやつ、なんて言いましたっけ?よくゴム製の草履みたいのと一緒に着用するやつ。 よく返り血ならぬ返りセメントがついてるような感じで足首の辺りでダボっとしてるやつ。うーん。
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ゆきのなか 35KB 虐待-普通 越冬 「餡子ンペ09」 ・餡子ンペ投稿作品:『親子/期待はずれ』 ・掲載ペースが落ちてると言われる昨今・・・忙しくて書けない時期もあるんですよ。 仕事って時期が重なるんですよね。 『ゆきのなか』 D.O 季節は冬。 ここは、人間の里から少し山の中に入った森の中。 しんしんと降り積もる雪の中、木の根元あたりに、 木の枝や小石が積み重ねられた奇妙な膨らみが見える。 「・・・っくちちちぇにぇ・・・」「すーり・・・むーしゃ・・・」「・・・ちあわちぇー・・・」 もしもここに人間がいて、周囲の音に注意深く耳を傾けたならば、 その膨らみの奥から、人間のしゃべるような声を、かすかに聞き取ることができたであろう。 そして、さらに注意深く周囲を観察すれば、同じような奇妙な膨らみは、 そこらじゅうの木の根元に見つけることができたはずだ。 そんな奇妙な膨らみの一つ、雪と、木の枝や小石に隠された奥には、木の洞がある。 そこには、つがいである2匹のゆっくり、群れの長まりさとれいむが住んでいた。 冬という、ゆっくりにとって死の季節の中にいながら、2匹の表情はとても明るい。 「まりさとれいむのおちびちゃん・・・もうすぐうまれるね。」 「ゆぅん。とってもゆっくりしてるね。」 「・・・(プルプル)」 「ゆぅ~ん。おちびちゃんがおへんじしてるよ~。」 なぜなら、おうちの入り口を完全に閉ざして越冬を開始してから数日、 このつがいの間には、間もなく新しい命が誕生しようとしていたからだ。 ここはゆっくりの群れの生息地。 木の枝や小石で作られた膨らみは、木の洞や洞穴など、巣穴の入り口を塞ぐためのバリケード、『けっかい』であった。 野生のゆっくり達は、雪の降るような冬の季節には、巣穴にこもってゆっくりと過ごし、 寒気を防ぐために入り口を堅く閉ざして、秋に蓄えた食糧で命をつないで春を待つ。 「どぼぢでごはんさんなくなっちゃうのぉぉぉおおお!!」 「ゆぁーん。おきゃーしゃん、おなかしゅいたー。」 「しょうがないよ・・・おぢびぢゃんは、でいぶにゆっぐりだべられでねぇぇぇええ!!」 「ゆびぃぃぃぃぃ!!どぼぢでしょんなことしゅるのー!?」 「もっちょ・・・ゆっぐぢ・・・」 と、たいていの場合、野生のゆっくりにとって、越冬は過酷であり、命がけのものだ。 十分な量の食料確保に失敗すれば、飢餓が親子にすら共食いを引き起こし、 それでも食料が不足すれば、体温を保てず凍死するか餓死する。 巣穴である『おうち』の作りがあまければ、積雪の重みで崩壊、雪と土の中で圧死。 巣穴が頑丈でも、入り口の塞ぎ方がダメだと隙間風でやはり凍死。 こうした悲劇を起こさないため、特に優秀なリーダーがいる群れならば、いくつもの対策を立てて 必死に被害を減らそうと努力している。 ドスまりさの力で頑丈な崖などに洞窟を掘り、共同住宅として群れ全員で冬を越す、 熟練のゆっくり達が協力して、群れのみんなの『おうち』補強工事を監督する。 食料が足りなかったら、人間さんの独り占めしているお野菜を強奪してくる、など。 そんな中で、何より注意されるのが、『越冬前にすっきりーして子供を作らない』ということだ。 「「すっきりー!!」」 「ゆぅん。れいむのかわいいおちびちゃんが、たくさんできたよ~。 まりさ、おちびちゃんのために、はやくれいむにあまあまをとってきてね!」 「なにいってるのぉぉぉおお!?おそとはゆきさんがふってるんだよぉぉぉおおお!!」 「だからなんだっていうの!?つべこべいわないで、はやくごはんをとってきてね!!」 びゅぅぅぅぅううううう 「しゃぶぃぃぃぃいいいいい!!!ゆっぐぢぃぃいいい!ゆっぐぢぃぃぃいいいいいい!!」 「れいむはむーしゃむーしゃするよ!むーしゃむーしゃむーしゃ・・・はぐっ!ばくばくっ!めっちゃうめっ!ぱねぇ!」 ・・・3日後 「どうしてごはんさん、なくなっちゃったの・・・・・・おちびちゃんをむーしゃむーしゃするよ・・・」 こんなことも当たり前のように起こる。 秋の半ば以降にすっきりーしようものなら、にんっしん中だけでなく、生まれてからも子育てのために、 つがいの一方は狩りに参加できなくなる。 越冬中にすっきりーしたりしたら、さらに最悪だ。 食い扶持の増加で貯蔵食料の計算は完全に崩れ、食糧不足で結局一家全滅となる。 つまり、厳しい環境下に生活する野生のゆっくりにとって、 冬+赤ゆっくり=死、というのは、ごくごく一般的な考え方なのだ。 だが、実は先ほどの長まりさとれいむのつがいだけでなく、この群れの中では、現在にんっしん中、 あるいは生後数日以内の赤ゆっくりを抱えた家族が大半を占めていた。 いかに若いゆっくり達とは言え、本能にまで刻み込まれた冬の恐怖を知らないはずはない。 では、なぜあえて越冬が始まった今、ゆっくり達は子供を作ることを選んだのか。 その理由を見ていくため、先ほどのつがいの一方、長まりさの生まれた春の中頃まで時間をさかのぼることにする。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 季節は春。 多くの野生ゆっくりにとっては、長い死の季節を乗り越えたあとの、喜びの季節である。 暖かな陽気。 新鮮で大量にある、ゆっくりした野草や虫。 食料の心配がなくなったことで、成体ゆっくり達はさっそくすっきりーに励み、 新たな命を迎えることでさらに喜びが積み重なる。 「まりさとれいむのおちびちゃん・・・もうすぐうまれるね。」 「ゆぅん。とってもゆっくりしてるね。」 ・・・・・・。 「そうだよね・・。」 「・・・そうだよ。」 ぶるぶる・・・ぷちんっ! ぽとっ! 「ゆぅ・・・ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 まりさも、そんなベビーラッシュの中で誕生し、祝福を受けた赤ゆっくりであった。 だが、生まれて数日経ち、おうちから外を眺めて過ごすようになった赤まりさは、 春の陽気も楽しめず、あまりゆっくり出来ていなかった。 なぜなら・・・ここが岩肌も荒々しい、草木もろくに育たない高山の荒地だからだ。 「ただいま、れいむ・・・。」 「おかえり・・・まりさ。」 「ふぅ・・・ごはんだよ・・・なかよくむーしゃむーしゃしようね・・・。」 「ゆわーい!!むーちゃむーちゃしゅるよ!!」×10 だが、食卓代わりに置かれた平たい石の上には、固い雑草が少々と干からびた虫の死骸だけ。 「むーちゃむーちゃ・・・それなりー。」 「おとーしゃん・・・もっとむーちゃむーちゃしちゃいよ・・・。」 「ごめんね・・・はぁ・・・おうちのまわりに、ごはんがないんだよ・・・」 「どぼぢでしょんなこというにょぉぉぉぉおおお!?」×10 とは言ってみたものの、赤ゆっくり達はそれほど駄々をこねることなく、残念そうに食事を終えた。 父まりさの話が嘘ではないことは、生後3日を迎えてようやく跳ねることが出来るようになったばかりの、 幼いまりさ達にもわかってはいたのだ。 何せ、おうちを一歩踏み出してみたら、眼前に広がるのは砂利や砂ばかりという、 およそ命の喜びとは無縁の世界が広がっていたのだから。 「おちびちゃんたち・・・きょうはもう、ゆっくりすーやすーやしようね。」 「ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくちりきゃいしちゃよ。」×6 「じゃあ・・・まりさが、ふぅ・・・おふとんをよういするね・・・」 だが、森に住む野生のゆっくり達のような、落ち葉や草を敷いたお布団や、 ましてや丁寧に編みこまれたベッドなどというものが出てくるはずもない。 そんなものがあったら、今日の夕御飯になっているのだから。 「おちびちゃん・・・はぁ・・・ゆっくりすーやすーやしてね・・・」 「ごりょごりょちて、ゆっくちできにゃいよぉ。」×6 「ふぅ・・・ごめんね・・・ゆっくりがまんしてね・・・はぁ・・・」 お布団として用意されていたのは、比較的粒の細かい砂(といってもサラサラというには程遠い)を、 平たい石の上に厚めに敷いただけのものである。 まりさ達赤ゆっくりは、この砂にあんよを口のすぐ下あたりまで埋め、身を寄せ合って眠る。 石の上に直に眠る両親よりはマシかもしれないが、少なくともしあわせーからは程遠かった。 まりさ達のおうちは、大きめの石が偶然積み重なってできた隙間に穴を掘って作ったものだ。 風雨や外敵から身を守るという意味で言えば、まあ、そうそう悪くもないものではあったが、 とにかくゆっくり出来ない場所に住んでいる、という感覚のまりさから見たら、 なんだか無機質でゆっくり出来ないおうちに思えてならなかった。 『ここはゆっくりできないよ。まりさはおおきくなったら、ゆっくりぷれいすにいくよ。』 それは、まりさが生まれてからずっと抱き続けていた想いである。 そして、食糧不足で次々と姉妹達が餓死していく中、なんとか生き延びてテニスボール程度に成長したある日、 父まりさが大事なお話がある、と言って姉妹をおうちの近くの崖へと連れて行った。 「ゆわーい!もりしゃんがみえりゅよ!」 「とっちぇもゆっくちちちぇりゅにぇ!」 「おしょらとんでるみちゃーい!!」 「ふぅ・・・。おちびちゃんたち。あの、もりのむこうをみてね。」 「ゆぅ?・・・ゆゆっ!!」 崖からは、山のふもとに広がる広大な森が一望できる。 この眺めのいい崖へのピクニックは、まりさ姉妹にとってはほとんど唯一と言っていい娯楽であった。 大きくなったらあんなところに住むんだ、というのは、姉妹共通の夢であったのだ。 そして、その広大な森のさらに向こうに、木々がほとんどない、平らな土地が広がっているのが見えた。 「あそこはね。・・・にんげんさんがすんでるところだよ。」 「ゆわぁぁぁ。しゅごくゆっくちしちぇるにぇぇ・・・」×3 ゆっくりは、ゆっくりしているものに関しては敏感なものだったりする。 人間から見てもかすんで見えるほど遠くの人里に、まりさ達はとてもゆっくりしたものを感じ取っていた。 里の中を流れる小川、緑に輝く田畑。 人間さんが出入りしている所は、人間さんのおうちだろうか。 だが、まりさ姉妹がゆっくりしている中・・・父まりさだけはまったく別の表情を浮かべていた。 人里を眺めているだけにもかかわらず、歯は限界まで食いしばられ、全身汗まみれ、 口の端からは餡子混じりの泡がゴボゴボとたれている。 「ゆ゛・・・ゆぎぃ・・っ!ゆぅぅぅうう・・・!!」 「おとーしゃん?」 「ゆぎぃぃぃひぃ!にんげんさんはゆっぐりでぎなぃぃぃいいいい!!」 「!?」×3 しばらく脂汗をかき、顔色を赤、青、土色にあわただしく変化させていた父まりさが、突然暴れ始めた。 「ゆびぃっ!!おねぇじゃんっ!だべぇっ!!おぎゃあじゃぁぁん!!」 「ゆぅぅぅ!!おとーしゃん、ゆっくちちちぇにぇっ!ゆっくちちちぇー!」 ・・・・・・。 「ゆぅ・・・ゆぅぅぅ・・・おちびちゃん、ぜったいにんげんさんにちかづいちゃだめだよ。ぜったいだよ。」 「ゆ、ゆっくちりきゃいしちゃよ。」×3 結局、何があったのかは聞けなかった。 まりさ姉妹達だって、餡子による記憶継承の効果で、人間さんがゆっくりできない、 という感覚は両親から受け継いでいるのだが、所詮は両親一代限りのトラウマであり、 れみりゃ等のような、明確な意味でのゆっくり出来なさは記憶を受け継いでいない。 そのため、まりさにとって父まりさからの忠告は、 『人間さんに出会うと確実に死ぬ』と言う様なものではなく、 『ゆっくり出来ない存在で、どんな強いゆっくりでも不用意に近づくと酷い目にあう。』 という程度のものと認識されることになった。 それからさらに月日は流れ、季節が夏の終わりに差し掛かった頃、 他の姉妹全てが命を失う中、最後まで生き延びたまりさが、 独り立ちして親元を離れる日がやってきた。 「おちびちゃん!ゆっくりしていってね!!」 「もうおちびちゃんじゃないよ!ゆっくりがんばるね!ゆっくりしていってね!!」 こうして結局まりさは、親の忠告を無視して森の方へと旅立っていったのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 独り立ちに際して、まりさには一つの計画があった。 その計画は大体以下のようなものである。 1.人間さんの里に行き、そこで一番強い人間さんと勝負して勝つ 2.力を示すことで人間さんからゆっくりプレイスと食料、おうちを手に入れる 3.森や山からゆっくりを呼び集め、人間さんの里をゆっくりのためのゆっくりプレイスにする 4.群れの長になる 5.ゆっくりした美ゆっくりと、ゆっくりした家庭を築く 6.ゆっくりし続けたまりさはいつしかドスになる 意気揚々と山を下り、森に入り、人間でも丸一日ではきかない距離を走破するまりさ。 まりさ自身は気づいていなかったが、山育ちであったため、 足腰の強さとスタミナについては、確かに群れの長にふさわしい逞しさを手に入れていたのである。 そして、ゆっくりの足で言えば、あと一日で人間の里に着こうという森の中で、 まりさの旅は、予想外の形で終わりを迎えることになった。 「ゆぁぁぁぁああああ!!なにこれぇぇぇええええええ!!!」 目の前には、人間の里が霞んでしまうほどの、ゆっくりプレイスが広がっていた。 木々は適度に生えて木漏れ日が優しく降り注ぐ。 地面には若く柔らかな雑草から人間も食用とするような野草まで青々と茂っている。 草ばかりではない。 周囲にはキノコやゆっくりでも届く高さに実った木の実も豊富にある。 その豊かな食料に誘われてか、昆虫からイモ虫まで、取り尽せないほどにいる。 食料ばかりではない。 大きく育った木々の根元を見れば、その多くにはゆっくりが家族で暮らすのにちょうどいい洞がある。 中は小石などもほとんど落ちておらず、すべすべに整えられており、隙間も丁寧に埋められている。 明らかに以前別の群れが使っていたと見られるおうちばかりであった。 今、どうしてゆっくりが住んでいないのか不思議であったが、 一時的な食糧不足で群れごと引っ越すことも珍しくはないので、 ここはかつて別の群れが使い、放棄したゆっくりプレイスだったのであろうと、まりさは理解した。 まりさが放心状態でゆっくりプレイスの中を歩き回っていると、 まりさとは別の場所から独り立ちしてきたのであろう、若いゆっくりの集団が多数、 吸い寄せられるようにこのゆっくりプレイスにやってきた。 「ちぇん、ゆっくりしていってね!!」 「まりさだねー!ゆっくりしていってねー!!ゆわぁぁー、すっごいゆっくりぷれいすだねー!わかるよー!」 「ゆぅん!ちぇんもそうおもう!?ここにはいま、ほかのゆっくりたちはぜんぜんすんでないんだよ!」 「わからないよー!!こんなゆっくりぷれいす、ほっとくにはもったいないねー!」 「ゆっふん!!そうだよ!ここは、まりさたちのおうちにしようね!!」 「わかるよー!!」 こうして、まりさの無謀なゆん生計画は、あっさりと方向転換を向かえ、 人里から近くも遠くも無い、実り豊かなゆっくりプレイスで、一から群れを作る作業が始まったのであった。 そもそも、まりさにしても、ゆっくりしていない人間さんと争うのは、あまり気が進まないことではあったのだ。 まりさほどのゆっくりであれば、相手が人間さんであっても負けることは無いであろう。 しかし、ケンカは痛いしゆっくり出来ない。 それに、万が一相手に遅れをとれば、永遠にゆっくりしてしまうこともあり得る。 また、実のところ人間さんの里を見たこともないので、どの程度ゆっくりしたゆっくりプレイスなのかわかったものでもない。 遠くの、あるかも怪しいゆっくりプレイスより、目の前の極上のゆっくりプレイス。 まりさの、新生活はここから始まった。 ゆっくりしたおうちとご飯は、余りにもあっさりと手に入ってしまった。 さらに、まりさ達のゆっくりとした姿を見つけて、独立したての若いゆっくり達が続々とやって来ては定住を決める。 わずか数週間で、まりさ達のゆっくりプレイスには、大規模、と言って差し支えない規模の群れが形成されていった。 「わからないよー。そろそろおさをきめないと、ゆっくりできなくなっちゃうよー。」 「そうね。せっかく、とかいはなゆっくりぷれいすなんだから、みんななかよくしたいわ。」 「むきゅん!それじゃあ、ぱちぇはまりさがおさになるといいとおもうの!!」 「ゆぅぅー!まりさでいいのぉぉぉおお!?」 「まりさなら、きっととかいはなむれにできるわ!」 「ゆぅ。でもまりさ、もりでのせいかつになれてないよ。わからないこともおおいよぉ。」 「わかるよー。でも、まりさのできないことは、みんなできょうりょくしてあげるからだいじょうぶだよー。」 ・・・・・・。 「ゆぅ。わかったよ!まりさ、このむれのおさになるよ!!」 「むきゅーん!ぱちぇたちにもおてつだいさせてね!むきゅっ!」 流れは自然と生まれ、拡大していく。 まりさは群れの初期メンバーとしてリーダーシップを発揮していた点を考慮され、立候補するまでもなく長に選出された。 なお、幹部メンバーは、このゆっくりプレイスでまりさに初めてであったちぇんとありすのつがい、知恵者ぱちゅりーの3匹。 群れの体制はこの4匹を中心として、急速に固まっていった。 そして・・・ 「このむれのおさはまりさみょん!?みょんたちをむれにいれてほしいみょん!!」 「ゆっくりしていってね!!おうちはたくさんあるよ!・・・ゆゆっ!?」 「どうしたみょん?れいむのおかおになにかついてるみょん?」 「・・・ゆぅ?ゆっくりしていってね。」 「(ゆわぁ。ゆっくりしたれいむだよぉ。)ま、ま、まりさとずっと、ゆっくりしていってね!!」 「・・・・・・?・・・ゆぅぅぅうううう!!?」 ある日群れに加わってきた若ゆっくりの集団に、一匹のれいむがいた。 清楚な物腰、紅く輝く大きなおリボン、そしてゆっくりとした下膨れ。 初めてれいむとあいさつした時に、まりさのぺにぺにに電流が走った。 一目ぼれというものであろう。 結局いきなりすぎて、れいむから正式にOKの返事が来るまでに5分以上かかったが、 まりさは、ゆっくりプレイス、長という立場にくわえて生涯の伴侶まで、あっさりと手に入れてしまったのであった。 季節は夏の終わりという時期。 群れのゆっくり達も、そろそろ新生活に慣れてきた時期である。 早期にこのゆっくりプレイスにやってきたメンバーはつがいを見つけ、にんっしんしている者も多かった。 長まりさとれいむの間にも、何一つ障害はない。 後は、一刻も早くおちびちゃんを手に入れて、ゆっくりとした家庭を築きあげれば、 まりさのゆん生計画は、ほぼ完璧に果されることになるはずであった。 ・・・だが、ある出来事が、まりさとれいむの子作りに待ったをかける。 「むきゅぅぅぅううううん!!まりさがぁぁぁぁああ、おちびちゃんがぁぁぁぁああああ!!」 その不幸は、長まりさの側近筆頭、ぱちゅりーの元に訪れた。 無論、この叫びの対象になるまりさとは、長まりさではなくぱちゅりーのつがいであった、だぜまりさである。 「むきゅ・・・おちびちゃん・・おそとはあぶないって・・・むきゅぅ。」 ぱちゅりーは胎生出産で、子供はまりさ1匹だった。 赤まりさは好奇心旺盛で、将来有望なゆっくりだったが、その好奇心が強すぎた。 「まりしゃ、おとーしゃんとかりにいっちぇくるよ!しょろーり、しょろーり!」 父であるだぜまりさが狩りに行き、母である側近ぱちゅりーがお昼寝している間に、 おうちを抜け出して、群れの喉を潤す泉へと遊びに行ってしまった。 さらに好奇心があだとなって、水草を採集している父、だぜまりさのマネをしてしまう。 水への恐怖よりも、お帽子で泉の上を自在に漂ってみたいという衝動が勝ってしまったのだ。 「まりしゃ、ゆっくちおぼうちにのりゅよ!ゆ!ぷーきゃ、ぷーきゃ・・・ぼちゃん。」 結果はご想像の通り。転覆、水没。 さらに不幸に輪をかけたのは、赤まりさが自分のおちびちゃんであると気付いただぜまりさが、 赤まりさを引き上げるため現場に急行、 「ゆぁぁぁぁああ!!おちびちゃん、まっててね!いまたすけ・・ゆぅっ!?・・・ぼちゃん。」 あわてすぎて転覆、水没。 結局側近ぱちぇは、一気に家族全員を失ってしまったのであった。 特に大きな危険もなく、ここに至るまで群れのゆっくりは増える一方だったため、 失うということに慣れていなかった幹部メンバーは、過剰に反応することになる。 特に側近ぱちぇは、自分自身を襲った不幸ということもあり、 これ以上同じ思いをするゆっくりを増やさないための対策を必死になって考えた。 そして、一つの結論に至る。 「ゆ!みんな、まりさのいうことをよっくきいてね!!」 「ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!」×300 「このむれでは、これからすっきりをきんしするよ!!」 「・・・ゆっぐりでぎなぃぃぃいいいいい!!!」×300 「でもあんっしんしてね!ずっとしちゃいけないわけじゃないんだよ!」 「?」×300 まりさ達幹部メンバーは、期限付きのすっきり禁止令を決定した。 内容は簡単。 要は、冬ごもりに入るまで一切すっきりーしてはダメ。 子作りは、冬ごもり中に行うべし!とのことである。 先にも書いたとおり、通常の群れであればこれは自殺に等しい案だ。 秋の間に集められるのは、成体のつがいであっても自分達の分だけで精いっぱい。 そこに子供が入れば飢え死に確定となる。 しかし、そこにこの群れの強みが加わると、状況が変わる。 何せ、ここは類を見ないほどのゆっくりプレイスで、食糧はおうちの外にあふれるほどある。 秋の間につがいで必死に集めれば、それこそ成体ゆっくり10匹以上は養える蓄えが出来るほどなのだ。 ならば・・・蓄えてしまえばいい。 後は、冬ごもりの季節になったらおうちの入り口をしっかりと閉じて、存分にすっきりーする。 赤ゆっくりはおうちの中で誕生し、お外にこっそり出て行ったりする心配はない。 しかも、両親ともやはりおうちから出ることはないので、にんっしん、子育て中にしんぐるまざーになる心配もない。 ゆっくりとしたおちびちゃん達とたっぷりゆっくりして冬の数か月を過ごし、その間におうちで出来る教育は済ませておく。 おちびちゃん達が子ゆっくり程度、十分に大きく成長した頃に、冬ごもりは終わりを迎えるはずだ。 後は春の恵みの中で、おちびちゃん達は大きく育ち、世界に羽ばたいていくのだ。 「すごーい!!おさはやっぱりてんっさいだよー!」 「わかるよー!」 「むほぉぉぉおおお!!すっきりー!」 群れのゆっくり達は、説明を聞き終わるとともに、目をキラキラと輝かせて幹部達をほめたたえた。 それもそのはずで、餡子で継承されている記憶では、冬ごもりと言うととても楽しいものではない。 餓死、凍死の危険を感じつつ、つがいがいればまだしも、下手すれば一匹で暗く狭い穴の中に閉じこもって過ごすのだから。 それが、死の危険もなく、最上級のゆっくりである『おちびちゃん』とともに過ごせるとなれば、 ゆっくりでなくとも、その喜びはなんとなく理解できるであろう。 そして群れのゆっくり達は以降数カ月間必死で狩りに奔走し、 (中には不幸な事故ですっきりを味わうことも出来ずに命を落とした者もいるが) ほとんどのつがいが無事に冬を迎え、すっきりー出来るだけの蓄えを確保しておうちの入り口を塞いだのであった。 みんな、より大きなゆっくりをちらつかせられた分、意外と我慢強かった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ・・・そして現在の状況に至る。 おうちの奥には貯蔵食糧の山、れいむの頭上にはツタが一本とそこに揺れる6匹の赤ゆっくり。 おうちの中央には、まりさがこの日のために、特に柔らかい枯れ草を編み上げて作った、 おちびちゃん達用の鳥の巣型ベッド。 ふかふか、ふわふわになるように、一生懸命頑張ったよ。 きっと、おちびちゃん達も気に入ってくれるね。 ぶるぶる・・・ぷちんっ! ・・・・・・ぽとっ! 「ゆぅ・・・ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「ゆぅぅん!おとーしゃん、おきゃーしゃん、ゆっくち!ゆっくち!」 「ゆぅ!まりさそっくりの、げんきなおちびちゃんだね。」 「ゆふぅん!でも、れいむにおめめはそっくりだよぉぉ。」 「ぴゃぴゃー!みゃみゃー!れいみゅおなきゃしゅいちゃよ!」 「むーちゃむーちゃしちゃいよぉ。」 「ゆっ!まっててね。おちびちゃんに、つたさんをたべさせてあげようね!」 「ゆっくちむーちゃむーちゃしゅるよ!」 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」 「おちびちゃん、さむくない?」 「ゆっくち!べっどしゃんがふーわふーわであっちゃかいよ!」 「ゆぅ。でも、まりしゃちょっとしゃむいから、しゅーりしゅーりしちぇにぇ!」 「おとーさんがすーりすーりするね!すーりすーり、しあわせー!」 「しゅーりしゅーり、ちあわちぇー!」 「ゆぅん、じゅるいよ!れいみゅもみゃみゃとしゅーりしゅーりしゅるよ!」 「すーりすーり、しあわせー!」 「しゅーりしゅーり!ちあわちぇー!」 まりさがおちびちゃんだった頃、しあわせーと言えばせいぜい、 栄養不足でガサガサな両親の頬とのすーりすーりくらいしかなかった。 さもなければ、手の届かないところにある、木々の緑を眺めている間の、白昼夢の中にだけ。 まりさは思うのであった。 この、ゆっくりとしたおちびちゃんには、まりさの全てを注いで、精一杯しあわせーを与えていこうと。 そうすることが、自分の報われなかった過去を取り返すことにもなるかのように。 「おとーしゃん、ゆっくちないちぇるにょ?」 「ぴゃぴゃ、ゆっくちちちぇにぇ!」 「ゆぅ?ゆふふ・・・おとーさんはね、しあわせーすぎてないちゃったんだよ。とってもゆっくりしてるよ。」 「ゆぅん、へんにゃにょー。」 「ゆふふふ、おちびちゃんたちも、おおきくなったらわかるよ。ゆっくりおやすみなさい。」 「ゆっくちしゅーやしゅーやしゅるよ!・・・しゅーや、しゅーや。」 「・・・・・・ゆっくりしていってね。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 次の日の朝、異変は突然やってきた。 ざくっ! まりさ一家が眠っているおうちの中に、何かが突き刺さるような異音が響いた。 「ゆぅ、ゆ?なんなの?」 「まりさ、おうちのいりぐちで、へんなおとがしたよ。」 「ゆぁーん、ゆっくちできにゃいよぉ。」 「ゆゆぅ。まりさがみてくるから、おちびちゃんたちは、べっどさんのうえでゆっくりまっててね。」 「ゆぴゅぅ・・ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 「ゆぅぅ、なんなのぉ?・・・ゆぁぁぁぁあああ!なにこれぇぇぇぇぇええ!!?」 まりさが入り口に向かうと、おうちの入り口を塞ぐ『けっかい』を、何か見たことない物が貫いていた。 「ゆぅぅぅううううう!!ゆっくりでていってね!ゆっくりはやくいなくなってねぇぇぇええ!!」 それは人間が見たとしたら、子供の手のひらサイズの、先割れスプーンに似ていると思うであろう、 銀色に輝く金属製の道具であった。 金属製のそれは、まりさの言葉を聞くまでもなく、ゆっくりと左右に動かされ、『けっかい』の石や木の枝を崩しながら引き抜かれた。 まりさが、寒気でおちびちゃん達がつらい思いをしないようにと一生懸命塞いだ入り口は、 いともたやすく寒気の中に口を開けてしまったのであった。 「まりさ、どうしたの・・・どうしてけっかいさんがなくなってるのぉぉぉおおお!!?」 「ゆぅぁあああ!ぎんいろのぴかぴかさんが、けっかいさんをこわしちゃったんだよぉぉ!」 訳が分からない相手に、秋の間ずっと待ち望んでいたゆっくりした時間を奪われた衝撃で、 れいむだけでなく、群れの長になったほどのまりさまでもが逃げるという選択肢を忘れ、お外にいるであろう敵に向かって飛び出していった。 そこでまりさ夫婦が見たものは、 先ほどの特Lサイズの先割れスプーンを、長さ1mほどの棒の先端に取り付けた、 槍のような奇妙な道具を手に持つ、一人の人間さんであった。 ちなみにその道具は、人間さんを避けていた、ゆっくり達は知らない道具。 里の人間さんの間では、『あの棒』と呼ばれている道具である。 「ゆ・・・にん、げんさん・・・。」 「ゆぅ?・・・どぼちて・・・?」 これまで、ゆっくりしていないからと、近づかないようにしていた人間さん。 遠くもない所に住んでいるのに、ゆっくりプレイスに一度もやってこなかった人間さん。 それが、雪の降り積もった、ゆっくりがおうちに閉じこもってしまった今、なぜかここにいた。 茫然とした一瞬、その間に、まりさとれいむは、人間さんのあんよでころりと上下さかさまに転がされた。 「「ゆ?」」 そして次の瞬間、 ざくっ!ざくっ! 「ゆ・・・ゆぎひぃぃぃいいいい!!!」 上を向いた2匹のあんよに、『あの棒』が突き刺された。 「どぼぢでっ!あんよさんが、まりさのゆっくりしたあんよさんがぁぁぁぁ!!」 まりさの叫びともとれる問いは、人間さんには聞こえた雰囲気すらみえず無視しされた。 そして人間さんは、崩されたままだった『けっかい』の材料であった、 木の枝や大きめの石を『あの棒』を使って雪に埋めていく。 「どぼ、ぢで・・・。やべでね!げっがいでおうぢをふさがないど、ざむぐでゆっくりでぎないよ!!!」 だが、やはりまりさの声は届かず、人間さんは手際よく木の枝や石を雪に埋めてしまった。 「なんでぞんなごどずるのぉぉおおお!!まりさだぢ、なんにもじでないでじょぉぉぉぉおおお!!?」 さらに人間さんは、もはや邪魔するもののなくなったおうちの入り口から、『あの棒』をおうちに滑り込ませると、 先端のフォーク状になった部分でおちびちゃん達のベッドの端を引っ掛け、崩れないようにそろりそろりと引きずりだす。 そのベッドの上には、まりさとれいむの、5匹の可愛いおちびちゃん達が恐怖と寒さで震え、涙を流していた。 「ゆぴぃ、ゆぴぃぃ・・・ゆっくちちちぇ・・ゆぅぅぅ、ころがりゅぅぅうう、ゆぴぃっ!!」 そして、ベッドに引っ掛けたままの先端を少し持ち上げ、ベッド全体を傾けて、 ゆんゆん泣くおちびちゃん達をころりと転がし落とす。 おちびちゃん達もまりさも状況についていけず、泣くことも出来ずに目を丸くしている中、 主のいなくなったゆっくりしたベッドは、雪をひとすくいかぶせられ、人間さんのあんよでパンパンと踏み固められてしまった。 「ゆ・・・くち、べっどしゃん・・ゆっくちちちぇ。」 「ゆぅ、・・・ぺーりょ、ぺーりょ、・・・ちゅめちゃぃ・・・。」 何が起きているのか未だに理解できていないおちびちゃん達は、 すっかり踏み固められた雪の下にうっすらと見えるベッドの上にもしょもしょと集まって、 ぺーろぺーろしようとして舌を雪に突っ込んだり、あんよをもぞもぞさせて、 ついさっきまで確かに感じていた、ゆっくりとした柔らかさを得ようとしていた。 しかし、当然埋め固められたベッドは二度と柔らかさを取り戻すことはなかった。 「ちゃむいよぉ・・・ゆっくちちゃちぇちぇ・・・」 「ゆっく・・・しゅーり、しゅーり・・・」 そうでなくても生まれたてのおちびちゃん達は、跳ねることが出来ず、這いまわることしか出来ない。 その上、すっかり冷え切ったおちびちゃん達のあんよは、もはやわずかに震える程度にしか動かせなくなっていた。 雪に埋められた、かつてベッドだったモノの上で、5匹のおちびちゃん達は、おうちに戻ることもできず、 身を寄せ合ってなんとか温まろうとすーりすーりしている。 「ゆぅぅううう!!にんげんざん!もうやべでね!まりざはどうなっでもいいがら、おぢびぢゃんをおうぢにいれであげでぇ!!」 そんなことを言っている間に、人間さんは再度『あの棒』をおうちの中に突っ込み、 まりさとれいむが秋の間、必死になって集めた、ゆっくりとしたご飯さんを、山盛りすくい出し、 ビュッ!!・・・・パラパラパラッ。 勢いよく周囲の雪の上にばら撒いてしまった。 「やべでぇぇぇぇええええ!!!おぢびぢゃんのだめの、だいじなごはんざんがぁぁぁああああ!!!」 それも、2回、3回と繰り返される。 まりさには、おうちの中は見えていなかったが、秋の間集めた食料の、実に9割近くは辺り一面にばら撒かれていた。 無論、逆さまにされている上、あんよに大きな穴があいているまりさには、集めなおすことなど出来ない。 結局まりさの声は人間さんに一向に届くことなく、視線すら一度も合うことがなかった。 人間さんはふぅっと一息吐くと、まりさのおうちの木の、人間さんの目のあたりの高さに描いてあった、 すっかり色が薄くなっていた×印を赤の塗料で塗りなおす。 そして、全ての作業が終わったとでも言うように、人間さんは向きを変えると、 こきっ、こきっと首をならし、深呼吸をして、どこかに移動しようと、歩き始めたのであった。 「ゆ・・・まっちぇ・・・」 人間さんが再びまりさ一家の前に通りがかった時、ベッドの残骸の上でぷるぷると震えていた赤まりさが最後の力を振り絞って呼びかけた。 「どうちちぇ・・・?にんげんしゃ・・・ん。」 人間さんは、赤まりさの前を素通りすると、まりさの横を通って、 群れ幹部のちぇんとありすのおうちの方へと、まっすぐ向かっていった。 ざくっ! まりさの後方で、聞き覚えのある音が響いた。 「ゆぅぁあああ!ぎんいろのぴかぴかさん、けっかいさんをこわさないで・・にん、げんさん・・・?」 「わ、わからないよ・・・?」 「ちぇぇぇん!ありずぅぅぅうう!にげでぇぇぇええええ!!」 まりさは叫ぶ。だが、全ては遅すぎた。 「「ゆ?」」 ころりっ・・・ざくっ!ざくっ! 「わ・・・わぎゃらにゃぁぁぁあああ!!!」 「どぼぢでっ!あんよさんが、ありずのどがいはなあんよさんがぁぁぁぁ!!」 「なんでぞんなごどずるのよぉぉぉ!!ありずだぢ、なんにもじでないでじょぉぉぉぉおおお!!?」 まりさの背後で、ありすとちぇん達の叫び、そして、 まだ生まれたばかりであろう赤ありすと赤ちぇんの泣き声が聞こえる。 「ゆぴぃ、ゆぴぃぃ・・・わきゃらにゃぁ、ころがりゅぅぅうう、わきゃら!!」 ばさっ!ばさっ!ぱんっ、ぱんっ! 「しょんにゃ・・・くち、べっどしゃん・・しゃむいわ・・・」 「ゆぅ、・・・ぺーりょ、ぺーりょ、・・・わきゃらにゃ・・・。」 「ゆっくちちちぇ・・・しゅーり、しゅーり・・・」 ビュッ!!・・・・パラパラパラッ。 「やべでぇぇぇぇええええ!!!おぢびぢゃんのだめの、とかいはなごはんざんがぁぁぁああああ!!!」 ・・・・・・。 その後も、まりさの後方では、いくつかの家族の叫び声が聞こえ続けていたが、 それがいくつか続いた頃には、まりさも大声で人間さんに呼びかけたり、ゆっくりに逃げるように叫んだりはしなくなっていた。 ただ、逆さまのまま身動き一つ取らず、涙を流していた。 そしてよく見れば、まりさの遠く前方にも、まりさ同様に上下ひっくりかえされ、 あんよに穴を開けられたまま、声一つ上げずに泣く成体ゆっくりの、つがいの姿がいくつも見える。 そして、バスケットボール大の饅頭達の目の前では決まって、数個の小さな饅頭が身を寄せ合いながら、静かに息を引き取っていた。 まりさの横に、逆さまになっているれいむは、あんよに穴を開けられてから、一度も声を発することなく息絶えていた。 おそらくあんよへの一刺しが中枢餡にまで届いてしまったのであろう、即死であった。 だが、まりさから見れば、それはうらやむべき幸運であっただろう。 「ゆ・・・もっちょ・・・く・・・・・・」 「ゆっぐぢぢでぇ、おぢびぢゃん、ゆっぐぢぢでぇぇぇ。」 ベッドの埋まる雪の上で、身動き一つ取れず凍えていたおちびちゃん達は、結局誰にも助けられることのないまま、 まりさの目の前で苦しみぬいて死んでいった。 これから毎日、あったかいおうちの中で存分にむーしゃむーしゃして、すーりすーりして、 春になったらきれいな草花さんや、あったかい太陽さんの光に包まれて、ゆっくりとしたゆん生を歩むはずだったおちびちゃん達。 だが、今まりさの目の前には、涙まで白く凍りついた、悲しい表情のまま息絶えた5個の饅頭が並んでいる。 「・・・くちちちぇにぇ。・・とーしゃ・・・。」 「・・・・・・ゆ!」 5?・・・おちびちゃんがひとり足りない!! 「・・ゆっくちちちぇにぇ。・・おとーしゃん・・・」 「ゆ・・!ゆっくりしてね!おちびちゃん!おちびちゃぁぁあああん!!」 まりさが、動けないながらも必死で視線をおうちの中に向けると、そこには末っ子まりさの元気な姿があった。 「おにぇーちゃん・・・みんにゃぁ・・ゆっくちちちぇにぇ。」 「おちびちゃん!こっちにきちゃだめぇ!!」 「ゆぴぃっ!」 まりさは、姉達のもとに駆け寄ろうとする末っ子まりさを制止する。 「おちびちゃん!よくきいてね!おうちにごはんさんはある!?」 「ゆ・・・ゆぅ。おとーしゃんのぶんしかにゃいよぉ。」 「・・・ゆぅぅ、おちびちゃん。それはおちびちゃんのぶんだよ。」 「ゆぅ?しょしたらおとーしゃんのごはんしゃんがにゃくなっちゃうよ!ゆっくちできにゃいよぉ!」 まりさは、もう決断していた。 「おちびちゃん。まりさは・・・おとーさんは、もうゆっくりできないよ・・・。」 「どぼぢでしょんなこちょいうにょぉぉぉおおお!?」 「おとーさんは、もうあるけないんだよ。だから、おちびちゃん。はるさんがくるまで・・・ひとりでゆっくりしていってね!!」 「ゆぅぅううう!?しょんなのゆっくちできにゃいよぉぉおおおお!!!」 「だいじょうぶだよ。おちびちゃんは、まりさとれいむのおちびちゃんなんだよ。」 「・・・ゆ・・・ゆぅ。」 「だから、はるさんがくるまで、おうちのごはんをたべて、べっどさんのかわりに、ごはんさんのなかですーやすーやするんだよ。」 それは、まりさの夢。 まりさの最後の希望。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆぁぁぁあああん!!ゆっくちりきゃいしちゃよぉ!!ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 まりさの両親は、人間さんの手によって、山のゆっくり出来ない土地に追いやられた。 まりさは、人間さんの手によって、ゆっくり出来ない最期を迎えようとしている。 しかし、それでも希望は、まりさのゆっくりとした夢は、未来へと輝き続けるのだ。 そして、まりさは余りにも理不尽に幸福な未来を奪われながら、群れのゆっくりの中でただ一匹、 満ち足りた表情で3日間生き延び、その後永遠のゆっくりへと旅立っていったのであった。 そしてただ一匹人間さんの手を逃れた赤まりさは、わずかに残されたご飯さんを食べ、 ご飯さんの山をお布団代わりにして、中に身を埋めて必死に寒さと戦った。 だが、寒さで体温を奪われ続けるため、体温維持のためにむーしゃむーしゃを絶えず続けなければならない。 しかしむーしゃむーしゃを続けると、お布団の代わりになるご飯さんがどんどんと減っていき、体温を維持できなくなる。 そこでさらにむーしゃむーしゃを繰り返す。 しかも、どれだけ体温を維持しても、おうちの入り口を塞ぐ材料も技術もないので、 室温は全く上がらず、状況が改善されることは無い。 結局、赤まりさは、まりさが息を引き取る2日ばかり前に、おうちの食料を全て平らげて、あっさりと息を引き取ったのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 森は春を迎えた。 前年の秋には300匹を数え、冬ごもりの中で生まれた赤ゆを合わせれば1500匹を超えた巨大な群れは、 人間さんの手によっておうちから引きずり出され、一匹残らず死に絶えた。 そして、その亡骸は雪解けとともに溶け、大地に栄養を与えて森の恵みを育む。 それは、雪に埋められた赤ゆっくり達のためのベッドも、冬ごもりのために貯められた食糧も同様である。 沢山の栄養で育った草花や木々は、今年も多くのゆっくりに、ゆっくりとした恵みを与えてくれるであろう。 また、ゆっくり達によって長年整備されてきた木の洞は、 いずれも新たなゆっくり達にとって絶好のおうちになることであろう。 おうちの入り口を塞ぐ『けっかい』の材料にも困ることはない。 なにせ、前の年の冬にも使われた、小石や太い木の枝もそのまま残っているのだから。 ゆっくり達が変わることが無い以上、昨年最高のゆっくりプレイスであったココは、 今年も多くのゆっくりにとって、最高のゆっくりプレイスとなることであろう。 ・・・・・・そう、人間さんの里に、近づこうなどとは考えないほどに。 春を迎え、山にもベビーラッシュがやってくる。 まりさの両親は新しい命を迎え、過酷な生活の中でも少しだけゆっくりしていた。 「まりさとれいむのおちびちゃん・・・もうすぐうまれるね。」 「ゆぅん。とってもゆっくりしてるね。」 「このおちびちゃんたちも、おねえちゃんたちみたいに、げんきにそだってほしいね。」 「そうだね。・・・みんな、げんきにしてるかな?」 「きっとげんきいっぱいだよ。まえのおちびちゃんだって、あんなにゆっくりしたまりさだったもん。」 「そうだよね・・。」 「・・・そうだよ。」 ぶるぶる・・・ぷちんっ! ぽとっ! 「ゆぅ・・・ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 なーんかイマイチ。 挿絵 byキリライターあき 挿絵 by儚いあき 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生 本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ 前日談 ふたば系ゆっくりいじめ 522 とてもゆっくりしたおうち 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん 『町れいむ一家の四季』シリーズ 後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ) D.Oの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る てかこんな大規模な群なのにドススパーク打てる奴が居ないってどゆこと? -- 2018-08-25 19 01 46 フォオオオオオオオオオオオオおっぱいもみたい -- 2017-06-04 07 22 37 しかしこんだけ数がありゃ何組か残ってもいいはずだが わざわざ全滅させる必要も無さそう -- 2014-08-27 04 17 19 ガキはすぐ死んでいくのに外で足破かれて3日生きる糞饅頭の生命力ときたら・・・人間よりはるかに丈夫だなおい -- 2013-08-07 01 05 42 ↓森から群れが消えた日(後編)を読めば分かる -- 2012-08-03 01 38 02 なんか納得できない。 -- 2012-07-29 22 25 49 こういう感情もなく容赦無いSSにはキリライターの絵がすごくマッチするなあ -- 2011-09-27 01 52 37 ↓畑や人里に行く気も失せるようなゆっくりプレイスを作ってゆ害の防止、冬になったら一斉駆除って事じゃないか? -- 2011-08-30 06 56 43 結局人間がここまできた理由がまだわからないんだが・・・ -- 2011-08-27 00 47 47 かつて先祖が散々好き勝手やってきたツケを未だに支払わされてる訳だ、コイツらは。 「森から群れが消えた日」見る限り、山の人達にとっておよそ最悪の部類に属する害獣だし こんなのがのさばってたら当然駆除だわな。恨むんだったら愚かなご先祖達を恨んでね! -- 2011-05-01 14 25 18 う~ん… 人間って怖いね。 -- 2011-04-14 05 57 47 ゆっくりは、弱肉強食のなかでは一番弱い生物だ!! -- 2011-03-18 22 34 32 めっちゃ面白かった!ぱねぇQNQNできた!! ゆっくり出来る森は人間の罠だったのかw 人間が毎年群れを潰すからゆっくり出来る森でいられるんだな -- 2011-03-08 12 57 34 長の考えた策は良かったんだけどな、ゆっくりにしては上出来といえる -- 2011-01-30 13 20 39 やべえ濡れた やっぱ越冬を無理やり失敗させるのはたまらなくQNQNするね! -- 2010-12-02 23 20 17 まあ、かつて散々山荒らしまわったクズ共の子孫で 実際あの場所見つけるまでは人里乗っ取ろうと企んでたアホだし、駆除は当然だな。 -- 2010-11-16 15 45 12 なんかもう虐待いらないわ逆に -- 2010-11-03 23 55 50 淡々とする作業、まさに駆除って感じがして良いですねぇ。 街に来るゆっくりを防止するための防波堤でもあり、ゆっくりホイホイでもある森か -- 2010-10-20 14 49 36 語彙的に無理なんじゃね?ゆっくりの知能で何か説明するのって難しいんだろうと解釈した それに言葉を重ねるより、アレにとって「ゆっくりできない」は存在に関わる最強の脅し文句なんだし十分と思ったとか あとトラウマすぎてその話をする事すらとか無理ゲーとかなんじゃね?w -- 2010-10-07 06 31 53 ↓ それを話そうとすると、顔色変えて発狂して暴れだす始末なんだから無理だろ。 ここらへんがゆっくりの限界なんだよ。 -- 2010-09-28 00 47 17
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交番のおじちゃん 「またあいつだ」 最近、帰り道の交番の前に警官がいつもつっ立ってる。 それだけならどーでもいいんだけど、これが毎回絡んでくるからマジキショイのなんのって。 この前なんてこっちはオールで疲れてんのに 「おい」 「若い女の子がこんな時間まで何してんだ。さっさと帰りなさい!」 とか言って絡んでくるし…。町の駐在さんでも気取ってんのか?今時流行んねっつーの! 「今日もこんな時間に……。いい加減にしなさい!」 「毎回毎回、いちいちうっせーんだよ!こっちは好きで遊んでんだからほっとけばぁ? わかった~♪ 援交でも狙ってんでしょ?」 「そういうはしたない言葉遣いはやめなさい!」 「やめねーよバーカ! いっぺん死ねッ!」 さっきまで威勢のよかった警官の顔が一気に曇るのを感じた。 「……」 「…残念だけどもう私は死んでるから二度も死ねないんだよ…。」 「はぁ?」 「やっぱり覚えてないんだね…。」 「マジで何言ってんの?」 「いや今のは忘れてくれ。」 いつも暗がりでよく見えなかったけど、こうまじまじ見るとなぜか見覚えがある。 しかも、最近じゃなくて遠い昔にみた気がする。 「あっ!」 記憶の波が一気に押し寄せてくる。 この人は小さい時に良くしてくれた「交番のおじちゃん」だ。 お母さんとの買い物の途中にいっつもおやつをくれた大好きだった人だ。 確かに急にいなくなっちゃって、お母さんにしつこく理由を聞いたことを思い出す。 「ほんとにあのおじちゃんなの?」 あの交番のおじちゃんはゆっくりと笑顔で頷く。 「あんなにちっちゃくてかわいかった子が本当におっきくなったね。」 いつもは反抗的なギャルで通してる私が懐かしさのあまり思わず抱きついてしまった。 「ん?!」 ちょっと待てよ。 「なんで私おじちゃんにさわれてんの?」 笑顔だったおじちゃんの顔がさっきの何倍も曇る。 「…ずっとそれを君に伝えたかったんだ……。」 「…本当に残念だけど、君も死んでしまったんだよ……。守ってあげられなくて本当にごめん…」 おじちゃんは涙を必死でこらえながらそう伝えてくれた。 信じたくない。でも、昔の記憶となんら変わることのないおじちゃんに こうして触れてるのがなによりの証拠なんだね。 「おじちゃんは、私が迷子になった時おっきな手をつないでくれて、わたしんちまで送ってくれたよね。」 「ちょっと私の手もおっきくなっちゃったけど、また手をつないでよ♪」 ある交番の前に揺らめいていた二つの影は、夜明けの空に向かってスゥーっと消えていった。