約 3,522,442 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1233.html
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ それを見つけたのは、久しぶりに部屋の大掃除をしている時だった。 「おお、これは懐かしい……」 すっかりボロボロになった、小さめの箱。 表面には、満面の笑みを浮かべるゆっくりのイラストと、セリフが描かれている。 『ゆっくり採集セットだよ!』 『ゆっくり捕まえていってね!』 小さな頃に入手したは良いが、存在を忘れて適当に押し込んでいたのだろう。 箱を開けてみると、小さな注射器まで入っている。 最近は何かと物騒だし、この手の道具はご法度だ。 「もう、こういうものは流行らないのだろうなぁ」 野生ゆっくりは、かなり森の中まで行かないとお目にかかれなくなっている。 街の野良ゆっくりは一斉駆除ですっかり姿を消してしまったし、飼いゆっくりに手を出すと当然問題になる。 時代の流れというやつだ。 「明日は休みか……よし!」 休日の予定も特になく、街の喧噪にも飽いていたところだ。 これは、ちょうど良い暇つぶしになるかもしれない。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 「居ないものだなぁ……」 手持ちぶさたに、取り網をブラブラと振り回す。 気がつけば、かなり森の奥まで来てしまった。 既に人工物の類は、全く見当たらない。 耳に入るのは、木々の葉を揺らす風の音と、微かに聞こえる河のせせらぎぐらいだ。 入念に辺りを見回すが、ゆっくりのゆの字も見あたらない。 森の中でさえ、既に絶滅してしまっているのだろうか? ……少し、腹が減ってしまった。 取り網を足元に置き、傍らの岩に腰を下ろす。 私はひとまず小腹を満たすため、リュックからおにぎりを取り出した。 「もっと、森の奥まで行くべきか?」 おにぎりに口をつけた、その瞬間だった。 「ゆっくりしていってね!」 聞きなれた、しかし最近では珍しくなった声。 木陰から覗く、キリリとした眉毛に不敵な笑顔。 「お、ゆっくりしていってね」 「ゆゆ~ん!」 挨拶を返されたのが嬉しかったのか、笑顔が更に弾けてゆく。 黒髪に赤いリボンは、れいむ種というヤツだ。 大きさはバレーボール程だろうか。 「ゆ……」 よく見れば、口元からは涎が垂れている。 その視線は、私のおにぎりに釘付けだ。 「……これが欲しいのかい?」 「ゆ! ゆ!」 れいむは、その場でピョンピョンと跳ね始めた。 どうやら正解だったようだ。 私はおにぎりを少し千切ると、れいむの手前に投げてやった。 「ほら、食べろ」 「ゆわーい」 れいむは何の警戒もせず、おにぎりの欠片へ飛びつく。 まずは匂いをかぎ始めた。 鼻も無いのに匂いが感じられるのは、まったくもって不思議なことだ。 次に、おにぎりの欠片へ舌を伸ばす。 ひと舐めすると満足気にほほ笑み、やっともそもそと食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ」 私は、おもむろに取り網へ手を伸ばす。 「しあわせー!」 れいむが、歓喜の声と同時に私を見上げてきた。 静かな森の中、ガッチリと目が合う私とれいむ。 「っ!」 目線を合わせたまま、私は取り網を振り下ろす。 「……ゆ?」 れいむは幸せそうな笑顔のまま、私を見続けていた。 私も、れいむを無言で見つめ直す。 そのままの体勢で、数秒は経っただろうか。 「ゆ!? ゆっくりできない!?」 やっと状況が把握できたらしく、れいむが網の中で暴れだす。 と言っても、片手で簡単に抑えきれる程度の抵抗ではあるが。 そのうち、暴れるれいむの足元から、まだ少し残っていたおにぎりの欠片が散らばってゆく。 「ゆ! むーしゃ、むーしゃ」 れいむも気がついたらしく、おにぎりの欠片を再び食べ始める。 一通り処分すると、また私を見上げて笑顔になった。 「しあわせー!」 「そうか、良かったな」 「……ゆ? ゆっくりできない!?」 状況を思い出したのか、れいむが再び網の中で暴れだす。 野良ゆっくりの駆除は、かなり短期間で大きな成果を上げたと聞く。 私は、その理由がよくわかったような気がした。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ こんな簡単に餌で釣られるのなら、準備をしておくべきだった。 手持ちの食料は、自分の昼食分ぐらいしかない。 「すーや、すーや」 リュックに取り付けた捕獲用の網に目をやると、れいむが眠りこけていた。 先を絞った網に納まっている様子は、まるでスイカのようだ。 閉じ込める時は、それなりに抵抗をしていたのだが……。 ものの数分もしないうちに、絶賛睡眠中のようだ。 「すーや、すーや」 「………………」 リュックと共にれいむを下ろし、拳を握り締める。 大きなキズは付けたくないので、れいむの底面を手前に向けた。 よく見ると、底面が軽く波を打っている。 このれいむは、あまり寝相がよろしくないようだ。 おしおきが必要だな。 「ふんっ!」 渾身の気合で、れいむの底面に拳を打ち込む。 適度に柔らかく、それでいて心地よい反発。 「ゆぎゅ!?」 素早くリュックを背負い直す。 当然、網に入ったれいむも背中へ戻る。 「……なんだか、いたいゆめだったよ。こんどはもっとよいゆめをみるよ!」 「ああ、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね! ……すーや、すーや」 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 私は、れいむが出てきた木陰の奥へ足を進めていた。 ゆっくりは、少なからず群れるものだと聞く。 もしかしたら、仲間か……巣が見つかるかもしれない。 だが、いくらゆっくりとはいえ、野生のものだ。 さすがに巣となると、そう簡単には見つからないだろう。 「みゃみゃのけっかいっ! は、ゆっきゅりできるにぇ!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 簡単に見つかったようだ。 木のうろに、不自然に立てかけられた小枝。 小枝の隙間からは、プチトマト大の丸いものがしっかりと見えていた。 1、2、3……たくさんの赤ゆっくりだ。 巣の目前に立ちふさがる私に、全く気がつく様子もない。 「みゃみゃは、まだかえってこにゃいの?」 「きっと、いっぱいかりをしてるんだよ!」 「あまあま、いっぱいだにぇ!」 「あまあま! あまあま!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 もしかして、さっきのれいむの子たちなのだろうか。 そんな疑問も浮かんだが……。 熟睡中のれいむを起こすのも忍びないので、確認はしないでおく。 しかし、こんな小さな子だけを巣に残して、大丈夫なのだろうか。 赤ゆっくりを良く見ると、れいむ種の他にまりさ種も見える。 ということは、親の片方はまりさ種のはずだが……。 「でも、みゃみゃがいないと、れいみゅさびちぃよ」 「まりちゃ、ゆっくちしてにぇ!」 「ぴゃぴゃがいれば……ゆっぐ、ゆっぐ」 「ゆ……ゆわーん!」 ご丁寧な説明に、感謝する。 なるほど、親まりさは既に永遠にゆっくりしてしまったようだ。 可愛そうに。色々と辛いこともあっただろう。 「よっ、と」 私は汚物を避けるかのごとく、けっかいっ! を蹴り払った。 ついでに、足の裏で丹念に踏みにじる。 「ゆゆ!?」 赤ゆっくり達が、慌てて巣から飛び出してきた。 飛び出したといっても、歩みはゆっくりしたものだったが。 赤ゆっくりはどれもこれも、跡形も無くなったけっかいっ! ……が、あった筈の場所を見て驚愕している。 「けっかいっ! さん、ゆっくちちてにぇ!?」 「どこいっちゃの、けっかいっ! さん!?」 しばらくオロオロとしていた赤ゆっくり達だが、何匹かが私の存在に気が付いたようだ。 「……ゆ?」 「ゆわぁ!? にんげんしゃんだぁ!!」 私に気が付いたからなのか、単に錯乱しているのか。 赤ゆっくり達は、てんでバラバラな方向に散らばってゆく。 小さく細かく跳ねるもの、這いずり回るもの、と色々だ。 「ゆわーん! みゃみゃー!」 「たちゅけちぇね! たちゅけちぇね!」 赤ゆっくり達の移動スピードは、とてもゆっくりしている。 しかし、汗だか涙だかわからないが、妙に身体が湿っていて掴み辛かった。 「まりちゃ、ちゅかまりちゃくないよぉ!」 掴み辛かった赤まりさに、おもむろに足を振り下ろす。 「ゆぎゅぶっ!」 ついでに、足の裏で踏みにじる。 すり潰すように、丹念に丹念に。 「た、たちゅけちぇぶっ! ふぎゅ!」 処理を終えた私は、比較的掴みやすかった赤れいむを、母と同じ網へ放り込んだ。 親子水入らず、感動のご対面だ。 「みゃみゃ!?」 「すーや、すーや」 「ゆぅ、みゃみゃとってもゆっくちしてりゅにぇ!」 「すーや、すーや」 「れいみゅもゆっくちしゅるよ! ……ゆぴー、ゆぴー」 ああ、逃げるのに疲れて眠ってしまったんだね。 まだ赤ちゃんだもの、それは仕方がない。 私は、渾身の気合を込め、親れいむに拳を打ち込む。 「ゆぎゅ!?」 「ぴぎゅ!?」 押しつぶされるように、赤れいむが潰されてしまったようだ。 原型を全く留めず、ただの餡子の染みになっている。 「ゆぅ、またいたいゆめを……ゆゆっ!? あまあま!? ぺーろ、ぺーろ!」 「よかったな、れいむ」 「しあわせー! ……すーや、すーや」 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 結局、生きたまま捕まえられたのは、赤れいむ2匹、赤まりさ2匹だけだった。 他は全部、不可抗力により餡子の染みになってしまったようだ。 捕まえたゆっくり達は、網の中で親子仲むつまじく熟睡中だ。 「成体だと、あと1匹ぐらいか」 親れいむを捨てて、赤ゆっくりだけにすれば、もっと持ち運べそうではある。 しかし赤ゆっくりだけというのも、情緒が無い。なんの情緒かは知らないが。 「ゆゆっ!? れいむとおちびちゃんがぁ!?」 突然、背後からすっとんきょうな声。 慌てて振り向くと、金髪に黒帽子をかぶった丸い物体が鎮座していた。 網の中のゆっくりを見つめて、驚愕の顔で固まっている。 このゆっくり達と、顔見知りのまりさなのだろうか。 もしかしたら父親? しかし、父親は永遠にゆっくりしたはず……。 「れいむとおちびちゃん、まるでおそらをとんでるみたい!」 既にまりさから驚愕の顔は消え、恍惚とした表情に変化していた。 私は、ひとまず声をかけてみる。 「ゆっくりしていってね」 「ゆっ! ゆっくりしていってね!」 「お前、このゆっくりの知り合いか?」 「そんなことより、まりさもおそらをとびたいよ!」 まりさが頬を染めつつ、その場で何度も飛び跳ねる。 ポヨンポヨンと、自然界に相応しくない奇妙な音が響き渡る。 「これは飛んでいるのではなく、捕まっているだけなんだが」 「とばせてね! まりさとんじゃう!」 どうやら日本語が通じないようだ。 仕方がないので、網の中のれいむを地面に下ろし、拳を打ち込む。 「ゆぎゅ!?」 「おはよう、れいむ」 「ゆぅ……れいむ、いたいゆめを」 「このまりさは、お前の知り合いなのか?」 「ゆ? ま、まりさ!? れいむのまりさ!?」 親れいむの声に、やっと我に返ったのだろうか。 飛び跳ねるだけだったまりさが、反応を示し始める。 「そうだよ! れいむのまりさだよ! ゆっくりりかいしてね!」 「まりさ、あいたかったよー!」 「れいむ、あいたかったよー!」 まりさが、一直線に愛するれいむの元……つまり私の元へ向かってくる。 すかさず手を伸ばし、まりさの帽子を掴み上げる。 「ゆあぁ! すてきなまりさのおぼうしさんが!」 急ブレーキをかけて、れいむに向かうのを止めるまりさ。 頭上高く持ち上げられた帽子を取り戻そうと、一生懸命に身体を伸ばし始めた。 「まりさのおぼうしさん、ゆっくりもどってね! のーびのーび!」 「がんばってね、まりさ!」 まりさは何やら忙しそうなので、代わりにれいむへ疑問をぶつけてみる。 「なぁれいむ、お前のまりさは死んだんじゃなかったのか?」 「まりさはしんでないよ! れいむはしんじていたよ!」 「じゃあ今まで、まりさは何処に居たんだ?」 「かりにいって、かえってこなくなっただけだよ!」 なるほど、何か事故にでも遭っていたのだろうか。 見れば親まりさの身体は、あちこちキズだらけだ。 愛するものの元へと帰るべく、様々な苦難を乗り越えてきた証なのだろう。 暖かい家族の絆に、思わず目頭が熱くなってしまうのを禁じえない。 「のーびのーび! のーびのーび!」 親まりさの妙に伸びたドテっ腹に、私は尊敬の気持ちを込めた拳を打ち込んだ。 「のーびのーぶぎゅふぅっ!」 親まりさが、くの字になって吹っ飛んでゆく。 それを見て親れいむが絶叫する。 「ばでぃさー!?」 「こらこら、愛するものの名前を間違うなよ。バディサじゃなくてまりさだろ?」 「ばでぃさは、ばでぃさだよ! ゆっぐりりがいじでね!」 「……ふんっ!」 「ゆぶっ!」 親れいむも疲れているようなので、私の拳で眠らせてあげた。 寝言もなく横たわっている様子を見る限り、今度は幸せな夢でも見ているのかもしれない。 傍らに居た赤れいむが、今の衝撃で一匹潰れてしまったようだが致し方ない。 「まりさのおぼうし、かえして……ね」 か細い涙声が、私にかけられた。 お腹の辺りを真っ赤にした親まりさが、私に向かって這いずってきているようだ。 「どうした、お腹でも痛いのかい?」 「すてきな……まりさの……おぼうし……」 大事な帽子に、万が一のことがあってはいけない。 親れいむ達が眠る網の中へ、帽子をそっとしまいこむ。 「ゆんやー! かえしてね! かえしてね!」 それを見て、親まりさが一目散に網の中へ潜り込む。 やはり家族の絆は、私が思っていたよりも強かったようだ。 また生き別れになどならないよう、網の口をきつく締め上げる。 「まりさのおぼうしさん! ゆっくりおかえり!」 さっきまで涙目だった親まりさも、すっかり満面の笑顔だ。 「ふんっ!」 「ゆぎゅふっ!」」 長旅で疲れた身体を癒すには、睡眠が一番だ。 親まりさが安らかな眠りについたのを確認し、私は安堵する。 今の衝撃で更に赤まりさが一匹潰れてしまったことも、いつか良い思い出になるだろう。 これで後腐れなく、森を後にすることができそうだ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 森から帰ってきた私は、早速、次の準備を始めた。 網の中から熟睡中のゆっくり達を取り出し、ちょうど空いていた大き目の水槽に並べてゆく。 この大きさなら、先刻のように不可抗力で赤ゆっくりが潰れることもないだろう。 結局、最終的に持ち帰ることができたのは……。 親れいむ&親まりさと、赤れいむ&赤まりさ、それぞれ一匹ずつ計4匹だけだった。 希少種までとは言わないが、もう少し色々な種類が欲しかったものだが……。 一斉駆除の影響が出ているのだろうか。 既に野生では、元々絶対数の多いれいむとまりさが大半なのかもしれない。 「ゆふぁ~、よくねちゃよ……」 「ゆ……おはようおちびちゃん」 「……まだねみゅいよ~」 「ゆふふ、おちびちゃんはおねぼうさんだね!」 「きゃわいくちぇ、ごめんにぇ!」 ゆっくりの生態について思いを巡らせているうちに、家族がお目覚めのようだ。 眠そうな目をもみあげやおさげで擦りつつ、ぼんやりと私の方へ視線を向けてくる。 「ゆゆっ!」 「ゆっくりしていってね!」 「しちぇいっちぇにぇ!」 「ああ、ゆっくりしていってね」 「ゆふ~ん」 挨拶を返すと、満足げに笑みを浮かべるゆっくり達。 「ゆゆ? ここはどきょ?」 「わからないよ!」 「ぴゃぴゃがいるよ!」 「おちびちゃん!」 「みゃみゃもいるよ!」 「おちびちゃん!」 親子が夢にまで見た、感動の再会だ。 どのゆっくりも涙が滝のように溢れている。 「ゆっくりできるね!」 「ゆっくりしようね!」 「ゆっくりしていってね!」 「しちぇいっちぇにぇ!」 家族の問題は無くなったようなので、私は準備の続きに戻る。 水槽から少し離れた場所に標本台を置き、採集セットの中身を広げてゆく。 「さて、まずは……」 私は腕を組み、最初のゆっくりをどれにするか考え始める。 「おちびちゃん、これからはずっといっしょだよ!」 「ぴゃぴゃ~!」 「ゆっくち、ゆっくち!」 まぁ、どれでも良いか。 「なにがあっても、まもってあげるからね!」 「れいむのまりさは、もりでいちばんつよいんだよ!」 「ゆゆ~ん! てれるよ、れいむぅ~」 たまたま目に止まった赤れいむを、水槽の中から摘み上げる。 「ゆっくち、ゆっく……ゆっ?」 涙で滑っているのか、掴み辛い。 もう少し指に力を込めて……。 「ゆ、ゆわぁ~! れいみゅ、おしょらを」 グシャッ! 「……あ」 「ゆ?」 「おちび……ちゃん?」 どうやら、力を込めすぎたようだ。 空中で餡子を撒き散らしながら、潰れてしまった。 「まりちゃの、きゃわいい、いもうちょがぁ~!?」 水槽の中に、赤れいむだったものの破片が降り注ぐ。 その様子は、まるで餡子のシャワーのようだ。 「れいむの、かわいいおちびちゃんがぁ~!?」 「かわいいまりさの、おちびちゃんがぁ~!?」 まぁいいか、赤ゆっくりならもう一匹いるし。 私は、あらためて慎重に赤まりさを摘み上げる。 「ゆゆっ! まりちゃ、おしょらをとんでりゅみちゃい!」 「ゆ、ゆわぁ~! れいむのかわいいおちびちゃん、とってもゆっくりしてるよ~」 「さすが、かわいいまりさのおちびちゃんだよ!」 家族の歓迎に包まれながら、赤まりさは標本台にセットされた。 標本台は、四方を浅く囲まれた箱のような形になっている。 赤まりさは、顔を天井に向けた状態だ。 「……ゆゆっ? なにしゅるの?」 キョロキョロとせわしなく周囲を伺う赤まりさを、片手で抑える。 暴れないことを確認すると、私は採集セットからピン針を何本か取り出した。 少々錆びついているようだが大丈夫だろうか? 「あしょんでくりぇりゅの? ゆわーい!」 「ねぇ、れいむ!」 「なぁに、まりさ?」 「おちびちゃんも、りっぱにゆっくりしていることだし、ひさしぶりに……!」 「ゆふふ……まりさったら、こんなあかるいうちから!」 「そういうれいむだって、まんざらじゃないんだよ!」 「まりさ……!」 「れいむ……!」 まずは……どこに刺せば良いんだろう? 赤まりさの身体を見渡し、適当な所を探す。 「はやくあしょんでにぇ! あしょんでにぇ!」 期待に満ち溢れた目で、赤まりさが私を見つめている。 ふと、ピコピコと激しく揺れるおさげが目についた。 「ここかな」 プスッ! 「……ゆ?」 赤まりさが、おさげと私の顔を交互に見つめる。 まん丸な目には、疑問の色が浮かんでいるようにも感じた。 「まりちゃのおしゃげさん……? うごきゃないよ?」 「そりゃ、ピン止めしたからな」 「どうちて?」 「どうして、って……」 返事の代わりに、ピン針を頬のあたりに差し込んでやる。 決して、説明が面倒だったわけではない。 「ゆびゃあ~っ!」 ピン針に特に問題はないようだ。 もう片方の頬やお腹のあたりに、次々と刺してゆく。 「いちゃい! いちゃいよぉ!」 ここにきて、赤まりさが暴れだした。 帽子が外れて、標本台から落ちそうになる。 「まりちゃの、しゅてきなおぼうちがぁ~!」 「おっと」 赤まりさが大きく身体を捻ろうとした瞬間だった。 ピン針が、赤まりさに刺さったまま折れてしまったのだ。 「やっぱり錆びてたかぁ」 「ゆんやぁ~!? いちゃい、いちゃいよぉ~!」 赤まりさが、グニグニと身体を揺らす。 異物を排除しようとしているのだろうか。 「まりちゃのなかに、なにか、はいってくりゅ~!」 「仕方ない、もう一本刺すか」 折れたピン針の辺りを狙い、再度刺しこむ。 「ゆっぴいぃ~!?」 「お?」 赤まりさがあんまり暴れるものだから、ピン針で刺されている周辺が裂けてきたようだ。 じわりじわりと、裂けた肌から餡子が漏れ始めている。 「まずいな、補強しないと」 裂けている周辺に、次々にピン針を刺しこんでゆく。 「やめっ! いちゃ! ぴぃ! ゆ゙っ! ゆ゙っ!」 刺しこまれる度に、赤まりさはビクビクと痙攣を始めるようになってしまった。 「ん? どうした?」 「ゆ゙っ! ゆ゙っ! ゆ゙っ! ゆ゙っ!」 赤まりさが妙なリズムで鳴き始めた。 ピン針を刺されるのが嬉しいのだろうか? ゆっくり版の針治療みたいなものだろうか。 そういうことなら、期待に答えてやらねばなるまい。 今度は赤まりさの腹の真ん中あたりに、ピン針を一気に刺しこんでやった。 「ゆ゙っ!」 今まで以上に、赤まりさが大きく鳴いた。 ゆっくりのツボはよく分からないが、針が効いたんだろうか。 「……もっちょ……ゆっきゅり……したかっちゃ……」 「あれ?」 赤まりさは、身体の穴という穴から餡子を漏らし、動かなくなってしまった。 これでは標本とは呼べない。ただの生ゴミだ。 おかしい……何を間違った? 「……あ、そうか。先に殺さないと駄目だったっけ」 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 「んほおおおぉぉ!」 「……すっきりー!」 水槽の方から、何やら嬌声が聞こえた気がした。 元赤まりさだった生ゴミを処分した後、あらためて水槽へ向かう。 「なにしてんだ、お前ら?」 「ゆふぅ……」 「ひさしぶりだから、いちだんともえちゃったよ!」 「なやましくてごめんね!」 「よく分からないが、お前らの番だぞ」 どちらでも良かったのだが、とりあえず親れいむを両手で持ち上げる。 「ゆゆゆ!? れいむおそらをとんでるみたい!」 「ゆわー! さすがかわいいまりさのれいむ、ゆっくりしてるよー!」 「……あれ?」 気のせいか、捕まえた時よりサイズが大きくなっているような気がする。 特にお腹のあたりが大きく膨れているような……。 「まぁ、殺ることは一緒だから別にいいか」 ひとまず作業台へ親れいむを乗せる。 これだけ大きくなると、普通の標本台じゃうまく入らないかもしれない。 「ちょっと待ってろ」 「ゆゆ~。おちびちゃん、ゆっくりうまれ……」 親れいむの声を背にし、標本台の代わりにダンボール箱を持ってくる。 天井側のフタを切り取り、あらためて親れいむを上から入れ込んだ。 「ゆゆっ? ここどこ?」 「注射器は……よし」 笑顔のまま、ダンボールを気にしてキョロキョロしている親れいむに注射器を向ける。 そのまま躊躇なく一気に刺しこむ。 「チクっとしたよ!」 親れいむが、もみあげを使って注射部分をさすり始める。 まるで予防接種を受けた昔の子供のようだ。 そんなに揉んで欲しいのなら……私は手を伸ばす。 「ゆゆっ! もーみもーみ! もーみもーみ!」 私が揉むのに合わせて、親れいむがリズムを取り始めた。 だんだん頬が紅潮してきているような気がする。 「……ゆゆっ! う、うまれる!」 「え?」 膨らんだお腹に小さな穴が開き始め、小さな丸いものが顔を覗かせている。 目をこらして丸いものをよく見ると……。 「ゆっくちうまれりゅよ! きゃわいくてごめんにぇ!」 それは親れいむそっくりの目と口で、満面の笑みを浮かべていた。 外へ出るべく、丸いものがじりじりと蠢いている。 「おいおい、こんな時に……」 「れいむのかわいいおちびちゃん、ゆっくりうまれてね!」 「ゆっくち! ゆっく……ゆ?」 「……ゆぐっ!?」 赤ゆっくりは、既に半分ぐらい顔を出していた。 髪の毛や飾りはまだ見えないので、何の種類なのかは分からない。 親れいむが苦しそうな声を上げて、いきみ始める。 なぜか赤ゆっくりまで苦しそうだ。 「ゆっくりでも、お産は苦しいものなんだな」 「なんだきゃ、ゆっくちできにゃい……」 「く、くるしい……たす……け……」 私は、生命の神秘を静かに見守った。 やがて赤ゆっくりがボテッっと生れ落ちると……。 「れいみゅ……ゆっくちうまれちゃ……かった……」 そのまま、ピクリとも動かずに固まってしまった。 黒髪に赤リボン、どうやられいむ種だったようだ。 が、既に笑顔はどこにもなく、生気が全く感じられない。 「あれ? どうしたんだ、おい」 「お、おちび……ちゃん……?」 親れいむも気がついたようだが、動かしたのは視線だけだ。 身体は全く動かしていない。 大きな目からは涙が溢れ、苦しみを訴えるかのような口元からは涎が垂れている。 いつも無駄にキリリとつり上がっていた眉毛も、すっかり八の字型になっていた。 「どぼじで……」 ついに親れいむも、固まってしまった。 いくら突付いても、殴っても、反応が無い。 「……ああ、注射が効いただけか」 注射器に貼られた、イラスト付きラベルを見直す。 『ゆっくり固めていってね!』とフキダシ付きのゆっくりが、そこには描かれていた。 「こんなに苦しんじまうのか」 親子れいむの表情は、とてもじゃないか飾るに適したものではなかった。 目も口も眉毛も、恐怖と苦痛に満ち溢れている。 もっと良い表情で固めるには、どうすれば良いのだろう? 元親子れいむだった生ゴミを処分しながら、私は考えを巡らせた。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 「ゆゆっ? おそらをとんでるみたい!」 昼寝を始めようとウトウトしていた親まりさを、水槽から掴み上げる。 こいつも、捕まえた時より大きくなっているような……? 「まりさとんでる~!」 「なぁ、まりさ」 ダンボールに親まりさをセットして、私は問いかけた。 「お前も子供産むのか?」 「ゆゆ!? まりさとんでない! とびにくい!」 「このお腹の大きさは……」 「そんなことより、まりさをとばせてね!」 親まりさの帽子を掴み上げ、即バラバラに引き裂く。 「ゆあぁぁぁ!? すてきなまりさのおぼうしさんが!」 「質問に答えたら、おぼうし治してやるぞ」 「ほんとう!? ゆっくりありがとう!」 「で、子供産むのか?」 「れいむがはげしすぎて、まりさまでおしたおしたんだよ!」 「へー」 「だから、おぼうしなおしてね!」 「あれは嘘だ」 「ゆがーん!?」 とりあえず、この身体のキズを何とかしなければならない。 親まりさの身体は、長い放浪生活のせいか、かなり痛んでいる。 私は採集セットから、小さなチューブ型容器を取り出した。 イラスト付きラベルには『ゆっくり治していってね!』とフキダシ付きのゆっくり。 容器を絞ると、練った小麦粉のようなものがひり出てきた。 どうやら、これが修復薬のようだ。 「暴れるなよ?」 「ゆゆっ?」 両手を使って、修復薬を親まりさの身体に万遍なくすり込んでゆく。 「ゆ、ゆふっ! ゆふっ!」 見る見る間に、親まりさのキズが目立たなくなってゆく。 かなり古い薬なのだが、ちゃんと効くものなのだなぁ。 「き、きもちいいよ! もっとぬりぬりしてね!」 同時に親まりさの息も荒くなってきているようだ。 頬もほんのりと染まり、幸せ一杯の笑顔だ。 「ぬーりぬーり! ぬーりぬーり!」 「うん、この表情なら……」 注射器を手に取り、ほんの少しだけ薬剤を注入する。 「チクっとしたよ! ……ゆぐっ!?」 あっという間に表情が曇り、苦痛を訴える親まりさ。 これでは先程と同じ結果になってしまう。 私は、慌てて修復薬を塗り直した。 「ゆぐっ……ぬーりぬーり? ぬーりぬーり!」 ガッチリと私に視線を合わせ、もっと塗ってくれと訴えんばかりの親まりさ。 輝くような笑顔は、まさにゆっくりの標本に相応しい。 再び私は、注射器を刺しこむ。 「チクっとしたよ! ぬーりぬーり! チクっとしたよ! ぬーりぬーり!」 私は注射器と修復薬を交互に使い、親まりさの笑顔を絶やさないよう留意した。 これならば、良い標本が完成しそうだ。 そして、注射器を使い終わろうとした瞬間……。 「……ゆっ!? うまれる!」 先程の親れいむと同じように、親まりさのプックリ膨れたお腹に穴が開き始める。 そこから親まりさ同様の眩しい笑顔が、ゆっくりと覗き始めた。 「ゆっくちうまれりゅ……」 これも先程と同じく、顔部分だけが覗いているため種類はわからない。 違っていたのは、希望に満ち溢れた笑顔のまま動かなくなったことだ。 「かわいいまりさの、おちび……」 視線を親まりさの顔へ戻すと、こちらも笑顔のまま固まっている。 指で突付いても、何の反応も示さない。 どうやら、今度はうまくいったようだ。 しかも親子セットだ。 達磨の腹に、もう一つ小さな達磨の顔があるような外見になっている。 今度は安心して、ピン針を身体のあちこちに刺しこむことが出来た。 「苦労したが……これで完成だな!」 よくわからない達成感に、私は満たされていた。 親子まりさの輝くような笑顔も、祝福を送っているかのようだった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ それを見つけたのは、久しぶりに部屋の大掃除をしている時だった。 「おお、これは懐かしい……って、あれ?」 すっかりボロボロになった、小さめの箱。 表面には、満面の笑みを浮かべるゆっくりのイラストと、セリフが描かれている。 『ゆっくり採集セットだよ!』 『ゆっくり捕まえていってね!』 「数ヶ月前にも、こんなことがあったような……あっ!」 採集セットの更に奥、押し入れの最深部に小汚いダンボールを見つける。 ゆっくりと戻ってくる記憶とともに、ダンボールの中を覗くと……。 「忘れてた」 そこには、親子まりさの標本が鎮座していた。 完成したは良いが、あっという間に飽きて、しまい込んでいたのだった。 いつかまた飾りたい気分になるかもしれない、と思っていたのだが……。 「もういいや。捨てよう」 ピン針は分別しないとな……。 処理を終えると、私は最寄りのゴミ置き場へ向かった。 見上げれば、今にも雨が降りそうな曇り空。 「思い出も、雨とともに過去へ流されてゆくのかな」 うまいこと言ったつもりだったが、全くそんなことはなかった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ あれから、どのぐらい経ったのだろう。 ゆっくり採集のことも、親子まりさのことも忘れかけていた、ある日のことだった。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいってにぇ!」 突然の声に振り向けば、そこには見覚えあるゆっくりが居た。 「お前は……」 「おにいさん、ひさしぶり!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 達磨の腹に、また小さな達磨の顔。 親子まりさの標本だったものが、ゆらゆらと身体を揺らしていた。 「なんで生きてるんだ?」 「よくわからないよ!」 「ゆっくちりかいしてにぇ!」 拳を何度か打ち込んで、平和的に事情を聞いてみる。 簡単に言うと、こういうことらしかった。 ゴミ捨て場に親子まりさを捨てた日、やはり雨が降ってきていた。 そこには他のゆっくりゴミも混じっており、餡子が雨に流れて親子まりさに降り注いだらしい。 「とってもおいしかったよ!」 「また、たべたいにぇ!」 採集セットの注射薬剤は、固めるだけで殺しはしないものだったのか。 親れいむを捨てたのが晴れの日で良かったよ。 それにしても、そんな簡単に復活できるものなのか? 「適当だな、お前ら」 「ゆゆっ! かわいくてごめんね!」 「ごめんにぇ!」 その時、複数の足音が近づいてくるのに気が付いた。 「通報があったのは、確かこの辺りだが……」 「お、居た居た」 声が聞こえた方へ、私も親子まりさも顔を向ける。 制服を着込んだ二人の大人が、こちらへ向かってきていた。 あの制服は確か……野良ゆっくり処理の……。 「失礼します。野良ゆっくり処理班なのですが……」 「これは、あなたのゆっくりですか?」 処理班の一人が、親子まりさを指差した。 「いえ、全く知りません」 「ゆ~?」 状況を把握していないだろう親子まりさが、間の抜けた声を上げる。 相変わらずの笑顔のまま、私と処理班を交互に見上げ続けていた。 「そうですか、では処理しますね」 「お疲れ様です」 処理班の一人が、ポケットから小さな注射器と飴玉を取り出した。 その場にしゃがみこんで、親子まりさに顔を向ける。 「あまあまあげるから、おいで」 「あまあま!」 「あみゃあみゃ!」 顔と腹から涎を撒き散らしつつ、親子まりさが処理班の元へ飛び跳ねてゆく。 すかさず注射器が親子まりさに刺しこまれた。 「ゆぐっ」 一瞬だった。 あっという間に親子まりさはその場に固まり、動かなくなってしまった。 やはり最新のものは効果が早いものなんだなぁ。 「またそんな……こんなものは適当に処理すれば良いんですよ」 もう一人の処理班が、固まった親子まりさに蹴りを入れた。 「ほら、こうやって……こう……ヘヘッ!」 蹴る。蹴る。殴る、蹴る。殴る、蹴る。 気が付けば親子まりさは、餡子と何かが混じった塊と化していた。 「……終わったか?」 「ハァ、ハァ、ハァ」 「じゃ、それお前が片付けろよ?」 「えっ。あっ……クソッ!」 最後にもう一度、親子まりさだったものに蹴りが入った。 ずっと親まりさと一緒だった子まりさ部分も既に分解され、飛び散っている。 しかし偶然か、顔の欠片部分だけが親子向かい合ったような形で、そこにはたたずんでいた。 「すみません。見苦しい所をお見せしました」 「し、失礼しました……」 処理班の二人が、私に向かって頭を下げる。 「いえいえ、気持ちはわかりますよ。では……」 処理班と親子まりさだったものを背にし、私はその場から立ち去った。 全てが終わったはずなのに、何か、心の中にこみ上げるものがあった。 「……あんまん食べたくなってきた」 ‐‐‐‐過去作‐‐‐‐ ふたば系ゆっくりいじめ 766 まりさがまりさだよ! ふたば系ゆっくりいじめ 761 ゆっくりした週末 ふたば系ゆっくりいじめ 755 まりさもみもみ ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
https://w.atwiki.jp/twitterlive/pages/60.html
【分類】 作品用語 エレメントハンター 毎週土曜夜6;00~6 30 本項ではエレメントハンターに登場する人物「ユノ」と彼女が登場した際につぶやかれる事が多い「ユノかわいい」を紹介する。 ユノはエレメントハンターでオペレーターを担う女性型アンドロイド。 26話現在では話の本筋にはあまり絡んでこないが彼女はストーリー上で重要な秘密を持っているらしい。 ほやほやした喋り方と劇中でセーラー服やメイド服など様々なコスプレをしているからか大きいお友達からの人気が高く、 彼女が画面に出てくると実況クラスタはうっかり「ユノかわいい」と無意識にその感情をつぶやきにしてしまうのだとか。 元旦のエレメントハンター一挙放送の際には「ユノ博士のエレメントハンター講座!」というユノが主役の特番が組まれるほどである。(ただしユノ人気によるものかは定かではない) EDでの合いの手も印象的だがED曲のCDではまさかのハブられを受け話題となった。 余談だが漫画版エレメントハンターでのはっちゃけぶりはファンとしても見逃せない。 用語集に戻る 最終更新09/1/16 【関連するページ】 実況クラスタ用語集
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3642.html
『受け入れられない』 11KB いじめ ゲス 虐待人間 初投稿です 初投稿です 既出ネタかもしれません 誤字脱字があったりします 日本語がおかしかったりします ≪受け入れられない≫ 「ゆあぁ・・・」 部屋に入るとれいむが顔を真っ青にさせ、「この世の終わり」だとでも言いたげな眼で僕を歓迎してくれた。 このれいむはいわゆる『でいぶ』だ。 道端で絡んできたのを命乞いをするまで痛めつけ、僕の家まで連れてきたわけだ。 その後、オレンジジュースででいぶを回復させたら「やさしくしろ」だの「あまあまもってこい」だの言ってきたので、 一週間毎日2時間ほど鞭で叩き続けるという僕なりの最高のお出迎えをしてあげたら、今ではすっかり僕に従順になった。 鞭には辛味エキスが塗ってあったので、一回叩かれるだけでも地獄の苦しみだっただろう。餌はもちろん腐った生ゴミだ。 三日目には「もうころしてください」と懇願してきたが、それでも僕はでいぶを生かし続けた。 僕が今からすることには完全に心がへし折れたゆっくりが必要なのだ。 ゲスを選んだのは、無駄にプライドの高いやつほどその心は脆く弱いから。あとプライドをへし折るのが楽しいから。 「よく聞け、今からお前には子供を作ってもらう」 「ゆ・・・?れいむ・・・おちびちゃんをつくれるの・・・?」 “子供を作れる”その言葉にでいぶは少し希望をもったようだ。眼にはすこし光が戻っている。 れいむ種はぼせい(笑)が強いので、子供を作れる事が何よりの喜びなのだ。 だが、その希望の光も今までの僕の行動を思い出しすぐになくなったようだ。頭の方は全くダメと言う程でもないらしい。 頭の弱いゆっくりなら「やったよ!おちびちゃんをつくれるんだよ!!」と能天気にはしゃぎ回るとこだろう。 「あぁ作ってもらうよ。勿論、僕の言うことはちゃんと守ってもらうけどね。 もし僕の言うとおりにしなかったら・・・『コレ』だよ」 「ゆ・・・ゆあぁ・・・ゆぎゃああああああああああああああああ!!!!!」 『コレ』と言われて見せられたものは、今まででいぶを痛めつけてきた『鞭』だ。 この鞭はでいぶにとって虐待の象徴であり、この世でもっとも“ゆっくりできなもの”なのだ。 その姿を見ただけでも、でいぶは最高の“歌”を僕に聞かせてくれる。 「いいかい、僕の言うとおりするんだぞ。もししないなら・・・わかってるよね?」 「ゆ゛・・・ゆ゛っぐじり゛がい゛じま゛じだぁぁぁぁあぁああぁあぁぁぁあ!!!!!!」 「よろしい、君にしてもらうことは簡単。 今から君が産む子供に、僕が合図したら“ゆっくりできない”言葉をたっぷり言ってくれればいい。ただそれだけさ。」 「ゆ゛・・・あ゛がじゃんに゛・・・ゆ゛っぐり゛でぎないごどを゛・・・・?」 僕の話を聞いたでいぶは『なぜそんなことをさせるのだ?』とでもいいたげな顔をしてきたが、 すぐに絶望した表情に戻り、『ゆ゛っぐじり゛がい゛じま゛じだ・・・』と快い返事をくれた。 僕はその返事を聞くと精子餡の入った注射器をでいぶに突き刺し、中のものをでいぶの体内へと注入した。 この精子餡は、先日捕まえた『ゲスまりさ』から死ぬまで絞り続けたものだ。 最初は気持ちよさそうに「すっきりーーーー!!」と言っていたまりさの顔がどんどん歪んでいき、 涙を流しプライドを捨て命乞いをしながら精子餡をまき散らすその姿は最高に笑えた。 精子餡を抽出し終えると同時に、でいぶのお腹が徐々に膨れていく。 加工所特性『成長促進剤』を混ぜておいたおかげだろう。あと数十分ででいぶは出産をするはずだ。 「ゆわあぁあ・・・れいむの・・・れいむのおちびちゃん・・・」 でいぶは嬉しそうだった。『自分はこの“地獄”のなかで殺され、おちびちゃんを産むことはできない』そう思っていたからだ。 僕はそのでいぶの幸せそうな顔を見て嬉しくなり、でいぶの真横に鞭を振り下ろした。 「バシンッ!!」という音に驚いたでいぶだったが、自らの状況を思い出しその後は泣くだけだった。 「(せっかくできたれいむのおちびちゃん・・・・ごべんねぇ・・・ごべんねぇ・・・)」でいぶはただ謝り続けた。 三十分後。そのときが来た。 「ゆぐぅぅう・・・おちびちゃん・・・」 「きゃわいいれいみゅがゆっくちうまれりゅよ♪しぇかいのみんにゃはゆっくちしゅくふくしてね♪」 ゲスとゲスの因子によって生まれた明らかにゲスな赤ゆっくり。 「(ゆぅ~ん♪れいみゅのようにさいっこうにゆっくりしたゆっくりをうめるおちょうしゃんとおきゃあしゃんは さいっこうのしあわせもにょだよ!ゆっくちれいみゅにかんしゃしちぇね! れいみゅのようにゆっくちゆっくりは、しぇかいのみんにゃにあいしゃれるしゅーぴゃーあいぢょるににゃりゅんだよ! しょしてさいっこうにかっきょいいまりしゃをおっちょにして、きゃわいいきょどもをいっぴゃいちゅくりゅよ! そしたらみんにゃといっしょにさいっこうのあみゃあみゃをたべて、さいっこうにゆっくちしたゆんせいをおくるよ! ほかのぐじゅどもは、どりぇいとしちぇれいみゅがつかっちぇあぎぇりゅね! きゃわいいれいみゅのどりぇいになれりゅこちょをゆっくちかんしゃしてね!そしたらあみゃあみゃもっちぇきてね!しゅぎゅでいいよ!」 勝手な妄想を抱いたままれいみゅはこの世に産まれようとしていた。 れいみゅの体がでいぶの産道から出てきたあたりで僕はれいみゅを押さえつけ、れいみゅをでいぶの産道に瞬間接着剤で固定した。 少しの間押さえつけていただけだったため接着剤は乾ききってないが、赤ゆっくりを固定するくらいの粘着性はある。 でいぶは出産の痛みの為に自分の体の変化に気がつかないが、れいみゅは当然気づく。 「ゆ?にゃんできゃわいいれいみゅがゆっくちうまれられないにょ?!じゃまにゃにぇばにぇばしゃんはとっととどいちゃにぇ! そしたらあみゃみゃもってきちぇね!」 「やあれいみゅ、どうしたんだい?」 「ゆ?くじゅなにんぎゃんがいりゅよ!ちょうどいいよ! きゃわいいれいみゅがうみゃれるじゃまをするこのにぇばにぇばをとっととせいっしゃいしちゃね!すぎゅでいいよ!」 「残念だけどそれはできないなれいみゅ。だってそれは君が産まれないようにするためのものなんだから。」 「にゃんじぇしょんにゃきょちょをしゅりゅの?れいみゅがきゃわいいきゃらってしっとしにゃいぢぇにぇ!」 「違うよ。君はね、この世界に“受け入れることができない”んだ。だって君は世界のみんなから嫌われるような まったくゆっくりしてないブサイクなクズゆっくりなんだからね」 「にゃにいっちゃるにょ!れいみゅはきゃわいいんぢゃよ!さいっこうにゆっくちしちぇりゅんだよ!」 「いや、してないね。だって今まさに君はこうやって生まれられないじゃないか。 それは君が誰からも愛されない、受け入れられないゆっくりだからだ。 もし君が皆に受け入れられるようなゆっくりだったら今頃みんなに祝福されているはずだろ? 君のおかあさんでさえ君のようなゆっくりしてないゆっくりはいらないって言うよ。」 「しょ、しょんにゃきょちょにゃいよ!おきゃあしゃんはれいみゅをきゃわいいっていっちぇくりぇるよ!」 「本当かな?じゃあ君の親に聞いてみるとするか。おい、れいむ!!」 当のでいぶは、出産の辛さで歯を食いしばり眼を『これでもか』と言わんばかりに見開き、 「ゆふう・・・ゆふう・・・」と洗い呼吸を繰り返していたが、僕に呼ばれた瞬間に「ビクッ!」か体を震わせた。 僕はでいぶの視界に鞭が入るようにし、れいむに訪ねた。 「君のあかちゃんは全然ゆっくりしてないし、とてもブサイクだよね?こんなあかちゃんいらないよね?」 「そんなことはない」そう言おうと思ったでいぶだったが、鞭を見た瞬間に人間の話を思い出し力の限り叫んだ。 「ぞ・・・ぞう゛ですぅぅうううううう!!!!ごん゛なゆ゛っぐり゛じでな゛ぐでがわ゛い゛ぐな゛い゛お゛ぢびぢゃんな゛んでいり゛ばぜん!!」 「だけど君のあかちゃんは『自分は世界に祝福されるんだ!』って言ってるよ?」 「ぞんな゛わけあ゛じばぜん!ごんな゛ゆ゛っぐり゛じでな゛の゛に゛じゅぐぶぐな゛んでざれ゛る゛わ゛げあ゛り゛ばぜんんん!!!」 「ほらねれいみゅ。僕の言ったとおりだっただろ?」 「しょ・・・しょんにゃ・・・。れいみゅはゆっくちちてない・・・れいみゅはきゃわいきゅない・・・。れいみゅは・・・。れいみゅは・・・。」 れいみゅは絶望した。人間だけならまだしも、母にすらも『いらない』と言われたのだから。 なにより自分は外の世界に生まれ落ちることすらできないのだ。外の世界には楽しみにしていた沢山のあまあまや他のゆっくりがいるだろうに、 自分はそこに行くことを拒否されてしまったのだ。こうなったらすべき行動は一つしかない。 戻るのだ。少しの間だが、ゆっくりできた母の胎内へ。せめてあそこでゆっくりしようと思い、胎内へ戻ろうとするれいみゅ。だが、 「ゆ・・・どぼじでも゛どりぇにゃいにょ゛ぉぉっぉぉぉっぉおおおおぉぉ」 戻ることも許されなかった。 「どおしてって・・・。君の母親が君のことを『いらない』って言ってただろ?なのに受け入れられるわけないじゃないか。」 「しょ・・・・しょんにゃあああああああああ!!!!!いやじゃああああああゆっくちちちゃいよおおおおおおおお ゆっくちちゃちぇてよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」 今までゆっくり出来てた場所からも追い出され、完全にみんなから除け者にされたれいみゅ。 「ゆああああああああん!!れいみゅをゆっくちしゃせりょきょのきゅしょじじいいいいいい!!!!!!!」 いくらゆっくり出来ないことを言われ続けた人間だとはいえ、今までれいみゅと会話した唯一の人物だ。 れいみゅが最後に頼るのも無理はないと言える。 「は?なんで俺がお前みたいなブッサイクな糞饅頭をゆっくりさせなきゃなんねぇんだよ?! 身の程をわきまえろよクズが!てめぇは誰からも受け入れられないつってんだろうが!まだわかんないの?馬鹿なの?死ぬの?」 「しょ・・・・しょんにゃ・・・・」 唯一の希望だった人間にも見放され、これでれいみゅを受け入れてくれる存在はいなくなった。そして、 「ゆ・・・ゆっくち!ゆっくち!!ゆっくちいいいいいいいいい!!!」 非ゆっくち症にかかり、地獄のような痛みが中枢餡を襲い出す。 それを見た僕は『ニヤリ』と笑った。 「いや、たった一つだけお前を“受け入れてくれる”ものがあったな。」 それを聞いた瞬間れいみゅの眼に希望の灯火が宿る。 「お前を受け入れてくれるのは“死”だけだよ。もうお前は死ぬこと以外は何もできないと言うわけだ」 その言葉を聞いた瞬間れいみゅの眼に宿った光は完全に消え去った。 「おいおい、そんな眼をするなよ。本当は“死”だってお前なんか受け入れたくないんだよ。お前今すごく体が痛いだろ? それは本当はお前みたいなやつを受け入れなきゃならない“死”がお前を苦しめてから殺してやろうとしてるんだよ。 だってお前みたいなやつを楽に殺すなんて嫌だから。」 「ゆっくち!ゆっくちいいいいいいい!!」 れいみゅが何か僕に呼びかけるように叫ぶ。たぶん「せめて楽に殺してくれ」とかそんなところだろう。 「お断りだね。」 僕はそうれいみゅに言い放つと、れいみゅの視界に入らないところに移動しその様子をじっくり眺めることにした。 でいぶの方を見てみると、歯を食いしばり身を見開き涙を流しながら死んでいた。 どうやらあまりにも長すぎた出産により体力が持たなかったようだ。 僕は椅子に腰掛けるとそのまま静かにれいみゅが死ぬのを待っていた。 れいみゅは地獄の苦痛の中で嘆き続けていた。 憧れていた外の世界には受け入れてもらえず、一歩踏み出すことすらもできなかった。 たくさん食べようと思っていたあまあまは一口も食べれなかった、それ以前に何かを口に含むことすらもできなかった。 他のゆっくりは見ることすらも叶わなかった。唯一声を聞けた母の声は自分を罵倒するものだった。 唯一ゆっくりできた母の温もり。それすらも今は感じることができない。 そして自分を受け入れてくれるのは最もゆっくり出来ない“死”だけ。それすらもとてつもない苦痛を伴うのだ。 でもれいみゅはせめて死ねることを感謝しようと思った。誰かも受け入れてもらえない自分を受け入れてくれるのだから。 そしていよいよれいみゅに死ぬ時がやってきた。数時間に渡る激痛の末、ようやく死ぬことができるのだ。 「(れいみゅ・・・ようやくしねるんだね・・・)」 そしてその時を迎えようとした瞬間、れいみゅにとてつもない激痛が走った。 それはいままで地獄のように感じできた痛みを遥かに凌ぐ、とてつもない激痛だった。 そしてその激痛ともに『死にたくない』という想いがれいみゅの中枢餡の中を駆け巡った。 「(い・・・いやじゃよ・・・やっぱりれいみゅしにちゃくないよ・・・・!)」 「(ぢゃれきゃ・・・おにぇがいぢゃれきゃられいみゅをたしゅけちぇ・・・・)」 「(あみゃあみゃみょいりゃにゃいきゃりゃ・・・わぎゃみゃみゃいわにゃいきゃら・・・・)」 「(せめて・・・すこしぢゃけぢぇもれいみゅにしょとのしぇかいぢぇしゅぎょしゃしぇちぇ・・・)」 「(おねぎゃいぢゃきゃら・・・ぢゃれきゃ・・・ぢゃりぇきゃ・・・)」 「(ゆっきゅり・・・しちぇみちゃきゃっちゃよ・・・)」 こうしてれいみゅは凄まじい激痛の中、もがき苦しみながら死んでいきましたとさ。 めでたしめでたし。 あとがき 赤ゆっくりが産まれる瞬間に「自分は絶対に幸せになる」と思って疑わない態度にイラついたので書きました。 産まれたあと不幸に陥って死ぬのも面白いのですが、産まれた瞬間に幸せそうになるのもムカついたので、 産まれることすらさせずに殺そうと思い、その結果できたのが今回の作品です。 至らない点が多かったと思いますが、少しでもゆっくりしていただけたのならば幸いです。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1792.html
ゆっへん!まりさはとってもつよいのぜ! ※現代設定。ゆっくりの俺設定。 ※人間が出ます。 ※斬新でもなんでもないただの虐待。 「ゆゆーっ!くらうんだぜーっ!」 初夏の山の中。午後の木漏れ日が地面に美しい斑を描いている。 「ゆっへん!まりさにかかれば こんなやついちころなのぜ!」 「ゆーっ!すごいよまりさ!あんなにこわいかまきりさんを やっつけちゃうなんて!」 二匹のゆっくりが狩りを行っていた。 「すごい!まりさはとってもつよいんだね!」 赤いリボンをつけたれいむ種、木の実を集めながら、連れの狩りを眺めている。 「あたりまえなのぜ!しょせんはまりさのてきじゃないんだぜ!」 れいむの連れ、黒い帽子のまりさ種は捕らえたカマキリを、どうやっているのか、舌で器用に掴みながら答える。 びくりびくりとうごめく、半分潰れかかった「獲物」を自分の目の前まで持って行き、少し優越感を顔に浮かべてから帽子の中へしまう。 別に食べる訳ではない。カマキリは堅い上に、そのカマで口の中を切ってしまう可能性もある。ゆっくりが食べられるものではない。 これは言うなれば「勲章」なのだ。自分が強いという、証。 「どうしてまりさはそんなにつよいの?ゆっくりおしえてよ!」 れいむもまりさみたいになりたいよ!得意気な様子のまりさに、れいむは飛び跳ねながら尋ねる。 「ゆっ!とくべつなことはなにもしていないんだぜ!まりさは うまれつきとってもつよかったのぜ!」 身をそらして、胸を張るような仕草をするまりさ。 「ゆゆ~ん♪さすがはむれいちばんの”かりうど”だよ~♪」 「ゆっへん!」 そんなまりさを、れいむは熱のこもった視線で見つめる。恐らくはつがいなのだろう、頬が赤く染まっている。 「れいむのためなら どんなやつだってやっつけてやるのぜ!」 そんなれいむにまりさも顔を赤くして答える。あまりむりはしないでね!と心配するれいむにも余裕の表情をみせる。 その顔は貫禄こそ無いが自信に満ち溢れていた。つまる所、このまりさは若かったのである。 「ゆゆっ!そういえばまりさはさいきんかりにあきてきたのぜ!」 狩りからの帰り道、急にまりさが言った。 「ゆっ!?そんなこといったらごはんをむ~しゃむ~しゃできなくなっちゃうよ!?」 れいむはその唐突な発言に顔を青く染める。れいむは狩りが得意ではなかったし、だからこそ狩りの上手なまりさと番になったのだから。 「かんちがいしないでほしいんだぜ!まりさはかりをやめたいわけじゃないんだぜ!」 「ゆゆっ?どういうこと?れいむにゆっくりせつめいしてね!」 「じゃぁゆっくりせつめいするのぜ!それはね…」 しばらくの後、赤く染まり始めた森にれいむの驚きと尊敬に満ちた声が響いた。 次の日、舗装された道路を跳ねているのは昨日の二匹。 二匹の住んでいた森は人間が住んでいる町からやや離れていたがそれでも歩いていけない距離ではない。 人間の3、4倍は時間がかかるが、ゆっくり達にとってもそれは同じであった。 ゆっ!ゆっ!ゆっ!と掛け声をかけながら進む二匹。その目は朝の日差しを受けてきらきらと輝いているが、理由は日差しだけではない。 希望。これからもずっとゆっくりできるという希望。 ゆっくり特有の小馬鹿にして笑っているような表情も心なしか普段より明るい。 昨日の帰り道でのまりさの提案。こんな提案を思いつくなんて、まりさは頭も良いに違いないよと、れいむは思い、頬を緩める。 緩やかな斜面を登りながら、れいむは新しい暮らしに胸をときめかせ、まりさの言葉を思い出した。 「ばかなにんげんたちをやっつけて、まりさとれいむだけのおうこくをつくるのぜ!」 …まりさはもうよわっちいむしさんたちあいてじゃつまらないのぜ!だからまりさはにんげんをかるのぜ! そうしたらまりさがおうさまで、れいむがおうじょさまだぜ! まりさの言葉を、れいむは何度も何度も頭の中で繰り返す。 ―――あぁ!れいむが王女さま!どんな生活が送れるだろう?あまあまを毎日食べて、ずっとすっきりー!をしようか? うぅん。一日中まりさと日向ぼっこをするのも良いな…――― …そうしたらにんげんをどれいにして、ずっとふたりでゆっくりするんだぜ! …ゆっくりー! ずっとゆっくり、その言葉はゆっくりにとって何よりの幸せ。 二匹には失敗の二文字は存在しなかった。 人間は噂でしか聞いたことが無かったが、まったく恐れることは無いように思えた。 まりさは自分の強さを信じていたし、れいむもまりさの強さを信じていたからだ。 坂を登りきり、まりさ達は実にゆっくりとした表情を浮かべながら、下り坂となった斜面を降りていった。 「ゆゆ~ん。やっとついたのぜ」 「つかれたね!まりさ!」 朝早く出かけた二人が町に着いたのは昼前だった。 「おひるにはまだはやいから、それまでここでゆっくりするのぜ!」 「ゆ~ん♪ゆっくりぃ~♪」 「「ゆっくりしていってね!」」 町のはずれの公園の真ん中に位置する芝生の上。お互いに挨拶をして、寄り添って日向ぼっこをする二匹。 天敵のほとんどいない山に住んでいた二人に警戒という概念は無かった。 しばらくして、太陽が二匹を真上から照らし始めた頃、空腹を感じ始めた二匹は昼食をとることにした。 「にんげんのやついないね!せっかく あまあまをみつがせて む~しゃむ~しゃ してあげようとおもったのにね!」 「しかたないから、ここあたりのくささんをたべてやるんだぜ!」 二匹はぴょんぴょんはねて食べられそうな草を口に入れる。 「「むーしゃ、むーしゃ、それなりー」」 人気の無い公園に二匹の声が響く。 ひとしきり食事を終え、二匹が食後のゆっくりをはじめたときに事件が起きた。 「ゆゆっ!まりさ!にんげんだよ!」 「ゆ!ちょうどいいのぜ!しょくごのでざーとをとってくるかられいむはそこでみてるのぜ!」 「ゆゆーん!まりさかっこいいよぉ!ゆっくりおうえんするよ!」 くたびれた作業着姿、恐らくは先ほどまで工事現場で働いていたのであろう20代半ばの男が、ペットボトルの飲料を飲みながら、公園に入ってきた。 男はゆっくり二匹をちらりと見やると、近くのベンチに腰掛けた。 「ゆっ!おい!にんげん!」 まりさが噛み付くように話しかける。しかし男はそんなまりさを黙殺する。 「ゆゆっ!このまりささまがよんでいるのぜ!むしするなだぜ!」 「きこえないの?ばかなの?しぬの?」れいむも加勢する。最強のまりさがいれば恐いものは無かった。 男は沈黙を続ける。先ほどまでの仕事で出た汗を拭き、また一口ペットボトルに口をつける。 「ゆっ!まりさ!にんげんは、まりさにおそれをなしているよ!さすがだねまりさ!」 「ゆっへん!おいにんげん!にげなくていいのかだぜ?まりさはさいきょうのほしょくしゃなのぜ?」 ピクリ、と男が反応する。理由は怒りでも、当然恐怖でもなく、まりさの言ったある言葉に興味が沸いたからに他ならない。 「ゆっ やっときこえたみたいだぜ!にげるならいまのうちなのぜ!はやくしないとぼこぼこにするんだぜ?」 わずかな沈黙。無表情な男と対照的にまりさは余裕の笑みを崩さない。 「…お前は捕食者なのか?」 ようやく男が口を開いた。男が興味を引いた言葉、それは捕食者という言葉。 「そうだよ!まりさはいままでどんなむしさんにもまけなかったんだよ!とりさんだっておっぱらったんだから!」 「ゆっへん!」 男は深くため息をつく、顔に浮かぶ落胆の顔。 「なんだ、そういうことかよ…」 「そういうことなのぜ!」 意味も無くまりさが胸を張る。男の言葉の真意は当然理解していない。 ”新種ゆっくり高価買取り!”仕事現場の傍にあった加工所のポスターの内容を思い出して、男は再びため息をつく。 男は飲みかけのペットボトルをベンチに置いた。饅頭に期待した俺が馬鹿だったな、と心の中で呟く。 「じゃぁ、お前、本気でかかって来いよ、負けたときの言い訳は聞きたくないからな」 「なにいってるの?まりさがまけるわけないでしょ?ば…」 「馬鹿なの?死ぬの?ってか?死ぬわけねぇだろアホ饅頭、お前はたたかわねぇんだろ?黙ってみてろよ」 「ゆぅぅっ!?」 目を見開くれいむを尻目に男は立ち上がる。少し遊ぶか、と呟いたその声は、二匹には聞こえない。男には少し虐待趣味があった。 一方まりさは怒り心頭だった。自分はまだしも愛しのれいむを目の前でアホ饅頭呼ばわりされたのだから。 「ゆぎぎ…!まりさのだいすきなれいむをぶじょくするなんてゆるさないのぜ!いわれなくてもほんきなのぜ!」 この人間は半殺しにして奴隷として生かしてあげようかとおもったが、やめた。 地獄を見せてやろう、負けたときの言い訳をするのは人間の方だ。人間とゆっくりの圧倒的な差を見せ付けて殺してやる! まりさは怒りのあまり歯を食いしばり男を睨む。男は自分の眼光に怯えるに違いないが、いまさら逃がすつもりは無い。 それなのに。 「早くしろよ。まりさは最強なんだろ?それとも怖いのか?かかってこいよ。動かないでいてやるからさ」 ほら、ここだここ、と男は自分の体をぽんぽんと叩く。 その行為が戦いの合図になった。もっとも一方的な虐殺を戦いと呼ぶのであればの話であるが。 「ゆ゛っがああああああああっ!」 まりさは怒りに身をまかせ、男に腹に渾身の体当たりを浴びせた。 ぽすっと間の抜けた音が鳴る。 当たった!勝負はついたも同然だ!その瞬間まりさは感じた。 枕を床に落とした時のような音を立ててまりさは着地する。視線を上げれば激痛に顔を歪めた男がいるはずだ。もしかしたらもう死んでいるかな? ニヤリ、と口の端を上げて、視線を向けた先には 当然ながら無傷の男が立っていた。 「ゆゆっ!?」 まりさの頬を汗が流れる。 いや、落ち着け。まりさは冷静になって考える。あれはやせ我慢をしているのだ、そうに違いない。無様なものだ、と。 とたんにまりさの顔に再び自信が戻る。 「ゆっ!ゆっ!やせがまんしないでさっさとしぬんだぜ!」 浴びせる連打、連打。今度は足だ。 「まりさ!にんげんはもうむしのいきだよ!がんばって!」 「ゆっ!ゆっ!まっててねれいむ!ゆっ!もうすぐこのにんげんをころすからね!ゆっ!ゆっ!」 しばらくぽすぽすと体当たりを浴びせた後、そろそろだろうか、とまりさは考え、人間の顔を見上げる。 「どうなのぜ!まりさのすーぱーあたっくは!まりさのあまりのつよさにてもあしもでないのぜ!?」 男は冷ややかな目でまりさを見下ろしていた。 「なぁ」 「ゆ!やっとしゃべったのぜ!てっきりしんだのかとおもったのぜ!」 「なにやってるんだ?」 「ゆっ!?」 お前こそ何を言っているんだ?まりさは混乱する。 「甘えてくるのもいいけどよ、そろそろかかってこいよ」 無論男は先ほどからまりさが”攻撃”を繰り出し続けているのを知っている。 要は、ただの挑発だった。 「ゆ゛っぎいいいいいいいいい!!なんでへいきなかおしているのぜええええええっ!?」 「あぁ?今の攻撃だったのか。気がつかなかったよ」 ゲラゲラと男は笑い、その笑いはまりさの怒りの炎をさらに燃え上がれせる 「ゆ゛ぎいぃぃぃ!しね!しねぇ!」 懸命な攻撃。だが男は顔色一つ変えない。 まりさ心に暗雲が立ち込める。何故効かない?何故? しばらくして、まりさがゆひぃ、ゆひぃと息を切らし始めた頃、男が口を開いた。 「走ってから体当たりをしたらどうだ?」 「ゆ!」 男の提案を聞きまりさの顔にわずかな光が戻る。 「ゆっ…へっへっへ…!やっぱりにんげんはばかなのぜ!」 「そのかわりそろそろ俺も攻撃するよ?いいな?」 男が言い終わる前に、すでにまりさは助走を始めていた。 「やってやるのぜーーーーーー!」 いままでのゆん生最大の力を込めてまりさは跳んだ。まりさの脳内には粉々に吹き飛ぶ忌々しい人間の姿が鮮明に描かれていた。 「ゆ゛ぎゃっ」 まりさは地面に叩きつけられていた。顔に痛みが走る。 つがいのれいむはしっかりと見ていた。男がまりさの頭をぴしゃりと叩いたのを。男としてはそのまま攻撃を受けてもまったく問題が無いのだが、気まぐれ、という奴だった。 「ゆぎいいい!いちゃい゛い゛いいい!なんでまりさのこうげきがきがないんだぜえ゛ぇぇぇ!」 まりさは顔の痛みと解けぬ疑問に身もだえする。何故?必殺の攻撃が?何故? 「よーし、俺の攻撃な」 もだえるまりさを無視し、男は足を上げ、まりさを踏みつけた。 「ゆ゛んぎっ!」 ギリギリと、男の足がまりさを死なない程度に押しつぶす。 「ゆ゛い゛い゛い゛…!!!」 自慢のお帽子がひしゃげ、脳天から踏まれて行き場を失った体内の餡子が体の外側へと集まる。 限界まで膨らんだ表皮に裂傷が走り、餡子が漏れ始める。 「ばりざぁぁ!?どぼじだのぉ!?はやぐやっづげでよおお!?」 れいむが叫ぶ。計画では、まりさが人間の群を制圧して、奴隷として働かせるはずだったのに。 「ゆ゛ぎ…ぎ…」 まりさは動かない、動けない。圧倒的質量の前に身をよじる事さえ叶わない。 口を必死に閉じているが少しずつ餡子が漏れ出す。涙が滝のように流れ、体液がぞくぞくと分泌される。 その時、不意にまりさを押さえつける力が無くなった。男が足を離したのだ。 白目を剥いてゆひぃ、ゆひぃと息を吐くまりさを、男が見下す。 れいむは何もいえない、何も言うことが出来ない。最強の夫がなすすべも無く倒されたのだから。 「ゆ゛…どぼじで…にんげんのくせに…」 「どうしてか、教えてやろうか?」 男がニヤつきながら言う。まりさはハッと息をのみ、体に虫が蠢く感覚を覚える。嫌な予感がする、とまりさは感じた。 だがもう、全てが遅かった。 「お前が、どうしようもないくらい弱いからさ」 痛みも忘れ、まりさの頭の中が真っ白になる。 自分が弱い?群れで狩りの一番上手い自分が、弱い? 男は追い討ちをかける。 「どうせ、群れで一番強い自分がどうして、なんて思っているんだろう」 何故分かる。やめろ、やめろ。まりさはとってもつよいんだぞ。 「ところで、お前は群れのゆっくり全員と戦って勝てるのか?」 やめろ、やめろ。まりさの中で何かが急速に崩れはじめる。取り返しのつかない、何かが。 「人間はな、お前らの群れなんざ、一人で皆殺しに出来るんだよ」 「ゆ゛っがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああっ!!!」 叫ぶ、叫べば男の声は聞こえないと信じて。まりさは叫ぶ。今まで積み上げてきた何かを守るために。 「それなのに人間を殺そうと思っただぁ?本当に馬鹿としかいえないな。」 それでも男の声は聞こえる、心をナイフで抉るような感覚を感じる。やめろやめろやめろ。 「まりさ!?まりさああああっ!がんばってえぇ!」 ―――あぁ、れいむのこえが聞こえる、頑張らないと。二人の王国のために。 そうだ、こんな男の言葉に苦しめられている場合ではない。なんとかして倒す方法を考えて――― 「まさか、お前、人間を支配しようなんて思ってないだろうな?」 まりさの思考が止まる。 「だとしたら馬鹿の極みだな。お前みたいな弱っちい饅頭がよぉ、身の程を知れってぇんだよ」 れいむの言葉でわずかに持ち直したかに見えたまりさの心は、その一言で見事に砕け散った。 「や゛べろ゛お゛お゛お゛おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」 決死の覚悟でまりさは男に飛び掛かる。 「やめねーよ、クソ饅頭」 だが男はまりさの顔面を蹴り飛ばす。 「ゆ゛っげえ゛ぇぇぇぇぇぇっ!!!!」 まりさの顔を今まで味わったことの無いほどの激痛が走る。もちもちの肌はべこりとへこみ、目玉が少し飛び出し、白玉で出来たやわらかい眼球が空気に晒される。 普段はやけたような笑顔を浮かべているその口も苦痛と衝撃でこの上なく醜く歪む。 衝撃で、やわらかい草や花しか食べてこなかった金平糖の綺麗な歯が5、6本折れ、砕け散り、口から餡子が流れ出す。 歯茎から無理矢理歯を、それも何本も抜かれる苦痛にまりさはただボロボロと涙を流すことしか出来ない。 自身が宙に浮かぶ感覚を感じ、まりさは縦にぐるんぐるんと回る。それに合わせて口から吐き出す餡子が、涙が、線を描いて飛び散って行く 「ばりざあああああぁぁっ!!!」 どさり。 数メートル吹っ飛ばされたまりさの体は芝生の上に叩きつけられた。 「ばりざっ!しっがりしでええ!ばりざっ!ばりざあ゛あ゛あ゛あああ!!」 れいむの慟哭も虚しく、まりさはぴくり、ぴくりと弱弱しく痙攣するだけだ。 「うわぁ、本当にゆっくりって弱いのな、まぁあの分だと放っておいても死にはしないよな」 ”弱い”という言葉を聴いたからか、少しだけ強くまりさが痙攣したように見えた。 生命力だけは強いからな。と男はれいむの方へ向き直る。仮に死んだところで、死体は自治体か加工所が回収してくれるので問題ない。 「や・・・やべでね!ひどいごどしないでねっ!」 歩み寄る男にひたすられいむは震える。最強のはずの夫をいとも簡単に倒した男に勝てるはずが無かった。 「おでがい・・・もうやめちぇぇえ・・・!!」 男は無言のままれいむの片方のもみ上げを持ち上げる。 「ゆ゛う゛う゛うううぅぅぅぅ!!」 自重を支えきれないもみ上げがブチブチと嫌な音を立てた。 男はもう片方の腕で傍に落ちていた小枝を拾い上げる。 「ゆっ…?なにずるの?やめてね!やめてね!」 男は笑う。こんなことをする人間がその言葉を聞いてやめるだろうか? いや、ないね。男は否定する。 枝を握った腕を振り上げた。 「ゆ…?ゆゆっ!!やめちぇっ!やめ…ピギイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」 アイデンティティの”ゆ”すら付け忘れる程の激痛。 れいむのまむまむと呼ばれる部位に硬い枝が突き刺さっていた。 その枝は、途中で何本かに短く枝分かれしていて、その枝分かれした部分がれいむの中を滅茶苦茶に突き破っていた。 「ゆっ…!ぎっぎっ…」 歯を食いしばり白目を剥いているれいむを眺める。口角から泡が漏れているが問題ないだろう。 男はそのまま、まむまむから飛び出ている枝を掴み直し、鍵を開けるように回し始めた。 枝がれいむの体内を掻き回す。 再び響き渡る悲鳴。つんざくような叫び声。小鳥のさえずり。遠くで犬が吠える声。 まりさは生きていた。 かろうじて動ける程度だったが、とにかく生きていた。 男はもうほとんど飲みつくしてしまったペットボトルの中身をまりさにぶちまける。 多少の糖分がこの飲料には入っている。 糖分を得ることで、いくらかマシになるはずだった。 「よぉ、雑魚。どうしようもないクソ饅頭」 男が話しかける。糖分を得たおかげで、多少の会話くらい出来るはずだが、まりさは言い返せない。 いや、言い返すことが出来るだろうか。 「よかったな。お前は蹴り一発で済んで」 人間で言えば自動車にはねられたようなもの。良い筈が無いが、男はそう言った。 「お前の愛しのれいむとやらはもっと長い間苦しんだんだぜ」 びくっとまりさが震えた。 「かわいそうになぁ、お前が自分の力を知っていればこんなことにはならなかったのに」 弱っちい饅頭ってさ。と男は続ける。 事実、昆虫程度が自分たちの勝てる限界だということを知っていれば、こんなことにはならなかっただろう。 「れ…れい…むは…?」 ようやくまりさが口を開いた。 「あぁ、アレ?あそこに落ちているから、見に行ってやればどうだ」 俺はもうすぐ仕事始まっちまうから。じゃぁな。男はそれだけ言い残すと空になったペットボトルをゴミ箱に捨てて公園を去っていった。 初夏の午後の太陽の下、夏には早いがそれでも眩しい日差しが公園の芝生に降り注ぐ。 さぁっと涼しい風が吹き、まりさのおさげを揺らした。 「れ…い、むぅ…」 ずりずりとまりさが這う。緑色の芝生のキャンパスに黒い餡の線が描かれる。 激痛と喪失感に耐えて、耐えて。ようやく愛しのれいむの赤いリボンの前に立つ。リボンはボロボロになっていた。 「れいぶぅ…ごべん、ねぇ…」 まりさ弱かったんだよぉ、弱っちぃ饅頭だったんだよぉ。涙と餡子をこぼしながられいむの前へ回り込む。 だから、今までどおり山で草さんを食べて暮らそう、今日の分までゆっくりさせてあげるから… そう言おうと思っていた。 「ひっ!」 しかし、言えなかった。 れいむは酷い有様だった。目玉は抉られ、全身が傷だらけ、殴られ続けたためか、体中ぼこぼこになっていた。 「あ…あ…」 何より、れいむのまむまむからおびただしい量の餡子が出ていて、そして、まるでそれをせき止めるかのように枝が刺さっていた。 一度もすっきりしていなかったのに。ゆっくりした赤ちゃんと一緒にゆっくりしようと思ったのに。 その夢は叶わない。己が弱かったから?それもある。あるが、しかし何よりも。 自分が愚かだったからだ。 必死の思いで、れいむを傷を舐める。甘い味が口に広がる。舐める程度では到底直らない怪我だった。 「ま、りさ…」 「あ…ああ…れいぶぅ…」 れいむが無事だった方の目を開けて、まりさを見た。 良かった生きていたんだね。まりさが言いかけたその言葉をさえぎる様にれいむが言い放つ。 「まりさ どうしてまけちゃったの」 沈黙。絶句。微笑みかけたまりさの顔が硬直する。 「れいむを だましたの」 「れいむ ばかだからしんじちゃったんだよ まりさがにんげんさんにかてるって」 「ねぇ あかちゃん つくれなくなっちゃったよ」 「ここはとってもゆっくりしてるゆっくりぷれいすなのに れいむもうゆっくりできないよ」 ねぇ、まりさ。れいむが続ける。 「れいむはもう えいえんにゆっくりしちゃうんだよ」 「まりさのせいだよ」 れいむは動かなくなった。 「ゆ…ゆっ…ゆわああああああぁぁぁ!!」 まりさは叫んだ。幸か不幸か、れいむの餡子を舐めたことで、まりさの体力は叫べるまでに回復していた。 「おうぢがえる!おうぢにがえる!」 逃げ出すように、まりさはずりずりと動き出した。 もう人間には近づかない。まりさは虫さんくらいにしか勝てないんだから。 ずりずりと、公園の出口を目指す。しかし、まりさが己の後ろにある、自分の餡子以外の”黒”に気がつくことはなかった。 「ゆっ…ゆっ…もう少しだよ…」 公園の出口が見えてきた。日が少し傾いてきたが、この分なら今日中に森に帰れるかもしれない。 男に受けた肉体的ダメージはほとんど回復していた。ぽいん、ぽいん、と間の抜けた音を出しながら跳ねる。 ちくり。 「ゆゆっ?」 まりさは跳ねるのをやめた。自分の足に小さな痛みが走ったのだ。 「ゆ、きのせいだよね」 そう決め付け、歩き始める。 ちくり。 「ゆゆっ!」 再び足を止める。今回は痛みの理由が分かった。自分の頬に蟻が喰いついている。 「ゆゆっ!むしのくせにまりさにはむかおうなんて なまいきなのぜ!」 まりさは下で器用に蟻を掴み地面へ叩き付けた。 人間には絶対に勝てない。だが少なくとも自分は虫よりは強いのだから。まりさは、心中に渦巻く屈辱と悲しみを紛らわせるように、叩き付けた蟻を何度も踏みつける。 たいした時間もかからず、蟻は動かなくなった。 「ゆっへん!ざまあみるんだぜ!」 まりさは潰れた蟻を見下して、帰りを急ぐ。 ちくり。 「ゆゆゆっ!」 ぎょっとして振り返る。蟻が生きていた? 否、死んでいる。では何が? 「ゆーん?」 まりさは首をかしげる様な動きをしてから、何とはなしに振り返る。 夕日に赤く染まった公園。その芝生にまりさの餡子が黒く、伸びている。 男に吹き飛ばされた地点から、れいむの場所、そして公園の出口と、公園を上から見たら、まるでLの字を描くような その軌跡は、まるで筆で書いたように、徐々に細くなっている。傷口が塞がっていっているからだ。 だがその細くなっている所が少しずつ太くなっていく。 甘い黒線を補強していくもう一つの黒い存在。 「ゆぎっ!?いぢゃいぃぃ!なんでふえてるのぜぇぇ!?」 蟻に他ならない。 芝生に付着した餡子よりも本体を狙いに来たようだ。 「なまいきなのぜ!いっぱいいるからかてるとおもったの?ばかなの?しぬの?」 男の言葉を思い出す。 ―――人間はな、お前らの群れなんざ、一人で皆殺しに出来るんだよ――― 「まりさだって!ばりざだって!」 おびただしい数の蟻の群に、まりさは立ち向かう。虫になら勝てる、その発想はもはやまりさにとって揺ぎ無いものとなっていたのだ。 致命的な勘違いをしているとも知らずに。 人間には四肢があり、道具を使い、それを作り出す知能がある。 蟻には強靭な顎がある。カマキリには力強い鎌と顎がある。 では、ゆっくりには? 「まりさはおまえたちになんが!まげないのぜっ!」 まりさはひたすらに飛び跳ね、踏みつける。饅頭ごときの一度の跳躍で昆虫を殺すことは出来ない。 まりさはその体格差から辛うじて殺すことが出来ているだけだ。 「ゆぎっ!?あんよがいだいいぃ!?」 しとめ損なった一匹が、まりさの底部に噛み付いた。 まりさがひるんだ隙に一匹、一匹、黒い粒が這い上がる。 ゆっくりは、人に擬態し、大声で人語を話し、大きく膨れ上がることができる。 それは被捕食者にとっては紛れも無く立派な”武器”。だが、それは狩るものの武器ではない。 狩られるものが狩るものに攻めかかる。その攻撃の先に何があるのか。 「ゆ゛うううぅぅ!?なんでのぼってきてるんだぜぇぇぇ!?」 ちくり、ちくり 黒い兵士たちは、愚かな生物を食らわんと次々と這い上がり、その体に食らいつく。 「やめるんだぜぇぇぇ!!ばりざからはなれるんだぜぇぇ!!」 蟻を引き剥がそうと、ごろごろと転がるまりさ、しかしその行為は逆に自分の首を絞める結果となる。 自分の体に地面の餡子を付着させてしまったのだ。 一気に這い上がる蟻。転がっても転がっても、次から次へと食らいつく蟻の攻撃を止めることは出来ない。 「ゆ゛う゛う゛うううぅぅ!!!」 口から、目の中から、まむまむから、蟻が入っていく。体内を喰らわれる痛みにまりさは叫びを上げた。 今度は蟻を引き剥がすためではなく、痛みに耐えるために転げまわる。少しづつ弱まるまりさの動きとは対照的に 蟻たちはどんどんまりさの体内に侵入していく。 「どぼじでぇ…!どぼじでぇ…!」 まりさは呟く。 むしさんになら勝てると思ったのに、と。 まむまむを蟻に食いちぎられ、まりさは一際大きな悲鳴を上げた。 ―――よぉ、雑魚。どうしようもないクソ饅頭――― 男の言葉が、まりさの中で浮かんで反響し、消える。 悲鳴を上げても、その声が聞こえる。まりさは心身ともに文字通り蝕まれていく。 「いちゃいよぉ…!おうぢ…かえるぅ…」 威勢の良さはすっかり消えて、幼児退行したまりさをあざ笑うように、蟻はまりさの体を喰らい、食いちぎる。 傍から見れば穴あきチーズのように見えるかもしれない。 「もう…や゛…べ…ちぇぇぇ…」 まりさが呟くなか、蟻はいよいよ食事を本格化させ始めた。 夕日は地平線に姿を消そうとしていて、空が赤から紫へと変わっていく。 そろそろ、自治体と加工所のゆっくり回収車が野良ゆっくりとその死体を集める頃だ。 公園の電灯に明かりが灯る。 まりさはまだそこにいた。しっかりと生きたまま。 だがもう長くないだろう。右目は喰われ。体の中身も大半が喰らい尽くされてしまった。 どさり、とまりさは横たわる。もはや体の平衡すら保てなくなっていた。 帽子がまりさの頭から落ちる。だが、それを拾う体力すらまりさには残されていない。 「ばりざ…の…おぼ…し…」 目から、空の眼窩から、涙がこぼれる。 激痛と、狭まった視界と薄れ行く意識の中、まりさが最後に見たものは。 「あ゛…ああぁ…」 蟻によって自分の帽子の中から運び出されていく、まりさのカマキリだった。 そのカマキリは男に踏まれて、以前よりも平べったくなっていた。 あとがき 最後までお読みくださりありがとうございます! 自分は今回がSS初投稿なのですが、ゆっくりできたでしょうか? 今回は、特に目新しい虐待方法もないので少しお兄さん達には食傷気味だったかもしれませんが ゆっくりできたのなら幸いです。 ご意見、ご感想等お待ちしております。 次回作を書くかは未定ですが、ご要望があればご自由に。 最後に:作中に出てくる男の作業着なのですが、服のビジョンは浮かぶのに名前が出てこないという大変もどかしい事に…。 ちなみに某いい男が着用しているようなツナギではありません。 紺色の袴みたいなやつ、なんて言いましたっけ?よくゴム製の草履みたいのと一緒に着用するやつ。 よく返り血ならぬ返りセメントがついてるような感じで足首の辺りでダボっとしてるやつ。うーん。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3679.html
『強制家族崩壊』 39KB 虐待 観察 妊娠 赤ゆ 虐待人間 独自設定 うんしー ぺにまむ 18作目 今作は餡庫に保管されているキリライターあきさんの「ほんとうのしあわせ」と、 anko748・anko781 ゆっくり命令していってね! の一部設定をお借りし、尚かつ設定を勝手 に付け加えております。お許し頂ければ幸いです。 毎度お世話になっております。マンネリ(仮名)です。 俺がいつものように研究所に遊びに行くと、 「ゆっくり園に行きませんか?」 と博士に誘われた。 ゆっくり園とは、本来山に生息している野生ゆっくりを気軽にウォッチできるのが売りの娯 楽施設だ。 当然、ゆっくり愛で派御用達である。 「何でまたそんな場所に?」 「ああ、もうそろそろ一年なので入れ替え時期なんですよ。野生ゆっくりがいつまでも同じだ と、飽きが来るでしょう? だから、あそこはたまに一斉に群れを入れ替えるんです」 「へー………………入れ替え?」 「そう。入れ替えです」 博士がニヤリと嗤ったのを見て、納得した。つまり、「入れ替え」とはそういうことか…… ふふふふふ。 「もちろん、ついていきますよ」 「丁度よかった。じゃ、これ持って下さい」 博士に手渡されたのは、ずっしりと重たいメガホンだった。 「ちょ。何ですかコレ?」 「ほら。ゴミ捨て場によくあるでしょう? どすすぴーかーです」 ああ……確か、ドスの声で「ごみすてばのごみはもってかえっちゃだめだよ!」とか叫んで いるアレか。 「このメガホンは、その原型です。24時間しか効果がない代わりに、どんな無茶な命令でも 聞かせられることができます」 「……どんな命令でも?」 「ええ。国立研究所で埃を被っていたのをツテで手に入れたんです。高かったですよー」 博士は見ているこちらが引くほど、ワクワクした表情を浮かべていた。 うむ……今日は餡子の雨が降るな。間違いなく。 ● ● ● ゆっくり園は街から少し離れた、郊外の元大型ショッピングセンターを改造した建物だ。 正直、面食らうほどの大きさだった。 「でっかいですねー」 「通常種だけで500匹以上いるって言われてますからね……」 車を停めて、俺たちは受付にチケットを買いに向かった。 「すいません。大人二枚」 受付の女性が、申し訳なさそうに頭を下げる。 「申し訳ありません。本日は施設の一斉清掃でしてゆっくりふれあいコースは中止しているの ですが……」 「ああ。清掃で構いません」 受付の女性が、なるほどと頷いた。一応秘密裏にされている訳か。 「……はい。では、こちらに指名用のアルバムがありますので」 「おっと、すいませんね」 俺たちはアルバムを覗き込んだ。中の写真は……おお、いるわいるわ。仲良し家族が山盛り だ。まりさ・れいむの定番コンビから、れいむ・れいむという珍しい組み合わせまで。 「ベタですが、この35番のまりさ・れいむ一家。胎生にんっしんコースでいきましょうか」 「いいっすねー」 しかしアレだな。なんだか風俗店みてえ。 指名すると、受付の女性はオプションにビデオをつけるかどうか聞いてきた。 「そうですね。お願いしましょうか」 ビデオ……ビデオ撮影か? 「はい。それでは、こちらをお持ちになって下さい」 「枝?」 なぜか、手頃な太さの木の枝を渡された。博士は渡された枝を、こちらによこした。 「何ですかこれ?」 「握り締めるためのものです。あ、折ってもいいですよ。僕はもう慣れたので」 にへらにへらと笑いながら、博士が言った。 「それでは、ビデオの準備ができましたので。3番入口からどうぞ」 俺たちは個室に通された。ミニシアターみたいな感じの施設で、大型のプラズマテレビが設 置されている。 「さて。それでは、今から一時間。覚悟してくださいね」 ……覚悟? 何のこっちゃ、と思っている内に部屋が暗くなり、プラズマテレビに映像が映し出された。 『強制家族崩壊』 マンネリあき (ナレーション) 「35番。とってもなかよし! しあわせー、なまりさとれいむいっかだよ!」 「ゆっくり園」35番、山を模したゆっくりプレイス。ここには、とてもゆっくりとしている まりさとれいむが住んでいました。 二匹は幼馴染みです。親によって引き合わされ、一目会ったその日からずっとずっと「いっ しょにゆっくりしようね」と誓いを交わしていたのでした。 独り立ちした二匹は早速、いっしょにゆっくりするという誓いを交わした。手頃なゆっくり プレイスを見つけ、そこでゆっくりプレイスの宣言をしました。 そしてその夜――。 「ゆう……れいむ、すっきりしよう?」 「まりさ……れいむ、すっきりははじめてだから、やさしくしてね……」 「れ、れいむっ。れいむぅっ……!」 ゆっくりのすっきりは、植物型と胎生型があります。植物型の場合は、頬をすりあわせるこ とですっきりー、できますが胎生型の場合は、ぺにぺにをまむまむに突っ込むことですっきり ー、を行います。 ぬっぷぬっぷと、まりさのぺにぺにがれいむのまむまむを突き上げます。 「れ、れいむぅっ。れいむぅっ」 「まりさぁっ、まりさぁっ」 「「すっきりーーーーーー!」」 バキリ←枝が折れる音 ……こうしてすっきりー、を済ませるとれいむのお腹には三人の赤ゆっくりが誕生していま した。 「ゆふふ……おちびちゃん。はやくでてきてね~♪」 「ゆーっ、だめだよまりさ!」 「ゆ!? ご、ごめんね。おちびちゃん。ゆっくりー、してでてきてね~♪」 「ゆふふ、だいじょうぶだよっ。ゆっくりしたれいむとまりさのおちびちゃん。 きっとすっごくすっごくゆっくりしたゆっくりになるよ!」 そして、数日が経ってとうとう出産の時がやってきます。 「ゆ……ゆ……ゆ……ゆっぐりいいいい!」 すぽん、すぽん、すぽん! 「ゆ……おちびちゃん……」 「「「ゆっくちちていっちぇにぇ!」」」 「「ゆううううん! ゆっくりしていってね!」」 三匹の声を揃えた挨拶に、親たちは感動の涙を流しながら答えました。 まりさとれいむは、生まれて以来さいっこうにゆっくりした時間を過ごしました。 「おちびちゃん! おとうさんがかりにいってくるから、みおくろうね!」 「ゆゆ……すぐにかえってくるからね。たっくさんのごちっそうをもってかえってくるから、 それまではおかあさんといっしょにおるすばんしててね!」 「まりしゃ、ゆっきゅりまちゅよ!」 「ゆぅ……れいみゅ、ゆっくちすりゅねー」 「ゆああん……ごひゃん! ごひゃん!」 長女の赤まりさはしっかりものさん。 次女の赤れいむはちょっとのんびりやさん。 末っ子の赤れいむは……あらあら、ちょっとあまえんぼうさんみたいですね。 「それじゃ、おかあさんといっしょに……」 「おかあしゃん、しゅりしゅりしちぇー」 「れいみゅも!」 「まりしゃもしゅりしゅりしちゃい!」 「ゆふふ。それじゃ、おちびちゃんをたっっぷりすーりすーりしてあげようね!」 「「「ゆわあああああい!」」」 もちもちぷにぷにした赤ゆっくり独特のお肌は、れいむのふっくらした肌に独特の感触を伝 えてくれます。 (ゆふん……おちびちゃんたち、ゆっくりしているよ! すっごくきもちいいよぉ……) 「しゅーりしゅーり! おかあしゃんとのしゅーりしゅーり、とっちぇもきみょちいいにぇ」 「しゅりしゅりー。まりちゃ、ずーっとこうしていたいのじぇ!」 「おかあしゃああん……しゅーり、しゅーり……ゆっくちちてるにぇ♪」 末っ子の赤れいむが、うれしーしーをちょろちょろと垂れ流しています。 「ゆゆ、おちびちゃんうれしーしーしちゃったね!」 「ゆ!? ゆぅ……ゆえええ……」 泣き出しそうな末っ子赤れいむを落ち着かせるように、れいむはぺーろぺーろと、うれしー しーを舐め取っています。 「しゅっきりー」 「おちびちゃん、しーしーはちゃんとおといれさんでしなきゃだめだよ。おちびちゃんはゆっ くりしているから、すぐにおといれさんとなかよし! になれるからね!」 「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」 「それじゃあ、みんなですーりすーりしながらおうたさんをうたおうね!」 れいむの言葉に、赤ゆっくりたちは目を輝かせます。 おうたさん、それは餡子の記憶が伝えるところによると、とってもゆっくりできるものです。 「それじゃあ、さん、はい♪ ゆっくりのひ~♪ まったりのひ~♪」 「ゆっくちのひー、まったちのひー」 「ゆっきゅりのひー、まっちゃりのひー」 「ゆっきゅりのひー、まったりのひー」 三匹も合わせて歌い出します。歌いながら、体は自然とのーびのーびをし始めています。 「ゆううん! みんなとってもおうたがじょうずだね! さすがれいむのおちびちゃんだよっ」 「おかあしゃんにほめられたにぇ、れいみゅ!」 「おねえしゃんのおうたしゃんも、いもーちょのおうたしゃんも、とってもゆっくりしていた にぇ!」 「ゆーっ、ゆー、ゆーっ。ゆっくちしてたにぇ!」 やがて、まりさが戻ってきます。満足げな顔を見る限り、狩りは成功したようですね。 「きょうはみみずさんといもむしさんがとれたよ! みんなでなかよくわけようね」 「「「ゆわぁぁぁ……」」」 れいむとまりさは、笹の葉にもーぐもーぐしてやわらかくしたみみずさんやいもむしさんを 載せます。末っ子の赤れいむは、涎がだらだらと流れっぱなしでふやけてしまいそうです。 「それじゃみんな……ゆっくり、いただきます!」 「「「ゆっくちいただきましゅ!」」」 三匹が一斉にいもむしとみみずのお団子さんに食いつきました。 「むーちゃむーちゃ…………しあわしぇえええええええええええ!」 ぷしゃーっ、と一斉にうれしーしーを流してしまうほど、その味は美味でした。 いもむしさんの爽やかな味と、みみずさんの濃厚な味。 それらが渾然一体となっておちびちゃんの味覚を責め立てるのです。 「ゆっくちぃ……ゆっくちちてりゅよぉ……」 「れいみゅたち……しあわしぇーだにぇ……」 「ぎょはん、ぎょはん、しあわしぇー」 ほっこりと餡子が温かくなる両親。 「れいむ……すごいね、おちびちゃんって」 「ゆんゆん。れいむ、おちびちゃんのためだったらあんこだってかけられるよ!」 「そうだね……まりさも、おちびちゃんのしあわしぇーをまもってみせるよ!」 両親はすーりすーりで、おちびちゃんへの、そして番への愛情を確かめ合います。 やがて二週間が過ぎると、赤ゆっくりたちは少しだけ大きくなりました。子ゆっくりまでは、 あと半分というところでしょう。 「このびーだまさんは、まりちゃのたからものだじぇ!」 「このせみのぬけがらしゃんは、れいみゅのちゃからもの!」 「このこいんしゃんは、れいみゅのたからものだよ。ちょらないでにぇ?」 「おちびちゃんたちも、おおきくなったね!」 「ゆふふ。おちびちゃんたちも、もうすぐおねえさんだね!」 れいむのお腹には、またしても二匹の赤ゆっくりが仕込まれていました。 「おかあしゃん、ぺーろぺーろしてあげるにぇ!」 「まりしゃもぺーろぺーろしてあげるのじぇ!」 「れいみゅも! れいみゅもぺーろぺーろしゅる!」 子ゆっくりたちは、母れいむのお腹をぺーろぺーろします。 「ゆっくちうまれてきてにぇ、いもーちょ!」 「すごくゆっくちしてるゆっくちになるよ、たのしみだにぇ!」 「ゆっくち! ゆっくちしてにぇ!」 「ゆふふ……ありがとう、おちびちゃん。きっとゆっくりしたゆっくりにうまれてくるよ! おちびちゃんみたいにね!」 「「「ゆわあああ……」」」 そんなれいむに、まりさが横にそっと寄り添います。 「れいむ……まりさ、とっても、とっても、とーーっても。しあわせだよ」 「まりさ……れいむだって、とっても、とっても、とーーっても。しあわせー、だよ……」 彼らは生まれてからずっとゆっくりしてきました。 悲しいことなど、何一つありません。 世界は平和で、幸福で、楽しいことばかりです。 これから先も、彼らはゆっくりすることでしょう。 ずっとずっとずっと……ゆっくり、できるでしょう。 「れいむ……」 「まりさ……」 「おかあしゃん……」 「おとうしゃん……」 「おねえしゃん……」 「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」 バキン←枝をヘシ折る音。 ● ● ● ……なるほど。枝はこうして使うのねー。 俺はビデオを見ている最中、ずっと握り締めていた枝(真っ二つになっている)を見て溜息 をついた。 「どうです。やる気が出るでしょう!」 「今の俺なら、神だって殺せる気がします」 「それじゃ、そろそろ行きましょうか。……35番に」 廊下を歩く途中、やる気満々の若者とすれ違った。彼が手に持っていたチケットがちらりと 見えた。どうやら、お隣さんらしい。 ドアを開けた途端、面食らった。ゆっくり園は、山や森を模した施設だとは聞いていたが… …これは想像以上だ。 鳥の鳴き声が微かに聞こえる。外は昼だがこちらはすっかり暗く、月まで出ている。成長を 早めるために、十二時間で一日を終わらせているらしい。これでちゃんと二年分育つというの だから、思い込みの力は大したものである。 「35番はここを真っ直ぐ登ったところですね」 ゆるやかな斜面を歩きつつ、俺たちは装備をチェックした。俺はライターに竹串、それにハ ンマーといった携帯虐待道具に、例のメガホン。 博士は何故か、古くさいカメラを持っていた。 「撮るんですか?」 「いえ。ストロボを使うだけです。あまり知られてませんが、強烈なストロボフラッシュは、 ゆっくりたちの時間を停止させることができるんですよ」 「……へ?」 「希少種であるゆっくりさくやが『時間を停止する』と言われているのは、これのせいです。 彼女が力を使うとき、両目が光るんです。それを見たゆっくりは、一時的に全ての機能が停止 するんですね」 「はー……」 そういう原理だったのか。 「お。見えてきましたよ」 夜ということもあってか、まりさ一家はけっかいで洞窟入口を封鎖していた。それでも、き ゃっきゃっとはしゃぐ声が、丸聞こえだ。 「いいですか。僕がカメラを構えますから、マンネリ君は合図でけっかいを崩して下さい」 「了解っす」 「では、三、二、一――――――――ゼロ!」 俺は一気にけっかいの枝を取っ払った。 「ゆ? いまのおとは……」 物音に気付いたのか、まりさ一家が一斉にこちらを向いた。その瞬間、俺も目が眩むほどの ストロボが光った。 博士がにっこり笑って言った。 「それでは、今の内に運びましょう。このレベルの光なら、三分間は効果があります」 俺たちは慎重に洞窟の中から、まりさ一家を運び出した。 博士は俺からメガホンを受け取ると、未だ硬直している彼らにそっと囁いた。 「命令する。今からお前たちは、人間が認識できなくなる」 ……認識できなくなる? 「いやあ、以前から考えていたんですよねえ。ゆっくりを観察しつつ、虐待もするっていう方 法を。それも、人間を一切認識させることなくね」 「でも、これだとメガホンの命令も聞けないんじゃ……」 「予めテストしておきました。このメガホンは中枢餡を直接刺激するので、聞こえるとか聞こ えないとか、そういうのは関係ないんです。命令には従うけど、声そのものは聞こえないって 状態ですね」 やがて三分が経過し、まりさたちが目を覚ました。 「ゆ……ゆゆ? まりさたちどうして、こんなところにいるんだろ」 「ゆ? あれ? れいむたち……」 「ゆぅ……?」 「ゆっくりしていってね……?」 「ゆ、ゆ、ゆ?」 「さて、マンネリ君。どうします? 先攻後攻決めておきますか?」 「いや、とりあえず博士でいいっすよ」 俺たち二人の会話も、まりさ一家にはまるで聞こえてないようだ。 「それでは。命令する。『動くな』」 「ゆ!?」 「ゆび!?」 「ゆぅ!?」 「ゆゆ!!」 「ゆあ……?」 五匹のゆっくりが、びくりと動かなくなった。全員が驚いた表情で、きょろきょろと周囲を 見回している。 「どうちてれいむのあんよさん、うごけにゃいにょ?」 「まりさのあんよさん? ゆ、ゆっくりしないでうごいてね……?」 博士が戸惑うゆっくりたちに命令する。 「『一列に並べ。それから末っ子のれいむだけ、家族の前に出ろ』」 「ゆゆぅ!? れいむのあんよさん、か、かってにうごかないでね!?」 「ゆんやああ……きょわいよ……」 「ど、どうしたのみんなあ!? ゆゆう! まりさのあんよさん、まりさのいうこときいてね! おねがいだよ!」 「ゆっち、ゆっち! あんよしゃん、きゃってにうごくにぇ!」 家族の誰もが見える位置に、末っ子のれいむが移動した。 さて、博士は何をする気なのかね……。 「命令する。『家族は絶対に末っ子のれいむから目を逸らすな』」 「『末っ子のれいむは、いいと言うまでのーびのーびをし続けろ』」 末っ子れいむが、博士の言う通りにのーびのーびを始めた。 「にょーび、にょーび!」 「お、おちびちゃんどうしたの? のーびのーびはしなくてもいいんだよ?」 「ゆゆ! いもーちょのれいみゅって、こんなにのーびのーびできるんだにぇ!」 「しゅごいじぇ、いもーちょ!」 「ゆぅ……おちびちゃん、おおきくなったんだね! れいむうれしいよ!」 「にょーび……にょーび……いぎぃ!? にょ……び……いびいいいい!」 まだまだのーびのーびしようとしている。限界まで伸びきってもなお、悲鳴をあげてまで伸 び続けようとする末っ子れいむに、さすがの家族も異常を認めたらしい。 「おちびちゃん! それいじょうはあんこさんがいたいいたいになっちゃうよ!」 「やめておちびちゃん! それいじょうはゆっくりできなくなっちゃう!」 「いもーちょ! いもーちょ!」 「ゆんやああ! のーびのーびこわいよおお!」 「い……ぎ……いじゃい……いじゃいよおおお! れいみゅ、のーびのーびしちゃくない! しちゃくないよおおおお! しちゃくないのにしちゃうよおおおおお! いじゃいいいい! あんござんがいじゃい゛い゛い゛!」 なすび型を通り越してきゅうりみたいになりつつある末っ子れいむ。 涙を流して、涎を垂れ流しながら叫ぶ。 「きょわいいいいいいいいい! いもーちょがきょわいいいい!」 「おびゃけえええ! いもーちょがおびゃけになっちゃったああああ!」 「ゆああ゛あ゛あ゛あ゛! もうのーびのーびしちゃだめえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!」 「おねがいだがらやべでえ゛え゛え゛え゛!」 俺たちには目もくれず、泣き叫ぶまりさ一家。 博士がニヤリと笑った。 「よし。『末っ子れいむ。のーびのーびはもうしなくてもいい。かわりに、体をねーじねーじ しなさい』」 「ゆぎ!? ね……じ……ね……じ……」 限界以上に伸びきったれいむの体が、今度はゆっくりと回転していく。 舌がピンと突き出て、目は想像を絶する圧力に半ば飛び出しかけている。 ゆっくりの中身は餡子である。従って、360度回転も決して不可能ではない。 本ゆんの激痛さえ、無視すればの話だが。 「ご……びょ゛! ぶべ……ね……じ……ね゛……じじじじじ」 「どぼじでやべないの゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「おぢびじゃん゛! しんじゃうよおおお! それいじょうはしんじゃうよおおお!」 「おちょーしゃん! おちょーしゃん! いもーちょだずげでえええええ!」 「ゆんやー! ゆんやーーーーーーー!」 「あんよさん! あんよさん! まりざのかもしかみたいなあ゛ん゛よ゛ざん゛! おねがいだがらうごいでね! ゆっぐりじないでうごいでね゛! おぢびじゃん゛がじんじゃうがらあ゛! ゆっぐりじないでえ゛え゛え゛え゛!」 「れいむのあんよざん! いづもゆっぐりじでるあ゛ん゛よ゛ざん゛! う゛ごい゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!」 「じゅ……びゅ……じゅぶ……じゅぶぶ! に゛じ……に゛ぇ゛じ…… に゛ぇ゛じれ゛る゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛! じぬ゛! れいびゅじぬ゛! じん゛じゃ゛う゛!」 絶叫する。もう、れいむの目玉がぷるぷると震えている。限界まであと少し。 今頃、彼女の餡子はただただ苦痛だけが支配しているだろう。 「に゛ぇ゛じれ゛る゛! に゛ぇ゛じれ゛る゛う゛! に゛ぇ゛じれ゛る゛う゛! に゛ぇ゛………………びゅびょお゛お゛お゛お゛お゛お゛!」 ぽん、と目玉が凄い勢いで飛び出した。 同時に噴水のように餡子が噴き出す。 口からも、大量に餡子が吐き出された。 それでも、まだかろうじて生きているれいむはねじねじを止めようとはしなかった。 末期の痙攣と共に、体が半分に千切れてやっと彼女は息の根が止まった。 博士が命令する。 「はい。『全員、動いていいですよー』」 「ゆんやあああああああああああ! おちびちゃん! おちびちゃん! おちびちゃああああ あああああああああああああん!」 「おちびちゃあああん! どぼじでごんなごどじだのおおおお! どぼじで! どぼじでええ ええええええええええええ!」 「ゆんやー! ゆんやーーーー! いもーちょ! まりちゃのかわいいいもーちょがああ!」 「どうちて……どうちて……? いもうちょ……ゆっくちちてたのに……どうちてえええ!」 その言葉を聞いたとき、俺の頭に閃くものがあった。 「博士博士。次、俺にやらせてください」 「はいはい。どうぞ」 俺はメガホンを手にした。末っ子れいむを取り囲み、嘆き続ける彼らに命令する。 「命令する『全員、動くな。長女まりさはいまから言うことを復唱しろ。それ以外は口に出す な』」 「ゆ゛! また!?」 「ゆゆ! あんよさんが……また……はんこうきだよっ」 「ゆんやーっ! あんよしゃん! あんよしゃんうごいちぇね!」 「れいみゅのあんよしゃん……どうちていうこときいてくれにゃいの……!? どうちて……どうちてえええ!」 全員が見苦しく、体をぐねぐねと動かしている。あんよ焼きをされたときによくある動きだ。 今回は、焼かれたときと違って因果関係が分からない。 突然動かなくなったあんよに、さぞ混乱しているだろう。 さあ……始めるぞ。 「『こうなったのもぜんぶおとうさんのせいだよ!』」 「こ……こうなったのもぜんぶおとうさんのせいだよ!」 長女まりさの言葉に、全員がぴたりと見苦しい動きを止めた。 「……ゆ?」 親まりさは、今の言葉が聞こえなかった……いや、理解できなかったようだ。 それは長女まりさもそうだろう。自分の言った言葉が、信じられないに違いない。 親れいむが、のろのろと口を開いた。 「お……おちびちゃん? いま、なにか……いった? いってない……よね……?」 「『今の言葉を繰り返せ』」 「こうなったのもぜんぶおとうさんのせいだよ!」 「ゆ……」 「『このくそおや! ゆっくりしないでしんでね!』」 「このくそおや! ゆっくりしないでしんでね!」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ……どぼじでぞんなごどいうのおおおおおお!」 親まりさが絶叫した。 涙と涎を撒き散らし、まさに食ってかかる勢いだ。 自分は一生懸命だった。 一生懸命ゆっくりさせてきたはず。 末っ子れいむが死んだのだって、絶対に自分のせいじゃない。 よく分からないけど、自分のせいじゃないはず。 なのに、長女まりさは自分のせいだという。 違う、違う、絶対に違う! 「『いっぽもうごけないむのうなくじゅおや!』」 「いっぽもうごけないむのうなくじゅおや!」 「『そこでじっとしてるんだじぇ! まりしゃさまがせいっさいしてやるんだじぇ!』」 「そこでじっとしてるんだじぇ! まりしゃさまがせいっさいしてやるんだじぇ!」 「どぼじで……どぼじでええ!? おぢびじゃん! まりさのかわいいかわいいまりさ そっぐりのおぢびじゃん! どぼじでぞんなごど……」 「命令だ。『長女まりさ、俺がいいと言うまで、ずっと親まりさに体当たりしろ』」 「ゆ……ゆぐ!? ち、ちがうのじぇ! まりしゃ、おとうしゃんのことせいっさいしような んておもってな……ゆゆ!? どうちてあんよしゃんがうごくんだじぇ!?」 長女まりさが、動けない親まりさにぴょんぴょんと向かっていく。 「ゆゆゆ!? あんよしゃん! まりちゃのすてきなあんよしゃん! どこにいくのじぇ!? ゆ……ゆ……ゆゆ……ゆんやああああ! やじゃやじゃやじゃああ!」 ぽこん。 長女まりさが、勢いよく親まりさに体当たりした。 だが、当然何の傷もつかない。 「ゆびゃ! いちゃい……いちゃいよ……」 逆に、長女まりさの方が痛がっていた。 親まりさは精神的ダメージの方が遙かに大きいらしい。 「うそ……おちびちゃんが……まりさを……せいさいなんて……うそだ……うそ……」 「ゆんやあああ! やじゃよおお! せいさいなんてしちゃくないよおおお! あんよしゃんがかっちぇに……かっちぇに……!」 「おちびちゃんやめてえええ! ゆっぐりじでないよおおおお!」 「おねええしゃあああん! やめちぇ……やめちぇえええええ!」 ぽこぽこと長女まりさは繰り返し繰り返し体当たりする。 柔らかな饅頭皮は、見る見る内に引き裂かれ、餡子がはみ出す。 その痛みに、長女まりさが泣き叫ぶ。 「ゆんやああああ! おちょうしゃん! まりちゃのだいしゅきなおちょうしゃん! だずげでえええ! まりちゃのあんよしゃん、おねぎゃいだがらどめちぇええええ!」 ぴょん……ぽこ。 ぴょん……ぽこ。 「いじゃいよ! まりしゃいちゃいよおお! まりちゃをとめちぇよおおおお!」 「とべられないよおおおおおおお!」 「命令だ。長女まりさはこういいなさい。『おまえがしねばかいけつする』」 「おまえがしねばかいけつするっ…………ゆんやー! ちがう! ちがううううう!」 ぽこ……べちょ。 ぽこ……べちょ。 既に普段の半分も飛べなくなっていた長女まりさは、せいっさいで全身がずたずただった。 まず、片目が取れてどこかへ転がってしまった。 「まりちゃのおめめしゃんがあああああ! ゆっぐりじないでもどってぎでえええ!」 「命令だ。『次女れいむは、その片目を食べなさい。絶対に吐き出さないこと』」 次女れいむが素早く、目の前に転がってきた片目を食べた。 「やがあああああああああ!? ごれ! おねえぢゃんの! おねえぢゃんのおべべ! やだやだやだやだだべだぐないいいいい! むーじゃむーじゃ! やだあああ!」 「なにやっでるのおちびじゃん! ぺーしなじゃい! ぺーしなざいい!」 「まりちゃのおべべがえじでえええええええええええ!」 「むーじゃむーじゃ!」 「『幸せ-、と叫びなさい』」 「じ……じあわぜええええええええええ!」 「ゆあああああああああああああ! まりじゃのおべべえええ!」 「ゆんやあああ! おねえじゃんごめんなじゃいいい! おべべざんむーしゃむーしゃしでご めんなざいいいい!」 その間も、長女まりさは体当たりし続けていた。 だが、もうその勢いは最初とは比較にならない。 ただ、這いずってぽこんと頭を当てるだけだ。 「ゆ……ぐ……」 「命令だ。『長女まりさは死んでも構わないから思いっきりぶつかりなさい』」 中枢餡への命令が書き換えられる。これで彼女のリミッターは外れた。 「ゆ……ゆあ……やじゃ……やじゃ……じにだぐない……じにだぐない……まりじゃじにだぐ ないよおおおおおおおおお!」 「命令だ。『長女まりさはこう言いなさい。しねえええええええええええええ!』」 「し……しねえええええええええええええええええええええ!」 勢いよく跳んだ長女まりさは、親まりさの体にぶつかり四散した。 「……おちび……ちゃん……?」 「まりさ……?」 「おねえしゃん……?」 「「「どぼじでええええええええええええええええ!」」」 「まりさわるぐない! まりざわるぐないよね!? ね゛え゛!? まりざわるぐないでじょおおお!?」 「わるぐないよおおお! まりざはぜんっぜんわるぐないよおおおお!」 「おねえしゃ……おねえしゃああああん!」 「ふひー。一仕事終わったー」 「いやー、なかなか面白いやり方でしたね」 「しかし……認識されないと、やっぱり普段とは随分違いますねー」 「そうですね。僕たちを憎むのではなく、ただただ己の身に降りかかった不幸を嘆くだけ。自 分に何が起きているのか、まるで分からない」 ゆんやー、ゆんやー、と家族たちは固まって泣き続けている。 誰かを憎むことはない。 ただひたすら「分からない分からない」と嘆くだけ。 何ともはや、哀れである。 「次はどうします?」 「次はですね……。家族を増やしてあげましょうか」 博士がメガホンを手にして告げた。 「命令する。『次女れいむは、親まりさを相手にぺにぺにを勃たせて、まむまむに突っ込んで すっきりしなさい』」 「ゆ……ゆゆ……れいみゅ……おきゃしいよ……?」 泣いていた次女れいむが、自分に突如沸き上がった熱情に戸惑っている。 「おちび……ちゃん? お、おちびちゃん!? おちびちゃん、どうじでぺにぺにさんがたっ てるのおおおお!?」 「ゆうううう!? おちびちゃん、なにしてるのおおおおお!」 「ゆううう! ゆんやあああ! ちぎゃう! ちぎゃうのおお! これ、ちぎゃう……。ああ あああ、あんよしゃんがきゃってにうごくよおおおお!」 「命令する。『親まりさはまむまむを自分で開いて受け入れなさい。次女れいむがすっきりし やすいよう、体勢も変えなさい』」 「ゆが!? ま、まだまりざのがらだ……が……がっでに……」 親まりさは大地に伏せると、まるで犬のような体勢でまむまむを広げた。 親れいむは、唖然とした表情でそれを見守る。 「まりざあああああああああああああ! なにやっでるのおおおおおおおおお! なんでっ! なんでまむまむひろげでるのおおおおおおお! ぞ、ぞれに! おぢびじゃんがどぼじでぺにぺにをそうにゅうしようとしでるのおお!」 「がらだががっでにうごいじゃうんだよおおおおおお! あんよがうごぐなら、れいぶがどべでえええ!」 ぺにぺにを勃たせた最愛の娘に犯される夫。 それを間近で見なければならない、妻の気持ちは一体どんなものだろうか。 赤ゆっくりの小さなぺにぺにが、親まりさのまむまむを少しだけ擦る。 次女れいむは、己のやろうとしていることへの嫌悪感だろう。 全身を震わせ、暴れ狂っていた。 「いやじゃあああああああああああ! ごんなのずっぎりじゃない! れいみゅのずっぎりは おざななじみのまりざにどっでおぐの! ぺにぺにじゃない! まむまむでずっぎりずるの! ぺにぺにいや! ぺにぺにいやぢゃああああああ!」 「おぢびじゃん! ぺにぺにぬいでええええ! まりざのまむまむづがわないでええええええ ええええええええ!」 「おぢびじゃん! いいごだがらやめでね! ゆっぐりやめでねえええええ!」 止められない。次女れいむは激しく動いて、まむまむを擦り続ける。 「ずっぎりじだぐない! ずっぎりじだぐない! ずっぎりじだぐ……ず、ず、ず……いや… …やじゃ……やじゃ……おねがい……おねがい……ずっぎりい゛い゛い゛い゛!」 「おぢびじゃああああああああああああああん! ずっぎりい゛い゛い゛い゛!」 娘が父を犯すという、おぞましいすっきりが終わった。 「ゆああ……ゆあああ……おなかに……おなかにあがじゃんがいるよおお……まりざとおちび じゃんのあがじゃんがああああ……」 親まりさが絶望の呻きをあげる。 親れいむはそれを見て、ただひたすら涙していた。 そして、次女れいむは永遠にゆっくりしかけていた。 まだ赤ゆっくりである次女れいむにとってたった一度のすっきりでも命に関わる問題である。 今すぐ、栄養を補給しなければならない。 「命令する。『次女れいむは、長女まりさと末っ子れいむをお腹が破裂する寸前までむーしゃ むーしゃしなさい』」 「ゆ!?」 びくんと次女れいむが震えた。ぴょんぴょんと跳ねて長女まりさの四散した死体の前に立つ。 次女れいむは、これから自分が何をするか分かったみたいでガタガタと震えていた。 「い……いやじゃ……」 「おちびちゃん……?」 「いやじゃああああああああ! だべだぐない! だべだぐない! おねえじゃんだべだぐな いよおおおおおおお!」 そう言いつつ、次女れいむは死体に貪りついた。 「や……やめでええええええええええええええ! おぢびじゃんを! おねえじゃんをむーじ ゃむーじゃしちゃだめええええええええええええええ!」 「わがっでるよおおおおおおおお! でもぐちがどまらないいいい! むーじゃ! むーじゃ! あまあま! あまあま! むーじゃ! むーじゃ……じ、じあわぜえええええ!」 「ああ……あああ……あああ……おぢびじゃ……」 「むーじゃ! むーじゃ! あまぐでおいぢい! おねえじゃんがあまぐでおいじいい! い もーぢょ! いもーぢょもあまぐでどっでもおいぢいいいいいいい! じあわぜええ! とっ てもとってもじあわぜええええええええええええええええ!」 次女れいむは狂乱していた。 いわゆる狂ゆだ。親れいむはそれを見て絶叫し、親まりさは先ほどのポーズのまま涙を流す。 「まんぶぐ……れいみゅまんぶぐうう! も、もうはいらないよ……もう、だべられないよ… …。だがら、うんうんずるよ! れいみゅのすーぱーうんうんたいむがはじま……」 「命令する『次女れいむはそのままでいなさい』」 「……らないよおおおお! どぼじでえええ!? うんうんじだい! うんうんじだいよお!」 博士と俺は話し合い、次の一手を決めた。 「命令する。『親れいむのお腹にいる赤ゆっくり。生まれる準備をしなさい』」 そう言った途端、親れいむの顔が苦痛に歪んだ。どうやらこのメガホン、生まれる前のゆっ くりですら効果がある代物らしい。 「ゆぎい!? う、うまれる゛! れいむとまりざのあいのげっじょうがっ! うばれるよお おおおおお!」 「命令する。『親れいむは寝そべって、まむまむが上になるように体を向けなさい』」 「ゆ……ぎ……」 親れいむの体が上に向いた。この体勢では垂直に赤ゆが跳ぶことになり、極めて危険だ。 「命令する。『次女れいむは、親れいむのまむまむに向けてうんうんしなさい。ちゃんと生ま れてくる赤ゆに直撃するようにね』」 「ゆびい……ゆっぐり……うごぐよ……」 「ゆああああ! いじゃいいいい! おぢびじゃんははやぐうまれでええええ!」 「きゃわいいきゃわいいれいみゅがきゅーとにうまれりゅよ! ……うまれりゅよ!? どう ちてうまれないのおおお!? ゆんやー!」 親れいむの髪の毛からもみあげを登り、ゆっくりと次女れいむは親れいむの顔を歩いていく。 「お……おぢびじゃん……? れいむのおかおさんに……の、のぼらないでね……」 陣痛の苦しさに顔を歪ませつつ、親れいむは必死に言う。 だが、次女れいむはそれを聞いていない。今、彼女の頭は120%が便意で占められている。 「うんうん……ぢだい……うんうん、ぢだいの……」 「ゆ? ゆゆ?」 次女れいむは、親れいむのまむまむにあにゃるを向けた。 「ゆち? れいみゅのおねえちゃん、ゆっきゅりしちぇいってにぇ! れいみゅ、いまからき ゅーとにうまれりゅよ!」 まむまむから、赤れいむが何の悩みもなさそうな表情で笑いかける。 次女れいむは、それを死んだような目で見たあと告げた。 「うんうん……」 「ゆ?」 「うんうんさん! だずよ! れいみゅのすーーーーーぱーーーーーーうんうんっ!!! た いむっ!!! はっじめっるよおおおおおおおおお! あああああ! ずっぎりいいいいいい いい!」 赤ゆっくりとは思えない量のうんうんが、大量に赤れいむの顔に降り注いだ。 「……………………ゆ?」 赤れいむはきょとんとした表情で、顔に降り注ぐうんうんを見つめていた。 だが、すぐにその悪臭に気付いて暴れ出す。 「ゆんやあああああああ! くっしゃいよおおお! くしゃいよおおお! おねえじゃんのう んうんしゃんがぐざいいいいいいいい!」 「れいみゅのすーーーーーぱーーーーーーしーしーたいむっ! はじまるううううううううう うううううううううすっぎりいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」 今度はしーしーだ。悪臭のする大量の砂糖水が、れいむの顔に降り注ぐ。 「どうぢでえええええええええ! どうぢでごんなごどおおおおおおおおおおお!」 赤れいむは訳が分からないだろう。 ゆっくりした両親がゆっくりさせてくれるはずだった。 姉たちは、自分たちを愛してくれるはずだった。 そういうものなのだと、信じて疑わなかったはずだ。 だが、現実は。赤れいむは、姉のうんうんとしーしーを顔面で受け止め、暴れ狂うしかない。 「ゆぎいいいい! いじゃいいい! いだいよおおおおお! だずげでまりざ! まりざだずげでええええええええ!」 「ゆわああああああああん! ゆっぐりじで! れいむゆっぐりいいいい!」 「ゆっぐりでぎないよおおおおおおおおおおおおおおお!」 「命令する。『最初の赤れいむは生まれなさい』」 言った瞬間、産道から赤れいむはすぽーんと抜けた。垂直に跳んだ赤れいむは、思い切り親 れいむの顔面にぶつかったものの、柔らかい饅頭だったのが幸い、無事に誕生した。 「ゆぐっ……ゆぐっ……くしゃい……くしゃいよおお……」 全身うんうんまみれだが。 「よ……よがっだ……おぢびじゃん……ぶじにうまれ……ゆぎい!?」 「よし。まだ居たな。命令する。『次女れいむは、次のおちびちゃんにもうんうんとしーしー を死ぬまで与えなさい。あ、赤まりさはまだ生まれちゃ駄目だよ』」 「かっこいいまりちゃがゆっくりうまれりゅ……ゆんやああああああ! くちゃいよおおおお おおおおおおおおおお!」 「いやだあああああああああああ! もううんうんでまぜん! でまぜん! あんござんがあ にゃるしゃんからでじゃうううううううううう!」 ぶりぶり。 ぶりぶりぶり。 ぶりびちぶりびちびちびちちちち。 ぶじゅ! ぶじゅぶじゅ! 「や……だ……じにだぐない……れいみゅ……うんうんさんで……じにだぐないよお……」 「ぐじゃいいいい! だじゅげでえええ! おとうじゃん! おかあしゃん! まりちゃがわ るいごどじだならあやまりまじゅ! ごめんにゃしゃい! だがら! だがらごのぐじゃいの どっでええええ!」 「おちび……ぐぎい! おぢびじゃ……」 親まりさは一生懸命舌を伸ばし、赤れいむのうんうんを舐め取ろうとしている。 赤れいむは一歩も動かず、ただ震えるだけなのでどれだけ舌を伸ばしても届かない。 「だずげで……あか……じゃん……いだいの……まりざ……だずげで……」 親れいむは、出産の痛みに廃ゆ寸前だ。 「うん……うん……じだぐ……な……ぐべ……」 次女れいむが、とうとう中枢餡を流出してしまったらしい。この世のありとあらゆる苦痛を 味わったような表情のまま、力無く倒れた。 「命令する『赤まりさは生まれていいよ』」 すぽーーん、と赤まりさが垂直に上がった。そして、また親れいむの顔面にブチ当たる。 「ゆぎ!」 「ゆぴい……くちゃいよお……」 「命令する。『赤まりさは赤れいむの近くに行きなさい。赤れいむはそこを動かないで。親れ いむと親まりさは体勢を元に戻しなさい』」 赤まりさと赤れいむが生まれたてとは思えないほどに、汚れきった姿で寄り添う。 「ゆぴい……おねえ……しゃん……だにぇ?」 「ゆび……いもうちょ……」 悪臭を必死になって我慢しつつ、赤ゆっくりたちは頬をすりよせた。 親まりさと親れいむは、ようやく……微かな笑顔を浮かべた。 「ゆっくりしてるよお……おちびちゃんたち……とってもゆっくりしてるよお……」 「しんだおちびちゃんのぶんまで……ぜったいにゆっくりさせてあげるからねえ……」 まあ、いわゆる一つの。 「そうは問屋が卸さない。命令する、『赤れいむと赤まりさは、罵り合って殺し合いなさい』」 「「ゆび!?」」 赤れいむと赤まりさが見つめ合い――ゆっくりと、その口を開いた。 「ゆっくちちんでにぇ!」 「れいみゅこそ、ゆっくちちね!」 その言葉に、両親が愕然とした。 「おちびじゃああああああああああん! どぼじでぞんなごどいうのおおお!」 「やめでね! おちびちゃん! そんなゆっくりできないごどはやめでえええええ!」 赤れいむと赤まりさは、泣いてしーしーをぶちまけながらぶつかり合い、噛みつきあった。 「ごめんにぇ! ごめんにぇ、おねえしゃん…………ちね!」 「やじゃああ! ごろじだぐにゃいよお…………ちね! ちんじゃえええ!」 成体ゆっくりほどの激しさはないが、赤ゆっくりはとにかく柔らかい。デコピン一発で瀕死 になるほどだ。本気でジャンプし、本気でぶつかり合う。 ただそれだけで、柔らかい皮がずたずたに引き裂かれていく。 「ちにたくにゃいよお!」 「ちにたくにゃいいい!」 両親が涙を流して見守る中、赤ゆっくりたちは次第にその動きを弱めていった。 「命令する『赤れいむと赤まりさは死んでも殺し合いなさい』」 最後の力の一滴まで振り絞り、赤ゆっくりたちはがぶりと噛みついた。 「むーちゃ……むーちゃ……くしょれいみゅはゆっくりしぬんだじぇ……」 「むーちゃ……むーちゃ……ばかまりしゃはしゃっしゃとしにぇ……」 「むーちゃ……いじゃいよお……むーちゃ……」 「むーちゃ……ふじあわぜえ……むーちゃ……」 やがて彼らはお互いの頭を囓り、目を抉り、おさげともみあげを引き千切って、餡子が流れ 過ぎて死んでしまった。 残されたのは、自分たちの「しあわせー」が完膚無きまでにブチ壊された二匹のゆっくり。 「ゆあ……ゆあああ……ゆあああああああ……!」 「どぼじで……どぼじでえ……」 博士が注射器を取り出した。 「何ですそれ?」 「成長促進剤です」 博士は嘆く親まりさを押し倒すと、次女れいむが孕ませた赤ゆっくりたちがいる子宮に注射 した。 「ゆびい!? い……いじゃ……お……おちびちゃんがあばれでる……」 「まりさのおちびちゃん……? さ、さっきすっきりーしたばかりでしょお!?」 「で、でもあばれ……あばれ……うがあああ! いじゃいいいい!」 博士が笑い、命令を下した。 「命令する。『親まりさの中にいる赤ゆっくりは、周囲の餡子を食べ続けろ。食べられなくな ったら吐いて、うんうんして食べろ』」 (ゆび! ゆびび! ゆびびびいいい!) (ゆびょ! ゆびょぼぼ! ゆぼおお!) 「あが……!? あ、あ、あ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! いじゃい゛! いじゃい゛! おなが……おなががいじゃいいいいいいい! あんござん゛! おながのあがじゃんが! まりざのあんござんぐっでるう゛う゛!?」 「ま……まりざあああああああああああああ!」 親れいむが絶叫する。 子供たちが次々と原因不明に死んでいく中、ただ一匹残った最愛のまりさ。 それが今、見る影もない醜悪な表情で苦しんでいる。 涎を垂れ流し、涙を流し、舌をつんと突き出し、体のあちこちをぼこぼこさせながら。 「ぼびょお゛お゛お゛!? ぐわれでる! まりざだべられでる゛! いやだ! ごんなじにがだ、ぜっだいにいやだ! だずげで! れいぶ! れいぶだずげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!」 「あ……ああ……あああああ……」 (ぼびょおお! うんうん! うんうんずっぎりいいいい!) (ぶべええええ! げろげろ! げろげろずっぎりいいいい!) 「おぢびじゃんがまりざのながでぐざいうんうんじでる! げろげろざん、げーげーじでる! やだ……やだあああああ! まりちゃたちゅげでええええええ!」 とうとう幼児退行まで始まってしまった。 「まり……まりさ……ゆっぐり……ゆっぐりぃ……」 やがてまりさの声が途絶え、ビクンビクンと痙攣し始める。 「命令する。『まりさ、立ちなさい』」 「……」 まりさが立ち上がった。 「命令する。『赤ゆっくりたちは、まりさの目玉を噛み千切って出てきなさい』」 その命令に従い、赤ゆっくりたちは目玉に移動する。 「命令する。『れいむは、絶対に目を逸らさずにまりさの顔をちゅっちゅできるほどに間近で 見なさい』」 「ゆ……あ……」 「まり……さ……」 「ゆが! ゆがが! ゆごげおげげげ!」 ぼこぼこと、まりさの目玉が回転する。 「まりさあああああああああああああ!」 「ごびょ……ぶびょ……まり……おべ……まり……おべべえええええ!」 ぐちゅり。 まりさの目玉が収縮し、がつがつと貪られた。ぽっかりと開いた穴から、醜い奇形のゆっく りが顔を見せた……リボンから判断するに、れいむの未熟ゆだ。 「ぶぎょおおおお!」 もう片方の目玉からは、目玉が三つあるまりさが誕生した。 「ぶべえええええ!」 「…………」 こてん、と親まりさが倒れた。中枢餡を食べられたのだろう。目玉があった場所ではしゃぐ 奇形のゆっくりたち。 「…………」 親れいむは沈黙。 「命令する。『れいむ、君は自由だ。好きにしなさい』」 「ゆ……」 れいむはずりずりとまりさに近づき、頬にすりすりした。 返ってくる固い感触に、ただただ絶望する。 それから、れいむは目玉の残りを貪る奇形ゆっくりたちに目を留めた。 「ゆっくり……しね……!」 もみあげで無理矢理目玉から引き摺り出すと、れいむは躊躇いなく押し潰した。 怒りか、あるいは憐憫か、それらが入り混じった複雑な感情なのか。 れいむは、啜り泣いていた。 「こいつはどうします?」 博士は俺の言葉に、メガホンを下ろした。 「もしかすると、もしかするかもしれませんよ。珍しいものが見られそうです」 れいむはまりさの帽子から、静かに鋭い枝を取り出した。狩りか何かに使うものだろう。 れいむには、もう何もかも無くなってしまった。 ゆっくりプレイスがあっても、分かち合う相手がもういないのだ。 「どうして……こうなったんだろうね……わからないよ……わからない……」 最後の最後まで、れいむには何も分からなかった。人間がやれば、人間を憎んだり恨んだり することができる。だが、俺たちは徹頭徹尾彼らに認識できなかった。 「まりざ……いまがら……いっしょにいぐよ……」 それを逆にくわえると、れいむは思いきってジャンプした。 地面に向かって、ぷーすぷーすをするように。 だが、当然そうはならない。ゆっくりの歯では、そこまでキツく噛み締められない。 まして、尖っているのはれいむが口に入れている方なのだ。 歯は折れ、枝はそのまま中枢餡に突き立てられた。 「……自殺っすか!」 「野生ゆっくりの自殺は珍しいですよ。いやあ、追い込んだ甲斐がありましたね!」 喜びを分かち合った俺たちは死体をそのままに、ゆっくり園を立ち去った。 36番の鬼意山が「し・あ・わ・せぇぇ!」と叫びながら出て行くのを見て、呟く。 「また、来年ですか」 「また、来年ですねえ」 今日の惨劇は瞬く間に片付けられ、新しいゆっくりたちがやってくるのだろう。 期間限定、一年後には必ず惨劇が巻き起こる珠玉のゆっくりプレイス。 街でわずかなゆっくりを求める野良ゆっくりと、果たしてどちらが幸せなのだろうか……? ……などと社会的な感じで〆。 (終) <あとがき> 勝手に設定作りまくって色々と申し訳ありません。 感想スレ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1304613952/ 過去の作品 http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/3403.html 挿絵:
https://w.atwiki.jp/83452/pages/18727.html
紬「唯ちゃん。お口の周りにクリームがついてるわ」 唯「ほんと?」 紬「うん。今拭いてあげるから」フキフキ 唯「取れた?」 紬「ええ。綺麗になったわ」 唯「ムギちゃん。ありがとー」 律「まったく。唯は仕方ないなー」 澪「そういう律も口の周りにクリームつけてるぞ」 律「うえ”っ」 澪「いま拭いてやるから、大人しくしてろ」フキフキ 唯「…‥」 紬「……? 唯ちゃん、どうかしたの?」 唯「ムギちゃんってお婆ちゃんみたいだよね」 紬「え”っ」 ___ __ 唯「今日もこなかったね」 紬「ええ」 唯「きてくれるかなー」 紬「きっと大丈夫。部活紹介のためのライブもやるんだから、ねっ!」 唯「うーん。そうだといいんだけどね」 紬「唯ちゃんが歌うんだから絶対大丈夫。私だったらぜったい、ぜ?ったい入部したくなるから」 唯「それは流石におおげさだよ」 紬「そんなことないわ」 唯「力説しますねー」 紬「ふふっ」 唯「……あのっ」 紬「なぁに、唯ちゃん?」 唯「今日もいいかな?」 紬「うんっ!」 唯「やっぱり枕はムギちゃんの膝に限りますなー」 紬「お褒めに与り光栄です」ナデナデ 唯「やっぱりムギちゃんってお婆ちゃんみたい」 紬「え”っ」 唯「……ん? なにかおかしいこと言っちゃった?」 紬「ううん」 唯「……嘘。なんだかムギちゃん落ち込んでるみたいだし」 紬「そんなことないわ」 唯「むーっ。顔を隠してそんなこと言われても信じられないよ」 紬「あのね、唯ちゃん」 唯「うん」 紬「私ってお婆ちゃんみたい?」 唯「うん」 紬「……」シュン 唯「えっ、えっ、なんでムギちゃん落ち込んじゃうの?」 紬「だって今、お婆ちゃんみたいだって」 唯「だってムギちゃんお婆ちゃんみたいだし」 紬「やっぱり」シュン 唯「わっわっ、落ち込んじゃ嫌だよ。ムギちゃん」 紬「……私、皺くちゃ?」 紬「……私の髪、白髪みたい?」 紬「……加齢臭とか、しちゃってる?」 唯「む、むぎちゃん。そんな意味じゃないよ!!」 紬「えっ」 唯「ムギちゃんはとっても綺麗な肌だし」 唯「髪は金色でとっても綺麗だし」 唯「とってもやさしくていい匂いだよ」 紬「それじゃあ、どうしてお婆ちゃんみたいだなんて……」 唯「だってムギちゃん優しいじゃん」 紬「えっ」 唯「えっ」 紬「……」 唯「……」 紬「私が優しいからお婆ちゃんみたいって言ったの?」 唯「うん。いつも私の面倒みてくれるし」 唯「こうやって膝枕してくれるし」 紬「……」 唯「ムギちゃん?」 紬「ごめんなさい唯ちゃん」 唯「どうしてムギちゃんが謝るの?」 紬「だって……唯ちゃんは私のことを褒めてくれていたんでしょ」 唯「うん」 紬「それなのに私は自分が貶されてると思っちゃったんだもの」 紬「唯ちゃんがそんなことするはずないのに……」 唯「そんなこと気にしなくていいよ」 紬「ううん。ごめんなさい」 唯「謝るのは私の方だよー」 紬「あのね、唯ちゃん。私のお祖母様はとても厳しい人だったの」 唯「へっ」 紬「礼儀作法をとても大切にする人でね」 紬「挨拶をいい加減にするときつく叱られたわ」 唯「うへぇ~」 紬「だから唯ちゃんの言葉をそういう風に受け止めちゃったの」 紬「本当にごめんなさい」 唯「そうなんだ」 紬「ええ」 唯「もういないんだね」 紬「ええ」 唯「ムギちゃん、お婆ちゃんのこと好きだった?」 紬「どうなんだろう」 唯「わからないの?」 紬「お祖母様生きてた頃は正直、いい印象がなかったの」 紬「私も幼かったし」 紬「でも今になって考えてみると、あの厳しさは私のためだったのかなって」 紬「お祖母様なりの優しさだったのかな、って思うの」 唯「ふぅん」 紬「唯ちゃんのお祖母様は?」 唯「私のお婆ちゃんはまだまだ元気だよー」 紬「どんな人?」 唯「うーん。一言でいうと」 紬「いうと?」 唯「ムギちゃんみたいな人かな」 紬「えっ」 唯「お婆ちゃんのところに行くと、いつも膝枕してくれるの」 唯「私が左の膝、憂が右の膝に陣取ってね」 唯「暑い夜はね、私が眠るまでずーっとうちわで扇いでくれるんだ」 紬「素敵なお祖母様ね」 唯「うん! でもそれだけじゃないんだ」 紬「他にも?」 唯「うん。私達が来るのに合わせて美味しいお菓子を用意してくれたり」 唯「お菓子を食べた後口元を優しく拭ってくれたり」 紬「ふふっ、私と同じね」 唯「うん。そうなんだ」 紬「私、唯ちゃんのお祖母様のかわりになれてるのかな?」 唯「それは無理だよー」 唯「だってムギちゃんはムギちゃんだもん」 紬「……!」 唯「お婆ちゃんのことは大好きだけど」 唯「一緒に音楽をやりたいと思うのはムギちゃんだけだよ」 紬「……りっちゃんと澪ちゃんは?」 唯「……忘れてた」テヘヘ 紬「もう……」 唯「あれっ、ムギちゃん」 唯(泣いてる……?) 紬「ごめんね、唯ちゃん」 唯「な、なんで泣いてるの?」 唯「私、また、おかしいこと言っちゃった?」」 紬「ううん。嬉しくって」 唯「嬉しい?」 紬「うん」 唯「もうっ! ムギちゃんは大袈裟なんだから」 紬「そうだね」 唯「ねぇ、ムギちゃん」 紬「なぁに?」 唯「私ね、ずっとずっとみんなで音楽やりたいと思うんだ」 紬「ずっとずっと?」 唯「うん。澪ちゃんとりっちゃんと……ムギちゃんと」 紬「……さっきは二人のこと忘れてたのに?」 唯「……うぅ。さっきのは言葉のアヤというか何というか」 紬「ふふっ、わかってるわ」 唯「話を戻すね」 唯「それこそ皺くちゃのお婆ちゃんになっても」 唯「白髪だらけのお婆ちゃんになっても」 唯「ずっとずーっと一緒に音楽をやりたいなって」 唯「そう思ってるんだ」 紬「音楽だけ?」 唯「えっ」 紬「ティータイムはいいの?」 唯「……! もちろんティータイムも!」 紬「私もね、思うんだ」 唯「なにを?」 紬「ずっとずっと唯ちゃんにお茶をいれてあげたいなって」 唯「私にだけ?」 紬「それは、どうだろうね?」 唯「えっ」 紬「ふふっ。もちろん澪ちゃんとりっちゃんにも、ね」 唯「そ、そうだよね」 紬「ええ」 唯「ムギちゃんならきっと優しいお婆ちゃんになると思うよ」 紬「私はお祖母様の血をひいてるから」 紬「意外と厳しいお婆ちゃんになったりして」 唯「それは嫌だなー。あっ、でも私にだけ優しくしてくれればいいかな」 紬「じゃあ唯ちゃんにだけはずっとずっと優しくするね」 唯「うんっ!」 紬「ねぇ、唯ちゃん」 唯「なぁに?」 紬「いつか唯ちゃんのお祖母様に会わせてくれる?」 唯「もちろんいいよ。きっと気が合うと思うよ」 紬「そうね。唯ちゃんの昔話を聞かせてもらわなきゃ」 唯「そんなこと聞いて楽しいかな」 紬「ええ!」 唯「ふぅん」 紬「……」 唯「……」 紬「あれっ、唯ちゃん?」 唯「ちょっと眠くなってきちゃった」 紬「すこし、寝る?」 唯「うん。少しだけ」 ___ __ 唯「ぐーぐー」 紬「ふふっ。よく寝てる」 紬「……」 紬「……」 紬「私ね、おもうの」 紬「ずっとずっと唯ちゃんの横に立っていたいって」 紬「お婆ちゃんになっても、ずっとずっといっしょにいたいって」 紬「だから、唯ちゃんに貶められてるって勘違いして、とても悲しかったの」 紬「ごめんね」 紬「勘違いしてごめんね」 唯「ぐーぐー」 紬「それからね」 紬「とっても嬉しかったんだ」 紬「ずっといっしょに音楽やりたいって言ってくれて」 紬「ずっとティータイムをやりたいって言ってくれて」 紬「本当に」 紬「本当に嬉しかったの!」 唯「ぐーぐー」 紬「私がお婆ちゃんになっても」 紬「本当に皺くちゃなお婆ちゃんになって」 紬「髪も眉毛も全部白くなっちゃって」 紬「まっすぐ歩くのが難しいぐらい腰が曲がっちゃっても」 紬「ずっとずっと唯ちゃんの傍に居たいって想ってるの」 唯「ぐーぐー」 紬「……やっぱり無理かな」 紬「でも、やってみないとわからないよね」 紬「唯ちゃんはどう思う?」 唯「ぐーぐー……もう食べられないよ~」ムニャムニャ 紬「もうっ!」 おしまいっ! 戻る
https://w.atwiki.jp/yuimio/pages/621.html
無題(r014) N女学生寮 コンコン 唯「ん~こんなじかんにだぁれぇ~」ファ 澪『わ、私だけど……今、いいかな……?』 唯「みおちゃん?どうぞーあいてるよぉ」 澪「お、おじゃまします」ガチャ 唯「こんな時間にどうしたのぉ?」 澪「……」 唯「みおちゃん?」 澪「……ゆい!」ダキッ 唯「ふぉぉ!?み、みおちゃん!?」 澪「ゆぃ……ゆいぃ……」グス 唯「!!みおちゃん、泣いてるの?」 澪「うぅ……ゆぃ……」 唯「……みおちゃん、わたしにはどうしてみおちゃんが泣いてるのかはわからないけど」ギュ 唯「こうしてることでみおちゃんの気が晴れるなら、いくらでも泣いていいからね」ナデナデ 澪「ゆいぃ……」ギュー * 唯「落ち着いた?」ナデナデ 澪「うん、だいぶ」 唯「そっか、よかった」ナデナデ 澪「あの、ゆい?」 唯「どうしたの?」ナデナデ 澪「もう放してくれても大丈夫だけど……」 唯「だぁめ、みおちゃんは良い子さんだからね、いま放しちゃったまた溜め込んじゃうでしょー」ナデナデ 澪「そんなこと……あるかも……」 唯「それにね、みおちゃんはもっと甘えてもいいんだよ?」 澪「え?」 唯「いつもみんなを引っ張ろうと頑張ってるもんね。たまにはめいっぱい誰かに甘えてもいいんだよ?」 澪「そう、かな」 唯「そうだよ、きっと他のメンバーも同じことを言ってくれると思うなぁ」 澪「……そっか」ギュ 唯「うん、そうだよ」ナデナデ 澪「それじゃあ、さ。今からゆいに……あ、甘えても、いいかな」/// 唯「もちろんだよ!なんでもいってごらんなさい!」 澪「今日は朝まで一緒にいてくれないか?」/// 唯「もちろん!それじゃあ一緒に寝よう!ほら、おいでよみおちゃん」ポフポフ 澪「し、しつれいします……」ゴソゴソ 唯「みおちゃんと一緒の布団で寝るのは初めてだねぇ」 澪「そうだな、あんまり同じ布団に入る機会なんてないからな」 唯「そだねー特にみおちゃんはいつも断るしー」 澪「う、だってみんなが一緒じゃ恥ずかしいし……」 唯「一緒じゃなければいいの?」パァ 澪「へ?や、それは、その……」/// 唯「」ワクワク 澪「うぅ……えい!」ギュ 唯「ほわぁ!?」 澪「た……たまに、なら……」/// 唯「ふふ、やっぱりみおちゃんはかわいいなぁ」ギュー 澪「なっ!?」/// 唯「それじゃあ、みおちゃんが寂しくないように毎日一緒に寝てあげよう!」フンス 澪「ま、毎日は困る!」 唯「えーどうしてー?」 澪「こんなのが毎日続いてさ、その、はまっちゃったら一人で寝れなくなるじゃないか」/// 唯「みおちゃん」キューン 澪「は、はずかしぃ」///プシュー 唯「ねぇみおちゃん」 澪「?」 唯「さっきわたしさ、みおちゃんは甘えていいって言ったよね?」 澪「うん、それがどうかしたの?」 唯「もしね、甘えるならわたしだけに甘えて来てくれたら嬉しいなぁって」 澪「え、どうして?」 唯「だって、その、いまのみおちゃんはとってもかわいいんだもん。わたし以外の人には見せたくないなぁって」テヘヘ 澪「ゆい……まったく、ゆいはそんなことかんがえてたのか」クス 唯「そんなことじゃないよー、大事なことだもん」 澪「心配しなくてもさ、こんな情けない姿、見せられるのはゆいだけだよ」ギュ 唯「みおちゃん……」 澪「なんだ、ゆい?」/// 唯「……顔、まっかだよ?」 澪「し、しょうがないだろ!すっごく、恥ずかしかったんだからな」ギュ 唯「ふふ、ありがとね、みおちゃん」ギュ 澪「ん、ゆいの、ためだからな」ファ… 唯「あれ、みおちゃん眠い?」 澪「ちょっと、な。ねぇゆい、私が起きるまでぎゅってしておいてくれる?」 唯「もちろんだよ」ギュ 澪「ふふ、よかった。わたし、ゆいにぎゅってされてるとすごく落ち着くなぁ」スリスリ 唯「わたしも、みおちゃんとぎゅってしてるととってもしあわせだよ」ナデナデ 澪「そっか、うれしいなぁ」 唯「ふふ、それじゃあ明日も学校だし、もう寝ようか」 澪「うん、おやすみぃ、ゆぃ」スースー 唯「おやすみ、みおちゃん」 END +あとがき 甘えるみおちゃんとかっこ唯テーマにして書いたつもりです。 でもあんまりそんなかんじがしなくて、最後のあたりは私のいつもの唯澪が出てきてしまいました。 かっこ唯の要素もあんまりないっぽいし……すこし反省。 ちなみに澪ちゃんがどうして泣いてたのかはご想像にお任せします(おい 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 初出:7- 838 自分の大きなミスから溝が生まれ、散り散り -- (名無しさん) 2012-11-15 16 49 04 となってしまったが、唯だけはそばにいてくれたみたいな夢を見たから -- (名無しさん) 2012-11-15 16 50 27 名前 コメント すべてのコメントを見る 戻る TOP
https://w.atwiki.jp/gensouiri/pages/1638.html
もこたんかわいいから幻想郷行きたいんだ 動画リンク コメント・レビュー もこたんかわいいから幻想郷行きたいんだ 何人目の幻想入りか 作者 ひとこと 主人公 動画リンク 新作 一話 コメント・レビュー テンポがとてもよく、面白い。毎回タイトル変わるのかな? -- (名無しさん) 2008-11-16 19 10 08 名前 コメント すべてのコメントを見る ※この作品のレビューを募集しています。レビューについては、こちらもご覧下さい。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1905.html
『おんもでゆっくりしよう!2』中編 オレはイライラしていた。 前回、編集ミスでナレーターであるこのオレ『観察お兄さん(神気取り)』の説明文が無くなっていた事に。 ではなく、今回絶賛観察中のこのゆっくり家族達に、である。とにかくウザイ。 観察一直線のオレが虐待鬼意三に宗旨替えしてしまいそうなウザさだ。 特にれいむ種のウザさに拍車がかかっている気がする。 かなりの数が死んだとはいえ、それでも溜飲が下がらないとは。 つーか、なんで全滅しなかったんですか? そんな運はイラナイよ! 今回(元々は1話形式でした。)はれいむ種のウザさにも焦点を当てて観察してみよう。 「それじゃあれいむ、おちびちゃん、ゆっくりおうちにかえっておみずさんご~くご~くするのぜ…」 「つかれたよ! もうあんようごかないよ!」 「おみじゅ! おみじゅ!」 「まりさ! れいむもかわいいおちびちゃんたちも、つかれちゃってもううごけないよ! ゆっくりしないでおみずさんさがしてきてね!」 「ゆぅぅぅ…」 でた、れいむ! なんなんですかね、コレ(笑) 身体機能に差が皆無なら、れいむの無能っぷりはその『向上心』の無さに尽きる。 ゆっくりは種毎に性格が違う。同種個体でも臆病・活発等の差異はあれど、 基本的な種の行動原理のようなものがあったりなかったり 観察対象のゆっくりについて考察するなら まりさ:活発、蒐集癖。これはエサを集めるのに適したものだ。 ありす:活発、とかいは。まりさほどではないが、ガラクタ蒐集もする。 れいむ:(笑) 現状に甘んじることなく、よりゆっくりするためにアクティブに行動するのが今回のまりさ、ありす。 餌場の開拓、食料の選別(毒など)、とかいはなコーディネート(資材集め)、すっきりてくにっく…枚挙に暇が無い。 一方、れいむは漠然とした『ゆっくり』を求める傾向にある。 『おうた』等は他のゆっくりだって歌うし、れいむ種は狭い自分の引き出しからしか旋律を生み出せない。 特に練習らしい練習もしない。どちらかというと、ゆっくりしたおうたを聴くことの方がゆっくりできる。 あったかいおうちでゆっくりしたい。 おちびちゃんがいればゆっくりできる。 おいしいごはんがあればゆっくりできる。等など そのどれもが受動的であり、現状の『ゆっくり』に甘んじてしまう傾向が強いのが『ゆっくりれいむ』だ。 例えば、ここに一本のアイスの棒(はずれ)が落ちていたとしよう。 例1)まりさ:「ゆゆゆっ! これはすごくゆっくりしたぼうさんだよ! まりさのだんびらにするよ!」 例2)ありす:「ゆゆっ! なかなかとかいはなぼうさんね! おうちのこーでぃねーとにつかえるわ!」 例3)れいむ:「(ぴょーん、ぴょーん、ぴょーん、ぴょーん…)」 …。たとえが悪かったかもしれない。おっと、またまた観察が疎かに。 この癖なんとしないといかんな。 「だめなんだぜ、ここはあぶないんだぜ、おうちのちかくにごーくごーくできるかわさんがあるから そこまでがんばってほしいんだぜ…」 「ゆっ! …しかたないね。れいむはおちびちゃんたちにしんじゃったおちびちゃんたちのぶんまで ゆっくりしてほしいよ。…おちびちゃん、れいむのおくちにはいってね! おうちかえろうね!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「ゆっきゅち!」 「やじゃぁぁっ! おみじゅ! おみじゅごーきゅごーきゅちたぃぃぃいいっ!」 「ゆっくりしないではやくしないとまたゆっくりできなくなっちゃうんだぜ! ゆっくりしないでおうちかえるんだぜ!」 どうやら、まりさ一家は帰宅することで話が纏ったようだ。 れいむも意外と聞き分けが良いのがオドロキである。 さて、赤れいむが1匹ダダこねているがどうするのかな? 「おおきなおちびちゃんたちは、まりさのおくちにゆっくりはいるんだぜ!」 「ゆびいいいいいぃぃっ! おみじゅぅぅぅ! ゆびぃぃぃい!!」(ころころ) ※饅頭格納中… 「ゆびぃぃぃぃっ! びゃぁぁぁっ!! みじゅもっでごぃぃぃっ!!」(ころんころん) 「ふうう、おひひひゃん、ふぁふぁうひへね…」 「へいふ…ひはんははいんはへ、ほうはへふぁふぁいふぉ…」 「ふうううう! ほへんふぇぇぇ! ほひひふぁんほへんふぇぇぇ!!」 あらあら、生き残った子ゆっくり達を格納した親達はわがまま赤れいむをおいて ずーりずーりと帰途についてしまった。 ころころ転がりながら泣き叫んでいる赤れいむはソレに気付いていない様子。 一家は、蚊に刺され苦しみぬいた末に死んでいった子達、泣き叫んでいるあかちゃん、 そして未だ毒に苦しんでいる瀕死の我が子を順に見やり、 『ふっふり…』 ぽつり、と涙と共に零し、背(?)を向けた。 すぐ傍には当然ありす一家もいたのだが、子ありすの惨状に嘆くのに忙しく、 まりさ達が去ったことには気が付いていない。 ありす達もまりさ達も、他の家族を気遣っている余裕など既に無くなっていた。 「ありしゅおみじゅごーきゅごーきゅちたいよ!」 「れいむものどさんからからだよぉ! おみずさんご~くご~くしたいよ!」 「ゆうう、れいむ、どうしよう…?」 「ゆっ! ゆっ! あがれないよ!」 ありす一家もノドの渇きに苦しんでいるようだ。 だが、帰ろうにも一家の大黒饅頭ゆっくりれいむが側溝から抜け出せない。 親れいむは側溝から抜け出そうと必死で、親ありすの問いかけにも気が付かない。 「ゆはぁ、ゆはぁああ、れいむのどさんからからになっちゃったよ! かべさんはいじわるしないでれいむをここからだしてね! ゆっ? これはおみずさんだよ! れいむがごーくごーくするよ!」 「ゆゆっ!? おと~さん! れいむにもごーくごーくさせてね!」 「ありしゅも! ありしゅも!」 どうやら、目の前のゆっくり皿に溜まった黒い雨水に気が付いたようだ。 ボウフラがうじゃうじゃ湧いているんだが、ゆっくり的にはお構いなしらしい。 蚊柱と同じ位、ゆっくりしていない挙動で蠢いているのだが…、水の中は良く見えないのだろうか。 側溝は成体1匹分の深さ。子ゆっくりどもはゆっくりしないでご~くご~くしたいのか 親れいむの頭を経由してコロリンと側溝の底に降り立った。 成体でも恐れをなした高さだというのに、なんとも無謀・無知・無垢… そこは風の通り道になっているからか、子れいむたちはヒヤリとした空気に包まれる。 コンクリートの外壁はどこまでも続いており、フタの抜けたこの場所から少し先は キチンと天蓋があり、『ュゥゥゥゥゥ』と暗い音を黒い洞から発していた。 ゆっくりの目線からすれば、天井が暗くざわめく灰色の異空間に迷い込んだような感覚だ。 そして目の前にはなんだか不気味な雰囲気の肌色のオブジェ。この中で子ありすは…。 「ゆううううっ! なんだかこわいよ! ゆっくりできないよ!」 「ゆぇぇぇぇえん!」 降りた子ゆっくり達は、その強烈な違和感に怯えはじめた。 「ゆっ! おちびちゃんたちもおりてきちゃったの? ゆふふ、しかたないね。いっしょにご~くご~くしようね!」 子ゆっくりでは皿の縁に届かないので、親れいむは口移しで子ゆっくり達を潤す。 大量のボウフラと共に… 「ごーくごーく! ごーくごーく! しあわせー!」 「とかいはなおあじね!」 「れいみゅも! れいみゅもぉぉぉっ!」 「れいむ、こっちにもとかいはなおあじのおみずさんちょうだいね!」 側溝の縁で待機していた親ありすと赤ゆっくり達もおみずの催促。 「ゆっ! わかったよ! ご~くご~く! ご~くご~く!」 「ゆゆっ! いじわるしないでおみずさんちょうだいね!」 「ちょ~らいにぇ!」 「ひゅっひゅひ、ひひゅほ! ぴゅ~~~~~~っ!」 「ゆわぁ~~~! あめしゃんだぁぁ!」 「ゆゆっ! これはおみずさんだよ! とかいはなしゃわ~さんね! さすがありすのだ~りんだわ!」 「ぴゅ~~~~~~~っ!」 「ゆきゃっ! ゆきゃっ!」 親れいむは口に含んだおみずを、上段の家族に向けて緩やかに噴出した。 蚊に刺された蔓の処理といい、今のしゃわ~といい、このれいむは何かと気転が利くようだ。 父ゆっくりになると、れいむ種でも少しは変わるのだろうか 渇きを潤す黒いしゃわ~(ボウフラ入り)にご満悦の一家。 黒い虹が一家の行く末を暗示するかのように架かっていた。 「ゆぅぅぅ~~~… でられないよ…」 一通り水遊びを楽しんだ一家はようやく、もう帰ろうという結論に辿り着く。 しかし、未だ親れいむの側溝脱出は成らず、残された一家は困り果てていた。 子れいむたちは親れいむのおつむに取り付いてず~りず~りと登頂し、なんとか脱出できた。 「れいむぅぅぅ、だいじょうぶなのぉぉ!?」 「ゆゆゆ! …しんぱいごむようだよ! きっとべつのばしょさんからでられるよ! ありすたちはゆっくりしないでさきにおうちにかえってね!」 「ゆ~~~ん… わかったわ、れいむ。ゆっくりしていってね!!!」 『ゆっくりしていってね!!!』 『ゆっきゅちちちぇいっちぇにぇ!!!』 子ゆっくり達を連れてその場からず~りず~りと去る親ありす達。 「ゆっ、おか~さん! あかちゃんがないているよ!」 「ゆっ!? ……いきましょう、おちびちゃんたち。ゆっくりしないでおうちにかえりましょうね…」 「ゆぅぅぅ…」 置いていかれた赤れいむを捨て置き、帰路に着く。 自然は厳しい。ゆっくりだって生きている。 時折見せる、こうした野生動物然としたドライな反応もゆっくりの魅力のひとつだ。 おうちにかえろう。おうちにかえってゆっくりしよう。 きょうはおちびちゃんたちがいっぱいゆっくりできなくなってしまった。 しんでしまったおちびちゃんのぶんまでいっぱいゆっくりしよう。 おいしいごはんさんをぽんぽんいっぱいむ~しゃむ~しゃしよう。 まいにちいっぱいす~やす~やしてす~くす~くおおきくなろう。 ゆっくりしよう。 おんもはこわいこわいだったけれどあしたもがんばってゆっくりしよう。 「ゆっ! ゆっくりしないででぐちさんをさがすよ!」 ゆっくり皿のあった場所は格子があり、『下流』の方に行くしかない。 意を決したれいむは暗闇の洞に吸い込まれるように消えていった。 遊歩道には呻き声と赤れいむの嘆きだけが残っていたが、 元々小さな体から発せられる声は、少し強くなってきた風に容易く掻き消される。 「か゛ゆ゛…う゛ま゛。゛」 「ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…。 ……。 …。 ゅ゛っ…。 ……。 …。」 「ゆびいいいいい!! ゆっ!? おきゃーしゃんどきょぉ? どきょぉぉぉ!?」 今まで宥めてくれていた親れいむの声が無くなっていることにようやく気付いた赤れいむ。 不信に思い、辺りをキョロキョロ見渡すが、そこにはゆっくり出来ないオブジェと化した家族達、おともだち。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆぁぁぁぁ! うわあああああああ!!」 (○)(○) あれだけ喧騒に包まれた遊歩道も静かになった。 散らばったゴミクズを足で寄せ集め、遊歩道のベンチの脇にあるクズ篭に放り込みながら これからの観察プランを練ることにする。 『ュゥゥゥゥゥ… ュゥゥゥゥゥ…』 …側溝から時折聞こえるこの音。大体見当はつくが、中はどうなっているのだろうか。 それにさっきまでは静かだったのにまた聞こえてきた。 次の観察プランはコイツでいくか。 「ず~り、ず~り! ゆっ! ゆっ!」 暗闇の側溝の中、親れいむは窮屈そうに這っていた。 天蓋はバスケットボール大の体の頭頂部分にピッタリで跳ねることが出来ないのだ。 じまんのかわいいおりぼんが擦れて汚れてしまっているのも知覚出来ていたが、 今は一刻も早くここから脱出して、ありすたちに合流しなければならない。 くきさんを生やした身重のありすひとりとおちびちゃんでは、帰り道は不安である。 生き残ったおちびちゃんもまだいっぱいいるのに、おと~さんのれいむが守らねば! 「まっててね! ありす! おちびちゃん! れいむはゆっくりはやくだっしゅつするよ!」 『ュゥゥゥゥゥ… ュゥゥゥゥゥ…』 「ゆ! ゆぅぅぅ… またきこえてきたよ」 この音。いや、声。 どれくらい進んだのか判らないが、だんだん近づいてきているような? 既に風の音ではないというのは、れいむでも判った。 こころなしか、ゆっくりの声に似ている? 「ゆ~~ん! だれかいるのぉ~? いるならおへんじしてねぇ~! ず~り、ず~り!」 呼びかけながらまた暫しのず~りず~り。 「ユウウウウウ… ユウウウウウ…」 「ゆゆゆ!?」 いた。 ゆっくりだ。 天蓋ブロック端に刻まれた取っ手が明り取りの窓の役割を果たし、ボンヤリと照らす。 そこにはボロボロのれいむがいた。 おりぼんも、おはだも、かみさんも、きっとおくちのなかのは(歯)やしたさんもボロボロだろう。 (なんだかゆっくりしてないれいむがいるよ…) 観察お兄さん的に側溝の中の状態も看破できるのだが、 観察お兄さん的好奇心で、れいむに姿を見られないよう留意しながら蓋を外してみる。 差し込んだ外の明かりにボロれいむ&親れいむがそれぞれ別な反応を示す。 いや、根底は同じなのかもしれない。 「ゆぴぴるっ… おんもぉ? …ゆぴるぱっ!」 「ゆゆゆ!? あかるくなったよ! でぐちだよ! れいむのるーとせんたくはただしかったよ!」 側溝の1ブロックを外すと、れいむとボロれいむが丁度露出した。 光を浴びたボロれいむの様子が何かおかしいと感じたれいむは、ボロれいむがかなり衰弱しているということに気が付いた。 「ゆゆっ! だいじょうぶ!? だいじょうぶ!? ゆっくりしてる!?」 「ゆぴぴる! ぴぴるんぱ! ぱぴゅるぴゅん!」 「ゆっくりしてね! ゆっくりしてね!」 「ぴぴゃらっぷ! ぴゃぁん! ぴゃぁん!」 ボロれいむがどんな状態か、簡単にいえば、体内で大量のボウフラが暴れているのだ。 天蓋を外したおかげで半透明の眼球から体内に光が差し込み、負の走光性だか走地性よろしく ボウフラが一斉に活動したのだ。その眼球内にもギッシリとボウフラが詰まっていたが。 それにしても、いったい、体内でどうやって呼吸しているのだろうか。 ボロれいむは一昨日、側溝に迷い込んだ若れいむだった。 はるさんを迎えひとりだちした矢先、同じく巣立ちをしたかっこいい若れいむ2・若ありす1姉妹に出会い、 一緒に遊んでいるうちに遊歩道に近づいてしまった。 針金に引っ掛って落下し、その時出来た傷口に卵を産み付けられ、体内でボウフラが孵化してしまったのだ。 傷の痛みと、一緒に落ちて分断されたおともだちのあまりにゆっくり出来ない最後に 散々泣き叫び衰弱していたため、あちこち刺されても大した反応も出来ず、 ゆっくりできないなにかから逃れるように這いずりながらココまで辿り着いた。 オレはゆっくりと蓋を元に戻した。 「ぱぴぷぺっ… ユウウウウ…」 「ゆっくりしてね! ゆっくり! (ゴゴゴ…)ゆゆっ?! おんもさんまってね! ゆっくりしててね! ゆぅぅぅぅ…」 予想通りってのも、案外つまらない。 くぐもっていく2匹の声を聞きながらオレは考える。 この親れいむも直接ボウフラ入りの水を飲んだし、ボウフラ自体もあんこに耐性があるようだ。 頭頂部も擦れて禿げ上がり、もうしばらく這いずれば中身が露出するだろう。 それにこの先には… 「ゆぐぅぅぅ?! でぐちさんがなくなっちゃたよぉぉお!? でぐちさんやめてね!! れいむをおんもにださせてね! それからしまってね!!」 「ゆううう… れいむは、いきるよ… いきて、ありすとおちびちゃんとしあわせ~にくらすんだよ… ず~り、ず~り」 「ュゥゥゥゥゥ… ュゥゥゥゥゥ…」 「ュゥゥ…」 「ゆっゆっ!? すすめないよ! どおして!?」 側溝には要所毎に格子が設えてあった。 格子の向こうからもあの声が渦巻いて聞こえてくる。 そして、ゆっくり出来ない羽音も… オレはありすを追いながら携帯で蚊について調べていた。 展望台は電波塔の役割も果しており、自然豊かなこの公園内でも感度は良好だ。 どうやら『ゆ擦り蚊』とかいうのがいるみたいだが、ソレと今回のは少し体色が違う。 コイツの口吻は赤く、翅はステンドグラスのように七色に煌いているのだ。 『紅魔蚊(ん)』ゆっくりの死体を媒介に繁殖する蚊だそうだ。 ゆっくりに含まれるれみりゃ・ふらん等の因子が起因して発生するらしい。 吸血するもの同士、気が合ったってことなのか? ゆっくりのあんこしか吸わず、日の光が苦手。 繁殖力・成長速度はゆっくり並み。etc. ちなみにボウフラは『ぼうふりゃ』とも『ぼうふらん』ともいわれるそうだ。 正直、どうでもいい。 ゆっくりが介入したことで、残念ながら全てにおいて元の蚊よりグレードダウンした生物である。 歴史的にみても、ゆっくりなんぞよりも蚊が優れた生命であることは知れたことなのだが ゆっくり同士でもこのようなグレードダウンは往々にして起こりうる。 例えば、れいむの場合 ゆっくりの基本的な身体差は無いが、れいむ種は小柄な個体が多い。 これはエサ集めを幼少期や成熟期に他の個体に依存した結果、最終的な摂取量がまりさ種やありす種に及ばないためだ。 もし、れいむ種が父役を果たした場合でも、拾得量や栄養面での問題。 少ないエサを子(特にれいむ種の仔にだが)に優先的に分け与えるため似たような結果になる。 アクティブに動く個体は『かり』の際にも少なからず食料を摂取し、運動の作用で健康なものが多い。 経験を積み重ね、それに基づいた野生ならではの知性と閃きも見せる。 小柄な個体が産む仔は、比例して小さく貧弱であり、餡容量も少ない。 ゆっくりの特徴として、劣性の遺伝情報も色濃く受け継がれてしまう。 野生で生きるものの母体としては、れいむ種などではなく、まりさ・ありす・ようむ等、 とにかくれいむ以外のゆっくりが望ましいのだ。 これは、現代で言うところのラバ・ケッティの関係に当てはめると判りやすいかもしれない。 ♀ウマに♂ロバを掛け合わせると、体の大きな♀ウマからは 馬の力強さ、ロバの頑丈さ、粗食に耐える素晴らしい能力を持った 『ラバ』という動物が生まれる。寿命も比較的長い。 ♀ロバに♂ウマを掛け合わせると、体の小さな♀ロバからは 馬の臆病さ、ロバの矮小さ、粗食に任せた大食らいの役立たず 『ケッティ』という動物が生まれる。体が小さいので労役には耐えられない。 これらは一代雑種と呼ばれ、子孫を、仔を成せない個体として生まれる。 だがこれがゆっくり同士、母体がれいむ、もしくはでいぶならどうだろう。 どんな個体でも大量に仔を成すし、れいむ同士(苦笑)の『つがい』も珍しくない。 上記の例をゆっくりに当てはめて鑑みれば、現在のゆっくりを取り巻く状況も少しは改善されるのかもしれない。 そんな事を考えながら散策していると、丘の手前の草むらでなにやら騒いでいるありす一家に追いついた。 「ゆぷりぴゅん!」 「ぷりんぱ!」 「おぢびぢゃんどおじぢゃっだのぉぉぉおおおっ!!」 ぼうふりゃ水を浴び、飲んだチビどもが悉く奇声を上げて転がっていた。 時刻はまだ14時。絶好のぴくにっく日和の丘の草原なのだ。 子ゆっくりのおめめから入った光は小さな体内を蹂躙し、ソレを受けたぼうふりゃもあんこを蹂躙する。 その苦痛は想像を絶するだろう。 わずかに生き残ったチビども(それでも『いっぱい』いたのだが)は、総てが正常に立つことが出来ず その丸っこい身体を弓なりに反らせ、ぬるぬるの気味の悪いアーチを形作っていた。 「あぎゃぢゃぁっ!! あぎゃぢゃっ! じっがりじでぇ!! おうぢがえろーね゛っ! もうずぐそごだよぉ!!」 「ぴぴゃらぁぁぁっ!! ぴゅん! ぴゅん!」 べぇろべぇろと子を舐めてあやす親ありす。 赤れいむ・赤ありすは、アーチのバランスが崩れ横倒しになるとコメツキムシの如くパチンと跳ねる。 普段の跳躍の倍以上の高度から粘液濡れの地面に叩きつけられ、またゆっくりとブリッジの態勢をとる。繰り返しだ。 よく見ると体表面がボコボコと不規則に波打っていて、体内でぼうふりゃが暴れていることがわかる。 体内のところどころから小さな突起が飛び出て、手を振るようにピンピンと動く。 コレも逃げ場を求めて体外に出ようともがくぼうふりゃだった。 幼体の場合、半透明の眼球を経由せずとも、その体全体で光を受けるだけで十分だ。 手を陽にかざすと光が透過するように、皮の薄い子ゆ・赤ゆも同様に体内を光が通る。 紫外線の影響もその身体内部全域に受けるので、成体近くになるまでの日光浴は程ほどにするのがゆっくり飼育の常識。 因果関係は不明だが短時間でも効果が出るので、それでも楽観視は出来ない。 野生の個体が良くする、実ゆっくりといっしょにひなたぼっこ→いねむり等は、高確率で先天的な障害を招くのである。 ちなみにれいむ種の多くは日光浴を好む傾向にある。 そう、れいむ種はその行動規範の悉くが実利を成さない。それはゆっくり全般に云えることでもあるのだが… れいむ…(笑) 「ぴぴりぎぃぃぃいっ! ぎぴぎぎぃいいぃぃぃっき!」 子ありすはよほど苦しいのか、アーチが捻れ、まるで固絞りの雑巾の様になっている。 絞られて出てくるのは水とは形容しがたいヌルヌルの黄ばんだ粘液だけだ。 そして、ギリギリと音立てるかのごとく捻れた子ありすが瞬時に弛緩し、 カラカラの体がぺしゃん!と粘液溜まりに沈む。 苦しみにもがき捻れすぎて水分を絞りきってしまったらしい。 おまけにゆっくりゲージ残量もほぼゼロ。えんぷてぃっ!だ まあ、ぼうふりゃに殺されたようなもんだから脱水赤れいむよりはマシかな。 なかなかとかいはな死に方だし、やったね! 雑巾ありす!! パサパサ雑巾ありすはその体全体を使い水分を吸い上げるが、既に意思の宿らない身体に給水される液体は その皮をグズグズに変化させてしまう。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! だんでだのぉぉぉおお!!」 「ぴききぃいぃっ! ぴぃぃいいぃいっ!」(ぱぴゅ!) こちらは子れいむ。全身を捻った結果、眼球が破裂してかわいい音を奏でる。 破裂と共に飛び出た大量のぼうふりゃが日の光に晒され、粘液ダレと子れいむの亡骸の上でピンピン跳ね回る。 欲張って他の子よりも大量に黒水を飲んだ結果であった。 「ゆひっ! ゆひっ! …ゲッ!! ォゲェェェ!!! ゲェッ! ォァゲッ!! ウェォォォオッ! …ッオ!」 その光景に親ありすも堪らず嘔吐してしまう。 水っぽいソレはパシャパシャと親ありすの前を流れ、のた打ち回る仔ゆっくり溜まりにまで到達する。 既に赤ゆっくり達も捻れており、その姿は一手間施したパスタ、もしくは何かの幼虫を髣髴させた。 どちらか一方の先端にはモッサリと毛が生え、鮮やかな飾りのようなものがヒラリと揺れていたが 親ありすの消化液も兼ねた吐瀉物が触れると、雪解けの如く消えてしまった。 「でいむぅぅぅ… ありず、どうじだらいいのぉぉぉぉ… ぽうやだよぼほぉぉ… ゆっぐりじだいよぉぉぉ…」 (*1) )))) 「ゆうう?」 今度は頭上の蔓に成った実ゆっくりが高速で振動し始めた。 3つの実のうち、本体側の2個の実(ありす・れいむ)がカッと目を見開き、苦悶の声をあげる。 子を宿したゆっくりが何か摂取すると、まずはその孕み子を経由する。 親ありすが飲んだ水、そのぼうふりゃが実ゆっくりまで到達し、徐々にその中身と摩り替わっていったのだ。 (*2) 「おぎびぎゃん! やべで! おぢびぎゃんぼゆっぐりさぜて! ありずのおぢびじゃっ!」 (*3) )))) (ぷつん! ぽとり) 「ゆゆゆっ! あ゛りずのおぢびぢゃん! うばれだよ! ゆっぐり゛! ゆっぐりじでいっでねぇぇ!!」 振動実れいむが蔓を離れ、地面に落ちた。 振動具合がしゅっっさんの前兆とは程遠いものだったとはいえ、ありすは無事におちびちゃんが生まれてくれたのだと思った。 こんな状況なのに、こんな状況だからこそ生まれてくれた。流石ありす。自分はゆっくりしているとかいはなありすなのだ。 おちびちゃんがうまれたよっ!! れいむ! ゆっくりしないではやくきていっしょにおちびちゃんとす~りす~りしようね! かっこいいれいむにそっくりなかわいいかわいいおちびちゃんだよ! (*4) (パカッ) 「ゆ゛っ?」 実れいむの上半身がパックリと縦に割れ、体内から白い虫が2匹、のっそりと出てきた。 6本の脚で逆さにおりぼんに掴まって身体を支え、重力の力を借りて翅を下方に垂らす。 体が黒ずみ、翅が本来の七色を放ちはじめた。 ワァ、こうまかの羽化だぁ。 「う~☆」(羽音) 2匹の蚊はその場で翅を振るわせアイドリングを済ませると、 示し合わせたように同時に飛び立ち、日の光を避けるために近くの草むらに消えていく。 イソイソとした所作だったが、その姿は中睦まじい姉妹に見えなくもなかった。 「お、おぢびぢゃっ! だんでおぢびぢゃんがわれじゃうのぉぉぉぉ???!!!」 残骸はぐるりと白目を剥き、割れていない下半身はだらりを舌を出して弛緩している。 やがて上半身が徐々に左右に垂れ下がり、無事だった下半身もキレイに真っ二つになってしまう。 水分もトンでしまっているようで、割れた惰力でボソリ…と崩れる。 羽化の最中に実ありすも地面に落ちていたが、こちらは何の反応もなくただただ、黒ずんでいくだけ。 親ありすは割れた赤れいむが衝撃的で、実ありすが生まれ落ちたことにも気付かなかったし 実ありすも消化液と残骸たちに紛れて融けてしまった。 「おうち… かえらなきゃ… れいむがまってるよ…」 ぼろぼろの蔓に残ったのは実れいむ(1)だけ。 辺り一面ヌルヌルした粘液とピンピン跳ねるぼうふりゃまみれ。 先ほどまで蠢いていたチビどもも、ありすの消化液の影響で全て体が半壊状態。 生き残ったおちびちゃんは実れいむを残してひとりもいなくなってしまった。 「どぼじでこんなことに…」 ず~り、ず~り。ありすは振り返らない。 残った実れいむが落ちないよう、ゆっくり、ゆっくり、あいするれいむのまつおうちへと這う。 「このおぢびぢゃんは… ごのおぢびぢゃんだげでも… ありずはぜっだいまもっでみぜるよ…」 本日、太陽の光を一身に浴びた実れいむ。 おひさまさんのひかりがあたると、きらきらすけてきれいなおちびちゃん。 きょうはいっぱいひなたぼっこしたね! あとはおうちでゆっくりしようね! おいしいごはんでゆっくりしようね! ありすのつくったきれいなあくせさりーさんでおしゃしようね! おとーさんれいむからぶゆーでんをいっぱいきこうね! ゆっくりしようね! ゆっくり! 展望台横の茂みに消えていく親ありすを見定め、巣の場所に中りをつける。 さて、次はまりさ一家だ。 帰宅済みなのか、枝葉で施錠された『おうち』の横にオレは腰を下ろした。 続きます。次回は後編。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/2041.html
ゆっくりいじめ系1914 楽園~まりさの場合(外伝)より続く ※俺設定注意 presented by [498] 「な に を し て い る の っ ! ?」 突然の怒鳴り声に驚いて目を覚ます11匹の姉妹達。目を開けると、藁と羽毛の寝床から憤怒の形相でこちらを睨み付けるれいむの姿が見えた。 少々騒いだところで目を覚ますれいむではない、だがこのときれいむは悪い夢を見ていた、最愛のまりさがレイパーありすに犯される夢、あのときと同じシチュエーションの夢を見ていたのだ。悪夢にうなされ目を覚ましてみると、そこに居る筈の子れいむが見当たらない。 寝ぼけて布団から出て行ったのだろうか?あの子は体が弱い、柔らかい布団の中で寝かせてあげないと体に障る。辺りを見回して我が子の姿を探すれいむ、それは意外な場所で見つかった。姉妹全員が固まって眠るその中心、長女と三女の子ありすに挟まれ、子れいむは安らかな寝息を立てていた。 端から見れば仲睦まじい姉妹の触れ合いだが、れいむに限りそうは見えなかった。ふと、子ありすが子れいむ側に寝返りを打つ、丁度『すーりすーり』をしているような体勢だ。 瞬間、れいむに電流走る。 直前まで見ていた夢も影響し、れいむにはそれが、子ありすが子れいむを犯し殺そうとしているように見えた、子ありすが『あのありす』と重なって見えてしまったのだ。焼付いたイメージはもう離れない、我が子が危ない、れいむはゆっくりらしからぬ大声を上げた。 姉妹達は焦っていた、いつもは起きる事のない時間にれいむが目覚めてしまったからだ、しかも姉妹達の真ん中には子れいむが居る。 10匹の姉妹達は子れいむとの接触をれいむから禁じられていた、子れいむと自分達とで受ける『おべんきょう』の内容が違うから、というのがその理由だったが、実際はれいむによる忌み子と我が子の隔離が目的だった。 無断で一緒にお昼寝していたとなればお仕置きは必至。怯える姉妹達の中、最初に口を開いたのは子れいむだった。 「ゆ…おとーしゃん、おこらにゃいでね!けほっ、けほっ……れいむがしらにゃいうちにおねーちゃんのとこでねてたの!」 「お…おちびちゃん……?」 「きっちょねぼけてころがっていったんだよ!けほっ…でもれいみゅあんよがいたくなっちゃったから、おとーしゃんのとこにもどれなき ゃったの!だきゃらおねーちゃんたちにおねがいちていっちょにおねむちてたの!」 「………………」 咳き込みながら必至に姉達を弁護する子れいむに、姉妹達は心配しながらも安堵の表情を浮かべる。止むを得ない理由があるなられいむも怒らないだろう……ちょっと残念だが、揃ってお昼寝は暫く控えなければ……。だがれいむから返ってきた言葉は姉妹達の予想を斜め上行くものだった。 「そう…それじゃあしかたないね!」 「ゆぅ…ゆぅ……、そうだよ、おねーちゃんたちはわるくないよ!だかりゃ……」 「あのくそがきどもに、そういえっておどされたんだよね?わかったよ…… いまたすけてあげるからねえええええぇぇぇっ!!!」 「ゆ、ゆううぅぅっ!!?」×11 硬い筈の、動かすだけで痛い筈の底部無理やり伸縮させ、尺取虫のような挙動で姉妹達へ猛然と向かっていくれいむ、水分の無くなってひび割れているいる箇所からは、少量だが餡子が漏れていた。 れいむに見竦められ、動く事の出来ない姉妹達。しかしあと少しで届く、というところで、ドアを開いて『あの男』が乱入してきた。 バンッ! 「ゆ!?」 今度は全員で驚いて見せるゆっくり一家、振り向くとそこに箱に入ったまりさを抱える鬼畏惨の姿があった。 「ゆ、ゆっくりじゃましないでね!おにいさん!れいむはいまからおちびちゃんをたすけるんだ……か…ら?」 「お…おかあしゃあああああんっ!!」×11 「ゆ、ゆ??れいむもおちびちゃんたちもどうしたの?」 まりさを見つけて焦るれいむ。不味い、非常に不味い……別にこの糞餓鬼共にどう思われようと知った事ではないが、まりさに『おべんきょう』や体罰の事を知られてしまうのはよろしくない……最悪のタイミングだ、どうしたものか……れいむが姉妹とまりさを見比べてあたふたとしている。そんな心の動きを察したのか、鬼畏惨がれいむに近づいて耳打ちをする。 「れいむ、安心して良いよ、まりさは今来たばかりだ、ここで起こった事は知らないし、僕から言う事も無い。」 そう言うと鬼畏惨は突然部屋の端から透明な板を引っ張り出してきて、何やら組み立て始めた。 姉妹達はと言うと、透明な箱に閉じ込められているまりさに向かって一斉に泣きつき始めた。事態がよく呑み込めないまりさと、姉妹達が告げ口するのではないかと気が気でないれいむ。暫くやいのやいのと騒いでいた一家だったが、いきなり鬼畏惨がれいむを掴んで放り投げた。 「ゆゆ!?おそらをとんでるみtゆべしっ!」 投げられた先は、先程から鬼畏惨が作っていた透明な板で出来た囲いの中だった。囲いの大きさは2m四方、高さは人間の腰ぐらいまである、跳ねる事の出来ないれいむでは脱出可能な高さではない。 次に鬼畏惨は、まりさに泣きつく姉妹達を子れいむを除き、まりさを入れたのより若干大きいサイズの透明な箱の中に詰めていく。 「ゆぎゅっ、しぇまいよぅ…」 「ゆっ、まりしゃ、ありしゅのうえではねにゃいでね!」 「ありしゅおさにゃいでええ!まりさのぽんぽんいちゃーよぉっ!」 「ゆえーん!くりゅしいよー!!」 「おかーしゃんたちけてえええ!」 「ゆうう!おにーさん、おちびちゃんたちをだしてあげてね!くるしんでるよ!」 「心配しなくても直ぐに出してあげるさ。」 鬼畏惨は箱詰めの姉妹達を抱えると、囲いの中のれいむの目の前に置いた。箱が隔てているとはいえ、目と鼻の先にれいむが居る状況にガタガタと震える姉妹達。まりさの手前、なんとか取り繕おうとして姉妹達に作り笑いを浮かべてみせるれいむだったが、その引き攣った笑い顔は姉妹達に更に恐怖を与えた。 「れいむ、子供達はひとまず置いといて、ちょっとコレを見てくれないか?」 「ゆ?」 あらかじめ用意して置いたビデオデッキとモニタをれいむに見える位置に配置する鬼畏惨。 「これはまりさの『おつとめ』様子を記録したものだ。」 「ゆ、『おつとめ』…の?」 ポケットからテープを取り出し、ビデオデッキにセット、再生。画面に映し出されたのは、笑顔で食事をするまりさとありすだった。『むーしゃ、むーしゃ、しあわせ?♪』と見るからに美味しそうなご馳走を仲良く頬張る二匹。え…?あのありすは……なんでまりさと……?どうして…?そんなれいむの想いをよそに映像は流れ続ける。 まりさの頬に付いたハチミツを舐め取るありす。 それに頬を赤らめて俯くまりさ。 ソファの上ですーりすーりする二匹。 そのまま寄り添って寝てしまう二匹。 起きたら笑顔で挨拶、そして語らう二匹。 『ねえまりさ、あのれいむのこと、すき?』 『そんなわけないよ!』 『そう…じゃあありすのことは?』 『ゆうん♪だいすきにきまってるよお♪せかいでいちばんあいしてるよ♪』 そんな会話を最後に映像は途切れた。最後の方は音声の繋ぎ合わせなのだが、れいむにそんな事分かる訳もなく、歯を食いしばり、涙を流しながら震えていた。 まりさは口をパクパクさせて青ざめていた。何か言おうとするが、焦りと緊張で上手く言葉にできずオロオロするばかり。姉妹達はまりさとれいむの異様な雰囲気になにかゆっくり出来ないものを感じ、押し黙っていた。 そんな中、沈黙を破ったのはれいむだった。 「どおおおしてえええええ!?どおしてれいぱーありすとまりさがなかよくしてるのおおおおお!?」 「ゆっ!?れ、れいむ、それは……」 「うらぎったね!れいむのきもちをうらぎったね!?れいむはまりさがまいにち『おつとめ』がんばってるってしんじてたから、れいむもがんばっておちびちゃんのおせわしてたのにっ!!なのにっ!!まりさは!まいにち!あんな!ゆっくりしたおへやで!おいしそうなごちそうたべながら!れいぱーありすとうわきしてたんだ!!!うああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 「ち、ちがうよ!!れいむ、まりさはうわきなんて……」 「じゃあさっきのはなんなのおおおおお!!?」 二匹の様子を見て少々不満そうな鬼畏惨。 上々な出来だが、れいむの姉妹達へのヘイトがいまいち足りない、どうしたものか……。ふと、足元に変な感触を感じ見下ろしてみると、鬼畏惨に擦り寄ってくる子れいむの姿があった。 「ゆぅ…ゆぅ……おにーしゃん、おねーちゃんたちをこっちにもどしてね。あそこにいたらゆっくりできにゃいよ。」 姉妹達を心配して、れいむから遠ざけるよう鬼畏惨にお願いする子れいむ。 そうだ、コレがあったじゃないか。鬼畏惨は子れいむを掴みあげると、他のゆっくりから見えないように、子れいむの後頭部から中枢餡子を狙って注射器で微量のカプサイシンを注入する。 「ぴぎょ!よよよよよよよよよよよよよ!!」 少量とはいえ、中枢餡子を辛味に蝕まれた所為で変な声を上げ始める子れいむ。鬼畏惨はそんな子れいむを囲いの中、れいむの真後ろに置いた。 「よし。 おーいれいむ、ちょっとこっちみてくれないか?」 「ゆ!?おにーさんはだまっててね!いまれいむはまりさと……」 「れいむの『おちびちゃん』が大変な事になってるんだ。」 「ゆ、おちびちゃん!?」 れいむが振り向くと、そこには顔を真っ青にして白目を剥き、小刻みに震えながら餡子を吐く我が子の姿があった。 「お……お、おちびちゃん!?どうしたの!?」 「お、お、お、おと…しゃん……なん…か……びり…びり…すりゅよ………ごふっ。」 「しっかりしてね!おとーさんがぺーろぺーろしてあげるからねっ!!!」 「ぴ……ぎゅ………」 「あああああんこさんでてきちゃだめえええええ!!もどってね!あんこさんゆっくりおちびちゃんのおくちにもどってねええええ!?」 我が子の吐いた餡子をどうにかして口から戻そうとするれいむだったが、子れいむの吐く餡子によってそれを阻まれる。ゆっくり、ゆっくりと体内の餡子を失っていき、気が付けば子れいむは床に顔だけ張り付いたような姿になっていた。平べったい顔から浮き出た二つの眼球がれいむの方を向く、れいむにはそれが『おとーしゃん、たちけてね…』と訴えているように見えた。一分後、子れいむは残った中枢餡子を吐き出し、苦悶の表情のまま絶命した。 れいむは物言わぬ皮となった我が子を見つめ、顔の穴という穴から体液を流し続けていた。なんでれいむのおちびちゃんがこんな目に遭わなきゃならないの……っ!? そんな悲しみに暮れるれいむに囁く鬼一匹。 「やあれいむ、なんで君の子供が死んだのか分かるかい?」 「ゆ゛あ゛…あ゛、あ゛……わがらないぃ、わがらないよお゛お゛お゛……どぼぢでえ?どぼぢででいぶのおぢびぢゃんがああああ………せっがくうばれだのにいぃ……はじめてのあがちゃんだったのにいぃ………。」 「ふむ、れいむの子は体が弱かったよね?だから元気になるよう、れいむはれいむに他の姉妹より多くごはんをあげてたよね。」 「ゆ゛!れ、れいむ…そんなことしてたの!?」 「だ、だって!!おちびちゃんはからだがよわかったんだよ!?ごはんはほかのこよりいっぱいあげなきゃだめでしょおおお!?」 「そのごはんを食べてなかった、としたら?」 「……ゆ?」 れいむは鬼畏惨を見て首をかしげる。そんな筈は無い、最初の方こそ残してはいたが、寝て起きるとおちびちゃんにあげたごはんは全部無くなっていたのだ、食べてないなんて筈が…。 困惑するれいむに、鬼畏惨は姉妹達を指差しながら言った。 「君が子供にあげたごはん、君が寝てる間にあの姉妹が食べてたみたいなんだよね、殆ど全部。」 「ゆ、ゆゆうぅぅ?!?」×10 確かに姉妹達は子れいむの餌を食べた。しかしそれは子れいむが言い出した事であり、更に言うならその餌は元々姉妹達が食べる筈のものだったのだ。仮にそうでなかったとしても、れいむは子れいむが食べ切れなかった分は捨てていたので、その捨てる筈だった物を姉妹達は口にしていたのだ。どっちにしても、姉妹達が子れいむの餌を食べた事は咎められような事ではないし、まして子れいむの死因になどなりはしないのだ。 だがれいむはそう思わなかった。 子れいむは体が弱い、だから大量のごはんが必要、それを姉妹達が食べた、だから子れいむは姉妹達の所為で死んだ。 れいむの頭の中ではそんな論理展開がなされていた。 子れいむの死を自分達の所為にされて固まっている姉妹達をれいむが睨み付ける。その顔は、先程姉妹達に向かって行ったときものとは比べ物にならない程、憎悪で歪んでいた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!お゛ま゛え゛だぢはごろずっ!!い゛っびぎの゛ごら゛ずごろ゛じでや゛る゛!!!」 「いやああああ!」 「きょわいよおおお!」 「おきゃあしゃあああん!」 「ぴいいい!?ゆっくちちていってね!ゆっくちちていってね!ゆっくちちていってねえええ!?」 「たちけてえええ!」 「ゆーっ!ゆーっ!れいむやめてね!!まりさのおちびちゃんたちだよっ!おねがいだからやめてねえっ!!?」 「うるざいっ!!れ゛いぷまのこどもも゛!うらぎりぼの゛のばりざも!みんなゆっぐぢでぎなぐじでや゛る゛う゛う゛う゛う゛!!!」 「どぼぢでそんなごどいうのおおおおおおお!?」 姉妹達を踏み殺そう、喰い殺そうと透明な箱に体を打ちつけ続けるれいむ。姉妹達は相変わらず泣き叫んでいるが、まりさは透明な箱で姉妹達が守られている事に気づくと、今度は鬼畏惨に姉妹達を助けるよう懇願しだした。 「おにいさん!まりさのおちびちゃんたちをたすけてあげてね!」 「…………」 「あのままじゃれいむにゆっくりできなくされちゃうよ!おねがいだからたすけてね!」 「………そうだな、今は大丈夫でも、あのままじゃ箱が壊れたとき子供達が危ないね。」 嘘だ。あの加工所製の透明な箱は、例え鬼畏惨が力の限り蹴ったとしても壊れはしない、まして底部が不自由なゆっくりの体当たりなど効く筈もない。だがそこはゆっくり補正、鬼畏惨の言葉も加わった事で、まりさの目には鬼気迫るれいむの攻撃で今にも箱が壊れそうになってるように見えた。 「ゆうううっ…!おねがいしますっ!どうかこどもたちをたすけてくださいいいいいっ!!」 「…………」 「とってもいいこたちなんですっ!すごくやさしくて!あたまもよくて!おうたもじょうずで!ゆっくりしたこたちなんですううう!!!おねがいしますっ!なんでもしますっ!あのこたちをたすけてあげてえええええ!!!」 「っん素晴らしいっ!!その言葉を待っていた!!」 「ひゅぐっ!?」 「まりさ、今君は『何でもする』と言ったね?」 「ゆ、い、いったよ!おちびちゃんたちをたすけるためならなんでもするよ!ほんとだよっ!!」 「わかった、実は子供達を助けるにあたって、ひとつ選択をしもらいたいんだ。 ああ、『えらぶ』って事だよ」 「『えらぶ』んだね?ゆっくりりかいしたよ!で、まりさはなにをえらべばいいの!?ゆっくりしないでおしえてね!!」 「簡単さ、『れいむを殺して子供達を助ける』か『子供達を見殺しにしてれいむを生かす』か……さあ、ゆっくりえらんでいってね!」 「……ゆ?………ゆ!?ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!?」 一拍置いて言葉の意味を理解するまりさ。鬼畏惨は更に追い討ちをかけるように言葉を続ける。 「ああ、そのままにしておいても子供達も何匹か生き残るだろうけど、それじゃツマンナイからさ、まりさがどっちも選ばなかったら頃合を見て全員潰すから。」 「いやああああ!!!おねがいだからたすけてあげでえええ!!!」 「うん、だからどっちを?」 「そんなのえらべないいいいいい!!!」 「じゃあみんな潰すけど、いいんだね?」 「ぞれはだめええええ!!!たすけてあげでええええ!!!」 「堂々巡りだな……じゃ、選びやすいようにしてあげるよ。」 そう言うと鬼畏惨は囲いの中に入って行き、姉妹達が入っている箱を、蓋を開けてれいむの前でひっくり返した。 顔から地面に落ちたり、他の姉妹が上に乗っかったりして、大半が動けないでいる。そんな姉妹の中で、頭から落ちて逆さまになったまま動けない子ありすにれいむが近づいていく。 「だめえええ!!おちびちゃんにげてえええ!!」 「ゆっきゅ?」 「ゆっくりしんでねえええぇぇぇっ!!!」 底部が上を向いてる子ありすをれいむが噛み千切る、丁度、口の真ん中から下半分を失うような形だ。上顎だけピクピクと動かし、目はキョロキョロと周りを見回している、暫くして自分の体が半分無くなった事に気づき、痛みと恐怖で涙を滲ませる子ありす。れいむは半分になった子ありすを咥えると、囲いの隅に放り投げた。 「とどめなんかさしてあげないよ!!れいぱーありすはそこでずうううぅぅぅっと!くるしみながらしんでねっ!!!」 「ゆああああん!ありしゅううううう!!」 「まりじゃのいもうとがあああああ!!!」 「おかあしゃあああん!たちけてねええええ!」 「まりしゃはしにたくにゃいよ!ゆっくちにげりゅよ!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でいぶや゛べでね゛え゛え゛え゛!!!ばりざの゛ごどもごろざな゛いでえ゛え゛え゛え゛!!!」 そして始まる小さな逃走劇。底部が不自由なれいむの移動速度では、全力で逃げる子ゆっくりを捕まえる事はまず出来ない。だがそれも広い空間での事だ、2m四方の囲いの中では大回りに移動する事が出来ない。姉妹達は迫り来る恐怖から全員で固まって逃げていた、こうなると、壁を背にしたとき壁側の子ゆっくりは初動が遅れる事になる、そして遅れた者の中から次の死者が出るのだ。 二匹目の犠牲者も子ありすだった。れいむはここでもありすを重点的に狙っていた。 この子ありすはれいむに押さえつけられ、身動きを封じられた。 「やめちぇえええ!!ありしゅのあんよだべにゃいでえええええ!!!」 まず押さえつけずに済むよう、底部を食いちぎる。 「いぢゃあ゛あ゛よ゛お゛お゛お゛!!!ありじゅのおべ、おべ、おべべがあ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 次に舌で両目を抉り、眼球がカスタードに繋がった状態で咀嚼する。 「んぐぉ!?ん…!ん…!んばばばば!!!」 最後に口内を口の部分ごと食いちぎる。 目を抉られ、口を縦長に食いちぎられた所為で、子ありすはまるで絵画『叫び』のような見た目になっていた。 三匹目は子まりさ。子ありすを捕まえようとしたのだが、先頭集団に居る子ありすを捕まえるのは困難だった為、近くでのそのそと動いていた姉妹の中で末っ子の子まりさに標的を変えたのだ。 「まりさににてるからってちょうしにのらないでねっ!!おまえもれいぱーのこだよっ!しんでもれいむにわびつづけてねっ!!!」 「あよ、あんよ゛!あんよはやめぢぇえ゛え゛え゛え゛!!!」 子ありすと同じように動きを封じるれいむ。 「までぃじゃのおぼうぢがあ゛あ゛あ゛あ゛!!?がえぢでえ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 子まりさの帽子を目の前で引き裂いていき、『おまえにはもうひつようないよ』と冷たく言い放つ。 「おぶぉっ!やべちぇええええ!!まりじゃのきれいなかみもってがないでえ゛え゛え゛え゛!!!」 今度は上から圧し掛かり、髪の毛を頭皮ごと引き千切る。 「ゆおおおお!?まりじゃのおはだが!!おべべがあ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 引き千切った頭皮から、まるでリンゴの皮を剥くように螺旋を描いて子まりさの皮を剥ぐ。瞼を失った眼球がぽろりと落ちて、れいむに踏み潰された。 最初の子ありすとは逆に、口の部分だけ残し餡塊となった子まりさ。わずかな大気の動きだけでも激痛なのだろう、しきりに痛みを訴えている。 四匹目の犠牲者が出たところで鬼畏惨が泣き喚くまりさに声をかけた。 「どうする?まりさ。」 「ゆああぁぁ……おちびちゃぁん…れいぶぅ……どぼぢてええぇぇ……?」 「やれやれ、まだ決められないのかい?最初にも言ったけど、決められないなら全員潰すよ?」 「ゆぃぃっ!?それはだめえええええ!!!」 「……まあ僕としては、子供達を残す方をお勧めするけどね。考えてもみなよ、仮にれいむを生かしたとして、まりさにどんな得があるっていうんだい? ま り さ の 子 を 殺 す よ う な ゆ っ く り な ん だ よ ?」 「……っ!?」 実際のところ、最初にれいむの手に掛かった子ありす以外はまだ生きていた。と言っても回復は絶望的で、中枢餡子のおかげで辛うじて意識が保っていられるという状態であり、とても『生きている』とは言い難い状態だった。 おちびちゃん……まりさのかわいいおちびちゃん………望んだすっきりじゃなかったけど、それでも大切に育ててきたまりさの子供達………。一緒にゆっくり出来る時間は少なかった、だからこれからすーりすーりもぺーろぺーろも沢山してあげるつもりだった………。けどもう4人も殺されちゃった…………。どうして?まりさはただみんなでゆっくr「おー、五匹目。喰っとる、喰っとる。」 「ゆ゛!?あ……あ…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 「まりさが早く選ばないからだぞ??……ゆっくりした結果がこれだよ!ってやつだね。」 まりさが囲いの方を見ると、子まりさがれいむに丸ごと噛み潰されている最中だった。れいむの口の中で必至に助けを乞う子まりさ、れいむは姉妹達に見せ付けるように、ゆっくりと歯で圧力を加えていく。みちみちと皮の裂ける音が聞こえ、圧迫された餡子が子まりさの目から口からまむまむから少しずつ溢れてくる、そして張力の限界を迎えた顔が、音を立てて口から一文字に裂け、押し出される形で子まりさの中身が外へひり出された。 もうゆっくりしている暇など無い!まりさの心は決まった。 「……おにいざんっ!ばりさはおちびぢゃんだちをえらぶよっっ!!!」 「決まったか。確認するけど、子供達を助けるんだよね?」 「そうだよ゛っ!!まりざはまりざがうんだおぢびちゃんたちをまもる゛よっ!!」 「わかった、それじゃあ子供達を助けるとしよう。」 鬼畏惨が囲いへ向かうと、れいむが6匹目を捕まえようとしているところだった。鬼畏惨はれいむを掴み上げ、殺戮ショーを強制中止させる。 「じゃまするなああああああ!!!ころさせろおおおおおおおお!!!」 「おお狂気狂気、お楽しみのところ悪いんだけど終了な、しゅーりょー。」 「ゆっ…ぐ……?」 「ゆぅ、たすかっちゃの?」 「ゆ!もうだいじょーぶだよ!」 「ゆっきゅいできるよ!」 「ゆえぇぇ……でもいもうちょがあぁ…おねーちゃんがああぁぁ……」 姉妹達の死に涙を流す子供達、殺戮が終わっても残るのは地獄だった。子供達の事はひとまず捨て置き、掴んだれいむをまりさの入った箱に叩きつける鬼畏惨。 「ゆべっ!」 「ゆひいぃっ!れいむう!?」 透明な箱の外側に張り付いたれいむに小さく悲鳴を漏らすまりさ、憎悪に歪んだその顔は、『楽園』に来た頃のれいむとは完全に別のものへと変わっていた。 鬼畏惨はれいむを箱から引っぺがすと、箱のまりさと向き合うように押さえつける。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!はなせえええ!!あいつらぜんぶゆっくりできなくしてやるううううう!!!」 「ああ、あ……れい……む……」 「さあまりさ、良く見ておくんだよ? 君が『選んだ事』を、ね」 to be continued...⇒