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ポケモン金銀水晶のラスボスのレッド 使い魔を使う使い魔-01 使い魔を使う使い魔-02 使い魔を使う使い魔-03 使い魔を使う使い魔-04 使い魔を使う使い魔-04.5 使い魔を使う使い魔-05 使い魔を使う使い魔-06 使い魔を使う使い魔-07
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「さてと皆さん」 コルベールがおちゃらけたように禿げ上がった頭を叩く。 その顔は実に嬉しそうだ。 そして机の上に何か置く。それは実に妙なものだった。 円筒状の金属の筒に、金属パイプが伸びている。そのパイプはふいごのようなものに繋がっている。 円筒の頂上にはクランクがついており、そのクランクは円筒の両脇にある車輪に繋がっていた。 そして車輪は扉のついた箱にギアを介してくっついている。 まさしく妙なものだった。 おそらく魔法に関係ある道具なのだろう。 「それはなんですか?ミスタ・コルベール」 違ったようだ。 どうやら生徒もあれがなんなのかわからないらしい。 いや、もしかしたら生徒も知らない魔法関連の道具なのかもしれない。 「おほん」 クラスの注目が集まる中、コルベールがもったいぶった咳をする。 「えー、『火』系統の特徴を、誰かこのわたしに開帳してくれないかね?」 コルベールはそう言うと教室中の視線が一箇所に集まった。 その視線の先にはキュルケが存在していた。キュルケは授業中にも係わらず爪の手入れを続けている。 しかしなぜキュルケに視線が集中するんだ? 確かにキュルケは『火』系統のメイジだったはずだが、そんなにクラスが注目するほど優秀なのだろうか? ……この反応を見る限り優秀なのだろう。 「情熱と破壊が『火』の本領ですわ」 注目を浴びる中、キュルケは爪をいじりながら気だるげに答えた。 「そうとも!だがしかし、情熱はともかく、『火』が司るものが破壊だけでは寂しいと、このコルベールは考えます」 キュルケの態度などまるで問題にせず(諦めているのかもしれない)にこにこしながらコルベールは言う。 「諸君、『火』は使いようですぞ。使いようによっては、いろんな楽しいことができるのです。 いいかねミス・ツェルプストー。破壊するだけじゃない。戦いだけが『火』の見せ場ではない」 「トリステインの貴族に、『火』の講釈を承る道理がございませんわ」 コルベールの言葉にキュルケはイヤミで返した。 言い草からしてトリステインの貴族よりゲルマニアの貴族の方が『火』について詳しいと言っている感じだ。 あのときキュルケに注目が集まったのはゲルマニアが『火』系統に優れているからかもしれない。 しかしキュルケは本当に舐めきっているな。イヤミすら言うほどだし。 だが言われた本人は気にせずににこにこしている。なぜ怒らないんだろうか? 「でも、その妙なカラクリはなんですの?」 キュルケもやはり気になっていたのかきょとんとした顔で机の上の妙なものを指差す。 その言葉でにこにこしていたコルベールの口がさらにつりあがる。 まるでよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりだ。 「うふ、うふふ。よくぞ聞いてくれました」 うわ、本当に言ったよあいつ。 「これは私が発明した装置ですぞ。油と、火の魔法を使って、動力を得る装置です」 なるほど、どうりで生徒どもが知らないわけだ。 個人が発明したものを知っているわけが無いからな。 「まず、この『ふいご』で油を気化させる」 コルベールはそういいながら足でふいごを踏み始める。 「すると、この円筒の中に、気化した油が放り込まれるのですぞ」 あれ、これもしかして…… そんなこと考えている間にコルベールが慎重な顔で円筒の横に開いた小さな穴に杖の先端を差し込む。 そして呪文を唱えたかと思うと発火音が断続的に聞こえてきて。そして発火音は爆発音に変わった。 「ほら!見てごらんなさい!この金属の円筒の中では、気化した油が爆発する力で上下にピストンが動いておる!」 思ったとおり円筒の上についていたクランクが動き出し車輪を回転させる。 回転した車輪は箱についた扉を開く。すると開いた扉からギアを介してヘビの人形が出てきた。 「動力はクランクに伝わり車輪を回す!ほら!するとヘビくんが!顔を出してぴょこぴょこご挨拶!面白いですぞ!」 いや、全く面白くは無い。 だが凄さはわかった。しかし周りは凄さがわからないらしく反応が薄い。 「で?それがどうしたっていうんですか?」 そう言われたコルベールは少し悲しそうな顔をした。 しかしそれを吹き飛ばすかのように咳払いを一つする。 「えー、今は愉快なヘビくんが顔を出すだけですが、たとえばこの装置を荷車に載せて車輪を回させる。すると馬がいなくても荷車が動くのですぞ! たとえば海に浮かんだ船のわきに大きな水車をつけて、この装置を使って回す!すると帆がいりませんぞ!」 「そんなの、魔法で動かせばいいじゃないですか。なにもそんな妙ちきりんな装置を使わなくても」 コルベールの発言を否定する発言に皆が頷きあう。 わかってないな、魔法を使える奴らは。これがどれだけ画期的な発明か。魔法が使えるからわからないんだろうがな。 「諸君、よく見なさい!もっともっと改良すれば、なんとこの装置は魔法がなくても動かすことが可能になるのですぞ! ほれ、今はこのように点火を『火』の魔法に頼っておるが、例えば火打石を利用して、断続的に点火できる方法が見つかれば……」 コルベールは興奮した様子でまくし立てるが生徒たちは、ついていけないよ、といった感じだ。 そうだ、今のうちに聞いとくか。 「ミスタ・コルベール一つ聞きたいことが」 そう言って手を上げ質問する。 「ん?あなたはミス・ヴェリエールの使い魔だったな。なにが聞きたいんだね」 「それは自分ひとりで考えついたものですか?」 「ああ、その通りだ」 コルベールは誇らしげに頷く。 「誰に教わったわけでもなく?」 「勿論だ!」 よくもまあ魔法が使えるこの世界でこんなものが思いつけるものだ。 コルベールは本当に天才らしい。それがたった今証明された。 もっとも魔法が使えるせいで受け入れられない天才だがな。 「しかしどうしてそんな質問を……、まさか!きみは何かこれについて知っているのかね!?」 コルベールが突然そんなことを言いだし、興奮した様子で近寄ってくる。 「もしかして似たようなものを見たことがあるとか!?」 眼前に顔が迫ってくる。 近い!近いって! 「え、ええ。似たようなものを見たことがあってつい質問を……」 「それはどんなものなのかね!?形は!?原理は!?用途は!?名前は!?」 安全地帯にも地雷は埋まっているものだと初めて知った。 なぜなら自分が地雷を踏んでいたからだ。 それ以上顔を近づけるな!大きな声を出すな!つばが飛ぶ!鼻息が荒い!頭が眩しい!
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スタンド使い同士が引かれ合うように、ガンダールヴのルーンはディオをその進むべき道へと推し進める。 だが、それは本当に正しいことなのだろうか?その結果は誰も知らない…。 おれは使い魔になるぞジョジョーッ!第九話 カーテンの光がやわらかい明かりを部屋に満たす中、ディオは目が覚めた。日の具合からすると ルイズを起こすべき時間から30分は遅れてしまったらしい。ルイズを見るとこれまた陶器でできた人形のような顔で寝ている。 起きている時もこれぐらい静かならいい駒として使えるのだが、と思いながらディオはルイズを起こす。 だがルイズは特に慌てる様子もなく服を着替える(勿論ディオに渡して貰っている)。 別にルイズが遅刻しようがどうでもいいが一応聞いてみる。 「今日は…いつもより遅いようだけどいいのかい?」 「忘れてたわね。今日は虚無の曜日だから授業はないのよ。それよりも」 とルイズは珍しく手早く着替えると人差し指をディオに突き出す。 「さあ、今日は城下町に行くわよ!」 「城下町?」 また気まぐれが始まったのかと呆れるディオに気付かずルイズは説明を続ける。 「そう!あの時はたまたまだったけど、いつもあんな殴り合いが通用するはずないでしょ。 魔法が使えない以上剣の一つ二つ持たないと駄目よ。それに見栄えにも関わるしね。 あとついでにベッドも買わなきゃね。あんな臭いベッドをずっと使うつもりなら話は別だけど」 ディオにはどちらかというと剣よりも城下町の方に興味を引かれた。今まではトリステイン魔法学院という陸の孤島に 閉じ込められたようなものだった。だがこの世界の風俗を知る為には城下町は格好の場所であるし、うさ晴らしにもなる。 後者については言うまでもない。ディオは腕を組みながら答えた。 「いいだろう…ついていかせてもらうよ、ご主人さま」 ディオとルイズが部屋を出て角を曲がった直後、ルイズの向かいの扉からキュルケが出てきた。 ディオを口説き落とす為の化粧もばっちりだ。 「そうね、ルイズは物ぐさだろうからダーリンを開けに行かせるはず。そしてドアを開けたダーリンの胸に私が飛び込めば さしものダーリンも…勝った!ゼロの使い魔、完ッ!!」 キュルケは自信満々にドアを叩く。 沈黙。 もう一度叩く。 沈黙。 「ノックしてもしもぉ~し!ルイズ、まだ寝てるの!?」 と声をかけながら叩いても何も返ってこない。 嫌な予感がしたキュルケがアンロックを使って部屋を開け、馬で出て行く二人を見つけてタバサの部屋へ猛ダッシュしたのは その直後であった。 タバサは虚無の曜日が好きである。一日中自分の部屋に篭って好きな本を読めるからだった。 だが最近のお気に入りは小説ではなく『ツェペリの奇妙な冒険』と題した冒険漫画である。 場面はちょうど主人公のシーザーという青年が囚われの友人の知り合いの老富豪を助ける為、友ジョセフと共に 悪逆非道の軍隊の基地に女装して潜入しようとしたところである。 どう見てもバレバレな変装でどう見張りをごまかすのかワクワクしながらページをめくろうとするタバサであったが、 横から伸びてきた手がそれを掴む。 何を考えてるのかと見上げると、友人のキュルケが何か叫んでいた。仕方がなくアンロックを解除して抗議しようとする タバサであったが、キュルケの怒涛の勢いに飲まれる。 「あたしね!恋したの!でね、その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出かけたの!そう、馬で! でね、あたしは行く先を突き止めたいけどあなたの使い魔じゃないと追いかけられないの!力を貸して!」 はっきり言えば断りたい。しかしたった一人の友人のたっての頼みである。断るわけにもゆくまい。 窓を開くと口笛を吹いて風韻竜シルフィードを呼ぶ。 「馬二頭。食べちゃだめ。」 せっかくの休日が台無しである。無意識のうちに爪を噛む。タバサは静かに暮らしたい。 それから暫くして、ディオとルイズは城下町に到着した。だがルイズの顔は心持ち暗い。 魔法が使えない代わりに馬の扱いには自信があったルイズだが、ディオはそれを上回る競馬の騎手顔負けな腕前であったからだ。 駅舎に馬を繋ぐとディオは周りを見渡す。人口は確かに多いが、町並みや道路の舗装はどう見ても産業革命以前である。 なるほど魔法が存在する以外は中世と同じと考えて差し支えないか、と一人ごこちてると、ルイズが声をかけてきた。 「どう?たくさん人がいるでしょ?驚いた?」 「ああ…驚いたよ(文明の低さに)」 その答えに満足したのかルイズは颯爽と町を歩きだす。 ルイズの後ろをついてゆくディオは昔貧民街に住んでいた事もあり大体の想像はつくが、この世界の文字が読めないので 一々ルイズに説明してもらう。 「あれは?」 「カジノダービーBr.」 「ほう、それでは向かいのあれは?」 「ブックスポルナレフ」 「ではこっちの」 「鳥犬専門ペットショップ・イギー!んなところよりさっさと行くわよ!」 そうしてルイズは恐れる様子もなく路地裏に入っていく。 狭い道を貴族くずれのスリが多発するというような話を聞きながら歩いてゆくと、明らかに武器屋と思しき店が目の前に現れた。 「ほら、着いたわよ」 とルイズが店に入ると太った親父が出迎えた。 「旦那、貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目を付けられるようなことなんか、これぽっちもありませんや」 「客よ。」 「こりゃおったまげた、貴族が剣を!これはどういった心境で?」 と親父が目を丸くすると何かの冗談のように手を振る。 「だから違うわ。話を最後まで聞きなさい。今日はこいつに剣を買ってやりにきたのよ」 「ほほう、成る程。最近は下僕に装飾をさせるのが流行りなのですからな」 「貴族の間で?」 「そうでさ。なんでも『土くれ』のフーケとかいうメイジの盗賊が貴族のお宝を散々盗みまくってるって噂で。」 と店主は世間話をしながら宝石が各所に埋め込まれている一振りの剣を持ってきた。 「これなんかいかがでしょう?ゲルマニアの錬金術師シュペー卿が鍛えた剣、お値段に見合う威力は保証しますよ?」 ルイズも気に入ったようで満足そうな笑みを浮かべる。 「んー、なかなかいいわね…いくら?」 「そうですね、こいつは店1番の業物ですからね、新金貨で3000エキューで如何でしょうか?」 「た、高いわよ!もっと安くならないの!?」 いくらルイズでもたかが剣一つに広大な庭付きの豪邸が建てられるような金を払うのは躊躇われた。 その時、帽子を被った長髪の男が店に入って来たが、ディオを見るなりくるっとドアの方を向き、また外に出ていった。 店主から剣を見せてもらい、大剣を手に取りしげしげと眺めるディオ。と 「かーっ、わかってねぇなあんちゃんよ。糞みてえな安物売り付けようってこいつもこいつだが、 そんなもんに引っ掛かるような奴はそれにすら及ばねぇ。帰れ帰れ!」 店の奥から渋い中年男性の声が聞こえた。 「な、なによ今の!」 「デ、デルフリンガー、くそっ…いや、あいつは嘘つきのボロインテリジェンスソードでさぁ。気にしないで」 「へっ!嘘つきのおめーに嘘呼ばわりされるならおれっちが正しいってことじゃねーか!」 「なんだと!」 喧嘩を始める剣と主人。ルイズはあっけに取られて今のやり取りを見ている。さして気にする様子もなく辺りを見回すディオだが、 やがてその声を見つけるとなおも喋ろうとするのを無視して手に取る。 すると、デルフリンガーは今まで叫んでいたのが嘘のようにぴたりと声をあげるのを止めると、暫く考えてから口を開いた。 「…おでれーた。見損なってた。てめ、『使い手』か」 「『使い手』?『使い手』とはなんだい?」 「言葉通り、おめーはかなり黒いがおれの使い手って事よ。どうだ、おれを買わねーか?」 そこでディオはルイズに向き直り、剣を渡す。 「ルイズ、これにしよう」 「はぁ?こんな喋るだけのボロ剣どこがいいのよ!」 「君には珍しくなくてもぼくには珍しくてね、それにぼくの事を何か知ってるみたいだ。気に入った。親父、これはいくらだい?」 「いや、若奥様の言う通りそんなボロ剣よりこっちのシュペー卿の剣の方が…」 「その偽物が、かい?」 「…畜生!」 店主は机を叩くと、大剣をしまう。 「わかったよ。そいつだな?捨て値で100エキューでかまわねえよ!」 店主が負け、あまり出費せずに済んだ事を喜ぶべきか錆だらけの剣を選んだ使い魔を叱るべきか微妙な表情を浮かべるルイズと デルフリンガーを背負ったディオは家具屋に向かうべく店を後にした。 それを上空から眺める人影が二人。キュルケとタバサだ。ルイズ達がいなくなると早速店に入る。 「アッサラーム!今のメイジ、いえ、今の使い魔が欲しがってた剣とかってないかしら?」 店主はニヤリと笑うと手を振りながらさっきの剣を出す。 「ああ、こいつですね。さっきメイジの若奥様が買おうとしたんですがね、高いとかいって買い渋って結局ボロ剣買っていきましたよ」 公爵家の娘ともあろうものが貧乏ね、とほくそ笑みながらキュルケは値段を尋ねる。 「おいくら?」 店主は少し悩むそぶりを見せたあと、おもむろに値段を言う。 「本当は5000はしますが、事情がおありのようですな。いいでしょう、4500で勉強させていただきます」 いくらなんでも高い。だがキュルケは胸元を開くと色気たっぷりの声で誘惑する。 「ねぇ、もっと安く買えないかしら?」 「そ、それじゃあ4000…」 「ね…もっと色をつけて♪」 と、そこに先程店を出て行った男が入って来た。 「よぅ、ダンナ!…ヒヒ、実は最近いい仕事で金稼いだからよー、これを機会に傭兵始めようと思うんだが、なんかいーい剣はないかい?」 「ああ、こいつがあるよ。見てみるかい?」 と、急に商売人の顔に戻ると店主は大剣を見せる。帽子の男はそれを受け取ると多少大袈裟にも見えるそぶりで剣を振るう。 一方のキュルケは気が気ではない。 「おっ!なかなかいい剣じゃねぇか。いくらだ?」 「ちょっと!今私が交渉してるのよ!」 と、キュルケが慌てるが、店主は 「悪いね、これはまだあんたのじゃないんだ」 と言うと男に向き直る。 「そうだな、5000ってとこだ。」 「そこをもーちょっと安くならないか?」 「しかたねえな、4200でどうだ?」 「お!それなら払えるぜぇ!」 と、男は大金の入った袋を取り出す。 何故平民があんな大金を!とキュルケは驚くが、ここであの剣を売り払われる訳にはいかない。 今まさに剣を渡そうとする店主の腕を掴むと、キュルケは慌てて叫んだ。 「ちょっと待って!4500でいいわ!」 「本当かい?」 胡散臭そうな目つきで男とキュルケを見比べていた店主だが、にっこりと微笑むとキュルケに剣を渡した。 「…仕方ないな。お客さん、運が悪かったと思ってあきらめな」 「マジかよ…なんてこったい」 そうしてがっくりとしている男を残してキュルケはほくほく顔で剣を持つと、タバサの元へと向かう。 「…どう?」 「用事は済んだわ!さ、学院に戻りましょ。今夜はビッグサプライズよ!」 「…シルフィード。」 「キュイ♪」 とシルフィードは浮き上がるとルイズ達に気付かれぬように学院に戻るのであった。 数時間後、酒場の席で先程の二人が乾杯をあげていた。 「いやー、今回はいいカモが釣れたな。これもお前さんのお陰だよ」 「なぁーに、中々のいい女だったが、別に殴るわけじゃねえ、問題はないッ!」 男はいつの間にか短銃を取り出し、ニヤニヤする。 「それにしてもあの嬢ちゃんも驚くだろうよ、おれは確かに傭兵だが得物はこいつだって事をよ。」 「だな。」 「ま、おれがいたからこそだが、ダンナがいるからこそおれも楽して金儲けができるって事よ。 ダンナも知ってるだろ?おれの人生哲学をよ」 「ああ。1番よりNO.2!だろ?」 「その通り、わかってんじゃねーか…ヒヒ」 つまりはこういう事である。カモを見つけると店主は手を挙げて合図をするとともに吹っ掛けて、渋る客の目の前で 男が買うふりをする。そしてぐずぐずすると先に買われてしまうと慌てた客は店主の言い値で買ってしまうという訳だ。 「だがどうしたんだい?最初の客が来た時いきなり逃げ出しやがってよ」 長髪の男は手に持った短銃を回しながら答える。 「いや、どーもあのメイジの使い魔?あいつを見た時にな、いやーな感じがしてよ。3回くらい前世であんな奴に 雇われていたような、例えるなら暗殺しようとしても一瞬で後ろに廻られそう?そんな感じがしてな」 「なんじゃそりゃ」 呆れる店主に男は酒をつぐ。 「ま、気にしててもしかたがねぇ、ほら、もう一度乾杯だダンナ!」 「おう、乾杯!」 ディオは計らずも名剣を手に入れた。キュルケは予想外の出費で役立たずの剣をつかんだ。そして店主は計算通り金を儲けた。 世の中には知らない方がいい事も、悪い事もある。 to be continued…
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広場に着くと多くの生徒で溢れかえっていた。噂を聞きつけたのだろう。 周りが本当に五月蠅いものだ。 「さてと、では始めるか」 ギーシュが薔薇の花を振ると花びらが一枚宙を舞う。それが甲冑を身に着けた女の形をした人形になる。あれがワルキューレなのだろう。 ギーシュを守るように立ちふさがる。しかしわかってはいたが驚くものがあるな。花びらが変わるなんて非常識すぎる。 しかしルイズの話しでは複数体出せるはずなのだが。一体ということは幾ら怒っていてもこちらを平民だと嘗めているのだろう。 そのほうがありがたいがね。 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 そんなもの想定済みだ。 「言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 それぐらいもう知っている。 ワルキューレがこちらに向かって突進してくる。それを間一髪で避ける。 予想より早いが修正の範囲内だ。殴りかかってくるがまた避ける。避ける。避ける。避ける。 それを何回か繰り返す。 「なんだよ。避けるばかりかい?」 ギーシュが呆れたように言ってくる。 ワルキューレの拳が顔に当たりそうになる。それを右腕で庇う。衝撃で地面を転がる。 右腕を押さえる。 「腕でも折れたかな?」 ギーシュがあざ笑う。気にしない。 「ギーシュ!」 ルイズの声がするが気にしない。 ワルキューレが近づいてくるが気にしない。 この位置だ。この位置が凄く良い!私とギーシュの間に何も無いこの位置が凄く良い! 距離なんて関係ない。懐から銃を取り出し撃つ。 「うわああああああああああ!」 ギーシュが悲鳴を上げる。当然か。手を撃ち抜かれたんだから。 「痛い痛い痛い痛い!」 悲鳴を上げながら泣き叫ぶ。立ち上がり顔を蹴り飛ばす。今度はギーシュが地面に転がる。 撃ち抜いた手を踏みつけ杖を手にとりへし折る。今度は顔を思いっきり踏みつける。どうやら気絶したみたいだ。 袖から木の板を取り出す。来る前に厨房から失敬したまな板を切って入れておいた。これでガードすればダメージは抑えられる。 避けていたのだってワルキューレをギーシュの目の前からどかせるためだ。転がったのは一気に距離を稼ぐため。右腕を押さえたのは油断させるための演技だ。ギーシュは銃を安全に、そして確実に当てるための策にまんまと引っかかったのだ。 「私の勝ちだな」 周りが騒いでいる。どうやら私が勝ったのを驚いているようだ。 しかし拍子抜けだな。もっと苦戦するかと思って他にも用意はあったんだがね。 魔法使いと言っても油断していればこの程度か。ギーシュが『ドット』だったというのもあるが。 服から全ての木を取り出す。動きにくくていけない。 このナイフも厨房に返さないといけないな。 しかしさっきの感覚は何だ?銃を持った瞬間あんなに早く動いてあんな短い間に狙いを付けられるなんて。そういえば使い魔のルーンが光っていたような気がするな。今度確かめてみよう。 とりあえず今は静かな場所に行きたいな。 9へ
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ポルナレフは二人にシルバー・チャリオッツとについて説明した。 ただ、剣針飛ばしや甲冑を外せる事等、伏せるべき事は伏せておいた。 味方だろうと、誰にも知られない方が奥の手として敵にも伝わりにくいからだ。 「で、結局その『銀の戦車』とやらはゴーレムじゃ無く、杖を使わずとも呼び出せ、しかも人間以上に素早く精密な動作までできるというのか?」 コルベールは終始驚きっぱなしだったが、オスマンは深刻な顔付きをしていた。 「君は…その力で何もする気は本当に無いのかね? そのような魔法に対抗出来る力を持ったら平民の誰もがやましいことを考えてもおかしくないと思うがのぉ…」 確かにこの世界では魔法という力が平民の恐怖そのものだ。それを分かっているだけに、スタンドの存在をオスマンは恐れたのだ。 「俺にそのような気持ちは無い。今までチャリオッツを正しいと信じた事以外に使ったことは無い。」 ポルナレフはそう自らの意志を示した。 なるほど、マリコルヌを針串刺しにしたのは正しいと信じているらしい。 「…一先ず君を信じよう。まだ我々は君がそれを悪用しているのを見ておらんしの。」 オスマンがそう言った時、ロングビルが帰って来た。 「た…只今…ハァ、戻りました…ハァ。」 急いで戻って来たのか、ロングビルは息を切らしていた。 ポルナレフはそれを見てそろそろ頃合いかと思い、 「どうやら帰ってきたようだな。それではもう話すこともないので、私はこれで。」 と言って、席から立ち上がるとそのまま退室しようとした。が、 「ちょっと待ちたまえ、ポルナレフ君。」 オスマンに呼び止められた。 「まだ何か?」 ポルナレフは面倒臭そうに振り返った。 「君はどうやってそれを身につけた?それも思い返せば君はミスタ・グラモンとの決闘の途中までそれを使わなかった。 君が本当に闘いに美学を置いているなら、決闘の途中で手に入れたと見ていい…違うかね?」 ポルナレフは1番教えたくない点を言われ、一瞬ビクリとした。しかしすぐに冷静を装うと、 「鋭いな…。しかし、それに答える事は出来ない。」 と答えた 「ちょ、ちょっと!答えられないってそれは無いだろ!全部話すって言ったじゃないか!」 コルベールが思わず叫んだ。 「その通りじゃ。話したまえ。」 オスマンも同意する。 少し考えてポルナレフは閃いた。 「そうだ、こうしよう。先程私はミス・ロングビルが帰ってくる頃にはルイズも戻ってくるといった。これで賭けをしよう。」 「『賭け』?」 「もし、このドアの向こうにルイズが居なかったらどうやって手に入れたか話そう。」 「逆にいたら?」 「そうだな…500エキューぐらいもらおうか。」 「高ッ!」 コルベールが叫んだ。平民が一年は暮らしていける金額の数倍である。 「別にいいぞ。やらないなら話さないだけだ。最も、チャリオッツを使えばこの敷地から逃げ出すなんて訳は無いしな。」 ポルナレフは脅すように言った。 三人は額を寄せて話し合い、分はこっちにある、大体あの娘にそんなこと出来る訳無いだろ、と結論づけた。 「君の話に乗ろう。賭けようじゃないか。」 オスマンはポルナレフにそう誓った。 「GOOD!」 ポルナレフはそう言うと、ドアを思いっきり勢いをつけて開けた! ドガァンッ! 「ガペシッ!」 またドアと何かがぶつかる音と珍妙な悲鳴がした。 そしてそこにはまた鼻柱をドアに打ち付け、後頭部を床にしたたかに打ち付けたルイズの姿があった。 「…」 三人共黙ってしまった。 「さて私の勝ちだな。約束通り貰おうか。500エキューをな…」 ポルナレフはニヤリと笑いながら手を突き出した。 「まったく、あんたご主人様を何だと思ってんの!?」 ルイズは部屋に戻る途中ポルナレフにキレ続けた。二回もドアに顔面を打ち付けられたのだ。キレてもしょうがない。 「盗み聞きしてる方が悪いと思うがな。」 ポルナレフは悪びれせずに言った。これを聞いて、ルイズはわなわなと震え出した。 「こここ、この犬のくせにご主人様になんて事を…!」 「聞きたいのなら別にあんな事しなくても、後で俺から話してやるというのに…」 ポルナレフは呆れたかの様に言った。 「ほ、本当!?」 ルイズは目を輝かせた。 「ただし100エキュー払うならな。」 「五月蝿い!やっぱりあんたの話なんて聞きたくないわ!」 こいつはプッツンしてて手に負えないな、とポルナレフは思うと、部屋に着くまで黙り通すことにした。 やがて二人と一匹は部屋の前に着いたのだが、ルイズと亀が入り、ポルナレフも入ろうとするとドアを閉められ、ガチャリと内部から小さな音がした。 しまった!と急いでノブをガチャガチャ回したが、開かなくなっていた。どうやら施錠したらしい。 「あんたなんてクビよ!使い魔は亀だけで十分だわ!!」 ドアの向こうからルイズが怒鳴った。 「おい、それは無いだろ!亀の中には色々大切な物が入っているんだ!貴様ごときに取られるわけにはいかん!開けろ!小娘!」 ポルナレフも叫んだのだが、返事は無かった。 いずれ地球に帰る時には亀と一緒に帰らなければならない。亀の中にはジョルノ達の『心』が納められているからだ。 それは去って行った仲間達から受け取った矢をはじめとした遺品の数々のことである。 だからポルナレフはなるべく亀と一緒にいる必要があった。もし自分だけ帰ったら殺されるだろうし。 「仕方があるまい…何処か寝れる場所を…」 と呟き、辺りを見渡すとキュルケのフレイムがこちらを見ているのに気付いた。 また見てるな…と思っていると、フレイムがこちらに近づいてきて、ズボンの端をくわえると引っ張り始めた。何処かへ連れていきたいらしい。 「こら、引っ張るな。ついていってやるから!」 そうポルナレフが言うと、理解したのか、フレイムは引っ張るのをやめきゅるきゅる鳴くと、ポルナレフを隣のキュルケの部屋へ引導していった。 キュルケの部屋の中は暗かった。フレイムの周りだけぼんやりと明るい。 「扉を閉めて?」 暗闇からキュルケの声がした。変に色っぽい気がしたが、一応言う通りに閉めた。 「こっちへいらっしゃいな。」 「話したいのは山々なんだが、暗くて部屋の中がよく分からんのでな…すまないが明かりをつけてくれないか?」 ポルナレフは嫌な気がして、ドアの近くからそう言った。 すると杖を振るような小さな音がして、蝋燭の一本一本に火が灯った。 その明かりに浮かび上がったのは下着姿のキュルケだった。 「これでいいかしら?そんな所に突っ立ってないでこちらにいらっしゃいな。」 誘惑するかのような声で話しかけてくる。おそらく並の男ならイチコロだろう。しかしポルナレフは違った。 まてまて、今の俺はこんなキャラじゃ無い。このキャラはエジプトで卒業したはずだ。 ポルナレフの脳内でそんな声がしたのだ。更に続けて そうだ。今の俺はこんなキャラじゃ無い。逃げろ。逃げるんだよォーッ!スモーキィーーッ!! と聞こえた気がした。 ポルナレフはジョースターさん?と思いつつも、この声に従いじりじり後退した。 その様子を見てキュルケは溜息をついた。 「貴方はあたしをはしたない女だとおもうでしょうね。」 ポルナレフはドン引きした。自覚してるなら恋人でもない男の前でそんな恰好するな。親が泣くぞ?そう思った。 「思われても仕方ないの。あたしの二つ名は『微熱』。」 ポルナレフは嫌でも分かった。ここは逃げるべきだと。もはやここから話を聞く余裕など無かった。 「~~~」 まだキュルケが何か言っている。もうとっとと逃げるべきだ。そう判断するとドアのノブを握った。 しかし、ドアは開かなかった。ハッと前を見た。キュルケが杖をドアに向けていた。 「あたしがこれだけ無視されるなんて初めてだわ…」 ヤバイ、俺はやっぱりこのキャラを卒業出来てなかったのか?トイレと女運は全て俺なのか? 「でも、ますます燃えてきたわ…貴方をどうやってでも振り向かせたい、あたしの虜にしたい…!」 やばい、ヤバすぎる。こうなったら仕方あるまい! 「チャリ…」 チャリオッツを呼び出そうとした時、ガシャガシャと窓が叩かれた。 見ると男子生徒が一人窓の外にいた。 「待ち合わせの時間に来ないから来てみれば…」 「ペリッソン!えぇと二時間後に!」 「約束が違う!」 キュルケはこちらに向けていた杖を窓の方に振ると、蝋燭の火がペリッソンをたたき落とした。 ギーシュと同じく二股しようとしていたらしい。貴族の風上にもおけない奴らである。 「まったく無粋なフクロウね」 「お前が言えるか。小娘」 「あら、嫉妬かしら?安心して。彼はただの友達よ。とにかく今、あたしが1番恋してるのはあなたよ。ジャン…」 キュルケはそう言うとするするとポルナレフの方へ近寄ってきたが、また誰かが窓を叩く音がした。 今度は先程のと違う男で、ポルナレフも見覚えがあった。名前は忘れていたが決闘を挑んで来た奴だ。 その彼も蝋燭の炎によって落とされた。 しかし、男はそれでおしまいでは無かった。 今度は三人が同時に来たのである。彼等は口々に何か言ったが、フレイムの吐く炎によって落とされた。 その間にもキュルケはポルナレフとの間を詰めて行った。 だが、ポルナレフは既に逃走経路を作っていた。チャリオッツを先程呼び出した時にドアを切り裂いておいたのだ。 ポルナレフはキュルケに背を向けるとキュルケが抱きつくより早くドアに突進した! バッキャァーンッ! ポルナレフは廊下に回転しながら着地した。しかし、彼の女運はまだ続いていた。 今度のそれはすぐ隣の部屋のドアを開けて出てきた少女、ポルナレフのご主人様であるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールその人だった… To Be Continued...
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轟音を聞きつけ、ルイズたちは宿を出る。 そして、空を見上げ、絶句する。 「なんてひどい…」 ルイズがショックから立ち直り、そう漏らす。 「あれは…アルビオンの艦隊だね、つい最近不可侵条約を結んだはずなのだが…」 「ふん、不可侵条約など両方の打算で結ばれるのだ、状況が変われば攻められる、そんなことは当然だ。 それより、一騎青い竜が近づいて来るぞ、撃ち落すか?」 「あら、あれは…もしかしてシルフィードかしら?それに、あなたの使い魔もいるわね。 シュトロハイムさん、あれは味方よ」 シルフィードが着地する。 「なにが起きて…」 「貴様はァーーーーーッ!」 降りてきたタバサがキュルケに状況を聞こうとすると、シュトロハイムが怒号で遮った。 「貴様は、ワムウッ!なぜ生きているッ!ジョセフに殺されたはずだ!」 「ほう、お前は…ジョセフの知り合いか?」 「質問に質問で返すなァーーッ!もしかしてカーズも生きていやがるのかァーーッ!」 「カーズ様が?その言い方だとカーズ様もやられたのか」 「そうだ、ジョセフがやったのだ、知らんのか!?」 「あの女と戦う予定ではなかったのか?」 「にっくきカーズは騙まし討ちをしたのだ、そして究極生命体へと生まれ変わったのだ。 しかし、ジョセフが命を賭けて救ってくれたのだ!」 「ほお、カーズ…確かに、カーズ様とは意見の合わん部分もあった…しかし、そうか、ジョセフが やったのか、あいつめ、そこまで成長しおるとはな」 そういってワムウは笑う。 「俺はなぜ生きているんだと聞いているんだ」 「さあ、俺に聞くな、むしろそっちのルイズの方が詳しいだろう」 シュトロハイムは振り向く。 「もしかして、異世界から来た使い魔とは…」 「え、ええ。ワムウだわ」 「奴はなぜ生きている?」 「し、知らないわ。召還したときにはあの体だったもの」 頷いて、再びワムウに向き合う。 「ふん、どうやらこの少年少女たちも知り合いのようだな、どうした、柱の男? 身近な人間を食わないとは人道主義か博愛主義か、友情にでも目覚めたか?さて、俺とやる気があるのか?」 「波紋戦士や強い戦士だというなら、受けてやろう」 「ふん、今じゃなければ向かっていってやるがな」 シュトロハイムがそっぽを向いたので、ワムウはルイズに尋ねた。 「おいルイズ、どういうことなんだ?」 「新生アルビオン軍がおそらく攻めてきたのよ」 「なるほど、それは面白そうだ、今度は持ち出さねばらならぬ手紙もない、思う存分やらせてもらおう」 ワムウは指を鳴らす。 「そういうことだ、どけ。あいつらを叩きのめしてくれるわ」 そういってシュトロハイムはゼロ戦の所へ行こうとする。 「なにをする気よ!?あなた一人でなにができるっていうの!?」 ルイズの制止にシュトロハイムは鼻を鳴らす。 「ゼロ戦を飛ばす。あれは道楽ではない、兵器だ。木造艦隊など木っ端みじんにしてくれるわ」 「…だめよ、トリステイン軍が出ていないわ、アルビオンと交渉中かもしれないのよ!」 「そんなことを言っている間に首都まで進まれても文句は言えんぞ、ここには冬将軍はいないのだからな」 そういって自嘲する。 「なら…私も行くわ!トリステイン人として、部外者に戦わせて私たちが指をくわえて待っているなんてできないわ!」 「ミス・ヴァリエール!」 一喝しようとしたコルベールを制して、シュトロハイムは話を続ける。 「そう言って、訓練もままならるまま敵に突っ込み、死んでいった勇敢な部下たちを何人も見てきた。 お前たちはこのトリステインの未来を担う人材なのだからな」 ルイズは必死で続ける。なにか不吉な未来が見えるかのように。 「じゃあ、なんであなたが行くのよ!」 「俺はトリステイン人でもトリステイン軍人でもない、ただの一人のドイツ軍大佐だ、こんな汚い戦争などは、 戦争にしか生きられない軍人に任せておけ、帰る故郷も、家族もいない異邦人の軍人にな」 シュトロハイムは、ゼロ戦のコクピットに入ろうとし、片足をかけたところで足を止めた。 「ワムウ、お前に頼むのもなんだが…お嬢さんがたは頼んだぞ」 「俺を知っているのなら、俺がただの人間風情に遅れをとらんことくらいわかるはずだ」 「そうだったな、化け物め、では行くぞ。コルベール、無線で逐次連絡を取るから、確保してくれ、 あとギーシュといったか?お前は男だろう、しっかりお嬢さんたちを守ってやれよ」 コルベールとギーシュにシュトロハイムは頼み込む。 「ああ、もちろんさ、僕の薔薇の針は可憐な花を守るためにあるのだからね」 「わかりましたぞ、生徒と無線を守るくらいはやってみせますよ…それにしても戦争というのは嫌なもんですな」 「ああ、どこの世界でも嫌なものだ。こんなものを利益なしに望むのは狂人だけだ。その点、俺も見知らぬ土地で 機銃を振り回すのだ、大して変わらないのかも知れんな。だが、俺は戦士を操る軍人、狂人だが、 戦闘機がある以上俺は騎士でもある、自分の知り合いくらい守らねばならん、難儀なものだ」 「人間とは難儀なものだな、まあいい、終わったら手合わせ願おう。こいつらガキどもの護衛、確かに承ったぞ、 戦士、シュトロハイムよ」 「ふふ、俺を戦士と呼ぶか、戦い狂いの化け物め。いいだろう、空は俺に任せろ。コルベール、ワムウ、武運を祈るぞ! では、ルドル・フォン・シュトロハイム、ドイツルフトバッフェ大佐、出撃する!」 エンジンが猛烈な音を立て、ゼロ戦は舞い上がった。 「さて、任された以上やらねばならぬな…この程度の人間の数ならば、メキシコですでに三度はやっている」 「やれやれ、味方になっても頼もしいを通り越して恐ろしいな」 無線からシュトロハイムの声が入る。 「我がサイボーグの視力はーッ!世界一ィイイイイッ!九時の方向に敵を数体発見、今日のエースは俺だァアアアッ! 記録係は瞬きするんじゃないぞッ!」 この世界ではありえないスピードで、竜騎士に接近していった。 右手に杖を、左手に無線をを持ったままタルブの民衆を避難させるコルベール。 もし、空から彼らを狙って来るアルビオン兵がいたとしたら、容赦なくコルベールにやられていただろう。 しかし、シュトロハイムの活躍が功をそうしてか、その機会はなかった。 地上では向かってくる兵士は文字通りワムウに吸い込まれていくのを顔をしかめて見ていたが、 やがてタルブの一般人の保護に集中するようになった。 ワムウに向かっていく兵士は、幸か不幸か、一斉にではなく、多くとも小隊単位で向かっていくにすぎなかった。 小隊を、分隊を、歩兵を、銃兵を、弓兵を、メイジを、階級に関わらず無傷で屠っていくにつれ、そのあたりに アルビオン兵が現れることはなくなった。もし、一斉に攻めていたら…傷くらいはつけられたのだろうか。 「この地域の方々はほぼ集めました、あとは残っている領主の兵士の方に護衛をお願いしましょうか」 この地域でも手際よく非戦闘員を集めたコルベールは、次の場所に向かおうとする。 「…ミス・ヴァリエール、ワムウくんを止めてきてくだされ」 集めた石を敵陣地のあるであろう方向に投げる。 ただの石もワムウにかかれば榴弾砲の様な威力となる。矢継ぎ早に飛ぶ石は空中でぶつかりあって降り注ぐ。 スピードがあるだけに、大抵は致命傷にはいたらないまでも脅威の対象となっていた。 「ワムウ、そろそろ行くわよ、あんたの仕事はアルビオン兵の殲滅じゃないのよ、わかってるの?」 「わかっているから投石なんぞで我慢しているのではないか、お前らがいなければとっくに突っ込んでいるわ」 「……はいはい」 「十九騎目ェイッ!とろい、とろいぞォオオオッ!そんな反応では東部戦線では一日で葬式が出るぞォオオッ!」 元戦闘機乗りとだけあって、七.七ミリ機銃を効果的に当て、強力な二十ミリ機銃を温存している。 「しかし、素晴らしい機体だ、東の黄色人種がアメ公相手に通用するのもうなずけるな! 航続距離も長い、二十ミリ機銃の威力もなかなかある。これだけの性能なら竜ごときには遅れはとらんわ!」 そして、前方を見て舌打ちをする。前方の巨大な船から数体 「しかし、あの化け物をなんとかせねばな…航空母艦は航空母艦でも空に浮く航空母艦とはな、 やれやれ、空飛ぶ要塞などといった異名が霞んで見える」 少し考え込むが、顔を上げ、操縦桿を強く握りなおす。 「どうにかせねばならんが…まあ後回しでいいだろう、相手が哀れなコミュニストでなくなったがやることは一緒だ、 アルビオンの竜騎士よ、運が悪かったな…アーメン」 シュトロハイムは発射把柄を握った。 錐揉み状態で前方の竜騎士が落ちたのを確認し、辺りを見回す。 そして、ある一点で目を止める。 「ふん、仰々しい格好をしおって、大きな杖を構えて、あれが噂の巨人使いのようなメイジということか? 少々遠いが、威嚇射撃でもしてやろう」 機銃の砲身が短い音を発し、数発弾丸が飛んでいく。 距離があるため、当たりはしないが、相手の騎士は特段驚きも慌てもせず、スピードも軌道も 変えずに進んでくる。 シュトロハイムは機首を上げ、上昇すると、遅れながらも竜も上がってくる。 機体を傾け、竜の側面から攻撃しようとする。 竜はそのまま上昇し、ゼロ戦が近づいてくると、体をひねらせ、ブレスを吹きながら突進してくる。 シュトロハイムは慌てて機体をひねりながら急降下させ、すんでのところでかわす。 「危ないところだった、しかしここまで近づかれると戦闘機の優位が霞む、少々距離をとるか」 機体を少しだけ上げ、出力急降下に切り替えてスピードを上げ竜から距離をとる。 ある程度距離がとれたのを確認すると、出力を上げて上昇させる。 かなりの高低差が生まれたと判断したシュツロハイムは、旋回し、降下してスピードを上げながら竜に 突っ込む。かなりのスピードに相手は判断が鈍り、予めとるべきだった回避行動をとれなかったようだ。 射程距離に入ったとみたシュトロハイムは発射把柄を握り、機銃をぶち込む。 相手は杖を振り必死で弾丸から身を守るが、数発竜に当たっていく。 とうとう、前方の竜はきりもみ降下していき、シュトロハイムは出力を落とした。 機体が揺れた。 シュトロハイムのゼロ戦が大きく揺れる。 なぜならば、機体の下部に穴がいくつか開いていたからだ。そしてほぼ同じ数がシュトロハイムにも開いていた。 落ちていく竜に乗った騎士の背中から飛び立った竜と騎士は、下からゼロ戦を追い越し、 母艦『レキシントン』へと戻っていった。 「子爵、どうでしたか?」 ボーウッドが椅子に座って目を瞑っていたワルドに尋ねた。 「ああ、やったよ、僕の偏在は確実にあの乗り手を竜ごとエアカッターで何発も貫いた、まず助からないね」 「さすが子爵ですな、では作戦に移りましょう、野蛮な無差別砲撃にね」 グラグラと揺れるゼロ戦を見て無線に向かってコルベールが叫ぶ。 「シュトロハイム君、どうしました、シュトロハイム君!」 「な…が起きたんだ?落…し…はずの竜騎士…背中…ら、もう一体の竜…士が…」 「シュトロハイム君、ゼロ戦が下がっていますぞ!立て直さねば!」 機体はハッとしたかのようになんとか態勢を戻す。 ルイズが無線に向かって話しかける。 「ねえ、もしかしてその騎士って、杖を構えて、黒い帽子をかぶっていた?」 「その通りだ」 「おそらく…ワルドだな、つじつまもあう」 ワムウが呟く。 コルベールが続けて話す。 「機体に穴があいていますぞ!早く着陸せねば危ないのでは!?」 笑い声が聞こえた。 「無駄だ、コルベール。油断してつけたま…であった増槽にも穴が…けられた。脚も降…ん、胴体着陸できるほど 整備され…飛行場…ない。それに…俺自身、もう助からん、それに無線…もガタがきて…る」 先ほどから強いノイズが入ってくる。 「ふん…忌々し…巨大…艦め、高度を下げて…る、おそら…制空権を取…たと判断して地上砲撃に入るのだ…う、 お前ら…けでも避難したほ…がいい、あ…な化け物の艦隊…砲撃を受…たらワムウでも無事で…すま…だろ…」 ノイズが強くなり始める。 「コルベ…ルよ、ゼロ戦のエ…ジン、渡せなくてすまんな。 ギーシュくん…、し…かりお嬢さ…方を守…よ。 そしてルイズ、タ…サ、キュ…ケ。そ…いえば苗字も聞…ていなか…たな… 礼を言わ…てもら…う、君たちが…なければあの巨人…倒…れ、ここに…いなか…た…もしれん。 シエ…タ…ワイン…美味であったぞ…ゼロ戦を快く渡して…ただい…重…重ね感謝す… そ…て、忌々し…柱の男よ、お前…なぞ言…ことは一つし…ない……頼んだぞ」 「シュトロハイムくん!なぜそんなことを言うのですか!シュトロハイムくん!諦めてはいけませんぞ!」 「コルベ…ル、か?もう、よ…聞…取れんよ」 弱弱しい声で返事をする。 「…お、友よ!この…うな調べでは…い!そんな調べ…り、も…と心地よく歌い始め…う、喜…に満…て!」 弱弱しい声でシュトロハイムは歌い始める。 「歓喜よ…美し…神々の煌め…よ…土から来た娘よ…我等…炎のよ…な情熱に酔…て天…の彼方、貴方の聖…に踏み入…」 シュトロハイムは気力と体力を振り絞り、ゼロ戦を上昇させる。 「貴方の御力によ…時の流れ…容赦な…分け隔たれ…も…は、再び一つとな… 全て…人々は貴方の柔ら…翼…もとで兄弟になる!」 『レキシントン』号の真上にゼロ戦は出力全開で上がっていく。 散弾がゼロ戦とシュトロハイムに容赦なく刺さっていく。エンジンは黒煙を吹き出し始めた。 霞む目でシュトロハイムは目標を探す。 「我が祖国ドイツよ!我が故郷タルブよ、永遠なれ!」 ワルドは部下に命令する。 「最後のあがきという奴か、だがじきに息は止まるだろう、とどめに散弾を叩き込んでやれ」 竜からは煙が出始めた。 しかし、それでもまだ上がり続ける。 部下が絶句し始める。 あまりの速さに。 あまりの高高度性能に。 あまりのタフさに。 あまりの気力に。 ワルドが部下に怒鳴る。 「なにをしている、散弾の数を増やせ!全力で落とすのだ!」 「子爵、まさかのことです…想定外のことです、あんな高さまで上がるなど竜、いや艦でさえもありえないことです!」 「だからどうしたというのだ!どんな高さでも構わん、叩き落せ!」 「それが無理なのです!この船は浮遊大陸アルビオンで使われていたもので、上から攻撃することはあれど、 あんな高さの敵に対処するなど全く想定していないのです!」 「…つまり、上は死角だと?」 「それだけではありません、武器庫、観測塔、そしてこの部屋も全て甲板の上にあるのです! 上から攻撃されては一たまりもありません!」 「なんという体たらくだ!」 ワルドは手直にあった机を蹴り倒す。 「…まずいです!あの竜が猛スピードで降下してきました!あのままいけば…武器庫です!」 「なぜピンポイントで武器庫が狙われるんだ!」 「武器庫は中からの事故の被害が抑えられるよう特殊な設計をしています、先ほど言ったとおり 上からの攻撃は想定していませんので、偽装もなにもしておりません、見る人によっては一目で看破され…」 『レキシントン』号の甲板上に爆音が響き渡った。 To Be Continued...
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風精霊が運んできた、届けるはずだった手紙の数々。西イストモスから西へ、未踏破領域に探索冒険へ向かい未だ帰ってこないキホーデン男爵の報告書。 “キホーデン紙篇”と呼ばれる紙集は真偽詳細は兎も角、生の未踏破報告書として異世界と地球の研究者から注目されている。 西イストモスでも西方に位置する辺境領の一つを治めるケンタウロスのキホーデンは物心つく頃から西に広がるイストモスと未踏破を分け遮る“黒い帯”を見て育つ。 許可ない者の立ち入りを禁じられているその森に常に興味を惹かれていたキホーデンは十分な蓄えと領地統治権の返上が叶うや否や、 従者筆頭の狗人サパンと城憑きの風精霊ナテロンを供に探索具一式を持ち未踏破到達を目指し黒い帯越えに挑んだのである。 それから都度まちまちではあるが日をあけて領地境界にある果ての監視所にキホーデンからの手紙が風精霊によって運ばれるようになる。 「我が語りサパンが書す」という一文で始まる手紙は現在保存されているだけで五百数通にも及ぶまでになる。 高地ケンタウロス族の出であるキホーデンは荒れ地や森林などの移動が得意であり、そう大きくはない体躯も合わせて洞窟や谷間を抜けて西へ西へと進んでいったのが手紙の内容からも察することができるという。 数々の報告の中でも研究者達が注目したのは「大気や水などの違い」である。 黒い帯でも陽光の届かなくなる“森の窟”と呼ばれる天井樹が茂る一帯から徐々に空気の質が変化しているという。 変化が最初に現れたのは風精霊ナテロンの力が増したことである。 「風の囁き、歌が強くなった気がする」というナテロンは増した風力により森を越えて手紙を運ぶ分身を生み出せるほどになり、窮地で置き去りにした荷物の回収もこなす様になった。 「流れる小川の水を煮沸し水筒に入れたが、その重さは明らかに倍ほどである」と書かれている“重量のある水”。 「慣れるまでに週を要した」と言われる“重い空気”は吸うだけで肺に負担がかかり行動を制限するほどで、研究者達はこれを“大気含有成分の濃いもの”と仮説付けている。 未踏破に生息する動植物と遭遇することも多かった一行であったが、普段目にするそれらよりも強靭かつ巨大な種が多いという報告がある。 未踏破に生息する生物のあらゆるは自身を維持するのに、そういった“濃い自然”を必要とするのではないかと目されており 未踏破にあるとされている過酷な自然淘汰自然循環の世界から抜けてこちら側に生物がやってこないのは生命維持に必要な自然の濃さがないからなのではと仮説が立っている。 「肉を諦めた我らは木の実を集め調理したがとんでもなく灰汁が強く抜くのに難儀した。しかし熱湯で長く灰汁抜きしたにも関わらずその味は舌が疲れるほどに濃い」という報告からも察するように 未踏破には数段濃い栄養バランスが成り立っているのではないかと言われている。 森を抜けた先には大草原が広がっており、手紙の届く頻度はここから明らかに少なくなり間隔も空くようになっていく。 風精霊も監視所まで到着できずに力を失い途中で消失することも多く、監視所と黒い帯との間や黒い帯に入ってすぐ周辺で発見された手紙の数々は届けきれなかったものだろうとされている。 「強い毛細運動を行う草が起こす波に乗って彷徨う鋼の廃船」「草原の中に突如現れる堅牢な石砦とその中で生存を続ける見たこともない種族」「ドラゴンですら小鳥の如く狩られる凶暴極まる空」 少ない報告の中にも目を引くものは多いが、研究者の間では「ホラ話や幻覚、妄想の類ではないか」という声もある。 そんなキホーデンの紙篇の最後のページと言われる一文は次の通りである 我が語りを書き記すサパンが調子を悪くし砦で養生しているので自身で記す 荒れ狂う曇天を冠する灰色の山脈より現れ攻めてくる獰猛な異形を討滅すべく我は出陣する 長らく世話になった砦の皆の一大反攻作戦であり、騎士の心がこれに参加せねばと心を囃した 未踏破は未だ広大であり、この戦いが終われば我はまた西へと探索の旅へ出ようと思っている 西イストモスは基本的に未踏破領域への立ち入りは禁止しているが、キホーデン紙篇の研究からいくつかの規模での調査派遣が計画に挙がっている。 国力、特に食糧事情が整備途中であるために西イストモス単独では立ち消えになるかと思われていたが他国、地球からの支援援助もあってか 近々出発が予定されるまで進んでいる。 アビスかな?グルメ界かな?とか思ってみたり。こういう真偽不明の先達の報告ってワクワクするなぁ -- (名無しさん) 2017-09-23 18 30 09 未踏破を越えてこない理由があるとそれっぽくなるな -- (名無しさん) 2017-09-24 01 24 34 デンさんは死んだんじゃなくて未踏破のもっと遠くへ旅立ったと思いたい -- (名無しさん) 2017-09-24 16 35 03 濃度の違いで世界に境界線があるというのは分かりやすいし越えるのが難しいのも想像できる -- (名無しさん) 2017-12-08 20 22 24 名前 コメント すべてのコメントを見る
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 二年生最強のメイジ。ギーシュ・ド・グラモンが食堂で女の子を苛めていると、平民の少年がそれを止めに入った。 「まちな!」 「何者だ貴様!」 ギーシュがその少年に杖を突きつける。 「てめーみたいな屑に名乗る名はねぇぜ・・・・」 「平民の分際で貴族に楯突く気か・・・?いいだろう。かかってこい!」 「てめーは俺が裁くっ!」 そして始まる決闘。 「この『平民』がぁー!『貴族』様に勝てると思ってんのかぁー!」 ギーシュはゴーレムを作り出し、少年に襲い掛かった。 「オラァ!」 少年が鉄拳を振るうと、ゴーレムは一撃で砕け散った! 「な、なんだとぉー!?」 「なめるなよ?全力を出せ。貴族!!」 「ひ、ひぃぃ!や、やってやるぅ!!」 ギーシュが杖を振るうと、数十体のゴーレムが少年を取り囲んだ! 「げへへ!平民の分際で舐めた口聞いたことを後悔させてやるゥー!!」 少年に襲い掛かるゴーレム達! だが、少年はゴーレムの一体を踏み台にして飛んだ! 「な、なにぃぃー!馬鹿なぁー!」 ギーシュは驚愕した。 少年はギーシュの背後に華麗に着地すると、ギーシュをギロリと睨んだ。 「次はてめーの番だ・・・」 「はひぃぃー!」 ギーシュはあまりの恐怖に失禁して腰を抜かしてしまう。 「右の拳で殴るか左の拳で殴るか、あててみな・・・。」 少年はギーシュを見下ろした。 ギーシュはごくりと唾を飲んだ。 「ひ、一思いに右で・・・やってくれ!」 「NO!NO!NO!」 「ひ・・・左?」 「NO!NO!NO!」 「り・・・りょーほーですかぁー!?」 「YES!YES!YES!」 「もしかしてオラオラですかぁー!?」 「YES!YES!YES!OH!MY!GOD!」 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ――!!」 少年のラッシュでギーシュは「ひでぶ!」と言いながら吹っ飛んだ! 顔面を血だらけにされたギーシュは命乞いをした。 「今まで威張ってすみませんでしたァー!もう平民を馬鹿にしないので、許してくださーい!」 「てめーら貴族が平民を苛めるようなことがあれば、またすぐにボコボコにしてやるからな。」 「わ、わかりましたー!」 ギーシュは土下座をした。 「やれやれだぜ・・・・」 少年はくるりと背を向けた。 「助けていただいて、ありがとうございました!」 苛められていた少女が礼を言うと、 「気にするな・・・」 とだけ言って去っていく。 「ま、まってください!」 少女が叫んだ。 「あなたの・・・あなたのお名前は?」 少年は顔だけを少女に向けて言った。 「俺の名はコーイチ。しがない平民さ・・・」 あれから三日。これが現在平民の間で噂されている決闘の詳細である。 あの決闘を見ていた平民はシエスタだけだった。 シエスタは興奮のままに、平民の仕事仲間に『平民の少年が貴族に勝った』決闘のことを話した。 シエスタから聞いた平民は、またその仲間に聞いた話を伝えていく。その仲間はまた別の仲間に。 「きっと、こうだったのさ・・・!」「・・・だって聞いたわよ!」「・・・だったらしいぜ!」 噂をするうちに膨らんだ想像が付け足されていき、逆にいくつかの情報が抜け落ちていく。 こうして、本人がいない間に、康一は 『弱きを助け、強きを挫く勇者』にされてしまったのだった。 「う、うわぁ・・・」 康一は青くなった。 なんだか、話が無茶苦茶美化されている。 しかも平民の代表みたいにされてるし・・・。 話を聞いていると、まるでその決闘をしたのが承太郎さんだったように思えてくる。 「(少なくともぼくみたいなチビのことじゃないよね。その主人公。)」 厨房にやってきた康一は、集まってきた平民達に取り囲まれ、話ようやくその噂を知ったのだった。 康一は誤解を解こうとした。 「い、いや。そんな大したもんじゃないですよ!実際ぼくだってボコボコにされて、今まで寝てたんですから!」 「でも、ギーシュって貴族に勝ったのは本当なんだろ?」 マルトー親父が尋ねた。 「それは・・・まぁ。そうなんですけど・・・。」 オオオオオオ! 集まってきた平民達がどよめいた。 「しかも素手でぼこぼこにしたって聞いたが?」 「それも、確かにそうなんですが・・・」 オオオオオオオオオ!! 歓声があがる。 「しかもトドメに、その貴族、『ゆるしてください!』って泣いて謝ってきたんだろ?」 「まぁ・・・それもだいたいその通りですけど・・・」 ヒャッホ――――――! 帽子が乱れ飛ぶ。泣き出したり、抱き合ったりしている人もいる。 康一の首にマルトーの毛深い腕が廻される。 「可愛い顔して、おめぇはすごいやつだ!コーイチ!『我らの拳』だ!」 「お、おおげさだなぁ。」 康一は困った。結果的にばれない形になったが、スタンドを使ったわけで、素手だけで倒したわけではない。しかし、 『いやー、実は『スタンド』っていうみなさんの言う『先住魔法』みたいな力を使ったんですよー!』 なんて明るくネタバレした翌日に火あぶりにされたりしたら困る。実に困る。 それになにより、これだけ喜んでいる人たちを悲しませるのは憚られた。 「おおげさなことなんてないぞ!」 マルトーは大きく首を振った。 「俺達平民は、いつもいつも貴族のいいなりにされてるんだ。それに逆らって殺されたやつを、俺は何人も知ってる。」 他の平民も静かに頷いている。 「俺達平民が一人の貴族を倒そうと思ったら、武器を持って数人がかりさ。それだって返り討ちにあうことすらあるんだ。」 それなのに・・・!マルトーはぐっと拳を握り締めた。 「お前は一人で、しかも素手で貴族を倒しちまった!こんな痛快な話聞いたことがない!だからお前は英雄だ!『我らの拳』だ!」 シエスタはその様子を見て嬉しそうに微笑んでいる。 「ちょ、ちょっとシエスタ!なんとかしてよ!それに、その噂すごい誇張してるよね!あいつ別にもらしてなんかなかったし、ゴーレムも7体しかいなかったよ!」 「そのくらい演出の範囲内ですわ。」 シエスタは嬉しげに胸を張った。どうやら話を大きくするのに積極的に関わったらしい。 「俺はお前と知り合えてうれしいぞ!俺がみこんだ男だけあった!コーイチ!俺はおまえの額にキスしてやるぞ!」 とマルトー親父が分厚い唇を近づけてくる。 「うわぁ!マルトーさん!ちょっとまって!キスは・・・!キスはいいからぁー!!」 康一は悲鳴をあげた。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
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第1章 前編 「あんた誰?」 値踏みするように、自分を覗き込む少女が問いかける。 …君こそ誰だ? ここはどこだ? 体を起こし、質問に質問で返そうとしたが……身体が応答しない。 目を開き、首を少し動かして、視野を確保するのが精一杯であった。 (身体が…重い…… 今敵に襲われたら… 楽に…逝けるな……) 何よりも男落胆させたのは、大切な相棒…”友”が自分の隣にいないことであった。 何の返答も無い。 (もしかして私… ”死体”を召喚しちゃった!? …でも、目は開いてるし…首もすこし動いてる? …ケガでもしてるのかしら?…) 少女は自分が召喚した生き物の安否を確かめるため、”それ”のそばに近寄り、まじまじと観察してみた。 どうやら初見通り、人間の男性らしい。 「黒地に、細い白い縞模様(ピンストライプ)」の変な服を着ている。肩には、鎧の肩当ようなモノを着けている。 (傭兵か兵士? まぁ、貴族ではなさそうね…) 呼吸に合わせ、身体が上下している。 (良かった… 生きてる… …ケガらしいケガも見当たらない…) (”死体”なんか召喚した日には、「”使い魔のライフポイントがゼロ”のルイズ」って呼ばれかねないもんね…) 自嘲気味に、安堵の気持ちを心の中で呟いた後、今度は首から上を改めて見てみる。 髪をいくつかに束ねて、植物の房のような髪型。額には、黒いバンダナを巻いている。顔立ちはなかなかの男前…だと思う。 男は一生懸命、目をぐるぐると動かしている。意識はあるようだ。 (…平民が使い魔だなんて気に入らないけど… 出てきたものはしょうがないわ・・・) 少女は人生で(まだ十数年ではあるが、それでも)トップ3に入るほどの譲歩と妥協をしてのけた。 (…やっぱり何事も最初が肝心よね? 御主人様としての威厳を見せ付けないと…!!) (ここはどこだ?) 自由の利く目を最大限使い、少しではあるが首も動かし、辺りを確認してみる。 …どうやらヴェネツィアの広場ではないらしい。なにやら少女以外にも、沢山の人の気配がする。 (…確かにオレは…・・・ヴェネツィアで死んだはず……だよな) 何故ティッツァが隣にいないのか。何故生きているのか。何故ヴェネツィアから移動しているのか。何故…。 疑問はたくさん有るが、それよりも、今現在何をするべきかを考えなくては……。 先ほど自分に声をかけてきた少女が、近くに寄ってきていた。 ……オレを観察してるらしい。 (まさか、コイツが”新手のスタンド使い”ってことは……) 最初に目に飛び込んできたのは、桃色がかったブロンドの、綺麗な長い髪である。 大地に仰向け状態のまま、動けぬ自分から見上げると、背景の青空のせいで、より桃色が映えて見えた。 顔だって整っている。美人というか、美少女というか。とりあえず、十分”有り”である。……色気は感じられないが。 (あと何年かすりゃもっと”化ける”な……って、そんな場合じゃねーな) 微妙に緊張感が無くなっている。いや、集中力と思考力が下がってきている。 (このまま目をつむったら楽になりそうだ……) 緩やかに、穏やかに”生”を終えるときは、こんなカンジなのだろうか……。 男の顔前に可愛い小さな顔が移動してきた。 「…もう一度聞くわ。 あなた誰? 名前は?」 落ちついた調子で、問いかける。 (…多分……スタンド使いとは違うな……答えても問題なさそうだ・・・) 少女の考えた”余裕のある威厳”を感じたからか、男が沈黙を破った。 「………スクアーロ…」 消え入りそうな声。スクアーロの全身全霊を込めた主張であった。 「そう、”すくあーろ”ね? どこの平m「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民呼び出してどうするの?」 誰かが、少女の威厳ある対応を横から完全にぶったぎる。それを受け、少女以外の人間が笑う。 「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」 少女は怒鳴るが、周りの人間は気にしていない。それどころが、さらに追い討ちをかける。 「間違いって、ルイズはいっつもそうじゃん」 「ルイズの失敗率は世界一ィィィッ!!」 「さすがはゼロのルイズだ!」 誰かがそう言うと、人垣がどっと爆笑した。 少女の名前はルイズというらしい。 (やっぱり平民の使い魔なんて嫌!) …ルイズは先ほどの譲歩と妥協をあっさり撤回した。 「ミスタ・コルベール!」 ルイズはスクアーロに背を向け、怒鳴った。 すると、中年の男が前にでてきた。……生え際は完全に後ろへ下がっていた。むしろ無い? ルイズはミスタ・コルベールに怒鳴りながら、コルベールはミス・ヴァリエールを諭しながら、会話をしている。 「もう一度……!!」 「それは……」 …なにやら、召喚だの儀式だの、果ては使い魔なんて単語が出てきた。 「でも平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」 ルイズがそう言うと、再び周りがどっと笑う。ルイズは人垣を睨みつけるが、笑いは収まらない。 「…たとえ彼が平民でも、君の使い魔になってもらわなくてはな」 「そんな……」 ルイズはがっくりと肩を落とした。 「さあ、儀式の続きを…」 「えー、彼と?」 ルイズとコルベールは、まだ話し合っていたが、ルイズの勢いは完全になくなっていた。 (……平民てオレのことか? …使い魔になる?オレが?) 聞こえてくる会話と自分の状況を何とかすり合わせ、導き出した答えは納得できないものであった。 というか、理解できない代物であった。 (そもそも使い魔ってなんだ? 契約?書類でも書くのか?) スクアーロが、脳内で謎と疑問軍団と戦っていたとき、ルイズがスクアーロの方に向き直った。 「ねえ… あんた…聞こえてる?」 「……何とかな」 そう。と一言いうと、ルイズはスクアーロの左手真横に、立て膝の状態で構える。 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」 貴族?またとんでもない単語が出てきたな…。 ルイズは諦めたように目をつむる。 手に持った、小さな杖をスクアーロの目の前で振った。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 朗々と、呪文らしき言葉を唱え始めた。 すっと、杖をスクアーロの額に置いた。 そして、横たわったままのスクアーロの唇を奪う。 ズキュウーーーz___ン それはまるで、王子様が眠れるお姫様へのキスするかのように。…配役は逆だが…。 「終わりました」 スクアーロから唇を離し、ミスタ・コルベールに告げる。 ルイズは顔を真っ赤にしている。どうやら照れているらしい。 …まさか初めてのキスじゃねぇよな? スクアーロの予想は的中していたが、それを確認するほど野暮ではなかったし……。 「誰にでも、初めてはある」ということだ。 「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね」 コルベールが嬉しそうに言った。 「相手がただの平民だから、『契約』できたんだよ」 「そいつが高位の幻獣だったら、『契約』なんかできないって」 すかさず野次が飛び、ルイズがそれに噛み付くように反撃してゆく。 …よくやる……。 ルイズと巻き毛の子をコルベールが宥めていた。そのとき、スクアーロの体が妙に熱くなった。 「うぐァァ! ぐうううう!」 仰向けの体勢から、体を丸め、何とかこらえようとする。だが……。 熱い!これはまるでッ!……そうッ!あの時のッ!ナランチャにッ!エアロスミスで撃ち込まれた時と同じッ!全身に機銃をブチ込まれた感覚と同じだッ!! スクアーロが何かをこらえている様子を見て、語りかける。 「すぐ終わるわよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」 余りにも事も無げに告げるルイズを睨みつける。 「あのね」 「なんだッ!」 「さっきからあんた……。平民が貴族にそんな口利いていいと思ってんの?」 うるせぇ!と怒鳴りつけてやろうとした瞬間、熱さが消え、体は平静を取り戻した。 「ふぅ……。」 熱さが引くと、今まで言うことを聴かなかった身体が素直になった。むしろ絶好調といっても良い。 最高に「ハイ!」ってやつかアアアア? コルベールが近寄り、スクアーロの左手を確かめる。 「珍しいルーンだな。…なかなか興味深い」 そんなに興味深いなら、テメーのその光るデコに、オレがじっくり刻んでやろうか!? さっきまでの諦観的・悲観的な気持ちから一転、強気なセリフを思いつくほど”息を吹き返した”。 「…それでは皆、教室に戻りましょう」 少しだけ名残惜しそうにしながら、スクアーロの左手から視線を外し、二・三歩歩くと宙に浮いた。 飛んだ…のか……? …ッ! スタンドかッ! さっと身構える。しかし……。 (水がッ…!? 水がねぇッ!) 慌てて周りを見渡すが、水溜りすらない。さらに他の生徒と思わしき連中も一斉に宙に浮く。 (全員スタンド使いかッ!? いや、いくら何でもそれはありえねぇッ!?) 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ『フライ』どころか『レビテーション』さえもともにできないんだぜ」 「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ!」 口々にそう言って笑いながら飛び去っていく。 自分への攻撃でなく、純粋に移動手段であることに安心するとともに、思いもしない光景にかなりの衝撃を受けた。 警戒を解き、飛んでゆく人間?を見送ることしかできなかった 二人きりになって、ルイズは大きなため息をつきながら、大声で怒鳴った。 「あんた、何なのよ!」 それからはただただ一方的にルイズがまくし立てた。 なんで、私の使い魔が平民なの?グリフォンとかドラゴンがよかったのに!どっからきたの?何その格好?その変な髪型は意味有るの? …質問というか、今までの鬱憤を晴らすかのごとく、身振り手振りで「疑問と要望」をぶつけてくる。 そんなルイズに何の反応もしないスクアーロ。何か考え事でもしているようだ。 返答しない使い魔のそっけない態度に、さらに燃えつきるほどヒート!!…アップしようとするルイズ。 そんな御主人様を、使い魔はいきなり抱きしめた。 「ちょ、ちょっと1? な、なにするd 「色々言いたいことはあると思うが、オレたちが最初にすべき事は…」 「互いの理解を深めること。 それには”コレ”が一番早い……」 スクアーロは目を閉じ、ルイズにキスをしようとしたが……。 次の瞬間、スクアーロの大事な部分は無言で蹴り上げられた。 薄れ行く意識の中で、スクアーロは友に「反省と考察?」を述べた。 …やっぱり慣れないことはするもんじゃないな……。 ティッツァーノ… ここがどこだかわからねぇが……。 かなりヤバイところってことと……。 ここの女の子は可愛いが…気が強くて…攻撃的ってことは確実だぜ……! うずくまり、微笑を浮かべながら気を失う使い魔と、赤面しつつ、怒りに体を震わせながら使い魔を見下ろす御主人様。 …なんとも空の『青』に『赤い顔と桃色の髪』が映え、大地の『緑』に『黒い服』が良く馴染んでいた……・ 第1章 オレは使い魔 前編終了 To Be Continued......
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「式神」ともいう。 本来は魔力によって作り出した魔法生物や従えた魔物などを指す。 現代においては魔法技術の発達により、工学的な技術を用いた「機械の使い魔」の製造も可能になっている。 中でもコンピュータとしての機能を持つものを「自律型PC」と呼称する。 与謝之香織は使い魔作りの名人として知られている。