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組織 海賊・世界政府 王下七武海 傘下勢力 備考 ジュラキュール・ミホーク サー・クロコダイル バロックワークス 除名 ドンキホーテ・ドフラミンゴ ドンキホーテ海賊団 バーソロミュー・くま ゲッコー・モリア スリラーバーク 除名 ボア・ハンコック 九蛇海賊団 ジンベエ タイヨウの海賊団 除名 マーシャル・D・ティーチ 黒ひげ海賊団 除名 トラファルガー・D・ワーテル・ロー ハートの海賊団 バギー バギー海賊団 ?
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一行はすぐさま学院の二頭立て馬車に乗り出立した。 道案内のロングビルが御者を買ってでており、後ろの座席にルイズと康一、キュルケとタバサが座っている。 「ねぇダーリン。盗まれた弓と矢ってどんなものなのかしらね。」 ルイズとキュルケの康一の隣争いは、キュルケの「ルイズってばそんなに康一にひっつきたいわけ?」の一言に、 「ご主人様は使い魔がへんなことしないように見張ってないといけないんだもん。」と言い張るルイズが勝利を収めていた。 「え、えーっと・・・どうだろうね。」 康一は答えた。 どんなのかはわかんないけど、ぼくあんまり弓矢にはいい思い出がないんだよね。」 康一は胸のあたりをさすった。 「一度死にかけたことがあってさ。」 キュルケが目を丸くする。 「まさか弓で射られたことがあるの?」 「うん・・・まぁね。」 虹村形兆に矢で貫かれたあのとき、仗助くんの助けがなければぼくはきっと死んでいた。 「あんたって意外と危ない人生送ってんのねー。」 ルイズが半分呆れて言った。 「いや、それまでは平和に学生生活送ってたんだけどね・・・」 「小さい頃からそういう経験してたからこんなに頼りになるのね。トリステインの男共も見習ってほしいわね~。」 キュルケは御者台に目を向けた。 「そういえば、ミス・ロングビルの魔法のクラスはどのくらいなのかしら?」 ロングビルは軽く振り向きながら答えた。 「私は土のラインです。でもみなさんと違って戦いの経験があまりないので、道案内以上のことはあまり期待しないでくださいね。」 「十分よ。それでもトライアングルの私とタバサ。それにコーイチはいるし、ルイズの爆発・・・あら、ちょっとした戦力じゃない。」 「私は爆発なわけ・・・」 ルイズは不満げだ。 「あら。あなたの爆発だって馬鹿にしたものじゃないわ。やれることがゼロじゃないんだから、少しは役に立ってもらわないとね。」 「やっぱり馬鹿にされてる気がするわ・・・。」 キュルケの軽口にルイズはため息をついて顔を背けた。 でもその背中にうれしい気持ちが隠し切れずに見えて、康一は思わず笑ってしまった。 「みなさん。そろそろ目撃証言のあった小屋につくころです。ここからは歩いていきましょう。」 ロングビルは道ばたに馬車を寄せた。 一行が馬車を降り、茂みの奥をのぞき込むと20メイルほど先に小さな小屋がある。 「昨夜、あそこにフーケらしき、ローブをまとった男が入っていったということです。」 ロングビルが声をひそめて説明した。 「まだ中にいるのかな。」 康一がつぶやきに、今まで空気のように静かだったタバサが答えた。 「気配はない。でも確証がない。偵察が必要。」 自然と皆の視線が康一に集まる。 「ぼ、ぼくですかぁ!?」 「あたりまえでしょ。使い魔なんだから。」 「適任。」 「ダーリン。がんばって!」 三人がそろって頷く。 「全く・・・こういうときだけ一致団結するんだからなぁ。」 康一は剣を抜いた。シュペー卿の剣である。 デルフリンガーは大きすぎて、扱いづらかったので、馬車に置いてきたのだ。 茂みを出て、小屋まで小走りで近づく。 壁際にしゃがみこむと、窓から中を覗いた。 (誰もいないな・・・) しかし中に隠れているかもしれない。 康一はACT2を呼び出した。 康一はあれから密かにスタンドと魔法について実験をしていた。 スタンドは本来、スタンド使いが触らせようとしないかぎり、スタンドでないものが触れることはできない。 つまり逆にいえば、スタンドはどこでもすり抜けて移動ができる。 しかし魔法学院の壁のように、固定化などの魔法がかけられている場所や魔法自体、そしてメイジの体はなぜか透過することができなかったのだ。 一方、魔法がかけられていない壁はやはりすり抜けることができた。それどころか平民にはやはりスタンドが見えていないことが分かったのだ。 (シエスタの目の前で手を振らせてみたのだが、見えている素振りも見せず、小首を傾げるだけだった。) ACT2は壁をぺたぺたと触る。透過できそうだ。魔法はかけられていない。 康一はスタンドを小屋の中に潜り込ませた。 こじんまりとした小屋である。 壁際にはいくつかの棚。箱。 ベッドなどはない。 (隠れ家じゃないみたいだな・・・) 人影もない。念のためにACT2に小屋の周りも調べさせたが、やはりどこにも人影はなかった。 剣を納め、陰からこちらを見守っている女性陣に首を振ってみせた。 皆ほっとした様子で康一の元に駆け寄る。 「もう逃げちゃったのかしら・・・。」 その中でルイズが残念そうにいう。 「いないにこしたことはないよ。」 相手はメイジが総掛かりで捕まえられない大盗賊である。 康一はそんなのを相手にして無事でいられるかどうか全く自信がなかった。 「では中の調査をお願いしますわ。わたしはこの辺りを調べて参ります。」 ロングビルは小屋の裏手へと行ってしまった。 もう調べましたよ。と言いかけたが、やめた。 言ったらキュルケやタバサにも「スタンド」について説明しなければならなくなる。 もう言ってしまってもいいとも思うのだが、今はその時ではない。これが終わったら説明しよう。 ロングビルを見送って、康一は小屋の扉を開けた。 中にいないのは分かっている。警戒することなく、小屋の中を調べにかかる。 女性陣三人も恐る恐るついてきた。 「ちょっとダーリン。いきなり入っちゃうなんて不用心じゃない?まぁ大丈夫だったみたいだけれど。」 うん、そうかもね。言葉を濁す。 棚の中にはそれらしきものはなかった。 棚の横にある木箱を開いた。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 「こ、これは・・・・!!」 そこに入っていたのは『弓と矢』。そこいらで狩猟で使われているようなものとは明らかに違う。装飾がちりばめられた鏃。 そして康一には分かる。これは自分を含め、杜王町にたくさんのスタンド使いを生んだ、あの矢。あれと同じものだ! (まさかとは思った。でもまさか本当にあの『弓と矢』だなんて・・・) 『弓と矢』を手に取った。自分の中の「エコーズ」が、引き寄せられるようななにかを感じた。 「どうしたの?なにか・・・あっ・・・こ、これって。盗み出された『弓と矢』じゃないの!?」 ルイズが歓声をあげる。 「そうみたいね・・・でも、フーケはいないのに、なぜ『弓と矢』だけがここに残されていたのかしら。」 キュルケの疑問は誰もが思うところだった。 しかし、自分たちの任務は『弓と矢』の奪還であって、フーケの捕縛ではない。 「一度学院に帰るべき。」 タバサの提案に異を唱えるものはいなかった。 「それにしてもあっさり終わっちゃったわ。心配して損しちゃった。」 ルイズは小屋の扉を開いて外に出ようとした。 目と鼻の先で巨大な土のゴーレムが小屋を見下ろしていた。 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「・・・間違えました。」 バタン 「ちょっとヴァリエール!なんで扉を閉めちゃうのよ。」 外が見えないキュルケが文句を言う。 「・・・いるんだもん。」 「はい?」 「いるんだもん!フーケのゴーレムがすぐ外に!目が合っちゃったんだもん!」 「そんな馬鹿なこと・・・。逃げだしたフーケがわざわざ戻ってくるわけないじゃないの。ほらどいて。」 キュルケがルイズを押し退けて扉を開けた。 遙か高みから見下ろすつぶらな石の瞳と目があった。 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「お邪魔しました。」 バタン 「いたわ。目が合っちゃったわ。どうしましょうか。」 「どうしましょうかって・・・」 ルイズとキュルケは言葉につまった。 天井からぱらぱらという音が聞こえてくる。 まるで土や小石が屋根の上に落ちてきているような・・・。 どんな顔をすればいいかわからないまま、ルイズとキュルケは天井を見上げた。 「キュルケ。私すごくイヤな予感がするんだけど。」 「奇遇ね。あたしもよ。」 タバサがぼそっと言った。 「踏みつぶそうとしている。」 四人は目を合わせた。 「うわぁぁぁぁ!!」 「きゃぁぁぁぁあ!」 「いやぁぁぁぁぁあ!」 「・・・・・」 そこからは早かった。窓をぶち破って四人が外に転がり出るのとほとんど同時に、ゴーレムの巨大な足が小屋を踏み潰した。
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スタンド使い同士が引かれ合うように、ガンダールヴのルーンはディオをその進むべき道へと推し進める。 だが、それは本当に正しいことなのだろうか?その結果は誰も知らない…。 おれは使い魔になるぞジョジョーッ!第九話 カーテンの光がやわらかい明かりを部屋に満たす中、ディオは目が覚めた。日の具合からすると ルイズを起こすべき時間から30分は遅れてしまったらしい。ルイズを見るとこれまた陶器でできた人形のような顔で寝ている。 起きている時もこれぐらい静かならいい駒として使えるのだが、と思いながらディオはルイズを起こす。 だがルイズは特に慌てる様子もなく服を着替える(勿論ディオに渡して貰っている)。 別にルイズが遅刻しようがどうでもいいが一応聞いてみる。 「今日は…いつもより遅いようだけどいいのかい?」 「忘れてたわね。今日は虚無の曜日だから授業はないのよ。それよりも」 とルイズは珍しく手早く着替えると人差し指をディオに突き出す。 「さあ、今日は城下町に行くわよ!」 「城下町?」 また気まぐれが始まったのかと呆れるディオに気付かずルイズは説明を続ける。 「そう!あの時はたまたまだったけど、いつもあんな殴り合いが通用するはずないでしょ。 魔法が使えない以上剣の一つ二つ持たないと駄目よ。それに見栄えにも関わるしね。 あとついでにベッドも買わなきゃね。あんな臭いベッドをずっと使うつもりなら話は別だけど」 ディオにはどちらかというと剣よりも城下町の方に興味を引かれた。今まではトリステイン魔法学院という陸の孤島に 閉じ込められたようなものだった。だがこの世界の風俗を知る為には城下町は格好の場所であるし、うさ晴らしにもなる。 後者については言うまでもない。ディオは腕を組みながら答えた。 「いいだろう…ついていかせてもらうよ、ご主人さま」 ディオとルイズが部屋を出て角を曲がった直後、ルイズの向かいの扉からキュルケが出てきた。 ディオを口説き落とす為の化粧もばっちりだ。 「そうね、ルイズは物ぐさだろうからダーリンを開けに行かせるはず。そしてドアを開けたダーリンの胸に私が飛び込めば さしものダーリンも…勝った!ゼロの使い魔、完ッ!!」 キュルケは自信満々にドアを叩く。 沈黙。 もう一度叩く。 沈黙。 「ノックしてもしもぉ~し!ルイズ、まだ寝てるの!?」 と声をかけながら叩いても何も返ってこない。 嫌な予感がしたキュルケがアンロックを使って部屋を開け、馬で出て行く二人を見つけてタバサの部屋へ猛ダッシュしたのは その直後であった。 タバサは虚無の曜日が好きである。一日中自分の部屋に篭って好きな本を読めるからだった。 だが最近のお気に入りは小説ではなく『ツェペリの奇妙な冒険』と題した冒険漫画である。 場面はちょうど主人公のシーザーという青年が囚われの友人の知り合いの老富豪を助ける為、友ジョセフと共に 悪逆非道の軍隊の基地に女装して潜入しようとしたところである。 どう見てもバレバレな変装でどう見張りをごまかすのかワクワクしながらページをめくろうとするタバサであったが、 横から伸びてきた手がそれを掴む。 何を考えてるのかと見上げると、友人のキュルケが何か叫んでいた。仕方がなくアンロックを解除して抗議しようとする タバサであったが、キュルケの怒涛の勢いに飲まれる。 「あたしね!恋したの!でね、その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出かけたの!そう、馬で! でね、あたしは行く先を突き止めたいけどあなたの使い魔じゃないと追いかけられないの!力を貸して!」 はっきり言えば断りたい。しかしたった一人の友人のたっての頼みである。断るわけにもゆくまい。 窓を開くと口笛を吹いて風韻竜シルフィードを呼ぶ。 「馬二頭。食べちゃだめ。」 せっかくの休日が台無しである。無意識のうちに爪を噛む。タバサは静かに暮らしたい。 それから暫くして、ディオとルイズは城下町に到着した。だがルイズの顔は心持ち暗い。 魔法が使えない代わりに馬の扱いには自信があったルイズだが、ディオはそれを上回る競馬の騎手顔負けな腕前であったからだ。 駅舎に馬を繋ぐとディオは周りを見渡す。人口は確かに多いが、町並みや道路の舗装はどう見ても産業革命以前である。 なるほど魔法が存在する以外は中世と同じと考えて差し支えないか、と一人ごこちてると、ルイズが声をかけてきた。 「どう?たくさん人がいるでしょ?驚いた?」 「ああ…驚いたよ(文明の低さに)」 その答えに満足したのかルイズは颯爽と町を歩きだす。 ルイズの後ろをついてゆくディオは昔貧民街に住んでいた事もあり大体の想像はつくが、この世界の文字が読めないので 一々ルイズに説明してもらう。 「あれは?」 「カジノダービーBr.」 「ほう、それでは向かいのあれは?」 「ブックスポルナレフ」 「ではこっちの」 「鳥犬専門ペットショップ・イギー!んなところよりさっさと行くわよ!」 そうしてルイズは恐れる様子もなく路地裏に入っていく。 狭い道を貴族くずれのスリが多発するというような話を聞きながら歩いてゆくと、明らかに武器屋と思しき店が目の前に現れた。 「ほら、着いたわよ」 とルイズが店に入ると太った親父が出迎えた。 「旦那、貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目を付けられるようなことなんか、これぽっちもありませんや」 「客よ。」 「こりゃおったまげた、貴族が剣を!これはどういった心境で?」 と親父が目を丸くすると何かの冗談のように手を振る。 「だから違うわ。話を最後まで聞きなさい。今日はこいつに剣を買ってやりにきたのよ」 「ほほう、成る程。最近は下僕に装飾をさせるのが流行りなのですからな」 「貴族の間で?」 「そうでさ。なんでも『土くれ』のフーケとかいうメイジの盗賊が貴族のお宝を散々盗みまくってるって噂で。」 と店主は世間話をしながら宝石が各所に埋め込まれている一振りの剣を持ってきた。 「これなんかいかがでしょう?ゲルマニアの錬金術師シュペー卿が鍛えた剣、お値段に見合う威力は保証しますよ?」 ルイズも気に入ったようで満足そうな笑みを浮かべる。 「んー、なかなかいいわね…いくら?」 「そうですね、こいつは店1番の業物ですからね、新金貨で3000エキューで如何でしょうか?」 「た、高いわよ!もっと安くならないの!?」 いくらルイズでもたかが剣一つに広大な庭付きの豪邸が建てられるような金を払うのは躊躇われた。 その時、帽子を被った長髪の男が店に入って来たが、ディオを見るなりくるっとドアの方を向き、また外に出ていった。 店主から剣を見せてもらい、大剣を手に取りしげしげと眺めるディオ。と 「かーっ、わかってねぇなあんちゃんよ。糞みてえな安物売り付けようってこいつもこいつだが、 そんなもんに引っ掛かるような奴はそれにすら及ばねぇ。帰れ帰れ!」 店の奥から渋い中年男性の声が聞こえた。 「な、なによ今の!」 「デ、デルフリンガー、くそっ…いや、あいつは嘘つきのボロインテリジェンスソードでさぁ。気にしないで」 「へっ!嘘つきのおめーに嘘呼ばわりされるならおれっちが正しいってことじゃねーか!」 「なんだと!」 喧嘩を始める剣と主人。ルイズはあっけに取られて今のやり取りを見ている。さして気にする様子もなく辺りを見回すディオだが、 やがてその声を見つけるとなおも喋ろうとするのを無視して手に取る。 すると、デルフリンガーは今まで叫んでいたのが嘘のようにぴたりと声をあげるのを止めると、暫く考えてから口を開いた。 「…おでれーた。見損なってた。てめ、『使い手』か」 「『使い手』?『使い手』とはなんだい?」 「言葉通り、おめーはかなり黒いがおれの使い手って事よ。どうだ、おれを買わねーか?」 そこでディオはルイズに向き直り、剣を渡す。 「ルイズ、これにしよう」 「はぁ?こんな喋るだけのボロ剣どこがいいのよ!」 「君には珍しくなくてもぼくには珍しくてね、それにぼくの事を何か知ってるみたいだ。気に入った。親父、これはいくらだい?」 「いや、若奥様の言う通りそんなボロ剣よりこっちのシュペー卿の剣の方が…」 「その偽物が、かい?」 「…畜生!」 店主は机を叩くと、大剣をしまう。 「わかったよ。そいつだな?捨て値で100エキューでかまわねえよ!」 店主が負け、あまり出費せずに済んだ事を喜ぶべきか錆だらけの剣を選んだ使い魔を叱るべきか微妙な表情を浮かべるルイズと デルフリンガーを背負ったディオは家具屋に向かうべく店を後にした。 それを上空から眺める人影が二人。キュルケとタバサだ。ルイズ達がいなくなると早速店に入る。 「アッサラーム!今のメイジ、いえ、今の使い魔が欲しがってた剣とかってないかしら?」 店主はニヤリと笑うと手を振りながらさっきの剣を出す。 「ああ、こいつですね。さっきメイジの若奥様が買おうとしたんですがね、高いとかいって買い渋って結局ボロ剣買っていきましたよ」 公爵家の娘ともあろうものが貧乏ね、とほくそ笑みながらキュルケは値段を尋ねる。 「おいくら?」 店主は少し悩むそぶりを見せたあと、おもむろに値段を言う。 「本当は5000はしますが、事情がおありのようですな。いいでしょう、4500で勉強させていただきます」 いくらなんでも高い。だがキュルケは胸元を開くと色気たっぷりの声で誘惑する。 「ねぇ、もっと安く買えないかしら?」 「そ、それじゃあ4000…」 「ね…もっと色をつけて♪」 と、そこに先程店を出て行った男が入って来た。 「よぅ、ダンナ!…ヒヒ、実は最近いい仕事で金稼いだからよー、これを機会に傭兵始めようと思うんだが、なんかいーい剣はないかい?」 「ああ、こいつがあるよ。見てみるかい?」 と、急に商売人の顔に戻ると店主は大剣を見せる。帽子の男はそれを受け取ると多少大袈裟にも見えるそぶりで剣を振るう。 一方のキュルケは気が気ではない。 「おっ!なかなかいい剣じゃねぇか。いくらだ?」 「ちょっと!今私が交渉してるのよ!」 と、キュルケが慌てるが、店主は 「悪いね、これはまだあんたのじゃないんだ」 と言うと男に向き直る。 「そうだな、5000ってとこだ。」 「そこをもーちょっと安くならないか?」 「しかたねえな、4200でどうだ?」 「お!それなら払えるぜぇ!」 と、男は大金の入った袋を取り出す。 何故平民があんな大金を!とキュルケは驚くが、ここであの剣を売り払われる訳にはいかない。 今まさに剣を渡そうとする店主の腕を掴むと、キュルケは慌てて叫んだ。 「ちょっと待って!4500でいいわ!」 「本当かい?」 胡散臭そうな目つきで男とキュルケを見比べていた店主だが、にっこりと微笑むとキュルケに剣を渡した。 「…仕方ないな。お客さん、運が悪かったと思ってあきらめな」 「マジかよ…なんてこったい」 そうしてがっくりとしている男を残してキュルケはほくほく顔で剣を持つと、タバサの元へと向かう。 「…どう?」 「用事は済んだわ!さ、学院に戻りましょ。今夜はビッグサプライズよ!」 「…シルフィード。」 「キュイ♪」 とシルフィードは浮き上がるとルイズ達に気付かれぬように学院に戻るのであった。 数時間後、酒場の席で先程の二人が乾杯をあげていた。 「いやー、今回はいいカモが釣れたな。これもお前さんのお陰だよ」 「なぁーに、中々のいい女だったが、別に殴るわけじゃねえ、問題はないッ!」 男はいつの間にか短銃を取り出し、ニヤニヤする。 「それにしてもあの嬢ちゃんも驚くだろうよ、おれは確かに傭兵だが得物はこいつだって事をよ。」 「だな。」 「ま、おれがいたからこそだが、ダンナがいるからこそおれも楽して金儲けができるって事よ。 ダンナも知ってるだろ?おれの人生哲学をよ」 「ああ。1番よりNO.2!だろ?」 「その通り、わかってんじゃねーか…ヒヒ」 つまりはこういう事である。カモを見つけると店主は手を挙げて合図をするとともに吹っ掛けて、渋る客の目の前で 男が買うふりをする。そしてぐずぐずすると先に買われてしまうと慌てた客は店主の言い値で買ってしまうという訳だ。 「だがどうしたんだい?最初の客が来た時いきなり逃げ出しやがってよ」 長髪の男は手に持った短銃を回しながら答える。 「いや、どーもあのメイジの使い魔?あいつを見た時にな、いやーな感じがしてよ。3回くらい前世であんな奴に 雇われていたような、例えるなら暗殺しようとしても一瞬で後ろに廻られそう?そんな感じがしてな」 「なんじゃそりゃ」 呆れる店主に男は酒をつぐ。 「ま、気にしててもしかたがねぇ、ほら、もう一度乾杯だダンナ!」 「おう、乾杯!」 ディオは計らずも名剣を手に入れた。キュルケは予想外の出費で役立たずの剣をつかんだ。そして店主は計算通り金を儲けた。 世の中には知らない方がいい事も、悪い事もある。 to be continued…
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広場に着くと多くの生徒で溢れかえっていた。噂を聞きつけたのだろう。 周りが本当に五月蠅いものだ。 「さてと、では始めるか」 ギーシュが薔薇の花を振ると花びらが一枚宙を舞う。それが甲冑を身に着けた女の形をした人形になる。あれがワルキューレなのだろう。 ギーシュを守るように立ちふさがる。しかしわかってはいたが驚くものがあるな。花びらが変わるなんて非常識すぎる。 しかしルイズの話しでは複数体出せるはずなのだが。一体ということは幾ら怒っていてもこちらを平民だと嘗めているのだろう。 そのほうがありがたいがね。 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 そんなもの想定済みだ。 「言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 それぐらいもう知っている。 ワルキューレがこちらに向かって突進してくる。それを間一髪で避ける。 予想より早いが修正の範囲内だ。殴りかかってくるがまた避ける。避ける。避ける。避ける。 それを何回か繰り返す。 「なんだよ。避けるばかりかい?」 ギーシュが呆れたように言ってくる。 ワルキューレの拳が顔に当たりそうになる。それを右腕で庇う。衝撃で地面を転がる。 右腕を押さえる。 「腕でも折れたかな?」 ギーシュがあざ笑う。気にしない。 「ギーシュ!」 ルイズの声がするが気にしない。 ワルキューレが近づいてくるが気にしない。 この位置だ。この位置が凄く良い!私とギーシュの間に何も無いこの位置が凄く良い! 距離なんて関係ない。懐から銃を取り出し撃つ。 「うわああああああああああ!」 ギーシュが悲鳴を上げる。当然か。手を撃ち抜かれたんだから。 「痛い痛い痛い痛い!」 悲鳴を上げながら泣き叫ぶ。立ち上がり顔を蹴り飛ばす。今度はギーシュが地面に転がる。 撃ち抜いた手を踏みつけ杖を手にとりへし折る。今度は顔を思いっきり踏みつける。どうやら気絶したみたいだ。 袖から木の板を取り出す。来る前に厨房から失敬したまな板を切って入れておいた。これでガードすればダメージは抑えられる。 避けていたのだってワルキューレをギーシュの目の前からどかせるためだ。転がったのは一気に距離を稼ぐため。右腕を押さえたのは油断させるための演技だ。ギーシュは銃を安全に、そして確実に当てるための策にまんまと引っかかったのだ。 「私の勝ちだな」 周りが騒いでいる。どうやら私が勝ったのを驚いているようだ。 しかし拍子抜けだな。もっと苦戦するかと思って他にも用意はあったんだがね。 魔法使いと言っても油断していればこの程度か。ギーシュが『ドット』だったというのもあるが。 服から全ての木を取り出す。動きにくくていけない。 このナイフも厨房に返さないといけないな。 しかしさっきの感覚は何だ?銃を持った瞬間あんなに早く動いてあんな短い間に狙いを付けられるなんて。そういえば使い魔のルーンが光っていたような気がするな。今度確かめてみよう。 とりあえず今は静かな場所に行きたいな。 9へ
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ポルナレフは二人にシルバー・チャリオッツとについて説明した。 ただ、剣針飛ばしや甲冑を外せる事等、伏せるべき事は伏せておいた。 味方だろうと、誰にも知られない方が奥の手として敵にも伝わりにくいからだ。 「で、結局その『銀の戦車』とやらはゴーレムじゃ無く、杖を使わずとも呼び出せ、しかも人間以上に素早く精密な動作までできるというのか?」 コルベールは終始驚きっぱなしだったが、オスマンは深刻な顔付きをしていた。 「君は…その力で何もする気は本当に無いのかね? そのような魔法に対抗出来る力を持ったら平民の誰もがやましいことを考えてもおかしくないと思うがのぉ…」 確かにこの世界では魔法という力が平民の恐怖そのものだ。それを分かっているだけに、スタンドの存在をオスマンは恐れたのだ。 「俺にそのような気持ちは無い。今までチャリオッツを正しいと信じた事以外に使ったことは無い。」 ポルナレフはそう自らの意志を示した。 なるほど、マリコルヌを針串刺しにしたのは正しいと信じているらしい。 「…一先ず君を信じよう。まだ我々は君がそれを悪用しているのを見ておらんしの。」 オスマンがそう言った時、ロングビルが帰って来た。 「た…只今…ハァ、戻りました…ハァ。」 急いで戻って来たのか、ロングビルは息を切らしていた。 ポルナレフはそれを見てそろそろ頃合いかと思い、 「どうやら帰ってきたようだな。それではもう話すこともないので、私はこれで。」 と言って、席から立ち上がるとそのまま退室しようとした。が、 「ちょっと待ちたまえ、ポルナレフ君。」 オスマンに呼び止められた。 「まだ何か?」 ポルナレフは面倒臭そうに振り返った。 「君はどうやってそれを身につけた?それも思い返せば君はミスタ・グラモンとの決闘の途中までそれを使わなかった。 君が本当に闘いに美学を置いているなら、決闘の途中で手に入れたと見ていい…違うかね?」 ポルナレフは1番教えたくない点を言われ、一瞬ビクリとした。しかしすぐに冷静を装うと、 「鋭いな…。しかし、それに答える事は出来ない。」 と答えた 「ちょ、ちょっと!答えられないってそれは無いだろ!全部話すって言ったじゃないか!」 コルベールが思わず叫んだ。 「その通りじゃ。話したまえ。」 オスマンも同意する。 少し考えてポルナレフは閃いた。 「そうだ、こうしよう。先程私はミス・ロングビルが帰ってくる頃にはルイズも戻ってくるといった。これで賭けをしよう。」 「『賭け』?」 「もし、このドアの向こうにルイズが居なかったらどうやって手に入れたか話そう。」 「逆にいたら?」 「そうだな…500エキューぐらいもらおうか。」 「高ッ!」 コルベールが叫んだ。平民が一年は暮らしていける金額の数倍である。 「別にいいぞ。やらないなら話さないだけだ。最も、チャリオッツを使えばこの敷地から逃げ出すなんて訳は無いしな。」 ポルナレフは脅すように言った。 三人は額を寄せて話し合い、分はこっちにある、大体あの娘にそんなこと出来る訳無いだろ、と結論づけた。 「君の話に乗ろう。賭けようじゃないか。」 オスマンはポルナレフにそう誓った。 「GOOD!」 ポルナレフはそう言うと、ドアを思いっきり勢いをつけて開けた! ドガァンッ! 「ガペシッ!」 またドアと何かがぶつかる音と珍妙な悲鳴がした。 そしてそこにはまた鼻柱をドアに打ち付け、後頭部を床にしたたかに打ち付けたルイズの姿があった。 「…」 三人共黙ってしまった。 「さて私の勝ちだな。約束通り貰おうか。500エキューをな…」 ポルナレフはニヤリと笑いながら手を突き出した。 「まったく、あんたご主人様を何だと思ってんの!?」 ルイズは部屋に戻る途中ポルナレフにキレ続けた。二回もドアに顔面を打ち付けられたのだ。キレてもしょうがない。 「盗み聞きしてる方が悪いと思うがな。」 ポルナレフは悪びれせずに言った。これを聞いて、ルイズはわなわなと震え出した。 「こここ、この犬のくせにご主人様になんて事を…!」 「聞きたいのなら別にあんな事しなくても、後で俺から話してやるというのに…」 ポルナレフは呆れたかの様に言った。 「ほ、本当!?」 ルイズは目を輝かせた。 「ただし100エキュー払うならな。」 「五月蝿い!やっぱりあんたの話なんて聞きたくないわ!」 こいつはプッツンしてて手に負えないな、とポルナレフは思うと、部屋に着くまで黙り通すことにした。 やがて二人と一匹は部屋の前に着いたのだが、ルイズと亀が入り、ポルナレフも入ろうとするとドアを閉められ、ガチャリと内部から小さな音がした。 しまった!と急いでノブをガチャガチャ回したが、開かなくなっていた。どうやら施錠したらしい。 「あんたなんてクビよ!使い魔は亀だけで十分だわ!!」 ドアの向こうからルイズが怒鳴った。 「おい、それは無いだろ!亀の中には色々大切な物が入っているんだ!貴様ごときに取られるわけにはいかん!開けろ!小娘!」 ポルナレフも叫んだのだが、返事は無かった。 いずれ地球に帰る時には亀と一緒に帰らなければならない。亀の中にはジョルノ達の『心』が納められているからだ。 それは去って行った仲間達から受け取った矢をはじめとした遺品の数々のことである。 だからポルナレフはなるべく亀と一緒にいる必要があった。もし自分だけ帰ったら殺されるだろうし。 「仕方があるまい…何処か寝れる場所を…」 と呟き、辺りを見渡すとキュルケのフレイムがこちらを見ているのに気付いた。 また見てるな…と思っていると、フレイムがこちらに近づいてきて、ズボンの端をくわえると引っ張り始めた。何処かへ連れていきたいらしい。 「こら、引っ張るな。ついていってやるから!」 そうポルナレフが言うと、理解したのか、フレイムは引っ張るのをやめきゅるきゅる鳴くと、ポルナレフを隣のキュルケの部屋へ引導していった。 キュルケの部屋の中は暗かった。フレイムの周りだけぼんやりと明るい。 「扉を閉めて?」 暗闇からキュルケの声がした。変に色っぽい気がしたが、一応言う通りに閉めた。 「こっちへいらっしゃいな。」 「話したいのは山々なんだが、暗くて部屋の中がよく分からんのでな…すまないが明かりをつけてくれないか?」 ポルナレフは嫌な気がして、ドアの近くからそう言った。 すると杖を振るような小さな音がして、蝋燭の一本一本に火が灯った。 その明かりに浮かび上がったのは下着姿のキュルケだった。 「これでいいかしら?そんな所に突っ立ってないでこちらにいらっしゃいな。」 誘惑するかのような声で話しかけてくる。おそらく並の男ならイチコロだろう。しかしポルナレフは違った。 まてまて、今の俺はこんなキャラじゃ無い。このキャラはエジプトで卒業したはずだ。 ポルナレフの脳内でそんな声がしたのだ。更に続けて そうだ。今の俺はこんなキャラじゃ無い。逃げろ。逃げるんだよォーッ!スモーキィーーッ!! と聞こえた気がした。 ポルナレフはジョースターさん?と思いつつも、この声に従いじりじり後退した。 その様子を見てキュルケは溜息をついた。 「貴方はあたしをはしたない女だとおもうでしょうね。」 ポルナレフはドン引きした。自覚してるなら恋人でもない男の前でそんな恰好するな。親が泣くぞ?そう思った。 「思われても仕方ないの。あたしの二つ名は『微熱』。」 ポルナレフは嫌でも分かった。ここは逃げるべきだと。もはやここから話を聞く余裕など無かった。 「~~~」 まだキュルケが何か言っている。もうとっとと逃げるべきだ。そう判断するとドアのノブを握った。 しかし、ドアは開かなかった。ハッと前を見た。キュルケが杖をドアに向けていた。 「あたしがこれだけ無視されるなんて初めてだわ…」 ヤバイ、俺はやっぱりこのキャラを卒業出来てなかったのか?トイレと女運は全て俺なのか? 「でも、ますます燃えてきたわ…貴方をどうやってでも振り向かせたい、あたしの虜にしたい…!」 やばい、ヤバすぎる。こうなったら仕方あるまい! 「チャリ…」 チャリオッツを呼び出そうとした時、ガシャガシャと窓が叩かれた。 見ると男子生徒が一人窓の外にいた。 「待ち合わせの時間に来ないから来てみれば…」 「ペリッソン!えぇと二時間後に!」 「約束が違う!」 キュルケはこちらに向けていた杖を窓の方に振ると、蝋燭の火がペリッソンをたたき落とした。 ギーシュと同じく二股しようとしていたらしい。貴族の風上にもおけない奴らである。 「まったく無粋なフクロウね」 「お前が言えるか。小娘」 「あら、嫉妬かしら?安心して。彼はただの友達よ。とにかく今、あたしが1番恋してるのはあなたよ。ジャン…」 キュルケはそう言うとするするとポルナレフの方へ近寄ってきたが、また誰かが窓を叩く音がした。 今度は先程のと違う男で、ポルナレフも見覚えがあった。名前は忘れていたが決闘を挑んで来た奴だ。 その彼も蝋燭の炎によって落とされた。 しかし、男はそれでおしまいでは無かった。 今度は三人が同時に来たのである。彼等は口々に何か言ったが、フレイムの吐く炎によって落とされた。 その間にもキュルケはポルナレフとの間を詰めて行った。 だが、ポルナレフは既に逃走経路を作っていた。チャリオッツを先程呼び出した時にドアを切り裂いておいたのだ。 ポルナレフはキュルケに背を向けるとキュルケが抱きつくより早くドアに突進した! バッキャァーンッ! ポルナレフは廊下に回転しながら着地した。しかし、彼の女運はまだ続いていた。 今度のそれはすぐ隣の部屋のドアを開けて出てきた少女、ポルナレフのご主人様であるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールその人だった… To Be Continued...
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轟音を聞きつけ、ルイズたちは宿を出る。 そして、空を見上げ、絶句する。 「なんてひどい…」 ルイズがショックから立ち直り、そう漏らす。 「あれは…アルビオンの艦隊だね、つい最近不可侵条約を結んだはずなのだが…」 「ふん、不可侵条約など両方の打算で結ばれるのだ、状況が変われば攻められる、そんなことは当然だ。 それより、一騎青い竜が近づいて来るぞ、撃ち落すか?」 「あら、あれは…もしかしてシルフィードかしら?それに、あなたの使い魔もいるわね。 シュトロハイムさん、あれは味方よ」 シルフィードが着地する。 「なにが起きて…」 「貴様はァーーーーーッ!」 降りてきたタバサがキュルケに状況を聞こうとすると、シュトロハイムが怒号で遮った。 「貴様は、ワムウッ!なぜ生きているッ!ジョセフに殺されたはずだ!」 「ほう、お前は…ジョセフの知り合いか?」 「質問に質問で返すなァーーッ!もしかしてカーズも生きていやがるのかァーーッ!」 「カーズ様が?その言い方だとカーズ様もやられたのか」 「そうだ、ジョセフがやったのだ、知らんのか!?」 「あの女と戦う予定ではなかったのか?」 「にっくきカーズは騙まし討ちをしたのだ、そして究極生命体へと生まれ変わったのだ。 しかし、ジョセフが命を賭けて救ってくれたのだ!」 「ほお、カーズ…確かに、カーズ様とは意見の合わん部分もあった…しかし、そうか、ジョセフが やったのか、あいつめ、そこまで成長しおるとはな」 そういってワムウは笑う。 「俺はなぜ生きているんだと聞いているんだ」 「さあ、俺に聞くな、むしろそっちのルイズの方が詳しいだろう」 シュトロハイムは振り向く。 「もしかして、異世界から来た使い魔とは…」 「え、ええ。ワムウだわ」 「奴はなぜ生きている?」 「し、知らないわ。召還したときにはあの体だったもの」 頷いて、再びワムウに向き合う。 「ふん、どうやらこの少年少女たちも知り合いのようだな、どうした、柱の男? 身近な人間を食わないとは人道主義か博愛主義か、友情にでも目覚めたか?さて、俺とやる気があるのか?」 「波紋戦士や強い戦士だというなら、受けてやろう」 「ふん、今じゃなければ向かっていってやるがな」 シュトロハイムがそっぽを向いたので、ワムウはルイズに尋ねた。 「おいルイズ、どういうことなんだ?」 「新生アルビオン軍がおそらく攻めてきたのよ」 「なるほど、それは面白そうだ、今度は持ち出さねばらならぬ手紙もない、思う存分やらせてもらおう」 ワムウは指を鳴らす。 「そういうことだ、どけ。あいつらを叩きのめしてくれるわ」 そういってシュトロハイムはゼロ戦の所へ行こうとする。 「なにをする気よ!?あなた一人でなにができるっていうの!?」 ルイズの制止にシュトロハイムは鼻を鳴らす。 「ゼロ戦を飛ばす。あれは道楽ではない、兵器だ。木造艦隊など木っ端みじんにしてくれるわ」 「…だめよ、トリステイン軍が出ていないわ、アルビオンと交渉中かもしれないのよ!」 「そんなことを言っている間に首都まで進まれても文句は言えんぞ、ここには冬将軍はいないのだからな」 そういって自嘲する。 「なら…私も行くわ!トリステイン人として、部外者に戦わせて私たちが指をくわえて待っているなんてできないわ!」 「ミス・ヴァリエール!」 一喝しようとしたコルベールを制して、シュトロハイムは話を続ける。 「そう言って、訓練もままならるまま敵に突っ込み、死んでいった勇敢な部下たちを何人も見てきた。 お前たちはこのトリステインの未来を担う人材なのだからな」 ルイズは必死で続ける。なにか不吉な未来が見えるかのように。 「じゃあ、なんであなたが行くのよ!」 「俺はトリステイン人でもトリステイン軍人でもない、ただの一人のドイツ軍大佐だ、こんな汚い戦争などは、 戦争にしか生きられない軍人に任せておけ、帰る故郷も、家族もいない異邦人の軍人にな」 シュトロハイムは、ゼロ戦のコクピットに入ろうとし、片足をかけたところで足を止めた。 「ワムウ、お前に頼むのもなんだが…お嬢さんがたは頼んだぞ」 「俺を知っているのなら、俺がただの人間風情に遅れをとらんことくらいわかるはずだ」 「そうだったな、化け物め、では行くぞ。コルベール、無線で逐次連絡を取るから、確保してくれ、 あとギーシュといったか?お前は男だろう、しっかりお嬢さんたちを守ってやれよ」 コルベールとギーシュにシュトロハイムは頼み込む。 「ああ、もちろんさ、僕の薔薇の針は可憐な花を守るためにあるのだからね」 「わかりましたぞ、生徒と無線を守るくらいはやってみせますよ…それにしても戦争というのは嫌なもんですな」 「ああ、どこの世界でも嫌なものだ。こんなものを利益なしに望むのは狂人だけだ。その点、俺も見知らぬ土地で 機銃を振り回すのだ、大して変わらないのかも知れんな。だが、俺は戦士を操る軍人、狂人だが、 戦闘機がある以上俺は騎士でもある、自分の知り合いくらい守らねばならん、難儀なものだ」 「人間とは難儀なものだな、まあいい、終わったら手合わせ願おう。こいつらガキどもの護衛、確かに承ったぞ、 戦士、シュトロハイムよ」 「ふふ、俺を戦士と呼ぶか、戦い狂いの化け物め。いいだろう、空は俺に任せろ。コルベール、ワムウ、武運を祈るぞ! では、ルドル・フォン・シュトロハイム、ドイツルフトバッフェ大佐、出撃する!」 エンジンが猛烈な音を立て、ゼロ戦は舞い上がった。 「さて、任された以上やらねばならぬな…この程度の人間の数ならば、メキシコですでに三度はやっている」 「やれやれ、味方になっても頼もしいを通り越して恐ろしいな」 無線からシュトロハイムの声が入る。 「我がサイボーグの視力はーッ!世界一ィイイイイッ!九時の方向に敵を数体発見、今日のエースは俺だァアアアッ! 記録係は瞬きするんじゃないぞッ!」 この世界ではありえないスピードで、竜騎士に接近していった。 右手に杖を、左手に無線をを持ったままタルブの民衆を避難させるコルベール。 もし、空から彼らを狙って来るアルビオン兵がいたとしたら、容赦なくコルベールにやられていただろう。 しかし、シュトロハイムの活躍が功をそうしてか、その機会はなかった。 地上では向かってくる兵士は文字通りワムウに吸い込まれていくのを顔をしかめて見ていたが、 やがてタルブの一般人の保護に集中するようになった。 ワムウに向かっていく兵士は、幸か不幸か、一斉にではなく、多くとも小隊単位で向かっていくにすぎなかった。 小隊を、分隊を、歩兵を、銃兵を、弓兵を、メイジを、階級に関わらず無傷で屠っていくにつれ、そのあたりに アルビオン兵が現れることはなくなった。もし、一斉に攻めていたら…傷くらいはつけられたのだろうか。 「この地域の方々はほぼ集めました、あとは残っている領主の兵士の方に護衛をお願いしましょうか」 この地域でも手際よく非戦闘員を集めたコルベールは、次の場所に向かおうとする。 「…ミス・ヴァリエール、ワムウくんを止めてきてくだされ」 集めた石を敵陣地のあるであろう方向に投げる。 ただの石もワムウにかかれば榴弾砲の様な威力となる。矢継ぎ早に飛ぶ石は空中でぶつかりあって降り注ぐ。 スピードがあるだけに、大抵は致命傷にはいたらないまでも脅威の対象となっていた。 「ワムウ、そろそろ行くわよ、あんたの仕事はアルビオン兵の殲滅じゃないのよ、わかってるの?」 「わかっているから投石なんぞで我慢しているのではないか、お前らがいなければとっくに突っ込んでいるわ」 「……はいはい」 「十九騎目ェイッ!とろい、とろいぞォオオオッ!そんな反応では東部戦線では一日で葬式が出るぞォオオッ!」 元戦闘機乗りとだけあって、七.七ミリ機銃を効果的に当て、強力な二十ミリ機銃を温存している。 「しかし、素晴らしい機体だ、東の黄色人種がアメ公相手に通用するのもうなずけるな! 航続距離も長い、二十ミリ機銃の威力もなかなかある。これだけの性能なら竜ごときには遅れはとらんわ!」 そして、前方を見て舌打ちをする。前方の巨大な船から数体 「しかし、あの化け物をなんとかせねばな…航空母艦は航空母艦でも空に浮く航空母艦とはな、 やれやれ、空飛ぶ要塞などといった異名が霞んで見える」 少し考え込むが、顔を上げ、操縦桿を強く握りなおす。 「どうにかせねばならんが…まあ後回しでいいだろう、相手が哀れなコミュニストでなくなったがやることは一緒だ、 アルビオンの竜騎士よ、運が悪かったな…アーメン」 シュトロハイムは発射把柄を握った。 錐揉み状態で前方の竜騎士が落ちたのを確認し、辺りを見回す。 そして、ある一点で目を止める。 「ふん、仰々しい格好をしおって、大きな杖を構えて、あれが噂の巨人使いのようなメイジということか? 少々遠いが、威嚇射撃でもしてやろう」 機銃の砲身が短い音を発し、数発弾丸が飛んでいく。 距離があるため、当たりはしないが、相手の騎士は特段驚きも慌てもせず、スピードも軌道も 変えずに進んでくる。 シュトロハイムは機首を上げ、上昇すると、遅れながらも竜も上がってくる。 機体を傾け、竜の側面から攻撃しようとする。 竜はそのまま上昇し、ゼロ戦が近づいてくると、体をひねらせ、ブレスを吹きながら突進してくる。 シュトロハイムは慌てて機体をひねりながら急降下させ、すんでのところでかわす。 「危ないところだった、しかしここまで近づかれると戦闘機の優位が霞む、少々距離をとるか」 機体を少しだけ上げ、出力急降下に切り替えてスピードを上げ竜から距離をとる。 ある程度距離がとれたのを確認すると、出力を上げて上昇させる。 かなりの高低差が生まれたと判断したシュツロハイムは、旋回し、降下してスピードを上げながら竜に 突っ込む。かなりのスピードに相手は判断が鈍り、予めとるべきだった回避行動をとれなかったようだ。 射程距離に入ったとみたシュトロハイムは発射把柄を握り、機銃をぶち込む。 相手は杖を振り必死で弾丸から身を守るが、数発竜に当たっていく。 とうとう、前方の竜はきりもみ降下していき、シュトロハイムは出力を落とした。 機体が揺れた。 シュトロハイムのゼロ戦が大きく揺れる。 なぜならば、機体の下部に穴がいくつか開いていたからだ。そしてほぼ同じ数がシュトロハイムにも開いていた。 落ちていく竜に乗った騎士の背中から飛び立った竜と騎士は、下からゼロ戦を追い越し、 母艦『レキシントン』へと戻っていった。 「子爵、どうでしたか?」 ボーウッドが椅子に座って目を瞑っていたワルドに尋ねた。 「ああ、やったよ、僕の偏在は確実にあの乗り手を竜ごとエアカッターで何発も貫いた、まず助からないね」 「さすが子爵ですな、では作戦に移りましょう、野蛮な無差別砲撃にね」 グラグラと揺れるゼロ戦を見て無線に向かってコルベールが叫ぶ。 「シュトロハイム君、どうしました、シュトロハイム君!」 「な…が起きたんだ?落…し…はずの竜騎士…背中…ら、もう一体の竜…士が…」 「シュトロハイム君、ゼロ戦が下がっていますぞ!立て直さねば!」 機体はハッとしたかのようになんとか態勢を戻す。 ルイズが無線に向かって話しかける。 「ねえ、もしかしてその騎士って、杖を構えて、黒い帽子をかぶっていた?」 「その通りだ」 「おそらく…ワルドだな、つじつまもあう」 ワムウが呟く。 コルベールが続けて話す。 「機体に穴があいていますぞ!早く着陸せねば危ないのでは!?」 笑い声が聞こえた。 「無駄だ、コルベール。油断してつけたま…であった増槽にも穴が…けられた。脚も降…ん、胴体着陸できるほど 整備され…飛行場…ない。それに…俺自身、もう助からん、それに無線…もガタがきて…る」 先ほどから強いノイズが入ってくる。 「ふん…忌々し…巨大…艦め、高度を下げて…る、おそら…制空権を取…たと判断して地上砲撃に入るのだ…う、 お前ら…けでも避難したほ…がいい、あ…な化け物の艦隊…砲撃を受…たらワムウでも無事で…すま…だろ…」 ノイズが強くなり始める。 「コルベ…ルよ、ゼロ戦のエ…ジン、渡せなくてすまんな。 ギーシュくん…、し…かりお嬢さ…方を守…よ。 そしてルイズ、タ…サ、キュ…ケ。そ…いえば苗字も聞…ていなか…たな… 礼を言わ…てもら…う、君たちが…なければあの巨人…倒…れ、ここに…いなか…た…もしれん。 シエ…タ…ワイン…美味であったぞ…ゼロ戦を快く渡して…ただい…重…重ね感謝す… そ…て、忌々し…柱の男よ、お前…なぞ言…ことは一つし…ない……頼んだぞ」 「シュトロハイムくん!なぜそんなことを言うのですか!シュトロハイムくん!諦めてはいけませんぞ!」 「コルベ…ル、か?もう、よ…聞…取れんよ」 弱弱しい声で返事をする。 「…お、友よ!この…うな調べでは…い!そんな調べ…り、も…と心地よく歌い始め…う、喜…に満…て!」 弱弱しい声でシュトロハイムは歌い始める。 「歓喜よ…美し…神々の煌め…よ…土から来た娘よ…我等…炎のよ…な情熱に酔…て天…の彼方、貴方の聖…に踏み入…」 シュトロハイムは気力と体力を振り絞り、ゼロ戦を上昇させる。 「貴方の御力によ…時の流れ…容赦な…分け隔たれ…も…は、再び一つとな… 全て…人々は貴方の柔ら…翼…もとで兄弟になる!」 『レキシントン』号の真上にゼロ戦は出力全開で上がっていく。 散弾がゼロ戦とシュトロハイムに容赦なく刺さっていく。エンジンは黒煙を吹き出し始めた。 霞む目でシュトロハイムは目標を探す。 「我が祖国ドイツよ!我が故郷タルブよ、永遠なれ!」 ワルドは部下に命令する。 「最後のあがきという奴か、だがじきに息は止まるだろう、とどめに散弾を叩き込んでやれ」 竜からは煙が出始めた。 しかし、それでもまだ上がり続ける。 部下が絶句し始める。 あまりの速さに。 あまりの高高度性能に。 あまりのタフさに。 あまりの気力に。 ワルドが部下に怒鳴る。 「なにをしている、散弾の数を増やせ!全力で落とすのだ!」 「子爵、まさかのことです…想定外のことです、あんな高さまで上がるなど竜、いや艦でさえもありえないことです!」 「だからどうしたというのだ!どんな高さでも構わん、叩き落せ!」 「それが無理なのです!この船は浮遊大陸アルビオンで使われていたもので、上から攻撃することはあれど、 あんな高さの敵に対処するなど全く想定していないのです!」 「…つまり、上は死角だと?」 「それだけではありません、武器庫、観測塔、そしてこの部屋も全て甲板の上にあるのです! 上から攻撃されては一たまりもありません!」 「なんという体たらくだ!」 ワルドは手直にあった机を蹴り倒す。 「…まずいです!あの竜が猛スピードで降下してきました!あのままいけば…武器庫です!」 「なぜピンポイントで武器庫が狙われるんだ!」 「武器庫は中からの事故の被害が抑えられるよう特殊な設計をしています、先ほど言ったとおり 上からの攻撃は想定していませんので、偽装もなにもしておりません、見る人によっては一目で看破され…」 『レキシントン』号の甲板上に爆音が響き渡った。 To Be Continued...
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デルフリンガーを忘れたのは仕方ない!後悔している時間は無い! とにかく今は相手が攻撃してくる前に攻撃できる態勢を整えなければならない! デルフリンガーを構えようとした左手を素早く懐に忍ばせ銃を掴む。相手が完璧に視認出来ている以上杖を振る前に銃で相手を撃つのは可能なはずだ。 「貴しゃま、ぼくにょヴェルダンデににゃにをしゅりゅんだ!」 何を言っているのか全くわからん!黙ってろ! ギーシュが杖を構えようとする。しかしそれより一瞬早く杖を抜いた相手はギーシュの杖を吹き飛ばす。 やはり敵か!?射殺しようと銃を取り出そうとした瞬間、 「僕は敵じゃない」 相手のその声に一瞬動くが止まってしまう。 「姫殿下より、きみたちに同行することを命じられてね。きみたちだけではやはり心もとないらしい。しかしお忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。 そこで僕が指名されたってワケだ」 相手は帽子をとり一礼しながら、 「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」 そう宣言した。 王女の増援だったのか。危うく殺すところだった。初めから言っていればいいものを、しかも心もとないだと?なら初めから頼むな! しかし本当に王女の増援かどうか怪しいな。王女はギーシュの尾行に気づかなかった位に間抜けだからな。安心は出来ない。ゆえに懐から手を出すことはしない。 「すまない。婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬ振りはできなくてね」 ワルドは首を振りながらギーシュに言った。それにしてギーシュの顔を見ても顔色一つ変えないとは、なかなかだな。 しかし婚約者?誰の?モグラに襲われていた?まさか…… 「ワルドさま……」 いつの間にか立ち上がっていたルイズは震える声でワルドに声をかける。 「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!」 マジィ!?まさか婚約者ってルイズのことか!? ワルドは笑みを浮かべるとルイズに駆け寄り抱き上げる。 「お久しぶりでございます」 「相変わらず軽いなきみは!まるで羽のようだね!」 「……お恥ずかしいですわ」 マジみたいだ。何だか会話がかみ合ってない気がしたが……しかしルイズの婚約者ということはトリステインの貴族か。なら問題ないか。 銃を離し懐に忍ばしていた手を出す。 ルイズの家は結構家柄は良かったはずだ。それの婚約者ということはワルドも位が高い貴族なのだろう。 それに女王陛下の魔法衛士隊のなんとか隊長とも言ってたはずだ。よくわからないが女王直属の兵隊の隊長ということだろう。 しかも魔法って付くぐらいだから魔法が使える兵隊の隊長ということになる。 多分クラスは『スクウェア』だろう。隊長をしているくらいだから教師と同じ『トライアングル』ではないはずだ。 やばい!これじゃアルビオンでルイズ(ならびにギーシュ)を殺すっていう計画が恐ろしく困難になるじゃないか!チクショウ! どうして幸福になろうと努力すると困難が出てくるんだ! 「彼らを、紹介してくれたまえ」 ワルドはルイズを地面に下ろし帽子を深く被りながら言った。 「あ、あの……可哀想なのがギーシュ・ド・グラモンで、変な格好なのが使い魔のヨシカゲです」 へ、変な格好……そりゃこっちの人間からしたら変な格好だろうからな納得しよう。 そしてちらりとギーシュを見やる。ギーシュは倒れていた。前のめりに倒れていた。倒れ付していた。そして微かな嗚咽が聞こえていた。 本当に可哀想な奴だ。さすがにショックが大きかったのだろう。 さすがのワルドもこれには引いているようだ。ルイズもしまった!という風な顔をしている。 「きき、きみがルイズの使い魔かい?ひひ、人とは思わなかったな」 嗚咽交じりの沈黙から早く逃れるためかワルドが話しかけてくる。そりゃ耐えられないだろうな、この空気は。 「ぼ、ぼくの婚約者がお世話になっているよ」 無理やり笑いながら話しかけてくるその姿はやけに頼もしく見える。ワルドはギーシュ空間を一人で打ち破ろうとしているのだ。 やはり只者ではない。 「初めまして、ヨシカゲです」 そう言って頭を下げる。すまないワルド、これが私に出来る最大限の支援だ。 しかしそこで会話が終わってしまう。また嗚咽交じりの沈黙が始まった……
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 「説明してもらうわっ!!」 山岸由花子は開口一番に叫んだ。 ここは杜王グランドホテルの一室である。 「やれやれ・・・ノックをすればこちらから開けるってのに。」 空条承太郎は般若のごとき形相で睨みつけてくる由花子を前に、溜息をついた。 山岸由花子は、制止するホテルマンたちを(文字通り)ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、『ラブ・デラックス』で部屋の鍵を無理矢理に開けて入ってきたのだ。 「用件は大体見当がつくがな。」 「当然、康一くんのことよ!」 由花子は承太郎に詰め寄った。 「イタリアにいった康一くんからの連絡が、四日前から途絶えたわ。一日一回は連絡するっていっていたのに!そして帰国予定日になっても帰ってこないの!」 「これってどういうわけかしら。康一くんは責任感のある人よ。予定を曲げてわたしに心配をかけるようなことをする人じゃない!なにかあったのよ!」 由花子は拳を握り締めた。 「もし、康一くんに何かがあったら、あんたを絶対に殺してやるわッ!」 由花子の髪がざわめく。 象でも気絶しそうな殺気のなかで、承太郎は静かに口を開いた。 「康一くんは無事だ。」 「・・・なんであんたにわかるのよっ。」 由花子が眉をひそめた。 「康一くんに何かがあったのではないかとは、俺も思っていた。こちらへの連絡も途絶えていたからな・・・。だから康一くんがどうしているか調べることにした。」 「だからどうやってよ!!」 「ジジイ――ジョセフ・ジョースター――に『ハーミット・パープル』で『念写』をさせた。ジジイは電話口で言った、『康一くんは無事だ』とな。そして・・・」 承太郎は一通の手紙を出して見せた。切手も印鑑もあて先すら書いてない手紙である。 「これがさっきSW財団の特別便で届いたばかりの、念写した写真だ。ジジイは、『写真を見ればわかる』といった。ちょうどこれから開けるところでな。」 というと、ペーパーナイフで手紙の上部を切り、写真を取り出した。 「こ・・・これは・・・!」 承太郎はその写真を見た瞬間に冷や汗を流した。 「(ま、まずいぜ・・・『これ』をこいつに見せるわけには・・・!)」 写真を見たまま固まってしまった承太郎に、由花子が痺れを切らす。 「ねぇ。何が写ってるの?わたしにも見せて!」 承太郎は沈黙したまま答えない。 ようやっと、重い口を開く。 「・・・この写真は俺が預かる。見ないほうがいい。」 由花子は目を見開いた。 「どういうこと!?まさか康一くんの身に何かあったわけ!?見せて!」 「康一くんは無事だ。安心しろ。だが、君がこの写真を見る必要は・・・」 「いいから見せろって言ってんのよこのウスラボゲッ!!!」 由花子は承太郎の手から写真をひったくった。 承太郎は早くも二度目の溜息をついた。 なるほど。康一くんは確かに無事である。 写真の康一くんは、ベッドに寝そべる、胸の大きな赤髪の美女に抱きしめられていた。 そしてその腕を、ピンクブロンドの美少女が引っ張っている。 二人とも、康一くんを渡すまいという気持ちが一目で見て取れる。 状況を見たまま一言で説明するならば、『修羅場』の写真なのだった。 承太郎は写真を見つめたまま微動だにしない由花子を置いて、部屋を出た。 廊下では、ホテルの支配人が心配そうにしながら様子を伺っていた。 「部屋の修理費用はスピードワゴン財団に請求してくれ。」 承太郎はそれだけを言った。 ふと気づいて、封筒を逆さに振った。 封筒の中には、小さなメモが入っていた。 『康一くんもやるもんじゃ!!しかしこの写真、由花子くんには見せないほうがいいのぉ。』 「ジジイ・・・。そういうことは先に言え!」 承太郎は支配人を連れてそこを離れた。 「やれやれだぜ・・・」 それが合図だったのだろうか。 300キロはある巨大なベッドが、頑丈なホテルの扉を爆音と共にぶち破った。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
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「さてと皆さん」 コルベールがおちゃらけたように禿げ上がった頭を叩く。 その顔は実に嬉しそうだ。 そして机の上に何か置く。それは実に妙なものだった。 円筒状の金属の筒に、金属パイプが伸びている。そのパイプはふいごのようなものに繋がっている。 円筒の頂上にはクランクがついており、そのクランクは円筒の両脇にある車輪に繋がっていた。 そして車輪は扉のついた箱にギアを介してくっついている。 まさしく妙なものだった。 おそらく魔法に関係ある道具なのだろう。 「それはなんですか?ミスタ・コルベール」 違ったようだ。 どうやら生徒もあれがなんなのかわからないらしい。 いや、もしかしたら生徒も知らない魔法関連の道具なのかもしれない。 「おほん」 クラスの注目が集まる中、コルベールがもったいぶった咳をする。 「えー、『火』系統の特徴を、誰かこのわたしに開帳してくれないかね?」 コルベールはそう言うと教室中の視線が一箇所に集まった。 その視線の先にはキュルケが存在していた。キュルケは授業中にも係わらず爪の手入れを続けている。 しかしなぜキュルケに視線が集中するんだ? 確かにキュルケは『火』系統のメイジだったはずだが、そんなにクラスが注目するほど優秀なのだろうか? ……この反応を見る限り優秀なのだろう。 「情熱と破壊が『火』の本領ですわ」 注目を浴びる中、キュルケは爪をいじりながら気だるげに答えた。 「そうとも!だがしかし、情熱はともかく、『火』が司るものが破壊だけでは寂しいと、このコルベールは考えます」 キュルケの態度などまるで問題にせず(諦めているのかもしれない)にこにこしながらコルベールは言う。 「諸君、『火』は使いようですぞ。使いようによっては、いろんな楽しいことができるのです。 いいかねミス・ツェルプストー。破壊するだけじゃない。戦いだけが『火』の見せ場ではない」 「トリステインの貴族に、『火』の講釈を承る道理がございませんわ」 コルベールの言葉にキュルケはイヤミで返した。 言い草からしてトリステインの貴族よりゲルマニアの貴族の方が『火』について詳しいと言っている感じだ。 あのときキュルケに注目が集まったのはゲルマニアが『火』系統に優れているからかもしれない。 しかしキュルケは本当に舐めきっているな。イヤミすら言うほどだし。 だが言われた本人は気にせずににこにこしている。なぜ怒らないんだろうか? 「でも、その妙なカラクリはなんですの?」 キュルケもやはり気になっていたのかきょとんとした顔で机の上の妙なものを指差す。 その言葉でにこにこしていたコルベールの口がさらにつりあがる。 まるでよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりだ。 「うふ、うふふ。よくぞ聞いてくれました」 うわ、本当に言ったよあいつ。 「これは私が発明した装置ですぞ。油と、火の魔法を使って、動力を得る装置です」 なるほど、どうりで生徒どもが知らないわけだ。 個人が発明したものを知っているわけが無いからな。 「まず、この『ふいご』で油を気化させる」 コルベールはそういいながら足でふいごを踏み始める。 「すると、この円筒の中に、気化した油が放り込まれるのですぞ」 あれ、これもしかして…… そんなこと考えている間にコルベールが慎重な顔で円筒の横に開いた小さな穴に杖の先端を差し込む。 そして呪文を唱えたかと思うと発火音が断続的に聞こえてきて。そして発火音は爆発音に変わった。 「ほら!見てごらんなさい!この金属の円筒の中では、気化した油が爆発する力で上下にピストンが動いておる!」 思ったとおり円筒の上についていたクランクが動き出し車輪を回転させる。 回転した車輪は箱についた扉を開く。すると開いた扉からギアを介してヘビの人形が出てきた。 「動力はクランクに伝わり車輪を回す!ほら!するとヘビくんが!顔を出してぴょこぴょこご挨拶!面白いですぞ!」 いや、全く面白くは無い。 だが凄さはわかった。しかし周りは凄さがわからないらしく反応が薄い。 「で?それがどうしたっていうんですか?」 そう言われたコルベールは少し悲しそうな顔をした。 しかしそれを吹き飛ばすかのように咳払いを一つする。 「えー、今は愉快なヘビくんが顔を出すだけですが、たとえばこの装置を荷車に載せて車輪を回させる。すると馬がいなくても荷車が動くのですぞ! たとえば海に浮かんだ船のわきに大きな水車をつけて、この装置を使って回す!すると帆がいりませんぞ!」 「そんなの、魔法で動かせばいいじゃないですか。なにもそんな妙ちきりんな装置を使わなくても」 コルベールの発言を否定する発言に皆が頷きあう。 わかってないな、魔法を使える奴らは。これがどれだけ画期的な発明か。魔法が使えるからわからないんだろうがな。 「諸君、よく見なさい!もっともっと改良すれば、なんとこの装置は魔法がなくても動かすことが可能になるのですぞ! ほれ、今はこのように点火を『火』の魔法に頼っておるが、例えば火打石を利用して、断続的に点火できる方法が見つかれば……」 コルベールは興奮した様子でまくし立てるが生徒たちは、ついていけないよ、といった感じだ。 そうだ、今のうちに聞いとくか。 「ミスタ・コルベール一つ聞きたいことが」 そう言って手を上げ質問する。 「ん?あなたはミス・ヴェリエールの使い魔だったな。なにが聞きたいんだね」 「それは自分ひとりで考えついたものですか?」 「ああ、その通りだ」 コルベールは誇らしげに頷く。 「誰に教わったわけでもなく?」 「勿論だ!」 よくもまあ魔法が使えるこの世界でこんなものが思いつけるものだ。 コルベールは本当に天才らしい。それがたった今証明された。 もっとも魔法が使えるせいで受け入れられない天才だがな。 「しかしどうしてそんな質問を……、まさか!きみは何かこれについて知っているのかね!?」 コルベールが突然そんなことを言いだし、興奮した様子で近寄ってくる。 「もしかして似たようなものを見たことがあるとか!?」 眼前に顔が迫ってくる。 近い!近いって! 「え、ええ。似たようなものを見たことがあってつい質問を……」 「それはどんなものなのかね!?形は!?原理は!?用途は!?名前は!?」 安全地帯にも地雷は埋まっているものだと初めて知った。 なぜなら自分が地雷を踏んでいたからだ。 それ以上顔を近づけるな!大きな声を出すな!つばが飛ぶ!鼻息が荒い!頭が眩しい!
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 二年生最強のメイジ。ギーシュ・ド・グラモンが食堂で女の子を苛めていると、平民の少年がそれを止めに入った。 「まちな!」 「何者だ貴様!」 ギーシュがその少年に杖を突きつける。 「てめーみたいな屑に名乗る名はねぇぜ・・・・」 「平民の分際で貴族に楯突く気か・・・?いいだろう。かかってこい!」 「てめーは俺が裁くっ!」 そして始まる決闘。 「この『平民』がぁー!『貴族』様に勝てると思ってんのかぁー!」 ギーシュはゴーレムを作り出し、少年に襲い掛かった。 「オラァ!」 少年が鉄拳を振るうと、ゴーレムは一撃で砕け散った! 「な、なんだとぉー!?」 「なめるなよ?全力を出せ。貴族!!」 「ひ、ひぃぃ!や、やってやるぅ!!」 ギーシュが杖を振るうと、数十体のゴーレムが少年を取り囲んだ! 「げへへ!平民の分際で舐めた口聞いたことを後悔させてやるゥー!!」 少年に襲い掛かるゴーレム達! だが、少年はゴーレムの一体を踏み台にして飛んだ! 「な、なにぃぃー!馬鹿なぁー!」 ギーシュは驚愕した。 少年はギーシュの背後に華麗に着地すると、ギーシュをギロリと睨んだ。 「次はてめーの番だ・・・」 「はひぃぃー!」 ギーシュはあまりの恐怖に失禁して腰を抜かしてしまう。 「右の拳で殴るか左の拳で殴るか、あててみな・・・。」 少年はギーシュを見下ろした。 ギーシュはごくりと唾を飲んだ。 「ひ、一思いに右で・・・やってくれ!」 「NO!NO!NO!」 「ひ・・・左?」 「NO!NO!NO!」 「り・・・りょーほーですかぁー!?」 「YES!YES!YES!」 「もしかしてオラオラですかぁー!?」 「YES!YES!YES!OH!MY!GOD!」 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ――!!」 少年のラッシュでギーシュは「ひでぶ!」と言いながら吹っ飛んだ! 顔面を血だらけにされたギーシュは命乞いをした。 「今まで威張ってすみませんでしたァー!もう平民を馬鹿にしないので、許してくださーい!」 「てめーら貴族が平民を苛めるようなことがあれば、またすぐにボコボコにしてやるからな。」 「わ、わかりましたー!」 ギーシュは土下座をした。 「やれやれだぜ・・・・」 少年はくるりと背を向けた。 「助けていただいて、ありがとうございました!」 苛められていた少女が礼を言うと、 「気にするな・・・」 とだけ言って去っていく。 「ま、まってください!」 少女が叫んだ。 「あなたの・・・あなたのお名前は?」 少年は顔だけを少女に向けて言った。 「俺の名はコーイチ。しがない平民さ・・・」 あれから三日。これが現在平民の間で噂されている決闘の詳細である。 あの決闘を見ていた平民はシエスタだけだった。 シエスタは興奮のままに、平民の仕事仲間に『平民の少年が貴族に勝った』決闘のことを話した。 シエスタから聞いた平民は、またその仲間に聞いた話を伝えていく。その仲間はまた別の仲間に。 「きっと、こうだったのさ・・・!」「・・・だって聞いたわよ!」「・・・だったらしいぜ!」 噂をするうちに膨らんだ想像が付け足されていき、逆にいくつかの情報が抜け落ちていく。 こうして、本人がいない間に、康一は 『弱きを助け、強きを挫く勇者』にされてしまったのだった。 「う、うわぁ・・・」 康一は青くなった。 なんだか、話が無茶苦茶美化されている。 しかも平民の代表みたいにされてるし・・・。 話を聞いていると、まるでその決闘をしたのが承太郎さんだったように思えてくる。 「(少なくともぼくみたいなチビのことじゃないよね。その主人公。)」 厨房にやってきた康一は、集まってきた平民達に取り囲まれ、話ようやくその噂を知ったのだった。 康一は誤解を解こうとした。 「い、いや。そんな大したもんじゃないですよ!実際ぼくだってボコボコにされて、今まで寝てたんですから!」 「でも、ギーシュって貴族に勝ったのは本当なんだろ?」 マルトー親父が尋ねた。 「それは・・・まぁ。そうなんですけど・・・。」 オオオオオオ! 集まってきた平民達がどよめいた。 「しかも素手でぼこぼこにしたって聞いたが?」 「それも、確かにそうなんですが・・・」 オオオオオオオオオ!! 歓声があがる。 「しかもトドメに、その貴族、『ゆるしてください!』って泣いて謝ってきたんだろ?」 「まぁ・・・それもだいたいその通りですけど・・・」 ヒャッホ――――――! 帽子が乱れ飛ぶ。泣き出したり、抱き合ったりしている人もいる。 康一の首にマルトーの毛深い腕が廻される。 「可愛い顔して、おめぇはすごいやつだ!コーイチ!『我らの拳』だ!」 「お、おおげさだなぁ。」 康一は困った。結果的にばれない形になったが、スタンドを使ったわけで、素手だけで倒したわけではない。しかし、 『いやー、実は『スタンド』っていうみなさんの言う『先住魔法』みたいな力を使ったんですよー!』 なんて明るくネタバレした翌日に火あぶりにされたりしたら困る。実に困る。 それになにより、これだけ喜んでいる人たちを悲しませるのは憚られた。 「おおげさなことなんてないぞ!」 マルトーは大きく首を振った。 「俺達平民は、いつもいつも貴族のいいなりにされてるんだ。それに逆らって殺されたやつを、俺は何人も知ってる。」 他の平民も静かに頷いている。 「俺達平民が一人の貴族を倒そうと思ったら、武器を持って数人がかりさ。それだって返り討ちにあうことすらあるんだ。」 それなのに・・・!マルトーはぐっと拳を握り締めた。 「お前は一人で、しかも素手で貴族を倒しちまった!こんな痛快な話聞いたことがない!だからお前は英雄だ!『我らの拳』だ!」 シエスタはその様子を見て嬉しそうに微笑んでいる。 「ちょ、ちょっとシエスタ!なんとかしてよ!それに、その噂すごい誇張してるよね!あいつ別にもらしてなんかなかったし、ゴーレムも7体しかいなかったよ!」 「そのくらい演出の範囲内ですわ。」 シエスタは嬉しげに胸を張った。どうやら話を大きくするのに積極的に関わったらしい。 「俺はお前と知り合えてうれしいぞ!俺がみこんだ男だけあった!コーイチ!俺はおまえの額にキスしてやるぞ!」 とマルトー親父が分厚い唇を近づけてくる。 「うわぁ!マルトーさん!ちょっとまって!キスは・・・!キスはいいからぁー!!」 康一は悲鳴をあげた。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔