約 7,335 件
https://w.atwiki.jp/jujutsu/pages/8.html
RSSを取り込んで一覧表示(showrss) #showrss(ここにRSSのURL) もしくは #rss(ここにRSSのURLを入力) と入力することで指定したRSSを取り込んで一覧表示します。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //www1.atwiki.jp/guide/pages/266.html#id_b6d0b10d たとえば、#showrss(http //iphone.appinfo.jp/rss/pricedown/,target=blank,countrss,lasttime) と入力すると以下のように表示されます。 showrss プラグインエラー RSSが見つからないか、接続エラーです。
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/76.html
皆様こんにちは、はじめましての方は、はじめまして。イリアスのゾイド講座、始まります。 第六回となる今回は、グランドカタストロフ直後のヘリック共和国軍水陸両用機、バリゲーターTSについてお話させて頂きます。 同時期に使用されたドスゴドス、エクスグランチュラと違い、この機体は旧バリゲーターの姿をほぼそのまま保っています。旧来機との外見的な差異は、背部に増設されたバックパック……TS(スラスターシステム)の存在です。 外部増設型補助動力自体は、古くはガリウスの時代から存在しました。「イオン過給機」と呼ばれる装備で、主にゾイドの積載量を増加させるのに使用されています。ゾイドコアの養分である金属イオンを供給する装備であり、現代でもレブラプター等が「イオンチャージャー」というこの流れを汲む装備を施されていますね。 こういった外部補助装置とスラスターシステムの違いは何か、それはエネルギーの伝達システムにあります。 イオン過給機のような装備がゾイドの機体に配線された伝達回路を通じてコアにエネルギーを供給するのに対し、スラスターシステムはその過程をすっ飛ばし、直にパワーユニット……すなわちゾイドコアにエネルギーを伝達することで、従来とは比べものにならない伝達効率を実現しているのです。 物の流れとは、長ければ長いほどその勢いを削ぎとられます。地球、特に日本の河川がいい例で、始点からの距離が長いほど……すなわち下流に行くに従い、流れは弱くなります。 スラスターシステムとは、例えるならば河川の上流がいきなり海に注ぐようなものです。いえ、もっと極端に言うなれば、滝が海に注ぐ様を想像してみて下さい。立ち上る水しぶきの量は、凄まじいものになるでしょう? 乱暴な例えではありますが、本当に原理はこれです。 なぜ、このようなシステムが実用化したのか。その影にあるのは、やはりこの時代のキーゾイド……キングゴジュラスの存在です。この機体が持つ重力制御機構……グラビティモーメントの伝達のために使用されていた伝達システムを転用したものと思われ、同様の機構がヴァルガにも存在するため、ある意味でこの2機は兄弟機といえなくも……いえ、この時代の機体には、どんな形にせよキングゴジュラスの技術を継いだものが多い以上、無意味な分類でしたね。 しかしながら、なぜか「この」スラスターシステムを搭載したのは本機及びティガゴドスの初期生産ロットのみで、以降のTS搭載機にはパワーユニット直結の外部ケーブルが存在しています。 なぜこのような仕様になったのか、一説にはリーバンテ島戦後にリル・メリル主任がスパイ容疑で身柄を確保されたためとも言われており、未だ明確な理由は判明していません。 いずれにせよ、ただでさえ外部に露出するという弱点を抱えるTSにさらにケーブルという目立つ弱点が付いた事で、前線の士気が下がったとかなんとか……。ウワサですよ? ちなみに第二次生産ロットの機体は、やはりパワーが落ちているとのウワサもあります。 本機はただバリゲーターにスラスターシステムを装備したのみではなく、いくつかの改良点も存在します。その最たるポイントがガイロス帝国軍機の残骸から回収・再現された「アイスメタル・マテリアル装甲」で、「ドスゴドスに振り回されジークドーベルに激突しても、相手が壊れる」という凄まじい強度を発揮。当然ながら耐圧性も大幅に上昇し、潜水深度も増しました。ま、いくらか改良案が出たもののコクピットは剥き出しのままなので、意味は無かったんですけどね……。 この機体強度を利用し、前述の通りドスゴドスの尾部に噛み付いて「ジョイント」し、横回転で敵機を薙ぎ倒す「ターボアクセレイション・ハンマーアタック」なる合体攻撃フォーメーションが存在します。当然、気をつけないと口の隙間からフッ飛ばされます。パイロットが。ログ・バイス大佐は化け物か何かでしょうか……。 出力が増大したことにより陸戦能力も高まり、海岸等場所を選べばヴァルガにも引けをとらない戦闘が可能とのこと。ただし残念ながら、グラビティアタックを考慮に入れない場合のみですが。 またリーバンテ島では塹壕掘削など、前線での戦闘支援にも使用出来る汎用性も評価されました。 当然海戦の性能もアップしています。浅海域での戦闘ならば、当時の海戦専用機ダークネシオスとも互角以上。ただしこれは上陸作戦仕様という装備の相性がはまったという理由もあり、また深海域になればなるだけ、バリゲーターが不利になります。これは本来渡河作戦や河川での戦闘を前提にした機体設計そのものから来る弱点なので、仕方が無いところではあるのですけどね。 とこのように、スラスターシステムという力で蘇ったバリゲーターについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか? 中央大陸戦争初期から中期にかけての機体でありながら、僅かな改装で最新鋭機に匹敵するゾイドに生まれ変わったバリゲーター。磁気嵐など様々な要因が複合した結果ではありますが、それでもゾイドが秘めた大きな可能性を見せてくれる事例ではないかと、私は思います。 最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。では皆様、ご機嫌よう。イリアスでした。
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/16.html
――何も、無かった。 「それ」には、言葉も感情も無かった。感覚すら、無かったように思う。 ただ透明な世界で、何も無いまま、時を刻み続けた。 ……ZAC2100年まで。 「……信じられん。こんな数値を出すとは」 「これが、完全なオーガノイド……」 そんな声が聞こえた。久しく耳にする、人間の声だった。 ……吐き気がした。 人間は大嫌いだ。 だから、意識から弾き出す。 ……どこだ、ここは? 意識があるということは、以前のように、コアが感覚器に繋がっているということだ。随分と久しい感覚。感覚があることすら、久しい。 おかしなものだ。感覚など失っていたくせに、時の流れだけは感じていたらしい。 「ジェノザウラーのコア出力をことごとく上回っている。すごいぞ、これは」 ……ジェノザウラー? 私と同じモノを、おぼろげながら感じる。 感じた場所に、感覚を集中させてみた。そこにいたのは、黒と紫の、ティラノサウルス型ゾイド。 ……何だ、この不完全なシロモノは。 嫌悪感を覚えた。不完全すぎる。あんなモノで、オーガノイドの力を制御できるわけがない。 ……ここにはもう、私の仲間はいないのか? やがて、私に新しい「体」が、与えられた。 そしてすぐ、戦場へと駆り出された。 いつだって、人間はこうだ。いつからだろう、私たちが、人間に屈するようになったのは。 考えても、詮無いこと。 今はただ、主の指示に従う。 ……今、は。 衝撃を感じた。 ……誰だ、撃ったのは? 私を、また、あの透明な何も無い世界へ戻すのか? ――嫌。 私のコアに、命令が来る。「次弾に備えて回避」と。 ――嫌だ。 拒否。また命令。同じの。拒否。命令、拒否、命令――。 ――嫌だっ!! 思うまま、私は動いた。 「ぎゃあああああああああ!!」 命がひとつ消えた気がした。私にもっとも近い命が。 「どうした? デススティンガー応答せよ!」 近づいて来る。黒いチーター型の機体。人間たちは、ライトニングサイクスと呼んでいた。 「何が起きた? 返事をしろ!」 ……近寄るな!! ただ、撃った。 撃って、弾いて、切り裂いて、引き千切った。たくさん。 みんな、私の味方じゃないから。 私と同じじゃないから。 ひとりだった。 今ここで、私はひとりだった。 寂しい。 サミシイ。 ……そうか、なら、造りかえればいいんだ。この世界を。 私ならできる。増やそう。私を。私と同じ仲間を。 ゾイドコアを狩った。そのゾイドコアを、片っ端から喰らった。喰らい続けると、いつしか数個のコアが生まれた。 ……私の、子供。 数が増えたら、ゾイドコアを子供に直接与えた。抜け殻は、一部は私の体に取りこんだ。また一部は、子供たちの体に与えた。 古い遺跡で、私は子供たちを増やし、育て続けた。 獲物を感じた。とびきり強い生命力を持つコアだった。 襲い掛かった。赤いのと、青いの。 「この化物を倒すには、最大出力の荷電粒子砲しかない!」 ――そんなの、どうってことない。 はずだった。 青いのが、私に飛び掛った。遅い。まるで止まっている。 撃った。 青いのが弾けた。 でも――。 「うおおおおおおおおおお!!」 赤いのの持つ金色の刀が、私の頭上に、振りかざされた。 ……やっぱり、ダメなの? 私は、今も居てはいけないの? 寂しい、苦しい、悲しい―― ZAC2100年10月、デススティンガーは撃破された。
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/14.html
この星は、未熟な星だと思う。いや、この星の人々は、というべきか。 力を手にし、その力を持って互いに傷付けあう。 その繰り返しだ。 ……それは、本当に自然なことなのだろうか。ふと、私は思った。 これから私は、この星に起こるであろう事象を記す。信じるも信じないも、これを読む者の自由。 ――ある古代遺跡から発見された文書より抜粋
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/65.html
「……というように、現在の統一政府の基盤が完成したというわけだ。あー、次回は統一政府初期の政治について。今日はここまで」 教壇に立つ講師の声を聞きながら、私は退屈な授業が終わった開放感に浸っていた。 ……別に、授業全部がつまらないわけじゃない。ただ、生まれてもいない時代の戦争だとか、テロだとか、実感が何も湧かないだけ。学ぶべき事があるのはわかるけど、それが役に立つのかと問われれば……やっぱり疑問に思う。 「リュシー、今から暇?」 「ごめん、バイト」 友人の誘いを断って、私は教室の出口へ向かう。せめて学校の中くらいはと、友人もついて来た。 「前々から不思議に思ってたんだけどさ、リュシーの家ってそんなに貧乏じゃないよね?」 「んー、まあ、そうなんだけど」 実際、私の家は貧乏どころか裕福な部類に入るだろう。父は政府の重鎮で、空中都市計画の責任者。兄も技術者として、計画に携わっている。 「じゃあ、なんでわざわざアルバイトなんか?」 「やっぱり早く自立したいって言うか、何と言うか」 とりとめもない会話をしながら、校舎を出る。 何でもない日常。この時私は、この日常が多大な犠牲の上に成り立っている事をまだ知らなかった。 アルバイトを終えて、家に向かう途中。 (……門限ヤバイし、仕方無いか……) シフトの交代が遅れ、帰りが遅くなってしまった私は、普段は通らない人気の少ない裏路地に足を踏み入れた。既に日も落ち、街灯も少ないそこは不気味な沈黙を保っている。 (早く抜けちゃお……) 正直、怖い。自然と歩みが速くなる。と、 「……!?」 不意に、呻き声が聞こえた気がした。 「……ぅ、ぐ……」 間違いない、聞こえる。 「だ、誰かいるんですか!?」 聞き返しながら、暗闇に目を凝らす。少し進んだ先に、お腹を押さえてうずくまる男性を見つけた。 「大丈夫ですか!?」 駆け寄って、声を掛ける。男性が何か言おうとしている。よく聞こえなかったから、耳を近づけた。 「……は、なれる、んだ……。巻き、こまれ、る……」 「なに言ってるんですか! 今、救急に連絡しますから……」 携帯電話を取り出して番号を押そうとした矢先、急に周囲が明るくなった。 「治安局!? 良かった……」 これでこの人も助かる。……そう思った。 けれど、 「……え?」 治安局の隊員は、その男性に銃を突きつけた。 「ちょ、ちょっと待って下さい! この人は怪我を……」 私の抗議にも耳を貸さず、隊員の一人が端末を操作し、言った。 「間違いない。テロリストナンバー0216、ガーランド・スタンレイだ」 テロリスト……? 「連行する。……お前も来い」 「きゃっ……!」 隊員の一人が、私の腕を掴んだ。 「待て、本部から指令だ。サードアベニューで0073を発見、現案件を速やかに処理し向かえ」 「……了解した」 その指令がどういう意味だったのか……、その時には、知らなかった。 速やかに処理。すなわち、目撃者もろとも容疑者を消せ。 銃口が、私にも向けられた。 その瞬間……、 「目を閉じて息を止めろ!」 誰の声かはわからない。けれど、もし助かるのならと思って、私は固く目を瞑り、息を止めた。 破裂音。 「何だ、ガスか!?」 治安局の隊員の慌てた声。続いて、鈍い金属音。 考える間もなく、私は誰かに抱えられ、狭い所に連れ込まれた。 「もういい、目を開けろ」 さっきの声が、すぐ近くで聞こえる。私は恐る恐る、目を開けた。 そこは、無数の計器と表示モニターが並ぶ空間……、ゾイドのコクピット? 上を見ると、ガスマスクで顔を覆った男。 「あ、あの」 「死にたくなければ黙っていろ」 その言葉に何も返せず、私は口をつむぐ。 「6人……か」 ぼそりと、男が呟いた。モニターから見える外では、治安局員が銃をこちらに向けている。 不意に、ゾイドが動いた。隊員が銃を放つ。けれど、ガンガンという音がするだけ。 モニターに、白い機械の腕が映った。きっと、このゾイドの腕。それが、 「ひっ……!」 躊躇無く、隊員を叩き潰した。凄惨な光景に、思わず私は目を背けてしまう。 そうやって、二人、三人と人が潰れていく。全てが終わるまで、私は目を開ける事が出来なかった。 冷たい風が頬を撫でた。コクピットハッチが開いたのだと気付き、私は再び目を開ける。 「……巻き込んですまなかった」 声の聞こえた方を見ると、ガスマスクを取った男がいた。黒髪に浅黒い肌。あまり、中央大陸では見ない人種。 「……テロリスト」 思わず、呟いてしまった。 「ああ。俺はテロリストだ。だがお前は無関係だ、巻き込むつもりは無かった」 「あの、顔見たから殺すとか、やっぱりそういうの……?」 自分でも何を言っているのかよくわからなかったが、映画だとか小説だとよくある話だったので聞いてみた。 「いや……。だが、お前も統一政府のリストに記載された可能性がある。安全は保障する……、俺と一緒に来い」 そう言うと、男は私を抱きかかえてゾイドから飛び降りる。 「こっちだ」 導かれるまま、私は男の後をついて歩いた。直後、さっきまでいた場所で何かが爆発した。……多分、証拠隠滅というヤツなんだろう。 この日、私の日常は終わりを告げた。
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/15.html
「……ったく、なんだかなぁ」 目の前には大量の本。正直、ここまでとは思ってなかった。 (――「今回の特集のため、国立首都図書館の協力を取りつけた。しっかり頼むよ、レジェッタ君」――) 頭の中で、編集長の言葉がリフレインする。 以下、自己紹介。 ローナ・レジェッタ。某戦史研究誌のライター兼編集部員。年齢は内緒。性別は名前から察してくれ。 以上、自己紹介終わり。 「だいたい、書物なんてほとんど読み尽くされてるだろうに」 本は嫌いじゃない。むしろ、昔から好きな方だ。 しかしだ。この量から必要な資料を探し出し、読み取るとなると、さすがにウンザリする。 「やれやれ……」 とはいえ、いつまでもウンザリしているわけにはいかない。仕事だ。とりあえず、林立する書架の谷間に足を踏み入れた。 と、 「あれ……?」 ふと目に止まった。「ヘリック共和国史」、「古代中央大陸」、「部族戦争」などのタイトルの本に混じって、背表紙に何も書かれていない、少し薄い本がある。 「何だ、これ……?」 抜き出して、見てみた。表裏、どちらの表紙にも何も無い。削り取られたわけでも無さそうだった。 なんとなく、気になった。 表紙を開け、ページをめくる。 「2056年……彗星衝突。2099年、ガイロス帝国が宣戦布告……、これ、歴史書?」 そして、次の文章、 「2100年、デススティンガー暴走……」 それが、目に入った時、 「……っ!?」 黒と赤の機体色、改造型と思しきジェノザウラー――プロトブレイカー、だったか?――が、荷電粒子砲を発射する。目標は? 知っている。デススティンガー。真オーガノイド。 ……何だ、この感じ? 怒り、憎しみ……違う。これは、悲しみ? 「――……っは!?」 周囲を見る。さっきと同じ、書庫の光景。 「……今のは……?」 さっきの本を見る。いつのまにか開いていた最後のページに、こう記されていた。 ――心に、刻みつけよ――
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/47.html
雨の音に混じって、別の音が聞こえる。 「……噴射音?」 この類の音を出すゾイドは一握りだ。ZAC2100年以降に開発された、T-Rex型ゾイドのホバー音。 のろのろと起き上がって、音のした方を見る。 赤いゾイド。 「……ぁ」 それが何か気付いた瞬間、私は逃げていた。 でも、所詮は人の姿での行動。すぐに追いつかれる。 「いやぁ……!」 感じていたのは、ただ純粋な恐怖。 何に対するかわからない、けれどどうしようもない恐怖を、その赤いゾイド……ジェノブレイカーから感じた。 コクピットから、男が降りてくる。確認するまでも無い、間違いない、一年前に出会ったあの男。 「来ないで……!!」 見たくない。あの夢を思い出したくない。 「やめて、やめてぇ!!」 逃げようとする私の腕を、男が掴む。 「……っ!」 延髄に衝撃。そこで、私の意識は消えた。 「ここは……?」 次に気付いたのは、ベッドの上。 「お気づきになられましたか?」 部屋の扉を開けて、少女が入って来た。私より多少背が高く、10代半ばくらいの銀髪の少女。 「お召し物は今、洗濯しておりますので……。乾くまではこちらを」 そう言って、少女はベッドサイドの台に着る物一式を置いた。 「私……、どうして」 「覚えておられませんか? リッツさんがここまで運ばれて来ました」 やっぱり……、そうか。 「……生きてるよね」 「え?」 「彼……、生きてる、よね……」 「ええ……。お呼びしましょうか?」 ……夢は夢でしかない。今、リッツは生きている。 殺してない。 「……うん」 「では、そちらをお召しになって……。そのままで殿方と会われるのは、ちょっと」 言われて、ようやく自分の状態を思い出した 「あ……」 何も着ていないんだった。 「ごめんなさい……」 リッツ・ルンシュテッドが部屋に入って来るなり、私は彼に謝った。何故そうしたのかわからないけど、謝らなきゃいけないと思った。 「……何があった?」 しばらくの沈黙を挟んで、リッツが聞いた。 言葉にするとなると、ひどく難しく感じる。 一つずつ、話した。タウ高原での、管理局員との遭遇。襲撃。小さな街での、リンネとの出会い。悪夢。二度目の襲撃、そしてシエナの裏切り。 最後に、また行ってしまった殺戮。 「……ねえ、やっぱり私は破壊者でしかないのかな」 つい、聞いてしまった。あまり意味のない問いではあると自覚していたけれど。 「だったらどうして、私は……」 この姿になったのか。人の身体になってまで、破壊を望むのか。 「……俺は昔、君に会った事がある。いや、正確には君ではなく、アルフィーネという存在に、だが」 リッツが紡いだのは、問いへの答えではなかった。 「11年前、俺とルイゼ……ジェノブレイカー、そしてブレードライガーがデススティンガーと戦った時だ。アルフィーネは、俺達人間を異物として、本能に従って世界を造り替えようとしていた。我々にとっては、まぎれもない破壊者だった。」 記憶を紐解くが、思い出せない。アルフィーネ……私の名前の由来となった言葉だが、私自身は「アルフィ」と名乗りこそすれ、「アルフィーネ」とは名乗っていない。 「楽にしてほしい、死にたい、子供達と同じ思いを……。俺と出会った時、君はこう言った」 確かに言った。一年前、あの墓標で彼と出会った時に。 「これは人間の思考だ。『生きたい』という生命の本能から、完全に外れている」 本能に反する感情……。今まで意識した事は無かったが、確かに私の思考は、時として本能から遠ざかった行動を生む。あの時ウェンの銃弾を自分から浴びたのも、その一つかも知れない。 「君とアルフィーネは、別の存在だと俺は思う。……俺は、だがな」 念押し。根拠も無ければ証拠も無い。 けれど、少しだけ気分が楽になった。 「……ありがと」 そこで、不意に気になる事が浮かんだ。 「ねえリッツ、ゾイドコアを人間に移植するって……、あなた、知ってる?」 「ゾイドコアの移植だと……?」 リッツの顔が歪んだ。 「聞いたことは無いが……。事実だとしたら、大変な事だ」 と、 「話は済んだかね、リッツ」 新たな入室者。 「先生!」 杖をつき、白衣を着た老人。髪はもう後頭部に僅かしか無いが、皺は少ないためあまり老けている感じがしない。左目のモノクルが印象的だった。 「お前さん、エーマという人物を知っているか?」 「エーマ?」 先生と呼ばれた老人は、私にそう聞いてきた。 「東方大陸のZOITECでキメラブロックスを開発したという科学者だ。そいつの私的な研究機関が、コアの移植実験をやっていたという話がある」 「本当ですか、先生!?」 思わぬところで、手がかりを見つけた。 「その機関は、どこに?」 「慌てるな……。私的と言ったろう、詳しい所在は不明。だが……、エーマはZOITECから抜けた後、北極に居を構えている。北……だな」 「北……」 もしその機関が、本当にゾイドコアと人間の融合を研究・実験しているとすれば。 「恐らく完全な融合にお前さんが必要なのだろう……、デススティンガーの娘」 「なッ……!?」 聞かれていた? 「今は町医者だが、これでも科学者の端くれでな。診察した時点で気付いたよ」 「あなたは……、何者なの?」 ただの医者でも、科学者でもない。モノクルの無い右の瞳が、そう語っている。 「わしの名はF……、ドクトルFだ」
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/68.html
「狼の身体? 貴方達、虎よね……」 銀髪の少女が、白い虎に問いかける。 『……言うな竜王の娘。さっきも言ったが、驚いたのは我自身だ』 「そうねぇ……、私もいきなり虎の身体になったら、それはそれで驚くのだろうけど」 苦笑しながら、銀髪の少女。声自体は無いが、虎達も笑っているように感じられた。 ブルーシティ、ZOITEC本社地下。ゾイドロードから直結するここには、大規模な格納庫と実験場が存在する。 「……エクステリア・アーネさんの依頼で来たのだけれど……」 その実験場とゾイドロードを繋ぐゲートに、一機のグスタフが差し掛かった。 「はい、お話は伺っております。先導の車に従って進んで下さい」 守衛がゲートを操作し、待機していた先導車がゆっくりと走り出す。 「はー……、物凄い設備だこと」 グスタフの助手席に座る淡い茶髪の女性……傍目に見て少女だが、今年で26になる……リエル・フィアットが、キャノピー越しに見える設備に嘆息する。 「そりゃ、世界でも有数の大企業だからな。大規模にもなるさ」 答えるのは、グスタフの操縦席に座る黒髪の男、リオーネ・フィンチ。当年24。 彼らは合法・非合法問わず、他者の依頼により仕事を請け負う現代の傭兵……猟兵を生業としている。とある経緯からここで開発実験中の新型機を知り、ここまでの護衛を引き受けた上で改めて仕事に来たのだった。 「しかし……古代種か。噂だけだと思ってたんだが」 「あたしもあたしもー」 現在の文明が発祥するより以前に、より高度な文明が存在していたという学説は、未だに珍説として扱われている。だが、かつての戦争で利用された遺産……オーガノイドシステムを始めとした証拠が存在するのも事実。恐らくソレもその一つなのだろう、とリオーネは結論付けた。それでは、護衛を頼むのも致し方ない。 「おっと、どうやら着いたようだな」 先導車が止まり、前方のゲートが開く。その先にあったのは、地下とは思えぬ広大な実験場と、何機かの四足獣型ゾイドが駐機されているハンガーだった。 「にしても、わざわざ起動実験に同伴してくれってのは、どういう事なんだろうね?」 「動ける人間が欲しいんだろうよ。いざって時に、な」 古代種ともなれば、極めて未知の部分が多い。場合によっては暴走などの危険もあるだろう。エクステリア・アーネと名乗ったあの女性――このプロジェクトの責任者で、ZOITECの社長令嬢らしい――は、『制御システムは理論上完成している』と言ってはいたが。 「リオーネ、降りるよ」 「ん、ああ。そうだな」 柄にも無く考え込んでしまったようだと思いつつ、リエルに続いてリオーネもグスタフから降りる。 「こちらでお待ち下さい」 係員に通された、管制室に併設された応接スペースの椅子に二人は腰を下ろす。程なくして扉が開き、ブロンドの髪を伸ばしたスーツ姿の女性が入って来た。エクステリア・アーネ、リエルとリオーネに仕事を依頼した張本人で、ZOITECの社長令嬢である。 「お待たせして申し訳ありません」 エクステリアは抱えた書類束やファイルを慌しくテーブルに置き、二人に向き直る。 「では早速ですが、依頼の内容について……」 と、エクステリアが席につき話し始めた瞬間、 「――おわっ!?」 下から突き上げるような振動が、応接スペースを……いや、管制室、あるいは地下施設全体を襲った。 「な、何事ですか!?」 「閉鎖区画から、所属不明のゾイドによる攻撃を受けているようです」 素早く部屋に入って来たエクステリアのSPが、状況を端的に告げる。だが、サングラスに覆われた表情には若干以上の動揺が見て取れた。 「お嬢様、ここは危険です。シェルターへ……」 「待って下さい、もしZI-ARMS社の仕業だとしたら、ワイツウルフは……!!」 「現在、守備隊が第二防衛ラインを固めています。イミテイドも起動をかけていますので、万が一にもワイツウルフに奴らの目が向く事は無いでしょう」 「……なら、せめて管制室へ。状況を知りたいわ」 エクステリアとSPの間で緊迫した会話が繰り広げられる、その隣では、 「ねー、こんだけ派手にやって上の人たち気付かないわけ?」 「シティ自体が階層構造だし、間に制震システムが目一杯あるからな、気付かないだろ。上は平和で下は戦争、どーこだ? ってな」 「ブルーシティ?」 「正解」 猟兵二人が、いまひとつ緊張感の無い会話を交わしていた。 『駄目だ、3番機行動不能……!』 『奴に近付くな! 電装品を丸々やられるぞ!!』 『ぐわっ……!! くそ、離れても撃てるのか!?』 管制室に響き渡る、守備隊の無線。その全てが、たった一機のゾイドにいいように蹂躙される無様な状況を示していた。 「どうなっているのです!?」 「……無線の内容から推察するに、電磁兵器だろう」 エクステリアの疑問に答えたのはリオーネだ。彼はエクステリアに連れられ管制室に入った瞬間から、溢れる情報を最大限に拾って状況把握に努めていた。 「イミテイドは!?」 「駄目です、通信が途絶。シグナルもロストしています……!」 オペレーターがうろたえた声で伝える。イミテイド――偽物、この名前から、詳しくは聞かされていないが要するに本物……恐らく例の古代ゾイドコアから目を逸らすためのダミーだな、とリオーネは推察する。そしてその通信が途絶しシグナルも消えたとなれば、偽者だとバレた……そう考えていい。 ――と、突如として激しいスパーク音と共に、管制室の照明、モニター、ランプ……ありとあらゆる電気機器が『落ちた』。 「きゃっ、な、何!?」 大音量と、急に訪れた暗闇にエクステリアが思わず悲鳴を上げる。少しして、やや光度を落として照明が復活した。 「電力供給が断たれました……。恐らく、パワーラインに意図的に負荷をかけたのでしょう。今、非常用の電源に切り替えています」 「電気の扱いに長けているなら、十中八九奴の仕業だな」 オペレーターの報告に、リオーネが補足する。 「……ねえ、もうバレたんだよね?」 「ああ、バレただろうな」 不意に、ここまで黙っていたリエルが口を開いた。かなり端折った物言いだが、リオーネは問題なく意図を汲み取る。すなわち、『イミテイドが偽物だとバレた』と。 「アーネさん、ワイツウルフ動かせる?」 「ど、どうするつもりですか?」 「四の五の言ってる時間が無い。動かせるなら、使って迎撃するしか無いよ」 リエルは、ワイツウルフが敵の目的ならばいっそそれを使って襲撃者を迎え撃つ、あるいは撃退する事を提案した。 「古代種のコア、載せてるんでしょ? 並みのゾイドよりよっぽど強いって聞いたけど」 「し……、しかし、今は駄目です。サビンガが居なければ……!」 「サビンガ?」 「古代種は、本来は虎型です。しかしあまりに出力が高すぎて、安全性を考慮した結果制御システムを別のゾイドに搭載することに」 「御託はいいから。サビンガってのは、何処にあるの?」 エクステリアの説明を遮り、リエルが詰め寄る。 「……第七ハンガーです」 「よし、そっちには俺が行こう」 言うが早いか、リオーネは管制室を飛び出した。 「ま、待って下さい! 制御システム自体はまだ……!」 「あたしたちの仕事は、起動実験に立ち会うこと」 止めようとするエクステリアを、リエルが制する。 「仕事を成立させるために仕事するってのも変だけど……、そうしないと報酬貰えないし。なにより、ここで何もせず見てるだけってのはすっごく気に食わない」 リエルの静かな、しかし確かに込められた怒りに押され、エクステリアは黙ってしまう。 「いいよね? ワイツウルフ、借りるよ」 そしてリエルも、駐機ハンガーへと駆け出した。 「お嬢様、よろしいのですか?」 「……任せましょう。先日、砂漠で我々を救ってくれたのはあの二人です」 「は。ではお嬢様、シェルターへ……」 「おい、何してる!?」 「責任者の許可は取ったよ。早くハッチ開けて!」 駐機されているワイツウルフの頭部によじ登り、リエルは整備員に叫ぶ。 「待て、さっきの停電のせいで電源が繋げん。機体のAPU(アシストパワーユニット)じゃ起動が間に合わん!」 襲撃者は、既に隔壁二つ先まで迫っていた。悠長に起動を待っていたら、間違いなく間に合わないだろう。 まともな方法でやれば、だが。 「間に合わせる。あたしが間に合わせる!」 リエルの特技の一つが、寝ている生き物を起こすこと。それは人間のみならず、ゾイドに対しても適応する。 「緊急起動シークエンス開始。APU作動、チャージャーのラインをゾイドコアに直結。メインエンジン始動、アイドルアップ開始……」 めまぐるしくキーボードを叩き、各種のパネルやボタンを操作する。あらかじめ停止状態のゾイドを緊急起動させるのとは違う、文字通り『眠っているゾイドを起こす』作業を、リエルは通常の2倍以上の速度でやってのけた。 「エンジン臨界……、ウェイクアップ! 行くよ、ワイツウルフ!!」 コンソールに、次々と光が点る。関節を固定するサーボが回転し、隙間から白い光を放つ。機体を固定するアームが外され、窮屈だったとでも言わんばかりに、白い狼が身体を揺すった。 ほぼ同時に、最後の隔壁が破られた。襲撃者が、ハンガーに飛び込んでくる。赤いゾイドだ。外見は竜。ひどく刺々しい装甲を纏っている。 その竜が、低空を滑空しワイツウルフに襲い掛かった。 「――っ!」 想像以上に速く、鋭い動き。咄嗟に避けるが、起き抜けで寝ぼけ状態のワイツウルフの反応は鈍い。 にもかかわらず、ワイツウルフはリエルの操縦に反応し、竜の突撃を確実にかわした。 「なに、こいつ……?」 リエルは薄ら寒いものを感じる。対峙する竜に、では無い。今操っている、狼にだ。 「っと!?」 だが、竜はそんな事を考える暇を与えてはくれなかった。両の前足に装備された砲塔……のような何かから、激しい雷を放つ。 「くぅ……」 音は光より遅い。それは覆せない理屈だ。光より速いのは希望(のぞみ)だけだと言ったのは、果たして何処の誰だったか。 リエルが『見て』避けてから、遅れてスパーク音が通り抜ける。これでは、リエルの『もう一つの特技』を活かすどころではない。 「しまっ、た……!!」 避けて避けて、ついにワイツウルフが雷撃に捕らえられた。咄嗟に電装品をシールドしたが、全て守りきるには足りない。コマンドシステムが一時的にフリーズする。 「ヤバっ……」 リエルの眼前に、赤い竜が迫る。万事休す、しかしその瞬間、竜の鼻先を白い飛翔体が突っ切った。 「――しめた!」 竜の意識がそちらに向いた瞬間、幸運な事にシステムが復活した。首が上がっている、竜に向けて背部のエレクトロンキャノンを放つ。 閃光、爆音。狼より一回り大きいであろう竜が、一撃で後ろに吹っ飛んだ。 「……ヤバいんじゃないの、これ?」 『リエル!』 「っと、リオーネ!?」 その威力に放心したリエルの意識を、リオーネが引っ張り戻す。 『こいつがサビンガだそうだ。いいか、今から言うコードを打ちこめ!』 「おっけー!」 リオーネが叫ぶ不規則な文字と数字の羅列を、リエルは正確に打ちこんでゆく。そして最後の文字を入れた瞬間、ワイツウルフとサビンガが引き寄せられるように、勝手に動いた。 『うおっ!?』 「っとと、何!?」 リエルの視線の先で、リオーネの乗ったサビンガがバラバラになる。ちらっとブロックが見えたから、サビンガはブロックスなのだろう。 ……まさか、B-CAS? その予想通り、サビンガのパーツが幾つかワイツウルフに合体する。ウルフの方も、肩のフラップが足先に、尻尾の装甲が前脚に置き換わり、後脚、腹部、背部、そして頭部にサビンガのパーツが組み込まれた。 「……これが、ワイツウルフの」 『真の姿……!?』 リエルとリオーネの声が重なった。 復旧したのか、竜が再び攻撃をかける。こけおどしが、とでも言わんばかりの、最初と同じ高速突撃。だが、最初と違うのはリエルがそれを避けないこと。 「――っだあ!!」 一撃。 前脚を振り出すその一撃で、竜は逆方向へ吹っ飛ばされた。 ズン、と脚を踏みしめる。そこに立っているのは、ウルフではない。白き装甲に身を包んだ、気高き虎。 その名を、 「ワイツタイガー……!」 「……ボブ」 「ああ、わかっている」 シェルターに避難していたエクステリアは、SPの二人が武器を取り出すのを見て慌てて問いかける。 「ど、どうしたのですか?」 「お嬢様、どうやら侵入者です。私とダグラスで迎え撃ちます」 「ここで動かぬよう、お待ち下さい」 確かに、この二人は対人戦に関してはスペシャリストだと言う。ならば、任せても大丈夫だろう。 「わかりました」 軽く頷き、二人のSPがシェルターから出る。 ……そして、五分ほど経っただろうか。不意に物音がして、エクステリアは外に声を放った。 「ボブ? ダグラス?」 だが、入って来たのは二人のSPではなかった。小柄な身体に外套を羽織った、黒髪と紅い瞳の少女。 「あ、貴女は……」 「エクステリア・アーネ?」 「え、ええ、そうですが……」 エクステリアの疑問は無視し、少女はそれを確かめた後、宣告した。 「依頼に基づき、貴女を拘束する」 何を、というエクステリアの問いが発せられる前に。 少女の肘が鳩尾を突き、エクステリアは昏倒した。 「……こちら『蠍娘』。対象の身柄を確保。後は頼んだよ」 動く者の居ないシェルターに、少女の声だけが響いた。
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/45.html
この街に滞在して4日目。ようやく、管理局からの返信が来たらしい。戦闘にも備えた、特別編成のチームを派遣したと。ちなみにシエナが言うには、これでも速い方だそうだ。 タウ高原の、野良ゾイドの異常発生。あれ以降、急にそれが途絶えたという。気がかりと言えば気がかりだし、そうでないと言えばそうでない。 というのも、別の悩みがあるからだ。私の事を彼らにどう説明すべきか、未だにいい考えが浮かばない。 (それで、またボクの所に来たと) 「うん」 相談する相手といえば、リンネくらいしか思いつかなかった。 (……でも、いくらボクでもいい考えなんてないよ?) そりゃそうだよね。 リッツ・ルンシュテッドのように、私の事……デススティンガーを多少なりとも知っている人間に対してなら、ある程度は上手く説明できる。 ところが、デススティンガーに関する情報は、民間レベルでは全く手に入らない。シエナやロナルドにそれとなく聞いてはみたものの、「知らない」の答えしか返ってこなかった。 「……むー」 さてどうするか。デススティンガーの事から説明する。これが一番、確実。ただし、時間がかかる上、私自身あまり思い出したくない記憶でもあり、上手く説明できるかわからない。 これまでのように、一部をぼかして話す。ロナルドには、既に私が「人間ではない」事を言っているし、ウェンにも竜の姿を見せている。シエナにはEシールドも見せてるし……。だったら話さない方がいい気がしてきた。 (……いいんじゃないの、話さなくても) 堂々巡りしていると、リンネの声が聞こえる。 (アルフィが人間でいたいなら、人間として振舞っても、別にいいとボクは思う) 「……ん」 人間として振舞う。私がこの姿になってから、そうせざるを得なかった。何故か人並みの知識は持っていたし、人間の生活行動も覚えていた。 不意に、何かモヤモヤした感覚が来る。大事な事を忘れているような。私の根底に流れる何か、とても大事な事を。 その感覚を。 「……アルフィさん!!」 シエナの叫びが遮った。 派遣された管理局の調査チームが襲撃され、SOS信号が発せられたという。ここから西に約30㎞の地点。私が竜形態で飛ぶのが一番速い。すぐに向かった。 「……ひどいな、これは」 思わず口にしてしまう。 戦闘にも対応できるといっても、やはり所詮は非武装の組織。ゾイド達の、そしてそれらに乗っていた人間の屍が、累々とそこにあった。 容赦のない攻撃、という印象がある。生存者はゼロ。ゾイドはコアを撃ち抜かれ、人間はコクピットに銃撃を受け、死んでいた。 「……助けられなかったな」 どうしても、気分が暗くなる。おまけにこの容赦のない破壊の跡が、否応なしに私の記憶を抉り、破壊者だった時を思い出させる。 「冷静になれ、私」 頭を振って、嫌な考えを引っ込める。 弾痕などから推察するに、ゾイドを葬ったのは長距離かつ高出力のビーム。グスタフの装甲すら一撃で貫いたということは、荷電粒子砲の可能性もある。 だが、コクピットを撃ち抜いて人間を殺した武器は、すぐに正体が判別した。 共和国製の、40ミリヘビーマシンガン。……ステルスバイパーだ。 「あの連中か……?」 先日交戦した、正体不明の組織。 通信のログか何か残っていないか、私はグスタフのコクピットを開ける。死臭が漂って来た。 「……?」 何か、おかしい。 コアが活動を停止したため、計器やモニターも軒並み止まっている。操縦レコーダーを解析すれば何かわかるかもしれないが、待っていられなかった。 「……ごめん」 本来やってはいけないこと。私は停止したコアに、少しだけ力を注ぐ。 計器が復活する。 「え、っ……?」 その一つが示した内容に、思わず呆けた声が出た。 「……さすがに、軍に通報した方がいいんじゃないか?」 先にプテラスから降りたロナルドが、同じく降りてくるウェンとシエナに言う。そういや、複座型プテラスって「定員は3名まで」だったっけ。 「いや、しなくていい」 頭に浮かんだ意味の無い考えを追いやり、私は口を開く。 「アルフィ?」 「どういうことだ?」 ロナルド、そしてウェンが私に問う。 「……尻尾は掴んだ。間抜けな襲撃者さんのおかげで」 そして私は、ここで今まで一言も発していない人物に向き直る。 「そうだよね、シエナ・ホワイトアロー」 「……何の、事ですか?」 少し置いて、シエナの返答。 「君が、私にSOSの事を伝えてくれた。そして、ロナルドとウェンにも君が伝えた」 「確かに、その時通信の担当だったのは私ですから……そうですけど」 「……でも、SOSなんて、彼らは出してなんかないんだよ」 シエナの顔に焦りが一瞬浮かび、すぐに戻る。 「そんなはず無いだろう。こっちのグスタフには、きちんと」 「画面を細工するなり何なりで、いくらでも偽装できるよ」 ウェンが横から口を挟む。それに反論して、再びシエナを見る。 「……何を根拠に、そんな事を」 そう言うシエナに、一枚の紙を渡す。破壊されたグスタフのコアをほんの少しだけ活性化させ、通信ログをプリントアウトしたものだ。 「管理局仕様の機体に、こういう機能があって助かった」 同じ物を、ロナルドにも渡す。 「……確かに、SOS発信という記録はない」 「こ、これこそ、いくらでも偽装できるものじゃないですか!」 「そう? 私はこのグスタフのナンバー、今知ったばかりなんだけど。君達が来るまでの僅かな時間で、これを用意できると思う?」 次第に、ロナルドのシエナに向ける目が、疑いを濃くしてゆく。 「……私に『こういう事』ができるとは思ってなかったんだろうけどね。見破られる心配は無いと踏んで、ログの消去は行わなかった」 つまり、こういう事。 「君は、今回の襲撃者と内通しているね? ……シエナ・ホワイトアロー」
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/73.html
治安維持局本局によるゴジュラスギガ強襲作戦は、人工的に磁気嵐を発生させるマグネジャマーによって失敗。武装勢力側に、12機のゴジュラスギガを奪取されるという結果に終わる。 市民の安全確保、ゴジュラスギガの奪還。奔走するニカイドス局チーフ、アラド・イクサスのもとに、本局からオブザーバーとして一人の女性が送られる。 「……いいご身分ですね。恋人同伴で御仕事ですか?」 「はい……?」 本局のオブザーバー、ミリア・クライナードと名乗った女性の放った言葉に、アラドは間抜けな声を返した。 「いや、恋人って……どこに?」 「そこにいるじゃないですか、お隣に!」 言われるまま、アラドは視線を隣のイリアスに向ける。はて、恋人? 自分とイリアスが? いや、いくらなんでもそれは無いだろう。確かに仕事仲間だし、さっきまで同じコクピットに収まっていたわけだが、恋人と見られるとは思えない。 ……自分を見るイリアスの視線が、どこか呆れたように見えるのは気のせいか。 「彼女はイリアス・パーファシー、ニカイドス局の民間委託局員だ。成り行きで行動を共にしてるだけで」 「……はぁ、そうですか」 酷く呆れたような声。いずれにせよこのオブザーバーの、アラドに対する第一印象はあまり良いものでは無いらしい。 「……それより、本局は一体何を考えているんだ?」 それはともかく、アラドはまず本局の行動を問い詰めた。 「ゴジュラスギガを、無人のキルモードで投下したな? こちらへの通達も、ニビル市への勧告も無しに。結果的には市民の被害は無かったが、もしあのままギガが進撃していたら大変な事になっていた!」 「……隊長の指示ですから、拒否する理由もありません」 「ならその隊長と話をさせろ! 上と下でろくな連携も取らないで、まともに対処出来るか!」 淡々としたミリアの言い様に、アラドの怒りは増してゆく。左遷された地とはいえ、守るべき土地の市民が無差別に攻撃される所だったのだから、当然と言えば当然だ。 「まだその時ではありません。私の目的は、あくまであなた方ニカイドス局への支援です!」 「監視、と言い換えたらどうだ!? 自信満々にギガを投下して、見事に失敗したから俺達に任せようとしたんだろう!」 先のハインツがミリアに与えた指令を考えればこのアラドの言い分も当たってはいるのだが、なまじ売り言葉に買い言葉。双方共に頭に血が上り、止まらなくなりそうな応酬を治めたのは、 「――っ、はいそこまで!!」 アラドも耳にした事の無い、イリアスの大声だった。 「お気持ちはわかりますけど、今は抑えてもらえませんか? 現状、ニカイドス局の局員に指示を出せるのは貴方だけです、アラドさん」 ハインツ・ベッカーに対しての解説と同じように、平淡にイリアスは言う。考えてみれば、彼女はニビル市で暮らしている。友人も市内に居ると言っていた。アラド以上に、ニビル市が蹂躙されるのは許せないはずだ。 そのイリアスがこうして冷静にしていて、自分がこのザマでは情けないにも程がある。そう思うと、アラドの頭は急速に冷えていった。 「貴女も……、クライナードさん、でしたか? 貴女も、もう少しこちらの気持ちも考えて頂けませんか? 事件解決のためとはいえ、無条件殺傷設定のゴジュラスギガを12機も放り落とされるのは……、正直、いい気分じゃありません」 ミリアも、気まずげに顔を伏せる。どうやら互いに熱くなりすぎていたのに気付いたようだった。 「ともかく……、もう少し市内が見える場所に移動しませんか?」 『リーダー! 最後の調整も終わりましたぜ!』 トライデント社試験場。楕円形の、スタジアム状の形をしたそこでは、ライオット達武装グループにより、奪取したゴジュラスギガの最終調整が行われていた。 「おう、ご苦労!」 無人運用されていたゴジュラスギガを、本来の有人仕様に戻す。ハードウェア的な処置としては、コクピットに据え付けられた無人操縦装置を取っ払うだけだが、ソフトウェア面では少々面倒な調整もある。各種入力デバイスからの反応速度、モニターの表示やアクチュエーター類の設定など、搭乗者の有無で変わる部分はきちんと直さねばならない。そうしないと、機体の性能を存分に発揮出来ないのだ。 「しかし……、本局仕様のゴジュラスギガか。いい機体だな、戦争のし甲斐がある」 ギガのコクピットに座るライオットは、満足げに呟いた。 「どうだい社長! 圧巻だろう、こいつぁ!!」 外部スピーカーを通じて、下にいるフレッドに声をかける。特に意味は無い、強いて言うなら自慢したかっただけだろう。 『一体……、君は何が目的なんだ!?』 外の声もしっかり拾う。集音性も高いようだ。 「さっきも言ったろうが……。俺は戦争をやるんだよ、こいつでな」 『馬鹿げている、そんな事が出来るはずが……』 「別に向こうさんがそう思ってくれる必要はねえ。要は俺が戦いたいだけだ。ゾイドバトルでも非合法バトルでもなく……、戦争ってヤツをな」 ライオットにとって、もはやまともな戦いは飢えも渇きも癒せないものに成り下がっていた。戦いにのみ快楽を見出し、その中で生きてきた男にとって、その自我を安定させられるのはやはり戦いでしかない。それも、自身が全く知らないレベルの戦い。だからそれを自ら行う。まるでパーティーのように。 まともではない戦い。ルールもレギュレーションも存在せず、己の力の全てを出し尽くして生き延びる戦い。ライオットがこれを「戦争」と呼ぶのは、単に他の呼び名を知らないからだった。 『……その先に何がある? 君は死に場所を求めているのか』 「はっ、馬鹿言いなさんな」 その上で、この男は考える。戦っている時のみ、自分は精神的に生きていると実感出来る。そして戦うには、自身が生物学的に生きているのが必須条件だった。死後の世界とやらでも戦えるなら話は別だが、そんなものを信じるほどライオットは夢想家ではない。 「俺は生きるために戦ってんだ。戦うために生きてるんだよ!」 故にこそ、ライオット・アレクセイは「死」をもっとも恐れていた。 「……友達が気になるかい?」 ニビル市内を展望出来る高台への移動中、アロザウラーのコクピット。同乗しているイリアスがしきりに携帯電話を取り出しては戻すのを見て、アラドは声をかけた。 「ええ、まあ……。心配しても仕方ないのは理解しているつもりですけれど」 人工的な磁気嵐の影響か、未だに電波状況は良くない。市内からの通話は不確実だろうし、そもそもイリアスは仕事中の身、連絡をとるのも気が引けるのだろう。 「ポイントに着くまでもう少しある。気になるなら、電話してもいい」 「いえ、やめておきます。どうせ繋がらないでしょうし」 と言いつつも、携帯をいじるのはやめようとしない。 「大事な友達なんだな」 「そうですね……。私もその子も、家族とか居ませんし」 藪をつついた結果が地雷だったらしい。明らかにトーンダウンしたイリアスの口調に、アラドは慌ててフォローを入れる。 「す、すまない。余計な事を……」 「構いませんよ、別に。……だからですかね、余計に大事なんですよ、その子。多分、私が抱えているものを共有できる唯一の相手だから。だから親友……、ううん、盟友、かな」 「盟友、か」 アラドは思う。果たして自分の人生に、そう呼べる人物は居るだろうか? 居ない。少なくとも今の時点では。そう思うと、不謹慎だがイリアスの事が少し羨ましくもなる。 「もっとも、向こうがどう思っているかはわかりませんけどね」 「っえっくし!」 黒髪の少女のくしゃみが響いた。頭痛が治まったかと思えばコレだ。どこかで噂でもされてるんだろうかと、アルフィは思った。 「本当に大丈夫かい? 風邪薬なら持ってるよ」 「ああ、うん……。本当に大丈夫だから」 自分でも理解しているが、未だに他人の好意というものには慣れていない。隣席の老婆からの気遣いに感謝し戸惑いつつ、アルフィは鼻を啜った。 (さて……、これはアレが止まったのか、それとも私が慣れたのか……どっちかな?) なにぶん今まで磁気嵐の真っ只中に入った事など無いのだから、頭痛が治まったからといって例のジャマーが止まったと考えるのは早計だ。今の所、考えても仕方が無い話でもあるが。とはいえ他にすることも無い以上、現状の確認はやっておいて損は無いはずだ。 『……ニビル市市民に告げる。これより、市外へと出てもらう』 つらつらと考えるアルフィの耳に、カウンターに 置かれたラジオからの声が聞こえた。 (電波ラジオ……、ってことは、ジャマーは止まってる) 『繰り返す、市民の諸君はこれより外に出てもらう。我々の誘導に従い……』 次第にあちこちからざわめきが聞こえだす。事態が大きく動こうとしているようだ。 (……ここからだね、母さん) 外套の内側、そこに入れた、折り畳んだ数枚の原稿用紙。その存在を確かめつつ、アルフィは一人決意を新たにした。