約 7,335 件
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/42.html
戦争という言葉は、もう過去のものになって久しい。どういう経緯でそうなったのか定かではないが、少なくともZAC2312年現在の惑星Ziは、平和だった。 でありながら、人という生き物は、戦いそのものを求める時がある。生存本能に根ざした行動か、敵に勝つことに対する喜びか。 人々はそれらの「戦闘欲」とでも言うべき欲求を、限定された戦い――ゾイドバトルと呼ばれる戦いで満たそうとする。だが、それは所詮「試合」。それでは満たされない者達もいる。 だから、彼らにはこうしたアンダーグラウンドな「戦場」が必要になる。 でも、足りない。 愛機であるヘルキャットのコクピットで、ライオット・アレクセイはそう考えた。 幾度となく続いた戦乱により、廃墟と化した都市はいくらでも存在する。暗黒大陸、ヴァーヌ平野に位置するセスリムニルも、そのひとつ。 彼ら非合法なZiファイターにとって、これらの都市は絶好の戦場となった。 ここにルールなどない。 息を潜め、感覚を研ぎ澄まし、周囲を窺う。この緊張感が、たまらなく楽しい。 撃たれたら、そこで終わり。文字通り、全てが終わる。この戦いも、自分の人生も。 (――面白いじゃねえか) だからこそ楽しい。 「……!」 ギリギリまで張り詰めた緊張、高められた感覚が、それを捉える。 射程に入った瞬間、ためらいなく、ライオットは引き金を引いた。 閃光、そして爆音。 非合法に改造され、戦時仕様とほとんど変わらない出力のビームが、敵機のゾイドコアを貫く。同時に燃料にでも引火したのか、派手に爆発した。乗り手は助かるまい。 ……これで、何人目か。 数えようとして、やめた。そんな事に意味はない。興味もない。 (……次だ) 今の爆発で、こちらの位置が知れた可能性がある。面白い。今度はどうするか。一度逃げるか、誘い込むか。 次々とその光景を思い浮かべ、その中で、ライオットは楽しさと同時に、どこか満たされない気持ちもあった。 足りない。 もっと欲しい。 そんな思いが、少しずつ彼を支配していった。 『……次のニュースです。昨夜遅く、ニカイドス島マリネリス遺跡の外壁が、何者かにより爆破されるという事件がありました。治安維持局では、テロの可能性もあるとみて捜査を……』 街頭の大型モニターから流れるニュースを聞き流しつつ、ライオットは歩いた。広域手配された当初はあまり都市部には行かないようにしていたが、今となっては別にどうでもいい。仮に通報されても、治安局の手から逃げ切る自信はあった。 向かうのは、ここニビル市の地下街に位置する「ある組織」の拠点。 宗教団体だと聞いているが、ライオットにとって細かい話は別に必要ない。要は、自分のこの満たされない渇きと飢えをどうにか出来るか、それに尽きる。 地下街へ入り、事前に教えられたとおりの道順に進む。やがて、開発の末に放棄されたと思しき閉鎖区画に差し掛かる。 その奥に、その拠点はあった。 「……かつて、この星の人間は金属生命体を敬い、奉っておった」 簡素なテーブルを挟み、ライオットは宗教組織の代表者と向き合う。 「それが今は、金属生命体を改造し、使役し、あまつさえ戦いの道具としている」 初老を過ぎたと見える代表者の言葉を、ライオットは聞く振りをして聞いていなかった。お題目はどうだっていい。それゆえに、 「……本題に入ってもらおうか。俺に何をさせたい?」 「我々の存在を誇示するために、ある企業を襲撃して欲しい」 なかなか話がわかる相手のようだった。 「やり方は君に任せる。機材・人員は可能な限り融通しよう。引き受けてくれるかね?」 ゾクゾクと、高揚感が押し寄せてくる。ここまでの感覚は、久しく感じていなかった。 「ああ、いいだろう」 地下街から出て浴びる日の光も、自分を祝福しているかのようにライオットは感じた。 (……こいつぁ、戦争だ。それも俺が動かす、俺の戦争) 指定された企業の襲撃で終わらせるつもりは、更々無かった。それを皮切りに、世の中がどう動くか。自分に対し、治安維持局はどう対応するか。 楽しみは尽きない。 ZAC2312年。後の世に「ニカイドス・リベリオン」と記される事件が起こるまで、あと一ヶ月を切った頃。
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/8.html
@wikiにはいくつかの便利なプラグインがあります。 アーカイブ コメント ニュース 動画(Youtube) 編集履歴 関連ブログ これ以外のプラグインについては@wikiガイドをご覧ください = http //atwiki.jp/guide/
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/44.html
夜、ニビル市。さほど大きな都市でもないが、明かりは多い。 「ふう……、今日の予定は、これで終了かな?」 そのひとつ、中心部にほど近いオフィスビルの一室に、壮年の男と若い女性がいた。 「はい、社長。御苦労様です」 トライデント社は、主に競技用ゾイドのパーツ・装備のライセンス生産を行っている。ニカイドス唯一の、直接的にゾイドバトルと関わりを持つ企業といえる。 「どうだね、これから一杯」 社長と呼ばれた壮年の男が、グラスを傾ける仕草をする。 「……社長、私は未成年です。……一応」 「はっは、そういうことになっていたか」 女性の突っ込みにも、気を害した風でもなく、穏やかに笑う。 フレッド・スターン。トライデントの社長であり、女性……ソナタの、現在の保護者である。 「でも、社長には感謝しています」 「何だね、いきなり」 「身寄りの無い私を育ててくださって、こうして秘書のお仕事まで……」 ソナタは、フレッドが12年前に偶然保護した、いわゆるストリートチルドレンだった。当初はフレッドの申し出を断っていたのだが、フレッドの強引かつ粘り強い説得により折れ、今に至る。 「……本音を言えば、他の子供達も引き取ってやりたかったんだが……。まだ私には、それだけの余裕はなかった」 「いえ、ご立派なお考えだと思います」 「はは、そう言ってくれると嬉しいね」 当のソナタも、今の生活には不満を感じていない。どころか、幸せであるとすら感じていた。 (……これで、私の背負う『さだめ』が無ければ) 「何か言ったかね?」 「あ、いいえ。何でもありません」 朴訥そうに見えて、フレッドは時々鋭い。今は考えまいと、ソナタは思う。 「……しかし、最近は物騒なニュースが多いな」 端末にニュースを表示させ、フレッドはため息を吐いた。 「大丈夫ですよ。ニカイドスは田舎ですし」 「……まあ、ね」 ソナタの若干ずれた返答に、一応フレッドも同意する。 「さて、私は格納庫をチェックしてくるから、君は先に外で待っていてくれ」 「わかりました」 星を眺めながら、ソナタはこれまでの自分の人生を振り返る。 この地に生まれ、特殊な血を引いているがゆえの、逃れ得ぬ『さだめ』。 守らなければならない秘密。 呪われた島の真実。 これらに縛られた自分を救ってくれたのは、間違いなくフレッドだった。 だからこそ、彼にその秘密を打ち明けるのは躊躇われた。 と、 (……何?) 不意に、違和感を覚えた。自分の中の、何かが騒いでいる。 振り返る。そこに、夜の闇にあってなお黒い髪の、少女がいた。 「あなたは……?」 反射的に、ソナタは少女に話しかけていた。そうせねばならないという、強迫観念じみたものが、ソナタの中にある。 小さな身体を覆う、旅塵にまみれた外套。無造作に、短めに切られた黒髪。そして真紅の瞳。 そんな外見の少女は、常軌を逸した怜悧な表情で、ソナタを見据える。 「……近く、大きな事件が起こる。あなたもそれに巻き込まれる」 少女の口から発せられた言葉は、聞いただけでは質の悪い占いか何かの類にしか聞こえない。しかし、少女の限りなく怜悧な目が、彼女の発するプレッシャーが、ソナタにその言葉を信じさせていた。 「それまでに、何かしろとは言わない。でも覚えておいて。諦めては駄目。必ず生きて。生きようとして」 それだけ言うと、少女は踵を返す。 「あ、ちょっと待って! あなたは一体……!」 ソナタの問いに、少女は一瞬だけ、逡巡するような仕草を見せた。そして肩越しに振り返り、言う。 「アルフィ・レジェッタ」 役者は揃い、舞台の幕が上がる。 ZAC2312年。かつて黒髪の少女の母が見た未来まで、あと二週間。
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/87.html
狭いとも広いとも言えないタイル張りの床と壁、端に据えられたバスタブと湯沸し器。 「――――」 その中心で、私は途方に暮れていた。 ――どうして、こんな状況になった? 地下――眠ったまま佇む黒い獣の元から離れ、警戒とも寂しさとも言える感銘に戸惑っていた中、あれよあれよと言う間に脱衣所に放り込まれ、大人しく風呂に入ら(従わ)なくては出してもらえそうな雰囲気だった為、流れに従う形で今に至るのだが――。 「……私がここに居る理由はあるのか?」 確かに厄介な事になりそうな窮地を助けられ、友人の言っていた感覚の正体らしき物を早々に発見できたのは僥倖以外の何物でもないが、だからと言って言われるがままにされる必要も無い筈だ。 「――よし」 出よう。 そして彼女がここに居る真意を確かめてから片腕を助け出し、トローヤに帰ろう。 そう決意して脱衣所のほうに目をやると磨硝子の向こうに青と白の色彩が見えた。 「――!?」 「アルフィ様、失礼致します」 反応しようとした時には扉を開けられていた。 「T4、と申します。 テーナ様からアルフィ様の御世話をする様にとの命を受けました」 「……は?」 ――テーナ(アイツ)の血縁者……? いや、違う。 似すぎている。 ――しかし、何でいきなり他人が入ってくる? ――そもそも名前が何かおかしく無いか? ――と言うよりも、今、何か危険な言葉が聴こえた気がする。 咄嗟に思い付くだけでも四つはある疑問に硬直している間に、T4と名乗った女性――私と同じ位の外見年齢をした彼女は、さも当然といった風に浴室に収まった。 「ここの機材は少々新しいので、御説明も必要かと思いましたので」 「いや、ちょっと待て」 状況に混乱し、浴室の端へと退ろうとするが、 「あと、洗いが甘いとテーナ様からも仰せつかっておりますので、お手伝いもさせて頂きます」 なにか、言い知れない間合いの取り方で――気が付いた時には至近に接近されていた。 「いや、だからちょっと待――」 「失礼します」 ――――この後の事は、ちょっと思い出したくない。 「――――」 人間(?)、崩れだしたら早いもので、もうどうにでもしてくれと心の中の何かが折れた瞬間、大体の事に耐えられるようになるらしい。 意図的に記憶の外に置いてある出来事が終わってからも穏便に事が済む筈も無く、T4が先に上がり、次に私が脱衣所に戻った時――私の服は無かった。 「T4……焼き方が上手くなったわねぇ」 「テーナ様の御教授があってこそです」 「…………」 そうして私は、代わりに配されていた服を着てここ食卓に居る。 リビングと呼ばれるものらしい広めの部屋に、彩り豊かな食卓を自分ともう二人――テーナとT4が囲み、テーナは私やT4の事を気にしながら賑やかに、T4は静かに受け答えしながら箸を進めている。 そんな中、私は人間の名前ではない名を抱く女性――T4の事を見据え、先程聴かされた彼女の生い立ちを思う。 ――最強のZA能力者の複製体にして、ゾイドコアを体内に埋め込まれた実験生物。 あの悪魔の研究が他の所でも推し進められていたという事実に行き場の無い怒りが湧いてくるが、その元凶はリバイン・アルバという組織の前身が既に潰してしまっている為に、本当に行き場が無い。 「……どうやら、あんまり満足して頂けていないようですね」 「――ぇ?」 唐突に発せられたテーナの言葉と視線に驚くと、思考によって箸が止まっていた事に気が付いた 「あ……そんな事、ない」 私の場合、生きていくのに必要が無い事から食料――その加工品である料理には無頓着であり、満足な食事をする事自体あまり多いとは言えないのだが、それでもテーナとT4の合作だというこれらの食事が豪勢だというのは理解できる。 「……よし、奥の手を出すわ。 T4、間違っても貴女は食べちゃダメよ?」 「もう、そんな子供ではありません」 「そうね、それじゃアルフィ……ちょっと待っててくださいね」 ――この後の衝撃を、私は一生忘れる事が無いだろう。
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/93.html
節をまたぎ登場する人物 アルフィ イリアス 一節の登場人物 アルフィ イリアス エミリオ・スパーク フーバー・シュタインベルグ ラグナ ローナ・レジェッタ 二節の登場人物 アルフィ イリアス 片腕(ゾイド) ウェン・ガーフィールド シエナ・ホワイトアロー ドクトルF リッツ・ルンシュテッド リンネ(ゾイド) ルイゼ(ゾイド) ロナルド・キーン 三節の登場人物 アルフィ アラド・イクサス イリアス ソナタ ハインツ・ベッカー フレッド・スターン ミリア・クライナード ライオット・アレクセイ 四節の登場人物 イリアス オペラ プーキー・マッコイ リュシー・シュタイナー 五節の登場人物 ???
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/81.html
白と紫のアクセントで塗装されたグスタフの横に足を付けた黒い獣から、私は同化中のテーナよりも先に機外へと出て、地上へと飛び降りる。 「君が古代種のオーガノイドか……」 その着地先――黒い獣の足元、グスタフの眼前で、私は赤い髪と瞳をした長身の男性からのそんな言葉を受け取った。 歳の頃は、多分30代――線の細い優男と呼ばれるような容貌をした背の高い男だ。 「――づっ!?」 だが、その姿を確りと認識した瞬間、私はあの頭痛――いや、今目の前にいる相手に対する自分の強すぎる殺意に顔をしかめ、片膝を付く。 「……そうあからさまな感情をぶつけられると、此方も黙ってはいられんな」 相手も同じ様に顔をしかめ、それと同時に言い様の無い険悪な雰囲気が場を支配し、一触即発とも思えるような緊張が二人の間に生まれようとした瞬間、 「ゼアル。 アルフィはあんまり為れていない子なんだから、下手に近づくと死ねるわよ?」 上方からテーナの声が落ちてくるのと同時に、彼女自身が私と男との間に降って来た。 男の姿を遮るように降り立ったテーナの姿は、大急ぎで服を着たのか皺や掛け忘れのボタンなどがチラホラ見えたが――今日まで傍にいたその悠然とした瞳を見上げる事で、彼女の先に居る男に対する殺意頭痛が僅かずつだが引いて行く。 「ゼアル、自己紹介は男の人からするのがマナーだと思うけれど?」 そんな中、私が落ち着いていくのを感じ取ったらしいテーナは、彼女の背面に立っている男にそんな言葉を促す。 「……私はゼアル・コーツ。 ま、察しは付くだろうが、君達が暴れまわっていた頃を知っている古代ゾイド人だ」 そうして、アルフィとゼアルとの初遭遇は険悪な雰囲気のまま終わり、彼女が乗ってきたレドラーは彼女の元に返される。 「……凄い、マグネッサーシステムや間接系の磨耗が完全に無くなってる」 「何処に行くかは知らないけれど、ニクシー基地周辺は迂回するように飛びなさい」 コックピットの中に座り、整備状態の高さに驚くアルフィに私はそんな言葉を預け、私は暖機状態を終えたレドラーから離れ、グスタフのトレーラに降りる。 「なんて言ったら良いか、判らないけれど……ありがとう」 「服、折角買ったんだからきちんと使いなさいね」 似合わない事を言う彼女に、私はそんな言葉を返すのと同時に「貴女は結構スペック高いんだから、一時の伴侶になる人でも引っ掛けて……もっと色々な事を知りなさいな」と、いった言葉を続けると、唖然としてように表情を失った後「善処してみる」と小さな言葉を返し、キャノピーを閉じる。 そうして僅かな間を開けた後、赤い機体が振動と高音域の騒音と共に浮かび上がり、ゆっくりと高度を上げて行く。 「じゃあね、アルフィ」 届く筈の無い言葉を私が口にした直後、十分な高度を取ったレドラーは高加速を開始する。 「……行ったな」 「ええ」 そうして彼女を乗せたレドラーは北西方面の空へと飛び上がり、更なる高所を目指し、目の届かない遠くへと飛び去っていく。 「……一応、感謝しておくわ。 捕獲されていたあの子のゾイドを引っ張って来てくれてありがとう」 「プリゼアのルールブレイカーの修繕や新技術開発の協力、しょっちゅう出張る困った代表の護衛……君には大きな借りがあるからな」 私がアルフィとの間に割って入ってからずっと私の後ろ側に立っていたゼアルは、肩を竦めながらそんな言葉を口にする。 言葉では謙遜染みていますが、自分の組織の中にある“物”とは言え、それを組織の人間に判らないように運び出すのは相当な苦労だったでしょうに。 「あら、だったら貸し一つ分くらいでT4の事を貰ってくれないかしら? 私と同じで良い女よ?」 彼がアルフィの事をとても恐れていた事、何でも無い事のように話す彼の甚大な努力――私はそれらを判らなかった風にして、私は自分の分身でもある彼女の事を売り込む。 人の人生は短い。 故に、早く私なんかとは縁を切った方が彼女の為であり、色々な所に話は振っているのだが――。 「……私まで骨抜きにされたら、誰が君らから世界を守るんだ?」 「ふふ、せいぜい頑張りなさいな」 どうにも私の関係者は私と敵対している存在である事が多く、この話はあんまり上手くいっていない。 ――そうして、レドラーが飛び去った後をどの位眺めていただろうか、 「……で、アイツはどうだった?」 ゼアルはあの子が去った空を眺めたまま、そんな問いを私に振ってくる。 「可愛い子だったわ。 できれば、ず~とお付き合いしたいわね」 私もその空を見続けたまま、問いの応えを返しながら今日までの事を思う。 シンシアのフルンティング(クレスト)が出張っているから、何事かと思ったけれど――昨日は中々に楽しいひと時だった。 「そうか。 ……だったら、あのレドラーに仕込んだ発信機のレコードは不要かな?」 「いいえ、ソレとこれとは話が別」 彼の冗談に対し、私も冗談を返すようなノリでその真実を口にするのと同時に、服の袖から昨日も使った一本の針を出す。 「代価として……コレ、上げるわ」 「針? ……いや、この先端は――」 「貴方方の作ったゾイドコアと反応する流体気化爆弾の極小版。 このサイズならば埋め込まれた事も判らない上、起動させれば人一人分ぐらいのサイズを“消失”させる事が出来るわね」 目聡く気がついた彼に一応の説明をしてあげながら、ソレを投げ渡す。 「……おい。 待て、まさか……」 「裏で私達の事を殺す事だけを考えている貴方と同じよ」 最初は料理に混ぜて一緒に飲ませたけれど、着せ替えさせながら調べた感じだと栄養として吸収するのと同時に無害化され――今度はこれを直接埋め込んでみたけれど、戦闘中に探っていた感じだと、どうやらこっちも無害化された感がある。 「まったく……流石はヤーウェが唯一怖いと思っている存在ね。 どんな再生能力してるんだか」 「……エクスリックスの市外で、姉妹のように振る舞っているのを目撃されたと聞いたが?」 「親愛で世界を回しながら、最悪の事は想定しておく。 これが最良な人間の行動でしょ?」 彼からは発せられた“答えの判っている”疑問に律儀に答えながら、私は懐からさっき拾った白い髪の毛を取り出す。 「それは?」 ゼアルが再び疑問の声を上げてから、ソレを自身の掌の中に強く握りこみ、 「……あの子の髪の毛。 いきなりヤーウェに取り込ませて大暴走なんて事になったら目も当てられないから、しばらくは私だけで解析するわ」 右手のみを半流体化させる事によってソレを私自身の中に取り込む。 「私に何かあったら“処分”はお願いするわね」 そんな確認を含めた私の言葉に、ゼアルは 「……そこまで強固に歪んでいると、逆に素晴らしく見えるよ」 最大限の皮肉と嘲笑を織り交ぜた言葉を返してくれた。 「あらら、私はず~とゼファーさんの物ですから、惚れられても困っちゃいますよ?」 「それをいつまで続けられるか見ものだな……それまで幻想に惚気てろ」 私は心からの本心で応え、彼もまた本心で応えを送り、 「もう行くわ。 あの子の帰る先の場所……後で教えてね」 「ああ。 そっちは代表やプリゼア嬢の事を頼む」 私達は最後の挨拶を交わし、彼はリバイン・アルバ所有のグスタフに、私は“自分”の中へと立ち戻り、それぞれの戻るべき場所、進むべき場所へと走り出す。 ――ただ、もし出来うるのならば……それら全ての策が無用になるような未来を望んでみましょうか。
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/59.html
皆様こんにちは、はじめましての方は、はじめまして。イリアスのゾイド講座、はじまります。 第四回、レッドホーンについての解説です。 ゼネバス帝国を代表するスティラコサウルス型ゾイド、レッドホーン。重装甲・重武装の突撃戦用ゾイドで、別名は「動く要塞」。その重装備ながら重量は94tと決して過重ではなく、非常にバランスのとれた機体といえます。 この機体の歴史は古く、原型機のロールアウトは中央大陸戦争のごく初期にまで遡ります。 そこから現在に至る過程で、レッドホーンは幾多の進化を遂げてきました。今回はその進化の過程を、一つずつ見ていきましょう。 まず、アーリータイプと呼ばれる極初期型のレッドホーン。 この機体のロールアウト年は不明ですが、地球技術が入る前の機体であるため、ZAC2030年以前の機体であるのは間違いありません。 ところでこの「ZAC」という年号ですが、古くは「ゾイド暦」という言葉が使用されてきました。これは正確には「ゾイド星紀元後暦」であり、「ZAC」という言葉自体も「Zoidsplanet After Century」あるいは「Zi After Century」の略語なので、意味的にはほぼ同じです。 ……話がずれてしまいましたが、ともかくこのレッドホーン・アーリータイプ。使用されている技術は全て惑星Zi純正であり、射撃装備は火薬式、誘導兵器も持たず、レーダー等も満足に装備されていません。 しかしながら基本設計自体は、後の制式量産型とほぼ変わりがありません。このことから、レッドホーンというゾイドの優秀さが垣間見えます。長く使われるゾイドというのは、得てして基本設計がしっかりしているものなのですから。もっとも、ゴジュラスという例外もいますが……。 次に登場したのが、一般的に「レッドホーン」と呼ばれる機体。地球人が持ち込んだ技術により強化された、制式採用型のレッドホーンです。 電磁砲やビーム砲、ミサイルといった最新鋭の武装を身に纏い、装甲も強化。当時無敵を誇ったヘリック共和国軍のゴジュラスに唯一対抗できる機体であり、名実共にゼネバス帝国の象徴として活躍しました。 乗員数は3名で、このへんは複雑化したであろう操縦系統のため、仕方のないところではあると思います。当然、不和が生じれば問題にはなるでしょうが、高速戦闘をする機体ではない点、さらに運用や人員配置が地球から持ち込まれた「戦車」に近い点から、さほど問題視はされなかったのでしょう。とはいえ後のサーベルタイガーが一人乗りになっているところを見るに、やはり複数搭乗のデメリットはあったのかも知れませんね。 戦争が激化するにつれ、アイアンコングやサーベルタイガーといった新型機が台頭してきます。しかしその中でも、レッドホーンは主力として活躍しました。これには二つの要因があります。 ひとつは、ゼネバス帝国軍側の方針。戦争当初からレッドホーンに搭乗している熟練の「レッドホーン乗り」を、機種転換させることを拒んだためです。理由は多々あり、単純に時間的な都合もあれば、彼らの腕を惜しんだということもあります。新型であるアイアンコングの操縦性が、新兵でも充分性能を発揮出来るレベルにあったというのも一因でしょう。 そしてもうひとつ。対抗機種の不在です。 当時のヘリック共和国軍には、意外なことにレッドホーンと同クラスの陸戦ゾイドは存在していなかったのです。後年のディバイソンがそれに当たりますが……、ロールアウトはデスザウラーの登場後です。 ビガザウロではもはや太刀打ちできず、ゴルドスも電子戦機であるため論外。マンモスはパワーでは勝りますが砲撃に沈められる……。 ゴジュラスならば互角以上に戦えますが、アイアンコングの登場により、レッドホーンばかりを相手にしていられなくなりました。 こういった理由により、レッドホーンは長きに渡りゼネバス帝国の主力として活躍したのです。もちろん、生産性・拡張性の高さも一因です。何より信頼性が、他のゾイドと比較してもずば抜けていたと思われます。 そういった評価の裏付けとも言えるように、新たに参戦したガイロス帝国もレッドホーンをベースとした機体を投入しています。ダークホーンと呼ばれる機体です。 暗黒大陸特有の発光物質「ディオハリコン」を投与し、出力を強化。武装にはハイブリッドバルカンを追加。装甲もさらに強化され、その戦闘力は僅か二機でかのマッドサンダーを撃破するに至りました。 ガイロス帝国軍は多数のゼネバスゾイドにディオハリコンを投与し、実戦配備していました。しかしながら、武装まで強化された機体は少なく、いかにレッドホーンの発展性が高いかを物語っています。 そして、グランドカタストロフ直後。同じくレッドホーンをベースとしたゾイドが、ケネス・オルドヴァイン技術将校の手により誕生します。 クリムゾンホーン。 この機体に関しては、良くも悪くも「異端」であるため、今回の解説では省かせて頂きます。 時は流れてZAC2099年。西方大陸戦争時にも、レッドホーンはガイロス帝国軍の主力として参戦しました。 この時代のレッドホーンは、正確には「赤く塗ったダークホーン」です。ディオハリコンが大異変により採掘不能となったため、内部機関に改修を施した上で、装備をレッドホーンの物に差し戻して運用されました。一部にはダークホーンと同じ装備の機体……レッドホーンGCと呼ばれる黒い機体も存在しましたが、ディオハリコンなしでハイブリッドバルカンの出力を確保するのに苦労したためか、後にハイブリッドバルカンをビームガトリングで代用したレッドホーンBGが主流になっていきました。 やがて、戦場へのブロックスの台頭により、レッドホーンも類に漏れず姿を消してゆきます。制式採用型から数えても、70年以上。大型機最多の生産数を誇り、ゴジュラスに並ぶ長い年月、レッドホーンは戦いつづけました。 後の世では、ゾイドバトル向けにデチューンされた機体も登場しています。機体の黒い部分が銀色になっているのが特徴で、安定した性能と抜群の信頼性により、ベテランのZiファイターに好まれました。 さらには教育用として、白い機体色のレッドホーンも登場しました。可能な限りベースとなった野性体に近付け、子供達に対しゾイドという「生物」に対して、興味を持ってもらえるように開発されたとのことです。同時にレイノス、ジェノザウラー、スナイプマスターにも、教育用バージョンが登場しました。 ゴジュラス、デスザウラー、マッドサンダーといった一騎当千の力を持つ機体が「神に愛されたゾイド」ならば、レッドホーンはある意味で「人に愛されたゾイド」ではないかと、私は思います。 だって、これほどまでの長きに渡り戦い続けたゾイドなど、ほんの一握りしか存在しません。決して突出した性能を持つわけでもなく、非常識な能力を持つわけでもない。それなのに……いえ、だからこそ、レッドホーンは名機として、歴史に名を残したのでしょう。 ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。次回は脅威のオーバーテクノロジー搭載機・ヴァルガを予定しております。 では皆様、御機嫌よう。イリアスでした。
https://w.atwiki.jp/jujutsu/pages/9.html
動画(youtube) @wikiのwikiモードでは #video(動画のURL) と入力することで、動画を貼り付けることが出来ます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_209_ja.html また動画のURLはYoutubeのURLをご利用ください。 =>http //www.youtube.com/ たとえば、#video(http //youtube.com/watch?v=kTV1CcS53JQ)と入力すると以下のように表示されます。
https://w.atwiki.jp/jujutsu/pages/14.html
インスタグラムプラグイン 人気の画像共有サービス、Instagram(インスタグラム)の画像をアットウィキに貼れるプラグインです。 #ig_user(ユーザー名) と記載することで、特定ユーザーのInstagramのフィードを表示することができます。 例)@dogoftheday #ig_user #ig_tags(タグ名) と記載することで、特定タグのInstagramのフィードを表示することができます。 #dogofthedayjp タグ #ig_tag #ig_popular と記載することで、Instagramのpopularフィードを表示することができます。 詳しい使い方は以下のページを参考にしてください! =>http //www1.atwiki.jp/guide/pages/935.html
https://w.atwiki.jp/jujutsu/pages/3.html
更新履歴 取得中です。 ここを編集