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【名前】闇口憑依 【出展】零崎一賊シリーズ 【種族】人間 【性別】女 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ [[]]→ 【特異能力】 【備考】
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11話 「あ、あれ?」 鳥の様な衣装を着て、その上から鎖を巻き付けた少年はそう呟いていた。 とんでもない展開。 そう言うに相応しい状況の中を彼はただ呆然としていた。 真庭人鳥 真庭忍軍の頭領の一人、 あまりにも幸運の星の下に生まれた彼。 悪運と言うには生易しく、 強運と言うにも生温い、 そんな運の強さを持つ彼。 そんな彼は今————何もなく殺風景な部屋の中に居た。 「あれ?」 死んだはずの自分がなぜ、 左右田右衛門左衛門に、 あの炎刀『銃』によって口から頭を撃ち抜かれた筈の自分が、 なぜ、今生きているのか理解が出来なかった。 最初にあの謎の部屋で目を覚ましてからもそうだ。 な、なぜ死んだはずの…………こ、蝙蝠さんがあの場に居たんだ? な、なぜ死んだはずの…………か、川獺さんがあの場に居たんだ? な、なぜ死んだはずの…………お、鴛鴦さんがあの場に居たんだ? なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ? こ、ここに鳳凰さまが居たらあっさりと答えて…………くれるだろうか? と、とりあえず、あの時の状況を、あの部屋での状況を思い返してみよう。 影谷蛇之と呼ばれていたあの男。 首に着いている首輪………… ルールを破れば爆発すると言っていた。 あっさりと、あまりにもあっさりと、 ぼくと鳳凰さまと狂犬さん以外を殺したこの首輪。 優勝すれば、如何なる望み叶えると言っていた。 叶えるとしたら何が良いかな? た、確かに毒刀『鍍』で斬り付けられた傷は何故か治っている。 それから考えれば夢を叶えられるかも知れない………… ————そ、そんな事は後だ! 内容……内容は殺し合いゲーム、バトルロワイヤル。 た、確か……最後の一人になるまで殺し合えと言っていたか? き、君達の力はある程度制限させてもらったとも言っていた。 ち、力?身体能力の事で良いのだろうか? 死んだ蝙蝠さんが『手裏剣砲』を使えていたから技術は使用が出来るのか? ぼ、ぼくの『忍法運命崩し』はあくまでも運だけだから制限は出来ないだろう。 ………………多分。 ろ、6時間毎に誰が殺された情報が入ると言っていた。 24時間以内に自分以外の全員を殺さなければ皆殺しだと言った。 そして、殺し合いの場所に送ってやると言った水倉神檎。 そ、そ、そう言えば、6時間毎に誰が殺された情報が入る時に、 戦闘区域が狭くなるとも言っていたか? 情報を注意して聞いておかないと………… そして目の前が段々暗くなったと思ったら何時の間にかこの殺風景な部屋に居る。 情報収集は得意分野では有る。 し、し、しかし、判らない。 なななななな、何が何だか判らない。 は、は、は早くこの部屋から出て情報収集を開始した方が良いのだろうか? と、とりあえず鳳凰さまと合流すれば何とかなるか? 窓の外を見れば真っ暗な事からまだ夜中の様だとは判る。 その上、高さから考えて…………2階? そ、そそ、外に出ようか?それとも、今はまだ待った方が良いのか? と、とりあえず支給品を確認をしてから行動した方が良いのか? ど、ど、ど、どうしようか………… ギシィ………… え?あ、足音? ギシィ………… だ、誰かがぼくが部屋に居る事に気が付いたのか!? い、いや、まだ、まだそう思うにはまだ早い。 偶然、偶然近くを通り掛っているだけかも知れない! で、でも…………隠れていよう。 ギシィ………… ギシィ………… ギシィ………… ギシィ………… ギシィ………… ギシィ………… ギ………… と、止まった? キィィ………… は、入ってきた! そ、そそ、そんな!?気が付かれてはないと思ったのに!? 「いーたん居るかーい?」 『いーたん』?誰だ『いーたん』って? 普段この部屋に住んでいる人の名前? と言う事はその人もバトルロワイヤルに参加してるって事!? 「おっかしいなー? いーたんが大好きな奴はここに集まるだろうと思ってたんだけどなぁ?」 あ、集まる?事前に集合場所に指定されていたのか? いや、それにしては確信が無さそうだから「居るかも知れない」 その程度の予想か? 「まあいいか…………いーたんでは無さそうだけど出て来い」 な!? 「おいおいおいおいおいおい。 まさかこの人類最強の請負人が気が付かないとでも思ったのか?」 人類最強の請負人? 「いいから出て来いよ。こっちはこっちで忙しいんだからな? さっさと、哀川潤を探し出して殺す予定なんだからな」 「え?」 人探し中?あ、し、しまった! 「あ、口滑らせちまったか?まあ、やっと声だけでも出してくれたし、まあいいや。 早く出て来いよ?まあ、出て来ても殺すし出て来なくても殺すけどなぁ。」 なっ!? 「十数えるまでに出てこないと殺すぞ?はい、じゅー」 え、あ 「きゅー」 あ、あ 「はーち」 ほ、ほ、 「ななー」 鳳凰さま! 「ろーく」 た、たたた、 「ごー」 戦わなければならないのですかッ! 「よーん」 でも、でもぼくは 「さーん」 ぼ、ぼぼぼぼぼぼ、 「にぃー」 ぼくはッ! 「いーちっ」 「た、戦いたくないッ!」 「はいっ、ぜ……」 「………………」 「お前、今何て言ったんだ?」 「ぼ、ぼ、ぼくは…………戦いたくない」 流れ出る沈黙、まだ姿を見せないぼくをどう思っているのか? 諦めているのか? 呆れているのか? 飽きているのか? 嘲っているのか? 怒っているのか? 疑っているのか? 恨んでいるのか? 驚いているのか? 考えているのか? 困っているのか? 狙っているのか? 呪っているのか? 迷っているのか? 許しているのか? 弱っているのか? 判っているのか? 染まっているのか? 楽しんでいるのか? 伝わっているのか? 戸惑っているのか? どう思っているんだろうか? 「くくく」 笑っている? 諦めている訳でもなく、 呆れている訳でもなく、 飽きている訳でもなく、 嘲っている訳でもなく、 怒っている訳でもなく、 疑っている訳でもなく、 恨んでいる訳でもなく、 驚いている訳でもなく、 考えている訳でもなく、 困っている訳でもなく、 狙っている訳でもなく、 呪っている訳でもなく、 迷っている訳でもなく、 許している訳でもなく、 弱っている訳でもなく、 判っている訳でもなく、 染まっている訳でもなく、 楽しんでいる訳でもなく、 伝わっている訳でもなく、 戸惑っている訳でもなく、 ただ、笑っている? 「はぁ…………あーあ、ばからしい。 とりあえず殺す気なくなったから顔だけ出せ。」 ————え?殺す気は、なくなったのか? 「さっさと天井裏から出て来い!ズルズル待たせるとぶっ殺すぞ!!」 「ひッ」 こ、こここ、殺される!は、は、早く降りないと殺される! ガタ、ゴト、バキ ドサッ お、落ちたけども…………とりあえず降りられた。 「はぁ……やっと降りてきやがったか」 目を玄関の方に向けると、そこに居たのは、 何処までも紅く、何処までも世界を皮肉っている様な笑みを浮かべた, 凄まじく綺麗な女性だった。 何処までも紅く、 「さーてと」 何処までも皮肉ったよな笑みを浮かべながら、 「降りて来た所で」 ポケットから何かを取り出し…… 「私の願いを叶える為だ」 倒れている僕の頭を狙って構え…… 「死ね」 気が抜けた様な音が一つ鳴ったと思うと………… 「——ああ?」 床に穴が一つつ開いた、だけだった。 「この距離で外した?」 「そ、そそそそ、それは、炎と」 「うるさい、黙れ、死ね」 また一つ、気が抜けた様な音が鳴ったが………… 「あれぇ?おっかしいな…… なんでこの距離であたらねえんだ?」 床の穴が二つになった、だけだった。 「…………運命崩し」 喋りだす僕 「は?」 まだ何が起こったか判っていない様子の自称・人類最強さん 「ぼくの使う忍法の名前は運命崩し。 運命崩しの前では飛び道具は決して当たりません」 とりあえず無駄だと言う事を説明してみた。 「————へえ?だとしたら……キング・クリムゾンみたいなもんか?」 試す様にまた音が一つ鳴って穴が三つになった、だけ。 前は、左右田右衛門左衛門に跳弾を使われて飛び道具からも怪我を負ったが、 ここの壁は薄いお陰で外に貫通している為に跳弾の心配は無い。 そのために運命崩しの効果は存分に発揮できる。 「はい?き、きんぐくりむぞん…………な、何かは知りませんが……少なくとも今は飛び道具は当たりません」 「————ふ〜ん……でもその言い方からすると飛び道具限定か?だったら」 直接殺すまでだ!そう言って一歩彼女が踏み出す前に倒れたままのぼくは、 楕円形の黒い球を二つ投げた、だけだった。 「?」 警戒してか、自称・人類最強は避け、 「おっ?」 壁に当たり跳ね、人類最強に当たり跳ねる。壁に当たり跳ね、また人類最強に当たり跳ねる。 「…………はぁ、 こんな遊び道具なんかで、この人類最強を止められると思ったのか?ん?」 飽きれた様な顔でこちらを見ながら近付こうとするが、 気が付いたようだ。 「あぁ?球の速度が上がってる? しかし何で玄関が空いてるのに外に出て行かねえんだ、これ?」 跳ねる。跳ねる。跳ねる。跳ねる。跳ねる。跳ねる。跳ねる。跳ねる。 光速に限りなく近い速度で跳ねる! 「なッ!こ、これは!?」 「忍法柔球術」 柔球術——それは球状のゴムのように柔らかい球を室内で投げ、 その球が建物内で何度も反射しながらスピードを増していくと言う物。 そのあまりの速さゆえに球を止める方法は皆無、 そのあまりの速さゆえに球を避ける方法は絶無。 あまりの、あまりの速度に球が百や二百にも見える。 そう、それが増殖の人鳥と言われる訳。 本当なら、自分にも球が当たる為に捨て身の業の筈だが、 『忍法運命崩し』の前では飛び道具は決して当たらない。 つまり、 運が良いぼくには全く当たらずに 自称・人類最強さんに当たり続ける。 普通なら玄関が空いている上に、天井に僕が下に落ちた時に開いた穴、 それか窓ガラスを割って外に飛び出すだろう。 そう、普通なら。 しかし、 『忍法運命崩し』の効果で僕には当たらない、 更に脆い部分に当たる回数も最小限! なぜなら、 ぼくは運が良いから! ふぅ…………一体どれ程の時間が経っただろうか? 球の一個は割とすぐに玄関から出て行ってしまった。 自称であれ、人類最強と言うだけあってしぶとかった………… しかし、顎に当たったせいでか倒れた彼女。 それから一分も経たずに残り一個だった光速に近い速度の球はガラスを突き破って出て行ってしまった。 「————————」 倒れている自称・人類最強さんのすぐ横で、 真庭人鳥は考え込んでいた。 やろうと思えば、やろうと思えばだが、 ここでこの人を殺す事は簡単に出来るだろう。 しかし、思い出してしまう。 鳳凰さまが毒刀『鍍』の力で狂った時、 その時に斬り付けられて怪我を負い、 そのまま放って置かれれば死んでいたであろう僕を助けてくれた。 あの時の奇策士とがめと鑢七花の二人組………… 情けをかけてか? 理由までは判らないけど敵である筈のぼくを助けてくれた。 あの時の二人を思い出すと殺す事が出来なかった。 でも、なぜだろうか? 今まで生き残る為に殺す事を厭わなかったぼくが、 この人を殺す事を躊躇うなんて? 「ぼくは戦いたくなんかなかった」 一度、死ぬ直前に言ったあの言葉………… あの時に死にたくなかった為だけに言ったのか? それとも…………あの言葉が本心だったとしたら? ——————首輪か………… 何をやるにしてもこの首輪は邪魔だ。 情報収集は得意だ 何とかしてこの首輪を外す方法を探せば………… あるいは………… な、何をやるにしても、自称・人類最強さんが起きたら協力を頼めるだろうか? 最強を名乗るんだから強いだろうし、 せ、せめて鳳凰さまと会うまでの間お願い出来るだろうか? で、でも、仮にも一度は殺そうとした相手を目の前に見逃す上に手伝ってなんかくれるだろうか? ————あ、そう言えば請負人って言っていたから交渉すれば雇われてくれるだろうか? 請負人と言う事が本当なら、鳳凰さまに会えるまでの間だけでも護衛をお願い出来るだろうか? ——————悩んでいても仕方が無い。 自称・人類最強さんが起きるまでの間は看病をして置いてあげよう、うん。 とりあえず…………玄関を閉めてからかな? あっ、そう言えば外に出て行った球は………… ま、まあ、あの球は武器と言うほどの物じゃないから、 武器と判断されなかったのか、取り上げられていなかったおかげでまだいくつかある。 放って置いても大丈夫…………かな? と、とりあえず交渉材料としてと炎刀『銃』とか持ち物は預かっておこうかな? 【1日目 深夜 骨董アパートD−6】 【真庭人鳥@刀語シリーズ】 [状態] 健康 [装備]柔球術用の球 [道具]炎刀『銃』の回転式の方@戯言シリーズ、支給品一式×2、ランダム支給品(1〜3)×2 [思考] 基本 鳳凰様と合流したい。 1 どうやれば首輪を外せるかな? 2 と、とりあえず、起きるまでの間は看病しておこう。 3 あ、この人の名前って何だろう? ※球を放って置いたのは取りに行く事が今はまだ危険だろうと思っての事です。 ※球は見る人が見れば真庭人鳥の持ち物だと判ります。 【誰でもない彼女@戯言シリーズ】 [状態] 全身打撲、気絶 (現在の姿は、哀川潤) [装備] なし [道具] なし [思考] 基本 哀川潤を殺して私が本物に成り代わる。それを邪魔する奴も殺す。 1 気絶中 ※参戦時期は哀川潤に成り代わると玖渚友の住むマンションで戯言遣いに言った頃より後です。 ※いーちゃんの部屋に居れば本物の方から現れるだろうと思って待ち伏せする予定でした。 010← 011 →012 ← 追跡表 → ― 真庭人鳥 ― ― 誰でもない彼女 ―
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零崎人識 No. タイトル 作者 005 5話 ◆iTZECfXJ4g 無藤伊織 No. タイトル 作者 001 しかつもんだい編(前編) ◆rOyShl5gtc 零崎曲識 No. タイトル 作者 007 ボルトキープの再開 ◆rOyShl5gtc 零崎双識 No. タイトル 作者 009 試験開始 ◆iTZECfXJ4g 020 ≪自殺志願≫の捜索 ◆kCGp90my/U 闇口憑依 No. タイトル 作者 012 死闘(四闘) 名無しさん
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【名前】櫃内夜月 【出展】世界シリーズ 【種族】人間 【性別】女 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ [[]]→ 【特異能力】 【備考】
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【名前】戯言遣い 【出展】戯言シリーズ 【種族】人間 【性別】男 【声優】 【年齢】19歳 【外見】 短髪。女装しても似合うような風貌。 【性格】 女に優しく男に冷たい。何故か年下の少女には異様に好かれる。 【口調】 一人称:僕 二人称:君 【呼称】 玖渚友→友 哀川潤→哀川さん、潤さん(注意時) 兎吊木垓輔→ 時宮時刻→ 西東天→狐さん 西条玉藻→玉藻ちゃん 紫木一姫→姫ちゃん 匂宮出夢→出夢くん 奇野頼知→奇野さん 萩原子荻→子荻ちゃん 石凪萌太→萌太くん 誰でもない彼女→ 千賀てる子→てる子さん 闇口濡衣→濡衣さん 【特異能力】 ※《無為式》 又は《なるようにならない最悪(イフナッシングイズバッド)》。本人が何もしなくても、周囲が勝手に狂い出す特異体質。例外は完全に同一である零崎人識か「名前の無い人間」。 【備考】 戯言シリーズの主人公兼語り部。「いーちゃん」。 メイドとベスパをこよなく愛する京都在住の大学生。玖渚友の幼馴染みで、想影真心の元ルームメイト。
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【新本格魔法少女りすか】からの出典 りすかのカッターナイフ 供犠創貴に支給。 りすかが魔法を起こす為、自傷する際に使うカッターナイフ。これで傷付けた場合、りすかは痛みを感じないらしい。それ以外はごく普通の品。
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真庭狂犬 No. タイトル 作者 019 虚刀『鑢』対人類最終『橙なる種』 名無しさん
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真庭忍軍最古vs相生忍軍最後 「待たせたか?」 橋。 つい三十分も前でない時間に虚刀流と出会い、 情報交換を行い、さっさと去った場所。 そこに居たのは―― 「いいや」 真庭忍軍十二頭領が一人、 真庭狂犬。 真庭の里設立にも関わったとされるほどに長生きの人物、ではなく、 その特殊な忍法で女の体を乗り移り乗り移り生きて来た。 しかも乗り移った女の記憶を自分の物に出来ると言う、 戦闘、技術、知識などの全てに置いて万能を狙える忍法。 名は、忍法・狂犬発動 しかし、欠点がある。 一つはいくら自分の物にしても体が実践できる物でないと意味を持たない。 一つはこの忍法を使用する本人の性格である。 その問題ある本人の性格は、 仲間に対する極端なまでの情、そして激情的な性格。 この二つが災いして、 四季崎記紀が作りし完成形変態刀十二本。 これを集める為に鳳凰が行った策を無駄にしかけた上、 結果的に自分と仲間一人が死ぬ事になった事を知らない。 「不判」 「一つ判らない事がある」 戦闘前、既にお互い向けてに殺気を出しながらも、 あくまでも冷静沈着な左右田右衛門左衛門。 「あ?」 「なぜ邪魔をした?」 もしも、さっき二人を殺そうとした時に真庭狂犬が手裏剣を投げなければ、 あのまま悲鳴の一つ出させずに二人を瞬殺する自信があった、 そして、あの場面で、二人と交渉する前ならいざ知らず、 殺そうとする時に邪魔が入るとは思っていなかった、 それだけに左右田右衛門左衛門にとっては謎であった。 「なぜあの二人を殺す邪魔をした?」 殺さないのなら殺す、 殺すのならその後殺す、 あの状況下で、 まさに二人とも殺そうとしたあの状況下で、 仲間ならいざ知らず、 仲間でもないただの見ず知らずの人間を二人、 見逃す、いや逃がす要因は、 忍者である自分達にはないはず。 ましてや状況が状況の中で、 二人も見逃す要因は無いに等しい。 にも関わらず、 なぜ真庭狂犬はあの二人を逃す様な真似をしたのか? 「最初に――」 「ん?」 静かに、 「最初に殺そうとしたのが男の方だったら良かったんだけど」 静かに、 「女の方だったのが頂けないねえ」 静かに語る。 「見た所プロのあんたと戦って無傷で済む保証がないからねえ」 「ふむ」 無傷で済ませるつもりも生かすつもりも無いが、 続けさせる。 「近くに予備の肉体を残して置きたかっただけさ! さっさと終わらせてあの女の肉体を乗っ取って、 虚刀流と一緒に居るオレンジ色の奴の肉体を乗っ取ってやるんだから!」 「ほう?…………では、どうやって虚刀流を追うつもりだ?」 「血の跡を追うだけだ」 詰まる所、 左右田右衛門左衛門との戦い無傷で済む保証が無い、 だから近くに一つ予備とでも言うべき肉体を残したかった。 忍者らしい発想と言えば忍者らしい発想であり、 忍者らしからぬ発想と言えば忍者らしからぬ発想である。 それよりも重要なのは…… 「鳳凰さまを殺すってのは本気か?」 「ああ、本気だ」 一瞬の間も開かぬ返答。 一瞬顔が引き攣り掛けるがそれを抑え、 全身を屈める。 近くに替えの肉体がある内に、 つまり、 だから、 「だったら死ねええええええええええ!」 捨て身特攻が出来る。 そう己に向かって突っ込んでくる真庭狂犬を見ながらも冷静に、 「さて、真庭狂犬よ…………」 一人呟くように言い、 「お前は何と言って死ぬのかな?」 背弄拳が発動した。 「お、おぉお?こ、これって確か……」 真後ろからの殺気、この技に覚えがあるだろう。 長年、と言っても既に随分前だが、 鎬を削り戦って来た忍びの技なのだから、 覚えがあるのは間違えないだろうが、 「で、でも確か相生忍軍は…………!」 既に壊滅させたはずの相生忍軍の技。 それを目の前で披露されて驚きでの混乱模様。 「残念ながら生き残りが居たと言う訳だ」 そう冷静に言いながらボウガンの先を向け、 「言い残す事は?」 聞く。 絶体絶命に近い現状。しかし、 「…………」 「ん?」 真庭狂犬は笑っていた。 ニヤニヤと声に出さず、笑っていた。 「確か……相生拳法の……背弄拳……だったけこれ?」 返答を期待していない様な声ではあるが、 自信満々の声で続ける。 「後ろの有利は誰にでも判るけどさあ?」 一気に走り出す。 何を狙っているか判った左右田右衛門左衛門だが、 既に遅く、 「後ろに川なんかあったら、回り込み様が無いよなあ?」 川を後ろにニヤニヤと笑う真庭狂犬、 それを苦々しげに見ながらも回り込み様が無い左右田右衛門左衛門、 よって真庭と相生、それぞれの忍が向かい合う図となった。 「………………」 「………………」 言葉に出さずともどちらも殺る気満々、 殺す気満々であるが難しい状況である。 真庭狂犬は下手に動けば後ろを取られる状況で、 左右田右衛門左衛門はボウガンがあるものの、 下手に使えば避けられる事は判り切っている。 つまり両方が両方打つ手が無く、 「………………」 「………………」 お互いほぼ同時に自分の支給品から使えそうな物を探す事になった。 「………………ち」 「………………ふ」 結果、良い物を見付けられなかった狂犬と、 良い物を見付けた右衛門左衛門と言う状況である。 真庭狂犬の方は持たないよりもと言った感じで、 右手に二個、左手に一個手裏剣を持った状態である。 「それでは…………今度こそ」 片手を支給品の入っている袋に突っ込みながら、 真庭狂犬………… 「お前は何と言って死ぬのかな?」 戦闘は再開した。 その言葉と共に投げた物体。 それは、真庭忍軍十二頭領の一人、 左右田右衛門左衛門の背弄拳が効かなかった忍、 巻戻しの鴛鴦の武器、 永劫鞭。 「え……ちょぉあああああ!?」 一つに付き10本の鞭が付いている永劫鞭、 それを前から投げられている現状、 前は向かって来ていて不可能、後ろは川で論外、 左右に避ける時間もなし。 詰まる所防御しか不可能な現状で、 長い長い間戦いを経験した真庭狂犬がそれを間違えるはずも無く、 両手に持っていた手裏剣から手を離し、 腕を顔の前に交差させ防御に移り………… 「甘い」 シュッ、と言う音と共にボウガンの矢が発射され、 「ぐはぁが?!」 見事に腹に突き刺さった。 無論、投げ付けられた永劫鞭も止まらず、 真庭狂犬に追い討ちを掛ける様に10本余さず全身に巻き付き、 その先に付いている刃物で全身を切り刻まれた。 「ぬぅぅぅうぅぅうぅうぅ!」 全身の10の切り傷から血を流し、 全身に鞭を巻き付けられた現状。 腹に刺さった矢を右手で抜きながらも、 それでも殺気が止まる事を知らぬ様に狂犬から溢れていたが。 「無駄だ」 その殺気に対する返事は無常。 「その状況下で、勝てるなどと言う甘い事は考えれまい」 いくら近くに替えの肉体があろうともそこまで生かさず終わらす。 次の矢を番えつつも油断無く、 しっかりと狂犬を見据えるつつそう言う右衛門左衛門。 「それではさらばだ――――真庭狂犬!」 シュッと言う音と共に発射された矢、 真庭狂犬の頭を狙ったボウガンの矢は、 外れた。 「なっ!?」 後ろを見せない様に前を向いたまま川に飛び降りた狂犬。 狂犬のその行動に気が付き、 すぐに川に近付き身を乗り出すように下を覗き込み、 顔に向けて先ほど狂犬が抜いていたボウガンの矢が飛んで来た。 「ぬぉおおおおお!?」 この時、 もしも真庭狂犬の体に10本の鞭の内の一本が腕に絡まっていなかったら、 もしも真庭狂犬が傷を負っていなかったら、 もしも真庭狂犬の狙いが首でなかったら、 もしも真庭狂犬の手に血が付いていてボウガンの矢が滑らなかったら、 もしももしももしも一つでも偶然が噛み合わなかったら、 問答無用に矢は当たっていただろう。 咄嗟、文字通り咄嗟に全身を反らせての回避、 仮面に一筋の傷を付けて行く矢を見ながら、 ギリギリの所で致命的な一撃を避け切った。 「くっ!真庭狂犬ッ!」 しかし避けてからでも遅すぎた。 既に川には真庭狂犬の姿も見えず、 取り残された様に浮かぶディパックが一つ、 それ以外は見える範囲では何も無かった。 「ちっ…………」 辺りを確認するとあるのは川辺に一つの小さな穴、 下水管の一つだがそんな事は関係がない。 関係が有るのは、 その下水管に足を掛けて左右田右衛門左衛門に反撃、 そして左右田右衛門左衛門が避けるのを確認してから川に潜った。 万が一当たらなくても問題が無い逃走の手段としての攻撃、 たとえ当たっても問題が無い必殺の手段としての攻撃、 仲間に対する情に厚かろうと、激情家であろうと、 歴戦の忍者である事には変わり様がなかった。 「どうする…………」 逃がしたのが正直痛いが、 今から上流か下流のどちらかに居ると思われる追いかければ、 真庭狂犬に追いつけるかも知れないが………… 「――――罠か?」 あの状況からの反撃は無いと思っていただけに、 警戒心が強くなっている、そう自覚していても、 動くに動けない。 結局の所決められずに時間が過ぎ、 その分だけ真庭狂犬の逃げる距離を稼ぐ事になり、 もう追いつけないだろうと自己完結で諦める事になった。 そして地面に落ちている三枚の手裏剣を拾いつつ本日早くも二度目の、 「次に会った時は殺す」 居るかも知れない相手に伝える様に、 負け惜しみの様にそう言って橋を渡って行った。 「不殺」 「上手く行かないものだ…………」 どうも殺し運が悪い左右田右衛門左衛門。 結局、罠を警戒するあまり、 川を流れる真庭狂犬のデイパックを取らず仕舞である。 【1日目 黎明 E-5から移動中】 【左右田右衛門左衛門@刀語シリーズ】 [状態] 健康 [装備]ボウガン(矢付き)@戯言シリーズ 永劫鞭×1@刀語シリーズ 手裏剣×3@刀語シリーズ [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~2) [思考] 基本 姫を探しつつ、見つけた姫以外の人間は殺す。 1 姫を見つけたら、以後は姫の指示に従う。 2 姫を闇口濡衣が何らかの方法でも守っていたら闇口濡衣と手を組む。 3 姫が参加していなかった場合は、闇口濡衣と手を組む。 ※肉体の制限がどの程度の物か判ったかも知れません 「……はっ……はっ……はっ……はっ……はっ……」 Gー4のコンクリートの海岸。 結局、真庭狂犬は最後の投擲以外に手はなく、 左右田右衛門左衛門が罠を警戒せずに、 そのまま追い掛けられていたら死ぬしかない展開であった。 しかし結果は追い掛けられず逃げ切りに成功、 勝利とは言えないまでも敗北とも言えない、 そんな半端な結果に終わってしまった。 「……はっ……はっ……はっ……はっ……ガハっ!……はっ……」 しかしその結果にしても問題である。 全身は傷だらけの上に荷物は落とし、 恐らく内臓まで傷付けているボウガンの矢の一撃。 それを利用しての必殺も避けられ、 唯一の戦利品と言える物は全身に巻き付いて離れない永劫鞭一つ。 向こう岸には病院があり泳いで渡れれば治療は出来るかも知れないが、 虚刀流とその虚刀流と互角に近い戦いを繰り広げた少女が居る。 そんな場所に敵である自分が治療しに行くなど死にに行く意味しかない。 まさに絵に描いた様な絶望的状況である。 あくまで、普通ならば。 「お……女……の体……だ」 女の体、それさえあれば今は乗り越えられる。 乗り移って、生き残れ、戦える。 「……近くに…………」 体を引きずる様に動き出す感染。 近くに感染相手を探し動く。 蠢く。 揺らめく。 動き出す。 感染する狂気。狂気の感染。 感染の狂犬。狂犬の感染。 殺す為でなく。 殺される為でなく。 感染する為に。 「……女……」 【1日目 黎明 G-4から移動中】 【真庭狂犬@真庭語】 [状態] 脇腹にボウガンの矢による刺傷(重傷)、全身に切り傷×10(軽傷) [装備]永劫鞭×1@刀語シリーズ [道具] なし [思考] 基本 真庭鳳凰と真庭人鳥を勝ち残らせる。 1 隙を見てあの小娘の体を乗っ取ってやる 2 真庭の里にもう一度繁栄を 3 急いで適当な体を乗っ取る ※参戦時期は七花に殺された後です。 ※体は戦乱時代の物です。 ※体に永劫鞭を巻き付けたままです。 ※体は結構ヤバ目です。 ※真庭狂犬のデイパックは川を流れたままです 024← 025 →026 ← 追跡表 → ― 左右田右衛門左衛門 ― ― 真庭狂犬 ―
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錯綜思考(策創試行) 「イシナギという魚をご存知ですか?」 大して険しくもない、ただ薄暗いだけの山道の中を、二人の人間が歩いている。 一人は足首まで届くほどに長い、美しい黒髪を携えた少女。 一人は伸ばしっぱなしの黒髪に、カチューシャをつけた痩身の男。 少女の唐突な問いに対し、男は「いや」と、まるで興味がないという風に、そっけなく返す。男の前を歩く少女も、まともな返答を期待していなかったように、男のほうを振り返ることなく言う。 「北海道に主に生息する魚です。一般的にはマイナーな魚ですけれど、体長が2メートルを超えるものもあって、大物狙いの方たちにとっては人気が あるようです。もちろん食用にもなります。煮付けや刺身として食べることが主だそうですね。ちなみに肝臓には、多量のビタミンAが含まれているそうですよ」 「へえ」男は、あくまでそっけなく言う。「肝臓まで食べるのかよ、その魚」 「いえ、ビタミンAとはいってもあまりに多量すぎるので、食べてしまうと過剰症を起こして、頭痛、吐き気、皮膚剥離などの症状が出るそうです」 「毒じゃねえかよ」 男が呆れたように言うと、少女はくすりと笑った。「そうです、イシナギは危ないんです」 男はまた「へえ」と返す。それは先程のそっけなさとは別の、知っていることを今初めて聞いたように振舞うような、微妙な白々しさがあった。 それからまた、二人は会話を交わすことなく山道を歩き続ける。山道とはいっても、辺りに生い茂っているのは樹木の類ではない。 竹である。 広大な面積の、そのほぼ全てを青々とした竹で覆われた山。 地図に記された名は、雀の竹取山。 少女が先を歩き、男がその後に続いて歩く。頂上から麓へ向けて、下山する形で。 少女のほうは、高校の制服らしき特徴的なセーラー服。男のほうは、薄手のタンクトップにハーフパンツ、足元はなんと下駄という、どう考えても山歩き には向いていない服装であるにもかかわらず、どちらも不自由そうなそぶりを見せることなく、軽快な足取りで進んでゆく。 少女が懐中電灯で照らしているとはいえ、足元が少し見える程度の山道を坦々と歩いてゆく二人。その自然な足取りが、逆に不自然に見えてしまうような光景だった。 「ところで、奇野さん」少女が、今度は振り返って言う。「今のこの状況について、奇野さんはどうお考えですか?」 奇野と呼ばれた男はその質問に対し、少し嫌そうな表情を見せた。 「どうって言ってもな――まあ、非常識っつーか、信じがたい状況ではあるよな。信じる信じないの話じゃねえのかも知れないけどよ。 話は単純に見えるのに、突拍子もない部分が多すぎる。なんていうか、現実的な夢の中にいるみてーだ」 「現実的な夢、ですか。なるほど」 実際にはその逆でしょうけどね――少女は独り言のように言って、また小さく微笑んだ。 逆――現実的な夢の、逆。 夢のような、現実。 男――奇野は、数時間前に自分が見た光景を回想する。ほんの数分間の間に繰り広げられた、いっそ滑稽ともいえるくらいに不条理な光景。 血、肉、骨、首、臓器、脳漿、死体。 そのすべてが、今ではもう、幻のように消えうせて。 ………。 すべて、現実なのか。 あの光景も、今の、この状況も――― 「『現実的で構わないから、いっそ夢であってほしい』」 はっとしたように、奇野は顔を上げる。 「そう思っていますか? 奇野さん」 少女は振り返ってはいなかった。しかし奇野は、少女のその言葉だけで、視線とはまた別の何かによって射すくめられたような感じがした。 「余計な心配だよ、お嬢ちゃん」 余裕を表現するためか、奇野は肩をすくめた。 「お嬢ちゃんこそ、実際ついていけてねーんじゃねーの? あんた、一般人なんだろ? それがこんな、冗談が冗談してるみたいな状況に放り込まれて」 「もちろん夢であってほしいと思っていますよ。私は」 少女はあっけらかんと言う。 「奇野さんの言うとおり、私は見てのとおりの普通の女子高生ですから。私からすれば、現実的な夢も夢のような現実もありません。夢のように夢心地ですよ。間違って醒めてしまいそうです。 夢の中というよりも、漫画の中にいるような、あるいはゲームの中にいるような、いやむしろ小説の中にいるような心地です」 「小説…」 なぜだろう、そこだけ妙に納得がいく気がするのは。 「それにしちゃあ、随分と軽く構えてるように見えるけどな」 「重く構えるだけ動きづらくなるだけです。当然、軽く見ているつもりもありませんけれど」 少女の声色が、少しだけ真剣味を帯びる。 「今の状況に救いがあるとすれば、不条理な状況ではあれど、状況そのものが不鮮明ではないというところでしょう。ですから今のところ、 地に足がついている感じがするのは確かです。何しろ目的がはっきりしていますからね。それ以外にすることがない、というくらいに」 「目的…」 「殺し合い」 真剣さを帯びていたとはいえ、その言葉はあまりにも軽く発せられた。 自分たちの目的。自分たちがここにいる理由。 そう、この状況がいくら信じがたいものであろうとも、そこだけははっきりしている。 殺し合い。 殺し合い以外に、することがない。 「………」 奇野自身、それは常々口にしたいと思っている言葉の一つだったが、それは軽々しい心構えで口に出してしまうと、予想以上にえらい目に遭う言葉であるということを、奇野は身をもって経験していた。 だからこそ、それをあっさりと口にしてしまう少女の態度に、奇野は少なからず違和感を覚えた。 こともあろうに、『参加者』の一人である奇野が、自分のすぐ背後を歩いているという状況にもかかわらず―― 「勝つつもりで、いるのか?」短い沈黙を、今度は奇野が破った。「こんな、でたらめな、無茶苦茶な闘いなんかに、強制的に放り込まれて、本当にあんた、最後まで生き残るつもりなのか?」 「生き残るつもり?」 少女の声は変わらない。 「そんなもの、生まれたときからずっとあります」 「………」 「生き残るつもりがなくて、人間がどうやって生き続けられるというのですか。偶然で死に、必然で死に、当たり前のように死に続けるこの 人間という種類が。生き残る気もないのに生き続けている人間なんて、それはただ他者によって生かされているというだけの事。生かされているのは 死んでいることと同義。生き恥という言葉すら勿体ない。そんなふうに生き続ける人間の気が、私には一向に知れませんね」 奇野はまた沈黙せざるをえなかった。 なぜこの少女は、こんな言葉を平然と吐く? 「それに」少女は仕切りなおすように言う。「可能性の上でなら、私たちが勝つ方法はいくらでもあります。最初、あの白い部屋の中で主催者側の人間が言っていた言葉、覚えていらっしゃるでしょう? この闘いではあらかじめ、バランスをとるための配慮がなされていると」 「……ああ」 「? どうかしまして?」 「いや――つまり、それがお嬢ちゃんの自信の根拠ってことか?」 「確かに私はただの普通の一般人ですけれど、目的が殺し合いだったところで、主催者側から平等に勝つチャンスを与えられているとするなら、 一般人という属性を悲観する意味はないということです。むしろ私のような一般人こそ、早い段階で動いておく必要があります。状況に呑まれるのは 三流の証拠。求められるのは俊敏な思考と、正確な試行。戦略こそが鍵です」 「クリティカルだな」 「タクティカルですね」 軽い冗談のつもりが軽く流されてしまった。立つ瀬がない。 とはいえ、少女の言い分には奇野もそれほど異論はなかった。おそらくこの闘いには、最初に見たような相当な力を持つ『異能者』が 何人も参加していることだろう。しかし主催者側によってその実力に均衡がもたらされているとするなら、目の前の少女でさえ、確かに 戦い方しだいではいくらでも勝ち目はある。知力と戦略。この闘いでは、それこそが物をいう。 しかし奇野がそういうと、少女は「それは違いますよ」と否定した。 「違う? 何が」 「戦略が鍵になる、とは言いました。しかしそれは『参加者の戦闘能力が均衡しているから、より巧みな戦略を練ったものが勝利する』 という意味ではありません。なぜなら私は、参加者の能力に制限が加えられているというのが真実だったとしても、それによって参加者全員の 能力のバランスが均衡しているとは考えていないからです。少なくとも、私が主催者側の人間だとすれば、絶対にそうはしないでしょう」 「なんでそう思う?」 「面白くないからです」 長い黒髪が竹やぶに引っかからないように気をつけるようなそぶりを見せながら、少女は細い竹藪を掻き分けてゆく。 山頂からは、既にだいぶ下っている。今は二合目あたりだろうか。足取りが鈍らないのは奇野も同じだったが、少女のほうは まともな道も道標もないはずのこの山道を、まるで自分の庭であるかのように、迷う気配もなく進んでゆく。 「先ほど私は、自分がゲームの中にいるようだ、といいましたが、例えとして言うならあの表現は間違いでしたね。なにしろここは まさにゲームの中なのですから。生身の人間が参加する、実際の命をかけたサバイバルゲーム」 バーチャルの世界でないというだけ――少女はそういった。 「他の人間が一方的に殺されたんじゃ面白くない――あの主催者側の人間は、確かそんなふうに言っていましたね。一方的な殺戮では ゲームにならない。ゲームにならなければ面白くない。だからバランスをとるために、力を制限する。それだけ聞けば、確かに自然な流れに 見えます。しかし主催者側の立場で考えた場合、どうしても納得できない部分があるんです。そうは思いませんか?」 奇野は沈黙を保った。少女は続ける。 「このゲームの参加者がどういった基準で選ばれたのか、私たちにとって走る由もありませんが、『他の人間が一方的に』という言葉から あの妙ちくりんな衣装の人達のような異能者を筆頭とした、いわゆるプロのプレイヤーと、私のようなごく普通の一般人が、同時に参加していると 推察されます。一方的な殺戮では面白くないといっておきながら、殺し合いという事柄に関して、経験も能力も、価値観さえも、極端なまでに 異なる人種を同じ舞台に立たせてしまっている。この時点で、既に矛盾していると思いませんか?」 「………」 「一般人を同じ舞台に立たせてしまっている以上、バランスをとろうと思えば、それは相当な制限を『異能者』の側にかけることを 意味します。当の異能者、プロのプレイヤーの方達からすれば不本意極まりないことでしょうけど、しかしそれは、主催者の側にとっても 望ましい状況とは言えるでしょうか。こんな特殊な場所、ステージを用意し、おそらくは相当な、異常なほどに現実離れした 『異能者』達をわざわざゲームのプレイヤーとして選出しておきながら、その肝心の『異能』に対し、主催者の側でわざわざ 制限をかけているんですよ? ゲームを観戦する側からすれば、その異能こそをフルに発揮してやりあってほしいと考えるのが 自然でしょう。バランスを重視するというのならそれこそ私のようなただの高校生を集めてやったほうがむしろ面白くなりそうです。 わざわざ武器まで与えているんですから。はたしてこれが自然な流れといえるでしょうか? 違和感で人が死ねるなら 私は既に15回は死んでいます」 奇野は答えない。少女はさらに続ける。 「このようなゲームに限って言えば、プレイヤーの能力の低下は、すなわちゲームのクオリティの低下に直結する。牙と爪をもがれた 獣同士の殺し合い。そんなもの見て楽しいと思いますか? かめはめ波は強すぎるから使用禁止、空を飛べると卑怯だから舞空術も禁止、 体力がありすぎるから、サイヤ人は身体能力も制限。天下一武道会にそんな制約があったら嫌でしょう。ヤムチャさんどころか、 ミスターサタンが素で優勝することだってあり得てしまいます。盛り上がりに欠けすぎです」 言いたいことはよくわかるが、最後の例えに意味はあるのか。 「まあ…確かに」 奇野は言ってから、内心でもう一度つぶやいた。まあ、確かに。 少女と話しているうちに、奇野は今の状況に対してやたら客観的な意識を持ってしまっていたことに気づく。考えてみれば、自分こそまさにその『異能者』の側として参加している人間の一人ではないか。 「つまり、お嬢ちゃんは」奇野は、右手に持った荷物を軽く持ち直しながら言う。 「こう考えてるってのか? このゲームの主催者は、ゲームのバランスをとるつもりはない、と」 「いいえ、違います」 少女はまたも否定する。 「主催者はこのゲームのバランスに対して最大限の配慮を行っているはずです。バランスという言葉を最初に持ち出したのは 主催者の側なのですから。ゲームバランスというのは、ゲームが成り立つか成り立たないか、その一端を握っているといっていいほど 重要なものなのですから。こんな大掛かりなゲームを作り上げるような人間が、そこをおろそかにするはずはありません」 それができなければクリエイターとして失格です。 少女はそんな風に言った。 「ですから、私の予想―予想というよりは期待ですけれど―している限りでは、主催者側からのあの言葉は、こういった意味を 持っていると考えています。『用意はしておいた。それを使って、後は自分たちで好きなようにバランスをとれ』」 「『それ』?」 「裏技、ですよ」 鳥でも飛び立ったのか、二人の頭上の竹の葉がざわざわと派手な音を立てて揺れた。 「レーシングゲームで言えば、ショートカットのようなものですか。とにかくそういったものがこのゲームの中には存在していると 私は期待しています。このゲームにおける最大のポイントの一つは、プレイヤーの自主性。主催者の側ではあえてバランスを取らずに 最終的なバランスはプレイヤーに決定させる。私たちにランダムに与えられた武器とはまた別の、ゲームの内部そのものに組み込まれた 不確定要素。ゲームのクオリティの最大限に維持し、かつ全てのプレイヤーに勝利条件を与えることができる、まさに裏技です。 あくまで予想に過ぎませんが、それを探してみる価値は十分にあると思います」 「………」 奇野はまたも、沈黙せざるを得なかった。 絶句、というよりも、言いたいことはあったが、それを口に出すべきか躊躇した、といった感じである。 反応に困ったといってもいい。 確かに少女の言い分には一理あると言えなくもない。しかしそれは少女自身、期待、という言葉を用いていたとおり、 あまりに希望的な観測というか、都合の良すぎる考えではないだろうか。 この少女の自信は、そんな曖昧なものに依拠したものだったのか? 大体裏技って何なのだ。コマンド入力でフルオプションに一足飛びでもする気でいるのか。 奇野は嘆息した。やはりこの少女は『一般人』の側の人間だ。 殺人鬼を恐れない人間は二種類いる。鬼をも恐れぬほどの力を有する人間か、殺人鬼を知らない人間のどちらか。 参加者全員が殺人鬼である可能性すらあるこの状況で、殺し合いという言葉を軽々しく使い、参加者の一人である奇野に、堂々と背中を預けている。 人が死ぬ光景すら目の当たりにして、なお現状を認識できていない。 まさしくゲーム感覚である。 この少女と組んだのは、ある意味では正解だったかもしれないな―― 奇野がそう思い、この雀の竹取山における少女との邂逅、この少女と組むことになった山頂での出来事を思い起こし始めた、そのほぼ同時。 奇野は、それを目視した。 ◆◆◆ 声をかけてきたのは、少女のほうからだった。 雀の竹取山、その頂上地点で一人佇んでいた奇野頼知の前に、散歩でもするかのような優雅な足取りで、その少女はあらわれた。 ごきげんよう、と、気さくな感じに声をかけながら。 それに対し奇野は、当然の如く警戒した。相手が年端も行かぬ少女であるということは、奇野にとっては気を緩める理由には まったくならない。むしろ今の状況において、丸腰のまま、しかも真正面から接近してきたことが、奇野にはこの上なく不気味に思えた。 そんな奇野に対して、少女はあくまでも優雅に、柔らかな笑顔を浮かべながら、両手を頭の上でひらひらと振った。 こわがらなくてもいいですよ、とでもいいたげな仕草で。 少女は言った。 私は、あなたと戦うつもりは毛頭ありません。 とりあえず、私の話を聞いてはいただけないでしょうか、と。 この時点で、奇野がこの少女に対して一切、何の攻撃も加えなかったことに関して疑問を挟む余地はあるかもしれない。 少女の言うところの『異能者』側の人間、プロのプレイヤーである奇野が、あからさまなまでに隙だらけの相手を目の前にして、 ただ相手の動向を窺っていたというのは不自然ではないだろうかと。 しかしこの疑問に対して、奇野はこう答える。奇野は相手が少女ということで気を緩めるこそなかったが、『この少女であれば いつでも殺せる』という感想を抱いた。このゲームの趣旨から言えば、目の前にいる相手を殺さないというのは確かに愚行であると いわざるを得ない。 しかし「殺す」という選択肢には、それが取り返しのつかない結果を生むという条件が付随する。少女を殺すことで、ゲームにおける 対戦者を一人減らすことができるのはプラスではあるが、逆に今ここで、少女の話をまったく聞かずに殺してしまった場合、 それがマイナスの結果を生むことにならないとは言えない。 要するに、「いつでも殺せるのならば、少女の話を聞いてからでも遅くはない」という、妥当というか、ごくありきたりとも いえるような理由において、奇野は状況を保留することを選択した。 少なくとも奇野自身は、自分がそういった考えを持って少女を攻撃することをしなかったと、そう自分を納得させている。 少女が続けて奇野に対して言ってきたことは、奇野にとっては、いや一般的な観点から見ても、十分に予想の範囲内のことだった。 要点だけを言えば、自分と組まないか、である。 この闘いを生き残るために、二人で組んで行動しましょう、と。 当然のこと、奇野があっさり「組む組む組みたい組みましょう」と少女の提案を受け入れることはなかった。 生き残るためには、一人で行動するより多人数のほうが基本的に有利、という理屈は正しい。しかしこのゲームは、 最終的に一人が生き残ることを前提としたゲームである。 何人がチームを組んだところで、生き残るのはただ一人。 そんな趣旨のゲームの中において、協力という言葉がどれほどの打算を含んでいるのか、それが分からないほどに奇野は馬鹿ではなかった。 しかし少女は、そんな奇野の心情を見越したように言葉を紡ぐ。 私はあなたを殺そうとは思っていません。 どころか、私はここで誰も殺そうとは思っていないんです。 もちろん、私が死ぬつもりもありません。 私はただ、生きてここから帰りたいだけなんです。 その矛盾をはらんだ言葉に、奇野は訝しんだ。 結論だけを言えば、少女はこう提案してきたのだ。このゲームの勝者に与えられる権利、どんな願いでも一つだけ 叶えることができるという、途方もない権利。 私の望みは、ただ生きてここから帰ること。 だから私は約束します。 『このゲームに参加した、全ての人間を生き返らせること』―――。 私が最後まで生き残った暁には、必ずそれを願うと。 ………。 奇野は黙って、その少女の言葉を聞いていた。 全員を生き返らせることができるのかどうがは定かではないですけれど、「何でも」と言ってはいるし、願い事が一つだけというなら ポルンガでなく神龍のほうでしょうから、大丈夫でしょう――そんな訳の分からない言葉さえ聞き流して。 結果的に、奇野は少女と組むことを了承した。 少女の甘言に乗せられたわけでは、勿論ない。 殺しはするが、必ず生き返らせる。 そんな言葉を真に受ければ、それこそ馬鹿である。 ただ奇野は、またも保留することを選択したのだ。少女を攻撃しなかったときと、ほとんど同様の考えにおいて。 今のうちは、利用できるものは利用しておこうと。 少女とて、まさか本当に最後まで奇野と行動するつもりではあるまい。 ころあいを見て奇野を殺すつもりだというなら、それより先に自分のほうがころあいをみて少女を殺せばいいだけの話。 それまでは、この少女を自分の『所有物』のひとつとして連れていておいても、おそらくマイナスにはならないだろう、と。 しかし奇野のこの考えは、先ほどの思考と同じく、奇野が自身の選択に対して納得のいく理由を考えたというだけの、 いわゆるあとづけに近いものだと言っていい。 奇野が少女に対し攻撃を加えなかったことも、奇野がこの少女と組むことを決定したのも、奇野にとっての、このゲームの スタート地点である雀の竹取山の山頂において、彼がそこから数時間ものあいだ「様子見」と称して動こうとしなかったことも、 余裕のあるときならば、相手を小馬鹿にしたような軽薄な態度で相手に望むはずの彼が、少女との会話においてほとんど受動的な 受け答えしかできていないことも、すべては同じ理由に基づくものであるといえる。 裏の世界の住人である奇野頼知は、殺し合いの場という一般的には非常識な状況も、むしろそれが日常であるような世界で生きてきた。 だから今現在の状況も、あまりに現実離れしているとはいえ、奇野にとっては日常の延長線上のようなものだと考えている。 殺し合いというなら、ここは自分のフィールドだと。 そういうふうに、むしろ余裕を持って臨んでいた。 しかし実際には、奇野は自分の心理状態を正確に把握できてはいない。 「呪い名」。 「殺し名」七名の対極に位置し、戦闘集団である「殺し名」とは真逆、非戦闘集団としての性質を持ちながら、 ある意味「殺し名」以上に忌み嫌われている集団。「呪い名」六名。 その三番目に名を連ねる「呪い名」が一名、「奇野」。 奇野頼知の有する能力は、人殺しという目的に対して言うなら、確かに特出して有効なものであるといわざるを得ない。 しかしその能力は、いうなら鳥籠の中の鳥を殺すような、相手を完全に自分の領域の中に引き込んでこそ威力を最大に 発揮するような、そういった類のものである。 この闘いの中において奇野は、殺し合いという名のフィールドの内部に強制的に放り込まれた形である。 裏の世界の住人とはいえ、奇野はあくまで「呪い名」なのだ。 戦場の外部にいてこそ威力を発揮する奇野が、完全に戦場の内部、殺し合いの渦中に引きずり込まれてしまった。 その現実が、自身でも気づかないうちに、彼からプロのプレイヤーとしての余裕を奪った。 恐怖、緊張、焦燥。そういったものが、今の彼の選択肢をどうしようもなく狭めている。 要するに、彼は状況に飲まれているのだ。 さきほど奇野は、少女が自分に安易に背中を預けている、と言った。 しかしそれは、奇野が自分の前を歩く少女の行動に完全に追従しているといってもよい形である。 行動だけではない。 協力という言葉にどれほどの打算がこめられているのか理解していたはずの奇野が、少女の言葉で安易に「組まされる側」に回ることを 良しとし、少女と出合ったときには確実に警戒心を抱いていたはずの奇野が、ゲームのバランスを問題にした先の会話において、 少女が自分たち、プロのプレイヤーと同等の力量を有しているという可能性を完全に失念してしまっている。 彼――奇野頼知は、自分が既に目の前の少女にすら飲み込まれつつあることに、まだ気づいていない。 ◇◇◇ 「なんだ――あれ」 麓まであと数分もかからないというところで、奇野は少し離れたところにある、細く背の低い竹が密集したようにして生えている 竹藪の中に、隠されるようにして置かれている何かを見つけた。 「あら、この距離からもう見えますか。目がいいんですね、奇野さん」 ビタミンAは豊富に摂ってるんでね――奇野は冗談めかしてそういった。 見えたとはいっても、この暗さの中では、さすがにそれが何なのかまでは判断できない。 少女がそれを隠している竹藪をかき分けるところに至って、ようやく奇野は、それが何なのかはっきりと見ることができた。 それは一台のジープだった。 アウトドア用だと一目でわかる、この竹藪に停められているのが不自然なほど豪胆なデザインのジープ。 運転席を見ると、そこには鍵がささったままの状態になっている。 少女はジープの窓をぽんぽんと叩いた。 「裏技とまではいきませんけど、まあ、隠しアイテムといったところでしょうね」 奇野はジープと少女を交互に見つめた。 裏技。 隠しアイテム。 まさか、こんなものが本当にあるなんて―― 「そういえば奇野さん」少女はジープの後部座席のドアを開きながら言った。 「山頂で私が言ったドラゴンボールのたとえ話、覚えていますか? 願いがひとつというなら、ポルンガでなく神龍だと言う話」 またか。奇野はそう言いそうになるのを内心で思うに留めた。 どれだけドラゴンボールが好きなのだ。 「神龍は叶えてくれる願いはひとつだけですが、一度に多人数の人間を生き返らせることができる。ポルンガは三つの願いを 叶えてくれますが、ひとつの願いにつき、生き返らせることのできる人間は一人だけ。そういう設定でした。 しかし魔人ブウ編において、ポルンガも一度に多人数の人間を生き返らせることができるようにパワーアップされてしまっているんです。 ナメック星人の手によって」 それがどうした、木野は思った。だから言った。「それがどうした」 「おかしな話ですよね。神と同等の存在であるはずの神龍やポルンガが、パソコンのOSをバージョンアップでもするかのように どんどん便利にされてっちゃってるなんて。確実に人間の命の重さを念頭に置いたはずの設定なのに」 「ご都合主義もほどほどに、ってことか? お嬢ちゃん」 「神なんてその程度、ということですよ、奇野さん」 少女は奇野に手を差し伸べてきた。握手を求めてきたわけではない。奇野は少女の意図を察し、右手に持っていた荷物を少女に差し出した。 荷物、といってもディパックではない。 奇野が今まで、山道の中で引きずるようにして運んでいた、それ。 それは人間だった。 少年と呼べるくらいの年齢にみえる風貌。 敏捷そうな長い足。 服装は作業服らしき、緑色のツナギ。 端正なその顔からは、完全に血の気が失せてしまっている。 口元からわずかに漏れる呼吸音で、かろうじて少年が生きているのが判断できるほどに。 少女は奇野からその少年を受け取ると、作業服の襟首をつかんで「よいしょ」と気合いを入れつつ、少年をジープの後部座席に放り込んだ。 「さて、奇野さん」ジープの後部座席のドアが閉められ、代わりに助手席のドアが開かれる。 「とりあえず私たちがすべきことは情報収集ですが、それに専念するというわけにも行きません。既に私たちより積極的な行動に 移っているプレイヤーもいるはず。警戒することも必要ですけれど、そういうプレイヤーに対してこそ、先手をもって 制していかなければなりません」 「言われるまでも」 「幸い『情報』に関しては、私たちは一歩先行していますからね」 少女は自分のディパックを背から下ろした。 「ドラゴンボールの世界では、ほとんどの戦いにおいて物を言ったのは当然のごとく戦闘能力。しかしドラゴンボール収集の クエストにおいては、重要なのはやはり情報だった。ブルマさんは本当に有能な技術者でしたね」 またもそんなことを言い、少女はディパックの中身をひとつ取り出した。 「………」 ドラゴンレーダー、ではあるまい。 しかしその形状は、限りなくそれを髣髴とさせる。 緑色の画面の中央部に、小さな光点がふたつ灯っているのが見える。それが何を示しているのか、確認することすら余計だと奇野は思った。 今のところ、このエリアに他の参加者はいないようですね――そう言って、少女はディパックを背負いなおした。 「生きるためには生き残ること。ここが戦場だというのなら、生き残るために戦いましょう。 たとえ舞台が神の手の上だったところで、たとえ相手が魑魅魍魎の集まりだったところで――」 少女は、鋭利な日本刀のような笑みを浮かべた。 「私の名前は萩原子荻。正々堂々手段を選ばず真っ向から不意討って御覧に入れましょう」 奇野は少女のその笑みに気を取られ、少女が何を呟いたのか聞いていなかった。 【1日目 黎明 雀の竹取山 B-8】 【奇野頼知@戯言シリーズ】 [状態] 健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本 とりあえず生きることが優先。そのためには誰でも殺す。 1 今のところは、少女の示すとおりにしておく。 【萩原子荻@戯言シリーズ】 [状態] 健康 [装備] 簡易レーダー(『生存者』の首輪に反応。同エリアにいる参加者の位置を示す) [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本 生き残るために、常に最善の策を考えておく。 1 情報収集を優先。特に参加者に関する情報がほしい。 2 今のところ、一番警戒すべきなのは目の前の「奇野」。 3 『彼』が参加しているかどうか気になる。 「裏技」「能力の制限」に関しては、実際は可能性のひとつ程度にしか考えていない。 「クビツリハイスクール」時点の萩原子荻。 【石凪萌太@戯言シリーズ】 [状態] 意識混濁 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) (現在は子荻が所有) [思考] 意識混濁のため思考停止中 005← 006 →007 ← 追跡表 → ― 奇野頼知 ― ― 萩原子荻 ― ― 石凪萌太 ―
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【刀語】からの出典 微刀『釵』 西東天に支給。 もしくは「日和号」。『人間らしさ』に主眼を置いた完成形変体刀。 四脚に高下駄を履き、四碗それぞれに日本刀を持ち、太陽電池で動く日本人形。本来は周囲の人間を皆殺しにする様に出来ているが、このバトロワでは所有者の命令に従事する仕様になっている。 斬刀『鈍』 羽川翼に支給。 柄や鍔、鞘に至るまで真っ黒な刀。『切れ味』に主眼を置いた完成形変体刀。物体の分子構造を破壊し、どんな物でも手応えなく切断出来る。 柔球術用の球 真庭人鳥に支給。 良く跳ねるゴム玉。加速次第では人をはね飛ばす威力を発揮する。 炎刀『銃』 誰でもない彼女に支給。 回転式連発拳銃と自動式連発拳銃の1セット。『連射性と速射性と精密性』に主眼を置いた完成形変体刀。物体の分子構造を破壊し、どんな物でも手応えなく切断出来る。 悪刀『鐚』 千賀てる子に支給。 電気を帯びたクナイ型の刀。『活性力』に主眼を置いた完成形変体刀。体に差し込む事により、どんな傷も疲労も癒し、死ねなくなる。