約 727,931 件
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/416.html
329: 名前:+椎名+☆2011/09/07(水) 18 13 08 ~宮本side~ あれは五年生の時。 私は親の事情でいろんなところに転校を繰り返した。 おかげで友達が出来てもすぐ転校して離ればなれ… だから私に友達と呼べる本当の友達はいなかった。 でもね、ある日私に好きな人ができた。 暁鈴地君。 彼は男女共に人気で頭もよかった。 私は暁君をじっと見つめてた。 いつもいつも遠くの方から。 そしてある日。 また引っ越しすることになったの。 「…転校しても元気でね」 「…うん…」 悔しかった。 親の理由で転校を繰り返して何も出来ない… 本当に好きな人がいる学校にさえもういられない。 その時それを見ていた暁君が近づいて来て声をかけたの。 「なあ、あんたさ、親の理由で転校繰り返してるって本当?」 「うん…」 「この学校にいたいなら… 親を説得すればいいじゃん」 こんな事言われたのは初めてだった。 「いざとなったら俺も一緒に行ってやるよ」 そう言って微笑みかけてきた。 優しいな… 説得か。 よし、してみるだけしよう! そう思って私はなんとか頑張って説得したの。 1時間ずっとお父さんに頼み込んでみたの。 そしたらお母さんとここに残っていいって…… 暁君のおかげだよ。これも。 その時から暁君とはあまり話していないが 暁君の事を私は頑張って追いかけるようにした。 332: 名前:+椎名+☆2011/09/08(木) 20 08 46 私は他の男子には目もくれずただ暁君だけを見ていた。 私を救ってくれた。 おかげで転校せず、友達と呼べる本当の友達ができた。 でも中学に上がった時だった。 山下佳暖という女が現れた。 どうやら転校してきたようだった。 そして初めて出会ったにも関わらず。 みんなの目の前で 暁君に抱きついた。 「うわ!なんだよお前!?」 「ごめんごめん。君かっこよかったからさ。 ねえ、私は山下佳暖。君は?」 「俺は暁鈴地。じゃあな山下」 その時暁君は大胆すぎる山下さんにイライラしてあしらってい た。 「ふふ、冷たいなぁ。でも可愛い」 「…あぁ!?お前馴れ馴れしいぞ!」 そして暁君は怒って行ってしまった。 誰でもあんなことしたら怒るだろう。 馬鹿だなぁ。 でも山下さんはそれを続けていた。 するといつの間にか暁君は山下さんとよく話すようになってい た。 「…ふふ、鈴地面白い」 「余計なお世話だよ…」 そして私は どんどん暁君から遠くなっていく気がした。 …このままの気持ちは嫌だ… 告白…しよう…… 333: 名前:+椎名+☆2011/09/08(木) 20 23 39 そして私は暁君を放課後に教室に呼びだした。 「…何?宮本さん」 「あ、その…えっと…暁君。小学生の時は…ありがとう…」 暁君はあぁ、と思い出したようでにこっと笑う。 「ああ、大したことしてねえけど」 「…ううん、嬉しかったの。 …あの日以来、ずっと暁君を見てた。 私は…暁君の事が……」 ガラッ その時、教室の扉が開く。 山下…さん…… 「告白のところごめんね?」 …!? 聞いてたの…? 「委員会終わったから帰ろ?」 山下さんは暁君の手を引っ張った。 「え?ちょ…待てよ…あ、ごめんな宮本さん」 教室にはただ私一人が残った。 告白を……邪魔…されたの…? ……私は…告白をして…気持ちを…どうにかしたかった… なのに…あの子は…あいつは…… 私の告白をまるで今まで聞いていたかのように… 許さない。 私の気持ちを踏みにじって…! その日から私は 山下佳暖を痛めつける方法を考えた。 そして…今がその時……! 337: 名前:+椎名+☆2011/09/11(日) 12 42 07 私は…告白をこいつに邪魔された。 そしてこいつは痛い目見ないとわからない。 だから…私は女子達に水をかけたりするのを頼んだ。 そう、いじめの主犯は私…… 女子達は山下をいじめてと頼むと喜んで承諾してくれた。 みんな…進んでこいつをいじめるのに協力してくれた。 別に暁君を奪いたい訳ではない。 こいつに復讐さえできればそれでいい。 暁君を遠くから眺めているだけでいい。 けどいつも見ていると視界に目障りな奴が入ってくる。 そいつを消したい。 目障りなんだよ。 存在自体が。 私は山下の髪を引っ張る。 「痛いなぁ」 こんな状況でもまだ笑ってる。 気持ち悪い。 私は思いっきり床に叩きつける。 顔面ヒットって感じね。 「痛いなぁ。でも鈴地はこんなので私を嫌いにならないよ?」 顔から血を出して言うことじゃないでしょ。 ていうか…キモい。 鈴地鈴地うるさいんだよ。 そうだ。 暁君に嫌われるくらい顔をぐちゃぐちゃにしてやればいいんだ。 私は何度も何度も山下の顔を 固くてく冷たい床に叩きつけた。 顔が醜くぐちゃぐちゃになるまで。 338: 名前:+椎名+☆2011/09/11(日) 12 57 23 チャイムが鳴る。 でも授業なんかどうでもいい。 私はこいつの顔を潰す。 山下の顔はすでに血だらけで多分鼻の骨は折れてるだろう。 ははは、ざまぁ。 もっと潰してやるよ。 まぁ元々潰れた汚い顔だけどさ。 気に入らないんだよね。 なんでこんな奴が暁君と…… そうだ、いいこと思いついた。 私は制服のポケットからライターを取り出す。 元々こいつのノート類全部燃やしてやろうと持ってきたけど… どうせなら残るような傷を作ればいいよね? ジュボっ… 私はライターの火を ゆっくりと山下の顔に近づける。 346: 名前:+椎名+☆2011/09/15(木) 20 18 12 …! 私は手を止めた。 なぜなら屋上の入り口に誰か立っているからだ。 「…あれ?やらないの?燃やすんでしょ、 その子の顔をさっ♪」 ここの生徒ではない… というか…見たことがない。 それに止めないの? 「…止めないんですか…?」 「…なんで?楽しいじゃん。血だらけの顔を燃やすなんてさ」 何この人…危険かもしれない…… 「やだなぁ、警戒しないでよ。敵じゃないよ?」 私は一歩近づく彼にライターを向けた。 「ふふ、可愛いな。だから面白いんだよね」 「…?」 この人馬鹿にしてるの? 「…あなたも…燃やしますよ……」 すると彼は高らかに笑う。 その声は屋上に響いた。 「はは、頼もしいなぁ。言ったろ?敵じゃないって。 僕のことは十六夜って呼んでよ」 い…十六夜? やっぱり聞いたことない… 私が山下の方に顔を向けると動かない。 どうやら気を失っているようだ。 「早く燃やさないと誰か来るかもよ?」 「…今は授業中なのに誰も来る訳……」 「暁君」 …! 「彼女の彼氏の暁君なら来るかもね?」 そんな…暁君に見られたくない… 暁君に…幻滅されたくない… 暁君に……嫌われたくない! 「へーえ、燃やさないの?じゃあ僕が燃やすよ」 十六夜は私のライターを取り上げて火を出す。 そして山下の胸ぐらをつかんで顔に近づけた。 「……ま、待ってよ…!」 「あれ?何?この醜い顔潰したいんでしょ?」 「………」 いきなり出会った奴がまさか… それに…もういい。 「あ、飽きました…」 私がそういうと彼は僅かな微笑を見せる。 「飽きたんだ?じゃあさー………」 「……!」 その一言で 私は彼についていくことにした。 347: 名前:+椎名+☆2011/09/15(木) 20 26 48 ~十六夜side~ ふふふ、面白い光景が見れそうだったのに。 真面目そうな女の子が嫌われ者で不思議っ子の女の子の顔を燃や そうとしてる。 でも彼女は燃やさなかった。 あーあ、残念。 面白いものが見れそうだったのに。 彼女は僕を警戒してる。 だから…… 「じゃあさー……」 僕は彼女の耳元で言う。 すると彼女は改心した。 ふふふ、これから楽しくなりそうだな… 不思議っ子の彼女。 理想のかっこいい彼氏。 そして恋心を抱く遠き存在の子…… あはは、こんなにうまい三角関係はないよ。 だから徹底的に遊んであげるよ。 まあ飽きたら殺しちゃうかもね? 覚悟してね。 僕の新しい玩具の『宮本さん』? 352: 名前:+椎名+☆2011/09/18(日) 22 47 26 ~宮本side~ フフフ… そうだよ。 そうだったんだ。 あの人の言うことは間違っていない。 正しい… なぜ今まで気づかなかったのだろう…? 十六夜って人はただ一言しか言ってない。 私はそれで気がついたの。 『飽きたんだ?じゃあさー… 愛を行動で示したらどうかな?』 愛を行動で示す… そして彼はナイフを渡したの。 そう、暁君をこれで… そうすればずぅっと私のもの… 私だけの…暁君。 私が暁君に愛の傷をつける…。 私が彼を殺した瞬間から山下は暁君の彼女じゃなくなる… 本当に…私の暁君になる。 私だけの…私色の暁君。 私はあなたの全てが欲しい。 あなたの思いも。 あなたの気持ちも。 あなたの心も。 全て私のものにしたいの… だから…死んでくれる? 暁君。 ごめんね? これは私の愛情表現なの。 353: 名前:+椎名+☆2011/09/18(日) 23 02 36 私は山下を置いて保健室に向かう。 サボるの。 別にどうでもいいの。受験なんてまだまだだし。 それに今はどうでもいい。 暁君を殺したいの。 憎いわけじゃない。 愛しているから。 山下みたいな女に暁君は渡せない。 あいつは暁君を振り回しているだけ。 あんなやつ彼女にふさわしくない。 私の方が彼を愛している。 暁君が私のものになれば山下も苦しむ。 あはははははははははは! 山下!お前なんて苦しんでしまえ! 苦しんで…消えてしまえ! あはははははははは! 7日間の醜いゲーム。 続き21
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/443.html
166: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 10 53 08 蓮くんと武塔先生がギャーギャー言っていると…。 「何抜けだしてるですか、武塔先生なのですよ」 なんと、花ちゃんが武塔先生を追っかけてきた。 あの小っちゃい花ちゃんが!! ムスッとした顔で武塔先生を見つめる。 「武塔先生、そんなに元気なら学校に戻って仕事なのですよ~」 そう言って、武塔先生の服の襟を掴んで 引きずりながら行ってしまった。 「花先生~~~」 悲しい叫びだけが響いた。 「やっとうるさいのがいなくなった」 「先生をそんな風に言っちゃ可愛そうだよ?」 「別に可哀想も思わないな」 「もー」 お互いに長いつきあいだから、 こういう口論にいたっては情がないのかな…? そうなると、武塔先生が可愛そうに思えてくる。 「おい」 「ん?」 「あした、お前の家に迎えにいく」 「本当!? ありがとう!!」 「寝坊したら、俺専用パシリな」 「だいじょーぶ!!絶対ない!!」 「待ち合わせ時間は10時だ。 9時には迎えに行くから、待ってろよ?」 「うん! あ、家についたよ!」 「ここがお前の…」 「小っさいけどね~」 「いや、結構でかいんじゃねーかな」 「そんなことないよ。じゃ、また明日! 送ってくれてありがとう!」 「あぁ、じゃあな」 スタスタ… 私は蓮くんの姿が見えなくなるまで、 家の中には入らなかった。 蓮くんと明日、もっと距離が縮まりますように…。 170: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 13 04 04 ~翌日~ とうとうこの日がやってきた。 遊園地の日---。 蓮くんが迎えに来てくれるから、 道に迷う心配はない。 それに、少しでも一緒の時間を過ごせる。 お母さんは長期出張でいないし、 お父さんは海外でお仕事。 ほぼ一人暮らし感覚。 ピーンポーン… 蓮くんだ!! 「はーい」 ガチャ… 「迎えにきた」 「準備はできてるよっ!行こうか!」 戸締りをして、家を出た。 今日の天気は、晴天。 何をしても上手くいきそう。 「お前、俺だけ見てろよ」 「どうして?」 「どうしてもだ。 蒼太のこと見てたら、 パシリやらせるからな」 「何で半分脅しなの…」 「いじりがいがあって、楽しいから?」 「ドSだぁぁぁぁぁぁ」 「うるせぇ。…あれ、蔵間じゃねぇか?」 「え? どこどこ~?」 遊園地の入り口に、蔵間くんが立っている。 雰囲気が大人っぽくて気づかなかった。 「あ!! 蓮、舞ちゃん!!」 「蔵間くん、おはよう」 「おはよ!蓮とのデートはどうだった?」 「で、でーと!!??」 「おい、蔵間」 「はいはい、ごめんね~」 笑いながら私の頭を撫でる。 子供じゃないよ!! 「あ、みんなおはよう」 「蒼太くん、おはよう」 「舞ちゃん、おはよう」 「意外と早く来るんだな」 「蓮こそ、舞ちゃんのお迎えなんてずるいね~」 二人の間に火花が散っている。 蔵間くんはやれやれ…と肩を落とした。 「火花散らしてないで。時間なくなるよー?」 「チッ…。舞、最初は何に乗るんだ?」 「んー、そうだなー…」 「メリーゴーランドでもいいよ、俺は!」 さすが可愛さもある、蒼太くん。 女の子の好きな乗り物も乗れるなんて!! 「俺はお前が楽しんでくれんなら、乗ったって構わねぇ」 蓮くんの意外な発言に、驚いた。 「え、蓮くんいいの?」 「仕方なくだ。早くしろ」 「うん!」 そうして悩んだ結果、 私はジェットコースターに乗ることに。 二人ずつ座るから席をじゃんけんで決めることに。 私の隣は… 「舞ちゃん、よろしくね!」 蒼太くんになった。 蓮くんと一緒じゃなくて、ちょっと残念。 「うん、よろしく」 「何で男と座らなきゃなんねんだよ…」 不機嫌な蓮くんに蔵間くんが言う。 「それは俺もだよ。ま、お互いさまね」 ジェットコースターが動く。 「私、ジェットコースター大好きなんだ!!」 「そうなの? なら、気が合いそう!!」 蒼太くんが嬉しそうに言う。 ジェットコースターが徐々にてっぺんへ上がっていく。 そして---。 「きゃーーーーー!!」 思いっきり叫ぶ!! もう最ッッッッッッッ高!!! ~広場~ 「あぁ~、超楽しかった!!」 「うん、最高だった!!」 蒼太くんもすごく楽しそう。 でも、蔵間くんと蓮くんは違った。 「男の隣で何も楽しくねぇよ」 「蓮の隣は二度といやだね…」 二人に何があったかは、 分からないけれど楽しそうじゃないのは分かる。 171: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 14 07 52 ~メリーゴーランド~ 次はメリーゴーランド!! 私は馬車にのりたくてウキウキ!! 隣のお相手は蓮くん! 「ねぇ、何かあの人かっこよくない~?」 「いやだぁ~!めっちゃタイプ!」 まわりにいる女の子たちの黄色い声。 「ほら、早く乗れ」 「あ、うん!」 ガチャンッ! メルヘンチックな音楽をバックに、 私はお姫様気分を味わう。 その正面で、蓮くんはじっと見つめている。 「ふぅ~!超楽しい!!」 「お姫様気分か?」 「うん!お姫様!王子様がいないけどねー」 「いるじゃねぇか」 「え…んン!?」 それは突然のことだった---。 蓮くんが私の唇にキスをした…。 別に嫌じゃなかったけど、 告白もしていないのにされるのは嫌だった。 ドンッ! 私は抵抗して蓮くんを突き倒した。 「…っはぁ。何すんの、蓮くん!!」 「…ってぇ。キスに決まってんだろ」 「どうして…」 「俺が舞のこと、好きだから」 「え…」 「前にも言ったろ」 「でも、イキナリ…」 「じゃぁ、蒼太なら許したのかよ?」 「そ、そういうわけじゃ…」 「なら、何なんだ」 「それは…」 ガチャンッ! “お下りのお客様は、焦らずにお下りくださいませ” 「タイムオーバー」 スタスタ… 蓮くんは一人で先に降りてしまった。 私はちゃんと向き合って、 告白した後にキスをしたかった。 ちゃんとしたデートのときに、キスしたかった。 「ごめんね…蓮くん…」 蓮くんの背中につぶやいた。 172: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 14 17 37 ~観覧車~ 蒼太くんの希望で乗ることになった観覧車。 私はさっきのことで頭がいっぱい。 蓮くんは一人でどこかに行っちゃうし…。 「気にしないで、舞ちゃん」 蔵間くんが優しい言葉をかけてくれる。 「うん…」 「さ、舞ちゃん一緒にのろ?」 「そ、だね…」 蔵間くんは蓮くんを探しに行ってくるから、 観覧車には乗らない。 「じゃ、楽しんでね」 「うん。ごめんね、蔵間くん」 「蓮の勝手な行動だから、謝んなくていいよ」 「舞ちゃん、乗ろ?」 「うん」 私と蒼太くんに手を振ってから、 蔵間くんは遊園地の広場へと姿を消した。 173: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 15 05 53 ~観覧車の中~ しばらくの沈黙。 蒼太くんは心配そうに私を見る。 「蓮がそんなに気になる?」 「え…」 「舞ちゃんは分かりやすい」 「…うん」 「いきなりキスされて、 そのまま流されるような人はいないから 舞ちゃんは正しいと思うよ」 「…うん」 「でも、後悔してるんだ?」 「あのとき、受け入れればよかったのかな?」 「うーん…。無理やり受け入れるのはできないんじゃないかな」 「そうだよね…」 「せっかくの遊園地なのにね」 「…」 「俺が先に舞ちゃんとっても、 文句ないって態度かな蓮は…」 「っ…」 「泣いてもいいんだよ?」 「っ…ふっ…」 「俺、片思いじゃん。 舞ちゃんになら胸貸してあげるからさ」 「そ…たく…ん」 「俺ならこんな風に舞ちゃんを泣かせないから」 「うん…」 「考えといてね。俺が彼氏になることも」 「…う…ん…」 「あと10秒で下に着くね」 「やだ…。涙拭かないと…」 私が立って、カバンからティッシュを取ろうとしたとき…。 ガタンッ! 間違えて足を崩して、蒼太くんを押し倒してしまった。 「うわっ!」 ドンッ! チュッ その衝撃で蒼太くんにキスをしてしまった。 その瞬間、ドアが開き… 「お疲れさ…きゃっ!」 「舞ちゃん、蓮連れてきたよー…」 「っ!!!!!」 ドアを開けてくれる女の人が声をあげる。 蔵間くんは絶句。 蓮くんは私と蒼太くんの状況に驚いている。 ダッ--- 「蓮くん!!待って!!」 ダッ 私は蓮くんに誤解だと伝えるために、 走り出した。 174: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 15 25 40 「待って!!待ってよ!!蓮くん!!」 ガシッ 蓮くん腕を力いっぱいに掴む。 「あれは誤解なの!足を崩して…」 「俺には嫌だとか言っといて、 本命のやつには自分からすんのかよ…」 蓮くんが低い声で言う。 「え…?」 「最初っから蒼太が本命なら、 俺が来る意味も迎えに行った意味もなかっただろ」 冷たくて消えそうな声で私に言う。 それでも私は誤解を解こうとした。 「違うの!あれはね、私が間違って---」 「俺の気持ちを弄(もてあそ)んで、楽しかったか…?」 ズキンッ!! 心が張り裂けそうだった。 好きな人に、愛しい人につくり笑顔で言われるのは、 私にとって絶望のようなものであった。 「蓮…く…」 「もう近寄んな。顔も見たくねぇ」 ダッ… 蓮くんは低く、悲しい声で言って走り去った。 追うことができない私は一人、涙を流す。 待って…。待ってよ、蓮くん…。 お願いだから…私の話を聞いて…。 一人になった私をさらに悲しくさせるように、 空からは大粒の雨が降ってきた---。 175: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 15 44 59 ~蓮side~ 「もう近寄んな。顔も見たくねぇ」 俺は舞の話も聞かずに、 走り出してしまった…。 あの状況を見て、誤解だなんて思えねぇよ。 違うと思いたいけど、思えないんだ。 このままつらくなんのは耐えらんねぇから、 お前を突き放したんだ。 舞、どんな顔してただろ…。 でももう、そんなこと関係ねぇ。 俺はもう、アイツの顔は見たくないんだ。 早く俺の脳内から、存在を消すんだ。 遊園地に何を期待した? アイツに何を期待した? もしかしたら、フラれるってことも考えただろ? 分かってたけど、自信があった。 自信があったからなお、傷いたダメージは大きい。 もう、関わらないようにするんだ。 俺は不良。 女なんていらねぇだろ。 あんなやつ、早く忘れるんだ。 何度も自分に言い聞かせた。 俺の目が熱くなる。 大雨が頬を伝うように、 舞への思いも流されればいいのに。 雨の中、俺は走りつづけた---。 176: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 16 00 26 ~舞side(普通視点)~ 私は大雨の中、 傘もささずに歩いていた。 道行く人々に、哀れな目で見られた。 路地裏に座り込んで曇天の空を見上げた。 「バカだな…」 蓮くんにあんなこと言って、 蒼太くんとキスしてるってなったら 誤解も何も、信じらんないよね…。 蓮くんを傷つけたのは、私---。 一番つらかったのは、蓮くんだよね…? ごめんね。私が矛盾してるって言いたいんだよね? 分かったよ? もう顔を合わせたりしないよ。 近寄ったりしないよ。 「さようなら、私の好きな人…」 路地裏の黒猫につぶやいた。 177: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17 25 06 ~翌日~ 「あ!!舞ちゃん!!」 教室に入ると、 蒼太くんが心配そうな顔で私に話しかけた。 「昨日、大丈夫だった?」 「ごめんね、なんかあんな感じになっちゃって…」 「やっぱり、蓮とは話せなかった?」 「うん…。話すら、聞いてもらえなかった。 でも、いいんだ。これが私の犯した罪だから…」 「舞ちゃん…」 「舞、何があったんだよ?」 康介が尋ねる。 鈴音も心配そうに見つめた。 「なんでもないよ」 「でも…」 「いいんだって。私が悪いんだし…」 ふと蓮くんの机を見る。 まだ学校には来ていない。 「舞、つらくなったら保健室に行きなよ?」 「ありがと」 つくり笑顔で鈴音に言う。 蓮くんには二度と振り向いてもらえない。 分かってても、涙がでてくる。 178: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17 32 53 ガラッ 蓮くんが教室に入ってきた。 私は胸が熱くなって、 我慢できず教室を飛び出した。 蔵間くんは私を見た後に、蓮くんを見た。 「蓮…」 「……」 それだけが耳に残っていた。 ~保健室~ 保健室の先生に頼んで、 少しだけ休ませてもらうことにした。 「あなた、無理しすぎじゃない?」 保健室の女の先生が私に言った。 「ちょっと疲れてるだけですよ。 寝ればすぐに治ります…」 「そう? 相談なら先生に何でも言ってね」 先生は職員室に戻って用事を済ませてくるらしい。 また一人になった…。 「どうして、こんなに苦しいの…?」 蓮くんへの伝えきれなかった思いが溢れ出す。 ガラッ ふいに保健室のドアが開いた音---。 私は急いでかけ布団をかぶった。 180: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17 48 04 「舞ちゃん?」 声の主は、蔵間くんだ。 「蔵間くん?」 私は飛び起きて、蔵間くんの姿を探す。 「いたー!」 「蔵間くん…」 「よかった。 昨日の話、蓮に無理やり吐かせた」 「え…」 「舞ちゃんは悪くないよ」 「っ……」 「蓮が怖がってるんだ。 自分に自信がなくなってね」 「もう関わらないよ」 「え?」 「蓮くんに顔も見たくないっていわれたから」 「うーん…」 「私ね、海外に行こうと思ってるの」 「えっ…」 「お父さんが海外にいるんだけどね、 一緒に住まないかって連絡あってさ…」 蔵間くんは私のことを切ない目で見る。 「そんな悲しい目で見ないでよ。 そうすればさ、蓮とは関わりもなくなるし…。 昨日の事でこうなったわけじゃなくて、 私が前から悩んでたことだから」 本当は全部ウソ。 お父さんにはこっちでガンバレって言われてる。 前から悩んでなんてない。 私自身が蓮くんを苦しめる存在なら、 相手がいなくなるより自分から 身を引いた方がいいと思ったから。 そうすれば、顔もあわせなくていいし近寄ることもない。 私は自分の本当の気持ちを押し殺した---。 182: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17 55 45 「それが、舞ちゃんの本心?」 私は少し考えて首を縦に振った。 「そっか…。蓮にはこのこと…」 「言っても蓮くんには関係ないから、 判断は蔵間くんに任せるよ」 つくり笑顔…。 やだ、私…ちゃんと笑えてるのかな… 蔵間くんが何かを言いかけたけど、 分かったと言って保健室を去った。 183: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 18 06 38 ~蓮side~ 俺はまだ、舞のことが忘れられずにいる。 あの日の夜、どうしても離れなかったあの光景。 思い出したくない嫌な記憶。 「クソッ!!」 ガンッ!! 「蓮、ものに当たるなよ」 「分かってるよ」 蔵間に何が起きたかを、すべて話した。 舞の話を聞かなかったことと、 無理やりキスしたことを説教された。 俺だって…悪いと思ってたんだ。 「蓮…」 蔵間が教室に戻ってきた。 「本当に舞ちゃんとは縁を切ったんだね?」 「……あぁ」 「本当に?」 「いいんだよ、もう」 「…分かった。じゃあ何も言わないよ」 「…」 蔵間は何か言うことあったのか? 聞きたかったけど、聞けなかった。 舞に昨日、本当は何があったか聞きたい。 だけど、あんなこと言っておいてそれはないよな。 寂しい気持ちと愛しい気持ちを押し殺した。 なぁ、舞…。 もう一度、お前と話したいって言ったらお前は何て言う? 教室のドアを見て、舞が戻ってこないか見つめる。 186: 名前:雷蓮☆2011/07/30(土) 15 03 32 ~舞side(普通視点)~ 私は蔵間くんが去った後、 いつの間にか寝てしまった。 誰か来てくれたのだろうか、 私のカバンが置いてある。 あれ…? 何でカバンが…? もしかして、もう放課後!? ガバッ 急いで体をおこし、時計を見てみると… “16時” 嘘でしょ…。 完璧に授業でてないじゃん! 後で鈴音にノート見せてもらおっと。 服装の乱れを直し、カバンをしょって保健室を出る。 「爆睡だったんだね?」 蒼太くんの声だ。 でも、その姿が見当たらない。 「蒼太くん? どこにいるの?」 「下、下~」 「した?」 言われたとおりに下を見ると、 蒼太くんが保健室の入り口の、 ドアの前でしゃがんでいた。 「わっ」 「驚いた~?」 ニッと笑って見せる蒼太くん。 もしかして、私が出てくるのをずっと待って…。 「待っててくれたの?」 「部活帰りにちょっと休憩してただけ」 蒼太くんの優しさが胸いっぱいに広がる。 「ありがとう」 ちょっとおかしくって笑っちゃった。 「何で笑うんだよ~」 「なんか、可愛くって」 「可愛いくて悪かったねー」 私を元気づけてくれてる。 本当に蒼太くんには感謝しなきゃな。 「よかったら、一緒に帰らない?」 「え、俺といいの?」 「蒼太くん、待っててくれたんでしょ?」 「あー…バレちゃってた?」 彼は恥ずかしそうに言う。 「じゃ、行こうっか」 「うん!舞ちゃん、転ばないようにね」 「わ、私そんなドジじゃないもん!」 こういうやりとりをしてると、 思い出してしまう。 愛しいあの人との会話。 忘れたくても、脳が消去してくれない。 蒼太くんに言わなきゃいけないよね。 私の本当の思いを。 言わなかったら蒼太くんの心を弄んでることになる。 冷えた風が吹き抜ける廊下に、 一つ、愛しい人の影---。 187: 名前:雷蓮☆2011/07/30(土) 15 11 18 「っ!!!」 私は硬直した。 正面から蓮くんが歩いてくる。 「舞ちゃん、どうしたの? ……蓮…」 かすかに手の震え。 心が張り裂けそう。 彼との距離が縮まっていく。 私の心拍数は、尋常じゃないくらいスピードをあげた。 ふと、昨日の光景が脳裏をよぎる。 “もう顔も見たくねぇ” すべてを絶望に染め上げたあの一言。 でも、私は伝えなきゃいけない。 もう海外に行くことは決めた。 最後に、誤解だけは解いておきたい。 気づいたら蓮くんの手を握ってた。 188: 名前:雷蓮☆2011/07/30(土) 15 31 45 「……何だよ」 蓮くんが低い声で威嚇する。 私はそんなことで引いてはいけないと思った。 「誤解だけ、解いておきたいと思ったの」 真剣な顔で蓮くんを見つめる。 でも、彼はこっちを向いてくれない。 「俺がお前に話すことはねぇ」 「せめて、私の話を聞いて」 「嘘じゃねぇのか?」 「え…?」 「昨日、俺のこと突き飛ばしたくせに 蒼太だったらいいってことだよな?」 「それは違う」 「何が違うんだよ。信じろってのか?」 「うん」 「今更…天然にもほどがあるぜ」 「蓮くんに会ったり、 話しかけるのはこれで最後にする」 「……は?」 「だったら、別に文句ないでしょ?」 「なら、一刻も早く消えてくれ」 ズキンッ! 「蓮!!そういう言い方は最低だぞ!!」 「本当のことだ。 俺はお前に話なんかないし、 聞くこともまったくないんだよ」 「蓮!!」 「分かったか、天然女」 「……もう、いい…。 明日から会うこともないし、話すこともない。 今までありがとう…」 「あぁ、じゃあな」 「さよなら…元気でね」 ダッ!! 「あ、舞ちゃん!!」 「……」 「蓮!!お前、好きなんじゃなかったのかよ!!」 「このままこういう関係だったら、 アイツを苦しめるだけだ」 「だからって、もっと違うやり方があったんじゃないのか!?」 「あるわけねぇだろ。昨日、あんなっこと言っといてよォ…」 私は一人、学校を飛び出して家に向かった。 心がバラバラで修復不可能になりそうで、怖かった。 明日、私は海外へ旅立つ。 二度と見れなくなる蓮くんの顔…。 未練はもうない。 あそこまで言われたら、さすがの私も言い残すことはない。 君を好きになる5秒前 続き6
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/348.html
1: 名前:サスライ☆12/17(金) 19 26 23 むかしむかし、あるところに大冒険をした3人の旅人が居ました。 気丈なジュウザ。 優しいサーパ。 陽気なハンプティ。 これは、そんな3人が別れてから数年後の、むかしむかしでは無い話。 2: 名前:サスライ☆12/17(金) 19 51 34 第一章 ササヤキ 風が吹く。その風は何処から来たのか、聞いても答える者は無いが、フィクションの制限されたこの町では、聞いたらかなり危ない人に見られる。 だから風に頬が当たれば鬱陶しいな程度にしか思えなく、しかし発散する場も無いので『彼女』は溜め込んでポケットに手を入れてズンと歩くしかなかった。 白い肌に紅い目と、銀髪がよく似合う娘だった。右目を髪で隠すのは思春期特有のオリジナリティで特に意味は無い。 小柄な身体を寒さに歯まで震わせて、嫌だと感じて愚痴を吐こうにも声が出ない。 ならば一刻も早く家に帰りたいのかと言えばそうでも無かった。 家に帰っても自分の気持ちを解ってくれる人なんていない。 家に帰っても何も無い。 国の中でも特権階級の過ごす事が出来る町。ここでは外の様に飢餓に苦しむ事もミサイルの直撃を受ける事も無い。 しかし自由は無くて、個性は奪われる。 彼女にとって家に帰ると言う事は、玄関で靴を脱ぐ様な物だった。 3: 名前:サスライ☆12/18(土) 12 18 14 彼女が曲がり角に差し掛かった時だった。何時もなら何も感じず通り過ぎる筈だが、今日は何かが違った。 囁く(ササヤク)様な声がする。聞き覚えの無い様で、しかし聞き覚えのある声色が。 「クックック。たまには曲がってみたらどうかな?」 人を喰った様な口調だ。未知に対してゾワリとした感覚が足の爪先から首の付け根まで伝う。 周りを見回すが、それらしい人影は無い。精々電灯に群がり、しかし行き場を失って右往左往している虫影が見つかる程度だ。 「だれ、そう誰ですか。こう言う人を脅す行為は条例により暴力と同様と見なされますよ!?」 必死に自分が今まで絶対無敵の最強武器だと思っていたものを振り回す。 しかし、もしこれが人に届いたとしても何の関わりの無い他人を『助けるなんて利益の無い事』を、人に襲われる恐怖を知らないこの町の住人が行うだろうか。 もし行政に届いたとして、自分で考え上の許可を取らず人のもとに駆け付ける人間がどれ程居るだろうか。 「やだなぁ、居るじゃないか、もう解ってるじゃないか。それを認めないだけじゃないのかな。 アンタの頭の中に直接響くこの声が、声色が。 そう、私はアンタ自身だ」 どこかで聞き覚えのある声だ、だってそれは自分の声なのだから。 4: 名前:サスライ☆12/18(土) 22 56 50 彼女は自分の脳がおかしくなったのだと思った。そして、この世の終わりの様な恐怖にかられる。 これが治療出来る範囲なら良い、入院すれば良いだけだ。 しかし、治しようの無い人間は、隔離治療して手の打ちようが無ければ『外の世界』に放り出される。 だって、法に殉じる『立派な大人』になれないのだから。 『外の世界』は学校で習っていないからよく分からないし、必要が無いから知ろうともしなかったが、そこは野蛮人しか居なくて人殺しなど日常茶飯事の事だとか。 「クックック、どうした?『私』、そんな頭を抱えていては下しか見えないよ?」 「五月蝿い。消えろ。お前が現れたせいで私はどうしようも無いんだ」 「……そうだなぁ、一つだけ方法があるよ」 「ホント!?」 彼女は目を見開き希望の光よろしく月光を顔に浴びる。ロクに自分で考えもしていなかったのに。 囁き声の主はそれを解っていながらも溜め息一つ。こいつは悪い意味で頭が良いけど馬鹿だなあと。 「うん、今日から暫く私の言う事を聞いてくれたら良いよ」 「うんうんするする。それで、何をすれば良いの?」 「じゃあ、目からピーナッツを食べて鼻からスパゲティを吸ってみよう」 沈黙。 電灯は相変わらず虫が群がり行き場を失う。その下に生える植物も常に光を与えられているから花を咲かせる時間が分からなくて行き場を失っている。 彼女もそんな気持ちだ。だから叫んだ。狂っていると思われる事を省みずに。 「出来るかボケェ!」 5: 名前:サスライ☆12/21(火) 00 32 56 「……と、言うのは冗談で」 「マジで怒るよ?」 地獄の底から深く呟いた。囁き声の惚(トボ)けた口調がかえって怒りを蒸し返す。 「一瞬本気にしたクセにー」 「え、アンタ何で解るの!?」 「そりゃ、私はアンタだからね。色々解るさ、例えば……」 テスト前、頭に一気に勉強を詰め込んだ様な痛みが疾り、脳裏に残るは赤裸々な過去の記憶、通称黒歴史。それは色々な意味で自分だと思いたくないと言う感情を作り出すには十分だった。 苦虫を噛み潰した様な顔をする彼女は割と平然とした感情で、しかし迷惑にならない様なのか保守的思想によるものなのかボソリと言葉を吐いた。 「……アンタは、『ササヤキ』だ」 「私の名前か。やれやれ、面倒な不思議ちゃんだ」 ムスッと頬を膨らます。軽く応えるササヤキに今の自分の必死さを伝えたいし殴りたい。そもそも何が不思議なのか。 「だってもう一人の自分にボソボソ語りかけるってドコの不思議ちゃん?それとも中二病? ウヒャヒャヒャヒャ」 胃が痛くなったと同時にこれに慣れるには随分手間隙かける必要がありそうだ。笑い声が心の底から鬱陶しいと思ったのは初めてかも知れない。 「まあ、良い。行くよ」 「おや、曲がり角に曲がるのかい、『メイ』。クックック」 「五月蝿いなぁ、アンタが言ったんでしょ」 こうして彼女、メイは産まれて初めてのルール違反をするのだった。 8: 名前:サスライ☆12/21(火) 11 35 01 言葉だけで解ったと言う人程、実は解っていない。 例えば、勉強ばかりゲームばかりの人間が論争の果てに一方が『俺を殴れ』と言う、それは殴られれば許されると解釈している。しかし、何故殴るかを解っていない。 拳を欲望を吐き出す手段としか捉えていない。それは殴った事も殴られた事も無いからだ。 その様にメイも何故街灯があるかが解っていない。暗闇を照らすのは知っているが、何故暗闇を照らすかを知らないのだ。 「な、何か話なさいよ。ササヤキ」 「クックック、鬱陶しいんじゃ無かったのかにゃー」 頬を電流の様な感覚が伝い、腿(モモ)が震える。 メイは暗闇がどれ程怖いかを解っていなかった。だから、路地裏も精々薄暗い程度と高をくくっていたらこの有り様だ。 「じゃあ引き戻せばいいんじゃないのお?チキンのメイちゃん」 「五月蝿い、私がこんな不幸なのはみんなみんなアンタのせいだ」 暗闇で怯えパニックを起こすメイの死角で、黒猫が塀の上で欠伸をしていた。月光を背にするシルエットには余裕が感じられる。 「ふうん、まあ良いんじゃないの。メイがそう思うなら」 「何、どう言う意味!?」 その言い争いは直ぐに終わる事になる。 黒猫が塀からピョンと飛び降りて何処かへ逃げた。途端、調度メイの正面の塀に何かがバンと叩きつけられる。 それは人だった。 11: 名前:サスライ☆12/22(水) 19 50 35 人がコンクリートの塀に叩きつけられれば服が波紋を描く。その服が群青だから、波紋と聞くと水を連想してしまい、すると人体の弾力に目が行き改めて水分量からこれは人体なのだと認識する。 そしてそれは、見覚えのある格好だった。 「あらら、お巡りさんが塀にぶっ飛ばされてるねえ。窓に突進のカブトムシもビックリだ」 「もうカブトムシの時期は過ぎてるよ。いや、そんな事はどうでもいい。 警察が暴力にあってる!?」 ズルリと身体が塀に沿って尻から落ちる名無しの警察。警棒やら金属製の、重量感ある音がした。 警官の正面、曲がり角の更に脇道、闇の向こうからカツカツと革靴の音が近付いてくる。 警官が顔を上げると同時に、顔面に革靴の裏側が叩き付けられた。尚、革靴は引く力が強い為、裏底は厚いゴム等強固な素材で出来ている場合が多い。 それが革靴が地面を叩く音が無くなって直後から行われた。つまり、この蹴りの主はメイが姿を確認する間も与えず、面を上げたばかりの警官に素早く蹴りを文字通り見舞ったと言う事だ。 暗闇に目が慣れてきた為かその姿が確認出来る。 「いや、まあ、慣れてなきゃ警官も確認出来ないから当然っちゃ当然なんだけどね。ウッシッシ」 ササヤキがメタ発言をするがスルーの方向でいこう。 月光を背にする黒髪の持ち主は、黒いスーツを手本の様に着た男性で、年齢はよく解らない。只、中性的な美貌があった。 普通の格好、普通の背だけに黒革の眼帯と腰に差した日本刀がかなり目立ち、彼の『恐怖』を引き立てていた。 12: 名前:サスライ☆12/24(金) 22 25 27 目的を違えた見開いた目同士が合う。スーツの男は視線から殺気を放つ為に、メイはそんなスーツの男の殺気に仰天していたからだった。 すると直ぐにスーツの男はメイへの視線を外して背中をメイへ向ける。悲鳴を上げる事も出来ず、膝から情けなく地面にへたりこんだ。 スーツの男が向かう先は蹴り飛ばした警官の居る場所の更に奥で、ズングリとした影が見えて、目を凝らせば、それが別の人と解った。詳細は不明。 スーツの男が刀の柄に手をかけて、スラリと美しい線を描いて抜く。月光に照らされる金色の曲線は、ゾクリと官能的だった。 その時、ササヤキが口をメイの脳内にはさむ。相変わらず惚けた口調で、残酷な内容を。 「あらま、あの人ガチで殺す気だねー。お巡りさんも動けないし、こりゃオワタ」 するとメイの中で感情が落ちて冷たい感覚になる。結局自分は何も出来ない人間なのだと。 それで良い、ここで傍観者をしていれば明日も何事も無く何時も通りだし、自分はこんな事に人生を無駄にする訳にもいかない。どうせ、時間が解決してくれるじゃないか。 が、思っている事とは裏腹に感情は高ぶり初めていた。ササヤキが冷やかしたから、昔の思い出があるから、将来を考える癖でもあるのか原因は不明。 どうでも良い訳無い、事件その物は時間が解決してくれても、自分の中でそれは時間と共に、後悔と言う形で大きくなるだろう。 どうせ、あの曲がり角を曲がった時からルール違反をしているんだ。ルールが無いなら自分の正義に従うしか無いじゃないか。 人を殺したく無い。 その正義を背負い、生まれて初めて彼女は、『選択』した。 13: 名前:サスライ☆12/25(土) 14 29 58 メイの駆け足にスーツの男は反応。一瞬メイの方向へ視線をずらした。 その隙を以て、今から斬られようとしていた人影の運命が変わる。懐に手を入れて、クロガネの金属光沢を放つ塊を取り出した。拳銃だ。 銃口がスーツの男に向けられると同時に、メイがスーツの男の脇腹に勢い良くタックルした、怖いとか感情は不思議と無かった。 「……邪魔だ!」 それは片手で磁石の反発よろしく弾かれる。 その流れでスーツの男は片手で刀を振る、一閃は拳銃をバターの様に飛び出す最中の鉛弾ごと叩き斬った。 さて、一方弾かれたメイは警官の方向に飛ばされていた。そんな彼女の視界に飛び込んでくるのは、スーツの男に向けたのか警官の構えた拳銃。 「うわぁ、リボルバーかっちょえ~。それに私、殺されちゃうけど」 このササヤキのぼやきにメイは無言だった。反論する余裕が無かったと言えばそれまでだが、何故か同意見でもあったのだ。 もう駄目だ。そんな時だ。 拳銃が突然、潰れた。これは抽象的表現では無くて、突然拳銃の中に強力な重力が発生したかの様に物理的に潰れたのである。 もはや拳銃と呼べないそれを構える警官に、今度は見えない力が顎に叩きこまれ、奥歯を一本吐いて、彼は気絶する。 塀の上にはまた猫が居て、ズングリした人影は消えている。そして道に立つスーツの男には一つの変化があった。 眼帯を取っていたのだ。それを見て、メイは今度こそ恐怖を感じた。 14: 名前:ササヤキ☆12/25(土) 19 47 18 スーツの男の眼帯の下は化け物の目だった。爬虫類の様な棒状の瞳の周りに赤目があった。白目は無く、変わりに墨で染めた様に真っ黒だ。 そして、目の周りに静脈血管の様な隆起が亀裂よろしく、はしっている。 それでも人間の方の冷めた目で、スーツの男はメイを見て、ポツリと呟く。 「……怖く無いのか?」 「怖いですよ。それより、さっきの人はどうなりました?」 メイは冷静だった。この状況を焦ってもどうしようもない。一回頭に血が昇ってバランスを保つ為かも知れない。 これは授業が解らなくても諦めず集中して聞き続ける事で、無駄な力が入らなくなり頭に入り易くなる事に似ている。 スーツの男は鼻息で行うをため息を一つ。刀を鞘に納めると、肩の力を抜いた。 「逃げたぞ。で、何故貴様は奴を助けた」 「人が死ぬのは誰だって嫌ですよ」 スーツの男がその言葉を聞くと、今度は口からため息を吐く。そして地面に落ちていた眼帯を拾い、着け直す。 相手も解ってくれたのかなと考えるメイに、ササヤキが囁いた。 「いや、単に呆れているだけじゃない?都合が良すぎる考えだって」 脳内でそんな事無いと返事した。 15: 名前:サスライ☆12/26(日) 09 15 39 「……呆れたな」 やっぱ呆れてた。目に見えぬ2対1で負ける構図にメイは項垂れる(ウナダレル)しかない。 「何が呆れるんですか、誰かを生かす事は間違っていますか」 「では貴様は、そいつが生きてるお陰で沢山の人が死んでも良いのか?良い訳無いだろう、貴様の理屈で言うとな」 さて、メイが住んでいる『この国』には『隣国』がある。「全ての人間を平等に」をスローガンに掲げた党が立ち上げた国だ。しかし、他の思想に対する弾圧力も一部では有名である。 近年、どうも景気が良いらしく、力を付けているとの事。 拳銃を犠牲にズングリした人影が逃げた闇をスーツの男が眺めると、再びメイを見た。 「さっきお前が助けたのは、隣国の工作員だ。この国と戦争を起こす為の理由作りのな」 メイはその一言で血の気が引く。一瞬、余りにも非日常過ぎて非現実に思えた。しかし叩き斬られた拳銃と血塗れでピクピクしている警官を見ると、逆に非日常がリアルに思える。 「……ジュウザ」 「は?」 スーツの男の突然の台詞にポカンと聞くと、付け加えられた。 「俺の名前だ、貴様はヤツを逃がした。 ……手伝って貰うぞ」 16: 名前:サスライ☆12/28(火) 00 04 21 路地裏に、門番の如くズンと立ち塞がり存在する石の塊が、得てして文明社会の光の裏側に存在する。 それは望まれて産まれ、しかし時が経つにつれて邪魔だと罵られて棄てられた。昔の物なのでコンクリートの表面は、ややパウダー状になっていて、空気は無機に満ちている。 死んだ文明。それを人は『廃ビル』と呼んでいる。 メイはそんな廃ビルの一室にジュウザと一緒に来ていた。何があっても自分は悪く無い、こうなったのはジュウザとササヤキのせいだ。そう、自分に言い聞かせる。 あの後、巻き込むとは何事とジュウザに抗議したが溶ける程呆れた顔で 「貴様の考えは、まるでデコレーションケーキの砂糖人形の様だな」 と、言った。笑いをこらえるササヤキを無視してどういう事だと抗議すれば、続ける。 「デコレーションケーキの砂糖人形の様に甘いのもだが、貴様は結局小綺麗なケーキの上に立つ考えしか出来ない」 ジュウザは、闇の向こうまで歩き、途中で止まって振り向かずに口だけ動かした。 「まあ来い。貴様が助けた奴がどんな人間か教えてやるから」 「あらあら、素敵なデートのお誘いだねえ。ここまで来ちゃったら行くしかないかなあ」 他人の言葉が生み出した、自分の心の波に流されて、今メイは此処に居る。 別に義務でも無いのに。 17: 名前:ササヤキ☆12/29(水) 00 02 22 ジュウザは刀を抜く。どう抜いたかは解り、スローモーションにすら見える筈なのに抜く瞬間は見えない。何故なら、とてつもなく速い動きだが、そこに無駄が無いからだ。 ユラリと刃を上に向け、手の甲を峰に添える。牙突、つまり突きの構えだ。 「クックック、こりゃ偉いもん見れるかもねえ」 ササヤキは不安な事を言った。ふざけた口調なのが他人事を引き立てていてメイにとっては憎たらしい。「なあ、メイ。アンタも私なら解らないかい?さっきの拳銃が潰れたあの力の波動を」 確かにメイは肌に突き刺さる感じがある。それは肌にぶつかっても広がらず、冷たい針の様だ。 しかし波動を感じるだとかそんな物は漫画の中のお伽噺に過ぎない。漫画なんてメイの常識では中学生で卒業する子供の玩具だ。 「クックック、そうやってアンタは何時も自分を誤魔化している。 そうやってアンタは自分を良くしか見せない。 気付いているじゃないか、この『波動』が何なのか」 「何なの!?勿体ぶらないでよ、馬鹿にしてんの」 集中して刃と一体化しているジュウザに声は届かないが、ササヤキには届く。 ササヤキは、言った。 その力はお伽噺なんかじゃない。その力はメイが何時も内側に持っている。その力の正体は、薄々形容表現を考える内にメイは気付いていた。 「……『憎しみ』さ。クックック」 途端、ジュウザの『憎しみ』を垣間見る事になる。 18: 名前:サスライ☆12/30(木) 13 14 08 ジュウザは添えた片手を発射台にして、突きを放つ。誰も見えない上に向かって。 うわあ、この人危ない人だよ、脳とか。と、一瞬考えるメイだが、その考えは即座に断ち斬られた。 天井に突きが貫通した跡が見えるのだ。 「エネルギー波を刀から放出したってトコかなあ、クックック」 そんな非現実的な事あるものかと突っ込みたいが、ササヤキをはじめとする非常識のバーゲンセールの存在がそれを否定する。 そしてジュウザが刀を脇構えにすると口を開く。 「……この刀は、感情を力に変換出来る。今放った憎しみからは、決して逃げられない。 憎しみは常に、誰かに向かっているからだ。怨念とも言うな」 天井の割れ目にヒビが入る、ヒビが一定の大きさに達すると天井その物が砕けた。大量の瓦礫が降り注ぎ、ジュウザはそれに刀を振るう。 弧は広がり、ジュウザとメイを覆う目に見えないが確かな盾になった。常に辺りに気を配って、自分を殻に閉じ込める。その感情を人は『恐怖』と呼ぶ。 大量の瓦礫が大量のパウダーを撒き散らして、煙いなんて無いかの様に涼しい顔で瓦礫の中心にジュウザは腕を突っ込んだ。 「さて、この辺にさっきの工作員は居る筈だな。 ……天井に、同じ感情と力の流れ。所謂『気配』を感じれた」 19: 名前:サスライ☆01/01(土) 17 41 51 瓦礫から片手で引っ張り出されたのは、全身をローブで覆った小柄な人だった。ローブは若葉色で、淡い色は暗闇に同調し易く出来ている、黒いと月光を反射して逆に目立ってしまうのだ。 どうやらこのヒラヒラがズングリの正体で、実際はもっと細いと予想される。 布に血がベットリ付いて足に貼り付き、細い曲線を描いていて、メイはそう感じた。 ジュウザがローブに手をかけると一気に引っ張る。破れ難い特殊な繊維で出来ていたが、ジュウザの力で直ぐティッシュペーパーの様に破れる。ジュウザの刀の能力は、刀以外にも適応されるからだ。 では何故、ローブを脱がせるか。服とは精神的な鎧であり、人との壁でもある。だから服を着込んでいると威圧感があるし、着てる側としては何か安心する。 つまり、尋問するのは服を脱がせた方が良い。 孵化よろしく中から現れたのはメイと同じ位の少女で、黒いタンクトップと迷彩カーゴパンツと言ったシンプルな服装。 茶髪をショートに切っており、顔の形は良いくせに色気は無いが気高さは感じる。所謂『格好可愛い系』だ。 ジュウザは問い、彼女はジュウザの予想通りに、しかしメイの予想外に応える。 「……さて、言い残した事はあるか?」 「この世を乱す害悪め、お前は死語己の罪の重さに地獄の業火にて焼かれるだろう」 「……そうか。では、尋問を開始する」 ジュウザは変わらない。警官の顔を血塗れにした時も、メイに憎しみを向けられた時も、そして今も。 無理矢理言うなら『歪み無い系』だ。 20: 名前:サスライ☆01/01(土) 22 13 12 メイは目を閉じる。決して変わらぬジュウザの姿に恐れているからではない。 メイは耳を塞ぐ。決して耳障りな風音を鬱陶しがっているからではない。 メイは今日、学校で何があったか考える。そう言えば先生が誤字をしていたっけ。しかし決して授業の復習をしたいからでは無い。 「クックック、無駄だよ。君がそう逃げた所で何も変わらない」 ササヤキに思わず薄ら目を開けた。天丼ネタよろしく変わらない風景が目の前にある。 全裸に剥かれた同世代の女性。それの両手首を片手で掴んで持ち上げるジュウザ。 そして、クラスに一人は居る様な無愛想な表情を変えずに、もう片手で拳を作る。 「……さて、貴様の目的は何だ?」 すると女性はジュウザに向かって、ジュウザ並みに無愛想な顔で唾を吐く。そしてザマアミロとガキ大将な台詞が似合う顔をしていた。カメラ目線とも言う。 「……そうか」 特にジュウザは表情を変えずに腹に拳を釘の様に打ち込んだ。女性は目を見開いて、口を大きく開き先程よりも大量の唾を吐く。 唾が大量に顔に付いてもジュウザは歪み無い。だから淡々と言葉を紡ぐ。 「……さて、貴様の目的は何だ?」 この『作業』がずっと続いていた、しかし不思議な事に一番はじめにそこから逃げ出したのはメイだった。ササヤキは続ける。 「だから無駄だって、君がどんな逃げたトコロで、君が生かした人が生きる事で酷い目に合う事は変わらない。 そんでさ、『私』にそれを止める手段は無いんだよ」 21: 名前:サスライ☆01/01(土) 22 55 55 マオ。それが今ジュウザに尋問されている女性の名前だ。工作員としての成績は、あまり良く無くて、何時でも切り離せる様に工作の先駆けに使われる事が多い。 逆を言えばマオが居ると言う事は何かが起こる前兆であり、こうして何を隣国が企んでいるかを問い詰める。 「さて、腹を殴るのも飽きてきたし趣向を変えてやろう」 ジュウザは少し血の付いた拳の人差し指でマオの左足を指す。次に右足、次に左腕、次に右腕、最後に顔面だ。 「……5回、チャンスをやろう。今指差した順番で骨を折っていく。 5つ目の意味は、解るな?」 しかしマオは、だからどうしたと言わんばかりに、他人事の目をする。 自覚しているのだ、自分の価値を。それでいて組織から離れる意思は無い。何が彼女をそうさせるのか。 「だからどうした。お前が私をお前の悪質な趣向で痛め付けた所で私の心は穢れない。 何でも力でどうにかなると思うなよ、野蛮人! ……アグゥ」 かなり速く、手刀で左足をトンと重く叩く。すると空手の演武の手刀で板が割れる様に、もしくはポッキーが折れる様に、あっさりと左足に第三の関節が出来た。 ただしそれは本人の意思では動かない上に、在るだけで激痛を伴う不便な物だが。 「……さて、次は右足か。心が痛むな」 「ふん。お前の考えている事なんてクズだ。そんな使えない物に我が誇り高き思想は屈しない」 「……そうか。お前等の思想は確か『全てを平等に』だったな」 右足にも第三関節が出来る。どんな人間にもどんな生き物にもどんな事象にも平等にジュウザは変わらない。 22: 名前:サスライ☆01/02(日) 12 01 22 あの化け物の目だ。ジュウザは眼帯に手を掛けて、あの時メイの見た目で、マオを見る。 こうする事で己から人間性を遠ざけさせ、絶望感をマオに与える。 「……さて、今の貴様の痛みは筋と神経が延びる事による痛みだ。 これで両腕を折られるとな、貴様の全体重が筋と神経を一気に伸ばす。 ……さて、貴様の目的は何だ?」 マオは冷や汗をかきながら少しだけ口ごもり、しかし直ぐに口を開き満面の笑みで舌を出す。アカンベエだ。 左腕が折れる。ぶら下がり状態のマオが傾き、彼女は痛みを堪える為に下唇を噛んだ。直ぐ様ジュウザは、やや早口で質問する。 「貴様の活動は今まで筒抜けだったしかし捕らわれなかったのは単に身近にもっと重要度の高い奴が居ただけでそれでも貴様の国は貴様等を酷使する」 「あ、早口になった。悔しいんだろう、所詮は義も無い単純な思考だな」 体重で延ばすのは一瞬の事なので、痛みに慣れさせる前に質問を早めただけだが、どうやら調子付かせてしまったらしい。そう思い、右腕も折った。 「……ギャアアアア!」 地獄の奥まで響くと言うが、正直地獄を見た事が無いから解らない。只、耳は勿論口や鼻と言った穴と言う穴から入り下腹の奥まで響いた声だった。 「クックック、ならば地獄とは案外私達の中にあるのかもねぇ」 23: 名前:サスライ☆01/02(日) 15 37 02 メイは涙と鼻水を垂れ流しながらジュウザに向かって駆け出した。そして叫ぶ。ササヤキの言葉なんて知らない、自分の正義に従うだけだ。 「もう止めてよ!アンタ何で平気な顔してそんな事出来るの!?」 「……これが平気に見えるか」 ジュウザは飽きてきたコーヒーブレイクと変わらない様な表情を変えずに、化け物の目をメイに向ける。 淡白な顔と、今にも爆発しそうな顔が同調した顔は確かに怖い。しかしメイはそれには恐れなかった。 「ああ、だからアンタはおかしい。人を傷付けて平気な人間なんか居る訳無いだろ、例えそれが沢山の人間を殺す事になっても平気なのはおかしいんだ。 どうせロクな教育を受けたんじゃ無いんだろう、外の世界は暴力的な事を庇護する出版物が溢れているらしいからな!」 言い切る。メイの中には震えるような恐怖感がドッと流れ込んで来るが、それでもやり切ったと言う爽快感があったから平気だった。そして、その爽快感は人生最大の物だったので死んでも良いとすら思えた。 そんなジュウザは囁く様に言葉を作っていく。 「……いや、俺は勉強ばかりでそんな物に接する暇も無かった。 そしてこれは、出版物も流通しない紛争地帯の兵士から学んだ物でな」 口をグッとつぐんだ彼女の脳内に、ササヤキ声が聞こえる。 「クックック。結局人間なんて、その程度の暴力的な生き物なんだろうねえ。 だって何も無くても無くならないのだから」 24: 名前:サスライ☆01/07(金) 01 31 14 ジュウザとは、実は本名では無い。その心を力に変える妖刀を持つ者の称号だ。 漢字では『獣座』と書き、『座』とは玉座。つまり王である事を差す。そして獣辺に王と書き『狂』。 では何故、その刀の持ち主は狂っていると言われるか。狂いとは極端に尖った感情であり、更にそこまで感情が強くなければ妖刀は使いこなせない。 「……化け物」 「違う。人間だ。未熟で、ちっぽけで、矮小で、惰弱な人間だ」 ジュウザの技は居合に似て、感情を内側に貯めて、一気に放出する。 もしも内側に貯めなければどうなるか、感情が表に出る事になる。 「貴様にこれが化け物に見えるならば、それは貴様が人間の本当の感情に触れていないだけだ」 憎しみ、怒り、悲しみ、傲慢、癇癪、様々な感情がジュウザの眼帯を外した目を中心に表に出る。 沢山の瘤が膨れ上がり、人面相が出来、沢山の刺が生えて触手が蠢く等、感情が顔の肉を変異させて表に出る。 「俺は平気なんかじゃ無い。平気なんかじゃ……無いんだ」 化け物の目から一滴の血の涙が流れる。 彼は何時も眼帯を付けている。つまり常に抑え切れない感情があると言う事だ。ならば彼が感情を抑えていないと言えば、そんな事は無い。 拳銃を殺意でバターの様に斬り、憎しみでビルの天井を崩す程の感情が内側に渦巻いている。 それ程の感情に呑み込まれ発狂しまいと抑えているそれは、皮肉にも狂気の沙汰だった。 25: 名前:サスライ☆01/07(金) 13 00 16 ジュウザがマオに向き直ると、拳を開き親指以外の指を合わせてピンと張る。 拳よりも殺傷力の高い貫手だ。これに頭を貫かれれば、即死である。 「……さて、貴様の目的は何だ?」 「死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!!」 「……そうか」 構造以外変わらぬ顔で、ジュウザは手をマオの方へ突き出し、当てた。 自転車のタイヤのチューブが爆ぜた様な音がして、ジュウザの手首の辺りからは数滴の血が飛び散る。 ダラリと力を喪う肩と、太股。慣性にならって折れた部分がブラリブラリと夕方の公園のブランコよろしく揺れていた。 一部始終をメイはボウと見るしか出来なくて、何も考えていなかったせいかスンナリ事実を受け入れる。 彼女の脳裏にこびり付いたのは叫んでいるマオの表情で、大きく見開きつつも不安気な目でジュウザを見て、歯を剥き出して笑っていた。 「クックック。結局、助けられなかったねえ」 「狂っている、みんな、狂っている」 メイは両手で額を覆い、下を向いて呟いた。 「ジュウザも、あの女の人も、そして、『アンタ』も! 何なんだ、突然人の頭にズカズカ入って来ては狂気の選択しかしない。アンタは何なんだよ」 ササヤキに叫ぶメイ。ジュウザから見たら危ない人にしか見えないが、彼は苦笑いも勿論浮かべない。その感情で能力を使うととんでもない力になりそうだが。 チッチッチと人を見下した様に相づちを打って、ササヤキは相変わらずメイの声で言う。 「クックック。 何を言ってるんだ、私はアンタだ。私は、普段アンタが裏で思っている事が表れた存在に過ぎない。 選んだのはアンタだ。ならばアンタは狂いたかったんだよ。 何時も周りと足並み揃えて、そして貯まるストレスに蓋をしてきた。その結果が狂気だよ、メイ」 26: 名前:サスライ☆01/08(土) 14 23 00 一拍置くと、ジュウザの顔はメイの知る顔に戻っていて、相変わらず無表情でマオを地面に横にすると、ローブを着せた。 「何で、そんな事するの?」 「……コイツには何も無いからだ。コイツ、最後まで俺を見ていたよ。 普通こう言うタイプは最後は自国に万歳とか言ったり抵抗したりして果てるタイプなのに」 自分の世界に狂えるのは、自分の世界に誇りがあるからだ。が、そうでも無いのにそれらしくなるパターンがある。 それは自分の狂信的な世界以外の生き方を知らない人間だ。 自分の世界に誇りは実は無いが、周りが狂信的で、他を知らないから狂信的な態度である事が正しいと思い込んでしまう。だから薄々おかしいと感じつつも、周りに流されて従ってしまう。 こうして一つの事ばかりにズルズル生きてきて、アイデンティティーを与えられるしかない人間になるのだ。 「……これが正しいか。否、こんな人間を生み出してはいけない。 だから俺は隣国と戦うし、コイツを助ける」 メイは息を飲む。隣国の存在にでは無くて、自分にも当てはまる事が多々あるからだ。 そしてメイは目が点になる。今確かに『助ける』と言ったからで、よく見るとマオの頭から血は出ているが、気絶してるだけで息はある。 ジュウザがマオの最後の表情を見た瞬間、凄まじいスピードで貫手を掌打に変えたからで、チューブが割れる様な音も、少量しか出ない血もその為だ。 27: 名前:サスライ☆01/10(月) 01 09 19 筆者が思うに、安定を求める人が死ぬ時、最期に見ようとするのは自分の興味の対象では無いだろうか。 人は生まれたからには足跡を残したくて、興味のある物を極めようとする。 それは挫折し、諦めても死んでいないが外的環境が生き返るのを許してくれない。何かを成すには今を捨てなければいけない。 だから何時か暇が出来た時にでもやろうかなと取って置き、いざその時になると時間は使い果たされている。 普通に生きてもそうなのだ、志半場で倒れるならその無念は尚更だろう。 それなのに、マオは最後までジュウザだけを見ていた。つまり彼女には何も無かったのだ、好きな事も。 「……コイツ、最後まで理想も見ずに俺しか見ていなかったのに罵倒しか言えないんだ」 ジュウザは折った腕に手を当てる。すると、高速映像を見るかの様にムクムクと骨折が治っていった。 メイは驚く、コイツは人を傷付ける以外の事も出来たのかと。 尚、今ジュウザがマオに放っている癒しの感情は『慈愛』。だから、実は受ける側も受け入れる心が無ければ不可能な技だ。 マオは、心に飢えていただけだからだ。例えそれが愛でも憎しみでも殺意でも。 28: 名前:サスライ☆01/12(水) 19 18 44 メイの頭の中で、ササヤキが話しかける。それはジュウザがマオを治療し終わった後の事だ。 なんとジュウザはマオをメイの家で保護してやれと言ってきたのだ。 メイはササヤキの声を聞いていて、正論だと感じた。何故なら自分自身が話し掛けているのだから。 「クックック。捨てちゃえよ、厄介事なんてあるだけ害だろう。 大体そんな危険な人、ジュウザが預かるべきじゃないか。 理由も話さないんだ、預かる義理も義務も無いよ」 何か面倒事に巻き込まれたら周りの人に迷惑になるかも知れない。 自分には自分の生活を守る必要がある。助けたからって崩壊するまで付き合う必要なんて無い。 それでも、メイは預かる事を考えていた。それは同情かも知れないし好奇心かも知れない。様々な感情が怨念の様に腹の中で渦巻いていた。 それでも、メイはササヤキに話しかける。それは凹凸ない滑らかな感情で、腹の中の渦巻く考えなんて小さな物に過ぎない。 「預かるよ。人を信じられなくなったら、終わりだからさ」 ジュウザは何処の誰かも解らない。しかし彼は偶々会ったに過ぎないメイを助けて、敢えて残酷性を見せる事で警告し、そして敵に対して慈愛の心を送る事が出来た。 メイにはどう考えてもジュウザが自分の事を何も考えていないと考えられなかった。 29: 名前:サスライ☆01/13(木) 01 17 49 メイが預かると言った時、ジュウザの複雑な感情が入り乱れる心の中で、歓喜の感情が多くを占めた。尤も、『オモテ』に出さないので伝わってはいないが。 まだ、何も言っていないのに、自律的に考える人間が少ないこの街で、意見が合ったのに感動したからだ。 取り敢えず、真意を伝えておく。 「……そうか。 俺はソイツから情報を掴めなかったから、隣国で情報を集めるので、忙しくなる。 ……ソイツを暫く預かってその際、面倒事もあるだろう。だから『コイツ』を頼れ」 スーツの内ポケットからメモ帳を取り出して、それに思い出を込める。すると、メモ帳に男の写真が浮かび上がってきた。 黒髪を後ろで三つ編みにした、西部劇にでも出てきそうな格好の男だった。 皮のカウボーイハットに羽を付けて、皮のマントを羽織っている。 口には葉の付いた草を喰わえ、無精髭を生やし、目付きと相まって大分ワイルドな印象だ。 「……名前はハンプティ。旅人だ。 俺の仲間でこの町の×××ホテルの×××号室に滞在してる」 メイは写真を受け取ると、ジュウザは隣国に向かう為に背中を見せる。 何故、警官も襲われたのか、何故、自分に預けたのか、何故、この写真の人は草を喰わえているのか様々な謎が残ったが、ジュウザが最後に振り向かずに言った一言が印象的だった。 「……ありがとう」 30: 名前:サスライ☆01/13(木) 01 20 17 †††第一章・完††† 風来坊いろは唄 続き1
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/126.html
184: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/29(日) 21 50 02 「……え」 明るい光の下で、晒される顔。 (ま、まだ涙乾いてなかった?今の駿達とのやり取りですっかり分からなくなったかと思ったのに……あ、目腫れてるのか) 何て考えながら、響の顔を見つめ返す。 「どうした。また何かあったか?」 その顔に、声に、瞳に、表情に、 自分の身に何が起こったのか分からないけど、 「――……」 「おまっ……な、何また泣いて」 (あれ……?) 安心してしまった自分が居た。 (ほらまた涙が溢れ出す) (なんで、どうして、) 185: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/29(日) 22 04 18 最近自分がおかしい。中学のときまでは、こんなによく泣く子じゃなかった。泣くことを堪えるのが普通だと思っていたから。だけど、今は何だろう。涙を止める術をこの数ヶ月間で忘れてしまったのだろうか。 「っ!!ちょ……」 気付いたら体が浮いていた。なぜか私は今、響に後ろ向きに担がれている。まるで大きなカバンを肩にかけてるみたいに運ばれて、荷物のようだ。 がちゃっ 後ろ向けのまま暗い部屋の中に入った。多分、響の部屋だと思う。 そこでようやく下ろしてくれた。パチっと電気が付いて、部屋の窓側の方向に体を向けると。 「わあ……すごい」 窓からちょうど見えたのは、海だ。私の部屋とは違って海側に接しているこの部屋。そしてホテルの明るい電気が海で反射していてきらきらしている。その輝きが空まで続いていた。 未だ頬を伝う涙も忘れられるくらい、清々しい光景だ。 「それで、あんなとこで何してたんだ?」 私としてはどうしてこの部屋に自分が居るのかが疑問なんだけど。 海をぼーっと見つめたまま、話した。 「信に」 「水嶋?」 「うん。 告白された」 「!?」 後ろで響がどんな表情をしているのかも知らず、私は言葉を続けた。 「それで……私は傷つけてばっかりで、悪い事ばっかりで」 治まり掛けていた涙が再びぽろぽろと零れ出す。 「響のこと好きなのかって聞かれた。あと何で私が前に振ったのかとか色々分かってるって感じで、けど向こうは笑って本当に馬鹿みたい」 堰を切ったように言葉が止まらなくなった。ああ、何をこんな話べらべら話してるんだろう。私こそ馬鹿だ。 「……ちょっと待て」 低い声が静かな部屋によく響いた。 191: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/30(月) 21 34 57 「……何?」 突然響の周りの雰囲気が変わったような気がして、思わず聞いた。 「何て答えた?」 「え?」 何て答えた……って、一体何に。 訳がわからない、という顔をしている私に、響ははあとため息をつき、苛々した様子で言った。 「好きかっていう質問。何て答えたんだよ」 「あぁ……」 急な質問に多少驚きつつ、答える。 「分かんない……って、言った」 一瞬驚きで止まっていた涙が、話した反動でもう一筋流れる。 おかしい、本当にどうかしてしまってる。また熱でもあるんだろうか。胸がわしづかみされているみたいに痛い。苦しい。 「ひ、響……なんか、私変だよ……」 ぽろぽろと懲りずにまた涙を流し始めてしまう。響は無言でそんな私の側に来て、涙を拭ってくれる。その想像以上に優しくて温かい指先に、不意に心臓が高鳴るのを感じた。 (な、何で……) ドクン ドクン 煩い、心臓。静まれ、心臓。 ドクン ドクン ……音が、早い。それに、痛い。 193: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/30(月) 21 50 10 「おい」 突然俯いてしまった私を見て、声をかけてくれる。どことなく心配そうな声音に聞こえるのは気のせいだろうか。 「どーしたんだよ」 (だ、駄目) 心の中で一人葛藤している私に気付くはずもなく、さらに声をかけてくる。 「マジでらしくねーぞ、お前。向こうを傷つけたこと、まだ悔んでんのか?」 (駄目だって。 それに、確かにそうだけど……違う) 違う、違う。 この人のせいだ。 私はこの人のせいで、泣いている 「莉…「だ、駄目だってば」 「は?」 それ以上声をかけないで、話さないで。なんだか自分が壊れてしまいそうだ。 よっぽど様子がおかしかったのだろう、響が不意に私の顔を覗き込んだ。 (!!) 「……!み、見ないで」 「お前……」 驚いたような顔をしてこちらを見るその人と、目が合った。 194: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/30(月) 22 00 42 ぱっと顔を背けるが、後の祭りで見られてしまっただろう。驚いたような響の表情が手に取るように分かる。 自分でもびっくりするくらい、顔が熱い。だから絶対、今の顔は真っ赤だというわけで。加えて未だ心臓がドキドキ鳴っていて落ち着かない。 「……っ」 「……」 こんな顔(しかも泣き顔)を見られて恥ずかしくないわけがないので、そのまま俯く他に為す術がなかった。 どうしよう、いつまでもこのままでいるわけにはいかない。何か言わないと。 迷っていると、この沈黙を向こうの方が破ってくれた。 「……何時の間に」 「……?」 「そんな『女』の表情(かお)をするようになった?」 「え―――っん!!」 私の言葉は響の唇によって飲み込まれた。 「ちょ、……んぅ……!!」 今までにないくらいの激しい口づけ。角度を変えて何度も貪るように口内を犯される。堅く閉じていた唇はいとも簡単に割られ、熱い舌の侵入を許してしまった。 「んっ……はぁっ……」 息が詰まってきて、腰が砕けそうになるとしっかりと腰と背中を支えられる。キスを続けたまま、少しだけ引きずられたかと思うと、二人が密着した状態のままでいつの間にかベッドに倒れ込んでいた。 * ちょ、本当中途半端ですみません。この先は慎重に話を進めたいので(←)今日はここまで……。 198: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/02(水) 22 17 37 くちゅっ……と、時折水音が鳴り響いている。 「んっ……はっ……」 ベッドに組み敷かれた状態で、必死に激しい接吻の中呼吸をしようと試みる。酸素が足りない、欲しい。 何も考えられなくて、相当時間が経っていたと思う、やっと唇が離れた。それでも名残惜しそうにツーっと銀色の糸が二人を繋いでいる。 はあはあと息も荒く、動く気力さえ失ってぼーっと響を見上げていると私の上に本格的に覆いかぶさって来た。両手を相手に握るように重ねられ、乗られているので身動きが出来ない。 「何、して……!響!」 ようやくはっと我に返って私は声を上げた。 「だ、駄目だってばっ……」 響が私の首元に顔をうずめてちゅ、ちゅ、という軽い口づけを何度も何度も落とす。顔の辺りに当たる髪の毛がくすぐったくて、身を捩っていると突然首筋にチクリという痛みが走った。 その痛みでまた私は我に返る。 「ま、待って!!」 本当にこのペースだと、ヤバい。今みたいにこのままこの人の波にさらわれるか、必死で抵抗するか。私にとっての選択しはただ一つ、相当頑張らないと。 せめてもの抵抗で動かない体を無理に動かそうとすると、今度は首筋をぺろりと温い舌で舐められる。 「ひゃっ……ね、いきなりどうして……!」 「……悪ぃ。止まんねーかも」 「あっ……!?」 寝巻用の備え付けの浴衣の胸元を肌蹴させられる。 「やだ、む、無理だって……!」 口ではそう言うが、実際動けないので本当に口だけだ。 ……しかも、お風呂上がりだったからブラ付けてない。この浴衣は意外と分厚いから今まで大丈夫だったのに。最悪…… 「嫌ってば……!!」 半分涙目で訴えると、ぴくりと響の手が止まった。 199: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/02(水) 22 23 15 手が止まった。今しかチャンスはない。 「何でこんなこと……こ、こういうことは、普通好きな人と……「じゃあなればいいだろ」 「え?」 「好きになれよ。問題ないだろ」 挑戦的な笑顔。例えるならば、試合中に「これは、いける」と確信したときの自信めいた強気な顔。そんな顔を至近距離で見せられ、また心臓が高鳴る。反抗しなきゃいけないのに、抵抗したいのになぜか出来ない私を良いことに、響はまた止まっていた手を動かし始めた。その手にまた私はパニックに陥る。 「俺は、」 「やっ……ど、どこ触って」 さっきから言葉は半分しか耳に入ってきていない。 「嫌いじゃないぜ。莉恵」 「んっ……!!」 206: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/04(金) 22 06 40 「やっ……んー!ちょっ……」 「やっぱCの上くらい?でかいよなァ、ここは。着やせするタイプか?」 「う、うるさ……!やめっ」 両胸を大きな手で掴まれ、やわやわと揉まれる。自分のものとは思えないような声が時折出て嫌になる。抵抗しようと手を伸ばしたら、響の片手によって私の両手はまとめて捕えられた。そのまま両手を頭の上に持っていかされる。 もがいても暴れても、所詮は男と女の力は歴然だ。 (恥ずかしすぎるってこんな格好!) 今や浴衣はほぼ完全に前が開いていて、上半身裸に等しい状態なのだから。元々明るい電球をつけていなくて良かった。それでもオレンジっぽいぼうっとした光があるが。逆にこの暗さ加減、怪しい気がする。 「あぁっ……!」 いきなり胸の先端を指でぐいっと押され、体がびくんと跳ねる。それを見た響は同じことを何度も繰り返し始めた。 「やあっ……だ、めだって……っ」 「ここは喜んでるみたいだけど。硬いし」 ぎゅ、と摘まれて思わず顔を顰める。声が出そうになった瞬間、唇を奪われた。その声を飲み込もうとするように。 「んっ」 さっきよりは穏やかに、しかし私にとっては激しいくらいのキス。 その間に響の手は下腹部辺りをなぞり、浴衣を脱がせるように体全体を撫で上げた。 (や、やば……ほとんど脱がされてる) 207: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/04(金) 22 12 55 何か言いたいことは山々なのだけれど、唇がふさがっていて。情けない事に、力が抜けてしまっていてこれ以上抵抗するのも難しくなってきていた。 「……っ!んーっ」 太ももの辺りをさまよっていた手が、下着越しに秘部を捕えた。腰が逃げようと動くが、許さないというように割れ目をゆっくりとなぞられた。 「んはぁっ!あぁっ……嫌……!」 ようやく解放された唇から洩れる声。 「嫌?説得力ねーな、結構濡れてんぞ」 「なっ……ち、違」 「違うことないって」 分かってる、そんなことは自分が一番。体の中心が熱い。そこから熱いものが外に向かって流れだしていることも。 「やめっ……!おかしく、なっちゃ……!!」 「壊れろ。壊れた莉恵が見たい」 「馬鹿っ……ひ、ひゃぁ!?」 下着の横の隙間から指を滑り込ませてきた。その手がゆっくりと秘部を弄り始める。その瞬間、体が何だかふわふわしたような、それでいて一気に脱力するようなよく分からない感覚に襲われた。 (な、何、これ……) ぞくぞくする。桐生のときと全然違う、浮いているみたいな。 213: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 18 18 「あぁっ……ん」 腰に力が入らない、がくがくしてきた。こんなの初めてだ、一体どうしてしまったんだろう。 これ以上響に手を動かされてはたまらないので、知らず知らずのうちに太ももに力を入れてぎゅっと手を挟んでいた。 「そんなに良い?」 「ち、ちがっ……ひ、びき!」 「ん?」 「手、止めて……何か変!おかしい、私! 力入らな……頭真っ白で……っひぁ!?」 くちゅくちゅと微かな水音を立てて、指が秘部に押し入ろうとしてきた。滑りが良いせいか以前ほどの痛みはないけれど……本当にやめて、壊れてしまう。 「ね、駄目だってっ……!」 「世間では」 耳元で囁かれ、体全体がびくっと反応する。 「それを『気持ち良い』って言うんだけど。知らねーのか?」 「んうっ……!」 ぴちゃぴちゃという厭らしい音が耳障りだ。抵抗する術もなく、ただただ喘いでいるだけのこの状態、穴があったら入りたいくらいだ。 「っ……!!あぁっ」 ぐっと一気に指を奥に指し込まれ、それと同時に体に電気が通ったような感覚がした。一気に息遣いも荒くなる。 「……ここか」 「あぁっ……ん、や、嫌っ……!!止めて……!!」 冷静な声が聞こえて、はっと自分の意識を取り戻し必死の思いでそう請うと。 ピタ (……え?) 214: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 25 50 文字通り、響の指がぴたりと止まった。妙な静けさが戻った室内に、はぁはぁという自分が息をする音だけが聞こえる。 (……止まった) 「ど、どうして……?」 思わずそう口走って、言ってからしまったと思った。 「どうしてって、お前がしつこく頼むからだろ」 ニヤリと笑って言ってくる。賭けてもいい、絶対、絶対に確信犯だこれは。 「今更何でって言われてもなぁ? その口で頼めるんなら、止めないこともねーけど」 「……っ」 カアっと顔が熱くなるのを感じた。こんなんじゃ、まるで私が触ってほしいみたいだ……。そんな恥ずかしい真似、出来るわけがない。 だけど、 (おかしい。変、ありえない。なんで私……) 「どうなんだ?」 黙っている私を見て問いかけてくる。何も言い返せないでいると、ねっとりと胸を舐めあげられた。 「んゃっ……!」 「黙っててもわかんねーぞ」 顔を近づけられ、そう囁かれた瞬間、私の中で何かが弾け飛んだ。とうとう頭がおかしくなったのかもしれない。 「……いで」 「え?」 「と……止めないで……響」 震える声でそう頼む。 215: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 32 25 「よく出来ました」 言い終えた途端、ものすごいスピードで指を入れたり抜いたりしだした。当然それに私の身体がついていけるはずもなく、 「んあぁっ……!ちょ、待……!!」 「無理」 「はぁっ……はぁっあぁ……!」 さっき見つけられた敏感な箇所ばかり攻められ、早くも体が限界に近い。だけど、頭に浮かぶのは嫌とか拒否とかそういう類のものではなかった。 「ん、や……!はぁっなんか……」 くちゅくちゅと絶え間なく、さっきよりも遥かに大きな音が響いた。それすら気にならないほど、何か巨大な波に飲み込まれていく自分自身を感じる。 「も、駄目っ……!!んっあぁっ……!!!」 体が大きく仰け反り、それと同時にすーっと頭の中が白み始める。そこでぷつんと私の意識は途切れてしまった。 216: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 40 14 ―――――…… 「……ん」 重い瞼を薄らと開けると、白い天井が目に入る。知っているような知らないような部屋だ。あぁそうそう、今合宿中で。けど私こんな部屋に泊まってたっけ……? しかもなんだか動きづらい。 外からは眩しいくらいの日差しを感じる。 今何時だろう。 そう思ってふと視線を横に向けると。 「っ………!!??」 (が、頑張った!!よく声抑えたよ私!!) 何故かというと、隣には我らがキャプテン且つ生徒会長の相川響の顔(ドアップ級)が。寝起きには少々刺激がキツイ。← そしてさっき動きづらいと思った正体は、この男だった。 (どこに手回してんのよ!!) 腰のあたりに両手を回され、ご丁寧に足(しかも両足)まで絡まっている。な、何このいかにも『昨夜如何わしい行為が行われていました』みたいな…… 「……あぁぁぁ!!??……う、嘘、え、けど確かに私昨日ここで……。 え、本当に?ど、どうしようどうしようま、まだ死にたくないよ誰か助けてぇぇぇ!!!」 「……うっせぇぇええええ!!!」 217: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 46 20 ……耳がキーンって言ってる。絶対この人の声のほうがうるさかった、今。 それにしてもなんだかすーすーする。肌寒いっていうか。……肌寒い? (えぇえ何この格好!?) よくよく見てみると、身体に浴衣を緩く羽織っているだけのような状態。もちろん前は閉まっていない。 (む、胸とか丸見えだし……) 響はというと、いつ脱いだのやら上半身裸だ。こんな状態で今まで寝ていただなんて、安らかに夢の中へと旅立っていた自分が信じられない。 「……おい「さっさようなら!」 慌ててベッドから抜け出そうと試みたが、あっさりと腕を掴まれて布団の中にダイブしてしまった。 「ひゃっ……!」 その拍子に響の身体に、私は倒れこんでしまって。正確に描写すると、私の胸が、直接…… 「あー……柔らけぇ」 「変態!!馬鹿!!離してよ!!」 大声で罵りつつ、私はさーっと青くなって昨日の晩の出来事を思い出していた。思い出したくない、けど考えないと。 (ま、まさか……私、最後まで、シ……シちゃった?) young leaf 続き10
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/357.html
117: 名前:浅葱☆09/05(日) 10 35 44 優奈ちゃんの、躊躇いも無い声が真っ直ぐに私の耳に届いて、消えた。 覆っていた手を離し、視線を優奈ちゃんに向けた。 「ウイは、我慢しすぎだと思うよ」 その一言は、素っ気無い言葉のようで、優奈ちゃんの優しさが込められていた。 「チアキは待ってるよ、ウイのこと。ウイが苦しんでることも分かってる。……ウイの気持ちも分からないわけじゃないよ。でも、これはウイの人生だから、ウイの好きなように生きても良いんじゃないかな」 優奈ちゃん――……。 視界が滲む。 最近泣くことが多くなった気がする。 「優奈ちゃん……私、良いのかな? 蓮君……許してくれるかな?」 「そんなの分かんないよ。優奈には分かんない。でも、レン君、ウイのことを憎んだり恨んだりはしてないと思う」 「……本当……?」 優奈ちゃんの言葉の一つ一つが重く圧し掛かってくる。 でも、決して苦しいわけじゃなくて、優奈ちゃんの優しさの重みだ。 「チアキのところ、行かなくて良いの?」 ハッと気づいて立ち上がる、が、心にブレーキを掛ける。 「私、良いのかな。津田のこと散々傷付けてきたのに……」 「さっきも言ったじゃん。チアキはウイのこと待ってるよ」 「……会いに行って、良いのかな」 「ウイ、会いに行かなきゃ後悔するよ!」 優奈ちゃんに背中を押され、「有難う」と言って歩き出した。 それがいつの間にか小走りになり、最終的には全力で走っていた。 会わなきゃ、津田に。謝らなきゃ。 そこで、ハッとして、足を止める。 ……その前に、会わなきゃいけない人が居る。 意を決して、止めた歩を進めた。 118: 名前:浅葱☆09/06(月) 18 51 50 ピンポーン 前来た時とは違う緊張が、私を襲う。 「はーい! ……あら、憂ちゃん。また来てくれたの?」 「今日は。あの……、蓮君のお墓って、何処にあるんですか……?」 突然来て、そんなことを訊いて失礼だったかな、と思ったけど、蓮君のお母さんは快く教えてくれた。 教えてくれた場所が書かれた地図を手に、蓮君のお墓へ向かった。 「此処だ……」 歩いて数分のところに、それはあった。 『杉野森家之墓』 と書かれたお墓を発見する。 深呼吸して、蓮君に語りかけるように、話し始めた。 「……蓮君、私ね、好きな人が出来たの」 聞いていますか? 蓮君。 「その人のこと、初めは最低な奴だって思ってた。 でも、いつも迷子になる私を見付けてくれて、私のこと、大事だって、言ってくれた」 もう、懐かしい。 そんなに月日は経ってないのに。 鼻の奥がつんとした。 今、泣いちゃ駄目だ。 「私も……その人のこと、大事にしたい……っ」 私の、津田への想い。 「……ねぇ、蓮君。 私のことを憎んでる? ……恨んでる? ごめんね、蓮君は私のこと、守ってくれたのに。 でも私、もう我慢したくない。 自分の人生だから……好きなように生きてみたいの」 我が儘かな? 心の中で独りでに呟く。 「でも蓮君なら許してくれるって、私の気持ち……分かってくれるって、信じてる。 有難う、私のこと守ってくれて……。 こんな言葉じゃ言い表せないくらい、本当に感謝してる。 ……でも、私生きてみるね。精一杯生きてみる。 それで、私なりに頑張ってるって思えたら、また此処に来る。 そのときは、その人と一緒に来るね。 蓮君にも見て欲しいから。私が好きになった人のこと……。 ……ね、約束だよ」 そっとお墓に触る。 涙は流さない。 これは始まりだから。 またね、と心の中で告げ、愛する人の元へ駆け足で向かった。 119: 名前:浅葱☆09/11(土) 11 26 31 津田の家は、灯りが付いていた。 そういえば、津田の家に両親は居るのだろうか。 だったら今からの訪問は迷惑だろうか。 でも、迷っているわけにもいかない。 ドキドキしながらインターホンを押した。 物音。 ガチャ、と扉が開いた瞬間にそこに居たのは津田だった。 ――上半身裸で。 「憂!?」 「つ、津田、なんで裸……っ」 「あ、悪い。今風呂入ってたから」 そう言われれば髪が濡れている。 っていうか、色気がヤバいのだが。 「そ、そうなんだ……っ」 「……なんで来てくれたの?」 「え!? あ、えと、あの……」 「……会いに来てくれたの?」 取り敢えず首を縦に振る。 多分、というか絶対、私の顔は赤い。 「なんで逃げたの?」 「……」 「ごめんってどういうこと?」 「……」 「なんか言えよ」 「……」 「……俺のこと、好き?」 どき、と胸が高鳴った。 今、言わなければ。 私はそれを伝えにきたんでしょう? 「……うん」 津田は何も言わなかった。 顔を上げ、津田の目を見つめて、言う。 「好きだよ」 125: 名前:浅葱☆09/13(月) 21 53 37 すると、津田の顔が一瞬にして赤くなった。 その変化に今度は私が驚いた。 「……津田、顔、真っ赤」 「……憂の所為だよ、馬鹿」 「なっ、何回馬鹿って言う……!?」 腕を引っ張られ、強引に家の中に入れられた。 津田が勢いよく玄関の扉を閉める。 それと同時に唇に生温かい感触。 「ん、……っ」 津田の濡れた髪が顔にかかって、私の顔を濡らす。 そういえば家の人は居ないのだろうか? さっきから人の気配を感じない。 考えていたら唇が離れた。 「……っ、冷たいってば……」 「あ、わり」 津田が、タオルで髪を拭きながら、 「……上がってく? てか」 津田の次の言葉を待つ。 「……泊まってく……?」 「え、」 「あー別にヤろうとかそういうんじゃないから。ただ、一緒に居たいっつーか」 無意識にホッとする。 一瞬考えて、ゆっくり頷いた。 126: 名前:浅葱☆09/13(月) 22 11 21 「じゃあ、上がって」 「あ、でも津田……っ」 先ほどからずっと気になっていたことを訊いてみようと口を開いた。 「その、家族の人、とかは? 居ないの?」 あんまりプライベートだったかな、と思ったが、訊いてしまったものは仕方ない。 少しドキドキしながら津田の返答を待った。 「あー……うん」 ……やっぱり、聞いちゃいけないことだったかな。 「……津田、ずっと1人暮らしなの?」 「うん」 「……寂しくない?」 通されたのはリビング。 結構広い。 こんなところに一人暮らし……津田の家ってお金持ちなのかな……? 「座ってて」と言われ、ソファーに座る。 わ、ふかふか。 「寂しくねぇけど、たまに……俺はなんでこんなとこに居るんだろうな、って……思う」 この前と同じように目の前にお茶を出された。 津田が横に座る。 「……ごめんね」 「だから、そのごめんってなんなの?」 笑いながら言う。 「あ……あの、津田のこと、傷付けちゃったから……ごめんって、思って……」 「……うん、傷付いた。だから」 津田がこっちを見て、微笑む。 ていうかニヤニヤしてる。 このパターンは…… 「憂が癒して?」 やっぱり……!! 「え、つつ津田!?」 「何?」 はい、今のこの状況を説明しましょう。 目の前に津田の顔。 頭の真横に右手、脇腹の真横に左手。 ……つまり、逃げられない状況。 132: 名前:浅葱☆09/21(火) 19 04 21 「さ、さっきそういうことしないって言ってたじゃん!」 「あぁ、でもキスなら良いでしょ?」 「良いとか、私了承してな、!」 言い終わる前に口を塞がれる。 ちょっとは私の話を聞けぇ!! 「っふ……ん、ん……」 流石に限界だと思い、胸板を押す。 名残惜しそうに透明な糸が繋いだ。 「も、いきなり……っ」 「エロいね」 「何処が!!」 「憂の全部が」 そう言うと、津田の人差し指が私の唇を塞いだ。 「憂のこの唇、とか、」 私の身体の至る所に触れられる。 「キスだけで涙目になってるとことか、真っ赤になったほっぺとか、真っ白な鎖骨とか……――」 津田の口角が上がり、ふ、と微笑った。 「可愛くて、――穢したくなる」 私の首筋に顔を埋めた。 さらさらな髪が頬に当たってくすぐったい。 刹那、首筋にちくりという痛み。 思わず「んっ」という声が漏れた。 「あーもう手出さないつもりだったのになぁ」 津田のその言葉で一瞬にして我に返る。 私が口を開こうとするより先に、津田が告げた。 「ごめん」と。 133: 名前:浅葱☆09/21(火) 19 13 15 「え――……っちょ、」 津田が軽々と私を持ち上げた。 これは所謂お姫様だっこという奴ではっ ……って、そんなこと考えてる場合じゃない。 これはマズイ、この状況は完璧マズイ。 だって、ベッドの上とか、絶対、“そういうこと”でしょう。 「つつつ津田っ、津田!?」 抵抗の言葉が出て来ず、津田の名をひたすらに呼んだ。 だが、津田の耳には届いていない様子。 こういうことしないって言ったのに……! 私が抵抗しないことを確認したのか、丁寧に制服を脱がし始めた。 あんまりするする脱がされてくもんだから自分が何をされているのか気付くのに数秒かかった。 「や、待って、津田っ、待っ……!」 唇を津田の唇で塞がれる。 こうなると、漸く述べられた抵抗の言葉など無意味に等しかった。 長かったキスが終わると、私はもう裸で、恥ずかしくて隠れようにも何処にも隠れられそうになかった。 津田の手が、乳房を捉え優しく揉みしだく。 先端の突起を舌でねっとりと舐め上げ、上目遣いで私の様子を窺う。 「ん、あ……っ」 我慢してもやっぱり出る声が恥ずかしい。 そんな私を見て嬉しそうな顔をする津田にも少し腹が立つ。 ……こういうことしないって言ったくせに!! 134: 名前:浅葱☆09/21(火) 19 33 42 すると、津田の少し冷たい指先が私の秘部に触れた。 突然のことに身体がビクンと跳ねた。 「あ、っ」 もう充分濡れていた私のそこに指を埋めていく。 それだけで、もう声が出てしまう。 津田の指、一つ一つに身体が反応してしまう。 同時に胸の突起と秘部の蕾も弄ばれる。 ビクビクッと、身体が仰け反り、私は絶頂を迎えた。 そして、部屋にカチャカチャという音が響く。 それはこれから私たちが一つになる合図だということを言葉も無く告げていた。 一気に身体に緊張が走る。 分かってるけど、津田のことが好きだけど、――怖い。 どうしよう、怖い。 自身にゴムを装着した津田が、それを秘部に宛がう。 どうしよう、未だ、心の整理がついてないのに――。 ……そう思っていたら、津田の動きが、止まった。 「……? 津、田?」 すると突然視界が先ほど見ていた景色と変わる。 温もり。 あぁ、……私、津田に抱き締められてるんだ。 「ごめ、ごめん……怖かった、よな。……本当にごめん……」 弱々しい津田の声。 一体何があったのだろう。 何が津田をこうさせた? 「だから、だから泣くな」 137: 名前:浅葱☆09/25(土) 16 03 10 ……泣く? 私、泣いてる? 「ごめん、今日はちょっと、久し振りに憂と一緒に居られて、憂が好きって言ってくれたから、浮かれてた」 何度もごめん、ごめんと謝る津田に私は何も言えず、ただ抱き締められているだけだった。 「ちょっと、もっかい風呂入ってくるわ。頭冷やしてくる」 そう言って、立ち上がろうとした津田の腕を、殆ど無意識で掴む。 驚いた顔を此方に向ける津田に、何を言えば良いのか分からず俯いた。 ぽんぽんと頭を軽く叩かれる。 考えるよりも早く、声が出た。 「い、いよ!」 津田が再び驚いた顔で私を見る。 自分の言った言葉に恥ずかしくなり、津田の顔など見ずに言葉を続けた。 「ごめん、ちょっと吃驚して、それで泣いちゃっただけだから! もう、だ、大丈夫、だから! だから……その、あの」 言葉が続かない。 なんと言えば良いんだろうか。 「……っ、が、我慢しないでっ……!」 私の、精一杯の言葉。 恥ずかしくて、恥ずかしすぎて、目を堅く瞑る。 ふと、唇に違和感を覚え、恐る恐る目を開いた。 目の前に、津田の顔。 あ……キスされてるんだ。 唇と唇が触れ合うだけのキス。 だけど、凄く心地よかった。 138: 名前:浅葱☆09/25(土) 16 16 11 唇が離れ、目が合う。 照れくさかったけど、不思議と笑みが零れた。 「……でも、良いの? 憂」 「う、うん。平気。全然大丈夫」 「馬鹿、強がんなよ。止めたくなったら直ぐ言えよ」 ……馬鹿は津田じゃん。 途中で「止めたい」なんて言ったら辛くなるのは津田でしょう? 私、津田にいっぱい辛い思いさせたから、少しでも幸せになってほしいの。 「大丈夫」 深呼吸して、もう一度口を開いた。 はっきりと、津田に届くように。 「津田のこと、大好きだから」 津田の顔が一瞬にして赤くなったのが、薄暗い部屋でもはっきりと分かった。 恥ずかしさを隠すかのように、再び私の秘部に自信を宛がった。 「良い……?」 「うん」 ゆっくり、だけど確かに、津田のモノが徐々にナカへ入ってくる。 「ぅ……い、痛、っ」 下腹部に激痛が襲う。 目を堅く瞑り、痛みに耐える。 「は、憂、こっち、見て……っ」 恐る恐る目を開ける。 そこには先ほどの照れた顔とは打って変わって、顔を顰めた津田が居た。 津田のこんな表情、見たの初めてだ……。 139: 名前:浅葱☆09/25(土) 16 34 08 「ん……っふ」 すると、突然キスをされた。 深いキス。 「んん、っ」 唇が離れる。 キスばかりに気を取られていた所為で、津田のそれが私のナカへ入りきっていることに気が付かなかった。 「憂、大丈夫? 動く、よ?」 津田がゆっくりと動き始めた。 それでも未だ怖くて、やっぱり身体が強張る。 「憂、力、抜いて」 津田自身も余裕がないのだろうか。 途切れ途切れに聞こえた言葉を、私は素直に実行できなかった。 否、実行しようと試みたものの、出来なかった。 「や、無、理……っ」 “初めて”を言い訳にしたいわけでもなかったが、初めての私がどれだけ努力してもそう簡単に力など抜ける筈もない。 それどころかますます身体は強張るばかりだった。 シーツをギュッと掴む。 「憂、好きだよ」 「え……」 津田の突然の言葉に驚き、一瞬力が抜けたのを津田は見逃さなかった。 ピストン運動を始める。 それによって私に快感が襲ってきた。 「あっ、あっ、駄目……!」 津田に奥を突かれるのと比例して声が出るから恥ずかしい。 快感で頭がおかしくなりそうだ。 思わず、津田の首に手を巻き付け、津田に抱きついた。 「津田っあぁ、っ」 「憂、千昭って、呼んで……っ」 津田の言葉を素直に受け取る。 「ち、あきっ、千昭……! んぁあっ」 私がそう言ったことに満足したのか、津田が腰の動きを速めた。 「あっ、ぁ、駄目……! 千昭、っ!」 そして津田が自身をギリギリまで抜き、一気に突き上げた瞬間―― 「あぁあ……っ!!」 「イッ、……!」 大きな波のようなものが、私を襲い、今まで感じたことのない快感が私の身体に廻った。 そして、大きな嬌声を上げ、私たちは2人同時に果てた。 140: 名前:浅葱☆09/27(月) 19 29 33 目覚めると、一番最初に見慣れない天井が目に入った。 辺りを冷静に観察する。 そういえば、泊まったんだっけ……。 起き上がろうとすると、下腹部がズキと痛んだ。 でも、決して不快な痛さではない。 これは――私が今幸せだっていう証拠だよね。 再びベッドに寝転ぶ。 私の横には無防備な寝顔を見せる津田が居た。 ……私、津田と―― そう思うと、急に恥ずかしくなり、布団を頭まで被る。 そういえば今日は休日だったな……。 暫く津田の寝顔を眺めていたら、津田が小さな声を出して目を開けた。 「……憂……?」 「……津田、起きた……?」 「…………うん」 なんか津田が可愛い……。 思わず笑顔になると、津田が気に食わなかったのか、「何?」と不機嫌そうな顔で言った。 「なんでもない」と答える。 「なんか、身体べたべたする」 そう言われればなんだか私も身体がべたべたするような。 ……汗? 「……風呂、入る?」 「え」 私の返事を待たずに、「お湯沸かしてくる」と言って、腰にタオルを巻き、部屋を出て行った。 津田が出ていった扉を数秒見つめ、ふぅ、と溜息を吐き、ベッドに倒れ込んだ。 なんだか、色んな事が一気に起きて、ちょっと混乱してる。 本当は何一つ解決なんかしてないんだけど、でも、幸せ。 ……幸せ。 そして暫くすると、津田が戻ってきた。 「行くぞ」 そう言って、裸の私をお姫様だっこした。 「えっ……ちょっと! まま待って!!」 落とされぬよう、津田の首に手を回して暴れる。 「ったく、黙ってて」 「だだだって……っ恥ずかしいって!」 「昨日全部見たって」 「そ、それとこれとはっ」 せめて身体を見られないように津田にしがみつく。 お風呂場の扉を開けると、もあっとした空気が私たちを包んだ。 広いなぁ、と思ったのが、一番の感想。 浴槽のお湯に2人で浸かるとちゃぷ、という音がした。 ……これ、凄く恥ずかしいんだけど……! 143: 名前:浅葱☆10/01(金) 22 09 08 身体を見られたくなくて、津田に背を向ける。 すると後ろからあからさまに不機嫌そうな声が飛んできた。 「……なんでそっち向いてんの」 「だだだって、恥ずかしいじゃん!!」 膝を抱えて、丸くなる。 少しの沈黙の後、津田が私の名前を呼んだ。 「憂」 「な、何?」 「キスして?」 「は!?」 「俺、今凄い憂にキスされたい。キスして」 「むむ無理だって! 絶対無理!!」 「なんで」 「は、恥ずかしいでしょっ」 「俺はいつも憂にしてんのに……」 「だ、だって津田は余裕な感じじゃん」 「んなことねーよ」 「嘘」 「ホントだって」 絶対嘘だ。 だって津田はいつも余裕で。 私ばっかり追い詰められて。 津田の言葉をもう一度否定しようとしたら、思いがけない言葉が聞こえてきた。 「……お前にするときはいつも緊張してんだから」 ……え? 津田の方を見ると、照れているのか、お湯の熱によって火照っているのか顔が赤い。 「こっち見てんじゃねぇよ」 leave 続き6
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/410.html
220: 名前:+椎名+☆2011/08/01(月) 18 50 15 山田side 俺は解放されると佐野を銃で殺した。 ざまあみろ。 この俺を・・けなしよって。 俺は警察トップ。 お前は所詮人民。 今までこきつかってくれたお礼だ。 ははは!すがすがしいな。 佐野は動かない。 本当に死んだんだな。この殺人鬼は。 「まあいい」 俺はしばらく休暇をとっているからどうなっているかな。 そろそろ戻るか。 その時、インターホンが鳴る。 しかたねぇ、殺したことばれたくないしでるか。 「はい」 「警察です」 !? 警察? 何で・・・ あ、こいつの人殺したのがばれたんだな。 「あぁ、お前たち」 「15時57分、山田哲自逮捕」 は? 「おい、お前ら何してる」 「あなたには学校の毒殺容疑と佐野蘭さんの殺害容疑がかかっています。 電話を通して全て聞きました」 なに? あいつ、はめやがったのか・・・ くそ!許さん。 絶対に・・! 俺はその日から生き地獄を見ることになった。 222: 名前:+椎名+☆2011/08/01(月) 19 00 22 現在にもどります。 嫌な思い出ね。 もう手っ取り早く殺してあげよっと。 こんなこと思い出させた雪奈ちゃんが悪いのよ。 そう、今は管理人サンに恩返しするために相手を殺す。 ちゃんとりっぱな理由がある。 そして・・・管理人さんが言ってたアレを・・・ アレをもらうのよ。 そうすれば龍は生き返る・・! 何か得を得るためには何か犠牲が必要なのよ。 ごめんね、雪奈ちゃん。 あなたと・・・・いや、なんでもないわ。 今は・・・あなたと暁君を赤星リリスとして殺すわ。 224: 名前:+椎名+☆2011/08/01(月) 19 19 21 注意、ここからちょい恋愛入ります(注意なのか・・?) 雪奈side 「・・・」 「・・・」 まだ沈黙が続いている。 だめだ・・・やっぱりこの気持ち、私好きなんだ・・・ でも暁君みたいにかっこよくて頭のいい絵にかいたような子と 私みたいな平方根もできない奴がつりあわないよね。 でもやっぱ好きだ・・・ 暁君のこと。 二人でいるとどきどきして、胸が締め付けられる。 それに教室で二人っきりって・・・ 私別の意味で死ぬかも。 「・・・暁君。本当にだいじょうぶ?」 「え?」 うわわぁ・・何いってんの私!さっきも言ったじゃん! 「あぁ、サンキューな。葉山って・・その、優しいな」 やさっ・・!? 優しくなんて・・・ 「ごめんね、私のせいで怪我したのに」 私が怪我をさせたも同然だよ・・・ 本当に最低だよね。 「何いってんの?」 え? 「お前のせいじゃない、俺が勝手に突っ込んで怪我したんだ。 だからそんな風に自分を責めるなよ・・・ それに言ったろ? 何かあったら呼べって・・・」 ! 「一人で抱え込むなよ。 それとも俺じゃたよりないか?」 たよりない・・? そんなことない! 真っ先に駆けつけて来てくれたもん・・! むしろ心強いよ・・ 「そんなことない!助けてくれたもん・・だから・・・」 「そうか、よかった」 私の言葉を遮る。 そして私の頭を撫でる。 「お前は一人じゃねぇ。 少なくとも俺がそばにいるからな」 232: 名前:+椎名+☆2011/08/05(金) 17 21 57 ! な、ななな、なんでそんなことこの場で言えるの? でも嬉しい。 そばにいてくれる・・・ 一人じゃない。 私の片思いでもいい。 私は自分に素直になる。 だから・・私は暁君が好き。 でも・・・ 「暁君、どうして私を助けてくれるの?」 「えっ・・おまっ、そんなこと聞くか?」 暁君は目をそらす。 そして小声でつぶやく。 「・・・葉山が好きだからだよ・・」 ! 戦場に芽生えた恋は今、大いなる実りをつけた・・・ 236: 名前:+椎名+☆2011/08/12(金) 16 39 30 これって・・・リョウオモイってやつだよね・・・ 嘘・・・まさか暁君が・・・ 「・・・もういい!はっきり言う。 俺は葉山のことが好きだ!」 告白・・・された? えっ?ど、な、その・・・ 「つ、付き合ってください」 !!! 本格的に告白された!? は、早く返事しなきゃ! 「わ、私も・・・!?」 言いかけると暁君に手で口をふさがれる。 「返事は帰ったら聞く。だから・・・ 俺の告白、預かっといてくれないか?」 だめ・・・もうきゅんってしちゃう。 こんなにどきどきしたの初めて・・・ 「は、はぃ・・」 返事。 もちろんYESだ。 私も暁君が好き。 この想いはずっとかわらないと思う。 「はぁい、ラブラブなとこ邪魔してごめんねぇ?」 !!! リリスちゃんがナイフをギラギラ光らせて教室の中に入ってくる。 「べつにいいぜ?もう告白したし」 「!」 「あらそう、返事は?」 「それは帰ったら聞く」 「へぇ、ロマンチック。 でも私が帰してあげないわ」 237: 名前:+椎名+☆2011/08/12(金) 16 47 03 リリスちゃんは笑いかけて言う。 「雪奈ちゃん、1つ言うわ。 他人は他人よ」 それだけ言うと私達のほうに走ってくる。 「葉山!走れ!」 「うん!」 私達は立ち上がり、別々の方向に走る。 「ちっ、ちょろちょろと」 リリスちゃんは暁君に狙いを定め、襲い掛かった。 暁君はその場にあった机をリリスちゃんの方にガン!と飛ばす。 リリスちゃんの足に当たり、立ち止まる。 「・・・・った・・・ふふ、そうこなくっちゃね」 ますます笑みが増えた。 どうしよう・・・ 今度は私がなんとかしないと・・! 暁君は怪我もしてるし、そんなに体力は持たない。 私はポケットをあさると、小型ナイフを見つけた。 これで・・リリスちゃんを刺すの・・・? 240: 名前:+椎名+☆2011/08/13(土) 12 50 23 このナイフでリリスちゃんを殺せば・・・ 暁君は助かる。 でも・・・リリスちゃんは・・・ 「・・・・」 「葉山!?立ち止まるな!」 「見ててね?雪奈ちゃん、 だーいすきな人が目の前で死ぬ姿を」 そうだ。 考えている間も この地球はまわってる。 時間は流れ続けている。 こうして考えている間にもリリスちゃんは暁君を殺しにかかってる。 早く決めないと・・・ そうはわかっていてもなかなか自分の意思で決められない。 暁君は私の好きな人。 そしてリリスちゃんは大切な1人友達だと思ってる。 友を殺して暁君を助けるか・・・ 友を見逃し、暁君が死ぬのを黙ってみているか・・・ 私は・・・・ どちらもすることができない。 たとえ無くても・・・ 私は2人が助かる方法を考えたい。 誰も・・・どちらも死なない方法を。 7日間の醜いゲーム。 続き15
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/86.html
番外編① 今日は8時には帰るからな。 確かにそう言った。でも今はもう9時。 携帯も繋がらないし、いったいどこで油売ってやがるんだ、あの野郎。 アメリカに住み始めてからもう半年近く経つ。 慎也は高校の教師を勤めていて、俺はというとまだ英語に慣れてないから学ぶために学校に行っている。 就職活動を行ってない。 つまりまことに不本意ながら慎也に養ってもらってるってワケだ。オマケに学費も出してもらって。 捜しにいこうにも、家と家の間が50mも離れているような田舎町だから捜しようがない。 携帯も繋がらないし(二度目)。 だが家でただただボーっと帰ってくるのを待っているのもむず痒く、俺は慎也を捜しに行くことにした。 べ、別にヤツを心配しているわけじゃないからな! ガレージに駐車してある車を動かす。田舎は車がないとやっていけない。 とりあえず、慎也の勤める学校まで行ってみようと思った。 何キロ進んだだろうか。 都会に向かえば向かうほど、辺りは明るく、ビルが多くなっていく。 近くまでくると車を止め、慎也の行方を知らないか関係者の方に聞くため、学校の敷地内に入った。 慣れない英語でまだ職務をこなしている人に聞く。 その人曰く、ついさっき慎也は帰ったらしかった。 俺は元来た道を引き返すことにした。 もしかすると、慎也の車を見つけられるかもしれない。 「あ、慎也」 見つけることには見つけられたんだけど…。 「な!」 俺は女の人と楽しそうに喋る慎也を見てしまった。 二人きりで。 何だろう、この気持ち。 見てはいけないものを見てしまったようで俺の胸の音は高鳴る。 車に戻って一旦家に引き返した。 ふう。家の中に入って深呼吸して気持ちを落ち着かせる。 ……あれはなんだろう。 え…も、もしかして浮気…ってヤツじゃ。 慎也はカッコいいしモテる上に軟派だからそれもかなりの確率でありえる。 俺は段々不安になってきた。 何だよ慎也のやつ! 浮気は絶対しないって言ってたのに!! それとともに怒りも込み上げてくる。 椅子に座ってしばらく思案していると、 「ただいま」 俺の悩みの元凶が帰ってきた。 「ごめんな、8時に帰るって言ったのに」 慎也は俺の姿を見かけると真っ先に謝ってきた。 何がだよ。元からあの女性と会うつもりだったくせに。 内心怒り心頭の俺は慎也に対して何も言わなかった。 「旭、どうかした?」 慎也の手が俺に伸びてくる。それを俺は思いっきり払った。 パシンと渇いた音がする。 「どうかした、だと? 俺の気もしらねーで!! お前なんか、お前なんかなぁ!」 感極まったせいで目頭がカッと熱くなった。 ボタボタと目から涙がこぼれ落ちる。 「あさ…ひ?」 一方の慎也は驚いた表情で俺を見ていた。 「お前なんか…ッ」 嫌いだ、って言ってやりたいのに言葉が出ない。 慎也の胸倉を掴んで必死で涙を堪えようとする。 けど、ダメだった。とめどなく溢れてくる。 俺、慎也に嫌われたのか? 愛想尽かされたのか? 慎也は俺を切り離して、違う人のところに行くのだろうか? 不安ばかりが心の中を過ぎった。 「嫌だ、慎也…ッ。俺は絶対嫌だ!」 相変わらず慎也はきょとんとしている。 「…何のことだ?」 「え?」 俺も思わずつられてきょとんとする。 「そんなに早く帰ってきて欲しかった? ごめんな、この時期はテスト採点で忙しいんだ。 前にお前に言った約束、守れなくてホントごめん」 慎也は俺に向かって頭を下げた。 「じゃ、じゃあ遅くなったのは仕事だって言うのか?」 「そうだよ」 「嘘付け! 女の人と一緒にいるところ見たんだからな!」 俺が怒声でそういうと、慎也は間を置いて笑い始めた。 「ッあははは」 「何がおかしいんだよ?」 ったくこっちは真剣だってのに。 「だってそれ、妬いてるってことじゃん」 「なっ!!」 自分が浮気しといてよくそんなこと言えるな! 「あの人は小さい時に良く遊んだ人で、久しぶりに会ったから挨拶がてらに少し話してただけだよ」 笑いが収まると慎也は俺の方に歩み寄ってきた。 そして俺の身体を優しく抱擁する。 「妬いてくれて嬉しいけど、もうちょっと俺のこと信用しろよ。俺はずっと旭一筋なんだぞ? これからもな」 「………」 その脳髄を突き刺すような慎也の言葉に、酷く紅潮したのは言うまでもなかった。 結婚と来れば浮気!浮気ネタを書いてみたかったーw でも、 浮気と思ってたが実は違う→受けが翻弄 が萌えだと思いましたw てなわけでというわけです(謎 番外編② 「慎也!」 旭は妙に明るい声で掃除している慎也を呼びかけた。 掃除機のスイッチを一旦切り、呼ばれたほうを慎也は振り返る。 「トリックオアトリートっ!」 アメリカに住んでいるというのに全く発音のよくない英語でそう言いつつ旭は右手を突き出した。 慎也はぽかんとしたが、すぐにこの日がハロウィンだと気づいたようだ。 「ハロウィンだろ? コスプ…仮装してから来い」 軽くあしらってから再び掃除機のスイッチを入れて床のほこりを吸い始める。 「仮装とかいいじゃねーか。俺はお菓子くれりゃあそれでいいんだよ」 「いや、どうせやるなら真剣にやれよ。それってアメリカのイベント馬鹿にしてるぞ」 「そっそういうわけじゃねーよ。ただハロウィンにかこつけて慎也の作ったケーキとか食いたいなって…」 「じゃあ俺はハロウィンにかこつけて旭のセーラー服姿が見たいな」 ウイーンと鳴る掃除機を操りながらしらっと言う慎也の言葉に旭はひどく赤面した。 「アホか!! お前なんてランターンに食われてしまえ!」 「ランターンはポケモン。お前が言いたいのはジャックランタンのことか? あとジャックランタンは人を食ったりしないと思うけど」 揚げ足を見事に取られた旭は何もいえないままその場を去った。 テイク2。 (これでいいか。セーラー服なんて冗談じゃねー) なぜかクロゼットの中にあった魔女の衣装。 (い、言っとくけど仮装しろって言われたからしてるんじゃねーぞ。やっぱイベントは楽しまなきゃな。 うん、それだけのことだから。いやマジで。っていうか何で俺こんなに言い訳してるんだっけ?) 黒いローブを服の上からかぶって、魔女帽子をかぶるだけ。簡単にコスプ…いや、仮装ができる。 もう一度旭は深夜の元へ向かった。彼は掃除を終わらせ、ソファに座って読書していた。 ちなみにエロ本ではない。 「…トリックオアトリート」 一度目失敗して二度目にテンションあげて言うのは恥ずかしいのだろうか。 旭の声は先ほどよりも小さくなっていた。発音が悪いのは相変わらずだが。 「いいよ。じゃあここ座って?」 読んでる途中の本を閉じ、隣の空いているスペースをぽんと叩く慎也。 それに従い旭は指示された場所に座った。 旭の心には、あの慎也の舌がとろけそうなケーキの味しか思い浮かんでいない。 わくわくしながら待っていると、そっと慎也に横たわらされた。 「な、何だよ?」 「お菓子くれなきゃいたずらするぞ、なんだろ? お菓子はやらない。だから"いたずら"してみろ」 魔女の黒ローブの中へ慎也は手を滑り込ませる。 「お前それっ、お前がやってんじゃねーかッ!!」 声を張り上げて旭はもぞもぞと抵抗した。 「どっちも同じようなもんだろ。するもされるも」 「は、ッふざけんな…あ、ん…ッ」 テイク3。 「慎也このやろーッ」 お菓子を食べるつもりが食べられてしまった旭はギンと慎也を睨む。 「じゃあ、これでどうだ? スイートオアスイートだ!」 ビッと人差し指を前に突き出して旭は叫ぶ。 「…お前、トリックとトリートの区別つかないんだろ?」 嘲るように慎也は目を細めて旭を見た。 「んなことどーでもいいの! それよりケーキ作ってくれよ。俺仮装までしてバカみたいじゃん」 「そうだな…」 片手をあごに充てて考え込む。 それを見て旭は、今度こそケーキが食べられるのかと期待した。 だが、次の瞬間はなぜかすぐ目前に慎也がいて、唇に何か柔らかいものを感じた。 「ん…?」 旭がそれがキスだと気づいたときにはもう慎也の舌が口内に入り込んでいるわけで。 「…ん、ぅ」 くちゅっと鳴った音で今の状況を完全に把握した旭は慎也を突き飛ばした。 「はぁ、はぁッ、おま…お前…ッ」 「スイートって言ったよな。甘いものって言ったらキスだろ」 唾液のついた下唇をペロリと舐めると慎也は得意そうに笑んだ。 「違うだろおおお!」 旭が叫んだのは言うまでもなかった。 テイク4。 「もう知らん…もう慎也なんか…」 まだ魔女のローブを脱がないまま部屋の隅で頭を抱えている旭。 コスプレしろと言われたりイタズラされたりキスされたりするのは、もちろん旭は嫌がっているわけではない。 むしろ喜んでいるはずだ、…構ってもらえて。 じゃあなぜいじけているのか。答えは簡単、ツンデレだから。 「ごめん、そんな怒るなよ。ちょっとイジメただけだろ?」 旭の背後から寄り添い、片手で抱き寄せつつ頭をくしゃりと撫でる。 「ケーキ作ったからさ。一緒に食べようぜ」 ケーキと言われて途端に旭は元気になった。単純なところも…まあ彼の魅力だろう。 テーブルの上の、慎也が作ったチーズケーキを頬張ったころには旭の機嫌は既に治っていた。 「やっぱうめーな、お前のケーキって」 「そら良かったな。で? お前は俺にお菓子くれんのか?」 にこにこ笑いながら慎也は言った。もちろん旭が菓子など用意していないことを見越してのことだ。 「う、うー…な、い、です…」 チーズケーキを食べる動作を止め、旭はバツの悪そうな顔をした。 「ふーん。じゃあイタズラ、するからな」 ニヤリと慎也が嫌な感じの笑みを浮かべたことは描写しなくともわかるだろう。 その表情は旭を青ざめさせた。 …ハッピーハロウィン。 バレンタインや誕生日は王道イベントなんで、ちょっとマイナー(?)なイベントに。 でもハロウィンもコスプ…ゴホ、ゴホッ仮装や、お菓子くれなきゃイタズラするぞ?という言葉とか…けしからんですね^p^(お前や 日本も欧米のようにハロウィンが浸透すればとおもいますw 番外編③(by蝶々) すごーく好きだった小説キャラをお借りして二次創作(*´ω`*)@事前許可は貰ってますーw 作者であるかずいちゃんに渡せるのに間に合わなかったのが心から残念ですが…と思ってたら奇跡の再会を果たせたので載せますw キャライメージと合ってるか不安…^^; そして受験おつかれ^p^ __________ 風邪って馬鹿は引かないって言うけど……それなら変態はどうなんだろうな。 目が覚めて一番最初にあれ、と思う。 いつもなら先に目覚めるアイツに苦しい程抱き付かれて嫌な目覚めを迎える筈なのに何故か今日は様子が違った。 ベッドから身体を起こし隣の慎也に目を向ければ仰向けの状態で額に腕を乗せて荒い息を繰り返している。 ……まさかと思い額に手を当て確認すると尋常じゃない熱さ。 「お、おい慎也……まさか風邪引いたのかっ!?」 「……おー、旭……おはよ……。ゴメン……今日はおはようのセックスできな……ゴホッゴホッ!」 ……咳をしながら変態発言しないでくれますか。誰が朝っぱらからヤルか。 心配する気が一気に失せて自分に掛かっていたシーツを乱暴に慎也の顔に覆い被せる。 別に熱に浮かされて血迷った事を言ってる訳じゃない。 コイツ――中田慎也は自他共に認める変態で、朝だろうが夜だろうがお構いなしにこうやって常識外れな発言や行動をする問題児だ。 そんな慎也に俺は常に振り回されている。 それならコイツと離れたらいいだろって思うかも知れないだろうが、まあ……腐れ縁と言うか……なんやかんやあって今はケッコ……結……あ゛ー……二人で住んでいる。 あ、でも別姓! 俺にはちゃんと“雪代”って名字があるんだからな、ウン。 「……八度五分。バッカじゃねーの」 ピピ、と小さな電子音を合図にダルそうな慎也の脇から体温計を引き抜いて確認する。 本当なら心配しなくてはいけないのは解っている。 ついつい癖で病人に向かって掛ける台詞ではない事を言ってしまうのはコイツの日頃の行いが悪いんだ。 「何が……ゴホ、原因なんだろな……ゴホ」 いやいやいや。この真冬に薄着してたからに決まってんでしょーが。 元々の体温が高いからって油断し過ぎだバカ。 「今日が休みで良かったな。まあ今日一日寝まくってれば治るだろ」 「おー……」 素直に目を瞑る慎也にこっちが面食らってしまう。 ……本当に辛そうだな。 慎也の邪魔になってはいけないと、俺はそっとベッドを降りると静かに寝室を抜け出した。 ――その数時間後、俺はあるものを手にしてもう一度寝室へと入る。 覗き込む俺の気配に気付いたのか慎也は薄く目を開けて反応を示した。 「……お粥、食べるか?」 「ゴホッ、旭……俺の為にわざわざ作ってくれたのか?」 「違う。あー……あれだ。なんか急に食べたくなっただけだ」 特に良い言い訳も思いつかず慎也に向かってそう答えると、笑いながらありがとうと礼を言われた。 なんか……すっげー居心地悪いしもうさっさと早く食べて薬飲んでもう一回寝て欲しい。 なのに慎也はじっと器を眺めたままなかなか食べ始めようとしなかった。 「食欲無いのか?」 「っていうか旭が食べさせてくれないのか?」 「なっ……!」 質問の答えになってるんだかなってないんだか判らない言葉に思わず身じろぎしてしまう。 「なんで俺がそんな……っ、新婚夫婦みたいな事できるかぁ!」 「新婚だろ?」 …………そうでしたね。 「そ、それでも俺は嫌だっ! 自分で食べろっ」 「ちぇ。旭のツンデレー」 無理矢理慎也にスプーンと器を押し付けると慎也はしぶしぶ起き上がり、自らお粥を掬って食べ始めた。 ていうかデレてねーし。いつデレたかむしろ言って欲しいぐらいだ。 お粥なんてご飯をふやかしただけの料理なのに、それでも美味しいって言われて少しだけ安心した。 食べ切って薬を飲んだのを見届けてから俺はやれやれと食器を片付けようと立ち上がる。 これで俺の仕事はすんだな。後は夜まで寝てれば治るだろ。 「――旭、どこ行くんだ?」 「どこ……って、食器を片付けに……うわっ!」 慎也に腕を掴まれバランスを崩した俺は、そのままベッドへと倒れ込んでしまった。 整った慎也の顔がいきなり至近距離に見えてかぁっと顔が熱くなるのが自分でもわかる。 「俺が寝るまで添い寝しといてー」 「……寝言は寝て言えよ」 そのままぎゅっと強く抱きしめられるとトクトクと聞こえる慎也の心臓の音。 その音を聞いてたら暴れるのも段々面倒くさくなってきて、俺はされるがままの状態でしばらく慎也の胸に顔を埋める。 ……熱い。やっぱり尋常じゃなく熱い。 やっぱさっきより熱ヒドいんじゃねーのコレ? 「……なぁ慎也? 汗もかいてるみたいだし、着替えとかしないと風邪悪化するぞ?」 脱がしてやろうと慎也のパジャマのボタンに手を掛け一つずつ外していく。 「今日はいつになく大胆だな。……旭の所為で勃ってきたんですけど」 「はぁっ!? 違う、これは誘ったんじゃなくて、お前を心配して――」 慌てて起き上がろうとするのを、病人とは思えない力で抑えられそのまま組み敷かれる。 もう大人しく寝とけよー! なんで俺が寝ててお前が今上になってんだよっ! 「心配してくれなくてもまだお前を満足させる程の体力ならある。キスは……伝染るからな。我慢しろ」 俺が心配してんのはそんなとこじゃねーよ! そう叫びたくて口を開いたのに首筋に熱い舌がうねる感覚がして俺の口から洩れたのは情けない程弱々しい喘ぎ声だった。 「っあ、やっ……!」 「知ってるか? 風邪は運動して汗をかくと早く治るんだぞ」 耳元でそう囁かれながら俺は思った。 慎也には勝てない……。 ――そしてやっぱりコイツは変態なんだと。 __________ 人様のキャラで性描写はさすがにマズイかなと思い自重(・∀・) 風邪ネタはうちの愁×直人でも書いたけどキャラ変えるだけで全然違うくなるから楽しかったですw お粗末様でした~w
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/204.html
41: 名前:乃愛☆11/22(月) 18 32 45 結夏Side 口の中に出された大量の精子。 お世辞でも美味しいとは言えない…。 結夏は、舌をちろりと出して 可愛らしく微笑む。 「 んー…いっぱい出たねっ 」 「 あ~…可愛すぎっ! 」 啓斗は、結夏を押し倒すと 馬乗りになり、上から被さった。 「 結夏にも気持ち良いことしてやるよ… 」 そう言って、啓斗は結夏の閉じていた足を 無理やり開かせた。 「 びちゃびちゃじゃん… 」 「 やあっ…! 」 啓斗は、結夏の足をM字にさせると 溢れ出している蜜を中指ですくった。 「 ほら、見ろよ 」 啓斗はそう言って、結夏の目線を捕らえると 目の前で、中指に付いた蜜を舐める。 「 っ……! 」 恥ずかしがる結夏の顔を確認した啓斗は、 ぷっくりと膨らんだ陰核にそっと触れた。 「 はぁんっ! 」 少し触っただけなのに、結夏は腰を浮かせて 甘い声を出す。 啓斗は、その反応を見て面白く思ったのか 突然、陰核を触る手を早めた。 シュシュシュ… 人差し指と中指で、陰核を擦らせる。 「 やあぁんっ…あぁんっ! 」 「 舐めちゃおうか… 」 啓斗はそう言うと、結夏の股に顔をしずめる。 陰核だけを刺激するかのように、舌先を使ってちろちろ…と舐める。 「 あっ、んはぁ!! 啓っ…んっ! 」 今度は、全体を舐めるように下から陰核まで ぺろー…と蜜をすくい上げるように舐める。 「 んん…あぁん…! 」 身体をよじらせた結夏は、 舌が陰核に触れた瞬間に声を大きくする。 続いて、啓斗は結夏の陰核だけを吸い上げる。 「 ひうぅんっ! 」 結夏は、腰を浮かせて止めようとするが 啓斗は吸うことを止めようとしない。 最後に啓斗は、水音が結夏に聞こえるように わざとらしく音を立てて吸ったり舐めたりする。 「 チュパ……ジュル…ジュルルル… 」 「 ん…あぁ…はあぁん…! 」 啓斗の涎と結夏の蜜でどろどろとなった、 結夏のアソコは男の理性を露にさせる。 42: 名前:りの☆11/22(月) 23 26 38 HOST ser355289013280607_docomo.ne.jp 『鬼ごっこ』って言う小説を書いている"りの"です^^ まだまだ素人ですが、良かったら見てみてください! "俺だけのプリンセスⅠ"も見ました! すごく面白いしドキドキしちゃいます(笑) 更新楽しみに待ってます^^ 頑張ってください! りのでいいですよ☆ 46: 名前:乃愛☆11/29(月) 19 16 39 結夏Side 啓斗の行為がいつもより激しい―… そう思うだけで、結夏のアソコは熱くなり 中からは蜜が溢れ出してくる。 「 …気持ち良かった? 」 唇に少し付いていた結夏の蜜を、 啓斗は誘うように舌で舐めた。 「 っ…! 」 忽ち結夏のアソコはじん…と熱くなり 土の色がどんどん変わっていく。 啓斗は結夏のそんな些細なことにも 反応し、悪魔のような笑みを浮かべた。 閉じていた結夏の足を無理やり開かせると、 大きくなった自分のものを、結夏の入り口に当てる。 大きく目を見開いた結夏の陰核を、 自分のものの先で弄る。 「 んっ…! はぁん… 」 「 最初はこんな所に人は来ないと思ったけど、 時間的にそろそろ来る人もいるかな…? 結夏のエロい声に誘われて…皆寄ってくるかも… 」 わざとらしく焦らしながら、 結夏の反応を確かめる啓斗。 「 やぁんっ…、啓…恥ずかしっ…! 」 啓斗は、結夏の言葉を耳に入れると ゆっくりと根元まで挿入した。 「 はぁぁん…! 」 「 俺のものを根元までしっかりと咥えた結夏のアソコを、 通りかかった人に見られたり…。 混ざり合った液がグチョグチョになってるのを、 分かられちゃったら、結夏はどうする…? 」 啓斗は、ゆっくりと腰を動かしながら 結夏の耳元で、言葉攻めをしていく。 「 あっ…んぅ……、あぁっ…! 」 言葉が耳に入っているのか、結夏の中は 啓斗のものが抜けないほどにきゅうっ…と締まった。 「 エロい結夏を見たいな…? 」 そう言うと、啓斗は一度結夏の中から 自分のものを抜いた。 54: 名前:乃愛☆12/18(土) 19 24 23 結夏Side えっと…啓斗の言っている意味が理解出来ない…。 十分、今のままでエロいと思うんだけどなぁ。 「 どうすればいいの…? 」 戸惑い気味にそう問いかける私を待っていたかのように、 啓斗はにっこりと悪魔のように微笑んだ。 「 んー…じゃあ、自分でシてよ 」 天使のような微笑みも、その言葉によってかき消される。 私の思考は一気に停止した。 「 …へ? 」 「 ほら、早く 」 啓斗は目の前で、横になると 準備満タンという顔で私を見ている。 「 う゛…… 」 これはもう、否定出来ない感じですよね? 私は溜息をつくと、啓斗の上に乗った。 大きくなっている啓斗のものを触り、 自分の穴へと近づける。 「 ん……はぁ…っ! 」 先だけが入り、思わず確認したくなり下を向く。 それを阻止するかのように、啓斗は上半身だけを 起こすと、私の頬に触れた。 「 顔…良く見せて? 何の為に、この体勢にしたと思ってんの? 」 啓斗はそう言うと、先だけ入った自分のものを 腰を浮かせてグッと入らせた。 「 あぁんっ!! 」 体を後ろに反らして胸を張る私。 嫌でも奥に入ってくる…。 「 自分で動かしてよ 」 啓斗は、私の乳首を指先で転がしながら 満面の笑みを浮かべてそう言った。 「 んっ…んっ…あぁ…っ! 」 ゆっくりと腰を動かす。 段々と息が上がり、周りが見えなくなる。 乃愛:12/27(月) 14 45 59 「 やぁっ…! あっ…駄目ぇ…!! 」 「 駄目じゃないだろ? 本当は気持ち良いくせに… 」 少し埃っぽい、資料室にいやらしい水音と、 可愛らしい喘ぎ声が響き渡る―… 「 んうっ…、はぁっ…!! 」 真っ白な肌が、どんどん赤く染まっていく。 荒い息と、潤んだ瞳が男の理性を崩していく―… 「 啓斗っ…激しいっ、あ…あぁん!! 」 自分の肩辺りを掴む彼女の手。 爪が、肌に食い込むと同時に彼女の声は大きくなった。 「 激しいくらいが好きだろ? 」 そう、耳元で囁けば彼女の声は 一層大きく高くなる。 「 あ、あぁっ!! 駄目、駄目ぇっ…! イッちゃ…イッちゃうよぉっ…!! 」 彼女の中が、急にぎゅっ…と引き締まる。 「 あっ、あっ…あぁあああっ!! 」 彼女の身体は見事に弓のように反り、 大きく震わせて絶頂に達した。 乃愛:12/31(金) 10 03 04 啓斗Side 「 なあ、結夏 」 「 ん? 」 服を着ている結夏に向かって、 俺は欠伸をしながら声をかけた。 「 お前、最近声デカいよな? 」 「 ふえっ!? 」 俺の言葉を耳に入れた結夏は、 顔を林檎のように真っ赤に染めた。 「 ほら、今もデカい 」 「 あ…、そっち……? 日常的に声が大きくなってる、ってこと? 」 一人で騒がしくなったかと思えば、 自分で勝手に解釈している結夏。 「 …え、何々ー? そっちってどっちー? 」 俺は、にぃ…と厭らしく笑いを浮かべながら、 服を着終えた結夏に後ろから抱きついた。 「 きゃっ…!! な、何でもないっ…! 」 「 何でも無くねぇだろー? 言わないと、もう一回犯すぞ 」 結夏の耳元で、息を吹きかけながら ゆっくりと…低く、甘く囁く俺。 「 ……っ! 」 それでも何も話そうとしない結夏。 「 もしかして、もう一回犯して欲しいわけ? 」 「 なっ…違…っ!! 」 前を向いていた結夏の顔は、 俺の言葉によって、後ろに向けられた。 否定をしようとする結夏の口を、 自分の口で塞ぐ俺。 「 んっ……! 」 「 …口、開けて? 」 小さく首を傾げながらそう言えば、 結夏は恥ずかしそうに、ほんの少しだけ口を開いた。 「 いただき… 」 「 んっ、……ちゅ…んぁ…… 」 厭らしく絡まる俺の舌と結夏の舌。 そして、2人の唾液が混ざった銀色の糸。 「 んん…ふぁ……、ちゅ……はぁ…っ 」 「 …ちゅ……、結夏…… 」 やっと離れた2人の間には、光が当たって輝く糸。 これは、愛し合った小さな証拠の1つ。 「 …何も答えないから、お仕置き 」 「 っ…! 」 俺の言葉に耳まで赤く染める結夏。 「 …あれ?もしかして、お仕置きなのに、 喜んじゃったりしてた…? 」 「 喜んで無いよ…っ! 」 結夏は、顔を前に戻すと俺から強引に離れた。 …ったく、素直じゃねぇんだから。 乃愛:01/09(日) 18 48 48 結夏Side 学校なのに、あたしと啓斗は資料室や図書室、屋上などで 毎日と言っても良いほど、えっちなことをしている。 駄目…そう思っても、啓斗の色っぽい顔や 眉間に皺を寄せて少し苦しそうな顔を見てしまうと、 つい抵抗することが出来なくなってしまう。 「 昼飯、一緒に食おうな? 」 資料室の扉をゆっくりと開いて、廊下に人がいるかを 確認する啓斗の後ろに立つあたし。 「 うんっ…、何処で食べるの? 」 廊下に出た啓斗に続き、あたしも教室から出ると 啓斗の隣に並び、小首を傾げた。 「 んー…、その時の気分…だな 」 口の端だけをクイッと上げて笑う啓斗の顔に、 思わずきゅん…としてしまうあたし。 「 今日ね、啓斗の分までお弁当作っちゃったの。 ……食べて、もらえる…かなぁ? 」 あたしはお昼はいつも自分で作ったお弁当だけど、 啓斗はいつもパンとかお握りとか…買ったものばっかり。 今までずっと気になってて…とうとう、作っちゃったんだよね。 「 まじでっ?! うわ、めっちゃ嬉しい! 」 子供のように目尻に皺を寄せて笑う啓斗。 本当に喜んでいる姿を見ると、作った甲斐があるなぁ…って思う。 教室に戻ると、授業はちょうど終わっていて 先生には怒られずには済んだ。 乃愛:01/09(日) 18 56 41 ―お昼。 あたしと啓斗は、4階まで階段をのぼり 誰もいない屋上でお昼ご飯を食べることにした。 「 はい、これ……どうぞっ 」 「 お、さんきゅ 」 あたしが差し出したお弁当を、啓斗は手に取ると 嬉しそうな顔をして、お弁当を開けた。 「 おお~っ! 」 お弁当の蓋を持ったまま、目をキラキラと輝かせる啓斗。 「 んじゃ、いただきまーす 」 用意したお箸を手にした啓斗は、お弁当の中にある "玉子焼き"に手を伸ばした。 啓斗の口の中に入った黄色い"玉子焼き"。 これは、結構自信作なんだけどなぁ……。 玉子焼きって、甘い派としょっぱい派に分かれるけど… あたしの玉子焼きは甘い派。 自分がお菓子みたいな甘いものが大好きだから、っていうのもあるけど、 他のおかずがしょっぱいから…っていうのが一番かな? 「 …、ど…どうでしょうか? 」 黙って玉子焼きを口に含んでいる啓斗に あたしは思わず声をかけた。 「 ……まい 」 「 え? 」 「 めっちゃ美味い! 俺、玉子焼き甘い派なんだよ! 」 喜んで、残りの玉子焼きを口に放り込んでいく啓斗。 自分の手作りのものを喜んで食べてくれる彼氏がいるって、 幸せ……うん、幸せだなぁ…。 乃愛:01/12(水) 18 39 01 ご飯を食べ終えて、授業は午後に突入した。 お昼が終わってすぐの授業って、お腹がいっぱいになって、 眠くなるから、あたしは苦手なんだよなぁ…。 + そんな午後の授業は高校3年生となったあたし達にとって、 とっても重要なことだった。 『 進路 』―…… 「 えー、3年になったお前達には そろそろ進路について考えて欲しいと思う。 」 教卓の前に立つ先生は、手に紙とチョークを持っている。 うう…、進路とか面倒くさいなぁ…。 「 今から、進路調査表を配るぞー。 大学に行きたいんだったら、大学って書け。 就職したいんだったら、就職って書け。 」 何て分かりきったことを簡潔にまとめて 言っているんでしょう、うちの先生は……。 配られた紙には第3希望まで書けるようになっている。 あたしは、筆箱からシャーペンを取り出し考える。 就職かぁ…、最近は大学出てからじゃないと 良い仕事も無いんだよね…。 やっぱり、大学進学かなぁ……。 「 啓斗はどうするの? 」 「 んー、あー…俺? 」 眠そうな顔をしている啓斗に、そっと声をかける。 「 まあ、普通に大学進学じゃね? 」 「 ふぅん…、やっぱそうだよねぇ… 」 「 あ、俺の嫁になる? 」 「 はぁっ?! 」 啓斗の突然の言葉に、顔を真っ赤に染めるあたし。 お、お嫁さんって……それじゃあ、あたしの就職先は 啓斗のお家ですかぁーっ?! 「 家事全般は勿論のこと、夜には性欲を満たしてもらわないとなぁ…? 」 「 …っ! 」 ぼぼぼっ、と更に顔が赤くなるのが分かる。 よ、夜と言いますと…やっぱりえっちなこと? 朝も昼も夜も啓斗と一緒だったら、 あたしの身体はもたないよぉーっ!! 乃愛:01/12(水) 18 43 12 「 まあ、すぐには決まらないと思うがな。 一度、家に帰ってゆっくり考えて、 家の人とも話し合って決めてくれ。 」 結局決まらなかったあたし……。 うう…、どうしよ…。 「 なあ、結夏。 」 「 んー? 」 授業が終わり、リップを塗っているあたしに声を かけながら、欠伸をする啓斗。 「 放課後、俺ン家来ねぇ? 」 「 啓斗の家? 」 "何しに?"と付け足すあたしを見て、 不敵な笑みを浮かべた啓斗。 うっ…嫌な予感…! 「 そりゃ勿論、激しいSEX。 」 「 っ…! 」 堂々とした顔つきで、そう言った啓斗。 「 え、えっとぉ… 」 「 来たくねぇの? 」 うっ…、そんな子犬みたいな可愛い目で あたしを見ないでよーっ…! 「 行く… 」 断りきれないじゃん…! 乃愛:01/12(水) 18 51 09 ―放課後。 「 さ、シようぜ。 」 気づけばあたしは、啓斗の部屋にあるベットに座っている。 あれ……、ほぼ強引に連れて来られた気がするなぁ。 色々なことを、ぼーっとしながら考えていると いきなり押し倒されて、バンザイ状態のあたし。 あたしの上には、馬乗りになった啓斗。 ええっ…もう、スタート?! 焦ったあたしの両手首は、何故か何かによって きつく縛られていた。 「 えっ…、これ何っ?! 」 上で結ばれた両手首を上目で見るあたしを見た 啓斗は、満足そうな顔をするとポケットから目隠しを取り出した。 「 えっ…やっ…啓斗?! 」 あたしは、啓斗の持っていた目隠しによって 視界を塞がれてしまった。 ど、どうしよう…。 突然、首筋に啓斗の舌が当たった。 その舌は、首筋をつー…と伝うと、あたしの耳を舐めたり、甘噛みをした。 「 っ…あ… 」 何も見えないから、何時どんな風に 何処を触れるか分からないため、不安でしょうがない。 「 今日は、結夏をたっぷり愛してやるよ… 」 耳元で囁いた啓斗の少し掠れた低くて甘い声。 「 俺だけのプリンセス 」 Ⅱ 続き2
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/209.html
2: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 21 48 「加藤先輩…」 可愛い天使が頬を染める。 「付き合ってください。」 可愛い天使が手を差し伸べる。 なんて可愛い天使なのだろう。 目の前の少女は僕を見つめている。 僕は君を幸せに出来るだろうか――― 5: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 24 06 「穂水…。」 僕は右手を頭の後ろへ。 「僕なんかでいいの?」 自分でも赤くなっているのが分かるくらい頬が熱い。 天使―穂水は小刻みに震えている。 「せ、せ、先輩じゃないとだめなんです…。」 そういうと穂水は口を噤んでしまった。 少しの沈黙の後。 「ぼ、僕でよければ…ってか、付き合ってください。」 何を言ってんだ僕は。 緊張の糸が解れて穂水も僕も笑みが零れた。 「先輩。」 天使が笑っている。 「ん?」 天使が見つめてる。 「大好きです。」 天使が目を瞑る。 「僕もだよ。」 僕は天使の綿の様に柔らかい手を取り、 それ以上に繊細な天使の唇へ自分の唇を優しく触れさせた。 その日は手を繋いで水穂を家まで送って ニヤニヤしながら自宅へ帰った。 ぼ、ぼ、僕に彼女が出来た!!!! 6: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 25 07 家に帰り自分の部屋へ直行。 随時電源ONのパソコンの椅子へ。 そしてインターネットマークをクリックして、 お気に入りを開く。 「アニメ弱愛者専用チャット」 をクリックして少し待つ。 パステルピンクのトップページが開いて 鼻を鳴らしながらIDとパスを打つ。 そして観覧者数を確認してから、 「魔法少女パルリンチャット」 をクリックして 横にあるパルリンの大きな人形を膝に乗せる。 この人形は人間と同じくらいの大きさで、 胸に柔らかいボールのようなものを入れていたり、 性器の毛やクリちゃん、膣口なども細かいところまで 修飾が施されていて、 オナニーなどに使えたりする優れものなのだ! その人形の胸を揉み解しながら、 「誰か居ませんか?」 と打つ。 するとすぐに返事が返ってきた。 「私でよければ☆」 僕は女性だということへの興奮を抑えながら 落ち着いて返事を返した。 「全然OKっす。年齢は?」 それからその女性とのチャット会話が始まった。 7: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 25 47 「16です♪」 おお!っとか思いながら自分の年齢を打つ。 「僕は17!!!一つしただなw」 「はぃ。そーですねぇ。」 なかなか可愛い反応だな。 僕的には好きだな。 「魔パルの誰が好き?」 魔パルとは「魔法少女パルリン」の略である。 魔法少女パルリンとは深夜アニメの一つで マイナーなアニメ好き(ヲタクとかいうやつかな?) のなかで絶大な人気を集めている神アニメなのだ! そのファンが集まるのがこのチャット。 みんな「うはうは」言いながら打ってるらしい(笑) まぁ僕もその一人なのだが。 でも、女性の魔パルファンは珍しい。 パルリン友達―パル友はこのチャットの中で587人居るが、 女性はたった2人だけ。 もしこの子と友達になれたら3人になる。 友達になれたらいいな。 って考えているうちに 「ミミリンですかね?」 「パル王さん?」←パル王とは僕のHN! 「トイレですかぁ?」 「おーい」 「落ちた?」 というスレが10件ほど打たれていた。 「あ、ごめんごめん(汗)」 と打つと 「あはは、オナってた?」 と冗談混じりに返ってきた。 だから 「うん。ごめん。」 と打つと 「いやーん。いやらしーww」 と。 まだまだこんな会話が続きそうだ。 10: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 27 55 「イった?」 「いや、まだw」 ここでは魔パル話よりエロ話が繰り広げられることが多い。 まあ、魔パルを見てる時点で相当なエロだからな。 「パル王さん、本名教えてくれませんか?」 チャットエッチを始めるためか、 本名を聞いてきた。 が、僕は外の世界(現実)では 『容姿端麗、成績優秀、それプラ穏やか』 という完璧な衣を纏っているので パパパパッパパァン! 偽名~。 大抵の人はこのチャットの中では 本名といわれれば嘘を附き、 偽名を名乗るのだ。 「章太。」 草太の草冠を変えて、 「章」にして、 章太。 こんな感じで名乗っておいた。 「そっちは?」 鳳香というHNの女性に尋ねると驚く返信が。 「風香!」 穂水?穂水風香か!? 僕の脳裏にはそれしか掠らなかった。 「へぇ。可愛い名前だなぁ。」 敢えてこう返す。 「ありがとうございます((はぁと」 でも、あの風香ちゃんがこんな所にくる筈がない! ……でも。 この僕も外の自分とは違うこの顔。 有り得るかも知れない。 明日。 行ってみよう。 穂水の家に。 その日は『友達認証』を送りあって、 画面を閉じた。 11: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 28 36 「ふわぁ。」 ベッドの下にはパルリンの人形が。 時計、時計、時計………。 ―――8時59分 ……今日は、土曜日で合ってるよな。 記憶が確かでない。 僕は……。 携帯を開くと新着が一件。 名前は「風香ちゃん」。 ああ。 僕は彼女が出来たんだっけ? 自覚が………。 もしかしてデェトだったんじゃなかったっけ。 とりあえずめーるを開く。 ---------- おはようございます! えっと、今日って 10時からで 合ってますよね? すごく楽しみですね♪ じゃ、あとで。。。 ---------- じゃ、じゅうじ? や、やばい。 いそげっっっ! とりあえず、 そこらへんにある服をチョイスして 財布の中を確認してから 家を出た。 12: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 29 12 「ふぅ。」 待ち合わせ場所には穂水はまだ来ていなかった。 上がっている呼吸を整え、 少し紳士的に振舞おうかと悩む。 でも、彼女ならそうやって固めなくてもな。 とか考えていると、 ふわふわした見るままの天使が現れた。 「すいません。まちましたぁ?」 薄い桃色のワンピースを装った穂水が掛けてきた。 本当にふわふわという表現があっている。 もうまさに天使に見えてきた。 「だいじょーぶ。ほんとにいまきたとこ。」 生憎これが本当なのだ。 「じゃ、いこーか。」 13: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 29 43 「せ、先輩…すっごいお洒落ですねぇ。」 赤面しながら言う穂水は緊張を丸出しだ。 「そうかなぁ?」 僕の格好は。 ストライプの半袖のワイシャツに 銀ピンを着けていて、 下は深い青のジーパンを履いており、 脹脛の所で折っている。 サンダルは茶色い皮のビーサン。 イメージ的にはラフな感じを求めたのだが、 どちらかというと清楚系になってしまった。 しかし、そう言う穂水も穂水である。 ワンピースを一着纏っているだけだが、 それが似合っていてすごく可愛い。 ポシェットはアイボリーに近い毛糸で 修飾が施されていて、 雰囲気にはピッタリだ。 靴は茶色の柔らかいパンプスを履いていて これもまたグーだ。 髪もふわふわしていて これといった欠点はない。 本当に天使みたいだなぁ こんな子が 魔法少女パルリンを プレイしているのか……!? 14: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 30 22 「あ、ここ。」 少しばかり歩くと見慣れた建物が現れた。 「すっげー美味しいんだよ。」 イタリア料理のお店。 「た、高そうですよ…」 穂水は目を丸くするが、 「そんなことないよ。ファミレスに近い感じのお店。」 ニコッと笑って穂水の笑顔を招く。 「じゃ、はいろっか。」 さっと穂水の手を取り、 店の入り口へ。 「あ、そーちゃん!」 なーんて声も軽く交わして、 一番奥の席へ歩く。 穂水は僕の手をぎゅっと握り締め、 俯いている。 穂水の反応はなかなか可愛い。 すぐ真っ赤んなって、 すぐ俯く。 そんな穂水を見ていると 自然と笑みが零れて 和む。 席に着くと、穂水がおどおどしだした。 「だいじょーぶ。」 心から微笑める。 「は、はぃ。」 「何にする?」 僕は慣れた手つきでメニューを開く。 中央に定食や単品メニュー。 左側にはドリンクとデザートが記されていて、 反対側は季節のお勧めメニューがズラリ。 「ん~。」 穂水が迷っているようだったから 「僕はカレーにするよ。」 と口角を上げる。 すると穂水は 「じゃ、あたしもそれで…。」 と笑みを返す。 「じゃ、呼ぶね…」 チャイムが鳴り、定員がきて、 「季節のカレー二つ。」 といい、メニューを閉じた。 15: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 32 08 「穂水…。」 定員が水を持ってきた後。 「風香ってよんでいい?」 敢えて親近感を掴もうとする。 「っう、えぇと……あのぉ…その……」 どぎまぎしながら最後に可愛い一言。 「すんごい。うれしーです…。」 ほんと、和む。 「じゃ、僕のことは草太ね。」 意地悪く微笑むと予想通りの反応。 「っえ!?せ、先輩?」 可愛いなぁ。 「うん。緊張が取れたらでいいよ。」 ほんと、抱きしめたくなる感じ。 「っはい!!」 満面の笑みで頷いてくれた。 「季節のカレーでーす。」 カレー皿を二つ持った自分の叔母が登場。 「ぅわぁぁ。」 風香は嬉しそうに笑う。 「なぁに?彼女?」 叔母は悪魔の笑みを浮かべて、 僕につんつんしてくる。 「はい。そーでーす!」 態と偉そ振ると、叔母は何度か頷いた。 「じゃ、葉子に連絡しておきまーす。」 「っえ!?ちょっと…それは!!」 葉子とは自分の母親である。 僕が一人暮らしを始めた頃から連絡を全く取っていない。 「花子さーん!!!!」 もう、花子さんはくるくる回りながら 厨房に入ってしまっていた。 「はぁ。」 顔を上げると風香が微笑んでいた。 「楽しそうだね。」 その言葉もまた、 僕を笑顔にしてくれる言葉。 「いやいや。うるさいだけだよ。」 二人で笑いあいながら 色々なことを話し始めた。 16: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 32 44 「風香。」 一瞬びくっとして目が合う。 「可愛いな。」 自然とそんなことを言っていた。 「二人っきりだったらすでに襲ってるよ。」 風香はまた赤面する。 そして、僕は一番気になっていることを 尋ねた。 「どうして、僕なんかを好きに?」 答えはもう分かってる。 どうせ「顔がかっこいいから」とかだろ。 今まで付き合ってきた女は いつもそうだった。 顔しか見てくれない。 趣味も打ち明けられない。 彼女と呼べるのかさえ分からなかった。 でも、風香は違っていてくれた。 「ちょっと長くなるんですけどいいですか?」 僕は黙って頷いた。 17: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 33 11 ~風香side~ 桜満開の日。 藤堂高校の入学式が行われた。 「背、のびたぁ?」 「制服に合ってるよ!」 親友の莉子と真由は同じ高校を受験して、 三人とも受かった。 合格発表の日にはみんなで 笑いながら泣いて 食事に行った。 「風香~。クラスはなれたね。」 真由が抱きついてくる。 「会いに行くから大丈夫!」 クラスが離れたら壁が出来てしまうのも知ってるけど そう言ってないと真由が可哀そう。 「二組の方は名前順に二列に並んで着いてきて下さい。」 案内してる先輩はすごく適当で説明とかよく分からなくて みんなダルイ空気を醸し出していた。 「敦也。もっとちゃんとしてあげろよ。 みんな困ってんじゃん。」 保健室の前で一人の先輩が現れた。 あたしと同じ事考えてる……。 そんな些細なことが無性に嬉しくて一人でにやついていた。 「ここは保健室。四時間目までしか先生は居ないから お昼休みからはここで性行為をしてもいいぞー。」 周りの男子は爆笑。 さっきまで案内していた男子も 「そんなんでいいのかよ。」 と吹き出した。 「ちゃんと説明してるだろ。」 ズッキューーーーーン!!!! え、笑顔が……格好いい。 し、しかもしかっりしてるのにジョークが通じる…! その一瞬であたしは先輩に恋に落ちた。 「でもさぁ。一目惚れっぽくない?」 次の日、昼休みでその気持ちを全部 真由と莉子に伝えた。 「あたしは、外見で判断したくないんだけど…」 一目惚れって言ったら顔で判断してるように見えるし。 「でも好きになっちゃったんでしょう?」 最後の一言は黒い長い髪を下ろしている莉子である。 「じゃ、別にいいよね。」 そして大人っぽい真由。 そして先輩への片思いが始まった。 18: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 33 37 「体育祭の役員を決める。」 待ちに待ったこの日!!!!! 体育委員長の先輩が挨拶に回ってくるのだ! 「じゃ、とりあえず体育委員は決まりで、 …ほか。立候補は?」 少しの沈黙の間に莉子と目で合図をして、 「「はい!あたしたちやります!!」」 っと叫んだ……っと同時に先輩が戸を開けた。 そして私たちを見て一言。 「今年は良い子達ばかりで楽しい体育祭になりそうだ。」 微笑む先輩はやっぱり愛しくて 大好きだった。 「じゃ、4人決まったから、 体育役員の加藤君に注意事項などを言ってもらう。」 先生は先輩に「よろしく」っといって教室から出て行った。 「えっと、僕は前期体育委員長を勤めさせてもらう 加藤 草太といいます。」 へぇ。 加藤先輩かぁ。 「まず、プログラムを順に言います……」 そして、先輩はみんなの眼を見ながら一通り、 説明を終えた。 19: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 34 38 「じゃ、役員の子達は放課後教室に残っててね。」 といい、先輩は教室を後にした。 「やっぱいいじゃん!ってか性格もよさそうじゃん!」 次の休み時間、いつもの三人でまた先輩のことを。 「しっかりしててそのうえ面白い…」 「そして容姿端麗、成績優秀、それプラ穏やかっていう。」 「何それ!?どこの情報よ?」 ぎゃーぎゃーいってるとチャイムがなる直前になっていた。 「じゃ、じゃーね!真由!!」 莉子に手を引っ張られながら教室へ飛び込む。 ――ドンッ 飛び込んだ拍子に、 あたしは誰かにぶつかってしまった。 「ご、ごめん…」 しかし顔を上げると愛しい目上の人が。 「…なさい!!!」 急に頬が熱くなって、 足が縺れてしまった。 そう。 目の前に居るのは愛しくて大好きな加藤先輩。 「大丈夫?」 「っあ!」 倒れてしまいそうになった瞬間、 先輩が莉子が離したばかりの左手を掴んだ。 そして、あっという間に しっかりとした先輩の胸に引き寄せられる。 「すいません…。」 慌てて退く。 すると先輩の骨っぽい手が あたしの頭の上に伸びてきた。 「廊下は静かに歩きましょう。じゃね。」 そういい、先輩はあたしの肩を 2度叩いて、行ってしまった。 席に着くとチャイムが鳴った。 周りの女子に冷やかされて 大声で怒鳴ったので 社会の先生に怒られてしまった。 でも、すごく幸せな気分だった。 可愛い君を 続き1
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/23.html
113: 名前:サスライ☆06/21(日) 12 16 12 私、天童 宗厳は果たし合いの場所に居た。 格好は帝国の時代の軍服。やはり私は何だかんだで軍服が合うと思う。 その為に造られたのだから。 まさか、シェンフォニーが生き残りとは思わなかった。だからと言ってためらいは無かったが。 シェンフォニーは恐らく来るだろう。こう言う、情の関わるところでは変に義理堅い奴だから。 丈治の情報によれば奴は道筋を辿ると戦時中の輪から海流に乗って流れ着いたの事。記憶はその時に失ったと思われる。身分は不明。 しかし、当時の技は知っているらしい。 十分だ。 身体に身に付いた魂と言うべき技。それに全力でぶつかる。 輪の帝国でも西の国でも良い。 戦争から追い出されて、救えなかった私に奴を倒せるか?確かめたくなった。そう結論付けた。 刀を抜く。帝国の兵隊に一人一本づつ配給される刀。 兵の証と言ってもいい。島送りにされてもこれを取られなかったのは幸いだと思う。 私はどうしたい? シェンフォニーに何を伝えたい? 私の居場所は何処にある? 様々な思いが頭の中を暴れまわり、グシャグシャになったので素振りをして忘れる事にした。 http //y.upup.be/?AgY1BtQafg 114: 名前:サスライ☆06/21(日) 21 38 11 一人で茶をすすってた時俺に迫ってきた矢文。 全く、気配に気付いて頭に迫る矢を掴んでなければ即死だったぞ、シャイな奴め。 で、それに書かれていた地図によると山の随分奥…。 そこは古ぼけた扉が丘に埋め込まれていた。 そして、扉の前では宗厳が素振りをしている。何かを振り払う様な表情で。 俺は左手を上げて、それを振ってみせた。 「お~い、宗厳。来ちゃったよ~ん♪ 待ち合わせ30分前に居るとは君も中々…」 俺に気付いた宗厳は、刀をダランと垂らした。あ~、こりゃ、体重移動を利用した超移動からの薙ぎかな。 垂らした方向から察するに~… ガキン 「おいおい、挨拶位は返そうぜ。せっかちさんめ」 俺の身体の影に隠してあった右手に持つ杖と刀がぶつかる。 そして、杖を引く事で刀を受け流した。 「焦りは禁物♪無防備な姿を晒しちゃう」 目の前には宗厳の後頭部。何時もなら寸止めで「一本♪」とでも言って、コーヒーでも奢らせるんだが、 相手は人形兵だ。 俺はたまに傭兵をするからプログラムを弄くられて未だに兵器にされてるヤツを見たことがある。 だから実力は承知の上だ。 だから、鋼よりも硬い杖を後頭部に向かって、勢いよく振る。寸止めなんて出来ないスピードで。 115: 名前:サスライ☆06/21(日) 22 06 00 シェンフォニーは死合いに剣では無くて杖を選んだ。 これは自信か。使い慣れてるからか、それとも… 私は首を『180°』回した。 目の前には骨の杖。私は背筋力で跳ね上がり、寧ろ杖に向かう。頑丈な額でそれを受けて、弾いた。 衝撃。しかし戦闘に支障無し。 「おっとっと…」 杖を上に弾かれたシェンフォニーは体勢を崩してケンケンで後ろに下がる。 瞬時に身体を回転させ、首を元に戻し、左手をシェンフォニーに向けた。 私の上腕がパカリと開き、中から小型のマシンガンが出て来る。 撃つ。調所無く。 爆竹を破裂させた様な音がして銃弾はシェンフォニーの胴体へ突撃。 しかし、身を捻る事で回避。ならばと腕を逃げる方向にずらす。 「うっ ひゃあ!絶対当たったら痛いっての。殺す気かよ~、あ、その通りだった」 シェンフォニーは兎に角逃げて、そして扉に追い詰められた。 そして、止めの縦断を撃ち込んだ。 しかし、シェンフォニーは身を縮める事で回避。鉄の扉に跳弾する音がした。 つまり、回避がそのまま扉の影に隠れる事に繋がる。 だが、無駄だ。私には熱反応センサーが搭載されている。見れば移動して起きあがってる最中。 好機。そう思った時にシェンフォニー独特の呑気な声が聞こえた。 「水詰まりには気を付けようね~♪」 マシンガンが突然爆発した。 116: 名前:サスライ☆06/21(日) 22 24 43 突然爆発したマシンガン。マシンガンを構えていた左腕が原型を留めない程になっていた。 私が驚いているとシェンフォニーが得意気な顔をして杖で肩を叩いていた。 「さて、タネ明かしといこうか♪」 私は左腕を切り離す作業に徹して動けなかった。こうしないと、故障が他の機関にも出てしまう。 「まあ、なんて事はない。バドミントン、知ってるだろ?」 バドミントン。確か白鳥から剥いだ羽をコルクに突き刺して、中途半端なハンマーで打ち合う競技だったと思う! 「それでは瞬時に片手で羽を打ち返す事が出来てね。そう、どんな体勢でも…」 そして杖を見る。 まさかこいつは… 「銃弾を打ち返して、銃口に突っ込んだ…?」 自分でも馬鹿馬鹿しいと思ってる。状況が状況なら「電波ちゃん」なんてアダ名を付けられ悲惨な学園生活を送るだろう。 だが、私に出来るのはせいぜい通信電波を受信する程度だ。 そんな馬鹿馬鹿しい事にシェンフォニーは意地悪な笑顔を浮かべて、言った。 「大正解♪」 何やら意味の解らないポーズを決めていた。 そして、今まで理解できなかった事が理解できた。 「怪物め…」 「怪物じゃないよシェンフォニーだよ~ん♪」 117: 名前:サスライ☆06/21(日) 23 00 03 私はシェンフォニーに向かって行った。銃弾をも打ち返す怪物に右手一本刀一本で。 「宗厳。今の君の眼は、俺が希に見る奴の眼だ。自分を見失っている眼… 誰と戦っているかも解らず、勝手に相手と自分を照らし合わせて自滅する」 くそ、一太刀。一太刀で良いんだ。頼む、当たってよ! 何でコイツは軽く受け流す事しかしない、もっと攻めてよ、私を… 「私を壊してよ!」 嗚呼、そうか。これを伝えたかったんだ。 自分で死ぬ事も出来ず、決闘なんかを死ぬ理由にして、 シェンフォニーを自分と照らし合わせて、自分を見失った余りに自分とシェンフォニーを勘違いして、殺そうとして。 なんだ、結局は自傷行為だったんじゃないの…。 言葉にしてなんと馬鹿馬鹿しい。見てる奴が居たらきっと私を笑うのだろう。しかし、思い至るまで時間が架かる。 「嗚呼、解った…」 「ん?まだやんの?」 私は刀を突きで構えた。そして身体中のエネルギーを溜める。 力の全てを利用して爆発的な突進を生み出す。そのスピードは銃弾にも匹敵。 しかし、私は確信している。彼はこれを避けて反撃する実力がある。 だから良い。これで壊れよう。私は口を動かした。 「迷惑をかけて、御免なさい。 でも、私は最期まで兵士なんだ。 この刀に誓って」 瞬間、エネルギーが爆発する。 118: 名前:サスライ☆06/21(日) 23 23 45 風を切る。 景色が流れる。 過去が思い出される。 敵を殺せなくて島に流されて、クロガネや社達に会った。 社が居なくなって、丘に入り口が埋め込まれたこの研究所を二人で護ってきた。 そして、滅んで、生きる意味を失った。戦う為の機械なのに、結局何も出来なかった。 恥だらけだ。人生恥だらけだよ。 救えなかった私に戦闘から生き残ったシェンフォニーを倒せるかなんて、只の建前だ! 本当は、本当は、本当は…! 「あああああああ~~~~!!!」 突撃する私に彼は素早く杖を捻る。すると杖から仕込み刀が出て来た。 あんな隠し玉まであったのか。 良いね、バッサリやっちゃってくれ。 私に生きる意味なんて無いんだからさ。 そして、私の視界は暗黒へ落ちていった。何処までも…。 † † † 「…の、筈なのに何で私は生きているのだ?」 左腕が無い状態でシェンフォニーに話し掛ける。彼はやっぱり意地悪に答えた。 「あの時言ったよね♪ 『私は兵士なんだ。この刀に誓って』と」 「む…だから何だと…」 「つまり!刀が無ければ兵士じゃ無いって事だ♪」 白い歯を見せて彼は何かを見せた。嫌な予感がして、的中する。 それは、折られた刀。私の、刀…。 取り敢えず叫ぶしかない。 「イヤアアアア~~~!!」 119: 名前:サスライ☆06/21(日) 23 43 3 突撃する宗厳に向かって俺は仕込み刀を使った。 ただし、宗厳を斬る為では無い。宗厳を過去に縛り付ける刀を斬る為だ。 俺は仕込み刀を宗厳の刀の内側に斜めから入れて、仕込み刀が最高速になったところで相手の力に逆らわずつつ、手首を回し、外側に仕込み刀を持っていく。 千鳥流断刀術・【柳】 師匠に習った技だ。これは、相手の突きが速ければ速い程に威力を増す。 効果は、武器破壊。 宗厳の刀が真っ二つになったと同時に、宗厳の身体は地面に倒れた。 「へ?」 俺は宗厳を診る。すると様々な機関が弱まっている事が理解できる。 ならば取る方法は一つ。 様々な情報網や都市伝説的なもので大体の目星はついていた。 この山には実は研究所が存在する。 そして場所は、ここだ! 宗厳を担いで丘に埋め込まれた鉄の扉を蹴り破った。 中から表れるは埃だらけの通路。Gの名を冠する虫が居てもおかしくない。 と、それは良いとして彼女を助けられる所を探して、『兵器用エネルギー室』というプレートが貼ってある所を見つけたので、駆け込んだ。 お姫様抱っこで! 120: 名前:サスライ☆06/23(火) 22 31 11 また、生き永らえてしまった。しかも、敵に助けられて。 なんたる屈辱だ。 敵であるシェンフォニーは一刀両断された刀を私に見せた。 「てな訳でまぁ、君はもう兵士じゃありませんよ~っと♪」 噛みつきたい。しかし、身体が動かない。エネルギー不足だ、喋るのが精一杯だろう。 「くそっ!ならば壊せ! 兵士として造られた私から兵士を取ったら存在意味が無い!」 私は、無茶苦茶になった。そうとも。 私にもう存在意味は無い。ならば、居場所は無いと同じだ。 するとシェンフォニーは鼻から溜め息を出した。 眉をハにしてやや困る。 しかし、口と眼は笑っていた。知っている。これは暴れる生き物をなだめ、愛でる眼だ。 「宗厳。手紙に国が滅んだとあったが、君は恐らく丈治からそれを聞いたんだろうね そして、情報は正しいんだ」 情報が間違っていたという期待を持たせずに一気に喋る。 聞くに浸る私に言葉が続く。 「じゃあ、何で今の今まで聞くのをためらった? 実は失いたく無かったんだろう? 『今』 を」 『今』。その言葉が妙に強調されて脳内に響く。 そして私は動かない。 エネルギーが切れてなくともきっと、動かない。 121: 名前:サスライ☆06/23(火) 22 55 54 さて、俺は宗厳との決着の後に下山したら腹が減った。 だから24時間営業で有名な【居酒屋;すとろんぐ】で夜食を頼んでた訳だ。 で、気付いたら寝ちゃってさ~♪店長好い人だから毛布なんぞをかけたりしてくれたりね。 と、言う訳で… 「シェンフォニー様~、言いましたよね? 朝までには帰ってきてと言いましたよね?」 「怒っちゃ嫌ですよ~雪さ~ん」 「アハハ。 怒ってませんよ?折檻をしようとしてるだけですよ?」 と、言う訳で逃げてる真っ最中~。いやいやいや、折檻の根幹となる感情は怒りだからね! 口では笑ってるけど眼は殺意でギラギラだったからね! うん。まさかフライパンを構えたメイドに追い掛けられるという漫画や小説みたいな事が起こるなんて…。 あ、小説だった。 そういう訳で俺は山に向かっている。宗厳の家に隠れてやり過ごせば、怒りが収まる可能性も… 「ねーよ」 ああ、もう。雲吉、やってみなきゃ分かんねーだろ! 宗厳の家であるログハウスのドアノブに手をかける。 あの後放置したけど、エネルギーが動ける位に溜まって帰ってきてる頃だ。 そして俺の視界に入ってきたのは着替え中の宗厳の黒い下着姿で… 「キャアアアアアア!!」 声を聞き付けて鬼のような雪がやってくるのはそう、時間がかからなかった。 122: 名前:サスライ☆06/23(火) 23 19 23 私は天童 宗厳だ。 私の自分自身に対する怒りを全て受けきった男、シェンフォニーに昨日言われた事を思い出す。 「充電が終われば動けるから安心してね。 さて、陽も昇りそうだし俺はそろそろ帰るかね。 朝帰りなんぞしたら雪に平手打ち位は喰らいそうだ」 いや、雪ならフライパンでぶん殴る位はするのでは無いだろうか。 因みに重要なのはその続きである。 部屋を出ようとするシェンフォニー。突然歩みが止まる。 緩い顔をして此方を見た。 「宗厳や。お前の居る場所はこの現在だ。 確かに、宗厳の戦闘力を必要とする人間は居ない、 しかし、宗厳のキャラを必要とする人間ならいっぱいいるぜ。 雪とか、丈治とか、クロガネとか、そして… 俺とかな♪」 言い残し、シェンフォニーはポケットに手を入れて部屋を去った。 歯を合わせて思いっきり笑ったままの顔で。 様々な所に温かさを感じる。 それは充電のプラグからも感じられるし、部屋の空気からも感じられるし、私の心臓からも感じられた。 部屋には私一人しか居ないが、孤独とは無縁だった。 そして今。 「さぁてぇ~、どうしてくれましょ~かねぇ~♪ 馬鹿主が」 あの時、私を打ち負かした男はフライパンを持った従者に押さえ付けられて、ジタバタしていた。 何故か、笑いが込み上げてきた。 123: 名前:サスライ☆06/24(水) 00 06 31 私、銀田一 雪は部屋を見渡す。部屋とは天童ちゃんが着替える為にそさくさと奥に行ってしまって、二人しか居ないこの部屋だ。 昨日、私は晶ちゃんの部屋のインテリアを取りに行った。これが重かったが晶ちゃんの部屋に栄えが出て、やり遂げた感がある。 天童ちゃんの部屋も同じだった。必要最低限の物以外は置いていない。 サッパリしているが、詰まらない部屋だ。 と、言う訳で、 「はい、シェンフォニー様。これを持って下さい」 私はコンポをシェンフォニー様にヒョイと渡す。シェンフォニー様は物凄い顔で担いでいた。 「ぐ、おおお…重いってば雪…」 「これ位で音を上げちゃ駄目ですよ♪『お仕置き』なんですから。 ところで天童さん、身体全体を映す鏡は持ってます?」 天童ちゃんは辛そうにしているシェンフォニー様を見た。シェンフォニー様は「ヘルプぷりーず!」と言っている。 それに対して笑みで返して、彼女は言った。 「い いや、無いな♪そう言えば軍服以外は今着ている、昨日買ってもらった服以外は無い。 どうせだし買ってしまおうか」 太陽が青空にある。その下に彼女の笑顔がある。 輝いている。そのまま口を動かす。 「荷物持ちは当然シェンフォニーでな♪」 124: 名前:サスライ☆06/24(水) 00 08 22 第五話 完 125: 名前:サスライ☆06/25(木) 13 42 55 第六話 村雲島。何も無い様に見えるこの島だが、人が住み、 笑い、怒り、泣き、やっぱり笑い、感情に満ちている。 そして感情を生み出すのは周りとの関わり。仕事やら学校やらだ。 「…と、言う訳で学校は学業より周りとの関わりを重視する必要があると思う!」 俺、橘 文哉(タチバナ フミヤ)は威圧感丸出しの先生に言い放つと、向こうは言葉を返す。 「ほう。それが授業中消しゴムで作った彫刻で品評会をしていた言い訳か」 「その通りだ!見よ、この素晴らしい女体像!」 俺は消しゴムで作ったボインボインで水着のねーちゃんを先生に見せた。 そこで喰らいつく男が居る。夏でも毛皮のコートを着て、ゴーグルタイプのサングラスをかけて素顔が解らない男、新木 タオ(アラキ タオ)。 「甘いぞ文哉!時代は水着よりもメイドを必要としている!」 机の上に本格的に作りこまれたメイド像をのせて、格好良く言う。漫画なら「どきゅーん!」なんて効果音が付いてもいい。 「何!?何を根拠に!?」 「こないだ商店街でアイアンクローかますメイドさんを見た!」 「んな筈ねーだろ!」 俺は叫ぶ。流石に無理のあるそのギャグを否定する。 しかし、次の瞬間だ。ノックの音の後に誰かがこの「生徒指導室」に入って来た。 「雑用の銀田一ですが、お茶をいれに来ました~」 126: 名前:サスライ☆06/25(木) 23 42 13 事の始まりはシェンフォニー様のこの一言が始まりだった。 「雪、 ちょっと学校行ってくるわ」 「はぁ?」 多分私は灰色と深緑が混ざった渋い顔でシェンフォニー様を見ていただろう。 彼の行動が意味不明なのはよく在る事だ。が、何故に学校? まさかネタに詰まって学園編!? …と、いう裏事情的なものは置いといて、 教師でもやるのだろうか。いや、まず無いだろう。 では生徒しか考えられない。今から一般常識を知る為に学校に…。 しかし、髭を剃ったとしても無理があるだろう。ならば私がサポートすべき事は只一つ! 「シェンフォニー様!この銀田一 雪。必ずや良い特殊メイカーを探し出して見せます!」 「…え~と、どういう事?雲吉?」 シェンフォニー様は肩に乗っかってる雲吉に取り敢えず聞いてみた。うん、雲吉は便利なキャラだ。 「シェンフォニーが生徒になると考えてるんじゃねーの?」 「あ~、成る程~。そりゃ悪いねぃ。なんせ顔のツヤとか結構… ってオイ!どう考えたって教師だろうがよ! 代理を頼まれたんだよ」 私は己の耳を疑った。生徒になったとしても素敵なアウトローライフを送りそうな彼が教師? せめて見張り位は必要ではないか? だから突発的に言ってしまった。 「じゃ あ私も行きます!」 127: 名前:サスライ☆06/27(土) 11 43 06 始まりは、突然宗厳が出した試験用紙だった。 俺は兎に角やれと言われた物だから頬杖をかきながら問題を解く。 普段から暇潰しに書斎の本を読んでるから割と楽だった。 まだ、代わりの腕パーツが届いていないから彼女は片手。しかし器用に採点して言ってみせた。 「よしシェンフォニー。貴様は今から教師だ」 「え、 あ~、うん。別に良いけど…」 「いや、驚けよ!突然教師なんだぞ!?」 宗厳は顔を真っ赤にして受け流しに対して抗議する。 「… もしかして、今のが精一杯の茶目っ気なのか?」 「……」 明後日の方向を見て何も言わない。うわぁ、図星じゃん。ならば、俺に出来る事と言えば… 「オモシロイヨ~」 「うわあああ! 棒読みなのが痛いよ~!いっそスルーしてよぉお~」 腰に差した棒きれでペチペチ叩いてくる。 やっぱ刀に思い入れがあったんだね。 「ま、まぁともかく!貴様は今日は教師なのだ!」 「ナンデ~」 「私の剣の弟子が高等学校の校長をしていてな、どうにも教師の代用が必要だから、知識人を持ってこいという話だ」 「俺 が知識人なのは嬉しいけど、晶ちゃんもなかなかよ~?」 そこで宗厳は肩を震わせた。 「バ、バババババ…バカァ!アイツなんぞに頼めるかぁ!」 この後、これをネタに散々いじくってみた。 銀田一 雪さんとシェンフォニー様と後、なんかの話 続き6