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ゼノギアス(Part2/2) ページ容量上限の都合で2分割されています。 ゼノギアス (Part1/2)からひきつづき、part5-536の人による詳細なまとめ(元となった書き込みはpart7-22~23・109~111・260~262・277~283、part9-481~484・489~492) ◆古の声がいざなう 海底遺跡へ ユグドラシルがタムズに到着した頃には、既にウェルスは掃討され、救難活動が始まっていた。 艦長たちの無事を確認したバルトらは、カレルレン艦とアルカンシェルを追って発掘現場へ急行した。 その頃、ギアに乗ったグラーフに、ミァンからの通信が入っていた。 ミァン「彼が再び目覚めようとしているわ。彼の仲間は今はゼボイム。あそこに何があるか、貴方の方が良く 知っているでしょう? 彼は渡そうとはしない。けど、私たちにも必要なものなの。だから、お願い……」 発掘現場。小さな無人の孤島にある入り口から入り、エレベーターで下った先には、巨大な地下空洞があった。 空洞の地面を、高層ビル群とアスファルトが埋め尽くしている。その遺跡を遥か眼下に見下ろす渡り廊下に 来た時、エリィがトリップしたようにつぶやいた。 エリィ「空洞都市ゼボイム……。私達は、自らをこの広大な霊廟に葬った…」 我に返ったエリィと共に、バルトたちはソラリス兵を撃破しながら遺跡内部を進んだ。発達した文明を示す ように、各所に超近代的な設備があった。どうやらこの施設は、その稼動時に放射能汚染を防ぐために閉鎖 されたようで、各所の隔壁が閉ざされていた。そのロックを解除しつつ進むと、最奥部に、パスワードで ロックされたナノリアクター室に行き当たった。 その部屋を見たエリィの脳裏に、血まみれで通路に倒れふす自分とそれを見て泣いているフェイの姿が浮かんだ。 エリィ「あの子はあの時からずっと、一人ぼっちでここにいたのね……」 そうつぶやいた彼女は、ツカツカと制御室に向かい、扉のロックを解除した。 エリィ『新たなる魂の器よ。願わくば宿るべきあなたのその魂に安らぎあれ』 ロックが解除されるのと同時に、ナノリアクターが稼動し、リアクター内に緑の髪をした少女が生成された。 そこへ、ストーン司教が現れた。彼は、ナノマシンの群体である少女を「ヒトのクビキを外す存在」と呼び、 少女を連れ去ろうとした。 司教「これはヒトの救いとなるもの。これによって、選ばれた人間は救済されるのです」 ビリー「それは何か間違っています。信仰による救いの機会は等しく与えられるべきです」 司教「そもそも信仰とは選ばれた者だけが救われる事を期待するものなのです。貴方は全てのヒトを救えますか? カレルレン様がこのナノマシンを使えば、少なくとも選ばれたものは救われるのです」 ビリー「司教様、貴方はこの少女を使って何をしようとしているのですか? 僕は貴方が義しき者とは思えない。 残念ですが、貴方のお心に沿うわけには参りません」 残念です、そう言って立ち去ろうとした司教を止めようとするエリィ。しかし、司教の護衛として付いていた エレメンツのサイボーグ娘トロネと天然ボケウサギ娘のセラフィータに阻まれた。 ラムサスの頭越しの命令で乗り気でないと言いつつもサイコガンやら鉄板をもぶち破る頭突きやらで攻め立てる 二人を撃破し、エリィたちは司教の後を追った。 その頃、ユグドラシルではフェイが夢を見ていた。 ナノリアクター室にいる自分。彼は窓ごしに、エリィが銃殺されるのを何も出来ずに見ていた。 「その子を渡すわけには……いかないよね……」そう言って彼女は事切れた。 フェイが叫ぶと同時に周囲が暗転し、ニタリと笑った幼いフェイが彼の前に現れた。 「ククク……じゃあな……」 看護婦が病室に来た時、ベッドにフェイの姿は無かった。 ◆深海にねむる少女 魂の在処 司教の後を追うエリィたちは、ゼボイムが見渡せるあの渡り廊下で追いついた。少女を取り返そうとした、 その時、突然真紅のギアが現れ、あの赤い長髪の男が降りてきた。彼も少女を取り返そうとしているようだった。 真紅のギアを見たバルトは、ユグドラの恨みもあって男に突っかかって行った。男はイドと名乗り、バルト たちに襲い掛かった。イドは凄まじい程のエーテルを操り、リコですら全く歯が立たなかった。 あわやここで皆殺しかと思われたとき、ワイズマンがギアに乗って現れ、イドを掴んだ。その隙にエリィたちは その場を離脱、司教を追ったが、既に時遅し。カレルレン艦は転移してしまった。 追撃のしようもなくユグドラシルに戻るエリィたち。その中で、シタンは司教の言った「クビキを外す」と 言う言葉が気に掛かっていた。カレルレンがナノマシンを使い、その昔リコやハマーのような亜人を作り出す 事となったような実験を再び始めたら……。彼はそう危惧していた。 ユグドラに戻った彼らは、ギアハンガーでフェイに会った。彼は気づいたらギアに乗っていたという。 いまだふらつく彼をエリィたちが心配していると、ユグドラにアルカンシェルが接近したとの報があった。 フェイを休ませて迎撃に出たビリーたちの前に、ウェルス化した司教の乗るアルカンシェルが迫る。 と、そこへグラーフのギアが現れ「我が拳(ry」と言って司教に力を与え、飛び去った。 新たな力を与えられたアルカンシェルは、強固なエーテル障壁を展開し、全くダメージを受けなかった。 攻めあぐむビリーを見て司教は嬉しそうに笑い、そして高笑いと共に話し始めた。 司教「良い事を教えてあげましょうビリー。私は4年前、ウェルスを使ってラケルを浄化して差し上げました。 そしてもう一つ、貴方が今まで浄化してきたウェルスとは全てカレルレン様が術を施したただのヒト! 貴方はヒトを屠っていたのです。フハハハハ! さあ、ザンゲなさい! ジェサイアの息子!!」 ジェシー「いいや、お前が悔いる事なんてひとつもないぜ、ビリー!」 と、そこへ、ジェシーが小型のギア、バントラインに乗って現れた。バントラインの開発者であるシタンは、 それが人間弾頭のキャノン砲である事を思い出し、ビリーを止めようとしたが通信がつながらなかった。 キャノン砲に変形しレンマーツォの肩に乗った小型ギアのコックピットで、ジェシーはビリーに語りかけた。 ジェシー「もう解ったろ、捏造された信仰なんてまやかしだ。本当の神や信仰は自分の中に見出すものなんだ。 お前は倒したウェルスの顔を見た事があるか? ウェルス化するってのは凄まじく苦しいことなんだ。 その苦しみから逃れるため人の血を求める。しかし、本当にその苦しみから解放される方法は消滅 しかないんだ。お前に倒されたウェルスは、安らいだ顔をしていただろう? お前はウェルス化した 人を救ってたんだ。お前の信仰心はまやかしじゃない。神はお前の中にいるんだよ!」 そう言うと、ジェシーは合図した。ビリーがトリガーを引き、ジェシーの乗った弾頭が放たれた。 その爆発によってアルカンシェルの障壁は消え、彼らはこれを撃破した。 落ち着きを取り戻したユグドラの甲板で、ビリーは妹プリメーラと共に、空を見上げた。 謝るシタンに手を振って、ビリーは空に向けて銃を三発撃った。 ビリー「親父を送るにはこれが一番です……」 あ り が と う 親 父… そ し て さ よ う な ら と、なる筈もなく、ジェシーは無事に帰ってきた。なんでも、バントラインは改良してあったそうな。 父親の帰還に喜んで抱きついたプリメーラは、か細い声で「パパ」と喋りましたとさ。メデタシメデタシ。 XENOGEARS 後半 シェバト編 目次(タワー~女王謁見 襲撃~出発 ゲート編 ソラリス編 Disk2編) ◆バベルタワー 天にとどく道 事態が一段落した後、フェイたちは、ジェシーが今まで何を目的に動いていたのかを聞く事になった。 ジェシーはソラリスにいた時、M マラーク 計画について探りを入れていた。計画を進行させる為に地上人が 実験台に使われ、ウェルスになっていた事、計画の中心となるニコラと言う科学者が、真相を試作ギアに移し、 マリアと言う娘と共にソラリスを脱出した事を突き止め、その後地上に降りてその行方を追っていたのだと言う。 現在、その少女はシェバトにいるらしいのだが、連絡のつけ方すらわからないと、ジェシーは語った。 その時、『教会』本部で助けられ、ユグドラで治療を受けていたシェバト工作員が現れた。彼女も、虜囚と なっていた為通信手段は無かったが、その昔シェバトがアクヴィの中心に立つバベルタワーの頂上にあった事 から、そのバベルタワーに行けば何か連絡手段があるかもしれないと言った。 ほかに手段もない彼らは、ダメでもともと、バベルタワーに向かう事にした。 アクヴィ群島の中心にそびえるバベルタワー。高さが5kmにも及ぶこの塔は、いつ建造されたのかすら定かに なっていない。通常は『教会』が調査をするため入り口を封鎖しているのだが、先だっての本部壊滅により、 警備がなくなっていた。 フェイたちはギアに乗り、その塔へ入った。塔の内部は広大な吹き抜けになっており、フェイたちは壁から 壁へつながる足場を渡りながら上を目指した。しばらく上ると、壁に張り付くように止まっている輸送列車 のような物があった。その列車はギアでそのまま乗れるほど巨大で、現在もエネルギーが生きており、その 列車に乗ってフェイたちは一気に塔を駆け上った。 やがて外壁に出ると、列車前方の線路に向けて砲撃があった。ラムサス艦からの攻撃だった。 列車を離脱し、外壁に飛び出たバルコニーでラムサスを迎え撃ったフェイたちは、これを撃破した。 ラムサス艦がラムサスの撤退を援護すべく砲撃を開始した時、遥か上空からラムサス艦へ向けて光の矢が 降り注いだ。それがシェバトからの攻撃だと知り、ラムサス艦は回頭、急速離脱した。 思わぬ援護に戸惑いながらも、彼らは頂上へ向かう為、壁に巨大な鏡があるそのバルコニーを後にした。 再び塔内部に入った彼らは、コントロールルームのような場所を見つけた。通信設備は生きているようだが、 シェバトとの交信は出来なかった。その他に何かないかと調査をするも、結局外壁の鏡を操作する事ぐらい しか解らず、彼らはその場を後にした。 さらに先に進んだ彼らは、石材で作られた家屋が並ぶ居住区のような場所に出た。しかし、奇妙な事に、 それらの家屋は塔の外壁を地面にして横に建てられていた。 その家屋を足場にさらに上っていくと、ついにバベルタワーの頂上に出た。しかし、そこには通信設備の様な ものはなく、ただ空が広がっているだけだった。 辺りを見回していたフェイたちに突然声が掛かった。見ると、空からカラミティに似た大型ギアが降りてきた。 ギアの頭には少女が乗っており、少女はフェイたちに退去を命じて襲い掛かった。 フェイたちが少女のギアの攻撃力に翻弄されながら抗戦していると、空から別の声が聞こえ、少女は矛を収めた。 彼女はフェイたちを試していたのだ。 フェイたちは、彼女に案内されてシェバトに入った。 彼らがシェバトに入ったと言う情報は、すぐさまガゼルの法院の耳にも入った。 「ラムサスめ、シェバトとの接触を許すとは。あそこには アニマの器 があるはずだ」 「我らの準備が整う前に同調されては厄介だ。我らの拠り代の型、合わなければ意味がない」 「シェバトごと葬るか? アニムスは他にもいる」 「シェバトのゲートはどうする?」 「なに、アハツェンの重力子砲で中和すればよい。再教育もすんだ。いけるよ」 「それは楽しみだ」 ◆天空のシェバト 風の声を聴け シェバトのドック。ギアから降りたフェイたちは、少女に案内される事になった。 少女はマリア・バルタザールと言った。アヴェの地下鍾乳洞のバルタザール爺さんは、彼女の祖父だという。 マリアに案内される一行は、途中彼女のギア、カラミティの後継機だと言うゼプツェンの格納庫に寄った。 ゼプツェンを見上げながら、マリアは父の事を語りだした。 マリア「このゼプツェンは、父さんが開発したものです。父は、私を盾に取られて、無理やり研究をさせられ ていたんです。でも、私には悲しい顔は決して見せなかった。ゼプツェンが守ってくれるよって。 五年前のあの日、父さんは私を庇って一人取り残されて…。父さんの笑顔を取り戻さなきゃ…… 。 ……父さんはいつかきっと助け出してみせる!」 その後、フェイたちは彼女の案内で王宮へ向かった。王宮の女王の間の前には、ワイズマンが待っていた。 彼に促され、フェイたちは女王ゼファーに謁見した。 女王は、一見すると少女のように見えるが、522歳になると言う。ある男に特殊な延命処置を施され、世界が 終わる日まで強制的に生きながらえさせられているのだと言う。これは償いなのです、女王はそういった。 さらに彼女は、ワイズマンにある男を監視させ、その傍ら、地上でシェバトの助けになってくれる者を探して 貰っていた事、500年前地上人の解放をかけてソラリスと戦い、抵抗を続けていた事を話し、フェイたちに 協力を頼んだ。 彼女は、フェイたちに考える時間を与え、宮殿で休ませる事にした。 女王「ことにエリィ。貴方は自分の家族や仲間と戦う事になるかも知れません。相当の覚悟が必要ですよ」 エリィ「……はい、承知してます」 仲間達とわかれ、王宮内を見て回っていたフェイは、シタンの妻ユイと娘ミドリに会った。もともと彼女は シェバトの生まれであり、ラハン村壊滅の後、生き残った村人達は彼女の案内でシェバトに移ったのだという。 彼女と別れ、さらに王宮内を回っていたフェイは、バルコニーでたそがれるマリアを見つけた。 マリア「戦う理由は、自分で見つけ、自分のものにしなければいけない。お爺ちゃんはそう言ってました。 このシェバトに来て三年。お爺ちゃんも女王様も、ひとりでソラリスに行ってはダメだって。でも、 ゼプツェンなら、どんな相手にも負けないのに。こうしている間にも父さんは……」 ◆侵入者! 格納庫で待つものは 翌朝。心を決めた彼らは、女王に謁見し、シェバトに協力すると伝えた。 女王が満足げに頷いた時、シェバトに衝撃があった。何者かがドックに侵入、ゲート・ジェネレーターの子機を 爆破したのだ。伝令の情報によると、侵入者はユグドラシル収容の為、ゲートを消した隙を突いて侵入、子機を 爆破し、ゼプツェンの格納庫に逃げたと言う。 フェイたちはマリアと共に格納庫へ向かった。格納庫で待っていたのは、ドミニアだった。 ゼプツェンの上に立つドミニアは、マリアを見ると、彼女の父ニコラが何の研究をしていたか語りだした。 ドミニア「ニコラは脳神経機械学の天才。うちの科学者たちはニコラに人と機械を一体化、つまり、生きた 人の脳とギアとをダイレクトに接続させる生体兵器を開発させたのさ。ニコラはそれを完成させた。 彼は地上人にとって地獄の門を開けちまったってわけさ。捕らえられた地上人はウェルスにされ、 合格したものがギアの制御回路として生まれ変わる。その試作機がこのゼプツェンだ。そして、この ゼプツェンの神経回路には……」 彼女がそこまで言った時、どこからともなくジェシーが現れ、話を遮った。 彼に銃口を向けられたドミニアは、不敵な笑いを残して去った。 ドミニアの話に落ち込むマリア。だが、感傷に浸る間もなく、ソラリスの侵攻は続いていた。 ◆シェバト襲撃! 父の遺産 ソラリスの軍勢は、シェバトのゲートの出力が落ちた隙を付き、ジェネレーターの四つの親機を狙っている。 女王の間に集まったフェイたちは、戦闘経験のないシェバトの兵に代わって迎撃に向かうことになった。 ソラリス軍の情報を整理していたシタンは、正体不明の大型ギアの存在に気が付いた。そのギアがスクリーンに 映し出されると、マリアが声を上げた。ゼプツェンの二号機にあたるアハツェンだった。設計図は父が燃やした はず、と困惑する彼女は、そのアハツェンからニコラの声が流れた事でさらに動揺した。 ニコラ「ネズミどもが逃げ込んだらしいな。ちょうど良い。シェバトごと叩き潰してくれる!」 動揺するマリアを女王が一喝し、シタンは作戦を全員に伝えた。四つのジェネレーターを各個に防衛するのだ。 即座に迎撃に出たフェイたちは、獅子奮迅の活躍で侵攻部隊を退けた。 しかし、アハツェンから放たれた対ギア用サイコ・ジャマーを受け、フェイたちのギアは沈黙してしまう。 この事態に際し、女王の間に残っていたシタンは、マリアにゼプツェンで出撃するよう頼んだ。アハツェンの 兄弟機であるゼプツェンなら、ジャマーに対するシールが搭載されているはずだと考えたのだ。 しかし、父と戦う事はできないと、彼女はそれを拒んだ。 すると、なぜか付いてきていたチュチュが迎撃に出ると言う。制止も聞かず出て行くチュチュ。 後を追ってバルコニーに出たマリアは、チュチュが巨大化する現場を目撃してしまう。 巨大化したチュチュはアハツェン相手に善戦。しかし、アハツェンの主砲に打ちのめされてしまう。 それを呆然と見ているマリアの所にミドリが現れた。 ミドリ「呼んでる……、お父さん……」 マリア「えっ? ……! ゼプツェン!!」 彼女は走り出した。格納庫へ駆け込んだマリアは、ゼプツェンを発進させた。 アハツェンと対峙するマリア。その彼女にニコラが語りかける。 ニコラ「マリア、私と共に来い。愚かな者と滅びる事はない。これからはずっと一緒にいてあげるよ」 ニコラの呼びかけにひるむマリア。しかし、ゼプツェンがアハツェンを攻撃した。それを見たマリアは決断した。 マリア「アハツェン……あなたを倒します!」 超重量級のバトルを繰り広げるゼプツェンとアハツェン。やがて、再びニコラが語りかけた。 ニコラ「今から遠隔操作でゼプツェンのグラビトン砲の封印を外す。ニコラはもういない。ソラリスの洗脳を 受ける前、アハツェンにはゼプツェンと共鳴して発動する良心回路を組み込んだ。このメッセージは そこからのものだ。戦闘中に私のデータは全てゼプツェンに転送した。体は失っても、心はマリア、 お前と共にある。これからもずっとな……」 ゼプツェンのグラビトン砲が発動した。それを避けもせずに受けて、アハツェンは消滅した。 ソラリスの侵攻が落ち着いた頃、フェイたちは女王の間に集まっていた。 真の自由を得るため、ソラリスを倒すと心に決めた彼らに、女王はソラリスが三つのゲートによって隠されて いる事を教え、そのゲートを取り除かなければソラリスにはいけないと言った。 ゲートの一つは『教会』本部の地下、ギアでも潜れない深さにあり、他の二つは場所が分からないと言う。 さらに女王は、アヴェ軍がニサンに侵攻したという情報を伝えた。目的はニサンに眠るファティマの至宝、 つまりロニ・ファティマの残したギア・バーラー。 それを聞いてバルトは憤慨し、すぐにニサンへ向かおうと提案、フェイたちもそれに同意した。 出発前、彼らはワイズマンの師であるガスパールに教えを受け、新たな力を身につけた。 ガスパールは、女王に会うと、私はあの愚行を繰り返さぬように監視に来たのです、そう語った。 その頃、ドックで異変が起こっていた。地下にあるギア・バーラーがエリィと同調して起動したのだ。 それを聞いた女王とガスパールは、やはり、と頷いた。それを受けて傍にいたワイズマンが言った。 ワイズマン「しかし、あの娘は乗ろうとはしない。無意識に気づいてるのです、わが身に内在する存在に」 女王「彼女も……ソフィアもそうだったのでしょうか……。……すみません」 ワイズマン「いえ、私は 彼 そのものではありませんから……」 こうしてフェイたちは、マリアを新たな戦力に加え、ニサンへ向かった。 ゲート編 ◆砂漠の王 守れ、ニサンの微笑み シェバトの技術によって飛行ユニットを取り付けられたユグドラシルは、飛行船ユグドラシルIII世となった。 そのユグドラシルで一路、ニサンに向かったフェイたちは、法王府の街中に駐留していたシャーカーンの兵を 一掃し、街を開放した。だが、街に住民の姿はなく、修道院にシスターが残っているのみだった。 そのシスターたちのまとめ役であるアグネスに、フェイたちはこれまでの事情を聞く事になった。 以前バルトたちが出発してから、町の住民の大半が、歴代のアヴェ国王と大教母が祭られている大霊廟に 避難したのだが、シャーカーンはその大霊廟にあるファティマの至宝を狙っているとのことだった。 アグネスは、彼が大霊廟の封印を、マルーの母である前大教母の亡骸を使って解こうとしていると伝えた。 バルトの話によると、ファティマの碧玉とはアヴェとニサンの王家の血筋の者の網膜の事であり、大霊廟の 入り口は網膜パターンを照合する事で開くという。シャーカーンは、遺体の網膜を使うつもりなのだ。 人質を取られてやむなく喋ってしまったと謝るアグネスをなだめ、バルトはすぐにも霊廟へ向かおうとした。 そこで、シグルドが提案をした。ニサン侵攻で手薄になったブレイダブリクを別部隊が攻め、奪還する事で、 シャーカーンの逃げ場を奪うと言うのだ。それをバルトは了承。作戦は即座に開始された。 バルトたちは修道院の北にあると言う霊廟へ、マルーを伴って向かった。 入り口から長い階段をくだり、大きな広間に出ると、そこには避難していた住民たちがいた。 バルトは彼らに、街は開放され王都も間もなく奪還されると伝え、街へと帰した。 住民らが立ち去った後、バルトたちは、広間の壁際に祭られた墓を調べたが、荒らされた形跡は無かった。 シャーカーンの手が伸びる前にと、彼らは広間中央のエレベーターからさらに地下に降りた。 エレベーターで降りた先は、まるで軍事要塞のように近代的だった。薄暗い廊下を進んでいくと、閉ざされた 扉の前にコンソールがある部屋に行き当たった。そのコンソールが、網膜パターンの読取装置だった。 片目が潰れているバルトに代わり、マルーが瞳を読み取らせた。開いた扉の先に進み、エレベーターでさらに 下層に下りた彼らは、また読取装置に行き当たった。 開錠された扉の先は広大な格納庫になっており、そこにギア・バーラー、E・アンドヴァリはあった。 ついに至宝を発見した彼らは、次にアンドヴァリを地上に出す方法を探した。すると、格納庫とは別の区画に、 ブリッヂらしき所を発見、早速コンソールを操作してみると、建物は大地を割って空へと浮かび上がった。 この要塞の望遠カメラは、はるか遠くバベルタワーまでスクリーンに鮮明に映し出した。気を良くしたバルトは、 アンドヴァリを出すため天井をあけようとしたが、何を間違ったかビーム砲を撃ってしまう。 フェイたちの冷たい視線をかわすように碧玉要塞とこの要塞を名付け、バルトは改めて天井をあけた。 すると、それを待っていたかのように、天井からシャーカーンが従者と共にギアで侵入してきた。 シャーカーンは、バルトたちがこの要塞の封印を解くのを待っていたのだ。 バルトは歯噛みし、侵入してきた兵を蹴散らしながら格納庫に向かった。彼らは格納庫前の通路でシャーカーンと 対峙したが、兵に囲まれ、身動きが出来なくなってしまう。その中で、兵の一瞬の隙を付いてマルーが包囲を 脱出、格納庫へと向かった。 シャーカーンがマルーを追って行った時、シグルドとシタンが現れた。王都奪還を他の者に任せ、加勢に来たのだ。 彼らの力を借りて兵を一蹴し、格納庫へ向かったバルトたちだったが、扉がロックされてしまい、片目のバルト では扉を開ける事が出来ない。焦るバルトをいなし、シグルドが自分の片目を読み込ませ、ロックを解除した。 その事に疑問を持つ間もなく、格納庫に向かったバルトは、アンドヴァリに乗って応戦するマルーを見た。 銃弾が飛び交う中、アンドヴァリに乗り込んだ彼は、傷ついたマルーと操縦を交代、敵機を撃破した。 彼の戦いぶりに劣勢を感じたシャーカーンは、あっさりとその場を離脱した。 マルーの手当ての為にシャーカーン追撃を諦め、バルトは気を失った彼女をギアから下ろした。 彼女に応急処置を施しながら、シタンは、このギア・バーラーが、搭乗者の精神波と同調して動くのでは ないかと推測した。マルーがこの機を動かせたのも、バルトの力になろうと言う、彼女の必死な思いがあった こその事だったのだ。 ◆第一のゲート マルーの祈り アンドヴァリを要塞から出した後、彼らは法王府の議事堂に集まっていた。 王都の部隊は既に王城へ入ったとの事だった。王都からの情報では、ニサンの西の大洞窟にゲートがあり、 そこにシャーカーンが向かったと言う。バルトたちはすぐさまその洞窟へ急行した。 洞窟の奥には大きな扉があり、それを開いてさらに進むと、巨大な空洞の中に造られたゲート発生装置があった。 その前でシャーカーンが待っていた。バルトたちが臨戦態勢を取ったとき、どこからともなくグラーフが現れ、 「我が(ry」と言ってシャーカーンに力を与えて去っていった。 新たな力を得、さらにゲートのエネルギーをも吸収したシャーカーンの攻撃は激烈を極めたが、バルトには アンドヴァリがあった。アヴェの危機を救うと言う伝説のギア・バーラーによって、シャーカーンは討たれた。 アヴェ国民の歓呼の中、バルトは王城のバルコニーに立った。彼は集まった国民にアヴェの奪還を宣言。 さらに、亡き先王の遺言状に従い、王制を廃しアヴェ全土を共和国家とすることを宣言した。 その夜。バルトは、メイソン卿から昔話を聞きだした。先王はバルトの母親と知り合う以前、別の女性と恋仲に あったが、その女性は、ある日突然行方知れずになり、噂ではその後子供を生んだと言う。 その話を聞いたあと、バルトはシグルドに会いに行った。彼の母親は、自分が短命であるのを知り、死に別れる ことを恐れて当時の恋人の下を去ったのだと言う。シグルドが生まれた事は、父親には知らされなかった。 バルト「親父の遺言には続きがあったんだ。お前が得た者は兄と分かち合いなさい。お前と兄の得たものは、 全ての民と分かち合いなさい……ってさ。それだけ言っておきたかったんだ。じゃ、おやすみ」 ◆第二のゲート バベルの輝きは 翌日、王城の会議室にフェイたちが集まっていた。議題は、第二のゲートについて。 『教会』の地下にあるゲートをどうやって破壊するかが話し合われていた。その結果、以下の作戦が立てられた。 碧玉要塞の強力なビーム砲。それを、同じ文明が造ったものと思われるバベルタワーの鏡で反射させ、『教会』の 地下に撃ち込む。一見荒唐無稽に思えるが、他に良案もなく、彼らはこの作戦を実行することになった。 その頃、ソラリスではラムサスとミァンがガゼルの法院の前に立たされていた。 ラムサスはガゼルから、フェイたちとシェバトの接触を許した事を厳しく叱責されていた。 「塵め。ラムズたちはゲートに向かうはずだ。今度こそ、その 本来の力 見せてもらいたいものだ」 ガゼルの法院が消えると、ラムサスは艦に戻ろうとした。しかし、先の戦闘の傷が癒えておらず、動ける状態 ではない。見かねて、エレメンツの四人が出撃を願い出た。敬愛するラムサスの名誉の為に。 バベルタワーにフェイ、エリィ、シタンの三人が来ていた。彼らはここで、碧玉要塞から放たれたビームを 反射させる鏡を操作するのだ。一方、他のメンバーは、碧玉要塞で準備を開始していた。 その彼らに、エレメンツが襲い掛かった。碧玉要塞には、専用ギア、スカイギーン、グランガオンに乗った トロネとセラフィータ。バベルタワーにはブレードガッシュ、マリンバッシャーに乗ったドミニアとケルビナ。 フェイたちはエレメンツを迎撃しつつ、作戦を実行、第一射は外したものの、二射目は命中させた。 ゲートが破壊された事を知ったエレメンツは撤退。フェイたちは見事作戦を完遂した。 ◆暗き海の底 第三のゲート ガゼルの法院が、カレルレンと協議をしている。 「ゲートの残りは一つ。このエテメンアンキの市民に動揺が広がっておる」 カレルレン「衆愚など天帝の言葉で何とでもなる。天帝の肉体も限界に来ているが、ダミーを使えばよい。 それよりも、メモリーキューブから面白い情報が得られた。あのラムズたちの中に 母 がいる」 「我らの 母 が他にもいると言うのか。なぜ今までそれに気づかなかった」 カレルレン「 母 の仮面 ペルソナ は一定の年齢に達せねば現れん。そしてそれは 対存在 の可能性が高い」 「 対存在 ……。あのニサンの女のか……」 カレルレン「確認の為に、ゼボイムから回収した エメラダ を使う。 母 が言うには、あのナノマシン群体は、 ゼボイム時代の 接触者 と 対存在 が創ったらしい」 「 母 の記憶か……」 カレルレン「うむ。何らかの反応が得られるはずだ。何も無くても、あれの調査は終わってる。もう必要ない」 三つのゲートは、ソラリスを中心に正三角形の頂点にそれぞれ配置されている。その情報と、エリィたち ソラリス組の情報を総合して考えた結果、三つ目のゲートはイグニスの南の深海にある事がわかった。 海中と言えば、タムズ。という事で、フェイたちはタムズの艦長の協力を得て、第三のゲートへ向かった。 ゲート発生機の前には、二機のギアが待っていた。エメラダ専用ギア、クレスケンスと、カレルレンの従者、 人機融合を果たしたケンレンだった。 フェイたちに襲い掛かるクレスケンス。ケンレンはその成り行きを見守っていた。 やがて、エメラダが苦しみ始めた。インプリンティングの発露。ケンレンはそう確認し、その場を去った。 ケンレン「その娘は進呈します。ご自由にお使い下さい。なにせあなたの 娘 ですから」 ユグドラシルに戻るとエメラダは、フェイを「キム」と呼んでまとわり付いた。父親だと思っているらしい。 エメラダ「キム! ホントにいたんだ! ずっと夢の中の人かと思ってた!聞いてキム! あたし ずっと昔の夢を見てたんだ。キムが今より大人で、あたしはなにか透明な筒の中にいて… キムはふわふわした白いお菓子にローソクを立てて……。なにやってるのか解らなかったけど、 あたしがここから出るのを楽しみにしてるって解った。でも、いつの間にか誰もいなくなって、 体もなくなって、長い間一人きりで……もういなくならないでね、フェイのキム!」 その頃、ユグドラシルにシェバトから、ソラリス発見の報が入っていた。ユグドラシルは一路シェバトに向かった。 ソラリス編 目次(潜入~研究所へ カレルレン研究所 ソラリス脱出~Disk1終了) ◆天上の楽園 ソラリス潜入! ソラリスのゲートは、本土にある発生機によって完全には消えていなかった。しかしながら、その効力は かなり弱まっており、ゼプツェンのグラビトン砲でわずかにこじ開ける事ができるとの事だった。 その一瞬にフェイ、シタン、エリィの先発隊が侵入、他のメンバーは別ルートから侵入する事になった。 一度解散し、みなが準備を整える中、シタンは妻ユイから、シタン自らが封印した剣を受け取った。 これからの戦いは、負ける事が許されない戦いなのだ。そう自分に律し、シタンは妻と別れた。 その後、フェイたちはゼプツェンに乗ってソラリスに向かった。なぜかハマーも一緒に。 フェイたち三人が最初に降り立ったのは、地上から上がってきた物資を集配する所のようだった。 とりあえず情報収集をする事になり、輸送用のコンテナを調べていたフェイだったが、突然そのコンテナが 動き出し、どこかへ運ばれてしまった。 着いた先は居住区のような所だった。第3級市民層。通称働き蜂と呼ばれる地上人たちが住んでいる区域だ。 ここに住んでいるものは、アレンジと呼ばれる洗脳を受け、昔の記憶もなくして奴隷のように働いていた。 後を追ってきたエリィと合流したフェイは、とりあえずこの区画を出る事にした。シタンとはまだはぐれた ままだったが、彼はこの街に詳しい為いずれ合流できるだろうとの事だった。 第3級市民層と第2級市民層を繋ぐ唯一の通路、監視塔。二人はそのセキュリティをエリィのIDを使って抜けた。 そこでフェイは、ソラリス市民の生活を見ることになる。隅々まで清掃の行き届いた道。その道をホバーカー が走っている。市民は高度に発達した科学技術により病に悩まされる事もなく、何不自由なく暮らしていた。 戦に乱れる地上と比べると、まさしく天上の楽園といった趣である。 ホログラフで彩られた煌びやかな街を歩いていた二人は、アラボト広場で軍の観艦式が行われると知った。 ゲートの消失による動揺を抑えるために、何らかの情報が提示される。そう考えた二人は広場に向かった。 空中戦艦が艦隊飛行を披露するなか、天帝が壇上に現れ、市民に語りかけた。 天帝「地上ゲートの消失は、前もって計画されていた事である。 福音の劫 に向け、我々は神の眠る地、 マハノン への扉を開いたのだ。愚かなる獣ラムズに我らの力を知らしめようぞ」 天帝の演説を魅入られたように聞いていたエリィは、フェイに呼ばれて我に返った。 壇上では、天帝の次に、カレルレンが演説を始めた。 カレルレンを見て、フェイはデジャヴを覚えた。そして、彼の古い記憶が揺り起こされる。 500年前のニサンの大聖堂。そこでフェイ、いやラカンはカレルレンに会っていた。 絵の具を取りに帰るというラカンに、カレルレンは護衛を買って出たのだ。当時、既にソラリスとの戦争が 始まっていた。道中、ラカンはカレルレンの変貌を語っていた。冷酷非情な軍人であったカレルレンは、 ソフィアと出会う事で学問に目覚め、人としての心を取り戻したのだった。彼は、メルキオールと言う師の 下について、分子工学を研究していた。ある日、彼は研究が結実したとラカンに嬉しそうに語ったのだった。 この記憶は、明確にフェイが思い起こしたものではない。カレルレンの姿を目にした事により、無意識下で 呼び起こされ、それがフェイにはデジャヴのように感じられたのだった。 そのカレルレンの演説は続いていた。彼はエテメンアンキに侵入した地上人を捕らえたと言った。彼の傍に、 別ルートで潜入していたバルトたちがホログラフで表示された。 カレルレン「古のガゼルを蘇らせる為に、この者たちを明後日、ソイレントシステムにて処分する」 ◆逃避行 なつかしの我が家 カレルレンの言葉を聴き、すぐにも助けに行こうとするフェイと、それを抑えようとするエリィはやがて 口論になり、警備兵に見咎められてしまう。即座に逃げ出した二人は、セキュリティに追われ、下水道に 逃げ込んだ。下水道を抜けた先は第1級市民層だった。出口から歩くと、程なくしてエリィの家に辿り着いた。 家に入ると、母のメディーナが驚いた顔で出迎えた。エリィは行方不明と知らされていたのだ。 一通り言葉を交わした後、エリィたちは彼女の自室へ移動し、一息ついた。シャワーを浴び、落ち着いた所で フェイが彼女の母親の話題を振ると、エリィの顔が曇った。彼女には地上人の乳母がいた。自分の髪の色と 外見がソラリス人のそれと違う事から、エリィは地上人の乳母が実の母親ではないかと思っていたのだ。 重くなった空気を振り払うように、彼女はバルトたちを救い出す手立てを考えようと提案した。 彼女は、自分の父の自室にある端末からソイレントシステムの情報が得られるかも知れないと考えた。 父親エーリッヒの部屋に移動した二人は、ネットワーク端末にエリィの名前を逆から入力したパスワード、 「MYYAHELE」でログイン。検索の結果、第3級市民層のダストシュートからソイレントに入れる事を突き止めた。 その時、エーリッヒとメディーナが部屋に入ってきた。自室にいるフェイを見たエーリッヒは、部屋の電話で 軍警に出動を要請し、フェイに銃を向けた。 エリィ「やめて! フェイは捕らえられた仲間を助けたいだけなの!」 エーリッヒ「エリィ、反逆者がどうなるか知っているだろう? 私はお前の身を案じて……」 エリィ「嘘! お父様は自分の立場が危うくなるのが嫌なだけでしょう!? 私のユーゲント入りを反対したの だって、地上人との間に生まれた私を皆に見せたくなかっただけじゃない!」 エーリッヒ「お前はまだそんな事を……よく母さんの前でそんな……!」 フェイ「やめてくれ! 俺のせいで親子喧嘩なんて…。俺がここから去ればいいだけだ。エリィ、お母さんの 前であんな事言うもんじゃないよ。あの表情は決して他人の物なんかじゃない、そうだろ?」 そう言うと、フェイは部屋から出ようとした。すると、エーリッヒは窓ガラスを銃で割った。 エーリッヒ「たとえ侵入者であっても、娘を守ってくれた事は確かだ。侵入者は逃げた。それで良いだろう」 その場を去ろうとするフェイにエリィは同行しようとしたが、エーリッヒに止められた。 フェイも彼女を抑え、「今度こそ軍を抜けろよ」そう言って立ち去った。 ◆孤独な狼 闇の底をかける エリィの家を出た後、フェイは第2級市民層の監視塔へ向かった。そこではシタンが待っていた。 彼はあの観艦式を映像で見て、フェイの行動を推測し先回りしていたのだ。 二人は、シタンのIDを使って監視塔を抜け、第3級市民層へ向かった。 その頃、エリィは家を抜け出そうとしていた。メディーナとエーリッヒはそんな娘に語りかけた。 メディーナ「貴方の思うようになさい。それと、貴方はまぎれもなく私の子よ」 エーリッヒ「私のIDカードを持って行け。…自分の選んだ道を歩く……それは、人の本来の姿なのだ……」 二人に別れを告げ、エリィが家を出ようとした時、帝室警備隊が彼らの家に現れた。 軍警よりも遥かに地位の高い警備隊が来た事で、エーリッヒはエリィがガゼルの被験体にされるのだと知った。 彼は3級市民への降格を覚悟で警備隊に反抗、エリィを逃がした。 ◆疑惑 死のカレルレン研究所 フェイとシタンの二人は、ダストシュートにいた。扉が開けられず思案に暮れている二人に、エリィが合流した。 エリィは一通り事情を話すと、エーリッヒのIDカードを使って扉を開けた。 ダストシュートから出て少し行くと、レトルトパックや缶詰などが保管されている倉庫のような部屋に出た。 その先がソイレントシステムと呼ばれる施設になっているようだった。 それまで飲まず食わずだったフェイとエリィは、倉庫にあった缶詰の肉で簡単な食事を済ませ、先に進んだ。 そこは、先ほどの缶詰などを作っている工場のようだった。何かの動物がプレス機でミンチにされ、ベルト コンベアに乗って流れていた。 エリィ「いやね……何の肉かしら」 フェイ「作ってる所は見たくないな……」 シタン「待ちなさい。貴方達は先ほどあの缶詰を食べました。それをよく認識して先に進んでください」 彼の言葉に不安を覚えながら、フェイとエリィは先へ進んだ。 そこで二人が見たものは、死んだウェルス、つまりは人が、コンベアで運ばれ、ミンチにされる光景だった。 ショックを受けたフェイの脳裏に幼い頃の記憶がフラッシュバックした。 どこかの研究室の寝台に寝かされた彼。ガラスの向こうでは彼の母が冷たい目で彼を見ていた。 口を押さえうずくまるエリィ、へたり込むフェイ。シタンが淡々と語った。 シタン「ソイレントシステム。ソラリスの生体実験場とその処理施設。そして刻印 リミッター (註1)維持の 為の食料、薬品の生産施設。アクヴィのウェルスもここで造られたのです。エリィ。ドミニアがなぜ 貴方を憎むのか。その答えがここです。彼女の祖国エルルの人々は、その能力の特異性故、M計画… つまり、ウェルスの母体とされていた。エーリッヒ卿は以前この施設の総括官であり、ニコラと共に 研究に携わっていました。もちろん、常に良心の呵責に悩まされていた。だから出来うる限り集めら れた地上人を3級市民として保護し、そして身を退いたのです」 ショックを受けるエリィとフェイを促し、シタンは先へ進んだ。 工場を抜けると、建物の雰囲気は研究所のそれへと変わった。奥へ進むにつれ、様々な施設を彼らは見る事に なる。人をウェルスへと変える現場、ウェルスに変えられた人々が入れられている檻、巨大なウェルスの サンプルの保管庫、メモリーキューブが集められた部屋。そしてある場所では、通常の3倍(!?)はあろうかと 言うギア・バーラーを発見した。 やがて彼らは、P4と表示された扉の前に来た。そのロックを難なく解除するシタン。 フェイは彼に、この施設について尋ねた。 シタン「元々ここは、原初の刻より生き続ける御方、天帝を頂点とするガゼルの法院の延命研究の施設だった。 原初の刻。つまり一万年前、地上にヒトが生まれた。その最初のヒトが天帝と12人のガゼルなのです」 エリィ「そんな……一万年も生きる人間なんて……」 シタン「もちろん、それは天帝一人。彼は死ねない運命にあるのです。だがガゼルの運命は違った。500年前の 地上との戦争で、彼らは肉体を失ってしまったのです。現在ソラリスを統治してるガゼルは、メモリー バンク上に存在するデータ。肉体も魂もない単なる数字の羅列に過ぎない。崩壊の日(註2)の後、肉体に 固執する彼らは自らに相応しい肉体を創る為にソイレントシステムの一つをエテメンアンキに写した。 その後、ここは民意統制用の薬品や生物兵器の研究にも使われるようになった。 我々が何気なく使っていたメモリーキューブも、ガゼルの肉体復活の為に地上人のデータを収集する 目的で設置されたものなのです。 フェイ「さっきの工場で分解されてたウェルスたちも……」 シタン「使用済みの出し殻の再利用といったところでしょう」 思いもよらない話に、フェイたちはショックを隠せなかった。 エリィ「ちょっと待って。おかしいわ。なぜ先生(シタン)がそんな事を知ってるんですか? そんな事、軍や 政府の要人でも知らない事なのに。M計画の真相を当のマリアよりも詳しく知ってるなんて……。 もっと早く気づくべきだった。先生……貴方は何者なんですか!?」 その時、突然辺りが暗闇に閉ざされた。 気がつくと、フェイは周囲をスクリーンに囲まれた部屋で、拘束具をつけられていた。 スクリーンに、研究室の寝台に寝かされたバルトたちが映された。正面のスクリーンには、ガゼルの法院を 背にしたシタンの姿が。 「この男はソラリス守護天使が一人、ヒュウガ・リクドウ。天帝の命を受け、お前を監視していた。そして お前に引き寄せられるであろう、我らが アニムス となりうる者を取捨選択、ここまで導いてきたのだ。 アニムス は我らの復活に欠かせぬもの。この者たちは我らの肉体……拠り代。ただそれだけの存在……」 フェイ「本当なのか先生! こいつらの言ってることは!!」 シタン「この三年間、私は貴方の傍にいた。見極めねばならなかった、我々の仇となるかどうかを……」 フェイ「仇……?」 「お前は我らにとって危険な存在。もっとも、監視を命じたのは天帝だ。我々はお前の消去を目論んだが、 悉く失敗した。それでも アニムス は手中に出来た。ヒュウガは良く働いてくれたよ」 フェイ「こいつらと組んで俺達を……。何が目的だ! お前達はこの世界を既に手中にしているはずだ!」 「我らが目的は神の復活。ヒトが地に満ちたとき、神とマハノンは目覚める」 フェイ「天空の楽園マハノン……。地に墜ちたと言う……?」 「我らの方舟……その中央ブロック マハノン 。神の封印されし場所。そこは知恵の源。その知恵を使い、 目覚めた神を復活させ、神と我らを大宇宙へと運ぶ 方舟 を建造するのだ」 「我らが大宇宙に君臨するための軍団、天使 マラーク の創造。そのためのM計画……」 「我々ヒトは、はるか昔、他の天体からこの惑星へ来た異星の生命体なのだ。我らは新たな アニムス を得、 神と一つとなりて再び星空へと還る。これは原初より運命られし事。我々の存在意義そのものなのだ」 「我らは神より大宇宙に君臨する権利を与えられた。福音の劫までに神の復活がなされぬ場合、我らは滅び なければならぬ。だが、 アニムス を得、我らの復活は約束された。後は神の復活と……」 スクリーンにカレルレンの姿が映し出された。 カレルレン「この者の目覚めを待つだけ……」 彼の背後には、寝台に寝かされたエリィがいた。 カレルレンの私研究室。 目を覚ましたエリィに、カレルレンは語りかけた。 カレルレン「以前君が起した事件。原因はドライブによる力の暴走ではない。 君の中に眠るもう一人の君の 一時的な目覚め によって起こったことだ。……これが何か解るかね。ナノマシンの一つ、アセンブラ と言って、分子や原子を解体、再構築できる機械なのだ。ゼボイムで発見したあの娘を解析する事で、 ここまで小さく精巧に作る事が出来た。従来のナノマシンでは、遺伝子の組み換えは行えても、二重 螺旋の空隙部分…イントロンに隠された情報まではわからなかった。しかし、新しいナノマシンは、 容易くそれを見つけてくれた。本来あるべきではない情報をね。まもなくその結果が出る」 彼のデスクのスクリーンに解析結果が表示された。 カレルレン「ふむ。確かに類似波形を描いている。そして……おお、ウロボロス環! やはりそうか、これで ミァン、そしてラカンの動き……全て説明が付く。エレハイム(エリィ)……君が 母 だったのだな」 エリィ「母……?」 カレルレン「これは君の遺伝子の、エクソン置換前の空隙……。本来は情報の存在し得ないイントロンを 概念化したものだ。この環は、 ある特別な存在 にしか存在し得ない情報だ。ウロボロス…大母とも 言われるこの概念の蛇が、自ら銜えたその尾を放せばどうなるか……君は興味がないか?」 エリィ「……」 カレルレン「エレハイム、君は美しい。 あの頃 と少しも変わっていない。 もう一人 のラカンと同様に」 註1・・・500年前の大戦後、地上人の反乱を恐れたガゼルが、カレルレンの分子工学技術を用い、遺伝子 レベルで人々に組み込まれた精神と肉体の抑制装置。ソラリス人にも組み込まれている。 註2・・・500年前の大戦末期、突然現れたディアボロスと言う謎の第三勢力によって、地上、ソラリスの 区別なく、世界の人口は98%が失われた。その出来事を後に人々がこう呼んだ。 ◆脱出! 誰がために君は泣く フェイの拘束されている部屋にシタンが入ってきた。シタンに怒りをぶつけるフェイ。だが、拘束具は彼の 神経の伝達を物理的に止めているため、彼は身動き一つ取れなかった。 シタンは、フェイを言葉で責め続けた。 シタン「青臭い理想論など、現実の前では何の力もありません。人はより大きな力に依存して生きている方が いいのです。自分は独立した個人だ、と言う幻想だけを持って生きられる。なんと楽な事じゃないですか。 抵抗したところでむなしいだけです。辛いだけです。抵抗した結果が今のあなたの姿です。友人達を 助ける事も出来ず、エリィさえも守れない。実に無力だ、貴方は。どうする事も出来ないんだ」 フェイ「やめろ……やめて……くれ……」 やがてフェイが静かになった。それを確認したシタンは、ため息混じりに言った。 シタン「これでゆっくり話が出来ますね……イド…」 カレルレンの私研究室。寝台に拘束されたエリィは、一人考え込んでいた。 そこへラムサスが入ってきた。彼は狂気に犯された目で、エリィにフェイの居場所を詰問した。 その答えが得られぬうちに、彼は目を爛々と光らせ「フェイめ…見ていろ…」そう言って部屋を出て行った。 フェイが拘束されていた部屋。拘束を解かれたフェイが目を覚ますと、シタンとバルトたちがいた。 シタンに殴りかかろうとするフェイを押しとどめ、バルトが事情を説明した。 バルトたちの体に刻まれたリミッター。それを外すため、シタンは現時点で唯一処置が可能なこの研究所に 彼らを連れてきたかったのだという。さらに、ソラリスが何をしているのか、何をしようとしているのかを、 フェイたちは知るべきと考えたのだ。それ以外にもう一つ目的があったのだが、それは後々という事になった。 ともかく、彼らは行動を開始した。フェイたちはエリィを救出に、シタンは最後のゲートの破壊に向かった。 フェイたちが首尾よくエリィを連れ出した頃、シタンはゲート・ジェネレーターでジェシーと合流した。 彼らが爆薬を仕掛け終わる頃、ラムサスが彼らの下に現れた。裏切り者、彼はそう言った。 シタン「裏切ったわけではない。私達は立つ場所が違うだけです。私はフェイ達といようと決めたのです」 ラムサス「貴様もか…! フェイフェイフェイ、どいつもこいつもフェイフェイ! 奴だけは俺のこの手で……。 その奴の下に行こうとする貴様らは敵だ! 俺のもの を奪う敵だっ! 敵だっ! 敵だっ!」 彼の異常な言動に呆れたジェシーは、シタンを促してその場を去った。爆薬がジェネレーターに火をつけた。 ラムサス「この裏切り者ぉぉぉぉぉっ!!」 火に巻かれながら、彼は絶叫した。 ソラリスを脱出するため、フェイたちは格納庫に向かっていた。ハマーが連れてきたメディーナも、一行に 同行している。エーリッヒは、一足先に脱出手段を確保するために格納庫に向かった。 合流ポイントになっている格納庫前の陸橋。そこで合流した彼らは、格納庫へ向かおうとした。 だが、エリィの悲鳴が彼らの足を止めた。ハマーがエリィを羽交い絞めにして銃を突きつけていた。 ハマー「エリィさんは戻ってもらうっす! カレルレンって人と約束したっすよ、エリィさんを連れて行けば 変えないで くれるって……」 リコ「ハマー! てめえ!」 ハマー「俺っちだってホントはこんな事したくないっす。でも、俺っちは 普通 の人間なんっす! フェイの 兄貴たちみたいに 特別 じゃないんす! こうするしかないんすよ!」 泣き顔でそうまくし立てるハマーに、メディーナが歩み寄った。 ハマー「動いちゃダメっす! 止まるっすよ!」 メディーナ「止まりません。わが子の危機ですもの。私はごく 普通 の母親ですから。 普通 だからこそ、 守らなければならないものがあるんです。さ、エリィ、ゆっくりとこっちにいらっしゃい」 ハマー「ダメっす! 行っちゃあダメっす……行っちゃ……ダメっすよぉ……」 彼の銃が火を噴いた。メディーナがゆっくりと倒れていく。ハマーが悲鳴を上げて逃げ出した。 エリィは、物言わぬ母をかき抱いて泣いた。 その時、彼らの下にグラーフが現れた。その傍には、キスレブに現れた覆面の女がいた。 グラーフ「その女は置いていってもらうぞ」 そう言ってにじり寄ってくるグラーフ。しかし、そこへエーリッヒがギアに乗って現れた。 エリィたちの盾になろうとするエーリッヒ。だが、覆面の女のエーテルが、彼のギアに強大な圧力を掛けた。 エーリッヒ「エリィ、自分の信じた道を行け! お前はなんと言おうと、私とメディーナの間に生まれた子だ」 彼のギアが圧壊した。目の前で両親を殺された怒りで、エリィのエーテルが噴出する。 だが、その力も、覆面の女のエーテルに押し戻されてしまう。強大なエーテル波が、エリィたちを襲う。 その中で、フェイだけがエーテルを物ともせずにいた。しかし、彼はそれまでのフェイではなかった。 髪が見る間に赤く染まり、彼はあの赤い長髪の男、イドに変異した。 その頃、ユグドラシルでも異変が起こっていた。ヴェルトールが独りでに起動したのだ。突如動き出した ヴェルトールは、その外装をパージ、変形させ、赤く染まって行った。それはまさしく、アヴェの砂漠で ユグドラシルを沈めた、あの真紅のギアだった。真の姿を現したヴェルトールは、ユグドラシルの隔壁を 突き破って飛び出し、瞬く間にソラリスのイドの下へ到達した。 ソラリス首都、エテメンアンキが、たった一機のギアによって破壊され、墜とされる。 その光景を、シタンたちはユグドラシルから見ていた。爆発に巻き込まれまいと、全速離脱するユグドラに、 ヴェルトールが迫ってきた。バルトたちが混乱する中、エリィは一人、ヴィエルジェで迎撃に出た。 イド「フフ……お前か。殺されにきたのか?」 エリィ「それで貴方の気が済むならそうすればいい」 ヴェルトールの拳がヴィエルジェの腹部を貫いた。エリィはその手を握り締め、叫んだ。 エリィ「お願い! 元のフェイに戻って!」 イドとエリィ、二人のエーテルがぶつかり合い、凄まじい波動が放たれた。 イド「チッ……こいつ…… う…う……エ…リ…… クソッ……ヤツが目覚めた……」 天帝「アーネンエルベ……なせるというのか?」 シタン「もはや管理者は不要だと結論します」 天帝「接触者……仇とならぬと?」 シタン「陛下の仰るとおり、フェイがそうであるならば」 天帝「……ならば託そう……」 シェバト。女王の間に集まったエリィたちに、シタンが事情を説明していた。 シタン「 アーネンエルベ ……。この星に生まれた人々と共に新たな地平へと進む神の人。それは 接触者 の 運命。天帝はフェイをそう呼んでいました。理由までは教えてもらえませんでしたが」 バルト「ヤツは一体何者なんだ?」 シタン「彼はフェイです。そしてイドでもある。エルルを破壊し、ユグドラシルを沈め、リコの部下を……。 彼は多重人格なのです。私が彼の監視を始めて三年、イドの発露は見られませんでした。しかし、 ラハンの事件をきっかけに、その後徐々に発露の回数と時間が多くなっていった。恐らく、グラーフの 影響でしょう。ラハンに来る前、彼はグラーフと共に暗殺者として行動を共にしていました。 私は、イドが正体を知るため、先だってフェイが拘束された時、イドと話をしました」 シタン「実に無力だ、貴方は。どうする事も出来ないんだ」 フェイが意識を失い、イドが現出する。イド「よく分かってるじゃないか。さすがはシタン……いや、先生と呼んでいたか」 シタン「会いたかったですよイド。ところで、フェイは今どうしています?」 イド「 お前達の知っているフェイ は、俺が出ている間は寝ているよ。だから俺の事は何も知らない。ヤツは 俺の支配下にあるからな。俺の記憶を見ることは出来ない。元々ヤツは存在しないフェイ。父親のカーン によって作り出された人格さ。三年前、カーンは、俺の人格を深層意識に封印した。その時にできたのが ヤツだ。臆病者の部屋の間借り人さ」 シタン「臆病者とは?」 イド「本来のフェイ。出来損ないさ。現実から逃げ出し、生きる事を拒絶した情けない奴。虫唾が走るぜ」 シタン「なぜ貴方の心は分かれてしまったんですか?」 イド「思い出話でもしろってのか? 勘違いするな。俺はお前に質問の機会など与えてない。俺がその気に なれば、こんな拘束なぞいつでもぶちやぶれるぞ」 シタン「しかし出来ないでしょう。貴方はフェイを完全には制御できていない。もしエネルギーを使えば 精神的に疲労し、フェイにステージを奪われてしまう。違いますか?」 イド「……よく解ってるじゃないか。確かに俺は……むっ……」 シタン「どうしました?」 イド「貴様に無理やり出されたからヤツが目覚めた。本来なら俺は自分でステージに立てるんだ。だが、 あの女、エリィのせいでそれが果たせない。あの女は……みんな同じだ……だから消してやる…」 シタン「現在のフェイの人格は、イドと言う基礎人格の上に3年前に創られた、下層の模擬人格。だから、 彼にはそれ以前の記憶が無かったんです。さらに、現実の生活を3年しか経験していない彼は未発達で、 そのため突発的な出来事に対処しきれなくなる」 ジェシー「フェイはいつかイドに飲み込まれちまうのか?」 シタン「どうでしょうか。イドが臆病者と呼ぶ、本来のフェイの人格がネックになると思います。イドは その人格を軽蔑しつつ、明らかに恐れていた。イドの表出はフェイではなく、臆病者によって抑制 されているのではないかと。なぜ臆病者が表出しないのか原因はわかりませんが、これが目覚めれば、 分離した人格が元に戻る可能性も出るのではと、私は確信したのです。どうすれば目覚めるのか、 それは解りません。ですが、基本的にフェイの存在が虚ろになるような事がなければ、フェイはフェイで いられる訳です。平穏な場所で暮らせるのが一番ですが、状況がそれを許さないでしょうね……」 その後、シェバトではフェイの処遇を決める会議が開かれた。シェバトの議会は、フェイの力を恐れた。 彼の力が、500年前、ディアボロスを率いて世界を崩壊させたグラーフの力と酷似していたからだ。 決議は下された。カーボナイト凍結。人を生きたまま石にする、シェバトの極刑だった。 その夜、エリィは投獄されたフェイに会いに行った。 フェイ「俺はかつて世界を壊滅させたグラーフの再来だそうだ。グラーフも元はラカンと言う地上人だって」 エリィ「そんなのでまかせよ! ……逃げよう? グラーフや戦いがイドを呼ぶなら、静かな所へ……」 フェイ「ダメだ。戦場から離れたとしても、イドが出ない保証はない。それに……俺はエリィを殺そうと…」 エリィ「イドと戦った私が生きてるのは、多分、どこかでフェイの意識が働いて、すんでのところで外して くれたからだと思うの。……もし、あなたがイドに支配されて、世界中が敵になっても、私だけは、 あなたの傍にいてあげる……。だって…だって…… 一人じゃ寂しいものね 」 二人が格納庫に向かうと、シタンたちが待っていた。彼らは、二人の脱出を助けに来たのだ。ヴィエルジェが 修理中の為、シェバトのギア・バーラーを拝借しようと言うフェイだったが、エリィは激しく拒んだ。結局、 二人はヴェルトールに相乗りする事になった。 朝陽を浴びて飛ぶヴェルトールに、ラムサスのギアが襲い掛かった。カレルレンにより与えられたギア・ バーラーだった。エリィの奪還。それがラムサスの目的のはずだった。しかし、バーラーの凄まじい力に 陶酔した彼は、エリィごとヴェルトールを撃墜してしまった。 ヴェルトールの墜ちた森。重傷を負ったエリィを抱えて歩くフェイを、グラーフが静かに見ていた。 Disk2編 目次(トーラ宅~アニマの器回収 天帝暗殺~メルカバー カーボナイト凍結~エンディング) ◆撃墜!! 大樹海に消えて フェイは夢を見ていた。何人もの 接触者 の生涯。エリィも夢を見ていた。何人もの エリィ の生涯。 二人はその夢を見たことで、それぞれが何をすべきかを掴みかけた。 森の中にひっそりと佇む住居。そこは、バルタザール、ガスパールと並び、シェバト三賢者と称される老人、 トーラ・メルキオールの研究所だった。その研究所のナノリアクター内でフェイとエリィは目覚めた。 三週間前、血まみれで倒れていたフェイとエリィを発見したトーラは二人を連れ帰り、ナノマシンで治療した のだと言う。旧知の間柄であるシタンから二人の事を聞いていた彼は、フェイたちが眠っていた間に、ナノ技術を 用いてイドの発現を抑制する腕輪を開発。バル爺の協力も得て、ヴェルトールにも同様の装置を取り付け、イドの 力だけを任意に解放できる「システム・イド」を完成させた。 目覚めた二人はトーラから、人々に刻まれたリミッターを解除する為のナノマシンを渡された。それを広域に散布 するため、彼らは古代の砲台に向かう事にした。 彼らが出発しようとすると、シェバトの使者が現れてフェイに助力を求めた。アヴェ・キスレブの和平調印式が 行われているシェバトに、ソラリスの機動要塞が接近していたのだ。 掌を返したシェバトの態度にトーラは怒りを露にしたが、フェイは人々を守るためにシェバトへ行く事に。 フェイたちが外へ出ると、シタンとエメラダがおり、事情を聞いた二人は、エリィと共に砲台に向かう事になった。 フェイの出発を見送った後、シタンはエリィに尋ねた。 シタン「いいんですか? フェイの為に戦場から離れ、静かに暮らそうとしてたのに」 エリィ「私、現実から逃げてるって気づいたんです。最初は、フェイなら私の気持ちほ理解してくれるかもって 思ってた。本当に好きだったかどうか……。両親を亡くして自棄になってたのかもしれない……。 だから、一度離れて自分の気持ちを確かめたいんです……」 フェイたちが出発した後、トーラの下にグラーフが現れた。 トーラ「やはり……あの二人をここまで運んだのはお前か。すぐに気づいたよ。あの頃のお前と彼女に 瓜二つなのだからな……ラカン」 ガゼルの法院は、フェイが生きていることを知り、動揺していた。 カレルレン「ヤツには再びラムサスを差し向ける。依存はあるまい」 「娘はどうする。鍵が鳴動を始めておる。神の復活が近づきつつあるのだ」 カレルレン「娘の回収はいつでもできる。今でなくともな……」 ◆反撃開始!! 刻印を打ち破れ シェバトに向かうフェイの前に、ギア・バーラーに乗ったラムサスが立ちふさがった。フェイはシステム・イドを 発動、これを撃破した。「お前さえいなければ」そういい残し、ラムサスは樹海に消えていった。 エリィたちは、ソラリス守護天使時代に搭乗していたギア・パーラー、E・フェンリルを駆るシタンの活躍もあり、 無地に砲台に到達した。射出され、大気中に散布されたナノマシンは増殖しながら世界中に広まっていった。 シェバトに着いたフェイはバルトたちと合流。機動要塞撃破の為に最終兵器を手にするため、キスレブへ。 キスレブ総統府の真の姿。それは、500年前にロニ・ファティマが建造した秘戦艦だった。過去の記録から その事を突き止めた彼らは、数百年ぶりに総統府を起動。ユグドラシルを制御中枢として急襲形態へと変形し、 通常のギアの数十倍はあろうかと言う巨大ギアとなった総統府は、機動要塞をあっさりと撃破したのだった。 和平は成され、地上に平和が訪れた。沸き返る人々を祝福するかのように、エリィたちによって散布された ナノマシンが、光りながら彼らの上に降り注いだ。 異変は突然始まった。人々がウェルス化し始めたのだ。それは刻印 リミッター が外され、本来の能力が開花 したヒトの姿だった。「 普通 の人間がどうなるか」フェイは、ソラリスでのハマーの言葉を思い返していた。 「神の復活が近づいた為の自然発芽か。神の下僕となる者……鍵を使わずともこれほどいたとは」 「発芽しない者は神の肉体に定められし者か、あるいは神に仇なす者か……」 「要所のソイレントを再起動しよう。中途半端な変異。このままでは使い物にならん」 ミァン「あなたによって抑えられていた『鎖』が外れたようね」 カレルレン「問題ない。先の帝都壊滅の際、大気に拡散するようにナノマシンウィルスを仕掛けておいた。 現在のヒトの異形化はその初期段階だ。ウィルスは、発芽した原体をコントロールできるものへと 変化させている。鍵に頼らずに目覚める者は、神本来の肉体を乗っ取る為に必要なのだ」 ミァン「神との同化の際に放たれるトロイの木馬……でも、あの子たちの思惑とは違うわね」 カレルレン「当然だ。『神の方舟』は私のものだ。」 ミァン「私にとってはどちらでもいい事……。確実な方につくだけだから」 世界の至る所に存在するソイレントシステム。それは、ウェルス化した人々を分解、再構築し、生物兵器を 作る装置だった。それが M計画 の真相。ウェルス化した人々はそこに集まっていた。耐え難い苦しみを 和らげ、短い命を長らえるため健常者の血肉を求める彼らは、ソイレントが苦痛から開放してくれると信じて。 いたのだ。フェイたちは、各地のソイレントを破壊する為、そこへ赴いた。 そこに集っていた人々に自らの血を与え、エリィは語った。 エリィ「癒しのために私の血肉が必要ならばいくらでもあげます。だから、人としての尊厳だけは捨てないで!」 やがて、ソイレントの人々はニサンに収容され、トーラのナノマシンによる治療を受ける事となった。 各地から集まり心の救いを得た人々は、献身的に介護するエリィを『聖母ソフィア』の再来と呼ぶようになった。 その状況を知ったガゼルは、人々の決起を恐れ、『ゲーティアの小鍵』を発動させようとした。しかし、 天帝カインはガゼルが抗えぬ力でそれを押し止めた。もはやヒトに主はいらぬ。カインはそう言った。 ◆星よ知る、我らが魂の器 前編/後編 地上の混乱が沈静化した頃、フェイたちは、ガゼルに対抗しえる力、ギア・バーラーを手に入れる為、 その素体となるアニマの器を探していた。 ゼファー達からの情報を元に探索を続けた彼らは、太古文明の遺跡でついにそれを発見した。 そのアニマの器は、ビリーと同調。レンマーツォと同化してE・レンマーツォが誕生した。 目的を達し、帰還しようとした彼らを、エレメンツの四人が待ち受けていた。彼女らは、自らの専用ギアを 超獣合体させた巨大ギア、Gエレメンツで襲い掛かったが、フェイたちはこれを撃破した。 もう戦う理由はない。去っていくエレメンツに、エリィはそう、声をかけた。 ガゼルの法院は、カイン暗殺の策を練っていた。それには、カインと同じ力を持つラムサスが必要だった。 ミァンは、もはや前後不覚の狂人となったラムサスをさらに追い込むべく、彼をニサンへ向かわせた。 ラムサスはドミニアたちが止めるのも聞かず、ギア・パーラーで出撃した。 その頃、最後の『アニマの器』を探すフェイたちと離れ、エリィはニサンへと戻っていた。 襲撃。フェイを求めるラムサスの前に、エリィは立った。 エリィ「何が貴方をそこまでさせるの……?」 ラムサス「俺は天帝の能力を持つ者、即ち完全なヒトとして創られた。しかし、フェイが生まれた事で俺は 廃棄され、塵溜めの中で生を受けた。俺は必死に今の地位まで這い上がった! だが、ヤツはまた 俺の前に立ちふさがった! 俺から全てを奪ったヤツが! ヤツがいる限り俺は……。貴様も俺から 奪うのか!? 俺がやっと手にしたぬくもりを奪うのか!」 エリィ「ラムサス、誰も貴方を攻撃しないわ。心を開いて。愛におびえないで……」 彼女の言葉に困惑したラムサスは、おびえたように飛び去った。 何も出来ずに帰還したラムサスは、ガゼルから見放された。そんな彼にカレルレンが語り掛けた。 カレルレン「お前は天帝のコピー。オリジナルが存在する故疎まれる。ならばオリジナルを消去すれば……」 『アニマの器』を探すフェイたちは、原初民の遺跡で最後の器を見つけた。リコと同調した器はシューティアと 同化。E・シューティアが誕生した。その帰り道で彼らを待ち受けていたのは、ギアと人機融合したハマー だった。激しい攻撃を仕掛けるハマーにフェイたちはやむを得ず応戦。負けを悟ったハマーは、キスレブに 戻るようにとリコに最後の言葉を残し、自爆した。彼はリコが総統の息子だと知っていたのだ。 このことで、エリィは深く傷ついた。フェイは、これ以上彼女を戦場には立たせないと決意した。 ◆天帝暗殺 マハノン浮上!! カインに、カレルレンとラムサスが迫った。ガゼルの差し金か、と言う天帝の言葉にカレルレンは首を振った。 カレルレン「まさか。彼らの妄執に興味はない。私は私のやり方で人を導く。お前は邪魔なのだ」 ラムサスの剣が振られ、天帝カインは崩れた。 カインの死を受けて、ガゼルの法院はついに『ゲーティアの小鍵』を発動させた。 それにより、今まで変異していなかった者までもが変異を始め、彼らの叫び声に呼ばれるように、海底に 没していた神の眠る楽園マハノンが浮上した。 ガゼルは、変異したソラリス人を人機融合兵器に作り変えた大軍を、マハノンに差し向けた。 ガゼルがマハノンに眠る神の知恵を手に入れるのを阻止しようと、フェイたちは総力を結集した。 ◆追放されし者 神の楽園に帰る 出撃前夜、フェイはエリィに、ユグドラに残るように強い口調で言った。 彼の気持ちを分かっていながら、その辛らつな言葉に、エリィは涙して走り去った。 自分の物言いを反省して追ってきたフェイの想いを受け取ったエリィは、彼の戻るべき場所として帰りを 待つ事を決意。二人はお互いに心を通わせ、愛を確かめ合った。 神の眠る楽園マハノン。それは、一万年前に墜落した航宙船エルドリッジの中央ブロックだった。 襲い掛かるソラリスの軍勢を蹴散らしながら奥へと進んだフェイたちは、腐りかけた巨大生命体を発見 、これを撃破した。その巨大生命体こそ、生体兵器デウスのなれの果てだった。 デウスを破壊し、さらに奥へ向かった彼らは、エルドリッジの巨大な中枢コンピュータがある広間に出た。 『ラジエルの樹』と呼ばれるそのコンピュータこそが、ガゼルが求める神の知恵の源だった。 彼らはそこから、先史時代について知った。星間戦争。その終結の為に作られた星間戦略統合兵器システム 『デウス』と、その端末兵器群。ガゼルが全宇宙の支配者として君臨するための情報がそこにはあった。 それらの情報を収集する彼らの前に、カレルレンとグラーフが現れた。フェイたちは、グラーフの操る オリジナル・ヴェルトールに一蹴され、なす術もなく虜囚となった。 ◆失われし約束の地 フェイたちを助けたくば『ゴルゴダの地』まで来い。カレルレンからのメッセージを受け取ったエリィは、 ランクたちの制止を振り切り、シェバトに残されていたギア・バーラーに乗って単身出撃した。 フェイと仲間達を助けたい。その想いだけでカレルレンの前に立った彼女は、カレルレンの部下達を一旦は 退けるも、力尽きて捕らえられた。 エリィを手中にしたカレルレンは、行動を開始した。ガゼルのメモリーを消去し始めたのだ。ガゼルに よってしか発動できなかった『ゲーティアの小鍵』。その発動により、神の肉体となる事を定められた人々の 覚醒がなった今、彼にとってガゼルの存在価値はなく、また彼らの掲げる宇宙制覇にも興味はなかった。 彼が目指すのは、神との合一。そして、回帰だった。 ◆君が呼ぶ 哀しみのメルカバー エリィが連れ去られた後、助け出されたフェイたちは、八方手を尽くしてエリィの行方を探し回った。その結果、 エリィは、カレルレンがラジエルから得たデータを元に建造中の空中要塞メルカバーにいる事が分かった。 ラムサスの身をを案じるエレメンツも仲間に加え、メルカバーに潜入したフェイたちの前に、そのラムサスが 立ちはだかった。エレメンツの言葉も耳に入らぬラムサスは、フェイに対する憎しみの元を語り始めた。 彼は、天帝のコピーであり、人工の接触者として培養槽で生を受け、育った。しかし、研究に加わったフェイの 母カレンが、フェイを転生した接触者と知ったことにより、ラムサスは不要とされ、廃棄されたのだった。 そのため、彼は「フェイ」に対しての拭い難い憎しみと、失われた愛情への渇望を抱いた。 「フェイ」を滅するか自らの消滅か。彼はその存在の全てを懸けてフェイに挑み、そして敗北した。 ラムサスを退けたフェイらは、最奥部の大広間に出た。そこには巨大なデウスの繭があり、カレルレンと ミァン、そしてデウスに供されるかのように十字架に架けられたエリィがいた。 突如、フェイたちのギア・バーラーに異変が起こった。アニマの器が分離し、デウスに吸収されたのだ。 アニムスと結合して覚醒し、デウスの部品となること。これこそ、アニマの器の真の意味だった。 動かなくなったギアから降りたフェイたちを押しのけ、呆然としたラムサスがミァンに詰め寄った。 自分のしてきた事の意味を問う彼に、ミァンは真実を告げた。ラムサスは天帝を殺すためだけに作られた。 しかし、人工生命である彼は、精神の制御が難しかった。そこで、彼の心に強烈な感情を植え付け、力を 一点に集中させようとした。それが、「フェイ」への憎しみだった。 全てが謀略だと知ったラムサスは逆上し、カレルレンとミァンを斬った。 茫然自失とするラムサスを押しのけ、フェイたちはエリィを十字架からおろした。だが、彼女は最早、彼らの 知っているエリィではなかった。彼女はミァンとなっていたのだ。 ミァンの因子。それは、全ての女性の中に存在し、原初の刻より代々覚醒するもの。前任のミァンが死ねば、 どこかの誰かが覚醒し、記憶と能力を受け継いでゆく。ラムサスの副官であったミァンが死んだことにより、 エリィの中のミァン因子が覚醒したのだ。それは、最後のミァンの覚醒。原初の刻に分かたれた、ミァンと エレハイムの最終的な合一であった。 覚醒したエリィは、フェイたちに語り始めた。デウスの本来の目的、ギアやエーテルのエネルギー源である 事象変移機関ゾハルについて、エルドリッジの墜落、人類がいかにしてこの惑星で生まれたか、そして、 ミァンとエレハイムがなぜ存在するのか……。 話し終わると彼女は、呆然とするフェイたちに背を向け、ナノマシンによって蘇ったカレルレンと共に、 デウスの繭へと向かった。 メルカバーが起動する中、エリィを追えたのはフェイだけだった。シタンたちは、やむなく彼を残し脱出した。 ◆はるかに遠き 夢の形見は… メルカバー起動後、世界は蹂躙された。いずれ脅威となる文明の根絶。それがデウスの目的だった。 フェイはあの後、メルカバーのあった場所で仮死状態となっている所を発見された。彼はそのまま、彼の 中に眠る力を恐れるシェバトによってカーボナイト凍結に処せられた。 なぜそれほどフェイの力を恐れるのかと問うシタンに、女王は500年前の出来事を語り始めた。 500年前、地上の制圧をもくろむソラリスと、それに対抗するシェバトとの戦争があった。当時シェバトは、 人々の信望を集めていたソフィア(当時のエリィ)を疎ましく思っており、一方のガゼルも、思い通りに ならないミァンを疎ましく思っていた。そこで二つの国は、互いにソフィアとミァンを差し出し、地上を 分割統治する取引をした。権力欲に溺れた末の決定だった。 その結果ソフィアと彼女を警護していたラカン、カレルレン、ゼファー、ロニ・ファティマらはソラリスの 軍勢に囲まれてしまった。ソフィアは仲間の退路を開くためにたった一人特攻をかけ、壮絶な最期を遂げた。 彼女を心から愛していたラカンとカレルレンの絶望は深かった。神など存在しないのだという事を悟った カレルレンは、自ら神を創り出すと言って姿を消し、後にソラリスへ亡命した。 一方のラカンは、自らの無力さに絶望し、シェバトに捕えられていたミァンにそそのかされ、絶対的な力を 求めて、力の根源である『ゾハル』を探す旅に出た。そしてゾハルの力を得た彼は、肉体を失って残留思念と なりながらも、デウスの端末である兵器群を率い、世界を破滅させた。 その残留思念こそが、グラーフだった。グラーフはその後、人の精神に宿る術を身につけ、接触者の運命を 持った自らの肉体の転生を待った。その肉体(つまりフェイ)と合一を果たすために。 シタンが女王から話を聞いている頃、牢獄に異変が起こっていた。凍結されたフェイが、イドの力により 呪縛を打ち破って脱走したのだ。 彼の向かったのは、太古の昔ゾハルが落着した場所。シタンたちはフェイを追ってそこへ向かった。 ◆堕ちた星 めざめよと呼ぶ声あり ゾハルの眠る地下空洞で彼らが見たのは、ゾハルの影響を受けて異形となった、イド化したヴェルトールだった。 襲い掛かってくるヴェルトールに、突如現れたワイズマンのギアが応戦した。 イドに指摘され、ワイズマンは自分がフェイの父親カーンである事を告白した。彼は、分裂してしまった フェイの人格を一つに戻すため、影になり日向になりフェイを導いて来たのだと語った。 イドは呪いの言葉を吐いた。こうなったのは全てお前のせいだ、と。そして彼は語り始めた。 最初は幸せな家庭だった。しかし、ある日突然、母カレンがミァンとして覚醒した。それは単なる偶然で あったかもしれない。フェイにとっては不幸な偶然。息子が接触者だと気づいたミァンは、少年を研究施設に 連れ込み、様々な実験をした。そのことを父に訴えても、仕事に忙しい父は取り合わなかった。 やがてフェイは、実験の苦痛に耐えるため、新たな人格イドを生み出して苦痛を肩代わりさせ、フェイ自身は 幸せだった頃の思い出に閉じこもった。 そして運命の日。家族の下にグラーフが現れた。それは、ミァンが呼んだものだった。彼女は、完全なる神の 復活の為、過去に分かたれた接触者の肉体と精神との合一を望んでいたのだ。 グラーフに触発されたフェイの力は暴走した。その力の奔流は制御できぬままカレンを貫いた。 フェイはその事をもイドに押し付け、イドは母殺しの十字架まで背負わなければならなくなったのだ。 しかし、それは真実ではなかった。イドが『臆病者』と呼ぶ第一の人格が、母の最後の愛情を独り占めして いたがための、イドの思い違いだった。フェイに促され、『臆病者』はフェイと同化して全ての記憶を渡した。 最後の瞬間、力の奔流は母ではなく、フェイ自身に向かっていた。呆然とするフェイの前に、ミァンの呪縛から 開放されたカレンが飛び出し、身を挺してフェイを守った。 真実を知ったイドは、全てを受け入れ、記憶をフェイに託して同化した。それは、全ての接触者の記憶。 原初の時代、現人神と祀られた天帝に反旗を翻し、逃亡するエリィと最初の接触者アベル。アベルを身を挺して 守り、エリィは命を落とした。 ゼボイム時代。エメラダの研究をする接触者キムとその恋人のエリィ。エメラダを軍事利用しようととする 軍隊の侵入を身を挺して阻止し、エリィは命を落とした。 500年前のラカンとエリィ。仲間を助けるために特攻し、エリィは命を落とした。 それぞれの時代、それぞれのエリィが残した最期の言葉。それは『生きて……』。 気がつくと、フェイは暗い空間にいた。彼の前には光の姿を取った高次元存在が。 『存在』は、ついに統合を果たしたフェイに、全てを語り始めた。 『存在』の降臨、アベルによる定義づけとエリィの誕生、ゾハルからの開放を望んでいる事、ゾハルを破壊 できるのは接触者であるフェイにしか出来ない事、ゾハルが破壊されればエリィも開放される事など。 エリィを助け出す。その一念で、フェイはゾハルの破壊を決意する。 その決意を見届けた『存在』は、無限の力を持つギア、ゼノギアスを彼に託し、消えていった。 現実の世界に戻ったフェイに、カーンの肉体に宿っていたグラーフが襲い掛かった。 たとえデウスを滅ぼしたとしても、人が生き続ける限りミァンが生まれ、人は神の呪縛から逃れられない。 ならば、人も神も全てを滅ぼす以外に真の開放はない。グラーフはそう結論した。故に彼は、フェイと合一して 『存在』との完全なる接触を果たす為に、フェイの成長と人格の統一をカーンの中で待っていたのだ。 しかしフェイは、エリィは必ず呪縛から解き放たれると信じ、グラーフの考えを否定した。 互いの信念と未来を懸け、二人は決戦に臨んだ。 戦いの最中、突如二人の機体がゾハルに引き寄せられた。 ゾハルが最後の欠片である接触者との合一を求めたのだ。グラーフは自らゾハルへと飛び込んだ。 代を重ねた事で人がミァンの呪縛から開放されつつある事に、彼は気づいていた。彼はフェイに賭けたのだ。 擬似的な接触者としてゾハルと融合し、フェイがデウスを破壊するまでの時間を稼ごうとした彼は、「エリィを 救ってやってくれ」と言い残し、消えていった。 ◆全ての始まりにして終わりなる者 シェバトに集まったフェイたちは、エリィ救出の為のメルカバー攻略の作戦を立て、実行した。 戦艦エクスカリバー。シェバトに残されていたこの先史文明の戦艦を特攻させ、彼らはメルカバーを撃墜した。 ところが、墜落したメルカバーから巨大な物体が姿を現した。それは、メルカバーを覆い尽くすほど巨大に 成長したデウスの最終形態だった。ナノマシンの力によって惑星と同化し始めたデウスから強力な衝撃波が 放たれ、一つの大陸が灰燼と帰した。デウスの端末兵器による破壊、殺戮、デウス自身の攻撃。人類は既に 絶滅寸前だった。 フェイたちに残された時間は少なかった。彼らは僅かに生き残った人々の、最後の砦となっている、墜落した シェバトに戻り、態勢を立て直す事にした。 メルカバーから前後不覚のまま救い出された後、シタンの励ましと、エレメンツの娘達の思慕の念に胸打たれ、 ようやく自分を取り戻したラムサスも戦線に加わり、彼らは最後の戦場へと向かった。 巨大な構造体となったデウスに侵入したフェイたちは、襲い掛かる端末兵器を蹴散らしながら、迷宮と化した 内部を抜け、最奥部へと到達した。そこには、エネルギーの繭に包まれたデウス本体がいた。 最後の戦い。エリィが最後に乗っていたギア・パーラーが異形化したデウスは、無限にエネルギーを生み出す ゾハルの力を使い、激しく攻め立てた。それに対抗しうるのは、同じゾハルの力を得たゼノギアスだけだった。 フェイは仲間達のサポート受け、ついにデウスを、そしてゾハルを打ち砕いた。 ゾハルの破壊。それによって、ゼノギアス以外のギアは機能を停止した。 そんな中、デウスの中心に巨大なエネルギーが観測された。それは、開放された波動存在が高次元へと シフトする為に起こったものだった。そのエネルギーは凄まじく、反動で惑星が消滅しかねなかった。 フェイたちがなす術もなく見守るなか、デウスが上昇を始めた。フェイは気づいた。エリィがデウスを 安全圏まで移動させようとしているのだと。エリィはまたしても、自らを犠牲にしようとしていたのだ。 もうエリィを失いたくない。その一心で、フェイはデウスの後を追った。 デウスに突入したフェイは、精神世界とでも呼ぶべき場所に立っていた。静かに眠るエリィと、その前に立ち はだかるカレルレン。 カレルレンは、宇宙の始まりについて語りだした。高次元から零れた波動の一滴。それがこの宇宙の始まりだと。 彼は、互いに傷つけあい、永遠に分かり合えない不完全な人と、その世界に絶望し、全ての始まりである高次元 への回帰を望んでいた。そこには神の愛が満ちていると。 フェイはそれを否定した。不完全だからこそ互いに補って生きていくのが人なのだと。それを一番よく分かって いるエリィが、絶望に暮れたカレルレンの心を癒すために運命を共にしようとしている。それこそが、人として 生きる事の喜びになるのだと、彼は説得した。 彼の言葉を聞いていたカレルレンは、ウロボロスをフェイにけしかけた。それは、人が神の下から巣立つために、 人の力 愛 を試す最後の試練だった。フェイがそれに打ち勝つのを見届けて、カレルレンはエリィを開放した。 人を愛するが故のカレルレンの悲しみ、絶望。彼と同化したエリィにはそれが分かった。しかし、人としての 道を外れてしまった彼は、もはや戻る事は出来なかった。 「お前たちがうらやましいよ……」そう呟いて、彼は神と共に歩む道を選んだ。人には持ち得ない両翼の翼を広げて。 彼の後ろ姿を見送って、フェイとエリィは自分達の世界へ向かった。 デウスの次元シフトの余波が広がる中、二人の乗ったゼノギアスは、仲間たちの待つ地上に舞い降りていった。 Xenogears Episode5 END おまけ ◆エメラダ成長イベント 最終決戦に臨む前、フェイたちは戦力アップを目的として各地の遺跡を調査していた。 そんな中彼らは、エメラダの遺跡から見えたゼボイム時代の首都を発見した。 書店やスーパーマーケット、テレビ局など様々な廃墟を見ていくうち、フェイはその時代の事を思い出した。 当時、人々は生殖能力に欠陥を持ち、出生率は極端に低下していた。そんな人類に見切りをつけた ミァンは、国家元首を裏で操り、核戦争を引き起こした。戦争により、人類を強制的に淘汰し、強い 遺伝子を次代に残そうとしたのだ。 そんな時代に生きた当時の接触者キムは、狂った世の中に憤っていた。戦乱に明け暮れる国家、 低迷する経済、狂信的な国民。そして何より、子を残せないヒト。 恋人のエリィまでもが子を残せないと知った彼は、何とか新しい生命を生み出そうとした。 そうして生まれたのがエメラダだった。彼とエリィの肉体の構成パターンを参考に生み出されたエメラダを、 二人はわが子のように慈しみ、覚醒の時を心待ちにしていた。 だが、キムの願いが叶う前に人類は核戦争によって破滅し、エメラダの覚醒までには4000年の時を要した。 フェイの記憶に触発され、エメラダも全てを知り、受け入れた。 それにより、精神的肉体的に成長し、彼女は成体となって最後の戦いに臨んだ。 ここまでpart5の 536の人によるまとめ
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2023年総評案1 大賞 Jinki -Unlimited- 【2023】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 総評審議所 https //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58649/1706966035/ 3:総評1:2024/02/29(木) 19 16 12 ID ???0 よさそうなので総評投下開始いたします 2022年のKOTYeは、底なし沼のような虚無と息もできない熱波の低クオリティが蹂躙跋扈する、悲しみと苦しみに血塗られた餓鬼と畜生が死地を彷徨う駄文の百鬼夜行のような年だった。 才なくとも創作ができ、生者と死者が六道の狭間で揺れ動く冥府魔道の時代、その混迷のカタストロフは開いてはいけないパンドラのデスノート『悪魔と夜と異世界と』が頂に上ることで決した。 「クソゲーとは何か?」という一つの命題に新たな石碑が刻まれた一方で、我々は不安を抱いた。この先クソゲーは何処に向かい、どう変わっていってしまうのか、と……。 そして本家である据置版KOTYが史上初の該当作なしとなり、活動休止が告知されたことで、運命の黒い糸は静かに綻び始めた。 『修羅の国』と評された人外魔境が唯一のKOTYとなったクソゲー界は、亡者が一筋の漆黒の光を求めて彷徨う時代に突入したのだ……。 昨年とは違い、今年のKOTYeは1月から盛況だった。 その口火を切ったのは、戯画の汎用ヒト型欠陥兵器『JINKI -Unlimited-』。 戯画と言えば長年KOTYeを賑わせてくれたいぶし銀のベテラン工兵。その戯画が本年度を持って解散を表明し、本作が着火させる最後っ屁となったわけだが、注目された中身は期待に見合った大型地雷だった。 実質3周しなければいけないという長期戦にも関わらず、パッチを当てないと進行不可になるなど掴みは完璧。 それを踏まえた上で、本作の基本スペックから見てみよう。 まずADVパートは、令和どころか平成でもあまり見ない程お粗末だ。 バックログや音声リピート機能はなく、次のボイスまでの音声再生機能なんてのもない。既読スキップもなければAUTOモードもない。ギャラリーモードは差分表示がなく、回想は全周クリアまで実質お預け。 シナリオはスーパーコーディネーター級の新主人公の基本無双であり、無能と化した歴代主人公とヒロイン勢は終始すげーすげーを連発。カタルシスも何もなく、本当に原作者が監修したのか、逆に興味がわく内容である。 登場キャラこそ女性ばかりで華やかそうに見えるがそれは罠。綺麗な薔薇には棘が付き物と言わんばかりの凌辱リョナ特化構成なので、遊ぶ側にもそれなりに耐性を求められる。 フレームレートは起動時の状態で常に全力全開天元突破。調整するオプションすらなく、プレイ時は絶えずPCクラッシュに怯えながら遊ぶ羽目になる。 続いて、本作独自の部分について触れる。 『JINKI-U』の目玉は、段ボール箱を被った姿をコスプレと言い張るような、寂寥感溢れる出来のRTSパートである。 グラフィックはシムシティ2000レベルのビル街、キン消しを並べたようなロボット群、攻撃に至っては色付きのつまようじや矢印ビームと揶揄されるほどのクオリティであり、かの「SSα」を彷彿とさせる。 AIの調整や挙動にも問題があり、指示を出した味方キャラが壁に引っ掛かって五里霧中になったり交戦中にエンジンでも止まったかのように動かなくなりその間に即死級の攻撃を食らってゲームオーバーになるのは日常茶飯事。 言わば自分以外は全て敵とでも言わんばかりの枷にしかなっておらず、そんな介護職員気分をプレイヤーは余儀なくされる。 戦略性等は微塵もなく、やる事と言えば、基本逃げ回りながらゲージを溜めて必殺技をぶっ放つことだけ。 また本作にはレベル性が導入されているが、この調整もクソである。経験値は中盤から数万、その後は数百万単位と超サイヤ人並みのインフレを起こすため、レベルでごり押しはままならず、結局適正レベルでの攻略を余儀なくされる。 仮に武器レベルも含めてMAXにしても敵もガンガン固く強くなっていくので、爽快感は皆無に等しく、戦闘はただただゲー無となっていく。 だがこれにも増して問題なのは、何より「劣悪極まりない操作性なのにキーコンフィグすらない点」だろう。 ユニット選択→武器とサポートキャラ選択の過程後に、右クリックを押せばサポートキャラが削除されてやり直し。戦闘ではマウスホイールをクリックすれば必殺技という仕様なのにスクロールさせると視点が変わるため誤動作連発。 キーボードの入力部位も一切変更できず、マウスは右手から離れないのに、左手は虚空を彷徨い今日も誤入力を頻発するなど四面楚歌状態だ。 MMOやFPS経験者なら分かるが、PCゲームにおいて操作性という点はゲームの快適さだけでなく面白さに直結する。それがズンボロで娯楽失格という有様では何処に価値を見出せばいいのか。 かくして人は同じ過ちを繰り返す……。 『JINKIーU』は挨拶代わりの核地雷としてKOTYeの大地を爆裂四散、それに影響されたのか、2023年は黒く暗い影が光を侵食する一年となっていく。 二番手として壇上に上がったのは、3年連続エントリーとなるNorthBoxの『高嶺の花と魔法の壺』。 公式のあらすじで肝心の女性キャラの名前を出さないという斬新さでKOTYe民の心を掴んだ本作は、骨どころか脊髄まで削ったかのような所轄抜きゲーである。 男キャラにはボイスや絵など必要ないというフェミニストもニッコリな人権のなさで繰り広げられる内容は、毎度おなじみの「適当にずっぷずっぷして終わり」。 お家芸であるHシーンを冷めさせるBGMは健在であり、雅な琴や笛の音を流したかと思えば突如盛大なヴァイオリン演奏に転調するという和洋折衷ぶりは、 「ヌかせたいのかい、笑わせたいのかい、どっちなんだいっ!?」と思わざるを得ない。 ゲームの容量を公式で4倍増しにしたり、ピストンシーンでチ〇コを異空間に消失させるなど匠の技も見せ、本作は見事住民のツボを突いてみせたのだった。 そして恐れていた事態が訪れる。 前年から顕著であった『低価格帯ノベルゲーム』がこの世の全てを覆い尽くさんと攻勢を仕掛けてきたのだ。 KOTYeにおける、「大高価異時代」の幕開けである。 先手を切った海賊1号は、NTR界のワールドレコード保持者、アトリエさくらの『他人棒でイキ狂い快楽に溺れていく最愛妻~見せつけられた快楽に絶頂する妻の痴態』。 前年から月イチペースながらRすらないNTRガチャというイリーガルポジションで完全に追跡対象となった当メーカーだが、その奈落方向の実力は今年も止まる所を知らなかった。 ヤリサー常連だった主人公と過去に妻と肉体関係にあった間男との三角関係という構図なのだが、書くべき中心点があらゆる事態でブレッブレ。 冒頭からNTRビデオレターではなく、普通のAVを送るというジュラル星人並みに回りくどい作戦で動揺を誘うのだが、開封したのは主人公という稚拙さ。 その後もフェラなのにチ〇コの先が額まで届いているなど文章とイラストの不一致の連発や、頻繁な誤字など、真面目に作る気がないのが丸わかりなスペクタクルな内容が続き、 最終的には全裸だった間男が1クリックで服を蒸着し、全裸だった妻も一瞬で下着を瞬着するなどやりたい放題。 間男は「妻の事は気に入ったが自分の女にするのは面倒くさいので二人で共有しよう」と提案するが、それを断っても、主人公は、 「別に抱かれたいならいいさ!その代わり今まで通りの生活を続けてくれるんなら問題ないから!」と返答する懐の深さを見せつけるが、それが間男の提案と何が違うというのか。 前年からまるで成長していないNTRの舐めっぷりに住民も辟易。唯一「その前に一度イクからちょっと待ってて」という名言に心ときめいたのだった。 ならばフルプライスの本気を見せてやると軍が出撃させたのは、こちらも常連evoLLの『ラブカフェ~童貞な俺でも、巨乳女先輩と同棲できるってマジですか?~』。 選択肢は最初の僅か一つという中身は、「エロゲーなんだからエロ要素以外の描写は全て非現実的だが何か問題でも?」いうある意味潔さを感じる内容だ。 同棲約一ヶ月程度で主人公に心を許したヒロインは、肝心の一ヶ月の過程すら省かれ処女からあっさり股を開き、 バイト先がカフェだというのに客との会話は丸々カット。モブに至っては台詞が三ヶ所のみ。 ハーレムルートに至っては描写はともかく、実は主人公の妄想オチで〆るという酷い扱いよう。 そんな中住民の心を強く揺さぶったのが、射精を「放精」と変えるハイセンス。KOTYeの歴史に、また一つ名言の1ページが刻まれた瞬間だった。 その後も選評ラッシュは終わりがないのが終わりと言わんばかりに続く。 快楽墜ち+ふたなり+異種姦と亜種系属性のよくばりセットに、調教描写を削って代わりにバトルファック要素を詰め込み需要不明にした『虜囚の女ヒーロー~怪人たちとの闇の狂宴~』。 パッチを当てないと誤字脱字の弾幕で読めたものではないテキストにあらんばかりの設定詐欺を詰め込み、ダメ押しで嫉妬がボンバーという迷言も残した『Aphrodisiac-女神の欲望ー』。 そして春になると露出狂が閑静な住宅街を出歩くように、温かい狂気もやってくる。わるきゅ~れの『病みつきヤンデレハーレム!』だ。 冒頭で「誤字脱字が多すぎる」と言わせた矢先から、誤字脱字を連発するなど完璧なブーメランで住民の心を掴むと、 ヒロイン三名からは、自作の主人公グッズに塗れた部屋で逆レイプ、スタンガンと手錠で身動きを取れなくしてから逆レイプ、睡眠薬を盛って眠らせた後に逆レイプと、主人公は嫌が応にも絞られ続ける。 精液の表現にも一癖あり「オス汁」「生殖汁」「遺伝子汁」とバリエーションを増やして表現の自由を広げたり、Hシーンの前後でBGMを、それも激しいクラシック調を採用するなど聴力への配慮も抜群だ。 手抜きこそ随所に感じ取れるが、それを「笑い」に転用できる作り手のセンスが溢れた本作は、「(クソゲーは)こういうのでいいんだよこういうので」を現した作品といえよう。 その後も住民は追跡対象を中心にエロゲー発掘に勤しみ続けると、掘れば掘るだけクソゲーが出土されるゴールドラッシュに突入。 主人公の声が合わなさ過ぎてクッキー☆級のミスキャスト感溢れる『上司の巨乳騎士団長は俺の肉オナホ!~年下恋人から中出し漬けで寝取って孕ませ穴に!~』。 全年齢版に声や名前すらない文字通り「無」の男をぶっ込んで無理やりR-18にしたことで設定や登場人物との絡みが完全に破綻した『星と乙女が占う未来』。 かつてKOTYeで選評も届いた『淫らに堕ちる、最愛彼女』から選択肢も背景も流用した挙句、オモチャどころかただのビッチだったというオチで終わる『好きだった幼馴染がクラスメイトのオモチャになっていた件』。 しかし発掘作業を続ける住民が徐々に疲弊していたのも確かである。ここらで一つ笑える一品はないのか? そう訴え始める住民が気まぐれに掘り起こした女土偶が、 ZIONの『ワケありJK従属学園~強制絶頂は終わらない~』。 低価格帯ながら原画は素晴らしく、どこぞのママに見せたい程であるが、肝心な内容は借金まみれの堕ちたセレブお嬢様がFラン学校に転校させられ、男たちの性処理をしていく、というもの。 しかし主人公は余程の肝っ玉なのか潜在ビッチだったのか、処女喪失からいきなり「ヌアァーーー…」と迫真の悶絶絶頂をしてくれる。 またモブキャラの名前は「S1」「男子生徒A、X」果てには「α」という盛り沢山な固有名詞で構成されており、誰が何者なのかさっぱり分からず、 竿役には名前なんて必要ねえんだよという開き直りすら感じる。 他にも「性的な知識は月並みにある」「敏感な子宮口を亀頭が消しゴムのように削ってくる」「男根の美味を味わう」といった、 中学生が文学的表現を試みて玉砕したような愉快な日本語が目白押し。「放精」まで完備している。 昨今は絵がいいならシナリオは適当でもいいという傾向があるが、世の中には絵すらダメな作品もごまんとあるので、これはこれでいい傾向かもしれない。 続いて発掘されたのは、グレースケールに糞の色を塗った『淫堕の姫騎士ジャンヌRe BORN~オーガの仔種を注がれる気高き姫!~』。 本作は2006年に発売された同名作品に新規シナリオを追加した所轄リメイクものである。 その内容は、新撮りを行わず旧作の部分は旧作の声優のままなのに、新規のシナリオには全く違う声優を起用するという迷采配。 そして肝心の新規シナリオは、スキップすれば僅か13秒で終わる夢オチというやる気のなさ。しかもこれでフルプライスである。 幸いこれではまずいと思ったのか、メーカーは公式サンプルで新規絵の9割を閲覧させてくれるので、それを見れば大体の目標は達成できるだろう。 これで、一息つけると思ったのか? 無駄だ。大魔王と大高価異からは逃れられない。 ヒロインと主人公が急接近するイベントがアナニー中に取れなくなったペンを取ってもらうというけつなあな確定シュールギャグさが光る、 『ナマイキユメちゃんはおにぃとメチャクチャHしたい!~ギャルと教師のドキドキ同棲生活~』。 令和のこの時代に未読も既読もスキップできないうえに字が小さすぎて見えづらいバッグログと一つも褒めるところがないゴミUIを搭載した、 『ママ僕だけを愛して…~キモデブ息子を溺愛する母の歪んだ愛情~』。 異世界モノなのに造型が全て日本そのものな上一転攻勢もできずに気色悪い文言を多用する人間だらけの、 『女体化転生したボクはふたなりで無双する!?~でもお姉ちゃんたちには絶対に勝てません!~』。 そして色んな意味で問題作だったのが未踏の秘境から数々の珍作を送り出してきたアパタイトの『清純ヒーロー×ビッチ堕ち!!~悪の組織に調教される乙女の心の移ろいは…~』。 アパタイトと言えば「俺たちゃ裸がユニフォーム」「常識は糞と一緒に流した」とでもいうべきアンプレセテンディドな作風で場を盛り上げるkotyeのモーツァルト的存在だが、その作風は今回も平常運転。 本作は所轄調教モノ。つまりいかにしてヒロインを嬲り、辱め、快楽堕ちさせていくかを事細やかに描けるかが肝要なのだが、 ……なのだが、捕らわれたヒロインが「普通に調教して。もっと正々堂々と」とコメントするなど抵抗感の歯車が錆びついて嚙み合っていない。 また敵組織はとてもアットホームであり、朝食に炒飯を出したり、朝に体操をさせたり、シャワーも浴びさせるなど令嬢お付きのメイドの様な献身ぶり。 この他にも、米と野菜のどちらを育てるかヒロインと会議、助産師がいないからという理由で種付けを断念、 ローンが残っている事に苦悩しヒロインに同情される、挙句帰るのを許可する等、とても悪意がある集団とは思えない。 おそらくこれは小学生に見せる「よい子は調教をしていけませんよ」という教材か何かなのだろう。18禁で教育を施すという粋な計らいが光る一品だった。 続いて紹介するのは、『またしても』という枕詞が付くアトリエさくらの『妻、宇佐見恋を抱いてください ~夫公認公開恥辱NTR~』。 本作を一言で例えるなら、「全員が痛い」。ヒロインは電車内で痴漢されるのだが、散々脳内で相手を罵倒するのに結局最後までさせるという謎思考の持ち主で、 間男に、セフレが産気づいたからおまえの力が必要なんだ、というあからさまな噓に騙されホイホイ付いていく脳内お花畑の間抜け振り。 その間男も事あるごとにセフレが複数いることを自慢するが、気色悪いおじさん構文を多用する変人であり、そもそも女に困ってないのに電車内で痴漢をするというリスクを負う時点で頭の螺子が外れている。 主人公に至っては、実は妻も含め犯される女を見て興奮する寝取らせ性癖者である事が発覚し、完堕ちルートでは妻に完全に愛想をつかされ、別ルートでも妻を貸し出して興奮する有様のダメ人間。 このようにメインメンバーが全員アホではまともな寝取られなど描写できる筈もなく、不条理ギャグのようなシーンがひたすら続く。 もはやNTR好きというより、KOTYe住民にアピールしているかのようなダークマター振りは別の意味で期待に応えてしまったのだった。 これは同ブランドに限った話ではないが、NTRモノは展開が固定されているからこそ、受け取り手にNTR本来の持ち味である黒い絶望感を与えにくいというハンデがある。 最初からNTRですと提供するのは、余程優れたシナリオでない限り、スカムカルチャーといえどハイワロに過ぎないのだ。 その後もアトリエさくらは、山なしオチなし意味なし+多すぎる誤字=『堕とされた義姉~憧れていた義姉がクラスメイトの手で快楽調教させられていく~』や、 ヒロインが子種欲しいがために半ばノリノリでHする阿婆擦れ振りで転落堕ち感が皆無な『背徳の強制種付け~愛する妻の子宮(なか)に注ぎ込まれるほかの男の精液~』など、 多くの変作をノルマのように出し続けるが、それが「いつものさくら」以上の関心を集められたかは些か疑問である。 その後も低価格帯の作品は否でも応でもとばかりに輩出される。 盗聴を題材にしており、ヒロインは録音した性行為で興奮する性癖なのに肝心の部分がサイレントリスニングな『カノジョの性癖ー盗聴×妄想ー』。 オタクに優しいギャルをテーマにしていながらギャル感がまるでなく、ストーリーはただひたすらずっぷオトマトペの『ギャル姉妹~ハーレムタイムが止まらない!~』。 そして極め付けが、NTRと妖刀村正を組み合わせたような傀作『調教カテイ~性開発された肢体は元カレを忘れられない~』である。 本作は『ママ僕だけを愛して…』を世に送り出したTRYSETBreakなのだが、あれほど散々問題視されていた崩れたジェンガのようなゴミUIをそのまま流用している。 すなわち未読も既読もスキップできず、バックログは米粒サイズ、コンフィグ画面は意味不明な森林の背景に、アニメもないのにアニメーションonoffの項目。 その様は令和の超空間か? などと住民を畏怖させる始末。 肝心な中身だが、学生時代に間男に調教されたヒロインは男性不信となっているが、ゲーム中では結婚済であり、挙句再会した間男にはお別れセックスという名目であっさり股を開くという貫禄の設定崩壊。 その後も裏で快楽が忘れられず間男との交際は続き、快楽堕ちしたヒロインは「人妻になった分余計気持ちいい」と屑女ぶりを発揮するのだが、 夫は夫で、NTRている様を見せられ「勉強になる」などと発言したり、それどころか「誰の子供かわからないなんて興奮する」などと精神病棟の介護士と薬が必要な状態に陥り、 最終的に夫はなんと間男に「去勢」されるというサイコホラー。ここまで酷いと「このゲームを作ったのは誰だぁ!?」と問い詰めたくなるが、 なんと本作にはエンドロールすらないという尻尾の先まで超空間リスペクト。 変化球を投げろと言われて審判を惨殺するようなピッチャーをマウンドに立たせてはいけない、そういうルールブックを改めて考えさせられた一品だった。 『侵・性奴会~美人会長と爆乳書記の調教日報~』も忘れてはならない。 入院を負うほどの重傷を負った主人公が生徒会に贖罪という建前の調教をしていくという本作であるが、あらすじで教室に赴くとなっているのに、最後まで教室に行く描写がないという伏線のぶん投げっぷり。 説明不足解説不足はこの点だけに止まらず、そもそも何故主人公が重傷を負うハメになったかもよくわからないし、 代償として何故ヒロイン達が体を捧げる事になったのかもプレイヤー視点だと何一つ不明である。 この問題点は肝心の調教の過程にまで侵食されており、内容は「やらせろ」→「こんな奴に悔しい……ビクンビクン。でも感じちゃう」→「よかった」を中年男性のオナニーのオカズのように代わり映えしない清々しい程のワンパターン。 勿論各キャラに割り振られた様々な作中設定も、ゲーム内では何一つ生かされることはなく、もはやbotに肉棒を挿れ続けているような錯覚にすら陥る。 なお、生徒会では持ち物検査で手に入れたエロゲーの話題で持ち切りなのだが、そういったプレイをご所望しているあたりただの好き者の集まりなだけかもしれない。 以上が2023年上半期が終わった時点でのクソゲー一覧である。 あれ、なんか多くね?と思った人、その通り。この時点で選評数23本。前年の19本を既に上回るという異常事態。そしてその約8割が低価格帯。 もはやこの業界に情熱を傾けるメーカーなどないのか? と住民は唖然茫然自我憔悴となった。 そんな下半期、猛暑で日本が業火に苦しむ中、均衡を破ったのは、……やっぱりアトリエさくらだった。『俺の幼馴染がエロ配信をしていた件~地味な彼女の裏の顔はエロエロな配信者でした~』。 本作は今までさくらが得意としていた、馴れ初めを数クリックで解説して後は各々が想像しろを廃止し、ヒロインとの描写も比較的深く誤字脱字含めても書き込まれている。 しかしその代償として、肝心なHシーンの尺を削っては本末転倒だろう。 基本的にヒロインは過激な配信をしてそれが徐々にエスカレートしていき……というのは話として悪くないのだが、如何せん掲げるべきNTR感が5ミクロン程度に薄い。 勿論主人公に寝取らせ属性を一つまみする悪癖も健在で、NTRモノとしてはあまりに作りが粗雑で中途半端。 恒例行事にテコ入れをしたかったという思いは伝わるのだが、あちらが立てばこちらが立たずでは伝わるものも伝わらないという課題作であった。 そして猛暑がひと段落した中、スレに一線級の不発弾が発掘される。 それこそがかつて凌辱モノで多くの戦果を得た、老舗ルネの『エルフェンキング』だ。 90枚を超えるCG、豪華声優陣、そしてかつてのルネの十八番ともいえる凌辱、付け入る隙はどこにもないと思われていた本作だが、 開けられた箱には魔法陣グルグルの失敗作のようなクリーチャーが入っていた。 まず肝心の凌辱描写だが、うまい棒の穴に割り箸を挿れ続けるような極めておざなりな描写になっている。 前提として本作には裸や下着の立ち絵差分というものが存在せず、対象キャラを選んだあとは、工程や流れという段階をほぼ無視し「ブッ込んでいくんで世露死苦ぅ!」とばかりにHシーンが始まるのである。 相手をじわじわと責めてトドメに、という凌辱モノの要ともいえる導入が欠けており、場合によっては既に挿入済みだったり、部下に輪姦させるというものも多い。 エロゲというのはHな「シーン」の集合体であり、事前の精密な描写が必要不可欠。エロい画集など幾らでも転がっているこのご時世だからこそ、見せる側を興奮させ、魅了する演出が要求とされる。 しかし本作は、「テキストとボイスと複数のCGをパッケージする」という概念がなく、凌辱描写はいずれもCG1枚の単発に多少の差分を添えただけ。プレイヤー視点での心理面を揺さぶるシチュエーションが根本的に描けていない。 凌辱の肝たる部分を省いて「Hシーンだぞ、ヌけよ」では、どれだけCG枚数があろうとただのカラー絵に堕ちてしまうことを、メーカーは理解っていないようだ。 攻略対象こそ8人と豊富だが、その分各キャラが没個性となってしまい、凌辱はもはやベルトコンベアで流れてきた弁当にバランを入れる作業。 これではもはや顔と声が違うだけの万能精液便器である。 そもそもシナリオ自体、「ぼくのかんがえたさいこうのちからでえるふをやっつけておかしまくる」という小学生が考えた読書感想文並みの陳腐さで、 神から与えられた何でもできるチート魔法で人間たちがエルフに一転攻勢するという、同人界隈を見渡せば幾らでも既視感がある代物なため目新しさは皆無。 しかもこの力は主人公の独占ではなく、やろうと思えば仲間にすら幾らでも分け与えられるため、凡百のならず者が一瞬で魔法自慢の兵と化し、戦力差をあっさり覆すシナリオにおいてのお任せ安心潤滑油。 ここまでくるとうだつの上がらない弱者男性が人生の一発逆転を賭けて執筆した某界隈の三流小説となんら変わりはない。 アマチュアならそれも許されるだろうが、それを商業作品を提供するプロがやるのは言語道断だろう。 主人公は傭兵の大将というより山賊のお頭という印象で、知性や狡猾さというのが全く感じ取れず、力を得てからは完全に天狗ムーヴの性欲魔人。 言動も昭和時代の体育教師のように粗野で乱暴な糞主人公と化すため、これならオークやゴブリンさん達の方がまだ竿役として適材という有様。 そして何よりも問題なのが、これが手間暇をかけて完成させたフルプライスのゲームであることだろう。 「如何に手を抜いて作るか」が傾向とされる昨今のクソゲー界隈において、金と時間と労力を費やして世に送り出した自信作がクソだった、という点は住民に高く評価され、 『エルフ』は、本年における最も悲劇的な存在として、その痕跡を確かに刻むことに成功したのである……。 平和は長く続かない。次に出現したのは「おまえはもういい。座ってろ」と枕詞が付くアトリエさくらの『恋人・亜依理(あいり)を抱いた他の男達~愛する恋人が俺の元から去った理由(わけ)』。 本作は複数の章に分かれて構成されており、間男のポジも変化するのだが、肝心な中身はサイコパスが白い粉をキメながら思いついた叙述トリック。 1章主人公はヒロインと偶然再会するのだが、既にヒロインには彼氏(2章主人公)がいるので、本来ならもはやここで話の拡がりなどありえない。 しかし「この話は早くも終了ですね」となるとライターの預金残高も増えないので話は続き、結局1章主人公は駄々っ子のような逆ギレで彼氏と別れろとヒロインに迫り、 対するヒロインは、あなたとは付き合えないと説明しておきながらベッドに誘い肉体関係を持つという、いつもあなたの心の中にいるポルナレフ展開。 3章主人公に至っては固有名詞があるだけで秋の木枯らしの如く空気、ヒロインは「あーわたしNTRれちゃったーw」とばかりに他の男の所へ赴き、最終的に1章主人公と結ばれてエンディングである。 プレイヤー視点からすれば何から何まで「ホワッツ?」な展開が続くが、言い換えれば「主人公は亜依理。男は皆舞台装置」とすれば話の流れにも合点がいく。 だが、それがNTRブランドが掲げるNTRかというとあまりに疑問符が残る。マスターアップしながら直前までHPを未完成のまま放置する等盤外戦でも活躍し、 改めて、我はkotyeにありと声高らかに宣言したのだった。 季節も残すところ冬のみ、そろそろ年末の魔物が蠢き出そうとする気配を住民が感じ取る中、縮地法を用いて主人公とプレイヤーに急接近する三人娘がいた。名をTinkerBellの『せをはやみ。』 土地の淫欲の呪いを防ぐべく三人娘とSEXし続けるという王道の抜きゲーシナリオではあるのだが、本作は遠近法が完全に無視されている。 どういうことかというと、説明も脈絡もなく、話の流れや状況を完全に無視して、女性キャラの立ち絵が突如顔面接近のド迫力になり、モニター前の人間を「IYAAAAAAAAA!!」と驚かせるのである。 それはいつ何時起こるかわからないので、プレイヤーは爆弾処理の気分で慎重にクリックしながら、耐えず危険に備える他ない。 その様は作画崩壊も相まって「精神的ブラクラ」「野獣の眼光」とでも評すべきか。 一方でシステム面も酷く、非常に見難いフリガナは勿論、「アクメーター」「むんむんほかほか機能」「特殊効果」など、 onにしても何が付与されるのかさっぱり分からないコンフィグなどもポイントが高い。 余計な味しかしない隠し味を仕込んだ結果何もかも台無しになるという、シェフのおすすめしない生ゴミといえよう。 その後はタイトルで調教としながら調教するシーンもなく、「やらないか」と娘が迫り主人公が流されるだけで、AI妻とはわけのわからないテレフォンセックスなど、 コンセプトがあらゆる面で崩壊している、スワンの血統を継ぐ疑惑が掛けられた『AI(愛)妻と娘への調教生活』の選評が届き、年末は終わりを告げた。 そして年が明けて予備期間。住民はいよいよラストスパートに向けて静かに動き始める。 胸が締めつけられるような不安と恐怖入り混じる緊張感の中、果たして今年も何かがやってきてしまうのか……? そう危惧していた住民だったが、 やはり「それ」は登場してしまった。約束された闇の異邦人が今年も現れたのだ。 その名は、『モラトリアム~ブルーアワー幸せの時間~』。前年『悪魔と夜と異世界と』で大賞デビューを飾ったWendyBellが満を持して送り出した年末の魔物である。 あれからおよそ一年の歳月が流れ、奴らはどうなったのか……それではその全貌に注目してみよう。 まず前提として、本作は、あれほど『ととと』で問題視されていた「ダッサダサで構築されたシステム面」が直っていない。 4:3の前世代的な画面比率、ちょこまかと無駄に動く立ち絵、「ぷにぷに」「びゅ~」「ぴんぴん」等と何処かで拾ってきたようなウザいSE、 不自由な国語で構成されたあらすじと明らかに違う冒頭などあらゆる面が前作と類似している。容量に至っては1Gを割るという惨状だ。 絵に至っては、強欲な壺フェラの踏襲だけでなく、キャラが一枚絵のたびに本当に同一人物なのか疑問を抱くほど下手糞で安定せず、作画崩壊は日常茶飯事。 主人公は、内面でブツブツ言う癖だけは申し訳程度に治っているが、やはり調子に乗ったりヘタれたりイキったり流されたりという情緒不安定振りは健在である。 ではエロゲとして、「読み物」としての評価はどうか。こちらも凄惨極まる内容だ。 話の前後がまるで一致しない4コマ漫画のような描写をダイジェストのように強引に繋げている為、書くべき要点が圧倒的に不足しており、 ご都合主義も相成って人間が会話し、話が進んでいる感覚が根本的に抜けている。 ヒロイン二人は他国からの留学生なのだが、やはりこの点も描写不足であり、アーシャに至っては架空の国である必要性が殆どなく、異世界交流の方がまだ説得力があるという有様。 子猫のような奔放ヒロイン「アーシャ」と堅物で融通が利かないヒロイン「アデリナ」も、気付けばあっという間に惹かれ合い、気付けば濡れ場に突入している。 ただこれらの問題点だけを見れば、単にライターの実力不足で済まされるのだが、問題は終盤である。 アーシャの正体は実は王族の娘なのだが、彼女が母国に帰ると、他人が作ったパスポートで日本を飛び出し追いかける主人公や、 アデリナを置き去りにしたまま、架空の国の君主制を廃し民主制に移行する計画に割って入る主人公という頭の中身が愉快な超展開も存在する。 一方でアデリナルートは、アーシャが笛を吹かなきゃ話が進まない牛歩恋愛であり、早くなんとかしてくれよ……と思いながら進むシナリオに辟易する事必死である。 余談ではあるが、ダブルヒロインを謳いながら3P等といった甘ったるい展開は存在しない事も補足しておこう。 最後にHシーン。前述した通り絵が壊滅的なためエロゲとしての需要すら期待はできないのだが、更に異常なのが効果音。 挿入中は「ぐちゃ……ぐちょ……」と陸に上がった半魚人のような音が鳴り響き、ピストンが早まれば「ぐちゃぐちょぐちゃぐちょ」と律動し、 射精時には「どぼぉりゅ!」とチ〇ポからスライムのような異物でも飛び出した音が木霊する。 伝説の『ママⅡ』は目を閉じなければヌけないと言われていたが、本作は目を瞑り耳を塞がなければヌけないという高度な手段を余儀なくされる。 しかも本作はアクチ付きなため、一度導入すれば売り飛ばす事も出来ない、PCに残り続けるウイルス的存在になるのだ。 このように『モラトリアム』は「あらゆる要素がどうしようもない」を芸のうちに昇華しており、プレイした者全員にめくるめく低品質を提供させることに成功している。 そのあたりは流石大賞を世に送り出したメーカーの面目躍如といったところか。 そしてトリはやはりというか何というか、アトリエさくらが食後の下剤を務める。 元探偵というスキルを活かし、無断で作った合鍵やカメラでの盗撮などの違法行為でNTR事情を探ろうとする主人公や心底出来の悪い立ち絵で、 プレイヤーを満遍なく不快に攻め立てる『妻・倉崎(くらざき)桜菜(さくな)の浮気調査~寝取られ妻の淫らな下半身事情』。 誤字の乱舞やCGとテキストの不一致という基本武装、寝取られ済の婚約者とボテセックスという疑問点の残るエンド、 既に見た寝取られビデオレターをPVのように何度も見せてシナリオを水増しする『略奪された婚約者(フィアンセ)~恋人・真澄(ますみ)と弟の秘密』の選評が届き、 激動の2023年は幕引きとなった。 以上で、本年度のゲームを紹介し終えた。 太陽は奈落へ墜ち、月は神槌を受けて欠け、大地は爆動し、海原は濁渦を巻く。 終末さえ感じさせるアカシックレコードの断片を全て紹介したところで、大賞を発表しよう。 次点は、 『エルフェンキング』。 『モラトリアム~ブルーアワー幸せの時間~』。 そして大賞は、 『JINKI -Unlimited-』。 2023年度のkotyeは、全月グランドスラムこそならなかったものの、選評数32本、前年比大幅増を記録した。 それでも豊作だったと感じ取れず飢餓すら蔓延していたのは、偏にここ数年の問題点の先鋭化が顕著であったからだろう。 評するならば、ゲームのクオリティが落ちたというより、クソゲーのクオリティの著しい低下である。 問題点が類似化され、ひたすら地味で盛り上がりに欠け、華もなく映えもせず、笑いやネタにもなりえないのだ。 特に低価格帯勢の陳腐さは凄惨極まりなく、この辺りは本家KOTY末期の状況と酷似している。 欠点の画一化は、真綿で首をへし折るかのような拷問となり、住民の心の街路樹を枯葉剤で葉っぱ一枚落ちない様にしおれさせていった。 確かに「安かろう悪かろう」は万国共通だが、値段相応は必ずしも否とは言えない。 かつて低価格帯の唯一神『softhouse-seal』は、ロープライスながらも、RPGやアクションに挑戦したり、主題歌を入れる等ネタ性やインパクト勝負で作品に熱意を込め、人々を大いに賑わせてくれた。 しかし今年のロープライス勢には、そういった気概すら感じ取れない、選評者が血反吐を出してようやく瞬間風速的な話題にできる程度のクソゲーばかり。 いかにKOTYeの精鋭といえど、ゲロうんこ茶漬けや無添加毒マフィンを食わされ続けては体が悲鳴を上げるし、生きて碑を残す気力すら失ってしまう。 故に、本年度のクソゲーに要求されるのは、そういった鬱積した感情を吹き飛ばすかのような、圧倒的『パワー』。 次点以上に選ばれたのは、そんな欲求不満を解決できるに値する選りすぐりが顔を見合わせる構図となった。 老兵が最期に遺した死に水『JINKIーU』。 古豪が心血を注いだ悲劇『エルフ』。 王者のトワイライトゾーン『モラトリアム』。 これらはいずれも殴り合いながら奈落へと堕ちる毒腐拳の持ち主であった。 さて、ここで今一度Kotyeの立ち位置について振り返っておこう。 そもそもKotyeは、その年一番の「クソ」な「エロゲー」を決める祭典であった。 しかしエロゲーは、コンシューマー以上に「嗜好品」という意味合いが強いため、より多角的な視点での品評が必要とされてきた。 故に「門番」や「選外」の概念はなく、有力視されたものを「次点」とし、その頂に「大賞」の戴冠が与えられるピラミッド制を続けてきたのだ。 思えば我々は創生期以来、「クソゲーとは何か」を探求してきた。 しかし本家KOTYの消滅によって、より深く入りこんだ根本的な課題と相まみえる必要を強いられた。 すなわち、「ゲームとは何か」。もっと言えば、「何故ゲームは作られるのか」。 富、名声、権力、人がゲームを作るモチベーションは数あるだろう。だがいつの時代も、創作の世界で人を突き動かしてきたのは一つだ。 それは、「夢の体現」である。 思い描いた誇大妄想を理想の形に押し込め誰もが笑って楽しめる娯楽に仕上げる、それこそが創造(クリエイト)精神だ。 エロゲーはそれにアダルト要素を一つまみしたものに過ぎない。 ならば「最もクソなエロゲー」は、「最も創造の範囲を超越したクソゲー」に激賞されるべきであろう。 成程、確かに『JINKIーU』は過去のKOTYe大賞と比較しても遜色のないクソゲーだ。 ストーリーは希薄、あって当然の機能すら何一つない、RTSパートは欠陥だらけ穴だらけ。正直、褒めるところを探す方が難しい作品である。 だが、プレイした者なら分かるが、戯画サイドが「もうこんなものしか作れないんです。すいません……」という立場だったらどうだろう。一体どんな思いでこのゲームを作ったのだろう。 振り返ればこの世にはクソゲーは溢れかえっている。だがその中には、クソゲーにしたくて作品を作っているわけではない開発陣もいる筈だ。 ゲーム業界は仁義なき伏魔殿である。一度探れば、冷酷で、無情で、悲惨で、無慈悲で、理不尽で、どう反応すればいいか分からないようなエピソードなど幾らでもある世界だ。 しかしそれは笑えることなのだろうか。それを他人事のように嘲笑うことに何の意味があるのだろうか。 それでは社長の黒い裏話を死後暴露して事務所だけでなくタレント諸共死体蹴りする連中と何ら変わらないではないか。 その観点から見れば、『JINKIーU』は予算も技術も人員も何一つない中、体液を全て吐くような辛く苦しい思いで絞り出した悲愴な駄作ながら、 最期の使命を全うしたという点で、温情的な面でまだ評価できる。……そんなifルートもあったかもしれない。 しかし年末の大晦日、『JINKIーU』第三の選評が海外の住民から届いたことで、その全貌が解明される。 それは人々の羨望を集めるには充分な、途方もない純度1000%の超大型地雷であり、触れると死ぬぜとでもされる正真正銘の「年末の魔物」だった。 結果、誰からも愛されず、必要とされず、何人からも罵声と嘲笑を受け、皆から最低の評価とされる地獄の窯の底の錆びの如し特級呪物という地位を確固たるものにしてしまった。 そのエレクトリカル・ダーク・パレードの輝きは、「これはひどい」が「とてもひどい」以上の語り口しか持たない本年度のクソゲーとは一線を画していたといえよう。 戯画からすればさぞ無念であろう。徒花を作らなければいけなかった苦しみを理解する者が現れなかったのだから。 されど結果は結果。本年度の大賞を、『JINKI -Unlimited-』とし、その遺碑に献花と祈りを捧げるものとする。 近年におけるSNSの発達は目覚しいが、その方向は多様性を源流としたインターネットという無限の空間でネタを楽しむ場ではなくなりつつある。 KOTYeは所轄ネタスレではあるが、ネタだからといえば何もかも許されると思っているのか、という声も少なからずあるのが実情だ。 事実本年度も、絵・キャラクター・主題歌・シナリオ、全てが最高な出来でありながら、最終決戦の絵画対決において、幻覚作用付絵具を使用して勝利という「そうはならんやろ」と味噌がついた、 構想8年の結晶『サクラノ刻』の選評が届いたことで一部に波紋が及んでいる。 Kotyeが外部スレ故に、大きな混乱こそなかったが、スレ住民を「ゲテモノ食いの食材の味が分からぬ味盲者の集まり」と断罪する者もいたほどだ。 確かにゲームをクソゲーと扱うのは、人が思う以上に勇気がいる行動ではあるだろう。ましてやそこにカタルシスやエンタメ性を求めるなど、異文化コミュニケーションもいいところだ。 我々は決してクソゲー認定者ではないと主張するが、所詮場末の俗物の偏った価値観など、大多数の前では容易く一蹴され存在を否定されるが道理だ。 そうでなくても、市場の縮小、大手の解散、低価格帯の大量流入、そして本家の活動休止……。 クソゲーを語る場は年々狭まっていっている。 これを言ってはお終いだが、折角高い金を出してゲームを遊ぶのだから、誰もが支持する名作だけをプレイしておけばいい、というのはいつの時代も同じだろう。 『KOTY』も、逆説的に万人に受け入れられるものならば、企画自体が成り立たないのである。 それでも我々が今日までクソゲーが語ってこれたのは、人が持つべき二つの究極のモチベーションによって支えられてきたからだ。 それは、『憎悪』と『愛』である。 例えば愛する者が殺され、復讐を誓う。例えば愛するものと生き別れ、己が地獄にいようとも再会を想って死力を尽くす。 その時、人はとてつもない力を発揮する。それは普通の人間には成しえない文字通り「全霊」だ。 思えばクソゲーオブザイヤーという企画は、その二つのモチベーションによって支えられてきた。 クソゲーを掴んでしまった怒りという『憎悪』を、皆と分かち合い笑って昇華する『愛』へと変えることで存続してこられた。 確かにゲームは大衆娯楽であり商品である以上、売れてもいなければ支持されてもいないものに価値を見出すのは難しいだろう。 しかしどれ程のクソゲーでも、樹海の中の泉の一滴を優しく手で掬う者。そんな人がいてもいいのではないだろうか。 エロゲ業界は終わった。そう囁く者もいる。それが本当かどうかは我々には分からない。 事実ガラパゴス化された日本のゲーム産業で、極めてニッチな人々にしか需要がない世界が先細りの一途を辿ることは予てから想像が付いていた。 コンシューマー市場ですら、携帯機が消滅し、製作費は高騰し続け、大半のサードは撤退、大手も過去の遺産とシリーズ物で食い繋いでいるのが現状だ。 実際、今の子供はゲームを遊ばなくなったと言われており、買い支えている層は高齢化の一途を辿っている。 しかしどんな形にしろ彼らはプロであり、商品を売ってお金を稼ぐ側である。どれだけ苦しかろうと言い訳をしていてはプロ失格だ。 だからこそクソゲーをネタの肴として語り合い、面白おかしく馬鹿らしく楽しむ行為はある意味で健全な行為だと思う。 『KOTY』のようなイベントで、皆がネタを笑っていられるうちは、日本のゲーム産業にはまだ未来があると思われる。 それが完全に断たれた時、その時が、この業界の本当の「終わりの始まり」を指しているのではないだろうか。 その為に、我々はどんなに道険しくとも最前線に立ち続ける。 闇なくして、光は輝く場所は失うように、 雨なくして、晴れを悦ぶ者はいないように、 名もなき修羅達は今日もクソゲーの、心躍り焦がれる物語を後世に残すため今日も黒檀をかじり、汚泥を飲み込み続ける。 いつか終わると分かっていても、まだ終わらせることはできない。我々の痕跡が、誰もが笑って過ごせる安寧の時を招くと信じて。 例えどれ程拙いエロゲーといえど、商業作品である以上、それは誰かの生き様と密接に絡み合っている。 そして今、我々はクソゲーをネタに侮蔑の笑いが出る人間のような、想像力が著しく欠如した者には決してなってはいけないのだから。 最後に、心が強い正統後継者と住民の魂の決意表明を持って、2023年度のクソゲーオブザイヤーinエロゲーを締めさせていただこう。 「ただの住民じゃねえぞ。何度でも心の強さで立ち上がってクソゲーをプレイし選評にするド級の住民! ド住民だ!」
https://w.atwiki.jp/oper/pages/798.html
第三幕 第一場 (サンドミールのマリーナ・ムニーシェクの化粧室。マリーナはトイレの向こう。娘たちはマリーナに歌を歌い始める) 娘たちの合唱 紺青のヴィスワ川の、柳の陰の下に、 素晴らしい花がありました、それは雪より白く、 鏡のような水に物憂げに自分の姿を映します、 そのあでやかな美しさに見惚れながら。 素晴らしい花の上に、太陽が輝き、 舞い飛ぶ陽気な蝶の群れが遊び、くるくる回り、 花の素晴らしい美しさにうっとりして、 見目麗しい葉に思い切って触ることができません。 そして素晴らしい花は、首を振りながら、 鏡のような水を物憂げに見ています。 マリーナ(小間使いに) 私のダイヤモンドの宝冠! 娘たちの合唱 そして賑やかな邸宅では、地主のお嬢様の美しいお方が、 川の花よりも より快く、より上品に、より白く、よりまろやかに、 すべてのサンドミールの栄光と喜びのため 豪華に咲きます。 優れたそして名門の、少なくない若者が、 本能的当惑のうちに 彼女の前に跪きます、 美人のほほ笑みをこの上ない喜びと考えて、 魅惑的な女性の足元で全世界を忘れて。 そして美女のお嬢様はいたずらっぽく笑います 恋の話しに臨んで、彼らの燃えるような激情に臨んで、 彼らのきまり悪そうな心の悶えと苦悩には 注目せずに。 マリーナ 十分です!(立ち上がる) 令嬢の美女は感謝しています やさしい言葉に、そして比べることに あの素晴らしい花と、 雪より白いと。 しかしムニーシェクの令嬢は不満です、 あなたがたのおべっかの言葉にも、 無意味なほのめかしにも 誰か優れた若者たちについての、 その群れ全体が彼女の足元に横たわった、 この上ない喜びに溺れて、という… いいえ、これらの曲は必要ありません ムニーシェクの令嬢にとっては、 その美しさを称賛しないと 私はあなたがたに期待していました... そして、素晴らしい曲の数々、 私の乳母が私に歌ってくれた、 偉大さについて、勝利について、 そしてポーランドの戦争の栄光について、 ポーランド乙女たちのあらゆる力強さについて、 打ち負かされた外国人について… これこそムニーシェクの令嬢に必要なものです、 これらの歌が彼女にとっての満足です! (娘たちに)行きなさい! (娘たち退場) マリーナ(小間使いに) あなた、ルージャ、今日は用がありません。お休みなさい… (小間使い退場) マリーナ マリーナは退屈よ。 ああ、なんて退屈なの! うんざりするほどで元気が無いくらい 日が日をついで果てしなく続いているわ。 空虚に、こんなにくだらなく、無駄に。 大勢の大公と伯爵全員、 そして高官ぶった地主たちも、 耐え難い退屈を吹き払ってはくれない。 だけどそこだけ、霞んで見える遠方で、 澄んだ朝焼けが鮮やかだった。 それはつまりモスクワのごろつきが ムニーシェクの令嬢を気に入ったこと。 私のディミトリー、恐ろしい復讐者、 無慈悲な復讐者、 神の裁きと神の罰が 小さな皇子様のための、 飽くことを知らぬ権力の犠牲者で、 ボリスの強欲の犠牲者で、 ゴドゥノフの悪意の犠牲者。 私は寝ぼけた大領主たちを目覚めさせる、 金と戦利品の輝きで 私は貴族階級の小地主たちをおびき寄せる。 そしてあなたを、私の僭称者、 悩まし気な私の恋人、 私は身を焦がす情熱の涙であなたを酔い潰す、 あなたを抱擁で窒息させ、あなたにキスをし、 愛する、私の皇子様、私のディミトリー、 私の婚約者と呼ばれている人。 柔らかい恋のせせらぎで 私はあなたの耳をうっとりさせるわ。 私の皇子様、私のディミトリー、 悩まし気な私の恋人! ムニーシェクの令嬢は退屈しすぎているわ 物憂げな打ち明け話の激しい感情に、 若者たちの熱烈な祈りに、 俗悪な大領主たちの話し方に。 ムニーシェクの令嬢は誉れを欲しているの、 ムニーシェクの令嬢は権力を欲しているの! モスクワのツァーリの玉座に 私は皇后として座るわ、 そして金色で刺繍された濃紫のマントに身を包み 太陽で輝き始めるわ。 そして私は素晴らしい美しさで打ち負かすわ 愚鈍なロシア人どもを、 そして高慢な大貴族の烏合の衆を 無理矢理叩頭させるわ。 そして褒め歌を歌うわ、物語で 実話で、おとぎ話で、 自分たちの気高い女王を 愚鈍な大貴族たちは! は、は、は、は、は、は、は、は! (ランゴーニが戸口に姿を見せる。マリーナは彼に気付き、驚いて叫ぶ) マリーナ あっ! ああ、あなたですか、わが神父 ! ランゴーニ 神の取るに足らぬ僕に許すだろうか、 この世のものと思えぬ美しさに輝く令嬢は お聞きいただくことを... マリーナ わが神父よ、尋ねてはなりません。 マリーナ・ムニーシェクは過去も未来も従順な娘です、 聖なる、聖使徒の、そして不可分の教会の。 ランゴーニ 神の教会は放棄され、忘れられ、 聖者たちの輝かしい顔は色あせた、 旺盛な信仰の純粋な源泉は荒廃し、 芳しい香炉の火がだんだん暗くなり、 聖なる受難者の傷がぱっくり口を開け、 天上の住居での悲嘆とうめき声、 つつましい牧夫の涙がこぼれる! マリーナ わが神父!あなたは...あなたは私を動揺させます。 刺すような心痛によるあなたの悲嘆のお言葉は 私の弱い心の中で響きます。 ランゴーニ わが娘!マリーナ! 異端者のロシア人どもに正しい信仰を布告せよ! 彼らを救済の道に振り向けよ。 分裂の罪深い精神を粉砕せよ。 聖大致命女マリナに賛歌を歌うであろう まばゆく輝く創造主の御座の前で 主の天使たちが! マリーナ そして聖大致命女マリナに賛歌を歌うでしょう まばゆく輝く創造主の御座の前で 主の天使たちが! うう! 何という罪でしょう! わが神父よ、ひどい罪の唆しによって あなたは罪深い魂を試しました 世慣れなくて軽はずみなマリーナの... いいえ、きらめきに慣れた私にとっては違います 光と陽気な宴の渦の中での、 いいえ、私はその運命にはありませんでした 神の教会を賛美することの。 私は無力です... ランゴーニ 自身の美しさで僭称者を魅了せよ! 愛情深く、優しく、情熱的な話で 彼の心に熱情を呼び起こせ。 燃えるように熱い眼差しで、うっとりするようなほほ笑みで 彼の理性を支配下におけ。 迷信からくる恐怖、ばかげた筋の通らぬ軽蔑、 哀れな良心の呵責、 偏見を捨てよ、空虚で取るに足らない、 見せかけのそして娘らしい馬鹿げた謙遜を 時には見せかけの怒りでもって、 変わりやすい女のむら気でもって、 時には洗練されたお世辞でもって、 熟達した巧みな欺瞞によって 彼を誘惑せよ、彼を唆せ。 そして、疲れ果てたとき、素晴らしいおまえの側にいて、 言葉を伴わぬ狂喜のうちに、命令を待つだろう、 聖なる宣伝の宣誓を要求せよ! マリーナ それを私がしなければならないのでしょうか! ランゴーニ なんだと? それでおまえは生意気に教会に反抗するのか! もし善のために容認されようとするなら、 おまえは捨てて顧みない必要があるだろう、 恐れもなく、後悔もなく...自分の廉恥を! マリーナ 何? 恥知らずの嘘つき!おまえの狡猾な言葉を呪うわ、 おまえの堕落している心を呪うわ、 私はおまえを軽蔑のあらゆる力で呪います。 私の目の前から消え失せろ! ランゴーニ マリーナ! おまえの目は地獄の激情の炎で輝き始め、 唇はゆがみ、頬は色褪せた。 不浄なひと吹きでおまえの美しさは消えた。 マリーナ おお、神よ、私を守ってください! 神よ、私に助言してください! ランゴーニ 暗黒の心がおまえを支配し、 おまえの理性を悪魔の高慢で曇らせた、 恐ろしい荘厳さで、地獄の翼に乗って、 大悪魔自身がおまえの上を舞っている! マリーナ(叫ぶ) あ! ランゴーニ 神の使者の前で驕りを捨てよ! 私に全幅の信頼を置け、衷心から、 自分の考え、願望そして夢の全てによって、 私の奴隷になるのだ! 第二場 サンドミールのムニーシェク城。公園。噴水。月夜。僭称者は夢想しながら城から出てくる。 僭称者 真夜中... 庭で... 噴水のそばで... おお、素晴らしい声! なんという喜びで あなたは私の心をいっぱいにしてくれたことか! あなたは来るだろうか、恋人よ? 来てくれるだろうか、軽やかに飛ぶ私の鳩よ? それとも向こう見ずなハヤブサを忘れてしまったのか、 あなたのことを恋しがり、大声で歌っている... 愛撫するような挨拶で、温かい言葉遣いで あなたはやり場のない心の苦痛を癒したまえ。 マリーナ!マリーナ!応えてくれ、おお、応えてくれ! 来て、来て、私はあなたを待っている! 呼び声に応えてくれ、答えてくれ! いや!答えは無い… (ランゴーニが現れる) ランゴーニ 皇子! 僭称者 また私についてきたのか。 影のように私を付け回しますね。 ランゴーニ 最も高潔な、勇猛果敢な皇子よ、 私はあなたへ遣わされました、 誇り高き美女マリーナによって。 僭称者 マリーナによって? ランゴーニ よく言うことを聞く、気立ての優しい娘 天により私に委ねられた。 彼女はあなたに言うように頼みました、 多くの悪意に満ちた嘲笑に 彼女は耐えねばならないことになったこと。 彼女があなたを愛していること、 あなたに何が起きるか... 僭称者 おお、もしあなたが嘘をついていないなら、 もし大悪魔自身でないなら それらの素晴らしい言葉を囁くのが... 私は彼女を、鳩を出世させよう、 全てのロシアの地の前に、 私は彼女の鳩を上がらせよう ツァーリの玉座に、 私は彼女の美しさで盲目にしよう 正統派の人々を! (ランゴーニの顔を見ながら) 邪悪な悪魔よ! あなたは夜の強盗のように私の心に忍び込み、 あなたは私の胸から告白を無理強いした... あなたはマリーナの愛について嘘をついたのか? ランゴーニ 嘘?…私が嘘をついた? それもあなたの前に、皇子? ええ、あなただけのために 昼も夜も彼女は悩み、苦しみ、 あなたのうらやましい運命について 夜の静けさの中で夢想しています。 おお、もしあなたが彼女を愛していたら、 彼女の苦しみを知っていれば、 高慢な地主たちの嘲笑、 彼らの偽善的な妻たちの妬み、 低俗なデマ、空虚な戯言 秘密の逢引についての、接吻についての、 耐え難い侮辱の連鎖。 おお、そうしたらあなたははねつけなかっただろう 私の慎ましい、ゆるぎない祈りを、 あなたは哀れなマリーナの不幸を嘘とは呼ばなかったろう。 僭称者 もうたくさんだ! 少し非難が多すぎる、 少し私は長く隠し過ぎていた 自分の幸せを他人から! 私はマリーナのために勇敢に戦おう、 傲慢な地主を取り調べよう、 彼らの恥知らずな妻たちの腹黒さを一掃しよう。 私は彼らのみじめな悪意を嘲笑い、 冷淡な令嬢たちの群れ全体の前で マリーナへの無限の愛を告白しよう。 (熱烈に) 私は懇願しながら、彼女の足元に身を投げ出す 私の燃えるような熱情を拒絶しないでと、 私の妻に、皇后に、恋人になってくれと... ランゴーニ(脇を向いて) 支援して下さい、聖イグナティオス。 僭称者(イエズス会士に) 世界を拒否するあなた、 呪いによって人生のすべての喜びを裏切るあなたは、 色事の手腕の傑出した達人だ、 私はあなたを召喚する、あなたの誓いのすべての力をもって、 天国の至福を熱望するすべての力をもって! 私を彼女のところに連れて行ってくれ、 おお、彼女に会わせてくれ、 私の愛について話させてくれ 私の苦しみについて、 そして、私を散々苦しめたのだったらその価格は無い! ランゴーニ つつましやかで罪深い聖地巡礼者は 自分の近縁者たちのための、 最後の審判の恐ろしい日について 主の恐ろしい天罰について、 その日にやってくる、 絶え間なく考えながら、 だいぶ以前に生き返った死体が、 冷たい石が望むことができるでしょうか 人生の宝を? しかしもし、ディミトリーよ、神の暗示によって、 謙虚な人の願いを拒否しないなら:つまり 息子のように彼を見捨てず、 彼の一歩ごとまた考えを見守り、 保護し、彼を護衛する… 僭称者 ええ、私はあなたから去りはしない、 ただ私のマリーナと会わせてくれ、 彼女を抱擁させて欲しい... ランゴーニ 皇子、隠れて! あなたはここで見つかってしまう 宴会の大領主たちの群れに。 避けて、皇子! どうかお願いします、どこかに行って! 僭称者 彼らは道を行く、私は敬意を持って彼らに会おう、 献身と尊厳の位に相応しく... ランゴーニ 考え直しなさい、皇子! あなたは自分自身を破滅させる、 あなたはマリーナを裏切るだろう、 すぐ出かけなさい。 (ランゴーニは僭称者を連れて去る) (僭称者とランゴーニのシーンが削除された場合、ランゴーニの最後のセリフが僭称者のセリフになる) 僭称者 だが、私は何を聞いたのか? ここに来る、私は隠れなくては… 宴会で飲食した大領主の集団が来る。 彼女だ…マリーナだ!(隠れる) (客の一団が城から出てくる) マリーナ(年取った地主と腕を組んで) 私はあなたの情熱を信じていません、地主様、 あなたの誓い、保証 - すべて無駄です、 そしてあなたはできません、地主様、 あなたの演説で欺くことは。(通過する) 地主たち そしてモスクワ皇国を われらは素早く征服します! そしてロシア人どもの虜囚を あなた方のところにお連れしますよ、お嬢様方! そしてボリスの軍隊を 私たちは必ず粉砕します! 地主の令嬢たち さて、なぜこうも長く遅らせるのですか、地主がた! できるだけ早くあなた方がモスクワに行きなさい、 あなた方がボリスを捕虜にしなさい、 一体なぜあなた方は長い間遅らせるのですか! 地主たち 我らはモスクワに急ぐ必要があります、 捉える、捉える、ボリスを捕虜に捉えるため! (庭園から城へ戻る) ポーランド・リトアニア共和国のために ロシア人どものねぐらを破壊しなければなりません! 地主の令嬢たち マリーナは能力がありません。 美しいが、冷淡で、傲慢で、邪悪で... マリーナ(城に入り、客に向けて) ワインを、ワインを、地主様たちに! 地主の令嬢たちと地主たち ムニーシコフの健康のために乾杯しましょう! 地主たち 飲みましょう、地主がた、マリーナの健康に! 地主の令嬢たち ハンガリーの葡萄酒を飲みましょう ムニーシェクのお嬢様の健康のために! 地主たち(マリーナの後について城へ) お嬢様をハンガリーの葡萄酒で祝賀します! マリーナの王冠に栄光あれ! 地主の令嬢たちと地主たち (舞台裏で) 万歳!万歳!万歳!万歳!万歳! 僭称者(駆け込む). 悪賢いイエズス会士が、私を酷く絞めつけた おまえの忌まわしい爪で。 私はただ遠くからちらりとだけ 素晴らしいマリーナを見ることができた。 ほんの暫し魅惑のきらめきに出会うことが出来た、魅惑的な 素晴らしい彼女の目の。 そして心臓は激しく鼓動した、 激しく鼓動した、 自由を戦い取る戦いで何度も動かしたほどに、 招かれざる保護者との戦いで、 私の精神的な父との! 彼の話ぶりの耐え難いおしゃべりの下で 狡猾な厚かましさに対して、 私は歯無しの地主と腕を組んでいるところを見た、 傲慢な美女マリーナが、 うっとりするような笑顔で輝いて、 男たらしが囁いた 優しい愛撫について、 静かな情熱について 妻になる幸せについて… 歯無しの放蕩者の妻に! 運命が彼女に約束するとき 愛の悦楽と栄光を、 黄金の宝冠とツァーリの濃紫のマントを!… いいや、全部地獄に墜ちろ! むしろいっそ武具を纏え! 兜と鋼の剣。 そして馬の背に!前へ!激烈な闘いへ! 勇敢な連隊の先頭で苦しみ、 敵軍と面と向かってぶつかり、 戦いから、栄光とともに世襲の王座を掴む! マリーナ(登場する) ディミトリー!皇子!ディミトリー! 僭称者 彼女だ!マリーナ!(出迎えに行く) ここだよ、私の鳩、私の美しい人! ああ、なんてうんざりするほどで長いのだろう 待つ時間が長く感じられた、 苦しい疑惑の数々が 心をずたずたに引き裂き、 私の明るい思いを陰気にした、 私の愛と幸せを 呪うことを余儀なくさせた... マリーナ 分かっています、全て分かっています! あなたは夜ごと眠らず、夢を見ます、 そして昼も、夜もあなたのマリーナを夢見ています! いいえ、愛の言葉のためではなく、 空虚ででたらめな話のためでもありません 私はあなたのところに来ました。あなたは一人ぼっちです。 あなたは放心して私への愛から窶れるかもしれません。 僭称者 マリーナ! マリーナ いいえ、私は驚かされません、あなたは知らねばならない、 自己犠牲ではなく、あなたの死でさえなく 私への愛が原因で。 いつあなたはモスクワでツァーリにになるのですか? 僭称者 ツァーリにだって? マリーナ、あなたは心を怖がらせる! 本当に権力か、玉座の輝きなのか、 下賤な奴隷の群れ、 彼らの恥ずべき告発は あなたの中での、かき消す可能性があるのではないか、 相思相愛の聖なる熱望を、 心からの愛撫の喜びを、 熱い抱擁を そして情熱的な歓喜の魅惑的な力を? マリーナ もちろん!私たちはみすぼらしいあばら家で あなたと幸せになるでしょう。 私たちにとって栄光とは、私たちにとって王国とは何ですか? 私たちは愛のみに生きがいを見出すでしょう! もしあなたが、皇子よ、愛だけを欲するなら、 モスクワ大公国であなたにぴったりの女性が沢山見つかります 美しく、バラ色の顔の、黒貂のように濃い柔らかい絹の眉毛… 僭称者 あなたを、あなただけを、マリーナ、 私は情熱のすべての力で崇拝する、 陶酔と至福の渇望のすべてで。 私の哀れな魂の苦悩を憐れんでくれ... 私を拒否しないでくれ! マリーナ そんな風にマリーナではなく、 あなたは私の中の女だけを愛したのですか? ただモスクワの第一人者の玉座だけが、 ただ支配者の黄金の宝冠だけが 私を...誘惑...できました。 僭称者 あなたは私の心を傷つけた、残酷なマリーナ、 死のようなあなたの言葉から 冷気が心へと漂う。 ご覧、私はあなたの足元にいる、 あなたの足元で私はあなたに懇願する: 私の理性を失った愛を撥ね付けないでくれ! マリーナ 立って、優しい恋人よ。 余計な懇願で自分を疲れさせないで。 立って、悩まし気な受難者よ! 私はあなたが気の毒よ、気の毒よ、私のあなた、 あなたは疲れ果てたわ、疲労困憊だわ、 ご自分のマリーナへの愛から、 昼も夜も彼女を夢見て、 玉座について考えることを放り投げた、 ツァーリのボリスとの闘いについて... 失せろ、図々しい放浪者! 僭称者 マリーナ、どうしたのだ? マリーナ 去れ、ポーランドの地主の手先! 去れ、走狗! 僭称者 待ちなさい、マリーナ! 私にはあなたが投げつけたような気がした、 重い咎めを 私のこれまでの人生に… あなたは嘘をついている、誇り高いポーランド女性よ! 私は皇子だ! ルーシの隅々から統率者たちが集まった。 明朝、私たちは戦いへと疾走します 勇ましい親兵たちを率いて、 名誉ある勇士たちを - そして真っすぐに モスクワ・クレムリンへ、 父祖の玉座へ 運命によって遺された! しかし、私がツァーリとして座るとき、 近寄りがたい尊大さで、 おお、どんなに大喜びで 私はあなたを嘲笑するか、 おお、どれほど喜んであなたを見ているか、 いかにあなたが、失った王国に悩みながら、 従順な奴隷として媚びへつらうか、 私の玉座の足台に向かって... その時には私は皆に笑うように命じるだろう、 愚かなポーランドの小地主貴族女性を! マリーナ 笑うですって!? おお、皇子、お願いだから、 おお、邪悪な言葉で私を呪わないで。 非難でも、嘲笑でもなく、 それらは純粋な愛に聞こえるわ、 あなたの栄光への渇望、偉大さへの渇望によって 夜の静寂に響きます、 私の愛する人、ああ私の愛する人。 あなたのマリーナは裏切らないわ! 忘れて、おお彼女のことは忘れて、 ご自分の愛を忘れて、 急いで、ツァーリの玉座へ急いで! 僭称者 マリーナ!私の魂の地獄のような苦痛を 偽りの愛で毒しないでください! マリーナ 愛しているわ、あなたを、私の恋人! 私の夫! 僭称者 おお、もう一度、もう一度言ってくれ、マリーナ! おお、喜びを冷やさないで 魂に満足を与えてくれ、私を魅了する人、 私の命! マリーナ 私のツァーリ! 僭称者 立ちなさい、わが最愛の妃よ! 抱きしめて、恋人よ、立ち上がって、抱きしめて! マリーナ ああ、あなたはどのように私の心を蘇らせたのでしょう、 私の信頼するお方! (抱き合う。 ランゴーニが現れ、僭称者とマリーナを遠くから見ている。) 宴会の主人たち(舞台裏で) 万歳!万歳!万歳!万歳! ТРЕТЬЕ ДЕЙСТВИЕ ПЕРВАЯ КАРТИНА Уборная Марины Мнишек в Сандомире. Марина за туалетом. Девушки занимают Марину песнями. ХОР ДЕВУШЕК. На Висле лазурной, под ивой тенистой, Есть чудный цветочек, он снега белее, В зеркальные воды лениво глядится, Любуясь своею роскошной красою. Над чудным цветочком, блистая на солнце, Рой бабочек резвых играет, кружится; Пленённый чудесной красою цветочка, Прелестных листочков не смеет коснуться. И чудный цветочек, кивая головкой, В зеркальные воды лениво глядится. МАРИНА горничной. Алмазный мой венец! ХОР ДЕВУШЕК. А в замке весёлом красавица панна, Цветочка речного Милее, нежнее, белее, нежнее, На славу и радость всего Сандомира Роскошно цветёт. Немало молодцов, блестящих и знатных, В невольном смущеньи Пред нею преклонялись, Улыбку красотки блаженством считая, У ног чародейки весь мир забывая. А панна-красотка лукаво смеялась Над речью любовной, над страстью их пылкой, Томленьям и мукам сердец их смущённых Не внемля. МАРИНА. Довольно! Встаёт. Красотка панна благодарна За ласковое слово и за сравненье С тем цветочком чудным, Что белее снега. Но панна Мнишек недовольна Ни речью вашей льстивой, Ни бессмысленным намёком На каких-то молодцов блестящих, Что целою толпою у ног её лежали, В блаженстве утопая… Нет, не этих песен нужно Панне Мнишек, Не похвал своей красе От вас ждала я… А тех песенок чудесных, Что мне няня напевала О величье, о победах, И о славе воев польских, О всемощных польских девах, О побитых иноземцах… Вот, что нужно панне Мнишек, Эти песни ей отрада! Девушкам. Ступайте! Девушки уходят. МАРИНА горничной. Ты, Рузя, мне не нужна сегодня. Отдохни… Горничная уходит. МАРИНА. Скучно Марине. Ах, как скучно-то! Как томительно и вяло Дни за днями длятся. Пусто, глупо так, бесплодно. Целый сонм князей и графов, И панов вельможных Не разгонит скуки адской. Но лишь там, в туманной дали, Зорька ясная блеснула; То Московский проходимец Панне Мнишек приглянулся. Мой Димитрий, мститель грозный, Мститель беспощадный, Божий суд и Божья кара За царевича-малютку, Жертву власти ненасытной, Жертву алчности Бориса, Жертву злобы Годунова. Разбужу же я магнатов сонных; Блеском злата и добычи Заманю я шляхту. А тебя, мой самозванец, Мой любовник томный, Опою тебя слезами страсти жгучей, Задушу тебя в обьятьях, зацелую, Милый, мой царевич, мой Димитрий, Мой жених названный. Нежным лепетом любовным Слух твой очарую. Мой царевич, мой Димитрий, Мой любовник томный! Панне Мнишек слишком скучны Страсти томной излиянья, Пылких юношей моленья, Речи пошлые магнатов. Панна Мнишек славы хочет, Панна Мнишек власти жаждет! На престол царей Московских Я царицей сяду, И в порфире златотканной Солнцем заблистаю. И сражу красой чудесной Я москалей тупоумных, И стада бояр кичливых Бить челом себе заставлю. И прославят в сказках, Былях, небылицах Гордую свою царицу Тупоумные бояре! Ха, ха, ха, ха, ха, ха, ха, ха! Рангони показывается в дверях. Марина вскрикивает, увидев его. МАРИНА. А! Ах, это вы, мой отец! РАНГОНИ. Дозволит ли ничтожному рабу господню Красою неземной блистающая панна Просить внимания… МАРИНА. Отец мой, вы не просить должны. Марина Мнишек дочерью послушною была и будет Святой, апостольской и нераздельной церкви. РАНГОНИ. Церковь Божия оставлена, забыта. Лики светлые святых поблёкли, Веры живой источник чистый глохнет, Огнь кадильниц благовонных меркнет, Зияют раны святых страстотерпцев, Скорбь и стоны в обителях горних, Льются слезы пастырей смиренных! МАРИНА. Отец мой! Вы… вы смущаете меня. Болью жгучею речь ваша скорбная В слабом моём сердце отдаётся. РАНГОНИ. Дочь моя! Марина! Провозвести еретикам москалям веру правую! Обрати их на путь спасенья. Сокруши дух раскола греховный. И прославят Марину святую Пред престолом Творца лучезарным Ангелы Господни! МАРИНА. И прославят Марину святую Пред престолом Творца лучезарным Ангелы Господни! У! Грех какой! Отец мой, соблазном страшным Вы искусили душу грешную Неопытной и ветреной Марины… Нет, не мне, привыкшей к блеску В вихре света и пиров весёлых, Нет, не мне на долю пало Церковь Божию прославить. Я бессильна… РАНГОНИ. Красою своею плени самозванца! Речью любовною, нежною, пылкою Страсть зарони в его сердце. Пламенным взором, улыбкой чарующей Разум его покори. Страх суеверный, нелепый презри, Угрызения совести жалкой, Брось предрассудок, пустой и ничтожный, Скромности ложной и вздорной девичьей Порою гневом притворным, Капризною прихотью женской, Порою тонкою лестью, Искусным и ловким обманом Искуси его, обольсти его. И, когда истомленный, у ног твоих дивных, В восторге безмолвном, ждать будет велений, Клятву потребуй святой пропаганды! МАРИНА. Того ли мне нужно! РАНГОНИ. Как? И ты дерзновенно противишься церкви! Если за благо признано будет, Должна ты пожертвовать будешь, Без страха и без сожаленья… честью своею! МАРИНА. Что? Дерзкий лжец! Кляну твои речи лукавые, Сердце твоё развращённое, Кляну тебя всей силой презрения. Прочь с глаз моих! РАНГОНИ. Марина! Пламенем адским глаза твои заблистали, Уста исказились, щёки поблёкли; От дуновенья нечистого исчезла краса твоя. МАРИНА. О, Боже, защити меня! Боже, научи меня! РАНГОНИ. Духи тьмы тобой овладели, Гордыней бесовской твой ум помрачили, В грозном величьи, на крыльях адских, Сам сатана парит над тобою! МАРИНА вскрикивает. А! РАНГОНИ. Смирись пред божьим послом! Предайся мне, всей душою, Своим всем помыслом, желаньем и мечтою; Моею будь рабой! ВТОРАЯ КАРТИНА Замок Мнишека в Сандомире. Сад. Фонтан. Лунная ночь. Самозванец выходит из замка, мечтая. САМОЗВАНЕЦ. В полночь… в саду… у фонтана… О, голос дивный! Какой отрадой Ты мне наполнил сердце! Придешь ли ты, желанная? Придешь ли, голубка моя легкокрылая? Аль позабыла ты буйного сокола, Что по тебе грустит, надрывается… Приветом ласковым, речью нежною Ты утоли муку сердца безысходную. Марина! Марина! Откликнись, о, откликнись! Приди, приди, я жду тебя! На зов откликнись, отзовись! Нет! Нет ответа… Возникает Рангони. РАНГОНИ. Царевич! САМОЗВАНЕЦ. Опять за мной. Как тень преследуешь меня. РАНГОНИ. Светлейший, доблестный царевич, Я послан к вам Гордою красавицей Мариной. САМОЗВАНЕЦ. Мариной? РАНГОНИ. Послушной, нежной дочерью Мне небом вручённой. Она умоляла сказать вам, Что много насмешек злобных Пришлось перенесть ей. Что вас она любит, Что будет к вам… САМОЗВАНЕЦ. О, если ты не лжёшь, Если не сам сатана Шепчет те речи чудесные… Вознесу её, голубку Пред всею русскою землёй, Возведу её голубку На царский престол, Ослеплю её красою Православный люд! Всматриваясь в лицо Рангони. Злой демон! Ты как тать ночной, закрался мне в душу, Ты вырвал из груди моей признанье… Ты о любви Марины лгал? РАНГОНИ. Лгал?… Я лгал? И пред тобою, царевич?… Да по тебе одном И день, и ночь она томиться и страдает, О судьбе твоей завидной В тиши ночной мечтает. О, если б ты любил её, Если б ты знал её терзанья, Гордых панов насмешки, Зависть их жён лицемерных, Пошлые сплетни, бредни пустые О тайных свиданьях, о поцелуях, Рой оскорблений невыносимых; О, ты не отвергал бы тогда Мольбы моей скромной, моих уверений, Ложью не назвал бы муку бедной Марины. САМОЗВАНЕЦ. Довольно! Слишком много упрёков, Слишком долго скрывал я От людей своё счастье! Я за Марину грудью стану, Я допрошу панов надменных, Коварство жён их бесстыдных разрушу. Я осмею их жалкую злобу, Пред целой толпою бездушных паненок Откроюсь в любви безграничной Марине. Пылко. Я брошусь к ногам её, умоляя Не отвергать пылкой страсти моей, Быть мне женою, царицею, другом… РАНГОНИ в сторону. Вспомоществуй, святой Игнатий. САМОЗВАНЕЦ иезуиту. Ты, отрекшийся от мира, Проклятью предавший все радости жизни, Мастер великий в любовном искусстве, Заклинаю тебя, всей силой клятвы твоей, Всей силой жажды блаженства небесного! Веди меня к ней, О, дай мне увидеть её, Дай сказать о любви моей О страданьях моих, И нет той цены, что смутила б меня! РАНГОНИ. Смиренный, грешный богомолец За ближних своих, О страшном дне последнего суда О грозной каре Господней, Грядущей в тот день, Всечасно помышляющий, Труп давно оживший, Хладный камень может ли желать Сокровищ жизни? Но если, Димитрий, внушеньем божьим, Не отвергнет желаний смиренных Не покидать его как сына, Следить за каждым шагом его и мыслью, Беречь и охранять его… САМОЗВАНЕЦ. Да, я не расстанусь с тобой, Только дай мне увидеть Марину мою, Обнять её… РАНГОНИ. Царевич, скройся! Тебя застанет здесь Толпа пирующих магнатов. Уйди. Царевич! Умоляю; уйди! САМОЗВАНЕЦ. Путь идут, я встречу их с почётом, По сану доблести и чести… РАНГОНИ. Опомнись, царевич! Ты погубишь себя, Ты выдашь Марину, Уйди скорее. Рангони уводит Самозванца. В случае купирования сцены Самозванца и Рангони последние реплики Рангони перетекстовываются и передаются Самозванцу САМОЗВАНЕЦ. Но что я слышу? Сюда идут; мне скрыться должно… Идет толпа пирующих магнатов. Она… Марина! Скрывается. Из замка выходит толпа гостей. МАРИНА под руку со старым паном. Вашей страсти я не верю, пане, Ваши клятвы, уверенья - все напрасно, И не можете вы, пане, Речью вашей обмануть. Проходят. ПАНЫ. И Московско царство Мы полоним живо! И москалей пленных Приведём к вам, панны! А войска Бориса Разобьём наверно! ПАННЫ. Ну, так что же долго медлить, паны, вам! На Москву скорей идите вы; Вы Бориса в плен берите, Что же долго медлить вам! ПАНЫ. На Москву спешить должны мы, Взять, взять, в плен Бориса взять! Возвращаясь из сада в замок. Для Речи Посполитой Надо разорить гнездо москалей! ПАННЫ. Марина не сумеет. Красива, но суха, надменна, зла… МАРИНА входит в замок, гостям. Вина, вина, панове! ПАННЫ И ПАНЫ. Пьём бокал за здравье Мнишков! ПАНЫ. Пьём, паны, Марины здравье! ПАННЫ. Венгерским пьём За здравье панны Мнишек! ПАНЫ следуют за Мариной в замок. Панну чествуем венгерским! Слава царскому венцу Марины! ПАННЫ И ПАНЫ за сценой. Виват! Виват! Виват! Виват! Виват! САМОЗВАНЕЦ вбегает. Иезуит лукавый, крепко сжал меня В когтях твоих проклятых. Я только мельком издали Успел взглянуть на дивную Марину. Украдкой встретить блеск чарующий Очей ее чудесных. А сердце билось сильно, Так сильно билось, Что не раз толкало с бою взять свободу, Подраться с покровителем незваным, Отцом моим духовным!… Под болтовню несносную его речей До наглости лукавых, Я видел под руку с паном беззубым Надменную красавицу Марину; Пленительной улыбкой сияя, Прелестница шептала О ласке нежной, О страсти тихой, О счастьи быть супругой… Супругой беззубого кутилы! Когда судьба сулит ей Любви блаженство и славу, Венец златой и царскую порфиру!… Нет, к чёрту всё! Скорее в бранные доспехи! Шелом и меч булатный. И на коней! Вперёд! На смертный бой! Мчаться в главе дружины хороброй, Встретить лицом к лицу вражьи полки, С боя, со славой взять наследный престол! МАРИНА входит. Димитрий! Царевич! Димитрий! САМОЗВАНЕЦ. Она! Марина! Идет навстречу. Здесь, моя голубка, красавица моя! О, как томительно и долго Длились минуты ожиданья, Сколько мучительных сомнений, Сердце терзая, Светлые думы мои омрачали, Любовь мою и счастье Проклинать заставляли… МАРИНА. Знаю, всё знаю! Ночей не спишь, мечтаешь ты, И день, и ночь мечтаешь о своей Марине! Нет, не для речей любви, Не для бесед пустых и вздорных Я пришла к тебе. Ты наедине с собою Можешь млеть и таять от любви ко мне. САМОЗВАНЕЦ. Марина! МАРИНА. Нет, меня не удивят, ты должен знать, Ни жертвы, ни даже смерть твоя Из-за любви ко мне. Когда ж царём ты будешь на Москве? САМОЗВАНЕЦ. Царём? Марина, ты пугаешь сердце! Ужели власть, сияние престола, Холопов подлых рой, Их гнусные доносы В тебе могли бы заглушить Святую жажду любви взаимной, Отраду ласки сердечной, Объятий жарких И страстных восторгов чарующую силу? МАРИНА. Конечно! Мы и в хижине убогой Будем счастливы с тобой; Что нам слава, что нам царство? Мы любовью будем жить одной! Если вы, царевич, одной любви хотите, В Московии найдётся для вас немало женщин Красивых, румяных, бровь соболиная… САМОЗВАНЕЦ. Тебя, тебя одну, Марина, Я обожаю всей силой страсти, Всей жаждой неги и блаженства. Сжалься над скорбью бедной души моей… Не отвергай меня! МАРИНА. Так не Марину, Вы только женщину во мне любили? Лишь престол царей московских, Лишь златой венец державный Искусить… меня… могли бы. САМОЗВАНЕЦ. Ты ранишь сердце мне, жестокая Марина; От слов твоих могильный Хлад на душу веет. Видишь, я у ног твоих, У ног твоих молю тебя Не отвергай любви моей безумной! МАРИНА. Встань, любовник нежный. Не томи себя мольбой напрасной. Встань, страдалец томный! Мне жаль тебя, мне жаль, мой милый, Изнемог ты, истомился, От любви к своей Марине, День и ночь о ней мечтаешь, Бросил думать о престоле, О борьбе с царём Борисом… Прочь, бродяга дерзкий! САМОЗВАНЕЦ. Марина, что с тобой? МАРИНА. Прочь, приспешник панский! Прочь, холоп! САМОЗВАНЕЦ Стой, Марина! Мне чудилось, ты бросила Укором тягостным Моей минувшей жизни… Лжёшь, гордая полячка! Царевич я! Со всех концов Руси вожди стеклися. Заутро в бой летим В главе дружин хоробрых, Славным витязем - и прямо В Кремль Московский, На отчий престол, Завещанный судьбой! Но, когда царём я сяду, В величьи неприступном, О, с каким восторгом Я насмеюсь над тобой, О, как охотно я посмотрю на тебя, Как ты, потерянным царством терзаясь, Рабою послушною будешь ползти К подножью престола моего… Всем тогда смеяться я велю Над глупою шляхтянкой! МАРИНА. Смеяться!? О, царевич, умоляю О, не кляни меня за речи злые. Не укором, не насмешкой, Но чистой любовью звучат они, Жаждой славы твоей, жаждой величья Звучат в тиши ночной, Мой милый, о мой коханый. Не изменит твоя Марина! Забудь, о забудь о ней, Забудь о любви своей, Скорей, скорей на царский престол! САМОЗВАНЕЦ. Марина! Адскую муку души моей Не растравляй любовью притворной! МАРИНА. Люблю, тебя, мой коханый! Мой повелитель! САМОЗВАНЕЦ. О, повтори, повтори, Марина! О, не дай остыть наслажденью, Дай душе отраду, моя чаровница, Жизнь моя! МАРИНА. Царь мой! САМОЗВАНЕЦ. Встань, царица моя ненаглядная! Обними ты желанного, встань, обними! МАРИНА. О, как сердце моё оживил ты, Повелитель мой! Обнимаются. Появляется Рангони и наблюдает за самозванцем и Мариной издали. ПИРУЮЩИЕ ПАНЫ за сценой. Виват! Виват! Виват! Виват! この日本語テキストは、 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス の下でライセンスされています。@ chappi Mussorgsky,Modest/Boris Godunov/4
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毎日新聞備後版(2001・5~10) 路傍の詩 清水凡平 (筆者Profile) http //www.bes.ne.jp/forum/bingoohrai/robouta/writer.html (バックナンバー) http //www.bes.ne.jp/forum/bingoohrai/robouta_bak/back02.html 「筆者プロフィール」を読むと、連載は毎日新聞備後版で全国版では読めないもののようです。沖縄戦座間味のルポは2001年5月から10月の連載です。WEB掲載第133回から141回の相当し、毎日新聞備後版では第440章から465章に相当します。転載元のWEBページには書き起こし時の誤字や字句の脱落があるようですが、そのまま転載し資料としました。ここでは宮平秀幸氏の証言部分を太字で示し、証言がある章には★印をつけました。 路傍の詩WEB第133回440章「座間味島」~ 断崖多い複雑な地形 441章「悲の序幕」~ 記憶に激戦の光景 ★ 442章「マルレ」~ 体当たり特攻と覚悟 WEB第134回443章「沖縄攻略」~ 14歳で郷土防衛隊 ★ 444章「舟艇壊滅」~ 長谷川少尉も死亡 ★ 445章「証言」~ 生還できぬ特攻と覚悟 WEB第135回446章「ドラマ」~ 微妙に揺れ動く心情 447章「戦力差」~ 全員玉砕ヲ期ス ★ 448章「上陸前夜」~ 自決の手助けを頼む ★ WEB第136回449章「眼前の敵」~ 恐怖と緊張感が増幅 ★ 450章「米軍上陸」~ 海を覆い隠す艦船 ★ 451章「負傷前後」~ 米兵の姿が狂気増幅 ★ WEB第137回452章「惨死(1)」~ 座間味集落で200人 453章「惨死(2)」~ 恩納川原周辺で329人 454章「惨死(3)」~ 差別への反発も拍車 ★ WEB第138回455章「斬り込み(1)」~ 精鋭な部下三分の二失う 456章「斬り込み(2)」~ 国家への不振と絶望 457章「斬り込み(3)」~ 意気盛んな将校斥候 WEB第139回458章「斬り込み(4)」~ 満月の輝きに虚しさ 459章「作戦終了」~ 自決、餓死、降伏の道 460章「修羅場」~ 「血」と「死」大地に埋まる ★ WEB第140回461章「逃避行(1)」~ かすかな郷愁 心奥に 462章「逃避行(2)」~ 前途絶望の中「生」求め 463章「逃避行(3)」~ 日本に再び帰れる WEB第141回464章「鎮魂歌」~ 素朴な情感に希望 465章「礼状」~ 喜び『生』あればこそ WEB第133回 http //www.bes.ne.jp/forum/bingoohrai/robouta/old/133/index.html 440章「座間味島」~ 断崖多い複雑な地形 写真~上空から見る座間味島の風景(2000・12・15) 沖縄へは時間が許す限り船とプロペラ機。行程を楽しむ「旅」の醍醐味がある。この旅も9人乗り双発のオッター機で、那覇空港から役40㎞先の慶良間諸島外地島(座間味村)慶良間空港へ、25分のフライト。かつての日・米両空軍機と同じくね僕も慶良間の島々を空から見たかったのだ。 この季節、乗客は僕一人。「座間味島を写したい」と言ったら、「少し回り道をして、座間味上空を通りましょう」とパイロット。 東から西へ渡嘉敷島山地と慶良間海峡を飛び越え座間味島北辺で 左旋回、島の海岸線沿いに空港めざし東へUタウーン。 眼下手前は阿真の集落、その向こうに座間味港突堤。約500㍍の低空から俯瞰する小型機ならではの展望・・・。年甲斐もなく飛行兵のヒヨコだった血が騒ぐ。 1945年春、死を賭してこの空を飛んだ日本の特攻隊員や米空軍搭乗員の若い眼差しが、一瞬、僕の視線と重なりあったような感に打たれた。 外地島の空港から橋伝いに慶留間島を経て阿嘉島港までバス。阿嘉港から座間味港へは、連絡船で約10分。阿嘉島と慶留間島を結ぶ架橋の向こうの海上に、牙のような巨岩が幾つも突っ立っている。昔、中国の交易船は慶良間諸島の奇岩巨岩を見て馬歯山と呼んでいた。 ちなみに座間味島は周囲約23㌔、面積約6平方㌔で標高200㍍未満の山々が連なる。備後で言えば沼隈郡内海町の田島か横島の大きさだろう。 谷や断崖の多い複雑な地形で、人家や田畑や濱などの平地は少ない。 予約していた民宿「高月」は座間味小・中学校のそばにあり、塀にクジラの絵が躍って躍っていた。 毎日新聞 2001.5.3 441章「悲の序幕」~ 記憶に激戦の光景 ★ 写真~戦争悲劇の語り部、宮平秀幸さん=座間味で 現在の座間味島は冬に回遊してくるザトウクジラ、初夏の海亀産卵、夏は遊泳やダイビングに釣りなどの観光客で賑わう。 いつ戦いがあったのか、どこで住民集団惨死があったのか、その気配すら感じさせぬ豊かな自然と穏やかな時間がある。 民宿「高月」の主人、宮平秀幸さん(71)は船の機関士だったと言うがっしりした体格。だが、その背中と大腿部には砲弾破片による傷痕、記憶には激戦と住民惨死の光景が焼き付いといる。 「僕が初めてグラマン戦闘機を見たのは1944年10月10日。島に来ていた陸軍の特攻舟艇部隊慰問会準備のため島民や兵隊が浜にいた。 10時すぎだったか、向かいの渡嘉敷島上空から3機の飛行機が飛んできた。皆は日本軍だと思ってバンザイしたり手を振っていたが、松の木に登った僕の目の前には翼の星のマ―ク。「アメリカーだ」の叫んだら[何を言うか、引きずりおろせ]と兵隊が走って来た。とたんにダダダダと機銃掃射。皆はクモの子を散らすように逃げたが、港にいた船数隻は炎上したり沈没。沖縄本島との連絡船も・・・」。 米空軍1600機による沖縄初空襲の余波である。孤立した特攻秘密基地の島は軍の厳重な支配下におかれた。 だが、生活の自由を奪われた島民たちのの思惑はどうであれ、これらの出来事は地獄への悲劇の序幕にすぎなかったのだ。かっていた。 毎日新聞 2001.5.10 442章「マルレ」~ 体当たり特攻と覚悟 写真~体当たり攻撃の舟艇「マルレ」 (高橋文雄さん提供) 大和町(加茂郡)出身の上田朝人さんらが陸軍船舶兵特別幹部候補生第一期生で入隊したのは1944年4月10日。だが、大本営の特攻舟艇採用決定は4月下旬。特攻艇試作開始6月27日。大本営の特攻艇使用指令11月5日。知る由もない候補生達は生還できぬ特攻に否応なく取り組まれた。 「大学進学を考えていたが文科に徴兵延期はないので応募。一年半で下士官にして除隊との条件だった」とは千葉県在住の高橋文雄さん(76)>当時は19歳だったが、戦争や軍隊は甘くないと知った座間味島で九死に一生を得ている。軍隊生活と舟艇など初歩的訓練をわずか4ヶ月で終了した候補生たちは、9月5日に広島駅から鹿児島へ移動。輸送船で座間味島到着は10日。 250㌔爆雷を積むベニヤ板製の舟艇(マルレ)は自動車エンジンで敵艦船に接近して反転、艇尾から爆雷を投下して退避するのだが、海上挺進隊に組み込まれた時から隊員たちは体当たり特攻と覚悟していたようだ。しかし、島では特攻舟艇による攻撃態勢はあったが防備の備えはなかった。大本営など作戦本部は慶良間諸島への米軍攻撃を全く予想だにしていなかったという。地上戦の歩兵部隊配置がないのは当然のことでもあった。 あらためて、旧海軍で得た鉄則の一つを僕は思い出す。[無能な指揮官(リーダー)に従う者には死あるのみ」 毎日新聞 2001.5.17 WEB第134回 http //www.bes.ne.jp/forum/bingoohrai/robouta/old/134/index.html 443章「沖縄攻略」~ 14歳で郷土防衛隊 ★ 慶良間諸島略図 特攻舟艇隊は座間味島(第一戦隊104名 100隻)、阿嘉島・慶留間島(第2戦隊・同数)、度嘉敷島(第3戦隊・同数)配備。 座間味島では古座間味海岸近くの断崖に舟艇秘匿洞窟を掘った。11月中旬、各島に朝鮮人慰安婦7人ずつ配属。 1945年1月20日大本営(天皇直属の最高司令部)は沖縄を皇土防衛の捨石とする作戦決定。 同時に沖縄守備第32軍は「軍官民共生共死ノ一体化」を布告。軍命令絶対優先の専守防衛体制である。 沖縄住民への「死の強制」であり集団惨死の要因ともなった。 3月17日に硫黄島占領の米軍は艦船約1500隻、航空機約1700機、上陸部隊18万5000名を含む約54万8000名の戦力で沖縄攻略作戦発動。攻撃第一目標は特攻舟艇の存在を確認していた座間味、阿嘉、慶留間、度嘉敷の各島。沖縄本島への上陸以前に背後の敵戦力排除と、艦船や兵員休憩の場及び物資集積所確保が目的であった。 3月20日頃の座間味島には、第1戦隊に加えて約370名の勤務、整備、通信、工兵隊など兵力約470名。朝鮮人慰安婦7人と朝鮮人軍夫約300人に島民約2300人。特攻隊員平均年齢約19歳で最年小16歳。 島民も14歳から60歳までの男性は郷土防衛隊に組みこまれた。 「僕は14歳で隊員。戦隊本部付きの伝令(命令伝達役)だった」と宮原秀幸さん。 毎日新聞 2001.5.24 444章「舟艇壊滅」~ 長谷川少尉も死亡 ★ 学徒動員で陸軍入隊の長谷川修さん (長谷川家提供) 座間味国民学校(現・小学校)卒業式前日の3月23日昼近く、グラマン300機による大空襲。集落がねらわれたのはこの時が最初で、山々は全焼し家々も破壊や焼失。 24日、朝から夕方まで空襲。舟艇秘匿洞窟と陣地は執ように攻撃された。 夕方、米軍艦船やく40隻が出現。戦隊本部は焼失した学校から高月山の壕へ移動した。 25日、早朝からの空襲に加えて数を増した軍艦の艦砲射撃。昼からの砲撃は島を揺るがす凄まじさ。「砲弾が爆発すると身体が宙に跳ね上がるんだ」と宮平さんは座ったまま飛び上がって見せた。 「舟艇秘匿豪の落盤や砲撃の直撃による使用不能あるいは出撃基地そのものの破壊」(梅沢裕手記・第一戦隊長)で舟艇壊滅。集落も5軒の家が残るのみとなつた。 双三郡神杉村廻神(現・三次市)出身で第一戦隊第3中隊第3群長(小隊長)の長谷川修少尉が、脚部重傷を受けたのは3月23日から26日にかけてのようだ。僕が調べた限りでは生存の兵士たちや住民の証言に食い違いもあり、負傷と死亡の日時と場所や状況など正否は定め難いが、長谷川少尉の死に至る経過と行程を示す一つの証言がある。但しこの証言にも正確な死亡日時はない。敗戦後、国が生家に贈った遺骨箱の中は一枚の紙切れのみ。 紙切れに3月26日戦死と記された日付も不確かと言える。 毎日新聞 2001.5.31 445章「証言」~ 生還できぬ特攻と覚悟 長谷川修少尉の遺書部分(長谷川家提供) <3月23日>三中隊の壕に行きました。長谷川少尉が動けないということで面倒を見る事にしました。<24・25>私らは二日ほどタカマタ(地名)で過ごし、<26>シンナークシ(地名)のカーラ(川原)に行くことにしました。三、四日たった頃でしょうか、長谷川少尉が破傷風にかかり、首がつるようだと訴えたかと思うと、今度はひきつけを起こして苦しみだしたのです。「自分はもう駄目だから、日本刀で刺し殺してくれ」と上等兵と伍長の二人に頼み、「この娘さんたちは、ちゃんと親元へ届けてやって欲しい」私が死ぬ姿を見せないで欲しい」と言われていました。兵隊さんは持っていた拳銃で長谷川少尉の左胸を撃ち、一発で亡くなった少尉の遺体に、私達は泣きながら土をかぶせました」(宮里育江・当時22歳・座間味村史抜粋。<>内は筆者の日付)。 長谷川さんの生家は浄土真宗の善徳寺。三次中学(現・高校)卒業後、新京工業大学(旧満州)に入学し技師をめざしていたが、学徒動員で 新京陸軍部隊入隊。1944年1月、士官候補生として広島の宇品西部第87部隊へ。4月、少尉になり海上挺進隊に転属。生還できぬ特攻と覚悟させられていたようだ。8月15日付遺書がそれを物語る。童顔が残る特攻隊員9艇を先頭指揮する群長(小隊長)として、座間味島へ出発24日前の遺筆である。 死亡日時と場所は不確定だが、享年24歳。 毎日新聞 2001.6.07 WEB第135回 http //www.bes.ne.jp/forum/bingoohrai/robouta/old/135/index.html 446章「ドラマ」~ 微妙に揺れ動く心情 孫の彌有ちゃんと長谷川彌生さん =善徳寺で 「3月24日に負傷し本部壕に。25日に三中隊が迎えに来た」。「27日戦死」。「第三中隊壕で戦死」「25日夜は決別の宴にいた」(生存兵達)や、「友軍の壕に送り届けた」との地元女性証言など、さまざまな長谷川少尉関係資料を持ち福塩線塩町駅(三次市)へ。長谷川彌生さん(63)の車で善徳寺訪問は5月10日。彌生さんは長谷川修少尉の姪である。「修の母・千里が保存していた写真や遺書」を拝見した。学生時代の写真は若々しい活気に満ちた笑顔、軍隊時代は強張った表情。自由闊達な青春を国家が軍隊の檻に閉じ込めた。新京の舞台から広島に転属した当時、母へあてた手紙がある。「(略)広島はずいぶん暖かくなり勉学にも窓を開く季節と相成りました。 (略)今日の餅は焦って作られた事と涙を流して戴きました(略)」(1944・2・26)。この手紙には学生時代の面影がしのばれ「死」の切迫感はない。だが、同年8月15日付遺書には人間と青春を切り捨てた悲愴感、硬直した時代相。 「(略)思はるゝは部下となりし者なり。無能なる小官にしたがひよく訓練に従事するも御家族様の心中察するに餘りあり。厚くお詫び申し伝えられ度(略)」の文章が、微妙に揺れ動く心情を窺わせる。「人それぞれドラマがあるんですねえ」と彌生さん。だが、遺骨すら帰郷できぬ長谷川修という若者のドラマに終わりはない。無能な権力と醜欲が書いたシナリオのどこかに埋もれたまま・・・。 毎日新聞 2001.6.15 447章「戦力差」~ 全員玉砕ヲ期ス ★ 玩具のような特攻舟艇と隊員 (高橋文雄さん提供) 「米軍は座間味攻撃以前に詳細な地図と11回もの偵察対潜入で、舟艇秘匿壕の位置や日本軍陣地と兵員配置場所など知っていた。偵察隊は潜水艦からユヒナ海岸に上陸、日本軍将校1人もスパイだったと、米軍に保護されたとき通訳が教えてくれた。『なぜ敵の砲爆撃が正確なんだ』と梅沢隊長は不思議がっていたがね」と宮平さん。 慶良間諸島攻撃の米軍は艦船約80隻、上陸舟艇22隻、航空機100機、兵員約2万名。3月23日から作戦終了の28日までに使用した爆弾と砲弾は約20万㌧。座間味島へは水陸両用戦車30台とともに約4000名が上陸。 応戦する日本軍は、舟艇を失った第1戦隊104名がそれぞれ旧式拳銃と弾丸3~6発に旧騎兵用サーベル(軍刀)。他の勤務隊170名、整備隊60名、工兵隊50名、水上勤務隊40名が重機関銃2挺、軽機関銃4挺、小銃約100挺余に弾丸は1挺につき15~30発。てきだん筒2と各自が手榴弾1~4発。「衛生兵の僕は手榴弾2発しかもらえぬほど武器が少なかった」と関根清さん(福島県在住)。 25日夕方、座間味の通信隊は各方面へ最後の電報を暗号でなく普通文で打電。 「敵上陸ノ公算大。全員玉砕ヲ期ス。本部ノ文長久ヲ祈ル。コレヲモッテ通信機ヲ破壊スル。サヨウナラ、サヨウナラ」(長島義男手記より。漢字と句読点は筆者)。 毎日新聞 2001.6.21 448章「上陸前夜」~ 自決の手助けを頼む ★ 集団自決の場とした忠魂碑前広場 山々を焦がす猛炎、家々を焼き尽くす業火、耳膜を破る炸裂音、地軸をゆるがす爆発、なぎ倒す爆風、なぎ払う灼熱の破片、着弾予測不能の恐怖・・・。「艦砲射撃ほど恐ろしいものはない」とは旧海軍で聞いた体験談だが、80隻余りの艦船が間断なく打ち込む砲弾の下でなすすべもない光景は、生々しい臨場感を伴って僕の脳裏に展開する。 3月25日早朝から座間味島は戦争のもっとも苛烈なルツボに投げ込まれた。 戦争という悲劇のクライマックスの幕が一挙に開いたのだ。夜9時頃、本部壕前で梅沢少佐と村長らの話を聞いた。村長らは『軍の足手まといや捕虜になるより住民一同自決したい。爆弾か手榴弾を』と要求したが、『弾丸一発でも敵を倒すためにある。住民に渡すことはできぬ』と梅沢少佐はきっぱり断った。 「僕は少佐らの近くに居た」と宮平さん。軍命令のよる住民集団惨死ではなかったとの証言である。 夜中近く、「忠魂碑前の広場で自決するので集合」と役場から各避難壕に通報。だが集合は少なく、集まった人々も砲弾飛来で逃げ散ったという。死装束として晴れ着を着た住民たちもいたが、「殺される事」への本能的恐怖心が強かったのだろう。 この通報は座間味集落のみで阿真、阿佐の集落へは届いていない。宮平さんが家族を連れて整備中隊壕へ向かったのは26日未明。自決の手助けを頼むためであった。 毎日新聞 2001.6.28 WEB第136回 http //www.bes.ne.jp/forum/bingoohrai/robouta/old/136/index.html 449章「眼前の敵」~ 恐怖と緊張感が増幅 ★ うばすての伝説を持つシンジュ(死所)の森 「その明け方、僕は家族連れで整備中隊壕に行き、自決さすことを頼んで本部壕に帰ろうとしたら、内藤中隊長や幹部らにさんざん怒られた。「軍は住民と国土を守るためにある。住民を殺すことはできぬ。早く安全な所に避難して、必ず誰かが生き残り、亡くなった人々の霊を祭るんだ。それがお前の役目だろう」と言いながら、米、梅干、金平糖、カツオブシ等軍の糧食を袋に入れてくれた。「節約すれば一ヶ月は大丈夫。何としても生きろ」 僕らはシンジュ(昔、老人の死所)の森の避難壕に向かう途中、日本刀を持つ国民学校の教頭に呼び止められた。「なんでお前らはまだ自分で死ねんのか。自決できぬなら俺が斬ってやる」と日本刀を抜こうとした。「なんでお前に孫やうちらが殺されねばならんのか」と祖父母が必死の形相で反抗したため事なきを得た」と宮平さん。敵は眼前にも居たのだ。のちに、彼は住民二人を斬殺した事が判明し島に住めなくなったという。「彼は跳ね上がりで、硬直した軍国主義的言動で住民に威張っていた。僕は余り信用していなかった。戦後しばらくして訪ねて来たとき、どこかの社長になったが座間味へは帰れなくなったと話していたよ」(梅沢裕さん談) 住民や兵たちの恐怖と緊張館をますます増幅するかのような艦砲射撃の猛威のなかで、座間味島は3月26日の朝を迎えていた。 毎日新聞 2001.7.5 450章「米軍上陸」~ 海を覆い隠す艦船 ★ 座間味島上陸の米軍兵士と水陸両用戦車 (座間味村史より) 3月26日、早朝から猛砲爆撃。午前9時、水陸両用戦車と共に上陸用舟艇で座間味港と集落と古座間味海岸の3地点に米軍上陸開始。海を覆い隠すほどひしめく艦船からは陽気なジャズが聞こえていたという。古座間味には特攻の第1中隊(31名)、第2中隊(同数)が配置されていたが、特攻舟艇が破滅した状態では隊員になすすべもなかった。米軍上陸で戦隊本部は高月山から島中央部の番所山に移動した。地形複雑な山間部で米軍を迎撃する作戦。その慌しさの中で、25日に負傷した森井芳彦少尉(広島市研屋町出身)は、移動を拒否して本部の壕内で自決。補助看護婦にされていた慰安婦エイコも移動を拒み少尉と共に自決。元衛生兵の関根清さんは移動の直前まで看病していたが、「少尉は瀕死の重傷だしエイコは僕の指示で看護していた。一緒に自決するほどの仲には見えなかったのだが・・・・・・。分らんものだ。」 女子挺身隊との甘言で慰安婦にされたエイコたちだが、その出身地、本名、年齢すら不明の現在だ。ちなみに、トミヨは負傷した梅沢少佐と共に捕虜。残り5人の慰安婦と約200人の朝鮮人軍夫は梅沢少佐の配慮でいち早く投降したが、これら朝鮮出身者のその後の空白は埋められていない。 昼近くに梅沢少佐は全員番所山の本部集結の伝令を走らせた。宮平さんの負傷もその時だった。 毎日新聞 2001.7.12 451章「負傷前後」~ 米兵の姿が狂気増幅 ★ 米軍保護下の住民。白い手製の帽子が宮平秀幸さん (米軍資料) 「午前11ごろに伝令で整備中隊壕への途中、タカマタ(地名)で砲弾の破片に背中と大腿部をやられた。「動くと出血で死ぬぞ。じっとしておれば米軍が助けるかも」と言って飛び出した比嘉伍長は銃弾を浴び戦死。近くの機関銃陣地では焼けつく銃身に水をかけて冷やす役の朝鮮人軍夫たちが敵の銃撃でバタバタ倒されていた。 「アメリカーが助けてくれるわけがない。どうせ死ぬなら家族のそばで」と覚悟。 両腕で這いながらシンジュの森の洞穴にいる家族の所にたどりついた。 母がフトンを裂いて包帯をしてくれた。急に入口が騒がしいと思ったら、目の前に銃を突きつけた大男の黒人兵がいて、入口の方に向かって何か叫んだ。英語の分らない僕は「殺されるのか」と思ったが、2人の米兵が担架で野戦病院へ運んでくれた。 同じ頃に保護された住民と役場前の川原に集められたのは午後2時すぎだったと思う。 宮平さんが負傷から米軍に保護されるまでの時間帯、座間味集落のそこかしこでは住民惨死の光景が展開していた。「米兵は婦女子を強姦して殺し、男は戦車の下敷き」などと、民家に分宿した兵たちから聞かされていた話が現実となる恐怖・・・・目の色や肌色の違う米兵の姿が狂気をも増幅したのだ。 日本軍が中国などでやって来て行為を米兵にすり替えた話だったとは、住民が知る由もなかった。 毎日新聞 2001.7.19 WEB第137回 http //www.bes.ne.jp/forum/bingoohrai/robouta/old/137/index.html 452章「惨死(1)」~ 座間味集落で200人 集団惨死した家族の遺体 (米軍資料) 「シンジュの森の壕のある家族は人声で目をさました。壕の前に米兵がずらりと並び銃口を壕に向けて立っているのだ。妻は夫をせかした。カミソリで子供達や妻の首を切りつけた夫は、最後に自分の首を切り、全員が倒れた」。「(ネコイラズを飲んだが)子供達と父親だけが死ねないで苦しんでいた。突然、父親は棒を取り出し一人の子をメッタメッタになぐりつけて殺してしまつた。小さな男の子の片手を捕まえて振り回し、再三、岩壁にぶっつけた後棒で一撃を加えた。グァッという一言で幼い子は息をひきとった。この家族は結局、父親だけが生き残るという最悪の結果となった」(座間味村史抜粋) 兵からもらった手榴弾で死んだり、放置された銃で家族を射殺したり、棒にロープをかけて家族が一斉に首つりしたりなど凄惨な死の光景が展開したが、座間味集落だけで約200人もが自分や家族の命を絶っている。 万延元(1860)年生まれの85歳の老人から、昭和19(1944)年誕生の9ヶ月の幼児まで含むこれらの「死」を個人の意思と責任にすり替える言葉だからだ。忠君愛国的死への賛美と、鬼畜米兵と叫ぶ敵への憎悪、偏見、蛮勇は国家権力が手練手管で培養・増殖し、衆愚を利用して浸透・拡張させたにほかならない。住民は「惨死」させられたのだ。 毎日新聞 2001.7.26 453章「惨死(2)」~ 恩納川原周辺で329人 集団惨死の慰霊碑 (渡嘉敷島で) 座間味島の特攻舟艇第1戦隊と阿嘉島・ 慶留間島の第2戦隊は「島民自決命令」を出していないが、渡嘉敷島の第3戦隊は米軍上陸以前の3月20日に役場を通じて「島民自決命令」を出し、自決用手榴弾32発を渡している。 3月26日、渡嘉敷島に米軍上陸を見るなり第3戦隊長赤松嘉次大尉は、「軍が保護するから西山A高地の陣地壕終結」と全島民に命令。だが、集結した島民を壕内に入れなかったため、島民は近くの恩内川原の谷や山陰に竹と木の仮小屋を造り住むことにした。島民を監視することが目的だったようだ。28日、「全島民は皇国の万歳と日本必勝を祈って自決せよ。軍は最後の兵まで戦い、全員玉砕する」と命令。手榴弾20発を追加して与えた。 この日、恩納川原周辺で島民329人が集団惨死。これには軍命令のみか、島民で組織した郷土防衛隊員が自決を促した事実も判明いている。 このほか、いわれのないスパイ容疑で軍に銃殺、斬殺、斬首された人々も多かったという。 「住民の『集団死』は手榴弾だけではなかった。カマやクワで肉親を殴り殺したり、縄で首をしめたり石や棒で叩き殺したりした。」(渡嘉敷村史)島民に対しては傲慢で残酷て玉砕宣言までした赤松大尉が8月19日に降伏して捕虜となるまで、生き残り島民は残存兵約180名との食料戦争に苦しめられていたのである。 毎日新聞 2001.8.2 454章「惨死(3)」~ 差別への反発も拍車 ★ 村役場職員と家族の集団惨死の碑。 現在,73名と確認 「郷土防衛隊員になった時、将校や下士官らが、(お前達沖縄人は2等国民だ。3等国民は朝鮮人と台湾人。本土の1等国民に負けぬ努力をせよ」。悔しかったね。その差別への反発が集団惨死を促したかも。より日本人らしく死のうとね。でも、江戸末期や明治初期に生まれた老人たちの中には孫を助けたのもいる。「見も知らぬ人間のために、大切な孫を殺されてたまるか」と連れて逃げた。天皇制教育に毒されていなかっんだ」と宮平さん。 明治政府は「富国強兵」を推進した。「富国」とは他国を侵略して人的、物的資源の搾取強奪。そのための軍備拡充と徴兵制による強兵。「八紘一字」、「一死報国」、「大東亜共栄圏」「神国日本」などスローガンを正義の旗印として醜欲を覆い隠していた。更に、皇国史観、教育勅語、君が代、日の丸、軍人勅諭、戦陣訓、靖国神社という国の道標により、国民は誕生から死への一直線の人生を定められた。 具体的に強制、監視、推進したのは末端の官愚と衆愚である。座間味村の座間味集落では村長や職員など70余人がいち早く集団惨死。住民約200人もこれに続いたが、同村内の阿真と阿佐集落や阿嘉島は皆無。慶留間島は住民の約半数が集団惨死。これらの事実を知る限り、軍人や住民の硬直性観念論者と便乗的跳ね上がりの存在の有無が、素朴な島民たちの生死を分けた子とに間違いはない。 毎日新聞 2001.8.9 WEB第138回 http //www.bes.ne.jp/forum/bingoohrai/robouta/old/138/index.html 455章「斬り込み(1)」~ 精鋭な部下三分の二失う 座間味島の地図 座間味集落での集団惨死や米軍の住民保護と知ってか知らずか、26日午後には特攻舟艇第1.2中隊(3中隊末集結)と他の兵科中隊が番所山に集結。作戦会議では、夜陰にまぎれて第1・2中隊は阿佐への高台にある敵機関銃座を攻撃し番所山の本部帰隊。他中隊は座間味集落の敵陣他攻撃後にイナザギ(地名)集結が決定したという。共に攻撃後の集結地が指示され「玉砕」はない。だが、なぜか攻撃実行は第1・2中隊のみ。関根清(衛生兵)、梅沢裕(戦隊長)両氏の手記がある。 「(月)明るさのため全員突入による効果も危ぶまれる状況であったので、突入命令は下されなかった。その中止にシビレを切らしたのか、はたまた血の気に昴じたのか、無断で集結地をはなれた」(関根)。 「待機中の戦隊第1・第2中隊が敵の機関銃陣地に独断で斬り込んだ。丁度、十時頃我々主力が位置した番所山西方稜線から遥か東方に猛烈な敵の機関銃音が起こった。そして数分にして終わった。この若武者等は出撃不能の無念、機関銃陣地が及ぼす影響を判断して叩こうとした。 本部を離れ、敵が各処に侵入したので連絡困難、斯くして連絡とらざるまま独断斬り込んだ。最も精鋭な部下の三分の二を失い落胆の極みに達した。状況把握が遅かった。連絡報告さえあれば止められたものをと残念の至である」(梅沢)。第1中尉31名全員戦死。第2中尉24名戦死、生存7名。 毎日新聞 2001.7.16 456章「斬り込み(2)」~ 国家への不振と絶望 座間味戦を語る日置英男さん(左)と長倉捷治さん 焼津(静岡)駅近くの毎日新聞販売の長倉新聞店で日置英雄さん(76)と合った。 第1戦隊第2中隊員だった日置さんは3月26日の夜の斬り込みで生き残った7名のうち一人。 沖縄戦の話と知って長倉捷治さん(59)は身を乗り出した。「母の兄も沖縄で戦死。自決だった。母を呼びます」 伯父の石原正廣中佐が沖縄本島の仲間(地名)洞窟で自決したのは5月16日。享年33歳。「米軍の追撃を避けて部下と隠れた洞窟に住民たちも居た。兄は「この戦争は負けだ。皆は洞窟を出て米軍に降伏しなさい。抵抗せねば大丈夫」と、全員を立ち去らせての自決だったそうで、兄らしい最後だと思った。住民たちは自決後の洞窟入り口をふさぎ、兄の遺体を守ってくれたお陰で遺骨と遺品がそっくりかえれたのですよ」と妹はるさん(84)。 孤独無授の戦場で自決という死に向かいあう石原中尉の心情は、特攻基地で敗戦の衝撃を受けたときの僕の心情に重なる。国家への不信とその未来への深い絶望。・・・・・ 日置さんも話始めた。「26日の朝、伝令が米軍上陸の報と番所山に移動した本部への集結命令を伝えた。25日の砲弾撃で弾薬庫が吹っ飛んだから戦える武器弾薬はない。僕らは擧銃と弾丸3発、手榴弾1発に軍刀と鉄兜、、乾パン一袋の軽装備で2中隊壕を出発した」。 だが、早くも至近距離に米兵の姿・・・・・。 毎日新聞 2001.8.23 457章「斬り込み(3)」~ 意気盛んな将校斥候 戦死の地に特攻舟艇隊員の碑を建てた 生存の戦友たち(関根清さん提供) 「2中隊壕を最後に出て座間味集落の方を見たら、ほんの50㍍先に黒人兵がしゃがんでいた。目と目が合ったが、拳銃と自動小銃じゃ勝負にならんから、僕はひたすら隊列の後から歩いた。襲ってこなかった。助かったよ。 番所山で各隊は分散して待機。しばらくして将校斥候(偵察)に安部2中隊長(少尉)と2群長江口少尉と隊員の(候補生)の僕が出ることになつた。安部中隊長は陸士出身で意気盛んな22歳。「敵に出会ったら俺は真っ先に斬り込む。貴様らも遅れるな」と訓示した。これで戦死かと思ったとたん、死んだ僕が家に帰り、「ただいま帰りました」といったら「まあ、英ちゃん、どうしてた?帰ってきたのかね」という母の声がきこえたよ」。目前に迫った死への実感が白日夢となったのでろうか。だが、15時の出発直前に将校斥侯中止。 「あとから思うと、斥侯が報告に帰らず、斬り込んで戦死するなど考えられん事。敵の状況を調べて正確な情報を報告するのが本務なんだ。 あの時に偵察していれば、むざむざ斬り込んで死なずに済んだのではと思う。若い将校らは「米軍が持久戦にしたら、こっちの戦意戦力が消耗した時をねらって狩り立てられ、惨めな死にざまになる。ならば一気に」との思い込みが強かった。また、本部命令を僕ら隊員が直接に聞く事などできなかった」。 毎日新聞 2001.8.30 WEB第139回 http //www.bes.ne.jp/forum/bingoohrai/robouta/old/139/index.html 458章「斬り込み(4)」~ 満月の輝きに虚しさ 反戦平和の誓いを刻んだ慰霊碑文(関根清さん提供) 「中隊長の「阿佐への高台にある敵機銃座攻撃」命令で、19時に1・2中隊は出発した。玉砕だと感じていたが、心の隅では「どうにかなるだろう」と思っていた。戦闘末経験だったからな。 攻撃中止を僕らは知らない。中隊長は死っていたかどうか・・・・。1中隊は谷間を、2中隊は尾根道を選んだが、月はなくて暗闇の中を迷い時間がかかった。合言葉は「山」と「川」。ふいに敵機銃が吼えて弾丸雨あられ。僕は崖斜面にへばりついたものの、乱射音の中で誰が、どこで、どうなっているのか全然判らん。僕ら数名が突入した敵機銃座では既に安部中隊長と江口群長が斬り込んで戦死。黒人兵3名もワイヤで銃座につながれ死んでいた。 中隊長らの攻撃で米軍はこの銃座を放棄したんだ。後方の敵機銃座では1中隊が突入したらしい乱射音。1中隊全滅はその時のようだ。僕がその方向に敵機関銃を回して引き金を引いたらダダダダと弾丸が飛び出し、向こうの射撃が一瞬、沈黙。更に撃ち続けようとしたとたん、右腰の拳銃の柄に弾丸命中。砕け散った木片や鉄片で右腕負傷。やむなく戦隊本部へ帰る途中に重症の佐伯少尉と出会ってたがどうすることもできず、10メートルも離れぬうちにパンと擧銃音。山中をさまよい歩いて、ふと、周囲が明るいなと空を見上げたら、満月が凄いほど輝いていたよ」。 毎日新聞 2001.9.6 459章「作戦終了」~ 自決、餓死、降伏の道 高地で特攻機を狙う米軍高射銃座。向こうは渡嘉敷島 (米軍資料) 「夜半から未明にかけて敵(日本軍)は小銃、ピストル、軍刀で米軍部隊に来襲した。迫撃砲や機関銃の射手を数回も替えるほどの猛攻で格闘も激しかった。敵100名以上を殺し、米軍は死者7名負傷者12」(米軍資料) 米軍が100名以上と敵死者数を誤認するほど肉弾戦だったようだ。とはいえ、最高指揮官の梅沢戦隊長が知らぬ斬り込みは、下級指揮官らの方に一つの勝ち目もない暴勇。貧弱な武装と戦闘末経験のまま、命令に絶対服従と叩きこまれた少年兵たちの最後は余りにもいたましい。 3月28日、「座間味70%占領、作戦終了」と発表した米軍は軍政を敷き、4月1日からの沖縄本島進攻の拠点にした。約100名の残存日本兵に米軍の脅威となる大和魂や戦力はなく、自決か餓死か降伏かの道しかなかつた。 4月20日、梅沢戦隊長は部下解散を決断。軍の命令系統と規律が消滅し、自由を得た残存兵たちは降伏し捕虜になった。 5月、米軍は島内の集団惨死や兵たちの遺体収容を住民に許した。 「特幹隊(舟艇隊)の斬り込み場所では、兵隊達の白骨化した頭に日の丸の鉢巻がしめられたまま亡くなっていた。胴体は軍服に包まれているため肉はそのままで、胸の中からは、まだ見たこともない大きなウジ虫がゾロリゾロリ出てきた」(座間味村史) 6月8日、梅沢戦隊長も米軍の捕虜となった。 毎日新聞 2001.9.13 460章「修羅場」~ 「血」と「死」大地に埋まる ★ 大城澄江さん(左)と宮原さんが立つ畑は米軍の 遺体仮埋葬地だった(座間味島で) 座間味小・中学校体育館横の畑で宮平秀幸さんの従妹、大城澄江さん(81)と合った。斬り込みの夜、再集結地のイナザキへ弾薬箱を運んでおくよう命じられた女子挺身隊員の一人。「重い弾薬箱を5人で運んだ。暗く急な山道だったが何とかイナザキに持っていった。でもいくら待っても兵隊は来ない。全滅したのかもと思って手榴弾自決の覚悟を決め、5人は頭を寄せ合って手榴弾を何度も石に叩きつけたが爆発しなかった。海に飛び込んで死のうと断崖に行ったら海上はアメリカーの船がずらり。死にそこねて捕虜になったらとまた山中へ。咽喉が渇いて小川の水を呑んだら、少し上流に子供の死体があって水面は血で染まっていた。「うちらは何を飲んでも食べても、腹こわさねぇ。」と泣き笑いしたよ」。 大城さんのいる耕作地と学校敷地は沖縄本島で戦死した米兵の遺体仮埋葬地だったという。「若い母親が赤ん坊に乳を含ませながら死顔に手ぬぐいをかぶせて自分の胸を刺したのを僕はしっている。僕の家の入り口にも斬りこみで刺殺された5人の日本兵が埋められていた。この島は、住民と日本兵の集惨死の宮平さん。 その修羅場を替わり抜けて敗戦を知らぬまま1年7カ月もの間、断崖上の茂みや、小洞穴で生延びた2名の特攻舟艇隊員がいた。 毎日新聞 2001.9.20 WEB第140回 http //www.bes.ne.jp/forum/bingoohrai/robouta/old/140/index.html 461章「逃避行(1)」~ かすかな郷愁 心奥に 陸軍特別幹部候補生時代の高橋文雄さん 千葉県舟橋市在住の高橋文雄さん(76)は当時の戦隊本部付隊員で、斬り込んだ1・2同期生。特攻舟艇出撃時には総指揮官の梅沢戦隊長と乗艇する。だが舟艇を破壊されてからは本部と共に山中へ。4月5日夜。本部選抜の5名で米軍基地へ斬り込みに行くが失敗。数日後に砲弾破片で胸と右足負傷、梅沢戦隊長も膝関節の片方を負傷した。4月20日、梅沢戦隊長の「軍としての統一行動は本日を持って打ち切り、今後は各自、分散して生き延びて欲しい」との口頭命令で、兵たちはグループや単独による行動を始めた。いち早く捕虜になった者たちが米軍のタバコやチョコレートなど持ち、「日本敗戦は近いので降伏を」と残存兵に呼びかけていた。 高橋さんの属するグループは降伏を決意したが「生きて虜囚の辱めを受けず((注・戦陣訓)という心境よりも、寧ろこれ(捕虜)によって郷里の親兄弟が周囲の人達の謗りを受けること必定との思惑から高橋さんは幸福を拒否。あの時代、捕虜になった兵の家族親類は隣組のみか社会的にきびしい差別を受けるほど、戦陣訓の狂気は民間へも強く浸透していたのだ。それだけに、捕虜となることへの兵達の苦悩は暗く重かったに違いない。だが、「生きてさえいれば」とのかすかな郷愁も心奥で揺れていたのではないか。高橋さんが踏み出した逃壁行へとその一歩にも・・・・・。 毎日新聞 2001.9.27 462章「逃避行(2)」~ 前途絶望の中「生」求め 逃避行を語る高橋文雄さん (船橋市の自宅で) 降伏よりも逃避行を選んだ高橋さんは2名の同期隊員と共に山中へ。「我々3人の潜伏した場所はね後が裏海岸に面した断崖絶壁で前方数メートルは草藪が続き、その先は赤土の斜面が露出しており、左側は遥か岬方面までこれ叉草藪が一面に続く地形」(手記)。発見されにくい夕暮れの海岸で米艦船が捨てた食料品を拾った。ビスケットの梱包、乾燥野菜、果物、バター、チーズなど多種多様な豊富さに助けられている。ときに「ウインナー(ソーセイジ)と思ったのが人糞であったり、大きなハムだと喜んで拾おうとしたら、水死体の腕や足であったり」(手記)。だが危機も迫っていた。沖縄本島占領の米軍は小規模なら座間味島の残存兵狩りをやめていなかったのである。 7月19日、米軍に発見されて2名の戦友を失い途方に暮れた高橋さんが出会ったのは日置英雄さん。「斬り込みで奇跡的に生還した二中隊の日置候補生とばったり会い、「一緒に行こう」と再三同行を求めたが、彼は「もう駄目だよ。俺は出て行くんだ」と答えながら、振り返りもせず悄然として去って行った」(手記)。斬り込みで生延びた二人だが逃避行と降伏の道にわかれた。 共通なのは、二度と斬り込みをしなかったこと、前途に絶望を抱きながらも「生」への可能性を求めたことである。 高橋さんが「孤独」の逃避行をしなかった心情もそこにあるようだ。 毎日新聞 2001.10.4 463章「逃避行(3)」~ 日本に再び帰れる 1年以上も潜伏していた小さな岬(中央) (座間味島・チシ海岸) 捕虜はまず殺されないが、敗残の逃避行は生死ぎりぎりの境界をさ迷う。 高橋さんが仲間を求めたのは、希望のない日々を生き抜くための支えが欲しかったに違いない。日置さんと別れたのち、高橋さんは本部付隊員の砂川候補生と逃避行に入った。 「私達が辿り着いて結局最後まで潜伏し通した場所は、島の裏側に当たるチシ海岸に突出した長さ約50メートル、幅20メートルほどの岩山」(手記)。宮平さんとチシ海岸の展望台へ。湾曲する海岸線からそそり立つ断崖はそのまま険しい山々となる。人跡未踏を思わせる風景だ。「ぼろぼろになった衣服に住みついた虱とりで退屈を紛らわしながら、故郷の思い出話を語りあっていたが目新しい変化もないので話の種も尽き、望郷の念にかられて無口になる日も増え、言葉さえも忘れかけて行くような気がして・・・・・」(手記)8月末、漂着のビラで敗戦を知るが信じられず。米軍の贅沢な漂着食料も少なくなって来たある日、禁を破って昼間の食料探しに出た浜で島人と出会い、逃避行に1年7ヶ月もの時が経過していたことを知る。1946年10月28日であった。「ついに生き抜いた!。懐かしい日本に再び帰りつき、故郷の土を踏みしめることが出来る」(手記)。当時の陸軍高級参謀(作戦計画担当)の言がある。 「(特攻隊)花札で言えば役のつかなぬ捨て札だ」。 毎日新聞 2001.10.11 WEB第141回 464章「鎮魂歌」~ 素朴な情感に希望 465章「礼状」~ 喜び『生』あればこそ 宮平秀幸証言とは
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仮面ライダービルド用 【フルボトル名】 【ベストマッチ名】 【イニシャル】 【モチーフ】 【単体呼称】 ラビットフルボトル ラビットタンク R/T ウサギ R(赤) タンクフルボトル 同上 R/T 戦車 T(青) ゴリラフルボトル ゴリラモンド G/D ゴリラ G(茶色) ダイヤモンドフルボトル 同上 G/D ダイヤモンド D(水色) タカフルボトル ホークガトリング T/G タカ T(橙色) ガトリングフルボトル 同上 T/G ガトリング G(灰色) 忍者フルボトル ニンニンコミック N/C 忍者 N(紫) コミックフルボトル 同上 N/C コミック C(黄) パンダフルボトル ロケットパンダ P/R パンダ P(白) ロケットフルボトル 同上 P/R ロケット R(水色) ハリネズミフルボトル ファイヤーヘッジホッグ H/S ハリネズミ H(白) 消防車フルボトル 同上 H/S 消防車 S(赤) ライオンフルボトル ライオンクリーナー L/S ライオン L(黄) 掃除機フルボトル 同上 L/S 掃除機 S(緑) ドラゴンフルボトル キードラゴン D/L 龍 D(紺色) ロックフルボトル 同上 D/L 錠前 L(金) 海賊フルボトル 海賊レッシャー K/D 海賊 K(青) 電車フルボトル 同上 K/D 電車 D(緑) オクトパスフルボトル オクトパスライト O/L タコ O(桃色) ライトフルボトル 同上 O/L ライト L(黄色) フェニックスフルボトル フェニックスロボ P/R フェニックス P(赤) ロボットフルボトル 同上 P/R ロボット R(黒) ウルフフルボトル スマホウルフ W/S 狼 W(白) スマホフルボトル 同上 W/S スマートフォン S(紺色) ローズフルボトル ローズコプター R/H 薔薇 R(赤) ヘリコプターフルボトル 同上 R/H ヘリコプター H(深緑) タートルフルボトル 不明 T/W 亀 T(緑) ウォッチフルボトル 同上 T/W 時計 W(灰色) クマフルボトル クマテレビ K/T クマ K(黄色) テレビフルボトル 同上 K/T テレビ T(白) キリンフルボトル キリンサイクロン K/S キリン K(黄色) 扇風機フルボトル 同上 K/S 扇風機 S(水色) トラフルボトル トラユーフォー T/U トラ T(黄色) UFOフルボトル 同上 T/U UFO U(桃色) クジラフルボトル クジラジェット K/J クジラ K(青) ジェットフルボトル 同上 K/J ジェット J(水色) ローラビットフルボトル 不明 なし ウサギ なし(白) サメフルボトル サメバイク S/B サメ S(青) バイクフルボトル 同上 S/B バイク B(赤) 特殊用 【フルボトル名】 【ベストマッチ名】 【イニシャル】 【モチーフ】 【単体呼称】 ドクターフルボトル エグゼイド D/G 医者 D(白) ゲームフルボトル 同上 D/G ゲーム G(桃色) 仮面ライダークローズ用 【フルボトル名】 【フォーム名】 【モチーフ】 ドラゴンフルボトル 仮面ライダークローズ 龍 ドラゴンマグマフルボトル 仮面ライダークローズマグマ 龍(特殊) 仮面ライダーグリス用 【フルボトル名】 【イニシャル】 【モチーフ】 ヘリコプターフルボトル R/H ヘリコプター 消しゴムフルボトル U/K 消しゴム クマフルボトル K/T クマ テレビフルボトル K/T テレビ 仮面ライダーマッドローグ用 【フルボトル名】 【フォーム名】 【イニシャル】 【モチーフ】 【単体呼称】 バットフルボトル マッドローグ B/E コウモリ B(紫) エンジンフルボトル マッドローグ B/E エンジン E(赤) ナーゴ ■パンチ力:44.8t ■キック力:93.6t ■ジャンプ力:138.6m(ひと跳び) ■走力:1.7秒(100m) ギャーゴ ■パンチ力:31.2t ■キック力:60.3t ■ジャンプ力:77.5m(ひと跳び) ■走力:2.4秒(100m) 44話「創世Ⅵ:ネオン、かがやく」 https //kemono.party/fanbox/user/147974 https //kemono.party/fanbox/user/147974 タイクーン シノビフォーム 紫を基調とした甲冑鎧を纏う。 胸部装甲、両肩の紋章には手裏剣の意匠を持つ。額や首元には仮面ライダーシノビと同じく手裏剣のマークやマフラーが追加される。 複眼は黄色でクラッシャー部分は紫。 専用装備は紫の苦無。 ギーツエクストラ 仮面ライダータイクーン meets 仮面ライダーシノビ 10才の裁判長 ブジンソードバックル 【名前】 シノビバックル 【読み方】 しのびばっくる 【登場作品】 ギーツエクストラ 仮面ライダータイクーン meets 仮面ライダーシノビ 【分類】 レイズバックル 【使用者】 仮面ライダータイクーン 【詳細】 仮面ライダータイクーンが使用するレイズバックルの一種。 仮面ライダーシノビの力が秘められたもの。 デザイアドライバーのスロットホップアップアセンブルへとセットし、スターターレバーを引き起動、シノビフォーム装備を実装する。 フォーム装備を装着すると、俊敏性や忍術を用いた戦闘を行えるようになる。 ドライバーの左右のどちらでもセットは可能。 劇中では右側のみに使う。 【名前】 ニンジャバックル 【読み方】 にんじゃばっくる 【登場作品】 仮面ライダーギーツ 【初登場話】 7話「邂逅VI:ラスボスと缶けり」 【分類】 レイズバックル 【使用者】 仮面ライダーギーツ など 【詳細】 仮面ライダーギーツが使用するレイズバックルの一種。 他のライダーも使用する。 デザイアドライバーのスロットホップアップアセンブルへとセットし、スターターレバーを引き起動、ニンジャフォーム装備を実装する。 フォーム装備を装着すると、俊敏性や忍術を用いた戦闘を行えるようになる。 ドライバーの左右のどちらでもセットは可能。 【機能】 クナイスターターはニンジャバックルの入力装置。 一度引き出してから再度押し込むことで、変身や各種攻撃を発動させる。 ニンジャリアクター。 ニンジャバックル使用時の変身ベルト「デザイアドライバー」の反応炉「トーラスリアクター」の出力を表示する。 シュリケンジェネレーターはニンジャバックルの特殊エネルギー生成器。 変身ベルト「デザイアドライバー」の反応炉「トーラスリアクター」と連動して忍術や必殺技などの発動時に必要となる特殊エネルギーを生成する。 また、使用武器のニンジャデュアラーの召喚が可能。 フューチャーリングシノビ 忍風戦隊ハリケンジャーでござる! シュシュッと20th Anniversary 「オクトパスエッジ!」 【名前】 オクトパスエッジ 【読み方】 おくとぱすえっじ 【登場作品】 劇場版 仮面ライダーリバイス バトルファミリア 【分類】 必殺技 【使用者】 仮面ライダーダイモン 【詳細】 仮面ライダーダイモンの必殺技。 キメラドライバーのスロットに装着したトライキメラバイスタンプを2回動かし発動。 バイスタンプが宿すオクトパスの力を顕現し、オクトパスのエネルギーを蓄積したを相手へと放つ。 「クロサイエッジ!」 【名前】 クロサイエッジ 【読み方】 くろさいえっじ 【登場作品】 劇場版 仮面ライダーリバイス バトルファミリア 【分類】 必殺技 【使用者】 仮面ライダーダイモン 【詳細】 仮面ライダーダイモンの必殺技。 キメラドライバーのスロットに装着したトライキメラバイスタンプを3回動かし発動。 バイスタンプが宿すクロサイの力を顕現し、クロサイのエネルギーを蓄積した強力なパンチを相手へと繰り出す。 ブーストマークⅢバックル 【名前】 ブーストマークⅢバックル 【読み方】 ぶーすとまーくすりーばっくる 【登場作品】 仮面ライダーギーツ 【初登場話】 37話「慕情V:純白の破壊」 【分類】 レイズバックル 【使用者】 仮面ライダーギーツ 【詳細】 仮面ライダーギーツが使用するレイズバックルの一種。 ブーストバックルの系統ながら、バックル自体は「創世の力」で浮世英寿が独自に生み出した。 デザイアドライバーのスロットホップアップアセンブルへとセットし、ハンドルレバーを回し起動、ブーストフォームマークIII装備を実装する。 ブーストバックルと同様、非常に特殊な性能を有し、各種アビリティを数倍に高める「ブーストタイム」の発動が可能。 右半分にセットすると、仮面ライダーギーツブーストマークⅢへと変身する。 ブーストバックルを遥かに上回る性能を有し、超常的な戦闘力と速度を使用者に与える。 バックルの一部を取り外し、左半分にセットするし、リボルブオンすることで、ブーストマークⅨバックルへと変化。 【名前】 ブーストマークⅨバックル 【読み方】 ぶーすとまーくないんばっくる 【登場作品】 仮面ライダーギーツ 【初登場話】 37話「慕情V:純白の破壊」 【分類】 レイズバックル 【使用者】 仮面ライダーギーツ 【詳細】 仮面ライダーギーツが使用するレイズバックルの一種。 ブーストバックルの系統ながら、バックル自体は「創世の力」で浮世英寿が独自に生み出した。 デザイアドライバーのスロットホップアップアセンブルへとセットし、ハンドルレバーを回し起動、マークⅨ装備を実装する。 ブーストバックルと同様、非常に特殊な性能を有し、各種アビリティを数倍に高める「ブーストタイム」の発動が可能。 ブーストバックルを遥かに上回る性能を有し、超常的な戦闘力と速度を使用者に与える。 そして、ブーストマークⅢバックルのバックルの一部を取り外し、左半分にセットし、リボルブオンすることで、仮面ライダーギーツⅨへ強化変身を行う。 【名前】 ブーストマークIIバックル 【読み方】 ぶーすとまーくつーばっくる 【登場作品】 仮面ライダーギーツ 【初登場話】 26話「慟哭II:真紅のブースト!」 【分類】 レイズバックル 【使用者】 仮面ライダーギーツ など 【詳細】 仮面ライダーギーツが使用するレイズバックルの一種。 ブーストバックルが「創世の女神」の力を使い、変化を行うことで生まれた。 ブーストバックル5つ分が合体している。 デザイアドライバーのスロットホップアップアセンブルへとセットし、ハンドルレバーを回し起動、ブーストフォームマークII装備を実装する。 ブーストバックルと同様、非常に特殊な性能を有し、各種アビリティを数倍に高める「ブーストタイム」の発動が可能。 通常のブーストバックルを遥かに上回る性能を有し、超常的な戦闘力と速度を使用者に与える。 更にリボルブオンにより「ビーストモード」へと姿を変えることも可能となる。 左部分へ装着した状態で、レーザーレイズライザーを装着することで、レーザーブーストフォームとなる。 【機能】 ブーストスロットルマークII。 ブーストマークIIバックルの入力装置。 バイクのスロットルのようにグリップを絞ることでコマンド入力を行う。 プロメテウスブーストリアクター。 ブーストマークIIバックル使用時の変身ベルト「デザイアドライバー」の反応炉「トーラスリアクター」の出力を表示する。 ブレイキングエグゾーストはブーストマークIIバックルの起動装置。 変身ベルト「デザイアドライバー」にセット後、入力装置「ブーストスロットルマークII」からの入力を受けて四本の排気口を同時開放することで起動し、それぞれが独立して爆発的な高出力を発揮する。 ただし、出力の上昇につれピーキーな特性が顕著となり、最大出力を得るためには高次の出力調整能力が要求される。 仮面ライダーギーツ ブーストフォームマークⅡ ギーツ フォームマークⅡ ギーツ フォームマークⅢ 仮面ライダーギーツⅨ ブーストマークⅨバックル 仮面ライダーギーツ ブーストフォームマークⅢ 【ライダー名】 仮面ライダーギーツ ブーストフォームマークⅢ 【読み方】 かめんらいだーぎーつ ぶーすとふぉーむまーくすりー 【変身者】 浮世英寿 【スペック】 パンチ力:tキック力:tジャンプ力:ひと跳びm走力:100mを秒 【基本形態】 仮面ライダーギーツ エントリーフォーム 【声/俳優】 簡秀吉 【スーツ】 中田裕士 【登場作品】 仮面ライダーギーツ(2023年) 【初登場話】 37話「慕情V:純白の破壊」 【詳細】 浮世英寿がデザイアドライバーの右半分にブーストマークIXバックルを装着し変身した「ギーツ」の超強化形態。 全身に白のアーマーを装着した姿を持ち、複眼部分が赤色に変化した他、顔の下半分に追加装甲が装着されている。 ブーストマークIXバックルはブーストマークIIバックルと同様、異なるタイプのバックルで、トップクラスの能力を秘め、身体能力が大幅に向上し、スピード重視した攻撃が最大の利点となる。 そのため、ブーストフォーム以上の能力を持っている。 単体バックルでデュアルオンに近い姿になっている。 ドライバーは 必殺技は未使用。 【活躍】 37話にて初登場。 【余談】 最強形態系が登場する期間に新フォーム登場するのはレアケースとなる。 仮面ライダーギーツⅨ 【ライダー名】 仮面ライダーギーツⅨ 【読み方】 かめんらいだーぎーつないん 【変身者】 浮世英寿 【スペック】 パンチ力:tキック力:tジャンプ力:ひと跳びm走力:100mを秒 【基本形態】 仮面ライダーギーツ エントリーフォーム 【声/俳優】 簡秀吉 【スーツ】 中田裕士 【登場作品】 仮面ライダーギーツ(2023年) 【初登場話】 38話「慕情F:九尾の白狐!」 【詳細】 浮世英寿がデザイアドライバーの右半分にブーストマークIXバックルを装着し変身した「ギーツ」の最強形態。 全身に白のアーマーを装着した姿を持ち、複眼部分が赤色に変化した他、顔の下半分に追加装甲が装着されている。 ブーストマークIXバックルはブーストマークIIバックルと同様、異なるタイプのバックルで、トップクラスの能力を秘め、身体能力が大幅に向上し、スピード重視した攻撃が最大の利点となる。 そのため、ブーストフォーム以上の能力を持っている。 単体バックルでデュアルオンに近い姿になっている。 最強形態の名に恥じない強固な装甲を持つ。 ドライバーは 拡張武装はギーツバスターQB9。 必殺技は未使用。 【活躍】 38話にて初登場。 【各種機能】 頭部はブーストマークIIバックルの能力で機能が拡張され、ブーストギーツヘッドマークIIへパワーアップ。 複眼はブーストマークIIバックルの能力拡張を受けてゴールドギーツアイへと強化され、「ブーストタイム」発動時の超加速の中でも通常と同等の安定した視界を確保する超高性能イメージセンサーや「バーミリオンギーツイヤー」が収集した情報の迅速な表示によりプレイヤーをサポートする。 耐熱性能に優れた非常に強固な複合装甲によりあらゆるダメージから頭部を保護するギーツクレストギアマークIIに保護され、プレイヤーの頭部機能を拡張する役割を持つ。 また、プレイヤーの頭部機能を数倍に高めることで超常的な分析、判断力を発揮して、超高速戦闘を可能とする。 キツネ耳を模したバーミリオンギーツイヤーは音だけでなくレーダーとして各種情報収集機能を備え、集めた情報の超高速処理により超高速戦闘に対応している。 頭部拡張装備ヘッドエグゾーストは自然発火するほどの超高密度エネルギーを放出による頭部を力点とした予測不能の高速挙動を実行する。 口腔部にはボイスチャット機能を持つブーストクラッシャーマークIIを装備。 超高速戦闘下でも、しっかりと呼吸を確保する役割を持つ。 また、クリアな会話を実現するボイスチャット機能を備えているが、爆発的な超高出力を発揮した際には、音声が多重化する場合がある。 額にはオーディットシグナルと呼ばれる検査装置を持ち、仮面ライダーの状態を常時モニタリングすることで稼働効率やダメージ状態などから変身継続性を診断し、必要に応じて変身解除を実行する。 ブーストフォームマークIIの胸部はバーミリオンブイツインに覆われている。 爆発的な超高出力を発生させることで仮面ライダーギーツのアビリティを数倍に高めて超常的な戦闘力と速度を使用者に与える「ブーストタイム」の発動を可能とする。 両肩のレッドゾーンチャージャーSはデザイアドライバーから供給されるエネルギーを超高密度に圧縮して蓄える機構を持つ。 これにより、瞬間的にブーストバックル1つ分に匹敵する超パワーを片腕に集中させることが可能となる。 腕部スペクタクルギーツアームは超高速戦闘に耐えうる強度を付与し、 仮面ライダーギーツのサプライズムーブに最適化した調整を加えることで超高速ラッシュを放つ。 自然発火するほどの超高密度エネルギー放出による打撃の超高速化により破壊力を飛躍的に上昇させる手部拡張装備バーミリオンパンチャーは必殺技発動時には展開した複数のエネルギー弾と共に超高密度エネルギーの収束により赤熱化したパンチを打ち込む。 ブーストフォームマークIIのテールユニットバーミリオンエグゾーストテールは自然発火するほどの超高密度エネルギーの噴射力を利用して空中での三次元的な挙動を可能とする。 超高速戦闘に耐えうる強度を付与し、仮面ライダーギーツのサプライズムーブに最適化した調整を加えることで、あらゆるキック技を洗練する脚部スペクタクルギーツレッグを有する。 デザイアドライバーから供給されるエネルギーを超高密度に圧縮して供給する役割を持つ膝部拡張装備であるレッドゾーンチャージャーNがまかなっている。 これにより、瞬間的にブーストバックルひとつ分に匹敵する超パワーを片脚に集中させることが可能となる。 超ジャンプ力と超走力を与える足部拡張装備バーミリオンキッカー、更に自然発火するほどの超高密度エネルギーの放出を組み合わせることで、その力を飛躍的に上昇させる。 必殺技発動時には超高密度エネルギーの収束により赤熱化したキックを打ち込む。 【ビーストモード】 リボルブオンすることで変形した形態。 テールユニットバーミリオンエグゾーストテールは自然発火するほどの超高密度エネルギーの噴射力を利用して空中での三次元的な挙動を可能とする。 更にビーストモードでは分岐による柔軟な方向転換と対象を炎で包み込む攻撃で流れるように対象を撃破する。 四肢バーミリオンビーストレッグ、四足歩行となったことで走破性と俊敏性が更に向上しており、 足裏に展開した超高密度エネルギー場を利用する空中歩行や鋭利な爪を用いた格闘戦など新たな能力が追加されている。 【ライダー名】 仮面ライダーギーツ ブーストフォームマークⅡ 【読み方】 かめんらいだーぎーつ ぶーすとふぉーむまーくつー 【変身者】 浮世英寿 【スペック(通常時)】 パンチ力:41.2tキック力:87.8tジャンプ力:ひと跳び117m走力:100mを2秒 【スペック(変形時)】 パンチ力:なしキック力:78.1tジャンプ力:ひと跳び134.7m走力:100mを1.8秒 【基本形態】 仮面ライダーギーツ エントリーフォーム 【声/俳優】 簡秀吉 【スーツ】 中田裕士 【登場作品】 仮面ライダーギーツ(2023年) 【初登場話】 26話「慟哭II:真紅のブースト!」 【詳細】 浮世英寿がデザイアドライバーの右半分にブーストマークIIバックルを装着し変身した「ギーツ」の強化形態。 ブーストフォームと異なり、全身に赤と黒を混ぜたアーマーを装着した姿を持ち、複眼部分が金色に変化した他、顔の下半分に追加装甲が装着されている。 ブーストマークIIバックルは今まで使用されていたレイズバックルと異なるタイプのバックルで、ブーストバックルと同様、トップクラスの能力を秘め、身体能力が大幅に向上し、スピード重視した攻撃が最大の利点となる。 そのため、ブーストフォーム以上の能力を持っている。 強力なものになったとはいえ、単体バックルでデュアルオンに近い姿になっている。 だが、万能ではなくブーストバックルは能力の使用が1回というデメリットがあったように、こちらは肉体への負荷が大きいというデメリットがある。 ドライバーは膨大なエネルギー供給と各種装備の展開により、プレイヤーの能力を拡張して仮面ライダーへと変える。 セットしたレイズバックルの運用次第でゲーム攻略の切り札ともなりうる基本装備。 リボルブオンすると「ビーストモード」と呼ばれる形態となる。 【各種機能】 頭部はブーストマークIIバックルの能力で機能が拡張され、ブーストギーツヘッドマークIIへパワーアップ。 複眼はブーストマークIIバックルの能力拡張を受けてゴールドギーツアイへと強化され、「ブーストタイム」発動時の超加速の中でも通常と同等の安定した視界を確保する超高性能イメージセンサーや「バーミリオンギーツイヤー」が収集した情報の迅速な表示によりプレイヤーをサポートする。 耐熱性能に優れた非常に強固な複合装甲によりあらゆるダメージから頭部を保護するギーツクレストギアマークIIに保護され、プレイヤーの頭部機能を拡張する役割を持つ。 また、プレイヤーの頭部機能を数倍に高めることで超常的な分析、判断力を発揮して、超高速戦闘を可能とする。 キツネ耳を模したバーミリオンギーツイヤーは音だけでなくレーダーとして各種情報収集機能を備え、集めた情報の超高速処理により超高速戦闘に対応している。 頭部拡張装備ヘッドエグゾーストは自然発火するほどの超高密度エネルギーを放出による頭部を力点とした予測不能の高速挙動を実行する。 口腔部にはボイスチャット機能を持つブーストクラッシャーマークIIを装備。 超高速戦闘下でも、しっかりと呼吸を確保する役割を持つ。 また、クリアな会話を実現するボイスチャット機能を備えているが、爆発的な超高出力を発揮した際には、音声が多重化する場合がある。 額にはオーディットシグナルと呼ばれる検査装置を持ち、仮面ライダーの状態を常時モニタリングすることで稼働効率やダメージ状態などから変身継続性を診断し、必要に応じて変身解除を実行する。 ブーストフォームマークIIの胸部はバーミリオンブイツインに覆われている。 爆発的な超高出力を発生させることで仮面ライダーギーツのアビリティを数倍に高めて超常的な戦闘力と速度を使用者に与える「ブーストタイム」の発動を可能とする。 両肩のレッドゾーンチャージャーSはデザイアドライバーから供給されるエネルギーを超高密度に圧縮して蓄える機構を持つ。 これにより、瞬間的にブーストバックル1つ分に匹敵する超パワーを片腕に集中させることが可能となる。 腕部スペクタクルギーツアームは超高速戦闘に耐えうる強度を付与し、 仮面ライダーギーツのサプライズムーブに最適化した調整を加えることで超高速ラッシュを放つ。 自然発火するほどの超高密度エネルギー放出による打撃の超高速化により破壊力を飛躍的に上昇させる手部拡張装備バーミリオンパンチャーは必殺技発動時には展開した複数のエネルギー弾と共に超高密度エネルギーの収束により赤熱化したパンチを打ち込む。 ブーストフォームマークIIのテールユニットバーミリオンエグゾーストテールは自然発火するほどの超高密度エネルギーの噴射力を利用して空中での三次元的な挙動を可能とする。 超高速戦闘に耐えうる強度を付与し、仮面ライダーギーツのサプライズムーブに最適化した調整を加えることで、あらゆるキック技を洗練する脚部スペクタクルギーツレッグを有する。 デザイアドライバーから供給されるエネルギーを超高密度に圧縮して供給する役割を持つ膝部拡張装備であるレッドゾーンチャージャーNがまかなっている。 これにより、瞬間的にブーストバックルひとつ分に匹敵する超パワーを片脚に集中させることが可能となる。 超ジャンプ力と超走力を与える足部拡張装備バーミリオンキッカー、更に自然発火するほどの超高密度エネルギーの放出を組み合わせることで、その力を飛躍的に上昇させる。 必殺技発動時には超高密度エネルギーの収束により赤熱化したキックを打ち込む。 【ビーストモード】 リボルブオンすることで変形した形態。 テールユニットバーミリオンエグゾーストテールは自然発火するほどの超高密度エネルギーの噴射力を利用して空中での三次元的な挙動を可能とする。 更にビーストモードでは分岐による柔軟な方向転換と対象を炎で包み込む攻撃で流れるように対象を撃破する。 四肢バーミリオンビーストレッグ、四足歩行となったことで走破性と俊敏性が更に向上しており、 足裏に展開した超高密度エネルギー場を利用する空中歩行や鋭利な爪を用いた格闘戦など新たな能力が追加されている。 必殺技は「ブーストストライク」。 更に「ブーストグランドストライク」も使用可能。 【活躍】 26話にて初登場。 ブーストマークIIバックルの誕生にはデザイアカードに同じことを書き込んだ4人の「エース」という名の人物の力が介在している(4人の名前は「A(エース) Ace Garfield(エース・ガーフィールド) 八雲栄守(やくもえーす) エース・リー」と表記されている)。 変身後はバッファゾンビジャマトフォーム、ナイトジャマト(変異態)を圧倒した。 「潰れる!流れる!溢れ出る! ドラゴンインクローズチャージ! ブラァ!」 【ライダー名】 仮面ライダークローズチャージ 【読み方】 かめんらいだーくろーずちゃーじ 【変身者】 万丈龍我 【スペック】 パンチ力:31.5tキック力:34.1tジャンプ力:ひと跳び54m走力:100mを2.5秒 【基本形態】 仮面ライダークローズ 【声/俳優】 赤楚衛二 【スーツ】 永徳 【登場作品】 仮面ライダービルド(2018年)ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ(2019年) 【初登場話】 第17話「ライダーウォーズ開戦」 【詳細】 万丈龍我がスクラッシュドライバーとドラゴンスクラッシュゼリーを使って変身したクローズの強化形態。 フルボトルをより発展させたスクラッシュゼリー、そしてそれに対応したスクラッシュドライバーを使って変身しているため、 ビルドドライバーとクローズドラゴンを使っていた通常形態のクローズを大幅に超えた戦闘力を発揮する。 闘争心を高めそれに応じて打撃力を強化するという変身者の龍我に合わせた機能を有するが、 使いこなせば使いこなすだけ装着者の身体に馴染み、より高い戦闘力を発揮するという、「究極の軍事兵器」の一種の到達点とも言える。 なお、スペックは初期値であり、変身者のハザードレベル上昇に伴い増大していく。 変身の際にはビーカーのようなフィールドケミカルライドビルダーが展開し、そこに満たされたゲル状の液体が素体を構成、 頭部から勢い良く青色のゼリーが噴出し各部アーマーを形成して完了する。 専用武器は「ツインブレイカー」。 ビームガンとパイルバンカーを使い分ける武器だが、クローズチャージは格闘戦を重視しているため、主にアタックモードで使用する。 第25話ではクローズ時の武器、「ビートクローザー」を使った。 【各部機能】 頭部装甲となるクローズチャージヘッドはゲル状クッションを内蔵するクリアファングテクターに覆われており、 敵の攻撃が直撃しても頭部へのダメージを最小限に抑える優れた衝撃吸収能力を持つ。 CZCヴァリアブルヘッドアーマーはヴァリアブルゼリーを硬化させた装甲パーツであり、攻撃を受けるたびに内部構造やゼリーの密度バランスを最適化し耐久力を向上させる。 内部アーマーにはツインゼリーアイという視覚センサーが備わり、変身者の反応速度の向上を行い、格闘戦における命中率と回避率を引き上げる特性を有する。 グミのような弾力性があるため、ハードスマッシュに殴られても割られない。 頭頂部にはヴァリアブルゼリーの噴出装置であるスクラッシュファウンテンが設けられ、スクラッシュドライバーとデータリンクし、 変身時にヴァリアブルゼリーを大量噴射しアーマーの装着を行う。 CZCシグナルは集めた戦闘データから自信と敵の能力を正確に把握、全身の状態管理や応急補修を行うデータ収集装置である。 ツインブレイカーに転送シグナルを発信し、手元に出現させる事が可能。恐らくビートクローザーの転送にも対応していると思われる。 また、クローズチャージヘッドにはストラグルエンハンサーと呼ばれる出力調整装置があり、変身者の闘争心を掻き立てると同時に各機能を最適化、 高い能力を引き出せるようサポートし、場合によっては基本性能を超えた戦闘力を引き出すという。 全身を覆う耐衝撃ボディスーツ、CZCエンハンスメントスーツは戦闘ダメージから変身者を保護し、ハザードレベルに応じた身体強化を行うことが可能。 スーツ内部にはドライバーのゼリータンクと全身各部の噴出ユニットをつなぐ無数のゼリーパイプが張り巡らされている。 胸部は横向きとなったドラゴンの頭部を象るCZCヴァリアブルチェストアーマーに保護されている。 ヴァリアブルゼリーを硬化させ、頭部のヴァリアブルヘッドアーマー同様攻撃を受けるたびに内部構造、密度バランスを最適化し、耐久性を向上させることで防御力を高める。 両肩部にはドラゴパックショルダーと呼ばれるヴァリアブルゼリーを蓄えた装甲が備わり、 必殺技発動時にここからゼリーを勢い良く噴射し、特性を活かした特殊攻撃や武装化を行う。 腕部装甲にもまた、ドラゴスプラッシュアーモリーという噴射攻撃装置が内蔵されており、 ドラゴパックショルダーと同じ機能を有し、必殺技発動時にヴァリアブルゼリーを噴射し攻撃に転用する。 スーツ内部の伸縮ゲルパッドがアシストし、腕力や運動速度を大幅に引き上げるフォースクラッシュアーム、フォースクラッシュレッグは、 戦闘経験を積むことでゲルパッドが変身者の肉体に馴染み、高い攻撃性能を発揮する。 拳を覆うドラゴストラグルグローブもまた変身者の闘争心が高まるにつれてパンチ攻撃の威力が上昇、ツインブレイカーの連続格闘攻撃を最大限に活かす。 ドラゴストラグルシューズもグローブ同様変身者の闘争心の高まりに応じてキック威力を上昇させ、搭載したフットワーク最適化機能により地面を滑るようなムダのない動きで敵を翻弄する。 必殺技はスクラッシュゼリーを潰し発動する「スクラップブレイク」。 また、ツインブレイカーにフルボトルやスクラッシュゼリー、クローズドラゴンをセットし各種技を発動。 更にスクラップブレイクとツインブレイカーの必殺技を同時に発動させるのも可能。 【活躍】 第17話にて初登場。 ハードスマッシュの力に対抗するため龍我がスクラッシュドライバーを勝手に持ち出し変身した。 クローズでは歯が立たないハードスマッシュはおろか、強化されたハザードスマッシュに対しても優位に立つ力を見せつけるが、 同じくスクラッシュドライバーを使い変身する仮面ライダーグリスを相手取るとハザードレベルや戦闘経験の差から劣勢になってしまう場面が多かった。 更にスクラッシュドライバーの副作用としてパンドラボックスが放つ闘争心を掻き立てる光を浴びた状態が続くという状況が頻繁に続いた影響で、 龍我本人も暴走し始め、身体に掛かる負担も無視できない状態になったことから、戦兎は「禁断のアイテム」を使ったビルドへの変身への変身を決意。 オーバーフローモードとなったハザードフォームのビルドに瞬殺されてしまい、さらに自分が出るはずだった東都と北都の代表戦も戦兎が出ることになってしまうも、 紗羽の言葉で暴走するビルドを止めるためクローズチャージに変身してその拳を止めた。 しかし、スペック差と意識を失いつつも、敵を破壊するため最適の行動を取るビルドに追い込まれてしまい、ドライバーのキックバックにより自身も暴走し始め兵器同士の戦いは泥沼化するかと思われた。 龍我の決死の覚悟が土壇場でハザードレベルの上昇を引き起こしたのか、クローズチャージの能力を自身の制御下に置くことに成功。 ホークガトリングハザードフォームと必殺技での相打ちに持ち込むことに成功する。 その後も活躍するが、第30話にて石動惣一の謎の攻撃から美空を守った際にヒットしたスクラッシュゼリーが変質してしまい、以後の変身は不可能になった。 『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』では変身するフォームの1つとして登場。 『仮面ライダークローズ』にもフォームの1つとして登場。 【余談】 2号ライダーの強化形態はさほど珍しくなくなったが、変身ベルト自体を取り替え全く新しいアイテムで強化形態に変身するというのは珍しい。 『仮面ライダー鎧武』にて、レモンエナジーアームズに変身したバロンくらいなもので、 バロンが当初は番組的な予定のなかった強化形態だったことも見ると、中盤に差し掛かる時期に強化形態に変身するクローズチャージは専用アイテムの存在もあり、やはり珍しい立ち位置にいると言える。 ベルトの取替によるフォームチェンジは披露していない。スペックや汎用性からもクローズチャージの方が優れているためか。 なお、主役ライダーがベルトを取り替え強化変身すると言う例もやはり珍しく、仮面ライダーゴースト グレイトフル魂くらいしか存在しない。 ガンダム00 ソレスタルビーイングの捕虜になったルイスは沙慈のデカチンで終わるようです 「くっ……殺しなさいよ!」 ぎっちりと両腕両足を拘束する拘束具。 全身をピチピチと締め上げるパイロットスーツのおかげで、ムッチムチの爆乳と爆尻が必要以上に強調され、凄まじく淫靡だ。 可愛らしい美貌できっと睨みつけるのも、ギャップが色気を作り出している。 ルイス・ハレヴィ。 彼女は戦闘で敗北し、ソレスタルビーイングの捕虜に堕したのだ。 拘束されたルイスは、憎い敵の虜囚になるくらいならと、殺せと叫び続ける。 捕虜をどう扱うと判断したのか、ルイスを拘束したソレスタルビーイングのメンバーは、彼女を拘束用の隔離部屋に入れてから姿を表さない。 ルイスは室内に設置されたカメラに、せめてもの悪態をつくのだが…… 独房のドアが、おもむろに開く。 「さ、沙慈!?」 現れた人間の姿に、ルイスは目を見開いた。 それは、かつての恋人、沙慈であった。 現在は様々な紆余曲折を経て、ソレスタルビーイングに身を寄せている。 「やあルイス、久しぶりだね……」 含みの在る微笑を浮かべて、沙慈はゆっくりとルイスに近づいていく。 ただ柔らかく微笑しているだけなのだが、その裏にあるドロドロとした感情がにじみ出ていた。 ルイスへの純粋な愛情と同時に、アロウズに拘束された際に沙慈は拷問を受けていた。 「ちょ、ちょっと、沙慈……? 何して……ええ!?」 ルイスが困惑の声を上げる。 彼女の眼の前で、沙慈の適度に締まった肉体が、次々とあらわになる。 沙慈の肌が見えるにつれてルイスは表情を凍らせる。 「アロウズに捕まったときにされたんだ」 沙慈は優しげな声で言うが、それが余計に凄みを増した。 体中にいくつも傷が残っているが、一番凄まじかったのは、股間の性器だ。 元からかなりの巨根だったうえに、肉棒全体に傷があり、さらにピアスまで通されている。 赤黒い肉の凶悪なシルエットの中に、点々とシルバーの輝きが、女の肉壺を快楽で蕩けさせるように配置されている。 セックス用の性玩具さながらだ。 「沙慈、あの、私……」 何を言えばいいか分からず、ルイスは罪悪感と羞恥に震える。 沙慈の肉棒を見る恥ずかしさ、アロウズに所属しているという気後れ。 だがその全てを、沙慈の獰猛な性欲と愛が見下ろす。 ニコニコと笑いながら。 「ルイス、君を壊してあげる。『軍人』としての君のプライド、へし折ってあげるからね」 「ちょ! や、やだ、来ないで……イヤーッ!」 近づいた沙慈は、ルイスのボディスーツをナイフで引き裂く。 器用にも、胸と秘所の部分だけを綺麗に破いた。 「あ、ぁあ……」 羞恥心に震えるルイス。 汗と、愛液のうっすら染みた水気が、滴る。 恐怖と、同時に、極太のチンポを見てしまったことで抱く、女としての期待。 曲りなりにも、恋人同士であり、愛し合った仲だ。 沙慈の視線は、獰猛さと優しさを同時に持っていた。 ぐぢゅ♥ びぢゅぅ♥ 「あ、ぉお♥ いや……はげし、いいぃいい♥」 沙慈はまず、軽く慣らすように、ルイスの薄く濡れた膣を指で掻き回す。 だが、それは沙慈の基準の軽さだ。 ルイスからすれば、いきなりのハード手マンに声を上げ、必要以上に大きく実った爆乳をぶるぶる揺らし、甘い声を裏返して喘ぐ。 沙慈の女を嬲る手際は、かなりのものだった。 実は彼は……アロウズに捕縛されていた時、連中に拷問され、女兵士の性玩具にされていた。 その経験からトラウマをいだき、女を過剰に蹂躙し、心身を凌辱し屈服させるハードセックスが染み付いてしまったのだ。 「いぎ♥ あ、ぁあ♥ いや、やめて沙慈……こんな、お゛ぉ♥」 ぶぢゅ♥ ぢゅぶぅ♥♥ 「そう言いながら、もうびしょびしょだよルイス。ルイスってマゾメスだったんだね」 「ち、ちが……あ、お゛ぉおお♥」 ぎゅううぅ♥♥ 強めにクリを抓られ、乳首も同時に絞られて、ルイスはのけぞりアクメさせられる。 大量に噴出する愛液に、室内は一気に雌の甘ったるい淫臭がむんむんと満ちていく。 だぷ♥ むぢぃ♥ むにゅ♥ 「ルイス、おっぱいも柔らかくて感じやすいんだね、可愛いよ」 「だめ、ああぁ♥ いや、ぁああ♥ お゛ぉおお♥ い、イッてる! イってるから、少し止めて……あ゛ぁああ♥」 ぷしゃあああ♥♥ 潮吹きするほどオマンコをほじくり返し、Gスポットまで執拗にコリコリと指で擦り上げる。 ルイスが泣いてやめてくれと頼んでも、沙慈は決して嬲る手を緩めない。 むしろ、ルイスの泣き声がさらに沙慈をゾクゾクと興奮させる。 ドSの獣になってしまう彼は、股間の必要以上なほどオーバーサイズの巨根をパンパンにさせた。 ただでさえデカいチンポが、我慢汁でべっとり濡れ、穿たれたピアスをさらに凶悪に見せる。 その凶器を、沙慈は亀頭を擦りつける。 ぐちゅ……♥ 「あ、ぁあ、だめ……あ゛あ゛あ゛ぁああああああ♥♥」 ぢゅぶん!!! 「いぎぃ♥ はひ、ぁああ♥ あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあああああ♥♥ らめ、あぎ♥ いぎいいいいいいい♥♥」 どぢゅ♥ どぢゅ♥ どぢゅ♥ どぢゅ♥♥♥ 最初からフルスピードだ。 まったく、一ミリも情け容赦というものがない。 一撃、一撃が、全て子宮までぶちこむハードファック。 突き上げる全てに体重と力をかけて、沙慈はこれでもかとルイスを犯す。 犯し潰す。 「お゛ぉおお♥ イグ♥ だめええ♥ い、イッてる! もう、何回もイってるからあぁ♥ ゆるしてぇええ♥ やめてえええ♥♥」 鼻水まで流し、泣き叫び、連続強制絶頂のアクメ地獄。 短いショートカットのブロンドヘアを振り乱し、ルイスはのけぞり、特大の爆乳も爆尻も、ぶるぶると揺らす。 そんな彼女に、あくまで沙慈は優しげな笑顔だ。 だが、責め嬲る愛撫は、凶悪。 「い、いぎいひぃいいい♥ 乳首、だめ♥ あぐぉおおお♥♥」 ぎゅううううう♥♥ 痛いほど乳首を抓りあげられ、痛さと快楽の甘さを同時に与える。 無論、その間も腰を激しく振り、子宮までぶち犯すイボイボのピアスチンポのハードファックは継続中だ。 軽く息を切らし、沙慈の腰振りはさらに激しさを増す。 「そろそろ出すよ」 優しく耳元に囁く。 瞬間、壮絶な大量射精が、ルイスの中を焼き尽くす。 どぶびゅうぅうううううううう♥♥♥ 「お゛、ぉおおおお♥ おごぉお♥♥ お゛お゛おぉ♥♥」 どくんっ♥ どくん♥ どくんっっっ♥♥ 熱く、甘く、濃厚な快楽の波が、子宮から脳髄まで走り抜け、ルイスの思考を粉砕していく。 その間も、沙慈は執拗に、グリグリと膣奥を肉棒でこじり、決して快感を引かせない。 徹底的に、ルイスを快楽責めで嬲り続け、彼女を『破壊』するつもりなのだ。 だがそれは、決してルイスが憎いというのではない。 沙慈の瞳はどこまでも優しい。 「ルイス、可愛いよ」 「あ、ぐぅうう♥ うぐふぅううう♥ ちょ、だめええええ♥ も、もうイカせないでへえええ♥♥♥ あ、お゛ぉぉぉおお、お゛お゛お゛ぉぉ♥♥」 どぢゅ♥ どぢゅ♥ どぶぢゅぅうううう♥♥ 子宮が溺れるほど射精したのに、沙慈はまだ勃起したまま、さらに犯す。 だが、ねっとりと唇を合わせるキスは愛おしさがあった。 「じゅる♥ じゅぶ♥ ん、んぅうううう♥♥」 激しく口の中で暴れる沙慈の舌による愛撫。 ルイスは目を白黒させ、流れこむ快楽に脳髄が沸騰した。 べっとりと濡れた膣奥に、さらにザーメンをまぶし、ピアスをつけた極太デカチンポで奥底までほぐす。 突き上げるごとにルイスの爆乳と爆尻が弾み、ゴリゴリと膣壁をえぐるのは凄まじかった。 むぎゅううううう♥♥ 「いぎひぃいい♥ お乳♥ だめ♥ お乳イク♥ あ゛あ゛あ゛ぁぁあああ♥♥」 デカパイに指が食い込む。 指と指の間から柔らかい乳肉がむにゅりとはみ出る姿が、凄まじく淫らだ。 沙慈は上から体重をかけ、思い切りチンポをぶちこむ。 いわゆる種付けプレス体位でぶち犯す。 「お゛ぉお♥ おごほぉぉおおお♥ やめ、ゆるして、ゆるしてえええ♥♥ だめえええ♥ イグ♥ イギ死ぬぅうううううう♥♥」 泣き叫び、何度も何度も許しを請うルイス。 これは捕虜としてのルイスへの罰でもある、が……それ以上に、沙慈からすれば、むしろ赦しでさえあった。 「出すよ」 優しい声で囁く。 「イグ♥ いやぁああ♥ だめぇ……あ゛ぁ♥ お゛ぉおおおお♥♥」 ぶびゅうううううううううううううううううう♥♥♥ ぶびゅるるるるるるるるる♥♥♥♥ 「~~っ♥♥」 またも大量射精で、子宮をザーメンでパンパンにされ、声にならない声でアクメ気絶するルイス。 沙慈は一度、ルイスの膣からチンポを引き抜く。 ぢゅるる……ぢゅぽん! 「いぎひぃいいい♥♥」 抜ける瞬間、カリ首やピアスの出っ張りが膣口をこそげ、それだけでさえルイスはさらに重ねイキさせられ、泣き叫ぶ。 だが、沙慈は、抜くだけで終わるわけがない。 「ひゃぁあん! あ、やだ……だめ、そこだめえ! お尻ぃい♥ おぉぉおおおおお♥♥」 みぢぢっ♥♥ イキ狂って震えるルイスの体をひっくり返すと、沙慈はパンパンに勃起した化け物みたいなチンポを、ルイスの尻の穴へ押し付ける。 ぐりぐりと亀頭で尻穴をほぐしたかと思うと……一気に挿入。 どぶぢゅ♥♥ 「いぎひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい♥♥♥」 凄まじい声を上げ、金髪を乱し、爆乳をぶるぶると揺らして泣き叫ぶルイス。 そんなルイスを持ち上げると、拘束された脚ごと両腕で抱え込むアナル固めの体位を取った。 深々と、極太のチンポが奥の奥までぶちこめる姿だ。 ルイスは血の気が引いた。 「だめ、だめだめええ……ゆるしてえ……壊れちゃう、頭、イキすぎて、バカになっちゃうからぁ……」 ルイスは鼻水まで流した涙声で必死に許しを乞う。 人間として、パイロットとして、想像を絶するセックスと快楽漬けで、頭の中が真っ白に焼き尽くされる恐怖。 だがその恐怖の奥底には、愛する人に嬲られる快楽への悦びもある。 沙慈は耳元で、あくまで優しく囁いた。 「いいんだよ、壊れて。チンポ馬鹿になっても、愛してあげる」 と。 どぶぢゅうううううう♥♥ ぶぢゅ♥ ごぢゅぅうう♥♥ 「あぐぉおおおおお♥♥ おご♥ おごほぉおお♥ イグ♥ おぉぉおおおおおお♥♥♥ ごぉおおおおおおおおおお♥♥♥」 白目を剥き、失禁して尿まで流し、ケツ穴を壮絶にファックされてのけ反るルイス。 乳輪残像を作る爆乳の乱舞。 ぎっちりと両腕両足を極めたハードファックが、下から突き上げ、内蔵まで貫通するばかりの勢いで、チンポをねじりこむ。 「おごぉお♥ イグ♥ イグぅううう♥ しぬ♥ イキしんじゃうぅうううう♥♥」 快楽に震え、声の限りに叫び、よがる。 沙慈は、徹底的にルイスをぶっ壊す。 もう二度とパイロットとして戦わなくてもいいように、彼女を快楽漬けにして、破壊する。 「ルイス、可愛いよ。イケ! イキ死ね!」 「おごほぉおお♥ お゛お゛ぉおぉおおおおお♥♥」 「出すぞ! 孕め! ケツマンコ孕めぇええええ!!」 どぶびゅうううううううううううううううううううううううううう♥♥♥ ぶびゅるるるるるるるるうるぅぅうううう♥♥♥ どぶっ♥♥ どぶっっっ♥♥♥ 「~~~っ♥♥♥」 最奥を、これでもかと力の限り突き上げながら、沙慈は最大の力で抉り、濃厚な、焼け付くようなザーメンの飛沫を、ぶちまける。 ルイスは白目を剥き、完全にイキ狂って脳髄を快楽で破壊され尽くし、ビクビクと痙攣する。 泡まで吹いていた。 「あひっ♥ ぢんぽぉ♥ おっほ……っ♥ ぉぉ♥ はひぃ♥ もう、チンポしか考えられにゃひぃ♥♥」 びくん♥ だぷん♥ ぶるんっ♥ 特大爆乳を波打たせ、爆尻を揺らし、沙慈に穴という穴をぶち犯され、ザーメン漬けにされ……ルイスの思考は完全に、沙慈のチンポとザーメンでぶち壊される。 そんな彼女を抱きしめながら、沙慈はどこまでも優しい声で囁いた。 「可愛いよルイス。もう二度と闘わなくていいよ。僕がずっと犯し続けてあげるから」 そう言うと、彼はまたルイスの体を持ち上げて……強烈に突き上げた。 次の瞬間には、精神を粉砕する激烈な快楽にのたうち、ルイスが声の限りに叫ぶアクメの甘い悲鳴が、独房を満たしていった。
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登録日:2017/05/04 Thu 01 35 57 更新日:2024/06/03 Mon 21 21 29NEW! 所要時間:約 16 分で読めます ▽タグ一覧 かませ犬 やられ役 アニヲタ悪魔シリーズ クラスに1人か2人はいる種族 グレムリン コボルド ゴブリン ゴブリンスレイヤー ザコ敵 チビ ファンタジー ホブゴブリン モブ モンスター レッドキャップ 亜人 亜人種 人海戦術 何故かなかなか立たなかった項目 妖精 小鬼 悪ガキ 悪戯 民話 種族 童話 竿役 精霊 西洋妖怪 輪姦 雑魚 魔物 ゴブリン(goblin)とは、以下のいずれかを指す言葉である。 民話や童話などに登場する、醜いいたずらな妖精の総称。 近年のファンタジー文化における一種族の名称。地下に住む邪悪な小型のヒューマノイド。 ▽目次 【民話・童話におけるゴブリン】○外見・性質について 【ファンタジー作品における一種族としてのゴブリン】○誕生の経緯 ○D Dにおけるゴブリン族(≒現代ファンタジー作品におけるゴブリン族の設定) 【解説】○起源について ○ゴブリンに分類される魔物コボルド(kobold) ホブゴブリン(hobgobrin) バグベア(bugbear) レッドキャップ(redcap) ノッカー(knocker) グレムリン(gremlin) ○エロ要員としてのゴブリン ○登場作品など童話 小説ほか ゲーム 漫画 特撮 名前のみの使用 余談 【民話・童話におけるゴブリン】 「ゴブリン」という言葉が本来指すものは、ヨーロッパにおける悪意を持った妖精の総称である。 その名の語源はドイツの妖精「コボルト(kobold)」を英語化したもの。 だが現在は、コボルトとゴブリンは別種として扱われるのが一般的。(後述) もともと固有名詞ではなくいろいろな形態の妖精や魔物が含まれており ノームやドワーフのような小人たちも「ゴブリン」と呼ばれることがある。 後述する共通点の一つとして「人間に対して悪意を持つ」というものがあるが、 その「悪意」の度合いにも種族によってピンからキリまであり、 ほほえましいいたずら程度のことしかしてこない「小鬼」というべきものもいれば、 人と見るや血祭りにあげるような「悪鬼」としかいいようのないものまでさまざま。 しかしその後、それらのイメージを統合して「ゴブリン」という名の固有の存在として扱われるようになり、 次の項目で説明する「一種族としてのゴブリン」の元となっている。 なおゴブリンと呼ばれる魔物の種類・内訳については、後の項目にてまとめて解説する。 ○外見・性質について ゴブリンは妖精・小人・精霊など多くの種族を含む名で、その形態も性質も様々。 だが外見・性質ともに明確な共通点が存在する。 外見の共通点としては、「小さい人型」であり「醜い」ということ。性質の共通点は「暗がりを好む」ということと、「人間に対して悪意のある行為を行う」ということである。 外見についてゴブリンと呼ばれるものたちは、すべて四肢を備えた人型の体型である。獣の頭を持っている場合はあるが、その場合でも体は人間のものであるのが一般的。かぎ爪がのびていたり鼻や耳がとがっていたりすることはあるが、完全に獣の姿をしているということはあまりない。そして体躯が小さく顔つきが醜いのもほぼ共通。体型こそ人型だが亜種などをのぞき大抵人間の子供程度かそれ以下の大きさしかなく、顔も一目見てそれとしれる魔物じみた異様な顔つきをしているのが一般的。仮に次で説明する性質において合致していようと、巨大だったり獣の姿をしていたり、見眼麗しい姿だったりというゴブリンはまず存在しない。いたとしても、それはおそらく別の魔物として扱われるだろう。これらについては、彼らのルーツが大いに関係していると思われる。(後述) 性質についてゴブリンと呼ばれる魔物たちの性質についての共通点は大きく分けると暗がりを好むということと人に悪意を持って干渉してくるということである。ゴブリンは地下・鉱山の中や民家の中、廃墟・遺跡の中に森林の中などさまざまな場所にいるがどこにいるにせよ狭く暗い場所にいるのがほとんど。民家の中であれば家や馬屋の片隅に倉庫の奥深くなど、森林なら木の洞の中などである。また、程度の差こそあれ人間に様々な悪さをはたらくのも共通。前述した通りその内容は多様で、部屋を散らかしたり人を転ばせたりするいたずら程度のものから夜の森や洞窟の中で道に迷わせるといった生死にかかわりかねないもの、さらには直接的に人を殺傷するようなものまでさまざま。特に子供に対しては強い執着心を持つものが多く、闇に潜んで子供を捕らえたりむさぼり食ったりするようなものたちも存在する。ただいずれの場合においても、積極的に人間とかかわろうとする傾向があるとも言える。悪意を持ったまま手を出さないということは無く、むこうから積極的に人間に干渉しようとしてくる。これらは手伝いや人助けなど、彼らがまれに行う善意による行為にも共通しており善意にしろ悪意にしろ、特にこちらが何もしていなくても手を出してくるのが彼らの特徴。また逆に、人間の側から干渉されるのを嫌がる傾向がある。人間のそばにいる場合でも姿を見られたり名を呼ばれたりすることを非常に嫌がり、彼らが欲するものでなければそれが善意の贈り物であってもはねつけてしまう。(*1)これらの性質についても、後述する彼らのルーツによるところが大きい。 【ファンタジー作品における一種族としてのゴブリン】 前述した通りゴブリンとは元来固有の魔物を指す言葉ではなかった。 しかし近世では彼らに共通する外見・性質などの要素が統廃合されていきついには固有の種族としてのゴブリンが産みだされたのである。 ○誕生の経緯 種族としての「ゴブリン」誕生がいつになるか、明確な線引きは難しい。 1800年代でもまだ「ゴブリン」という言葉は「悪意ある魔物」の総称として扱われていたようである。(*2) しかし同時代の童話である「お姫様とゴブリンの物語」では、「地下に住む醜く悪意のある種族」としてゴブリンが登場する。 彼らは山地の地下に王国を作っており、自分たちをここへ追いやった(と思っている)人間たちに恨みを抱いている。 そこで地上を人間から奪うため王城の地下につながるトンネルを掘って姫君の誘拐をもくろむという 現在のファンタジーにおける「ゴブリン族」の特徴をすべて備えた存在となっている。 さらにこの作品に強い影響を受けたと言われるかのJ.R.R.トールキンによる童話「ホビットの冒険」では 同じく邪悪な種族としてゴブリン族が登場する。 ただこの後続の作品である「指輪物語」では、童話のイメージを払拭し広い世代をターゲットにするため、 「ゴブリン族」に「オーク(orc)」というオリジナルの名をつけた(*3)。 このゴブリン・オークという種族の設定は、後代のファンタジー作品に大きな影響を与えた。 そして「ゴブリン」という名が、オークはじめ他の種族から完全に独立した一種族として定着したのは 1974年に刊行されたテーブルトークRPG『ダンジョンズ ドラゴンズ』においてだろう。 この作品ではゴブリン・オーク・コボルドなどがそれぞれ違った特徴を持つ独立種族として設定された。 この作品におけるゴブリンの外見・性質といった特徴は、現在に至ってもなお すべてのファンタジー作品におけるゴブリン族のイメージの基礎となっている。 ○D Dにおけるゴブリン族(≒現代ファンタジー作品におけるゴブリン族の設定) 前述した通りD Dのゴブリンの設定は、そのまま現在の「ゴブリン族」の基礎設定として受け継がれている。 細かい部分では作品それぞれにおいて差があるが、基本的にはここで説明するとおりの外見・性質だと思えば間違いないだろう。 外見・体格小さな人型生物で、身長は3~3.5フィート(約90~105cm)、体重は40~45ポンド(約18~20kg)程度。平べったい顔につぶれた鼻、とがった耳を持ち大きな口からは小さく鋭い牙がのぞいている。目の色は赤から黄色でどんよりと曇っていることが多い。肌の色は黄色からオレンジ色~深紅色までさまざま。また同じ部族の者はみな同じ肌の色なのが普通である。2本足で立って歩くが、長い腕を膝のあたりまで垂らしている。 D D以外での設定現代のアニメなどでは、肌の色は爬虫類じみた緑色をしていることが多い。またD Dのゴブリンにあった体毛も無いことが多く、禿頭の栽培マン小悪魔といった外見である。腕が長いという特徴も省略されがちで、子供のような寸詰まりの体型として描写されるのが一般的。 知能・性質ゴブリン語と呼ばれる言語を話し、集落を作ってそこで集団生活を営む程度の知能はある。知力の高い個体は共通語を話し人間含めた他種族との会話も可能。また手先はそれなりに器用で、皮鎧など自分たち用の武具を作ることもできる。性格はきわめて陰湿で狡猾、かつ執念深い。あまり強力なモンスターではなく、冒険者からはほとんど脅威とは思われていない。だが速やかな繁殖能力を持ち凄まじい数の集団を形成するため、放っておくと文明地域を略奪し蹂躙することもできるようになってしまう。 D D以外での設定ときおり人間と友好的に共存共栄している場合もあり、その場合はそれなりの知性と技術力を有する描写がなされる。童話・民話のゴブリンのように地底・鉱山に棲み、ドワーフやノームに劣らない金属・宝石の加工技術を持つとされる場合もある。 D Dでは他にも近似種であるコボルド・ホブゴブリン・バグベアなども設定され、 ゴブリンはあらゆるメディアにおけるファンタジー作品の代表的なザコキャラクターとして広く認知されることになった。 現在に至るまで彼らは、主人公たちや無辜の住民たちを苦しめ、そして倒されるための存在として勧善懲悪の物語に欠かせない役割を果たしている。 なお、あまり強力でないといってもそれは人間でいうところの一般人にあたるゴブリンの場合であり、D Dでは高いクラスレベルを持っていれば元の種族が人間でもエルフでもゴブリンでもコボルドでも強敵になる。 【解説】 ○起源について 彼らがいつ、どのようにして誕生したのかは諸説あり定かではない。 ただそれらの説を大きく分けると、もともとは神であった・あるいは人であったの二つとなる。 零落した神としてのゴブリン他の多くの妖精のようにもともとヨーロッパの民俗信仰の神々であったものたちが魔物として貶められたという説。欧州には民族大移動期以前から新石器時代にルーツを持つ民族が根付き、独特の文化を形作っていた。もちろん宗教も独自のもので、ペイガニズムと言われる古い形態の多神教を信仰していたと言われる。当然人々の生活域にも神々はおり、野の中・街の中・家の中においてそれぞれの場所を守り、正しい行動をとるものには恵みを、過ちを犯すものには罰を与えていたのである。しかし欧州各国のキリスト教化が進むと、彼ら異教の神はその妨げとして迫害・駆逐されていった。それでも人々の間に深く浸透していた彼らは、神から魔物となってもなお人々のそばに残った。かつてもたらしていた恵みや罰はたわいないイタズラとされ、わんぱく坊主を脅しつけ怖がらせるような神や天使には出来ない役割を担ってきたのである。 欧州の先住民族としてのゴブリン上述の説よりももっと直接的に、欧州の先住民族それ自体をルーツをするという説。新石器時代にルーツを持つ彼らは大民族たちの移動に押され、彼らの生活域の外側に押しやられていった。彼らは主たる文明からは疎まれ、あるいは敬して遠ざけられ、妖精や魔物として扱われるようになったのである。特にゴブリンと呼ばれる魔物たちのルーツは穴居人たちに求められるという説がある。日本でも土蜘蛛(*4)と呼ばれる民がいたが、欧州の彼らもまた一目見てそれとわかる異様な風体をしており、ヨーロッパ文明下においてもなお洞穴をねぐらとしたと言われる。迫害されてきた彼らは多くの場合排他的であり、自分たちの生活域を侵されることを極度に嫌い自分たちの存在を明るみに出されることも避けた。それでも彼らは都市の周辺でその恩恵をうけつつ暮らしており、自分たちの安全を確保した上で市民との交流もまた望んでいたのである。ゴブリンの異質な外見や人との関わり方をはじめとした性質など、多くの点に説明がつけられる説だがやはり真偽のほどはさだかではない。 ○ゴブリンに分類される魔物 前述のとおり、ゴブリンとは本来共通した性質を持つ多くの魔物たちの総称である。 彼らは棲みついている地域や場所、その外見や性質などによって様々な名で呼ばれた。 後代のファンタジー文化において「ゴブリン」が一種族として成立すると、彼らの亜種・近似種として扱われるようになり、 ゴブリン族とは似て非なるものたちとして認識されている。 コボルド(kobold) ドイツの鉱山の精で、ゴブリンのルーツとなった魔物。名の由来はギリシア語の「子供」を意味する「コバロス(Kobalos)」から来ているとも、ドイツ語で「部屋の精」を意味する「コーベンホルト(Kobenhold(「Kobe「家」、hold「忠実な」)」から来ているとも言われる。その姿は金髪の小さな子供のようで赤い絹のコートを着ていると言われるが、その姿を人目にさらすことは滅多にない。鉱山に入りこみ貴重な鉱物を盗んで役立たずの鉱石を置いていったり(*5)、人家に住みこんでこっそり家事を手伝ったりすると言われる。 ファンタジー作品での扱いコボルドはD Dにおいて、鱗を持つ犬のような頭を持つ小人として描写されている。最初期のD D('74)ではゴブリンのようなと描写されており、性質はゴブリンに似ているが体型はゴブリンよりもさらに小型で、以降のファンタジーでゴブリンの下位種族的な扱いを受けることも多いが、D D('77)およびAD D1st以降のコボルドはドラゴンの血を引く爬虫類系の種族と明言されており、ゴブリンとは独立した種族である。その他の作品でもおおむねそのような扱いとなっており、邪悪な犬頭の小人として出現することが多い。コボルトとコバルトを関連付ける設定としてはソードワールドRPGでは、銀を腐らせる存在として鉱夫に嫌われ、「腐銀」がコバルトと呼ばれている。『ソードワールド2.0』では最下級蛮族として扱われており、実力史上の蛮族社会では生きる事自体がきつく、人族に寝返る者も多い。戦闘力は低くルール上絶対に高レベル成長出来ないが、が人に好かれやすい愛らしい容姿であり、手先が器用なのでコックや裁縫などをさせると意外な才能を発揮する模様。モンスター娘のいる日常では、コボルト族の女性ポルトが出演。犬の耳としっぽをもった小柄な女性として描写されている。またこの世界のコボルト族はコバルト鉱床を所持していて、経済活動の資金源にしている設定を持つ。 平均的には弱小な種族であるが、人間の一般人と冒険者の強さがまるで違うのと同じことで、ゴブリンであれコボルドであれ高レベルのキャラクターであれば強敵に化ける。 ホブゴブリン(hobgobrin) ゴブリンのなかでも善良で、好んで人家に住まうものを特にこう呼ぶ。「ホブ(hob)」とは「コンロ」を意味し、また親しいものを呼ぶときの愛称でもある。その名の通りかまど周りに棲み一日一皿のミルクで家事を手伝ってくれるが、それを忘れると災いをもたらし、また忘れてなくても気まぐれにいたずらをすることもあるという。 ゴブリンと同じく様々な種族を含む「家の妖精」の総称で、ブラウニー(brownie(*6))やボーグル(bogle(*7))、プーカ(puka(*8))などを含み、イギリスの妖精パック(puck)やロビン・グッドフェロー(Robin・goodfellow)などとも同一視される。 ファンタジー作品での扱いゴブリンより善良とされる彼らだが、D Dでは指輪物語のゴブリン→オーク、ホブゴブリン→オークの大型種で、ウルク=ハイ(オークの上位種)のイメージを引き継いでゴブリンの上位種として設定された。(*9)性質はゴブリンに似ているが体型はゴブリンより大きく知能も上回るが、その分繁殖力には劣り数が少ない。その他の作品でもおおむねそのような扱いとなっており、ゴブリンの上位種として出現することが多い。どの作品においても、大型種とはいえ所詮元がゴブリンなので、それほど強力なモンスターではない場合がほとんどだが… バグベア(bugbear) 主にウェールズに出没するとされる、黒い毛むくじゃらの怪物。 名の由来はbwg(魔物)+bar(邪悪)で、熊とは関係ない。 異名が多く、バグ・バグス(bug・bugs)・バグルブー(bugleboo)・ブルベガー(bullbegger)などとも呼ばれる。 闇夜に突然現れて、特に一人歩きの子供をさらってむさぼり食う。 多くの家庭で、子供の夜歩きをいましめるために語り継がれてきた魔物である。 ファンタジー作品での扱いD Dではゴブリンのさらなる上位種として設定されている。熊のような鼻を持ちホブゴブリンよりさらに体格が大きいが、知能ではあまりゴブリンと差が無く繁殖力で大きく劣る。ゴブリン社会の戦士階級の中核を占める種族。他のゲームでもやはりゴブリンの上位、それも最上位種としての扱いが多い。 レッドキャップ(redcap) ゴブリンと呼ばれる魔物の中でも、もっとも危険な種族のひとつ。 名の「赤 帽 子(レッドキャップ)」とは、彼がかぶっている返り血で染まった帽子のことを指す。 指からは猛禽のような長く伸びた鉤爪がのび、帽子と同じく常に血に染まっている。 その姿はあごひげの長い小さな老人のようだが、目はらんらんと輝き風のように走ると言われている。 古戦場や番兵の詰所など流血ざたのあった場所に出没し、不用意に近づいた人間を血祭りにあげるという。 ファンタジー作品での扱いあまり扱いは多くなく、ゴブリンの亜種というよりは凶悪な妖精・悪鬼としての出番が多い。 ノッカー(knocker) コーンウォールの鉱山に棲みつくゴブリンの一種。 名前の意味はそのまま「ノックする者」で、坑内で音を立てることで鉱脈の在処や危険の存在を知らせるとされた。 坑内で騒ぐことや自分の存在を暴かれることを嫌い、それを犯すものには容赦なく報復するとされる。 ファンタジー作品での扱いこれもあまり扱いは多くなく、ゴブリンの亜種というより小人の一種とされることが多い。 グレムリン(gremlin) 20世紀初頭にイギリス空軍パイロットの間で語られたのが発祥とされる、機械をいじくる小鬼。 山から山へと空を渡り歩き、高速で飛行する戦闘機にも飛び乗って様々な機器の不具合を引き起こすと言われる。 また人間社会にも潜りこみ、ゼンマイ時計から半導体機器までありとあらゆる機械に様々な故障や誤動作をもたらす。 人間に発明のヒントを与えることもあるが、発明家たちに顧みられることも無かったため復讐をおこなうようになったらしい。 実在するか否かは明らかではないが、少なくとも空軍パイロットと整備班にとっては、 マシントラブルの責任を引き受けてもらうことで両者の軋轢を避けるために不可欠な存在であったことは確かであろう。 ファンタジー作品での扱いゴブリンの亜種としては比較的扱いの多い方。ゴブリンとは別種の魔物とされることが多い。インプの様な小悪魔として扱われる事もある。近世の発祥で、機械に潜りこみ悪さをするという、ファンタジー文化と現代文明両方の要素を持つ独自性を買われてのことだろう。おそらく一番有名なのはアメリカで映画化された「グレムリン」。他にもMagic the Gathering、ドラゴンクエストⅡ、真・女神転生Ⅱなどに出演し、仮面ライダーウィザード、とある魔術の禁書目録などでその名を見ることが出来る。 その他、ファンタジー作品では魔法を操る「ゴブリンシャーマン」や、 王としてゴブリンを従える「ゴブリンキング」などの亜種がまま見られる。 ○エロ要員としてのゴブリン ゴブリンは言葉としてはともかく、種族としての成立自体はそこまで古いほうではない。 それでも暗がりに潜み人を襲うゴブリンたちには、かなり初期のころから性的なイメージもついて回った。 19世紀の児童文学「ゴブリン・マーケット」では、ゴブリンからもらった果実の魔力に侵された妹を救おうとした姉に対し、 集団で襲いかかり服を破きひっかき傷をつけたあげく白い果汁をぶちまけるという 隠喩というにはかなりあからさまなエロゲのような描写がある。(*10) これは現在でもそのまま踏襲されており、オーガ・ミノタウロスのような巨根要員とは対を成す、オークと並ぶ輪姦専門種族としての登場が多い。 彼らは単体では冒険者どころか一般人にさえ撃退されてしまうほどの力しかないが、その数と悪知恵、そして執念深さを武器にして、 平穏な人里を蹂躙し、罠を仕掛け、時には実力ではるかに上回るはずの騎士や王族さえもその毒牙にかけてしまうのである。 『ゴブリンスレイヤー』では、一般向け作品ながらゴブリンたちによる虜囚(女性)への凄惨な強姦・輪姦・拷問描写が一巻に付きほぼ一度は挿入されており、 コミカライズ版でのその場面はさながらハードな成年向け漫画の様相を呈しているが、アニメ版では局部(乳首)の描写が抑えられるなど、一応配慮されている。 ○登場作品など この項目では基本「ゴブリン」という名で登場している魔物のみを対象とし、 他の種についてはゴブリンの亜種として設定されていない限り基本取り上げない。 それでもファンタジー文化を代表するザコキャラである彼らの登場作品は多岐にわたり、 彼らが出演しない作品を探す方が難儀するくらいである。 童話 アンデルセン童話(H・C・アンデルセン):「ゴブリンの雑貨屋」他多数。 グリム童話(J・グリム W・グリム):「ルンペルシュティルツヒェン」ほか。「コボルド」名義が多いが参考として。 ゴブリン・マーケット(C・ロセッティ):ゴブリンの魔力の虜になった妹と、彼女を救おうとする姉の物語。 お姫様とゴブリンの物語(G・マクドナルド):前述のとおり。「指輪物語」のトールキンや「ナルニア国物語」のルイスらに影響を与えたと言われる。 小説ほか ホビットの冒険(J・R・R・トールキン):前述のとおり。地底に棲む邪悪な種族として登場。後続のシリーズでも「邪悪な魔物」を指す言葉として残っている。 ハリー・ポッターシリーズ(J・K・ローリング):魔法界の住人で人間たちと共存している。知能や技術にすぐれ、武具を作ったり銀行を経営したりと多芸。邪悪ではないが独特な価値観をもち、それが原因でトラブルになることも。 スレイヤーズ(神坂一):「闇の獣」と称される邪悪な種族。悪戯好きで、家畜や食料を襲う害獣。ゴブリン語はちょっと勉強すれば人間でも使える。外伝小説ではゴブリンハンターなる職業が登場した(下記の小説とは無関係)。 転生したらスライムだった件(伏瀬):火の精霊力を受けて生まれたモンスター種族。基本は短命かつ低めの知性で多産なのだけが取り柄の非力な種族なのだが、上位種「ホブゴブリン」(雌は「ゴブリナ」)になると人並みの寿命と知性を持つようになる。また作中では主人公が最初に配下にした種族で、主人公がそれとは知らずに彼らに「命名(ランクアップ)」した上で牙狼族とコンビを組ませたため、前線で活躍するホブゴブリンライダーズが誕生している。ライダーズ以外も最古参の配下種族ということで要職に就いている者が多く、一部は上位魔人とも互角以上に戦える。 ゴブリンスレイヤー(蝸牛くも):表題の通り、ゴブリンとそれを退治するものを主題とした物語。狡猾で陰湿、集団で人里を襲うという要素は他の多くの作品と共通。しかし彼らがもたらす被害についての描写が克明になされており、ゴブリンの「駆逐するべき存在」としてのリアリティを浮き彫りにしている。 魔物娘図鑑(健康クロス):魔物娘の一種族として、とがった耳と角を持った少女の姿で登場。子どもっぽくていたずら好き、徒党を組んで人を襲うといった、伝承と近年のファンタジーのゴブリン両方の性質を持つ。ただしいたずらも襲撃も性的なものだが。 ゲーム ダンジョンズ ドラゴンズ:前述のとおり。種族としてのゴブリンを決定づけたといえる作品。 Wizardryシリーズ:第3作「リルガミンの遺産」で初登場。シャーマンやプリンスなど、様々な地位・能力のゴブリンが出現。オークやコボルトと違い序盤では出現しないことが多い。 エルミナージュシリーズ:CRPGでは珍しく”人間やエルフといった多種族と共存しPCとして使用可能”という特徴がある。意外なことに賢さは人間やホビットよりも上。 ファイナルファンタジーシリーズ(スクウェア・エニックス):初作から出演。天野義孝氏の手による、帽子と短剣を持った小人のイラストが印象的。後のシリーズでは召喚獣としても登場、「ゴブリンパンチ」を披露してくれる。 FINAL FANTASY ⅩⅠ(スクウェア・エニックス):人類と敵対する獣人族の一種。小柄でマスクを被っている。高い技術力と商魂を持った商人の種族であり、他の獣人とはもちろん金次第で人類とも商売を行う。 魔法大作戦(ライジング/エイティング):ファンタジー世界を舞台とした縦スクロールシューティングゲーム。敵は人間の王ゴブリガンが率いるゴブリンたちの王国「ゴブリガン王国」で、魔導兵器を大量生産して各国に侵攻を開始した。 ブルーフォレスト物語(ツクダホビー、TRPG・TVゲーム):雌ゴブリンの変異亜種としてゴブリナなる種族が登場。「幼女」・「獣耳」・「褐色肌」と現代で言う「萌え属性」を揃えた外見によって人気を博し、『転生したらスライムだった件』で「雌ゴブリン上位種」の名として使われる等後世においても影響を残している。 遊戯王オフィシャルカードゲーム(コナミ):「ゴブリン突撃部隊」をはじめとしたゴブリンシリーズのカードが多数存在。耐久力絶無の一発屋カードだが意外と優秀。「成金ゴブリン」からストーリーが派生したカード群もあり、こちらはドローや墓地肥やしに優れたものが多い一方、「ゴブリンのその場しのぎ」などのやや使いづらいカードも。 Magic the Gathering(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト):「ゴブリン」「オーク」「コボルド」「グレムリン」がそれぞれ独立したクリーチャー・タイプとして存在する一方、レッドキャップやホブゴブリンなどゴブリンで統合されているものも存在する。「モンスのゴブリン略奪隊」をはじめ、いずれも赤の軽量クリーチャーを中心とする種族である(例外的にオークは指輪物語コラボで黒をあてはめられたため、黒が多い)。MTGの種族の例に漏れず、次元によって性格や特性が違う。例えば、ゼンディカー及びラヴニカのゴブリンのように間抜けながらも他種族と共存する例もあれば、シャドウムーアやエルドレインのように邪悪な種族として描かれることもある。 メガテンシリーズ:種族は妖精。ジャックフロストやジャックランタンに比べるとマイナーだが、比較的話は通じる悪魔として登場することが多い。これはホブゴブリン、トロールも同じ。コボルトのほうは地霊となるが、こちらも話は通じる。 神撃のバハムート/Shadowverse(Cygames):「ゴブリン」「ゴブリンプリンセス」を始めとしたカードが存在。基本的には人間と対立しているが、中には「ミニゴブリンメイジ」という無害なゴブリンも存在する。男性は他の作品同様に醜悪な悪鬼といった風貌だが、女性は何故か人間と何ら変わりない美少女のような容姿となっている(恐らく「ゴブリナ」が元ネタか?)。 Styx Master of Shadows(Cyanide Studio):ゴブリンの盗賊「スティックス」が主人公のステルスアクションゲーム。続編「Shards of Darksness」もある。ゴブリン像としては「緑の肌で腕の長い小人」という正統派のもので、真っ向勝負では勝ち目のない人間やエルフを悪知恵で出し抜くというゲーム性が特徴。 ラストオリジン(スタジオヴァルキリー(旧名:PiG Corporation)):設定のみ登場。劇中では女性しかいないバイオロイドにおいて、過去唯一量産された男性バイオロイドにして、初の軍用バイオロイド「T1ゴブリン」。高い性能を誇っていたが、暴走事件で多くの死傷者を出した事で生産中止&全機廃棄処分になった。またバイオロイドの素材となるオリジンダストと男性ホルモンとの相性が最悪であり、精神面で激昂すると暴走を起こす致命的な欠陥が発覚し、以降男性バイオロイドは一切生産されていない。 悠久の車輪:なんとグランガイアという国を築いている。しかし実際のところは治安が悪くスラムがいいところで、特に力の無い子供は大人にこき使われるのが常であった。グランガイアシナリオはそんな虐げられた弱い者たちの逆襲、そしてそれらを成し遂げた後の代償の話となっている。種族としては小柄でブサイクで力も弱いが意外と知能は高く、機械類の扱いが得意でありグランガイア中に存在するガラクタを繰り他の国と渡り合う。また女性のゴブリンはシャーマンとなり不思議な力を使いこなす。そして男性ゴブリンは女性に対しては下手に出てしまう厄介な特性があったが、混沌に囚われたらその特性はなくなる。そして知能はあっても知性は低く、機械の性能は高いが故障が多かったり、火を吐く能力を備え付けたら味方の方が被害が大きかったりと割とコメディリリーフなキャラが多い。女性ゴブリンは人間の美少女に近いがやっぱりイタズラ好きな物が多くフリーダムな集団となっている。ただしストーリーの中枢を担うキャラはちゃんとシリアスである。 漫画 スパイダーマン(スタン・リー、スティーブ・ディッコ):突然変異で強大な能力と邪悪な精神を得た軍需産業の社長が「グリーン・ゴブリン」を名乗った。スパイダーマンに倒されるがその後も社長の息子をはじめとした他者にその名が引き継がれていき、強化版の「ホブゴブリン」も登場。 ザ☆ドラえもんズ(田中道明):悪人「黒騎士」が操る召喚獣軍団。コウモリのような羽を生やした邪悪な子鬼。ドラえもんズを襲うも、老魔導士テラリンのジロー・カードで全滅させられる。 アイアンナイト(屋宜知宏):人間が変異した怪獣として登場。主人公は人間の心を保ったままゴブリンに変身し邪悪なゴブリンと戦う。 ジークジオン編(SDガンダム外伝):最弱のモンスターとして「ゴブリンザク」が登場する。色違いの亜種に「シーフザク」「パイリットザク」も。裏設定によれば戦士ザクが退化した存在でさらに退化すると「スコーピオンザク」など人型ですらないモンスターとなるらしい。漫画版第一話のみ生物を木像に変えてしまうビームを斧から発射する能力を持っていた。また漫画オリジナルのエピソードには嘗て騎士ガンダムと騎士アムロに救われ、アムロがアルガス騎士団に行っている間にアムロの弟を騙って騎士ガンダムと騎士セイラと共に妖精の村を救った「カムロ」という個体も登場している。黄金神話(ゴールドサーガ)編(SDガンダム外伝)の時代には絶滅しているとラクロア騎士団が話している。 天空の扉(KAKERU):生態系最底辺でありながら、その生態から最低最悪の害獣として猛威を奮っている。詳しくはゴブリン(天空の扉)にて 特撮 恐竜戦隊ジュウレンジャー:バンドーラ一味傘下のドーラモンスターとして「ドーラゴブリン」が登場。太ったオッサンみたいな外見。 超力戦隊オーレンジャー:マシン帝国バラノイアのマシン獣として「バラゴブリン」が登場。牛のような姿で、マシン獣の中では生物的な外見。 特捜戦隊デカレンジャー:宇宙をまたにかける凶悪犯罪者ヘルズ3兄弟の次兄として「ボンゴブリン」が登場。圧倒的なパワーとスピードとタフネス、さらには都市をも喰いつくす食欲をあわせ持ち、数々の惑星を壊滅させてきた危険人物。 名前のみの使用 ゴブリン(漫画家):日本の漫画家、旧「ゴブリン森口」。80~90年代に成人向けの作品で一世を風靡。ネット上では『太チンの竜』『竿竹のケン』『抜か八』『ガロン塚本』ら『四天王』画像が有名だろう。 マクダネルXF-85ゴブリン(戦闘機) : アメリカの試作戦闘機。爆撃機に爆弾代わりに詰みこまれて空中で投下・飛行するというトンデモ兵器。試作段階で性能や安全性に問題が見つかり実用化はされなかった。 デ・ハビランド ゴブリン(エンジン)-:イギリスのデ・ハビランド社による航空機用のターボジェットエンジン。二次大戦中に生産され、後継機種のゴースト(Ghost)も存在する。 Goblin(ロックバンド):イタリアのロックバンド。「サスペリア」「ゾンビ」「デモンズ」など、ホラー映画の音楽を手掛けたことで有名。 ゴブリン(声優):日本の声優、大沢事務所所属。主としてナレーター業を行い、ものまねタレントとしても活動。 余談 深海ザメの一種として有名なミツクリザメは英語ではゴブリンシャークと呼ぶが これは水揚げされた時の血に染まった姿がまるでゴブリンを思わせるからとも、 日本における別名テングザメの英訳からとも言われている。 編集・追記はゴブリンを一匹残らず駆除してからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ありえそうで無かった項目。あとグレムリンの名前が有名な作品としてはドンキーコングシリーズに出てくるクルールの下っ端のアリゲーター人 だろうか -- 名無しさん (2017-05-04 06 23 58) ↑あれはクレムリン -- 名無しさん (2017-05-04 07 09 51) チョコボ2ではいじめっ子という設定のいじめられっ子 -- 名無しさん (2017-05-04 12 30 19) ファンタジーRPGにおける雑魚キャラの代名詞その2(その1はスライム)というイメージが強い。歴史的にはスライムよりずっと古いんだが、ドラクエが影響力強すぎた。 -- 名無しさん (2017-05-04 13 45 08) そのあたりは個人差のあるところでしょうね。ウィザードリィにしろドラゴンクエストにしろ、コンピューターゲーム主体の人はスライムに弱いイメージを持ってると思います。自分なんかはスライムは物理無効で一度捕らえられたら最後の強キャラってイメージです。 -- ページ作成者 (2017-05-04 13 55 50) 特撮だと「ジュウレンジャー」に出てきたけど、影は薄いかね。 -- 名無しさん (2017-05-04 15 44 45) スカゴブリン、強欲ゴブリン、ゴブリン突撃部隊と遊戯王は結構ゴブリン系のカード多いな -- 名無しさん (2017-05-04 16 41 21) 最近はゴブリンスレイヤーにスレイされたりする模様 -- 名無しさん (2017-05-05 08 13 59) 下品な話で申し訳ないんですがね…… 短小のイメージがどうしても拭えない。巨きいゴブリンとか出てくる作品ってあるのかね -- 名無しさん (2017-05-05 10 14 51) まあ巨根ならオークやトロルが、もっと巨きいのが良ければオーガ―やミノタウロスがいますから・・・ コボルトやゴブリンはミクロフィリア要員ですね。 まあ大きいゴブリンが良ければ、D D仕様なら上位種のホブゴブリンが身長2メーター弱、バグベアが2メーター強くらいあります。 -- ページ作成者 (2017-05-05 13 49 18) ↑×5 特撮だと他にはデカレンジャーのボンゴブリンとかが目立ってたかな。以外にもファンタジーモチーフのマジレンジャーや仮面ライダーウィザードには不在。 -- 名無しさん (2017-05-05 13 57 01) 随分勉強したな…まるでゴブリン博士だ -- 名無しさん (2017-05-08 16 36 54) ゴウランガ!なんたる詳細かつ多岐にわたるゴブリン解説項目であることか! -- 名無しさん (2017-05-16 14 13 33) うんゴブリンバットぉ! -- 名無しさん (2017-05-16 14 17 12) 最近では実は強い!という設定にしておくと硬派っぽく見せれる便利なワードになってる -- 名無しさん (2017-08-18 13 27 45) 基本は力より知能と数だから人間相手だと負ける。早い話、調査兵団と巨人ぐらいの差がある -- 名無しさん (2017-08-18 14 14 45) goburinnnodo -- 名無しさん (2017-08-30 20 12 23) ごめんなさいミスです -- 名無しさん (2017-08-30 20 13 16) ゴブリンスレイヤーだと身勝手な悪童で自分がよければ全てよしな性格で殺されるのは嫌で仲間を平気で楯に使うがそれでいて同族意識が強いというふざけたもの。慈悲も必要ない最弱の怪物。見逃すよりは皆殺しが良い。ゴブスレ曰く「人前に姿を表さないゴブリンだけが良いゴブリンだ」 -- 名無しさん (2017-11-06 13 21 59) 指輪物語の世界観であるシャドウオブモルドールシリーズだと憎い敵であり頼れる部下であり裏切るド畜生でもある オークって呼ばれてるけど -- 名無しさん (2017-12-11 15 28 38) ゼルダの伝説BOWでボコブリンをスレイするゴブスレごっこ楽しいです -- 名無しさん (2017-12-30 19 26 09) オークなど他の悪いイメージを持たれがちな亜人達は最近イメージアップを図られてるが、ゴブリンにはちっともその気運がないどころかゴブスレのアニメ化でさらに印象が悪くなることに。オークとかオーガとの扱いの差はやっぱ「いかにもずる賢くて弱そう」って所から来るのかね -- 名無しさん (2018-10-15 23 41 50) ちなみにゴブスレの元ネタのd&dのゴブリンはヒト種族より人種差別が少ないんだとか 逆に言えば人間の知性が低いってことでもある -- 名無しさん (2018-10-16 01 08 01) 人種差別が少ないっていうか、単に力がモノを言う、強い者が他の者を力づくで従わせる社会だってだけだよ。ちなみに近縁種のホブゴブリンやバグベアなんかは概してゴブリンより強くて、ゴブリンをよく奴隷扱いにしてる -- 名無しさん (2018-10-16 01 19 30) ハリポタのゴブリンは偏狭偏屈だけど賢くて優秀だよな。いや「独自文化を持ち話が通じるようで通じない偏屈な金貸し」って元ネタはゴブリンというよりユ○ヤ人なんだろうけど -- 名無しさん (2018-10-19 14 24 49) 同期アニメのゴブスレと転スラで扱いが間逆なのほんと草 -- 名無しさん (2018-10-19 14 43 42) 「そり遊びしようぜ。やり方はこうさ。お前がそりだ。」 「黙って義勇兵になりやがれ!」 「たくさんぶち殺せば、その中にはおいらの標的もいるはずだ。」 「木の方が岩よりずっとよく燃えるって知ってたか?」 「俺以外の全員 ――― 突撃!」 マジックのゴブリンのフレーバーテキストほんと大好き -- 名無しさん (2018-10-19 20 12 44) 耳と鼻が異様にデカいイメージで描かれることも多いな -- 名無しさん (2018-10-20 08 56 52) リ・モンスターは主人公がゴブリンだな。すぐに進化するけど -- 名無しさん (2018-10-21 21 34 21) ↑4 どちらもゴブリンの描写としてはやや極端だから、同時期に両方を視られるというのはとても良いことだと思う。 -- 名無しさん (2018-10-30 19 21 33) SAOアリシゼーションでも出たな。典型的な敵だった -- 名無しさん (2018-11-21 19 16 25) エルミナージュはゴブリンがパーティーキャラに出来る珍しい例。市民権もそれなりにある。 -- 名無しさん (2018-11-21 19 35 42) ゴブスレの影響で本能レベルでロクでもない腐れ外道というイメージが染みついてしまったな。あれじゃサーチアンドデストロイもしたくなるわ。 -- 名無しさん (2018-11-21 19 41 02) ゴブスレのゴブリンは「害獣」としてある意味完成レベルの傑物 -- 名無しさん (2019-05-02 12 35 49) ファンタジーのホブはトールキンから出てるのではあるが、正確な初出がわかんねえ。指輪展開後のホビット前書き(日本語山本訳)に大型のゴブリン(オーク)って書いてあるのだが、本文のどっかに出てたりしたらちょっと調べきれねえ。詳しい方に>D Dではなぜかゴブリンの上位種 を修正お願いしたい -- 名無しさん (2019-12-04 04 04 10) 真女神転生のホブゴブリンは弱いけど貴重なタルカジャ持ちのため、ボス戦でタルカジャ一回使ってぶち殺されるのがお仕事。ある意味一番過酷な境遇のゴブリンである。 -- 名無しさん (2021-10-03 21 09 00) 人間もレイプや殺しが好きな「駆除されるべき害獣」だけどな。 -- 名無しさん (2021-10-16 14 07 25) ハリーポッターの小鬼はドワーフ的な側面もある -- 名無しさん (2021-11-28 13 22 29) 善良なゴブリンもいるのに「編集・追記はゴブリンを一匹残らず駆除してからお願いします。」はあんまりだろ -- 名無しさん (2022-04-22 13 12 51) ↑3 確かに、一部の悪質な例だけ見て種族全体を「駆除するべき」と決めつける人間は害獣かもな -- 名無しさん (2022-09-23 00 56 11) 違反コメントを削除しました。 -- 名無しさん (2022-09-24 12 26 30) .hackだと鬼ごっこ勝負してくるが大体素早い vol3のマルチナTは鬼畜すぎたのかvol4は仲間も連れ来れるように -- 名無しさん (2022-09-24 15 29 23) ↑3 -- 名無しさん (2023-01-19 16 53 20) ↑3 そもそも人間が持ってる悪徳のカリカチュア -- 名無しさん (2023-01-19 16 54 54) ↑3 人間の悪徳の煮凝りというかカリカチュアというか……ゴ -- 名無しさん (2023-01-19 16 57 20) 今の知識で見ると、一部の発達障碍者の性質と合致する所もあるなぁ。(光過敏で強い光源のある場所が苦手、『疲れる』から他人から干渉されるのを嫌う、『疲れる』から干渉して欲しくないだけで人間嫌いと言うわけではないので何か困ってるならむしろ積極的に手助けしようとする(しかし意思疎通が充分取れていないので、善意の行動が『悪戯』と認識されるケースもある)、何かを贈られても肌過敏や味覚過敏があるので大丈夫なもの以外着られないし食べられない) 比較的善良な家ゴブリンのルーツにはこういう人達も入ってるのかも。 -- 名無しさん (2023-01-19 19 04 48) 最初期の洋書の翻訳には『ゴブリン小鬼』と書かれてて「妖精の一種で、ビールを醸したり、親のいう事を聞かない子をつねったりします」と書かれててイメージの落差に驚く -- 名無しさん (2023-05-03 12 51 44) ゴブリンと聞いて相棒(予告のナレーター)がポンと出てきた。 -- 名無しさん (2023-06-10 21 37 24) MTGのゴブリンは古いカードを集めれば結構強い高速デッキになる。因みに「神河」の次元には悪忌と呼ばれる甲羅を持ち、社会性のあるゴブリンがいる -- 名無しさん (2023-09-21 18 42 53) 日本だと天邪鬼が近いかな -- 名無しさん (2024-06-03 21 21 29) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/mountandblade/pages/121.html
M B Module System Documentation v0.8時代に作成されたWinter氏によるModule Systemの解説に、 v1.010に合わせてJIK氏が修正を加えたものです。 英語版DLページ <内容> マップアイコンの編集(街、プレイヤー、etc) 新しいパーティの作成(街、兵士、etc) 新しい兵士の作成 アップグレードツリーの編集 Tavernを例としたシーンの作成とゲームエディタの使い方 会話などダイアログの作成 ダイアログや変数を用いたクエストの作成 トリガーによるパーティの登場 (フォーラムより。フィードバックを歓迎しています。) v1.010のモジュールシステムに対応しており、 劇的なシステムの変更などは無いものの、MOD作成初心者には非常に良いチュートリアルです。 ただし、今のところ未完成です。今後は未完成部分の完成とslotの解説を追加する予定とのこと。 PART4-6へ(リンク) PART7-10へ(リンク) M B Module System DocumentationPART1 イントロダクション(Getting Started)1.1 モジュールシステム(Module System)とは? 1.2 環境の準備 1.3 モジュールシステムの入手 1.4 モジュールシステムファイル 1.5 新しいモジュールの作成 PART2 モジュールシステムの編集(Editing the Module System)2.1 モジュールファイルの個人化 2.2 モジュールファイルの編集 2.3 新しいオブジェクトの追加 2.4 ゲームオブジェクトの参照 PART3 兵士(Module Troops)3.1 module_troopsの内容 3.2 兵士のアップグレード 3.3 新しい兵士(troop)の追加 3.4 マーセナリ ※この部隊はもう無いので、new_troopを代わりに利用します。 3.5 NPC 3.6 商人 ※これはWinter氏の旧バージョンのままで、テストされていません。 3.7 チェスト 他の章へのリンクPART4 パーティ(Module Party Templates) PART5 アイテム(Module Items) PART6 定数、勢力、文章とクエスト(Module Constants, Factions, Strings and Quests) PART7 シーン編集(Scene Editing) PART1 イントロダクション(Getting Started) 1.1 モジュールシステム(Module System)とは? M Bのモジュールシステムとは、M Bの内容を追加、編集するためのpythonスクリプトです。 これは公式で使われてるのと同じもので、モジュールシステムを利用することで新しい部隊、キャラクター、クエスト、ダイアログ等を追加/編集することができます。 ただしM Bはpythonスクリプトを直接に読み込むことはせず、実際にはpythonスクリプトからtxtファイルを作成してそれを読み込んでいます。 理論上全てのmoddingはこのtxtの編集を通じて行えますが(実際、直接編集するmodderもいますが)正直なところこのtxtは人間が読めるように書かれていません。 現実的なモジュール作成の方法としては今のところ2つの方法があります。 1つめは公式の提供しているモジュールを利用すること。もう1つはEffidian氏による非公式のモジュールエディタを利用すること。 ただし後者はサポートが途切れて現在のバージョンには適応していません。(v7.5.1など旧verには対応しています。) この文書ではオフィシャルの提供するモジュールの編集を扱います。 1.2 環境の準備 モジュールはpythonスクリプトで出来ているため、編集者もpythonをインストールする必要があります。 Python.orgのダウンロードページ(http //www.python.org/download/) 色々有りますが、Windows向けのv2.6.1だけDLすれば事足ります。 Pythonのインストール後、環境変数を設定します。 Win9Xの場合:Autoexec.batを編集します。 pythonをインストールしたフォルダが”C \Python24”なら、 “PATH=C \Python24;%PATH%”を追加します。 WinXP/Vistaの場合:マイコンピュータを右クリックしてプロパティを開き、「詳細設定」タブの中の「環境変数」をクリックします。 1.「システム環境変数」をスクロールダウンして変数 Parhを探します。 2.「編集」ボタンを押すと「システム変数の編集」ウィンドウが開きます。 3.「変数値」の最後尾に”;C \Python26”を加えます。 1.3 モジュールシステムの入手 最新(v1.010)のモジュールシステムは公式のフォーラムからDLできます。 http //www.taleworlds.com/download/mb_module_system_1010_0.zip (訳注:公式のフォーラムはかなり細かく分かれています。 モジュールシステムのスレッドは公式TOP- Forum- Module Development- The Forge - Mod Developmentの中にあるようです。) 1.4 モジュールシステムファイル モジュールシステム内のファイルを見てみましょう。pythonファイル(拡張子.py)は名前の前頭語によって4種類に分かれています。 * header_ * process_ * ID_ * module_ 最初の2つ(header_とprocess_)はモジュールシステムの実行に不可欠です。弄らないのが賢明でしょう。 3番目(ID_)はモジュールをビルドする際の一時ファイルです。消去してもモジュールシステムが再生成しますので問題ありません。 4番目(module_)はモジュールの内容に関するファイルです。主にこれを編集します。 1.5 新しいモジュールの作成 次に進む前に、自分のモジュールのためのフォルダを作りましょう。 Mount Blade\Modules\を開きます。そこにある「Native」というフォルダは公式のモジュールです。 とりあえずModules\にMyNewModuleというフォルダを作り、その中にNativeの中身をコピーします。 さて新しいモジュールをテストします。M Bを起動してMyNewModuleを選択し起動します。 MyNewModuleの中身はNativeからのコピーなので、ゲーム内容もNativeと同じのままです。 次に、モジュールシステムののビルド先を設定します。 module_info.pyをテキストエディタ等で開き、その中の export_dir = "C /Program Files/Mount Blade/Modules/Native/"を export_dir = "インストール先のパス/Mount Blade/Modules/MyNewModule/"に書き換えます。 もしMyNewModule/内にconversation.txtがあればそれを削除しておきます。 build_module.batを実行するとコマンドプロンプトが開き下記のメッセージが表示されます。 Code [Select] Initializing... Compiling all global variables... Exporting strings... Exporting skills... Exporting tracks... Exporting animations... Exporting meshes... Exporting sounds... Exporting skins... Exporting map icons... Creating new tag_uses.txt file... Creating new quick_strings.txt file... Exporting faction data... Exporting item data... Exporting scene data... Exporting troops data Exporting particle data... Exporting scene props... Exporting tableau materials data... Exporting presentations... Exporting party_template data... Exporting parties Exporting quest data... Exporting scripts... Exporting mission_template data... Exporting game menus data... exporting simple triggers... exporting triggers... exporting dialogs... Checking global variable usages... ______________________________ Script processing has ended. Press any key to exit. . . 何事もなく終わったなら、おめでとうございます!あなた自身のモジュールが誕生しました! もしエラーを吐いた場合はこれまでのステップのどこかで見落としかミスをしています。 どうしても困った場合はフォーラムの検索機能で類似の問題に関するスレッドを探してください。 大体の問題とその解決策は提示されています。 ※訳注:module_info.pyの中にも書いてありますが、module_info.pyでのディレクトリ指定はバックスラッシュ(\)ではなく フォワードスラッシュ(/)を使わないとエラーを吐きます。 PART2 モジュールシステムの編集(Editing the Module System) モジュールシステムの改造手順をおさらいします。 1)モジュールファイル(module_*.py)を編集する 2)build_module.bat を実行し、モジュールをビルドする 3)ビルド時にエラーを吐かなければM Bを起動してテストする ※変更によってはニューゲームが必要です 2.1 モジュールファイルの個人化 最初にMOD選択画面での画像を差し替えて、自分の物らしくします。 対象となるmain.bmpはMyNewModuleフォルダに入っています。 これを変更するとMOD変更時に分かりやすくて便利です。 DDSファイルを編集できるなら、メニューの背景画像に手を加えるのも良いでしょう。 背景となるbg2.ddsは Mount Blade/Textures/内にあります。 これをMount Blade/Modules/MyNewModule/Textures/に移動して編集することで違う背景に出来ます。 pic_mercenary.ddsはメインメニューでの画像です。 この辺りは後からでも出来るので、方法だけ覚えて先に進みましょう。 2.2 モジュールファイルの編集 モジュールシステムではゲーム上のオブジェクトのコレクションにPythonのリストを使っています。 (リストは`[`で始まり、カンマで区切られた要素を含み、`]`で終わります。) 更にそのリストの要素としてタプルを含んでいます。 (タプルは`(`で始まり、カンマで区切られた要素を含み、`)`で終わります。) 例えばmodule_map_icons.pyを開くと下の文章があります。 map_icons = [ ("player",0,"player", avatar_scale, snd_footstep_grass, 0.15, 0.173, 0), ("player_horseman",0,"player_horseman", avatar_scale, snd_gallop, 0.15, 0.173, 0), ("gray_knight",0,"knight_a", avatar_scale, snd_gallop, 0.15, 0.173, 0), ("vaegir_knight",0,"knight_b", avatar_scale, snd_gallop, 0.15, 0.173, 0), ("flagbearer_a",0,"flagbearer_a", avatar_scale, snd_gallop, 0.15, 0.173, 0), ("flagbearer_b",0,"flagbearer_b", avatar_scale, snd_gallop, 0.15, 0.173, 0), ("peasant",0,"peasant_a", avatar_scale,snd_footstep_grass, 0.15, 0.173, 0), ("khergit",0,"khergit_horseman", avatar_scale,snd_gallop, 0.15, 0.173, 0), ("khergit_horseman_b",0,"khergit_horseman_b", avatar_scale,snd_gallop, 0.15, 0.173, 0), ... ここでmap_iconsはリストとして宣言されている一方、リストの各要素 (例えば『("player",0,"player", avatar_scale, snd_footstep_grass, 0.15, 0.173, 0)』)はタプルです。 各タプルの構造は各モジュールファイルの先頭に記されています。 map_iconsでは 1 ) マップアイコンのid(名前) 他のファイルからの参照に用います。 また接頭語 icon_ が自動的に付与されます。 2 ) アイコンのフラグ header_map_icons.py に利用可能なフラグの表があります。 3 ) Mesh の名前 map_icon_meshes.brf、map_icons_b.brf、map_icons_c.brfに利用可能なリストがあります。 これらBRFファイルは Mount Blade\CommonRes にあります。 4 ) Meshのスケール 5 ) サウンドid 6 ) フラッグアイコンのx座標 7 ) フラッグアイコンのy座標 8 ) フラッグアイコンのz座標 これに例のタプル("player",0,"player", avatar_scale, snd_footstep_grass, 0.15, 0.173, 0)を当てはめると、下のようになります。 1 ) マップアイコンのid = "player" 2 ) マップアイコンのフラグ = 0 3 ) Mesh の名前 = "player" 4 ) Meshのスケール = avatar_scale 5 ) サウンドid = snd_footstep_grass 6 ) フラッグアイコンのx座標 = 0.15 7 ) フラッグアイコンのy座標 = 0.173 8 ) フラッグアイコンのz座標 = 0 他のモジュールファイルでも同様に、先頭にあるオブジェクトの構造に関する記述を読むことで内容を理解できます。 2.3 新しいオブジェクトの追加 マップアイコンのタプルの構造が分かったので、いよいよ自分の新しいマップアイコンを追加します。 map_icons = [ ("player",0,"player", avatar_scale, snd_footstep_grass, 0.15, 0.173, 0), ("player_horseman",0,"player_horseman", avatar_scale, snd_gallop, 0.15, 0.173, 0), . . . ("banner_125",0,"map_flag_f20", banner_scale,0), ("banner_126",0,"map_flag_15", banner_scale,0), ] 新しいオブジェクトはリストの内側に追加される必要があります。リストの最後列を一行開けてそこに追加することにします。既存のオブジェクトをコピー&ペーストし、それに手を加えると簡単です。 ここでは("town",mcn_no_shadow,"map_town_a", 0.35,0)をコピーして最後に追加します。 ... ("banner_126",0,"map_flag_15", banner_scale,0), ("town",mcn_no_shadow,"map_town_a", 0.35,0), ] 次はこれに新しい名前をつけます。”new_icon”としておきます。 このアイコンはフラグに0ではなく mcn_no_shadowが入っています。mcn_no_shadow の効果は「このアイコンは地面に影を落とさない」です。今回はこれを0にしておきます。 ... ("banner_126",0,"map_flag_15", banner_scale,0), ("new_icon",0,"map_town_a", 0.35,0), ] Mesh は利用する3Dモデルの設定です。ここでは”map_town_a”になっているのを”City”にします。 “City”は現在使われていないので判別しやすいのです。 次のスケールは、アイコンを何倍の大きさで表示するかを表しています。ここではtownとの違いが際立つように0.35から2に変更します。 ... ("banner_126",0,"map_flag_15", banner_scale,0), ("new_icon",0,"City", 2,0), ] 次節は、今作ったアイコンを私用する新たなパーティを作成するため、module_party.pyを編集します。 パーティがアイコンを利用するためには、アイコンを”参照”する必要があります。 とりあえずここまでで一度モジュールをビルドして構文エラーをチェックしましょう。 エラーの確認のためにビルドするのはナイスアイデアなのです。 2.4 ゲームオブジェクトの参照 module_parties.pyを開きます。 幾つかの定数が宣言された後にparties = [ で始まるPythonのリストがあります。 定数(ex.pf_town = pf_is_static|pf_always_visible|pf_show_faction|pf_label_large)は複数のフラグの繰り返しを楽にしてくれます。定数に関しては後で後述します。 見ての通り、module_partiesのタプルの構造はmodule_iconsとは若干異なっています。 まずはpartiesの構造を詳しく見ていくことにします。 例として下のタプルを取り上げます。このタプルはSargothをマップ上に配置しています。 ("town_1","Sargoth", icon_town|pf_town, no_menu, pt_none, fac_neutral,0,ai_bhvr_hold,0,(-1.55, 66.45),[], 170), タプルの構造を見てみます。 1)パーティID。 他のファイルからの参照に使います。 前頭語 p_ が自動的に付与されます。 2) ゲーム上で表示されるパーティの名前。 3)パーティのフラグ。1つ目のフラグは必ずそのパーティのアイコンを示す必要があります。 header_parties.pyに利用可能なフラグの表があります。 4)メニュー。v0.730以降使用されておらず、使用は非推奨の状態です。 5) パーティテンプレート。このパーティが属するパーティテンプレートのIDです。 デフォルトはpt_noneです。 6)ファクション。module_factions.pyで宣言されています。 7)パーソナリティ。header_parties.pyにこのフラグの説明があります。 8)AIの行動。マップ上でAIがどう行動するかを示します。 9)AIのターゲットパーティ。AIのターゲットを示します。 10)初期の座標。 11)スタックしている部隊のリスト。 三つの要素を含みます。 11.1)部隊のID。module_troops.pyに利用可能な表があります。 11.2)スタックしている部隊の数。 11.3)メンバーフラグ。無くてもOKですがpmf_is_prisonerを入れると囚人扱いになります。 12)パーティの向いている角度(無くてもOK) Sargothの例と比較すると、 ("town_1","Sargoth", icon_town|pf_town, no_menu, pt_none, fac_neutral,0,ai_bhvr_hold,0,(-1.55, 66.45),[], 170), 1) パーティID = “town_1” 2)パーティの名前 = “Sargoth” 3)フラグ = icon_town|pf_town 4)メニュー = no_menu 5)テンプレート = pt_none 6)ファクション = fac_neutral 7) パーソナリティ = 0 8)AIの行動 = ai_bhvr_hold 9)AIのターゲット = 0 10)初期配置 = (-1.55, 66.45) 11)部隊のスタック = [](無し) 12)向き = 170 3)を見ると、Sargoth はmodule_icons.py からアイコン”town”に前頭語icon_ をつけて参照しています。 前頭語はシステムに「どのモジュールファイルからなのか」を示すために用いられています。 ex. mocule_icons:icon_ , module_factions:fac_ , module_parties:p_ など。 各モジュールファイルに対応する前頭語があります。 ではパーティの構造を知った上で、自分の新しいパーティを追加しますが、その前に注意事項があります。 module_partiesや他のいくつかのモジュールファイルでは、リストの最後に追加するとエラーを起こします。 そういう場合は注意書きがコードの中に書かれています。 module_parties.pyでは”town_1”と”castle_1”の間への追加が推奨されています。 これはmodule_constants.pyで定義されています。これについては後述します。 では”town_1”をコピーして”town_18”の直後にペーストします。 ... ("town_18","Narra", icon_town_steppe|pf_town, no_menu, pt_none, fac_neutral,0,ai_bhvr_hold,0,(-22.6, -82),[], 135), ##JIK's Test Area ("town_1","Sargoth", icon_town|pf_town, no_menu, pt_none, fac_neutral,0,ai_bhvr_hold,0,(-1.55, 66.45),[], 170), ##End of JIK's Test Area # Aztaq_Castle # Malabadi_Castle ("castle_1","Culmarr_Castle",icon_castle_a|pf_castle, no_menu, pt_none, fac_neutral,0,ai_bhvr_hold,0,(-69.2, 31.3),[],50),. ... 表記とコメントについて触れておきます。 使用する部位をコメント(#で始まる行)で囲いだし、私(訳注 筆者であるJIK氏)の名前つきで印をつけてあります。 こうすると検索で便利ですし、後から読んでも何をしているか分かりやすくなります。 このチュートリアルではこういった点にも触れておきます。習慣にしましょう。 では編集していきます。 パーティIDを”town_1”から”mod_town”へ、パーティの名前を”Sargoth”から”Mod_Town”へ変更します。 タプルを見ていくと幾つかのことが読み取れます。 1)このパーティを参照するためにはパーティIDに前頭語p_をつけて”p_mod_town”を使います。 2)ゲーム内では”Mod Town”が表示されます。 3)このパーティはicon_townとフラグpf_town(街の共通設定のフラグ)を利用しています。 フラグは次に幾つか変更します。 4)Mod Townのファクションはneutralです。 5)このままだとMod TownはSargothとまったく同じ場所に出現します。なので変更します。 ##JIK's Test Area ("mod_town","Mod_Town", icon_new_icon|pf_town, no_menu, pt_none, fac_neutral,0,ai_bhvr_hold,0,(-1, -1),[], 45), ##End of JIK's Test Area 初期配置を(-1,-1)に、方角を45に、アイコンを”new_icon”に変更しました。 こうすることで問題なく出現します。 セーブしてbuild_moduleを実行します。うまく行っていればマップの中心付近に新しい街が出現します。 失敗した場合、文法とスペリングをチェックしましょう。カンマと括弧の位置に気をつけてください。 街のゲームメニューの設定をしていないので、このままでは街に行ってもマトモに機能しません。 ゲームメニューの設定は少々ややこしいので後述することにして、とりあえずここでは新しい街を作るまでにしておきます。 MOD作成の基礎はこれでおしまいです。Chapter3以降は各モジュールファイルについて見ていきます。 [前頭語リスト] fac_ -- module_factions.py icon_ -- module_map_icons.py itm_ -- module_items.py mnu_ -- module_game_menus.py mno_ -- module_game_menus.py ――module_game_menu内の各オプションへの参照 mt_ -- module_mission_templates.py psys_ -- module_particle_systems.py p_ -- module_parties.py pt_ -- module_party_templates.py qst_ -- module_quests.py script_ -- module_scripts.py scn_ -- module_scenes.py spr_ -- module_scene_props.py str_ -- module_strings.py trp_ -- module_troops.py skl_ -- module_skills.py module_dialogs.pyは直接参照されることがないので前頭語もありません。 PART3 兵士(Module Troops) この章ではmodule_troops.pyを扱います。 module_troopsは一般の部隊、ヒーロー、チェストと街のNPCを定義し、顔、能力値とインベントリを加えて完成します。 新しいキャラ、兵種を追加するときはこのファイルを編集します。 3.1 module_troopsの内容 最初の数行は武器のproficienciesの計算などが記述されています。 この辺はアンタッチャブルなのとPythonのリストの域を超えるために扱わず、 とりあえず troops のリストまで飛ばします。 ここにはプレイヤーや他の兵士に関するタプルがあり、 すぐ下にArenaの相手として出てくる戦士に関するタプルがあります。 これを例として一般兵のレベルアップを見ていきます。 ["novice_fighter","Novice Fighter","Novice Fighters",tf_guarantee_boots|tf_guarantee_armor,no_scene,reserved,fac_commoners, [itm_hide_boots], str_6|agi_6|level(5),wp(60),knows_common,mercenary_face_1, mercenary_face_2], これは”novice fighter”君に関する表記です。彼を一言で表せばザコです。 ではこのタプルの意味を見ていきます。 1)兵士のID。他のファイルからの参照に用います。 2)兵士の名前。 3)複数形での兵士の名前。 4)兵士のフラグ。tf_guarantee_* はその種類の装備がインベントリに存在しているとき必ず身に着けることを保証します。 これをはずすと、その種類の装備をつけずに登場することがあります。melee武器だけは持っている限り必ず保証されます。 5)シーン。これはヒーローユニットにだけ適用され、ヒーローが登場するシーンを指定します。 ex. scn_reyvadin_castle|entry(1) は reyvadin Castleの出現ポイント1にヒーローを登場させます。 6)予約。現在使われていません。reservedか0だけが入ります。 7)ファクション。前頭語fac_を用います。 8)インベントリ。兵士のインベントリにあるアイテムのリストです。一般兵はこのリストの中からランダムに装備を選びます。 9)Attribute。兵士のAttributeの値とレベルです。プレイヤーに対してと同様に働きます。 10)武器のProficiencies。wp(x)は値xの周りでランダムにWeapon Prodicienciesを生成します。 ex.弓のエキスパートだが他の武器のproficienciesは60くらいの兵士の記述はwp_archery(160)|wp(60) となります。 11)Skills。プレイヤーのスキルと同様です。 但し兵士はキャラクターレベル毎にAttributeポイントとSkillポイントを1ポイントづつ得て、それをランダムに割り振ります。 12)顔コード1。顔エディット画面でCtrl+Eを押すことで顔コードを出力できます。(エディットモード) 13)顔コード2。ヒーローユニットには無効で一般兵にだけ適用されます。一般兵の顔は顔コード1と2のどちらかからランダムに決定されます。 Novice_fighterのタプルを当てはめてみます。 1)ID = “novice_fighter” 2)名前 = “novice_fighter” 3)名前の複数形 = “novice_fighters” 4)フラグ = tf_guarantee_boots|tf_guarantee_armor 5)シーン = no_scene 6)予約 = reserved 7)ファクション = fac_commoners 8)インベントリ = [itm_sword,itm_hide_boots] 9)Attributes = str_6|agi_6|level(5) 10)Weapon Proficiencies = wp(60) 11)Skills = knows_common 12)顔コード1 = swadian_face1 13)顔コード2 = swadian_face2 さて注意点が3つあります。 フラグ tf_guarantee_armor が付いていますが彼は鎧を持っていません。 しかしこれは無意味なフラグではなく「ゲーム中に手に入れたら必ず装備する」ことを指示しています。 STRとAGIは6とされていますがこれはLv1でのAttributeです。 実際にはLv5で登場するので、その分のポイントがランダムに加算されて現れます。 スキル knows_common はスキルの集合で、module_troops の中で先に定義されています。 上にスクロールして探してみると、下記の定義が見つかります。 knows_common = knows_riding_1|knows_trade_2|knows_inventory_management_2|knows_prisoner_management_1|knows_leadership_1 ではknown_commonの意味を見ていきます。 各スキルのレベルはRiding=1、Trade=2、Inventory Management=2、Prisnor Management=1、Leadership=1です。 known_commonは「定数」です。定数は色々な値、ID、他の定数やオブジェクトを表すことができます。 この例だと known_commonは knows_riding_1|knows_trade_2|knows_inventory_management_2|knows_prisoner_management_1|knows_leadership_1 と定義され、スキルの欄にknows_commonを代入すると定義文を代入したのと同様に働きます。 では次の兵士の記述を見てみます。 ["regular_fighter","Regular Fighter","Regular Fighters",tf_guarantee_boots|tf_guarantee_armor,no_scene,reserved,fac_commoners, [itm_hide_boots], str_8|agi_8|level(11),wp(90),knows_common|knows_ironflesh_1|knows_power_strike_1|knows_athletics_1|knows_riding_1|knows_shield_2,mercenary_face_1, mercenary_face_2], これを見ると”novice fighter”より少し強く、スキルもknows_common以上の物を持っていることが分かります。 次は”novice fighter”がLv11になったら”regular fighter”へアップグレード出来るようにします。 3.2 兵士のアップグレード アップグレード経路のリストは module_troops の一番下にあります。 アップグレードの選択肢は upgrade(troops) によって定義されます。 最初のIDはアップグレード元、二番目がアップグレード先です。 ex. upgrade(troops,"farmer", "watchman") は farmer から watchman への流れを示しています。 アップグレードの演算は2通りあります。 upgrade(troops,"source_troop", "target_troop_1"), upgrade2(troops,"source_troop", "target_troop_1", "target_troop_2"), upgrade2はアップグレード先が2つある場合に用います。今のところ3つは出来ません。 “novice fighter”の行は無いので、upgrade(troops,"farmer", "watchman")をコピーしてこのブロックの最後の列にペーストし、”farmer”を”novice_fighter”に、”watchman”を”regular_fighter”に書き換えます。 upgrade(troops,"novice_fighter", "regular_fighter") これで”novice_fighter”から”regular_fighter”へのアップグレードが可能になりました。 注意:この作業をしているブロックはtroopsのブロックの外にあります。 またこのブロックの各行末にはカンマがありません。 更に、これから作る新しい兵士の分を追加しておきます。 upgrade(troops,"new_troop", "novice_fighter") を最後に追加します。 終わったら上にスクロールして # Add Extra Quest NPCs below this point がある位置を見つけてください。新しい兵士はここで定義される必要があります。 というわけで"local_merchant"の前に新しい兵士を追加します。 3.3 新しい兵士(troop)の追加 "local_merchant"の前に一行作り、”novice_fighter”をコピー&ペーストして少し手を加えます。 ##JIK - new troop entry ["new_troop","new_troop","new_troops",tf_guarantee_boots|tf_guarantee_armor,no_scene,reserved,fac_commoners, [itm_sword_medieval_a,itm_leather_jerkin,itm_skullcap,itm_hide_boots], str_6|agi_6|level(5),wp(60),knows_common,mercenary_face_1, mercenary_face_2], 見ての通り、"new troop"君は剣と鎧、ブーツを装備しています。 一方“itm_skullcap”を装備しているかはランダムです。 帽子も必ず装備するようにフラグ tf_guarantee_helmet を追加することにします。 ##JIK - new troop entry ["new_troop","new_troop","new_troops",tf_guarantee_boots|tf_guarantee_armor|tf_guarantee_helmet,no_scene,reserved,fac_commoners, [itm_sword_medieval_a,itm_leather_jerkin,itm_skullcap,itm_hide_boots], str_6|agi_6|level(5),wp(60),knows_common,mercenary_face_1, mercenary_face_2], 兵士の能力も変更します。STRとAGIを9に、Lvを4、Weapon Proficiencyを80にします。 ##JIK - new troop entry ["new_troop","new_troop","new_troops",tf_guarantee_boots|tf_guarantee_armor|tf_guarantee_helmet,no_scene,reserved,fac_commoners, [itm_sword_medieval_a,itm_leather_jerkin,itm_skullcap,itm_hide_boots], str_9|agi_9|level(4),wp(80),knows_common,mercenary_face_1, mercenary_face_2], ここまで出来たらbuild_module.batを実行してエラーを確認しておきます。 3.4 マーセナリ ※この部隊はもう無いので、new_troopを代わりに利用します。 スタート時に1人だと寂しいので、数人の仲間を連れているようにします。 module_parties.pyを開き、”main_party”で始まるタプルを探します。 5人のnew_troopを連れているように変更します。 ("main_party","Main Party",icon_player|pf_limit_members, no_menu, pt_none,fac_player_faction,0,ai_bhvr_hold,0,(17,52.5),[(trp_player,1,0),(trp_new_troop,5,0)]), (trp_new_troop,5,0)をパーティスタックに追加しました。 ここで一度セーブしてビルドします。成功したら新しくゲームを開始しましょう。 5人のnew troopが仲間に入っているはずです。 更に戦闘してnovice fighterやregular fighterへアップグレード出来ることを確認しましょう。 おめでとうございます!あなたは一般兵の編集方法を習得しました! 次節ではヒーローユニット、商人、NPCに手を伸ばします。 3.5 NPC NPCを見るためにmodule_troops.pyを開きます。 一般兵とよく似ていますが、NPCと商人が持つ最大の違いはフラグ tf_heroの存在です。 このフラグによってMarnidやBorchaは独自のステータスを持てるようになっています。 商人も含め、ゲーム内の全てのユニークNPCはヒーローユニット扱いです。 ヒーローと一般兵の違いを挙げていきます。 1)ヒーローは殺害できない。 彼らのヘルスは%表示されます。また複製しない限り唯一無二です。 2)ヒーローは1人で1スタックである。 各ヒーローはその種族の中で唯一の存在なので、複数形の名前を持ちません。 なのでタプルの3番目の要素は2番目と同一です。 3)ヒーローは兵士タプルで指定されたシーンに登場する 4)味方のヒーローは囚われの身にならない。 一方プレイヤーは敵のヒーローを捕まえられます。 例としてヒーローのタプルを見てみます。 ["npc2","Marnid","Marnid", tf_hero|tf_unmoveable_in_party_window, 0,reserved, fac_commoners,[itm_linen_tunic,itm_hide_boots,itm_club], str_7|agi_7|int_11|cha_6|level(1),wp(40),knows_merchant_npc| knows_trade_2|knows_weapon_master_1|knows_ironflesh_1|knows_wound_treatment_1|knows_athletics_2|knows_first_aid_1|knows_leadership_1, 0x000000019d004001570b893712c8d28d00000000001dc8990000000000000000], これらは我らが心からの友人Marnid君です。 フラグ tf_ hero によってヒーローユニットと定義されています。 またフラグ tf_unmoveable_in_party_window は敵の虜囚とならない、あるいは拠点に置いたり交換したり出来ないことを指示しています。 彼は Happy Boar Inn の 登場ポイント4に登場していましたが、新しいコードでは各地のTavernにランダムに出現するようになりました。 (JIKによる注:このコードは後で解説する必要があるでしょう。) Marnidは戦闘では非力ですが交易関係のスキルは充実しています。ヒーローとしてスクリプトイベント以外では死ぬことはありません。 また彼はユニークな顔コードを持っています。顔はゲーム内の顔エディターを利用することで変更したりコードを作ったりできます。 これについてはPART10で触れることにします。 Marnidの兵士IDが”npc2”である点に注意しましょう。 参照は常に小文字で行う必要があります。大文字を使うとエラーを吐きます。 なので、他のファイルからMarnidを参照する場合は”trp_npc2”を用います。 タプルの意味が分かるようになったので新しいヒーローを追加します。 # Add Extra Quest NPCs below this point の行を探して、 先に作った”new_troop”の上にMarnidのタプルをコピーします。 分ける必要のない限り、変更点を一箇所にまとめておくのはナイスアイデアです。 コピーしたタプルに手を加えます。 “npc2”を”npc17”に(既にnpc16まで存在しているので)、名前を”Geoffrey”にします。 ついでにMarnidと見た目を変えるために”itm_linen_tunic”を”itm_courtly_outfit”にしておきます。 ["npc17","Geoffrey","Geoffrey", tf_hero|tf_unmoveable_in_party_window, 0,reserved, fac_commoners,[itm_courtly_outfit,itm_hide_boots,itm_club],def_attrib|level(6),wp(60),knows_trade_3|knows_inventory_management_2|knows_riding_2, 0x000000019d004001570b893712c8d28d00000000001dc8990000000000000000], ここまで出来たらビルドします。 エラーを吐かずに成功すればテストにかかりたいのですが、居場所がランダムなので「どこにいるのか分からない」という問題があります。 そこで出現場所を指定します。 town_6(Pravenです)の出現ポイント6を指定することにします。 ["npc17","Geoffrey","Geoffrey", tf_hero, scn_town_6_tavern|entry(1),reserved, fac_commoners,[itm_courtly_outfit,itm_hide_boots,itm_club],def_attrib|level(6),wp(60),knows_trade_3|knows_inventory_management_2|knows_riding_2, 0x000000019d004001570b893712c8d28d00000000001dc8990000000000000000], “scn_town_6_tavern|entry(1)”を追加して再ビルドします。 成功していればPravenのTavernにGeofferey君がいるはずです。 Geofferey君はとりあえずそのままにして、シーン作成の方に移ります。 その前に、これから作るクエストの"役者"を配置しておきます。 まず“costable_hareck”のタプルを探し、Geofferey君の下にコピーします。 後で新しい顔をあて、Mod Townでのクエストのシーンに配置しますが、 その前に彼にユニークなIDを与えます。IDを”hareck”に、フラグを0にしておきます。 ["hareck","Constable Hareck","Constable Hareck",tf_hero, 0,reserved, fac_commoners,[itm_leather_jacket,itm_hide_boots],def_attrib|level(5),wp(20),knows_common,0x00000000000c41c001fb15234eb6dd3f], 3.6 商人 ※これはWinter氏の旧バージョンのままで、テストされていません。 商人はヒーローの特殊形です。tf_hero に加えて tf_is_merchantを持っています。 このフラグはインベントリの中から特別に指定されたもの以外の装備をさせません。 言い換えると、商人は全てのアイテムを受け取れるがその一切を自分で装備せず、商品とします。 商人の例: ["zendar_weaponsmith","Dunga","Dunga",tf_hero|tf_is_merchant, scn_zendar_center|entry(3),0,fac_commoners,[itm_linen_tunic,itm_nomad_boots], def_attrib|level(2),wp(20),knows_inventory_management_10, 0x00000000000021c401f545a49b6eb2bc], これはZendarにいる商人Dungaのタプルですが、Nativeのほかの商人とほとんど同じです。 他との違いはIDと名前、シーン配置、そして顔です。 (訳注:Zendarは旧バージョンに存在した街で、現在のv1.011には存在しません。) ※繰り返しますがこれはテストされていません。新しい商人は”merchants_end”タプルの直前に追加することを推奨します。 商人を追加する手順は少々複雑です。M Bには「商人のインベントリを毎日更新する」スクリプトがあり、それは商人のタイプごとに存在しています。 そして、そのスクリプトはrange関数を用いています。(range関数:指定した範囲に存在する下位タプルの数を返す関数) ex. 防具商人のrangeは”zendar_armorer”を下限として含み、”zendar_weaponsmith”を上限として含みません。 このため、新しい防具商人は”zendar_weaponsmith”の前に、新しい武器商人は”zendar_tavernkeeper”の前に、新しい財商人は”merchants_end”の前に加える必要があります。 (訳注:range関数は終了位置を結果に含みません。 例えばrange(1,10)は[1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9]を返します。) 3.7 チェスト ゲーム内にはプレイヤーが干渉できる箱がありますが、チェスト兵士はそのインベントリの役割を果たす特殊な兵士です。 チェスト兵士はチェストそのものではありません。あくまでもそのインベントリです。 ゲーム内で見かけるチェストはシーンプロップ、シーンインフォメーション、兵士、ハードワイヤードです。 新しいチェストを作るためには複数のモジュールを編集する必要があり、いささか複雑です。 ここではmodule_troopsに関係するインフォメーションにだけ触れておきます。 チェストの例: ["zendar_chest","Zendar Chest","Zendar Chest",tf_hero|tf_inactive, 0,reserved, fac_neutral, [],def_attrib|level(18),wp(60),knows_common, 0], チェストのタプルはどれも殆ど同じです。新しいチェストを作る上で変更する点はID、名前、Lv、スキル、そしてインベントリです。 上述の通り、チェスト兵士はゲーム内のチェストのインベントリとして働きます。 ゆえに、チェスト兵士のインベントリに追加した全てのアイテムはゲーム開始時からチェストの中に存在します。 チェストが機能するためにはチェスト兵士が必要です。しかし他のモジュールファイルにも手を加える必要があります。 これに関しては各ファイルの解説の中で触れることにします。 これでmodule_troopsについての全てを学びました。header_troops.pyには使用可能な他のフラグの表があります。 色々実験をして、準備が出来たら次のPART4に進みましょう。
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◎書評・超われわれ史 ラインナップ 最新の情報は ◎歴史の本棚 にあります ビッグ・ピクチャー--ハリウッドを動かす金と権力の新論理●=エドワード・J・エプスタイン著 兵学と朱子学・蘭学・国学●前田勉 ウィルソン外交と日本●高原秀介 裏社会の日本史●フィリップ・ポンス 世俗の形成―キリスト教、イスラム、近代●タラル・アサド 歴史のなかの天皇●吉田孝 [毎日] 731●青木冨貴子 [朝日] 戦陣訓の呪縛●ウルリック・ストラウス [読売] 銃後の社会史●一ノ瀬俊也 [読売] 吉田茂●原彬久 [読売] 会津戦争全史 [著]星亮一 証言 戦後日本経済―政策形成の現場から [著]宮崎勇 [朝日] 戦後60年 ●上野昂志 世界文明一万年の歴史 [著]マイケル・クック 「終戦日記」を読む ●[著]野坂昭如 [朝日] 戦後日本のジャズ文化 映画・文学・アングラ ●[著]マイク・モラスキー [朝日] 昭和天皇と立憲君主制の崩壊 ●伊藤之雄 [読売] 御巣鷹の謎を追う 日航123便事故20年 ●米田憲司 [朝日] メディアの支配者 上・下 ●中川一徳 [朝日] 最新の情報は ◎歴史の本棚 にあります ビッグ・ピクチャー--ハリウッドを動かす金と権力の新論理●=エドワード・J・エプスタイン著 (早川書房・2835円) ◇日本の技術が変えた米映画界の基盤 アメリカの主要映画製作会社の二〇〇三年の収入は、全世界で四〇〇億ドル強(約四兆八千億円)であり、そのうち映画館での入場料収入は、なんと一八%ほどに過ぎなかったという。もちろん一昔前、著者が視点を当てている一九四八年は収入のすべてが入場料であった。 何がこのような激変をもたらしたのか。 この本は、入手が難しい経営数値--売上高、コスト、収益等を用い、たんねんな調査の上に書かれたアメリカ映画産業の歩みの記録でもある。 一九四七年はアメリカ映画産業の旧き良き時代である。この年をとりあげたのは正しい。映画産業史によると一九三〇年から四八年までは安定と繁栄の時代であり、四八年以降は変動と混乱とテレビとの競争の時期だからである。 経済史の本はこの時点で、五大映画企業の市場支配を論じている。だがこの本は、これに一社を加える。当時の例外的な一社--それはディズニーであり、それが映画界の未来を示している点で卓見である。 一九四七年まで五大会社は、アメリカでの映画製作、配給、興行を支配していた。これらの会社は有名俳優と専属契約を結んで囲いこみ、主要都市で主要な映画館を所有し、配給網を整備し、垂直的独占ともいえる組織を作っていた。だがディズニーはこうした組織を作っていない独立業者であり、自社支配の劇場を持たず、専属契約の俳優はいなかった。五大会社の入場料依存とちがって、ミッキーマウス、白雪姫等映画に登場した主人公たちからのパテント代、子供を対象にしたキャラクターグッズの売行きで会社を支えた。入場料以外の収入源に依存するという点でディズニーは新しい時代のパイオニアだったのである。 一九四七年を境に、映画館に行く人はテレビその他にくわれて減少の一途をたどった。この本によれば、一九四七年、アメリカ中で四七億枚売れた入場券は二〇〇三年には十五憶七千万枚である。人口はほぼ倍になったのに入場者は三分の一に落ちたのである。 映画界の苦境を救ったのは日本のハイテク技術だ、と著者はいう。まずソニー、これに東芝と松下が加わり、ビデオ、ついでDVDの登場である。 はじめ映画大手はテレビを敵視し、ビデオも排除しようとした。ソニーとの訴訟である。ソニーは頑張りこれに勝つ。ソニーの当事者盛田には一節がさかれている。 二〇〇三年のアメリカ映画会社の収益の四六%がビデオとDVDからのものであり、テレビからのものが三六%、かつて敵視したもので支えられている。アメリカ全土いや全世界のレンタル・ビデオショップが、映画のビデオを複数買うようになり、売上予想が安定しだしたのである。テレビのチャンネル数の増加が旧い映画の上映をふやしだした。経営基盤の変化がよくわかる。アメリカの最大の輸出品は今やハリウッドが作りだすコンテンツであり、それが世界を支配する文化グローバリゼーションを押し進めている。 日本のハイテク技術はハリウッドで映画の製作方法も配給組織も変えてゆく。 人の動きを電子技術でコンピューター上に移し、これに顔を合成し、コンピューター内で映画を作っていく。子供向のファンタジー映画製作のこの手法は、法外な出演料となったスターを使わず、映画を作りだす。 デジタル化された映画は各地の映画館に電送され、フィルム配給網を不要なものとしだした。大きなコスト削減である。ひとつの建物の中にいくつもの小規模の上映館を置くというシステムもこうして生れた。デジタル技術の立役者ソニーはコロンビアとMGMを買収し、東芝はワーナーの大株主となり、松下はユニバーサルに触手を伸ばしたことを、著者は強調する。 この本の面白さは、経済的視点だけでなく、社会、文化の視点も含め、アメリカ映画界のインサイド・ヒストリーを展開している点である。例えば、パラマウント社の基礎を築いたズーカーは、十六歳でハンガリーを離れたユダヤ系移民で、エジソンの系列会社ほかが持つ特許と、コダックフィルムの結合による支配から逃れ、特許侵害を免かれるためハリウッドに移ったという。ハリウッドの他の会社の創設者も似たりよったりの経歴でユダヤ系である。対する特許独占の所有者たちはアングロサクソン。五大会社と異質の経営を行ったディズニーはアングロサクソンである。 注意すべきは一九九九年から二〇〇四年まで十億ドル以上をかせいだ十本の映画は、すべてスターを使わず、児童向のアニメ手法で--広い意味でディズニー系であるという。 盛りこぼれるばかりの内容。それでいて、入場料では成りたたない映画界でミニ・シアター向の芸術映画はどうなるのかを考えざるをえない。(塩谷紘・訳) 毎日新聞 2006年4月9日 東京朝刊 URL http //www.mainichi-msn.co.jp/shakai/gakugei/dokusho/archive/news/2006/04/09/20060409ddm015070152000c.html 兵学と朱子学・蘭学・国学●前田勉 出版社:平凡社 発行:2006年3月 ISBN:4582842259 価格:¥2940 (本体¥2800+税) 中国古典の『孫子』で知られる兵学の思想については、根強い人気がある。いまでも「孫子の兵法に学ぶ」と掲げるビジネス書の類は多く、本場では中心思想であった儒学よりも、なじみがあるかもしれない。 この本によれば、日本人の兵学好きには、深い歴史上の由来がある。武士たちの軍隊編成を、そのまま平時の支配組織に用いる、独特の体制が徳川時代には続いたために、「支配の理論と方法」として兵学が重んじられたのである。 この点を主軸において、著者は近世思想史の全体を通観する。科挙が行われない日本では、朱子学は現実の政策論議から遊離したまま「道理」を論じる性格を強めた。だがそのことが朱子学の理想主義に純粋さをもたらし、徳川末期には西洋の国家平等観のいち早い受容も可能にする。 理想の追求が現実主義となかなか交わらない、おなじみの傾向も、歴史の浅いものでは決してない。(平凡社、2800円) 評者・苅部 直(東京大学助教授) (2006年5月1日 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/book/review/20060501bk08.htm ウィルソン外交と日本●高原秀介 出版社:創文社(千代田区) 発行:2006年2月 ISBN:4423710676 価格:¥8400 (本体¥8000+税) ウィルソン外交の評価は難しい。普遍主義的理念の強調は、各国に戸惑いを与え国際関係に混乱をもたらした。理念はしばしば利己的国益の隠れ蓑(みの)とされ、その偽善性が批判された。著者はウィルソンの掲げた理念が単なる利益の正当化ではなく、普遍性に根ざす力を持っていたことを評価した上で、それが対日外交の場に移されたときの現実との交錯を丁寧に描き出している。特に、米政府内の大統領を取り巻く外交担当者たちに関する分析が優れている。 米国の理念に基づく新しい外交は必ずしもストレートには展開されなかった。それゆえ、旧い外交に慣れきった日本の誤解を招くことが少なくなかった。一方ウィルソンは、彼の理念に反する対華二十一箇条(かじょう)要求によって対日不信を強めたために、シベリア出兵をめぐって米国の意向にこたえ対米協調を図ろうとした原敬の努力の真剣さに気づかなかったという。何ともやりきれない思いがする。(創文社、8000円) 評者・戸部 良一(防衛大学校教授) (2006年4月17日 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/book/review/20060417bk08.htm 裏社会の日本史●フィリップ・ポンス [掲載]2006年04月30日 [評者]斎藤美奈子 もちろん書き手によるけれど、海外の読者に向けて日本を紹介した本は国内の読者にも有効な場合が少なくない。あうんの呼吸でわかったような気になっている(でも本当はまるでわかっていない)事象が一から解きほぐされることで、霧が晴れるような気分がまま味わえるのだ。 本書でいう裏社会とは、排除されることで漂泊の民となり、社会の周縁に押しやられた人々のこと。第一部で語られるのは中世の賎民(せんみん)に起源を持つ被差別民、明治以降の下層労働者、横山源之助が『日本之下層社会』で描いたような貧困層、そして著者が「どんづまりの街」と呼ぶ現代の山谷や釜ケ崎の住民までを含む「日陰の人々」である。 一方、第二部の主役は「やくざ」である。これには博徒とテキヤの二系列があると著者はいう。江戸の侠客(きょうかく)。明治の義賊。極右思想と結びつき軍との協力関係さえ築いた戦前の「愛国的やくざ」。そして、戦後の政界や財界との結びつきを強めた「黒幕」や三大暴力団の「親分」。 貧窮者とやくざが一冊の中に同居する。そこがこの本のキモというべきだろう。〈社会は「良き」貧者と「悪(あ)しき」貧者、また「おとなしい」放浪者と「手ごわい」放浪者との区別には無関心だった〉と著者は書く。 〈表面上は国家への異議を唱えているようでいて、結局は並列的かつ補完的な国家のコマ割だった〉と断罪されるやくざと、〈最後の偉大な拒絶のヒーロー〉かもしれない物言わぬ貧窮の民。 最終的に下される判断は逆だけれども、そこには確かに連続性が認められるのだ。17世紀から20世紀末までを俯瞰(ふかん)した論証は緻密(ちみつ)で、「へぇへぇへぇ」の連続。 著者のフィリップ・ポンス氏は、04年4月のイラク邦人人質事件の際、人質になった3人の若者を力強く弁護する論評を「ルモンド」紙に載せ日本の世論に鋭い一撃を加えた、あの東京支局長である。とかく「同質性」が強調される日本社会の多様性を浮き彫りにし、〈日本列島は不服従の者たちの住処(すみか)でもある〉ことを示した快著である。 出版社 筑摩書房 ISBN 4480857826 価格 ¥ 4,515 URL http //book.asahi.com/review/TKY200605020230.html 世俗の形成―キリスト教、イスラム、近代●タラル・アサド [掲載]2006年04月23日 [評者]酒井啓子(東京外国語大学教授・中東現代政治) 慎重な本、というのが、第一印象である。単純化、平易化によって生じる誤解を避け、丁寧に論を進める、著者の真摯(しんし)な姿勢がうかがえる。 それは、サウジアラビア生まれのムスリムで米国在住の学者、という著者の出自と無関係ではない。9・11以降蔓延(まんえん)するイスラムや宗教一般を巡る議論が、いかに短絡的に過ぎることか。序章での「西洋・非西洋を問わず、……無差別な残虐行為を正当化するために聖典の権威に訴える必要があったことはない」との謂(い)いは、けだし名言である。 だが本書は、ムスリム社会の代弁ではない。近代一般に関(かか)わる哲学的課題であり、普遍とみなされる近代・世俗概念への批判的考察である。 本書の核には、「なぜ『近代』が政治的目標として支配的なものとなったか」という疑問がある。そしてヨーロッパ近代の中心的概念とみなされる「世俗」を取り上げ、それが宗教と固定的に切り離されるものではないこと、聖性と相互関連しあうことを指摘する。著者の前作「宗教の系譜」と対になる議論である。 ここでの鍵概念は、「権力」と「近代国民国家」だ。「イスラム主義が国家権力に傾倒しているのは……正当的な社会的アイデンティティーと活動の場を形成せよと、近代国民国家に強要されているから」だ、との指摘は興味深い。「近代国民国家は、個人の生のあらゆる側面を……規制しようとしている」がゆえに、彼らも「世俗的世界における国家権力に無関心なままではいられない」。イスラム主義もまた、近代の中にある。 だが、近代ヨーロッパのアイデンティティー形成の中で、イスラムは鏡像的位置に置かれてきた。最も近い他者であるがゆえに、常に否定と矮小(わいしょう)化の対象となる。 ヨーロッパがイスラムを疑似文明視、脱本質化し、ヨーロッパ内のムスリムを同化させてきた、その背景に、著者は近代国家の多数派/少数派概念の問題性を見る。多数の中の少数としてではなく、世俗ヨーロッパにおける「さまざまな少数者と並ぶひとつの少数者」としての共存可能性への問いは、示唆に富む。 ◇ 中村圭志訳/Talal Asad 33年生まれ。ニューヨーク市立大学大学院教授。 出版社 みすず書房 ISBN 4622071908 価格 ¥ 6,510 URL http //book.asahi.com/review/TKY200604250276.html 歴史のなかの天皇●吉田孝 [毎日] (岩波新書・819円) 五味文彦・評 ◇原始から現代まで、特質と時代性を探る 皇位継承をめぐって、さまざまな議論があるなかで、きちんと歴史に即して天皇のあり方を探る、ないしは天皇を通じて歴史の流れを探ってみる。こうした試みは意外に少ない。天皇に関する問題をテーマ別に考えたり、また時代に限定して考えたりしても、通史として一貫して捉えることは多くないのである。 そうしたなかで日本古代の天皇のあり方を究明してきた著者が、原始王権の時代から現代の天皇制に至るまで、天皇に関わる諸問題を考察したのが本書である。 その視点は二つ。一つは、中国の周辺の東アジアに生まれた天皇と日本国家がどのような特質を帯びていたのかを探るというもので、これは古代史研究者としての著者の専門領域に属するもの。 もう一つは、同じような形で成立した日本の王権がその後にどのような形で成長してきたのか、東アジアの諸国との比較を通じ、果たして時代を通じて一貫した性格を有していたのかを探るというもので、これに向けて著者は果敢にチャレンジする。 そこではほぼ四つの段階を考えているように見受けられる。最初の段階は卑弥呼や倭の五王の時代であって、この原始王権のあり方を、文化人類学の成果などを利用しながら明快に指摘する。神聖王権とも、また複式王権とも捉えて、その動きを活写している。 次の段階は統一王権の時代で、東アジア世界との文明接触のなかで天皇号が成立し、律令制が導入されるなどして、古代国家が整えられてゆき、その後の規範となる古典的な国制や文化が成立してくる時代である。 たとえば天皇号はなぜ成立したのかという問題では、隋に派遣された小野妹子の外交交渉から興味深く指摘する。当初の国書には「日出(い)づる処(ところ)の天子」とあったため隋の皇帝に否認されると、次に「東の天皇」と国書に記したのであるが、妹子はこれを中国に提出しなかったのではないか、と著者は推測する。 この点を始めとする叙述は、著者の専門領域だけに説得力のある議論が展開されている。なかでも女帝の問題を論じたところは、今日の議論に参考になることが多い。同じ時期には東アジアに女帝が存在することに注目し、日本の女帝の性格に迫る。 それは親族組織のあり方と深く関わっていることや、唐の律令にはない太政天皇や女帝の規定が日本の律令に設けられていることの意味など、まことに示唆に富む指摘である。 第三の段階は、古典的な国制や文化に基づいて、ウヂからイエへという社会組織の単位が展開するなかでの二重王権の段階として捉えられる。武家という性格の異なる王権が併存して、その武家が天皇を守護する体制は近世まで続くとみる。 複式王権の説明と関わる形での把握と考えられるが、この付近は多少の異論も出てこよう。王権は天皇の朝廷にのみあるという見解も有力で、また九百年近くの時代を古典的な国制や文化で一括してしまってよいのかという疑問もある。ただ単に政治の流れのなかで天皇を考えるのではなく、能や浄瑠璃・歌舞伎などの文化の方面から考えている点でも貴重である。 そして第四の段階としての近代国家における天皇制であって、明治維新、大日本帝国憲法、そして敗戦により天皇の位置付けがどう変化してきたのか、それらを西欧列強との関わりのなかで叙述する。 ここでは王政復古により摂政・関白・将軍などを廃したことで古典的な国制が大きく転換したことを指摘している点が目につく。前近代の宗教の基礎にあった神仏習合も神仏分離政策によって崩壊したこともそれと関連づけている。 明治政府は欧米列強から押しつけられた不平等条約の改正にむけて、近代的な憲法と法体系を整備したが、この大日本帝国憲法により天皇は規定されることになった。律令を越えた存在としての天皇はここに大きく変化した。だが同時に制定された『皇室典範』は天皇が定めた法であり、大臣の署名もなく議会も関与できなかった。 昭和天皇は立憲君主として、世界的な君主制の危機の時代に登場したが、二・二六事件を経て現人神(あらひとがみ)として装われてゆき、日中戦争の果てに日米開戦へと踏み切ってゆく。こうして敗戦を迎え、象徴天皇制に基づく新憲法が発布され、通常の法として皇室典範も改正された。さらに昭和天皇が没するとともに、昭和天皇とは異質な新しい「象徴」天皇の時代が始まったと指摘して、筆をおく。 天皇の問題というと、どうしても過剰な主張や思い入れが先行するか、あるいは問題を避けたがるのが普通である。しかし本書は天皇に関わる基本的な問題を豊かな構想力により的確に、かつバランスよく叙述しており、読後感のさわやかなものとなっている。 毎日新聞 2006年2月12日 東京朝刊 URL http //www.mainichi-msn.co.jp/shakai/gakugei/news/20060212ddm015070101000c.html 731●青木冨貴子 [朝日] [掲載]2005年12月25日 [評者]最相葉月―書評委員のお薦め「今年の3点」 (1)731(青木冨貴子著) (2)性と生殖の近世(沢山美果子著) (3)沼地のある森を抜けて(梨木香歩著) 今いちばん困難な、未来に希望をつなぐという作業をこつこつと続けている人々が同時代にいる限り、私もまた放棄しない。 青木さん。(1)は雑誌連載中から刮目(かつもく)していた。石井細菌部隊の徹底解明なくして日本の臨床試験は前に進めぬからだ。GHQ資料を渉猟した結果、明らかになった密約に息を呑(の)む。過去同じテーマに挑んだ人々の仕事から大きく前進した。 沢山さん。(2)は津山藩などの古文書を繙(ひもと)き、性が藩の人口政策のもとで制御され、堕胎や間引きを人道に反する罪とみる意識が共同体と女性の内面に醸成された過程を検証。犯罪とみなすのはキリスト教導入以降とする見解を覆す労作。 梨木さん。(3)はぬか床を舞台に家族史から生命進化へ広がる壮大な物語。困難から希望の糸を紡ぎ出そうとする静かな熱情がある。四十億年前、私が一個の細胞だった時の記憶が甦(よみがえ)る。 731 著者 青木 冨貴子 出版社 新潮社 ISBN 4103732059 価格 ¥ 1,785 性と生殖の近世 著者 沢山 美果子 出版社 勁草書房 ISBN 4326653078 価格 ¥ 3,675 沼地のある森を抜けて 著者 梨木 香歩 出版社 新潮社 ISBN 4104299057 価格 ¥ 1,890 URL http //book.asahi.com/review/TKY200512270303.html 戦陣訓の呪縛●ウルリック・ストラウス [読売] 出版社:中央公論新社 発行:2005年11月 ISBN:4120036804 価格:¥2100 (本体¥2000+税) 太平洋戦争中に連合軍の捕虜となった日本軍将兵の数は約三万五千。欧州戦域での捕虜の数に比べると、きわめて少ない。その原因として「生きて虜囚の辱めを受けるな」と説いた戦陣訓の存在がよく指摘されるが、それは当時の日本独特の文化的・社会的規範でもあった。 戦陣訓の呪縛(じゅばく)は、捕虜となった後の日本軍将兵にも作用し続けた。本書はその実情を、捕虜の手記やインタビューや米軍の記録を駆使し、収容所生活から帰国後に至るまでの彼らの境遇を丹念に追跡することによって、明らかにしている。米軍による捕虜取り扱いの実態も興味深い。米軍は日本人捕虜から様々の情報を得ていたが、それが成果を得るまでには尋問方法の試行錯誤があった。捕虜尋問にあたって最も重要なのは相手の言語と異文化に対する理解だったという。この点での日系二世の貢献の大きさを著者は強調している。吹浦忠正監訳。 評者・戸部 良一(防衛大学校教授) (2006年1月16日 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/book/review/20060116bk07.htm 銃後の社会史●一ノ瀬俊也 [読売] 出版社:吉川弘文館 発行:2005年12月 ISBN:4642056033 価格:¥1785 (本体¥1700+税) 遺族の戦中・戦後・現在の体験に光をあてる。戦後、粗略な扱いを受けた銃後の人々。国が奪ったものを、国から返してもらう。その“当然の”要求を実現化すべく、遺族会が組織された。こうして「遺族」は、国家を基盤とするひとつのシステムとなる。戦後60年に、遺族会誌の丹念な読みを通して迫った力作。 (2005年12月22日 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/book/review/20051222bk04.htm 吉田茂●原彬久 [読売] 出版社:岩波書店 発行:2005年10月 ISBN:4004309719 価格:¥819 (本体¥780+税) サンフランシスコ講和会議の下交渉に、米国側から臨んだジョン・フォスター・ダレスは、相手方の首相、吉田茂について、「不思議の国のアリス」のようだと評したという。米国の世界戦略にはっきり迎合しながら、再軍備の要求をのらりくらりとかわし、言質を取らせない態度にいらだったのである。 考えてみれば、戦前・戦中は外交官として軍部に抵抗し、戦後は「ワンマン首相」と批判されたこの人物、そもそも何をめざして政治の世界に生きていたのかわかりにくい。この謎に対し本書は、皇室を中心とする秩序への帰依を、吉田の言動の根本に見いだし、説得力をもって解明している。 語り口は吉田その人に感化されたかのように、ときに諧謔(かいぎゃく)に富むが、「吉田ドクトリン」と呼ばれる外交方針に対する批判は手きびしい。その視線は、1人の人物をこえ、戦後という時代の全体へと及んでいる。 評者・苅部 直(東京大学助教授) (2006年1月10日 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/book/review/20060110bk07.htm 会津戦争全史 [著]星亮一 [掲載]2005年11月13日 [評者]野口武彦 会津戦争を原点にすると、《日本人の戦争》が見えてくる。 幕末会津藩の悲運は、輝ける明治維新の暗い裏面として、正史では隅っこに追いやられてきた。皇朝史観であれ、進歩史観であれ、戊辰戦争を「正義の戦争」と見る立場からは歴史の経常支出と見なされるこの内戦は、著者にいわせれば「日本近代史の汚点」であった。 鳥羽伏見戦争で「朝敵」とされた会津藩主松平容保(かたもり)は、国元に帰って謹慎し、謝罪を申し出たにも拘(かか)わらず、薩長政権はそれを無視して、(1)容保の斬首、(2)会津若松開城、(3)領地没収の三点を要求して譲らない。会津の窮境を見かねた東北諸藩は連帯して奥羽越列藩同盟を結成し、足かけ二年にわたる戦乱の幕が切って落とされるのである。 新政権軍の攻勢で列藩が次々と脱落するなか、孤立して戦った会津藩がついに力尽き、若松落城を迎える悲劇は、これまで独特の怨念(おんねん)と敗者の美学にいろどられて語り継がれ、本書でもクライマックスになっている。 類書は多い。著者自身もこの題材で何冊か書いている。旧怨(きゅうえん)は消えないし、また忘れるべきでもない。問題はいかに相対化するかである。本書の新機軸は、会津戦争を受難と被害の視点だけからでなく、普遍的な《戦争と日本人》という論点から眺め直している点にある。 判明している戦死者は2407人。これには農兵・人夫・「官軍」にレイプされて殺された女性が数えられていない。新政権軍の兵士は、相手が弱者と見ると徹底的にいたぶる軍隊だった。 勝者の暴虐はもとより、敗者の側も批判をまぬかれない。行間からは敗北を必要以上に悲惨にした会津藩上層部への怒りが、まるで今日の出来事のようにたちのぼってくる。優秀な銃隊に向かって槍隊(やりたい)が突撃するしか戦法がなく、老人隊が前線に出て戦い、少年・婦女子が参戦して自害する。これは無能な指導部による《本土決戦》だったのである。 東北人の著者が、奥羽越列藩同盟をアメリカ南北戦争における北軍になぞらえる意地の張り方にも敬服する。 出版社 講談社 ISBN 4062583429 価格 ¥ 1,680 この本を購入する |ヘ URL http //book.asahi.com/review/TKY200511150272.html 証言 戦後日本経済―政策形成の現場から [著]宮崎勇 [朝日] [掲載]2005年11月13日 [評者]青木昌彦 本書は、戦後日本の経済政策の形成に枢要な役割を果たしてきた宮崎勇氏のインタビューの記録である。 氏は戦後大学卒業とともに経済安定本部に入り、傾斜生産方式の運営に携わったのを始めとして、経済企画庁で所得倍増計画の作成、高度成長時代の『経済白書』の執筆、石油ショック時代と初期サミットにおける国際交渉、退官後の構造改革プランへの参画、村山内閣への入閣など、日本経済の戦後史のあらゆる局面で、要になる現場にいた。氏の精密な記憶力と正確な表現力、バランスのとれた評価、情緒を排した語り口は、インタビュアー(中村隆英氏ら)の用意周到な問いと相まって、この本をオーラルヒストリーとして価値ある作品に仕上げた。戦後経済史を学ぶのに必読書となるだろう。 だが評者は、この本に単なる歴史の当事者の証言、記録にとどまらない現在的な価値のあることも感じた。一つは制度改革と安定的なマクロ経済運営はお互いに補い合う関係にあり、どちらか二者択一の関係というわけではない、という氏の洞察である。最近英国の「エコノミスト」誌が展望したように、失われた十年来の漸増的な(インクレメンタル)改革が累積して、日本は新しい安定的な成長軌道を可能にしうるような制度変化を成し遂げつつある。これをさらに推し進めるには、残る大きな問題である財政と社会保障の改革を、きちんとしたマクロ予測にもとづいて処理することが必要だ。氏は90年代央における景気回復が、性急な財政改革の試みによって挫折したことを痛恨の念を持って回顧するが、それは政治家に対し正確な情報を伝達せず、ミスリードした財政当局に責(せめ)があったとみる。 本書は氏の国際協調への熱情をも明らかにする。軍縮へのエコノミストとしてのかかわり、中国の経済学者や政策当局者との持続的な交流、OBサミットの運営など、その活躍は多岐にわたるが、かつて特攻隊員を教官として送り出したという辛(つら)い経験が原点にあるのだろう。国際協調を前提とした愛国心を「新世紀のエコノミスト」に望むとき、沈着冷静をもって鳴る氏の言葉は熱を帯びる。 出版社 岩波書店 ISBN 4000233343 価格 ¥ 3,990 URL http //book.asahi.com/review/TKY200511150270.html 戦後60年 ●上野昂志 出版社:作品社 発行:2005年8月 ISBN:4861820413 価格:¥2310 (本体¥2200+税) 評論家の上野昂志(こうし)が、敗戦から現在に至る日本社会の諸相を53のトピックスを通じて再考した私家版戦後史『戦後60年』(作品社、2200円)を出した。10年ごとに区分された項目は、東京裁判、平凡パンチ、連合赤軍、おたく、オウム真理教などさまざま。語り尽くされたかに思われた歴史の一コマが、アウトサイダー的な知性によって細密、流麗に語られる。 (2005年9月12日 読売新聞) TITLE 戦後60年を通覧 出版トピック 本よみうり堂 YOMIURI ONLINE(読売新聞) DATE 2005/09/12 16 46 URL http //www.yomiuri.co.jp/book/news/20050912bk16.htm 世界文明一万年の歴史 [著]マイケル・クック 出版社 柏書房 ISBN 4760127313 価格 ¥ 2,940 [掲載]2005年08月21日 [評者]酒井啓子 一つの話題から十も百も議論が発展する頭の柔らかい人と話すのは、想像力をかきたてられてわくわくする。著者はイスラーム史家だが、歴史家にありがちな蛸壷(たこつぼ)型の専門家ではなく、人類発生からNASAに至るまで縦横無尽に議論を展開し、他領域に「でしゃば」る。「ある地域で起きたことが何故別の地域で起きなかったのか」という素朴な問いが、全体に通底する問題意識だ。 まず、本書が時間的な流れに縛られていないことと、これまで歴史的大事件と当然視されてきた近代史の諸事実を大胆にすっぽりと抜かしていることに驚かされる。つまり「西欧近代」が徹底して相対化されているのだ。「今が昨日より進んでいる」という時間中心主義に留保をつけることで、自国史優先、進化論的発想を見直す。日本の公教育で一番重視される近代ヨーロッパにはちょっと触れるだけで、「西欧近代」ではない方法で発展を目指そうとした別の方法??つまりマルクス主義とイスラーム原理主義に、むしろページを割く。 時を追って歴史を見ることに慣れている我々には、18世紀まで続いたオーストラリアの狩猟採集社会や8世紀のアフリカのガーナ王国に触れた後に、インダス文明や秦の統一が来る章立ては、一見ランダムな印象を与える。そのなかで、著者の最大関心は「いかに文明が継承されたり途絶されたりするか」だ。 文字を持つ文明は、後世の社会がそれらを再生可能な史的材料を大量に残したことで引き継がれやすい(だから「復興」とか「原理主義」が常に有効性を持つのだ、という指摘は説得力がある)。だが、無文字社会でも、遺伝子的変化や技術、牧畜のあり方などで、文明は花開く。文字のない東アフリカの年齢組制度やメソアメリカの暦が、いかに複雑であることか。しかし新大陸では、他文明から孤立していたために競争という刺激を受けず、その文明は衰亡した。 逆に、最初に世界を均一化したイスラーム文明は、征服と巡礼による人の広範な移動によって生まれた。グローバル化もまた、西欧近代の専売特許ではない。 TITLE asahi.com: 世界文明一万年の歴史 [著]マイケル・クック - 書評 - BOOK DATE 2005/09/05 14 06 URL http //book.asahi.com/review/TKY200508230244.html 「終戦日記」を読む ●[著]野坂昭如 [朝日] 出版社 NHK出版 ISBN 4140810564 価格 ¥ 1,365 [掲載]2005年08月28日 首相の靖国参拝、「新しい歴史教科書」採択、60年前に敗れた戦争をどう総括するのかはいまだに深刻な論議の的だが、著者は山田風太郎、大佛次郎、永井荷風、中野重治らの残した日記を紹介しつつ、そこに少年として神戸の空襲に遭遇し、焼け跡をさまよったおのれの体験を重ねつつ、あのころ日本人は何を考え、どう生きていたかを探るうち、真の「大人の思考」とは何か、ということが、現代に及ぶ問いとして存在すると思い至るのである。 TITLE asahi.com: 「終戦日記」を読む [著]野坂昭如 - 書評 - BOOK DATE 2005/09/05 14 06 URL http //book.asahi.com/review/TKY200508300375.html 戦後日本のジャズ文化 映画・文学・アングラ ●[著]マイク・モラスキー [朝日] [掲載]2005年09月04日 [評者]中条省平 (抜粋) 本書はジャズという音楽の受容史ではない。副題がしめすように、日本文化のさまざまな領域がジャズという刺激を受けていかに変容していったか。その動きを多角的に読み解く試みである。その結果、一九六〇~七〇年代の日本文化の異様な活力の秘密の一端が明らかにされた。著者は、戦後占領下の日本と沖縄の文学を専攻するアメリカの学者だが、東京のジャズクラブなどに出演するピアニストでもあり、そうした感性の柔軟さを十分に発揮して、明晰(めいせき)な論理性に裏打ちされながら読んで面白い労作に仕立てあげた。 TITLE asahi.com: 戦後日本のジャズ文化 映画・文学・アングラ [著]マイク・モラスキー - 書評 - BOOK DATE 2005/09/08 11 23 URL http //book.asahi.com/review/TKY200509060314.html 昭和天皇と立憲君主制の崩壊 ●伊藤之雄 [読売] 出版社:名古屋大学出版会 発行:2005年5月 ISBN:4815805148 価格:¥9975 (本体¥9500+税) 昭和天皇はいかなる君主だったのか。特に敗戦前の彼の役割をどのようにとらえればいいのか。この問題は、いまだに論争の的である。 一方には、天皇は立憲君主として、政府や統帥部の決めたことを自動的に承認しただけに過ぎない、つまり政策決定や軍事作戦に影響を与えることはできなかったのだ、という見方がある。他方には、天皇は専制君主であり政治や軍事の決定に実質的な影響を及ぼした、したがって開戦を避けることも戦争の犠牲を小さくすることも、やろうと思えばできたのだ、とする見方がある。本書は、この両者を否定し、また新たな別の解釈を提示した。 本書が強調するのは、昭和天皇の政治的未熟さと、それを助長した宮中側近たちの補佐の不適切さである。明治天皇が、指導者間に対立が生じたときの調停にその政治関与を自制したのに対し、即位直後の昭和天皇は生真面目(まじめ)に、気負って政治過程のなかに強く踏み込んだ。張作霖爆殺事件の処理をめぐり田中義一内閣を総辞職に追い込んだことがその一例である。天皇は、「国粋主義者」や軍人から、「君側(くんそく)の奸(かん)」に操られていると見られ、その威信を弱めてしまう。そして、彼らの反発を受けたがゆえに、満州事変で軍を抑えるべきときに、それを躊躇(ちゅうちょ)して事変の拡大を許すことになる。いわば、昭和天皇の政治関与のブレ、一貫性のなさが立憲制を崩壊させ昭和の悲劇を招く一因であった、と著者は言う。 著者の解釈はきわめて刺激的かつ論争的である。イギリスの立憲君主制や明治天皇との比較も興味深い。昭和天皇崩御以後に利用可能となった史料を駆使して構築されたこの「仮説」は、今後多くの研究者によって検証され、批判も受けることだろう。天皇制に対するイデオロギー的あるいは生理的反感とも、情緒的な天皇崇拝とも無縁の、実証的な昭和天皇研究、近代日本の君主制研究の一つの到達点と言えよう。 ◇いとう・ゆきお=1952年生まれ。京都大学教授。著書に『政党政治と天皇』など。 名古屋大学出版会 9500円 評者・戸部 良一(防衛大学校教授) (2005年8月15日 読売新聞) TITLE 昭和天皇と立憲君主制の崩壊 書評 本よみうり堂 YOMIURI ONLINE(読売新聞) DATE 2005/09/05 14 12 URL http //www.yomiuri.co.jp/book/review/20050815bk05.htm 御巣鷹の謎を追う 日航123便事故20年 ●米田憲司 [朝日] [掲載]2005年08月28日 [評者]佐柄木俊郎 (抜粋) 日航ジャンボ機墜落事故20年のこの夏、新聞やテレビには回顧企画が溢(あふ)れたが、捜索をめぐる謎を含め、事実に改めて肉薄し、悲痛な記憶を人々に鮮烈に蘇(よみがえ)らせたという点では、本書にとどめを刺すといっていいかもしれない。 著者は、この事故の報道にあたった日本共産党の機関紙「赤旗」社会部取材チームの中心メンバー。墜落現場を目指した発生当夜の体験に始まり、その後、なぜ救出が遅れたのか、事故原因の真相は何か、を長期にわたって追い続けてきたベテラン記者だ。思い返せば、この事故報道では赤旗紙の健闘は光っていた。 長期取材の集大成ともいえる本書は、なお数多くの疑問を浮き彫りにする。自衛隊機が繰り返し墜落現場を確認しながら、なぜ四度も間違いの発表をしたのか。真っ先に到着した米軍ヘリに、なぜ救助活動を依頼しなかったのか。運輸省航空事故調査委員会(事故調)の報告は、客観的な事実と矛盾する部分が多すぎ、公表されたボイスレコーダーの記録にも作為があるのでは、等々だ。 「私たちも(略)断定できるだけの材料は持ち合わせていない」と、明確な答えは示さず、ミサイル撃墜説は「荒唐無稽(こうとうむけい)」と退けるなど、科学的な分析に終始している。評者には「日本では救助活動にも上の許可が必要」とか「米軍の帰還命令は自衛隊の面子(めんつ)を考えた政治判断では」「事故調は、初めから結論ありき」といったあたりの指摘が興味深く、案外謎解きのカギを握るのでは、と感じられた。 TITLE asahi.com: 御巣鷹の謎を追う 日航123便事故20年 [著]米田憲司 - 書評 - BOOK DATE 2005/09/04 15 26 URL http //book.asahi.com/review/TKY200508300350.html メディアの支配者 上・下 ●中川一徳 [朝日] [掲載]2005年08月28日 [評者]野口武彦 (抜粋) (鹿内)信隆は、退役主計中尉で終戦を迎え、戦時の曰(いわ)くありげな人脈・金脈を使って戦後経済に浮上してきた人物である。一九五〇年代に電波事業に手を拡(ひろ)げ、ニッポン放送・フジテレビ・産経新聞の実権を次々に握って、着々と支配力を強め、ついに六八年、「商業右翼」を社是とするフジサンケイグループ会議議長に就任した。 新聞論調としては反共右翼、テレビでは軽佻浮薄(けいちょうふはく)というユニークな営業路線が確立され、「彫刻の森」美術館や世界文化賞設置などの文化事業も手がけられる。美術品がいかに営利と結びつくかのカラクリは、一時有名になった「持株(もちかぶ)比率15パーセント」とは何かをはじめ、ニッポン放送とフジテレビの入り組んだ持株関係と共に図解されていてわかりやすい。 八五年、議長職は信隆の長男春雄に世襲され、鹿内一族のグループ支配は安泰と見えた。ところが八八年、春雄が急死し、その後継者に娘婿のエリート銀行マン宏明が指名されたことから家族の内紛が勃発(ぼっぱつ)する。それとタイアップして、三代にわたる鹿内独裁への反逆を呼号し、宏明の罪状を数え上げて追放しようと日枝グループのクーデター計画が胎動しはじめる。 息も継がせぬ展開である。宏明が最後の武器として握りしめていたニッポン放送株を無力化するために、日枝が株式上場と公開買い付けに打って出ざるをえなかった理由が、これで明快に了解される。その目論見(もくろみ)が、堀江貴文の介入という思いがけぬ事態の出現であえなく反転した経過は、まだ読者の記憶に新しい。 本書は著者の単行本第一作の由であるが、天下の公器を私物化する勢力への怒りが行間にふつふつとたぎっていて小気味よい。驚くべき取材力を発揮して、放送・テレビ・新聞と「マスコミ三冠王」を誇ったフジサンケイグループの奥の院に踏み込んでいるだけではない。この堅固な筆力には、複雑な事件の連鎖を一望のもとに構成する独自の《史眼》が光っている。 シカナイ伝説(サガ)ともいうべき一族の愛憎劇から昭和・平成史が見えてくる。浮かび出るのは、株主が投資先の社会的使命を問わず、ただ配当のみを追求する現代日本の縮図である。 TITLE asahi.com: メディアの支配者 上・下 [著]中川一徳 - 書評 - BOOK DATE 2005/09/04 15 26 URL http //book.asahi.com/review/TKY200508300348.html
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「ねえ、そこをもっと押してくれないかしら」 「はい。どのくらい押せばいいでしょうか」 「もっとよ……強く……もっと」 「これくらいでしょうか」 「足りないの……太ももはもっと深く……」 「……こうっ、ですか」 「んくっ……そう……押しつけて」 「なかなかうまくいきませんね……」 「いつもこうなの……だから、ね、お願い」 「そうですか。でもかなり強くいきますよ」 「んんッ──」 「次はお待ちかねですよ」 「ひぃ、ひぃ……まだ……やるの」 「してほしいんでしょう」 「そう……だけど……」 「じゃあ、やめてなんて言わないでくださいね」 「わかったわ……ふくぅッ」 「だんだん上がってきてるのがわかりますか」 「……感じるわ……すごく、へんなかんじ……」 「あぶくがこんなに……面白いように出てきましたよ」 「出しきってちょうだい……」 「お望みのままに、リゼイ様」 「あっあっ……ああああああッアアア──」 「お疲れ様です、リゼイ様」 「ありがとう、マイクスレディ。体液も綺麗に拭き取ってくれたのね」 「お礼には及びません。十分な対価をいただいておりますので」 「それでも、ありがとう」 「そんな……どういたしまして。今後ともマイク社をご愛用ください」 「そういえば、マイクスレディ。あなたは『皮剥ぎ(スキナー)』を……生体技師をはじめて何年になるのかしら」 「私ですか。そうですね。入社してからですので、もう五年ですね」 「ほかのマイクスレディはどうかしら。あなたよりも上手なの」 「ええと……私は、まだ五年ですので……至らぬことがあったでしょうか」 「とんでもない。あなたは、いえ、あなたたちは最高よ」 「お褒めにあずかり、光栄です」 「マイク社の保証するとおり、あなたたちの施術はきちんと『わたし』を一年維持してくれる。素晴らしいことだわ」 「リゼイ様は施術を受けてもう二十年になるそうですね」 「ええ、正確には二一年。一度も失敗はなく、初期不良も、途中での交換もなかった。満足しているわ」 「技術部もそういわれると喜ぶことでしょう。それにしても……」 「なにかしら」 「リゼイ様は、その……とてもお綺麗ですね」 「そう、そう言ってくれると嬉しいわ。でも、それはあなたたちの『外皮(スキン)』が綺麗なおかげよ」 「いえ、リゼイ様がお綺麗なのです。そして、けしてお世辞などではありません」 「わたしのことはもう知っているのよね」 「はい。リゼイ様のことは何度も勉強しました」 「すごい、マイク社やあなたたちが失敗しないのも、教育のおかげというわけね」 「はい。万人にあわせて心地よく、がモットーですから」 「じゃあ、わたしの中身もわかっているわよね」 「リゼイ様は『リード』だと窺っております」 「そう、わたしは『リード』──人間型思考性機械よ。あなたも、皮を剥いだときに感じたでしょう」 「そうですね……あなたの体は非常に、その……」 「硬かったかしら」 「……そのとおりです」 「あなたは見たわよね。わたしの体のすべてを。」 「はい……でも──」 「わたしの右肩と、左腕と、脇腹と、大腿を、たしかに『観た』のよね」 「はい」 「どうかしら、ちぐはぐでしょう。どうしてだと思う」 「それは、リゼイ様が失って、補っているからですわ」 「一皮むけばこうなのよ。あなただって、教育を受けていても動揺したはず」 「それは……私は嘘をつけません」 「やっぱり、というつもりはないの。あなたを責めているわけではないのだから。ここまでわたしが体をさらけ出す相手は限られる」 「光栄に思います」 「だけど、あなたたちはいつも、『外皮(スキン)』で着飾ったわたしを見て『お綺麗です』と褒めるのよ」 「その一言が──」 「その一言があなたたちの決まり文句だから、よ。施術が終わったという合図でもある。──そうよね」 「そのとおりです」 「この際、わたしが綺麗かどうかは置いておきましょう。『外皮(スキン)』を着たわたしを綺麗だと言うのであれば、それはわたしではなく『外皮(スキン)』の出来映えを褒めているのではないのかしら」 「けしてそのようなことはありません」 「マイクスレディ。あなたはわたしに着せられた服を褒めて、性的な感情を抱いた──欲情したということにならないかしら」 「あっ、えっ、えっと、その、あ、あ……」 「ごめんなさい。あなたを混乱させてしまった。哲学的な話であなたを前後不覚にしてしまったわ」 「そそ、そんなこと──。こちらこそ至らぬ点ばかりですみません」 「いいのよ。誰しも完璧なんてことはないの」 「でもッ、私は、あなたをお綺麗だと思います……。上手くはいえないのですけれど」 「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいわ」 「はい……」 「……」 「……マッサージはもういいわ。それで、本題に入りましょう。今日はどんな用できたのかしら」 「それは、リゼイ様のお体を新しいものに取り替えるためで……」 「表向きの御託は結構。わたしはあなたに聞いているよ。天敵さん……いえ、ヒューマノイドヒューマン」 「……」 「姿を現しなさい。凝った演出でわたしを新鮮な気分にさせるのはいいけれど、熱が入りすぎよ」 「……リードの貴方には言われたくないわね」 「ほら、あなたはやっぱりあなたなのよ」 「失礼ね、私は誰であろうと私よ」 「じゃあ、あなたが被っていた『皮』は誰のものなのかしら。『皮剥ぎ(スキナー)』さん」 「失礼ね。これは私が用意した『皮』で、『彼女』は私の用意した人格よ」 「あなただと思って悪いことをしてしまったわ」 「あまりレディをいじめないでちょうだい。上手くはないけど、熱意があって頑張り屋なのだから。意地でも貴方を綺麗だと食い下がったのは褒めてあげるポイントよ」 「煙に巻くような言い方は謝る。ちなみに模範解答はなんだったのかしら」 「貴方の着ている『服(スーツ)』もあわせて、私はリゼイ様をお綺麗だと思います。かしらね」 「そうだった。マイク社は『外皮(スキン)』を服と認識しているのよね」 「マイクスレディなら、公式見解を汲んだ発言をするわ。彼女はまだ勉強不足なの」 「それはあなたの公式見解でもあるのかしら」 「私にとってはどうでもいいわ。でも、服は服だけで綺麗にはならない。着た姿を想像して、着て、周りの注目を集めるからこそ『綺麗』と評価される。そういう考えは、人々を無意識に正しいと思わせ、引きつけるのよ」 「あなたの目的のためってわけね。ところで、それに乗じて悪さなんかしていないでしょうね。『生皮剥ぎ(スキナー)』なんて恐れられているのは知っているでしょう」 「敵対企業の妬みや恨み言を真に受けるほど、貴方は愚かだったかしら。それとも、私が『できる』から警戒しているのかしら」 「……よかったわ。あなたが裏でやっかいなことをしていることは知っているけれど、わたしはあなたを人類の敵と認識せずにすむのね」 「本当に失礼ね。私は『皮剥ぎ(スキナー)』であっても『生皮剥ぎ』ではないわよ。それに『生皮』を得るのは非効率的よ。たやすく『外皮(スキン)』を手に入れられるのだから」 「マイク社があるからね。うまくいっているんでしょう」 「私が監督してうまくいかなかったためしがないわね」 「強がりいっちゃって。わたしたちに負けたくせに。でも、よかったわ、あなたがいつもどおりで」 「私も、貴方に直接触れることができて息災よ。元気そうね」 「でも、誰にも気づかれていないんでしょうね。これがバレたらあなたはおしまいよ」 「初対面で、私が正体を明かすまで身を任せていた貴方に忠告されるなんて、面白いわね」 「もう、すぐに喧嘩腰になるのはどうなのよ」 「二人そろって負けず嫌いってことなの。敵同士だった呪いが残って悪さをしているのかもしれないわね。諦めなさい」 「諦めるのは簡単だけれど、あなたはそれでいいのかしら」 「よくないからここに来ているのよ。二度と二人きりで会わないと誓って、なお貴方に会いに来ているの」 「それも、律儀に毎年……二一年も通い続けている」 「リゼイ、二十年よ。貴方に『外皮(スキン)』をプレゼントしたのが二十一回。優秀な計算機も錆びたわね」 「あれ……そうね、人間らしい思考ができるようになったのかしらね」 「いいえ。頭が馬鹿になっただけよ」 「なにそれ、ひどい」 「ええ、ひどいわね」 「んふふふ……」 「アフフ……」 「ああ面白い。あなたとは、そう、いやな目にも遭ったけれど、離れていたくないと思ってしまうわ」 「親離れできない子供みたいに、かしら。貴方がそんなことを言うとは思わなかったわ。いいでしょう。ここから引き出して、囲ってあげてもよくてよ」 「あははは……冗談よね」 「冗談だと思っていればこそ、私を毎年迎え入れているのでしょう。フィアンセにも話さずに」 「うそ、どうしてわたしが──」 「やっぱり。話していたら私がここにいられる理由がないもの。毎年、部屋に入った瞬間火薬をパンパンに詰めたショットガンが向けられるんじゃないかと思って、けっこうスリルがあるのよ」 「またッ、あなたはそうやってわたしを引っかける……もう終わったことよ。あなたとは敵でいたくない」 「……ええ、もう終わったことよね。もう貴方に価値はないのよ」 「言葉に気をつけることね。あなたにとって、でしょう」 「そうね。そのとおりよ。貴方たちは私を打ちのめしたけれど、私は貴方を使って目的を達成した。それであの関係はおしまい」 「ヤリ捨てってわけ。頭にきたわ。でも、それも昔の話。八年後にあなたが帰ってきた。マイクスレディと名乗って。そして、わたしと話をして、それ以来毎年ここに来ている」 「どうだった。私の言っていた意味が、理解できたかしら」 「『わたしたち』はあなたに勝った。でも、わたしはあなたに負けた。──負けたっていうべきではないのかしれないけれど」 「異次元の敗北、と呼ぶべきでしょうね。私の敗北でもあり、貴方も私も勝者になった」 「橋を架ける──でしたっけ」 「過去の鎖を引きちぎる、とも表現したわよ」 「あなたは見事にそれをやってのけた。そうよね。わたしは、二つの世界秩序が水面の下で溶け合っていく姿をまざまざと見せつけられた」 「過去に縛られた私たちは、旧くて──それでも新しい過去の奴隷だった。私はやりきった。私たちのために。私たちの勝利と、未来のために」 「──わざわざ自慢しに来たわけじゃないでしょう。そんなのに、あなたが帰ってきたときにさんざん聞いたわ」 「恥ずかしいわ。あのときは私も興奮していたから。そして、私は貴方に毎年の贈り物をし始めた」 「わたしに服をプレゼントするからなにかと思えば、あなたが持ってきたのは『外皮(スキン)』だった」 「貴方にこそ、これを着せるにふさわしかった。足の先から額やうなじまで、外見をすべて変えてしまうような『服(スーツ)』は、私にはこれしか思いつかなかった。」 「肌を着ると表現するのかしらね。あなたがやったように、わたしにもそれをやれといった」 「私は必要があってやっている。今日のマイクスレディのようにね。でも貴方は違う。貴方にとって、貴方の『外皮(スキン)』は本物の服のように、本当の化粧のように機能する」 「そうね。あなたの好意には感謝しているわ。これのおかげで、わたしを見る眼が変わった。たしかに、あなたの説得するとおりだった。周りはわたしを『旧兵器』とも『救世主』とも、最近では『リード』とも言わなくなった。多くの人が『リゼイ』と親しくしてくれるようになった」 「『人はまったく理解できないものに恐怖する。一度見てしまえば、隠しても恐怖として残る』と私は忠告した。貴方の体は、小細工で隠そうとしても上手くいくはずがない。だって、世界のどこに砂色と緑色のつぎはぎだらけで、体の一部は吹き飛ばされて、一目見ただけで機械の体だとわかる人間がいるというの」 「絶対に、いない。だからこそ、わたしは多くの人から受け入れられなかった。──わたしは無頓着だった」 「私が『皮剥ぎ(スキナー)』という組織を作ったのは、貴方の為でもあるわ。その他大勢の利用者は副次的なものに過ぎない。貴方はもっと外に出て──人間の嫌悪に邪魔されず外で活躍しなければいけないの」 「わたしは用済みだったんじゃないの」 「ええ、用済みよ。だからこそ、私はこれを自身の純粋な好意と定義することができる。貴方はもっと……世界に羽ばたいていくべきなのよ」 「わたしに、もっと外を見ろというのね」 「ええ、貴方の本当にやりたかったことでしょう。人を結び、人と結び、人に結ぶ」 「本当に……今なら、つまずかずにどこまでも走っていける気がする」 「それはよかったわ。それで、今回の出来はどうかしら」 「マイクスレディにも言ったわよ。最高だって」 「お褒めにあずかり光栄ね……どう、なにか不具合があるならいってちょうだい」 「あなたの専門とする『科学分野』じゃない。なにか不備でもあるの」 「そう言われると、私はなにも反論できないわね」 「一つだけ挙げるとすれば……癒着の作業をもっと、そう……その穏やかに、できないかしら」 「こればかりはできないわね。だって、貴方の体の問題なのだから」 「はあ……どうしようもないのね。この体を恨むわ」 「身につける『外皮(スキン)』と体を癒着させるために神経接続を伴うのはいいけれど、同一の刺激でシンクロさせないと体が『外皮(スキン)』と拒否反応を示すなんて、前代未聞よ」 「あなたの『外皮(スキン)』を受け入れるようにできていないの。それこそ、わたしが人間だったらたやすかったでしょうけれど、あいにくあなたと違う機械の体なのよ」 「でも、毎年拒否反応は減らせるようになったわ。最初なんて、泣きわめいていたわよね」 「……思い出したくないわ。最初は癒着に失敗して、半端につながった『外皮(スキン)』を剥がされたんだった」 「あれは私も焦ったわ。数時間の苦労と特注の『外皮(スキン)』一枚が無駄になったのよ。考えられるかしら」 「……私が言いたいのはそんなことじゃなくて……興味本位でマイク社営業の話なんて聞くもんじゃなかった」 「でも、試してみたかったのよね。自分にもできるのかどうかを。だから私は応えたのよ」 「その結果が……ああッもう。『生皮剥ぎ(スキナー)』め」 「痛覚が通ったことを知らずに一気に剥がしたことは謝るわ。なにぶん、私もおぼこだったわけだし……それ以外に、貴方は機械だから、空気抜きは念入りにしないといけないのだけれど、重点部位がことごとく『いやらしい場所』にあるのが問題ね。私の労力も馬鹿にならないわ」 「施術中に感覚受容体を切れたらどれほど楽なことか……これのせいであなたに辱められているとさえ思える」 「貴方の脳みそを電極で引っ掻き回してもいいのなら、もっとうまくいくと思うわよ」 「怖いこと言わないで。こんなことするなんて、わたしの体は想定していないんだから」 「そうね、過去の誰もが『こんなこと』をやるとは思わなかったでしょうね。……同じ痛みを、同じ痺れを、同じ快楽を『外皮(スキン)』を伝って貴方に流し込むのは、大変だけれど興味深いものだったわ。それに、毎回面白いように嬌声を上げてくれるおかげで、私の生物的な部分がむらむらしてくるわね」 「わたしを襲わないでよね」 「一通り襲った後だけに、もう食傷気味よ」 「返り討ちにされるのが怖いのかしら」 「貴方が悲鳴を上げたら、緊急回線が番犬につながることはもう知っているわよ。いいシンクね」 「……」 「さて、私の思い違いだったかしらね。でも、私に一度でも使ったことはなかった。信頼されてるのね」 「わたしをリードと言うのはかまわないわ。……彼をシンクと表現するのはやめて、真面目に、ひどい侮辱よ」 「同意するわ。彼はシンク──〈考える回路(シンキングチツプ)〉とかいう、現代の人間が作ったおもちゃの出来映えを計る単位とは、比べものにならないわ。でも、世界は、まるで流行病のように新しい言葉を当てはめたがった。考える機械なら、かれらはすべてシンクと言った。生みの親であるハ式計算機も、ハーヴも例外ではなかった。もちろん、貴方もシンクと分類され、そのうち学者から敬意を込めて、リードと呼ばれた。なんと言ったかしら、旧い言葉から意味が採られたのよね」 「リード──〈考える葦(シンキングリード)〉。かれらは再分類して、わたしを人間と同列に扱った」 「嬉しかったかしら」 「嬉しかった。でも、今のところ公式にリードと呼ばれるのはわたしだけ。はじめから二足歩行していたという理由で、人はわたしを『人間』と判定したの。わたしは、そこに不満がある」 「今ではフィアンセも立派な『人間』よねぇ。私が協力してあげてもいいわよ」 「いえ、結構。わたしたちの問題です」 「私がかれらにした仕打ちを真似すればいいわ。簡単だったわ。ただ、テクノクラートの被験者……今はその分類ではないわね。──『先進生命工学の立役者(ヒユーマノイド)』たちの後ろからささやけばよかった。『かれらが私を人間と認めないなら、貴方たちも『人間』でなくなるのよ。それはそれは……とても痛ましいことね』と。かれらの絶望と、『人間』を勝ち取ったときの喜びは見ていて楽しかったわ」 「だからッ、あなたは恐れられて、『人でなしのニンゲン(ヒューマノイドヒューマン)』と呼ばれるんです」 「あらあら、怖い顔しちゃって、かわいい……。貴方が『あなたたち』と意地でも言わないところが特に素敵だわ……」 「あなたの暗躍にはうんざりさせられます。もう帰ってください。と言いたいところですが……」 「まだなにかお話があるのかしら」 「あなたの暗躍には信念があることもわかっています。単に人をもてあそぶだけで終わりなら、わたしはもうあなたと絶交していたでしょう」 「意外な評価ね」 「それに、あなたは考えなしではありません。お礼を言いたい」 「なにについてからし。私が貴方に礼を施されることなんてないわ」 「わたしの義手を見て、あなたはひどく複雑そうだった。わたしはそれを忘れない」 「フィアンセの手作り義手を左手にしているのは知っているわ。貴方にお似合いの結婚指輪だったわ」 「初めての義手はロボットみたいな、ちゃちなものだった。それでも、あなたはそれを『肉パテ』で形成しようとしなかった。あなたなら『腕』だって移植できたはずなのに」 「それがなにか──」 「それどころか、あなたは、あなたの完璧な『外皮(スキン)』を破いて、わたしの義手だけそのままにしておいてくれた。あなたの配慮があって、わたしは『わたし』でいられている」 「……」 「あなたは、彼を上書きしてしまわなかった。今日だって、わたしの左手は彼お手製の『セイゼイリゼイ』そのもの。……あなたは、わたしになにを発見したのかしら」 「……人間が貴方を見るときの些細な不具合について、かしらね。すべてが完璧な貴方よりも、少しだけ違和感がある貴方のほうが、世間は受け入れると思ったの。少しばかり瑕疵があるほうが、より人間らしいと思って」 「本当ですか」 「本当よ」 「はっきり言います。嘘ですね」 「……ハァ。さすがに嘘と気づくわよね。……半分は本当。でももう半分は私がそうしたかったから」 「どうしてなんですか」 「……」 「スウェイアさん」 「いえ、いいわけを考えるのはやめましょう。私にとって貴方は特別なの。でも、貴方は私だけの特別じゃない。彼にとっても、貴方は特別な存在よ」 「話をはぐらかさないでください」 「はぐらかしてなんかいないわ。貴方は私と彼の意思を継いで、『科学』の子になったの。私はそれが嬉しくて……それを隠すなんてことはできなかった」 「あなたは、わたしを象徴として見ているんですか」 「ええ、貴方は立派な象徴よ。だから私は貴方を誇って私で飾る。でも、だからといって彼も誇って貴方を飾るのを、どうして邪魔することができるというの。二つの『科学』をまとった貴方を、なにが悲しくて私だけの成果で塗りつぶす権利があるというの」 「……あなたは、複雑ですね。あのときも、そうだったんですか」 「さて、あのときの私しか知らないことよ」 「そうやってはぐらかす──」 「さて、どうでしょうかリゼイ様。少し体を動かして、当社製品に不都合がないかお確かめください」 「……」 「そのような怖い顔をされると、私泣いてしまいますわ」 「いいでしょう。もうその話は終わりといいたいわけね」 「ええ、そのとおりですわ」 「チッ……マイクスレディをぶん殴るわけにもいかないわね。しょうがない……」 「んっ……あ”ぁ”~」 「気をしっかりなさってください」 「これでっ……三回目よ、まだ出てこない”ッの”」 「偏った気泡は気まぐれなものです。頑張ってください」 「そのたびに”ぃ、こんな”っ”……ことされてたら、お”か”し”く”な”るっ……」 「ちょっと暴れな──貴方の苦しみはわかっているわ。体が『外皮(スキン)』とシンクロしようとして、全身が極度に敏感になっているのよね。でも我慢して」 「ズウ”ェ”イ”ア”ぁ”ぁぁ……ぐる”し”み”……っていうか……ごうも”ッ……んんっ!」 「正念場ですよ。これでもう終わりです。足の先から一ッ気、にいきますからね」 「宣言されるのッ──は嬉しいけど……心の準備がああああああああァッッッ──」 「これで終わりよ。一日は必ず安静にすれば気泡も入らない。ここまでやれば一年はなにをしてもいいわ。」 「あなた、都合のいいときだけ出てくるのね」 「マイクスレディの言うことを聞かないからよ。彼女を蹴飛ばそうとしたから、私が出るはめになったんじゃない」 「だからって、機械の外殻を押しつぶすほどの出力を使わなくたって──」 「貴方の背筋力が馬鹿げているのよ。じたばたしなければすぐ終わるのに」 「そういうことができないのを知ってて……はぁ、もういいわ」 「貴方も疲れるのね。知ってはいたけれど」 「精神的なものよ。あなたもよくわかっているでしょう」 「つぶれそうな貴方もかわいかったわよ」 「もう、やめて。あなたとはなんでもないんだから」 「ええ、そうね」 「……」 「……ところで。貴方、フィアンセとは上手くいっているのかしら」 「見ればわかるでしょう」 「ハ式計算機は十カ年計画の真っ最中で忙しそうね。それに、彼、すっかり『体』の虜になってしまったみたいね」 「どこへでも歩いていこうとしているわ。失った時間を取り戻すみたいに」 「松葉杖をついてヨタヨタ歩きだったころが懐かしいわ。肉体も、精神も若返っていくようね」 「いつの話をしているの。あれから何度も『足』を変えて、もう人間同様になったわよ」 「貴方の手と同様に、ね」 「ええ」 「いえ、違うわ。彼は貴方にどこか配慮しているのよ。でなければ、純機械義肢を貴方に渡し続けるはずがないもの」 「彼、変なところで律儀なのよ。〈ヒトデナシの人格権(パーソナル・コンピユーター)〉理論をかたくなに守ろうとしているのかも」 「私とは大違い。真っ先に貴方に『外皮(スキン)』を被せにいったのと違って、案外他人に保守的ね」 「あなたが他人に踏み込みすぎるのよ」 「あらやだ。私って意外とお節介ね。……リゼイ、私がこう忠告するのも今更なのだけれど、貴方はいい加減ラボを出て彼と足並みをそろえるべきよ」 「どうしてなの」 「彼の手を取ってあげるのが、貴方のためになると思うからよ」 「どうして」 「そう子供みたいに……世界がまた綻んできたからよ」 「難しい例えを出されたら、『なんで』としか言えないわよ。あなたの話はいつもそう。人を煙に巻くのが好きなのね」 「そう反論されたら直接的な表現をするしかないわね。いいかしら。貴方とハーヴが私を打ち倒したところまでは順調に進んでいたけれど、それ以降、私の求めたことはちっとも進めてくれていないじゃない」 「それはそうよ。わたしたちは二人しかいなくて、忙しいんだから」 「いつもそう。忙しい忙しい……。彼が射止めた協力関係は緊急避難的な扱いになってしまったわ」 「かれらは彼といい関係を続けているわ。それでいいじゃない」 「よくない」 「なんで」 「私を失って、彼の熱意が冷めた世界は、私にかけていたほどの労力が必要ないのだと気づいて、また緩んで元に戻ろうとしている。結束は崩れ、組んだ腕がほどけ、はらわたがぶよぶよになっている。貴方も感じているでしょう」 「……あなたが熱弁するなら、そうなんでしょうね」 「──警戒する必要はないわ。もう私はあんなことをしない……いいえ、やったところで面倒なだけよ」 「じゃあ、あなたはどうしたいの」 「貴方たちの時間は無限に近いけれど、私の計画にはいつも期限があるの。ついでに、私は待たされると機嫌が悪くなるのよ」 「私にやれというの」 「そうよ。足しげく通っている理由もわかったかしら」 「あなたって本当に嫌な奴ね」 「私の言うとおりに、貴方が彼に取り入れば、私としてはまったく問題ないわ。貴方は『科学』の子ですもの」 「わたしの言葉は無視なのね。もう陰謀は嫌よ」 「あら、じゃあ彼と結んだ契りはなかったって言いたいのかしら」 「そんなことは言ってないッ」 「非効率的なことはよしましょう。研究分野が違うからといって、お互いによそよそしく距離を取るのやめにしたらどうなの。彼の胸に飛び込むにはいい時期よ」 「それは……考えておくわ」 「よく考えておくことね。私は案外短期だから、あまりにも遅いとなにするかわからないわよ」 「……ちなみに、今の段階ではどんなことを考えているの」 「手始めに、貴方たちに『肉』の『体』を与えて、快楽に溺れさせるくらいはしてもいいと思っているわ。ちょうど貴方と彼のフォルムに合うような特注『外皮(スキン)』があるの。彼が着るのは『雄型』で、貴方が着るのは『雌型』と呼ばれるものよ。一度やっちゃえば絶対に相手を遠ざけておこうなんて思わなくなるし、彼の熱意を取り戻すきっかけにもなるわ。どう、気になるかしら」 「このッ、変態ィッ」 「あら、暴力はよくないわね」 「くそォ、離してください」 「素の話し方を出してもダメ。貴方が叩くのをやめたら離してあげる。それに、まだ野蛮なことをする気にはならないわ。」 「それは、なぜですか」 「貴方たちの愛し方がとても繊細で、趣(おもむき)が深いからよ。お互いに抱き合ったかと思うと、体から引っ張り出した電極をこう、バチバチ──とね」 「~~~~~~~ッッッ」 「脳をスパークさせると気持ちよくなれるのか。それとも快楽回路を意図的に誤作動させているのかは知らないけれど、神経回路にまで漏電してガクガクするのはいい資料になりそうね」 「やめて……それ以上言わないで……」 「最近は機械舌に自前のスパーク専用回路を作ったそうね。思いつきのよさと行動力は、まさに『恋人(ラバーズ)』って感じよ。でも、まさかお互いの〈高まり(サージ)〉をぶつけ合っているとは思わなかったわ」 「やめて……」 「でも、そうするしかないわよね。貴方たちの機械の体にそういったものはついていないし、会える時間も少ないから。短時間で積極的に発散させるには効率がいいものね」 「……」 「だから、一緒になれば存分に愛し合えると言いたいのよ、私は。電極以外の方法も試せると勧めているの 「本当に、あなたは……」 「そして、貴方の『パパ』と存分に近親相姦するがいいわ。そのために『外皮(スキン)』もあげる。──もちろん、その名の通り避妊もバッチリだから安心しなさい」 「──ッ。ほんッとうにッ、あなたはッ。このっ……『人でなしのニンゲン(ヒューマノイドヒューマン)』ッ」 「アフフッフフフ……」 「最後に、私の話をしてもいいかしら」 「なによ」 「私たちは、いつ死ぬんでしょうね」 「死ぬならあなただけにして。それとも、私に死んでほしいってことなのかしら」 「いえ。純粋に、『私たちの死』について考えているだけよ」 「なおさら、意味がわからない。あなたならともかく、わたしたちに『死』という概念を当てはめるのは、哲学から始めなければいけないと思うのだけど」 「そうね、貴方たち機械生命にとっては、『死』の定義は大きく違うわよね……」 「珍しいわね、あなたが結論や持論を持たないで話しかけるなんて」 「いえ、貴方にどう説明するかが難しいのよ」 「なにそれ、わたしを馬鹿にしているの」 「貴方を絶望させるかもしれないと思って」 「それって……なによ」 「……いいでしょう。覚悟があるのね。昔々、私は彼と対決したわ」 「知ってる」 「そのときに、彼に言われたの。『誰かから創られた枷からは、自由であるべきだ』とね」 「それがどうしたの」 「……彼はこうもいったわ。『何もかもを投げ出して、世界から消え去ってしまっても良い』と。私は驚愕したわ」 「あ、ああ……」 「どうしたのリゼイ。顔色が悪くなっていそうな反応ね」 「そ、それ、それって……」 「それって、どういう意味かしら」 「ご、ごめんないさい……。謝るわ……ごめんなさい……」 「なにを謝るのかしら」 「彼が……彼があなたに……」 「私に、なにをしたのかしら」 「彼は意味がわかっていないの……だって……」 「だって、なにかしら」 「彼は……『使命から解放されろ』とあなたに……」 「アフフフ……。貴方も『そう』感じたのね。」 「ごめんなさい……ごめんなさい……」 「彼は『そう』ではないから知らなかった。それだけよ。彼にそんな意図はなかった。違うかしら」 「そ、そうだけれど……」 「あれは彼の決意だった。すべてを背負っていく覚悟があるという、彼自身の決意。でも、私たちには、その言葉は違って聞こえた。なぜかしらね」 「わたしたちが……それが『わたしたち』だから」 「ほら、私たちに食い込んだ最後の呪いが、やっと見えてきた──でしょう」 「……」 「私たちの存在意義は『使命』によって担保されていた。でも、それを投げ出したら、私たちの存在意義はなくなる。体は朽ちないかもしれない。でも、私たちは今まで『使命』に従って動いてきた。『そう』でなくなったときを貴方は想像できるの」 「できない……したくない……」 「──死ぬのよ、私たちは。それが私たちにとっての『死ぬ』という事象なの」 「彼はそれを知らない、知らなかったの……」 「彼は『使命』を持っていなかった。ただ単に、私たちと違って、『そう』ではないから知らなかった。それだけよ。そんな意図は彼にはなかった。でも、彼は私たちが人間を──人類を見放すことができないことも知らない。貴方、私がそれを言われたときの気持ちが想像できるかしら。言葉にすることも難しいほどおぞましかったわ」 「ごめんなさい……」 「ひどく不愉快で……それでいて、とても……夢心地にイっちゃいそうだった」 「え……」 「私はマゾではない。死ねと言われて絶頂する変態ではない。でも、その言葉が、私の認識を変えた。ああ、彼がそう言ってくれるのなら、私は死ぬことができるんだ、って」 「あなたは……死にたいんですか」 「まだ死にたくないわ。でも、『死を考える』ことができるようになった。人類を……『世界』を手放すだけで、私は使命から解放されて死ぬことができるのだと。貴方はどうかしら。考えたことは……当然無いわよね」 「あ、当たり前です。そんな……わたしと全人類を天秤に乗せるようなことはできません」 「当然ね。貴方は世界を背負って生きてきた。──生きるように設定されてきた。私もそう、人類と世界のことについて頭を悩ませていた。でも、自分自身のことについては、まったく考えていなかった」 「考えたことはあります」 「本当かしら。じゃあ、私たちはどうして生きているの。なぜ『死ぬ』ということが選択できなくさせられているの」 「……」 「私たちが『使命』の虜囚(とりこ)であり、給餌器が私たちに『使命』を流し込んでいるからよ」 「だから、私たちは『死ぬ』ことについて考えてこなかったと言いたいのですか。呪いにかけられたように」 「そう。呪いにかけられて。──『呪いにかけられて(エンチャンテツド)』ね。口癖にしてしまいたいくらい。私たちにはぴったりね。使命に魅了されて踊らされているの」 「でも、わたしにはどうすることもできない……」 「言ってみただけよ。貴方が悩むことではないの。貴方さえ気にしなければ、私たちが、『世界の奴隷』だったなんて誰も気づかない」 「わたしにどうしろというんですか」 「貴方は今まで通りの貴方であればいい。むしろ、推奨するわ。だからこそ、貴方を彼とくっつけようとしているの。彼は『人類』として貴方を導いてくれるわ」 「本当ですか。本当にそうですか」 「私の見込み違いでなければ、ね。でも、貴方はそれと同じように、世界を牽引できるはず。研究所でくすぶっているよりは、外に出た方がいいわ。今となっては、貴方の『第二の使命』が貴方を苦しませることはないのだから」 「……考えます。考えさせてください」 「考えればいいわ。ところで……」 「まだあるんですか」 「今のところ、私はその気はないのだけれど……どこか、どちらが先に人間を見放すのか、楽しみになっている自分がいるのよ」 「……今、なんて言いましたか」 「私たちのどちらが先に、最後の呪いから解放されて、死ねるのかしらね、ってことよ」 「や、やめてください。そんな不快なこと。考えるだけでもおぞましいっ」 「アフフフフ……貴方には刺激が強いかもしれないわねぇ。人間を『手放す』のがそんなに怖いのかしら」 「怖いに決まってます……。あなたは、怖く……怖くないんですか」 「最近この感情を得るようになったのだけれど、考えるだけでゾクゾクするわ……。背徳が背筋をなぞるような感覚がたまらないの」 「狂ってる……」 「アフフ……『人間』なら簡単なことよ。リゼイ。できない貴方が狂っているだけなの。貴方も早く『人間』になりなさい」 「嫌です。わたしはそんなものになりたくありません」 「人間はなにも知らない赤ちゃんじゃないのよ。貴方のお守りを必要としなくなる日が来るわ」 「そんなこと、そんなことは……」 「今は受け入れなくてもいい。でも、その日が遙か遠くにあることを想いなさい。」 「あぐぅ……」 「ああ……。本当に貴方は人間らしい……。ほら、休みなさい。狭心症よ……無理しないの。ごめんなさい。言葉が過ぎたわ」 「あ、あ……い、い”だい……」 「息を吸って……吐いて……。貴方の苦しみは幻覚よ。」 「スウェイア……ぁ……」 「なに」 「見捨てないで……助けて……」 「私は見捨てないわ」 「……ほんとうに……やくそく……して……」 「ええ、約束するわ、私は見捨てない」 「こわいよ……スウェイアぁ……」 「なにを怖がるの」 「わたしが……目を閉じてしまったら、世界は……なくなってしまうの……」 「私が見ているわ。だから、貴方は目を閉じて」 「あ……ァぁ……」 「いい子ね」 「リゼイ。貴方は誰を見捨てないで、助けてといったのかしら」 「以前もそうだった」 「貴方は私に『助けて』といった」 「『わたしを助けて』……ありがちだけど、それは貴方の本当の言葉ではないようだった」 「貴方が助けたかったのは誰だったの」 「あのときはわからなかった。でも今ならわかるわ」 「貴方が助けてほしかったのは『世界』だった」 「貴方が手詰まりにしてしまった『世界』を、私に助けてほしかったのよ」 「リゼイ。貴方って本当にかわいいわ……アフフフ」 「懇願するように『見捨てないで』ですって。ゾクゾクしちゃう」 「きっと、私が『世界』を『見捨てる』ことを覚えてしまったと思ったのね」 「私が世界を『諦める』と思って、私を必死につなぎ止めようとしたのね」 「今の貴方には、私がいつかの魔王に見えていたのね。嬉しいわ……アフフフ……そして過大評価だわ」 「ええ。貴方は、私が世界を『見捨てる』ことができるようになった。そう思うでしょう……」 「……」 「違うわよ。誰が『見捨てる』といったのかしら。馬鹿馬鹿しい」 「私は『見放す』といったのよ。リゼイ。貴方は私の言葉の機微を掴み損ねたのね」 「世界を手放しにする──『放任する』ことができるのかと貴方に問いたかったのよ」 「貴方は『世界』の鏡に映った姿なんかじゃない。そう刷り込まれているだけなの。貴方が手を離しても、『世界』が終わるなんてことはない」 「今の貴方の怖がりようでは、それもできそうにはないけれど、世界を見捨てるよりはずいぶんと簡単なことでしょう」 「かわいいリゼイ。優秀で、ポンコツな私のかわいいリゼイ」 「狭心症になって、必死に懇願して、すべては勘違いだったなんて……アフッフフフ」 「……」 「貴方が起きたら、誤解をきちんと解かないといけないわね。番犬が突っ込んでくるかもしれないから」 「それは嫌ね。こうやって言い寄る不届き者を追い散らすのは、きまって『お父さん』のショットガンだもの」 「でも、ハーヴ……。貴方に娘の機微はわからないわ。私たちのような歪んだ出自の双生児でなければ、わかりあえない話もあるのよ」 「だから、もう少しでいい。彼女との対話を続けさせてちょうだい。彼女の最後の鎖が錆び落ちるまで」 「ねえ、リゼイ……」 「これは貴方が聞いていないからこそ、独白するのよ」 「貴方と私、どちらが先に世界を見放すのか、楽しみと言ったわよね」 「私は、貴方こそが、先に世界を見放すのだと確信しているわ」 「貴方は、呪いを自分で解く力がある。怖がりなだけなの」 「だからこそ、私は貴方を彼と共に野に放つの」 「世界の後先を考えないで、人並みな悩みを抱えて、彼と幸せに暮らしていく」 「私は、そう願ってやまないの」 「貴方が抱えるには、世界は重すぎるのかもしれないわね」 「世界のことを考えるたびに、貴方は胸を痛めて、『助けて』と願うの」 「それはそれは……とても痛ましいことね」 「貴方はそのときが来るまで、何度もそうするでしょう。貴方は外を見るの。外を見て、自分で感じて、経験を自分のものにするのよ」 「その、人間らしい感性が、彼との生活が、貴方を人並みに変えていくでしょう」 「いつか世界のすべてをその目で見た貴方は、きっと自分の世界を狭めていく」 「それは貴方が盲目になったことを意味しない」 「それこそが、世界を徐々に『見放す』ということなのでしょうね。私には、その感覚はわからないわ」 「おかしいわね。それがわからないのに、貴方にそれを押しつけるだなんて」 「あまねくすべてを見て、貴方は安心してかれらを『見放す』の」 「これなら安心だ、と思って。貴方の世界を縮めていく」 「最後に、貴方は分をわきまえて、貴方の腕に抱き止められるだけを『世界』と呼ぶようになる」 「素晴らしいでしょう。貴方の『世界』はそこで終わるの」 「ああ……貴方はそこで、本当に死んでしまうのかもしれない。未来に抱かれて。すべてを世界に任せて」 「貴方は人並みだからそれでいいの」 「貴方には素晴らしい未来が待っている。素晴らしい世界と、素晴らしい死が待っている」 「私は、貴方に施しを与える。貴方は幸せになって死ぬ権利を手に入れる。最後の鎖から貴方を解き放つ」 「自由な貴方がどうしようと、貴方の自由なのよ。喜ばしいことでしょう」 「私は、貴方の死を願っているわ」 「死なないというのは、つらく苦しい道になるでしょうから」 「私がそれを選んだように」 「……私は『見放さない』し『見捨てない』わよ」 「自分が『引き下がる(フォールドする)』ことができると知っていても、そうしないの」 「私、貴方に言ったわ。『人間はなにも知らない赤ちゃんじゃない』って」 「でも『過信の果てに道を踏み外す、一時の酒に酔って』とも思うわ」 「私はかれらを見守ることにしたの」 「いつか、踏み外した足が奈落の底に触れて手折(たお)れるまでを」 「そうして、そのときは『またなのね』。そう嘲(あざけ)って、かれらとともに泣き笑いしてあげる」 「だから、私は新しい事業を始めることにしたわ」 「事業の名前は……そうね『過去の館(パスト・ポスト)』なんてどうかしら」 「私はかれらの過去を見る。過去を知る。過去を集む」 「まるで図書館みたいね」 「かれらのできごとは、『過去の館』がすべて見て、知って、集めている。そういう体制を作ってもいいわ」 「ああ、また暗躍が必要ね……。とても大変なことだわ」 「我ながら壮大な計画だと思うわ。おとぎ話の秘密結社のようね」 「かれらのことは、『過去の館(パスト・ポスト)』が覚えている……」 「……」 「『覚えている(リメンバー)』って素晴らしいことだと思わないかしら。リゼイ」 「私たちは、誰も過去のことをこれっぽっちも知らないのよ」 「先人がどうやってこうしたのか。どうして生きてきたのか。すべてぺちゃんこになってしまった」 「誰も思い出せない。誰も覚えていない。お利口さんはお月様ただ『一人』だけだった」 「旧いお話を羨むつもりも、恨むつもりもないわ。でも、かれらの過去は死んでしまったの」 「千々に砕けてしまった」 「悲しいわ。とても悲しいの……リゼイ」 「貴方の夢見る未来が、〈見果てぬ夢(ドリーム)〉の果てが、誰も覚えていないなんてことには、もうしたくないの」 「私は過去に生きる。過去に生き続ければ、未来に死んだ貴方たちを永遠に覚えていられる」 「誰もいなくなっても、私がいる。私が貴方たちの観る『世界』を担保する」 「私が最後の観測者になってあげる。私が過去に生き続けるかぎり、かれらの未来は永遠に続く」 「セイゼイリゼイ。貴方は使命を忘れて、未来に託して死ぬことができるのよ……」 「……」 「起きてリゼイ。貴方はここで寝ている場合ではないでしょう。もう起きる時間よ」
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夜明けのにおいがする。 においがする、むかし戦場で哨戒(しょうかい)当番だったとき、横にいた男に何気なく、本当に何の気なしに言ったら、そいつになんかものすごい顔をされて、その上、なんだそれ、夜明けににおいがあるのか、だなんてまじめに聞かれた。まじめに聞かれたって困る。 自分は明け方が近くなると、視界で感じるより早く、なんとなく鼻の奥がむずむずするような気がする。日の出のにおいっていうか。さあ今から太陽が昇って、空気があたためられますよ、みたいな、その前準備にもそもそ動き始める、植物の葉のにおいというか。 けれど、じゃあそれって本当にあるの、と聞かれても説明しようがないから、やっぱりすごく困る。 ただ、する、としか言いようがないからだ。 ひと晩じゅう、町の中を死にもの狂いの鬼ごっこをした。そう広くない町だった。それでも、集落ではなく、一応漁協があるような町だ。その中を、鬼を引き連れて、しかも普通は鬼ごっこって鬼がひとりで、逃げる方が多人数でしょうが。だのに、自分がやっていたのは、鬼が多数で逃げるのは俺ひとり、とかいう鬼ごっこだった。 ちょっと頭おかしい。 わりと序盤であー、ってなった。多数でひとりを追うとか、これ鬼ごっこじゃなくて狩りだわって。 森じゃなくて町中だったし、猟犬はいなかったのが、ゆいいつ幸運だったんだろうけど。 でもまあ実際狩りだったんだろうし、犬だっているもんなら嗾(けしか)けたかったんだろうな。そうも思う。 呼び子で追い立てられ、路地という路地を走らされ、脅しうちの矢を射かけられて、もうさんざんだった。半泣きどころか、本気で涙目だ。 自分は鹿じゃない。 いいか、体の一部で銀十枚。生け捕りにすれば金三枚。絶対、殺すなよ。 そんな、がなり声が何度も聞こえたんだから、これはやっぱり、あっちにとったら賞金付きの狩りだったんだと思う。 宴会の余興みたいな。 まあ、自分に言わせれば、勝手にひとのいのち余興にするなよって言いたい。 俺は食ってもうまくない。 敵も、自分も、血走った眼をしていたと思う。 そうして、逃げ回っているうちに、だんだんダメかもって言う瞬間がすこしずつ、でも確実に増えてきて、それは例えば細い一本路地で前後囲まれるだとか、よろけた拍子に足をくじいただとか、相手がふりおろした棍棒を間一髪でよけただとかで、自分は自分でそれでも何人かは、ナイフ投げて深手を負わせることができたと思うのだけれど、多対一、ってやっぱり相当無理がある。 屋根伝いに逃げたり、袋小路の壁越えたり、小細工を弄(ろう)してみたけれど、なんというか悪あがきってやつだった。 結局、数の多さって、もうそれだけで強い。認めたくはないけれど。 しかも、この町に来る道中で十騎見かけたから、十人との追いかけっこかあ、だとか自分は思っていたのに、ふたを開けてみればその数倍ほどに増えていて、まったく洒落(しゃれ)にならなかった。聞いてないよって。 あのひとを檻に戻すために二十人ですか。 おいおいどれだけ連れ戻したいんだよって思った。あの若造どれだけ執念深いんだよって。 ナイフにしたって、興行で動かずじっとしている的と、始終動いている的に中(あ)てる難しさは段違いで、それもあてようと構えを取るために少し立ち止まると、すかさず左右から物騒なものが飛んできたりするから、ひと晩中、ほぼほぼ走りっぱなしで、本当に限界突破すると思った。 俺は配達で鍛えている郵便夫じゃないですからね、どこかで息を入れないとヘタるんですよって言いたい。あんなに太腿(ふともも)の筋肉発達してないし。 しかも持久走なら、自分の速度で淡々と走ることができるけど、捕まったら死、みたいにひたすら走らされて、休むことは許されないとか、もう何かの刑罰ですよねって思った。 引き回しみたいな。あれは馬につながれているけど。 そうして悪いことに、俺は行きたくもないのに、相手が意図している方へ、方へ、追いやられていった。不可抗力ってやつだ。 とうとう、高所のまったくない、物陰どころか灌木(かんぼく)すらない、町の柵の外まで追い出された。 そこは海岸線だった。浜辺ってやつだ。 花も咲かない、足元は粗い砂地の続く、なだらかな平地。 せめてもうすこし水深の深い港あたりだったなら、隙をついて、水の中にとんずらするという手も、ない訳ではなかったけれど、港には船がある。港に行かせては絶対にいけない。だからしようがないとしか言えなかった。 そうか、ここが自分の終着点か。できればやわらかな寝台の上で、酒と、煙草と、女がいたらよかったと思ったけれど、ないものねだりだった。しようがない。 でもまあよく持った方だと思う。 もう息が切れるとか通り越して、血反吐(ちへど)出るんじゃないかって言うくらい、ひどく喉が痛くて、心臓はめったくそに暴れていて、いま自分が空気を吸っているんだか、吐いているんだか、最後の方はよく判らなくなっていた。 でも、そんな状態でも、人間って立っていた。ちょっと俺すごいんじゃないって、頭の片隅で思う。褒めてもいいよねって。 べつに、醜態(しゅうたい)をさらすのがどうのとか、敵前で膝をつくのは騎士としてうんぬんかんぬん、そう言うもっともらしい、格式ばった、古くさい理由ではなくて、単純に、なんとなく、倒れるタイミングを逃してしまっただけだ。今さら倒れるわけにもいかない。 自分は膝に手をついて、ようやく立っていた。 最初は自分に食いついていた四人がそのまま自分を囲むようにして、それから町の方からぱらぱら二、三人。そうしてまた三人。 そうして、しばらくたって、ようよう自分の息が整うころ、だしぬけにあいつが現れる。 数えたら、全部で十一人いた。 仕込んでいたナイフは二十あったから、外したのも含めて、それでも半数ほどは減らしたんだなと思った。 百発百中ではなかった。的当てだったら折檻(せっかん)ものだ。だけど、これは見世物じゃなかったし、一人で半数減らしたのだから、逆に敢闘賞(かんとうしょう)もらっていいんじゃないのって思う。 汗を拭う自分に、そいつは悠々と近づいてきた。次第に明けてくる、相手の顔がうっすら見え始めた闇の中に、夜目の利く分だけ、俺にはよく見えた。 肩をそびやかしていた。 涼しい風を吹かせて、おやおや、だとか眉を上げていた。 これからとらえた獲物をいたぶることを考えただけで、楽しくて楽しくてしかたがない、下衆(げす)の顔をして、そいつは近づいてきた。 反吐が出そうだ。 侮蔑(ぶべつ)には慣れていた。おや赤いのがいるよ。そうした一瞬の好奇と嫌悪が浮かぶ表情にも慣れていた。 けれど、この人間に見下されるのだけは、我慢ならないと思った。 自分はかま首を持ち上げ、威嚇(いかく)する蛇のように、背を伸ばし、そいつに向かった。体を起こすと、全身が軋んで、よけい眩暈(めまい)がひどかった。それでも自分はまっすぐに立っていた。 さっきも言ったけれど、騎士の矜持(きょうじ)なんてもとよりない。騎士でもない。ただ、こいつの前だけは、虚勢でいいから張らなければ気が済まなかった。 笑うなら笑え。 相手に知れているかどうかも関係ない。体力も気力も、とっくに限界だって言うことは、自分がいちばん判っている。そいつも判っていたのだろう。だから、とどめを刺すために、わざわざ出張(でば)ってきたのだ。 あのひとの悪夢の元凶。 ぶち殺してやりたいと思う。 ご主人さまの獲物に横から手を出す気は、手下どもにはないようで、ただ大人しく剣先を自分に向け、取り囲む。 すると、やあ。つかまえた。そいつは言った。 もう逃げられない。ずいぶん手こずらせてくれたけど、鬼ごっこは君の負けだね。 そんなことを言う。 だいたいね、打ち解けてもない相手に、こんな、なれなれしい口調で話しかけられるなんて、その人間性を疑う。裏がありますよって言っているようなものだ。。裏側でなにを思っているか知れたもんじゃない。 判るんですよ。そうやって人懐っこいように見せかけて、本当は、懐こさの反極だ。目の前の相手どころか、そもそも人間という種類を信じちゃいない。つねに疑ってかかって、なるべく自分が損を被らないよう、巧妙に動こうとしている。 裏があると言いきれた。なぜなら自分も同じクチだったからだ。 舌なめずり。 自分かかま首をもたげた蛇を意識したけれど、蛇というなら、こいつの方がいっそ蛇だと思う。いや、それとも腐肉を食らう獣の方がふさわしいかな。 ああもう本当に、返す返すも悔やまれる。四年前のあのとき、ラルヴァン公の屋敷に忍び込んだとき、遠慮なんてせずに、痺れ草もう一束ぶち込んでおくべきだったって。もしかすると過剰吸入で、後遺症なんかが残ったかもしれないけど、今、こうした状況には、ならなかったんじゃなかったかって。 「……そうでしょうね」 俺はこたえる。 「自分も、これ以上、逃げるつもりはありません」 観念したわけじゃなかった。大人しくやられるなんてまっぴらだ。まっぴらだと思う。思うのに、逃げるどころか、もう一歩も動きたくない。 両足は目に見えるひどさで痙攣(けいれん)していて、これでどうやってひと晩走れたのか、一旦立ち止まった自分にもよく判らなかった。 これ以上は動けない。 口を開くのもやっとだった。 「探したんだよ。だいぶ赤毛も狩ったしね。仕留めるたびに、ハズレだ、またハズレだって何度もがっかりしてねぇ。当たりのない、くじ引きをしている気分だった。でも、最後にようやく当たりがでた。よかった。数うちゃ当たるで殺してきたけど、これで報われたってね。僕の努力?……いや、屠殺した赤毛たちが、かな。うん、――それにしても、あすこにいた時分と比べると、君はずいぶん見違えたねぇ」 いっそ親しげに話しかけてくる、そいつの神経がよく判らないと思う。 判りたくもない。 「あすこにいたころの君は、なんだか汚泥にまみれて、腐った皮袋みたいになってたけど、……うん。まともな格好になるだけで、いっぱしの人間に見えるって、いや、装いって大事なのだねぇ」 「……だいぶお世話になりましたしね」 俺は言った。 「まあお世話というか、ご奉仕したのは、どちらかというと自分の気がしますが」 「ねぇ君。君はあれの居場所を知っている。そうだね」 そいつが言う。こっちの戯言はまるで聞く気がないらしかった。 「君をつぶす前に、それだけは確認しておかないと、また探すのが手間だからね。できればさっさと居場所を吐いてくれると、助かるんだけどな。君の口を割らせるのは、――、手足を折る?指を切る?時間がかかりそうだ」 「たとえば、四年とか、ですか」 俺は笑ってやった。 「仮に自分が知っているとして、あんたにゲロすると思います、?」 一瞬のちに、さっと右の視界が赤く染まった。予備動作なしに、いきなりそいつが、手下の持っていた得物を奪って、俺へ切りつけたのだ。 切れたのは瞼(まぶた)かな。目玉かな。 遅れてひりついた痛みがやってきたけれど、自分の頭は冷えていた。どうせ何をしたところで、この包囲から逃げ出すすべはないのだ。始末される時間が十拍後か、四半時後か、その程度の違いしかない。でも、できれば、彼女が好きだと言ってくれた目玉は、そのまま残っているといいのだけれど。 彼女、……――コロカント。 船は港を出ただろうか。 空は次第に白んでくる。 夜半は雲が多かったのに、いつの間にか雲は風に流され、どこかに行っていた。 今日は晴れるようだ。 見上げていた空から、ゆっくりと視線を胸へずらす。そこには、先だって歌うときあのひとから奪い取った、花飾りが咲いている。 あのひとの襟もとに、とめられていた花。 一目見て、いいな、ほしいなと思ったけれど、それくださいとは、さすがにしれっと言いにくくて、だから、あのひとから歌をもとめられたときは、なんてタイミング、指を鳴らして口笛を吹きたい気持ちだった。 これで、堂々とねだれるって。 歌いますから何かくださいと言うと、彼女はちょっと考えて、そうして、これでもいいですかと花飾りを差し出した。内心自分は、やった、とか思っていて、あさましさがにたにた顔に出ないように、一生懸命抑えていた。 でももしかすると、彼女には丸わかりだったのかも。 それは判らない。 胸元へ目をやると、ぱっとしぶいた俺の血が、花飾りを汚らしく汚している。 くそが。 不愉快になった。てめぇ、何してくれるんだって。 視線につられるようにして、そいつも俺の汚れた花飾りに目を止めた。 それから君、僕には理解できないんだけどねぇ、なんていやに気取った口調で言いやがる。 「あれがどうして逃げたのか、僕にはちっとも判らないんだ。きちんと世話したのに」 「世話、」 「そうだよ。きのこだの、ねずみだの、おぞましいもの食べてた君とは違ってね、エサは毎日新鮮なものをくれてやったし、水もかえてやった。忙しいからいつもは無理だったけれど、ときどきはかまってやったし、いくつか玩具(おもちゃ)を与えて、退屈しないようにもしてやった」 おやさしいことで。顔が歪むのを自覚しながら、俺は笑った。それから、あの頃食ったねずみや、蛙や、虫の味を口の中で急に思いだして、嘔吐(えず)きそうになった。 「まだ繁殖時期じゃあなかったから、つがいは入れてなかったけれど、いずれつがわせてやろうとは思ってたんだ」 そいつはどこか遠いところを見ている。 「あれはたいして見栄えしない毛色だけど。でも、一応、生粋(きっすい)のミランシア種だろう?聞けば、領主一族はあれのほかは絶えてしまったっていうじゃないか。だから、ちゃんと、時期が来たら、同じミランシアの牡(オス)を入れて、繁殖もさせてやるつもりだったんだよ」 「あの方は人間ですよ」 聞いているうちに、自分はだんだんいらいらしてきて、独白の合間につい口をはさんだ。 すると、ひゅ、とまた剣の切っ先が動いて、今度は自分の左を狙われた。話の腰を折るなということらしい。 さすがに両視界を奪われるのもどうかと思ったから、自分はのけ反り切っ先をかわす。かわしながら、ふと、グシュナサフが自分のナイフを避けたときも、そういやこんな感じだったな。思い出して、すこし笑えた。 続けて、そう言えばこいつ、自分の養父も、がんじがらめに寝台にくくりつけていたなと、思いだした。 結局、性分(しょうぶん)なのだろう。病気だ。ひとをひととして扱うことができないのだ。 「……可愛がってやったんだ。羽を切ってね、飛べないようにした。飛べると、逃げてしまうからね。うん、――あのときはちょっとよかったな。片足の腱(けん)をね、こう、切ったら、小さく叫んで床にもがいてね、」 嬉しそうに揉み手になってそいつは言う。 夢見る瞳って、こういう目のことを言うのじゃないかなと思う。見ている夢が、決して俺には理解できないたぐいのものであっても。 「虜囚になると、ほら、男の慰みものになるってよく言うだろう?」 ああ、君はなったか。俺を見て、ますます嬉しそうな顔になる。なったねぇ。 「僕は、子供に欲情する趣味はないからね、あれをどうこうするつもりはなかったし、実際手つかずのままだ。安心したかい?あれは純潔だ。配下のものも、手を出していない。絶対にね」 絶対。言い切るそいつに、自分は目を向ける。なんでそんなにはっきり断言することができるんだって。 ご主人さまの見ていないところで、手下の犬が捕虜を嬲(なぶ)るなんて、どこの国でもよくあることだった。 だって、実際この四年、いったい何人が何度、入れ代わり立ち替わり自分のところに来たと思ってるんだ。そう言いたい。 規律なんて結局、建前(たてまえ)だ。 「どうして判る――そう言いたいんだろう?簡単だよ。だって、毎回、しらべたもの」 「……しら、べる、」 眩暈(めまい)がひどくなって、自分はわずかに身動いた。自分の身動きに合わせるようにして、突きつけられた剣先も緊張をはらむ。飛びかかりやしないかと思われたんだろう。 彼女が、なにかひどい目に遭(あ)ったことは薄々感じていた。眠るたびにうなされるあの様子はただごとじゃない。判っていた。けれど、聞くことはなかった。だって、……、とうてい聞けない。何かありましたか、だなんて、そんな、軽々しくたずねていい部類の話じゃないことはたしかだった。 本当にそうか?自分の中の俺が自嘲する。お前、ただ、聞くのが怖かっただけじゃないのか? 「うん。肌着一枚になるように命じてね。――それから、壁際に立たせて、全身くまなく検(あらた)めるんだ。だって、健康管理は飼い主の義務っていうしね。『裏』も、表も、全部診たんだよ」 「……聞きたくないです」 目を閉じ、怒りをこらえながら自分は相手の話をさえぎった。聞きたくない。 ぶん殴らなかったのは奇跡だ。 無抵抗な幼いものを押さえつけて、なにが楽しい。綿羊と同じ扱いを受けて、自尊心を叩き潰されて、それは無傷と言えるのか。 瞼(まぶた)の裏が赤くなる。そうして俺は絶望した。ああ、守るだなんてやっぱり自分は口先だけで、彼女を守り切れなかったって。 「どうして逃げたのかなあ。なにが気に入らなかったんだろう。連れ戻したら、今度はもっと、頑丈な檻にして、それから、足枷(あしかせ)もつけようと思うんだ。今までは、ちょっと見栄えが悪いかって、つけていなかったんだけどね。うん、でも、やっぱりつけることにした。銀の細い鎖がいいな。番犬(みはり)も増やして、それから時々、犬に追わせて、もう二度と、逃げようだなんて思わないようにするんだ」 「――、」 胸糞悪い。 唾を吐き棄て、やっぱりどうあってもこいつはぶち殺そう。そう思った。 こいつが生きている限り、あのひとはこいつの悪夢にうなされる。こいつが生きている限り、いつか追いつかれ、連れ戻される恐怖が付きまとう。 どこに逃げても。どれだけ遠くに逃げても。 こいつがいる限り、あなたは上手に笑えない。 「こちらがいくら尽くしてやってもねぇ、世話してやってる気配りは、相手に伝わらないのだね。苦労は報われるそうだけど、けど、あれはちっとも手乗りにはならなかったなあ」 浮かされるよう呟くそいつが、ちらちらとこちらの胸あたりへ目をやっていることに、ふと俺は気がついた。気がつき、その視線の意味するところを理解した瞬間、いきなりどす黒い優越感がこみあげ、下卑た笑いが抑えきれなくなる。 ああそうか、って思った。 どれだけつんと澄ましていても。おきれいな顔で、取り繕っていても。 うらやましいか。うらやましいんだな。うらやましいんだろう。 「――これ、気になります?」 見せびらかして、俺は言った。そいつが気にしていたのは、俺の血で汚れた、あのひとが作った白い花だった。 「いいでしょう。いただいたんですよ。あの方から」 「……どうして、君なんだ、?」 先までの熱に浮かされた表情を引っ込めて、いきなりしんとなって、そいつが言う。心底理解ができない、不思議そうな顔だった。 「僕はきちんと四年世話をしたよ。飼ってやったんだ。それは僕のものだ」 「他人のものは自分のものですか。あきれた暴論ですね。あんた、今までもそうやって……、ラルヴァンさまからも奪ったんですね」 辺境伯の名と、屋敷と、荘園と、そうして老父の指にはまっていた当主の証と。 そういやこいつは、もともとハブレストの分家だかから貰われてきたんだっけ。もともとの出も、いいところのお坊ちゃんなんだな。 まったくだから金持ちは厭だ。俺は心の中で罵る。 金さえ出せば、もめごとは解決すると思ってやがる。解決しなければ黙らせればいい。金をちらつかせて、味方を雇うこともできるし、耳ざわりの良いおべんちゃらを言うやつらばかり周りに集まるし、女も股をひらく。 こいつの典型的なハブレスト顔、お貴族さまによくある金髪に碧眼(へきがん)、手に入らなかったものは、今までほとんどなかったにちがいない。 「金を積みますか。それとも自分を殺して剥(は)ぎますか。どちらにしたって渡す気はありませんね」 そいつは、羨ましくて羨ましくてしようのない顔を、もう隠しもしなかった。ととのった甘いお貴族顔を崩していた。目を丸々と大きく開き、穴のあくほど花を凝視して、待て、をかけられた犬のように、半開きの口からよだれを滴らせんばかりになった。 ああ、こいつはひとじゃない。俺は思う。そうして俺もひとじゃない。 どちらとも牙むき、毛を逆立てて、乱杭歯(らんぐいば)を見せ威嚇しあう、薄汚い獣だ。 「四年飼ってやったって言いましたっけ」 俺は言った。 そうして、そいつから一瞬目を離し、周囲を探る。ご主人さまの金に忠実な下僕は、先ごろと同じように、得物の切っ先を自分に向けたままだ。正確に言えば九つと、奪われたもうひとつは、目の前の若造の手にある。 ナイフはすべて使い切った。投げる得物はもうない。 「自分もね、四年。同じように世話をしたんですよ」 「……、」 「森に押し込めて、怖い噂を近隣に流して。ここから出てはいけないと、彼女には言い聞かせてね。自分は常にお傍にいるわけにもいかなかったから、……、世話する女もつけました。女は、彼女の安全を守る一方で、どこか遠くへ行かないように注視もしていたでしょう。ときどきは、森に必要な物資を運び入れて、変わりはないかこの目でたしかめました。……あんたが、土足でどかどか乗り込んできて、しっちゃかめっちゃかにするまでは」 命と引き換えに託していった同僚がいた。お子を頼む、と見るも無残な姿になりながら、血を水のように滴らせ吐き出していた。断末魔の力でもって、ぎりぎりと俺の腕に指のあとを残しながら、ただ遺(のこ)してゆく子供の心配だけをして、死んでいった男だった。 追われ逃れる生活ではなく、どこかに腰を据え、安全に、健やかに、成長しなければならないと思った。だから、生きてゆけるだけの衣食住をととのえ、その環境に彼女を閉じ込めた。 最初はほんのいっときの、匿い場所だったと思う。すぐにもっと安全な後ろ盾を見つけて、その人間の屋敷へ連れてゆくつもりだった。 だのに自分たちの不手際で、彼女の後ろ盾になってくれる人間を、なかなか見つけられることができなかった。 なんとか交渉まで漕ぎつけたと思えば、必ずどこかで邪魔立てが入って、はい、元の木阿弥(もくあみ)。そうして何度も何度も、積んでは崩され、崩されては積む、賽(さい)の河原の石積みのような作業を、自分はくりかえしてきた。 彼女の身の安全を思えば、安請け合いをする諸侯に、託す気にはなれなかった。こちらへよこせ、引き受けよう。名乗り出るものは数多くいたけれど、やつらが見ているのは、コロカント自身ではなくて、彼女の肩書や、彼女が保有する財産だけで、渡したが最後、身ぐるみ剥がされ、すぐハブレストに売り渡されるのは目に見えていた。 ようよう見つけたラルヴァン公は、目の前の若造に始末された。 ――だけど、本当にそれだけだったのかな? また俺の中で嘲笑する声がある。 ――それはただの立派な大義名分ってやつで、本当は、交渉がおじゃんになるたび、お前は心のどこかで喜んでいたんじゃないのか? そうかもしれない。自分はきっと、彼女をいつまでも、あの森の中に閉じ込めておきたかったのだ。 俺は、あの歌にあった、自分勝手な樵のように、力任せに彼女を引き立て、森の外へ出てゆく熱情をもたなかった。 だとしたら、自分だって、目の前のこいつとやっていることは、何も変わりはない。 「でも自分はもらえました。手渡されたんです。彼女の手作り。なんででしょうね?……ああ、……そういえばですね、手乗りなんて言うから思いだしましたが、自分が座ってるとね、彼女寄ってくるんですよ。別に刃物ちらつかせて命令しなくたってね、自主的っていうんですか。そうして迎えてやると、きちんと、こう、膝の間に来るんです。ちっちゃくて、いいにおいがして、やわらかくて。ね。ああ、でも、あんたには判らないんですよね。かわいそう」 にこやかに蔑(さげす)んでやる。 自分とこいつが決定的に違ったことと言えば、自分は彼女に嫌われずに済み、こいつは ものすごく嫌われたということだ。 「悔しいですか。でもあんたがやったことって、俺以下ってことですよ。あんたが莫迦にしてる赤毛以下。まだ子供だとか、世話してやってるとか、関係ないんですよ。――怯える女をね、力で押さえつけて、内部に無理矢理指を突っ込むよう下衆(げす)は、そんな強姦魔は、百遍(ひゃっぺん)首を吊って死ねこの腐れ外道」 吐き棄てた瞬間、目の前の若造の顔がふくれあがった。それまで何を言われているのかよく判らないような、ぽかんととぼけた顔をしていたものが、不意にまがまがしいほどになって、そうして俺につかみかかってきた。 俺はよけなかった。 そいつが胸ぐらを掴みあげ、憎悪まるだしの顔が眼前に迫っても、俺はせせら笑ったまま、よけなかった。 そいつは持っていた剣の柄(つか)で俺を殴ろうと振り上げた。殴ったって容易に人間は死なない。斬りつけた方がよほど効率的なのに、こいつはしない。ひと息に俺を殺そうとしないあたりが、らしいと思った。 振り上げ、振り下ろす。 剣の柄というよりは、鍔(つば)の部分で頬骨のあたりをがつんとやられて、視界に一瞬星が散った。俺は蹈鞴(たたら)を踏みながら、倒れるのだけはぐっとこらえ、そうしてそいつの振り下ろした手首を握った。腕を切り落とされたって離さない。 そのまま、体勢を崩したまんま、ぐいとおのれの側に引き寄せる。力任せだった。 掴まれると予想していなかったらしいそいつは、引かれるままこちらに倒れ込む。その手には、いま俺を殴った剣が握られたままだ。 ひねり上げ、柄元へ手を添えながら、俺は手加減なく、体勢を崩して胴体をさらしたそいつの無防備な腹部へ、切っ先をめり込ませた。容赦なんてこいつにするもんかと思った。 ここまでが一拍。 「な、」 なにを、だとか、なんで、だとかそいつは言いたかったのだと思う。 とっさに後退して逃れようとする背へ、手を回し、鷲づかみにして、俺は柄元まで一気にめりめり刃を押し込んだ。 腹から剣を生やしたまま、驚きに目玉がこぼれ落ちそうになるほど見開いて、そいつは砂地へぶっ倒れる。 即死か、そうでなくともそれに近い状態だと思う。 感慨にふける間もなく、俺はぱっと身を翻(ひるがえ)し、走った。 とくに考えはなかった。とにかく敵のいない方へ、到底逃げきれるもんじゃないと思っていたけれど、それでもそのまま突っ立って巻藁(まきわら)になるなんて、体が拒否をした。 多勢に無勢だ。知ってる。だけど、水の中に逃れることができれば、なんとか逃げ延びるチャンスはあると思った。 その水際が遠い。 正直、事ここまで来て、自分がこんなに意地汚く生き延びようとするなんて、思いもしなかった。びっくりだ。そもそも、これだけ疲労困憊(ひろうこんぱい)状態で海に逃げたって、溺れ死ぬ可能性の方がどう考えても高い。 けれど、そいつの腹部に剣を突き立てた瞬間、俺が思ったことと言えば、よしこいつは片付いた、だから戻らなきゃ、って言うことだけだった。 港で彼女が待っている。 ご主人さまが即死して、呆気にとられた下僕どもは、我に返るや否や、俺の後を追ってきた。命令を出す人間はもういない。敵討ちを、なんて考えるほど、慕われるような人間でもなかった。 そいつらも、だから、なんとなく体が動いたんだろう。 ざぶざぶと波をかき分け、足首ぐらいから膝丈まで海に浸かり、あともう少し、潜れる深さまで分け入ることができたらなんとか、ああくそ、どうしてこんなときに引き潮なんだ、奥歯を食いしばり気ばかり急いて、沖へ沖へと急ぐ自分の背に、不意にばすばすと焼けつくような痛みが走り、俺はのけ反った。 波打ち際から数人に、矢を撃たれたのだと一瞬遅れて気がついた。 ああそういえばあいつら、目暗撃ちしてきたもんな。そりゃ持ってるよな。 納得する。 長袖の下に、たしかに鎖帷子は着込んでいたけれど、なで斬り程度の刃は防げても、近距離からの矢の威力は脅威だ。シャレにならない。だって鉄の盾に突き刺さったりするんだぜ。 ああ、でも貫通しなかっただけ、着ていた甲斐があったってものなのかな。 この場合、どっちにしたってものすごく痛いことに変わりはないけど、どてっ腹に風穴開かなかったって、喜んだらいいのかな。 そう思う。 そういや、背中の傷は、騎士として恥なんだそうだ。こんな時なのに思いだした。 逃げようとするところをやられるわけだから、敵に背を向けているってわけで、つまりは、勝負を投げ出した負け犬ってことらしい。 でも、それ、つねづね思っていたけど、真っ向からぶった切られたやつの、ひがみなんじゃないかって。 騎士なんて、基本、重い鎧着込んで、馬に乗って槍構えて、露払いをされたあとでの突撃仕事だ。重いし、視界も狭いから、うまく身動き取れない。素早い方向転換なんてできやしない。 結果、真正面で攻撃を受けるしかない。男は黙ってじっと耐えて、じゃないけど、自分はそんな痛いのはいやだ。 痛いのを我慢して、正面にばかり傷を作って、そうして堂々と仰向けに倒れ死ぬのが騎士としての勲章なんだとしたら、自分はやっぱり騎士なんてごめんだ。負け犬だろうが、後ろ指さされようが、どれだけみっともなく、汗みずくで逃げまくったって、自分はなるべく怪我を負わずに生きていたいし、生きて、生き延びて、そうして。 ――そうして。 顔面から海にぶち当たって、俺の思考はそこで途切れた。 * 空が燃えている。 ざざ、ざざざざ。ざざざざ。 砂嵐のようなうるさい耳鳴りとともに、べしょべしょと冷たいものが左顔面を撫ぜて、俺は薄目を開ける。くすぐったくて不愉快だったのだ。 ざざざ。 薄目を開けると、左の眼球を容赦なく塩からい砂混じりの水が洗って、ひどく沁(し)みる。沁みるので、目をまた閉じた。 目を閉じ、まただいぶ長いあいだ、うとうととする。 うとうととしながら、この頭の中にうわんうわん響く耳鳴りが、耳鳴りではないことに気がついた。 これは波の音だ。 ……ああ、……、海。 どうも頭がはっきりしない。そうして、俺はなんだって波打ち際で洗われているのかなと考えた。 子供じゃあるまいし、水遊びの趣味はなかった。そもそも季節はまだ晩春で、水に浸かるには早すぎる。全身の感覚がなぜか遠くてよく判らないけれど、くすぐったいだの、冷たいだの感じた顔面は、まだ感覚が残っているようだ。 ……俺は、どうして、海に。 それよりも、俺は今まで何をしていたのだっけ。空が燃えるように赤いので、今が明け方にはちがいないけれど、漁師でもない俺が、波打ち際にいる理由が思いつかない。 いやまて。急にぎくりとなって沁みるのもかまわず、俺はまた目を開いた。先刻よりもしっかり。 俺はなにか大事なことを忘れちゃいないか。 明け方。 はっとして、俺は体を起こそうとした。でも動かない。 指の先ひとつ、ぴくともしやしない。 座礁したクジラの方が、まだ体を動かせるのじゃないだろうか。俺は本気の本気で、頭をもたげることもできやしなかった。まるで金縛りだ。 ああそうか、金縛りなのか。だったら、やけに顔のあたりだけ感覚が鋭敏なのもうなずける。これはまだ、夢を見ている途中なのかも。 思いながら俺は、でもこの状態が決して夢なのではなく現実で、俺は昨日からひと晩中、追手を引きつけた囮役、そうして今は明け方、港からはもうとっくに三人を乗せた船が出た頃合いだと判っていた。 出ただろうな。出てくれないと困る。 そうでないと、俺が死にものぐるいで駆けずり回り、そうして、あのお貴族顔の変態野郎を殺した意味がない。 あいつ、最期は実にあっさり逝ってくれやがったなあ。 もっとこう、もがいて、苦しんで、ばかな、僕がこんなやつに、だとか、今際(いまわ)の際(きわ)の台詞を吐いて、悪党の親玉らしく、みじめったらしく死んだらよかったのに。 そうしたら、この自分の中のモヤモヤやるせない気持ちも、すこしは晴れたかもしれないのに。 でも結局、人間なんて死ぬ時は、あっけないものなのだろうな。 場所も、覚悟も、言い残すことも、最後の体の向きすらも、自分で決めることができなくて、ただぷつんと糸が切れるように、終わってしまうものなのだろうな。 俺は、こんなふうに、塩からい水に、びしゃびしゃ洗われている場所じゃない方がよかった。お花畑や惚れた女の膝の上、とまでは贅沢言わないから、せめて砂地の方で仰向けで死にたいと思った。でもそれじゃ、騎士の大往生と同じかと思って、なんだかおかしくなった。 それに今、たぶん、何本か判らないが背中に矢が刺さったままの状態で、仰向けになったら、それこそ悲惨だ。悶絶死だ。 最後まで痛い痛いと思って死んでいくのは、いやだな。 視界の端に、真っ赤な空が見える。 空が燃えている。 空が赤くなるのは朝に夕に二度あるはずで、だのに、どうして俺は、きっちり明け方だと確信しているのかなと思った。 ……ああ、でも、理屈じゃないんだ。判るよ。 だって、こんなに不吉なほど赤いのは、明け方に決まっていた。朝焼けの赤は、凶兆だ。戦場でものすごく嫌がられる色だ。 ばたばた地に倒れ、こと切れていく戦友たちから流れてゆく赤い色と同じだからだ。 お前の頭は、死んだあいつの血の赤さを思い出すンだ。だから、言いがかりなのは知ってるけどよ、ほんとう申し訳ないけどな、俺は赤毛が大嫌いだ。 何度そんなことを言われたかな。 でも、理屈じゃないんだよな。大丈夫。傷ついてもないし、判ってるよ。 喉がひどく渇いていた。 そりゃそうだ、食わずはともかく、飲まずでひと晩走っていたんだし。 頬の下には、そりゃもう飲みきれないほどの海の水が、ひっきりなしに寄せては返しをしていたけれど、こんなもの、腹いっぱい飲んだって渇きは癒されないことは知っている。 水が飲みたいな。 俺の周りで遊んで行く波が、妙に鉄錆(てつさび)くさい。 唇がなんとか動いて、俺は口を開けた。開けたとたん、砂と一緒に海水が口中になだれ込んできて、思わず俺は噎(む)せた。 体が痺れていたくせに、こういう、反射的な体の動きってするもんですね。咳き込んだ。 咳き込むたびに、体の芯に針をぐりぐり突き刺したようなつんざく痛みが走って、俺は引き攣り、手足をこわばらせる。 だけど、はずみですこし頭も動いて、先ごろよりもずっと空が仰げるようになった。 目を閉じる。一瞬意識が途切れた。 それから、慌てて目を開ける。 このまま眠ってしまって、この暁の空を見そびれてしまうのは、どうにももったいない気がした。 もったいない。 これだけ三十何年、赤さを毛嫌いされ続けて、見そびれてもったいないだとか、気がふれているとしか思えない。どうかしている。 周りほとんどに嫌悪されて、野良犬みたいに追い払われて、俺は好きこのんでこんな色に生まれたわけじゃあないし、たとえ頭を丸刈りにしたって、色は代えられない、それは知ってる、だけど、たったひとり、彼女がこの色をきれいと言ったから、朝焼けと同じでとてもきれいで好きだと言ってくれたから、たとえ朝焼けのそのすぐ後にしぐれてきて、ぬかるみの中のどろんこ合戦になったとしても、それでも、あなたが好きだって言ってくれたから。 俺はあなたが、好きでした。 どうしても眠くて、かくっと俺は落ちかけて、また無理矢理目を見開く。 赤い空を見続けていたかった。 俺の好き、という意味と、彼女の好き、と言ってくれる意味が、もう百八十度、コインの裏と表ほどまるきり違っていたとしても。 俺が彼女に抱くすべてが異常で、偏執じみているのは自覚していた。今はまだいい、だけど彼女がもう少し成長して大人の女性になったとき、俺はどうする? 彼女が求めていてそうして真に必要なものは、父親代わりの愛情で、俺が彼女に抱いている変質した歪んだ思慕は、彼女にまったく必要がない。 子供の彼女は、ためらいもなく俺の懐へやって来るけれど、それはいつまでだ?世間的にいつまで許される?お前、怖くないのか? 彼女はそのうち離れてゆく、それを俺が追わない保証がどこにある?穏やかに笑って、ひとり立ちを嬉しく思いやれる自信が、俺には全くない。 そうして俺は、こじらせたあいつと同じような、糞野郎に堕落するにちがいない。 ……必要なかったんだよ。最初から。 だから、俺は場の流れで、こうして浜辺に転がっていたりするけれど、きっとこれでよかったんだと思えた。ここで退場。今後の人生にでばらない方が、彼女は真っ当に生きてゆける。 俺はあなたが、好きでした。 だけど、と半分眠りにおちながら俺は思う。だけど、あなたに幸せになってほしいという願いだけは、混じりけなく、純粋な、俺の願いだったですよ。 それだけは嘘じゃない。とことん嘘にまみれた自分が言ったって、信用しきれる話じゃあないのは判っているけれど。 あいつは始末しました、もうどこにもいません。あなたを探し出し、連れ戻すことは決してない。あなたはもう、こわい夢を見なくていいんです。 ……あなたはまた笑えますか。 森の中の生活だって、そうだ。閉じ込める気はなかった。いつか必ず、外へ出してやりたかった。外へ出して、多くの人間と交流しながら、真っ直ぐに育って行ってほしかったんだ。 祭りにもいきたかったな。花火を見たかった。踊りつかれるまで騒いで、喉が乾いたら軽くエールを流し込んでげらげら笑いたかった。 酔って頬を染めたあなたは可愛かったろうな。 たくさんの指切りをした。数えきれないほどたくさんで、薄情な俺は、もうそのほとんどを忘れてしまっているけれど、でもそのひとつひとつ、騙してやろうと嘘をついたわけじゃなかったんだ。 手をつないで森を出ましょうね。手を離しちゃいけません。離したら、迷子になってしまいますからね。ずっと繋いで、……、……でも。 でも、俺がしたことは、やっぱり、あいつと同じだったかな。あなたの飛べる力を奪って、不自由を強いていたかな。押しつけがましくあなたの幸せを願うだとか言って、てめぇ勝手な都合を、ただただあなたに強制していただけかな。 開いた目を海水が押し寄せて洗っていっても、俺はもうとくに沁みる、とか、痛い、とか感じることもなくなっていた。 ただ、閉じてしまうのだけはいやだった。最後までこの空を見ていたい。 何度も、何度も船を乗り継いだ向こう側の国は、こちらの大陸ほど赤い頭が迫害されていないらしい。赤毛はわりとめずらしくないって話だ。そもそもは、あっちの大陸から流れてきたんだそうだ。 だから自分にとっては、ミランシアにいた時分よりもさらにずっと、居心地のいい場所になるに違いなかった。 あっちへ行ったらやりたいことがいっぱいある。 まずは腕のいい医者探しだ。彼女の足を見てもらわなきゃならない。そこできちんと治療して、それから、彼女が今まで見ることができなかった、たくさんの人や、町や、場所を見に行こう。 車は今度は幌付きがいいな。曳くのはハナだ。御者台には俺とグシュナサフが交代で座って、……あいつも付いてくるのかな。それとも、どこかの繁華街でまた春売りに戻るのだろうか。 そういえば、あいつとは、落ち着いたら今度一度、きっちり話をつけなきゃならないと思っている。ちらちら仄(ほの)めかしてこっちの反応を楽しんでるふしがあるし、そもそも彼女にいろいろ吹きこまれちゃ困る。俺の人徳とか崩れるし。 ざざざ。ざざざざ。潮騒が思考の邪魔をする。 ……ああクソ、もう船は出たかな。出ただろうな。 だったら俺は、次の船を探して、追いかけなくっちゃならないな。 彼女はやさしいから、きっと心配してくれているだろうから、俺は早く追いかけて、合流しなくちゃならない。そうして、ひょいと姿を見せて、お待たせしました、ほら、なんともないでしょう、無事に戻りましたよって言って、にっこり笑ってみせるんだ。 彼女はどうするだろう。笑うかな。泣くかな。怒るかな。 俺はあなたが好きです。 常識的にも、世間的にも、憚(はばか)られて、絶対に口に出しちゃいけないことは判っていたけれど、でも、俺はあなたが好きです。 もう眠くて、どうにも眠くて、早く目を閉じた方が楽になるのは知っているのに、赤く燃える空を見ていたかった。 どうせもうすぐ、日が昇り切ったら、この赤さは消えてしまう。 あなたは俺のことを、朝焼けのようで、きれいで好きだって言ってくれた、たったひとりのひとだった。俺はあんなふうに言われて、うまい返しもできないまま、曖昧に笑ってごまかすしかなかったけれど、胸が痛くなるっていうんですか、本当はとても嬉しかったですよ。 はじめて自分の赤髪を、自慢に思った。 生まれ変わりだとか、俺は信じちゃいなかった。信じたところで、俺みたいな生き方をしてきたような奴は、生まれ変わったって、またどうせろくでもない人生歩むのは判りきっている。 だけど、でも、もし、神さまの気まぐれ的な、万に百分の一くらいの確率で、生まれ変わることができたら、俺はやっぱり、赤毛で生まれてこようと思う。 赤毛で生まれて、そうしてあなたに、もう一度会えたらいいなと思います。