約 243,175 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1178.html
一方、風紀委員第一七七支部では絹旗と固法の口論が落ち着いた頃に一本の電話が舞い込んでいた。 「柵川中学校で神裂先生がいかがわしい格好で生徒相手に刀を振り回しているですって!?しかも相手の生徒は電撃を放つ常盤台の生徒!?」 固法が電話内容を復唱しながら座っていた椅子を倒しながら立ち上がった。その反動なのか、デスクの上に置いてあった開封済みの武蔵野牛乳が倒れて中身がこぼれてしまっている。電話を即座に切り上げてこぼれた牛乳を嘆きながら拭き始めるのだった。 固法が受け答えした驚愕の事実を聞いた初春・佐天・絹旗は、 「な、何でそんなことになってるんだろう?」 「確かに、超気になります。飾利、超すぐに事実の確認です。」 「分かってます、すでに監視カメラの映像シークエンスに入ってます」 そこに映っていたものは、柵川中学校のグラウンドと神裂が堕天使エロメイドの格好で意気揚々と刀を振り回し、美琴に襲い掛かっている所だった。 「火織お姉ちゃん・・・なんて格好で暴れてるんですか!?」 「神裂さんの格好、どこかで超見た事ある気がするんですが・・・私の超気のせいでしょうか!?」 「てゆーか!神裂先生の格好ってクリスマスパーティーの時に土御門さんが見せたコスプレの女性バージョンじゃないの!?」 「ああ!言われてみれば、超思い出しました。確かにそうですね。」 「て、ふたりとも火織お姉ちゃんの格好に突っ込みたいのは分かりますが、今は何故火織お姉ちゃんと美琴おねえちゃんが争っているのか調べないと!」 初春の正論に二人は笑いながら、 「ア、アハハ・・・そうだよね。神裂先生の格好がインパクト強くて忘れるところだったよ!(でもやっぱり気になる!)」 「アハハハハ・・・そうでした。神裂さんの格好は超気になりますが、争いの原因を調べなくては!(ですがやっぱり超気になります)」 神裂の格好があまりにもインパクトが強すぎたのか、内面では気になって仕方がないのであった。 そこへ牛乳の後始末を済ませた固法が話しかけてきた。 「ていうか三人とも、神裂先生の格好に心当たりがあるならどうしてそこから調べようとしないわけ?」 「そ、そうですよね、固法先輩!飾利、あんた確か土御門さんの携帯番号知ってたよね!?」 「そうです、飾利!超すぐに土御門さんに超連絡です!」 「ハ、ハイ!」 初春は携帯を手にして電話を掛けるのだが 「だ、だめです。留守録になっちゃいました・・・・・・」 「る、留守録?・・・・・・」 「アハハハ、はやくも手詰まりって感じなのかな?」 「こ、こんな一大事なときに繋がらないなんて・・・あのネコ語男、超何やってるんですか!!」 初春は事実を告げた。それを聞いた固法と佐天は呆れ、絹旗は怒りを露わにするのだった。 だが、繋がらないのは争いの真っ只中にいて、雷鳴や剣戟音があらゆる場所に鳴り響き、着信音など気づくはずもないのである。 「超どうするですか!あの服の心当たりなんて他には超居ませんよ!」 「とゆうか、この争いを先に止めるべきよ。このままじゃ学校が崩壊するわ」 「で、でもあの本気の二人を止めるのって難しくないですか?」 「確かに超そうです!本気の二人を止められるであろう人物は現在学園都市には超いません!」 「でも、当麻おにいちゃんなら止められるんじゃないでしょうか?」 「それは無理ね」 「「「え?(超)なんでですか?」」」 「さっきから映像にチラチラ映ってるからよ」 「「「え!?」」」 三人は画面を凝視して 「本当だ」 「本当ですね」 「超本当ですね」 上条当麻の姿を見つけ三者三様で答えるのだった。 「どうしようか、飾利?」 「私に振らないでくださいよ涙子さん!どうしましょう、最愛さん?」 「飾利、だからって私に振られても超困ります!超どうしましょう、固法先輩」 「あんたたち、ここで言い争っても意味がないでしょうが!即、現場直行!!」 「「「はい!!!」」」 固法に怒鳴られて三人はあわてて現場へ向かうのだった。 三人を見送ったあと、My冷蔵庫から武蔵野牛乳を取り出し、一口くちにしたあと、 「あ、佐天さんはジャッジメントじゃないんだから別に行かなくて良かったんだっけ。・・・・・・ま、いっか」 ―――――――――――――――――――――――――――― 第一七七支部を跡にした三人は走りながら会話を続けていた。 「私たちが超向かったところで、超何もできない気がします」 「確かにそうなんだよね、でも本当に何で美琴お姉ちゃんと神裂先生が争ってるんだろう?」 「ハアハア、それは、・・・ついたら分かるんじゃないですか!?」 「それもそうだね」 「なら超急ぎますよ」 三人はペースを上げて柵川中学校へ向かうのであった。 そしてもうひとり、偶然三人の会話を聞いたアステカの魔術師も向かうのであった。 「御坂さんと天草式の聖人が争っている?・・・・・・御坂さん、今助けに行きます!!」 ______________________________ 「っのおっ!!」 「無駄です。七閃」 怒涛のごとき砂鉄の刃の群れを放つ美琴、しかしそれを冷静に七閃で蹴散らす神裂。 わずかな隙をついて接近を試みる神裂を近づけまいと広範囲の雷撃を放つ美琴、まさに互角の戦いである。 「(神裂のやつ、青ピ達の居る手前、分かりやすい魔術は使ってないんだな。何だ、意外と冷静じゃ)ぬおっ!! 危ねっ!」 「アンタ何ボーっと突っ立ってんのよ?」 「呆けてる暇があると思っているのですか?」 考えごとをしている間に迫ってきた雷撃を右手でかき消し、七閃をギリギリかわした当麻は思った、この二人息ピッタリだと。 当麻VS美琴VS神裂のバトルロイヤルの苛烈ぶりを唖然と見守るのは一番最初に避難を済ませた青黒と春上だった。 「……黒子はん、止めなくてええんか?」 「無茶を言わないで下さいまし。○○様、いくら黒子がジャッジメントでもあのような死地に赴くのはゴメンですわよ……」 「ど、どどどどうしようなの……。御坂さんと神裂先生と知らない男の人が喧嘩が止まらないの……。あたしはただ初春さんのことで話し合いたいだけだったの……」 黒子はひらめいた、戦っている上琴と神裂、そして春上の口から出た初春の名前を聞いて。 「春上さん! 今すぐ初春と連絡を取ってくださいまし!」 「え? ど、どうして初春さんが必要なの?」 「理由は後でじっくりと説明させて頂きます! あの三人を大人しくさせられる可能性があるのは初春だけですの!」 「せやったら黒子はんが連絡して初春はんに居場所聞いてから【空間移動】でノーーーッ!」 青ピのもっともな意見だが三人のバトルロイヤルのとばっちりがこっちに向かっていたのですぐさま【空間移動】で退避する黒子たち。 今のを見て青ピは納得した、黒子が離れたら自分も春上はんも無事では済まないと。 「さ、春上さん。初春と連絡を」 黒子の真剣な表情に春上は黙って頷くと、初春に電話をかけた。 ―――――――――― 「はいもしもし初春ですけど」 『初春さん? 春上なの! お願い、御坂さんと神裂先生と知らない男の人を止めて欲しいの!』 「え、ええ。私達も今そちらに向かってる所ですからそれはいいんですけど……。春上さん、事情を話してくれますか?」 慌てながらも要点を捉えた春上の説明に初春は納得してしまった、何もかも自分のせいだと。 『白井さんが言ってたの。御坂さん達を止められる可能性があるのは初春さんだけって。だから』 「分かりました! 大急ぎでそちらに向かいます!」 電話を切った初春、すぐさま佐天と絹旗に事情を説明すると二人の呆れた顔を見て予想通りのリアクションだと思っていた。 上琴と神裂が喧嘩してるのを良しとしないのは初春だけでなく佐天と絹旗も同様で、絹旗が【窒素装甲】を使用して二人を軽々と持ち上げる。 「二人とも、超ガマンして下さいね。今から超全力で柵川中学に向かいますから!」 「飾利、そんなに自分を責めちゃダメだよ。今のあんたが考えることは三人を止めて、春上さんを説得することだけ! 分かった?」 「はいっ! 待っててくださいね、当麻お兄ちゃん、美琴お姉さん、火織お姉ちゃん!」 義妹トリオは改めて柵川中学への道を急ぐが彼女達は気付いていなかった、春上からの電話の間に海原(エツァリ)に追い抜かれていたことを。 (御坂さん!!今僕が行きますから!!) 海原は走った。愛しの美琴に会うために。 そんな情報をどこで手に入れたか?そのようなヤボなことは聞かないで欲しい。 ___________________________________ その頃の上琴達はと言うと、堕天使エロメイドとのバトルロイヤルをやっていた。 「美琴!!危ない!!」 「えっ?きゃあ!?」 死角から飛んできた七閃に美琴は気づかず、もろに喰らってしまいそうだったが、今は敵の上条が抱き締めて、七閃を避けられた。 「美琴……」 「な、なによ?」 「別に神裂に着てほしかったんじないんだよ。何かプラスになることがあればあった方がいいと思って賛成しちまったをだ。 美琴の事を考えないで賛成してごめんな」 「ううん、私こそ変な焼きもち妬いちゃってごめんね」 「謝るのは俺の方だ。どうやったら許してくれるんだ?」 「じゃあ……キスして」 「何回だってしてやるよ」 そして二人はいつも通りのキス……ではなく、神裂の七閃を避けながらのキスをした。 (ちなみに、神裂の七閃はカスリもしなかった) ―――――――――― ボロボロの教室からグラウンドでの戦いを眺めていた土白だが、仲直りしていちゃついてる上琴を見てダシに使われた神裂に同情した。 「まっさかカミやんと美琴ちゃんが戦闘中に仲直りするとはにゃー。まるでねーちんがピエロだぜい」 「ホントにそうだよ……。上条くんなんて神裂さんの味方だってこと、すっかり忘れてるし。……元春、あれって」 「ん? げっ! な、何てあんのバカがこんな所に!」 月夜が指差す方向、グラウンドに到着した海原を発見した土御門はもの凄く嫌そうな反応の後でもの凄く嫌な予感を立てた。 (海原、頼むから余計なことはするなよ……。ねーちんが下手したら本気の本気で怒りかねねぇんだからな、今はギリギリ堪えてるが……) ―――――――――― グラウンドでは美琴を抱きかかえながら七閃を避ける当麻に神裂は言いようの無い怒りを感じていた。 まるで自分が蚊帳の外、二人の目には映っていない、そんな疎外感の中、心ここにあらずの状態で七閃を放っているのだから簡単に避けられて当たり前だ。 (私は何をしているのでしょう? 飾利の寄宿舎入りを春上に認めてもらう為にここに来た筈。それがどうして堕天使エロメイドを着て戦っているのでしょうか?) 「美琴、大丈夫か? もし怖いならもっとギューッとしてもいいんだぞ?」 「当麻が居るから怖くないけどギューってしたいからギューってしちゃう♪」 (上条当麻、あなたは私の味方ですよね? それがどうして御坂といちゃついているのですか? 人がこんなにも苦労してるのにこのバカップルは……!) 自分がここまで苦労してるのに(少し自業自得だが)目の前の上琴が楽しそうにいちゃついてるのを見た神裂、本当に我慢の限界である。 そこへその我慢の限界を突き破ってくれることになる海原が名乗りを上げる。 「おまたせしました御坂さん! 自分が助けに来たからにはもう大丈夫! 後は任せてギャンッ!」 「何をあんたなんかに任せるのよ? お呼びじゃないからさっさと帰ってくれる?」 「ぐ、ぐうっ……。相変わらず素晴らしい電撃です。ですがっ! 今の自分はこれくらいはあなたへの愛があれば耐えられ…………っ!」 美琴の電撃を喰らって立ち上がる海原を見て『御坂美琴ファンクラブ』初代会長の黒子は、現会長の海原の勇姿に少しだけ感動した。 そんな海原だが美琴への言葉を中断させて絶句したのは神裂の堕天使エロメイドが理由だが、この後で最悪なことをやらかしてくれる。 「ま、まさか極東の聖人はそのような変態が好むような服を着るとは! 天草式十字凄教の女教皇ともあろう人が白昼堂々と破廉恥な服に身をガッ……!」 海原の暴言にブチ切れた神裂は誰もが目を見張るほどのスピードで間合いを詰めると、海原を七閃で切り刻む。 しかし海原も実力の高い魔術師、全身傷だらけながらも持ち堪えてポケットに忍ばせていたトラウィ(以下略)と原典に手をかけようとしたが、 「背後を取ってもこの至近距離で自分と戦おうなどと」 「邪魔です! 消えなさいっ!」 「そっ、そんグギャァーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」 相手のことなど知ったこっちゃ無いとばかりに七天七刀を抜刀、しかも唯閃(器用に峰打ち)の一撃で何も出来ないまま校舎にノーバウンドで激突でリタイア。 とはいえ原典対策として万全では無いが目を閉じ、何もさせないまま倒すという手際はさすがという所だろう。 派手な音を立てて校舎に激突し、無残に沈んだ海原を見てさすがの上琴もいちゃつく所ではなく神裂に対して本当に久しぶりに、しかも格段上の恐怖を抱く。 「次はあなた方の番ですよ馬鹿カップル。私は殺生はいたしません。ですが峰打ちではなく本気で斬らせてもらいます、当然唯閃で」 土御門は思った、このねーちんはもうダメだ、初春ちゃんが来るか相当のショックでも与えん限りはこのままだと。 本気の神裂の怒りにタジタジな上琴、何とか神裂を説得しようとするがバカップル気分が抜け切っていないせいで更に怒らせてしまう羽目に。 そして土御門は妙案を思いつき一か八かの賭けに出た。 「神裂ねーちーん!ちょっと聞くぜよ!」 上琴への攻撃をしようとした矢先に邪魔されたために、土御門たちの方へ向きなおし 「土御門?邪魔すればどうなるか、判っていて邪魔をするとはいい度胸ですね!」 神裂の怒りがこちらに向いたことを感じた白雪は土御門に対し 「ちょ、ちょっと元春!なんで怒りを買うような真似を・・・・・・」 「月夜、ねーちんを落ち着かせることができるかもしれないから、少し静かに頼むにゃ」 「わ、わかった」 元春を信じ静かにしていようと思う白雪であった。 「(く、あちらもいちゃつきだしましたか!)どうやら覚悟はいいようですね土御門元春!」 「にゃー覚悟はしてないにゃー!だけどねーちんにひとつだけ忠告しとこうと思ってにゃー!」 「忠告?今の私に忠告とは・・・・・・それは私に対する侮辱と捉えますがよろしいですか!?」 「どー捉えてもかまわんにゃー!(いや実際問題侮辱と捉われるのは後が怖いんだがにゃ!)」 「良いでしょう・・・その忠告とやらを聴きましょう。ですが私が侮辱と捉えた場合は・・・有無を言わず七閃と唯閃を貴方にくらわせます」 (それは流石にキツイにゃーーーー!) 「どうしました、臆しましたか?」 「じゃあ、忠告するぜ!ねーちんがこれ以上暴れたら学校が崩壊して初春ちゃんの寄宿舎入りどころじゃなくなり、良くてイギリスへ強制送還、最悪の場合初春ちゃんに絶縁されるかもしれないが良いのかにゃー!」 土御門の忠告が神裂の心にグサリと抉るのだった。 そこへ義妹トリオがグラウンドに到着した。そして初春は土御門の声が聞こえていたと言わんばかりに 「火織お姉ちゃん!それ以上暴れるのであれば、義姉妹の関係をなかった事にして絶縁しますよ!」 慌てた神裂は七天七刀を納刀し、怒りも戦意も霧散させるとダッシュで初春の所へと駆け寄った。 その様子を見て戦闘は終了したと踏んだ土白は月夜の雪の翼でグラウンドに降り立ち、上琴も緊張を解いて長い溜め息を吐いた。 「あ、あの、か、飾利、これはその……」 「……火織お姉ちゃんが理由も無く暴れたりしないことは分かってます。でもちょっとやり過ぎですよ?」 「う、ううっ……。ご、ごめんなさい……。で、ですから、ぜ、絶縁は……」 「大丈夫、そんなことしませんから♪ 私はどんなことがあっても火織お姉ちゃんの味方です。ずーっと好きですわぷっ!」 最初から絶縁する気など無かった初春、神裂が充分反省してるのを受けて笑顔で許すと、神裂に思いっきりハグされた。 お礼やら何やらを言いながら初春に抱きつく神裂を見ていた春上、彼女の気持ちに変化が現れていた。 (そっか、神裂先生は初春さんが居ないとダメな先生だったの。神裂先生には初春さんが必要だってよーく分かった気がするの) ―――――――――― 「はい、こっちは無事に片付きました。後のことは私達で何とかしますから固法先輩、アンチスキルへの連絡は無しにして下さい。ええ、じゃあまた後で」 「超お疲れ様でした飾利。それにしてもお兄ちゃんとお姉ちゃんと神裂さんが超本気で戦ったらこうなるんですね。超凄まじいです……」 「いやー、ホントに凄いことになってるよねー。凄いのは神裂さんのそのコスプレもだけど」 「絹旗、佐天、あなた達も来て……ああっ! こ、この服はですね、その……。か、飾利、それと二人にき、聞きますけど、この服、変でしょうか?」 未だに初春から離れない神裂、ようやく佐天と絹旗の存在に気付くと今まで忘れていた堕天使エロメイドのことを思い出して急に恥ずかしがる。 今の自分の格好について義妹トリオに尋ねた神裂、その答えは実に3人らしいものだった。 「確かに超エッチぃですけど変っていうことは無いと思います。きっと神裂さんだから超似合うのかもしれませんね」 「あたしはこーゆう神裂さんも有りです。それにいつも以上に魅力的に見えますよ♪」 「とっても可愛いですよ火織お姉ちゃん♪ ちょっとセクシーかもって思っちゃいますけど火織お姉ちゃんならわぷっ!」 本当なら三人とも抱きしめたかった神裂だがそれは出来なかったので、初春をさらにハグすることで嬉しさを表現した。 そこへ意気揚々と土御門がやって来たが、義妹トリオの厳しい視線にたじろいでしまう。 「み、みんなどうして俺をそんなに睨むのかにゃー……?」 「土御門さんですよね? 火織お姉ちゃんにこの服を着せたのって」 「超予想に過ぎませんけどこのコスプレが切っ掛けでお姉ちゃんが怒ったと推測します。つまり超悪いのは土御門です!」 「神裂さんが飾利の引越しの件で春上さんを説得しようって時にこれを着せるなんて……。土御門さん最ッ低!」 最初に神裂が羽織っていたフード付きマントを抱えながら義妹トリオに責められて泣きつく土御門をあやす月夜だが、内心では自業自得と思っていた。 そこへ春上が青黒と一緒に初春たちの所へ歩み寄ると、初春に頭を下げて話し合いの結論をお願いする。 「初春さん、引越し先でも神裂先生のこと、よろしくお願いするの」 「えっ? それって春上さん、もしかして……」 「ちょっと寂しいけど神裂先生には初春さんが居ないとダメダメなの。だから引越しのことは認めるの」 「あ、ありがとうございます! でも引越したからといっても春上さんとはお友達ですし、時々は遊びに行ったりお泊りもしますから!」 普通なら神裂に初春のことを任せるものだが、神裂のダメな一面を見た春上が逆の結論に辿り着き初春の教会寄宿舎入り問題は無事に解決。 春上もいつの間にか神裂に対する警戒心がすっかり解け、和気藹々ムードで全てが終わろうとしていた。 「良かったな神裂。問題も無事に解決、飾利とも仲直り。一時はどうなるかと思ったけど円満解決して何よりだ」 何の気もなしに当麻は防御魔術が施された堕天使エロメイドの神裂に右手で触れる、そして【幻想殺し】が堕天使エロメイドに発揮されてしまう。 パキーン!!と、そしてハラリと、堕天使エロメイドの衣装は散った。 「え?あっ、きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 流石の聖人様もいきなりの裸に恥ずかしく(当たり前だ)、あらゆる大切な部分を隠し土御門の抱えていたマントを着た。 神裂もマントを着て落ち着いたらしく、上条をにらめ付け『七天七刀』を手にとる。 「……上条当麻、切り刻みます」 「ええ!?ちょっと待って神裂さん!!これは不可抗力でしょう!?」 「……問答無用です!!」 「ぬおぉ!?不幸だー!!」
https://w.atwiki.jp/index-index/pages/951.html
【種別】 区分 【初出】 二巻 とある魔術の禁書目録ノ全テでは三巻 【解説】 クローン食肉や野菜の人工栽培をしている農業ビルが存在する学区。 また、学園都市内で使用される工業製品の製造に特化しており、施設の大半が自動化されている。 オートメーション化の影響で、人口は他の学区に比べて極端に少ない。 道路にも余計な電飾はなく、夜になれば自動工場の照明しか灯らないため、他の学区よりも比較的暗い。 登場した中では、三沢塾が存在。 当麻と一方通行が三巻で戦った場所もこの学区である。 アニメとある科学の超電磁砲によれば、木山春生が勾留された特別拘置所、木原幻生の私設研究所がある。 【備考】 とある魔術の禁書目録ノ全テでは三沢塾の所在は第七学区。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2779.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の執行部員 第1章(1) 「はい、当麻。 こっちの書類に目を通してサインしておいてね」 「あいよ」 上条は美琴から書類を受け取ると、その中身に目を通し始める。 美琴は自分の仕事が一段落ついたのか『グループ』と同じ部屋に拠を構える 『風紀委員』第一七七支部の面々と談笑に耽り始めた。 (今日は『外れ日』だな) 上条は心の中で溜息を吐きながら書類に目を通し終えるとサインをして、 『警備員』の本部へ書類を転送する。 上条が所属する『執行部』は全部で三つのチームしか存在しない。 そして緊急時以外は一つのチームが休暇を取っている間に、 他の二つのチームがパトロールとデスクワークをそれぞれ受け持つ。 それに伴いデスクワークを担当する日は、その日によって仕事量にバラつきが出るのだ。 そして特別に仕事が多い日のことを上条は『外れ日』と呼んでいた。 「ふぁー」 上条も一段落つくと大きく背伸びをして体を解す。 上条は自分はデスクワーク派の人間でないことを自覚していたので、 どうしてもデスクワークを担当する日は気が滅入ってしまうのだった。 そしてこのオフィスには何故か女子の『風紀委員』が多いため、 肩身が狭い思いをせざる得ないのだった。 上条は何やら楽しそうにしている女子達を余所目に携帯を開く。 そこには美琴と付き合い始めたばかりの頃に撮った2ショットに 日付と時間が映し出されている。 8月31日、今日で夏休みも終わりだ。 (今年は非番の日に限って魔術師が侵入してきやがって、 あまり美琴との時間が取れなかったな) そう思いながら上条はふとあることを思い付く。 そして上条は茶菓子を囲んで談笑している女子達のところに向かった。 「なあ、美琴。 明日って常盤台も午前中授業か?」 「そうだけど、急にどうしたのよ?」 「だったらさ、明日はちょうど非番だしデートしないか?」 「え?」// 思いがけない上条の提案に美琴は頬を染めている。 それとは対照的に白井はテーブルで顔ドラムを行っていた。 「いや、夏休み中は帰省した時を除いてゆっくり出来なかったし、 偶には二人きりで何処か遊びに行こうぜ」 「と、当麻がそう言うなら別に構わないけど」// 「御坂さんったら、もっと素直に喜べばいいのに」 「だって…」 初春に苦笑いを浮かべながら言われると、 美琴はしどろもどろに何か言い訳みたいなものを始める。 付き合い始めて一年も経つのに全然変わらない美琴のことを微笑ましく思いながらも 上条は明日のデートについて話を続ける。 「詳しいプランはまた後で伝えるから、ちゃんと予定を空けといてくれよな」 「う、うん」// やがて仕事を終えた上条たちは、それぞれ住まう寮に向かって解散する。 そして嬉しさのあまり悶絶する美琴を見て、 白井はまるで苦行を行っているような気分に陥らされるのだった。 上条は美琴に手伝ってもらい何とか終わらせた宿題と念のために『執行部』の腕章を カバンの中に詰め込むと朝食の準備を始める。 夏休みは基本的に美琴が食事を作りに来てくれていたため、久しぶりの自炊だった。 朝食など誰が作っても似たようなものが出来るはずだが、 美琴が作ってくれたものの方がずっと美味しく感じるのは気のせいだろうか? すっかり餌付けされてることに上条は苦笑いを浮かべながら、 自分の作った朝食を無造作に口に詰め込んでいく。 そろそろ出ないと遅刻する時間だった。 上条は急いで朝食の片付けをすると、学校に向かって走り出すのだった。 「おっす、一方通行」 「なンだァ、上条か。 今日は遅刻しなかったンだな」 「流石に新学期初日からは上条さんも遅刻はしませんことよ」 「殊勝な心がけじゃねェか。 それがいつまで続くかは見物だがなァ」 一方通行は高校の進学先を上条と同じ高校に決めていた。 裏では数多くある進学校が一方通行を獲得するためにかなりの金額を使ったらしいが、 一方通行は普通の生活というものに憧れて上条と同じ高校を選択したのだった。 決して口には出さないが初めての友人といえる上条と 同じ学校生活を送りたかったということも無かったわけではない。 「あれ、番外個体は?」 「なンで俺が一々アイツの行動を把握してなきゃなンねェンだよ?」 「だって一緒に暮らして…」 「愉快なオブジェになりてェよォだな、上ィィィ条くゥゥゥゥゥゥゥゥン!!」 「ひぃっ!?」 一方通行と番外個体、そして打ち止めは学校の寮には入らずに、 マンションで共同生活を送っている。 クラスメイトの女子と同居してることが知られれば、 色々と面倒臭いことになるのは必然だ。 意外なことに一方通行もクラスでの立ち位置などを気にするらしい。 「不用意に発言すると本当ォにオブジェにしてやるからな」 「…はい」 すると悪友の土御門や青髪ピアスも上条たちのところに集まってくる。 そして喧しくも楽しい二学期が幕を開けるのだった。 夏休みに救い出した姫神の転入イベントがあったり、 これからより騒がしい学校生活になる予感に囚われながら上条が学校を出ようとすると、 土御門に呼び止められた。 「カミやーん、ちょっといいかにゃー?」 「どうした?」 「今日はカミやんは非番だよな」 土御門は『グループ』の『本来』の仕事のエージェントのような役割を担っている。 そして土御門から『執行部』についての話があったということは、 魔術師絡みの事件か何かがあったことを表している。 「そんなに警戒しなくてもいいにゃー。 念のために小耳に挟んでおいて欲しい話があるだけぜよ。 今日イギリス清教から『客』が来てるんだが、ソイツが一癖ある奴でな。 万が一という可能性があることだけは覚えておいて欲しいにゃー」 「もしもの時は出ればいいんだな。 今日は久しぶりに美琴とのデートだから、そうならないことを祈ってるよ」 「まあ『スクール』も『アイテム』もいるから心配いらないと思うけどにゃー」 「でもそういう時に限って不幸な予感がするんだよな」 「せっかくのデートなんだし、あんまり気を散らせてると美琴ちんも可愛そうぜよ。 カミやんに仕事が回ってこないよう俺も動くから楽しんでくるんだにゃー」 「サンキューな。 それじゃあまた明日、学校で…」 「また明日にゃー」 そうして上条は土御門と別れ、美琴との約束場所に向かうのだった。 「悪い、待たせちまったか?」 「ううん、私も今来たばかりだから。 それよりも今日は任せろって言ってたけど、 ちゃんとエスコートしてくれるんでしょうね?」 「任せとけって、今日は美琴を楽しませるために飛びっきりのプランを用意してるから」 「うん、楽しみにしてる」// 上条が手を差し出すと美琴は少し恥ずかしがりながらも上条の手を握り返す。 そして上条と美琴は手を繋いで歩き始めるのだった。 「えっ、ここって!?」 上条と美琴がやって来たのは第六学区にある屋内アミューズメント施設だ。 そして入口の看板には『ラヴリーミトンズワールド』と大きく書かれている。 『ラヴリーミトンズワールド』とは、その名の通りラヴリーミトンのキャラクターと 触れ合うことを目的としたコミュニケーションパークだ。 アトラクションの数自体は少なく、 その代わりにショーなどのエンターテイメントが数多くある。 「でも前はこんな子供じみた所は来たくないって言ってたじゃない?」 「そりゃ今だって、こんな子供だらけの場所には正直来たくないですよ。 でもせっかくのデートなんだし、美琴が一番楽しめる場所を選んだわけです」 「馬鹿のくせに気を遣っちゃって…」 「うっ、せっかく美琴のことを思ってしたのにこの言われよう…」 しかし美琴は上条に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言った。 「ありがとう」ボソッ 「それじゃあ行くか!!」 「うん!!」 そして上条と美琴は手を繋いだまま施設の中へと入っていくのだった。 「いやー、ショーも思ったより本格的で中々楽しめたな」 「でしょ、私がずっと来たかったわけが分かった?」 「お前はショーがどうこうというより、ゲコ太と触れ合えればそれで良かっただけだろ? 子供に混じって写真撮影の列に並ぶのは正直しんどかったぞ」 「い、いいじゃない、遊びに来た記念にもなったんだし」 「彼氏じゃなくてゲコ太に抱きついての記念写真っていうのが複雑だけどな」 「何よ、妬いてるの?」 「別にー、ただ中身が男だったらって思っただけで…」 「え?」 「お前は気付いてないかもしれないけど、 あのゲコ太、嫌らしくお前の腰に手を回してたんだぞ」 「そういえば、何だか妙に触られたような…」 「さっ、もう行こうぜ。 時間も時間だし、何処かで適当に飯を食って解散しよう」 「…うん」 先ほどまでと違い名前を呼んでくれず、手も差し出してくれない上条に戸惑いながらも、 美琴は足早に歩いていく上条の後に続くのだった。 「何処も混んでて飯を食う場所がないな」 「だったら、今から当麻の部屋に行って夕食を作ってあげようか?」 「いや、それだと常盤台の門限に間に合わなくなっちまう。 少しアレだけど、ファーストフード店か何かで適当に済ましちまおう」 上条に少しでも機嫌を直してもらおうと食事を作る提案をした美琴だったが、 あっさりと上条に却下されてしまう。 すぐ隣に上条がいるものの、妙に二人の距離が開いているように美琴は感じるのだった。 するとその時、凄まじい地響きが二人のいる第六学区を襲った。 思わずよろけて転びそうになる美琴を支えた上条のタイミングを見計らったように 上条の携帯電話が鳴った。 『カミやんか、少しばかり拙いことになった』 「何となく状況は分かってるよ」 『二箇所同時に魔術師が侵入して 『スクール』と『アイテム』はそっちの対応に回ってるんだが、 イギリス清教の『客』まで警備員の隙を突いて暴れだしやがった』 「『客』が暴れてるのは第六学区か?」 『その通りぜよ』 「ちょうど美琴と一緒に第六学区にいる。 今から『接待』に向かうから、念のため『猟犬部隊』にも連絡を取ってくれ。 この規模の騒ぎだと第一級警戒になりそうだ」 突然の揺れに逃げ惑う人々と避難誘導を始めた警備員と風紀委員を横目で見ながら、 上条と美琴はカバンの中から『剣』をモチーフとした腕章を取り出すと、 それぞれ腕に取り付ける。 「それじゃあ、さっさと片付けて夕食にするか!! 美琴と話しておきたいこともあるしな…」 「えっ、それって?」 「話は後だ、今はこの騒ぎを鎮圧するのに集中するぞ」 「う、うん!!」 そして上条と美琴は逃げ惑う人々とは逆方向に向かって走り出すのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の執行部員
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/636.html
「あー!!追え、追えー!!捕まえろ!!いや、殺せ!!」 やっと本来の目的を思い出した常盤台上琴反対派の生徒達は直ぐ様追い掛ける。 「だー!!何で思い出すんだコンチクショー!!殺るならさっさとかかって来いやゴルァー!!」 常盤台上琴反対派の生徒達は攻撃するが直ぐ様かき消される。 (んじゃこれを使うか) 心理掌握は常盤台上琴反対派の生徒達に暗示をかけた。 『何がなんでも殺せ』と、 上条は常盤台上琴反対派の生徒達の動きが変わったのに気づいた。 何だか獣を狩る漁師の様な目だった。 (まさか、そこまでして俺をどーこーしたいのかよ!!) しかも、さっきと威力もはね上がってきている。 そのたびに肩やら足やらから苦い音がした。 「お前!!何で後輩をここまで使ってるんだ!?このままじゃ体がヤバイぞ!?」 「何でって言われてもねえ?レベル5がただの虫けらと付き合ってるなんて……レベル5の看板を汚してるだけでしょ?私まで軽い女だと思われるのが嫌なのよね~。」 彼女がそこまでするのは、ただそれだけだった。 「……っざけんな」 「はぁ?」 「ふざけんなって言ったんだよこのクソガキ! レベル5がそんなに偉いのか! この子たちを弄ぶ権利がてめえにあんのか! この子達はてめえの玩具じゃねえんだぞ!」 心理掌握は当麻の『幻想殺し』の影響で彼の心は読めなかったが向けてる感情は理解出来た、あるのは純然たる他人の為の怒り。 しかし心理掌握は能力のせいか、当麻の感情が理解出来ない人種になっていたのでその怒りを鼻で笑う。 「フフッ。何て青臭くて頭の悪い方なのでしょう。この子達を弄ぶ権利? この子達を玩具にするな? 分かっていませんのね。レベル5とはそれらを許容される存在。ゆえにその子達も本望なのですよ」 「俺の知ってるレベル5はてめえと違っていい奴ばっかりだったな。アクセラ、削板、そして美琴。てめえのような奴があいつらと一緒ってのは許せねぇな。俺がそのてめえの捻じ曲がった幻想、ぶっ殺して叩き直してやるぜ!」 「……出来もしないことを吠えるのはみじめでみっともなくて、そして愚劣です。あなた達、この男を血祭りに……なっ!」 怒れる当麻を引き戻し、心理掌握を驚かせた光景、それは心理掌握に操られた上琴反対派生徒達が一人残らず気絶している異様な光景だった。 「君が手を下す必要は無いよ、上条当麻。ここからはネセサリウスの領分だ。君の右手はこんな幼稚な子供に対して向けるべきじゃあない」 「ステイルの言う通りです。ああ、更に催眠でこの子達を動かそうとしても無駄です。意識を完全に刈り取りましたし、動けたとしても体を麻痺させてますから」 「この子達に手荒な真似をするつもりは無かったのだがな。事が事だ、緊急措置を取らせてもらった」 「ま、魔術師!」 心理掌握が『魔術師』というフレーズを口にしたことに驚いた当麻達だったが、駆けつけたステイル、神裂、闇咲は平然としていた。 ちなみに半蔵と郭は3人に頼まれて、中に居る人間の足止めを任されてしまう。 ステイル達がやって来た理由、それは実に魔術師らしいものだった。 「やっぱり貴女は私達の心を読んでいたのですね。でなければ私達から逃亡した際の怯えようは説明が付きません」 「さて、君は魔術の存在を知ってしまったわけだけど、もちろん無事に帰れるとは思ってないよね?」 「思ってますが? 私の能力ならあなた達をまとめて洗脳なんて……っ!!」 魔術の存在をこのような相手に知られるのは自分達も相手もまずい、つまりお互いの為に魔術の秘匿を行うのだ。 しかし心理掌握もレベル5の第五位、すんなりとステイル達の言葉を受け入れるわけが無い、いつも通りならばの話だが。 それをさせたのは『透魔の弦』で姿を消し、心理掌握の延髄に梓弓を押し当てた闇咲だった。 「君が彼らを洗脳すれば私は『衝打の弦』で首をへし折らせてもらう。もっとも、君よりも私の『衝打の弦』や神裂の『七閃』の方が速いだろうがな」 「私は人を殺すような真似はしません。ですが、貴女がこれ以上、人の尊厳を弄ぶのなら死なない程度に斬り刻ませてもらいます」 「僕は優しいから殺すとか壊すとか、そんなことはしないから安心していい。ただ、この炎剣で君の顔を人前で見せられないように焼かせてもらうだけだから。痛みは後で取り除いてあげるから心配はいらないよ」 魔術師三人のえげつない脅しに彼らを知ってる当麻、心を読んで彼らをそれなりに理解してしまった心理掌握、二人揃ってゾッとした。 しかし心理掌握は彼らの心を覗いた際に見つけたあるものの存在を思い出し、脅しにかかる、それがいかに愚かなこととは知らずに。 「……あなた達、自分よりも大切な人がいるのでしょう? その方達を壊すなんて造作も無いんですのよ? それでもまだ私を脅すつもりですか?」 「そうか、君は知ってしまったんだね。でも僕らの大切な人に手を出したらどうなるのかまでは読んでいなかったようだ。さあ、読んでごらん、僕たちの今の心理状態ってやつを」 ステイルに促されるまま、心理掌握は彼らの現在の心を読んだことを死ぬほど、いや死んだ方がマシと思えるほどに後悔した。 脳裏に入ってきたのは口に出すのもおぞましいほどの仕打ちばかりで心理掌握はガタガタ震え出し、涙を浮かべていた(特にステイルで)。 心理掌握は恐怖に震えながら、魔術の存在だけは決して口にはすまいと決意し、大慌てでその場から逃げて行った。 「……えっと、見せ場とか一切合財持っていかれ、しかも胸の中で燻ってる怒りを上条さんはどうやって発散させればいいのでせうか?」 「見せ場なら残してあるじゃないか。さあ、君の右手で彼女達にかけられた洗脳を一人残らずぶち殺すんだ」 「てめぇステイル! 人の決め台詞を勝手に使ってんじゃねぇ! あ、でも麻痺はどうすんだ? 俺の右手じゃあ麻痺とかは解除できないぞ」 「心配無用です。その麻痺も魔術によるものですからあなたの右手で解除されます。良かったですね上条当麻。さらに遣り甲斐が出て」 付き合いの長い二人にこき使われることにムッとしつつも、当麻は『幻想殺し』で洗脳と麻痺の解除に精を出す。 そして全員の洗脳と麻痺の解除を終えた当麻は心理掌握に対する三人のやり過ぎとも言える脅しに文句を言う。 「……それにしてもお前らさ、ちょっとやり過ぎだろ。いくらあいつが気に喰わないからってあんなになるまで追い詰めるってのは……」 「まあ、確かに少し過剰だったかもしれないね。でも僕らはこれでも被害を最小限に食い止めたつもりだよ」 「あれでかよ! ていうかそれ以上のことを…………やる奴らがここには一杯居たな」 ステイルの発言にツッコミを入れた当麻だが、彼ら以上に危険な存在がここにいたことを思い出す。 「土御門、アクセラ、建宮、シェリー……。あいつらだったらさっきのが可愛いくらいのことやりそうだもんな、笑いながら」 「そうゆうことです。私達は彼女の身の安全を考えてあのような行動に出たのです。それだけは察して下さい」 当麻が危険人物としてあげた仲間達の中に美琴と初春の名前が無かったのには理由があった。 彼が名前を挙げた4人は洒落にならないレベルの危険性を持っていて、心理掌握が壊れかねないことを平気でやりそうな面子なのだ。 本当なら初春の名前もコッソリ付け加えようかと思ったが、神裂に冗談抜きで唯閃される予感がしたのであえて省いた(美琴は自分の可愛い恋人という理由で削除)。 「では私は気絶しているこの子達を第二学区の外へと運んでくるとしよう。ステイル、悪いが手伝ってくれるか?」 「分かった。じゃあ僕らはこっちを片付けてから戻るとするよ。上条当麻、早く戻ってみんなを安心させるといい」 こうして当麻は神裂と一緒にジャッジメント訓練所へと戻って行った。 一方、逃げ出した心理掌握は心の中で悪態を付きながら寮への道を歩いていた。 (許さない! 絶対に許さない! あの生意気で無価値なレベル0! 今度こそ私の前に跪かせてやる!) (あの魔術師どもが居ない所で今度こそ! 今度こそ私の偉大さを思い知らせてあげるわ!!) 子供じみたプライドを持った学園都市第五位、彼女の辞書には『懲りる』とか『改心』の文字は入っていないようだ。 その頃、第一七七支部では最近の固法の悩みの種こと絹旗が、ジャッジメントの腕章を付けてリラックスしていた。 どうやら今回も押しかけジャッジメントをやるらしく、本人もノリノリな所へ騒動から一先ず先に抜け出していた黒子がやって来た。 「あれ白井さん、パトロールは超終わりましたの?」 「それどころじゃありませんでしたの。さっきまで、私の学校の生徒達に捕まるし、第二学区に連れて行かれたりして大変でしたの。」 「超何をしたのですか!?」 絹旗は黒子が何かしたのかと思った。 「いえ私が目的ではなく、上条さんとお姉様に目的があって、その人質にされていましたの。」 「でもなんで白井さんが超捕まらなきゃいけないんですか?ひょっとしたら超助けに来ないかもしれませんのに。」 「それは、あの二人の性格からにしてないでしょう。あの二人は誰かが助けを求めていたら助けにいくでしょうし、自分のせいで捕まっているのならなおさらです。」 「で、超当麻お兄ちゃんと超美琴お姉ちゃんに助けてもらったのですか?」 「いえ、助けてもらったのは他の人なんですけど、なんでAIMジャマーが効かなかったのでしょうか?」 「え!!能力者なのにAIMジャマーが超効かなかったのですか!?」 「そうなんですの。一体どうやったらAIMジャマーが効かないで済むんでしょうか?」 「「う~ん…」」 絹旗と黒子はどうしてAIMジャマーが効かなかったのか気になっていた。 そんなこと話していたら、固法が帰ってきた。 「あら、どうしたの二人とも。そんなに考えて。」 固法は、来てそうそう二人が考え事をしていてちょっとビックリしていた。 「固法先輩、ちょっと聞きたいことがありますんですけど。」 「どうしたの?」 「能力者でAIMジャマーが効かない能力者って居ますの?」 「そんな人聞いたこと無いけど。」 固法はAIMジャマーが効かない能力者なんている訳が無いと否定した。 「そうですよね。なら、あの人たちは能力者じゃないのでしょうか?」 「ねぇ、一体何があったのかまだ分からないんだけど。」 黒子は固法にパトロール中に何があったのか話した 「そう言うことだったの。ま、それは仕事が終わらせてから考えましょ。 という事で、三人はジャッチメントの仕事をするのだった。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2251.html
「Aブロックに。部外者で結成された。乱入チーム?」 「その可能性があるってだけですけどね。打ち止めちゃんが知り合いが覆面被っていたって言ってたのでもしかしたらと」 乱入チームの噂の出所は打ち止めだが、あくまでそれは御坂妹が覆面を被っていた可能性を導き出しただけにすぎない。 「それが本当なら。由々しき事態だけど。私のチームは強い。負けるはずが無い」 「その通りです姫神さま! 姫神さま率いる俺達が負けるはずないですよ! それより浜面、他に何か情報は無いのかよ?」 「そういえば打ち止めちゃんの知り合いが変な名前を呟いてたって言ってたな。ピュアシスターにシガレット、シルクにムギムギ、当の本人はクールビューティーだとよ」 明日まで別ブロックの詮索は禁じられているのであくまで推測することしか出来ないが、姫神たちは数名に当たりを付けていた。 (ピュアシスターは。おそらくあの子。どの面下げてそう名乗ったのか。分からないけど。シガレットはあの子に付いて来るのが。当たり前の彼しかいない) (ムギムギ……絶対にあいつだろうな。滝壺がいじめられてないか心配だぜ。シルクは……誰だ?) 「(シルクとムギムギが俺の考えてる奴だったら勝てるかどうか怪しいぞ、マジで)青ピ、お前はどう思う……あれ?」 乱入チームについて考えている間に青ピが居ないことに気付いた服部、その疑問を解決したのは姫神だった。 「青髪くんなら。恋人の白井さんの。お勤めの見送りに行った。私たちもそろそろ着替えよう。そして他の競技の見学」 「了解です姫神さま! 乱入チームの件はもういいんですか?」 「他ブロックの偵察や詮索。ならびにあからさまな情報交換は厳禁。だからもういい。それに相手が誰でも。私たちは優勝を勝ち取る」 姫神の力強さを感じる宣言に浜面と服部は心から頼もしいと思ったが、若干の不安は残っていたりする。 しかし結局は出たとこ勝負と割り切り、クールダウンを終えて着替えに行くのだった。 ―――――――――― その頃の第一七七支部、青ピに送り出されて意気揚々とジャッジメントの巡回に出ようとした黒子だが、 「……………………」 「ん? どうしたの黒子ちゃん。私が居ることがそんなに変? それとも嫌?」 「めっ、めめめめ滅相も無い! わたくしが浦上様にそのような感情を持つわけがありませんの!」 相棒の初春ではなく浦上が出迎えたことでテンションダウン、というより不幸とか考えていた。 とりあえず黒子は努めて平静を保って浦上に事情を尋ねたのだが、それが彼女にとって更なる不幸をもたらすことに。 「初春ちゃんに頼まれたの。今日からしばらく、と言ってもGW終わるまでだけど黒子ちゃんの相棒になってくれって。ちなみに今日は初春ちゃん、対馬と第九学区だよ」 「そんなご無体な! 約2週間、浦上様とご一緒にジャッジメントの任務だなんて胃に穴が開いてしまいますわ! せめて絹旗さんにチェひいっ!」 「黒子ちゃん、斬るか突くかしちゃうよ、それ以上言うと♪ 心配いらないよ、ちゃんと仕事はするから」 そうゆう問題じゃねーんですよの、黒子はそう言いたかったが浦上にドレスソードを突きつけられてるので言えなかった。 ならばと黒子が理由を聞いてきたのだが、理由が理由だけに浦上は差し障りの無いように黒子に話す。 「ロンドンに短期留学するからだよ。将来のために必要な勉強しに行くんだって(魔術絡みだなんて黒子ちゃんには言えないもんね)」 「……そうですか、初春も頑張ってるんですのね。分かりました! この黒子、浦上様とのジャッジメントのお仕事、嫌々でげふっ! ずびばぜんの……」 「一言多いよ黒子ちゃん。じゃあ張り切って巡回行ってみよー♪」 学園都市に配属されてから手が出るのが早くなった浦上にドレスソードの柄で殴られた黒子、浦上との2週間の相棒ライフに身を投じるのだった。 ちなみに固法も居たのだが、もう初春のことには慣れたのか全く動じずにムサシノ牛乳を飲みつつ、浦上と歩み寄ろうと考えていた。 ―――――――――― 一方の常盤台ではたった今、上条率いる野球組が本日最後の試合を勝利で飾っていた。 試合内容は一方通行の時速200kmという通常有り得ない投球で完封どころか完全試合を達成。 しかしそれを本当の意味で成し遂げたのはそんな常識外れなスピードのボールを受け止めたキャッチャー上条である。 「いやー、意外と何とかなるものだな」 「いやいやいや!意外と何とかなるってレベルじゃねーぞ、上条!」 時速200kmの剛速球を素手で受け止めていたのにけろっとしている上条。 その様子にさすがに紫木がつっこみを入れた。 「ん、どうしたんだよ情報屋?何かおかしいところでも……」 「大有りだぁぁああぁぁああ!そんだけできるならお前がキャッチャーをやれぇぇぇえええ!!!」 「そしたら情報屋が活躍できないだろ?それに一方通行がピッチャーじゃ試合の途中で充電切れで終わるのが目に見えてるだろ?」 「あ、そっか……………って二人でやったら完封できるみたいな言い方だな、それ!!」 「そんなわけ無いだろ、情報屋や土御門、それに翔太やみんながいるから勝てるんだよ」 今回の一方通行と上条の活躍で暴走しかけている情報屋。 そんな情報屋にチームプレイで勝っていることを伝え、情報屋を落ち着かせようとした。 「第一、これでお前が活躍すれば吹寄と付き合えるんだろ?ならいいじゃねーか」 「………そうだ、そうだよな!ははははは!」 活躍すれば吹寄と付き合える(実際には後日一緒に遊びに行ける)ことを思い出し、ようやく情報屋が落ち着いた。 この様子を見て上条は安心し、着替えるため、そして愛する美琴のところに行くために控え室へと向かっていった。 ―――――――――― 一方、野球組控え室 その場所の近くで美琴と打ち止めが待ち構えていた。 そう、自らが愛する相手が出てくるのを待っているのだ。 ―――――――――― 「あれ? 待っててくれたのか美琴。悪い、すぐに着替えるからうおっ!」 てっきり別の場所で待ってると思ってた美琴が控え室の前に居ることに驚いた上条、急いで着替えようと控え室へと入ろうとした。 しかしその前に控え室の扉が開き、自分の荷物が飛んできたので慌ててキャッチする上条が見たものは、 「御坂と打ち止めが待ってンのに着替えンのは時間の無駄だからよォ、そのまま帰れ」 やや不機嫌そうな顔をした一方通行で、すでに着替えは終わっている。 一方通行に言われて初めて打ち止めの存在に気付いた上条はお詫びの意味も込めて、目の前の少女の頭を軽く撫でてやった。 「それもそっか、家だってすぐ近くだしな。ところでアクセラ、他のみんなは?」 「とっくに着替え終わって解散したっての。土御門はサッカーグラウンド、翔太は結標が迎えに来て連れてかれた。着替え終わってねェのはてめェと情報屋だけだ」 野球組の状況報告を終えた一方通行に上条はこの後、自分達だけでどこか遊びにいかないかと誘ったが、 「悪ィが今日はこの後、芳川と合流することになってンだよ。それにてめェらのイチャイチャに割って入るほど野暮でもねェしよォ」 「そうゆうわけだからじゃーねーってミサカはミサカは笑顔で手を振ってさよならしてみたり」 先約があったのであえなく断念、仲良く手を繋いで去って行く一打を微笑ましく見送った。 そして上条もまた、美琴の手を取って帰ろうとしたが、 「み、美琴さん? わたくし上条当麻、ただ今着替えていないのでかなり汗臭いので腕を組むのは遠慮することをお勧めしたいのですが……」 「いーのっ♪ どうせ家に帰ったら一緒にお風呂に入るんだもん。それとも当麻、私が腕を組むのってそんなに迷惑?」 「め、滅相もございませんっ! 分かった、分かりました! 今日はこのまま帰りませう!(ぬおっ、美琴の胸の感触が上条さんの腕に! 持ってくれマイ理性!)」 美琴が自然な感じで腕を組んできたので今の自分の状態から止めるように促した上条だが、美琴の頼みが断れるわけも無くそのまま帰宅。 なお、腕組みを許可されて嬉しくなった美琴がさらにピッタリくっ付いてきたことで彼女の胸が上条にジャストフィット、上条は家に帰るまで理性と本能の狭間で苦しむ羽目に。 ―――――――――― 「そうですか、Bブロックの月詠先生のクラスのチームは全て準決勝まで勝ち残りましたか」 『ええ。正直、目立った能力者の居ないバスケくらいは負けると思ってたけど姫神さんを中心に見事なチームに仕上がってたわ。そっちは?』 「概ね順調です。ささいなトラブルはありましたが問題はありません。それよりも決勝戦ですがこのままだと」 『スペシャルマッチになりそうね。一応、結標さんにはサッカーも視野に入れておいてって言っておいたから。じゃあ私はこれで。一方通行と美咲華が待ってるから』 友愛高校職員室、木山が連絡を取っていたのは芳川でBブロックの上条のクラスの状況報告を聞いていた所だ。 報告を終えた芳川からの電話が切れた所で木山は楽しそうに微笑む、決勝戦に思いを馳せて。 「てっきり1チームくらいは決勝に残れないと踏んでいたのだがなかなかどうして楽しませてくれるな、上条のクラスというのは」 「ごきげんそうじゃん木山センセ。もしかして決勝戦は例のスペシャルマッチになるじゃんか?」 「ええ黄泉川先生。しかも都合良く上条たちのクラス以外で決勝に残るチームの主力メンバーの数もピッタリになりそうです」 実は学校側、万が一上条のクラスのチームが全種目で決勝に残った場合、相手決勝チームの混合軍で戦わせようと目論んでいた。 とはいえバスケの姫神チームが残るとは思っていなかったのでお遊び程度のアイディアだったのだが奇跡的に採用されそうな雰囲気である。 (インデックス、ステイル、【妹達】の1人、麦野、絹旗、エツァリ、ショチトル、五和、削板、心理掌握、結標。見事に11人だな) 「明日の決勝、面白いことになりそうじゃん♪」 黄泉川は木山の机に置いてあったものを見て確信を込めてそう言った、携帯ゲーム機の画面に映し出されていた超次元サッカーなゲームを。 ―――――――――― 「あー、やっぱり真夜くんと同じサッカーがよかったなー。真夜君の活躍も見ることができないしさー」 「まあ、明日見れるからいいじゃねーか」 「とりあえず真昼さんも赤音さんも暴れないで。落ちちゃうよ」 絶賛、22学区のスパリゾート安泰泉に向かっているプリアモリーカップル ちなみに、真昼と赤音は真夜の上にのっており、【瞬間超人】を使用して走っている状態である。 「まあー明日真夜くんと真昼ちゃんと月夜ちゃんの活躍が見れるからいっかー♪」 「それにこれからスパリゾート安泰泉にいくからな、もっと楽しみだぜ!」 「………」 「ん、どうした真夜?もしかして楽しみじゃないのか…?」 「えっ…いや、そんなわけないじゃないんだ!ただ…」 「ただ…なんなの、真夜くん?」 「いや、なんかいやな予感がするなー、って思っただけだよ」 「はぁ?そんなん杞憂に決まってるだろ!俺達のクラスが球技大会完全制覇するに決まってるだろ!」 真夜の上でそう豪語する真昼。 その発言を聞いて、赤音が少し変な顔になった。 「ん?どうしたんだよ、赤音。顔色おかしいぞ!」 「いや………だって……真昼ちゃんが杞憂なんて言葉知っているなんて!」 「ちょっ…!俺だってそんぐらい知ってるぞ!どんだけバカだと思ってるんだよ!」 真夜の上で騒ぎ続ける二人を見て自分の感じた予感が杞憂だと思う真夜。 しかし、明日まさか敵主力組とのサッカーが起こることになるとはこのときの彼らには予想ができなかった。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/655.html
ミサカ一三五一〇号はその存在に息を飲み、強大な力に身を震わせ肩を抱き寄せた。 二槍の雷が交わることはなかった。理性を失った獰猛な牙はどちらも獲物を捕らえることもなく——、 一人の少女によって打ち消された。 (これが美琴お姉様の……ミサカたちのお姉様(オリジナル)である超電磁砲(レールガン)の力なのですね、とミサカは目の前の光 景に唖然としながらも美琴お姉様の素晴らしさに感嘆の溜息をこぼします) ミサカたちが放った雷撃の槍を美琴は自分で生み出したかのように操作し、全てを放電しきってしまった。 両側からの雷撃を同時に操作するなど、たとえ超能力者(レベル5)であろうとも一瞬のミスが命取りになるような行為だった。そ もそも受け止めること自体が間違っている。 周囲に被害が及んでしまうが、普通は相殺とゆう選択肢を受諾してしまうだろう。 その妥協を拒絶し、平然として困難をやってのける。超電磁砲(レールガン)とはそういう存在なのだ。 「——アンタたち、もうやめなさいっ!!」 感情の高ぶりを示すように全身で激しい火花をまとうと、美琴はミサカたち二人に怒号を飛ばした。 今日が初対面のミサカ一三五一〇号にとっては、当然だが、美琴に怒鳴られることも初体験だ。眉根を寄せた表情で睨まれミサカ一 三五一〇号はすくみ上がってしまう。 「ちょっと来なさい」 もはやどうすればいいかわからないミサカ一三五一〇号は大人しくその言葉に従った。ミサカ一〇〇三二号も特になにも言わず美琴 に歩み寄る。 美琴たちを取り巻いていた人だかりはミサカたちが戦闘を始めると散り散りになって逃げていたが、それでも能力者同士の喧嘩など 珍しくないので今では再び喧騒が戻ってきている。 美琴は路上の片隅に逸れて苛立ちを隠さず告げる。 「ったく——地下街のど真ん中でなにやってんのよ? 姉妹喧嘩くらい別にいいんだけど……さっきのはやりすぎだからね?」 怒られるということ自体、ミサカ一三五一〇号には経験が足りないのだ。 (あぁ……ど、どうすればいいのでしょう、とミサカは不測の事態に対応できずに慌ててしまいます) 美琴と目が合った瞬間、肩をすくめ目を瞑ってしまった。 すぐ近くに人の体温を感じる。きっと美琴だろう。 一発くらい雷撃をくらうのでは、とミサカ一三五一〇号が身構えた瞬間だった。 「お、おお、お姉様が三人もぉおおおおおおおっ!?」 騒がしい地下街に一際大きな嬌声が響き渡る。 地下街で発電系能力者(エレクトロマスター)二人が喧嘩をしている。 その報告が届いたのは『学び舎の園』からちょうど目的地であった『風紀委員活動第一七七支部』に移動していた最中だった。 『もしもし? まだこっちに着いてないですよね。ちょっと寄り道してもらえますか?』 電話越しに同僚の初春飾利が用件を報告した。 たかが喧嘩ぐらいで風紀委員(ジャッジメント)が出る必要はないのだろう、仕事放棄というわけではないが正直そう思ったので素 直に言ったところ、 『まぁ、異能力者(レベル2)ほどの能力者みたいなんで、私もそう思うんですけど……でも行った方が良いと思いますよ?』 もったいぶった言い方に今すぐにでも背後から頭の花をむしり取ってやろうと思った。 が——、 『どうも「御坂」さんもそこにいるみたいで……』 前言撤回ですの。今度お礼に何かおごってあげますわ。 空間転移(テレポート)で学バスから途中下車し、白井黒子は驚異的な速度で地下街へ向かった。 ともすれば鼓膜を破りそうなほどの大声にミサカ一三五一〇号は閉じていた目を見開いて振り返った。 そこには自分よりも二〇センチほど小柄な、リボンで髪をツインテールにまとめた少女——白井黒子が、さも驚いたという表情でわ なないていた。その視線は美琴、ミサカ一三五一〇号、ミサカ一〇〇三二号の三人を行ったり来たりしている。 (この少女は誰なのでしょう、とミサカは初対面の少女を見て素直に疑問に思います) お姉様と言っていたし、もしかして美琴の知り合いかと思って見てみると——、 「あぁ……これが不幸だぁーってやつなのかしら」 さっきまでの威厳などどこへやら、がっくりとうなだれた超能力者(レベル5)がそこにはいた。 ミサカ一〇〇三二号も初めて見た人物のようで不思議そうに美琴を眺めている。 『これは美琴お姉様の知り合いと見ていいのでしょうか、とミサカ一三五一〇号は美琴お姉様の態度からはそうは思えないので率直な 意見を求めます』 『知り合いだとは思いますがお姉様(オリジナル)はひどく憔悴していますね、とミサカ一〇〇三二号はあなたの意見に若干の同意と、 かなりの疑問を含めて回答します』 ネットワーク上で会話をしていると突如として美琴とミサカたちの真ん中に白井が現れた。 音もなく、衣服をたなびかせることもなく……それは写真を切り抜き、貼り付けたかのような挙動だった。 「お、お姉様っ! こ、こここ、これはいったいどうゆうことなんですの!? 大覇星祭のときにお姉様のお母様にはお会いなりまし たけれど、あ、あああのときにはご姉妹がいたなんて言わなかったじゃないですのっ!!」 白井の瞳はひどくキラキラしていたのだが、ミサカ一三五一〇号は逆にその輝きで背中に嫌な汗をかいてしまった。 なんというか——この少女は危険な気配がする。理屈ではなく感覚で理解した。 それをミサカ一〇〇三二号に告げると、 『ミサカもこの少女からは生理的な嫌悪感がします、とミサカ一〇〇三二号は初対面で申し訳ないですが本音を言わせてもらいます。 つけ加えると……先ほどのミサカ一三五一〇号からも同様の怖気を感じました、とミサカ一〇〇三二号はあなたを射撃した理由につい て言及させてもらいます』 苦笑いを続けている美琴を見ると、どうやら悲しいことに同じ感覚なのだろうと容易に想像できる。 「ですけど——」と不意に白井が真剣な声音で美琴を見据えた。 その表情に美琴が過剰に反応したようにミサカ一三五一〇号には見えた。 「あまりにも似過ぎではありませんか? ——っ! もしやお姉様は三つ子なんですのってゆーかこうなりゃお姉様だろうがそっくり さんだろうがみんなまとめて頂きますわ!!」 直後、美琴の鉄拳が白井の額に吸い込まれていった。 白井は傍観を決め込んでいた上条に引っ張られてどこかへ行ってしまった。 去り際に、 「ちょ、殿方!? 貴方につかまれると空間転移(テレポート)ができませんの! ですから放して——ってお姉様ぁっ! そっくり さんに浮気しそうになった黒子を許してください! やはり黒子はお姉様一筋ですの、一生ついて行きますわ——ってだから貴方は早 く放してください!! お姉様ぁあああっ!!」 「——って俺ってば雑用ですか? 今回はしかたねぇけどさぁ……ちくしょう不幸だぁあああっ!!」 そう叫んでいたが気にしたら負けだ。 また、ミサカ一〇〇三二号も「あの人が心配なのでミサカはここで失礼します、とミサカ一〇〇三二号はお姉様(オリジナル)も心 配ですが、所詮あの人と比べるほどじゃないな、と自己完結し二人の追跡を開始します」と言って追っかけて行ってしまった。 台風のように現れた白井がいなくなると美琴は大げさなくらい盛大に溜息をついた。 「ごめんね、アンタたちをあの子に知られるわけにはいかないんだわ。踏み込んで欲しくないってのもあるけど……あの性格だから。 姉妹(シスターズ)が九〇〇〇人近くいるなんて知られたら、なにが起きるかわからないし」 うんざりした様子で口を開いた。 その言葉にミサカ一三五一〇号は胸を締めつけられる。 (あぁ、美琴お姉様はベタベタされるのが嫌いなのですね、とミサカはさきほどの少女にミサカと同様の雰囲気を感じてしまったこと に愕然とします。これを機にミサカもお姉様(オリジナル)と呼び方を戻した方がいいのですね、とミサカは落ち込みながらも渋々で すがそう決めることにします) 行き着いた結論にミサカ一三五一〇号が呆然としていると美琴はそれに気づき、 「……アンタも、あんなふうになっちゃダメなんだからね? わかった?」 諭すように告げる美琴だが今のミサカ一三五一〇号には死刑宣告もいいとこだ。 (ミサカはこれからなにを糧に生きればいいのでしょう、とミサカはいもしない神様にすがるような気分で聞いてみます) 「それにね——」 少しうつむきながら美琴は付け加える。 「アンタは本当の妹なんだから……その、お姉様とかじゃなくて……『お姉ちゃん』とかでいい、のよ?」 真っ赤になってそう言ったがそれでもかなり恥ずかしかったのか「あ、でも気が向いたらっていうか、別にそう言ってほしいわけじ ゃなくてね? アンタがそう呼びたいなら……その……ね?」と両手をバタバタさせながら言い訳がましいことを言った。 ……お姉ちゃん? 停止寸前だったミサカ一三五一〇号の思考回路に不自然な語彙(キーワード)が入ってきた。 (お姉様(オリジナル)は今なんと言ったのでしょう、とミサカは自分の聴覚器官に異常がないか念入りに確認してみます。……機能 正常(オールグリーン)、ということは本当に『お姉ちゃん』と言ったのでしょうか、とミサカはいまだに信じられない事態に思考が 追いつかなくて対処できません) 美琴は相変わらず呆けてしまっているミサカ一三五一〇号に小さく溜息をつくも、柔らかな笑顔を浮かべる。 「ほら、いつまでもここにいるわけにはいかないでしょ? 私も病院まで一緒に行くから、さっさと戻るわよ!」 言うが早いか、もはや競歩では、と疑いたくなる速度で美琴は歩き出してしまう。 「あ、待ってください……その……お、お姉ちゃん? とミサカは恐る恐る口に出してみます」 一度だけ美琴は立ち止まり——、 「行くわよ」 と呟いてまた歩きだしてしまった。ただ、その頬には鮮やかな紅葉が訪れていたが。 ミサカ一三五一〇号は美琴に駆け寄り、歩調を合わせて歩きだす。 「お・ね・え・さ・まぁーっ」 「だぁああああっ!? だから、それはやめなさいって——」 思いっきり嫌な顔をされてしまったが、それでも歩幅は小さく、さっきよりゆっくりと歩いてくれた。 自分たちは造られた関係だが、それでも本当の姉妹として肩を並べて歩くことができる。そう思うと、ミサカ一三五一〇号の足取り は自然と軽くなっていった。むろん隣に美琴の存在を感じるからなのだが。 だからこそ——さりげなく手を握ろうとするのは止められない。 (この際ですから性別も血縁関係も無視の方向でいきます、とミサカは憎き恋敵を出し抜くために決意を新たにします) ミサカ一三五一〇号の、恋する乙女としての戦いはやっとこさ始まったばかりだ。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/585.html
「結果、俺達はお前を見捨てない!!」 出番が少ない最弱からのお言葉に 「ありがてェ……」 マジで感謝した。 「んで、誰がアクセラに付くんだ?」 「それじゃ私が行くよ。打ち止めちゃんも心配だし。」 「お前が付いてくれるのは心強ェ」 「それにお荷物がいるってのもね……働いてもらわないと。」 「グサッときたぞ……」 「はいスルー、さっさと行くよ。」 時間を短縮するために氷のボードを作り、雪を原動力として跳ばしていくと言うなんともスゴい移動手段を取ることに… 「それじゃあ行ってきます!!」 「「「「「「頑張ってこいよー!!」」」」」」 「ラジャー!!」 氷のボードと言ってもただの板にあらず。 風防付き。 見た感じはズバリ。 「これってよォ…リニアモーターカーじゃねェか?学園都市が20年前くらいに作った。」 「まあね♪スピードだしたいからモデルにして作ったよ。…まぁかっこいいし。」 「ンで、所要時間は?」 「ボードの下に吹雪みたいなのを起こして浮かすから時速360キロは出るね。だから…えーっと14秒くらい?あ、でも急には止まれないし減速しないといけないから30秒くらいだね。」 (時速360=分速6=秒速100メートル 1.4キロ先までの所要時間:14秒。) 「原理からしてリニアモーターカーだなおィ。にしても早くて助かるぜェ。」 「んじゃ、行くよ。歯ぁくいしばってぇええええ!!!!!」 「ぬォおおおおおおお!!!!!」 後半はあまりのスピードによるドップラー効果。 「早え…。」 「にゃー。…あまりのスピードで待ち伏せしてた奴らを衝撃波で吹っ飛ばしてるぜい。」 「28・29・30。そろそろ着いた頃です土御門氏。」 「にゃー。着いたら電話が来るはず。…おっ来た来た。ピッ…もしもし」 『あー、元春?お宿のエントランスホールの修理費って出せる?』 「…なんとかするぜい。(ネセサリウスとグループ両方使うかにゃー。)…にしてもどうしたにゃー?」 『えーっとね、調子に乗って時速500くらいまで出ちゃったみたいでさ。ブレーキもきかしたんだけどそのままドッカーン!…ゴメン。』 「まあいいぜい。うちらを陣地から出そうとした先生達がいけないにゃー。」 『だよね。あっ、それと今打ち止めちゃんの回収終わったので今から帰りまーす。地下壕の中に退避してて。』 「…了解。ブチッ 総員退避ーっ!!」 10秒後。 彼らのいた場所は凄まじいことに。 「あっちゃー、こりゃまた酷い有様だにゃー。地下に陣地作っておいて正解だったぜい」 月夜が帰って来た場所、そこはまるで爆発があったかのような惨状だった。 「ただいま元春。行きと帰りで待ち伏せしてた人達は戦闘不能になってるよ」 「め、目が回るゥ……」 「わーいわーいってミサカはミサカは月夜おねーちゃんのアトラクションをもう一度体験してみたいって言ってみる!」 帰って来た月夜と打ち止めは余裕だが、能力使ってない一方通行にはハードだったらしくグロッキー状態だ。 一方通行の有様に同情した土御門は彼を抱えて、自分達の陣地へと戻り、打ち止めに一方通行のチョーカーの充電を頼むと昼食兼今後の話し合いをすることに。 「やれやれ。いざという時の核シェルターが役に立つとはな」 「まさか白雪ちゃんがあんな強攻策に出てくるとは予想外でしたよー」 「仕方ないじゃんよ。こっちが護衛も指名しなかった落ち度もあるじゃんよ。ところで災誤先生、今ので何人リタイアしましたか?」 教師達は無人島に不要な核シェルターのおかげで無事に難を逃れていた。 ベースよりも設備的には整っているのでむしろこっちで過ごせることはラッキーとか思っていたりする。 災誤は戦闘不能者の数を数えると、浮かない顔で黄泉川に伝える。 「今ので30人やられてますね。これくらいの数なら一人で充分回収出来ますので、黄泉川先生たちはその間に作戦会議を」 そうやって災誤は月夜にやられた30名の脱落者を回収に向かうことに。 災誤を見送った教師達は当麻&土御門グループ対策を考えるがいい案が浮かばない、ハンター以外は。 「ハンターだがあと二人ほど増やすのはどうだろうか? 最初の3人だけでは心もとない」 「そんなことないですよー。ナンバー7ちゃんに結標ちゃんにステイルちゃん、彼らならきっと……」 「ダメだろうな。第七位はともかく他の二人はあのグループと面識がある。それなりの対策を練ってくるはずだ」 「じゃあどうするじゃんよ? 木山先生には他に当てがあるじゃん?」 木山の言う通り、削板以外に関しては土御門が既に対処方法を考えていたりする。 黄泉川の指摘を受けた木山は特に動じる様子も無く、彼女なりの考えを皆に告げる。 「私ではない。だがあの花飾りの少女ならいい人選をしてくれるはずだ。一応、私の要望も添えて彼女に頼んでみるとしよう」 (初春さんか……。少なくとも建宮さんは出張ってきそうね) 小萌は木山の案に首を傾げたが、黄泉川と芳川はクリスマスでの初春の手腕を知っているので淡いながらも期待することに。 その頃、青ピ&姫神グループもまた当麻&土御門グループに対抗する為の作戦を練っていた。 「カミやんやつっちー、アクセラはんだけじゃないやん危険なの!」 「白雪さん。人が変わった。目的のためには手段を問わないみたい。」 「どないするん?」 「まあ良くも悪くも吹っ飛ばされて発信器がとれて攻撃を受けなかったのはラッキーだったな愚弟よ♪」 「うううあと3日間ねーちゃんにこき使われると思うと…敗者になったほうがマシゴギィ!!!!」 「愚弟、我が家の家訓その2『敗北主義は許されぬ』を忘れたか?」 「…なあ真昼はん、その家訓っていくつあるん?」 「…17カ条?」 「…よく覚えてるね真昼ちゃん。」 青ピがとりあえず作戦会議をしまひょと言って本陣に戻って地図を広げて会議をしているころ、学園都市では。 ジャッジメント第177支部は第7学区に存在し、白井黒子や固法美偉。 そして、 花飾りの少女が在籍する。 「初春のやつ、今日は来てませんわね。どうしたのでしょう?」 白井に話しかけられた固法はさあとかえし、 「まあ最近変わっちゃったからねー…はぁ、あのまじめで誠実なかわい子ちゃんは今いずこ?」 「まぁ…もともと腹黒い所がありましたのでそれが頭の花よろしく開花し…」 「誰が腹黒なんですか白井さん♪」 白井が恐る恐る入口の方を振り返ると。 そこには黒子が一番恐れている少女、初春飾利の姿が。 あわててなんでもありませんのっ!と黒子は取りつくろい 「所で初春、今日は遅かったですのね。何かありましたの?」 すると初春はハハハーと笑い、 「いやー、神裂先生からのお願い事を聞いてましてー、正確には○○高校発柵川中学経由神裂先生経由初春行きの依頼なんですけどねー。」 学校で下の名前で呼びかけてヒヤリとして以来、初春は神裂先生となるべく人前では呼ぶようにしている、。 「○○高校と言えば○○様(青ピ)や上条さんのいる所ではありませんの?確か今無人島で能力強化のための合宿中とか。」 御坂や白井も其の行事についてはかなりに気にしている。 聞いた所では学年240人のうち無傷で帰ってくるのは8人~12人と言う恐ろしい行事らしい。 そうですそうですと初春は言って、 「最終日にハンターを投入するんですけど今年の生徒は強すぎるので3人追加しようという話でその人選と言うか手配をお願いされたんです。…って白井さん?」 初春は気が付く。 そう言えば白井黒子という人間は青ピにしろ御坂にしろ自分が尊敬し慕う人間への攻撃は何が何でも許せない性格である事を。 「○○様に危害を加える奴はたとえ初春といえども見逃すわけにはいきませんわ。」 そう言って金属矢を手に取る白井。 慌てふためく固法。 だが、初春はしれっとして言う。 「そう言われても困りますよー。もう手配完了しちゃいましたからー。」 「「何ですって??」」 黒子があまりの驚きに金属矢を落とすカランと言う乾いた音がとある詰め所に静寂をもたらす。 初春が手配した追加3名は。 ①神裂 火織(最終日は休みで次の日は祝日なので) ②シェリー(日本美術に隠された魔術的要素の研究とか言って来日中) ③シークレット♪ 黒子が茫然自失してる中、大慌てで第一七七支部へと駆け込んだ何者かが初春を掻っ攫う。 突然のことで固法も何が起こったのか分からなくなると、初春がいたことを忘れるという現実逃避に出た。 「か、火織お姉ちゃん? どうしたんですか?」 「あんまりです飾利! 上条当麻の合宿に参加してハンターとかを演じろだなんて! お姉ちゃんのことが嫌いになったんですか?」 初春を掻っ攫ったのは追加のハンターとして選ばれた神裂だが、その表情には驚きと悲しみが混じっていた。 驚きは初春が自分に何の相談も無く決めたこと、悲しみは連休で初春と一緒に過ごせなくなったことで。 しかし初春はここで意外な一言を口にした。 「え? だって火織お姉ちゃんがハンターやりたいって志願したんじゃないんですか?」 「何でそんなことを私が志願するんですか! 私は飾利のお姉ちゃんとして連休は飾利と遊びたいって思ったのに……。ところで、誰がそんなこデマを?」 「建宮さんです」 犯人が分かった神裂はすぐにでも犯人こと建宮を殺してやろうと動き出すが、それは初春によって止められた。 初春も建宮が嘘をついたことにちょっと怒っていたので、お仕置きを兼ねて神裂を取り下げて建宮をハンターとして派遣することを決意する。 「しかし飾利。建宮がごねる可能性は十二分にあるわけですが、対処方法は考えてるのですか?」 「出発前日にばらして逃げ道作れないようにすればいいだけですよ♪ 建宮さんが嘘を吐くような人とは思わなかったのでショックです」 「(建宮、同情はしませんよ。元はあなたが悪いのですから)ところで気になっていたのですがシェリーの次のシークレットとは誰ですか?」 神裂は日本にシェリーがいたことも驚きだが、シークレットが何者か、その一点が非常に気になっていた。 そのシークレットこそ、木山が要望した人材だった。 「この人は今から交渉するんですよ。木山先生が『土御門がおそらく会ったことのない相手。出来れば魔術師が好ましい』って言っていた人材です」 「土御門が会ったことの無い……なるほど、あの男が事前に対策を練られない相手ということですね。しかしそのような人材がいるのですか?」 「それなんですけどインデックスさんに尋ねたらちょうどいい人がいたんです。当麻お兄ちゃんとは会ってますけどインデックスさんがどうせ忘れてるから大丈夫って」 「インデックスや上条当麻が会っていて土御門が知らない魔術師……? 何者ですか?」 木山の要望に頭を悩ませた初春だったが、教会に行ってステイルとインデックスに相談したらインデックスが紹介してくれたのだ。 インデックス曰く『とうまはおバカだからあの人の魔術も会ってからじゃないと思い出さないんだよ』とのこと。 初春はインデックスに紹介された魔術師の名前を口にした。 「闇咲逢魔さんっていうフリーの魔術師です」
https://w.atwiki.jp/bennrishi_matome/pages/14.html
第一章―総則 第一条 第二条 第三条 第四条 第五条 第六条 第七条 第八条 第九条 第一〇条 第一一条 第一二条 第一三条 第一四条 第一五条 第一六条 第一七条 第一七条の二 第一七条の三 第一七条の四 第一八条 第一八条の二 第一九条 第二〇条 第二一条 第二二条 第二三条 第二四条 第二五条 第二六条 第二七条 第二八条 第二章―特許及び特許出願 第二九条 第二九条の二 第三〇条 第三一条 第三二条 第三三条 第三四条 第三五条 第三六条 第三六条の二 第三七条 第三八条 第三九条 第四〇条 第四一条 第四二条 第四三条 第四三条の二 第四四条 第四五条 第四六条 第四六条の二 第三章―審査 第四七条 第四八条 第四八条の二 第四八条の三 第四八条の四 第四八条の五 第四八条の六 第四九条 第五〇条 第五〇条の二 第五一条 第五二条 第五三条 第五四条 第五五条から第六三条まで 第三章の二―出願公開(本章追加、昭和四五法律九一) 第六四条 第六四条の二 第六四条の三 第六五条 第四章―特許権 第一節―特許権 第六七条 第六六条 第六七条の二 第六七条の二の二 第六七条の三 第六七条の四 第六八条 第六八条の二 第六九条 第七〇条 第七一条 第七一条の二 第七二条 第七三条 第七四条及び第七五条 第七六条 第七七条 第七八条 第七九条 第八〇条 第八一条 第八二条 第八三条 第八四条 第八五条 第八六条 第八七条 第八八条 第八九条 第九〇条 第九一条 第九一条の二 第九二条 第九三条 第九四条 第九五条 第九六条 第九七条 第九八条 第九九条 第二節―権利侵害 第一〇〇条 第一〇一条 第一〇二条 第一〇三条 第一〇四条 第一〇四条の二 第一〇四条の三 第一〇五条 第一〇五条の二 第一〇五条の三 第一〇五条の四 第一〇五条の五 第一〇五条の六 第一〇五条の七 第一〇六条 第三節―特許料 第一〇七条 第一〇八条 第一〇九条 第一一〇条 第一一一条 第一一二条 第一一二条の二 第一一二条の三 第五章―削除(削除、平一五法律四七) 第一一三条から第一二〇条まで 第六章―審判 第一二一条 第一二二条 第一二三条 第一二四条 第一二五条 第一二五条の二 第一二六条 第一二七条 第一二八条 第一二九条及び第一三〇条 第一三一条 第一三一条の二 第一三二条 第一三三条 第一三三条の二 第一三四条 第一三四条の二 第一三四条の三 第一三五条 第一三六条 第一三七条 第一三八条 第一三九条 第一四〇条 第一四一条 第一四二条 第一四三条 第一四四条 第一四四条の二 第一四五条 第一四六条 第一四七条 第一四八条 第一四九条 第一五〇条 第一五一条 第一五二条 第一五三条 第一五四条 第一五五条 第一五六条 第一五七条 第一五八条 第一五九条 第一六〇条 第一六一条 第一六二条 第一六三条 第一六四条 第一六五条 第一六六条 第一六七条 第一六八条 第一六九条 第一七〇条 第七章―再審 第一七一条 第一七二条 第一七三条 第一七四条 第一七五条 第一七六条 第一七七条 第八章―訴訟(改正、昭五三法律三〇) 第一七八条 第一七九条 第一八〇条 第一八〇条の二 第一八一条 第一八二条 第一八二条の二 第一八三条 第一八四条 第一八四条の二 第九章―特許協力条約に基づく国際出願に係る特例(本章追加、昭五三法律三〇) 第一八四条の三 第一八四条の四 第一八四条の五 第一八四条の六 第一八四条の七 第一八四条の八 第一八四条の九 第一八四条の一〇 第一八四条の一一 第一八四条の一二 第一八四条の一三 第一八四条の一四 第一八四条の一五 第一八四条の一六 第一八四条の一七 第一八四条の一八 第一八四条の一九 第一八四条の二〇 第一〇章―雑則 第一八五条 第一八六条 第一八七条 第一八八条 第一八九条 第一九〇条 第一九一条 第一九二条 第一九三条 第一九四条 第一九五条 第一九五条の二 第一九五条の三 第一九五条の四 第一一章―罰則 第一九六条 第一九六条の二 第一九七条 第一九八条 第一九九条 第二〇〇条 第二〇〇条の二 第二〇一条 第二〇二条 第二〇三条 第二〇四条
https://w.atwiki.jp/toaru2railgun2mikoto/pages/17.html
美 失礼しま~す 固 あら、どうしたの?今日はみんな揃っているのね 黒 ええ、どうしても一七七支部を見学したいとお姉様が仰るものですから 固 そう?じゃ、ゆっくりしていって 佐 ありがとうございます 固 せっかくだから、麦茶でも入れる? 美 いただきます 佐 いただきまーす。この暑さ、どうにかならないのかな 黒 やっぱり室内は涼しくていいですわね 美 まさか、暑いのが嫌でここに連れてきたわけじゃないわよね 黒 おっほほほ、ち、違いますわ 黒 初春、都市伝説についてのデータを調べてくださる? 初 はい、都市伝説関連、特に、カミキリムシについて、ですよね 初 う~ん、『空き地のカミキリムシ』については、詳細な報告があまりありませんね… 佐 どれどれ?…なんだか、あっさりしてる報告ばっかりだね 固 何を調べてるの?なになに? 固 『空き地のカミキリムシ』についての報告書? 初 あの、これはっ 固 別に怒ったりしないわよ。平時に報告書をチェックしておくのも仕事だし 佐 あの、どうしてカミキリムシについて詳細な報告が残っていないんですか? 固 大体は報告を受けた風紀委員や警備員が、その場でお説教をしておしまい、だからかな 美 お説教? 固 立ち入り禁止の空き地に近づかなければそんな被害にも遭わないのですから、処置としては妥当ですわ 黒 実際にケガをさせられたって報告も見当たらないようですし 黒 あっても髪を少し切られた程度 黒 こう言ってはなんですけれど、面白半分で虚偽の目撃報告をする子供も多いんですの 黒 つまり実害が認められず、事件なのかイタズラなのかハッキリしていない状態なのです 固 存在するかどうかも分からない都市伝説の調査をするほど、警備員も暇ではないということね 美 風紀委員も警備員も、『空き地のカミキリムシ』を事件として捉えていないってことか… 美 う~ん、ここまで来て収穫なしか 黒 そんなこともありませんわよ。わたくし達が調べているのは『空き地』のカミキリムシです 佐 そっか、子供たちが集まりそうな空き地を調べるんですね 初 学園都市の不動産データベースにアクセスしてみます 初 取り壊し中の物件を含めて432件、純粋な空き地と呼べるのは176件ですね 美 そのうち、第七学区に絞るとどのぐらいになる? 初 該当するのは41件です 佐 41件か、結構な数だね 黒 しらみつぶしに見て回るには、ちょっと無理のある数ですわ 美 そのうち、子供でも入れそうな場所ってある? 佐 監視カメラがついてないとか、警備ロボットがあまり来ない場所とか 初 届け出にある警備計画と照らし合わせてみます 初 出ました。13件です 佐 さっきより減ったけど、やっぱり多いね 黒 で、お姉さま。調査するにしても、どこから当たりますの? 佐 空き地の場所はわかったけど、全部行くのって結構大変そうですけど 美 やっぱり、近場の空き地から手当たり次第に回ってみるしかないか 黒 そんな適当な調査方針で大丈夫ですの? 美 その調査方針を固めるための手がかりを見つけようって言ってんのよ 美 さあ、行くわよ!
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1139.html
憎まれる風の馬鹿(上) 「なんで私(わたし)まで勾留されるのか納得いかないんだけど。まったくもって。」 「暴れすぎですのよ。」 第7学区の警備員の詰所でツインテールの少女、白井黒子は隣の椅子に座らされている別の少女に呆れたように言った。 白井と同じぐらいの年頃に見える少女は中途半端な長さの黒髪を後頭部で束ねた髪型をしている。 銀色のチェーンについた胸元のネックレスは縁が金色で中心部は鮮やかな青をベースとしたデザインとなっている。 一見してお洒落なアクセサリーに見えるが、実はこれは携帯音楽プレイヤーである。 アクセサリーと音楽機器の融合というテーマでとある企業が作った試作品だが、 値段の割に操作性や液晶の広さなどが今一歩というなんともな品である。 ヘッドフォンをネックレス部分に収納しているためやや厚ぼったいのも客がつかない理由の一つである。 少女は座らされているといっても別に取り押さえられているわけでも拘束されているわけではない。 ただ頭にタンコブを一つ作っているだけである。 「だって100パーもってあっちが悪いじゃない?」 「街中で派手にドンパチする迷惑を考えなさいな。」 一応任意同行となっているが半ば勾留という態で少女はここにいる。あまり良い意味ではない。 事件の発端は二十分ほど前。 最近、同一の能力者によるものと思われる事件が多発していたため、 風紀委員も警備員も見回りの回数をいつもより増やしていた。 見回り中の白井はひったくりの現場に遭遇し、被害者に怪我がないことを確認した直後、 風紀委員(ジャッジメント)ですの!と逃げる不良たちの前に立ちはだかった。 風紀委員だとなんだガキじゃねえかお嬢ちゃんどかないとケガしちゃうぜーと 一通りお約束(死亡フラグ)を果たした不良達をさてどうあしらって差し上げましょうかと考えていたら さっきの被害者が「アックソックザアァァァァァァァン!!!」とか叫びながら突撃しつつ 衝撃波を不良達(プラス白井)に向けて放ってきた。吹っ飛ぶ不良達。白井は空間移動で難を逃れた。 そこで終わっていれば良かったのだが不良の一人がそこそこ(おそらくLV3程度)の能力者だったらしく ふははは俺様の真空断熱(ゾージルシー)を使う時が来たようだな!!とか言い出して超能力バトル勃発。 最終的に巨乳の警備員が「派手に喧嘩してる馬鹿はどこじゃーん!」と(若干楽しそうに)拳で二人ともぶっ飛ばして終結した。…なまはげ? 「くそう…善良な一般学生が手助けしたのにこの仕打ち。感謝状ちょーだいよ諭吉の絵のついてるやつ。」 「一般人が危険に飛び込んでいくのは感心しませんの。更に騒ぎを大きくするのはなおさらですわ。」 「風紀委員だったらいいんだ。私も風紀委員になろうかな?」 軽いノリで言いながら指をピストルのようにしてバーンバーンとふざける少女に白井はやれやれと呆れたような溜息をついた。 「私たちは別に力を振り回したくて風紀委員をやっているわけではないですわ。誤解なさらないでくださいな。」 「…てゆうか風紀委員の権限ってたしか校外じゃ通用しないんじゃ…。 でもあなた、えー名前は?」 「白井ですわ」 「白井さん、テレポートってかなり便利なんでしょ? 普通に生活してるだけじゃ持て余すんじゃないの?」 「別にそんなことはありませんわ…多少できることの幅が広がりますけれど。」 そう白井が答えた時、巨乳の警備員が不良を他の警備員に引き渡し、現場を確認し終わったのか戻ってきた。 「おっ待たせじゃーん。そんじゃちゃちゃっと状況聞かしてもらおうじゃん?」 風紀委員第一七七支部 「昨日も警備員によってスキルアウトが倒れているのが発見されました。」 パソコンの前の初春は白井に最近のスキルアウト返り討ち事件について報告していた。 襲撃事件、ではなく返り討ち事件。である。 犯人の手口はこれ見よがしにブランド物のバッグなどを持ち歩きながら治安の悪そうな場所をうろうろし、 タチの悪い連中が関わってきたら返り討ちにして身ぐるみ剥ぐというものである。 発覚したのは一昨日だが、事件の性質上被害者から証言が得にくいという点や よからぬ目的でわざわざ監視カメラの死角に犯人を追い込む「被害者」も多いため、 被害者の数は発覚していないところで数倍はいるだろうと推測される。 「被害者は昏倒、全身への打撲、ひどい耳鳴り、吐き気などの症状を訴えています。特に耳が痛いと言っています。」 「犯人の目星は?」 「単独犯か複数犯かはまだ判りません。 他には大きな音がして被害者が吹き飛んだという証言ぐらいですね。これだけだと何とも言えないです。 あと衛星からの観測で周囲の大気の不自然な揺らぎが観測されたらしいので、 おそらく大気操作系か音波操作系の能力者かと。 とりあえず絞った学生のデータが……あっ」 初春は画面の右下に開いていた監視カメラの映像を分割していたウィンドウを画面一杯に広げた。 「どうしましたの?」 「ここ、この人、なんか怪しくないですか?」 分割された映像の一つを拡大すると、確かに怪しい人物が映っていた。 もうすぐ五月だというのに、スカーフ、サングラス、マスク、耳あて、ニット帽子という出で立ちだ。 極めつけに、晴れだというのに体格に合わない男物らしい不審者のような濃紺のトレンチコートを着ていて、体のラインもはっきりとしない。 「…………怪しすぎますわね。」 「あっ!この派手派手なバッグ、ブランドものですよ。」 「でもこんな浮いた格好している方って普通はスルー…って絡まれてる!?」 「あ、逃げてきますねー。追ってますねー。この先は監視カメラとかないですねー。」 「はぁ…初春。私はこの地点に行ってきますの。衛星から大気の揺らぎが観測されたら警備員に連絡を。 彼らの行き先を予想してナビをお願いしますわ。」 その裏路地に白井が到着すると、不良達はいきなり現れた白井に狼狽したが、 『むぅ…こいつは!!』『知っているのか、山本!!』 『こいつは噂に聞く風紀委員のテレポーター女狂戦士(アマゾネス)白井!! まさか本人をこの目で見ることになるとは…!!』『な、なんだってー!!』 とか大騒ぎして勝手に逃げていった。 (名前まで広がってるんですの…。)白井はややげんなりとしながら駆けていく彼らを見送った。 「やぁー。まったくもって助かった。ありがとね。ヤバかったよ。昼にも合ったよね?」 そう言う女は先ほどまで不審者不審者してた(と思われる)女だ。 つけていたゴタゴタとした小道具は地面に散らばっている。 この乱雑ぶりを見るに自分から脱ぎ捨てようだ。ニット帽やサングラスだけでなくトレンチコートも脱ぎ捨てられたまま放置されている。 トレンチコートの下は上下のデニムだった。上が水色、下が藍色である。アクセサリー型音楽機器はつけていない。 ただ首に巻いている赤色のスカーフだけは外していない。 「…巌霧砕戸(いわきりくだきと)でしたわね。」 「砕(くだき)でいいよ。」 「そんなに親しくなった覚えはありませんし、するつもりもありませんの。」 えぇーと岩霧が残念そうな声を出す 昼の時も感じたがどうやらこの少女、結構馴れなれしい性格らしい。 「主に度重なるスキルアウトへの暴力的な能力使用の容疑などで拘束しますわ。」 そう言われて岩斬は「む」と短く唸った。 「できるだけ注意深くやってたんだけどなぁ。やっぱいつかはバレるもんだね。まったくもって」 「特に証拠も無いハッタリでしたのに。お認めになるんですの?」 「しまったぁぁぁぁあああ!!」 (馬鹿ですの…) 頭を抱えオウマイガーッ!!と天を仰ぐ岩霧を見て心中で呟く白井であった。 「いや、ちょっと待て…私別に悪い事してなくない?正当防衛じゃん。」 「明らかに過剰防衛ですの。他にも器物損壊や窃盗などの容疑がてんこもりですわ。申し開きは警備員の詰所でしてくださいな。」 「やだね」 即答すると岩霧は一歩白井へと踏み出し、勢いよく右手を突き出す。 それだけでギイイイン!という飛行機が滑空するような轟音が裏路地に反響し、路地に面した窓ガラスが砕け散る。 Lv3の(ソニックブーム)というのが彼女の能力だ。 対象物に向かって極高圧と極低圧による圧力の波を放射する。簡単に言えば衝撃波を操る能力である。 衝撃波は彼女の手の平数センチで拡散してしまうのだが、拡散して音波となった状態でも 至近距離なら人を吹っ飛ばし、昏倒させる程の威力をもつ。 ちなみに窓ガラスは固有振動数による共振によって割れたのではなく、 気圧が急激に変化した結果、内側または外側に向かって弾け飛んだのだ。 たかが音、と侮るのは危険である。 紛争地帯の兵士には、戦争後も頭痛や記憶障害に悩まされるケースが多く起こる。 戦争によるストレスの結果、というのもあるのだが、その大きな要因の一つとして外傷性脳損傷(TBI)がある。 これは『目に見える外傷はないが、脳組織の一部が破壊される』ケースである。 その原因は戦場で繰り返し爆弾の攻撃を受け、超音速の爆風がもたらす圧力変化の波が脳組織を破壊するために起こるのだ。 このように、音というのは案外危険なものであったりもするわけだが 「そうですの」 当たらなければどうということもない。 一瞬で岩霧の背後に空間移動した白井はそのまま岩霧に触れ、 次の一瞬で岩霧は地面に組み伏せられていた。 ドカドカドカッ!!という音とともにデニム生地の袖を貫通した金属矢がコンクリートに突き刺さる。 岩霧が気がついたときには既に勝負がついていた。 「それ以上抵抗すれば体内に空間移動させますわよ?」 「うわぁ…まったくもって風紀委員はえげつない。 私はただ世のため人のため自分のために持ってるアドバンテージを有効活用しただけなのに。」 要は力を振いたくて仕方のない能力者か。と白井は結論づける。 「まったくもってどこが悪いのか判らないんだけど。教えてよ。」 「それを考えるのが反省というものですわ。 私個人としては取り返しのつかない事態になる前にやめておけというところですわね。」 この「返り討ち」が繰り返されれば被害者に後の人生を潰すような大怪我を引き起こすかもしれないし この犯人が返り討ちにあって酷い目に合うかもしれない 全く関係のない通りすがりが巻き込まれる可能性だってある だから止める。ただこの街に住むみんなを守るために。 白井は初春に連絡して、もう警備員に連絡したことを確認した後このまま待機することにした。 「わーすごーい風紀委員だー。ナマ捕り物ー?」 その時、裏路地になんとも間延びした声が響いた。 そちらを見れば制服姿の女生徒がこちらを見ている。おそらく高校生ぐらいだろうと白井は推測した。 「危険ですから近づかないで下さいな。」 地面に縫い付けているとはいえ危険な能力者である。一応注意を呼び掛けるが、 女生徒は「わーい写メール写メール。ケータイケータイ……」と手提げ鞄の中をゴソゴソとやっている。 地面の岩霧が逆上して暴れるのではないかと警戒していると、顔だけ白井に向けた岩霧が女生徒を無視して話しかけてきた。 口元には笑みが浮かんでいる。 「ふふふふふ。」と、わざとらしく笑うというより発音するように言い、 「私だけが犯人だと思ったが大間違い…。 私たちのグループは四人や五人ってもんじゃない…。 それに私たちのボスは……………」 最後の方は小声でごにょごにょと言っていてよく聞き取れない (組織的な能力者によるスキルアウト狩りですの?…いや、ハッタリかもしれませんの。 後で読心能力者(サイコメトラー)が読めばハッキリしますわ。) それでも気になって白井は地面の能力者に話しかけた。 「そのボスの名前は?」 「―――――――――」 岩霧は少しの沈黙のあと口を開いた。 ところで、白井黒子は一ヶ月ほど前に常盤台中学に入学したばかりで、 風紀委員として実戦に投入されるようになったのもその頃からだ。 高いポテンシャルを持つ彼女の活躍(と始末書の数)は風紀委員の中でも特に目を見張るものであったが。 踏んだ場数の数というのはそんなに多くない。 結果として 白井黒子の背中に何かが刺さり、強烈な電流が流れた。 「なっ…!」 意識の落ちる前に白井が見たのは銃のようなものをこちらに向けている先ほどの女生徒だった。 おそらく離れたところから電極を相手に発射するたタイプのスタンガンだろう。 「―――は――――――――た」 女生徒が何か言っていたが、その前に白井の意識は落ちていった。 続く