約 733,984 件
https://w.atwiki.jp/preciousmemories/pages/6190.html
俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎるスターターデッキ 2013年10月25日発売。 BEFORE:さくら荘のペットな彼女スターターデッキ NEXT:みなみけスターターデッキ ブースターと同時発売。 カード60枚、サインカード1枚(4種類)、プレイマット、ルールブックを封入。 久々のハイランダー構成となっている。 収録カードリスト ※はスターター限定カード。サインカード仕様のカードとして+1枚封入されている。 ナンバー カード名 星 枚数 01-002 《春咲 千和》※ 3 1 01-008 《春咲 千和》 1 1 01-010 《春咲 千和》 2 1 01-011 《春咲 千和》 1 1 01-013 《春咲 千和》 1 1 01-014 《春咲 千和》 1 1 01-015 《春咲 千和》 1 1 01-017 《春咲 千和》 1 1 01-018 《春咲 千和》 2 1 01-019 《春咲 千和》 2 1 01-020 《春咲 千和》 2 1 01-021 《夏川 真那》 2 1 01-023 《夏川 真涼》※ 3 1 01-028 《夏川 真涼&春咲 千和》 3 1 01-030 《夏川 真涼》 1 1 01-032 《夏川 真涼》 1 1 01-034 《夏川 真涼》 2 1 01-036 《夏川 真涼》 1 1 01-038 《夏川 真涼》 1 1 01-040 《夏川 真涼》 2 1 01-041 《夏川 真涼》 1 1 01-042 《夏川 真涼》 1 1 01-043 《夏川 真涼》 2 1 01-045 《秋篠 姫香》※ 3 1 01-055 《秋篠 姫香》 2 1 01-057 《秋篠 姫香》 2 1 01-058 《秋篠 姫香》 1 1 01-059 《秋篠 姫香》 1 1 01-060 《秋篠 姫香》 2 1 01-061 《秋篠 姫香》 1 1 01-062 《秋篠 姫香》 1 1 01-063 《秋篠 姫香》 1 1 01-064 《秋篠 姫香》 1 1 01-065 《秋篠 姫香》 2 1 01-066 《秋篠 姫香》 1 1 01-067 《季堂 鋭太》 1 1 01-068 《季堂 鋭太》 1 1 01-071 《冬海 愛衣》※ 3 1 01-081 《春咲 千和&夏川 真涼》 3 1 01-082 《冬海 愛衣》 1 1 01-083 《冬海 愛衣》 2 1 01-086 《冬海 愛衣》 1 1 01-087 《冬海 愛衣》 2 1 01-088 《冬海 愛衣》 1 1 01-090 《冬海 愛衣》 2 1 01-092 《冬海 愛衣》 1 1 01-094 《冬海 愛衣》 1 1 01-095 《桐生 冴子》 1 1 01-096 《プール清掃》 2 1 01-097 《今日の朝ごはん》 1 1 01-099 《食いしん坊》 1 1 01-100 《ふくれっ面》 1 1 01-103 《プールの授業》 2 1 01-109 《水着選び》 3 1 01-113 《前髪パッツン》 1 1 01-115 《座席の順番》 1 1 01-116 《春夏秋冬》 3 1 01-123 《ウェディングドレス》 1 1 01-124 《中二ノート》 2 1 関連項目 『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』 編集
https://w.atwiki.jp/hshorizonl/pages/485.html
歌うたいの小鳥が、殺されたことによって。 ――このお城は、もう融れちゃうから。 友達だったかもしれない少女は、そうなることを確信していた。 ――もう今までのやり方じゃダメだ。 王子様だったらよかったと言われた少年は、武器を手にするようになった。 雨の中、小鳥の声が消えてしまったことで、全てが融けた。 ◇◇◇◇◇◇ ――もう変わってるんだと思うよ。 さとうが私にそう言ったのは、もうずいぶん以前のことだったと思う。 まだ私達が二人で男遊びをしていて、だけどそれで満たされたという事はなくて。 むしろコレって空回りなんじゃないだろうか、という私の疑問と焦りは。 それでも、さとうとは確かに友達になったんだという安心感に着地した。 私の人生は、その時よりもずっと大きく変わってしまった。 たった一人を探していたさとうに、運命の人ができた。 私にも、人生を変えてしまう出会いがさとうの他にできた。 さとうみたいに最愛の人だと言い切れるほど、確かな形をしてなかったけど。 その男の子との出会いは、『王子様』なんて言葉にそぐわない、素朴なもので。 決まった時間にパンを持って行く、お付き合いというより餌付けと言った方がいいような時間で。 危なっかしくて、小動物みたいで、放っておけない。 それだけの情で近づいた男の子は、だんだん色々な顔を見せてくれるようになった。 大切な人を想う顔。ひたむきな顔。勇気をふりしぼる時の顔。 その姿に勇気をもらったんだと、大げさじゃなく思ってる。 私の人生は変わったけれど、私は半端にしか変われなかった。 彼に正しく勇気をもらった私は、『さとうから眼を逸らす』という大きな間違いをした。 大好きな親友を傷つけて、肝心なところで拒んで、彼女をいっそう閉じ籠らせた。 それでも勇気を出したことまで否定しなくていいと、彼から励ましてもらった。 そこから、また親友にぶつかろうとしたことまで間違っていたとは思わない。 だけど、さとうのお城に踏み込んだあの日のことは、間違いだった、たぶん。 さとうの信頼を損なった私が、さとうから最愛の人を引き離した方がいいと乗り込んできた時点で。 さとうにとって私は『敵』になっていることを、きちんと分かっていなかった。 さとうは私に何も感じない。 それを結論に、私の人生はそこで終わった。 人生を変えるような出会いは、ちゃんと二回もあったけど。 私の物語は、苦い結末と後悔で終わった。 ――だから、ごめんね。 さとうの声が、私を見下ろす瞳が、恐ろしく冷えているのが記憶に残っていて。 何も感じないと言ったのに、彼女がわざわざ謝ったことは印象に残っていて。 それは私が求めていた結果とはかけ離れたもので。 ――間違えちゃったのかな。 間違えたのだとしたら。 どこでどうしていれば良かったのかな。 松坂さとうの世界から消されてしまうその時に。 私はたしかに、そんなことを気にしていた。 ――なんか変わったね、しょーこちゃん 聖杯戦争によって、私の人生はまた劇的に掬い上げられて。 再会したさとうは、いつかと同じように私のことをそう言ってくれた。 それでも私は、間違えようとしている。 彼がいることは分かっていたのに、いざ彼が現れた時の心の備えがまるで無くて。 彼には彼の願いがあると分かっていたのに、さとうの敵として現れた彼を止めようとして。 さとうの味方をするということは彼を敵に回すことだと釘を刺されていたのに、彼に駆け寄って。 聖杯を狙う同士なのに、彼――神戸あさひ君には死んでほしくないと思っていて。 そして、改めて私は思う。 私が聖杯を狙うのはどうしてだっけと、理由を顧みれば。 松坂さとうとの関係をやり直したくて、神戸あさひ君との関係に言葉を贈りたくて。 人生の未練だった二人は、今となっては二人とも近くにいて。 二人とも聖杯を欲しがっていて。 聖杯を手に入れたマスター以外は、ここで消えるというのなら。 私が聖杯を手にしたところで、その先の人生には松坂さとうも神戸あさひもいなくなってしまうことを。 ◇◇◇◇◇◇ ――人の愛なんて、誰かが語るようなことじゃないんだ ボクが松坂さとうにそう言ったのは、この夜が始まるより以前のことだったと思う。 それはもう、昨日の夕景と共にある出来事だった。 松坂さとうには言い切った一方で、ボクは苦い追憶をしていた。 なぜなら、ボクの事情だって決して胸を張れるものではなかったから。 ボクの愛の始まりは。 蒼き雷霆ガンヴォルトと、電子の謡精を宿した少女シアンの、関係の始まりは。 (この子は、あの頃のボクと同じだ――) 情だった。 初対面で向けられたのは、『殺してください』という懇願。 これからも籠の中で飼われたまま、人に害を与える歌を強制されるぐらいなら、と。 その裏側に、自由への飢えと、普通の生活への羨望を読み取れたのは、ボクも似たような境遇だったから。 かつてボクがアシモフにしてもらったように、ボクもこの子に自由を与えたいのだと意気込んで、連れ出して。 これからは後ろ盾のない傭兵だと覚悟していたはずの暮らしは、一人ではなく二人だと満たされていて。 あの頃の日々には、いつもシアンとの心の繋がりを感じていた。 結果として、ボクは彼女を死なせた。 凶弾から守れなかった、というだけではない。 ボクと一つになって謡精そのもになった彼女がふたたび消えていくのを、何もできずに失った。 それどころか、記憶を失って真っ白になった『シアンを宿した少女』を、そのまま家族の元へと帰した。 そんな話を聞いたら、『お前の愛は愛じゃない』という人もいるかもしれない。 ボクは、あの選択を後悔はしていない。 むしろ、今になって後悔するわけにもいかない程には、大事で重い選択だった。 だけど、ボクとシアンの関係が、兄妹のような親愛だったのか、それとも別種の愛情だったのか。 そこに対する答えは出ないまま、ボクもシアンに何かを応えてあげられないまま、ボク達は別れの日を迎えた。 だから。 「おたくのマスター、あさひの事をどういう風に言ってた?」 ボクのマスターが、まさにそこのところを上手く言えないからといって、それを否とするつもりは無かった。 そして、座り込んだままの赤きサーヴァントが問うてきたことで、ボクも察する。 あるいは、神戸あさひの側もそうなのではないかと。 『飛騨しょうこが神戸あさひに向ける感情』を、そのサーヴァントが気にせずにはいられないほどには。 神戸あさひもまた、飛騨しょうこに対して、不定形の感情を抱いているのではないか、と。 「詳しくは聴かない。でも、勇気をくれる男の子で、お礼が言いたい、そういう少年だったと言っていた」 「…………そりゃ男を視る眼があるね。困ったことに」 先刻までは道化のように多弁だったのに、覆面の下でひとしきり思いをめぐらすような間があった。 困ったというからには『仮に飛騨しょうこが神戸あさひに全く無関心だったなら、それはそれで対応の仕方があった』という事でもあるのだろう。 このサーヴァントは、本気で神戸あさひのことをマスターとサーヴァントとして心配し、その心情を慮った行動を心がけている。 そう察したから、こちらもなるべく正確なところを述べることにした。 「……それから、『怖い』とも、言っていたよ」 「怖い?」 「神戸あさひは、聖杯を手に入れようとするだろうとマスターは考えた。 そして、マスターがいることを理解した上でその目的が変わらないなら、神戸あさひとの関係が壊れる事に対してだよ」 これだと神戸あさひの元に駆けつけなかったことに対して言い訳がましいかな、と思いながらも。 それでも、『飛騨しょうこは結局のところ情を捨てた女の子だ』などと受け取られるのは、どうにも嫌だった。 「ああ、そこんとこを責めるつもりは俺ちゃんには無いから安心しなよ。 あさひのヤツ、しょうこちゃんがいることを知らないのが幸せには違いなかったからな」 松坂さとうに敵意はあるにせよ、マスターにまで敵視が及んでいないことにはひとまず安堵する。 だが、その言い回しには含みがあると気付いた。 「違いなかったってことは………過去形、だったのか?」 「ああ、あさひはもう、しょうこちゃんとあの女が連れ立ってることを知ってるよ。 むしろ、あさひがおたくらの訪問を知らされたところに俺ちゃんもいたって方が正しい」 「なら、お前ひとりでこれ見よがしに待ち伏せしてたのは、やっぱり陽動だったのか」 彼の独断による行動ではなく、マスターの意を受けていたというならば。 サーヴァント二人がいるところに、自分のサーヴァント単騎で相手をさせるかというと怪しい。 つまり、このサーヴァントはあくまで囮で、本命の接触者がマスター達が逃げたところに待っている。 ボクらも待ち伏せが陽動である可能性は考えていたし、だからこそキャスターをマスターたちに付かせたのだけど。 「おや、案外冷静に受け止めるもんだね、ロックマン。」 「ロックマン? ボクも知らないサーヴァントの特殊クラスなのか?」 「あれ、若い子なのに通じない? 2Dアクションって昨今は下火だったりする?」 まぁいいや、そこはうちのあさひとおたくのしょうこちゃんが接触したらまずいって、焦ったりとかしねぇの?」 「……まずいと思わないわけじゃないよ。でも、お前はさっき『社会の歯車だ』って言った。 つまり、この作戦はお前たち主従の独断じゃないんだ。だったら、会話の放棄が何を意味するのかは分かってるさ」 「ジャパニーズってわけじゃ無さそうなのに、ずいぶん空気を読んでくれるんだな。助かるよ」 陽動作戦が、神戸あさひだけでなく他の主従との合意のもとに行われたものであるなら。 今こうやって彼がボクとの会話に付き合っている時間も、陽動の一環ということになる。 それを簡単に打ち切らせてしまうことは、彼が陽動を真面目にやらなかったこと、つまり同盟者への不義理にならないとは言えない。 そして、神戸あさひとマスターの繋がりを考えれば、キャスターがボクとの内通を冗談ごとでなく疑い始める可能性もあり。 キャスターの戦力としての信頼性と、松坂さとうへの初撃が失敗してからの彼にもう殺意がないことも併せて考えれば。 マスターは本当に危なくなったら令呪なり念話なりを使ってくれると信じて、ここは場を繋ごう、という事になる。 「さて、こいつは会話のキャッチボールだから、今度はこっちから質問させてもらおうか」 会話の流れだと、最後に質問をしたのは彼の方だったはずだが。 どうやら、『神戸あさひはもう知っているのか』という一連のやりとりで、ボクからの質問一つという扱いらしい。 「お前は、自分のマスターを殺した女が、マスターとつるんでる事を受け入れてんのか?」 切り込むような問いかけ。 そこに、おどけやふざけは完全に排除されていた。 前提についての共有は不要だった。 なぜなら、『神戸あさひが松坂さとうを恨んでいることをボクが知っていた』時点で。 マスター・飛騨しょうこと松坂さとうとの関係にボクが無知だとは考えにくいのだから。 「マスターは、松坂さとうに殺される結果に終わったことを悔いていた。 関係をやり直したい、彼女に信じてもらえなかった自分を変えたいと言っていた」 「あー…………どういう子なのか分かった気がするわ。いや、あさひの話を聞いた時から、人柄はお察しだったけどさ」 彼は胡坐をかいたまま天を仰ぎ、いるかもわからない神様に毒吐くように「なんでそんな連中ばっかり巻き込んでる?」とぼやいた。 どうやら彼は、ボクのマスターがとてつもなく芯の強くて善良な少女だということを、さほど労せず受け入れたらしい。 もし髪があればそれをぼさぼさと乱すような手つきで覆面の頭部を掻き、重ねてボクに問う。 「けどな、お前は止めたりしなかったの? シビアな話、【都合の良いお友達】と思われてる可能性だってあるわけだろ」 それはマスターの想いとは別であり、サーヴァントとしては当然の疑問でもあった。 自分のマスターを殺した者のもとに再びマスターを寄り添わせようとするのは、思い切りが過ぎることだから。 そしてボクの答えは、買い物帰りの道中で松坂さとうに語った通りだ。 覆面の奥から向けられる視線が食い入るように鋭さを増したように感じられたが、臆するほどのことはないと同じ答えを返す。 「リスクは承知の上だ。そして彼女らが牙をむいた時の備えもある」 「話を聞く限り、そんな備えを持つにはイイ娘すぎる嬢ちゃんって感じだけど?」 「備えがあるのはボクだよ」 「ああ、そっか」 赤き覆面の男は、頷きとともに瞑目した――ように見えた。 赤と黒の布地に覆われているから、眼を瞑ったかどうかなど見分けがつかなかったけれど。 表情が変わったかのように覆面の布地がわずか動いたから、そう思えたのかもしれない。 「要するにお前は【そうせずにはいられなかった】んだな」 つぶやきには、納得の感情がともなっていた。 「彼女たちの仲を取り持たずにいられなかった、ということか?」 「いや、そこじゃない。ずいぶん前にいたんだよ。 ガキの為に手を汚そうとするバカを、そんな好意的に言ってくれたカタブツがさ」 いざとなったら、松坂さとうを殺す役目を引き受ける覚悟はある。 たとえ、それが汚れ役に値する仕事であろうとも。 たとえ、マスターに嫌われることになったとしても。 そのように、直接的な言葉にはしなかったボクの意図は。 「備えがあるのはボクだ」というぼかしだけで十分に伝わったらしい。 「こんな風に見られてたんなら俺ちゃんも照れるね」と一人納得したように、男は茶を濁していた。 「気持ちとしての落としどころは分かったさ。 あの女といる以上敵には違いないが、サーヴァントのスジとして文句をつける謂われも無い。 そんで、おたくらの方から何か言っときたいことはあるか? ああ、俺ちゃんじゃなくてあさひにだけどさ」 「神戸あさひに伝えてくれるのか? 彼のサーヴァントとして、お前はそれでいいのか?」 神戸あさひに思いを寄せる少女のサーヴァントとして、マスターの想いを伝えること。 今まさに行われているかもしれない神戸あさひとの接触が歯車のかけ違いに終わる危惧もある以上、保険としてはありがたい。 だが、聖杯を狙う神戸あさひのサーヴァントとしてはそれでいいいのか。 マスターの想いを感じることで、かえって神戸あさひの迷いや悩みを深めることは危惧しないのか。 そういったリスクは気にならないのかと尋ねれば、渋みのある大人の声を伴った男はこともなげに答えた。 「殺されちまったしょうこちゃんの人生が懸かってる以上、おたくらはおたくらで聖杯が要るんだろう? なら、どのみちしょうこちゃんとあさひは最後に手を取り合えねぇところにいる」 あさひが願いを叶えりゃあの子も取り戻せるかもしれないが、傍目に見て弱小主従の俺らにベットできねぇことも分かる、とも付け加えて。 「せめて言い残しは無いようにしといた方がいいだろ。あさひのヤツ、『飛騨さんは俺のせいで死んだ』って気にしてたからな」 「松坂さとうの敵だのといった事情に関わらず、私怨で殺し合おうとするわけでは無いと分かっていた方がマシってことか」 恨みっこ無しで殺し合いましょうと言うには、互いのマスターの良心の呵責という点において問題が大いにある。 だが、他でもないマスター自身が怖れていたように、関係が拒絶に終わったままで決戦を迎えるよりはマシだと言われたら違いなかった。 「そっちのマスターにとっても、あさひと話したいことが未練だったんだろ? ウチのあさひに礼が言いたいって話なら、それ自体は歓迎しないもんじゃねぇ」 それどころか、話題を向けられたのはまさにこちらのマスターの願いについてだった。 ――さとうに信じて欲しいし、私に勇気をくれたあの子にお礼を言いたい。 出会って間もないころから、彼女はそれが望みだと伝え続けてきた。 彼女が松坂さとうを選んだ今でもそこを変えられないことは、分かっているつもりだった。 その願いのうち一つが、特殊な状況下であれ叶いそうになっている。 こちらとしても、拒むべくもない提案………………だと、見なしていいはずだった。 マスターの未練が、ひとつ消える。 しかし。 ――地上に戻るまで振り向いてはいけないという誓いを破ったオルフェウスは、妻を永遠に失った。 直観めいたものが、言葉を詰まらせた。 それを別の意味で受け取ったのか、赤黒のサーヴァントは流暢に続ける。 「まぁ、向こうの状況が落ち着かないと、何て言うのかも決められることじゃねぇか。 こっちだってあさひを死なせないだけの援護は念押ししてあるが、念話が切られてるのが引っ掛か――」 「いや……申し出はありがたいけど、考えさせてくれないか」 状況のゴタゴタを抜きにしたところから、生じている躊躇い。 それが思わず声に出てしまって、覆面の男にも怪訝そうな空気が伝染する。 「なんだ、もしかしてあの砂糖女に気兼ねしてるのか? 自分のダチと恋人の兄貴がいい空気になるのさえ許されない感じだったりする?」 「いや、遣り取り自体は可能だと思う……ただ、終わらせていいものかどうかが分からない」 「終わらせる?」 無意識に『終わらせる』という言葉を使ってしまったことに気づき、違和感のもとが見えてきた。 ――調子乗るんじゃないわよ、バカ。最後に笑うのは私だっての マスターが松坂さとうにそう啖呵を切ったのは、本心であるように見えた。 ただ生き残りたいという、小さくとも否定されるべきでない願い。 もっと外の世界で飛び続けたい、歌い続けたいという、ボクにとっての戦う理由。 かつてシアンに抱いた動機であり、今もそれは戦うに足りると信じている。 ――私ね。やり残したことと、やり直したいことがあるの だけど、そもそも彼女が生き残りたいと願ったのは、誰と誰の為だったか。 「……ああ、お前が何に引っ掛かったのか、分かった気がするよ。 いや、想像だけどな。俺ちゃんだって『あさひの身内がいるかも』って考えた時は、そっちに転んだらヤバイと思ったさ」 ボクはよほど、表情を凍りつかせたらしい。 覆面の向こうから向けられる声が、やれやれと共感を伴ったものに変わったからだ。 「マスターは、神戸あさひという少年は、悪い事ができる人じゃないと言っていた。炎上騒動の時だけど」 「いいヤツだよ。そんで、そっちの嬢ちゃんもとびっきり友達思いで、他人思いで、イイ娘だと聞いた。なら、俺の想像で当たってるのか?」 「たぶん。優しい人は、ときどき人のために命を投げ出してしまうから」 ボクも、かつては大切な少女の命を糧として命を繋いでもらった。 そして、その彼女は二度目の別れの時も、最後までボクが生きることを考えてくれていた。 ――今のあなたなら、きっと一人で戦える… ボクの愛の終わりは。 お互いがお互いに、手放し合うことだった。 シアンを手放した選択を、やり直すべきだったとは考えたくもない。 だけど、シアンに、別れを受け入れさせてしまったものが。 私がいなくてもいいのだという選択肢を向かせてしまったものが。 ボクとオウカとの、かつてはシアンとの暮らしにあったような家庭の団欒だったり。 シアンのことを認識できないシャオがいる時の会話に、上手く混ざれないことだったりと。 自分がいなくても大切な人達には影響がないという、諦めと孤独が募ったことに、よるものだったのなら。 それは、やり直したかった。 僕もオウカも君のことを大切に思っていると、否定したかった。 彼女が自分のことをいなくてもいい死者なのだと思うような事には、したくなかった。 それは、そのままマスターにも当てはまってしまうかもしれない。 松坂さとうとの間にあった信頼関係を築き直すという、生前に成し遂げたかった思い出作りを終えて。 松坂さとうも、神戸あさひも、自分がいなくても願いの為に突き進むから、影響はないという確信を得て。 神戸あさひにお礼が言えなかったという未練までも、清算してしまった時に。 「しょうこちゃんが、友達やあさひの為に聖杯を諦めるかもしれないって、お前さんは考えたのか」 飛騨しょうこが、彼女自身の命≪じゆう≫を、差し出してしまうこと。 彼女と共に飛びたいサーヴァントとして、ボクはそれを恐れているのだ。 ◇◇◇◇◇◇ 「ごめんね」 「どうして、謝るんですか?」 「半端なことしてるって、思ったから」 松坂さとうの味方をしていることは明らかでありながら、今もなお神戸あさひを死なせたくない情をかけていること。 元をたどれば、昨夕の炎上騒動によって神戸あさひの参戦を知ったことに端を発してから、先刻の殺し合いに至るまで。 少なくとも、飛騨しょうこには『神戸あさひを選ぶ』という選択肢はあった。 そうしなくてごめんなさいと謝罪することは、よけいに中途半端だとしょうこは自覚している。 それでも、今こうやって会話を望んでいることだって、彼にとっては辛いだけかもしれない。 飛騨しょうこの第一声は、そういった全てを包括したものだった。 「中途半端な勇気が、いちばん人を傷つけるって、私は分かってたのにね」 公園のベンチのようにちょうどいい場所は住宅街には無く。 裏路地に、じかに腰を下ろすようにして、二人は座っていた。 氷で作られた趣味の良いとはいえない人形に一定間隔で追従されながらも、場所は少しだけ移動した。 間もなくして夜が明ければ、神戸あさひ自身の血によってできた血だまりが眼前へと露わになってしまうから。 それは、先ほどまでの二人があまりにも情けなかったと、気まずい悔恨をもたらしてしまうから。 「それは、違います。俺の方があなたを拒絶して……中途半端だったのは、俺の方が先だ」 あの頃のままの、飛騨しょうこさんだ。 勇気を出したいと足掻いて、優しいから自分を責めてしまう、いつかのあの人だ。 そんな既視感で、あさひはとにかく言葉を次いだ。 憎悪に動かされていた時には思い至らなかった、彼女にとっての神戸あさひがどうだったかについて。 ――来ないでくれ。あなたのことは、巻き込みたくないんだ 何て、ばかなことを言ったのだろう。 神戸あさひは、聖杯を目指していて。 飛騨しょうこは、聖杯のためには倒すことになるマスターの一人で。 それなのに『飛騨しょうこを巻き込みたくない』なんて白々しいことを、どの口が言った? たとえ松坂さとうとの因縁に決着がついても、飛騨しょうこがマスターであることは変わりないのなら。 よくも彼女のことをを殺して利用したなと糾弾しながら、これから殺す人達の中に彼女も含めているお前だって、悪魔じゃないか? 「ねぇ」 重たい沈黙を回避しようとしたのか。 しょうこは距離を詰めるように、あさひの顔をしげしげと覗いてきた。 「ちゃんと、ごはん食べてる?」 「え…………どうして?」 「いや、ここでの生活、一か月もあったじゃない? その、パンも無かったし、お腹すいてないかなって……」 「晩御飯は食べたから、大丈夫です……」 そこを心配されるとは思ってなかったという、拍子抜け。 ある意味この人らしいのかなという安堵と、『パンも無かったし』で以前からそんなに栄養失調を危惧されていたのかという恥ずかしさと。 リッツパーティーをしたなんて言ったら、もっと栄養のあるものを食べなさいと逆に心配されるかなと、数時間前を思い出す。 今思えば、デッドプールはあの時。 少しでもこちらが暗くならないように、気遣いとして場を盛り上げてくれたのだろう。 「あの、先に、サーヴァントに念話しませんか?」 「え?」 会話を持たせるように切り出すのも、どうかと思ったけれど。 デッドプールに、戦闘終了の念話を送っていなかったと気付いた。 「下手すると、まだ戦ってるかもしれないし……」 「あ、そう、そうよね! だいぶ可愛そうなことしてたわ」 そして彼女にとっても、その放置は恥ずかしいことだったらしい。 当然ながら、彼女達とともにいた鬼は、はっきりと松坂さとうの指示を仰ぎ、指示に従っていた。 つまり、ヤツと契約してるのは松坂さとうで、デッドプールに足止めされた方のサーヴァントは飛騨しょうことの契約者だろうと想像はできる。 マスター同士が座り込んで話をしているのに、サーヴァント同士が下手すれば戦いっぱなしというのは申し訳ない。 松坂さとう絡みで、デッドプールに無碍な態度を取ってしまった後悔もあり、あさひは彼にこそ謝らなければと心を重くした。 ◇◇◇◇◇◇ ――すべて、亡くしてた。 ◇◇◇◇◇◇ 情けないところも含めて、なるべくありのままデッドプールに話した。 突き放すような態度を取ったからには、せめてそうすべきだと思ったから。 『まずはお前さんが無事で良かったよ。 令呪も念話もノーサンキューだったのはいただけねぇが、反省はしてるだろうしな』 デッドプールは、あさひのことを責めなかった。 彼があさひの為に、松坂さとう殺しの汚れ役を被ろうとしてくれたことは、分かっていた。 その上で、デッドプールの方もまた『あさひが殺害失敗を期待していたこと』を察していただろうにも関わらず。 『俺から一つ、言えるとしたらさ』 それどころか。 松坂さとうに言ったこと、松坂さとうに言われたことを話したところ。 ひょい、とテレビ画面ごしや漫画、絵本の仕切り線の向こうから手を伸ばすように。 空間を無視して手をのばし少年の頭を撫でるような、それぐらいに事もなげに言った。 『お前は松坂さとうを言い負かす必要なんかなかったよ。 だって、お前は『全部やり直す』って言ったんだろ?』 こいつは、黙ってそっちに邁進してろってことじゃないぜ、と注釈が入る。 そもそも、俺はお前が幸せになれるなら方法はなんだっていいんだ、とも但しをつけられて。 『お前と松坂さとうは、実のところ同じ娘をめぐって争ってるのとは、もう違うのさ。 シュガー・キッドナッパーが言ってる『しおちゃん』は、自分が攫ってきた子どものこと。 お前が暮らしたい妹は、やり直した先にいる『初めから幸せだった妹』なんだろ?』 あっけらかんと、まるで妹の乗り換えを肯定するかのような言い草。 だが、デッドプールは何も、本来の妹ではなく思い通りになる者を飼えばいいという主張に添うているわけではない 『あさひにとって、【今のしお】は敵なんだろ? んで、しおの方だって伝言を聞く限りそのつもりでいる』 そこは既に通過した問題なのだから、嵌るところじゃないと言っているのだった。 なぜならデッドプールは、神戸あさひがそう言ったことを、聞いているから。 それは神戸あさひが悪魔のような実父の血を引いたせいではなく、そうすると腹を括れる奴だと、言ってくれたから。 『あさひは、ちゃんと分かってるよ。しおは連れ戻せるモノじゃないってことも、妹の為じゃなくて自分の為だってことも。 でも、死んだはずの女と、死んでほしくなかった【飛騨さん】が一緒にいたから焦っちまったのさ』 松坂さとうが、『神戸あさひの恩人』もあの場に引き連れていたこと。 麻薬の服用にとって人相さえも豹変したあさひが人を殺そうとする現場を、少女が見ていたこと。 少女の言葉を聞き入れて攻撃を止める訳にこそいかなかったけれど。 その動揺は、確かに迷いとして現れていた。 その人は、殺意を知る前の神戸あさひを理解しようとしてくれた人で。 暴力を使うようになる前の、あさひを知る数少ない人だったから。 妹への想いの丈を聞いて、そこまで大切な人を想えるなんてすごいと、肯定してくれた少女だったから。 そんな少女が聞いている前で、しおだって殺すと決めたんだと開き直ることをためらった。 だからさ、とデッドプールは続ける。 『せっかくおしゃべりする機会なんだから、もっと根っこのところを聞いてやりな。 どうしてあの女と一緒にいるってことだけじゃなくて、その子が何を望んでいるのか。 そこを分かってないと、たとえこの先【飛騨さん】があの女と別れたって、モヤモヤは残ったままだぞ?』 あさひの今の心境を先読みしていたかのように、ずばりという言葉まで添えた。 『お前さんのことだから、やり直しの為に、この人をもう一回死なせるんだ、とか。 自分が死ぬか殺人者になるかの預言を聞いたハリー・ポッターみたいな顔してるんだろうけどさ。 その子は、自分のことをお前さんに殺される被害者だなんて、思ってないかもしれないだろ』 ◇◇◇◇◇◇ 『そっか、あの子のサーヴァントは、ちゃんとあの子のことを想ってくれてるんだね』 互いの経緯を伝え合った後に、しょうこが発した感想はそれだった。 いきなり挑発的な感じで銃口向けられた時は焦ったから、しょーじきほっとした、とも。 『言動が道化のようであったのはたしかだけど、そういう外側の印象よりもずいぶん理性的だったよ。 少なくとも、僕がマスターのことを想っているように、彼も自分のマスターを想っている、という様子だった』 『うん、さとうのキャスターみたいなサーヴァントもいるって分かった後だったから、そうじゃなくて良かった』 まぁ、良かったって言っても、そういう半端なところがダメなんだぞって言われたらその通りなんだけどね、とも続けて。 『マスターは…………伝えたかったことを、伝えられそうかい?』 『その話はしたいよ。でも、それだけじゃダメだなって、思い始めてるところ』 変わらず気を遣ってくれるGVに、そう返した。 飛騨しょうこの人生を変えてくれたことに、感謝を伝えたいのは変わらない。 しかし、いざ目の当たりにすると、想いを馳せてしまったことがある。 『アーチャー』 それは、飛騨しょうこ以外の人々の、人生についてだった。 『自分にできる事はないって、寂しくて、悔しいことなんだね』 『……ボクの知るマスターは、たくさんの事をしてくれたよ』 『ありがとう……でも、私の話だけでも無いかな』 『どういうこと?』 『んー、大切な人にはもう慰めてくれる人がいたり、むしろ自分が枷になってたかもしれなかったり。 そう思っちゃうような子を見たことがあった、のかな』 けっこう前に、君が出てくる夢を見たんだけどね、とは言わない。 ガンヴォルトにとっての運命の人であるらしき『彼女』がそんな風に思っていたことは、彼を傷つけるかもしれないから。 夢を介して記憶を共有することは、本来であれば契約で繋がりを持ったマスターとサーヴァントの間にだけ起こることだ。 にも関わらず、飛騨しょうこの見た夢がGVではなく、彼とともにいた少女の見ていた世界だったこと。 それは、長らくその少女が生前のGVに取り憑いてその一部となっていたせいかもしれないし。 彼女の謡精としての特性が『精神感応』――他者との同調を本義としていたものだったことに依ったのかもしれない。 『とにかく、そういう子の気持ちが、ちょっとだけ分かったかもしれないって、さっき思ったの。 私は何もできないし、半端者でしかいられないんだって、本当に悔しかったから。 さとうも、あの子も、目指している幸せの中に、私がいないように話してたから』 松坂さとうは、心の弱いところを見せてくれるようになった。 神戸あさひは、優しさからしょうこを突き放そうとしてくれた。 彼女や彼が、なにがしかの感情を持ってくれた手ごたえは皆無ではなかったし、そのことは受け止めた上で。 それでも二人にとって優先順位の一番は、飛騨しょうこではなく、神戸しおなのだろう。 『私だけ生きてても……って、思わなかったわけじゃないよ』 松坂さとうも神戸あさひもいない日々に、飛騨しょうこは耐えられるかどうか自信がない。 だけど二人の方は違う。 しょうこがいなくなっても、神戸しおという少女がいれば幸いを得られるのだろう。 それなら、二人の方がよほど『可能性』と言うものを持っているのでは、と。 『マスター、ボクはマスターが生きてても仕方ないとは思わないよ』 『ありがとう……私もね、それだけじゃないって、アンタたちのおかげで気付けたんだ』 『ボク、たち……?』 きっぱりとした否定、そして複数形で表現されたことに、アーチャーが困惑した。 『聖杯戦争のおかげで、知ることができた人達、かな』 ガンヴォルトが、身も心も飛騨しょうこに捧げることはできないと言った理由。 その根源たる少女の夢を見たことで、しょうこは触れていた。 アーチャー・ガンヴォルトと、少女・シアンの【愛】だったかもしれない関係の、始まりと終わり。 シアンの視点からでは、『彼と一つになったところで、以前と同じ関係ではいられなかった』と悲観していたそれは。 しかしガンヴォルトにとっては、しょうこからのキスに応えることはできないと誓いを立てるほど、大切でもあったこと。 彼女が彼に対して無力だったと思っていても。 彼は彼女のことを要らないなんて思ってなかったんだ、と。 双方の想いを目の当たりにしたから、気づけた。 『私がいなくなった後に…………壊れちゃった幸せも、あったんだな、って』 蒼い雷霆の愛した蝶々が、己のことをどう思っていたところで。 比翼の少女がいなくなった痛みで、しょうこの知っている彼が構成されている。 そして、再会した少年もまた。 妹を失ったのだという喪失の痛みが、顔に声にと刻まれていて。 松坂さとうはいなくなったが妹は戻って来なかったと、しょうこが知らないことを叫んでいた。 『私はさ、あの子に楽しい事を教えてあげるつもりだったんだよね。 でも、さっきの彼はとても切羽詰まってて、あの時よりずっと幸せじゃなさそうだった』 聖杯戦争をやってるのだから当たり前だと言えばそうかもしれない。 けれど、『もっと楽しい事をしよう、遊ぼう』と、彼に向かって声をかけて以来。 彼がそれを実践するような生き方をしてこれた事は、無かったのだろうなと。 ちゃんと食べてるか聞いた時のぼんやりした様子で、『やっぱり』と思ってしまった。 『私がいたらそんなことにはさせなかったのにー、なんて偉そうなことは言えないけど。 それでも、休みの日に一緒に遊んだりとか、できることはいっぱいあったと思う』 松坂さとうに喉を裂かれたところで、しょうこの人生は途切れている。 その結末は、間違えてしまったという後悔として、体と心に刻まれている。 けれど、間違いの余波は飛騨しょうこ以外の人達にも及んでしまっていた。 松坂さとうは、神戸しおの元からいなくなったのだという。 もちろんそれは、常識としては誘拐犯の元から子どもが帰ってきたという話でしかないのかもしれないが。 松坂さとうと神戸しおの輪郭をここ一日でなぞったしょうこにとって、それは『破滅』に匹敵する出来事だと察せた。 神戸あさひも、『しおを取り戻して幸せになるんだ』と言っていたことが、できなかったのだという。 それは、さとうとしては身勝手なしおのモノ扱いだと評せるものだったのかもしれないが。 神戸あさひの『俺みたいになるな』という叫びを目の当たりにしたしょうこは、彼が妹の為を気取るような少年でないと知っていた。 自分がいなくなった後、世界は決して良い方に向かわなかった。 しょうこには、それが悲しい。 それがさとうにとっての『苦い』なのかは分からなかったけれど、とても痛くて悲しい。 『私、今まで未来のこと、あんまり考えたことがなかった。 私が死んだ後に、みんながどうなったかってことも』 さとうの刃によって喉元をざっくりと裂かれた時は、本音を言えばとても恐ろしく、苦しかった。 それでも、そんな痛みの比にならないぐらい、神戸あさひと、キャスターの間に振るわれる暴力は痛々しくて。 あれほど超人的でなくとも、かつての二人が同じぐらいの憎悪で殺し合いなり奪い合いなりしていたことを再認識して。 自分が死んだことで始まった崩壊が、二人を追い込んだことが、悲しくて、いたたまれなかった。 『私を殺した後で、少しでもさとうの心は重くなったのかな、とか。 私の遺体が発見されたって聞いたあの子は、何を思ったのかな、とか。 そういうことを、はじめて考えるようになったんだ』 しょうこが、さとうに殺されたことで。 しょうこが、あさひに最後のメールを送ったことで。 松坂さとうの居城は融れてしまったらしいこと。 神戸あさひが、松坂さとうを憎悪するようになったこと。 どちらも、飛騨しょうこはずっと知らなかった。 さとうから彼は敵だと聞いていたけど、『しおちゃんを探しているならそうなるだろうな』という想像で察していただけだ。 神戸あさひが、さとうに怨嗟の声を吐きつけるところに立ち会って、ようやく実感として追いついた。 『ちゃんと知りたいのよ。私が死んだ後に、何がどうなったのか。 私が聖杯を目指すとして、それでどうしたいのかは、その後に決める』 だから、神戸あさひが何を想っているかを知るためには。 だから、松坂さとうがこのままではどうなるのかを知るためには。 自分が死んだ後に何がどうなったのかを、きちんと知らなければいけない。 そうでなければ、次こそは間違えないために、何をすればいいのかが分からない。 『そうか……大切な人の知らない側面を知るのは、とても勇気がいる事だと思う。 そこに踏み込めるマスターは、やはりいい方に変わったんだと思うよ』 GVのほっとしたような声が、しょうこの羽ばたきを肯定する。 言い回しに不思議なデジャブがあったのが、なんだか嬉しかった。 ――もう変わってるんだと思うよ? ――いい方? わるい方? ――知らないけど~~ いい方だったみたいだよ、さとう。 ……と、ここにいない大切なもう一人に、心の中で報告する。 さとうの方はもう覚えてないかもしれないけどね、と寂しく付け加えながらも。 それこそしおちゃんの言った事だったら、彼女はさっき語ったように一言一句を覚えているのだろうけど。 『あーあ。あさひ君にキスした時も思ったけど…………やっぱり羨ましいな。神戸しおちゃん』 なぜって、飛騨しょうこが好きになる人は、いつも月(かのじょ)の周りをまわっているから。 GVにしか聞こえない声で、しょうこは本音をそう表現した。 ◇◇◇◇◇◇ 全部、やり直すんだ ◇◇◇◇◇◇ 「今までのことを、聞いてもいいかな?」 改めて向き合い、そう尋ねた。 その角度から問われるとは思っていなかったのか、あさひは驚いたネコのように眼を見開く。 「ああ、もちろん同盟相手のこととか色々聞き出してやるぞーってコトじゃなくてね」 自分でも言葉をまとめきれていないのか、否定するようにわたわたと手を振って。 「たぶんそっちの方が、質問をたくさんするより分かると思うから。その、お互いの気持ちとか、願いとか。 私も、ぜんぶ話すから。サーヴァントの事とか、話せないことはあるけど」 要は、問い詰め合いになるぐらいなら、打ち明け合いにしましょうと。 そういうことならと、あさひも頷く。 あさひとしても、『どうして自分を殺した奴なんかと一緒にいるんだ』なんて、問い質すような事はしたくない。 しょうことしても、『今まできっと大変だったでしょう?』なんて、傷口を切開するような直球を投げたくはない。 その上で、二人とも『いったい何があったの』という互いの物語のことを知りたかった。 何を思って、動いていたのか。 何を想いながら、聖杯を目指すのか。 神戸あさひとしては、『飛騨しょうこが望んでくれたこと』が何一つ叶わなかった人生を明かすことに、口の重さはあったけれど。 しょうこのこれまでを知りたいという想いがないはずもなく、頷いた。 飛騨しょうこは、話した。 松坂さとうがどんな友達で、どんな思いを抱いているのかということ。 神戸あさひと最後にあった夜から先の、1208号室を訪れた日のこと。 神戸あさひにメールを送ってから訪れた修羅場と、説得に失敗した時のこと。 未練だらけの人生を繋ぐために、聖杯を望んだこと。 昨日の昼間に、ばったり松坂さとうと再会したこと。 自宅がサーヴァントの襲撃に巻き込まれて、彼女を頼ろうと決めたこと。 その後に炎上騒動によって神戸あさひの存在は知っていたこと。 松坂さとうと共にいること、神戸あさひと共に戦わないことを、自ら選んだこと。 一晩じゅう行動を共にしているうちに、さる筋から神戸しおが来ているとも、知った事。 神戸あさひにとっては気の知れないことも多かったはずだけれど、最後まで言い返されることはなかった。 神戸あさひは、話した。 飛騨しょうこからメールを貰ったあと、1208号室をつきとめたということ。 忍び込んだ1208号室で、『ガソリンをかけられた飛騨しょうこの遺体』を見たこと。 松坂さとうと戦ったが、妹はその女と共にいることを選んで逃げたこと。 逃げ切れずに、松坂さとうは死んで、神戸しおは帰ってきたこと。 飛騨しょうこは、そこで一度だけ問いを挟まずにはいられなかった。 「どうして、さとうが死んだの?」 「逃げきれなくて、マンションから落ちて……一か八かだったのか、無理心中のつもりだったのかは分かりません」 そこから先は、松坂さとうの前で叫んだとおりの有り様で。 罪を犯した母親と、変わってしまった妹との断裂を受け入れ、一人でやり直す選択肢はあったこと。 それでも、どうしても、だめだったこと。それだけは耐えられなかったこと。 『神戸家にはじめから不幸がなかった世界』をやり直すことでしか、幸いを望めなかったこと。 神戸しおが別陣営にいると分かった上で、そうしようとしていること。 松坂さとうのサーヴァントが監視を残して行った以上、それらの話はおそらく彼女にも伝わる。 そのことに躊躇いはあったけれど、打ち明けた。 どのみちガムテが『神戸しおとはやり合っている』と明言している。 ならば、神戸しおに対する殺意を隠すことに意味はなかった。 話し終えれてしまえば、まるでやましいことを打ち明ける懺悔みたいだな、と思った。 相手は神様ではなくただの女の子で、だからこそ彼女はとてもとても、悲しそうにしていたけれど。 「だから、あなたが『大切な人のために頑張ってる』って言ってくれた俺は、もういません。 ここにいるのは、幸せになるために妹を敵に回した悪党だから」 「まだいるよ」 泣きそうな顔のままで、即答された。 「あさひ君はやっぱり人を想ってるよ。 マンションでも、さっきも、私が殺されたことに怒ってくれた。 それに、自分みたいな奴になるもんじゃないって言うところも、震えながら歩いてるのも変わってない」 言ってから、はっとしたように言い直す 「ううん、強くなろうとしてる人に、変わらないって言うのも失礼だった」 なんだか最後に会った夜みたいだねと、続けた。 「私はアンタの気も知らずに、アンタの過去をほじくり返して。酷いこと言って」 「酷くは、なかったですよ。あの時は俺が勝手に泣いただけで、あなたは俺を心配してくれてた」 「酷いよ。私は、あさひ君が見てきた世界が想像つかなかった。 今だってそうだよ。笑えなくなることがあったんだな、と思ってたけど。 …………想像していたより、ずっとずっと辛い結末になってた。誰にとっても」 それを感想として、しょうこの口はしばらく閉ざされた。 新たに知った事実を、一通り噛み締めるように。 あさひもまた、想いを馳せながら何も言えなかった。 しょうこが今に至るまでに、どれほどの勇気を出したのかを考えていた。 そんな良い人にそこまで優しくされながら、やはりあの女は彼女を利用している、という怒りがあり。 それでも、しょうこが今まで生き延びるために、自分よりよほどあの女は仕事をしたのだろうという事が情けなかった。 「……やっぱり、後悔するのはいやだな」 実際の時間にして、どのぐらいを経た後だったのか。 とても静かに、しょうこはそう言った。 大きな瞳からにじんでいた涙は、もう止まっていた。 悲しそうな顔のまま、しかし口元には控えめなほほえみがあった。 生前の最後に出会ったときに、あさひの涙を拭いてくれた顔と、よく似ていた。 それは松坂さとうのところに向かう決意の顔だったと、あの時のあさひは知らなかったけれど。 全ての物語を飲み込んだしょうこは、そういう顔のまま口にした。 「私、やっぱり聖杯がほしい」 此処まで来たら、もう戻れない。 分かっていたと、只頷いて。 隣に座り合ったまま、凍えた手は重ならず。 あさひとは敵同士になるという意味を、自覚して言った。 「そう、なんだ……」 神戸あさひも予想して、覚悟していたその言葉は。 しかし、神戸あさひが予想しなかった言葉として続いた。 「でも、もう自分が生き延びるためだけに、聖杯は使わない」 聖杯の使い道。 飛騨しょうこが生き延びたいと願うのは当然、と受け入れていたあさひは「え?」と驚きの声を漏らす。 「私だって、たくさん間違えたよ。結局、さとうにもあさひ君にも、何もできなかった。 私にもできることがあったらいいのになって、ずっと思ってた」 こんな殊勝なこと言ったって、さとうに腹が立たなかったわけじゃないけどね、と。 流石に『死体隠蔽の為に焼かれるところだった』という話は堪えたし、それは微笑ではなく苦笑としてごまかして。 「さとうのマンションに突撃した時の私は、とにかくしおちゃんは返さなきゃいけないって話をしてた。 誘拐とか後ろ暗いことじゃなくて、さとうは私が光の下に連れ戻さなきゃいけないんだって決めつけてた」 さとうの事を想いながらも、二人を引き離そうとした。 でもだめだったと、しんみりとしたまま呟いてから。 「あさひ君にとっては酷いことだけど、さとうといるしおちゃんは不自由なさそうだった」 『さとうを好いているようだった』と口にすることは、追い打ちをかけるようで躊躇われたけれど。 神戸あさひが幸せになる手段を、間接的に肯定していない言葉でもあったけど。 それでもしょうこは、さとうを選んだ。そこはもう譲れず、変えられないから。 「たとえ人から奪ったものであっても、さとうがしおちゃんを幸せにしたことは本当だと思う」 思い出す。 さとうと再会して、『さとうの愛は愛なのか』で口論になったこと。 しおに会いに行かないと選んだことを、『愛だと思うよ』と励ましたこと。 叔母さんがいなければしおには会えなかったのかと迷うさとうを、迷わなくていいと肯定したこと。 さとうとしおが結ばれることは、既に、しょうこにとって否定されるべきものではなかった。 「さとうの愛は、甘くて痛いよ。しおちゃん以外の人は、いくらでも奪われる。 でも、それが二人の幸せだってこと、愛があったことは、私には否定できない」 光の下で生きることだけが、幸せじゃない。 さとうと一緒だった一晩は、しょうこに常識外の想いを体感させていた。 あさひはただ、意外性と諦めをもってその言葉を聞く。 彼女に選ばれないことは理不尽だと思わず、しかし、しょうこが離れていくという実感によって震える。 でもね、と。 もう涙のない瞳は、あさひを見据えた。 「でも、やっぱり間違ってる」 ――さとうの愛は、間違ってる 池袋のカフェ。 まだまだ暑かった八月一日。 再会して喧嘩別れになった時と、結論は同じ。 そもそも、人の愛なんて第三者があれこれ語ることじゃない、と傲慢さを知った上で。 でもそれは、さとうのしたことが誘拐だからという理由では、もうない。 まして、反社会的だからとか、光の当たらない道に進んでいるからという理由でさえもない。 そこにしか咲かない幸せがあるのだと肯定した上で、認めた上で。 それでもなお、違うと思ったのは。 違わないと、愛の為なら殺してもいいんだと、言い切ってしまうには。 「だって私は、さとうに殺されたまま終わらなくて、本当に良かった」 飛騨しょうこの、たった一日の苦くもない時間は、かけがえのないものだったから。 「今日一日で、私は会いたかった二人に会えた。 やっぱりどっちのことも傷つけたけど。間違えてばっかりだけど。 それでも、私の知らなかったさとうをたくさん見て、あさひ君とも話ができた。 あの時に私が殺されたまま終わらなくて、本当に良かったと思ってる」 だから、さとうの愛を守るためにしょうこは命を奪われておくべきだった、と。 さとうの愛がしょうこの物語を終わらせたことが間違ってなかったとは、絶対に言えない。 一番の愛のためなら奪ってもいいと言われて頷くには、生きて果たしたいことが多すぎた。 「それは、全部あなた達が教えてくれたこと。 人生を変えちゃうような出会いが私にもあるって、分かったから決められたこと」 そして、これは。 あなたのおかげで決断できたから、あなたの元から離れますという話――でさえない。 松坂さとうを選んだ。神戸あさひを選ばなかった。 その選択は下されたと自覚はして、その上で。 「でも、さとうが間違ってるなら、さとうの味方をする私だってやっぱり間違ってる」 「それは……聖杯戦争で生き残るためにやってることだから」 生き延びるための生存策として、マスター同士で同盟することまで罪とは言えない。 その同盟相手が、神戸あさひにとって気の知れない相手だという事はまだしも。 マスター同士で同盟しているからと言って、その同盟者と同じ過ちを犯している事はイコールではない。 けれど、しょうこはその建前を否定する。 「自分が生きるために、さとうに生きてほしかったなんて、もう言えない。 だって私は、さとうがマンションから落ちて死んじゃうって聞いて、怒ったから」 神戸あさひの話を聞いて、ああやはり後悔は嫌だと前を向かせたもの。 悲しみだけでない怒りをもたらしたのは、『親友の死』だった。 聖杯戦争なんてものをやっているのだから、最後に雌雄を決することは分かっている。 だけど、しょうこの知らないところで、しょうこの死が引き金になって、さとうが死んでしまうなら話は別だ。 しょうこのいない未来ではさとうが死んでしまうと聞いて。 私が神様ってやつに怒らないとでも思っているのか。 「私は、さとうを死なせないために生きて帰りたい」 それは、生存欲求ではなく、友情のために戦って生きるという誓い。 そして、生存競争ではなく、大切な人と共に生きる為に人から奪うという、松坂さとうと同じ間違いの証明。 「だけど、それで悲しみが増えることも分かってる」 この愛が正しい事だと、さとうと違ってしょうこは割り切れない。 だから、願いを叶えた結果として悲しみが増えることはなるべく望まない。 まして、しょうこが死んでほしくない人は、さとうの他にもう一人いる。 たとえ聖杯戦争という枠の中では敵だとしても、聖杯によって救いたい人は一人ではない。 「それに、私はあさひ君にも不幸になってほしくない。 あさひ君に思いっきり笑ってほしいって約束したのは、ほんとうに本音だから」 聖杯戦争を終えた、その暁には。 聖杯戦争の終末を、さとうと共に迎えるにせよ。 さとうも既にいなくなっていて、他の誰かとの一騎打ちで迎えるにせよ。 その時まで生き延びたとして、飛騨しょうこは誰のために願うのかというのなら。 「私は、さとうから眼を逸らさなくて、さとうに殺されなかったところからやり直したいの。 死ななかった私が、さとうとあさひ君の間に立って、みんな幸せになれるハッピーエンドにする」 「やり直し……」 それは、神戸あさひも述べたこと。 だからこそあさひは、己がしょうこにその発想を与えたのだと気付く。 そして、しょうこにとってのハッピーエンドの形を聞かされて、ひたすら驚く。 「これが一番いい、なんて言わないよ。きっと私、アンタに酷いことを言ってるから」 そう、これは、神戸あさひにとっても願ったりかなったりという話ではない。 少なくとも、『神戸あさひの望むやり直し』では生まれなかった被害者は、確実にできる。 しょうこには、『さとうとしおの関係そのものを否定すること』は、もうできない。 もちろん、1208号室の営みが不法行為によって維持されている以上、しょうこに全てを何とかすることはできないが。 少なくとも、『さとうとしおが出会わなかった世界』を望むことだけは、できそうにないのだ。 さとうが叔母を失って己の愛を疑った時も、『二人の間には運命がある』と、はっきり認めたのだから。 その上で、それまでのように生き延びるため聖杯を取るだけでは、生まれない被害者もいる。 例えば、この世界にもいるという神戸しおだ。 さとうの話によれば、以前のしおはマスターとして自発的に歩くことなど、できなかった子だという。 もしも、さとうが『歩くのをやめないでほしい』と思ったその営みが、さとうの不在によって生じたものだとすれば。 しょうこが未来を変えることは、しおの成長をリセットする事も意味する。 「でも、傲慢になった私でも、まだあさひ君を笑顔にできるなら」 この世に、傲慢じゃない愛はないらしい。 なるほど『どっちも幸せになれるハッピーエンドはこうだ』と押し付けるのは、絶対に傲慢だ。 間違っているのは百も承知で。 それでも、間違っているのは分かっているから、埋め合わせはしないといけない。 神戸しおがいないとあさひ君が幸せじゃないなら。 やり直した世界では、私があさひ君にたくさんの幸せを教える。 「――その時は、会いに行くから。」 王子様を待つんじゃなくて、自分の足で会いに行く。 だからしょうこは身を乗り出した。 少年に顔を近づけた。 口ではなく、頬に。 ここにいる彼を選ばなかった以上、そこには一線を引くところだった。 歳のわりには頬骨も出ていなくて柔らかいそこに、唇をあてる。 いつか交わした『またね』のキスではなく、お別れのキス。 「だから、ごめんね」 これは、改めて伝えるつもりになったこと。 「ありがとう」 これは、前から伝えたかったこと。 ごめんね。ありがとう。 その人の為なら生きて死ねるという人に対して。 その人の為に生きて死ぬことを告げるとき、人は泣き笑いになるらしい。 ◇◇◇◇◇◇ それは、八月二日の朝。 暦の上では夏なので、夜明けは早い時間にやって来る。 かつて、しょうこがあさひに望んだ、『笑うべき太陽の光の下』はもうすぐそこにある場所で。 神戸あさひは、頬にのこった体温へと指先で触れながら。 どんな言葉を返すべきなのか、思考を彷徨わせていた。 【二日目・早朝/中央区・高級住宅街(裏路地)】 【飛騨しょうこ@ハッピーシュガーライフ】 [状態]:健康 [令呪]:残り2画 [装備]:なし [道具]:最低限の荷物 [所持金]:1万円程度 [思考・状況] 基本方針:私達の物語を幸せな結末に。そのためにも、諦められない。 0:ごめんね、ありがとう 1:さとうと一緒に戦う。あさひ君とは、きっといつか戦う。 2:それはきっと"愛"だよ、さとう。 [備考] ※松坂さとうと連絡先を交換しました。 【神戸あさひ@ハッピーシュガーライフ】 [状態]:疲労(大)、自己嫌悪(大)、松坂さとうへの殺意と憎しみ、そして飛騨しょうこへの困惑と悲しみ [令呪]:残り3画 [装備]:デッドプールの拳銃(懐に隠している)、着替えの衣服(帽子やマスクを着用) [道具]:リュックサック(保存食などの物資を収納) [所持金]:数千円程度(日雇いによる臨時収入) [思考・状況] 基本方針:絶対に勝ち残って、しおを取り戻す。そのために、全部“やり直す”。 0:飛騨さん、あなたは―― 1:折れないこと、曲がらないこと。それだけは絶対に貫きたい。 2:ガムテと協力する。後戻りはもう出来ない 3:さよなら――しお。 4:星野アイと殺島は、いつか必ず潰す。 5:櫻木さん達のことは、次に会ったら絶対に戦う……? 6:あの悪魔を殺す。殺したい、けど、あの人は―― [備考] ※真乃達から着替え以外にも保存食などの物資を受け取っています。 ※廃屋におでん達に向けた書き置きを残しました。内容についてはおまかせします。 【二日目・早朝/中央区・高級住宅街】 【アヴェンジャー(デッドプール)@DEADPOOL(実写版)】 [状態]:気道から肺までが冷気によりほぼ完全に壊死(だいぶ回復) [装備]:二本の刀、拳銃、ナイフ [道具]:予選マスターからパクったスマートフォン、あさひのパーカー&金属バット [所持金]:なし [思考・状況] 基本方針:俺ちゃん、ガキの味方になるぜ。 0:お前がそう望むなら、やってやるよ。 1:あさひと共に聖杯戦争に勝ち残る。 2:星野アイ達には必ず落とし前を付けさせるが、今は機を伺う。 3:真乃達や何処かにいるかもしれない神戸しおを始末するときは自分が引き受ける。だが、今は様子見をしておきたい。 4:黄金時代(北条沙都子)には警戒する。あのガキは厄(ヤバ)い [備考] ※櫻木真乃、ガムテと連絡先を交換しました。 ※ネットで流されたあさひに関する炎上は、ライダー(殺島飛露鬼)またはその協力者が関与していると考えています。 【アーチャー(ガンヴォルト(オルタ))@蒼き雷霆ガンヴォルト爪】 [状態]:健康、クードス蓄積(現在3騎分) [装備]:ダートリーダー [道具]:なし [所持金]:札束 [思考・状況] 基本方針:彼女“シアン”の声を、もう一度聞きたい。 0:マスター。君が選んだのはそれなんだね。 1:マスターを支え続ける。彼女が、何を選んだとしても。 2:ライダー(カイドウ)への非常に強い危機感。 3:松坂さとうがマスターに牙を剥いた時はこの手で殺す。……なるべくやりたくない。 [備考] ※予選期間中にキャスター(童磨)と交戦しています。また予選期間中に童磨を含む2騎との交戦(OP『SWEET HURT』参照)を経験したことでクードスが蓄積されています。 ※神戸しおと神戸あさひが、現在交戦関係にあるかもしれないと思っています 時系列順 Back ねぇねぇねぇ。(前編) Next ハッピーエンドをはじめから 投下順 Back ねぇねぇねぇ。(前編) Next ハッピーエンドをはじめから ←Back Character name Next→ 122 ねぇねぇねぇ。(前編) 神戸あさひ 130 ラブ&ピース アヴェンジャー(デッドプール) 122 ねぇねぇねぇ。(前編) 飛騨しょうこ 130 ラブ&ピース アーチャー(ガンヴォルト[オルタ])
https://w.atwiki.jp/yuri48moe/pages/67.html
出典:エーケービー四八で百合SS レス:130-133 好きな人に触りたくなる時って、本当に前ぶれもなくやってくる それは今日の休憩時間も同じで、自分に抵抗する事なく伸ばした指先は簡単に彼女の髪に触れた 楽屋には狙いすましたように私と彼女しかいなくて、彼女も私の手を目を細めて受け入れる もっと近づこうと椅子ごと動けば床と擦れて派手な音を立てた それに驚いてこちらを向いた彼女に苦笑いを零して肩をくっつける 冷房が効きすぎているせいか、触れ合った肩からあまり体温は伝わって来なかった 「麻里子どしたの?」 「んーなんとなくー」 「そっかー」 鏡を使って彼女を見ると、その視線は携帯をじっと見つめて、指はせわしなく動いている きっとブログでも書いてるんだろうな、って気にしなかったものの、どこか満足していない自分が居て 鏡越しにずっと視線を送って見れば1分くらいして携帯を閉じた彼女が首を傾げて見返して来る 薄く笑って自分の肩を叩くと彼女も少し笑って素直に頭を預けてくれた 私も首を傾けて、頬に当たるさらさらした髪の感触に時計の針がゆっくり進んでいるような気がした 二人の距離は充分に近いし、肩の重みは心地よくて思わず目を閉じてしまいそうだった それでももっと触れたくなるのは、楽屋に二人しか居ないから 目を閉じるのを躊躇ったのは、彼女の手が私の手に重なったから 「敦子?」 「なぁんか、暇だよね」 「まぁ空き時間だし」 「みんなコンビニ行っちゃったし」 「私と敦子しか居ないし」 「それはそれでいいんだけど」 言い終わった彼女が手を強く握る、そのまま逆の手で軽く体を引き寄せた 嗅ぎ慣れた筈の香水が新鮮で、仮にも仕事中だって事を忘れそうになる むしろもう忘れていなきゃこんな体勢にはなっていない気もしながら、額同士をくっつけた 黒目がちの瞳は至近距離でもしっかりと私を捕らえて不思議そうに光を反射させた 「ホントにどしたの?」 「んーなんか触りたいなーって」 「珍しいね」 「もっとくっついていい?」 「はーい」 「じゃあチューしよ」 「それはやだ」 即答で拒否されたものの、口調はそうでもないし、表情も本気で嫌がってはいない 瞳だってその先を期待している、と全部都合のいいように解釈しているのを彼女は気づいてる 顔を離せば下がった眉は若干呆れたようにも困ったようにも見えた この顔はなんだかんだ私の言うことを聞いてくれる顔だと分かって、思わず笑みを漏らせば、わざとらしい溜め息をつかれた 溜め息の後彼女がまた手を強く握ったのを合図に軽く触れるだけ、たちまち赤くなった頬をつつけば目で怒られた その視線をわざと勘違いしてさっきよりちょっと長くもう一度、今度は違うってはっきり口に出されてしまう 謝る気なんて全く含んでいないごめんを頬を膨らませて聞き流した彼女は横目で楽屋の入り口を見ていた 「あれ、敦子さんチュー嫌い?」 「そうじゃないです」 「…まだ帰って来ないっしょ」 「でも」 まだまだ休憩時間は残ってるし、他のメンバーがコンビニに出かけてからそこまで時間は経っていない もう数回キスしたところで別に誰に見られる訳でもない、はず それでもイマイチ私の言葉が信用出来ない彼女は、時計と入り口を交互にちら見していた 「敦子」 「はい?」 「私、キスだけじゃ足りないかも」 「え、待って、チューで我慢して、下さい」 「じゃあしてよ」 「ぁ…」 してやったりな笑顔の私と、してやられたと言わんばかりに口を開けたままの彼女 あまりにも二人の表情が対照的すぎてまた笑えて来たけどそれをグッと我慢する 急かすように自分の唇を指差して軽く二回叩くと、今日二回目のわざとらしい溜め息をついた 彼女の口から小さな幸せが逃げ切った少し後、知らない間に敏感になっていた耳が一人分の足音に気づく それは彼女も同じみたいで、反射的に手を離そうとしたけどその前に強く私が引き寄せる バランスを崩してすっぽり私の腕の中に収まった彼女がそのまま見上げて来て、柄にもなく息が詰まった でもそれは一瞬で私しか気付かずに妙な緊張感が二人を包む 「麻里子」 「まだ大丈夫だって、早く」 「でも、もう誰か」 「いいじゃん、誰か来たらさ」 この問答の間に更に近付いて来た足音に無理だと判断した彼女が私の肩を押した けれど腕力では私の方が強い、腕力だけじゃないけど なのですぐに追いつくと彼女の耳元に唇を寄せた 好きな人に触りたくなる時って、本当に前ぶれもなくやってくる そういう時ってやっぱり誰にも邪魔されたくないし、あまり見られたくもないものだとは思うけど 近付いてくる足音がもし私たちを邪魔しようとしているのなら、私はむしろ 「誰か来たらさ、見せつけてやろうよ」 「まり、こ」 私が彼女に三度目のキスをしたのと、扉の向こうの誰かがノブに手をかけたのは同時だった END
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5947.html
前ページ虚無の少女と蒼穹の少年 虚無の少女と蒼穹の少年 何度も何度も、必死で呪文を唱えたのに呪文は少女に応えてくれなかった。 既に日は落ちかけ皆が帰りだす中、少女はもうこれで最後にしようとありったけの気合いを込めて呪文を唱える。 その気合いと思いは、報われることとなる。 「きゃあっ!!」 轟音と共に現れたのは青い鋼の巨人。 やった。私はなんてものを呼び出せたのだろう。と思ったのも束の間。 その巨人は片腕を無くし、ところどころが痛んでいるのがすぐに分かった。 どうしよう、あの巨人は痛がっているのではないかと思った矢先、 巨人の胸元が開き、一つの人影が視界に入る。 ぴったりと身体に貼りつくような服に、見たこともない意匠の兜を被った小柄な、おそらく男性。 先に足場のような器具がついた紐に足をかけ、するすると降りてくる。 兜の人物は少女の前に立ち、兜を脱いだ。 若い。私と同じ位の年なのではないか。 顔立ちは悪くなく、むしろ整っていると言ってよい。 このへんでは見かけない系統の顔だ。しいて言うなら昔行商に来た、砂漠の民に近い。 所は変わってロマリア。 ハルケギニアの民の心をまとめる若き教皇。 その横には眼帯の青年が控えていた。 「我が天使よ、戻ったか」 ガリアのヴェルサルテイル宮殿では、 ウェーブのかかったすみれ色の髪と藤色のドレスの若く美しい貴婦人が、国王ジョセフに任務の労を労われていた。 否、ドレスを着ているから貴婦人に見えるのであって、身体は華奢ではあるものの胸の膨らみは無いに等しい。 男性物の衣装を着せればどこの王子にも負けない貴公子に早変わりするだろう。 そのような中性的な魅力の人物であった。 またまた所変わってアルビオン。 酒場ではとある狩人が森で怪我をしたときに「金色とすみれ色の妖精に助けられた」という話をしていた。 金色の娘はとにかく胸が大きくて、すみれ色の娘の胸は本当に平らだったとか。 あと、すみれ色の方は「こんな服しか無いのか」と、スカートに握り締めながらぶつくさ言っていたとかなんとか。 学園に仕えるメイドは、洗濯物を取り込んでいた。 彼女が居る所からでも、轟音と共に現れた鋼の巨人ははっきりと見える。 似ている。と彼女は思った。 タルブの生家の裏山に、にょきりと生えるように突き刺さっている橙色の鋼の翼と、倒れている桃色の巨人。 祖父と祖母はそれに乗って空から落ちてきたと話していたが、大人達は酒の席の与太話だと笑い飛ばしていた。 しかし彼女と従姉だけは真剣に、その話を信じていた。 ブリミルの昔話に出てくるような天にまで届く高き恵みの塔。 鋼の巨人たちによる激しい戦争。 天から舞い降りる鋼の天使たち。 それは彼女達にとっては、半分が真実で半分がおとぎ話であった。 祖父も祖母も年の割には元気で若く見えたが、半年前に流行ったガリア風邪であっけなく始祖の元へ召されてしまった。 しかし、そんなことは今はどうでもいい。 あの鋼の巨人は、一体何なのか。家の裏庭に突き刺さってるあれと同じ物なのか。 居てもたってもいられなくなった黒髪に月目のメイドのシエスタは鋼の巨人の方へ走り出していった。 少年にまっすぐ見つめられてどぎまぎしている少女が先に口を開いた。 「あ、あんた名前は?」 「俺は刹那・F・セイエイ。」 「俺がガンダムだ。」 前ページ虚無の少女と蒼穹の少年
https://w.atwiki.jp/vocaloidss/pages/181.html
いえいえ、そのようなことはございません。 女人というものは心に幾つもの部屋を持っているものでございます。 断じて。ええ、断じてそのような弱いものではございません。 姫様のお名前ですか。芽衣様とお呼び申し上げます。 まぁ世間では大殿様のご長女であそばしますので大姫様とお呼びしておりますが、 わたくしはお乳を差し上げた者でございましょう? どうしてもお名でお呼びしてしまって。 は? 本名は伝えられていないと仰いますか。 それは世の史(ふみ)には女人の名など記されぬのが常でございますものね。 芽衣様も幼い頃からわたくしのことをうばや、うばや、と慕って下さって、 それはもう可愛いお方でございました。 天真爛漫、天衣無縫、のびのびとお育ちあそばしましてね、それはもう・・・。 ◆ ・・・あれはもう随分と昔のこと。 大殿様とは仲がお悪く、戦になるやとも思われた隣のお殿様との間に和議の契りが結ばれて、 その若君様が芽衣様の許婚としてこちらに来られたのでございます。 芽衣様は御歳六歳。でも、もう聡くいらして、大人の話も気持ちも深く察するお力がお有りでした。 若君様の方は十一歳、そろそろ元服も近いお年頃。立派な殿御でございましたが、 父君の勇ましさよりは母君の優しさを受け継がれたお方とお見受け致しました。 歌舞音曲がお好きで、忘れもしません、初めて奥向きに挨拶に来られた時、 それはそれは見事な舞を一指しご披露あそばして。 御台様始めわたくしども一同、その扇捌きに溜息を洩らす程でございました。 芽衣様ですか。 それはもう、わたくしども下女の座からでもお目を奪われあそばしているご様子が判るほどで。 驚きましたのはその翌日、芽衣様が舞の調べをもう諳(そら)んじていらしたこと。 それからは毎日、ええ、それはもう御熱心にいつも謡っておいでで。 わたくしにも、舞を謡いたい、教えよ、としつこいほど。 「どうなさいました、芽衣様」 お答は存じながらお訊ねすると 「空に大きなお月さま」 ええ、あの夜は綺麗なお月さまでございましたね。 「若殿言われたのじゃ。あのお月さま見ると本当」 ほほほ、正しくはこうでございましたね。 『あのお月さまのご覧になっている所でこの謡いを舞うと必ず思いが叶うのです』 「それで訊ねた、何が本当」 芽衣様が謡えば若君様が何を叶えて下さるかと訊ねられたのですね。それで若君様は何と。 「いつも一緒 ずっと一緒 扇をくれたのじゃ」 それは本当に良うございましたね、と扇を持った小さなその細い指をお取り申し上げると、 にっこりされて「うん」と可愛いおつむを上下に大きく振られたのでございます。 ◆ さりながら許婚とは申せ実のところは人質。そう会えるはずもないのが道理でございます。 昨日の友が今日の敵、明日をも知れぬは武士(もののふ)の世の常。 情を移さぬようお二人を隔つは心配りとも申せましょうが、 今にして思えば残酷な仕打ちでございました。 「次はいつ会えるのじゃ」 そう聞かれる度に胸が潰れる思いがしたものでございます。 賢い芽衣様はわたくしの心を察してか駄々を捏ねることもなく、嘘と判る言い訳を申し上げると 「そうか」とだけ呟かれてそれ切り黙ってお仕舞でした。 政(まつりごと)には疎い奥向きのわたくし共にもお隣との不穏な空気が伝えられて来たのは その年の秋も深まる頃でしたでしょうか。 若君様の父君と大殿様との仲が再びお悪くなり、政所は戦への備えで騒がしくなりました。 各地から武士達が馳せ参じ、師走には雪の降りしきる中、次々と境の関を越えて行ったのでございます。 芽衣様のご心痛は如何ばかりでしたでしょう 明けて翌年。その年ほど暗く悲しい正月はございませんでした。 若君様の父君が討たれたのです。 表方の殿方たちは勿論のこと、奥向きも一緒になって勝ち戦に沸き立ってはおりました。 しかしその中で唯お一人、芽衣様だけが深く沈みきっておいでで。 若君様の心中を慮り、そしてこれから起こるであろうことをすでに悟っておられたのでしょう。 この時ばかりは神仏にもお恨み申し上げたく存じました。 お可哀そうに。 聡きゆえ人の幾倍もの苦しみを感じ、まだその小さな体に耐え切れれぬほど背負われて・・・。 初夏、卯月になりました。 討ち滅ぼした敵の人質などもはや無益無用、 将来の禍根を慮れば生かして置くことはむしろ有害と思し召されたのでしょう、 大殿様は若君様の斬首をお命じになります。 わたくしは偶々その時、御所で御台様のお供を仰せ仕っておりましたので、 大殿様のお言葉を直接耳に致しました。 急ぎ奥向きに戻り、信頼のおける侍女数人と共に若君様を逃す算段を始めました。 ええ勿論、発覚すれば命はございません。 仮に何故かと問われれば、若君様にもしものことがあったその時、 目に浮かぶ芽衣様のお姿がわたくしには怖ろしかったゆえ、と申しておきましょう。 若君様には女房装束を着て、まだ薄暗い、日が昇るか昇らぬかの内にお発ちいただきました。 芽衣様にはお目覚めになった後で申し上げました。 大殿様の恐ろしいご命令のことは伏せて、唯若君様には暫く別のさる場所にてお過ごしいただくこと、 これから御所も奥向きも騒ぎになるが心安くおいでになることをお願い申し上げると、 ああ本当に賢いお方、お顔をきりりとお引締めになり、小さく頷かれたのでございます。 前日から降り続く大雨の中、侍女共の足で峠を越え関所を過ぎるのはいかに早くとも二日はかかります。 その間、同い年で背格好も似た若者を身代わりに若君様の衣装を着せ、時を稼ごうとしました。 しかし事はそう甘く運ぶものでもございません。 その日の夜に露見し、すぐさま大殿様の命を受けた早馬が各地の関所に向かいました。 そして、ああ、幾日も経ずして若君様が討たれたとの知らせが。 それを耳にされた芽衣様はついに心が折れてしまわれたのでございましょう、 床に伏せってお仕舞になられました。 御調べ所では覚悟を決めて当夜のわたくしの行いを全て包み隠さず申し上げました。 ところが牢には暫く留め置かれただけで、また元の奥向きのご奉公が叶ったのでございます。 これはどうしたことでしょう。 聞けば芽衣様のお指図とのこと。また、御台様も芽衣様をいたくご心配になり、 もしわたくしが罰せられるようなことがあれば、もっと容態が悪くなるかも知れぬ、 と大殿様にご進言あそばしたからだそうです。 再びわたくしは芽衣様のお近くでお仕え致しました。 芽衣様は横になったままわたくしをご覧になり、唯一言「よかった」とだけ仰いました。 わたくしは思わず涙がこぼれました。ご自分のお辛いことを一言も仰らずに・・・ 若君様が討たれた事、そしてそれを命じたのが他でもない父君の大殿様である事を知って これ程お窶れなのに・・・何がよいものですか・・・お手元に残されたのは若君様の舞扇だけなのに。 「うばや、あの謡いをまた舞いたいのじゃ。うばやにまた教えてもらいたいのじゃ」 床の中から弱々しく伸びて来たその小さな細い指をそっと握ったまま、 わたくしは顔を上げることが出来ませんでした。 ◆ 月日は流れ、戦の世も終りました。大殿様は将軍となられ、帝からこの国の政を任されました。 芽衣様は御歳二十、お美しい姫御前にお成りあそばしました。 ええ、あれからご病気は一進一退でございましたが、お具合の良い時には謡われたり、 また田植えの見物などをされて早乙女達の唄を楽しまれたりもされました。 そうそう、そう言えば、 三年ほど前にご縁談が持ち上り都から若いお公家様が下向なされたことがございます。 勿論、帝との繋がりを強めたい大殿様のお計らいでしたが、そのお顔を一目見た芽衣様は 「あれは駄目じゃ。目が死んでおる。活きの悪い魚は美味くなかろう」と笑っておられました。 人の目があれば、お慎みあそばせ、とお諭し申し上げる所ですが、その時は芽衣様と二人だけ。 ついわたくしも「確かに」とお受けして笑い転げてしまいました。 しかし目尻に涙を溜めながらもわたくしは、芽衣様にはもうそのご生涯、 首を縦に振らせる殿方は現れないであろう、とも思っておりました。 芽衣様は心の奥底にあのお方の思い出を大切にそっと仕舞われたのです。 わたくしも、誰も入ることが出来ない、触れることも出来ない奥の部屋の扉の向こうに。 このご縁談の他にも、大殿様はあちらこちらの名立たる殿方を引合わせようとご執心であられました。 かつての過ち、ええ、わたくしは不忠者と言われても敢て申し上げます、 若君様との縁(えにし)を引き裂いた過ちを振り返ることなく、 繰り返し芽衣様を政の具にしようとされる大殿様。 そのような大殿様を芽衣様は笑って許し、憐れんでさえおられました。 大らかで、人に優しく、それでいてご自分には厳しく・・・。 芽衣様、なぜそこまでお強くなられたのですか。 ご縁談をお断りになる度に、その夜、人知れず謡われたあの舞のゆえですか。 その切ない歌声を迎えた大きく美しいお月さまがあの誓いの夜と何ら変わらぬゆえですか。 そのお月さまの元、小さな細い指で交わしたあのお方の温もりの思い出ゆえですか。 でもその思い出を心の奥に閉ざして、いつとは終わりの知れぬ胸の痛みに 一人静かに耐え続けておられたのでしょう? 人の世の定めを恨んではいつしか心を蝕まれ、魂が消え行くような怯えもおありでしたのでしょう? しかし、わたくしの問いに芽衣様は答えては下さりません。 今、わたくしの前には、ただ黙して語らぬ舞扇があるのみでございます。 ◆ 年寄りの由無しごとを恥をも顧みずお聴きいただきました。 ただ八百歳(やおとせ)も先におられる貴方様にはどうしてもお話申し上げたくて。 は? 芽衣様・・・いえ、その大姫様はか弱い女人で、養生の甲斐なく 病のまま若くして亡くなられた・・・と? そちらではそう伝わっているのですか。 いえいえ、そのようなことはございません。 女人というものは心に幾つもの部屋を持っているものでございます。 断じて。ええ、断じてそのような弱いものではございません。 それどころか、申し損ねましたが、今日は芽衣様の御祝言の日でございまして。 は? 生涯相手はいないと申したではないか、と仰せですか? 涙のわけを探し続け、もう一度あのお方と同じ夢を、と望まれた芽衣様。 この空の下でまた会えると信じて強く生きてこられた芽衣様。 そのような芽衣様の思いが天に通じたのでございましょう。 あ、芽衣様のお仕度が出来たようでございますね。それでは、これにて。 ◆ まあまあ、そのように恥ずかしがらずとも。いつもは勝気な姫様が今日に限っては可笑しなこと。 大丈夫でございますよ。お召しもお化粧も。このように綺麗な花嫁様が何処におられるものですか。 さあ、お急ぎなさいませ、舞扇をお持ちになって。 若君様があちらでずっと長いこと待ち焦がれておいでですよ。 終り
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/220.html
彼・彼女の顔が思い浮かんだ ◆Bn4ZklkrUA 「ところで健太郎さん。さっきから何をしてるんですか?」 「おかしいなぁ。いつもなら怪しい場所をどんどん触っていけば隠し扉の一つや二つ、すぐに見つかるものなのにー」 「さすがにそんなに簡単に見つかるようなら誰も苦労しないと思いますけど…」 「それでもこんなに探して、何も出ないのは最初から何も無かったと思うんだけどね」 「それは……」 改めてこの慰霊碑を一通り探索していた二人だが所詮は探索に素人。 しかも片方は闇雲になんでも弄って、罠が発動しようがどうなろうがお構い無しな行動が探索することだと 本気で思ってる自称ベテランだ。 最初から探索には不向きなコンビだったのだ。 何かがあったとしても見つけられるかどうか最初から疑わしいが…。 「それもそうですね……いつまでもここにいるより早く他の人達と合流した方がいいかもしれませんね」 「それもそうかもしれないけど、今から探すとなると大変じゃないかな?」 健太郎は別に殺し合いをしたいわけではないが、接極的に他人を助けたい理由もない。 いい手段があるのなら手伝ってもかまわないかなぐらいの動機はあったが。 「それについて私にいい考えがあるんです。実は私に支給されたアイテムが……じゃん、コレなんです」 余程自分のアイデアに自信があるのだろう。自慢げにバッグからそれを取りだす。 「え~と、それは?」 「なんでも遠くにも声を届ける事ができる機械なんですけど。つまり……」 ◇ ◇ ◇ 「え~と……つまり、それで人を集めるつもりなんですよね? でも、それを使用すれば人を呼ぶのは簡単だけど……危ないんじゃないかな?」 「はい、本当はコレを使うのに躊躇してたんです」 躊躇するのも当たり前だ。仮に拡声器を使った場合、殺し合いに乗った参加者も引き寄せる可能性がある。 「でも……こうしてる間にもこの島の何処かで誰かが誰かを殺してるのかもしれない。 誰かが誰かに殺されてるかもしれない……だから、だから私はそれを止めたいんです!! お願いです、健太郎さん。私に協力してください!」 そう言い切るとさくらは勢いよく健太郎に対して頭を下げる。 「えっ、ちょっと、急にそんなこと言われても……」 突然の急展開にさすがの健太郎も慌てる。 「でも、さっきの無敵結界なら誰にも負けないと思うんです。私だけではどうにもならないけど健太郎と一緒ならっ! お願いです! 協力してください!!」 再度、健太郎に対して頭を下げる。その真剣さにさすがに戸惑う。 空気の読めない彼でもここで『僕は別に他の人なんて…』と馬鹿正直に言えない。 それにこの島からは出たいが彼自身にはこれといった代案もない。 ならば……と思ったが、ふと、頭に思い浮かんだのはランスの傍若無人の姿である。 確かにこれが上手くいけばランスとも合流できるかもしれない。彼なら女性の声……さくらさんの声に反応するだろう。 まあ、合流したら合流したで自分は邪険に扱われそうだがその辺はなんとか言い包める自信は無くも無い。 だがその時、近くの男剣士が来たら……おそらく乱闘になるだろう。あの人は男はどうでもいいって性格だし。 そうなったらもう自分に止められるかどうか…まずい、それは凄くまずい。大乱闘だ。 その時の情景を想像して青くなる。 「え~と、さくらちゃんがどうしてもと言うなら協力するのはやぶさかでもないけどもう少し慎重に…」 「それは駄目です! こうしてる間にも殺し合いがどんどん進んでします! 例え危険でもそれを止める手段があるのなら 命を賭けるに値します!」 さくらは正義感が強く、とても頑固な性格だ。この時もこの殺し合いを打開できそうな手段に執着した。 「いや、でも、ほら、僕ら以外の参加者で物凄く危険な人だっているじゃないか。例えば超が付くほどの自己中心的性格で女性とみれば見境が無くて犯して、 その反面、男には無茶苦茶厳しい鬼畜で、そういう性格な上に無茶苦茶強いから手に負えない外道剣士がいるかもしれないじゃないですか」 「……そこまで酷い人がいるんですか? 嬉々として殺し合いに乗る人はいると思いますが……」 「え~と、それもそうですね。あ、あはははは」 健太郎の言葉にジト目で返すさくら。冷や汗を掻きつつ笑って誤魔化す健太郎。 確かにさくらも帝国華撃団の一員としてさまざまな悪人、怪人と対決したことはあるが健太郎の言い分はまるで子供の想像に出てくる 『ぼくが考えたさいきょうのわるもの』を聞いてるみたいで現実感が無いように思えた。 まあ、幾らなんでもあんなエロゲーにしか存在しないような、超自己中な鬼畜剣士が現実に存在するなんてどんなに説明されても 普通は誰も信じないだろう。 それにそれを納得させようにも説明する健太郎も弁が立つ方でもない。 大体、言葉を重ねて相手を納得させたとしても『どうしてそんな外道剣士の事に詳しいんですか?』と尋ねられたら誤魔化すか、 『僕の知り合いですから』と言わざる負えない。 さすがに下手に誤魔化そうとしたり、馬鹿正直にそんな外道が知り合いですと言おうものなら相手の不信感を買うだろうぐらいは彼も判ってる。 言いよどむ健太郎を余所にさくらの決意は変わらなかった。 「自分でも馬鹿な方法だと判っています。でも、私にはこの首輪を外す知識も技能もありません。 でも自分にしかできない事でこの殺し合いに抗いたいんです。 お願いです、健太郎さん。いざという時、必ずあなたを守り切れるとは言えませんが力を貸して……」 「その言葉、偽りでないのなら私も手を貸しましょう」 突然、自分達以外の声が聞こえ……反射的にそちらに剣を向け、身構えるさくら。健太郎もそちらに注意を向ける。 いつからそこに居たのだろうか。近くの森の傍に長身の少女が佇んでいた。 会話に夢中になっていて大声を出していたから聞こえてしまったのろうか。 自分のうっかりさを呪うさくら。 もっとも、健太郎はびっくりしたがそれだけだ。余裕があるのか鈍いのか。 おそらくその両方だろう。 だが少女はそんな二人の動揺を表面上は気にせずに言葉を畳みかける。 「先程の会話からあなた達もこの殺し合いに抵抗しようとしてるとしているみたいですね。なら私達は共闘できるのではないでしょうか?」 「えっ? それって……あなたも殺し合いに乗ってないんですね!」 最初は警戒していたさくらだったが相手も自分と同じこの殺し合いに抗う同士だと知って破顔する。 普通なら初対面の相手の言い分をここまで簡単に信じるものだろうかとも思えるがよくも悪くもさくらは純朴だった。 「はい、最初は人の声が聞こえて合流を考えたのですがあなた達が乗ってないかどうか判らなかった。 まずはあなた達の会話から判断しようとして気配を消して近づいたのですが……疑ってしまった事を謝罪します」 「そ、そんな! 気になんかしないでください! え~と……」 「神裂火織と言います」 「神裂火織さん……っていうんですか。私は真宮寺さくらと言います」 「それと僕は小川健太郎っていうんだけど、君も協力してくれるってどういう事なのかな?」 「言葉通りの意味です。あなた達はその拡声器使って人を集めようと考えているのですよね? それも危険を承知の上で。 だが護衛役がいればそういう危険を排除できる。その役を私は引き受けても構わないというのです」 『ま、まずい。まさか女性がもう一人いきなり現れて協力するとか急展開過ぎるよっ!』 さくらちゃんも可愛いけどこの人も別タイプの美人だ。 しかも……さくらちゃんよりおっぱいが大きい。 ランスさん、こんな大きなおっぱいを見たら前後の見境なしに押し倒すだろうなぁ、絶対。 この人もさくらちゃんも真面目そうだから襲われたらまず剣を抜くだろう…… 最悪、貞操を守る為にそのまま戦闘に突入するかもしれない。 ランスさん、相手が死んでも嫌みたいな場合以外は無理やりにでも…する人だし、 傍から見たら……それなんて強姦魔? ああ、どうすれば…… はぁ、やっぱりここは…… 「さくらさんの言いたい事はよく判りました。僕も協力しますよ」 「健太郎さん! ありがとうございます」 「でも、さくらちゃんや神裂ちゃんを危険な目に遭わせたくないよ。だからこれは僕が貰います」 そう言うとさくらから拡声器を奪う。 「きゃ、健太郎さん! 急に何をするんですかっ!」 「どういうつもりですか?」 さくらも神裂も健太郎の行動の意味が判らない。 「見ての通りさ。これで人を集めるのは僕一人でするよ」 「何を言ってるんですか! そんなの危険……」 「さくらさんは僕の力を知っているでしょ。なら僕だけで行動した方が都合がいいよ」 「能力ですか? ですがあなた一人でそれを使うなんて無謀では?」 「うん、そうだね。でも都合だけで言ってる訳じゃないんだ。君達にお願いがあるんだ」 お願い? 二人とも首をかしげる 「お願いですか?」 「そう、僕はあの山の上で人を集めるつもりだ。でもさすがに西の街とかまでは届かない。 だから僕が人を集めている間にそっちは二人に任せたいと思う。その方が効率的だと思うんだ」 「確かに二手に分かれて探索した方が効率的には妥当でしょう。ですがあなたはそれでいいのですか?」 「そうですよ。一人でなんて危険です! やっぱりここは三人で……」 「でも、こうしている間にも殺し合いが進んでいるって言ったのはさくらちゃんだよ。大丈夫、僕は死んだりしないから」 そういうとにっこりと微笑を浮かべる。 「で、でもっ!」 「じゃあ、僕はもう行くよ。人を集めたら西の街に向かうからそこで合流しよう。二人ともお元気で」 尚も喰い下がるさくらを尻目に健太郎は山の方へダッシュした。まるで都合の悪い事から逃げる様に。 「あ、待ってください!」 「いえ、待つのはあなたです。彼の言い分も一理あります。 可能な限り多くの人を救いたいのであるのなら分散して事に当たるべきです」 確かに言われてみれば二人の言い分も正しい。さくらも多くの人を助けたいのは同じだった。 完全に納得できない。だがここは健太郎の無事を信じるしかない。 「……判りました」 「では、まずはお互いの情報を交換しませんか?」 ◇ ◇ ◇ 「ふう、これでランスさんとさくらちゃん達が出会う事は無くなったね。さて、頂上から呼びかければ人は集まるけど…… どうしようかな……まぁ、なんとかなるか」 楽観的に、というかお気楽極楽にあっさりとそう締め括る。 自分の能力を過信してる、こういう性格だか、その両方で彼はこの状況でもある意味ブレていない。 さくらちゃんらに呼び止められない内に強引に拡声器を奪い、一人でこれを使用する為に別れる。 彼女たちに護衛よりも二手に分かれて殺し合いを止めに回った方がいいと言い含め、人を集めてさせて後で合流する。 ランスさんとさくらちゃんらを出会わせない為の苦し紛れから出た計画だが中々悪くないかもね。 あ、でもみんなと合流する時はどうすればいいんだろう…… なんとかなる……よね……うん、それは後で考えよう。なるようになるさ! とりあえず僕だけならこれでランスさん個人へ呼びかけても文句は言われない。 この近くに居るかどうかは分からないけどランスさんを見つける事ができれば僕だけなら言い包められる…… いや、男の顔なんか覚えていないとかでいきなり切りかかられるかもしれないけど。 まぁ、繰り返し説得して、おだてればまだ活路はある。うん、あると思う。多分。 後は他の人と喧嘩になりそうなら上手く割って入れればいいんだけど……。 彼女たちを巻き込みたくない為の苦し紛れの計画。この状況で拡声器を使用するのは危険なのも判っている。 ただ、ランスの事以外は口から出まかせを言ったわけではない。 誰よりも先にランスを確保して自分が他の人の間に立って緩衝材代わりになるつもりはある。 そうする事がこの状況ではベターな手段だと思えたから行動を起こす。 彼はお気楽極楽で空気が読めなくて軽薄な所もあるが完全にどうしようもない訳ではないのだ。 もっとも、後でさくら達と合流する時にランスをどう扱うかまで考えが及んでいなかったが…。 【G-7 西北部 一日目 黎明】 【小川健太郎@ランスシリーズ】 【状態】一ダメージ程の怪我 【装備】支給品の刀@不明、スコップ、拡声器 【道具】支給品一式 ランダムアイテム(一つはスコップ) 【思考】基本:なるようになるさ! 1:美樹ちゃんに怒られない内に帰りたい。 2:さくらちゃんみたいないい人がランスさんに…されるのはできれば避けたい。 3:山の頂上で拡声器を使いランスさんを確保したい。その後は…なるようになるさ! 4:人を集めたら西の街で合流する。 ◇ ◇ ◇ (あそこは話を合わせるしかありませんでしたが……これからどうすればいいのでしょう?) 急激な展開に内心戸惑っていたのは神裂火織も同じだった。 最初に殺そうとした相手、それが自分の想像以上に手練だった上に本気で殺そうとしたのに仕留められなかった。 このゲームで優勝を目指すにはただ殺して回るだけでは駄目だと悟り、 確実に倒せそうな相手、そして確実に仕留められる状況を見極めてから殺害する戦術に切り替えた。 他の参加者を探すべく、地図にある大きな墓標らしきものに足を運ぶ。 森に姿を隠れつつ建物を観察してみれば建物の傍で二人組の男女がなにやらウロチョロしてしていた。 あれで探索してるつもりなのだろうか。傍から見ていても素人なのは判った。 さて、あの二人をどうすべきか思案していると袴の少女の方が珍妙なかっこうの青年になにかを懇願している。 会話の内容に耳を傾ければ、大声を出せるアイテムを使って人を集めるというではないか。 ……正直、他の参加者がどうなろうが知った事ではない。 だが、危険を承知の上で人の善意を信じ、人を救う為に死地に飛びこもうとする勇気ある行為……でも…… 自分は元の世界に帰る為に優勝すると決意したのだ。 あの子の元へ急いで駆け付けると決めたのだ。 それだ。この状況を利用すればいいだけのことだ。彼らに協力する振りをして集団に混ざって気を窺えばいい。 人を集めるというのならその状況を利用して臨機応変に動けばいい。 そうと決まれば彼らに声をかけ、協力を持ちかけた。 彼らの信用を勝ち取る為に協力を約束した。 相手はそれを疑う事もせず拍子抜けするほど簡単で信じてくれた…信じたというより疑っていないと言うべきか。 だが…… 「無敵結界…ですか。それが彼の自身の源なのですね」 「ええ、あれは凄かったんです。傷一つ付いてなかったんですから」 「あなたもいったいどういう状況で彼を攻撃したのですか? 二人とも味方同士の様に思えたのですが…」 まさか、あそこで彼が独断専行するとは思いませんでした。 確かに彼女…さくらの言う事が正しければ私達がいる必要はありません。 さくらから聞いた範囲では一見、無敵に近い様に思えますが……少なくとも事前情報も無しに襲撃していたら苦戦は免れませんでした。 しかし、能力による自信もあるのでしょうが、彼もまたこの殺し合いを止める為に危険な手段を取る事を厭わない人間ですか… 「では情報交換も終わりましたし私達も街に行きましょう」 「そうですね、私達も頑張らないとっ! 行きましょう神裂さんっ!」 「ええ……」 私はこれまでの行動を一部を除いて嘘偽りなくさくらに伝えた。 最初に出会ったのはあなた達だという部分以外は……。 無論、自身がある男を襲撃した事も伏せる。 嘘はいつかばれる。だが、嘘がばれるまで集団の中に紛れて力を温存するのもいいかもしれない。 せめて、もう少し人数が減ってくれれば…そして私はあの子の元へ…。 (なんだろう……まるで火織さんって……昔のマリアさんに似ている様な…) 小川健太郎がランスの為(?)に単独で行動した様に、真宮寺さくらが神裂火織を疑わなかったのにも理由がある。 マリア・タチバナ 帝国華撃団の副隊長であり、同じ帝都を守る仲間。厳しさの内にも優しさがあり、隊長である大神やみんなの信頼も厚い。 でも、今でこそ大神さんやみんなと打ち解け合っているが、昔は他者に対して礼儀正しいが何処か距離を取ってる様な…人との交わり 避ける様なスタンスを取っていた。 火織とはこの島で出会ったのが初めてであり、まだ出会って間もない間柄だ。 それにさくらも人物眼が優れている訳でもないし、火織の容姿がマリアに似ている訳でもない。 ただ……それでも雰囲気が似ている様に思えるのだ。 理性的だけでは割り切れない何か。他人に距離をおき、どこか自分に対して捨て鉢というか… (でも付き合いにくいってだけで、この人も悪い人じゃないみたい) いきなり誘拐同然に呼び出され、見知らぬ者同士、殺し合いを強制させられたが健太郎さんも入れてこれで 殺し合いに抗う人間が三人目。まだ首輪を外す見通しもここから脱出する方策も立ってない。 だが、この不利な状況で同じ志を持った者同士が団結する事が出来たのは大きな前進に思えた。 少なくともこの時のさくらはそう思えた……。 【G-7 巨大な墓の下 一日目 黎明】 【真宮寺さくら@サクラ大戦】 【状態】健康 【装備】エクスカリパー@FFV 【道具】支給品一式 【思考】基本:この島の平和は私が守る! 1:大神さん、私に力を! 2:西の街を探索する。 3:二人とも何を考えてるかわからないけど、悪い人じゃないみたい。 ※火織と情報交換をしました。一部、嘘があります。 【神裂火織@とある魔術の禁書目録】 【状態】全身に軽い打撲 【装備】秋水@ONE PIECE 【道具】支給品 ランダムアイテム 【思考】基本:この殺し合いで優勝する 1: 一刻も早く優勝して元の世界に帰る 2:しばらく集団に紛れて力を温存する 3:彼女らの様な善人もこの島にはいるのですね… ※参戦時期は小説の一巻の上条戦後です。 ※さくらと情報交換をしました。 ※巨大な墓の下は健太郎とさくらが探索したつもりですが 素人の探索なので見逃しがある可能性があります BACK NEXT 039 聖剣の少女騎士 投下順 041 七転八刀 039 聖剣の少女騎士 時系列順 041 七転八刀 BACK 登場キャラ NEXT 017 最強の聖剣 小川健太郎 041 七転八刀 017 最強の聖剣 真宮寺さくら [[]] 014 この闇の先には―― 神裂火織 [[]]
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/20761.html
ここを編集 ■彼女と彼女の猫 -Everything Flows- 撮影監督 ■ツインエンジェルBREAK 撮影監督 ■殺戮の天使 撮影監督 ■通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか? 撮影監督 ■とある科学の一方通行 撮影監督 ■クドわふたー 撮影監督(廣瀬唯希と共同) ■薔薇王の葬列 撮影監督 ■デリコズ・ナーサリー 撮影監督 ■関連タイトル Blu-ray 彼女と彼女の猫 -Everything Flows- 完全版 rakuten_design= slide ;rakuten_affiliateId= 053df7e0.7c451bd1.0c852203.190c5695 ;rakuten_items= ctsmatch ;rakuten_genreId=0;rakuten_size= 468x160 ;rakuten_target= _blank ;rakuten_theme= gray ;rakuten_border= on ;rakuten_auto_mode= on ;rakuten_genre_title= off ;rakuten_recommend= on ; 随時更新! pixivFANBOX アニメ@wiki ご支援お待ちしています! ムック本&画集新刊/個人画集新刊/新作Blu-ray単巻/新作Blu-ray DVD-BOX アニメ原画集全リスト スタッフインタビューwebリンク集 最新登録アイテム Switch ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom Switch 世界樹の迷宮Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ HD REMASTER Switch ピクミン 4 大友克洋 Animation AKIRA Layouts Key Frames 2 小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女 1 ONE PIECE FILM REDデラックス・リミテッド・エディション 4K ULTRA HD Blu-ray Blu-ray 劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ 完全生産限定版 Blu-ray 映画『ゆるキャン△』 Blu-ray 【コレクターズ版】 Blu-ray ウマ娘 プリティーダービー 4th EVENT SPECIAL DREAMERS!! Blu-ray 天地無用!GXP パラダイス始動編 Blu-ray第1巻 特装版 天地無用!魎皇鬼 第伍期 Blu-ray SET 「GS美神」全話いっき見ブルーレイ Blu-ray ソードアート・オンライン -フルダイブ- メーカー特典:「イベントビジュアル使用A3クリアポスター」付 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! 虹が咲く場所 Blu-ray Memorial BOX 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Blu-ray BOX 特装限定版 地球へ… Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 神風怪盗ジャンヌ Complete Blu-ray BOX HUNTER×HUNTER ハンター試験編・ゾルディック家編Blu-ray BOX BLEACH Blu-ray Disc BOX 破面篇セレクション1+過去篇 完全生産限定版 MAZINGER THE MOVIE 1973-1976 4Kリマスター版 アニメ・ゲームのロゴデザイン シン・仮面ライダー 音楽集 テレビマガジン特別編集 仮面ライダー 完全版 EPISODE No.1~No.98 MOVIE リスアニ!Vol.50.5 ぼっち・ざ・ろっく!号デラックスエディション ヤマノススメ Next Summit アニメガイド おもいでビヨリ アニメ「魔入りました!入間くん」オフィシャルファンブック 『超時空要塞マクロス』パッケージアート集 CLAMP PREMIUM COLLECTION X 1 トーマの心臓 プレミアムエディション パズル ドラゴンズ 10th Anniversary Art Works はんざわかおり こみっくがーるず画集 ~あばばーさりー!~ あすぱら画集 すいみゃ Art Works trim polka-トリムポルカ- つぐもも裏 超!限界突破イラスト&激!すじ供養漫画集 開田裕治ウルトラマンシリーズ画集 井澤詩織1st写真集 mascotte 鬼頭明里写真集 my pace 内田真礼 1st photobook 「まあやドキ」 進藤あまね1st写真集 翠~Midori~ 声優 宮村優子 対談集 アスカライソジ 三石琴乃 ことのは 亀田祥倫アートワークス 100% 庵野秀明責任編集 仮面ライダー 資料写真集 1971-1973 金子雄司アニメーション背景美術画集 タローマン・クロニクル ラブライブ!サンシャイン!! Find Our 沼津~Aqoursのいる風景~ 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会[復刻版] 梅津泰臣 KISS AND CRY 資料集 安彦良和 マイ・バック・ページズ 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』編 氷川竜介 日本アニメの革新 歴史の転換点となった変化の構造分析 Blu-ray THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th Anniversary Celebration Animation ETERNITY MEMORIES Blu-ray おいら宇宙の探鉱夫 ブルーレイ版 Blu-ray 映画 バクテン!! 完全生産限定版 アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~ Blu-ray BOX 初回生産限定版 はたらく細胞 Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 Blu-ray 長靴をはいた猫 3作品収録 Blu-ray わんぱく王子の大蛇退治 Blu-ray 魔道祖師 完結編 完全生産限定版 魔道祖師Q Blu-ray Disc BOX 完全生産限定盤 にじよん あにめーしょん Blu-ray BOX 【特装限定版】 Blu-ray 鋼の錬金術師 完結編 プレミアム・エディション Blu-ray付き やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。完 限定版【同梱物】オリジナルアニメ Blu-ray「だから、思春期は終わらずに、青春は続いていく。」
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/731.html
遠くを見る目にはどこか憂いを湛えて。彼女は丘の上から遥か彼方を見渡す。 ちらちらと舞う雪は彼女のそばで儚く消えた。 そんな彼女を、ぽつんと座っているガーディが見つめている。 声をかける訳ではない。ただ座って彼女を見ているだけなのだ。 「いつまでそうしてる気だい?」 彼女は振り返りもしない。いや、きっと彼女は今まで振り返る事などなかったのだろう。 「わかんないけど……お姉さんが悲しくなくなるまで」 ガーディには彼女が今にも泣きそうな顔になりながら、そこに佇んでいるように見えていた。 なんとかして元気付けたいのに、自分は何も出来ない。 だから、彼女が少しでも元気になるように一緒に居る。 頭も悪いし、他の姉妹のように強くも無い。けれど元気ではあった。 だから少しでも自分の元気が彼女に伝わればいいな。ガーディはそう思っている。 「難しいことを言うな、お前は。なんで私が悲しそうに見えるんだ?」 「……わかんない。でもね、なんだろう……ぼやーって顔がなってて……えーと」 まだ幼いガーディは必死だった。何故? と問われても答えはなかなか見つからない。 だが、漠然と彼女が抱えている悲しみだけはひしひしと感じる。 初めて、ガーディが動いた。 「えいっ」 もふっ 彼女の尻尾は柔らかく、頬擦りするとほのかに日向のにおいがする。 それはそう、父母や姉妹と一緒に眠っている時のあのにおい。 彼女は少し困った顔で、はじめてガーディのほうを見ようと振り返った。 けれど、ガーディはしっぽと一緒に移動する。 そのガーディを追いかけて、彼女はまた回る。ガーディも回る。 くるくるくるくると、斜陽の丘を二人は回る。 「……ぷっ」 彼女がゆっくり動きを止める。 そして―― 「あっはははははは!!」 初めて、笑った。 その笑顔が嬉しくてガーディも笑っていた。 「変なコだな。本当に」 初めてガーディは彼女の顔をまじまじと見る。 左目の上の大きな傷、そして夕日を一杯に受けて金色に輝く髪。 それが全て神秘的で。 「キレー……」 口から素直な感想がこぼれる。 それを聞いた彼女はくすぐったそうな顔でくしゃり、とガーディの頭を撫でた。 「ありがとう」 「お姉さんはなんていうポケモンなの? スーパーきんいろふわふわ?」 「ふふ、違うよ。私は……いや、知らなくていい。きっと……どこにでもいる普通のポケモンだよ」 普通の、というのがなんだかすごく気になった。 まだ生まれて間もないガーディだったが、友達のロコンちゃんや、姉妹たち、両親と彼女を比べてみても、全然違う。 神秘的なその佇まいは幼いガーディの心にどんどんと広がっていく。 「……さて。そろそろお暇しよう」 彼女はそう言うとゆっくりガーディに背を向けた。 「えっ? どうしたの?」 「……少し、ここに居すぎたみたいだ。そろそろ他所に行くよ」 何故、居すぎては駄目なのか? ガーディにはいまいちわからない。 ただ、もう少し彼女と居たかった。 「ヤダ! もっとお話しよ! あそんで!」 彼女のしっぽにもふりと顔を埋め、いやいやと頭を振る。 そんなガーディを優しく撫でて彼女は言った。 「それじゃあ、目を瞑ってみっつ数えてごらん? 私が最後にすごいものを見せてあげる」 「ほんと? すごいの見れる?」 泣きそうな顔のガーディ。 彼女はこくりと頷いた。 ガーディは両手で目を隠し、数を数え始める。 瞬間、ふわっと暖かい風がガーディの頬を撫でる。 みっつ、数を数え終わったガーディの前に、もう彼女は居ない。 その代わりに、赤い、小さな石が彼女の居た所に転がっていた。
https://w.atwiki.jp/also_little/pages/632.html
\(^o^)/それがボクが最後に見た彼女の姿だった リオンがよくうpする画像のこと。 カマキリがバンザーイしてる。 (image/jpeg, 58980 bytes)ときたら間違いなくカマキリである。 豆しば 豆しばによるとメスのカマキリはオスのカマキリを食べちゃうらしい。
https://w.atwiki.jp/nightstalker/pages/30.html
Last update 2007年10月07日 黒髪のDandelion Girl 著者:知 「おとといは兎をみたわ。昨日は鹿、今日はあなた」 彼女は僕の「久しぶり」という呼びかけに振り返ると微笑みながら―何かを期待するかのような瞳で僕を見つめながら―そう言った。 ―なら、僕は彼女の期待に応えよう― 「しかし、どうして昨日があるんだろう。いつも同じ時間点にくるのなら今日しかないはずなのに」 僕がそう返すと僕達二人は暫く見つめあうとどちらからと言うのではなく笑い出した。 僕と彼女は20歳以上年が離れているわけもなく、又、彼女の髪はたんぽぽ色でもないし、瞳も青ではない。 寧ろ彼女はどこか市松人形を髣髴(ほうふつ)させる。 「うん、久しぶりだね。最後に会ってから何年経ったのかな?」 僕の最初の「久しぶり」という呼びかけに対して彼女はどこか踊るような口調でそう応えた。 「……6年かな?僕が中学に入学する年にこの町を去ったから」 彼女は僕のその言葉を聞くと小さく首を傾げて、微笑みながら 「……やっぱり、あなたの方が年上だったんだね」 と言った。 「君はやっぱりお嬢様だったんだね」 僕は彼女の言葉にそう返した。 彼女が着ている制服はお嬢様学校として有名な私立高校の制服だ。 僕と彼女は昔、よくこの場所で遊んでいた。 きっかけは、偶々僕が迷ってこの場所に来た時に彼女がこの場所にいた、ただそれだけのことだった。 そして最初に会った日に―初めて彼女と一緒に遊んだ日に―不思議な約束をした。 『互いに名前や年(学年)を教え合わないようにしよう』 これがその時の約束だ。 そして、僕がこの町を去ることになったとき、又、約束をした。 『次に会ったときに、名前や年を教え合おう』 彼女が又、僕に何かを期待するかのような瞳でみつめている。 ……僕からということだろう…… 「僕の名前は……」 そういい始めたとき急に沢山の鳥が空へ飛び立ち、その羽音で僕は自分が何を言ったか聞こえなかった。 でも、彼女は聞き取れたようだ。聞き返してこようとはしなかった。 だから…… 「君の名前は?」 僕はそう彼女に尋ねた。 彼女は踊るような口調で、微笑みながら……でもゆっくりと僕を焦らす様に 彼女はしばらく鳥の行方を目で追い、やっと答えた。 前の作品 次の作品 コメント 名前 コメント