約 775,702 件
https://w.atwiki.jp/asagesd/pages/26.html
トップページ トップページ 超大作 ☆SA・O・RI 『SA・O・RI』 第一章 『SA・O・RI』 第二章 『SA・O・RI』 第三章 『SA・O・RI』 第四章 『SA・O・RI』 第五章 『SA・O・RI』 第六章 『SA・O・RI』 第七章 『SA・O・RI』 最終章 ☆疑心~何かいる~ 何かいる 大作 ~貰いもの~ ☆運命 『運命』 第一章 『運命』 第二章 『運命』 第三章 『運命』 第四章 『運命』 最終章 ☆僕と彼女の記念塔 『僕と彼女の記念塔』 第一章 『僕と彼女の記念塔』 第二章 『僕と彼女の記念塔』 第三章 『僕と彼女の記念塔』 最終章 その他 ☆硫化水素殺人事件 狂気の行方 ☆恋愛シリーズ 札幌の中心で、愛を叫ぶ 18禁 ☆官能 ~淫らな君を~ 総合 - 今日 - 昨日 -
https://w.atwiki.jp/vocaloidss/pages/181.html
いえいえ、そのようなことはございません。 女人というものは心に幾つもの部屋を持っているものでございます。 断じて。ええ、断じてそのような弱いものではございません。 姫様のお名前ですか。芽衣様とお呼び申し上げます。 まぁ世間では大殿様のご長女であそばしますので大姫様とお呼びしておりますが、 わたくしはお乳を差し上げた者でございましょう? どうしてもお名でお呼びしてしまって。 は? 本名は伝えられていないと仰いますか。 それは世の史(ふみ)には女人の名など記されぬのが常でございますものね。 芽衣様も幼い頃からわたくしのことをうばや、うばや、と慕って下さって、 それはもう可愛いお方でございました。 天真爛漫、天衣無縫、のびのびとお育ちあそばしましてね、それはもう・・・。 ◆ ・・・あれはもう随分と昔のこと。 大殿様とは仲がお悪く、戦になるやとも思われた隣のお殿様との間に和議の契りが結ばれて、 その若君様が芽衣様の許婚としてこちらに来られたのでございます。 芽衣様は御歳六歳。でも、もう聡くいらして、大人の話も気持ちも深く察するお力がお有りでした。 若君様の方は十一歳、そろそろ元服も近いお年頃。立派な殿御でございましたが、 父君の勇ましさよりは母君の優しさを受け継がれたお方とお見受け致しました。 歌舞音曲がお好きで、忘れもしません、初めて奥向きに挨拶に来られた時、 それはそれは見事な舞を一指しご披露あそばして。 御台様始めわたくしども一同、その扇捌きに溜息を洩らす程でございました。 芽衣様ですか。 それはもう、わたくしども下女の座からでもお目を奪われあそばしているご様子が判るほどで。 驚きましたのはその翌日、芽衣様が舞の調べをもう諳(そら)んじていらしたこと。 それからは毎日、ええ、それはもう御熱心にいつも謡っておいでで。 わたくしにも、舞を謡いたい、教えよ、としつこいほど。 「どうなさいました、芽衣様」 お答は存じながらお訊ねすると 「空に大きなお月さま」 ええ、あの夜は綺麗なお月さまでございましたね。 「若殿言われたのじゃ。あのお月さま見ると本当」 ほほほ、正しくはこうでございましたね。 『あのお月さまのご覧になっている所でこの謡いを舞うと必ず思いが叶うのです』 「それで訊ねた、何が本当」 芽衣様が謡えば若君様が何を叶えて下さるかと訊ねられたのですね。それで若君様は何と。 「いつも一緒 ずっと一緒 扇をくれたのじゃ」 それは本当に良うございましたね、と扇を持った小さなその細い指をお取り申し上げると、 にっこりされて「うん」と可愛いおつむを上下に大きく振られたのでございます。 ◆ さりながら許婚とは申せ実のところは人質。そう会えるはずもないのが道理でございます。 昨日の友が今日の敵、明日をも知れぬは武士(もののふ)の世の常。 情を移さぬようお二人を隔つは心配りとも申せましょうが、 今にして思えば残酷な仕打ちでございました。 「次はいつ会えるのじゃ」 そう聞かれる度に胸が潰れる思いがしたものでございます。 賢い芽衣様はわたくしの心を察してか駄々を捏ねることもなく、嘘と判る言い訳を申し上げると 「そうか」とだけ呟かれてそれ切り黙ってお仕舞でした。 政(まつりごと)には疎い奥向きのわたくし共にもお隣との不穏な空気が伝えられて来たのは その年の秋も深まる頃でしたでしょうか。 若君様の父君と大殿様との仲が再びお悪くなり、政所は戦への備えで騒がしくなりました。 各地から武士達が馳せ参じ、師走には雪の降りしきる中、次々と境の関を越えて行ったのでございます。 芽衣様のご心痛は如何ばかりでしたでしょう 明けて翌年。その年ほど暗く悲しい正月はございませんでした。 若君様の父君が討たれたのです。 表方の殿方たちは勿論のこと、奥向きも一緒になって勝ち戦に沸き立ってはおりました。 しかしその中で唯お一人、芽衣様だけが深く沈みきっておいでで。 若君様の心中を慮り、そしてこれから起こるであろうことをすでに悟っておられたのでしょう。 この時ばかりは神仏にもお恨み申し上げたく存じました。 お可哀そうに。 聡きゆえ人の幾倍もの苦しみを感じ、まだその小さな体に耐え切れれぬほど背負われて・・・。 初夏、卯月になりました。 討ち滅ぼした敵の人質などもはや無益無用、 将来の禍根を慮れば生かして置くことはむしろ有害と思し召されたのでしょう、 大殿様は若君様の斬首をお命じになります。 わたくしは偶々その時、御所で御台様のお供を仰せ仕っておりましたので、 大殿様のお言葉を直接耳に致しました。 急ぎ奥向きに戻り、信頼のおける侍女数人と共に若君様を逃す算段を始めました。 ええ勿論、発覚すれば命はございません。 仮に何故かと問われれば、若君様にもしものことがあったその時、 目に浮かぶ芽衣様のお姿がわたくしには怖ろしかったゆえ、と申しておきましょう。 若君様には女房装束を着て、まだ薄暗い、日が昇るか昇らぬかの内にお発ちいただきました。 芽衣様にはお目覚めになった後で申し上げました。 大殿様の恐ろしいご命令のことは伏せて、唯若君様には暫く別のさる場所にてお過ごしいただくこと、 これから御所も奥向きも騒ぎになるが心安くおいでになることをお願い申し上げると、 ああ本当に賢いお方、お顔をきりりとお引締めになり、小さく頷かれたのでございます。 前日から降り続く大雨の中、侍女共の足で峠を越え関所を過ぎるのはいかに早くとも二日はかかります。 その間、同い年で背格好も似た若者を身代わりに若君様の衣装を着せ、時を稼ごうとしました。 しかし事はそう甘く運ぶものでもございません。 その日の夜に露見し、すぐさま大殿様の命を受けた早馬が各地の関所に向かいました。 そして、ああ、幾日も経ずして若君様が討たれたとの知らせが。 それを耳にされた芽衣様はついに心が折れてしまわれたのでございましょう、 床に伏せってお仕舞になられました。 御調べ所では覚悟を決めて当夜のわたくしの行いを全て包み隠さず申し上げました。 ところが牢には暫く留め置かれただけで、また元の奥向きのご奉公が叶ったのでございます。 これはどうしたことでしょう。 聞けば芽衣様のお指図とのこと。また、御台様も芽衣様をいたくご心配になり、 もしわたくしが罰せられるようなことがあれば、もっと容態が悪くなるかも知れぬ、 と大殿様にご進言あそばしたからだそうです。 再びわたくしは芽衣様のお近くでお仕え致しました。 芽衣様は横になったままわたくしをご覧になり、唯一言「よかった」とだけ仰いました。 わたくしは思わず涙がこぼれました。ご自分のお辛いことを一言も仰らずに・・・ 若君様が討たれた事、そしてそれを命じたのが他でもない父君の大殿様である事を知って これ程お窶れなのに・・・何がよいものですか・・・お手元に残されたのは若君様の舞扇だけなのに。 「うばや、あの謡いをまた舞いたいのじゃ。うばやにまた教えてもらいたいのじゃ」 床の中から弱々しく伸びて来たその小さな細い指をそっと握ったまま、 わたくしは顔を上げることが出来ませんでした。 ◆ 月日は流れ、戦の世も終りました。大殿様は将軍となられ、帝からこの国の政を任されました。 芽衣様は御歳二十、お美しい姫御前にお成りあそばしました。 ええ、あれからご病気は一進一退でございましたが、お具合の良い時には謡われたり、 また田植えの見物などをされて早乙女達の唄を楽しまれたりもされました。 そうそう、そう言えば、 三年ほど前にご縁談が持ち上り都から若いお公家様が下向なされたことがございます。 勿論、帝との繋がりを強めたい大殿様のお計らいでしたが、そのお顔を一目見た芽衣様は 「あれは駄目じゃ。目が死んでおる。活きの悪い魚は美味くなかろう」と笑っておられました。 人の目があれば、お慎みあそばせ、とお諭し申し上げる所ですが、その時は芽衣様と二人だけ。 ついわたくしも「確かに」とお受けして笑い転げてしまいました。 しかし目尻に涙を溜めながらもわたくしは、芽衣様にはもうそのご生涯、 首を縦に振らせる殿方は現れないであろう、とも思っておりました。 芽衣様は心の奥底にあのお方の思い出を大切にそっと仕舞われたのです。 わたくしも、誰も入ることが出来ない、触れることも出来ない奥の部屋の扉の向こうに。 このご縁談の他にも、大殿様はあちらこちらの名立たる殿方を引合わせようとご執心であられました。 かつての過ち、ええ、わたくしは不忠者と言われても敢て申し上げます、 若君様との縁(えにし)を引き裂いた過ちを振り返ることなく、 繰り返し芽衣様を政の具にしようとされる大殿様。 そのような大殿様を芽衣様は笑って許し、憐れんでさえおられました。 大らかで、人に優しく、それでいてご自分には厳しく・・・。 芽衣様、なぜそこまでお強くなられたのですか。 ご縁談をお断りになる度に、その夜、人知れず謡われたあの舞のゆえですか。 その切ない歌声を迎えた大きく美しいお月さまがあの誓いの夜と何ら変わらぬゆえですか。 そのお月さまの元、小さな細い指で交わしたあのお方の温もりの思い出ゆえですか。 でもその思い出を心の奥に閉ざして、いつとは終わりの知れぬ胸の痛みに 一人静かに耐え続けておられたのでしょう? 人の世の定めを恨んではいつしか心を蝕まれ、魂が消え行くような怯えもおありでしたのでしょう? しかし、わたくしの問いに芽衣様は答えては下さりません。 今、わたくしの前には、ただ黙して語らぬ舞扇があるのみでございます。 ◆ 年寄りの由無しごとを恥をも顧みずお聴きいただきました。 ただ八百歳(やおとせ)も先におられる貴方様にはどうしてもお話申し上げたくて。 は? 芽衣様・・・いえ、その大姫様はか弱い女人で、養生の甲斐なく 病のまま若くして亡くなられた・・・と? そちらではそう伝わっているのですか。 いえいえ、そのようなことはございません。 女人というものは心に幾つもの部屋を持っているものでございます。 断じて。ええ、断じてそのような弱いものではございません。 それどころか、申し損ねましたが、今日は芽衣様の御祝言の日でございまして。 は? 生涯相手はいないと申したではないか、と仰せですか? 涙のわけを探し続け、もう一度あのお方と同じ夢を、と望まれた芽衣様。 この空の下でまた会えると信じて強く生きてこられた芽衣様。 そのような芽衣様の思いが天に通じたのでございましょう。 あ、芽衣様のお仕度が出来たようでございますね。それでは、これにて。 ◆ まあまあ、そのように恥ずかしがらずとも。いつもは勝気な姫様が今日に限っては可笑しなこと。 大丈夫でございますよ。お召しもお化粧も。このように綺麗な花嫁様が何処におられるものですか。 さあ、お急ぎなさいませ、舞扇をお持ちになって。 若君様があちらでずっと長いこと待ち焦がれておいでですよ。 終り
https://w.atwiki.jp/hshorizonl/pages/485.html
歌うたいの小鳥が、殺されたことによって。 ――このお城は、もう融れちゃうから。 友達だったかもしれない少女は、そうなることを確信していた。 ――もう今までのやり方じゃダメだ。 王子様だったらよかったと言われた少年は、武器を手にするようになった。 雨の中、小鳥の声が消えてしまったことで、全てが融けた。 ◇◇◇◇◇◇ ――もう変わってるんだと思うよ。 さとうが私にそう言ったのは、もうずいぶん以前のことだったと思う。 まだ私達が二人で男遊びをしていて、だけどそれで満たされたという事はなくて。 むしろコレって空回りなんじゃないだろうか、という私の疑問と焦りは。 それでも、さとうとは確かに友達になったんだという安心感に着地した。 私の人生は、その時よりもずっと大きく変わってしまった。 たった一人を探していたさとうに、運命の人ができた。 私にも、人生を変えてしまう出会いがさとうの他にできた。 さとうみたいに最愛の人だと言い切れるほど、確かな形をしてなかったけど。 その男の子との出会いは、『王子様』なんて言葉にそぐわない、素朴なもので。 決まった時間にパンを持って行く、お付き合いというより餌付けと言った方がいいような時間で。 危なっかしくて、小動物みたいで、放っておけない。 それだけの情で近づいた男の子は、だんだん色々な顔を見せてくれるようになった。 大切な人を想う顔。ひたむきな顔。勇気をふりしぼる時の顔。 その姿に勇気をもらったんだと、大げさじゃなく思ってる。 私の人生は変わったけれど、私は半端にしか変われなかった。 彼に正しく勇気をもらった私は、『さとうから眼を逸らす』という大きな間違いをした。 大好きな親友を傷つけて、肝心なところで拒んで、彼女をいっそう閉じ籠らせた。 それでも勇気を出したことまで否定しなくていいと、彼から励ましてもらった。 そこから、また親友にぶつかろうとしたことまで間違っていたとは思わない。 だけど、さとうのお城に踏み込んだあの日のことは、間違いだった、たぶん。 さとうの信頼を損なった私が、さとうから最愛の人を引き離した方がいいと乗り込んできた時点で。 さとうにとって私は『敵』になっていることを、きちんと分かっていなかった。 さとうは私に何も感じない。 それを結論に、私の人生はそこで終わった。 人生を変えるような出会いは、ちゃんと二回もあったけど。 私の物語は、苦い結末と後悔で終わった。 ――だから、ごめんね。 さとうの声が、私を見下ろす瞳が、恐ろしく冷えているのが記憶に残っていて。 何も感じないと言ったのに、彼女がわざわざ謝ったことは印象に残っていて。 それは私が求めていた結果とはかけ離れたもので。 ――間違えちゃったのかな。 間違えたのだとしたら。 どこでどうしていれば良かったのかな。 松坂さとうの世界から消されてしまうその時に。 私はたしかに、そんなことを気にしていた。 ――なんか変わったね、しょーこちゃん 聖杯戦争によって、私の人生はまた劇的に掬い上げられて。 再会したさとうは、いつかと同じように私のことをそう言ってくれた。 それでも私は、間違えようとしている。 彼がいることは分かっていたのに、いざ彼が現れた時の心の備えがまるで無くて。 彼には彼の願いがあると分かっていたのに、さとうの敵として現れた彼を止めようとして。 さとうの味方をするということは彼を敵に回すことだと釘を刺されていたのに、彼に駆け寄って。 聖杯を狙う同士なのに、彼――神戸あさひ君には死んでほしくないと思っていて。 そして、改めて私は思う。 私が聖杯を狙うのはどうしてだっけと、理由を顧みれば。 松坂さとうとの関係をやり直したくて、神戸あさひ君との関係に言葉を贈りたくて。 人生の未練だった二人は、今となっては二人とも近くにいて。 二人とも聖杯を欲しがっていて。 聖杯を手に入れたマスター以外は、ここで消えるというのなら。 私が聖杯を手にしたところで、その先の人生には松坂さとうも神戸あさひもいなくなってしまうことを。 ◇◇◇◇◇◇ ――人の愛なんて、誰かが語るようなことじゃないんだ ボクが松坂さとうにそう言ったのは、この夜が始まるより以前のことだったと思う。 それはもう、昨日の夕景と共にある出来事だった。 松坂さとうには言い切った一方で、ボクは苦い追憶をしていた。 なぜなら、ボクの事情だって決して胸を張れるものではなかったから。 ボクの愛の始まりは。 蒼き雷霆ガンヴォルトと、電子の謡精を宿した少女シアンの、関係の始まりは。 (この子は、あの頃のボクと同じだ――) 情だった。 初対面で向けられたのは、『殺してください』という懇願。 これからも籠の中で飼われたまま、人に害を与える歌を強制されるぐらいなら、と。 その裏側に、自由への飢えと、普通の生活への羨望を読み取れたのは、ボクも似たような境遇だったから。 かつてボクがアシモフにしてもらったように、ボクもこの子に自由を与えたいのだと意気込んで、連れ出して。 これからは後ろ盾のない傭兵だと覚悟していたはずの暮らしは、一人ではなく二人だと満たされていて。 あの頃の日々には、いつもシアンとの心の繋がりを感じていた。 結果として、ボクは彼女を死なせた。 凶弾から守れなかった、というだけではない。 ボクと一つになって謡精そのもになった彼女がふたたび消えていくのを、何もできずに失った。 それどころか、記憶を失って真っ白になった『シアンを宿した少女』を、そのまま家族の元へと帰した。 そんな話を聞いたら、『お前の愛は愛じゃない』という人もいるかもしれない。 ボクは、あの選択を後悔はしていない。 むしろ、今になって後悔するわけにもいかない程には、大事で重い選択だった。 だけど、ボクとシアンの関係が、兄妹のような親愛だったのか、それとも別種の愛情だったのか。 そこに対する答えは出ないまま、ボクもシアンに何かを応えてあげられないまま、ボク達は別れの日を迎えた。 だから。 「おたくのマスター、あさひの事をどういう風に言ってた?」 ボクのマスターが、まさにそこのところを上手く言えないからといって、それを否とするつもりは無かった。 そして、座り込んだままの赤きサーヴァントが問うてきたことで、ボクも察する。 あるいは、神戸あさひの側もそうなのではないかと。 『飛騨しょうこが神戸あさひに向ける感情』を、そのサーヴァントが気にせずにはいられないほどには。 神戸あさひもまた、飛騨しょうこに対して、不定形の感情を抱いているのではないか、と。 「詳しくは聴かない。でも、勇気をくれる男の子で、お礼が言いたい、そういう少年だったと言っていた」 「…………そりゃ男を視る眼があるね。困ったことに」 先刻までは道化のように多弁だったのに、覆面の下でひとしきり思いをめぐらすような間があった。 困ったというからには『仮に飛騨しょうこが神戸あさひに全く無関心だったなら、それはそれで対応の仕方があった』という事でもあるのだろう。 このサーヴァントは、本気で神戸あさひのことをマスターとサーヴァントとして心配し、その心情を慮った行動を心がけている。 そう察したから、こちらもなるべく正確なところを述べることにした。 「……それから、『怖い』とも、言っていたよ」 「怖い?」 「神戸あさひは、聖杯を手に入れようとするだろうとマスターは考えた。 そして、マスターがいることを理解した上でその目的が変わらないなら、神戸あさひとの関係が壊れる事に対してだよ」 これだと神戸あさひの元に駆けつけなかったことに対して言い訳がましいかな、と思いながらも。 それでも、『飛騨しょうこは結局のところ情を捨てた女の子だ』などと受け取られるのは、どうにも嫌だった。 「ああ、そこんとこを責めるつもりは俺ちゃんには無いから安心しなよ。 あさひのヤツ、しょうこちゃんがいることを知らないのが幸せには違いなかったからな」 松坂さとうに敵意はあるにせよ、マスターにまで敵視が及んでいないことにはひとまず安堵する。 だが、その言い回しには含みがあると気付いた。 「違いなかったってことは………過去形、だったのか?」 「ああ、あさひはもう、しょうこちゃんとあの女が連れ立ってることを知ってるよ。 むしろ、あさひがおたくらの訪問を知らされたところに俺ちゃんもいたって方が正しい」 「なら、お前ひとりでこれ見よがしに待ち伏せしてたのは、やっぱり陽動だったのか」 彼の独断による行動ではなく、マスターの意を受けていたというならば。 サーヴァント二人がいるところに、自分のサーヴァント単騎で相手をさせるかというと怪しい。 つまり、このサーヴァントはあくまで囮で、本命の接触者がマスター達が逃げたところに待っている。 ボクらも待ち伏せが陽動である可能性は考えていたし、だからこそキャスターをマスターたちに付かせたのだけど。 「おや、案外冷静に受け止めるもんだね、ロックマン。」 「ロックマン? ボクも知らないサーヴァントの特殊クラスなのか?」 「あれ、若い子なのに通じない? 2Dアクションって昨今は下火だったりする?」 まぁいいや、そこはうちのあさひとおたくのしょうこちゃんが接触したらまずいって、焦ったりとかしねぇの?」 「……まずいと思わないわけじゃないよ。でも、お前はさっき『社会の歯車だ』って言った。 つまり、この作戦はお前たち主従の独断じゃないんだ。だったら、会話の放棄が何を意味するのかは分かってるさ」 「ジャパニーズってわけじゃ無さそうなのに、ずいぶん空気を読んでくれるんだな。助かるよ」 陽動作戦が、神戸あさひだけでなく他の主従との合意のもとに行われたものであるなら。 今こうやって彼がボクとの会話に付き合っている時間も、陽動の一環ということになる。 それを簡単に打ち切らせてしまうことは、彼が陽動を真面目にやらなかったこと、つまり同盟者への不義理にならないとは言えない。 そして、神戸あさひとマスターの繋がりを考えれば、キャスターがボクとの内通を冗談ごとでなく疑い始める可能性もあり。 キャスターの戦力としての信頼性と、松坂さとうへの初撃が失敗してからの彼にもう殺意がないことも併せて考えれば。 マスターは本当に危なくなったら令呪なり念話なりを使ってくれると信じて、ここは場を繋ごう、という事になる。 「さて、こいつは会話のキャッチボールだから、今度はこっちから質問させてもらおうか」 会話の流れだと、最後に質問をしたのは彼の方だったはずだが。 どうやら、『神戸あさひはもう知っているのか』という一連のやりとりで、ボクからの質問一つという扱いらしい。 「お前は、自分のマスターを殺した女が、マスターとつるんでる事を受け入れてんのか?」 切り込むような問いかけ。 そこに、おどけやふざけは完全に排除されていた。 前提についての共有は不要だった。 なぜなら、『神戸あさひが松坂さとうを恨んでいることをボクが知っていた』時点で。 マスター・飛騨しょうこと松坂さとうとの関係にボクが無知だとは考えにくいのだから。 「マスターは、松坂さとうに殺される結果に終わったことを悔いていた。 関係をやり直したい、彼女に信じてもらえなかった自分を変えたいと言っていた」 「あー…………どういう子なのか分かった気がするわ。いや、あさひの話を聞いた時から、人柄はお察しだったけどさ」 彼は胡坐をかいたまま天を仰ぎ、いるかもわからない神様に毒吐くように「なんでそんな連中ばっかり巻き込んでる?」とぼやいた。 どうやら彼は、ボクのマスターがとてつもなく芯の強くて善良な少女だということを、さほど労せず受け入れたらしい。 もし髪があればそれをぼさぼさと乱すような手つきで覆面の頭部を掻き、重ねてボクに問う。 「けどな、お前は止めたりしなかったの? シビアな話、【都合の良いお友達】と思われてる可能性だってあるわけだろ」 それはマスターの想いとは別であり、サーヴァントとしては当然の疑問でもあった。 自分のマスターを殺した者のもとに再びマスターを寄り添わせようとするのは、思い切りが過ぎることだから。 そしてボクの答えは、買い物帰りの道中で松坂さとうに語った通りだ。 覆面の奥から向けられる視線が食い入るように鋭さを増したように感じられたが、臆するほどのことはないと同じ答えを返す。 「リスクは承知の上だ。そして彼女らが牙をむいた時の備えもある」 「話を聞く限り、そんな備えを持つにはイイ娘すぎる嬢ちゃんって感じだけど?」 「備えがあるのはボクだよ」 「ああ、そっか」 赤き覆面の男は、頷きとともに瞑目した――ように見えた。 赤と黒の布地に覆われているから、眼を瞑ったかどうかなど見分けがつかなかったけれど。 表情が変わったかのように覆面の布地がわずか動いたから、そう思えたのかもしれない。 「要するにお前は【そうせずにはいられなかった】んだな」 つぶやきには、納得の感情がともなっていた。 「彼女たちの仲を取り持たずにいられなかった、ということか?」 「いや、そこじゃない。ずいぶん前にいたんだよ。 ガキの為に手を汚そうとするバカを、そんな好意的に言ってくれたカタブツがさ」 いざとなったら、松坂さとうを殺す役目を引き受ける覚悟はある。 たとえ、それが汚れ役に値する仕事であろうとも。 たとえ、マスターに嫌われることになったとしても。 そのように、直接的な言葉にはしなかったボクの意図は。 「備えがあるのはボクだ」というぼかしだけで十分に伝わったらしい。 「こんな風に見られてたんなら俺ちゃんも照れるね」と一人納得したように、男は茶を濁していた。 「気持ちとしての落としどころは分かったさ。 あの女といる以上敵には違いないが、サーヴァントのスジとして文句をつける謂われも無い。 そんで、おたくらの方から何か言っときたいことはあるか? ああ、俺ちゃんじゃなくてあさひにだけどさ」 「神戸あさひに伝えてくれるのか? 彼のサーヴァントとして、お前はそれでいいのか?」 神戸あさひに思いを寄せる少女のサーヴァントとして、マスターの想いを伝えること。 今まさに行われているかもしれない神戸あさひとの接触が歯車のかけ違いに終わる危惧もある以上、保険としてはありがたい。 だが、聖杯を狙う神戸あさひのサーヴァントとしてはそれでいいいのか。 マスターの想いを感じることで、かえって神戸あさひの迷いや悩みを深めることは危惧しないのか。 そういったリスクは気にならないのかと尋ねれば、渋みのある大人の声を伴った男はこともなげに答えた。 「殺されちまったしょうこちゃんの人生が懸かってる以上、おたくらはおたくらで聖杯が要るんだろう? なら、どのみちしょうこちゃんとあさひは最後に手を取り合えねぇところにいる」 あさひが願いを叶えりゃあの子も取り戻せるかもしれないが、傍目に見て弱小主従の俺らにベットできねぇことも分かる、とも付け加えて。 「せめて言い残しは無いようにしといた方がいいだろ。あさひのヤツ、『飛騨さんは俺のせいで死んだ』って気にしてたからな」 「松坂さとうの敵だのといった事情に関わらず、私怨で殺し合おうとするわけでは無いと分かっていた方がマシってことか」 恨みっこ無しで殺し合いましょうと言うには、互いのマスターの良心の呵責という点において問題が大いにある。 だが、他でもないマスター自身が怖れていたように、関係が拒絶に終わったままで決戦を迎えるよりはマシだと言われたら違いなかった。 「そっちのマスターにとっても、あさひと話したいことが未練だったんだろ? ウチのあさひに礼が言いたいって話なら、それ自体は歓迎しないもんじゃねぇ」 それどころか、話題を向けられたのはまさにこちらのマスターの願いについてだった。 ――さとうに信じて欲しいし、私に勇気をくれたあの子にお礼を言いたい。 出会って間もないころから、彼女はそれが望みだと伝え続けてきた。 彼女が松坂さとうを選んだ今でもそこを変えられないことは、分かっているつもりだった。 その願いのうち一つが、特殊な状況下であれ叶いそうになっている。 こちらとしても、拒むべくもない提案………………だと、見なしていいはずだった。 マスターの未練が、ひとつ消える。 しかし。 ――地上に戻るまで振り向いてはいけないという誓いを破ったオルフェウスは、妻を永遠に失った。 直観めいたものが、言葉を詰まらせた。 それを別の意味で受け取ったのか、赤黒のサーヴァントは流暢に続ける。 「まぁ、向こうの状況が落ち着かないと、何て言うのかも決められることじゃねぇか。 こっちだってあさひを死なせないだけの援護は念押ししてあるが、念話が切られてるのが引っ掛か――」 「いや……申し出はありがたいけど、考えさせてくれないか」 状況のゴタゴタを抜きにしたところから、生じている躊躇い。 それが思わず声に出てしまって、覆面の男にも怪訝そうな空気が伝染する。 「なんだ、もしかしてあの砂糖女に気兼ねしてるのか? 自分のダチと恋人の兄貴がいい空気になるのさえ許されない感じだったりする?」 「いや、遣り取り自体は可能だと思う……ただ、終わらせていいものかどうかが分からない」 「終わらせる?」 無意識に『終わらせる』という言葉を使ってしまったことに気づき、違和感のもとが見えてきた。 ――調子乗るんじゃないわよ、バカ。最後に笑うのは私だっての マスターが松坂さとうにそう啖呵を切ったのは、本心であるように見えた。 ただ生き残りたいという、小さくとも否定されるべきでない願い。 もっと外の世界で飛び続けたい、歌い続けたいという、ボクにとっての戦う理由。 かつてシアンに抱いた動機であり、今もそれは戦うに足りると信じている。 ――私ね。やり残したことと、やり直したいことがあるの だけど、そもそも彼女が生き残りたいと願ったのは、誰と誰の為だったか。 「……ああ、お前が何に引っ掛かったのか、分かった気がするよ。 いや、想像だけどな。俺ちゃんだって『あさひの身内がいるかも』って考えた時は、そっちに転んだらヤバイと思ったさ」 ボクはよほど、表情を凍りつかせたらしい。 覆面の向こうから向けられる声が、やれやれと共感を伴ったものに変わったからだ。 「マスターは、神戸あさひという少年は、悪い事ができる人じゃないと言っていた。炎上騒動の時だけど」 「いいヤツだよ。そんで、そっちの嬢ちゃんもとびっきり友達思いで、他人思いで、イイ娘だと聞いた。なら、俺の想像で当たってるのか?」 「たぶん。優しい人は、ときどき人のために命を投げ出してしまうから」 ボクも、かつては大切な少女の命を糧として命を繋いでもらった。 そして、その彼女は二度目の別れの時も、最後までボクが生きることを考えてくれていた。 ――今のあなたなら、きっと一人で戦える… ボクの愛の終わりは。 お互いがお互いに、手放し合うことだった。 シアンを手放した選択を、やり直すべきだったとは考えたくもない。 だけど、シアンに、別れを受け入れさせてしまったものが。 私がいなくてもいいのだという選択肢を向かせてしまったものが。 ボクとオウカとの、かつてはシアンとの暮らしにあったような家庭の団欒だったり。 シアンのことを認識できないシャオがいる時の会話に、上手く混ざれないことだったりと。 自分がいなくても大切な人達には影響がないという、諦めと孤独が募ったことに、よるものだったのなら。 それは、やり直したかった。 僕もオウカも君のことを大切に思っていると、否定したかった。 彼女が自分のことをいなくてもいい死者なのだと思うような事には、したくなかった。 それは、そのままマスターにも当てはまってしまうかもしれない。 松坂さとうとの間にあった信頼関係を築き直すという、生前に成し遂げたかった思い出作りを終えて。 松坂さとうも、神戸あさひも、自分がいなくても願いの為に突き進むから、影響はないという確信を得て。 神戸あさひにお礼が言えなかったという未練までも、清算してしまった時に。 「しょうこちゃんが、友達やあさひの為に聖杯を諦めるかもしれないって、お前さんは考えたのか」 飛騨しょうこが、彼女自身の命≪じゆう≫を、差し出してしまうこと。 彼女と共に飛びたいサーヴァントとして、ボクはそれを恐れているのだ。 ◇◇◇◇◇◇ 「ごめんね」 「どうして、謝るんですか?」 「半端なことしてるって、思ったから」 松坂さとうの味方をしていることは明らかでありながら、今もなお神戸あさひを死なせたくない情をかけていること。 元をたどれば、昨夕の炎上騒動によって神戸あさひの参戦を知ったことに端を発してから、先刻の殺し合いに至るまで。 少なくとも、飛騨しょうこには『神戸あさひを選ぶ』という選択肢はあった。 そうしなくてごめんなさいと謝罪することは、よけいに中途半端だとしょうこは自覚している。 それでも、今こうやって会話を望んでいることだって、彼にとっては辛いだけかもしれない。 飛騨しょうこの第一声は、そういった全てを包括したものだった。 「中途半端な勇気が、いちばん人を傷つけるって、私は分かってたのにね」 公園のベンチのようにちょうどいい場所は住宅街には無く。 裏路地に、じかに腰を下ろすようにして、二人は座っていた。 氷で作られた趣味の良いとはいえない人形に一定間隔で追従されながらも、場所は少しだけ移動した。 間もなくして夜が明ければ、神戸あさひ自身の血によってできた血だまりが眼前へと露わになってしまうから。 それは、先ほどまでの二人があまりにも情けなかったと、気まずい悔恨をもたらしてしまうから。 「それは、違います。俺の方があなたを拒絶して……中途半端だったのは、俺の方が先だ」 あの頃のままの、飛騨しょうこさんだ。 勇気を出したいと足掻いて、優しいから自分を責めてしまう、いつかのあの人だ。 そんな既視感で、あさひはとにかく言葉を次いだ。 憎悪に動かされていた時には思い至らなかった、彼女にとっての神戸あさひがどうだったかについて。 ――来ないでくれ。あなたのことは、巻き込みたくないんだ 何て、ばかなことを言ったのだろう。 神戸あさひは、聖杯を目指していて。 飛騨しょうこは、聖杯のためには倒すことになるマスターの一人で。 それなのに『飛騨しょうこを巻き込みたくない』なんて白々しいことを、どの口が言った? たとえ松坂さとうとの因縁に決着がついても、飛騨しょうこがマスターであることは変わりないのなら。 よくも彼女のことをを殺して利用したなと糾弾しながら、これから殺す人達の中に彼女も含めているお前だって、悪魔じゃないか? 「ねぇ」 重たい沈黙を回避しようとしたのか。 しょうこは距離を詰めるように、あさひの顔をしげしげと覗いてきた。 「ちゃんと、ごはん食べてる?」 「え…………どうして?」 「いや、ここでの生活、一か月もあったじゃない? その、パンも無かったし、お腹すいてないかなって……」 「晩御飯は食べたから、大丈夫です……」 そこを心配されるとは思ってなかったという、拍子抜け。 ある意味この人らしいのかなという安堵と、『パンも無かったし』で以前からそんなに栄養失調を危惧されていたのかという恥ずかしさと。 リッツパーティーをしたなんて言ったら、もっと栄養のあるものを食べなさいと逆に心配されるかなと、数時間前を思い出す。 今思えば、デッドプールはあの時。 少しでもこちらが暗くならないように、気遣いとして場を盛り上げてくれたのだろう。 「あの、先に、サーヴァントに念話しませんか?」 「え?」 会話を持たせるように切り出すのも、どうかと思ったけれど。 デッドプールに、戦闘終了の念話を送っていなかったと気付いた。 「下手すると、まだ戦ってるかもしれないし……」 「あ、そう、そうよね! だいぶ可愛そうなことしてたわ」 そして彼女にとっても、その放置は恥ずかしいことだったらしい。 当然ながら、彼女達とともにいた鬼は、はっきりと松坂さとうの指示を仰ぎ、指示に従っていた。 つまり、ヤツと契約してるのは松坂さとうで、デッドプールに足止めされた方のサーヴァントは飛騨しょうことの契約者だろうと想像はできる。 マスター同士が座り込んで話をしているのに、サーヴァント同士が下手すれば戦いっぱなしというのは申し訳ない。 松坂さとう絡みで、デッドプールに無碍な態度を取ってしまった後悔もあり、あさひは彼にこそ謝らなければと心を重くした。 ◇◇◇◇◇◇ ――すべて、亡くしてた。 ◇◇◇◇◇◇ 情けないところも含めて、なるべくありのままデッドプールに話した。 突き放すような態度を取ったからには、せめてそうすべきだと思ったから。 『まずはお前さんが無事で良かったよ。 令呪も念話もノーサンキューだったのはいただけねぇが、反省はしてるだろうしな』 デッドプールは、あさひのことを責めなかった。 彼があさひの為に、松坂さとう殺しの汚れ役を被ろうとしてくれたことは、分かっていた。 その上で、デッドプールの方もまた『あさひが殺害失敗を期待していたこと』を察していただろうにも関わらず。 『俺から一つ、言えるとしたらさ』 それどころか。 松坂さとうに言ったこと、松坂さとうに言われたことを話したところ。 ひょい、とテレビ画面ごしや漫画、絵本の仕切り線の向こうから手を伸ばすように。 空間を無視して手をのばし少年の頭を撫でるような、それぐらいに事もなげに言った。 『お前は松坂さとうを言い負かす必要なんかなかったよ。 だって、お前は『全部やり直す』って言ったんだろ?』 こいつは、黙ってそっちに邁進してろってことじゃないぜ、と注釈が入る。 そもそも、俺はお前が幸せになれるなら方法はなんだっていいんだ、とも但しをつけられて。 『お前と松坂さとうは、実のところ同じ娘をめぐって争ってるのとは、もう違うのさ。 シュガー・キッドナッパーが言ってる『しおちゃん』は、自分が攫ってきた子どものこと。 お前が暮らしたい妹は、やり直した先にいる『初めから幸せだった妹』なんだろ?』 あっけらかんと、まるで妹の乗り換えを肯定するかのような言い草。 だが、デッドプールは何も、本来の妹ではなく思い通りになる者を飼えばいいという主張に添うているわけではない 『あさひにとって、【今のしお】は敵なんだろ? んで、しおの方だって伝言を聞く限りそのつもりでいる』 そこは既に通過した問題なのだから、嵌るところじゃないと言っているのだった。 なぜならデッドプールは、神戸あさひがそう言ったことを、聞いているから。 それは神戸あさひが悪魔のような実父の血を引いたせいではなく、そうすると腹を括れる奴だと、言ってくれたから。 『あさひは、ちゃんと分かってるよ。しおは連れ戻せるモノじゃないってことも、妹の為じゃなくて自分の為だってことも。 でも、死んだはずの女と、死んでほしくなかった【飛騨さん】が一緒にいたから焦っちまったのさ』 松坂さとうが、『神戸あさひの恩人』もあの場に引き連れていたこと。 麻薬の服用にとって人相さえも豹変したあさひが人を殺そうとする現場を、少女が見ていたこと。 少女の言葉を聞き入れて攻撃を止める訳にこそいかなかったけれど。 その動揺は、確かに迷いとして現れていた。 その人は、殺意を知る前の神戸あさひを理解しようとしてくれた人で。 暴力を使うようになる前の、あさひを知る数少ない人だったから。 妹への想いの丈を聞いて、そこまで大切な人を想えるなんてすごいと、肯定してくれた少女だったから。 そんな少女が聞いている前で、しおだって殺すと決めたんだと開き直ることをためらった。 だからさ、とデッドプールは続ける。 『せっかくおしゃべりする機会なんだから、もっと根っこのところを聞いてやりな。 どうしてあの女と一緒にいるってことだけじゃなくて、その子が何を望んでいるのか。 そこを分かってないと、たとえこの先【飛騨さん】があの女と別れたって、モヤモヤは残ったままだぞ?』 あさひの今の心境を先読みしていたかのように、ずばりという言葉まで添えた。 『お前さんのことだから、やり直しの為に、この人をもう一回死なせるんだ、とか。 自分が死ぬか殺人者になるかの預言を聞いたハリー・ポッターみたいな顔してるんだろうけどさ。 その子は、自分のことをお前さんに殺される被害者だなんて、思ってないかもしれないだろ』 ◇◇◇◇◇◇ 『そっか、あの子のサーヴァントは、ちゃんとあの子のことを想ってくれてるんだね』 互いの経緯を伝え合った後に、しょうこが発した感想はそれだった。 いきなり挑発的な感じで銃口向けられた時は焦ったから、しょーじきほっとした、とも。 『言動が道化のようであったのはたしかだけど、そういう外側の印象よりもずいぶん理性的だったよ。 少なくとも、僕がマスターのことを想っているように、彼も自分のマスターを想っている、という様子だった』 『うん、さとうのキャスターみたいなサーヴァントもいるって分かった後だったから、そうじゃなくて良かった』 まぁ、良かったって言っても、そういう半端なところがダメなんだぞって言われたらその通りなんだけどね、とも続けて。 『マスターは…………伝えたかったことを、伝えられそうかい?』 『その話はしたいよ。でも、それだけじゃダメだなって、思い始めてるところ』 変わらず気を遣ってくれるGVに、そう返した。 飛騨しょうこの人生を変えてくれたことに、感謝を伝えたいのは変わらない。 しかし、いざ目の当たりにすると、想いを馳せてしまったことがある。 『アーチャー』 それは、飛騨しょうこ以外の人々の、人生についてだった。 『自分にできる事はないって、寂しくて、悔しいことなんだね』 『……ボクの知るマスターは、たくさんの事をしてくれたよ』 『ありがとう……でも、私の話だけでも無いかな』 『どういうこと?』 『んー、大切な人にはもう慰めてくれる人がいたり、むしろ自分が枷になってたかもしれなかったり。 そう思っちゃうような子を見たことがあった、のかな』 けっこう前に、君が出てくる夢を見たんだけどね、とは言わない。 ガンヴォルトにとっての運命の人であるらしき『彼女』がそんな風に思っていたことは、彼を傷つけるかもしれないから。 夢を介して記憶を共有することは、本来であれば契約で繋がりを持ったマスターとサーヴァントの間にだけ起こることだ。 にも関わらず、飛騨しょうこの見た夢がGVではなく、彼とともにいた少女の見ていた世界だったこと。 それは、長らくその少女が生前のGVに取り憑いてその一部となっていたせいかもしれないし。 彼女の謡精としての特性が『精神感応』――他者との同調を本義としていたものだったことに依ったのかもしれない。 『とにかく、そういう子の気持ちが、ちょっとだけ分かったかもしれないって、さっき思ったの。 私は何もできないし、半端者でしかいられないんだって、本当に悔しかったから。 さとうも、あの子も、目指している幸せの中に、私がいないように話してたから』 松坂さとうは、心の弱いところを見せてくれるようになった。 神戸あさひは、優しさからしょうこを突き放そうとしてくれた。 彼女や彼が、なにがしかの感情を持ってくれた手ごたえは皆無ではなかったし、そのことは受け止めた上で。 それでも二人にとって優先順位の一番は、飛騨しょうこではなく、神戸しおなのだろう。 『私だけ生きてても……って、思わなかったわけじゃないよ』 松坂さとうも神戸あさひもいない日々に、飛騨しょうこは耐えられるかどうか自信がない。 だけど二人の方は違う。 しょうこがいなくなっても、神戸しおという少女がいれば幸いを得られるのだろう。 それなら、二人の方がよほど『可能性』と言うものを持っているのでは、と。 『マスター、ボクはマスターが生きてても仕方ないとは思わないよ』 『ありがとう……私もね、それだけじゃないって、アンタたちのおかげで気付けたんだ』 『ボク、たち……?』 きっぱりとした否定、そして複数形で表現されたことに、アーチャーが困惑した。 『聖杯戦争のおかげで、知ることができた人達、かな』 ガンヴォルトが、身も心も飛騨しょうこに捧げることはできないと言った理由。 その根源たる少女の夢を見たことで、しょうこは触れていた。 アーチャー・ガンヴォルトと、少女・シアンの【愛】だったかもしれない関係の、始まりと終わり。 シアンの視点からでは、『彼と一つになったところで、以前と同じ関係ではいられなかった』と悲観していたそれは。 しかしガンヴォルトにとっては、しょうこからのキスに応えることはできないと誓いを立てるほど、大切でもあったこと。 彼女が彼に対して無力だったと思っていても。 彼は彼女のことを要らないなんて思ってなかったんだ、と。 双方の想いを目の当たりにしたから、気づけた。 『私がいなくなった後に…………壊れちゃった幸せも、あったんだな、って』 蒼い雷霆の愛した蝶々が、己のことをどう思っていたところで。 比翼の少女がいなくなった痛みで、しょうこの知っている彼が構成されている。 そして、再会した少年もまた。 妹を失ったのだという喪失の痛みが、顔に声にと刻まれていて。 松坂さとうはいなくなったが妹は戻って来なかったと、しょうこが知らないことを叫んでいた。 『私はさ、あの子に楽しい事を教えてあげるつもりだったんだよね。 でも、さっきの彼はとても切羽詰まってて、あの時よりずっと幸せじゃなさそうだった』 聖杯戦争をやってるのだから当たり前だと言えばそうかもしれない。 けれど、『もっと楽しい事をしよう、遊ぼう』と、彼に向かって声をかけて以来。 彼がそれを実践するような生き方をしてこれた事は、無かったのだろうなと。 ちゃんと食べてるか聞いた時のぼんやりした様子で、『やっぱり』と思ってしまった。 『私がいたらそんなことにはさせなかったのにー、なんて偉そうなことは言えないけど。 それでも、休みの日に一緒に遊んだりとか、できることはいっぱいあったと思う』 松坂さとうに喉を裂かれたところで、しょうこの人生は途切れている。 その結末は、間違えてしまったという後悔として、体と心に刻まれている。 けれど、間違いの余波は飛騨しょうこ以外の人達にも及んでしまっていた。 松坂さとうは、神戸しおの元からいなくなったのだという。 もちろんそれは、常識としては誘拐犯の元から子どもが帰ってきたという話でしかないのかもしれないが。 松坂さとうと神戸しおの輪郭をここ一日でなぞったしょうこにとって、それは『破滅』に匹敵する出来事だと察せた。 神戸あさひも、『しおを取り戻して幸せになるんだ』と言っていたことが、できなかったのだという。 それは、さとうとしては身勝手なしおのモノ扱いだと評せるものだったのかもしれないが。 神戸あさひの『俺みたいになるな』という叫びを目の当たりにしたしょうこは、彼が妹の為を気取るような少年でないと知っていた。 自分がいなくなった後、世界は決して良い方に向かわなかった。 しょうこには、それが悲しい。 それがさとうにとっての『苦い』なのかは分からなかったけれど、とても痛くて悲しい。 『私、今まで未来のこと、あんまり考えたことがなかった。 私が死んだ後に、みんながどうなったかってことも』 さとうの刃によって喉元をざっくりと裂かれた時は、本音を言えばとても恐ろしく、苦しかった。 それでも、そんな痛みの比にならないぐらい、神戸あさひと、キャスターの間に振るわれる暴力は痛々しくて。 あれほど超人的でなくとも、かつての二人が同じぐらいの憎悪で殺し合いなり奪い合いなりしていたことを再認識して。 自分が死んだことで始まった崩壊が、二人を追い込んだことが、悲しくて、いたたまれなかった。 『私を殺した後で、少しでもさとうの心は重くなったのかな、とか。 私の遺体が発見されたって聞いたあの子は、何を思ったのかな、とか。 そういうことを、はじめて考えるようになったんだ』 しょうこが、さとうに殺されたことで。 しょうこが、あさひに最後のメールを送ったことで。 松坂さとうの居城は融れてしまったらしいこと。 神戸あさひが、松坂さとうを憎悪するようになったこと。 どちらも、飛騨しょうこはずっと知らなかった。 さとうから彼は敵だと聞いていたけど、『しおちゃんを探しているならそうなるだろうな』という想像で察していただけだ。 神戸あさひが、さとうに怨嗟の声を吐きつけるところに立ち会って、ようやく実感として追いついた。 『ちゃんと知りたいのよ。私が死んだ後に、何がどうなったのか。 私が聖杯を目指すとして、それでどうしたいのかは、その後に決める』 だから、神戸あさひが何を想っているかを知るためには。 だから、松坂さとうがこのままではどうなるのかを知るためには。 自分が死んだ後に何がどうなったのかを、きちんと知らなければいけない。 そうでなければ、次こそは間違えないために、何をすればいいのかが分からない。 『そうか……大切な人の知らない側面を知るのは、とても勇気がいる事だと思う。 そこに踏み込めるマスターは、やはりいい方に変わったんだと思うよ』 GVのほっとしたような声が、しょうこの羽ばたきを肯定する。 言い回しに不思議なデジャブがあったのが、なんだか嬉しかった。 ――もう変わってるんだと思うよ? ――いい方? わるい方? ――知らないけど~~ いい方だったみたいだよ、さとう。 ……と、ここにいない大切なもう一人に、心の中で報告する。 さとうの方はもう覚えてないかもしれないけどね、と寂しく付け加えながらも。 それこそしおちゃんの言った事だったら、彼女はさっき語ったように一言一句を覚えているのだろうけど。 『あーあ。あさひ君にキスした時も思ったけど…………やっぱり羨ましいな。神戸しおちゃん』 なぜって、飛騨しょうこが好きになる人は、いつも月(かのじょ)の周りをまわっているから。 GVにしか聞こえない声で、しょうこは本音をそう表現した。 ◇◇◇◇◇◇ 全部、やり直すんだ ◇◇◇◇◇◇ 「今までのことを、聞いてもいいかな?」 改めて向き合い、そう尋ねた。 その角度から問われるとは思っていなかったのか、あさひは驚いたネコのように眼を見開く。 「ああ、もちろん同盟相手のこととか色々聞き出してやるぞーってコトじゃなくてね」 自分でも言葉をまとめきれていないのか、否定するようにわたわたと手を振って。 「たぶんそっちの方が、質問をたくさんするより分かると思うから。その、お互いの気持ちとか、願いとか。 私も、ぜんぶ話すから。サーヴァントの事とか、話せないことはあるけど」 要は、問い詰め合いになるぐらいなら、打ち明け合いにしましょうと。 そういうことならと、あさひも頷く。 あさひとしても、『どうして自分を殺した奴なんかと一緒にいるんだ』なんて、問い質すような事はしたくない。 しょうことしても、『今まできっと大変だったでしょう?』なんて、傷口を切開するような直球を投げたくはない。 その上で、二人とも『いったい何があったの』という互いの物語のことを知りたかった。 何を思って、動いていたのか。 何を想いながら、聖杯を目指すのか。 神戸あさひとしては、『飛騨しょうこが望んでくれたこと』が何一つ叶わなかった人生を明かすことに、口の重さはあったけれど。 しょうこのこれまでを知りたいという想いがないはずもなく、頷いた。 飛騨しょうこは、話した。 松坂さとうがどんな友達で、どんな思いを抱いているのかということ。 神戸あさひと最後にあった夜から先の、1208号室を訪れた日のこと。 神戸あさひにメールを送ってから訪れた修羅場と、説得に失敗した時のこと。 未練だらけの人生を繋ぐために、聖杯を望んだこと。 昨日の昼間に、ばったり松坂さとうと再会したこと。 自宅がサーヴァントの襲撃に巻き込まれて、彼女を頼ろうと決めたこと。 その後に炎上騒動によって神戸あさひの存在は知っていたこと。 松坂さとうと共にいること、神戸あさひと共に戦わないことを、自ら選んだこと。 一晩じゅう行動を共にしているうちに、さる筋から神戸しおが来ているとも、知った事。 神戸あさひにとっては気の知れないことも多かったはずだけれど、最後まで言い返されることはなかった。 神戸あさひは、話した。 飛騨しょうこからメールを貰ったあと、1208号室をつきとめたということ。 忍び込んだ1208号室で、『ガソリンをかけられた飛騨しょうこの遺体』を見たこと。 松坂さとうと戦ったが、妹はその女と共にいることを選んで逃げたこと。 逃げ切れずに、松坂さとうは死んで、神戸しおは帰ってきたこと。 飛騨しょうこは、そこで一度だけ問いを挟まずにはいられなかった。 「どうして、さとうが死んだの?」 「逃げきれなくて、マンションから落ちて……一か八かだったのか、無理心中のつもりだったのかは分かりません」 そこから先は、松坂さとうの前で叫んだとおりの有り様で。 罪を犯した母親と、変わってしまった妹との断裂を受け入れ、一人でやり直す選択肢はあったこと。 それでも、どうしても、だめだったこと。それだけは耐えられなかったこと。 『神戸家にはじめから不幸がなかった世界』をやり直すことでしか、幸いを望めなかったこと。 神戸しおが別陣営にいると分かった上で、そうしようとしていること。 松坂さとうのサーヴァントが監視を残して行った以上、それらの話はおそらく彼女にも伝わる。 そのことに躊躇いはあったけれど、打ち明けた。 どのみちガムテが『神戸しおとはやり合っている』と明言している。 ならば、神戸しおに対する殺意を隠すことに意味はなかった。 話し終えれてしまえば、まるでやましいことを打ち明ける懺悔みたいだな、と思った。 相手は神様ではなくただの女の子で、だからこそ彼女はとてもとても、悲しそうにしていたけれど。 「だから、あなたが『大切な人のために頑張ってる』って言ってくれた俺は、もういません。 ここにいるのは、幸せになるために妹を敵に回した悪党だから」 「まだいるよ」 泣きそうな顔のままで、即答された。 「あさひ君はやっぱり人を想ってるよ。 マンションでも、さっきも、私が殺されたことに怒ってくれた。 それに、自分みたいな奴になるもんじゃないって言うところも、震えながら歩いてるのも変わってない」 言ってから、はっとしたように言い直す 「ううん、強くなろうとしてる人に、変わらないって言うのも失礼だった」 なんだか最後に会った夜みたいだねと、続けた。 「私はアンタの気も知らずに、アンタの過去をほじくり返して。酷いこと言って」 「酷くは、なかったですよ。あの時は俺が勝手に泣いただけで、あなたは俺を心配してくれてた」 「酷いよ。私は、あさひ君が見てきた世界が想像つかなかった。 今だってそうだよ。笑えなくなることがあったんだな、と思ってたけど。 …………想像していたより、ずっとずっと辛い結末になってた。誰にとっても」 それを感想として、しょうこの口はしばらく閉ざされた。 新たに知った事実を、一通り噛み締めるように。 あさひもまた、想いを馳せながら何も言えなかった。 しょうこが今に至るまでに、どれほどの勇気を出したのかを考えていた。 そんな良い人にそこまで優しくされながら、やはりあの女は彼女を利用している、という怒りがあり。 それでも、しょうこが今まで生き延びるために、自分よりよほどあの女は仕事をしたのだろうという事が情けなかった。 「……やっぱり、後悔するのはいやだな」 実際の時間にして、どのぐらいを経た後だったのか。 とても静かに、しょうこはそう言った。 大きな瞳からにじんでいた涙は、もう止まっていた。 悲しそうな顔のまま、しかし口元には控えめなほほえみがあった。 生前の最後に出会ったときに、あさひの涙を拭いてくれた顔と、よく似ていた。 それは松坂さとうのところに向かう決意の顔だったと、あの時のあさひは知らなかったけれど。 全ての物語を飲み込んだしょうこは、そういう顔のまま口にした。 「私、やっぱり聖杯がほしい」 此処まで来たら、もう戻れない。 分かっていたと、只頷いて。 隣に座り合ったまま、凍えた手は重ならず。 あさひとは敵同士になるという意味を、自覚して言った。 「そう、なんだ……」 神戸あさひも予想して、覚悟していたその言葉は。 しかし、神戸あさひが予想しなかった言葉として続いた。 「でも、もう自分が生き延びるためだけに、聖杯は使わない」 聖杯の使い道。 飛騨しょうこが生き延びたいと願うのは当然、と受け入れていたあさひは「え?」と驚きの声を漏らす。 「私だって、たくさん間違えたよ。結局、さとうにもあさひ君にも、何もできなかった。 私にもできることがあったらいいのになって、ずっと思ってた」 こんな殊勝なこと言ったって、さとうに腹が立たなかったわけじゃないけどね、と。 流石に『死体隠蔽の為に焼かれるところだった』という話は堪えたし、それは微笑ではなく苦笑としてごまかして。 「さとうのマンションに突撃した時の私は、とにかくしおちゃんは返さなきゃいけないって話をしてた。 誘拐とか後ろ暗いことじゃなくて、さとうは私が光の下に連れ戻さなきゃいけないんだって決めつけてた」 さとうの事を想いながらも、二人を引き離そうとした。 でもだめだったと、しんみりとしたまま呟いてから。 「あさひ君にとっては酷いことだけど、さとうといるしおちゃんは不自由なさそうだった」 『さとうを好いているようだった』と口にすることは、追い打ちをかけるようで躊躇われたけれど。 神戸あさひが幸せになる手段を、間接的に肯定していない言葉でもあったけど。 それでもしょうこは、さとうを選んだ。そこはもう譲れず、変えられないから。 「たとえ人から奪ったものであっても、さとうがしおちゃんを幸せにしたことは本当だと思う」 思い出す。 さとうと再会して、『さとうの愛は愛なのか』で口論になったこと。 しおに会いに行かないと選んだことを、『愛だと思うよ』と励ましたこと。 叔母さんがいなければしおには会えなかったのかと迷うさとうを、迷わなくていいと肯定したこと。 さとうとしおが結ばれることは、既に、しょうこにとって否定されるべきものではなかった。 「さとうの愛は、甘くて痛いよ。しおちゃん以外の人は、いくらでも奪われる。 でも、それが二人の幸せだってこと、愛があったことは、私には否定できない」 光の下で生きることだけが、幸せじゃない。 さとうと一緒だった一晩は、しょうこに常識外の想いを体感させていた。 あさひはただ、意外性と諦めをもってその言葉を聞く。 彼女に選ばれないことは理不尽だと思わず、しかし、しょうこが離れていくという実感によって震える。 でもね、と。 もう涙のない瞳は、あさひを見据えた。 「でも、やっぱり間違ってる」 ――さとうの愛は、間違ってる 池袋のカフェ。 まだまだ暑かった八月一日。 再会して喧嘩別れになった時と、結論は同じ。 そもそも、人の愛なんて第三者があれこれ語ることじゃない、と傲慢さを知った上で。 でもそれは、さとうのしたことが誘拐だからという理由では、もうない。 まして、反社会的だからとか、光の当たらない道に進んでいるからという理由でさえもない。 そこにしか咲かない幸せがあるのだと肯定した上で、認めた上で。 それでもなお、違うと思ったのは。 違わないと、愛の為なら殺してもいいんだと、言い切ってしまうには。 「だって私は、さとうに殺されたまま終わらなくて、本当に良かった」 飛騨しょうこの、たった一日の苦くもない時間は、かけがえのないものだったから。 「今日一日で、私は会いたかった二人に会えた。 やっぱりどっちのことも傷つけたけど。間違えてばっかりだけど。 それでも、私の知らなかったさとうをたくさん見て、あさひ君とも話ができた。 あの時に私が殺されたまま終わらなくて、本当に良かったと思ってる」 だから、さとうの愛を守るためにしょうこは命を奪われておくべきだった、と。 さとうの愛がしょうこの物語を終わらせたことが間違ってなかったとは、絶対に言えない。 一番の愛のためなら奪ってもいいと言われて頷くには、生きて果たしたいことが多すぎた。 「それは、全部あなた達が教えてくれたこと。 人生を変えちゃうような出会いが私にもあるって、分かったから決められたこと」 そして、これは。 あなたのおかげで決断できたから、あなたの元から離れますという話――でさえない。 松坂さとうを選んだ。神戸あさひを選ばなかった。 その選択は下されたと自覚はして、その上で。 「でも、さとうが間違ってるなら、さとうの味方をする私だってやっぱり間違ってる」 「それは……聖杯戦争で生き残るためにやってることだから」 生き延びるための生存策として、マスター同士で同盟することまで罪とは言えない。 その同盟相手が、神戸あさひにとって気の知れない相手だという事はまだしも。 マスター同士で同盟しているからと言って、その同盟者と同じ過ちを犯している事はイコールではない。 けれど、しょうこはその建前を否定する。 「自分が生きるために、さとうに生きてほしかったなんて、もう言えない。 だって私は、さとうがマンションから落ちて死んじゃうって聞いて、怒ったから」 神戸あさひの話を聞いて、ああやはり後悔は嫌だと前を向かせたもの。 悲しみだけでない怒りをもたらしたのは、『親友の死』だった。 聖杯戦争なんてものをやっているのだから、最後に雌雄を決することは分かっている。 だけど、しょうこの知らないところで、しょうこの死が引き金になって、さとうが死んでしまうなら話は別だ。 しょうこのいない未来ではさとうが死んでしまうと聞いて。 私が神様ってやつに怒らないとでも思っているのか。 「私は、さとうを死なせないために生きて帰りたい」 それは、生存欲求ではなく、友情のために戦って生きるという誓い。 そして、生存競争ではなく、大切な人と共に生きる為に人から奪うという、松坂さとうと同じ間違いの証明。 「だけど、それで悲しみが増えることも分かってる」 この愛が正しい事だと、さとうと違ってしょうこは割り切れない。 だから、願いを叶えた結果として悲しみが増えることはなるべく望まない。 まして、しょうこが死んでほしくない人は、さとうの他にもう一人いる。 たとえ聖杯戦争という枠の中では敵だとしても、聖杯によって救いたい人は一人ではない。 「それに、私はあさひ君にも不幸になってほしくない。 あさひ君に思いっきり笑ってほしいって約束したのは、ほんとうに本音だから」 聖杯戦争を終えた、その暁には。 聖杯戦争の終末を、さとうと共に迎えるにせよ。 さとうも既にいなくなっていて、他の誰かとの一騎打ちで迎えるにせよ。 その時まで生き延びたとして、飛騨しょうこは誰のために願うのかというのなら。 「私は、さとうから眼を逸らさなくて、さとうに殺されなかったところからやり直したいの。 死ななかった私が、さとうとあさひ君の間に立って、みんな幸せになれるハッピーエンドにする」 「やり直し……」 それは、神戸あさひも述べたこと。 だからこそあさひは、己がしょうこにその発想を与えたのだと気付く。 そして、しょうこにとってのハッピーエンドの形を聞かされて、ひたすら驚く。 「これが一番いい、なんて言わないよ。きっと私、アンタに酷いことを言ってるから」 そう、これは、神戸あさひにとっても願ったりかなったりという話ではない。 少なくとも、『神戸あさひの望むやり直し』では生まれなかった被害者は、確実にできる。 しょうこには、『さとうとしおの関係そのものを否定すること』は、もうできない。 もちろん、1208号室の営みが不法行為によって維持されている以上、しょうこに全てを何とかすることはできないが。 少なくとも、『さとうとしおが出会わなかった世界』を望むことだけは、できそうにないのだ。 さとうが叔母を失って己の愛を疑った時も、『二人の間には運命がある』と、はっきり認めたのだから。 その上で、それまでのように生き延びるため聖杯を取るだけでは、生まれない被害者もいる。 例えば、この世界にもいるという神戸しおだ。 さとうの話によれば、以前のしおはマスターとして自発的に歩くことなど、できなかった子だという。 もしも、さとうが『歩くのをやめないでほしい』と思ったその営みが、さとうの不在によって生じたものだとすれば。 しょうこが未来を変えることは、しおの成長をリセットする事も意味する。 「でも、傲慢になった私でも、まだあさひ君を笑顔にできるなら」 この世に、傲慢じゃない愛はないらしい。 なるほど『どっちも幸せになれるハッピーエンドはこうだ』と押し付けるのは、絶対に傲慢だ。 間違っているのは百も承知で。 それでも、間違っているのは分かっているから、埋め合わせはしないといけない。 神戸しおがいないとあさひ君が幸せじゃないなら。 やり直した世界では、私があさひ君にたくさんの幸せを教える。 「――その時は、会いに行くから。」 王子様を待つんじゃなくて、自分の足で会いに行く。 だからしょうこは身を乗り出した。 少年に顔を近づけた。 口ではなく、頬に。 ここにいる彼を選ばなかった以上、そこには一線を引くところだった。 歳のわりには頬骨も出ていなくて柔らかいそこに、唇をあてる。 いつか交わした『またね』のキスではなく、お別れのキス。 「だから、ごめんね」 これは、改めて伝えるつもりになったこと。 「ありがとう」 これは、前から伝えたかったこと。 ごめんね。ありがとう。 その人の為なら生きて死ねるという人に対して。 その人の為に生きて死ぬことを告げるとき、人は泣き笑いになるらしい。 ◇◇◇◇◇◇ それは、八月二日の朝。 暦の上では夏なので、夜明けは早い時間にやって来る。 かつて、しょうこがあさひに望んだ、『笑うべき太陽の光の下』はもうすぐそこにある場所で。 神戸あさひは、頬にのこった体温へと指先で触れながら。 どんな言葉を返すべきなのか、思考を彷徨わせていた。 【二日目・早朝/中央区・高級住宅街(裏路地)】 【飛騨しょうこ@ハッピーシュガーライフ】 [状態]:健康 [令呪]:残り2画 [装備]:なし [道具]:最低限の荷物 [所持金]:1万円程度 [思考・状況] 基本方針:私達の物語を幸せな結末に。そのためにも、諦められない。 0:ごめんね、ありがとう 1:さとうと一緒に戦う。あさひ君とは、きっといつか戦う。 2:それはきっと"愛"だよ、さとう。 [備考] ※松坂さとうと連絡先を交換しました。 【神戸あさひ@ハッピーシュガーライフ】 [状態]:疲労(大)、自己嫌悪(大)、松坂さとうへの殺意と憎しみ、そして飛騨しょうこへの困惑と悲しみ [令呪]:残り3画 [装備]:デッドプールの拳銃(懐に隠している)、着替えの衣服(帽子やマスクを着用) [道具]:リュックサック(保存食などの物資を収納) [所持金]:数千円程度(日雇いによる臨時収入) [思考・状況] 基本方針:絶対に勝ち残って、しおを取り戻す。そのために、全部“やり直す”。 0:飛騨さん、あなたは―― 1:折れないこと、曲がらないこと。それだけは絶対に貫きたい。 2:ガムテと協力する。後戻りはもう出来ない 3:さよなら――しお。 4:星野アイと殺島は、いつか必ず潰す。 5:櫻木さん達のことは、次に会ったら絶対に戦う……? 6:あの悪魔を殺す。殺したい、けど、あの人は―― [備考] ※真乃達から着替え以外にも保存食などの物資を受け取っています。 ※廃屋におでん達に向けた書き置きを残しました。内容についてはおまかせします。 【二日目・早朝/中央区・高級住宅街】 【アヴェンジャー(デッドプール)@DEADPOOL(実写版)】 [状態]:気道から肺までが冷気によりほぼ完全に壊死(だいぶ回復) [装備]:二本の刀、拳銃、ナイフ [道具]:予選マスターからパクったスマートフォン、あさひのパーカー&金属バット [所持金]:なし [思考・状況] 基本方針:俺ちゃん、ガキの味方になるぜ。 0:お前がそう望むなら、やってやるよ。 1:あさひと共に聖杯戦争に勝ち残る。 2:星野アイ達には必ず落とし前を付けさせるが、今は機を伺う。 3:真乃達や何処かにいるかもしれない神戸しおを始末するときは自分が引き受ける。だが、今は様子見をしておきたい。 4:黄金時代(北条沙都子)には警戒する。あのガキは厄(ヤバ)い [備考] ※櫻木真乃、ガムテと連絡先を交換しました。 ※ネットで流されたあさひに関する炎上は、ライダー(殺島飛露鬼)またはその協力者が関与していると考えています。 【アーチャー(ガンヴォルト(オルタ))@蒼き雷霆ガンヴォルト爪】 [状態]:健康、クードス蓄積(現在3騎分) [装備]:ダートリーダー [道具]:なし [所持金]:札束 [思考・状況] 基本方針:彼女“シアン”の声を、もう一度聞きたい。 0:マスター。君が選んだのはそれなんだね。 1:マスターを支え続ける。彼女が、何を選んだとしても。 2:ライダー(カイドウ)への非常に強い危機感。 3:松坂さとうがマスターに牙を剥いた時はこの手で殺す。……なるべくやりたくない。 [備考] ※予選期間中にキャスター(童磨)と交戦しています。また予選期間中に童磨を含む2騎との交戦(OP『SWEET HURT』参照)を経験したことでクードスが蓄積されています。 ※神戸しおと神戸あさひが、現在交戦関係にあるかもしれないと思っています 時系列順 Back ねぇねぇねぇ。(前編) Next ハッピーエンドをはじめから 投下順 Back ねぇねぇねぇ。(前編) Next ハッピーエンドをはじめから ←Back Character name Next→ 122 ねぇねぇねぇ。(前編) 神戸あさひ 130 ラブ&ピース アヴェンジャー(デッドプール) 122 ねぇねぇねぇ。(前編) 飛騨しょうこ 130 ラブ&ピース アーチャー(ガンヴォルト[オルタ])
https://w.atwiki.jp/alice-baseball/pages/152.html
【ボード】┏━━━━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓┃ ..┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃0..┃計┃H ┃E ┃┣━━━━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫┃. 明和... .┃1 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ .┃1 ┃8 ┃2 ┃┣━━━━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫┃ バルク ...┃1 ┃1 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃×┃ .┃2 ┃6 ┃0 ┃┗━━━━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛【戦力比較】5986 名前:梱包済みのやる夫[sage] 投稿日:2018/06/01(金) 18 28 55 ID oF7MpUsU1:三 三日月 BCCCCC 1:中 遊矢 CCBCCB+2:遊 小林 CCACCC 2:二 弟者 DFBC+BB3:二 柊 BABBBB 3:三 劉鳳 ACB+BDC+4:捕 ニャル子 CDDBCC 4:一 阿部 A+A+FFFF5:投 アリス BBDC+AC 5:補 井ノ原 CBCB+EC6:右 ヴィクター. BACC+CC 6:中 モブ DDDDDD7:一 鳴滝 CBCDDD 7:右 モブ DDDDDD8:左 司波 CFCDCD 8:遊 兄者 FFC+AAA9:中 我妻 EFBC+CC 9:投 比企谷 GGDCDD138CB シンカーA+、ナックルB、カットボールC 132BA スライダーA、シュートB、チェンジアップBチェンジアップD、スライダーE、カーブE、フォークG【スコア】1510 名前:梱包済みのやる夫[sage] 投稿日:2018/06/02(土) 00 11 37 ID 4+dew021バルク高校VS明和第一実業 スコア2-1【投手成績】アリス 9回 1失点 1自責点 被安打8 四死球0 被本塁打0 奪三振9比企谷 8回 2失点 2自責点 被安打8 四死球2 被本塁打1 奪三振10 ※四死球はどちらへもやる夫への敬遠気味のもの 被安打8の内2はエラー?勝利投手:アリス(バルク) 敗戦投手:比企谷(明和第一実業)本塁打:鳴滝(1号) バルク高校の試合成績 打順 位置 名前 打席・安打 四球 守備 熱烈 補足 1 三 三日月 4-0 2 遊 ギャル夫 4-2 2-0 初回に1塁から一気にホームイン。内野安打1つ。ダイジェストのアウト2つ。 3 二 四四八 4-0 1-1 4 捕 やる夫 3-1 2つ 1-1 1点ビハインドのランナー1塁でライトフェンス直撃の2塁打を打って打点1。 守 捕 ニャル子 1-0 2-2 1-0 負傷したやる夫の代わりに7回から出場。盗塁阻止2つ。熱烈は不利。 5 投 アリス 3-0 6 右 ヴィクター 3-1 1点リードのランナー1塁でライトオーバーの2塁打を打つが、打点は0。熱烈守備対象。 7 一 鳴滝 3-1 1-0 同点の場面で本塁打を打って打点1。決勝点。 8 左 司波 3-1 ゴロ判定でクリティカル。2塁まで進む。 9 中 我妻 3-1 1-1 熱烈で2塁まで進むが、3塁挑戦アウト。バント成功1つ。 順番 名前 投球回 失点 熱烈 補足 先発 アリス 9 1 3-2 ランナーはそれなりに出している。バント封殺1つ。9回1失点(完投勝利) 打席……打撃機会の数。ダイジェストを含む。 安打……安打の数。本塁打や長打コースを含む。 四球……四球の数。 守備……内野ゴロ・盗塁判定などの回数と成功数。 熱烈……熱烈歓迎の回数と有利を取った数。 演出はエラーだがシステムでは安打だと思われるのでお兄様と善逸の安打1。 ギャル夫はダイジェストで2つアウトがあるので、それを抜いた場合は2-2の1得点になる。 ギャル夫の守備は50%、55%の2つ。 善逸のバント・ダイジェストを抜いた成績は1-1になる。 やる夫・ニャル子のダイジェストのアウトは0。 【( 1)の評価】7162 名前: ◆C..Jf6TpFM [] 投稿日:2018/06/02(土) 17 25 29 ID RRVKlYY1 [150/233]私としての評価はこんな感じ【今回のMVP】アリス【次点】鳴滝さん(決勝HR)【中評価以上】ニャル子(急遽の途中出場、2つの盗塁阻止)ギャル夫(2安打本塁帰還+GM裁定の小お詫び込み)司波達也(ゴロ判定クリティカル)【中評価】ヴィクター(熱烈有利対象+二塁打)我妻善逸(熱烈有利)ヴィクターが中評価に収まっているのは元々の能力が高いから。
https://w.atwiki.jp/sousouwa/pages/994.html
くー 古翠 ク~にゃん くーぴー クーヤ ぐーん ぐい井戸・御簾田 空想を紡ぐ程度の能力 クォーク 九丘(位置) 久遠恭介 九遠寺 久遠の夢 久我拓人 草蟹 草な木 草薙S 腐りジャム 腐姫 玖爾 クシキ 九紫楓 くしゅあ 釧路失言 クジン 薬漬 口無し 狗月 くつした 玖薙 グニ 国広 椚 首吊蓬莱人 窪鞠 熊の人 組合長 [部分編集] くー タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 「ぶきっちょ」 63 人形のイロ、死神のパレット ハジマリ 64 人形のイロ、死神のパレット トマドイ 77 従者バカ、酒バカ 77 死神のおしごと(前編) 98 死神のおしごと(後編) 98 [部分編集] 古翠 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 ボーダーオブライフ 104 ク~にゃん タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 小悪魔の一日 28 Lily of valley 28 くーぴー くーぴー [部分編集] クーヤ タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 百合の花が落ちた日 24 うっかりとドジの結末 24 裁くということ 26 恋するアリスは切なくて魔理沙の事を思うと××しちゃうの 26 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 蓮子はどこへ消えた プチ26 ぐーん タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 風見VS射命丸 プチ3 迷走の半分幻 プチ3 果てしない時間の中で プチ3 幽香と紫 プチ4 ぐい井戸・御簾田 ぐい井戸・御簾田 空想を紡ぐ程度の能力 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 後の世の幻想郷 プチ14 [部分編集] クォーク タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 紅魔館の門番少女 前編 77 紅魔館の門番少女 後編 77 九丘(位置) 九丘(位置) [部分編集] 久遠恭介 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 私と彼女と赤い花 -前編- 26 私と彼女と赤い花 -後編- 26 * ふわふわ * 47 梅雨の戯れ(緋想天ネタバレあり) 56 凪羅氏との合作 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 桜歌結界 プチ1 少女の夢 プチ28 柔らかきちゅーの味 ~慧音先生は欲す・ちゅーの歴史を~ プチ44 理由→暑いから... プチ44 [部分編集] 九遠寺 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 『文と椛の現界漫遊記』 55 文と椛の現界徒然話 56 文と椛の現界奔走記 66 久遠の夢 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 中華終焉 28 迷ひ家の平和な一日? 38 霧雨邸の悲劇 39 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 小悪魔語り プチ6 永遠亭はうどんげ無しでは動きません プチ17 久我拓人 久我拓人 [部分編集] 草蟹 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 白蓮のハート プチ50 紅美鈴は嫌われ者 プチ50 草な木 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 博麗神社の不思議 34 19kb ギャグ 文 霊夢 幻想郷オールスター、大弾幕バレットシスターズ!? (開幕) 36 13kb 怪霊「夢想封印 食」 37 6kb ギャグ 霊夢 魔理沙 東方美人茶 38 紅魔夜行 40 ねがいごと 41 草薙S タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 遥か……例大祭 プチ23 腐りジャム 腐りジャム 腐姫 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 最強兵器(前編) 36 最強兵器(後編) 36 裏切りの代償 36 魔女と猫 37 パーティー、夜も更けて 38 [部分編集] 玖爾 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 背中合わせ 94 必ず訪れる幸福 96 待ち人眠りて 96 はや春? 98 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 気づけよ…… プチ61 [部分編集] クシキ タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 その夢を醸して 68 チルノのお面 69 [部分編集] 九紫楓 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 正直者には祝福を 106 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 See You Again ~ 妖々夢裏話 プチ59 [部分編集] くしゅあ タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 とある夏の日の話 87 釧路失言 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 美鈴本気モード プチ21 [部分編集] クジン タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 早苗マンだョ!全員集合 プチ26 [部分編集] 薬漬 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 甘い香りで目が覚めた プチ57 口無し タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 闇と鳥と詩の旅人 プチ4 狗月 狗月 [部分編集] くつした タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 見えない魚 72 像をつくる、護る 72 重創話 73 我らの幻想郷 74 ドミノ倒し 75 めぐる環 84 幻金郷 97 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 消えた盾 プチ40 玖薙 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 紫の気まぐれと紅の偶然が呼んだ邂逅 9 紫の気まぐれと紅の偶然が呼んだ邂逅 後編 9 家庭教師 -前- 16 家庭教師 -後- 28 [部分編集] グニ タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 美鈴退去中 (1) プチ55 [部分編集] 国広 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 ゲームセンターCX 八雲紫の挑戦 ロックマン3編part1 91 [部分編集] 椚 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 虹色門番の素敵な午睡 74 二十二度目の降り積み幻想 100 [部分編集] 首吊蓬莱人 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 流水に乗る思い 60 香霖堂には色々なものがやってくる 61 幻想小話集その1 63 [部分編集] 窪鞠 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 幼少メリー(前編) 87 [部分編集] 熊の人 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 天まで届け、我が想い 43 シリアス、バトル 妹紅、ミスティア 天まで届け、我が想い【二】 43 シリアス 妹紅、輝夜、慧音 天まで届け、我が想い【三】 43 シリアス 妹紅、慧音 天まで届け、我が想い【四】 43 シリアス、バトル 妹紅、慧音、輝夜、永琳、鈴仙 変身 43 パロディ リグル、チルノ、他 冬さりて、春きたる 43 ほのぼの レティ、リリー 回想:虹色の邂逅 45 バトル 美鈴、レミリア、パチュリー、魔理沙 火焔猫燐の最も長い日 83 [部分編集] 組合長 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 凡夫 ~ an innocent edge 64
https://w.atwiki.jp/moemonss/pages/731.html
遠くを見る目にはどこか憂いを湛えて。彼女は丘の上から遥か彼方を見渡す。 ちらちらと舞う雪は彼女のそばで儚く消えた。 そんな彼女を、ぽつんと座っているガーディが見つめている。 声をかける訳ではない。ただ座って彼女を見ているだけなのだ。 「いつまでそうしてる気だい?」 彼女は振り返りもしない。いや、きっと彼女は今まで振り返る事などなかったのだろう。 「わかんないけど……お姉さんが悲しくなくなるまで」 ガーディには彼女が今にも泣きそうな顔になりながら、そこに佇んでいるように見えていた。 なんとかして元気付けたいのに、自分は何も出来ない。 だから、彼女が少しでも元気になるように一緒に居る。 頭も悪いし、他の姉妹のように強くも無い。けれど元気ではあった。 だから少しでも自分の元気が彼女に伝わればいいな。ガーディはそう思っている。 「難しいことを言うな、お前は。なんで私が悲しそうに見えるんだ?」 「……わかんない。でもね、なんだろう……ぼやーって顔がなってて……えーと」 まだ幼いガーディは必死だった。何故? と問われても答えはなかなか見つからない。 だが、漠然と彼女が抱えている悲しみだけはひしひしと感じる。 初めて、ガーディが動いた。 「えいっ」 もふっ 彼女の尻尾は柔らかく、頬擦りするとほのかに日向のにおいがする。 それはそう、父母や姉妹と一緒に眠っている時のあのにおい。 彼女は少し困った顔で、はじめてガーディのほうを見ようと振り返った。 けれど、ガーディはしっぽと一緒に移動する。 そのガーディを追いかけて、彼女はまた回る。ガーディも回る。 くるくるくるくると、斜陽の丘を二人は回る。 「……ぷっ」 彼女がゆっくり動きを止める。 そして―― 「あっはははははは!!」 初めて、笑った。 その笑顔が嬉しくてガーディも笑っていた。 「変なコだな。本当に」 初めてガーディは彼女の顔をまじまじと見る。 左目の上の大きな傷、そして夕日を一杯に受けて金色に輝く髪。 それが全て神秘的で。 「キレー……」 口から素直な感想がこぼれる。 それを聞いた彼女はくすぐったそうな顔でくしゃり、とガーディの頭を撫でた。 「ありがとう」 「お姉さんはなんていうポケモンなの? スーパーきんいろふわふわ?」 「ふふ、違うよ。私は……いや、知らなくていい。きっと……どこにでもいる普通のポケモンだよ」 普通の、というのがなんだかすごく気になった。 まだ生まれて間もないガーディだったが、友達のロコンちゃんや、姉妹たち、両親と彼女を比べてみても、全然違う。 神秘的なその佇まいは幼いガーディの心にどんどんと広がっていく。 「……さて。そろそろお暇しよう」 彼女はそう言うとゆっくりガーディに背を向けた。 「えっ? どうしたの?」 「……少し、ここに居すぎたみたいだ。そろそろ他所に行くよ」 何故、居すぎては駄目なのか? ガーディにはいまいちわからない。 ただ、もう少し彼女と居たかった。 「ヤダ! もっとお話しよ! あそんで!」 彼女のしっぽにもふりと顔を埋め、いやいやと頭を振る。 そんなガーディを優しく撫でて彼女は言った。 「それじゃあ、目を瞑ってみっつ数えてごらん? 私が最後にすごいものを見せてあげる」 「ほんと? すごいの見れる?」 泣きそうな顔のガーディ。 彼女はこくりと頷いた。 ガーディは両手で目を隠し、数を数え始める。 瞬間、ふわっと暖かい風がガーディの頬を撫でる。 みっつ、数を数え終わったガーディの前に、もう彼女は居ない。 その代わりに、赤い、小さな石が彼女の居た所に転がっていた。
https://w.atwiki.jp/share-world/pages/111.html
サークル会館にいる人たちに片っ端から話を聞いたが大して情報が増えなかった井筒は、思いで手芸部を訪れようとしていたが、部室前で立ち往生していた。さっきから何度もドアノブに手をかけては引っ込めるを繰り返している。 (倉田がいるんだよなあ。さっきも部室に上がっていくのが見えたし、ていうか話したし。別に俺は嫌いじゃないのにあっちが妙に毛嫌いしているからなあ。でもさっき黒曜先輩に言われた通り女性の気持ちをくみ取れるようにしなければなあ) でもなあ、とうだうだしているうちにドアが勢い良く開いた。外向きに開くので必然的に井筒の顔面をドアが強打した。 井筒が痛みに悶え苦しみ声も出せない状態でいると、加害者の倉田薫は「え、あ、ごめんなさい」と素直に謝った。しっかりと誠意もこもっている。そんな悪気のない態度に井筒も毒気を抜かれ「うう、くく、でぃじょうぶ」と精一杯の見栄を張った。男として張るしかなかった。 そんないざこざがあって今は手芸部の部室において井筒と倉田は向かい合って座っている。至極当然、そこは気まずい空気が流れている。元より性格が全く正反対と言ってもいい二人。井筒は交友関係が広くアウトドアでアクティブな方だが、倉田は交友関係が狭く部屋で一人でいる方が楽なタイプである。部活に入った当初から何かと意見がぶつかることが多かったが、さらに井筒が何かと人の助けをかってでていたため、手芸部の部室に依頼する人が来るようになってからは、より一層倉田の機嫌が悪くなっていったのだ。ただ井筒も何もしなかった訳ではない。自分のパーソナルスペースが太平洋並みに広い倉田を慮って依頼人が直接部室に来る事の無いよう、部室の前に依頼ボックスを設置したりもしている。 それはさておき今現在、その水と油の二人の火蓋が切って落とされた。 「お前の知っている事を話してくれないか」 「意味がわからないから口を閉じて」 「この一週間のうちに起ったことなんだが」 「意味がわからないから呼吸しないで」 「多分猫除けのペットボトルの事件と関係があると思うんだよ」 「意味がわからないから首を吊って」 「何でもいいんだ。小さなことでもいいから」 「意味がわからないから目の前からジェノサイドして」 全くもって成り立たない会話。恐らく傍目からみれば、あれ日本語が通じてないのかなと疑問に思うほどだ。いや成り立たせてないというべきか。 「倉田。お願いだ。話してくれないか。今度何かおごるから」 「現金希望」 「変わり身はえええええええええええええ。金貰えるなら何してもいいのかよ」 「二千円でいい」 「……いやに現実的で嫌だな、この俗物」 「払わないなら話さない。さっさと出て行って」 「わかったよ。後で払うから教えてくれ」 いかにもしぶしぶといった表情で、井筒が呆れて溜息をつきながら了承すると、ずいっと目の前から腕が伸び出してきた。そしてその手首がくいくいっと曲がり始めるのを視認すると、頬を引き攣らせながら井筒は正反対に微笑んでいる倉田に確認した。 「これは何かな?」 「ま え ば ら い❤」 後に井筒はこの時の出来事をこう語る。それはさながら天使を連想させる笑顔であったと。 井筒の財布が寂しくなると、お約束のように倉田は何も話さず部室から出ていこうとしたので井筒が必死に引き止めた。元から本気で出るつもりは無かったらしく、抵抗はなかったが。 「バカップルが消えたのと猫除けのペットボトルが一週間前くらいから毎日置かれていることくらいかな」 突然脈絡なく倉田が話し始めたので、不意を突かれた形になった井筒は思考が追い付かなかったが、今の内容に聞き覚えのなかったものをオウム返しに聞き返した。 「バカップル?」 「バカみたいにいちゃいちゃするカップルに対する蔑称よ」 「いや、俺が聞きたいのはそういうことじゃねえよ!!」 反射的に激昂してしまった井筒に対して倉田は冷めた目つきをしながら「冗談よ」とけろりと言ってのけた。 「(冗談も通じないのね、だからモテないのよ)」 「喋っちゃってる。喋っちゃってるよ。倉田さーん。本音がオブラートからはみ出ちゃってるよ」 「厚生食堂の裏口の段差になってるところあるでしょ」 「え! ああそうだな、あるな」 さっき俺が考え事をしていたところか、と井筒は心の中で考える。 「あそこで今まで何だか知らないけど、バカップルが毎日のようにたむろしてたのよ。男の方が膝に猫を乗せて女の方がそれを見て楽しそうにしていたわ」 勘違いだろうか。嫉妬丸出しの倉田の言葉の中にどこか寂寥とした思いが含まれていると感じるのは。 「だけれど、ちょうど一週間前かな。突然姿を見せなくなったわ。正確には二週間前から男の方が来なくなって、女はその間ちょくちょく様子は見に来ていたみたいだけど、一週間前からぱたりと来なくなったわね」 「一週間前……」 符号が揃いすぎていて逆に不気味なくらいだな、と井筒は倉田に聞こえないよう毒づいた。 「そいつらの名前わかるか?」 「知るわけないでしょ。バカ? あんた。見ず知らずのカップルに名前を聞き出すって不審者極まりないじゃない」 「ん、それもそうか。すまん」 確かにそう考えると知る由は無いな、と井筒が反省していると倉田が何気なく呟いた。 「まあ女の方は知ってるけどね」 「知ってんのかよ! 教えてくれよ」 「いやよ、あんたに教えたらストーカーしそうじゃない」 「どんだけ、俺は変態キャラなんだよ! しねえよそんなこと!」 「この前言ってたじゃない『寝取るという行為は大変崇高なものであり一抹の性的興奮を覚えるのも無理はないのである』って」 「ぜっっったい、俺じゃないだろ。力説し過ぎててキモすぎるわそいつ! 口調も吐き気を覚えるわ!」 「ちょっと熱くならないでよ。キモ男さん」 「キモ男っていうなああああああ!!!!!!!!!!!!!」 謂れのない言葉の暴力に思わずパイプ椅子から立ち上がってしまった井筒に、倉田は能面のような無表情を保ちながら「佐々木紘華」と応えた。 「え?」 「佐々木紘華よ。教育学部の」 「そうなのか……ありがとう」 「礼はいいわ。お金貰ったし」 何で知っているのか訝しんだが、「助かったありがとな」と井筒は言及することなくその場を立ち去った。 「知り合いだったのか? うーん。わからん」 それにしても黒曜先輩に教えてもらった情報といま教えてもらった情報が合致しそうだな、と井筒は思案を巡らす。 彼氏に会えなくなった事情。そしてその所為で動物に対しての凶行。さらに彼氏が大事にしていた猫に対して猫除けの水。 「ピースが揃ってきた。あとはビルの幽霊騒ぎ、か」 どうやらエンディングが近そうだ。外はもう夕暮れになってしまい僅かにセンチメタルな気分を掻きたたせられるが構うことなく井筒は、携帯で教育学部の一年生に連絡を取った。 「あれで良かったんですか、黒曜さん?」 「ええ、ありがとうございます。わざわざ名前を知ってるふりをさせてしまって」 「別にいいです。気にしないで下さい。先輩には色々お世話になってますし。でもあいつは私の交友関係の狭さを知っています。絶対怪しんでますよ」 「それはそれで面白いですよ。大丈夫あなたに危害は決して及びませんから」 「その点は黒曜先輩を信頼してますんで。でもあまりあいつを舐めない方がいいですよ」 それでは、と倉田は電話を切った。黒曜先輩が何をしようとしてるのか、そして井筒が何に関わってるのか、毛ほど興味もなかった倉田は無心でぬいぐるみ制作に勤しむことにした。 * はあはあ。知らず知らずのうちに息が荒くなる。体が熱い。まるで自分の体じゃないみたいだ。やった、やってやったのだ。前からあの犬は嫌いだった。そしてその畜生を見て和んでいる奴も嫌いだった。 だからこれは制裁なのだ。犬や猫は人間を害する存在。むしろあたしは褒められるべきかもしれない。汚らわしい獣共に脅かされなくて済むのだから。 あたしは正しい。私は正しい。正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しい正しいんだ!!!!!!!!!!!!!!!! 「大丈夫? こっちに来なよ。猫たちも待ってるよ」 無意識のうちにいつもの場所に出てきてしまっていた。だけれど彼はそこにはいない。聞こえてくるのは残響のみ。目に映るのは幻想のみ。 彼と過ごした日々は僅かだったけど、それでも確かにあったんだ。楽しかった、ただ楽しかった。だけれどあたしは涙を流すことさえ許されない。なぜならあたしは堕ちてしまったから。 だれかだれか、あたしをとめて…………。 * 佐々木紘華には付き合っている彼氏がいたらしい。正確には仲が良かった程度かもしれないが、重要なことはそこじゃない。大事なのは仲の良かった異性の友達がいたという事実のみ。それさえ分かればビルの幽霊騒ぎも大体想像がつく。だがどうする? 決め手が足りない。直接相手と対峙できる手段が見つからない。 そう井筒が攻めあぐねている状態で図書館前のベンチに腰かけていると、携帯の呼び出し音が鳴った。ディスプレイには綾瀬結と表示されている。 「先輩! 大丈夫ですか? 体調の方は」 「うんもう平気だよ。ごめんね心配かけちゃって」 「良かった。変な男に何かされたのかと思って冷や冷やしちゃいましたよ」 「うん~。よく覚えてないんだけどその人にもめいわくかけちゃったなあ」 「まあ気にしないでいいと思いますよ。見事に証拠を隠滅してくれやがりましたし」 「いんめつ? まあいいや。今日のきょーくんは知らない人の後を追っちゃダメってことだね。だから今日一緒に帰らない? 綾坂くんもいっしょだよ」 脈絡のみの字も感じさせない話の流れだったが、それよりも引っかかることがあった。 「知らない人の後を追う? どういうことです?」 「あの……ばしょはね、もともと女の子が先に見てたんだよ。それでなんだか気になっちゃって見たんだ。それじゃあ一緒に帰ろう?」 「……もしかしてその子って身長155cmくらいで栗色ミディアムロングヘアじゃありませんでしたか?」 「にゅ~~~~。無視しないでよ~。そんなこといわれてもよくおぼえてないよ~。でもあの後ろすがたはあの子に似てたなあ。多分井筒君は知らないだろうけど」 なぜか勝ち誇ったように言う先輩(?)を無視して井筒は自分の予測していた人物の名前を言う。 「それって……」 答えを聞いたとき井筒は頭の中の霧が晴れたかのようにクリアになっていくのを感じた。つながった。やはりあの事件には意味があったのだ。今バラバラだったすべてのピースが一つの糸になり結ばれていく。だったら次に何をすべきかは明白だ。 綾瀬との電話を一方的に切った後、さすがに申し訳なくなった井筒はメールで綾瀬と綾坂に謝罪のメールを送っておいた。そして幽鬼のごとくふらりと立ち上がった井筒は 「俺の貴重な一日を無駄にしやがった罪、償ってもらうぜ。佐々木紘華ああああ」 猛ダッシュで決戦の地へと向かっていった。 * あたしの目の前で猫が死んでいる。猫がねこがねこがねこがしんでいる。あたしがやったのか。あたしが壊したのか。かれとのつながりを。あたしが地に堕ちたあたしが。あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。 簡単なことじゃないか。生きているものの命を奪うなんて。大丈夫あたしはわるくない。あたしはこわれてない。だからきょうこそとびおりよう。かれもきっとそれをのぞんでる。ちにおちたあたしがほんとうのいみでおちるのを。 さあ、幕を引こう。物語の終焉はもう間近だ。誰も救いになど来やしない。 あたし一人がこの世からいなくなるだけの物語。 * 井筒隆幸は必死に走りながら考えていた。今までの一連の流れを。 まず佐々木紘華という女の子がいた。その子はある先輩に恋をした。だが何らかの理由でその恋は実ることは無かった、その精神的なショックで犬を傷つけたり、猫を遠ざけたりした。そして今日恐らく何者かから呼び出しを受けてその場所に行ってみると、猫の死体を発見したのだ。精神的に不安定になっていた佐々木は自分がやったものだと思い込まされ、廃ビルで投身自殺を試みようとしているはず。今までの廃ビルの幽霊騒ぎは佐々木が自殺しようとして引き起こしたものである可能性が濃厚なためだ。 「杞憂であればいい」 喘ぐように声を絞り出した。せめて頭だけは落ち着かせようと試みる。 また井筒は自分の考えに問題があることも承知している。 ①たかが恋愛で精神的に不安定になりすぎではないか。 ②呼び出しを受けたと考えると誰が一体呼び出したのか。 ③そもそも彼氏は一体今何をしているのか。 という3点が特に気にかかる。1つ目は黒曜先輩に怒られそうだが、どうも不自然な感じがする。話に聞いたところ、別に佐々木は初めての恋という訳でもない。そんな女性がこうも精神を病ますだろうか。百歩譲って心を病んだとしよう。それにしても大学を休んでいるわけではないどころか毎日来ているのは、些か気になる点である。何よりも気になるのは2つ目。この事件は何か第3者の介入が入ってる気がしてならない。 「うく……はあはあ。つ、着いた。廃ビルのまえか」 そして……最後の3つ目に関してはもう手は打ってある。 全力で走りながら電話するのは思いのほか体力を奪われることを身をもって実感した。 「頼みますよ。羽住先輩」 そう言い残し井筒は立ち入り禁止となっている廃ビルに足を踏み入れた。目の前にはさながら地獄を連想させるほどの暗闇が続いている。まるで迷い子を誘うかのような演出に、しかし井筒は不敵に言ってのけた。 「おあつらえむきだぜ。世界ごと焼き焦がしてやるよ」 獰猛に笑いながら井筒は地獄の階段を上り始めた。天国へと登ろうとする咎人のように…………。 「間に合わなかったら恨むぜ。神様」 * もう死ぬしかない。元より生きる価値などなかったあたしの存在。悲しむ人などいない。大丈夫さんざん予行練習はしてきた。誰も止める人などいなかった。彼もいない。これでいい。あいつも言っていたじゃないか。 あいつって誰だろう。もうわからない。もうあたしには知る術もない。あたしを動かしているこの激情すら、どこから来ているのかわからない。 廃ビルに着いた。ゆっくりゆっくり登っていこう。地獄に堕ちるために、天国へと続くこの階段を。 さあ後はこの柵を乗り越えるだけ。足の震えが止まらない。やはり肉体が本能的に察知しているのだろう。死にたくないと、死んではならないと。 そんな往生際の悪いあたしの体に優しく語りかける。「大丈夫だよ」と。「一緒に飛び降りよう」と。 最後にもう一度後ろを振り返る。それは無意識下の行動だった。なぜそうしたのかは自分でもわからない。そのとき確かに聞こえた。誰かが登ってくる音。しまった、と判断したはずなのに体は動かない。どうしてだろうか。今自分は安堵している。今すぐにでも飛び降りなければならないのに。 バタン、と屋上の扉が開いた。飛び出してきた誰かが言った。 「佐々木紘華だな」 あたしは何も答えない。何も答えれなかった。月明かりが照らし出す彼の姿は救世主とは程遠い、まるで悪魔のようだったからだ。 悪魔は続けて言う。 「話してもらうぞ。何もかも。お前の意思とは無関係に、な」
https://w.atwiki.jp/mbmr/pages/174.html
彼女たちが選んだファイブデイウイーク ◆John.ZZqWo 見上げる夜空には数え切れないほどの星が明るく瞬いていた。 今晩は月明かりが強いが、もしそうでなければもっと多くの星を見れるだろうと相川千夏は考える。 そして、それを同じ事務所の仲間と一緒に見れればどれだけ楽しいだろうか、 恋するプロデューサーと二人きりでこの空を見上げながら一夜を過ごせればどれだけかと、彼女は思った。 感傷は一瞬で、相川千夏は視点を地上に降ろすと、改めて彼女の出発点であるダイナーの周囲を見渡した。 ダイナーの目の前には一本の道がまっすぐ通っているが、そのどちらの先もこれといったものは何もない。 平坦な道路の脇に等間隔で街灯が立ち並び、その外には背の低い草が生い茂っているだけだ。人の姿も見当たらない。 振り返れば派手なネオンの看板を掲げたオールドスタイルの店舗。そして、白線を引いただけの簡素な駐車場。 駐車場には錆の浮かんだ動くのかどうかも定かではない軽トラックがぽつんと寂しそうに止まっていた。 相川千夏は手元の情報端末に表示される自分の位置を確かめると「なるほど」と呟いてダイナーの中に戻った。 少し重たいガラス扉を開くと、その端にぶら下がったベルがカランコロンと気持ちのいい音を鳴らす。 店内はダイナーらしい縦長のレイアウトで、入って右側にカウンターがあり、左側には4人がけのボックス席が奥まで並んでいる。 つきあたりにはトイレへの扉。その脇に観葉植物を挟んで、年代モノのジュークボックスとこれも年代モノのコカコーラの自販機。 それらはどちらもまだ現役で働いているようだ。 もっとも、コインを持たない相川千夏にはそれらが実際に働いているところを確認することはできなかったが。 天井にはイミテーションかそれとも実際に機能を果たすのかシーリングファンが吊られている。 所謂、アメリカンスタイルのオーソドックスなダイナーだった。 壁にかけられたメニューにもホットドックやハンバーガー、アメリカンクラブハウスサンド、フレンチポテトにアップルパイ。 ドリンクに各種コーヒーとジンジャエール、レモネード――などといったそれっぽいものが並んでいる。 もっともそうでないダイナーというのも想像できはしなかったが。アメリカンでなければここは喫茶店かファミレスと呼ばれる。 相川千夏はカウンターをぐるりと回りこむとその中、そしてその奥へと――拳銃を構え慎重に――入ってゆく。 カウンターの奥はキッチンだ。そこは彼女が想像するよりも少しばかり広かった。 コンクリートが打放しの床にステンレス製の調理台が並び、その上にはさまざまな調理器具が乱雑に置かれたままになっている。 この店の主人はあまり整理整頓が得意ではないようだ――などと思いながら相川千夏はキッチンの中を調べてゆく。 壁際には肉を焼く為のグリルやオーブン、ポテトを揚げる為のフライヤー、そして天井にまで届く巨大な冷蔵庫と冷凍庫。 冷蔵庫の中には分厚いベーコンの塊やブロック状のチーズ、大きな瓶にいっぱいのピクルスなどが入っており、 冷凍庫のほうにはというと、ビニール袋に入った冷凍のナゲットやパティ、ポテトなどがきゅうぎゅうと詰め込まれていた。 牛乳やジュースなんかも日常じゃそう見かけないサイズのボトルで用意されている。 万が一この店の中に閉じ込められても、ゆうに一ヶ月はすごせそうだ――と、相川千夏はそんな感想を抱いた。 キッチンの中には扉が二つ。 その片方、無骨な鉄扉は裏口の扉だった。 開いて外を見ると、そこは先ほど確認した駐車場で、相変わらずぼろっちい軽トラックが寂しそうに止まっている。 もう一方のとりたてて特徴のない扉の向こうには二階へと続く階段があった。 おそらくは居住スペースなのだろうとあたりをつけた相川千夏の想像はすぐに正解だったと判明する。 二階はほとんど壁の間仕切りがない広いスペースで、印象としては彼女が暮らすワンルームマンションの一室と似ていた。 一応は部屋といえるスペースには安っぽいパイプベッドと今時珍しいブラウン管のテレビ、そして頑丈そうな収納棚。 ためしにテレビのスイッチを入れてみるがどのチャンネルも砂嵐で意味があるものは映らなかった。 はしっこのほうにはビニール紐で縛って詰まれている雑誌。洗濯物がつめこまれたプラスチックのかごなんかが見られる。 窓はあったが、どうやらすぐ外をダイナーの看板が塞いでいるようでその機能を果たしてはいなかった。 そのせいなのかこの部屋は随分と埃っぽい。相川千夏は口元を押さえながら調査を続ける。 窓があるほうとは反対の壁際には、あまり使われた形跡のない小さな流しに、缶ビールでいっぱいの小さな冷蔵庫。 壁を回りこんでその奥はかび臭いユニットバスで、脇には年季の入った洗濯機が鎮座している。 洗面台の上に置かれたうがい用のコップには歯ブラシが一本しか刺さっておらず、住人がひとりだということが推測できた。 相川千夏は部屋のほうへまた戻ると今度はベッドの下を覗き込み、クローゼットを開いてその中も確認した。 店舗とキッチン、居住スペース。どこを調べても人はおらず、どうやらやはりこのダイナーにいるのは自分ひとりだけらしい。 それをようやく確認し終えると、彼女はここでファイブデイウィーク(効率のいい仕事と休息のバランス)を選択した。 キッチンに下りた相川千夏は裏口の扉に鍵をかけ、入り口の扉にもうひとつ店舗の壁にかかっていたベルを付け足すと、 店舗側からは見えないキッチンの隅に椅子を置いてゆっくり腰を下ろした。 ここは待ち伏せをするにはベストスポットだ――そう彼女は考える。 このダイナーの前を横切る道路はこの島の北部にある東西の市街をつないでいるが、 それはつまりその市街から市街へと移動する際には必ず通りかかる場所だということになる。 そして、その何者かが他人との遭遇を、あるいは休息を欲しているのならこのダイナーを無視して通り過ぎることはないだろう。 また、例え素通りされたとしても困ることはなにもない。 ともかくとして、その何者かは間違いなく表の扉から入ってくる。 その何者かが慎重、あるいは卑劣な人物であり裏口から入ろうとしても鍵がかかっているからだ。 裏口に鍵がかかっているのはなにも不自然なことではない。となれば、やはり表の扉しか入ってくる入り口はない。 そして、確実に気づけるようにベルの数を増やしておいたので、それはキッチンの奥からでも容易に察することができる。 後は簡単だ。何者かが入ってきたならキッチンから顔を出して銃で撃てばいい。隠れられる場所は少ないので難しくはないはずだ。 もし、相手も武器を構えていたり簡単には殺せそうもないというならそれはそれで方法がある。 店舗のほうへと爆弾であるストロベリー・ボムを投げ込めばいい。 投げた後はすぐに裏口から駐車場へと避難すれば、自分がその被害を受けることはないだろう。 しかし、相川千夏は待ち伏せ戦法を徹底するつもりはない。これはあくまで最初に休息を取る為の保険だ。 この殺し合いは長期戦になる――と彼女は推測している。それは間違いなく、少なくとも丸一日程度では終わらないはずだと。 だとすればどこかで休息をとる必要がでてくる。逆に言えば、他のアイドル達もそのうち疲弊して休息をとろうとする。 では、確実に他のアイドル達を狩っていくのならば、最初に休息をとってスタミナ的な優位性を得よう。 それが相川千夏の発想であった。 とりあえずは最初の放送があるという6時まではここに留まる。 その後、6時間はアクティブに他のアイドルとの接触を狙って動き、また6時間後には成果がなくとも休息をとる。 それを最後まで繰り返す――これが彼女の選んだファイブデイウィーク(効率のいい仕事と休息のバランス)だった。 @ 相川千夏は浅めに椅子へと腰かけ静かに目を瞑る。 アイドルとしてそれなりの経験をつんだことで細かく休息をとる方法は習得していた。 静寂と暗闇の中で考えるのは自分と同じ立場であろう四人の少女のことだ。 若林智香。五十嵐響子。緒方智恵里。大槻唯。 どの子も、人を殺害できるのかというとそう簡単ではない気がする。 ひょっとすれば、こんなに冷静に他のアイドル達を殺そうと考えているのは自分だけで、他の子らは逆のことを考えているのかもしれない。 智香はこんな状況にくじけそうになっている子を応援し励ましているかもしれないし、 響子はいっしょにプロデューサーを助けようと他の四人を探し回っているかもしれない。 智恵里がどこか暗がりの中で泣いている姿なんかは簡単に想像することができる。 そして、唯はどうだろうか――? 大槻唯。その豊かな金髪と蒼い目が印象的な、プロデューサーが会わせてくれた自分とは全く違う女の子。 彼女とは別に公式でユニットを組んでいるというわけではない。 しかしかなりの頻度で仕事先は同じになる。おそらくはプロデューサーが意識してそう仕事を割り振っている。 初めて一緒に仕事をしたのは彼女へのヘルプで、最初はうまがあうとは思っていなかった。 彼女はその年頃の女の子らしく、思いつきで行動し、めんどうや努力を嫌い、なにをするにしてもルーズだ。 なので、最初は彼女に対するお目付け役として自分があてがわられているのだと理解していた。 しかしその仕事が終わる頃には考えは逆になっていた。 彼女はやはりその年頃の女の子らしく、明るくあることを常とし、はじめてのことにもポジティブで、なんに対しても正直だ。 彼女こそが自分にあてがわられているのだと理解し、それを受け入れるのは思いのほか気持ちのいいことだった。 そして今では無二の親友だと思っている。 むこうはともかくとして自分は今、彼女ほどにいっしょにいて、見ていて楽しい友人はいない。 彼女は常に新しい刺激を求め、それを私に与えてくれる。 オフの日に彼女に紹介されるスポットはどこも今までに行ったことのない場所だし、 逆に私がいつも行く場所に彼女を連れて行けば、私では思いもよらぬ方法で新しい発見をもたらしてくれるのだ。 最後にオフを一緒にすごしたのはいつだったろうか。そう、確か五日ほど前のことだ。 いきつけのカフェで「家で本格的なコーヒーが飲みたい」という彼女にコーヒーを選んであげた。 淹れ方は知ってると言っていたけど、さてその感想はまだ聞いていない。おそらく、もう聞く機会は訪れないだろう。 彼女もプロデューサーの為に殺人を決心しているだろうか? もしそうなら少しだけ気が休まる。 もし彼女が目の前に現れた時、殺しあいはいけないなんて言われれば、 きっと私は迷い、それでも彼女を殺して、そして大きく後悔するだろうから。 それほどに私は彼のことが大切なのだ。親友を殺してもしかたないと思えるほどに。 この決心はたとえ千川ちひろの話がなくとも変わりなかったはず。あの話がなくとも、私は今ここで同じ決断をしただろう。 数え切れないほどにこの運命が繰り返されたとしても、その度に変わらない決断をしただろう。 「……ごめんなさい」 先に謝るなんて卑怯だけれど、きっとその時にはこんなことは言えないだろうから。 ごめんなさい、唯。 私はあなたであろうと殺すわ。 他の誰であろうと、私には私と彼以外に優先するものはないのだから――。 【B-5 ダイナー/一日目 深夜】 【相川千夏】 【装備:ステアーGB(19/19)】 【所持品:基本支給品一式×1、ストロベリー・ボム×11】 【状態:健康】 【思考・行動】 基本方針:生き残り、プロデューサーに想いを伝える。 1:6時まではダイナーで待ち伏せしながら休憩。 2:以後、6時間おきに行動(対象の捜索と殺害)と休憩とを繰り返す。 前:夜にしか咲かない満月 投下順に読む 次:アイドルの王女様 前:フォースド・トゥ・フェイス、アンノウン 時系列順に読む 次:飛べない翼 前:アイドルだけど愛さえあれば関係ないよねっ 相川千夏 次:Joker to love/The mad murderer ▲上へ戻る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/16794.html
梓「たい焼き、絶対約束だからね!」ピッ 梓「もう、純ったら勝手なんだから。これからどうしよう…ん?」 梓「(あれはムギ先輩!どこ行くんだろう…ちょっとつけてみよ)」 梓「(あれ?今ここ曲がったと思ったのに)」 紬「わっ!!」 梓「ひゃっ!」 紬「えへへ、驚いた?」 梓「もう、おどかさないで下さいよ…」ドキドキ 紬「ごめんなさい。梓ちゃんがつけてきてたから、つい」テヘッ 梓「(かわいい!)も、もう…//ところで先輩は何してたんですか?」 紬「私は参考書を買いに行く所なの。梓ちゃんもお買い物?」ニコッ 梓「えーっと、まぁそんなとこです…あははは」 紬「そうなの。じゃあよかったら一緒にお買い物しましょ」キラキラ 梓「えっ!でも」 紬「梓ちゃんとも二人でお買い物したかったの~」 梓「(うぅ、なんて眩しい笑顔!)でわ、お供させていただきましゅ」 梓「(か、噛んだ~!!)//」 紬「ふふふっ、梓ちゃんったら。じゃあ行きましょっか」ギュッ 梓「あっ…(手…)」 ほんやさん! 紬「あったわ」 梓「先輩はN女子大を受けるんですよね?」 紬「えぇ」 梓「もうすぐ…卒業しちゃうんですよね…」シュン 紬「梓ちゃん?」 梓「あっ…いえ、何でもありません!」 店員「アリヤシター」 紬「ごめんね、わざわざ付き合わせちゃって…」 梓「いえ!私こそ変なこと言って…すみません…」 紬「…あ、そうだ!梓ちゃん、私行きたい所があるの!」 梓「へ?」 紬「ほら、行きましょ!」ギュッ 梓「ここは…」 紬「うん!駄菓子屋さんよ!」フンス 梓「(ムギ先輩が…駄菓子屋さん?)」 紬「見て、梓ちゃん!これ何かしら!」 梓「これはゼリーですよ」 紬「おじさんこれください!…どうやって食べるのかしら…」 梓「ふふふっ。これはこうやって食べるんですよ」ネジネジ 紬「へぇ~、すごいわ梓ちゃん!」 梓「これくらい普通ですよ」フンスッ 紬「よかった」 梓「え?」 紬「うん…梓ちゃん、なんだか落ち込んでるみたいだったから」 紬「でもやっと笑ってくれた」ニコッ 梓「!!///」 紬「あのね、私たちはもうすぐ卒業しちゃうけど…」 紬「でもね!放課後ティータイムは不滅だからね!」フンスッ 梓「ムギ先輩…」ウルッ 紬「だから安心して?みんな梓ちゃんのこと大好きなんだから」ニコッ 梓「えっ、ちょっ///」 紬「あら?みんな卒業しちゃうのがさみしかったんじゃないのかしら?」 梓「そ、そんなことありません!//」 梓「先輩たちがいなくても今以上のけいおん部にしてみせます!」フンスッ 紬「そう、それは頼もしいわね」クスクス 梓「は!すみません、調子に乗りすぎました(は、恥ずかしー//)」 紬「梓ちゃん、これからもけいおん部をよろしくね」ニコッ 梓「はい!あの…そこでムギ先輩、お願いがあるんですけど…」 紬「なぁに?梓ちゃん」 梓「その…今度お茶の入れ方、教えてもらえませんか?」 紬「ええ、もちろんよ!」 梓「ありがとうございます!」 紬「そうだ、次の後輩のために新しいティーカップも用意しなくちゃね」 紬「さっそく食器屋さんにいきましょう!」ギュッ 梓「ちょ、ムギ先輩!気が早すぎますってば!」 梓「(でも……)」 梓「(まぁ、いっか)」ギュッ おしまい 戻る
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/46854.html
登録日:2020/12/30 Wed 16 49 35 更新日:2021/10/22 Fri 23 10 44 所要時間:約 20 分で読めます ▽タグ一覧 セカカノ ラブコメ 世界 世界か彼女か選べない 内山敦司 別冊少年マガジン 彼女 漫画 講談社 「彼女に告白したら、世界滅んじゃうよ?」 ♡概要● 『世界か彼女か選べない』とは別冊少年マガジンにて2017年5月号から2020年9月号まで連載されていたラブコメ漫画である。作者は内山敦司。 全40話、コミックは全9巻で売り上げはデジタル版も含めて累計78万部を突破した。 ♡ストーリー● 中川光輝は幼なじみでもある藤咲歩美に惚れており関係が壊れるのを恐れて告白できない状況が続いていたが、高校生になってから歩美と付き合いたい男子が増えた事で光輝は意を決して彼女に告白を決意する。 ところが歩美に告白する光輝の元に隣の席の神堂ひかりが現れて、いきなり光輝の彼女と宣言してしまう。 突然の出来事に告白はうやむやになってしまい光輝は怒るが、これまで地味な印象だった神堂の美貌と付き合ったら何でもしてくれると彼女から告白されて光輝は動揺するが同時に歩美と付き合うのを諦める事を促されてしまう。 神堂から歩美と付き合うと世界が滅ぶと言われるが当然、光輝は信じるはずもなく再び歩美に告白しようとするが何故か次々と不運に襲われて告白ができない。 それでもめげずに光輝は歩美に告白するが、動揺した彼女の影響で隕石が落下する光景を目撃した事で光輝は神堂から歩美への告白を邪魔した理由を伝えられて事の重大さを理解する。 そして光輝は歩美も世界も救おうと神堂のエロ仕掛けや歩美の力を狙うKONOE COMPANYの暗躍に翻弄されながら選択だらけの波乱の日常が幕を開ける。 ♡登場人物● 中川(なかがわ)光輝(こうき) 茶髪とアホ毛が特徴の本作品の主人公。 高校生になってから幼なじみの歩美に想いを寄せるようになり彼女に告白しようとするが、神堂が現れた事により告白はうやむやになってしまう。 さらに歩美と付き合うと世界が滅ぶ事を神堂から告げられるが、8年前に両親を亡くした歩美をほっとけないと歩美も世界も救おうと選択だらけの日々を送る事になる。 神堂から何かと逆セクハラされたりそんな状況を見た歩美に鉄拳制裁されたり、途中から転校してきた天使にもグイグイ迫られるなど傍から見たら羨まし過ぎる状況のため、学校内ではモブ男子から常に殺意に等しい感情を向けられて胃が荒れるほどのストレスを抱えている。もっとも光輝の自業自得も原因ではあるのだが…。 スマホでソープの動画ばかり見るほど年相応にスケベで神堂のエロい自撮りも保存している。 どこで買ったのか突っ込みたくなるくらいダサいTシャツを着用する事が多い。 両親は健在だがメタ的な都合からか作中では一切登場しない。 10年後はブラックと思われる企業に務めている。 藤咲(ふじさき)歩美(あゆみ) 二つ結びにした長い金髪と八重歯が特徴の本作品のヒロインのひとり。 勉強も運動も優秀でクラスの人気者と非の打ち所がないが幼なじみの光輝に対してはツンデレ。 下半身に自信があるらしいが、胸も神堂には及ばずとも貧乳と呼べるほど小さくはなく美乳…どころか普通に巨乳である。 8年前の交通事故で両親を失い実は彼女も一度、命を落としているが神堂によって生き返るも以降は彼女が精神を取り乱すと天変地異が発生するようになってしまう。 さらに両親を失ったのに自分だけ生き残ってしまった事に罪悪感を抱えてしまい、自分だけ幸せになる事が許せない歩美はそれを隠すために勉強も運動もできるクラスの人気者という仮面を付けて周囲に振る舞うようになった。 神堂の事は光輝にエロ仕掛けを繰り返したり空気が読めない言動をするため最初は嫌っていたが、彼女と交流を重ねるうちに自分の代わりに光輝と付き合うのを認めるまでの関係になる。 普段は光輝にツンデレな対応をしているが歩美自身も昔から彼の事が好きであり、雨の日になると光輝への想いが強くなって普段と一転して過剰に攻めるようになる。 作中では何度か光輝にキスをしており、雨の日は一線を越えかねない状況が二度も発生していた。 10年後は光輝と結婚して2人の子供を授かり、時には喧嘩もするが仲睦まじく過ごしている。 神堂(じんどう) ひかり 黒髪ショートヘアが特徴の本作品のもうひとりのヒロイン。 女性キャラの中ではもっとも巨乳(どころか爆乳にも近いサイズ)で、 その豊満なおっぱいを駆使して歩美を諦めさせようと光輝にたびたびエロ仕掛けをしてくる。 神堂ひかりは人間ではなく本作品の世界における神様であり見た目に反して何千、何万年も生きており数え切れない長い年月の中、自身の力を人類に狙われ続けていたため彼女は次第に人間不振に陥っていた。 ある時、幼い光輝と歩美に出会い2人と交流した事で興味を抱くも歩美が交通事故で命を落とすが彼女が生きたい気持ちを訴えて神堂は自身の力を歩美に与えて生き返らせる。 同時に天変地異を発生する体質になった歩美を危険視して与えた力を再び抜き取ろうとするが、彼女を護ろうとする光輝の成長と元気を取り戻す歩美を観察し続けた事で次第に力を抜き取る気持ちはなくなっていた。 高校生になってから光輝が歩美に告白する事になり世界を護ろうと神堂が告白を妨害したのが全ての始まりであり、光輝へのエロ仕掛けも丸く収めるための彼女なりの考えだったのだが、人という生き物の本質がわからない神堂はこの行動が浅はかだと後に語っている。 そんな彼女も光輝に対して次第に強い恋心を抱いてしまい、彼女もまた選択の板挟みで苦悩する事になってしまう。 天使の策略に翻弄され、さらに歩美が力を奪われて命を落としてしまうが神堂は覚悟を決めてKONOE COMPANYに単身で乗り込み力を取り戻そうとする。 豪六の操り人形にされた天使との交戦中に同じく覚悟を決めた光輝が駆けつけて彼の呼び掛けで天使は自我を取り戻し、同行していたあんずによって神堂は力を取り戻し豪六を倒した。 神堂は光輝が世界より歩美を選んだ事に薄々は気づきつつも悔いは残したくない彼女は、1話で光輝の告白を妨害した時と同じシチュエーションで彼に告白をする。 光輝も神堂の告白に対して胸を張って世界より歩美と宣言した事で振られるも神堂は笑みを浮かべ、自身の力で歩美を生き返らせようとする。 しかし、辛うじて意識が残っていた豪六によって光輝が銃殺されてしまい神堂は光輝と歩美のどちらを生き返らせるか最後の選択を強いられてしまう。 そこへ自分の命はもう長くない事を悟っていた天使が自身の命で光輝を生き返らせる事を提案して、神堂も彼女の意志を尊重して光輝は生き返る。 光輝は自分のせいで天使が命を落として歩美を生き返らせる事ができなくなり自責の念に駆られるが、神堂は一連の騒動は自分の存在が全て招いた事だと責任を果たす形で自身が持つ全ての力を歩美の魂へと変換する決意をする。 光輝は神堂にこれまでの思い出を彼女に伝えて歩美は絶対に幸せにする事を宣言した後、神堂は最後のワガママとして2話でずっと興味があった光輝と最初で最後のキスを交わし、彼女は歩美の魂に変換する形で消滅して、歩美は生き返った。 10年後、光輝と歩美は結婚してさらに4歳になる娘もいた。 その子の名前は「光」であり見た目も神堂ひかりと瓜二つで光輝には特に懐いており、かつてエロ仕掛けを繰り返していた彼女のような言動をしたり光輝が光に対して一瞬だけ神堂の気配を感じるなど幼い姿ながらも光は神堂ひかりと同一人物と思われる。 作中で行った神堂のエロ仕掛け一覧 胸を触らせる(1話など多数) 歩美への告白を邪魔されて怒る光輝に世界滅亡を信じてもらおうと突発的に行った行為。光輝は16歳で初めて女子のおっぱいを揉んだようで柔らかくて温かかったとのこと。 疑似ソープごっこ(2話) 光輝の家の風呂場にいた神堂が歩美を諦めさせようとした彼に行った行為。日頃からエロ動画ばかり見ていた光輝は血涙を出すほど悩んでいた。 胸を顔に押し当てる(7話など多数) 体育祭で歩美のクラスがスポーツ推薦者だらけで勝ち目がないことを黙っていた光輝に対して行った行為。当然ながら光輝はモブ男子にフルボッコされた。 布団に潜り込んでイタズラする(10話) 寝ていた光輝の布団に潜り込んだり歩美との電話中の光輝に密着したり耳に息を吹きかけたり股間に挨拶をした。神堂は光輝のワイシャツを勝手に借りていた。 指を舐める(12話) 歩美を怒らせた光輝が彼女との仲直りを促す時に行った行為。光輝はH目的じゃないと否定していたが表情はどこか煩悩にまみれている。 お尻を擦りつける(12話) 歩美と仲直りした後に狭い路地裏で光輝に行った行為。光輝の股間にお尻を擦りつけるがアングルがいろいろ際どい。 顔面騎乗(14話など) 光輝が歩美とキスした事を知り彼にキスしようとする流れでうっかり胸を揉まれた事で欲情スイッチが発動していつもより攻めた行為。神堂も喘ぎ声を出して思いっきり感じていた。 酔っぱらって迫る(16話) 夏休みの宿題中にあんずが缶チューハイを飲ませた事で歩美と共に光輝に迫る。光輝はこっそり歩美と神堂に似たアイドルの写真集を購入していたが後で2人に処分された。 ロッカーに閉じこもる(17話) バレー部が着替えようと更衣室に入る過程で光輝と共に慌ててロッカーに隠れた。お色気漫画ではよくある展開だが、向かい合わせではなく神堂の後ろに光輝がいる形になっている。 近衛(このえ)天使(てんし) 18話から登場した黒髪ロングと泣きぼくろが特徴の本作品3人目のヒロイン。 歩美と神堂の対応に精神をすり減らす光輝が病院帰りの途中に鉄棒するひとりの少女のパンツをガン見する形で出会う。 作中では特に言及されてないが、彼女も歩美や神堂に負けず劣らずのナイスバディである。3人のビジュアルや性格は作者の好み丸出しだから仕方ない。 病弱で長く入院しているようだが病院を抜け出して歩美と世界で選択肢の板挟みに悩む光輝を励まし、さらに自分を選べば毎日が癒しという第3の選択肢が加わった事で後に転校して光輝を巡り歩美や神堂との四角関係に発展する。 天使という名前は光輝に天使のような対応をした時の彼の発言をきっかけに自ら名乗るようになり、元々あった本名はそのまま廃棄している。 実は天使は歩美に入っている神堂の力をつけ狙うKONOE COMPANYに所属しており、光輝との出会いも偶然ではなく意図的なものである。 天使が患っている病気は既に末期でいつ命を落としてもおかしくない状態なのだが、祖父の豪六によって擬似「生命E」を投与された事で延命できるようになった。 だが、副作用として過激な行動をするようになってしまい光輝や神堂をたびたび弄んでは名前に反して悪魔のような笑みを浮かべている。 本来の天使が望んでいた事は健康になって友達と仲良くなって遊ぶなど普通の生活がしたかっただけであり、彼女もまた一連の騒動に振り回された犠牲者でもあった。 天使は最期にこれまでの行いを神堂に謝罪して自身の残り少ない命で豪六に銃殺された光輝を生き返らせる事を彼女に頼み、今まで自分を支えてくれた茜や青春を教えてくれた光輝に感謝してその短い生涯を終えた。 10年後、結婚した光輝と歩美の間に生まれた2人目の子供は天使と同じく泣きぼくろがある。 一度は命を落とした光輝は天使の命によって救われており、その子供は名前も同じで茜の事も覚えているなど天使と同一人物の可能性が高く長女の光と同じく光輝にはよく懐いている。 あんず 神楽一族の生き残りの少女で本作品のマスコット的存在。 一族では能力に関して特にずば抜けていたようで随所で活躍を見せるが、精神的に幼いため光輝に口が臭いなど遠慮のない発言や傍若無人な行動で歩美を振り回すなどトラブルメーカーになる事も多い。 歩美を慕う一方で光輝は家来としてこき使い神堂に対しては苦手意識を抱き、ロミオとは師弟のような関係を築いている。 10年後、推定21歳になったあんずは結婚した光輝と歩美の元でニートとして過ごしていた。 あんずとは昔から反りが合わない光輝にとっては歩美と娘2人との結婚生活を満喫できないため疎ましく思っているが、歩美があんずに甘いため居候を続けていた。 しかし、娘2人がかつての天敵を彷彿するためさすがのあんずも敵わず最初は逃げる口実として茜の支援で設立した探偵事務所に引きこもるが、最初に受けた依頼をきっかけに爆発的な人気を得た事で結果的に中川家の家計を大きく支える事になり引き続き居候する事になった。 ロミオ 歩美と同じクラスにいる男子生徒。 銀髪で「FU☆」という独特な語尾を付けて話す一見チャラいキャラに見えるが運動神経がずば抜けているため体育祭では切り札として温存されていたものの、普段から予測不能な言動を繰り返しているため彼の起用はハイリスクハイリターンである。 彼が生まれた土地は凄惨な環境で昔は傭兵として活動しており、やがて「シーカー」と呼ばれるが裏切りと利用されては始末されかけるの繰り返しでロミオはいつしか人を信用しなくなってしまった。 当時の古傷が額に残っており、彼にとって苦い思い出のため普段は銀髪で隠している。 その後の経緯は不明だが、日本に渡り光輝と歩美をKONOE COMPANYから護ろうとする神堂に雇われ任務を続ける中で次第に光輝と歩美の絆に希望を見出だした事で光輝にとってかけがえのない同性の親友になった。 10年後はYouTuberとして成功を収め、美樹と愛子と共に世界で活動している。 茜(あかね) センター分けストレートでスーツを着ている天使の付き人。 ほとんど感情を出さないが、あんずや天使の行動に昭和のようなリアクションをするなど意外とノリがいい。 あんずと同じく神楽一族の生き残りであり、本名は「神楽アカネ」。 神楽一族が滅んでしまったのは彼女がKONOE COMPANYに所属した後に豪六によって里の情報を吐かされたせいであり、茜はこの出来事がトラウマになっている。 天使とは付き人になってから茜にとって大切な存在になっており、余命僅かの天使からこれまでの感謝を伝えられた後に彼女の命によって生き返った光輝に天使の分まで生きてほしい事を涙ながらに伝えた。 10年後はホームレスになっていた茜を光輝達が発見、それからヨーロッパで4年間ゲームの修行をした事でプロゲーマーとしての才能を開花させた。 そして光輝と歩美の第2子でもある天使と瓜二つの子供と出会い、茜はかつて護れなかったひとりの少女を今度こそ護る事を誓うのだった。 本作品の登場人物では数少ない見た目が大人のキャラだが、10年後も容姿は全く変わっていない。 竹井(たけい)美樹(みき) 国仲(くになか)愛子(あいこ) 歩美の友人で彼女とは付き合いが長いようで学校内では常に一緒に過ごしている。 美樹はベリーショートで背が高く見た目通りサバサバした性格。 愛子はおかっぱボブで高校生としてはかなり小柄で、あんずに自身と体型が変わらない事を指摘されてショックを受けていた。 実は茜の部下であり、いつも歩美と一緒にいるのは監視目的の意味合いも含まれている。 しかし、美樹は歩美と一緒に過ごすうちに次第に情が移ってしまい自分の行いに迷いが生じてしまう。 一方、愛子は美樹と異なり既に割り切っているようで今後どうするかで迷っている美樹に任務をやめる事も勧めていた。 その後、天使が歩美から力を奪う事を決めて時間稼ぎとしてロミオと交戦して一時は目的を果たすものの再び戦った時は戦法を変えたロミオに敗北、彼に諭されて2人は考えを改める事になった。 10年後はロミオと共に世界を救う活動を続けており、美樹は当時の事で罪悪感を抱えていたが歩美は2人が友達になってくれた事に感謝して現在も良好な関係を築いている。 愛子は10年後もほとんど背が伸びておらず、年相応に成長したあんずが愛子より身長が高くなり彼女から背が縮んだと指摘されて10年前のようにショックを受けていた。 3バカ 歩美の親衛隊の中心メンバーとして活動する筋肉質の男とメガネをかけた男のコンビが普段のロミオとまとめて光輝から3バカと呼ばれている。 ロミオを除き2人は歩美への想いが強く彼女にしょっちゅうアプローチしているが、そのたびに光輝に阻止されている。 学校のモブ男子と同じく、光輝が羨ましい思いをしたら辛辣に接している。 10年後も光輝や歩美達と交流を続けているが、愛しの歩美が結婚した事に未練タラタラで会うたびに光輝を殴っている模様。 他の登場人物のように別に特殊な種族でも隠された素性もないただの一般人からか歩美は彼らの名前を覚えておらず、2人は名乗ろうとするも美樹と愛子が現れてスルーされた事で彼らの名前は最後まで判明する事はなかった。光輝はここぞとばかりに2人に対してほくそ笑んでいた。 直也(なおや) 光輝と同じクラスの目つきが悪い男子生徒。 3バカの2人と同じく羨ましい思いをする光輝に殺意を向けている。 体育祭ではモブ男子と共にモブ女子のおっぱいのために奮闘する。女子生徒は神堂に洗脳されてただけなのでざまぁと言いたくなる結果に終わったが。 近衛(このえ)豪六(ごうろく) KONOE COMPANYのトップで天使の祖父。 神堂の力を表向きでは世界中の命を救うために必要と発言していたが、実際は力を利用して神になり世界征服を企む典型的な外道。 歩美の8年前の交通事故は密かに彼女についてきた神堂をつけ狙っていたKONOE COMPANYのトラックが衝突した事による悲劇であり、天使は豪六が開発した擬似「生命E」を投与された事で行動が過激化した事で光輝達を翻弄させたため結果的に本作品の騒動における全ての元凶でもある。 孫でもある天使に対しても道具程度にしか思っておらず、裏切った茜を用済みとばかりに天使を操り人形にして葬ろうとするが力を取り戻した神堂の力によって重傷を負うも悪あがきで光輝を銃殺して取り乱す神堂を嘲笑うが、最後は操り人形から解放された天使にとどめを刺されてしまうという因果応報の末路を迎えた。 ♡主な用語● 生命E(エネルギー) 神堂が過去に命を落とした歩美を生き返らせるために自身に秘めた力を魂に変換して分け与えた事で歩美は生き返るが、以降は彼女が精神を取り乱すと天変地異が発生する体質になってしまう。 この世界の神様でもある神堂に秘められたエネルギーは寿命に換算すると10万年で地球を1000回も破壊できるほどの無限に等しい量が歩美の体内に収まっている。 三坂高校(みさかこうこう) 光輝達が通っている埼玉県の三坂市にある高等学校。 日頃から殺伐としており、特に光輝と神堂が所属するクラスのモブ男子は授業を抜け出してまで羨ましい思いばかりしている光輝を何度も粛清しようとしたりモブ女子は派閥があって協調性がない。 さらに担任もそんな状況を容認して放置したり授業中に騒がれると体罰したり退学をちらつかせて脅すなどブラック企業に等しい。 神楽(かぐら)の一族(いちぞく) 気を駆使して探し物などを見つける能力を持ち、耳が尖っているのが特徴の民族。 茜が豪六に情報を吐かされた事で彼女とあんずを除きKONOE COMPANYとの戦争によって全滅してしまった。 KONOE(コノエ) COMPANY(カンパニー) 天使と茜、美樹と愛子が所属している謎の組織。 トップの豪六からの指示により歩美の体内に収まった神堂の生命Eを奪おうと光輝達に接触する。 長年、神堂をつけ狙っていたが最終的に豪六が命を落とした事によりKONOE COMPANYもそのまま瓦解したと思われる。 疑似生命E(エネルギー) 豪六の開発によって生み出された不完全な生命E。 病気の天使に投与した事で彼女の体調は回復したが、同時に行動が過激化するという致命的な副作用が起きてしまった。 ♡余談● コミックのカバーを外すと登場人物は下着姿になっている(第8巻のみ収録話がシリアス展開なのもあり歩美がその事にツッコミを入れている)。 第4巻のデジタル版のみ特装版も販売されており、矢吹健太朗など豪華ゲストによる寄稿イラストなど様々なおまけが収録されている。 本作が完結した同年の冬から週刊少年マガジンにて『恋か魔法かわからない!』が2021年2・3合併号から35号まで連載されていた。 「追記・修正したら、世界滅んじゃうよ?」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 読みにくい。句読点の位置がおかしい。「○○するが誰々が××したことで云々なるが」等の重複した表現も気になる。一行が長すぎるからそうしたことが起きる。もう少し改行してみてほしい。 -- 名無しさん (2020-12-31 09 19 44) ↑代理作成した者です。とりあえず、文章を自分なりに何点か修正してみました。不自然な所が残っていたらすみません。 -- 名無しさん (2020-12-31 11 08 06) 「神堂から胸を揉まれて」はミスなのかそういう性癖なのか… -- 名無しさん (2020-12-31 11 33 12) 恋か魔法かわからないが打ち切り…。 -- 名無しさん (2021-07-28 11 42 10) 名前 コメント