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ゼロの使い魔 (全13話終了) 01 ゼロのルイズ 02 平民の使い魔 03 微熱の誘惑 04 メイドの危機 05 トリステインの姫君 06 盗賊の正体 07 ルイズのアルバイト 08 タバサの秘密 09 ルイズの変心 10 姫君の依頼 11 ルイズの結婚 12 ゼロの秘宝 13 虚無のルイズ
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『NINKU―忍空―』から、キャラ『風助』を召喚。 原作FIRST STAGE終了後、釈迦の証を所持している状態です。 1章 輝きは君の中に 風の使い魔-01 風の使い魔-02a/b 風の使い魔-03a/b 風の使い魔-04a/b/c/d
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女盗賊が投獄された地下の監獄。 杖もない、金属もない、身動きもとれないで脱出は不可能だと早々に決め付け、観念した女盗賊。 眠りにつこうと思っていた刹那、階段の上からコツコツと靴の音が聞こえてくる。 「『土くれ』だな」 男は低い声を出した。 「あんた、何者?」 フーケは男に問い掛ける。男は質問には答えずに 「再びアルビオンに仕える気はないか?」 「ふざけたことを言わないで、それ以上そんな話をするようなら助けに来てもらったところ悪いけど死んでもらうよ」 半透明で薄緑色のゴーレムのような物体が現れる。 「物騒だな、勘違いをするな。アルビオンの王家に仕えろと言っているのではない。あそこの王家はもうすぐ倒れる」 「バカどもがドンパチやってるらしいからね」 「その片方のバカの誘いだ。トリステイン貴族などという枠を越え、この世界を憂う貴族たちの連盟だ。目的はハルケギニアの 統一、そして最終的には『聖地』を奪還する。手始めにあそこの風石と造船技術を頂く。造船所のお上は掌握済みだ、 最後の詰めに、そしてこの先の夢をキャンバスに描くためにお前のような優秀なメイジが一人でも多く欲しい」 フーケは肩をすくめて笑う。 「バカ言わないで、夢は寝ながら描くものよ。私は貴族が嫌いだし、ハルケギニアの統一なんかには興味が無いわ」 男は更に低い声を出す。 「断っても構わん。牢獄に転がっている死体にまで頼むほど人材は足りていないわけではないからな」 フーケはため息をつく。 「なら最初からそう言いなさいよ」 「そうか、なら話は早い」 男はフーケに杖を投げつけ、衛兵から奪ったであろう鍵で扉を開け、拘束具を外す。 「好きに脱出するんだな、三日後にラ・ロシェールの『サンジェルマン』で待っている」 フーケは男に杖を向ける。 「あんた、私をバカにしてるんじゃないの?殺すなんて脅した後に杖を渡されてそのまま従うほど従順じゃないね。 『ジャッジメント』!」 フーケのスタンドが檻を破壊し、杖からは男に向かって石礫が飛ぶ。 しかし、そこに立っていた男はもう影も形もなく、今度は数人『その男』が階段から降りてくる。 「『土くれ』、なかなか頭の回転が速いが、相手の属性もクラスもわからないまま攻めるのは感心しないな」 数人の『男』が同時に同じ声を出し、エコーのように響く。男は重なり合い、一人になる。 「『偏在』かい、一瞬で消えたのは魔力温存のため当たる前に引っ込めたのかい?」 「『偏在』の部分はその通り」 「ずいぶんと余裕だね、偏在は偏在に重なれない、あんたが本体だってのはわかりきってるのにね!」 もう一度フーケは石礫を飛ばす。 今度こそ男の体を捉らえる。 そして、男の体は消える。 「なッ!これも『偏在』!?」 今度は一人増えた『男』が階段から降りてくる。 「どうだい、力の差というものがわかったかな?これで断るようでも、ここの裏に墓標くらいは立ててやる」 フーケは再度ため息をつく。 「わかったわよ、完全敗北ね。当面の間は大人しく従ってあげるわよ」 「そうか、ではラ・ロシェールでな」 男は重なり、今度こそ一人になり、そして、今度は一人も居なくなり、消えた。 * * * 「で、ワムウ、わかってるの?ふざけたことしないで大人しくしてなさいよ?」 「ああ、大体わかった。この国の姫が学校の視察に来るのか、また騒がしくなりそうだ。俺は適当なところにいる」 「そうはいかないわよ、使い魔と主人は一心同体、あんたも出ないと失礼に当たるのよ」 「面倒だな」 「だから大人しくしてなさいって言ってるのよ」 ルイズはワムウに言い聞かす。 先ほどコルベールが珍妙な格好で授業に割り込み、姫殿下が行幸されると伝えて今日の授業は中止となった。 姫殿下が通過するというだけでその街道はさながらパレードで、近隣の一般人が多く集まっていた。 王室の紋章の入ったレリーフが街道に並べられ、ユニコーンの引く馬車の中からアンリエッタ姫が手を振る。 「トリステインバンザイ!」 「アンリエッタ姫殿下バンザイ!」 「マザリーニ枢機卿バンザーイ!」 「君に会えてよかった!」 脇の民衆から歓声が沸きあがる。 馬車は魔法学院の正門をくぐり、整列した生徒が一斉に杖を掲げる。 アンリエッタ姫が馬車を降りると、歓声があがる。姫は優雅に手を振る。 ワムウが呟く。 「あれがそのアンリエッタ、か」 いつもならば姫を呼び捨てにするなんてといってすごい剣幕でまくしたてるルイズだが、ルイズはその呟きには答えなかった。 視線の先には姫の近衛兵であろう羽帽子をかぶり、グリフォンにまたがっている貴族がいた。 ワムウは鼻を鳴らし、ルイズが見とれている隙に人ごみから抜け出していった。 * * * 日も沈み、二つの月が部屋を照らす。 鍵をかけないことが暗黙の了解となっている窓が外から開き、ワムウがルイズの部屋に入ってくる。 てっきり、途中でいなくなったことについてなにか言われるとでも思っていたが、 ルイズは放心状態で入ってきたことにも気づかないようであった。 が、ワムウは気にも留めず、部屋に来る目的であった先日買った剣を拾い再度窓から出て行こうとした。 その時、ドアが規則正しくノックされる。 ルイズはハッとしたように立ち上がり、ドアを開ける。 そこには頭巾を被った少女が立っていた。 「静かに」 少女は呟き、杖を出す。 それを一振りすると光の粉が部屋に舞う。 「ディテクトマジック?」 魔法の正体にルイズが気づき、怪訝な顔をする。 「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」 と頭巾の少女は返事をし、頭巾を外す。 その少女は、昼間歓迎式典を行った相手である 「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」 アンリエッタ姫であった。 彼女は感極まったようにルイズを抱きしめる。 「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!私の友達のルイズ!」 「姫殿下、こんな下賎なところにお越しになられるなんて…」 「ルイズ、そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!あなたにまでよそよそしい態度をとられたら、私死んでしまうわ!」 「ああ、そんな姫さま…」 二人は昔話に花を咲かせる。ワムウはそれをつまらなそうに眺める。 「……忘れるわけ無いじゃない、あの頃は毎日が楽しかったわ。なんにも悩みなんてなくって」 アンリエッタはため息をつく。 「姫さま?」 「あなたが羨ましいわ、王国に生まれた姫なんて、籠の鳥も同然…飼い主の機嫌次第であっちにいったりこっちにいったり…」 憂鬱げに外の月を眺め、呟く。 「ルイズ、私結婚するのよ」 「…おめでとうございます」 アンリエッタの陰のある言葉にルイズは手放しでは喜べなかった。 「…あら、そこに立っているのはどなた?」 アンリエッタはワムウに気づき、尋ねる。 「私の使い魔です、姫さま」 アンリエッタは感嘆の声を上げる。 「すごいじゃないルイズ、こんなすごい亜人を召還したなんて!あなたって昔から変わってると思ったけれど… こんな使い魔みたことないわ!」 「そ、そんな…確かにすごいことはすごいですが私の命令に従うことなんて滅多に無くて…」 「そんな謙遜することないわよ」 「まだ数日しか立ってないのに決闘騒ぎに色々と言えない事まで…もし使い魔にするならイモリかこいつを選べと言われたら 迷わずイモリを選びますわ」 ルイズは憮然とする。それに合わせるようにアンリエッタはため息をつく。 「どうしたんですか姫さま」 先ほどからの過剰ともいえるおかしな様子にルイズが尋ねる。 「…いえ、なんでもないわ・・・ごめんなさい、あなたに相談できるようなことではないのに…」 「なんでもおっしゃってください、姫さま。そんな様子ではとんでもないお悩みを抱えているんでしょう?」 「いえ、話せません…悩みがあるなんてことは忘れてちょうだい、ルイズ」 「そんな、私を友達なんて呼んでいただいたのに、悩みを話せないのですか?」 ルイズは語勢を強める。 アンリエッタは嬉しそうに微笑む。 「嬉しいわ、ルイズ。今日初めて私を友達と呼んでくれて。わかりました、そこまで言うのなら話しましょう」 「外しても構わないか?」 ワムウは面倒ごとに巻き込まれるのは勘弁だと思い、なおかつこの姫には大してよい印象を持っていなかった上での発言だったのだが 「あら、人語も介するのね!お気遣いは嬉しいけれども使い魔と主人は一心同体、外さなくて構いませんよ」 やんわりと一蹴される。 そして、静かに話し始める。 「これから、話すことは、他言無用ですよ…私はゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが…」 「ゲルマニアですって!あんな野蛮な成り上がりどもごときのうすっぺらな藁の家が深遠なる姫様の砦に踏み込んで来るのッ!」 ルイズが甲高い声をあげ、語を荒げる。 「ええ、でも仕方ないの…反乱を起こしたアルビオンの貴族がこのまま順当に王家を倒せば、トリステインに攻め込んで くるでしょう……地理上は隣接しているようなものですし、ゲルマニアの軍事力は驚異的、ガリアとは政治的主張が 似通っています…あの反乱軍は腐敗した王家を倒すのが目的だといっていますが、その建前で同じような政治形態の トリステインに攻めてくることはリンゴを幹から切ったら地面に落ちるくらい確実なの… それで、軍事的庇護を受けるためにゲルマニアと同盟を結ぶのに私が嫁ぐことは致し方ないのです……」 アンリエッタは手で顔を抑え、下に向ける。 「そうだったんですか…」 ルイズは沈んだ声で言う。 「それで、礼儀知らずのアルビオンの貴族派どもは私の婚姻を妨げるための材料を血眼になって探しているのです」 「…では、もしかして姫様の婚姻を妨げる材料があるのですね?」 ルイズはその意味を察し、尋ねる。 アンリエッタは悲しげに頷き、ひざまずき、顔を両手で覆う。 「おお、始祖ブリミルよ、この不幸な姫をお救いください…」 ルイズの顔は紅潮し、興奮した様子でまくしたてる。 「では姫さま!その婚姻を妨げる材料とはなんなのですか!」 アンリエッタは呻き声を出すように呟く。 「…私が以前したためた一通の手紙なのです…それがアルビオンの貴族派に渡れば、それをゲルマニアの皇帝に届けるでしょう」 「どんな内容なのですか?」 「それはいえません…ですが、それをゲルマニアの皇帝が読めば、この私を許さないでしょう。そうすれば婚姻は潰れ、 あのアルビオンの貴族派にトリステイン一国で立ち向かうことになります…それだけは避けなければなりません…」 ルイズはアンリエッタの手を取る。 「して、その手紙はどこにあるのですか?私、姫さまの御為とあれば鬼が島でもヒンタボ島でも夢見が島でも向かいますわ!」 「それが…現在火中にあるアルビオン王家のウェールズ皇太子が…」 「プリンス・オブ・ウェールズ?あの凛々しい皇太子様が…では、姫さま!この『土くれ』のフーケを捕らえた ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとその使い魔にその任務、お任せください!」 「ああ、そんな無理よルイズ!現在火中であるアルビオンに赴けなんて危険なこと、頼めるわけがありませんわ!」 「何をおっしゃいます! 姫さまとトリステインの危機とあらば、私見過ごすわけにはいけません!」 ルイズは強い意思を伝える。 「この私のためにそこまで言って下さるの!これが誠の忠誠と友情というものなのですね!ありがとうルイズ!」 アンリエッタは感涙したように眼を手で拭う。 ワムウが自分たちの言葉に酔っている2人の話に割り込む。 「俺も行くのか?」 「当たり前でしょ、連れて貰えないとでも思ったの?」 「断る。受身の対応者である悲劇の姫気取りの尻拭いなど俺がやるようなことではない」 ルイズは顔を紅潮させる。 「なななな、なに言ってんのよあんたは!すみません姫さま、私の教育が悪くて…」 「言った通りだ、若いとは言え姫なのだろう?心酔している者も多くいるようだしな。一国で事を構えられるだけの国力と軍事力を 整えるなり、アルビオンに介入して反乱の目を摘んでおくなり、開戦を察知して安全なうちに手紙を回収することもできた。 だが、それを怠ったのはお前の責任だ。結婚による同盟も一つの選択肢であることを割り切っているならともかく 敗戦が確実になるまで行動をおこさず、悲劇の姫を気取っているような奴にただで手を貸すほど暇でないんでな」 「ワムウッ!姫様になんたる失礼を!謝りなさい!」 「いえ、ルイズいいのです。彼の言うとおりです、これは私の責任です…ただで、とおっしゃいましたね? ならば…母君からいただいたこの『水のルビー』を差し上げましょう。どうか、ルイズをお守りください」 アンリエッタは右手の薬指から指輪を引き抜き、ワムウに差し出した。 「そんな姫さま、畏れ多い…」 「ワムウッ!姫殿下になにをしたァーーッ!」 ギーシュが扉を開けて現れ、ワムウを怒鳴る。 すかさずワムウが殴り飛ばし、片方の手で指輪を受け取る。 「いいだろう、この依頼引き受けた。他言無用だったな?こいつは終了まで軟禁でもしておけ、なんなら証拠も残さず食うが」 ワムウの物騒な発言と拳を意に介さず、ギーシュはアンリエッタの前にひざまずく。 「姫殿下!その任務、どうかこのギーシュ・ド・グラモンにもお申し付けください!」 「あら、グラモンといえば…ワイルドキャット……じゃなくて…西部の投手でもなくて…」 「グラモン元帥の息子です、姫殿下!」 「知ってますわよぉおお!あなたも、私の力になってくれるとおっしゃるのですか!」 「ええ、もちろんです!加えて貰えるとしたらこれはもう望外の喜びに違いありません!」 「ではお願いしますわ、ギーシュさん」 ギーシュはひざまずいたまま深く礼をする。 「では、明日の朝に出発してください。貴方たちに始祖ブリミルのご加護かありますように」 * * * ラ・ロシェールの『サンジェルマン』。 一人の男と一人の女。 「…それで、お前には『女神の杵』亭を襲ってもらう。狙いはワルドとルイズ以外…たぶんあの使い魔だけだろう、その殺害だ」 「使い魔一人殺すのに私を使うのかい?自分を過信してるわけじゃないが、随分無駄な使い方だね」 「あの使い魔を舐めるな、『ゼロの使い魔』だ、なにが起こるかわからん。それにお前一人だけではない」 「やれやれ、あんたは敵の実力を過信しすぎじゃないか?まあ、軍人なんてのはそれがお似合いなのかもしれないけどね せいぜい丘の向こうの見えない敵に怯えてな。それで、私以外に襲うのはどんな連中なんだい?」 「お前と同じ貴族くずれのメイジだ、『同じ』、な。報酬の先払い分だ」 女は報酬の袋を開け、中身の量をみて驚く。 「使い魔一人殺すのにこんなに金を積むなんて、軍人の貴族さんは違うわね」 「相方も同額だ、文句は無いだろう。それに、戦争と暗殺と人脈に金を惜しむほど馬鹿なことはない。 コストパフォーマンスを考えればお前たちの力量ではむしろ割安だ」 フーケは袋をしまい、話を再開する。 「で、その相方とはいつ落ち合えるんだい?」 「二日後の同じ時間で先ほど言った『女神の杵』亭で下見も兼ねてもらう」 「わかったわ、任務はワルドとルイズ以外の殺害ね、あんたの言うように好きなように暴れさせてもらうさ」 「暴れるだけなら相方の方が上だ、対象以外の尊き犠牲がどれくらいでるか…ああ、心が痛むな」 「心にもないことを、じゃあ私は行かせて貰うよ、ここの勘定も報酬に含めときな」 女は店を出、扉の鈴が鳴る。 残された男は呟く。 「ふむ、勘定か。やれやれ、自腹など払うのもな、俺への報酬とさせていただこうか」 男は、一瞬のうちに姿を消していた。
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時はギーシュを億泰がフルボッコにする数分前…… 「フン、ご飯抜きは当然の報いよ」 そう言って自分だけお昼に手をつける。 うん、今日も美味しい。 部屋で着替えた後で少~~~し昼寝をしてしまったから、他の皆より遅い昼食だった。 周りは大体デザートに入っているので少し気恥ずかしい。 「掃除はもう終わったの?ルイズ? 少しばかり遅い昼食みたいだけどねー?」 ああ、もうこのキュルケときたらからかう事ばかり。 得意げな顔をして胸を揺らしている。こんなキュルケと家がライバルの自分が憎い。 「あら?そういえば使い魔はどうしたの? まさか一人で掃除させて自分は寝てたとかじゃないわよね?」 正解にすぎる。トリステインはどうなってしまうのか。 「~~~! その通りよ!文句ある!?」 「まあいいけどね。 貴方の使い魔があそこでケーキ配ってても」 「え!?」 キュルケに言われて辺りを見てみると、確かに間抜け面が見つかった。 隣のメイドとそれなりに仲良さそうにケーキを配っている。 (な、ななななによアイツは! なんで勝手にメイドと仲良くしてんのよ! いえ、平常心、平常心よルイズ。 使い魔が言うこと聞かないでメイドに餌付けされた位でなんだっていうの。 後でご飯を抜いて……ってもう一週間抜いたんだったァー!) そんなこんなで悩んでいるルイズをキュルケが可愛い物を見る目でこっそり鑑賞しだした頃、 ふと勘違いのギーシュの辺りでモンモランシーと知らない少女の怒鳴る声、それからガラスの割れる音が聞こえた。 見ると、ツープラトンを食らっているようだ。 「あちゃー、ギーシュってば手酷くやられたわねー」 「……自業自得じゃない」 あれ?いつの間にかアホのオクヤスが厨房に戻って出てきて…… と時がすっ飛んでいることにルイズが気づくのと同時に、メイドが土下座をしていた。 ボーッとそれを見ていると、今度はオクヤスがギーシュとなにやら言い合いを始めて…… 気づいた時にはもう億泰がギーシュをフルボッコにしていた。 白目を剥いて鼻血と舌をダランと垂らしたギーシュの襟首を掴んで殴っている。 暫くすると手を離されてギーシュが床に沈みこむ。 さっき取り巻いてた友人達が引っ張ってく様子を見て、 マリコルヌと一緒におねんねするのね、とルイズは思った。 「って何をやってるのアンタはーーー!?」 メイドに手を差し出して立たせていた億泰へと詰め寄ることにした。 「お、オクヤスさん!? 逃げてください!貴族を殴っちゃうなんて! 殺されちゃいますよ!?」 「そ、そうよ! アンタ何考えてやってんのよ! 今度は魔法使ってくるわよアイツは!」 「いや、別になんも考えてなんてねーけどさ」 それを聞いてルイズとシエスタはサッと顔を青くし、周囲の生徒は皆ずっこけた。 「考えなしでギーシュをボコボコに!?平民が!?」 「いや、別にギーシュはどうでも良かったけどアホかアイツは!」 「へへ、あの平民が何日生き残れるか賭けようぜ! 俺は一日目でだ!毎食のはしばみ草のサラダを賭けるぜ!」 「Bad!もっとまともな物を賭けるんだ! 僕は三日で……この十枚を賭けよう!」 「Good!」 「ああ、どこに行ってたんだアンジェロ岩! 心配したよ急に居なくなってるもんだから!」 アギ…… 「~~~~! 出かけるわよ!用意しなさい! メイド、アンタは馬の支度!」 喧騒をよそにルイズがシエスタと億泰を食堂から引っ張り出して命令する。 「え、あの、ミス・ヴァリエール? 午後の授業は言ったいどうするんですか?」 「サボるわよ…… 町にいくの。少なくともギーシュが起きあがる前までに剣を買うわ。 丸腰よりは幾らかマシだもの」 「剣~~~? オメーが使うってのか~~?」 「アンタのよ!」 そして三時間後 「腰がいてェェ~~!」 「情けないわね、馬にも乗った事ないなんて。 それより気持ち悪いからその歩き方なんとかならないの? 相当人の目を引いてるじゃないの」 トリステインの城下町へと辿り着いた二人の様子は対照的だった。 映画のセットのような街中をひょこひょこと内股で歩く学生服の億泰。 それを気持ち悪い物を見る目で見ているルイズ。 そして億泰の(主にケツを)見ているイイ男数人。 「というか、アンタ感謝の気持ちが足りてないでしょ。 生存確率上げてあげようと思ってわざわざ町まで遠出したのに……」 「だからよォー、いらねーっつったじゃねーか」 「メイジの魔法って物を分かってないわね。 そんなんじゃ本当に死ぬわよ?さっきの逆の構図で」 馬の上でも何度も交わした問答だったが、 改めて言っても無駄だったので億泰は諦める事にした。 「それより、預けた財布は大丈夫? 大通りなんだからスリ多いのよ?」 財布は下僕が持つ物だと言われ馬から降りるなり財布を預けられたのだ。 ずっしりとした感触に顔がどうしても綻ぶ。 「大丈夫だってーの。 こんな小さな通りでよぉ~~スられっかって」 「小さいって……この町一番の大通りよ?ここ」 そう言いながらもルイズは更に狭い路地裏へと入っていく。 汚物やらゴミやらが道端に放置されていて、 入ってきた二人に気づいた猫が子犬を咥えて走り去っていった。 「うわ、見るからにヤバそーですって感じだなァー」 「だからあんま来たくないの。 ほら、さっさと用事を済ませるわよ」 そう言ってルイズは路地裏を進んでいき、やがて一軒の店へと入っていった。 億泰が看板を見ると、剣の形をした銅の看板がかかっている。 どうやら武器の店らしいな、と思いながら億泰はルイズに続いて店内へと入った。 店の中は昼間だというのに薄暗く、所狭しと並べられた武器防具がランプに照らしだされていた。 奥には五十絡みの親父がたるんだ顔してパイプをふかしている。 「レストラン・トラザr じゃねーや、こんな所へ何の用だい?おじょうちゃ……」 くわえたパイプを離し、ドスの利いた声で言いかけた所でルイズの服装に気づいたらしい。 胸元の五芒星に目をやると、途端に態度を変える。 「旦那。貴族の旦那! うちはまっとうな商売をしてまさあ、お上の目にさわるような事はこれっぽっちも! もう『ゼロ』でさあ!」 「客よ」 『ゼロ』に反応してムカつきながらも、ルイズはそう言って物色しだす。 やがて、自分では剣の良し悪しなんて分からない事を理解して億泰に尋ねる。 命が懸かってる分本人に尋ねた方が分がいいだろうと考えたのだ。 「ほら、どんなのが欲しいの?」 「ってもよォ~俺帰宅部だったしそんなん分からねーって」 「アンタ自分の命懸かってるのがわかんないの!?」 そう言い合う二人を見ると、店主はいそいそと奥へ引っ込んでいく。 そして、倉庫に入る前に振り向いてニヤニヤと笑いながら小声で呟いた。 「ド素人どもめ、鴨葱ってやつか。 せいぜい高く売って儲からせてもらおうかね」 やがて店主は奥から1.5メイルはあろうかという立派な剣を油布で拭きながら持ってきた。 両手で扱える程の柄の長さに、ところどころ宝石が散りばめられている。 「なるほど、確かに昨今は貴族の方々の間で下僕に流行ってますからね。 そこの兄ちゃんはガタイもいいし、コイツでもきっと扱いきれますな。 どうです?コイツはこの店一番の業物ですぜ」 その輝きにルイズも億泰も魅入られたのか、覗き込んだ。 やがて、ルイズが聞き出す。 こいつでいいやと思ったのだろう。見栄っ張りのルイズらしい所である。 「おいくら?」 「へい、何せこいつはかの高名な錬金魔術師シュペー卿が鍛えた一品でしてね、 ちょいと値が張りますぜ?」 「私は貴族よ?ほら、もったいぶらないで言いなさい」 「エキュー金貨で二千、新金貨では三千になりますな」 その値段を聞いた途端、ルイズがあんぐりと口を開く。 億泰はサッパリこちらの金銭感覚が分からないのでポケーっとしていた。 「ドンくらいの価値なわけ?これ」 「森つきの庭と立派な邸宅が買えるくらいよ」 「……ハァ?何言ってんだてめー! 俺達からボろうってでも言うのかコラー!」 「お、おい、勘弁してくださいよ兄ちゃん。 うちの品物にケチつけるってのかい? 青銅だって真っ二つだし、青銅や青銅や青銅のゴーレムが殴った程度じゃ折れない代物なんですぜ?」 弁解と追求の争いが始まろうとしたその時、乱雑に積まれた剣の山の中から声がした。 低い男の声だ。 「おいおめえ!ケチつけるんなら証明でもすりゃーいいじゃねえか! 鉄を切るだとか剣がダメになるだとかの前に腕が壊れるだろうがな! むしろ棒っきれでも振ってんのがお似合いだぜ猿野郎が!」 「ん、んだとてめー!」 いきなりの悪口にムカっ腹が立った。 しかもいつもと違うバリエーションだったためにより一層だ。 しかし、声がしても姿が見えない。 「デル公てめえ!商売の邪魔する気か! せっかく良い値でだま……っと、売れそうだってのに!」 「黙ってろいオヤジ! ほらほら、帰んな貴族の娘っ子!」 「失礼ね!」 怒鳴るルイズをよそに、億泰は声の方へと近づいていく。 そして、剣の山の中から一本の剣を引き抜く。 「まさか、おめーがしゃべってんの?」 「そうだぜこのボケナス!」 それは薄手の長剣だった。 しかし、錆がところどころに浮いてとてもじゃないが使えそうとは言えない。 「ほォー!剣がしゃべんのか!おもしれーな」 「それって、インテリジェンスソード?」 ルイズが当惑した声を出してその剣を見た。 「そうでさあ若奥様。意思を持つ魔剣インテリジェンスソードでさ。 どこの物好きが始めたのか、剣をしゃべらせるようにした奴なんですが…… いかんせんこいつは性格は悪い、口は悪い、喧嘩早いととにかく嫌な野郎でして。 おいデル公!失礼はそこまでにしときな!それ以上すると川底に沈めるからな!」 「そん時は魚に話して岸まで運んでもらうから構わねえぜクソオヤジ!」 「なんだとこの野郎!孤独だよ~!って喚いてもゆ、許さないからな!」 歩き出す主人を億泰が手で制す。 その表情は新しいおもちゃを手に入れた子供、 あるいは康一が由花子に初めて呼び出されたシーンを見た億泰のようだ。 「おもしれーじゃねーか。 俺よォ~、このデル公でいーぜ?」 「え?い、嫌よそんなの。 『ぜ~~~~ったいに負けんのだあ!』とか叫びそうじゃないの」 「俺様はデルフリンガー様だ!デル公じゃねえ! さっさと放せ三下!……?」 ルイズと一緒になって抗議しだしたデルフリンガーだったが、ふと押し黙った。 そして、暫くたってから再び話しはじめる。 「おでれーた。てめ『使い手』じゃねえか。 ああ。あんなナマクラよりは損はさせないから俺を買え」 「ん、だから買うっつんじゃねーかよォ」 そう億泰が言うとすぐにまた押し黙る。 「チッ…… まあ、ソイツなら厄介払いで百で結構でさあ。 どうしやすか?相場なら数百は頂きやすし、そいつ鞘に入れとけば黙りやすんで」 ウッとルイズは息がつまる。 財布には数百も無い。せいぜい二百が良い所だったのだ。 だから、それを気取られないように精一杯虚勢を張って言う。 「仕方ないわね……こいつでいいから買ってあげるわ」 「ヘイ、毎度あり!」 そうして、デルフリンガーを抱えて二人は出て行った。 途端に武器屋には静寂が戻ってくる。 「フン、今日はもう店じまいにするかね。 五月蝿いのがいなくなってせいせいしたしなあ」 酒瓶を取り出しながら親父は独り言を漏らす。 「ま、これで儲け話を零さないで済むんならマシってもんよ。 なあ?そう思うだろおめーら。 ……チッ、今日はやけに酒が塩辛いな」 親父の呟きは、ガランとした店の中に消えていった。
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ポルナレフがルイズを助ける少し前のこと。 「いいか、よく聞け。フーケが出て来たのはチャンスだ。今なら奴を倒せるかもしれん。」 ポルナレフはシルフィードの上で二人に話し出した。「確かに出て来たのはいいけど、あたし達の魔法じゃきっと効かないわよ?」 「お前達の魔法じゃあ無い。あくまで可能性の話だが…」 タバサが持っていた破壊の杖を指差した。 「その破壊の杖ならあのゴーレムを一発で破壊できるかもしれない。そして俺はその使い方を知っている。」 二人は驚いて、顔を見合わせた。破壊の杖を初めて見たばかりのそれもメイジではないはずのポルナレフが「使える」と言い出したのだ。 「だが、使うにはあそこにルイズがいると危険だし、距離と時間が必要だ。」 だからフーケの動きをしばらく止めてくれ、とポルナレフは頼んだ。 「ダーリンの頼みなら断る理由は無くてよ!それにルイズばかりかっこよくさせとくのも釈だし。」 「…(コクリ)」 キュルケとタバサは快く承知した。 ポルナレフはそれじゃあ頼んだ、とだけ言うと亀と破壊の杖を持って飛び降りた。 「はん!何わざわざ『土』は切れないなんて教えてんだい!これであんたの勝ち目は無くなったよ!」 フーケはゴーレムの腕を鉄に変えずにポルナレフに向かって撃った。 ポルナレフはルイズを抱えて急いで避けると、そのまま背中を向けて逃げ出した。 「逃がさないよ!」 フーケはゴーレムで後ろから追おうとしたが、 「ファイア・ボール!」 キュルケ達に邪魔された。「うざったい虫だね!」 空から来る二人の魔法に足止めを喰らうフーケ。ちらりとポルナレフの方を見ると、いつの間にか大分距離が開いていた。 ヤバイと思ったが、はたと気付いた。何故ポルナレフは破壊の杖を持って来たのだ?ルイズを助けるだけならば邪魔以外のなんでも… そしてフーケはニィっと口を歪めた。 (こいつは『当たり』だったようだね…。まあ、ゴーレムは犠牲になるかもしれないけど…) フーケはそう考えると今度は『わざと』じりじり後退していくような振りをした。 ポルナレフはフーケのゴーレムからある程度距離を取るとルイズを亀の中に入れ、破壊の杖を構えた。 「こんなものには頼りたくないんだがな…生憎チャリオッツじゃああいつには分が悪すぎる。」 ポルナレフはそうぶつぶつ言いながら慣れた手つきで破壊の杖の安全ピンを抜きとり(めんどくさいので省略)安全装置を外した。弾数は一発。失敗は許されない。 「タバサ!準備は出来た!すぐにゴーレムから離れろッ!」 ポルナレフがそう叫ぶとタバサは急いでシルフィードを上昇させた。 それを確認すると、ゴーレムに狙いを定めポルナレフはトリガーを引いた。 しゅっぽっと栓抜きのような音がして羽がついた大きな弾が白煙を引きながら飛び出した。 その弾がゴーレムの身体にのめり込んだ瞬間、その衝撃で信管が作動、弾頭は爆発し、ゴーレムを吹っ飛ばした。 だがその爆風の中、三人共気付かなかった。フーケが砕け散っていくゴーレムの残骸と共に落ちていく最中、笑っていたことに。 「後はこの土の中からフーケを探し出したらようやく終わりね。」 「…」 ポルナレフ、キュルケ、タバサの三人はゴーレムの残骸もとい土の山の前で立ちすくんでいた。ちなみに破壊の杖はすぐ近くの地面に置いてある。(ルイズはまだ亀の中で気絶している。) 正直言ってこの中から探し出すなんて面倒である。 「それにしてもダーリン。何で破壊の杖の使い方を知ってたの?」 「ノーコメントだ。」 「…ずるい」 三人がそんなやり取りを交わしている所に 「皆さんすいません。遅くなってしまって…てこの土の山は!?まさかフーケが…」 ロングビルが森の中から現れた。 「ああ、フーケが襲って来た。罠だったみたいだが俺がその破壊の杖で奴を倒し…「そこまでだよ。全員動くな。」!?」 ロングビルがポルナレフの言葉を遮った。その手には破壊の杖。 「ミ、ミス・ロングビル?」 キュルケがまさか、という顔をした。 「その通り。あたしが『土くれ』のフーケさ。 すまなかったねミスタ・ポルナレフ。あんたのお陰で全ては上手くいったよ。本当に感謝しているよ。」 フーケが嫌味ったらしく言った。 「成る程、やはりあれは嘘だったか。しかし、感謝しているならその破壊の杖を下ろしてもらいたいものだな…」 ポルナレフは静かに言った。 「駄目駄目。だってあたしの正体ばれてるのにここで逃がしたらあたしが大変な目に会うからね。 あんた達には残念だけど、これで死んでもらうよ。」 フーケがそう言って、破壊の杖の照準をポルナレフに合わせようとした時、ポルナレフはクククと笑い出した。 「?何笑ってんだい?」 「さっさと魔法で俺達を始末すればいいのに、貴様が無駄口叩いているのが面白くてな…しかもそれはな、」 ドサッ ポルナレフがそこまで言った時、いきなりフーケが倒れた。首の付け根に丸い凹みが出来ている。 「単発式…てもう聞いてないか。」 ポルナレフはロングビルが自分がフーケと明かした時、既にチャリオッツの剣針を飛ばしていた。 直接やらなかったのはフーケの位置までチャリオッツが届かなかったからだ。そして剣針は森の木々に反射し、見事フーケの首に命中したのだ。 「まさかミス・ロングビルがフーケだったとはのう…」 四人の報告を受けたオスマンは多少残念そうに言った。オスマンいわく、酒場で給仕をしていた彼女の尻を故意に触ったのだが怒らなかった、という理由だけでスカウトしたらしい。 その場にいたコルベール含む五人全員「死ねばいいのに」と思ったのは言うまでもないが、コルベールとポルナレフの親父二人はまあ、色々あったので少し同情した。 とりあえず体裁だけ整えてからオスマンはルイズとキュルケにシュヴァリエ、タバサには精霊勲章を申請しておくと言った。 その言葉に三人は誇らしげに礼をしたが、ルイズはあることに気付いた。 「オールド・オスマン。ポルナレフには何も無いのですか?」 「残念じゃが、彼は貴族では無いのでな…」 「そんな…」 1番手柄を立てたと言えるポルナレフには貴族では無いというだけで何も無いのか、ルイズはその理不尽に憤慨したが、ポルナレフはその肩を叩いて、 「俺は別に何もいらない。色々訳ありでな…」 と言った。 その言葉にルイズは渋々頷いた。 「それはそうと今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。この通り『破壊の杖』は戻ってきたし、予定通り執り行う。 今日の舞踏会の主役は君達じゃ。用意してきたまえ。せいぜい着飾ってくるのじゃぞ。」 三人が礼をしドアに向かったがポルナレフは行こうとしなかった。 「ポルナレフ?」 「先に行ってろ。こいつらと話がある。」 ルイズは納得いかなかったが、渋々出て行った。 「何か、私に聞きたいことがお有りの様じゃな…言ってごらんなさい。 出来るだけ力になろう。君に爵位は…ああ、要らないんじゃったな。まあ、せめてもの御礼じゃ。」 「聞きたいことは二つある。一つはこのルーンだ。薄々気付いていたが、このルーンは剣やナイフを持つと何故か反応する…これは何だ?」 「うむ…それは伝説の使い魔の印じゃ。」 「伝説の使い魔?」 「さよう。始祖ブリミルの使い魔でガンダールヴと言う。彼の者はありとあらゆる武器を使いこなした、と言い伝えられておる。 コルベールの仮説じゃったがどうやら本物らしいな。」 「なるほど…だから破壊の杖も扱えたのか。しかし何故あの小娘が俺達をそのような使い魔として召喚したのだ?」 「すまんが、そればかりは分からん。」 「…まあ、いい。それよりだ。あの破壊の杖はどうやって手に入れた?あれは俺がいた世界の武器だ。この世界の技術で作れるはずがない。」 「君がいた世界…ああ、君が言ってた召喚される前の魔法が無い世界か…まあ、話すと長いのじゃが…」 オスマンが言うにはその昔ワイバーンに襲われ危機に陥った所を破壊の杖の持ち主に助けられたらしい。 「その男は?」 「死んだよ。酷い怪我を負っていてな…『元の世界に帰りたい』とベッドで言っていたよ。 彼は破壊の杖を二本持っていてな、それで彼の墓に彼が使った方を埋め、もう一本は宝物庫にしまったのじゃ。」 「そいつが来た方法なんかは聞いてないのか?」 「聞いたのじゃが、本人も分からんと言っておった。すまんな、力になれなくて。」 オスマンがすまなさそうに頭を下げた。 「別に構わない。ただ、俺や亀の様に来た奴がいる…それさえ分かればな…」 ポルナレフは立ち上がると一礼してから退室していった。 To Be Continued...
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康一達がマリコルヌに地獄を見せていた同時刻、本塔の最上階にある学院長室で、ちょっとした騒ぎが起ころうとしていた。 トリステイン魔法学院の学院長を務めるオスマン氏が、白いひげと髪を揺らして、退屈そうにしていた。 「暇じゃのう……」 オスマンは、机に手をつきながら立ち上がり、理知的な顔立ちが凛々しい、ミス・ロングビルに近づいた。 椅子に座ったロングビルの後ろに立つと、重々しく目をつむった。 「こう平和な日々が続くとな、時間の過ごし方というものが……」 「オールド・オスマン」 オスマンが、年季の入ったしわをよせながら重々しく語ろうとするが、ロングビルによって遮られる。 「なんじゃ?」 「暇だからといって、わたくしのお尻を撫でるのはやめてください」 オスマンは口を半開きにして、耳をロングビルに向けながら聞く。 「え? ポッポ ポッポ ハト ポッポ?」 「都合が悪くなると、ボケた振りをするのもやめてください」 どこまでも冷静な声でロングビルが言った。 オスマンは深くため息をついた。そして真剣な顔をしながら語る。 「そういえば、昨日召喚されたという平民の少年はどうしてるんじゃろうな? 後で様子でも……」 「少なくとも、私のスカートの中にはいませんので、机の下にネズミを忍ばせるのはやめてください」 ロングビルの机の下から、小さなハツカネズミが現れた。 オスマンの足を上り、肩にちょこんと乗っかって、首をかしげる。 「気を許せる友達はお前だけじゃ。モートソグニル」 そう言って、ネズミの前にナッツを振る。 「ほしいか? カリカリの欲しいじゃろう? なら報告をするんじゃ」 ネズミは、ちゅうちゅうと鳴きながら、オスマンに耳打ちした。 「そうかそうか、白か。純白か。よーし、よしよしよしよしよしよしよしよしよしよし! よく観察してきたのう、モートソグニル! 褒美をやろう。いくつ欲しいんじゃ? 二個か?」 ネズミは、顔を横に振って、ちゅーうちゅうちゅうちゅう! と鳴いた。 「三個欲しいのか? カリカリのを三個……。いやしんぼじゃのう! よし、三個くれてやろう!」 ロングビルが眉をぴくぴくとさせながら、その光景を見ていた。 「オールド・オスマン」 オスマンは、ネズミに向かってナッツを放り投げながら聞く。 「なんじゃね?」 「今度やったら、王室に報告します」 その言葉を無視するかのように、オスマンはネズミと戯れていた。 ネズミが手を使わずに、全てのナッツを口でキャッチして、カリコリさせながらナッツを食べている。 「よォ~しよしよしよしよしよしよしよしよしよし! とってもいい子じゃぞ、モートソグニル!」 うれしそうにネズミを撫で回すオスマン。 その光景を見ていたロングビルは、オスマンの背後に無言の圧力をかける。 「下着を覗かれたぐらいでカッカしなさんな! そんな風に怒ると、余計にしわが増えるぞ。 これ以上、婚期は逃したくないじゃろう。 ぁ~~~~、若返るのう~~~、何というスベスベの……」 オスマンが、ロングビルのお尻を堂々と撫で回し始めた。 ロングビルは立ち上がり、無言で上司の顔面を手の甲の部分で引っぱたいた。 バギィッ! 小気味良い音を立て、オスマンは地面に倒れる。 追撃といわんばかりに、ドガドガドガと、オスマンの体中に何度も蹴りを入れ続ける。 「ごめん。やめて。痛い。もうしない。ほんとに。許して!」 「このッ! このッ! このエロじじぃがッ! 思い知れッ!!」 普段の冷静なロングビルとは思えない台詞を言い放ちながら、尚もオスマンに蹴りを入れる。 「あだッ! うげッ! ごげッ! と、年寄りを、きみ。ちょま、まって。折れちゃう! はぐッ!」 「私の清らかな部分を! よくも汚れた指先で! いやらしく撫で回してくれたわねッ!」 ロングビルは完全にプッツンしているようで、目を尋常じゃないほど見開いている。 迂闊なことをしたと後悔しながら、意識が遠くへいきそうになるオスマン。 オスマンが失禁寸前になっていたその時、 ドアがガタン! 勢いよくあけられ、中堅教師のミスタ・コルベールが飛び込んできた。 「オールド・オスマン!!」 「……」 返事がない。 ロングビルは何事も無かったように机に座っているが、オスマンはピクピクと体を痙攣させていた。 いつものことなので、特に気にも留めずにコルベールは話を進める。 「たた、大変です! ここ、これを見てください!」 『炎蛇のコルベール』の二つ名を持つコルベールは、 白目をむいて気絶しているオスマンを燃やして、強制的に意識を覚醒させる。 そして、図書館にあった書物をオスマンに手渡した。 「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか」 オスマンは何事も無かったかのように、書物をマジマジと見つめている。 「これが一体どうしたと言うんじゃ。 こんな古臭い文献など漁ってる暇があったら、貴族から学費を徴収するうまい手を考えるんじゃよ。ミスタ……、なんだっけ?」 オスマンは首を傾げた。 「コルベールです! お忘れですか!」 「そうそう。そんな名前だったな。それで、この書物がどうかしたのかね? コルベット君」 「コル 『ベール』ですッ! わざとらしく間違えないで下さい!!」 だめだコイツ……、と思いながら頭を抱えるコルベール。 「とにかく、これを見て下さい!」 コルベールは、康一の手に現れたルーンのスケッチを手渡した。 それを見た瞬間、オスマンの表情が変わった。目が光って、厳しい色になった。 「ミス・ロングビル。席を外しなさい」 ミス・ロングビルは立ち上がり、部屋を出て行った。 彼女の退室を見届け、オスマンは口を開いた。 「詳しく説明するんじゃ、ミスタ・コルベール」 ルイズがめちゃくちゃにした教室の片付けが終わったは、昼休みの前だった。 罰として、魔法を使って修理することが禁じられたため、時間が掛かったのである。 といっても、片づけをしたのは殆ど康一で、ルイズは面倒くさそうな顔で机の煤を拭いただけだった。 新しい窓ガラスや重い机を運ばされた康一はくたくたになりながら、食堂へ向かうルイズの後ろを歩いてる。 「……」 「……」 二人とも無言であった。 ルイズは不機嫌そうにしており、康一は話す気力もないと言った感じで肩を落としてる。 だらだらと歩く康一に我慢できなくなったルイズが、康一に向かって怒鳴りつける。 「ちょっと! 私の使い魔らしく、もっとシャキっとなさい、シャキっと!」 康一は、何も答えずにノロノロと歩いている。 「人の話を聞いてんの? この犬!」 犬と言われた康一は、ムッとしながらも何とか堪え、ルイズの所までスタスタと歩いた。 ルイズの肩に手をポンと置き、散々コキ使われた恨みを籠めながら笑顔で返事をする。 「僕もシャキっとしたいんだけど、何せもう体力が 『ゼロ』 だからなぁ~」 康一は、『ゼロ』の部分だけ声を張った。 ルイズの眉毛がぴくぴくと動き、歯はギリギリと不協和音を奏でていた。 「いや、本当は僕も急ぎたいけど、体力が『ゼロ』だし、気力も『ゼロ』だからさぁ~!」 「ふーん、へぇ~、そーなの。 体力が無いなら仕方ないわね~」 ルイズは笑顔で、しかし、万力の力を込めるように、拳を握った。 それを見た康一は、ヤバイと思って、後ずさりしながら離れる。 「さ、さあ~てッ! 早いとこ食堂に行こ……」 ルイズの右ストレートが、康一の左頬にクリーンヒットする。 バギィッ! という音が、食堂へと続く廊下に響いた。 康一は、明日の食事も全て抜きとされてしまった。 殴られた左頬を押さえながら、康一はシエスタに案内された厨房へ向かっていた。 口の中は鉄の味で充満しており、虫歯になった時のように、ジンジンと痛みが走っている。 「あら、コーイチさん」 厨房の前に到着すると、シエスタが大きな銀のトレイで、何枚もの皿を運んでいる最中だった。 康一は、シエスタのところまで駆け寄り、一礼をした。 「どうも、シエスタさん。朝はお世話になりました。運ぶの手伝いますよ」 そう言って、シエスタの持っていたトレイを持ち上げる。 しかし、片づけで大幅に体力を失っていたこともあり、持ち上げた体勢のままプルプルと震えて動けなくなる。 「あ、あの……無理はなさらないほうが……」 シエスタが康一を心配そうに見つめる。 「だ、だ、だ、大丈夫……です。あ、いや……。やっぱまずいかも……」 シエスタは、康一の両手に重なるように手を置き、トレイを持ち上げるのを手伝う。 「す、すいません……」 シエスタの手に触れていることも相まって、康一は顔を真っ赤にして俯いた。 「一緒に運びましょう。二人で運べば、お互い楽に運べますから」 そう言って、可愛らしい笑顔でニコリと微笑むシエスタ。 康一は十分の一でもいいから、シエスタの優しさをルイズに分けてほしいと思った。 皿が乗っているトレイを、厨房のテーブルに乗せる。 トレイから皿を下ろしていると、料理を作っていたコックが皿を何枚か要求した。 康一が皿を持っていき、コックが料理を盛って、再び康一に手渡す。 シエスタが康一から料理を受け取り、何枚か大きな銀のトレイに乗せて食堂へと持っていった。 数分後、メイン料理の全てを運び終えたメイドたちは、デザートの時間になるまで昼食を取っていた。 「うーん、やっぱおいしいッ!」 康一も、シエスタを含むメイドたちと賄い料理を食べていた。 今日の賄いはシチューらしく、康一の腹を満たすには充分すぎる程の量が入っている。 シエスタは、その様子をクスクスと笑いながら見ている。 「……? どうしたの?」 「コーイチさんって、本当においしそうに食べてくれますね」 「そりゃあ、本当においしいんですから、自然とそうなりますよぉ~!」 そう言って、満面の笑みでシチューを頬張る康一。 ルイズに殴られた傷なんて、気にならないくらいであった。 「この後、デザートを運ぶんですよね? 僕も手伝いますよ」 「そんな、そこまでしてもらうわけには……」 既に厨房の仕事を手伝って貰っており、これ以上手伝ってもらっては申し訳ない、とシエスタは思った。 「いえ、朝もご馳走になりましたから、是非やらせて下さい!」 「……わかりました。なら、手伝って下さいな」 康一の素直な瞳を見て、断っては逆に失礼だと思ったシエスタは、デザート運びを手伝ってもらうことにした。 大きく頷き、康一は再びシチューを食べ始めた。 大きな銀のトレイに、デザートのケーキが並んでいる。 康一がトレイを持ち、シエスタがはさみでケーキをつまみ、一つずつ貴族たちに配っていく。 「なあ、ギーシュ! お前、今は誰と付き合ってるんだよ!」 声のした方を見ると、金色の巻き髪にフリルのついたシャツを着た、キザなメイジがいた。 薔薇をシャツのポケットに挿している。どうやら友人らしき人物と話をしているようだった。 「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」 「つきあう? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 あの人、自分を薔薇に例えるなんて、よっぽど自分の容姿に自信があるんだなぁ~。 などと思いながら次の席までトレイを運ぶ。 特に興味もなかった康一は、すぐに視線を元に戻した。 次の席にケーキを配ろうと康一が移動した時、シエスタが何かに気づき、はさみをトレイに置いた。 「すみません、ちょっと待ってていただけますか?」 「あ、はい」 そう言って、シエスタはさっきのキザな男の元に駆け寄った。 知り合いかな、と思いながら康一が見ていると、何やら少しモメているようだった。 シエスタは困った顔をして、オロオロとしていた。 何かあったのかと思い、トレイをテーブルに乗せて康一がシエスタに声をかける。 「どうしたんですか?」 「あ、それが……」 その時、一人の女性がキザ男に向かってコツコツと歩いてきた。 「ギーシュさま……。 やはりミス・モンモランシーと……」 「彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは……」 ギーシュと呼ばれた男がそう言いかけた時、パァンッ! という音が、食堂に響いた。 ケティと呼ばれた女性が、ギーシュの頬を思いっきり引っ叩いていた。 「その香水が貴方のポケットから出てきたのが、何よりの証拠ですわ! さようなら!」 ギーシュは頬をさすった。 康一が何事かと思っていると、康一を押しのけて、また一人の女がギーシュの前に現われた。 「モンモランシー。誤解だ。彼女とはただ一緒に、ラ・ロシェールの森へ……」 「やっぱり、あの一年生に、手を出していたのね?」 モンモランシーは、テーブルに置かれたワインのビンを掴むと、中身をどぼどぼとギーシュの頭の上からかけ、 「うそつき!」 と怒鳴って去っていった。 しばし、なんともいえない沈黙が流れた。 ギーシュはハンカチを取り出すと、ゆっくりと顔を拭いた。 そして、首を振りながら芝居がかった仕草で言った。 「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」 康一は、この人二股かけてたのか、まあ自業自得かな。などと思っていた。 あんまり惨めな姿を見ていると可哀想だったので、康一はすぐにその場を去ろうとする。 「……メイド風情がやってくれたね。君が軽率に、香水のビンなんかを拾い上げたおかげで、 二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだい?」 シエスタは、体を震わせながら、半泣きで土下座をする。 その光景を見た康一は、ピタリと足を止め、ギーシュの元へと引き返した。 「も、申し訳ございません!」 「謝って済む問題じゃない。キミには責任を取ってもらうとしよう。 ここのメイドをやめて、今すぐトリステインから出て行ってくれたまえ」 そう言って、ギーシュはシエスタの元から去ろうとする。 それを聞いていた康一が怒りをあらわにしながら言った。 「ちょっと! 何もそこまでする必要はないじゃないですか!」 「ん? 君は確か……ゼロのルイズの使い魔だったか。 使い魔如きが、軽々しく僕に話しかけないでくれたまえ」 使い魔如きと言われカチンとするが、 それよりも頭に来たのは、ギーシュが自分の責任をシエスタに押し付けてることだった。 「話を聞いていると、悪いのは明らかにキミの方だ! 大体、二股をかけてるのが悪いんじゃあないか。自業自得だよ!」 ギーシュの友人たちが、どっと笑った。 「確かにその通りだ! ギーシュ、お前が悪い!」 「そうだ、お前が悪い!」 それを聞いていた、周りのギャラリーたちも、一斉にギーシュを攻め立てた。 「責任転嫁するなんて、かっこ悪いぞ!」 「この極悪人め!」 「キミが真の邪悪だ」 周りから好き放題言われるギーシュ。 プルプルと振るえ、顔を怒りの形相へと変えた。 「よくも……僕にこんな恥をかかせてくれたな……」 歯をギリギリとならし、康一をキッと睨みつけている。 康一も負けじと、ギーシュを真っ直ぐ見る。 「そうやって、なんでもかんでも人のせいにするのは止めた方がいいよ。 全てキミが悪いじゃあないか。周りの皆だって、そう言ってるよ」 うんうん、と頷くギーシュの友人とギャラリー達。 「……どうやらキミは貴族に対する礼を知らないようだな。 よかろう、ヴェストリの広場で待っている。ケーキを配り終えたら来たまえ」 くるりと体を翻し、ギーシュと、その友人たちが去って行った。 「コ、コーイチさん! 逃げて下さい! 殺されちゃいます!」 「シエスタさん」 「悪いのは私なんです! だから、行くのは絶対にやめて下さい!」 「シエスタさん、聞いて下さい」 康一は地面に座り込んでいたシエスタの手を取って、立たせた。 その姿は、体の小さな康一とは思えないほど、凛々しかった。 ドキリと胸をならし、シエスタは思わず視線をそらす。 「僕が逃げるってことはつまり、シエスタさんの名誉を汚すことになります。 シエスタさんは何も悪くないんです。だから、自分が悪いなんて言うのはやめて下さい」 康一は、真っ直ぐにシエスタを見ながら言葉を続ける。 「それに、僕は彼に解らせてあげなければならないんだ。『お前が悪いんだ』ってね。 大丈夫。僕は一度殺されそうになったことがあるからね。あんな奴、ちっとも怖くなんかないよ」 そう言って、康一はテーブルに置いたトレイを持った。 「さ、それより、早くケーキを配りましょう。皆さん、お待たせしてすみません」 康一達は、残りのケーキを貴族達に配っていった。 To Be Continued →
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ゼロの使い魔 第01話 「ゼロのルイズ」 第02話 「平民の使い魔」 第03話 「微熱の誘惑」 第04話 「メイドの危機」 第05話 「トリステインの姫君」 第06話 「盗賊の正体」 第07話 「ルイズのアルバイト」 第08話 「タバサの秘密」 第09話 「ルイズの変心」 第10話 「姫君の依頼」 第11話 「ルイズの結婚」 第12話 「ゼロの秘宝」 最終話 「虚無のルイズ」 第01話 「ゼロのルイズ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm449457 24 00 9803 3341 第02話 「平民の使い魔」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm449611 24 00 8730 2761 第03話 「微熱の誘惑」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm449724 23 40 8010 3513 第04話 「メイドの危機」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm449810 23 40 7392 2258 第05話 「トリステインの姫君」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm449932 23 40 7843 2169 第06話 「盗賊の正体」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm450661 23 40 9797 3546 第07話 「ルイズのアルバイト」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm450733 24 00 10169 4114 第08話 「タバサの秘密」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm451081 24 00 8981 3927 第09話 「ルイズの変心」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm451157 24 00 12198 3877 第10話 「姫君の依頼」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm453372 23 40 8146 3209 第11話 「ルイズの結婚」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm453540 23 40 8371 5069 第12話 「ゼロの秘宝」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm453676 23 40 8953 3071 最終話 「虚無のルイズ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm281407 23 41 22841 9933
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空に輝く二つの月が一本の木を照らし出している 木には一本の剣がロープで吊り下げられていた 「おーい、降ろせー」 剣が喋っている、彼(?)は魔法によって知性を得た剣‐インテリジェンスソードで銘をデルフリンガーという 何故学院の裏庭で木に吊り下げられているかというと、ルイズが鉄をも切り裂くという剣の試し切りがしたいと言い始めた為だ 昼間の武器屋での騒動の後、ルイズは店主に「貴族の使い魔を殺すなんて…」だの「事が公になれば縛り首ね…」だの 様々な文句で脅し付け、店主の持ってきた数々の剣をロハでせしめていた (ルイズが出て行く時、店主は涙目で今にも倒れそうだった、今頃枝振りのいい木でも探しているかもしれない) 「って訳だから、はい、ちょっとぶった切ってみなさい」 ルイズはデルフリンガーを指しながらディアボロに剣を渡す 「うるせー、なにがちょっとぶった切ってみなさいだ、ぶった切られた様な胸しやがって」 デルフリンガーの言葉に額に血管を浮かせながら、周りに置いていた剣を木の方に向かって投げつける 「あっごめんなさい、いや、ちょっと、やめて」 「呪うなら、その口の悪さを呪うがいいわ」 親指を下に向けて拳を振り下ろしディアボロを促す これが本当に鉄をも切り裂くというのならデルフリンガーの運命は風前の灯だが、 適当に振るわれた剣は甲高い音と共に弾かれた 「へへーん、このデルフリンガー様はな、そんななまくらに切られる様なやわな体はしてねえってんだ」 振り子の様に戻ってくるデルフリンガーをディアボロは手で止める これで急に足が動かなくなってとか何かに気をとられている内に後ろから突き刺さると言う事は無い 不意に月が翳った ディアボロが振り返ると全高30メートルはあろうかという巨大なゴーレムがこちらに迫って来ている あれが月の光を遮ったのだ 「おい、危ねえぞ」 デルフリンガーが警告を発する 確かにこのままでは踏み潰されかねない ルイズはとうに離れて此方に向かって剣を回収しろと叫んでいる 急いでこの場を離れようとした時、いつの間にか足元に転がっていた妙な形の石に足を取られ転んでしまった 倒れた後に見えたのは巨大な足の裏だった ■今回のボスの死因 巨大なゴーレムに踏み潰されて圧死 ■おまけのデルフリンガー ボスと一緒に踏まれた時にへし折れて死亡?
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フーケの騒動があってから一週間が経ちました いろんな人たちから一目置かれるようになったルイズとドッピオ ルイズはあいかわらず魔法の腕が上がっていないのでフーケの件は使い魔がすべて行ったと周りは思っているようです その所為か決闘を申し込む貴族は殆どいなくなり、ドッピオにとっては平和な日々が続いていました そんな中 「ドッピオ、アンタ芸とかある?」 そんなことを主人から聞かれました 「芸・・・ですか?なんでまた」 いきなりそんなことを聞いてきたルイズに質問で返します 「質問を質問で返さない!・・・まあ、いきなりなのは認めるけど 今度使い魔の品評会があるのよ」 「品評会?・・・そういえば」 最近学院の中で使い魔に芸を教え込む人たちを見たことがありました 「・・・で、何かある?」 「・・・・・・」 この人たちにはスタンドは見えない。ならスタンドを使った芸でもいいかと考え 「・・・うーん」 いざ芸をしろと言われても思い浮かびません 「・・・え?もしかして特に無い?」 「・・・いえ、特に無いってわけじゃないですけど」 スタンド自体の能力は未来予知・・・これを利用した芸といって思いついたのは 「・・・手品なんてどうでしょう?」 「手品?・・・なにが出来るの?」 「そうですね・・・硬貨とかありますか?」 「あるけど・・・」 そういって一枚金貨を取り出します 「表か裏か。右手か左手か。絶対にあてることが出来ます」 「・・・それじゃこれはどっち?」 差し出した両手。ドッピオはエピタフを発動させます 「・・・右手、裏」 「・・・当たってる。でも」 二人が考えることは 「地味ね」 「そうですね」 ドッピオではどうも未来予知を生かしきる芸と言うものが思いつきません 「・・・まあ品評会は明後日だし手品だって変な力使ってやってるんでしょう?」 「そうなんですけど・・・」 「時間には猶予があるしもっとパッとした物、思いついてよ」 言うだけ言って主人は眠ってしまいました 翌日、もはや日課と化した使い魔の仕事をこなしてドッピオは自由時間を謳歌していました 「・・・品評会か」 自分を晒されるようであまりいい気分ではありません それでもやるなら驚かせるようなものをしてやろうと思い芸を考えますが (・・・学院精鋭百人連続で倒すなんてどうだろう) 変なものばかり思いつきます 「・・・やっぱりエピタフを使ったもので・・・」 ぶつぶつ言いながら廊下を歩いていると 「ドッピオー♪」 そう言って誰かが後ろから抱きついてきました。いえ、誰かなんて分かっています 考え事をしながら歩いていたドッピオはその突然のことに対応できず前のめりで転んでしまいました 「っ」 「あっと・・ごめんなさい」 抱きついてきた人はドッピオに謝ります。もちろんその人はキュルケでした 「・・・キュルケさん。いきなり抱きつくのはちょっと」 「そうね。今度からは前からにするわ。ところで」 「・・・品評会ですか?」 「ピンポーン♪ドッピオは何をするのかな?」 はっきり言ってまったく思いつきませんでした 「・・それがまだ」 「えー?ドッピオのことだからすること決まっていたと思ったのに」 残念ながらまったく決まっていません 「・・・手品」 そんな中キュルケの横で黙っていたタバサが口を開きました 「手品?ああ、そういえばルイズが言ってたわね」 現状でなにも芸が無い以上手品程度でしかドッピオには出来ません 「で?どんな手品が出来るの?」 「えっと相手がなにを持っているかとかそういう類のものなら」 事実未来を見えるドッピオにはそれが尤も簡単かつすごいと思わせるものです 「それじゃカードを使った手品をしたらいいんじゃない? カードくらいならルイズだってすぐ用意できるでしょ」 「・・それだ!」 ドッピオはいきなり叫びました 「ありがとうございます!これなら・・・」 そう言ってドッピオは走っていきました。おそらく行き先はルイズの部屋でしょう 「・・・楽しみ」 タバサが小さい声で言いました 「え?タバサ?」 「・・・なんでもない」 「ルイズさん!」 部屋に入りこんで来た使い魔がいきなり自分のことを呼びました 「なに?芸でも決まったの?」 「はい。ところでカードって用意できますか?」 「出来るけど・・・カードで手品でもするの?」 「はい」 言い切りました。ここでキュルケからの提案とかは言いません 言ったら絶対「するな」といわれますから 「カードか。やっぱり手品といえばカードかしらね」 「どうでしょう?用意できます?」 「大丈夫よ、そのくらい。で、すごいのが出来るの?」 「・・・カードが来たら見せてあげます」 (・・そんなに自信があるのなら問題ないかしら) そう思ったルイズは 「分かったわ。カード用意するからすごい手品してよね」 「もちろんです!」 13へ
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その日、マルトーに夕食を御馳走になった後、年代物が手に入ったといって振舞われたワインに気をよくし、ついつい長居をしてしまったヴァニラが部屋に戻ると、既にドアに鍵が掛けられていた 「おい、ここを開けろ」 酒精のおかげで多少おおらかになったヴァニラは即座にプッツンする事は無かったが多少いらついた口調でドアをノックする が、反応は無い 気配を感じる以上中にいるのだろうが寝ているのか無視しているのか・・・・恐らく後者だろう しかも足元には御丁寧に綺麗に畳んだ毛布まで置いてある ヴァニラは知る由もないが食事を終え部屋へ戻ったルイズは部屋にいない使い魔を探しに出て、ヴァニラが厨房でシエスタやマルトーたちとささやかな品評会を催しているのを見て機嫌を損ね、このような行動に出ていた しかし先記した通りヴァニラはそのことを知らない、つまりまたルイズの高慢さから出た自分勝手な行動だと認識する・・・・つまり挟み撃ちの形にならない バリバリとドス黒いクレヴァスが口を開け始め新しい入り口を新設してやろうか等と思い始め、即座に行動に移そうとしたのとほぼ同時に、廊下の向うからペタペタと四足歩行生物の足音が聞こえてきた 「む?」 クリームの口内へ潜り込もうとしていたのを中断し、音の方へ顔を向けると廊下の暗がりから微かに光る一対の瞳と、赤々と燃える炎が近づいてくる 「お前は・・・・」 それは今までこそこそと影からヴァニラを監視していた爬虫類 堂々と姿を現したのを戦意アリと認識したヴァニラがクリームを飛ばそうと身構える が、相手はそれを否定するように首を振り、きゅるきゅると人懐っこい鳴き声を出す 何故かヴァニラはその鳴き声の意味が理解できたような気がし、しゃがんで視線を合 わせ、問いかけてみた 「お前は・・・誰の使い魔だ?」 「きゅるきゅる」 その問いに答えるようにサラマンダーはルイズの隣の部屋へ平べったい顔を向けた 「・・・・・隣か、迂闊だったな」 眉間に皺を寄せ、苦々しく呟くヴァニラを他所に、サラマンダーはついて来いと催促 するようにヴァニラのジャケットの裾を引っ張る 「・・・いいだろう、何の用か知らんが理由も聞きたい」 ヴァニラは軽く溜息を漏らし、隣室のドアをノックする 「どうぞ」 返って来た女の声に、女子寮なので当然といえば当然だが――呼吸を整えると不意打ちに身構えつつドアを開け、足を踏み入れる しかし、部屋の中は真っ暗だった ヴァニラの後からついてきたサラマンダーの周りだけぼんやりと明るく光っている DIOの館で暗闇には慣れていたが召喚されて以来光のある生活が当たり前になっていた ヴァニラには先の見通せないでいた 不意打ちに備え急所を庇うようにクリームを展開させるが魔法の変わりに女の声が聞こえてきた 「戸を閉めて?」 ヴァニラは言われた通りにした 逃げ道なら簡単に作れる 「ようこそ、そして初めまして・・・・でもないわね。こちらにいらっしゃい」 「この蜥蜴を通してみていたのか?」 その場から動かずヴァニラは淡々と訊ねる ここは既に相手の領域、これ以上主導権を奪われるわけには行かない 相手が戦うつもりであると信じ込んでいるヴァニラは臨戦態勢だった 「ええ、それに直接見ることもあったわ。ねぇ、そんなに堅くならないでこっちにいらっしゃいな」 地の利と視角、絶対有利なはずのこの状況で攻撃もせず、誘うような相手の声にヴァニラは漸く疑問を持ち始める 「しかし暗いぞ」 指を弾く音が聞こえた すると部屋の中に置かれたいたロウソクが一本ずつ燈っていく ヴァニラの近くに置かれていたロウソクから順に火は燈り、ベットの傍のロウソクがゴールだった 道のりを照らす街灯のように、ロウソクの灯が浮かんでいる ぼんやりと淡い幻想的な光の中、ベットに腰掛けた褐色の肌に深紅の瞳と頭髪を持つ女の悩ましげな姿があった ベビードールというのだろうか、そういう誘惑するための下着を着けている・・・・ というかそれ以外はなにもつけていない それを見たヴァニラの感想は (・・・・・・・・痴女か?) 冷めていた 何せDIOの配下に扇情的な衣装の女が一人いたうえに食料の女たちも似たり寄ったりで今更動じる事は無かった だが殆ど透けたような生地の下着を持ち上げる盛り上がりには多少驚いたが そのベクトルもルイズと同い年でどうしてここまで違うのかという ルイズが聞いたら激怒するであろうものだった 勿論学園のシステム上同学年であっても年齢は違うのだが それにしてもこの差はないだろう 女はヴァニラの視線を勘違いしたのか微笑み、名乗った 「名乗るのが遅れたけど私の名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプトー、キュルケと呼んでくださってけっこうよ?」 名乗る際にクセなのか軽く前髪を掻き揚げるが、その動作すらも計算したように悩ましげな様子を見せる 「ではキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプトー嬢、既にご存知だろうがこのヴァニラ・アイスに何のようだろうか?」 一度聞いた名前を一字一句間違えず返し、軽い皮肉を込めて訊ねる 「あん、つれない人ね。そんなところに突っ立ってないで、いらっしゃいな」 キュルケはヴァニラの問いに答えず色っぽい声で誘う 望む答えが得られず軽い落胆の溜息を吐くとヴァニラは諦めたよう、誘われるままにキュルケの元へ向かった 「座って?」 ヴァニラは言われたとおりにキュルケの隣に腰掛けた 裸に近いキュルケの隣にいても至って平静を保っていたが流石に多少の興味は湧き ・・・・・DIOの姿を思い浮かべると即座に消えた 「改めて聞くが、何の用だ?」 至って平静を保った声でヴァニラが言った 燃えるような赤い髪を優雅に掻き揚げ、キュルケはヴァニラをみつめる ぼんやりとしたロウソクの灯に照らされたキュルケの褐色の肌は野性的な魅力を放ち、ヴァニラ以外の誰かをどうにかしそうになる キュルケは大きく溜息を吐き、そして悩ましげに首を振った。 「あなたは、あたしをはしたない女だとおもうでしょうね」 「まったくだ」 「思われても、しかたがないの。わかる?あたしの二つ名は『微熱』」 「知らん。熱なら水でも被って醒ませ」 突然の口上に呆れたように受け答える 「あたしはね、松明みたいに燃え上がりやすいの。いきなりこんな風にお呼び出ししたりしてしまうの。わかってる、いけないことよ」 「理解していて抑えられないのか、最低だな」 ヴァニラは早く解放されて適当に相槌を打った 正直相手の意図がさっぱり読めない 読めないのが逆に恐怖になりつつある 「でもね、あなたはきっとお許しくださると思うわ」 キュルケは潤んだ瞳でヴァニラを見つめた 確実にヴァニラが言った事を理解していない 「・・・・・・・・何故?」 キュルケはすっとヴァニラの手を握ってきた 一本一本、ヴァニラの手を確かめるようになぞり始めた ヴァニラの背筋に悪寒が走った 「恋してるのよ。あたし。あなたに。恋はまったく、突然ね」 「まったく突然だ。ところで帰っていいか?」 ヴァニラは真顔で切り返すがキュルケの顔は真剣そのものだった 「あなたが、ギーシュを倒した時の姿・・・・。かっこよかったわ。まるで伝説のイーヴァルディの勇者みたいだったわ!あたしね、それを見て痺れたのよ。信じられる!痺れたのよ!情熱!あああ、情熱だわ!」 「・・・・情熱か、で?」 「二つなの『微熱』はつまり情熱なのよ!その日からあたしはぼんやりとマドリガルを綴ったわ。マドリガル、恋歌よ。あなたの所為なのよ、ヴァニラ。あなたが毎晩あたしの夢に出てくるものだから、フレイムをつかって様子を探らせたり・・・・。ほんとうにあたしってばみっともない女だわ。そう思うでしょう?でも、全部あなたの所為なのよ」 ヴァニラはなんと答えればいいのかわからずにじっと座っていた とうか答える答えない以前に言い知れぬ恐怖を感じていた キュルケはヴァニラの沈黙をイエスと受け取ったのか、ゆっくりと目を瞑り唇を近づけてきた 確かにキュルケは魅力的だ カリスマ性こそ比べるべくも無いが女性という点ではDIOより明らかに魅力は上のはずだ、ヴァニラも男である どうせ元に戻る当ても無い、このまま流されてしまうのもありか、などと一瞬浮かぶが・・・・・キュルケの肩を押し戻した なんとなく、悪い予感がした どうして?と言わんばかりの顔でキュルケがヴァニラをみつめる ヴァニラはキュルケから目を離さず 「つまり今までの話を要約するとお前は惚れっぽい」 それは図星のようでキュルケは顔を赤らめる ヴァニラにしては何を今更、といったところだが 「そうね・・・・・。人より、ちょっと恋ッ気は多いのかもしれないわ。でもしかたないじゃない。恋は突然だし・・・・」 キュルケがその台詞を言い終わらぬうちに、窓の外が叩かれた そこには恨めしげに部屋の中を覗く一人のハンサムな男の姿があった 「キュルケ・・・・。待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば・・・・」 「ペリッソン!ええと、二時間後に」 「話が違う!」 ここは三階だがどうやらペリッソンと呼ばれた生徒は魔法で浮いているらしい キュルケは煩そうに胸の谷間に差した派手な魔法の杖を取り上げると窓のほうを見もしないで杖を振る その動きに同じてロウソクの火から炎が大蛇のように伸び、窓ごと男を吹き飛ばした 「まったく、無粋なフクロウね」 ヴァニラはすっかり元のように冷め切った目でその様子をみつめていた 「でね?聞いてる?」 「今のは?」 「彼はただのお友達よ。とにかく今、あたしが一番恋してるのはあなたよ。ヴァニラ」 キュルケはヴァニラに再び唇を近づけた しかしそれを阻むように今度は窓枠が叩かれた 見ると悲しそうな顔で部屋の中を覗き込む精悍な顔立ちの男がいた 「キュルケ!その男は誰だ!今夜は僕と過ごすんじゃなかったのか!」 「スティックス!ええと、四時間後に」 「別けはともかく理由を言えッ!」 怒り狂いながら男は部屋に入ろうとするが再びキュルケが杖を振ると同じようにロウソクの火から生まれた蛇が男を飲み込み、地面に落ち ていった 「・・・・今のも友人か?」 「彼は、友達というよりはただの知り合いね。とにかく時間をあまり無駄にしたくないの。夜が長いなんて誰が言ったのかしら! 瞬きする間に太陽はやってくるじゃないの!」 キュルケはヴァニラに唇を以下略 今度は窓だった壁の穴から悲鳴が聞こえた 既に予想はついていたが、ヴァニラは呆れたように窓の外に目を向ける 窓枠で三人の男が押し合いへし合いしている 三人は同じに同じ台詞を吐いた 「キュルケ!そいつは誰なんだ!恋人はいないって言ったじゃないか!」 「マニカン!エイジャックス!ギムリ!」 今まで出てきた男が全員違うのにヴァニラは感心した (まるでホルホースだな。あいつはきちんと折り合いをつけてそうだが・・・) 「ええと、六時間後に」 キュルケが面倒そうにいうと 「朝だよ!」 三人は仲良く唱和した キュルケはうんざりした声でサラマンダーに命令した 「フレイムー」 きゅるきゅると部屋の隅で寝ていたサラマンダーが起き上がり、三人が押し合っている窓だった穴に向かって炎を吐いた それをもろに浴びた三人は仲良く地面にキッスすべく落下していく 「今のは?」 ヴァニラは分かりきったことを敢えて尋ねた 「さあ?知り合いでも何でもないわ。とにかく!愛してる!」 キュルケはヴァニラの顔を両手で挟むと真っ直ぐに唇を奪おうとする その時、ドアが物凄い勢いで開けられた 正しくは内側に向かって吹き飛ばされた また男か、と思ったら違った ネグリジェ姿で杖を持ったルイズが立っている キュルケはちらりとルイズを見るがドアが吹き飛ばされたにも関わらずそのままヴァニラの唇を奪おうとするが、ルイズが杖を振り上げた のを見てヴァニラがキュルケを突き飛ばす、 それに僅かに一瞬遅れて先程まで二人の顔のあった場所の延長線の壁が爆発した 「キュルケ!」 小さく舌打ちし、艶やかに部屋を照らすロウソクを一本一本忌々しそうに蹴り飛ばしながら、ルイズは二人に近づいた ルイズは怒る男口より先に手が動き、さらに起こると手より足が先に動くのだった ヴァニラに似ている気がするがきっと気のせいだろう キュルケは起き上がりながらルイズに今気づいたように顔を向ける 「取り込み中よ。ヴァリエール」 「ツェルプストー!誰の使い魔に手を出してんのよ!」 ヴァニラは我関せずといった様子で成り行きを見守っている ルイズの鳶色の瞳は爛々と輝き、火のような怒りを表している 「しかたないじゃない。好きになっちゃったんだもん」 キュルケは両手を上げた ヴァニラは二人の間に挟まれ心底面倒臭そうにしている 三人の温度差が物凄く激しい、ひょっとしたら陽炎が出来ているかも知れない 「恋と炎はフォン・ツェルプストーの宿命なのよ。身を焦がす宿命よ。恋の業火で焼かれるなら、あたしの家系は本望なのよ。 あなたが一番ご存知でしょう?」 キュルケは上げた両手を竦めて見せた ルイズの手がわなわなと震える 「きなさいヴァニラ」 ルイズはヴァニラをじろりと睨む それに応じるようにヴァニラは立ち上がり、それを見ていたキュルケが追いすがるように裾を掴む 「あら、お戻りになるの?」 キュルケは悲しそうにヴァニラを見つめる キラキラとした目が、悲しそうに潤む 「・・・・・・」 だがヴァニラは可哀想だけど明日には以下略な目で見るとルイズに促されるままにさっさと歩き出した 部屋に戻ったルイズは身長に内鍵を閉めるとヴァニラに向き直った 「まるでサカリのついた野良犬じゃないの~~~~~~~~~ッ!」 声が震えている ルイズは怒ると口より先に手が動き、手より先に足が動く、もっと怒ると声が震えるのだ その震える声でツェルプストーとヴァリエールの長きにわたる因縁を語り始める ヴァニラは初めは面倒臭そうにしていたがどうやらDIOとジョースター家のような関係なのだと理解した したのだが (それは殆ど逆恨みじゃないのか?) 領土の問題は別として恋人云々の話は明らかに逆恨みだ しかも寝取られたということは開いてのほうが魅力的だったということだろう このヴァニラ、どこまでもドライだった 一頻り文句をぶちまけ、乗馬用の鞭を振るうだけ振るったルイズは肩で息をしながらヴァニラを睨みつけている まだ何か言う事はないかと必死に考えているようだが怒り心頭の頭では何も浮かばないらしい 因みに鞭は振り下ろす度に先端を削り取られ今は持ち手以外残っていなかった、勿論ヴァニラにかすりもしていない 「そうか、わかった。今後気をつけよう」 そのタイミングを見計らったようにヴァニラが頭を下げる それでも何か言おうとするが文句を言い尽くしてしまった後では何も出てこない 「そ、そう。分かればいいのよ!」 仕方なく威厳を保つようにちっぽけな胸をそらしてみせた 「今度から何かあったらきちんと断りなさいよ、脅してもいいわ」 ルイズは物騒なことをぬかしたが、流石にクリームで消し飛ばしたとあっては責任問題としてルイズにも累が及ぶ、暫し考え 「あんたに剣を買ってあげる」 「剣?私には必要ない」 ヴァニラは即答するが 「いいから持ちなさい、あんたいつかあのわけの分からない力で人を殺しそうで見ちゃいられないのよ」 先程隣人の顔面に向けて失敗魔法をぶつけようとした人間の台詞とは思えない 「明日は虚無の曜日だから街に連れてってあげる」 ヴァニラの意思を無視して明日の予定を決めるとルイズはベットに潜り、灯りを消す 「おい、私は中で寝ていいのか?」 「いいわよ。またキュルケに襲われたら大変でしょ」 ヴァニラの問いに面倒臭そうに答えると程無くして静かな寝息を立て始めた 灯りの落ちた部屋で小さく溜息を吐き、ヴァニラは毛布に包まって横になる まだ何か嫌な予感がするが、きっと気のせいだと言い聞かせ、そのまま眠りに落ちた To Be Continued...