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「宵闇眩燈草紙」の長谷川虎蔵を召喚 宵闇の使い魔 第壱話:まれびと 宵闇の使い魔 第弐話:異界の止り木 宵闇の使い魔 第参話:ヴェストリ広場の決闘 宵闇の使い魔 第肆話:微熱の誘惑 宵闇の使い魔 第伍話:錆びた剣 宵闇の使い魔 第陸話:開け - Knock Knock - 宵闇の使い魔 第漆話:拳骨 宵闇の使い魔 第捌話:万媚 宵闇の使い魔 第玖話:王女との友情 宵闇の使い魔 第拾話:《暴風》対《閃光》 宵闇の使い魔 第拾壱話:奥の手 宵闇の使い魔 第拾弐話:空の浮島 宵闇の使い魔 第拾参話:悲嘆のルイズ 宵闇の使い魔 第拾肆話:《閃光》の末路 宵闇の使い魔 第拾伍話:サウスゴータの恩讐 宵闇の使い魔 第拾陸話:それぞれの日常へ 宵闇の使い魔 第拾漆話:忘却と妄執 宵闇の使い魔 第拾捌話:宝を求めて 宵闇の使い魔 第拾玖話:《閃光》、襲来 宵闇の使い魔 第弐拾話:目覚めの時 宵闇の使い魔 第弐拾壱話:嵐の中の輝き 宵闇の使い魔 第弐拾弐話:銃士隊の女 宵闇の使い魔 第弐拾参話:Dusky Link 小ネタ 宵闇の使い魔IF ラスキンVSフーケ
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覚悟は出来てるか? 俺は出来ているッ!! 亜空の使い魔 「キサマなああんぞにィィィィィィーッ……」 満身創痍のヴァニラ・アイスッ 彼方此方から血を流し右腕と右足、それぞれ肘と膝から下が綺麗に消し飛び あまつさえその断面からは煙のようなものが出ていたが 日光の中、同じく満身創痍で膝を付くポルナレフに向かい吠える しかしッ 「地獄でやってろ」 ドンッ ポルナレフのスタンド―シルバーチャリオッツ、甲冑を着た銀色の騎士の肩がヴァニラにぶつかり、DIOの血で吸血鬼となった狂信者は、文字通り塵となった 塵になった者はどうなるのか?それはスタンド、クリームの亜空間に消えた者の行方同様に分からない しかし 「ぐぁああああッ!?」 「きゃっ!」 ヴァニラ・アイスは突然左手を襲った焼け付くような痛みで覚醒する 「な、何だこれはッ!左手に文字が!!」 まるで焼印を押されたようなこの痛みッ! しかしそれ以上の衝撃が彼を襲う 「右手があるだと!?」 紫外線を浴び消し飛んだはずの右腕が、右足がッ しっかりと存在し、それどころかチャリオッツに刺された傷も何処にも見当たらない 「おいおいルイズ!平民どころかそいつ頭がおかしいんじゃないのか?」 「さすが『ゼロ』ッ!俺たちにできないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるぅ!」 ヴァニラを遠巻きに囲むよう不規則に並んだ子供、その中のから野次が飛ぶ それは半分は自分に向けられたものだったがもう半分は誰か別の人物へ向けたもの しかしその疑問を口にする前にその答えは見つかった 「うるさいわね! ちょっと間違っただけよ!」 「間違いって、ルイズはいっつもだろ!」 「『ゼロ』のルイズは失敗が当然なんだからな!」 目の前で尻餅をついたピンク色の髪の少女、どうやらルイズというらしい 「おい女ッ!ここは何処だ?DIO様は何処にいるッ!!」 ヴァニラの迫力に思わず気圧されるが直ぐに 「ご主人様に向かってその口の利き方は何よ!」 「ご主人様?私がお仕えするのはDIO様だけだッ 質問に答えろ!!」 少女を締め上げようと手を伸ばすが、 「ミス・ヴァリエール!そこまでです!みなさん。今日はここでおしまいです。解散!!」 U字禿の男の言葉に遮られタイミングを逃してしまった 野次を飛ばしていた子供たちもぞろぞろと遠くに見える城の様な建物へ向かい歩いて行き、 ゼロのルイズと呼ばれていた少女も溜息をつき立ち上がる 「・・・・アンタ、名前は?」 「名前?ヴァニラ・アイスだ、それより質問に」 「ヴァニラ?変な名前ね・・・まあいいわ、来なさい。色々説明して上げる」 ルイズはそれだけ言うとヴァニラの返事を待たず、さっさと歩き出してしまった 一人取り残されたヴァニラはにわかに翳り出した空と、そこに浮かぶ何故か自分の身体を焼かない太陽を見上げ呟く 「DIO様、私はこれからどうなるのでしょうか・・・?」 己の命さえ投げ出し忠誠を誓った主の顔を思い浮かべ、一先ずあの少女から話を聞こう。そう自分を奮い立たせヴァニラは立ち上がった To Be Continued...
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いつの間にか気を失ってしまったらしい。間田は仰向けのまま、ゆっくりと目を開けた。 「う・・・・」 眩しい。太陽の光が双眸に突き刺さる。―――太陽? そんなバカな。自分は学校から帰宅する途中だったはず。そんな時間帯に真上を見上げても、日の光に 目を焼かれるようなことはまずない。 今度は直に太陽を見ないように注意しながら、頭を持ち上げる。 視線の先には雲ひとつない青い空が広がり、太陽がさんさんと輝いていた。 「・・・・・ど、どうなってんだ・・・」 慌てて上半身を起こす。すると、身体を支えるため地面についた手のひらに、妙な感触が伝わってきた。 草だ。それもきれいに刈り揃えられた芝生。冷たいアスファルトの上ではなかった。 「・・・・・・・・・・・・・」 右を見る。灰色の壁が目に入った。視線を上にずらすと壁と同じ色の塔が見える。 まるでお城の中にいるようだった。 「杜王町にこんな場所あったっけか?」 今度は左を見る。黒いマントを身につけた妙ちきりんな連中が見えた。 なんだあれ。新興宗教か。しかし時代錯誤な格好してやがるな。 まるでRPGの登場人物がそのまま現実世界に出てきたかのような、古めかしい格好をしている。 あの青い髪の女の子なんて、でけえ杖持ってドラゴンまで従えてるぞ・・・って。 「・・・・・・・ドラゴン!?」 スタンド使いか、と間田は思わず身構えるが、よく見るとドラゴンは『実体』だった。 間違いなく、モノホンの血の通った『生き物』だ。 「ホントに・・・どうなってんだよ?」 そう呟き、頭を抱える。すると、すぐそばで草を踏みしめる音がした。 ―――反射的に正面を見る。 「あんた、誰?」 ド派手な桃色の髪に、鳶色の瞳を持った女の子が間田を見下ろしていた。 「・・・・俺は・・・間田敏和」 「どこの平民?」 「平民だぁ?」 聞きなれない言葉に、間田は思わずオウム返しで答える。 今どき、人のことをそんなエラそーに呼ぶ文化なんてあるんだろうか。 訝しげに女の子を観察していると、いつの間にか周りにいた黒マントの連中のひとりが声をあげた。 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」 誰かがそう言うと、間田を見下ろしている女の子以外の全員がどっと笑う。 「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」 女の子は振り向き、鈴のようによく通る声で怒鳴る。 「間違ったって、ルイズはいつもそうじゃん!」 「さっすが、ゼロのルイズは言うことが違いますなァ~」 再び爆笑が沸き起こる。 ルイズと呼ばれた女の子はそっちを睨みつけると、人垣に向かって叫んだ。 「ミスタ・コルベール!」 人垣が割れ、ハゲ頭の中年男性が姿を現す。 間田は吹き出しそうになった。彼があんまりな格好をしていたからだ。 手には長い杖を持ち、真っ黒いローブを身に着けている。漫画やゲームに出てくる『魔法使い』そのまんまの格好だった。 その男に向かって、ルイズがお願いします、とかもう一回やらせてください、とか言いながら腕をぶんぶん振っている。 「あの! もう一回召喚させてください!」 「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」 ミスタ・コルベールと呼ばれた男は首を横に振る。 召喚?なんだそりゃ。ファンタジーやメルヘンじゃないんだから。それとも、この子は頭がカワイソーなことになってるのか。 間田は気味悪げにルイズとコルベールを眺めていたが、しばらくするとルイズががっくりと肩を落とし、こちらに向き直る。 「あんた、感謝しなさいよね。平民が貴族にこんなことされるなんて、ありえないことなんだから」 「はあ? 貴族?」 アホか、と間田は付け足した。中世のヨーロッパじゃあるまいし、今どきそんなものいるわけがない。 間田を無視して、ルイズは諦めたように目を瞑り、手に持った指揮棒のようなものを振る。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 朗々とわけのわからない言葉を並べると、ルイズは座ったままの間田に顔を近づけてくる。 「な、何すんだ」 「いいから・・・じっとしてなさいよ!」 がし、とルイズは間田の頭を押さえ、頭突きするかのような勢いで間田の薄い唇に自らの唇を重ね合わせたッ! ズキュウゥゥゥン、と奇妙な効果音が周囲に鳴り響いたとか鳴り響かなかったとか。 「ん・・・・・・・・」 「・・・・・・・・!?!?!?」 一方、初対面の女の子にいきなりファーストキスを奪われた間田敏和! スタンドも月までブッ飛ぶ衝撃ってやつを、間田は身を持って体感していた。 ああー、でもあったかいッ! そして柔らかいッ! 女の子と手すら繋いだことも無いというのに、いきなりキスとは!! 俺って果報モンだなあ、とか思った直後。 「―――うわっチィィィィィ!?」 「キャアッ!? なっ、何すんのよ!」 突如として間田の左手の甲に、焼きごてを押し付けられたかのような熱さと痛みが走った! 思わずルイズを突き飛ばし、手の甲を押さえてうずくまる。 「ぐぅぅ・・・あ、熱ッ・・・・!」 呻く間田に、ルイズの呆れたような声が届く。 「使い魔のルーンを刻んでるだけよ。すぐ終わるからしばらく我慢してなさい」 「つ、使い、魔ァ?」 痛みは徐々に引いていく。恐る恐る右手をどけると、見たこともない文字が手の甲に刻まれていた。 コルベールが近寄り、呆然としている間田の手を取ってその文字をしげしげと観察する。 「ふむ・・・・・珍しいルーンだな。さて、それじゃあ皆、教室に戻るぞ」 コルベールはそう言うと、ふわりと宙に浮かび上がった。周りにいた黒マント達もそれに続く。 去り際に、黒マントの連中が何人か、ルイズに声を投げかけてきた。 「ルイズ! お前は歩いてこいよ!」 「あいつ、『フライ』はおろか『レビテーション』も使えないんだぜ」 「その平民、あんたにはお似合いよ!」 口々にルイズを馬鹿にした言葉を残し、黒マントたちは塔の高いところにある窓に吸い込まれるように入っていく。 間田はその様子をぽかんと口を開けて見つめていた。 「空、飛びやがった・・・・・・」 スタンドかと思ったがどうも違うようだ。スタンドのヴィジョンはまったく見えないし、何よりあれだけの人数が『空を飛ぶ』という同じ能力を持つスタンドを有しているとは考えられなかった。 自分の知らない未知の能力なのか、それとも―――。 間田は先ほどまでのことを思い返す。コルベールのどこからどう見ても『魔法使い』な格好。ルイズが口走った『召喚』という単語。そして、左手の甲に突如出現したこの妙な文字。 空を飛ぶという事象も、こう考えれば納得が――――。 「・・・・いくわけねーだろ。マンガの読みすぎだな、『魔法を使ってる』なんてよォ~」 頭を振ってこの馬鹿げた考えを断ち切る。起きたばっかりで頭がまともに働かないんだろう、そう考えることにした。 空を飛ぶ謎は結局解明できていないのだが、間田はそんなことはどうでもいいとばかりに立ち上がった。 まずここがどこなのかハッキリさせなくては。連中がどんなヤツらか考えるよりも、まずそっちを確かめる方が重要だ。 そう思い、憮然とした表情で突っ立っているルイズの肩を叩く。 「なあ、ここはどこなんだ?」 ルイズは振り向いた。間田をジト目で見ながら、『なんでこんなのが使い魔なのよ・・・』と呟く。 そして仏頂面を崩さず、不機嫌そうに言った。 「トリステインよ。そしてここはトリステイン魔法学院」 「・・・・・・ハイ?」 ルイズの口から出た言葉に、思わずマヌケ面で聞き返す間田。 魔法学院、と彼女は確かに言った。『まほう』という地名・・・・・ではなさそうだ。 「聞こえなかった? それとも頭脳がマヌケ?」 「・・・・・『まほう』って、まさかあの『魔法』か?」 「あの、って何よ。魔法は魔法でしょ? はぁ、陰気臭いうえにとんでもない田舎者なのね。魔法を知らないなんて」 「空飛んでたのも魔法?」 「そうよ、当たり前じゃない! ・・・ああもう、授業が始まっちゃう・・・! ほら、教室に行くわよ!」 苛立った様子でルイズは踵を返し、塔の入り口に向かって行く。 「あ、おい!」 間田は慌てて地面に落ちていた自分の荷物を回収し、ルイズの後を追う。 これが虚無のメイジ、ルイズと、優しくてタフで頼りになる(予定の)使い魔、間田敏和の出会いだったのである。 ルイズは不機嫌だった。今日召喚した使い魔のせいである。 ベルトだらけの奇妙な服を着た、17、8歳くらいの平民の少年だ。彼は部屋についてから、色々なことをルイズに聞いた。 ここはどこなのか? ルイズたちは何者なのか? 貴族とは? 平民とは? 質問は多岐に渡った。 トシカズ、と名乗った彼はひっきりなしに質問を繰り返す。それこそ子供でも知っているようなことまで聞いてくるものだから、ルイズはいい加減イライラしていたのだ。 おまけに、最後には『自分は違う世界から来た』とのたまった。これにはさすがのルイズも『こいつはイカれてるのか?』という疑念を持たざるを得なかった。 しかし、ルイズから見て間田の言動はハッキリしているし、何より彼が語る異世界とやらの様子が非常に詳細で、クスリ漬けのイカレポンチの狂言だとはとても思えなかった。 「・・・・でも、いくらなんでも信じられないわ。違う世界なんて・・・」 ルイズは困った顔で言う。テーブルを挟んだ向かい合わせの位置に座った間田は、夜食にともらったパンをかじりながら、神妙な顔つきでうんうん頷いている。 「俺も最初は夢でも見てんのかと思ったけどな、アレを見て確信したぜ。ここは間違いなく別の世界だ」 そう言って、窓を指差す。空には紅と翠の、それぞれ大きさの違う二つの月が浮かんでいる。間田の話では、自分のいた世界には月はひとつしかないのだという。 「別の世界に来た割にはえらく落ち着いてるじゃない」 「わけのわかんねーことが連続するとかえって落ち着くもんだ」 もし自分が異世界とやらに来てしまったのなら相当に取り乱してしまうだろう。ルイズはそう思ったが、目の前の使い魔の少年は異様に落ち着いた態度で、パンの最後の一口を口に放り込んでいた。 この落ち着きっぷりに、やはりこの平民は自分を騙しているのでは?という疑念が拭えないルイズは、あることを間田に問う。 「何か、証拠を見せてよ。あんたが住んでる異世界の物とか持ってないの?」 「・・・・証拠ねえ」 ルイズの問いに、間田は一緒に召喚された自分の通学鞄を取り出す。 写真つきの教科書でもあれば良かったのだろうが、あいにく置き勉ばかりしていたため、登校中に買ったマンガ雑誌しか入っていなかった。 仕方なく、間田は『ピンクダークの少年』が表紙を飾っているそれをテーブルの上に置く。 「何これ?」 「俺の世界の本」 「絵ばっかりじゃない。あんた絵本を読む趣味でもあんの?」 「絵本じゃねえ! んだよ、マンガがねーのか、ハルケギニアってのは」 ルイズはページをパラパラとめくる。確かに、四角い枠で区分けされたページにはディフォルメされた絵と見たこともない文字が書かれており、ハルケギニアのものではないということがわかる。 しかし、これだけでは・・・とルイズが悩んでいると、間田と一緒に召喚されたらしいもう一つの荷物が目に入った。 その荷物―――大きなナップザック―――は、所々がいびつに歪んでいて、わずかに開いた口の部分からは、入りきらなかったのか太い木の棒が一本飛び出している。 ルイズはその変な荷物を指差す。 「あっちは何?」 「え?・・・・・・いや、あれは・・・。その、ちょっとな」 先ほどまでの冷静さもどこへやら。急にしどろもどろになった間田に、ルイズはピンと来た。 ――――この平民は、何か怪しいモノを持っているッ! 人が見せたがる物は別に見たくもないが、人が隠そうとする物はすごく見たい。 今のルイズはまさにそれだった! すかさず間田に高圧的な態度で迫る。 「いいから見せなさいよ。それとも何? ご主人様に見せられない物でも入ってるのかしら?」 「そんなん入ってねーよ」 「じゃあ見せて」 間田は舌打ちし、ナップザックのジッパーに手をかける。 ジィィィ、と口を大きく広げ、飛び出していた木の棒を引っ張り出す。 ズルズルと少しずつ全身像が露になる、その怪しい荷物とはッ! 「・・・・・・・・・何これ」 先ほどと全く同じ言葉を、全く違う調子で言うルイズ。 「えーっと、木の人形、かな?」 『だから見せたくなかったんだ』といった感じの表情の間田。 ナップザックの中に押し込められていた怪しい荷物。 それは関節が人間とほぼ同じように曲がる、人間と同サイズの木製の人形だったのである。 ルイズは知るよしもないことだが、この人形はご存知の通り、間田のスタンド能力を発揮するための媒体。 人形に触れた人間そっくりに化けるコピー人形なのだ。 このバカでかくてクソ重い人形を、間田はナップザックに入れて毎日持ち歩いていたのだった。 もちろん、知らない人間が見ればそれはそれは白い目で見られるのだが、目の前にいるルイズも例外ではなかった。 完全に変態を見る目つきになっているルイズに、間田は慌てて話題を変えようとする。 「な、なあ! ところで使い魔って何すりゃいいんだ?」 「・・・・そうね」 首を傾げて考え込むルイズに、間田は無事話を逸らせたことにほっと息をつく。 やがて、ルイズが口を開いた。 「使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるんだけど・・・できないみたいね。何にも見えないし、聞こえないもの」 「はぁ」 「あと、秘薬の材料を探してくること。あんた、できる?」 「全然わからん」 にべもなく言う間田。ルイズはため息をつき、続ける。 「最後に、主人を守ること・・・・は、もっと無理そーね」 「何でだよ?」 「オーク鬼とかトロール鬼とかに一発でやられちゃいそうだもん」 ま、あんたじゃその辺の平民にも負けちゃいそうだけどね、とルイズは付け足した。 間田は付け足された悪口にカチンと来たが、言い返すよりも新たに飛び出した単語の意味を知るほうを優先した。 「オークとかトロールって何だ?」 「亜人よ。一匹で手練の戦士5人に匹敵する力を持っていて、人間を食べる怪物なの」 「・・・・そんなのがいるのかよ・・・・」 間田は急に怖くなった。まるでゲームのような世界だと思っていたが、そんなゲームよろしくモンスターまで棲んでいるとは思いもよらなかった。 もし道端でそんなのとエンカウントしたら秒殺されてしまいそうだ。サーフィスは直接戦闘には向かないし、人間じゃない連中をコピーできるとは限らないからだ。 「・・・・やっぱり、元の世界に返してくれ」 「は?」 「だ、だってそーだろ!? なんか話聞いてると俺、役に立たないっぽいし・・・俺なんか送り返して、また新しい使い魔呼べばいいじゃねーかッ!」 見よ! このブザマな主人公(ヒーロー)の姿を。間田は見たこともない怪物の姿に怯え、優しくてタフで頼れる男になるという誓いも忘れ、元の世界に戻してくれと懇願している! だが! だからといって間田がこの物語の主人公の資格を失いはしない! なぜならッ!! 「無理よ・・・送り返す魔法なんてないもの」 「・・・マジで?」 「マジよ」 間田が主人公の資格を失うとすれば、それは間田が死んだときだけなのだッ! 契約した使い魔が死なない限り、サモン・サーヴァントの呪文を唱えても召喚のゲートは出現しない。間田は死ぬまでこの世界に居続け、この高飛車な女の子の使い魔として暮らさなければならないのだ。 もちろん、ルイズもこんな死にそーなコオロギみたいな男を使い魔とするのはごめんだった。今すぐブチ殺して新たな使い魔を召喚したいというのが本音なのだが、そんなくだらないことで罪に手を染めることはしたくない。 それに、たとえ無知でなんの取り柄もない平民だとしても、一応は初めて成功した魔法の成果なのだ。 「だからあんたには私の身の回りの世話をやらせてあげるわ。掃除、洗濯、その他雑用」 「・・・・・・・・・わかったよ」 間田は露骨に嫌そうな顔をしたが、先ほどのオークだのトロールだのとやり合うよりはマシだと考え、渋々頷いた。 それに、衣食住はこの子に世話してもらうことになるのだ。言うことを聞いておかないと食事を抜くくらい平気でやりそうな気もする。 ルイズはその答えに満足そうに微笑み、ブラウスのボタンをはずし始めた。 当然、間田は目を丸くする。 「ちょ、何やってんのォ!?」 「? 寝るから着替えてるんだけど」 「・・・・男が部屋にいるのにか?」 「男って、あんた使い魔じゃない。別に気になんないわ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 いつもの間田なら鼻の下を伸ばしながらチラチラ着替えを拝むのだろうが、さすがにそんな気は起きなかった。 人はペットが部屋にいても気にしない・・・それと同じ。要するに、自分は人間扱いすらされていないのだ。 使い魔とは思った以上に待遇が悪そうだ。そう考えた間田の頭に、柔らかいものが投げつけられた。 手にとって見ると、それはッ! 「こっ、こっ、これわァァ~~ッ!?」 脱ぎたてホヤホヤの、パンティーがッ!! 「それ朝になったら洗濯しとい・・・・・って、何でポケットに入れてんの?」 「え!? ああ~ゴメンゴメン! つい興奮・・・じゃなくて、何でもない! 何でもないから!」 「・・・? 変なヤツね」 ルイズは寝巻きに着替え終わると、ベッドに潜り込む。 ランプを消そうとすると、部屋をキョロキョロ見回している間田が目に入った。 「俺はどこで寝りゃいいんだ?」 「あー、忘れてたわ」 ほい、とボロい毛布を間田に投げる。 「布団が見あたらねーんだけど」 「布団? そんなの必要ないでしょ。それじゃ、おやすみ~」 パチンと指を鳴らすとランプが消え、あたりは闇に包まれる。 間田は仕方なく固い床に寝転んだ。毛布を被ると、どっと疲れが押し寄せてくる。 「ハァ。寝る場所もマトモに与えられないなんて、奴隷と似たようなもんじゃねーか・・・」 耳を澄ますと、ふかふかのベッドの中からルイズの気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 なんとなく悔しくなって、ポケットに手を突っ込み、さっき入手したパンティーを取り出す。 まだルイズのぬくもりがかすかに残っている。 固い床の寝床も少しはマシになった気がする。やってることは最低だが。 こうして、間田の使い魔生活第一日目は幕を閉じた。 彼は無事に元の世界に帰ることができるのか。そして、優しくてタフで頼りになる、ハードボイルドな男になることはできるのか・・・。 結末は、まだ誰も知らない。 .....To Be Continued →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/782.html
室内で使い魔と向かい合う少女が一人。 言わずと知れたルイズのお部屋である。所々焦げたり穴があいているのはご愛嬌だ。 彼女は今、使い魔にわりと偏った説明をしていた。 「使い魔の仕事はねえ・・・私の身の回りの世話や、硫黄とか宝石みたいな材料探し、 さらにはあらゆる危険から私を守り抜く、といったようなことまで色々とあるの。 あんたは亜人ぽいし・・・ひょっとして洗濯とかできる?」 無理よねえ、と言外に含ませながら尋ねる。 「・・・?」 案の定、だ。人型なんだからそのくらい出来るでしょう?とか、 装飾品っぽいのつけるくらいの文化持ってるくせに・・・とか言いたいのをぐっと抑える。 「できなさそうね・・・例を挙げると(ヌギヌギ)・・・いい?これは私のパンツ。これを綺麗にするの。」 パサッ 「・・・。」 ボンッ! ・・・消えた。綺麗さっぱり。 「あ・・・あ、あんたねえ!綺麗にしろとは言ったけどッ!綺麗に吹き飛ばしてどーすんノよっ!?」 だめだこいつ・・・私の服が無くなる。着替えも自分でやらなくちゃ。 「・・・?」 教え込める・・・かしら?・・・まあ・・・そのうちメイドの子にでも教育、させようかしら・・・。 「はあ・・・もういいわ。あんた食事はいらないみたいだし、そのへんは楽だから今回は許してあげる。 その代わり、しっかり私の言うこと聞くのよ?・・・もう寝るわ。」 ルイズは服を脱ぎ始めた。上着を脱ぎ、スカートも脱ぎ、次に下着に手をかけようとして・・・ ルイズは穿いていないことを思いだし・・・キラークイーンを蹴った。 「あんたが吹っ飛ばしたパンツ、どーするのよッ!」 ・・・でもまあ強いんだから満足はしているわ♪ 口には出さないルイズであった。 To Be Continued → 戻る< 目次
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(何だ、この状況は?) 本塔の壁に背中を預けたヴァニラは呆れたように目の前の光景を眺めている 真剣な面持ちのルイズとキュルケが杖を構え、屋上には水色の頭髪を持つ眼鏡の少女 、タバサというらしい――がその使い魔の竜に跨っているのが見える そして屋上から吊り下げられたロープには 「おーい、下ろしやがれ娘ッ子!」 デルフリンガーがぶら下がっていた 亜空の使い魔――デルフの受難・フォーエバー 場面を数分前にバイツァーダストッ! 街から帰ったヴァニラがルイズの部屋でデルフに尋問もとい質問をしているとキュル ケが小さな少女を伴い部屋に飛び込んできた 「ハーイ、ダーリン!プレゼントよ」 そういって罵声を並び立てるルイズを無視して差し出したのはルイズの買えなかった シュペー卿とやらの剣、話によると二人が店から出た後で入れ違いに買っていったらしい (ストーカーというやつか?) 当然ルイズは烈火の如く怒りキュルケはそれに飄々と返す、ついでにキュルケについてきた少女はヴァニラが踏みつけているデルフをじっと眺めている (何だ、この状況は?) 数分後軽いデジャヴを感じるであろう状況に平和的な質問を諦め事の成り行きを見守る ヴァニラが考えるのを止めかけたところでどうやら御互い決闘してどちらの剣を使ってもらうか決めるということで落ち着いたようだ 「それでなんでオレが吊られてるんだよォ!?」 「決闘、危険」 竜に跨ったタバサがぽつりとデルフの疑問に答えるが当然ながら納得できないらしくまだ喚き散らす しかし無常にも二人の準備は整ったらしくキュルケがタバサへ合図を送る 「いいわねヴァリエール、魔法であの剣を落とした方が勝ち。ハンデとして先行は譲ってあげるわ」 「ふ、ふん!後で後悔させてやるんだから・・・」 精一杯の虚勢を張るルイズを尻目にキュルケの合図を受けたタバサはデルフを思いっきり揺らす 「ゆーらーすーなーッ!吐く!絶対吐く!」 哀れ左右に振り子運動を始めたデルフが盛大に抗議するが誰も取り合わない そもそも剣が何を吐くというのだろう、錆? 「煩いわね、集中できないから黙りなさいッ!」 そういうとルイズはゆっくりと杖を掲げ振り子運動を続けるデルフへと狙いを定める 色んな意味でルイズの魔法に生死がかかっているデルフはごくりと息を飲み柄にも無く神に祈りを捧げる その神の御名はイタリア語で御衣には所々ハートマークがあしらってあるのだがあまり関係ない 「・・・・ファイアーボール!」 「ひッ!?」 裂帛の気合と共にルイズが叫び、放たれた魔法、もちろんファイアーボールではなく失敗魔法――はデルフの脇を掠め本塔の壁にぶち当たると爆発を起こし、塔の壁面に亀裂が走った 「てめ娘ッ子!オレを殺す気か!?」 爆風で勢いを増して揺れるデルフが抗議するが誰も聞いちゃいない 「あらヴァリエール、ロープじゃなくて壁を壊してどうする気?どうせならあのオンボロに当てて壊しちゃえばよかったのに」 悔しそうに拳を握り、自分を睨むルイズを一頻りからかうとキュルケは狩人の如くデルフを吊るしたロープを見据える 「見てなさいヴァリエール」 ロープはルイズの挑戦した時より激しく揺れていたがキュルケはゆっくりと狙いを定めると余裕の表情で短いルーンを唱え、手馴れた仕草で杖を突き出す 「ファイアーボール!」 杖の先から出たメロンほどの大きさの火球は狙いを違わずロープを焼き切り、当然ながらデルフは自由落下を満喫する羽目となる 「ちょっと待てーーーー!この高さは無理無理無理無理無理無理ィッ!!」 ラッシュの速さ比べでもするような奇声を上げて落ちるデルフを地面スレスレでヴァニラが受け止める 「た、助かったぜ相棒・・・・」 「誰が相棒だ、話を聞く前に壊れられても困る」 「それでも許す、相棒だからな」 微妙に噛み合っていない遣り取りをする一人と一本だが 「ねぇダーリン、私が買ったんだからそのオンボロは捨ててこっちを使って頂戴な」 しなをつくったキュルケがヴァニラの手からデルフを奪うとがっくりと膝をつき、項垂れているルイズの方へと放り投げてしまった 「ちょ、ちょっとキュルケ!危ないじゃないの!?」 目の前にザックリと突き刺さったデルフに思わず小用を滲ませそうになったルイズはキュルケに詰め寄る。と、不意に月が翳る 「へ?」 「な!?」 「ふぇ?」 キュルケ、ヴァニラ、ルイズの順番に上を見上げると、そこには30メイル程の巨大なゴーレムが聳え立ち、その拳を振り上げていた To Be Continued...
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「遅いから逃げ出したのかと思っていたよミス・ヴァリエール!」 ルイズたちが着くなり、ギーシュは奇抜なポーズをとりながら挑発を始めた。 コォォォォォォという奇妙な呼吸音も聞こえる。一瞬体が光ったような気もするが目の錯覚だろう。 ギーシュがさらに人体の構造を無視したポージングを決めると、観客から歓声があがった。 「ギーシュ!あなたが侮辱した全員に謝りなさい!まず私に!そうしたら許してあげてもいいわ!」 ルイズも負けじとポージングを決めながら強気の姿勢で答える。 以前図書館で見た学術書に乗っていた「究極生物」の登場シーンの挿絵と同じポーズだ。これには観客から失笑があがった。 「許してあげる?それはこっちのセリフさ!君と、その隣の君の使い魔が僕にした侮辱を謝罪するがいい!」 そう言うとギーシュは一本のバラの花をポケットから取り出した。 「ワルキューレ!」 ギーシュが派手な仕草でバラの花を振りかざすと7体のゴーレムがギーシュの前に横一列に現れた。 「本来貴族の決闘は1対1でするものだが、僕は君の使い魔にも用がある。分けるのは面倒だ。いっぺんに来るがいい。ただし! 僕は『青銅』のギーシュ!従って青銅のゴーレム、ワルキューレ7体がお相手する!8対1になるわけだけど、よもや文句はあるまいね?」 それを聞いたルイズは疑問符を上げる。 ギーシュ+ワルキューレ×7=8は分かる。でもルイズ+ブラック・サバス=2ではないか。 足し算もできないのかこのド低脳がァーッ! と、言おうとしたルイズよりも先にギーシュが口を開いた。 「ああすまない。『ゼロ』のルイズをカウントするのを忘れていたよ。8対2。だったね」 ギーシュはバラの花の香りを嗅ぎながら、ルイズにウィンクした。 いつもならこの挑発にのっているところなのだろうが ギーシュのウィンクに寒気を覚えたルイズは幾分冷静さを取り戻すことができた。 「…………さっさと始めましょ。このままだと日が昇ってくるわ」 「フッ。覚悟は決まったようだね。行けワルキューレ!」 ギーシュのその掛け声に、2体のワルキューレが列を崩さぬまま突進してくる。 ルイズはそれを見ると冷静に、ブラック・サバスに命令を下す。 「サバス。ワルキューレを捕らえなさい!」 広場は相変わらず暗い。行こうと思えばきっとブラック・サバスは、ワルキューレを飛び越えてそのままギーシュを拘束できるはずだ。 実際ルイズはもしあの7体のワルキューレが、全部同時に襲ってきたらそうしようと考えていた。 しかし、あのキザ男はルイズたちを舐めているのだろう。今こっちに向かってきているのは2体 ……まずはこの2体を軽く撃退して驚かしてやろうという魂胆だ。 (ギーシュ!あんたが勝ち誇った時、そのときすでに敗北しているのよ!) ルイズが杖をワルキューレに向けると同時に、自分の隣で微動だにしていなかったブラック・サバスが、水中に潜っていくように地面に消えた。 このときルイズはまだ気づいていない。すでに自分が勝ち誇っていたことを。 消えたブラック・サバスは、ギーシュとルイズの立っている場所の、ちょうど中間地点に突如現れた。 予想外の出現に突進してきていたワルキューレの動きが止まり、観客から驚きの声が上がる。 ブラック・サバスが右手を上げ、ワルキューレを指差した。 観客はもちろん、ギーシュも次にブラック・サバスが何をするのか、思わず固唾を呑んで見守ってしまう。 「チャンスをやろう!」 ブラック・サバスは高らかに宣言した。 その言葉にルイズは思わずがっくりと膝をつき、それ以外の者は何がなんだかという顔で見ている。 「お前にh「いいから!かっこつけてないでさっさと行きなさい!」」 ブラック・サバスがルイズの方を向く。ルイズは腰に手をあて、目で「さっさと行きなさい」と意志を送る。 すると予備動作なくブラック・サバスがワルキューレに突撃していく。 それに反応するように、キレイに並んでいた2体のワルキューレのうち、右側のほうが槍を片手に立ち向かってくる。 両者の距離があっという間に縮む。あと数歩と言うところでワルキューレが槍を前方に構えた。 この勢いではブラック・サバスは自らその槍に突っ込んでいってしまう。 しかし、ブラック・サバスは半歩体を横にそらすだけで、槍の直線的な軌道から外れた。 まるで闘牛士のように、ブラック・サバスの黒いマントがはためき、ワルキューレをひらりとかわす。 「なかなかやるね。でも!」 不敵に笑うギーシュ。実際彼の中ではもうルイズの使い魔をチェックメイトしていた。 2体のワルキューレのうち、動いていなかったほうがいつの間にか距離を詰めている。 そして今度は槍を突くのではなく、なぎ払うために構える。 もう横に逃げても意味を成さない。すでに必殺の間合いだ。 (勝った!第三部完!) ワルキューレが槍を横一線に振りぬく! しかし、その軌道上にやはりブラック・サバスはいなかった。 もう横に逃げるには遅すぎるし、突っ込んできている勢いがあるため後ろには飛べない。 だからブラック・サバスは前転するように頭から突っ込んでいったのだ。 回りから見たら単につまづいて、こけた様にしか見えなかっただろう。 (い、今こけてなかったら、首が飛んでたわよ!) ……ルイズもそう思っていた。 ブラック・サバスはワルキューレの足元で両肘、両膝をつき、四つんばいのポーズになっている。 正直、負けました許してくださいと土下座をしているようにも見える。 だが、ワルキューレは今度こそ止めを刺すために、槍を頭上に掲げる。後はコレを振り下ろすだけだ。 しかし先に動いたのはブラック・サバスだった。 ブラック・サバスは片手でワルキューレの腰布をめくり、もう一方の手をワルキューレの股の間に突っ込んだ。 「つかんだ!」 再びブラック・サバスは高らかに宣言した。 (な、な、な、な、何をやってんのよーー!!エロ犬ーー!) 今までで一番の意味不明の行動に、ルイズが声にならない心の叫びをあげる。 「なにをされてるんでしょうか?」 さっきまで戦いを恐々観戦していたシエスタが、少し顔を赤らめてキュルケに尋ねる。 「なにって…………」 「…………」 キュルケは苦笑するしかない。タバサは無言で見つめている。 回りからはブラック・サバスがワルキューレの股に手を突っ込んで、何かをまさぐっている様にしか見えない。 何をつかんだのかは分からないが、いろいろな考えが皆の頭に浮かぶ。なぜかマリコルヌが鼻血を出している。 これはルイズもまだ知らないことだったのだが、ブラック・サバスは影から魂を引き抜き動きを止める。 ルイズも2回それ体験していたのだが、魂を引き抜かれていたことには、気づくに至っていなかったのだ。 ……とにかくブラック・サバス本人はいたって真面目に、ワルキューレの影から魂を引っ張り出そうとしているのだ。 しかし何度やっても上手くいかない。影を触っているはずなのに、地面にガリガリ爪を立てるばかりだ。 ブラック・サバスも気づいていないことがあったのだ。ワルキューレが魂を持たぬ人形だということに。そして。 「僕のワルキューレに、なにハレンチなことをするだァーーーッ!ゆるさん!!」 ギーシュの怒りの叫びに合わせて、ワルキューレの槍がブラック・サバスの後頭部めがけて振り下ろされた。 「サバス!!!」 ルイズの悲鳴にも似た声をかき消す様に、ドゴォという鈍い音がヴェストリの広場に重く響いた。 To Be Continued 。。。。?
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一行はその日の夜中にラ・ロシェールの入口に到着した。 「…彼らは本当に先に行ったのかい?」 ワルドは自慢の使い魔であるグリフォンでも二人に追いつけなかったと思いこみ、ショックを受けて凹んでいた。 「あの…子爵…実は」 それを見たルイズは哀れに思い、ワルドに亀の事を話した。 「…そういう種だったのかい。」 「もしかして怒ってますか…?」 「いや一本取られたな、と思ってね。まさかそんな方法で着いてくるなんて思い付かなかったよ。 とりあえず町で一泊して明日朝一番の舟でアルビオンに向かうことにしよう。」 ワルドは笑いながらそう言い、グリフォンをラ・ロシェールの町に乗り入れた。 「道理で追いつけなかったし、見つかりもしなかったわけだ。なるほど、な」 それと同時刻、ラ・ロシェールの入口の崖の上に多数の傭兵達がいまかいまかと待ち構えていた。 金の酒樽亭で女メイジと仮面を被ったメイジの二人に雇われ、「ラ・ロシェールの入口でグリフォンと馬二頭を襲え」と言われたのだ。 そしてつい先程グリフォンが通過し、何人かが弓を構えた。これに続いて馬二頭が来たら矢を尽きるまで射続けるつもりだった。 と、そこへ仮面メイジが闇の中から音もなく現れた。 「作戦は失敗だ。」 「…はあ?どういう事だ、あんた?まだ馬は来てないぜ。」 「奴らは既に町に入った。次にやるべきことを指示するから全員一旦『金の酒樽』亭に戻れ。異論は許さん。」 そう言うと再び闇の中に姿を消していった。 傭兵達は仮面メイジの言うことが理解出来なかったが、そこは傭兵。ぶつぶつ言いながらも雇い主の彼の言うことに従い、崖を降りて行った。 一行はラ・ロシェールで1番上等な宿、『女神の杵』亭に泊まることにした。 「宿に入る前に二人に着いたことを伝えないと…」 ルイズはそう言うと亀の鍵を外した。 「二人共、宿に着いたわよ。」 亀の中から断りもなくいきなり引きずり出されたギーシュは恨めしそうにルイズを見て文句を言ったが、ワルドとルイズはギーシュの文句を華麗にスルーして宿に入ろうとした。 その時である。四人の前に一頭の龍が舞い降りた。 ワルドは咄嗟に杖を構えたが、ルイズとギーシュはその背中に乗っていた少女達に驚愕した。 「あんなに急いで何処に行くのかと思ったら、ラ・ロシェールって…アルビオンにでも行くつもりなの?」 「キュ、キュルケ!タバサも!なんでここに!?」 「後をつけてきた。」 パジャマ姿のタバサが本を読みながら短く答えた。 キュルケは驚いたままのルイズとギーシュを無視してワルドににじり寄った。 「お髭が素敵よ。あなた、情熱はご存知?」 ワルドはちらっとキュルケを見つめて左手で押しやった。 「あら?」 「好意は有り難いが、これ以上近づかないでくれたまえ。婚約者が誤解するといけないのでね。」 そう言ってルイズを見つめた。ルイズの頬が赤く染まった。 「なあに?あんたの婚約者だったの?」 キュルケがつまらなさそうに言うと、ルイズの後ろで何か考え事をしていたポルナレフに抱き着いた。 「ほんとはね、ダーリンが心配だったからよ!」 が、ポルナレフは無反応だった。キュルケが抱き着いてきた事を無視して何か別の事を考えていた。 「…つまんない」 キュルケは自分のアプローチに反応しない男二人に軽く失望した。 『女神の杵』亭の一階は酒場となっていて、その造りは貴族を相手にするだけあって豪華だった。テーブルは床と同じ一枚岩から削り出しでピカピカに磨き上げられていた。 ルイズとワルドが『桟橋』へ交渉に行っている間、彼ら以外はそこでくつろいでいた。 ギーシュとキュルケは他愛のない事をしゃべり、タバサは普段と同じく本を読んでいたが、ポルナレフだけ三人から離れてカウンターに座っていた。 「…果たして俺はどうしたらいいんだろうな…」 出されたワインに手をつけず、そう呟いた。 「なんだい相棒?なんか元気無いねえ」 鞘から僅かに出ていたデルフがいつもと同じ軽い口調で言った。 「いや、これから…俺はどんな『道』に進むべきなのかが気になってな…」 「『道』?」 「俺はここに来るまでずっと戦っていたんだ…妹の仇や100年の時を越え蘇った吸血鬼、世に蔓延る邪悪とかとな…」 「へえ。そいつあおでれーた。意外とすげえ人生送ってきたんだな。」 「ああ。だが、そのような『因縁』はこの世界にはない…俺は異邦人だからな。そんな俺がだ、この世界で戦いを続ける義務が、権利があるのか?まだ戦う事に意味があるのか?分からないんだ…全く、な。」 「…難しくて俺にはよくわかんねーけど、なんだい、相棒は戦う事に『理由』を求めてるのかい?」 「そうとも言えるし、違うとも言える。」 「?」 「ひょっとしたら『戦い』自体を俺はもう嫌っているのかもしれない…」 「おいおい、変な事言うんじゃないぜ、相棒。」 「いや、これはまじめな話だ。考えてみれば俺は今まで生きてきた内の半分は戦いや修業に費やしてきた…もう休みたいと考えても変じゃあない程な」 「でも相棒は…」 ポルナレフはデルフを鞘に収めた。 これ以上話したくなかった。ポルナレフは学院を発つ前に、この任務を終えたらもう戦いから身を退こうと考えていた。ルイズには少し悪い気もするが亀だけで使い魔は十分だろうから、自分はただの平民として暮らし帰る方法も自分一人で探そうと決めた。 だがデルフと話していて沸々と何かが沸いてきた。何かは分からなかったが、それは確かに今の自分の心に問いかけてきた。 それが嫌だった。これ以上話せば自分の決心が鈍る…そう思った。 ポルナレフはワインを煽った。酔い潰れて今の話を全て忘れるまで飲み続けようと… 「お客様の気持ち…よく分かりますよ」 店主はそれだけ言って空いたグラスにワインをなみなみと注いだ。 やがてルイズとワルドが帰って来た。 ワルドは席につくと、困ったように言った。 「アルビオンに渡る船は明後日にならないと出ないそうだ」 「急ぎの任務なのに…」 ルイズが口を尖らせた。 「あたしはアルビオンに行った事無いから分かんないけど、どうして明日は船が出ないの?」 キュルケの方を向いてワルドが答えた。 「明日の夜は月が重なるだろう?『スヴェル』の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく。」 キュルケはふーんと納得したように頷いた。 「さて、じゃあ今日はもう寝よう。部屋は取った。」 ワルドは鍵束を机の上に置いた。 「キュルケとタバサは相部屋だ。そしてギーシュとポルナレフが相部屋…って彼は何処だい?」 キュルケがカウンターを指差した。そこにはワインを煽り続けるポルナレフの姿があった。近寄りがたい負のオーラが滲み出ている。 「…まあ、酔い潰れたら店主に運んでもらうよう頼んでおこう。 あと、僕とルイズは同室だ。婚約者だからな。当然だろう?」 「そんな、ダメよ!まだ、私たち結婚してるわけじゃないじゃない!」 しかしワルドは首を振ってルイズを見つめた 「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」 貴族相手の宿、『女神の杵』亭で一番上等な部屋だけあって、ワルドとルイズの部屋はかなり立派な造りであった。ベッドを例にとっても、天蓋付きの大きなもので高そうなレースの飾りがついていた テーブルに座るとワルドはワインの栓を抜いて杯に注いだ。それを飲み干す。 「君も腰掛けて一杯やらないか?ルイズ」 ルイズは言われるままにテーブルについた。ワルドがルイズの杯にワインを満たしていく。自分の杯にも注いで、それを掲げた。 「二人に」 ルイズはちょっと俯いて杯をあわせた。かちん、と陶器のグラスが触れ合った。 「姫殿下から預かった手紙はきちんと持っているかい?」 ルイズはポケットの上から預かった封筒を押さえた。一体どんな内容なのか、そしてウェールズから返して欲しいという手紙の内容はなんなのか、ルイズにはなんとなく予想がついていた。 アンエリッタとは幼なじみである。彼女がどういう時にあのような表情をするのか、よく分かっていたからだ。 「…ええ」 「心配なのかい?無事にアルビオンのウェールズ皇太子から姫殿下の手紙を取り返せるのかどうか」 「そうね。心配だわ…」 「大丈夫だよ。きっと上手くいく。なにせ僕がついているんだから」 「そうね、あなたがいればきっと大丈夫よね。あなたは昔からとても頼もしかったもの。で、大事な話って?」 ワルドは遠くを見る目になって言った。 「覚えているかい?あの日の約束…ほら、君のお屋敷の中庭で…」 「あの池に浮かんだ小船?」 ワルドは頷いた。 「君はいつもご両親に怒られた後、あそこでいじけていたな。まるで捨てられた子猫みたいにうずくまって…」 「本当に、もう、ヘンな事ばっかり覚えているのね」 「そりゃ覚えているさ」 ワルドは楽しそうに言った。 「君はいっつもお姉さんと魔法の才能を比べられて、出来が悪いなんて言われてた」 ルイズは恥ずかしそうに俯いた。 「でも僕はそれはずっと間違いだと思ってた。確かに君は不器用で失敗ばかりしていたけれど…」 「意地悪ね」 ルイズは頬を膨らませた。 「違うんだルイズ。君は失敗ばかりしていたけれど、誰にもないオーラ…さっきの使い魔君みたいなんじゃなくて…何て言うかな、魅力、みたいなものを放っていた。 それは君が他人には無い特別な力を持っているからさ。僕だって並のメイジじゃ無い。だからそれが分かる」 「まさか…」 「まさかじゃない。例えば、そう、君の使い魔…人間の方しか見えなかったけど、彼のはただのルーンじゃない。伝説の使い魔の印さ」 「伝説の使い魔の印?」 「そうさ。あれは『ガンダールヴ』の印だ。始祖ブリミルが用いたという、伝説の使い魔さ」 ワルドの目が光った。 「ガンダールヴ?」 「そう。君も知ってるだろう?誰もが持てる使い魔じゃない。しかも亀まで呼び出した…つまり君はそれだけ力を持ったメイジなんだよ」 「信じられないわ」 「君はただ自分の力に気付いていないだけだ。きっと君はいつしか偉大なメイジになるだろう。そう、始祖ブリミルのように歴史に名を残すような素晴らしいメイジにね。僕はそう予感している」 ワルドは熱っぽい口調でそう言うと、改めてルイズを見つめた。 「この任務が終わったら僕と結婚しよう、ルイズ」 「え…」 いきなりのプロポーズにルイズははっとした顔になった。 「僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりは無い。いずれは国を…いや、ハルケギニアを動かすような貴族になりたいと思っている」 「で、でも…」 「でも、なんだい?」 「わ、わたし…まだ…」 「もう子供じゃない。君は十六だ。自分のことは自分で決められる年齢だし、父上だって許して下さってる。確かにずっとほったらかしだった。婚約者だなんて言えた義理じゃない事も重々承知している。でもルイズ、僕には君が必要なんだ」 「でも…まだ私はあなたに釣り合うような立派なメイジじゃないし…もっともっと修行して…」 ルイズは俯いた。 「…君がそう考えているなら仕方が無い。その気持ちはよくわかる。取り消そう。今返事をくれとは言わないよ。君が君の言う『立派なメイジ』になるまで待とうじゃないか。」 ルイズは頷いた。 「それじゃあもう寝ようか。疲れただろう」 それからワルドはルイズに近づき、唇を合わせようとした。 ルイズの体が一瞬強張る。それから、すっとワルドを押し戻した。 「ルイズ?」 「ごめん、でも、なんか、その…」 ルイズはもじもじとしてワルドを見つめた。ワルドは苦笑いを浮かべて首を振った。 「急がないよ。僕は」 ルイズは再び俯いた。 こんなに優しくて、凛々しい、あの憧れだったワルドの気持ちはもの凄く嬉しい。 だけど気にかかるのはポルナレフのことだった。 使い魔とは言え人間、それも男なのだ。ワルドと結婚しても連れていけるのだろうか。それは出来ない気がした。 異世界から来たあいつはほっぽりだされた後、生きていく宛はあるんだろうか あのメイドや学院の使用人達、あるいはキュルケが世話してくれるだろうか?でも、呼び出したからには帰る方法を一緒に探してやる義務があるんじゃないか。それを無視するのは… そのような思いがルイズの心を前に歩かせないのだった。 翌日、ポルナレフは見知らぬ部屋のベッドの上で目覚めた。隣にはギーシュが寝ていた。 ぼやーとした頭で何処だここは?と思っているとドアがノックされた。 ふらふらした足取りでドアに向かい、鍵を外してドアを開けるとワルドが立っていた。 「おはよう。使い魔くん」 「…おはよう。 おお、そうだ。昨日は結局どうなったのか教えてくれないか?酒を飲んでたから全く聞いてなくてな…」 「ああ。まず出発は明日の朝だよ。明日じゃないと船が出ないらしくてね。」 「ほう…じゃあ今日は暇な訳だ」 ワルドが頷いた。 「そういうことだ。ところで君は伝説の使い魔『ガンダールヴ』なんだろう?」 「あ?」 「いや、フーケを尋問した時君の名前が出て来てね…きみに興味を抱き王立図書館で調べたんだよ。その結果『ガンダールヴ』にたどり着いた」 ポルナレフは二日酔いで頭がぼんやりしていてワルドが何を言いたいのか分からなかった。 「あの『土くれ』を捕まえた腕がどのぐらいのものだか、知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」 「手合わせ…」 「分かってるとは思うが、これさ」 ワルドは腰に差した杖を引き抜いた。 「もちろん二日酔いを治す薬は持って来ているよ。ほら。」 ワルドはポルナレフに透明な液体が入っている小瓶を投げて寄越した。 「引き受けてくれるね?」 「断る」「は?」 「手合わせなどやって怪我したりして明日からに響いたらどうするつもりだ」 ポルナレフはそう言うとドアを閉めた。ベッドの方を見るとギーシュがいつの間にか起きていて、こっちをじっと見ていた。 「…なんで断ったんだい?」「任務中だからな。仕方ないだろう」 「そうじゃないだろ?本当の理由は」「…どういう事だ」 「君と一度やりあったからね。何となく分かるんだ。君が今断ったのは心の深いところからやりたくないからじゃないか、てね」 「…気付いていたのか、小僧」 「で、何でなんだい?僕の申し入れは受けたのに」 「それは…もう戦いから身を退くことを決めたからだ。」 「身を退く?」 「ああ…ルイズにはまだ言ってないが、この任務が終わり次第、俺は隠者のような生活をしようと考えている」 ポルナレフは静かに続けた。「戦う理由が…因縁が…俺には無いからな…」 バキィ! ギーシュは魔法を使わず、素手でポルナレフを殴った。「な…!?」 「君は…!君は…!いつの間に誇りも主人も平気で捨ててしまうような屑みたいな人間になったんだ!因縁が無いから使い魔をやめるのかい!?」 怒りで声が震えていた。 「僕は…あの時君から言われた事を覚えている……『誇り高い男に月桂樹の冠を送る』と君は言った! 僕は…君を尊敬した!月桂樹を身につけなかったのは君にまだ劣っていると考えていたからだ!いつか…君に追い付いた時に堂々と身につけようと考えていた!なのに…君は…!」 ギーシュは鞄から月桂樹の花を取り出すとポルナレフに投げ付けた。 「君みたいな男にこんなもの貰うなんてむしろ恥だ!!」 そう言うとギーシュは扉を荒々しく開けて出ていった。部屋には呆然と床に座り込んだポルナレフだけが残されていた。 To Be Continued...
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サガフロンティアⅡのギュスターヴ13世 本編 第一部『覚醒篇』 鋼の使い魔-01 鋼の使い魔-02 『ギュスターヴと学院』 鋼の使い魔-03 鋼の使い魔-04 『ギュスターヴの決闘』 鋼の使い魔-05 鋼の使い魔-06 鋼の使い魔-07 『剣と盗賊』 鋼の使い魔-08 鋼の使い魔-09 鋼の使い魔-10 『盗賊捕縛、そして』 鋼の使い魔-11 『教える者、教えられる者』 鋼の使い魔-12 『シエスタは何処へ?』 鋼の使い魔-13 『モット邸潜入』 鋼の使い魔-14 『舞台、その裏は…』 鋼の使い魔-15 『アンリエッタ来訪』 鋼の使い魔-16 『ラ・ロシェールへ向けて…』 鋼の使い魔-17 『秘かな疑惑を胸に』 鋼の使い魔-18 『襲来!土くれのフーケ』 鋼の使い魔-19 『ウェールズ邂逅』 鋼の使い魔-20 『前夜祭は静かに流れ』 鋼の使い魔-21 『ギュス対ワルド』 鋼の使い魔-22 『無垢なる過失は罪か、それとも罰か』 鋼の使い魔-23 『百貨店 建設』 鋼の使い魔-24 『挑む若者、伏する男、携える女』 鋼の使い魔-25 『氷河剣と土人形』 鋼の使い魔-26 『歯車は外から回る?』 鋼の使い魔-27 『下準備の日々』 鋼の使い魔-28 『来る僅かな手懸り』 鋼の使い魔-29 『老獪とふたつの遺物』 鋼の使い魔-30 『seventy years ago/fortytwo years ago』 鋼の使い魔-31 『触れ合う歴史の糸二つ』 鋼の使い魔-32 『大きな一歩、躓いて…?』 鋼の使い魔-33 『開幕、長い一日』 鋼の使い魔-34 『タルブ戦役・序―開戦―』 鋼の使い魔-35 『タルブ戦役・二―紛糾―』 鋼の使い魔-36 『タルブ戦役・三―戦端/飛天―』 鋼の使い魔-37 『タルブ戦役・四―誘う魔卵―』 鋼の使い魔-38 『タルブ戦役・五―集結―』 鋼の使い魔-39 『タルブ戦役・六―両軍衝突/降り立つ明暗―』 鋼の使い魔-40 『タルブ戦役・七―再戦、狂気のワルド―』 鋼の使い魔-41 『タルブ戦役・八―始源者の亡霊―』 鋼の使い魔-42 『ルイズの夜』 第二部 『前夜篇』 鋼の使い魔-43 『王命拝命』 鋼の使い魔-44 『ルイズ、術を知る。/ギーシュ、堕ちる。』 鋼の使い魔-45 『ギーシュの秘密』 鋼の使い魔-46 『シエスタ滑落事件』 鋼の使い魔-47 『行き先は、ラグドリアンレイク』 鋼の使い魔-48 『巨湖の主、ここに』 鋼の使い魔-49 『水魔との狂宴』 鋼の使い魔-50 『忍び寄る第二幕』 鋼の使い魔-51a 鋼の使い魔-51b 幕間 鋼の使い魔 幕間-01 『幕間 ギーシュの災難』 鋼の使い魔 幕間-02 『幕間 ヘンリーの日記』 鋼の使い魔 幕間-03 『幕間 ウェールズ最後の戦い』 鋼の使い魔 幕間-04 『続・ギーシュの災難』 鋼の使い魔 幕間-05 『ジェシカの華麗なる一日』 鋼の使い魔 幕間-06 『外伝 魔法戦士タバサ(1)』 鋼の使い魔 幕間-07 『外伝 魔法戦士タバサ(2)』 鋼の使い魔 幕間-08 『外伝 魔法戦士タバサ(3)』 鋼の使い魔 幕間-09 『外伝 魔法戦士タバサ(4)』 ライブラリ 鋼の使い魔 ライブラリ-01 『1.ドラングフォルドの魔法書断片』 鋼の使い魔 ライブラリ-02 『2.石工一家所蔵、怪文書物の一項』
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ヴェストリの広場に向かうルイズとワムウ。 「勝算はあるのか?」 「ないわ」 「作戦はあるのか?」 「ないわ」 「俺に助けろなどというのか?」 「言わないわ……ああ、なんであんなこと言っちゃったのかしら…あんたに似てきたのかも」 口調は嫌がっているようだが後悔の念はなかった。 「ならば、付き添いは必要ないな」 「あら、何様のつもり?主人に付き添いって私子供じゃないのよ」 「俺から見れば人間なんぞ皆子供だ」 ワムウがフッと笑う 「よく言うわ」 「遅れるなよ」 「あいつが笑ってるところなんて……初めて見たわね。雨でも降るのかしら」 * * * 「はあ?ゼロのルイズが決闘?あの恐ろしい使い魔じゃなくて?」 キュルケがタバサから噂を聞き、首を傾げる。 「変ねえ、あいつは後先考えないことがあるとは忍耐だけはあると思ってたのに。 ま、あのヴィリエじゃもし気に入らなくなったらなにするかわかんないけどね、最近は落ち着いてきたと思ってたけど。あいつ何されたのよ」 「メイドが侮辱された」 たまたま食堂にいなかったキュルケの代わりに事態を見ていたタバサは答える。 「あいつも素っ頓狂な理由で決闘なんかするわねー。確か禁則事項だったわよね?校則は守らないと」 「私たちも人のことは言えない」 「未遂でしょ。校則破りなんてバレなきゃいいのよバレなきゃ」 キュルケは立ち上がって歩き出す。 「どこ行くの?」 「あんた程じゃないけどヴィリエは確か風のラインメイジでしょ?点もないのにどれだけやれるかからかいに行くのよ」 * * * 「なに?あのルイズが決闘だって?本当かい、モンモンラシー」 決闘でのケガでまだ医務室暮らしのギーシュ。 「ええ、本当よ」 「やれやれ、あの使い魔に影響されたのかな?それで、原因と相手は?」 「風のラインメイジのヴィリエよ。原因は私は直接見てないけど、シエスタっていうメイドの平民らしいわ」 「ああ、あの脱いだら凄そうな」 「ギーシュ、そうえいばケティの件問いただしてなかったわね?あと見舞いに来た子達のことも」 モンモンラシーに殺気が宿る。 その気配を感じ取って慌てるギーシュ 「ははは、何言ってるんだモンモンラシー、君の愛のこもった看護のおかげで全治数週間のケガだってのにもう歩けるようになったし、僕もヴェストリの広場を見に行こうかな」 言うが早いか、ギーシュは立ち上がって医務室を出ていった。 「まったく、あの浮気癖の治療法はないのかしら…」 モンモンラシーはため息をついて、医務室を出て行った。 もちろん、行き先はヴェストリの広場。 * * * 「おい、また決闘だってよ」 「誰と誰がだい?またゼロの使い魔かい?」 「その主人とヴィリエだってよ」 「チハとシャーマンくらい差があるな」 「いや、クリリンと魔人ブウくらいだろ」 「いやいや、勇次郎とディーノ男爵くらいだって」 「ちょっと待てお前、地獄の魔術師バカにしやがったな?」 「あんな奴ヘタレじゃねーか、所詮鎮守直廊三人衆だろ」 「黙れ、今その思いをはらしてやる!キレまくってはらしてやる!」 「俺が最強だ!はらしてやる!」 「最高にハイ!って奴だーーッ!」 * * * ヴェストリの広場、決闘開始10分前。 「立ち見席でいい、買うぜ!50ドニエまで出す!」 「金さえ出すなら一番前の席だって引っ張ってきてやる」 「特等席だっ!……500ドニエ以上出せる奴っ……!ケチケチしてると買い損なうぞ!」 席の売買まで行われ、非常に活況を呈している。 この前のワムウとギーシュの決闘での結果が尾を引いているのか、それともルイズがどう戦うか見ものなのか。 「ヴィリエに5スウ賭けるぜ!」 「あ、あれは!1ヶ月分の小遣い全部だ!」 賭けも行われ、さながら祭りのような異様な雰囲気だ。 あまりの騒ぎに校長を含め、教師が駆けつけたが、止めるどころか声すら届かない。 「のう、ミス・ロングビル。ワシ、けっこう娯楽だけは用意しているつもりなんじゃが、近頃の子供はそんなに退屈しておるのかのう……今期の学生は色々と不安じゃ……なんとか仲裁できんかの?」 「ミスタ・オスマンがやらないなら無理でしょう」 「スクウェアクラスが5人居ても仲裁なんて無理ですな」 「やれやれ、こういうときはいつも風を自慢しておるミスター・ギトーに押し付け…任せたいんじゃが、あやつはどこにいるんかの?ミスタ・コルベール」 「えーっと、さっきチラっと見たんですが…」 コルベールがあたりを見回す。 そして、ギトーを見つける。 「最前席に座ってますな」 コルベールはため息をつく。 「なあ、ちょっとあやつを殴ってきていいかの?わしゃもう泣きたくなって来たわい…」 「やれやれ、すごい活況だね、モンモンラシー」 立ち見席で遠巻きに広場を眺めるギーシュとモンモンラシー。 そこに席を探しているキュルケとタバサがスペースを目ざとく見つける。 「……ほんと、どこも空いてないわね…あ、ギーシュの隣が空いてるわね。あそこで妥協しましょう、行くわよタバサ」 「妥協ってなんだねキュルケ、そんなに僕の隣がいやなのかい?」 「あんたの隣なんて座ってたらうるさいのが増えるもの、あんたの女だなんて思われると色々と面倒だしね」 「…僕の名誉を貶すのがそんなに好きかい?」 「あんたの名誉なんてこの前の決闘で急落も急落、整理ポスト行き同然じゃない」 「せめて、そういうことはモンモンラシーの前以外で言ってくれよ…」 決闘後の医務室で五股もバレ、使い魔に決闘で敗れて取り巻きも消え、唯一残ったモンモンラシーの中での評価もガタ落ち。 それでも彼女が残ったのは決闘の原因が彼女の香水であったこともちょっとだけ影響している。 「おいお前らも賭けないか?1口10ドニエだ」 小銭の入った箱と賭け金の額を書いている紙を持った同級生が彼らに尋ねる。 「今の倍率どうなってんのよ」 キュルケが興味を示す。タバサはギャンブルは嫌いではないが、野暮だと思って顔を上げない。 「賭けになんねーよ、今ならルイズに賭ければ140倍だ、どうだい賭けないかい」 彼は肩をすくめる。 ギーシュがポケットの財布を出し、 「そうだな、じゃあルイズに5口かけるよ」 「ほう、ギーシュ、なかなかギャンブラーだな」 「彼女が勝ってくれれば彼女の使い魔に負けた僕も少しは汚名返上できるかもしれないからね。まあお祈りみたいなもんさ」 ギーシュは苦笑する。 「そうねえ…」 キュルケが呟く。 「じゃあこれくらいかしら…5スゥだから…50口ね」 「はいはい、ヴィリエに50口ね」 「待って、わたしの『投票先の選択』の発言がまだすんでないわ」 帳簿に書き込もうとした彼の手が止まる。 「ルルルルルルルルルルル、『ルイズ』だとッ!あんたは一番バカにしてるはずじゃ…」 「140倍なら十分儲かる見込みありよ」 「驚いた、こんだけもらえれば黒字だな、サンクスキュルケ!」 彼は去っていった。 「どういう風の吹き回しだい、キュルケ?」 「言ったとおりよ、殺し合いならともかくルールのある決闘なんだから十に一つくらいはルイズでも勝てるでしょ。 1割で勝てるんだから140倍なら限界まで張らないと……それに、なんとなく『なんか』やりそうなのよね、あの子」 ギーシュはニヤっと笑った。 「君はルイズ以上に素直じゃないな」 「どういう意味よ、燃やすわよ」 キュルケはニコリともせずにギーシュを睨んだ。 「ふーっ、もうすぐ決闘開始か、まあこんなもんだろうな」 帳簿を見直し、一息つく。 「おい、そこの男」 「ヒッ!な、なんですか?」 いきなり後ろから巨漢に話し掛けられ、ビクりとする。 どうみてもメイジではないが、平民からの賭けも募っているため、その件かと思う。 「なんでしょうか?賭けならば一口10ドニエですが」 「賭けをやっているらしいな、この宝石を賭けよう、証明書もある」 大男は宝石と証明書を懐から出してくる。素人でもわかるくらい素晴らしい輝きを誇っている。 「そうですね…それはいくら分ですか?」 「100エキューだと書いてあるな」 冷や汗が彼の頬を走る。 (ひゃひゃひゃ100エキューだって!?馬が何頭帰るんだ!?えーと…2頭、3頭、5頭、7頭…) 「どうした?受けないのか」 「そ、そんな、ヴィリエにそんなに賭けられたら赤字ですよ」 「ヴィリエ?誰だそれは、俺はルイズに賭けると言ってるんだ」 彼の汗が引く (やったァーーッメルヘンだ! ファンタジーだッ!こんな体験できるやつは他にいねーッ!) 「わかりました、ルイズに100000口ですね!」 (でも…万が一…当たっちゃったら…俺破産だな!そんなわけないだろうけどね!ハハハ!) 「「ルイズ・フランソワーズの入場だァーーッ!」」 場内から歓声があがった。
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教室を爆破した罰として、ルイズは魔法無しでの掃除を命じられた。(無論この教室は使えないため、休講となった) 「なるほど、それが『ゼロのルイズ』のいわれか」 「なんとでも言いなさいよ!どうせ私の魔法成功率はゼロよ!あんたは掃除が終わるまでどっかいってなさい」 ぷい、とそっぽを向いてルイズは一人で掃除をし始めた。 すると、ワムウが歩いてきて横に立つ。 「なによ、同情の代わりに手伝ってくれるとでもいうの?これは私の受けた罰なんだから私がやらないと。 まあ、強制はしないけどやってくれるっていうなら別に手伝ってもいいわ」 無言を肯定と受け取ったルイズ。 「じゃあ、あんたはあっち側をお願いね」 しかし、動かない。 「なによ?手伝ってくれるんじゃなかったの?」 「少し待て」 ぶっきらぼうに返すワムウ。 ワムウは小型の竜巻を作る。そしてッ!その竜巻は部屋中のほこりを一箇所に集めていったッ! 「……すごいじゃない、亜人のくせに私より魔法みたいなことができるなんて…」 「俺を召還したんじゃなかったのか?使い魔は主人の能力を示すというがそれならば大したメイジとやらだといえるんじゃないのか?」 「…努力したって、練習したって、どうにもならなのよ!生まれてこの方、まともな魔法なんて成功したことないのよ!」 「努力、か。我々には縁のない言葉だな」 「そうよ!あんたみたく才能だけでそれだけやれるような奴とは出来が違うのよ!」 ルイズは目に涙を浮かべる。 が、それを無視してワムウは語りつづける。 「そうだ。我が風の流法は天賦の才。我々一族はそういった能力を生かして戦ってきた。だが、多少荒削りでもありのままの能力を生かす のは貴様ら人間の方が上手いのではないだろうか?俺が今までに戦ってきた戦士たちにも波紋の強さ、弱さなどはあったが、決して自分の 本質を見失い、闇雲に攻撃してくるような敵は手ごわくない。が、自分の弱ささえも武器にする、そういった人間が手ごわいのは 二〇〇〇年間変わっていなかった。俺が負けた相手も、波紋の強さは数々の勇士とは劣っていたが、自分の本質を最大限に生かしていた」 この大男が負けたと聞いて、ルイズは唖然とする。 「あ、あんたが負けたって?『はもん』とか、よくわからないけど……そいつはなにかすごい能力を持ってたの?」 「目に見える能力だけなら、我々が戦ってきた者の中でも一般的な強さであっただろう……しかし、奴の武器は状況、怪我、道具、 能力、相手、自分全てを利用する、そういったしたたかさであった。これに敵う人間、いや我々を含めてもそんなのは数少ないだろう そして、そういったしたたかさ、というのはどんな能力だろうと発揮できる。お前の『爆発』も天賦の才、違うか?」 「そ、そうやって、高い目線で私をバカにして!励ましになってないんだから!」 言葉とは裏腹に機嫌を戻したのか掃除を再開した。 「あ、あの~」 入り口のあたりにメイドの女性が立っている 「あら、どうしたの?確かあなたは、メイドの…」 「シエスタです、ミス・ヴァリエール。あの、掃除など私めに頼んでいただければ請け負いましたのに」 「いいのよ、これは私の罰なんだから私がやらないと」 「じゃ、じゃあ手伝わせてください!」 「せっかくだけど、私の失敗が原因だし、責任くらい私が果たさないと」 「で、でも隣の…ええと…貴族様…じゃないですよね…?」 「ああ、あいつは私の使い魔よ、どうしても手伝いたいって言うから手伝ってるだけよ。貴女がやらなくても構わないわ」 ワムウは風でゴミを集めつづけている。 「いいえ、やらせてください!私もどうしても手伝いたいんです!」 といってシエスタは有無を言わさず部屋に入り込み掃除を始める。 数十分後にはほとんど片付いていた。 「ミス・ヴァリエール、掃除は終わりましたか…って貴女!魔法は禁止したはずですよ!」 「え、違います、これは私の使い魔がおこした風で……ねえワムウ、そうで…」 ワムウは既に居なかった。 「ちょっとぉぉおおおおッ!どこ行ったのよあの木偶の棒はぁあああッ!」 「貴族たるもの、掃除を手伝ってもらうくらいはいいでしょう、しかしミス・ヴァリエール!今のは魔法を使っていたのに 一方的に嘘をついていたように見えたわ!貴族のすることではないッ!」 「え、ち…違いますわ!」 「いいわけ無用です!ふたりとも、ふたりともあとで罰を与えるわ!」 説明には掃除していた時間よりも多くかかった。 * * * 寮の廊下を歩いている二人。 「ふう、ひどい目にあったわ…貴女も災難だったわね、ごめんなさい」 「い、いえ、そんな!貴族の方が私なんかに謝らないで下さい!」 「そんな貴族だとか平民だなんて関係ないわよ。あなたの好意で手伝ってもらったのに、迷惑かけちゃって… あなたにもまだやることはあったんでしょう、ごめんなさいね」 「い、いえ、仕事なんかもうありませんよ、その……もうすぐ貴族の方の家に専属で勤めることになっていて…」 シエスタが続きを話すのを止める。ワムウが部屋の前に立っていた。 「あ、あんた!どこ行ってたのよ!あのあと説明とかすごい大変だったのよ!」 「俺の風で集められるゴミはあらかた集め終わった。あいにく不器用なんでな、残りはそこのシエスタにやってもらった方が 効率的だっただろう?力仕事は先に終えていたしな。俺の仕事が終わったら俺の好きにさせて構わんだろう」 「そうじゃなくて!あんたのあの風が魔法と間違われたのよ!先住魔法の類だって言って誤魔化しておいたけど… あんたのその風の仕組みを知らないんだから説明だって難しいわよ!だいたい、窓から出て行ったのにすぐ見えなくなったなんて」 「少々日差しが強かったんでな、プロテクターを纏っていたからな」 「『ぷろてくたー』?なによそれ、よくわかんないけど今日はあんたの能力について教えなさいよ!いい、わかった?」 「教えてやるから扉を開けてくれ、扉や壁を壊されては困るんだろう?」 ブツブツといいながら扉のカギを開ける。 ワムウがすっと中に入っていく。 「さ、話の続きは中でしましょう。よくわからないけど、今は特にやることがないんでしょう?」 「え、ええ。ではお邪魔しますわ、ミス・ヴァリエール」 先ほどの話に入る。 「えーと、どこかの貴族に専属で勤めることになったんですって?」 「ええ」 「どこに勤めるのかしら?それくらいもう聞いているでしょう?」 「それが………その……モット伯というところで……」 ルイズは唖然とする。 「も、モット伯ってあの変態ドスケベオヤジ?」 「そ、そんなミス・ヴァリエール、そんな言葉をおっしゃらないでください」 「で、でも…貴女だってモット伯の評判くらい聞いているでしょう?断れないの?」 「私たち平民が貴族様に抗うなんて…私にもタルブに家族が居ますから…」 場が重くなり、二人の口は止まる。 シエスタが先に口を開く。 「でも、残り数日間ここで生活ができますから、思う存分その間は楽しませていただきます」 「じゃ、じゃあね、あさって一緒にでかけない?綺麗な湖が森の方にあるんだけど」 「本当ですか!じゃあ、お言葉に甘えて、ご一緒させていただきます……あら、もうこんな時間ですので部屋に戻らないと… 楽しみにしてますわ、ミス・ヴァリエール。」 シエスタは出ていき、扉が閉まった。 「おい、ルイズ、シエスタが言っていたモット伯とやらはどんな人間なんだ?」 「クズもクズ、貴族の風上にもおけないクズよ!いろんなところから目をつけた平民の女性を逆らえないことをいいことに 屋敷に連れ込んで、ご禁制の薬やらなにやらを使っていろいろやっているらしいけれど、王宮直属の国吏でそうそう手は出せないのよ」 「そうか、ではそんなクズは生きていても仕方がないな」 話を聞き終えたワムウは、 ワムウは窓を開け出て行こうとする。 「待ちなさい、これは命令よ。いくらクズでも貴族ですし、王宮直属の国吏なんか殺したらあんたの死刑は確実、わたしだけじゃなく シエスタも含めて使用人たちにもなにか罪を科せられるかもしれないわ」 「人間どもの社会は面倒だな、ならば死体さえ残さない『事故』にすればいい。体ごと取り込んで食えばそれも可能だ」 「ダメといったらダメよ。これはね、あんたのことも心配して言ってるのよ。とにかく、そのルーンがあって私の使い魔である以上命令は聞いてもらうわ」 それを聞いたワムウは質問で返す。 「ルーンがなければいいんだな?」 「無理よ、使い魔の契約は死なないと切れ……」 ワムウは、ルーンの刻まれた左手の甲を、切り落とした。 「なにをやってんのよワムウゥウウウッ!手首はともかく理由を言いなさい!なんでそんなにあのシエスタにこだわるのよ?」 「主人が恩を受けた以上、使い魔がその義理を返すのは当然だ、違っても今更曲げる気にはなれん」 ワムウは、窓から夜の闇に飛び去った。